以下、本発明の一実施形態を図1〜図5に基づいて説明する。
図1には、一実施形態に係る露光装置10の概略的な構成が示されている。この露光装置10は、ステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置、すなわちいわゆるスキャニング・ステッパである。後述するように本実施形態では、投影光学系PLが設けられており、以下においては、この投影光学系PLの光軸方向をZ軸方向、これに直交する面内でレチクルとウエハとが相対走査される方向をY軸方向、これらZ軸及びY軸に直交する方向をX軸方向とし、X軸、Y軸、及びZ軸回りの回転(傾斜)方向をそれぞれθx、θy、及びθz方向として説明を行う。
露光装置10は、照明ユニットIOP、レチクルRを保持するレチクルステージRST、投影光学系PLを含む投影ユニットPU、ウエハWを保持してXY平面内で移動するウエハステージWST、及びこれらの制御系、並びに投影ユニットPUを保持するコラム34等を備えている。
照明ユニットIOPは、光源及び照明光学系を含み、その内部に配置された視野絞り(マスクキングブレード又はレチクルブラインドとも呼ばれる)で規定される矩形又は円弧状の照明領域に照明光ILを照射し、回路パターンが形成されたレチクルRを均一な照度で照明する。照明光ILとしては、ここでは、一例として、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)が用いられるものとする。
レチクルステージRSTは、後述するコラム34の天板を構成するレチクルステージベース32a上に配置され、レチクルステージ駆動系19Rを構成する例えば磁気浮上型2次元リニアアクチュエータが発生する磁気浮上力によってレチクルステージベース32a上に浮上支持されている。そして、このレチクルステージRST上には、レチクルRが、例えば真空吸着又は静電吸着により固定されている。
レチクルステージRSTは、レチクルステージ駆動系19RによってY軸方向(図1における紙面内左右方向)に所定のストロークで駆動されるとともに、X軸方向(図1における紙面直交方向)及びθz方向にも微小駆動され、更に、Z軸方向及びXY平面に対する傾斜方向(θx方向及びθy方向)にも微小駆動される。
レチクルステージRST(レチクルR)のXY平面内の位置(θz方向の回転も含む)は、レチクルステージRSTに固定された(又は形成された)反射面にレーザビームを照射するレチクルレーザ干渉計(以下、「レチクル干渉計」という)18Rによって、例えば0.25〜1nm程度の分解能で常時検出される。そして、レチクルRのZ軸方向の位置は、例えば米国特許第5,448,332号明細書に開示される多点焦点位置検出系からなるレチクルフォーカスセンサRF(図1では不図示、図5参照)によって計測される。
レチクル干渉計18R及びレチクルフォーカスセンサRFの計測値は、主制御装置11(図5参照)に供給される。主制御装置11は、供給された計測値に基づいて、レチクルステージ駆動系19Rを介してレチクルステージRSTを駆動する。
前記投影ユニットPUは、円筒状の鏡筒40と、該鏡筒40に保持された複数の光学素子から成る投影光学系PLとを有している。本実施形態では、鏡筒40が単一であるものとしたが、例えば、それぞれ1つ又は複数の光学素子を保持する複数の鏡筒を積み重ねて構成しても良い。この場合、その複数の鏡筒を密閉部材内に収納し、投影光学系PLの清浄度を高く維持することが好ましい。
前記投影光学系PLとしては、例えば、Z軸方向と平行な光軸に沿って配列される複数の光学素子(レンズエレメント)から成る屈折光学系が用いられている。この投影光学系PLは、例えば、両側テレセントリックで所定の投影倍率(例えば1/4あるいは1/5)を有する。このため、照明ユニットIOPからの照明光ILによって前述の照明領域が照明されると、投影光学系PLの第1面(物体面)とパターン面がほぼ一致して配置されるレチクルRを通過した照明光ILにより、投影光学系PLを介してその照明領域内のレチクルRの回路パターンの縮小像(回路パターンの一部の投影像)が、投影光学系PLの第2面(像面)側に配置され、表面にレジスト(感光剤)が塗布されたウエハW上の前記照明領域に共役な領域(露光領域)に形成される。
そして、レチクルステージRSTとウエハステージWSTとの同期駆動によって、照明領域(照明光IL)に対してレチクルRを走査方向(Y軸方向)に相対移動させるとともに、露光領域(照明光IL)に対してウエハWを走査方向(Y軸方向)に相対移動させることで、ウエハW上の1つのショット領域(区画領域)の走査露光が行われ、そのショット領域にレチクルRのパターンが転写される。すなわち、本実施形態では、照明ユニットIOP、レチクルR及び投影光学系PLによって、ウエハW上にパターンが生成され、照明光ILによるウエハW上の感応層(レジスト層)の露光によってウエハW上にそのパターンが形成される。
コラム34は、床面Fにその下端部が固定された複数(ここでは、例えば3本)の脚部32b(紙面奥側の脚部は不図示)と、該脚部32bにより床面F上方で支持されたレチクルステージベース32aとを含んでいる。レチクルステージベース32aの中央部には、上下方向(Z軸方向)に貫通する平面視(上方から見て)矩形の開口34aが、形成されている。
鏡筒40は、例えば投影光学系PLを収容する長手方向をZ軸方向とする円柱状の中空部材であり、その底壁の中央には、突出部が形成されている。この突出部の内部には、投影光学系PLの下端に位置する光学部材が保持されており、その突出部の中央には、照明光の通路となる開口部が形成されている。これに限らず、鏡筒40の底壁を中央部に円形開口が形成された板部材により構成し、その円形開口から投影光学系PLの下端に位置する光学部材を保持する保持部材を突出させても良い。
また、鏡筒40の高さ方向の中央より幾分下方の位置には、外周部にリング状のフランジFLGが一体に設けられている。
鏡筒40は、レチクルステージベース32aの下面側に一端が固定された複数、例えば3つの吊り下げ支持機構137(ただし紙面奥側の吊り下げ支持機構は不図示)によって、フランジFLGが支持されることで、レチクルステージベース32aの下方に吊り下げ支持されている。各吊り下げ支持機構137は、例えば柔構造の連結部材であるコイルばね136とワイヤ135とを含んでいる。コイルばね136は、投影光学系PLの光軸(Z軸)に垂直な方向に振り子のように振動し、投影光学系PLの光軸に垂直な方向の振動を除振する(すなわち、床の振動が投影光学系PLに伝達するのを防止する)。また、コイルばね136は、光軸に平行な方向に関しても、高い除振性能を有している。なお、投影ユニットPUを支持する鏡筒定盤が設けられる場合には、該鏡筒定盤を、例えば3つの吊り下げ支持機構137によって吊り下げ支持しても良い。
コラム34の3つの脚部32bそれぞれのZ軸方向に関する中央部近傍には凸部134aが形成されている。また、各凸部134aと投影光学系PLのフランジFLGとの間には、駆動機構440が設けられている。各駆動機構440は、投影光学系PLを鏡筒40の半径方向に駆動するボイスコイルモータと、投影光学系PLを光軸方向(Z軸方向)に駆動するボイスコイルモータとを含んでいる。3つの凸部134aそれぞれとフランジFLGとの間に設けられた3つの駆動機構440(図1における紙面奥側の駆動機構は不図示)により、投影光学系PLを6自由度方向に駆動できる。本実施形態では、主制御装置11(図5参照)が、例えば投影光学系PLのフランジFLGに設けられた不図示の加速度センサで検出される加速度情報に基づいて、投影光学系PLがコラム34及び床面Fに対して静止した状態となるように各駆動機構440のボイスコイルモータの駆動を制御する。
ウエハステージWSTは、投影光学系PLの下方に配置され、床面F上に水平に設置されたステージ定盤BS上に、その底面に設けられた複数の非接触軸受、例えばエアベアリングなどを介して浮上支持されている。ウエハステージWST上に、不図示のウエハホルダを介してウエハWが真空吸着(又は静電吸着)により保持される。
ウエハステージWSTの位置は、例えば米国特許出願公開第2007/0288121号明細書、米国特許出願公開第2008/0088843号明細書、米国特許出願公開第2006/0227309号明細書などに開示されるエンコーダシステムによって計測される。本実施形態において、このエンコーダシステムは4つのリニアエンコーダ70A〜70D(図5参照)を有し、図2(A)に示されるように、4つのエンコーダヘッドユニット62A〜62Dが計測マウント(保持部材)51の下面に配置されている(詳細後述)。一方、ウエハステージWSTの上面には、図2(B)に示されるように、ウエハWを取り囲むように、長手方向をY軸方向とする1対のYスケール44A,44Cと、1対のXスケール44B,44Dとが、それぞれ固定されている。スケール44A〜44Dそれぞれの表面には、それぞれの長手方向を周期方向とする反射型の回折格子が形成されている。
ステージ定盤BSの+Z側の面(上面)は平坦度が非常に高くなるように加工され、ウエハステージWSTの移動の際の基準面(ガイド面)となっている。ウエハステージWSTは、ウエハステージ駆動系19WによってY軸方向に所定ストロークで駆動されるとともに、X軸方向及びθz方向にも微小駆動され、更に、Z軸方向及びXY平面に対する傾斜方向(θx方向及びθy方向)にも微小駆動される。
投影光学系PLのフランジFLGには、計測マウント51が複数(ここでは例えば4本)の支持部材53(ただし、紙面奥側の支持部材は不図示)を介して吊り下げ支持されている。各支持部材53は、実際には、両端部にフレクシャー部を有するリンク部材を含んで構成されている。各フレクシャー部は、支持部材の長手方向(Z軸方向)に関する剛性が高く、その他の5自由度方向に関する剛性が低い。従って、4本の支持部材によって、計測マウント51とフランジFLGとの間に応力を殆ど生じさせることなく、計測マウント51が支持される。
計測マウント51は、図3の斜視図に示されるように、円形板状の本体部52と、本体部52から+X方向、+Y方向、−X方向、−Y方向にそれぞれ突設された平面視略正方形状の4つの延設部53A,53B,53C,53Dとを有している。
本体部52は、上面の外周縁のリング状のリム部を除く部分(内部の円形の部分)が、リム部に比べてその内部底面が一段低い凹部52aとなっている。そして、凹部52aの中央には、凹部52aの内部底面より幾分低い上面に平行な環状の面領域が形成されている。この環状の面領域の内周縁、外周縁は、前述のリム部と同心である。面領域の内周縁は、円形開口52cの内周面となっている。面領域と凹部52aの内部底面とは、テーパ状の斜面によって、連結されている。円形開口52c周囲の面領域とテーパ状の斜面とによって、収容部52bが形成されている。
図2(A)及び図3に示されるように、計測マウント51の凹部52aの内部底面上には、後述するリニアエンコーダ50x、50y(図5参照)のセンサヘッド部である、ピックアップ54x及びピックアップ54yが配置されている。
ピックアップ54xは、図2(A)に示されるように直線Px上に配置され、上方(+Z方向)に光を照射するxヘッド56xを備えている。同様にピックアップ54yは直線Py上に配置され、上方に光を照射するyヘッド56yを備えている。
投影ユニットPUの下面(−Z側の面)、例えば鏡筒40の下面には、図4にxスケール58xを取り上げて代表的に示されるように、ピックアップ54x及び54yそれぞれに対向してxスケール58x及びyスケール58yが、固定されている。
xスケール58xは、図2(A)の配置図に示されるように、投影光学系PLの光軸に直交しX軸と45度の角度をなす直線Px上に、直線Pxと平行な方向を長手方向として配置され、yスケール58yは、投影光学系PLの光軸に直交しY軸と45度の角度をなす直線Py上に、直線Pyと平行な方向を長手方向として配置されている。また、スケール58x,58yの下面(−Z側の面)には長手方向を周期方向とする反射型の回折格子が形成されている。
ピックアップ54xは、鏡筒40の下面に固定されたxスケール58xに光を照射して得られる反射光(回折格子からの回折光)を用いて、例えば振動などに起因する、直線Pxに平行な方向の鏡筒40(投影光学系PL)の変位を検出する光学式のxリニアエンコーダ50x(図5参照)を構成する。同様に、ピックアップ54yは、鏡筒40の下面に固定されたyスケール58yに光を照射して得られる反射光(回折格子からの回折光)を用いて、直線Pyに平行な方向の鏡筒40(投影光学系PL)の変位を検出する光学式のyリニアエンコーダ50y(図5参照)を構成する。
ここで、xリニアエンコーダ50x及びyリニアエンコーダ50yでは、例えば米国特許第7,238,931号明細書、及び米国特許出願公開第2007/0288121号明細書などに開示されるエンコーダヘッドと同様の構成の回折干渉型のヘッドが、ピックアップ54x,54yとして用いられている。ただし、本実施形態では、ピックアップ54x,54yは、光源及び受光系(光検出器を含む)が、計測マウント51の外部に配置され、光源からの光を偏光分離する偏光ビームスプリッタを含む光学系(の一部)のみが計測マウント51の凹部52aの内部底面上に、すなわちxスケール58x、yスケール58yに対向して配置されている。すなわち、ピックアップ54x,54yはその全てが計測マウント51に設けられていなくても良い。この場合、光源及び受光系と光学系との間では、不図示の光ファイバを介して、又は空中伝送にて、光及び又は信号の送受が行われる。以下、計測マウント51の凹部52aの内部底面上に配置された光学系をピックアップと呼ぶ。なお、ピックアップ54x,54yのうち、計測マウント51の外部に配置する部材は光源及び受光系に限られず、例えば光源のみ、あるいは光源と受光素子(センサ)のみなどでも良い。
また、計測マウント51の下面(−Z側の面)には、図2(A)に示されるように、投影光学系PLの下端部の周囲を四方から囲むように、4つのエンコーダヘッドユニット(以下、ヘッドユニットともいう)62A〜62Dが配置されている。
前記ヘッドユニット62A,62Cは、投影ユニットPUの+X側及び−X側にそれぞれX軸方向を長手方向とし、投影光学系PLの光軸に対して対称に配置されている。また、前記ヘッドユニット62B,62Dは、投影ユニットPUの+Y側及び−Y側にそれぞれY軸方向を長手方向とし、投影光学系PLの光軸に対して対称に配置されている
ヘッドユニット62A,62Cは、図2(A)に示されるように、X軸方向に沿って所定間隔で配置された複数、ここでは5個のYヘッド64を備えている。ヘッドユニット62Aは、ウエハステージWST上の前述のYスケール44Aを用いて、ウエハステージWSTのY軸方向の位置(Y位置)を計測する複数のYヘッド64を備えた多眼、ここでは5眼のYリニアエンコーダ70A(図5参照)を構成する。同様に、ヘッドユニット62Cは、前述のYスケール44Cを用いて、ウエハステージWSTのY位置を計測する5個のYヘッド64を備えた5眼のYリニアエンコーダ70C(図5参照)を構成する。
また、ヘッドユニット62B,62Dは、図2(A)に示されるように、Y軸方向に沿って所定間隔で配置された複数、ここでは5個のXヘッド66を備えている。ヘッドユニット62Bは、前述のXスケール44Bを用いて、ウエハステージWSTのX軸方向の位置(X位置)を計測する複数のXヘッド66を備えた多眼、ここでは5眼のXリニアエンコーダ70B(図5参照)を構成する。同様に、ヘッドユニット62Dは、前述のXスケール44Dを用いて、ウエハステージWSTのX位置を計測する5個のXヘッド66を備えた5眼のXリニアエンコーダ70D(図5参照)を構成する。
上述のように構成された計測マウント51は、図1に示されるように、フランジFLGに上端が固定(接続)され、下端が延設部53A〜53Dにそれぞれ固定(接続)された前述の4本の支持部材53(ただし、紙面奥側の支持部材は不図示)によって吊り下げ支持され、鏡筒40の下面から所定距離だけ下方(−Z方向)の位置に配置されている。この吊り下げ支持状態では、図4に示されるように、鏡筒40下端の突出部が計測マウント51に形成された収容部52bに収容された状態となる。また、図4に示されるように、鏡筒40の下面と凹部52aの内部底面とが、所定の隙間を介して対向し、ピックアップ54xのxヘッド56xと鏡筒40の下面に配置されたxスケール58xとが対向し、ピックアップ54yのyヘッド56yと鏡筒40の下面に配置されたyスケール58yとが対向した状態となる。
更に、計測マウント51には、アライメント系ALG、ウエハフォーカスセンサWFなど(図5参照)が装着されている。アライメント系ALGとしては、画像処理方式のセンサを用いることができ、この、画像処理方式のセンサは、例えば特開平04−065603号公報(対応米国特許第5,493,403号明細書)に開示されている。また、ウエハフォーカスセンサWFとしては、例えば特開平06−283403号公報(対応米国特許第5,448,332号明細書)等に開示されるウエハフォーカスセンサを用いることができる。
なお、本実施形態では、前述のスケール58x、58y、ヘッドユニット62A〜62Dなどが計測マウント51に設けられることから、計測マウント51をメトロロジーフレームなどとも呼ぶことができる。また、本実施形態では、スケール58x、58yだけでなく、ヘッドユニット62A〜62D、アライメント系ALG、ウエハフォーカスセンサWFをも計測マウント51に設けるものとしたが、これに限らず、例えばヘッドユニット62A〜62D、アライメント系ALG、ウエハフォーカスセンサWFの少なくとも1つを、計測マウント51とは別の部材に設けても良い。
図5には、本実施形態の露光装置10の制御系がブロック図にて示されている。この図5に示される制御系は、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リード・オンリ・メモリ)、RAM(ランダム・アクセス・メモリ)等から成るいわゆるマイクロコンピュータ(又はワークステーション)を含み、装置全体を統括して制御する主制御装置11を中心として構成されている。
上述のように構成された露光装置10では、露光動作の際にウエハWを保持したウエハステージWSTが計測マウント51の下方に位置すると、ウエハステージWSTの上面に配置されたYスケール44A,44Cとヘッドユニット62A,62Cとがそれぞれ対向し、Xスケール44B,44Dとヘッドユニット62B,62Dとがそれぞれ対向する。そして、Yスケール44A,44Cに対向するヘッドユニット62A,62C(Yリニアエンコーダ70A,70C)によって、ウエハステージWSTのY軸方向の位置が計測され、Xスケール44B,44Dに対向するヘッドユニット62B,62D(Xリニアエンコーダ70B,70D)によって、ウエハステージWSTのX軸方向の位置が計測される。また、同時に鏡筒40の下面に配置されたxスケール58xに対向するピックアップ54x(xリニアエンコーダ50x)と、yスケール58yに対向するピックアップ54y(yリニアエンコーダ50y)とで、鏡筒40の直線Px及び直線Pyに平行な方向の変位、すなわち鏡筒40のXY平面内での位置が計測される。そして、主制御措置11は、Yリニアエンコーダ70A,70C及びXリニアエンコーダ70B,70Dの計測結果と、xリニアエンコーダ50x及びyリニアエンコーダ50yの計測結果とをモニタして、ウエハステージWSTをXY平面内で、鏡筒40を基準に移動させる。
以上説明したように、本実施形態の露光装置10によると、露光動作中の鏡筒40のXY平面内における変位が、鏡筒40の下面に配置されたスケール58xに対向する計測マウント51に配置されたピックアップ54x(xリニアエンコーダ50x)、及び鏡筒40の下面に配置されたスケール58yに対向する計測マウント51に配置されたピックアップ54y(yリニアエンコーダ50y)によって計測される。従って、ウエハステージWSTの移動などに起因する振動などによって、鏡筒40のXY平面内の位置が微少変動しても、その変位を精度よく計測することが可能となり、結果的に鏡筒40に保持される投影光学系PLの光軸を基準とするウエハステージWSTの位置制御を精度よく行うことができる。
また、ピックアップ54x,54yから射出される光(以下、測長光という)は、xスケール58x又はyスケール58yで反射され、ピックアップ54x,54yと鏡筒40に固定されたxスケール58x又はyスケール58yとの間を往復することとなるが、測長光の経路は、例えば干渉計における測長光の経路と比べて無視できるほど小さくなる。従って、露光中に鏡筒40の周囲などで空気揺らぎなどが生じたとしても、xリニアエンコーダ50x及びyリニアエンコーダ50yの計測値の短期安定性を、干渉計を用いた場合に比べて格段に向上させることが可能となる。
また、本実施形態では、鏡筒40の変位の計測に用いられる測長光を射出するピックアップ54x,54yと、ウエハステージWSTの位置を計測するヘッドユニット62A〜62Dがともに計測マウント51に配置されている。このため、ピックアップ54x,54yとヘッドユニット62A〜62Dとの位置関係は一定に維持され、ウエハステージWSTに対する計測を行うXリニアエンコーダ70B,70D及びYリニアエンコーダ70A,70Cと、鏡筒40に対する計測を行うxリニアエンコーダ50x及びyリニアエンコーダ50yとの間で生じる計測誤差を低減することが可能となる。
なお、上記実施形態では、xリニアエンコーダ50x及びyリニアエンコーダ50yで、X軸及びY軸に対して45度の角度をなす直線Px及び直線Pyに平行な方向の鏡筒40の変位を計測しているが、これに限らず、エンコーダを用いて鏡筒40のX軸方向及びY軸方向の変位を計測しても良く、また、任意の異なる2軸方向の変位を計測することで鏡筒40のXY平面上における変位を計測しても良い。すなわち、スケール58x,58yはその長手方向(計測方向、回折格子の周期方向/配列方向)が直線Px、Pyに平行な方向に限られるものではなく任意で構わない。
また、上記実施形態では、熱源を避けるべく、光学系(の一部)のみが計測マウント51に配置されるものとしたが、熱の影響を排除できる、あるいは熱の影響を考慮しなくても良い場合には、光源及び/又は受光系(光検出器を含む)を、計測マウント51に配置しても良い。
また、上記実施形態では、xリニアエンコーダ50x及びyリニアエンコーダ50yそれぞれのピックアップ54x,54yは、計測マウント51に取り付けられているが、これに限らず、ピックアップ54x,54yを鏡筒40に取り付けて、計測マウント51に取り付けられたスケール58x,58yを用いて、計測マウント51に対する鏡筒40の変位を計測しても良い。
また、これまでは、ピックアップ54x,54y又はスケール58x,58yを、投影ユニットPU(鏡筒40)の下端面に取り付けるものとしているが、投影ユニットPU(鏡筒40)の下端面以外の部位に、ピックアップ54x,54y又はスケール58x,58yを、固定しても良い。
また、上記実施形態では、鏡筒40の変位計測に、光学式のxリニアエンコーダ50x及びyリニアエンコーダ50yを用いたが、これに限らず、例えば電磁誘導方式のエンコーダなどを用いても良い。
また、上記実施形態では、スケールに光を照射することによって得られる反射光を受光するピックアップ54x,54yを備えたxリニアエンコーダ50x及びyリニアエンコーダ50yを用いて鏡筒40の変位を計測することとしたが、これに限らず、鏡筒40の変位を計測するエンコーダとしては、例えばスケール58x,58yを透過した透過光を用いて変位を計測するエンコーダなども採用することができる。
また、エンコーダにより、X軸及びY軸などの任意の異なる2軸方向に限られず、例えば他の方向(θz方向など)についても鏡筒40の変位を計測可能として良い。
なお、上記実施形態では、投影ユニットPU(投影光学系PL)が、3つの吊り下げ支持機構137によって、フランジFLGを介して、レチクルステージベース32aの下方に吊り下げ支持されるものとしたが、これに限らず、床面上に防振装置を介して水平に支持される鏡筒定盤によって投影ユニットPU(投影光学系PL)を支持しても良い。この場合、計測マウント51はその鏡筒定盤で吊り下げ支持しても良い。要は、投影ユニットPU(投影光学系PL)と基準位置とのXY平面内における位置関係が、リニアエンコーダによって計測可能であれば良い。また、前述のヘッドユニット62A〜62D、アライメント系ALG、及びウエハフォーカスセンサWFの少なくとも1つを、計測マウント51とは独立に鏡筒定盤に設けても良い。
また、本実施形態では、ウエハステージWSTの位置計測を、Xリニアエンコーダ70B,70D、及びYリニアエンコーダ70A,70Cを含むエンコーダシステムを用いて行ったが、ウエハステージWSTの位置計測の方法はこれに限られるものではない。例えば、ウエハステージWSTの位置計測を、干渉計システム、又は干渉計システム及びエンコーダシステムにより行っても良い。この干渉計システムでは、投影光学系PLを基準としてウエハステージの位置計測を行う必要がないので、干渉計システムの計測ビームの反射面を投影光学系PLに設けなくても良い。なお、干渉計システム及びエンコーダシステムの両方を備える露光装置は、例えば米国特許出願公開第2007/0288121号明細書、米国特許出願公開第2008/0088843号明細書などに開示されている。
また、上記実施形態では、ウエハテーブル(ウエハステージ)上に格子部(Yスケール、Xスケール)を設け、これに対向してXヘッド、Yヘッドをウエハステージの外部に配置する構成のエンコーダシステムを採用した場合について例示したが、これに限らず、例えば米国特許出願公開第2006/0227309号明細書などに開示されているように、ウエハステージにエンコーダヘッドを設け、これに対向してウエハステージの外部に格子部(例えば2次元格子又は2次元に配置された1次元の格子部)を配置する構成のエンコーダシステムを採用しても良い。この場合において、ウエハテーブルのZ軸方向に関する位置を計測するZヘッドもウエハステージに設け、その格子部の面を、Zヘッドの計測ビームが照射される反射面としても良い。この場合において、エンコーダヘッドとZヘッドとの機能を備えた単一のヘッドを用いても良い。また、その格子部(スケール)は、一例として、前述の計測マウントあるいは鏡筒定盤などで支持しても良い。
また、上記実施形態では、スキャニング・ステッパに本発明が適用された場合について説明したが、これに限らず、ステッパなどの静止型露光装置に本発明を適用しても良い。また、ショット領域とショット領域とを合成するステップ・アンド・スティッチ方式の投影露光装置にも本発明を適用することができる。
また、上記実施形態の露光装置における投影光学系の倍率は縮小系のみならず等倍および拡大系のいずれでも良いし、投影光学系PLは屈折系のみならず、反射系及び反射屈折系のいずれでも良いし、その投影像は倒立像及び正立像のいずれでも良い。
また、照明光ILは、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)に限らず、KrFエキシマレーザ光(波長248nm)などの紫外光や、F2レーザ光(波長157nm)などの真空紫外光であっても良い。そのほか、超高圧水銀ランプから発せられるg線(波長436nm)、i線(波長365nm)などの紫外域の輝線を照明光ILとして用いることもできる。この他、例えば米国特許7,023,610号明細書に開示されているように、真空紫外光としてDFB半導体レーザ又はファイバーレーザから発振される赤外域、又は可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(又はエルビウムとイッテルビウムの両方)がドープされたファイバーアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いても良い。
また、上記実施形態では、露光装置の照明光ILとしては波長100nm以上の光に限らず、波長100nm未満の光を用いても良いことはいうまでもない。例えば、近年、70nm以下のパターンを露光するために、SORやプラズマレーザを光源として、軟X線領域(例えば5〜15nmの波長域)のEUV(Extreme Ultraviolet)光を発生させるとともに、その露光波長(例えば13.5nm)の下で設計されたオール反射縮小光学系、及び反射型マスクを用いたEUV露光装置の開発が行われている。この装置においては、円弧照明を用いてマスクとウエハを同期走査してスキャン露光する構成が考えられるので、かかる装置にも本発明を適用することができる。この他、電子線又はイオンビームなどの荷電粒子線を用いる露光装置にも本発明を適用できる。
さらに、例えば国際公開WO99/49504号パンフレットなどに開示される、投影光学系PLとウエハとの間に液体(例えば純水など)が満たされる液浸露光装置などにも本発明を適用することができる。
また、上記実施形態においては、光透過性の基板上に所定の遮光パターン(又は位相パターン・減光パターン)を形成した光透過型マスク(レチクル)を用いたが、このレチクルに代えて、例えば米国特許第6,778,257号公報に開示されているように、露光すべきパターンの電子データに基づいて、透過パターン又は反射パターン、あるいは発光パターンを形成する電子マスク(可変成形マスク)を用いても良い。
また、例えば国際公開第2001/035168号パンフレットに開示されているように、干渉縞をウエハW上に形成することによって、ウエハW上にライン・アンド・スペースパターンを形成する露光装置(リソグラフィシステム)にも本発明を適用することができる。
さらに、例えば米国特許第6,611,316号明細書に開示されているように、2つのレチクルパターンを投影光学系を介してウエハ上で合成し、1回のスキャン露光によってウエハ上の1つのショット領域をほぼ同時に二重露光する露光装置にも本発明を適用することができる。
なお、上記実施形態でパターンを形成すべき物体(エネルギビームが照射される露光対象の物体)はウエハに限られるものではなく、ガラスプレート、セラミック基板、フィルム部材、あるいはマスクブランクスなど、他の物体でも良い。
露光装置の用途としては半導体製造用の露光装置に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに液晶表示素子パターンを転写する液晶用の露光装置や、有機EL、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD等)、マイクロマシン及びDNAチップなどを製造するための露光装置にも広く適用できる。また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるレチクル又はマスクを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも本発明を適用できる。
なお、これまでの説明で引用した露光装置などに関する全ての公報、国際公開パンフレット、米国特許出願公開明細書及び米国特許明細書の開示を援用して本明細書の記載の一部とする。
なお、半導体デバイスは、デバイスの機能・性能設計を行うステップ、この設計ステップに基づいたレチクルを製作するステップ、シリコン材料からウエハを製作するステップ、前述した実施形態の露光装置(パターン形成装置)によりマスク(レチクル)のパターンをウエハに転写するリソグラフィステップ、露光されたウエハを現像する現像ステップ、レジストが残存している部分以外の部分の露出部材をエッチングにより取り去るエッチングステップ、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除くレジスト除去ステップ、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程を含む)、検査ステップ等を経て製造される。この場合、リソグラフィステップで、上記実施形態の露光装置が用いられるので、高集積度のデバイスを歩留り良く製造することができる。