JPWO2009022660A1 - シール材用高飽和ニトリルゴムおよびゴム架橋物 - Google Patents
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Abstract
【課題】アルコールを含有する溶液を封止するために用いられるシール材用の高飽和ニトリルゴムであって、ヨウ素価が80以下、界面活性剤の含有量が0.4重量%以下であるシール材用高飽和ニトリルゴム。本発明によれば、水溶性インクやアルコールを含む燃料油等のアルコールを含有する溶液による、含有成分の溶出が有効に防止されており、しかも耐熱老化性に優れたゴム架橋物を与えることができる。
Description
本発明は、アルコールを含有する溶液を封止するために用いられるシール材用の高飽和ニトリルゴム、およびこれを架橋してなるゴム架橋物に関する。
インクジェット記録方式は、水およびアルコールを含有するインクを記録ヘッドに形成された極細いノズル(プリントヘッドノズル)より噴出させて、シート状の記録媒体(記録紙など)に付着させることにより、画像や文字などを記録する方式である。この方式は記録時の騒音が少なく、高速印字が可能であり、しかも複数のノズルによるカラー化が容易であることから各種端末用のプリンターやコピー機などに広く利用されている。
このようなインクジェット式の記録装置においては、水溶性のインクが充填されたインクカートリッジを、記録装置本体に形成されたインク供給流路を介して記録ヘッドと接続し、記録ヘッドにインクを供給できるように構成されている。そして、記録ヘッドに形成された極細いノズルよりインクを噴出できるようになっている。ここで、インクカートリッジにはインク供給口が、記録装置本体のインク供給流路には中空針が、それぞれ設けられており、記録装置本体にインクカートリッジを装着することにより、インクカートリッジのインク供給口に中空針が挿入、結合されるようになっている。これにより、インクカートリッジから、中空針を介して、記録ヘッドにインクが補給される構成となっている。
インクカートリッジは、その内部に水溶性のインクが充填されている一方で、このように記録装置本体に形成された中空針に装着されるものであるため、中空針との接触部分の気密性を確保するために、ゴム材料あるいはエラストマー樹脂等の弾性材料からなるパッキンが用いられている。たとえば、特許文献1では、インクカートリッジ用のパッキンとして、ポリエチレンオイルを25重量%以下含有する熱可塑性エラストマーで構成されたパッキンを用いる点が開示されている。なお、この特許文献1では、熱可塑性エラストマー中におけるポリエチレンオイルの含有量に関し、その下限を20重量%とすることが好ましい旨が記載されている。
一方で、従来より、ニトリルゴム(α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位を有するニトリル基含有共重合体ゴム)の炭素−炭素不飽和結合部を水素添加(「水素化」とも言う。)して得られる高飽和ニトリルゴム(ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム)は、耐油性、耐熱老化性および耐オゾン性に優れるゴムとして知られている。このような高飽和ニトリルゴムの架橋物は、ベルト、ホース、ガスケット、パッキン、オイルシールなど種々のゴム製品として用いられている。
このような高飽和ニトリルゴムは、耐熱老化性に優れているという点から、上述したインクカートリッジ用のパッキンとして用いることが期待されている。しかしその一方で、インクカートリッジに充填される水溶性のインクとしては、印刷後における耐水性を向上させるために、近年、アルコールに可溶な顔料や染料が用いられるようになってきており、また、プリントヘッドノズル先端でのインクの乾燥防止、インクの記録紙への浸透速度を向上させる等の目的のため、インク中に含有されるアルコールの量も多くなってきている。そして、このような高飽和ニトリルゴムやその他のゴム材料、あるいは樹脂(たとえば、ポリエチレンなどのポリオレフィン樹脂)を、インクカートリッジ用のパッキンとして用いると、これらのゴムや樹脂中に含有されている成分が、インク中に含有されるアルコールの影響により溶出してしまい、記録ヘッドのノズルが詰まってしまうという問題がある。特に、インク中に含有されるアルコール量が多くなった場合に、このような問題が顕著となっていた。加えて、近年、インクジェット式記録装置においては、高精細な印刷および印刷の高速化に対応するために、記録ヘッドのノズルの微細化が進んでおり、このような観点からも上記問題の解決が望まれている。
また、高飽和ニトリルゴムは、自動車の燃料油用のシール材などとしても用いられているが、このような自動車の燃料油用のシール材においては、ガソリン蒸散の低減が盛んに検討されており、そのため、自動車の燃料油用のシール材に用いられる高飽和ニトリルゴムには、耐熱老化性及び耐燃料油性の向上が求められている。特に、近年においては、化石燃料の枯渇や二酸化炭素発生の抑制といった観点から、ガソリンや軽油等の燃料油にエタノールなどのアルコールを混合することが検討されており、このような場合には、従来から用いられている高飽和ニトリルゴムでは耐燃料油性(シール性能)が悪化してしまう。そのため、耐熱老化性に優れ、かつ、アルコール含有ガソリンに対して高い耐燃料油性を示す、シール材用の高飽和ニトリルゴムが望まれていた。
特開2001−191547号公報(対応USは、US2002/0024572A1)
本発明は、水溶性インク等のアルコールを含有する溶液による、含有成分の溶出が有効に防止されており、しかも耐熱老化性に優れたゴム架橋物を与えることができるシール材用の高飽和ニトリルゴム、およびこの高飽和ニトリルゴムを架橋してなるシール材用のゴム架橋物を提供することを目的とする。また、本発明は、アルコール(特に、エタノール)を含有するガソリンや軽油に対して高い耐燃料油性を示し、しかも耐熱老化性に優れたシール材用のゴム架橋物を提供することも目的とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、高飽和ニトリルゴムの界面活性剤量を所定の範囲に制御することにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明によれば、アルコールを含有する溶液を封止するために用いられるシール材用の高飽和ニトリルゴムであって、ヨウ素価が80以下、界面活性剤の含有量が0.4重量%以下であるシール材用高飽和ニトリルゴムが提供される。
本発明のシール材用高飽和ニトリルゴムにおいて、好ましくは、石けんの含有量が0.08重量%以下である。
本発明のシール材用高飽和ニトリルゴムにおいて、好ましくは、メタノール抽出量が0.7重量%以下である。
本発明のシール材用高飽和ニトリルゴムにおいて、好ましくは、前記高飽和ニトリルゴムが、アニオン性界面活性剤を用いた乳化重合により得られたニトリルゴムに水素添加反応を行うことによって製造したものである。
本発明のシール材用高飽和ニトリルゴムにおいて、好ましくは、前記アニオン性界面活性剤が、カプリン酸塩である。
本発明のシール材用高飽和ニトリルゴムにおいて、好ましくは、石けんの含有量が0.08重量%以下である。
本発明のシール材用高飽和ニトリルゴムにおいて、好ましくは、メタノール抽出量が0.7重量%以下である。
本発明のシール材用高飽和ニトリルゴムにおいて、好ましくは、前記高飽和ニトリルゴムが、アニオン性界面活性剤を用いた乳化重合により得られたニトリルゴムに水素添加反応を行うことによって製造したものである。
本発明のシール材用高飽和ニトリルゴムにおいて、好ましくは、前記アニオン性界面活性剤が、カプリン酸塩である。
本発明によれば、上記いずれかのシール材用高飽和ニトリルゴムに、架橋剤を配合してなるシール材用架橋性ニトリルゴム組成物が提供される。
本発明によれば、上記シール材用架橋性ニトリルゴム組成物を架橋してなるシール材用ゴム架橋物が提供される。好ましくは、本発明のシール材用ゴム架橋物は、インクカートリッジ用のシール材又は燃料油用のシール材である。
また、好ましくは、上記燃料油が、エタノール含有ガソリン又はエタノールを含有する軽油である。
本発明によれば、上記シール材用架橋性ニトリルゴム組成物を架橋してなるシール材用ゴム架橋物が提供される。好ましくは、本発明のシール材用ゴム架橋物は、インクカートリッジ用のシール材又は燃料油用のシール材である。
また、好ましくは、上記燃料油が、エタノール含有ガソリン又はエタノールを含有する軽油である。
本発明によれば、水溶性インク等のアルコールを含有する溶液による、含有成分の溶出が有効に防止されており、しかも耐熱老化性に優れたゴム架橋物を与えることができるシール材用の高飽和ニトリルゴム、およびこれを架橋してなるシール材用のゴム架橋物が提供される。特に、本発明によれば、アルコールを含有する溶液中におけるアルコール量が比較的多い場合でも、含有成分の溶出を有効に防止できる高飽和ニトリルゴムおよびゴム架橋物を提供できるものである。本発明に係るシール材用のゴム架橋物は上記特性を生かし、特にインクジェット式記録装置に用いられるインクカートリッジ用のパッキン用途に好適に用いることができる。
加えて、本発明に係るシール材用のゴム架橋物は、アルコールを含有する燃料油に対して高い耐燃料油性を示し、しかも耐熱老化性に優れるため、アルコール(特に、エタノール)を含有する燃料油用のシール材として好適に用いることができる。
シール材用高飽和ニトリルゴム
本発明のシール材用高飽和ニトリルゴム(以下、「高飽和ニトリルゴム(A)」と記すことがある。)は、アルコールを含有する溶液を封止するためのシール材として用いられるものであり、ヨウ素価が80以下、界面活性剤の含有量が0.4重量%以下のものである。
本発明のシール材用高飽和ニトリルゴム(以下、「高飽和ニトリルゴム(A)」と記すことがある。)は、アルコールを含有する溶液を封止するためのシール材として用いられるものであり、ヨウ素価が80以下、界面活性剤の含有量が0.4重量%以下のものである。
本発明の高飽和ニトリルゴム(A)の用途としてのシール材としては、アルコールを含有する溶液を封止するためのものであれば良く、ガスケット、パッキン等の各種シールが挙げられる。本発明においては、アルコールを含有する溶液を封止するためのシール材、特に、インクジェット式記録装置に用いられるインクカートリッジ用のシール材、及び、燃料油(たとえば、アルコールと、ガソリンまたは軽油とからなる燃料油)用のシール材が好ましい。
本発明の高飽和ニトリルゴム(A)のヨウ素価は80以下であり、好ましくは60以下、より好ましくは40以下、特に好ましくは30以下である。高飽和ニトリルゴム(A)のヨウ素価が高すぎると、得られるゴム架橋物の耐熱老化性や耐オゾン性が低下するおそれがある。
また、本発明の高飽和ニトリルゴム(A)は、界面活性剤の含有量が0.4重量%以下であり、好ましくは0.3重量%以下、より好ましくは0.2重量%以下である。高飽和ニトリルゴム(A)中に含有される界面活性剤の量が多すぎると、得られるゴム架橋物を、シール材、特にインクカートリッジ用のパッキンとして用いた場合に、界面活性剤が、インクに含まれるアルコールにより溶出し、ノズルの目詰まりが発生してしまう。あるいは、溶出した界面活性剤がインク中の成分と反応等することにより、アルコールを含有する溶液に不溶な成分となり、ノズルの目詰まりの発生の原因となってしまう。また、エタノール含有燃料油のシール材とした場合に、耐熱老化性及び耐燃料油性が劣るため、燃料油を構成するガソリンや軽油、エタノールの透過性が高くなり、ガソリンや軽油、エタノール飛散の原因となってしまう。なお、高飽和ニトリルゴム(A)と、これを架橋して得られるゴム架橋物とでは、含有される界面活性剤の量はほぼ同程度となる。
本発明において、高飽和ニトリルゴム(A)中の界面活性剤量は、エタノールとトルエンの混合液(エタノール70容量%、トルエン30容量%)を抽出液として用い、JIS K6237と同様の方法(指示薬を用いた、水酸化ナトリウムおよび塩酸による中和滴定)で、界面活性剤量(有機酸の量と石けんの量との合計量)を求め、抽出前の高飽和ニトリルゴムに対する、抽出された界面活性剤の重量割合(単位は、重量%)として求めたものである。なお、高飽和ニトリルゴム(A)中に含有される界面活性剤としては、疎水基および親水基の両方を有する化合物であり、上記方法により抽出、測定される通常の界面活性剤であれば何でも良いが、乳化重合反応の安定性の観点から、通常はアニオン性界面活性剤が含有されている。
また、本発明においては、高飽和ニトリルゴム(A)は、界面活性剤の含有量が上記範囲であり、かつ、界面活性剤中の石けんの含有量が次の範囲に制御されていることが好ましい。すなわち、高飽和ニトリルゴム(A)中の石けんの含有量が、好ましくは0.08重量%以下、より好ましくは0.05重量%以下、さらに好ましくは0.04重量%以下に制御されていることが望ましい。界面活性剤中の石けんの含有量を上記範囲とすることにより、界面活性剤の含有量を上述した範囲とすることにより得られる効果を更に高めることができる。なお、本発明において、石けんとは有機酸の塩であり、脂肪酸の塩であることが好ましく、脂肪酸のナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩であることが特に好ましい。石けんの具体例としては、後述する「乳化剤として作用する界面活性剤の具体例」と同様のものが挙げられる。また、高飽和ニトリルゴム(A)中の石けん量は、上記した界面活性剤量の測定において、測定することができる。
また、高飽和ニトリルゴム(A)のメタノール抽出量は、好ましくは0.7重量%以下であり、より好ましくは0.6重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下である。メタノール抽出量をこのような範囲とすることにより、得られるゴム架橋物を、シール材、特にインクカートリッジ用のパッキンとして用いた場合における、アルコールによる、界面活性剤(有機酸および石けん)やその他の不純物の溶出の防止効果の更なる改善を図ることができる。また、メタノール抽出量を上記範囲とすることにより、耐熱老化性も改善できる。なお、高飽和ニトリルゴム(A)と、これを架橋して得られるゴム架橋物とでは、メタノール抽出量はほぼ同程度となる。
本発明においてメタノール抽出量とは、次の方法により測定されるものである。
すなわち、3mm角に細断した高飽和ニトリルゴム6gを50mlのメタノールに分散させて、ソックスレー抽出器を用いて65℃で6時間抽出した後にメタノールを濾別し、濾液からメタノールを蒸発除去させ、次いで真空乾燥することによりメタノール抽出分(固形分)を得る。そして、抽出前の高飽和ニトリルゴムに対する、得られたメタノール抽出分の重量割合(単位は、重量%)を求め、これをメタノール抽出量とすることができる。
すなわち、3mm角に細断した高飽和ニトリルゴム6gを50mlのメタノールに分散させて、ソックスレー抽出器を用いて65℃で6時間抽出した後にメタノールを濾別し、濾液からメタノールを蒸発除去させ、次いで真空乾燥することによりメタノール抽出分(固形分)を得る。そして、抽出前の高飽和ニトリルゴムに対する、得られたメタノール抽出分の重量割合(単位は、重量%)を求め、これをメタノール抽出量とすることができる。
高飽和ニトリルゴム(A)、ニトリルゴム(a)
本発明のシール材用の高飽和ニトリルゴム(A)は、特定のニトリルゴム(以下、「ニトリルゴム(a)」と記すことがある。)に水素添加(「水素化」とも言う。)反応を行い、炭素−炭素不飽和結合部を水素化することにより形成されるものである。
本発明のシール材用の高飽和ニトリルゴム(A)は、特定のニトリルゴム(以下、「ニトリルゴム(a)」と記すことがある。)に水素添加(「水素化」とも言う。)反応を行い、炭素−炭素不飽和結合部を水素化することにより形成されるものである。
ニトリルゴム(a)および高飽和ニトリルゴム(A)におけるα,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有量は、全単量体単位中に、好ましくは10〜60重量%、より好ましくは15〜55重量%、特に好ましくは20〜50重量%の量である。α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有量が少なすぎると得られるゴム架橋物の耐油性が低下するおそれがあり、逆に、多すぎると耐寒性が低下する可能性がある。
α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位を形成する単量体としては、ニトリル基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物であれば限定されず、アクリロニトリル;α−クロロアクリロニトリル、α−ブロモアクリロニトリルなどのα−ハロゲノアクリロニトリル;メタクリロニトリルなどのα−アルキルアクリロニトリル;などが挙げられ、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルが好ましい。α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体として、これらの複数種を併用してもよい。
ニトリルゴム(a)には、上記のα,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の他に、得られるゴム架橋物がゴム弾性を保有するために、通常、ジエン単量体単位および/またはα−オレフィン単量体単位をも有する。
ジエン単量体単位を形成するジエン単量体としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンなどの炭素数が4以上の共役ジエン;1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエンなどの好ましくは炭素数が5〜12の非共役ジエンが挙げられる。これらの中では共役ジエンが好ましく、1,3−ブタジエンがより好ましい。
α−オレフィン単量体単位を形成するα−オレフィン単量体としては、好ましくは炭素数が2〜12のものであり、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどが例示される。
ニトリルゴム(a)におけるジエン単量体単位および/またはα−オレフィン単量体単位の含有量は、全単量体単位中に、好ましくは20〜90重量%、より好ましくは30〜85重量%、特に好ましくは40〜80重量%の量である。ニトリルゴム(a)中におけるこれらの単量体単位の含有量が少なすぎると得られるゴム架橋物の弾性が低下するおそれがあり、多すぎると耐熱老化性や耐化学的安定性が損なわれる可能性がある。
ニトリルゴム(a)は、また、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体、並びに、ジエン単量体および/またはα−オレフィン単量体、と共重合可能なその他の単量体の単位を含有することができる。その他の単量体単位を形成する単量体としては、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体、芳香族ビニル単量体、フッ素含有ビニル単量体、共重合性老化防止剤などが例示される。
α,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸n−ドデシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどの、アクリル酸アルキルエステルおよびメタクリル酸アルキルエステルであって、アルキル基の炭素数が1〜18のもの;アクリル酸メトキシメチル、メタクリル酸メトキシエチルなどのアクリル酸アルコキシアルキルエステルおよびメタクリル酸アルコキシアルキルエステルであって、アルコキシアルキル基の炭素数が2〜12のもの;アクリル酸α−シアノエチル、アクリル酸β−シアノエチル、メタクリル酸シアノブチルなどのアクリル酸シアノアルキルエステルおよびメタクリル酸シアノアルキルエステルであって、シアノアルキル基の炭素数が2〜12のもの;アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸3−ヒドロキシプロピルなどのアクリル酸ヒドロキシアルキルエステルおよびメタクリル酸ヒドロキシアルキルエステルであって、ヒドロキシアルキル基の炭素数が1〜12のもの;アクリル酸フルオロベンジル、メタクリル酸フルオロベンジルなどのフッ素置換ベンジル基含有アクリル酸エステルおよびフッ素置換ベンジル基含有メタクリル酸エステル;アクリル酸トリフルオロエチル、メタクリル酸テトラフルオロプロピルなどのフルオロアルキル基含有アクリル酸エステルおよびフルオロアルキル基含有メタクリル酸エステル;マレイン酸ジメチル、フマル酸ジメチル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチルなどの不飽和多価カルボン酸ポリアルキルエステル;アクリル酸ジメチルアミノメチル、アクリル酸ジエチルアミノエチルなどのアミノ基含有α,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル;などが挙げられる。
芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルピリジンなどが挙げられる。
フッ素含有ビニル単量体としては、フルオロエチルビニルエーテル、フルオロプロピルビニルエーテル、o−トリフルオロメチルスチレン、ペンタフルオロ安息香酸ビニル、ジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンなどが挙げられる。
共重合性老化防止剤としては、N−(4−アニリノフェニル)アクリルアミド、N−(4−アニリノフェニル)メタクリルアミド、N−(4−アニリノフェニル)シンナムアミド、N−(4−アニリノフェニル)クロトンアミド、N−フェニル−4−(3−ビニルベンジルオキシ)アニリン、N−フェニル−4−(4−ビニルベンジルオキシ)アニリンなどが挙げられる。
これらの共重合可能なその他の単量体として、複数種類を併用してもよい。ニトリルゴム(a)に含有される、これらの他の単量体単位の含有量は、全単量体単位中に、好ましくは55重量%以下、さらに好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下、特に好ましくは10重量%以下の量である。
ニトリルゴム(a)のムーニー粘度〔ML1+4(100℃)〕は、好ましくは10〜100、より好ましくは15〜80、特に好ましくは20〜75である。この範囲を外れると、水素添加により得られる高飽和ニトリゴム(A)のムーニー粘度が不適切になるおそれがある。ニトリルゴム(a)のムーニー粘度は、分子量調整剤の量、重合反応温度、重合開始剤濃度などの条件を適宜選定することにより調整することができる。
また、高飽和ニトリルゴム(A)のムーニー粘度〔ML1+4(100℃)〕は、好ましくは15〜200、より好ましくは30〜150、特に好ましくは45〜120である。高飽和ニトリルゴム(A)のムーニー粘度が低すぎると、得られる架橋物の機械的特性が低下するおそれがあり、逆に、高すぎると、架橋剤を添加し、架橋性ニトリルゴム組成物とした場合における加工性が低下する可能性がある。
高飽和ニトリルゴム(A)は、乳化剤を用いた乳化重合により上述の単量体を共重合してニトリルゴム(a)のラテックスを調製し、これを水素化することにより製造することが好ましい。なお、乳化剤としては、重合安定性が良いことから、通常、アニオン性界面活性剤が用いられる。
本発明においては、上述の単量体を乳化重合し、ニトリルゴム(a)のラテックスを得る際には、乳化剤として作用する界面活性剤として、炭素数10以下の石けんを用いることが好ましい。乳化剤としての石けんとしては、炭素数が6〜10のものがより好ましく、炭素数が8〜10のものがさらに好ましく、炭素数10のものが特に好ましい。乳化剤として作用する界面活性剤として、このような特定の炭素数からなる石けんを用いることにより、水素添加後の高飽和ニトリルゴム(A)中における界面活性剤の含有量を低くすることができる。このような乳化剤として作用する界面活性剤として、炭素数が多すぎるものを用いると、水素添加後の高飽和ニトリルゴム(A)中における界面活性剤の含有量が増大してしまう。一方、乳化剤として、炭素数が少なすぎるものを用いると、乳化剤としてのミセル形成能力が低下し、乳化重合反応を行うことができなくなる場合がある。
なお、上記した石けんの中でも、水素添加後の高飽和ニトリルゴム(A)中における界面活性剤量の低減効果が大きいという観点から、これらのナトリウム塩、カリウム塩またはアンモニウム塩が好ましく、カリウム塩が特に好ましい。
本発明においては、上述の単量体を乳化重合し、ニトリルゴム(a)のラテックスを得る際には、乳化剤として作用する界面活性剤として、炭素数10以下の石けんを用いることが好ましい。乳化剤としての石けんとしては、炭素数が6〜10のものがより好ましく、炭素数が8〜10のものがさらに好ましく、炭素数10のものが特に好ましい。乳化剤として作用する界面活性剤として、このような特定の炭素数からなる石けんを用いることにより、水素添加後の高飽和ニトリルゴム(A)中における界面活性剤の含有量を低くすることができる。このような乳化剤として作用する界面活性剤として、炭素数が多すぎるものを用いると、水素添加後の高飽和ニトリルゴム(A)中における界面活性剤の含有量が増大してしまう。一方、乳化剤として、炭素数が少なすぎるものを用いると、乳化剤としてのミセル形成能力が低下し、乳化重合反応を行うことができなくなる場合がある。
なお、上記した石けんの中でも、水素添加後の高飽和ニトリルゴム(A)中における界面活性剤量の低減効果が大きいという観点から、これらのナトリウム塩、カリウム塩またはアンモニウム塩が好ましく、カリウム塩が特に好ましい。
このような乳化剤として作用する界面活性剤の具体例としては、ヘキサン酸ナトリウム、ヘキサン酸カリウムおよびヘキサン酸アンモニウム等の炭素数6の石けん;ヘプタン酸ナトリウム、ヘプタン酸カリウムおよびヘプタン酸アンモニウム等の炭素数7の石けん;オクタン酸(「カプリル酸」ともいう)ナトリウム、オクタン酸カリウムおよびオクタン酸アンモニウム等の炭素数8の石けん;ノナン酸ナトリウム、ノナン酸カリウムおよびノナン酸アンモニウム等の炭素数9の石けん;デカン酸(「カプリン酸」ともいう)ナトリウム、デカン酸カリウムおよびデカン酸アンモニウム等の炭素数10の石けん;などが挙げられる。これらの中でも、乳化重合の反応性が良く、水素添加後の高飽和ニトリルゴム(A)中における界面活性剤の含有量の低減効果がより一層大きいことから、ノナン酸ナトリウム、ノナン酸カリウム、デカン酸ナトリウムおよびデカン酸カリウムがより好ましく、デカン酸カリウム(カプリン酸カリウム)が特に好ましい。
上記乳化剤の使用量は、全単量体100重量部に対して、好ましくは1〜10重量部、より好ましくは1〜5重量部、特に好ましくは1.5〜3.0重量部である。乳化剤の使用量が多すぎると、水素添加後の高飽和ニトリルゴム(A)中における界面活性剤の含有量が多くなり、逆に、乳化剤の使用量が少なすぎるとラテックスの安定性が低下して乳化重合反応を行うことができなくなる場合がある。
乳化重合においては、乳化剤以外の重合開始剤、分子量調整剤等の従来公知の重合副資材を使用することができる。これら重合副資材の添加方法は特に限定されず、重合初期に一括添加する方法、分割して添加する方法、連続して添加する方法などいずれの方法でも採用することができる。
重合開始剤としては、ラジカル開始剤であれば特に限定されないが、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウム、過酸化水素等の無機過酸化物;t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル等のアゾ化合物等を挙げることができる。これらの重合開始剤は、単独でまたは2種類以上を組み合わせて使用することができる。重合開始剤としては、無機または有機の過酸化物が好ましい。
重合開始剤として過酸化物を用いる場合には、重亜硫酸ナトリウム、硫酸第一鉄等の還元剤と組み合わせて、レドックス系重合開始剤として使用することもできる。
重合開始剤の使用量は、全単量体100重量部に対して、好ましくは0.01〜2重量部、より好ましくは0.03〜1.8重量部、さらに好ましくは0.05〜1.5重量部である。
重合開始剤として過酸化物を用いる場合には、重亜硫酸ナトリウム、硫酸第一鉄等の還元剤と組み合わせて、レドックス系重合開始剤として使用することもできる。
重合開始剤の使用量は、全単量体100重量部に対して、好ましくは0.01〜2重量部、より好ましくは0.03〜1.8重量部、さらに好ましくは0.05〜1.5重量部である。
分子量調整剤としては、特に限定されないが、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン等のメルカプタン類;四塩化炭素、塩化メチレン、臭化メチレン等のハロゲン化炭化水素;α−メチルスチレンダイマー;テトラエチルチウラムダイサルファイド、ジペンタメチレンチウラムダイサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンダイサルファイド等の含硫黄化合物等が挙げられる。これらは単独で、または2種類以上を組み合わせて使用することができる。なかでも、メルカプタン類が好ましく、t−ドデシルメルカプタンがより好ましい。
分子量調整剤の使用量は、全単量体100重量部に対して、好ましくは0.1〜2.0重量部、より好ましくは0.1〜1.0重量部、さらに好ましくは0.1〜0.8重量部、特に好ましくは0.2〜0.7重量部の範囲である。
分子量調整剤の使用量は、全単量体100重量部に対して、好ましくは0.1〜2.0重量部、より好ましくは0.1〜1.0重量部、さらに好ましくは0.1〜0.8重量部、特に好ましくは0.2〜0.7重量部の範囲である。
乳化重合の媒体は、通常、水が使用される。水の量は、全単量体100重量部に対して、好ましくは80〜500重量部、より好ましくは100〜300重量部である。
乳化重合に際しては、さらに、必要に応じてキレート剤、分散剤、pH調整剤、脱酸素剤、粒子径調整剤等の重合副資材を用いることができる。これらを用いる場合においては、その種類、使用量とも特に限定されない。
本発明のシール材用の高飽和ニトリルゴム(A)は、上記乳化重合により得られたニトリルゴム(a)に水素添加反応を行うことによって製造される。この水素添加反応に際し、ニトリル基まで水素化すると架橋物の耐油性が低下してしまうので、炭素−炭素不飽和結合のみを選択的に水素化する必要がある。
このような選択的水素化としては公知の方法によればよく、油層水素化法、水層水素化法のいずれも可能であるが、高飽和ニトリルゴム(A)の界面活性剤量を低くできることから、油層水素化法が好ましい。
このような選択的水素化としては公知の方法によればよく、油層水素化法、水層水素化法のいずれも可能であるが、高飽和ニトリルゴム(A)の界面活性剤量を低くできることから、油層水素化法が好ましい。
高飽和ニトリルゴム(A)の製造を油層水素化法で行う場合には、次の方法により行うことが好ましい。
すなわち、まず、乳化重合により調製したニトリルゴム(a)のラテックスを塩析により凝固させ、濾別および乾燥を経て、有機溶媒に溶解する。次いで、有機溶媒に溶解させたニトリルゴム(a)について水素添加反応(油層水素化法)を行い、水素化物とし、有機溶媒として水溶性のアセトンなどを用いた場合には、得られた水素化物溶液を大量の水中に注いで凝固、濾別および乾燥を行うことにより高飽和ニトリルゴム(A)を得る。
すなわち、まず、乳化重合により調製したニトリルゴム(a)のラテックスを塩析により凝固させ、濾別および乾燥を経て、有機溶媒に溶解する。次いで、有機溶媒に溶解させたニトリルゴム(a)について水素添加反応(油層水素化法)を行い、水素化物とし、有機溶媒として水溶性のアセトンなどを用いた場合には、得られた水素化物溶液を大量の水中に注いで凝固、濾別および乾燥を行うことにより高飽和ニトリルゴム(A)を得る。
上記ラテックスの塩析による凝固では、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、硫酸アルミニウムなど公知の凝固剤を使用することができるが、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウムなどのマグネシウム塩を採用すると、高飽和ニトリルゴム(A)中に含有される界面活性剤量をより一層低減することができるので好ましい。凝固剤の使用量は、水素化するニトリルゴム(a)の量を100重量部とした場合に、好ましくは1〜100重量部、より好ましくは5〜50重量部、特に好ましくは10〜50重量部である。凝固温度は10〜80℃が好ましい。
油層水素化法の溶媒としては、ニトリルゴム(a)を溶解する液状有機化合物であれば特に限定されないが、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、シクロヘキサノンおよびアセトンなどが好ましく使用される。
油層水素化法の触媒としては、公知の選択的水素化触媒であれば限定なく使用でき、パラジウム系触媒およびロジウム系触媒が好ましく、パラジウム系触媒(酢酸パラジウム、塩化パラジウムおよび水酸化パラジウムなど)がより好ましい。これらは2種以上併用してもよいが、ロジウム系触媒とパラジウム系触媒とを組み合わせて用いる場合には、パラジウム系触媒を主たる活性成分とすることが好ましい。これらの触媒は、通常、担体に担持させて使用される。担体としては、シリカ、シリカ−アルミナ、アルミナ、珪藻土、活性炭などが例示される。触媒使用量は、水素化するニトリルゴム(a)の量に対して、好ましくは10〜5000重量ppm、より好ましくは100〜3000重量ppmである。
油層水素化法の水素化反応温度は、好ましくは0〜200℃、より好ましくは10〜100℃であり、水素圧力は、好ましくは0.1〜30MPa、より好ましくは0.2〜20MPaであり、反応時間は、好ましくは1〜50時間、より好ましくは2〜25時間である。
あるいは、高飽和ニトリルゴム(A)の製造を水層水素化法で行う場合には、乳化重合により調製したニトリルゴム(a)のラテックスに、必要に応じて水を加えて希釈し、水素添加反応を行うことが好ましい。
ここで、水層水素化法には、水素化触媒存在下の反応系に水素を供給して水素化する(I)水層直接水素化法と、酸化剤、還元剤および活性剤の存在下で還元して水素化する(II)水層間接水素化法とがある。
ここで、水層水素化法には、水素化触媒存在下の反応系に水素を供給して水素化する(I)水層直接水素化法と、酸化剤、還元剤および活性剤の存在下で還元して水素化する(II)水層間接水素化法とがある。
(I)水層直接水素化法においては、水層のニトリルゴム(a)の濃度(ラテックス状態での濃度)は、凝集を防止するために40重量%以下とすることが好ましい。
また、用いる水素化触媒としては、水で分解しにくい化合物であれば特に限定されない。水素化触媒の具体例として、パラジウム触媒では、ギ酸、プロピオン酸、ラウリン酸、コハク酸、オレイン酸、フタル酸などのカルボン酸のパラジウム塩;塩化パラジウム、ジクロロ(シクロオクタジエン)パラジウム、ジクロロ(ノルボルナジエン)パラジウム、ヘキサクロロパラジウム(IV)酸アンモニウムなどのパラジウム塩素化物;ヨウ化パラジウムなどのヨウ素化物;硫酸パラジウム・二水和物などが挙げられる。これらの中でもカルボン酸のパラジウム塩、ジクロロ(ノルボルナジエン)パラジウムおよびヘキサクロロパラジウム(IV)酸アンモニウムが特に好ましい。水素化触媒の使用量は、適宜定めればよいが、水素化するニトリルゴム(a)の量に対して、好ましくは5〜6000重量ppm、より好ましくは10〜4000重量ppmである。
また、用いる水素化触媒としては、水で分解しにくい化合物であれば特に限定されない。水素化触媒の具体例として、パラジウム触媒では、ギ酸、プロピオン酸、ラウリン酸、コハク酸、オレイン酸、フタル酸などのカルボン酸のパラジウム塩;塩化パラジウム、ジクロロ(シクロオクタジエン)パラジウム、ジクロロ(ノルボルナジエン)パラジウム、ヘキサクロロパラジウム(IV)酸アンモニウムなどのパラジウム塩素化物;ヨウ化パラジウムなどのヨウ素化物;硫酸パラジウム・二水和物などが挙げられる。これらの中でもカルボン酸のパラジウム塩、ジクロロ(ノルボルナジエン)パラジウムおよびヘキサクロロパラジウム(IV)酸アンモニウムが特に好ましい。水素化触媒の使用量は、適宜定めればよいが、水素化するニトリルゴム(a)の量に対して、好ましくは5〜6000重量ppm、より好ましくは10〜4000重量ppmである。
水層直接水素化法における反応温度は、好ましくは0〜300℃、より好ましくは20〜150℃、特に好ましくは30〜100℃である。反応温度が低すぎると反応速度が低下するおそれがあり、逆に、高すぎるとニトリル基の水素添加などの副反応が起こる可能性がある。水素圧力は、好ましくは0.1〜30MPa、より好ましくは0.5〜20MPaである。反応時間は反応温度、水素圧、目標の水素化率などを勘案して選定される。
水層直接水素化法においては、反応終了後、ラテックス中の水素化触媒を除去する。その方法として、例えば、活性炭、イオン交換樹脂などの吸着剤を添加して攪拌下で水素化触媒を吸着させ、次いでラテックスをろ過または遠心分離する方法を採ることができる。あるいは、水素化触媒を除去せずにラテックス中に残存させることも可能である。
(II)一方、水層間接水素化法では、水層のニトリルゴム(a)の濃度(ラテックス状態での濃度)は、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは1〜40重量%とする。
水層間接水素化法で用いる酸化剤としては、酸素、空気、過酸化水素などが挙げられる。これら酸化剤の使用量は、炭素−炭素二重結合に対するモル比(酸化剤:炭素−炭素二重結合)で、好ましくは0.1:1〜100:1、より好ましくは0.8:1〜5:1の範囲である。
水層間接水素化法で用いる還元剤としては、ヒドラジン、ヒドラジン水和物、酢酸ヒドラジン、ヒドラジン硫酸塩、ヒドラジン塩酸塩などのヒドラジン類またはヒドラジンを遊離する化合物が用いられる。これらの還元剤の使用量は、炭素−炭素二重結合に対するモル比(還元剤:炭素−炭素二重結合)で、好ましくは0.1:1〜100:1、より好ましくは0.8:1〜5:1の範囲である。
水層間接水素化法で用いる活性剤としては、銅、鉄、コバルト、鉛、ニッケル、鉄、スズなどの金属のイオンが用いられる。これらの活性剤の使用量は、炭素−炭素二重結合に対するモル比(活性剤:炭素−炭素二重結合)で、好ましくは1:1000〜10:1、より好ましくは1:50〜1:2である。
水層間接水素化法で用いる還元剤としては、ヒドラジン、ヒドラジン水和物、酢酸ヒドラジン、ヒドラジン硫酸塩、ヒドラジン塩酸塩などのヒドラジン類またはヒドラジンを遊離する化合物が用いられる。これらの還元剤の使用量は、炭素−炭素二重結合に対するモル比(還元剤:炭素−炭素二重結合)で、好ましくは0.1:1〜100:1、より好ましくは0.8:1〜5:1の範囲である。
水層間接水素化法で用いる活性剤としては、銅、鉄、コバルト、鉛、ニッケル、鉄、スズなどの金属のイオンが用いられる。これらの活性剤の使用量は、炭素−炭素二重結合に対するモル比(活性剤:炭素−炭素二重結合)で、好ましくは1:1000〜10:1、より好ましくは1:50〜1:2である。
水層間接水素化法における反応は、0℃から還流温度までの範囲内で加熱することにより行い、これにより水素化反応が行われる。この際における加熱範囲は、好ましくは0〜250℃、より好ましくは20〜100℃、特に好ましくは40〜80℃である。
水層での直接水素化法、間接水素化法のいずれにおいても、水素化に続いて、塩析による凝固、濾別、乾燥を行うことが好ましい。塩析は、前記油層水素化法におけるラテックスの塩析と同様に、高飽和ニトリルゴム(A)中に含有される界面活性剤量をより一層低減することができるという点より、上述したマグネシウム塩を用いることが好ましい。また、凝固に続く濾別および乾燥の工程はそれぞれ公知の方法により行うことができる。
シール材用架橋性ニトリルゴム組成物
本発明のシール材用の架橋性ニトリルゴム組成物は、上記したシール材用の高飽和ニトリルゴム(A)に、架橋剤を配合してなるものである。
本発明のシール材用の架橋性ニトリルゴム組成物は、上記したシール材用の高飽和ニトリルゴム(A)に、架橋剤を配合してなるものである。
架橋剤としては、硫黄系架橋剤および有機過酸化物系架橋剤が好ましい。
硫黄系架橋剤としては、粉末硫黄、沈降硫黄などの硫黄;4,4’−ジチオモルホリンやテトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、高分子多硫化物などの有機硫黄化合物;などが挙げられる。
有機過酸化物系架橋剤としては、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド類;ベンゾイルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド類;2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートなどのパーオキシエステル類;などが挙げられる。
架橋剤の配合量は、高飽和ニトリルゴム(A)100重量部に対して、好ましくは0.2〜20重量部、より好ましくは1〜15重量部である。
硫黄系架橋剤としては、粉末硫黄、沈降硫黄などの硫黄;4,4’−ジチオモルホリンやテトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、高分子多硫化物などの有機硫黄化合物;などが挙げられる。
有機過酸化物系架橋剤としては、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド類;ベンゾイルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド類;2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートなどのパーオキシエステル類;などが挙げられる。
架橋剤の配合量は、高飽和ニトリルゴム(A)100重量部に対して、好ましくは0.2〜20重量部、より好ましくは1〜15重量部である。
また、本発明のシール材用の架橋性ニトリルゴム組成物は、架橋剤以外に、ゴム加工分野において通常使用されるその他の配合剤、例えば、カーボンブラック、アクリル酸亜鉛およびメタクリル酸亜鉛などの補強性充填剤;炭酸カルシウムやクレーなどの非補強性充填材、酸化防止剤、光安定剤、一級アミンなどのスコーチ防止剤、可塑剤、加工助剤、滑剤、粘着剤、潤滑剤、難燃剤、受酸剤、防黴剤、帯電防止剤、着色剤、シランカップリング剤、架橋促進剤、架橋助剤、架橋遅延剤などを配合することができる。これらの配合剤の配合量は、配合目的に応じた量を適宜採用することができる。
架橋剤およびその他の配合剤と、高飽和ニトリルゴム(A)との混合は、非水系で行うことが好ましい。混合方法としては、特に限定はないが、通常、架橋剤および熱に不安定な架橋助剤などを除いた成分を、バンバリーミキサ、インターミキサ、ニーダなどの混合機で一次混練した後、ロールなどに移して架橋剤などを加えて二次混練する。
本発明のシール材用の架橋性ニトリルゴム組成物のムーニー粘度〔ML1+4(100℃)〕(コンパウンドムーニー)は、好ましくは15〜150、より好ましくは40〜120である。
シール材用ゴム架橋物
本発明のシール材用のゴム架橋物は、上記シール材用の架橋性ニトリルゴム組成物を架橋して得ることができるものである。
本発明のシール材用のゴム架橋物を得るにあたっては、所望の形状に対応した成形機、例えば押出機、射出成形機、圧縮機、ロールなどにより成形を行い、架橋反応によりゴム架橋物としての形状を固定化する。予め成形した後に架橋しても、成形と同時に架橋を行ってもよい。成形温度は、通常、10〜200℃、好ましくは25〜120℃である。架橋温度は、通常、100〜200℃、好ましくは130〜190℃であり、架橋時間は、通常、1分〜24時間、好ましくは2分〜1時間である。
本発明のシール材用のゴム架橋物は、上記シール材用の架橋性ニトリルゴム組成物を架橋して得ることができるものである。
本発明のシール材用のゴム架橋物を得るにあたっては、所望の形状に対応した成形機、例えば押出機、射出成形機、圧縮機、ロールなどにより成形を行い、架橋反応によりゴム架橋物としての形状を固定化する。予め成形した後に架橋しても、成形と同時に架橋を行ってもよい。成形温度は、通常、10〜200℃、好ましくは25〜120℃である。架橋温度は、通常、100〜200℃、好ましくは130〜190℃であり、架橋時間は、通常、1分〜24時間、好ましくは2分〜1時間である。
また、ゴム架橋物の形状、大きさなどによっては、表面が架橋していても内部まで十分に架橋していない場合があるので、さらに加熱して二次架橋を行ってもよい。
本発明のシール材用ゴム架橋物は、界面活性剤の量が低減された高飽和ニトリルゴム(A)を用いているので、アルコールを含有する溶液による、含有成分の溶出が有効に防止できることに加え、耐熱老化性に優れており、持続的な熱負荷を受けても強度特性の低下が少ない特徴を有する。特に、本発明のゴム架橋物は、150℃、72時間の熱負荷における伸びの変化率が、好ましくは50%以下、より好ましくは45%以下であり、耐熱老化性に優れるものである。
そのため、本発明のシール材用ゴム架橋物は、アルコールを含有する溶液を封止するために用いられるシール材、好ましくは、インクジェット式記録装置に用いられるインクカートリッジ用のシール材、及び、燃料油用のシール材として好適に用いられる。
そのため、本発明のシール材用ゴム架橋物は、アルコールを含有する溶液を封止するために用いられるシール材、好ましくは、インクジェット式記録装置に用いられるインクカートリッジ用のシール材、及び、燃料油用のシール材として好適に用いられる。
本発明のシール材用ゴム架橋物を、インクカートリッジ用のシール材とする場合のシール材としては、特に限定されないが、好ましくはパッキンであり、インク取り出し口に装着され、インク取り出し口に、インクジェット式記録装置本体のインク供給流路に形成された中空針が挿入された際に、インク取り出し口と中空針との気密性を確保するために装着されるパッキンであることが特に好ましい。
また、本発明のシール材用ゴム架橋物を、インクカートリッジ用のシール材とする場合における、該シール材により封止されるアルコールを含有する溶液としては、特に限定されないが、アルコールの他、水や顔料、染料などを主として含有する溶液などが挙げられるが、好ましくは、アルコールを含有する水溶性のインクである。そして、水溶性のインク等の封止される溶液に含有されるアルコールとしては、水に相溶するアルコールである限り特に限定されず、任意のアルコールを用いることができるが、水よりも小さい蒸気圧を有するアルコールが好ましい。このようなアルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール等の多価アルコール類(特に2価又は3価アルコール類);2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−イソプロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、2−イソペンチルオキシエタノール等のアルコキシアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコールエーテル類;フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ジアセトンアルコール等を挙げることができる。前記の個々のアルコールは、各種の効果を有している場合があるので、それらの効果を考慮して使用するのが好ましい。例えば、インクの乾燥防止改善作用をも有するアルコールとしては、グリセリン、ジエチレングリコール、チオジグリコール等の多価アルコール類を、紙へのインクの浸透促進作用をも有するアルコールとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコールエーテル類を好適に用いることができる。また、これらのアルコールは、1種類又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。さらにアルコールを含有する水溶性のインク(インクジェット用インク)には、上述したアルコールのほかにも、インクの乾燥時間を短縮する効果を有するアルコールや低沸点有機溶剤が含まれていてもよい。そのようなアルコールや低沸点有機溶剤としては、たとえばメタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、i−ブタノール、n−ペンタノールなどの炭素数5以下の1価のアルコールが好ましい。
さらに、アルコールを含有する溶液中における、アルコールの含有量は、溶液全体中に、好ましくは0.1〜98重量%、より好ましくは0.1〜60重量%、さらに好ましくは10〜60重量%、特に好ましくは40〜60重量%の量である。特に、本発明のゴム架橋物は、本発明の高飽和ニトリルゴム(A)を用いて得られるものであるため、界面活性剤量が低減されているものである。そのため、アルコール量が比較的に多い溶液と接触して用いられた場合においても、アルコールを含有する溶液に不溶な成分の溶出、生成を有効に防止できるという利点を有する。なお、本発明者の知見によれば、高飽和ニトリルゴムをアルコールと接触して用いた場合に溶出または生成する、アルコールを含有する溶液に不溶な成分は、界面活性剤を主として含むもの、あるいは界面活性剤がインク中の成分と反応等したものであると考えられる。そのため、本発明によれば、上記のように界面活性剤量を低減させることにより、このような不溶な成分の溶出、生成を有効に防止することができるものである。
一方、本発明のシール材用ゴム架橋物を、燃料油用のシール材とする場合には、自動車のエンジン等の内燃機関に装着されるシール材であれば何でも良く、特に限定されないが、好ましくは、O−リング、パッキン又はガスケットである。
また、本発明のシール材用ゴム架橋物を、燃料油用のシール材とする場合における、該シール材により封止される燃料油としては、好ましくは、アルコールと、ガソリンまたは軽油を含有するものである。燃料油を構成するアルコールとしては、好ましくは、メタノールまたはエタノールであり、より好ましくはエタノールである。さらに、燃料油中のアルコールの含有量は、好ましくは0.1〜98重量%、より好ましくは30〜98重量%、さらに好ましくは50〜98重量%、特に好ましくは70〜98重量%の量である。特に、本発明のゴム架橋物は、本発明の高飽和ニトリルゴム(A)を用いて得られるものであるため、界面活性剤量が低減されているものである。そのため、このようにアルコール量が比較的に多い燃料油と接触して用いられた場合においても、耐燃料油性に優れる。また、耐熱老化性も良好なため、燃料油を構成するガソリンや軽油、アルコールの透過性を低減することができ、これらの飛散を有効に防止することができる。
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。本実施例における「部」は、特記しない限り重量基準である。なお、試験、評価は下記によった。
ヨウ素価
ヨウ素価はJIS K6235に従って測定した。
ヨウ素価はJIS K6235に従って測定した。
ムーニー粘度〔ML 1+4 (100℃)〕
高飽和ニトリルゴムのムーニー粘度(ポリマームーニー)および架橋性ニトリルゴム組成物のムーニー粘度(コンパウンドムーニー)は、JIS K6300に従って測定した。
高飽和ニトリルゴムのムーニー粘度(ポリマームーニー)および架橋性ニトリルゴム組成物のムーニー粘度(コンパウンドムーニー)は、JIS K6300に従って測定した。
メタノール抽出量
メタノール抽出量は、次の方法により測定した。すなわち、3mm角に細断したゴム6gを50mlのメタノールに分散させ、次いで、ソックスレー抽出器を用いて65℃で6時間抽出した後にメタノールを濾別し、濾液からメタノールを蒸発除去させ、次いで真空乾燥することによりメタノール抽出分(固形分)を得た。そして、抽出前の高飽和ニトリルゴムに対する、得られたメタノール抽出分の重量割合(単位は、重量%)を求め、これをメタノール抽出量とした。
メタノール抽出量は、次の方法により測定した。すなわち、3mm角に細断したゴム6gを50mlのメタノールに分散させ、次いで、ソックスレー抽出器を用いて65℃で6時間抽出した後にメタノールを濾別し、濾液からメタノールを蒸発除去させ、次いで真空乾燥することによりメタノール抽出分(固形分)を得た。そして、抽出前の高飽和ニトリルゴムに対する、得られたメタノール抽出分の重量割合(単位は、重量%)を求め、これをメタノール抽出量とした。
界面活性剤量および石けん量
高飽和ニトリルゴム中の界面活性剤量および石けん量は、次の方法により測定した。
すなわち、エタノールとトルエンの混合液(エタノール70容量%、トルエン30容量%)を抽出液として用い、JIS K6237と同様の方法(指示薬を用いた、水酸化ナトリウムおよび塩酸による中和滴定)で、石けん量と界面活性剤量(有機酸の量と石けんの量との合計量)を求め、抽出前の高飽和ニトリルゴムに対する、抽出された石けんの重量割合(単位は、重量%)および界面活性剤の重量割合(単位は、重量%)として求めた。
高飽和ニトリルゴム中の界面活性剤量および石けん量は、次の方法により測定した。
すなわち、エタノールとトルエンの混合液(エタノール70容量%、トルエン30容量%)を抽出液として用い、JIS K6237と同様の方法(指示薬を用いた、水酸化ナトリウムおよび塩酸による中和滴定)で、石けん量と界面活性剤量(有機酸の量と石けんの量との合計量)を求め、抽出前の高飽和ニトリルゴムに対する、抽出された石けんの重量割合(単位は、重量%)および界面活性剤の重量割合(単位は、重量%)として求めた。
常態物性(引張強さ、伸び、引張応力、硬さ)
まず、架橋性ニトリルゴム組成物を、縦15cm、横15cm、深さ0.2cmの金型に入れ、170℃で20分間、プレス圧10MPaで架橋し、次いでギヤー式オーブンにて170℃で4時間二次架橋を行うことにより、ゴム架橋物の試験片を作製した。次いで、得られた試験片を用いて、JIS K6251に従って引張強さ、伸びおよび100%引張応力を測定した。また、硬さは、JIS K6253に従ってデュロメータ硬さ試験機タイプAを用いて測定した。
まず、架橋性ニトリルゴム組成物を、縦15cm、横15cm、深さ0.2cmの金型に入れ、170℃で20分間、プレス圧10MPaで架橋し、次いでギヤー式オーブンにて170℃で4時間二次架橋を行うことにより、ゴム架橋物の試験片を作製した。次いで、得られた試験片を用いて、JIS K6251に従って引張強さ、伸びおよび100%引張応力を測定した。また、硬さは、JIS K6253に従ってデュロメータ硬さ試験機タイプAを用いて測定した。
耐熱老化性試験
上記常態物性の測定と同様に、一次および二次架橋して作製したゴム架橋物の試験片を用いて、JIS K6257(ノーマルオーブン法)に従い、150℃において72時間熱負荷をかけた後の引張強さ、伸びおよび100%引張応力をJIS K6251に従って測定した。また、熱負荷後の硬さについても、JIS K6253に従ってデュロメータ硬さ試験機タイプAを用いて測定した。そして、熱負荷後の引張強さ、伸びおよび100%引張応力の常態物性からの変化率、ならびに、熱負荷後の硬さの常態物性からの変化度をそれぞれ求めた。
上記常態物性の測定と同様に、一次および二次架橋して作製したゴム架橋物の試験片を用いて、JIS K6257(ノーマルオーブン法)に従い、150℃において72時間熱負荷をかけた後の引張強さ、伸びおよび100%引張応力をJIS K6251に従って測定した。また、熱負荷後の硬さについても、JIS K6253に従ってデュロメータ硬さ試験機タイプAを用いて測定した。そして、熱負荷後の引張強さ、伸びおよび100%引張応力の常態物性からの変化率、ならびに、熱負荷後の硬さの常態物性からの変化度をそれぞれ求めた。
アルコール接触試験(耐アルコール性)
高飽和ニトリルゴムおよび上記常態物性と同様にして一次および二次架橋して作製したゴム架橋物について、イソプロピルアルコールと水との混合液((イソプロピルアルコール濃度50%溶液、「高アルコール濃度溶液」)および(イソプロピルアルコール濃度10%溶液、「低アルコール濃度溶液」))に、25℃×24時間の条件で浸漬し、浸漬後の溶液を観察することにより、耐アルコール性の評価を行った。なお、評価基準は以下の通りとした。
○:アルコール溶液が透明で、析出物なし。
△:アルコール溶液がやや濁り、微量の析出物がある。
×:アルコール溶液が濁り、析出物がある。
高飽和ニトリルゴムおよび上記常態物性と同様にして一次および二次架橋して作製したゴム架橋物について、イソプロピルアルコールと水との混合液((イソプロピルアルコール濃度50%溶液、「高アルコール濃度溶液」)および(イソプロピルアルコール濃度10%溶液、「低アルコール濃度溶液」))に、25℃×24時間の条件で浸漬し、浸漬後の溶液を観察することにより、耐アルコール性の評価を行った。なお、評価基準は以下の通りとした。
○:アルコール溶液が透明で、析出物なし。
△:アルコール溶液がやや濁り、微量の析出物がある。
×:アルコール溶液が濁り、析出物がある。
実施例1
金属製ボトル内でイオン交換水200部に、炭酸ナトリウム0.2部を溶解し、それにカプリン酸カリウム(炭素数10の脂肪酸の石けん:乳化剤として作用するアニオン性界面活性剤)を2.5部添加して石けん水溶液を調製し、さらに分散剤として、ナフタリンスルホン酸ホルムアルデヒド重縮合物を1.0部添加した。これにアクリロニトリル37部、t−ドデシルメルカプタン(分子量調整剤)0.5部の順に仕込み、内部の気体を窒素で3回置換した後、1,3−ブタジエン63部を仕込んだ。そして、金属製ボトルを5℃に保ち、クメンハイドロパーオキサイド(重合開始剤)0.1部、還元剤およびキレート剤を適量仕込み、温度を5℃に保ちながら16時間重合反応を行った。次いで、濃度10重量%のハイドロキノン(重合停止剤)水溶液0.1部を加えて重合反応を停止し、水温60℃のロータリーエバポレータを用いて残留単量体を除去してニトリルゴムのラテックスを得た。得られたニトリルゴムの組成は、アクリロニトリル単量体単位37重量%、ブタジエン単量体単位63重量%であり、ラテックス中の固形分濃度は25重量%であった。
金属製ボトル内でイオン交換水200部に、炭酸ナトリウム0.2部を溶解し、それにカプリン酸カリウム(炭素数10の脂肪酸の石けん:乳化剤として作用するアニオン性界面活性剤)を2.5部添加して石けん水溶液を調製し、さらに分散剤として、ナフタリンスルホン酸ホルムアルデヒド重縮合物を1.0部添加した。これにアクリロニトリル37部、t−ドデシルメルカプタン(分子量調整剤)0.5部の順に仕込み、内部の気体を窒素で3回置換した後、1,3−ブタジエン63部を仕込んだ。そして、金属製ボトルを5℃に保ち、クメンハイドロパーオキサイド(重合開始剤)0.1部、還元剤およびキレート剤を適量仕込み、温度を5℃に保ちながら16時間重合反応を行った。次いで、濃度10重量%のハイドロキノン(重合停止剤)水溶液0.1部を加えて重合反応を停止し、水温60℃のロータリーエバポレータを用いて残留単量体を除去してニトリルゴムのラテックスを得た。得られたニトリルゴムの組成は、アクリロニトリル単量体単位37重量%、ブタジエン単量体単位63重量%であり、ラテックス中の固形分濃度は25重量%であった。
そして、上記にて得られたラテックスを、ラテックス中のニトリルゴム分の量を100重量部とした場合に、12重量部の硫酸マグネシウムを含有する水溶液に加え、撹拌してラテックスを凝固させ、次いで、水で洗浄しつつ濾別した後、60℃で12時間真空乾燥することによりニトリルゴム(a1)を得た。
次いで、得られたニトリルゴム(a1)を、濃度12重量%となるようにアセトンで溶解し、オートクレーブに入れ、ニトリルゴム(a1)の量に対して1000重量ppmとなる量のパラジウム・シリカ触媒を加え、3.0MPaで水素添加反応を行った。水素化反応終了後、大量の水中に注ぐことにより凝固させ、濾別、乾燥を行うことにより高飽和ニトリルゴム(A1)を得た。
上記方法により得られた高飽和ニトリルゴム(A1)100重量部に、カーボンブラック(MTサーマックス、リーマン&ボス社製)60重量部、有機過酸化物系架橋剤(Vul−Cup40KE、ハーキュレス社製)8重量部を配合し、ロールを用いて、50℃で混合、混練することにより、架橋性ニトリルゴム組成物を得た。
上記にて作製した高飽和ニトリルゴム(A1)のヨウ素価、メタノール抽出量、界面活性剤量、石けん量、ムーニー粘度(ポリマームーニー)およびアルコール接触試験、架橋性ニトリルゴム組成物のムーニー粘度(コンパウンドムーニー)、並びに、ゴム架橋物の常態物性(引張強さ、伸び、100%引張応力および硬さ)、耐熱老化試験およびアルコール接触試験の各評価を行った。結果を表1に示す。
上記にて作製した高飽和ニトリルゴム(A1)のヨウ素価、メタノール抽出量、界面活性剤量、石けん量、ムーニー粘度(ポリマームーニー)およびアルコール接触試験、架橋性ニトリルゴム組成物のムーニー粘度(コンパウンドムーニー)、並びに、ゴム架橋物の常態物性(引張強さ、伸び、100%引張応力および硬さ)、耐熱老化試験およびアルコール接触試験の各評価を行った。結果を表1に示す。
実施例2
実施例1において、ニトリルゴムラテックスの凝固剤として、硫酸マグネシウム水溶液に代えて、ラテックス中のニトリルゴム分の量を100重量部とした場合に、6重量部の硫酸アルミニウムを含有する水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして高飽和ニトリルゴム(A2)を得た。得られた高飽和ニトリルゴム(A2)を用いて、実施例1と同様に各評価を行った。結果を表1に示す。
実施例1において、ニトリルゴムラテックスの凝固剤として、硫酸マグネシウム水溶液に代えて、ラテックス中のニトリルゴム分の量を100重量部とした場合に、6重量部の硫酸アルミニウムを含有する水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして高飽和ニトリルゴム(A2)を得た。得られた高飽和ニトリルゴム(A2)を用いて、実施例1と同様に各評価を行った。結果を表1に示す。
比較例1
実施例1において、乳化重合における乳化剤として2.5部のカプリン酸カリウムの代わりに、同量のステアリン酸カリウム(炭素数18の脂肪酸の石けん:乳化剤として作用するアニオン性界面活性剤)を用いた以外は、実施例1と同様にしてニトリルゴム(a2)のラテックスを得た。得られたニトリルゴム(a2)の組成は、アクリロニトリル単量体単位37重量%およびブタジエン単量体単位63重量%であり、ラテックス中の固形分濃度は25重量%であった。
実施例1において、乳化重合における乳化剤として2.5部のカプリン酸カリウムの代わりに、同量のステアリン酸カリウム(炭素数18の脂肪酸の石けん:乳化剤として作用するアニオン性界面活性剤)を用いた以外は、実施例1と同様にしてニトリルゴム(a2)のラテックスを得た。得られたニトリルゴム(a2)の組成は、アクリロニトリル単量体単位37重量%およびブタジエン単量体単位63重量%であり、ラテックス中の固形分濃度は25重量%であった。
次いで、得られたニトリルゴム(a2)のラテックスについて、硫酸マグネシウ水溶液に代えて、ラテックス中のニトリルゴム分の量を100重量部とした場合に、2重量部の硫酸アルミニウムを含有する水溶液を用いた以外は実施例1と同様にしてニトリルゴム(a2)を得た。ニトリルゴム(a1)に代えて、ニトリルゴム(a2)を用いる以外は実施例1と同様に水素添加反応を行って、高飽和ニトリルゴム(A3)を得た。得られた高飽和ニトリルゴム(A3)を用いて、実施例1と同様に各評価を行った。結果を表1に示す。
表1に示すように、実施例1,2より、炭素数10以下の石けんを、乳化剤として作用する界面活性剤として用いる乳化重合により得られたニトリルゴムに水素添加反応を行って製造された高飽和ニトリルゴムは、ヨウ素価80以下で、メタノール抽出量0.7重量%以下、界面活性剤の含有量が0.4重量%以下、石けんの含有量が0.08重量%以下であった。そして、該高飽和ニトリルゴムの架橋物は耐アルコール性(アルコール浸漬試験)も良好であり、水溶性のインク等のアルコールを含有する溶液を封止するためのシール材や、アルコールを含有する燃料油を封止するためのシール材に好適であることが確認できる。特に、水溶性のインク等のアルコールを含有する溶液、好適にはアルコール含有量が0.1〜60重量%、特に好適には40〜60重量%の溶液を封止するためのシール材として用いた場合においても、不純物の溶出が低く抑えられることが確認できる。加えて、これら実施例1,2においては、ゴム架橋物の150℃、72時間の熱負荷における伸びの変化率が50%以下となり、良好な耐熱老化性を有していた。
一方、比較例1においては、メタノール抽出量が0.9重量%以上、界面活性剤の含有量が0.5重量%以上、石けんの含有量が0.1重量%以上と多く、水溶性のインクやアルコール含有燃料油等のアルコールを含有する溶液を封止するためのシール材として適さない結果となった。すなわち、水溶性のインクやアルコール含有燃料油等のアルコールを含有する溶液を封止するためのシール材として用いた場合に、不純物が多く溶出する結果となった。さらに、耐アルコール性(アルコール浸漬試験)に関しては、低アルコール濃度の溶液に浸漬した場合に微量の析出物が観察される程度であったが、高アルコール濃度の溶液に浸漬した場合に、析出が顕著(記録ヘッドのノズルが詰まり易いことを示す)となる傾向にあった。また、比較例1においては、ゴム架橋物の150℃、72時間の熱負荷における伸びの変化率が65%と大きく、耐熱老化性に劣るものであった。加えて、比較例1においては熱負荷における伸びの変化率が大き過ぎ、100%伸びないため、耐熱老化性試験の100%引張応力および100%引張応力変化率が測定できなかった。
一方、比較例1においては、メタノール抽出量が0.9重量%以上、界面活性剤の含有量が0.5重量%以上、石けんの含有量が0.1重量%以上と多く、水溶性のインクやアルコール含有燃料油等のアルコールを含有する溶液を封止するためのシール材として適さない結果となった。すなわち、水溶性のインクやアルコール含有燃料油等のアルコールを含有する溶液を封止するためのシール材として用いた場合に、不純物が多く溶出する結果となった。さらに、耐アルコール性(アルコール浸漬試験)に関しては、低アルコール濃度の溶液に浸漬した場合に微量の析出物が観察される程度であったが、高アルコール濃度の溶液に浸漬した場合に、析出が顕著(記録ヘッドのノズルが詰まり易いことを示す)となる傾向にあった。また、比較例1においては、ゴム架橋物の150℃、72時間の熱負荷における伸びの変化率が65%と大きく、耐熱老化性に劣るものであった。加えて、比較例1においては熱負荷における伸びの変化率が大き過ぎ、100%伸びないため、耐熱老化性試験の100%引張応力および100%引張応力変化率が測定できなかった。
Claims (10)
- アルコールを含有する溶液を封止するために用いられるシール材用の高飽和ニトリルゴムであって、
ヨウ素価が80以下、界面活性剤の含有量が0.4重量%以下であるシール材用高飽和ニトリルゴム。 - 石けんの含有量が0.08重量%以下である請求項1に記載のシール材用高飽和ニトリルゴム。
- メタノール抽出量が0.7重量%以下である請求項1又は2に記載のシール材用高飽和ニトリルゴム。
- 前記高飽和ニトリルゴムが、アニオン性界面活性剤を用いた乳化重合により得られたニトリルゴムに水素添加反応を行うことによって製造したものである請求項1ないし3のいずれか1項に記載のシール材用高飽和ニトリルゴム。
- 前記アニオン性界面活性剤が、カプリン酸塩である請求項4に記載のシール材用高飽和ニトリルゴム。
- 請求項1ないし5のいずれか1項に記載の高飽和ニトリルゴムに、架橋剤を配合してなるシール材用架橋性ニトリルゴム組成物。
- 請求項6に記載の架橋性ニトリルゴム組成物を架橋してなるシール材用ゴム架橋物。
- インクカートリッジ用のシール材である請求項7に記載のシール材用ゴム架橋物。
- 燃料油用のシール材である請求項7に記載のシール材用ゴム架橋物。
- 前記燃料油が、エタノール含有ガソリン又はエタノール含有軽油である請求項9に記載のシール材用ゴム架橋物。
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