JPWO2009116243A1 - 水溶性アントラピリドン化合物又はその塩、インク組成物及び着色体 - Google Patents

水溶性アントラピリドン化合物又はその塩、インク組成物及び着色体 Download PDF

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Abstract

本発明は、下記式(1)(式中、R1はアルキル基等を、R2はヒドロキシ基;置換又は非置換アニリノ基;置換又は非置換アラルキルアミノ基;置換又は非置換モノ又はジアルキルアミノ基;等を、R3及びR4はそれぞれ独立して水素原子;ハロゲン原子;カルボキシ基等を、それぞれ表す。)で表される新規アントラピリドン化合物又はその塩に関するもので、本発明は、インクジェット記録に適する高い鮮明性をもつ色相を有し、且つ記録物の堅牢度、特に普通紙に記録した画像の耐水性が強く、又保存安定性が優れたマゼンタ色素及びこれを含有するインク組成物を提供する。

Description

本発明は水溶性のアントラピリドン化合物又はその塩、これを含有するインク組成物及びこれにより着色された着色体に関する。
各種カラー記録方法の中で、その代表的方法の一つであるインクジェットプリンタによる記録方法、すなわちインクジェット記録方法は、インクの吐出方式が各種開発されている。それらはいずれもインクの小滴を発生させ、これを種々の被記録材料、例えば、紙、フィルム、布帛等に付着させ記録を行うものである。この方法は、記録ヘッドと被記録材料とが直接接触しない為、音の発生がなく静かであり、また小型化、高速化、カラー化が容易という特長の為、近年急速に普及しつつあり、今後とも大きな伸長が期待されている。従来、万年筆、フェルトペン等のインク及びインクジェット記録用インクとしては、色素として水溶性の染料を水性媒体に溶解したインクが使用されており、これらの水性インクにおいてはペン先やインク吐出ノズルでのインクの目詰まりを防止すべく、一般に水溶性の有機溶剤が添加されている。これらのインクにおいては、十分な濃度の記録画像を与えること、ペン先やノズルの目詰まりを生じないこと、被記録材上での乾燥性がよいこと、滲みが少ないこと、保存安定性に優れること等が要求される。また形成される記録画像には、耐水性、耐湿性、耐光性、および耐ガス性等の各種堅牢度が求められている。
インクジェットのノズル詰まりは、ノズル付近でインク中の水分が他の溶剤や添加剤よりも先に蒸発し、水分が少なく溶剤や添加剤が多いという組成状態になったときに、色素が結晶化し析出することに由来するものが多い。よって、インクを蒸発乾燥させた場合においても結晶が析出しにくいということが非常に重要な要求性能の一つである。またこの理由により、溶剤や添加剤に対する高い溶解性も色素に求められる性質のひとつである。
ところで、コンピューターのカラーディスプレー上の画像又は文字情報をインクジェットプリンタによりカラーで記録するには、一般にイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の4色のインクによる減法混色が用いられ、これにより記録画像がカラーで表現される。CRT(ブラウン管)ディスプレー等におけるレッド(R)、グリーン(G)及びブルー(B)による加法混色画像を、減法混色画像で出来るだけ忠実に再現するには、インクに使用される各色素、中でもY、M及びCのそれぞれが、標準に近い色相を有し且つ鮮明であることが望まれる。又、インクは長期の保存に対して安定であり、また前記のようにプリントした画像の濃度が高く、しかも印刷画像の堅牢度に優れている事が求められる。
近年のインクジェットプリント技術の発達により、印刷スピードの向上がめざましく、オフィス環境での主用途である普通紙へのドキュメントの印刷に、電子トナーを用いたレーザープリンタと同じ様に、インクジェットプリンタを用いる動きが出ている。インクジェットプリンタは、記録紙の種類を選ばない、機械の価格が比較的安い、という利点があり、特にSOHO等の小〜中規模オフィス環境で普及が進んでいる。このように普通紙への印刷にインクジェットプリンタを使用する場合、印刷物に求められる各種の品質の中でも、色相や耐水性がより重視される傾向がある。これらの性能、特に耐水性能を満たす為には顔料インクを用いるという方法が提案されている。しかし、色素として顔料を使用したインクは、染料インクと異なり溶液とはならず分散液であるため保存安定性が不良であるという問題や、プリンタヘッドのノズルが詰まるという問題などが比較的起こりやすい。また、顔料インクを使用した場合、耐擦性にも問題が出ることが多く、色相も染料より劣る場合が多い。これに対して染料を使用したインクの場合、このような顔料を使用したインクの問題は比較的起こりにくいとされる。しかし、染料インクは特に耐水性が顔料インクと比較して著しく劣り、それに対する改良が強く望まれている。
普通紙上での染料の耐水性向上という問題に対しては古くから多くの提案がなされている。耐水性に優れ、色相や耐光性などの改良を行ったインクジェット用のマゼンタ色素としては、例えば特許文献1乃至11に開示されたアントラピリドン系マゼンタ色素が知られている。
例えば、特許文献1には耐水性及び/又は耐湿性に優れたマゼンタ色素が開示されているが、耐水性、特に普通紙に記録した場合の記録画像の耐水性について市場の要求を十分に満たしているとはいえない。従って、より多くの種類の普通紙上で一様に優れた耐水性をもち、更には耐光性や色相、色濃度にも優れたマゼンタ色素が求められている。
特開2000−109464号公報 特開平10−306221号公報 特開2000−191660号公報 特開2000−169776号公報 特開2001−72884号公報 特開2001−139836号公報 特開2002−332418号公報 特開2005−8868号公報 特開2005−314514号公報 特開2006−188706号公報 特許3767879号
本発明は水または水溶性有機溶剤に対する溶解性が高く、インクジェット記録に適する色相と鮮明性を有し、色濃度が高く、且つ記録物の耐光性、耐ガス性(例えば耐オゾンガス性)、耐湿性、および特に普通紙に記録した場合における耐水性などの堅牢性に優れた水溶性のマゼンタ色素及びそれを含有する保存安定性の良いインク組成物を提供する事を目的とする。
本発明者等は前記課題を解決すべく、鋭意検討の結果、特定の下記式(1)で表される水溶性アントラピリドン化合物及びそれを色素として含有するインク組成物が前記課題を解決するものであることを見出し、本発明を完成させたものである。
即ち、本発明は、下記の通りである。
(1)
下記式(1)で表されるアントラピリドン化合物又はその塩、
Figure 2009116243
(式中、
は水素原子、アルキル基、ヒドロキシ低級アルキル基、シクロヘキシル基、モノ又はジアルキルアミノアルキル基またはシアノ低級アルキル基を表し、
はヒドロキシ基;アルコキシ基;アミノ基;ハロゲン原子;置換基として、スルホ基、カルボキシ基、アルコキシ基、カルバモイル基、シアノ基、アルキル基、アニリノ基、フェノキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基及びメルカプト基よりなる群から選択される基を少なくとも1つ有するアニリノ基;無置換アニリノ基;置換基として、スルホ基、カルボキシ基、アルコキシ基、オキソ基、カルバモイル基、シアノ基及びヒドロキシ基よりなる群から選択される基を少なくとも1つ有するアラルキルアミノ基;無置換アラルキルアミノ基;置換基として、スルホ基、カルボキシ基、アルコキシ基、オキソ基、カルバモイル基、シアノ基、アニリノ基、フェノキシ基、ヒドロキシC1−C4アルキルアミノ基、ジ(C1−C4)アルキルアミノ基、アミノ基、ヒドロキシ基及びメルカプト基よりなる群から選択される基を少なくとも1つ有するモノ又はジアルキルアミノ基;無置換モノ又はジアルキルアミノ基;を表し、
及びRはそれぞれ独立して水素原子;ハロゲン原子;カルボキシ基;アルコキシカルボニル基;スルホ基;ヒドロキシ基;置換又は無置換C1−C12アルキル基;置換又は無置換カルバモイル基;置換又は無置換スルファモイル基;置換又は無置換アミノ基;ニトロ基;C1−C12アルキルスルホニル基;又はC1−C4アルコキシ基;を表す)。
(2)
がヒドロキシ基;アルコキシ基;アミノ基;置換基として、スルホ基、カルボキシ基、アルコキシ基、カルバモイル基、シアノ基、アルキル基、アニリノ基、フェノキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基及びメルカプト基よりなる群から選択される基を有するアニリノ基;無置換アニリノ基;置換基として、スルホ基、カルボキシ基、アルコキシ基、オキソ基、カルバモイル基、シアノ基及びヒドロキシ基よりなる群から選択される基を有するアラルキルアミノ基;無置換アラルキルアミノ基;置換基として、スルホ基、カルボキシ基、アルコキシ基、オキソ基、カルバモイル基、シアノ基、アニリノ基、フェノキシ基、ヒドロキシC1−C4アルキルアミノ基、ジ(C1−C4)アルキルアミノ基、アミノ基、ヒドロキシ基及びメルカプト基よりなる群から選択される基を有するモノ又はジアルキルアミノ基;または無置換モノ又はジアルキルアミノ基である上記(1)に記載のアントラピリドン化合物またはその塩。
(3)
が水素原子又はメチル基である、上記(1)又は(2)に記載のアントラピリドン化合物またはその塩。
(4)
が水素原子又はメチル基を表し、
又はRのいずれか一方がカルボキシ基;アルコキシカルボニル基;又は、置換又は無置換のカルバモイル基、他方が水素原子;ハロゲン原子;カルボキシ基;アルコキシカルボニル基;スルホ基;ヒドロキシ基;置換又は無置換C1−C12アルキル基;置換又は無置換カルバモイル基;置換又は無置換スルファモイル基;置換又は無置換アミノ基;ニトロ基;C1−C12アルキルスルホニル基;又はC1−C4アルコキシ基である上記(1)又は(2)に記載のアントラピリドン化合物又はその塩。
(5)
下記式(2)で表される上記(1)乃至(4)のいずれか一項に記載のアントラピリドン化合物又はその塩、
Figure 2009116243
[式中、
、R及びRは、上記(1)乃至(4)におけるR、R及びRと同じ意味を表す]。
(6)
又はRのいずれか一方がカルボキシ基;アルコキシカルボニル基;又は、置換又は無置換のカルバモイル基;他方が水素原子;ハロゲン原子;カルボキシ基;アルコキシカルボニル基;スルホ基;ヒドロキシ基;置換又は無置換C1−C12アルキル基;置換又は無置換カルバモイル基;置換又は無置換スルファモイル基;置換又は無置換アミノ基;ニトロ基;C1−C12アルキルスルホニル基;又はC1−C4アルコキシ基である上記(1)乃至(5)のいずれか一項に記載のアントラピリドン化合物又はその塩。
(7)
がヒドロキシ基;アミノ基;カルボキシ基で置換されたアニリノ基;無置換アニリノ基;カルボキシ基で置換されたアラルキルアミノ基;置換基として、スルホ基、カルボキシ基、アルコキシ基、オキソ基、カルバモイル基、シアノ基、アニリノ基、フェノキシ基、ヒドロキシC1−C4アルキルアミノ基、アミノ基、ヒドロキシ基及びメルカプト基よりなる群から選択される基を少なくとも1つ有するモノアルキルアミノ基;又は、無置換モノアルキルアミノ基;である上記(1)乃至(6)のいずれか一項に記載のアントラピリドン化合物又はその塩、
(8)
がヒドロキシ基;アミノ基;カルボキシ基で置換されたアニリノ基;無置換アニリノ基;アルキル部分がカルボキシ基で置換されたフェニルC1−C4アルキルアミノ基;カルボキシ基で置換されたモノC1−C12アルキルアミノ基;又は、無置換モノアルキルアミノ基;であり、
又はRの一方がカルボキシ基又は無置換カルバモイル基であり、他方が水素原子、ハロゲン原子又はカルボキシ基である上記(1)乃至(5)のいずれか一項に記載のアントラピリドン化合物又はその塩。
(9)
がヒドロキシ基;アミノ基;カルボキシ基で置換されたアニリノ基;無置換アニリノ基;アルキル部分がカルボキシ基で置換されたフェニルC1−C4アルキルアミノ基;カルボキシ基で置換されたモノC5−C11アルキルアミノ基;又は、無置換C5−C11モノアルキルアミノ基;であり、
又はRの一方がカルボキシ基であり、他方が水素原子又はハロゲン原子である上記(1)乃至(5)のいずれか一項に記載のアントラピリドン化合物又はその塩。
(10)
がヒドロキシ基;無置換アニリノ基;アルキル部分がカルボキシ基で置換されたフェニルC1−C4アルキルアミノ基;又は、カルボキシ基で置換されたモノC5−C11アルキルアミノ基;であり、
又はRの一方がカルボキシ基であり、他方が水素原子又はハロゲン原子である上記(1)乃至(5)のいずれか一項に記載のアントラピリドン化合物又はその塩。
(11)
上記(1)乃至(10)のいずれか一項に記載のアントラピリドン化合物又はその塩を色素として含有し、さらに水を含有することを特徴とするインク組成物。
(12)
水溶性有機溶剤をさらに含有する上記(11)に記載のインク組成物。
(13)
上記(1)乃至(10)のいずれか一項に記載のアントラピリドン化合物又はその塩を色素として含有し、さらに水及び水溶性有機溶剤を含有するインクジェット記録用のインク組成物。
(14)
色素として含有する上記(1)乃至(10)のいずれか一項に記載のアントラピリドン化合物の総質量中における無機不純物の含有量が1質量%以下である上記(11)乃至(13)のいずれか一項に記載のインク組成物。
(15)
アントラピリドン化合物の含有量が、インク組成物の総質量に対して0.1〜20質量%の範囲である上記(11)乃至(14)のいずれか一項に記載のインク組成物。
(16)
上記(1)乃至(10)のいずれか一項に記載のアントラピリドン化合物又はその塩を含有するインク組成物の小滴を記録信号に応じて吐出させて被記録材に付着させることにより記録を行うことを特徴とするインクジェット記録方法。
(17)
被記録材が情報伝達用シートである上記(16)に記載のインクジェット記録方法。
(18)
情報伝達用シートが普通紙又は多孔性白色無機物を含有するインク受像層を有する情報伝達用シートである上記(17)に記載のインクジェット記録方法。
(19)
上記(1)乃至(10)のいずれか一項に記載のアントラピリドン化合物又はその塩を含み、更に水、又は、水及び水溶性有機溶剤の両者、を含むインク組成物により着色された着色体。
(20)
着色がインクジェットプリンタによりなされた上記(19)に記載の着色体。
(21)
上記(1)乃至(10)のいずれか一項に記載のアントラピリドン化合物又はその塩を含み、更に水及び水溶性有機溶剤を含むインク組成物を含有する容器が装填されたインクジェットプリンタ。
(22)
がメチル基であり、Rがハロゲン原子である上記(1)に記載のアントラピリドン化合物又はその塩。
(23)
又はRの一方がカルボキシ基であり、他方が水素原子又はハロゲン原子である上記(22)に記載のアントラピリドン化合物又はその塩。
に関する。
本発明の上記式(1)で表される水溶性アントラピリドン化合物又はその塩はマゼンタ色を有する色素であり、これを含有するインク組成物は各種インク、特にマゼンタ色のインクジェット記録用インクとして好適に用いることができる。該化合物又はその塩は、水や水溶性有機溶剤に対する溶解性に優れる。またインク組成物を製造する過程でのメリットとして、例えば、該化合物又はその塩はメンブランフィルターに対するろ過性が良好という特徴を有する。また、該化合物又はその塩を含むインクを用いて、インクジェットで記録した場合、該化合物又はその塩はインクジェット記録紙上で非常に鮮明で、明度の高いマゼンタ色の色相を与える。又、この化合物を色素として含有する本発明のインク組成物は長期間保存後の結晶析出、物性変化、色相変化等もなく、貯蔵安定性が極めて良好である。そして本発明のインク組成物をインクジェット記録用のインクとして使用した場合、被記録材(例えば紙、フィルム等)を選択することなく理想的なマゼンタ色の色相をもつ印刷物を得ることができる。また、該インクにより、写真調のカラー画像を紙の上に忠実に再現させることも可能である。
更に本発明のインク組成物は、従来の染料インクと比較して特に普通紙上での耐水性が極めて向上している。また、写真画質用インクジェット専用紙や同専用フィルムのような多孔性白色無機物を表面に塗工した被記録材に記録しても、該インク組成物の各種堅牢性、すなわち耐水性、耐湿性、耐オゾンガス性等の耐ガス性、および耐光性は良好であり、写真調の記録画像の長期保存安定性にも優れている。このため、該インク組成物は、記録メディアを選ばないことが特徴の一つであるインクジェット印刷に非常に適している。このように、上記式(1)の水溶性アントラピリドン化合物はインク用、特にインクジェットインク用のマゼンタ色素として極めて有用である。
本発明を詳細に説明する。尚、本明細書においては特に断りがない限り、スルホン酸基およびカルボキシ基などの酸性官能基は遊離酸の形で表す。また、本発明のアントラピリドン化合物又はその塩は、特に、マゼンタインク組成物用又はマゼンタインク用の色素として有用である。以下、便宜上、「本発明のアントラピリドン化合物又はその塩」を含めて、単に「本発明のアントラピリドン化合物」と簡略して記載する。「式(1)で表される化合物」、「式(2)で表される化合物」及び「本発明の化合物」との記載も同様に、それぞれの塩の場合をも含む意味で使用される。
本発明のアントラピリドン化合物は、前記式(1)又は/及び式(2)で表される。
式(1)において、Rは水素原子、アルキル基、ヒドロキシ低級アルキル基、シクロヘキシル基、モノ又はジアルキルアミノアルキル基またはシアノ低級アルキル基を表す。
におけるアルキル基の炭素数は、通常C1−C10であり、好ましくはC1−C6であり、より好ましくはC1−C4であり、更に好ましくはC1−C3である。該アルキル基としては、直鎖又は分岐鎖アルキル基が挙げられ、直鎖がより好ましい。その好ましい具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル及びn−ヘキシル等の直鎖C1−C6アルキル;イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、イソアミル、2−メチルブチル、t−ペンチル及びイソヘキシル等の分岐鎖C1−C6アルキルが挙げられる。
におけるヒドロキシ低級アルキル基としては、通常、ヒドロキシC1−C8アルキル基である。好ましくはヒドロキシC1−C6アルキル基、より好ましくはヒドロキシC1−C4アルキル基が挙げられ、該アルキル部分は直鎖が好ましい。具体例としては、例えばヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル及びヒドロキシブチル等が挙げられる。
におけるモノ又はジアルキルアミノアルキル基としては、通常モノ−またはジ−(C1−C8)アルキルアミノ(C1−C8)アルキル基である。好ましくはモノ−またはジ−(C1−C6)アルキルアミノ(C1−C6)アルキル基、より好ましくはモノ−またはジ−(C1−C4)アルキルアミノ(C1−C4)アルキル基が挙げられる。該アルキル部分は直鎖又は分岐鎖のいずれでもよいが、直鎖のものがより好ましい。モノアルキルアミノアルキル基の具体例としては、例えばメチルアミノプロピル及びエチルアミノプロピル等が挙げられ、ジアルキルアミノアルキル基の具体例としては、例えばジメチルアミノプロピル及びジエチルアミノエチル等が挙げられる。
におけるシアノ低級アルキル基としては、通常シアノC1−C8アルキル基である。好ましくはシアノC1−C6アルキル基、より好ましくはシアノC1−C4アルキル基が挙げられる。該アルキル部分は直鎖又は分岐鎖のいずれでもよいが、直鎖のものがより好ましい。具体例としては、シアノエチル、シアノプロピル、シアノブチル、シアノペンチル、シアノヘキシル、シアノヘプチル及びシアノオクチル等が挙げられる。
好ましいRとしては水素原子、またはC1−C4アルキル基が挙げられ、水素原子及びメチルがより好ましく、メチルが特に好ましい。Rがメチルのとき、前記式(1)は前記式(2)で表される。
前記式(1)又は(2)において、Rはヒドロキシ基;アルコキシ基;アミノ基;ハロゲン原子;置換基として、スルホ基、カルボキシ基、アルコキシ基、カルバモイル基、シアノ基、アルキル基、アニリノ基、フェノキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基及びメルカプト基(特に断りの無い限り無置換メルカプト又はC1−C4アルキルメルカプト基等の置換メルカプト基を意味し、好ましくはC1−C4アルキルメルカプトである:以下同じ)よりなる群から選択される基を少なくとも1つ有するアニリノ基、又は無置換アニリノ基;置換基として、スルホ基、カルボキシ基、アルコキシ基、オキソ基、カルバモイル基、シアノ基及びヒドロキシ基よりなる群から選択される基を少なくとも1つ有するアラルキルアミノ基、又は無置換アラルキルアミノ基;置換基として、スルホ基、カルボキシ基、アルコキシ基、オキソ基、カルバモイル基、シアノ基、アニリノ基、フェノキシ基、ヒドロキシC1−C4アルキルアミノ基、ジ(C1−C4)アルキルアミノ基、アミノ基、ヒドロキシ基及びメルカプト基(特に断りの無い限り無置換メルカプト又はC1−C4アルキルメルカプト基等の置換メルカプト基を意味し、好ましくはC1−C4アルキルメルカプトである:以下同じ)よりなる群から選択される基を少なくとも1つ有するモノ又はジアルキルアミノ基、又は無置換モノ又はジアルキルアミノ基;を表す。
におけるアルコキシ基(置換基として有する時も含む)としては、アルキル部分の炭素数が通常C1−C6、好ましくはC1−C4であるアルコキシ基が挙げられる。該アルキル部分は、直鎖又は分岐鎖のいずれでもよいが、直鎖が好ましい。該アルコキシ基の具体例としては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、n−ブトキシ、n−ペンチロキシ及びn−ヘキシロキシ等の直鎖C1−C6アルコキシ;並びに、イソプロポキシ、イソブトキシ、t−ブトキシ、イソアミロキシ及びイソヘキシロキシ等の分岐鎖C1−C6アルコキシが挙げられる。
が、置換基として、スルホ基、カルボキシ基、アルコキシ基(好ましくはC1−C4アルコキシ基)、カルバモイル基、シアノ基、アルキル基(好ましくはC1−C6アルキル基)、アニリノ基、フェノキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基及びメルカプト基(好ましくはC1−C4アルキルメルカプト基)よりなる群から選択される基を少なくとも1つ有するアニリノ基(置換アニリノ基)である場合、該置換基の数は通常1〜4、好ましくは1〜3、より好ましくは1または2、さらに好ましくは1である。
該置換アニリノ基の具体例としては、例えば2−スルホアニリノ、3−スルホアニリノ、4−スルホアニリノ及び2,5−ジスルホアニリノ等のスルホ置換アニリノ;2−カルボキシアニリノ、3−カルボキシアニリノ、4−カルボキシアニリノ及び3,5−ジカルボキシアニリノ等のカルボキシ置換アニリノ;4−メトキシアニリノ等のアルコキシ置換アニリノ(好ましくはC1−C4アルコキシ置換アニリノ);2−カルバモイルアニリノ、3−カルバモイルアニリノ等のカルバモイル置換アニリノ;4−シアノアニリノ等のシアノ置換アニリノ;4−ブチルアニリノ等のアルキル置換アニリノ(好ましくはC1−C6アルキル置換アニリノ);4−アニリノ−3−スルホアニリノ等のアニリノ及びスルホの両者で置換されたアニリノ;4−フェノキシアニリノ等のフェノキシ置換アニリノ;4−アミノアニリノ等のアミノ置換アニリノ;2−ヒドロキシアニリノ及び3−ヒドロキシアニリノ等のヒドロキシ置換アニリノ;並びに、4−メチルメルカプトアニリノ等のC1−C4アルキルメルカプト置換アニリノ;等が挙げられる。
における該アニリノ基としては、スルホ置換アニリノ、カルボキシ置換アニリノ、又は無置換アニリノが好ましく、カルボキシ置換アニリノ又は無置換アニリノがより好ましく、無置換アニリノがさらに好ましい。
が置換基として、スルホ基、カルボキシ基、アルコキシ基(好ましくはC1−C4アルコキシ基)、オキソ基、カルバモイル基、シアノ基及びヒドロキシ基よりなる群から選択される基を少なくとも1つ有するアラルキルアミノ基(以下置換アラルキルアミノ基ともいう)である場合、置換基の数は通常1〜4、好ましくは1〜3、より好ましくは1または2、さらに好ましくは1である。
における置換アラルキルアミノ基又は無置換アラルキルアミノ基のアリール部分は、通常C6−C10の単環又は縮合環の芳香族基であり、その具体例としてはフェニル又はナフチルが挙げられる。好ましい該アリール部分はフェニルである。又、該アラルキルアミノ基のアルキル部分の炭素数は通常C1−C6であり、好ましくはC1−C4であり、さらに好ましくはC1−C3である。該アルキル部分は直鎖又は分岐鎖のいずれでもよいが、直鎖がより好ましい。該アラルキルアミノ基としては、置換又は無置換フェニルC1−C4アルキルアミノ基が特に好ましい。上記の置換基はアラルキルアミノ基のアリール部分又はアルキル部分のいずれの部分に置換していてもよいが、アルキル部分に置換するのがより好ましい。
該アラルキルアミノ基としては、スルホ置換アラルキルアミノ基、ヒドロキシ置換アラルキルアミノ基、カルボキシ置換アラルキルアミノ基、アルコキシ置換アラルキルアミノ基(好ましくはC1−C4アルコキシ置換アラルキルアミノ)又はオキソ置換アラルキルアミノ基等を挙げることができる。より具体的には、例えば、アリール部分に置換基を有するものとしては4−スルホベンジルアミノ、3−メトキシベンジルアミノ、4−シアノベンジルアミノ、4−ヒドロキシフェネチルアミノ等のアリール基上にスルホ基、アルコキシ基(好ましくはC1−C4アルコキシ)、シアノ基又はヒドロキシ基を有するアラルキルアミノ基等が挙げられ、アルキル部分に置換基を有すものとしては、2−フェニル−1−カルボキシエチルアミノ;2−フェニル−2−オキソエチルアミノ;2−フェニル−1−カルバモイルエチルアミノ等のアルキル部分にカルボキシル基、オキソ基又はカルバモイル基を有するアラルキルアミノ;が挙げられ、無置換アラルキルアミノとしては、ベンジルアミノ、2−フェネチルアミノ、フェニルプロピルアミノ、1−フェネチルアミノ等の無置換アラルキルアミノ基等が挙げられる。また、アルキル部分が分岐鎖であるアラルキルアミノとしては2−フェニルイソプロピルアミノ等を挙げることができる。
該アラルキルアミノ基としては、カルボキシ置換アラルキルアミノが好ましく、カルボキシ基がアルキル部分に置換したカルボキシ置換アラルキルアミノがより好ましく、カルボキシ基がアルキル部分に置換したフェニルC1−C4アルキルアミノ基がさらに好ましい。
が、置換基として、スルホ基、カルボキシ基、アルコキシ基(好ましくはC1−C4アルコキシ基)、オキソ基、カルバモイル基、シアノ基、アニリノ基、フェノキシ基、ヒドロキシC1−C4アルキルアミノ基、ジ(C1−C4)アルキルアミノ基、アミノ基、ヒドロキシ基及びメルカプト基(好ましくはC1−C4アルキルメルカプト基)よりなる群から選択される基を少なくとも1つ有するモノ又はジアルキルアミノ基(以下場合により置換モノ又はジアルキルアミノ基という)、又は、無置換モノ又はジアルキルアミノ基である場合、その「置換又は無置換モノ又はジアルキルアミノ基」のアルキル部分は通常C1−C12であり、好ましくはC5−C12であり、より好ましくはC5−C11である。また、置換又は無置換ジアルキルアミノの場合は、場合によりそのアルキル部分はC1−C8程度が好ましい。該アルキル部分は直鎖、分岐鎖又は環状のいずれでもよいが、直鎖又は分岐鎖が好ましく、直鎖がより好ましい。該モノ又はジアルキルアミノ基としては、置換又は無置換のいずれの場合も、モノアルキルアミノ基が好ましい。
該置換モノ又はジアルキルアミノ基における置換基の数に制限は無いが、通常1乃至4、好ましくは1乃至3、より好ましくは1又は2、さらに好ましくは1である。これらの基における置換基はC1−C12アルキルアミノにおけるアルキル基の何れの炭素原子に置換していてもよいが、少なくとも1つの置換基が、末端の炭素原子に置換しているのが好ましい。
該モノ又はジアルキルアミノ基の具体例としては、2−スルホエチルアミノ等のスルホ置換アルキルアミノ;カルボキシメチルアミノ、1−カルボキシエチルアミノ、2−カルボキシエチルアミノ、1,2−ジカルボキシエチルアミノ、1,3−ジカルボキシプロピルアミノ、3−カルボキシプロピルアミノ、4−カルボキシブチルアミノ、5−カルボキシペンチルアミノ、6−カルボキシヘキシルアミノ、7−カルボキシヘプチルアミノ、8−カルボキシオクチルアミノ、9−カルボキシノニルアミノ、10−カルボキシデシルアミノ、11−カルボキシウンデシルアミノ及び12−カルボキシドデシルアミノ、及び、ビス(カルボキシメチル)アミノ等の、カルボキシ置換直鎖モノ又はジアルキルアミノ;1−カルボキシ−2,2−ジメチルエチルアミノ及び1−カルボキシ−3,3−ジメチルプロピルアミノ等のカルボキシ置換分岐鎖アルキルアミノ;2−カルボキシ−シクロペンチルアミノ等のカルボキシ置換環状アルキルアミノ;3−エトキシプロピルアミノ等のアルコキシ置換アルキルアミノ(好ましくは、C1−C4アルコキシ置換モノ又はジアルキルアミノ);3−オキソブチルアミノ等のオキソ置換アルキルアミノ;2−アミノカルボニルエチルアミノ等のカルバモイル置換アルキルアミノ;3−シアノプロピルアミノ等のシアノ置換アルキルアミノ;2−フェニルアミノエチルアミノ等のアニリノ置換アルキルアミノ;2−フェノキシエチルアミノ等のフェノキシ置換アルキルアミノ;N−(3−ヒドロキシプロピル)アミノエチルアミノ等のヒドロキシC1−C4アルキルアミノ置換アルキルアミノ;ジエチルアミノエチルアミノ等のジ(C1−C4)アルキルアミノ置換アルキルアミノ;アミノエチルアミノ等のアミノ置換アルキルアミノ;2−ヒドロキシエチルアミノ及びビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ等のモノ又はジ(ヒドロキシ基置換アルキル)アミノ;2−メチルチオエチルアミノ等のC1−C4アルキルチオ(又はC1−C4アルキルメルカプト)置換アルキルアミノ;メチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノ、ブチルアミノ、ペンチルアミノ、ヘキシルアミノ、ヘプチルアミノ、オクチルアミノ、ノニルアミノ、デシルアミノ、ウンデシルアミノ及びドデシルアミノ、及び、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ及びジブチルアミノ等の無置換モノ又はジ直鎖アルキルアミノ;2−エチルヘキシルアミノ等の無置換分岐鎖アルキルアミノ;シクロヘキシルアミノ等の無置換環状アルキルアミノ;等が挙げられる。
好ましいモノアルキルアミノ基としては、スルホ置換モノC1−C12アルキルアミノ、カルボキシ置換モノC1−C12アルキルアミノ又は無置換モノC1−C12アルキルアミノを挙げることができ、より好ましくはカルボキシ置換モノC1−C12アルキルアミノ又は無置換モノC1−C12アルキルアミノであり、更に好ましくはカルボキシ置換モノC1−C12アルキルアミノである。カルボキシ置換モノC5−C11アルキルアミノは特に好ましい。これらの基におけるスルホ基又はカルボキシ基はC1−C12アルキルアミノにおけるアルキル基の何れの炭素原子に置換していてもよいが、通常末端の炭素原子に置換しているのが好ましい。
好ましいジアルキルアミノ基としては、無置換ジアルキルアミノ基(好ましくはジC1−C8アルキルアミノ基)、ビス(カルボキシ置換アルキル)アミノ(好ましくはビス(カルボキシ置換C1−C8アルキル)アミノ基)、及び、ビス(ヒドロキシ置換アルキル)アミノ(好ましくはビス(ヒドロキシ置換C1−C8アルキル)アミノ基)が挙げられる。
におけるハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子及び臭素原子等が挙げられ、塩素原子又は臭素原子が好ましく、より好ましくは塩素原子である。
前記式(1)又は式(2)において、R及びRはそれぞれ独立して水素原子;ハロゲン原子;カルボキシ基;アルコキシカルボニル基;スルホ基;ヒドロキシ基;置換又は無置換C1−C12アルキル基;置換又は無置換カルバモイル基;置換又は無置換スルファモイル基;置換又は無置換アミノ基;ニトロ基;C1−C12アルキルスルホニル基;又は、C1−C4アルコキシ基;を表す。
及びRにおけるハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子及び臭素原子等が挙げられ、塩素原子が好ましい。
及びRにおけるアルコキシカルボニル基としては、通常C1−C6アルコキシカルボニル基、好ましくはC1−C4アルコキシカルボニル基、より好ましくはC1−C3アルコキシカルボニル基が挙げられる。該アルコキシカルボニル基のアルコキシ部分は直鎖又は分岐鎖のいずれでもよいが、直鎖がより好ましい。該アルコキシカルボニル基の具体例としては、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル及びn−プロポキシカルボニル等の直鎖C1−C6アルコキシカルボニル;イソプロポキシカルボニル、イソブトキシカルボニル及びt−ブトキシカルボニル等の分岐鎖C1−C6アルコキシカルボニル;等が挙げられる。
及びRにおける置換又は無置換C1−C12アルキル基として好ましいのは置換又は無置換C1−C6アルキル基であり、より好ましいのは置換又は無置換C1−C4アルキル基である。該置換C1−C12アルキル基における置換基としては、アルキル基を除き、R乃至R及びR乃至R上の置換基として挙げた基のいずれでもよい。置換C1−C12アルキル基の置換基の数としては通常1乃至4、好ましくは1乃至2、より好ましくは1である。該アルキル基としては無置換C1−C12アルキル基が好ましい。該アルキル基は直鎖、分岐鎖及び環状のいずれでもよいが、直鎖又は分岐鎖が好ましく、直鎖がより好ましい。該C1−C12アルキル基の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル及びドデシル等の直鎖C1−C12アルキル;イソプロピル、イソブチル、t−ブチル、イソアミル及びイソヘキシル等の分岐鎖C1−C12アルキル;及び、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシル等の環状C1−C12アルキル;等が挙げられる。
及びRにおける置換又は無置換カルバモイル基の具体例としては、無置換カルバモイル;N,N−ジメチルカルバモイル等のN,N−ジ(C1−C4)アルキルカルバモイル基;及び、フェニルカルバモイル等のN−アリールカルバモイル基;等が挙げられる。
及びRにおける置換又は無置換スルファモイル基の具体例としては、無置換スルファモイル;N−メチルスルファモイル又はN,N−ジメチルスルファモイル等のN−(C1−C4)アルキルスルファモイル基又はN,N−ジ(C1−C4)アルキルスルファモイル基;並びに、p−カルボキシフェニルスルファモイル等のN−カルボキシ置換アリールスルファモイル基;等が挙げられる。
及びRにおける置換又は無置換アミノ基の具体例としては、無置換アミノ;N−メチルアミノ又はN,N−ジメチルアミノ等のモノ−(C1−C4)アルキルアミノ基又はジ−(C1−C4)アルキルアミノ基;カルバモイルアミノ基;並びに、アセチルアミノ等の無置換C1−C4アシルアミノ基;等が挙げられる。
及びRにおけるC1−C12アルキルスルホニル基における「C1−C12アルキル」部分としては、その好ましいもの及び例示も含めて、前記「R及びRにおける置換又は無置換C1−C12アルキル基」の項で記載した基が挙げられる。好ましくは無置換C1−C12アルキルスルホニル基である。また、具体例としてはエチルスルホニル等が挙げられる。
及びRにおけるC1−C4アルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ及びn−ブトキシ等C1−C4アルコキシが挙げられる。
好ましいR及びRとしては、いずれか一方がカルボキシ基;アルコキシカルボニル基;又は置換又は無置換のカルバモイル基であり、他方が水素原子;ハロゲン原子;カルボキシ基;アルコキシカルボニル基;スルホ基;ヒドロキシ基;置換又は無置換C1−C12アルキル基;置換又は無置換カルバモイル基;置換又は無置換スルファモイル基;置換又は無置換アミノ基;ニトロ基;C1−C12アルキルスルホニル基;又はC1−C4アルコキシ基である。他方が水素原子、ハロゲン原子の場合より好ましい。
乃至Rで表される上記全ての基及び置換基が、水素原子を有する場合、該水素原子は水素原子以外の基でさらに置換されていても本発明の効果を達成する限りは本発明に含まれる。しかし、通常は該更なる置換基は含まなくて良い。
前記式(1)で表される化合物のうち、好ましいものが前記式(2)で表される化合物である。
前記式(2)において、R乃至Rは、前記式(1)におけるR乃至Rと同じ意味を表す。前記式(2)におけるR乃至Rの具体例も、前記式(1)におけるR乃至Rの具体例と同じである。
前記式(1)及び前記式(2)において、好ましいRとしては、ヒドロキシ基;アミノ基;カルボキシ基で置換されたアニリノ基;無置換アニリノ基;カルボキシ基で置換されたアラルキルアミノ基(好ましくはカルボキシ基で置換されたフェニルC1−C4アルキルアミノ基);置換基として、スルホ基、カルボキシ基、アルコキシ基、オキソ基、カルバモイル基、シアノ基、アニリノ基、フェノキシ基、ヒドロキシC1−C4アルキルアミノアルキルアミノ基(好ましくはヒドロキシC1−C4アルキルアミノC1−C4アルキルアミノ基)、アミノ基、ヒドロキシ基及びメルカプト基よりなる群から選択される基を少なくとも1つ有するモノアルキルアミノ基(好ましくはモノアルキルアミノのアルキル基はC1−C12アルキル基);又は、無置換モノアルキルアミノ基である。また、好ましいRとしてハロゲン原子もあげることができる。Rがハロゲン原子の化合物はマゼンタ色の色素として有用であると共に、Rがヒドロキシ基等の本発明の化合物を合成する場合の中間体としても有用である。
より好ましいRは、ヒドロキシ基;アミノ基;カルボキシ基で置換されたアニリノ基;無置換アニリノ基;アルキル部分がカルボキシ基で置換されたフェニルC1−C4アルキルアミノ基;カルボキシ基で置換されたモノC1−C12アルキルアミノ基(好ましくはカルボキシ基で置換されたモノC5−C12アルキルアミノ基);又は、無置換モノアルキルアミノ基である。また、より好ましいRの1つとして、塩素原子又は臭素原子も挙げることができる。
さらに好ましいRは、ヒドロキシ基;アミノ基;カルボキシ基で置換されたアニリノ基;無置換アニリノ基;アルキル部分がカルボキシ基で置換されたフェニルC1−C4アルキルアミノ基;カルボキシ基で置換されたモノC5−C11アルキルアミノ基;又は、無置換C5−C11モノアルキルアミノ基である。また、更に好ましいRの1つとして、塩素原子又は臭素原子も挙げることができる。
特に好ましいRは、ヒドロキシ基;無置換アニリノ基;アルキル部分がカルボキシ基で置換されたフェニルC1−C4アルキルアミノ基;又は、カルボキシ基で置換されたモノC5−C11アルキルアミノ基である。
最も好ましいRは、ヒドロキシ基;又は、カルボキシ基で置換されたモノC5−C11アルキルアミノ基である。また、最も好ましいRの1つとして、塩素原子を挙げることができる。
前記式(1)及び式(2)における、好ましいR及びRの組み合わせとしては、R及びRのいずれか一方がカルボキシ基;アルコキシカルボニル基;又は、置換又は無置換のカルバモイル基で、他方が水素原子;ハロゲン原子;カルボキシ基;アルコキシカルボニル基;スルホ基;ヒドロキシ基;置換又は無置換C1−C12アルキル基;置換又は無置換カルバモイル基;置換又は無置換スルファモイル基;置換又は無置換アミノ基;ニトロ基;C1−C12アルキルスルホニル基;又はC1−C4アルコキシ基である組み合わせが挙げられる。
又はRの一方がカルボキシ基又は無置換カルバモイル基であり、他方が水素原子、ハロゲン原子又はカルボキシ基である組み合わせはより好ましく、R又はRの一方がカルボキシ基であり、他方が水素原子又はハロゲン原子である組み合わせは更に好ましく、R又はRの一方がカルボキシ基であり、他方がハロゲン原子である組み合わせは特に好ましい。
及びRの置換位置は特に限定されないが、好ましくはアゾ基の置換位置を1位とした場合に、一方が2位、他方が5位;一方が2位、他方が4位;一方が3位、他方が5位;の組み合わせであり、より好ましくは一方が2位、他方が5位である組み合わせである。
置換位置も含めた好ましいR及びRの組み合わせとしては、アゾ基の置換位置を1位として、一方が2位に置換しているカルボキシ基又は無置換カルバモイル基であって、他方が5位に置換している水素原子、ハロゲン原子又はカルボキシ基である組み合わせであり、より好ましくは、一方が2位に置換しているカルボキシ基であって、他方が5位に置換している水素原子又はハロゲン原子である組み合わせであり、さらに好ましくは、一方が2位に置換しているカルボキシ基であって、他方が5位に置換しているハロゲン原子である組み合わせである。
前記の式(1)におけるR乃至R又は式(2)におけるR乃至Rで表される置換基及びそれらの置換位置に関して、好ましいもの同士を組み合わせた化合物はより好ましい化合物であり、より好ましいもの同士を組み合わせた化合物はさらに好ましい。さらに好ましいもの同士を組み合わせたもの等についても同様である。
好ましい本発明のアントラピリドン化合物を具体的に挙げれば、下記の通りである。
(i)前記式(1)又は前記式(2)において、Rが、ヒドロキシ基;アミノ基;カルボキシ基で置換されたアニリノ基、又は無置換アニリノ基;アルキル部分がカルボキシ基で置換されたフェニルC1−C4アルキルアミノ基;又はカルボキシ基で置換されたモノC1−C12アルキルアミノ基、又は無置換モノC1−C12アルキルアミノ基であり、R又はRの一方がカルボキシ基又は無置換カルバモイル基であり、他方が水素原子、ハロゲン原子又はカルボキシ基であり、式(1)においてはRが水素原子又はメチルである、アントラピリドン化合物、
(ii)Rが、ヒドロキシ基;無置換アニリノ基;アルキル部分がカルボキシ基で置換されたフェニルC1−C4アルキルアミノ基;又はカルボキシ基で置換されたモノC5−C12アルキルアミノ基である上記(i)に記載のアントラピリドン化合物、
(iii)R又はRの一方がカルボキシ基であり、他方が水素原子又はハロゲン原子である上記(i)又は(ii)に記載のアントラピリドン化合物、
(iv)R又はRの一方がカルボキシ基であり、他方がハロゲン原子である上記(i)又は(ii)に記載のアントラピリドン化合物、
(v)R又はRの置換位置が一方がアゾ基に対して2位に置換しており、他方がアゾ基に対して5位に置換している上記(i)〜(iv)の何れか一項に記載のアントラピリドン化合物、
(vi)Rが、ヒドロキシ基;又はカルボキシ基で置換されたモノC5−C12アルキルアミノ基である上記(i)、(iii)、(iv)及び(v)の何れか一項に記載のアントラピリドン化合物、
(vii)R又はRの一方がアゾ基に対して2位のカルボキシ基であり、他方がアゾ基に対して5位のハロゲン原子である上記(i)、(ii)及び(vi)の何れか一項に記載のアントラピリドン化合物、
(viii)式(1)においてはRが水素原子又はメチルであり、Rがハロゲン原子、R又はRの一方がカルボキシ基又は無置換カルバモイル基であり、他方が水素原子、ハロゲン原子又はカルボキシ基、好ましくはR又はRの一方がカルボキシ基、他方が水素原子又はハロゲン原子であるアントラピリドン化合物、
を挙げることができる。
また、より好ましい化合物の1つとして、上記(i)において、
(ix)Rが、ヒドロキシ基;無置換アニリノ基;アルキル部分がカルボキシ基で置換されたフェニルC1−C4アルキルアミノ基;又はカルボキシ基で置換されたモノC5−C11アルキルアミノ基であり、R又はRの一方がカルボキシ基であり、他方が水素原子又はハロゲン原子であるアントラピリドン化合物、及び
(x)Rがヒドロキシ基;又はカルボキシ基で置換されたモノC5−C11アルキルアミノ基であり、R又はRの一方がアゾ基に対して2位のカルボキシ基であり、他方がアゾ基に対して5位のハロゲン原子であるアントラピリドン化合物を挙げることができる。
本発明の前記式(1)で表されるアントラピリドン化合物の具体例を下記表1に示す。
Figure 2009116243
前記式(1)又は前記式(2)で表される化合物は遊離酸、あるいはその塩の形としても存在する。前記式(1)又は前記式(2)で表される化合物の塩としては、無機又は有機の陽イオンとの塩が挙げられる。無機陽イオンとの塩の具体例としてはアンモニウム塩やアルカリ金属塩(例えばリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などの塩)が挙げられる。また、有機の陽イオンとの塩としては、たとえば下記式(3)で表される4級アンモニウム塩が挙げられる。前記式(1)又は前記式(2)で表される化合物の塩は、これらに限定されるものではない。
Figure 2009116243
(式(3)において、Z〜Zはそれぞれ独立に水素原子、C1−C4アルキル基、ヒドロキシC1−C4アルキル基又はヒドロキシC1−C4アルコキシC1−C4アルキル基を表わし、Z〜Zの少なくとも1つが水素原子以外の基である。)
ここで、Z〜ZにおけるC1−C4アルキル基の例としてはメチル、エチル等があげられ;ヒドロキシC1−C4アルキル基の例としてはヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシプロピル、4−ヒドロキシブチル、3−ヒドロキシブチル、2−ヒドロキシブチル等があげられ;ヒドロキシC1−C4アルコキシC1−C4アルキル基の例としては、ヒドロキシエトキシメチル、2−ヒドロキシエトキシエチル、3−(ヒドロキシエトキシ)プロピル、3−(ヒドロキシエトキシ)ブチル、2−(ヒドロキシエトキシ)ブチル等が挙げられる。
前記塩のうち好ましいものは、ナトリウム、カリウム、リチウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン及び/又はアンモニウム等と形成する各塩が挙げられる。これらのうち、特に好ましいものは、リチウム、ナトリウム、カリウム及び/又はアンモニウムと形成する各塩である。
当業者においては明らかなように、前記式(1)又は前記式(2)で表される化合物の塩は以下の方法などにより容易に得ることができる。
例えば、該化合物の合成反応における最終工程後の反応液、あるいは該化合物を含むウェットケーキ若しくは該化合物の乾燥品などを溶解した水溶液に食塩を加えて塩析し、析出固体を濾過分離することにより、該化合物のナトリウム塩をウェットケーキとして得ることができる。
又、得られたナトリウム塩のウェットケーキを水に溶解後、塩酸などの酸を加えてそのpHを適宜調整し、析出した固体を濾過分離することにより、該化合物の遊離酸を得ることができる。また、上記方法において水酸化ナトリウムを用いて水溶液のpHを適宜調製することにより、該化合物の一部がナトリウム塩である、遊離酸とナトリウム塩の混合物を所望の比率で得ることもできる。
更に、該化合物の遊離酸のウェットケーキを水に加えて、撹拌しながら、例えば、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア水又は前記式(3)で表される4級アンモニウム塩の水酸化物等を添加してアルカリ性にすることにより、各々相当するカリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、又は4級アンモニウム塩を得ることもできる。また、添加する塩基を、2種又はそれ以上として、遊離酸のモル数に対するそれぞれの塩基のモル数を調整することにより、例えばリチウム塩とナトリウム塩の混塩、又は、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、及びアンモニウム塩からなる群から選ばれる任意の組合せの2種又は3種の混塩などを調製することも可能である。
本発明のアントラピリドン化合物の塩は、その塩の種類により、溶解性などの物理的な性質、あるいはインクとして用いた場合のインクの性能、特に堅牢性に関する性能が変化する場合もある。このため目的とするインク性能などに応じて塩の種類を選択することも好ましく行われる。
以下に本発明の化合物の製造方法を記載する。
なお下記式(4)〜(11)に記載のR乃至Rは、前記式(1)におけるのと同じ意味を表す。また、以下の説明では本発明の化合物を式(1)の化合物で説明するが、式(2)の化合物は式(1)の好ましい化合物であるので、式(2)の化合物においても全く同様である。
下記式(4)で表されるアントラキノン化合物1モルに、ベンゾイル酢酸エチルエステル1.1〜3モルを、キシレン等の極性溶媒中、炭酸ナトリウム等の塩基性化合物の存在下に、130〜180℃で5〜15時間反応させることにより、下記式(5)で表される化合物を得る。
式(4)
Figure 2009116243
式(5)
Figure 2009116243
得られた上記式(5)で表される化合物1モルに、メタアミノアセトアニリド1〜5モルを、N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性有機溶媒中で、炭酸ナトリウムのような塩基及び酢酸銅のような銅触媒の存在下に、110〜150℃で2〜6時間縮合反応(ウルマン反応)させることにより、下記式(6)で表される化合物が得られる。
Figure 2009116243
得られた上記式(6)で表される化合物を、8〜15%発煙硫酸中において、50〜120℃で、スルホ化すると同時にアセチルアミノ基を加水分解する事により、下記式(7)で表される化合物を得る。
Figure 2009116243
得られた上記式(7)で表される化合物を、水に添加し、水酸化ナトリウム水溶液等で反応液のpHを11〜12に調整し、60〜95℃で攪拌することにより、下記式(8)で表される化合物を得る。
Figure 2009116243
一方、1−アミノ−8−ヒドロキシ−3,6−ナフタレンジスルホン酸(H酸)1.0〜1.2モルを水に溶解させ、H酸の水溶液を得る。次いで、2,4,6−トリクロロ−S−トリアジン(シアヌルクロライド)1.0〜1.2モルを水に懸濁した液に、上記H酸の水溶液を5℃以下で滴下することにより、下記式(9)で表される化合物を得る。下記式(9)で表される化合物を含む反応液に、常法によって得られた、置換基としてR及びRを有するアニリンのジアゾ化物を添加し、5℃以下を維持しながら、カップリングさせることにより下記式(10)で表される化合物を得る。
式(9)
Figure 2009116243
式(10)
Figure 2009116243
得られた上記式(10)で表される化合物を含む反応液に、前記で得た式(8)で表される化合物を添加し、20〜80℃及びpH2〜10で、1〜24時間反応を行うことにより下記式(11)で表される化合物を得る。
Figure 2009116243
次いで、上記式(11)で表される化合物1モルに、Rに対応する基を導入するために、例えばR−Hで表される化合物1〜4モルを、pH2〜12及び50〜100℃で、0.5〜5時間反応させることにより、本発明の前記式(1)又は/及び式(2)で表される化合物が得られる。
得られた本発明の前記式(1)又は/及び式(2)で表される化合物は、反応後、反応液への塩酸などの鉱酸の添加により固体の遊離酸として単離する事ができる。得られた遊離酸の固体を水、又は、例えば塩酸などの酸性水溶液で洗浄することにより、不純物として含有する無機塩(例えば塩化ナトリウム等のアルカリ金属陽イオンの塩化物や、硫酸ナトリウム等のアルカリ金属陽イオンの硫酸塩等)、すなわち、本明細書における「無機不純物」を除去することができる。
これらの無機不純物は、前記式(1)又は/及び式(2)で表される化合物を色素として含有するインク組成物及び/又はインクを調製する場合の該インク等の保存安定性や、該インクを使用してインクジェット記録等を行う際の吐出安定性等に悪影響を与えることが多い。このため、前記式(1)又は/及び式(2)で表されるアントラピリドン化合物の総質量中における、該無機不純物の含有量は少なくとも1質量%以下にすることが好ましく、下限は0質量%、すなわち分析機器における検出限界以下でもよい。
無機不純物の少ない化合物を製造する方法としては、例えば逆浸透膜による方法が知られている。その他の方法として、前記式(1)又は/及び式(2)で表される化合物の乾燥品あるいはウェットケーキを、メタノールなどのC1−C4アルコール及び水の混合溶媒中に懸濁させて、撹拌した後、析出した固体を濾過分離し、乾燥することによっても、無機不純物を除去することができる。
前記式(1)又は/及び式(2)で表される化合物は、天然及び合成繊維材料又は混紡品の染色、さらには、筆記用インク及びインクジェット記録用インクの製造に適している。
前記式(1)又は/及び式(2)で表される化合物を含む反応液は、本発明のインク組成物の製造に直接使用する事もできる。また、反応液から該化合物を単離、例えばスプレー乾燥などの方法により反応液などを乾燥して本発明の化合物を単離した後、得られた化合物をインク組成物に加工することもできる。本発明のインク組成物は、上記式(1)又は/及び式(2)で表される化合物を、色素としてインク組成物の総質量に対して通常0.1〜20質量%、好ましくは1〜10質量%、より好ましくは2〜8質量%含有する。
本発明のインク組成物は、水を媒体として調製され、また必要に応じて、水溶性有機溶剤及びその他のインク調製剤を、本発明の効果を害しない範囲内において含有しても良い。
水溶性有機溶剤は、染料の溶解性向上、乾燥防止(湿潤性保持)、粘度調整、浸透促進、表面張力調整、及び/又は、消泡等の作用を目的として使用される。その他のインク調製剤としては、例えば、防腐防黴剤、pH調整剤、キレート試薬、防錆剤、紫外線吸収剤、粘度調整剤、染料溶解剤、褪色防止剤、乳化安定剤、表面張力調整剤、消泡剤、分散剤、及び分散安定剤等の公知の添加剤が挙げられる。
水溶性有機溶剤の含有量はインクの総質量に対して0〜60質量%、好ましくは10〜50質量%、より好ましくは10〜30質量%であり、その他のインク調製剤は同様に0〜20質量%、好ましくは0〜15質量%、より好ましくは3〜10質量%である。上記以外の残部は水である。
上記の水溶性有機溶剤としては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、第二ブタノール及び第三ブタノール等のC1−C4アルカノール(アルコール);N,N−ジメチルホルムアミド及びN,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−オン及び1,3−ジメチルヘキサヒドロピリミド−2−オン等の複素環式ケトン;アセトン、メチルエチルケトン及び2−メチル−2−ヒドロキシペンタン−4−オン等のケトンまたはケトアルコール;テトラヒドロフラン及びジオキサン等の環状エーテル;エチレングリコール、1,2−又は1,3−プロピレングリコール、1,2−又は1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びチオジグリコール等のC2−C6アルキレン単位を有するモノ、オリゴ若しくはポリアルキレングリコール又はチオグリコール;グリセリン及びヘキサン−1,2,6−トリオール等のポリオール(好ましくはトリオール);エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル及びトリエチレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールのC1−C4モノアルキルエーテル;γ−ブチロラクトン;又はジメチルスルホキシド等が挙げられる。
上記の水溶性有機溶剤として好ましいものは、イソプロパノール、グリセリン、モノ、ジまたはトリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン及びブチルカルビトールであり、より好ましくはイソプロパノール、グリセリン、ジエチレングリコール、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン及びブチルカルビトールである。これらの水溶性有機溶剤は、単独又は混合して用いられる。本発明のインク組成物を調製するに際しては、水溶性有機溶剤を含有する方が好ましい。
防腐防黴剤としては、例えば、有機硫黄系、有機窒素硫黄系、有機ハロゲン系、ハロアリールスルホン系、ヨードプロパギル系、N−ハロアルキルチオ系、ベンゾチアゾール系、ニトリル系、ピリジン系、8−オキシキノリン系、イソチアゾリン系、ジチオール系、ピリジンオキシド系、ニトロプロパン系、有機スズ系、フェノール系、第4アンモニウム塩系、トリアジン系、チアジアジン系、アニリド系、アダマンタン系、ジチオカーバメイト系、ブロム化インダノン系、ベンジルブロムアセテート系、および無機塩系等の化合物が挙げられる。
有機ハロゲン系化合物としては、例えばペンタクロロフェノールナトリウムが挙げられる。
ピリジンオキシド系化合物としては、例えば2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウムが挙げられる。
イソチアゾリン系化合物としては、例えば1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンマグネシウムクロライド、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンカルシウムクロライド及び2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンカルシウムクロライド等が挙げられる。
その他の防腐防黴剤としてソルビン酸ソーダ、酢酸ソーダ及び安息香酸ナトリウム等が挙げられる。
防腐防黴剤の具体例としては、例えば、プロクセルRTMGXL(S)およびプロクセルRTMXL−2(S)(商品名、いずれもアベシア社製)等が好ましく挙げられる。
pH調整剤は、インクの保存安定性を向上させる目的で使用するものであり、本発明のインク組成物に悪影響を及ぼさずに、インクのpHを6.0〜11.0の範囲に制御できるものであれば、任意の物質を使用することができる。例えば、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミンなどのアルカノールアミン、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、水酸化アンモニウム、あるいは炭酸リチウム、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩などが挙げられる。
キレート試薬としては、例えばエチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、及び、ウラシル二酢酸ナトリウムなどが挙げられる。
防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオグリコール酸アンモニウム、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、及び、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライトなどが挙げられる。
紫外線吸収剤としては、例えばベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、桂皮酸系化合物、トリアジン系化合物、スチルベン系化合物、又はベンズオキサゾール系化合物に代表される、紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤も用いることができる。
粘度調整剤としては、水溶性有機溶剤の他に、水溶性高分子化合物があげられ、例えばポリビニルアルコール、セルロース誘導体、ポリアミン、及び、ポリイミン等が挙げられる。
染料溶解剤としては、例えば尿素、ε−カプロラクタム、及び、エチレンカーボネート等が挙げられ、尿素を使用するのが好ましい。
褪色防止剤は、画像の保存性を向上させる目的で使用される。褪色防止剤としては、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。有機系の褪色防止剤としてはハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、及びヘテロ環類などがあり、金属錯体系の褪色防止剤としてはニッケル錯体、及び亜鉛錯体などがある。
表面張力調整剤としては、界面活性剤があげられ、例えばアニオン界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン界面活性剤、及びノニオン界面活性剤などが挙げられる。
アニオン界面活性剤としてはアルキルスルホカルボン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、N−アシルアミノ酸およびその塩、N−アシルメチルタウリン塩、アルキル硫酸塩ポリオキシアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ロジン酸石鹸、ヒマシ油硫酸エステル塩、ラウリルアルコール硫酸エステル塩、アルキルフェノール型燐酸エステル、アルキル型燐酸エステル、アルキルアリールスルホン酸塩、ジエチルスルホ琥珀酸塩、ジエチルヘキルシルスルホ琥珀酸塩、及び、ジオクチルスルホ琥珀酸塩などが挙げられる。
カチオン界面活性剤としては2−ビニルピリジン誘導体、及び、ポリ4−ビニルピリジン誘導体などがある。
両性界面活性剤としてはラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシン、及び、その他のイミダゾリン誘導体などがある。
ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル及びポリオキシエチレンアルキルエーテル等のエーテル系;ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ポリオキシエチレンモノオレエート及びポリオキシエチレンステアレートなどのエステル系;並びに、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール及び3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オールなどのアセチレングリコール(アルコール)系;等が挙げられる。ノニオン界面活性剤の具体例としては、例えば、サーフィノールRTM104、同82、同465、及び、オルフィンRTMSTG(商品名、日信化学工業株式会社製)等が挙げられる。
消泡剤としては、高酸化油系、グリセリン脂肪酸エステル系、フッ素系、及び、シリコーン系の化合物が必要に応じて用いられる。
これらのインク調製剤は、単独又は混合して用いられる。なお、本発明のインク組成物を含有するインクの表面張力は通常25〜70mN/m、より好ましくは25〜60mN/mである。同様に、インクの粘度は30mPa・s以下が好ましく、20mPa・s以下に調整することがより好ましい。
本発明のインク組成物を製造するにあたり、添加剤などの各成分を溶解させる順序には特に制限はない。インク組成物を調製するにあたり、用いる水はイオン交換水又は蒸留水などの不純物が少ないものが好ましい。
さらに、必要に応じメンブランフィルターなどを用いて精密濾過を行うことによってインク組成物より夾雑物を除いてもよく、インクジェットプリンタ用のインクとして使用する場合は精密濾過を行うことが好ましい。精密濾過を行うフィルターの孔径は通常1μm〜0.1μm、好ましくは、0.8μm〜0.2μmである。
本発明のアントラピリドン化合物を色素として含有するインク組成物は、印捺、複写、マーキング、筆記、製図、スタンピング、又は記録(印刷)、特にインクジェット記録における使用に適する。また本発明のインク組成物は、インクジェットプリンタのノズル付近における乾燥に対しても結晶の析出は起こりにくく、この理由によりヘッドの閉塞もまた起こりにくい。さらに本発明のインク組成物をインクジェット記録に用いた場合、水、光、オゾン等の酸化性ガス、及び摩擦に対して良好な耐性を有する、高品質のマゼンタ色の印捺物が得られ、特に普通紙に記録した画像の耐水性が極めて良好である。
インクジェットプリンタにおいて、高精細な画像を供給することを目的に、高濃度のインクと低濃度のインクの2種類のインクが1台のプリンタに装填されたものもある。その場合、色素として本発明の化合物を高濃度に含有するインクと、低濃度に含有するインクとをそれぞれ調製し、それらのインクをインクセットとして使用してもよい。また、2種類のインクのどちらか一方だけに本発明の化合物を含有させてもよい。
また本発明の化合物が有する耐水性等の効果を阻害しない範囲で、公知のマゼンタ色素を併用してもよい。
また他の色、例えばブラックインクの調色用の目的、あるいはイエロー色素やシアン色素と混合して、レッドインクやブルー(又はバイオレット)インクを調製する目的で、本発明の化合物を用いることもできる。
本発明の着色体とは、本発明の化合物で着色された物質のことである。着色体の材料には特に制限はなく、例えば紙又はフィルムなどの情報伝達用シート、繊維や布(セルロース、ナイロン、羊毛等)、皮革、カラーフィルター用基材等、着色されるものであればなんでも良く、これらに限定されない。着色法としては、例えば浸染法、捺染法、スクリーン印刷等の印刷法、インクジェットプリンタによる方法等が挙げられる。本発明においては、インクジェットプリンタによる方法が好ましい。
上記の情報伝達用シートとしては、特に制限はなく、普通紙はもちろん、表面処理されたもの、具体的には紙、合成紙、又は、フィルム等の基材にインク受容層を設けたものなども用いることができる。該インク受容層は、例えば上記基材にカチオン系ポリマーを含浸あるいは塗工する方法;または多孔質シリカ、アルミナゾル又は特殊セラミックスなどの、インク中の色素を吸収し得る無機微粒子を、ポリビニルアルコール及び/又はポリビニルピロリドン等の親水性ポリマーと共に上記基材表面に塗工する方法;などにより設けられる。このようなインク受容層を設けたものは通常インクジェット専用紙、インクジェット専用フィルム、光沢紙、または光沢フィルム等と呼ばれる。
普通紙とは、特にインク受容層を設けていない紙のことを意味し、用途によってさまざまなものが数多く市販されている。市販されている普通紙の一例を挙げると、インクジェット用としては、両面上質普通紙(セイコーエプソン株式会社製);カラー普通紙(キヤノン株式会社製);Multipurpose Paper及びAll−in−one Printing Paper(いずれもHewlett Packard社製);などがある。この他、特に用途をインクジェット印刷に限定しないPPC用紙なども普通紙である。
本発明のインク組成物は、上記のような普通紙に記録した画像の耐水性が特に優れているが、その他の光、オゾン、湿度又は摩擦などに対する堅牢性にも優れる。一方、本発明のインク組成物は上記のインクジェット専用紙にも使用することが可能である。
本発明のインクジェット記録方法での被記録材への記録は、例えば本発明のインク組成物が充填された容器をインクジェットプリンタの所定位置にセットし、通常の方法、即ち、該インク組成物の小滴を記録信号に応じて吐出させ、それを被記録材に付着させ、被記録材に記録する方法により、行えばよい。
本発明のインクジェット記録方法においては、本発明のマゼンタインク組成物を単独で用いてもよく、また、該マゼンタインク組成物と共に、イエロー、シアン、必要に応じて、グリーン、ブルー(又はバイオレット)、レッド、及びブラック等の各インクを併用してもよい。併用される各色のインクは、それぞれの容器に注入され、それらの容器は、本発明のインク組成物を充填した容器と共に、インクジェットプリンタの所定位置にセット(装填)され、インクジェットプリントに使用される。
インクジェットプリンタには、例えば機械的振動を利用したピエゾ方式;及び加熱により生ずる泡を利用したバブルジェットRTM方式;等のプリンタがある。本発明のインクジェット記録方法は、いかなる方式のプリンタであっても使用が可能である。
本発明のインク組成物は、鮮明なマゼンタ色であり、インクジェット専用紙及び普通紙等の被記録材、特に普通紙に記録した場合であっても画像の鮮明度が高く、インクジェット記録方法に適した色相を有する。また、その記録画像の堅牢度、特に普通紙における耐水性が非常に高いことを特徴とする。
本発明のインク組成物は貯蔵中に色素成分等が沈澱、分離することがない。また、本発明のインク組成物をインクジェット記録に使用した場合、ノズル付近におけるインク組成物の乾燥による結晶の析出は非常に起こりにくく、噴射器(インクヘッド)を閉塞することもない。本発明のインク組成物は、連続式インクジェットプリンタを用い、比較的長い時間間隔においてインクを再循環させて使用する場合においても、又、オンデマンド式インクジェットプリンタによる断続的な使用においても、物理的性質の変化を起こさない。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。尚、本文中「部」及び「%」とあるのは、特別の記載のない限り質量基準である。実施例中の反応及び晶析等の操作については、特に断りのない限りいずれも攪拌下に行った。
また、実施例に記載した化合物のうち、最大吸収波長(λmax)の測定において、ほぼ同等の吸収強度を有するピークが複数観測されたものについては、その複数のピークのいずれをも最大吸収波長として記載した。このλmaxは、水溶液での測定値である。
なお合成した本発明の化合物はいずれの化合物も100g/L以上の溶解度を示した。
実施例1
(1)キシレン360部中に、攪拌しながら、下記式(12)で表される化合物94.8部、炭酸ナトリウム3.0部、及び、ベンゾイル酢酸エチルエステル144.0部を順次加えた後に液温を上げ、140〜150℃の温度で8時間反応を行った。その間、反応で生成するエタノールと水をキシレンと共沸させながら系外へ留出させ、反応を完結させた。次いで、反応液を冷却し、そこに、30℃にてメタノール240部を添加して、30分攪拌した後、析出した固体を濾過分離した。得られた固体をメタノール360部で洗浄後、乾燥して、下記式(13)で表される化合物124.8部を淡黄色針状結晶として得た。
式(12)
Figure 2009116243
式(13)
Figure 2009116243
(2)攪拌下、N,N―ジメチルホルムアミド300.0部中に、上記式(13)で表される化合物88.8部、メタアミノアセトアニリド75.0部、酢酸銅1水和物24.0部及び炭酸ナトリウム12.8部を順次加えた後、液温を120〜130℃に上げて、3時間反応を行った。反応液を約50℃に冷却し、そこにメタノール120部を添加して30分攪拌した。析出した固体を濾過分離した。得られた固体を、メタノール500部、次いで80℃の温水で順次洗浄した後、乾燥することによって、下記式(14)で表される化合物79.2部を青味赤色固体として得た。
Figure 2009116243
(3)98%硫酸130部に、攪拌下、水冷しながら28%発煙硫酸170部を添加して、12%発煙硫酸300部を調製した。そこに、水冷下、上記式(14)で表される化合物51.3部を50℃以下の液温で添加した。液温を85〜90℃に上げ、4時間反応を行った。氷水600部中に反応液を添加し、反応の間、氷を加えることにより発熱による液温の上昇を抑え、液温を40℃以下に保持した。さらに反応液に水を加えて液量を1000部とした後、濾過して、不溶解物を除去した。得られた母液に温水を加えて1500部とし、液温を60〜65℃に保ちながら、塩化ナトリウム300部を添加して2時間攪拌し、析出した固体を濾過分離した。得られた固体を20%塩化ナトリウム水溶液300部で洗浄し、よく水分を絞って、下記式(15)で表される化合物59.2部を含むウェットケーキ129.0部を赤色固体として得た。
Figure 2009116243
(4)水500部中に、上記(3)で得られた上記式(15)で表される化合物のウェットケーキ320部を添加し、次いで25%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを12に調整した後、90℃の液温で6時間反応させた。反応液を濾過し、得られたウェットケーキに水400部を加えpHを7に調整した後、析出した固体を濾過分離した。得られたウェットケーキを乾燥して、下記式(16)で表される化合物85.8部を得た。
Figure 2009116243
(5)1−アミノ−8−ヒドロキシ−3,6−ナフタレンジスルホン酸(H酸)19.8部を水75部中に加え、次いで25%水酸化ナトリウムを加えてpHを9〜9.5に調整することにより、H酸を溶解させた。一方、氷水75部にリパールOH(商品名、アニオン界面活性剤、ライオン株式会社製)0.4部を加え、次いでシアヌルクロライド10.0部を添加し、30分間攪拌した。そこに、上記で得られたH酸の水溶液を、0〜5℃の液温を維持しながら1時間かけて滴下した。さらに2時間、0〜5℃の液温で反応させ、下記式(17)で表される化合物を含有する反応液を得た。
Figure 2009116243
(6)2−アミノ−4−クロロ安息香酸8.2部を常法によりジアゾ化し、その反応液を上記で得られた式(17)で表される化合物を含有する反応液に加え、液温を0〜5℃に維持しながら、更に25%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを7に調整することにより、2−アミノ−4−クロロ安息香酸のジアゾ化物と式(17)で表される化合物を反応させ、下記式(18)で表される化合物を含有する反応液を得た。
Figure 2009116243
(7)上記(6)で得られた上記式(18)で表される化合物を含有する反応液に、本実施例1(4)で得られた前記式(16)で表される化合物19.0部を加え、次いで25%水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを8〜9に調整し、液温を40℃になるように加熱して24時間反応させることにより、下記式(20)で表される化合物を含有する反応液を得た。常法による塩析と濾過分離により、この化合物を固体として得ることが出来る。
λmax:514nm
Figure 2009116243
(8)上記(7)で得られた式(20)で表される化合物を含む反応液中に、25%苛性ソーダ水溶液を滴下してpHを10.8〜11.2に保ちながら、90〜95℃の液温で、2時間反応を行った。反応後、反応液をpH4.0に調整することにより結晶を析出させた。析出した結晶を濾過分離して、下記式(22)で表される化合物の赤色ウェットケーキ80.8部を得た。
Figure 2009116243
(9)上記(8)で得られたウェットケーキを水500部中に添加した後、液温を50℃に調整し、アンモニア水溶液を加えることにより溶解させた。次いで35%塩酸を滴下してpHを5に調整することにより結晶を析出させ、析出した結晶を濾過分離した。得られたウェットケーキをメタノール600部と共に加熱、攪拌しながら50℃の液温にて30分間保持した後、固体を濾過分離した。得られた固体を、メタノール100部で洗浄した後、乾燥して、上記式(22)で表される化合物の精製品18.1部のアンモニウム塩を赤色固体として得た。
λmax:515nm
実施例2
(1)実施例1(1)乃至(7)と同様にして得られた上記式(20)で表される化合物を含有する反応液にアミノドデカン酸16.1部を加えた。該反応液に、25%苛性ソーダ水溶液を滴下してpHを9〜10に保ちながら、50〜70℃の温度で、2時間反応させた。反応後、反応液をpH5.0に調整することにより析出した結晶を濾過分離して、下記式(23)で表される化合物の赤色ウェットケーキ96.8部を得た。
Figure 2009116243
(2)上記(1)で得られた式(23)の化合物を含むウェットケーキを水500部中に添加し、液温を50℃に調整した後、アンモニア水溶液を加えることにより溶解させた。次いで35%塩酸を滴下してpHを5に調整することにより結晶を析出させ、析出した結晶を濾過分離した。得られたウェットケーキをメタノール600部と共に加熱、攪拌しながら50℃の液温にて30分間保持した後、固体を濾過分離した。得られた固体を、メタノール100部で洗浄した後、乾燥して、上記式(23)で表される化合物のアンモニウム塩の精製品22.5部を、赤色固体として得た。
λmax:515nm
実施例3
(1)実施例1(1)〜(7)と同様にして得られた前記式(20)で表される化合物を含有する反応液に、DL−フェニルアラニン12.4部を加えた。この反応液に、25%苛性ソーダ水溶液を滴下してpHを9〜10に保ちながら、50〜70℃の温度で、2時間反応させた。反応後、反応液をpH5.0に調整することにより結晶を析出させ、析出した結晶を濾過分離して、下記式(24)で表される化合物の赤色ウェットケーキ90.5部を得た。
Figure 2009116243
(2)上記(1)で得られた式(24)の化合物を含むウェットケーキを水500部中に添加し、50℃に調整した後、アンモニア水溶液を加えることにより、溶解させた。次いで、そこに35%塩酸を滴下してpHを5に調整することにより結晶を析出させ、析出した結晶を濾過分離した。得られたウェットケーキをメタノール600部と共に加熱し、攪拌しながら50℃の液温にて30分間保持した後、固体を濾過分離した。得られた固体をメタノール100部で洗浄した後、乾燥して上記式(24)で表される化合物のアンモニウム塩の精製品23.4部を、赤色固体として得た。
λmax:515nm、551nm
実施例4
(1)実施例1(1)〜(7)と同様にして得られた前記式(20)で表される化合物を含有する反応液に、アミノヘキサン酸9.8部を加えた。該反応液に25%苛性ソーダ水溶液を滴下してpHを9〜10に保ちながら、50〜70℃の温度で、2時間反応を行った。反応後、反応液をpH5.0に調整することにより結晶を析出させた。析出した結晶を濾過分離して、下記式(25)で表される化合物の赤色ウェットケーキ82.7部を得た。
Figure 2009116243
(2)上記(1)で得られた式(25)の化合物のウェットケーキを水500部中に添加し、液温を50℃に調整した後、アンモニア水溶液を加えることにより溶解させた。次いで、そこに35%塩酸を滴下してpHを5に調整することにより結晶を析出させ、析出した結晶を濾過分離した。得られたウェットケーキをメタノール600部と共に加熱し、攪拌しながら50℃の液温にて30分間保持した後、固体を濾過分離した。得られた固体をメタノール100部で洗浄した後、乾燥して、上記式(25)で表される化合物のアンモニウム塩の精製品18.9部を、赤色固体として得た。
λmax:514nm
実施例5
(1)実施例1(6)において、2−アミノ−4−クロロ安息香酸の代わりにアントラニル酸6.5部を使用すること以外は実施例1(1)乃至(6)と同様にして、下記式(19)で表される化合物を含有する反応液を得た。
Figure 2009116243
(2)実施例1(7)において、前記式(18)で表される化合物を含有する反応液の代わりに上記で得られた式(19)で表される化合物を含有する反応液を用いる以外は実施例1(7)と同様にして、下記式(21)で表される化合物を含有する反応液を得た。
Figure 2009116243
(3)上記で得られた上記式(21)で表される化合物を含有する反応液にアニリン7.0部を加え、50〜70℃の温度で、2時間反応させた。反応後、反応液をpH5.0に調整し、そこに塩化アンモニウム30部を加え、固体を析出させた。析出した固体を濾過分離し、下記式(26)で表される化合物の赤色ウェットケーキ50.7部を得た。
Figure 2009116243
(4)上記(3)で得られた式(26)の化合物のウェットケーキをメタノール600部に加え、50℃に加熱して30分間攪拌した後、固体を濾過分離した。得られた固体を、メタノール100部で洗浄した後、乾燥して、上記式(26)で表される化合物のアンモニウム塩の精製品15.5部を赤色固体として得た。
λmax:518nm、557nm
実施例6
(1)実施例5(2)と同様にして得られた前記式(21)で表される化合物を含有する反応液にアミノヘキサン酸9.8部を加え、50〜70℃の温度で、2時間反応させた。反応液をpH5.0に調整し、そこに塩化アンモニウム30部を加え、結晶を析出させた。析出した結晶を濾過分離し下記式(27)で表される化合物の赤色ウェットケーキ64.7部を得た。
Figure 2009116243
(2)上記(1)で得られたウェットケーキをメタノール600部と共に加熱、攪拌して50℃にて30分保持した後、固体を濾過分離した。得られた固体をメタノール100部で洗浄した後、乾燥して、上記式(27)で表される化合物のアンモニウム塩の精製品16.0部を赤色固体として得た。
λmax:518nm、557nm
実施例7〜12
(A)インクの調製
前記実施例1で得られた式(22)で表される化合物、及びその他のインク調製剤等の各成分を、下記表2に示した組成比で混合して、本発明のインク組成物を得た。得られたインク組成物を0.45μmのメンブランフィルターで濾過する事により夾雑物を除き、評価用のインクを得た。尚、水はイオン交換水を使用し、インク組成物のpHがおよそ9.0となるようにアンモニア水で調整した後、総量が100部になるように水を加えた。このインクの調製を実施例7とする。同様に実施例2乃至6で得られた化合物を用いる以外は実施例7と同様の組成及び操作によって得られたインクをそれぞれ実施例8〜12とする。
表2(インク組成物の組成比)
実施例1で得られた式(22)で表される化合物 4.0部
グリセリン 5.0部
尿素 5.0部
N−メチル−2−ピロリドン 4.0部
イソプロピルアルコール 3.0部
ブチルカルビトール 2.0部
商品名サーフィノールRTM104PG50(注) 0.1部
アンモニア水+水 76.9部
計 100.0部
(注)アセチレングリコ−ル系ノニオン界面活性剤、日信化学工業株式会社製
比較例1
実施例1(8)で得られた前記式(22)で表される化合物のかわりに、特許文献1の実施例2で得られたNo.4の化合物を色素として用いる以外は実施例7と同様にして、比較用のインク組成物を調製した。このインクの調製を比較例1とする。用いた色素の構造式を下記式(28)に示す。尚、下記式(28)で表される化合物はアンモニウム塩として合成し、これを用いた。
Figure 2009116243
(B)インクジェットプリント
インクジェットプリンタ(キヤノン株式会社製、商品名:PIXUSRTMip4100)を用いて、下記表3に示す4種類の普通紙に、実施例7乃至12及び比較例1で調製したインクによるインクジェット記録を行った。インクジェット記録の際、チェック柄のパターン(濃度100%と0%の1.5mm角正方形を交互に組み合わせたパターン)を作成し、コントラストの高いマゼンタ−ホワイトの印字物を得た。なお、該ホワイトの部分は、印字されていない普通紙の生地の部分である。また、反射濃度につき数段階の階調が得られるように画像パターンも作成し、マゼンタ色のグラデーションを有する印字物を得た。
なお、このようにして得られた各実施例及び比較例のグラデーションを有する印字物は、反射濃度(D値)が1.0付近の画像について下記する測色システムを用いたL*、a*、b*の測定結果、及びC*の算出結果から、いずれもインクジェット用マゼンタ色素として好適な色相及び鮮明性を有していた。
また、耐水性試験1(浸漬試験)の目視判断を行う際には、チェック柄の印字物を試験片として用いた。
また、耐水性試験2(ふき取り試験)の色素残存率測定は、グラデーションを有する印字物を試験片として用い、試験前の印字物の反射濃度D値が1.0に最も近い部分について反射濃度の測定を行った。反射濃度は測色システム(GretagMacbeth社製、商品名SectroEye)を用いて測定した。
記録画像の各種試験方法および試験結果の評価方法を以下に記載する。
表3
普通紙1
キヤノン株式会社製
商品名:LBP PAPER LS−500
普通紙2
Hewlett Packard社製
商品名:Multipurpose Paper
普通紙3
Hewlett Packard社製
商品名:All−in−One Printing Paper
普通紙4
キヤノン株式会社製
商品名:オフィスプランナーマルチグレード
(C)耐水性試験1(浸漬試験)
インクジェット記録後から24時間乾燥を行った各実施例及び比較例1の各試験片を、イオン交換水中に1時間浸漬した。水中から試験片を取り出した後にこれらを乾燥し、パターンの着色部分の色落ち具合を目視で評価し、以下の基準で3段階に評価した。
やや色落ちする・・・・・・・・・・・・・・・・○
色落ちするが、着色の残存がある・・・・・・・・△
全て色落ちする・・・・・・・・・・・・・・・・×
結果を表3に示す。
(D)耐水性試験2(ふき取り試験)
インクジェット記録後から24時間乾燥を行った各試験片に対して、イオン交換水を一滴落とし、1分後にこの水滴をふき取った。試験片を乾燥後、反射濃度を前記の測色システムを用いて測色した。測定後、色素残存率を(試験後の反射濃度/試験前の反射濃度)×100(%)で計算した。求めた値の結果を表4に示す。なお、該色素残存率は、値の大きいほど良好な結果を示す。
表3 耐水性試験1の結果

普通紙1 普通紙2 普通紙3 普通紙4
実施例7 △ △ △ △
実施例8 △ △ △ △
実施例9 △ △ △ △
実施例10 △ △ △ △
実施例11 △ ○ ○ ○
実施例12 △ △ △ △
比較例1 × △ △ ×
表4 耐水性試験2の結果

普通紙1 普通紙2 普通紙3 普通紙4
実施例7 74.8 69.0 89.7 82.2
実施例8 76.3 94.4 94.3 82.1
実施例9 66.7 95.2 95.1 73.3
実施例10 74.4 67.0 91.7 75.6
実施例11 72.4 97.9 94.8 84.1
実施例12 71.3 70.2 74.1 75.2
比較例1 56.3 73.4 66.7 64.4
表3及び4の結果より明らかなように、耐水性試験1(表3)においては、実施例11が、4種の普通紙のうち3種において○であり、残り1種においてのみ△であり、最も耐水性に優れ、残りの実施例7〜10、及び12においては、4種の普通紙において全て△であり、2種の普通紙で×であり、残り2種において△である比較例に比して、本発明のインクが顕著に耐水性において優れている。
また、耐水性試験2では、比較例においては、4種の普通紙の中、3種では残存率が50%台若しくは60%台と70%以下であり、70%台は1種のみで留まっているが、本発明では最も残存率が悪い実施例12においても、4種の普通紙において、70%を超えており、実施例7、9及び10においては、それぞれ1種の普通紙で69.0%、66.7%及び67.0と60%台後半のものがあるが、他の3種の普通紙では何れも70%以上であり、残存率の高いものでは、1種又は2種の普通紙で、ほぼ90%、又は90%以上を達成しており、実施例8及び11においては、それぞれ1種の普通紙で、70%台があるのみで、残りの3種の普通紙においては、それぞれ1種で、80%台で、残り2種では90%以上となっており、本発明のインクが何れも耐水性試験2において顕著に優れていることが判る。
すなわち、比較例1に対して実施例7〜12の記録画像は、目視及び測色結果のいずれにおいても比較例1と一部の普通紙で同等、それ以外の普通紙では比較例1より極めて優れた耐水性を示し、本発明の色素及びこれを含有するインクは、インクジェット等での記録に極めて有用である。また、上記の結果から、本発明の前記式(1)又は/及び式(2)で表される化合物のうち、Rがアルキルアミノ基である場合には、該アルキル部分の炭素数は、より多い方が耐水性の観点からは好ましいことが判る。
以上の結果から、本発明の水溶性アントラピリドン化合物はインクジェット記録用のインク組成物を調製するのに適しており、各種の堅牢性、特に普通紙に記録した画像の耐水性に極めて優れ、また水溶解性が高く、又マゼンタ色として良好で鮮明な色相を持つ。これらの特徴から、本発明のアントラピリドン化合物は各種の記録用インク色素、特にインクジェットインク用のマゼンタ色の色素として非常に有用である。

Claims (23)

  1. 下記式(1)で表されるアントラピリドン化合物又はその塩、
    Figure 2009116243
    (式中、Rは水素原子、アルキル基、ヒドロキシ低級アルキル基、シクロヘキシル基、モノ又はジアルキルアミノアルキル基またはシアノ低級アルキル基を表し、
    はヒドロキシ基;アルコキシ基;アミノ基;ハロゲン原子;置換基として、スルホ基、カルボキシ基、アルコキシ基、カルバモイル基、シアノ基、アルキル基、アニリノ基、フェノキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基及びメルカプト基よりなる群から選択される基を少なくとも1つ有するアニリノ基;無置換アニリノ基;置換基として、スルホ基、カルボキシ基、アルコキシ基、オキソ基、カルバモイル基、シアノ基及びヒドロキシ基よりなる群から選択される基を少なくとも1つ有するアラルキルアミノ基;無置換アラルキルアミノ基;置換基として、スルホ基、カルボキシ基、アルコキシ基、オキソ基、カルバモイル基、シアノ基、アニリノ基、フェノキシ基、ヒドロキシC1−C4アルキルアミノ基、ジ(C1−C4)アルキルアミノ基、アミノ基、ヒドロキシ基及びメルカプト基よりなる群から選択される基を少なくとも1つ有するモノ又はジアルキルアミノ基;無置換モノ又はジアルキルアミノ基;を表し、
    及びRはそれぞれ独立して水素原子;ハロゲン原子;カルボキシ基;アルコキシカルボニル基;スルホ基;ヒドロキシ基;置換又は無置換C1−C12アルキル基;置換又は無置換カルバモイル基;置換又は無置換スルファモイル基;置換又は無置換アミノ基;ニトロ基;C1−C12アルキルスルホニル基;又はC1−C4アルコキシ基;を表す。)。
  2. がヒドロキシ基;アルコキシ基;アミノ基;置換基として、スルホ基、カルボキシ基、アルコキシ基、カルバモイル基、シアノ基、アルキル基、アニリノ基、フェノキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基及びメルカプト基よりなる群から選択される基を有するアニリノ基;無置換アニリノ基;置換基として、スルホ基、カルボキシ基、アルコキシ基、オキソ基、カルバモイル基、シアノ基及びヒドロキシ基よりなる群から選択される基を有するアラルキルアミノ基;無置換アラルキルアミノ基;置換基として、スルホ基、カルボキシ基、アルコキシ基、オキソ基、カルバモイル基、シアノ基、アニリノ基、フェノキシ基、ヒドロキシC1−C4アルキルアミノ基、ジ(C1−C4)アルキルアミノ基、アミノ基、ヒドロキシ基及びメルカプト基よりなる群から選択される基を有するモノ又はジアルキルアミノ基;または無置換モノ又はジアルキルアミノ基である請求項1に記載のアントラピリドン化合物またはその塩。
  3. が水素原子又はメチル基である、請求項2に記載のアントラピリドン化合物またはその塩。
  4. が水素原子又はメチル基を表し、
    又はRのいずれか一方がカルボキシ基;アルコキシカルボニル基;又は、置換又は無置換のカルバモイル基、他方が水素原子;ハロゲン原子;カルボキシ基;アルコキシカルボニル基;スルホ基;ヒドロキシ基;置換又は無置換C1−C12アルキル基;置換又は無置換カルバモイル基;置換又は無置換スルファモイル基;置換又は無置換アミノ基;ニトロ基;C1−C12アルキルスルホニル基;又はC1−C4アルコキシ基である請求項2に記載のアントラピリドン化合物又はその塩。
  5. 下記式(2)で表される請求項2に記載のアントラピリドン化合物又はその塩、
    Figure 2009116243
    [式中、R、R及びRは、請求項2におけるR、R及びRと同じ意味を表す]。
  6. 又はRのいずれか一方がカルボキシ基;アルコキシカルボニル基;又は、置換又は無置換のカルバモイル基;他方が水素原子;ハロゲン原子;カルボキシ基;アルコキシカルボニル基;スルホ基;ヒドロキシ基;置換又は無置換C1−C12アルキル基;置換又は無置換カルバモイル基;置換又は無置換スルファモイル基;置換又は無置換アミノ基;ニトロ基;C1−C12アルキルスルホニル基;又はC1−C4アルコキシ基である請求項5に記載のアントラピリドン化合物又はその塩。
  7. がヒドロキシ基;アミノ基;カルボキシ基で置換されたアニリノ基;無置換アニリノ基;カルボキシ基で置換されたアラルキルアミノ基;置換基として、スルホ基、カルボキシ基、アルコキシ基、オキソ基、カルバモイル基、シアノ基、アニリノ基、フェノキシ基、ヒドロキシC1−C4アルキルアミノ基、アミノ基、ヒドロキシ基及びメルカプト基よりなる群から選択される基を少なくとも1つ有するモノアルキルアミノ基;又は、無置換モノアルキルアミノ基;である請求項6に記載のアントラピリドン化合物又はその塩。
  8. がヒドロキシ基;アミノ基;カルボキシ基で置換されたアニリノ基;無置換アニリノ基;アルキル部分がカルボキシ基で置換されたフェニルC1−C4アルキルアミノ基;カルボキシ基で置換されたモノC1−C12アルキルアミノ基;又は、無置換モノアルキルアミノ基;であり、
    又はRの一方がカルボキシ基又は無置換カルバモイル基であり、他方が水素原子、ハロゲン原子又はカルボキシ基である請求項5に記載のアントラピリドン化合物又はその塩。
  9. がヒドロキシ基;アミノ基;カルボキシ基で置換されたアニリノ基;無置換アニリノ基;アルキル部分がカルボキシ基で置換されたフェニルC1−C4アルキルアミノ基;カルボキシ基で置換されたモノC5−C11アルキルアミノ基;又は、無置換C5−C11モノアルキルアミノ基;であり、
    又はRの一方がカルボキシ基であり、他方が水素原子又はハロゲン原子である請求項5に記載のアントラピリドン化合物又はその塩。
  10. がヒドロキシ基;無置換アニリノ基;アルキル部分がカルボキシ基で置換されたフェニルC1−C4アルキルアミノ基;又は、カルボキシ基で置換されたモノC5−C11アルキルアミノ基;であり、
    又はRの一方がカルボキシ基であり、他方が水素原子又はハロゲン原子である請求項5に記載のアントラピリドン化合物又はその塩。
  11. 請求項2、5、8又は10に記載のアントラピリドン化合物又はその塩を色素として含有し、さらに水を含有することを特徴とするインク組成物。
  12. 水溶性有機溶剤をさらに含有する請求項11に記載のインク組成物。
  13. 請求項2、又は10に記載のアントラピリドン化合物又はその塩を色素として含有し、さらに水及び水溶性有機溶剤を含有するインクジェット記録用のインク組成物。
  14. 色素として含有する請求項2又は10に記載のアントラピリドン化合物の総質量中における無機不純物の含有量が1質量%以下である請求項13に記載のインク組成物。
  15. アントラピリドン化合物の含有量が、インク組成物の総質量に対して0.1〜20質量%の範囲である請求項11に記載のインク組成物。
  16. 請求項2に記載のアントラピリドン化合物又はその塩を含有するインク組成物の小滴を記録信号に応じて吐出させて被記録材に付着させることにより記録を行うことを特徴とするインクジェット記録方法。
  17. 被記録材が情報伝達用シートである請求項16に記載のインクジェット記録方法。
  18. 情報伝達用シートが普通紙又は多孔性白色無機物を含有するインク受像層を有する情報伝達用シートである請求項17に記載のインクジェット記録方法。
  19. 請求項2又は10に記載のアントラピリドン化合物又はその塩を含み、更に水、又は、水及び水溶性有機溶剤の両者、を含むインク組成物により着色された着色体。
  20. 着色がインクジェットプリンタによりなされた請求項19に記載の着色体。
  21. 請求項2又は10に記載のアントラピリドン化合物又はその塩を含み、更に水及び水溶性有機溶剤を含むインク組成物を含有する容器が装填されたインクジェットプリンタ。
  22. がメチル基であり、Rがハロゲン原子である請求項1に記載のアントラピリドン化合物又はその塩。
  23. 又はRの一方がカルボキシ基であり、他方が水素原子又はハロゲン原子である請求項22に記載のアントラピリドン化合物又はその塩。
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