JPWO2008090671A1 - インジウム及び塩化第二鉄を含有するエッチング廃液からのインジウムの回収方法とその装置 - Google Patents

インジウム及び塩化第二鉄を含有するエッチング廃液からのインジウムの回収方法とその装置 Download PDF

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Abstract

水酸化インジウムの状態で回収する必要がなく、高濃度インジウムとして回収することができ、回収時においてハンドリングの悪さもなく、フィルターなどで容易に回収することができ、回収率が著しく良好となるインジウムの回収方法と装置を提供することを課題とする。少なくともインジウムと塩化第二鉄とを含有する廃液中の塩化第二鉄の濃度が20重量%以下となるように調整されたエッチング廃液に、インジウムよりもイオン化傾向の大きい金属からなる析出用金属を添加し、前記エッチング廃液中に含有されるインジウムを前記析出用金属の表面に析出させ、その後、剥離手段によって前記析出用金属に析出したインジウムを前記析出用金属から剥離して、剥離した固形状のインジウム又はインジウム合金を液分から分離して回収することを特徴とする。

Description

本発明は、インジウム及び塩化第二鉄を含有するエッチング廃液からインジウムを回収するインジウムの回収方法とその装置、さらに詳しくは、たとえば液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等のフラットパネルディスプレイの製造プロセスで発生するようなエッチング廃液から、有価物であるインジウム(In)を合金或いは金属単体等として回収する方法と装置に関する。
液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ(FPD)は、近年においてコンピュータの表示デバイス用やデレビ受像器用、携帯電話の表示部用等、各種電子機器に多用されている。このようなFPDの製造プロセスにおいては、当然のことながら廃液が生じ、そのような廃液を処理しなければならない点においては、このようなFPDを扱う液晶製造工場のみならず、たとえば半導体製造工場やメッキ工場の場合と同様である。そして、このようなFPDの製造プロセスで発生する廃液の1つにインジウム及び塩化第二鉄を含有するエッチング廃液がある。
一般に、産業廃液には種々の金属が含有されていることがあり、上記FPDの製造等を行う液晶製造工場廃液にはIn等が含有され、半導体製造工場廃液には、銅(Cu)、ガリウム(Ga)等が含有され、メッキ工場廃液にはニッケル(Ni)、Cu、亜鉛(Zn)等が含有され、それらを有価物である金属単体として回収することが試みられている。これらを金属単体あるいは合金として回収できれば、それらの金属を再利用すること等も可能となる。
重金属類を回収する廃液の処理技術として、従来では薬剤を用いた凝集沈殿処理、共沈処理等が一般に採用されており、濃度が低い場合には吸着剤を用いて金属類を除去することも行なわれている。たとえば薬剤を用いた凝集沈殿処理を利用する技術として下記特許文献1に係る発明がある。
しかしながら、上記のようなインジウム及び塩化第二鉄を含有するエッチング廃液に上記のような凝集沈殿処理を適用した場合、水酸化インジウムとして回収することは可能ではあるものの、塩化第二鉄も水酸化物として沈殿することとなり、全体として水酸化物のスラッジの発生量が多くなるという問題がある。しかも、ほとんどが鉄含有スラッジの状態となるので、有価物にならないという問題もある。
一方、インジウム及び塩化第二鉄を含有するエッチング廃液からのインジウムの除去方法及び回収方法に関する先行技術として本発明者等が検索した結果、唯一、下記特許文献2に記載の特許出願が存在した。すなわち、この特許文献2に係る発明は、請求項1に記載されているように、インジウム及び塩化第二鉄を含有するエッチング廃液に、鉄、ニッケル化合物を添加することを特徴とするインジウムの除去、回収方法である。
そして、具体的な回収手段については、当該特許文献2の明細書の段落[0022]に「当該廃液にニッケル化合物を添加し、鉄を加え、攪拌加熱して、ニッケルを析出させるとともにインジウムを析出させる。このことから、当該廃液中からインジウムを除去することができる。即ち、沈殿物からインジウムを回収することができ、…」と記載され、さらに段落[0023]には「インジウム及び塩化第二鉄を含有するエッチング廃液に鉄を添加して析出したインジウム及びニッケルなどからなる混合物は、鉄に付着していることから沈殿物として溶液から簡単に分離することができる。当該沈殿物の分離方法としては、重力式沈降、ろ過やサイクロンなどの遠心力を利用する方法を挙げることができる。」と記載されている。
これらの記載から判断すると、特許文献2の方法においては、ニッケルイオンの添加により、ニッケルの析出反応が起こり、この析出反応に付随してインジウムの析出反応を起こすため、回収されたインジウム合金は非常にインジウム濃度が低く、ニッケルを主体とする合金として回収されるため、回収したインジウムを有効利用することが困難である。この点、当該特許文献2においては、合金中のインジウムの濃度を所望の濃度以上にして回収することについては言及されていない。従って、この特許文献2のような方法は、廃液からインジウムを除去する技術として利用できても、インジウムのみを有価物として回収する技術として有効利用できるとは必ずしも認められないのである。また、インジウムはニッケル等との混合物として、鉄に付着しており、沈殿物として各種の分離方法で分離する必要があり、しかも通常の分離方法では、インジウムを有価物として回収することは非常に困難である。
日本国特開2005−342694号公報 日本国特開2004−75463号公報
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、従来のように水酸化インジウムの状態で回収する必要がなく、或いは他の金属との合金として回収する場合に、合金中のインジウムの濃度が低くなることがなく、高濃度インジウムとして回収することができ、従って回収時において水酸化インジウムの場合のようなハンドリングの悪さもなく、フィルターなどで容易に回収することができ、しかもインジウムの回収率が著しく良好となるインジウムの回収方法と装置を提供することを課題とする。
本発明は、このような課題を解決するために、インジウム及び塩化第二鉄を含有するエッチング廃液からのインジウムの回収方法とその装置としてなされたもので、インジウムの回収方法としての特徴は、少なくともインジウムと塩化第二鉄とを含有するエッチング廃液からインジウムを回収するエッチング廃液からのインジウムの回収方法であって、廃液中の塩化第二鉄の濃度が20重量%以下となるように調整されたエッチング廃液に、インジウムよりもイオン化傾向の大きい金属からなる析出用金属を添加し、前記エッチング廃液中に含有されるインジウムを前記析出用金属の表面に析出させ、その後、剥離手段によって前記析出用金属に析出したインジウムを前記析出用金属から剥離して、剥離した固形状のインジウムを液分から分離して回収することである。
またインジウムの回収装置としての特徴は、少なくともインジウムと塩化第二鉄とを含有するエッチング廃液からインジウムを回収するエッチング廃液からのインジウムの回収装置であって、廃液中の塩化第二鉄の濃度が20重量%以下となるように調整されたエッチング廃液を流入し、或いはエッチング廃液を流入するとともに該廃液中の塩化第二鉄の濃度が20重量%以下となるように調整し、インジウムよりもイオン化傾向の大きい金属からなる析出用金属を添加して、前記エッチング廃液中に含有されるインジウムを前記析出用金属の表面に析出させる金属析出反応を行なうための回収用リアクター1と、前記析出用金属に析出したインジウムを前記析出用金属から剥離する剥離手段とを具備することを特徴とする。
尚、本発明の回収対象物であるインジウムは、金属単体として回収される他、合金としても回収され、或いは化合物等としても回収される場合があり、またエッチング廃液に含有されているインジウムは、通常、イオン、化合物等の状態であるので、これらをすべて厳密且つ明確に区別するのは困難であり、またすべてを明確に区別する必要は必ずしもない。従って、本発明において、単に「インジウム」というときは、金属単体を意味する場合の他、合金や化合物である場合なども含むものである。
廃液中の塩化第二鉄の濃度は、9重量%以下となるように調整することがより好ましく、6重量%以下となるように調整することがさらに好ましい。インジウムよりもイオン化傾向の大きい金属からなる析出用金属としては、たとえば亜鉛又はアルミニウムが用いられる。
さらに、析出用金属から該析出用金属に析出したインジウムを剥離する手段としては、たとえば超音波によって金属粒子を振動させる手段又は電磁石によって金属粒子を攪拌し相互に衝突させる手段のようなものが採用される。廃液中の塩化第二鉄の濃度調整は、回収用リアクター1の前段側に、調整槽2を設けてその調整槽2内で行ってもよく、また回収用リアクター1内で濃度調整を行ってもよい。
本発明は、上述のように、廃液中の塩化第二鉄の濃度が20重量%以下となるように調整されたインジウム及び塩化第二鉄を含有するエッチング廃液に、インジウムよりもイオン化傾向の大きい金属からなる析出用金属を添加し、前記エッチング廃液中に含有されるインジウムを前記析出用金属の表面に析出させ、その後、剥離手段によって前記析出用金属に析出したインジウムを前記析出用金属から剥離して、剥離した固形状のインジウムを液分から分離して回収するものであるため、エッチング廃液からのインジウムの回収に、イオン化傾向を利用したセメンテーション反応と剥離技術とを組み合わせ、すなわちインジウムよりもイオン化傾向の大きい析出用の金属を用いることで金属析出反応のための金属の総表面積が増加し、析出反応速度が向上し、またある程度成長した析出金属を剥離手段で剥離させることで常に新しい金属表面を露出させ反応速度を維持することができるので、従来のいずれの方法と比べても、廃液中からのインジウムの回収率を著しく向上させることができるという効果がある。
特に、本発明の対象となるインジウム及び塩化第二鉄を含有するエッチング廃液の場合には、通常、塩化第二鉄の濃度は30重量%以上と非常に高く、上記イオン化傾向を利用したセメンテーション反応を適用しようとすると析出用金属の溶解反応が激しく、還元析出反応の制御が困難となる。また、析出用金属の溶解速度がインジウムの析出速度よりも速いため、鉄とインジウムが亜鉛の表面に析出して亜鉛の溶解反応が停止する前に亜鉛粒子がすべて溶解することとなり、その結果、析出したインジウムが再度溶解し、回収することができない。これに対して、本発明においては、上述のようにエッチング廃液中の塩化第二鉄の濃度が20重量%以下、好ましくは9重量%以下、さらに好ましくは6重量%以下となるように調整しているため、析出用金属の溶解反応がそれほど激しくはなく、従って、還元析出反応の制御が困難となることもなく、また析出用金属が必要以上に溶解するようなこともないのである。
また、従来の方法のように水酸化インジウム等の沈殿物の状態で回収する必要がなく、また、合金として回収される場合でも、合金中のインジウムの濃度が低くなることもなく、高濃度インジウムとして回収することができるので、回収時において水酸化インジウムの場合のようなハンドリングの悪さもなく、フィルターなどで容易に回収することができるという効果がある。
以上のように、本発明によって、回収率の高いインジウムの回収方法を提供することができるので、たとえば将来家電リサイクル法又はそれに相当する法律でFPD等の回収リサイクルが義務づけられるようになった場合でも、液晶テレビのリサイクル工場でのリサイクル過程におけるインジウムの回収方法として、本発明を適用することができるという実益がある。
一実施形態としてのインジウム及び塩化第二鉄を含有するエッチング廃液からのインジウムの回収装置の概略正面図。 同インジウム回収装置における回収用リアクターの概略正面図。 他実施形態の回収用リアクターの概略正面図。
符号の説明
1 回収用リアクター
2 調整槽
以下、本発明の実施形態について図面に従って説明する。
(実施形態1)
本実施形態のインジウム及び塩化第二鉄を含有するエッチング廃液からのインジウム(In)の回収装置は、図1に示すように、回収用リアクター1と、調整槽2と、フィルター3とを具備したものである。
回収用リアクター1は、後述するようにセメンテーション反応(金属析出反応)によって廃液中からInを析出させるためのものであり、調整槽2は、それに先だって廃液中の塩化第二鉄の濃度を調整するためのものであり、フィルター3は前記回収用リアクター1で析出されたInを分離、回収するためのものである。尚、分離された処理液は前記調整槽2へ返送しうるように構成することも可能である。分離された処理液を調整槽2へ返送しうるように構成する場合には、被処理液を循環させるポンプ等が必要となる。
前記回収用リアクター1のリアクター本体5は、図2に示すように縦長のものであり、リアクター上部6、リアクター中間部7、及びリアクター下部8からなり、それぞれ連設部9、10を介して連設されている。リアクター上部6、リアクター中間部7、及びリアクター下部8のそれぞれは同幅に形成されているが、リアクター上部6の断面積はリアクター中間部7の断面積より大きく形成され、リアクター中間部7の断面積はリアクター下部8の断面積より大きく形成されている。この結果、全体としてリアクター本体5の断面積が上方に向かって不連続的に増加するように構成されている。尚、連設部9、10は、上向きに幅広なテーパ状に形成されている。
リアクター下部8の下側には、処理対象であるIn及び塩化第二鉄を含有するエッチング廃液を流入するための略円錐形の流入用チャンバー11が設けられ、さらにその下部に流入管12が設けられている。流入管12には、図示しないが、逆止弁が設けられている。またリアクター上部6の上側には、上部チャンバー13が設けられ、その側部に、回収されたフレーク状や微粒子状の回収対象金属であるInを排出するための排出管14が設けられている。
上部チャンバー13は、このような排出管14によって回収された金属(In)を排出するための部分であるとともに、Inとのイオン化傾向の相違に基づいていわゆるセメンテーション反応(金属析出反応)を生じさせるための、Inよりもイオン化傾向が大きい析出用金属の金属粒子を投入する部分でもある。実際には、投入される金属と回収される金属(In)とのセメンテーション反応は、前記リアクター本体5の全体で生じることとなる。そして、流入管12から流入されたエッチング廃液が排出管14に至るまでの間に、その廃液が垂直方向に上昇しつつ金属粒子による流動床を形成するように構成されている。さらに、エッチング廃液中に含有されている金属であって、前記セメンテーション反応により前記投入された金属粒子に析出した回収対象金属を剥離させる剥離手段としての超音波発振体15a、15b、15cが、リアクター上部6、リアクター中間部7、及びリアクター下部8にそれぞれ設けられている。
本実施形態では、投入する金属粒子として亜鉛(Zn)やアルミニウム(Al)の粒子が用いられる。投入する金属粒子の平均粒径は、0.1〜8mmの金属粒子を用いることが好ましいが、本実施形態では平均粒径が2mmのものが用いられる。尚、平均粒径は、画像解析法あるいはJIS Z 8801ふるい分け試験法等により測定される。
そして、このような構成からなるInの回収装置によってInを回収する方法について説明すると、先ず処理対象である廃液を調整槽2へ供給し、その調整槽2でエッチング廃液中の塩化第二鉄の濃度を調整する。具体的には、水を調整槽2に添加して塩化第二鉄の濃度が6重量%以下となるように希釈する。
次に、このようにして塩化第二鉄の濃度が調整されたエッチング廃液を、流入管12から流入用チャンバー11を介してリアクター本体5内に流入する。その一方で、上部チャンバー13からセメンテーション反応を生じさせるための金属粒子(Zn又はAl粒子)を投入する。リアクター本体5内においては、流入されたエッチング廃液が垂直方向に上昇する一方で、上部チャンバー13から投入された金属粒子が流動床を形成するように流動状態となる。
そして廃液中に含有されているInと、投入された金属粒子であるZn又はAlとのイオン化傾向の相違に基づく、いわゆるセメンテーション反応を生じさせる。これをより詳細に説明すると、各金属イオンの還元反応は次式(1)〜(3)のとおりであり、各金属イオンの標準電極電位(E°)をそれぞれに示している。尚、廃液中には塩化第二鉄が含有され、Feもセメンテーション反応に関与するので、Feイオンの還元反応を次式(1)に示し、その標準電極電位(E°)も示している。
In3++3e→In …(1) −0.34V
Zn2++2e→Zn …(2) −0.76V
Al3++3e→Al …(3) −1.66V
Fe2++2e→Fe …(4) −0.44V
上記(1)〜(4)からも明らかように、In3+やFe2+に比べて、Zn2+やAl3+の標準還元電位が小さい。換言すれば、InやFeに比べて、ZnやAlのイオン化傾向が大きいことになる。そのため、上記のような流動状態となった状態で、イオン化傾向の大きいZnやAlがZn2+或いはAl3+となって廃液中に溶出し、それとともに廃液中に含有されていたIn3+がInとなり、Fe2+がFeとなって、ZnやAlの粒子の表面上に析出する。
この場合において、エッチング廃液中には塩化第二鉄が含有されているので、塩化第二鉄の濃度が高いと、上記セメンテーション反応が生じる場合に、Zn粒子又はAl粒子の溶解反応が激しく、還元析出反応の制御が困難となるおそれがある。またZn粒子又はAl粒子が必要以上に溶解することで経済的にも損失が生じる。
しかし、本実施形態においては、上述のようにエッチング廃液中の塩化第二鉄の濃度が6重量%以下となるように調整されているため、Zn粒子又はAl粒子の溶解反応がそれほど激しくはなく、従って、還元析出反応の制御が困難となることもなく、またZn粒子又はAl粒子が必要以上に溶解するようなこともないのである。さらに上記のようなセメンテーション反応から、析出物はInとFeとの合金の形態で得られるが、前記リアクター本体5内に流入されたエッチング廃液は、塩化第二鉄の濃度が6重量%以下となるように予め希釈されているので、得られるInとFeとの合金についてもInの含有割合が90重量%以上と非常に高濃度のIn合金を得ることができる。
そして、このようなセメンテーション反応によってInをZnやAl粒子の表面上に析出させた後、超音波発振体15a、15b、15cを作動させる。この超音波発振体15a、15b、15cを作動させることによって、該超音波発振体15a、15b、15cから発振される超音波が、前記Inを析出したZn粒子又はAl粒子に振動力及び攪拌力を付与し、それによって析出したInがZn粒子又はAl粒子から強制的に剥離されることとなる。
このように析出させたInの剥離のために超音波発振を利用した場合は、処理装置の外観でリアクター部分に超音波発振体の存在を目視で確認できる。また、目視で確認できない場合であっても、処理中には超音波発振体がリアクター内のZnやAlの金属粒子を接触振動させる際に10数キロヘルツ程度の高音が発生するため、超音波を利用した処理がなされていることが容易に確認できる。
このようにして剥離されたInを含む処理液は、上部チャンバー13から排出管14を経てリアクター本体5の外部に排出され、フィルター3によって分離され、分離されたInが回収されることとなるのである。この場合において、本実施形態では、回収対象金属であるInを析出させるために投入される析出用金属として、粒子状のものを用いているので、たとえばZnやAlのスクラップを投入するような場合に比べると、セメンテーション反応を生じさせるための金属(Zn、Al)の表面積が増加し、Inの析出反応の速度が向上することとなる。そして、ある程度成長した金属の析出が認められた後に、上記のような超音波の振動による強制的な剥離によって、常に新しい金属表面(Zn粒子の表面)を露出させ、反応速度を維持することができる。また、従来の方法に比べると、剥離した回収金属中には上述した通り、In以外の不純物が非常に少ないものとなる。
また、Zn又はAlからなる金属粒子はリアクター本体5内で流動し、上記のようなセメンテーション反応によってZn2+又はAl3+が溶出するので、上部チャンバー13に投入された金属粒子の投入初期時における粒径は、時間の経過とともにどうしても減少することになる。この結果、本来であれば廃液がほぼ同じ上向流の速度でリアクター本体5内を上昇するので、上部に向かうほど粒径が減少して小さくなった金属粒子がリアクター本体5から不用意に溢流するおそれがある。
しかしながら、本実施形態においては、リアクター本体5の断面積が上方へ向かうほど不連続的に大きくなるように形成されているため、リアクター本体5内での廃液の上向流の速度は徐々に減少し、従って上記のようにセメンテーション反応等により粒径が減少した金属粒子は、断面積が増加していくリアクター本体5の上部において、不用意に溢流することなくリアクター本体5内に保持される可能性が高くなる。
また、エッチング廃液はリアクター本体5の下部側から流入し、リアクター本体5内を通過する際に、セメンテーション反応によりZn又はAlからなる金属粒子に回収対象となるInを析出させることから、リアクター本体5の上部へ向かうほど、廃液中の回収対象金属の濃度が低下する。
しかしながら、本実施形態では、リアクター本体5の上部ほど微細なZn又はAlの粒子が存在し、またエッチング廃液の上向流の速度が徐々に減少することでZn又はAl粒子の数が増加すると認められることから、リアクター本体1の上部ほどZn又はAl粒子の総表面積は大きくなる。この結果、セメンテーション反応の反応速度(In析出の効率)が向上することから、Inの濃度がより低濃度となるリアクター本体5の上部においても、回収対象金属であるInを効率よく回収処理することが可能となるのである。
(実施形態2)
本実施形態は、リアクター本体5の構造が上記実施形態1と相違する。すなわち、本実施形態では、図3に示すようにリアクター本体5の周面全体が上向きにテーパ状となるように形成され、リアクター本体5の断面積が連続的に上方に向かって増加するように構成されている。この点で、リアクター本体5の断面積が不連続的に上方に向かって増加している実施形態1の場合と相違している。不連続的ではなく、断面積が連続的に上方に向かって増加するように構成されているので、本実施形態においては実施形態1のようにリアクター上部6、リアクター中間部7、リアクター下部8のように区分して構成されてはいない。
しかし、超音波発振体15a、15b、15cが、リアクター本体5の上部から下部にかけての3箇所に設けられている点は実施形態1と共通している。従って、本実施形態においても、実施形態1と同様に、超音波発振体15a、15b、15cから発振される超音波によって、析出用金属の金属粒子(Zn、Al等の)に析出している回収対象金属であるInを強制的に剥離することができる効果が得られる。
また、不連続的であるか連続的であるかの相違はあるものの、断面積が上方に向かって増加するように構成されている点では実施形態1とは共通しているので、本実施形態においても、粒径が減少した微細な金属粒子をリアクター本体5の上部で保持し、不用意に溢流するのを防止する効果、及び回収対象金属の濃度が低濃度であるリアクター本体5の上部において回収対象金属を効率よく回収処理できる効果が生じることとなるのである。
(その他の実施形態)
尚、上記実施形態では、エッチング廃液中の塩化第二鉄の濃度を6重量%以下としたため、Inの回収率が良好になるという好ましい効果が得られたが、エッチング廃液中の塩化第二鉄の濃度は該実施形態に限定されるものではない。要は20重量%以下にされていればよい。ただし、エッチング廃液中の塩化第二鉄の濃度を6重量%以下とした場合には、回収されるInとFeとの比率を、9:1程度にすることが可能となる。これに対して、10〜20重量%程度では、InとFeとの比率は1:1程度であるが、この場合でも、In又はInとFeとの合金を有価物として回収しうるという本発明の目的を達成することは可能である。
また上記実施形態では、回収用リアクター1の前段側に調整槽2を設け、その調整槽2内で廃液中の塩化第二鉄の濃度調整を行ったが、これに限らず、回収用リアクター1に直接希釈液を添加する等によって濃度調整を行ってもよい。
さらに、上記実施形態では、Zn又はAlの粒子を添加してInを回収する場合について説明したが、回収用リアクターに添加される金属粒子は、該実施形態のZn又はAlの粒子に限定されず、要はInよりもイオン化傾向の大きい金属が用いられていればよい。
また、該実施形態では、金属粒子の粒径を約2mmとしたが、金属粒子の粒径は該実施形態に限定されるものではなく、0.1〜8mmであることが好ましい。0.1mm未満であると、セメンテーション反応が必ずしも好適に行なわれるとは限らず、また金属粒子から剥離した析出用金属の回収が容易に行なえない可能性がある。特に塩化第二鉄の濃度が高い場合、セメンテーション反応が好適に行われないおそれがある。また8mmを超えると、リアクター本体1内で保持しうる金属粒子の数が減少し、結果的に金属粒子の総表面積が減少して析出反応の効率が低下するおそれがあり、また回収目的の有価金属以外の金属が金属粒子に析出するおそれがあるからである。
尚、金属粒子の平均粒径は、前述の通り、画像解析法、JIS Z 8801ふるい分け試験法等にて測定される。画像解析法による平均粒径の測定は、たとえば日機装株式会社製のミリトラックJPAが用いられる。一例として金属粒子の平均粒径を1〜2mmの範囲とする場合は、JISのふるい分け法で、呼び寸法2000μmふるい下で、1000μmふるい上となる金属粒子を用いればよい。
さらに、上記実施形態1、2では、リアクター本体1の断面積が上部に向かうほど大きくなるように形成したため、上記のような好ましい効果が得られたが、このようにリアクター本体1を形成することは本発明に必須の条件ではない。
さらに、金属粒子から回収対象金属を剥離する手段も、上記実施形態1、2の超音波による手段や実施形態3の電磁石による手段に限定されるものではなく、それ以外の手段であってもよい。また、上記実施形態では析出用金属として金属粒子を利用したが、これに限定されず、金属線や金属線をメッシュ状に加工したもの、板状の金属等を利用してもよい。
処理液であるエッチング廃液の塩化第二鉄の濃度と、析出した金属中におけるInの濃度との相関関係について試験した。具体的には、表1に示すように、原液であるエッチング廃液(塩化第二鉄の濃度約36重量%)を、水を利用してそれぞれ2倍、4倍、6倍、10倍に希釈した液を準備し、それぞれ濃度の異なる液について上記実施形態のような装置を用いて試験した。試験結果を表1に示す。
Figure 2008090671
表1からも明らかなように、希釈倍率が2倍(塩化第二鉄の濃度約18重量%)と4倍(塩化第二鉄の濃度約9重量%)の液では、析出物中のInの濃度が約50重量%であり、希釈倍率が6倍(塩化第二鉄の濃度約6重量%)と10倍(塩化第二鉄の濃度約3.6重量%)の液では、析出物中のInの濃度が約90重量%であった。このことから、液中の塩化第二鉄の濃度が低い程、Inの濃度が高くなる、つまりInの回収率が高くなることがわかった。
尚、析出物中のIn以外の金属は大部分がFeであり、従ってInの濃度が約50重量%の場合は、析出物のおよその組成はIn:Fe=1:1であり、Inの濃度が約90重量%の場合は、析出物のおよその組成はIn:Fe=9:1となる。

Claims (12)

  1. 少なくともインジウムと塩化第二鉄とを含有するエッチング廃液からインジウムを回収するエッチング廃液からのインジウムの回収方法であって、廃液中の塩化第二鉄の濃度が20重量%以下となるように調整されたエッチング廃液に、インジウムよりもイオン化傾向の大きい金属からなる析出用金属を添加し、前記エッチング廃液中に含有されるインジウムを前記析出用金属の表面に析出させ、その後、剥離手段によって前記析出用金属に析出したインジウムを前記析出用金属から剥離して、剥離した固形状のインジウムを液分から分離して回収することを特徴とする、インジウム及び塩化第二鉄を含有するエッチング廃液からのインジウムの回収方法。
  2. 廃液中の塩化第二鉄の濃度が9重量%以下となるように調整する請求項1記載のインジウム及び塩化第二鉄を含有するエッチング廃液からのインジウムの回収方法。
  3. 廃液中の塩化第二鉄の濃度が6重量%以下となるように調整する請求項1記載のインジウム及び塩化第二鉄を含有するエッチング廃液からのインジウムの回収方法。
  4. 廃液中の塩化第二鉄の濃度を調整した後に、エッチング廃液に析出用金属を添加する請求項1乃至3のいずれかに記載のインジウム及び塩化第二鉄を含有するエッチング廃液からのインジウムの回収方法。
  5. インジウムよりもイオン化傾向の大きい金属からなる析出用金属が亜鉛又はアルミニウムである請求項1乃至4のいずれかに記載のインジウム及び塩化第二鉄を含有するエッチング廃液からのインジウムの回収方法。
  6. 析出用金属からインジウムを剥離する手段が、超音波によって金属粒子を振動させる手段である請求項1乃至5のいずれかに記載のインジウム及び塩化第二鉄を含有するエッチング廃液からのインジウムの回収方法。
  7. 析出用金属が、粒径0.1〜8mmの金属粒子である請求項1乃至5のいずれかに記載のインジウム及び塩化第二鉄を含有するエッチング廃液からのインジウムの回収方法。
  8. 少なくともインジウムと塩化第二鉄とを含有するエッチング廃液からインジウムを回収するエッチング廃液からのインジウムの回収装置であって、廃液中の塩化第二鉄の濃度が20重量%以下となるように調整されたエッチング廃液を流入するとともに、インジウムよりもイオン化傾向の大きい金属からなる析出用金属を添加して、前記エッチング廃液中に含有されるインジウムを前記析出用金属の表面に析出させる金属析出反応を行なうための回収用リアクター(1)と、前記析出用金属に析出したインジウムを前記析出用金属から剥離する剥離手段とを具備することを特徴とするインジウム及び塩化第二鉄を含有するエッチング廃液からのインジウムの回収装置。
  9. 回収用リアクター(1)の前段側に、廃液中の塩化第二鉄の濃度を調整するための調整槽(2)が設けられている請求項8記載のインジウム及び塩化第二鉄を含有するエッチング廃液からのインジウムの回収装置。
  10. 少なくともインジウムと塩化第二鉄とを含有するエッチング廃液からインジウムを回収するエッチング廃液からのインジウムの回収装置であって、エッチング廃液を流入するとともに、該廃液中の塩化第二鉄の濃度が20重量%以下となるように調整し、インジウムよりもイオン化傾向の大きい金属からなる析出用金属を添加して、前記エッチング廃液中に含有されるインジウムを前記析出用金属の表面に析出させる金属析出反応を行なうための回収用リアクター(1)と、前記析出用金属に析出したインジウムを前記析出用金属から剥離する剥離手段とを具備することを特徴とするインジウム及び塩化第二鉄を含有するエッチング廃液からのインジウムの回収装置。
  11. インジウムよりもイオン化傾向の大きい金属からなる析出用金属が亜鉛又はアルミニウムである請求項8乃至10のいずれかに記載のインジウム及び塩化第二鉄を含有するエッチング廃液からのインジウムの回収装置。
  12. 析出用金属からインジウムを剥離する手段が、超音波によって金属粒子を振動させる手段である請求項8乃至11のいずれかに記載のインジウム及び塩化第二鉄を含有するエッチング廃液からのインジウムの回収装置。
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