JPWO2008132785A1 - アンテナ装置 - Google Patents

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一幸 崎山
瞳 嶺岸
瞳 嶺岸
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    • H01Q13/08Radiating ends of two-conductor microwave transmission lines, e.g. of coaxial lines, of microstrip lines

Abstract

無線デジタル信号をベースバンド伝送で直接的に無線送受信する場合に、矩形波形の高調波成分が基本周波数成分より減少することによって生じる波形歪みを低減するために、アンテナ装置は、裏面に接地導体(2)を形成してなる誘電体基板(1)と、誘電体基板(1)の表面に形成された放射導体(3)とを含む。放射導体(3)は、アンテナ装置を励振したときの電界により定義される電界面と交差する放射導体(3)の辺に形成された切欠き(5,6)を形成することにより、放射導体(3)の給電点9を介して無線デジタル信号をベースバンド伝送で直接的に送受信するとき、伝送された無線デジタル信号の波形歪みを低減させる。

Description

本発明は、アンテナ装置に関し、特に、無線デジタル信号を直接的に無線送受信するためのアンテナ装置に関する。
無線デジタル信号を直接的に無線送受信するための広帯域アンテナ装置が普及しつつある。特許文献1に、広帯域に渡って高調波モードの発生を低減した従来例に係るマイクロストリップアンテナが開示されている。特許文献1は、マイクロストリップアンテナの各共振モードの分布に着目し、誘電体基板面に形成された放射導体板の四隅に切欠きを設けることにより、高次周波数共振モードを抑制してアンテナ特性を制御する。
特開平05−129825号公報。 特開2005−278067号公報。 特開2005−079972号公報。 Ramesh Garg, et al., "Microstrip antenna Design Handbook", Artech House, November 2000. 子安修ほか「高速イーサネットケーブルの改良とパッシブイコライザによる伝送特性の改善」電子情報通信学会論文誌C,Vol.J87−C,No.11,pp.873−880,2004年11月1日。
しかしながら、上記従来例に係るマイクロストリップアンテナにおいて、矩形波の無線デジタル信号を直接的に無線送受信する場合、矩形波の基本周波数成分に比較して高調波成分が減衰し(例えば、詳細後述する図31の従来技術に係るオーバルダイポール広帯域アンテナ装置の高次次数に対する通過減衰量S21の特性を参照。)、その結果、受信側で受信される無線デジタル信号波形が歪むという問題点があった。
本発明の目的は以上の問題点を解決し、無線デジタル信号をベースバンド伝送で直接的に無線送受信する場合に、矩形波形の高調波成分が基本周波数成分より減少することによって生じる波形歪みを低減するアンテナ装置を提供することにある。
第1の発明に係るアンテナ装置は、裏面に接地導体を形成してなる誘電体基板と、前記誘電体基板の表面に形成された放射導体とを備え、前記放射導体の給電点を介して無線デジタル信号をベースバンド伝送で直接的に送受信するためのアンテナ装置において、前記放射導体は、上記アンテナ装置を励振したときの電界により定義される電界面と交差する前記放射導体の辺のうち少なくとも1つの辺に、少なくとも三次の高調波信号レベルが基本波信号レベルに比較して大きくなるように、少なくとも1つの切欠きを形成することにより、上記伝送された無線デジタル信号の波形歪みを低減させることを特徴とする。
上記アンテナ装置において、少なくとも三次の高調波信号レベルが基本波信号レベル及び二次の高調波信号レベルに比較して大きくなるように、少なくとも1つの切欠きを形成したことを特徴とする。
また、上記アンテナ装置において、前記切欠きは、前記電界面と交差する前記放射導体の辺の略中央に形成される。
さらに、上記アンテナ装置において、前記放射導体の辺に対応する前記各切欠きの辺の長さの和は、前記各切欠きを形成しないときの前記放射導体の全周の6分の1よりも短くなるように設定される。
またさらに、上記アンテナ装置において、前記切欠きが前記放射導体の重心点又は前記給電点に位置しないように形成される。
また、上記アンテナ装置において、前記切欠きは、前記電界面と交差する前記放射導体の両方の辺にそれぞれ形成され、かつ、前記電界面に直交する磁界面に対して対称に形成される。
さらに、上記アンテナ装置において、前記誘電体基板は、前記電界面と交差する少なくとも1つの位置であって前記切欠きの近傍の位置に形成された少なくとも1つの溝をさらに備える。
またさらに、上記アンテナ装置において、前記各溝の深さは、ゼロから前記誘電体基板の厚さと等しい値までの範囲のうちの1つの値に設定される。
また、上記アンテナ装置において、前記放射導体の辺に平行な前記各溝の辺の長さの和は、前記各切欠きを形成しないときの前記放射導体の全周の6分の1よりも短くなるように設定される。
さらに、上記アンテナ装置において、前記各溝が前記誘電体基板の端部から前記放射導体の重心点又は前記給電点までの位置に形成される。
またさらに、上記アンテナ装置において、前記誘電体基板は少なくとも2つの溝を有し、前記2つの溝は前記磁界面に対して対称に形成される。
本発明に係るアンテナ装置によれば、放射導体が、上記アンテナ装置を励振したときの電界により定義される電界面と交差する前記放射導体の辺のうち少なくとも1つの辺に、少なくとも三次の高調波信号レベルが基本波信号レベルに比較して大きくなるように、少なくとも1つの切欠きを形成したので、高調波成分の放射強度に対して基本周波数成分の放射強度を低減させることができ、無線デジタル信号をベースバンド伝送で直接的に無線送受信する場合に、矩形波形の高調波成分が基本周波数成分より減少することによって生じる波形歪みを大幅に低減することができる。
また、送信される矩形波形の基本周波数成分を低減する動作を受動素子によって行うので、回路構成が単純であり、かつ能動素子を用いた場合に比べて消費電力を低減できる。
本発明の第1の実施形態に係るアンテナ装置の構成を示す平面図である。 図1のアンテナ装置の外観を示す斜視図である。 図1のA−A’面における縦断面図である。 切欠き5及び6を設けない状態の放射導体33を備えたアンテナ装置の構成を示す平面図である。 図4のB−B’面における縦断面図である。 切欠き5及び6を設けない従来例に係るアンテナ装置と、切欠き5及び6を設けた本実施形態に係るアンテナ装置との各モードにおける電界及び磁流分布を比較するための図である。 切欠き5及び6を設けない従来例に係るアンテナ装置の構成を示す平面図である。 図7のC−C’面における縦断面図である。 図7のアンテナ装置の等価回路を示す回路図である。 切欠き5及び6を設けた本実施形態に係るアンテナ装置の構成を示す平面図である。 図10のD−D’面及びF−F’面における縦断面図である。 図10のE−E’面における縦断面図である。 図10のアンテナ装置の等価回路を示す回路図である。 図9の等価回路を用いた従来例に係るアンテナ装置のシミュレーション用回路を示す回路図である。 図14のシミュレーション回路を用いて行ったシミュレーション結果を示す波形図である。 図13の等価回路を用いた本実施形態に係るアンテナ装置のシミュレーション用回路を示す回路図である。 図16のシミュレーション回路を用いて行ったシミュレーション結果を示す波形図である。 電磁界シミュレータを用いた比較例におけるシミュレーション回路図である。 従来例に係るアンテナ装置により受信された受信信号のアイパターンのシミュレーション結果を示す波形図である。 本実施形態に係るアンテナ装置により受信された受信信号のアイパターンのシミュレーション結果を示す波形図である。 本発明の第1の実施形態の変形例に係るアンテナ装置の切欠き5A〜5D,6A〜6D及び放射導体3の形状の第1の例を示す平面図である。 本発明の第1の実施形態の変形例に係るアンテナ装置の切欠き5A〜5D,6A〜6D及び放射導体3の形状の第2の例を示す平面図である。 本発明の第1の実施形態の変形例に係るアンテナ装置の切欠き5A〜5D,6A〜6D及び放射導体3の形状の第3の例を示す平面図である。 本発明の第1の実施形態の変形例に係るアンテナ装置の切欠き5A〜5D,6A〜6D及び放射導体3の形状の第4の例を示す平面図である。 本発明の第2の実施形態に係るアンテナ装置の構成を示す平面図である。 図25に対応する斜視図である。 図25のG−G’面における縦断面図である。 本発明の第2の実施形態の変形例に係るアンテナ装置の溝7A〜7Cの位置の第1の例を示す平面図である。 本発明の第2の実施形態の変形例に係るアンテナ装置の溝7A〜7Cの位置の第2の例を示す平面図である。 本発明の第2の実施形態の変形例に係るアンテナ装置の溝7A〜7Cの位置の第3の例を示す平面図である。 従来技術に係るオーバルダイポール広帯域アンテナ装置(発明者による試作アンテナであって、2つの試作例がある。)の各1対を対向させてそれぞれ無線伝送システム及び有線伝送システムを形成したときの基本波モード及び二次以上の高調波モードの伝送信号に対する通過減衰量S21[dB]を示すグラフである。 従来技術に係る正方形状の矩形パッチアンテナ装置における反射減衰量S11[dB]の周波数特性を示すスペクトラム図である。 第1の実施形態に係るアンテナ装置における反射減衰量S11[dB]の周波数特性を示すスペクトラム図である。 従来技術に係る矩形ループスロットアンテナ装置(特許文献3の図4のアンテナ装置であって、図32の矩形パッチアンテナ装置のパッチ導体の回りに所定の幅のスロットを介して接地導体を配置形成した装置)における反射減衰量S11[dB]の周波数特性を示すスペクトラム図である。 従来技術に係る矩形ループスロットアンテナ装置(特許文献3の図1のアンテナ装置であって、H形状のパッチ導体の回りに所定の幅のスロットを介して接地導体を配置形成した装置)における反射減衰量S11[dB]の周波数特性を示すスペクトラム図である。
符号の説明
1,1A…誘電体基板、
2…接地導体、
3,3A…放射導体、
5,6,5A,5B,5C,5D,6A,6B,6C,6D…切欠き、
7,8,7A,7B,7C…溝、
9…給電点、
10…同軸ケーブル、
11…中心導体、
12…誘電体、
13…接地導体、
14…スルーホール導体、
14h…スルーホール、
15,35…アンテナ装置、
16…矩形波信号発生器、
17…クロック信号発生器、
18…アンテナの2ポートモデル、
C1,C11,C12,C13…キャパシタ、
L0〜L2,L11〜L13,L21〜L23…インダクタ、
R1,R3,R4…放射空間抵抗。
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各実施形態において、同様の構成要素については同一の符号を付している。
第1の実施形態.
図1は本発明の第1の実施形態に係るアンテナ装置の構成を示す平面図であり、図2は図1のアンテナ装置の外観を示す斜視図であり、図3は図1のA−A’面における縦断面図である。本実施形態に係るアンテナ装置は、例えばマイクロストリップアンテナであって、例えば無線デジタル信号をベースバンド伝送で直接的に送受信する無線バスや無線インタコネクション等に用いられる。図1乃至図3において、アンテナ装置は、誘電体基板1と、接地導体2と、長さL及び幅Lを有する放射導体3と、給電線10とを備えて構成される。放射導体3は、周辺部分のうち、放射電界の方向が平行となる電界面(以下、E面という。)と交差する辺の略中央にそれぞれ形成された切欠き5,6を有する。切欠き5は奥行きL及び長さ(幅)Lを有し、切欠き6は奥行きL及び長さLを有し、切欠き5及び6は、H面に対して対称に形成される。
接地導体2は誘電体基板1の裏面に形成され、誘電体基板1の表面には放射器となる放射導体3が形成される。給電線である同軸ケーブル10は、中心導体11と、接地導体13と、これらの導体11,13間を絶縁する誘電体12により構成される。ここで、中心導体11は、誘電体基板1を厚さ方向に貫通するスルーホール14h内に充填されたスルーホール導体14を介して、放射導体3の給電点9に接続される。また、接地導体13は、接地導体2に接続される。同軸ケーブル10は、デジタル伝送信号を送受信するために、給電点9から放射導体3に給電する。同軸ケーブル10により給電される無線信号は、放射導体3の給電点9に給電されることにより、放射導体3を励振して当該無線信号を自由空間に放射する。
次に、図4及び図5を参照して、図1の切欠き5及び6の大きさの設定方法について説明する。図4は、切欠き5及び6を設けない状態の放射導体33を備えたアンテナ装置の構成を示す平面図であり、図5は図4のB−B’面における縦断面図である。図4及び図5において、放射導体1と接地導体2との間で電磁界の共振が起きる際の、一番低い周波数(以下、基本周波数という。)での電界の振動の様子を示すために、電気力線の流れの瞬間を模式的に示す。電気力線の向きをDeとし、磁流の向きをDhとする。このときの共振電界の分布は、ほぼE面に平行な方向で分布し、E面に直交する磁界面(以下、H面という。)でほぼ対称になる。E面は、図5のB−B’面において誘電体基板1の厚さ方向であってB−B’面に平行な面であり、H面は、E面と直交しかつ誘電体基板1の厚さ方向に存在する。このような基本周波数での共振電界は、放射導体33のH面部分が節となる定在波になる。このように放射導体33の周辺部に沿ってλ/2波長相当の共振電界が定在波として分布することから、図4に示すように、定在波分布の周期長Lsに沿った、電界の定在波の空間強度分布の空間調波成分を考慮して、基本空間高調波成分が基本共振周波数の電磁放射に寄与するものと考える。
従って、本実施形態において、基本周波数成分を抑制するために、空間調波成分の基本成分を抑制するように、切欠き5,6の長さL,Lは、それぞれ定在波分布の周期長Lsの3分の1より短くなるように設定される。言い換えると、切欠き5,6の長さL,Lは、切欠き5,6を形成しないときの放射導体33の全周の6分の1の長さより短くなるように設定される。即ち、図1乃至図3において、次式(1)が成り立つように設定される。
[数1]
<(L+L)/3 (1)
また、切欠き5,6は、基本周波数の共振電界の節に当たるH面と放射導体3に交点を含まず、かつ、電界の基本周波数での定在波分布の腹の部分、即ち放射導体3の周辺部分の漏れ電界が大きくなるE面との交差部分を含む位置に設けられる。また、切欠き5,6は、基本共振周波数での共振を阻害しないように、放射導体3の重心点に位置しないように形成され、かつ、給電を妨げないように、給電点9に位置しないように形成される。これにより、基本周波数成分の定在波分布のピークに近い値を抑制することができる。
上記構成を有するアンテナ装置について、以下、その動作及び効果について説明する。図6は、切欠き5及び6を設けない従来例に係るアンテナ装置と、切欠き5及び6を設けた本実施形態に係るアンテナ装置との各モードにおける電界及び磁流分布を比較するための図である。図6において、各放射導体における固有振動のうち低いほうから、基本周波数成分の動作モードである基本波モード、二次高調波成分の動作モードである二次高調波モード、及び三次高調波成分の動作モードである三次高調波モードとする。図6に示すように、基本波モードにおいて、本実施形態に係るアンテナ装置では放射導体3に切欠き5,6が設けられているため、切欠き5,6が無い場合よりも全体の磁流分布が減少する。第2モードにおいて、両者に大きな違いは無い。三次高調波モードにおいて、従来例に係るアンテナ装置では磁流が相殺されて減少するが、本実施形態に係るアンテナ装置では放射導体3に切欠き5,6が設けられているため、基本波モードとほぼ同じ程度の磁流を生じる。従って、本実施形態に係るアンテナ装置では、切欠き5,6が無い場合と比較して、基本波モードにおける磁流分布が減少し、基本周波数成分が抑制されることがわかる。
図7は、切欠き5及び6を設けない従来例に係るアンテナ装置の構成を示す平面図であり、図8は、図7のC−C’面における縦断面図であり、図9は、図7のアンテナ装置の等価回路を示す回路図である。なお、図8において、同軸ケーブル10は図示を省略する。図7及び図8において、従来例に係るアンテナ装置では、放射導体33及び接地導体2間の電界のうち、放射導体33の端部に分布するいわゆる漏れ電界と、それに起因する磁流による電磁結合によってアンテナ装置からの放射電磁界が形成される。従って、図9の等価回路に示すように、切欠きを設けない従来例に係るアンテナ装置は、放射導体33及び接地導体2間のキャパシタC1と、自由空間側への相互誘導を示すインダクタL1及びL2とのモデルで表すことができる。
図10は、切欠き5及び6を設けた本実施形態に係るアンテナ装置の構成を示す平面図であり、図11は、図10のD−D’面及びF−F’面における縦断面図であり、図12は、図10のE−E’面における縦断面図であり、図13は、図10のアンテナ装置の等価回路を示す回路図である。なお、図12において、同軸ケーブル10は図示を省略する。図10において、本実施形態に係るアンテナ装置では放射導体3に切欠き5及び6が設けられている故に、放射導体3が切欠き5,6によって3つの矩形部分によって構成されると考えることができ、図13に示すように、放射導体33の各部及び接地導体2間のキャパシタC11,C12,C13と、自由空間側への相互誘導を示すインダクタL11〜L13及びL21〜L23とのモデルで表すことができる。
図14は、図9の等価回路を用いた従来例に係るアンテナ装置のシミュレーション用回路を示す回路図である。図14において、従来例に係るアンテナ装置のシミュレーション用回路は、矩形波信号発生器16と、インダクタL0と、キャパシタC1及びインダクタL1を含むアンテナ装置35と、インダクタL2と、放射空間抵抗R1とを備えて構成される。矩形波信号発生器16は、1GHzのサンプリング周波数と、1Vの振幅レベルViを有する矩形波信号を発生して出力する。本シミュレーションにおいて、インダクタL0のインダクタンスを1nHとし、キャパシタC1の静電容量を5pFとし、インダクタL1,L2のインダクタンスを共に5nHとし、放射空間抵抗R1の抵抗値を50Ωとする。また、インダクタL1及びL2の相互結合係数を0.9と近似した。矩形波信号発生器16からの矩形波信号は、アンテナ装置35を介して、放射空間抵抗R1に伝送され、空間側で測定される電圧Voがシミュレーションされる。
図15は、図14のシミュレーション回路を用いて行ったシミュレーション結果を示す波形図である。図15において、放射空間抵抗R1側の電圧Voの波形は、入力信号である矩形波Viと比較して、アンテナ装置35の特性により歪むことが見て取れる。
図16は、図13の等価回路を用いた本実施形態に係るアンテナ装置のシミュレーション用回路を示す回路図である。図16において、本実施形態に係るアンテナ装置のシミュレーション用回路は、矩形波信号発生器16と、インダクタL0と、キャパシタC11〜C13及びインダクタL11〜L13を含むアンテナ装置15と、インダクタL21〜L23と、放射空間抵抗R1とを備えて構成される。矩形波発生器16は、1GHzのサンプリング周波数と、1Vの振幅レベルViを有する矩形波信号を発生して出力する。本シミュレーションにおいて、インダクタL0のインダクタンスを1nHとし、キャパシタC11及びC13の各静電容量を2pFとし、キャパシタC2の静電容量を1pFとし、インダクタL11,L13,L21,L23のインダクタンスを2nHとし、インダクタL12,L22のインダクタンスを1nHとし、放射空間抵抗R1を50Ωとする。また、インダクタL11及びL21の相互結合係数及びインダクタL13及びL23の相互結合係数を0.9と近似し、インダクタL12及びL22の相互結合係数を0.2と近似した。矩形波発生器16からの矩形波信号は、アンテナ装置15を介して、放射空間抵抗R1に伝送され、空間側で測定される電圧Voがシミュレーションされる。
図17は、図16のシミュレーション回路を用いて行ったシミュレーション結果を示す波形図である。図17において、放射空間抵抗R1側の電圧Voの波形は、図15と比較して、基本周波数成分を減少させるため、電圧Voの振幅は減少するものの、高調波成分と基本周波数成分との差が小さくなることで、矩形波の歪み度合いが減少している。
次に、従来例に係るアンテナ装置と、本実施形態に係るアンテナ装置とを、アンテナ構造の違いを直接考慮できる電磁界シミュレータを用いて比較実験を行った。図18は、電磁界シミュレータを用いた比較例におけるシミュレーション回路図である。なお、比較実験において、従来例に係るアンテナ装置の放射導体33の長さ33aを15.9mm、幅33bを24.4mmとし、誘電体基板1の比誘電率を2.5とし、本実施形態に係るアンテナ装置の放射導体3の長さLを15.9mm、幅Lを24.4mmとし、切欠き5及び6の長さL,Lを10.7mmとし、奥行きL及びLを0.82mmとする。また、送信側負荷R3を50Ωとし、空間側負荷R4を1kΩとする。これらのアンテナモデルを送信側及び受信側で対にしてアンテナの2ポートモデル18を構成し、クロック信号発生器17により発生された1GHzサンプリングの擬似M系列ランダムクロック信号Vsを送信側から送信し、受信側で受信された信号Voの信号波形のアイパターン解析を行った。解析方法は送信側及び受信側間の伝達関数を電磁界シミュレーションにより求め、その伝達関数を用いて擬似M系列ランダムクロック信号Vsの伝送を評価するシミュレーションモデルにより行った。
図19及び図20は、それぞれ従来例及び本実施形態に係るアンテナ装置により受信された受信信号のアイパターンのシミュレーション結果を示す波形図である。図19及び図20に示すように、本実施形態に係るアンテナ装置では、高調波成分と基本周波数成分の差が小さくなることで、従来例に係るアンテナ装置に比較して、矩形波の歪み度合いを低減して矩形波としての波形形状を保った信号受信ができることがわかる。
以上説明したように、本実施形態に係るアンテナ装置によれば、放射導体3に、E面と交差する辺に形成された切欠き5,6を設けることによって、高調波成分の放射強度に対して基本周波数成分の放射強度を低減させることができるので、無線デジタル信号を直接的に無線送受信する場合に、矩形波形の高調波成分が基本周波数成分より減少することによって生じる無線デジタル信号の波形歪みを低減することができる。
また、送信される矩形波形の基本周波数成分を低減する動作を受動素子によって行うことができるので、回路構成が単純でかつ能動素子を用いた場合に比べて消費電力を低減できる。
なお、本実施形態において、切欠き5及び6は矩形であった。しかし、本発明はこの構成に限らず、切欠き5及び6は、例えば図21〜図23に示すような他の形状であってもよい。また、放射導体3は矩形であったが、例えば図24に示すように円形等の他の形状であってもよい。切欠き5及び6及び放射導体3は、図21〜図24に示した形状の他、様々な変形を考え得ることは言うまでもない。さらに、切欠き5と切欠き6の形状が互いに異なっていてもよい。またさらに、いずれか一方の切欠き5及び6のみが設けられてもよい。
また、給電線を背面同軸型給電方式の同軸ケーブル10としたが、本発明はこれに限らず、共平面型給電方式又は電磁結合型方式等としてもよい。
第2の実施形態.
図25は本発明の第2の実施形態に係るアンテナ装置の構成を示す平面図であり、図26は図25に対応する斜視図であり、図27は図25のG−G’面における縦断面図である。本実施形態に係るアンテナ装置は、図1乃至図3に示した第1の実施形態に係るアンテナ装置に比較して、誘電体基板1に代えて誘電体基板1Aを備えた点が異なる。それ以外の点については、図1乃至図3に示した第1の実施形態と同様であり、同一符号を付した構成要素についての詳細な説明は省略する。
図25乃至図27において、誘電体基板1Aは、E面と交差する位置かつそれぞれ切欠き5,6の近傍に形成された、誘電体基板1Aの表面に開口した凹形状の溝7,8を有する。溝7,8は、それぞれ長さ7b及び8bと、幅7a及び8aと、深さ7d及び8dを有する。溝7,8の深さ7d,8dは、誘電体基板1の厚さに等しい。溝7及び8の幅7a及び8aは、それぞれ定在波分布の周期長Lsの3分の1より短くなるように設定される。また、溝7は、放射導体3の重心点から距離7cの位置に形成され、溝8は、給電点9から距離8cの位置に形成され、溝7及び8は、H面に対して対称に形成される。
上記構成によれば、誘電体基板1に溝7,8を設けることにより、溝7,8近傍の誘電体基板1の電界強度が誘電体基板1の他の部分よりも小さくなり、磁流が低減される。これにより、第1の実施形態と同様に、等価回路におけるインダクタ間の相互結合係数を小さくする作用を生じ、その結果、基本波モードの電磁結合を選択的に低減させ、電界の基本周波数成分を抑制することができる。
以上説明したように、本実施形態に係るアンテナ装置によれば、誘電体基板1に凹形状の溝7,8を設けることにより、第1の実施形態と同様に、無線デジタル信号を直接的に無線送受信する場合に、矩形波形の高調波成分が基本周波数成分より減少することによって生じる波形歪みを低減することができる。
なお、本実施形態において、図25乃至図27に示した溝7及び8の形成位置は一例であり、溝7及び8は、例えば図28乃至図30に示すような他の位置に配置されてもよい。図28において、溝7に代えて溝7Aが形成され、溝7Aの長さ7Abが図25乃至図27に示した溝7の長さ7bよりも大きく、誘電体基板1の端部近傍にまで延在していてもよい。溝7Aは、誘電体基板1の端部から放射導体3の重心点又は給電点9までの位置に形成されてよい。図29において、溝7に代えて溝7Bが形成され、放射導体3の重心点からの溝7Bの距離7Bcが図25乃至図27に示した放射導体3の重心点からの溝7の距離7cよりも小さく、溝7Bの一部が放射導体3の一部と重なっていてもよい。溝7Bの一部が放射導体3の一部と重なることにより、等価回路におけるキャパシタC12(図13参照。)の静電容量を減少させることができ、容易にアンテナ部分の静電容量を変えた設計ができるという効果がある。また、図30において、溝7に代えて溝7Cが形成され、溝7Cの幅7Caが図25乃至図27に示した溝7の幅7aよりも大きく、放射導体3の一部と重なってもいてもよい。溝7Cの幅7Caは、放射導体3全体の幅L及び長さLの和の3分の1よりも短くなる任意の値に設定されてよい。図28乃至図30において、溝7の変形例である溝7A,7B,7Cについて示したが、溝8についても同様の変形例が考えられることは言うまでもない。
また、溝7,8の深さ7d,8dは、誘電体基板1の厚さに等しいとした。しかし、本発明はこの構成に限らず、溝7,8の深さ7d,8dは、ゼロから誘電体基板1の厚さに等しい値までの範囲内であれば、任意の値であってよい。また、溝7の長さ7b、幅7a及び深さ7dと、溝8の長さ8b、幅8a及び深さ8dとは、それぞれ同一であったが、互いに異なる値に設定されてもよい。さらに、溝7,8は平面図において矩形状であったが、本発明はこの形状に限らず、円形等の他の形状であってもよい。
また、本実施形態において、切欠き5,6及び溝7,8を両方設けたが、切欠き5,6を設けずに、溝7,8のみを設けてもよい。
以下、発明者による従来技術及び実施形態に係るアンテナ装置に関するシミュレーション結果について説明する。
図31は、従来技術に係るオーバルダイポール広帯域アンテナ装置(発明者による試作アンテナであって、2つの試作例がある。)の各1対を対向させてそれぞれ無線伝送システム及び有線伝送システムを形成したときの基本波モード及び二次以上の高調波モードの伝送信号に対する通過減衰量S21[dB]を示すグラフである。図31において、各プロット点を結ぶ折れ線以外の直線は無線伝送システム及び有線伝送システムにおける線形近似の直線である。図31から明らかなように、無線伝送システム及び有線伝送システムのいずれのシステムにおいても、二次以上の高調波成分の信号レベルは基本波成分の信号レベルに比較して大幅に減衰している。
次いで、以下の4つのアンテナ装置における反射減衰量S11の比較結果を以下に示す。図32は従来技術に係る正方形状の矩形パッチアンテナ装置(第1の比較例)における反射減衰量S11[dB]の周波数特性を示すスペクトラム図であり、図33は第1の実施形態に係るアンテナ装置における反射減衰量S11[dB]の周波数特性を示すスペクトラム図である。また、図34は従来技術に係る矩形ループスロットアンテナ装置(特許文献3の図4のアンテナ装置であって、図32の矩形パッチアンテナ装置のパッチ導体の回りに所定の幅のスロットを介して接地導体を配置形成した装置:第2の比較例)における反射減衰量S11[dB]の周波数特性を示すスペクトラム図である。さらに、図35は従来技術に係る矩形ループスロットアンテナ装置(特許文献3の図1のアンテナ装置であって、H形状のパッチ導体の回りに所定の幅のスロットを介して接地導体を配置形成した装置:第3の比較例)における反射減衰量S11[dB]の周波数特性を示すスペクトラム図である。図32乃至図35において、101は基本波モードの反射減衰量S11[dB]を示し、102は二次高調波モードの反射減衰量S11[dB]を示し、103は三次高調波モードの反射減衰量S11[dB]を示す。なお、図32乃至図35において、反射減衰量の極小点で共振が発生し、一般に、その共振点の周波数での反射減衰量が小さい方が伝送信号レベルは大きくなる。
図32及び図33の比較から明らかなように、本実施形態の効果(切欠形成の効果)として、基本波モードの伝送信号レベルを下げるが、三次高調波モードの信号レベルを上げる作用効果を有する。また、図34及び図35から明らかなように、基本波モードの伝送信号レベルは変化するが、三次以上の高調波モードの共振を得ることができないので、三次以上の高調波モードでの信号レベルを上げる作用効果を得ることはできない。
本発明に係るアンテナ装置によれば、放射導体が、上記アンテナ装置を励振したときの電界により定義される電界面と交差する前記放射導体の辺のうち少なくとも1つの辺に、少なくとも三次の高調波信号レベルが基本波信号レベルに比較して大きくなるように、少なくとも1つの切欠きを形成したので、高調波成分の放射強度に対して基本周波数成分の放射強度を低減させることができ、無線デジタル信号をベースバンド伝送で直接的に無線送受信する場合に、矩形波形の高調波成分が基本周波数成分より減少することによって生じる波形歪みを大幅に低減することができる。
また、送信される矩形波形の基本周波数成分を低減する動作を受動素子によって行うので、回路構成が単純でかつ能動素子を用いた場合に比べて消費電力を低減できる。
本発明に係るアンテナ装置は、例えば、無線デジタル信号を直接的に無線送受信する無線バスや無線インタコネクション等に利用することができる。
本発明は、アンテナ装置に関し、特に、無線デジタル信号を直接的に無線送受信するためのアンテナ装置に関する。
無線デジタル信号を直接的に無線送受信するための広帯域アンテナ装置が普及しつつある。特許文献1に、広帯域に渡って高調波モードの発生を低減した従来例に係るマイクロストリップアンテナが開示されている。特許文献1は、マイクロストリップアンテナの各共振モードの分布に着目し、誘電体基板面に形成された放射導体板の四隅に切欠きを設けることにより、高次周波数共振モードを抑制してアンテナ特性を制御する。
特開平05−129825号公報。 特開2005−278067号公報。 特開2005−079972号公報。 Ramesh Garg, et al., "Microstrip antenna Design Handbook", Artech House, November 2000. 子安修ほか「高速イーサネットケーブルの改良とパッシブイコライザによる伝送特性の改善」電子情報通信学会論文誌C,Vol.J87−C,No.11,pp.873−880,2004年11月1日。
しかしながら、上記従来例に係るマイクロストリップアンテナにおいて、矩形波の無線デジタル信号を直接的に無線送受信する場合、矩形波の基本周波数成分に比較して高調波成分が減衰し(例えば、詳細後述する図31の従来技術に係るオーバルダイポール広帯域アンテナ装置の高次次数に対する通過減衰量S21の特性を参照。)、その結果、受信側で受信される無線デジタル信号波形が歪むという問題点があった。
本発明の目的は以上の問題点を解決し、無線デジタル信号をベースバンド伝送で直接的に無線送受信する場合に、矩形波形の高調波成分が基本周波数成分より減少することによって生じる波形歪みを低減するアンテナ装置を提供することにある。
第1の発明に係るアンテナ装置は、裏面に接地導体を形成してなる誘電体基板と、前記誘電体基板の表面に形成された放射導体とを備え、前記放射導体の給電点を介して無線デジタル信号をベースバンド伝送で直接的に送受信するためのアンテナ装置において、前記放射導体は、上記アンテナ装置を励振したときの電界により定義される電界面と交差する前記放射導体の辺のうち少なくとも1つの辺に、少なくとも三次の高調波信号レベルが基本波信号レベルに比較して大きくなるように、少なくとも1つの切欠きを形成することにより、上記伝送された無線デジタル信号の波形歪みを低減させることを特徴とする。
上記アンテナ装置において、少なくとも三次の高調波信号レベルが基本波信号レベル及び二次の高調波信号レベルに比較して大きくなるように、少なくとも1つの切欠きを形成したことを特徴とする。
また、上記アンテナ装置において、前記切欠きは、前記電界面と交差する前記放射導体の辺の略中央に形成される。
さらに、上記アンテナ装置において、前記放射導体の辺に対応する前記各切欠きの辺の長さの和は、前記各切欠きを形成しないときの前記放射導体の全周の6分の1よりも短くなるように設定される。
またさらに、上記アンテナ装置において、前記切欠きが前記放射導体の重心点又は前記給電点に位置しないように形成される。
また、上記アンテナ装置において、前記切欠きは、前記電界面と交差する前記放射導体の両方の辺にそれぞれ形成され、かつ、前記電界面に直交する磁界面に対して対称に形成される。
さらに、上記アンテナ装置において、前記誘電体基板は、前記電界面と交差する少なくとも1つの位置であって前記切欠きの近傍の位置に形成された少なくとも1つの溝をさらに備える。
またさらに、上記アンテナ装置において、前記各溝の深さは、ゼロから前記誘電体基板の厚さと等しい値までの範囲のうちの1つの値に設定される。
また、上記アンテナ装置において、前記放射導体の辺に平行な前記各溝の辺の長さの和は、前記各切欠きを形成しないときの前記放射導体の全周の6分の1よりも短くなるように設定される。
さらに、上記アンテナ装置において、前記各溝が前記誘電体基板の端部から前記放射導体の重心点又は前記給電点までの位置に形成される。
またさらに、上記アンテナ装置において、前記誘電体基板は少なくとも2つの溝を有し、前記2つの溝は前記磁界面に対して対称に形成される。
本発明に係るアンテナ装置によれば、放射導体が、上記アンテナ装置を励振したときの電界により定義される電界面と交差する前記放射導体の辺のうち少なくとも1つの辺に、少なくとも三次の高調波信号レベルが基本波信号レベルに比較して大きくなるように、少なくとも1つの切欠きを形成したので、高調波成分の放射強度に対して基本周波数成分の放射強度を低減させることができ、無線デジタル信号をベースバンド伝送で直接的に無線送受信する場合に、矩形波形の高調波成分が基本周波数成分より減少することによって生じる波形歪みを大幅に低減することができる。
また、送信される矩形波形の基本周波数成分を低減する動作を受動素子によって行うので、回路構成が単純であり、かつ能動素子を用いた場合に比べて消費電力を低減できる。
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各実施形態において、同様の構成要素については同一の符号を付している。
第1の実施形態.
図1は本発明の第1の実施形態に係るアンテナ装置の構成を示す平面図であり、図2は図1のアンテナ装置の外観を示す斜視図であり、図3は図1のA−A’面における縦断面図である。本実施形態に係るアンテナ装置は、例えばマイクロストリップアンテナであって、例えば無線デジタル信号をベースバンド伝送で直接的に送受信する無線バスや無線インタコネクション等に用いられる。図1乃至図3において、アンテナ装置は、誘電体基板1と、接地導体2と、長さL及び幅Lを有する放射導体3と、給電線10とを備えて構成される。放射導体3は、周辺部分のうち、放射電界の方向が平行となる電界面(以下、E面という。)と交差する辺の略中央にそれぞれ形成された切欠き5,6を有する。切欠き5は奥行きL及び長さ(幅)Lを有し、切欠き6は奥行きL及び長さLを有し、切欠き5及び6は、H面に対して対称に形成される。
接地導体2は誘電体基板1の裏面に形成され、誘電体基板1の表面には放射器となる放射導体3が形成される。給電線である同軸ケーブル10は、中心導体11と、接地導体13と、これらの導体11,13間を絶縁する誘電体12により構成される。ここで、中心導体11は、誘電体基板1を厚さ方向に貫通するスルーホール14h内に充填されたスルーホール導体14を介して、放射導体3の給電点9に接続される。また、接地導体13は、接地導体2に接続される。同軸ケーブル10は、デジタル伝送信号を送受信するために、給電点9から放射導体3に給電する。同軸ケーブル10により給電される無線信号は、放射導体3の給電点9に給電されることにより、放射導体3を励振して当該無線信号を自由空間に放射する。
次に、図4及び図5を参照して、図1の切欠き5及び6の大きさの設定方法について説明する。図4は、切欠き5及び6を設けない状態の放射導体33を備えたアンテナ装置の構成を示す平面図であり、図5は図4のB−B’面における縦断面図である。図4及び図5において、放射導体1と接地導体2との間で電磁界の共振が起きる際の、一番低い周波数(以下、基本周波数という。)での電界の振動の様子を示すために、電気力線の流れの瞬間を模式的に示す。電気力線の向きをDeとし、磁流の向きをDhとする。このときの共振電界の分布は、ほぼE面に平行な方向で分布し、E面に直交する磁界面(以下、H面という。)でほぼ対称になる。E面は、図5のB−B’面において誘電体基板1の厚さ方向であってB−B’面に平行な面であり、H面は、E面と直交しかつ誘電体基板1の厚さ方向に存在する。このような基本周波数での共振電界は、放射導体33のH面部分が節となる定在波になる。このように放射導体33の周辺部に沿ってλ/2波長相当の共振電界が定在波として分布することから、図4に示すように、定在波分布の周期長Lsに沿った、電界の定在波の空間強度分布の空間調波成分を考慮して、基本空間高調波成分が基本共振周波数の電磁放射に寄与するものと考える。
従って、本実施形態において、基本周波数成分を抑制するために、空間調波成分の基本成分を抑制するように、切欠き5,6の長さL,Lは、それぞれ定在波分布の周期長Lsの3分の1より短くなるように設定される。言い換えると、切欠き5,6の長さL,Lは、切欠き5,6を形成しないときの放射導体33の全周の6分の1の長さより短くなるように設定される。即ち、図1乃至図3において、次式(1)が成り立つように設定される。
[数1]
<(L+L)/3 (1)
また、切欠き5,6は、基本周波数の共振電界の節に当たるH面と放射導体3に交点を含まず、かつ、電界の基本周波数での定在波分布の腹の部分、即ち放射導体3の周辺部分の漏れ電界が大きくなるE面との交差部分を含む位置に設けられる。また、切欠き5,6は、基本共振周波数での共振を阻害しないように、放射導体3の重心点に位置しないように形成され、かつ、給電を妨げないように、給電点9に位置しないように形成される。これにより、基本周波数成分の定在波分布のピークに近い値を抑制することができる。
上記構成を有するアンテナ装置について、以下、その動作及び効果について説明する。図6は、切欠き5及び6を設けない従来例に係るアンテナ装置と、切欠き5及び6を設けた本実施形態に係るアンテナ装置との各モードにおける電界及び磁流分布を比較するための図である。図6において、各放射導体における固有振動のうち低いほうから、基本周波数成分の動作モードである基本波モード、二次高調波成分の動作モードである二次高調波モード、及び三次高調波成分の動作モードである三次高調波モードとする。図6に示すように、基本波モードにおいて、本実施形態に係るアンテナ装置では放射導体3に切欠き5,6が設けられているため、切欠き5,6が無い場合よりも全体の磁流分布が減少する。第2モードにおいて、両者に大きな違いは無い。三次高調波モードにおいて、従来例に係るアンテナ装置では磁流が相殺されて減少するが、本実施形態に係るアンテナ装置では放射導体3に切欠き5,6が設けられているため、基本波モードとほぼ同じ程度の磁流を生じる。従って、本実施形態に係るアンテナ装置では、切欠き5,6が無い場合と比較して、基本波モードにおける磁流分布が減少し、基本周波数成分が抑制されることがわかる。
図7は、切欠き5及び6を設けない従来例に係るアンテナ装置の構成を示す平面図であり、図8は、図7のC−C’面における縦断面図であり、図9は、図7のアンテナ装置の等価回路を示す回路図である。なお、図8において、同軸ケーブル10は図示を省略する。図7及び図8において、従来例に係るアンテナ装置では、放射導体33及び接地導体2間の電界のうち、放射導体33の端部に分布するいわゆる漏れ電界と、それに起因する磁流による電磁結合によってアンテナ装置からの放射電磁界が形成される。従って、図9の等価回路に示すように、切欠きを設けない従来例に係るアンテナ装置は、放射導体33及び接地導体2間のキャパシタC1と、自由空間側への相互誘導を示すインダクタL1及びL2とのモデルで表すことができる。
図10は、切欠き5及び6を設けた本実施形態に係るアンテナ装置の構成を示す平面図であり、図11は、図10のD−D’面及びF−F’面における縦断面図であり、図12は、図10のE−E’面における縦断面図であり、図13は、図10のアンテナ装置の等価回路を示す回路図である。なお、図12において、同軸ケーブル10は図示を省略する。図10において、本実施形態に係るアンテナ装置では放射導体3に切欠き5及び6が設けられている故に、放射導体3が切欠き5,6によって3つの矩形部分によって構成されると考えることができ、図13に示すように、放射導体33の各部及び接地導体2間のキャパシタC11,C12,C13と、自由空間側への相互誘導を示すインダクタL11〜L13及びL21〜L23とのモデルで表すことができる。
図14は、図9の等価回路を用いた従来例に係るアンテナ装置のシミュレーション用回路を示す回路図である。図14において、従来例に係るアンテナ装置のシミュレーション用回路は、矩形波信号発生器16と、インダクタL0と、キャパシタC1及びインダクタL1を含むアンテナ装置35と、インダクタL2と、放射空間抵抗R1とを備えて構成される。矩形波信号発生器16は、1GHzのサンプリング周波数と、1Vの振幅レベルViを有する矩形波信号を発生して出力する。本シミュレーションにおいて、インダクタL0のインダクタンスを1nHとし、キャパシタC1の静電容量を5pFとし、インダクタL1,L2のインダクタンスを共に5nHとし、放射空間抵抗R1の抵抗値を50Ωとする。また、インダクタL1及びL2の相互結合係数を0.9と近似した。矩形波信号発生器16からの矩形波信号は、アンテナ装置35を介して、放射空間抵抗R1に伝送され、空間側で測定される電圧Voがシミュレーションされる。
図15は、図14のシミュレーション回路を用いて行ったシミュレーション結果を示す波形図である。図15において、放射空間抵抗R1側の電圧Voの波形は、入力信号である矩形波Viと比較して、アンテナ装置35の特性により歪むことが見て取れる。
図16は、図13の等価回路を用いた本実施形態に係るアンテナ装置のシミュレーション用回路を示す回路図である。図16において、本実施形態に係るアンテナ装置のシミュレーション用回路は、矩形波信号発生器16と、インダクタL0と、キャパシタC11〜C13及びインダクタL11〜L13を含むアンテナ装置15と、インダクタL21〜L23と、放射空間抵抗R1とを備えて構成される。矩形波発生器16は、1GHzのサンプリング周波数と、1Vの振幅レベルViを有する矩形波信号を発生して出力する。本シミュレーションにおいて、インダクタL0のインダクタンスを1nHとし、キャパシタC11及びC13の各静電容量を2pFとし、キャパシタC2の静電容量を1pFとし、インダクタL11,L13,L21,L23のインダクタンスを2nHとし、インダクタL12,L22のインダクタンスを1nHとし、放射空間抵抗R1を50Ωとする。また、インダクタL11及びL21の相互結合係数及びインダクタL13及びL23の相互結合係数を0.9と近似し、インダクタL12及びL22の相互結合係数を0.2と近似した。矩形波発生器16からの矩形波信号は、アンテナ装置15を介して、放射空間抵抗R1に伝送され、空間側で測定される電圧Voがシミュレーションされる。
図17は、図16のシミュレーション回路を用いて行ったシミュレーション結果を示す波形図である。図17において、放射空間抵抗R1側の電圧Voの波形は、図15と比較して、基本周波数成分を減少させるため、電圧Voの振幅は減少するものの、高調波成分と基本周波数成分との差が小さくなることで、矩形波の歪み度合いが減少している。
次に、従来例に係るアンテナ装置と、本実施形態に係るアンテナ装置とを、アンテナ構造の違いを直接考慮できる電磁界シミュレータを用いて比較実験を行った。図18は、電磁界シミュレータを用いた比較例におけるシミュレーション回路図である。なお、比較実験において、従来例に係るアンテナ装置の放射導体33の長さ33aを15.9mm、幅33bを24.4mmとし、誘電体基板1の比誘電率を2.5とし、本実施形態に係るアンテナ装置の放射導体3の長さLを15.9mm、幅Lを24.4mmとし、切欠き5及び6の長さL,Lを10.7mmとし、奥行きL及びLを0.82mmとする。また、送信側負荷R3を50Ωとし、空間側負荷R4を1kΩとする。これらのアンテナモデルを送信側及び受信側で対にしてアンテナの2ポートモデル18を構成し、クロック信号発生器17により発生された1GHzサンプリングの擬似M系列ランダムクロック信号Vsを送信側から送信し、受信側で受信された信号Voの信号波形のアイパターン解析を行った。解析方法は送信側及び受信側間の伝達関数を電磁界シミュレーションにより求め、その伝達関数を用いて擬似M系列ランダムクロック信号Vsの伝送を評価するシミュレーションモデルにより行った。
図19及び図20は、それぞれ従来例及び本実施形態に係るアンテナ装置により受信された受信信号のアイパターンのシミュレーション結果を示す波形図である。図19及び図20に示すように、本実施形態に係るアンテナ装置では、高調波成分と基本周波数成分の差が小さくなることで、従来例に係るアンテナ装置に比較して、矩形波の歪み度合いを低減して矩形波としての波形形状を保った信号受信ができることがわかる。
以上説明したように、本実施形態に係るアンテナ装置によれば、放射導体3に、E面と交差する辺に形成された切欠き5,6を設けることによって、高調波成分の放射強度に対して基本周波数成分の放射強度を低減させることができるので、無線デジタル信号を直接的に無線送受信する場合に、矩形波形の高調波成分が基本周波数成分より減少することによって生じる無線デジタル信号の波形歪みを低減することができる。
また、送信される矩形波形の基本周波数成分を低減する動作を受動素子によって行うことができるので、回路構成が単純でかつ能動素子を用いた場合に比べて消費電力を低減できる。
なお、本実施形態において、切欠き5及び6は矩形であった。しかし、本発明はこの構成に限らず、切欠き5及び6は、例えば図21〜図23に示すような他の形状であってもよい。また、放射導体3は矩形であったが、例えば図24に示すように円形等の他の形状であってもよい。切欠き5及び6及び放射導体3は、図21〜図24に示した形状の他、様々な変形を考え得ることは言うまでもない。さらに、切欠き5と切欠き6の形状が互いに異なっていてもよい。またさらに、いずれか一方の切欠き5及び6のみが設けられてもよい。
また、給電線を背面同軸型給電方式の同軸ケーブル10としたが、本発明はこれに限らず、共平面型給電方式又は電磁結合型方式等としてもよい。
第2の実施形態.
図25は本発明の第2の実施形態に係るアンテナ装置の構成を示す平面図であり、図26は図25に対応する斜視図であり、図27は図25のG−G’面における縦断面図である。本実施形態に係るアンテナ装置は、図1乃至図3に示した第1の実施形態に係るアンテナ装置に比較して、誘電体基板1に代えて誘電体基板1Aを備えた点が異なる。それ以外の点については、図1乃至図3に示した第1の実施形態と同様であり、同一符号を付した構成要素についての詳細な説明は省略する。
図25乃至図27において、誘電体基板1Aは、E面と交差する位置かつそれぞれ切欠き5,6の近傍に形成された、誘電体基板1Aの表面に開口した凹形状の溝7,8を有する。溝7,8は、それぞれ長さ7b及び8bと、幅7a及び8aと、深さ7d及び8dを有する。溝7,8の深さ7d,8dは、誘電体基板1の厚さに等しい。溝7及び8の幅7a及び8aは、それぞれ定在波分布の周期長Lsの3分の1より短くなるように設定される。また、溝7は、放射導体3の重心点から距離7cの位置に形成され、溝8は、給電点9から距離8cの位置に形成され、溝7及び8は、H面に対して対称に形成される。
上記構成によれば、誘電体基板1に溝7,8を設けることにより、溝7,8近傍の誘電体基板1の電界強度が誘電体基板1の他の部分よりも小さくなり、磁流が低減される。これにより、第1の実施形態と同様に、等価回路におけるインダクタ間の相互結合係数を小さくする作用を生じ、その結果、基本波モードの電磁結合を選択的に低減させ、電界の基本周波数成分を抑制することができる。
以上説明したように、本実施形態に係るアンテナ装置によれば、誘電体基板1に凹形状の溝7,8を設けることにより、第1の実施形態と同様に、無線デジタル信号を直接的に無線送受信する場合に、矩形波形の高調波成分が基本周波数成分より減少することによって生じる波形歪みを低減することができる。
なお、本実施形態において、図25乃至図27に示した溝7及び8の形成位置は一例であり、溝7及び8は、例えば図28乃至図30に示すような他の位置に配置されてもよい。図28において、溝7に代えて溝7Aが形成され、溝7Aの長さ7Abが図25乃至図27に示した溝7の長さ7bよりも大きく、誘電体基板1の端部近傍にまで延在していてもよい。溝7Aは、誘電体基板1の端部から放射導体3の重心点又は給電点9までの位置に形成されてよい。図29において、溝7に代えて溝7Bが形成され、放射導体3の重心点からの溝7Bの距離7Bcが図25乃至図27に示した放射導体3の重心点からの溝7の距離7cよりも小さく、溝7Bの一部が放射導体3の一部と重なっていてもよい。溝7Bの一部が放射導体3の一部と重なることにより、等価回路におけるキャパシタC12(図13参照。)の静電容量を減少させることができ、容易にアンテナ部分の静電容量を変えた設計ができるという効果がある。また、図30において、溝7に代えて溝7Cが形成され、溝7Cの幅7Caが図25乃至図27に示した溝7の幅7aよりも大きく、放射導体3の一部と重なってもいてもよい。溝7Cの幅7Caは、放射導体3全体の幅L及び長さLの和の3分の1よりも短くなる任意の値に設定されてよい。図28乃至図30において、溝7の変形例である溝7A,7B,7Cについて示したが、溝8についても同様の変形例が考えられることは言うまでもない。
また、溝7,8の深さ7d,8dは、誘電体基板1の厚さに等しいとした。しかし、本発明はこの構成に限らず、溝7,8の深さ7d,8dは、ゼロから誘電体基板1の厚さに等しい値までの範囲内であれば、任意の値であってよい。また、溝7の長さ7b、幅7a及び深さ7dと、溝8の長さ8b、幅8a及び深さ8dとは、それぞれ同一であったが、互いに異なる値に設定されてもよい。さらに、溝7,8は平面図において矩形状であったが、本発明はこの形状に限らず、円形等の他の形状であってもよい。
また、本実施形態において、切欠き5,6及び溝7,8を両方設けたが、切欠き5,6を設けずに、溝7,8のみを設けてもよい。
以下、発明者による従来技術及び実施形態に係るアンテナ装置に関するシミュレーション結果について説明する。
図31は、従来技術に係るオーバルダイポール広帯域アンテナ装置(発明者による試作アンテナであって、2つの試作例がある。)の各1対を対向させてそれぞれ無線伝送システム及び有線伝送システムを形成したときの基本波モード及び二次以上の高調波モードの伝送信号に対する通過減衰量S21[dB]を示すグラフである。図31において、各プロット点を結ぶ折れ線以外の直線は無線伝送システム及び有線伝送システムにおける線形近似の直線である。図31から明らかなように、無線伝送システム及び有線伝送システムのいずれのシステムにおいても、二次以上の高調波成分の信号レベルは基本波成分の信号レベルに比較して大幅に減衰している。
次いで、以下の4つのアンテナ装置における反射減衰量S11の比較結果を以下に示す。図32は従来技術に係る正方形状の矩形パッチアンテナ装置(第1の比較例)における反射減衰量S11[dB]の周波数特性を示すスペクトラム図であり、図33は第1の実施形態に係るアンテナ装置における反射減衰量S11[dB]の周波数特性を示すスペクトラム図である。また、図34は従来技術に係る矩形ループスロットアンテナ装置(特許文献3の図4のアンテナ装置であって、図32の矩形パッチアンテナ装置のパッチ導体の回りに所定の幅のスロットを介して接地導体を配置形成した装置:第2の比較例)における反射減衰量S11[dB]の周波数特性を示すスペクトラム図である。さらに、図35は従来技術に係る矩形ループスロットアンテナ装置(特許文献3の図1のアンテナ装置であって、H形状のパッチ導体の回りに所定の幅のスロットを介して接地導体を配置形成した装置:第3の比較例)における反射減衰量S11[dB]の周波数特性を示すスペクトラム図である。図32乃至図35において、101は基本波モードの反射減衰量S11[dB]を示し、102は二次高調波モードの反射減衰量S11[dB]を示し、103は三次高調波モードの反射減衰量S11[dB]を示す。なお、図32乃至図35において、反射減衰量の極小点で共振が発生し、一般に、その共振点の周波数での反射減衰量が小さい方が伝送信号レベルは大きくなる。
図32及び図33の比較から明らかなように、本実施形態の効果(切欠形成の効果)として、基本波モードの伝送信号レベルを下げるが、三次高調波モードの信号レベルを上げる作用効果を有する。また、図34及び図35から明らかなように、基本波モードの伝送信号レベルは変化するが、三次以上の高調波モードの共振を得ることができないので、三次以上の高調波モードでの信号レベルを上げる作用効果を得ることはできない。
本発明に係るアンテナ装置によれば、放射導体が、上記アンテナ装置を励振したときの電界により定義される電界面と交差する前記放射導体の辺のうち少なくとも1つの辺に、少なくとも三次の高調波信号レベルが基本波信号レベルに比較して大きくなるように、少なくとも1つの切欠きを形成したので、高調波成分の放射強度に対して基本周波数成分の放射強度を低減させることができ、無線デジタル信号をベースバンド伝送で直接的に無線送受信する場合に、矩形波形の高調波成分が基本周波数成分より減少することによって生じる波形歪みを大幅に低減することができる。
また、送信される矩形波形の基本周波数成分を低減する動作を受動素子によって行うので、回路構成が単純でかつ能動素子を用いた場合に比べて消費電力を低減できる。
本発明に係るアンテナ装置は、例えば、無線デジタル信号を直接的に無線送受信する無線バスや無線インタコネクション等に利用することができる。
本発明の第1の実施形態に係るアンテナ装置の構成を示す平面図である。 図1のアンテナ装置の外観を示す斜視図である。 図1のA−A’面における縦断面図である。 切欠き5及び6を設けない状態の放射導体33を備えたアンテナ装置の構成を示す平面図である。 図4のB−B’面における縦断面図である。 切欠き5及び6を設けない従来例に係るアンテナ装置と、切欠き5及び6を設けた本実施形態に係るアンテナ装置との各モードにおける電界及び磁流分布を比較するための図である。 切欠き5及び6を設けない従来例に係るアンテナ装置の構成を示す平面図である。 図7のC−C’面における縦断面図である。 図7のアンテナ装置の等価回路を示す回路図である。 切欠き5及び6を設けた本実施形態に係るアンテナ装置の構成を示す平面図である。 図10のD−D’面及びF−F’面における縦断面図である。 図10のE−E’面における縦断面図である。 図10のアンテナ装置の等価回路を示す回路図である。 図9の等価回路を用いた従来例に係るアンテナ装置のシミュレーション用回路を示す回路図である。 図14のシミュレーション回路を用いて行ったシミュレーション結果を示す波形図である。 図13の等価回路を用いた本実施形態に係るアンテナ装置のシミュレーション用回路を示す回路図である。 図16のシミュレーション回路を用いて行ったシミュレーション結果を示す波形図である。 電磁界シミュレータを用いた比較例におけるシミュレーション回路図である。 従来例に係るアンテナ装置により受信された受信信号のアイパターンのシミュレーション結果を示す波形図である。 本実施形態に係るアンテナ装置により受信された受信信号のアイパターンのシミュレーション結果を示す波形図である。 本発明の第1の実施形態の変形例に係るアンテナ装置の切欠き5A〜5D,6A〜6D及び放射導体3の形状の第1の例を示す平面図である。 本発明の第1の実施形態の変形例に係るアンテナ装置の切欠き5A〜5D,6A〜6D及び放射導体3の形状の第2の例を示す平面図である。 本発明の第1の実施形態の変形例に係るアンテナ装置の切欠き5A〜5D,6A〜6D及び放射導体3の形状の第3の例を示す平面図である。 本発明の第1の実施形態の変形例に係るアンテナ装置の切欠き5A〜5D,6A〜6D及び放射導体3の形状の第4の例を示す平面図である。 本発明の第2の実施形態に係るアンテナ装置の構成を示す平面図である。 図25に対応する斜視図である。 図25のG−G’面における縦断面図である。 本発明の第2の実施形態の変形例に係るアンテナ装置の溝7A〜7Cの位置の第1の例を示す平面図である。 本発明の第2の実施形態の変形例に係るアンテナ装置の溝7A〜7Cの位置の第2の例を示す平面図である。 本発明の第2の実施形態の変形例に係るアンテナ装置の溝7A〜7Cの位置の第3の例を示す平面図である。 従来技術に係るオーバルダイポール広帯域アンテナ装置(発明者による試作アンテナであって、2つの試作例がある。)の各1対を対向させてそれぞれ無線伝送システム及び有線伝送システムを形成したときの基本波モード及び二次以上の高調波モードの伝送信号に対する通過減衰量S21[dB]を示すグラフである。 従来技術に係る正方形状の矩形パッチアンテナ装置における反射減衰量S11[dB]の周波数特性を示すスペクトラム図である。 第1の実施形態に係るアンテナ装置における反射減衰量S11[dB]の周波数特性を示すスペクトラム図である。 従来技術に係る矩形ループスロットアンテナ装置(特許文献3の図4のアンテナ装置であって、図32の矩形パッチアンテナ装置のパッチ導体の回りに所定の幅のスロットを介して接地導体を配置形成した装置)における反射減衰量S11[dB]の周波数特性を示すスペクトラム図である。 従来技術に係る矩形ループスロットアンテナ装置(特許文献3の図1のアンテナ装置であって、H形状のパッチ導体の回りに所定の幅のスロットを介して接地導体を配置形成した装置)における反射減衰量S11[dB]の周波数特性を示すスペクトラム図である。
1,1A…誘電体基板、
2…接地導体、
3,3A…放射導体、
5,6,5A,5B,5C,5D,6A,6B,6C,6D…切欠き、
7,8,7A,7B,7C…溝、
9…給電点、
10…同軸ケーブル、
11…中心導体、
12…誘電体、
13…接地導体、
14…スルーホール導体、
14h…スルーホール、
15,35…アンテナ装置、
16…矩形波信号発生器、
17…クロック信号発生器、
18…アンテナの2ポートモデル、
C1,C11,C12,C13…キャパシタ、
L0〜L2,L11〜L13,L21〜L23…インダクタ、
R1,R3,R4…放射空間抵抗。

Claims (11)

  1. 裏面に接地導体を形成してなる誘電体基板と、前記誘電体基板の表面に形成された放射導体とを備え、前記放射導体の給電点を介して無線デジタル信号をベースバンド伝送で直接的に送受信するためのアンテナ装置において、
    前記放射導体は、上記アンテナ装置を励振したときの電界により定義される電界面と交差する前記放射導体の辺のうち少なくとも1つの辺に、少なくとも三次の高調波信号レベルが基本波信号レベルに比較して大きくなるように、少なくとも1つの切欠きを形成することにより、上記伝送された無線デジタル信号の波形歪みを低減させることを特徴とするアンテナ装置。
  2. 少なくとも三次の高調波信号レベルが基本波信号レベル及び二次の高調波信号レベルに比較して大きくなるように、少なくとも1つの切欠きを形成したことを特徴とする請求項1記載のアンテナ装置。
  3. 前記切欠きは、前記電界面と交差する前記放射導体の辺の略中央に形成されたことを特徴とする請求項1又は2記載のアンテナ装置。
  4. 前記放射導体の辺に対応する前記各切欠きの辺の長さの和は、前記各切欠きを形成しないときの前記放射導体の全周の6分の1よりも短くなるように設定されたことを特徴とする請求項1乃至3のうちのいずれか1つに記載のアンテナ装置。
  5. 前記切欠きが前記放射導体の重心点又は前記給電点に位置しないように形成されたことを特徴とする請求項1乃至4のうちのいずれか1つに記載のアンテナ装置。
  6. 前記切欠きは、前記電界面と交差する前記放射導体の両方の辺にそれぞれ形成され、かつ、前記電界面に直交する磁界面に対して対称に形成されたことを特徴とする請求項1乃至5のうちのいずれか1つに記載のアンテナ装置。
  7. 前記誘電体基板は、前記電界面と交差する少なくとも1つの位置であって前記切欠きの近傍の位置に形成された少なくとも1つの溝をさらに備えたことを特徴とする請求項1乃至6のうちのいずれか1つに記載のアンテナ装置。
  8. 前記各溝の深さは、ゼロから前記誘電体基板の厚さと等しい値までの範囲のうちの1つの値に設定されたことを特徴とする請求項7に記載のアンテナ装置。
  9. 前記放射導体の辺に平行な前記各溝の辺の長さの和は、前記各切欠きを形成しないときの前記放射導体の全周の6分の1よりも短くなるように設定されたことを特徴とする請求項7又は8記載のアンテナ装置。
  10. 前記各溝が前記誘電体基板の端部から前記放射導体の重心点又は前記給電点までの位置に形成されたことを特徴とする請求項7乃至9のうちのいずれか1つに記載のアンテナ装置。
  11. 前記誘電体基板は少なくとも2つの溝を有し、前記2つの溝は前記磁界面に対して対称に形成されたことを特徴とする請求項7乃至10のうちのいずれか1つに記載のアンテナ装置。
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