本発明は、マイクロ波を照射して加熱対象物である被加熱物を加熱処理するマイクロ波加熱装置に関するものである。
マイクロ波により対象物を加熱処理するマイクロ波加熱装置の代表的な装置としては電子レンジがある。電子レンジにおいては、マイクロ波発生器において発生したマイクロ波が金属製の加熱室の内部に放射され、加熱室内部の被加熱物が放射されたマイクロ波により加熱処理される。
従来の電子レンジにおけるマイクロ波発生器としては、マグネトロンが用いられている。マグネトロンにより生成されたマイクロ波は、導波管を介して加熱室内部に供給される。
加熱室内部におけるマイクロ波の電磁界分布が不均一であると、被加熱物を均一に加熱することができない。そこで、加熱室内部のマイクロ波の電磁界分布を均一にするように試みた電子レンジが提案されている。例えば、日本の特開2004−47322号公報には、マグネトロンにおいて発生したマイクロ波を第1の導波管を介して加熱室の底面部分から放射させるとともに、第2の導波管を介して加熱室の上面部分から放射する電子レンジが開示されている。
特開2004−47322号公報に開示された電子レンジは、マグネトロンにより生成されたマイクロ波を加熱室内部へ供給するための導波管が中空の金属管により形成されており、加熱室の外側に配置されている。したがって、この電子レンジでは、マイクロ波を1つのマグネトロンから加熱室の複数のマイクロ波放射口へ導くために、複数の導波管を加熱室の外側に設ける必要があり、電子レンジが大型化していた。
また、特開2004−47322号公報には、マイクロ波の供給位置を増やすために、1つのマグネトロンにおいて発生したマイクロ波を加熱室の底部に設けた回転可能な複数のアンテナから加熱室内部に放射する電子レンジの構成が開示されている。このように構成された電子レンジにおいては、複数の放射アンテナの回転スペースを加熱室の外側に確保する必要があり、電子レンジの小型化を阻害していた。
さらに、上記のように構成された従来のマイクロ波加熱装置では、1つのマグネトロンにより発生したマイクロ波を被加熱物に照射しており、被加熱物の形状、種類、大きさ、量などに応じて電磁界分布を調整するような構成ではなかった。
したがって、このようなマイクロ波加熱装置の分野においては、加熱室内部のマイクロ波の電磁界分布を均一若しくは、被加熱物に応じて変更することができ、小型化が可能なマイクロ波加熱装置が求められていた。
また、従来の電子レンジにおいて、被加熱物を均一に加熱することを目的として、加熱室を6面以上の多面体で構成し、各面の一部あるいは全部の面から放射アンテナを加熱室内に突出して配置した電子レンジが、日本の特開昭52−19342号公報に開示されている。
特開昭52−19342号公報に開示された電子レンジは、互いの放射アンテナを異なる面に配置したことにより、互いの干渉を防止できるとしている。この従来の電子レンジは、放射アンテナがそれぞれ異なる方向を向いて配置されている。このように構成された電子レンジにおいては、放射された電波は加熱室内のあらゆる方向に伝搬して、壁面にて反射して散乱するため、加熱室内では電波が均一に分布すると、この公報では説明されている。
しかしながら、多面体の各面に放射アンテナを配置する構成では、放射される方向は異なっているが、加熱室壁面での反射に伴う散乱、およびその散乱したマイクロ波が壁面にて反射してさらに散乱するという繰返しの反射により、加熱室内は広範囲において散乱状態となる。このため、複数の放射アンテナから放射されたマイクロ波の干渉を確実に防止することは不可能な構成である。
また、複数の固体高周波発振器を加熱室壁面に分散配置して、これらのマイクロ波出力部のうち、少なくとも二つの壁面に配したマイクロ波出力部を時分割動作させるものが、日本の特開昭53−5445号公報に開示されている。
特開昭53−5445号公報に開示された電子レンジにおいては、動作させるために選択した固体高周波発振器を時分割して動作させることにより、干渉によるマイクロ波出力部の破壊を防止して、同時動作させることができる説明されている。また、この特開昭53−5445号公報には、加熱室における直交する壁面に配置した固体高周波発振器が、加熱室とマイクロ波出力部との結合形態を適当に選ぶことにより、互いに干渉しないように励振させることができ、同時発振が可能であると説明している。
しかしながら、特開昭53−5445号公報に開示された電子レンジの構成において、どのような結合形態であれば、相互干渉を回避できるかについての内容が開示されていないため、実際には実現できない構成である。
また、日本の特開昭56−132793号公報には位相器を備えた電子レンジが開示されている。この電子レンジは、半導体発振部と、半導体発振部の出力を複数に分割する分配器と、分配された出力をそれぞれ増幅する複数の増幅器と、増幅器の出力を合成する合成器とを有し、分配器と増幅器との間に位相器を設けている。
特開昭56−132793号公報に開示された電子レンジにおいては、位相器がダイオードのオンオフ特性によりマイクロ波の通過線路長を切り換える構成である。この電子レンジにおいて、合成器として90度および180度ハイブリッドを用いることで出力を2つにしており、位相器を制御することで2つの出力の電力比を変化させ、2つの出力間の位相を同相あるいは逆相にすることができるとしている。
位相器を備えた従来の電子レンジにおいては、合成器の2つの出力から放射されるマイクロ波は、位相器によって位相を変化させることで2つの放射アンテナからの放射電力比や位相差を任意に、かつ瞬時に変化させることは可能である。しかしながら、そのような放射によってマイクロ波が供給される加熱室内に収納されたさまざまな形状、種類、大きさ、量の異なる被加熱物を所望の状態に確実に加熱することは困難であった。
本発明は、上記従来のマイクロ波加熱装置における問題を解決するものであり、マイクロ波を放射する複数のマイクロ波供給手段を加熱室の異なる壁面に最適に配置することにより、加熱室内部のマイクロ波の電磁界分布を均一、若しくは被加熱物に応じて適切に変更することができ、且つ小型化が可能なマイクロ波加熱装置を提供することを目的とする。
本発明に係る第1の観点のマイクロ波加熱装置は、複数の出力部を有するマイクロ波発生部と、被加熱物を収納する加熱室と、前記複数の出力部のそれぞれの出力を前記加熱室に供給する複数の給電部と、前記複数の給電部からのマイクロ波放射を制御して、前記加熱室の電磁波分布を調整する制御部と、を具備する。このように構成された本発明に係る第1の観点のマイクロ波加熱装置は、マイクロ波を放射する複数のマイクロ波供給手段である供給部を加熱室に最適に配置することにより、加熱室内部のマイクロ波の電磁界分布を均一、若しくは被加熱物に応じて適切に変更することができ、且つ小型化が可能なマイクロ波加熱装置を提供することができる。
本発明に係る第2の観点のマイクロ波加熱装置においては、前記第1の観点における前記制御部は、前記加熱室に収納された前記被加熱物にマイクロ波が集中するように、前記複数の給電部においてマイクロ波を放射させる給電部を選択するよう構成されている。このように構成された本発明に係る第2の観点のマイクロ波加熱装置は、加熱室内に収納された被加熱物を確実に所望の状態で効率高く加熱することが可能となる。この結果、本発明のマイクロ波加熱装置は、被加熱物を均一に加熱することができる。
本発明に係る第3の観点のマイクロ波加熱装置においては、前記第1の観点における前記制御部は、前記加熱室に収納された前記被加熱物にマイクロ波が集中するように、マイクロ波を放射する給電部間の位相差を制御するよう構成されている。このように構成された本発明に係る第3の観点のマイクロ波加熱装置は、加熱室内に収納された被加熱物を確実に所望の状態で効率高く加熱することが可能となる。
本発明に係る第4の観点のマイクロ波加熱装置においては、前記第1の観点における前記マイクロ波発生部は、マイクロ波を発生する単一または複数の発振部を有する構成としてもよい。このように構成された本発明に係る第4の観点のマイクロ波加熱装置は、加熱室内部のマイクロ波の電磁界分布を均一、若しくは被加熱物に応じて適切に変更することができる。
本発明に係る第5の観点のマイクロ波加熱装置においては、前記第1乃至第4の観点における前記マイクロ波発生部は、マイクロ波を発生する発振部と、前記発振部のマイクロ波出力を複数に分配して出力する電力分配部と、前記電力分配部のマイクロ波出力をそれぞれ出力する複数の出力部と、を備える構成としてもよい。このように構成された本発明に係る第5の観点のマイクロ波加熱装置は、発振部にマグネトロンや半導体素子を用いて、加熱室内部のマイクロ波の電磁界分布を均一、若しくは被加熱物に応じて適切に変更することができる。
本発明に係る第6の観点のマイクロ波加熱装置においては、前記第1乃至第4の観点における前記加熱室を複数の空間に分割する仕切り部を設け、分割された各加熱室内に収納された被加熱物にマイクロ波をそれぞれ集中させるよう構成されている。このように構成された本発明に係る第6の観点のマイクロ波加熱装置は、1つのマイクロ波加熱装置により異なる種類の被加熱物を同時あるいは個別に、それぞれの被加熱物に適した加熱を行うことができる。
本発明に係る第7の観点のマイクロ波加熱装置においては、前記第1乃至第4の観点における前記マイクロ波発生部は、マイクロ波を発生する発振部と、前記発振部のマイクロ波出力を複数に分配して出力する電力分配部と、前記電力分配部のマイクロ波出力をそれぞれ電力増幅する増幅部と、前記増幅部の出力をそれぞれ出力する複数の出力部と、を備え、
前記加熱室を少なくとも2つの空間に仕切る仕切り部を設け、前記複数の給電部が分割された各加熱室内に収納された被加熱物にマイクロ波をそれぞれ集中させるよう構成されている。このように構成された本発明に係る第7の観点のマイクロ波加熱装置は、1つのマイクロ波加熱装置により異なる種類の被加熱物を同時あるいは個別に、それぞれの被加熱物に適した加熱を行うことができる。
本発明に係る第8の観点のマイクロ波加熱装置においては、前記第1乃至第4の観点における前記加熱室を少なくとも左右または上下の2つの空間に分割する仕切り部を備え、前記複数の給電部が分割された各加熱室内に収納された被加熱物にマイクロ波をそれぞれ集中させるよう構成されている。このように構成された本発明に係る第8の観点のマイクロ波加熱装置は、1つのマイクロ波加熱装置により異なる種類、形状の被加熱物を同時あるいは個別に、それぞれの被加熱物に適した加熱を行うことができる。
本発明に係る第9の観点のマイクロ波加熱装置においては、前記第1乃至第4の観点における前記マイクロ波発生部は、マイクロ波を発生する発振部と、前記発振部のマイクロ波出力を複数に分配して出力する電力分配部と、前記電力分配部のマイクロ波出力をそれぞれ出力する複数の出力部と、前記給電部からの反射電力を検出する電力検知部と、を備え、
前記制御部は、被加熱物を加熱する前に、発振部において発生する周波数を変化させつつ、加熱動作時のマイクロ波出力より低い出力で前記給電部から被加熱物にマイクロ波を放射させて、前記電力検知部により検知された反射電力が最小値または極小値となる周波数を検出し、検出された周波数に基づいて加熱動作時のマイクロ波周波数を決定するよう構成されており、
前記制御部は、決定されたマイクロ波周波数で加熱動作時のマイクロ波出力を前記発振部によって発生させるとき、加熱動作中に前記電力検知部によって検出された反射電力が予め定められた閾値をこえると、前記発振部が出力するマイクロ波電力を一旦低減し、前記発振部の発生するマイクロ波周波数を掃引して、再度電力検知部が検知した反射電力が最小または極小となる周波数を検出し、反射電力が最小または極小となる周波数で加熱動作を再開するよう構成されている。このように構成された本発明に係る第9の観点のマイクロ波加熱装置は、反射電力が最小または極小となる周波数に基づいて加熱動作時のマイクロ波周波数が決定されて被加熱物に対する加熱動作が行われるので、被加熱物の加熱動作時に発生する反射電力が確実に低減される。このため、マイクロ波加熱装置の電力変換効率が大幅に向上する。また、本発明に係る第9の観点のマイクロ波加熱装置においては、反射電力に起因してマイクロ波発生部が発熱する場合でも、その発熱量が大幅に低減される。その結果、本発明に係る第9の観点のマイクロ波加熱装置は、反射電力に起因するマイクロ波発生部の破損および故障を防止することができる。
本発明に係る第10の観点のマイクロ波加熱装置においては、前記第9の観点における前記制御部は、加熱動作中に前記発振部の発生するマイクロ波周波数を微少量増減させ、前記電力検知部によって検知された反射電力が小さくなる方向に前記発振部の発生するマイクロ波周波数を微減あるいは微増するよう構成されている。このように構成された本発明に係る第10の観点のマイクロ波加熱装置は、反射電力が最小または極小となる周波数に基づいて加熱動作時のマイクロ波周波数が決定されて被加熱物に対する加熱動作が行われるので、被加熱物の加熱動作時に発生する反射電力が確実に低減される。このため、マイクロ波加熱装置の電力変換効率が大幅に向上する。また、本発明に係る第10の観点のマイクロ波加熱装置においては、加熱動作中に反射電力が変化した場合においても常に反射電力が最小または極小となる周波数を追尾するので常に高い電力変換効率を維持することが可能となる。
本発明に係る第11の観点のマイクロ波加熱装置においては、前記第9の観点における前記制御部は、被加熱物を加熱する前に、発振部によりマイクロ波の周波数を変化させつつ、加熱動作時のマイクロ波出力より低い出力で前記給電部から被加熱物にマイクロ波を放射させて、前記電力検知部により検出された反射電力が極小値となる複数の周波数を検出するよう構成されており、
検出された第1の極小値となる周波数で加熱動作を行い、前記電力検知部が検知した反射電力が、予め定めた所定の値よりも大きくなると、加熱動作前に検出した第2の極小値となる周波数を発振部が発生するよう構成されている。このように構成された本発明に係る第11の観点のマイクロ波加熱装置は、反射電力が最小または極小となる周波数に基づいて加熱動作時のマイクロ波周波数が決定されて被加熱物に対する加熱動作が行われるので、被加熱物の加熱動作時に発生する反射電力が確実に低減される。このため、マイクロ波加熱装置の電力変換効率が大幅に向上する。また、本発明に係る第11の観点のマイクロ波加熱装置においては、加熱動作中に反射電力が増加した場合でも加熱動作時のマイクロ波周波数を変えることにより、反射電力が小さい周波数で動作するため、高い電力変換効率を維持することが可能となる。
本発明に係る第12の観点のマイクロ波加熱装置においては、前記第1乃至第4の観点における前記マイクロ波発生部は、マイクロ波を発生する複数の発振部と、前記複数の発振部のそれぞれからのマイクロ波出力を複数に分配して出力する電力分配部と、前記電力分配部のマイクロ波出力をそれぞれ出力する複数の出力部と、を備え、
前記複数の発振部は、マイクロ波を放射する前記給電部と対となるよう構成されており、
前記制御部は、前記給電部のそれぞれから放射されるマイクロ波周波数は前記給電部のそれぞれからの反射電力が最小値または極小値となる周波数となるように、前記発振部をそれぞれ独立に制御するよう構成されている。このように構成された本発明に係る第12の観点のマイクロ波加熱装置は、反射電力が最小または極小となる周波数に基づいて加熱動作時のマイクロ波周波数が決定されて被加熱物に対する加熱動作が行われるので、被加熱物の加熱動作時に発生する反射電力が確実に低減される。このため、マイクロ波加熱装置の電力変換効率が大幅に向上する。
本発明に係る第13の観点のマイクロ波加熱装置においては、前記第1乃至第4の観点における前記マイクロ波発生部は、マイクロ波を発生する発振部と、前記発振部のマイクロ波出力を複数に分配して出力する電力分配部と、前記電力分配部のマイクロ波出力をそれぞれ出力する複数の出力部と、前記給電部からの反射電力と前記発振部から前記給電部に伝送される入射電力を検出する電力検知部と、を備え、
前記制御部は、被加熱物を加熱する前に、前記発振部において発生する周波数を変化させつつ、加熱動作時のマイクロ波出力より低い出力で前記給電部から被加熱物にマイクロ波を放射させて、前記電力検知部により検知された反射電力と入射電力の比が最小値または極小値となる周波数を検出し、検出された周波数に基づいて加熱動作時のマイクロ波周波数を決定するよう構成されており、
前記制御部は、前記決定されたマイクロ波周波数で加熱動作時のマイクロ波出力を前記発振部によって発生させるとき、加熱動作中に前記発振部の発生する周波数を微少量増減させ、前記電力検知部によって検知された反射電力と入射電力の比が小さくなる方向に前記発振部の発生する周波数を微減あるいは微増するよう構成されている。このように構成された本発明に係る第13の観点のマイクロ波加熱装置は、反射電力が最小または極小となる周波数に基づいて加熱動作時のマイクロ波周波数が決定されて被加熱物に対する加熱動作が行われるので、被加熱物の加熱動作時に発生する反射電力が確実に低減される。このため、マイクロ波加熱装置の電力変換効率が大幅に向上する。また、本発明に係る第13の観点のマイクロ波加熱装置においては、反射電力に起因してマイクロ波発生部が発熱する場合でも、その発熱量が大幅に低減される。その結果、本発明に係る第13の観点のマイクロ波加熱装置は、反射電力に起因するマイクロ波発生部の破損および故障を防止することができる。
本発明に係る第14の観点のマイクロ波加熱装置においては、前記第1乃至第4の観点における前記加熱室を複数の空間に仕切る電波遮蔽機能を有する仕切り部を備え、前記複数の給電部は複数の空間に仕切られた前記加熱室のそれぞれに配置され、任意に選択されるよう構成されている。このように構成された本発明に係る第14の観点のマイクロ波加熱装置は、1つのマイクロ波加熱装置により異なる種類の被加熱物を同時あるいは個別にそれぞれ適した加熱状態で処理することができる。
本発明に係る第15の観点のマイクロ波加熱装置においては、前記第14の観点における前記複数の給電部は、前記加熱室の各空間に複数設けられ、前記加熱室の各空間を構成する壁面の異なる複数の壁面に配置されている。このように構成された本発明に係る第15の観点のマイクロ波加熱装置は、1つのマイクロ波加熱装置により異なる種類の被加熱物のそれぞれに対して所望の加熱状態で処理することができる。
本発明に係る第16の観点のマイクロ波加熱装置においては、前記第14の観点における前記加熱室が2つの空間を有しており、前記空間に配置された2つの給電部が対向するように配置されており、前記2つの給電部から放射されるマイクロ波の位相を変化させるよう構成されている。このように構成された本発明に係る第16の観点のマイクロ波加熱装置は、1つのマイクロ波加熱装置により2種類の被加熱物のそれぞれに対して適切に加熱動作を行うことができ、各加熱室の電磁波分布を変化させることができ、被加熱物を均一に加熱することができる。
本発明に係る第17の観点のマイクロ波加熱装置においては、前記第14の観点における前記加熱室が2つの空間を有しており、前記空間に配置された2つの給電部は放射するマイクロ波が交差するよう配置されており、前記2つの給電部から放射されるマイクロ波の位相を変化させるよう構成されている。このように構成された本発明に係る第17の観点のマイクロ波加熱装置は、1つのマイクロ波加熱装置により2種類の被加熱物のそれぞれに対して適切に加熱動作を行うことができ、各加熱室の電磁波分布を変化させることができ、被加熱物を均一に加熱することができるとともに、被加熱物の所望の部分を集中的に加熱することも可能となる。
本発明に係る第18の観点のマイクロ波加熱装置においては、前記第6の観点における前記仕切り部は、前記加熱室を上下に複数の空間に分割し、被加熱物を載置可能な金属製皿で構成してもよい。このように構成された本発明に係る第18の観点のマイクロ波加熱装置は、載置可能な金属製皿により電磁波遮蔽はもちろんのこと、仕切り部が皿形状であるため、仕切り部の機能が向上し、使い勝手が改善して加熱機器としての利便性が向上する。
本発明に係る第19の観点のマイクロ波加熱装置においては、前記第6の観点における前記発振部は、マイクロ波を発生する複数の発振部を有し、分割された各加熱室に異なる発振部がそれぞれ設けられた構成としてもよい。このように構成された本発明に係る第19の観点のマイクロ波加熱装置は、1つのマイクロ波加熱装置により異なる種類の被加熱物のそれぞれに対して当該被加熱物に適した加熱を行うことができる。また、本発明に係る第19の観点のマイクロ波加熱装置においては、加熱室内の空間に応じて被加熱物に対するマイクロ波を効率高く伝えることができ、いわば受熱効率の高い発振周波数を各々加熱室内の被加熱物に応じて選択することができる。
本発明に係る第20の観点のマイクロ波加熱装置においては、前記第6の観点における前記発振部は、マイクロ波を発生する複数の発振部を有し、分割された各加熱室に異なる発振部がそれぞれ設けられており、各発振部の発振周波数が独立して変更されるよう構成してもよい。このように構成された本発明に係る第20の観点のマイクロ波加熱装置は、加熱室内の被加熱物の種類、材質、大きさ、量、載置位置などの変化に対して受熱効率が最適となるように加熱動作時のマイクロ波周波数を変化、調整することができる。本発明に係る第20の観点のマイクロ波加熱装置は、受熱効率が最大となる加熱動作時のマイクロ波周波数に調整する機能を備えて、被加熱物をより最適に加熱でき、かつ加熱効率が著しく高い加熱装置となる。
本発明に係る第21の観点のマイクロ波加熱装置においては、前記第6の観点における前記複数の加熱室の空間に対して、それぞれ任意の加熱時間を設定するよう構成してもよい。このように構成された本発明に係る第21の観点のマイクロ波加熱装置は、各加熱室に同時に被加熱物を収納し加熱する場合において、各被加熱物を異なる加熱時間で加熱処理することができ、一つのマイクロ波加熱装置で複数の加熱室を自在にマニュアル的に加熱条件を設定して独立的に使用することが可能となり、優れた利便性を有する。
本発明に係る第22の観点のマイクロ波加熱装置においては、前記第6の観点における前記複数の加熱室の空間内に収納された被加熱物の加熱状態を遠隔的に監視可能な温度検出センサを設け、予め設定された目標温度にて加熱を停止するよう構成してもよい。このように構成された本発明に係る第22の観点のマイクロ波加熱装置は、各加熱室に収納された被加熱物の加熱状態を遠隔的に監視でき、使用者の所望の状態で各被加熱物の加熱を停止させることが可能となり、加熱装置として優れた性能向上を提供することができる。
本発明に係る第23の観点のマイクロ波加熱装置においては、前記第22の観点における前記温度検出センサにより被加熱物の加熱状態を検出し、予め設定された目標温度にて加熱を停止するシーケンスで動作するよう構成されており、収納された被加熱物に応じて異なるシーケンスで処理する構成としてもよい。このように構成された本発明に係る第23の観点のマイクロ波加熱装置においては、各加熱室に収納された被加熱物の加熱状態の遠隔的な監視が可能となる。そして、本発明に係る第23の観点のマイクロ波加熱装置は、加熱の進行状態を監視しつつ、位相差調整による加熱処理、および/または周波数調整により加熱処理を用いて、均一加熱または集中加熱などの使用者の所望する加熱処理を行うことができる。本発明に係る第23の観点のマイクロ波加熱装置は、各加熱室に収納された被加熱物を全く独立したシーケンスで加熱処理することができるため、優れた利便性を提供することができる。
本発明に係る第24の観点のマイクロ波加熱装置においては、前記第6の観点における前記複数の加熱室のそれぞれの空間内に被加熱物を収納するために複数の開閉扉を設けた構成としてもよい。このように構成された本発明に係る第24の観点のマイクロ波加熱装置においては、各加熱室に対する被加熱物の収納が容易となり、優れた利便性を提供することができる。
本発明に係る第25の観点のマイクロ波加熱装置においては、前記第24の観点における前記複数の開閉扉のいずれか一方が開かれている時、各加熱室へのマイクロ波放射を中止するよう構成してもよい。このように構成された本発明に係る第25の観点のマイクロ波加熱装置においては、仕切り部により各加熱室が区画されているが、一方の扉を開いた場合には加熱室壁面との微小なスペースを通ってマイクロ波が漏れて、駆動している加熱室から扉を開放している加熱室にマイクロ波が漏洩し、使用者が曝露する可能性があるため、いずれか一方の扉が開いている時には装置全体のマイクロ波の発振を停止することにより、電磁波漏洩が生じない安全性の高い加熱装置を提供することができる。
本発明に係る第26の観点のマイクロ波加熱装置においては、前記第18の観点における金属製皿は周辺部が絶縁材料で構成されており、前記加熱室の壁面と前記金属製皿との間でスパークが発生しないよう構成してもよい。加熱室壁面と金属部分とのギャップが少なく、その部分において電界集中するとスパークが生じる可能性がある。本発明に係る第26の観点のマイクロ波加熱装置において、金属製皿が加熱室壁面に近い部分が絶縁材料で構成されているため、スパークの発生しない構造となり、金属製皿の残りの部分を金属を用いて電磁波遮蔽構造とすることにより、金属製皿により分割された各加熱室が互いのマイクロ波干渉のない独立性を維持した構成となる。
本発明に係る第27の観点のマイクロ波加熱装置においては、前記第1乃至第4の観点における前記加熱室を構成する壁面に被加熱物を収納するための複数の開閉扉を有し、前記複数の開閉扉を備えていない壁面において、対向する壁面に前記給電部が設けられた構成としてもよい。このように構成された本発明に係る第27の観点のマイクロ波加熱装置においては、対向する壁面から供給されるマイクロ波により被加熱物が効率高く加熱されるとともに、複数の開閉扉を備えたことにより、異なる方向から被加熱物を加熱室内に出し入れできる利便性を提供できる。
本発明に係る第28の観点のマイクロ波加熱装置においては、前記第1乃至第4の観点における前記加熱室を構成する壁面に被加熱物を収納するための複数の開閉扉が対向して配置され、前記複数の開閉扉を備えていない壁面において、対向する壁面に前記給電部が設けられた構成としてもよい。このように構成された本発明に係る第28の観点のマイクロ波加熱装置においては、対面式キッチンで使用する場合、キッチン側とリビング側の両方向から当該加熱装置にアクセスすることができる。また、本発明に係る第28の観点のマイクロ波加熱装置は、コンビニエンスストアなどの店で使用する場合においては、従業員と客の両方が異なる方向から当該加熱装置にアクセスすることが可能となる。
本発明に係る第29の観点のマイクロ波加熱装置においては、前記第1乃至第4の観点における前記加熱室を構成する壁面に被加熱物を収納するための複数の開閉扉を有し、前記複数の開閉扉を備えていない壁面において、対向する壁面に前記給電部が設けられており、前記給電部は、共通の発振部からマイクロ波が供給されるよう構成してもよい。このように構成された本発明に係る第29の観点のマイクロ波加熱装置においては、対向配置された給電部から供給されるマイクロ波の位相を一意的に制御することができる。
本発明によれば、複数の開閉扉を備えてマイクロ波加熱装置の利便性を高めることができるとともに、マイクロ波を放射する機能を有した複数のマイクロ波供給手段を加熱室の壁面に配置して、マイクロ波供給手段から放射されるマイクロ波を最適化することにより、さらに利便性を高めて、さまざまな形状、種類、大きさ、量の異なる被加熱物を所望の状態に加熱するマイクロ波加熱装置を提供することができる。
本発明に係る実施の形態1のマイクロ波加熱装置の正面図
実施の形態1のマイクロ波加熱装置のマイクロ波供給系の構成を示すブロック図
本発明を説明するための実験において用いた加熱室を上方から見た平面断面図
図3の加熱室を用いた実験結果において、放射されたマイクロ波の位相差が0度のときの加熱室内を等温線により示した図
図3の加熱室を用いた実験結果において、放射されたマイクロ波の位相差が40度のときの加熱室内を等温線により示した図
図3の加熱室を用いた実験結果において、放射されたマイクロ波の位相差が80度のときの加熱室内を等温線により示した図
図3の加熱室を用いた実験結果において、放射されたマイクロ波の位相差が120度のときの加熱室内を等温線により示した図
図3の加熱室を用いた実験結果において、放射されたマイクロ波の位相差が160度のときの加熱室内を等温線により示した図
図3の加熱室を用いた実験結果において、放射されたマイクロ波の位相差が200度のときの加熱室内を等温線により示した図
図3の加熱室を用いた実験結果において、放射されたマイクロ波の位相差が240度のときの加熱室内を等温線により示した図
図3の加熱室を用いた実験結果において、放射されたマイクロ波の位相差が280度のときの加熱室内を等温線により示した図
図3の加熱室を用いた実験結果において、放射されたマイクロ波の位相差が320度のときの加熱室内を等温線により示した図
本発明に係る実施の形態2のマイクロ波加熱装置のマイクロ波供給系の構成を示すブロック図
本発明に係る実施の形態3のマイクロ波加熱装置の正面図
実施の形態3のマイクロ波加熱装置における加熱室の正面図
実施の形態3のマイクロ波加熱装置における仕切り皿を示す平面図
実施の形態3のマイクロ波加熱装置における仕切り皿の断面図
実施の形態3の別の構成のマイクロ波加熱装置の正面図
本発明に係る実施の形態4のマイクロ波加熱装置のマイクロ波供給系の構成を示すブロック図
実施の形態4のマイクロ波加熱装置の制御系の構成を示すブロック図
本発明に係る実施の形態5のマイクロ波加熱装置の構成を示す断面図
実施の形態5のマイクロ波加熱装置のマイクロ波供給系の構成を示すブロック図
本発明に係る実施の形態6のマイクロ波加熱装置のマイクロ波供給系の構成を示すブロック図
本発明に係る実施の形態7のマイクロ波加熱装置の平面図
本発明に係る実施の形態8のマイクロ波加熱装置のマイクロ波供給系の構成を示すブロック図
実施の形態8のマイクロ波加熱装置における4つの電力検知部が検知した反射電力と発振周波数の関係を示すグラフ
実施の形態8のマイクロ波加熱装置における周波数抽出処理を説明する図
実施の形態8のマイクロ波加熱装置における別の周波数抽出処理を説明する図
本発明のマイクロ波加熱装置におけるマイクロ波発生部に含まれる各種の構成を示す模式図
本発明のマイクロ波加熱装置における電力合成部の具体的な回路構成を示す図
以下、本発明に係るマイクロ波加熱装置の好適な実施の形態について、添付の図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施の形態のマイクロ波加熱装置においては電子レンジについて説明するが、電子レンジは例示であり、本発明のマイクロ波加熱装置は電子レンジに限定されるものではなく、誘電加熱を利用した加熱装置、生ゴミ処理機、あるいは半導体製造装置などのマイクロ波加熱装置を含むものである。また、本発明は、以下の実施の形態の具体的な構成に限定されるものではなく、同様の技術的思想に基づく構成が本発明に含まれる。
(実施の形態1)
図1は、本発明に係る実施の形態1のマイクロ波加熱装置の外観を示す正面図である。図2は実施の形態1のマイクロ波加熱装置におけるマイクロ波供給系の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、実施の形態1のマイクロ波加熱装置である電子レンジ1は、その前面に上下2つの窓を有する扉2が設けられており、被加熱物を収納する加熱室4が上側加熱室4aと下側加熱室4bの2つに分割されている。実施の形態1のマイクロ波加熱装置においては、その前面に設けられた操作表示パネル3において、使用者が上側加熱室4aおよび/または下側加熱室4bの加熱条件の設定を行い、その加熱条件および被加熱物の処理状態などが表示されるよう構成されている。
図2に示すマイクロ波供給系の構成において、実施の形態1のマイクロ波加熱装置には、加熱室4へ供給するマイクロ波を形成するマイクロ波発生部5、および操作表示パネル3からの加熱条件などに基づきマイクロ波発生部5などを制御するマイクロコンピュータで構成された制御部6が設けられている。
マイクロ波発生部5は、半導体素子を用いて構成した発振部7と、この発振部7の出力を2段構成により4分配する3つの電力分配部8a,8b,8cと、2段目の電力分配部8b,8cから4分配された出力が各マイクロ波伝送路9a,9b,9c,9dを介して入力される半導体素子を用いて構成された初段増幅部11a,11b,11c,11dと、初段増幅部11a,11b,11c,11dのそれぞれの出力が入力されて、さらに増幅する半導体素子を用いて構成された主増幅部12a,12b,12c,12dと、主増幅部12a,12b,12c,12dの出力がマイクロ波伝送路13a,13b,13c,13dを介して入力される出力部15a,15b,15c,15dと、マイクロ波伝送路13a,13b,13c,13dに挿入され、加熱室4からの反射電力を検知する電力検知部14a,14b,14c,14dと、マイクロ波伝送路9a,9cに挿入された位相可変部10a,10bと、を具備して構成されている。図2において、初段増幅部11a,11b,11c,11dおよび主増幅部12a,12b,12c,12dで構成される増幅ブロックは、2段構成で示されているが、当該マイクロ波加熱装置の出力仕様に応じて一段から複数段に構成される。
実施の形態1のマイクロ波加熱装置における加熱室4は、仕切り板25により上下に2分割されており、被加熱物を収納する略直方体構造を有する上側加熱室4aおよび下側加熱室4bから構成されている。また、マイクロ波加熱装置は、上側加熱室4aおよび下側加熱室4bに対して被加熱物の出し入れを行うために開閉する扉2が設けられており、加熱室内部に供給されたマイクロ波が漏洩しないよう構成されている。
前述のように、マイクロ波発生部5から加熱室4へは4つのマイクロ波出力が伝送されており、マイクロ波発生部5から出力されたマイクロ波は加熱室内部に放射する4つの給電部21a,21b,21c,21dに伝送される。各給電部21a,21b,21c,21dは、加熱室4を構成するそれぞれの壁面に配設されている。上側加熱室4aにおける対向面である左壁面上部26aと右壁面上部27aには、給電部21bと給電部21aがそれぞれ対向して配置されている。
一方、下側加熱室4bにおける対向面である左壁面下部26bと右壁面下部27bには給電部21cと給電部21dがそれぞれ対向して配置されている。
上記のように、一方の対となる給電部21aと給電部21bが設けられている上側加熱室4aと、他方の対となる給電部21cと給電部21dが設けられている下側加熱室4bとの間は、電磁波遮蔽機能を有する仕切り板25により区切られている。仕切り板25の材料としては、金属板で構成しても良いが、電磁波が透過しない材料で高い反射係数を有する材料であれば良く、例えばセラミック材で構成することも可能である。
実施の形態1のマイクロ波加熱装置は、上記のように構成されているため、一つの筐体であるにもかかわらず加熱室4の内部が2つに区画されて、2つの加熱室4(4a,4b)を形成することができる。実施の形態1のマイクロ波加熱装置は、例えば、使用者による使用実態を想定すると、上側加熱室4aには被加熱物として主菜、下側加熱室4bには被加熱物として副菜を収納し、一度に加熱するという使い方にも対応できるという長所を有している。
実施の形態1のマイクロ波加熱装置においては、上側加熱室4aの給電部21aと給電部21b、および下側加熱室4bの給電部21cと給電部21dが対向して配置され、上側加熱室4aおよび下側加熱室4bのそれぞれにおいて対向してマイクロ波を放射するよう構成されている。また、マイクロ波伝送路9a,9cには位相可変部10a,10bが設けられているため、対向して放射されるマイクロ波の位相を変えることが可能である。
上記のように構成されているため、上側加熱室4aおよび下側加熱室4bのそれぞれにおいては、対向して配置された両側の給電部21aおよび21b、並びに給電部21cおよび21dから放射されるマイクロ波がお互いに衝突し、かつ両者のマイクロ波の位相を変化させることができるため、加熱室4の内部に所望の電磁波分布を形成することが可能である。
それぞれの給電部21a,21b,21c,21dは、加熱室4の壁面に形成された開口部24a,24b,24c,24dと、マイクロ波を開口部24a,24b,24c,24dへ導く導波部22a,22b,22c,22dと、マイクロ波発生部5からのマイクロ波を出力するアンテナとなる供給部23a,23b,23c,23dと、を具備して構成されている。各開口部24a,24b,24c,24dは、矩形形状である長方形形状に形成されており、その長手方向が全て水平方向となるよう配置されている。ここで水平方向とは、マイクロ波加熱装置における正面側と裏面側とを結ぶ奥行き方向である。
実施の形態1のマイクロ波加熱装置においては、制御部6からの制御信号により位相可変部10a,10bが対向するマイクロ波の位相差を自在に変化させている。このように2つの位相可変部10a,10bにより、上側加熱室4aおよび下側加熱室4bにおいて対向して供給されるマイクロ波の位相を調整して、上側加熱室4aおよび下側加熱室4bのそれぞれの内部は所望の電磁波分布が形成される。実施の形態1における位相可変部10a,10bは、印加電圧に応じて静電容量が変化する静電容量可変素子を用いて構成されており、位相可変範囲が0度〜180度の範囲である。
制御部6は、使用者が操作表示パネル3(図1参照)において直接入力する被加熱物の加熱条件(図2の矢印X)および加熱動作中において検知された被加熱物の加熱状態を示す加熱情報(図2の矢印Y)などに基づいて、マイクロ波発生部5の発振部7に発振周波数調整信号を送出して、発振部7が発生するマイクロ波の発振周波数を変化させている。また、制御部6は、反射電力を検出する電力検知部14a,14b,14c,14dからの検知情報(図2の矢印Z)に基づいて、マイクロ波発生部5の構成要素である発振部7と増幅ブロックのそれぞれに供給する駆動電力の制御、および位相可変部10a,10bへの印加電圧を制御する。図2において、制御部6に入力される矢印Sで示す信号は加熱開始信号であり、使用者が操作表示パネル3において加熱開始操作を行うことにより制御部に入力される信号である。
このように制御部6は、入力された信号に基づき加熱室4における上側加熱室4aおよび下側加熱室4bのそれぞれの内部に収納された被加熱物を最適に加熱するようにマイクロ波発生部5を駆動制御する。制御部6による詳細な駆動制御に関しては後述する。
以下、制御部6からの制御信号により位相可変部10a,10bが制御されることにより、加熱室4の内部が最適な加熱状態となることを説明する。
また、発振部7からのマイクロ波信号が各給電部21a,21b,21c,21dに略1/4の電力量でどのようにして配分されるかについて説明する。
マイクロ波発生部5におけるマイクロ波伝送部9a,9b,9c,9d,13a,13b,13c,13dにおいては、誘電体基板の片面に設けた導電体パターンによって特性インピーダンスが略50Ωの伝送回路が形成されている。2段構成の電力分配部8a,8b,8cは、それぞれが同一構造を有する3dBブランチラインカプラー構成である。したがって、以下の説明においては、1段目の電力分配器8aを代表としてその構成について説明する。
電力分配部8aは、4端子を有しており、それぞれの端子を第1端子16、第2端子17、第3端子18および第4端子19とする。第1端子16と第2端子17の間、および第3端子18と第4端子19の間には特性インピーダンス50Ωでその電気長がλ/4(λは使用周波数帯の中央周波数の実効波長)からなるマイクロストリップ線路を配置している。また、第1端子16と第3端子18の間、および第2端子17と第4端子19の間には特性インピーダンスが略35.35Ωでその電気長がλ/4のマイクロストリップ線路を配置している。さらに、第3端子18には抵抗値が50Ωの電気終端部20が接続されている。
上記のように構成された電力分配部8aにおいて、第1端子16に入力したマイクロ波信号は、第2端子17および第4端子19に2分配されて出力される。また、このとき第2端子17と第4端子19から出力されるマイクロ波信号は、第2端子17から出力されたマイクロ波信号の位相を基準にすると、第4端子19から出力されたマイクロ波信号は位相が90度遅れている。
電力分配部8aの出力を次段の2つの電力分配部8b,8cに入力する2段構成とすることにより、発振部7の出力電力は、略1/4ずつ分配されて、後続の増幅ブロックにおける初段増幅部11a,11b,11c,11dに出力される。このように伝送された4つのマイクロ波伝送路9a,9b,9c,9dにおいて、マイクロ波伝送路9bを伝送するマイクロ波信号を基準にすると、マイクロ波伝送線路9aおよび9cを伝送するマイクロ波信号は、位相が90度遅れており、マイクロ波伝送路9dを伝送するマイクロ波信号は、位相が180度遅れている。なお、4分配された電力のばらつきには、位相可変部10a,10b、初段増幅部11a,11b,11c,11d、および主増幅部12a,12b,12c,12dの利得の許容差等も含まれるが、支配的なものではない。
以下、対向して配置された給電部のアンテナから放射されたマイクロ波において位相差を変化させることにより、加熱室内部の電磁界分布がどのような変化するかについて、本発明者が実験を行ったので説明する。
図3は、実験に用いた加熱室4を上方から見た平面断面図である。この実験では、図3に示すように、初めに加熱室4の内部に所定量の水が入った複数のカップ(図3においてはCUとして表示)を整列配置した。その時の各カップ(CU)内の中央部(図3において点Pと表示)における水の温度を測定した。
そして、加熱室4の壁面において配置された2個のアンテナA1,A2から位相を変化させたマイクロ波を放射させた。その後、所定時間経過後にマイクロ波の放射を停止して、各カップ(CU)内の中央部の位置(P)において、マイクロ波放射による水の温度上昇値を測定した。
アンテナA1から放射されるマイクロ波とアンテナA2から放射されるマイクロ波との間で複数の位相差を設定し、設定した位相差ごとに複数回のマイクロ波を放射した。なお、本実験では、位相差を0度〜320度の範囲において40度ごとに変えて測定した。
上記のように、マイクロ波加熱装置の加熱室内部の水平面内に配置された水の温度上昇値を測定することにより、加熱室内部におけるマイクロ波の電磁界分布を調査した。本実験によれば、水の温度上昇値が高い領域では電磁界分布が強いと判定でき、水の温度上昇値が低い領域では電磁界分布が弱いと判定できる。
図4は、アンテナA1から放射されるマイクロ波とアンテナA2から放射されるマイクロ波の位相差を0度に設定した場合の実験結果を、水の温度上昇値に基づく等温線により示したものである。同様に、図5〜図12は、アンテナA1から放射されるマイクロ波とアンテナA2から放射されるマイクロ波の位相差を40度から320度の範囲において40度ごと変えて測定した場合の実験結果を等温線で示している。なお、図5〜図12に示した各位相差は、アンテナA2から放射されるマイクロ波の位相を基準として、アンテナA1から放射されるマイクロ波の遅れ位相を示している。
図4〜図12に示される実験結果によれば、水の温度上昇値は、加熱室内部において大きくばらついている。また、図7および図8に示すように、設定された位相差が120度および160度の場合には、加熱室4の一方の側面(左壁面)に近い領域(図7および図8においてHR1と表示)で温度上昇値が非常に高くなっている。
また、図11および図12に示すように、設定された位相差が280度および320度の場合には、加熱室4の他方の側面(右壁面)に近い領域(図11および図12においてHR2と表示)で温度上昇値が非常に高くなっている。
以上の実験結果から、本発明者は、加熱室内の電磁界分布が、対向して配置された2個のアンテナA1,A2から放射されるマイクロ波の位相差に応じて変化することに着目した。本発明者は、対向して配置されたアンテナA1,A2から放射されたマイクロ波の位相差を変化させることにより、加熱室内部の被加熱物を均一に加熱することが可能であること、および被加熱物の特定の部分を集中的に加熱することが可能であることを見出した。
したがって、対向して配置されたアンテナA1,A2から放射されるマイクロ波の位相差を変化させることにより、加熱室内部の電磁波分布を変化させることができる。このため、加熱室内部に配置された被加熱物を加熱室内部で移動させて加熱ムラを解消させる必要がなくなる。また、上記のように位相差を変化させることにより、加熱室内部の電磁波分布を変化させることができる。このため、加熱ムラを解消すべく電磁界分布を変化させるために、マイクロ波を放射するアンテナを移動させる必要がなくなる。
また、上記の実験結果から明らかなように、対向して放射されたマイクロ波の衝突に起因した現象が電磁界分布の変化としてあらわれているため、アンテナA1とアンテナA2のそれぞれから放射されるマイクロ波の放射方向が交差するようにアンテナA1、A2を配設しても同様の現象が発生する。これは、例えば隣接する加熱室壁面にアンテナA1、A2を配設する構成においても実現できる。
したがって、本発明に係る実施の形態1のマイクロ波加熱装置においては、電磁界分布を所望の分布とするために、被加熱物またはアンテナを移動させるための機構が必要ではなく、加熱室内部に被加熱物またはアンテナの移動用のスペースを確保する必要もない。その結果、実施の形態1のマイクロ波加熱装置の構成は、低コスト化および小型化を実現することができる。
なお、実施の形態1のマイクロ波加熱装置において、加熱室を上下に分割した場合について説明したが、給電部の配置を変更して加熱室を左右に分割する仕切り部を設けて、分割された各加熱室内に収納された被加熱物にマイクロ波をそれぞれ集中させるよう構成することも可能である。
以上のように、本発明に係る実施の形態1のマイクロ波加熱装置は、複数の加熱室4a,4bを備えて利便性を高めることができるとともに、マイクロ波を放射する機能を有する複数のマイクロ波供給手段である給電部21a,21b,21c,21dを加熱室の異なる壁面に配置して、それぞれのマイクロ波供給手段から放射されるマイクロ波を最適化することにより、さまざまな形状、種類、大きさ、量の異なる被加熱物を所望の状態に加熱することができる。
(実施の形態2)
以下、本発明に係る実施の形態2のマイクロ波加熱装置について添付の図13を用いて説明する。図13は実施の形態2のマイクロ波加熱装置のマイクロ波供給系の構成を示すブロック図である。
実施の形態2のマイクロ波加熱装置において、前述の実施の形態1のマイクロ波加熱装置と異なる点は、加熱室に対する給電部の配置である。実施の形態2の説明において実施の形態1と同じ機能、構成を有するものには同じ符号を付して、その説明は実施の形態1における説明を適用する。以下、実施の形態2のマイクロ波加熱装置において実施の形態1のマイクロ波加熱装置と異なる点について説明する。
図13に示すように、上側加熱室4aには2つの給電部21aと給電部21bが交差した位置関係で配置されている。すなわち、上側加熱室4aにおいては、天井である上面に給電部21aが設けられており、左壁面26aに給電部21bが設けられている。一方、下側加熱室4bにおいては、左壁面26bに給電部21cが設けられており、底面に給電部21dが設けられている。
上記のように構成された実施の形態2のマイクロ波加熱装置においても、前述の実施の形態1のマイクロ波加熱装置と同様に、上側加熱室4aおよび下側加熱室4bのそれぞれに設けた2つの給電部から放射されたマイクロ波に位相差を設定することにより、それぞれの加熱室4a,4bの内部における電磁界分布を変化させることができる。
実施の形態2のマイクロ波加熱装置における有利な点としては、右壁面27a,27bに給電部が存在しないため、この右壁面27a,27bの空きスペースを利用できることである。例えば、上側加熱室4aにおける右壁面27aの少し上側に、被加熱物の温度上昇状態を斜めから監視する温度検出センサである赤外線センサ32aを設けることができる。また、下側加熱室4bにおける右壁面27bの少し上側に、被加熱物の温度上昇状態を斜めから監視する温度検出センサである赤外線センサ32bを設けることができる。このように赤外線センサ32a,32bを設けることにより、両加熱室内部の被加熱物の温度上昇状態をそれぞれ独立して監視することが可能となる。
被加熱物の実際の温度を示す赤外線センサ32a,32bの検出信号は、制御部6へ加熱情報(図13において矢印Yとして表示)として帰還させることにより、使用者の設定した加熱条件(図13において矢印Xとして表示)により決定される所望の仕上がり温度を示す信号と比較される。被加熱物の実際の温度が所望の仕上がり温度に達したとき、マイクロ波発生部5におけるマイクロ波発生が停止され、被加熱物への加熱が停止される。
以上のように、本発明に係る実施の形態2のマイクロ波加熱装置は、前述の実施の形態1のマイクロ波加熱装置と同様に、複数の加熱室4a,4bを備えて利便性を高めることができるとともに、マイクロ波を放射する機能を有する複数のマイクロ波供給手段である給電部21a,21b,21c,21dを加熱室の壁面に最適に配置して、それぞれのマイクロ波供給手段から放射されるマイクロ波を最適化することにより、さまざまな形状、種類、大きさ、量の異なる被加熱物を所望の状態に加熱することができる。さらに、実施の形態2のマイクロ波加熱装置は、複数の加熱室内部に収納されたそれぞれの被加熱物に応じて所望の状態に高精度に加熱することが可能となる。
(実施の形態3)
以下、本発明に係る実施の形態3のマイクロ波加熱装置について添付の図14乃至図17を用いて説明する。図14は実施の形態3のマイクロ波加熱装置の外観を示す正面図である。図15は実施の形態3のマイクロ波加熱装置における加熱室のみを正面から見た図である。図16および図17は実施の形態3のマイクロ波加熱装置に用いられる仕切り部となる仕切り皿を示す図である。
図14および図15に示すように、実施の形態3のマイクロ波加熱装置は、前述の実施の形態1のマイクロ波加熱装置と同様に、加熱室4が上下2つに区切られて上側加熱室4aおよび下側加熱室4bが形成されている。実施の形態3のマイクロ波加熱装置においては、その前面に2つに分割された扉、上側扉30aと下側扉30bが設けられており、被加熱物を収納する上側加熱室4aおよび下側加熱室4bのそれぞれに対して出し入れ可能に構成されている。
実施の形態3のマイクロ波加熱装置においては、加熱室4の左右壁面の中央部分に棚レール29が設けられている。この棚レール29の上には仕切り皿28が摺動可能に載置されている。仕切り皿28は棚レール29に沿って移動可能であり、加熱室内に挿入できる構成である。加熱室4に挿入された仕切り皿28は加熱室4を上下に分割する仕切り板となっている。
図16は実施の形態3のマイクロ波加熱装置において用いられる仕切り皿28を示す平面図である。図17における(a)は図16に示す仕切り皿28のA−A’線による断面図であり、(b)は図16に示す仕切り皿28のB−B’線による断面図である。図16および図17において金属部分をハッチングで示す。
図16に示すように、仕切り皿28は、加熱室4の平面断面形状に対応するよう矩形状(四角形状)であり、4辺にフランジ28aが形成されている。このフランジ28aにおける対向する2辺が棚レール29上を摺動する構成である。仕切り皿28は、深さを有しており、中央部分が凹んだ形状である。したがって、仕切り皿28に載っている被加熱物が加熱されて、その被加熱物から煮汁や水が出ても、それらの液体は仕切り皿28に確実に受け取られる。即ち、仕切り皿28は、その外縁部分が略垂直な壁面で構成されているため、被加熱物からの液体が加熱室4の内部に漏出したり、仕切り皿28により上下に分割された上側加熱室4aから下側加熱室4bに垂れ落ちたりするということがない。
仕切り皿28は、その底部分の殆どが電磁波を遮蔽する金属、例えば、鉄、アルミニウム、ステンレスなどにより形成されている。この仕切り皿28により上側加熱室4aおよび下側加熱室4bが区切られているため、上側加熱室4aと下側加熱室4bとの間でマイクロ波がお互いに大量に漏洩して、それぞれの電磁界分布に対して大きく影響を及ぼし合うことがない。したがって、実施の形態3のマイクロ波加熱装置においては、仕切り皿28により独立した2つの加熱室4a,4bを構築することが可能となる。
仕切り皿28は、図16および図17に示すように、金属で構成された加熱室4の壁面と仕切り皿28との間で電界が集中してスパークを発生させることがないように、樹脂の部分と金属の部分の2ピース構造を有している。
即ち、仕切り皿28は、金属で構成された加熱室4の壁面と隣接する外縁部分の近傍が樹脂で構成されており、その他の部分が電磁波を遮蔽する金属で構成されている。仕切り皿28において、樹脂の部分の大きさおよび位置を適切に選択することによって、樹脂が存在するにもかかわらず上下の加熱室間におけるマイクロ波の漏洩を実質的に阻止することが可能となる。例えば、仕切り皿28の投影平面形状領域における80%以上に金属部分が配設されていれば、この仕切り皿28により分割された上下の加熱室4におけるそれぞれの電磁界分布に対して大きな影響を及ぼすことがない。特に、仕切り皿28における被加熱物を載置する面の90%以上に金属部分が配設されていることが好ましい。
なお、仕切り皿を全て金属で構成し、当該仕切り皿を載置する棚レールを仕切り皿のフランジを含む外周部分を覆うように形成された樹脂製で構成することも可能である。
なお、実施の形態3のマイクロ波加熱装置においては、加熱室4を仕切り皿28により上下に2分割する構成について説明したが、このように2つの加熱室4(4a,4b)を構成すると放射電力上の制約から出力が当該マイクロ波加熱装置の最高出力の略1/2となり、且つ加熱室4(4a,4b)の大きさが小さくなる。このような制約を嫌う使用者には、仕切り皿28を加熱室4の内部から取り外して、1つの加熱室4で当該マイクロ波加熱装置の最高出力で加熱処理する、いわゆる通常の電子レンジのように加熱処理することが可能である。
実施の形態3のマイクロ波加熱装置において、被加熱物を加熱室4から出し入れするための扉として、上側扉30aと下側扉30bが設けられている。したがって、例えば、仕切り皿28により区切られた上側加熱室4aに収納された被加熱物が下側加熱室4bに収納された被加熱物より先に仕上がった場合には、上側扉30aだけを開き該当する被加熱物を取り出すことが可能である。そして、更に別の被加熱物を上側加熱室4aで加熱する場合には、その被加熱物を上側加熱室4aに収納して上側扉30aを閉成して、加熱開始操作を操作表示パネル3において実施すれば継続的な使用が可能である。
なお、実施の形態3のマイクロ波加熱装置においては、上側扉30aを開放したときには、下側扉30bが閉鎖されていても下側加熱室4bにおける加熱処理を一旦停止するよう構成して、安全性が高められている。
勿論、実施の形態3のマイクロ波加熱装置においては、下側加熱室4bに収納された被加熱物だけを取り出すために、下側扉30bだけを開き該当する被加熱物を取り出すことも可能である。上側扉30aおよび下側扉30bのいずれの扉も単独で開閉操作することが可能であり、操作表示パネル3において上側加熱室4aおよび/または下側加熱室4bに対して所望の加熱条件に設定して、それぞれに収納された被加熱物を別々に加熱処理することが可能である。
なお、実施の形態3のマイクロ波加熱装置においては、2つの加熱室4a,4bに対応して上側扉30aおよび下側扉30bを有する構成について説明したが、安全性をさらに高めるために、1つの扉2の中に小さな扉30aを設けて一方の加熱室から被加熱物を出し入れできる構成とすることも可能である。図18は実施の形態3のマイクロ波加熱装置における扉2の上側に小さな上側扉30aを設けた例を示す正面図である。図18に示すように、このマイクロ波加熱装置においては、扉2により加熱室4の全体を開放することができると共に、上側扉30aのみを開くことにより上側加熱室4aに対する被加熱物の出し入れが可能となる。勿論、扉2に下側扉30bを設けることも可能である。
実施の形態3のマイクロ波加熱装置は、加熱室4をそのまま分割せずに1つの加熱室として使いたい場合、上側加熱室4aと下側加熱室4bを同時に使いたい場合、上側加熱室4aまたは下側加熱室4bのいずれか一方の加熱室だけを使いたい場合のそれぞれに対応することができ、使用者の様々の使用目的に応じて柔軟に対応できるため利便性の高い加熱装置である。
なお、実施の形態3のマイクロ波加熱装置においては、1枚の仕切り皿28を用いて加熱室を上下に2分割する構成について説明するが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、複数枚の仕切り皿28を用いて複数の加熱室を構成し、それぞれの加熱室に給電部を配設する構成も可能である。
上記のように構成された仕切り皿28を実施の形態3のマイクロ波加熱装置に用いることにより、加熱室4を複数に分割することが可能であると共に、仕切り皿28と加熱室壁面との間でスパークが発生することのない安全なマイクロ波加熱装置を実現することができる。
以上のように、本発明に係る実施の形態3のマイクロ波加熱装置は、前述の実施の形態1のマイクロ波加熱装置と同様に、複数の加熱室を備えて利便性を高めることができるとともに、マイクロ波を放射する機能を有する複数のマイクロ波供給手段である給電部21a,21b,21c,21dを加熱室の壁面に配置して、それぞれのマイクロ波供給手段から放射されるマイクロ波を最適化することにより、さまざまな形状、種類、大きさ、量の異なる被加熱物を所望の状態に加熱することができる。さらに、実施の形態3のマイクロ波加熱装置は、被加熱物に応じて加熱室を変更することが可能であり、利便性の更に高い加熱装置となる。
(実施の形態4)
以下、本発明に係る実施の形態4のマイクロ波加熱装置について添付の図19および図20を用いて説明する。図19は実施の形態4のマイクロ波加熱装置のマイクロ波供給系を主体とした構成を示すブロック図である。図20は実施の形態4のマイクロ波加熱装置の制御系を主体とした構成を示すブロック図である。
実施の形態4のマイクロ波加熱装置において、前述の図13に示した実施の形態2のマイクロ波加熱装置と異なる点は、マイクロ波発生部における発振部が2つ設けられている点である。図19および図20に示す実施の形態4の説明において、前述の実施の形態2と同じ機能、構成を有するものには同じ符号を付して、その説明は実施の形態1および実施の形態2における説明を適用する。以下、実施の形態4のマイクロ波加熱装置において実施の形態2のマイクロ波加熱装置と異なる点について説明する。
図19に示すように、実施の形態4のマイクロ波加熱装置の基本的構成は、図13に示した実施の形態2のマイクロ波加熱装置と類似しているが、発振部の数が異なっている。
実施の形態4のマイクロ波加熱装置のマイクロ波発生部31においては、上側加熱室4aにマイクロ波を放射する給電部21aと給電部21bに対する発振部として第1の発振部7aを備え、下側加熱室4bにマイクロ波を放射する給電部21cと給電部21dに対する発振部として第2の発振部7bを備えている。
マイクロ波発生部31における増幅ブロックの主増幅部12a,12b,12c,12dから出力部15a,15b,15c,15dまでのマイクロ波伝送路13a,13b,13c,13dに挿入された電力検知部14a,14b,14c,14dは、加熱室4からの反射電力を抽出する。抽出された反射電力の情報は制御部(CPU)6に入力されて、その制御部6において反射電力の最小値または極小値を示すときの周波数が検出される。制御部6は、検出された周波数で発振させるために、周波数調整信号A,Bが発振部7a,7bのそれぞれに入力される。この結果、マイクロ波発生部31は、反射電力が最小値または極小値を示すマイクロ波信号を出力し、マイクロ波加熱装置は反射電力が最小となる加熱条件で効率高く加熱処理される。
上記のように、電力検知部14a,14b,14c,14dは、加熱室側からマイクロ波発生部側にそれぞれ伝送される、いわゆる反射波の電力(反射電力)を抽出するものであり、電力結合度を例えば約40dBとすると、反射電力の約1/10000の電力量を抽出する。この抽出された電力を示す信号は、それぞれ検波ダイオード(図示していない)で整流化され、コンデンサ(図示していない)で平滑処理される。平滑処理された信号は制御部6に入力される。
したがって、上記のように制御部6において制御されたマイクロ波加熱装置は、加熱室4およびその加熱室4に収納された被加熱物に応じて、最も反射波が少ない状態、すなわち被加熱物が最も多くのマイクロ波エネルギを受熱している条件で動作している。このため、実施の形態4のマイクロ波加熱装置は反射損失が少なく高い効率で加熱処理することができる。
図20は実施の形態4のマイクロ波加熱装置における制御系を主体とした構成のブロック図である。以下、図20のブロック図を用いて実施の形態4のマイクロ波加熱装置における特徴的な制御について説明する。
マイクロ波発生部31における、第1の発振部7aと第2の発振部7bは、一方の被加熱物を収納した上側加熱室4aと他方の被加熱物を収納した下側加熱室4bのそれぞれに対応するように、制御部6からの周波数調整信号A,Bにより最適な周波数で発振し、所望のマイクロ波信号をそれぞれ出力する。制御部6においては、それぞれの被加熱物に適応したマイクロ波としての周波数を選択して周波数調整信号A,Bを出力する。制御部6における抽出演算処理は、基本的に反射波の少ない領域(最小値または極小値)の周波数を選択するアルゴリズムとなっている。
上側加熱室4aからの反射波の電力は給電部21a,21bを介して電力検知部14a,14bにおいて検出される。電力検知部14a,14bにおいて検出された反射波の電力を示す信号は、制御部6に帰還される。制御部6においては、帰還された信号に基づいて演算処理し、上側加熱室4aに適した反射波の少ない周波数を選択して第1の発振部7aの発振周波数を決定する。
一方、下側加熱室4bを加熱動作させる場合も同様であり、下側加熱室4bからの反射波の電力は給電部21c,21dを介して電力検知部14c,14dにおいて検出される。電力検知部14c,14dにおいて検出された反射波の電力を示す信号は、制御部6に帰還される。制御部6においては、帰還された信号に基づいて演算処理し、下側加熱室19bに適した反射波の少ない周波数を選択して第2の発振部7bの発振周波数を決定する。
上記のように所望の発振周波数に調整する場合において、最初に最高出力で周波数抽出処理を行った場合、反射波が大き過ぎて、主増幅部12a,12b,12c,12dを破壊する可能性がある。そのため、最初の周波数抽出処理は低出力で行うことが望ましい。一度、反射波の少ない周波数を抽出できれば、その周波数で通常の時に使用する高出力に出力を上昇させるように動作するアルゴリズムが好ましい。マイクロ波出力の高低は制御部6から第1の発振部7a、第2の発振部7bの発振信号に高低を付ける指令を出力することによって実現できる。
実施の形態4のマイクロ波加熱装置においては、制御部6が上記のように動作することにより、上側加熱室4aと下側加熱室4bが独立した加熱シーケンスで加熱工程を進行させることが可能となる。したがって、各上側加熱室4aおよび下側加熱室4bが異なる被加熱物を異なる加熱条件で加熱処理する場合には、制御部6は各加熱室4a,4bにおいて全く異なった加熱シーケンスで各工程を進行させる必要がある。
実施の形態4のマイクロ波加熱装置の使用方法としては、操作表示パネル3において使用者が加熱時間を設定して2つの加熱室4a,4bに被加熱物を収納し、加熱シーケンスの各工程をマニュアル的に実施する方法がある。マニュアル的なアプリケーションとしては、2つの加熱室4aおよび4bのそれぞれに異なる被加熱物を収納し、使用者がそれぞれを所望の加熱時間に設定して加熱する方法がある。また、その他のマニュアル的なアプリケーションとしては、一方の加熱室だけに被加熱物を収納して、その加熱室のみの加熱時間を使用者が設定して加熱する方法がある。さらに、その他のマニュアル的なアプリケーションとしては、仕切り板25または仕切り皿28を加熱室4から取り外して、加熱室4を分割せずに大きな被加熱物を収納させて、使用者が加熱時間を設定して加熱する方法である。
例えば、電子レンジにおいて、自動調理は使用者にとっての利便性が高いが、機器を使いこなした使用者にとってはマニュアル的な使用方法の途を提供しておくことは必要不可欠である。使用者独自の仕上がりを望む場合には、自動調理による仕上がりでは画一化できない側面を持っているためである。
したがって、実施の形態4のマイクロ波加熱装置は、マニュアル的な各種アプリケーションに適用できるため、使用者にとって使い勝手が良く、利便性の高い加熱装置となる。
実施の形態4のマイクロ波加熱装置においては、上側加熱室4aに収納された被加熱物の温度上昇を検知して、仕上がり状態を監視する赤外線センサ32aが設けられている。実施の形態4のマイクロ波加熱装置は、使用者が操作表示パネル3において設定した加熱条件で決定される仕上がり目標(温度)と実際の仕上がり状態(温度)との偏差を常に監視している。加熱が進行しその偏差が零になったことを制御部6が検出したとき、制御部6は最終的に加熱終了として第1の発振部7aの駆動を停止する。また、初段増幅部11aと主増幅部12aで構成された第1の増幅ブロック33aおよび初段増幅部11bと主増幅部12bで構成された第2の増幅ブロック33bを有する上側加熱室用増幅ブロック36aへの電力供給の停止は、接続器35aを遮断することにより行われる。接続器35aは駆動電源部34と上側加熱室用増幅ブロック36aとの間に設けられ、駆動電源部34から上側加熱室用増幅ブロック36aへの電力供給のオンオフ制御を行っている。接続器35aが遮断されることにより、マイクロ発生部31からのマイクロ波出力は完全に停止される。
実施の形態4のマイクロ波加熱装置においては、上側加熱室4aと同様に、下側加熱室4bに収納された被加熱物の温度上昇を検知して、仕上がり状態を監視する赤外線センサ32bが設けられている。実施の形態4のマイクロ波加熱装置は、使用者が操作表示パネル3において設定した加熱条件で決定される仕上がり目標(温度)と実際の仕上がり状態(温度)との偏差を常に監視している。加熱が進行しその偏差が零になったことを制御部6が検出したとき、制御部6は最終的に加熱終了として第2の発振部7bの駆動を停止する。また、初段増幅部11cと主増幅部12cで構成された第3の増幅ブロック33cおよび初段増幅部11dと主増幅部12dで構成された第4の増幅ブロック33dを有する下側加熱室用増幅ブロック36bへの電力供給は、接続器35bを遮断することにより停止される。接続器35bは駆動電源部34と下側加熱室用増幅ブロック36bとの間に設けられ、駆動電源部34から下側加熱室用増幅ブロック36bへの電力供給のオンオフ制御を行っている。接続器35bが遮断されることにより、マイクロ発生部31からのマイクロ波出力が完全に停止される。
なお、使用者が当該マイクロ波加熱装置の扉を開成すると、その開成動作に応じて接続器35a,35bが遮断され、マイクロ波発生部31からのマイクロ波出力は完全に停止されるため、使用者にはマイクロ波被爆という危険な状態となることが完全に防止されている。
上記のように、実施の形態4のマイクロ波加熱装置においては、2つの発振部7a,7bが設けられているため、2つの電力分配器8b,8cにより各発振部7a,7bからの出力を分配して4つのマイクロ波出力を形成している。なお、実施の形態4のマイクロ波加熱装置においては、前述の実施の形態2のマイクロ波加熱装置と同様に、2つの位相可変部10a,10bが設けられており、制御部6からの制御信号である電圧信号が入力された位相可変部10a,10bにより、それぞれの加熱室4a,4bに放射されるマイクロ波を所望の位相差とすることが可能となっている。
また、実施の形態4のマイクロ波加熱装置においては、上側加熱室4aおよび下側加熱室4bの加熱動作が独立シーケンスにより作動している。しかし、いずれか一方の加熱動作が終了して、上側扉30aまたは下側扉30bのいずれか一方の扉が開成されたときには、仕切り板25若しくは仕切り皿28の仕切り部により2つの加熱室4a,4bの間は基本的にはマイクロ波が遮蔽されているが、上側加熱室4aおよび下側加熱室4bとの間でマイクロ波が漏洩する可能性があるため、他方の加熱室が加熱動作中であっても、マイクロ波出力を完全に停止する安全性を重視した構成を有している。
なお、実施の形態4のマイクロ波加熱装置において、加熱室を上下に分割した場合について説明したが、給電部の配置を変更して加熱室を左右に分割する仕切り部を設けて、分割された各加熱室内に収納された被加熱物にマイクロ波をそれぞれ集中させるよう構成することも可能である。
以上のように、本発明に係る実施の形態1〜4のマイクロ波加熱装置は、複数の給電部を有し、加熱室を構成する異なる壁面に給電部を分散配置し、電波を遮蔽する仕切り板(仕切り皿)により複数の加熱室を構成することが可能である。本発明に係るマイクロ波加熱装置においては、それぞれの加熱室で加熱される被加熱物をそれぞれ独立したシーケンスで加熱することができるので、電子レンジで代表されるような誘電加熱を利用した加熱装置や生ゴミ処理機、あるいは半導体製造装置であるプラズマ電源のマイクロ波電源などの用途にも適用できる。
(実施の形態5)
以下、本発明に係る実施の形態5のマイクロ波加熱装置について添付の図21および図22を参照しつつ説明する。図21は実施の形態5のマイクロ波加熱装置の構成を示す断面図である。図22は実施の形態5のマイクロ波加熱装置のマイクロ波供給系の構成を示したブロック図である。実施の形態5の説明において、前述の実施の形態1〜4のマイクロ波加熱装置と同じ機能、構成を有するものには同じ符号を付し、その説明は重複するため実施の形態5においては省略する。
本発明に係る実施の形態5のマイクロ波加熱装置は、前述の実施の形態1〜4と同様に、加熱室の異なる壁面のそれぞれに給電部を設けて、加熱室内部の電磁波分布を均一化、若しくは被加熱物に応じて可変するよう構成されている。
特に、実施の形態5のマイクロ波加熱装置においては、以下の問題を解決するものである。
従来のマイクロ波加熱装置である電子レンジの加熱室は一般に直方体形状で構成されている。この加熱室を構成する一つの壁面には、加熱室内部に被加熱物を出し入れするための開閉扉が設けられている。近年、対面式キッチンを設ける家庭が増えてきている。このような対面式キッチンでは、電子レンジの開閉扉が、通常、キッチンにおいて操作できるようにキッチン側に向いて設置されている。また、コンビニエンスストアには、加熱してから食べるように形成された食品が販売されている。このような加熱食品を購入者が直ぐに食べられるように、コンビニエンスストアでは、食品を加熱するために、電子レンジによる再加熱処理が行われている。このように用いられる電子レンジは、コンビニエンスストアの従業員が操作できるように開閉扉はレジカウンタの内側を向いて設置されている。
上記のような電子レンジの設置環境において、対面キッチンにおいては、キッチン側およびリビング側の両方から電子レンジを利用できると利便性が高くなる。また、コンビニエンスストアにおいては、レジカウンタの内側およびレジカウンタの外側である客側の両方から電子レンジを利用できれば、利便性を高くなる。
上記のような設置環境に対応できる構成としては、例えば天井部分が開閉するドーム状の開閉扉を備えたものが考えられる。例えば、日本の実開昭63−139408号公報にはドーム状の開閉扉を有する電子レンジが開示されている。
しかしながら、ドーム状の開閉扉を有する電子レンジでは、電子レンジの天井部分を開閉する構成であるため、電子レンジの上部にある程度の空間が必要である。このようなドーム形状の開閉扉を有する電子レンジを家庭で用いる場合には、このような電子レンジを収納棚へ設置して操作することが困難である。また、このような電子レンジをコンビニエンスストアにおいて使用する場合には、複数の電子レンジを設置する必要があるが、このような電子レンジは積み重ねができないという問題がある。
本発明に係る実施の形態5のマイクロ波加熱装置である電子レンジにおいては、上記の問題を解決するものであり、加熱室を構成する前面と裏面に開閉扉を設けたものである。
以下、本発明に係る実施の形態5のマイクロ波加熱装置について詳細に説明する。
図21はマイクロ波加熱装置である電子レンジ1の側面断面図であり、図21において左側が正面、右側が裏面である。図22は電子レンジ1のマイクロ波供給系の構成示した図であるが、その右側に記載した加熱室4は正面図であり、左壁面42、右壁面43、底壁面44、上壁面45、および裏面側扉38が示されている。
図21および図22に示すように、実施の形態5の電子レンジ1は、被加熱物を収納する略直方体構造からなる加熱室4を有する。加熱室4はマイクロ波を遮断する材料、例えば鉄、アルミニウム、ステンレスなどの金属材料で形成された左壁面42、右壁面43、底壁面44、上壁面45、および加熱室4に対して被加熱物を出し入れするために開閉する正面側扉37と裏面側扉38で構成されている。加熱室4は、その内部に供給されたマイクロ波を内部に閉じ込めるよう遮蔽構造を有している。なお、図21に示す電子レンジ1においては、正面側扉37および裏面側扉38の開成途中の状態を一点鎖線で示す。
図21に示すように、装置本体側に設けられた正面側扉取り付け板40に対向する正面側扉37の周縁部には電波漏洩防止機構37a,37bが設けられており、裏面側扉取り付け板41に対向する裏面側扉38の周縁部には電波漏洩防止機構38a,38bが設けられている。各扉37,38の中央部分38c,37cには、マイクロ波を遮断するとともに加熱室4の内部を透視できるようにパンチング孔加工が施こされている。
図22に示すように、加熱室4へのマイクロ波を形成して供給するマイクロ波発生部5は、前述の図2に示した実施の形態1と同様に、半導体素子を用いて構成した発振部7と、この発振部7の出力を2段構成により4分配する3つの電力分配部8a,8b,8cと、2段目の電力分配部8b,8cから4分配された出力が各マイクロ波伝送路9a,9b,9c,9dを介して入力される半導体素子を用いて構成された初段増幅部11a,11b,11c,11dと、初段増幅部11a,11b,11c,11dのそれぞれの出力が入力されて、さらに増幅する半導体素子を用いて構成した主増幅部12a,12b,12c,12dと、主増幅部12a,12b,12c,12dの各出力がそれぞれのマイクロ波伝送路13a,13b,13c,13dを介して入力される出力部15a,15b,15c,15dと、各マイクロ波伝送路13a,13b,13c,13dに挿入され、加熱室4からの反射電力を検知する電力検知部14a,14b,14c,14dと、マイクロ波伝送路9a,9cに挿入された位相可変部10a,10bと、を具備して構成されている。
マイクロ波発生部5の4つの出力部15a,15b,15c,15dから伝送されたマイクロ波を加熱室4の内部に放射供給する給電部21a,21b,21c,21dが加熱室4に設けられている。給電部21a,21b,21c,21dは、加熱室4を構成する各壁面に配設されている。加熱室4の内部において、対向する左壁面42と右壁面43の略中央には給電部21c,21dがそれぞれ対向するよう配設されている。同様に、対向する底壁面44と上壁面45の略中央には給電部21a,21bが対向するよう配設されている。
上記のように、実施の形態5のマイクロ波加熱装置においては各給電部21a,21b,21c,21dのそれぞれが加熱室4を構成する壁面における異なる壁面に配設されている。
実施の形態5のマイクロ波加熱装置において、給電部21a,21b,21c,21dは、マイクロ波を放射するアンテナである供給部23a,23b,23c,23dと、供給部23a,23b,23c,23dからのマイクロ波を導く導波部22a,22b,22c,22dと、加熱室4の各壁面に形成された開口部24a,24b,24c,24dと、を有する。
各給電部21a,21b,21c,21dにおいて、導波部22a,22b,22c,22dは加熱室4の壁面に形成した開口部24a,24b,24c,24dを加熱室壁面の外部から覆うとともに、供給部23a,23b,23c,23dを始端側に開口部24a,24b,24c,24dを終端側に配置する。供給部23a,23b,23c,23dは、各導波部22a,22b,22c,22dにマイクロ波発生部5からの各出力を供給する同軸伝送路の中心導体を突出させて構成されている。開口部24a,24b,24c,24dは、略長方形の矩形形状を有している。対向して配置された上壁面45の開口部24aと底壁面44の開口部24bは、それぞれの長手方向が平行となるよう配置されている。また、対向して配置された左壁面42の開口部24cと右壁面43の開口部24dは、それぞれの長手方向が平行となるよう配置されている。実施の形態5においては、開口部24aと開口部24bの長手方向、および開口部24cと開口部24dの長手方向が直交するよう構成されている。即ち、開口部24aと開口部24bの長手方向は加熱室4の幅方向であり、開口部24cと開口部24dの長手方向は加熱室4の奥行き方向である。
上記のように、加熱室4を構成する壁面において、直交して隣接する上壁面45と左壁面42に設けられた開口部24aと開口部24cは、それぞれの長手方向が直交状態となるよう配置されている。同様に、直交して隣接する上壁面45と右壁面43に設けられた開口部24aと開口部24dは、それぞれの長手方向が直交状態となるよう配置されている。
また、実施の形態5のマイクロ波加熱装置において、左壁面42に配設した給電部21cおよび右壁面43に配設した給電部21dは、開口部24c,24dがアンテナとなる供給部23c,23dに対して、高さ方向に高い位置に配置されている。
なお、給電部21a,21b,21c,21dの構成要素として、加熱室4の内部へ放射するマイクロ波の伝送効率を高めるために導波部22a,22b,22c,22dの内部にインピーダンス整合素子を付帯させてもよい。
実施の形態5のマイクロ波加熱装置において、増幅ブロックである初段増幅部11a,11b,11c,11dおよび主増幅部12a,12b,12c,12dは、低誘電損失材料により構成された誘電体基板の片面に形成された導電体パターンの回路で構成されている。また、各増幅部の増幅素子である半導体素子を良好に動作させるために、各半導体素子の入力側と出力側のそれぞれに整合回路が設けられている。
マイクロ波発生部5におけるマイクロ波伝送路9a,9b,9c,9d、および13a,13b,13c,13dは、誘電体基板の片面に形成された導電体パターンによって特性インピーダンスが略50Ωの伝送回路が形成されている。
2段構成の3つの電力分配部8a,8b,8cは、それぞれ同一構造の3dBブランチラインカプラー構成である。以下、電力分配部8aを代表としてその構成について説明する。
電力分配部8aにおける4つの端子に符号16〜19を付すと、第1端子16と第2端子17の間、および第3端子18と第4端子19の間には特性インピーダンスが略50Ωでその電気長がλ/4(ここで、λは使用周波数帯の中央周波数の実効波長を示す)からなるマイクロストリップ線路が配置されている。第1端子16と第3端子18の間、および第2端子17と第4端子19の間には特性インピーダンスが略35.35Ωで電気長λ/4のマイクロストリップ線路が配置されている。さらに、第3端子18には抵抗値が50Ωの電力終端器20が接続されている。他の電力増幅部8b,8cにおいても、電力分配部8aと同様に構成されている。
上記のように構成された電力分配部8aにおいて、第1端子16に入力されたマイクロ波信号は、第2端子17および第4端子19に2分配されて出力される。また、このとき第2端子17および第4端子19から出力されるマイクロ波信号の位相の関係は、第2端子17から出力されたマイクロ波信号の位相に対して、第4端子19から出力されたマイクロ波信号は位相が90度遅れている。
実施の形態5のマイクロ波加熱装置においては、電力分配部8a,8b,8cが2段構成であるため、発振部7の出力電力は、略1/4ずつ分配され、後続の初段増幅部11a,11b,11c,11dに出力される。マイクロ波伝送路9bを伝送するマイクロ波信号を基準にすると、マイクロ波伝送路9aおよび9cを伝送するマイクロ波信号は、位相が90度遅れた信号として伝送され、マイクロ波伝送路9dを伝送するマイクロ波信号は、位相が180度遅れた信号として伝送される。
また、実施の形態5のマイクロ波加熱装置において、2つのマイクロ波伝送路9aと9cにはそれぞれ位相可変部10aと10bが挿入されている。この位相可変部10a,10bは、印加電圧に応じて容量が変化する容量可変素子を用いて構成されており、その位相可変範囲は略0度から略270度の範囲である。
マイクロ波発生部5における電力検知部14a,14b,14c14dは、加熱室4からマイクロ波発生部5に伝送された、いわゆる反射波の電力(反射電力)を抽出するものである。各電力検知部14a,14b,14c,14dは、電力結合度を、例えば約40dBとして、反射電力の約1/10000の電力量を抽出する。この抽出された電力量を示す信号は、それぞれの電力検知部14a,14b,14c,14dにおいて、検波ダイオード(図示していない)で整流化し、コンデンサ(図示していない)で平滑処理して出力される。各電力検知部14a,14b,14c,14dの出力信号は、制御部6に入力される。
制御部6は、使用者が操作表示パネル3において直接入力した被加熱物の加熱条件(図22において矢印Xで示す)、または加熱中における被加熱物の実際の加熱状態を検知して得られた加熱情報(図22において矢印Yで示す)、および電力検知部14a,14b,14c,14dから反射電力に関する検知情報(図22において矢印Zで示す)に基づいて、マイクロ波発生部5の構成要素である発振部7と初段増幅部11a,11b,11c,11dと主増幅部12a,12b,12c,12dのそれぞれに供給する駆動電力の制御を行う。また、制御部6は、加熱条件(X)と加熱情報(Y)と検知情報(Z)に基づいて位相可変部10a,10bに印加する電圧を制御する。このように制御部6がマイクロ波発生部5を駆動制御することにより、加熱室4の内部に収納された被加熱物は最適に加熱され、使用者にとって所望の仕上がり状態となる。
マイクロ波発生部5には、発振部7、初段増幅部11a,11b,11c,11d、主増幅部12a,12b,12c,12dなどを構成する半導体素子の発熱を放熱させるための放熱手段、例えばフィン形状の放熱部、送風ファンなどが設けられている。
なお、実施の形態5のマイクロ波加熱装置には、加熱室4の底壁面44に設けた給電部21bの開口部24bを覆うとともに、被加熱物を載置するための皿39が設けられている。この皿39は低誘電損失材料で構成されている。
以下、実施の形態5のマイクロ波加熱装置における動作について説明する。
まず始めに、使用者は一方の正面側扉37または裏面側扉38を開成して、被加熱物を加熱室4の内部に収納し、該当する正面側扉37または裏面側扉38を閉成する。使用者は、操作表示パネル3において、当該被加熱物に関する加熱条件を入力する。なお、操作表示パネル3はマイクロ波加熱装置における正面側と裏面側の両方に設けられている。
使用者は、加熱条件を入力した後、加熱開始キーを押圧する。加熱開始キーの押圧により加熱開始信号(S)が制御部6に入力される。加熱開始信号(S)が入力された制御部6は、制御信号をマイクロ波発生部5に出力し、マイクロ波発生部5の動作を開始させる。また、制御部6は、駆動電源を動作させて発振部7、初段増幅部11a,11b,11c,11dおよび主増幅部12a,12b,12c,12dに電力を供給させる。この時、発振部7には、初期の発振周波数が、例えば2450MHzとなる電圧信号が供給され、発振が開始される。
発振部7の出力は、1段目の電力分配部8aにて略1/2に分配されて、2段目の電力分配器8b,8cにてさらに略1/2に分配され、4つのマイクロ波電力信号が形成される。各マイクロ波電力信号は、半導体素子で構成された初段増幅部11a,11b,11c,11dおよび主増幅部12a,12b,12c,12dに順次供給される。マイクロ波電力信号は、駆動電源が入力された初段増幅部11a,11b,11c,11dおよび主増幅部12a,12b,12c,12dにおいて増幅される。
それぞれの伝送路におけるマイクロ波電力信号は、並列動作する初段増幅部11a,11b,11c,11dおよび主増幅部12a,12b,12c,12dにおいて増幅され、電力検知部14a,14b,14c,14dを介して出力部15a,15b,15c,15dからそれぞれ出力される。
マイクロ波発生部5から出力されたマイクロ波電力信号は、加熱室4に設けられた給電部21a,21b,21c,21dに伝送され、加熱室4の内部に放射される。このとき、加熱室4の底壁面44に設けられた給電部21bから放射されるマイクロ波信号の位相を基準にすると、上壁面45の給電部21aおよび左壁面42の給電部21cから放射されるマイクロ波信号は、略90度遅れた信号となり、右壁面43の給電部21dから放射されるマイクロ波信号は、略180度遅れた信号となる。すなわち、対向する給電部(21a,21b)および(21c,21d)の間の位相差が略90度となるようにマイクロ波発生部5の出力が各給電部21a,21b,21c,21dに入力されている。このとき、各主増幅部12a,12b,12c,12dはそれぞれ100W未満、たとえば50Wのマイクロ波電力を出力し、各給電部21a,21b,21c,21dに供給している。
加熱室4に供給されるマイクロ波電力が被加熱物に100%吸収されると加熱室4からの反射電力は無くなるが、実際には被加熱物の種類、形状、大きさ、量などに応じて変化する反射電力が生じる。被加熱物の種類、形状、大きさ、量などが被加熱物を収納する加熱室4における電気的特性を決定し、マイクロ波発生部5の出力インピーダンスと加熱室4のインピーダンスなどに基づいて反射電力が生じ、加熱室4からマイクロ波発生部5に反射電力が伝送される。
電力検知部14a,14b,14c,14dは、加熱室4からマイクロ波発生部5に伝送された反射電力を検出して、反射電力量に比例した検知情報(Z)である検出信号を制御部6に出力する。検出信号が入力された制御部6は、反射電力が最小値または極小値となる周波数の抽出を行う。この周波数抽出動作において、制御部6は、発振部7の発振周波数を初期の2450MHzから0.1MHzピッチ(たとえば、10ミリ秒で1MHz)の間隔で低い周波数に変化させていく。そして、周波数可変範囲の下限である2400MHzに到達すると1MHzピッチで周波数を高く変化させていき、2450MHzに到達すると、さらに0.1MHzピッチで周波数可変範囲の上限である2500MHzまで高くする。この周波数抽出動作において、反射電力が最小または極小となる周波数と、それらの周波数における反射電力に相当する信号を記憶する。そして、反射電力が最小または極小となる周波数群において反射電力に相当する信号が最も小さい周波数を選定する。制御部6は、選定された周波数で発振部7が発振するように制御するとともに、発振部7の発振出力が使用者の入力した加熱条件(X)に対応した出力となるように制御する。この結果、各主増幅部は、それぞれ200Wから300Wのマイクロ波電力を出力する。
なお、検出された最も小さい第1の極小値となる周波数を加熱動作時のマイクロ波周波数として加熱処理を行い、もし、電力検知部が検知した反射電力が、予め定めた所定の値よりも大きくなると、加熱処理前に検出した第1の極小値より大きな第2の極小値となる周波数を加熱動作時のマイクロ波周波数として加熱処理するように発振部7が発生するよう構成してもよい。
上記のように制御されたマイクロ波発生部5の出力は、各給電部21a,21b,21c,21dに伝送され、加熱室4内に放射される。このとき、底壁面44の給電部21bから放射されたマイクロ波信号の位相を基準にすると、上壁面45の給電部21aおよび左壁面42の給電部21cから放射されたマイクロ波信号は、略90度遅れた信号となり、右壁面43の給電部21dから放射されたマイクロ波信号は略180度遅れた信号となる。すなわち、対向する給電部(21a,21b)および(21c,21d)の間の位相差が略90度となるようにマイクロ波発生部5の出力が各給電部21a,21b,21c,21dに入力されている。
実施の形態5のマイクロ波加熱装置においては、略90度の倍数の位相差を形成するよう構成して、電力分配部8a,8b,8cに90度ハイブリッド分配器を用いる。このように、電力分配部に90度ハイブリッド分配器を用いることにより、コンパクト形状で安定した等分配を実行することができ、且つ電力分配部を複数段接続することにより、4分配、8分配などの複数分配に形成しても、分配出力間の位相差を略90度に安定して形成することができる。
実施の形態5のマイクロ波加熱装置においては、1つの発振部7を発振源として、電力分配部により4分配されたマイクロ波信号が形成され、対向する給電部(21a,21b)および(21c,21d)にマイクロ波信号を伝送する2つのマイクロ波伝送路(9a,9b)および(9c,9d)の一方9a,9cに位相可変部10a,10bがそれぞれ設けられている。実施の形態5においては、対向する給電部(21a,21b)および(21c,21d)における各開口部(24a,24b)および(24c,24d)の長手方向が同一方向となっている。
上記のように構成されたマイクロ波発生部5において、位相可変部10a,10bに印加する電圧を制御することにより、対向および/または近接した給電部から放射されるそれぞれのマイクロ波の位相差を同相、若しくは逆相(180度差)にすることができる。
上記のように、実施の形態5のマイクロ波加熱装置においては、加熱室内に放射されるマイクロ波の位相差を変えることにより、加熱室内のマイクロ波の伝搬状態を時間的に変化させて、被加熱物に対する局所加熱を解消し、加熱の均一化を図ることができる。
なお、実施の形態5においては、位相可変部10a,10bは2つのマイクロ波伝送路9a,9cに挿入した例で説明したが、最大ですべてのマイクロ波伝送路9a,9b,9c,9dに挿入してもよい。その場合、それぞれの位相可変部を個別にかつ時間的に制御することにより、複数の給電部21a,21b,21c,21dから放射されるマイクロ波の位相の組合せを変化させることが可能となり、さらに均一な加熱を図ることができる。
また、実施の形態5のマイクロ波加熱装置においては、電力検知部14a,14b,14c,14dの検知信号に基づいて、反射電力量が少なくなるように位相可変部10a,10bへの印加電圧を制御することで、加熱効率を高めて、短時間加熱を図ることができる。
実施の形態5のマイクロ波加熱装置は、電力検知部14a,14b,14c,14dが検知する反射電力量が所定の最大許容反射電力量を超えた場合、制御部6は発振出力を低下させるように発振部7、若しくは初段増幅部11a,11b,11c,11dおよび主増幅部12a,12b,12c,12dへの供給電力を低減させて、各半導体素子の熱破壊を回避させている。
実施の形態5のマイクロ波加熱装置は、加熱室4を構成する4つの壁面(左壁面42,右壁面43,底壁面44,上壁面45)のそれぞれに給電部21a,21b,21c,21dを設けた例で説明したが、少なくとも2つの給電部を加熱室10を構成する隣接した2つの壁面(左壁面42と底壁面44、あるいは右壁面43と底壁面45)にそれぞれ設けることにより、被加熱物に異なる2方向から直接的にマイクロ波を照射させることができ、例えば厚みのある被加熱物の加熱を促進させることが可能となる。
実施の形態5のマイクロ波加熱装置において、加熱室4を構成する対向する壁面(上壁面45と底壁面44,左壁面42と右壁面43)に設けられた給電部(21aと21b,21cと21d)は、対向する開口部(24aと24b,24cと24d)が同一方向が長手方向となる長方形形状である。開口部から放射されるマイクロ波は、そのマイクロ波が放射される開口部の長手方向に直交する方向で、壁面に沿って4つの壁面を周回しながら伝搬する。したがって、対向する開口部(24aと24b,24cと24d)から放射されたマイクロ波の偏波面は略平行となり、それぞれのマイクロ波のエネルギを被加熱物に集中させることができる。
また、実施の形態5のマイクロ波加熱装置において、加熱室4を構成する隣接する壁面(例えば、上壁面45と左壁面42,右壁面43と底壁面44)に設けられた給電部(21aと21c,21dと21b)の開口部(24aと24c,24dと24b)の長手方向が直交するよう構成されている。このように開口部の長手方向が直交するよう構成された給電部において、当該給電部の開口部から放射されるマイクロ波の偏波面が直交状態となることにより、互いの干渉が緩和され、それぞれの給電部から放射されるマイクロ波のエネルギを効率よく被加熱物に供給することができる。
さらに、実施の形態5のマイクロ波加熱装置において、加熱室の側面壁面である左壁面42と右壁面43にそれぞれ設けた給電部21c,21dの開口部24c,24dは、導波部22c,22dにおける供給部23c,23dの位置よりも高い位置に設けられている。このように開口部24c,24dを供給部23c,23dより高い位置に設けることにより、開口部24c,24dから放射されるマイクロ波の伝搬方向を上壁面側に偏らせることができる。この結果、被加熱物の形状、大きさ、量などの影響に起因する開口部24c,24dから放射されるマイクロ波の偏向面の乱れを緩和して、マイクロ波エネルギをさらに効率高く被加熱物に供給することができる。
また、実施の形態5のマイクロ波加熱装置において、加熱室の側面壁面である左壁面42と右壁面43にそれぞれに設けた給電部21c,21dの開口部24c,24dは、それぞれの側面壁面の略中央に形成されている。このように開口部24c,24dを側面壁面の略中央に形成されているため、加熱室内に収納された被加熱物の嵩高さの影響に起因する開口部24c,24dから放射されるマイクロ波の偏向面の乱れを緩和して、マイクロ波エネルギをさらに効率高く被加熱物に供給することができる。
さらに、実施の形態5のマイクロ波加熱装置においては、電力分配部8a,8b,8cの出力を増幅ブロックに伝送する複数のマイクロ波伝送路9a,9b,9c,9dにおける2つのマイクロ波伝送路9a,9cに位相可変部10a,10bを配置した例について説明したが、本発明のマイクロ波加熱装置は少なくとも1つのマイクロ波伝送路に位相可変部を配置する構成を含むものである。このように本発明のマイクロ波加熱装置においては、少なくとも1つのマイクロ波伝送路に位相可変部を配置して、その位相可変部を制御して対象となる給電部から放射されるマイクロ波の位相を時間的に変化させ、他の給電部から放射されるマイクロ波との位相差を変化させることができる。このため、本発明のマイクロ波加熱装置は、加熱室内のマイクロ波分布を変化させることが可能となり、加熱室内の被加熱物をより均一に加熱することができる。
(実施の形態6)
以下、本発明に係る実施の形態6のマイクロ波加熱装置について添付の図23を参照しつつ説明する。図23は実施の形態6のマイクロ波加熱装置のマイクロ波供給系の構成を示したブロック図である。実施の形態6の説明において、前述の実施の形態1〜5のマイクロ波加熱装置と同じ機能、構成を有するものには同じ符号を付し、その説明は実施の形態6においては省略する。
本発明に係る実施の形態6のマイクロ波加熱装置は、前述の実施の形態1〜5と同様に、加熱室の異なる壁面のそれぞれに給電部を設けて、加熱室内部の電磁波分布を均一化、若しくは被加熱物に応じて可変するよう構成されている。
図23に示す実施の形態6のマイクロ波加熱装置において、実施の形態5のマイクロ波加熱装置と異なる点は、マイクロ波発生部に増幅選択手段である増幅選択部を設けたことと、加熱室内にマイクロ波を放射する給電部の開口部の形状である。
図23において、マイクロ波発生部70は、半導体素子を用いて構成した発振部7と、発振部7の出力を2分配する電力分配部8aと、電力分配部8aのそれぞれの出力がマイクロ波伝送路9a,9bを介して入力される増幅選択部62a,62bと、増幅選択部62a,62bからの各出力がマイクロ波伝送路50a,50b,50c,50dを介して入力される半導体素子を用いて構成した初段増幅部11a,11b,11c,11dと、初段増幅部11a,11b,11c,11dのそれぞれの出力をさらに増幅する半導体素子を用いて構成した主増幅部12a,12b,12c,12dと、主増幅部12a,12b,12c,12dの各出力がマイクロ波電送部13a,13b,13c,13dを介して入力され、後述する給電部に出力する出力部15a,15b,15c,15dと、を具備している。また、各マイクロ波伝送路13a,13b,13c,13dには電力検知部14a,14b,14c,14dが挿入されて、加熱室4からの反射電力を検知するよう構成されている。
さらに、マイクロ波伝送路9aには、位相可変部10aが挿入されている。この位相可変部10aは、印加電圧に応じて容量が変化する容量可変素子を用いて構成されており、その位相可変範囲は、略0度から略270度の範囲である。
実施の形態6のマイクロ波加熱装置は、被加熱物を収納する略直方体構造を有する加熱室4を具備している。加熱室4は、例えば鉄、アルミニウム、ステンレスなどの金属材料で構成されており、左壁面42、右壁面43、底壁面44、上壁面45、および対向して配置され開閉する扉37,38により構成されている(図21参照)。扉37,38は正面側扉37と裏面側扉38により構成され、加熱室4に対して被加熱物を出し入れするために開閉できるよう構成されている。正面側扉37と裏面側扉38が閉成状態において、加熱室内に放射されたマイクロ波は漏洩することなく内部に閉じ込めるよう構成されている。
マイクロ波発生部70の4つの出力部15a,15b,15c,15dにそれぞれ接続された給電部46a,46b,21c,21d,が加熱室4を構成する各壁面に配置されている。加熱室4において対向する左壁面42と右壁面43のそれぞれの略中央には給電部21cと給電部21dが設けられており、上壁面45と底壁面44の略中央には給電部46aと給電部46bがそれぞれ設けられている。各給電部46a,46b,21c,21dは、加熱室4の各壁面に設けた開口部49a,49b,24c,24dと、マイクロ波発生部70からのマイクロ波信号を出力する供給部48a,48b,23c,23dと、供給部48a,48b,23c,23dを始端側に配置し開口部49a,49b,24c,24dを終端側に配置した導波部47a,47b,22c,22dと、により構成されている。導波部47a,47b,22c,22dは、開口部49a,49b,24c,24dを加熱室壁面の外側から覆うように構成され、供給部48a,48b,23c,23dからのマイクロ波を開口部49a,49b,24c,24dに導くよう構成されている。供給部48a,48b,23c,23dは、それぞれの導波部47a,47b,22c,22dにマイクロ波発生部70の各出力を供給する同軸伝送路の中心導体を突出させて構成されている。開口部49a,49b,24c,24dは、略矩形形状の長方形形状であり、それぞれの長手方向はすべて同一方向であり、正面側扉37および裏面側扉38が設けられている装置における奥行き方向である。
マイクロ波発生部70において、電力分配部8aの一方の出力が伝送するマイクロ波伝送路9aに挿入された位相可変部10aの後段には第1の増幅選択部62aが設けられている。第1の増幅選択部62aはその2つの出力端子として切換端子51a,51bを有している。切換端子51aが初段増幅部11aに接続され、切換端子51bが初段増幅部11bに接続されている。したがって、上壁面45に設けられた給電部46aと底壁面44に設けられた給電部46bは、第1の増幅選択部62aにより切換選択される。
また、電力分配部8aの他方の出力が伝送するマイクロ波伝送路9bには第2の増幅選択部62bが設けられている。第2の増幅選択部62bはその2つの出力端子として切換端子51c,51dを有している。切換端子51cが初段増幅部11cに接続され、切換端子51dが初段増幅部11dに接続されている。したがって、左壁面42に設けられた給電部21cと右壁面43に設けられた給電部21dは、第2の増幅選択部62bにより切換選択される。
発振部7の出力電力は、電力分配部8aにより略1/2ずつ分配され、マイクロ波伝送路9a,9bを伝送して第1の増幅選択部62aおよび第2の増幅選択部62bに入力する。前述のように、第1の増幅選択部62aおよび第2の増幅選択部62bは、初段増幅部11a,11b,11c,11dおよび主増幅部12a,12b,12c,12dで構成された増幅ブロックの中からマイクロ波信号を伝送すべき増幅ブロックを選択するものである。第1の増幅選択部62aおよび第2の増幅選択部62bにより、マイクロ波信号が伝送するマイクロ波伝送路50aまたは50b,50cまたは50dが選択される。選択されたマイクロ波伝送路に接続され増幅ブロックに駆動電力を供給することにより、マイクロ波信号が増幅されて、選択された増幅ブロックに接続している給電部から増幅されたマイクロ波信号が加熱室内に放射供給される。
上記のように選択された給電部からマイクロ波信号が加熱室内に放射されるとき、電力分配部8aの一方の出力が伝送するマイクロ波伝送路9aのマイクロ波信号を基準にすると、電力分配部8aの他方の出力が伝送するマイクロ波伝送路9bのマイクロ波信号は、位相が90度遅れた信号である。したがって、最終的に加熱室内に放射されるマイクロ波は、上壁面45の給電部46aまたは底壁面44の給電部46bから放射されるマイクロ波の位相を基準にすると、左壁面42の給電部21cまたは右壁面43の給電部21dから放射されるマイクロ波の位相は略90度遅れた信号となっている。このときの位相可変部10aにおける位相可変範囲は0度の場合である。
図23に示すように、実施の形態6のマイクロ波加熱装置において、加熱室4に設けられた給電部46a,46b,21c,21dの開口部49a,49b,24c,24dは、それぞれの長手方向が同一方向(奥行き方向)であるため、開口部から放射されたマイクロ波が開口部の長手方向に直交する方向で加熱室壁面に沿って周回しながら伝搬する。この結果、各開口部から放射されたマイクロ波の偏波面が略平行となり、それぞれのマイクロ波のエネルギを被加熱物に集中させることができる。
以下、上記のように構成された実施の形態6のマイクロ波加熱装置における動作について説明する。
被加熱物の加熱開始時における発振周波数の選択に係る諸動作は、前述の実施の形態5と同様であるため、ここではその動作説明については省略する。
正面側扉37または裏面側扉38のいずれかの扉を利用して使用者が被加熱物を加熱室4に収納し、加熱条件(図23においてXとして表示)を操作表示パネルにおいて入力し、加熱開始キーを押圧することのより、当該マイクロ波加熱装置は加熱動作を開始する。制御部6は使用者が設定した加熱条件(X)、および加熱開始キーの押圧により形成された加熱開始信号(S)が入力されて、制御信号をマイクロ波発生部70に出力する。制御部6は、入力された加熱条件に基づいて第1の増幅選択部62aおよび第2の増幅選択部62bを切換制御して、加熱開始時に動作させる増幅ブロックを決定する。その後、発振部7に駆動電力を供給し、所望の発振周波数のマイクロ波を発振させる。以降、第1の増幅選択部62aおよび第2の増幅選択部62bが選択した増幅ブロックにおける初段増幅部を動作させ、次に主増幅部を動作させる。
上記のように選択された各増幅ブロックの主増幅部は200Wから500Wのマイクロ波電力で位相差90度を有して出力する。そして選択された増幅ブロックに接続された給電部から被加熱物が収納された加熱室内にマイクロ波が供給放射される。例えば、加熱初期に選択されマイクロ波を放射する給電部が、右壁面43に設けられた給電部21dと底壁面44に設けられた給電部46bである場合、これらの給電部21d,46bから放射されるマイクロ波の位相差は略90度である。例えば、給電部46bから放射されるマイクロ波信号を基準にすると、給電部21dから放射されるマイクロ波信号が略90度遅れた状態である。このとき、位相可変部10aの位相可変範囲は0度である。このように、右壁面43も給電部21dと底壁面44の給電部46bから位相が略90度異なるマイクロ波が供給されることにより、加熱室4の略中央部から右壁面側にマイクロ波の電界集中領域が形成される。このように加熱室4の内部に電界集中領域が形成されることにより、被加熱物が加熱室4の略中央に収納された場合には、被加熱物の略中央から右寄りが強く加熱される状態となる。
したがって、制御部6は、被加熱物の加熱の均一化を図るために、適当な時間周期あるいは被加熱物に関する検知情報(図23においてZとして表示)、例えば被加熱物の温度分布情報に基づいて、駆動するべき増幅ブロックに切り換える制御信号をマイクロ波発生部70に出力する。制御信号が入力されたマイクロ波発生部70は、現在動作中の増幅ブロックへ供給されている駆動電力を停止し、第1の増幅選択部62aおよび/または第2の増幅選択部62bの切換動作を行う。切換動作が終了すると切り換えられた増幅ブロックに駆動電力を供給し、その増幅ブロックを駆動させる。
次に、実施の形態6にマイクロ波加熱装置における切換動作について詳細に説明する。例えば、右壁面43の給電部21dを左壁面42の給電部21cに切り換える場合について説明する。
給電部21dから給電部21cへの切り換え動作は、被加熱物の略中央から左側部分の加熱を促進させる目的で実施する。例えば、被加熱物の温度分布情報として被加熱物の表面温度分布情報が制御部6に入力されると、被加熱物の略中央から左側の領域における表面温度と、略中央から右側の領域における表面温度とを比べる。その結果、被加熱物の左側の領域における最低表面温度が、右側の領域における最高表面温度に比べて、例えば10℃以上の差に達した場合に切換指令信号を制御部6が出力する。
切換指令信号が入力された駆動電源部(例えば、図20の符号34参照)は、その切換指令信号に基づいて、初段増幅部11dおよび主増幅部12dに供給している駆動電力を停止する。そして、切換指令信号が入力された第2の増幅選択部62bは、コモン端子を切換端子51dから切換端子51cに切り換える。その後、駆動電源部は初段増幅部11cおよび主増幅部12cに順次駆動電力を供給する。この一連の切り換え動作により、左壁面42の給電部21cから放射されたマイクロ波が加熱室内に供給される。
上記のように左壁面42の給電部21cおよび底壁面44の給電部46bの両者から放射されたマイクロ波が加熱室4に供給されることにより、加熱室内の被加熱物は、その略中央より左側の領域が強く加熱され始める。
上記のように加熱動作の継続中において、被加熱物の略中央より左側の領域の表面温度上昇が未だに所望の温度に達しない場合には、底壁面44の給電部46bから放射されるマイクロ波給電を上壁面45の給電部46aから放射されるマイクロ波給電に切り換えてもよい。
底壁面44の給電部46bから上壁面45の給電部46aへの切り換え動作は、制御対象となる増幅ブロックおよび増幅選択部が異なるが前述した右壁面43の給電部21dから左壁面42の給電部21cへの切り換え動作と実質的に同じである。
以上の一連の切り換え動作は、被加熱物の表面温度分布情報に基づいて、加熱動作中において適宜実施するものである。
実施の形態6のマイクロ波加熱装置においては、マイクロ波伝送路9aに挿入した位相可変部10aに印加する電圧を制御することで、動作中の2つの給電部から放射されるマイクロ波の位相差を同相から逆相(180度差)の間を連続的に可変制御することができるよう構成されている。実施の形態6のマイクロ波加熱装置においては、各給電部の開口部の長手方向が同一方向であるため、位相可変部10aを設けることにより、加熱室壁面を周回しながら伝搬するマイクロ波の伝搬状態を時間的に連続変化させることができる。この結果、実施の形態6のマイクロ波加熱装置は、被加熱物の局所加熱を解消し、均一な加熱をさらに促進することができる。
実施の形態6のマイクロ波加熱装置において、使用者が設定した加熱条件(X)、加熱室内の被加熱物に関する表面温度などの加熱情報(Y)などに基づいて、所定の状態に達したとき加熱動作は終了する。
以上に説明した実施の形態6のマイクロ波加熱装置においては、増幅選択部62a,62bを切換制御して、加熱室内にマイクロ波を供給する放射位置を選択することができる。したがって、実施の形態6のマイクロ波加熱装置は、被加熱物の特定部分の加熱を促進させることが可能となる。また、実施の形態6のマイクロ波加熱装置の構成において、マイクロ波を供給する放射位置を時間的に選択切換することが可能であり、被加熱物の全体を所望の状態に加熱することができる。
また、実施の形態6のマイクロ波加熱装置においては、電力分配部8aの出力と第1の増幅選択部62aとの間のマイクロ波伝送路9aに位相可変部10aを設けている。このようにマイクロ伝送路に位相可変部を設けることにより、給電部から放射されるマイクロ波の位相を時間的に変化させることが可能となる。対向しない隣接する壁面のそれぞれから供給されるマイクロ波に対して位相差を可変制御することにより、加熱室内のマイクロ波分布を変化させて、被加熱物に対する均一な加熱を促進させることができるとともに、被加熱物における特定した部分の加熱を促進させることができる。
さらに、実施の形態6のマイクロ波加熱装置においては、正面側と裏面側に扉37,38が設けられているため、異なる方向から被加熱物を加熱室内に出し入れできるという優れた利便性を有する。
なお、実施の形態6のマイクロ波加熱装置は、加熱室4を構成する壁面に1つの給電部を設けた構成について説明したが、加熱室4を構成する同一壁面に複数の給電部を設けて、いずれか一方の給電部を増幅選択部により選択できるよう構成することも可能である。このように構成した場合、被加熱物において、選択した給電部に近い領域が強く加熱される。この特徴を利用して、受熱効率の異なる異種の被加熱物を同時に均一に昇温させることが可能となる。同一壁面としては、加熱室における底壁面が実用価値が大きい。
(実施の形態7)
図24は本発明に係る実施の形態7のマイクロ波加熱装置の平面図である。
図24において、加熱室52は、上下壁面と6面の側壁面53〜58との8面体で構成されている。側壁面53〜58の6面において、ひとつ置きに3つの開閉扉59〜61が配置されている。加熱室52に対してマイクロ波を供給する給電部は上下壁面に設けられている。
実施の形態7のマイクロ波加熱装置においては、加熱室52の内部の被加熱物を出し入れするための扉が多数設けられている。このため、実施の形態7のマイクロ波加熱装置は、装置の周囲のあらゆる方向から加熱室内に対する被加熱物の出し入れのアクセスが可能となり、利便性がさらに高くなる。
以上のように、本発明に係る実施の形態7のマイクロ波加熱装置は複数の開閉扉を備えるとともにマイクロ波を放射する複数のマイクロ波供給手段である複数の給電部が加熱室を構成する壁面に最適に配置されている。また、実施の形態7のマイクロ波加熱装置は、前述の実施の形態1〜5で説明したような構成として給電部からの放射方向および放射位置を最適化するとともに、マイクロ波を放射する給電部を切り換え制御を行うことができ、且つ動作中の給電部間のマイクロ波の位相差を変化させることができる。このように構成された実施の形態7のマイクロ波加熱装置は、電子レンジで代表されるような誘電加熱を利用した加熱装置、生ゴミ処理機、あるいは半導体製造装置であるプラズマ電源のマイクロ波電源などの用途に適用できる。
(実施の形態8)
図25は、本発明に係る実施の形態8のマイクロ波加熱装置におけるマイクロ波供給系の構成を示すブロック図である。実施の形態8のマイクロ波加熱装置は、前述の図22に示した実施の形態5のマイクロ波加熱装置と実質的に同じ構成である。実施の形態8のマイクロ波加熱装置は、検出した反射電力に基づく加熱動作時のマイクロ波周波数の抽出処理の具体例を説明するものである。したがって、実施の形態8のマイクロ波加熱装置の説明において、実施の形態5のマイクロ波加熱装置と同じ機能、構成を有するものには同じ符号を付し、その詳細な説明は実施の形態5の説明を適用する。
図25に示すように、実施の形態8のマイクロ波加熱装置である電子レンジは、4つの給電部21a,21b,21c,21dが設けられた加熱室4、マイクロ波発生部5、マイクロコンピュータで構成された制御部6、および商用電源が接続されマイクロ波発生部5に駆動電力を供給する駆動電源部34を含むものである。
マイクロ波発生部5は、発振部7、電力分配部8(図22における8a,8b,8cに相当)、位相可変部10a,10b、増幅ブロック80a,80b,80c,80d、電力検知部14a,14b,14c,14dを備える。
駆動電源部34は、商用電源から供給される交流電圧を可変電圧および直流電圧に変換して、可変電圧を発振部7に供給し、直流電圧を増幅ブロック80a,80b,80c,80dに供給する。
発振部7は、例えば、トランジスタなどの回路素子から構成されており、駆動電源部34から供給された可変電圧の電圧信号に基づいてマイクロ波を発生する。また、発振部7は制御部6に接続されており、例えば、制御部6から送信された電圧信号により、発振周波数および発振出力が制御される。このように発振器7は制御部6によりその動作が制御されている。
増幅ブロック80a,80b,80c,80dは、駆動電源部34から供給された直流電圧により動作し、発振部7において発生したマイクロ波を増幅する。
各増幅ブロック80a,80b,80c,80dは放熱フィン、回路基板を含んでおり、この回路基板上に初段増幅部および主増幅部が形成されている。なお、各増幅ブロック80a,80b,80c,80dは、当該マイクロ波加熱装置の出力仕様に応じて1個から複数個の増幅器で構成される。増幅器はGaN(窒化ガリウム)やSiC(炭化珪素)等を用いたトランジスタ等の高耐熱性かつ高耐圧の半導体素子により構成されている。各増幅器には、それぞれの増幅器の電源電圧と、基準電位を示す基準電圧と、それぞれの増幅器の動作/非動作を制御する制御信号が駆動電源部34から供給される。制御信号は、例えば0Vから−10V程度の電圧であり、それぞれの増幅器が増幅動作を行うか、または停止状態とするかを制御している。また、増幅ブロック80a,80b,80c,80dにおいて、初段増幅部は発振部7からのマイクロ波電力を増幅し、主増幅部は初段増幅部の出力をさらに増幅している。
駆動電源部34は商用電源の電圧を発振部7と増幅ブロック80a,80b,80c,80dのそれぞれに所望の電圧を供給する、いわゆるスイッチング電源であり、商用電源の電位と発振部7と増幅ブロック80a,80b,80c,80dの電位を絶縁する役目も同時に果たしている。
各増幅ブロックブロック80a,80b,80c,80dから出力されたマイクロ波電力は、電力検知部14a,14b,14c,14dを介して給電部21a,21b,21c,21dのアンテナである供給部23a,23b,23c,23dに与えられる。供給部23a,23b,23c,23dに与えられたマイクロ波は、加熱室内へ放射される。加熱室内に放射されたマイクロ波は、被加熱物に吸収されて被加熱物を昇温させる。加熱室内に放射されたマイクロ波の一部は加熱室壁面、被加熱物表面などで反射して供給部23a,23b,23c,23dに戻ってくる。電力検知部14a,14b,14c,14dは加熱室4から反射して戻ってくる反射電力の値に応じた検出信号を制御部6に送信する。
電力検知部14a,14b,14c,14dは、検波ダイオード、方向性結合器および終端器等を含み、増幅ブロック80a,80b,80c,80dにより増幅されたマイクロ波を加熱室4に設けられた給電部21a,21b,21c,21dに同軸ケーブルを介して供給するとともに、加熱室4からの反射電力の値に応じた検出信号を出力する。
次に、制御部6におけるマイクロ波発生部5および駆動電源部34に対する制御方法について説明する。
制御部6は、使用者が加熱条件(X)を設定し、加熱開始信号(S)が入力されると、以下の処理を行う。制御部6は、予め定められた第1の出力電力をマイクロ波発生部5の出力として設定する。第1の出力電力は被加熱物を加熱する第2の出力電力よりも小さく設定されている。マイクロ波が加熱室内に放射されることにより、発生する反射電力はその周波数に応じて変化する。したがって、周波数を可変する際、反射電力が大きく増減する。発生した反射電力によって発振部7、増幅ブロック80a,80b,80c,80dを構成する回路素子が発熱した場合、それらに設けられた放熱機構の能力に応じてその発熱は放熱される。しかし、発生した反射電力がその放熱能力を超えると回路素子の温度が高くなり、回路素子が損傷する恐れがある。そこで、実施の形態8のマイクロ波加熱装置においては、それぞれの回路素子の放熱能力を超えないように第1の出力電力を定めている。第1の出力電力の決定方法については後述する。
次に、マイクロコンピュータである制御部6は、発振部7において発生するマイクロ波の周波数を電子レンジで用いられる2400MHz〜2500MHzの全周波数帯域とし、その全周波数帯域で掃引(スイープ)する。そのとき、制御部6は、電力検知部14a,14b,14c,14dにより検出された反射電力と周波数との関係を記憶する。この周波数帯域はISM(Industrial Scientific and Medical)バンドと呼ばれている。
なお、制御部6は、マイクロ波の周波数の掃引時に全周波数帯域における反射電力と周波数との関係を記憶する代わりに、反射電力が最小値または極小値を示すときの反射電力と周波数との関係のみを記憶してもよい。この場合には、制御部6内の記憶装置の使用領域を削減することができる。
続いて、制御部6は、ISMバンドから特定の周波数を抽出する周波数抽出処理を行う。この周波数抽出処理では、例えば、記憶した反射電力から特定の反射電力(例えば、最小値または極小値)を識別し、その反射電力が得られたときの周波数を当該マイクロ波加熱装置の加熱動作時のマイクロ波周波数として抽出する。なお、反射電力が極小値を示すときの反射電力と周波数との関係のみをマイクロコンピュータが複数組記憶する場合には、記憶された複数の周波数の中から特定の周波数(例えば、最小の反射電力を示す周波数)を当該マイクロ波加熱装置の加熱動作時のマイクロ波周波数として抽出する。
以下、周波数抽出処理について詳細に説明する。図26は、例示としての4つの電力検知部14a,14b,14c,14dが検知した反射電力と発振周波数の関係をグラフ化した図である。縦軸は反射電力[W]を示し横軸は発振周波数[Hz]を示している。図26において、ANT1は給電部21aからの反射電力と発振周波数との関係を示し、ANT2は給電部21bからの反射電力と発振周波数との関係を示し、ANT3は給電部21cからの反射電力と発振周波数との関係を示し、ANT4は給電部21dからの反射電力と発振周波数との関係を示す。図26の例示に示すように、各電力検知部14a,14b,14c,14dが検知する反射電力と発振周波数との関係は、ある程度同じような反射電力曲線を示し、複数の極小値を有している。
制御部6には各電力検知部14a,14b,14c,14dから上記のような反射電力と発振周波数との関係を示すデータが入力される。制御部6は各電力検知部14a,14b,14c,14dからのデータに基づき各反射電力曲線を合成した反射電力曲線を算出する。図27は合成した反射電力曲線を示す図である。図27において、縦軸は反射電力[W]を示し、横軸は発振周波数[Hz]を示している。
図27に例示されている各反射電力曲線では極小値を2つ有する(周波数f1,f2)。
制御部6は、周波数抽出処理において、例えば反射電力が極小値となるときの周波数f1を当該マイクロ波加熱装置の加熱動作時のマイクロ波周波数として抽出する。複数の周波数を抽出する場合は、例えば別の極小値となる周波数f2を第2の加熱動作時のマイクロ波周波数として抽出する。
なお、加熱動作時のマイクロ波周波数を抽出するための掃引動作は、例えば0.1MHz当り1msecで行われる。この場合、ISMバンドの全周波数帯域にわたる掃引動作は、約1secの時間を要する。
掃引動作が終了した後、制御部6は、予め定められた第2の出力電力を当該マイクロ波加熱装置の駆動の出力電力として設定する。この第2の出力電力は、加熱室4の内部に収納された被加熱物を実際に加熱するための電力である。第2の出力電力は、当該マイクロ波加熱装置の最大出力電力(定格出力電力)に相当する。例えば、当該マイクロ波加熱装置である電子レンジの定格出力電力が950Wである場合、第2の出力電力は950Wとして予め定められる。
そして、制御部6は、第2の出力電力で抽出された加熱動作時のマイクロ波周波数のマイクロ波を給電部21a,21b,21c,21dから加熱室内に放射させる。その結果、反射電力を低減して、被加熱物の加熱を効率高く行うことができる。このときの加熱動作が実際に被加熱物を加熱する本加熱動作である。
本加熱動作中において、制御部6は、いずれかの電力検知部14a,14b,14c,14dにより検出された反射電力が予め定められたしきい値を超えたか否かを判別する。ここで、しきい値は、例えば周波数抽出処理時において検出された反射電力の最小値に50Wを加算した値として定めてもよい。このようにしきい値を定めることにより、反射電力が本加熱動作の開始時の値から50Wを超えて大きくなると、制御部6は再びISMバンドの全周波数帯域にわたってマイクロ波の周波数を掃引して、周波数抽出処理を行う。
上記のように本加熱動作中において反射電力が大きくなれば周波数抽出処理を行う構成であるため、実施の形態8のマイクロ波加熱装置は、被加熱物の本加熱動作中において反射電力が著しく増大することを確実に防止することができる。
また、被加熱物が加熱されることにより、反射電力の周波数特性が大きく変化する場合でも、ISMバンドの全周波数帯域にわたって掃引動作して、周波数抽出処理を行うよう構成されているので、常に反射電力の低減を図ることが可能となる。
続いて、制御部6は、先に抽出した加熱動作時のマイクロ波周波数を基準周波数として設定する。そして、制御部6は、設定された基準周波数を含む一定範囲の周波数帯域、例えば、基準周波数から±5MHzの範囲内の周波数帯域で、部分的に掃引動作を行うとともに、そのとき電力検知部14a,14b,14c,14dにより検知された反射電力と周波数との関係を記憶する。なお、ここでも、制御部6は、部分的な周波数帯域での掃引動作時において検出された、反射電力と周波数との関係を連続的に記憶する代わりに、反射電力が極小値を示すときの反射電力と周波数との関係のみを記憶してもよい。この場合には、制御部6内の記憶装置の使用領域を削減することができる。
続いて、制御部6は、上記のように設定された掃引動作の対象となる周波数帯域の中から、例えば反射電力が最小値を示す特定の周波数を再度抽出する周波数再抽出処理を行う。この周波数再抽出処理は、前述の周波数抽出処理と同様の処理である。
以上のように実施の形態8のマイクロ波加熱装置においては、被加熱物に対する本加熱動作を行う前に、被加熱物の加熱時に発生する反射電力が最小となるマイクロ波の周波数が、周波数抽出処理により抽出される。抽出された周波数が実際の被加熱物を加熱するマイクロ波周波数として用いられることにより、マイクロ波加熱装置の電力変換効率が向上する。
実施の形態8のマイクロ波加熱装置において、周波数抽出処理に用いられる第1の出力電力は、実際の加熱動作時の出力電力よりも十分に小さい電力に設定されている。このように周波数抽出処理時の出力電力が設定されているため、マイクロ波の周波数の掃引動作時において、反射電力により発振部7および増幅ブロック80a,80b,80c,80dを構成する回路素子が発熱する場合でも、それぞれが有する放熱機構において十分に放熱される。その結果、回路素子の反射電力による破損が確実に防止される。
なお、実施の形態8のマイクロ波加熱装置において、加熱動作時のマイクロ波周波数の抽出は反射電力が最小値または極小値に基づいて決定するとしているが、以下に説明する方法により加熱動作時のマイクロ波周波数を抽出してもよい。
図28は、図27と同じように実施の形態8のマイクロ波加熱装置において各電力検知部14a,14b,14c,14dからのデータに基づいて算出された合成反射電力曲線の一例を示す図である。図28において、縦軸は反射電力[W]を示し横軸は発振周波数[Hz]を示している。以下、図28を用いて別の周波数抽出処理について説明する。
制御部6は、加熱動作時のマイクロ波周波数の抽出の際に反射電力が極小となる第1の周波数f1と、そのときの反射電力値Pr1を記憶する。さらに周波数を掃引して、反射電力がPr1から所定の割合、例えば1dB増加した周波数f1’を記憶する。さらに周波数の掃引を継続し、反射電力が極小となる第2の周波数f2とそのときの反射電力Pr2を記憶する。ここでも同じように掃引を続けPr2から、例えば1dBだけ反射電力が増加した周波数f2’を記憶する。発振部7が最高周波数の2500MHzに達すると。先に記憶した2つの周波数f1,f2に関する演算処理を行う。具体的には、所定の割合の前後における周波数の差を算出する。式で表すと次のように示される。
Δf1=f1−f1’
Δf2=f2−f2’
上記のように算出された周波数の差Δf1とΔf2の大小関係が比較される。ここでは、周波数の差が大きい方の周波数を加熱動作時のマイクロ波周波数(図28に示した周波数曲線の場合はf2)として決定する。
なお、上記のように反射電力の極小値を記憶する場合、極小値が予め設定されている反射電力より小さいことを条件として含めてもよい。
上記のように加熱動作時のマイクロ波周波数を抽出することにより、図27に示した周波数抽出処理と同様の効果に加えてさらに、以下の効果を発揮することが可能となる。即ち、非常に先鋭な周波数特性を示した場合、外乱ノイズによって極小値の検出を誤ることが考えられるが、図28に示した周波数抽出処理を使うことにより、外乱ノイズによる検出誤りを排除して、正しく反射電力が極小となる周波数を抽出することができる。その結果、誤った周波数で本加熱動作を行うことによって、回路素子の反射電力による損傷を未然に防止することができる。
反射電力は被加熱物の種類、形状、温度、大きさなどによって大きく変化する。また、加熱動作中においてもマイクロ波によって加熱されることによって被加熱物の水分量の変化し、反射電力が時々刻々変化する。このため、実施の形態8のマイクロ波加熱装置においては、反射電力が所定の値以上になると加熱動作時のマイクロ波周波数を再抽出する作業を行っている。このとき、前述のように反射電力の所定の割合における周波数の差Δfが大きい方の周波数を加熱動作時のマイクロ波周波数として選択している。このように選択することにより、加熱動作進行に伴って反射電力が極小のマイクロ波周波数が選択された周波数がずれたとしても、反射電力の増加が少なく、加熱動作時のマイクロ波周波数の再抽出を行う頻度を低減し、実質的に被加熱物を加熱する時間を短縮することが可能となる。
なお、実施の形態8のマイクロ波加熱装置におけるマイクロ波発生部5は、図25に示したように、1つの発振部7により4つの給電部21a,21b,21c,21dのそれぞれにマイクロ波を供給する構成について説明した。本発明はこの構成に限定されるものではなく、例えば複数の給電部のそれぞれが対応する発振部を有する構成も可能である。このように構成した場合には、それぞれの電力検知部において検知した反射電力に基づいて前述のような周波数抽出処理を行い、それぞれの給電部から放射されるマイクロ波の加熱動作時の周波数を抽出することが可能である。したがって、このように構成されたマイクロ波加熱装置においては、加熱室に設けられたそれぞれの給電部から最適な周波数のマイクロ波が放射されて、加熱室内の被加熱物を効率高く加熱することができるとともに、電力変換効率が大幅に向上する。
実施の形態8のマイクロ波加熱装置においては、電力検知部14a,14b,14c,14dは、加熱室4からの反射電力を検出して、その情報を制御部6に伝送する構成であるが、電力検知部14a,14b,14c,14dが反射電力だけでなく増幅ブロック80a,80b,80c,80dから給電部21a,21b,21c,21dに向かって伝送される入射電力も検出し、その検出信号を制御部6に伝送する構成としてもよい。このように構成することにより、加熱動作時のマイクロ波周波数を制御部6が決定する際、反射電力ではなく、反射電力と入射電力との比を用いて加熱動作時のマイクロ波周波数の抽出を行うことができる。その抽出方法は、図27および図28を用いて説明した周波数抽出方法において反射電力によって判断する部分を反射電力と入射電力の比によって判断するように変更すればよい。このように構成することにより、発振部7および増幅ブロック80a,80b,80c,80dが周波数特性を有し、周波数に応じて入射電力に増減があったとしても、本加熱動作時に反射電力が最小または極小となる周波数を誤り無く検出することができる。したがって、このように構成されたマイクロ波加熱装置は、常に最も反射電力が小さい状態で加熱処理を行うことが可能となり、被加熱物の加熱を効率高く行うことができ、電力変換効率が向上する。
以上のように、本発明のマイクロ波加熱装置は加熱室に複数の給電部が設けられ、各給電部が加熱室を構成する複数のそれぞれの所定位置に配設されているため、加熱室内の被加熱物を適切に効率高く加熱することができる構成となる。本発明に含まれる、複数の給電部にマイクロ波を供給するマイクロ波発生部の構成について以下に説明する。図29は、本発明のマイクロ波加熱装置におけるマイクロ波発生部に含まれる各種の構成を示す模式図である。なお、図29においては、4つの給電部にマイクロ波を供給する4つの出力部501〜504を有するマイクロ波発生部を示したが、本発明は給電部が4つに限定されるものではなく、マイクロ波加熱装置の仕様に応じて複数の給電部が適宜設けられ、それに応じてマイクロ波発生部の出力部の数が決定される。
図29の(a)は、複数の発振部101〜104と、それぞれの発振部101〜104からのマイクロ波信号を出力する出力部501〜504とを有して構成されたマイクロ波発生部を示す図である。この構成においては、発振部101〜104はマグネトロンまたは半導体素子で構成することができる。マグネトロンを用いる場合には、均一加熱を促進するために、加熱室に回転するアンテナを設ける構成、および/または加熱室内部に金属攪拌機構を設ける構成が必要となる。なお、導波管2分配器を用いることにより、2つの給電部の位相差を特定値に設定することが可能である。
図29の(b)は、複数、例えば2つの発振部101,102と、それぞれの発振部101,102からのマイクロ波を2分配する2つの電力分配部201,202と、電力分配部201,202からのマイクロ波信号を増幅する増幅ブロック301〜304と、増幅されたマイクロ波信号を出力する出力部501〜504とを有して構成されたマイクロ波発生部を示す図である。
図29の(c)は、単一の発振部101と、発振部101からのマイクロ波を4分配する電力分配部201と、電力分配部201からのマイクロ波信号を増幅する増幅ブロック301〜304と、増幅されたマイクロ波信号を出力する出力部501〜504とを有して構成されたマイクロ波発生部を示す図である。
図29の(d)は、複数の発振部101〜103と、発振部101,102からのマイクロ波信号を出力する出力部501,502と、発振部103からのマイクロ波を2分配する電力分配部201と、電力分配部201からのマイクロ波信号を増幅する増幅ブロック301,302と、増幅されたマイクロ波信号を出力する出力部503,504とを有して構成されたマイクロ波発生部を示す図である。この構成においては、発振部101,102はマグネトロンで構成することができる。
図29の(e)は、複数、例えば2つの発振部101,102と、それぞれの発振部101,102からのマイクロ波を4分配する2つの電力分配部201,202と、電力分配部201,202からのマイクロ波信号を増幅する増幅ブロック301〜308と、増幅された2つのマイクロ波信号を合成する4つの電力合成部401〜404と、合成されたマイクロ波信号を出力する出力部501〜504とを有して構成されたマイクロ波発生部を示す図である。なお、電力分配部201,202と電力合成部401〜404は同様の回路構成である。但し、電力合成部401〜404に用いられる回路素子、例えば抵抗などは、電力分配部201,202の素子に比べて電力容量が大きいものが用いられる。図30は、電力合成部401〜404の具体的な回路構成を示す図であり、Wilkinson coupler を用いた例である。図30において、PORT2とPORT3にマイクロ波信号が入力され、PORT1から合成されたマイクロ波信号が出力される。PORT2とPORT3との間の入力側を接続する抵抗にて合成性能の安定化が図られる。なお、電力分配部201,202の場合には、図30に示すPORT1にマイクロ波信号が入力され、PORT2とPORT3から分配されたマイクロ波信号が出力される。
図29の(f)は、単一の発振部101と、その発振部101からのマイクロ波を8分配する電力分配部201と、電力分配部201からのマイクロ波信号を増幅する増幅ブロック301〜308と、増幅された2つのマイクロ波信号を合成する4つの電力合成部401〜404と、合成されたマイクロ波信号を出力する出力部501〜504とを有して構成されたマイクロ波発生部を示す図である。図29の(f)の構成は、前述の図29の(e)の構成において用いられた電力合成部401〜404が用いられる。
以上のように、本発明のマイクロ波加熱装置において、複数の給電部にマイクロ波を供給するマイクロ波発生部は、各種の構成を含むものである。このように構成された本発明のマイクロ波加熱装置は、加熱室に複数の給電部を設け、各給電部が加熱室を構成する複数のそれぞれの所定位置に配設して、マイクロ波発生部から適切に各給電部にマイクロ波が供給されるため、加熱室内の被加熱物を適切に効率高く加熱することができる構成となる。
本発明のマイクロ波加熱装置は、被加熱物を効率高く加熱できるため、電子レンジで代表されるような誘電加熱を利用した加熱装置、生ゴミ処理機、あるいは半導体製造装置であるプラズマ電源のマイクロ波電源などの各種用途に適用できる。
本発明は、マイクロ波を照射して加熱対象物である被加熱物を加熱処理するマイクロ波加熱装置に関するものである。
マイクロ波により対象物を加熱処理するマイクロ波加熱装置の代表的な装置としては電子レンジがある。電子レンジにおいては、マイクロ波発生器において発生したマイクロ波が金属製の加熱室の内部に放射され、加熱室内部の被加熱物が放射されたマイクロ波により加熱処理される。
従来の電子レンジにおけるマイクロ波発生器としては、マグネトロンが用いられている。マグネトロンにより生成されたマイクロ波は、導波管を介して加熱室内部に供給される。
加熱室内部におけるマイクロ波の電磁界分布が不均一であると、被加熱物を均一に加熱することができない。そこで、加熱室内部のマイクロ波の電磁界分布を均一にするように試みた電子レンジが提案されている。例えば、日本の特開2004−47322号公報には、マグネトロンにおいて発生したマイクロ波を第1の導波管を介して加熱室の底面部分から放射させるとともに、第2の導波管を介して加熱室の上面部分から放射する電子レンジが開示されている。
特開2004−47322号公報に開示された電子レンジは、マグネトロンにより生成されたマイクロ波を加熱室内部へ供給するための導波管が中空の金属管により形成されており、加熱室の外側に配置されている。したがって、この電子レンジでは、マイクロ波を1つのマグネトロンから加熱室の複数のマイクロ波放射口へ導くために、複数の導波管を加熱室の外側に設ける必要があり、電子レンジが大型化していた。
また、特開2004−47322号公報には、マイクロ波の供給位置を増やすために、1つのマグネトロンにおいて発生したマイクロ波を加熱室の底部に設けた回転可能な複数のアンテナから加熱室内部に放射する電子レンジの構成が開示されている。このように構成された電子レンジにおいては、複数の放射アンテナの回転スペースを加熱室の外側に確保する必要があり、電子レンジの小型化を阻害していた。
さらに、上記のように構成された従来のマイクロ波加熱装置では、1つのマグネトロンにより発生したマイクロ波を被加熱物に照射しており、被加熱物の形状、種類、大きさ、量などに応じて電磁界分布を調整するような構成ではなかった。
したがって、このようなマイクロ波加熱装置の分野においては、加熱室内部のマイクロ波の電磁界分布を均一若しくは、被加熱物に応じて変更することができ、小型化が可能なマイクロ波加熱装置が求められていた。
また、従来の電子レンジにおいて、被加熱物を均一に加熱することを目的として、加熱室を6面以上の多面体で構成し、各面の一部あるいは全部の面から放射アンテナを加熱室内に突出して配置した電子レンジが、日本の特開昭52−193242号公報に開示されている。
特開昭52−193242号公報に開示された電子レンジは、互いの放射アンテナを異なる面に配置したことにより、互いの干渉を防止できるとしている。この従来の電子レンジは、放射アンテナがそれぞれ異なる方向を向いて配置されている。このように構成された電子レンジにおいては、放射された電波は加熱室内のあらゆる方向に伝搬して、壁面にて反射して散乱するため、加熱室内では電波が均一に分布すると、この公報では説明されている。
しかしながら、多面体の各面に放射アンテナを配置する構成では、放射される方向は異なっているが、加熱室壁面での反射に伴う散乱、およびその散乱したマイクロ波が壁面にて反射してさらに散乱するという繰返しの反射により、加熱室内は広範囲において散乱状態となる。このため、複数の放射アンテナから放射されたマイクロ波の干渉を確実に防止することは不可能な構成である。
また、複数の固体高周波発振器を加熱室壁面に分散配置して、これらのマイクロ波出力部のうち、少なくとも二つの壁面に配したマイクロ波出力部を時分割動作させるものが、日本の特開昭53−5445号公報に開示されている。
特開昭53−5445号公報に開示された電子レンジにおいては、動作させるために選択した固体高周波発振器を時分割して動作させることにより、干渉によるマイクロ波出力部の破壊を防止して、同時動作させることができる説明されている。また、この特開昭53−5445号公報には、加熱室における直交する壁面に配置した固体高周波発振器が、加熱室とマイクロ波出力部との結合形態を適当に選ぶことにより、互いに干渉しないように励振させることができ、同時発振が可能であると説明している。
しかしながら、特開昭53−5445号公報に開示された電子レンジの構成において、どのような結合形態であれば、相互干渉を回避できるかについての内容が開示されていないため、実際には実現できない構成である。
また、日本の特開昭56−132793号公報には位相器を備えた電子レンジが開示されている。この電子レンジは、半導体発振部と、半導体発振部の出力を複数に分割する分配器と、分配された出力をそれぞれ増幅する複数の増幅器と、増幅器の出力を合成する合成器とを有し、分配器と増幅器との間に位相器を設けている。
特開昭56−132793号公報に開示された電子レンジにおいては、位相器がダイオードのオンオフ特性によりマイクロ波の通過線路長を切り換える構成である。この電子レンジにおいて、合成器として90度および180度ハイブリッドを用いることで出力を2つにしており、位相器を制御することで2つの出力の電力比を変化させ、2つの出力間の位相を同相あるいは逆相にすることができるとしている。
位相器を備えた従来の電子レンジにおいては、合成器の2つの出力から放射されるマイクロ波は、位相器によって位相を変化させることで2つの放射アンテナからの放射電力比や位相差を任意に、かつ瞬時に変化させることは可能である。しかしながら、そのような放射によってマイクロ波が供給される加熱室内に収納されたさまざまな形状、種類、大きさ、量の異なる被加熱物を所望の状態に確実に加熱することは困難であった。
本発明は、上記従来のマイクロ波加熱装置における問題を解決するものであり、マイクロ波を放射する複数のマイクロ波供給手段を加熱室の異なる壁面に最適に配置することにより、加熱室内部のマイクロ波の電磁界分布を均一、若しくは被加熱物に応じて適切に変更することができ、且つ小型化が可能なマイクロ波加熱装置を提供することを目的とする。
本発明に係る第1の観点のマイクロ波加熱装置は、複数の出力部を有するマイクロ波発生部と、被加熱物を収納する加熱室と、前記複数の出力部のそれぞれの出力を前記加熱室に供給する複数の給電部と、前記複数の給電部からのマイクロ波放射を制御して、前記加熱室の電磁波分布を調整する制御部と、を具備する。このように構成された本発明に係る第1の観点のマイクロ波加熱装置は、マイクロ波を放射する複数のマイクロ波供給手段である供給部を加熱室に最適に配置することにより、加熱室内部のマイクロ波の電磁界分布を均一、若しくは被加熱物に応じて適切に変更することができ、且つ小型化が可能なマイクロ波加熱装置を提供することができる。
本発明に係る第2の観点のマイクロ波加熱装置においては、前記第1の観点における前記制御部は、前記加熱室に収納された前記被加熱物にマイクロ波が集中するように、前記複数の給電部においてマイクロ波を放射させる給電部を選択するよう構成されている。このように構成された本発明に係る第2の観点のマイクロ波加熱装置は、加熱室内に収納された被加熱物を確実に所望の状態で効率高く加熱することが可能となる。この結果、本発明のマイクロ波加熱装置は、被加熱物を均一に加熱することができる。
本発明に係る第3の観点のマイクロ波加熱装置においては、前記第1の観点における前記制御部は、前記加熱室に収納された前記被加熱物にマイクロ波が集中するように、マイクロ波を放射する給電部間の位相差を制御するよう構成されている。このように構成された本発明に係る第3の観点のマイクロ波加熱装置は、加熱室内に収納された被加熱物を確実に所望の状態で効率高く加熱することが可能となる。
本発明に係る第4の観点のマイクロ波加熱装置においては、前記第1の観点における前記マイクロ波発生部は、マイクロ波を発生する単一または複数の発振部を有する構成としてもよい。このように構成された本発明に係る第4の観点のマイクロ波加熱装置は、加熱室内部のマイクロ波の電磁界分布を均一、若しくは被加熱物に応じて適切に変更することができる。
本発明に係る第5の観点のマイクロ波加熱装置においては、前記第1乃至第4の観点における前記マイクロ波発生部は、マイクロ波を発生する発振部と、前記発振部のマイクロ波出力を複数に分配して出力する電力分配部と、前記電力分配部のマイクロ波出力をそれぞれ出力する複数の出力部と、を備える構成としてもよい。このように構成された本発明に係る第5の観点のマイクロ波加熱装置は、発振部にマグネトロンや半導体素子を用いて、加熱室内部のマイクロ波の電磁界分布を均一、若しくは被加熱物に応じて適切に変更することができる。
本発明に係る第6の観点のマイクロ波加熱装置においては、前記第1乃至第4の観点における前記加熱室を複数の空間に分割する仕切り部を設け、分割された各加熱室内に収納された被加熱物にマイクロ波をそれぞれ集中させるよう構成されている。このように構成された本発明に係る第6の観点のマイクロ波加熱装置は、1つのマイクロ波加熱装置により異なる種類の被加熱物を同時あるいは個別に、それぞれの被加熱物に適した加熱を行うことができる。
本発明に係る第7の観点のマイクロ波加熱装置においては、前記第1乃至第4の観点における前記マイクロ波発生部は、マイクロ波を発生する発振部と、前記発振部のマイクロ波出力を複数に分配して出力する電力分配部と、前記電力分配部のマイクロ波出力をそれぞれ電力増幅する増幅部と、前記増幅部の出力をそれぞれ出力する複数の出力部と、を備え、
前記加熱室を少なくとも2つの空間に仕切る仕切り部を設け、前記複数の給電部が分割された各加熱室内に収納された被加熱物にマイクロ波をそれぞれ集中させるよう構成されている。このように構成された本発明に係る第7の観点のマイクロ波加熱装置は、1つのマイクロ波加熱装置により異なる種類の被加熱物を同時あるいは個別に、それぞれの被加熱物に適した加熱を行うことができる。
本発明に係る第8の観点のマイクロ波加熱装置においては、前記第1乃至第4の観点における前記加熱室を少なくとも左右または上下の2つの空間に分割する仕切り部を備え、前記複数の給電部が分割された各加熱室内に収納された被加熱物にマイクロ波をそれぞれ集中させるよう構成されている。このように構成された本発明に係る第8の観点のマイクロ波加熱装置は、1つのマイクロ波加熱装置により異なる種類、形状の被加熱物を同時あるいは個別に、それぞれの被加熱物に適した加熱を行うことができる。
本発明に係る第9の観点のマイクロ波加熱装置においては、前記第1乃至第4の観点における前記マイクロ波発生部は、マイクロ波を発生する発振部と、前記発振部のマイクロ波出力を複数に分配して出力する電力分配部と、前記電力分配部のマイクロ波出力をそれぞれ出力する複数の出力部と、前記給電部からの反射電力を検出する電力検知部と、を備え、
前記制御部は、被加熱物を加熱する前に、発振部において発生する周波数を変化させつつ、加熱動作時のマイクロ波出力より低い出力で前記給電部から被加熱物にマイクロ波を放射させて、前記電力検知部により検知された反射電力が最小値または極小値となる周波数を検出し、検出された周波数に基づいて加熱動作時のマイクロ波周波数を決定するよう構成されており、
前記制御部は、決定されたマイクロ波周波数で加熱動作時のマイクロ波出力を前記発振部によって発生させるとき、加熱動作中に前記電力検知部によって検出された反射電力が予め定められた閾値をこえると、前記発振部が出力するマイクロ波電力を一旦低減し、前記発振部の発生するマイクロ波周波数を掃引して、再度電力検知部が検知した反射電力が最小または極小となる周波数を検出し、反射電力が最小または極小となる周波数で加熱動作を再開するよう構成されている。このように構成された本発明に係る第9の観点のマイクロ波加熱装置は、反射電力が最小または極小となる周波数に基づいて加熱動作時のマイクロ波周波数が決定されて被加熱物に対する加熱動作が行われるので、被加熱物の加熱動作時に発生する反射電力が確実に低減される。このため、マイクロ波加熱装置の電力変換効率が大幅に向上する。また、本発明に係る第9の観点のマイクロ波加熱装置においては、反射電力に起因してマイクロ波発生部が発熱する場合でも、その発熱量が大幅に低減される。その結果、本発明に係る第9の観点のマイクロ波加熱装置は、反射電力に起因するマイクロ波発生部の破損および故障を防止することができる。
本発明に係る第10の観点のマイクロ波加熱装置においては、前記第9の観点における前記制御部は、加熱動作中に前記発振部の発生するマイクロ波周波数を微少量増減させ、前記電力検知部によって検知された反射電力が小さくなる方向に前記発振部の発生するマイクロ波周波数を微減あるいは微増するよう構成されている。このように構成された本発明に係る第10の観点のマイクロ波加熱装置は、反射電力が最小または極小となる周波数に基づいて加熱動作時のマイクロ波周波数が決定されて被加熱物に対する加熱動作が行われるので、被加熱物の加熱動作時に発生する反射電力が確実に低減される。このため、マイクロ波加熱装置の電力変換効率が大幅に向上する。また、本発明に係る第10の観点のマイクロ波加熱装置においては、加熱動作中に反射電力が変化した場合においても常に反射電力が最小または極小となる周波数を追尾するので常に高い電力変換効率を維持することが可能となる。
本発明に係る第11の観点のマイクロ波加熱装置においては、前記第9の観点における前記制御部は、被加熱物を加熱する前に、発振部によりマイクロ波の周波数を変化させつつ、加熱動作時のマイクロ波出力より低い出力で前記給電部から被加熱物にマイクロ波を放射させて、前記電力検知部により検出された反射電力が極小値となる複数の周波数を検出するよう構成されており、
検出された第1の極小値となる周波数で加熱動作を行い、前記電力検知部が検知した反射電力が、予め定めた所定の値よりも大きくなると、加熱動作前に検出した第2の極小値となる周波数を発振部が発生するよう構成されている。このように構成された本発明に係る第11の観点のマイクロ波加熱装置は、反射電力が最小または極小となる周波数に基づいて加熱動作時のマイクロ波周波数が決定されて被加熱物に対する加熱動作が行われるので、被加熱物の加熱動作時に発生する反射電力が確実に低減される。このため、マイクロ波加熱装置の電力変換効率が大幅に向上する。また、本発明に係る第11の観点のマイクロ波加熱装置においては、加熱動作中に反射電力が増加した場合でも加熱動作時のマイクロ波周波数を変えることにより、反射電力が小さい周波数で動作するため、高い電力変換効率を維持することが可能となる。
本発明に係る第12の観点のマイクロ波加熱装置においては、前記第1乃至第4の観点における前記マイクロ波発生部は、マイクロ波を発生する複数の発振部と、前記複数の発振部のそれぞれからのマイクロ波出力を複数に分配して出力する電力分配部と、前記電力分配部のマイクロ波出力をそれぞれ出力する複数の出力部と、を備え、
前記複数の発振部は、マイクロ波を放射する前記給電部と対となるよう構成されており、
前記制御部は、前記給電部のそれぞれから放射されるマイクロ波周波数は前記給電部のそれぞれからの反射電力が最小値または極小値となる周波数となるように、前記発振部をそれぞれ独立に制御するよう構成されている。このように構成された本発明に係る第12の観点のマイクロ波加熱装置は、反射電力が最小または極小となる周波数に基づいて加熱動作時のマイクロ波周波数が決定されて被加熱物に対する加熱動作が行われるので、被加熱物の加熱動作時に発生する反射電力が確実に低減される。このため、マイクロ波加熱装置の電力変換効率が大幅に向上する。
本発明に係る第13の観点のマイクロ波加熱装置においては、前記第1乃至第4の観点における前記マイクロ波発生部は、マイクロ波を発生する発振部と、前記発振部のマイクロ波出力を複数に分配して出力する電力分配部と、前記電力分配部のマイクロ波出力をそれぞれ出力する複数の出力部と、前記給電部からの反射電力と前記発振部から前記給電部に伝送される入射電力を検出する電力検知部と、を備え、
前記制御部は、被加熱物を加熱する前に、前記発振部において発生する周波数を変化させつつ、加熱動作時のマイクロ波出力より低い出力で前記給電部から被加熱物にマイクロ波を放射させて、前記電力検知部により検知された反射電力と入射電力の比が最小値または極小値となる周波数を検出し、検出された周波数に基づいて加熱動作時のマイクロ波周波数を決定するよう構成されており、
前記制御部は、前記決定されたマイクロ波周波数で加熱動作時のマイクロ波出力を前記発振部によって発生させるとき、加熱動作中に前記発振部の発生する周波数を微少量増減させ、前記電力検知部によって検知された反射電力と入射電力の比が小さくなる方向に前記発振部の発生する周波数を微減あるいは微増するよう構成されている。このように構成された本発明に係る第13の観点のマイクロ波加熱装置は、反射電力が最小または極小となる周波数に基づいて加熱動作時のマイクロ波周波数が決定されて被加熱物に対する加熱動作が行われるので、被加熱物の加熱動作時に発生する反射電力が確実に低減される。このため、マイクロ波加熱装置の電力変換効率が大幅に向上する。また、本発明に係る第13の観点のマイクロ波加熱装置においては、反射電力に起因してマイクロ波発生部が発熱する場合でも、その発熱量が大幅に低減される。その結果、本発明に係る第13の観点のマイクロ波加熱装置は、反射電力に起因するマイクロ波発生部の破損および故障を防止することができる。
本発明に係る第14の観点のマイクロ波加熱装置においては、前記第1乃至第4の観点における前記加熱室を複数の空間に仕切る電波遮蔽機能を有する仕切り部を備え、前記複数の給電部は複数の空間に仕切られた前記加熱室のそれぞれに配置され、任意に選択されるよう構成されている。このように構成された本発明に係る第14の観点のマイクロ波加熱装置は、1つのマイクロ波加熱装置により異なる種類の被加熱物を同時あるいは個別にそれぞれ適した加熱状態で処理することができる。
本発明に係る第15の観点のマイクロ波加熱装置においては、前記第14の観点における前記複数の給電部は、前記加熱室の各空間に複数設けられ、前記加熱室の各空間を構成する壁面の異なる複数の壁面に配置されている。このように構成された本発明に係る第15の観点のマイクロ波加熱装置は、1つのマイクロ波加熱装置により異なる種類の被加熱物のそれぞれに対して所望の加熱状態で処理することができる。
本発明に係る第16の観点のマイクロ波加熱装置においては、前記第14の観点における前記加熱室が2つの空間を有しており、前記空間に配置された2つの給電部が対向するように配置されており、前記2つの給電部から放射されるマイクロ波の位相を変化させるよう構成されている。このように構成された本発明に係る第16の観点のマイクロ波加熱装置は、1つのマイクロ波加熱装置により2種類の被加熱物のそれぞれに対して適切に加熱動作を行うことができ、各加熱室の電磁波分布を変化させることができ、被加熱物を均一に加熱することができる。
本発明に係る第17の観点のマイクロ波加熱装置においては、前記第14の観点における前記加熱室が2つの空間を有しており、前記空間に配置された2つの給電部は放射するマイクロ波が交差するよう配置されており、前記2つの給電部から放射されるマイクロ波の位相を変化させるよう構成されている。このように構成された本発明に係る第17の観点のマイクロ波加熱装置は、1つのマイクロ波加熱装置により2種類の被加熱物のそれぞれに対して適切に加熱動作を行うことができ、各加熱室の電磁波分布を変化させることができ、被加熱物を均一に加熱することができるとともに、被加熱物の所望の部分を集中的に加熱することも可能となる。
本発明に係る第18の観点のマイクロ波加熱装置においては、前記第6の観点における前記仕切り部は、前記加熱室を上下に複数の空間に分割し、被加熱物を載置可能な金属製皿で構成してもよい。このように構成された本発明に係る第18の観点のマイクロ波加熱装置は、載置可能な金属製皿により電磁波遮蔽はもちろんのこと、仕切り部が皿形状であるため、仕切り部の機能が向上し、使い勝手が改善して加熱機器としての利便性が向上する。
本発明に係る第19の観点のマイクロ波加熱装置においては、前記第6の観点における前記発振部は、マイクロ波を発生する複数の発振部を有し、分割された各加熱室に異なる発振部がそれぞれ設けられた構成としてもよい。このように構成された本発明に係る第19の観点のマイクロ波加熱装置は、1つのマイクロ波加熱装置により異なる種類の被加熱物のそれぞれに対して当該被加熱物に適した加熱を行うことができる。また、本発明に係る第19の観点のマイクロ波加熱装置においては、加熱室内の空間に応じて被加熱物に対するマイクロ波を効率高く伝えることができ、いわば受熱効率の高い発振周波数を各々加熱室内の被加熱物に応じて選択することができる。
本発明に係る第20の観点のマイクロ波加熱装置においては、前記第6の観点における前記発振部は、マイクロ波を発生する複数の発振部を有し、分割された各加熱室に異なる発振部がそれぞれ設けられており、各発振部の発振周波数が独立して変更されるよう構成してもよい。このように構成された本発明に係る第20の観点のマイクロ波加熱装置は、加熱室内の被加熱物の種類、材質、大きさ、量、載置位置などの変化に対して受熱効率が最適となるように加熱動作時のマイクロ波周波数を変化、調整することができる。本発明に係る第20の観点のマイクロ波加熱装置は、受熱効率が最大となる加熱動作時のマイクロ波周波数に調整する機能を備えて、被加熱物をより最適に加熱でき、かつ加熱効率が著しく高い加熱装置となる。
本発明に係る第21の観点のマイクロ波加熱装置においては、前記第6の観点における前記複数の加熱室の空間に対して、それぞれ任意の加熱時間を設定するよう構成してもよい。このように構成された本発明に係る第21の観点のマイクロ波加熱装置は、各加熱室に同時に被加熱物を収納し加熱する場合において、各被加熱物を異なる加熱時間で加熱処理することができ、一つのマイクロ波加熱装置で複数の加熱室を自在にマニュアル的に加熱条件を設定して独立的に使用することが可能となり、優れた利便性を有する。
本発明に係る第22の観点のマイクロ波加熱装置においては、前記第6の観点における前記複数の加熱室の空間内に収納された被加熱物の加熱状態を遠隔的に監視可能な温度検出センサを設け、予め設定された目標温度にて加熱を停止するよう構成してもよい。このように構成された本発明に係る第22の観点のマイクロ波加熱装置は、各加熱室に収納された被加熱物の加熱状態を遠隔的に監視でき、使用者の所望の状態で各被加熱物の加熱を停止させることが可能となり、加熱装置として優れた性能向上を提供することができる。
本発明に係る第23の観点のマイクロ波加熱装置においては、前記第22の観点における前記温度検出センサにより被加熱物の加熱状態を検出し、予め設定された目標温度にて加熱を停止するシーケンスで動作するよう構成されており、収納された被加熱物に応じて異なるシーケンスで処理する構成としてもよい。このように構成された本発明に係る第23の観点のマイクロ波加熱装置においては、各加熱室に収納された被加熱物の加熱状態の遠隔的な監視が可能となる。そして、本発明に係る第23の観点のマイクロ波加熱装置は、加熱の進行状態を監視しつつ、位相差調整による加熱処理、および/または周波数調整により加熱処理を用いて、均一加熱または集中加熱などの使用者の所望する加熱処理を行うことができる。本発明に係る第23の観点のマイクロ波加熱装置は、各加熱室に収納された被加熱物を全く独立したシーケンスで加熱処理することができるため、優れた利便性を提供することができる。
本発明に係る第24の観点のマイクロ波加熱装置においては、前記第6の観点における前記複数の加熱室のそれぞれの空間内に被加熱物を収納するために複数の開閉扉を設けた構成としてもよい。このように構成された本発明に係る第24の観点のマイクロ波加熱装置においては、各加熱室に対する被加熱物の収納が容易となり、優れた利便性を提供することができる。
本発明に係る第25の観点のマイクロ波加熱装置においては、前記第24の観点における前記複数の開閉扉のいずれか一方が開かれている時、各加熱室へのマイクロ波放射を中止するよう構成してもよい。このように構成された本発明に係る第25の観点のマイクロ波加熱装置においては、仕切り部により各加熱室が区画されているが、一方の扉を開いた場合には加熱室壁面との微小なスペースを通ってマイクロ波が漏れて、駆動している加熱室から扉を開放している加熱室にマイクロ波が漏洩し、使用者が曝露する可能性があるため、いずれか一方の扉が開いている時には装置全体のマイクロ波の発振を停止することにより、電磁波漏洩が生じない安全性の高い加熱装置を提供することができる。
本発明に係る第26の観点のマイクロ波加熱装置においては、前記第18の観点における金属製皿は周辺部が絶縁材料で構成されており、前記加熱室の壁面と前記金属製皿との間でスパークが発生しないよう構成してもよい。加熱室壁面と金属部分とのギャップが少なく、その部分において電界集中するとスパークが生じる可能性がある。本発明に係る第26の観点のマイクロ波加熱装置において、金属製皿が加熱室壁面に近い部分が絶縁材料で構成されているため、スパークの発生しない構造となり、金属製皿の残りの部分を金属を用いて電磁波遮蔽構造とすることにより、金属製皿により分割された各加熱室が互いのマイクロ波干渉のない独立性を維持した構成となる。
本発明に係る第27の観点のマイクロ波加熱装置においては、前記第1乃至第4の観点における前記加熱室を構成する壁面に被加熱物を収納するための複数の開閉扉を有し、前記複数の開閉扉を備えていない壁面において、対向する壁面に前記給電部が設けられた構成としてもよい。このように構成された本発明に係る第27の観点のマイクロ波加熱装置においては、対向する壁面から供給されるマイクロ波により被加熱物が効率高く加熱されるとともに、複数の開閉扉を備えたことにより、異なる方向から被加熱物を加熱室内に出し入れできる利便性を提供できる。
本発明に係る第28の観点のマイクロ波加熱装置においては、前記第1乃至第4の観点における前記加熱室を構成する壁面に被加熱物を収納するための複数の開閉扉が対向して配置され、前記複数の開閉扉を備えていない壁面において、対向する壁面に前記給電部が設けられた構成としてもよい。このように構成された本発明に係る第28の観点のマイクロ波加熱装置においては、対面式キッチンで使用する場合、キッチン側とリビング側の両方向から当該加熱装置にアクセスすることができる。また、本発明に係る第28の観点のマイクロ波加熱装置は、コンビニエンスストアなどの店で使用する場合においては、従業員と客の両方が異なる方向から当該加熱装置にアクセスすることが可能となる。
本発明に係る第29の観点のマイクロ波加熱装置においては、前記第1乃至第4の観点における前記加熱室を構成する壁面に被加熱物を収納するための複数の開閉扉を有し、前記複数の開閉扉を備えていない壁面において、対向する壁面に前記給電部が設けられており、前記給電部は、共通の発振部からマイクロ波が供給されるよう構成してもよい。このように構成された本発明に係る第29の観点のマイクロ波加熱装置においては、対向配置された給電部から供給されるマイクロ波の位相を一意的に制御することができる。
本発明によれば、複数の開閉扉を備えてマイクロ波加熱装置の利便性を高めることができるとともに、マイクロ波を放射する機能を有した複数のマイクロ波供給手段を加熱室の壁面に配置して、マイクロ波供給手段から放射されるマイクロ波を最適化することにより、さらに利便性を高めて、さまざまな形状、種類、大きさ、量の異なる被加熱物を所望の状態に加熱するマイクロ波加熱装置を提供することができる。
本発明に係る実施の形態1のマイクロ波加熱装置の正面図
実施の形態1のマイクロ波加熱装置のマイクロ波供給系の構成を示すブロック図
本発明を説明するための実験において用いた加熱室を上方から見た平面断面図
図3の加熱室を用いた実験結果において、放射されたマイクロ波の位相差が0度のときの加熱室内を等温線により示した図
図3の加熱室を用いた実験結果において、放射されたマイクロ波の位相差が40度のときの加熱室内を等温線により示した図
図3の加熱室を用いた実験結果において、放射されたマイクロ波の位相差が80度のときの加熱室内を等温線により示した図
図3の加熱室を用いた実験結果において、放射されたマイクロ波の位相差が120度のときの加熱室内を等温線により示した図
図3の加熱室を用いた実験結果において、放射されたマイクロ波の位相差が160度のときの加熱室内を等温線により示した図
図3の加熱室を用いた実験結果において、放射されたマイクロ波の位相差が200度のときの加熱室内を等温線により示した図
図3の加熱室を用いた実験結果において、放射されたマイクロ波の位相差が240度のときの加熱室内を等温線により示した図
図3の加熱室を用いた実験結果において、放射されたマイクロ波の位相差が280度のときの加熱室内を等温線により示した図
図3の加熱室を用いた実験結果において、放射されたマイクロ波の位相差が320度のときの加熱室内を等温線により示した図
本発明に係る実施の形態2のマイクロ波加熱装置のマイクロ波供給系の構成を示すブロック図
本発明に係る実施の形態3のマイクロ波加熱装置の正面図
実施の形態3のマイクロ波加熱装置における加熱室の正面図
実施の形態3のマイクロ波加熱装置における仕切り皿を示す平面図
実施の形態3のマイクロ波加熱装置における仕切り皿の断面図
実施の形態3の別の構成のマイクロ波加熱装置の正面図
本発明に係る実施の形態4のマイクロ波加熱装置のマイクロ波供給系の構成を示すブロック図
実施の形態4のマイクロ波加熱装置の制御系の構成を示すブロック図
本発明に係る実施の形態5のマイクロ波加熱装置の構成を示す断面図
実施の形態5のマイクロ波加熱装置のマイクロ波供給系の構成を示すブロック図
本発明に係る実施の形態6のマイクロ波加熱装置のマイクロ波供給系の構成を示すブロック図
本発明に係る実施の形態7のマイクロ波加熱装置の平面図
本発明に係る実施の形態8のマイクロ波加熱装置のマイクロ波供給系の構成を示すブロック図
実施の形態8のマイクロ波加熱装置における4つの電力検知部が検知した反射電力と発振周波数の関係を示すグラフ
実施の形態8のマイクロ波加熱装置における周波数抽出処理を説明する図
実施の形態8のマイクロ波加熱装置における別の周波数抽出処理を説明する図
本発明のマイクロ波加熱装置におけるマイクロ波発生部に含まれる各種の構成を示す模式図
本発明のマイクロ波加熱装置における電力合成部の具体的な回路構成を示す図
以下、本発明に係るマイクロ波加熱装置の好適な実施の形態について、添付の図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施の形態のマイクロ波加熱装置においては電子レンジについて説明するが、電子レンジは例示であり、本発明のマイクロ波加熱装置は電子レンジに限定されるものではなく、誘電加熱を利用した加熱装置、生ゴミ処理機、あるいは半導体製造装置などのマイクロ波加熱装置を含むものである。また、本発明は、以下の実施の形態の具体的な構成に限定されるものではなく、同様の技術的思想に基づく構成が本発明に含まれる。
(実施の形態1)
図1は、本発明に係る実施の形態1のマイクロ波加熱装置の外観を示す正面図である。図2は実施の形態1のマイクロ波加熱装置におけるマイクロ波供給系の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、実施の形態1のマイクロ波加熱装置である電子レンジ1は、その前面に上下2つの窓を有する扉2が設けられており、被加熱物を収納する加熱室4が上側加熱室4aと下側加熱室4bの2つに分割されている。実施の形態1のマイクロ波加熱装置においては、その前面に設けられた操作表示パネル3において、使用者が上側加熱室4aおよび/または下側加熱室4bの加熱条件の設定を行い、その加熱条件および被加熱物の処理状態などが表示されるよう構成されている。
図2に示すマイクロ波供給系の構成において、実施の形態1のマイクロ波加熱装置には、加熱室4へ供給するマイクロ波を形成するマイクロ波発生部5、および操作表示パネル3からの加熱条件などに基づきマイクロ波発生部5などを制御するマイクロコンピュータで構成された制御部6が設けられている。
マイクロ波発生部5は、半導体素子を用いて構成した発振部7と、この発振部7の出力を2段構成により4分配する3つの電力分配部8a,8b,8cと、2段目の電力分配部8b,8cから4分配された出力が各マイクロ波伝送路9a,9b,9c,9dを介して入力される半導体素子を用いて構成された初段増幅部11a,11b,11c,11dと、初段増幅部11a,11b,11c,11dのそれぞれの出力が入力されて、さらに増幅する半導体素子を用いて構成された主増幅部12a,12b,12c,12dと、主増幅部12a,12b,12c,12dの出力がマイクロ波伝送路13a,13b,13c,13dを介して入力される出力部15a,15b,15c,15dと、マイクロ波伝送路13a,13b,13c,13dに挿入され、加熱室4からの反射電力を検知する電力検知部14a,14b,14c,14dと、マイクロ波伝送路9a,9cに挿入された位相可変部10a,10bと、を具備して構成されている。図2において、初段増幅部11a,11b,11c,11dおよび主増幅部12a,12b,12c,12dで構成される増幅ブロックは、2段構成で示されているが、当該マイクロ波加熱装置の出力仕様に応じて一段から複数段に構成される。
実施の形態1のマイクロ波加熱装置における加熱室4は、仕切り板25により上下に2分割されており、被加熱物を収納する略直方体構造を有する上側加熱室4aおよび下側加熱室4bから構成されている。また、マイクロ波加熱装置は、上側加熱室4aおよび下側加熱室4bに対して被加熱物の出し入れを行うために開閉する扉2が設けられており、加熱室内部に供給されたマイクロ波が漏洩しないよう構成されている。
前述のように、マイクロ波発生部5から加熱室4へは4つのマイクロ波出力が伝送されており、マイクロ波発生部5から出力されたマイクロ波は加熱室内部に放射する4つの給電部21a,21b,21c,21dに伝送される。各給電部21a,21b,21c,21dは、加熱室4を構成するそれぞれの壁面に配設されている。上側加熱室4aにおける対向面である左壁面上部26aと右壁面上部27aには、給電部21bと給電部21aがそれぞれ対向して配置されている。
一方、下側加熱室4bにおける対向面である左壁面下部26bと右壁面下部27bには給電部21cと給電部21dがそれぞれ対向して配置されている。
上記のように、一方の対となる給電部21aと給電部21bが設けられている上側加熱室4aと、他方の対となる給電部21cと給電部21dが設けられている下側加熱室4bとの間は、電磁波遮蔽機能を有する仕切り板25により区切られている。仕切り板25の材料としては、金属板で構成しても良いが、電磁波が透過しない材料で高い反射係数を有する材料であれば良く、例えばセラミック材で構成することも可能である。
実施の形態1のマイクロ波加熱装置は、上記のように構成されているため、一つの筐体であるにもかかわらず加熱室4の内部が2つに区画されて、2つの加熱室4(4a,4b)を形成することができる。実施の形態1のマイクロ波加熱装置は、例えば、使用者による使用実態を想定すると、上側加熱室4aには被加熱物として主菜、下側加熱室4bには被加熱物として副菜を収納し、一度に加熱するという使い方にも対応できるという長所を有している。
実施の形態1のマイクロ波加熱装置においては、上側加熱室4aの給電部21aと給電部21b、および下側加熱室4bの給電部21cと給電部21dが対向して配置され、上側加熱室4aおよび下側加熱室4bのそれぞれにおいて対向してマイクロ波を放射するよう構成されている。また、マイクロ波伝送路9a,9cには位相可変部10a,10bが設けられているため、対向して放射されるマイクロ波の位相を変えることが可能である。
上記のように構成されているため、上側加熱室4aおよび下側加熱室4bのそれぞれにおいては、対向して配置された両側の給電部21aおよび21b、並びに給電部21cおよび21dから放射されるマイクロ波がお互いに衝突し、かつ両者のマイクロ波の位相を変化させることができるため、加熱室4の内部に所望の電磁波分布を形成することが可能である。
それぞれの給電部21a,21b,21c,21dは、加熱室4の壁面に形成された開口部24a,24b,24c,24dと、マイクロ波を開口部24a,24b,24c,24dへ導く導波部22a,22b,22c,22dと、マイクロ波発生部5からのマイクロ波を出力するアンテナとなる供給部23a,23b,23c,23dと、を具備して構成されている。各開口部24a,24b,24c,24dは、矩形形状である長方形形状に形成されており、その長手方向が全て水平方向となるよう配置されている。ここで水平方向とは、マイクロ波加熱装置における正面側と裏面側とを結ぶ奥行き方向である。
実施の形態1のマイクロ波加熱装置においては、制御部6からの制御信号により位相可変部10a,10bが対向するマイクロ波の位相差を自在に変化させている。このように2つの位相可変部10a,10bにより、上側加熱室4aおよび下側加熱室4bにおいて対向して供給されるマイクロ波の位相を調整して、上側加熱室4aおよび下側加熱室4bのそれぞれの内部は所望の電磁波分布が形成される。実施の形態1における位相可変部10a,10bは、印加電圧に応じて静電容量が変化する静電容量可変素子を用いて構成されており、位相可変範囲が0度〜180度の範囲である。
制御部6は、使用者が操作表示パネル3(図1参照)において直接入力する被加熱物の加熱条件(図2の矢印X)および加熱動作中において検知された被加熱物の加熱状態を示す加熱情報(図2の矢印Y)などに基づいて、マイクロ波発生部5の発振部7に発振周波数調整信号を送出して、発振部7が発生するマイクロ波の発振周波数を変化させている。また、制御部6は、反射電力を検出する電力検知部14a,14b,14c,14dからの検知情報(図2の矢印Z)に基づいて、マイクロ波発生部5の構成要素である発振部7と増幅ブロックのそれぞれに供給する駆動電力の制御、および位相可変部10a,10bへの印加電圧を制御する。図2において、制御部6に入力される矢印Sで示す信号は加熱開始信号であり、使用者が操作表示パネル3において加熱開始操作を行うことにより制御部に入力される信号である。
このように制御部6は、入力された信号に基づき加熱室4における上側加熱室4aおよび下側加熱室4bのそれぞれの内部に収納された被加熱物を最適に加熱するようにマイクロ波発生部5を駆動制御する。制御部6による詳細な駆動制御に関しては後述する。
以下、制御部6からの制御信号により位相可変部10a,10bが制御されることにより、加熱室4の内部が最適な加熱状態となることを説明する。
また、発振部7からのマイクロ波信号が各給電部21a,21b,21c,21dに略1/4の電力量でどのようにして配分されるかについて説明する。
マイクロ波発生部5におけるマイクロ波伝送部9a,9b,9c,9d,13a,13b,13c,13dにおいては、誘電体基板の片面に設けた導電体パターンによって特性インピーダンスが略50Ωの伝送回路が形成されている。2段構成の電力分配部8a,8b,8cは、それぞれが同一構造を有する3dBブランチラインカプラー構成である。したがって、以下の説明においては、1段目の電力分配器8aを代表としてその構成について説明する。
電力分配部8aは、4端子を有しており、それぞれの端子を第1端子16、第2端子17、第3端子18および第4端子19とする。第1端子16と第2端子17の間、および第3端子18と第4端子19の間には特性インピーダンス50Ωでその電気長がλ/4(λは使用周波数帯の中央周波数の実効波長)からなるマイクロストリップ線路を配置している。また、第1端子16と第3端子18の間、および第2端子17と第4端子19の間には特性インピーダンスが略35.35Ωでその電気長がλ/4のマイクロストリップ線路を配置している。さらに、第3端子18には抵抗値が50Ωの電気終端部20が接続されている。
上記のように構成された電力分配部8aにおいて、第1端子16に入力したマイクロ波信号は、第2端子17および第4端子19に2分配されて出力される。また、このとき第2端子17と第4端子19から出力されるマイクロ波信号は、第2端子17から出力されたマイクロ波信号の位相を基準にすると、第4端子19から出力されたマイクロ波信号は位相が90度遅れている。
電力分配部8aの出力を次段の2つの電力分配部8b,8cに入力する2段構成とすることにより、発振部7の出力電力は、略1/4ずつ分配されて、後続の増幅ブロックにおける初段増幅部11a,11b,11c,11dに出力される。このように伝送された4つのマイクロ波伝送路9a,9b,9c,9dにおいて、マイクロ波伝送路9bを伝送するマイクロ波信号を基準にすると、マイクロ波伝送線路9aおよび9cを伝送するマイクロ波信号は、位相が90度遅れており、マイクロ波伝送路9dを伝送するマイクロ波信号は、位相が180度遅れている。なお、4分配された電力のばらつきには、位相可変部10a,10b、初段増幅部11a,11b,11c,11d、および主増幅部12a,12b,12c,12dの利得の許容差等も含まれるが、支配的なものではない。
以下、対向して配置された給電部のアンテナから放射されたマイクロ波において位相差を変化させることにより、加熱室内部の電磁界分布がどのような変化するかについて、本発明者が実験を行ったので説明する。
図3は、実験に用いた加熱室4を上方から見た平面断面図である。この実験では、図3に示すように、初めに加熱室4の内部に所定量の水が入った複数のカップ(図3においてはCUとして表示)を整列配置した。その時の各カップ(CU)内の中央部(図3において点Pと表示)における水の温度を測定した。
そして、加熱室4の壁面において配置された2個のアンテナA1,A2から位相を変化させたマイクロ波を放射させた。その後、所定時間経過後にマイクロ波の放射を停止して、各カップ(CU)内の中央部の位置(P)において、マイクロ波放射による水の温度上昇値を測定した。
アンテナA1から放射されるマイクロ波とアンテナA2から放射されるマイクロ波との間で複数の位相差を設定し、設定した位相差ごとに複数回のマイクロ波を放射した。なお、本実験では、位相差を0度〜320度の範囲において40度ごとに変えて測定した。
上記のように、マイクロ波加熱装置の加熱室内部の水平面内に配置された水の温度上昇値を測定することにより、加熱室内部におけるマイクロ波の電磁界分布を調査した。本実験によれば、水の温度上昇値が高い領域では電磁界分布が強いと判定でき、水の温度上昇値が低い領域では電磁界分布が弱いと判定できる。
図4は、アンテナA1から放射されるマイクロ波とアンテナA2から放射されるマイクロ波の位相差を0度に設定した場合の実験結果を、水の温度上昇値に基づく等温線により示したものである。同様に、図5〜図12は、アンテナA1から放射されるマイクロ波とアンテナA2から放射されるマイクロ波の位相差を40度から320度の範囲において40度ごと変えて測定した場合の実験結果を等温線で示している。なお、図5〜図12に示した各位相差は、アンテナA2から放射されるマイクロ波の位相を基準として、アンテナA1から放射されるマイクロ波の遅れ位相を示している。
図4〜図12に示される実験結果によれば、水の温度上昇値は、加熱室内部において大きくばらついている。また、図7および図8に示すように、設定された位相差が120度および160度の場合には、加熱室4の一方の側面(左壁面)に近い領域(図7および図8においてHR1と表示)で温度上昇値が非常に高くなっている。
また、図11および図12に示すように、設定された位相差が280度および320度の場合には、加熱室4の他方の側面(右壁面)に近い領域(図11および図12においてHR2と表示)で温度上昇値が非常に高くなっている。
以上の実験結果から、本発明者は、加熱室内の電磁界分布が、対向して配置された2個のアンテナA1,A2から放射されるマイクロ波の位相差に応じて変化することに着目した。本発明者は、対向して配置されたアンテナA1,A2から放射されたマイクロ波の位相差を変化させることにより、加熱室内部の被加熱物を均一に加熱することが可能であること、および被加熱物の特定の部分を集中的に加熱することが可能であることを見出した。
したがって、対向して配置されたアンテナA1,A2から放射されるマイクロ波の位相差を変化させることにより、加熱室内部の電磁波分布を変化させることができる。このため、加熱室内部に配置された被加熱物を加熱室内部で移動させて加熱ムラを解消させる必要がなくなる。また、上記のように位相差を変化させることにより、加熱室内部の電磁波分布を変化させることができる。このため、加熱ムラを解消すべく電磁界分布を変化させるために、マイクロ波を放射するアンテナを移動させる必要がなくなる。
また、上記の実験結果から明らかなように、対向して放射されたマイクロ波の衝突に起因した現象が電磁界分布の変化としてあらわれているため、アンテナA1とアンテナA2のそれぞれから放射されるマイクロ波の放射方向が交差するようにアンテナA1、A2を配設しても同様の現象が発生する。これは、例えば隣接する加熱室壁面にアンテナA1、A2を配設する構成においても実現できる。
したがって、本発明に係る実施の形態1のマイクロ波加熱装置においては、電磁界分布を所望の分布とするために、被加熱物またはアンテナを移動させるための機構が必要ではなく、加熱室内部に被加熱物またはアンテナの移動用のスペースを確保する必要もない。その結果、実施の形態1のマイクロ波加熱装置の構成は、低コスト化および小型化を実現することができる。
なお、実施の形態1のマイクロ波加熱装置において、加熱室を上下に分割した場合について説明したが、給電部の配置を変更して加熱室を左右に分割する仕切り部を設けて、分割された各加熱室内に収納された被加熱物にマイクロ波をそれぞれ集中させるよう構成することも可能である。
以上のように、本発明に係る実施の形態1のマイクロ波加熱装置は、複数の加熱室4a,4bを備えて利便性を高めることができるとともに、マイクロ波を放射する機能を有する複数のマイクロ波供給手段である給電部21a,21b,21c,21dを加熱室の異なる壁面に配置して、それぞれのマイクロ波供給手段から放射されるマイクロ波を最適化することにより、さまざまな形状、種類、大きさ、量の異なる被加熱物を所望の状態に加熱することができる。
(実施の形態2)
以下、本発明に係る実施の形態2のマイクロ波加熱装置について添付の図13を用いて説明する。図13は実施の形態2のマイクロ波加熱装置のマイクロ波供給系の構成を示すブロック図である。
実施の形態2のマイクロ波加熱装置において、前述の実施の形態1のマイクロ波加熱装置と異なる点は、加熱室に対する給電部の配置である。実施の形態2の説明において実施の形態1と同じ機能、構成を有するものには同じ符号を付して、その説明は実施の形態1における説明を適用する。以下、実施の形態2のマイクロ波加熱装置において実施の形態1のマイクロ波加熱装置と異なる点について説明する。
図13に示すように、上側加熱室4aには2つの給電部21aと給電部21bが交差した位置関係で配置されている。すなわち、上側加熱室4aにおいては、天井である上面に給電部21aが設けられており、左壁面26aに給電部21bが設けられている。一方、下側加熱室4bにおいては、左壁面26bに給電部21cが設けられており、底面に給電部21dが設けられている。
上記のように構成された実施の形態2のマイクロ波加熱装置においても、前述の実施の形態1のマイクロ波加熱装置と同様に、上側加熱室4aおよび下側加熱室4bのそれぞれに設けた2つの給電部から放射されたマイクロ波に位相差を設定することにより、それぞれの加熱室4a,4bの内部における電磁界分布を変化させることができる。
実施の形態2のマイクロ波加熱装置における有利な点としては、右壁面27a,27bに給電部が存在しないため、この右壁面27a,27bの空きスペースを利用できることである。例えば、上側加熱室4aにおける右壁面27aの少し上側に、被加熱物の温度上昇状態を斜めから監視する温度検出センサである赤外線センサ32aを設けることができる。また、下側加熱室4bにおける右壁面27bの少し上側に、被加熱物の温度上昇状態を斜めから監視する温度検出センサである赤外線センサ32bを設けることができる。このように赤外線センサ32a,32bを設けることにより、両加熱室内部の被加熱物の温度上昇状態をそれぞれ独立して監視することが可能となる。
被加熱物の実際の温度を示す赤外線センサ32a,32bの検出信号は、制御部6へ加熱情報(図13において矢印Yとして表示)として帰還させることにより、使用者の設定した加熱条件(図13において矢印Xとして表示)により決定される所望の仕上がり温度を示す信号と比較される。被加熱物の実際の温度が所望の仕上がり温度に達したとき、マイクロ波発生部5におけるマイクロ波発生が停止され、被加熱物への加熱が停止される。
以上のように、本発明に係る実施の形態2のマイクロ波加熱装置は、前述の実施の形態1のマイクロ波加熱装置と同様に、複数の加熱室4a,4bを備えて利便性を高めることができるとともに、マイクロ波を放射する機能を有する複数のマイクロ波供給手段である給電部21a,21b,21c,21dを加熱室の壁面に最適に配置して、それぞれのマイクロ波供給手段から放射されるマイクロ波を最適化することにより、さまざまな形状、種類、大きさ、量の異なる被加熱物を所望の状態に加熱することができる。さらに、実施の形態2のマイクロ波加熱装置は、複数の加熱室内部に収納されたそれぞれの被加熱物に応じて所望の状態に高精度に加熱することが可能となる。
(実施の形態3)
以下、本発明に係る実施の形態3のマイクロ波加熱装置について添付の図14乃至図17を用いて説明する。図14は実施の形態3のマイクロ波加熱装置の外観を示す正面図である。図15は実施の形態3のマイクロ波加熱装置における加熱室のみを正面から見た図である。図16および図17は実施の形態3のマイクロ波加熱装置に用いられる仕切り部となる仕切り皿を示す図である。
図14および図15に示すように、実施の形態3のマイクロ波加熱装置は、前述の実施の形態1のマイクロ波加熱装置と同様に、加熱室4が上下2つに区切られて上側加熱室4aおよび下側加熱室4bが形成されている。実施の形態3のマイクロ波加熱装置においては、その前面に2つに分割された扉、上側扉30aと下側扉30bが設けられており、被加熱物を収納する上側加熱室4aおよび下側加熱室4bのそれぞれに対して出し入れ可能に構成されている。
実施の形態3のマイクロ波加熱装置においては、加熱室4の左右壁面の中央部分に棚レール29が設けられている。この棚レール29の上には仕切り皿28が摺動可能に載置されている。仕切り皿28は棚レール29に沿って移動可能であり、加熱室内に挿入できる構成である。加熱室4に挿入された仕切り皿28は加熱室4を上下に分割する仕切り板となっている。
図16は実施の形態3のマイクロ波加熱装置において用いられる仕切り皿28を示す平面図である。図17における(a)は図16に示す仕切り皿28のA−A’線による断面図であり、(b)は図16に示す仕切り皿28のB−B’線による断面図である。図16および図17において金属部分をハッチングで示す。
図16に示すように、仕切り皿28は、加熱室4の平面断面形状に対応するよう矩形状(四角形状)であり、4辺にフランジ28aが形成されている。このフランジ28aにおける対向する2辺が棚レール29上を摺動する構成である。仕切り皿28は、深さを有しており、中央部分が凹んだ形状である。したがって、仕切り皿28に載っている被加熱物が加熱されて、その被加熱物から煮汁や水が出ても、それらの液体は仕切り皿28に確実に受け取られる。即ち、仕切り皿28は、その外縁部分が略垂直な壁面で構成されているため、被加熱物からの液体が加熱室4の内部に漏出したり、仕切り皿28により上下に分割された上側加熱室4aから下側加熱室4bに垂れ落ちたりするということがない。
仕切り皿28は、その底部分の殆どが電磁波を遮蔽する金属、例えば、鉄、アルミニウム、ステンレスなどにより形成されている。この仕切り皿28により上側加熱室4aおよび下側加熱室4bが区切られているため、上側加熱室4aと下側加熱室4bとの間でマイクロ波がお互いに大量に漏洩して、それぞれの電磁界分布に対して大きく影響を及ぼし合うことがない。したがって、実施の形態3のマイクロ波加熱装置においては、仕切り皿28により独立した2つの加熱室4a,4bを構築することが可能となる。
仕切り皿28は、図16および図17に示すように、金属で構成された加熱室4の壁面と仕切り皿28との間で電界が集中してスパークを発生させることがないように、樹脂の部分と金属の部分の2ピース構造を有している。
即ち、仕切り皿28は、金属で構成された加熱室4の壁面と隣接する外縁部分の近傍が樹脂で構成されており、その他の部分が電磁波を遮蔽する金属で構成されている。仕切り皿28において、樹脂の部分の大きさおよび位置を適切に選択することによって、樹脂が存在するにもかかわらず上下の加熱室間におけるマイクロ波の漏洩を実質的に阻止することが可能となる。例えば、仕切り皿28の投影平面形状領域における80%以上に金属部分が配設されていれば、この仕切り皿28により分割された上下の加熱室4におけるそれぞれの電磁界分布に対して大きな影響を及ぼすことがない。特に、仕切り皿28における被加熱物を載置する面の90%以上に金属部分が配設されていることが好ましい。
なお、仕切り皿を全て金属で構成し、当該仕切り皿を載置する棚レールを仕切り皿のフランジを含む外周部分を覆うように形成された樹脂製で構成することも可能である。
なお、実施の形態3のマイクロ波加熱装置においては、加熱室4を仕切り皿28により上下に2分割する構成について説明したが、このように2つの加熱室4(4a,4b)を構成すると放射電力上の制約から出力が当該マイクロ波加熱装置の最高出力の略1/2となり、且つ加熱室4(4a,4b)の大きさが小さくなる。このような制約を嫌う使用者には、仕切り皿28を加熱室4の内部から取り外して、1つの加熱室4で当該マイクロ波加熱装置の最高出力で加熱処理する、いわゆる通常の電子レンジのように加熱処理することが可能である。
実施の形態3のマイクロ波加熱装置において、被加熱物を加熱室4から出し入れするための扉として、上側扉30aと下側扉30bが設けられている。したがって、例えば、仕切り皿28により区切られた上側加熱室4aに収納された被加熱物が下側加熱室4bに収納された被加熱物より先に仕上がった場合には、上側扉30aだけを開き該当する被加熱物を取り出すことが可能である。そして、更に別の被加熱物を上側加熱室4aで加熱する場合には、その被加熱物を上側加熱室4aに収納して上側扉30aを閉成して、加熱開始操作を操作表示パネル3において実施すれば継続的な使用が可能である。
なお、実施の形態3のマイクロ波加熱装置においては、上側扉30aを開放したときには、下側扉30bが閉鎖されていても下側加熱室4bにおける加熱処理を一旦停止するよう構成して、安全性が高められている。
勿論、実施の形態3のマイクロ波加熱装置においては、下側加熱室4bに収納された被加熱物だけを取り出すために、下側扉30bだけを開き該当する被加熱物を取り出すことも可能である。上側扉30aおよび下側扉30bのいずれの扉も単独で開閉操作することが可能であり、操作表示パネル3において上側加熱室4aおよび/または下側加熱室4bに対して所望の加熱条件に設定して、それぞれに収納された被加熱物を別々に加熱処理することが可能である。
なお、実施の形態3のマイクロ波加熱装置においては、2つの加熱室4a,4bに対応して上側扉30aおよび下側扉30bを有する構成について説明したが、安全性をさらに高めるために、1つの扉2の中に小さな扉30aを設けて一方の加熱室から被加熱物を出し入れできる構成とすることも可能である。図18は実施の形態3のマイクロ波加熱装置における扉2の上側に小さな上側扉30aを設けた例を示す正面図である。図18に示すように、このマイクロ波加熱装置においては、扉2により加熱室4の全体を開放することができると共に、上側扉30aのみを開くことにより上側加熱室4aに対する被加熱物の出し入れが可能となる。勿論、扉2に下側扉30bを設けることも可能である。
実施の形態3のマイクロ波加熱装置は、加熱室4をそのまま分割せずに1つの加熱室として使いたい場合、上側加熱室4aと下側加熱室4bを同時に使いたい場合、上側加熱室4aまたは下側加熱室4bのいずれか一方の加熱室だけを使いたい場合のそれぞれに対応することができ、使用者の様々の使用目的に応じて柔軟に対応できるため利便性の高い加熱装置である。
なお、実施の形態3のマイクロ波加熱装置においては、1枚の仕切り皿28を用いて加熱室を上下に2分割する構成について説明するが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、複数枚の仕切り皿28を用いて複数の加熱室を構成し、それぞれの加熱室に給電部を配設する構成も可能である。
上記のように構成された仕切り皿28を実施の形態3のマイクロ波加熱装置に用いることにより、加熱室4を複数に分割することが可能であると共に、仕切り皿28と加熱室壁面との間でスパークが発生することのない安全なマイクロ波加熱装置を実現することができる。
以上のように、本発明に係る実施の形態3のマイクロ波加熱装置は、前述の実施の形態1のマイクロ波加熱装置と同様に、複数の加熱室を備えて利便性を高めることができるとともに、マイクロ波を放射する機能を有する複数のマイクロ波供給手段である給電部21a,21b,21c,21dを加熱室の壁面に配置して、それぞれのマイクロ波供給手段から放射されるマイクロ波を最適化することにより、さまざまな形状、種類、大きさ、量の異なる被加熱物を所望の状態に加熱することができる。さらに、実施の形態3のマイクロ波加熱装置は、被加熱物に応じて加熱室を変更することが可能であり、利便性の更に高い加熱装置となる。
(実施の形態4)
以下、本発明に係る実施の形態4のマイクロ波加熱装置について添付の図19および図20を用いて説明する。図19は実施の形態4のマイクロ波加熱装置のマイクロ波供給系を主体とした構成を示すブロック図である。図20は実施の形態4のマイクロ波加熱装置の制御系を主体とした構成を示すブロック図である。
実施の形態4のマイクロ波加熱装置において、前述の図13に示した実施の形態2のマイクロ波加熱装置と異なる点は、マイクロ波発生部における発振部が2つ設けられている点である。図19および図20に示す実施の形態4の説明において、前述の実施の形態2と同じ機能、構成を有するものには同じ符号を付して、その説明は実施の形態1および実施の形態2における説明を適用する。以下、実施の形態4のマイクロ波加熱装置において実施の形態2のマイクロ波加熱装置と異なる点について説明する。
図19に示すように、実施の形態4のマイクロ波加熱装置の基本的構成は、図13に示した実施の形態2のマイクロ波加熱装置と類似しているが、発振部の数が異なっている。
実施の形態4のマイクロ波加熱装置のマイクロ波発生部31においては、上側加熱室4aにマイクロ波を放射する給電部21aと給電部21bに対する発振部として第1の発振部7aを備え、下側加熱室4bにマイクロ波を放射する給電部21cと給電部21dに対する発振部として第2の発振部7bを備えている。
マイクロ波発生部31における増幅ブロックの主増幅部12a,12b,12c,12dから出力部15a,15b,15c,15dまでのマイクロ波伝送路13a,13b,13c,13dに挿入された電力検知部14a,14b,14c,14dは、加熱室4からの反射電力を抽出する。抽出された反射電力の情報は制御部(CPU)6に入力されて、その制御部6において反射電力の最小値または極小値を示すときの周波数が検出される。制御部6は、検出された周波数で発振させるために、周波数調整信号A,Bが発振部7a,7bのそれぞれに入力される。この結果、マイクロ波発生部31は、反射電力が最小値または極小値を示すマイクロ波信号を出力し、マイクロ波加熱装置は反射電力が最小となる加熱条件で効率高く加熱処理される。
上記のように、電力検知部14a,14b,14c,14dは、加熱室側からマイクロ波発生部側にそれぞれ伝送される、いわゆる反射波の電力(反射電力)を抽出するものであり、電力結合度を例えば約40dBとすると、反射電力の約1/10000の電力量を抽出する。この抽出された電力を示す信号は、それぞれ検波ダイオード(図示していない)で整流化され、コンデンサ(図示していない)で平滑処理される。平滑処理された信号は制御部6に入力される。
したがって、上記のように制御部6において制御されたマイクロ波加熱装置は、加熱室4およびその加熱室4に収納された被加熱物に応じて、最も反射波が少ない状態、すなわち被加熱物が最も多くのマイクロ波エネルギを受熱している条件で動作している。このため、実施の形態4のマイクロ波加熱装置は反射損失が少なく高い効率で加熱処理することができる。
図20は実施の形態4のマイクロ波加熱装置における制御系を主体とした構成のブロック図である。以下、図20のブロック図を用いて実施の形態4のマイクロ波加熱装置における特徴的な制御について説明する。
マイクロ波発生部31における、第1の発振部7aと第2の発振部7bは、一方の被加熱物を収納した上側加熱室4aと他方の被加熱物を収納した下側加熱室4bのそれぞれに対応するように、制御部6からの周波数調整信号A,Bにより最適な周波数で発振し、所望のマイクロ波信号をそれぞれ出力する。制御部6においては、それぞれの被加熱物に適応したマイクロ波としての周波数を選択して周波数調整信号A,Bを出力する。制御部6における抽出演算処理は、基本的に反射波の少ない領域(最小値または極小値)の周波数を選択するアルゴリズムとなっている。
上側加熱室4aからの反射波の電力は給電部21a,21bを介して電力検知部14a,14bにおいて検出される。電力検知部14a,14bにおいて検出された反射波の電力を示す信号は、制御部6に帰還される。制御部6においては、帰還された信号に基づいて演算処理し、上側加熱室4aに適した反射波の少ない周波数を選択して第1の発振部7aの発振周波数を決定する。
一方、下側加熱室4bを加熱動作させる場合も同様であり、下側加熱室4bからの反射波の電力は給電部21c,21dを介して電力検知部14c,14dにおいて検出される。電力検知部14c,14dにおいて検出された反射波の電力を示す信号は、制御部6に帰還される。制御部6においては、帰還された信号に基づいて演算処理し、下側加熱室19bに適した反射波の少ない周波数を選択して第2の発振部7bの発振周波数を決定する。
上記のように所望の発振周波数に調整する場合において、最初に最高出力で周波数抽出処理を行った場合、反射波が大き過ぎて、主増幅部12a,12b,12c,12dを破壊する可能性がある。そのため、最初の周波数抽出処理は低出力で行うことが望ましい。一度、反射波の少ない周波数を抽出できれば、その周波数で通常の時に使用する高出力に出力を上昇させるように動作するアルゴリズムが好ましい。マイクロ波出力の高低は制御部6から第1の発振部7a、第2の発振部7bの発振信号に高低を付ける指令を出力することによって実現できる。
実施の形態4のマイクロ波加熱装置においては、制御部6が上記のように動作することにより、上側加熱室4aと下側加熱室4bが独立した加熱シーケンスで加熱工程を進行させることが可能となる。したがって、各上側加熱室4aおよび下側加熱室4bが異なる被加熱物を異なる加熱条件で加熱処理する場合には、制御部6は各加熱室4a,4bにおいて全く異なった加熱シーケンスで各工程を進行させる必要がある。
実施の形態4のマイクロ波加熱装置の使用方法としては、操作表示パネル3において使用者が加熱時間を設定して2つの加熱室4a,4bに被加熱物を収納し、加熱シーケンスの各工程をマニュアル的に実施する方法がある。マニュアル的なアプリケーションとしては、2つの加熱室4aおよび4bのそれぞれに異なる被加熱物を収納し、使用者がそれぞれを所望の加熱時間に設定して加熱する方法がある。また、その他のマニュアル的なアプリケーションとしては、一方の加熱室だけに被加熱物を収納して、その加熱室のみの加熱時間を使用者が設定して加熱する方法がある。さらに、その他のマニュアル的なアプリケーションとしては、仕切り板25または仕切り皿28を加熱室4から取り外して、加熱室4を分割せずに大きな被加熱物を収納させて、使用者が加熱時間を設定して加熱する方法である。
例えば、電子レンジにおいて、自動調理は使用者にとっての利便性が高いが、機器を使いこなした使用者にとってはマニュアル的な使用方法の途を提供しておくことは必要不可欠である。使用者独自の仕上がりを望む場合には、自動調理による仕上がりでは画一化できない側面を持っているためである。
したがって、実施の形態4のマイクロ波加熱装置は、マニュアル的な各種アプリケーションに適用できるため、使用者にとって使い勝手が良く、利便性の高い加熱装置となる。
実施の形態4のマイクロ波加熱装置においては、上側加熱室4aに収納された被加熱物の温度上昇を検知して、仕上がり状態を監視する赤外線センサ32aが設けられている。実施の形態4のマイクロ波加熱装置は、使用者が操作表示パネル3において設定した加熱条件で決定される仕上がり目標(温度)と実際の仕上がり状態(温度)との偏差を常に監視している。加熱が進行しその偏差が零になったことを制御部6が検出したとき、制御部6は最終的に加熱終了として第1の発振部7aの駆動を停止する。また、初段増幅部11aと主増幅部12aで構成された第1の増幅ブロック33aおよび初段増幅部11bと主増幅部12bで構成された第2の増幅ブロック33bを有する上側加熱室用増幅ブロック36aへの電力供給の停止は、接続器35aを遮断することにより行われる。接続器35aは駆動電源部34と上側加熱室用増幅ブロック36aとの間に設けられ、駆動電源部34から上側加熱室用増幅ブロック36aへの電力供給のオンオフ制御を行っている。接続器35aが遮断されることにより、マイクロ発生部31からのマイクロ波出力は完全に停止される。
実施の形態4のマイクロ波加熱装置においては、上側加熱室4aと同様に、下側加熱室4bに収納された被加熱物の温度上昇を検知して、仕上がり状態を監視する赤外線センサ32bが設けられている。実施の形態4のマイクロ波加熱装置は、使用者が操作表示パネル3において設定した加熱条件で決定される仕上がり目標(温度)と実際の仕上がり状態(温度)との偏差を常に監視している。加熱が進行しその偏差が零になったことを制御部6が検出したとき、制御部6は最終的に加熱終了として第2の発振部7bの駆動を停止する。また、初段増幅部11cと主増幅部12cで構成された第3の増幅ブロック33cおよび初段増幅部11dと主増幅部12dで構成された第4の増幅ブロック33dを有する下側加熱室用増幅ブロック36bへの電力供給は、接続器35bを遮断することにより停止される。接続器35bは駆動電源部34と下側加熱室用増幅ブロック36bとの間に設けられ、駆動電源部34から下側加熱室用増幅ブロック36bへの電力供給のオンオフ制御を行っている。接続器35bが遮断されることにより、マイクロ発生部31からのマイクロ波出力が完全に停止される。
なお、使用者が当該マイクロ波加熱装置の扉を開成すると、その開成動作に応じて接続器35a,35bが遮断され、マイクロ波発生部31からのマイクロ波出力は完全に停止されるため、使用者にはマイクロ波被爆という危険な状態となることが完全に防止されている。
上記のように、実施の形態4のマイクロ波加熱装置においては、2つの発振部7a,7bが設けられているため、2つの電力分配器8b,8cにより各発振部7a,7bからの出力を分配して4つのマイクロ波出力を形成している。なお、実施の形態4のマイクロ波加熱装置においては、前述の実施の形態2のマイクロ波加熱装置と同様に、2つの位相可変部10a,10bが設けられており、制御部6からの制御信号である電圧信号が入力された位相可変部10a,10bにより、それぞれの加熱室4a,4bに放射されるマイクロ波を所望の位相差とすることが可能となっている。
また、実施の形態4のマイクロ波加熱装置においては、上側加熱室4aおよび下側加熱室4bの加熱動作が独立シーケンスにより作動している。しかし、いずれか一方の加熱動作が終了して、上側扉30aまたは下側扉30bのいずれか一方の扉が開成されたときには、仕切り板25若しくは仕切り皿28の仕切り部により2つの加熱室4a,4bの間は基本的にはマイクロ波が遮蔽されているが、上側加熱室4aおよび下側加熱室4bとの間でマイクロ波が漏洩する可能性があるため、他方の加熱室が加熱動作中であっても、マイクロ波出力を完全に停止する安全性を重視した構成を有している。
なお、実施の形態4のマイクロ波加熱装置において、加熱室を上下に分割した場合について説明したが、給電部の配置を変更して加熱室を左右に分割する仕切り部を設けて、分割された各加熱室内に収納された被加熱物にマイクロ波をそれぞれ集中させるよう構成することも可能である。
以上のように、本発明に係る実施の形態1〜4のマイクロ波加熱装置は、複数の給電部を有し、加熱室を構成する異なる壁面に給電部を分散配置し、電波を遮蔽する仕切り板(仕切り皿)により複数の加熱室を構成することが可能である。本発明に係るマイクロ波加熱装置においては、それぞれの加熱室で加熱される被加熱物をそれぞれ独立したシーケンスで加熱することができるので、電子レンジで代表されるような誘電加熱を利用した加熱装置や生ゴミ処理機、あるいは半導体製造装置であるプラズマ電源のマイクロ波電源などの用途にも適用できる。
(実施の形態5)
以下、本発明に係る実施の形態5のマイクロ波加熱装置について添付の図21および図22を参照しつつ説明する。図21は実施の形態5のマイクロ波加熱装置の構成を示す断面図である。図22は実施の形態5のマイクロ波加熱装置のマイクロ波供給系の構成を示したブロック図である。実施の形態5の説明において、前述の実施の形態1〜4のマイクロ波加熱装置と同じ機能、構成を有するものには同じ符号を付し、その説明は重複するため実施の形態5においては省略する。
本発明に係る実施の形態5のマイクロ波加熱装置は、前述の実施の形態1〜4と同様に、加熱室の異なる壁面のそれぞれに給電部を設けて、加熱室内部の電磁波分布を均一化、若しくは被加熱物に応じて可変するよう構成されている。
特に、実施の形態5のマイクロ波加熱装置においては、以下の問題を解決するものである。
従来のマイクロ波加熱装置である電子レンジの加熱室は一般に直方体形状で構成されている。この加熱室を構成する一つの壁面には、加熱室内部に被加熱物を出し入れするための開閉扉が設けられている。近年、対面式キッチンを設ける家庭が増えてきている。このような対面式キッチンでは、電子レンジの開閉扉が、通常、キッチンにおいて操作できるようにキッチン側に向いて設置されている。また、コンビニエンスストアには、加熱してから食べるように形成された食品が販売されている。このような加熱食品を購入者が直ぐに食べられるように、コンビニエンスストアでは、食品を加熱するために、電子レンジによる再加熱処理が行われている。このように用いられる電子レンジは、コンビニエンスストアの従業員が操作できるように開閉扉はレジカウンタの内側を向いて設置されている。
上記のような電子レンジの設置環境において、対面キッチンにおいては、キッチン側およびリビング側の両方から電子レンジを利用できると利便性が高くなる。また、コンビニエンスストアにおいては、レジカウンタの内側およびレジカウンタの外側である客側の両方から電子レンジを利用できれば、利便性を高くなる。
上記のような設置環境に対応できる構成としては、例えば天井部分が開閉するドーム状の開閉扉を備えたものが考えられる。例えば、日本の実開昭63−139408号公報にはドーム状の開閉扉を有する電子レンジが開示されている。
しかしながら、ドーム状の開閉扉を有する電子レンジでは、電子レンジの天井部分を開閉する構成であるため、電子レンジの上部にある程度の空間が必要である。このようなドーム形状の開閉扉を有する電子レンジを家庭で用いる場合には、このような電子レンジを収納棚へ設置して操作することが困難である。また、このような電子レンジをコンビニエンスストアにおいて使用する場合には、複数の電子レンジを設置する必要があるが、このような電子レンジは積み重ねができないという問題がある。
本発明に係る実施の形態5のマイクロ波加熱装置である電子レンジにおいては、上記の問題を解決するものであり、加熱室を構成する前面と裏面に開閉扉を設けたものである。
以下、本発明に係る実施の形態5のマイクロ波加熱装置について詳細に説明する。
図21はマイクロ波加熱装置である電子レンジ1の側面断面図であり、図21において左側が正面、右側が裏面である。図22は電子レンジ1のマイクロ波供給系の構成示した図であるが、その右側に記載した加熱室4は正面図であり、左壁面42、右壁面43、底壁面44、上壁面45、および裏面側扉38が示されている。
図21および図22に示すように、実施の形態5の電子レンジ1は、被加熱物を収納する略直方体構造からなる加熱室4を有する。加熱室4はマイクロ波を遮断する材料、例えば鉄、アルミニウム、ステンレスなどの金属材料で形成された左壁面42、右壁面43、底壁面44、上壁面45、および加熱室4に対して被加熱物を出し入れするために開閉する正面側扉37と裏面側扉38で構成されている。加熱室4は、その内部に供給されたマイクロ波を内部に閉じ込めるよう遮蔽構造を有している。なお、図21に示す電子レンジ1においては、正面側扉37および裏面側扉38の開成途中の状態を一点鎖線で示す。
図21に示すように、装置本体側に設けられた正面側扉取り付け板40に対向する正面側扉37の周縁部には電波漏洩防止機構37a,37bが設けられており、裏面側扉取り付け板41に対向する裏面側扉38の周縁部には電波漏洩防止機構38a,38bが設けられている。各扉37,38の中央部分38c,37cには、マイクロ波を遮断するとともに加熱室4の内部を透視できるようにパンチング孔加工が施こされている。
図22に示すように、加熱室4へのマイクロ波を形成して供給するマイクロ波発生部5は、前述の図2に示した実施の形態1と同様に、半導体素子を用いて構成した発振部7と、この発振部7の出力を2段構成により4分配する3つの電力分配部8a,8b,8cと、2段目の電力分配部8b,8cから4分配された出力が各マイクロ波伝送路9a,9b,9c,9dを介して入力される半導体素子を用いて構成された初段増幅部11a,11b,11c,11dと、初段増幅部11a,11b,11c,11dのそれぞれの出力が入力されて、さらに増幅する半導体素子を用いて構成した主増幅部12a,12b,12c,12dと、主増幅部12a,12b,12c,12dの各出力がそれぞれのマイクロ波伝送路13a,13b,13c,13dを介して入力される出力部15a,15b,15c,15dと、各マイクロ波伝送路13a,13b,13c,13dに挿入され、加熱室4からの反射電力を検知する電力検知部14a,14b,14c,14dと、マイクロ波伝送路9a,9cに挿入された位相可変部10a,10bと、を具備して構成されている。
マイクロ波発生部5の4つの出力部15a,15b,15c,15dから伝送されたマイクロ波を加熱室4の内部に放射供給する給電部21a,21b,21c,21dが加熱室4に設けられている。給電部21a,21b,21c,21dは、加熱室4を構成する各壁面に配設されている。加熱室4の内部において、対向する左壁面42と右壁面43の略中央には給電部21c,21dがそれぞれ対向するよう配設されている。同様に、対向する底壁面44と上壁面45の略中央には給電部21a,21bが対向するよう配設されている。
上記のように、実施の形態5のマイクロ波加熱装置においては各給電部21a,21b,21c,21dのそれぞれが加熱室4を構成する壁面における異なる壁面に配設されている。
実施の形態5のマイクロ波加熱装置において、給電部21a,21b,21c,21dは、マイクロ波を放射するアンテナである供給部23a,23b,23c,23dと、供給部23a,23b,23c,23dからのマイクロ波を導く導波部22a,22b,22c,22dと、加熱室4の各壁面に形成された開口部24a,24b,24c,24dと、を有する。
各給電部21a,21b,21c,21dにおいて、導波部22a,22b,22c,22dは加熱室4の壁面に形成した開口部24a,24b,24c,24dを加熱室壁面の外部から覆うとともに、供給部23a,23b,23c,23dを始端側に開口部24a,24b,24c,24dを終端側に配置する。供給部23a,23b,23c,23dは、各導波部22a,22b,22c,22dにマイクロ波発生部5からの各出力を供給する同軸伝送路の中心導体を突出させて構成されている。開口部24a,24b,24c,24dは、略長方形の矩形形状を有している。対向して配置された上壁面45の開口部24aと底壁面44の開口部24bは、それぞれの長手方向が平行となるよう配置されている。また、対向して配置された左壁面42の開口部24cと右壁面43の開口部24dは、それぞれの長手方向が平行となるよう配置されている。実施の形態5においては、開口部24aと開口部24bの長手方向、および開口部24cと開口部24dの長手方向が直交するよう構成されている。即ち、開口部24aと開口部24bの長手方向は加熱室4の幅方向であり、開口部24cと開口部24dの長手方向は加熱室4の奥行き方向である。
上記のように、加熱室4を構成する壁面において、直交して隣接する上壁面45と左壁面42に設けられた開口部24aと開口部24cは、それぞれの長手方向が直交状態となるよう配置されている。同様に、直交して隣接する上壁面45と右壁面43に設けられた開口部24aと開口部24dは、それぞれの長手方向が直交状態となるよう配置されている。
また、実施の形態5のマイクロ波加熱装置において、左壁面42に配設した給電部21cおよび右壁面43に配設した給電部21dは、開口部24c,24dがアンテナとなる供給部23c,23dに対して、高さ方向に高い位置に配置されている。
なお、給電部21a,21b,21c,21dの構成要素として、加熱室4の内部へ放射するマイクロ波の伝送効率を高めるために導波部22a,22b,22c,22dの内部にインピーダンス整合素子を付帯させてもよい。
実施の形態5のマイクロ波加熱装置において、増幅ブロックである初段増幅部11a,11b,11c,11dおよび主増幅部12a,12b,12c,12dは、低誘電損失材料により構成された誘電体基板の片面に形成された導電体パターンの回路で構成されている。また、各増幅部の増幅素子である半導体素子を良好に動作させるために、各半導体素子の入力側と出力側のそれぞれに整合回路が設けられている。
マイクロ波発生部5におけるマイクロ波伝送路9a,9b,9c,9d、および13a,13b,13c,13dは、誘電体基板の片面に形成された導電体パターンによって特性インピーダンスが略50Ωの伝送回路が形成されている。
2段構成の3つの電力分配部8a,8b,8cは、それぞれ同一構造の3dBブランチラインカプラー構成である。以下、電力分配部8aを代表としてその構成について説明する。
電力分配部8aにおける4つの端子に符号16〜19を付すと、第1端子16と第2端子17の間、および第3端子18と第4端子19の間には特性インピーダンスが略50Ωでその電気長がλ/4(ここで、λは使用周波数帯の中央周波数の実効波長を示す)からなるマイクロストリップ線路が配置されている。第1端子16と第3端子18の間、および第2端子17と第4端子19の間には特性インピーダンスが略35.35Ωで電気長λ/4のマイクロストリップ線路が配置されている。さらに、第3端子18には抵抗値が50Ωの電力終端器20が接続されている。他の電力増幅部8b,8cにおいても、電力分配部8aと同様に構成されている。
上記のように構成された電力分配部8aにおいて、第1端子16に入力されたマイクロ波信号は、第2端子17および第4端子19に2分配されて出力される。また、このとき第2端子17および第4端子19から出力されるマイクロ波信号の位相の関係は、第2端子17から出力されたマイクロ波信号の位相に対して、第4端子19から出力されたマイクロ波信号は位相が90度遅れている。
実施の形態5のマイクロ波加熱装置においては、電力分配部8a,8b,8cが2段構成であるため、発振部7の出力電力は、略1/4ずつ分配され、後続の初段増幅部11a,11b,11c,11dに出力される。マイクロ波伝送路9bを伝送するマイクロ波信号を基準にすると、マイクロ波伝送路9aおよび9cを伝送するマイクロ波信号は、位相が90度遅れた信号として伝送され、マイクロ波伝送路9dを伝送するマイクロ波信号は、位相が180度遅れた信号として伝送される。
また、実施の形態5のマイクロ波加熱装置において、2つのマイクロ波伝送路9aと9cにはそれぞれ位相可変部10aと10bが挿入されている。この位相可変部10a,10bは、印加電圧に応じて容量が変化する容量可変素子を用いて構成されており、その位相可変範囲は略0度から略270度の範囲である。
マイクロ波発生部5における電力検知部14a,14b,14c14dは、加熱室4からマイクロ波発生部5に伝送された、いわゆる反射波の電力(反射電力)を抽出するものである。各電力検知部14a,14b,14c,14dは、電力結合度を、例えば約40dBとして、反射電力の約1/10000の電力量を抽出する。この抽出された電力量を示す信号は、それぞれの電力検知部14a,14b,14c,14dにおいて、検波ダイオード(図示していない)で整流化し、コンデンサ(図示していない)で平滑処理して出力される。各電力検知部14a,14b,14c,14dの出力信号は、制御部6に入力される。
制御部6は、使用者が操作表示パネル3において直接入力した被加熱物の加熱条件(図22において矢印Xで示す)、または加熱中における被加熱物の実際の加熱状態を検知して得られた加熱情報(図22において矢印Yで示す)、および電力検知部14a,14b,14c,14dから反射電力に関する検知情報(図22において矢印Zで示す)に基づいて、マイクロ波発生部5の構成要素である発振部7と初段増幅部11a,11b,11c,11dと主増幅部12a,12b,12c,12dのそれぞれに供給する駆動電力の制御を行う。また、制御部6は、加熱条件(X)と加熱情報(Y)と検知情報(Z)に基づいて位相可変部10a,10bに印加する電圧を制御する。このように制御部6がマイクロ波発生部5を駆動制御することにより、加熱室4の内部に収納された被加熱物は最適に加熱され、使用者にとって所望の仕上がり状態となる。
マイクロ波発生部5には、発振部7、初段増幅部11a,11b,11c,11d、主増幅部12a,12b,12c,12dなどを構成する半導体素子の発熱を放熱させるための放熱手段、例えばフィン形状の放熱部、送風ファンなどが設けられている。
なお、実施の形態5のマイクロ波加熱装置には、加熱室4の底壁面44に設けた給電部21bの開口部24bを覆うとともに、被加熱物を載置するための皿39が設けられている。この皿39は低誘電損失材料で構成されている。
以下、実施の形態5のマイクロ波加熱装置における動作について説明する。
まず始めに、使用者は一方の正面側扉37または裏面側扉38を開成して、被加熱物を加熱室4の内部に収納し、該当する正面側扉37または裏面側扉38を閉成する。使用者は、操作表示パネル3において、当該被加熱物に関する加熱条件を入力する。なお、操作表示パネル3はマイクロ波加熱装置における正面側と裏面側の両方に設けられている。
使用者は、加熱条件を入力した後、加熱開始キーを押圧する。加熱開始キーの押圧により加熱開始信号(S)が制御部6に入力される。加熱開始信号(S)が入力された制御部6は、制御信号をマイクロ波発生部5に出力し、マイクロ波発生部5の動作を開始させる。また、制御部6は、駆動電源を動作させて発振部7、初段増幅部11a,11b,11c,11dおよび主増幅部12a,12b,12c,12dに電力を供給させる。この時、発振部7には、初期の発振周波数が、例えば2450MHzとなる電圧信号が供給され、発振が開始される。
発振部7の出力は、1段目の電力分配部8aにて略1/2に分配されて、2段目の電力分配器8b,8cにてさらに略1/2に分配され、4つのマイクロ波電力信号が形成される。各マイクロ波電力信号は、半導体素子で構成された初段増幅部11a,11b,11c,11dおよび主増幅部12a,12b,12c,12dに順次供給される。マイクロ波電力信号は、駆動電源が入力された初段増幅部11a,11b,11c,11dおよび主増幅部12a,12b,12c,12dにおいて増幅される。
それぞれの伝送路におけるマイクロ波電力信号は、並列動作する初段増幅部11a,11b,11c,11dおよび主増幅部12a,12b,12c,12dにおいて増幅され、電力検知部14a,14b,14c,14dを介して出力部15a,15b,15c,15dからそれぞれ出力される。
マイクロ波発生部5から出力されたマイクロ波電力信号は、加熱室4に設けられた給電部21a,21b,21c,21dに伝送され、加熱室4の内部に放射される。このとき、加熱室4の底壁面44に設けられた給電部21bから放射されるマイクロ波信号の位相を基準にすると、上壁面45の給電部21aおよび左壁面42の給電部21cから放射されるマイクロ波信号は、略90度遅れた信号となり、右壁面43の給電部21dから放射されるマイクロ波信号は、略180度遅れた信号となる。すなわち、対向する給電部(21a,21b)および(21c,21d)の間の位相差が略90度となるようにマイクロ波発生部5の出力が各給電部21a,21b,21c,21dに入力されている。このとき、各主増幅部12a,12b,12c,12dはそれぞれ100W未満、たとえば50Wのマイクロ波電力を出力し、各給電部21a,21b,21c,21dに供給している。
加熱室4に供給されるマイクロ波電力が被加熱物に100%吸収されると加熱室4からの反射電力は無くなるが、実際には被加熱物の種類、形状、大きさ、量などに応じて変化する反射電力が生じる。被加熱物の種類、形状、大きさ、量などが被加熱物を収納する加熱室4における電気的特性を決定し、マイクロ波発生部5の出力インピーダンスと加熱室4のインピーダンスなどに基づいて反射電力が生じ、加熱室4からマイクロ波発生部5に反射電力が伝送される。
電力検知部14a,14b,14c,14dは、加熱室4からマイクロ波発生部5に伝送された反射電力を検出して、反射電力量に比例した検知情報(Z)である検出信号を制御部6に出力する。検出信号が入力された制御部6は、反射電力が最小値または極小値となる周波数の抽出を行う。この周波数抽出動作において、制御部6は、発振部7の発振周波数を初期の2450MHzから0.1MHzピッチ(たとえば、10ミリ秒で1MHz)の間隔で低い周波数に変化させていく。そして、周波数可変範囲の下限である2400MHzに到達すると1MHzピッチで周波数を高く変化させていき、2450MHzに到達すると、さらに0.1MHzピッチで周波数可変範囲の上限である2500MHzまで高くする。この周波数抽出動作において、反射電力が最小または極小となる周波数と、それらの周波数における反射電力に相当する信号を記憶する。そして、反射電力が最小または極小となる周波数群において反射電力に相当する信号が最も小さい周波数を選定する。制御部6は、選定された周波数で発振部7が発振するように制御するとともに、発振部7の発振出力が使用者の入力した加熱条件(X)に対応した出力となるように制御する。この結果、各主増幅部は、それぞれ200Wから300Wのマイクロ波電力を出力する。
なお、検出された最も小さい第1の極小値となる周波数を加熱動作時のマイクロ波周波数として加熱処理を行い、もし、電力検知部が検知した反射電力が、予め定めた所定の値よりも大きくなると、加熱処理前に検出した第1の極小値より大きな第2の極小値となる周波数を加熱動作時のマイクロ波周波数として加熱処理するように発振部7が発生するよう構成してもよい。
上記のように制御されたマイクロ波発生部5の出力は、各給電部21a,21b,21c,21dに伝送され、加熱室4内に放射される。このとき、底壁面44の給電部21bから放射されたマイクロ波信号の位相を基準にすると、上壁面45の給電部21aおよび左壁面42の給電部21cから放射されたマイクロ波信号は、略90度遅れた信号となり、右壁面43の給電部21dから放射されたマイクロ波信号は略180度遅れた信号となる。すなわち、対向する給電部(21a,21b)および(21c,21d)の間の位相差が略90度となるようにマイクロ波発生部5の出力が各給電部21a,21b,21c,21dに入力されている。
実施の形態5のマイクロ波加熱装置においては、略90度の倍数の位相差を形成するよう構成して、電力分配部8a,8b,8cに90度ハイブリッド分配器を用いる。このように、電力分配部に90度ハイブリッド分配器を用いることにより、コンパクト形状で安定した等分配を実行することができ、且つ電力分配部を複数段接続することにより、4分配、8分配などの複数分配に形成しても、分配出力間の位相差を略90度に安定して形成することができる。
実施の形態5のマイクロ波加熱装置においては、1つの発振部7を発振源として、電力分配部により4分配されたマイクロ波信号が形成され、対向する給電部(21a,21b)および(21c,21d)にマイクロ波信号を伝送する2つのマイクロ波伝送路(9a,9b)および(9c,9d)の一方9a,9cに位相可変部10a,10bがそれぞれ設けられている。実施の形態5においては、対向する給電部(21a,21b)および(21c,21d)における各開口部(24a,24b)および(24c,24d)の長手方向が同一方向となっている。
上記のように構成されたマイクロ波発生部5において、位相可変部10a,10bに印加する電圧を制御することにより、対向および/または近接した給電部から放射されるそれぞれのマイクロ波の位相差を同相、若しくは逆相(180度差)にすることができる。
上記のように、実施の形態5のマイクロ波加熱装置においては、加熱室内に放射されるマイクロ波の位相差を変えることにより、加熱室内のマイクロ波の伝搬状態を時間的に変化させて、被加熱物に対する局所加熱を解消し、加熱の均一化を図ることができる。
なお、実施の形態5においては、位相可変部10a,10bは2つのマイクロ波伝送路9a,9cに挿入した例で説明したが、最大ですべてのマイクロ波伝送路9a,9b,9c,9dに挿入してもよい。その場合、それぞれの位相可変部を個別にかつ時間的に制御することにより、複数の給電部21a,21b,21c,21dから放射されるマイクロ波の位相の組合せを変化させることが可能となり、さらに均一な加熱を図ることができる。
また、実施の形態5のマイクロ波加熱装置においては、電力検知部14a,14b,14c,14dの検知信号に基づいて、反射電力量が少なくなるように位相可変部10a,10bへの印加電圧を制御することで、加熱効率を高めて、短時間加熱を図ることができる。
実施の形態5のマイクロ波加熱装置は、電力検知部14a,14b,14c,14dが検知する反射電力量が所定の最大許容反射電力量を超えた場合、制御部6は発振出力を低下させるように発振部7、若しくは初段増幅部11a,11b,11c,11dおよび主増幅部12a,12b,12c,12dへの供給電力を低減させて、各半導体素子の熱破壊を回避させている。
実施の形態5のマイクロ波加熱装置は、加熱室4を構成する4つの壁面(左壁面42,右壁面43,底壁面44,上壁面45)のそれぞれに給電部21a,21b,21c,21dを設けた例で説明したが、少なくとも2つの給電部を加熱室10を構成する隣接した2つの壁面(左壁面42と底壁面44、あるいは右壁面43と底壁面45)にそれぞれ設けることにより、被加熱物に異なる2方向から直接的にマイクロ波を照射させることができ、例えば厚みのある被加熱物の加熱を促進させることが可能となる。
実施の形態5のマイクロ波加熱装置において、加熱室4を構成する対向する壁面(上壁面45と底壁面44,左壁面42と右壁面43)に設けられた給電部(21aと21b,21cと21d)は、対向する開口部(24aと24b,24cと24d)が同一方向が長手方向となる長方形形状である。開口部から放射されるマイクロ波は、そのマイクロ波が放射される開口部の長手方向に直交する方向で、壁面に沿って4つの壁面を周回しながら伝搬する。したがって、対向する開口部(24aと24b,24cと24d)から放射されたマイクロ波の偏波面は略平行となり、それぞれのマイクロ波のエネルギを被加熱物に集中させることができる。
また、実施の形態5のマイクロ波加熱装置において、加熱室4を構成する隣接する壁面(例えば、上壁面45と左壁面42,右壁面43と底壁面44)に設けられた給電部(21aと21c,21dと21b)の開口部(24aと24c,24dと24b)の長手方向が直交するよう構成されている。このように開口部の長手方向が直交するよう構成された給電部において、当該給電部の開口部から放射されるマイクロ波の偏波面が直交状態となることにより、互いの干渉が緩和され、それぞれの給電部から放射されるマイクロ波のエネルギを効率よく被加熱物に供給することができる。
さらに、実施の形態5のマイクロ波加熱装置において、加熱室の側面壁面である左壁面42と右壁面43にそれぞれ設けた給電部21c,21dの開口部24c,24dは、導波部22c,22dにおける供給部23c,23dの位置よりも高い位置に設けられている。このように開口部24c,24dを供給部23c,23dより高い位置に設けることにより、開口部24c,24dから放射されるマイクロ波の伝搬方向を上壁面側に偏らせることができる。この結果、被加熱物の形状、大きさ、量などの影響に起因する開口部24c,24dから放射されるマイクロ波の偏向面の乱れを緩和して、マイクロ波エネルギをさらに効率高く被加熱物に供給することができる。
また、実施の形態5のマイクロ波加熱装置において、加熱室の側面壁面である左壁面42と右壁面43にそれぞれに設けた給電部21c,21dの開口部24c,24dは、それぞれの側面壁面の略中央に形成されている。このように開口部24c,24dを側面壁面の略中央に形成されているため、加熱室内に収納された被加熱物の嵩高さの影響に起因する開口部24c,24dから放射されるマイクロ波の偏向面の乱れを緩和して、マイクロ波エネルギをさらに効率高く被加熱物に供給することができる。
さらに、実施の形態5のマイクロ波加熱装置においては、電力分配部8a,8b,8cの出力を増幅ブロックに伝送する複数のマイクロ波伝送路9a,9b,9c,9dにおける2つのマイクロ波伝送路9a,9cに位相可変部10a,10bを配置した例について説明したが、本発明のマイクロ波加熱装置は少なくとも1つのマイクロ波伝送路に位相可変部を配置する構成を含むものである。このように本発明のマイクロ波加熱装置においては、少なくとも1つのマイクロ波伝送路に位相可変部を配置して、その位相可変部を制御して対象となる給電部から放射されるマイクロ波の位相を時間的に変化させ、他の給電部から放射されるマイクロ波との位相差を変化させることができる。このため、本発明のマイクロ波加熱装置は、加熱室内のマイクロ波分布を変化させることが可能となり、加熱室内の被加熱物をより均一に加熱することができる。
(実施の形態6)
以下、本発明に係る実施の形態6のマイクロ波加熱装置について添付の図23を参照しつつ説明する。図23は実施の形態6のマイクロ波加熱装置のマイクロ波供給系の構成を示したブロック図である。実施の形態6の説明において、前述の実施の形態1〜5のマイクロ波加熱装置と同じ機能、構成を有するものには同じ符号を付し、その説明は実施の形態6においては省略する。
本発明に係る実施の形態6のマイクロ波加熱装置は、前述の実施の形態1〜5と同様に、加熱室の異なる壁面のそれぞれに給電部を設けて、加熱室内部の電磁波分布を均一化、若しくは被加熱物に応じて可変するよう構成されている。
図23に示す実施の形態6のマイクロ波加熱装置において、実施の形態5のマイクロ波加熱装置と異なる点は、マイクロ波発生部に増幅選択手段である増幅選択部を設けたことと、加熱室内にマイクロ波を放射する給電部の開口部の形状である。
図23において、マイクロ波発生部70は、半導体素子を用いて構成した発振部7と、発振部7の出力を2分配する電力分配部8aと、電力分配部8aのそれぞれの出力がマイクロ波伝送路9a,9bを介して入力される増幅選択部62a,62bと、増幅選択部62a,62bからの各出力がマイクロ波伝送路50a,50b,50c,50dを介して入力される半導体素子を用いて構成した初段増幅部11a,11b,11c,11dと、初段増幅部11a,11b,11c,11dのそれぞれの出力をさらに増幅する半導体素子を用いて構成した主増幅部12a,12b,12c,12dと、主増幅部12a,12b,12c,12dの各出力がマイクロ波電送部13a,13b,13c,13dを介して入力され、後述する給電部に出力する出力部15a,15b,15c,15dと、を具備している。また、各マイクロ波伝送路13a,13b,13c,13dには電力検知部14a,14b,14c,14dが挿入されて、加熱室4からの反射電力を検知するよう構成されている。
さらに、マイクロ波伝送路9aには、位相可変部10aが挿入されている。この位相可変部10aは、印加電圧に応じて容量が変化する容量可変素子を用いて構成されており、その位相可変範囲は、略0度から略270度の範囲である。
実施の形態6のマイクロ波加熱装置は、被加熱物を収納する略直方体構造を有する加熱室4を具備している。加熱室4は、例えば鉄、アルミニウム、ステンレスなどの金属材料で構成されており、左壁面42、右壁面43、底壁面44、上壁面45、および対向して配置され開閉する扉37,38により構成されている(図21参照)。扉37,38は正面側扉37と裏面側扉38により構成され、加熱室4に対して被加熱物を出し入れするために開閉できるよう構成されている。正面側扉37と裏面側扉38が閉成状態において、加熱室内に放射されたマイクロ波は漏洩することなく内部に閉じ込めるよう構成されている。
マイクロ波発生部70の4つの出力部15a,15b,15c,15dにそれぞれ接続された給電部46a,46b,21c,21d,が加熱室4を構成する各壁面に配置されている。加熱室4において対向する左壁面42と右壁面43のそれぞれの略中央には給電部21cと給電部21dが設けられており、上壁面45と底壁面44の略中央には給電部46aと給電部46bがそれぞれ設けられている。各給電部46a,46b,21c,21dは、加熱室4の各壁面に設けた開口部49a,49b,24c,24dと、マイクロ波発生部70からのマイクロ波信号を出力する供給部48a,48b,23c,23dと、供給部48a,48b,23c,23dを始端側に配置し開口部49a,49b,24c,24dを終端側に配置した導波部47a,47b,22c,22dと、により構成されている。導波部47a,47b,22c,22dは、開口部49a,49b,24c,24dを加熱室壁面の外側から覆うように構成され、供給部48a,48b,23c,23dからのマイクロ波を開口部49a,49b,24c,24dに導くよう構成されている。供給部48a,48b,23c,23dは、それぞれの導波部47a,47b,22c,22dにマイクロ波発生部70の各出力を供給する同軸伝送路の中心導体を突出させて構成されている。開口部49a,49b,24c,24dは、略矩形形状の長方形形状であり、それぞれの長手方向はすべて同一方向であり、正面側扉37および裏面側扉38が設けられている装置における奥行き方向である。
マイクロ波発生部70において、電力分配部8aの一方の出力が伝送するマイクロ波伝送路9aに挿入された位相可変部10aの後段には第1の増幅選択部62aが設けられている。第1の増幅選択部62aはその2つの出力端子として切換端子51a,51bを有している。切換端子51aが初段増幅部11aに接続され、切換端子51bが初段増幅部11bに接続されている。したがって、上壁面45に設けられた給電部46aと底壁面44に設けられた給電部46bは、第1の増幅選択部62aにより切換選択される。
また、電力分配部8aの他方の出力が伝送するマイクロ波伝送路9bには第2の増幅選択部62bが設けられている。第2の増幅選択部62bはその2つの出力端子として切換端子51c,51dを有している。切換端子51cが初段増幅部11cに接続され、切換端子51dが初段増幅部11dに接続されている。したがって、左壁面42に設けられた給電部21cと右壁面43に設けられた給電部21dは、第2の増幅選択部62bにより切換選択される。
発振部7の出力電力は、電力分配部8aにより略1/2ずつ分配され、マイクロ波伝送路9a,9bを伝送して第1の増幅選択部62aおよび第2の増幅選択部62bに入力する。前述のように、第1の増幅選択部62aおよび第2の増幅選択部62bは、初段増幅部11a,11b,11c,11dおよび主増幅部12a,12b,12c,12dで構成された増幅ブロックの中からマイクロ波信号を伝送すべき増幅ブロックを選択するものである。第1の増幅選択部62aおよび第2の増幅選択部62bにより、マイクロ波信号が伝送するマイクロ波伝送路50aまたは50b,50cまたは50dが選択される。選択されたマイクロ波伝送路に接続され増幅ブロックに駆動電力を供給することにより、マイクロ波信号が増幅されて、選択された増幅ブロックに接続している給電部から増幅されたマイクロ波信号が加熱室内に放射供給される。
上記のように選択された給電部からマイクロ波信号が加熱室内に放射されるとき、電力分配部8aの一方の出力が伝送するマイクロ波伝送路9aのマイクロ波信号を基準にすると、電力分配部8aの他方の出力が伝送するマイクロ波伝送路9bのマイクロ波信号は、位相が90度遅れた信号である。したがって、最終的に加熱室内に放射されるマイクロ波は、上壁面45の給電部46aまたは底壁面44の給電部46bから放射されるマイクロ波の位相を基準にすると、左壁面42の給電部21cまたは右壁面43の給電部21dから放射されるマイクロ波の位相は略90度遅れた信号となっている。このときの位相可変部10aにおける位相可変範囲は0度の場合である。
図23に示すように、実施の形態6のマイクロ波加熱装置において、加熱室4に設けられた給電部46a,46b,21c,21dの開口部49a,49b,24c,24dは、それぞれの長手方向が同一方向(奥行き方向)であるため、開口部から放射されたマイクロ波が開口部の長手方向に直交する方向で加熱室壁面に沿って周回しながら伝搬する。この結果、各開口部から放射されたマイクロ波の偏波面が略平行となり、それぞれのマイクロ波のエネルギを被加熱物に集中させることができる。
以下、上記のように構成された実施の形態6のマイクロ波加熱装置における動作について説明する。
被加熱物の加熱開始時における発振周波数の選択に係る諸動作は、前述の実施の形態5と同様であるため、ここではその動作説明については省略する。
正面側扉37または裏面側扉38のいずれかの扉を利用して使用者が被加熱物を加熱室4に収納し、加熱条件(図23においてXとして表示)を操作表示パネルにおいて入力し、加熱開始キーを押圧することのより、当該マイクロ波加熱装置は加熱動作を開始する。制御部6は使用者が設定した加熱条件(X)、および加熱開始キーの押圧により形成された加熱開始信号(S)が入力されて、制御信号をマイクロ波発生部70に出力する。制御部6は、入力された加熱条件に基づいて第1の増幅選択部62aおよび第2の増幅選択部62bを切換制御して、加熱開始時に動作させる増幅ブロックを決定する。その後、発振部7に駆動電力を供給し、所望の発振周波数のマイクロ波を発振させる。以降、第1の増幅選択部62aおよび第2の増幅選択部62bが選択した増幅ブロックにおける初段増幅部を動作させ、次に主増幅部を動作させる。
上記のように選択された各増幅ブロックの主増幅部は200Wから500Wのマイクロ波電力で位相差90度を有して出力する。そして選択された増幅ブロックに接続された給電部から被加熱物が収納された加熱室内にマイクロ波が供給放射される。例えば、加熱初期に選択されマイクロ波を放射する給電部が、右壁面43に設けられた給電部21dと底壁面44に設けられた給電部46bである場合、これらの給電部21d,46bから放射されるマイクロ波の位相差は略90度である。例えば、給電部46bから放射されるマイクロ波信号を基準にすると、給電部21dから放射されるマイクロ波信号が略90度遅れた状態である。このとき、位相可変部10aの位相可変範囲は0度である。このように、右壁面43も給電部21dと底壁面44の給電部46bから位相が略90度異なるマイクロ波が供給されることにより、加熱室4の略中央部から右壁面側にマイクロ波の電界集中領域が形成される。このように加熱室4の内部に電界集中領域が形成されることにより、被加熱物が加熱室4の略中央に収納された場合には、被加熱物の略中央から右寄りが強く加熱される状態となる。
したがって、制御部6は、被加熱物の加熱の均一化を図るために、適当な時間周期あるいは被加熱物に関する検知情報(図23においてZとして表示)、例えば被加熱物の温度分布情報に基づいて、駆動するべき増幅ブロックに切り換える制御信号をマイクロ波発生部70に出力する。制御信号が入力されたマイクロ波発生部70は、現在動作中の増幅ブロックへ供給されている駆動電力を停止し、第1の増幅選択部62aおよび/または第2の増幅選択部62bの切換動作を行う。切換動作が終了すると切り換えられた増幅ブロックに駆動電力を供給し、その増幅ブロックを駆動させる。
次に、実施の形態6にマイクロ波加熱装置における切換動作について詳細に説明する。例えば、右壁面43の給電部21dを左壁面42の給電部21cに切り換える場合について説明する。
給電部21dから給電部21cへの切り換え動作は、被加熱物の略中央から左側部分の加熱を促進させる目的で実施する。例えば、被加熱物の温度分布情報として被加熱物の表面温度分布情報が制御部6に入力されると、被加熱物の略中央から左側の領域における表面温度と、略中央から右側の領域における表面温度とを比べる。その結果、被加熱物の左側の領域における最低表面温度が、右側の領域における最高表面温度に比べて、例えば10℃以上の差に達した場合に切換指令信号を制御部6が出力する。
切換指令信号が入力された駆動電源部(例えば、図20の符号34参照)は、その切換指令信号に基づいて、初段増幅部11dおよび主増幅部12dに供給している駆動電力を停止する。そして、切換指令信号が入力された第2の増幅選択部62bは、コモン端子を切換端子51dから切換端子51cに切り換える。その後、駆動電源部は初段増幅部11cおよび主増幅部12cに順次駆動電力を供給する。この一連の切り換え動作により、左壁面42の給電部21cから放射されたマイクロ波が加熱室内に供給される。
上記のように左壁面42の給電部21cおよび底壁面44の給電部46bの両者から放射されたマイクロ波が加熱室4に供給されることにより、加熱室内の被加熱物は、その略中央より左側の領域が強く加熱され始める。
上記のように加熱動作の継続中において、被加熱物の略中央より左側の領域の表面温度上昇が未だに所望の温度に達しない場合には、底壁面44の給電部46bから放射されるマイクロ波給電を上壁面45の給電部46aから放射されるマイクロ波給電に切り換えてもよい。
底壁面44の給電部46bから上壁面45の給電部46aへの切り換え動作は、制御対象となる増幅ブロックおよび増幅選択部が異なるが前述した右壁面43の給電部21dから左壁面42の給電部21cへの切り換え動作と実質的に同じである。
以上の一連の切り換え動作は、被加熱物の表面温度分布情報に基づいて、加熱動作中において適宜実施するものである。
実施の形態6のマイクロ波加熱装置においては、マイクロ波伝送路9aに挿入した位相可変部10aに印加する電圧を制御することで、動作中の2つの給電部から放射されるマイクロ波の位相差を同相から逆相(180度差)の間を連続的に可変制御することができるよう構成されている。実施の形態6のマイクロ波加熱装置においては、各給電部の開口部の長手方向が同一方向であるため、位相可変部10aを設けることにより、加熱室壁面を周回しながら伝搬するマイクロ波の伝搬状態を時間的に連続変化させることができる。この結果、実施の形態6のマイクロ波加熱装置は、被加熱物の局所加熱を解消し、均一な加熱をさらに促進することができる。
実施の形態6のマイクロ波加熱装置において、使用者が設定した加熱条件(X)、加熱室内の被加熱物に関する表面温度などの加熱情報(Y)などに基づいて、所定の状態に達したとき加熱動作は終了する。
以上に説明した実施の形態6のマイクロ波加熱装置においては、増幅選択部62a,62bを切換制御して、加熱室内にマイクロ波を供給する放射位置を選択することができる。したがって、実施の形態6のマイクロ波加熱装置は、被加熱物の特定部分の加熱を促進させることが可能となる。また、実施の形態6のマイクロ波加熱装置の構成において、マイクロ波を供給する放射位置を時間的に選択切換することが可能であり、被加熱物の全体を所望の状態に加熱することができる。
また、実施の形態6のマイクロ波加熱装置においては、電力分配部8aの出力と第1の増幅選択部62aとの間のマイクロ波伝送路9aに位相可変部10aを設けている。このようにマイクロ伝送路に位相可変部を設けることにより、給電部から放射されるマイクロ波の位相を時間的に変化させることが可能となる。対向しない隣接する壁面のそれぞれから供給されるマイクロ波に対して位相差を可変制御することにより、加熱室内のマイクロ波分布を変化させて、被加熱物に対する均一な加熱を促進させることができるとともに、被加熱物における特定した部分の加熱を促進させることができる。
さらに、実施の形態6のマイクロ波加熱装置においては、正面側と裏面側に扉37,38が設けられているため、異なる方向から被加熱物を加熱室内に出し入れできるという優れた利便性を有する。
なお、実施の形態6のマイクロ波加熱装置は、加熱室4を構成する壁面に1つの給電部を設けた構成について説明したが、加熱室4を構成する同一壁面に複数の給電部を設けて、いずれか一方の給電部を増幅選択部により選択できるよう構成することも可能である。このように構成した場合、被加熱物において、選択した給電部に近い領域が強く加熱される。この特徴を利用して、受熱効率の異なる異種の被加熱物を同時に均一に昇温させることが可能となる。同一壁面としては、加熱室における底壁面が実用価値が大きい。
(実施の形態7)
図24は本発明に係る実施の形態7のマイクロ波加熱装置の平面図である。
図24において、加熱室52は、上下壁面と6面の側壁面53〜58との8面体で構成されている。側壁面53〜58の6面において、ひとつ置きに3つの開閉扉59〜61が配置されている。加熱室52に対してマイクロ波を供給する給電部は上下壁面に設けられている。
実施の形態7のマイクロ波加熱装置においては、加熱室52の内部の被加熱物を出し入れするための扉が多数設けられている。このため、実施の形態7のマイクロ波加熱装置は、装置の周囲のあらゆる方向から加熱室内に対する被加熱物の出し入れのアクセスが可能となり、利便性がさらに高くなる。
以上のように、本発明に係る実施の形態7のマイクロ波加熱装置は複数の開閉扉を備えるとともにマイクロ波を放射する複数のマイクロ波供給手段である複数の給電部が加熱室を構成する壁面に最適に配置されている。また、実施の形態7のマイクロ波加熱装置は、前述の実施の形態1〜5で説明したような構成として給電部からの放射方向および放射位置を最適化するとともに、マイクロ波を放射する給電部を切り換え制御を行うことができ、且つ動作中の給電部間のマイクロ波の位相差を変化させることができる。このように構成された実施の形態7のマイクロ波加熱装置は、電子レンジで代表されるような誘電加熱を利用した加熱装置、生ゴミ処理機、あるいは半導体製造装置であるプラズマ電源のマイクロ波電源などの用途に適用できる。
(実施の形態8)
図25は、本発明に係る実施の形態8のマイクロ波加熱装置におけるマイクロ波供給系の構成を示すブロック図である。実施の形態8のマイクロ波加熱装置は、前述の図22に示した実施の形態5のマイクロ波加熱装置と実質的に同じ構成である。実施の形態8のマイクロ波加熱装置は、検出した反射電力に基づく加熱動作時のマイクロ波周波数の抽出処理の具体例を説明するものである。したがって、実施の形態8のマイクロ波加熱装置の説明において、実施の形態5のマイクロ波加熱装置と同じ機能、構成を有するものには同じ符号を付し、その詳細な説明は実施の形態5の説明を適用する。
図25に示すように、実施の形態8のマイクロ波加熱装置である電子レンジは、4つの給電部21a,21b,21c,21dが設けられた加熱室4、マイクロ波発生部5、マイクロコンピュータで構成された制御部6、および商用電源が接続されマイクロ波発生部5に駆動電力を供給する駆動電源部34を含むものである。
マイクロ波発生部5は、発振部7、電力分配部8(図22における8a,8b,8cに相当)、位相可変部10a,10b、増幅ブロック80a,80b,80c,80d、電力検知部14a,14b,14c,14dを備える。
駆動電源部34は、商用電源から供給される交流電圧を可変電圧および直流電圧に変換して、可変電圧を発振部7に供給し、直流電圧を増幅ブロック80a,80b,80c,80dに供給する。
発振部7は、例えば、トランジスタなどの回路素子から構成されており、駆動電源部34から供給された可変電圧の電圧信号に基づいてマイクロ波を発生する。また、発振部7は制御部6に接続されており、例えば、制御部6から送信された電圧信号により、発振周波数および発振出力が制御される。このように発振器7は制御部6によりその動作が制御されている。
増幅ブロック80a,80b,80c,80dは、駆動電源部34から供給された直流電圧により動作し、発振部7において発生したマイクロ波を増幅する。
各増幅ブロック80a,80b,80c,80dは放熱フィン、回路基板を含んでおり、この回路基板上に初段増幅部および主増幅部が形成されている。なお、各増幅ブロック80a,80b,80c,80dは、当該マイクロ波加熱装置の出力仕様に応じて1個から複数個の増幅器で構成される。増幅器はGaN(窒化ガリウム)やSiC(炭化珪素)等を用いたトランジスタ等の高耐熱性かつ高耐圧の半導体素子により構成されている。各増幅器には、それぞれの増幅器の電源電圧と、基準電位を示す基準電圧と、それぞれの増幅器の動作/非動作を制御する制御信号が駆動電源部34から供給される。制御信号は、例えば0Vから−10V程度の電圧であり、それぞれの増幅器が増幅動作を行うか、または停止状態とするかを制御している。また、増幅ブロック80a,80b,80c,80dにおいて、初段増幅部は発振部7からのマイクロ波電力を増幅し、主増幅部は初段増幅部の出力をさらに増幅している。
駆動電源部34は商用電源の電圧を発振部7と増幅ブロック80a,80b,80c,80dのそれぞれに所望の電圧を供給する、いわゆるスイッチング電源であり、商用電源の電位と発振部7と増幅ブロック80a,80b,80c,80dの電位を絶縁する役目も同時に果たしている。
各増幅ブロックブロック80a,80b,80c,80dから出力されたマイクロ波電力は、電力検知部14a,14b,14c,14dを介して給電部21a,21b,21c,21dのアンテナである供給部23a,23b,23c,23dに与えられる。供給部23a,23b,23c,23dに与えられたマイクロ波は、加熱室内へ放射される。加熱室内に放射されたマイクロ波は、被加熱物に吸収されて被加熱物を昇温させる。加熱室内に放射されたマイクロ波の一部は加熱室壁面、被加熱物表面などで反射して供給部23a,23b,23c,23dに戻ってくる。電力検知部14a,14b,14c,14dは加熱室4から反射して戻ってくる反射電力の値に応じた検出信号を制御部6に送信する。
電力検知部14a,14b,14c,14dは、検波ダイオード、方向性結合器および終端器等を含み、増幅ブロック80a,80b,80c,80dにより増幅されたマイクロ波を加熱室4に設けられた給電部21a,21b,21c,21dに同軸ケーブルを介して供給するとともに、加熱室4からの反射電力の値に応じた検出信号を出力する。
次に、制御部6におけるマイクロ波発生部5および駆動電源部34に対する制御方法について説明する。
制御部6は、使用者が加熱条件(X)を設定し、加熱開始信号(S)が入力されると、以下の処理を行う。制御部6は、予め定められた第1の出力電力をマイクロ波発生部5の出力として設定する。第1の出力電力は被加熱物を加熱する第2の出力電力よりも小さく設定されている。マイクロ波が加熱室内に放射されることにより、発生する反射電力はその周波数に応じて変化する。したがって、周波数を可変する際、反射電力が大きく増減する。発生した反射電力によって発振部7、増幅ブロック80a,80b,80c,80dを構成する回路素子が発熱した場合、それらに設けられた放熱機構の能力に応じてその発熱は放熱される。しかし、発生した反射電力がその放熱能力を超えると回路素子の温度が高くなり、回路素子が損傷する恐れがある。そこで、実施の形態8のマイクロ波加熱装置においては、それぞれの回路素子の放熱能力を超えないように第1の出力電力を定めている。第1の出力電力の決定方法については後述する。
次に、マイクロコンピュータである制御部6は、発振部7において発生するマイクロ波の周波数を電子レンジで用いられる2400MHz〜2500MHzの全周波数帯域とし、その全周波数帯域で掃引(スイープ)する。そのとき、制御部6は、電力検知部14a,14b,14c,14dにより検出された反射電力と周波数との関係を記憶する。この周波数帯域はISM(Industrial Scientific and Medical)バンドと呼ばれている。
なお、制御部6は、マイクロ波の周波数の掃引時に全周波数帯域における反射電力と周波数との関係を記憶する代わりに、反射電力が最小値または極小値を示すときの反射電力と周波数との関係のみを記憶してもよい。この場合には、制御部6内の記憶装置の使用領域を削減することができる。
続いて、制御部6は、ISMバンドから特定の周波数を抽出する周波数抽出処理を行う。この周波数抽出処理では、例えば、記憶した反射電力から特定の反射電力(例えば、最小値または極小値)を識別し、その反射電力が得られたときの周波数を当該マイクロ波加熱装置の加熱動作時のマイクロ波周波数として抽出する。なお、反射電力が極小値を示すときの反射電力と周波数との関係のみをマイクロコンピュータが複数組記憶する場合には、記憶された複数の周波数の中から特定の周波数(例えば、最小の反射電力を示す周波数)を当該マイクロ波加熱装置の加熱動作時のマイクロ波周波数として抽出する。
以下、周波数抽出処理について詳細に説明する。図26は、例示としての4つの電力検知部14a,14b,14c,14dが検知した反射電力と発振周波数の関係をグラフ化した図である。縦軸は反射電力[W]を示し横軸は発振周波数[Hz]を示している。図26において、ANT1は給電部21aからの反射電力と発振周波数との関係を示し、ANT2は給電部21bからの反射電力と発振周波数との関係を示し、ANT3は給電部21cからの反射電力と発振周波数との関係を示し、ANT4は給電部21dからの反射電力と発振周波数との関係を示す。図26の例示に示すように、各電力検知部14a,14b,14c,14dが検知する反射電力と発振周波数との関係は、ある程度同じような反射電力曲線を示し、複数の極小値を有している。
制御部6には各電力検知部14a,14b,14c,14dから上記のような反射電力と発振周波数との関係を示すデータが入力される。制御部6は各電力検知部14a,14b,14c,14dからのデータに基づき各反射電力曲線を合成した反射電力曲線を算出する。図27は合成した反射電力曲線を示す図である。図27において、縦軸は反射電力[W]を示し、横軸は発振周波数[Hz]を示している。
図27に例示されている各反射電力曲線では極小値を2つ有する(周波数f1,f2)。
制御部6は、周波数抽出処理において、例えば反射電力が極小値となるときの周波数f1を当該マイクロ波加熱装置の加熱動作時のマイクロ波周波数として抽出する。複数の周波数を抽出する場合は、例えば別の極小値となる周波数f2を第2の加熱動作時のマイクロ波周波数として抽出する。
なお、加熱動作時のマイクロ波周波数を抽出するための掃引動作は、例えば0.1MHz当り1msecで行われる。この場合、ISMバンドの全周波数帯域にわたる掃引動作は、約1secの時間を要する。
掃引動作が終了した後、制御部6は、予め定められた第2の出力電力を当該マイクロ波加熱装置の駆動の出力電力として設定する。この第2の出力電力は、加熱室4の内部に収納された被加熱物を実際に加熱するための電力である。第2の出力電力は、当該マイクロ波加熱装置の最大出力電力(定格出力電力)に相当する。例えば、当該マイクロ波加熱装置である電子レンジの定格出力電力が950Wである場合、第2の出力電力は950Wとして予め定められる。
そして、制御部6は、第2の出力電力で抽出された加熱動作時のマイクロ波周波数のマイクロ波を給電部21a,21b,21c,21dから加熱室内に放射させる。その結果、反射電力を低減して、被加熱物の加熱を効率高く行うことができる。このときの加熱動作が実際に被加熱物を加熱する本加熱動作である。
本加熱動作中において、制御部6は、いずれかの電力検知部14a,14b,14c,14dにより検出された反射電力が予め定められたしきい値を超えたか否かを判別する。ここで、しきい値は、例えば周波数抽出処理時において検出された反射電力の最小値に50Wを加算した値として定めてもよい。このようにしきい値を定めることにより、反射電力が本加熱動作の開始時の値から50Wを超えて大きくなると、制御部6は再びISMバンドの全周波数帯域にわたってマイクロ波の周波数を掃引して、周波数抽出処理を行う。
上記のように本加熱動作中において反射電力が大きくなれば周波数抽出処理を行う構成であるため、実施の形態8のマイクロ波加熱装置は、被加熱物の本加熱動作中において反射電力が著しく増大することを確実に防止することができる。
また、被加熱物が加熱されることにより、反射電力の周波数特性が大きく変化する場合でも、ISMバンドの全周波数帯域にわたって掃引動作して、周波数抽出処理を行うよう構成されているので、常に反射電力の低減を図ることが可能となる。
続いて、制御部6は、先に抽出した加熱動作時のマイクロ波周波数を基準周波数として設定する。そして、制御部6は、設定された基準周波数を含む一定範囲の周波数帯域、例えば、基準周波数から±5MHzの範囲内の周波数帯域で、部分的に掃引動作を行うとともに、そのとき電力検知部14a,14b,14c,14dにより検知された反射電力と周波数との関係を記憶する。なお、ここでも、制御部6は、部分的な周波数帯域での掃引動作時において検出された、反射電力と周波数との関係を連続的に記憶する代わりに、反射電力が極小値を示すときの反射電力と周波数との関係のみを記憶してもよい。この場合には、制御部6内の記憶装置の使用領域を削減することができる。
続いて、制御部6は、上記のように設定された掃引動作の対象となる周波数帯域の中から、例えば反射電力が最小値を示す特定の周波数を再度抽出する周波数再抽出処理を行う。この周波数再抽出処理は、前述の周波数抽出処理と同様の処理である。
以上のように実施の形態8のマイクロ波加熱装置においては、被加熱物に対する本加熱動作を行う前に、被加熱物の加熱時に発生する反射電力が最小となるマイクロ波の周波数が、周波数抽出処理により抽出される。抽出された周波数が実際の被加熱物を加熱するマイクロ波周波数として用いられることにより、マイクロ波加熱装置の電力変換効率が向上する。
実施の形態8のマイクロ波加熱装置において、周波数抽出処理に用いられる第1の出力電力は、実際の加熱動作時の出力電力よりも十分に小さい電力に設定されている。このように周波数抽出処理時の出力電力が設定されているため、マイクロ波の周波数の掃引動作時において、反射電力により発振部7および増幅ブロック80a,80b,80c,80dを構成する回路素子が発熱する場合でも、それぞれが有する放熱機構において十分に放熱される。その結果、回路素子の反射電力による破損が確実に防止される。
なお、実施の形態8のマイクロ波加熱装置において、加熱動作時のマイクロ波周波数の抽出は反射電力が最小値または極小値に基づいて決定するとしているが、以下に説明する方法により加熱動作時のマイクロ波周波数を抽出してもよい。
図28は、図27と同じように実施の形態8のマイクロ波加熱装置において各電力検知部14a,14b,14c,14dからのデータに基づいて算出された合成反射電力曲線の一例を示す図である。図28において、縦軸は反射電力[W]を示し横軸は発振周波数[Hz]を示している。以下、図28を用いて別の周波数抽出処理について説明する。
制御部6は、加熱動作時のマイクロ波周波数の抽出の際に反射電力が極小となる第1の周波数f1と、そのときの反射電力値Pr1を記憶する。さらに周波数を掃引して、反射電力がPr1から所定の割合、例えば1dB増加した周波数f1’を記憶する。さらに周波数の掃引を継続し、反射電力が極小となる第2の周波数f2とそのときの反射電力Pr2を記憶する。ここでも同じように掃引を続けPr2から、例えば1dBだけ反射電力が増加した周波数f2’を記憶する。発振部7が最高周波数の2500MHzに達すると。先に記憶した2つの周波数f1,f2に関する演算処理を行う。具体的には、所定の割合の前後における周波数の差を算出する。式で表すと次のように示される。
Δf1=f1−f1’
Δf2=f2−f2’
上記のように算出された周波数の差Δf1とΔf2の大小関係が比較される。ここでは、周波数の差が大きい方の周波数を加熱動作時のマイクロ波周波数(図28に示した周波数曲線の場合はf2)として決定する。
なお、上記のように反射電力の極小値を記憶する場合、極小値が予め設定されている反射電力より小さいことを条件として含めてもよい。
上記のように加熱動作時のマイクロ波周波数を抽出することにより、図27に示した周波数抽出処理と同様の効果に加えてさらに、以下の効果を発揮することが可能となる。即ち、非常に先鋭な周波数特性を示した場合、外乱ノイズによって極小値の検出を誤ることが考えられるが、図28に示した周波数抽出処理を使うことにより、外乱ノイズによる検出誤りを排除して、正しく反射電力が極小となる周波数を抽出することができる。その結果、誤った周波数で本加熱動作を行うことによって、回路素子の反射電力による損傷を未然に防止することができる。
反射電力は被加熱物の種類、形状、温度、大きさなどによって大きく変化する。また、加熱動作中においてもマイクロ波によって加熱されることによって被加熱物の水分量の変化し、反射電力が時々刻々変化する。このため、実施の形態8のマイクロ波加熱装置においては、反射電力が所定の値以上になると加熱動作時のマイクロ波周波数を再抽出する作業を行っている。このとき、前述のように反射電力の所定の割合における周波数の差Δfが大きい方の周波数を加熱動作時のマイクロ波周波数として選択している。このように選択することにより、加熱動作進行に伴って反射電力が極小のマイクロ波周波数が選択された周波数がずれたとしても、反射電力の増加が少なく、加熱動作時のマイクロ波周波数の再抽出を行う頻度を低減し、実質的に被加熱物を加熱する時間を短縮することが可能となる。
なお、実施の形態8のマイクロ波加熱装置におけるマイクロ波発生部5は、図25に示したように、1つの発振部7により4つの給電部21a,21b,21c,21dのそれぞれにマイクロ波を供給する構成について説明した。本発明はこの構成に限定されるものではなく、例えば複数の給電部のそれぞれが対応する発振部を有する構成も可能である。このように構成した場合には、それぞれの電力検知部において検知した反射電力に基づいて前述のような周波数抽出処理を行い、それぞれの給電部から放射されるマイクロ波の加熱動作時の周波数を抽出することが可能である。したがって、このように構成されたマイクロ波加熱装置においては、加熱室に設けられたそれぞれの給電部から最適な周波数のマイクロ波が放射されて、加熱室内の被加熱物を効率高く加熱することができるとともに、電力変換効率が大幅に向上する。
実施の形態8のマイクロ波加熱装置においては、電力検知部14a,14b,14c,14dは、加熱室4からの反射電力を検出して、その情報を制御部6に伝送する構成であるが、電力検知部14a,14b,14c,14dが反射電力だけでなく増幅ブロック80a,80b,80c,80dから給電部21a,21b,21c,21dに向かって伝送される入射電力も検出し、その検出信号を制御部6に伝送する構成としてもよい。このように構成することにより、加熱動作時のマイクロ波周波数を制御部6が決定する際、反射電力ではなく、反射電力と入射電力との比を用いて加熱動作時のマイクロ波周波数の抽出を行うことができる。その抽出方法は、図27および図28を用いて説明した周波数抽出方法において反射電力によって判断する部分を反射電力と入射電力の比によって判断するように変更すればよい。このように構成することにより、発振部7および増幅ブロック80a,80b,80c,80dが周波数特性を有し、周波数に応じて入射電力に増減があったとしても、本加熱動作時に反射電力が最小または極小となる周波数を誤り無く検出することができる。したがって、このように構成されたマイクロ波加熱装置は、常に最も反射電力が小さい状態で加熱処理を行うことが可能となり、被加熱物の加熱を効率高く行うことができ、電力変換効率が向上する。
以上のように、本発明のマイクロ波加熱装置は加熱室に複数の給電部が設けられ、各給電部が加熱室を構成する複数のそれぞれの所定位置に配設されているため、加熱室内の被加熱物を適切に効率高く加熱することができる構成となる。本発明に含まれる、複数の給電部にマイクロ波を供給するマイクロ波発生部の構成について以下に説明する。図29は、本発明のマイクロ波加熱装置におけるマイクロ波発生部に含まれる各種の構成を示す模式図である。なお、図29においては、4つの給電部にマイクロ波を供給する4つの出力部501〜504を有するマイクロ波発生部を示したが、本発明は給電部が4つに限定されるものではなく、マイクロ波加熱装置の仕様に応じて複数の給電部が適宜設けられ、それに応じてマイクロ波発生部の出力部の数が決定される。
図29の(a)は、複数の発振部101〜104と、それぞれの発振部101〜104からのマイクロ波信号を出力する出力部501〜504とを有して構成されたマイクロ波発生部を示す図である。この構成においては、発振部101〜104はマグネトロンまたは半導体素子で構成することができる。マグネトロンを用いる場合には、均一加熱を促進するために、加熱室に回転するアンテナを設ける構成、および/または加熱室内部に金属攪拌機構を設ける構成が必要となる。なお、導波管2分配器を用いることにより、2つの給電部の位相差を特定値に設定することが可能である。
図29の(b)は、複数、例えば2つの発振部101,102と、それぞれの発振部101,102からのマイクロ波を2分配する2つの電力分配部201,202と、電力分配部201,202からのマイクロ波信号を増幅する増幅ブロック301〜304と、増幅されたマイクロ波信号を出力する出力部501〜504とを有して構成されたマイクロ波発生部を示す図である。
図29の(c)は、単一の発振部101と、発振部101からのマイクロ波を4分配する電力分配部201と、電力分配部201からのマイクロ波信号を増幅する増幅ブロック301〜304と、増幅されたマイクロ波信号を出力する出力部501〜504とを有して構成されたマイクロ波発生部を示す図である。
図29の(d)は、複数の発振部101〜103と、発振部101,102からのマイクロ波信号を出力する出力部501,502と、発振部103からのマイクロ波を2分配する電力分配部201と、電力分配部201からのマイクロ波信号を増幅する増幅ブロック301,302と、増幅されたマイクロ波信号を出力する出力部503,504とを有して構成されたマイクロ波発生部を示す図である。この構成においては、発振部101,102はマグネトロンで構成することができる。
図29の(e)は、複数、例えば2つの発振部101,102と、それぞれの発振部101,102からのマイクロ波を4分配する2つの電力分配部201,202と、電力分配部201,202からのマイクロ波信号を増幅する増幅ブロック301〜308と、増幅された2つのマイクロ波信号を合成する4つの電力合成部401〜404と、合成されたマイクロ波信号を出力する出力部501〜504とを有して構成されたマイクロ波発生部を示す図である。なお、電力分配部201,202と電力合成部401〜404は同様の回路構成である。但し、電力合成部401〜404に用いられる回路素子、例えば抵抗などは、電力分配部201,202の素子に比べて電力容量が大きいものが用いられる。図30は、電力合成部401〜404の具体的な回路構成を示す図であり、Wilkinson coupler を用いた例である。図30において、PORT2とPORT3にマイクロ波信号が入力され、PORT1から合成されたマイクロ波信号が出力される。PORT2とPORT3との間の入力側を接続する抵抗にて合成性能の安定化が図られる。なお、電力分配部201,202の場合には、図30に示すPORT1にマイクロ波信号が入力され、PORT2とPORT3から分配されたマイクロ波信号が出力される。
図29の(f)は、単一の発振部101と、その発振部101からのマイクロ波を8分配する電力分配部201と、電力分配部201からのマイクロ波信号を増幅する増幅ブロック301〜308と、増幅された2つのマイクロ波信号を合成する4つの電力合成部401〜404と、合成されたマイクロ波信号を出力する出力部501〜504とを有して構成されたマイクロ波発生部を示す図である。図29の(f)の構成は、前述の図29の(e)の構成において用いられた電力合成部401〜404が用いられる。
以上のように、本発明のマイクロ波加熱装置において、複数の給電部にマイクロ波を供給するマイクロ波発生部は、各種の構成を含むものである。このように構成された本発明のマイクロ波加熱装置は、加熱室に複数の給電部を設け、各給電部が加熱室を構成する複数のそれぞれの所定位置に配設して、マイクロ波発生部から適切に各給電部にマイクロ波が供給されるため、加熱室内の被加熱物を適切に効率高く加熱することができる構成となる。
本発明のマイクロ波加熱装置は、被加熱物を効率高く加熱できるため、電子レンジで代表されるような誘電加熱を利用した加熱装置、生ゴミ処理機、あるいは半導体製造装置であるプラズマ電源のマイクロ波電源などの各種用途に適用できる。