JPWO2009133951A1 - 抗汗抗原モノクローナル抗体 - Google Patents

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Abstract

【課題】汗に含まれる抗原物質によるヒスタミン遊離活性を抑制する抗体の提供。【解決手段】汗抗原組成物と反応し、かつ、該組成物による汗抗原刺激応答細胞からのヒスタミン遊離活性を抑制することができる抗体。

Description

本発明は、汗抗原組成物に対するモノクローナル抗体に関する。本発明はまた、該抗体を用いる判定方法、並びに該抗体を含んでなる医薬組成物、診断剤、および診断用キットに関する。本発明はさらに、該抗体を生産することができるハイブリドーマ並びに該ハイブリドーマのスクリーニング方法および製造方法に関する。
近年、アトピー性皮膚炎患者は急増しており、皮膚科にかかる患者中のアトピー性皮膚炎患者比率は30%を越える情況で、主たる皮膚病の一つになっている。アトピー性皮膚炎は、通常の抗原に対しIgE抗体を産生しやすい遺伝的要因に種々の環境因子が加わることにより引き起こされるアトピー性疾患の一つであり、乳児期から発症し、加齢と共に慢性的に経過し、多くは思春期前に軽快するが、一部の症例は思春期以降も継続し、また思春期以降発症する例もある。成人症例のほとんどは特に難治であり、それ以降の加齢による寛解は期待しがたい。完成した病巣は苔癬化し、掻痒は著しく、しばしば発作的であり、他のアトピー性疾患と一定の関連をもって増悪、軽快を繰り返すというものである。
このようなアトピー性皮膚炎の発症機序には明らかにされていない部分が多く、他の皮膚疾患との識別にもいまだ問題があり、治療方法はいまだ確立されていないが、従来より、副腎皮質ホルモン剤の外用、抗ヒスタミン剤、化学伝達物質遊離抑制剤の投薬療法、あるいは食材から卵、牛乳、大豆等を除く食事療法、生活環境からのダニ、真菌(カビ)などの抗原物質の除去などが試みられてきた。しかしながら薬物療法の場合は、薬剤を成長期の子供に、しかも長期にわたって使用することになるため、副作用の点で問題が残る。
また食事療法や環境抗原除去対策では、完全に抗原を除くことは困難であり、精神的負担も大きいという問題点があった。
このような状況に鑑み、最近では、分子生物学的な知見を駆使してアトピー性皮膚炎の発症機構を解明しながら、その発生機構の一部を阻害することにより治療効果を上げようとする研究が行われている。例えば、上記したように抗原に対してIgE抗体を産生することが症状を発生させる機構の一部になっていることに着目し、抗原に対するIgE抗体の産生を抑制する物質を外用することによって症状を緩和する方法が提案されている(特開平7−109290号公報、特開平7−109292号公報、特開平9−100236号公報)。
ところで、これまでに、汗に含まれ、かつアトピー性皮膚炎を誘引する抗原物質が報告されている(WO 03/084991 A1、特許第3983260号、平成14年度厚生労働科学研究費補助金 免疫アレルギー疾患予防・治療等研究事業の研究報告書(第1分冊p.101−103,厚生労働省 平成15年3月発行))。しかし、該抗原物質は同定されておらず、該抗原物質が誘引するヒスタミン遊離活性を抑制する抗体も報告されていない。
本発明者らはこれまでに、ヒト汗から調製した組成物を用いて抗体の取得を試みたが、ヒト汗に含まれるヒスタミン遊離活性化物質に結合し、かつ、好塩基球やマスト細胞等からのヒスタミン遊離を抑制するような抗体を得ることはできなかった。
そこで、本発明者らは、ヒスタミン遊離活性を指標として得られたヒト汗腺からの分泌物に含まれる画分をさらに抗ヒトCystatinA抗体アフィニティクロマトグラフィーにかけて得られた素通り画分(抗ヒトCystatinA抗体非吸着画分)を抗原として用い、好塩基球からのヒスタミン遊離量を指標としてハイブリドーマのスクリーニングを行うことにより、モノクローナル抗体を作製したところ、該モノクローナル抗体が、汗抗原画分による、アトピー性皮膚炎患者の好塩基球からのヒスタミン遊離を抑制することを見出した(実施例2および実施例6の6−4(3))。また、該抗体を用いることにより、汗抗原組成物を回収することができること(実施例3の3―1)、汗抗原画分を検出することができること(実施例3の3−2、3−3および実施例7)、アトピー性皮膚炎患者血清中の汗抗原特異的IgE抗体を検出することができること(実施例4および5)、コリン性蕁麻疹患者血清中の汗抗原特異的IgE抗体を検出することができること(実施例8)を見出した。本発明は、これらの知見に基づくものである。
本発明は、汗抗原物質による汗抗原刺激応答細胞からのヒスタミン遊離を抑制することができるモノクローナル抗体を提供することを目的とする。本発明はまた、該抗体を用いる判定方法、並びに該抗体を含んでなる、医薬組成物、診断剤、および診断用キットを提供することを目的とする。本発明はさらに、該抗体を生産することができるハイブリドーマ並びに該ハイブリドーマのスクリーニング方法および製造方法を提供することを目的とする。
本発明によれば、汗抗原組成物と反応し、かつ、該組成物による汗抗原刺激応答細胞からのヒスタミン遊離を抑制することができる抗体またはその機能的断片(以下、「本発明による第一の態様の抗体」という)が提供される。
本発明によれば、本発明による第一の態様の抗体と抗原抗体反応する汗抗原に反応する抗体またはその機能的断片(以下、「本発明による第二の態様の抗体」という)が提供される。(以下、「本発明による第一の態様の抗体」と「本発明による第二の態様の抗体」とを併せて「本発明による抗体」という。)
本発明によれば、汗抗原が関連する疾患またはその発症リスクを判定する方法であって、本発明による第一の態様の抗体を用いて、被検試料中の汗抗原および/または汗抗原に特異的なIgE抗体を検出する工程を含んでなる方法(以下、「本発明による判定方法」という)が提供される。
本発明によれば、本発明による抗体と、場合によっては1種以上の薬学的に許容される担体、および/または希釈剤とを含んでなる、汗抗原が関連する疾患の予防または治療に用いられる医薬組成物が提供される。
本発明によれば、汗抗原が関連する疾患の予防剤または治療剤の製造のための、本発明による抗体の使用が提供される。
本発明によれば、予防上または治療上の有効量の本発明による抗体を、ヒトを含む哺乳類に投与することを含んでなる、汗抗原が関連する疾患の予防方法または治療方法が提供される。
本発明によれば、本発明による第一の態様の抗体および/または本発明による第二の態様の抗体を含んでなる、汗抗原が関連する疾患またはその発症リスクの診断剤または診断用キットが提供される。
本発明によれば、汗抗原組成物と反応し、かつ、該組成物による汗抗原刺激応答細胞からのヒスタミン遊離を抑制することができる抗体またはその機能的断片の製造に用いられるハイブリドーマであって、汗抗原刺激応答細胞からのヒスタミン遊離量を指標に選択して得られた、汗抗原特異的抗体を産生するハイブリドーマ(以下、「本発明による第一の態様のハイブリドーマ」という)が提供される。
本発明によれば、本発明による第一の態様の抗体と組み合わせて、サンドイッチ法により汗抗原組成物を検出することができる抗体またはその機能的断片の製造に用いられるハイブリドーマ(以下、「本発明による第二の態様のハイブリドーマ」という)が提供される。
本発明によれば、汗抗原刺激応答細胞からのヒスタミン遊離量を指標として、ヒスタミン遊離抑制作用を有する抗体を産生するハイブリドーマを選択する工程を含んでなる、汗抗原特異的抗体を産生するハイブリドーマのスクリーニング方法が提供される。
本発明によれば、汗抗原特異的抗体を産生するハイブリドーマの製造方法であって、
(i)汗抗原刺激応答細胞からのヒスタミン遊離量を指標として、ヒスタミン遊離抑制作用を有する抗体を産生するハイブリドーマを選択する工程;および
(ii)(i)で得られたハイブリドーマをクローニングする工程
を含んでなる方法が提供される。
本発明による抗体は、汗抗原組成物を特異的に感度よく認識することができることから、汗抗原の測定試薬、診断剤等として利用することができる点で有利である。本発明による抗体は、また、プレート等の固相に固着させて使用できることから、汗抗原や汗抗原に特異的なIgE抗体を、サンドイッチ法等を用いて高感度で検出することが可能となる点で有利である。本発明による判定方法は、患者自身の皮膚を用いる皮内反応試験、プリックテスト等や、患者血球細胞を用いるヒスタミン遊離試験を行うことなく、患者血清を用いることで汗抗原が関連する疾患の診断を行うことができ、簡便な点で有利である。本発明による判定方法は、また、従来アレルギー性疾患(アトピー性皮膚炎やコリン性蕁麻疹等)の診断に用いられていたヒスタミン遊離試験では判定されない患者(ノンレスポンダー)に対しても汗抗原が関連する疾患の診断を行うことができる点で有利である。
また、本発明による抗体は、汗抗原刺激応答細胞からのヒスタミン遊離を抑制することができるため、汗抗原が関連する疾患の予防および治療薬としても利用することができる点で有利である。
図1は、ハイブリドーマ培養上清によるヒスタミン遊離試験の結果を示した図である。 図2は、ハイブリドーマ精製IgGによる、患者由来の血球からのヒスタミン遊離試験の結果を示した図である。 図3は、実施例2で得られたモノクローナル抗体によりヒスタミン遊離活性を有する画分が回収されることを示した図である。 図4−1は、実施例2で得られたモノクローナル抗体によるウェスタンブロット(Native−ポリアクリルアミドゲル(NON−SDS−PAGE mini(4〜20w/v%)ゲル)の結果を示した図である。 図4−2は、実施例2で得られたモノクローナル抗体によるウェスタンブロット(Native−PAGEゲル、パジェルNPU−15L(15w/v%)ゲル)の結果を示した図である。 図4−3は、電気泳動の結果を示した図である。 図4−4は、画分1〜3のヒスタミン遊離試験の結果を示した図である。 図5は、ELISA試験の結果を示した図である。 図6は、実施例2で得られたモノクローナル抗体を用いたアトピー性皮膚炎の診断結果を示した図である。 図7は、抗ヒトIgE抗体を固相に用い、本発明のモノクローナル抗体を標識抗体として用いたELISAによる汗アレルギー診断結果を示した図である。 図8は、smith−2F(ab’)2を固相化したサンドイッチELISA試験によるハイブリドーマ培養上清中モノクローナル抗体検出結果を示した図である。 図9は、ハイブリドーマ培養上清による患者由来の血球からのヒスタミン遊離試験の結果を示した図である。 図10は、smith−2F(ab’)2フラグメントを固相化したサンドイッチELISA試験における、実施例6で得られたハイブリドーマ精製モノクローナル抗体の反応性の結果を示した図である。 図11は、実施例6で得られたハイブリドーマ精製モノクローナル抗体による患者由来の血球からのヒスタミン遊離試験の結果を示した図である。 図12−1は、本発明で得られたモノクローナル抗体およびsmith−2によるサンドイッチELISA試験の結果を示した図である。 図12−2は、同サンドイッチELISAを用いたQRX測定用検量線を示した図である。 図13は、実施例2で得られたモノクローナル抗体を用いたコリン性蕁麻疹患者の汗アレルギー診断結果を示した図である。
発明の具体的な説明
[汗抗原組成物]
ヒトの汗には、アレルギー反応を誘導し、アトピー性皮膚炎やコリン性蕁麻疹等の疾患を引き起こすような抗原物質(以下、「汗抗原」ということがある)が含まれる。汗抗原は、これらの患者由来の汗のみならず、健常者由来の汗にも含まれる。
本願明細書において「汗抗原組成物」とは、汗抗原を含んでなる組成物を意味する。
本発明によれば、汗抗原組成物は、本発明による抗体を作製することに用いることができる。
汗抗原組成物は、ヒト汗腺からの分泌物から、ヒスタミン遊離活性画分を分離することにより得ることができる。さらに、得られたヒスタミン遊離活性画分を抗ヒトCystatinA抗体アフィニティクロマトグラフィーにかけ、素通りした画分(すなわち、抗ヒトCystatinA抗体非吸着画分)を選択してもよい。
「汗腺からの分泌物」とは、汗または汗に含まれるタンパク質、糖類、脂質、核酸またはそれらの複合体であり、皮膚(顔面、頭頸部、躯幹、上肢等)から得ることができる。また、唾液、涙液、尿からも得ることができる。
「汗腺からの分泌物」は、回収した分泌物をそのまま使用することもできるが、好ましくは、不溶物を除去した濾液等を使用することができる。
不溶物の除去方法としては、フィルター濾過、遠心分離等が挙げられる。好ましくは、フィルター濾過である。
「ヒスタミン遊離活性画分」は、汗抗原刺激応答細胞からのヒスタミンの遊離を誘導する抗原物質が含まれる画分を意味し、汗腺からの分泌物を陰イオン交換カラムクロマトグラフィー、逆相カラムクロマトグラフィー、およびゲル濾過クロマトグラフィーを用いて分離し、ヒスタミン遊離活性を有する画分を選択することにより得ることができる。
「汗抗原刺激応答細胞」は、細胞表面にIgE受容体を発現する細胞であって、該IgE受容体に、汗抗原が結合されたIgE抗体が結合されることによって生じる汗抗原刺激により活性化され、ヒスタミン等の化学伝達物質を分泌することができる細胞であればよく、例えば、好塩基球、マスト細胞(肥満細胞)、IgE受容体遺伝子を発現させて人工的に作製したヒスタミン等の化学伝達物質遊離能を有する細胞株等が挙げられ、好ましくは、好塩基球である。
分離方法は、公知のクロマトグラフィーであれば特に限定されないが、例えば、陰イオン交換カラムクロマトグラフィー、逆相カラムクロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、電気泳動的法等、またはこれらの2以上の組み合わせが挙げられる。
陰イオン交換カラムクロマトグラフィーとしては、例えば、MonoQ 10/100GT(GEヘルスケアバイオサイエンス)等の市販の陰イオン交換カラムが挙げられる。
逆相カラムクロマトグラフィーとしては、例えば、SOURCE 15RPC ST4.6/100(GEヘルスケアバイオサイエンス)等の市販の逆相カラムが挙げられる。
ゲル濾過クロマトグラフィーとしては、例えば、Superdex 75 PC 3.2/30(GEヘルスケアバイオサイエンス)等の市販のゲルが挙げられる。
好ましくは、陰イオン交換カラムクロマトグラフィー、逆相カラムクロマトグラフィー、およびゲル濾過クロマトグラフィーを組み合わせて使用することができる。
「ヒスタミン遊離活性」は、公知の方法に従って測定することができる。例えば、ヒスタミン量を測定し、全ヒスタミン量に対する遊離ヒスタミン量が3〜97%の範囲の場合にヒスタミン遊離活性を有すると判定することができる。(Koro, O. et al., J. Allergy Clin. Immunol., 103, 663-670, 1999)。
「抗ヒトCystatinA抗体アフィニティクロマトグラフィー」は、例えば、クロマトグラフィーハンドブック・アフィニティークロマトグラフィー(GEヘルスケアバイオサイエンス)に記載の方法に従って行うことができる。
抗ヒトCystatinA抗体固定化担体は、市販のものであってもよいし、公知の方法に従って作製してもよい。
汗抗原組成物は、好ましくは、ヒト自らのIgE抗体に結合してマスト細胞や好塩基球等の汗抗原刺激応答細胞を活性化し、ヒスタミンを遊離させることができ、かつ抗ヒトCystatinA抗体に非吸着である。
汗抗原組成物は、好ましくは、下記工程:
(1)フィルター濾過されたヒト汗を陰イオン交換カラムクロマトグラフィー、次に逆相カラムクロマトグラフィー、最後にゲル濾過クロマトグラフィーにかけ、ヒスタミン遊離活性画分を得る工程;および
(2)(1)で得られたヒスタミン遊離活性画分を抗ヒトCystatinA抗体アフィニティクロマトグラフィーにかける工程
を含んでなる方法により得ることができる。
汗抗原組成物は、好ましい態様で用いることができるが、例えば、等電点電気泳動を行った場合に、等電点4.5〜4.8の範囲に泳動される物質を使用することができる。あるいは、Native−ポリアクリルアミドゲルを用いて電気泳動を行った場合に、マーカータンパク質の泳動位置を目安にして、35kD〜100kDの位置に泳動される物質を使用することができる。あるいは、陰イオン交換クロマトグラフィーによって得られる画分をアトピー性皮膚炎疾患患者の好塩基球を用いたヒスタミン遊離試験でスクリーニングした場合に得られる3つのヒスタミン遊離活性ピークの内、2番目および3番目のピーク位置に溶出される物質を、より好ましくは、2番目のピーク位置に溶出される物質を使用することができる。
[抗体]
本発明による第一の態様の抗体は、ヒト汗腺からの分泌物に含まれる汗抗原組成物を特異的に認識することができ、かつ、汗アレルギー患者において、汗抗原による汗抗原刺激応答細胞からのヒスタミン遊離を抑制することができる。
本発明による第一の態様の抗体は、ヒト汗腺からの分泌物に含まれるヒスタミン遊離活性画分に対する抗体とすることができる。
本発明による第一の態様の抗体は、汗抗原刺激応答細胞からのヒスタミン遊離量を指標にしてハイブリドーマを選択することにより得ることができる。
本発明による第二の態様の抗体は、本発明による第一の態様の抗体と抗原抗体反応する汗抗原と抗原抗体反応する抗体とすることができる。
ここで、「抗原抗体反応」とは、抗原とそれに対応する抗体とが選択的に結合する特異的な反応を意味する。
本発明による第二の態様の抗体は、本発明による第一の態様の抗体と汗抗原組成物とを使用したサンドイッチ法を利用してハイブリドーマを選択することにより得ることができる。
本発明による抗体には、汗抗原組成物をマウス等の哺乳動物に免疫して得られるポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体(本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体も含む)、遺伝子組換え技術を用いて製造されるキメラ抗体およびヒト化抗体、並びにヒト抗体産生トランスジェニック動物等を用いて製造されるヒト抗体が含まれる。
本発明による抗体を医薬としてヒトに投与する場合は、副作用低減の観点から、ヒト抗体が望ましい。
「ヒト抗体」とは、すべての領域がヒト由来の抗体である。本発明によるヒト抗体は、当業者に周知の方法を用いて作製することができる(例えば、エプスタイン・バーウイルス(EBV)不死化法(Watson et al., 1983. J Immunol 130, 2442-2447)、ファージディスプレイ法(Marks et al., 1991. J Mol Biol 222, 581-597、Bardas et al., 1992. Proc Natl Acad Sci USA 89, 4457-4461)、完全ヒト抗体産生ハイブリドーマ法(特開2007−000141号公報)等を参照することができる)。
「ヒト化抗体」は、マウス抗体の抗原結合部位(CDR;相補性決定領域)の遺伝子配列だけをヒト抗体遺伝子に移植(CDRグラフティング)した抗体である。本発明によるヒト化抗体は、当業者に周知の方法を用いて作製することができる(例えば、マウス抗体の抗原結合部位であるCDRとFR(フレームワーク領域)の幾らかのアミノ酸残基をヒト抗体に移植させたヒト化抗体の製造法(Owens et al., 1994. J Immunol Methods 168, 149-165)等を参照することができる)。
「キメラ抗体」は、ある種の抗体の可変領域とそれとは異種の抗体の定常領域とを連結した抗体である。具体的には、抗原をマウスに免役し、そのマウスモノクローナル抗体の遺伝子から抗原と結合する抗体可変部(V領域)を切り出し、ヒト骨髄由来の抗体定常部(C領域)遺伝子と結合して作製することができる。本発明によるキメラ抗体は、当業者に周知の方法を用いて作製することができる(例えば、Boulianne et al., 1984. Nature 312, 643-646、Morrison et al., 1984. Proc Natl Acad Sci USA 81, 6851-6855、Walls et al., 1993. Nucleic acid Research 21, 2921-2929、Norderhung et al., 1997. J Immunol Methods 204, 77-78、Persic et al., 1997. Gene 187, 9-18、McLean et al., 2000. Mol Immunol 37, 837-845等を参照することができる)。
本発明によるモノクローナル抗体は、当業者に周知の方法を用いて作製することができる。例えば、抗原を免疫した哺乳動物由来のリンパ球と、哺乳動物由来のミエローマ細胞との細胞融合により形成されるハイブリドーマにより産生させることができる。
免疫抗原としては、上記の汗抗原組成物を用いることができる。抗原は、キャリアタンパク質との複合体として用いてもよい。汗抗原組成物とキャリアタンパク質とは化学的に結合させることができる。化学的な結合の様式は特に限定されないが、共有結合が好ましい。キャリアタンパク質としては、例えば、BSA、KLH等が挙げられるが、好ましくは、KLHである。
リンパ球およびミエローマ細胞は、哺乳動物由来である限りにおいて特に限定されず、哺乳動物としては、例えばブタ、ウシ、マウス、ラット等が挙げられるが、好ましくは、マウスである。
免疫は、免疫抗原を哺乳動物に足蹠注射することにより行うことができる。注射方法はこれに限らず、皮下注射、腹腔内注射、静脈注射でも良い。通常、免疫は数回に分けて行うが、免疫はアジュバントと共に投与することが好ましい。アジュバントとしては、ミョウバン、結核死菌、核酸、完全フロイントアジュバント、不完全フロイントアジュバント等、アジュバント効果が期待できるもので有れば限定されることはない。
細胞融合は公知の方法に従って実施することができる(Nature, 256, 495(1975))。例えば、マウスを最終免疫した後に、当該マウスのリンパ節或は脾臓から得られるリンパ球と、ミエローマ細胞等の腫瘍細胞株の細胞(通常、マウスのBALB/c由来のP3−NS−1/1−Ag4−1、P3−X63−Ag8−U1(P3 U1)、P3−X63−Ag8−653、SP2/0−Ag14等)を用いて行うことができる。
抗体産生ハイブリドーマは、例えば、下記に例示する方法により選択と単クローン化を行うことにより得ることができる。
本発明による第一の態様の抗体は、汗抗原組成物に反応し、かつ該組成物による汗抗原刺激応答細胞からのヒスタミン遊離を抑制することができる。従って、抗体産生ハイブリドーマの選択は、ハイブリドーマにより生産される抗体が、汗抗原刺激応答細胞からのヒスタミン遊離を抑制することができるか否かを判定することにより行うことができる。
汗抗原刺激応答細胞からのヒスタミン遊離を抑制することができるか否かは、公知の方法に従って、汗抗原刺激応答細胞からのヒスタミン遊離量を測定することにより確認することができる。
被験抗体の存在下におけるヒスタミン遊離量が、該抗体の非存在下におけるヒスタミン遊離量を下回る場合に、具体的には、95%以下、好ましくは90%、より好ましくは85%、さらに好ましくは80%、さらにより好ましくは75%、特に好ましくは70%、特により好ましくは65%、最も好ましくは60%以下となった場合に、ヒスタミン遊離活性が抑制されたと判定することができる。
本発明による第二の態様の抗体は、本発明による第一の態様の抗体と組み合わせて、サンドイッチ法により汗抗原組成物を検出することができる。従って、抗体産生ハイブリドーマの選択は、ハイブリドーマにより生産される抗体が、本発明による第一の態様の抗体と抗原抗体反応する汗抗原と抗原抗体反応することができるか否かを判定することにより行うことができる。
本発明による第一の態様の抗体と抗原抗体反応する汗抗原と抗原抗体反応することができるか否かは、サンドイッチ法による免疫学的検出方法等の公知の方法に従って確認することができる。
免疫学的分析方法において、被験抗体を用いた場合の信号量(例えば、蛍光強度、発色強度等)が、被験抗体を用いない場合の信号量を上回る場合に、具体的には、1.1倍以上、好ましくは1.5倍、より好ましくは2倍以上となった場合に、本発明による第一の態様の抗体と抗原抗体反応する汗抗原と抗原抗体反応すると判定することができる。
抗体産生ハイブリドーマの選択は、2次スクリーニングとして、ハイブリドーマの増殖の盛んな細胞培養上清から種々の分析法(例えばRIA法、プラーク法、凝集反応法、ELISA法、フローサイトメトリー法、組織染色法、ウェスタンブロッティング法等)により本発明による汗抗原組成物に対して反応する目的の抗体を産生するハイブリドーマを選択することにより行うことができる。
得られたハイブリドーマについてはクローニングを行って、単一クローンを得てもよい。
クローニングの方法としてはFACS(Fluorescent Activated Cell Sorter)もしくは、一般によく用いられる限界希釈法等が挙げられる。例えば、限界希釈法では96ウェルプレートの1ウェルあたり細胞が1個以下になるように行うことが好ましい。どの方法を用いてもクローニングは2回繰返し行うことが好ましく、単一クローンとすることが好ましい。このようにして得られた単一クローンを、例えばin vitroで培養する方法、in vivoで培養(腹水化)する方法等により培養することにより、モノクローナル抗体を産生させることができる。
モノクローナル抗体の精製は、公知の方法を用いればよく、例えば、得られた培養液から、塩析、イオン交換、ゲル濾過、アフィニティクロマトグラフィー、電気泳動等の生化学的一般的手法を適宜組み合わせることにより、分離、精製することができる。
本発明による抗体の免疫グロブリンクラスおよびそのサブクラスは特に限定されないが、免疫グロブリンクラスはIgM又はIgGであることが好ましい。さらに免疫グロブリンクラスがIgGの場合、そのサブクラスはIgG2a又はIgG1であることがより好ましい。
本発明によるポリクローナル抗体は、当業者に周知の方法を用いて作製することができる。例えば、抗原を免疫した哺乳動物の血清から得ることができる。
本発明による「機能的断片」とは、抗体の一部分(部分断片)であって、ヒト汗腺からの分泌物に含まれる汗抗原を特異的に認識するものを意味する。具体的には、F(ab’)化抗体、Fab化抗体、短鎖抗体(scFv)、ダイアボディ(Diabodies)及びミニボディ(Minibodies)などが挙げられる。
本発明による第一の態様の抗体の好ましい例としては、FERM BP−11110のもと受託されたハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体(smith−1抗体)、FERM BP−11111のもと受託されたハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体(smith−2抗体)、FERM BP−11112の受託番号のもと寄託されたハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体(smith−8抗体)が挙げられる。
本発明による第二の態様の抗体の好ましい例としては、FERM BP−11113の受託番号のもと寄託されたハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体(adam−1抗体)が挙げられる。
本発明による抗体は、好ましくは、モノクローナル抗体である。
[判定方法]
本発明による抗体を使用することにより、汗抗原および/または汗抗原に特異的なIgE抗体を検出することができる。従って、本発明によれば、本発明による抗体を用いて、被験試料中の汗抗原および/または汗抗原に特異的なIgE抗体を検出することにより、汗抗原が関連する疾患またはその発症リスクを判定することができる。
ここで、「汗抗原が関連する疾患を判定する」とは、汗抗原が関連する疾患の症状(徴候)を呈している対象者が、汗抗原が原因でその疾患に罹っているか否かを判定することを意味する。
また、「汗抗原が関連する疾患の発症リスクを判定する」とは、汗抗原が関連する疾患の症状(徴候)を呈していない対象者が、汗抗原が関連する疾患を発症するリスクを有するか否かを判定することを意味する。
生体試料における汗抗原の存在は、汗抗原が関連する疾患またはその発症のリスクの指標(特には、汗抗原が関連する疾患の発症のリスクの指標)となる。実施例3、6および7によれば、本発明による抗体を用いることにより汗抗原を検出できることが確認された。
従って、本発明によれば、汗抗原を検出することにより、対象者(特に、汗抗原に感受性が高い対象者)が、汗抗原が関連する疾患の患者である、または汗抗原が関連する疾患を発症するリスクがある(特には、汗抗原が関連する疾患の発症のリスクがある)と判定することができる。本発明によれば、また、対象者(特に、汗抗原に感受性が高い対象者)の体表または体内において汗抗原を検出することにより、対象者において汗抗原の局在や分布およびその濃度を解析することができることから、汗抗原除去等の汗抗原が関連する疾患に対する治療計画や予防対策を立てることができる。
汗抗原が関連する疾患を罹患しているまたは罹患するおそれのあるヒトの生体試料には、正常なヒトに比べて、ヒスタミン遊離活性画分に特異的なIgE抗体が多く含まれる。従って、生体試料における汗抗原に特異的なIgE抗体の存在は、汗抗原が関連する疾患またはその発症のリスクの指標となる。実施例4および5によれば、本発明による第一の態様の抗体を用いることにより汗抗原に特異的なIgE抗体を検出できることが確認された。
従って、本発明によれば、汗抗原に特異的なIgE抗体を検出することにより、対象者が汗抗原が関連する疾患の患者である、または汗抗原が関連する疾患を発症するリスクがあると判定することができる。本発明によれば、また、汗抗原に特異的なIgE抗体を検出して、基準値と比較することにより、対象者が汗抗原に対して感受性が高いと判定することができる。
本発明による判定方法は、汗抗原の検出と汗抗原に特異的なIgE抗体の検出とを組み合わせて実施することもできる。
本発明において用いられる検出の手段としては、被験試料における汗抗原および/または汗抗原に特異的なIgE抗体を検出できる方法であれば特に限定されず、例えば、抗原抗体反応法が挙げられる。例えば、汗抗原の検出は、汗抗原が関連する疾患に罹患しているまたは罹患するおそれのあるヒトを含む哺乳類から被験試料を採取し、採取した試料と本発明による抗体とを接触させ、抗原抗体反応が検出されるか否かを判断することによって実施することができる。また、汗抗原に特異的なIgE抗体の検出は、汗抗原が関連する疾患に罹患しているまたは罹患するおそれのあるヒトを含む哺乳類から被験試料を採取し、採取した試料と、汗抗原および本発明による抗体とを接触させ、抗原抗体反応が検出されるか否かを判断することによって実施することができる。
「被験試料」は、検出しようとする対象者(被験者)の体表または体内から採取して得ることができる。「被験試料」は、汗抗原および/または汗抗原に特異的なIgE抗体を含むか、含む可能性を有する試料であれば特に限定されないが、例えば、被験者の尿、血液、血漿、血清等の体液、汗、鼻汁、涙等の分泌物、細胞、組織、臓器、または細胞の培養物(例えば培養上清等を含む)等が挙げられ、好ましくは、血液、汗である。または、これらに由来する精製物、抽出物、標本等であってもよい。
本発明による第一の態様の方法において、抗原抗体反応を利用した汗抗原の検出は、例えば、下記工程により実施することができる:
(a)被験試料と、本発明による抗体とを接触させる工程; および
(b)抗原抗体複合体を検出する工程。
より具体的には、下記工程により実施することができる:
(a−1)被験試料と、本発明による第一の態様の抗体とを接触させる工程; および/または
(a−2)被験試料と、本発明による第二の態様の抗体とを接触させる工程; および
(b)抗原抗体複合体を検出する工程。
本発明による第二の態様の方法において、抗原抗体反応を利用した汗抗原に特異的なIgE抗体の検出は、例えば、下記工程により実施することができる:
(a’)被験試料と、本発明による抗体と、汗抗原とを接触させる工程; および
(b’)抗原抗体複合体を検出する工程。
より具体的には、下記工程により実施することができる:
(a’−1)被験試料と、汗抗原を接触させる工程;
(a’−2)工程(a’−1)において生成された第一の抗原抗体複合体と、本発明による抗体とを接触させる工程; および
(b’ −1)工程(a’−2)において生成された第二の抗原抗体複合体を検出する工程。
あるいは、下記工程により実施することができる:
(a’−I)本発明による抗体と汗抗原とを接触させる工程;
(a’−II)工程(a’−I)において生成された第一の抗原抗体複合体と、被験試料とを接触させる工程; および
(b’ −I)工程(a’−II)において生成された第二の抗原抗体複合体を検出する工程。
抗原抗体反応の検出方法は当業者に周知であり、例えば、免疫学的方法により、被験試料中の汗抗原および/または汗抗原に特異的なIgE抗体を検出することができる。組織標本を生体試料として用いる場合は、通常の免疫組織染色法などを用いることができる。体液または培養上清等を生体試料として用いる場合は、ELISA法、RIA法、サンドイッチ法、競合法、プラーク法、凝集反応法、フローサイトメトリー法、ウェスタンブロッティング法などを用いることができる。
免疫組織染色法は、例えば、汗抗原および標識化抗体を用いる直接法、該抗体に対する抗体が標識化されたものを用いる間接法などにより行うことができる。標識化剤としては螢光物質、放射性物質、酵素、金属、色素など公知の標識物質を使用することができる。
サンドイッチ法においては、例えば、本発明による抗体をプレート等の固相に固着させて1次抗体として用いることができる。あるいは、標識して2次抗体として用いることもできる。1次抗体と2次抗体は、両方ともモノクローナル抗体を用いることができる。あるいは、いずれか一方をポリクローナル抗体とすることもできる。
ELISA法においては、例えば、汗抗原に特異的なIgE抗体を検出する場合、本発明による抗体を固相化し、これに汗抗原を反応させ、さらにアトピー性皮膚炎患者の血清を反応させ、抗ヒトIgE抗体で検出することにより、アトピー性皮膚炎患者血清中の汗抗原に特異的なIgEを検出することができる。あるいは、抗IgE抗体をプレート等の固相に固着させ、これにアトピー性皮膚炎患者の血清を反応させ、さらに汗抗原を反応させ、本発明による抗体で検出することにより、アトピー性皮膚炎患者血清中の汗抗原に特異的なIgEを検出することができる。抗ヒトIgE抗体の代わりに抗ヒトIgG抗体を用いれば、汗抗原に特異的なIgGを検出することができる。
本発明による第一の態様の方法によれば、抗原抗体複合体が検出された被検者(特に、汗抗原に感受性が高い被検者)は、汗抗原が検出されたと評価されるため、汗抗原が関連する疾患の患者である、あるいは汗抗原が関連する疾患を発症するリスクがあると診断または判定することができる。特に、アトピー性皮膚炎については、患者の約80%が汗アレルギーであることが報告されていることから(Hide M, et al. Acta Derm Venereol 2002;82;335−340)、本発明による判定方法によれば、アトピー性皮膚炎様症状を呈する対象者について、汗抗原に起因するアトピー性皮膚炎の患者であるか否かを高精度で判定することができる点で有利である。
本発明による第二の態様の方法によれば、抗原抗体複合体が検出された被検者は、汗抗原に特異的IgE抗体が検出されたと評価されるため、汗抗原が関連する疾患の患者である、あるいは汗抗原が関連する疾患を発症するリスクがあると診断または判定することができる。本発明による第二の態様の方法によれば、ヒスタミン遊離試験の結果によらず、汗抗原に特異的IgE抗体が検出されるか否かで、汗抗原が関連する疾患の患者である、あるいは汗抗原が関連する疾患を発症するリスクがあると診断または判定することができる点で有利である。
本発明によれば、汗抗原に特異的なIgE抗体の検出は、本発明による抗体のヒスタミン遊離抑制作用を利用することにより、生物学的な検出に応用することができる。
本発明によれば、汗抗原の検出は、免疫組織化学染色法等の方法と組み合わせることにより、汗抗原の局在や分布の解析に応用することができる。
本発明によれば、汗抗原の検出は、定量的な検出であってもよく、定性的な検出であってもよい。定量的な検出である場合、試料中に存在する汗抗原組成物濃度は、例えば予め既知濃度の汗抗原組成物標準液を用いて汗抗原組成物濃度と検出結果との関係について検量線を作成し、汗抗原組成物濃度が未知の試料についての検出結果と前記検量線とを照らし合わせることにより行うことができる。
本発明によれば、本発明において用いられる検出手段を使用する、汗抗原および/または汗抗原に特異的なIgE抗体の検出方法が提供される。
[抗体の用途および医薬組成物]
汗抗原が関連する疾患
アレルギー性皮膚炎等の汗抗原が関連する疾患の患者を含むヒトの汗には、汗抗原が含まれることが知られている。白血球の細胞表面上のレセプター(IgEレセプター)がIgE抗体を介して、該抗原によって架橋されると、ヒスタミンをはじめとする化学伝達物質が放出され、アレルギーが引き起こされる。従って、抗原と該抗原に特異的なIgEとの結合を阻害することにより、化学伝達物質の放出を抑制することができれば、これらの化学伝達物質に起因するアレルギー疾患を緩和、軽減または治療することができる。後記実施例に示されるように、本発明による抗体は、汗抗原によって引き起こされるアトピー性皮膚炎患者の好塩基球からのヒスタミン遊離を抑制することが確認された(実施例2および実施例6の6−4))。従って、本発明による抗体は、汗抗原が関連する疾患の予防または治療に有用である。
本発明による抗体は、好ましくは、本発明による第一の態様の抗体である。
汗抗原が関連する疾患は、汗に含まれる抗原物質により誘引される疾患を意味し、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹(例えば、コリン性蕁麻疹等)、汗疹、汗疱、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、喘息等が挙げられる。好ましくは、アトピー性皮膚炎または蕁麻疹である。
本願明細書において、「予防」とは、疾患の素因を有するが、未だ発症していない対象者において、発症のリスクを低減させることを意味する。本発明において「予防」の対象となる者としては、汗抗原が関連する疾患の症状(徴候)を呈していない者であって、血清中の汗抗原特異的なIgE抗体の濃度が正常値よりも高いか、あるいは体液中に汗抗原の存在が認められる者が挙げられ、このような対象者は本発明による判定方法等により特定することができる。
本願明細書において、「治療」とは、患者、特にヒトの疾患の任意の治療を意味し、疾患の症状を改善ないし緩和させることも含む。ここで、「症状を改善ないし緩和させる」とは、汗抗原が関連する疾患の重症度を軽減する、すなわち、患者の症状をより軽症へと変化させることを意味する。軽症への変化は、痒みや皮疹等の臨床学的症状または血液や皮膚組織等を材料とする臨床検査における異常所見の減少もしくは消失により示される。
本発明において「治療」の対象となる者としては、汗抗原が関連する疾患の症状(徴候)を呈している者であって、血清中の汗抗原特異的なIgE抗体の濃度が正常値よりも高いか、あるいは体液中に汗抗原の存在が認められる者が挙げられ、このような対象者も本発明による判定方法等により特定することができる。
本発明において「汗抗原が関連する疾患の症状(徴候)」としては、例えば、アトピー性皮膚炎であれば、痒み、発汗後の皮疹の悪化等、蕁麻疹であれば、体温上昇や精神的緊張等の発汗刺激による膨疹、痒み、痛み感覚の出現等、汗疹であれば、紅斑、丘疹等、汗疱であれば、掌蹠の水疱、落屑等、アレルギー性鼻炎であれば、鼻汁、くしゃみ、鼻づまり等、アレルギー性結膜炎であれば、眼瞼、結膜の痒み、充血、流涙等、喘息であれば、喘鳴、呼吸困難、咳嗽等が挙げられる。
本発明によれば、汗抗原が関連する疾患の予防剤または治療剤の製造のための、本発明による抗体の使用が提供される。
本発明によれば、予防上または治療上の有効量の本発明による抗体を、ヒトを含む哺乳類に投与することを含んでなる、汗抗原が関連する疾患の予防方法または治療方法が提供される。
汗抗原が関連する疾患の診断剤
後記実施例において示されるように、本発明による抗体は、汗抗原組成物を検出することができる(実施例3、6および7)。生体試料における汗抗原の存在は、汗抗原が関連する疾患またはその発症のリスクの指標となる。また、本発明による抗体は、汗抗原組成物に特異的なIgE抗体を検出することができる(実施例4および5)。生体試料における汗抗原に特異的なIgE抗体の存在は、汗抗原が関連する疾患またはその発症のリスクの指標となる。従って、本発明による抗体は、汗抗原が関連する疾患またはその発症リスクの診断に有用である。
本発明によれば、本発明による抗体を用いて、生体試料中の汗抗原特異的IgE抗体を検出することを含んでなる、汗抗原が関連する疾患またはその発症リスクの診断方法が提供される。
本発明による診断方法は、汗抗原が関連する疾患に罹患しているまたは罹患するおそれのあるヒトを含む哺乳類から被検試料を採取し、採取した試料と本発明による抗体とを接触させ、汗抗原および/または汗抗原に特異的なIgE抗体が検出されるか否かを判断することによって実施することができる。本発明による診断方法において、汗抗原や汗抗原に特異的なIgE抗体は、本発明による検出方法に従って検出することができる。本発明による診断方法は、本発明による判定方法に従って、判定(診断)することができる。
診断用キット
本発明によれば、本発明による第一の態様の抗体および/または本発明による第二の態様の抗体を少なくとも含んでなる、汗抗原が関連する疾患またはその発症リスクの診断用キットが提供される。
本発明のキットによれば、生体試料中に存在する汗抗原および/または汗抗原特異的IgE抗体を指標として、汗抗原が関連する疾患に罹患しているか否かを診断することができる。本発明のキットによれば、また、生体試料中に存在する汗抗原および/または汗抗原特異的IgE抗体を指標として、汗抗原が関連する疾患の発症リスクを有するか否かを診断することができる。
本発明による抗体は、例えば、溶液に溶解された形態や、固相化された形態で提供されてもよい。
本発明による抗体は、酵素等により標識されたものであってもよい。
本発明によるキットは、抗原抗体反応を検出することにより、汗抗原および/または汗抗原特異的IgE抗体の存在を検出する。
従って、本発明によるキットは、所望により、抗原抗体反応を実施するための種々の試薬、例えば1次抗体、2次抗体、反応バッファー、洗浄液、反応基質、汗抗原標準液、説明書、器具等を含むものであってもよい。
医薬組成物
本発明による医薬組成物は、本発明による抗体を有効成分として用い、好ましくは、精製した抗体と任意の成分、例えば、生理食塩水、ブドウ糖水溶液、またはリン酸塩緩衝液などを含有する組成物の形態で使用しても良い。
本発明による抗体の投与形態は、特に制限されず、経口投与、非経口投与(例えば静脈注射、筋肉注射、皮下投与、直腸投与、経皮投与、局所投与)のいずれかの投与経路でヒトを含む哺乳類に投与することができるが、非経口投与、特に経皮投与、が好ましい。
経口投与および非経口投与のための剤形およびその製造方法は当業者に周知であり、本発明による抗体を、薬学的に許容される坦体などと混合等することにより、常法に従って製造することができる。
薬学上許容される担体としては、例えば、製剤分野において常用され、かつ本発明による抗体と反応しない物質が用いられる。薬学上許容される担体には、例えば、通常用いられる安定化剤、防腐剤、等張化剤等を使用することができる。
非経口投与のための剤型は、注射用製剤(例えば、点滴注射剤、静脈注射剤、筋肉注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤)、外用剤(例えば、湿布剤、噴霧剤、エアゾール剤、塗布剤)、坐剤吸入剤、眼剤、眼軟膏剤、点鼻剤、点耳剤、リポソーム剤等が挙げられるが、好ましくは、外用剤である。
医薬組成物の投与量は、患者の年齢、体重、性別、一般的な健康状態、疾患の程度および投与する抗体の成分により多様である。例えば、本発明による医薬組成物を、経皮投与する場合には、成人1人当たり1日0.01〜5000mg/kg(体重)、好ましくは0.1〜1000mg/kg(体重)の抗体を投与することができる。実際に用いられる投与法は、臨床医師の判断により大幅に変動することもあり、上記の投与範囲から逸脱することがある。
本発明による診断剤は、合目的な任意の手段を用いて調製することができる。
[汗抗原特異的抗体産生ハイブリドーマ]
本発明による第一の態様のハイブリドーマは、本発明による第一の態様の抗体を生産することができる。
本発明によれば、汗抗原組成物を免疫することによって得られるリンパ球とミエローマ細胞を融合して得られたハイブリドーマから、汗抗原刺激応答細胞からのヒスタミン遊離量を指標にして、目的の抗体を産生するハイブリドーマを選択することができる。
本発明による第一の態様のハイブリドーマは、本発明によるスクリーニング方法によって選別することができる。
本発明による第一の態様のハイブリドーマは、本発明による製造方法によって製造することができる。
本発明によれば、平成19年11月16日付で、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(〒305−8566茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に寄託された受託番号FERM BP−11110(FERM P−21439より移管)であるハイブリドーマ(Mouse−Mouse hybridoma smith−1)が提供される。
また、平成19年11月16日付で、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(〒305−8566茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に寄託された受託番号FERM BP−11111(FERM P−21440より移管)であるハイブリドーマ(Mouse−Mouse hybridoma smith−2)が提供される。
さらに、平成20年10月1日付で、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(〒305−8566茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に寄託された受託番号FERM BP−11112(FERM P−21697より移管)であるハイブリドーマ(Mouse−Mouse hybridoma smith−8)が提供される。
本発明による第二の態様のハイブリドーマは、本発明による第二の態様の抗体を生産することができる。
本発明によれば、汗抗原組成物を免疫することによって得られるリンパ球とミエローマ細胞を融合して得られたハイブリドーマから、本発明による第一の態様の抗体と結合する汗抗原組成物との結合能を指標にして、目的の抗体を産生するハイブリドーマを選択することができる。
本発明によれば、平成20年10月1日付で、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(〒305−8566茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に寄託された受託番号FERM BP−11113(FERM P−21696より移管)であるハイブリドーマ(Mouse−Mouse hybridoma adam−1)が提供される。
本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1)汗抗原組成物と反応し、かつ、該組成物の、汗抗原刺激応答細胞からのヒスタミン遊離活性を抑制することができる抗体またはその機能的断片。
(2)ヒト汗腺からの分泌物に含まれるヒスタミン遊離活性画分を抗原として用いて得られた、(1)の抗体またはその機能的断片。
(3)ヒト汗腺からの分泌物に含まれるヒスタミン遊離活性画分を、抗ヒトCystatinA抗体アフィニティクロマトグラフィーにかけて得られた抗ヒトCystatinA抗体非吸着画分を抗原として用いて得られた、(1)の抗体またはその機能的断片。
(4)汗抗原刺激応答細胞からのヒスタミン遊離量を指標にしてスクリーニングされるハイブリドーマから生産される、(1)〜(3)の抗体またはその機能的断片。
(5)FERM BP−11110またはFERM BP−11111として寄託されたハイブリドーマから生産される、(1)〜(4)の抗体またはその機能的断片。
(6)抗体がモノクローナル抗体である、(1)〜(5)のいずれか一項に記載の抗体またはその機能的断片。
(7)汗抗原が関連する疾患またはその発症リスクを判定する方法であって、(1)〜(6)の抗体を用いて、被験試料中の汗抗原または汗抗原に特異的なIgE抗体を検出する工程を含んでなる、方法。
(8)汗抗原が関連する疾患が、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、汗疹、汗疱、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、および喘息からなる群から選択される、(7)の判定方法。
(9)(1)〜(6)の抗体またはその機能的断片と、場合によっては1種以上の薬学的に許容される担体、および/または希釈剤とを含んでなる、汗抗原が関連する疾患の予防または治療に用いられる医薬組成物。
(10)汗抗原が関連する疾患が、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、汗疹、汗疱、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、および喘息からなる群から選択される、(9)の医薬組成物。
(11)(1)〜(6)の抗体またはその機能的断片を含んでなる、汗抗原が関連する疾患の診断剤または診断用キット。
(12)汗抗原が関連する疾患が、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、汗疹、汗疱、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、喘息からなる群から選択される、(11)の診断剤または診断用キット。
(13)汗抗原組成物と反応し、かつ、該組成物の、汗抗原刺激応答細胞からのヒスタミン遊離活性を抑制することができる抗体またはその機能的断片の製造に用いられるハイブリドーマであって、汗抗原刺激応答細胞からのヒスタミン遊離量を指標に選択して得られた、汗抗原特異的抗体を産生するハイブリドーマ。
(14)FERM BP−11110またはFERM BP−11111の受託番号のもと寄託された(13)のハイブリドーマ。
(15)汗抗原刺激応答細胞からのヒスタミン遊離量を指標として、ヒスタミン遊離活性抑制作用を有する抗体を産生するハイブリドーマを選択する工程を含んでなる、汗抗原特異的抗体を産生するハイブリドーマのスクリーニング方法。
(16)汗抗原特異的抗体を産生するハイブリドーマの製造方法であって、
(i)汗抗原刺激応答細胞からのヒスタミン遊離量を指標として、ヒスタミン遊離活性抑制作用を有する抗体を産生するハイブリドーマを選択する工程;および
(ii)(i)で得られたハイブリドーマをクローニングする工程
を含んでなる、方法。
以下、実施例を示してこの出願の発明をさらに詳細かつ具体的に説明するが、この出願の発明は以下の例によって限定されるものではない。
[実施例1] 抗ヒトCystatinAカラム非吸着の精製画分の調製
1−1. 濃縮汗の調製
ヒトの汗を、100μmと70μmのメッシュフィルター(Nylon製Cell Strainer、Falcon)を通して不溶物を除去した後、さらに0.22μmフィルター(Bottele Top Filter、1L、Corning)で沈殿物を除去した。フィルター濾過済みの汗4Lを限外濾過(3000M.W.cut)で150mL程度に濃縮して、汗抗原精製のための材料とした。
1−2.陰イオン交換カラムによる分離
あらかじめ10mmol/L Tris−HCl(pH8.0)で平衡化させた陰イオン交換カラムMonoQ 10/100 GT(GEヘルスケアバイオサイエンス)に、pH8.0に調製した濃縮汗75mLをロードし、10mmol/L Tris−HCl(pH8.0)中、0〜1.0MのNaCl濃度勾配により溶出した。精製用クロマト装置としてはAKTA explorer(GEヘルスケアバイオサイエンス)を用いた。
ヒスタミン遊離活性を誘引する物質を含む画分を選択するために、各フラクションについて、アトピー性皮膚炎患者の好塩基球を用いたヒスタミン遊離試験を行った。
まず、適当に希釈した各フラクションと、5mmol/L グルコース、0.03w/v%HSA、2mmol/L CaCl2、1mmol/L MgClを含むHEPESバッファー中に調製したアトピー性皮膚炎患者の好塩基球画分を1:1で混和し、37℃で40分インキュベートした。遠心分離で上清と沈渣血球に分け、それぞれに0.2mol/L過塩素酸を加えて変性させた後、遠心分離によって得られた上清中のヒスタミン濃度をHPLC(シマヅLC solution)で測定した。全ヒスタミン量に対する上清のヒスタミン量の割合をヒスタミン遊離活性とした。
なお、ヒスタミン量の測定は文献( Koro, O. et al., J. Allergy Clin. Immunol., 103, 663-670, 1999)記載の方法に従った。
その結果、他の画分に比べヒスタミン遊離活性が高かった0.25〜0.3mol/L NaClの塩濃度範囲で溶出される画分をヒスタミン遊離活性を示す画分として回収した。
1−3.逆相カラムによる分離
実施例1−2で得られた画分18mLを純水で10倍希釈して最終濃度0.1v/v%のTFAを添加した。これを、逆相カラム(SOURCE 15RPC ST 4.6/100(GEヘルスケアバイオサイエンス) にロードし、0.1v/v%TFA/蒸留水から0.1v/v%TFA/アセトニトリルの濃度勾配で溶出した。精製用クロマト装置としてはAKTA explorer(GEヘルスケアバイオサイエンス)を用いた。
溶出した各フラクションのTFAおよびアセトニトリルを揮発させた後、実施例1−2と同様にヒスタミン遊離試験を行った。
その結果、他の画分に比べヒスタミン遊離活性が高かった約30〜35v/v%アセトニトリルの範囲を、ヒスタミン遊離活性を示す画分として回収した(4mL)。
1−4.ゲル濾過クロマトによる分離
実施例1−3で得られた画分は、凍結乾燥後、PBSに再溶解してSuperdex 75 PC 3.2/30(GEヘルスケアバイオサイエンス)にロードし、PBS(−)で分画溶出した。精製用クロマト装置としてはSmart system(GEヘルスケアバイオサイエンス)を用いた。
溶出した各フラクションについて、実施例1−2と同様にヒスタミン遊離試験を行った。
その結果、溶出位置15〜60kDの範囲を、ヒスタミン遊離活性を示す画分として回収し(1.2mL)、以後これをQRX画分とした。
1−5.CystatinAの除去
抗ヒトCystatinA抗体(Biogenesis)1mLから0.9mLを、PBS(−)に対して透析 (3500MWCO)した後、2mLのNHS−activated Sepharose 4 Fast Flow(GEヘルスケアバイオサイエンス)ゲルに添加して3時間ゆるやかに撹拌しながら反応させて、抗ヒトCystatinA抗体固定化担体を作製した。抗体固定化の操作は添付の操作マニュアルに従った。このアフィニティ担体を小カラム(1.8mL)に充填し、約3倍量のPBS(−)で洗浄・平衡化した後、実施例1−4で得られた画分0.5mLをカラムにかけ、素通り画分を回収し、これを目的の抗原画分とした。
なお、SDS−PAGEにより、回収された画分からはほとんどのCystatinAが除去されていることを確認した。
[実施例2] モノクローナル抗体の作製
2−1.マウスの免疫
実施例1で調製した抗原画分を遠心濃縮器(Pall社;Nanosep;3000MWCO)を用いて50μLまで濃縮し、その20μLを同量のFreund Complete Adjuvant と混合して8週齢の雌BALB/cマウスの後足蹠に注射して免疫した。7日後および19日後にFreund Incomplete Adjuvantを用いて同量の汗抗原を追加免疫した。3回目の追加免疫の3日後に膝窩リンパ節を回収し細胞融合の材料とした。
2−2.細胞融合
最終免疫の3日後に、免疫マウスから摘出した膝窩リンパ節から、RPMI培地を用いてリンパ節細胞の浮遊液を調製した。得られた細胞9.9×10個と1.98×10 個のマウスミエローマ細胞株(PU1)とを混合し、遠沈後、電気細胞融合機(島津製作所;SSH−2 somatic Hybridizer、CCC−1 centrifugal cell compress)を用いて細胞融合を行った。融合後の細胞を10v/v%牛胎児血清およびヒポキサンチン100μmol/L、アミノプテリン0.4μmol/L、チミジン16μmol/Lを含む完全RPMI培地(HAT培地)420mLに浮遊させ、96穴マイクロ培養プレート21枚の各ウェルに、0.2mLずつ接種し、5v/v%炭酸ガスの存在下、37℃で培養した。培養開始後10日以内に全てのウェルからハイブリドーマのコロニーが出現した。
2−3.ハイブリドーマの選択
培養ウェル中のハイブリドーマを完全RPMI培地で培養し、その培養上清中の特異抗体産生の有無を次のようにして検出した。
(1)ハイブリドーマ培養上清中のIgG測定
アッセイ用96穴マイクロ培養プレートのウェルにヤギ抗マウスIgG抗体(シグマ社;M4280)を4μg/mLの濃度で50μL添加し固定した。0.05v/v%Tween20を含むPBS(−)洗浄液でウェルを3回洗浄した後、3w/v%スキムミルク/PBS(−)を250μLを添加してブロッキングを行った。このウェルに0.5w/v%スキムミルク/PBS(−)で5倍希釈した培養上清(50μL)を加えて反応させた。洗浄後、5000倍希釈のパーオキシダーゼ標識ヤギ抗マウスIgG抗体(シグマ社;A2554)50μLを添加しウェルに結合したIgGと反応させた。洗浄後、o−フェニレンジアミン(OPD)−H発色液(和光純薬)100μLを添加し20分程度反応させて、マイクロプレートリーダーで490nmの吸光度を測定した。
(2)ヒスタミン遊離活性の抑制の測定
IgG産生の認められたウェル(140ウェル)の培養上清40μLと実施例1−4で調製したQRX画分の3000倍希釈溶液10μLを混和して、37℃、30分間プレインキュベートした。これに、アトピー性皮膚炎患者の末梢血液から調製した好塩基球50μL添加して、実施例1−2に記載の方法によるヒスタミン遊離試験を行った。
その結果、6つのウェルの培養上清が、QRX画分によるヒスタミン遊離を抑制することが確認された(図1)。
選択したハイブリドーマを、限界希釈法によりBALB/cマウスの胸腺細胞をFeeder細胞として用いてクローニングした。クローニングの操作は最低2回以上行った。得られた6つのハイブリドーマから生産される抗体をそれぞれsmith−1〜smith−6とした。
2−4.モノクローナル抗体の精製
クローニング後の細胞は、無血清培地(SFM)への馴化を行った後、CELLine CL−350(BD バイオサイエンス)フラスコにより大量培養した。得られた培養上清を遠心分離機(10,000RPM)にかけて不溶物を除いた後、PBS(−)で2倍に希釈してProtein G−Sepharose 4 Fast Flow(GEヘルスケアバイオサイエンス)2mLカラムに通した。カラム洗浄液としてPBS(−)を用いて、OD280nmの吸光度がほぼ0になるまで洗浄した。その後、0.2mol/L Gly−HCl(pH2.5)を用いてIgGを溶出した。得られたモノクローナル抗体については280nmでの吸光度からIgGとしてのタンパク濃度を計算した。
精製抗体(10μg/mL)について、実施例1−2記載の方法を用いてヒスタミン遊離活性を調べた。
その結果、いずれの抗体も、QRX画分によるアトピー性皮膚炎患者(A患者およびB患者)の好塩基球からのヒスタミン遊離を抑制した(図2)。
得られたハイブリドーマは、FERM BP−11110またはFERM BP−11111のもと独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託された。
[実施例3] モノクローナル抗体とのQRX画分の反応
3−1.モノクローナル抗体による汗抗原の精製
モノクローナル抗体を固定化したアフィニティ担体を用いて汗抗原サンプルからヒスタミン遊離活性を持つ物質の精製を行った。
精製モノクローナル抗体(smith−1〜smith−6)をPBS(−)に対して透析(3500MWCO)し、各々0.5mg相当の抗体を0.7mLのNHS−activated Sepharose 4 Fast Flow(GEヘルスケアバイオサイエンス)ゲルに添加して3時間ゆるやかに撹拌しながら反応させた。これに0.1mol/LTris−HCl(pH8.5)を添加して活性基をブロッキングした後、同緩衝液および0.1mol/L酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.5)により洗浄した。この操作は添付の操作マニュアルに従った。最終的に十分量のPBS(−)で洗浄・平衡化して抗汗抗原モノクローナル抗体固定化担体を作製した。
この担体50μLをサンプルチューブに入れ、これに実施例1−4で調製したQRX画分を添加して20分間振盪後遠心分離で得た沈殿(抗体固定化担体)をPBS(−)で洗浄した。このサイクルでQRX量を4μL、20μL、100μLと増加させながら3サイクルの処理を行った。最終的に得られた沈殿を十分量のPBS(−)で洗浄した後、120μLの0.1mol/LGly−HCl(pH2.5)を添加して5分間溶出操作を行った。これを遠心分離して得られた上清100μLをリン酸緩衝液で中和した後、PBS(−)で平行化した脱塩カラム(NAP−5;GEヘルスケアバイオサイエンス)で緩衝液をPBS(−)に交換した。こうして調製した溶出液のアトピー性皮膚炎患者血球からのヒスタミン遊離活性を調べた。
その結果、いずれの担体を用いた場合も、溶出液中にヒスタミン遊離活性が認められた。従って、実施例2で得られたモノクローナル抗体を用いて、ヒスタミン遊離活性を有する物質を回収できることが確認された(図3)。
3−2.Native−PAGE ゲル電気泳動及びWestern Blottingにおける汗抗原の検出
実施例2で得られたモノクローナル抗体を用いたWestern Blottingによる汗抗原の検出を試みた。
遠心濃縮器(Pall社;Nanosep;3000MWCO)を用いて10倍濃縮したQRX画分の10μLと5μLのサンプルバッファーおよび1μL の5w/v% Coomassie Brilliant Blue G−250(Native PAGE用;Native PAGE sample preparation kit ; invitrogen製)と混合し、85℃10分インキュベートした。同じ処理を施したものを6レーン分調製し、Native−ポリアクリルアミドゲル(NON−SDS−PAGE mini(4〜20w/v%)ゲル;TEFCO製)で電気泳動した。泳動後のゲルについて、ドライブロッティングシステム(iBlot; invitrogen製)を用いて通常の方法によりニトロセルロースメンブレン(iBlot Gel Transfer Stacks Nitrocellulose, Regular:IB3010−01)にブロッティングした。得られたメンブレンを10w/v%スキムミルク/PBS(−)中でブロッキング(室温、2時間)した。このメンブレンを各レーンに相当するストリップ状にカットし、それぞれを実施例2で得られたモノクローナル抗体溶液(smith−1〜6、5〜10μg/mL)中に入れて4℃にて一晩反応させた。T−TBS(0.05v/v%Tween20入りTBS)で3回洗浄した後、二次抗体としてx2000希釈のHRP標識抗マウスIgG抗体(MP Biomedicals)と室温で2時間反応させた。T−TBSで3回洗浄後、ECL発光検出試薬(GEヘルスケアバイオサイエンス)でバンドを検出した。
その結果、smith−2、smith−3、smith−4、smith−5ではマーカータンパクのバンド位置である66kDの位置の下方に抗原のバンドが検出されたが、smith−1およびsmith−6では検出されなかった(図4−1)。
また、ゲル密度の異なるNative−PAGEゲル(15w/v%ゲル、パジェルNPU−15L;Atto製)を用いて同様にWestern Blottingによる抗原の検出を試みた。 抗体はsmith−2を用いた(図4−2)。
次いで、ヒスタミン遊離活性を持つ抗原画分のNative−PAGE電気泳動における分布を調べた。上記と同様の操作で調製したQRX試料をNative−ポリアクリルアミドゲル(パジェルNPU−15L;Atto製)の8つのウェルに入れて電気泳動した(図4−3)。泳動後、図に示した範囲でゲルを3つの画分(画分1〜3)に切り出してそれぞれさらに細かくカットした後、透析チューブ(排除限界3000ダルトン)に移し、泳動バッファー(25mmol/L Tris/192mmol/Lグリシン)中で電気泳動(100V、40分間)的に透析チューブ内に溶出させた。溶出液の緩衝液を脱塩カラム(NAP−10;GEヘルスケアバイオサイエンス)でPBSに置換し、その抗原活性をヒスタミン遊離試験によって測定した。
その結果、本発明の抗体smith−2によるWestern Blottingで検出されるバンドの位置とほぼ同じ位置の画分1のゲルでヒスタミン遊離活性が認められた(図4−4)。
3−3.抗汗抗原抗体を用いるELISAによる汗抗原の検出
(1)抗血清の調製
QRX画分40μLとFreund Complete Adjuvantを混合してエマルジョン化し、その10μLずつをマウス足蹠に注射して免疫した。免疫は9ヶ月の間に同様の方法で4回行い、最終的に採血して抗血清とした。
(2)smith−2のF(ab’)フラグメントの調製
20mmol/L酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.5)中で透析したsmith−2(1.5mg/mL)の1mLに対して、同緩衝液で洗浄したペプシン固定化ゲル(Pierce社製)50v/v%懸濁液0.25mLを添加して、37℃で5時間反応させた。反応後、遠心分離によって上清を回収した。ゲルに同緩衝液200μLを加えて再懸濁した後、再度遠心分離して得た洗浄液と合わせて約1.1mLの酵素消化物を得た。これに3mol/L塩化ナトリウムを含む0.1mol/Lリン酸緩衝液(pH7.8)を1.1mL加えてpHを調整した。これを1.5M塩化ナトリウムを含む0.05mol/Lリン酸緩衝液(pH7.8)で平衡化したProtein Aカラム(GEヘルスケアバイオサイエンス)にかけ、1.5mol/L塩化ナトリウムを含む0.05mol/Lリン酸緩衝液(pH7.8)で洗浄した。溶出は0.2mol/Lグリシン−塩酸緩衝液(pH2.5)を用いた。溶出液の280nmにおける吸光度をモニターしながら、素通り(および洗浄)部分のタンパク質ピークを集めてF(ab’)フラグメントとした。得られたF(ab’)フラグメントに未消化のIgGが含まれていないことはSDSポリアクリルアミド電気泳動によって確認した。
(3)ELISA試験
ELISA用96穴マイクロプレートの各ウェルに50μLのF(ab’)(1.5μg/mL−PBS)を入れ室温で2時間静置してウェル表面上に固定した。3w/v%BSA/PBSでブロッキングした後、4倍希釈系列にPBSによって希釈したQRX画分50μLを入れて2時間室温で反応させた。T−PBS(0.05v/v%Tween20入りPBS(−))で洗浄後、これに(1)の抗血清(75倍希釈/0.2w/v%BSA/PBS)50μLを加えて1時間室温で反応させた。T−PBSで洗浄後、0.2w/v%BSA PBSで3000倍に希釈したパーオキシダーゼ標識ヤギ抗−マウスIgG(Fc specific:Sigma社)50μLを入れて1時間室温で反応させた。反応後T−PBSで洗浄し、o−フェニレンジアミン発色試薬(和光純薬社製)および過酸化水素を100μL注入して発色させた。1mol/L硫酸を100μL注入添加することで発色反応を停止させた後、マイクロプレートリーダー(Bio−Rad model Benchmark Plus, Bio−Rad社製)を用いてその490nmにおける吸光度を測定した。対照実験には非免疫マウスの血清を用いた。
その結果、smith−2のF(ab’)を固相に用いたサンドイッチELISAにより、汗抗原を特異的に検出できることが確認された(図5)。
[実施例4] 患者血清中の抗汗抗原特異的IgE抗体の測定(1)
アトピー性皮膚炎患者の血清中には汗抗原特異的IgE抗体が存在することが報告されている(Experimental Dermatology 15: 283-290, 2006)。そこで、被験者の血清中の汗抗原特異的IgE抗体を本発明のモノクローナル抗体を用いて検出する汗アレルギーの診断方法を検討した。
smith−2抗体(2.5μg/mL−PBS(−))50μLをELISAプレートの各ウェルに入れ一夜4℃で静置して固相化した。1w/v%BSA−PBS(−)でブロッキングした後、これに50倍希釈のQRX画分50μLを反応させて固相化された抗体に反応させて固定した。T−PBSで洗浄後、1w/v%BSA−PBS(−)で10倍希釈した被験者血清(アトピー性皮膚炎患者および健常者血清)50μL入れて90分間室温で反応させた。T−PBSで洗浄後、0.2w/v%BSA−PBSで5000倍に希釈したパーオキシダーゼ標識ヤギ抗ヒトIgE抗体(Betyl社)50μLを入れて1時間室温で反応させた。反応後T−PBSで洗浄し、o−フェニレンジアミン発色試薬(和光純薬社製)および過酸化水素を100μL注入して発色させた。100μLの2N硫酸を注入添加することで発色反応を停止させた後、マイクロプレートリーダー(Bio−Rad model Benchmark Plus;Bio−Rad社製)を用いてその490nmにおける吸光度を測定した。
その結果、アトピー性皮膚炎患者の11人中(A〜K)9人で抗汗抗原IgE抗体が検出され、健常者3人中(L〜N)3人では該当するIgEは認められなかった(図6)。この検査法を用いれば、ヒスタミン遊離試験等を行わなくとも、微量の血清のみを用いて汗アレルギーの検査を行うことが可能となる(図6)。
[実施例5] 患者血清中の抗汗抗原特異的IgE抗体の測定(2)
血清中の全IgEを選択的にアッセイプレート上に捕集固定し、これに汗抗原QRX画分を反応させた上で、本発明のモノクローナル抗体をQRX画分に反応させて汗抗原特異的に反応するIgEを検出する系を構築した。
ヒトIgE測定キット(Betyl社)のヤギ抗ヒトIgE抗体(100倍希釈)溶液50μLをELISAプレートの各ウェルに入れ、ミキサー上で室温1時間振盪して固相化した。1w/v%BSA−PBS(−)でブロッキングした後、これに1w/v%BSA−PBS(−)で5倍および50倍希釈した被験者血清(アトピー性皮膚炎患者、コリン性蕁麻疹患者、および健常者血清)50μLを入れて1時間室温で反応させた。T−PBSで洗浄後、50倍希釈のQRX画分50μLを反応させた。T−PBSで洗浄後、0.2w/v%BSA−PBS中5μg/mLに実施例6―(1)で調製したビオチン標識smith−2抗体希釈液を室温で1時間反応させた。次いで、0.2w/v%BSA−PBSで1500倍に希釈したパーオキシダーゼ標識streptavidin(Zymed 社)50μLを入れて1時間室温で反応させた。反応後T−PBSで洗浄し、100μLのo−フェニレンジアミン発色試薬(和光純薬社)および過酸化水素を添加して発色させた。100μLの1mol/L硫酸を添加することで発色反応を停止させた後、マイクロプレートリーダ(Bio−Rad model Benchmark Plus;Bio−Rad社製)を用いてその490nmにおける吸光度を測定した。
その結果、IgG等の影響を受けずに汗抗原特異的IgEを検出することができた(図7)。
ここで、患者A〜Cは、アトピー性皮膚炎患者ではあるが、ヒスタミン遊離試験ではヒスタミン遊離が認められず、いわゆる、ノンレスポンダーであると考えられる。しかし、患者Cの血清では汗抗原特異的IgE抗体が確認されたことから、患者Cは汗抗原に過敏性を示し、発汗等によりアトピー性皮膚炎が発症または増悪していると判定することができる。このように、本発明による判定方法は、ヒスタミン遊離試験に代わる、または補完する判定方法として利用することができる。
[実施例6] サンドイッチELISAに使用可能なモノクローナル抗体の作製
6−1.マウスの免疫
実施例1−4で調製したQRX画分500μLを遠心濃縮器(Pall社;Nanosep;3000MWCO)を用いて50μLまで濃縮し、その15μLに10μLのPBS(−)を加え、これを25μLのアジュバント TiterMAX Gold(TiterMAX社)と混合して8週齢の雌BALB/cマウスの後足蹠に注射して免疫した。15日後に同様に追加免疫した。この追加免疫の3日後に膝窩リンパ節を回収し、smith−2抗体およびQRX抗原を用いて抗体産生細胞の選択を行った。
6−2.抗体産生細胞の選択
細胞培養用6ウェルプレートの6ウェルをPBS(−)で洗浄した後、実施例3−3(2)で調製したsmith−2のF(ab’)フラグメント(10μg/mL−PBS)溶液の1.33mLを各ウェルに添加し、4℃で16時間、ゆるやかに撹拌した。PBS(−)、次いで1v/v%FCS(牛胎児血清)を含むPBS(−)で洗浄した後、約30倍希釈のQRX画分の1.33mLをウェルに添加、2時間室温で振盪することで、プレート上のsmith−2のF(ab’)フラグメントに反応させて固定した。
免疫マウスから摘出した膝窩リンパ節から、5v/v%FCS(牛胎児血清)を含むPBS(−)を用いて細胞を調製し、該細胞をウェル当り1.1x10個/1.33mLの濃度でプレートに添加した。時々プレートをゆるやかに撹拌しながら室温で約90分間反応させた。反応終了後、1v/v%FCS(牛胎児血清)を含むPBS(−)でプレート表面上を数回洗浄し吸着していない細胞を除去した。最後にウェル当り1.5mLの完全RPMI培地を加えて、5v/v%炭酸ガスの存在下、37℃で1時間培養した。その後、ピペッティングおよびラバーポリスマンを用いて、プレート面に吸着していた7x10個の細胞を回収した。
6−3.細胞融合
回収した7x10個の細胞と1.75x10個のマウスミエローマ細胞株(PU1)とを用いて実施例2−2に記載の方法により細胞融合を行った。融合後の細胞を、最終濃度で10倍希釈濃度のBriclone(Archport社)を含む10v/v%牛胎児血清RPMI完全培地20mLに浮遊させ、96穴マイクロ培養プレートの187ウェルに100μLずつ撒き、5v/v%炭酸ガスの存在下、37℃で培養した。翌日、ウェル当り同量の通常の2倍濃度HATを含むRPMI完全培地を添加した。培養開始後8日後に全てのウェルからハイブリドーマのコロニーが出現した。
6−4.ハイブリドーマの選択
培養ウェル中のハイブリドーマを完全RPMI培地で培養し、その培養上清中の特異抗体産生の有無を次のようにして検出した。
(1)ハイブリドーマ培養上清中のIgG測定
実施例2−3に記載の方法に従って、各ウェルのIgG量の測定を行ない、490nmでの吸光度が0.5以上の発色が認められるウェルを選択した。
(2)smith−2のF(ab’)フラグメントおよびQRX画分を用いたサンドイッチELISAによるモノクローナル抗体産生細胞の選択
実施例3−3(2)の方法で調製したsmith−2のF(ab’)フラグメント(5μg/mL−PBS(−))50μLをELISAプレートの各ウェルに入れ、1時間静置して固相化した。1w/v%BSA−PBS(−)でブロッキングした後、これに25倍希釈のQRX画分50μLを反応させ、固相化された抗体に反応させてQRXを固定した。T−PBSで洗浄後、実施例6−4(1)でIgG産生が認められたウェルの培養上清約40μLを添加して1時間反応させた。0.2w/v%BSAを含むPBSで2000倍に希釈したパーオキシダーゼ標識ヤギ抗マウスIgG(Fc specific:Sigma社)50μLを入れて1時間室温で反応させた。反応後、T−PBSで洗浄し、o−フェニレンジアミン発色試薬(和光純薬社)および過酸化水素を100μL注入して発色させた。2N硫酸を100μL注入添加することで発色反応を停止させた後、マイクロプレートリーダー(Bio−Rad model Benchmark Plus, Bio−Rad社)を用いてその490nmにおける吸光度を測定した。
その結果、最終的に4つのウェル(♯1−37、♯2−15、♯3−12、♯3−64)の培養上清がこのサンドイッチELISAで陽性となった(図8)。陽性ウェル中のハイブリドーマを、BALB/cマウスの胸腺細胞をFeeder細胞として用いた限界希釈法によりクローニングした。クローニング後、同様のELISA法により、2つのウェル由来のハイブリドーマからサンドイッチELISAに使用可能な抗体産生クローンを得た。この2つのハイブリドーマから産生される抗体を、それぞれadam−1、adam−2とした。
(3)ヒスタミン遊離抑制活性測定によるモノクローナル抗体産生細胞の選択
実施例6−4(1)でIgG産生の認められたウェルの培養上清40μLとQRX画分の3000倍希釈溶液10μLを混和して、37℃、30分間プレインキュベートした。これに、アトピー性皮膚炎患者の末梢血液から調製した好塩基球細胞溶液50μLを添加して、実施例2−3(2)に記載された測定を実施した。
その結果、5つのウェル(♯1−57、♯2−16、♯2−33、♯3−12、♯3−31)の培養上清が、QRX画分によるヒスタミン遊離を抑制した(図9)。これら5つのウェル中のハイブリドーマを、限界希釈法によりクローニングした後、ヒスタミン遊離抑制活性を再測定した。その結果、最終的に3つのウェル由来のクローンを得た。この3つのハイブリドーマから産生される抗体をそれぞれ、smith−7、smith−8、smith−9とした。
(4)モノクローナル抗体の性質
実施例6−4(2)で得られたモノクローナル抗体adam−1〜2および実施例6−4(3)で得られたモノクローナル抗体smith−7〜9を、実施例2−4に記載された方法で精製し、それぞれの活性を調べた。
精製抗体(6.25μg/mL)について、実施例6−4(2)に記載の方法を用いてサンドイッチELISAを行った。
その結果、adam−1〜2抗体は、サンドイッチELISAで陽性を示した(図10)。これにより、汗抗原組成物の検出において、adam−1〜2抗体はsmith−2のF(ab’)フラグメントと組み合わせて、サンドイッチ法により汗抗原組成物を検出できることが確認された。また、smith−7〜9抗体も、サンドイッチELISAでわずかに陽性を示した(図10)。これにより、汗抗原組成物の検出において、smith−7〜9抗体はsmith−2のF(ab’)フラグメントと組み合わせて、サンドイッチ法により汗抗原組成物を検出できることが確認された。
次に、最終濃度で50、10、2μg/mLに調製した精製抗体を用いて、実施例2−3(2)に記載の方法を用いてヒスタミン遊離抑制活性を調べた。
その結果、いずれのモノクローナル抗体でも用量依存的なヒスタミン遊離阻害活性が認められた(図11)。また、他のアトピー性皮膚炎患者2名の好塩基球を用いたヒスタミン遊離試験においても、遊離阻害活性の強弱はあるものの同様の結果を示した。
[実施例7] 抗汗抗原抗体を用いるELISAによる汗抗原の検出
実施例3−3では、固相化抗体としてsmith−2のF(ab’)フラグメントを用い、サンドイッチ用抗体としてはQRX抗原画分で免疫して得たマウスの血清を用いて汗抗原検出のためのELISA試験を行った。そこで、マウス血清の代わりに実施例6−4(2)で作製したモノクローナル抗体を用いることにより、より安定したELISA系の構築を試みた。
(1)ビオチン標識モノクローナル抗体の調製
精製抗体(adam−1〜2およびsmith−2、7〜9)を0.1mg/0.2mLとなるようにPBS(−)で調製し、最終濃度で10mmol/Lとなるように、Sulfo−NHS−LC−Biotin(Pierce社)を加え、室温で1時間反応させた。1mol/Lモノエタノールアミンの2μLを添加して反応を停止した後、PBS(−)で平衡化したNAP−5(GEヘルスケアバイオサイエンス)にかけて、ビオチン化試薬等を除去した。
(2)汗抗原検出用サンドイッチELISA系の構築
ELISA用96穴マイクロプレートの各ウェルに50μLのモノクローナル抗体(adam−1〜2およびsmith−2、7〜9;5μg/mL−PBS)を入れ、室温で2時間静置してウェル表面上に抗体を固定した。1w/v%BSA/PBSでブロッキングした後、PBS(−)中で50倍希釈したQRX画分50μLを加えて、1時間室温で反応させた。T−PBS(0.05v/v%Tween20入りPBS(−))で洗浄後、これに(1)で調製したビオチン標識モノクローナル抗体(10μg/mL−0.2w/v%BSA/PBS)の50μLを加え、室温で1時間反応させた。T−PBSで洗浄後、0.2w/v%BSAを含有するPBSで1500倍に希釈したパーオキシダーゼ標識streptavidin(Zymed 社)を50μL加え、室温で1時間反応させた。反応後T−PBSで洗浄し、o−フェニレンジアミン発色試薬(和光純薬社)および過酸化水素を100μL注入して発色させた。1mol/L硫酸を100μL注入添加することで発色反応を停止させた後、マイクロプレートリーダ(Bio−Rad model Benchmark Plus, Bio−Rad社)を用いて、その490nmにおける吸光度を測定した。
その結果、いずれの組み合わせにおいても汗抗原を特異的に検出できることが確認された(図12−1)。特に、smith−8固相化−ビオチン標識adam−1、smith−9固相化−ビオチン標識adam−1、adam−1固相化−ビオチン標識smith−2、またはsmith−8固相化−ビオチン標識smith−2の組み合わせの場合に高感度で汗抗原を検出できることが確認された(図12-1)。この内のsmith−8を固相化抗体とし、adam−1をビオチン標識抗体とする組み合わせにおける汗抗原の測定の結果を図12−2に示す。
[実施例8] コリン性蕁麻疹患者血清中の抗汗抗原特異的IgE抗体の測定
アトピー性皮膚炎患者と同様、コリン性蕁麻疹患者のうち、60%以上の患者の血清中に汗抗原特異的IgE抗体が存在する(Takahagi S, et al., Br J Dermatol, 2008)。そこで、被験者の血清中の汗抗原特異的IgE抗体を本発明によるモノクローナル抗体を用いて検出する汗アレルギーの診断方法を検討した。
実施例4に記載した方法と同様の操作によって行った。
smith−2抗体(5μg/mL−PBS(−))50μLをELISAプレートの各ウェルに入れ、室温で2時間静置して固相化した。1w/v%BSA−PBS(−)でブロッキングした後、これに50倍希釈のQRX画分50μLを添加し、ミキサー上で1時間撹拌しながら固相化された抗体に反応させて固定した。T−PBSで洗浄後、1w/v%BSA−PBS(−)で5倍および50倍希釈した被験者血清(コリン性蕁麻疹患者および健常者血清)50μLを入れて90分間室温で反応させた。T−PBSで洗浄後、0.2w/v%BSA−PBSで5000倍に希釈したパーオキシダーゼ標識ヤギ抗ヒトIgE抗体(Betyl社)50μLを入れて1時間室温で反応させた。反応後T−PBSで洗浄し、o−フェニレンジアミン発色試薬(和光純薬社)および過酸化水素を100μL注入して発色させた。100μL の1mol/L硫酸を注入添加することで発色反応を停止させた後、マイクロプレートリーダ(Bio−Rad model Benchmark Plus;Bio−Rad社)を用いてその490nmにおける吸光度を測定した。
その結果、コリン性蕁麻疹患者でも抗汗抗原IgE抗体が検出された(患者6、患者7)。しかし、健常者では該当するIgEは認められなかった(図13)。この検査法を用いることにより、ヒスタミン遊離試験等を行わなくとも、微量の血清のみを用いてコリン性蕁麻疹患者について汗アレルギーの検査を行うことが可能となることが確認された。

Claims (26)

  1. 汗抗原組成物と反応し、かつ、該組成物による汗抗原刺激応答細胞からのヒスタミン遊離を抑制することができる抗体またはその機能的断片。
  2. ヒト汗腺からの分泌物に含まれるヒスタミン遊離活性画分を抗原として用いて得られた、請求項1に記載の抗体またはその機能的断片。
  3. ヒト汗腺からの分泌物に含まれるヒスタミン遊離活性画分を、抗ヒトCystatinA抗体アフィニティクロマトグラフィーにかけて得られた抗ヒトCystatinA抗体非吸着画分を抗原として用いて得られた、請求項1に記載の抗体またはその機能的断片。
  4. 汗抗原刺激応答細胞からのヒスタミン遊離量を指標にしてスクリーニングされるハイブリドーマから生産される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の抗体またはその機能的断片。
  5. FERM BP−11110、FERM BP−11111またはFERM BP−11112の受託番号のもと寄託されたハイブリドーマから生産される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の抗体またはその機能的断片。
  6. 抗体がモノクローナル抗体である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の抗体またはその機能的断片。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の抗体またはその機能的断片と抗原抗体反応する汗抗原に反応する、抗体またはその機能的断片。
  8. FERM BP−11113の受託番号のもと寄託されたハイブリドーマから生産される、請求項7に記載の抗体またはその機能的断片。
  9. 抗体がモノクローナル抗体である、請求項7または8に記載の抗体またはその機能的断片。
  10. 汗抗原が関連する疾患またはその発症リスクを判定する方法であって、請求項1〜6のいずれか一項に記載の抗体を用いて、被験試料中の汗抗原および/または汗抗原に特異的なIgE抗体を検出する工程を含んでなる、方法。
  11. 請求項7〜9のいずれか一項に記載の抗体を更に用いる、請求項10に記載の方法。
  12. 汗抗原が関連する疾患が、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、汗疹、汗疱、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、および喘息からなる群から選択される、請求項10または11に記載の判定方法。
  13. 請求項1〜9のいずれか一項に記載の抗体またはその機能的断片と、場合によっては1種以上の薬学的に許容される担体、および/または希釈剤とを含んでなる、汗抗原が関連する疾患の予防または治療に用いられる医薬組成物。
  14. 汗抗原が関連する疾患が、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、汗疹、汗疱、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、および喘息からなる群から選択される、請求項13に記載の医薬組成物。
  15. 汗抗原が関連する疾患の予防剤または治療剤の製造のための、請求項1〜9のいずれか一項に記載の抗体またはその機能的断片の使用。
  16. 汗抗原が関連する疾患が、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、汗疹、汗疱、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、および喘息からなる群から選択される、請求項15に記載の使用。
  17. 予防上または治療上の有効量の請求項1〜9のいずれか一項に記載の抗体またはその機能的断片を、ヒトを含む哺乳類に投与することを含んでなる、汗抗原が関連する疾患の予防方法または治療方法。
  18. 汗抗原が関連する疾患が、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、汗疹、汗疱、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、および喘息からなる群から選択される、請求項17に記載の予防または治療方法。
  19. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の抗体もしくはその機能的断片および/または請求項7〜9のいずれか一項に記載の抗体もしくはその機能的断片を含んでなる、汗抗原が関連する疾患またはその発症リスクの診断剤または診断用キット。
  20. 汗抗原が関連する疾患が、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、汗疹、汗疱、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、喘息からなる群から選択される、請求項19に記載の診断剤または診断用キット。
  21. 汗抗原組成物と反応し、かつ、該組成物による汗抗原刺激応答細胞からのヒスタミン遊離を抑制することができる抗体またはその機能的断片の製造に用いられるハイブリドーマであって、汗抗原刺激応答細胞からのヒスタミン遊離量を指標に選択して得られた、汗抗原特異的抗体を産生するハイブリドーマ。
  22. FERM BP−11110、FERM BP−11111またはFERM BP−11112の受託番号のもと寄託された請求項21に記載のハイブリドーマ。
  23. 汗抗原組成物と反応し、かつ、該組成物による汗抗原刺激応答細胞からのヒスタミン遊離を抑制することができる抗体またはその機能的断片と組み合わせて、サンドイッチ法を用いて汗抗原組成物を検出することができる、汗抗原特異的抗体を産生するハイブリドーマ。
  24. FERM BP−11113の受託番号のもと寄託された請求項23に記載のハイブリドーマ。
  25. 汗抗原刺激応答細胞からのヒスタミン遊離量を指標として、ヒスタミン遊離抑制作用を有する抗体を産生するハイブリドーマを選択する工程を含んでなる、汗抗原特異的抗体を産生するハイブリドーマのスクリーニング方法。
  26. 汗抗原特異的抗体を産生するハイブリドーマの製造方法であって、
    (i)汗抗原刺激応答細胞からのヒスタミン遊離量を指標として、ヒスタミン遊離抑制作用を有する抗体を産生するハイブリドーマを選択する工程;および
    (ii)(i)で得られたハイブリドーマをクローニングする工程
    を含んでなる、方法。
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