本発明は、動作効率に優れた液圧アクチュエータ及びそれを用いた関節駆動ユニットに関する。
近年、医療用ロボット、家庭用サービスロボット、及び、工場内での作業支援ロボット等、人と近い領域で動作するロボットへの期待が高まっている。このようなロボットでは、産業用ロボットとは異なり、人と接触した時の安全性確保が重要となる。そのためには、作業が行えるパワーと軽量及び低慣性の両立が求められるようになり、関節駆動用アクチュエータに対しても、高いパワーウェイトレシオが求められるようになる。そのような要求に対応するアクチュエータの一例として、油圧アクチュエータがある(例えば、非特許文献1、特許文献1、特許文献2参照)。油圧アクチュエータは、非圧縮性流体を用いて高圧で駆動を行うので、高いパワーウェイトレシオを得ることができる。
特開昭60−164677号公報
USP4,903,578号公報
バイオメカニズム学会発行,論文集「バイオメカニズム」,1975年発行,Vol.3の104〜114ページ
油圧アクチュエータは、非圧縮性流体である油を作動流体に用いているため、圧力を発生させるための加圧手段が必要となる。加圧手段としては、油圧ポンプを用いて加圧する方法が一般に用いられているが、圧力を発生し続けるためにはポンプを動作させ続ける必要がある。そのため、力は必要だが変位の必要はない保持動作のような場合には、外部へのエネルギー伝達を伴わないにもかかわらず、ポンプでのエネルギー消費を続ける必要がある。このような状態を避けるためには、アキュムレータ等の蓄圧手段を利用することが有効だと考えられるが、アキュムレータからのエネルギー消費は油の消費量に依存することになる。シリンダ型又はベーン型の油圧アクチュエータでは、速度を調節するために絞りが用いられるが、絞りを用いた構成では、低速で動作させるほど、アキュムレータ内のエネルギーが損失として無駄に消費されることになる。そのため、シリンダ型又はベーン型の油圧アクチュエータでは、家庭用ロボットに求められるような低速及び高トルクの条件において、油圧ポンプ及びアキュムレータが大型になるとともに、損失による発熱を抑えるための冷却機構がさらに必要になるといった問題点があり、システムとしてのパワーウェイトレシオを高くできないという課題を持つことになる。
一方で、可変容量のアキシャルピストン型油圧アクチュエータでは、揺動板の角度を変化させることで出力の調整が可能であるため、油を定圧で動作させることができ、アキュムレータでのエネルギー消費と出力を連動させやすい。しかし、アキシャルピストン型油圧アクチュエータでは、有限個のピストンでの動作であるため、揺動板の角度を変化させるために大きな力が必要となり、制御性に問題があるという課題がある。
従って、本発明の目的は、かかる点に鑑み、加圧手段の軽量化が図れるとともに、制御性にも優れた液圧アクチュエータ及びそれを用いた関節駆動ユニットを提供することにある。
前記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
本発明の第1態様によれば、ベース部材と、
前記ベース部材に対してユニバーサルジョイント機構を介して保持され、前記ベース部材を基準とした前記ユニバーサルジョイント機構のジョイント中心を含む第1の軸に対して揺動可能である揺動部材と、
前記揺動部材を基準とした前記ユニバーサルジョイント機構のジョイント中心を含む第2の軸回りに前記揺動部材に対して回転可能に保持される第1の回転部材と、
前記第1の回転部材に対して、前記第2の軸に垂直かつ前記ユニバーサルジョイント機構の前記ジョイント中心を含む第3の軸回りに回転可能に保持されるとともに、前記ベース部材に対しても前記第1の軸回りに回転可能に保持される第2の回転部材と、
蓄圧機構により加圧された非圧縮性流体で満たされた高圧配管部と、
前記高圧配管部内の前記非圧縮性流体より低圧に保持された状態で前記非圧縮性流体で満たされた低圧配管部と、
前記低圧配管部の前記非圧縮性流体を前記高圧配管部に移送するポンプ機構と、
前記ベース部材と前記揺動部材を連結し、前記高圧配管部と前記低圧配管部と前記ポンプ機構とがそれぞれ接続されて前記非圧縮性流体により駆動されることで、前記揺動部材に対して揺動トルクを発生させる複数の揺動トルク発生機構と、
前記揺動トルク発生機構と前記高圧配管部及び前記低圧配管部との間の前記非圧縮性流体の接続を制御する制御弁装置と、
前記第1の回転部材と前記第2の回転部材との前記第3の軸回りの相対角度を変化させる揺動角調節手段とを備え、
前記制御弁装置は、前記揺動トルク発生機構により、前記第1の軸と前記第3の軸に垂直な第4の軸回りに前記揺動部材に対する揺動トルクが発生するように制御することを特徴とする回転動作可能な液圧アクチュエータを提供する。
本発明の第11態様によれば、第1〜10のいずれか1つの態様に記載の液圧アクチュエータにより駆動される関節駆動ユニットを提供する。
よって、本発明によれば、揺動トルク発生機構及び蓄圧機構などの加圧手段の軽量化が図れるとともに、制御性にも優れた液圧アクチュエータ及びそれを用いた関節駆動ユニットを得ることができる。すなわち、第2の回転部材に作用する回転トルクは、揺動部材に作用する第4の軸回りの揺動トルクと、揺動角調節手段により調整される第1の回転部材と第2の回転部材との相対角度により決定されるので、揺動トルク発生機構に高圧配管部の非圧縮性流体の圧力をそのまま作用させ、揺動部材に対する第4の軸回りの揺動トルクを最大限発生させ続けた状態でも、第4の軸回りの揺動トルクに関係なく、揺動角調節手段によって第2の回転部材に作用する回転トルクを制御することが可能になる。この際、揺動部材に作用する第3の軸回りの揺動トルク調節に用いられる一部の揺動トルク発生機構以外は、高圧配管部の非圧縮性流体により直接駆動することができるので、高圧配管部を加圧する蓄圧機構が失うエネルギーと液圧アクチュエータの外部になされるエネルギーは連動し、蓄圧機構が無駄にエネルギーを消費しなくなるので、ポンプ機構及び蓄圧機構の小型化が図れるようになる。さらに、本発明による液圧アクチュエータに対して外部から仕事がなされる場合には、そのエネルギーは高圧配管部の非圧縮性流体の移動に伴って蓄圧機構に対して回生されることになるので、さらに蓄圧機構が消費するエネルギーが減少し、ポンプ機構の小型化が図れることになる。また制御弁装置により、揺動角調節手段の動作負荷が低減するように第3の軸回りの揺動トルクが制御されているので、揺動角調節手段の応答性も高められ、制御性が向上することになる。
本発明のこれらと他の目的と特徴は、添付された図面についての好ましい実施形態に関連した次の記述から明らかになる。この図面においては、
図1Aは、本発明の第1実施形態による回転アクチュエータの概略を示す正面断面図であり、
図1Bは、本発明の前記第1実施形態による前記回転アクチュエータの概略を示す正面断面図の部分拡大図であり、
図1Cは、本発明の前記第1実施形態による前記回転アクチュエータの概略を示す右側面断面図であり、
図1Dは、本発明の前記第1実施形態による前記回転アクチュエータの概略を示す、図1AのA−A線断面図であり、
図1Eは、本発明の前記第1実施形態による前記回転アクチュエータの駆動時の概略を示す右側面断面図であり、
図2は、本発明の前記第1実施形態による前記回転アクチュエータのバルブ機構の内部構成を示す配管図であり、
図3は、本発明の前記第1実施形態による前記回転アクチュエータの前記バルブ機構における制御コントローラと各部との接続関係を示す図であり、
図4Aは、本発明の前記第1実施形態による前記回転アクチュエータの前記制御コントローラにより制御された油圧シリンダ30aの発生力変化を示す図であり、
図4Bは、本発明の前記第1実施形態による前記回転アクチュエータの前記制御コントローラにより制御された油圧シリンダ30bの発生力変化を示す図であり、
図4Cは、本発明の前記第1実施形態による前記回転アクチュエータの前記制御コントローラにより制御された油圧シリンダ30cの発生力変化を示す図であり、
図4Dは、本発明の前記第1実施形態による前記回転アクチュエータの前記制御コントローラにより制御された油圧シリンダ30dの発生力変化を示す図であり、
図4Eは、本発明の前記第1実施形態による前記回転アクチュエータの前記制御コントローラにより制御された油圧シリンダ30eの発生力変化を示す図であり、
図5は、本発明の前記第1実施形態による前記回転アクチュエータを用いた関節駆動ユニットの概略を示す斜視図であり、
図6Aは、本発明の前記第1実施形態による前記回転アクチュエータを用いた前記関節駆動ユニットの概略を示す側面図であり、
図6Bは、本発明の前記第1実施形態による前記回転アクチュエータを用いた前記関節駆動ユニットの概略を示す側面図であり、
図7は、本発明の前記第1実施形態による前記回転アクチュエータを複数個使用しかつ油圧ポンプを共用した構成を示す図である。
以下に、本発明にかかる実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
以下、図面を参照して本発明における実施形態を詳細に説明する前に、本発明の種々の態様について説明する。
本発明の第1態様によれば、ベース部材と、
前記ベース部材に対してユニバーサルジョイント機構を介して保持され、前記ベース部材を基準とした前記ユニバーサルジョイント機構のジョイント中心を含む第1の軸に対して揺動可能である揺動部材と、
前記揺動部材を基準とした前記ユニバーサルジョイント機構のジョイント中心を含む第2の軸回りに前記揺動部材に対して回転可能に保持される第1の回転部材と、
前記第1の回転部材に対して、前記第2の軸に垂直かつ前記ユニバーサルジョイント機構の前記ジョイント中心を含む第3の軸回りに回転可能に保持されるとともに、前記ベース部材に対しても前記第1の軸回りに回転可能に保持される第2の回転部材と、
蓄圧機構により加圧された非圧縮性流体で満たされた高圧配管部と、
前記高圧配管部内の前記非圧縮性流体より低圧に保持された状態で前記非圧縮性流体で満たされた低圧配管部と、
前記低圧配管部の前記非圧縮性流体を前記高圧配管部に移送するポンプ機構と、
前記ベース部材と前記揺動部材を連結し、前記高圧配管部と前記低圧配管部と前記ポンプ機構とがそれぞれ接続されて前記非圧縮性流体により駆動されることで、
前記揺動部材に対して揺動トルクを発生させる複数の揺動トルク発生機構と、
前記揺動トルク発生機構と前記高圧配管部及び前記低圧配管部との間の前記非圧縮性流体の接続を制御する制御弁装置と、
前記第1の回転部材と前記第2の回転部材との前記第3の軸回りの相対角度を変化させる揺動角調節手段とを備え、
前記制御弁装置は、前記揺動トルク発生機構により、前記第1の軸と前記第3の軸に垂直な第4の軸回りに前記揺動部材に対する揺動トルクが発生するように制御することを特徴とする回転動作可能な液圧アクチュエータを提供する。
このような構成によれば、第2の回転部材に作用する回転トルクは、揺動部材に作用する第4の軸回りの揺動トルクと、揺動角調節手段により調整される第1の回転部材と第2の回転部材との相対角度により決定されるので、揺動トルク発生機構に高圧配管部の非圧縮性流体の圧力をそのまま作用させ、揺動部材に対する第4の軸回りの揺動トルクを最大限発生させ続けた状態でも、第4の軸回りの揺動トルクに関係なく、揺動角調節手段によって第2の回転部材に作用する回転トルクを制御することが可能になる。この際、揺動部材に作用する第3の軸回りの揺動トルク調節に用いられる一部の揺動トルク発生機構以外は、高圧配管部の非圧縮性流体により直接駆動することができるので、高圧配管部を加圧する蓄圧機構が失うエネルギーと外部になされるエネルギーは連動し、蓄圧機構が無駄にエネルギーを消費しなくなるので、ポンプ機構及び蓄圧機構の小型化が図れるようになる。さらに、本発明による液圧アクチュエータに対して外部から仕事がなされる場合には、そのエネルギーは高圧配管部の非圧縮性流体の移動に伴って蓄圧機構に対して回生されることになるので、さらに蓄圧機構が消費するエネルギーが減少し、ポンプ機構の小型化が図れることになる。また制御弁装置により、揺動角調節手段の動作負荷が低減するように第3の軸回りの揺動トルクが制御されているので、揺動角調節手段の応答も高められ、制御性が向上することになる。従って、加圧手段の軽量化が図れるとともに、制御性にも優れた液圧アクチュエータを得ることができる。
本発明の第2態様によれば、前記ユニバーサルジョイント機構が、等速ジョイント機構であることを特徴とする第1の態様に記載の液圧アクチュエータを提供する。
このような構成によれば、第2の回転部材の角度による特性のばらつきが少なくなり、揺動角調節手段による第2の回転部材に作用する回転トルクの制御、又は、制御弁装置による第3の軸回り揺動トルクの調節が容易になるので、より制御性に優れた液圧アクチュエータを得ることができる。
本発明の第3態様によれば、前記複数の揺動トルク発生機構のそれぞれが、前記第2の軸回りの円周上に等間隔で配置されていることを特徴とする第1〜2のいずれか1つの態様に記載の液圧アクチュエータを提供する。
このような構成によれば、第2の回転部材の角度による特性のばらつきが少なくなり、揺動角調節手段による第2の回転部材に作用する回転トルクの制御、又は、制御弁装置による第3の軸回り揺動トルクの調節が容易になるので、より制御性に優れた液圧アクチュエータを得ることができる。
本発明の第4態様によれば、前記揺動トルク発生機構が、前記揺動部材に対して双方向の揺動トルクを与えることを特徴とする第1〜3のいずれか1つの態様に記載の液圧アクチュエータを提供する。
このような構成によれば、揺動部材に作用する第4の軸回りのトルクを、揺動部材を押圧することにより発生できる領域と、揺動部材を引張することにより発生できる領域の、何れの領域に位置する揺動トルク発生機構も用いて発生させることができるようになるので、より、高出力な液圧アクチュエータを得ることができる。
本発明の第5態様によれば、前記揺動トルク発生機構を、3以上の奇数個備えることを特徴とする第4の態様に記載の液圧アクチュエータを提供する。
このような構成によれば、揺動トルク発生機構を配置する間隔のばらつきを大きくしなくても、各揺動トルク発生機構をジョイント中心に対して非対称な位置に配置することができる。これにより、第2の回転部材の角度による揺動トルクのばらつきを小さくすることができるようになるので、より性能の安定した液圧アクチュエータを得ることができる。
本発明の第6態様によれば、前記揺動トルク発生機構に作用する前記非圧縮性流体の圧力が、前記第4の軸に最も接近した前記揺動トルク発生機構を除き、前記高圧配管部における前記非圧縮性流体の圧力若しくは前記低圧配管部における前記非圧縮性流体の圧力であることを特徴とする第5の態様に記載の液圧アクチュエータを提供する。
このような構成によれば、1つを除いた揺動トルク発生機構には高圧配管部の非圧縮性流体の圧力を直接作用させることができるので、高圧配管部を加圧する蓄圧機構のエネルギー変化と外部とのエネルギー授受との差が小さくなり、より動作効率に優れた液圧アクチュエータを得ることができる。
本発明の第7態様によれば、前記揺動トルク発生機構が、ピストンシリンダ機構であることを特徴とする第1〜6のいずれか1つの態様に記載の液圧アクチュエータを提供する。
このような構成によれば、変位にかかわらず揺動トルク発生機構の発生力を一定にすることでできるので、より性能の安定した液圧アクチュエータを得ることができる。
本発明の第8態様によれば、前記ピストンシリンダ機構が、両ロッド形のピストンを用いた機構であることを特徴とする第7の態様に記載の液圧アクチュエータを提供する。
このような構成によれば、高圧配管部の非圧縮性流体の圧力により揺動トルク発生機構を動作させた場合における、ピストン動作方向による揺動トルクの大きさの違いを抑えることができるので、より性能の安定した液圧アクチュエータを得ることができる。
本発明の第9態様によれば、前記揺動トルク発生機構と前記揺動部材は球ジョイント機構にて連結され、前記球ジョイント機構のジョイント中心が前記第2の軸に垂直かつ前記第3の軸を含む平面上にあることを特徴とする第1〜8のいずれか1つの態様に記載の液圧アクチュエータを提供する。
このような構成によれば、第1の回転部材と第2の回転部材との相対角度を変化させる際に揺動角調節手段が行う仕事を小さくすることができるので、より制御性に優れた液圧アクチュエータを得ることができる。
本発明の第10態様によれば、第1〜9のいずれか1つの態様に記載の液圧アクチュエータを複数備え、各液圧アクチュエータの前記ポンプ機構が互いに共有される構成であることを特徴とする多軸液圧アクチュエータを提供する。
このような構成によれば、複数の液圧アクチュエータの高圧配管部に対して、単一のポンプ機構により低圧配管部より非圧縮性流体を移送することになるので、必要とされる非圧縮性流体の移送量のばらつきが平均化され、各液圧アクチュエータの動作の連動性が低いほどポンプ機構の仕事量の変動を小さくすることができるようになる。それにより、全体構成としてポンプ機構の小型化が図れるようになり、より加圧手段が軽量な液圧アクチュエータを得ることができる。
本発明の第11態様によれば、関節部を介して連結された2つの腕の前記関節部に第1〜10のいずれか1つの態様に記載の液圧アクチュエータが配置され、前記液圧アクチュエータにより、前記2つの腕のうちの一方の腕に対して他方の腕が駆動される関節駆動ユニットを提供する。
このような構成によれば、前記第1〜10のいずれか1つの態様に記載の液圧アクチュエータにより駆動される関節駆動ユニットを構成することができて、前記液圧アクチュエータの作用効果を奏することができる関節駆動ユニットを得ることができる。
以下、本発明の種々の実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1Aは、本発明にかかる第1実施形態の液圧アクチュエータの一例としての回転アクチュエータ1の概略を示した正面断面図であり、その部分拡大図が図1Bである。また図1Cには回転アクチュエータ1の右側面断面図を示し、図1Dには図1AにおけるA−A線の断面図を示している。この第1実施形態の回転アクチュエータにおける直交座標軸として、図1Aの上向きをZ軸、左向きをX軸、紙面手前側をY軸と定義する。
図1A〜図1Dにおいて、ベース部材の一例である円筒状のフレーム11の上面中央部に、中心軸が第1の軸(仮想軸)の一例として機能する固定軸12が固定されている。固定軸12には、ユニバーサルジョイント機構の一例である等速ジョイント13を介して、中心軸が第2の軸(仮想軸)の一例として機能する揺動軸14が接続されている。等速ジョイント13としては、例えば特開2002−349593号公報にて開示されているような等速ジョイントが利用可能である。このような等速ジョイントを用いることは、揺動軸14が傾く方向により回転トルクが変動しないので望ましい。さらに、揺動軸14の下端には、揺動部材の一例でありかつ5角形の平面形状を有する椀状部材15の中央板部15aの開口15bが固定されており、等速ジョイント13のジョイント中心を基準に、揺動軸14と椀状部材15とが一体的に揺動動作が可能なようになっている。また、椀状部材15は、椀状部材15の中央板部15aの上面に配置しかつラジアル荷重及びスラスト荷重を保持できるベアリング機構16を介して、第1の回転部材の一例である円形の板状部材17を中央板部15aと平行に保持するようになっており、板状部材17は、椀状部材15に対して揺動軸14の中心軸と同軸に相対回転できるようになっている。ベアリング機構16としては、例えばクロスローラ軸受又は組合せアンギュラ玉軸受などが利用可能である。板状部材17には、揺動軸14の中心軸回りに180度間隔をあけて二つの板状突起部38a、38bがあり、板状突起部38a、38bには、それぞれ軸18a、18bが固定されている。軸18a、18bは、同軸上に配置されるとともに、軸18a、18bの中心軸が、等速ジョイント13のジョイント中心を通過する位置に配置されている。
一方で、固定軸12には、その中間段部に配置されかつラジアル荷重及びスラスト荷重を保持できるベアリング機構21を介して、第2の回転部材の一例である回転体20が、固定軸12の中心軸回りに回転可能なように保持されている。ベアリング機構21は、ベアリング押さえ22により回転体20に固定されている。また、回転体20は、ラジアル軸受19a、19b、19c、19dを介して軸18a、18bとも連結されており、回転体20は、椀状部材15に対して、中心軸が第3の軸(仮想軸)の一例として機能する軸18a、18bの中心軸回り(X軸回り)に相対回転できるようになっている。さらに、回転体20の回転は、回転体20の上端に設けられた傘歯車部39と直交するように噛み合った傘歯車27を介して、傘歯車27と一体に回転する回転軸28に伝達されるようになっている。回転軸28は、フレーム11の上端突起部11aの貫通口11bを回転自在に貫通し、かつ、X軸回りに回転可能なように、ベアリング機構29a、29bを介してフレーム11の上面に保持され、フレーム11を基準とした回転軸28の回転角度は、エンコーダ57により計測されるようになっている。エンコーダ57は、後述する制御コントローラ(制御手段又は制御部の一例)52に接続されており、制御コントローラ52で、エンコーダ57で計測した回転軸28の回転角度から、回転軸28と連動する回転体20の回転角度を求めるようにしている。
また、軸18a、18bには、それぞれの端面にそれぞれ歯車23a、23bが固定されている。回転体20の側面に一端が固定されたL字状の支持部材26a、26bの他端に、揺動角調節手段の一例であるサーボモータ25a、25bがそれぞれ保持されている。サーボモータ25a、25bの回転軸にそれぞれ固定された歯車24a、24bは、歯車23a、23bとそれぞれかみ合っている。これにより、サーボモータ25a、25bを駆動してそれぞれの回転軸及び歯車24a、24bを歯車23a、23bに対して回転させることで、回転体20と椀状部材15との相対角度を変化させることが可能になっている。回転体20と椀状部材15との相対角度が変化すると、図1Cに示される状態(回転体20の回転軸芯と板状部材17の回転軸芯とが平行な状態(すなわち、椀状部材15の中央板部15aが水平面沿いに位置した水平状態))が、例えば図1Eに示される状態(回転体20の回転軸芯に対して板状部材17の回転軸芯が傾斜した状態(すなわち、椀状部材15の中央板部15aが水平面沿いから傾斜した傾斜状態))に変化することになる。なお、サーボモータ25a、25bの回転情報は制御コントローラ52に入力されるようにしている。
さらに、椀状部材15には、椀状部材15の側面に椀状部材15の回転軸芯回りの円周上に等間隔に(72度毎の位置に)配置された球ジョイント32a、32b、32c、32d、32eを介して、揺動トルク発生機構の一例であるピストンシリンダ機構の一例としての油圧シリンダ30a、30b、30c、30d、30eの両ロッド形のピストン31a、31b、31c、31d、31eの上側のロッドの上端が、それぞれ、固定軸12の中心軸に対して回転対称となる位置(具体的には固定軸12の中心軸周りの同一円周上の72度毎の位置に)に回動自在に連結されている。油圧シリンダは、変位に対して力が変化しない点で望ましい。さらに、両ロッド形のピストンを用いることは、駆動方向による発生力の違いが生じない点で望ましく、回転対称の位置に配置することは、回転体20の角度が変化する際の特性のばらつきを最も小さくできるので望ましい。また、球ジョイント32a、32b、32c、32d、32eのジョイント中心は、揺動軸14の中心軸に垂直でかつ軸18a、18bの中心軸を含む平面上に位置している。このようにすることは、回転体20の回転軸芯に対して板状部材17の回転軸芯の傾きが変化しても、球ジョイント32a、32b、32c、32d、32eのジョイント中心を通る円の中心位置が一定となり、余計なアンバランスが椀状部材15に生じないので望ましい。さらに、油圧シリンダ30a、30b、30c、30d、30eの下部は、それぞれの下端部に球状部33qを設けかつ中心部にピストン31a、31b、31c、31d、31eの下側のロッドが通過するための貫通穴33pをそれぞれ備えたシリンダ支持部材33a、33b、33c、33d、33eの上端に固定されており、シリンダ支持部材33a、33b、33c、33d、33eの下端の球状部33qは、フレーム11の下端の底面に固定されたボールホルダ34a、34b、34c、34d、34eによりそれぞれ回転自由に支持され、球ジョイントを構成している。
一方で、油圧シリンダ30a、30b、30c、30d、30eの上部側面及び下部側面には、非圧縮性流体の一例である油を供給するための上側の接続配管36a、36b、36c、36d、36e及び下側の接続配管37a、37b、37c、37d、37eがそれぞれ接続され、制御弁装置の一例であるバルブ機構35と油圧シリンダ30a、30b、30c、30d、30eとを上側の接続配管36a、36b、36c、36d、36e及び下側の接続配管37a、37b、37c、37d、37eで接続している。バルブ機構35の内部構成は、図2で示す配管図示すような構成となっている。さらに、バルブ機構35には制御コントローラ52が備えられており、制御コントローラ52と図2で示される各要素とは、図3に示すような接続関係にある。
図2において、上側の接続配管36a、36b、36c、36d、36e及び下側の接続配管37a、37b、37c、37d、37eには、それぞれ、5ポート弁41a、41b、41c、41d、41eが接続されており、油圧シリンダ30a、30b、30c、30d、30eと、高圧配管部の一例である高圧配管50及び低圧配管部の一例である低圧配管51との接続を切り替えるようになっている。低圧配管51は、高圧配管50内の非圧縮性流体より低圧に保持された非圧縮性流体で満たされている。高圧配管50には、蓄圧機構の一例であるアキュムレータ40が接続されており、内部に蓄えられたエネルギーにより高圧配管50内の油を加圧している。アキュムレータ40の種類としては、特に限定されるものではなく、従来公知の種々のものを採用することができる。具体的には、例えばブラダ型アキュムレータ、ピストン型アキュムレータ、又は、ダイアフラム型アキュムレータ等がアキュムレータ40として利用可能である。また、上側の接続配管36a、36b、36c、36d、36eは、油タンク48に至る低圧配管51に対して、それぞれ、ON−OFF弁42a、42b、42c、42d、42eを介して接続されるとともに、高圧配管50に対しても、それぞれ、ON−OFF弁43a、43b、43c、43d、43e及び逆止弁46a、46b、46c、46d、46eを介して接続されている。同様に、下側の接続配管37a、37b、37c、37d、37eは、油タンク48に至る低圧配管51に対して、それぞれ、ON−OFF弁44a、44b、44c、44d、44eを介して接続されるとともに、高圧配管50に対しても、それぞれ、ON−OFF弁45a、45b、45c、45d、45e及び逆止弁47a、47b、47c、47d、47eを介して接続されている。制御コントローラ52は、5ポート弁41a、41b、41c、41d、41eと、ON−OFF弁42a、42b、42c、42d、42eと、ON−OFF弁43a、43b、43c、43d、43eと、ON−OFF弁44a、44b、44c、44d、44eと、ON−OFF弁45a、45b、45c、45d、45eとにそれぞれ接続されて、それぞれのON−OFF弁の動作を制御コントローラ52でそれぞれ制御できるようにしている。
さらに、高圧配管50は、リリーフ弁49を介して低圧配管51と接続されており、アキュムレータ40及び高圧配管50の圧力が一定の圧力以上にならないようにアキュムレータ40及び高圧配管50を保護している。逆に、低圧配管51と高圧配管50の間には、ポンプ機構の一例である逆止弁を備えた油圧ポンプ53が設けられており、低圧配管51の油を高圧配管50に油圧ポンプ53により送れるようになっている。また、上側の接続配管36a、36b、36c、36d、36eの途中には、それぞれ圧力センサ54a、54b、54c、54d、54eが設けられ、上側の接続配管内の圧力を計測できるようになっている。同様に、下側の接続配管37a、37b、37c、37d、37eの途中には、それぞれ圧力センサ55a、55b、55c、55d、55eが設けられ、高圧配管50の途中にも圧力センサ56が設けられ、それぞれの配管内の圧力をそれぞれ計測できるようになっている。制御コントローラ52は、圧力センサ54a、54b、54c、54d、54eと、圧力センサ55a、55b、55c、55d、55eと、圧力センサ56とにそれぞれ接続されて、それぞれのセンサで計測されたそれぞれの配管内の圧力の情報が制御コントローラ52に入力されるようになっている。
次に、バルブ機構35内に備えられた制御コントローラ52の下で行われる、この回転アクチュエータ1の作用を説明する。
回転アクチュエータ1の回転軸28に作用する力は、油圧シリンダ30a、30b、30c、30d、30eの発生力と、回転体20の回転軸芯に対する板状部材17の回転軸芯の傾きの大きさとによって決定される。すなわち、図1Cにおいて、油圧シリンダ30a、30b、30c、30d、30eの発生力が椀状部材15に作用したとき、X軸、Y軸、Z軸の各方向への変位及びZ軸回りの回転については、椀状部材15が、揺動軸14と、等速ジョイント13を介して固定軸12とに連結されているので、規制されることになる。椀状部材15に作用するX軸回りの回転トルクについては、ベアリング機構16と、板状部材17及び板状部材17と一体に回転する板状突起部38a、38bと、軸18a、18bと、歯車23a、23bと、そして歯車24a、24bを介してサーボモータ25a、25bとに伝達されることになる。また、椀状部材15に作用するY軸回りの回転トルクについては、ベアリング機構16と、板状部材17と、軸18a、18bを介して回転体20とに伝達されることになる。図1Cの状態では、椀状部材15の中央板部15aが水平状態を保っているので、回転体20にはY軸回りの回転トルクのみが作用することになる。回転体20のY軸回りの回転は、ベアリング機構21によって拘束されているので、図1Cの状態では回転体20の状態は変化しないことになる。
一方、椀状部材15の中央板部15aが水平状態から傾いた図1Eの傾斜状態では、椀状部材15に作用したY軸回りの回転トルク(揺動トルクの一例としてのトルク)は、回転体20に対するY軸回りの回転トルクとZ軸回りの回転トルクとに分解されることになる。椀状部材15は、等速ジョイント13のジョイント中心を揺動中心とした揺動動作のみが可能であり、図1Eのように椀状部材15がX軸回りに傾いた傾斜状態からY軸回りの回転を与えることは、椀状部材15の傾く方向をZ軸回りに回転させることと等しいことになる。一方で、軸18a、18bの中心軸は、回転体20による拘束のため、等速ジョイント13のジョイント中心を含むX−Y平面上にしか存在できないので、椀状部材15の傾く方向が変化すると、それにつれて軸18a、18b及び回転体20は、Z軸回りに回転することになる。そのため、椀状部材15に作用するY軸回りの回転トルクにより、回転体20に対するZ軸回りの回転トルクが得られるようになる。すなわち、サーボモータ25a、25bにより板状部材17の傾きを固定し、軸18a、18bの中心軸とX−Y平面上で垂直な軸(第3の軸に垂直な第4の軸の一例としての仮想軸)回り(以下、Y’軸回りと表す)に一定のトルクが椀状部材15に発生するように、バルブ機構35が、油圧シリンダ30a、30b、30c、30d、30eのそれぞれの発生力をコントロールすることで、回転体20には、Z軸回りに一定のトルクが発生するようになる。この回転体20に作用するZ軸回りのトルクは、板状部材17の傾きにより変化し、図1Cのように傾きがない水平状態では0となり、図1Eの示されるような傾斜状態に板状部材17の傾きが増えるに従って、増加していくことになる。ちなみに、回転体20に作用するZ軸回りのトルクは、回転体20の傘歯車部39と、傘歯車27を介して回転軸28とに伝達されることになり、これが回転アクチュエータ1の発生トルクとなる。
次に、バルブ機構35の動作について説明する。バルブ機構35は、図3に示すように、複数のセンサの情報に基づいてバルブをコントロールし、油圧シリンダ30a、30b、30c、30d、30eのそれぞれの発生力を制御する機構である。制御コントローラ52では、エンコーダ57で計測した回転軸28の回転角度から、回転軸28と連動する回転体20の回転角度を求めるとともに、サーボモータ25a、25bの回転情報から板状部材17及び椀状部材15の傾きに関する情報を得ている。図4A〜図4Eに制御コントローラ52によって制御される、回転体20の角度と、油圧シリンダ30a、30b、30c、30d、30eの発生力との関係の一例をそれぞれ示す。図4A〜図4Eにおいて、横軸の角度θは回転体20の回転角を度数(°)単位で示しており、図1Eの状態をθ=0度として、Z軸方向右ネジ回りを正としている。縦軸は油圧シリンダ30a、30b、30c、30d、30eのそれぞれの発生力を示しており、Z軸方向を正としている。また、縦軸における「+F」とは、下側の接続配管37a、37b、37c、37d、37eのそれぞれに高圧配管50の圧力を加えた状態、すなわち、図2において5ポート弁41a、41b、41c、41d、41eのそれぞれが左方向に移動した状態を表している。同様に、縦軸における「−F」とは、上側の接続配管36a、36b、36c、36d、36eのそれぞれに高圧配管50の圧力を加えた状態、すなわち、図2において5ポート弁41a、41b、41c、41d、41eのそれぞれが右方向に移動した状態を表している。また、油圧シリンダ30a、30b、30c、30d、30eのそれぞれの発生力が「+F」と「−F」の中間にある場合は、5ポート弁41a、41b、41c、41d、41eのそれぞれは図2の位置にあり、ON−OFF弁42a、42b、42c、42d、42eのそれぞれと、ON−OFF弁43a、43b、43c、43d、43eのそれぞれとによる圧力制御が行われている状態となる。図1Eの状態において、図4A〜図4Eのように油圧シリンダ30a、30b、30c、30d、30eのそれぞれの発生力が変化する場合、回転体20にはZ軸方向左ネジ回りの回転トルクが作用することになる。椀状部材15の傾きが一定だと、椀状部材15に作用するY’軸回りのトルクは5%程度の変動はあるものの、回転体20の角度にかかわらず略一定となる。一方で、椀状部材15に作用する軸18a、18bの中心軸周りのトルクは略0となり、サーボモータ25a、25bには負荷がかからないようになる。軸18a、18bの中心軸周りのトルクについては、図4A〜図4Eのように直線状に変化させても良いが、±F×tan(Δθ)/tan(180°/(n×2))のように変化させる方がより軸18a、18bの中心軸周りのトルクを0に近づけることができるので望ましい。ただし、Δθは図4A〜図4Eにおいて発生力が0となる角度からの差分であり、nはシリンダの本数であり、第1実施形態ではn=5となる。符号は、図4A〜図4Eにおいて右上がりに発生力が変化する場合に+であり、右下がりに発生力が変化する場合が−である。ちなみに、図4Aの油圧シリンダ30aの場合に望ましいのは、θ=72°〜108°の範囲で−F×tan(θ−90°)/tan(18°)であり、θ=252°〜288°の範囲でF×tan(θ−270°)/tan(18°)である。この第1実施形態では、n=5の奇数本の油圧シリンダを双方向動作させているが、これは椀状部材15に対して5方向の双方向トルク(双方向の揺動トルク)を発生できる点で望ましい。例えば、均等に配置された6本の油圧シリンダの場合、双方向動作させても3方向からの双方向トルクしか発生することができない。また、第1実施形態ではn=5としているが、これを増やすことで、Y’軸回りのトルクの変動をより小さくすることができる。しかし、nの数値が大きすぎると構造が複雑になるので、3以上の奇数、好ましくは、n=5,7,9,11程度の奇数が望ましい。
以上のようにバルブ機構35が油圧シリンダ30a、30b、30c、30d、30eのそれぞれの発生力を制御している状態において、サーボモータ25a、25bを動作させ、板状部材17の傾きを変化させることで、回転アクチュエータ1の発生トルクを、方向変化を含めて、自由に変化させることができる。サーボモータ25a、25bの動作に必要なトルクは、油圧シリンダ30a、30b、30c、30d、30eの発生力による軸18a、18bの中心軸周りのトルクの影響を受けるが、バルブ機構35による制御で軸18a、18bの中心軸周りのトルクを抑制することで、サーボモータ25a、25bの必要トルクを低減する(すなわち、揺動角調節手段の一例であるサーボモータ25a、25bの動作負荷を低減する)ことができる。なお、回転体20の角度が、図4A〜図4Eにおける36°、72°、108°等のように、バルブ機構35による圧力制御が行われていない角度である場合、サーボモータ25a、25bが動作しても圧力制御に伴うエネルギー消費が必要ないので、可能な限り、このような角度にあるときにサーボモータ25a、25bを動作させるようにすることが、回転アクチュエータ1の動作効率の面で望ましい。
一方で、回転アクチュエータ1の発生トルクは、椀状部材15に作用するY’軸回りのトルクに依存することになるが、Y’軸回りのトルクは、そのほとんどが高圧配管50の圧力が直接加わった油圧シリンダにより発生されることになる。すなわち、図4A〜図4Eのように油圧シリンダ30a、30b、30c、30d、30eのそれぞれの発生力が変化する場合、圧力制御された状態にあるのは、Y’軸に最も接近した油圧シリンダ(例えば、θ=0°〜36°の場合は油圧シリンダ30e)のみとなり、この油圧シリンダによる発生力がY’軸回りのトルクに与える影響は、Y’軸に最も接近していることからもわずかとなる。よって、回転アクチュエータ1がトルク発生方向(回転軸28がX軸方向左ネジ回り)に回転して回転アクチュエータ1の外部に仕事をなす場合、外部に出力したエネルギーと同等のエネルギーが、そのまま、高圧配管50内の油の移動に伴い、アキュムレータ40に内包されるエネルギーから消費されることになる。逆に、回転アクチュエータ1がトルク発生方向と逆方向(回転軸28がX軸方向右ネジ回り)に回転して回転アクチュエータ1の外部から仕事がなされる場合、外部から入力されたエネルギーと同等のエネルギーが、そのまま、高圧配管50内の油の移動に伴い、アキュムレータ40に内包されるエネルギーに補充されることになる。このように、回転アクチュエータ1は、その回転方向に応じて自動的に駆動と回生を切り替えることができるので、アキュムレータ40が消費するエネルギーをさらに少なくすることができる。また、回転アクチュエータ1の動作により、アキュムレータ40から失われるエネルギーについては、油圧ポンプ53から補充されることになる。このとき、回転アクチュエータ1の動作において、回生が効果的に働き、出力のピークパワーに比べて平均パワーが大きく減少する場合には、短期的に放出したアキュムレータ40内のエネルギーの補充が時間をかけて行えるようになるので、油圧ポンプ53に要求される能力は小さくても良く、油圧ポンプ53の小型化が図れることになる。
よって、前記第1実施形態によれば、揺動トルク発生機構の一例である油圧シリンダ30a、30b、30c、30d、30e及び蓄圧機構の一例であるアキュムレータ40などの加圧手段の軽量化が図れるとともに、制御性にも優れた液圧アクチュエータ1及びそれを用いた関節駆動ユニット71を得ることができる。すなわち、第2の回転部材の一例である回転体20に作用する回転トルクは、揺動部材の一例である椀状部材15に作用する第4の軸回りの揺動トルクと、揺動角調節手段の一例であるサーボモータ25a、25bにより調整される第1の回転部材の一例である板状部材17と回転体20との相対角度により決定されるので、油圧シリンダ30a、30b、30c、30d、30eに高圧配管部の一例である高圧配管50の非圧縮性流体の一例である油の圧力をそのまま作用させ、椀状部材15に対する第4の軸回りの揺動トルクを最大限発生させ続けた状態においても、第4の軸回りの揺動トルクに関係なく、サーボモータ25a、25bによって回転体20に作用する回転トルクを制御することが可能になる。この際、椀状部材15に作用する第3の軸(一例として、軸18a、18bの中心軸)回りの揺動トルク調節に用いられる一部の油圧シリンダ30a、30b、30c、30d、30e以外は、高圧配管50の油により直接駆動することができるので、高圧配管50を加圧するアキュムレータ40が失うエネルギーと外部になされるエネルギーは連動し、アキュムレータ40が無駄にエネルギーを消費しなくなるので、ポンプ機構の一例である油圧ポンプ53及びアキュムレータ40の小型化が図れるようになる。さらに、第1実施形態にかかる液圧アクチュエータ1に対して外部から仕事がなされる場合には、そのエネルギーは高圧配管50の油の移動に伴ってアキュムレータ40に対して回生されることになるので、さらにアキュムレータ40が消費するエネルギーが減少し、油圧ポンプ53の小型化が図れることになる。また制御弁装置の一例であるバルブ機構35により、サーボモータ25a、25bの動作負荷が低減するように第3の軸回りの揺動トルクが制御されているので、サーボモータ25a、25bの応答性も高められ、制御性が向上することになる。
なお、この第1実施形態では、揺動角調節手段としてサーボモータ25a、25bを用いているが、これに限るものではなく、通常の電磁モータ若しくは超音波モータ等の他の方式のモータとエンコーダを組み合わせたもの、又は、ステッピングモータ等のオープンループで動作できる回転アクチュエータ等も利用可能である。また、エンコーダによる角度計測の代わりに、回転体20又は回転軸28に作用するトルクの計測値を用いるようにしても良い。これは、アキュムレータ40内の圧力変動、又は、Y’軸回りのトルク変動が、回転アクチュエータ1の出力トルクに与える影響を低減できる点で望ましい。
加えて、この第1実施形態では、回転軸28の回転角度から回転体20の回転角度を制御コントローラ52により求めているが、回転体20の回転角度を直接計測するような構成としても良い。さらに、第1実施形態では、軸18a、18bの中心軸周りのトルクを常に0に近づけているが、サーボモータ25a、25bの能力に余裕がある場合には、圧力制御を行う角度範囲を図4A〜図4Eの場合よりも狭めても良い。このようにすると、圧力制御に伴うエネルギー消費を抑制することができるので望ましい。
さらに、第1実施形態における回転アクチュエータ1を用いた関節駆動ユニット71の構成例を図5〜図6Bに示す。回転アクチュエータ1の下方に第1腕60が配置されるとともに上方に第2腕61が配置され、かつ、回転アクチュエータ1のフレーム11が第1腕60に固定されているとともに、回転軸28に第2腕61が直接固定されている(具体的には、回転軸28の両端部が第2腕61の張出し部61aに固定されている)。すなわち、下側の腕である第1腕60に対して、上側の腕である第2腕61を、回転アクチュエータ1により回転駆動するための駆動ユニットとして、関節駆動ユニット71を使用している。
このような構成とすることで、図6Aの状態(第1腕60の中心軸と第2腕61の中心軸とが大略同一直線状に位置した状態)から回転アクチュエータ1を動作させ、回転軸28を反時計回りに回転させることで第2腕61が第1腕60に対して反時計回りに回転動作を行うようになり、図6Bの状態(第1腕60の中心軸に対して第2腕61の中心軸が傾斜した状態)となる。逆に、回転軸28を時計回りに回転させることで、第2腕61が第1腕60に対して前記とは逆方向へ(すなわち、時計回りに)回転させることも可能となる。
よって、このような構成とすることで、回転アクチュエータ1の有する特徴、すなわち、動作効率に優れるという特徴をそのまま引き継ぐ関節駆動ユニット71が得られ、特に家庭用途に適したロボットアームにおける関節駆動ユニットを実現することができる。すなわち、前記図5の例では、関節部を介して連結されるロボットアームの2つの腕が前記第1腕61と第2腕60として、前記関節部に前記液圧アクチュエータ1が配置され、前記液圧アクチュエータ1により、前記2つの腕のうちの一方の腕(例えば、第2腕60)に対して他方の腕(例えば、第1腕61)が関節駆動ユニット71で駆動されるようにしている。
また、図7のように複数の(例えば、4個の)回転アクチュエータ1a、1b、1c、1dのそれぞれの油圧ポンプを単一の油圧ポンプ53で共用する構成としても良い。このようにすることで、複数の高圧配管50a、50b、50c、50dに対して、単一の油圧ポンプ53により低圧配管51(すなわち、1つの油圧ポンプ53と回転アクチュエータ1a、1b、1c、1dとをそれぞれ接続する低圧配管51a,51b,51c,51d)より油を移送することになるので、必要とされる油の移送量のばらつきが平均化され、各回転アクチュエータ1a、1b、1c、1dの動作の連動性が低いほど油圧ポンプ53の仕事量の変動を小さくすることができるようになる。よって、全体構成として油圧ポンプ53の小型化が図れるようになり、加圧手段(例えば、揺動トルク発生機構の例の油圧シリンダ30a、30b、30c、30d、30e及び蓄圧機構の例のアキュムレータ40などの加圧手段)をより軽量にすることが可能になる。また、図7では、アキュムレータについても単一のアキュムレータ40で共用しているが、共用したアキュムレータ40の配置に問題がない場合、共用化した方が加圧手段を軽量にできるので望ましい。
なお、前記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
本発明にかかる液圧アクチュエータ及びそれを用いた関節駆動ユニットは、力制御が容易で、パワーウェイトレシオに優れたものであり、ロボットの関節駆動用アクチュエータ等及びそれを用いた関節駆動ユニット等として有用である。
本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関連して充分に記載されているが、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形又は修正は明白である。そのような変形又は修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
本発明は、動作効率に優れた液圧アクチュエータ及びそれを用いた関節駆動ユニットに関する。
近年、医療用ロボット、家庭用サービスロボット、及び、工場内での作業支援ロボット等、人と近い領域で動作するロボットへの期待が高まっている。このようなロボットでは、産業用ロボットとは異なり、人と接触した時の安全性確保が重要となる。そのためには、作業が行えるパワーと軽量及び低慣性の両立が求められるようになり、関節駆動用アクチュエータに対しても、高いパワーウェイトレシオが求められるようになる。そのような要求に対応するアクチュエータの一例として、油圧アクチュエータがある(例えば、非特許文献1、特許文献1、特許文献2参照)。油圧アクチュエータは、非圧縮性流体を用いて高圧で駆動を行うので、高いパワーウェイトレシオを得ることができる。
特開昭60−164677号公報
USP4,903,578号公報
バイオメカニズム学会発行,論文集「バイオメカニズム」,1975年発行,Vol.3の104〜114ページ
油圧アクチュエータは、非圧縮性流体である油を作動流体に用いているため、圧力を発生させるための加圧手段が必要となる。加圧手段としては、油圧ポンプを用いて加圧する方法が一般に用いられているが、圧力を発生し続けるためにはポンプを動作させ続ける必要がある。そのため、力は必要だが変位の必要はない保持動作のような場合には、外部へのエネルギー伝達を伴わないにもかかわらず、ポンプでのエネルギー消費を続ける必要がある。このような状態を避けるためには、アキュムレータ等の蓄圧手段を利用することが有効だと考えられるが、アキュムレータからのエネルギー消費は油の消費量に依存することになる。シリンダ型又はベーン型の油圧アクチュエータでは、速度を調節するために絞りが用いられるが、絞りを用いた構成では、低速で動作させるほど、アキュムレータ内のエネルギーが損失として無駄に消費されることになる。そのため、シリンダ型又はベーン型の油圧アクチュエータでは、家庭用ロボットに求められるような低速及び高トルクの条件において、油圧ポンプ及びアキュムレータが大型になるとともに、損失による発熱を抑えるための冷却機構がさらに必要になるといった問題点があり、システムとしてのパワーウェイトレシオを高くできないという課題を持つことになる。
一方で、可変容量のアキシャルピストン型油圧アクチュエータでは、揺動板の角度を変化させることで出力の調整が可能であるため、油を定圧で動作させることができ、アキュムレータでのエネルギー消費と出力を連動させやすい。しかし、アキシャルピストン型油圧アクチュエータでは、有限個のピストンでの動作であるため、揺動板の角度を変化させるために大きな力が必要となり、制御性に問題があるという課題がある。
従って、本発明の目的は、かかる点に鑑み、加圧手段の軽量化が図れるとともに、制御性にも優れた液圧アクチュエータ及びそれを用いた関節駆動ユニットを提供することにある。
前記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
本発明の第1態様によれば、ベース部材と、
前記ベース部材に対してユニバーサルジョイント機構を介して保持され、前記ベース部材を基準とした前記ユニバーサルジョイント機構のジョイント中心を含む第1の軸に対して揺動可能である揺動部材と、
前記揺動部材を基準とした前記ユニバーサルジョイント機構のジョイント中心を含む第2の軸回りに前記揺動部材に対して回転可能に保持される第1の回転部材と、
前記第1の回転部材に対して、前記第2の軸に垂直かつ前記ユニバーサルジョイント機構の前記ジョイント中心を含む第3の軸回りに回転可能に保持されるとともに、前記ベース部材に対しても前記第1の軸回りに回転可能に保持される第2の回転部材と、
蓄圧機構により加圧された非圧縮性流体で満たされた高圧配管部と、
前記高圧配管部内の前記非圧縮性流体より低圧に保持された状態で前記非圧縮性流体で満たされた低圧配管部と、
前記低圧配管部の前記非圧縮性流体を前記高圧配管部に移送するポンプ機構と、
前記ベース部材と前記揺動部材を連結し、前記高圧配管部と前記低圧配管部と前記ポンプ機構とがそれぞれ接続されて前記非圧縮性流体により駆動されることで、前記揺動部材に対して揺動トルクを発生させる複数の揺動トルク発生機構と、
前記揺動トルク発生機構と前記高圧配管部及び前記低圧配管部との間の前記非圧縮性流体の接続を制御する制御弁装置と、
前記第1の回転部材と前記第2の回転部材との前記第3の軸回りの相対角度を変化させる揺動角調節手段とを備え、
前記制御弁装置は、前記揺動トルク発生機構により、前記第1の軸と前記第3の軸に垂直な第4の軸回りに前記揺動部材に対する揺動トルクが発生するように制御することを特徴とする回転動作可能な液圧アクチュエータを提供する。
本発明の第11態様によれば、第1〜10のいずれか1つの態様に記載の液圧アクチュエータにより駆動される関節駆動ユニットを提供する。
よって、本発明によれば、揺動トルク発生機構及び蓄圧機構などの加圧手段の軽量化が図れるとともに、制御性にも優れた液圧アクチュエータ及びそれを用いた関節駆動ユニットを得ることができる。すなわち、第2の回転部材に作用する回転トルクは、揺動部材に作用する第4の軸回りの揺動トルクと、揺動角調節手段により調整される第1の回転部材と第2の回転部材との相対角度により決定されるので、揺動トルク発生機構に高圧配管部の非圧縮性流体の圧力をそのまま作用させ、揺動部材に対する第4の軸回りの揺動トルクを最大限発生させ続けた状態でも、第4の軸回りの揺動トルクに関係なく、揺動角調節手段によって第2の回転部材に作用する回転トルクを制御することが可能になる。この際、揺動部材に作用する第3の軸回りの揺動トルク調節に用いられる一部の揺動トルク発生機構以外は、高圧配管部の非圧縮性流体により直接駆動することができるので、高圧配管部を加圧する蓄圧機構が失うエネルギーと液圧アクチュエータの外部になされるエネルギーは連動し、蓄圧機構が無駄にエネルギーを消費しなくなるので、ポンプ機構及び蓄圧機構の小型化が図れるようになる。さらに、本発明による液圧アクチュエータに対して外部から仕事がなされる場合には、そのエネルギーは高圧配管部の非圧縮性流体の移動に伴って蓄圧機構に対して回生されることになるので、さらに蓄圧機構が消費するエネルギーが減少し、ポンプ機構の小型化が図れることになる。また制御弁装置により、揺動角調節手段の動作負荷が低減するように第3の軸回りの揺動トルクが制御されているので、揺動角調節手段の応答性も高められ、制御性が向上することになる。
本発明のこれらと他の目的と特徴は、添付された図面についての好ましい実施形態に関連した次の記述から明らかになる。
図1Aは、本発明の第1実施形態による回転アクチュエータの概略を示す正面断面図である。
図1Bは、本発明の前記第1実施形態による前記回転アクチュエータの概略を示す正面断面図の部分拡大図である。
図1Cは、本発明の前記第1実施形態による前記回転アクチュエータの概略を示す右側面断面図である。
図1Dは、本発明の前記第1実施形態による前記回転アクチュエータの概略を示す、図1AのA−A線断面図である。
図1Eは、本発明の前記第1実施形態による前記回転アクチュエータの駆動時の概略を示す右側面断面図である。
図2は、本発明の前記第1実施形態による前記回転アクチュエータのバルブ機構の内部構成を示す配管図である。
図3は、本発明の前記第1実施形態による前記回転アクチュエータの前記バルブ機構における制御コントローラと各部との接続関係を示す図である。
図4Aは、本発明の前記第1実施形態による前記回転アクチュエータの前記制御コントローラにより制御された油圧シリンダ30aの発生力変化を示す図である。
図4Bは、本発明の前記第1実施形態による前記回転アクチュエータの前記制御コントローラにより制御された油圧シリンダ30bの発生力変化を示す図である。
図4Cは、本発明の前記第1実施形態による前記回転アクチュエータの前記制御コントローラにより制御された油圧シリンダ30cの発生力変化を示す図である。
図4Dは、本発明の前記第1実施形態による前記回転アクチュエータの前記制御コントローラにより制御された油圧シリンダ30dの発生力変化を示す図である。
図4Eは、本発明の前記第1実施形態による前記回転アクチュエータの前記制御コントローラにより制御された油圧シリンダ30eの発生力変化を示す図である。
図5は、本発明の前記第1実施形態による前記回転アクチュエータを用いた関節駆動ユニットの概略を示す斜視図である。
図6Aは、本発明の前記第1実施形態による前記回転アクチュエータを用いた前記関節駆動ユニットの概略を示す側面図である。
図6Bは、本発明の前記第1実施形態による前記回転アクチュエータを用いた前記関節駆動ユニットの概略を示す側面図である。
図7は、本発明の前記第1実施形態による前記回転アクチュエータを複数個使用しかつ油圧ポンプを共用した構成を示す図である。
以下に、本発明にかかる実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
以下、図面を参照して本発明における実施形態を詳細に説明する前に、本発明の種々の態様について説明する。
本発明の第1態様によれば、ベース部材と、
前記ベース部材に対してユニバーサルジョイント機構を介して保持され、前記ベース部材を基準とした前記ユニバーサルジョイント機構のジョイント中心を含む第1の軸に対して揺動可能である揺動部材と、
前記揺動部材を基準とした前記ユニバーサルジョイント機構のジョイント中心を含む第2の軸回りに前記揺動部材に対して回転可能に保持される第1の回転部材と、
前記第1の回転部材に対して、前記第2の軸に垂直かつ前記ユニバーサルジョイント機構の前記ジョイント中心を含む第3の軸回りに回転可能に保持されるとともに、前記ベース部材に対しても前記第1の軸回りに回転可能に保持される第2の回転部材と、
蓄圧機構により加圧された非圧縮性流体で満たされた高圧配管部と、
前記高圧配管部内の前記非圧縮性流体より低圧に保持された状態で前記非圧縮性流体で満たされた低圧配管部と、
前記低圧配管部の前記非圧縮性流体を前記高圧配管部に移送するポンプ機構と、
前記ベース部材と前記揺動部材を連結し、前記高圧配管部と前記低圧配管部と前記ポンプ機構とがそれぞれ接続されて前記非圧縮性流体により駆動されることで、
前記揺動部材に対して揺動トルクを発生させる複数の揺動トルク発生機構と、
前記揺動トルク発生機構と前記高圧配管部及び前記低圧配管部との間の前記非圧縮性流体の接続を制御する制御弁装置と、
前記第1の回転部材と前記第2の回転部材との前記第3の軸回りの相対角度を変化させる揺動角調節手段とを備え、
前記制御弁装置は、前記揺動トルク発生機構により、前記第1の軸と前記第3の軸に垂直な第4の軸回りに前記揺動部材に対する揺動トルクが発生するように制御することを特徴とする回転動作可能な液圧アクチュエータを提供する。
このような構成によれば、第2の回転部材に作用する回転トルクは、揺動部材に作用する第4の軸回りの揺動トルクと、揺動角調節手段により調整される第1の回転部材と第2の回転部材との相対角度により決定されるので、揺動トルク発生機構に高圧配管部の非圧縮性流体の圧力をそのまま作用させ、揺動部材に対する第4の軸回りの揺動トルクを最大限発生させ続けた状態でも、第4の軸回りの揺動トルクに関係なく、揺動角調節手段によって第2の回転部材に作用する回転トルクを制御することが可能になる。この際、揺動部材に作用する第3の軸回りの揺動トルク調節に用いられる一部の揺動トルク発生機構以外は、高圧配管部の非圧縮性流体により直接駆動することができるので、高圧配管部を加圧する蓄圧機構が失うエネルギーと外部になされるエネルギーは連動し、蓄圧機構が無駄にエネルギーを消費しなくなるので、ポンプ機構及び蓄圧機構の小型化が図れるようになる。さらに、本発明による液圧アクチュエータに対して外部から仕事がなされる場合には、そのエネルギーは高圧配管部の非圧縮性流体の移動に伴って蓄圧機構に対して回生されることになるので、さらに蓄圧機構が消費するエネルギーが減少し、ポンプ機構の小型化が図れることになる。また制御弁装置により、揺動角調節手段の動作負荷が低減するように第3の軸回りの揺動トルクが制御されているので、揺動角調節手段の応答も高められ、制御性が向上することになる。従って、加圧手段の軽量化が図れるとともに、制御性にも優れた液圧アクチュエータを得ることができる。
本発明の第2態様によれば、前記ユニバーサルジョイント機構が、等速ジョイント機構であることを特徴とする第1の態様に記載の液圧アクチュエータを提供する。
このような構成によれば、第2の回転部材の角度による特性のばらつきが少なくなり、揺動角調節手段による第2の回転部材に作用する回転トルクの制御、又は、制御弁装置による第3の軸回り揺動トルクの調節が容易になるので、より制御性に優れた液圧アクチュエータを得ることができる。
本発明の第3態様によれば、前記複数の揺動トルク発生機構のそれぞれが、前記第2の軸回りの円周上に等間隔で配置されていることを特徴とする第1〜2のいずれか1つの態様に記載の液圧アクチュエータを提供する。
このような構成によれば、第2の回転部材の角度による特性のばらつきが少なくなり、揺動角調節手段による第2の回転部材に作用する回転トルクの制御、又は、制御弁装置による第3の軸回り揺動トルクの調節が容易になるので、より制御性に優れた液圧アクチュエータを得ることができる。
本発明の第4態様によれば、前記揺動トルク発生機構が、前記揺動部材に対して双方向の揺動トルクを与えることを特徴とする第1〜3のいずれか1つの態様に記載の液圧アクチュエータを提供する。
このような構成によれば、揺動部材に作用する第4の軸回りのトルクを、揺動部材を押圧することにより発生できる領域と、揺動部材を引張することにより発生できる領域の、何れの領域に位置する揺動トルク発生機構も用いて発生させることができるようになるので、より、高出力な液圧アクチュエータを得ることができる。
本発明の第5態様によれば、前記揺動トルク発生機構を、3以上の奇数個備えることを特徴とする第4の態様に記載の液圧アクチュエータを提供する。
このような構成によれば、揺動トルク発生機構を配置する間隔のばらつきを大きくしなくても、各揺動トルク発生機構をジョイント中心に対して非対称な位置に配置することができる。これにより、第2の回転部材の角度による揺動トルクのばらつきを小さくすることができるようになるので、より性能の安定した液圧アクチュエータを得ることができる。
本発明の第6態様によれば、前記揺動トルク発生機構に作用する前記非圧縮性流体の圧力が、前記第4の軸に最も接近した前記揺動トルク発生機構を除き、前記高圧配管部における前記非圧縮性流体の圧力若しくは前記低圧配管部における前記非圧縮性流体の圧力であることを特徴とする第5の態様に記載の液圧アクチュエータを提供する。
このような構成によれば、1つを除いた揺動トルク発生機構には高圧配管部の非圧縮性流体の圧力を直接作用させることができるので、高圧配管部を加圧する蓄圧機構のエネルギー変化と外部とのエネルギー授受との差が小さくなり、より動作効率に優れた液圧アクチュエータを得ることができる。
本発明の第7態様によれば、前記揺動トルク発生機構が、ピストンシリンダ機構であることを特徴とする第1〜6のいずれか1つの態様に記載の液圧アクチュエータを提供する。
このような構成によれば、変位にかかわらず揺動トルク発生機構の発生力を一定にすることでできるので、より性能の安定した液圧アクチュエータを得ることができる。
本発明の第8態様によれば、前記ピストンシリンダ機構が、両ロッド形のピストンを用いた機構であることを特徴とする第7の態様に記載の液圧アクチュエータを提供する。
このような構成によれば、高圧配管部の非圧縮性流体の圧力により揺動トルク発生機構を動作させた場合における、ピストン動作方向による揺動トルクの大きさの違いを抑えることができるので、より性能の安定した液圧アクチュエータを得ることができる。
本発明の第9態様によれば、前記揺動トルク発生機構と前記揺動部材は球ジョイント機構にて連結され、前記球ジョイント機構のジョイント中心が前記第2の軸に垂直かつ前記第3の軸を含む平面上にあることを特徴とする第1〜8のいずれか1つの態様に記載の液圧アクチュエータを提供する。
このような構成によれば、第1の回転部材と第2の回転部材との相対角度を変化させる際に揺動角調節手段が行う仕事を小さくすることができるので、より制御性に優れた液圧アクチュエータを得ることができる。
本発明の第10態様によれば、第1〜9のいずれか1つの態様に記載の液圧アクチュエータを複数備え、各液圧アクチュエータの前記ポンプ機構が互いに共有される構成であることを特徴とする多軸液圧アクチュエータを提供する。
このような構成によれば、複数の液圧アクチュエータの高圧配管部に対して、単一のポンプ機構により低圧配管部より非圧縮性流体を移送することになるので、必要とされる非圧縮性流体の移送量のばらつきが平均化され、各液圧アクチュエータの動作の連動性が低いほどポンプ機構の仕事量の変動を小さくすることができるようになる。それにより、全体構成としてポンプ機構の小型化が図れるようになり、より加圧手段が軽量な液圧アクチュエータを得ることができる。
本発明の第11態様によれば、関節部を介して連結された2つの腕の前記関節部に第1〜10のいずれか1つの態様に記載の液圧アクチュエータが配置され、前記液圧アクチュエータにより、前記2つの腕のうちの一方の腕に対して他方の腕が駆動される関節駆動ユニットを提供する。
このような構成によれば、前記第1〜10のいずれか1つの態様に記載の液圧アクチュエータにより駆動される関節駆動ユニットを構成することができて、前記液圧アクチュエータの作用効果を奏することができる関節駆動ユニットを得ることができる。
以下、本発明の種々の実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1Aは、本発明にかかる第1実施形態の液圧アクチュエータの一例としての回転アクチュエータ1の概略を示した正面断面図であり、その部分拡大図が図1Bである。また図1Cには回転アクチュエータ1の右側面断面図を示し、図1Dには図1AにおけるA−A線の断面図を示している。この第1実施形態の回転アクチュエータにおける直交座標軸として、図1Aの上向きをZ軸、左向きをX軸、紙面手前側をY軸と定義する。
図1A〜図1Dにおいて、ベース部材の一例である円筒状のフレーム11の上面中央部に、中心軸が第1の軸(仮想軸)の一例として機能する固定軸12が固定されている。固定軸12には、ユニバーサルジョイント機構の一例である等速ジョイント13を介して、中心軸が第2の軸(仮想軸)の一例として機能する揺動軸14が接続されている。等速ジョイント13としては、例えば特開2002−349593号公報にて開示されているような等速ジョイントが利用可能である。このような等速ジョイントを用いることは、揺動軸14が傾く方向により回転トルクが変動しないので望ましい。さらに、揺動軸14の下端には、揺動部材の一例でありかつ5角形の平面形状を有する椀状部材15の中央板部15aの開口15bが固定されており、等速ジョイント13のジョイント中心を基準に、揺動軸14と椀状部材15とが一体的に揺動動作が可能なようになっている。また、椀状部材15は、椀状部材15の中央板部15aの上面に配置しかつラジアル荷重及びスラスト荷重を保持できるベアリング機構16を介して、第1の回転部材の一例である円形の板状部材17を中央板部15aと平行に保持するようになっており、板状部材17は、椀状部材15に対して揺動軸14の中心軸と同軸に相対回転できるようになっている。ベアリング機構16としては、例えばクロスローラ軸受又は組合せアンギュラ玉軸受などが利用可能である。板状部材17には、揺動軸14の中心軸回りに180度間隔をあけて二つの板状突起部38a、38bがあり、板状突起部38a、38bには、それぞれ軸18a、18bが固定されている。軸18a、18bは、同軸上に配置されるとともに、軸18a、18bの中心軸が、等速ジョイント13のジョイント中心を通過する位置に配置されている。
一方で、固定軸12には、その中間段部に配置されかつラジアル荷重及びスラスト荷重を保持できるベアリング機構21を介して、第2の回転部材の一例である回転体20が、固定軸12の中心軸回りに回転可能なように保持されている。ベアリング機構21は、ベアリング押さえ22により回転体20に固定されている。また、回転体20は、ラジアル軸受19a、19b、19c、19dを介して軸18a、18bとも連結されており、回転体20は、椀状部材15に対して、中心軸が第3の軸(仮想軸)の一例として機能する軸18a、18bの中心軸回り(X軸回り)に相対回転できるようになっている。さらに、回転体20の回転は、回転体20の上端に設けられた傘歯車部39と直交するように噛み合った傘歯車27を介して、傘歯車27と一体に回転する回転軸28に伝達されるようになっている。回転軸28は、フレーム11の上端突起部11aの貫通口11bを回転自在に貫通し、かつ、X軸回りに回転可能なように、ベアリング機構29a、29bを介してフレーム11の上面に保持され、フレーム11を基準とした回転軸28の回転角度は、エンコーダ57により計測されるようになっている。エンコーダ57は、後述する制御コントローラ(制御手段又は制御部の一例)52に接続されており、制御コントローラ52で、エンコーダ57で計測した回転軸28の回転角度から、回転軸28と連動する回転体20の回転角度を求めるようにしている。
また、軸18a、18bには、それぞれの端面にそれぞれ歯車23a、23bが固定されている。回転体20の側面に一端が固定されたL字状の支持部材26a、26bの他端に、揺動角調節手段の一例であるサーボモータ25a、25bがそれぞれ保持されている。サーボモータ25a、25bの回転軸にそれぞれ固定された歯車24a、24bは、歯車23a、23bとそれぞれかみ合っている。これにより、サーボモータ25a、25bを駆動してそれぞれの回転軸及び歯車24a、24bを歯車23a、23bに対して回転させることで、回転体20と椀状部材15との相対角度を変化させることが可能になっている。回転体20と椀状部材15との相対角度が変化すると、図1Cに示される状態(回転体20の回転軸芯と板状部材17の回転軸芯とが平行な状態(すなわち、椀状部材15の中央板部15aが水平面沿いに位置した水平状態))が、例えば図1Eに示される状態(回転体20の回転軸芯に対して板状部材17の回転軸芯が傾斜した状態(すなわち、椀状部材15の中央板部15aが水平面沿いから傾斜した傾斜状態))に変化することになる。なお、サーボモータ25a、25bの回転情報は制御コントローラ52に入力されるようにしている。
さらに、椀状部材15には、椀状部材15の側面に椀状部材15の回転軸芯回りの円周上に等間隔に(72度毎の位置に)配置された球ジョイント32a、32b、32c、32d、32eを介して、揺動トルク発生機構の一例であるピストンシリンダ機構の一例としての油圧シリンダ30a、30b、30c、30d、30eの両ロッド形のピストン31a、31b、31c、31d、31eの上側のロッドの上端が、それぞれ、固定軸12の中心軸に対して回転対称となる位置(具体的には固定軸12の中心軸周りの同一円周上の72度毎の位置に)に回動自在に連結されている。油圧シリンダは、変位に対して力が変化しない点で望ましい。さらに、両ロッド形のピストンを用いることは、駆動方向による発生力の違いが生じない点で望ましく、回転対称の位置に配置することは、回転体20の角度が変化する際の特性のばらつきを最も小さくできるので望ましい。また、球ジョイント32a、32b、32c、32d、32eのジョイント中心は、揺動軸14の中心軸に垂直でかつ軸18a、18bの中心軸を含む平面上に位置している。このようにすることは、回転体20の回転軸芯に対して板状部材17の回転軸芯の傾きが変化しても、球ジョイント32a、32b、32c、32d、32eのジョイント中心を通る円の中心位置が一定となり、余計なアンバランスが椀状部材15に生じないので望ましい。さらに、油圧シリンダ30a、30b、30c、30d、30eの下部は、それぞれの下端部に球状部33qを設けかつ中心部にピストン31a、31b、31c、31d、31eの下側のロッドが通過するための貫通穴33pをそれぞれ備えたシリンダ支持部材33a、33b、33c、33d、33eの上端に固定されており、シリンダ支持部材33a、33b、33c、33d、33eの下端の球状部33qは、フレーム11の下端の底面に固定されたボールホルダ34a、34b、34c、34d、34eによりそれぞれ回転自由に支持され、球ジョイントを構成している。
一方で、油圧シリンダ30a、30b、30c、30d、30eの上部側面及び下部側面には、非圧縮性流体の一例である油を供給するための上側の接続配管36a、36b、36c、36d、36e及び下側の接続配管37a、37b、37c、37d、37eがそれぞれ接続され、制御弁装置の一例であるバルブ機構35と油圧シリンダ30a、30b、30c、30d、30eとを上側の接続配管36a、36b、36c、36d、36e及び下側の接続配管37a、37b、37c、37d、37eで接続している。バルブ機構35の内部構成は、図2で示す配管図示すような構成となっている。さらに、バルブ機構35には制御コントローラ52が備えられており、制御コントローラ52と図2で示される各要素とは、図3に示すような接続関係にある。
図2において、上側の接続配管36a、36b、36c、36d、36e及び下側の接続配管37a、37b、37c、37d、37eには、それぞれ、5ポート弁41a、41b、41c、41d、41eが接続されており、油圧シリンダ30a、30b、30c、30d、30eと、高圧配管部の一例である高圧配管50及び低圧配管部の一例である低圧配管51との接続を切り替えるようになっている。低圧配管51は、高圧配管50内の非圧縮性流体より低圧に保持された非圧縮性流体で満たされている。高圧配管50には、蓄圧機構の一例であるアキュムレータ40が接続されており、内部に蓄えられたエネルギーにより高圧配管50内の油を加圧している。アキュムレータ40の種類としては、特に限定されるものではなく、従来公知の種々のものを採用することができる。具体的には、例えばブラダ型アキュムレータ、ピストン型アキュムレータ、又は、ダイアフラム型アキュムレータ等がアキュムレータ40として利用可能である。また、上側の接続配管36a、36b、36c、36d、36eは、油タンク48に至る低圧配管51に対して、それぞれ、ON−OFF弁42a、42b、42c、42d、42eを介して接続されるとともに、高圧配管50に対しても、それぞれ、ON−OFF弁43a、43b、43c、43d、43e及び逆止弁46a、46b、46c、46d、46eを介して接続されている。同様に、下側の接続配管37a、37b、37c、37d、37eは、油タンク48に至る低圧配管51に対して、それぞれ、ON−OFF弁44a、44b、44c、44d、44eを介して接続されるとともに、高圧配管50に対しても、それぞれ、ON−OFF弁45a、45b、45c、45d、45e及び逆止弁47a、47b、47c、47d、47eを介して接続されている。制御コントローラ52は、5ポート弁41a、41b、41c、41d、41eと、ON−OFF弁42a、42b、42c、42d、42eと、ON−OFF弁43a、43b、43c、43d、43eと、ON−OFF弁44a、44b、44c、44d、44eと、ON−OFF弁45a、45b、45c、45d、45eとにそれぞれ接続されて、それぞれのON−OFF弁の動作を制御コントローラ52でそれぞれ制御できるようにしている。
さらに、高圧配管50は、リリーフ弁49を介して低圧配管51と接続されており、アキュムレータ40及び高圧配管50の圧力が一定の圧力以上にならないようにアキュムレータ40及び高圧配管50を保護している。逆に、低圧配管51と高圧配管50の間には、ポンプ機構の一例である逆止弁を備えた油圧ポンプ53が設けられており、低圧配管51の油を高圧配管50に油圧ポンプ53により送れるようになっている。また、上側の接続配管36a、36b、36c、36d、36eの途中には、それぞれ圧力センサ54a、54b、54c、54d、54eが設けられ、上側の接続配管内の圧力を計測できるようになっている。同様に、下側の接続配管37a、37b、37c、37d、37eの途中には、それぞれ圧力センサ55a、55b、55c、55d、55eが設けられ、高圧配管50の途中にも圧力センサ56が設けられ、それぞれの配管内の圧力をそれぞれ計測できるようになっている。制御コントローラ52は、圧力センサ54a、54b、54c、54d、54eと、圧力センサ55a、55b、55c、55d、55eと、圧力センサ56とにそれぞれ接続されて、それぞれのセンサで計測されたそれぞれの配管内の圧力の情報が制御コントローラ52に入力されるようになっている。
次に、バルブ機構35内に備えられた制御コントローラ52の下で行われる、この回転アクチュエータ1の作用を説明する。
回転アクチュエータ1の回転軸28に作用する力は、油圧シリンダ30a、30b、30c、30d、30eの発生力と、回転体20の回転軸芯に対する板状部材17の回転軸芯の傾きの大きさとによって決定される。すなわち、図1Cにおいて、油圧シリンダ30a、30b、30c、30d、30eの発生力が椀状部材15に作用したとき、X軸、Y軸、Z軸の各方向への変位及びZ軸回りの回転については、椀状部材15が、揺動軸14と、等速ジョイント13を介して固定軸12とに連結されているので、規制されることになる。椀状部材15に作用するX軸回りの回転トルクについては、ベアリング機構16と、板状部材17及び板状部材17と一体に回転する板状突起部38a、38bと、軸18a、18bと、歯車23a、23bと、そして歯車24a、24bを介してサーボモータ25a、25bとに伝達されることになる。また、椀状部材15に作用するY軸回りの回転トルクについては、ベアリング機構16と、板状部材17と、軸18a、18bを介して回転体20とに伝達されることになる。図1Cの状態では、椀状部材15の中央板部15aが水平状態を保っているので、回転体20にはY軸回りの回転トルクのみが作用することになる。回転体20のY軸回りの回転は、ベアリング機構21によって拘束されているので、図1Cの状態では回転体20の状態は変化しないことになる。
一方、椀状部材15の中央板部15aが水平状態から傾いた図1Eの傾斜状態では、椀状部材15に作用したY軸回りの回転トルク(揺動トルクの一例としてのトルク)は、回転体20に対するY軸回りの回転トルクとZ軸回りの回転トルクとに分解されることになる。椀状部材15は、等速ジョイント13のジョイント中心を揺動中心とした揺動動作のみが可能であり、図1Eのように椀状部材15がX軸回りに傾いた傾斜状態からY軸回りの回転を与えることは、椀状部材15の傾く方向をZ軸回りに回転させることと等しいことになる。一方で、軸18a、18bの中心軸は、回転体20による拘束のため、等速ジョイント13のジョイント中心を含むX−Y平面上にしか存在できないので、椀状部材15の傾く方向が変化すると、それにつれて軸18a、18b及び回転体20は、Z軸回りに回転することになる。そのため、椀状部材15に作用するY軸回りの回転トルクにより、回転体20に対するZ軸回りの回転トルクが得られるようになる。すなわち、サーボモータ25a、25bにより板状部材17の傾きを固定し、軸18a、18bの中心軸とX−Y平面上で垂直な軸(第3の軸に垂直な第4の軸の一例としての仮想軸)回り(以下、Y’軸回りと表す)に一定のトルクが椀状部材15に発生するように、バルブ機構35が、油圧シリンダ30a、30b、30c、30d、30eのそれぞれの発生力をコントロールすることで、回転体20には、Z軸回りに一定のトルクが発生するようになる。この回転体20に作用するZ軸回りのトルクは、板状部材17の傾きにより変化し、図1Cのように傾きがない水平状態では0となり、図1Eの示されるような傾斜状態に板状部材17の傾きが増えるに従って、増加していくことになる。ちなみに、回転体20に作用するZ軸回りのトルクは、回転体20の傘歯車部39と、傘歯車27を介して回転軸28とに伝達されることになり、これが回転アクチュエータ1の発生トルクとなる。
次に、バルブ機構35の動作について説明する。バルブ機構35は、図3に示すように、複数のセンサの情報に基づいてバルブをコントロールし、油圧シリンダ30a、30b、30c、30d、30eのそれぞれの発生力を制御する機構である。制御コントローラ52では、エンコーダ57で計測した回転軸28の回転角度から、回転軸28と連動する回転体20の回転角度を求めるとともに、サーボモータ25a、25bの回転情報から板状部材17及び椀状部材15の傾きに関する情報を得ている。図4A〜図4Eに制御コントローラ52によって制御される、回転体20の角度と、油圧シリンダ30a、30b、30c、30d、30eの発生力との関係の一例をそれぞれ示す。図4A〜図4Eにおいて、横軸の角度θは回転体20の回転角を度数(°)単位で示しており、図1Eの状態をθ=0度として、Z軸方向右ネジ回りを正としている。縦軸は油圧シリンダ30a、30b、30c、30d、30eのそれぞれの発生力を示しており、Z軸方向を正としている。また、縦軸における「+F」とは、下側の接続配管37a、37b、37c、37d、37eのそれぞれに高圧配管50の圧力を加えた状態、すなわち、図2において5ポート弁41a、41b、41c、41d、41eのそれぞれが左方向に移動した状態を表している。同様に、縦軸における「−F」とは、上側の接続配管36a、36b、36c、36d、36eのそれぞれに高圧配管50の圧力を加えた状態、すなわち、図2において5ポート弁41a、41b、41c、41d、41eのそれぞれが右方向に移動した状態を表している。また、油圧シリンダ30a、30b、30c、30d、30eのそれぞれの発生力が「+F」と「−F」の中間にある場合は、5ポート弁41a、41b、41c、41d、41eのそれぞれは図2の位置にあり、ON−OFF弁42a、42b、42c、42d、42eのそれぞれと、ON−OFF弁43a、43b、43c、43d、43eのそれぞれとによる圧力制御が行われている状態となる。図1Eの状態において、図4A〜図4Eのように油圧シリンダ30a、30b、30c、30d、30eのそれぞれの発生力が変化する場合、回転体20にはZ軸方向左ネジ回りの回転トルクが作用することになる。椀状部材15の傾きが一定だと、椀状部材15に作用するY’軸回りのトルクは5%程度の変動はあるものの、回転体20の角度にかかわらず略一定となる。一方で、椀状部材15に作用する軸18a、18bの中心軸周りのトルクは略0となり、サーボモータ25a、25bには負荷がかからないようになる。軸18a、18bの中心軸周りのトルクについては、図4A〜図4Eのように直線状に変化させても良いが、±F×tan(Δθ)/tan(180°/(n×2))のように変化させる方がより軸18a、18bの中心軸周りのトルクを0に近づけることができるので望ましい。ただし、Δθは図4A〜図4Eにおいて発生力が0となる角度からの差分であり、nはシリンダの本数であり、第1実施形態ではn=5となる。符号は、図4A〜図4Eにおいて右上がりに発生力が変化する場合に+であり、右下がりに発生力が変化する場合が−である。ちなみに、図4Aの油圧シリンダ30aの場合に望ましいのは、θ=72°〜108°の範囲で−F×tan(θ−90°)/tan(18°)であり、θ=252°〜288°の範囲でF×tan(θ−270°)/tan(18°)である。この第1実施形態では、n=5の奇数本の油圧シリンダを双方向動作させているが、これは椀状部材15に対して5方向の双方向トルク(双方向の揺動トルク)を発生できる点で望ましい。例えば、均等に配置された6本の油圧シリンダの場合、双方向動作させても3方向からの双方向トルクしか発生することができない。また、第1実施形態ではn=5としているが、これを増やすことで、Y’軸回りのトルクの変動をより小さくすることができる。しかし、nの数値が大きすぎると構造が複雑になるので、3以上の奇数、好ましくは、n=5,7,9,11程度の奇数が望ましい。
以上のようにバルブ機構35が油圧シリンダ30a、30b、30c、30d、30eのそれぞれの発生力を制御している状態において、サーボモータ25a、25bを動作させ、板状部材17の傾きを変化させることで、回転アクチュエータ1の発生トルクを、方向変化を含めて、自由に変化させることができる。サーボモータ25a、25bの動作に必要なトルクは、油圧シリンダ30a、30b、30c、30d、30eの発生力による軸18a、18bの中心軸周りのトルクの影響を受けるが、バルブ機構35による制御で軸18a、18bの中心軸周りのトルクを抑制することで、サーボモータ25a、25bの必要トルクを低減する(すなわち、揺動角調節手段の一例であるサーボモータ25a、25bの動作負荷を低減する)ことができる。なお、回転体20の角度が、図4A〜図4Eにおける36°、72°、108°等のように、バルブ機構35による圧力制御が行われていない角度である場合、サーボモータ25a、25bが動作しても圧力制御に伴うエネルギー消費が必要ないので、可能な限り、このような角度にあるときにサーボモータ25a、25bを動作させるようにすることが、回転アクチュエータ1の動作効率の面で望ましい。
一方で、回転アクチュエータ1の発生トルクは、椀状部材15に作用するY’軸回りのトルクに依存することになるが、Y’軸回りのトルクは、そのほとんどが高圧配管50の圧力が直接加わった油圧シリンダにより発生されることになる。すなわち、図4A〜図4Eのように油圧シリンダ30a、30b、30c、30d、30eのそれぞれの発生力が変化する場合、圧力制御された状態にあるのは、Y’軸に最も接近した油圧シリンダ(例えば、θ=0°〜36°の場合は油圧シリンダ30e)のみとなり、この油圧シリンダによる発生力がY’軸回りのトルクに与える影響は、Y’軸に最も接近していることからもわずかとなる。よって、回転アクチュエータ1がトルク発生方向(回転軸28がX軸方向左ネジ回り)に回転して回転アクチュエータ1の外部に仕事をなす場合、外部に出力したエネルギーと同等のエネルギーが、そのまま、高圧配管50内の油の移動に伴い、アキュムレータ40に内包されるエネルギーから消費されることになる。逆に、回転アクチュエータ1がトルク発生方向と逆方向(回転軸28がX軸方向右ネジ回り)に回転して回転アクチュエータ1の外部から仕事がなされる場合、外部から入力されたエネルギーと同等のエネルギーが、そのまま、高圧配管50内の油の移動に伴い、アキュムレータ40に内包されるエネルギーに補充されることになる。このように、回転アクチュエータ1は、その回転方向に応じて自動的に駆動と回生を切り替えることができるので、アキュムレータ40が消費するエネルギーをさらに少なくすることができる。また、回転アクチュエータ1の動作により、アキュムレータ40から失われるエネルギーについては、油圧ポンプ53から補充されることになる。このとき、回転アクチュエータ1の動作において、回生が効果的に働き、出力のピークパワーに比べて平均パワーが大きく減少する場合には、短期的に放出したアキュムレータ40内のエネルギーの補充が時間をかけて行えるようになるので、油圧ポンプ53に要求される能力は小さくても良く、油圧ポンプ53の小型化が図れることになる。
よって、前記第1実施形態によれば、揺動トルク発生機構の一例である油圧シリンダ30a、30b、30c、30d、30e及び蓄圧機構の一例であるアキュムレータ40などの加圧手段の軽量化が図れるとともに、制御性にも優れた液圧アクチュエータ1及びそれを用いた関節駆動ユニット71を得ることができる。すなわち、第2の回転部材の一例である回転体20に作用する回転トルクは、揺動部材の一例である椀状部材15に作用する第4の軸回りの揺動トルクと、揺動角調節手段の一例であるサーボモータ25a、25bにより調整される第1の回転部材の一例である板状部材17と回転体20との相対角度により決定されるので、油圧シリンダ30a、30b、30c、30d、30eに高圧配管部の一例である高圧配管50の非圧縮性流体の一例である油の圧力をそのまま作用させ、椀状部材15に対する第4の軸回りの揺動トルクを最大限発生させ続けた状態においても、第4の軸回りの揺動トルクに関係なく、サーボモータ25a、25bによって回転体20に作用する回転トルクを制御することが可能になる。この際、椀状部材15に作用する第3の軸(一例として、軸18a、18bの中心軸)回りの揺動トルク調節に用いられる一部の油圧シリンダ30a、30b、30c、30d、30e以外は、高圧配管50の油により直接駆動することができるので、高圧配管50を加圧するアキュムレータ40が失うエネルギーと外部になされるエネルギーは連動し、アキュムレータ40が無駄にエネルギーを消費しなくなるので、ポンプ機構の一例である油圧ポンプ53及びアキュムレータ40の小型化が図れるようになる。さらに、第1実施形態にかかる液圧アクチュエータ1に対して外部から仕事がなされる場合には、そのエネルギーは高圧配管50の油の移動に伴ってアキュムレータ40に対して回生されることになるので、さらにアキュムレータ40が消費するエネルギーが減少し、油圧ポンプ53の小型化が図れることになる。また制御弁装置の一例であるバルブ機構35により、サーボモータ25a、25bの動作負荷が低減するように第3の軸回りの揺動トルクが制御されているので、サーボモータ25a、25bの応答性も高められ、制御性が向上することになる。
なお、この第1実施形態では、揺動角調節手段としてサーボモータ25a、25bを用いているが、これに限るものではなく、通常の電磁モータ若しくは超音波モータ等の他の方式のモータとエンコーダを組み合わせたもの、又は、ステッピングモータ等のオープンループで動作できる回転アクチュエータ等も利用可能である。また、エンコーダによる角度計測の代わりに、回転体20又は回転軸28に作用するトルクの計測値を用いるようにしても良い。これは、アキュムレータ40内の圧力変動、又は、Y’軸回りのトルク変動が、回転アクチュエータ1の出力トルクに与える影響を低減できる点で望ましい。
加えて、この第1実施形態では、回転軸28の回転角度から回転体20の回転角度を制御コントローラ52により求めているが、回転体20の回転角度を直接計測するような構成としても良い。さらに、第1実施形態では、軸18a、18bの中心軸周りのトルクを常に0に近づけているが、サーボモータ25a、25bの能力に余裕がある場合には、圧力制御を行う角度範囲を図4A〜図4Eの場合よりも狭めても良い。このようにすると、圧力制御に伴うエネルギー消費を抑制することができるので望ましい。
さらに、第1実施形態における回転アクチュエータ1を用いた関節駆動ユニット71の構成例を図5〜図6Bに示す。回転アクチュエータ1の下方に第1腕60が配置されるとともに上方に第2腕61が配置され、かつ、回転アクチュエータ1のフレーム11が第1腕60に固定されているとともに、回転軸28に第2腕61が直接固定されている(具体的には、回転軸28の両端部が第2腕61の張出し部61aに固定されている)。すなわち、下側の腕である第1腕60に対して、上側の腕である第2腕61を、回転アクチュエータ1により回転駆動するための駆動ユニットとして、関節駆動ユニット71を使用している。
このような構成とすることで、図6Aの状態(第1腕60の中心軸と第2腕61の中心軸とが大略同一直線状に位置した状態)から回転アクチュエータ1を動作させ、回転軸28を反時計回りに回転させることで第2腕61が第1腕60に対して反時計回りに回転動作を行うようになり、図6Bの状態(第1腕60の中心軸に対して第2腕61の中心軸が傾斜した状態)となる。逆に、回転軸28を時計回りに回転させることで、第2腕61が第1腕60に対して前記とは逆方向へ(すなわち、時計回りに)回転させることも可能となる。
よって、このような構成とすることで、回転アクチュエータ1の有する特徴、すなわち、動作効率に優れるという特徴をそのまま引き継ぐ関節駆動ユニット71が得られ、特に家庭用途に適したロボットアームにおける関節駆動ユニットを実現することができる。すなわち、前記図5の例では、関節部を介して連結されるロボットアームの2つの腕が前記第1腕61と第2腕60として、前記関節部に前記液圧アクチュエータ1が配置され、前記液圧アクチュエータ1により、前記2つの腕のうちの一方の腕(例えば、第2腕60)に対して他方の腕(例えば、第1腕61)が関節駆動ユニット71で駆動されるようにしている。
また、図7のように複数の(例えば、4個の)回転アクチュエータ1a、1b、1c、1dのそれぞれの油圧ポンプを単一の油圧ポンプ53で共用する構成としても良い。このようにすることで、複数の高圧配管50a、50b、50c、50dに対して、単一の油圧ポンプ53により低圧配管51(すなわち、1つの油圧ポンプ53と回転アクチュエータ1a、1b、1c、1dとをそれぞれ接続する低圧配管51a,51b,51c,51d)より油を移送することになるので、必要とされる油の移送量のばらつきが平均化され、各回転アクチュエータ1a、1b、1c、1dの動作の連動性が低いほど油圧ポンプ53の仕事量の変動を小さくすることができるようになる。よって、全体構成として油圧ポンプ53の小型化が図れるようになり、加圧手段(例えば、揺動トルク発生機構の例の油圧シリンダ30a、30b、30c、30d、30e及び蓄圧機構の例のアキュムレータ40などの加圧手段)をより軽量にすることが可能になる。また、図7では、アキュムレータについても単一のアキュムレータ40で共用しているが、共用したアキュムレータ40の配置に問題がない場合、共用化した方が加圧手段を軽量にできるので望ましい。
なお、前記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
本発明にかかる液圧アクチュエータ及びそれを用いた関節駆動ユニットは、力制御が容易で、パワーウェイトレシオに優れたものであり、ロボットの関節駆動用アクチュエータ等及びそれを用いた関節駆動ユニット等として有用である。
本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関連して充分に記載されているが、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形又は修正は明白である。そのような変形又は修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。