JPWO2009116659A1 - 抗グリピカン3抗体を用いる肝癌細胞の検出法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、被験体における肝癌細胞の存在を検出するためのインビトロ免疫アッセイ方法に関する。本発明の方法では、肝癌組織におけるグリピカン3抗原の発現を検出する際に、熱誘導抗原賦活化法による抗原賦活化処理と、プロテアーゼ抗原賦活化法による抗原賦活化処理とを組み合わせることによって、グリピカン3抗原の発現量や発現態様の差異を免疫組織化学的染色法によって検出することができる。このことにより、従来のHIER法ではグリピカン3が高発現していると認定されていた検体を、グリピカン3の発現量に応じて段階的に類別することが可能である。

Description

本発明は、被験体における肝癌細胞の存在を検出するためのインビトロ免疫アッセイ方法に関する。
グリピカン3は肝癌で頻繁に高発現していることから、肝癌におけるグリピカン3の発現プロファイルの解析は、グリピカン3の肝癌における機能の同定、肝癌の治療または診断および肝癌の予後予測に有用であろうと考えられている。一般にタンパク質の発現解析に際しては、免疫組織化学、とりわけ酵素抗体法が病理診断に広く用いられている。免疫組織化学は生体内の物質(抗原)の存在と分布を抗体や酵素等の生物学的試薬を用いて高感度、かつ特異的に検出する方法である。免疫組織化学の特徴として、1.手技的に簡便である、2.得られた生化学的情報を形態情報に適用することができる等の広範な応用が可能である、3.生物学的、病理学的に重要な情報を提供する、4.生物学的試薬を用いるので通常の方法とは異なった注意がいる、等の特徴があげられる。また、免疫組織化学染色は新鮮凍結切片、細胞診検体、または、固定組織のパラフィン切片等広範囲な検体を用いて目的とする病理診断や形態学的観察に使用できるという長所も有している。
免疫組織化学の中でも、酵素抗体法による免疫染色は、通常の病理診断に用いられるホルマリン固定パラフィン包埋組織が使えるために、その応用範囲は非常に広い。しかし、ホルマリン固定組織であるために起こりうるアーチファクト(人為的所産)等に十分な注意を払わないと、染色に失敗するばかりか、ときにはホルマリン固定および包埋による抗原の変化や、抗体の浸透と反応性の変化をもたらす結果、偽陽性や偽陰性が生じる。こうした偽陽性や偽陰性は、染色結果に対する解釈の誤りに帰結することがある。
通常の組織学的検索に用いられるホルマリン固定は、形態の保持には有用であるが、抗体との結合性の保持という点からは理想的な固定液とはいえない。そこでホルマリン以外にもアルコールなどが固定液として用いられることもあるが、形態保持に優れ、すべての抗原の抗体との結合性を保存できるような固定法はまだ確立されていない。したがって、ホルマリン固定は、抗体との結合性の保持に問題があるものの、広く用いられている現実的な固定法となっている。
そこで、抗体との結合性の保持に対するホルマリン固定の影響を減弱するためのいくつかの方法が考えられてきている。第一に、ホルマリン固定の影響を受けないエピトープを認識する抗体を選択して免疫染色に使用するという方策が考えられる。同一の抗原を認識する抗体の中から、抗原中のホルマリン固定の影響を受けにくいエピトープを認識する抗体を免疫染色に使用することにより、偽陰性を減らすことが可能となる。しかしながら、グリピカン3は細胞表面に発現した後にプロテアーゼ等の翻訳後修飾を受けるため、抗体との結合が可能なエピトープが限定されることから、好適なエピトープを選択するためのエピトープの多様性がない。
第二に、免疫染色の感度を高くして通常の方法では可視化できない抗原を検出する方法が挙げられる。最も簡便な方法は、発色時に通常免疫染色で使用されるDAB(3,3’diaminobenzidine tetrahydrochloride)に銅などの重金属を加える方法であるが、顕著な感度の上昇は期待できない。ABC(avidin−biotylated peroxidase complex)法やLSAB(labeled streptavidin biotynlated antibody)法などの、ビオチン化二次抗体とABCあるいは酵素標識アビジンを繰り返して切片と反応させることによって感度をあげるという方法も試みられたが、反応回数が増えるに従って背景の非特異染色も増強する傾向が認められた。さらに酵素標識デキストランポリマーを用いるEPOS(enhanced polymer one−step staining)法や、ビオチン化タイラマイドとABC法を組み合わせたCSA(catalyzed signal amplification)法が利用できるようになって、染色の感度は飛躍的に向上した。しかしながら、ABC法等の従来の方法を用いてホルマリン固定組織における抗原を検出する際には、腫瘍組織は陽性と、正常または非腫瘍組織は陰性と判断され、そうした判断に基づいて腫瘍組織と非腫瘍組織の識別をすることが可能であったが、高感度法を用いると非腫瘍組織内の微量の抗原も検出されるため、抗原によってはこのような識別ができない場合もある。また、高感度法を用いる場合は高感度ゆえに背景染色も増強するといった問題も有していた。
第三にホルマリン固定により抗体との反応性が減弱した抗原の反応性を賦活化するという方法がある。1970年代に導入されたプロテアーゼを用いた切片の消化による方法(Protease−induced epitope retrieval,以下「PIER法」または「プロテアーゼ抗原賦活化法」と指称される)においては、トリプシン、ペプシンなどによる切片の消化が免疫染色の前に行われる。この方法では、切片自体が消化されることに起因する切片のガラスからの剥離や染色結果の不安定性等の問題があった。
その後、熱誘導抗原賦活化法(Heat−induced epitope retrieval,以下「HIER法」または「熱誘導抗原賦活化法」と指称される)が、1990年代に開発された。マイクロウェーブ、煮沸やオートクレーブを用いて加熱すると、高温処理により抗原が加水分解される結果、エピトープが抗体と結合可能になるといわれている。グリピカン3の肝癌における発現も、これまではHIER法によって検出されてきた(非特許文献1〜5および特許文献1)。しかしながら、抗グリピカン3抗体が血管や肝類洞の上皮細胞と交叉反応性を示すため、正常肝細胞由来のタンパク質ライゼートとのブロッキング反応を予め施してこうした交叉結合を除外するような煩雑な処理が必要であり(非特許文献4)、元来細胞膜上に発現しているグリピカン3が細胞質性に発現しているように観察される等(非特許文献2)、従来用いられているHIER法では肝癌組織でのグリピカン3の発現が正確に検出できず、従来のHIER法に替わる当該発現の正確な検出方法の開発が求められていた。
Capurro M,Wanless IR,Sherman M,Deboer G,Shi W,Miyoshi E,Filmus J.,(2003)Gastroenterology 125(1),89−97 Yamauchi N,Watanabe A,Hishinuma M,Ohashi K,Midorikawa Y,Morishita Y,Niki T,Shibahara J,Mori M,Makuuchi M,Hippo Y,Kodama T,Iwanari H,Aburatani H,Fukayama M.,(2005)Mod Pathol 18(12),1591−8 Libbrecht L,Severi T,Cassiman D,Vander Borght S,Pirenne J,Nevens F,Verslype C,van Pelt J,Roskams T.,(2006)Am J Surg Pathol 30(11),1405−11 Grozdanov PN,Yovchev MI,Dabeva MD.,(2006)Lab Invest 86(12),1272−84 Llovet,J.M.,Chen,Y.,Wurmbach,E.,Roayaie,S.,Fiel,M.I.,Schwartz,M.,Thung,S.N.,Khitrov,G.,Zhang,W.,Villanueva,A.,Battiston,C.,Mazzaferro,V.,Bruix,J.,Waxman,S.,Friedman,S.L.,(2006)Gastroenterology 131(6),1758−1767 WO2003100429 WO2006006693 WO2004022739
[発明が解決しようとする課題]
本発明はこのような情況に鑑みて為されたものであり、その目的は、肝癌組織におけるグリピカン3の発現の態様を正確に検出することを可能とする方法を提供することにある。
[課題を解決するための手段] 本発明者らは、肝癌組織におけるグリピカン3抗原の発現を検出する際に、熱誘導抗原賦活化法による抗原賦活化処理と、プロテアーゼ抗原賦活化法による抗原賦活化処理とを組み合わせることによって、グリピカン3抗原の発現量や発現態様の差異を免疫組織化学的染色法によって検出できることを見出して本発明を完成した。このことにより、従来のHIER法ではグリピカン3が高発現していると認定されていた検体を、グリピカン3の発現量に応じて段階的に類別することが可能となった。
すなわち、本願出願は以下の発明;
[1]被験体における肝癌細胞の存在を検出するためのインビトロの免疫アッセイ方法であって、
(a)前記被験体から調製された後に、パラフィンに包まれて透過性の支持体に取り付けられた、同一被験体より少なくとも二つの同視し得る一組の組織標品がパラフィン包埋切片として提供され、
(b)前記一組の組織標品の脱パラフィン処理が実施され、
(c)前記(b)処理が実施された同視し得る一組の組織標品の一方に対して熱誘導抗原賦活化法による抗原賦活化処理が施され、他方に対してプロテアーゼ抗原賦活化法による抗原賦活化処理が施され、
(d)前記(c)処理が施された組織標品中に存するグリピカン3と抗グリピカン3抗体との複合体の形成に適切な条件下で、当該標品に対して抗グリピカン3抗体が接触され、
(e)複合体の存在が検出され、ここで、複合体が存在する場合に被験体において肝癌細胞が存在すると判定される、
の各工程を含む方法;
[2]前記熱誘導抗原賦活化法がマイクロ波による加熱である[1]に記載の方法;
[3]前記熱誘導抗原賦活化法がオートクレーブによる加熱である[1]に記載の方法;
[4]前記プロテアーゼ抗原賦活化法に用いるプロテアーゼが、ペプシン、トリプシンおよびプロテアーゼKからなる群より選択される、[1]から[3]のいずれかに記載の方法;
[5]複合体を検出するための検出反応が酵素反応である、[1]から[4]のいずれかに記載の方法;
[6]前記抗グリピカン3抗体がグリピカン3のC末端ポリペプチドに結合する抗体である、[1]から[5]のいずれかに記載の方法;
[7]グリピカン3のC末端ポリペプチドが配列番号1に記載の359番目のアミノ酸から580番目のアミノ酸からなるポリペプチド、または、375番目のアミノ酸から580番目のアミノ酸からなるポリペプチドである[6]に記載の方法;
[8]前記抗グリピカン3抗体がGC33抗体である[6]または[7]に記載の方法;
[9]前記抗グリピカン3抗体が1G12抗体である[1]から[5]のいずれかに記載の方法;
[10]工程(e)において、複合体の存在が数値化されて検出される、[1]から[9]のいずれかに記載の方法;
[11]前記数値化が以下の式;
IRCp=PR+(SI−Cp)+SP
[式中、
IRCpは、グリピカン3の発現量スコアであり、
PRは、検鏡下で前記複合体が検出される細胞の割合をスコア化した数値であり、
SI−Cpは、検鏡下で前記複合体が視野中細胞の細胞質において検出される染色強度をスコア化した数値であり、SPは、検鏡下での視野中細胞の細胞膜において完全な膜染色を示す細胞の割合をスコア化した数値である]
にしたがって算出される、[10]に記載の方法;
[12]前記数値化が以下の式;
IRCm=PR+(SI−Cm)+SP
[式中、
IRCmは、グリピカン3の膜局在スコアであり、
PRは、検鏡下で前記複合体が検出される細胞の割合をスコア化した数値であり、
SI−Cmは、検鏡下で前記複合体が視野中細胞の細胞膜において検出される染色強度をスコア化した数値であり、
SPは、検鏡下での視野中細胞の細胞膜において完全な膜染色を示す細胞の割合をスコア化した数値である]
にしたがって算出される、[10]に記載の方法;
[13][11]および[12]に記載の方法により算出されたスコアに基づいて、被験体に存在する肝癌細胞を分類する方法;
[14][11]および[12]に記載の方法により算出されたスコアに基づいて、被験体に抗グリピカン3抗体を含む抗癌剤を投与するか否かを決定する方法;
[15][11]および[12]に記載の方法により算出されたスコアに基づいて、被験体に対する肝癌治療における抗グリピカン3抗体を含む抗癌剤の投与量を決定する方法;を提供するものである。
SIのスコアの各グレードを表す図である。 SPのスコアの各グレードを表す図である。 HuH−7およびHepG2細胞移植モデルの標品の染色結果を示す図である。 ヒト肝癌の臨床検体から調製された標品の染色結果を示す図である。 hGC33抗体のヒト肝癌移植マウスモデルにおける抗腫瘍効果を表す図である。 hGC33抗体のヒト肝癌移植マウスモデルにおける抗腫瘍効果を表す図である。 hGC33抗体のヒト肝癌移植マウスモデルにおける抗腫瘍効果を表す図である。 hGC33抗体のヒト肝癌移植マウスモデルにおける抗腫瘍効果を表す図である。
本明細書は、本願の優先権の基礎である特願2008−068316号の明細書に記載された内容を包含する。
組織標品
本明細書中で使用される用語「組織標品」とは、個体、体液(例えば、血液、血清、血漿、および髄液)、組織培養物もしくは組織切片等から得られる任意の生物学的標品をいう。生物学的標品として用いられるものとして被験体標品が好適に挙げられる。好ましい被験体標品は、被験体から得られた組織であり、さらに好ましくは、被験体の肝組織である。肝組織を採取する方法としては公知の方法である生検(バイオプシー)が好適に用いられる。肝生検とは細く長い針が皮膚の表面から直接肝臓に刺され、肝臓の組織が採取される方法をいう。通常、針が穿刺される部位は右胸下部の肋間である。術前に超音波検査装置を用いて穿刺部の安全性が確認された上で、穿刺部が消毒される。更に皮膚から肝臓の表面までが麻酔の対象となり、穿刺部の皮膚が小切開された後に穿刺針が穿刺される。
本発明においては、組織標品が顕微鏡下で透過光線によって観察されるために、組織標品が顕微鏡に使用される光線を十分に透過する程度に薄切される。薄切の前段階として組織標品が固定される。すなわち、組織・細胞の蛋白質に脱水や変性を起こさせて凝固させることによって、組織を構成する細胞が速やかに死滅し、その構造が安定化および不溶化される。まず、固定の対象とされる組織標品が、パラフィン包埋切片を作るのに適した大きさおよび形の断片として手術用メス等の刃物で切り取られる。次いで、固定を実施するために用いられる試薬である固定液中で当該断片が浸漬される。固定液としては、ホルマリン、更に好ましくは中性緩衝ホルマリンが好適に使用される。中性緩衝ホルマリンの濃度は組織標品の特性または物性に応じて適宜選択される。濃度は1〜50%、好ましくは5〜25%、更に好ましくは10〜15%の間で適宜変更されて使用され得る。組織標品が浸漬された固定液が真空ポンプを用いて適宜脱気される。固定は組織標本を常圧および室温の条件下で固定液中に数時間放置することによって実施される。固定に要する時間は、1時間から7日間、好ましくは2時間から3日間、また好ましくは3時間から24時間、更に好ましくは4時間から16時間の範囲で適宜選択され得る。固定の後にリン酸緩衝液等に更に数時間(2時間から48時間、好ましくは3時間から24時間、更に好ましくは4時間から16時間の範囲で適宜選択され得る時間)、適宜浸漬される。
次に、固定が適用された組織標品から、凍結切片法またはパラフィン切片法を用いて切片が好適に作製され得る。凍結切片法の好適な例としては、O.C.T.compound(Miles.Inc)中に組織を投入して凍結させたものを、クリオスタット(凍結切片作製装置)を用いて薄切する方法が挙げられる。パラフィン切片法においては、固定が適用された組織標品が包埋剤に浸漬され固められることにより、均一かつ適切な硬度が付与される。包埋剤としては、パラフィンが好適に使用され得る。固定が適用された組織標品はエタノールを用いて脱水される。具体的には、組織標品が70%エタノール、80%エタノール、100%エタノールに順次浸漬されることによって、当該組織標品が脱水される。浸漬に要する時間および回数は、1時間から数日および1回から3回の範囲で適宜選択され得る。また、室温または4℃においても浸漬され得るが、4℃において浸漬される場合には、浸漬時間は終夜等その時間が長いほうが好ましい。次いでその液相がキシレンに置換された後に、組織標品がパラフィンによって包埋される。その液相のキシレンへの置換に要する時間は1時間から数時間の範囲で適宜選択され得る。その際に、室温で置換され得るし、4℃においても置換され得るが、4℃において置換される場合には、置換の時間は、終夜等その時間が長いほうが好ましい。パラフィン包埋に要する時間および回数は、1時間から数時間および1回から4回の範囲で適宜選択され得る。その際に、室温で包埋され得るし、4℃においても包埋され得るが、4℃において包埋される場合には、包埋の時間は、終夜等その時間が長いほうが好ましい。また、パラフィン包埋反応が自動化処理されるパラフィン包埋装置(EG1160、Leica等)を用いることによって、組織標品が好適にパラフィン包埋され得る。
上述のようにしてパラフィン包埋された組織標品を台木に接着することによって「ブロック」が作製され、このブロックがミクロトームよって1から20μmの厚さから選択される所望の厚さに薄切される。薄切された組織切片は透過性の支持体であるスライドグラス上に静置されることにより固着される。この場合において、組織切片の剥離を防止するためにスライドガラスに0.01%ポリ−L−リジン(Sigma)を塗布し乾燥させたスライドグラスも好適に使用され得る。固着された組織切片は数分から1時間の間から選択される適切な時間風乾される。
本発明においては、上述のように調製され、透過性の支持体上に取り付けられた二つの組織標品が一組用意される。この当該組織標品は組織上同視され得る二つの組織標品であることが望ましい。「同視され得る」とは、相比較する二つの組織標品がその組織標品が由来する被験体標品中でほぼ同一の細胞または組織から構成されていることを意味する。例えば、隣接する切片として調製された二つの組織標品は同視され得る二つの組織標品である。本発明においても特段別に記載しない限り、「同視され得る二つの組織標品」とは隣接する切片として調製された二つの組織標品をいうが、これに加えて、隣接する切片として調製されていなくとも二つの組織標品を構成する細胞または組織の構成が当該二つの組織標品間で同視できるものであれば「同視され得る二つの組織標品」に該当する。細胞または組織の構成が当該二つの組織標品間で同視できる場合としては、例えば、(1)組織切片中の平面座標上で同一の位置に同一の細胞から由来する細胞の切片が存在する場合、(2)当該細胞の切片が当該平面座標上の同一の位置に存在する割合が少なくとも50%以上、好ましくは60%以上、また好ましくは70%以上、更に好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上である場合、等が好適に例示される。
抗原賦活化
本発明の方法においては、ホルマリン固定により抗体との反応性が減弱した抗原の反応性を賦活化する。本発明においては、二つの組織標品のうち一の標品に対して、プロテアーゼ抗原賦活化法(PIER法)を適用し、他方の標品に対して、熱誘導抗原賦活化法(HIER法)を適用し、抗体と反応させたときの両者間の染色程度の相違を数値化する。
熱誘導抗原賦活化法は、マイクロ波による加熱方法やオートクレーブによる加熱方法、または、煮沸処理による加熱方法等が適宜用いられる。液温が約98℃に保たれるように780Wの出力で煮沸処理する場合、処理等賦活化に要する時間は5分−60分の間から適宜選択され、例えば10分間である。抗原の賦活化処理は、10mMクエン酸ナトリウム緩衝液の他、市販のTarget Retrieval Solution(DakoCytomation)等の中で行うことができる。下記の実施例においてはTarget Retrieval Solutionを使用する。賦活化処理の結果として抗グリピカン3抗体が認識する抗原中のエピトープが抗体との結合性を獲得して、後述する抗原と抗体の複合体の検出が可能となるものであれば、いずれの緩衝液、水溶液も好適に用いられる。
プロテアーゼ抗原賦活化法において使用されるプロテアーゼは、その種類や由来について特に限定されるものでなく、一般的に入手可能なプロテアーゼを適宜選択して使用され得る。用いられるプロテアーゼの例として、0.01N塩酸中0.05%濃度のペプシン、または、pH7.6のTris緩衝液中0.01%濃度のCaClを更に含有する0.1%濃度のトリプシン、10mMのEDTAおよび0.5%のSDSを含むpH7.8の10mM Tris塩酸緩衝液中1〜50μg/ml濃度のプロテアーゼK等が好適に挙げられる。さらにプロテアーゼKを用いる場合、その反応液のpHは6.5から9.5の間で適宜選択され、SH試薬やトリプシン阻害剤やキモトリプシン阻害剤も適宜利用され得る。本明細書実施例中で記載されるヒストファインHER2キット(MONO)(ニチレイバイオサイエンス)に添付されるプロテアーゼもこうした好適なプロテアーゼの具体例として挙げられる。プロテアーゼ抗原賦活化は通常37℃にて行われるが、反応温度は25℃から50℃の範囲内において適宜変更され得る。プロテアーゼ抗原賦活化が37℃にて行われる場合には、反応時間は例えば1分から5時間の間で適宜選択され、例えば、15分、30分、45分、1時間、2時間、3時間、4時間等である。賦活化処理が終了した後、当該処理が施された組織標品は洗浄用緩衝液によって洗浄される。洗浄用緩衝液はPBS(Phosphate buffer saline)が好適に用いられる他、Tris塩酸緩衝液も好適に使用され得る。通常、洗浄条件としては室温にて5分間の洗浄を3回実施する方法が採用されるが、洗浄の時間および温度は適宜変更され得る。
抗グリピカン3抗体
本発明の方法に用いられる抗グリピカン3抗体は、グリピカン3に結合する活性を有していればいずれの抗体も好適に使用され得る。特に好適な抗体の例は、下記の実施例において開示されるGC33抗体(特許文献2)や1G12抗体(特許文献1)である。また、これらの公知の抗体の他にも、グリピカン3を免疫抗原として使用して非ヒト動物を免疫することによって、本発明に好適に用いられる抗グリピカン3抗体を取得することができる。特許文献1、特許文献2にはこうした抗グリピカン3抗体の作製方法が記載されており、当業者であれば当該方法に基づいて適宜所望の抗グリピカン3抗体を取得することが可能である。
抗グリピカン3抗体のグリピカン3への結合は当業者に公知の方法により好適に検出され得る。例えば、ELISA(酵素結合免疫吸着検定法)、EIA(酵素免疫測定法)、RIA(放射免疫測定法)あるいは蛍光免疫法などを用いることができる。これらの方法は、一般的な教示書である「Antibodies A Laboratory Manual.Ed Harlow,David Lane,Cold Spring Harbor Laboratory,1988」に記載されている。
抗原を発現している細胞に対する抗体の結合活性を測定する方法としては、例えば、Antibodies A Laboratory Manual.(Ed Harlow,David Lane,Cold Spring Harbor Laboratory,1988)中の359−420ページに記載されている方法が挙げられる。すなわち、細胞を抗原とするELISAやFACS(fluorescence activated cell sorting)の原理によって好適に評価され得る。ELISAフォーマットにおいては、細胞への抗体の結合活性は、酵素反応によって生成するシグナルレベルを比較することによって定量的に評価される。すなわち、抗原を強制発現させた細胞を固定化したELISAプレートに被験抗体を加え、被験抗体を認識する酵素標識抗体を利用して、細胞に結合した抗体が検出される。あるいはFACSにおいては、被験抗体の希釈系列を作成し、抗原を強制発現させた細胞に対する抗体結合力価(titer)を決定することにより、細胞に対する結合活性が比較され得る。
FACSフォーマットにより、ELISAプレート等の担体に結合していない、緩衝液等に懸濁した細胞表面上に発現している抗原と当該抗原に対する抗体との結合を測定することができる。このような測定に使用するフローサイトメーターとしては、例えば、FACSCantoTM II,FACSAriaTM,FACSArrayTM,FACSVantageTM SE,FACSCaliburTM(以上、BD Biosciences)や、EPICS ALTRA HyPerSort,Cytomics FC 500,EPICS XL−MCL ADC,EPICSXL ADC,Cell Lab Quanta/Cell Lab Quanta SC(以上、Beckman Coulter)などが挙げられる。
抗グリピカン3抗体の抗原に対する結合活性を測定する好適な方法の一例として、グリピカン3を発現する細胞と反応させた被検抗体を認識する二次抗体を用いる方法が挙げられる。グリピカン3を発現する細胞を被検抗体と反応させ、FITC標識した二次抗体で染色後、FACSCalibur(BD)により測定を行い、その蛍光強度をCELL QUEST Software(BD)を用いて解析する。本方法によれば、FACSCaliburにより測定を行った場合において、その蛍光強度をCELL QUEST Softwareを用いて解析する方法によって得られるGeometric Meanの値(被検Geo−Mean値)を、一次抗体として対照抗体を用いたときの対照Geo−Mean値と比較することによって、抗原に対する抗体の結合活性を判定することができる。Geo−Mean値(Geometric Mean)を求める計算式は、CELL QUEST Software User’s Guide(BD biosciences社)に記載されている。
組織標品と抗グリピカン3抗体との反応
熱誘導抗原賦活化法による抗原賦活化処理が施された組織標品およびプロテアーゼ抗原賦活化法による抗原賦活化処理が施された組織標品に対して、抗グリピカン3抗体を一次抗体として反応させる。当該反応は抗グリピカン3抗体が抗原中のエピトープを認識して抗原抗体複合体を形成するのに適切な条件下で実施される。通常、当該反応は4℃にて終夜、または37℃にて1時間実施されるが、反応条件は、抗体が抗原中のエピトープを認識して抗原抗体複合体を形成するのに適切な範囲で適宜変更され得る。例えば、反応温度は4℃から50℃の範囲内で変更され得るし、反応時間は1分から7日の間で変更され得る。低温での反応が実施される場合には長い時間反応させることが好ましい。一次抗体反応が終了した後、組織標品は洗浄用緩衝液によって洗浄される。洗浄用緩衝液はPBS(Phosphate buffer saline)が好適に用いられる他、Tris塩酸緩衝液も好適に使用され得る。通常、洗浄条件としては室温にて5分間の洗浄を3回実施する方法が採用されるが、洗浄の時間および温度は適宜変更され得る。
次いで、一次抗体反応が施された組織標品に対して、一次抗体を認識する二次抗体を反応させる。通常、二次抗体を可視化するための標識物質によって予め標識された二次抗体が用いられる。標識物質としては、FITC(フルオレセインイソチオシアネート)やCy2(Amersham)、Alexa488(Molecular Probe)等の蛍光色素、ペルオキシダーゼやアルカリフォスファターゼ等の酵素、または金コロイド等が好適に挙げられる。
二次抗体との反応は、抗グリピカン3抗体と、当該抗グリピカン3抗体を認識する二次抗体とが抗原抗体複合体を形成するのに適切な条件下で実施される。通常、当該反応は室温または37℃にて30分乃至1時間実施されるが、抗グリピカン3抗体と二次抗体とが抗原抗体複合体を形成するのに適切な範囲で適宜変更され得る。例えば、反応温度は4℃から50℃の範囲内で変更され得るし、反応時間は1分から7日の間で変更され得る。低温での反応が実施される場合には長い時間反応させることが好ましい。二次抗体反応が終了した後、組織標品は洗浄用緩衝液によって洗浄される。洗浄用緩衝液はPBS(Phosphate buffer saline)が好適に用いられる他、Tris塩酸緩衝液も好適に使用され得る。通常、洗浄条件としては室温にて5分間の洗浄を3回実施する方法が採用されるが、洗浄の時間および温度は適宜変更され得る。
次に、二次抗体反応が施された組織標品に対して、標識物質を可視化する物質を反応させる。二次抗体の標識物質としてペルオキシダーゼを用いた場合には、0.02%過酸化水素水とpH7.2の0.1Mトリス塩酸緩衝液で0.1%濃度に調製されたDAB(ジアミノベンジジン)溶液とをインキュベート直前に等量混合することによって得られる反応液で組織標品がインキュベートされる。DABの他には、DAB−NiやAEC+(以上、DAKO)等の発色基質が適宜選択され得る。インキュベートの過程において、時折顕微鏡下で発色の程度を観察し、適切な発色が確認された段階で組織標品をPBSに浸漬することによって可視化反応が止められる。
二次抗体の標識物質として、アルカリフォスファターゼを用いた場合には、BCIP(5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルリン酸)/NBT(ニトロブルーテトラゾリウム)(Zymed)基質溶液(10mM濃度のMgClおよび28mM濃度のNaClを含有するpH9.8の50mM炭酸ナトリウム緩衝液に、0.4mM濃度でNBTおよび0.38mM濃度でBCIPが溶解されたもの)で組織標品がインキュベートされる。また、BCIPおよびNBTの他には、Permanent Red、Fast Red、またはFuchsin+(以上、DAKO)等も適宜使用されうる。インキュベートに先立って、1mM濃度の内在性アルカリフォスファターゼの阻害剤である塩化レバミソール(ナカライテスク)、0.1M塩化ナトリウムおよび50mM塩化マグネシウムを含む0.1Mトリス−塩酸緩衝液(pH9.5)と、室温にて1分から数時間プレインキュベートしてもよい。インキュベートの過程において、時折顕微鏡下で観察し、反応最終産物である紫色のホルマザンの沈着が観察された段階で、組織標品を水洗または2%ポリビニルアルコールを含むTBSによる反応停止の後、TBST(0.1%のTween20を含むTBS)にて洗浄される。金コロイドが二次抗体の標識として使用される場合には、銀増感によって金粒子に金属銀が付着されることによって金コロイドが可視化される。銀増感の方法は当業者に公知である。
FITC(フルオレセインイソチオシアネート)やCy2(Amersham)、Alexa488(Molecular Probe)等の蛍光色素を二次抗体の標識物質として用いた場合には、可視化物質の反応工程は不要であり、当該蛍光物質の励起波長の光を照射して、放出される光が蛍光顕微鏡を用いることによって適宜検出され得る。
肝癌組織の分類と治療効果の予測
グリピカン3は肝癌組織において消化を受けてそのN末端部分が血清中に遊離することが知られている(特許文献3)。したがって、本発明の方法において、そのような消化を受けて血清中に遊離するグリピカン3のN末端の部分ペプチドに結合する抗体を用いた場合には、当該抗体は消化を受けた後になお細胞表面上に係留するC末端の部分ポリペプチドには結合することができない。一方、本発明の方法において、C末端の部分ペプチドに結合する抗体を用いた場合には、当該抗体は消化を受けた後になお細胞表面上に係留するC末端の部分ポリペプチドに結合することができる。すなわち、本発明に使用される抗グリピカン3抗体を目的によって適宜選択することによって、消化を受けるか否かに関わらず細胞表面上に係留するグリピカン3の部分ポリペプチドを検出することも、消化されるまでは細胞表面に係留されるが消化を受けた後には血清中に遊離されるグリピカン3の部分ポリペプチドを検出することも可能である。
肝癌の治療および予防に抗グリピカン3抗体が有用であることが見いだされている(特許文献3)。このような治療用抗グリピカン3抗体が奏する殺細胞活性は、主に、細胞表面上に係留されたC末端の部分ポリペプチドに結合した抗グリピカン3抗体のFc部分にエフェクター細胞や補体が結合することにより開始される抗体依存性細胞傷害活性(ADCC活性)や補体依存性細胞傷害活性(CDC活性)によって発揮される。したがって、抗グリピカン3抗体が結合するエピトープの肝癌組織における存否の観点から治療用抗グリピカン3抗体による肝癌の治療効果を予測する場合には、本発明の方法において、C末端の部分ポリペプチドに結合する抗グリピカン3抗体が好適に使用され得る。
グリピカン3が肝癌組織において消化を受ける部位は、配列番号1で表されるグリピカン3分子の358番目と359番目のアミノ酸、または、374番目と375番目のアミノ酸のポリペプチド結合であることが示唆されている(特許文献3)。したがって、本発明で好適に使用されるC末端の部分ポリペプチドに結合する抗グリピカン3抗体としては、配列番号1で表されるグリピカン3分子の359番目から580番目のアミノ酸からなるポリペプチド、または、375番目から580番目のアミノ酸からなるポリペプチドに結合する抗体が挙げられる。
一方で、治療用抗グリピカン3抗体による治療効果をグリピカン3分子の成熟化の観点から予測する場合には、本発明の方法において、N末端の部分ポリペプチドに結合する抗グリピカン3抗体を用いることができる。この場合、N末端の部分ポリペプチドに結合する抗グリピカン3抗体によって認識されるグリピカン3分子はより成熟化していない治療標的分子として、そのようなグリピカン3分子を発現する肝癌細胞はより成熟化していない治療標的細胞として、それぞれ性格付けされ得る。グリピカン3分子のC末端の部分ポリペプチドに結合する抗グリピカン3抗体は、成熟化のいかんに関わらずグリピカン3分子を検出する。一方、グリピカン3分子のN末端の部分ポリペプチドに結合する抗グリピカン3抗体は成熟化前のグリピカン3分子を検出するが、成熟化後のグリピカン3分子は検出しない。すなわち、グリピカン3分子のC末端の部分ポリペプチドに結合する抗体と、N末端の部分ポリペプチドに結合する抗体との2種類の抗体を使用することによって、本発明の方法によって検出されるグリピカン3分子およびグリピカン3分子を発現する肝癌細胞を成熟化の度合いにより分類することが可能となる。
この分類方法について、以下により具体的に記載する。一次抗体として、グリピカン3分子のC末端の部分ポリペプチドに結合する抗グリピカン3抗体と、グリピカン3分子のN末端の部分ポリペプチドに結合する抗グリピカン3抗体との2種類の抗体を用意する。同一被験者から2つの組織標品を調製し、その一方に対してはグリピカン3分子のN末端の部分ポリペプチドに結合する抗グリピカン3抗体が一次抗体として反応に供され、他方に対してはグリピカン3分子のC末端の部分ポリペプチドに結合する抗グリピカン3抗体が一次抗体として反応に供される。グリピカン3分子のN末端の部分ポリペプチドに結合する抗グリピカン3抗体を用いて検出されるグリピカン3分子は、その成熟化の程度という観点から、より成熟化されていない分子と評価されることが可能であり、そのようなグリピカン3分子を発現する肝癌細胞は、より成熟化されていない細胞と評価されることが可能である。また、グリピカン3分子のN末端の部分ポリペプチドに結合する抗グリピカン3抗体では検出されないが、グリピカン3分子のC末端の部分ポリペプチドに結合する抗グリピカン3抗体を用いて検出されるグリピカン3分子は、その成熟化の程度という観点から、より成熟化されている分子と評価されることが可能であり、そのようなグリピカン3分子を発現する肝癌細胞は、より成熟化されている細胞と評価されることが可能である。
グリピカン3分子のN末端の部分ポリペプチドに結合する抗グリピカン3抗体と、グリピカン3分子のC末端の部分ポリペプチドに結合する抗グリピカン3抗体とが互いに異なる抗体のサブクラスに属する場合、あるいは異なる種類の動物で生成されたものである場合には、1つの組織標品を用いて測定を行うことが可能である。この場合においては、N末端の部分ポリペプチドに結合する抗グリピカン3抗体を認識する二次抗体と、C末端の部分ポリペプチドに結合する抗グリピカン3抗体を認識する二次抗体とを、異なる種類の酵素または蛍光で標識することにより、1つの組織標品上で2種類の抗グリピカン3抗体を用いる検出が可能となる。
抗グリピカン3抗体との反応性の数値化
本発明は抗原賦活化反応(すなわち、熱誘導抗原賦活化法およびプロテアーゼ抗原賦活化法)の相違に基づいて、グリピカン3と抗グリピカン3抗体とから形成される抗原抗体複合体の顕微鏡下での検出の程度および態様の相違を数値化する方法を提供する。
1つの態様においては、数値化は以下の式(1);
IRCp=PR+(SI−Cp)+SP
[式中、
IRCpは、グリピカン3の発現量スコアであり、
PRは、検鏡下で前記複合体が検出される細胞の割合をスコア化した数値であり、
SI−Cpは、検鏡下で前記複合体が視野中細胞の細胞質において検出される染色強度をスコア化した数値であり、
SPは、検鏡下での視野中細胞の細胞膜において完全な膜染色を示す細胞の割合をスコア化した数値である]
にしたがって行う。
PRのスコアは、
(a)4倍または10倍の対物レンズを用いた検鏡下での視野中細胞のうち;
(i)前記複合体が検出される細胞の割合がゼロの検体のスコアを0、
(ii)当該割合が20%未満の検体のスコアを1、
(iii)当該割合が20%以上で50%未満の検体のスコアを2、
(iv)当該割合が50%以上の検体のスコアを3として算出し、
SI−Cpのスコアは、
(b)検鏡下での視野中細胞の細胞質において、
(i)前記顕鏡が4倍または10倍の対物レンズを用いられた場合に前記複合体が検出される細胞の割合がゼロの検体のスコアを0、
(ii)前記顕鏡が10倍の対物レンズを用いられた場合に不明りょうであるがうっすらと陽性反応が認められる検体のスコアを1、
(iii)4倍の対物レンズでうっすらと陽性反応が認められる検体のスコアを2、
(iv)4倍の対物レンズでも十分認識可能である陽性反応が認められる検体のスコアを3、
(v)4倍の対物レンズで、明確に認識され強い陽性反応が認められる検体のスコアを4として算出し、
SPのスコアは、
(c)検鏡下での視野中細胞の細胞膜における前記複合体の検出において、
(i)細胞膜における陽性反応が認められない検体のスコアを0、
(ii)陽性反応が認められる細胞のうち20%未満の細胞が完全な膜染色を示す検体のスコアを1、
(iii)陽性反応が認められる細胞のうち20%以上で50%未満の細胞が完全な膜染色を示す検体のスコアを2、
(iv)陽性反応が認められる細胞のうち50%以上の細胞が完全な膜染色を示す検体のスコアを3として算出する。
別の態様においては、数値化は以下の式(2);
IRCm=PR+(SI−Cm)+SP
[式中、
IRCmは、グリピカン3の膜局在スコアであり、
PRは、検鏡下で前記複合体が検出される細胞の割合をスコア化した数値であり、
SI−Cmは、検鏡下で前記複合体が視野中細胞の細胞膜において検出される染色強度をスコア化した数値であり、
SPは、検鏡下での視野中細胞の細胞膜において完全な膜染色を示す細胞の割合をスコア化した数値である]
にしたがって行う。
PRのスコアは、
(a)4倍または10倍の対物レンズを用いた検鏡下での視野中細胞のうち;
(i)前記複合体が検出される細胞の割合がゼロの検体のスコアを0、
(ii)当該割合が20%未満の検体のスコアを1、
(iii)当該割合が20%以上で50%未満の検体のスコアを2、
(iv)当該割合が50%以上の検体のスコアを3として算出し、
SI−Cmのスコアは、
(b)検鏡下での視野中細胞の細胞膜において、
(i)前記顕鏡が4倍または10倍の対物レンズを用いられた場合に前記複合体が検出される細胞の割合がゼロの検体のスコアを0、
(ii)前記顕鏡が10倍の対物レンズを用いられた場合に不明りょうであるがうっすらと陽性反応が認められる検体のスコアを1、
(iii)4倍の対物レンズで不明りょうであるが10倍の対物レンズで十分認識可能である陽性反応が認められる検体のスコアを2、
(iv)4倍の対物レンズでも十分認識可能である陽性反応が認められる検体のスコアを3、
(v)4倍の対物レンズで、明確に認識され強い陽性反応が認められる検体のスコアを4として算出し、
SPのスコアは、
(c)検鏡下での視野中細胞の細胞膜における前記複合体の検出において、
(i)細胞膜における陽性反応が認められない検体のスコアを0、
(ii)陽性反応が認められる細胞のうち20%未満の細胞が完全な膜染色を示す検体のスコアを1、
(iii)陽性反応が認められる細胞のうち20%以上で50%未満の細胞が完全な膜染色を示す検体のスコアを2、
(iv)陽性反応が認められる細胞のうち50%以上の細胞が完全な膜染色を示す検体のスコアを3として算出する。
この場合において、熱誘導抗原賦活化法が施された組織標品と、プロテアーゼ抗原賦活化法が施された組織標品のそれぞれについて、上述の式(1)および式(2)に基づいて算出されるスコアが決定される。式(1)に基づいて算出されるスコアはグリピカン3の発現量を反映したスコアであり、式(2)に基づいて算出されるスコアはグリピカン3の細胞膜での発現の局在を反映したスコアである。本発明の数値化の方法に基づけば、被験体に存在する肝癌細胞をグリピカン3の発現量や発現の態様に基づいて分類することが可能となる。下記の実施例に示されるように、実際の肝癌患者から採取された組織標品を用いて分類が有効に実施されることが確認された。さらに、グリピカン3の発現量が決定されている肝癌細胞株であるHuH−7またはHepG2を移植した肝癌動物モデルにおいても、当該分類が有効に実施されることが確認された。
さらに本発明において、肝癌動物モデルに対して治療用抗グリピカン3抗体を投与した結果、本発明の方法にしたがって数値化により分類された肝癌におけるグリピカン3の発現量および発現態様の相違と、治療用抗グリピカン3抗体による肝癌の治療に対する効果の相違が互いに相関することが実証された。すなわち、本発明にしたがって数値化されたスコアの相違に基づいて、治療用抗グリピカン3抗体の治療効果の相違が判断されることが示された。本発明にしたがう数値化の方法に基づけば、抗グリピカン3抗体を有効成分として含む肝癌治療剤を用いた肝癌治療の効果を予測することが可能となる。また、本発明にしたがう数値化の方法に基づけば、抗グリピカン3抗体を用いた肝癌治療において所望の効果を得るために必要な治療用抗グリピカン3抗体の必要投与量を決定することができる。
以下に実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
(実施例1)
グリピカン3を発現するヒト肝癌細胞株のマウス腹部皮下への移植モデルを用いたグリピカン3の免疫染色
(1)細胞株
肝癌細胞株としてHuH−7細胞(ヒューマンサイエンス研究資源バンク)、HepG2細胞(ATCC)が用いられた。HuH−7は、10%FBS(BIONET)を含むDulbecco’s Modifid Eagle’s Medium培地(SIGMA)にて、HepG2は10%FBS、1mmol/L MEM Sodium Pyruvate(Invitrogen)、1mmol/L MEM Non−Essential Amino Acid(Invitrogen)を含むMinimum Essential Medium Eagle培地(SIGMA)にて、維持継代された。
(2)GPC3発現量の測定
(2−1)測定方法
HuH−7細胞およびHepG2細胞におけるGPC3の発現量は、マウス抗ヒトGPC3モノクローナル抗体(クローン名:GC33、WO2006/006693に記載される。)を用いて、QIFI−Kit(DakoCytomation)により測定された。測定方法は付属の説明書に記載された方法が実施された。
使用されたGC33抗体は室温にて溶解後、PBSにて1mg/mlに調製された。陰性対照として、凍結乾燥状態のmIgG2a(1バイアル分)が500μlの「日本薬局方 注射用水 大塚蒸留水」に溶解されたものが用いられた。5×10の各細胞が98μlの0.5w/v% BSA(Sigma−Aldrich)が添加されたCellWASH細胞洗浄溶液(ベクトン・ディッキンソン)(以下FACS−PBSと指称される。)に懸濁された。GC33およびmIgG2aがそれぞれ2μlおよび5μl添加された当該各懸濁液が4℃にて30分間静置された。その後、1mlのFACS−PBSが添加された当該各懸濁液が4℃において5000rpmにて1分間の遠心分離操作に供されることにより細胞が分画された。当該細胞は98μlのFACS−PBSに再び懸濁された。
また前記の操作と並行して以下の操作も行われた。QIFIKITに付属しているキャリブレーションビーズおよびセットアップビーズ100μlに1mlのFACS−PBSが添加され、4℃において5000rpmにて1分間の遠心分離操作により洗浄された。当該ビーズは98μlのFACS−PBSに懸濁された。前記の細胞およびビーズに対してQIFIKITに付属しているFITC標識ヤギ抗マウス抗体が各2μlずつ添加され、当該細胞およびビーズが4℃にて45分間の反応に供された。次に1mlのFACS−PBSが添加された前記の反応液が4℃において5000rpmにて1分間の遠心分離操作に供された。沈降された細胞およびビーズは1mlのFACS−PBSに懸濁された。全自動細胞解析装置EPICS−XL(Beckman Coulter)を用いて、標識されたセットアップビーズの測定により生じる2つのピークが測定画面内に入るように出力が調整された。全自動細胞解析装置EPICS−XLを用いてGC33抗体が反応に供された細胞サンプル、mIgG2aが反応に供された細胞サンプル、およびキャリブレーションビーズが発する各蛍光のMean fluorescence Intensity(MFI)値が測定された。キャリブレーションビーズの5つのMFI値とAntibody−Binding Capacity(ABC)値を基礎としてMicrosoft Office Excel 2003 SP2(Microsoft Corporation)を用いて最適直線が作図された。当該直線の検量線に各細胞のMFI値を代入されてABC値が求められた。GC33抗体が反応に供されたサンプルのABC値からmIgG2aが反応に供されたサンプルのABC値を引いた値が抗体結合部位数とされた。
その結果、HuH−7におけるグリピカン3の発現量は、細胞当たり1.25×10分子であった。HepG2におけるグリピカン3の発現量は、細胞当たり9.67×10分子であった。
(3)ヒト肝癌細胞株のマウス腹部皮下への移植モデルの作製
HuH−7およびHepG2の各細胞が、(1)に記載されるその維持継代用の培地とMATRIGEL Matrix(BD Bioscicnce)を等量含む溶液にて1ml当たり5×10細胞になるように調製された。各細胞のマウスへの移植前日に、予め抗アシアロGM1抗体(和光純薬、1バイアルの内容物が1mlの蒸留水に溶解され更に4mlの生理食塩水によって希釈された。)100μlがオスで5週齢のSCIDマウス(日本クレア)の腹腔内へ投与された。当該抗アシアロGM1抗体(和光純薬)は、1バイアルの内容物が1mlの蒸留水に溶解され更に4mlの生理食塩水によって希釈されることによって調製された。その翌日、当該マウスの腹部皮下へ100μlの当該各細胞懸濁液(すなわち、マウス一匹当たり5×10細胞)が移植された。
(4)腫瘍組織切片の作製法の検討
(3)で作製したHepG2の移植モデルより採取された均一な移植組織片が手術用メスを用いて四等分された。その内の一断片が10%中性緩衝ホルマリンで24時間固定された。固定化された組織片はその後自動包埋装置ETP−150C(サクラファインテックジャパン)を用いてパラフィン包埋され、4℃にて保存された(A法)。
次に、別の一断片は4%パラホルムアルデヒドを含有するPLP固定液(10mM濃度のNaIO、75mM濃度のリジン、37.5mM濃度のリン酸緩衝液、2%濃度のパラホルムアルデヒド)を用いて4℃において6時間固定された後にPBS(リン酸緩衝生理食塩水、10mM、pH7.4)にて4℃において洗浄された。次いで当該断片が4℃において終夜および室温において2時間アセトン中にて脱水された。さらに、当該断片は安息香酸メチルで一時間およびキシレンで一時間清浄化され、前記同様パラフィンに包埋され、4℃にて保存された(B法)。
A法、および、B法で作製されたパラフィン包埋標品は免疫組織染色の適用直前にクリオスタットミクロトーム上で薄切され、風乾された後に脱パラフィン処理され染色に供された。
次に、別の一断片はPLP固定液を用いて4℃において6から8時間浸漬された後に4℃において段階的ショ糖濃度を有するPBSに順次浸潤された(10%ショ糖濃度のPBSで4時間、15%ショ糖濃度のPBSで4時間、および20%ショ糖で終夜の期間)。次いで当該断片がTissue−Tek OCT compound(Sakura Finetechnical)中に包埋されドライアイスアセトン浴中で凍結された。凍結されたブロックはクリオスタットミクロトーム上で薄切され、薄切切片は風乾後−80℃にて保存された(C法)。
別の一断片はTissue−Tek OCT compound中に4℃において包埋されドライアイスアセトン浴中で凍結された。凍結されたブロックはクリオスタットミクロトーム上で複数の切片に薄切された後に、当該切片は風乾され下記の異なる方法で固定化された。その内の一切片は4℃において4%パラホルムアルデヒド中で30分固定された(D法)。別の一切片は4℃においてアセトン中で10分固定された(E法)。更に別の切片は室温において10%中性緩衝ホルマリン中で30分固定された(F法)。D法、E法およびF法による固定化切片はトリス緩衝生理食塩水(TBS、50mM、pH7.4)を用いて5分間、3回洗浄された後に風乾され−80℃にて保存された。
前記のように調製された組織切片が以下に示す免疫組織化学的染色に用いられた。一次抗体として、GC33抗体(IgG2a)または1G12抗体(BioMosaic、IgG1)がそれぞれ2.5μg/mlおよび1.0μg/mlの濃度で使用された。染色に際して、染色に必要な試薬はLSAB−2kit(Dako Cytomation)に同梱された試薬が使用された。染色方法はキット付属の説明書に記載の方法が実施された。固定化時間が短時間だったため抗原賦活化は実施されなかった。かかる免疫組織化学的染色過程において形成された抗原抗体複合体は、ペルオキシダーゼ−ジアミノベンジジン(DAB)反応により可視化された。対比染色としてはヘマトキシリンが用いられた。なお、一次抗体の対照抗体として、GC33の場合にはマウスIgG2および1G12の場合にはIgG1が使用された。各方法当たり3例ずつが評価され、その結果が表1に示されている。
免疫染色における染色性は、以下に示すようなパラメーターによってグレード化された。すなわち;
PR(陽性細胞率)グレードについて;
4倍または10倍の対物レンズを用いた検鏡下での視野中細胞のうち;
(i)前記複合体が検出される細胞の割合が50%以下の標品を「L」、
(ii)前記複合体が検出される細胞の割合が50%以上70%未満の標品を「ML」、
(iii)前記複合体が検出される細胞の割合が70%以上で90%未満の標品を「MH」、
(iv)前記複合体が検出される細胞の割合が90%以上の標品を「H」、
としてPRのグレードが決定され、
SI(染色強度スコア)について;
(i)軽微陽性の染色を示す標品を「+1」、
(ii)弱陽性の染色を示す標品を「+2」、
(iii)中程度陽性または/および強陽性を伴う、弱陽性の染色を示す標品を「+3」、
(iv)中程度陽性の染色を示す標品を「+4」、
(v)強陽性の染色を示す標品を「+5」、
としてSIのスコアが決定され、
SP(細胞膜染色性)について;
4倍または10倍の対物レンズを用いた検鏡下での視野中細胞のうち;
(i)細胞が細胞膜の一部のみ染色される標品を「I」、
(ii)ほとんどの細胞の細胞膜の一部が染色され、一部の細胞の細胞膜が円周状に染色される標品を「II」、
(iii)ほとんどの細胞の細胞膜が円周状に染色される標品を「III」、
としてSPのスコアが決定された。
SIのスコアの各グレード(+1、+2、+4および+5)の標準染色像が図1に示される。AはSIが+1の標品を、BはSIが+2の標品を、CはSIが+4の標品を、DはSIが+5の標品をそれぞれ示す。また、SPのスコアの各グレード(+I、+IIおよび+III)の染色像が図2に示される。AはSPがIの標品を、BはSIがIIIの標品をそれぞれ示す。
C法からF法のいずれの方法で調製された標品のSIおよびSPのグレードは共に低く、十分な染色像が得られていないことが示された。また、当該標品における形態的な構造も保存されていなかった。A法とB法との比較においては、B法で調製された標品のSIおよびSPのグレードがいずれも高く(SIが+3から+5で、SPがIIまたはIII)、PRグレードも90%以の細胞が陽性(H)と判定された。一方、A法ではSIが+3から+5で、SPがIまたはIIと判定され、PRグレードもLないしMHと判定された。GC33抗体と1G12抗体の相違という点では、GC33抗体はいずれも1G12抗体よりもより強い染色像を与えた。
(5)腫瘍組織切片の作製の際の固定化時間および抗原賦活化法の検討
(3)で作製したHepG2の移植モデルより採取された均一な移植組織片の固定化時間が以下のように検討された。(4)で記載されたA法における10%中性緩衝ホルマリンによる固定時間を24時間と7日間とした標品が調製された。また、それぞれの固定時間で調製された標品は、以下に記載されるオートクレーブ、マイクロウェーブ、プロテアーゼのうちのいずれかの賦活化法によりそれぞれ賦活化された。target retrieval solution,pH6(DAKO)が10倍希釈された溶液中で標品を121℃において10分間のオートクレーブ処理することによって、オートクレーブにより賦活化された標品が調製された。同一溶液中において標品を4回、780Wにて5分間加熱することによりマイクロウェーブにより賦活化された標品が調製された。HistofineHer2 kit(MONO)(ニチレイバイオサイエンス)に付属のAR試薬によって室温にて5分反応された標品もまた別に調製された。
前記のように調製された組織切片が以下に示す免疫組織化学的染色に用いられた。一次抗体として、GC33抗体(IgG2a)または1G12抗体(BioMosaic、IgG1)がそれぞれ2.5μg/mlおよび1.0μg/mlの濃度で使用された。染色に際して、染色に必要な試薬はLSAB−2kitに同梱された試薬が使用された。染色方法はキット付属の説明書に記載の方法が実施された。固定化時間が短時間だったため抗原賦活化は実施されなかった。かかる免疫組織化学的染色過程において形成された抗原抗体複合体は、ペルオキシダーゼ−ジアミノベンジジン(DAB)反応により可視化された。対比染色としてはヘマトキシリンが用いられた。なお、一次抗体の対照抗体として、GC33の場合にはマウスIgG2および1G12の場合にはIgG1が使用された。各固定化時間および各賦活化反応が適用された標品当たり3例ずつが評価され、その結果が表2に示されている。抗原賦活化法の比較において、マイクロウェーブ法はオートクレーブ法よりも若干優れたSIおよびSPグレードを示す結果を与えた。一方、プロテアーゼ法による抗原賦活化処理がされた標品は、そのPRグレードおよびSIスコアとともにSPスコアにおいてもその他の抗原賦活化処理がされた標品よりも優れた染色性を示した。
(6)腫瘍組織切片の免疫組織化学染色
(6−1)組織標品の作製および染色
(2)で作製した移植モデルより採取された移植組織片が10%中性緩衝ホルマリンに7日間浸漬することによって固定され、次いで常法に従い当該組織片のパラフィン包埋ブロック標本が作製された。このブロック標本より薄切された組織切片が以下に示す免疫組織化学的染色に用いられた。
一次抗体として、GC33抗体(IgG2a)が使用された。染色に際して、染色に必要な試薬はヒストファインHER2キット(MONO)(ニチレイバイオサイエンス)に同梱された試薬が使用された。一次抗体としてGC33抗体を使用した以外は、染色方法はキット付属の説明書に記載の方法が実施された。なお、抗原賦活化処理としては、プロテアーゼ処理(同キットに付属しているプロテアーゼを用いて室温にて5分間の反応に供する処理)または、10倍希釈したTarget Retrieval Solution(DakoCytomation)中で121℃にて10分間オートクレーブ処理が実施された。かかる免疫組織化学的染色過程において形成された抗原抗体複合体は、ペルオキシダーゼ−ジアミノベンジジン(DAB)反応により可視化された。対比染色としてはヘマトキシリンが用いられた。なお、一次抗体の対照抗体として、マウスIgG2が使用された。
(6−2)染色結果の評価
マウス抗ヒトグリピカン3抗体を用いた免疫染色による染色性が、下記に示される3つのパラメーター(陽性細胞率:PR、染色強度:SI、細胞膜染色パターン:SP)によって評価された。
すなわち;
PR(陽性細胞率)値を;
4倍または10倍の対物レンズを用いた検鏡下での視野中細胞のうち;
(i)前記複合体が検出される細胞の割合がゼロの検体のスコアを0、
(ii)当該割合が20%未満の検体のスコアを1、
(iii)当該割合が20%以上で50%未満の検体のスコアを2、
(iv)当該割合が50%以上の検体のスコアを3としてPRのスコアを算出し、
細胞質の染色性を反映する(SI−Cp)(細胞質染色強度)値を;
検鏡下での視野中細胞の細胞質において、
(i)前記検鏡が4倍または10倍の対物レンズを用いられた場合に前記複合体が検出される細胞の割合がゼロの検体のスコアを0、
(ii)前記検鏡が10倍の対物レンズを用いられた場合に不明りょうであるがうっすらと陽性反応が認められる検体のスコアを1、
(iii)4倍の対物レンズでうっすらと陽性反応が認められる検体のスコアを2、
(iv)4倍の対物レンズでも十分認識可能である陽性反応が認められる検体のスコアを3、
(v)4倍の対物レンズで、明確に認識され強い陽性反応が認められる検体のスコアを4としてSI−Cpのスコアを算出し、
細胞膜の染色性を反映する(SI−Cm)(細胞膜の染色強度)値を;
検鏡下での視野中細胞の細胞膜において、
(i)前記検鏡が4倍または10倍の対物レンズを用いられた場合に前記複合体が検出される細胞の割合がゼロの検体のスコアを0、
(ii)前記検鏡が10倍の対物レンズを用いられた場合に不明りょうであるがうっすらと陽性反応が認められる検体のスコアを1、
(iii)4倍の対物レンズ不明りょうであるが10倍の対物レンズで十分認識可能である陽性反応が認められる検体のスコアを2、
(iv)4倍の対物レンズでも十分認識可能である陽性反応が認められる検体のスコアを3、
(v)4倍の対物レンズで、明確に認識され強い陽性反応が認められる検体のスコアを4としてSI−Cmのスコアを算出し、
SP(細胞膜染色パターン)値を;
検鏡下での視野中細胞の細胞膜における前記複合体の検出において、
(i)細胞膜における陽性反応が認められない検体のスコアを0、
(ii)陽性反応が認められる細胞のうち20%未満の細胞が完全な膜染色を示す検体のスコアを1、
(iii)陽性反応が認められる細胞のうち20%以上で50%未満の細胞が完全な膜染色を示す検体のスコアを2、
(iv)陽性反応が認められる細胞のうち50%以上の細胞が完全な膜染色を示す検体のスコアを3としてSPのスコアを算出する;
方法によって各パラメーターが数値化された。なお、SI−Cmを用いて算出されるトータルスコアはIRCm、SI−Cpを用いて算出されるトータルスコアはIRCpと表記された。
(6−3)染色性の評価
HuH−7およびHepG2が移植された動物モデルから由来する組織標品がオートクレーブ処理された場合の染色像が図3に示される。AはHuH−7移植モデルから調製された切片にオートクレーブ処理による熱誘導抗原賦活化処理をした標品の染色像を、BはHuH−7移植モデルから調製された切片にプロテアーゼ抗原賦活化処理をした標品の染色像を、CはHepG2移植モデルから調製された切片にオートクレーブ処理による熱誘導抗原賦活化処理をした標品の染色像を、DはHepG2移植モデルから調製された切片にプロテアーゼ抗原賦活化処理をした標品の染色像を表す。
また、個別の染色パラメーターのスコアが表3に示されている。HuH−7およびHepG2が移植された動物モデルから由来する組織標品から算出されるIRCpの値はいずれも7で、HuH−7とHepG2間でその値の差は観察されなかった。また、それらのIRCmの値はいずれも5であり、両者間でその値の差はみられなかった。(表3および図3)。
一方、HuH−7およびHepG2が移植された動物モデルから由来する組織標品に対してプロテアーゼ処理が施された場合の個別の染色パラメーターのスコアも表3に示されている。プロテアーゼ処理が施された組織標品から得られるSI−CmおよびSI−Cpのスコアは、オートクレーブ処理された標品から得られるそれらの値と比べて高い傾向が観察された。個別の染色パラメーターから算出されるトータルスコアとしては、HuH−7およびHepG2が移植された組織標品から得られたIRCpの値は、それぞれ4および8であった。また、HuH−7およびHepG2が移植された組織標品から得られたIRCmの値は、それぞれ4および9であった(表3および図3)。図3最下段の写真に示されるように、プロテアーゼ処理した組織標品が染色された場合にあっては、グリピカン3を発現していない細胞、グリピカン3を中等度に発現した細胞、グリピカン3を強く発現した細胞がそれぞれ明確に区別され得る。これに対して、オートクレーブ処理された組織標品を染色した場合にあっては、そのような定量性が得られなかった。更に、オートクレーブ処理された組織標品を染色した場合にあっては、炎症細胞等に対する非特異的反応が頻繁に認められた。
以上の結果から、オートクレーブ処理と比較してプロテアーゼ処理による抗原賦活化は、グリピカン3の発現量の違いがより正確に反映される方法であることが示された。また、組織標品の細胞膜の染色性の観点からは、オートクレーブ処理と比較してプロテアーゼ処理が優れていることが明らかとされた。
(実施例2)
ヒト肝細胞癌組織標品を用いたGPC3免疫染色におけるプロテアーゼによる抗原賦活化効果
(1)ヒト肝細胞癌サンプルにおける免疫組織化学染色
(1−1)標本作製および染色方法
ヒト肝細胞癌サンプルが10%中性緩衝ホルマリンに一定時間以上浸漬固定された。次に、常法に従いパラフィン包埋ブロック標本が作製された。上記ブロック標本より薄切された組織切片が免疫組織化学的染色に用いられた。免疫組織化学染色は実施例1と同様の手法により、実施された。
(1−2)染色結果の評価方法
実施例1(6−2)の記載に基づいて、マウス抗ヒトGPC3抗体免疫染色による染色性が下記に示される3つのパラメーター(陽性細胞率:PR、染色強度:SI、細胞膜染色パターン:SP)によって評価された。
すなわち;
PR(陽性細胞率)値を;
4倍または10倍の対物レンズを用いた検鏡下での視野中細胞のうち;
(i)前記複合体が検出される細胞の割合がゼロの検体のスコアを0、
(ii)当該割合が20%未満の検体のスコアを1、
(iii)当該割合が20%以上で50%未満の検体のスコアを2、
(iv)当該割合が50%以上の検体のスコアを3としてPRのスコアを算出し、
細胞質の染色性を反映する(SI−Cp)(細胞質染色強度)値を;
検鏡下での視野中細胞の細胞質において、
(i)前記検鏡が4倍または10倍の対物レンズを用いられた場合に前記複合体が検出される細胞の割合がゼロの検体のスコアを0、
(ii)前記検鏡が10倍の対物レンズを用いられた場合に不明りょうであるがうっすらと陽性反応が認められる検体のスコアを1、
(iii)4倍の対物レンズでうっすらと陽性反応が認められる検体のスコアを2、
(iv)4倍の対物レンズでも十分認識可能である陽性反応が認められる検体のスコアを3、
(v)4倍の対物レンズで、明確に認識され強い陽性反応が認められる検体のスコアを4としてSIのスコアを算出し、
細胞膜の染色性を反映する(SI−Cm)(細胞膜の染色強度)値を;
検鏡下での視野中細胞の細胞膜において、
(i)前記検鏡が4倍または10倍の対物レンズを用いられた場合に前記複合体が検出される細胞の割合がゼロの検体のスコアを0、
(ii)前記検鏡が10倍の対物レンズを用いられた場合に不明りょうであるがうっすらと陽性反応が認められる検体のスコアを1、
(iii)4倍の対物レンズで不明りょうであるが10倍の対物レンズで十分認識可能である陽性反応が認められる検体のスコアを2、
(iv)4倍の対物レンズでも十分認識可能である陽性反応が認められる検体のスコアを3、
(v)4倍の対物レンズで、明確に認識され強い陽性反応が認められる検体のスコアを4としてSIのスコアを算出し、
SP(細胞膜染色パターン)値を;
検鏡下での視野中細胞の細胞膜における前記複合体の検出において、
(i)細胞膜における陽性反応が認められない検体のスコアを0、
(ii)陽性反応が認められる細胞のうち20%未満の細胞が完全な膜染色を示す検体のスコアを1、
(iii)陽性反応が認められる細胞のうち20%以上で50%未満の細胞が完全な膜染色を示す検体のスコアを2、
(iv)陽性反応が認められる細胞のうち50%以上の細胞が完全な膜染色を示す検体のスコアを3としてSPのスコアを算出する;
方法によって各パラメーターが数値化された。
また、併せて、非特異的染色(バックグラウンド)の程度(炎症性細胞や間質の染色性から判断される)についても評価が行われた。
(1−3)結果および結論
抗原賦活化処理をした標品の染色像が図4に示される。Aは症例Aの検体から調製された切片にオートクレーブ処理による熱誘導抗原賦活化処理をした標品の染色像を、Bは症例Aの検体から調製された切片にプロテアーゼ抗原賦活化処理をした標品の染色像を、Cは症例Bの検体から調製された切片にオートクレーブ処理による熱誘導抗原賦活化処理をした標品の染色像を、Dは症例Bの検体から調製された切片にプロテアーゼ抗原賦活化処理をした標品の染色像を、Eは症例Cの検体から調製された切片にオートクレーブ処理による熱誘導抗原賦活化処理をした標品の染色像を、Fは症例Cの検体から調製された切片にプロテアーゼ抗原賦活化処理をした標品の染色像をそれぞれ表す。
図4および表4に示されるように、オートクレーブ処理がされた組織標品においては、症例A、B、Cいずれも図中の肝細胞癌領域において、PRのスコアが3(50%以上の領域で陽性)であった。また、膜染色強度および膜染色パターンについては、症例AおよびBでは、膜局在がみられなかった(SI−Cm=0およびSP−Cm=0)のに対し、症例Cでは、膜発現が認められ、スコアはそれぞれSI−Cm=1、SP−Cm=2であった。なお、いずれの症例でも、炎症性細胞や間質において、図4症例Bの写真に示されるような非特異的陽性反応が認められる傾向があった。
一方、プロテアーゼ処理がされた組織標品においては、PRのスコアが症例Aでは、1(20%未満の領域が陽性)、症例Bでは2(20−50%の領域で陽性)、症例Cでは3(50%以上の領域で陽性)であった。また、膜染色強度および膜染色パターンについては、症例Aの各スコアはSI−Cm=1およびSP−Cm=1であった。また症例Bの各スコアは、SI−Cm=3およびSP−Cm=2であった。症例Cにおいては、明瞭な膜発現が認められ、その各スコアはそれぞれSI−Cm=4、SP−Cm=3であった。なお、オートクレーブ処理がされた組織標品とは異なり、プロテアーゼ処理がされた組織標品では、非特異的陽性反応はほとんど認められなかった。
以上の結果から、オートクレーブと比較してプロテアーゼ処理による抗原賦活化法は、臨床肝細胞癌サンプルを用いたGPC3免疫染色において、GPC3の発現量の違いをより正確に反映する方法である可能性が示唆された。また、細胞膜染色性についても、プロテアーゼ処理が優れていることが明らかとなった。さらに、プロテアーゼ法では、非特異的陽性反応が最小限であることから、抗GPC3抗体による特異的陽性反応をより的確に捉えることが可能であることが示された。
(実施例3)
GPC3発現ヒト肝癌細胞株移植マウスモデルに対する抗GPC3抗体の薬効
(1)細胞株
移植に供する細胞としてHuH−7細胞およびHepG2細胞が用いられた。HuH−7細胞は10%FBS(BIONET)を含むDulbecco’s Modifid Eagle’s Medium培地(SIGMA)中で、HepG2細胞は10%FBS、1mmol/l MEM Sodium Pyruvate(Invitrogen)、1mmol/l MEM Non−Essential Amino Acid(Invitrogen)を含むMinimum Essential Medium Eagle培地(SIGMA)中で、それぞれ維持継代された。
(2)ヒト肝癌細胞株移植マウスモデルの作製
各細胞が、上述の継代用培地とMatrigel Matrix(BD Bioscience)とをそれぞれ等量含む溶液を用いて1ml当たり5×10個細胞になるように調製された。細胞の移植前日に、あらかじめ100μlの抗アシアロGM1抗体(和光純薬、1バイアルが5mlのPBSで溶解されたもの)がその腹腔内へ投与されたSCIDマウス(オス、5週齢、日本クレア)の腹部皮下へ、100μlの当該細胞懸濁液が移植された。すなわち、マウス一匹当たり5×10細胞が投与された。腫瘍体積は以下の式にて算出され、腫瘍体積の平均が117〜330mmになった時点でモデルが成立したものとした。
式1:腫瘍体積=長径×短径×短径/2
(3)投与抗体の調製
治療用抗体として、ヒト化抗ヒトGPC3モノクローナル抗体(クローン名:hGC33、公開出願 WO2006/006693に記載されている。)が投与の当日に、濾過滅菌されたPBSを用いて、0.5mg/ml、0.1mg/mlまたは0.05mg/mlになるように調製され、それぞれ5mg/kg投与群、1mg/kg投与群、0.5mg/kg投与群に対する投与試料として用いられた。
(4)抗体投与
(2)で記載したように作製されたHuH−7細胞移植マウスモデルに対してはその移植後20日目より、HepG2細胞移植マウスモデルに対してはその移植後26日より、それぞれ週に1回ずつ、三週間の間にわたり、上記(3)で調製された投与試料が10ml/kgの用量で尾静脈より投与された。陰性対照として、濾過滅菌したPBS(Vehicle)が前記と同様に週に1回ずつ、三週間の間にわたり、10ml/kgの用量で尾静脈より投与された。いずれの群も、1群当たり5〜6匹のマウスから構成された。
(5)抗腫瘍効果の評価
hGC33抗体のヒト肝癌移植マウスモデルにおける抗腫瘍効果が、腫瘍体積の継時変化(図5A)および最終投与日より一週間後の腫瘍湿重量(図5B)で評価された。図5Aは、HepG2移植マウスモデルにおける腫瘍体積の継時変化を表す図である。菱形はベヒクルを投与した群、四角はhGC33抗体を1mg/kgで投与した群、丸はhGC33抗体を5mg/kgで投与した群の腫瘍体積の経時変化を表す。hGC33抗体を投与した時点を矢印で示す。図中*は有意差検定による有意水準PがP<0.05であることを表す。また、図中**は有意差検定による有意水準PがP<0.0001であることを表す。図5Bは、HuH−7移植マウスモデルにおける腫瘍体積の継時変化を表す図である。菱形はベヒクルを投与した群、四角はhGC33抗体を1mg/kgで投与した群、丸はhGC33抗体を5mg/kgで投与した群の腫瘍体積の経時変化を表す。hGC33抗体を投与した時点を矢印で示す。図中*は有意差検定による有意水準PがP<0.05であることを表す。また、図中**は有意差検定による有意水準PがP<0.0001であることを表す。図5Cは、HepG2移植マウスモデルにおける、最終投与日から一週間後の腫瘍湿重量を示す図である。図中*は有意差検定による有意水準PがP<0.05であることを表す。また、図中**は有意差検定による有意水準PがP<0.0001であることを表す。図5Dは、HuH−7移植マウスモデルにおける、最終投与日から一週間後の腫瘍湿重量を示す図である。図中*は有意差検定による有意水準PがP<0.05であることを表す。また、図中**は有意差検定による有意水準PがP<0.0001であることを表す。
統計解析に際してはSAS前臨床パッケージ(SAS Institute)が用いられた。最終測定日の腫瘍体積が用いられて、有意差検定がDunnett型多重比較法によって評価された。その結果、図5Aおよび図5Bに示すように、hGC33抗体投与群における腫瘍の増殖は、Vehicle投与群におけるそれと比較して有意に抑制されていることが認められた。また、抗体の薬効はHepG2細胞移植モデルにおいて比較的強く、HuH−7細胞移植モデルにおいては比較的弱いことが明らかとなった。
以上より、プロテアーゼ抗原賦活化法によって調製された組織標本の免疫組織染色による解析結果から抗原の発現量が高く、細胞膜局在性の発現態様を示すと判定されるHepG2細胞が移植されたマウスモデルに対して高い抗腫瘍効果を示すことが明らかとなった。これに対して前記の解析結果から抗原の発現量が低いと診断されるHuH−7細胞が移植されたマウスモデルに対しては低い抗腫瘍効果を示すことが明らかとなった。こうした相違は従来の熱誘導抗原賦活化法による解析では導き出すことができない結論であり、従来の熱誘導抗原賦活化法とプロテアーゼ抗原賦活化法を組み合わせることによってGPC3抗体の薬効を有効に判断できることが明らかとなった。
本明細書中で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願をそのまま参考として本明細書中にとり入れるものとする。
[配列表]

Claims (15)

  1. 被験体における肝癌細胞の存在を検出するためのインビトロの免疫アッセイ方法であって、
    (a)前記被験体から調製された後に、パラフィンに包まれて透過性の支持体に取り付けられた、同一被験体より少なくとも二つの同視し得る一組の組織標品がパラフィン包埋切片として提供され、
    (b)前記一組の組織標品の脱パラフィン処理が実施され、
    (c)前記(b)処理が実施された同視し得る一組の組織標品の一方に対して熱誘導抗原賦活化法による抗原賦活化処理が施され、他方に対してプロテアーゼ抗原賦活化法による抗原賦活化処理が施され、
    (d)前記(c)処理が施された組織標品中に存するグリピカン3と抗グリピカン3抗体との複合体の形成に適切な条件下で、当該標品に対して抗グリピカン3抗体が接触され、(e)複合体の存在が検出され、ここで、複合体が存在する場合に被験体において肝癌細胞が存在すると判定される、
    の各工程を含む方法。
  2. 前記熱誘導抗原賦活化法がマイクロ波による加熱である請求項1に記載の方法。
  3. 前記熱誘導抗原賦活化法がオートクレーブによる加熱である請求項1に記載の方法。
  4. 前記プロテアーゼ抗原賦活化法に用いるプロテアーゼが、ペプシン、トリプシンおよびプロテアーゼKからなる群より選択される、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
  5. 複合体を検出するための検出反応が酵素反応である、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
  6. 前記抗グリピカン3抗体がグリピカン3のC末端ポリペプチドに結合する抗体である、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
  7. グリピカン3のC末端ポリペプチドが配列番号1に記載の359番目のアミノ酸から580番目のアミノ酸からなるポリペプチド、または、375番目のアミノ酸から580番目のアミノ酸からなるポリペプチドである請求項6に記載の方法。
  8. 前記抗グリピカン3抗体がGC33抗体である請求項6または7に記載の方法。
  9. 前記抗グリピカン3抗体が1G12抗体である請求項1から5のいずれかに記載の方法。
  10. 工程(e)において、複合体の存在が数値化されて検出される、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
  11. 前記数値化が以下の式;
    IRCp=PR+(SI−Cp)+SP
    [式中、
    IRCpは、グリピカン3の発現量スコアであり、
    PRは、検鏡下で前記複合体が検出される細胞の割合をスコア化した数値であり、
    SI−Cpは、検鏡下で前記複合体が視野中細胞の細胞質において検出される染色強度をスコア化した数値であり、
    SPは、検鏡下での視野中細胞の細胞膜において完全な膜染色を示す細胞の割合をスコア化した数値である]にしたがって算出される、請求項10に記載の方法。
  12. 前記数値化が以下の式;
    IRCm=PR+(SI−Cm)+SP
    [式中、
    IRCmは、グリピカン3の膜局在スコアであり、
    PRは、検鏡下で前記複合体が検出される細胞の割合をスコア化した数値であり、
    SI−Cmは、検鏡下で前記複合体が視野中細胞の細胞膜において検出される染色強度をスコア化した数値であり、
    SPは、検鏡下での視野中細胞の細胞膜において完全な膜染色を示す細胞の割合をスコア化した数値である]
    にしたがって算出される、請求項10に記載の方法。
  13. 請求項11および12に記載の方法により算出されたスコアに基づいて、被験体に存在する肝癌細胞を分類する方法。
  14. 請求項11および12に記載の方法により算出されたスコアに基づいて、被験体に抗グリピカン3抗体を含む抗癌剤を投与するか否かを決定する方法。
  15. 請求項11および12に記載の方法により算出されたスコアに基づいて、被験体に対する肝癌治療における抗グリピカン3抗体を含む抗癌剤の投与量を決定する方法。
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