以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
図1〜図6は、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の形成工程を示す断面図である。なお、本実施形態における半導体装置は、強誘電体メモリであって、便宜上、その構造については、製造方法と共に説明する。
先ず、図1(a)に示す構造を形成するまでの工程を説明する。
シリコン等の半導体基板1の表面に、素子活性領域を区画する素子分離絶縁膜2を、例えばロコス(LOCOS:Local Oxidation of Silicon)法により形成する。なお、素子分離絶縁膜2は、半導体基板1に凹部を形成し、その中に酸化シリコンを埋め込んだシャロートレンチアイソレーション(STI)構造を採用してもよい。
次に、素子分離絶縁膜2により区画された素子活性領域内に、ゲート絶縁膜3を介してゲート電極4を形成する。ゲート絶縁膜3としては、例えば、熱酸化により、厚さが100nm程度のSiO2膜を形成する。また、ゲート電極4は、例えばパターニングされたポリシリコン膜からなり、その上にはシリサイド層5が形成されている。なお、ポリシリコン膜にはドーパントがドープされる。
ゲート電極4の両側の半導体基板1内にはドーパントが複数回に分けてドープされ、エクステンション領域21を有するソース/ドレイン拡散領域22が形成される。例えば、ゲート電極4をマスクにして半導体基板1にドーパントを導入してエクステンション領域21を形成した後に、ゲート電極4の側面に絶縁性のサイドウォール6を形成し、さらにサイドウォール6及びゲート電極4をマスクにして半導体基板1にドーパントを導入してソース/ドレイン領域22を形成する。
それらゲート絶縁膜3、ゲート電極4、シリサイド層5、サイドウォール6、エクステンション領域層21及びソース/ドレイン拡散領域22等によりトランジスタ(MOSFET)trが構成される。
次いで、MOSFETtrを覆うようにして半導体基板1の全面に酸窒化シリコン膜(SiON膜)7を形成し、更に全面にシリコン酸化膜8aを形成する。SiON膜7は、シリコン酸化膜8aを形成する際の水素によるゲート絶縁膜3等の劣化を防止するために形成されている。
シリコン酸化膜8aは、例えば、気相成長(CVD)法により、テトラエトキシシラン(Tetraethoxysilanea (TEOS))を反応ガスに用いて700nm程度の厚さに形成される。続いて、CMP(化学機械的研磨)法により、シリコン酸化膜8aの上面を平坦化する。
その後、窒素(N2)雰囲気中で、650℃、30分間のアニール処理を行うことにより、シリコン酸化膜8aの脱ガスを行う。次に、シリコン酸化膜8a上に、密着膜8bとしてアルミナ(Al2O3)膜を例えばスパッタ法により20nm程度の厚さに形成する。
密着膜8bとして、アルミナ膜の他に、厚さが20nm程度のTi膜又はTiOx膜等を採用してもよい。又は、密着膜8bは、厚さが20nmのTi膜と厚さが180nmのPt膜からなる積層構造を採用してもよい。例えば、Ti膜は150℃で形成することができ、Pt膜は100℃又は350℃で形成することができる。密着膜8b及びシリコン酸化膜8aを第1の層間絶縁膜8とする。
以上により図1(a)に示す構造が形成される。
次に、図1(b)に示すように、密着膜8bの上に下部電極膜9を形成する。下部電極膜9として、例えば、Pt膜をスパッタ法により150nm程度の厚さに形成する。
続いて、図1(c)に示すように、下部電極膜9上に強誘電体膜10をアモルファス状態で形成する。強誘電体膜10としては、例えばRFスパッタ法によって、PLZT膜を100nm〜200nm程度の厚さに形成する。スパッタ用のターゲットとして、例えばPLZT((Pb,La)(Zr,Ti)O3)を用いる。
続いて、不活性ガスであるArと酸化ガスであるO2を含有する雰囲気中で強誘電体膜10及び下部電極膜9に650℃以下の高速熱処理(RTA:Rapid Thermal Annealing)を施し、更に、酸素雰囲気中において温度750℃で強誘電体膜10及び下部電極膜9に2回目のRTAを施す。この結果、強誘電体膜10が結晶化すると共に、下部電極膜9を構成するPt膜が緻密化し、下部電極膜9と強誘電体膜10との界面近傍におけるPtとOとの相互拡散が抑制される。
その後、図2(a)〜(c)に示すように、強誘電体膜10上に上部電極膜11を形成する。
上部電極膜11の形成に当たっては、先ず、図2(a)に示すように、強誘電体膜10上に第1導電性酸化膜11aを形成する。第1導電性酸化膜11aとして、成膜の時点で結晶化したIrOx膜をスパッタ法により10〜50nmの厚さに形成する。
IrOx膜の成長条件として、例えば、成膜温度を300℃とし、成膜雰囲気に導入するガスとしてAr及びO2を用い、スパッタパワーを0.5〜3.0kW、例えば1.0kW程度とする。この場合、例えば、Arの流量を140sccm、O2の流量を60sccmとする。
次に、図2(b)に示すように、IrOxの第1導電性酸化膜11a上に、IrOyからなる第2導電性酸化膜11bをスパッタ法で30nm〜200nmの厚さに形成する。この場合、IrOyの成膜温度を30℃以上100℃以下の範囲、好ましくは30℃以上、75℃以下の範囲に設定して成膜の時点にIrOyが粒径5〜60nmに微結晶化していることが望ましい。
IrOyの成膜雰囲気に導入するガスとしてAr及びO2を用い、O2の流量f1とArの流量f2の割合(f1/f2)は、IrOxの第1導電性酸化膜11a成長時のその割合よりもり高く設定することを前提とする。そして、IrOy成膜時に、例えば、Arの流量を100sccmとし、O2の流量を100sccmとする。この場合、スパッタパワーを0.5〜3.0kW、例えば1.0kW程度とする。
第1導電性酸化膜11aをほぼ同じ膜質に形成するためには、スパッタパワーと酸素ガス比率は相関関係がある。例えば、スパッタパワーを低くする場合には酸素ガス比率を下げると、ほぼ同じ膜質が得られる。また、スパッタパワーを高くする場合には酸素ガス比率を上げると、ほぼ同じ膜質が得られる。
このような条件で形成されたIrOyの第2導電性酸化膜11bは、異常酸化を発生させずにきれいなIrOy微結晶膜となる。
IrOy成長時の基板温度を30℃以上100℃以下の範囲で設定する理由は、以下のような事前調査の結果から導き出された。事前調査は、ウェーハ上に成長温度を異ならせて複数のIrOy膜を成長したRTA前の試料と、1容量%の酸素を含む雰囲気中でRTAにより各IrOy膜を700℃で60秒間加熱したRTA後の試料とを用意した。
調査に使用されるIrOy膜は、通常の酸化膜で覆われた複数のシリコンのウェーハの上にそれぞれ100nmの厚さに成膜された。成膜時の各ウェーハの温度は、50℃、75℃、100℃,150℃、200℃、250℃にそれぞれコントロールされた。成長されたIrOy膜はさらに1容量%の酸素を含む雰囲気中でRTAにより700℃で60秒間熱処理された。
RTAにより熱処理される前の各IrOy膜の表面を金属顕微鏡により1000倍で拡大した画像の写真を図8、図9に示す。さらに、RTAにより熱処理された各IrOy膜の表面を金属顕微鏡により1000倍に拡大した画像の写真を図10、図11に示す。
なお、図8、図10に示す画像は、それぞれシリコンウェーハの中心部のIrOy膜の表面像であり、図9、図11に示す画像は、それぞれリコンウェーハの右の領域でのIrOy膜の表面像である。
まず、図8(d)〜(f)、図9(d)〜(f)に示すように、IrOzの成膜温度が150℃以上になると、IrOzが完全に結晶化するが、IrOz膜に異常成長が生じて平滑な表面モフォロジが得られない。IrOzの成膜温度が100℃では、微結晶と大きな結晶が混在しているが、表面モフォロジは図8(c)、図9(c)に示すようにやや平滑になる。また、IrOzの成膜温度が75℃以下では、微結晶なIrOzになるので、図8(a)、(b)、図9(a)、(b)に示すように、非常に平滑な表面モフォロジを有する。
図10(a)〜(f)、図11(a)〜(f)によれば、RTAにより処理された後のIrOy膜の表面状態は、RTA処理前の状態がそのまま反映されている。従って、RTA後の表面状態はIrOyからなる第2導電性酸化膜11bの成長温度に依存することがわかり、平滑な表面モフォロジを得るためにはIrOy膜を100℃以下、好ましくは75℃以下で成長する。
以上のような温度条件で第2の導電性酸化膜11bを形成した後に、図2(c)に示すように、第2の導電性酸化膜11b上にIr、Ru等の貴金属或いはその貴金属を含む合金よりなる金属膜或いは導電性貴金属酸化膜11cをスパッタにより形成する。
上記のような条件で形成されたIrOxの第1導電性酸化膜11aとIrOyの第2導電性酸化膜11bと金属膜或いは導電性貴金属酸化膜11cは併せて上部電極膜11となる。なお、金属膜或いは導電性貴金属酸化膜11cを形成せずに、第1導電性酸化膜11aと第2導電性酸化膜11bにより上部電極11を構成してもよい。
上記の強誘電体膜10及び上部電極膜11の形成方法は第1の例であり、次のような第2例〜第5例の工程を含む方法を採用してもよいし、その他の方法を採用してもよい。
第2例は、強誘電体膜10形成後、Ar及びO2を含有する雰囲気中において、650℃以下の基板温度で例えば560℃のRTA処理を行い、その後に、第1導電性酸化膜11aとしてIrOxを室温或いはそれより高い温度で20nm〜75nmの厚さに形成する工程を含む方法である。
室温で成膜する場合には、例えば、Arを100sccm、O2を56sccmに設定し、成膜パワーを2kWとする。また、室温より高い温度、例えば300℃で成膜する場合、Arの流量を140sccm、O2の流量を60sccmとし、成膜パワーを1kWとする。その後、第1、第2導電性酸化膜11a,11bをRTAで650℃〜750℃(例えば、725℃)で熱処理を行う。この熱処理は、強誘電体膜10を完全に結晶化すると同時に、強誘電体膜10と第1導電性酸化膜11aの界面をフラットにする。この方法は、強誘電体キャパシタの低電圧動作とそのスイッチング特性の向上に非常に有利である。
第3例は、強誘電体膜10の形成後に、1番目の方法と同じ方法で熱処理を行い、更に薄いアモルファス強誘電体膜を形成し、その後、1番目の方法と同じ条件で第1導電性酸化膜11aをアモルファス強誘電体膜上に形成し、熱処理を行う工程を含む方法である。この方法で形成されたキャパシタの特徴は、第1例の方法で説明した特徴の他に、キャパシタのリーク電流を低減できるという利点がある。
第4例は、強誘電体膜10が結晶化してある場合に、その上にアモルファス強誘電体(不図示)膜を形成し、その後に第1導電性酸化膜11aを形成する工程を含む方法である。
第5例は、第2導電性酸化膜11bを形成した後に、再度RTAで650〜750℃の温度範囲、例えば700℃の熱処理を行う工程を含む方法である。この方法は、上部電極膜11と強誘電体膜10の密着性を向上する上に、上部電極膜12の結晶を更に良くする。
以上のような方法により上部電極膜11を形成した後に、半導体基板1の背面洗浄を行う。続いて、上部電極用マスクパターン(不図示)を使用して上部電極膜11をパターニングすることにより、図3(a)に示すようなキャパシタ上部電極11qを形成する。そのキャパシタ上部電極11qは、例えば素子分離絶縁膜2の上方に位置させる。
次に、O2雰囲気中において温度650℃で60分間の条件で、強誘電体膜10の膜質回復アニール処理を行う。この熱処理は、キャパシタ上部電極11qを形成する際に強誘電体膜10が受けた物理的なダメージ等を回復させるためのものである。
その後、図3(b)に示すように、マスク(不図示)を用いて強誘電体膜10のパターニングを行うことにより、キャパシタ誘電体膜10qを形成する。キャパシタ誘電体膜10qは、キャパシタ上部電極11qに重なる領域とこれからはみ出した領域に形成される。
続いて、後に形成する第1の保護膜12の剥がれ防止用の酸素アニールを行う。
次に、図3(c)に示すように、第1の保護膜12としてAl2O3膜をスパッタリング法にてキャパシタ上部電極11q、キャパシタ絶縁膜10q、密着膜8b上の全面に形成する。第1の保護膜12は、外部からキャパシタ誘電体膜10qに水素が侵入することを防止する。続いて、スパッタリングにより生じたキャパシタ絶縁膜10qの損傷を緩和するために、酸素アニールを行う。
その後、図4(a)に示すように、マスク(不図示)を使用して第1の保護膜12及び下部電極膜9を連続してパターニングすることにより、下部電極膜9からなるキャパシタ下部電極9qを形成する。キャパシタ下部電極9qは、キャパシタ誘電体膜10q及びキャパシタ上部電極11qに重なる領域とこれからはみ出す領域を含む大きさを有している。
以上のようなパターニングにより形成されたキャパシタ下部電極9q、キャパシタ誘電体膜10q及びキャパシタ上部電極11qにより強誘電体キャパシタQ1が構成される。
続いて、図4(b)に示すように、次に形成される第2の保護膜13の剥がれを防止するための酸素アニールを行う。
第2の保護膜13としてAl2O3膜がスパッタリング法により第1の保護膜13及び密着膜8bの上に形成される。続いて、強誘電体キャパシタQ1のリークを低減させるために、酸素アニールを行う。
その後、図5(a)に示すように、第2の層間絶縁膜14を高密度プラズマ法により全面に形成する。第2の層間絶縁膜14は、TEOSを用いて形成されるシリコン酸化膜であり、その厚さを例えば1.5μm程度とする。
続いて、CMP法により、第2の層間絶縁膜14の上面を平坦化する。次に、N2Oガスを用いたプラズマ処理を第2の層間絶縁膜14に施す。これにより、第2の層間絶縁膜14の表層が若干窒化され、その内部に水分が浸入しにくくなる。なお、このプラズマ処理は、N又はOの少なくとも一方が含まれたガスを用いていれば有効的である。
次いで、図5(b)に示すように、MOSFETtrのソース/ドレイン拡散領域22まで到達する深さのコンタクトホール14aを、第2の層間絶縁膜14、第2の保護膜13、密着膜8b、シリコン酸化膜8a及びSION膜7に形成する。
その後、コンタクトホール14a内にバリアメタル膜15aとしてTi膜及びTiN膜を連続してスパッタリング法により形成する。続いて、六フッ化タングステンを含むガスを使用してCVD法にてタングステン(W)膜15bをコンタクトホール14a内に埋め込む。その後に、CMP法により第2の層間絶縁膜14の上面上からW膜15b及びバリアメタル膜15aを除去することにより、コンタクトホール14a内に残されたW膜15b及びバリアメタル膜15aを導電性のプラグ15とする。
次に、図6(a)に示すように、プラグ15の酸化防止膜16としてSiON膜を、例えばプラズマエンハンストCVD法により形成する。
続いて、図6(b)に示すように、SiON膜16、層間絶縁膜14及び第1、第2の保護膜12,13の所定領域をエッチングすることにより、上部電極11aまで到達するコンタクトホール14bと、下部電極9aのコンタクト領域まで到達するコンタクトホール14cをそれぞれ形成する。
その後、キャパシタ誘電体膜10qの損傷を回復させるために、酸素アニールを行う。
続いて、図7(a)に示すように、酸化防止膜16をエッチバックにより全面にわたって除去することにより、Wプラグ15の表面を露出させる。
次に、図7(b)に示すように、キャパシタ上部電極11qの表面の一部、キャパシタ下部電極9qの表面の一部、及びプラグ15の表面が露出した状態で、第2の層間絶縁膜14の上にAl膜を形成し、このAl膜のパターニングを行うことにより、Al配線17a〜17cを形成する。この場合、第1のAl配線17aはWプラグ15に接続され、第2のAl配線17bはコンタクトホール14bを通してキャパシタ上部電極11qに接続され、また、第3のAl配線17cはコンタクトホール14cを通してキャパシタ下部電極17cに接続される。
その後、特に図示しないが、層間絶縁膜の形成、コンタクトプラグの形成及び下から第2層目以降の配線の形成等を行う。そして、例えばTEOS酸化膜及びSiN膜からなるカバー膜を形成して強誘電体キャパシタを有する強誘電体メモリを完成させる。
表1は、前記上部電極の第1、2層導電性酸化膜11a、11bを構成するIrO
x、IrO
yについて、化学量論組成IrO
2を基準とした酸化の程度を高分解能RBS(ラザフォード後方散乱、Rutherford Back-scattering Spectrometry)分析装置HRBSV500により調べた結果を示す。IrO
2は、IrO
yの組成パラメータyが2となる場合に相当する。
表1よりわかるように、このようにして形成された強誘電体キャパシタQ1では、キャパシタ上部電極11qの第1層導電性酸化膜11aを構成するIrOx膜よりも第2層導電性酸化膜11bを構成するIrOy膜の方が酸化の割合が高く(x<y)、第2層導電性酸化膜のIrOy膜16はほぼ理想的な化学量論組成を有していることがわかる。組成yは、2又はそれ以上であることが好ましい。
本実施形態では、上述のように、第1導電性酸化膜11aの上に、それよりも酸化度が高いIrOyの第2導電性酸化膜11bを形成し、更にその上に貴金属又は貴金属を含む金属膜或いは導電性貴金属酸化膜11cを形成している。これらの膜11a〜11cにより構成されるキャパシタ上部電極11qは、異常なIrOx結晶成長を避けることができる。さらなる詳細については、第2実施形態で説明される。
また、以上の方法により形成されたキャパシタQ1は、強誘電体膜10の上層と上部電極膜11と反応しにくく、それらの界面で層の生成が抑制される上に、第2の導電性酸化膜11bでの巨大結晶の成長が抑制されるため、後の還元雰囲気中での熱処理においても水素の拡散が生じにくく、強誘電体膜が還元されにくい。従って、良好なキャパシタ特性を得ることができる。
一般的に、金属状態のIrやPtは水素触媒として作用することが周知である。すなわち、金属状態のIrやPtと接触すると水素は活性化される。単膜のIrやPtからキャパシタ上部電極を構成すると、半導体装置の製造工程で強誘電体キャパシタが劣化しやすくなるので、使用できない。
また、第1層導電性酸化膜11aの上に直接に金属状態のIrやPtの金属膜を形成して上部電極膜11を構成しても同じく工程劣化しやすくなる。
即ち、強誘電体キャパシタのスイッチング電荷量は、第2の層間絶縁膜14の上方に配線を三層構造に形成した後では、形成する前に比べて50%以下になる。これは、第1導電性酸化膜11aを構成するIrOx膜(x=1.3〜1.9)中では、組成パラメータxの値が化学量論組成x=2.0よりも小さいため酸素欠損が生じており、酸化物成分と金属成分が混在している。
酸化されていない金属成分は、強誘電体キャパシタ形成後の層間絶縁膜形成工程や配線パターン形成工程で生じる水素を活性化する。かかる活性化された水素はキャパシタ特性を劣化する。
一方、化学量論組成に近い第2導電性酸化膜11bを構成するIrOy膜(y=2)中には、酸素欠損が少なく金属Ir成分がほとんど含まれていないため水素が活性化されにくい。しかも、上部電極膜11を構成する第2導電性酸化膜11bを100℃以下、好ましくは30℃以上、75℃以下の範囲の温度で成長しているので第2導電酸化膜11bを構成する粒径5nm〜60nmのIrOyは石垣状又は柱状の微結晶となる。これにより第2導電性酸化膜11bは従来よりも緻密の膜になり、その中での大きな空孔(ボソボソ)の発生を無くし水素の通過を抑制する。従って、強誘電体キャパシタQ1上に多層配線構造を形成した後でも、そのキャパシタ特性が劣化せずに維持されると考えられる。
つまり、上述の実施形態によれば、キャパシタ上部電極11qと強誘電体膜10qとの界面を改善し、また、工程劣化を改善することができる。この結果、反転電荷量を向上させ、抗電圧を低減し、疲労耐性及びインプリント耐性を向上させることができる。そして、このような強誘電体キャパシタは、次世代の低電圧で動作する強誘電体メモリに極めて好適である。
ところで、上部電極膜11を構成する第1、第2導電性酸化膜11a、11bのそれぞれの構成金属をA、B、酸素をOとすれば、第1導電性酸化膜11aは、成膜当初には組成パラメータx1を使って化学式AOx1で表される。さらに、その後のプロセスを経た実際の状態、例えば成膜後の熱処理の状態やキャパシタの回復熱処理後の状態で実際の組成パラメータx2を使って化学式AOx2で表される。なお、AとBは、同一であっても異なってもよい。異なる例としては、AとBの一方がIrであり他方がRuである層である。
また、第1導電性酸化膜11a上に形成される第2導電性酸化膜11bは、成膜当初には組成パラメータy1を使って化学式BOy1で表される。さらに、その後のプロセスを経た実際の状態、例えば成膜後の熱処理の状態やキャパシタの回復熱処理後の状態で実際の組成パラメータy2を使って化学式BOy2で表される。
第2導電性酸化膜11bは、最初は非常に小さく微結晶な石垣状であり、その後の熱処理により、多数の微結晶が接合して柱状になり、第1導電性酸化膜11aより酸化の割合が高く、さらに、組成パラメータx1,x2,y1及びy2の間には、(y2/y1)>(x2/x1)の関係が成立する。つまり、半導体装置の形成工程において、キャパシタ上部電極11q内の酸素量が初期状態から変化しても、第2導電性酸化膜11bの酸化の組成は、第1導電性酸化膜11aの酸化の組成よりも大きい。また、組成y1は、2又はそれ以上が好ましい。x1,x2,y1及びy2の関係については、以下の第2〜第6実施形態でも同様である。
(第2の実施の形態)
以下、本発明の実施形態について説明する。但し、ここでは、便宜上、強誘電体メモリの各メモリセルの断面構造については、その製造方法と共に説明する。
図12〜図21は、本発明の実施形態に係る強誘電体メモリ(半導体装置)の製造方法を工程順に示す断面図である。
まず、図12(a)に示す構造を形成するまでの工程を説明する。
n型又はp型のシリコン(半導体)基板30表面に、トランジスタの活性領域を画定するSTI(Shallow Trench Isolation)用の溝を形成し、その中に酸化シリコン等の絶縁膜を埋め込んで素子分離絶縁膜31とする。なお、素子分離絶縁膜31の構造はSTIに限られず、LOCOS法で形成されてもよい。
次いで、シリコン基板30の活性領域にp型不純物を導入してpウェル32を形成した後、その活性領域の表面を熱酸化することにより、ゲート絶縁膜33となる熱酸化膜を形成する。
続いて、シリコン基板31の上側全面に非晶質又は多結晶のシリコン膜を形成し、これらの膜をフォトリソグラフィー法によりパターニングして二つのゲート電極34,35を形成する。
pウェル32上には、上記の2つのゲート電極34,35が間隔をおいて平行に配置され、それらのゲート電極34,35はワード線の一部を構成する。
次いで、ゲート電極34,35をマスクにするイオン注入により、ゲート電極34,35の横のシリコン基板30にn型不純物を導入し、第1、第2ソース/ドレインエクステンション領域36a、37a、38aを形成する。
その後に、シリコン基板30の上側全面に絶縁膜を形成し、その絶縁膜をエッチバックしてゲート電極34,35の側面に絶縁性サイドウォール39として残存させる。その絶縁膜として、例えばCVD法により酸化シリコン膜を形成する。
続いて、絶縁性サイドウォール39とゲート電極34,35をマスクにしながら、シリコン基板30にn型不純物を再びイオン注入することにより、2つのゲート電極34,35両側方のシリコン基板30の表層にソース/ドレイン領域(不純物拡散領域)36,37,38を形成する。
シリコン基板30の活性領域に形成されたゲート絶縁膜、ゲート電極34,35及びソース/ドレイン領域36,37,38によって第1、第2MOSランジスタT1、T2が構成される。
次に、シリコン基板30の上側全面に、スパッタ法によりコバルト層等の高融点金属層を形成した後、この高融点金属層を加熱してシリコンと反応させ、ソース/ドレイン領域36,37,38表層に高融点金属シリサイド層39を形成する。この工程では、ゲート電極34,35の表層部分にも高融点金属シリサイド層40が形成され、それによりゲート電極34,35が低抵抗化されることになる。素子分離絶縁膜31の上等で未反応となっている高融点金属層は、エットエッチングにより除去される。
続いて、カバー絶縁膜41としてSiON膜をプラズマCVD法により約200nmの厚さに形成する。続いて、カバー絶縁膜41の上に第1層間絶縁膜42として酸化シリコン膜を厚さ約1000nmに形成する。酸化シリコン膜は、TEOSガスを使用するプラズマCVD法により形成される。
その後に、第1層間絶縁膜42の上面をCMP法により研磨して平坦化する。このCMPの結果、第1層間絶縁膜42の厚さは、シリコン基板30の平坦面上で約700nmとなる。
次に、図12(b)に示すように、フォトリソグラフィー法によりカバー絶縁膜41と第1層間絶縁膜42をパターニングして、0.25μmの径で第1〜第3のソース/ドレイン拡散領域36〜38のそれぞれを露出する第1〜第3のコンタクトホール42a〜42cを形成し、それらの中に導電性プラグ43〜45を形成する。
導電性プラグ43〜45を形成する工程は、第1〜第3のコンタクトホール中42a〜42c内に厚さ30nmのTi膜と厚さ20nmのTiN膜を順に積層し、これらにより第1の密着膜(グルー膜)43を構成する。さらに、第1密着膜43上に第1のW膜44をCVD法により成長することにより、第1のW膜44を第1〜第3のコンタクトホール42a〜42c内に充填する。第1のW膜47は、第1層間絶縁膜42上の平坦面上で約300nmの厚さに成長される。
この後に、第1層間絶縁膜42の上面上の余分な第1の密着膜43と第1のW膜44をCMP法により除去する。これにより、第1〜第3のコンタクトホール42a〜42c内にそれぞれ残された第1の密着膜43と第1のW膜44をそれぞれ第1〜第3の導電性プラグ45a〜45cとする。
次に、図12(c)に示すように、第1〜第3の導電性プラグ45a〜45c及び第1層間絶縁膜42の上に、SiONよりなる酸化防止膜46をプラズマCVD法により例えば130nmの膜厚に形成する。さらに、酸化防止膜46上に、第2層間絶縁膜47としてシリコン酸化膜を例えば300nmの厚さに形成する。シリコン酸化膜は、TEOSを原料としたプラズマCVD法により例えば300nmの膜厚に形成される。
なお、酸化防止膜46として、SiON膜の代わりに、SiN膜や酸化アルミニウム(Al2O3)膜を形成してもよい。
さらに、図13(a)に示すように、第2層間絶縁膜47及び酸化防止膜46をパターニングすることにより、pウェル32の両側寄りの第2、第3の導電プラグ45b、45c上に第4、第5のコンタクトホール48b、48cを形成する。
次に、第4、第5のコンタクトホール48b,48c内に、第1の密着膜43、第1のW膜44と同じ条件で、第2の密着膜49と第2のW膜50を順に形成する。その後に、CMPにより第2のW膜50と第2の密着膜49を第2層間絶縁膜43の上面上から除去する。
このCMPでは、研磨対象である第2の密着膜49と第2のW膜50の研磨速度が、下地の第2層間絶縁膜47の研磨速度よりも速くなるようなスラリ、例えばCabot Microelectronics Corporation製の商品SSW2000を使用する。そして、第2層間絶縁膜47上に研磨残を残さないために、このCMPによる研磨量は第2の密着膜49及び第2のW膜50の合計膜厚よりも厚く設定される。即ち、そのCMPはオーバー研磨となる。
これにより、第4、第5のコンタクトホール48b、48c内に残された第2のW膜50と第2の密着膜49を第4、第5の導電性プラグ51、52とする。第4、第5の導電性プラグ51、52はそれぞれ、それらの下の導電性プラグ45b、45cを介して第2、第3のソース/ドレイン拡散領域37、38に接続される。
次に、アンモニア(NH3)プラズマにより発生させたNH基を第2層間絶縁膜47表面の酸素原子に結合させる。
これにより、その後に発生させるTi原子が第2層間絶縁膜47上にさらに堆積されても、堆積したTi原子は酸素原子に捕獲されてしまうことがない。これにより、Ti原子は第2層間絶縁膜47表面を自在に移動でき、その結果、第2層間絶縁膜47上には、(002)配向に自己組織化されたTi膜(不図示)が形成される。
そのアンモニアプラズマ処理は、例えば半導体基板30に対して約9mm(350mils)離間した位置に対向電極を有する平行平板型のプラズマ処理装置を使う。その処理条件として、例えば、266Pa(2Torr)の圧力下、400℃の基板温度で保持された処理容器中にアンモニアガスを350sccmの流量で供給し、被処理基板側に13.56MHzの高周波を100Wのパワーで、また前記対向電極に350kHzの高周波を55Wのパワーで、60秒間供給する。
次に、例えば半導体基板30とターゲット(不図示)の間の距離を60mmに設定したスパッタ装置のチャンバ内を0.15PaのAr雰囲気とし、20℃の基板温度で2.6kWのスパッタDCパワーを35秒間供給する。これにより、強い(002)配向のTi膜が例えば100nmの厚さに形成される。
その後、RTAで窒素の雰囲気中でTi膜を650℃、60秒の熱処理を行い、図13(b)に示すように、Ti膜を(111)配向のTiNの導電性密着膜53に変える。この導電性密着膜53の厚さとして100nm〜300nmが好ましい。本実施例は約100nmとされる。
なお、導電性密着膜3は、窒化チタン膜に限定されず、タングステン膜、シリコン膜、及び銅膜のいずれかを形成してもよい。
次に、図13(c)に示すように、導電性密着膜53の上に、酸素拡散バリア膜54としてTiAlN膜を反応性スパッタにより例えば100nmの厚さに形成する。導電性密着膜53を形成するスパッタ条件として、TiとAlを合金化したターゲットを使用し、スパッタ雰囲気中にArを40sscm、窒素を10sccmで導入し、スパッタ雰囲気内を253.3Paの圧力下に設定し、400℃の基板温度に設定し、スパッタパワーを1.0kWに設定する。
次に、図14(a)に示すように、酸素拡散バリア膜54上に、下部電極膜55と強誘電体膜56を順に形成する。
下部電極膜55として、スパッタにより100nmの厚さのIr膜が形成される。下部電極膜55のスパッタ条件として、Ar雰囲気中にIrターゲットを設置し、その内部を0.11Paの圧力下に設定し、基板温度を500℃、スパッタパワーを0.5kWに設定する。
下部電極膜55の形成後に、シリコン基板30をRTAでAr雰囲気中、650℃以上、60秒の熱処理を行う。この熱処理は、下部電極膜55を形成する温度より高く、シリコン基板30全面の温度を均一させるので、シリコン基板30の中央から周辺に至るまで下部電極膜55の結晶性を向上できる。これにより、下部電極膜55の結晶性はシリコン基板30の面内分布がかなり改善できる。熱処理の雰囲気は、Arに限らない、不活性ガス例えばN2、Heなどでも良い。
なお、下部電極膜55としてIr膜の代わりにPtなどの白金族の金属、あるいはPtO,IrOx,SrRuO3などの導電性酸化物を用いてもよい。さらに下部電極膜55は、上記の金属あるいは金属酸化物の積層膜としてもよい。この場合、下部電極膜55と酸素拡散バリア膜54の合金としてPtAlx又はRuAlxが形成される。
上記の強誘電体膜56として、例えばPZT膜が下部電極膜55上にMOCVD法により形成される。PZT膜は、より具体的には以下のような工程で形成される。
まず、Pb(DPM)2とZr(DMHD)4とTi(O−iPr)2(DPM)2をそれぞれテトラヒドロフラン(THF)溶媒中にいずれも0.3mol/l(モル/リットル)の濃度で溶解し、Pb、Zr及びTiの各液体原料を形成する。さらに、これら3つの液体原料を、MOCVD装置の気化器に、流量が0.474ml(ミリリットル)/分のTHF溶媒とともに、それぞれ0.326ml/分、0.200ml/分、および0.200ml/分の流量で供給し、気化させることにより、Pb、ZrおよびTiの原料ガスを生成する。
さらに、MOCVD装置のチャンバ内を665Pa(5Torr)の圧力下に設定し、基板温度を620℃に保持する。そして、上記のPb、ZrおよびTiの各原料ガスを、MOCVD装置のチャンバ中に対し620秒間導入する。これにより、下部電極膜55上には、所望のPZT膜が約100nmの厚さに形成される。
なお、酸素を含む雰囲気中において600℃〜620℃の温度で60秒間の熱処理をPZT膜に施すことが望ましい。この熱処理はPZT膜表面に吸着した不純物を飛ばせ、キャパシタの特性を向上させる。ここで酸素に不活性ガスを添加してもよい。また、PZT膜を結晶化してもよい。
続いて、PZT膜の全面に、例えばスパッタ法により、アモルファス強誘電体膜を形成する。アモルファス強誘電体膜としては、例えば膜厚が1nm〜30nm(例えば20nm)の強誘電体膜を形成する。
強誘電体膜をMOCVDで成膜する場合は、例えば鉛(Pb)供給用の有機ソースとして、Pb(DPM)2( Pb(C11H19O2)2) をTHF液に溶かした材料が用いられる。また、ジルコニウム(Zr)供給用の有機ソースとして、Zr(DMHD)4(Zr((C9H15O2)4)をTHF液に溶かした材料が用いられる。チタン(Ti)供給用の有機ソースとして、Ti(O−iPr)2(DPM)2(Ti(C3H7O)2(C11H19O2)2)をTHF液に溶かした材料が用いられる。
次に、図14(b)に示すように、強誘電体膜56上に第1導電性酸化膜57を形成する。第1導電性酸化膜57の形成に当たっては、先ず、強誘電体膜56上に、厚さが20nm〜70nm、例えば、25nmで成膜の時点で結晶化したIrOx膜をスパッタ法により形成する。成膜条件について、例えば、成膜温度を300℃とし、成膜ガスとしてAr及びO2を用い、Arの流量を140sccm、O2の流量を60sccmに設定し、スパッタパワーを例えば1kW程度とする。
ついで、シリコン基板30をRTA法で熱処理する。この熱処理は強誘電体膜56を完全に結晶化させ、強誘電体膜56を構成するPZT膜中の酸素欠損を補償すると同時に、プラズマダメージを受けた第1導電性酸化膜56の膜質も回復できる。RTA法の条件については、加熱雰囲気内に置かれる基板温度を725℃に設定し、加熱雰囲気内に酸素を流量200sccm、Arを流量1800sccmで導入し、さらに熱処理時間を60秒間とする。
次いで、図14(c)に示すように、IrOxの第1導電性酸化膜57の上にIrOyの第2導電性酸化膜58をスパッタ法により50nm〜200nmの厚さに形成する。この時、成膜温度を30℃以上、100℃以下の温度範囲、好ましくは50℃以上、75℃以下の範囲内に設定する。第2導電性酸化膜58は、成膜の時点でIrOyが微結晶化して石垣状或いは柱状に多数結合していることが望ましい。なお、温度範囲の詳細については、第1実施形態において既に説明したので、ここでは省略する。
第2導電性酸化膜58の成膜時には、IrターゲットとAr及びO2のガスを用いる。その際のArに対するO2の割合は、IrOxの第1導電性酸化膜57の成長時のその割合よりも高くすることを前提とする。IrOy成膜のガスの流量は、例えば、Arの流量を100sccm、O2の流量を100Sccmとする。また、スパッタパワーは、例えば1kW程度に設定される。
以上の条件で形成されたIrOyからなる第2導電性酸化膜58は、異常酸化がなく、きれいな結晶膜が得られた。この際、工程劣化を抑えるために、第1実施形態と同様に、IrOy膜はIrO2の化学量論組成に近い組成を有しているので、水素に対して触媒作用を生じにくく、強誘電体膜が水素ラジカルにより還元されてしまう問題が抑制され、キャパシタの水素耐性が向上する。
なお、第1、第2導電性酸化膜57、58を構成する材料として、IrOx、IrOy又はIrO2の代わりにプラチナ(Pt)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、レニウム(Re)、オスミウム(Os)、パラジウム(Pd)かその酸化物、及びSrRuO3などの導電性酸化物やこれらのいずれかを選択した積層構造としても良い。
強誘電体膜56、第1、第2導電性酸化膜57、58の形成については、第1実施形態に示した第2〜第5例の工程を含む方法を採用してもよい。
次に、RTA法によりシリコン基板30を熱処理する。その条件として、例えば基板温度を700℃に設定し、酸素を流量20sccm、Arを流量2000sccmで導入する雰囲気中で基板の熱処理時間を60秒間とする。この熱処理によれば、強誘電体膜56及び第1、2導電性酸化膜57、58の密着性向上する上に、第2導電性酸化膜58の結晶性より安定させ、酸素欠損などの欠陥をなくす。
続いて、図15(a)に示すように、IrOyからなる第2導電性酸化膜58の上に、厚さが50nm〜150nmのIrあるいはRuからなる金属膜59を形成する。Irの場合、例えば、基板温度を400℃に設定し、成膜雰囲気中にArを流量199sccmで導入するスパッタ法により形成する。
従って、第1導電性酸化膜57、第2導電性酸化膜58をそれぞれ第1の層、第2の層とすると、金属膜59は第3の層であってその構成金属は第1の層又は第2の層の構成金属と同じ又は異なる貴金属又は貴金属を含む合金又は導電性貴金属酸化物から構成される。
上記のようなIrOxからなる第1導電性酸化膜57と、IrOyからなる第2導電性酸化膜58と、Ir又はRuからなる金属膜59は、合わせてキャパシタの上部電極膜になる。
シリコン基板30の背面を洗浄した後に、図15(b)に示すように、上部電極を構成する金属膜59の上にスパッタ法でアルミナ膜、窒化チタン膜を形成し、これらを第1マスク材料層60aとする。更に、第1マスク材料層60a上に、TEOSガスを使用するCVD法により酸化シリコン膜を形成し、その酸化シリコン膜を第2マスク材料層60bとする。
次いで、第2マスク材料層60b上にフォトレジストを塗布し、これを露光、現像して、第4、第5の導電性プラグ51、52の上にキャパシタ平面形状を有する島状のレジストパターンRを形成する。そして、レジストパターンRをマスクにして第2マスク材料層60bをパターニングする。さらに、パターニングされた第2マスク材料層60bをマスクにして第1マスク材料層60aをエッチングする。
パターニングされた第1、第2マスク材料層60a,60bは、図16(a)に示すように、ハードマスクMとして使用される。レジストパターンRは、第1マスク材料層60aをエッチングした後に除去される。
次に、図16(b)に示すように、HBr、O2、Ar及びC4F8の混合ガスをエッチングガスとするプラズマエッチングにより、ハードマスクMに覆われていない部分の上部電極膜57〜59、PZT膜56及び下部電極膜55を連続してドライエッチングする。
これにより、パターニングされた上部電極膜57〜59はキャパシタ上部電極61となり、パターニングされた強誘電体膜56はキャパシタ誘電体膜56qとなり、さらに、パターニングされた下部電極膜55はキャパシタ下部電極55qとなり。キャパシタ上部電極61、キャパシタ誘電体膜56q及びキャパシタ下部電極55qにより強誘電体キャパシタQ2が構成される。
続いて、図17(a)に示すように、ドライエッチング或いはウェットエッチにより第2マスク材料層60bを除去する。例えば、ウェットエッチングとしてフッ酸が使用される。
次に、図17(b)に示すように、強誘電体キャパシタQ2に覆われていない部分の酸素バリアメタル膜54、導電性密着膜53及び第1マスク材料層60aをドライエッチングして除去する。
さらに、図18(a)に示すように、強誘電体キャパシタQ2を覆うAl2O3よりなる第1の保護絶縁膜62をスパッタ法により20nmの厚さに形成する。なお、第1の保護絶縁膜62として、ALD(atomic layer deposition)法で膜厚2nmのアルミナ膜を形成してもよいし、また、スパッタ法によりPZT膜又はTiOx膜を形成してもよい。
続いて、図18(b)に示すように、ダメージを受けたキャパシタ誘電体膜56qの膜質を回復させる目的で、酸素含有雰囲気中でキャパシタ誘電体膜56qに対して回復アニールを施す。この回復アニールの条件は特に限定されないが、本実施形態では、加熱炉内において基板温度550℃〜700℃として行われる。また、キャパシタ誘電体膜56qがPZTの場合には、酸素の雰囲気中において基板温度600℃で60分間のアニールを行うことが望ましい。
さらに、図19(a)に示すように、第1の保護絶縁膜62及び強誘電体キャパシタQ2を覆う第2の保護絶縁膜63を形成する。第2の保護絶縁膜63は、水素バリア膜として機能する。なお、第2の保護絶縁膜63として、Al2O3をCVD法により約40nmの厚さに形成してもよい。
次に、図19(b)に示すように、第2の保護絶縁膜63上に、例えば膜厚が1500nmのシリコン酸化物から構成される第3層間絶縁膜64を形成する。シリコン酸化物は、基板全面に、例えばプラズマCVD法により形成される。その原料ガスとして、例えば、TEOSガスと酸素ガスとヘリウムガスとの混合ガスを用いる。なお、第3層間絶縁膜64として、例えば、絶縁性を有する無機膜等を形成してもよい。
続いて、例えばCMP法により、第3層間絶縁膜64の表面を平坦化する。さらに、N2Oガス又はN2ガス等を用いて発生させたプラズマ雰囲気にて、第3層間絶縁膜64に対して熱処理を行う。熱処理の結果、第3層間絶縁膜64中の水分が除去されると共に、第3層間絶縁膜64の膜質が変化し、その中に水分が入りにくくなる。
その後、第3層間絶縁膜64の全面に、例えばスパッタ法又はCVD法により、バリア膜(第3の保護絶縁膜)65を形成する。バリア膜65として、例えば、膜厚が20nm〜100nmの酸化アルミニウム膜を形成する。平坦化された第3層間絶縁膜64上に形成されたバリア膜65は平坦となる。
次に、図20(a)に示すように、バリア膜65の全面に第4層間絶縁膜66を形成する。第4層間絶縁膜66として、例えば、TEOSガスを用いてプラズマCVD法により膜厚が800nm〜1000nmのシリコン酸化膜を形成する。なお、第4層間絶縁膜66として、SiON膜又はシリコン窒化膜等を形成してもよい。この後に、例えばCMP法により、第4層間絶縁膜66の表面を平坦化する。
さらに、図20(b)に示すように、強誘電体キャパシタQ2上に第6〜第8の導電性プラグ69〜70を形成する。第6〜第8の導電性プラグ69〜70は以下の工程により形成される。
まず、強誘電体キャパシタQ2の上方に開口部を有するレジストパターン(不図示)を第4層間絶縁膜66上に形成する。その後に、そのレジストパターンをマスクに使用して第4層間絶縁膜66から第3層間絶縁膜64までをエッチングすることにより、強誘電体キャパシタQ2のキャパシタ上部電極60の上にビアホール66aを形成する。これにより、ビアホール66aから第2の保護絶縁膜63が露出する。
レジストパターンを除去した後に、シリコン基板30を酸素雰囲気中に置いて450℃で熱処理する。これにより、第1ビアホール66aの形成に伴ってキャパシタ誘電体膜56qに生じた酸素欠損を回復させる。
この後に、ビアホール66aの形成と同様な方法によって、第4層間絶縁膜66から第3層間絶縁膜42までをエッチングして、pウェル32の中央領域の上にある第1の導電性プラグ45aの上方にコンタクトホール66bを形成する。これにより、コンタクトホール66bからは酸化防止膜46が露出する。
次に、ビアホール66aを通して酸化防止膜46をウェットエッチングすることにより、キャパシタ上部電極60の上面を露出させる。また、コンタクトホール66bを通し第1、第2の保護絶縁膜62、63を部分的にエッチングすることにより、第1の導電性プラグ45aの上面を露出させる。
その後に、ビアホール66aとコンタクトホール66bの表面にTiN膜を単層で密着膜67として形成する。密着膜67は、Ti膜をスパッタにより形成し、その上にTiN膜をMOCVD法により形成することにより、二層構造から構成することも可能である。
この場合、TiN膜から炭素除去を行うため、窒素と水素の混合ガスプラズマ中での処理が必要になる。しかし、本実施形態では、キャパシタ上部電極60の最上層である金属膜59が水素バリア機能を有するIr膜から構成しているため、キャパシタ上部電極60が還元される問題は生じない。
この後に、密着膜67上にW膜68をCVD法により成長し、これによりビアホール66aとコンタクトホール66bの中をW膜68で埋め込む。続いて、第4層間絶縁膜66上のW膜68及び密着膜67をCMPにより除去する。
これにより、コンタクトホール66b内に残されたW膜68を第6の導電性プラグ69とし、さらに、ビアホール66a内に残されたW膜68をビアプラグ70とする。
次に、第4層間絶縁膜66上には、例えばスパッタ法により、膜厚が60nmのTi膜、膜厚が30nmのTiN膜、膜厚が360nmのAlCu合金膜、膜厚が5nmのTi膜、及び、膜厚が70nmのTiN膜を順次形成する。この結果、Ti膜、TiN膜、AlCu合金膜、Ti膜及びTiN膜からなる積層膜が形成される。
次に、図21に示すように、フォトリソグラフィー技術を用いて積層膜をパターニングする。これにより、積層膜からなる配線(第1金属配線層)が形成される。即ち、ビアプラグ70に接続される配線72と、第6の導電性プラグ69に接続される導電性パッド73などが形成される。配線72は、コンタクトホール66aを介して上部電極61に接続され、第1、第2導電性酸化膜57,58に接続される。その接続は、電気的な接続を含む。
その後、更に、層間絶縁膜の形成、コンタクトプラグの形成及び下から第2〜5層目以降の配線の形成等を行う。そして、例えばTEOS酸化膜及びSiN膜からなるカバー膜を形成して強誘電体キャパシタを有する強誘電体メモリを完成させる。その詳細の説明は省略する。
以上のような構成を有する本実施形態に係る強誘電体キャパシタQ2の電気特性を以下に説明する。
ここで、IrOyの組成y=2として、第2導電性酸化膜58をIrO2から構成する。成膜温度を次の2つの条件I、IIに設定して、IrO2膜を作製した。
I. ウェーハ(シリコン基板)温度をコントロールせずに初期状態では室温でIrO2膜を成膜する。つまり、静電チャックの温度コントロールをOFFする。この場合、IrO2膜の成長過程で、ウェーハの温度が徐々に上昇する。(W/OES)。
II. IrO2膜を成長する際の複数のウェーハの各温度を25、50、60、75及び100℃にそれぞれ設定して複数の試料を作成した。
これらの条件により形成された複数の強誘電体キャパシタQ2について、図21に示した一層目の配線72を形成した後の状態で、電気特性をそれぞれ測定し、さらに、5層目の配線(不図示)を形成した後のプロセスアウトの状態の電気特性を測定した。
図22は、キャパシタ上部電極61を構成する第2導電性酸化膜58、即ちIrO2膜の成長温度条件を異ならせた複数の強誘電体キャパシタQ2のそれぞれについて測定したスイッチング電荷量(反転電荷量)Qswを示す。図中W/OESは、上記(I)の条件で第2導電性酸化膜58を形成した場合を示す。なお、反転電荷量の測定の印加電圧を±1.8Vとした。
強誘電体キャパシタQ2の試料として大きさの異なる2種類を作成した。第1の種類は、平面形状が50μm×50μmの正方形の同一のキャパシタをシリコン基板1に互いに孤立するように56個作成したでディスクリート(Discrete)であり、そのスイッチング電荷量はQSW(SQ)として示される。
第2の種類は、平面形状が0.7μm×0.7μmの同一のキャパシタを5152個密集して形成してなるセル領域を56箇所作成したセルアレイ(Cell Array)であり、そのスイッチング電荷量はQSW(CA)として示される。
図22によれば、第2導電性酸化膜58を構成するIrO2膜の成膜温度をコントロールしない、あるいは25℃成膜した場合には、QSW(CA)のスイッチング電荷量が小さくなる。スイッチング電荷量が小さくなるのは、第2導電性酸化膜58を構成するIrO2膜の成膜温度をコントロールしない、あるいは25℃成膜した場合、IrO2膜はアモルファス状となり、その後の熱処理により膜中空孔が発生しやすくなるからである。
例えば、図23のリファレンスの強誘電体キャパシタに示すように、第2導電性酸化膜58aの成長の際に、温度コントロールをせずに、成膜パワーを変化させて、下層部58bにアモルファス膜、上層部58cに柱状構造の結晶膜58cを形成する。上層部が結晶化される理由は、パワーの変化による成膜中の基板温度の上昇によるものである。この場合、第2導電性酸化膜58aには異常成長が見られない。
そのような層構造を有する第2導電性酸化膜58aの上にIr金属膜59を形成し、さらにIr金属膜59の上に、TiNと酸化シリコンTEOS膜の積層構造のハードマスクを形成すると、ハードマスク成長時の熱処理により第2層導電性酸化膜58aのアモルファスの下層部58bが結晶化される。即ち、下層部58bであるIrO2のアモルファス部分の結晶が徐々に成長すると同時に、結晶間に酸素欠損などの空位58vが生じる。
それらの空位58vは水素や水侵入経路となるので、強誘電体キャパシタの上方に多層配線を形成する工程で、第2導電性酸化膜58a及び第1導電性酸化膜に水素などが浸入し、これが強誘電体膜57を劣化して、ついには電気特性を劣化させてしまう。しかも、多層配線工程において、強誘電体キャパシタに膜剥がれが発生しやすくなる。
さらに、図20(b)に示したように、上部電極61の上にWプラグ70を形成する際には、高温、還元雰囲気でW膜を成膜する必要がある。その成膜時に発生する水素は、Wプラグのグルー膜であるTiNにより大部分はブロックされるのであるが、過剰に水素が供給されるとTiNのブロックを通り越して、水素がキャパシタ上部電極61に進入してきて、キャパシタ上部電極のIrOxを還元して体積収縮(シュリンク)をおこし、Wプラグ70のグルー膜67とキャパシタ上部電極61の間に空隙ができる。このため、キャパシタ上部電極61のコンタクト抵抗が不安定になる。
5層目の配線を形成した後のリファレンスの強誘電体キャパシタのTEM写真を図24に示す。上部電極の二層目IrO2に大量の空孔が見られる。これらの空孔は耐水素や水の能力が低く、その後の工程で強誘電体膜に劣化を発生させる。
これに対して、本発明の実施形態では、図25(a)に示すように、第2導電性酸化膜58は、成膜温度を50℃〜75℃にコントロールされて安定な微結晶IrO2となる。微結晶IrO2は、粒径20nm〜50nm程度の小さな結晶粒が石垣状又は柱状に一様に接合して存在し、酸素欠損の空位58vは少ない。このため、第2導電性酸化膜58内の水素や水の浸入経路は極めて細いか或いは殆ど存在しない。
従って、金属膜59を透過して水素が第2の導電性酸化膜58に入っても、第1の導電性酸化膜57において水素や水をスムーズに透過させず、強誘電体膜56の劣化が抑制される。第2の導電性酸化膜58内の微結晶は、その後の熱処理により結晶化して図25(b)に示すようにほぼ柱状になる。
本実施形態に係る第2の導電性酸化膜58を構成するIrO2は、第1実施形態において図8〜図11に示したように、成膜温度が100℃以上になると、IrO2は成長時に結晶または結晶と微結晶が混在するので、異常成長しやすくなる。IrO2膜中に空孔或いは異常成長が存在する場合、キャパシタの耐工程劣化能力は弱くなる。
一方、IrO2の成膜温度が60℃付近の場合に、IrO2は粒径が35nm〜45nmの均一な微結晶であり、その後に熱処理しても、均一な石垣状或いは柱状の結晶になるので、耐工程劣化能力が強くなる。
以上の理由により、図22において、60℃付近の温度で成膜した第2導電性酸化膜58のキャパシタスイッチング電荷量が一番大きくなる。また、同じ条件で成膜したキャパシタの電気特性はプロセスアウトでも変わらない結果が得られた。
また、そのスイッチング電荷量のアシンメトリを図26に示す。図26により、50℃以上成膜したキャパシタのアシンメトリが小さくなる。つまり、ヒステリシスのシフトが少なく、キャパシタの耐インプリント(Imprint)特性を向上できる。
スイッチング電荷量Qswは、図27を参照して、Qsw=((N−U)+(P−D))/2)で表され、アシンメトリAssyはAssy=((N−U)―(P−D))/2)で表される。
強誘電体メモリにおける強誘電体キャパシタの印加電圧と反転電荷量QSWとの関係を測定したところ、図26に示す特性結果となった。図28(a)は、上記のディスクリート構造の強誘電体キャパシタの特性図、図28(b)は、上記のセルアレイ構造の強誘電体キャパシタの特性図である。
図28(a)、(b)により、50℃〜75℃成膜した第2導電性酸化膜のキャパシタでは、印加電圧の低電圧から飽和電圧にわたって、高い反転電荷量QSWが得られるとともに、その勾配が大きくなっていることがわかる。このことは、50℃〜75℃成膜した第2導電性酸化膜の強誘電体キャパシタが工程劣化に強く、低電圧動作の強誘電体メモリに極めて好適であることを示している。
以上の結果より、本実施形態では、強誘電体膜55上にIrOxからなる第1の導電性酸化膜56は、上部電極61と強誘電体膜55との界面を改善する。また、第1の導電性酸化膜58上に酸化度が高い微結晶のIrOyからなる第2の導電性酸化膜58内では空孔が発生しにくく、上部電極61内のIrOyのボソボソ(空孔)現象の発生を防ぐ。
これによりその後の工程による第2の導電性酸化膜58の膜質劣化が抑えられ、酸化イリジウムの異常成長をなくせ、きれいな結晶化上部電極が得られた。そして、このような強誘電体キャパシタは、次世代の低電圧で動作する強誘電体メモリに極めて好適である。
(第3の実施の形態)
図29、図30は、本発明の第2実施形態に係る強誘電体メモリ(半導体装置)及びその製造方法を示す断面図である。なお、図29、図30において、図12〜図21と同じ符号は同じ要素を示している。
まず、図13(a)に示したように、第2層間絶縁膜47上に導電性プラグ51,52を形成するまでは、第2実施形態と同様なプロセスとする。導電性プラグ51,52を形成するためのCMPによれば、一般的に、導電性プラグ51,52の上面の高さが第2層間絶縁膜47の上面よりも低くなり、導電性プラグ51,52の周囲の第2層間絶縁膜47にリセスが形成されやすい。リセスの深さは20nm〜50nmであり、典型的には約50nm程度である。
リセスは、第2層間絶縁膜47上に順に形成される下地導電膜53から強誘電体膜56までの複数の膜のそれぞれの面配向に影響を与えるが、その影響は以下のような工程により低減される。
そこで次に、図29(a)に示すように、第2層間絶縁膜47の表面をアンモニア(NH3)プラズマで処理し、第2層間絶縁膜47の表面の酸素原子にNH基を結合させる。
NH基が結合された第2層間絶縁膜47表面では、その上に下地導電膜53を構成するTi原子を堆積する際に、Ti原子は第2層間絶縁膜47の酸素原子に捕獲されにくくなり、第2層間絶縁膜47の表面を自在に移動できる。その結果、図29(b)に示すように、(002)配向に自己組織化されたTi膜53aが第2層間絶縁膜47上に形成される。
上記のアンモニアプラズマ処理は、例えばシリコン基板30に対して約9mm(350mils)離間した位置に対向電極(不図示)を有する平行平板型のプラズマ処理装置を使う。そして、266Pa(2Torr)の圧力に調整され、400℃の基板温度で保持された処理容器中にアンモニアガスを350sccmの流量で供給し、シリコン基板30側に13.56MHzの高周波を100Wのパワーで、また対向電極に350kHzの高周波を55Wのパワーで、60秒間供給することにより実行することができる。
また、Ti膜の形成条件は、例えば、シリコン基板30とTiターゲットの間の距離を60mmに設定したスパッタ装置中で、0.15PaのAr雰囲気、20℃の基板温度に設定し、さらに2.6kWのスパッタDCパワーをターゲット・基板間に35秒間供給する。これにより、強い(002)配向のTi膜53aが第2層間絶縁膜47上に形成される。Ti膜53aは、例えば100nmの厚さに形成される。
次に、窒素雰囲気にシリコン基板30を置いて、基板温度650℃、60秒の条件で、RTAによる熱処理を行うことにより、Ti膜53aを窒化する。これにより、図30(a)に示すように、第2層間絶縁膜47上には、(111)配向のTiNからなる下地導電膜53が形成される。下地導電膜53の厚さは100〜300nmが好ましい。本実施形態では、その厚さは約100nmとされる。
なお、下地導電膜53は窒化チタン膜に限定されず、タングステン膜、シリコン膜、及び銅膜のいずれかを下地導電膜53として形成してもよい。
ところで、リセス47rの深さやTi膜53aの形成条件によっては、TiNからなる下地導電膜53の上面には凹部が形成される。図30(b)ではその凹部が表されている。このような凹部は、下地導電膜53の上方に形成される強誘電体膜56の結晶性を劣化させる恐れがある。
そこで、本実施形態では、図30(b)に示すように、CMP法により下地導電膜53の上面を研磨して平坦化し、上記した凹部を除去する。このCMPで使用されるスラリは特に限定されないが、本実施形態ではCabot Microelectronics Corporation製のSSW2000(商品名)を使用する。
CMPにより処理され下地導電膜53の厚さは、研磨誤差に起因して、シリコン基板の30面内や、シリコン基板30毎にばらつく。そのばらつきを考慮して、本実施形態では、研磨時間を制御することにより、CMP後の下地導電膜53の厚さの目標値を50nm〜100nm、より好ましくは50nmとする。
研磨されたままの状態にある下地導電膜53の上面は研磨によって歪んだ状態となりやすい。そして、結晶に歪が発生している下地導電膜53の上方にキャパシタの下部電極55を形成すると、その歪みを下部電極55が拾ってしまってその結晶性が劣化し、ひいてはその上の強誘電体膜56の強誘電体特性が劣化することになる。
そこで、図30(b)に示すように、下地導電膜53の研磨面をNH3プラズマに曝すことにより、下地導電膜56の結晶の歪みが下地導電膜53の上方に形成される膜に伝わらないようにする。
これにより、下地導電膜53の上面では、その後に形成される酸素拡散バリア膜54を構成する元素が移動しやすくなり、酸素拡散バリア膜54の結晶方位が良好になる。従って、酸素拡散バリア膜54の上の下部電極55、強誘電体膜56の強誘電体特性が良好になる。
以上のように、下地導電膜53の研磨面をNH3プラズマに曝した後のプロセスは、第2実施形態と同じ工程となる。
従って、本実施形態によれば、下地電極55、強誘電体膜56の結晶方位を改善する他、第2実施形態と同じ効果が得られる。
(第4の実施の形態)
図31、図32は、本発明の第4実施形態に係る半導体装置の形成工程を示す断面図である。なお、図31、図32において、図12〜図21と同じ符号は同じ要素を示している。
まず、図30(a)に示したように、第2層間絶縁膜47上に下地導電膜53を形成するまでの工程は、第3実施形態と同様である。
この後に、図31(a)に示すように、下地導電膜53をCMP法により研磨し、その下地導電膜53をプラグ51,52の上とその周辺のリセス47rにのみ残す。
この後に、図31(b)に示すように、アンモニアプラズマを導電性プラグ51、52上の下地導電膜35と第2層間絶縁膜47に施す。
これにより、図32(a)に示すように、下地導電膜53及び第2層間絶縁膜47上に形成される酸素拡散バリア層54の結晶方位は良好になり、第3実施形態と同様に、その上に形成される下部電極膜55、強誘電体膜56の結晶方位も良好になる。
以上のように、下地導電膜53及び第2層間絶縁膜47の研磨面をNH3プラズマに曝した後のプロセスは、第3実施形態と同じ工程を経て、図32(b)に示すような構造の半導体装置が形成される。
(第5の実施の形態)
図33、図34は、本発明の第4実施形態に係る半導体装置の形成工程を示す断面図である。なお、図33、図34において、図12〜図21と同じ符号は同じ要素を示している。
まず、図12(a)に示したように、シリコン基板30上にSTI31、pウェル32を形成した後に、第1層間絶縁膜42を形成するまでの工程は、第1実施形態と同様である。
その後に、図33(a)に示すように、フォトリソグラフィー法によりカバー絶縁膜41と第1層間絶縁膜42をパターニングして、pウェル32の両側寄りの第2、第3のソース/ドレイン拡散領域37、38のそれぞれを露出する第2、第3のコンタクトホール42b、42cを形成し、それらの中に導電性プラグ45b、45cを形成する。
導電性プラグ45b、45cの形成方法は第1実施形態と同様である。続いて、第1層間絶縁膜42上に直接に下地導電膜53を形成し、その上に酸素拡散バリア膜54を形成する。
下地導電膜53の形成については、第3、第4実施形態と同じ方法を採用してもよい。
続いて、図33(b)に示すように、第2実施形態と同じプロセスにより下地導電膜53の形成から第1層間絶縁膜64までの構造を形成する。
次に、図34(a)に示すように、pウェル32の中央寄りにあるソース/ドレイン領域36の上の第3層間絶縁膜64からカバー絶縁膜41をフォトリソグラフィー法により部分的にエッチングしてコンタクトホール64aを形成する。その後に、コンタクトホール64aの中に導電性プラグ79を埋め込む。導電性プラグ79は、第2実施形態の第4導電性プラグ69の形成と同じ方法によって形成される。
さらに、第2実施形態と同様な方法によりビアホール64bを強誘電体キャパシタQ2上に形成する。
この後に、図34(b)に示すように、ビアホール64a内を通してキャパシタ上部電極61に接続される配線72を第3層間絶縁膜64上に形成する。
以上の実施形態によれば、第3層間絶縁膜64には1回の導電性プラグ79の形成工程だけで済むことになり、第2実施形態に比べて工程が短くなる。
なお、上記の実施形態では、強誘電体膜としては、PZTを使用したが、例えば、熱処理により結晶構造がBi層状構造又はペロブスカイト構造となる膜を形成してもよい。このような膜としては、PZT膜の他、La、Ca、Sr及び/又はSi等を微量ドープしたPZT、SBT、BLT並びにBi系層状化合物などの一般式XYO3(X、Yは元素)で表される膜が挙げられる。また、強誘電体膜は、ゾル−ゲル法、有機金属分解法、CSD(Chemical Solution Deposition)法、化学気相蒸着法、エピタキシャル成長法、スパッタ法又はMOCVD法のいずれかの方法で形成される。
(第6の実施の形態)
本発明の第6実施形態に係る半導体装置の形成工程は、強誘電体キャパシタの上部電極を除いて第2実施形態とほぼ同じ工程を採用する。そこで、以下に上部電極の形成工程を説明する。
まず、図14(a)に示すようなシリコン基板30の上方に強誘電体膜56を形成するまでの工程は、第2実施形態に従う。
次に、図35(a)に示すように、強誘電体膜56上に第1導電性酸化膜57を形成する。第1導電性酸化膜57の形成に当たっては、先ず、強誘電体膜56上に、厚さが20nm〜70nm、例えば、25nm或いは50nmであって成膜の時点で結晶化するIrOx膜をスパッタ法により形成する。その成膜条件について、例えば、成膜温度を300℃とし、成膜ガスとしてAr及びO2を用い、Arの流量を140sccm、O2の流量を60sccmに設定し、スパッタパワーを例えば1kW程度とする。
第1導電性酸化膜57を形成する際には、シリコン基板30をウェーハステージに静電チャックしない。
ついで、シリコン基板30をRTA法で熱処理する。この熱処理は強誘電体膜56を完全に結晶化させ、強誘電体膜56を構成するPZT膜中の酸素欠損を補償すると同時に、プラズマダメージを受けた第1導電性酸化膜56の膜質も回復できる。RTA法の条件については、加熱雰囲気内に置かれる基板温度を725℃に設定し、加熱雰囲気内に酸素を流量200sccm、Arを流量1800sccmで導入し、さらに熱処理時間を60秒間とする。
次いで、図35(b)に示すように、IrOxの第1導電性酸化膜57の上にIrOyの第2導電性酸化膜58をスパッタ法によって50nm〜200nmの厚さ、好ましくは100nm〜180nmの厚さ、より好ましくは125nm以上、150nm以下の厚さに形成する。この時、成膜温度を30℃以上、100℃以下の温度範囲、好ましくは50℃以上、75℃以下の範囲内、より好ましくは60℃に設定する。第2導電性酸化膜58は、成膜の時点でIrOyが微結晶化して石垣状或いは柱状に多数結合していることが望ましい。
ここで、成膜温度を例えば60℃に設定するために、シリコン基板30を静電チャックESで固定する。
以上の条件で形成されたIrOyからなる第2導電性酸化膜58は、異常酸化がなく、きれいな結晶膜となる。この際、工程劣化を抑えるために、第1実施形態と同様に、IrOy膜はIrO2の化学量論組成に近い組成を有するので、水素に対して触媒作用を生させにくく、水素ラジカルによる強誘電体膜56の還元が抑制され、キャパシタの水素耐性が向上する。
なお、第1、第2導電性酸化膜57、58を第2実施形態に示した材料又は積層構造から構成してもよい。また、強誘電体膜56、第1、第2導電性酸化膜57、58の形成については、第1実施形態に示した第2〜第5例の工程を含む方法を採用してもよい。
次に、RTA法によりシリコン基板30を熱処理する。その条件として、例えば基板温度を700℃に設定し、酸素を流量20sccm、Arを流量2000sccmで導入する雰囲気中で基板の熱処理時間を60秒間とする。この熱処理によれば、強誘電体膜56及び第1、2導電性酸化膜57、58の密着性が向上する上に、第2導電性酸化膜58の結晶性をより安定させ、酸素欠損などの欠陥をなくす。
続いて、図35(c)に示すように、IrOyからなる第2導電性酸化膜58の上に、厚さが50nm〜150nmのIrあるいはRu等の貴金属又は貴金属含有材料からなる金属膜59を形成する。Irの場合、例えば、基板温度を400℃に設定し、成膜雰囲気中にArを流量199sccmで導入するスパッタ法により形成する。
以上の金属膜59、第2導電性酸化膜58及び第1導電性酸化膜57は強誘電体キャパシタの上部電極61の少なくとも一部を構成する。
その後の工程は、第2実施形態と同じ方法を採用する。
次に、上部電極を構成する第2導電性酸化膜58の膜厚について、従来との比較において説明する。
まず、強誘電体キャパシタを構成する上部電極について従来技術と本実施形態を比較するために計4種類の第1〜第4の上部電極をそれぞれ異なるウェーハ上に形成した。
第1の上部電極は、上記の特許文献2に記載された条件によって形成される。その方法は、第1導電酸化性膜となるIrOxを本実施形態に示したと同様な条件で50nmの膜厚に形成した後に熱処理し、その後に第2導電性酸化膜となるIrOyを形成するという工程を有している。この場合、成膜チャンバ内では、基板を静電チャックせずにステージに載せる。
IrOyの形成工程は、まず、Arの流量を100sccm、O2の流量を100sccm、成膜パワーを1kWに設定して75nmの厚さに形成した後に、その成膜パワーを2kwに変更して25nmの厚さに形成するという2ステップから構成される。これにより計100nmの厚さの第2導電性酸化膜を形成する。
成膜の途中で成膜パワーを上げているのは、厚さ100nmのIrOy膜の全てを成膜パワー1kWにして成膜すると、IrOyの酸化度が高くなるので表面が異常成長してしまうからである。
従来方法では、IrOy膜の形成時に、基板が静電チャック無しでウェーハステージに載っているので、基板温度は成膜中に上昇する。例えば、2ステップの条件で厚さ100nmのIrOy膜を成長した後には成膜用プラズマの影響で基板温度は100℃以上になる。
その後、第2実施形態と同じ方法で熱処理を行い、さらに第2導電性酸化膜上にIrの第3導電性膜を100nmの厚さに形成する。
このような方法で形成した第1の上部電極は、厚さ50nmのIrOx膜と、厚さ100nmのIrOy膜と、厚さ100nmのIr膜を順に形成して構成され、そのトータル膜厚は250nmとなる。
第2、第3及び第4の上部電極のそれぞれは、本実施形態に係る半導体装置内の強誘電体キャパシタを構成する。
第2の上部電極は、厚さ50nmのIrOx膜と、厚さ100nmのIrOy膜と、厚さ100nmのIr膜を順に形成して構成される。
第3の上部電極は、厚さ25nmのIrOx膜と、厚さ125nmのIrOy膜と、厚さ100nmのIr膜を順に形成して構成される。
第4の上部電極は、厚さ25nmのIrOx膜と、厚さ150nmのIrOy膜と、膜厚さ75nmのIr膜を順に形成して構成される。
以上の第2〜第4の上部電極の総膜厚は第1の上部電極の総膜厚と同じになるが、IrOy膜の形成時に、静電チャックによりウェーハステージに保持され基板の温度が第2実施形態に示した60℃となるので、第2〜第4の上部電極のIrOy膜は、第1の上部電極のIrOy膜とは膜質が異なる。即ち、静電チャックをオンにして使用するとIrOy膜形成時の成膜温度の上昇が抑制される。
以上の4種類の上部電極を形成した後に、第2実施形態に示したと同様に、各ウェーハ上で金属膜59の形成から5層構造の金属配線形成までの工程を実施し、プロセスアウト後にモニター測定を行った。
測定対象となるモニターは4種類の強誘電体キャパシタであって、それぞれ異なるウェーハに複数形成されている。第1のモニターの強誘電体キャパシタは第1の上部電極を有し、第2のモニターの強誘電体キャパシタは第2の上部電極を有し、第3のモニターの強誘電体キャパシタは第3の上部電極を有し、第4のモニターの強誘電体キャパシタは第4の上部電極を有している。それらのモニターは、それぞれ0.7μm×0.7μmの平面形状であって工程劣化しやすい単ビットモニターである。
各ウェーハの複数箇所に形成された複数のモニター、即ち複数の強誘電体キャパシタの反転電荷量の測定結果の分布をウェーハ毎に図36A、図36B、図36C、図36Dに示す。また、それらの反転電荷量の各ウェーハ面内分布の中心値と中心値±3σ(標準偏差)の比較結果を図37に示す。
図36A、図37に示すように、従来方法で形成した第1の上部電極を有する複数の第1のモニターのそれぞれの単ビット反転電荷量QSW0は非常に低く、QSW0のウェーハ面内分布のバラツキも大きい。これは、第1の上部電極の耐工程劣化能力が低いからである。
耐工程劣化能力が低いと、キャパシタ形成後の多層配線構造の形成工程において、層間絶縁膜に含まれる水或いは水素が第1の上部電極に浸入し、さらにその下の強誘電体膜の強誘電性を破壊することになる。これにより、第1のモニターについては、ウェーハ面内の反転電荷量QSW0は全体的に小さく、しかも、ウェーハにおいて15μC/cm2未満のモニターが半分程度存在する。
一方、本実施形態に係る複数の第2のモニターのそれぞれの単ビット反転電荷量QSW0は、図36B、図37示すような特性となり、従来構造の第1のモニターの特性に比べて大幅に向上している。しかしながら、単ビット反転電荷量の面内分布を示す図36Bを見ると、単ビット反転電荷量QSW0が15μC/cm2未満の小さいモニターがまだ僅かに存在する。
本実施形態に係る複数の第3のモニターのそれぞれの単ビット反転電荷量QSW0は、図36C、図37に示すような特性となり、単ビット反転電荷量の面内分布、中心値ともに第2のモニターの特性に比べて向上している。また、図36Cにおいて単ビット反転電荷量QSW0は全ての領域で20μC/cm2以上であり、25μC/cm2未満の領域が1つだけ存在する。
これは、第3のモニターの上部電極のIrOx膜を第2のモニターのそれよりも薄くすることによって、IrOx膜形成後の熱処理時にIrOx膜と強誘電体膜の界面に酸素を多く供給するこができることと、IrOy膜の膜厚を第2のモニターのそれより厚い125nmにすることにより触媒効果を低減できることに起因すると考えられる。
従って、IrOxの第1導電性酸化膜をできるだけ薄くし、また、IrOyの第2導電性酸化膜をできるだけ厚く形成すことが好ましい。しかし、第2導電性酸化膜が厚すぎると逆に劣化が生じ易くなる。そのような上部電極の構成を採用することにより、単ビットモニターの反転電荷量QSW0は通常のセルアレイ並みになり、工程劣化はほとんど見られない。
本実施形態に係る複数の第4のモニターのそれぞれの単ビット反転電荷量QSW0は、図36D、図37に示すような特性となり、ウェーハ上の各単ビット反転電荷量QSW0の中心値は第3のモニターとほぼ同じになっている。しかし、単ビット反転電荷量の面内分布を示す図36Dを見ると、反転電荷量QSW0が25μC/cm2〜30μC/cm2未満の小さい第4のモニターは1つだけであり、その他は全て30μC/cm2以上、45μC/cm2以下と大きくなっている。
しかも、第4のモニターは、図37に示すように、第3のモニターに比べて±3σが小さくなっている。3σが小さいということは、第3のモニターに比べ、第4のモニターの単ビット反転電荷量QSW0のウェーハ面内分布のバラツキが改善していることを意味する。
以上のことから、第4のモニターによれば、ウェーハ面全体のキャパシタ特性の劣化がさらに抑制され、これによりデバイスの単ビット不良問題を激減でき、歩留まり及びリテンション特性を大幅に向上できる。従って、第4のモニターの形成条件及びその構成の採用は強誘電体キャパシタの製造に非常に有効な方法及び構造といえる。
ところで、第4のモニターにおいて、第2導電性酸化膜を構成するIrOyの厚さは150nmであり、それ以上厚くなると、IrOy膜の表面が異常成長しやすくなる。IrOy膜の表面に異常成長が発生すると耐工程劣化能力が低くなる。
これを改善する方法は、IrOyをスパッタの成膜パワー1kWで150nmの厚さに成膜した後に、成膜パワーを2kWに変更して酸化度を若干低くする方法がある。これによれば、耐工程劣化能力を持つIrOyの第2導電性酸化膜の膜厚の上限はさらに厚くなる。しかしながら、上部電極が厚すぎとエッチングが難くなるので、その膜厚の上限は200nm程度、好ましくは180nmである。
以上の結果より、静電チャックにより保持されたシリコン基板40の上方に形成される第2導電性酸化膜58の厚さは50nm〜200nm、好ましくは100nm〜180nmが望ましく、より最適な条件は125nm〜150nmであると考えられる。
第2〜第4の上部電極と同じ条件、特に第3、第4の上部電極と同じ条件で成膜した上部電極58は、形成後の各工程での劣化を従来よりも大幅に抑制でき、デバイスの歩留まり、リテンション特性を大幅に向上できる。
次に、膜厚の異なる第2導電性酸化膜58であるIrOy膜の表面を金属顕微鏡により観察した画像の写真を図38(a)〜(d)に示す。それらの膜厚は、125nm、150nm、160nm、210nmである。
図38(a)、(b)はそれぞれ厚さ125nm、150nmのIrOy膜の表面を示し、特に異常は見られない。また、図38(c)は厚さ160nmのIrOy膜の表面を示し、僅かに異常が見られる。図38(d)は、厚さ210nmのIrOy膜の表面を示し、異常酸化が発生している。
そのような実験結果から、導電性貴金属酸化膜の膜厚として125nm〜150nmを選択することは、良好な結晶の第2導電性酸化膜58を得るために有効であることがわかる。
以上説明した実施形態は典型例として挙げたに過ぎず、その各実施形態の構成要素を組み合わせること、その変形およびバリエーションは当業者にとって明らかであり、当業者であれば本発明の原理および請求の範囲に記載した発明の範囲を逸脱することなく上述の実施形態の種々の変形を行えることは明らかである。
本願は、第2導電性酸化膜が成膜する時、成膜条件をうまくコントロールし、成膜後第2導電性酸化膜が石垣状或いは柱状に集合した微結晶から構成される。その後の熱処理工程でも、IrOyが微結晶化からさらに結晶化するが、結晶のシュリンクの発生が抑えられ、きれいな第2導電酸化膜が得られる。そのような構造の第2導電性酸化膜は、水素を含む雰囲気中に曝された場合でも、膜中の金属成分の触媒作用が低減して、水素を活性化しにくくなり、ひいては強誘電体膜の特性を従来よりも向上できる。
さらに、キャパシタ上部電極のトータル膜厚さを変更することなく、第1導電性酸化膜の膜厚を第2導電性酸化膜より薄くして、上部電極と強誘電体膜の界面により多くの酸素を供給し、第2導電性酸化膜の膜厚を厚くさせることより、工程劣化をなくし、特に単ビットセル反転電荷量の劣化及びバラツキを改善することができる。
第5例は、第2導電性酸化膜11bを形成した後に、再度RTAで650〜750℃の温度範囲、例えば700℃の熱処理を行う工程を含む方法である。この方法は、上部電極膜11と強誘電体膜10の密着性を向上する上に、上部電極膜11の結晶を更に良くする。
次に、図7(b)に示すように、キャパシタ上部電極11qの表面の一部、キャパシタ下部電極9qの表面の一部、及びプラグ15の表面が露出した状態で、第2の層間絶縁膜14の上にAl膜を形成し、このAl膜のパターニングを行うことにより、Al配線17a〜17cを形成する。この場合、第1のAl配線17aはWプラグ15に接続され、第2のAl配線17bはコンタクトホール14bを通してキャパシタ上部電極11qに接続され、また、第3のAl配線17cはコンタクトホール14cを通してキャパシタ下部電極9qに接続される。
ところで、上部電極膜11を構成する第1、第2導電性酸化膜11a、11bのそれぞれの構成金属をA、B、酸素をOとすれば、第1導電性酸化膜11aは、成膜当初には化学量論組成パラメータx1を使って化学式AOx1で表される。さらに、その後のプロセスを経た実際の状態、例えば成膜後の熱処理の状態やキャパシタの回復熱処理後の状態で実際の組成パラメータx2を使って化学式AOx2で表される。なお、AとBは、同一であっても異なってもよい。異なる例としては、AとBの一方がIrであり他方がRuである層である。
次に、シリコン基板30の上側全面に、スパッタ法によりコバルト層等の高融点金属層を形成した後、この高融点金属層を加熱してシリコンと反応させ、ソース/ドレイン領域36,37,38表層に高融点金属シリサイド層39を形成する。この工程では、ゲート電極34,35の表層部分にも高融点金属シリサイド層40が形成され、それによりゲート電極34,35が低抵抗化されることになる。素子分離絶縁膜31の上等で未反応となっている高融点金属層は、ウエットエッチングにより除去される。
次に、図12(b)に示すように、フォトリソグラフィー法によりカバー絶縁膜41と第1層間絶縁膜42をパターニングして、0.25μmの径で第1〜第3のソース/ドレイン拡散領域36〜38のそれぞれを露出する第1〜第3のコンタクトホール42a〜42cを形成し、それらの中に導電性プラグ45a〜45cを形成する。
次に、第4、第5のコンタクトホール48b,48c内に、第1の密着膜43、第1のW膜44と同じ条件で、第2の密着膜49と第2のW膜50を順に形成する。その後に、CMPにより第2のW膜50と第2の密着膜49を第2層間絶縁膜47の上面上から除去する。
続いて、PZT膜の全面に、例えばスパッタ法により、アモルファス強誘電体膜を形成する。アモルファス強誘電体膜としては、例えば膜厚が1nm〜30nm(例えば20nm)の強誘電体膜を形成する。
強誘電体膜をMOCVDで成膜する場合は、例えば鉛(Pb)供給用の有機ソースとして、Pb(DPM)2( Pb(C11H19O2)2) をTHF液に溶かした材料が用いられる。また、ジルコニウム(Zr)供給用の有機ソースとして、Zr(DMHD)4
(Zr(C 9H15O2)4)をTHF液に溶かした材料が用いられる。チタン(Ti)供給用の有機ソースとして、Ti(O−iPr)2(DPM)2(Ti(C3H7O)2(C11H19O2)2 )をTHF液に溶かした材料が用いられる。
例えば、図23のリファレンスの強誘電体キャパシタに示すように、第2導電性酸化膜58aの成長の際に、温度コントロールをせずに、成膜パワーを変化させて、下層部58bにアモルファス膜、上層部58cに柱状構造の結晶膜を形成する。上層部が結晶化される理由は、パワーの変化による成膜中の基板温度の上昇によるものである。この場合、第2導電性酸化膜58aには異常成長が見られない。
研磨されたままの状態にある下地導電膜53の上面は研磨によって歪んだ状態となりやすい。そして、結晶に歪が発生している下地導電膜53の上方にキャパシタの下部電極膜55を形成すると、その歪みを下部電極膜55が拾ってしまってその結晶性が劣化し、ひいてはその上の強誘電体膜56の強誘電体特性が劣化することになる。
これにより、下地導電膜53の上面では、その後に形成される酸素拡散バリア膜54を構成する元素が移動しやすくなり、酸素拡散バリア膜54の結晶方位が良好になる。従って、酸素拡散バリア膜54の上の下部電極膜55、強誘電体膜56の強誘電体特性が良好になる。
ついで、シリコン基板30をRTA法で熱処理する。この熱処理は強誘電体膜56を完全に結晶化させ、強誘電体膜56を構成するPZT膜中の酸素欠損を補償すると同時に、プラズマダメージを受けた第1導電性酸化膜57の膜質も回復できる。RTA法の条件については、加熱雰囲気内に置かれる基板温度を725℃に設定し、加熱雰囲気内に酸素を流量200sccm、Arを流量1800sccmで導入し、さらに熱処理時間を60秒間とする。