JPWO2008093886A1 - Mcf7由来細胞 - Google Patents

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Abstract

本発明は、乳癌関連細胞の高転移能・高浸潤能獲得モデルを作製することを目的とする。本発明は、MCF7細胞に由来する細胞であって、MCF7細胞に比較して有意に高い浸潤能または転移能を有するMCF7由来細胞を提供する。本発明のMCF7由来細胞は、マトリゲル等の基底膜調製物又はその類似物通過能を獲得したMCF7細胞を回収することによって得ることができる。

Description

本発明は、低転移性のヒト乳癌由来樹立細胞株であるMCF7細胞を所定の条件で継代培養することによって得られる、高浸潤性または高転移性MCF7由来細胞に関する。
近年、医療機器の進歩により極めて早期の癌診断が可能になり、癌の治癒率、特に術後5年生存率は徐々に上昇し、癌の死亡率は1975年以降緩やかに減少してきている。しかし乳癌をはじめとする転移性の高い上皮性癌はその範疇ではない。現在国内の乳癌罹患者数は4万人を超えており、その数は未だに増加傾向にある。しかも初発乳癌の切除手術後の5年生存率が90%以上であるにも関わらず、乳癌罹患者の約40%は死に至るという統計がある。
このような乳癌を含めた上皮性癌患者の主な死因は癌の遠隔転移や再発によるが、転移や再発を正確に予測できないために、本来ならば不要な抗癌剤治療を長期にわたって行われ、副作用で苦しんでいる患者も多く存在する。例えば乳癌の場合、腫瘍の大きさや腋窩リンパ節転移の有無等の予後マーカーはあるが、判定精度が低く患者の約30%しか転移再発リスクを予測できない。また癌の早期発見が可能になったため原発巣は小さく、その時点で転移巣が存在しても極微小であるか、小さな播種性癌細胞として血中を漂っている可能性が高く、視覚的に転移を捕らえることが非常に困難であり、上記のような予後マーカーは有効ではなくなってきている。したがって癌細胞が転移能を獲得する極めて初期に生じる変化を捕らえることが重要である。
バイオマーカーの探索は数10億ドル市場として世界中の注目を浴びており、多くの研究者と資金を投じて研究が行われているが、疾患特異的マーカーの発見に至るには困難を極めている。もちろん癌転移マーカーや予後予測マーカーもその例外ではない。最近DNAマイクロアレイの解析により原発巣と転移巣では遺伝子の発現プロファイルが異なるだけでなく、予後不良な癌は早い時期に遺伝子変異が入って転移形成能を獲得することが報告された。また、創傷と腫瘍の生理現象(マトリックスリモデリング、細胞運動、血管形成の活性化)の類似を根拠に、乳癌患者の創傷応答遺伝子の発現パターンを調べたところ、これらの遺伝子が予後不良を予測できるマーカーとしての可能性が示された。このようなDNAマイクロアレイによる解析結果から、約70個の遺伝子の発現プロファイルが癌転移とリンクすることが判明してきた(例えば、非特許文献1を参照)。しかし疾患の不均一さや個人差による遺伝子発現への影響や解析方法の複雑さから判定精度が安定しておらず、臨床応用はされていない。
薬物誘導性遺伝子の同定により発見されたHER2は乳癌の予後マーカーとして有効であることが示されてきている。特にこのレセプターに対するモノクローナル抗体trastuzumabは、HER2陽性早期乳癌患者への投与により再発リスクの軽減及び延命効果があることが報告された。また癌浸潤時に発現量が増大するプラスミノーゲンアクチベーターとその阻害因子なども予後マーカーとして有効であり、特に化学療法への感受性を規定する因子として臨床応用されるようになってきた。
しかしながら、これらのマーカーを発現していない乳癌患者においても遠隔転移や再発が生ずることや、trastuzumabや化学療法に対する感受性が低い乳癌患者においても遠隔転移や再発が生ずることから、転移の発生メカニズムを調べ、転移能を獲得する初期ステージでの変化を捉え、癌転移、再発等の予後予測マーカーを探索するために、乳癌関連細胞の高転移能獲得モデルが必要とされていた。
Laura J.van’t Veer,Hongyue Dai,Mark J.van de Vijver et al.(2002)Nature,Vol 415,530−536
癌の転移においては、癌細胞の接着、浸潤、移動のステップが繰り返される。転移能の高い癌細胞は接着性、浸潤性、移動性が高い。特に、癌転移の最初のステップは、基底膜から周辺組織への浸潤であるため、転移の発生のメカニズムや、転移能を獲得する初期のステージには細胞の浸潤性が深く関与していると考えられる。
そこで、本発明は、乳癌関連細胞の高転移能獲得または高浸潤能獲得モデルを作製することを目的とする。
本発明者らは、上記課題に鑑みて研究を重ねた結果、低転移性のヒト乳癌由来樹立細胞株MCF7細胞をマトリゲル(商標。以下同様)上に播種し、マトリゲル通過能を有する細胞を回収しては再びマトリゲル上に播種する工程を繰り返すことにより、浸潤性、転移能が高く、MCF7細胞とは形態も異なる新規な細胞株を得ることに成功し、本発明を完成した。
即ち、本発明は、
〔1〕MCF7細胞に由来する細胞であって、MCF7細胞に比較して有意に高い浸潤能を有するMCF7由来細胞;
〔2〕MCF7細胞に由来する細胞であって、MCF7細胞に比較して有意に高い転移能を有するMCF7由来細胞;
〔3〕HER2陰性である、上記〔1〕又は〔2〕に記載のMCF7由来細胞;
〔4〕ESTR陽性である、上記〔1〕から〔3〕のいずれか1項に記載のMCF7由来細胞;
〔5〕CD44遺伝子、CXCL12遺伝子、PLAU遺伝子、及びVEGF遺伝子から
なる群より選択される少なくとも一つの遺伝子の発現量が、MCF7細胞の1.5倍以上
である、上記〔1〕から〔4〕のいずれか1項に記載のMCF7由来細胞;
〔6〕スフェロイドを形成することを特徴とする、上記〔1〕から〔5〕のいずれか1項
に記載のMCF7由来細胞;
〔7〕実験用動物に移植した場合、移植部位に原発腫瘍巣を形成する能力を有する、上記〔1〕から〔6〕のいずれか1項に記載のMCF7由来細胞;
〔8〕実験用動物に移植した場合、近位リンパ節、遠隔リンパ節、又は脳に転移巣を形成する能力を有する、上記〔1〕から〔7〕のいずれか1項に記載のMCF7由来細胞;
〔9〕MCF7細胞を基底膜調製物又はその類似物上に播種し、該基底膜調製物又はその類似物を通過するように変異した細胞を回収することによって得られる、上記〔1〕から〔8〕のいずれか1項に記載のMCF7由来細胞;
〔10〕MCF7−14細胞(受領番号FERM BP−10944)である、MCF7由来細胞;
〔11〕GFP遺伝子、YFP遺伝子、CFP遺伝子、βガラクトシダーゼ遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子、及びエクオリン遺伝子からなる群より選択される少なくとも一つの遺伝子が導入されている、上記〔1〕から〔10〕のいずれか1項に記載のMCF7由来細胞;
〔12〕上記〔1〕から〔11〕のいずれか1項に記載のMCF7由来細胞が移植された実験用動物;
〔13〕上記〔1〕から〔11〕のいずれか1項に記載のMCF7由来細胞を含む、癌転移若しくは再発関連因子又は抗癌剤のスクリーニング系;
〔14〕上記〔12〕に記載の実験用動物を含む、癌転移若しくは再発関連因子又は抗癌剤のスクリーニング系;及び
〔15〕MCF7細胞から、高浸潤能または高転移能を獲得した変異細胞株を樹立する方法であって、MCF7細胞を基底膜調製物又はその類似物上に播種した後、該基底膜調製物又はその類似物通過能を有する細胞を回収しては再び基底膜調製物又はその類似物上に播種する工程を少なくとも7回繰り返すことを特徴とする方法、に関する。
図1は、マトリゲルインベンジョンチャンバーを用いた高浸潤性細胞株樹立方法の概要を示す。
図2は、マトリゲルインベージョンチャンバーを通過した細胞を固定しクリスタルバイオレット染色した像を示す。
図3は、マトリゲルを通過し下側に移動した細胞を100倍の倍率で顕微鏡観察した像を示す。
図4は、マトリゲルを通過し下側に移動した細胞数の平均を示す。
図5は、MCF7細胞(A)とMCF7−14細胞(B)の位相差像を示す。
図6は、MCF7細胞及びMCF7−14細胞の増殖曲線を示す。
図7は、MCF7細胞及びMCF7−14細胞のWound healing アッセイの結果を示す。
図8は、マトリゲルを含まない細胞培養用ディッシュで培養したときのMMP活性をザイモグラム法で検出した結果を示す。
図9は、マトリゲルインベージョンチャンバーで培養したときのMMP活性をザイモグラム法で検出した結果を示す。
図10は、HER2遺伝子及びESTR遺伝子の発現量をウエスタンブロット解析により調べた結果を示す。
図11は、細胞の移植方法の概要を示す。
図12は、MCF7−GFP細胞(A、C)とMCF7−14−GFP細胞(B、D)を移植して4週間後のマウスの解剖結果を示す。AとBは解剖像、CとDはGFP発現細胞の挙動を蛍光観察した結果である。
図13は、MCF7−GFP細胞(A、C、E)とMCF7−14−GFP細胞(B、D、F)を移植したマウスから4週間後に摘出した肺を観察した結果を示す。AとBは肺の解剖像、CとDは蛍光観察像、EとFは摘出した肺から凍結切片を作製し抗GFP抗体により免疫染色した結果を示す。
図14は、MCF7−GFP細胞を移植したマウスから4週間後に摘出した乳腺の移植部位(A、C)と近位リンパ節(B、D)を観察した結果を示す。
図15は、MCF7−14−GFP細胞を移植したマウスから4週間後に摘出した乳腺の移植部位(A、C)と近位リンパ節(B、D)を観察した結果を示す。
図16は、MCF7−14−GFP細胞移植マウスから移植4週間後にすい臓周辺部位を摘出して観察した結果を示す。
図17は、移植4週間後のMCF7−14−GFP細胞移植マウスからすい臓部分の腫瘤を摘出、凍結組織切片を作成し、明視野および蛍光観察した結果を示す。
図18は、移植4週間後のマウスから、MCF7−GFP細胞移植部、MCF7−14−GFP細胞の移植部およびすい臓部分の腫瘤の凍結切片を作成し、上皮マーカーの免疫染色を行った結果を示す。
図19は、MCF7−14−GFP細胞をマウスに移植してから12週間後のマウス腹部(A、B)、摘出したすい臓周辺部位(C、D)と脳(E、F)を観察した結果を示す。AとBにおいて、矢印は移植部位、丸で囲んだ部分はすい臓の周辺を示す。
符号の説明
符号は、それぞれ1…マトリゲルインベージョンチャンバー、10…セルカルチャーインサート、12…メンブレン、13…マトリゲル、14…細胞、2…ディッシュを示す。
以下、本発明について、その好ましい態様を具体的に説明する。
本発明に係るMCF7由来細胞は、高い浸潤性を獲得したMCF7細胞の変異株である。ヒト乳癌に由来するMCF7細胞は本来浸潤性が低く、従って低転移性であり、ヌードマウス等に移植しても原発巣は形成するが転移しない。これに対し、本発明のMCF7由来細胞は、もとのMCF7細胞に比較して、有意に高い浸潤性を獲得した変異株である。
本発明において、「有意に高い浸潤能を有する」とは、細胞の浸潤性を測定する種々の方法のうちいずれかの方法で測定された浸潤能が、MCF7細胞の浸潤能より統計的に有意に高いことを意味する。また、細胞の浸潤性は、例えば、生体内の基底膜と類似した環境を提供するマトリゲル通過能で評価することができる。マトリゲル上に、MCF7由来細胞を播種し、播種した細胞数に対するマトリゲルを通過した細胞数の割合が、MCF7細胞で同様の試験を行った場合に比較して50倍以上、好ましくは100倍以上、さらに好ましくは500倍以上高いことを、浸潤性が高いということができる。
本発明のMCF7由来細胞は、もとのMCF7細胞に比較して有意に高い転移能を有する。MCF7細胞は低転移性であり、ヌードマウス等に移植しても原発巣は形成するが転移はしない。しかし、本発明のMCF7由来細胞は、高い転移能を獲得する変異を有している。本発明において「有意に高い転移能を有する」とは、細胞の転移能を評価する種々の方法のうちいずれかの方法によって求めた転移能が、MCF7細胞の転移能よりも統計的に有意に高いことを意味する。また、例えば、細胞を実験用動物に移植した場合に、少なくとも50%以上、好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上の個体において近接するリンパ節への転移が見られることを、転移能が高いということができる。
また、本発明のMCF7由来細胞は、HER2陰性であることを特徴とする。ここで、「HER2陰性」とはHER2タンパク質が標準的なウエスタンブロッティング法での検出限界以下であることを言う。HER2遺伝子及びタンパク質は高い転移能力を持つ乳癌由来の悪性腫瘍では高い発現が認められることが多く、診断及び治療法の決定にしばしば用いられている腫瘍マーカーである。本発明のMCF7由来細胞は高浸潤能・高転移能を有するにも関わらず、転移能に関連するHER2陰性であることから、trastuzmabに対する感受性の低い乳癌患モデルとして、転移や再発の研究に利用できる可能性が高いことが示唆される。
また、本発明のMCF7由来細胞は、高浸潤能または高転移能を有するにも関わらず、ESTR陽性である。ここで、ESTRはエストロゲン受容体のことであり、「ESTR陽性」とは標準的なウエスタンブロッティング法で明確なバンドが検出可能であることを言う。このように、ESTR陽性であることから、ホルモン治療に対しても高い抵抗性を示すものと考えられ、本発明のMCF7由来細胞が、ホルモン治療に対する感受性の低い乳癌モデルとして、転移や再発の研究に利用できる可能性が高いことが示唆される。
また、本発明のMCF7由来細胞は、CD44遺伝子、CXCL12遺伝子、PLAU遺伝子、及びVEGF遺伝子からなる群より選択される少なくとも一つの遺伝子の発現量が、MCF7細胞の1.5倍以上である。遺伝子の発現量を測定する方法には種々のものがあるが、いずれかの方法で測定した場合に、MCF7細胞の1.5倍以上であればよい。CD44遺伝子については好ましくは2倍以上、CXCL12遺伝子については好ましくは5倍以上、PLAU遺伝子については好ましくは10倍以上、VEGF遺伝子については好ましくは1.8倍以上である。これらの遺伝子は、いずれも転移能を有する細胞で発現量が多いことが知られている。
また、本発明のMCF7由来細胞は、MCF7細胞と異なり、スフェロイドを形成する。MCF7細胞を培養すると、通常4〜5日でコンフルエントになり、容器から剥がれて死亡するところ、本発明のMCF7由来細胞は、スフェロイドを形成し、10日以上培養可能であったことから、長期培養・高密度培養が可能であるものと推測される。このような性質は、本発明のMCF7由来細胞から、タンパク質や核酸等、特定の物質を抽出して研究する場合に有用である。
また、本発明のMCF7由来細胞は、実験用動物に移植した場合、移植部位に原発腫瘍巣を形成する能力を有する。一般に、MCF7細胞等の癌細胞は、癌特異的抗原の発現の上昇等により、移植しても数日で剥離することが多いことが知られているところ、本発明のMCF7由来細胞は、移植された個体で安定に定着する。ここで、安定に定着するとは、例えば、移植した個体のうち少なくとも50%、好ましくは60%、さらに好ましくは70%、さらに好ましくは80%の個体において、28日以上剥離しない場合をいう。
また、本発明のMCF7由来細胞は、実験用動物に移植した場合、近位リンパ節、遠隔リンパ節、又は脳に転移巣を形成する能力を有する。
このようなMCF7由来細胞は、例えば、MCF7細胞を基底膜と同等の性質を有する基底膜調製物又はその類似物上に播種し、該基底膜調製物又はその類似物を通過できるような変異が自然発生的に生じた細胞を回収することによって得ることができる。さらに、基底膜調製物又はその類似物通過能を有する細胞を、再び基底膜調製物又はその類似物上に播種し、基底膜調製物又はその類似物通過能を有する細胞を回収する工程を繰り返すことにより、より高い浸潤能または転移能を有するMCF7由来細胞株を作製することができる。基底膜調製物又はその類似物の例としては、例えば、マトリゲルを挙げることができるが、ここでマトリゲルとは細胞外基質タンパク質(ECM)が豊富なEHSマウス腫瘍細胞から抽出された可溶化基底膜調製品であり、生体内の基底膜と類似した環境を提供するものである。マトリゲルを使用する場合には、MCF7細胞をマトリゲルに播種した後、マトリゲルを通過する細胞を回収して再びマトリゲル上に播種する工程を少なくとも7回、好ましくは8回、さらに好ましくは9回、最も好ましくは10回繰り返すことにより、十分に高い浸潤能または転移能を獲得したMCF7由来細胞を得ることができる。また、基底膜調製物の類似物の例としては、アガロース又はコラーゲンゲルが挙げられる。MCF7由来細胞株は培養中に培地中の線維成分により移動能が制限され、浸潤能や転移能が低くなると考えられるが、このような線維成分を基底膜調製物の類似物としてMCF7由来細胞を得ることも可能である。
このような本発明のMCF7由来細胞としては、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに寄託したMCF7−14細胞株が挙げられる。
[寄託された生物材料への言及]
1)寄託機関の名称及びあて名
独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター
日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6(郵便番号305−8566)
2)寄託日
平成19年1月10日(原寄託日)
3)受託番号
FERM BP−10944
この細胞は癌転移研究及び予後マーカー、創薬ターゲット探索等を行ううえで有用な情報を与える可能性が高い。たとえばDNAマイクロアレイやサブトラクション法などの遺伝子レベルでの解析に加えて、二次元電気泳動−質量分析といったタンパク質レベルでの詳細な解析を駆使することにより、高転移能や高浸潤能の獲得に特異的だと考えられる因子が同定される可能性が高い。また転移初期に変異する因子を捕らえることで、初発癌の発見と同時にその癌が転移性なのか予後予測ができるようになり、抗癌剤投与方法等の治療方針を立てる上で役立つ診断基準になる可能性が高い。新規予後マーカーとしての可能性だけではなく、同定された因子そのものが癌治療の標的分子になる可能性がある。転移細胞特異的に発現する因子が発見できれば、転移巣を形成する前の血中を漂っている播種性癌細胞をターゲッティングし、細胞死を誘導するドラッグデリバリーシステムの開発など創薬への貢献も大きい。さらに遺伝子レベル、タンパク質レベルなど様々な角度から転移現象を網羅的に解析することにより得た多くの情報は、転移のメカニズムを解明する糸口をいくつも提供すると考えられる。転移巣形成の分子メカニズムへの理解が深まれば、新しい癌治療戦略の発展にもつながる。
さらに、本発明は、GFP遺伝子、YFP遺伝子、CFP遺伝子、βガラクトシダーゼ遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子、及びエクオリン遺伝子からなる群より選択される少なくとも一つの遺伝子が導入されているMCF7由来細胞も提供する。このような細胞は、公知の遺伝子導入法又はそれに順ずる方法によって作製することができ、それぞれの遺伝子の表現型を種々の研究に利用することができて有用である。
また、本発明は、上述のMCF7由来細胞が移植された実験用動物をも提供する。このような実験用動物は、公知の方法又はそれに順ずる方法によって作製することができる。上述のように本発明に係るMCF7由来細胞は、高い浸潤能、転移能を有する上に移植能が高いことから、当該実験用動物は、乳癌モデルとして、転移や再発の研究等に有用である。尚、実験用動物としては、マウス、ラット、ハムスター類、スナネズミ、モルモット、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、サル類、トリ類、魚類、両生類等を用いることができる。
また、本発明は、上述のMCF7由来細胞を含む、癌転移若しくは再発関連因子又は抗癌剤のスクリーニング系を提供する。細胞を含むスクリーニング系は、公知の方法又はそれに順ずる方法で作製することができる。このスクリーニング系は、従来の乳癌の治療方法に感受性の低いMCF7由来細胞を含むので、浸潤阻害物質をスクリーニングすることができ、新規な乳癌の転移若しくは再発関連因子の発見や、新規な乳癌治療・予防薬の発見に寄与する有用なものである。
また、本発明は、上述のMCF7由来細胞を移植した実験用動物を含む、癌転移若しくは再発関連因子又は抗癌剤のスクリーニング系を提供する。このような実験用動物を含むスクリーニング系は、公知の方法又はそれに順ずる方法で作製することができる。このスクリーニング系は、転移阻害物質をスクリーニングすることができる有用なものである。
また、本発明は、MCF7細胞から高浸潤性または高転移能を獲得した変異細胞株を樹立するスクリーニング方法も提供する。当該方法は、MCF7細胞を基底膜調製物又はその類似物上に播種した後、該基底膜調製物又はその類似物通過能を有する細胞を回収しては再び基底膜調製物又はその類似物上に播種する工程を少なくとも7回繰り返すことを特徴とする。MCF7由来細胞の浸潤性・転移性を向上させる方法としては、点突然変異を誘発するなど人工変異誘発剤を用いる方法もあるが、導入できる変異のパターンが有限であることから浸潤性が十分に高くすることができない。また、生体内では生じない変異が生じる可能性があることから、乳癌モデルとしては適さない場合もある。しかしながら、本発明のスクリーニング方法によれば、薬剤等によって変異を誘発しないで極めて高い浸潤性を有するMCF7由来細胞を得ることができ、乳癌モデルとして転移の発生のメカニズムや、転移能を獲得する初期ステージでの変化を捉える研究に有用に用いられる。基底膜調製物又はその類似物としては、例えば、マトリゲルを使用することができる。
以下に本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。
1.細胞培養
MCF7細胞(Breast adenocarcinoma;Human)は10%FBS(Equitech BIO社製)含有RPMI 1640(SIGMA社製)培地で培養した。細胞は3日毎に公知の方法に従って継代した。
2.in vitro浸潤アッセイ及び低浸潤能細胞から高浸潤細胞の樹立
図1に示すように、MCF7細胞14をマトリゲルインベージョンチャンバー1(Becton Dickinson社製)のセルカルチャーインサート10に公知の方法に従って播種した。セルカルチャーインサート10の底部は、メンブレン12上にマトリゲル13がコーティングされており、マトリゲル通過能を有する細胞14のみがメンブレン12の下側に移動する。60時間後にメンブレン12の下側に移動した細胞(浸潤細胞)をトリプシン−EDTA処理により回収した。回収した細胞14はディッシュ2でサブコンフルエントになるまで培養し、再びマトリゲルインベージョンチャンバー1に播種した。以上の操作を14回繰り返し行った。またメンブレン12の下側に移動した細胞はクリスタルバイオレット染色し、全体像を観察するとともに、顕微鏡下で5視野選択して、移動した細胞数を数えた。
結果を図2〜4に示す。図2はクリスタルバイオレット染色像、図3は100倍の倍率で観察した顕微鏡像、図4は移動した細胞数を示している。controlはMCF7細胞を、数字はマトリゲルを通過させた回数を示す。マトリゲル13を通過した細胞を再びマトリゲル上に播種して通過させるというサイクルを14回繰り返した結果、浸潤能の高い細胞群(MCF7−14細胞)を得られた。
図5にMCF7細胞とMCF7−14細胞の位相差像を示す。MCF7細胞(図5A)とMCF7−14細胞(図5B)を比較すると、MCF7−14細胞の方が丸みを帯びていた。また、MCF7細胞はコンフルエントにすると剥離してしまうが、MCF7−14細胞はスフェロイドを形成し増殖し続けた。
3.細胞増殖曲線
MCF7細胞とMCF7−14細胞を96ウェルプレートに5×10細胞/ウェルで播種し1、2、3、4日後の細胞数をMTT法により計測した。
結果を図6に示す。縦軸は細胞数、横軸は培養日数を示す。MCF7細胞とMCF7−14細胞では、細胞増殖率には有意差はなかった。
4.Wound healing アッセイ
細胞の移動能を比較するために、Wound healing アッセイを行った。MCF7細胞とMCF7−14細胞を10cmディッシュでコンフルエントの状態まで培養し、マイクロピペットのチップで溝を作った。1、2、3、4日後の細胞の移動した様子(それぞれ3箇所の同一視野)を位相差顕微鏡で観察し、カメラで撮影した。細胞の移動度を調べるために、画像解析ソフトを用いて解析し、溝の幅を測定した。
結果を図7に示す。溝をつけてから0、1、2、3、4日後のMCF7細胞(図7A)とMCF7−14細胞(図7B)を比較すると、MCF7−14細胞の方が早く溝が埋まった。図7Cは、細胞が移動した距離の3視野の平均(%)を示す。図7D及び図7Eは、それぞれ、3日後のMCF7細胞及びMCF7−14細胞の拡大像である。MCF7−14細胞(図7E)では、アクチンストレスファイバーが活発に伸びていた。
5.ザイモグラムによるMMP活性の検証
次に、MCF7細胞及びMCF7−14細胞における、マトリックスメタプロテアーゼ(MMP)活性を測定した。MMPは、細胞外マトリックスを基質として分解する酵素であり、癌細胞の浸潤・転移形成に大きな役割を果たす。
12ウェルプレートに、MCF7細胞とMCF7−14細胞を2.5×10細胞/ウェルの濃度で、マトリゲルを含まない通常の培地と、マトリゲルを含む培地に播種した。翌日、培地を500μlの無血清培地に交換し、1、2、3時間後に培地を回収した。回収した培地はMicrocon(登録商標) YM30(ミリポア社製)を用いて遠心濃縮した。濃縮した培地とサンプルバッファーを混合し、10%ポリアクリルアミドゲルを用い、4□にて25mAで2時間電気泳動した。2.5%tritonX−100含有緩衝液を満たしたバットにゲルを入れ、室温で30分間、ゆっくりと浸透しながらSDSを取り除く作業を2回行なった。さらにゼラチナーゼ活性化溶液で37□、24時間インキュベーションした。その後CBB染色液で30分間染色し、さらに30分間脱色液で脱色した。
図8にマトリゲルを含まない細胞培養用ディッシュで培養した場合の結果を、図9にマトリゲルインベージョンチャンバーで培養したときの結果を示す。各図Aは、ザイモグラム法で用いたゲルの染色像であり、各図B及びCは、それぞれ、画像解析ソフトにより解析してMMP9とMMP2の活性を測定した結果である。図示されるとおり、培地にマトリゲルを含まずに培養した状態でも、培地にマトリゲルを含み浸潤させながら培養した場合であっても、MCF7−14細胞の方が、活性型MMPの発現量が高かった。
6.オリゴマイクロアレイ
MCF7細胞とMCF7−14細胞から公知の方法に従ってRNAを抽出し、公知の方法に従ってGeneChip(登録商標) Human Genome U 133 Plus 2.0 Array(Affymetrix社製)よる解析を行なった。その後、2倍以上変動した遺伝子と2倍以下の変動した遺伝子について“cancer”と“転移”に関与している遺伝子をGene springにより検索した。
結果を表1〜4に示す。2倍以上変動した1495遺伝子中、cancerに関与している遺伝子は13遺伝子(表1)、転移に関与している遺伝子は13遺伝子(表2)であった。また、0.5倍以下に変動した1363遺伝子中、cancerに関与している遺伝子は7遺伝子(表3)、転移に関与している遺伝子は0遺伝子であった。さらに乳癌に関与することが示唆された231遺伝子(非特許文献1を参照)のうち14遺伝子の変動が確認された(表4)。
7.GFP発現安定株の作製
MCF7細胞と樹立したMCF7−14細胞に、公知の方法に従ってGFP発現プラスミドベクターを遺伝子導入し、約1週間GFP発現細胞をスクリーニングした。クローニングリングを用いて30クローンをクローニングし、約3週間、選択培地(400μg/mlのG418(SIGMA社製)添加培地)と維持培地(50μg/mlのG418添加培地)で繰り返し培養することでGFP発現安定株を樹立した。以下、それぞれ、MCF7−GFP細胞、MCF7−14−GFP細胞と称する。
8.ウエスタンブロット解析
MCF7細胞、MCF7−14細胞、MCF7−GFP細胞、MCF7−14−GFP細胞から蛋白質を抽出し、2〜15%の濃度勾配のあるポリアクリルアミドゲルを用いて公知の方法に従ってSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動を行った。分離した蛋白質をPVDFメンブレンに転写し、5%スキムミルクでブロッキング後に、抗HER2抗体、あるいは抗エストロゲンレセプター抗体と反応させた。さらにHRP架橋2次抗体と反応させ、ECLで検出した。
結果を図10に示す。MCF7細胞(レーン1)、MCF7−14細胞(レーン2)、MCF7−GFP細胞(レーン3)、MCF7−14−GFP細胞(レーン4)から抽出した蛋白質を用い、抗HER2抗体(上段)と抗ESTR抗体(下段)によるウエスタンブロッティング解析を行った結果を示す。一般にHER2の発現量が増大すると転移性が高く、ESTR発現量が増大すると悪性度が増す(転移性が高い)ことが知られているが、MCF7−14は逆の性質(HER2陰性、ESTR陽性)を示した。
9.細胞移植
MCF7−GFP細胞(control)と樹立したMCF7−14−GFP細胞を最終濃度が8.6×10細胞/mlになるようにグロースファクターリデューストマトリゲル(Becton Dickinson社製)と1:1で混合し、移植細胞液を調製した。この移植細胞液 100μlを、図11に示すように、BALB/cALcl−nu/nu系統マウスのメスの第4乳腺に移植した。移植後、解剖時にGFP発現細胞の挙動を解析した。
移植4週間後のマウスを観察した結果を図12に示す。図12A及びCはMCF7−GFP細胞、B及びDはMCF7−14−GFP細胞を移植したマウスであり、A及びBはマウス全体像、C及びDはそれぞれA及びBの蛍光観察像である。MCF7−GFP細胞では、移植部位に腫瘍を形成しているものの転移巣は観察されなかった。一方、MCF7−14−GFP細胞は移植部位の原発腫瘍巣の形成に加えて、腹膜内へ播種しているGFP発現細胞の局在、及び腹部に比較的大きなGFP発現細胞の細胞塊が観察された。
10.染色による転移の確認
移植4週間後の乳腺を摘出し、公知の方法に従って凍結切片を作製した。この切片を公知の方法に従って、HE染色及び抗GFPポリクローナル抗体、抗BRCA2モノクローナル抗体による免疫染色を行なった。
MCF7−GFP細胞及びMCF7−14−GFP細胞移植マウスの肺部位の全体像及び抗GFP抗体で免疫染色した組織切片を観察した結果を図13に示す。図13中、A、C及びEはMCF7−GFP細胞、B、D、FはMCF7−14−GFP細胞に関するものであり、図13中、A、Bは肺の解剖像、C、Dは蛍光観察像、E、Fは凍結切片を抗GFP抗体により免疫染色した結果である。図示されるように、マウス肺部位に腫瘍及びGFP発現細胞は観察されなかった。
図14は、MCF7−GFP細胞移植4週間後のマウスから摘出した乳腺の移植部位(A、C)と近位リンパ節(B、D)を観察した結果を示す。AとBはHE染色、CとDは抗GFP抗体により免疫染色した結果を示す。MCF7−GFP細胞を移植したマウスの移植部位ではGFP発現細胞が多数観察されたが、乳腺リンパ節にはなく転移が起きていないことが観察された。
図15は、MCF7−14−GFP細胞移植4週間後のマウスから摘出した乳腺の移植部位(A、C)と近位リンパ節(B、D)を観察した結果を示す。AとBはHE染色、CとDは抗GFP抗体により免疫染色した結果を示す。MCF7−14−GFP細胞移植マウスは移植部位、乳腺リンパ節の両方にGFP発現細胞が観察され、転移の予後予測マーカーでもある近位リンパ節転移が生じていることが観察された。
図12で示されたMCF7−14−GFP細胞移植マウスの転移巣に関して、さらに詳しく調べるため、すい臓周辺部位を摘出して観察した結果を図16に示す。図16中、Aはマウス全体像、Bは摘出したすい臓周辺の解剖像、CとDはそれぞれAとBに相当する部位を蛍光観察した結果である。すい臓のリンパ節が肥大しており、GFP発現細胞が多数局在していることが観察された。
さらに詳しく解析するために、MCF7−14−GFP細胞移植マウスからすい臓部分の腫瘤(図17A,B)を摘出、凍結組織切片(厚さ6μm)を作製し、HE染色(図17C)、メチルグリーンピロニン染色(図17D)による明視野観察、およびGFPの蛍光観察(図17E)を行った。すい臓部分の腫瘤にGFPの発光が観察されたことから、移植したMCF7−14細胞の転移巣であると考えられた。
図18に示したように、移植4週間後のMCF7−GFP細胞移植マウスから移植部(A−C)を、移植4週間後のMCF7−14−GFP細胞移植マウスから移植部(D−F)およびすい臓部分の腫瘤(G−I)を摘出、凍結切片を作成し、上皮マーカーであるサイトケラチン7(KRT7;A,D,G)、KRT19(B,E,H)、KRT20(C,F,I)の免疫染色を行った。一次抗体として、マウス抗KRT7モノクローナル抗体(ZYMED Laboratories,18−0234;希釈倍率50倍)、マウス抗KRT19モノクローナル抗体(SANTA CRUZ,sc−6278;50倍)およびマウス抗KRT20モノクローナル抗体(SANTA CRUZ,sc−52320;50倍)を用い、ブロッキングおよび増感試薬としてヒストファインマウスステインキット(ニチレイ)を、発色基質には3,3’−ジアミノベンジジンテトラヒドロクロライド(DAKO)を使用した。すい臓に認められた腫瘤に含まれる細胞の多くは、由来となるMCF7細胞のGFP導入株(MCF7−GFP)および移植したMCF7−14−GFP細胞と、同様の上皮マーカーの発現パターンを示したことから、乳腺に移植したMCF7−14−GFP細胞が転移し、転移巣を形成していることが確認された。
図19は、MCF7−14−GFP細胞移植12週間後のマウスを観察した結果を示す。マウス腹部(A、B)からすい臓周辺部位(C、D)を摘出し、さらには脳(E、F)を摘出した。A、C、Eは解剖像、B、D、Fは蛍光観察像である。この結果からもすい臓付近リンパ節に直径1cm以上の転移腫瘍巣が観察され、脳においてもGFP発現細胞の局在が確認できた。
本発明に係るMCF7由来細胞は、MCF7細胞由来であるにもかかわらず、高い浸潤能を有し、または、高い転移能を有する。このような変異は、薬剤等を使用せず、自然に近い環境で誘発されたものであるため、転移の発生のメカニズムや、本発明に係るMCF7由来細胞は、転移能を獲得する初期ステージでの変化を捉え、転移や再発等の予後予測マーカーを探索する研究に好適に利用されるものであり、浸潤・転移特異的因子の探索や、癌転移性及び予後予測用診断キット開発にも利用されうるものである。
また、従来の癌転移研究においては、様々な人種や多様な疾患症状由来の組織、あるいはそれらの組織から派生した細胞株を対象としているため、非常に多くの原因因子を発見することはできたものの、共通に存在しマーカーとなりうる因子を同定することは困難であった。しかしながら、本発明のMCF7由来細胞を用いれば、同一の遺伝的背景をもつ細胞株から派生した亜細胞株を比較することで、精度の高いマーカーのスクリーニングができる可能性が高く、マーカーだけではなく同定因子そのものが創薬ターゲットになる可能性も高い。
【0008】
は、高い転移能を獲得する変異を有している。本発明において「有意に高い転移能を有する」とは、細胞の転移能を評価する種々の方法のうちいずれかの方法によって求めた転移能が、MCF7細胞の転移能よりも統計的に有意に高いことを意味する。また、例えば、細胞を実験用動物に移植した場合に、少なくとも50%以上、好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上の個体において近接するリンパ節への転移が見られることを、転移能が高いということができる。
また、本発明のMCF7由来細胞は、HER2陰性であることを特徴とする。ここで、「HER2陰性」とはHER2タンパク質が標準的なウエスタンブロッティング法での検出限界以下であることを言う。HER2遺伝子及びタンパク質は高い転移能力を持つ乳癌由来の悪性腫瘍では高い発現が認められることが多く、診断及び治療法の決定にしばしば用いられている腫瘍マーカーである。本発明のMCF7由来細胞は高浸潤能・高転移能を有するにも関わらず、転移能に関連するHER2陰性であることから、trastuzmabに対する感受性の低い乳癌患モデルとして、転移や再発の研究に利用できる可能性が高いことが示唆される。
また、本発明のMCF7由来細胞は、高浸潤能または高転移能を有するにも関わらず、ESTR陽性である。ここで、ESTRはエストロゲン受容体のことであり、「ESTR陽性」とは標準的なウエスタンブロッティング法で明確なバンドが検出可能であることを言う。このように、ESTR陽性であることから、ホルモン治療に対しても高い感受性を示すものと考えられ、本発明のMCF7由来細胞が、ホルモン治療に対する感受性の高い乳癌モデルとして、転移や再発の研究に利用できる可能性が高いことが示唆される。
また、本発明のMCF7由来細胞は、CD44遺伝子、CXCL12遺伝子、PLAU遺伝子、及びVEGF遺伝子からなる群より選択される少なくとも一つの遺伝子の発現量が、MCF7細胞の1.5倍以上である。遺伝子
【0020】
7.GFP発現安定株の作製
MCF7細胞と樹立したMCF7−14細胞に、公知の方法に従ってGFP発現プラスミドベクターを遺伝子導入し、約1週間GFP発現細胞をスクリーニングした。クローニングリングを用いて30クローンをクローニングし、約3週間、選択培地(400μg/mlのG418(SIGMA社製)添加培地)と維持培地(50μg/mlのG418添加培地)で繰り返し培養することでGFP発現安定株を樹立した。以下、それぞれ、MCF7−GFP細胞、MCF7−14−GFP細胞と称する。
8.ウエスタンブロット解析
MCF7細胞、MCF7−14細胞、MCF7−GFP細胞、MCF7−14−GFP細胞から蛋白質を抽出し、2〜15%の濃度勾配のあるポリアクリルアミドゲルを用いて公知の方法に従ってSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動を行った。分離した蛋白質をPVDFメンブレンに転写し、5%スキムミルクでブロッキング後に、抗HER2抗体、あるいは抗エストロゲンレセプター抗体と反応させた。さらにHRP架橋2次抗体と反応させ、ECLで検出した。
結果を図10に示す。MCF7細胞(レーン1)、MCF7−14細胞(レーン2)、MCF7−GFP細胞(レーン3)、MCF7−14−GFP細胞(レーン4)から抽出した蛋白質を用い、抗HER2抗体(上段)と抗ESTR抗体(下段)によるウエスタンブロッティング解析を行った結果を示す。一般にHER2の発現量が増大すると転移性が高く、ESTR発現量が減少すると悪性度が増す(転移性が高い)ことが知られているが、MCF7−14は逆の性質(HER2陰性、ESTR陽性)を示した。
9.細胞移植
MCF7−GFP細胞(control)と樹立したMCF7−14−GFP細胞を最終濃度が8.6×10細胞/mlになるようにグロースファク

Claims (15)

  1. MCF7細胞に由来する細胞であって、MCF7細胞に比較して有意に高い浸潤能を有するMCF7由来細胞。
  2. MCF7細胞に由来する細胞であって、MCF7細胞に比較して有意に高い転移能を有するMCF7由来細胞。
  3. HER2陰性である、請求項1又は2に記載のMCF7由来細胞。
  4. ESTR陽性である、請求項1から3のいずれか1項に記載のMCF7由来細胞。
  5. CD44遺伝子、CXCL12遺伝子、PLAU遺伝子、及びVEGF遺伝子からなる群より選択される少なくとも一つの遺伝子の発現量が、MCF7細胞の1.5倍以上である、請求項1から4のいずれか1項に記載のMCF7由来細胞。
  6. スフェロイドを形成することを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載のMCF7由来細胞。
  7. 実験用動物に移植した場合、移植部位に原発腫瘍巣を形成する能力を有する、請求項1から6のいずれか1項に記載のMCF7由来細胞。
  8. 実験用動物に移植した場合、近位リンパ節、遠隔リンパ節、又は脳に転移巣を形成する能力を有する、請求項1から7のいずれか1項に記載のMCF7由来細胞。
  9. MCF7細胞を基底膜調製物又はその類似物上に播種し、該基底膜調製物又はその類似物を通過するように変異した細胞を回収することによって得られる、請求項1から8のいずれか1項に記載のMCF7由来細胞。
  10. MCF7−14細胞(受領番号FERM BP−10944)である、MCF7由来細胞。
  11. GFP遺伝子、YFP遺伝子、CFP遺伝子、βガラクトシダーゼ遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子、及びエクオリン遺伝子からなる群より選択される少なくとも一つの遺伝子が導入されている、請求項1から10のいずれか1項に記載のMCF7由来細胞。
  12. 請求項1から11のいずれか1項に記載のMCF7由来細胞が移植された実験用動物。
  13. 請求項1から11のいずれか1項に記載のMCF7由来細胞を含む、癌転移若しくは再発関連因子又は抗癌剤のスクリーニング系。
  14. 請求項12に記載の実験用動物を含む、癌転移若しくは再発関連因子又は抗癌剤のスクリーニング系。
  15. MCF7細胞から、高浸潤能または高転移能を獲得した変異細胞株を樹立する方法であって、MCF7細胞を基底膜調製物又はその類似物上に播種した後、該基底膜調製物又はその類似物通過能を有する細胞を回収しては再び基底膜調製物又はその類似物上に播種する工程を少なくとも7回繰り返すことを特徴とする、方法。
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