JPWO2009069703A1 - 内燃機関のピストンリングとシリンダライナとの組合せ構造 - Google Patents
内燃機関のピストンリングとシリンダライナとの組合せ構造 Download PDFInfo
- Publication number
- JPWO2009069703A1 JPWO2009069703A1 JP2009543848A JP2009543848A JPWO2009069703A1 JP WO2009069703 A1 JPWO2009069703 A1 JP WO2009069703A1 JP 2009543848 A JP2009543848 A JP 2009543848A JP 2009543848 A JP2009543848 A JP 2009543848A JP WO2009069703 A1 JPWO2009069703 A1 JP WO2009069703A1
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- cylinder liner
- sample
- mass
- piston ring
- ring
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Classifications
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C23—COATING METALLIC MATERIAL; COATING MATERIAL WITH METALLIC MATERIAL; CHEMICAL SURFACE TREATMENT; DIFFUSION TREATMENT OF METALLIC MATERIAL; COATING BY VACUUM EVAPORATION, BY SPUTTERING, BY ION IMPLANTATION OR BY CHEMICAL VAPOUR DEPOSITION, IN GENERAL; INHIBITING CORROSION OF METALLIC MATERIAL OR INCRUSTATION IN GENERAL
- C23C—COATING METALLIC MATERIAL; COATING MATERIAL WITH METALLIC MATERIAL; SURFACE TREATMENT OF METALLIC MATERIAL BY DIFFUSION INTO THE SURFACE, BY CHEMICAL CONVERSION OR SUBSTITUTION; COATING BY VACUUM EVAPORATION, BY SPUTTERING, BY ION IMPLANTATION OR BY CHEMICAL VAPOUR DEPOSITION, IN GENERAL
- C23C30/00—Coating with metallic material characterised only by the composition of the metallic material, i.e. not characterised by the coating process
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C22—METALLURGY; FERROUS OR NON-FERROUS ALLOYS; TREATMENT OF ALLOYS OR NON-FERROUS METALS
- C22C—ALLOYS
- C22C21/00—Alloys based on aluminium
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C22—METALLURGY; FERROUS OR NON-FERROUS ALLOYS; TREATMENT OF ALLOYS OR NON-FERROUS METALS
- C22C—ALLOYS
- C22C21/00—Alloys based on aluminium
- C22C21/02—Alloys based on aluminium with silicon as the next major constituent
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C22—METALLURGY; FERROUS OR NON-FERROUS ALLOYS; TREATMENT OF ALLOYS OR NON-FERROUS METALS
- C22C—ALLOYS
- C22C38/00—Ferrous alloys, e.g. steel alloys
- C22C38/02—Ferrous alloys, e.g. steel alloys containing silicon
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C22—METALLURGY; FERROUS OR NON-FERROUS ALLOYS; TREATMENT OF ALLOYS OR NON-FERROUS METALS
- C22C—ALLOYS
- C22C38/00—Ferrous alloys, e.g. steel alloys
- C22C38/18—Ferrous alloys, e.g. steel alloys containing chromium
- C22C38/40—Ferrous alloys, e.g. steel alloys containing chromium with nickel
- C22C38/58—Ferrous alloys, e.g. steel alloys containing chromium with nickel with more than 1.5% by weight of manganese
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C23—COATING METALLIC MATERIAL; COATING MATERIAL WITH METALLIC MATERIAL; CHEMICAL SURFACE TREATMENT; DIFFUSION TREATMENT OF METALLIC MATERIAL; COATING BY VACUUM EVAPORATION, BY SPUTTERING, BY ION IMPLANTATION OR BY CHEMICAL VAPOUR DEPOSITION, IN GENERAL; INHIBITING CORROSION OF METALLIC MATERIAL OR INCRUSTATION IN GENERAL
- C23C—COATING METALLIC MATERIAL; COATING MATERIAL WITH METALLIC MATERIAL; SURFACE TREATMENT OF METALLIC MATERIAL BY DIFFUSION INTO THE SURFACE, BY CHEMICAL CONVERSION OR SUBSTITUTION; COATING BY VACUUM EVAPORATION, BY SPUTTERING, BY ION IMPLANTATION OR BY CHEMICAL VAPOUR DEPOSITION, IN GENERAL
- C23C8/00—Solid state diffusion of only non-metal elements into metallic material surfaces; Chemical surface treatment of metallic material by reaction of the surface with a reactive gas, leaving reaction products of surface material in the coating, e.g. conversion coatings, passivation of metals
- C23C8/06—Solid state diffusion of only non-metal elements into metallic material surfaces; Chemical surface treatment of metallic material by reaction of the surface with a reactive gas, leaving reaction products of surface material in the coating, e.g. conversion coatings, passivation of metals using gases
- C23C8/08—Solid state diffusion of only non-metal elements into metallic material surfaces; Chemical surface treatment of metallic material by reaction of the surface with a reactive gas, leaving reaction products of surface material in the coating, e.g. conversion coatings, passivation of metals using gases only one element being applied
- C23C8/24—Nitriding
- C23C8/26—Nitriding of ferrous surfaces
-
- F—MECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
- F02—COMBUSTION ENGINES; HOT-GAS OR COMBUSTION-PRODUCT ENGINE PLANTS
- F02F—CYLINDERS, PISTONS OR CASINGS, FOR COMBUSTION ENGINES; ARRANGEMENTS OF SEALINGS IN COMBUSTION ENGINES
- F02F1/00—Cylinders; Cylinder heads
- F02F1/18—Other cylinders
- F02F1/20—Other cylinders characterised by constructional features providing for lubrication
-
- F—MECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
- F16—ENGINEERING ELEMENTS AND UNITS; GENERAL MEASURES FOR PRODUCING AND MAINTAINING EFFECTIVE FUNCTIONING OF MACHINES OR INSTALLATIONS; THERMAL INSULATION IN GENERAL
- F16J—PISTONS; CYLINDERS; SEALINGS
- F16J10/00—Engine or like cylinders; Features of hollow, e.g. cylindrical, bodies in general
- F16J10/02—Cylinders designed to receive moving pistons or plungers
- F16J10/04—Running faces; Liners
-
- F—MECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
- F16—ENGINEERING ELEMENTS AND UNITS; GENERAL MEASURES FOR PRODUCING AND MAINTAINING EFFECTIVE FUNCTIONING OF MACHINES OR INSTALLATIONS; THERMAL INSULATION IN GENERAL
- F16J—PISTONS; CYLINDERS; SEALINGS
- F16J9/00—Piston-rings, e.g. non-metallic piston-rings, seats therefor; Ring sealings of similar construction
- F16J9/26—Piston-rings, e.g. non-metallic piston-rings, seats therefor; Ring sealings of similar construction characterised by the use of particular materials
-
- F—MECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
- F02—COMBUSTION ENGINES; HOT-GAS OR COMBUSTION-PRODUCT ENGINE PLANTS
- F02F—CYLINDERS, PISTONS OR CASINGS, FOR COMBUSTION ENGINES; ARRANGEMENTS OF SEALINGS IN COMBUSTION ENGINES
- F02F3/00—Pistons
Abstract
アルミニウム合金製シリンダライナの線膨張に追随する線膨張特性を備えるピストンリングを使用する場合に、これら相互の摺動挙動による損傷を確実に減少させることの出来るシリンダ構造の提供を目的とする。この目的を達成するため、内燃機関のシリンダのシリンダライナに、その内周面が、十点平均粗さ(Rz)が0.5μm〜1.0μm、有効負荷粗さ(Rk)が0.2μm〜0.4μm、初期摩耗高さ(Rpk)が0.05μm〜0.1μm、油溜まり深さ(Rvk)が0.08μm〜0.2μmの各条件を備え、当該ピストンリングのシリンダライナの内周壁との摺動面が、十点平均粗さ(Rz)が1.6μm以下、初期摩耗高さ(Rpk)が0.3μm以下の条件を備え、当該シリンダライナの内周面に対し、ピストンリングの面圧が0.03MPa〜0.2MPaとして用いることを特徴とする内燃機関のピストンリングとシリンダライナとの組合せ構造等を採用する。
Description
本件発明は、内燃機関のピストンリングとシリンダライナとの組合せ構造に関する。特に、ピストンを収容するアルミニウム合金製シリンダの内周面を構成するシリンダライナと、これに対して摺動するピストン側に配置したピストンリングとの最適な組み合わせに関する。
近年、自動車は、燃費の向上を目指して、車体重量の減量が図られている。従って、自動車の構成部品に対して、性能、品質、価格を維持又は向上させながら、部品重量を軽量化することが望まれている。例えば、内燃機関のピストンを収容するシリンダは、シリンダとして要求される機械的特性及び価格的観点から、鋳鉄、鉄鋼等という鉄系素材が用いられてきた。ところが、鉄系材料で製造されたシリンダは、量産性及び価格面で優れても、重量が重いという欠点を備えるため、上述の部品重量の軽量化を達成できる材質ではあり得ない。
このシリンダの軽量化を図るために、シリンダの構成成分としてアルミニウム合金用いることが検討されている。シリンダをアルミニウム合金で製造すれば、鉄系素材で製造したシリンダと比べ、シリンダの軽量化が容易に達成できる。ところが、アルミニウム合金は、その組織内で、合金成分が析出して大きな粒状物となり、この粒状物が分散した状態で存在するという特徴を備えている。これに対し、鉄系素材の場合には、一定の金属間化合物、炭素等の粒状物が組織内に存在するとしても、アルミニウム合金の組織内にある合金元素の粒状物と比べれば微細である。
従って、鉄系素材で製造したシリンダの場合には、シリンダライナのピストンリングとの摺動面として機能する内周面に、組織内の粒状物が、シリンダライナ及びピストンリングの摩耗を助長するような状態で存在することはなく、内燃機関としての長寿命化、耐久性を左右する要因とはならない。しかし、アルミニウム合金で製造したシリンダの場合、シリンダライナのピストンリングとの摺動面として機能する内周面に、この組織内の硬い粒状物が、表面から突出した状態で存在すると、シリンダライナ及びピストンリングの摩耗、摩擦損傷が顕著となり、内燃機関としての長寿命化、耐久性を確保することが困難になる。
このような問題を解決するため、特許文献1には、溶湯から形成される微粒の硬い粒子及び母組織中における硬い粒子の高い割合と、母組織の硬い粒子が増加するため、摺動面の耐摩耗性、荷重負担割合が向上するだけでなく、僅かな潤滑油消費による安価なピストンリング及びピストン被覆を利用することを目的とする技術に関する。具体的には、シリンダライナのピストンリングとの摺動面として機能する内周面に、硬い粒子を台地状面を備えるように形成し、シリンダライナの形成に用いたアルミニウム合金の母組成の表面から露出させる技術に関し、硬い粒子としての微細な珪素―次結晶及び金属間相が形成される過共晶アルミニウム―珪素合金の溶湯を噴霧圧縮により素材を成形し、押出成形によりシリンダライナに近い形に成形された後、摺動面を精密機械加工、化学処理し、アルミニウム合金の母組成の表面から露出した硬い粒子に台地状面を形成している。
一方、ピストンリングは、シリンダの中に収容する内燃機関のピストン側に配置されるものであり、内燃機関の動作時には、ピストンを収容するアルミニウム合金製シリンダの内周面を構成するシリンダライナに対して摺動するものである。一般的に、ピストンリングは、コンプレッションリング(ファーストリング及びセカンドリング)及びオイルリングの各リングを1セットとしてピストンヘッドの外周に配置して用いている。そして、ピストンリングの材質に起因して、エンジン出力の低下や潤滑油消費量の増加が起きないよう、耐摩耗性、耐スカッフ性等を考慮した材質によって構成される。例えば、ファーストリングには、シリンダライナとの摺動面を窒化処理したマルテンサイト系ステンレス鋼製リング、シリンダライナとの摺動面にクロムメッキを施したSWOSC−V鋼製のリング等が広く用いられている。また、セカンドリングには、高級鋳鉄製リング又は合金鋳鉄製リングが採用され、特に高級鋳鉄製リングのシリンダライナとの摺動面にクロムメッキを施したものが多用される。更に、オイルリングとしては、2ピースタイプ又は3ピースタイプと称される製品が使用される。
ところが、アルミニウム合金製のシリンダと従来のピストンリングとを組み合わせて用いると、ブローバイガスの発生量が多くなる傾向があった。このブローバイガスの発生原因は、アルミニウム合金製のシリンダ及びシリンダライナが、鉄系素材で構成したシリンダ及びシリンダライナと比べて、大きな線膨張係数を備えるためである。即ち、線膨張係数の異なるファーストリングが、アルミニウム合金製のシリンダの膨張に伴い、ファーストリングがシリンダライナに追従し、合口隙間が拡大することにより、シリンダ内において、ファーストリングが燃焼室内のガスシールを十分に行えなくなり、燃焼ガスの吹き抜けを起こし、エンジンのレスポンスが低下し、エンジン出力を低下させてしまうからである。
そこで、特許文献2には、アルミニウム合金製シリンダーに用いるピストンリングにおいて、アルミニウム合金製シリンダーの線膨張に追従可能なピストンリングが開示されている。この特許文献2には、アルミニウム合金製のシリンダーを相手材として摺動するピストンリングとして、15×10−6/℃以上の熱膨張係数を有するオーステナイト系ステンレス鋼を用いることによって上記課題を解決している。特に、ピストンリングが、3.5重量%以上17重量%以下のNiと15重量%以上20重量%以下のCrを含有するオーステナイト系ステンレス鋼からなることが好ましい。また、ピストンリングには、窒化層を侵入元素型の窒化処理によって形成したり、クロムメッキ、複合クロムメッキ、複合メッキ、溶射、物理蒸着(PVD)、化学蒸着(CVD)の何れかの表面処理を施すことが好ましいことが開示されている。
しかしながら、上記特許文献1は、安価なピストンリング及びピストン被覆を利用することを目的とする技術であり、その明細書の全体から把握できることは、シリンダライナの摺動面を精密機械加工し、アルカリ溶液を用いてエッチング研磨する化学処理を行い、シリンダライナの表面に存在するアルミニウム合金の母組成の表面から露出した硬い粒子に台地状面を形成するものであり、あらゆるピストンリングを対象として適用可能な技術として記載されているが、次のような問題がある。
特許文献1における、前記化学処理の制御は困難で、安定して一定の表面状態を備えるシリンダライナ表面を形成することが困難である。シリンダライナを構成するアルミニウム合金は、粒状のケイ素一次結晶、金属間化合物としてのAl2O3、Mg2Si等の異なる成分が含まれており、これらはエッチング研磨に用いるアルカリ溶液に対して、溶解速度がそれぞれに異なる。従って、シリンダライナ表面には、アルミニウムマトリックスから突出した不規則な凹凸が必然的に形成されることになるからである。この結果、シリンダライナ表面に対するピストンリングの摺動面の密着性が安定化せず、製造するエンジンの品質のバラツキが大きくなる傾向がある。
以上のことから理解できるように、特許文献1に開示のシリンダ(シリンダライナ)と特許文献2に開示のアルミニウム合金製シリンダーの線膨張に追従可能なピストンリングとを組み合わせて用いたとしても、当業者間での要求を満足させ得ないものになる。また、特許文献2に開示の発明の場合、アルミニウム合金製シリンダーの表面粗さや組成よっては、ピストンを収容するアルミニウム合金製シリンダの内周面を構成するシリンダライナと、これに対して摺動するピストン側に配置したピストンリングとの組合せにおいて、十分な耐久性能を確保することが困難となる場合がある。
従って、本件発明では、アルミニウム合金で製造したシリンダを用いる場合において、シリンダライナの線膨張に追随する線膨張特性を備えるピストンリングを使用して、これら相互の摩耗、摩擦損傷等の摺動挙動による損傷を確実に減少させることのできる内燃機関のピストンリングとシリンダライナとの組合せ構造の提供を目的とする。
そこで、本発明者等は、以下に示す内燃機関のピストンリングとシリンダライナとの組合せ構造を採用することで、上記課題を達成した。
本件発明に係る内燃機関のピストンリングとシリンダライナとの組合せ構造は、内燃機関のピストン側に配置したピストンリングが、ピストンを収容するアルミニウム合金製シリンダの内周面を構成するシリンダライナに対し、所定の面圧となるように配置して摺動する内燃機関のピストンリングとシリンダライナとの組合せ構造であって、当該シリンダライナは、その内周面が、以下に表面粗さ特性1として示した(1)〜(4)の各条件を備えるものであり、当該ピストンリングのシリンダライナの内周面との摺動面は、以下の表面粗さ特性2として示す(a)及び(b)の条件を備えるものであり、当該シリンダライナの内周面に対し、ピストン側に配置した当該ピストンリングの面圧が0.03MPa〜0.2MPaとして用いることを特徴とするものである。
[表面粗さ特性1]
(1)JIS B 0601(1994)に定める十点平均粗さ(Rz)が0.5μm〜1.0μm。
(2)DIN4776に定める有効負荷粗さ(Rk)が0.2μm〜0.4μm。
(3)DIN4776に定める初期摩耗高さ(Rpk)が0.05μm〜0.1μm。
(4)DIN4776に定める油溜まり深さ(Rvk)が0.08μm〜0.2μm。
(1)JIS B 0601(1994)に定める十点平均粗さ(Rz)が0.5μm〜1.0μm。
(2)DIN4776に定める有効負荷粗さ(Rk)が0.2μm〜0.4μm。
(3)DIN4776に定める初期摩耗高さ(Rpk)が0.05μm〜0.1μm。
(4)DIN4776に定める油溜まり深さ(Rvk)が0.08μm〜0.2μm。
[表面粗さ特性2]
(a)JIS B 0601(1994)に定める十点平均粗さ(Rz)が1.6μm以下。
(b)DIN4776に定める初期摩耗高さ(Rpk)が0.3μm以下。
(a)JIS B 0601(1994)に定める十点平均粗さ(Rz)が1.6μm以下。
(b)DIN4776に定める初期摩耗高さ(Rpk)が0.3μm以下。
本件発明に係る内燃機関のピストンリングとシリンダライナとの組合せ構造において、前記シリンダライナは、以下に記載のシリンダライナ用合金組成1を備えることが好ましい。
[シリンダライナ用合金組成1]
ケイ素 :20.0質量%〜28.0質量%
マグネシウム:0.4質量%〜2.0質量%
銅 :2.0質量%〜4.5質量%
鉄 :0.60質量%以下
ニッケル :0.01質量%以下
残部 :アルミニウム及び不可避的不純物
ケイ素 :20.0質量%〜28.0質量%
マグネシウム:0.4質量%〜2.0質量%
銅 :2.0質量%〜4.5質量%
鉄 :0.60質量%以下
ニッケル :0.01質量%以下
残部 :アルミニウム及び不可避的不純物
また、本件発明に係る内燃機関のピストンリングとシリンダライナとの組合せ構造において、前記シリンダライナは、以下に記載のシリンダライナ用合金組成2を備えるものも好ましい。
[シリンダライナ用合金組成2]
ケイ素 :20.0質量%〜28.0質量%
マグネシウム:0.8質量%〜2.0質量%
銅 :3.0質量%〜4.5質量%
鉄 :1.0質量%〜1.4質量%
ニッケル :1.0質量%〜5.0質量%
残部 :アルミニウム及び不可避的不純物
ケイ素 :20.0質量%〜28.0質量%
マグネシウム:0.8質量%〜2.0質量%
銅 :3.0質量%〜4.5質量%
鉄 :1.0質量%〜1.4質量%
ニッケル :1.0質量%〜5.0質量%
残部 :アルミニウム及び不可避的不純物
次に、本件発明に係る内燃機関のピストンリングとシリンダライナとの組合せ構造において、前記ピストンリングは、以下に記載のピストンリング用合金組成のオーステナイト系ステンレス鋼を用いることが好ましい。
[ピストンリング用合金組成]
ニッケル :3.5質量%〜15.0質量%
クロム :13.0質量%〜20.0質量%
炭素 :0.15質量%以下
ケイ素 :1.0質量%以下
マンガン :7.5質量%以下
リン :0.06質量%以下
硫黄 :0.03質量%以下
残部 :鉄及び不可避的不純物
ニッケル :3.5質量%〜15.0質量%
クロム :13.0質量%〜20.0質量%
炭素 :0.15質量%以下
ケイ素 :1.0質量%以下
マンガン :7.5質量%以下
リン :0.06質量%以下
硫黄 :0.03質量%以下
残部 :鉄及び不可避的不純物
また、本件発明に係る内燃機関のピストンリングとシリンダライナとの組合せ構造において、前記ピストンリングは、前記ピストンリング用合金組成に更にモリブデンを1質量%〜4質量%含むことが好ましい。
そして、本件発明に係る内燃機関のピストンリングとシリンダライナとの組合せ構造において、前記ピストンリングのシリンダライナ内周面との摺動面は、その表面に厚さ30μm〜150μmの窒化処理層を備え、且つ、その表面のビッカース硬さ(HV)が900HV0.1〜1200HV0.1であることが好ましい。
また、本件発明に係る内燃機関のピストンリングとシリンダライナとの組合せ構造において、前記ピストンリングのシリンダライナ内周面との摺動面は、その表面にダイアモンド ライク カーボン層を備えることが好ましい。
更に、本件発明に係る内燃機関のピストンリングとシリンダライナとの組合せ構造において、前記ピストンリングのピストンリング溝と接するピストンリング上面及びピストンリング下面は、耐熱樹脂又は、耐熱樹脂に無機フィラーを含有させたフィラー含有耐熱樹脂のいずれかを用いて形成した樹脂コート層を備えることが好ましい。
そして、前記耐熱樹脂は、耐熱温度が150℃以上のポリベンゾイミダゾール樹脂又はポリイミドアミド樹脂のいずれかを用いることが好ましい。
更に、本件発明に係る内燃機関のピストンリングとシリンダライナとの組合せ構造において、前記ピストンリング上面及びピストンリング下面は、化成処理により粗化した表面を備え、この粗化表面上に前記樹脂コート層を設けることも好ましい。
以上に述べてきた内燃機関のピストンリングとシリンダライナとの組合せ構造を用いることで高品質の内燃機関の提供が可能になる。
本件発明に係る内燃機関のピストンリングとシリンダライナとの組合せ構造は、アルミニウム合金製シリンダの内周面を構成するシリンダライナの表面粗さ特性と、ピストンリングのシリンダライナの内周面との摺動面の表面粗さを一定の範囲とすることにより、シリンダライナとピストンリングの当該摺動面との双方の摩耗を最低限に抑制し、摺動挙動に伴う相互の摩擦損傷を効果的に軽減する。その結果、内燃機関の長寿命化、耐久性を飛躍的に向上させる事ができる。
以下、本件発明に係る内燃機関のピストンリングとシリンダライナとの組合せ構造の形態に関して説明する。以下の説明では、シリンダライナ側の説明と、ピストンリング側の説明との混同無きよう、可能な限り項目に分けて説明する。
本件発明に係る内燃機関のピストンリングとシリンダライナとの組合せ構造は、内燃機関のピストン側に配置したピストンリングが、ピストンを収容するアルミニウム合金製シリンダの内周面を構成するシリンダライナに対し、所定の面圧となるように配置して摺動するものである。
本件発明で用いるシリンダライナの形態: 本件発明に係る内燃機関のピストンリングとシリンダライナとの組合せ構造で用いるシリンダは、その内周に配するシリンダライナが、その内周面として、以下の表面粗さ特性1として示す(1)〜(4)の各条件を備えるものである。
この表面粗さ特性1の(1)は、「JIS B 0601(1994)に定める十点平均粗さ(Rz)が0.5μm〜1.0μm。」というものである。この十点平均粗さ(Rz)が0.5μm未満の場合には、耐スカッフ性が劣化するため、内燃機関としての性能を安定して引き出すことが出来なくなる。一方、十点平均粗さ(Rz)が1.0μmを超えると、表面粗さとして大きくなるため、この表面と擦れ合うピストンリングの摺動面に対して摩擦損傷を与える可能性が急激に高くなる。
この表面粗さ特性1の(2)は、「DIN4776に定める有効負荷粗さ(Rk)が0.2μm〜0.4μm。」である。この有効負荷粗さ(Rk)が0.2μm未満の場合には、摺動抵抗は低くても、シリンダライナの内周面とピストンリングの摺動面との間で、摺動特性が悪くなる。一方、この有効負荷粗さ(Rk)が0.4μmを超える場合には、摺動抵抗が大きくなりすぎて、内燃機関としての燃費が低くなるため好ましくない。
この表面粗さ特性1の(3)は、「DIN4776に定める初期摩耗高さ(Rpk)が0.05μm〜0.1μm。」である。この範囲において、シリンダライナの内周面とピストンリングの摺動面の双方の摩擦損傷を軽減化でき、摺動挙動の安定化が図れ、且つ、良好な耐スカッフ性が得られる。この初期摩耗高さ(Rpk)が0.05μm未満の場合には、シリンダライナの内周面とピストンリングの摺動面との間で、内燃機関の始動時に、シリンダライナの内周面がピストンリングの摺動面の凹凸になじんで流体潤滑可能な状況を素早く形成することが困難で、初期なじみ性が劣るようになるため好ましくない。一方、この初期摩耗高さ(Rpk)が0.1μmを超えた場合には、粗いが故に初期なじみ性も低下すると同時に、シリンダライナの内周面の凹凸と擦れ合うピストンリングの摺動面に対して摩擦損傷を与える可能性が急激に高くなる。
この表面粗さ特性1の(4)は、「DIN4776に定める油溜まり深さ(Rvk)が0.08μm〜0.2μm。」である。油溜まり深さ(Rvk)が0.08μm未満の場合には、シリンダライナの内周面とピストンリングの摺動面との凹凸の間に適当量のオイルを保持できない、摺動挙動を安定化させるための流体潤滑可能な状況を形成することが困難になり、耐スカッフ性が低下する。一方、油溜まり深さ(Rvk)が0.2μmを超えると、シリンダライナの内周面とピストンリングの摺動面との凹凸の間へのオイルの浸透流入量が増加するため、十分な流体潤滑状態を形成することが出来るが、エンジンオイル消費量が多くなり好ましくない。
以上に述べてきたように、シリンダの内周面に設けるシリンダライナの製造方法に関しては、特段の限定はない。例えば、アルミニウム合金を形成する粉末材料を用いて、これを混合し、溶融し、当該溶融材料をスプレーフォーミング法で噴霧し、圧縮処理し、引き抜き加工、ハンマリング等の塑性加工を施し筒状のシリンダライナ形状として、これをアルミダイキャスト法でシリンダブロックに鋳包まれた状態として、シリンダライナの内周面にホーニング加工、バフ研磨等の物理的研磨を施し、シリンダライナの内周面を、上述の表面粗さ特性を備えるように物理的に加工することにより、シリンダライナを製造する等である。ここで、明記しておくが、本件発明において、シリンダライナの内周面の上述の表面粗さ特性は、ホーニング加工、バフ研磨等の物理的研磨をもって調整可能なものであり、上述の特許文献1のように化学的な処理では形成が不可能な表面粗さ特性である。
そして、シリンダライナの形成に用いるアルミニウム合金は、以下の2種類の鋳造用アルミニウム合金のいずれかを用いることが好ましい。ここで言うシリンダライナ用合金組成は、ケイ素、マグネシウム、銅、鉄、ニッケル、残部がアルミニウム及び不可避的不純物という組成を備え、固体潤滑作用を示す硬質粒子をアルミニウムマトリックス中に備えるものである。以下、シリンダライナ用合金組成1とシリンダライナ用合金組成2とに分けて説明する。
まず、シリンダライナ用合金組成1に関して説明する。ここで、シリンダライナ用合金組成1におけるケイ素は、アルミニウム合金の線膨張係数を抑制するように作用する成分であり、20.0質量%〜28.0質量%の範囲で含有することが好ましい。このケイ素の含有量の範囲は、アルミニウム−ケイ素合金状態図において、過共晶領域になる。従って、溶湯からの凝固過程において、固体潤滑作用を示すケイ素の一次結晶粒(初晶ケイ素)を晶出させることが容易になる。従って、ケイ素の含有量が20.0質量%未満の場合には、固体潤滑作用を示す初晶ケイ素の一次結晶粒を晶出させることが困難になると同時に、後述するマグネシウムとケイ素とで形成する固体潤滑作用を示す金属間化合物であるMg2Siの形成が不可能になるため好ましくない。一方、ケイ素の含有量が28.0質量%を超える場合には、凝固後のアルミニウムマトリックス中に存在する初晶ケイ素が粗大化し、分散密度が過剰になるため基地硬さが過剰になり、切削、研磨等の成形加工性が悪くなるため好ましくない。なお、ケイ素の含有量は23.0質量%〜28.0質量%の範囲とすることがより好ましい。
シリンダライナ用合金組成1におけるマグネシウムは、0.4質量%〜2.0質量%の範囲で含有することが好ましい。このマグネシウムは、ここで用いるアルミニウム、銅、ケイ素の各成分と、固体潤滑作用を示す金属間化合物を形成する。従って、マグネシウムの含有量が0.4質量%未満の場合には、形成すべき金属間化合物が得られなくなり、シリンダライナの内周面とピストンリングの摺動面との間での摺動抵抗、摩擦係数が大きくなるため好ましくない。一方、マグネシウムの含有量が2.0質量%を超える場合には、マグネシウムに起因した金属間化合物量が過剰になり、シリンダライナの全体が硬化するため、靱性が低下して耐振動性能が低下すると同時に、疲労強度が低下するため好ましくない。なお、マグネシウムの含有量は0.8質量%〜2.0質量%の範囲とすることがより好ましい。
シリンダライナ用合金組成1における銅は、2.0質量%〜4.5質量%の範囲で含有することが好ましい。銅は、軸受け鋼等の潤滑性を要求される材料に、固体潤滑作用を付与するための合金成分として広く用いられている。ここで、合金成分としての銅は、銅とアルミニウムとの間で固体潤滑作用を示す金属間化合物であるAl2Cuを形成し、一部の銅成分をアルミニウムマトリックス中に固溶させて、良好な固体潤滑作用と疲労強度との改善を同時に行うために用いられている。ここで、銅の含有量が2.0質量%未満の場合には、アルミニウムマトリックス中への銅の固溶量が少なくなり、アルミニウム合金としての靱性が改善できず、疲労強度を向上させ得ない。一方、銅の含有量が4.5質量%を超える場合には、アルミニウムマトリックス中へ固溶することのない金属間化合物であるAl2Cuが過剰形成され、アルミニウム合金としての靱性が低下することに伴い、疲労強度も低下する。なお、銅の含有量は3.0質量%〜4.5質量%の範囲とすることがより好ましい。
シリンダライナ用合金組成1における鉄は、0.60質量%以下の範囲で含有することが好ましい。この合金成分としての鉄は、鋳造したアルミニウム合金が凝固する過程で発生する「ひけ割れ」の発生を防止するために添加するものである。従って、合金成分としての鉄を過剰に添加する必要はなく、鉄の含有量が0.60質量%を超えて過剰になるほど、凝固過程において、本件発明において不必要なFeAl3、α(AlFeSi)、β(AlFeSi)等の分散溶解しにくい特異な配列を備える金属間化合物の生成が過剰となり、シリンダライナの表面に偏析しやすく、外観及び靱性を低下させる要因となる。ここで、鉄の含有量は、0.25質量%以下とすることがより好ましい。なお、ここで鉄の含有量の下限値を記載していないが、「ひけ割れ」発生の防止効果を得るためには、0.001質量%以上であることが好ましい。
シリンダライナ用合金組成1におけるニッケルは、0.01質量%以下の範囲で含有することが好ましい。この合金成分としてのニッケルは、鋳造したアルミニウム合金が凝固する過程で発生する「ひけ割れ」の発生を防止し、凝固後のアルミニウム合金の耐熱性を向上させ、塑性加工を容易にするために用いるものである。従って、合金成分としてのニッケルも過剰に添加する必要はなく、ニッケルの含有量が0.01質量%を超えて過剰になるほど、凝固過程において、本件発明において不必要なNiAl3等の金属間化合物が生成し、アルミニウム合金としての靱性が低下する。なお、ここでニッケルの含有量の下限値を記載していないが、「ひけ割れ」発生の防止効果及び耐熱特性の向上を図るためには、0.001質量%以上であることが好ましい。
そして、シリンダライナ用合金組成1の場合には、残部がアルミニウム及び不可避的不純物である。この不可避的不純物には、マンガン、亜鉛が含まれる。なお、アルミニウムには不可避不純物として、ケイ素及び鉄が含まれることは周知の事実である。しかし、上述のシリンダライナ用合金組成1における、ケイ素及び鉄の含有量は、単なる不可避不純物量ではなく、合金成分として添加して成分調整を行った場合の含有量を示している。
次に、シリンダライナ用合金組成2に関して説明する。ここで、シリンダライナ用合金組成2におけるケイ素は、20.0質量%〜28.0質量%の範囲で含有する。従って、上述のシリンダライナ用合金組成1の場合と同様であり、この範囲とした理由も同様である。従って、重複した記載を避けるため、ここでのシリンダライナ用合金組成2のケイ素含有量に関する説明は省略する。
シリンダライナ用合金組成2におけるマグネシウムは、0.8質量%〜2.0質量%の範囲で含有する。従って、上述のシリンダライナ用合金組成1の場合と同様であり、この範囲とした理由も同様である。従って、重複した記載を避けるため、ここでのシリンダライナ用合金組成2のマグネシウム含有量に関する説明は省略する。
シリンダライナ用合金組成2における銅は、3.0質量%〜4.5質量%の範囲で含有する。従って、上述のシリンダライナ用合金組成1の場合と同様であり、この範囲とした理由も同様である。従って、重複した記載を避けるため、ここでのシリンダライナ用合金組成2の銅含有量に関する説明は省略する。
シリンダライナ用合金組成2における鉄は、1.0質量%〜1.4質量%の範囲で含有することが好ましい。この合金成分としての鉄は、鋳造したアルミニウム合金が凝固する過程で発生する「ひけ割れ」を防止し、溶融したアルミニウム合金材料をスプレーフォーミング法で金型内に噴霧したときの金型表面への焼き付きを防止するために添加するものである。従って、鉄の含有量が1.0質量%未満の場合には、上述した「ひけ割れ」の発生防止効果は小さく、金型表面への焼き付きの防止効果も得られない。一方、鉄の含有量が1.4質量%を超える場合には、凝固過程において、本件発明において不必要なFeAl3、α(AlFeSi)、β(AlFeSi)等の分散溶解しにくい金属間化合物が生成し、シリンダライナ用のアルミニウム合金に必要な靱性等の強度が得られなくなる。
シリンダライナ用合金組成2におけるニッケルは、1.0質量%〜5.0質量%の範囲で含有することが好ましい。この合金成分としてのニッケルは、シリンダライナ用合金組成1のアルミニウム合金の場合と同様の効果を発揮する。ニッケルの含有量が1.0質量%未満の場合には、「ひけ割れ」の発生防止効果を得ることも、アルミニウム合金としての耐熱特性の向上を図ることもできなくなる。一方、ニッケルの含有量が5.0質量%を超えた場合には、凝固過程において、本件発明において不必要なNiAl3等の金属間化合物が生成し、アルミニウム合金としての靱性が低下するため、耐衝撃特性が顕著に低下する。
そして、シリンダライナ用合金組成2の場合でも、残部がアルミニウム及び不可避的不純物である。この不可避的不純物には、シリンダライナ用合金組成1と同様の成分が含まれる。なお、アルミニウムの不可避不純物であるケイ素及び鉄が存在することを前提とした、上述のシリンダライナ用合金組成2における、ケイ素及び鉄の含有量は、単なる不可避不純物量ではなく、合金成分として添加して成分調整を行った場合の含有量を示している。
本件発明で用いるピストンリングの形態: 本件発明で用いるピストンリングは、当該ピストンリングのシリンダライナの内周面との摺動面として、以下の表面粗さ特性2として示す(a)及び(b)の条件を備えるものである。
この表面粗さ特性2の(a)は、「JIS B 0601(1994)に定める十点平均粗さ(Rz)が1.6μm以下。」である。この十点平均粗さ(Rz)が1.6μmを超えると、表面粗さとして大きくなるため、上述の表面粗さ特性1を備えるシリンダライナとの摺動特性が安定せず、内燃機関としての性能を安定して引き出すことができなくなり、ピストンリングの摺動面と擦れ合うシリンダライナ表面に対して摩擦損傷を与える可能性が急激に高くなる。なお、ここで当該ピストンリングのシリンダライナの内周面との摺動面に関しては、十点平均粗さ(Rz)の下限値を特に限定していない。しかしながら、上述のシリンダライナの内周面とピストンリングの摺動面との凹凸の間へのオイルの浸透流入量を調整し、適当な流体潤滑状態を形成することを考慮すれば、ピストンリングの摺動面の十点平均粗さ(Rz)は、0.1μm以上であることが好ましい。
そして、この表面粗さ特性2の(b)は、「DIN4776に定める初期摩耗高さ(Rpk)が0.3μm以下。」である。上述したシリンダライナの内周面が、上記表面粗さ特性1を備えることを前提として、初期摩耗高さ(Rpk)を0.3μm以下にすると、ピストンリングの摺動面とシリンダライナの内周面との双方の摩擦損傷を極めて効果的に軽減化でき、摺動挙動の安定化が図れ、且つ、良好な耐スカッフ性が得られる。この初期摩耗高さ(Rpk)が0.3μmを超えた場合には、粗いが故に初期なじみ性も低下すると同時に、ピストンリングの摺動面と擦れ合うシリンダライナの内周面の凹凸に対して摩擦損傷を与える可能性が高くなる。なお、この表面粗さ特性2において、初期摩耗高さ(Rpk)の下限値を定めていないが、シリンダライナの内周面とピストンリングの摺動面との間で、内燃機関の始動時に、シリンダライナの内周面がピストンリングの摺動面の凹凸になじんで流体潤滑可能な状況を素早く形成するためには、初期摩耗高さ(Rpk)が0.01μm以上であることが好ましい。
次に、本件発明に係る内燃機関のピストンリングとシリンダライナとの組合せ構造において、前記ピストンリングは、以下に記載のピストンリング用合金組成のオーステナイト系ステンレス鋼を用いることが好ましい。
本件発明において用いるピストンリング用合金組成は、ニッケル、クロム、炭素、ケイ素、マンガン、リン、硫黄、残部が鉄及び不可避的不純物からなり、オーステナイト系ステンレス鋼に分類されるものである。即ち、ピストンリング用合金組成は、ニッケル含有量が3.5質量%〜15.0質量%、クロム含有量が13.0質量%〜20.0質量%、炭素含有量が0.15質量%以下、ケイ素含有量が1.0質量%以下、マンガン含有量が7.5質量%以下、リン含有量が0.06質量%以下、硫黄含有量が0.03質量%以下、残部が鉄及び不可避的不純物というものである。この組成は、上記範囲において、ニッケル含有量とクロム含有量との配合比率を変化させても、安定して高い線膨張係数を得ることができ、シリンダライナを構成する上記アルミニウム合金の線膨張係数に近づけることが出来るようにするためのものである。
ここで、ピストンリング用合金組成の主要成分であるニッケルに関して述べる。ピストンリング用合金組成としてのニッケル含有量は、3.5質量%〜15.0質量%であることが好ましい。ニッケル含有量が3.5質量%未満の場合には、線膨張係数が不安定なオーステナイト系ステンレス鋼になる。一方、オーステナイト系ステンレス鋼の場合には、表面に後述する窒化処理層を形成する場合には、ニッケル成分が窒化処理に際して、窒素原子の進入を阻害し、窒化処理を妨害するという欠点がある。従って、ニッケル含有量が15質量%を超えると、表面に窒化処理層を形成することが困難で、窒化処理層の形成に長時間かかるため、製造コストの上昇が著しくなる。
ピストンリング用合金組成としてのクロム含有量は、13.0質量%〜20.0質量%であることが好ましい。当該クロム含有量が13.0質量%未満の場合には、クロムによる緻密で強固な不動態皮膜の形成が不十分となり、耐食性が劣るため好ましくない。また、窒化処理による高硬度の窒化層が得られにくく耐摩耗性が劣る。更に、クロムの固溶による耐熱性の向上が得られにくく好ましくない。また、表面に後述する窒化処理層を形成する場合には高硬度の窒化クロムの形成が不十分となり、高硬度の窒化層が得られない。一方、当該クロム含有量が20.0質量%を超える場合には、鋼材コストの向上を招くとともに、表面に後述する窒化処理層を形成する場合には、ニッケル成分と同様にクロム成分がオーステナイト系ステンレス鋼中への窒素元素の侵入を妨害し、窒化処理を阻害する欠点がある。
ピストンリング用合金組成としての炭素は、0.15質量%以下であることが好ましい。炭素は、ピストンリングを構成するオーステナイト系ステンレス鋼の組織中で、炭化物を形成し、固体潤滑性能を発揮する。しかしながら、炭素含有量が0.15質量%を超えると、結晶粒界に硬い炭化物の存在量が増えるため、耐食性が劣り好ましくない。
ピストンリング用合金組成としてのケイ素は、1.0質量%以下であることが好ましい。ケイ素は、一定のオーステナイト形成元素として寄与し、耐摩耗性能を向上させる成分として機能する。しかしながら、ケイ素を1.0質量%を超えて含有させると、ピストンリングを構成するオーステナイト系ステンレス鋼の耐熱強度が低下する傾向があるため好ましくない。
ピストンリング用合金組成としてのマンガンは、7.5質量%以下であることが好ましい。ピストンリングを構成するオーステナイト系ステンレス鋼の成分としてのマンガンは、オーステナイト形成元素として機能する。しかし、このマンガン含有量が7.5質量%を超えるものとしても、マンガンに起因したオーステナイト形成能は飽和して、それ以上に向上しない。しかも、マンガン量が過剰になると、マンガンがオーステナイト系ステンレス鋼の結晶粒界に片析して、強度が脆くなるため好ましくない。
そして、リンは、0.06質量%以下であることが好ましい。また、硫黄は、0.03質量%以下であることが好ましい。ピストンリング用合金組成としてのリン及び硫黄は、微細なリン化合物、硫化物の形態で、オーステナイト系ステンレス鋼の結晶内に均一に分散していれば、粒子分散効果によって高強度化が達成され、且つ、耐摩耗性を向上させる成分として寄与する。しかし、合金成分としてのリンが0.06質量%を超えた場合、硫黄が0.03質量%を超えて過剰に存在すると、リン化合物及び硫化物の結晶粒界への偏析も起こりやすくなり脆い材質となる。また、オーステナイト系ステンレス鋼の結晶内のリン化合物及び硫化物が粗大化し、変形応力を受けたときの応力集中箇所となり、振動によるマイクロクラックの発生が起こりやすくなるため、耐久性能が損なわれる傾向にあるため好ましくない。
さらに、本件発明に係る内燃機関のピストンリングとシリンダライナとの組合せ構造において、前記ピストンリングは、前記ピストンリング用合金組成に更にモリブデンを1質量%〜4質量%含むことが好ましい。モリブデンは、ピストンリング用合金の高強度化、高靱性化に寄与し、且つ、高温においても材料の軟化を防止する耐熱特性を有する。また、モリブデンを1質量%以上含有させることで、耐食性が増し、耐硫酸性が向上する。モリブデン含有量が、1質量%未満の場合には、十分な耐熱特性及び高強度化が行えない。一方、モリブデン含有量が、4質量%を超える場合には、性能に変化はなく、資源の無駄となるため好ましくない。
そして、本件発明に係る内燃機関のピストンリングとシリンダライナとの組合せ構造において、上記組成を備えるピストンリングのシリンダライナ内周面との摺動面は、その表面に厚さ30μm〜150μmの窒化処理層を備え、且つ、その表面のビッカース硬さ(HV)が900HV0.1〜1200HV0.1であることが好ましい。なお、ここでいう窒化処理層の厚さは、当該窒化処理層断面の硬度分布をマイクロビッカース硬度計により求め、700HV0.1以上の硬さが得られる厚さとして示す。
ここで、ピストンリングの摺動面に設ける窒化処理層の厚さに関して述べる。当該窒化処理層は、厚さが30μm〜150μmの範囲であることが好ましい。当該窒化処理層の厚さが30μm未満の場合には、内燃機関の通常条件下での使用によって摩耗する窒化処理層厚を考慮すると、不十分な厚さであり、実用に耐えなくなる。一方、図1に示した3種のステンレス鋼の上に形成した窒化処理層の厚さと窒化処理層のビッカース硬度との関係から明らかなように、当該窒化処理層の厚さが150μmを超えると、折損しやすくなるため好ましくない。また、製造コストの削減、資源の無駄遣いを防止する観点から考えれば、図1から読み取れるように、当該窒化処理層は、厚さが30μm〜90μmの範囲であることが、より好ましい。
また、当該ピストンリングは、オーステナイト系ステンレス鋼を材料としており、その合金元素としてのクロムは、窒化処理により進入した窒素原子と結合し、高硬度の窒化クロムを形成し、窒化処理層の硬さを更に向上させビッカース硬さ(HV)が900HV0.1〜1200HV0.1とすることが好ましい。ビッカース硬さ(HV)が900HV0.1未満の場合には、内燃機関の駆動により、ピストンリングの摺動面とシリンダライナの内周面との摩擦による摩耗が顕著になり、内燃機関としての寿命を長期化させることが困難である。一方、ビッカース硬さ(HV)が1200HV0.1を超えると、ピストンリングの摺動面の表面が硬くなり過ぎることになり、脆化して脆くなり、アルミボアへの攻撃性が大きくなるため好ましくない。従って、上記範囲の厚さ及び硬さの窒化処理層を備えるオーステナイト系ステンレス鋼で製造したピストンリングは、上記シリンダライナと組み合わせて使用することで、ピストンリングの摺動面の耐摩耗性、耐スカッフ性が飛躍的に向上する。なお、窒化処理層の硬さは、950HV0.1〜1100HV0.1の範囲とすることがより好ましい。
ここで言う窒化処理は、窒素原子がオーステナイト系ステンレス鋼製のピストンリングの表面から侵入する侵入型の窒化処理によって形成される。このような窒化処理を行うためには、ガス窒化、イオン窒化、塩浴窒化、浸硫窒化等のあらゆる窒化処理を使用することが可能である。この窒化処理を施すことによって、従来は摩耗損傷が多いため、ピストンリングに適さないと言われたオーステナイト系ステンレス鋼製のピストンリングを、アルミニウム合金製のシリンダライナと組み合わせて使用しても、内燃機関として求められる長寿命化が図れる。このときの窒化処理は、ピストンリング表面の表面の全体に形成しても、シリンダライナと摩擦するピストンリングの摺動面に対してのみ施しても良い。以上に述べてきた窒化処理層の表面には、クロムメッキ、複合クロムメッキ、複合メッキ、溶射、物理蒸着(PVD)、化学蒸着(CVD)等の手法を用いて、更に表面処理を施すことも好ましい。
また、本件発明に係る内燃機関のピストンリングとシリンダライナとの組合せ構造において、前記ピストンリングのシリンダライナ内周面との摺動面は、その表面にダイアモンド ライク カーボン層(以下、単に「DLC層」と称する。)を備えることも好ましい。このDLC層は、上述のピストンリングの窒化処理層を形成した摺動面の最外層に設けても、その窒化処理層を省略して当該摺動面の上に直接形成しても構わない。このDLC層は、潤滑油が存在しない状態においては、TiN、CrN等の耐摩耗性の硬質皮膜材と比べ、摩擦係数が低い低摩擦材料として知られており、当該摺動面の表面にDLC層を設けることで、耐摩耗特性を飛躍的に向上させ得る。
ここで言うDLC層は、炭素で構成された非晶質の硬質皮膜であり、炭素同士の結合形態として、SP3結合と称されるダイヤモンド構造とSP2結合と称されるグラファイト構造とを備える。このようなDLC層の形成には、PVD法、CVD法等の蒸着法を使用することが好ましい。そして、このDLC層を形成する場合、これらの蒸着法の使用条件に関して特段の限定はない。
また、当該DLC層の厚さに関しては、0.1μm〜10.0μmの範囲であることが好ましい。DLC層の厚さが0.1μm未満の場合には、耐摩耗性を向上させることが出来ず、DLC層を形成する意義が没却する。一方、DLC層の厚さが10.0μmを超えると、DLC皮膜自体は硬いが故に、脆くDLC層の一部が欠けて剥離する傾向が高くなる。なお、当該DLC層の厚さは、1.0μm〜5.0μmの範囲であることがより好ましい。
更に、本件発明に係る内燃機関のピストンリングとシリンダライナとの組合せ構造において、前記ピストンリングのピストンリング溝と接するピストンリングの上下面には、耐熱樹脂又は耐熱樹脂に無機フィラーを含有させたフィラー含有耐熱樹脂のいずれかを用いて形成した樹脂コート層を備えることが好ましい。この耐熱樹脂を用いた樹脂コート層は、ピストンリングの摺動面の表面に直接設けても、上記窒化処理層の表面に窒化処理層/樹脂コート層の2層構造として設けても、上記DLC層の場合にはDLC層/樹脂コート層又は樹脂コート層/DLC層の2層構造として設けても、ピストンリングの摺動面の表面に窒化処理層/樹脂コート層/DLC層の3層構造としても構わない。
そして、この耐熱樹脂には、耐熱温度が150℃以上のポリベンゾイミダゾール樹脂又はポリイミドアミド樹脂のいずれかを用いることが好ましい。ここで、耐熱温度を150℃以上と規定しているのは、ピストンリングは、内燃機関のエンジンオイルと接触するものであり、一般的な自動車の内燃機関を想定するとエンジンオイルの油温が150℃付近となるのが通常であり、この温度に耐える樹脂成分でなければ使用できないからである。なお、ここで言う耐熱温度とは、雰囲気温度により、溶融を起こさず、顕著な樹脂軟化現象を引き起こさない温度を言う。
ここで言う耐熱温度が150℃以上の樹脂には、種々のものが存在する。例えば、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミド(PA)等である。これらの樹脂は、単独で用いても、あるいはこれらの2種以上を任意に組み合わせて用いることも可能である。しかしながら、樹脂としての均一な皮膜を形成し、且つ、耐久性を考慮すると、中でもポリベンゾイミダゾール(PBI)又はポリアミドイミド(PAI)を樹脂コート層の形成に用いることが好ましい。
また、当該耐熱樹脂には、固体潤滑作用を示すフレーク銅粉、二硫化モリブデン(MoS2)粒子、黒鉛(グラファイト)粒子等を、単独又は任意に組み合わせてフィラーとして添加し、含有させることが可能である。
以上に述べた樹脂コート層は、3μm〜10μmの厚さとすることが好ましい。樹脂コート層の厚さが3μm未満の場合には、樹脂膜厚の均一性が無くなり、内燃機関のピストン内での使用に耐えなくなる傾向がある。一方、樹脂コート層が10μmを超える厚さとなると、シリンダライナの内周面とピストンリングの摺動面との面圧を均一にすることが困難となる傾向があるからである。
ここまでに述べてきた窒化処理層、DLC層、樹脂コート層を適宜設けることにより、ピストンリングの品質の安定化が図れる。この結果、シリンダライナに対して擦れ合うピストンリングの摺動面の耐久性を飛躍的に向上させると同時に、良好な低摩擦特性、耐摩耗特性、耐スカッフ性を得ることが可能になる。
以上に述べてきたシリンダライナとピストンリングとの組み合わせは、当該シリンダライナの内周面に対し、ピストン側に配置した当該ピストンリングの面圧が0.03MPa〜0.2MPaとして用いることを想定したものであり、この面圧の範囲内でのピストンリングとシリンダライナとの組合せ構造に好適なものである。この範囲内にある限り、以上に述べてきたシリンダライナとピストンリングとの組み合わせを用いることで、内燃機関としての長寿命化及び耐久性を向上させることが可能になり、結果として高品質の内燃機関の提供が可能になる。以下、実施例を用いて、本件発明を説明する。
シリンダライナ相当材の製造:表1に示す7種類のアルミニウム合金組成の溶湯を調製し、窒素雰囲気を用いたスプレーフォーミング法で円筒状の基礎形状を形成し、圧縮処理し、引き抜き加工、鍛造による塑性加工を施し、シリンダライナ相当材を作成した。
当該シリンダライナ相当材と後述のピストンリングとの摩耗試験用として、上述の7種類の組成の溶湯で、上述と同様の窒素雰囲気を用いたスプレーフォーミング法で円筒状の基礎形状を形成し、圧縮処理し、引き抜き加工、鍛造による塑性加工を施し、図3の摩耗試験機5の回転ローター6での軸支可能な、内径16mm、外径40mm、厚さ10mmのローラー状として、この外周面を摩耗試験用のボア材として用いた。なお、この摩耗試験における試料は、「CL試料1」、「CL試料2」、「CL試料3」、「CL試料4」、「CL試料5」、「CL試料6」、「CL試料7」と称することとする。表1に示す「CL試料1」の場合、ケイ素含有量が20.0質量%、マグネシウム含有量が0.8質量%、銅含有量が3.0質量%、鉄含有量が0.15質量%、ニッケル含有量が0.01質量%、残部がアルミニウム及び不可避的不純物という組成のものを用いた。
「CL試料2」の場合、ケイ素含有量が23.0質量%、マグネシウム含有量が1.2質量%、銅含有量が3.9質量%、鉄含有量が0.15質量%、ニッケル含有量が0.01質量%、残部がアルミニウム及び不可避的不純物という組成のものを用いた。
「CL試料3」の場合、ケイ素含有量が28.0質量%、マグネシウム含有量が2.0質量%、銅含有量が4.5質量%、鉄含有量が0.2質量%、ニッケル含有量が0.01質量%、残部がアルミニウム及び不可避的不純物という組成のものを用いた。
「CL試料4」の場合、ケイ素含有量が20.0質量%、マグネシウム含有量が0.8質量%、銅含有量が3.0質量%、鉄含有量が1.0質量%、ニッケル含有量が1.0質量%、残部がアルミニウム及び不可避的不純物という組成のものを用いた。
「CL試料5」の場合、ケイ素含有量が23.0質量%、マグネシウム含有量が1.2質量%、銅含有量が3.9質量%、鉄含有量が1.2質量%、ニッケル含有量が2.2質量%、残部がアルミニウム及び不可避的不純物という組成のものを用いた。
「CL試料6」場合、ケイ素含有量が28.0質量%、マグネシウム含有量が2.0質量%、銅含有量が4.5質量%、鉄含有量が1.4質量%、ニッケル含有量が5.0質量%、残部がアルミニウム及び不可避的不純物という組成のものを用いた。
「CL試料7」の場合、ケイ素含有量が20.0質量%、マグネシウム含有量が0.44質量%、銅含有量が2.61質量%、鉄含有量が0.59質量%、亜鉛含有量が0.01質量%、マンガン含有量が0.01質量%、ニッケル含有量が0.01質量%、カルシウム含有量が0.003質量%、リン含有量が0.027質量%、残部がアルミニウム及び不可避的不純物という組成のものを用いた。
ピストンリングの製造: この実施例では、ファーストリングを製造するにあたり、3種類の組成で、且つ各組成に対し2種類の表面粗さの試料(「FR試料1」〜「FR試料6」)を用意した。まず、表3に示す「FR試料1」及び「FR試料2」の場合、クロム含有量が17.0質量%、ニッケル含有量が4.5質量%、マンガン含有量が6.5質量%、ケイ素含有量が0.9質量%、炭素含有量が0.10質量%、リン含有量が0.02質量%、硫黄含有量が0.01質量%、残部が鉄及び不可避的不純物という組成のオーステナイト系のステンレス鋼に対して、ガス窒化処理を施した素材を用いた。
また、表3に示す「FR試料3」及び「FR試料4」の場合は、クロム含有量が19.0質量%、ニッケル含有量が9.0質量%、マンガン含有量が1.6質量%、ケイ素含有量が0.7質量%、炭素含有量が0.04質量%、リン含有量が0.035質量%、硫黄含有量が0.02質量%、残部が鉄及び不可避的不純物という組成のオーステナイト系のステンレス鋼に対して、ガス窒化処理を施した素材を用いた。
さらに、「FR試料5」及び「FR試料6」の場合には、クロム含有量が17.0質量%、ニッケル含有量が12.0質量%、マンガン含有量が1.6質量%、ケイ素含有量が0.7質量%、炭素含有量が0.04質量%、リン含有量が0.035量%、硫黄含有量が0.02質量%、モリブデン含有量が2.5質量%、残部が鉄及び不可避的不純物という組成のオーステナイト系のステンレス鋼に対して、ガス窒化処理を施した素材を用いた。
そして、このファーストリングは、D1を90mm、a1を3.3mm、h1を1.2mm、S1を0.25mmとした。この実施例で、表面粗さ特性2の範囲に含まれる6種類のファーストリングを製造した。このファーストリングを、「FR試料1」、「FR試料2」、「FR試料3」、「FR試料4」、「FR試料5」、「FR試料6」と称する。そして、図2(a)には、「FR試料1」の窒化処理層の金属顕微鏡を用いた断面観察像を示している。図2(b)には、「FR試料3」の窒化処理層の金属顕微鏡を用いた断面観察像を示している。この断面観察を行うために、「FR試料1」ならびに「FR試料3」と同様の仕様のファーストリング相当材の摩耗試験片を作成した(固定片:8mm×7mm×5mm)。
そして、ピストンリングに関してする摩耗試験は、上記ボア材と組み合わせて、図3に示す摩耗試験機を用いて行った。ピストンリングの試験材1を研磨するローラー形状のボア材2を用いる。そして、このボア材2は、その下側半分が、オイルバス3に入れた80℃の潤滑油4(タービン油#100)の中に浸漬する状態で回転(周速:1m/s)し、上部のボア材2に試験材1を荷重W(784N)で7時間押し当てて、そのときのリング材1及びボア材2の双方の摩耗量を求めた。この摩耗試験の結果は、以下の表4に比較例と対比可能なように示す。なお、この摩耗試験は、現実の内燃機関におけるピストンリングとシリンダライナとの摺動挙動で発生するピストンリングとシリンダライナとの相互の摺動面での摩耗状態を推測する上での代替え試験である。
[実施例1]
この実施例1では、7種類のシリンダライナ相当材(「CL試料1」〜「CL試料7」)に対して、それぞれファーストリング相当材である「FR試料3」を組み合わせた場合の「シリンダライナ相当材の摩耗量」、「ファーストリング相当材の摩耗量」、「シリンダライナ相当材の摩耗量とファーストリング相当材の摩耗量とを合計した総摩耗量」について確認する。実施例1では、ファーストリング相当材が「FR試料3」の試料を用いる点で共通する。表3より、「FR試料3」の表面粗さはRz0.7、Rpk0.06であり、表面粗さ特性2の範囲からみて比較的表面粗さの小さいものである。表4より、「FR試料3」と実施例1の各シリンダライナ相当材(「CL試料1」〜「CL試料7」)とを組み合わせた場合の摩耗量は、「シリンダライナ相当材の摩耗量」が0.41μm〜0.55μm(平均0.48μm)、「ファーストリング相当材の摩耗量」が0.85μm〜0.95μm(平均0.90μm)、「シリンダライナ相当材の摩耗量とファーストリング相当材の摩耗量とを合計した総摩耗量」が1.35μm〜1.41μm(平均1.38μm)となった。
この実施例1では、7種類のシリンダライナ相当材(「CL試料1」〜「CL試料7」)に対して、それぞれファーストリング相当材である「FR試料3」を組み合わせた場合の「シリンダライナ相当材の摩耗量」、「ファーストリング相当材の摩耗量」、「シリンダライナ相当材の摩耗量とファーストリング相当材の摩耗量とを合計した総摩耗量」について確認する。実施例1では、ファーストリング相当材が「FR試料3」の試料を用いる点で共通する。表3より、「FR試料3」の表面粗さはRz0.7、Rpk0.06であり、表面粗さ特性2の範囲からみて比較的表面粗さの小さいものである。表4より、「FR試料3」と実施例1の各シリンダライナ相当材(「CL試料1」〜「CL試料7」)とを組み合わせた場合の摩耗量は、「シリンダライナ相当材の摩耗量」が0.41μm〜0.55μm(平均0.48μm)、「ファーストリング相当材の摩耗量」が0.85μm〜0.95μm(平均0.90μm)、「シリンダライナ相当材の摩耗量とファーストリング相当材の摩耗量とを合計した総摩耗量」が1.35μm〜1.41μm(平均1.38μm)となった。
[実施例2]
この実施例2では、7種類のシリンダライナ相当材(「CL試料1」〜「CL試料7」)に対して、それぞれファーストリング相当材である「FR試料4」を組み合わせた場合の「シリンダライナ相当材の摩耗量」、「ファーストリング相当材の摩耗量」、「シリンダライナ相当材の摩耗量とファーストリング相当材の摩耗量とを合計した総摩耗量」について確認する。実施例2では、ファーストリング相当材が「FR試料4」の試料を用いる点で共通する。表3より、「FR試料4」の表面粗さはRz1.6、Rpk0.3であり、表面粗さ特性2の範囲からみて表面粗さが上限となる大きいものである。表4より、「FR試料4」と実施例2の各シリンダライナ相当材(「CL試料1」〜「CL試料7」)とを組み合わせた場合の摩耗量は、「シリンダライナ相当材の摩耗量」が0.46μm〜0.58μm(平均0.50μm)、「ファーストリング相当材の摩耗量」が0.87μm〜0.97μm(平均0.92μm)、「シリンダライナ相当材の摩耗量とファーストリング相当材の摩耗量とを合計した総摩耗量」が1.40μm〜1.45μm(平均1.42μm)となった。
この実施例2では、7種類のシリンダライナ相当材(「CL試料1」〜「CL試料7」)に対して、それぞれファーストリング相当材である「FR試料4」を組み合わせた場合の「シリンダライナ相当材の摩耗量」、「ファーストリング相当材の摩耗量」、「シリンダライナ相当材の摩耗量とファーストリング相当材の摩耗量とを合計した総摩耗量」について確認する。実施例2では、ファーストリング相当材が「FR試料4」の試料を用いる点で共通する。表3より、「FR試料4」の表面粗さはRz1.6、Rpk0.3であり、表面粗さ特性2の範囲からみて表面粗さが上限となる大きいものである。表4より、「FR試料4」と実施例2の各シリンダライナ相当材(「CL試料1」〜「CL試料7」)とを組み合わせた場合の摩耗量は、「シリンダライナ相当材の摩耗量」が0.46μm〜0.58μm(平均0.50μm)、「ファーストリング相当材の摩耗量」が0.87μm〜0.97μm(平均0.92μm)、「シリンダライナ相当材の摩耗量とファーストリング相当材の摩耗量とを合計した総摩耗量」が1.40μm〜1.45μm(平均1.42μm)となった。
[実施例3]
この実施例3では、3種類のシリンダライナ相当材(「CL試料2」、「CL試料5」、「CL試料7」)に対して、それぞれファーストリング相当材である「FR試料1」、「FR試料2」を組み合わせた場合の「シリンダライナ相当材の摩耗量」、「ファーストリング相当材の摩耗量」、「シリンダライナ相当材の摩耗量とファーストリング相当材の摩耗量とを合計した総摩耗量」について確認する。実施例3では、ファーストリング相当材が「FR試料1」及び「FR試料2」であり、表3に示すように、共に窒化処理層の厚さが40μmで、硬さが980HV0.1のものである。本件発明における当該窒化処理層の厚さの範囲が30μm〜150μmで、硬さの範囲が900HV0.1〜1200HV0.1であることから考えると、「FR試料1」及び「FR試料2」の窒化処理層の厚さ及び硬さは比較的下限よりのものである。表4より、「FR試料1」及び「FR試料2」と実施例3の各シリンダライナ相当材(「CL試料2」、「CL試料5」、「CL試料7」)とを組み合わせた場合の摩耗量は、「シリンダライナ相当材の摩耗量」が0.46μm〜0.57μm(平均0.50μm)、「ファーストリング相当材の摩耗量」が0.86μm〜0.95μm(平均0.92μm)、「シリンダライナ相当材の摩耗量とファーストリング相当材の摩耗量とを合計した総摩耗量」が1.39μm〜1.45μm(平均1.42μm)となった。
この実施例3では、3種類のシリンダライナ相当材(「CL試料2」、「CL試料5」、「CL試料7」)に対して、それぞれファーストリング相当材である「FR試料1」、「FR試料2」を組み合わせた場合の「シリンダライナ相当材の摩耗量」、「ファーストリング相当材の摩耗量」、「シリンダライナ相当材の摩耗量とファーストリング相当材の摩耗量とを合計した総摩耗量」について確認する。実施例3では、ファーストリング相当材が「FR試料1」及び「FR試料2」であり、表3に示すように、共に窒化処理層の厚さが40μmで、硬さが980HV0.1のものである。本件発明における当該窒化処理層の厚さの範囲が30μm〜150μmで、硬さの範囲が900HV0.1〜1200HV0.1であることから考えると、「FR試料1」及び「FR試料2」の窒化処理層の厚さ及び硬さは比較的下限よりのものである。表4より、「FR試料1」及び「FR試料2」と実施例3の各シリンダライナ相当材(「CL試料2」、「CL試料5」、「CL試料7」)とを組み合わせた場合の摩耗量は、「シリンダライナ相当材の摩耗量」が0.46μm〜0.57μm(平均0.50μm)、「ファーストリング相当材の摩耗量」が0.86μm〜0.95μm(平均0.92μm)、「シリンダライナ相当材の摩耗量とファーストリング相当材の摩耗量とを合計した総摩耗量」が1.39μm〜1.45μm(平均1.42μm)となった。
[実施例4]
この実施例4では、3種類のシリンダライナ相当材(「CL試料2」、「CL試料5」、「CL試料7」)に対して、それぞれファーストリング相当材である「FR試料5」、「FR試料6」を組み合わせた場合の「シリンダライナ相当材の摩耗量」、「ファーストリング相当材の摩耗量」、「シリンダライナ相当材の摩耗量とファーストリング相当材の摩耗量とを合計した総摩耗量」について確認する。実施例4では、ファーストリング相当材が「FR試料5」及び「FR試料6」であり、表3に示すように、共に窒化処理層の厚さが130μmで、硬さが1080HV0.1のものである。本件発明における当該窒化処理層の厚さの範囲が30μm〜150μmで、硬さの範囲が900HV0.1〜1200HV0.1であることから考えると、「FR試料5」及び「FR試料6」の窒化処理層の厚さ及び硬さは比較的上限よりのものである。表4より、「FR試料5」及び「FR試料6」と実施例4の各シリンダライナ相当材(「CL試料2」、「CL試料5」、「CL試料7」)とを組み合わせた場合の摩耗量は、「シリンダライナ相当材の摩耗量」が0.46μm〜0.59μm(平均0.52μm)、「ファーストリング相当材の摩耗量」が0.83μm〜0.92μm(平均0.89μm)、「シリンダライナ相当材の摩耗量とファーストリング相当材の摩耗量とを合計した総摩耗量」が1.36μm〜1.45μm(平均1.40μm)となった。
この実施例4では、3種類のシリンダライナ相当材(「CL試料2」、「CL試料5」、「CL試料7」)に対して、それぞれファーストリング相当材である「FR試料5」、「FR試料6」を組み合わせた場合の「シリンダライナ相当材の摩耗量」、「ファーストリング相当材の摩耗量」、「シリンダライナ相当材の摩耗量とファーストリング相当材の摩耗量とを合計した総摩耗量」について確認する。実施例4では、ファーストリング相当材が「FR試料5」及び「FR試料6」であり、表3に示すように、共に窒化処理層の厚さが130μmで、硬さが1080HV0.1のものである。本件発明における当該窒化処理層の厚さの範囲が30μm〜150μmで、硬さの範囲が900HV0.1〜1200HV0.1であることから考えると、「FR試料5」及び「FR試料6」の窒化処理層の厚さ及び硬さは比較的上限よりのものである。表4より、「FR試料5」及び「FR試料6」と実施例4の各シリンダライナ相当材(「CL試料2」、「CL試料5」、「CL試料7」)とを組み合わせた場合の摩耗量は、「シリンダライナ相当材の摩耗量」が0.46μm〜0.59μm(平均0.52μm)、「ファーストリング相当材の摩耗量」が0.83μm〜0.92μm(平均0.89μm)、「シリンダライナ相当材の摩耗量とファーストリング相当材の摩耗量とを合計した総摩耗量」が1.36μm〜1.45μm(平均1.40μm)となった。
また、ピストンリングに関しては、単独で疲労試験を行った。このときの疲労試験は、2000rpmで合口部を規定の応力で振幅させ、この結果からS−N曲線を作成した。この疲労試験の結果に関しては、図4のグラフ中に、実施例の「FR試料1」、「FR試料3」、「FR試料5」と比較例5の「FR比較試料A」、「FR比較試料B」とを対比可能なようにして示す。
実施例1と実施例2との対比: 表4の実施例1と実施例2とを比較した結果、ファーストリング相当材の表面粗さが粗いものを使用した実施例2の方が若干ではあるが「シリンダライナ相当材の摩耗量」、「ファーストリング相当材の摩耗量」、「シリンダライナ相当材の摩耗量とファーストリング相当材の摩耗量とを合計した総摩耗量」の全てにおいて値が大きくなった。しかし、実施例2における「シリンダライナ相当材の摩耗量とファーストリング相当材の摩耗量とを合計した総摩耗量」は全て1.45μm以内であり、シリンダライナとファーストリングとの組合せにおいて、本件発明の諸条件を具備する限り、耐久性能に影響が無いことが分かる。
実施例3と実施例4との対比: 表4の実施例3と実施例4とを比較した結果、ファーストリング相当材の窒化処理層の硬さが硬いものを使用した実施例4の方が若干ではあるが「シリンダライナ相当材の摩耗量」の値が大きくなり、「ファーストリング相当材の摩耗量」の値が小さくなった。なお、「シリンダライナ相当材の摩耗量とファーストリング相当材の摩耗量とを合計した総摩耗量」については、実施例3と実施例4とでほぼ同じ値となった。この結果より、ファーストリング相当材の窒化処理層の硬さが硬いほどシリンダライナ相当材への攻撃性が大きくなることが分かった。しかし、実施例3及び実施例4における「シリンダライナ相当材の摩耗量とファーストリング相当材の摩耗量とを合計した総摩耗量」は全て1.45μm以内であり、シリンダライナとファーストリングとの組合せにおいて、本件発明の諸条件を具備する限り、耐久性能に影響が無いことが分かる。
実施例の「FR試料3」と実施例の「FR試料5」との対比: 「FR試料3」の試料に対し、表3に示すように、クロム含有量を若干減らし、ニッケル含有量を増やし、さらにモリブデンを添加したのが「FR試料5」である。また、表面粗さも「FR試料3」がRz0.7μm、RpK0.06μm、「FR試料5」がRz0.8μm、RpK0.08μmでほぼ同条件とし、窒化処理層の硬さも「FR試料3」が1050HV0.1で、「FR試料5」が1080HVでほぼ同条件としている。表4に、「FR試料3」(実施例1参照のこと。)と「FR試料5」(実施例4参照のこと。)と各々アムスラー型摩耗試験を行った結果を示す。このときに、シリンダライナ相当材には、実施例1と実施例4とで共通する試料として、「CL試料2」、「CL試料5」、「CL試料7」について比較をすると、「シリンダライナ相当材の摩耗量」は、「FR試料3」が平均0.49μm(CL試料2が0.48μm、CL試料5が0.44μm、CL試料7が0.55μm)に対し、「FR試料5」が平均0.50μm(CL試料2が0.49μm、CL試料5が0.46μm、CL試料7が0.56μm)である。
また、「FR試料3」と「FR試料5」との「ファーストリング相当材の摩耗量」について比較をすると、「FR試料3」が平均0.90μm(CL試料2が0.92μm、CL試料5が0.92μm、CL試料7が0.85μm)に対し、「FR試料5」が平均0.88μm(CL試料2が0.91μm、CL試料5が0.90μm、CL試料7が0.83μm)である。
「シリンダライナ相当材の摩耗量とファーストリング相当材の摩耗量とを合計した総摩耗量」は、「FR試料3」が平均1.39μm(CL試料2が1.40μm、CL試料5が1.36μm、CL試料7が1.40μm)に対し、「FR試料5」が平均1.38μm(CL試料2が1.40μm、CL試料5が1.36μm、CL試料7が1.39μm)である。
摩耗量について「FR試料3」と「FR試料5」とを比較した結果、ほぼ同等の耐摩耗特性が得られた。更に、疲労試験を行った結果、図4に示すように、「FR試料3」、「FR試料5」共に、1×107回の繰り返し回数での繰り返し応力は1030MPaと、同等の疲労強度特性が得られた。この結果より、「FR試料3」の試料に対して、クロム含有量を若干減らし、ニッケル含有量を増やし、さらにモリブデンを添加してもほぼ同等な耐摩耗特性及び疲労強度特性が得られることが分かる。
「CL試料1」と「CL試料7」との対比: 表4の実施例1及び実施例2の「CL試料1」と「CL試料7」とを比較した結果を以下に示す。ここで、「CL試料1」と「CL試料7」との相違点は、「CL試料7」の方がマグネシウムの含有量が本件発明のシリンダライナ用合金組成1の範囲の下限よりの組成を備え、且つ鉄の含有量が本件発明のシリンダライナ用合金組成1の範囲の上限よりの組成を備えている点にある。まず、表4の実施例1より、共通のファーストリング相当材である「FR試料3」と「CL試料1」、「CL試料7」の各シリンダライナ相当材とを組み合わせた場合のそれぞれの摩耗量を比較した場合、「シリンダライナ相当材の摩耗量」は「CL試料1」が0.51μmで、「CL試料7」が0.55μmとなり、「ファーストリング相当材の摩耗量」は「CL試料1」が0.87μmで、「CL試料7」が0.85μmとなり、「シリンダライナ相当材の摩耗量とファーストリング相当材の摩耗量とを合計した総摩耗量」は「CL試料1」が1.38μmで、「CL試料7」が1.40μmとなった。
次に、表4の実施例2より、共通のファーストリング相当材である「FR試料4」と「CL試料1」、「CL試料7」の各シリンダライナ相当材とを組み合わせた場合の摩耗量を比較した場合、「シリンダライナ相当材の摩耗量」は「CL試料1」が0.52μmで、「CL試料7」が0.58μmとなり、「ファーストリング相当材の摩耗量」は「CL試料1」が0.89μmで、「CL試料7」が0.87μmとなり、「シリンダライナ相当材の摩耗量とファーストリング相当材の摩耗量とを合計した総摩耗量」は、「CL試料1」が1.41μmで、「CL試料7」が1.45μmとなった。
以上の結果より、シリンダライナの備える組成に関して、マグネシウムの含有量が本件発明のシリンダライナ用合金組成1の範囲の下限よりの組成を備え、且つ鉄の含有量が本件発明のシリンダライナ用合金組成1の範囲の上限よりの組成を備えた場合、当該シリンダライナの耐摩耗性能が若干低下する傾向の得られることが分かった。
以下に示す比較例で使用するシリンダライナ相当材は、表2に記載の合金組成を用いて、実施例と同様の手順で製造するが、シリンダライナ相当材の内周面にホーニング加工を施し、ホーニング加工後のシリンダライナ相当材の内周面と苛性ソーダ溶液とを30秒間接触させ、エッチングした後に研磨を施して表面粗さ(RK、RpK、RvK)の調整を行った。なお、このとき、1つのシリンダあたり、液温が50±3℃で、濃度5.0wt%の苛性ソーダ溶液(3.5リットル)をエッチング液として用いた。また、ここで明記しておくが、摩耗試験用のボア材の場合には、外周面に当該エッチング処理を施すことになる。
[比較例1]
この比較例1では、表2に示す7種類のシリンダライナ相当材(「CL比較試料a」〜「CL比較試料g」)と、上記実施例で用いるファーストリング相当材である「FR試料3」とを用いた場合の「シリンダライナ相当材の摩耗量」、「ファーストリング相当材の摩耗量」、「シリンダライナ相当材の摩耗量とファーストリング相当材の摩耗量とを合計した総摩耗量」について確認する。比較例1では、ファーストリング相当材が「FR試料3」の試料を用いる点で共通する。表3より、「FR試料3」の表面粗さはRz0.7、Rpk0.06であり、表面粗さ特性2の範囲からみて比較的表面粗さの小さいものである。表5より、「FR試料3」と比較例1の各シリンダライナ相当材とを組み合わせた場合の摩耗量は、「シリンダライナ相当材の摩耗量」が0.41μm〜0.61μm(平均0.55μm)、「ファーストリング相当材の摩耗量」が0.90μm〜1.10μm(平均0.95μm)、「シリンダライナ相当材の摩耗量とファーストリング相当材の摩耗量とを合計した総摩耗量」が1.47μm〜1.55μm(平均1.50μm)となった。
この比較例1では、表2に示す7種類のシリンダライナ相当材(「CL比較試料a」〜「CL比較試料g」)と、上記実施例で用いるファーストリング相当材である「FR試料3」とを用いた場合の「シリンダライナ相当材の摩耗量」、「ファーストリング相当材の摩耗量」、「シリンダライナ相当材の摩耗量とファーストリング相当材の摩耗量とを合計した総摩耗量」について確認する。比較例1では、ファーストリング相当材が「FR試料3」の試料を用いる点で共通する。表3より、「FR試料3」の表面粗さはRz0.7、Rpk0.06であり、表面粗さ特性2の範囲からみて比較的表面粗さの小さいものである。表5より、「FR試料3」と比較例1の各シリンダライナ相当材とを組み合わせた場合の摩耗量は、「シリンダライナ相当材の摩耗量」が0.41μm〜0.61μm(平均0.55μm)、「ファーストリング相当材の摩耗量」が0.90μm〜1.10μm(平均0.95μm)、「シリンダライナ相当材の摩耗量とファーストリング相当材の摩耗量とを合計した総摩耗量」が1.47μm〜1.55μm(平均1.50μm)となった。
[比較例2]
この比較例2では、表2に示す7種類のシリンダライナ相当材(「CL比較試料a」〜「CL比較試料g」)と、上記実施例で用いるファーストリング相当材である「FR試料4」とを用いて、これらを組み合わせた場合の「シリンダライナ相当材の摩耗量」、「ファーストリング相当材の摩耗量」、「シリンダライナ相当材の摩耗量とファーストリング相当材の摩耗量とを合計した総摩耗量」について確認する。比較例2では、ファーストリング相当材が「FR試料4」の試料を用いる点で共通する。表3より、「FR試料4」の表面粗さはRz1.6、Rpk0.3であり、表面粗さ特性2の範囲からみて表面粗さが上限となる大きいものである。表5より、「FR試料4」と比較例2の各シリンダライナ相当材とを組み合わせた場合の摩耗量は、「シリンダライナ相当材の摩耗量」が0.44μm〜0.61μm(平均0.55μm)、「ファーストリング相当材の摩耗量」が0.92μm〜1.11μm(平均0.97μm)、「シリンダライナ相当材の摩耗量とファーストリング相当材の摩耗量とを合計した総摩耗量」が1.46μm〜1.58μm(平均1.53μm)となった。
この比較例2では、表2に示す7種類のシリンダライナ相当材(「CL比較試料a」〜「CL比較試料g」)と、上記実施例で用いるファーストリング相当材である「FR試料4」とを用いて、これらを組み合わせた場合の「シリンダライナ相当材の摩耗量」、「ファーストリング相当材の摩耗量」、「シリンダライナ相当材の摩耗量とファーストリング相当材の摩耗量とを合計した総摩耗量」について確認する。比較例2では、ファーストリング相当材が「FR試料4」の試料を用いる点で共通する。表3より、「FR試料4」の表面粗さはRz1.6、Rpk0.3であり、表面粗さ特性2の範囲からみて表面粗さが上限となる大きいものである。表5より、「FR試料4」と比較例2の各シリンダライナ相当材とを組み合わせた場合の摩耗量は、「シリンダライナ相当材の摩耗量」が0.44μm〜0.61μm(平均0.55μm)、「ファーストリング相当材の摩耗量」が0.92μm〜1.11μm(平均0.97μm)、「シリンダライナ相当材の摩耗量とファーストリング相当材の摩耗量とを合計した総摩耗量」が1.46μm〜1.58μm(平均1.53μm)となった。
[比較例3]
この比較例3では、表2に示す2種類のシリンダライナ相当材(「CL比較試料b」、「CL比較試料c」)と、上記実施例で用いるファーストリング相当材である「FR試料1」、「FR試料2」とを用いた場合の「シリンダライナ相当材の摩耗量」、「ファーストリング相当材の摩耗量」、「シリンダライナ相当材の摩耗量とファーストリング相当材の摩耗量とを合計した総摩耗量」について確認する。比較例3では、ファーストリング相当材が「FR試料1」及び「FR試料2」であり、表3に示すように、共に窒化処理層の厚さが40μmで、硬さが980HV0.1のものである。本件発明における当該窒化処理層の厚さの範囲が30μm〜150μmで、硬さの範囲が900HV0.1〜1200HV0.1であることから考えると、「FR試料1」及び「FR試料2」の窒化処理層の厚さ及び硬さは比較的下限よりのものである。表5より、「FR試料1」及び「FR試料2」と比較例3の各シリンダライナ相当材とを組み合わせた場合の摩耗量は、「シリンダライナ相当材の摩耗量」が0.55μm〜0.60μm(平均0.58μm)、「ファーストリング相当材の摩耗量」が0.93μm〜0.99μm(平均0.96μm)、「シリンダライナ相当材の摩耗量とファーストリング相当材の摩耗量とを合計した総摩耗量」が1.48μm〜1.58μm(平均1.54μm)となった。
この比較例3では、表2に示す2種類のシリンダライナ相当材(「CL比較試料b」、「CL比較試料c」)と、上記実施例で用いるファーストリング相当材である「FR試料1」、「FR試料2」とを用いた場合の「シリンダライナ相当材の摩耗量」、「ファーストリング相当材の摩耗量」、「シリンダライナ相当材の摩耗量とファーストリング相当材の摩耗量とを合計した総摩耗量」について確認する。比較例3では、ファーストリング相当材が「FR試料1」及び「FR試料2」であり、表3に示すように、共に窒化処理層の厚さが40μmで、硬さが980HV0.1のものである。本件発明における当該窒化処理層の厚さの範囲が30μm〜150μmで、硬さの範囲が900HV0.1〜1200HV0.1であることから考えると、「FR試料1」及び「FR試料2」の窒化処理層の厚さ及び硬さは比較的下限よりのものである。表5より、「FR試料1」及び「FR試料2」と比較例3の各シリンダライナ相当材とを組み合わせた場合の摩耗量は、「シリンダライナ相当材の摩耗量」が0.55μm〜0.60μm(平均0.58μm)、「ファーストリング相当材の摩耗量」が0.93μm〜0.99μm(平均0.96μm)、「シリンダライナ相当材の摩耗量とファーストリング相当材の摩耗量とを合計した総摩耗量」が1.48μm〜1.58μm(平均1.54μm)となった。
[比較例4]
この比較例4では、表2に示す2種類のシリンダライナ相当材(「CL比較試料e」、「CL比較試料f」)と、上記実施例で用いるファーストリング相当材である「FR試料5」、「FR試料6」とを用いた場合の「シリンダライナ相当材の摩耗量」、「ファーストリング相当材の摩耗量」、「シリンダライナ相当材の摩耗量とファーストリング相当材の摩耗量とを合計した総摩耗量」について確認する。比較例4では、ファーストリング相当材が「FR試料5」及び「FR試料6」であり、表3に示すように、共に窒化処理層の厚さが130μmで、硬さが1080HV0.1のものである。本件発明における当該窒化処理層の厚さの範囲が30μm〜150μmで、硬さの範囲が900HV0.1〜1200HV0.1であることから考えると、「FR試料5」及び「FR試料6」の窒化処理層の厚さ及び硬さは比較的上限よりのものである。表5より、「FR試料5」及び「FR試料6」と比較例4の各シリンダライナ相当材とを組み合わせた場合の摩耗量は、「シリンダライナ相当材の摩耗量」が0.56μm〜0.59μm(平均0.57μm)、「ファーストリング相当材の摩耗量」が0.90μm〜0.96μm(平均0.93μm)、「シリンダライナ相当材の摩耗量とファーストリング相当材の摩耗量とを合計した総摩耗量」が1.46μm〜1.55μm(平均1.51μm)となった。
この比較例4では、表2に示す2種類のシリンダライナ相当材(「CL比較試料e」、「CL比較試料f」)と、上記実施例で用いるファーストリング相当材である「FR試料5」、「FR試料6」とを用いた場合の「シリンダライナ相当材の摩耗量」、「ファーストリング相当材の摩耗量」、「シリンダライナ相当材の摩耗量とファーストリング相当材の摩耗量とを合計した総摩耗量」について確認する。比較例4では、ファーストリング相当材が「FR試料5」及び「FR試料6」であり、表3に示すように、共に窒化処理層の厚さが130μmで、硬さが1080HV0.1のものである。本件発明における当該窒化処理層の厚さの範囲が30μm〜150μmで、硬さの範囲が900HV0.1〜1200HV0.1であることから考えると、「FR試料5」及び「FR試料6」の窒化処理層の厚さ及び硬さは比較的上限よりのものである。表5より、「FR試料5」及び「FR試料6」と比較例4の各シリンダライナ相当材とを組み合わせた場合の摩耗量は、「シリンダライナ相当材の摩耗量」が0.56μm〜0.59μm(平均0.57μm)、「ファーストリング相当材の摩耗量」が0.90μm〜0.96μm(平均0.93μm)、「シリンダライナ相当材の摩耗量とファーストリング相当材の摩耗量とを合計した総摩耗量」が1.46μm〜1.55μm(平均1.51μm)となった。
[比較例5]
この比較例5では、表1に示す実施例で用いる2種類のシリンダライナ相当材(「CL試料2」、「CL試料5」)と、表3に示す比較例のファーストリング相当材である「FR比較試料A」又は「FR比較試料B」、実施例のファーストリング相当材である「FR試料3」及び「FR試料4」と同様の組成を備え、且つ表面粗さ特性2の範囲を超えた表面粗さを備える「FR比較試料C」とを用いた場合の「シリンダライナ相当材の摩耗量」、「ファーストリング相当材の摩耗量」、「シリンダライナ相当材の摩耗量とファーストリング相当材の摩耗量とを合計した総摩耗量」について確認する。
この比較例5では、表1に示す実施例で用いる2種類のシリンダライナ相当材(「CL試料2」、「CL試料5」)と、表3に示す比較例のファーストリング相当材である「FR比較試料A」又は「FR比較試料B」、実施例のファーストリング相当材である「FR試料3」及び「FR試料4」と同様の組成を備え、且つ表面粗さ特性2の範囲を超えた表面粗さを備える「FR比較試料C」とを用いた場合の「シリンダライナ相当材の摩耗量」、「ファーストリング相当材の摩耗量」、「シリンダライナ相当材の摩耗量とファーストリング相当材の摩耗量とを合計した総摩耗量」について確認する。
まず、「CL試料2」と「FR比較試料A」又は「FR比較試料B」とを用いた場合について確認する。ここで、「FR比較試料A」(SUS410J1相当材)及び「FR比較試料B」(SUS440B相当材)は、共に本件発明の組成と異なり炭素含有量を増加したマルテンサイト系ステンレス鋼であり、窒化処理層の硬さも本件発明の範囲の上限となるものである。
表5より、「FR比較試料A」と「CL試料2」とを組み合わせた場合の摩耗量は、「シリンダライナ相当材の摩耗量」が0.82μm、「ファーストリング相当材の摩耗量」が0.69μm、「シリンダライナ相当材の摩耗量とファーストリング相当材の摩耗量とを合計した総摩耗量」が1.51μmとなった。
これに対し、「FR比較試料B」と「CL試料2」とを組み合わせた場合の摩耗量は、「シリンダライナ相当材の摩耗量」が1.15μm、「ファーストリング相当材の摩耗量」が0.40μm、「シリンダライナ相当材の摩耗量とファーストリング相当材の摩耗量とを合計した総摩耗量」が1.55μmとなった。
次に、「FR比較試料C」と「CL試料5」とを組み合わせた場合の摩耗量は、「シリンダライナ相当材の摩耗量」が0.60μm、「ファーストリング相当材の摩耗量」が1.18μm、「シリンダライナ相当材の摩耗量とファーストリング相当材の摩耗量とを合計した総摩耗量」が1.78μmとなった。
なお、図5(a)に「FR比較試料A」における窒化処理層を形成したときの金属顕微鏡による断面観察像を示し、図5(b)に「FR比較試料B」における窒化処理層を形成したときの金属顕微鏡による断面観察像を示す。
比較例1及び比較例2の「CL比較試料a」と「CL比較試料d」との対比: 表5の比較例1及び比較例2の「CL比較試料a」と「CL比較試料d」とを比較した結果を以下に示す。ここで、「CL比較試料a」は、ケイ素含有量及びマグネシウム含有量が本件発明の範囲から下限側に外れており、「CL比較試料d」はケイ素含有量及びマグネシウム含有量が本件発明の範囲から上限側に外れているものである。表5の摩耗量について「CL比較試料a」と「CL比較試料d」とを比較した結果、「シリンダライナ相当材の摩耗量」は「CL比較試料a」が0.60μm、0.61μmであるのに対し、「CL比較試料d」が0.41μm、0.44μmとなり、「ファーストリング相当材の摩耗量」は「CL比較試料a」が0.90μm、0.92μmであるのに対し、「CL比較試料d」が1.10μm、1.11μmとなり、「シリンダライナ相当材の摩耗量とファーストリング相当材の摩耗量とを合計した総摩耗量」は「CL比較試料a」が1.50μm、1.53μmであるのに対し、「CL比較試料d」が1.51μm、1.55μmとなった。
この結果より、「CL比較試料a」は、ケイ素含有量及びマグネシウム含有量が共に少ないために固体潤滑作用を示す初晶ケイ素の一次結晶粒の晶出が不十分であると共に、マグネシウムとケイ素とで形成する固体潤滑作用を示す金属間化合物であるMg2Siの形成が不十分となり、「CL比較試料d」は凝固後のアルミニウムマトリックス中に存在する初晶ケイ素が粗大化し、分散密度が過剰になることで基地硬さが過剰となっていることが分かる。
比較例1及び比較例2の「CL比較試料b」と「CL比較試料c」との対比: 表5の比較例1及び比較例2の「CL比較試料b」と「CL比較試料c」とを比較した結果を以下に示す。ここで、「CL比較試料b」及び「CL比較試料c」は、共に同じシリンダライナ合金組成1の組成を備えるものであり、同じファーストリング相当材(「FR試料3」または「FR試料4」)を使用するものである。なお、「CL比較試料b」と「CL比較試料c」との相違点は、「CL比較試料b」の表面粗さが表面粗さ特性1の範囲より上限側に大きく外れるものであり、「CL比較試料c」の表面粗さが表面粗さ特性1の範囲より下限側に僅かに外れるものである。以上をふまえ、まず表5の比較例1について「CL比較試料b」と「CL比較試料c」との摩耗量を比較した結果、「シリンダライナ相当材の摩耗量」は「CL比較試料b」が0.61μmであるのに対し、「CL比較試料c」が0.56μmとなり、「ファーストリング相当材の摩耗量」は「CL比較試料b」が0.94μmであるのに対し、「CL比較試料c」が0.92μmとなり、「シリンダライナ相当材の摩耗量とファーストリング相当材の摩耗量とを合計した総摩耗量」は「CL比較試料b」が1.55μmであるのに対し、「CL比較試料c」が1.48μmとなった。
次に、表5の比較例2について「CL比較試料b」と「CL比較試料c」との摩耗量を比較した結果、「シリンダライナ相当材の摩耗量」は「CL比較試料b」が0.60μmであるのに対し、「CL比較試料c」が0.57μmとなり、「ファーストリング相当材の摩耗量」は「CL比較試料b」が0.98μmであるのに対し、「CL比較試料c」が0.96μmとなり、「シリンダライナ相当材の摩耗量とファーストリング相当材の摩耗量とを合計した総摩耗量」は「CL比較試料b」が1.58μmであるのに対し、「CL比較試料c」が1.53μmとなった。
以上の結果より、シリンダライナの表面粗さは、表面粗さ特性の範囲から外れる程、耐久性能の低下を招くことが分かった。この結果は、共に同じシリンダライナ合金組成2の組成を備え、且つ表面粗さが表面粗さ特性1の範囲より上限側と下限側とに外れる、比較例1及び比較例2における「CL比較試料e」と「CL比較試料f」との摩耗量を比較した場合にも同様の傾向が得られた。
比較例1及び比較例2の「CL比較試料c」と「CL比較試料f」との対比: 表5の比較例1及び比較例2の「CL比較試料c」と「CL比較試料f」とを比較した結果を以下に示す。ここで、「CL比較試料c」及び「CL比較試料f」は、共に同じ表面粗さを備えるものであり、同じファーストリング相当材(「FR試料3」または「FR試料4」)を使用するものである。なお、「CL比較試料c」と「CL比較試料f」との相違点は、「CL比較試料c」がシリンダライナ用合金組成1を備えるものであるのに対し、「CL比較試料f」がシリンダライナ用合金組成2を備えるものである。以上をふまえ、まず表5の比較例1について「CL比較試料c」と「CL比較試料f」との摩耗量を比較した結果、「シリンダライナ相当材の摩耗量」は「CL比較試料c」が0.56μmであるのに対し、「CL比較試料f」が0.55μmとなり、「ファーストリング相当材の摩耗量」は「CL比較試料c」と「CL比較試料f」が共に0.92μmとなり、「シリンダライナ相当材の摩耗量とファーストリング相当材の摩耗量とを合計した総摩耗量」は「CL比較試料c」が1.48μmであるのに対し、「CL比較試料c」が1.47μmとなった。
次に、表5の比較例2について「CL比較試料c」と「CL比較試料f」との摩耗量を比較した結果、「シリンダライナ相当材の摩耗量」は「CL比較試料c」が0.57μmであるのに対し、「CL比較試料f」が0.54μmとなり、「ファーストリング相当材の摩耗量」は「CL比較試料c」が0.96μmであるのに対し、「CL比較試料f」が0.95μmとなり、「シリンダライナ相当材の摩耗量とファーストリング相当材の摩耗量とを合計した総摩耗量」は「CL比較試料c」が1.53μmであるのに対し、「CL比較試料f」が1.49μmとなった。
以上の結果より、「FR試料3」または「FR試料4」に相当するファーストリング相当材を使用する限り、本件発明のシリンダライナ用合金組成1とシリンダライナ用合金組成2との組成の違いのみによって、「シリンダライナ相当材の摩耗量」、「ファーストリング相当材の摩耗量」、「シリンダライナ相当材の摩耗量とファーストリング相当材の摩耗量とを合計した総摩耗量」の各摩耗量の値に差が生ぜず、耐久性能に及ぼす影響はほぼ同様となることが分かった。
<実施例と比較例との対比>
上記表4、表5を参照しつつ、実施例と比較例との対比を行う。最初に、実施例の評価結果に関して述べる。実施例の「シリンダライナ相当材の摩耗量」は、0.41μm〜0.59μmであり、全て0.6μm以下の値になっている。そして、「ファーストリング相当材の摩耗量」は、0.83μm〜0.97μmであり、全て1.0μm以下の値になっている。更に、「シリンダライナ相当材の摩耗量とファーストリング相当材の摩耗量とを合計した総摩耗量」は、1.35μm〜1.45μmであり、全て1.45μm以下の値になっている。
上記表4、表5を参照しつつ、実施例と比較例との対比を行う。最初に、実施例の評価結果に関して述べる。実施例の「シリンダライナ相当材の摩耗量」は、0.41μm〜0.59μmであり、全て0.6μm以下の値になっている。そして、「ファーストリング相当材の摩耗量」は、0.83μm〜0.97μmであり、全て1.0μm以下の値になっている。更に、「シリンダライナ相当材の摩耗量とファーストリング相当材の摩耗量とを合計した総摩耗量」は、1.35μm〜1.45μmであり、全て1.45μm以下の値になっている。
実施例1と比較例1との対比: 表4及び表5に示すように、実施例1と比較例1とは、ファーストリング相当材として実施例の「FR試料3」と同様のものを使用している。しかし、シリンダライナに関しては、実施例1が「CL試料1」〜「CL試料7」を使用しているのに対し、比較例1が「CL比較試料a」〜「CL比較試料g」を使用している点で異なる。また、摩耗量について実施例1と比較例1とを比較をすると以下に示す結果となった。まず、「シリンダライナ相当材の摩耗量」について比較をすると、実施例1が平均0.48μmであるのに対し、比較例1は平均0.55μmとなった。
次に、「ファーストリング相当材の摩耗量」について比較すると、実施例1が平均0.90μmであるのに対し、比較例1は平均0.95μmとなった。
「シリンダライナ相当材の摩耗量とファーストリング相当材の摩耗量とを合計した総摩耗量」について比較すると、実施例1が平均1.38μmであるのに対し、比較例1は平均1.50μmとなった。
以上の結果より、実施例1と比較例1とを比較すると、「シリンダライナ相当材の摩耗量」と「ファーストリング相当材の摩耗量」との双方ともに比較例1の方が約0.05μm程度摩耗量が大きい値を示した。「シリンダライナ相当材の摩耗量とファーストリング相当材の摩耗量とを合計した総摩耗量」については、実施例1の最大摩耗量が1.41μmであるのに対し、比較例1は(「CL比較試料a」〜「CL比較試料g」)の全ての試料が1.45μmを超える値を示した。
実施例2と比較例2との対比: 表4及び表5に示すように、実施例2と比較例2とは、ファーストリング相当材として実施例の「FR試料4」と同様のものを使用している。しかし、シリンダライナに関しては、実施例2が「CL試料1」〜「CL試料7」を使用しているのに対し、比較例2が「CL比較試料a」〜「CL比較試料g」を使用している点で異なる。また、実施例2と比較例2とを摩耗量について比較をすると以下に示す結果となった。まず、「シリンダライナ相当材の摩耗量」について比較をすると、実施例2が平均0.50μmであるのに対し、比較例2は平均0.55μmとなった。
次に、「ファーストリング相当材の摩耗量」について比較すると、実施例2が平均0.92μmであるのに対し、比較例2は平均0.97μmとなった。
「シリンダライナ相当材の摩耗量とファーストリング相当材の摩耗量とを合計した総摩耗量」について比較すると、実施例2が平均1.42μmであるのに対し、比較例2は平均1.53μmとなった。
以上の結果より、実施例2と比較例2とを比較すると、「シリンダライナ相当材の摩耗量」と「ファーストリング相当材の摩耗量」との双方において比較例2の方が約0.05μm程度摩耗量が大きい値を示した。「シリンダライナ相当材の摩耗量とファーストリング相当材の摩耗量とを合計した総摩耗量」については、実施例2の最大摩耗量が1.45μmであるのに対し、比較例2は(「CL比較試料a」〜「CL比較試料g」)の全ての試料が1.45μmを超える値を示した。
実施例3と比較例3との対比: 表4及び表5に示すように、実施例3と比較例3とは、ファーストリング相当材に共に実施例の「FR試料1」、「FR試料2」と同様のものを使用している。しかし、シリンダライナ相当材に関して、実施例3は「CL試料2」、「CL試料5」、「CL試料7」を使用しているのに対し、比較例3は「CL比較試料b」、「CL比較試料c」を使用している点で異なる。また、実施例3と比較例3とを摩耗量について比較をすると以下に示す結果となった。まず、「シリンダライナ相当材の摩耗量」について比較をすると、実施例3が平均0.50μmであるのに対し、比較例3は平均0.58μmとなった。
次に、「ファーストリング相当材の摩耗量」について比較すると、実施例3が平均0.92μmであるのに対し、比較例3は平均0.96μmとなった。
「シリンダライナ相当材の摩耗量とファーストリング相当材の摩耗量とを合計した総摩耗量」について比較すると、実施例3が平均1.42μmであるのに対し、比較例3は平均1.54μmとなった。
以上の結果より、実施例3と比較例3とを比較すると、「シリンダライナ相当材の摩耗量」と「ファーストリング相当材の摩耗量」との双方において比較例3の方が平均で約0.05μm程度摩耗量が大きい値を示した。「シリンダライナ相当材の摩耗量とファーストリング相当材の摩耗量とを合計した総摩耗量」については、実施例3の最大摩耗量が1.45μmであるのに対し、比較例3は「CL比較試料b」、「CL比較試料c」の全ての試料が1.45μmを超える値を示した。
実施例4と比較例4との対比: 表4及び表5に示すように、実施例4と比較例4とは、ファーストリング相当材に共に実施例の「FR試料5」、「FR試料6」と同様のものを使用している。しかし、シリンダライナ相当材に関して、実施例4は「CL試料2」、「CL試料5」、「CL試料7」を使用しているのに対し、比較例4は「CL比較試料e」、「CL比較試料f」を使用している点で異なる。また、実施例4と比較例4とを摩耗量について比較をすると以下に示す結果となった。まず、「シリンダライナ相当材の摩耗量」について比較をすると、実施例4が平均0.52μmであるのに対し、比較例4は平均0.57μmとなった。
次に、「ファーストリング相当材の摩耗量」について比較すると、実施例4が平均0.89μmであるのに対し、比較例4は平均0.93μmとなった。
「シリンダライナ相当材の摩耗量とファーストリング相当材の摩耗量とを合計した総摩耗量」について比較すると、実施例4が平均1.40μmであるのに対し、比較例4は平均1.51μmとなった。
以上の結果より、実施例4と比較例4とを比較すると、「シリンダライナ相当材の摩耗量」と「ファーストリング相当材の摩耗量」との双方において比較例4の方が平均で約0.05μm程度摩耗量が大きい値を示した。「シリンダライナ相当材の摩耗量とファーストリング相当材の摩耗量とを合計した総摩耗量」については、実施例4の最大摩耗量が1.45μmであるのに対し、比較例4は「CL比較試料e」、「CL比較試料f」の全ての試料が1.45μmを超える値を示した。
実施例1及び実施例2と比較例5との対比: 表4及び表5に示すように、比較例5は、比較例1〜比較例4迄とは異なり、ファーストリング相当材に実施例の範囲に含まれない組成のものが使用されている。具体的には、比較例5では、表5から明らかなように、実施例で用いたオーステナイト系ステンレス鋼で製造したファーストリング相当材(「FR試料1」〜「FR試料6」)に比べて、硬いマルテンサイト系ステンレス鋼で製造したファーストリング相当材(「FR比較試料A」、「FR比較試料B」)が使用されている。なお、「FR比較試料C」に関しては実施例の「FR試料3」及び「FR試料4」と同様の組成のものを使用している。
また、シリンダライナ相当材に関しては、実施例1及び実施例2と比較例5とは、「CL試料2」及び「CL試料5」を含む点で共通する。よって、ここでは特に実施例1及び実施例2に関しては「CL試料2」及び「CL試料5」に該当する試料のみに着目して比較例5との比較をしていく。なお、比較例5の「FR比較試料A」、「FR比較試料B」を使用した場合は、シリンダライナ相当材として実施例の「CL試料2」を使用しているため、実施例1及び実施例2の「CL試料2」を使用する試料と比較例5の「FR比較試料A」、「FR比較試料B」とを比較すると以下に示す結果となった。
まず、「シリンダライナ相当材の摩耗量」について比較をすると、実施例1、実施例2がそれぞれ0.48μm、0.50μmであるのに対し、比較例5はそれぞれ0.82μm、1.15μmとなった。
次に、「ファーストリング相当材の摩耗量」について比較すると、実施例1、実施例2がそれぞれ0.92μm、0.94μmであるのに対し、比較例5はそれぞれ0.69μm、0.40μmとなった。
「シリンダライナ相当材の摩耗量とファーストリング相当材の摩耗量とを合計した総摩耗量」について比較すると、実施例1、実施例2がそれぞれ1.40μm、1.44μmであるのに対し、比較例5はそれぞれ1.51μm、1.55μmとなった。
以上の結果より、実施例1及び実施例2と比較例5とは、「シリンダライナ相当材の摩耗量」は比較例5の方が摩耗量が非常に大きくなる結果となった。これに対し「ファーストリング相当材の摩耗量」については、実施例1及び実施例2の方が摩耗量が大きくなる結果となった。「シリンダライナ相当材の摩耗量とファーストリング相当材の摩耗量とを合計した総摩耗量」については、実施例1及び実施例2の最大摩耗量が1.45μm以内であるのに対し、比較例5は「FR比較試料A」、「FR比較試料B」の双方の試料が1.45μmを超える値を示した。
以上の結果は、実施例1及び実施例2で使用したオーステナイト系ステンレス鋼で製造したファーストリング相当材(「FR試料3」、「FR試料4」)に対し、比較例5では硬いマルテンサイト系ステンレス鋼で製造したファーストリング相当材(「FR比較試料A」、「FR比較試料B」)を使用していることが原因と考えられる。表5に示されるように比較例5の「FR比較試料A」及び「FR比較試料B」は、「ファーストリング相当材の摩耗量」に比して「シリンダライナ相当材の摩耗量」が特に大きくなっているが、このファーストリング相当材とシリンダライナ相当材との組合せの場合、ファーストリング相当材のシリンダライナ相当材への攻撃性が大きすぎるため耐久性能が悪くなっていると思われる。
以上のことから、本件発明の内容を反映させた実施例では、良好な耐摩耗性能が得られるが、オーステナイト系ステンレス鋼を用いたファーストリング相当材であっても、上述の表面粗さ特性2の範囲に含まれない表面粗さのファーストリング相当材であれば、良好な耐摩耗性能が得られないことが理解できる。従って、シリンダライナとピストンリングとの相互の摺動面の表面粗さ特性が非常に重要な要素であることが理解できる。
また、図2(a)の「FR試料1」及び図2(b)の「FR試料3」をみると、オーステナイト系のステンレス層20の上の窒化処理層10が極めて均一な組織を示し、窒化時の窒素の侵入が良好に行われていることが分かる。これに対し、図5(a)の「FR比較試料A」及び図5(b)の「FR比較試料B」のマルテンサイト系のステンレス層20の上の窒化処理層10には、板状、粒状のクロム窒化物形成されており、アルミニウム系合金からなるボア材に対し攻撃性が高い。従って、マルテンサイト系ステンレス鋼に窒化処理を施すと、オーステナイト系ステンレス鋼との材料自体の硬さの差以上に、窒化表面の硬さが異なることになり、摺動して摩擦する相手に摩耗損傷を与え易くなると言える。
以上のことから、マルテンサイト系ステンレス鋼で製造したファーストリング相当材の場合には、本件発明で用いるオーステナイト系ステンレス鋼で製造したファーストリングの場合と同様の表面粗さ特性を備えていても、シリンダライナ(CL試料2)に対して与える摩耗が大きくなることが理解できる。
次に、比較例5の「FR比較試料C」を使用した場合について述べる。表5より、比較例5の「FR比較試料C」は、シリンダライナ相当材に実施例の「CL試料5」を使用しているため、実施例1及び実施例2の「CL試料5」を使用する試料と比較例5の「FR比較試料C」とを比較すると以下に示す結果となった。まず、「シリンダライナ相当材の摩耗量」について比較をすると、実施例1、実施例2が0.44μm、0.48μmであるのに対し、比較例5は0.60μmとなった。
次に、「ファーストリング相当材の摩耗量」について比較すると、実施例1、実施例2が共に0.92μmであるのに対し、比較例5は1.18μmとなった。
「シリンダライナ相当材の摩耗量とファーストリング相当材の摩耗量とを合計した総摩耗量」について比較すると、実施例1、実施例2が1.36μm、1.40μmであるのに対し、比較例5は1.78μmとなった。
以上の結果より、実施例1及び実施例2と比較例5とは、「シリンダライナ相当材の摩耗量」及び「ファーストリング相当材の摩耗量」について、比較例5の方が摩耗量が顕著に大きくなる結果となった。「シリンダライナ相当材の摩耗量とファーストリング相当材の摩耗量とを合計した総摩耗量」については、実施例1及び実施例2の最大摩耗量が1.45μm以内であるのに対し、比較例5は1.45μmを大きく超える値を示した。
更に、表3〜表5より、実施例1及び実施例2の「FR試料3」及び「FR試料4」と比較例5の「FR比較試料C」とを比較してみると、窒化層は、厚さが共に80μmであり、硬さも共に1050HV0.1で共通している。しかし、実施例2で用いたオーステナイト系ステンレス鋼で製造したファーストリング相当材(「FR試料3」、「FR試料4」)と比較すると、比較例5の場合は材質は同じであるが表面粗さの値が大きく、上述の表面粗さ特性2の範囲に含まれない表面特性を備えるファーストリング相当材(「FR比較試料C」)を、実施例2のシリンダライナ(「CL試料1」、「CL試料2」)に対して用いている。具体的には、ファーストリング表面の粗さに関して、「FR試料3」がRz0.7、Rk0.06であり、「FR試料4」がRz1.6、Rk0.3であり、「FR比較試料C」がRz1.7、Rk0.36である。この結果、本件発明で定めた範囲内の特性を備えるシリンダライナ相当材を使用した場合に、ファーストリング相当材の粗さはRz1.6、Rk0.3を超えると耐久性が悪化することが分かる。
「CL試料2」と「CL比較試料b」との対比: まず、表4及び表5の実施例1及び実施例2の「CL試料2」と比較例1及び比較例2の「CL比較試料b」とを比較した結果を以下に示す。ここで、「CL試料2」と「CL比較試料b」との相違点は、「CL比較試料b」が本件発明の表面粗さ特性1の範囲より上限側に外れた表面粗さを備えている点にある。表4及び表5の実施例1及び比較例1より、共通のファーストリング相当材である「FR試料3」と「CL試料2」、「CL比較試料b」の各シリンダライナ相当材とを組み合わせた場合の摩耗量を比較した場合、「シリンダライナ相当材の摩耗量」は「CL試料2」が0.48μmで、「CL比較試料b」が0.61μmとなり、「ファーストリング相当材の摩耗量」は「CL試料2」が0.92μmで、「CL比較試料b」が0.94μmとなり、「シリンダライナ相当材の摩耗量とファーストリング相当材の摩耗量とを合計した総摩耗量」は「CL試料2」が1.40μmで、「CL比較試料b」が1.55μmとなった。
次に、表4及び表5の実施例2及び比較例2より、共通のファーストリング相当材である「FR試料4」と「CL試料2」、「CL比較試料b」の各シリンダライナ相当材とを組み合わせた場合の摩耗量を比較した場合、「シリンダライナ相当材の摩耗量」は「CL試料2」が0.50μmで、「CL比較試料b」が0.60μmとなり、「ファーストリング相当材の摩耗量」は「CL試料2」が0.94μmで、「CL比較試料b」が0.98μmとなり、「シリンダライナ相当材の摩耗量とファーストリング相当材の摩耗量とを合計した総摩耗量」は、「CL試料2」が1.44μmで、「CL比較試料b」が1.58μmとなった。
以上の結果より、シリンダライナの備える表面粗さが本件発明の表面粗さ特性1の範囲より上限側に外れた場合、当該シリンダライナの耐摩耗性能が低下することが分かった。なお、このことは、「CL試料5」と「CL比較試料e」とを対比した場合も、表4及び表5から明らかなように同じ傾向となる。
以上のことから、本件発明で用いたオーステナイト系ステンレス鋼で製造したファーストリング相当材(「FR試料1」〜「FR試料6」)を、単に本件発明の条件と異なる特性のシリンダライナと組み合わせて用いても、本件発明に係るシリンダライナとファーストリング相当材との組み合わせと同等の耐摩耗特性が得られないことが理解できる。
実施例と比較例との対比のまとめ: 以上に述べてきた実施例と比較例との対比から、アルミニウム合金で製造したシリンダを用いる場合において、シリンダライナとピストンリング(ファーストリング相当材)との相互の摩耗、摩擦損傷等の摺動挙動による損傷を確実に減少させるためには、シリンダライナとピストンリングとの相互の摺動面の表面粗さ特性が最も重要であり、更に、相互の材質として、最も適当な組み合わせを選択することが重要であることが理解できる。
本件発明に係る内燃機関のピストンリングとシリンダライナとの組合せ構造は、アルミニウム合金製シリンダの内周面を構成するシリンダライナの表面粗さ特性と、ピストンリングのシリンダライナの内周面との摺動面の表面粗さを制御し、相互の材質の最適な選択を行うことで、シリンダライナとピストンリングの当該摺動面との双方の摩耗を最低限に抑制し、摺動挙動に伴う相互の摩擦損傷を効果的に軽減できる。その結果、自動車用エンジンを初めとする内燃機関の長寿命化、耐久性を飛躍的に向上させる事ができる。
1 試験材(リング材)
2 ボア材
3 オイルバス
4 潤滑油
5 摩耗試験機
6 回転ローター
10 窒化処理層
20 ステンレス層
W 荷重
2 ボア材
3 オイルバス
4 潤滑油
5 摩耗試験機
6 回転ローター
10 窒化処理層
20 ステンレス層
W 荷重
Claims (11)
- 内燃機関のピストン側に配置したピストンリングが、ピストンを収容するアルミニウム合金製シリンダの内周面を構成するシリンダライナに対し、所定の面圧となるように配置して摺動する内燃機関のピストンリングとシリンダライナとの組合せ構造であって、
当該シリンダライナは、その内周面が、以下に表面粗さ特性1として示した(1)〜(4)の各条件を備えるものであり、
当該ピストンリングのシリンダライナの内周壁との摺動面は、以下の表面粗さ特性2として示す(a)及び(b)の条件を備えるものであり、
当該シリンダライナの内周面に対し、ピストン側に配置した当該ピストンリングの面圧が0.03MPa〜0.2MPaとして用いることを特徴とする内燃機関のピストンリングとシリンダライナとの組合せ構造。
[表面粗さ特性1]
(1)JIS B 0601(1994)に定める十点平均粗さ(Rz)が0.5μm〜1.0μm。
(2)DIN4776に定める有効負荷粗さ(Rk)が0.2μm〜0.4μm。
(3)DIN4776に定める初期摩耗高さ(Rpk)が0.05μm〜0.1μm。
(4)DIN4776に定める油溜まり深さ(Rvk)が0.08μm〜0.2μm。
[表面粗さ特性2]
(a)JIS B 0601(1994)に定める十点平均粗さ(Rz)が1.6μm以下。
(b)DIN4776に定める初期摩耗高さ(Rpk)が0.3μm以下。 - 前記シリンダライナは、以下に記載のシリンダライナ用合金組成1を備えるものを用いる請求項1に記載の内燃機関のピストンリングとシリンダライナとの組合せ構造。
[シリンダライナ用合金組成1]
ケイ素 :20.0質量%〜28.0質量%
マグネシウム:0.4質量%〜2.0質量%
銅 :2.0質量%〜4.5質量%
鉄 :0.60質量%以下
ニッケル :0.01質量%以下
残部 :アルミニウム及び不可避的不純物 - 前記シリンダライナは、以下に記載のシリンダライナ用合金組成2を備えるものを用いる請求項1に記載の内燃機関のピストンリングとシリンダライナとの組合せ構造。
[シリンダライナ用合金組成2]
ケイ素 :20.0質量%〜28.0質量%
マグネシウム:0.8質量%〜2.0質量%
銅 :3.0質量%〜4.5質量%
鉄 :1.0質量%〜1.4質量%
ニッケル :1.0質量%〜5.0質量%
残部 :アルミニウム及び不可避的不純物 - 前記ピストンリングは、以下に記載のピストンリング用合金組成のオーステナイト系ステンレス鋼を用いたものである請求項1〜請求項3のいずれかに記載の内燃機関のピストンリングとシリンダライナとの組合せ構造。
[ピストンリング用合金組成]
ニッケル :3.5質量%〜15.0質量%
クロム :13.0質量%〜20.0質量%
炭素 :0.15質量%以下
ケイ素 :1.0質量%以下
マンガン :7.5質量%以下
リン :0.06質量%以下
硫黄 :0.03質量%以下
残部 :鉄及び不可避的不純物 - 前記ピストンリングは、前記ピストンリング用合金組成に更にモリブデンを1質量%〜4質量%含むことを特徴とする請求項4に記載の内燃機関のピストンリングとシリンダライナとの組合せ構造。
- 前記ピストンリングのシリンダライナ内周壁との摺動面は、
その表面に厚さ30μm〜150μmの窒化処理層を備え、且つ、その表面のビッカース硬さ(HV)が900HV0.1〜1200HV0.1である請求項1〜請求項5のいずれかに記載の内燃機関のピストンリングとシリンダライナとの組合せ構造。 - 前記ピストンリングのシリンダライナ内周壁との摺動面は、その表面にダイアモンド ライク カーボン層を備えるものである請求項1〜請求項6のいずれかに記載の内燃機関のピストンリングとシリンダライナとの組合せ構造。
- 前記ピストンリングのピストンリング溝と接するピストンリング上面及びピストンリング下面は、耐熱樹脂又は、耐熱樹脂に無機フィラーを含有させたフィラー含有耐熱樹脂のいずれかを用いて形成した樹脂コート層を備える請求項1〜請求項7のいずれかに記載の内燃機関のピストンリングとシリンダライナとの組合せ構造。
- 前記耐熱樹脂は、耐熱温度が150℃以上のポリベンゾイミダゾール樹脂又はポリイミドアミド樹脂のいずれかである請求項8に記載の内燃機関のピストンリングとシリンダライナとの組合せ構造。
- 前記ピストンリング上面及びピストンリング下面は、化成処理により粗化した表面を備え、この粗化表面上に前記樹脂コート層を設けたものである請求項8又は請求項9に記載の内燃機関のピストンリングとシリンダライナとの組合せ構造。
- 請求項1〜請求項10のいずれかに記載の内燃機関のピストンリングとシリンダライナとの組合せ構造を用いたことを特徴とする内燃機関。
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2007311532 | 2007-11-30 | ||
JP2007311532 | 2007-11-30 | ||
PCT/JP2008/071556 WO2009069703A1 (ja) | 2007-11-30 | 2008-11-27 | 内燃機関のピストンリングとシリンダライナとの組合せ構造 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPWO2009069703A1 true JPWO2009069703A1 (ja) | 2011-04-14 |
Family
ID=40678595
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2009543848A Pending JPWO2009069703A1 (ja) | 2007-11-30 | 2008-11-27 | 内燃機関のピストンリングとシリンダライナとの組合せ構造 |
Country Status (3)
Country | Link |
---|---|
US (1) | US20100319647A1 (ja) |
JP (1) | JPWO2009069703A1 (ja) |
WO (1) | WO2009069703A1 (ja) |
Families Citing this family (27)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP5545774B2 (ja) * | 2009-12-08 | 2014-07-09 | 株式会社リケン | ピストンリング及びピストン装置 |
JP5715754B2 (ja) * | 2009-12-24 | 2015-05-13 | 株式会社不二工機 | 四方切換弁 |
BRPI0905228B1 (pt) * | 2009-12-29 | 2017-01-24 | Mahle Metal Leve Sa | anel de pistão nitretado resistente à propagação de trincas |
CN102115885B (zh) * | 2009-12-30 | 2012-07-18 | 上海工程技术大学 | 一种对铝合金零件进行无油自润滑镀层处理的工艺 |
BRPI1100176A2 (pt) * | 2011-02-10 | 2013-04-24 | Mahle Metal Leve Sa | componente de motor |
FR2990246B1 (fr) * | 2012-05-03 | 2014-05-02 | Hydromecanique & Frottement | Chemise de moteur a combustion interne |
BR102012012636B1 (pt) * | 2012-05-25 | 2022-01-04 | Mahle Metal Leve S/A | Cilindro para aplicação em um motor de combustão interna |
JP5939928B2 (ja) | 2012-08-06 | 2016-06-22 | 大同メタル工業株式会社 | すべり軸受 |
JP5942698B2 (ja) * | 2012-08-23 | 2016-06-29 | マツダ株式会社 | エンジン燃焼室部材の断熱構造体及びその製造方法 |
JP2014040820A (ja) | 2012-08-23 | 2014-03-06 | Mazda Motor Corp | エンジン燃焼室に臨む部材の断熱構造体及びその製造方法 |
JP6036005B2 (ja) * | 2012-08-23 | 2016-11-30 | マツダ株式会社 | エンジン燃焼室部材の断熱構造体及びその製造方法 |
BR102012024729B1 (pt) * | 2012-09-27 | 2020-05-19 | Mahle Int Gmbh | anel de controle de óleo de três peças para motores de combustão interna, elemento expansor e elemento anelar |
DE112013006827T5 (de) | 2013-03-14 | 2015-12-17 | Applied Nano Surfaces Schweden Ab | Gleitsatz zur Verwendung in einem Verbrennungsmotor |
BR102013011586B1 (pt) * | 2013-05-09 | 2022-03-03 | Mahle International Gmbh | Conjunto de deslizamento e bloco de motor |
BR102013018952B1 (pt) * | 2013-07-24 | 2021-10-26 | Mahle Metal Leve S/A | Conjunto de deslizamento |
BR102013019686B1 (pt) | 2013-08-01 | 2020-11-03 | Mahle Metal Leve S/A | anel de pistão e seu processo de fabricação |
US11274260B2 (en) * | 2013-10-02 | 2022-03-15 | Shimano Inc. | Slide member, bicycle component using slide member, and fishing tackle component using slide member |
BR102013031072A2 (pt) | 2013-12-03 | 2015-09-22 | Mahle Int Gmbh | conjunto de deslizamento |
BR102013031391A2 (pt) * | 2013-12-06 | 2015-07-21 | Mahle Metal Leve Sa | Anel de pistão e processo de tratamento térmico |
DE102014003114B3 (de) * | 2014-03-11 | 2014-12-31 | Daimler Ag | Verfahren zum Beschichten eines Substrats, bei dem ein drahtförmiger Spritzwerkstoff in einem Lichtbogen aufgeschmolzen und als Schicht auf dem Substrat abgeschieden wird sowie lichtbogendrahtgespritzte Schicht |
US9551419B2 (en) * | 2015-04-22 | 2017-01-24 | Federal-Mogul Corporation | Coated sliding element |
JP6139605B2 (ja) | 2015-07-17 | 2017-05-31 | 株式会社リケン | ピストンリング及びその製造方法 |
CN107557697B (zh) * | 2016-06-30 | 2019-04-02 | 郑州永通特钢有限公司 | 一种索氏体不锈钢 |
US10737462B2 (en) * | 2016-08-24 | 2020-08-11 | Hyundai Motor Company | Method for coating surface of moving part of vehicle and moving part of vehicle manufactured by the same |
JP6962998B2 (ja) | 2019-12-17 | 2021-11-05 | 株式会社リケン | シリンダとピストンリングとの組み合わせ |
JP7032469B2 (ja) * | 2020-03-26 | 2022-03-08 | 大同メタル工業株式会社 | 摺動部材 |
US11346301B1 (en) * | 2020-11-12 | 2022-05-31 | Caterpillar Inc. | Piston having smoothed outer crown surface in deposit-sensitive zone |
Citations (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2860537B2 (ja) * | 1995-06-28 | 1999-02-24 | メルセデス−ベンツ・アクチエンゲゼルシヤフト | 往復ピストン機関のクランクケースへ鋳込むための過共晶アルミニウム−珪素合金から成るシリンダライナ及びこのようなシリンダライナの製造方法 |
JP2000145962A (ja) * | 1998-11-09 | 2000-05-26 | Teikoku Piston Ring Co Ltd | 組合せリング |
JP2003042294A (ja) * | 2001-07-31 | 2003-02-13 | Nippon Piston Ring Co Ltd | ピストンリング |
JP2003254156A (ja) * | 2002-02-28 | 2003-09-10 | Nippon Piston Ring Co Ltd | シリンダとピストンリングとの組み合わせ |
JP2004116707A (ja) * | 2002-09-27 | 2004-04-15 | Nippon Piston Ring Co Ltd | 組合せ摺動部材 |
JP2007232026A (ja) * | 2006-02-28 | 2007-09-13 | Riken Corp | 摺動部材 |
Family Cites Families (9)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US5154433A (en) * | 1991-06-14 | 1992-10-13 | Teikoku Piston Ring Co., Ltd. | Piston ring |
JPH0763266A (ja) * | 1993-08-25 | 1995-03-07 | Nippon Piston Ring Co Ltd | ピストンリング |
US6096143A (en) * | 1994-10-28 | 2000-08-01 | Daimlerchrysler Ag | Cylinder liner of a hypereutectic aluminum/silicon alloy for use in a crankcase of a reciprocating piston engine and process for producing such a cylinder liner |
JP3355306B2 (ja) * | 1997-09-30 | 2002-12-09 | 帝国ピストンリング株式会社 | ピストンリング |
JP3623741B2 (ja) * | 2001-02-19 | 2005-02-23 | 大同メタル工業株式会社 | すべり軸受及びその製造方法 |
JP2003194224A (ja) * | 2001-12-26 | 2003-07-09 | Isuzu Motors Ltd | ピストンリング及びピストンのシール方法 |
CN1330873C (zh) * | 2002-07-25 | 2007-08-08 | 株式会社理研 | 活塞环 |
JP2006275269A (ja) * | 2005-03-30 | 2006-10-12 | Nippon Piston Ring Co Ltd | 組合せ摺動部材 |
JP4954644B2 (ja) * | 2006-08-31 | 2012-06-20 | 日本ピストンリング株式会社 | シリンダライナとピストンリングの組み合わせ |
-
2008
- 2008-11-27 US US12/743,825 patent/US20100319647A1/en not_active Abandoned
- 2008-11-27 JP JP2009543848A patent/JPWO2009069703A1/ja active Pending
- 2008-11-27 WO PCT/JP2008/071556 patent/WO2009069703A1/ja active Application Filing
Patent Citations (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2860537B2 (ja) * | 1995-06-28 | 1999-02-24 | メルセデス−ベンツ・アクチエンゲゼルシヤフト | 往復ピストン機関のクランクケースへ鋳込むための過共晶アルミニウム−珪素合金から成るシリンダライナ及びこのようなシリンダライナの製造方法 |
JP2000145962A (ja) * | 1998-11-09 | 2000-05-26 | Teikoku Piston Ring Co Ltd | 組合せリング |
JP2003042294A (ja) * | 2001-07-31 | 2003-02-13 | Nippon Piston Ring Co Ltd | ピストンリング |
JP2003254156A (ja) * | 2002-02-28 | 2003-09-10 | Nippon Piston Ring Co Ltd | シリンダとピストンリングとの組み合わせ |
JP2004116707A (ja) * | 2002-09-27 | 2004-04-15 | Nippon Piston Ring Co Ltd | 組合せ摺動部材 |
JP2007232026A (ja) * | 2006-02-28 | 2007-09-13 | Riken Corp | 摺動部材 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
WO2009069703A1 (ja) | 2009-06-04 |
US20100319647A1 (en) | 2010-12-23 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JPWO2009069703A1 (ja) | 内燃機関のピストンリングとシリンダライナとの組合せ構造 | |
JP5030439B2 (ja) | 摺動部材 | |
JP4954644B2 (ja) | シリンダライナとピストンリングの組み合わせ | |
JP6326426B2 (ja) | 滑り軸受複合材料 | |
CN101435381B (zh) | 活塞环 | |
JP5545774B2 (ja) | ピストンリング及びピストン装置 | |
JP6276929B2 (ja) | 軸受部品及び溶射法 | |
KR100670228B1 (ko) | 알루미늄 전신재 합금 | |
JP2013528697A (ja) | コーティングを有するスライド要素、特に、ピストンリング、およびスライド要素を製造するプロセス | |
US20070199442A1 (en) | Piston pin with slide layer for connecting rod eye for internal combustion engines | |
JP5042466B2 (ja) | 直受コンロッド及びその製造方法 | |
JP4901207B2 (ja) | ピストンリング | |
JP2011075065A (ja) | 内燃機関用オイルリング | |
JP2000345258A (ja) | すべり軸受 | |
JP2001280497A (ja) | アルミニウム合金製シリンダとピストンリングの組合せ | |
JP2003013163A (ja) | 粉末アルミニウム合金製摺動部材及びシリンダとピストンリングの組み合わせ | |
JP2006057674A (ja) | 摺動部材及びピストンリング | |
JP4725229B2 (ja) | 組合せ摺動部材、及びこれを用いた内燃機関及びすべり軸受機構 | |
JP2003343353A (ja) | 内燃機関のシリンダとピストンリングの組み合わせ | |
JP4374160B2 (ja) | ピストンリング | |
JP3690512B2 (ja) | アルミ合金摺動部材と相手摺動部材の組合せ | |
JPH04331817A (ja) | 複合めっき皮膜を有するすべり軸受 | |
US20230193950A1 (en) | Plain bearing, notably for aerospace applications, having improved wear resistance | |
KR100536785B1 (ko) | 내마모성 슬라이딩 부재 | |
JP2004176848A (ja) | 非晶質硬質炭素被覆部材と鉄系部材の組み合わせ |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20110811 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20121126 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20130124 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20130723 |