JPWO2008078769A1 - 脂肪酸低級アルキルエステルの製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
脂肪酸低級アルキルエステルは、原料油脂を、低級アルキルアルコールを用いたエステル交換反応に付することにより製造される。通常、原料油脂には遊離脂肪酸が含まれているが、この遊離脂肪酸はエステル交換反応の効率を低下させる。したがって、エステル交換反応に先立ち、原料油脂中の遊離脂肪酸含量を低減することが行われている。
原料油脂中の遊離脂肪酸含量を低減する方法として、遊離脂肪酸を含む原料油脂とアルコールとを混合し、得られた混合物を陽イオン交換樹脂と接触させて、遊離脂肪酸をエステル化する方法が知られている(特許文献1〜3)。
上記方法において、陽イオン交換樹脂は、原料油脂中に含まれる水分や不純物等の付着によって劣化して触媒能力の低下を起こす。劣化した陽イオン交換樹脂は、アルコール洗浄することにより再生できることが知られている(特許文献4)。
この条件では樹脂充填カラム内を油脂とアルコールが分離した状態で流れるため、カラム出口より均一な組成で常に出てくるわけではない。さらに、分離したアルコール相は油相に比べて水分を多く保持しているが、常に決まった量がカラムより流出するわけではないため、水分量のフレも大きく、これに伴い次のエステル交換工程の反応率が変動し、反応率を高く維持することができないという問題があった。
すなわち、本発明は、
(A)原料油脂と水分含量1000ppm以下の低級アルキルアルコールとを、質量比が原料油脂/低級アルキルアルコール=100/5〜100/12の範囲で混合し、得られた混合物を陽イオン交換樹脂と連続的に接触させ、該原料油脂中に含まれる遊離脂肪酸をエステル化して、遊離脂肪酸含量を低減させた油脂を得る工程と、
(B)工程(A)で得られた油脂へ、工程(B)で得られる混合物中の水分含量が5000ppm以下となるように、工程(D)から排出された低級アルキルアルコールと水分含量1000ppm以下の追加の低級アルキルアルコールとアルカリ触媒とを添加し混合して、油脂と低級アルキルアルコールとアルカリ触媒との混合物を得る工程と、
(C)混合物中の油脂と低級アルキルアルコールとをアルカリ触媒存在下でのエステル交換反応に付して、脂肪酸低級アルキルエステルを得る工程、及び
(D)工程(A)の陽イオン交換樹脂を、水分含量1000ppm以下の低級アルキルアルコールと接触させて、該陽イオン交換樹脂を洗浄する工程と
を含むことを特徴とする、脂肪酸低級アルキルエステルの製造方法
に関するものである。
工程(A)について
工程(A)では、原料油脂と水分含量1000ppm以下の低級アルキルアルコールとを、質量比が原料油脂/低級アルキルアルコール=100/5〜100/12の範囲で混合し、得られた混合物を陽イオン交換樹脂と連続的に接触させ、該原料油脂中に含まれる遊離脂肪酸をエステル化して、遊離脂肪酸含量を低減させた油脂を得る。
原料油脂は、脂肪酸エステルの他に遊離脂肪酸を含んでいる。遊離脂肪酸としてはラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸等があげられる。
その他、原料油脂には、水、金属成分、ステロール、リン脂質、カロテノイド等が含まれている。
原料油脂の具体例としては、大豆油、菜種油、パーム油、パーム核油、ヤシ油やコーン油等の植物油、及び、牛脂、豚脂や魚油等の動物油等があげられる。
原料油脂は公知物質であり、市場において容易に入手することができる。
本発明では、単一種類の原料油脂を単独で用いてもよく、複数種類の原料油脂を組み合わせて使用してもよい。
工程(A)に用いる前に原料油脂中の特に金属成分を予め低減させておくと、この金属成分に起因する陽イオン交換樹脂の劣化を遅延させることができるので好ましい。原料油脂中の金属成分を低減させる手段としては、当該技術分野において周知の手段、例えば濾過、活性白土処理や脱ガム処理等があげられる。
低級アルキルアルコールの水分含量は1000ppm以下、好ましくは800ppm以下、特に好ましくは600ppm以下である。ppmは質量基準の値である。水分含量が1000ppm以下であると、後述する工程(C)の混合物の水分含量(5000ppm以下)の設定を容易に行うことができる。
低級アルキルアルコールの水分含量の下限値について、工程(C)のエステル交換反応効率の点からは0ppmであるが、カールフィッシャー法の測定限界である10ppm以上であれば十分であり、好ましくは100ppm以上である。
低級アルキルアルコールの水分含量は、カールフィッシャー法にしたがい測定することができる。具体的には、基準油脂分析法2.1.3.4-1996の方法に則り、平沼産業株式会社製 平沼水分自動滴定装置 AQV-7を用いて測定できる。(後述する工程における低級アルキルアルコールの水分含量についても同様)。
陽イオン交換樹脂の架橋度は、通常2質量%〜10質量%、好ましくは3質量%〜9質量%、より好ましくは4質量%〜8質量%である。架橋度が2質量%以上であると十分な樹脂強度を確保することができる。架橋度が10質量%以下であると、高いエステル化反応効率を得ることができる。
陽イオン交換樹脂の形状は、適切なエステル化反応を触媒できるものであれば特に制限なく選択することができる。
陽イオン交換樹脂は公知物質であり、市場において容易に入手することができる。具体例としては、三菱化学株式会社製のダイヤイオン、The Dow Chemical Company製のDOWEXやRoam and Haas Company製のAmberlite等があげられる。
本発明では、単一種類の陽イオン交換樹脂を単独で用いてもよく、複数種類の陽イオン交換樹脂を組み合わせて使用してもよい。
エステル化反応に先立ち、陽イオン交換樹脂を前処理しておくとエステル化反応効率が向上するので好ましい。前処理としては、例えばアルコール洗浄があげられる。洗浄用アルコールは、エステル化反応に用いる低級アルキルアルコールであることが好ましい。
エステル化反応に用いる原料油脂と低級アルキルアルコールとの質量比は、原料油脂中に含まれる遊離脂肪酸の量により変動しうるものであるが、原料油脂100質量部あたり低級アルキルアルコール5質量部〜12質量部(すなわち、質量比が原料油脂/低級アルキルアルコール=100/5〜100/12)、好ましくは5質量部〜10質量部(すなわち、質量比が原料油脂/低級アルキルアルコール=100/5〜100/10)である。原料油脂100質量部あたり低級アルキルアルコールが5質量部以上であると、原料油脂中の遊離脂肪酸を十分に低減させることができる。原料油脂100質量部あたり低級アルキルアルコールが12質量部以下であると、アルコール分離層の発生を抑制することができる。
反応温度は、例えば、原料油脂の融点〜100℃、好ましくは50℃〜80℃、特に好ましくは55℃〜70℃である。反応温度が原料油脂の融点以上であると、陽イオン交換樹脂内での原料油脂の固化を回避して安定した反応を行うことができる。100℃以下であると、陽イオン交換樹脂の熱劣化を回避して高い触媒能力を維持することができる。
上述のエステル化反応により原料油脂中に含まれる遊離脂肪酸はエステル化される。これにより、遊離脂肪酸含量を低減させた油脂を得ることができる。
工程(A)によって得られた油脂の酸価は、好ましくは2以下、より好ましくは1以下である。酸価の下限値について、工程(C)のエステル交換反応効率の点からは0であるが、0.1以上であれば十分であり、好ましくは0.2以上である。
工程(B)では、工程(A)で得られた油脂へ、工程(B)で得られる混合物中の水分含量が5000ppm以下となるように、工程(D)から排出された低級アルキルアルコールと水分含量1000ppm以下の追加の低級アルキルアルコールとアルカリ触媒とを添加し混合して、油脂と低級アルキルアルコールとアルカリ触媒との混合物を得る。
アルカリ触媒の量は、工程(A)の原料油脂100重量部に対して、0.05質量部〜1.0重量部、好ましくは0.1質量部〜0.75重量部、より好ましくは0.15質量部〜0.5重量部である。アルカリ触媒の使用量が工程(A)の原料油脂100重量部に対して0.05質量部以上であると、エステル交換反応の触媒としての機能を十分に発揮することができる。アルカリ触媒の量の上限は触媒機能の点からは特に制限されるものではないが、原料油脂100質量部あたり1.0質量部以下であると製造コストを抑制することができる。
追加の低級アルキルアルコールは、工程(A)で定義した低級アルキルアルコールと同じである。
追加の低級アルキルアルコールの水分含量は1000ppm以下、好ましくは800ppm以下、特に好ましくは600ppm以下である。ppmは質量基準の値である。追加の低級アルキルアルコールの水分含量下限値について、工程(C)のエステル交換反応効率の点からは0ppmであるが、カールフィッシャー法の測定限界である10ppm以上であれば十分であり、好ましくは100ppm以上である。
追加の低級アルキルアルコールは、工程(A)で得られた油脂へ添加してもよく、工程(D)から排出された低級アルキルアルコールへ添加してもよい。工程(D)から排出された低級アルキルアルコールへ直接添加することが工程(C)のエステル交換反応が行われる混合物の水分含量を容易に調整できる点で好ましい。
この混合物の水分含量は5000ppm以下、好ましくは4750ppm以下、特に好ましくは4500ppm以下である。ppmは質量基準の値である。水分含量が5000ppm以下であると、水分を原因とするエステル交換反応効率の低下を許容しうる程度に抑えられる。
混合物の水分含量の下限値について、エステル交換反応効率の点からは0ppmであるが、カールフィッシャー法の測定限界である10ppm以上であれば十分であり、好ましくは100ppm以上である。
本発明は特定の理論に限定されるものではないが、混合物の水分含量が5000ppm以下であると、水分を原因とするエステル交換反応効率の低下を許容しうる程度に抑えられるのはアルカリ触媒の機能低下が抑制されたためと考えられる。
混合物の水分含量は、カールフィッシャー法にしたがい測定することができる。基準油脂分析法2.1.3.4-1996の方法に則り、平沼産業株式会社製 平沼水分自動滴定装置 AQV-7を用いて測定できる。
工程(C)では、工程(B)で得られた混合物中の油脂と低級アルキルアルコールとをアルカリ触媒存在下でのエステル交換反応に付して、脂肪酸低級アルキルエステルを得る。
反応温度は、好ましくは50℃〜100℃、より好ましくは60℃〜80℃である。反応温度が50℃以上であると、十分な反応速度を得ることができる。反応温度の上限は触媒機能の点からは特に制限されるものではないが、100℃以下であると製造コストを抑制することができる。
反応時間は、種々の反応条件により適宜設定しうるが、例えば20分〜120分、好ましくは30分〜90分、より好ましくは40分〜70分である。20分以上であると、エステル交換反応を十分に行うことができる。反応時間の上限は反応の程度の点からは特に制限されるものではないが、120分以下であると製造効率を高く維持することができる。
エステル交換反応は、1段階で行ってもよく、2段階以上で行ってもよい。例えば、第一段階のエステル交換反応後に反応液を主に脂肪酸アルキルエステルを含む油相と主にグリセリンを含む相とに分離し、油相のみを次段階のエステル交換反応に供すると反応収率が高くなるため好ましい。
低級アルキルアルコールの量が油脂100質量部あたり5質量部以上であると、エステル交換反応を効率よく行うことができる。低級アルキルアルコールの量が油脂100質量部あたり50質量部以下であると製造コストを抑制することができる。
脂肪酸低級アルキルエステルを出発原料として、当該技術分野における周知の手段、例えば、蒸留、水素添加、スルホン化、乾燥及び粉砕を適用して脂肪酸低級アルキルエステルのスルホン化物粉末とすることができる。
脂肪酸低級アルキルエステルのスルホン化物粉末は洗浄剤の有効成分(界面活性剤)として広範囲の用途に使用でき、特に衣料用洗剤の洗浄剤組成物として好適に使用することができる。
工程(D)では、工程(A)の陽イオン交換樹脂を、水分含量1000ppm以下の低級アルキルアルコールと接触させて洗浄する。
工程(A)の、陽イオン交換樹脂を用いての遊離脂肪酸をエステル化反応では、陽イオン交換樹脂の劣化(触媒機能の低下や破砕)が起こる。
本発明は特定の理論に限定されるものではないが、陽イオン交換樹脂の触媒機能の低下や破砕が起こるのは下記の理由であると考えられる。
(1)水による触媒機能の低下
遊離脂肪酸と低級アルキルアルコールのエステル化反応で陽イオン交換樹脂を触媒として用いる場合、触媒(陽イオン交換樹脂に存在するスルホン酸基)近傍にこれら反応物が存在しない限り速やかな反応は起こりにくい。詳細は不明であるが、陽イオン交換樹脂のスルホン酸基が水和されることで反応物の接近が妨げられるなどにより、触媒機能が低下する。
(2)金属成分による触媒機能の低下
原料油脂に含まれる金属成分と、陽イオン交換樹脂のスルホン酸基のH+イオンとの間でイオン交換反応が起こり、その結果触媒能力が低下する。そのため、できるだけ金属成分は予め除いておくことが望ましい。
(3)破砕
陽イオン交換樹脂自体の体積変化(膨潤及び収縮)が起こると、歪みが生じて樹脂の破砕が起こる。また、樹脂自体の酸化や異物吸着によっても破砕が起こりやすくなる。
このような陽イオン交換樹脂の触媒機能の低下や破砕に対して、当該樹脂を低級アルキルアルコールと接触させて洗浄すると、触媒機能を回復させ、破砕進行を遅延させることができる。具体的には、低級アルキルアルコール洗浄によって樹脂に吸着した水や異物が当該アルコール中に洗い出されるので触媒能力を回復させることができる。
洗浄に用いる低級アルコールの水分含量は、好ましくは1000ppm以下であり、より好ましくは800ppm以下、特に好ましくは600ppm以下である。ppmは質量基準の値である。水分含量が1000ppm以下であると、洗浄工程後に再利用したときに、工程(C)でのエステル交換反応に付される混合物の水分含量(5000ppm以下)の設定を容易に行うことができる。
洗浄に用いる低級アルキルアルコールの水分含量の下限値について、工程(C)のエステル交換反応効率の点からは0ppmであるが、カールフィッシャー法の測定限界である10ppm以上であれば十分であり、好ましくは100ppm以上である。
陽イオン交換樹脂の洗浄に用いる低級アルキルアルコールの量は、洗浄効果が得られる量であれば特に制限されるものではないが、樹脂質量の3倍〜10倍の質量を用いると高い洗浄効果を得ることができる。
洗浄は、陽イオン交換樹脂と低級アルキルアルコールと接触させることにより行う。一般的には、陽イオン交換樹脂を充填したカラムへ低級アルキルアルコールを流すことによって行う。
洗浄工程は、例えば、原料油脂の融点〜100℃、好ましくは50℃〜80℃、特に好ましくは55℃〜70℃で行う。洗浄温度が原料油脂の融点以上であると直前まで通液させていた油脂が固化することによる閉塞を防ぐことができる。100℃以下であると、陽イオン交換樹脂の熱劣化を回避して高い触媒能力を維持することができる。
尚、陽イオン交換樹脂は、工程(D)に付されている間は、工程(A)の為に使用することができない。そこで、陽イオン交換樹脂(充填カラム)を複数設け、一方の陽イオン交換樹脂が工程(D)に付されている間、平行して他方の陽イオン交換樹脂で工程(A)を行うことにより、工程(A)〜(C)を連続的に行うことができる。これにより、製造設備の稼働率を向上させることができる。
カラム1で工程(A)を行った。原料油脂と水分含量1000ppm以下の低級アルキルアルコール(アルコール1)とを混合部1で混合し、得られた混合物をカラム1へ供給し、カラム1に充填された陽イオン交換樹脂と接触させ、該原料油脂中に含まれる遊離脂肪酸のエステル化反応を行った。カラム1からは「遊離脂肪酸含量を低減させた油脂」が得られた。
カラム2で工程(D)を行った。後述する製造例にしたがい予め工程(A)を行った(劣化)陽イオン交換樹脂を充填したカラム2へ、水分含量1000ppm以下の低級アルキルアルコール(アルコール2)を供給し、当該樹脂と接触させて、樹脂洗浄を行った。
カラム2からは「工程(D)から排出された低級アルキルアルコール」が得られた。
混合部3で工程(B)を行った。はじめに、カラム2から排出された低級アルキルアルコールと、「追加の低級アルキルアルコール」(アルコール3)とを混合部2で混合した。得られた混合液とアルカリ触媒とを、混合部3において、カラム1から得られた「遊離脂肪酸含量を低減させた油脂」へ添加し混合して「油脂と低級アルキルアルコールとアルカリ触媒との混合物」を得た。
エステル交換反応器で工程(C)を行った。工程(B)で得られた混合物をエステル交換反応器へ導入してエステル交換反応を行い「脂肪酸低級アルキルエステル」を得た。
水分含量は、基準油脂分析法2.1.3.4-1996の方法に則り、平沼産業株式会社製 平沼水分自動滴定装置 AQV-7を用いて測定した。単位ppmは質量基準の値である。
「原料油脂」や「油脂と低級アルキルアルコールとの混合物」の酸価は、下記の手順にしたがい測定した。
測定手順1
測定試料に含まれる低級アルキルアルコール及び水分をエバポレータで除去した後、無水硫酸ナトリウムを加えて脱水し、濾過した。濾別後の試料5〜10g精秤し(W[g])、200mLの三角フラスコへ採取した。試料を中和エタノール50mLで溶解し、指示薬としてフェノールフタレインを数滴加えた後、1/10N−KOH水溶液で試液を適定した。この適定数をA[mL]とする。
酸価は、次式により計算した。
酸価 [mg-KOH/g] =0.1×f×A/1000/W×56110
f:1/10N-KOH水溶液の力価
測定手順2
反応液約30mgをバイアル瓶に採取し、ピリジン100μLとBSTFA(N,O‐Bis(trimethylsilyl)trifluoroacetamide)を200μL加え、80℃で30分間加熱した。室温まで冷却した後、GC測定を行った。脂肪酸低級アルキルエステルについては、予め既知の試料を用いてピーク位置を確認しておいた。
(GC測定条件)
GC:Agilent Technology製 6890N
カラム:DB−1HT φ0.25mm×長さ30m、膜厚0.1mm
温度:50℃、10分保持 → 10℃/minで昇温 → 390℃、10分保持
インジョクション温度:380℃、検出器温度:390℃
検出器:FID(水素炎イオン化検出器)
キャリアガス:ヘリウム
スプリット比:50/1
試料注入量:1μL
反応率は次式で計算する。
原料油脂
マレーシア産の粗パーム油(CPO)。この粗パーム油は、脂肪酸エステルとして、炭素数12の成分を0.3質量%、炭素数14の成分を1.1質量%、炭素数16の成分を43.9質量%、炭素数18の成分を53.9質量%、炭素数20の成分を0.8%質量含有していた。水分含量は1000ppmであった。酸価は8.4であった。
65℃に加熱した上記粗パーム油100質量部へ、75質量%リン酸水溶液0.04質量部と、吸着剤であるパーライト(昭和化学工業製)0.03質量部とを添加して、20分間混合撹拌した。ついで、ジャケット付加圧ろ過器(ADVANTEC製)にADVANTEC社製NO−5Cろ紙(ろ過面積113cm2)をセットし、圧力1kg/cm2、温度45℃の条件で上記油を加圧ろ過し、ガム質を含有する不溶物を除去して、ろ過油を得た。得られたろ過油の水分含有量は1000ppm、酸価は8.4であった。得られたろ過油を原料油脂とした。
低級アルキルアルコール
全工程において、メタノール(水分含量:600ppm)を低級アルキルアルコールとして使用した。
陽イオン交換樹脂
三菱化学株式会社製の酸性ゲル型イオン交換樹脂ダイヤイオンSK-104(架橋度4%)4900g(5890mL)をカラム(サイズ:直径100mm、長さ750mm)へ充填した。この充填カラムへ低級アルキルアルコールを、温度60℃下、流速1568g/hで合計14kg通過させて、樹脂を洗浄した。これを図1のカラム1及びカラム2へ充填し、陽イオン交換樹脂として用いた。
アルカリ触媒
水酸化ナトリウムの低級アルキルアルコール溶液(水酸化ナトリウム濃度:3質量%)を用いた。
エステル交換反応器
エステル交換反応器は、5Lガラス製容器(サイズ:直径12cm、深さ45cm、底部より27cmのところに液抜き口を備える)、容器内の3段のパドル攪拌機、容器底部の原料供給口、及び、容器上部の反応物流出口を備えていた。
混合部
各混合部には、内径5mm×長さ145mm(エレメント設置長さ:100mm)のスタティックミキサーを使用した。
カラム2における工程(A)の実施
カラム1における工程(A)とカラム2における工程(D)とを同時に行うために、カラム2において予め工程(A)を行い、カラム2の樹脂を劣化させた。
原料油脂100質量部と低級アルキルアルコール10部質量部とを混合し、得られた混合物を陽イオン交換樹脂充填カラム2内へ流通させて、遊離脂肪酸をエステル化して、遊離脂肪酸含量を低減させた油脂を得た。カラム温度は60℃、混合物の流速は1790g/h、カラム滞留時間は180分間であった。カラム出口からの流出物では、油脂中にメタノールが均一に溶解していた。流通開始後5時間目におけるカラム流出物(遊離脂肪酸含量を低減させた油脂)の酸価は0.43であった。また、カラム流出物の水分含量は600ppmであった。カラムへの流通開始後15時間目において流出物の酸価が0.55へ上昇した時点で、流通を終了した。このときの流出物の水分含量は600ppmであった。
工程(A)
原料油脂100質量部と低級アルキルアルコール(図1のアルコール1)10部質量部とを混合(図1の混合部1)し、得られた混合物を陽イオン交換樹脂充填カラム(図1のカラム1)内へ流通させて、遊離脂肪酸をエステル化した。カラム温度は60℃、混合物の流速は1790g/h、カラム滞留時間は180分間であった。カラム出口からの流出物では、油脂中にメタノールが均一に溶解していた。流通開始後5時間目におけるカラム流出物(遊離脂肪酸含量を低減させた油脂)の酸価は0.43であった。また、カラム流出物の水分含量は600ppmであった。
後述の工程(D)の実施によりカラム2から排出された低級アルキルアルコールと、追加の低級アルキルアルコール(図1のアルコール3)とを混合部2で混合した。
混合部3において、混合部2から得られた低級アルキルアルコール混合物と、アルカリ触媒の低級アルキルアルコール溶液(図1のアルカリ触媒)とを、カラム1から得られた「遊離脂肪酸含量を低減させた油脂」へ添加し混合して「油脂と低級アルキルアルコールとアルカリ触媒との混合物」を得た。混合部3における「油脂と低級アルキルアルコールとアルカリ触媒との混合物」の水分含量を表1に示す。ここで、原料油脂100質量部に対して水酸化ナトリウムが0.3質量部となるようアルカリ触媒の低級アルキルアルコール溶液(水酸化ナトリウム濃度:3質量%)を加えた。さらに、原料油脂100質量部に対し、混合部3における低級アルキルアルコールが28質量部となるよう、アルコール2、3の量を調整した。
エステル交換反応器へ、上述の製造例より得た遊離脂肪酸含量を低減させた油脂1969g(110質量部)を仕込み、更に低級アルキルアルコール501g(28質量部)及び水酸化ナトリウム5.9g(0.3質量部)を添加して、70℃で60分間、回分式でのエステル交換反応を行った。
次いで、工程(B)で得られた「油脂と低級アルキルアルコールとアルカリ触媒との混合物」をエステル交換反応器へ連続的に供給してエステル交換反応を行った。反応温度70℃であり、反応時間(滞留時間)60分間であった。反応器上部の流出口からは、脂肪酸低級アルキルエステル(脂肪酸メチルエステル)を主成分とする油相とグリセリン相と混合物である反応生成物が連続的に得られた。
反応生成物100gを1時間ごとにサンプリングし、これを40℃で60分間静置して油相とグリセリン相とに分離させた後、油相を取り出した。油相100質量部に対して水洗用の水14質量部を添加し、撹拌後、40℃で60分間静置して油相と水相とに分離させ、油相を取り出した。油相中の脂肪酸低級アルキルエステル量(測定方法:GC測定)からエステル交換反応率を求めた。
工程(D)は、工程(C)の回分式でのエステル交換反応終了時点に開始し、この時点を供給開始時間とした。具体的には劣化陽イオン交換樹脂を充填したカラム2へ、水分含量1000ppm以下の低級アルキルアルコール(アルコール2)を供給し、当該樹脂と接触させて、樹脂洗浄を行った。
工程(B)で得られる「油脂と低級アルキルアルコールとアルカリ触媒との混合物」の水分含量が本発明の範囲外(5000ppmより多い)であったことを除いて、工程(A)〜(D)を実施例と同様にして行った。混合部3における「油脂と低級アルキルアルコールとアルカリ触媒との混合物」の水分含量を表2に示す。
工程(A)において、原料油脂100質量部に対して低級アルキルアルコール(図1のアルコール1)20部質量部を混合したことを除き、さらに工程(D)から排出される低級アルコールを使用せずに実施例と同様に行った。この場合には、カラム1から流出してくる液はメタノール層が分離し不均一であった。
流通反応開始後3時間後にサンプリングを開始した。エステル化で得られたサンプルを静置分離し、メタノール層と油層それぞれの水分を測定した。水を多く含むメタノール層が不均一層として分離するために水分が一定しなかった。その結果、エステル交換反応が安定しなかった。結果を以下に示す。
工程(B)において工程(D)から排出された低級アルキルアルコールを添加しなかった(すなわち、劣化した陽イオン交換樹脂の洗浄に用いた低級アルキルアルコールを再利用しなかった)ことを除いて、工程(A)〜(D)を実施例と同様にして行った。混合部3における「油脂と低級アルキルアルコールとの混合物」の水分含量を表3に示す。
表4
実施例では、95%以上という高いエステル交換反応率を維持することができた。
一方、比較例1では、工程(B)で得られる「油脂と低級アルキルアルコールとアルカリ触媒との混合物」の水分含量が本発明の範囲外(5000ppmより多い)であったため、水分を原因とするエステル交換反応率の低下がおこり、高い反応率(95%以上)を得ることができなかった。
参考例では95%以上のエステル交換反応率が得られたが、劣化した陽イオン交換樹脂の洗浄に用いた低級アルキルアルコールを再利用しなかったため、実施例と比較して経済性に劣っていた。
Claims (4)
- (A)原料油脂と水分含量1000ppm以下の低級アルキルアルコールとを、質量比が原料油脂/低級アルキルアルコール=100/5〜100/12の範囲で混合し、得られた混合物を陽イオン交換樹脂と連続的に接触させ、該原料油脂中に含まれる遊離脂肪酸をエステル化して、遊離脂肪酸含量を低減させた油脂を得る工程と、
(B)工程(A)で得られた油脂へ、工程(B)で得られる混合物中の水分含量が5000ppm以下となるように、工程(D)から排出された低級アルキルアルコールと水分含量1000ppm以下の追加の低級アルキルアルコールとアルカリ触媒とを添加し混合して、油脂と低級アルキルアルコールとアルカリ触媒との混合物を得る工程と、
(C)混合物中の油脂と低級アルキルアルコールとをアルカリ触媒存在下でのエステル交換反応に付して、脂肪酸低級アルキルエステルを得る工程、及び
(D)工程(A)の陽イオン交換樹脂を、水分含量1000ppm以下の低級アルキルアルコールと接触させて、該陽イオン交換樹脂を洗浄する工程と
を含むことを特徴とする、脂肪酸低級アルキルエステルの製造方法。 - 工程(B)で得られる混合物中の水分含量が4500ppm以下である、請求項1記載の製造方法。
- 工程(A)で得られた油脂の酸価が2以下である、請求項1又は2記載の製造方法。
- 工程(A)〜(D)で使用する低級アルキルアルコールがメタノールである、請求項1〜3のいずれか1項記載の製造方法。
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