本発明は、レーザ光源が発するレーザ光を非線形光学効果により波長変換する波長変換レーザ光源、これを備えたプロジェクションディスプレイ装置、液晶ディスプレイ装置及びレーザ光源に関する。
従来より、Nd:YAGレーザやNd:YVO4レーザから発振される光を、非線形光学効果を用いて波長変換することによって、緑色光等の可視レーザ光を得たり、緑色光をさらに変換した紫外レーザ光を得たりする波長変換レーザ光源が数多く開発・実用化されてきた。これらの変換光は、レーザ加工やレーザディスプレイ等の用途に用いられている。
非線形光学効果を用いた従来の波長変換レーザ光源の一般的な構成例を図1に示している。非線形光学効果を得るには、複屈折率を有する非線形光学結晶を使用する必要がある。具体的には、複屈折率を有する非線形光学結晶として、LiB3O5(リチウムトリボレート:LBO)、KTiOPO4(リン酸チタニルカリウム:KTP)、CsLiB6O10(セシウムリチウムボレート:CLBO)、分極反転構造を形成したLiNbO3(ニオブ酸リチウム:PPLN)やLiTaO3(タンタル酸リチウム:PPLT)等が用いられてきた。
図1に示すように、波長変換レーザ光源100は、基本波光源101、集光レンズ108、波長変換素子(非線形光学結晶)109、再コリメートレンズ111、波長分離ミラー113、波長変換素子109の温度を一定に保持するヒーターなどの温度保持装置116、レーザ出力を制御する制御装置115、及び制御装置115内に配置される非線形光学結晶の温度をコントロールする温度コントローラ122を含んでいる。基本波光源101には、波長1.06μmのNd:YAGレーザやNd:YVO4レーザ、Ybドープファイバを用いたファイバレーザ等がよく用いられる。
ここで、波長1.06μmのレーザ光から半分の波長の0.532μmのレーザ光を発生させる第2高調波発生を例に挙げて実際の動作について説明する。
基本波光源101から発振された、波長1.06μmのレーザ光は、集光レンズ108により非線形光学結晶109に集光される。このとき、非線形光学結晶109が有する波長1.06μmの光に対する屈折率と、発生させたい波長0.532μmの光に対する屈折率とが一致している必要があり、このことを位相整合と呼ぶ。一般に、結晶の屈折率は結晶自体の温度条件で変化するため、結晶の温度は一定にしておく必要がある。このため、非線形光学結晶自体は、温度保持装置116内に配置され、結晶の種類に応じた温度に保持される。
例えば、LBO結晶を用いて、type−1非臨界位相整合と呼ばれる位相整合の方法をとる場合、148℃〜150℃という温度で結晶を保持する必要がある。
また、分極反転構造のLiNbO3結晶を使用する場合においては、分極反転構造の周期を設計することにより、位相整合する温度や波長を任意に決定することが可能となっているが、位相整合条件を保ち続けるには、素子温度と基本波波長とを一定に保つ必要がある(特許文献1及び特許文献2参照)。
図2は、波長変換後の光として、緑色光をモニターして、出力を一定に制御する制御ループを模式的に示している。
図2に示す制御ループ250は、基本波光源101への投入電流240をコントロールすることで基本波光源101からの基本波出力260を制御している。基本波出力260は、素子温度制御部280の制御により、温度が一定に保たれた非線形光学結晶からなる波長変換素子109に入射される。そして、波長変換素子109内で波長変換された後、波長変換素子109から緑色光270が出力される。この緑色光270の出力を一定にするために、緑色光270の光強度に応じて、基本波光源101へ投入する電流240を、制御ループ250よって制御する方法が、APC(オートパワーコントロール)として用いられてきた。
一方、非線形光学効果により波長変換を行う場合は、位相整合条件を満たす必要がある。このため、基本波光源101から発振される基本波の偏光方向及び基本波光源101から発振される基本波の波長も、波長変換の重要な要素となる。
特許文献3では、基本波と第2高調波との出力をそれぞれモニターすることで緩和発振したときの出力のノイズを低減する方法について示されている。
一方、特許文献4では、type-II位相整合を取る波長変換素子を使用した、波長変換レーザ光源において、基本波の各偏光成分を取得し、共振器内に具備した位相差調整手段の駆動にフィードバックする方法が提案されている。
しかしながら、特許文献4の方法では、波長変換素子の位相整合状態も一緒に変動してしまうため、出力の安定化が難しかった。
従来の制御ループでは、従来より指摘されている緩和発振の状態で対応できないという問題だけでなく、定常状態であっても、偏光の変化または波長の変化に対応できないという問題があった。
以上のように、基本波の状態が原因となり、波長変換素子の位相整合状態が変化することで、安定して効率のよい波長変換をすることが不可能になるという課題があることがわかった。
特開2004−157217号公報
特開2000−305120号公報
特開2004−348052号公報
特開平5−188421号公報
本発明の目的は、安定して効率のよい波長変換を行うことが可能な波長変換レーザ光源、これを備えたプロジェクションディスプレイ装置、液晶ディスプレイ装置及びレーザ光源を提供することにある。
本発明の一局面に係る波長変換レーザ光源は、上記の目的を達成するために、基本波光を出射する基本波光源と、非線形光学効果を有し、前記基本波光を異なる波長の高調波光に変換する波長変換素子と、前記基本波光源から出射される基本波光に含まれる特定の偏光方向の光を受光してその光量を電気信号に変換する第1の受光器と、前記波長変換素子から出力される高調波光を受光してその光量を電気信号に変換するする第2の受光器と、前記波長変換素子の温度を一定に保持する温度保持部と、前記第2の受光器からの電気信号に基づいて前記基本波光源から出射される基本波光の光量を制御する第1の制御、および、前記第1の受光器からの電気信号に基づいて前記基本波光の光量を制御する第2の制御をそれぞれ行う基本波制御部と、前記第2の受光器からの電気信号に基づいて前記温度保持部の保持温度を制御する第3の制御を行う温度制御部と、を備えている。
本願発明者らの研究の結果、基本波光の偏光成分の変化が高調波光の出力の変動に大きく影響することが、今回初めて明らかとなった。そこで、本波長変換レーザ光源は、基本波光源から出射される基本波光に含まれる特定の偏光方向の光を第1の受光器で受光してその光量を電気信号に変換し、当該電気信号に基づいて、基本波光源から出射される基本波光の光量または波長を基本波制御部が制御する構成となっている。これにより、基本波光の偏光成分の変化に応じた基本波光の調整が適切に行えるので、安定して効率のよい波長変換を行うことが可能な波長変換レーザ光源を実現できる。
本発明のさらに他の目的、特徴、及び優れた点は、以下に示す記載によって十分わかるであろう。また、本発明の利点は、添付図面を参照した次の説明で明白になるであろう。
従来の波長変換レーザ光源の概略構成を示す模式図である。
従来の波長変換レーザ光源における制御ループを示す説明図である。
図3Aは、基本波光の偏光方向の変化量を測定する測定装置の概略構成を示している。図3Bは、図3Aに示す測定装置用いて測定した基本波光の偏光方向が変化する量を示している。
本発明の一実施の形態に係る高調波出力光の制御方法を適用した波長変換光源の概略構成を示す模式図である。
本発明の一実施の形態に係る高調波出力光の制御方法を適用した制御ループを示す説明図である。
本発明の一実施の形態に係る高調波出力光の制御方法を適用した制御ループにおける、制御対象の切替のタイミングを示すタイミングチャートである。
本発明の一実施の形態に係る波長変換素子の温度調整を行うための制御システムの概略構成を示す模式図である。
図8Aは、本発明の一実施の形態に係る高調波出力光の制御方法において、波長変換素子の温度制御方法を説明するためのプロット図である。図8Bは、本発明の一実施の形態に係る高調波出力光の制御方法において、波長変換素子の温度制御方法を説明するためのプロット図である。図8Cは、本発明の一実施の形態に係る高調波出力光の制御方法において、波長変換素子の温度制御方法を説明するためのプロット図である。図8Dは、本発明の一実施の形態に係る高調波出力光の制御方法において、波長変換素子の温度制御方法を説明するためのプロット図である。
本発明の一実施の形態に係る高調波出力光の制御方法を適用した場合における出力安定性を示すプロット図である。
本発明の一実施の形態における他の高調波出力光の制御方法を適用した波長変換光源の概略構成を示す説明図である。
本発明の一実施の形態における他の高調波出力光の制御方法における、制御ループを示す説明図である。
本発明の一実施の形態に係る発振波長の調整を行うための制御システムの概略構成を示す模式図である。
本発明の一実施の形態に係る高調波出力光の他の制御方法を適用した場合における出力安定性を示すプロット図である。
本発明の他の実施の形態に係る高調波出力光の制御方法を適用した波長変換光源の概略構成を示す模式図である。
本発明の他の実施の形態に係る高調波出力光の制御工程を示すフローチャートである。
本発明の他の実施の形態に係る高調波出力光の制御方法における制御ループを示す模式図である。
本発明のさらに他の実施の形態に係る波長変換レーザ光源の概略構成を示す模式図である。
本発明のさらに他の実施の形態に係る波長変換素子の基本波から高調波光への変換効率が最大となる温度からの差分(ΔT)と、設定した高調波出力を得るのに必要な基本波光量との関係を示したプロット図である。
本発明のさらに他の実施の形態に係る波長変換素子の基本波から高調波光への変換効率が最大となる温度からの差分(ΔT)と、設定した高調波出力を得るのに必要な基本波光量との関係を示したプロット図である。
本発明のさらに他の実施の形態に係る制御工程を示すフローチャートである。
本発明のさらに他の実施の形態に係る波長変換レーザ光源の波長変換素子温度の制御工程を示すフローチャートである。
本発明のさらに他の実施の形態に係る制御における閾値cと図17との関係を示すプロット図である。
本発明のさらに他の実施の形態に係る波長変換レーザ光源の概略構成を示す説明図である。
本実施の形態のさらに他の実施の形態に係る波長変換レーザ光源のサーミスタと基本波光路との間の温度差と、基本波から高調波光への変換効率が最大となる温度からのずれ量ΔTがシフトする様子を示すプロット図である。
本実施の形態のさらに他の実施の形態に係る波長変換レーザ光源のサーミスタと基本波光路との間の温度差と、基本波から高調波光への変換効率が最大となる温度からのずれ量ΔTがシフトする様子を示す他のプロット図である。
本実施の形態のさらに他の実施の形態に係る波長変換レーザ光源のサーミスタと基本波光路との間の温度差と、基本波から高調波光への変換効率が最大となる温度からのずれ量ΔTがシフトする様子を示すさらに他のプロット図である。
本発明のさらに他の実施の形態に係る熱抵抗部材を備えた波長変換レーザ光源の概略構成を示す説明図である。
本発明のさらに他の実施の形態に係る波長変換レーザ光源の波長変換光量と基本波から高調波光への変換効率が最大となる温度からのずれ量ΔTとの関係を示すプロット図である。
本実施の形態のさらに他の実施の形態に係る波長変換レーザ光源の波長変換光量と基本波から高調波光への変換効率が最大となる温度からのずれ量ΔTとの関係を示すプロット図である。
本発明のさらに他の実施の形態に係る熱抵抗部材を備えた波長変換レーザ光源の概略構成を示す説明図である。
本発明の一実施の形態に係る波長変換レーザ光源を適用したプロジェクタ(プロジェクションディスプレイ)の概略構成を示す説明図である。
図31Aおよび図31Bは、本発明の一実施の形態に係る波長変換レーザ光源を適用した液晶ディスプレイの概略構成を示す説明図である。
本発明の一実施の形態に係る波長変換レーザ光源を適用した医療用光源の概略構成を示す説明図である。
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態について、図3ないし図13を参照しながら説明する。
本願発明者らの研究の結果、基本波光の偏光成分の変化が高調波光の出力の変動に大きく影響することが、今回初めて明らかとなった。また、type-I位相整合や擬似位相整合を採る波長変換素子を使用した場合も、基本波の偏光成分の変化が高調波出力の変動に大きく影響することが今回の検討で明らかとなった。
この問題に関し、発振波長や偏光方向が変化しうる基本波光源を用いた場合、投入電流の余裕(制御マージン)を大きく取る必要があるという問題があることが今回初めて明らかとなった。
図3Aは、基本波光の偏光方向の変化量を測定する測定装置300の概略構成を示している。図3Bは、図3Aに示す測定装置300を用いて、基本波光源101から出射される基本波光の偏光方向が変化する量を測定した結果を示している。測定装置300は、図3Aに示すように、基本波光源101と、偏光プリズム301と、受光部302を備えたパワーメータ303とを有している。基本波光源101から出射される基本波光105は、偏光プリズム301へ入射され、直線偏光される。そして、当該直線偏光内の、所定の偏光成分のみがパワーメータ303の受光部302に入射される。そして、パワーメータ303は、この受光部302に入射された受光量に基づいて、出力変動量を測定する。図3Bのグラフは、測定時間に対する出力変動量すなわち偏光方向が変化する量をプロットしている。
図3Bのグラフから、図中破線で示すように、基本波光205が偏光プリズム301を通らない場合は、出力は略一定であるのに対し、基本波光205が偏光プリズム301を通る場合、出力が最大8%程度低下、すなわち偏光方向が変化することがわかる。
本実施の形態は、偏光方向の変化や波長の変化などの従来の制御方法では調整が難しかった要素について、制御マージンを小さくしても対応できる制御(制御A)を実現している。
図4は、本発明の一実施の形態に係る波長変換レーザ光源200の概略構成を示す模式図である。この波長変換レーザ光源200は、上記制御Aを実現する構成例である。
本波長変換レーザ光源200は、図4に示すように、基本波光源(光源)201、ダイクロイックミラー206、ビームスプリッタ207、偏光フィルタ403、受光器(フォトダイオード)404、集光レンズ208、波長変換素子(非線形光学結晶を含む)209、再コリメートレンズ211、ビームスプリッタ213、受光器(フォトダイオード)212等を備えている。
基本波光源(光源)201から発振された基本波205の一部は、ビームスプリッタ207により光量の1%が透過され、残りの99%が反射される。ビームスプリッタ207で反射された基本波205は、波長変換素子209に入力される。そして、基本波205は、波長変換素子209により波長変換され、第2高調波としての緑色光に変換される。
基本波光源201としては、Ybドープファイバを用いたファイバレーザ光源を用いている。ファイバレーザ光源は、発振波長やスペクトル幅を任意に決定することができるという利点がある。したがって、スペクトル幅を狭帯域化することにより基本波から高調波への変換効率を大幅に向上することができる。
基本波光源201より発生した基本波光205は、集光レンズ208により非線形光学結晶を含む波長変換素子209へ集光される。本実施の形態では、非線形光学結晶として分極反転構造を形成したMg:LiNbO3結晶素子(MgLN素子)を用いている。
本実施の形態では、ビームスプリッタ207を透過し、偏光フィルタ403を通過した基本波をモニターし、フィードバック制御を行うように構成されている。
偏光フィルタ403は、ビームスプリッタ207を透過した基本波205のうち、波長変換に寄与する偏光成分だけを透過する。そして、偏光フィルタ403を透過した当該偏光成分の光を、受光器(フォトダイオード)404でモニターしている。
受光器404は、基本波205の強度の変化と同時に偏光揺らぎを強度の変化としてモニターし、電気信号に変換することができる。この電気信号は、基本波205の強度情報として、制御装置215へフィードバックされる。本実施の形態では、このフィードバックされた情報に基づいて、後述する図5のループ2の様に、所定の偏光成分の強度が一定になるようにフィードバック制御を行っている(APC:Auto Power Control)。
また、本波長変換レーザ光源200は、波長変換素子209の下面に配され、波長変換素子209を一定の温度に維持するための温度保持部216を備えている。この温度保持部216としては、ペルチェ素子を用いている。
波長変換素子209での波長変換により生成された第2高調波210(緑色光)は、再コリメートレンズ211により平行光束とされた後、ビームスプリッタ213を介してその一部が受光器212で受光される。この受光器212は、波長変換素子209にて生成された第2高調波210の強度をモニターし、電気信号(緑色光の強度情報)に変換して出力する。
波長変換素子209の温度を保持する温度保持部216の温度は、受光器212でモニタされる第2高調波210の強度情報に基づいて制御されている(図5のループ3)。これにより、基本波の波長が変化したことによって、第2高調波210の強度が変動する場合、基本波の波長の変化に合わせて波長変換素子209の温度を変化させることができる。
すなわち、波長変換に寄与する偏光方向の基本波入力を一定に制御している(図5のループ2)にも関わらず、第2高調波210の出力が変動する場合、当該出力の変動の要因は、基本波の波長であると言える。そこで、本制御Aでは、このような場合、波長変換素子209の温度を変化させて(図5のループ3)基本波の波長の変化に対応させている。
しかしながら、上記の2つのループ(ループ2及びループ3)のみによるフィードバック制御では、第2高調波210の出力の変動に対して、温度という時定数が大きなパラメータでしか制御できない。このため、第2高調波210の出力を一定にすることは困難である。
そこで、本制御Aでは、図5のループ2及びループ3の制御を停止させた状態で、ループ1による制御を行っている。このループ1では、第2高調波210の強度情報を示す電気信号に基づいて、基本波を駆動する電流を制御している。このループ1のフィードバック制御を挿入することで、時定数が大きなパラメータを制御対象にした場合においても、第2高調波210の出力を一定にすることが可能となる。すなわち、本制御Aのように、複数のループを時分割で動作させることで、第2高調波210の出力変動を小さくすることができる。
図6は、制御対象の切り替えタイミングの一例を示すタイミングチャートである。このタイミングチャートでは、波長変換レーザ光源200の動作状況に対して各ループが動作しているか、休止しているかを示している。
まず、波長変換レーザ光源200からの光出力(第2高調波210の出力)を設定する際には、光出力値を基本波光源201へ入力される電流値へフィードバックするAPC制御(ループ1)を行い、光出力を決定したところで時分割制御を開始している。
本制御Aでは、基本波205の出力を一定にする制御(ループ2)と、波長変換素子209の温度を最適にする制御(ループ3)とを、同じタイミングで動作させている。これは、上記ループ2及びループ3の2つのループについては、同時に動作させても暴走等の問題が生じないためである。しかしながら、本実施の形態に係るフィードバック制御は、これに限定されるものではない。すなわち、ループ1の動作タイミングと、ループ2及びループ3の動作タイミングとを、異なるタイミングで動作させれば、ループ2及びループ3の2つのループについては、必ずしも同じタイミングで動作させる必要はなく、異なるタイミングで開始・終了されてもよい。
ループ3では、波長変換素子209の温度調整を行っている。このため、ループ3の動作時間は、10秒から1分程度であることが好ましい。ここで、ループ2及びループ3を一定時間動作させた後、ループ2及びループ3の制御を一旦終了する。一方、ループ1の動作時間は0.1秒〜10秒程度で十分追随させることができる。
そして、ループ2及びループ3を解放した後、再び、高調波光出力に基づいて、基本波光源へ入力される電流値へフィードバックするループ1を動作させている。このように、ループ1を動作させる時間、ループ2及びループ3を動作させる時間を分割させることで、周辺環境温度や基本波光の波長変動などの環境変化に対して波長変換素子209の温度を常に最適な値に保つことができる。そのため、波長変換素子209の温度を変化させず一定とした場合に必要な基本波光の出力マージン、つまり基本波光源へ入力される電流値のマージンを小さくすることができ、簡便な制御で装置の小型化・低消費電力化できる効果がある。
高調波光の出力が矩形波に変調され出射する場合やパルス発振した高調波光の出力について取り扱う際には、高調波光の出力を時間平均した値をフィードバック制御に用いることで本制御を適用することができる。
次に、波長変換素子209の温度設定方法について説明する。図7は、ループ3で用いる、波長変換素子209の温度調整を行う制御システムを示す模式図である。
波長変換素子209は、温度保持部216上に保持されており、温度保持部216の温度をサーミスタ703でモニターすることで間接的に波長変換素子209の温度をモニターしている。サーミスタ703からの温度信号と波長変換された光の光強度信号712は、A/Dコンバータ704でデジタル値に変換され、レジスタ705へ格納される。高調波出力に対する素子温度のテーブルは、予め必要な基本波光源201へ投入される電流の値と共にEEPROM706へ格納されている。制御装置215は、高調波光出力の設定値のデータが、MPU707に転送される。
温度コントローラ711は、図7に示すように、電源708、サーミスタ703、サーミスタ703からの温度信号をデジタル値に変換するA/Dコンバータ704、A/Dコンバータ704によってデジタル値に変換された温度信号を格納するレジスタ705、出力−温度設定値の換算テーブル、予め必要な投入電流値等を格納するEEPROM706、制御装置215から高調波出力設定値のデータが転送されるMPU707、電源708から温度保持部216へ供給される電流波形に対し、PWM(Pulse Width Modulation)制御を行うためのスイッチ709を含んでいる。
本実施の形態では、波長変換素子209が分極反転構造を有しており(本実施形態では分極反転構造を有するMg:LiNbO3)、波長変換素子209の保持温度を50℃としている。
図8Aないし図8Dは、波長変換素子209の温度調整方法の一例を示している。
波長変換素子209の制御温度は、中心温度Tc(℃)を中心にして±Δt(℃)ウォブリングさせている。
素子温度がTc+Δt(℃)の時の高調波出力をP(Tc+Δt)、Tc(℃)の時の高調波出力をP(Tc)、Tc−Δt(℃)の時の高調波出力をP(Tc−Δt)とした場合、図8Aに示すように、P(Tc−Δt)<P(Tc)<P(Tc+Δt)の場合、Tcを上昇させる操作を行う。図8Bに示すように、P(Tc+Δt)<P(Tc)>P(Tc−Δt)の場合は、Tcを維持するよう制御する。一方、図8CのようにP(Tc−Δt)>P(Tc)>P(Tc+Δt)の場合は、Tcを減少させる操作を行う。なお、Δtは0.1〜0.2℃の範囲であることが好ましい。ウォブリングの周期は5秒から10秒としている。波長変換素子保持部分の熱容量にも関係するが、Δtが0.2℃以上の場合やウォブリングの周期を5秒以下とした場合、高調波出力のハンチング(リップル)が大きくなるため、P(Tc)が最大となる点のサーチが難しくなる。一方、Δtが0.1℃以下の場合は温度検出の際、外乱の影響を受けやすくなるため、上記の範囲に設定することで出力変動を小さく抑えたまま、出力一定動作を行うことができる効果がある。
なお、温度制御方法としては、この方法に限らず。図8Dに示すように、温度に対する出力特性カーブの出力ピーク値80%〜90%の位置で待機させておき、(図中のP(Tpv))そこからの出力変動量から、基本波から高調波光への変換効率が最大となる温度からのずれを算出し、波長変換素子209の温度を補正する方法、いわゆる山登り制御も適用できる。
図9は、波長変換レーザ光源200に、本実施の形態の出力制御方法を適用した場合の動作時間に対する出力変動量を示すプロット図である。これを図3Bと比較して本実施の形態の効果を以下に検証する。
図3Bの場合は、基本波の偏光成分の変化に起因する出力の低下は8%以上とかなり大きいものであり、基本波の波長変動に起因する出力の低下も動作開始から3500秒後に2%程度になっていた。これに対して、本実施の形態の出力制御方法を適用した場合、図9に示すように、基本波の偏光成分の変化に起因する出力の低下は僅か1%程度に低減されており、基本波の波長変動に起因する出力の低下については略ゼロになっていることがわかる。
本実施の形態に係る制御方法は、上述のように、基本波の偏光成分の変化及び基本波の波長変動に起因する出力変動を効果的に抑制している。これにより、制御の安定性の向上及び波長変換レーザ光源の信頼性の向上を実現することができる。
次に、本実施の形態に係る他のフィードバック制御について、図10を参照し以下に説明する。このフィードバック制御では、基本波光源201の発振波長を調整することによって、波長変換光の出力が一定となるように制御している(制御B)。
図10は、制御Bで提案するレーザ光源1000の構成を示す模式図である。
基本波光源201は、図10に示すように、励起光を発する半導体レーザ102と、半導体レーザ102から発せられた励起光を吸収し、前記基本波光を発するダブルクラッド希土類添加ファイバ103と、ダブルクラッド希土類添加ファイバ103の両端に配置され、基本波光源201から発せられる前記基本波光の波長を決定する、狭反射帯域のファイバグレーティング104bおよび広反射帯域のファイバグレーティング104aと、半導体レーザ102から発せられた前記励起光のうち前記ダブルクラッド希土類添加ファイバ103で吸収されなかった前記励起光を吸収処理する残存励起光処理機構(不図示)と、基本波光源201から発せられる前記基本波光の偏光方向を直線方向にする偏光単一化機構(不図示)と、前記狭反射帯域のファイバグレーティングに応力を付加するアクチュエータ1001と、を備え、狭反射帯域のファイバグレーティング104bの一端が前記アクチュエータ1001に保持され、アクチュエータ1001が前記狭反射帯域のファイバグレーティング104bに与える応力により前記基本波光の波長が変化する構成としている。
基本波光源(ファイバレーザ)201から発振された基本波205の一部は、ビームスプリッタ207により光量の1%が透過され、残りの99%が反射される。反射された基本波205は、波長変換素子209に入力される。そして、入力された基本波205は、波長変換素子209により波長変換され、高調波光としての緑色光へ変換される。
基本波205は、ビームスプリッタ207を透過してきた光によりモニターされている。ここで、偏光フィルタ403により一方の偏光成分だけを取り出された状態の光が受光器(フォトダイオード)404で観測される。これにより、受光器404は、基本波205の強度の変化と同時に偏光揺らぎを強度の変化としてモニターすることができる。基本波光源201から発振される基本波は、受光器404でモニターされ、制御装置215へ強度情報がフィードバックされる。
基本波光の波長を変更できる基本波光源としては、分布帰還ミラー部を含む分布帰還型半導体レーザ光源であって、前記分布帰還ミラー部へ投入する電流を変化させることにより、前記基本波光の波長が変化する構成としてもよい。
また、基本波光の波長を変更できる基本波光源として、分布帰還ミラー部を有し、前記基本波光の元となる光を発生する分布帰還型半導体レーザ光源と、励起光を発する励起光源と、前記励起光を吸収することで前記分布帰還型半導体レーザ光源が発する光の強度を増幅させるレーザ媒質と、を含み、前記分布帰還ミラー部へ投入する電流を変化させることで、前記基本波光の波長が変化する構成の光源を用いてもよい。
制御Bでも、前述の制御Aと同様に、制御装置にフィードバックされた情報に基づいて、ある偏光成分の強度が一定になるようにフィードバック制御されている(APC:Auto Power Control, ループ2(図11))。
次に、制御Aと異なる点について説明する。制御Aでは、波長変換素子209を温調している温度保持部216の温度は、受光器212でモニターされた緑色光の強度情報に基づいて制御しているが、本制御Bでは、温度保持部216の温度は、所定の温度で一定としている。本制御Bでは、素子温度を調整することに代えて、ファイバグレーティング104bを固定するアクチュエータ1001を用いて、基本波波長を温度保持部216で定まる素子温度に調整している(ループ3)。すなわち、波長変換に寄与する偏光方向の基本波入力が一定となるように制御し(図11のループ2)、もう一つの緑色光の変動要因である基本波の波長を変化させて(図11のループ3)、緑色光の出力の変動に対応させるという思想である。
しかしながら、上記の2ループ構成では、緑色光の光量を基準として基本波光源201に投入する電流量を決めることができない。このため、所望の緑色光出力を設定する際に支障が生じる。そこで、本制御Aでは、図11のループ2及びループ3の制御を停止させた状態で、緑色光の強度信号に基づいて、基本波を駆動する電流へフィードバックする制御(図11のループ1)を挿入することで、緑色出力を設定する場合においても緑色光出力を一定にすることが可能となる。つまり、複数のループを時分割で動作させることで、緑色光の変動を小さくすることができる。
なお、制御Aと同様に、矩形波変調した光出力を出射する場合やパルス発振したレーザ光について取り扱う際には、出力を時間平均した値をフィードバック制御に用いることで本制御を適用することができる。
次に、波長変換素子209の基本波光の温度設定方法について説明する。図12は、ループ3で用いる、発振波長の調整を行う制御システム1200を示す模式図である。
発振波長を決めるファイバグレーティング(FBG)104bの一端はアクチュエータ1001上に保持されており、アクチュエータ1001上に印加する電圧によりFBG104bへ与える応力を決定している。波長変換されて生じた緑色光の光強度信号1201は、A/Dコンバータ1202でデジタル値に変換され、レジスタ1203へ格納される。高調波出力に対するアクチュエータ1001への電圧つまり、FBGへ与える応力のテーブルは、必要な励起LDへの投入電流と共に予めEEPROM1204へ格納されている。
制御装置215からは、高調波出力設定値のデータが、MPU1205に転送される。MPU1205は、EEPROM1204に格納されている高調波出力に対するFBGへの応力のデータを取得し、レジスタ1203に格納されている緑色光強度信号の現在値と比較・演算する。電源1206はアクチュエータ1001へ供給する電源であり、信号変換器1207でPWM信号をアナログの電圧信号に変換してアクチュエータ1001の制御を行っている。
なお、本実施の形態で使用できるアクチュエータ1001としては、電磁コイルを用いたものであっても、圧電素子を用いたものであってもよいが、FBGに与える応力を電圧で制御でき、かつ電圧値で応力をモニターできる点から見て電磁コイルを用いたアクチュエータ1001を使用するのが好ましい。
なお、基本波波長を変化させる方法としては、波長可変半導体レーザの一種であるDBR(Distributed Bragg Reflector)レーザを用いることもできる。また、DBRレーザをシード光として、光ファイバアンプなどを用いて光増幅させる方法を採ることもできる。
図13は、制御Bにおける波長変換レーザ光源1000の動作時間に対する出力変動量のプロット図を示している。この場合、出力変動量は1%以内に収められており、図3Bに示すプロット図と比較して、基本波の波長変動に起因する出力変動および基本波の偏光成分の変化に起因する出力変動を大幅に低減できていることがわかる。本実施の形態の場合、波長変換素子の温度時間応答よりも高速な、基本波の発振波長を制御対象としているため、制御Aと比較して制御応答速度を向上させることができる。そして、制御Aを適用した場合の図9に示すプロット図では、1%程度残っていた波長に対する出力変動を、制御Bを適用することによってさらに抑制する効果があることがわかる。
本実施の形態の制御A及び制御Bに示した構成の波長変換レーザ光源とすることで、基本波の偏光方向、基本波の波長、及び波長変換素子の温度に対する外乱による出力変化を検出することができるため、出力制御の安定性向上とともに装置の信頼性を高める効果がある。
(実施の形態2)
本発明の他の実施の形態について図14及び図15を参照し、以下に説明する。
本実施の形態では、前述の実施の形態1の制御方法を、内部共振器型波長変換レーザ光源に適用させた場合について説明する。
図14は、本実施の形態に係る内部共振器型波長変換レーザ光源1400の概略構成を示している。
本内部共振器型波長変換レーザ光源1400は、電源装置1403、制御装置1402、出力設定器1401、励起光源(基本波光源、レーザダイオード)1405、コリメートレンズ1406、集光レンズ1407、固体レーザ素子1409、共振ミラー1408及び1412、誘電体多層膜ミラー1413、偏光子1415を備えた受光素子1416、温度コントローラ1404、高調波反射ミラー1414・1417、受光素子1418等を備えている。
励起光源(レーザダイオード)1405から出射された励起光は、コリメートレンズ1406及び集光レンズ1407を用いて固体レーザ素子1409に入射することで励起する。
固体レーザ素子1409及び波長変換素子1410は、共振ミラー1408及び1412で構成された共振器内に配置されている。固体レーザ素子1409から発振される基本波は、この共振器内で共振し、レーザ発振する。発生した基本波は、波長変換素子1410に入射され、その一部が第2高調波に変換される。共振ミラー1408及び出射ミラー1412は、基本波光の波長で高反射率となっており、特に光が出射される1412については、第二高調波が低反射(高透過)率となるよう誘電体多層膜が形成されている。
レーザ共振器から出射される光は、ほとんど第2高調波であるが、わずかに基本波も出射される。このため、出射ミラー1412から出射された第2高調波を誘電体多層膜ミラー1413に通し、第2高調波から基本波成分を分離している。誘電体多層膜ミラー1413で反射して第2高調波から分離された基本波は、偏光子1415を備えた受光素子1416に入射され、その光量がモニタされている。一方、第2高調波の成分は、誘電体多層膜ミラー1413を通過し、高調波反射ミラー1414、1417で反射され、出力光1419として光源外に出射される。このとき、第2高調波の一部は高調波反射ミラー1417を通過する。そして、高調波反射ミラー1417を通過した高調波を受光素子1418で受光し、高調波の光量をモニターしている。
本実施の形態では、波長変換素子として、周期分極反転構造を有する擬似位相整合LiNbO3素子を使用しているが、同じく基本構造に酸素八面体構造を持つLiTaO3やKTiOPO4結晶に周期分極反転構造を形成した擬似位相整合波長変換素子を使用しても良い。また、一般的に行われているように、結晶系にMgやCe等を添加して光屈折率変化を抑制した結晶基板を使用した素子を用いても良い。
受光素子1416で受光された基本波の光強度信号および受光素子1418で受光された高調波の光強度信号は、制御装置1402に送られる。制御装置1402は、基本波および高調波の各光強度信号と、出力設定器1401で設定された入力値とに基づいて、電源装置1403から励起光源1405へ送られる電流信号を制御する。また、波長変換素子1410は、温度コントローラ1404で温度調節されている。
実施の形態2においても受光素子1416に入射される基本波は、偏光子1415を通過することで所定の偏光成分のみとなっている。本実施の形態の構成とすることで、レーザ共振器のモード変化から生じる偏光変動を把握することが可能となり、以下に述べるようにレーザの発振状態に応じた制御を行うことができる。
本実施の形態に係る高調波光の制御工程について、図15Aのフローチャートを参照説明する。
まず、定常動作において、高調波光(高調波)の光量の変化の有無を判断する(S1)。高調波光の光量に変化がない場合は(S1でNO)、定常動作を継続する(S2)。一方、高調波光の光量が変化した場合は(S1でYES)、残存基本波の位相と高調波光の位相とが一致しているか反転しているかを判断する(S2)。残存基本波の位相と高調波光の位相とが一致している場合、励起電流を調整する(S3)。一方、残存基本波の位相と高調波光の位相とが反転している場合、素子温度を調整する(S4)。S3で励起電流を調整した後、又はS4で素子温度を調整したのち、高調波出力が回復したかを判断する(S5)。高調波出力が回復していない場合(S5でNO)、S2に戻って、残存基本波の位相と高調波光の位相とが一致しているか反転しているかを判断し、以後の工程を繰り返す。一方、高調波出力が回復していた場合(S5でYES)、S1に戻って、定常動作を継続する。
例えば、受光素子1416で検知される所定の偏光成分の光強度信号の位相と受光素子1418で検知される高調波の光強度信号の位相が一致(同期)している場合、出力変動の要因は基本波光源にあると予測できる。基本波光源に起因する出力低下要因としては、固体レーザ素子の発熱、励起光源の出力低下、及び発振した基本波のモード変化の3通りが考えられる。励起光源(基本波光源)1405に原因がある場合は、図15Bに示すループ2に示すように、受光素子1416で検知された所定の偏光成分の基本波の強度が一定になるように、励起光源1405に供給する励起電流を変化させるフィードバック制御を行っている(APC:Auto Power Control)。
一方、受光素子1416で検知される所定の偏光成分の光強度信号の位相と受光素子1418で検知される高調波の光強度信号の位相とが反転(非同期)してる場合は、出力変動の要因は波長変換素子に原因があると予測できる。このように、波長変換素子に異常がある場合は、実施の形態1において図8Aないし図8Dを参照して説明した方法を用いて、素子温度を最適にすることで、出力を回復させることができる。
なお、受光素子1416で検知される所定の偏光成分の光強度信号と、受光素子1418で検知される高調波の光強度信号との位相が一致(同期)しているか反転(非同期)しているかの判断については、例えば、両信号の位相が0±45度の範囲にあれば一致(同期)していると判断でき、また、両信号の位相が180±45度の範囲にあれば反転(非同期)していると判断できる。
以上のように、基本波の光強度と高調波の光強度との位相差を検出することで、出力変動の要因を、迅速に認識することができる。これにより、レーザの発振状態に応じた制御を、迅速かつ安定して行うことができるため、信頼性の高い波長変換レーザ光源を実現することができる。
なお、上述した位相の同期・非同期の選択制御は、図11の制御ループ2および制御ループ3にも適用できる。
本実施の形態に係る波長変換レーザ光源の制御ループを図15Bに示す。
出射ミラーから出力される残存基本波と高調波(緑色光)とは、その強度の位相情報を比較し、強度変化の同期/非同期を示す情報に基づいて、ループ2でフィードバックするか、ループ3でフィードバックするかを判断する。ループ2では、励起光源1405への投入電流値へフィードバックしている。一方、ループ3では、素子温度という形でフィードバックを行う。この際、本実施の形態を実行する上で重要なことは、残存基本波の光量の変動に対し、高調波(緑色光)の光量が変化していなければ、フィードバック動作を行わないことにある。
ループ1は、出力を設定する際、又は一定時間毎に投入電流値と高調波(緑色光)出力との比較を行うために使用するループである。本実施の形態でも、実施の形態1で用いた制御対象の切り替えタイミングの一例をそのまま使用できる。図6のタイミングチャートでは、波長変換レーザ光源の動作状況に対して各ループが動作しているか、休止しているかを示している。
まず、光源からの光出力を設定する際には、光出力値を入力電流値へフィードバックするAPC制御を(ループ1)行い、光出力を決定したところで、時分割制御を開始する。
本実施の形態では、基本波の出力を一定にする制御(ループ2)と、波長変換素子の温度を最適にする制御(ループ3)とを、同じタイミングで動作させている。これは、上記ループ2及びループ3の2つのループについては、同時に動作させても暴走等の問題が生じないためである。しかしながら、実施の形態1と同様に、本実施の形態に係るフィードバック制御は、これに限定されるものではない。すなわち、ループ1の動作タイミングと、ループ2及びループ3の動作タイミングとを、異なるタイミングで動作させれば、ループ2及びループ3の2つのループについては、必ずしも同じタイミングで動作させる必要はなく、異なるタイミングで開始・終了されてもよい。
ループ3では、波長変換素子の温度調整を行っているため、ループ3の動作時間は10秒から1分程度であることが好ましい。そして、ループ2およびループ3を一定時間動作させた後、ループ1およびループ2の制御を一旦終了してループを解放し、再び、高調波(緑色光)出力をもとに、入力電流値へフィードバックするループ1を動作させる。ループ1の動作時間は0.1秒〜10秒程度で十分追随させることができる。このように、ループ1を動作させる時間、ループ2及びループ3を動作させる時間を分割させることで、環境温度・基本波光の波長変動などの環境変化に対して素子温度を常に最適な値に保つことができる。その結果、制御の安定性を向上させ、光源の信頼性を高める効果がある。
以上のように、本実施の形態に係る制御方法によれば、素子温度を一定とした場合に必要な基本波光の出力マージン(入力電流値のマージン)を小さくすることができるため、簡便な制御で波長変換レーザ装置の小型化及び低消費電力化を実現することができる。
本実施の形態に係る制御方法を用いた場合も、実施の形態1の図13に示したプロット図と同様に、1%以下まで出力変動を抑制する効果があることがわかった。
(実施の形態3)
本発明の他の実施の形態に係る波長変換レーザ光源について図16ないし図29を参照し以下に説明する。
実施の形態1及び2で説明した制御による出力安定化・低消費電力化という課題に対して、より効果を増強することができる波長変換レーザ光源の構成について説明する。
図16は、本実施の形態で提案する波長変換レーザ光源の構成模式図を示している。図17及び図18は、波長変換効率が最大となるサーミスタ温度と、サーミスタでモニターした温度との差分(ΔT)と、設定した高調波出力を得るのに必要な基本波光量との関係を示したプロット図である。
本実施の形態の波長変換レーザ光源1600の構成について説明する。図16に示すように、波長変換レーザ光源1600は、基本波光源1601、集光レンズ1603、波長変換素子1604、ペルチェ素子1605、サーミスタ1606、コリメータレンズ1607、波長分離ミラー1608、光分岐ミラー1610、温度制御回路1611、フォトダイオード1612、及び光量一定制御回路を備えている。
基本波光源1601より出射する基本波光1602を、非線形光学結晶を用いた波長変換素子1604に入射させて、基本波光1602の一部を波長変換光1609に変換させる。また、基本波光源1601はファイバレーザとし、基本波光1602は1μm帯の赤外光とし、波長変換光1609は赤外光の第2高調波となる緑色光とする。また、波長変換素子1604は、周期7μmの分極反転構造を形成した5mol%のMgを添加したLiNbO3からなる擬似位相整合波長変換素子とする。本実施の形態では、波長変換素子1604の素子長は20mmとする。
波長変換素子1604から出射した基本波光1602と波長変換光1609とを、波長分離ミラー1608にて分離し、得られた波長変換光1609を光分岐ミラー1610(波長変換光透過率1〜10%程度)にてその一部をフォトダイオード1603に入射し、波長変換光1609の光量をモニターする。
本実施の形態では、モニターされた値をもとに、光量一定制御を行う。波長変換光1609が所望の光量より増加すれば、基本波光1602を減らし、波長変換光1609が所望の光量より減少すれば、基本波光1602を増やすように基本波光源1601の駆動電流を制御する光量一定制御回路1613を備え、波長変換光1609のモニター値が一定となるよう制御する。
また、基本波光源1601は、基本波光量をモニターした値をもとに、サーミスタ1606、ペルチェ素子1605を用いて、波長変換素子1604の温度を調節する温度制御回路1611を備えている。
ここで、基本波光量をモニターする手段は、図16に図示していないが、波長変換素子に入射する前の基本波光の一部を分岐ミラーで反射させてフォトダイオードで受光する構成でもよい。
また、基本波光源が、駆動電流の増減と発振する基本波光量の増減が一致する光源の場合は、駆動電流をモニターする手段で代用しても良い。この場合、フォトダイオードの使用個数を軽減することが可能となり、より低コスト化が可能となるため好ましい。
また、波長変換素子から出射する基本波光と波長変換光の合計光量は波長変換素子に入射する基本波光量にほぼ一致し、波長変換素子から出射する基本波光量と波長変換素子に入射する基本波光量の増減は一致する。本実施の形態の制御では波長変換素子に入射する基本波光量の増減がわかればよいので、波長変換素子から出射する基本波光量をモニターする手段で代用しても良い。この場合、基本波光源にて発振した基本波光を少しでも多く波長変換素子に入射させることが可能となるため好ましい。これにより、さらに高効率な波長変換が可能となる。
次に、温度制御回路を用いたレーザ光源の波長変換素子の温度制御について、その基本的な動作について説明する。
本実施の形態では、前述の通り、波長変換光量をモニターし、その値が一定となるように基本波光量を増減させて光量一定制御を行っている。このため、従来型(図17)と同様、図18に示すように、ΔTの絶対値が大きくなるほど、多くの基本波光量が必要となる。このように、ΔTの変化に伴って増減する基本波光量をモニターすることで、本実施の形態では、光量一定制御をかけながら波長変換素子1604の温度制御を行う。
これにより、光量一定制御を中断させることなくレーザ光源を駆動させ続けることが可能となる。このように、光量一定制御を動作させながら、波長変換素子1604の温度制御を行う方法としては、例えば、次のような制御方法がある。
制御C
図18に示すように、例えば、所定の波長変換光量を得るために、必要な基本波光量が最低となる点(ΔT=0)における基本波光量(以下、基準基本波光量とする)の1.3倍の基本波光量を閾値aとし、当該基準基本波光量の1.1倍の基本波光量を閾値bとする。
立上げ動作時には、まず、図19のフローチャートに示す制御を実行する。
まず、立上げ開始時の波長変換効率が最大となるサーミスタ温度と、サーミスタでモニターした温度との差分ΔTが光量一定制御可能な範囲かどうかを判断する(S11)。ΔTが光量一定制御可能な範囲にある場合(S11でYES)は、立ち上げ動作を終了し、通常動作を開始する(S12)。一方、光量一定制御可能な範囲にない場合(S11でNO)は、ΔT≧0かを判断する(S13)。ΔT≧0であれば(S13でYES)、波長変換素子1604を加熱する(S14)。ΔTが負であれば(S13でNO)、波長変換素子1604を冷却する(S15)。そして、再び光量一定制御可能な範囲に入っているかどうかを判断し(S11)、以後、同様の処理を繰り返す。すなわち、光量一定制御可能な範囲にない場合(S11でNO)は、ΔT≧0かを判断する(S13)。ΔT≧0であれば(S13でYES)波長変換素子1604を加熱し、ΔTが負であれば(S13でNO)波長変換素子1604を冷却する。そして、光量一定制御可能なΔTの範囲に到達した後は、立上げ動作を終了し、通常動作に切り替える(S12)。
次に、通常動作での制御工程を、図20のフローチャートを参照し以下に説明する。
通常動作では、まず、基本波光量が閾値aより大きいか否かを判断する(S21)。閾値a以下の場合は(S21でNO)、温度一定制御を行う(S22)。一方、基本波光量が閾値aより大きい場合は(S21でYES)、波長変換素子1604を加熱する(S23)。次に、基本波光量が増加しているか否かを判断する(S24)。基本波光量が増加していれば(S24でYES)、TM0とTMとのずれ量(ΔTの絶対値)の増大を意味するため、波長変換素子1604を冷却する(S25)。一方、基本波光量が増加していなければ(S24でNO)、基本波光量が閾値bより大きいか否かを判断する(S26)。閾値b以下の場合は(S27でNO)、温度一定制御を行う(S22)。
S25で、波長変換素子1604を冷却したのち、さらに、基本波光量が増加しているか否かを判断する(S27)。基本波光量が増加していれば(S27でYES)、S23に戻り、波長変換素子1604を加熱する(S23)。そして、S23移行の工程を繰り返す。一方、基本波光量が増加していなければ(S27でNO)、基本波光量が閾値bより大きいか否かを判断する(S28)。閾値b以下の場合は(S28でNO)、温度一定制御を行う(S22)。一方、基本波光量が閾値bより大きい場合(S28でYES)、S25に戻り、波長変換素子1604を冷却し、S25以後のルーチンを繰り返す。
上記の制御方法では、光量一定制御を続けることで、基本波光量の変化量を検出している。このため、波長変換光量を一定にするための制御は、通常動作時に常に実行されている必要がある。
このとき、基本波光量が増減したか否かを判断するための基準となる閾値aと閾値bとの差が大きすぎると、サーミスタ温度のハンチングが増大する。この場合、温度調節に必要な加熱冷却のエネルギーが増え、より高出力な基本波光源が必要となり、コスト増となる。一方、基本波光量が増減したか否かを判断するための基準となる閾値aと閾値bとの差が大きすぎると、基本波光量の増減の判断を誤る可能性が高まる。
このため、基本波光量が増減したか否かを判断するための基準となる閾値aと閾値bとの差は、基本波光量がΔT=0のときに必要な基本波光量の1.5倍以下となるΔTの幅の20%以下であることが好ましい。この場合、TMのハンチングが減少し、より少ないエネルギーで波長変換素子の温度調節が可能となる。
また、基本波光量が増減したか否かを判断するための基準となる閾値aと閾値bとの差は、基本波光量がΔT=0のときに必要な基本波光量の1.5倍以下となるΔTの幅の5%以上であることが好ましい。この場合、基本波光量の増減を正確に判断することが可能となり、より高速な温度調節が可能となる。これにより、必要な基本波光量の平均値も低くすることができるため、基本波光源の出力マージン値を低く抑えることができる。この結果、波長変換レーザ光源の低電力化及び低コスト化を実現することができる。
本制御方法によれば、図18に示すように、閾値a及び閾値bを設定し、ΔTを解消するための温度制御と温度一定制御とを切り替えて実行する。これにより、光量一定制御を中断することなく、レーザ光源の駆動を継続することができる。さらに、波長変換素子の加熱又は冷却に必要なエネルギーを軽減することが可能となるため、安定した高調波出力を低消費電力で実現することができる。
また、光量一定制御下における温度制御として、次のような制御方法をとることもできる。
制御D
図21に示すように、所定の波長変換光量を得るために、必要な基本波光量が最低となる点(ΔT=0)における基本波光量(以下、基準基本波光量とする)の1.15倍の基本波光量を閾値cとし、常に、基本波光量が閾値cに近づくように波長変換素子を加熱/冷却する場合について説明する。
立上げ動作については、制御Cと同様に、TMが光量一定制御可能な範囲に到達するまで、図20のフローに示すような立上げ動作を行う。そして、光量一定制御が可能なΔTの範囲に到達した後は、通常動作に切り替える。
そして、立上げ開始時にΔTが負の場合、立上げ動作として波長変換素子を加熱し、ΔTが光量一定制御可能で、且つΔTが負となる範囲で、通常動作に切り替える。
通常動作時には、図21に示す点Aに収束するように、基本波光量が閾値cより大きい場合は波長変換素子を加熱し、基本波光量が閾値c以下の場合は波長変換素子を冷却する。このように、点Aに収束させることで、点Bに収束させる場合より、制御工程を削減できるため、より高速な制御を実現できる。
逆に、立上げ開始時にΔT≧0の場合は、立上げ動作として波長変換素子を冷却する。一方、通常動作で(ΔT=0の右側の曲線)図21の点Bに収束させることが好ましい。この場合も、点Aに収束させるより、制御工程を削減できるため、より高速な制御が可能となる。
さらには、必要な基本波光量と加熱または冷却に必要なエネルギーの両方を減らすことが可能となり、より低消費電力なレーザ光源を実現することができる。
また、波長変換素子の温度変化を少なくすることで、光源の発振波長変動を軽減することが可能となり、画像表示装置として用いた場合の色ずれなどを抑制した光源を提供できるという効果もある。
また、入出射面に結露が発生し、基本波光や波長変換光の散乱やビーム品質低下を軽減することが可能となる。このため、波長変換素子は設置環境の温度より高温で使用することが好ましい。
制御Dでは、TMが点Aより高温側或は低温側のどちらにシフトしたかを瞬時に判断することができる。これにより、前述の制御Cに比べ、制御工程を削減できるため、より高速な温度制御を実現することができる。その結果、TMや波長変換素子内の基本波光路自体の温度が変動する幅を大幅に狭めることが可能となり、制御Cとの比較においては以下の点で優れている。
すなわち、波長変換素子の温度制御のための加熱または冷却に必要なエネルギーを大きく軽減することが可能となる。また、波長変換素子の温度変化に起因するレーザ光源から発振される光の波長変動を抑制することが可能となる。これにより、本レーザ光源を画像表示装置に用いた場合、色ずれを抑制した画像表示装置を実現できる。また、計測装置用光源として用いた場合、波長ずれによる計測誤差を軽減することができる。
また、制御Dにおいて、許容可能なΔTの変動範囲(以降、ΔT許容範囲)は以下の方法で拡大することが可能となる。ΔT許容範囲を拡大することによって、より精度の低い温度計測手段を用いることが可能となり、より加熱・冷却能力が低い温度調節手段を用いることが可能となるため、更に低コスト化が可能となる。また、サーミスタで測定した温度における許容範囲を大きく拡大することで、温度調節手段を省くことができるため、波長変換レーザ光源の更なる低コスト化を実現することができる。
次に、ΔT許容範囲を拡大するための構成について図22を参照し以下に説明する。
図22に示す波長変換レーザ光源2400のように、波長変換素子1604内において、基本波光1602の一部を吸収し波長変換素子1604内の基本波光1602光路とサーミスタ1606の間に熱抵抗調節材2401を備える構成とすることで、波長変換レーザ光源の外部温度の変化に対応できる許容範囲を広げることができる。
上記の構成によれば、基本波光の大きさに比例して、サーミスタ1606と波長変換素子1604内の基本波光1602の光路との間に温度差が生じる。このため図23のグラフ上では、熱抵抗調節材2401を備えない場合の実線1002に対して、基本波光量が大きくなるほど、温度差の分だけ低温側にシフトすることになり、破線2501で示す曲線へと変化することになる。結果的にΔTが負の場合のΔTの変化に対する波長変換効率の変化の傾きが、ΔTが正の場合に比べ緩やとなる。この場合、点A’に収束するように温度制御を行うと、ΔTの許容範囲が広がる。
言い換えれば、ΔTが負のとき、ΔTが低下すると、基本波光量の吸収量が増加し、波長変換素子内の基本波光路とTMの温度差が増加するため、波長変換素子内の基本波光路における温度低下量はTMの温度低下量に比べて小さくなる。
このため、TMが変動する幅に比べて、波長変換素子内の基本波光路の温度が変動する幅が狭くなる。
例えば、ΔT=0のときに必要な基本波光量の1.5倍まで発振可能な基本波光源を用いる場合、熱抵抗調節材2401を備えない波長変換レーザ光源では、ΔT=0.7℃付近から−0.7℃の範囲で光量一定制御が可能となるが、熱抵抗調節材2401を備えるレーザ光源の例では、ΔTが1℃付近から−1.9℃の範囲で光量一定制御が可能となる。
ここで、ΔT許容範囲を拡大する方法としては、波長変換素子の素子長を短くする方法があるが、この場合、基本波光から波長変換光への波長変換効率が大きく低下してしまう。
これに対し、本実施の形態の構成では、波長変換効率の大幅な低下を招くことなく、ΔT許容範囲拡大効果が大きい点で、素子長を短くする方法より好ましい。このため、より低消費電力の波長変換レーザ光源を実現することができる。
本実施の形態の構成において、サーミスタと基本波光路との間の熱抵抗を増加させることが好ましい。
なお、サーミスタと基本波光路との間の温度差を拡大する方法としては、熱抵抗調節材2401の熱伝導率をより低い値とする、熱抵抗調節材2401を厚くする、波長変換素子1604内の基本波光1602の吸収率を高くする等の方法が挙げられる。
この場合、サーミスタと基本波光路との間の温度差を拡大することができるため、図24に示すように、左曲線2601aと右曲線2601bとのΔTに対する基本波光量の傾きを共に負とすることができる。
また、ΔTを一定とする場合、同一の波長変換光量が得られる基本波光量の値が、2つ以上となるΔTを有することが好ましい。このように、左曲線2601aと右曲線2601bのΔTに対する基本波量の傾きを共に負とすることが可能となる。
特に、例えば、基本波光源としてファブリーペロー型の半導体レーザ共振器や固体レーザなどを用いた場合、基本波光の発振波長が瞬間的シフトし、左曲線2601aから右曲線2601bに移ってしまうことがある。しかしながら、本実施の形態の構成では、ΔTの増減と基本波光量の増減の傾きが共に負となるため、温度の制御が暴走することを抑制することができる。
さらに、サーミスタと基本波光路との間の熱抵抗を増加させることにより、図25に一点破線2701で示すように、ΔTに対する基本波光量の増減の傾きをさらに緩やかにすることができる。
基本波光源の最大光量が、ΔT=0のときに必要な基本波光量の1.5倍とすると、図25に示す例では、基本波光路とサーミスタの間に熱抵抗調節材2401を備えない構成におけるΔT許容幅2702aが約1.4℃であるのに対して、熱抵抗調節材2401を備えた場合、ΔT許容幅2702bは約8.9℃と拡大できている。ここで、基本波光吸収による発熱量を増やし、サーミスタと基本波光路の間の熱抵抗をさらに拡大すれば、より許容幅を拡大することができることは言うまでもない。
また、図25に示すように、熱抵抗調節材2401を備えない場合の温度許容幅2702aは、熱抵抗調節材2401を備える場合に、基本波光量を最大(一定)として、所望の波長変換光量が得られるΔTの差2702cと一致する。このため、このΔTの差2702cよりΔT許容幅2702bが広くなるように、熱抵抗調節材2401の熱抵抗を調節することが好ましい。
熱抵抗調節材2401は、熱伝導率[W/m/K]を厚み(波長変換素子とサーミスタの距離)[m]で割った値が15×104以下となることが好ましい。
この場合、少なくとも本実施の形態に係る熱抵抗調節材を備えた構成による効果が得られ、温度特性を非対称とすることが可能となる。このため、制御Dを実行する際に、出力が不安定となる問題を抑制することができる。
また、熱抵抗調節材2401は、熱伝導率[W/m/K]を厚み(波長変換素子とサーミスタの距離)[m]で割った値が5×104以下となることが好ましい。
この場合、基本波光の発振波長が瞬間的にシフトし、左の曲線から右の曲線に移ってしまうことがあっても、ΔTの増減と基本波光量の増減の傾きが共に負となるため、温度の制御が暴走することを抑制することができる。
波長変換レーザ光源2400では、波長変換素子の温度変化に対して光量一定時に必要な励起光量が、レーザ光源1600における光量一定時に必要な基本波光の光量(図18、図19)と同様に変化する。このため、基本波光量の代わりに、本実施の形態では励起光量を制御することで、同様の制御が可能となる。つまり、ΔTの変化に伴って増減する励起光量をモニターすることで、実施の形態2に示した内部共振器型波長変換光源の構成においても、光量一定制御をかけながら波長変換素子の温度制御を行う事ができる。
また、本実施の形態に係る他の波長変換レーザ光源の構成について図26を参照し以下に説明する。
本波長変換レーザ光源2800は、波長変換素子1604が熱抵抗調節材2401を介して波長変換レーザ光源2800内に設置される構成とし、サーミスタやペルチェ素子等温度調節手段を省いている。
図26の構成において、波長変換レーザ光源2800の外部温度を「T」とし、波長変換効率が最大となる波長変換レーザ光源2800の温度を「T0」としている。また、先に、図16の構成を用いた場合に示したTMやTM0を、それぞれTやT0に置き換え、TとT0との差をΔTとすることで、図16の構成と同様に、制御C及び制御Dを行うことができる。
本波長変換レーザ光源2800の場合も、ΔTの変化に対し、出力を一定にするために必要な基本波光量は、図21に示した物と同じ特性を示す。また、熱抵抗調節材2401を用いることで、図23ないし図25に示す特性となる。つまり、レーザ光源の温度が低下しても、基本波光量を増加させ、レーザ光源に対して基本波光路の温度を上昇させることで、基本波光路の温度低下を大幅に軽減させる構成となっている。
これにより、温度調節手段を省き、レーザ光源温度(現在値)が、例えば、0℃〜60℃と大きな範囲で変化しても、光量一定制御が可能な波長変換レーザ光源を実現することができる。
本実施の形態の構成で基本波光路とサーミスタの間の熱抵抗を増加させて、温度差を拡大することによって、図27に示すように、サーミスタ温度許容幅を従来に比べて大幅に拡大させることが可能となることを示している。これは、サーミスタで計測している位置の温度が低下しても、基本波光を増加させて、サーミスタに対して基本波光路の温度を上昇させることで、基本波光路の温度低下を大幅に軽減することができるからである。同様に本実施の形態では、レーザ光源の温度が低下しても、基本波光量を増加させ、レーザ光源に対して基本波光路の温度を上昇させることで、基本波光路の温度低下を大幅に軽減できる。
すなわち、本実施の形態では、波長変換効率が最大となるサーミスタ温度と、サーミスタでモニターした温度との差をΔTとし、熱抵抗調節材2401を用いた基本波光路とレーザ光源との間の熱抵抗を調節することで、図25ないし図27で示す関係を満たすことが可能となる。
例えば、波長変換レーザ光源2800の外部温度が60℃のとき、波長変換レーザ光源2800の外部温度と基本波光路の温度差が120℃となるように、発熱量と両者間の熱抵抗と波長変換素子の変換効率が最大となる温度を設計する。この設計により、波長変換レーザ光源2800の外部温度が0℃の場合も、基本波光量を波長変換効率が最大となる時の1.5倍となり、波長変換レーザ光源2800の外部温度と基本波光路との温度差が180℃となる。つまり、波長変換レーザ光源2800の外部温度が0℃から60℃まで変動しても、波長変換素子の温度は、180℃で、ほぼ一定とすることができる。
図29に示すように、本実施の形態に係るレーザ光源2900では、波長変換素子2305は、熱抵抗調節材2401を挟んで、直接レーザ光源2900に設置されている構成とする。
また、内部共振器構成の場合で示したTMとTM0とを、本実施の形態では、TとT0とに置き換えることで、本実施の形態と同様の効果が得られる。つまり、本実施の形態では、TとT0と差をΔTとし、熱抵抗調節材2401を用いた基本波光路とレーザ光源の間の熱抵抗を調節することで、図23ないし図25で示す関係を満たす構成となっている。
また、本実施の形態では、熱抵抗調節材と波長変換素子の間に伝熱材(熱伝導率が大きな物質。例えば、金属:アルミ(237W/m/K)、銅(390W/m/K)、銀(420W/m/K)など)を備えることで、熱抵抗調節材と波長変換素子との接触面積を大きくすることができ接触熱抵抗の個体ばらつきの影響が低減することが可能となる。その結果、波長変換素子とサーミスタ間の熱抵抗の個体ばらつきも軽減できる。
サーミスタと熱抵抗調節材との間に伝熱材を備えることで、さらに、波長変換素子とサーミスタとの間の熱抵抗の個体ばらつきを軽減することが可能となる。波長変換効率が最大となるサーミスタ温度の個体ばらつきを抑制することが可能となり、波長変換レーザ光源の歩留まりの向上及び信頼性の向上を図ることができる。この結果、サーミスタ又は波長変換素子と熱抵抗調節材との間に伝熱材を設けた構造とすることが好ましい。
以上、光量一定制御を行う波長変換レーザ光源について、熱抵抗調節材を波長変換素子とサーミスタ、又は波長変換素子と波長変換レーザ光源の筐体との間に設置することによる効果について示した。しかしながら、本実施の形態に係る波長変換素子とサーミスタやレーザ光源の間に熱抵抗調節材を備える構成は、上記の構成に限らず、同様の構成の波長変換レーザ光源で入力一定制御を行う場合にも適用することができる。
以下に、その効果を示す。
図27は、従来の波長変換レーザ光源で入力一定制御を行った場合における、ΔTに対する波長変換光量を示す。図27中の3001、3002、3003は基本波光量(又は励起光量:以下、投入光量と呼ぶ)をパラメータとした波長変換光量のプロット図である。波長変換光量が1以上となる最小の投入光量(以降、最小光量とする)としたときのΔTと波長変換光量の関係を実線3001で示し、最小光量の1.1倍としたときについて破線3002で示し、最小光量の1.2倍としたときについて、点線3003で示す。
図27に示すように、従来の波長変換レーザ光源では、例えば、波長変換光量を1以上得ることが可能なΔTの範囲(3004)は、投入光量が最大の時、つまり点線3003で示す曲線は波長変換光量が1以上となる範囲と一致し、1℃(0.5℃〜−0.5℃)程度となる。
これに対して、図28は、波長変換素子とサーミスタとの間、又は波長変換素子と波長変換レーザ光源の筐体との間に熱抵抗調節材2401を備える波長変換レーザ光源で、入力一定制御を行った場合のΔTに対する波長変換光量を示したプロット図である。
図28中、実線3101は、投入光量が最小光量のときのΔTと波長変換光量との関係を示している。破線3102は、投入光量が最小光量の1.1倍のときのΔTと波長変換光量との関係を示している。点線3103は、投入光量が最小光量の1.2倍のときのΔTと波長変換光量との関係を示している。
投入光量を増加させると、波長変換素子とサーミスタ又は波長変換レーザ光源の筐体との間の温度差が増加する。
このため、図28に示すように、投入光量が大きいほど、波長変換効率が最大となる温度は低温側にシフトする。その結果、熱抵抗調節材を備えた波長変換レーザ光源では、図28に示す波長変換光量が1以上となるΔTの範囲3104は、1.6℃(0.1℃〜−1.5℃)程度と従来の波長変換レーザ光源に比べて、1.6倍ほど拡大できていることがわかる。
つまり、図28に示すように、あるΔTにおいて、投入光量がより大きな点線3103より、投入光量がより小さな破線3102の方が、波長変換光量が大きくなる。
同様に、別のΔTにおいて、破線3102より点線3101の方が、波長変換光量が大きくなるように、熱抵抗調節材2401を、波長変換素子とサーミスタとの間、又は波長変換素子とレーザ光源との間に設け、熱抵抗を調節することが好ましい。この場合、波長変換素子とサーミスタとの間、又は波長変換素子と波長変換レーザ光源の筐体との間の温度差が大きくなるため、所定の光量以上の波長変換光量が得られるΔTの範囲を大きくすることができる。つまり、より広い温度範囲で平均出力を一定にすることができる。
さらに、入力一定制御を用いながら、ある一定以上の光量が必要となる場合、上述のような効果を発揮する波長変換レーザ光源は低コスト化が実現可能となるため、レーザポインタなどに好適に用いることができる。
また、1以上の波長変換光量が得られる場合、パルス駆動させることが好ましい。
この場合、ピーク光量が1以上であっても、波長変換光の平均光量が1となるようにパルスDuty(パルス発振時間/パルス周期)を調節することが可能となる。
レーザポインタや画像表示装置に用いる場合は、人間の目で出力のチラツキが視認できないように、高速でパルス駆動させることが望ましく、少なくとも60Hz以上の周期であることが好ましい。この場合、広い温度範囲で平均出力が一定の波長変換レーザ光源を実現することが可能となる。
以上の制御方法を採用することで、広い温度範囲で平均出力を一定にすることができる。このため、基本波光の出力マージン(入力電流値のマージン)を小さくすることができ、簡便な制御で波長変換レーザ光源の小型化及び低消費電力化できる。
(実施の形態4)
本発明の他の実施の形態について、図30ないし図32を参照し、以下に説明する。
図30は、第1ないし第3の実施の形態で提案しているレーザを光源に用いたプロジェクタシステムの光学エンジン模式図を示している。本実施の形態に係る2次元画像表示装置1700は、液晶3板式プロジェクタの光学エンジンに、第1ないし第3の各実施の形態の波長変換レーザ光源を適用させた一例である。図31は、第1ないし第3の各実施の形態の波長変換レーザ光源を適用させた液晶ディスプレイの構成例を示す模式図である。図32は、第1ないし第3の各実施の形態の波長変換レーザ光源を適用させたファイバ付きレーザ光源の構成例を示す模式図である。
2次元画像表示装置1700は、画像処理部1702と、レーザ出力コントローラ(コントローラ)1703、LD電源1704、赤色、緑色、青色レーザ光源1705R、1705G、1705B、ビーム形成ロッドレンズ1706R、1706G、1706B、リレーレンズ1707R、1707G、1707B、折り返しミラー1708G、1708B、画像を表示させるための2次元変調素子1709R、1709G、1709B、偏光子1710R、1710G、1710B、合波プリズム1711、および投影レンズ1712を含んでいる。
緑色レーザ光源1705Gは、グリーン光源の出力をコントロールするレーザ出力コントローラ1703およびLD電源1704で制御される。
各光源(赤色、緑色、青色レーザ光源1705R、1705G、1705B)からのレーザ光は、ビーム形成ロッドレンズ1706R、1706G、1706Bにより、矩形に整形され、その後リレーレンズ1707R、1707G、1707Bを通して各色の2次元変調素子1709R、1709G、1709Bを照明する。そして、2次元に変調された各色の画像を合波プリズム1711で合成し、投影レンズ1712よりスクリーン上に投影することにより映像を表示する。
また、緑色レーザ光源1705Gは、レーザ共振器をファイバ内に閉じた系とする。これにより、外部からの塵あるいは反射面のミスアライメントなどで共振器の損失が増加することによる出力の経時低下・出力変動を抑制することができる。
画像処理部1702は、TV、ビデオ装置、PC等から入力される映像信号1701の輝度情報に応じてレーザ光の出力を変動させる光量制御信号を発生し、当該光量制御信号をレーザ出力コントローラ1703に送出する役割を果たしている。このように輝度情報に応じて光量を制御することにより、コントラストを向上することが可能となる。
この際、レーザ出力コントローラ1703は、レーザをパルス駆動し、レーザの点灯時間のデューティー比(点灯時間/(点灯時間+非点灯時間)の値)を変化させることにより平均的な光量を変化させるような制御方法(PWM制御)を取ることもできる。
また、このプロジェクタシステムに用いられる緑光源の波長は510nmから550nmの緑色レーザ光を出射する構成としてもよい。この構成により、視感度の高い緑色のレーザ出力光を得ることができ、色再現性の良いディスプレイとして、さらに原色に近い色表現をすることができる。
また、本実施の形態の2次元画像表示装置は、スクリーンと、複数のレーザ光源と、レーザ光源を走査する走査部とを備え、レーザ光源は、少なくとも赤色、緑色及び青色をそれぞれ出射する光源を用いた構成からなり、レーザ光源のうち、少なくとも緑色の光源は上記の第1ないし第3の実施の形態で示したいずれかの波長変換レーザ光源を用いた構成としてもよい。
この構成により、視感度の高い緑色のレーザ出力光を得ることができるので、色再現性の良いディスプレイ等に使用して、さらに原色に近い色表現をすることができる。
なお、このようなスクリーンの背後から投影する形態(リアプロジェクションディスプレイ:図30)のほかに、前方投影型構成の2次元画像表示装置の形態をとることも可能である。
なお、空間変調素子には、透過型液晶あるいは反射型液晶、ガルバノミラーやDMD(Digital Mirror Device)に代表されるメカニカルマイクロスイッチMEMS(Micro Electro Mechanical System)などを用いた2次元変調素子を用いることももちろん可能である。
なお、本実施の形態のように反射型空間変調素子やMEMS、ガルバノミラーといった光変調特性に対する偏光成分の影響が少ない光変調素子において、高調波を光ファイバで伝搬する際は、PANDAファイバ(polarization maintaining and absorption reducing) fiberなどの偏波保持ファイバである必要はない。しかしながら、液晶を用いた2次元変調デバイスを使用する際には、変調特性と偏光特性が大いに関係するため、偏波保持ファイバを使用することが好ましい。
また、図31A及び図31Bに示すように、レーザを光源としたディスプレイの一形態として、レーザ光源1802と制御部1803、レーザ光源を点光源から線光源に変換する導光部材1804、線光源から面光源に変換し、液晶パネル全面を照明するための導光板部材1808、偏光方向をそろえたり照明ムラを除去したりするためのもの偏光板・拡散部材1809、および液晶パネル1810等を含む液晶ディスプレイ1800を実現することも可能である。つまり、第1・第2・第3の実施の形態で示した波長変換レーザ光源を液晶ディスプレイのバックライト光源として使用することができる。
また、図32に示すように、第1ないし第3の実施の形態で示した本発明の波長変換レーザ光源を備えたレーザ装置を、手術用のファイバ付きレーザ光源1900として使用することも可能である。この手術用のファイバ付きレーザ光源1900は、レーザ光源、レーザ光源からの出力を制御する制御部、出力を設定する出力設定部1902、レーザ光源を出力させる出力コネクタ1903、レーザ光を照射したい領域へ導くデリバリファイバ1904、およびハンドピース1905などを備えている。
以上のような、レーザディスプレイ(画像表示装置)、レーザ液晶バックライトあるいは手術用のレーザ光源に本願の波長変換レーザ光源を適用することにより、光源の出力制御安定性を向上させることができ、機器の動作温度拡大や信頼性向上という効果を得ることができる。
なお、本願発明の各実施形態に示す構成は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形をしても構わない。
各実施形態で使用した波長変換素子として、周期分極反転構造を有する、擬似位相整合LiNbO3素子を使用しているが、本実施の形態はこれに限らず、基本構造に酸素八面体構造を持つLiTaO3やKTiOPO4結晶に周期分極反転構造を形成した擬似位相整合波長変換素子を使用しても良く、一般的に行われているこれらの結晶系にMgやCe等を添加して光屈折率変化を抑制した結晶基板を使用した素子を用いても良い。
周期分極反転構造を形成した擬似位相整合波長変換素子は、入射する基本波の偏光方向と出射する高調波の偏光方向が一致するが、波長変換素子の温度や基本波波長の変動に敏感であるため、本願で提案した構成・制御方法を採用することで、各構成要素に対する外乱による出力変化を検出し・要素毎に制御することができるため、高調波出力の時間安定性を向上させるより大きな効果を得ることができる。
なお、本願発明の各実施形態で使用したニオブ酸リチウムおよびタンタル酸リチウム系結晶に加えて、リン酸チタニルカリウム(KTiOPO4:KTP)結晶など基本構造に酸素八面体構造を有する非線形光学結晶は、分極反転構造を形成することが可能で、可視光に対する吸収率は0.01cm-1以上と大きいものの、赤外光に対する吸収率は0.002cm-1から0.004cm-1程度と低い。
実施の形態1ないし4の光量一定制御をかけたレーザ光源の構成では、可視光である第2高調波の光量は一定であり、吸収量も一定となるため、第2高調波の吸収による発熱によって、本発明の効果を得ることができない。そのため、赤外光の吸収率を高めた材料とすることが好ましい。これにより波長変換素子内基本波光路とサーミスタ間の温度差が大きくなり、ΔT許容範囲はより大きくなる。ΔT許容範囲が数十℃程度と広い場合は、波長変換素子の温調手段(実施の形態1,2ではサーミスタ206、ペルチェ205、温度制御回路102、813を示す)を省き、温調フリーのレーザ光源とすることも可能となる。また、基本波光路部分の加熱・冷却を、より高速に調節することが可能となるため、温度が安定し、出力する波長が安定したレーザ光源を実現することが可能となる。このため、本レーザ光源を用いることにより、色ずれのない画像表示装置や、波長ずれによる計測誤差が少ない計測装置を実現することが可能となる。非線形光学結晶に分極反転構造を形成した(擬似位相整合)波長変換素子は分極反転壁(分極方向が入れ替わる境界)が露出する分極方向と交わる面に非絶縁体を設置して、ヒートサイクルを実施すると赤外光(波長800nm〜1800nm)の吸収率が増加することが我々の独自調査により分かった。
例えば、ニオブ酸リチウム系の擬似位相整合波長変換素子の場合、分極方向と交わる面の被覆を、導電性コート材、電気抵抗率1×108Ω・cmのコート材A、電気抵抗率2×1011Ω・cmのコート材B、RFスパッタによるSiO2膜、CVDによって形成したSiO2膜として、それぞれ0〜80℃のヒートサイクルを100サイクル実施することで、表1に示すように、電気抵抗率1×108Ω・cm以下の非絶縁体コートで被覆した場合、ヒートサイクルを行うことによって赤外光の吸収率が増加することが分かる。また、RFスパッタによるSiO2膜の場合も、DCドリフトが発生し、赤外光の吸収率を増加させる効果を有することがわかる。また、ヒートサイクルについては、100サイクル以下であっても、赤外光吸収を増加させる作用がある。この結果、より広い温度範囲で平均出力を一定にする事ができるという効果がある。
酸素八面体構造を有する非線形光学結晶において赤外光吸収を増加させる方法としては、添加物を添加するなどの他の方法もあるが、擬似位相整合波長変換素子作製に不可欠な周期的分極反転構造の均一性が劣るため本実施の形態で提案する方法を採用するのが好ましい。本実施の形態の赤外光の吸収率を増加させる方法は、周期的分極反転構造を形成し擬似位相整合波長変換素子となった状態で、赤外光の吸収率を増加させる処理を行うことが可能となるため、分極反転構造の形成が容易であり、より好ましい方法である。
以上のように、本発明の一局面に係る波長変換レーザ光源は、基本波光を出射する基本波光源と、非線形光学効果を有し、前記基本波光を異なる波長の高調波光に変換する波長変換素子と、前記基本波光源から出射される基本波光に含まれる特定の偏光方向の光を受光してその光量を電気信号に変換する第1の受光器と、前記波長変換素子から出力される高調波光を受光してその光量を電気信号に変換するする第2の受光器と、前記波長変換素子の温度を一定に保持する温度保持部と、前記第2の受光器からの電気信号に基づいて前記基本波光源から出射される基本波光の光量を制御する第1の制御、および、前記第1の受光器からの電気信号に基づいて前記基本波光の光量を制御する第2の制御をそれぞれ行う基本波制御部と、前記第2の受光器からの電気信号に基づいて前記温度保持部の保持温度を制御する第3の制御を行う温度制御部と、を備えている。
本願発明者らの研究の結果、基本波光の偏光成分の変化が高調波光の出力の変動に大きく影響することが、今回初めて明らかとなった。そこで、本波長変換レーザ光源は、基本波光源から出射される基本波光に含まれる特定の偏光方向の光を第1の受光器で受光してその光量を電気信号に変換し、当該電気信号に基づいて、基本波光源から出射される基本波光の光量または波長を基本波制御部が制御する構成となっている。これにより、基本波光の偏光成分の変化に応じた基本波光の調整が適切に行えるので、安定して効率のよい波長変換を行うことが可能な波長変換レーザ光源を実現できる。
さらに、高調波光の光量を第2の受光器で受光して基本波光の光量をフィードバック制御し、高調波光を安定化させる第1の制御を行っている。また、基本波光に含まれる特定の偏光方向の光を第1の受光器で受光して基本波光の光量をフィードバック制御し、波長変換に寄与する偏光方向の基本波を安定させる第2の制御を行っている。これにより、高調波光のさらなる安定化を図っている。さらに、高調波光の光量を第2の受光器で受光して温度保持部の保持温度をフィードバック制御し、波長変換素子の温度を基本波の波長の変化に適切に対応させる第3の制御を行っている。このように、第1ないし第3の制御を実行することにより、安定して効率のよい波長変換を行うことが可能な波長変換レーザ光源を実現できる。
上記の構成において、前記第1の制御の実施タイミングと、前記第2の制御および前記第3の制御の実施タイミングとが重複しないように、前記第1ないし第3の制御が前記基本波制御部および前記温度制御部により間欠的に実施されることが好ましい。
第1の制御は、第2の制御および第3の制御に比べて短時間で制御が可能である。特に、第3の制御では、温度という時定数が大きなパラメータを制御に使用するので、第1の制御に比して制御に要する時間が長くかかる。そこで、上記の構成のように、第1の制御の実施タイミングと、第2の制御および第3の制御の実施タイミングとが重複しないような時分割の制御を間欠的に実施する。これにより、第1の制御のタイミングにおいて高調波光の光量を基準として基本波光の光量を適切に制御しながら、前記第1の制御の実施タイミングと重複しないタイミングで波長変換に寄与する偏光方向の基本波を安定させると共に(第2の制御)、波長変換素子の温度を基本波光の波長変動に応じて調整することができる(第3の制御)。よって、さらに安定して効率のよい波長変換を行うことが可能な波長変換レーザ光源を実現できる。
上記の構成において、前記温度制御部は、前記波長変換素子の温度を計測する温度計測部と、前記温度計測部からの計測信号に基づいて、前記温度保持部に電流を供給し、前記温度保持部の保持温度を一定に制御する温度コントローラと、を含んでいることが好ましい。
上記の構成のように温度制御部を構成することにより、第3の制御を的確に行うことができる。
上記の構成において、前記温度コントローラは、中心温度Tc(℃)を中心にして±Δt(℃)でウォブリングすることによって、前記温度保持部の保持温度を調整するものであり、前記波長変換素子の温度がTc+Δt(℃)、Tc(℃)およびTc−Δt(℃)のときの前記高調波光の光量をそれぞれP(Tc+Δt)、P(Tc)およびP(Tc−Δt)としたとき、P(Tc−Δt)<P(Tc)<P(Tc+Δt)の場合はTcを上昇させ、P(Tc+Δt)<P(Tc)>P(Tc−Δt)の場合はTcを維持させ、P(Tc−Δt)>P(Tc)>P(Tc+Δt)の場合はTcを低下させるよう、前記温度保持部に電流を供給することが好ましい。
上記の構成のように温度コントローラがウォブリングを行うことにより、第3の制御を容易かつ的確に行うことができる。
上記の構成において、前記温度コントローラがウォブリングを行う前記Δtの範囲は、0.1℃〜0.2℃であることが好ましい。
この場合、温度コントローラが適切なウォブリングを行うことができる。
上記の構成において、前記温度コントローラによる前記ウォブリングの周期が、5秒〜10秒であることが好ましい。
この場合、温度コントローラが適切なウォブリングを行うことができる。
上記の構成において、前記波長変換素子から出力される高調波光を受光してその光量を電気信号に変換するする第2の受光器と、前記波長変換素子の温度を一定に保持する温度保持部と、をさらに含み、前記基本波制御部は、前記第2の受光器からの電気信号に基づいて前記基本波光源から出射される基本波光の光量を制御する第1の制御、前記第1の受光器からの電気信号に基づいて前記基本波光の光量を制御する第2の制御、および前記第2の受光器からの電気信号に基づいて基本波光の波長を制御する第3の制御をそれぞれ行う構成とすることが好ましい。
上記の構成によれば、高調波光の光量を第2の受光器で受光して基本波光の光量をフィードバック制御し、高調波光を安定化させる第1の制御を行っている。また、基本波光に含まれる特定の偏光方向の光を第1の受光器で受光して基本波光の光量をフィードバック制御し、波長変換に寄与する偏光方向の基本波を安定させる第2の制御を行っている。これにより、高調波光のさらなる安定化を図っている。さらに、基本波光の波長が変化することによって、一定温度に保持されている波長変換素子の温度に最適な基本波光の波長からずれた場合に対応できるように第3の制御を行っている。すなわち、高調波光の光量を第2の受光器で受光して基本波光の波長をフィードバック制御し、基本波光の波長を安定させる第3の制御を行っている。このように、第1ないし第3の制御を実行することにより、安定して効率のよい波長変換を行うことが可能な波長変換レーザ光源を実現できる。
上記の構成において、前記基本波制御部は、前記第1の制御の実施タイミングと、前記第2の制御および前記第3の制御の実施タイミングとが重複しないように、前記第1ないし第3の制御を間欠的に実施することが好ましい。
上記の構成のように、前記第1の制御の実施タイミングと、前記第2の制御および前記第3の制御の実施タイミングとが重複しないような時分割の制御を間欠的に実施することにより、第1の制御のタイミングにおいて高調波光の光量を基準として基本波光の光量を適切に制御しながら、前記第1の制御の実施タイミングと重複しないタイミングで波長変換に寄与する偏光方向の基本波を安定させると共に(第2の制御)、基本波光の波長を安定させることができる(第3の制御)。これにより、さらに安定して効率のよい波長変換を行うことが可能な波長変換レーザ光源を実現できる。
上記の構成において、前記基本波光源は、励起光を発する半導体レーザと、前記半導体レーザから発せられた励起光を吸収し、前記基本波光を発するダブルクラッド希土類添加ファイバと、前記ダブルクラッド希土類添加ファイバの両端に配置され、当該基本波光源から発せられる前記基本波光の波長を決定する、狭反射帯域のファイバグレーティングおよび広反射帯域のファイバグレーティングと、前記狭反射帯域のファイバグレーティングに応力を付加するアクチュエータと、を含み、前記アクチュエータが前記狭反射帯域のファイバグレーティングに与える応力により前記基本波光の波長が変化する構成とすることが好ましい。
この場合、上記構成の基本波光源を用いることにより、第3の制御を容易かつ的確に行うことができる。
上記の構成において、前記基本波光源は、分布帰還ミラー部を含む分布帰還型半導体レーザ光源であり、前記分布帰還ミラー部へ投入する電流を変化させることにより、前記基本波光の波長が変化する構成とすることが好ましい。
この場合、上記構成の基本波光源を用いることにより、第3の制御を容易かつ的確に行うことができる。
上記の構成において、前記基本波光源は、分布帰還ミラー部を有し、前記基本波光の元となる光を発生する分布帰還型半導体レーザ光源と、励起光を発する励起光源と、前記励起光を吸収することで前記分布帰還型半導体レーザ光源が発する光の強度を増幅させるレーザ媒質と、を含み、前記分布帰還ミラー部へ投入する電流を変化させることで、前記基本波光の波長が変化する構成とすることが好ましい。
上記構成の基本波光源を用いることにより、第3の制御を容易かつ的確に行うことができる。
上記の構成において、前記温度保持部の保持温度を制御する温度制御部をさらに含み、前記温度制御部は、前記波長変換素子の温度を計測する温度計測部と、前記温度計測部からの計測信号に基づいて、前記温度保持部に電流を供給し、前記温度保持部の保持温度を一定に制御する温度コントローラと、を備えていることが好ましい。
この場合、波長変換素子の温度を確実に一定に保持することができる。
上記の構成において、前記波長変換素子の温度と前記温度計測部で計測される温度との間に差を設けるための熱抵抗調節材が、前記波長変換素子と前記温度計測部との間に設けられていることが好ましい。
この場合、波長変換レーザ光源の外部温度の変化に対応できる許容範囲を広げることができる。
上記の構成において、前記熱抵抗調節材と、前記波長変換素子、前記波長変換レーザ光源の筐体、または前記温度計測部と、の間に、部材間の接触熱抵抗を均一にするための伝熱材が設けられていることが好ましい。
この場合、波長変換レーザ光源の外部温度の変化に対応できる許容範囲を広げることができる。
この場合、熱抵抗調節材と波長変換素子との接触面積を大きくすることができ接触熱抵抗の個体ばらつきの影響を低減することができる。
上記の構成において、前記波長変換素子は、基本構造に酸素八面体構造を主とする光学結晶からなり、前記光学結晶には、前記基本波光と前記高調波光との位相を整合させるための周期的分極反転構造が形成されていることが好ましい。
上記構成の波長変換素子は、本波長変換レーザ光源に最適である。
上記の構成において、前記波長変換素子は、前記周期的分極反転構造の分極方向と直交する面が電気抵抗率1×108Ω・cm以上の被覆材で覆われていることが好ましい。
この場合、上記構成の被覆材で覆われた波長変換素子は、赤外光の吸収率が高まり、波長変換素子の基本波光路部分の温度調節が容易となる。
上記の構成において、前記第1の受光器から出力される電気信号の位相と前記第2の受光器から出力される電気信号の位相とが同期しているときには前記第2の制御が選択的に実行される一方、前記第1の受光器から出力される電気信号の位相と前記第2の受光器から出力される電気信号の位相とが非同期のときには前記第3の制御が選択的に実行されることが好ましい。
上記構成のように、前記第1の受光器から出力される電気信号の位相と前記第2の受光器から出力される電気信号の位相とが同期しているか否かにより、第2の制御と第3の制御とを選択的に実行することにより、適切な制御が可能である。すなわち、上記の両位相が同期している場合には、高調波光の出力変動の要因は基本波光源にあると予測できるので、波長変換に寄与する偏光方向の基本波を安定させる第2の制御が効果的である。一方、上記の両位相が非同期の場合には、高調波光の出力変動の要因は波長変換素子の温度に適した基本波光の波長になっていないことにあると予測できるので、波長変換素子の温度を調整するか又は基本波光の波長を調整する第3の制御が効果的である。上記構成の制御により、さらに安定して効率のよい波長変換を行うことが可能な波長変換レーザ光源を実現できる。
本発明の他の局面に係るプロジェクションディスプレイ装置は、上記の何れかの構成の波長変換レーザ光源と、前記波長変換レーザ光源から発せられた前記高調波光を受けて画像を形成する2次元光変調素子と、前記2次元変調素子で形成された画像を投影する投影レンズと、を備えている。
上記の構成によれば、安定して効率のよい波長変換を行うことが可能な上記の波長変換レーザ光源を用いることによって、高画質で低消費電力のプロジェクションディスプレイ装置を実現できる。
本発明の他の局面に係る液晶ディスプレイ装置は、上記の何れかの構成の波長変換レーザ光源と、前記光源ユニットから発せられた光を受けて画像を形成する液晶パネルと、を備えている。
上記の構成によれば、安定して効率のよい波長変換を行うことが可能な上記の波長変換レーザ光源を用いることによって、高画質で低消費電力の液晶ディスプレイ装置を実現できる。
本発明の他の局面に係るレーザ光源は、上記の何れかの構成の波長変換レーザ光源と、前記波長変換レーザ光源から出力された前記高調波光を照射対象領域へ導くデリバリファイバと、を備えている。
上記の構成によれば、安定して効率のよい波長変換を行うことが可能な上記の波長変換レーザ光源を用いることによって、信頼性の高い低消費電力のファイバ付きレーザ光源を実現できる。
本願発明の波長変換レーザ光源は、基本波の偏光特性や発振波長が変化しやすい基本波光源を備えた波長変換レーザ光源に有益であり、色再現性が高いレーザディスプレイ装置などに適応することが可能となる。
なお、発明の詳細な説明の項においてなされた具体的な実施態様または実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなく、本発明の精神と次に記載する特許請求事項との範囲内で、種々変更して実施することができるものである。
本発明は、レーザ光源が発するレーザ光を非線形光学効果により波長変換する波長変換レーザ光源、これを備えたプロジェクションディスプレイ装置、液晶ディスプレイ装置及びレーザ光源に関する。
従来より、Nd:YAGレーザやNd:YVO4レーザから発振される光を、非線形光学効果を用いて波長変換することによって、緑色光等の可視レーザ光を得たり、緑色光をさらに変換した紫外レーザ光を得たりする波長変換レーザ光源が数多く開発・実用化されてきた。これらの変換光は、レーザ加工やレーザディスプレイ等の用途に用いられている。
非線形光学効果を用いた従来の波長変換レーザ光源の一般的な構成例を図1に示している。非線形光学効果を得るには、複屈折率を有する非線形光学結晶を使用する必要がある。具体的には、複屈折率を有する非線形光学結晶として、LiB3O5(リチウムトリボレート:LBO)、KTiOPO4(リン酸チタニルカリウム:KTP)、CsLiB6O10(セシウムリチウムボレート:CLBO)、分極反転構造を形成したLiNbO3(ニオブ酸リチウム:PPLN)やLiTaO3(タンタル酸リチウム:PPLT)等が用いられてきた。
図1に示すように、波長変換レーザ光源100は、基本波光源101、集光レンズ108、波長変換素子(非線形光学結晶)109、再コリメートレンズ111、波長分離ミラー113、波長変換素子109の温度を一定に保持するヒーターなどの温度保持装置116、レーザ出力を制御する制御装置115、及び制御装置115内に配置される非線形光学結晶の温度をコントロールする温度コントローラ122を含んでいる。基本波光源101には、波長1.06μmのNd:YAGレーザやNd:YVO4レーザ、Ybドープファイバを用いたファイバレーザ等がよく用いられる。
ここで、波長1.06μmのレーザ光から半分の波長の0.532μmのレーザ光を発生させる第2高調波発生を例に挙げて実際の動作について説明する。
基本波光源101から発振された、波長1.06μmのレーザ光は、集光レンズ108により非線形光学結晶109に集光される。このとき、非線形光学結晶109が有する波長1.06μmの光に対する屈折率と、発生させたい波長0.532μmの光に対する屈折率とが一致している必要があり、このことを位相整合と呼ぶ。一般に、結晶の屈折率は結晶自体の温度条件で変化するため、結晶の温度は一定にしておく必要がある。このため、非線形光学結晶自体は、温度保持装置116内に配置され、結晶の種類に応じた温度に保持される。
例えば、LBO結晶を用いて、type−1非臨界位相整合と呼ばれる位相整合の方法をとる場合、148℃〜150℃という温度で結晶を保持する必要がある。
また、分極反転構造のLiNbO3結晶を使用する場合においては、分極反転構造の周期を設計することにより、位相整合する温度や波長を任意に決定することが可能となっているが、位相整合条件を保ち続けるには、素子温度と基本波波長とを一定に保つ必要がある(特許文献1及び特許文献2参照)。
図2は、波長変換後の光として、緑色光をモニターして、出力を一定に制御する制御ループを模式的に示している。
図2に示す制御ループ250は、基本波光源101への投入電流240をコントロールすることで基本波光源101からの基本波出力260を制御している。基本波出力260は、素子温度制御部280の制御により、温度が一定に保たれた非線形光学結晶からなる波長変換素子109に入射される。そして、波長変換素子109内で波長変換された後、波長変換素子109から緑色光270が出力される。この緑色光270の出力を一定にするために、緑色光270の光強度に応じて、基本波光源101へ投入する電流240を、制御ループ250よって制御する方法が、APC(オートパワーコントロール)として用いられてきた。
一方、非線形光学効果により波長変換を行う場合は、位相整合条件を満たす必要がある。このため、基本波光源101から発振される基本波の偏光方向及び基本波光源101から発振される基本波の波長も、波長変換の重要な要素となる。
特許文献3では、基本波と第2高調波との出力をそれぞれモニターすることで緩和発振したときの出力のノイズを低減する方法について示されている。
一方、特許文献4では、type-II位相整合を取る波長変換素子を使用した、波長変換レーザ光源において、基本波の各偏光成分を取得し、共振器内に具備した位相差調整手段の駆動にフィードバックする方法が提案されている。
特開2004−157217号公報
特開2000−305120号公報
特開2004−348052号公報
特開平5−188421号公報
しかしながら、特許文献4の方法では、波長変換素子の位相整合状態も一緒に変動してしまうため、出力の安定化が難しかった。
従来の制御ループでは、従来より指摘されている緩和発振の状態で対応できないという問題だけでなく、定常状態であっても、偏光の変化または波長の変化に対応できないという問題があった。
以上のように、基本波の状態が原因となり、波長変換素子の位相整合状態が変化することで、安定して効率のよい波長変換をすることが不可能になるという課題があることがわかった。
本発明の目的は、安定して効率のよい波長変換を行うことが可能な波長変換レーザ光源、これを備えたプロジェクションディスプレイ装置、液晶ディスプレイ装置及びレーザ光源を提供することにある。
本発明の一局面に係る波長変換レーザ光源は、上記の目的を達成するために、基本波光を出射する基本波光源と、非線形光学効果を有し、前記基本波光を異なる波長の高調波光に変換する波長変換素子と、前記基本波光源から出射される基本波光に含まれる特定の偏光方向の光を受光してその光量を電気信号に変換する第1の受光器と、前記波長変換素子から出力される高調波光を受光してその光量を電気信号に変換するする第2の受光器と、前記波長変換素子の温度を一定に保持する温度保持部と、前記第2の受光器からの電気信号に基づいて前記基本波光源から出射される基本波光の光量を制御する第1の制御、および、前記第1の受光器からの電気信号に基づいて前記基本波光の光量を制御する第2の制御をそれぞれ行う基本波制御部と、前記第2の受光器からの電気信号に基づいて前記温度保持部の保持温度を制御する第3の制御を行う温度制御部と、を備えている。
本願発明者らの研究の結果、基本波光の偏光成分の変化が高調波光の出力の変動に大きく影響することが、今回初めて明らかとなった。そこで、本波長変換レーザ光源は、基本波光源から出射される基本波光に含まれる特定の偏光方向の光を第1の受光器で受光してその光量を電気信号に変換し、当該電気信号に基づいて、基本波光源から出射される基本波光の光量または波長を基本波制御部が制御する構成となっている。これにより、基本波光の偏光成分の変化に応じた基本波光の調整が適切に行えるので、安定して効率のよい波長変換を行うことが可能な波長変換レーザ光源を実現できる。
本発明によれば、安定して効率のよい波長変換を行うことが可能な波長変換レーザ光源、これを備えたプロジェクションディスプレイ装置、液晶ディスプレイ装置及びレーザ光源を提供することができる。
本発明のさらに他の目的、特徴、及び優れた点は、以下に示す記載によって十分わかるであろう。また、本発明の利点は、添付図面を参照した次の説明で明白になるであろう。
従来の波長変換レーザ光源の概略構成を示す模式図である。
従来の波長変換レーザ光源における制御ループを示す説明図である。
図3Aは、基本波光の偏光方向の変化量を測定する測定装置の概略構成を示している。図3Bは、図3Aに示す測定装置用いて測定した基本波光の偏光方向が変化する量を示している。
本発明の一実施の形態に係る高調波出力光の制御方法を適用した波長変換光源の概略構成を示す模式図である。
本発明の一実施の形態に係る高調波出力光の制御方法を適用した制御ループを示す説明図である。
本発明の一実施の形態に係る高調波出力光の制御方法を適用した制御ループにおける、制御対象の切替のタイミングを示すタイミングチャートである。
本発明の一実施の形態に係る波長変換素子の温度調整を行うための制御システムの概略構成を示す模式図である。
図8Aは、本発明の一実施の形態に係る高調波出力光の制御方法において、波長変換素子の温度制御方法を説明するためのプロット図である。図8Bは、本発明の一実施の形態に係る高調波出力光の制御方法において、波長変換素子の温度制御方法を説明するためのプロット図である。図8Cは、本発明の一実施の形態に係る高調波出力光の制御方法において、波長変換素子の温度制御方法を説明するためのプロット図である。図8Dは、本発明の一実施の形態に係る高調波出力光の制御方法において、波長変換素子の温度制御方法を説明するためのプロット図である。
本発明の一実施の形態に係る高調波出力光の制御方法を適用した場合における出力安定性を示すプロット図である。
本発明の一実施の形態における他の高調波出力光の制御方法を適用した波長変換光源の概略構成を示す説明図である。
本発明の一実施の形態における他の高調波出力光の制御方法における、制御ループを示す説明図である。
本発明の一実施の形態に係る発振波長の調整を行うための制御システムの概略構成を示す模式図である。
本発明の一実施の形態に係る高調波出力光の他の制御方法を適用した場合における出力安定性を示すプロット図である。
本発明の他の実施の形態に係る高調波出力光の制御方法を適用した波長変換光源の概略構成を示す模式図である。
本発明の他の実施の形態に係る高調波出力光の制御工程を示すフローチャートである。
本発明の他の実施の形態に係る高調波出力光の制御方法における制御ループを示す模式図である。
本発明のさらに他の実施の形態に係る波長変換レーザ光源の概略構成を示す模式図である。
本発明のさらに他の実施の形態に係る波長変換素子の基本波から高調波光への変換効率が最大となる温度からの差分(ΔT)と、設定した高調波出力を得るのに必要な基本波光量との関係を示したプロット図である。
本発明のさらに他の実施の形態に係る波長変換素子の基本波から高調波光への変換効率が最大となる温度からの差分(ΔT)と、設定した高調波出力を得るのに必要な基本波光量との関係を示したプロット図である。
本発明のさらに他の実施の形態に係る制御工程を示すフローチャートである。
本発明のさらに他の実施の形態に係る波長変換レーザ光源の波長変換素子温度の制御工程を示すフローチャートである。
本発明のさらに他の実施の形態に係る制御における閾値cと図17との関係を示すプロット図である。
本発明のさらに他の実施の形態に係る波長変換レーザ光源の概略構成を示す説明図である。
本発明のさらに他の実施の形態に係る波長変換レーザ光源のサーミスタと基本波光路との間の温度差と、基本波から高調波光への変換効率が最大となる温度からのずれ量ΔTがシフトする様子を示すプロット図である。
本発明のさらに他の実施の形態に係る波長変換レーザ光源のサーミスタと基本波光路との間の温度差と、基本波から高調波光への変換効率が最大となる温度からのずれ量ΔTがシフトする様子を示す他のプロット図である。
本発明のさらに他の実施の形態に係る波長変換レーザ光源のサーミスタと基本波光路との間の温度差と、基本波から高調波光への変換効率が最大となる温度からのずれ量ΔTがシフトする様子を示すさらに他のプロット図である。
本発明のさらに他の実施の形態に係る熱抵抗部材を備えた波長変換レーザ光源の概略構成を示す説明図である。
本発明のさらに他の実施の形態に係る波長変換レーザ光源の波長変換光量と基本波から高調波光への変換効率が最大となる温度からのずれ量ΔTとの関係を示すプロット図である。
本発明のさらに他の実施の形態に係る波長変換レーザ光源の波長変換光量と基本波から高調波光への変換効率が最大となる温度からのずれ量ΔTとの関係を示すプロット図である。
本発明のさらに他の実施の形態に係る熱抵抗部材を備えた波長変換レーザ光源の概略構成を示す説明図である。
本発明の一実施の形態に係る波長変換レーザ光源を適用したプロジェクタ(プロジェクションディスプレイ)の概略構成を示す説明図である。
図31Aおよび図31Bは、本発明の一実施の形態に係る波長変換レーザ光源を適用した液晶ディスプレイの概略構成を示す説明図である。
本発明の一実施の形態に係る波長変換レーザ光源を適用した医療用光源の概略構成を示す説明図である。
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態について、図3ないし図13を参照しながら説明する。
本願発明者らの研究の結果、基本波光の偏光成分の変化が高調波光の出力の変動に大きく影響することが、今回初めて明らかとなった。また、type-I位相整合や擬似位相整合を採る波長変換素子を使用した場合も、基本波の偏光成分の変化が高調波出力の変動に大きく影響することが今回の検討で明らかとなった。
この問題に関し、発振波長や偏光方向が変化しうる基本波光源を用いた場合、投入電流の余裕(制御マージン)を大きく取る必要があるという問題があることが今回初めて明らかとなった。
図3Aは、基本波光の偏光方向の変化量を測定する測定装置300の概略構成を示している。図3Bは、図3Aに示す測定装置300を用いて、基本波光源101から出射される基本波光の偏光方向が変化する量を測定した結果を示している。測定装置300は、図3Aに示すように、基本波光源101と、偏光プリズム301と、受光部302を備えたパワーメータ303とを有している。基本波光源101から出射される基本波光105は、偏光プリズム301へ入射され、直線偏光される。そして、当該直線偏光内の、所定の偏光成分のみがパワーメータ303の受光部302に入射される。そして、パワーメータ303は、この受光部302に入射された受光量に基づいて、出力変動量を測定する。図3Bのグラフは、測定時間に対する出力変動量すなわち偏光方向が変化する量をプロットしている。
図3Bのグラフから、図中破線で示すように、基本波光205が偏光プリズム301を通らない場合は、出力は略一定であるのに対し、基本波光205が偏光プリズム301を通る場合、出力が最大8%程度低下、すなわち偏光方向が変化することがわかる。
本実施の形態は、偏光方向の変化や波長の変化などの従来の制御方法では調整が難しかった要素について、制御マージンを小さくしても対応できる制御(制御A)を実現している。
図4は、本発明の一実施の形態に係る波長変換レーザ光源200の概略構成を示す模式図である。この波長変換レーザ光源200は、上記制御Aを実現する構成例である。
本波長変換レーザ光源200は、図4に示すように、基本波光源(光源)201、ダイクロイックミラー206、ビームスプリッタ207、偏光フィルタ403、受光器(フォトダイオード)404、集光レンズ208、波長変換素子(非線形光学結晶を含む)209、再コリメートレンズ211、ビームスプリッタ213、受光器(フォトダイオード)212等を備えている。
基本波光源(光源)201から発振された基本波205の一部は、ビームスプリッタ207により光量の1%が透過され、残りの99%が反射される。ビームスプリッタ207で反射された基本波205は、波長変換素子209に入力される。そして、基本波205は、波長変換素子209により波長変換され、第2高調波としての緑色光に変換される。
基本波光源201としては、Ybドープファイバを用いたファイバレーザ光源を用いている。ファイバレーザ光源は、発振波長やスペクトル幅を任意に決定することができるという利点がある。したがって、スペクトル幅を狭帯域化することにより基本波から高調波への変換効率を大幅に向上することができる。
基本波光源201より発生した基本波光205は、集光レンズ208により非線形光学結晶を含む波長変換素子209へ集光される。本実施の形態では、非線形光学結晶として分極反転構造を形成したMg:LiNbO3結晶素子(MgLN素子)を用いている。
本実施の形態では、ビームスプリッタ207を透過し、偏光フィルタ403を通過した基本波をモニターし、フィードバック制御を行うように構成されている。
偏光フィルタ403は、ビームスプリッタ207を透過した基本波205のうち、波長変換に寄与する偏光成分だけを透過する。そして、偏光フィルタ403を透過した当該偏光成分の光を、受光器(フォトダイオード)404でモニターしている。
受光器404は、基本波205の強度の変化と同時に偏光揺らぎを強度の変化としてモニターし、電気信号に変換することができる。この電気信号は、基本波205の強度情報として、制御装置215へフィードバックされる。本実施の形態では、このフィードバックされた情報に基づいて、後述する図5のループ2の様に、所定の偏光成分の強度が一定になるようにフィードバック制御を行っている(APC:Auto Power Control)。
また、本波長変換レーザ光源200は、波長変換素子209の下面に配され、波長変換素子209を一定の温度に維持するための温度保持部216を備えている。この温度保持部216としては、ペルチェ素子を用いている。
波長変換素子209での波長変換により生成された第2高調波210(緑色光)は、再コリメートレンズ211により平行光束とされた後、ビームスプリッタ213を介してその一部が受光器212で受光される。この受光器212は、波長変換素子209にて生成された第2高調波210の強度をモニターし、電気信号(緑色光の強度情報)に変換して出力する。
波長変換素子209の温度を保持する温度保持部216の温度は、受光器212でモニタされる第2高調波210の強度情報に基づいて制御されている(図5のループ3)。これにより、基本波の波長が変化したことによって、第2高調波210の強度が変動する場合、基本波の波長の変化に合わせて波長変換素子209の温度を変化させることができる。
すなわち、波長変換に寄与する偏光方向の基本波入力を一定に制御している(図5のループ2)にも関わらず、第2高調波210の出力が変動する場合、当該出力の変動の要因は、基本波の波長であると言える。そこで、本制御Aでは、このような場合、波長変換素子209の温度を変化させて(図5のループ3)基本波の波長の変化に対応させている。
しかしながら、上記の2つのループ(ループ2及びループ3)のみによるフィードバック制御では、第2高調波210の出力の変動に対して、温度という時定数が大きなパラメータでしか制御できない。このため、第2高調波210の出力を一定にすることは困難である。
そこで、本制御Aでは、図5のループ2及びループ3の制御を停止させた状態で、ループ1による制御を行っている。このループ1では、第2高調波210の強度情報を示す電気信号に基づいて、基本波を駆動する電流を制御している。このループ1のフィードバック制御を挿入することで、時定数が大きなパラメータを制御対象にした場合においても、第2高調波210の出力を一定にすることが可能となる。すなわち、本制御Aのように、複数のループを時分割で動作させることで、第2高調波210の出力変動を小さくすることができる。
図6は、制御対象の切り替えタイミングの一例を示すタイミングチャートである。このタイミングチャートでは、波長変換レーザ光源200の動作状況に対して各ループが動作しているか、休止しているかを示している。
まず、波長変換レーザ光源200からの光出力(第2高調波210の出力)を設定する際には、光出力値を基本波光源201へ入力される電流値へフィードバックするAPC制御(ループ1)を行い、光出力を決定したところで時分割制御を開始している。
本制御Aでは、基本波205の出力を一定にする制御(ループ2)と、波長変換素子209の温度を最適にする制御(ループ3)とを、同じタイミングで動作させている。これは、上記ループ2及びループ3の2つのループについては、同時に動作させても暴走等の問題が生じないためである。しかしながら、本実施の形態に係るフィードバック制御は、これに限定されるものではない。すなわち、ループ1の動作タイミングと、ループ2及びループ3の動作タイミングとを、異なるタイミングで動作させれば、ループ2及びループ3の2つのループについては、必ずしも同じタイミングで動作させる必要はなく、異なるタイミングで開始・終了されてもよい。
ループ3では、波長変換素子209の温度調整を行っている。このため、ループ3の動作時間は、10秒から1分程度であることが好ましい。ここで、ループ2及びループ3を一定時間動作させた後、ループ2及びループ3の制御を一旦終了する。一方、ループ1の動作時間は0.1秒〜10秒程度で十分追随させることができる。
そして、ループ2及びループ3を解放した後、再び、高調波光出力に基づいて、基本波光源へ入力される電流値へフィードバックするループ1を動作させている。このように、ループ1を動作させる時間、ループ2及びループ3を動作させる時間を分割させることで、周辺環境温度や基本波光の波長変動などの環境変化に対して波長変換素子209の温度を常に最適な値に保つことができる。そのため、波長変換素子209の温度を変化させず一定とした場合に必要な基本波光の出力マージン、つまり基本波光源へ入力される電流値のマージンを小さくすることができ、簡便な制御で装置の小型化・低消費電力化できる効果がある。
高調波光の出力が矩形波に変調され出射する場合やパルス発振した高調波光の出力について取り扱う際には、高調波光の出力を時間平均した値をフィードバック制御に用いることで本制御を適用することができる。
次に、波長変換素子209の温度設定方法について説明する。図7は、ループ3で用いる、波長変換素子209の温度調整を行う制御システムを示す模式図である。
波長変換素子209は、温度保持部216上に保持されており、温度保持部216の温度をサーミスタ703でモニターすることで間接的に波長変換素子209の温度をモニターしている。サーミスタ703からの温度信号と波長変換された光の光強度信号712は、A/Dコンバータ704でデジタル値に変換され、レジスタ705へ格納される。高調波出力に対する素子温度のテーブルは、予め必要な基本波光源201へ投入される電流の値と共にEEPROM706へ格納されている。制御装置215は、高調波光出力の設定値のデータが、MPU707に転送される。
温度コントローラ711は、図7に示すように、電源708、サーミスタ703、サーミスタ703からの温度信号をデジタル値に変換するA/Dコンバータ704、A/Dコンバータ704によってデジタル値に変換された温度信号を格納するレジスタ705、出力−温度設定値の換算テーブル、予め必要な投入電流値等を格納するEEPROM706、制御装置215から高調波出力設定値のデータが転送されるMPU707、電源708から温度保持部216へ供給される電流波形に対し、PWM (Pulse Width Modulation) 制御を行うためのスイッチ709を含んでいる。
本実施の形態では、波長変換素子209が分極反転構造を有しており(本実施形態では分極反転構造を有するMg:LiNbO3)、波長変換素子209の保持温度を50℃としている。
図8Aないし図8Dは、波長変換素子209の温度調整方法の一例を示している。
波長変換素子209の制御温度は、中心温度Tc(℃)を中心にして±Δt(℃)ウォブリングさせている。
素子温度がTc+Δt(℃)の時の高調波出力をP(Tc+Δt)、Tc(℃)の時の高調波出力をP(Tc)、Tc−Δt(℃)の時の高調波出力をP(Tc−Δt)とした場合、図8Aに示すように、P(Tc−Δt)<P(Tc)<P(Tc+Δt)の場合、Tcを上昇させる操作を行う。図8Bに示すように、P(Tc+Δt)<P(Tc)>P(Tc−Δt)の場合は、Tcを維持するよう制御する。一方、図8CのようにP(Tc−Δt)>P(Tc)>P(Tc+Δt)の場合は、Tcを減少させる操作を行う。なお、Δtは0.1〜0.2℃の範囲であることが好ましい。ウォブリングの周期は5秒から10秒としている。波長変換素子保持部分の熱容量にも関係するが、Δtが0.2℃以上の場合やウォブリングの周期を5秒以下とした場合、高調波出力のハンチング(リップル)が大きくなるため、P(Tc)が最大となる点のサーチが難しくなる。一方、Δtが0.1℃以下の場合は温度検出の際、外乱の影響を受けやすくなるため、上記の範囲に設定することで出力変動を小さく抑えたまま、出力一定動作を行うことができる効果がある。
なお、温度制御方法としては、この方法に限らず。図8Dに示すように、温度に対する出力特性カーブの出力ピーク値80%〜90%の位置で待機させておき、(図中のP(Tpv))そこからの出力変動量から、基本波から高調波光への変換効率が最大となる温度からのずれを算出し、波長変換素子209の温度を補正する方法、いわゆる山登り制御も適用できる。
図9は、波長変換レーザ光源200に、本実施の形態の出力制御方法を適用した場合の動作時間に対する出力変動量を示すプロット図である。これを図3Bと比較して本実施の形態の効果を以下に検証する。
図3Bの場合は、基本波の偏光成分の変化に起因する出力の低下は8%以上とかなり大きいものであり、基本波の波長変動に起因する出力の低下も動作開始から3500秒後に2%程度になっていた。これに対して、本実施の形態の出力制御方法を適用した場合、図9に示すように、基本波の偏光成分の変化に起因する出力の低下は僅か1%程度に低減されており、基本波の波長変動に起因する出力の低下については略ゼロになっていることがわかる。
本実施の形態に係る制御方法は、上述のように、基本波の偏光成分の変化及び基本波の波長変動に起因する出力変動を効果的に抑制している。これにより、制御の安定性の向上及び波長変換レーザ光源の信頼性の向上を実現することができる。
次に、本実施の形態に係る他のフィードバック制御について、図10を参照し以下に説明する。このフィードバック制御では、基本波光源201の発振波長を調整することによって、波長変換光の出力が一定となるように制御している(制御B)。
図10は、制御Bで提案するレーザ光源1000の構成を示す模式図である。
基本波光源201は、図10に示すように、励起光を発する半導体レーザ102と、半導体レーザ102から発せられた励起光を吸収し、前記基本波光を発するダブルクラッド希土類添加ファイバ103と、ダブルクラッド希土類添加ファイバ103の両端に配置され、基本波光源201から発せられる前記基本波光の波長を決定する、狭反射帯域のファイバグレーティング104bおよび広反射帯域のファイバグレーティング104aと、半導体レーザ102から発せられた前記励起光のうち前記ダブルクラッド希土類添加ファイバ103で吸収されなかった前記励起光を吸収処理する残存励起光処理機構(不図示)と、基本波光源201から発せられる前記基本波光の偏光方向を直線方向にする偏光単一化機構(不図示)と、前記狭反射帯域のファイバグレーティングに応力を付加するアクチュエータ1001と、を備え、狭反射帯域のファイバグレーティング104bの一端が前記アクチュエータ1001に保持され、アクチュエータ1001が前記狭反射帯域のファイバグレーティング104bに与える応力により前記基本波光の波長が変化する構成としている。
基本波光源(ファイバレーザ)201から発振された基本波205の一部は、ビームスプリッタ207により光量の1%が透過され、残りの99%が反射される。反射された基本波205は、波長変換素子209に入力される。そして、入力された基本波205は、波長変換素子209により波長変換され、高調波光としての緑色光へ変換される。
基本波205は、ビームスプリッタ207を透過してきた光によりモニターされている。ここで、偏光フィルタ403により一方の偏光成分だけを取り出された状態の光が受光器(フォトダイオード)404で観測される。これにより、受光器404は、基本波205の強度の変化と同時に偏光揺らぎを強度の変化としてモニターすることができる。基本波光源201から発振される基本波は、受光器404でモニターされ、制御装置215へ強度情報がフィードバックされる。
基本波光の波長を変更できる基本波光源としては、分布帰還ミラー部を含む分布帰還型半導体レーザ光源であって、前記分布帰還ミラー部へ投入する電流を変化させることにより、前記基本波光の波長が変化する構成としてもよい。
また、基本波光の波長を変更できる基本波光源として、分布帰還ミラー部を有し、前記基本波光の元となる光を発生する分布帰還型半導体レーザ光源と、励起光を発する励起光源と、前記励起光を吸収することで前記分布帰還型半導体レーザ光源が発する光の強度を増幅させるレーザ媒質と、を含み、前記分布帰還ミラー部へ投入する電流を変化させることで、前記基本波光の波長が変化する構成の光源を用いてもよい。
制御Bでも、前述の制御Aと同様に、制御装置にフィードバックされた情報に基づいて、ある偏光成分の強度が一定になるようにフィードバック制御されている(APC:Auto Power Control, ループ2(図11))。
次に、制御Aと異なる点について説明する。制御Aでは、波長変換素子209を温調している温度保持部216の温度は、受光器212でモニターされた緑色光の強度情報に基づいて制御しているが、本制御Bでは、温度保持部216の温度は、所定の温度で一定としている。本制御Bでは、素子温度を調整することに代えて、ファイバグレーティング104bを固定するアクチュエータ1001を用いて、基本波波長を温度保持部216で定まる素子温度に調整している(ループ3)。すなわち、波長変換に寄与する偏光方向の基本波入力が一定となるように制御し(図11のループ2)、もう一つの緑色光の変動要因である基本波の波長を変化させて(図11のループ3)、緑色光の出力の変動に対応させるという思想である。
しかしながら、上記の2ループ構成では、緑色光の光量を基準として基本波光源201に投入する電流量を決めることができない。このため、所望の緑色光出力を設定する際に支障が生じる。そこで、本制御Bでは、図11のループ2及びループ3の制御を停止させた状態で、緑色光の強度信号に基づいて、基本波を駆動する電流へフィードバックする制御(図11のループ1)を挿入することで、緑色出力を設定する場合においても緑色光出力を一定にすることが可能となる。つまり、複数のループを時分割で動作させることで、緑色光の変動を小さくすることができる。
なお、制御Aと同様に、矩形波変調した光出力を出射する場合やパルス発振したレーザ光について取り扱う際には、出力を時間平均した値をフィードバック制御に用いることで本制御を適用することができる。
次に、波長変換素子209の基本波光の温度設定方法について説明する。図12は、ループ3で用いる、発振波長の調整を行う制御システム1200を示す模式図である。
発振波長を決めるファイバグレーティング(FBG)104bの一端はアクチュエータ1001上に保持されており、アクチュエータ1001上に印加する電圧によりFBG104bへ与える応力を決定している。波長変換されて生じた緑色光の光強度信号1201は、A/Dコンバータ1202でデジタル値に変換され、レジスタ1203へ格納される。高調波出力に対するアクチュエータ1001への電圧つまり、FBGへ与える応力のテーブルは、必要な励起LDへの投入電流と共に予めEEPROM1204へ格納されている。
制御装置215からは、高調波出力設定値のデータが、MPU1205に転送される。MPU1205は、EEPROM1204に格納されている高調波出力に対するFBGへの応力のデータを取得し、レジスタ1203に格納されている緑色光強度信号の現在値と比較・演算する。電源1206はアクチュエータ1001へ供給する電源であり、信号変換器1207でPWM信号をアナログの電圧信号に変換してアクチュエータ1001の制御を行っている。
なお、本実施の形態で使用できるアクチュエータ1001としては、電磁コイルを用いたものであっても、圧電素子を用いたものであってもよいが、FBGに与える応力を電圧で制御でき、かつ電圧値で応力をモニターできる点から見て電磁コイルを用いたアクチュエータ1001を使用するのが好ましい。
なお、基本波波長を変化させる方法としては、波長可変半導体レーザの一種であるDBR(Distributed Bragg Reflector)レーザを用いることもできる。また、DBRレーザをシード光として、光ファイバアンプなどを用いて光増幅させる方法を採ることもできる。
図13は、制御Bにおける波長変換レーザ光源1000の動作時間に対する出力変動量のプロット図を示している。この場合、出力変動量は1%以内に収められており、図3Bに示すプロット図と比較して、基本波の波長変動に起因する出力変動および基本波の偏光成分の変化に起因する出力変動を大幅に低減できていることがわかる。本実施の形態の場合、波長変換素子の温度時間応答よりも高速な、基本波の発振波長を制御対象としているため、制御Aと比較して制御応答速度を向上させることができる。そして、制御Aを適用した場合の図9に示すプロット図では、1%程度残っていた波長に対する出力変動を、制御Bを適用することによってさらに抑制する効果があることがわかる。
本実施の形態の制御A及び制御Bに示した構成の波長変換レーザ光源とすることで、基本波の偏光方向、基本波の波長、及び波長変換素子の温度に対する外乱による出力変化を検出することができるため、出力制御の安定性向上とともに装置の信頼性を高める効果がある。
(実施の形態2)
本発明の他の実施の形態について図14及び図15を参照し、以下に説明する。
本実施の形態では、前述の実施の形態1の制御方法を、内部共振器型波長変換レーザ光源に適用させた場合について説明する。
図14は、本実施の形態に係る内部共振器型波長変換レーザ光源1400の概略構成を示している。
本内部共振器型波長変換レーザ光源1400は、電源装置1403、制御装置1402、出力設定器1401、励起光源(基本波光源、レーザダイオード)1405、コリメートレンズ1406、集光レンズ1407、固体レーザ素子1409、共振ミラー1408及び1412、誘電体多層膜ミラー1413、偏光子1415を備えた受光素子1416、温度コントローラ1404、高調波反射ミラー1414・1417、受光素子1418等を備えている。
励起光源(レーザダイオード)1405から出射された励起光は、コリメートレンズ1406及び集光レンズ1407を用いて固体レーザ素子1409に入射することで励起する。
固体レーザ素子1409及び波長変換素子1410は、共振ミラー1408及び1412で構成された共振器内に配置されている。固体レーザ素子1409から発振される基本波は、この共振器内で共振し、レーザ発振する。発生した基本波は、波長変換素子1410に入射され、その一部が第2高調波に変換される。共振ミラー1408及び出射ミラー1412は、基本波光の波長で高反射率となっており、特に光が出射される1412については、第二高調波が低反射(高透過)率となるよう誘電体多層膜が形成されている。
レーザ共振器から出射される光は、ほとんど第2高調波であるが、わずかに基本波も出射される。このため、出射ミラー1412から出射された第2高調波を誘電体多層膜ミラー1413に通し、第2高調波から基本波成分を分離している。誘電体多層膜ミラー1413で反射して第2高調波から分離された基本波は、偏光子1415を備えた受光素子1416に入射され、その光量がモニタされている。一方、第2高調波の成分は、誘電体多層膜ミラー1413を通過し、高調波反射ミラー1414、1417で反射され、出力光1419として光源外に出射される。このとき、第2高調波の一部は高調波反射ミラー1417を通過する。そして、高調波反射ミラー1417を通過した高調波を受光素子1418で受光し、高調波の光量をモニターしている。
本実施の形態では、波長変換素子として、周期分極反転構造を有する擬似位相整合LiNbO3素子を使用しているが、同じく基本構造に酸素八面体構造を持つLiTaO3やKTiOPO4結晶に周期分極反転構造を形成した擬似位相整合波長変換素子を使用しても良い。また、一般的に行われているように、結晶系にMgやCe等を添加して光屈折率変化を抑制した結晶基板を使用した素子を用いても良い。
受光素子1416で受光された基本波の光強度信号および受光素子1418で受光された高調波の光強度信号は、制御装置1402に送られる。制御装置1402は、基本波および高調波の各光強度信号と、出力設定器1401で設定された入力値とに基づいて、電源装置1403から励起光源1405へ送られる電流信号を制御する。また、波長変換素子1410は、温度コントローラ1404で温度調節されている。
実施の形態2においても受光素子1416に入射される基本波は、偏光子1415を通過することで所定の偏光成分のみとなっている。本実施の形態の構成とすることで、レーザ共振器のモード変化から生じる偏光変動を把握することが可能となり、以下に述べるようにレーザの発振状態に応じた制御を行うことができる。
本実施の形態に係る高調波光の制御工程について、図15Aのフローチャートを参照説明する。
まず、定常動作において、高調波光(高調波)の光量の変化の有無を判断する(S1)。高調波光の光量に変化がない場合は(S1でNO)、定常動作を継続する(S2)。一方、高調波光の光量が変化した場合は(S1でYES)、残存基本波の位相と高調波光の位相とが一致しているか反転しているかを判断する(S2)。残存基本波の位相と高調波光の位相とが一致している場合、励起電流を調整する(S3)。一方、残存基本波の位相と高調波光の位相とが反転している場合、素子温度を調整する(S4)。S3で励起電流を調整した後、又はS4で素子温度を調整したのち、高調波出力が回復したかを判断する(S5)。高調波出力が回復していない場合(S5でNO)、S2に戻って、残存基本波の位相と高調波光の位相とが一致しているか反転しているかを判断し、以後の工程を繰り返す。一方、高調波出力が回復していた場合(S5でYES)、S1に戻って、定常動作を継続する。
例えば、受光素子1416で検知される所定の偏光成分の光強度信号の位相と受光素子1418で検知される高調波の光強度信号の位相が一致(同期)している場合、出力変動の要因は基本波光源にあると予測できる。基本波光源に起因する出力低下要因としては、固体レーザ素子の発熱、励起光源の出力低下、及び発振した基本波のモード変化の3通りが考えられる。励起光源(基本波光源)1405に原因がある場合は、図15Bに示すループ2に示すように、受光素子1416で検知された所定の偏光成分の基本波の強度が一定になるように、励起光源1405に供給する励起電流を変化させるフィードバック制御を行っている(APC:Auto Power Control)。
一方、受光素子1416で検知される所定の偏光成分の光強度信号の位相と受光素子1418で検知される高調波の光強度信号の位相とが反転(非同期)してる場合は、出力変動の要因は波長変換素子に原因があると予測できる。このように、波長変換素子に異常がある場合は、実施の形態1において図8Aないし図8Dを参照して説明した方法を用いて、素子温度を最適にすることで、出力を回復させることができる。
なお、受光素子1416で検知される所定の偏光成分の光強度信号と、受光素子1418で検知される高調波の光強度信号との位相が一致(同期)しているか反転(非同期)しているかの判断については、例えば、両信号の位相が0±45度の範囲にあれば一致(同期)していると判断でき、また、両信号の位相が180±45度の範囲にあれば反転(非同期)していると判断できる。
以上のように、基本波の光強度と高調波の光強度との位相差を検出することで、出力変動の要因を、迅速に認識することができる。これにより、レーザの発振状態に応じた制御を、迅速かつ安定して行うことができるため、信頼性の高い波長変換レーザ光源を実現することができる。
なお、上述した位相の同期・非同期の選択制御は、図11の制御ループ2および制御ループ3にも適用できる。
本実施の形態に係る波長変換レーザ光源の制御ループを図15Bに示す。
出射ミラーから出力される残存基本波と高調波(緑色光)とは、その強度の位相情報を比較し、強度変化の同期/非同期を示す情報に基づいて、ループ2でフィードバックするか、ループ3でフィードバックするかを判断する。ループ2では、励起光源1405への投入電流値へフィードバックしている。一方、ループ3では、素子温度という形でフィードバックを行う。この際、本実施の形態を実行する上で重要なことは、残存基本波の光量の変動に対し、高調波(緑色光)の光量が変化していなければ、フィードバック動作を行わないことにある。
ループ1は、出力を設定する際、又は一定時間毎に投入電流値と高調波(緑色光)出力との比較を行うために使用するループである。本実施の形態でも、実施の形態1で用いた制御対象の切り替えタイミングの一例をそのまま使用できる。図6のタイミングチャートでは、波長変換レーザ光源の動作状況に対して各ループが動作しているか、休止しているかを示している。
まず、光源からの光出力を設定する際には、光出力値を入力電流値へフィードバックするAPC制御を(ループ1)行い、光出力を決定したところで、時分割制御を開始する。
本実施の形態では、基本波の出力を一定にする制御(ループ2)と、波長変換素子の温度を最適にする制御(ループ3)とを、同じタイミングで動作させている。これは、上記ループ2及びループ3の2つのループについては、同時に動作させても暴走等の問題が生じないためである。しかしながら、実施の形態1と同様に、本実施の形態に係るフィードバック制御は、これに限定されるものではない。すなわち、ループ1の動作タイミングと、ループ2及びループ3の動作タイミングとを、異なるタイミングで動作させれば、ループ2及びループ3の2つのループについては、必ずしも同じタイミングで動作させる必要はなく、異なるタイミングで開始・終了されてもよい。
ループ3では、波長変換素子の温度調整を行っているため、ループ3の動作時間は10秒から1分程度であることが好ましい。そして、ループ2およびループ3を一定時間動作させた後、ループ1およびループ2の制御を一旦終了してループを解放し、再び、高調波(緑色光)出力をもとに、入力電流値へフィードバックするループ1を動作させる。ループ1の動作時間は0.1秒〜10秒程度で十分追随させることができる。このように、ループ1を動作させる時間、ループ2及びループ3を動作させる時間を分割させることで、環境温度・基本波光の波長変動などの環境変化に対して素子温度を常に最適な値に保つことができる。その結果、制御の安定性を向上させ、光源の信頼性を高める効果がある。
以上のように、本実施の形態に係る制御方法によれば、素子温度を一定とした場合に必要な基本波光の出力マージン(入力電流値のマージン)を小さくすることができるため、簡便な制御で波長変換レーザ装置の小型化及び低消費電力化を実現することができる。
本実施の形態に係る制御方法を用いた場合も、実施の形態1の図13に示したプロット図と同様に、1%以下まで出力変動を抑制する効果があることがわかった。
(実施の形態3)
本発明の他の実施の形態に係る波長変換レーザ光源について図16ないし図29を参照し以下に説明する。
実施の形態1及び2で説明した制御による出力安定化・低消費電力化という課題に対して、より効果を増強することができる波長変換レーザ光源の構成について説明する。
図16は、本実施の形態で提案する波長変換レーザ光源の構成模式図を示している。図17及び図18は、波長変換効率が最大となるサーミスタ温度と、サーミスタでモニターした温度との差分(ΔT)と、設定した高調波出力を得るのに必要な基本波光量との関係を示したプロット図である。
本実施の形態の波長変換レーザ光源1600の構成について説明する。図16に示すように、波長変換レーザ光源1600は、基本波光源1601、集光レンズ1603、波長変換素子1604、ペルチェ素子1605、サーミスタ1606、コリメータレンズ1607、波長分離ミラー1608、光分岐ミラー1610、温度制御回路1611、フォトダイオード1612、及び光量一定制御回路を備えている。
基本波光源1601より出射する基本波光1602を、非線形光学結晶を用いた波長変換素子1604に入射させて、基本波光1602の一部を波長変換光1609に変換させる。また、基本波光源1601はファイバレーザとし、基本波光1602は1μm帯の赤外光とし、波長変換光1609は赤外光の第2高調波となる緑色光とする。また、波長変換素子1604は、周期7μmの分極反転構造を形成した5mol%のMgを添加したLiNbO3からなる擬似位相整合波長変換素子とする。本実施の形態では、波長変換素子1604の素子長は20mmとする。
波長変換素子1604から出射した基本波光1602と波長変換光1609とを、波長分離ミラー1608にて分離し、得られた波長変換光1609を光分岐ミラー1610(波長変換光透過率1〜10%程度)にてその一部をフォトダイオード1603に入射し、波長変換光1609の光量をモニターする。
本実施の形態では、モニターされた値をもとに、光量一定制御を行う。波長変換光1609が所望の光量より増加すれば、基本波光1602を減らし、波長変換光1609が所望の光量より減少すれば、基本波光1602を増やすように基本波光源1601の駆動電流を制御する光量一定制御回路1613を備え、波長変換光1609のモニター値が一定となるよう制御する。
また、基本波光源1601は、基本波光量をモニターした値をもとに、サーミスタ1606、ペルチェ素子1605を用いて、波長変換素子1604の温度を調節する温度制御回路1611を備えている。
ここで、基本波光量をモニターする手段は、図16に図示していないが、波長変換素子に入射する前の基本波光の一部を分岐ミラーで反射させてフォトダイオードで受光する構成でもよい。
また、基本波光源が、駆動電流の増減と発振する基本波光量の増減が一致する光源の場合は、駆動電流をモニターする手段で代用しても良い。この場合、フォトダイオードの使用個数を軽減することが可能となり、より低コスト化が可能となるため好ましい。
また、波長変換素子から出射する基本波光と波長変換光の合計光量は波長変換素子に入射する基本波光量にほぼ一致し、波長変換素子から出射する基本波光量と波長変換素子に入射する基本波光量の増減は一致する。本実施の形態の制御では波長変換素子に入射する基本波光量の増減がわかればよいので、波長変換素子から出射する基本波光量をモニターする手段で代用しても良い。この場合、基本波光源にて発振した基本波光を少しでも多く波長変換素子に入射させることが可能となるため好ましい。これにより、さらに高効率な波長変換が可能となる。
次に、温度制御回路を用いたレーザ光源の波長変換素子の温度制御について、その基本的な動作について説明する。
本実施の形態では、前述の通り、波長変換光量をモニターし、その値が一定となるように基本波光量を増減させて光量一定制御を行っている。このため、従来型(図17)と同様、図18に示すように、ΔTの絶対値が大きくなるほど、多くの基本波光量が必要となる。このように、ΔTの変化に伴って増減する基本波光量をモニターすることで、本実施の形態では、光量一定制御をかけながら波長変換素子1604の温度制御を行う。
これにより、光量一定制御を中断させることなくレーザ光源を駆動させ続けることが可能となる。このように、光量一定制御を動作させながら、波長変換素子1604の温度制御を行う方法としては、例えば、次のような制御方法がある(制御C)。
図18に示すように、例えば、所定の波長変換光量を得るために、必要な基本波光量が最低となる点(ΔT=0)における基本波光量(以下、基準基本波光量とする)の1.3倍の基本波光量を閾値aとし、当該基準基本波光量の1.1倍の基本波光量を閾値bとする。
立上げ動作時には、まず、図19のフローチャートに示す制御を実行する。
まず、立上げ開始時の波長変換効率が最大となるサーミスタ温度と、サーミスタでモニターした温度との差分ΔTが光量一定制御可能な範囲かどうかを判断する(S11)。ΔTが光量一定制御可能な範囲にある場合(S11でYES)は、立ち上げ動作を終了し、通常動作を開始する(S12)。一方、光量一定制御可能な範囲にない場合(S11でNO)は、ΔT≧0かを判断する(S13)。ΔT≧0であれば(S13でYES)、波長変換素子1604を加熱する(S14)。ΔTが負であれば(S13でNO)、波長変換素子1604を冷却する(S15)。そして、再び光量一定制御可能な範囲に入っているかどうかを判断し(S11)、以後、同様の処理を繰り返す。すなわち、光量一定制御可能な範囲にない場合(S11でNO)は、ΔT≧0かを判断する(S13)。ΔT≧0であれば(S13でYES)波長変換素子1604を加熱し、ΔTが負であれば(S13でNO)波長変換素子1604を冷却する。そして、光量一定制御可能なΔTの範囲に到達した後は、立上げ動作を終了し、通常動作に切り替える(S12)。
次に、通常動作での制御工程を、図20のフローチャートを参照し以下に説明する。
通常動作では、まず、基本波光量が閾値aより大きいか否かを判断する(S21)。閾値a以下の場合は(S21でNO)、温度一定制御を行う(S22)。一方、基本波光量が閾値aより大きい場合は(S21でYES)、波長変換素子1604を加熱する(S23)。次に、基本波光量が増加しているか否かを判断する(S24)。基本波光量が増加していれば(S24でYES)、TM0とTMとのずれ量(ΔTの絶対値)の増大を意味するため、波長変換素子1604を冷却する(S25)。一方、基本波光量が増加していなければ(S24でNO)、基本波光量が閾値bより大きいか否かを判断する(S26)。閾値b以下の場合は(S27でNO)、温度一定制御を行う(S22)。
S25で、波長変換素子1604を冷却したのち、さらに、基本波光量が増加しているか否かを判断する(S27)。基本波光量が増加していれば(S27でYES)、S23に戻り、波長変換素子1604を加熱する(S23)。そして、S23以降の工程を繰り返す。一方、基本波光量が増加していなければ(S27でNO)、基本波光量が閾値bより大きいか否かを判断する(S28)。閾値b以下の場合は(S28でNO)、温度一定制御を行う(S22)。一方、基本波光量が閾値bより大きい場合(S28でYES)、S25に戻り、波長変換素子1604を冷却し、S25以後のルーチンを繰り返す。
上記の制御方法では、光量一定制御を続けることで、基本波光量の変化量を検出している。このため、波長変換光量を一定にするための制御は、通常動作時に常に実行されている必要がある。
このとき、基本波光量が増減したか否かを判断するための基準となる閾値aと閾値bとの差が大きすぎると、サーミスタ温度のハンチングが増大する。この場合、温度調節に必要な加熱冷却のエネルギーが増え、より高出力な基本波光源が必要となり、コスト増となる。一方、基本波光量が増減したか否かを判断するための基準となる閾値aと閾値bとの差が大きすぎると、基本波光量の増減の判断を誤る可能性が高まる。
このため、基本波光量が増減したか否かを判断するための基準となる閾値aと閾値bとの差は、基本波光量がΔT=0のときに必要な基本波光量の1.5倍以下となるΔTの幅の20%以下であることが好ましい。この場合、TMのハンチングが減少し、より少ないエネルギーで波長変換素子の温度調節が可能となる。
また、基本波光量が増減したか否かを判断するための基準となる閾値aと閾値bとの差は、基本波光量がΔT=0のときに必要な基本波光量の1.5倍以下となるΔTの幅の5%以上であることが好ましい。この場合、基本波光量の増減を正確に判断することが可能となり、より高速な温度調節が可能となる。これにより、必要な基本波光量の平均値も低くすることができるため、基本波光源の出力マージン値を低く抑えることができる。この結果、波長変換レーザ光源の低電力化及び低コスト化を実現することができる。
本制御方法によれば、図18に示すように、閾値a及び閾値bを設定し、ΔTを解消するための温度制御と温度一定制御とを切り替えて実行する。これにより、光量一定制御を中断することなく、レーザ光源の駆動を継続することができる。さらに、波長変換素子の加熱又は冷却に必要なエネルギーを軽減することが可能となるため、安定した高調波出力を低消費電力で実現することができる。
また、光量一定制御下における温度制御として、次のような制御方法をとることもできる(制御D)。
図21に示すように、所定の波長変換光量を得るために、必要な基本波光量が最低となる点(ΔT=0)における基本波光量(以下、基準基本波光量とする)の1.15倍の基本波光量を閾値cとし、常に、基本波光量が閾値cに近づくように波長変換素子を加熱/冷却する場合について説明する。
立上げ動作については、制御Cと同様に、TMが光量一定制御可能な範囲に到達するまで、図20のフローに示すような立上げ動作を行う。そして、光量一定制御が可能なΔTの範囲に到達した後は、通常動作に切り替える。
そして、立上げ開始時にΔTが負の場合、立上げ動作として波長変換素子を加熱し、ΔTが光量一定制御可能で、且つΔTが負となる範囲で、通常動作に切り替える。
通常動作時には、図21に示す点Aに収束するように、基本波光量が閾値cより大きい場合は波長変換素子を加熱し、基本波光量が閾値c以下の場合は波長変換素子を冷却する。このように、点Aに収束させることで、点Bに収束させる場合より、制御工程を削減できるため、より高速な制御を実現できる。
逆に、立上げ開始時にΔT≧0の場合は、立上げ動作として波長変換素子を冷却する。一方、通常動作で(ΔT=0の右側の曲線)図21の点Bに収束させることが好ましい。この場合も、点Aに収束させるより、制御工程を削減できるため、より高速な制御が可能となる。
さらには、必要な基本波光量と加熱または冷却に必要なエネルギーの両方を減らすことが可能となり、より低消費電力なレーザ光源を実現することができる。
また、波長変換素子の温度変化を少なくすることで、光源の発振波長変動を軽減することが可能となり、画像表示装置として用いた場合の色ずれなどを抑制した光源を提供できるという効果もある。
また、入出射面に結露が発生し、基本波光や波長変換光の散乱やビーム品質低下を軽減することが可能となる。このため、波長変換素子は設置環境の温度より高温で使用することが好ましい。
制御Dでは、TMが点Aより高温側或は低温側のどちらにシフトしたかを瞬時に判断することができる。これにより、前述の制御Cに比べ、制御工程を削減できるため、より高速な温度制御を実現することができる。その結果、TMや波長変換素子内の基本波光路自体の温度が変動する幅を大幅に狭めることが可能となり、制御Cとの比較においては以下の点で優れている。
すなわち、波長変換素子の温度制御のための加熱または冷却に必要なエネルギーを大きく軽減することが可能となる。また、波長変換素子の温度変化に起因するレーザ光源から発振される光の波長変動を抑制することが可能となる。これにより、本レーザ光源を画像表示装置に用いた場合、色ずれを抑制した画像表示装置を実現できる。また、計測装置用光源として用いた場合、波長ずれによる計測誤差を軽減することができる。
また、制御Dにおいて、許容可能なΔTの変動範囲(以降、ΔT許容範囲)は以下の方法で拡大することが可能となる。ΔT許容範囲を拡大することによって、より精度の低い温度計測手段を用いることが可能となり、より加熱・冷却能力が低い温度調節手段を用いることが可能となるため、更に低コスト化が可能となる。また、サーミスタで測定した温度における許容範囲を大きく拡大することで、温度調節手段を省くことができるため、波長変換レーザ光源の更なる低コスト化を実現することができる。
次に、ΔT許容範囲を拡大するための構成について図22を参照し以下に説明する。
図22に示す波長変換レーザ光源2400のように、波長変換素子1604内において、基本波光1602の一部を吸収し波長変換素子1604内の基本波光1602光路とサーミスタ1606の間に熱抵抗調節材2401を備える構成とすることで、波長変換レーザ光源の外部温度の変化に対応できる許容範囲を広げることができる。
上記の構成によれば、基本波光の大きさに比例して、サーミスタ1606と波長変換素子1604内の基本波光1602の光路との間に温度差が生じる。このため図23のグラフ上では、熱抵抗調節材2401を備えない場合の実線1002に対して、基本波光量が大きくなるほど、温度差の分だけ低温側にシフトすることになり、破線2501で示す曲線へと変化することになる。結果的にΔTが負の場合のΔTの変化に対する波長変換効率の変化の傾きが、ΔTが正の場合に比べ緩やとなる。この場合、点A’に収束するように温度制御を行うと、ΔTの許容範囲が広がる。
言い換えれば、ΔTが負のとき、ΔTが低下すると、基本波光量の吸収量が増加し、波長変換素子内の基本波光路とTMの温度差が増加するため、波長変換素子内の基本波光路における温度低下量はTMの温度低下量に比べて小さくなる。
このため、TMが変動する幅に比べて、波長変換素子内の基本波光路の温度が変動する幅が狭くなる。
例えば、ΔT=0のときに必要な基本波光量の1.5倍まで発振可能な基本波光源を用いる場合、熱抵抗調節材2401を備えない波長変換レーザ光源では、ΔT=0.7℃付近から−0.7℃の範囲で光量一定制御が可能となるが、熱抵抗調節材2401を備えるレーザ光源の例では、ΔTが1℃付近から−1.9℃の範囲で光量一定制御が可能となる。
ここで、ΔT許容範囲を拡大する方法としては、波長変換素子の素子長を短くする方法があるが、この場合、基本波光から波長変換光への波長変換効率が大きく低下してしまう。
これに対し、本実施の形態の構成では、波長変換効率の大幅な低下を招くことなく、ΔT許容範囲拡大効果が大きい点で、素子長を短くする方法より好ましい。このため、より低消費電力の波長変換レーザ光源を実現することができる。
本実施の形態の構成において、サーミスタと基本波光路との間の熱抵抗を増加させることが好ましい。
なお、サーミスタと基本波光路との間の温度差を拡大する方法としては、熱抵抗調節材2401の熱伝導率をより低い値とする、熱抵抗調節材2401を厚くする、波長変換素子1604内の基本波光1602の吸収率を高くする等の方法が挙げられる。
この場合、サーミスタと基本波光路との間の温度差を拡大することができるため、図24に示すように、左曲線2601aと右曲線2601bとのΔTに対する基本波光量の傾きを共に負とすることができる。
また、ΔTを一定とする場合、同一の波長変換光量が得られる基本波光量の値が、2つ以上となるΔTを有することが好ましい。このように、左曲線2601aと右曲線2601bのΔTに対する基本波量の傾きを共に負とすることが可能となる。
特に、例えば、基本波光源としてファブリーペロー型の半導体レーザ共振器や固体レーザなどを用いた場合、基本波光の発振波長が瞬間的シフトし、左曲線2601aから右曲線2601bに移ってしまうことがある。しかしながら、本実施の形態の構成では、ΔTの増減と基本波光量の増減の傾きが共に負となるため、温度の制御が暴走することを抑制することができる。
さらに、サーミスタと基本波光路との間の熱抵抗を増加させることにより、図25に一点破線2701で示すように、ΔTに対する基本波光量の増減の傾きをさらに緩やかにすることができる。
基本波光源の最大光量が、ΔT=0のときに必要な基本波光量の1.5倍とすると、図25に示す例では、基本波光路とサーミスタの間に熱抵抗調節材2401を備えない構成におけるΔT許容幅2702aが約1.4℃であるのに対して、熱抵抗調節材2401を備えた場合、ΔT許容幅2702bは約8.9℃と拡大できている。ここで、基本波光吸収による発熱量を増やし、サーミスタと基本波光路の間の熱抵抗をさらに拡大すれば、より許容幅を拡大することができることは言うまでもない。
また、図25に示すように、熱抵抗調節材2401を備えない場合の温度許容幅2702aは、熱抵抗調節材2401を備える場合に、基本波光量を最大(一定)として、所望の波長変換光量が得られるΔTの差2702cと一致する。このため、このΔTの差2702cよりΔT許容幅2702bが広くなるように、熱抵抗調節材2401の熱抵抗を調節することが好ましい。
熱抵抗調節材2401は、熱伝導率[W/m/K]を厚み(波長変換素子とサーミスタの距離)[m]で割った値が15×104以下となることが好ましい。
この場合、少なくとも本実施の形態に係る熱抵抗調節材を備えた構成による効果が得られ、温度特性を非対称とすることが可能となる。このため、制御Dを実行する際に、出力が不安定となる問題を抑制することができる。
また、熱抵抗調節材2401は、熱伝導率[W/m/K]を厚み(波長変換素子とサーミスタの距離)[m]で割った値が5×104以下となることが好ましい。
この場合、基本波光の発振波長が瞬間的にシフトし、左の曲線から右の曲線に移ってしまうことがあっても、ΔTの増減と基本波光量の増減の傾きが共に負となるため、温度の制御が暴走することを抑制することができる。
波長変換レーザ光源2400では、波長変換素子の温度変化に対して光量一定時に必要な励起光量が、レーザ光源1600における光量一定時に必要な基本波光の光量(図18、図19)と同様に変化する。このため、基本波光量の代わりに、本実施の形態では励起光量を制御することで、同様の制御が可能となる。つまり、ΔTの変化に伴って増減する励起光量をモニターすることで、実施の形態2に示した内部共振器型波長変換光源の構成においても、光量一定制御をかけながら波長変換素子の温度制御を行う事ができる。
また、本実施の形態に係る他の波長変換レーザ光源の構成について図26を参照し以下に説明する。
本波長変換レーザ光源2800は、波長変換素子1604が熱抵抗調節材2401を介して波長変換レーザ光源2800内に設置される構成とし、サーミスタやペルチェ素子等温度調節手段を省いている。
図26の構成において、波長変換レーザ光源2800の外部温度を「T」とし、波長変換効率が最大となる波長変換レーザ光源2800の温度を「T0」としている。また、先に、図16の構成を用いた場合に示したTMやTM0を、それぞれTやT0に置き換え、TとT0との差をΔTとすることで、図16の構成と同様に、制御C及び制御Dを行うことができる。
本波長変換レーザ光源2800の場合も、ΔTの変化に対し、出力を一定にするために必要な基本波光量は、図21に示した物と同じ特性を示す。また、熱抵抗調節材2401を用いることで、図23ないし図25に示す特性となる。つまり、レーザ光源の温度が低下しても、基本波光量を増加させ、レーザ光源に対して基本波光路の温度を上昇させることで、基本波光路の温度低下を大幅に軽減させる構成となっている。
これにより、温度調節手段を省き、レーザ光源温度(現在値)が、例えば、0℃〜60℃と大きな範囲で変化しても、光量一定制御が可能な波長変換レーザ光源を実現することができる。
本実施の形態の構成で基本波光路とサーミスタの間の熱抵抗を増加させて、温度差を拡大することによって、図27に示すように、サーミスタ温度許容幅を従来に比べて大幅に拡大させることが可能となることを示している。これは、サーミスタで計測している位置の温度が低下しても、基本波光を増加させて、サーミスタに対して基本波光路の温度を上昇させることで、基本波光路の温度低下を大幅に軽減することができるからである。同様に本実施の形態では、レーザ光源の温度が低下しても、基本波光量を増加させ、レーザ光源に対して基本波光路の温度を上昇させることで、基本波光路の温度低下を大幅に軽減できる。
すなわち、本実施の形態では、波長変換効率が最大となるサーミスタ温度と、サーミスタでモニターした温度との差をΔTとし、熱抵抗調節材2401を用いた基本波光路とレーザ光源との間の熱抵抗を調節することで、図25ないし図27で示す関係を満たすことが可能となる。
例えば、波長変換レーザ光源2800の外部温度が60℃のとき、波長変換レーザ光源2800の外部温度と基本波光路の温度差が120℃となるように、発熱量と両者間の熱抵抗と波長変換素子の変換効率が最大となる温度を設計する。この設計により、波長変換レーザ光源2800の外部温度が0℃の場合も、基本波光量を波長変換効率が最大となる時の1.5倍となり、波長変換レーザ光源2800の外部温度と基本波光路との温度差が180℃となる。つまり、波長変換レーザ光源2800の外部温度が0℃から60℃まで変動しても、波長変換素子の温度は、180℃で、ほぼ一定とすることができる。
図29に示すように、本実施の形態に係るレーザ光源2900では、波長変換素子2305は、熱抵抗調節材2401を挟んで、直接レーザ光源2900に設置されている構成とする。
また、内部共振器構成の場合で示したTMとTM0とを、本実施の形態では、TとT0とに置き換えることで、本実施の形態と同様の効果が得られる。つまり、本実施の形態では、TとT0と差をΔTとし、熱抵抗調節材2401を用いた基本波光路とレーザ光源の間の熱抵抗を調節することで、図23ないし図25で示す関係を満たす構成となっている。
また、本実施の形態では、熱抵抗調節材と波長変換素子の間に伝熱材(熱伝導率が大きな物質。例えば、金属:アルミ(237W/m/K)、銅(390W/m/K)、銀(420W/m/K)など)を備えることで、熱抵抗調節材と波長変換素子との接触面積を大きくすることができ接触熱抵抗の個体ばらつきの影響が低減することが可能となる。その結果、波長変換素子とサーミスタ間の熱抵抗の個体ばらつきも軽減できる。
サーミスタと熱抵抗調節材との間に伝熱材を備えることで、さらに、波長変換素子とサーミスタとの間の熱抵抗の個体ばらつきを軽減することが可能となる。波長変換効率が最大となるサーミスタ温度の個体ばらつきを抑制することが可能となり、波長変換レーザ光源の歩留まりの向上及び信頼性の向上を図ることができる。この結果、サーミスタ又は波長変換素子と熱抵抗調節材との間に伝熱材を設けた構造とすることが好ましい。
以上、光量一定制御を行う波長変換レーザ光源について、熱抵抗調節材を波長変換素子とサーミスタ、又は波長変換素子と波長変換レーザ光源の筐体との間に設置することによる効果について示した。しかしながら、本実施の形態に係る波長変換素子とサーミスタやレーザ光源の間に熱抵抗調節材を備える構成は、上記の構成に限らず、同様の構成の波長変換レーザ光源で入力一定制御を行う場合にも適用することができる。
以下に、その効果を示す。
図27は、従来の波長変換レーザ光源で入力一定制御を行った場合における、ΔTに対する波長変換光量を示す。図27中の3001、3002、3003は基本波光量(又は励起光量:以下、投入光量と呼ぶ)をパラメータとした波長変換光量のプロット図である。波長変換光量が1以上となる最小の投入光量(以降、最小光量とする)としたときのΔTと波長変換光量の関係を実線3001で示し、最小光量の1.1倍としたときについて破線3002で示し、最小光量の1.2倍としたときについて、点線3003で示す。
図27に示すように、従来の波長変換レーザ光源では、例えば、波長変換光量を1以上得ることが可能なΔTの範囲(3004)は、投入光量が最大の時、つまり点線3003で示す曲線は波長変換光量が1以上となる範囲と一致し、1℃(0.5℃〜−0.5℃)程度となる。
これに対して、図28は、波長変換素子とサーミスタとの間、又は波長変換素子と波長変換レーザ光源の筐体との間に熱抵抗調節材2401を備える波長変換レーザ光源で、入力一定制御を行った場合のΔTに対する波長変換光量を示したプロット図である。
図28中、実線3101は、投入光量が最小光量のときのΔTと波長変換光量との関係を示している。破線3102は、投入光量が最小光量の1.1倍のときのΔTと波長変換光量との関係を示している。点線3103は、投入光量が最小光量の1.2倍のときのΔTと波長変換光量との関係を示している。
投入光量を増加させると、波長変換素子とサーミスタ又は波長変換レーザ光源の筐体との間の温度差が増加する。
このため、図28に示すように、投入光量が大きいほど、波長変換効率が最大となる温度は低温側にシフトする。その結果、熱抵抗調節材を備えた波長変換レーザ光源では、図28に示す波長変換光量が1以上となるΔTの範囲3104は、1.6℃(0.1℃〜−1.5℃)程度と従来の波長変換レーザ光源に比べて、1.6倍ほど拡大できていることがわかる。
つまり、図28に示すように、あるΔTにおいて、投入光量がより大きな点線3103より、投入光量がより小さな破線3102の方が、波長変換光量が大きくなる。
同様に、別のΔTにおいて、破線3102より点線3101の方が、波長変換光量が大きくなるように、熱抵抗調節材2401を、波長変換素子とサーミスタとの間、又は波長変換素子とレーザ光源との間に設け、熱抵抗を調節することが好ましい。この場合、波長変換素子とサーミスタとの間、又は波長変換素子と波長変換レーザ光源の筐体との間の温度差が大きくなるため、所定の光量以上の波長変換光量が得られるΔTの範囲を大きくすることができる。つまり、より広い温度範囲で平均出力を一定にすることができる。
さらに、入力一定制御を用いながら、ある一定以上の光量が必要となる場合、上述のような効果を発揮する波長変換レーザ光源は低コスト化が実現可能となるため、レーザポインタなどに好適に用いることができる。
また、1以上の波長変換光量が得られる場合、パルス駆動させることが好ましい。
この場合、ピーク光量が1以上であっても、波長変換光の平均光量が1となるようにパルスDuty(パルス発振時間/パルス周期)を調節することが可能となる。
レーザポインタや画像表示装置に用いる場合は、人間の目で出力のチラツキが視認できないように、高速でパルス駆動させることが望ましく、少なくとも60Hz以上の周期であることが好ましい。この場合、広い温度範囲で平均出力が一定の波長変換レーザ光源を実現することが可能となる。
以上の制御方法を採用することで、広い温度範囲で平均出力を一定にすることができる。このため、基本波光の出力マージン(入力電流値のマージン)を小さくすることができ、簡便な制御で波長変換レーザ光源の小型化及び低消費電力化できる。
(実施の形態4)
本発明の他の実施の形態について、図30ないし図32を参照し、以下に説明する。
図30は、第1ないし第3の実施の形態で提案しているレーザを光源に用いたプロジェクタシステムの光学エンジン模式図を示している。本実施の形態に係る2次元画像表示装置1700は、液晶3板式プロジェクタの光学エンジンに、第1ないし第3の各実施の形態の波長変換レーザ光源を適用させた一例である。図31は、第1ないし第3の各実施の形態の波長変換レーザ光源を適用させた液晶ディスプレイの構成例を示す模式図である。図32は、第1ないし第3の各実施の形態の波長変換レーザ光源を適用させたファイバ付きレーザ光源の構成例を示す模式図である。
2次元画像表示装置1700は、画像処理部1702と、レーザ出力コントローラ(コントローラ)1703、LD電源1704、赤色、緑色、青色レーザ光源1705R、1705G、1705B、ビーム形成ロッドレンズ1706R、1706G、1706B、リレーレンズ1707R、1707G、1707B、折り返しミラー1708G、1708B、画像を表示させるための2次元変調素子1709R、1709G、1709B、偏光子1710R、1710G、1710B、合波プリズム1711、および投影レンズ1712を含んでいる。
緑色レーザ光源1705Gは、グリーン光源の出力をコントロールするレーザ出力コントローラ1703およびLD電源1704で制御される。
各光源(赤色、緑色、青色レーザ光源1705R、1705G、1705B)からのレーザ光は、ビーム形成ロッドレンズ1706R、1706G、1706Bにより、矩形に整形され、その後リレーレンズ1707R、1707G、1707Bを通して各色の2次元変調素子1709R、1709G、1709Bを照明する。そして、2次元に変調された各色の画像を合波プリズム1711で合成し、投影レンズ1712よりスクリーン上に投影することにより映像を表示する。
また、緑色レーザ光源1705Gは、レーザ共振器をファイバ内に閉じた系とする。これにより、外部からの塵あるいは反射面のミスアライメントなどで共振器の損失が増加することによる出力の経時低下・出力変動を抑制することができる。
画像処理部1702は、TV、ビデオ装置、PC等から入力される映像信号1701の輝度情報に応じてレーザ光の出力を変動させる光量制御信号を発生し、当該光量制御信号をレーザ出力コントローラ1703に送出する役割を果たしている。このように輝度情報に応じて光量を制御することにより、コントラストを向上することが可能となる。
この際、レーザ出力コントローラ1703は、レーザをパルス駆動し、レーザの点灯時間のデューティー比(点灯時間/(点灯時間+非点灯時間)の値)を変化させることにより平均的な光量を変化させるような制御方法(PWM制御)を取ることもできる。
また、このプロジェクタシステムに用いられる緑光源の波長は510nmから550nmの緑色レーザ光を出射する構成としてもよい。この構成により、視感度の高い緑色のレーザ出力光を得ることができ、色再現性の良いディスプレイとして、さらに原色に近い色表現をすることができる。
また、本実施の形態の2次元画像表示装置は、スクリーンと、複数のレーザ光源と、レーザ光源を走査する走査部とを備え、レーザ光源は、少なくとも赤色、緑色及び青色をそれぞれ出射する光源を用いた構成からなり、レーザ光源のうち、少なくとも緑色の光源は上記の第1ないし第3の実施の形態で示したいずれかの波長変換レーザ光源を用いた構成としてもよい。
この構成により、視感度の高い緑色のレーザ出力光を得ることができるので、色再現性の良いディスプレイ等に使用して、さらに原色に近い色表現をすることができる。
なお、このようなスクリーンの背後から投影する形態(リアプロジェクションディスプレイ:図30)のほかに、前方投影型構成の2次元画像表示装置の形態をとることも可能である。
なお、空間変調素子には、透過型液晶あるいは反射型液晶、ガルバノミラーやDMD(Digital Mirror Device)に代表されるメカニカルマイクロスイッチMEMS(Micro Electro Mechanical System)などを用いた2次元変調素子を用いることももちろん可能である。
なお、本実施の形態のように反射型空間変調素子やMEMS、ガルバノミラーといった光変調特性に対する偏光成分の影響が少ない光変調素子において、高調波を光ファイバで伝搬する際は、PANDAファイバ(Polarization Maintaining and Absorption Reducing) Fiberなどの偏波保持ファイバである必要はない。しかしながら、液晶を用いた2次元変調デバイスを使用する際には、変調特性と偏光特性が大いに関係するため、偏波保持ファイバを使用することが好ましい。
また、図31A及び図31Bに示すように、レーザを光源としたディスプレイの一形態として、レーザ光源1802と制御部1803、レーザ光源を点光源から線光源に変換する導光部材1804、線光源から面光源に変換し、液晶パネル全面を照明するための導光板部材1808、偏光方向をそろえたり照明ムラを除去したりするためのもの偏光板・拡散部材1809、および液晶パネル1810等を含む液晶ディスプレイ1800を実現することも可能である。つまり、第1・第2・第3の実施の形態で示した波長変換レーザ光源を液晶ディスプレイのバックライト光源として使用することができる。
また、図32に示すように、第1ないし第3の実施の形態で示した本発明の波長変換レーザ光源を備えたレーザ装置を、手術用のファイバ付きレーザ光源1900として使用することも可能である。この手術用のファイバ付きレーザ光源1900は、レーザ光源、レーザ光源からの出力を制御する制御部、出力を設定する出力設定部1902、レーザ光源を出力させる出力コネクタ1903、レーザ光を照射したい領域へ導くデリバリファイバ1904、およびハンドピース1905などを備えている。
以上のような、レーザディスプレイ(画像表示装置)、レーザ液晶バックライトあるいは手術用のレーザ光源に本願の波長変換レーザ光源を適用することにより、光源の出力制御安定性を向上させることができ、機器の動作温度拡大や信頼性向上という効果を得ることができる。
なお、本願発明の各実施形態に示す構成は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形をしても構わない。
各実施形態で使用した波長変換素子として、周期分極反転構造を有する、擬似位相整合LiNbO3素子を使用しているが、本実施の形態はこれに限らず、基本構造に酸素八面体構造を持つLiTaO3やKTiOPO4結晶に周期分極反転構造を形成した擬似位相整合波長変換素子を使用しても良く、一般的に行われているこれらの結晶系にMgやCe等を添加して光屈折率変化を抑制した結晶基板を使用した素子を用いても良い。
周期分極反転構造を形成した擬似位相整合波長変換素子は、入射する基本波の偏光方向と出射する高調波の偏光方向が一致するが、波長変換素子の温度や基本波波長の変動に敏感であるため、本願で提案した構成・制御方法を採用することで、各構成要素に対する外乱による出力変化を検出し・要素毎に制御することができるため、高調波出力の時間安定性を向上させるより大きな効果を得ることができる。
なお、本願発明の各実施形態で使用したニオブ酸リチウムおよびタンタル酸リチウム系結晶に加えて、リン酸チタニルカリウム(KTiOPO4:KTP)結晶など基本構造に酸素八面体構造を有する非線形光学結晶は、分極反転構造を形成することが可能で、可視光に対する吸収率は0.01cm-1以上と大きいものの、赤外光に対する吸収率は0.002cm-1から0.004cm-1程度と低い。
実施の形態1ないし4の光量一定制御をかけたレーザ光源の構成では、可視光である第2高調波の光量は一定であり、吸収量も一定となるため、第2高調波の吸収による発熱によって、本発明の効果を得ることができない。そのため、赤外光の吸収率を高めた材料とすることが好ましい。これにより波長変換素子内基本波光路とサーミスタ間の温度差が大きくなり、ΔT許容範囲はより大きくなる。ΔT許容範囲が数十℃程度と広い場合は、波長変換素子の温調手段(実施の形態1,2ではサーミスタ206、ペルチェ205、温度制御回路102、813を示す)を省き、温調フリーのレーザ光源とすることも可能となる。また、基本波光路部分の加熱・冷却を、より高速に調節することが可能となるため、温度が安定し、出力する波長が安定したレーザ光源を実現することが可能となる。このため、本レーザ光源を用いることにより、色ずれのない画像表示装置や、波長ずれによる計測誤差が少ない計測装置を実現することが可能となる。非線形光学結晶に分極反転構造を形成した(擬似位相整合)波長変換素子は分極反転壁(分極方向が入れ替わる境界)が露出する分極方向と交わる面に非絶縁体を設置して、ヒートサイクルを実施すると赤外光(波長800nm〜1800nm)の吸収率が増加することが我々の独自調査により分かった。
例えば、ニオブ酸リチウム系の擬似位相整合波長変換素子の場合、分極方向と交わる面の被覆を、導電性コート材、電気抵抗率1×108Ω・cmのコート材A、電気抵抗率2×1011Ω・cmのコート材B、RFスパッタによるSiO2膜、CVDによって形成したSiO2膜として、それぞれ0〜80℃のヒートサイクルを100サイクル実施することで、表1に示すように、電気抵抗率1×108Ω・cm以下の非絶縁体コートで被覆した場合、ヒートサイクルを行うことによって赤外光の吸収率が増加することが分かる。また、RFスパッタによるSiO2膜の場合も、DCドリフトが発生し、赤外光の吸収率を増加させる効果を有することがわかる。また、ヒートサイクルについては、100サイクル以下であっても、赤外光吸収を増加させる作用がある。この結果、より広い温度範囲で平均出力を一定にする事ができるという効果がある。
酸素八面体構造を有する非線形光学結晶において赤外光吸収を増加させる方法としては、添加物を添加するなどの他の方法もあるが、擬似位相整合波長変換素子作製に不可欠な周期的分極反転構造の均一性が劣るため本実施の形態で提案する方法を採用するのが好ましい。本実施の形態の赤外光の吸収率を増加させる方法は、周期的分極反転構造を形成し擬似位相整合波長変換素子となった状態で、赤外光の吸収率を増加させる処理を行うことが可能となるため、分極反転構造の形成が容易であり、より好ましい方法である。
以上のように、本発明の一局面に係る波長変換レーザ光源は、基本波光を出射する基本波光源と、非線形光学効果を有し、前記基本波光を異なる波長の高調波光に変換する波長変換素子と、前記基本波光源から出射される基本波光に含まれる特定の偏光方向の光を受光してその光量を電気信号に変換する第1の受光器と、前記波長変換素子から出力される高調波光を受光してその光量を電気信号に変換するする第2の受光器と、前記波長変換素子の温度を一定に保持する温度保持部と、前記第2の受光器からの電気信号に基づいて前記基本波光源から出射される基本波光の光量を制御する第1の制御、および、前記第1の受光器からの電気信号に基づいて前記基本波光の光量を制御する第2の制御をそれぞれ行う基本波制御部と、前記第2の受光器からの電気信号に基づいて前記温度保持部の保持温度を制御する第3の制御を行う温度制御部と、を備えている。
本願発明者らの研究の結果、基本波光の偏光成分の変化が高調波光の出力の変動に大きく影響することが、今回初めて明らかとなった。そこで、本波長変換レーザ光源は、基本波光源から出射される基本波光に含まれる特定の偏光方向の光を第1の受光器で受光してその光量を電気信号に変換し、当該電気信号に基づいて、基本波光源から出射される基本波光の光量または波長を基本波制御部が制御する構成となっている。これにより、基本波光の偏光成分の変化に応じた基本波光の調整が適切に行えるので、安定して効率のよい波長変換を行うことが可能な波長変換レーザ光源を実現できる。
さらに、高調波光の光量を第2の受光器で受光して基本波光の光量をフィードバック制御し、高調波光を安定化させる第1の制御を行っている。また、基本波光に含まれる特定の偏光方向の光を第1の受光器で受光して基本波光の光量をフィードバック制御し、波長変換に寄与する偏光方向の基本波を安定させる第2の制御を行っている。これにより、高調波光のさらなる安定化を図っている。さらに、高調波光の光量を第2の受光器で受光して温度保持部の保持温度をフィードバック制御し、波長変換素子の温度を基本波の波長の変化に適切に対応させる第3の制御を行っている。このように、第1ないし第3の制御を実行することにより、安定して効率のよい波長変換を行うことが可能な波長変換レーザ光源を実現できる。
上記の構成において、前記第1の制御の実施タイミングと、前記第2の制御および前記第3の制御の実施タイミングとが重複しないように、前記第1ないし第3の制御が前記基本波制御部および前記温度制御部により間欠的に実施されることが好ましい。
第1の制御は、第2の制御および第3の制御に比べて短時間で制御が可能である。特に、第3の制御では、温度という時定数が大きなパラメータを制御に使用するので、第1の制御に比して制御に要する時間が長くかかる。そこで、上記の構成のように、第1の制御の実施タイミングと、第2の制御および第3の制御の実施タイミングとが重複しないような時分割の制御を間欠的に実施する。これにより、第1の制御のタイミングにおいて高調波光の光量を基準として基本波光の光量を適切に制御しながら、前記第1の制御の実施タイミングと重複しないタイミングで波長変換に寄与する偏光方向の基本波を安定させると共に(第2の制御)、波長変換素子の温度を基本波光の波長変動に応じて調整することができる(第3の制御)。よって、さらに安定して効率のよい波長変換を行うことが可能な波長変換レーザ光源を実現できる。
上記の構成において、前記温度制御部は、前記波長変換素子の温度を計測する温度計測部と、前記温度計測部からの計測信号に基づいて、前記温度保持部に電流を供給し、前記温度保持部の保持温度を一定に制御する温度コントローラと、を含んでいることが好ましい。
上記の構成のように温度制御部を構成することにより、第3の制御を的確に行うことができる。
上記の構成において、前記温度コントローラは、中心温度Tc(℃)を中心にして±Δt(℃)でウォブリングすることによって、前記温度保持部の保持温度を調整するものであり、前記波長変換素子の温度がTc+Δt(℃)、Tc(℃)およびTc−Δt(℃)のときの前記高調波光の光量をそれぞれP(Tc+Δt)、P(Tc)およびP(Tc−Δt)としたとき、P(Tc−Δt)<P(Tc)<P(Tc+Δt)の場合はTcを上昇させ、P(Tc+Δt)<P(Tc)>P(Tc−Δt)の場合はTcを維持させ、P(Tc−Δt)>P(Tc)>P(Tc+Δt)の場合はTcを低下させるよう、前記温度保持部に電流を供給することが好ましい。
上記の構成のように温度コントローラがウォブリングを行うことにより、第3の制御を容易かつ的確に行うことができる。
上記の構成において、前記温度コントローラがウォブリングを行う前記Δtの範囲は、0.1℃〜0.2℃であることが好ましい。
この場合、温度コントローラが適切なウォブリングを行うことができる。
上記の構成において、前記温度コントローラによる前記ウォブリングの周期が、5秒〜10秒であることが好ましい。
この場合、温度コントローラが適切なウォブリングを行うことができる。
上記の構成において、前記波長変換素子から出力される高調波光を受光してその光量を電気信号に変換するする第2の受光器と、前記波長変換素子の温度を一定に保持する温度保持部と、をさらに含み、前記基本波制御部は、前記第2の受光器からの電気信号に基づいて前記基本波光源から出射される基本波光の光量を制御する第1の制御、前記第1の受光器からの電気信号に基づいて前記基本波光の光量を制御する第2の制御、および前記第2の受光器からの電気信号に基づいて基本波光の波長を制御する第3の制御をそれぞれ行う構成とすることが好ましい。
上記の構成によれば、高調波光の光量を第2の受光器で受光して基本波光の光量をフィードバック制御し、高調波光を安定化させる第1の制御を行っている。また、基本波光に含まれる特定の偏光方向の光を第1の受光器で受光して基本波光の光量をフィードバック制御し、波長変換に寄与する偏光方向の基本波を安定させる第2の制御を行っている。これにより、高調波光のさらなる安定化を図っている。さらに、基本波光の波長が変化することによって、一定温度に保持されている波長変換素子の温度に最適な基本波光の波長からずれた場合に対応できるように第3の制御を行っている。すなわち、高調波光の光量を第2の受光器で受光して基本波光の波長をフィードバック制御し、基本波光の波長を安定させる第3の制御を行っている。このように、第1ないし第3の制御を実行することにより、安定して効率のよい波長変換を行うことが可能な波長変換レーザ光源を実現できる。
上記の構成において、前記基本波制御部は、前記第1の制御の実施タイミングと、前記第2の制御および前記第3の制御の実施タイミングとが重複しないように、前記第1ないし第3の制御を間欠的に実施することが好ましい。
上記の構成のように、前記第1の制御の実施タイミングと、前記第2の制御および前記第3の制御の実施タイミングとが重複しないような時分割の制御を間欠的に実施することにより、第1の制御のタイミングにおいて高調波光の光量を基準として基本波光の光量を適切に制御しながら、前記第1の制御の実施タイミングと重複しないタイミングで波長変換に寄与する偏光方向の基本波を安定させると共に(第2の制御)、基本波光の波長を安定させることができる(第3の制御)。これにより、さらに安定して効率のよい波長変換を行うことが可能な波長変換レーザ光源を実現できる。
上記の構成において、前記基本波光源は、励起光を発する半導体レーザと、前記半導体レーザから発せられた励起光を吸収し、前記基本波光を発するダブルクラッド希土類添加ファイバと、前記ダブルクラッド希土類添加ファイバの両端に配置され、当該基本波光源から発せられる前記基本波光の波長を決定する、狭反射帯域のファイバグレーティングおよび広反射帯域のファイバグレーティングと、前記狭反射帯域のファイバグレーティングに応力を付加するアクチュエータと、を含み、前記アクチュエータが前記狭反射帯域のファイバグレーティングに与える応力により前記基本波光の波長が変化する構成とすることが好ましい。
この場合、上記構成の基本波光源を用いることにより、第3の制御を容易かつ的確に行うことができる。
上記の構成において、前記基本波光源は、分布帰還ミラー部を含む分布帰還型半導体レーザ光源であり、前記分布帰還ミラー部へ投入する電流を変化させることにより、前記基本波光の波長が変化する構成とすることが好ましい。
この場合、上記構成の基本波光源を用いることにより、第3の制御を容易かつ的確に行うことができる。
上記の構成において、前記基本波光源は、分布帰還ミラー部を有し、前記基本波光の元となる光を発生する分布帰還型半導体レーザ光源と、励起光を発する励起光源と、前記励起光を吸収することで前記分布帰還型半導体レーザ光源が発する光の強度を増幅させるレーザ媒質と、を含み、前記分布帰還ミラー部へ投入する電流を変化させることで、前記基本波光の波長が変化する構成とすることが好ましい。
上記構成の基本波光源を用いることにより、第3の制御を容易かつ的確に行うことができる。
上記の構成において、前記温度保持部の保持温度を制御する温度制御部をさらに含み、前記温度制御部は、前記波長変換素子の温度を計測する温度計測部と、前記温度計測部からの計測信号に基づいて、前記温度保持部に電流を供給し、前記温度保持部の保持温度を一定に制御する温度コントローラと、を備えていることが好ましい。
この場合、波長変換素子の温度を確実に一定に保持することができる。
上記の構成において、前記波長変換素子の温度と前記温度計測部で計測される温度との間に差を設けるための熱抵抗調節材が、前記波長変換素子と前記温度計測部との間に設けられていることが好ましい。
この場合、波長変換レーザ光源の外部温度の変化に対応できる許容範囲を広げることができる。
上記の構成において、前記熱抵抗調節材と、前記波長変換素子、前記波長変換レーザ光源の筐体、または前記温度計測部と、の間に、部材間の接触熱抵抗を均一にするための伝熱材が設けられていることが好ましい。
この場合、波長変換レーザ光源の外部温度の変化に対応できる許容範囲を広げることができる。
この場合、熱抵抗調節材と波長変換素子との接触面積を大きくすることができ接触熱抵抗の個体ばらつきの影響を低減することができる。
上記の構成において、前記波長変換素子は、基本構造に酸素八面体構造を主とする光学結晶からなり、前記光学結晶には、前記基本波光と前記高調波光との位相を整合させるための周期的分極反転構造が形成されていることが好ましい。
上記構成の波長変換素子は、本波長変換レーザ光源に最適である。
上記の構成において、前記波長変換素子は、前記周期的分極反転構造の分極方向と直交する面が電気抵抗率1×108Ω・cm以上の被覆材で覆われていることが好ましい。
この場合、上記構成の被覆材で覆われた波長変換素子は、赤外光の吸収率が高まり、波長変換素子の基本波光路部分の温度調節が容易となる。
上記の構成において、前記第1の受光器から出力される電気信号の位相と前記第2の受光器から出力される電気信号の位相とが同期しているときには前記第2の制御が選択的に実行される一方、前記第1の受光器から出力される電気信号の位相と前記第2の受光器から出力される電気信号の位相とが非同期のときには前記第3の制御が選択的に実行されることが好ましい。
上記構成のように、前記第1の受光器から出力される電気信号の位相と前記第2の受光器から出力される電気信号の位相とが同期しているか否かにより、第2の制御と第3の制御とを選択的に実行することにより、適切な制御が可能である。すなわち、上記の両位相が同期している場合には、高調波光の出力変動の要因は基本波光源にあると予測できるので、波長変換に寄与する偏光方向の基本波を安定させる第2の制御が効果的である。一方、上記の両位相が非同期の場合には、高調波光の出力変動の要因は波長変換素子の温度に適した基本波光の波長になっていないことにあると予測できるので、波長変換素子の温度を調整するか又は基本波光の波長を調整する第3の制御が効果的である。上記構成の制御により、さらに安定して効率のよい波長変換を行うことが可能な波長変換レーザ光源を実現できる。
本発明の他の局面に係るプロジェクションディスプレイ装置は、上記の何れかの構成の波長変換レーザ光源と、前記波長変換レーザ光源から発せられた前記高調波光を受けて画像を形成する2次元光変調素子と、前記2次元変調素子で形成された画像を投影する投影レンズと、を備えている。
上記の構成によれば、安定して効率のよい波長変換を行うことが可能な上記の波長変換レーザ光源を用いることによって、高画質で低消費電力のプロジェクションディスプレイ装置を実現できる。
本発明の他の局面に係る液晶ディスプレイ装置は、上記の何れかの構成の波長変換レーザ光源と、前記光源ユニットから発せられた光を受けて画像を形成する液晶パネルと、を備えている。
上記の構成によれば、安定して効率のよい波長変換を行うことが可能な上記の波長変換レーザ光源を用いることによって、高画質で低消費電力の液晶ディスプレイ装置を実現できる。
本発明の他の局面に係るレーザ光源は、上記の何れかの構成の波長変換レーザ光源と、前記波長変換レーザ光源から出力された前記高調波光を照射対象領域へ導くデリバリファイバと、を備えている。
上記の構成によれば、安定して効率のよい波長変換を行うことが可能な上記の波長変換レーザ光源を用いることによって、信頼性の高い低消費電力のファイバ付きレーザ光源を実現できる。
本願発明の波長変換レーザ光源は、基本波の偏光特性や発振波長が変化しやすい基本波光源を備えた波長変換レーザ光源に有益であり、色再現性が高いレーザディスプレイ装置などに適応することが可能となる。
なお、発明の詳細な説明の項においてなされた具体的な実施態様または実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなく、本発明の精神と次に記載する特許請求事項との範囲内で、種々変更して実施することができるものである。