JPWO2010008042A1 - 植物栽培システム - Google Patents

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英治 西原
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昭弘 岡本
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Abstract

【課題】低コスト且つ簡単な操作で、植物の生育を阻害する無機塩(例えば、NaCl)で汚染された汚染水を低コストで且つ効率的に浄化して植物に供給することを可能にする植物栽培システムを提供する。【解決手段】水は透過させず水蒸気は透過させる選択的透湿性フィルム、該フィルム上に配置された、植物栽培用支持体と吸水性樹脂とを含む培地混合物、および該培地混合物上に配置された、水蒸気不透過性マルチングシートを含んでなる植物栽培システム。【選択図】 図3

Description

本発明は植物栽培システムに関する。より詳しくは、植物の生長を阻害する無機塩で汚染された汚染水を植物栽培用水源として用いて、植物を栽培するためのシステムであって、水は透過させず水蒸気は透過させる選択的透湿性フィルム、該選択的透湿フィルム上に配置された、植物栽培用支持体と吸水性樹脂とを含む培地混合物、および該培地混合物上に配置された、水蒸気不透過性マルチングシートを含んでなることを特徴とする植物栽培システムに関する。本発明の植物栽培システムは、上記のように非常にシンプルな構成でありながら、植物の生育を阻害する無機塩(例えば、NaCl)で汚染された汚染水を、低コストで且つ効率的に浄化して植物に供給することを可能にするのみならず、水や肥料の大気及び大地土壌への流亡を抑制しつつ、極めて良好な生育状態で植物の栽培を行うことを可能にする。従って、本発明の植物栽培システムは、特に、塩分を含まない水が非常に貴重である砂漠地帯などで植物を栽培するために極めて有用である。
降雨量の極端に少ない砂漠土壌では、水分は下方から上方に移行し、土壌表面では水のみが蒸発により失われるので、塩類が土壌表層で集積し、植物生育の阻害原因となる。また、砂漠の地下水には塩分が含まれることが多く、通常、そのままでは植物の灌水に利用することができない。植物はNaCl 濃度で100mM以上の高塩濃度水では生長することができないことが知られている(非特許文献1参照)。
一方、塩水を淡水化する技術として、逆浸透膜によるろ過が広く知られている。しかしながら、逆浸透膜は高価であり、逆浸透圧を負荷するための高圧負荷エネルギーも必要となり、植物の灌水に必要な淡水を得るには莫大なコストがかかる。
また、水は透過させず水蒸気は透過させる選択透湿性フィルムを使用して、塩水から塩分を除去して、植物栽培に利用する技術も知られていた。例えば、特許文献1には、防水透湿性樹脂フィルム(多孔性ポリテトラフルオロエチレン)、またはこれと水蒸気選択透過膜(シリコーン膜、セルロースアセテート膜、ポリイミド膜など)との複合フィルムを使用する植物栽培装置が開示されている。この装置の利用時には、防水透湿性樹脂フィルム(又はこれと水蒸気選択透過膜との複合フィルム)の下面を海水などの植物栽培に適さない水に接触させ、該フィルムを介して、塩(NaCl)などの有害物質が除去された水(水蒸気)が該フィルム上の植物に供給される。しかし、この装置では、塩分の除去は可能だが、上記したフィルムの透湿性が低いため、塩水から回収できる水の量はわずかであり、植物栽培に必要な水分は、実質的にはフィルムの上方から灌水することにより補わなければならず、塩水の有効利用の観点からは不十分であった。
また、特許文献2にも選択的透湿性フィルムを使用した水耕栽培のための植物栽培装置が開示されている。特許文献2の装置においても、特許文献1の場合と同様に、選択的透湿性フィルムを水面に接触させ、選択的透湿性フィルム上で植物を栽培する構造となっている。また、この特許文献の実施例においては、選択的透湿性フィルムの下に供給されているのは水道水のみだが、明細書本文に海水なども利用できるとの記載がある。しかし、特許文献2は、水分を選択的透湿性フィルムを介して植物に供給することによって、水耕栽培において屡々問題となる、根周りの過剰な水分による根腐れなどを防止することを目的としており、そのために、ポリビニルアルコールフィルムのような透湿度が比較的高いフィルムを主に使用している。そのようなフィルムの場合、実際に海水などの塩水を使用すると、塩分が透過してしまい、塩害により植物の生育が阻害されてしまうという問題があった。また、透湿性の低いフィルムを使用すれば、当然、上記特許文献1と同様の問題が発生する。
また、砂漠で植物を生育させるために、高吸水性樹脂を保水剤として利用する試みが行われている。しかしながら、高吸水性樹脂として広く使われているポリアクリル酸塩架橋物(例えば、特許文献3及び特許文献4参照)は、純水中での吸水性には優れるものの、塩水中では極端にその吸水能力が低下するという性質があり、塩分を多く含む砂漠土壌中ではその能力を十分に発揮できないという問題があった。
E. Yildrim, A. G. Taylor, T. D. Spittler, "Ameliorative effects of biological treatments on growth of squash plantsunder salt stress", Scentia Horticulture, 111, 1-6 (2006) 実公平第7-45169号公報 EP特許第1203525号公報 米国特許第6,286,254B1号公報 米国特許第6,615,539B1号公報
従って、低コスト且つ簡単な操作で、植物の生育を阻害する無機塩(例えば、NaCl)で汚染された汚染水を低コストで且つ効率的に浄化して植物に供給することを可能にする技術の開発が望まれていた。
このような状況下、本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を行った。その結果、水は透過させず水蒸気は透過させる選択的透湿性フィルム、該選択的透湿フィルム上に配置された、植物栽培用支持体と吸水性樹脂とを含む培地混合物、および該培地混合物上に配置された、水蒸気不透過性マルチングシートを含んでなることを特徴とする植物栽培システムが、上記のように非常にシンプルな構成でありながら、植物の生育を阻害する無機塩(例えば、NaCl)で汚染された汚染水を、低コストで且つ効率的に浄化して植物に供給することを可能にするのみならず、水や肥料の大気及び大地土壌への流亡を抑制しつつ、極めて良好な生育状態で植物の栽培を行うことを可能にすることを見出した。この知見に基づき、本発明を完成した。
本発明の上記及びその他の諸目的、諸特徴並びに諸利益は、添付の図面を参照しながら述べる以下の詳細な説明及び請求の範囲の記載から明らかになる。
本発明の植物栽培システムは、非常にシンプルな構成でありながら、植物の生育を阻害する無機塩(例えば、NaCl)を含む水を、低コストで且つ効率的に浄化して植物に供給することができるばかりでなく、水や肥料の大気及び大地土壌への流亡を抑制しつつ、極めて良好な生育状態で植物の栽培を行うことを可能にするため、特に、塩分を含まない水が非常に貴重である砂漠地帯などで植物を栽培するために極めて有用である。
比較例1で使用した植物栽培システムを示す断面図である。 本発明の植物栽培システムの1つの態様を示す断面図である。 本発明の植物栽培システムの他の1つの態様を示す断面図である。 実施例及び比較例の実験結果を示すグラフである。
1 選択的透湿性フィルム
2 植物栽培用支持体
3 水蒸気不透過性マルチングシート
4 無機塩で汚染された汚染水または該汚染水を含有する大地土壌
5 吸水性樹脂
6 地下水
7 潅水手段(汚染水用点滴チューブ)
8 潅水手段(水または養液用点滴チューブ)
本発明の1つの態様によれば、植物の生長を阻害する無機塩で汚染された汚染水を植物栽培用水源として用いて、植物を栽培するためのシステムであって、
水は透過させず水蒸気は透過させる選択的透湿性フィルム、
該選択的透湿フィルム上に配置された、少なくとも1種の植物栽培用支持体と少なくとも1種の吸水性樹脂とを含む培地混合物、および
該培地混合物上に配置された、水蒸気不透過性マルチングシート
を含んでなることを特徴とする植物栽培システムが提供される。
また、本発明の他の1つの態様によれば、植物の生長を阻害する無機塩で汚染された汚染水を植物栽培用水源として利用して、植物を栽培するための方法であって、
(1)水は透過させず水蒸気は透過させる選択的透湿性フィルム、
該選択的透湿フィルム上に配置された、少なくとも1種の植物栽培用支持体と少なくとも1種の吸水性樹脂とを含む培地混合物、および
該培地混合物上に配置された、水蒸気不透過性マルチングシート
を含んでなる植物栽培システムの該培地混合物中に、植物を植え、そして
(2)該植物栽培システムを、植物の生長を阻害する無機塩で汚染された汚染水または該汚染水を含む大地土壌上に配置し、それにより、該無機塩が該選択的透湿性フィルムを透過することを防ぎながら、該汚染水の水分を水蒸気の形で培地混合物に供給する、
ことを包含する植物栽培方法が提供される。
次に、本発明の理解を容易にするために、本発明の基本的特徴及び好ましい諸態様を列挙する。
1.植物の生長を阻害する無機塩で汚染された汚染水を植物栽培用水源として利用して、植物を栽培するためのシステムであって、
水は透過させず水蒸気は透過させる選択的透湿性フィルム、
該選択的透湿フィルム上に配置された、少なくとも1種の植物栽培用支持体と少なくとも1種の吸水性樹脂とを含む培地混合物、および
該培地混合物上に配置された、水蒸気不透過性マルチングシート
を含んでなることを特徴とする植物栽培システム。
2.該選択的透湿性フィルムが、無孔性親水性フィルムであることを特徴とする、前項1に記載の植物栽培システム。
3.該選択的透湿性フィルムの透湿度が、少なくとも1×103g/m2・24時間であることを特徴とする、前項1又は2に記載の植物栽培システム。
4.該選択的透湿性フィルムの水不透過性が、耐水圧として10cm以上であることを特徴とする、前項1〜3のいずれかに記載の植物栽培システム。
5.該吸水性樹脂の吸水性が、該植物栽培用支持体の吸水性よりも高いことを特徴とする、前項1〜4のいずれかに記載の植物栽培システム。
6.該少なくとも1種の吸水性樹脂の吸水倍率が5を超え、該少なくとも1種の植物栽培用支持体の吸水倍率が5以下であって、該吸水倍率は、吸水性樹脂または植物栽培用支持体が吸収し得るイオン交換水の重量の、吸水性樹脂または植物栽培用支持体の乾燥重量に対する比として定義される、ことを特徴とする、前項5に記載の植物栽培システム。
7.該吸水性樹脂のカルシウムイオン吸収量が、吸水性樹脂乾燥重量1gあたり150mg未満であることを特徴とする、前項1〜6のいずれかに記載の植物栽培システム。
8.該吸水性樹脂の量が、該植物栽培用支持体1リットルあたり0.5〜20gであることを特徴とする、前項1〜7のいずれかに記載の植物栽培システム。
9.該選択的透湿性フィルムの下に該汚染水を供給する手段を更に含むことを特徴とする、前項8に記載の植物栽培システム。
10.該培地混合物に水または養液を灌水するための手段を更に含むことを特徴とする、前項1〜9のいずれかに記載の植物栽培システム。
11.植物の生長を阻害する無機塩で汚染された汚染水を植物栽培用水源として利用して、植物を栽培するための方法であって、
(1)水は透過させず水蒸気は透過させる選択的透湿性フィルム、
該選択的透湿フィルム上に配置された、少なくとも1種の植物栽培用支持体と少なくとも1種の吸水性樹脂とを含む培地混合物、および
該培地混合物上に配置された、水蒸気不透過性マルチングシート
を含んでなる植物栽培システムの該培地混合物中に、植物を植え、そして
(2)該植物栽培システムを、植物の生長を阻害する無機塩で汚染された汚染水または該汚染水を含む大地土壌上に配置し、それにより、該無機塩が該選択的透湿性フィルムを透過することを防ぎながら、該汚染水の水分を水蒸気の形で培地混合物に供給する、
ことを包含する植物栽培方法。
12.該培地混合物が、植物の生長に有用な養分を含有することを特徴とする、前項11に記載の方法。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のシステムは植物の生長を阻害する無機塩で汚染された汚染水を植物栽培用水源として利用して、植物を栽培するためのシステムである。
上記の無機塩類の例としては、NaClなどのナトリウム塩、及びカドミウムやクロムなどの重金属の塩などが挙げられる。特に、本発明の植物栽培システムは、自然界に豊富に存在するにも拘らず、そのままでは植物栽培に使用できない食塩水溶液(NaCl水溶液)を、低コストで簡単に淡水化して植物に安定的に供給することができるため、食塩水溶液を利用した植物栽培に極めて好適に使用できる。そのような食塩水溶液の具体例としては、NaCl濃度が100mM以上、飽和溶解度以下のNaCl水溶液(海水や地下水など)が挙げられる。また、本発明で使用する食塩水溶液のNaClの濃度は、1,000mMを超えないことが好ましく、500mMを超えないことがより好ましく、150mMを超えないことが特に好ましい。上記の重金属の塩の具体例としては、CdCl2、Cd(NO3)2及びCdSO4などのカドミウム塩、K2CrO4などのクロム酸塩などが挙げられる。このような重金属は、人体にも深刻な悪影響を与えるため、ppmレベルの僅かな量であっても除去することが望ましい。しかし、あまり高濃度の水溶液を使用することは危険であるため、重金属の塩を含む水を使用する際には、その濃度が1,000ppmを超えないことが好ましく、100ppmを超えないことがより好ましく、10ppmを超えないことが特に好ましい。上記の重金属の塩で汚染された汚染水の例としては、工業廃水などが挙げられる。また、複数の異なる無機塩で汚染された汚染水を使用してもよい。
また、本発明の植物栽培システムにより、病原性微生物や病原菌、ウィルス、線虫なども除去することができる。即ち、本発明の植物栽培システムにおいては、植物の生長を阻害する無機塩で汚染された汚染水やそれを含む大地土壌と植物の根とが選択的透湿性フィルムによって隔離され、直接には接触していないため、本発明のシステムを設置する水や大地土壌が病原性微生物や病原菌で汚染されていても、微生物、細菌は該フィルムを透過できないため、根に触れることがなく、連作障害などの植物汚染を回避できる。
また、大地土壌が残留農薬などで汚染されているような場合にも、やはり大地土壌と根が選択的透湿性フィルムで隔離されているために、植物の汚染が軽減される。
本発明の植物栽培システムは、植物の生長を阻害する無機塩で汚染された汚染水(食塩水溶液など)または該汚染水を含む大地土壌の上に設置した場合でも、無機塩を含有した地下水の選択的透湿性フィルム上への移行が阻止され、水蒸気のみが通過する。選択的透湿性フィルム上に移行した水蒸気は、水蒸気不透過性マルチングシートによって大気中への蒸散が阻止され、昼夜の温度差により該マルチングシートの下面あるいは植物栽培用支持体中で再凝集されて無機塩を含まない水となるので、植物の生育に有効に利用される。更には、選択的透湿性フィルムで、植物と汚染水または大地土壌とを隔離することによって、フィルム上に供給した水や肥料が、フィルム下の汚染水や大地の土壌へ流亡することが防止される。従って、必要に応じて選択的透湿性フィルム下の大地土壌などに供給する水、また、必要に応じて選択的透湿性フィルム上の培地混合物に供給する水および肥料の量は、いずれも極めて少量で済み、地下水汚染、大地土壌の表層への塩の蓄積といった環境面、更には、貴重な水資源の有効利用、肥料使用量の低減などといった栽培コスト面で極めて有利である。
更には、選択的透湿性フィルム上の、大地から隔離された少量の客土に少量の肥料と水分を効率的に供給することによって、経済的であると同時に高品質の作物が得ることができるというメリットもある。
本発明によれば、前記植物栽培用支持体に混合された吸水性樹脂は、植物の根への水分供給のみならず、塩害防止の効果もある。即ち、選択的透湿性フィルムを通過した水蒸気は、再凝集して液体の水になるが、これが該フィルムに接触してしまうと、該フィルムに吸収されている無機塩類が該フィルム上の再凝集水中に溶出し、再凝集水が無機塩類を含むこととなり、植物の生育を阻害してしまうという問題が発生する。本発明者らは、該吸水性樹脂の使用によりこの問題を解決できることを見いだした。
さらに、本発明者らは、本発明のシステムを使用して植物を栽培すると、植物は吸水して膨潤した吸水性樹脂表面に根を張り、吸水性樹脂中の水分を直接、吸収し生長することを見いだした。特に、培地混合物に肥料成分が含まれていると、植物が吸水性樹脂中の水および肥料成分を吸収しようとするために、膨大な数の毛根が生起されることによって、根の近傍にある水、肥料成分、空気などを効率良く吸収できるようになる。
本発明のシステムを用いて、植物の生長を阻害する無機塩で汚染された汚染水を植物栽培用水源として利用して植物栽培を行う際に、該汚染水の供給方法としては、以下の三通りの方法が挙げられる。
(1)汚染水を含んだ大地土壌のみを使用し、該土壌上に本発明のシステムを設置する。
(2)汚染水を含まない大地土壌または汚染水を含んだ大地土壌に食塩水溶液などの汚染水を供給しながら、植物栽培を行う。
(3)汚染水のみを選択的透湿性フィルムの下に直接供給する。
汚染水を含んだ大地土壌とは、NaClなどの無機塩で汚染された地下水によって湿った土壌のことを指す。そのような土壌のpF値は、通常0〜3の範囲であり、土壌ガスの相対湿度は通常99%以上である。
上記(2)の方法で、大地土壌に食塩水溶液などの汚染水を供給する手段としては特に制限はないが、公知の灌水手段(例えば、水が貴重なイスラエルで開発された点滴チューブ、「ドリップチューブ」とも称される)を用いることができる。
また、上記(3)の方法の具体例としては、貯水槽などの容器中の汚染水上に本発明のシステムを設置する方法や、水不透過性材料の上に食塩水溶液などの汚染水を供給するための灌水手段(例えば、ドリップチューブなど)を配置し、その上に上記選択的透湿性フィルムを配置する方法などが挙げられる。上記の水不透過性材料としては、水を通さないものであれば特に制限はなく、素材として合成樹脂、木材、金属あるいはセラミックなどで、フィルム状、シート状、板状、または箱状などのものを使用することができる。尚、上記の容器については、例えば、WO2004/064499を参照することができ、上記の水不透過性材料については、例えば、WO2008/035580を参照することができる。
以下、本発明の植物栽培システムにおける各部の構成について、必要に応じて図面を参照しつつ本発明を更に具体的に説明する。以下の記載において量比を表す「部」および「%」は、特に断らない限り質量基準とする。
本発明の植物栽培システムは、水は透過させず水蒸気は透過させる選択的透湿性フィルム、該選択的透湿フィルム上に配置された、植物栽培用支持体と吸水性樹脂とを含む培地混合物、および該培地混合物上に配置された、水蒸気不透過性マルチングシートを含んでなることを特徴とする植物栽培システムである。
図1は、比較例1で用いた植物栽培システムの断面図である。図1に示すシステムにおいては、食塩水溶液などの汚染水4上に、水は透過させず水蒸気は透過させる選択的透湿性フィルム1が設置され、該フィルム1の上に植物栽培用支持体2が配置され、該植物栽培用支持体の上に水蒸気不透過性マルチングシート3が設置されている。
図1において、汚染水4はそのまま選択的透湿性フィルム1を透過することはないが、汚染水4は無機塩とともに選択的透湿性フィルム1に吸収される。選択的透湿性フィルム1に吸収された汚染水中の水分は水蒸気として蒸散するが、無機塩が蒸散することはない。選択的透湿性フィルム1から蒸散した水蒸気は、植物栽培用支持体2の上に設置された水蒸気不透過性マルチングシート3によって大気中に蒸散することが遮られる。水蒸気不透過性マルチングシート3によって閉じ込められた水蒸気は、その温度における飽和水蒸気圧以上になると凝集して純粋な水となり、植物栽培用支持体2中あるいは水蒸気不透過性マルチングシート3下面で露結する。水蒸気不透過性マルチングシート3下面で露結した水は植物栽培用支持体2中に重力で落下する。
しかし、高吸水性樹脂を使用していないため、植物栽培用支持体2中での結露が激しくなり、その結果、液体の水が選択的透湿性フィルム1上に溜まり、選択的透湿性フィルム1に吸収された無機塩が選択的透湿性フィルム1上に溶出してしまう。その結果、塩害により植物の生育が制限されてしまう。
尚、本発明で使用する吸水性樹脂は、食塩水溶液中では極端にその吸水能力が低下するという性質を有し、そのため、従来、食塩水溶液を使用した植物栽培においては使用されていなかった。
図2は、本発明の植物栽培システムの1つの態様を示す断面図である。図2においては、水は透過させず水蒸気は透過させる選択的透湿性フィルム1、該選択的透湿フィルム1上に配置された、少なくとも1種の植物栽培用支持体2と少なくとも1種の吸水性樹脂5とを含む培地混合物、および該培地混合物上に配置された、水蒸気不透過性マルチングシート3を含むシステムが、食塩水溶液などの汚染水4または該汚染水を含む大地土壌4の上に配置されている。
図2では、植物栽培用支持体2中に吸水性樹脂5が混合されてなる培地混合物が使用されているので、図1の態様で植物栽培用支持体2中に露結した水は、ここでは吸水性樹脂5に吸収されることになる。再凝集された塩分を含まない水が、吸水性樹脂5によって吸水され保持されるため、選択的透湿性フィルム1上に、再凝集された水が接触することが防止される。上述したように、再凝集した水が該フィルム上に接触してしまうと、該フィルムに含まれている塩類が該フィルム上の再凝集水中に溶出し、再凝集水が塩分を含むこととなり、植物の生育を阻害する問題が生じるが、吸水性樹脂5の上記のような機能により、この問題を回避することができる。更に、吸水性樹脂5に吸収された水は再蒸散しにくいため、吸水性樹脂5が配置されない場合に比べて植物栽培用支持体2中により多くの水を保持することができ、植物の生長が促進されるという効果が得られる。
また、植物は吸水性樹脂5中の水分を利用しようとして、膨潤した吸水性樹脂5の表面に根を張り、その根の表面積を広げようとして毛根を発達させる。この発達した毛根により、培地混合物中の養分や酸素もより有効に利用できるようになるというメリットも得られる。さらに吸水性樹脂5が選択的透湿性フィルム1と離れて植物栽培用支持体2中に配置されることにより、植物の根が該無機塩を含む該フィルム1と離れて生育するため、該無機塩による植物生長阻害を回避できる。この点についてより具体的に説明する。吸水により膨潤した吸水性樹脂が、選択的透湿性フィルムの表面に接触していると、該フィルムに吸収されている無機塩類が該吸水性樹脂中の水に溶出してしまう。この吸水性樹脂中の無機塩類を含む水を植物の根が吸収すると、植物の生長が阻害されてしまう。
従って、吸水性樹脂は、これより吸水性の低い支持体を介して、選択的透湿性フィルムから1〜5mm程度隔離しておくことが好ましい。この際、全ての吸水性樹脂を選択的透湿性フィルムから隔離しておく必要はないが、該培地混合物と選択的透湿性フィルムとの接触面における、吸水性樹脂が選択的透湿性フィルムに接している面積の割合を、10%以下にすることが好ましく、5%以下にすることがより好ましく、3%以下にすることが特に好ましい。
上記のように、吸水性樹脂を選択的透湿性フィルムから隔離して配置するための方法としては、1)予め植物栽培様支持体と吸水性樹脂とを後述する使用量で混合して選択的透湿性フィルム上に設置する方法、2)まず植物栽培様支持体のみを選択的透湿性フィルム上に設置した後、支持体表面に吸水性樹脂を均一に散布し、耕運機などで支持体表層に吸水性樹脂をすき込む方法、などが挙げられる。
図2の態様では、選択的透湿性フィルム1から蒸散し、植物栽培用支持体2中あるいは水蒸気不透過性マルチングシート3下面で露結する水が無機塩を含まない純水な水であるため、吸水性樹脂5の吸水性能が低下することがない。
図3は、本発明の植物栽培システムの他の1つの態様を示す断面図である。図3の態様においては、植物の成長を阻害する無機塩を含む地下水を含んだ大地土壌上に選択的透湿性フィルム1が設置され、該フィルムの上に植物栽培用支持体2である砂漠土壌が配置され、該植物栽培用支持体の上に水蒸気不透過性マルチングシート3が設置され、植物栽培用支持体2中に吸水性樹脂5が混合されている。尚、砂漠土壌は、表層において塩分を高濃度で含有する場合があるので、本発明において砂漠土壌を支持体として使用する場合、塩分が特定量(1L中のNaClが3g)未満のものを用いる。例えば、乾燥した砂漠土壌であり且つ表層以外であれば支持体として使用可能となり得る場合がある。また、塩分の量が上記特定量以上の「砂漠土壌」であっても、塩分の少ない水で洗うことにより、塩分を特定量未満(即ち、1L中のNaClが3g未満)にして使用することもできる。
図3の態様では、植物の成長を阻害する無機塩を含む地下水6がそのまま選択的透湿性フィルム1を透過することはないが、地下水6は選択的透湿性フィルム1に吸収され、選択的透湿性フィルム1から水蒸気が蒸散する。あるいは、上記無機塩を含む地下水6から蒸散した水蒸気がそのまま選択的透湿性フィルム1を透過する。選択的透湿性フィルム1から蒸散した水蒸気は、植物栽培用支持体2(上記したような砂漠土壌であっても良い)の上に設置された水蒸気不透過性マルチングシート3によって大気中に蒸散することが遮られる。水蒸気不透過性マルチングシート3によって閉じ込められた水蒸気は、その温度における飽和水蒸気圧以上になると凝結して純粋な水となり、植物栽培用支持体2中あるいは水蒸気不透過性マルチングシート3下面で露結する。水蒸気不透過性マルチングシート3下面で露結した水は植物栽培用支持体2中に重力で落下し、植物の生長に利用される。
(追加的手段)
図3において、選択的透湿性フィルム1の下に灌水手段7(例えば、水が貴重なイスラエルで開発された点滴チューブ、「ドリップチューブ」とも称される)を配置しても良い。このような灌水手段7を配置することにより、地下水6からの水分供給のみならず、選択的透湿性フィルム1の下部に水または上記の汚染水を供給できるというメリットを得ることができる。
さらに本発明の植物栽培システムは、前記選択的透湿性フィルム上の培地混合物に水または養液を灌水する手段を有していてもよい。ここで、該フィルムの下の大地土壌への水あるいは養液の供給、およびフィルム上の培地混合物への水あるいは養液の供給には、制御のし易さなどの点から、上記の点滴チューブが好適に使用される。
図3において、マルチングシート3と選択的透湿性フィルム1の間に灌水手段8(例えば、ドリップチューブ)を配置しても良い。このような灌水手段8を配置することにより、水または養液を培地混合物中に供給して植物の生長を促進することができる。
(選択的透湿性フィルム)
本発明の植物栽培システムにおいて使用可能な選択的透湿性フィルム1は、「水は透過させず、水蒸気は透過させる」ことが特徴である。本発明において、選択的透湿性フィルム1を構成する材料が「水不透過性」であること、および「水蒸気は透過させる」ことは、例えば、以下のような方法で確認することが可能である。
<水不透過性の確認方法>
本発明において、選択的透湿性フィルムが水不透過性であるとは、「耐水圧」が10cm以上であることを言う。この「耐水圧」は、JIS L1092(B法)に準拠して、測定することが可能である。本発明においては、耐水圧は、30cm以上であることが好ましく、50cm以上であることがより好ましく、1m以上であることがより好ましく、2m以上であることが特に好ましい。
<透湿度の測定方法>
上記選択的透湿性フィルムの「透湿度」はJIS Z0208(防湿包装材料の透湿度試験方法;カップ法)に準拠して測定される。
このカップ法による透湿度測定においては、吸湿剤(塩化カルシウム)を入れたJIS所定の透湿カップに、該カップの内径より約10mm以上大きい円形を有する試験片(選択的透湿性フィルム)を取り付け、所定の封ろう剤で該試験片の縁を封かんする。温度25℃(または40℃)において上記試験片を境界面とし、一方の側を相対湿度90%又はそれ以上、他方の側を上記吸湿剤によって乾燥状態とし、適当な時間間隔(24時間、48時間または96時間)をおいて上記カップの重量増加を測定し、該増加が5%以内で一定になるまで試験を続ける。このような試験結果に基づき、下記の式で透湿度を求める。測定は、少なくとも10回行い、その算術平均を求める。
透湿度(g/m2・24時間)=(240×m)/(t・s)
s:透湿面積(cm2
t:試験を行った最後の秤量間隔時間の合計(h、時間)
m:試験を行った最後の秤量間隔・増加質量の合計(mg)
上記透湿度は、生育すべき植物体の水分消費量、土壌の通気性、選択的透湿部の面積、水の温度等によっても若干異なる場合があるが、通常、1×103g/(m2・24時間)以上、更には2×103g/(m2・24時間)以上、特に5×103g/(m2・24時間)以上、更に10×103g/(m2・24時間)以上であることが好ましい。
上述した「水不透過性」且つ「水蒸気は透過させる」選択的透湿性の条件を満足する限り、本発明のシステムに使用可能な選択的透湿性フィルムは、特に制限されず、公知の材料から適宜選択して使用することが可能である。このような材料は、通常、フィルムないし膜の形態で用いることができる。
従来、開発されてきた液体の水は不透過で水蒸気のみを透過する材料は、多孔性材料、および無孔性材料の2種類に分類することができる。本発明においては、これらのいずれの種類の材料も使用できる。
その第1の種類(多孔性材料)は、例えば、疎水性の高いポリマーを微多孔化したフィルムである。このような材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリテトラフロロエチレン、ポリエステル等の疎水性の高いポリマーが使用可能である。これらの材料の内、ポリプロピレン及びポリテトラフルオロエチレンが好ましい。微多孔化する方法としては、無機充填剤を溶融混練しシートを形成させた後、該無機充填剤を溶出させる方法あるいは一軸または二軸延伸する方法が一般的に使用できる。また、上記の微多孔性疎水性フィルムの平均細孔径は、0.01〜10μmの範囲であることが好ましく、0.05〜1μmの範囲であることがより好ましく、0.1〜0.2μmの範囲であることが特に好ましい。
また、多孔性のフィルムは、充填剤を添加することなく、上記ポリマーのシートを急速、冷延伸しフィブリル化することにより微多孔化することによっても形成可能である。このような微多孔化性フィルムにおいては、微孔があるもののポリマー材質の撥水性のために液体の水が該微孔を通過することができず、水蒸気のみが透過可能である。
第2の種類(無孔性)の透湿性材料としては、例えば、ポリビニルアルコール、セロファン、酢酸セルロース、硝酸セルロース、エチルセルロース、シリコーンゴム、ポリエステル、ネオプレン、ポリエチルメタクリレート、ポリスチレン等および上記ポリマーを構成するモノマーの共重合体等が、本発明の透湿性材料として使用できる。これらの材料の内、ポリビニルアルコールが好ましい。上記のポリビニルアルコール、各種のセルロース等の親水性高分子のフィルムの透湿性は、水の浸透気化現象によって発現可能となる。
上記の微多孔性疎水性フィルムは、本発明で使用する食塩水溶液などの汚染水または本発明のシステムを設置する土壌中に界面活性物質が存在すると、水の表面張力が低下して、NaClなどの無機塩が液体の水と共に通過するようになってしまう場合がある。一方、無孔性親水性フィルムの場合には、このような問題は無いため、この観点からは無孔性親水性フィルムを使用する方が好ましい。
本発明の選択的透湿性フィルムの厚さは、1μm〜500μm程度、更には10μm〜200μm(0.01mm〜0.2mm)程度であることが好ましい。
更に本発明の選択的透湿性フィルム1の強度補強、取り扱い易さおよび形状保持性の向上の目的で、必要に応じて、「他の材料」と複合化してもよい。このような「他の材料」としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド等から成る不織布などが挙げられる。該複合化の手法としては、例えば、張り合わせ、ラミネート等が挙げられる。
更には、選択的透湿性フィルム1の機械的強度を考慮して、該フィルム1の外側を、水透過性を有する他の材料でカバーしてもよい。該「他の材料」と選択的透湿性フィルム1とは接触(一部接触を含む)していてもよく、また必要に応じて、互いに間隙をおいて配置してもよい。このような材料としては、例えば、金属、プラスチック、セラミック、木材等の比較的堅い材料が挙げられる。
(植物栽培用支持体)
本発明の植物栽培システムにおいては、植物栽培用支持体2として、従来より公知の支持体を特に制限なく使用することが可能である。このような支持体としては、例えば、土壌(礫、砂、壌土等)、炭化物、天然鉱物質(バーミキュライト、パーライト、ゼオライト等)、天然植物質(ビートモス、バーク、水苔、ヤシガラ等)、植物生育用保水剤およびこれらを配合した苗育苗用混合植込材料等が挙げられる。
例えば、無機系では天然の砂、れき、パミスサンドなど、加工品(高温焼成等)では、ロックウール、バーミキュライト、パーライト、セラミック、籾殻くん炭などが挙げられる。これらの無機系支持体の内、加工品が好ましく、バーミキュライト及びパーライトが特に好ましい。有機系では天然のピートモス、ココヤシ繊維、樹皮培地、籾殻、ニータン、ソータンなど、合成品の粒状フェノール樹脂などが挙げられる。これらの有機系支持体の内、天然有機系支持体が好ましく、ピートモスが特に好ましい。また、これらの混合物でもよい。また、合成繊維の布あるいは不織布も使用可能である。必要最小限の肥料および微量要素を、これらの土壌ないし培地に加えてもよい。ここで「必要最小限」の量は、栽培する植物の種類、量、などによって異なるが、例えば、支持体1リットルに対して、窒素の場合は40〜180mg、リンの場合は30〜120mg(P2O5換算)、カリウムの場合は約50〜220mg(K2O換算)である。
また、上記の植物栽培用支持体と吸水性樹脂とを含む培地混合物は、フィルム上の厚みとして、0.5〜300cm、好ましくは1〜100cm、より好ましくは2〜50cm使用することが好ましい。
尚、植物栽培用支持体も保水性が高いことが望ましいが、保水性が高い植物栽培用支持体が、選択的透湿性フィルム及び吸水性樹脂と接触していると、該フィルムに含まれている無機塩類が植物栽培用支持体中の水中に溶出し、これが吸水性樹脂にも伝わってしまう。従って、植物栽培用支持体の吸水性が、吸水性樹脂の吸水性よりも低いことが望ましい。より具体的には、該植物栽培用支持体の吸水倍率が5以下であることが好ましい。ここで、該吸水倍率は、植物栽培用支持体が吸収し得るイオン交換水の重量の、吸水性樹脂または植物栽培用支持体の乾燥重量に対する比として定義され、後述する方法によって測定することができる。また、該選択的透湿性フィルム表面に接触して配置される植物栽培用支持体として、吸水性が比較的低い支持体(a)を使用し、それ以外の箇所において、比較的吸水性が高い植物栽培用支持体(b)を使用しても良い。即ち、ここで低吸水性支持体(a)は、吸水性樹脂を選択的透湿性フィルムから隔離しておくために使用される。このように低吸水性支持体(a)と高吸水性支持体(b)とを組み合わせて使用する場合、低吸水性支持体(a)の吸水倍率が0〜1であり、高吸水性支持体(b)の吸水倍率が2〜5であることが好ましい。
(水分の植物栽培用支持体への移行)
本発明の選択的透湿性フィルム1の下面を水と接触させた場合には、上記選択的透湿性フィルム1を通して、実質的に水蒸気のみが該フィルム上部の植物栽培用支持体に移行し、水自身は植物栽培用支持体に移行しない。したがって植物栽培用支持体内の相対湿度が上昇することとなる。一般に、土壌(植物栽培用支持体)内ガスの相対湿度(P/PO)と土壌(植物栽培用支持体)内の単位質量当たりの水ポテンシャル(ψ)との間には次式の関係がある。
ψ=RT/M・ln(P/PO
ここで、Rは気体定数、Tは絶対温度、Mは水のモル質量である。
土壌中の相対湿度を上昇させることは、土壌中の水ポテンシャル(ψ)を上昇させることになる。水ポテンシャル(ψ)と土壌水のpF値の間には次の関係がある。
pF=log10(−ψ/[cmH2O])
水ポテンシャルが増大するとpF値が低下する。一般に、植物の生長に利用可能な水のpF値は1.5〜2.5の範囲とされており、pF値が3を越える場合は、通常は生長阻害水分量とされている。pF値が3以下に対応する、即ち植物が生長できる土壌ガスの相対湿度は、通常は、99%以上となる。
上記した理由により、植物が生長できる水ポテンシャルを維持するために土壌中ガスの相対湿度を高くすることにより、従来の植物栽培方法で行われてきたような液体の水を直接、土壌中に供給する必要を全く無くするか、あるいは非常に少ない回数で、且つ少量の灌水量で栽培が可能であることを支持している。
本発明の植物栽培システムによれば、水と接触させた選択的透湿性フィルム1を通して液体の水を通過させることなく、水蒸気のみを透過させることにより、土壌などの植物栽培用支持体中ガスの相対湿度を高めることが可能となる。したがって、本発明によれば、灌水等により液体の水を直接、土壌などの植物栽培用支持体中に供給する灌水量および/又は水供給の回数を、少なくとも著しく低減させることが可能となる。
(水蒸気不透過性マルチングシート)
「マルチング」とは、植物の生長を助けるため、防寒・乾燥防止などのために、根元や幹などに施すために使用される材料を言う。本発明においては、水蒸気不透過性マルチングシート3を用いることにより、水分の有効利用性が高まるというメリットを得ることができる。
また、本発明において「水蒸気不透過性」は、上記マルチングシートの透湿度が、1,000g/m2・24hrs 未満、好ましくは100g/m2・24hrs 未満、より好ましくは50g/m2・24hrs 未満であることを意味する。上記マルチングシートの「透湿度」はJIS Z0208(防湿包装材料の透湿度試験方法;カップ法)に準拠して測定することができる。また、具体的な測定方法は、選択的透湿性フィルムに関連して上記した方法を採用することができる。
マルチングシートとしては、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン製のシート、ポリテトラフロロエチレンやポリフッ化ビニリデンなどのフッ素樹脂製のシート、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル製のシート、ナイロン(ポリアミド)シート、ポリアセタールシート、ポリ塩化ビニルシート、ポリカーボネートシート、ABSシート、アクリルシート、アルミシート、発泡スチロールシートなどを挙げることができる。上記素材単独のフィルムでも、異種素材を重ね合わせたラミネートフィルムでも良い。好ましい材料としては、ポリオレフィンフィルムを、特に好ましい材料としてはポリエチレンフィルムを挙げることができる。マルチングシートの厚さとしては、0.01〜1mmの範囲が好ましく、0.02〜0.03mmの範囲が特に好ましい。
本発明によれば、選択的透湿性フィルム上に移行した水蒸気は、水蒸気不透過性マルチングシートによって大気中への蒸散が阻止され、昼夜の温度差により該マルチングシートの下面あるいは植物栽培用支持体中で再凝集されて無機塩を含まない水となる。
すなわち、本発明によるシステムでは、食塩水溶液などの汚染水または該汚染水を含む土壌4から選択的透湿性フィルム1中に移動した水が、該フィルム1の表面から水蒸気として蒸発する。このように蒸発する水蒸気を大気中に出来る限り逃がさないようにするために、植物栽培用支持体表面を水蒸気不透過性マルチングシート3で覆う。マルチングシート3で覆うことにより、該マルチングシート3の下面あるいは植物栽培用支持体2表面に水蒸気を凝結させ、水として利用することができる。
(吸水性樹脂)
本発明の植物栽培システムにおいては、植物栽培用支持体2中に吸水性樹脂5を含有させることが、植物栽培用支持体2の保水力を高めるために必要である。吸水性樹脂5としては各種の水溶性または親水性高分子を架橋させ、非水溶性とした高分子化合物を用いることができる。
(水溶性または親水性高分子)
本発明において吸水性樹脂5の製造に用いることができる水溶性または親水性高分子化合物としては、メチルセルロース、デキストラン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリN−ビニルピロリドン、ポリN−ビニルアセトアミド、ポリビニルピリジン、ポリアクリルアミド、ポリメタアクリルアミド、ポリ−N−アクリロイルピペリジン、ポリ−N−n−プロピルメタアクリルアミド、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド、ポリ−N,N−ジエチルアクリルアミド、ポリ−N−イソプロピルメタアクリルアミド、ポリ−N−シクロプロピルアクリルアミド、ポリ−N−アクリロイルピロリジン、ポリ−N,N−エチルメチルアクリルアミド、ポリ−N−シクロプロピルメタアクリルアミド、ポリ−N−エチルアクリルアミド、ポリN−メチルアクリルアミド、ポリヒドロキシメチルアクリレート、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸およびそれらの塩、ポリN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、ポリN,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、ポリN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドおよびそれらの塩などがあげられる。これらの内、好ましい材料としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸塩を挙げることができ、特に好ましい材料としてポリアクリル酸塩を挙げることができる。
(架橋)
上記したような高分子化合物に架橋構造を付与ないし導入する方法としては、該高分子化合物を与えるべき単量体を重合する際に架橋構造を導入する方法と、該単量体の重合終了後に架橋構造を導入する方法とが挙げられるが、本発明においては、これらのいずれの方法も使用可能である。
前者の(単量体重合時の架橋導入)方法は、通常、二官能性単量体(あるいは3以上の官能基を有する単量体)を共重合することにより実施可能である。例えば、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、ヒドロキシエチルジメタクリレート、ジビニルベンゼン等の二官能性単量体が好適に使用できる。
後者の(単量体重合終了後の架橋導入)方法は、通常、光、電子線、繃線照射等により分子間に架橋を形成することにより実施可能である。
また、このような後者の方法は、例えば、高分子化合物中の官能基(例えばアミノ基)と結合しうる官能基(例えば、イソシアネート基)を分子内に複数個有する多官能性分子を架橋剤として用いて、該高分子化合物を架橋させることによっても実施可能である。
本発明におけるハイドロゲル形成性高分子の吸水率は、上記の架橋構造、特に架橋密度に依存し、一般に架橋密度が低い程、吸水率が大きくなる傾向がある。
このような「架橋密度」は前者の方法においては、例えば、二官能性単量体の共重合比を変えることで、後者の方法においては、例えば、光、電子線、γ線等の照射量を変えることで、任意に所望の程度に制御することが可能である。
本発明においては、架橋密度は、全単量体に対する分岐点のモル比で、約0.02mol%〜約10mol%、更には約0.05mol〜約4mol%の範囲にあることが好ましい。前者の(重合時の架橋導入)方法により架橋構造を導入する場合、二官能性単量体の全単量体(該二官能性単量体自体をも含む)に対する共重合重量比は、約0.03wt%〜約3wt%(更には約0.05wt%〜約1.5wt%)の範囲であることが好ましい。
本発明において架橋密度が約10mol%を越える場合には、本発明のハイドロゲル形成性高分子の吸水倍率が小さくなるために、本発明のハイドロゲル形成性高分子の保水用担体としての効果が小さくなる。一方、架橋密度が約0.02mol%未満の場合には、該ハイドロゲル形成性高分子の機械的強度が弱くなり、取扱いが困難になる。
本発明の植物栽培システムにおいて好適に用いられる吸水性樹脂のイオン交換水中の吸水倍率は5を超え、好ましくは10以上、より好ましくは100以上である。尚、上記吸水倍率は、吸水性樹脂が吸収し得るイオン交換水の重量の、吸水性樹脂の乾燥重量に対する比として定義される。
(イオン交換水中の吸水倍率の測定)
乾燥吸水性樹脂の一定量(W1g)を秤取り、過剰量(例えば、前記吸水性樹脂の予想吸水量の1.5倍以上の重量)のイオン交換水(電気伝導度5μS/cm以下)に浸漬し、室温(25℃)で2日間(48時間)恒温槽中に放置して、前記吸水性樹脂を膨潤させる。余剰の水を濾過により除去した後、吸水膨潤した吸水性樹脂の重量(W2g)を測定し、次式により吸水倍率を求める。
吸水倍率=(W2−W1)/W1
上記した方法により測定された「吸水倍率」が5以下では、吸水性樹脂の保水力が不十分なために、植物に充分な水分を供給することが困難となる。
吸水性樹脂の吸水倍率を最も有効に向上させる手段としては、吸水性樹脂中に解離性のイオン基を導入して、分子鎖を広げると同時に、内部浸透圧を高めることが挙げられる。そのような解離性イオン基を持つ吸水性樹脂として、例えば、ポリアクリル酸塩系樹脂を用いることができる。
ポリアクリル酸塩系樹脂に代表されるイオン性吸水性樹脂は、イオン交換水中で高い吸水倍率を示すものの、高塩濃度水溶液中ではイオン交換水中に比べ吸水倍率が極端に低下する問題がある。しかしながら、本発明の植物栽培システムにおいて、吸水性樹脂5が吸収する水は水蒸気が凝結した塩分を含まない水なので、イオン交換水中で高吸水倍率を示すイオン性高吸水性樹脂を好適に用いることができる。
一方、ポリアクリル酸塩系樹脂に代表されるイオン性高吸水性樹脂は、カルシウムイオンを吸収する性質があるため、植物の根の生長を阻害する問題がある。本発明の植物栽培システムにおいて、吸水性樹脂5は植物の根に水分を供給する保水剤として使用するので、そのカルシウムイオン吸収量は吸水性樹脂乾燥重量1gあたり150mg未満、好ましくは100mg未満、より好ましくは50mg未満である。上記した「カルシウムイオン吸収量」は、例えば、以下の方法により好適に測定可能である。
(カルシウムイオン吸収量の測定)
1gの乾燥吸水性樹脂を、カルシウムイオン濃度200mg/L(リットル)の塩化カルシウム水溶液1Lに添加し、時々攪拌しながら室温(25℃)で2日間(48時間)恒温槽中で放置して、上記の吸水性樹脂を膨潤させつつカルシウムイオンを吸収させる。膨潤した吸水性樹脂を分離し、残存する上清(上記塩化カルシウム水溶液の過剰分)中のカルシウムイオン濃度を原子吸光分析により定量する(Amg/L)。このようにして測定したカルシウムイオン濃度の定量値(A)に基づき、保水用担体1gあたりのカルシウムイオン吸収量は、次式により求められる。吸水性樹脂と上清の分離に際し、未架橋の水溶性高分子が上清中に溶解している可能性があるため、必要に応じて、分画分子量1,000〜3,000程度の限外濾過膜を用いた限外濾過による分離を行うことが好ましい。
吸水性樹脂1gあたりのカルシウムイオン吸収量(mg/g)=200−A
上記方法により測定された「カルシウムイオン吸収量」が吸水性樹脂の乾燥重量1gあたり150mg以上では、該吸水性樹脂に接触する植物体に「カルシウムイオン欠乏症」が生じ易くなる。
(ポリアクリル酸塩系樹脂などのカルボキシル基を有する高分子)
植物体の保水に好適なカルシウムイオン吸収量を有し、しかも好適な「イオン交換水中での吸水倍率」を有する吸水性樹脂の好適な一態様として、例えば、高分子鎖に結合されたカルボキシル基を有し、該高分子鎖が架橋された吸水性樹脂であって、該カルボキシル基のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩の含有量が1gあたり0.3〜2.5mmolである吸水性樹脂を挙げることができる。この「カルボキシル基のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩の含有量」は、0.5〜2.0mmol(特に、1.0〜1.5mmol)であることが好ましい。
また、吸水性樹脂の形状については、特に制限はなく、鱗片状、球状、粒状、粉体、不定形状等のものを用いることができる。しかし、植物栽培用支持対中に均一に分散させることが好ましいため、乾燥時の平均粒子径が0.1〜5mmの粒子状のものを用いることが好ましい。
該吸水性樹脂の量(乾燥重量)は、該植物栽培用支持体1リットルあたり、通常、0.5〜20gであり、1.0〜10gであることが好ましく、2.0〜5.0gであることがより好ましい。
尚、本発明において吸水性樹脂として好適に使用できる、ポリアクリル酸塩系樹脂については、前述の特許文献3及び特許文献4を参照できる。
(潅水手段)
図3において、マルチングシート3と選択的透湿性フィルム1の間に灌水手段8を配置して、水または養液を植物栽培用支持体2中に間歇的に少量ずつ供給して植物の生長を促進することができる。例えば、上記のドリップチューブを使用すると、点滴潅水で作物の生育に有用な水および肥料をできるだけ少量供給する手段として用いることができる。
上記灌水手段8から供給する水または養液は、作物の生育を促進する効果を有するが、選択的透湿性フィルム1上に水が滞留すると、選択的透湿性フィルム中の無機塩が該滞留水中に移行して、植物に高塩障害を及ぼす可能性があるので、フィルム上からは、過剰の水分を加えることは好ましくない。適正な水分供給量は、植物の種類、量、生長ステージ、温度、湿度、培地混合物の量などに依存するので一概に言えないが、培地混合物が吸収できる範囲内でなければならない。1回の灌水量としては、培地混合物1リットルに対して10〜800mlの範囲であり、好ましくは50ml〜300mlの範囲である。灌水頻度としては、1日に1回〜10回、通常は1日に3回〜5回程度である。
(養液)
本発明において使用可能な養液(ないし肥料溶液)は特に制限されない。例えば、従来の土耕栽培ないし養液土耕栽培において使用されてきた養液は、本発明においていずれも使用可能である。養液の供給手段にも特に制限は無く、公知の潅水手段によって培地混合に供給しても良いし、予め養液で膨潤させた吸水性樹脂や養液で湿らせた支持体を使用することによって供給しても良い。
一般には、水または養液として植物の生育にとって必要不可欠な無機成分としては、主要な成分として:窒素(N)、リン(P)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、硫黄(S)、微量成分として:鉄(Fe)、マンガン(Mn)、ホウ素(B)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)が挙げられる。さらにこの他に、副成分として、珪素(Si)、塩素(Cl)、アルミニウム(Al)、ナトリウム(Na)等がある。必要に応じて、本発明の効果を実質的に阻害しない限り、その他の生理活性物質も加えることができる。更に、グルコース(ブドウ糖)などの糖質、アミノ酸等を添加することも可能である。
また、本発明の他の1つの態様によれば、植物の生長を阻害する無機塩で汚染された汚染水を植物栽培用水源として用いて、植物を栽培するための方法であって、
(1)水は透過させず水蒸気は透過させる選択的透湿性フィルム、
該選択的透湿フィルム上に配置された、少なくとも1種の植物栽培用支持体と少なくとも1種の吸水性樹脂とを含む培地混合物、および
該培地混合物上に配置された、水蒸気不透過性マルチングシート
を含んでなる植物栽培システムの該培地混合物中に、植物を植え、そして
(2)該植物栽培システムを、植物の生長を阻害する無機塩で汚染された汚染水または該汚染水を含む大地土壌上に配置し、それにより、該無機塩が該選択的透湿性フィルムを透過することを防ぎながら、該汚染水の水分を水蒸気の形で培地混合物に供給する、
ことを包含する植物栽培方法が提供される。
本発明の方法に使用する植物栽培システムの構成部材や製造方法については、上記した通りである。また、具体的な栽培条件などについては、植物栽培システムに関連して上記したものを使用することができ、それ以外の条件については、公知の条件を適宜採用することができる。
以下、実施例及び比較例により本発明を更に具体的に説明する。
材料および方法:
供試植物種子はコマツナ(品種:さおり小松菜、トーホク交配)を用いた。実験方法は、NaCl濃度0mMの水(対照区0、I)またはNaCl濃度100mMの食塩水溶液(処理区II(比較例1)、処理区III(比較例2)、処理区IV(比較例3)、処理区V(実施例1))を、黒プラスチック容器(内寸23.0cm×31.5cm×4.4cm、ポリプロピレン製)に2Lずつ入れた。次に、この溶液の上に厚さ65μmのHymecフィルム(43cm×52cm、メビオール(株);耐水圧は200cm以上、透湿度は2000g/m2・24時間)を敷き、その上から植物栽培用支持体としてバーミキュライト(sおよびssサイズ(1:1)の混合、日本農業協同組合;吸水倍率は1.2倍)を深さ1.5〜2.0cmに敷き詰めた。対照区Iおよび処理区III(比較例2)、処理区V(実施例1)にはバーミキュライトの上に、水蒸気不透過性マルチングシートとして、播種位置に丸穴(直径2.0cm×6穴)を開けた厚さ50μmの透明ビニルマルチ(16.0cm×23.0cm、ポリエチレン製フィルム、透湿度:12g/m2・24時間)を設置した。処理区IV(比較例3)、処理区V(実施例1)には、吸水性樹脂(保水剤)として、架橋ポリアクリル酸塩系樹脂(SkyGel、メビオール(株);吸水倍率は200倍、カルシウムイオン吸収量は40mg)を、植物栽培用支持体(バーミキュライト)に5g/Lの比率で混合して得られる培地混合物を使用した。尚、この培地混合物のサンプルを100g採取して、透明アクリル板上に配置して、アクリル板の下面の写真を撮り、この写真を面積計測ソフトで分析することによって、該培地混合物と透明アクリル板との接触面における、吸水性樹脂が透明アクリル板に接している面積の割合を測定したところ0.1%であった。
各区のコマツナ播種の間隔は株間5cm、条間5cmで計6穴とした。また播種前にのみ水を霧吹き吹きつけて、培地混合物を湿らせた。その後、播種穴をつくり1穴3粒ずつ播種した。播種後、3週間目に各区の発芽数(1容器中)と、発芽した小松菜の草丈を測定し、平均を求めた。
対照区、処理区としては下記のとおりであった。
対照区0:0mM NaCl+Hymecフィルム
対照区I:0mM NaCl+Hymecフィルム+ビニルマルチ
処理区II:100mM NaCl+Hymecフィルム(比較例1)
処理区III:100mM NaCl+Hymecフィルム+ビニルマルチ(比較例2)
処理区IV:100mM NaCl+Hymecフィルム+保水剤(SkyGel:5g/L培土)(比較例3)
処理区V:100mM NaCl+Hymecフィルム+保水剤(SkyGel:5g/L培土)+ビニルマルチ(実施例1)
すべての区は、植物培養器(Koitotoron, HNM-S)の中で栽培した。温度、日照および湿度は昼夜(25℃/15℃、12h/12h、60%)、照度は10000luxで制御した。
(実験結果に対する記述)
実験結果を表1に示す。
Figure 2010008042
また、各対照区及び処理区における草丈の合計を図4のグラフに示す。
表1及び図4から明らかなように、水蒸気不透過性マルチングシート(ビニルマルチ)なしの処理区II(比較例1)、処理区IV(比較例3)では種子の発芽率が低く、植物体(コマツナ)の生長も著しく抑制された。処理区III(比較例2)においては、吸水性樹脂を使用していないため、植物栽培用支持体2中での結露が激しくなり、その結果、液体の水が選択的透湿性フィルム1上に溜まり、選択的透湿性フィルム1に吸収された無機塩が選択的透湿性フィルム1上に溶出して、塩害により植物の生育が制限されたものと思われる。コマツナの発芽率および生育は、処理区V(実施例1)における、食塩水溶液(100mM NaCl)+選択的透湿性フィルム(Hymecフィルム)+吸水性樹脂(保水剤、SkyGel:5g/L培土)+ビニルマルチが最も良好であり、対照区に比べてもNaClストレスを全く受けていない。特に、図4のグラフから、処理区V(実施例1)における生育状態が格段に優れていることが分かる。
本発明の植物栽培システムは、非常にシンプルな構成でありながら、植物の生育を阻害する無機塩(例えば、NaCl)で汚染された汚染水を、低コストで且つ効率的に浄化して植物に供給することを可能にするのみならず、水や肥料の大気及び大地土壌への流亡を抑制しつつ、極めて良好な生育状態で植物の栽培を行うことを可能にする。従って、本発明の植物栽培システムは、特に、塩分を含まない水が非常に貴重である砂漠地帯などで植物を栽培するために極めて有用である。

Claims (12)

  1. 植物の生長を阻害する無機塩で汚染された汚染水を植物栽培用水源として用いてして、植物を栽培するためのシステムであって、
    水は透過させず水蒸気は透過させる選択的透湿性フィルム、
    該選択的透湿フィルム上に配置された、少なくとも1種の植物栽培用支持体と少なくとも1種の吸水性樹脂とを含む培地混合物、および
    該培地混合物上に配置された、水蒸気不透過性マルチングシート
    を含んでなることを特徴とする植物栽培システム。
  2. 該選択的透湿性フィルムが、無孔性親水性フィルムであることを特徴とする、請求項1に記載の植物栽培システム。
  3. 該選択的透湿性フィルムの透湿度が、少なくとも1×103g/m2・24時間であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の植物栽培システム。
  4. 該選択的透湿性フィルムの水不透過性が、耐水圧として10cm以上であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の植物栽培システム。
  5. 該吸水性樹脂の吸水性が、該植物栽培用支持体の吸水性よりも高いことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の植物栽培システム。
  6. 該少なくとも1種の吸水性樹脂の吸水倍率が5を超え、該少なくとも1種の植物栽培用支持体の吸水倍率が5以下であって、該吸水倍率は、吸水性樹脂または植物栽培用支持体が吸収し得るイオン交換水の重量の、吸水性樹脂または植物栽培用支持体の乾燥重量に対する比として定義される、ことを特徴とする、請求項5に記載の植物栽培システム。
  7. 該吸水性樹脂のカルシウムイオン吸収量が、吸水性樹脂乾燥重量1gあたり150mg未満であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の植物栽培システム。
  8. 該吸水性樹脂の量が、該植物栽培用支持体1リットルあたり0.5〜20gであることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の植物栽培システム。
  9. 該選択的透湿性フィルムの下に該汚染水を供給する手段を更に含むことを特徴とする、請求項8に記載の植物栽培システム。
  10. 該培地混合物に水または養液を灌水するための手段を更に含むことを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の植物栽培システム。
  11. 植物の生長を阻害する無機塩で汚染された汚染水を植物栽培用水源として用いて、植物を栽培するための方法であって、
    (1)水は透過させず水蒸気は透過させる選択的透湿性フィルム、
    該選択的透湿フィルム上に配置された、少なくとも1種の植物栽培用支持体と少なくとも1種の吸水性樹脂とを含む培地混合物、および
    該培地混合物上に配置された、水蒸気不透過性マルチングシート
    を含んでなる植物栽培システムの該培地混合物中に、植物を植え、そして
    (2)該植物栽培システムを、植物の生長を阻害する無機塩で汚染された汚染水または該汚染水を含む大地土壌上に配置し、それにより、該無機塩が該選択的透湿性フィルムを透過することを防ぎながら、該汚染水の水分を水蒸気の形で培地混合物に供給する、
    ことを包含する植物栽培方法。
  12. 該培地混合物が、植物の生長に有用な養分を含有することを特徴とする、請求項11に記載の方法。
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