JP5005547B2 - 脂肪酸低級アルキルエステルの製造方法 - Google Patents

脂肪酸低級アルキルエステルの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、洗剤原料や高級アルコール原料などに好適に使用される脂肪酸低級アルキルエステルの製造方法に関する。
本願は、2005年12月27日に出願された特願2005−373776号に基づいて優先権を主張し、その内容をここに援用する。
従来、洗剤などに使用される界面活性剤の原料や、セッケン、高級アルコールの原料などとして、動植物油脂を低級アルキルアルコールでエステル交換して得られた脂肪酸低級アルキルエステルが使用されている。脂肪酸低級アルキルエステルの製造方法としては、例えば、特許文献1〜3に開示された方法がある。
このような用途に使用される脂肪酸低級アルキルエステルには、高純度であることが求められ、特に、着色や臭いのないことが重要であるとされている。
特許第2590538号公報 特許第3046999号公報 特開昭59−5142号公報
しかしながら、このような従来の製造方法で得られた脂肪酸低級アルキルエステルは、着色や臭いの点で必ずしも十分な品質を有してはいなかった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、着色や臭いがなく、界面活性剤の原料や、セッケン、高級アルコールの原料などに好適な高純度の脂肪酸低級アルキルエステルを高収率で炭素数ごとに安定に生産することを課題とする。
本発明の脂肪酸低級アルキルエステルの製造方法は、パーム油を含む原料から、脂肪酸低級アルキルエステルを製造する方法であって、カチオン交換樹脂を使用して、前記原料中の脂肪酸を低級アルキルアルコールでエステル化し、酸価が2以下のエステル混合油を含む反応混合物を得るエステル化工程(A)と、アルカリ触媒の量を前記エステル混合油100質量部に対して0.1〜1質量部の範囲内で、前記酸価に応じて調整しながら、前記エステル混合油中の油脂を低級アルキルアルコールでエステル交換する1段目の工程を少なくとも備えたエステル交換反応工程(B)と、前記エステル交換反応工程(B)で得られた油相から、低炭素数側の脂肪酸低級アルキルエステルを含有する留出液を留去し、高炭素数側の脂肪酸低級アルキルエステルを含有する残留物を残留させる蒸留工程(C)と、前記残留物から、該残留物に含まれる高炭素数側の脂肪酸低級アルキルエステルを炭素数ごとに留出させる工程を少なくとも備えた分留工程(D)とを有し、前記の高炭素数側の脂肪酸低級アルキルエステルを含有する残留物は、炭素数16の脂肪酸に由来する脂肪酸低級アルキルエステルと、炭素数18の脂肪酸に由来する脂肪酸低級アルキルエステルとを含有し、前記分留工程(D)は、前記の高炭素数側の脂肪酸低級アルキルエステルを含有する残留物から、前記の炭素数16の脂肪酸に由来する脂肪酸低級アルキルエステルと前記の炭素数18の脂肪酸に由来する脂肪酸低級アルキルエステルとを主成分とする留出液を留出させて、該留出液とそれ以外の残留物とに分けてから、該留出液を分留して、前記の炭素数16の脂肪酸に由来する脂肪酸低級アルキルエステルと、前記の炭素数18の脂肪酸に由来する脂肪酸低級アルキルエステルとを順次留出させる工程を有することを特徴とする。
前記分留工程(D)で前記の炭素数18の脂肪酸に由来する脂肪酸低級アルキルエステルを留出させた後の残留物を、前記の高炭素数側の脂肪酸低級アルキルエステルを含有する残留物に加えることが好ましい。
前記パーム油が未精製油脂である場合、該未精製油脂からガム質を除去する脱ガム工程(P)を前記エステル化工程(A)の前段側に有することが好ましい。
前記脱ガム工程(P)は、前記未精製油脂にリン酸を含む変性剤とパーライトを含む吸着剤とを混合し、得られた混合物をろ過する工程であることが好ましい。
前記エステル交換反応工程(B)は2段の工程を含むことが好ましい。
前記エステル交換反応工程(B)で副生したセッケンをpH2〜5の条件下、酸で分解して脂肪酸とし、該脂肪酸を前記エステル化工程(A)または該エステル化工程(A)よりも前段側の工程に返送するリサイクル工程(R)を有することが好ましい。
前記アルカリ触媒として水酸化ナトリウムを使用するとともに、前記酸として硫酸を使用して、前記リサイクル工程(R)で硫酸ナトリウムを副生させることが好ましい。
本発明によれば、着色や臭いがなく、界面活性剤の原料や、セッケン、高級アルコールの原料などに好適な高純度の脂肪酸低級アルキルエステルを高収率で炭素数ごとに安定に製造できる。
本発明の製造方法の一例を示す概略工程図である。 本発明の製造方法のうち、リサイクル工程(R)についての一例を示す概略工程図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の製造方法で原料として使用される動植物油脂は、動物(微生物を含む)や、植物に由来し、油脂(脂肪酸トリグリセライド)を主成分とするものである。動物由来のものとしては、牛脂、豚脂などが挙げられ、植物由来のものとしては、ヤシ油、パーム核油、パーム油、ナタネ油、大豆油、ヒマワリ油、コーン油などが挙げられる。これら動植物油脂としては、リン脂質を主成分とするガム質、遊離している脂肪酸(以下、遊離脂肪酸という場合もある。)、臭気成分などを含んだままの未精製の未精製油脂であってもよいし、精製処理によりこれらの少なくとも一部が除去された精製油脂であってもよい。なお、以下、主成分とは、少なくとも50%を占める成分のことを指す。
また、動植物油脂は、1種を単独で使用しても2種以上を混合して使用してもよい。さらに、動植物油脂には、例えば、他の物質などの製造過程で回収された脂肪酸を混合して使用してもよい。このような脂肪酸が多すぎると、各工程に悪影響が及ぶ場合があるため、動植物油脂100質量部に対して5質量部以下が好ましい。
未精製油脂としては、例えば、粗パームなどが好適に使用できる。粗パーム油は、アブラヤシの果肉を圧搾して得られ、炭素数16〜18の脂肪酸の油脂を主成分とする未精製の混合物である。粗パーム油には、他に、カロチン、リン脂質、タンパク質、樹脂状物質などのガム質、遊離脂肪酸、炭素数20の脂肪酸の油脂などが含まれる。粗パーム油としては、遊離脂肪酸の含有量が5質量%以下、過酸化物価が5 m equivalent/kg以下のものが特に好ましい。
図1は、本発明の製造方法の一例を示す概略工程図であって、原料の動植物油脂として、未精製油脂である粗パーム油を使用する場合について示している。
粗パーム油のような未精製油脂を使用する場合には、まず、脱ガム工程(P)を行った後、原料中の脂肪酸のエステル化工程(A)を行い、その後、エステル交換反応工程(B)、蒸留工程(C)、分留工程(D)を実施する。精製油脂を使用する場合には、脱ガム工程(P)を行わずに、エステル化工程(A)を行うことができる。また、リサイクル工程(R)は、エステル交換反応工程(B)で副生したセッケンを酸で分解して脂肪酸とし、この脂肪酸を再利用するためのものである。図2にはリサイクル工程(R)の一例を示している。
[脱ガム工程(P)]
脱ガム工程(P)は、原料に未精製油脂を使用する場合において、未精製油脂に含まれるリン脂質を主成分とするガム質や、コロイド状不純物などの不溶物をあらかじめ除去するための工程であって、この工程を実施した後、エステル化工程(A)を行う。
脱ガム工程(P)の具体的な方法には特に制限はなく、温水とともに吸着剤を未精製油脂に混合し、得られた混合物をその後ろ過して、不溶物を除去する方法でもよいが、図示のように、未精製油脂に変性剤としてリン酸を添加するとともに吸着剤を添加してろ過する方法が好ましい。リン酸を使用すると脱ガム率が高まり、後の各工程で副生物を分離し易くなるため、分離効率が向上する。その結果、高純度の脂肪酸低級アルキルエステルが高収率で得られるようになる。吸着剤としては、パーライト、ケイソウ土、活性白土などを使用できるが、ケイソウ土、パーライトが好ましく、より高い吸着能を有していることからパーライトがより好ましい。なお、パーライトとは、黒曜石を高温で熱処理してできる発泡体である。
具体的には、未精製油脂を好ましくは50〜70℃、より好ましくは60〜70℃に加熱し、これにリン酸とパーライトとを添加し、好ましくは1〜60分間、より好ましくは10〜40分間混合撹拌する。混合撹拌の後、この混合物を、布フィルタなどのフィルタを備えたろ過器でろ過することにより、不溶物が除去され、脱ガム物がろ液として得られる。処理温度が50〜70℃であると、未精製油脂中の有用な成分を変質させたり、劣化させたりすることがないとともに、効果的に脱ガムできる。
ここでリン酸の添加量は、未精製油脂100質量部に対して0.01〜0.1質量部が好ましい。0.01質量部以上であると、脱ガムが効果的に進行し、一方、0.1質量部以下であると、脱ガムに寄与しなかったリン酸が残存しにくく、残存リン酸に由来するエステル交換反応工程(B)での不溶塩の生成も抑制される傾向がある。また、リン酸の添加量は、未精製油脂のガム質含有量に応じて、適宜調整することがより好ましい。なお、ガム質含有量は、A.O.C.S試験法Ca 9f−57により測定可能である。
また、リン酸は水溶液の形態で添加されることが好ましく、その場合、リン酸水溶液のリン酸濃度は70質量%以上が好ましく、より好ましくは75〜90質量%である。このような濃度であると、溶媒である水が脱ガム工程(P)よりも後段の工程に悪影響を与えるおそれや、ガム質のろ過性を低化させるおそれが少なく、好適である。
パーライトの添加量は、未精製油脂100質量部に対して、0.03〜0.15質量部が好ましく、より好ましくは0.03〜0.1質量部であり、さらに好ましくは0.03〜0.05質量部である。0.03質量部以上であると、脱ガムが効果的に進行し、一方、0.15質量部以下であると、未精製油脂のロスが抑えられるとともに、廃棄されるパーライト量も少なくできる。
なお、脱ガム工程(P)では、吸着剤を多めに配合した未精製油脂をフィルタに循環供給して、フィルタの表面にプレコート相を形成させ、ろ過をより円滑に行えるようにしてもよい。その際のパーライトの添加量は、未精製油脂100質量部に対して、好ましくは0.2〜1.0質量部、より好ましくは0.2〜0.7質量部、さらに好ましくは0.2〜0.4質量部である。この場合でも、パーライトの添加量がこのような範囲であると、未精製油脂のロスを抑え、廃棄されるパーライト量を少なくしつつ、効果的に脱ガムすることができる。
また、脱ガム工程(P)の前後や、脱ガム工程(P)中において、必要に応じて未精製油脂から夾雑物を除去することが好ましい。夾雑物は、前記ガム質の除去と同じ方法、同じ装置により除去してもよいし、未精製油脂貯蔵タンクでの静置分離またはろ過分離、遠心分離等の方法で除去することができる。夾雑物としては、土、砂利、ゴミがあり、場合によっては金属分等が含まれることもある。また、脱ガム物の水分含有量は2000ppm以下であることが好ましく、これを超える場合には、ここで水分を適宜除去することが好ましい。これは、多量の水分が後のエステル交換反応工程(B)におけるエステル交換反応率に悪影響を与えるおそれがあるためである。
[エステル化工程(A)]
エステル化工程(A)は、カチオン交換樹脂を使用して原料中の脂肪酸を低級アルキルアルコールでエステル化し、エステル混合油を含む反応混合物を得る工程である。
なお、ここで反応混合物とは、エステル化工程(A)で得られた未処理の混合物のことであって、エステル化工程(A)で生成したエステルと、原料の主成分である油脂と、原料に元々含まれる他の成分とからなるエステル混合油に加えて、未反応の低級アルキルアルコールや副生した水分を含んだものを指す。すなわち、エステル化工程(A)で得られた未処理の混合物である反応混合物から、低級アルキルアルコールと水分とを除いたものがエステル混合油である。
脂肪酸には、原料に元々存在する遊離脂肪酸が含まれ、さらに、リサイクル工程(R)が行われる場合には、エステル交換反応工程(B)で副生し、リサイクル工程(R)で回収、返送された回収脂肪酸も含まれるが、どちらもここでのエステル化の対象となる。
また、エステル化工程(A)に供される原料の水分含有量は、2000ppm以下であることが、エステル交換反応工程(B)におけるエステル交換反応率の点から好ましい。原料が未精製油脂を含むものであって、すでに脱ガム工程(P)が施されている場合には、先述したように、脱ガム工程(P)において水分含有量が2000ppm以下にまで低減されていることが好ましい。原料に精製油脂を使用する場合には、すでに水分含有量2000ppm以下にまで低減されているものも多いが、2000ppmを超えるものの場合には、より水分含有量の少ない他の精製油脂を混合するなどして、このような水分含有量にまで低下させておくことが好ましい。
また、このエステル化工程(A)では、エステル混合油の酸価が2以下、好ましくは1以下、より好ましくは0.1〜0.5となるように、エステル化を行う。エステル化工程(A)で到達させるエステル混合油の酸価は低いほど好ましいが、現実的な下限は0.1程度である。酸価を2以下とするためには、カラムの種類、カラム温度、カラム滞留時間、低級アルキルアルコールの使用量などの条件を調整すればよい。
このようなエステル化工程(A)をエステル交換反応工程(B)の前に行うことは、最終的に得られる脂肪酸低級アルキルエステルを高収率で得るために非常に重要である。
すなわち、エステル混合油に、その酸価が2を超えるほどの脂肪酸が含まれると、エステル交換反応工程(B)で使用するアルカリ触媒がこの脂肪酸に消費されてしまい、目的とするエステル交換が進行しないばかりでなく、大量のセッケンが副生することになる。それでも尚、エステル交換を進行させようとすれば、アルカリ触媒が大量に必要になり、油脂のケン化が進行しセッケンの生成量がますます増大する。セッケンが大量に生成すると、その分離作業に悪影響を及ぼし、得られる脂肪酸低級アルキルエステルの純度低下や、製造歩留まり低下を引き起こす原因となったり、リサイクル工程(R)の負荷も大きくなったりして好ましくない。
よって、エステル化工程(A)において、酸価が2以下となるように脂肪酸をあらかじめエステル化しておくことにより、高純度な脂肪酸低級アルキルエステルが高収率で円滑に得られる。
なお、酸価とは、試料1gあたり、中和に要した水酸化カリウムの質量(mg)で表される酸性物質の濃度であって、油脂の場合、脂肪酸の濃度を意味する。酸価=1とは、脂肪酸濃度0.46質量%(パルミチン酸換算)に相当する。酸価はAVと呼ばれる場合もある。
実際の測定に際しては、反応混合物をエバポレータで吸引して未反応の低級アルキルアルコールや水分を除去してエステル混合油を得て、これをさらに無水硫酸ナトリウムを含ませたろ紙に通して前処理した後、中和滴定する方法が好ましい。
さらに、このようなエステル化工程(A)は、脂肪酸を系外へ除去するのではなく、脂肪酸低級アルキルエステルに変換するものであるので、原料ベースの製造歩留まりを高く維持することができる。しかも、このようなエステル化工程(A)は、エステル交換反応工程(B)の前に実施され、脱ガム工程(P)が実施される場合には、脱ガム工程(P)とエステル交換反応工程(B)との間に連続的に行われるものであるので、非常に効率的である。系外に除去した脂肪酸を別のラインでエステル化した後、これを最終的に得られる脂肪酸低級アルキルエステルに混合することで製造歩留まりを維持する方法なども考えられるが、そのような方法は効率的ではない。
また、エステル化工程(A)では、脂肪酸の低級アルキルエステルとともに水が生成するため、原料中に大量の脂肪酸が含まれると、エステル化で生成する水の量もそれにともなって多くなる。多量の水の存在は、先述したように、ついで実施されるエステル交換反応工程(B)でのエステル交換反応率に悪影響を与えるおそれがある。よって、エステル化工程(A)で処理される原料中の脂肪酸の量は、酸価として15以下であることが好ましく、12以下がより好ましく、10以下がさらに好ましい。原料の酸価が15以下であると、エステル化工程(B)において、エステル混合油の酸価が2以下になるように原料をエステル化した場合に、エステル化にともなって生成する水の量が過剰にならず、反応混合物中の水分含有量が5000ppm以下に抑えられる傾向にある。このような水分含有量であれば、反応混合物から水分を分離せずに、これをエステル交換反応工程(B)に供しても、水分がエステル交換反応率に悪影響を与えることはない。なお、ここで言う原料の酸価とは、遊離脂肪酸に由来する酸価だけでなく、回収脂肪酸に由来する酸価も含まれる。
さらに本発明におけるエステル化工程(A)では、カチオン交換樹脂を使用してエステル化を行う。よって、原料をカチオン交換樹脂に接触させる簡単な方法で、連続的にエステル化を進行させることができるうえ、固体触媒を使用する方法や、硫酸などの酸を加える方法などの他のエステル化方法に比べて、高いエステル化反応率が達成できる。また、カチオン交換樹脂を使用した方法では、原料である動植物油脂の品質劣化や、装置の腐食などの問題を生じることもない。
さらに、カチオン交換樹脂としては、酸型固形カチオン交換樹脂、酸性ゲル型カチオン交換樹脂などがあるが、特に酸性ゲル型カチオン交換樹脂を使用すると、エステル化反応率がより高まるため好ましい。この理由については明らかではないが次のように推察できる。すなわち、酸型固形カチオン交換樹脂は、エステル化反応で生成した水が付着または吸着することにより触媒能が低下するが、酸性ゲル型カチオン交換樹脂では、水を水和水として取り込むことができるため、水による触媒能の低下が生じないことに起因すると考えられる。
酸性ゲル型カチオン交換樹脂の架橋度は、3〜10%の範囲が好ましい。3%以上であれば、樹脂強度の点で好ましく、10%以下であれば、脂肪酸の除去効率の点から好ましい。架橋度は、さらに好ましくは4〜8%である。なかでも、脂肪酸のエステル化反応率が最も高く、樹脂の機械的強度が十分であることなどから、架橋度4%のものが特に好ましい。
好適に使用できる酸性ゲル型カチオン交換樹脂としては、例えば、スチレン−ジビニルベンゼンコポリマーのスルホン化物などが挙げられ、例えば、三菱化学社製のダイヤイオンSK104(商品名、架橋度4%)、同SK106(商品名、架橋度6%)、同SK1B(商品名、架橋度6%)および同SK110(商品名、架橋度10%)や、ダウケミカル社製ダウエックス(商品名、架橋度4%)、ローム・アンド・ハース社製のアンバーライト(商品名、架橋度4%)などが挙げられる。
エステル化工程(A)の具体的な方法としては、カチオン交換樹脂が充填されたカラムを用意し、低級アルキルアルコールと原料との混合物をカラムに供給し、通過させる方法が挙げられる。
カラムを通過させる際の条件は、カラム温度が好ましくは40〜70℃、より好ましくは50〜65℃、さらに好ましくは60〜65℃で、カラム滞留時間が好ましくは60〜480分間、より好ましくは90〜360分間、さらに好ましくは90〜240分間である。このような温度およびカラム滞留時間であると、混合物の流動性が良好で、反応速度も十分であるとともに、カラムを過度に大型化したり、耐圧化したりする必要もなく、効率的である。
なお、低級アルキルアルコールと原料との混合物をカラムに供給する前には、前処理として、カチオン交換樹脂をアルコールで洗浄しておくことが好ましい。洗浄のためのアルコールとしては、エステル化反応に使用するものと同じ低級アルキルアルコールを使用することが好ましい。また、このような洗浄は、カラムに通す前後のアルコール中の水分が変化しなくなるまで行うことが好ましい。このように洗浄することにより、カチオン交換樹脂中の水分がアルコールで置換され、脂肪酸のエステル化効率をより高めることができる。具体的には、カチオン交換樹脂の2〜5倍容量のアルコールで洗浄することが好ましい。
低級アルキルアルコールとしては、炭素数4以下のアルコールが使用でき、具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどが挙げられる。これらは1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよいが、好適には、図示のようにメタノールを使用する。
また、低級アルキルアルコールの添加量は、原料中の脂肪酸分布に応じて適宜決定されるが、原料100質量部に対して、好ましくは5〜50質量部であり、より好ましくは10〜30質量部、さらに好ましくは15〜25質量部である。このような範囲内であると、十分なエステル化反応率が得られるとともに、低級アルキルアルコールの回収コストや設備容量の過度の増大を抑制できる。
また、低級アルキルアルコール中の水分量は低いほど好ましいが、現実的には、1500ppm以下が好ましく、より好ましくは1000ppm以下、さらに好ましくは600ppm以下である。
[エステル交換反応工程(B)]
このようなエステル化工程(A)の後、アルカリ触媒を使用して、エステル混合油中の油脂を低級アルキルアルコールでエステル交換するエステル交換反応工程(B)を行う。ここでエステル交換の対象となる油脂とは、原料の動植物油脂の主成分として存在しているものである。このエステル交換により、脂肪酸低級アルキルエステルとグリセリンとが生成する。
アルカリ触媒は、品質の良い脂肪酸低級アルキルエステルが低温で得られやすいことから好ましく、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラートなどが挙げられる。これらのうちの1種以上を使用できるが、コストの点から水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましく、さらに操作性の点からは図示のように水酸化ナトリウムが好ましい。
また、このエステル交換反応工程(B)は少なくとも1段の工程からなり、1段目の工程においては、エステル化工程(A)で得られたエステル混合油の酸価に応じてアルカリ触媒の量を制御しながら、エステル交換反応を実施する。
すなわち、アルカリ触媒量が多いと、エステル交換反応の反応性は高まる。しかしながら、アルカリ触媒量が多いと、アルカリ触媒と脂肪酸や油脂とが反応して副生するセッケンの量も多くなり、セッケンの分離作業、製造歩留まり、得られる脂肪酸低級アルキルエステルの純度などに悪影響を及ぼしたり、後述するリサイクル工程(R)の負荷が大きくなったりする。よって、副生するセッケンの量を抑制しつつ、効率的にエステル交換反応を進行させることが重要であり、そのためには、エステル混合油の酸価に着目し、それに応じてアルカリ触媒量を制御しながら、エステル交換反応を実施することが好適である。
具体的には、エステル混合油100質量部に対して、アルカリ触媒量0.1〜1.0質量部の範囲内、より好ましくは0.2〜0.6質量部の範囲内で、酸価が大きい場合にはアルカリ触媒量も多くし、酸価が小さい場合にはアルカリ触媒量も少なくすることが好ましい。さらに好ましくは、アルカリ触媒として水酸化ナトリウムを単独で使用し、その際のエステル混合油100質量部に対する触媒量CNaOH[質量部]を、酸価をパラメータとした下記式(1)により決定する。下記式(1)は実験により求めたものである。
NaOH=0.2+0.07×AV・・・(1)
ただし、AVは酸価を示し、2以下である。
また、アルカリ触媒として水酸化カリウムを単独で使用する場合には、その際のエステル混合油100質量部に対する触媒量CKOH[質量部]を、酸価をパラメータとした下記式(2)により決定することが好ましい。下記式(2)は実験により求めたものである。
KOH=0.37+0.1×AV・・・(2)
ただし、AVは酸価を示し、2以下である。
具体的なエステル交換反応工程(B)の方法としては、エステル化工程(A)で得られた反応混合物に、低級アルキルアルコールとアルカリ触媒とを添加し、後述の条件で反応を進行させればよい。なお、反応混合物には、水分も含まれるが、ここでその水分含有量が5000ppm以下であると、特に上述のアルカリ触媒量とすることが有効である。
使用する低級アルキルアルコールとしては、前述のエステル化工程(B)で例示したものを同様に使用でき、好適には、図示のようにメタノールを使用する。
低級アルキルアルコールの使用量(反応混合物中に含まれる低級アルキルアルコールの量も含む。)は、エステル混合油100質量部に対し、好ましくは10〜50質量部であり、より好ましくは20〜40質量部、さらに好ましくは30〜40質量部である。このような範囲であると、使用する装置を大型化する必要がなく、低級アルキルアルコールの回収、精製も低コストで行えるとともに、十分なエステル交換反応率が得られる。
また、反応温度は、好ましくは40〜120℃であり、より好ましくは50〜100℃、さらに好ましくは60〜80℃である。このような範囲であると、エステル交換反応の速度が十分であるとともに、使用する装置の耐圧性を高めたりする必要がなく、効率的である。また、処理時間は、好ましくは15〜120分間であり、より好ましくは30〜70分間、さらに好ましくは40〜60分間である。このような範囲であると、使用する装置を大型化することなく、高いエステル交換反応率を達成することができる。
このような1段目の工程により、脂肪酸低級アルキルエステルを主成分とする油相と、グリセリンを主成分とする相(以下、グリセリン相という。)とが生成する。
こうして得られた油相をそのまま蒸留工程(C)に供してもよいが、好ましくは、このような1段目の工程に引き続いて2段目のエステル交換反応工程を行ってから、蒸留工程(C)を実施することが好ましい。このようにエステル交換反応を2段とすることにより、脂肪酸低級アルキルエステルのエステル交換反応率を高めることができる。好ましくは、1段目で95〜96%程度の反応率まで進行させ、2段目で99%程度の反応率まで進行させる2段で行う。
1段目の後には、脂肪酸低級アルキルエステルを主成分とする油相と、グリセリン相とを分離し、油相のみを2段目に供給する。
油相とグリセリン相との分離は、静置分離、遠心分離等で行えばよく、静置分離の場合には、温度は好ましくは30〜70℃、より好ましくは30〜50℃で、静置時間は好ましくは30〜90分間、より好ましくは30〜60分間とすればよい。このような条件とすると、油相の流動性が良好であるとともに、低級アルキルアルコールの蒸気圧も抑制できるため使用する分離装置の耐圧性を高める必要もなく、効率的に分離が行える。
また、油相とグリセリン相とを分離する前には、アルカリ触媒を水洗するための水を添加することが好ましい。
2段目では、1段目でのエステル交換反応率に応じて、2段目の低級アルキルアルコール添加量、処理温度や処理時間、触媒添加量などの条件を1段目よりも緩やかに設定すればよいが、好適には、2段目に供給された油相100質量部に対して、低級アルキルアルコール添加量を好ましくは1〜20質量部、より好ましくは5〜10質量部とする。このような範囲であると、低級アルキルアルコールの回収、精製も低コストで行えるとともに、十分なエステル交換反応率が得られる。また、アルカリ触媒の量は、油相100質量部に対して好ましくは0.01〜0.2質量部、より好ましくは0.05〜0.2質量部、さらに好ましくは0.05〜0.1質量部であり、このような範囲であれば、セッケンの副生を少なく抑えつつ、効率的にエステル交換反応を行える。
また、2段目の処理温度は好ましくは40〜70℃であり、より好ましくは50〜60℃である。このような範囲であると、エステル交換反応の速度が十分であるとともに、使用する装置の耐圧性を高めたりする必要がなく、効率的である。また、2段目の処理時間は、好ましくは1〜15分間であり、より好ましくは3〜10分間である。このような範囲であると、過度に時間を要することなく、十分なエステル交換反応率を達成することができる。
このような2段目の終了後、脂肪酸低級アルキルエステルを主成分とする油相と、グリセリン相とを分離し、油相は蒸留工程(C)へと送られ、グリセリン相は好ましくはリサイクル工程(R)へと送られる。
ここでの油相とグリセリン相との分離は、1段目と2段目との間に実施される分離と同様に静置分離、遠心分離等で行うことができ、静置分離の場合には、分離性が良好となり、分離装置の耐圧性を高める必要がない点から、温度は好ましくは30〜70℃、より好ましくは40〜70℃で、静置時間は好ましくは30〜90分間、より好ましくは30〜60分間とすればよい。また、油相とグリセリン相とを分離する際には、グリセリンや低級アルキルアルコールなどを水洗するための水を添加することが好ましく、その場合、水の添加量は、エステル交換反応工程(B)で得られた混合物100質量部に対して10〜30質量部が好ましく、10〜20質量部がより好ましい。このような範囲であると、乳化を起こすことなく、効果的な水洗が行える。
[リサイクル工程(R)]
リサイクル工程(R)は、エステル交換反応工程(B)で副生したグリセリン相中のセッケンをpH2〜5の条件下、酸で分解して脂肪酸とし、この脂肪酸を返送する工程である。脂肪酸は、エステル化工程(A)に返送されてもよいし、それよりも前段側の工程に返送されてもよい。具体的には、脱ガム工程(P)に返送される場合や、原料貯蔵タンクに返送される場合が例示できる。
副生したセッケンは、品質が悪いため、そのままセッケンとして使用することは困難であるが、このようなリサイクル工程(R)により脂肪酸とし、原料として再利用することで、製造歩留まりを高めることができる。グリセリン相中には、グリセリン、セッケンの他、通常、低級アルキルアルコール(図示例ではメタノール)、アルカリ触媒、水などが存在している。
リサイクル工程(R)の具体的方法としては、次の方法が好ましい。
まず、エステル交換反応工程(B)で生成したグリセリン相から低級アルキルアルコールを分離除去せずに、そのままのグリセリン相に酸を添加しpH2〜5、好ましくはpH3〜4とする。そして、好ましくは10〜70℃、より好ましくは40〜60℃の温度条件下、好ましくは30〜360分間、より好ましくは60〜120分間、これを撹拌混合し、脂肪酸を含む混合物を生成させる。
ここでpHが2未満であると装置が腐食する可能性があり、5を超えると分解が困難となる傾向にある。また、温度が10〜70℃であると、装置の耐圧性を高くする必要もなく、十分な速度で分解が進行する。また、撹拌混合時間が30〜360分間であると、装置を大型化することなく、十分な分解率を達成することができる。また、このようにグリセリン相から低級アルキルアルコールを分離除去せずに酸を添加する方法によれば、低温かつ短時間で酸分解することができる。
ここで酸としては、硫酸、塩酸、リン酸、硝酸などが使用できるが、硫酸が好ましい。酸として硫酸を使用し、かつ、上述のエステル交換反応工程(B)でアルカリ触媒として水酸化ナトリウムを使用した場合には、脂肪酸とともに、硫酸ナトリウムが副生する。こうして副生した硫酸ナトリウムは脂肪酸から分離、除去されるが、硫酸ナトリウムは分離性に優れるため、脂肪酸への混入が少なく好適である。ここで、例えば酸として塩酸を使用し、かつ、上述のエステル交換反応工程(B)でアルカリ触媒として水酸化ナトリウムを使用した場合には、塩化ナトリウムが副生するが、塩化ナトリウムは分離性が悪いために脂肪酸へ混入しやすい。脂肪酸は再利用されるものであるため、できるだけ不純物を含有していないことが求められる。よって、酸として硫酸を使用することが好ましい。
脂肪酸や副生した硫酸ナトリウムを含む混合物からは、まず、硫酸ナトリウムを遠心分離などで除去し、ついで、一部の低級アルキルアルコールやグリセリン、水を除去する。そして、これらが除去された混合物に水を添加して、脂肪酸を主成分とする相と、水、低級アルキルアルコール、グリセリンを含む相とにさらに分離する。そして、脂肪酸を主成分とする相を返送する。
一方、水、低級アルキルアルコール、グリセリンを含む相については、通常、120〜200℃でのフラッシュ蒸留により水、低級アルキルアルコールを留除し、粗グリセリンを残留物として得る。また、フラッシュ蒸留で留出した水、低級アルキルアルコールは、ついで、低級アルキルアルコール精留塔に導入し、60〜120℃で操作し、低級アルキルアルコールを留出液として回収するとともに、廃水を残留物として除去する。
なお、エステル交換反応工程(B)を2段以上で行った場合、各段の終了ごとにグリセリン相を分離回収して、これらを全てこのリサイクル工程(R)に供することが好ましい。
[蒸留工程(C)および分留工程(D)]
蒸留工程(C)は、エステル交換反応工程(B)で得られた油相を蒸留して低炭素数側の脂肪酸低級アルキルエステルを含有する留出液を留去するとともに、高炭素数側の脂肪酸低級アルキルエステルを含有する残留物を残留させる工程である。そして、分留工程(D)は、蒸留工程(C)で得られた残留物から、この残留物に含まれる高炭素数側の脂肪酸低級アルキルエステルを炭素数ごとに留出させる工程を少なくとも備えたものである。分留工程(D)は、必要に応じて、蒸留工程(C)で得られた留出液から、この留出液に含まれる低炭素数側の脂肪酸低級アルキルエステルを炭素数ごとに留出させる工程をさらに有していてもよい。このような分留工程(D)は好ましくは減圧条件下で行われる。
なお、分留工程(D)では、脂肪酸低級アルキルエステルを炭素数ごとに留出させるが、ここで「炭素数ごとに」留出させるとは、必ずしも1種の炭素数ごとに留出させることに限定されず、目的に応じて、複数の炭素数のものをともに留出させてもよい。
このように、蒸留工程(C)で低炭素数側の脂肪酸低級アルキルエステルを含有する留出液を留去してから、分留工程(D)において、高炭素数側の脂肪酸低級アルキルエステルを含有する残留物を炭素数ごとに分留することにより、特に高炭素数側の脂肪酸メチルエステルを炭素数ごとに高純度で得ることができる。
すなわち、エステル交換反応工程(B)で得られた油相には、炭素数が異なる脂肪酸低級アルキルエステルが複数存在し、これらは一般的に沸点も異なる。よって、例えば、高炭素数側の脂肪酸低級アルキルエステルを主成分とする油相に対して、蒸留工程(C)を行わずに、この高炭素数側の脂肪酸低級アルキルエステルの分留に好適な条件で分留工程(D)を実施したとすると、分留中に、マイナー成分である低炭素数側の脂肪酸低級アルキルエステルが突沸し、その結果、蒸留塔の塔底に残留するモノグリセライドが留出液に同伴されやすくなり、得られる高炭素数側の脂肪酸低級アルキルエステルの純度や性状が低下してしまう。その点、あらかじめ蒸留工程(C)を実施しておくと、その後の分留工程(D)では、主成分である高炭素数側の脂肪酸低級アルキルエステルの分留に最適な条件を設定できるため、得られる脂肪酸低級アルキルエステルは高純度なものとなる。
具体的な蒸留工程(C)と分留工程(D)の方法には特に制限はないが、例えば、原料に、油脂として炭素数12、14、16、18の脂肪酸に由来するものを主成分とするローカラーやし油が主に含まれる場合には、蒸留工程(C)において、まず、低級アルキルアルコール(図示例ではメタノール)と水とを留出液として除去する常圧のフラッシュ蒸留工程を実施した後、主成分よりも低炭素数側のマイナー成分である脂肪酸低級アルキルエステル、すなわち、炭素数6、8、10の脂肪酸に由来する脂肪酸低級アルキルエステルを主に含有する留出液を減圧条件下で留去する。
そして、分留工程(D)では、蒸留工程(C)の残留物から、この残留物に含まれる高炭素数側の脂肪酸低級アルキルエステル、すなわち、炭素数12、14、16、18の脂肪酸に由来する脂肪酸低級アルキルエステルを減圧条件下で、炭素数ごとに順次留出させる。この分留工程(D)では、油相に含まれる不純物は残留物として塔底に残ることとなる。
この場合の蒸留工程(C)の好適な条件としては、フラッシュ蒸留工程は、通常120〜170℃の温度条件とし、その後の炭素数6、8、10の脂肪酸に由来する脂肪酸低級アルキルエステルを含有する留出液を留出させる工程は、蒸留塔のトップ圧力を8〜11kPa、トップ温度を135〜175℃、還流比を1〜2とした減圧条件とする。
また、この場合の好適な分留工程(D)の条件としては、まず、蒸留塔のトップ圧力を7〜9kPa、トップ温度を180〜183℃、還流比を1〜2として、炭素数12の脂肪酸に由来する脂肪酸低級アルキルエステルを主成分とする留出液を留出させ、ついで、その残留物に対して、蒸留塔のトップ圧力を1〜3kPa、トップ温度を199〜203℃、還流比を1〜2として、炭素数14の脂肪酸に由来する脂肪酸低級アルキルエステルを主成分とする留出液を留出させ、ついで、その残留物に対して、蒸留塔のトップ圧力を0.6〜2.5kPa、トップ温度を183〜206℃、還流比を0.5として、炭素数16の脂肪酸に由来する脂肪酸低級アルキルエステルを主成分とする留出液を留出させる。そして、その残留物に対して、蒸留塔のトップ圧力を0.5〜0.8kPa、トップ温度を180〜205℃、還流比を0として、炭素数18の脂肪酸に由来する脂肪酸低級アルキルエステルを主成分とする留出液を留出させる。
一方、蒸留工程(C)で得られ、マイナー成分である低炭素数側の脂肪酸低級アルキルエステルを含む留出液に対しては、蒸留塔のトップ圧力を10〜12kPa、トップ温度を60〜86℃、還流比を11〜13として、炭素数6の脂肪酸に由来する脂肪酸低級アルキルエステルを主成分とする留出液を留出させ、ついで、その残留物に対して、蒸留塔のトップ圧力を10〜12kPaに維持したまま、トップ温度を120〜130℃、還流比を1〜2として、炭素数8の脂肪酸に由来する脂肪酸低級アルキルエステルを主成分とする留出液を留出させ、ついで、その残留物に対して、蒸留塔のトップ圧力を10〜12kPaに維持したまま、トップ温度を152〜158℃、還流比を0として、炭素数10の脂肪酸に由来する脂肪酸低級アルキルエステルを主成分とする留出液を留出させるなどして、分留することが好ましい。
また、原料に、油脂として炭素数16、18の脂肪酸に由来するものを主成分とするパーム油が主に含まれる場合には、蒸留工程(C)において、主成分よりも低炭素数側のマイナー成分である脂肪酸低級アルキルエステル、すなわち、炭素数12、14の脂肪酸に由来する脂肪酸低級アルキルエステルを主に含む留出液を留去する。そして、分留工程(D)において、蒸留工程(C)の残留物から、炭素数16、18の脂肪酸に由来する脂肪酸低級アルキルエステルを順次留出させればよい。ただし、特にパーム油の場合には、図1に示すように、分留工程(D)において、蒸留工程(C)で得られた残留物を減圧蒸留して、炭素数16、18の脂肪酸に由来する脂肪酸低級アルキルエステルを含む留出液とそれ以外の残留物とに分けて、不純物を残留物に残してから、得られた留出液を分留して、炭素数16の脂肪酸に由来する脂肪酸低級アルキルエステルと、炭素数18の脂肪酸に由来する脂肪酸低級アルキルエステルを順次留出させる2段階の方法を採用することが好ましい。
この場合の蒸留工程(C)の好適な条件としては、フラッシュ蒸留工程は、通常120〜170℃の温度条件下とし、その後の炭素数12、14の脂肪酸に由来する脂肪酸低級アルキルエステルを含有する留出液を留出させる工程は、蒸留塔のトップ圧力を1〜3kPa、トップ温度を178〜184℃、還流比を10〜15とした減圧条件とする。
また、この場合の好適な分留工程(D)の条件としては、蒸留工程(C)で得られた残留物に対して、まず、蒸留塔のトップ圧力を0.5〜0.8kPa、トップ温度を166〜207℃、蒸発率を最大で98%、還流比を0の条件を適用して、炭素数16、18の脂肪酸に由来する脂肪酸低級アルキルエステルを含む留出液と、不純物を含む残留物とに分ける。このような条件、特に蒸発率を98%以下、好ましくは95〜96%とすることにより、着色成分や臭気成分を残留物中に確実に残すことができ好適である。その後、得られた留出液に対して、蒸留塔のトップ圧力を0.6〜2.5kPa、トップ温度を183〜206℃、還流比を0.5として、炭素数16の脂肪酸に由来する脂肪酸低級アルキルエステルを主成分とする留出液を留出させ、その残留物に対して、蒸留塔のトップ圧力を0.5〜0.8kPa、トップ温度を180〜205℃、還流比を0、蒸発率を99%として、炭素数18の脂肪酸に由来する脂肪酸低級アルキルエステルを主成分とする留出液を留出させる。
一方、蒸留工程(C)で得られ、マイナー成分である低炭素数側の脂肪酸低級アルキルエステルを含む留出液に対しては、蒸留塔のトップ圧力を7〜9kPa、トップ温度を180〜183℃、還流比を1〜2として、炭素数12の脂肪酸に由来する脂肪酸低級アルキルエステルを主成分とする留出液を留出させ、炭素数14の脂肪酸に由来する脂肪酸低級アルキルエステルを残留物として残すことで、炭素数12の脂肪酸に由来する脂肪酸低級アルキルエステルと、炭素数14の脂肪酸に由来する脂肪酸低級アルキルエステルとを分取することが好ましい。
なお、還流比とは、還流量の留出量に対する比であって、蒸発率とは仕込み(供給)液量に対する留出量の比率を(%)で示したものである。
また、トップ温度およびトップ圧力、ボトム温度およびボトム圧力とは、蒸留塔のトップ、ボトムでそれぞれ測定された温度と圧力のことであり、トップは留出液が出る塔頂部分、ボトムは残留物が溜まる塔底部分である。
このような方法では、蒸留工程(C)を行ってから分留工程(D)を行うため、特に高炭素数側の脂肪酸低級アルキルエステルを炭素数ごとに最適な条件で留出させることが可能となり、高純度の脂肪酸低級アルキルエステルを炭素数ごとに得ることができる。また、このような分留工程(D)では、脂肪酸低級アルキルエステルを高純度で留出させる一方、油相に含まれる不純物を残留物として塔底に残すことができる。残留物に含まれる不純物には、原料に使用した動植物油脂の種類によって異なるが、例えばモノグリセライド、ジグリセライド、トリグリセライドなどの未反応のグリセライド、炭素数20、22の脂肪酸の低級アルキルエステル、アルカリセッケンなどのアルカリ金属に由来した成分の他、カロチンの分解物をはじめとする着色成分、糖脂質、リン脂質、タンパク質などに由来する臭気成分などがあり、これらを塔底の残留物に残すことにより、不純物を除去する工程を別途行わなくても、これらに由来する茶褐色の着色や臭いのない高純度の脂肪酸低級アルキルエステルを得ることができる。
以上説明したような製造方法によれば、エステル化工程(A)では酸価が2以下のエステル混合油を得て、エステル交換反応工程(B)ではエステル混合油の酸価に応じてアルカリ触媒の量を特定の範囲内で制御しながらエステル交換し、その後、蒸留工程(C)を実施してから分留工程(D)を行っているので、着色や臭いのない高純度の脂肪酸低級アルキルエステルを炭素数ごとに高収率で安定に生産できる。また、リサイクル工程(R)を実施すれば、脂肪酸が原料として効果的に再利用され、特に高い製造歩留まりが達成できる。
ここで、これら各工程のうちの少なくとも1つを実施しないと、脂肪酸低級アルキルエステルの純度が安定しなくなったり低下したりして、着色や臭いの抑制が困難となったり、さらには製造歩留まりが低下して脂肪酸低級アルキルエステルの収率が低くなったりして、工業的に安定な操業ができなくなる。
このようにして得られた脂肪酸低級アルキルエステルは、炭素数ごとに、あるいは必要があれば適宜混合されて、洗剤に使用される界面活性剤の原料や、セッケン、高級アルコールの原料などとして、好適に使用される。
以下、本発明について、実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
また、下記実施例において、特に断りの無い限り、「部」は「質量部」を意味し、「%」は「質量%」を意味する。
また、各例中、水分含有量の測定はカールフィッシャー法に準拠した。
[実施例1]
以下の工程により、原料としてフィリピン産のローカラーヤシ油を用い、これから脂肪酸メチルエステルを製造した。このローカラーヤシ油は、油脂として、炭素数6の成分を0.5%、炭素数8の成分を7.4%、炭素数10の成分を6.1%。炭素数12の成分を46.4%、炭素数14の成分を18.6%、炭素数16の成分を9.3%、炭素数18の成分を11.6%、炭素数20の成分を0.1%含有し、さらに、遊離脂肪酸を2.3%、ガム質を0.2%含有していた。また、酸価は6.4で、水分含有量は800ppmであった。なお、以下、炭素数とは、エステルにおいて、アルコール由来の炭素を含まないものである。
(1)エステル化工程(A)
酸性ゲル型カチオン交換樹脂である三菱化学社製のダイヤイオンSK1B(商品名、架橋度8%)を充填したカラムにメタノールを通過させ、洗浄した。ついで、上記原料100部に対してメタノールを20部添加した混合物を、カラムに供給して通過させ、反応混合物を得た。反応混合物中のエステル混合油は、酸価が1.6であった。また、反応混合物中の水分含有量は、2300ppmであった。また、カラム温度は65℃、カラム滞留時間は120分間とし、メタノールとしては、水分量が600ppmのものを使用した。
(2)エステル交換反応工程(B)
上記(1)で得られたエステル混合油に対して、エステル交換反応工程(B)(1段)を次のように行った。
まず、エステル混合油を84%含有する反応混合物に対して、メタノールと、アルカリ触媒である水酸化ナトリウムとを添加した。ここで、メタノールの添加量は、反応混合物120部に対して15部であり、水酸化ナトリウムの添加量はエステル混合油100部に対して0.3部となるようにした。
そして、これを処理温度70℃で60分間、パドル攪拌機付オートクレーブで反応させることで、脂肪酸メチルエステルを主成分とする油相と、グリセリン相とを生成させた。
ついで、これを40℃で60分間静置した後、油相とグリセリン相に分離し、油相100部に対して水洗用の水14部を添加し、撹拌後、これを40℃で60分間静置した。その後、これを油相と水相(セッケン、メタノール、グリセリン、水酸化ナトリウムなどの水溶性物質が溶解している相、グリセリン相ともいう。)に分離した。油相中の脂肪酸メチルエステル濃度(エステル交換反応率)は95.0%であった。
(3)蒸留工程(C)
上記(2)で得られた油相に対して、まず、150℃の常圧でフラッシュ蒸留して、メタノールと水とを留出液として除去した。
ついで、フラッシュ蒸留の残留物に対して、減圧蒸留工程(トップ温度180℃、トップ圧力8.0kPa)を行って、炭素数6、8、10の脂肪酸に由来する脂肪酸メチルエステルを主成分とする留出液を得た。
(4)分留工程(D)
上記(3)で得られた残留物に対して、トップ圧力を8kPa、トップ温度を180℃、還流比を1として、炭素数12の脂肪酸に由来する脂肪酸メチルエステルを留出させ、ついで、その残留物に対して、トップ圧力を2kPa、トップ温度を200℃、還流比を1として、炭素数14の脂肪酸に由来する脂肪酸メチルエステルを留出させ、ついで、その残留物に対して、トップ圧力を1kPa、トップ温度を205℃、還流比を0.5として、炭素数16の脂肪酸に由来する脂肪酸メチルエステルを留出させ、ついで、その残留物に対して、トップ圧力を0.5kPa、トップ温度を200℃、還流比を0、蒸発率98%として、炭素数18の脂肪酸に由来する脂肪酸メチルエステルを留出させた。
一方、上記(3)で得られた炭素数6、8、10の脂肪酸に由来する脂肪酸メチルエステルを主成分とする留出液に対して、トップ圧力を10.6kPa、トップ温度を70℃、還流比を12.2として、炭素数6の脂肪酸に由来する脂肪酸メチルエステルを留出させ、ついで、その残留物に対して、トップ圧力を10kPa、トップ温度を121℃、ボトム温度を160℃、還流比を1.2として、炭素数8の脂肪酸に由来する脂肪酸メチルエステルを留出させ、炭素数10の脂肪酸に由来する脂肪酸メチルエステルを残留物として得た。
これらのうち主要な脂肪酸メチルエステルについて、その性状、収率などについて表1にまとめる。
[実施例2]
以下の工程により、原料としてマレーシア産の粗パーム油(CPO)を用い、これから脂肪酸メチルエステルを製造した。
この粗パーム油は、油脂として、炭素数12の成分を0.3%、炭素数14の成分を1.1%、炭素数16の成分を43.9%、炭素数18の成分を53.9%、炭素数20の成分を0.8%含有し、さらに、遊離脂肪酸を2.82%、ガム質を0.5%含有していた。酸価は6.2であった。
(1)脱ガム工程(P)
65℃に加熱した粗パーム油100部に対して、温水1部と、吸着剤であるパーライト1部を添加して、20分間混合撹拌した。ついで、これをジャケット付加圧ろ過器(KST−142−JA‐S)を用い、Advantec社製NO−5Cろ紙(ろ過面積113cm)で圧力1kg/cm、温度45℃の条件で加圧ろ過し、ガム質を含有する不溶物を除去し、脱ガム物(ガム質含有量0.2%)をろ液として得た。得られた脱ガム物の水分含有量は1300ppmであった。
(2)エステル化工程(A)
上記(1)で得られた脱ガム物100部に対して、メタノールを20部使用するとともに、酸性ゲル型カチオン交換樹脂として、三菱化学社製のダイヤイオンSK106(商品名、架橋度6%)を充填したカラムを使用した以外は実施例1の(1)と同様にしてエステル化工程(A)を行って、反応混合物を得た。反応混合物中のエステル混合油は、酸価が1.2であった。また、反応混合物中の水分含有量は、2900ppmであった。
(3)エステル交換反応工程(B)
実施例1の(2)と同様にして、脂肪酸メチルエステルを主成分とする油相と、グリセリン相とを生成させた。
ついで、これを40℃で30分間静置した後、油相とグリセリン相に分離し、油相100部に対して水洗用の水20部を添加し、撹拌後、これを40℃で60分間静置した。その後、これを油相と水相に分離した。油相中の脂肪酸メチルエステル濃度は95.8%であった。
(4)蒸留工程(C)
上記(3)で得られた油相に対して、まず、170℃の常圧でフラッシュ蒸留して、メタノールと水とを留出液として除去した。
ついで、フラッシュ蒸留の残留物に対して、減圧蒸留工程(トップ温度180℃、トップ圧力2kPa、還流比10)を行って、炭素数12、14の脂肪酸に由来する脂肪酸メチルエステルを主成分とする留出液を得た。
(5)分留工程(D)
上記(4)で得られた残留物に対して、トップ圧力を0.6kPa、トップ温度を200℃、蒸発率98%、還流比0として、炭素数16、18の脂肪酸に由来する脂肪酸メチルエステルを主成分とする留出液を得た。
ついで、この留出液に対して、トップ圧力を2.0kPa、トップ温度を190℃、還流比を0.5として、炭素数16の脂肪酸に由来する脂肪酸メチルエステルを留出させ、その残留物に対して、トップ圧力を0.5kPa、トップ温度を190℃、還流比0、蒸発率99%として、炭素数18の脂肪酸に由来する脂肪酸メチルエステルを留出させた。残留物は、分留工程(D)の最初の工程に戻した。
一方、(4)で得られた炭素数12、14の脂肪酸に由来する脂肪酸メチルエステルを主成分とする留出液に対して、蒸留塔のトップ圧力を8kPa、トップ温度を180℃、還流比を1として、炭素数12の脂肪酸に由来する脂肪酸低級アルキルエステルを留出させ、炭素数14の脂肪酸に由来する脂肪酸低級アルキルエステルを残留物として残した。
これらのうち主要な脂肪酸メチルエステルについて、その性状、収率などについて表1にまとめる。
[実施例3]
原料として、実施例1で使用したローカラーヤシ油と、実施例2で使用した粗パーム油との1:4(質量比)の混合物を用い、これから脂肪酸メチルエステルを以下の工程により製造した。
(1)脱ガム工程(P)
65℃に加熱した上記混合物100部に対して、75%のリン酸水溶液0.04部と、吸着剤であるパーライト0.03部を添加して、20分間混合撹拌した。ついで、これを実施例2の(1)と同様にして加圧ろ過し、ガム質を含有する不溶物を除去し、脱ガム物(ガム質含有量0.1%)をろ液として得た。なお、原料として使用した混合物は、酸価が5.7で、遊離脂肪酸を2.8%、ガム質を0.45%含有していた。また、得られた脱ガム物の水分含有量は600ppmであった。
(2)エステル化工程(A)
上記(1)で得られた脱ガム物100部に対して、メタノールを20部使用するとともに、酸性ゲル型カチオン交換樹脂として、三菱化学社製のダイヤイオンSK104(商品名、架橋度4%)を充填したカラムを使用した以外は実施例1の(1)と同様にしてエステル化工程(A)を行って、反応混合物を得た。反応混合物中のエステル混合油は、酸価が0.2であった。また、反応混合物中の水分含有量は、2500ppmであった。
(3)エステル交換反応工程(B)
実施例1の(2)と同様にして、脂肪酸メチルエステルを主成分とする油相と、グリセリン相とを生成させた。
ついで、これを40℃で30分間静置した後、油相とグリセリン相に分離し、油相100部に対して水洗用の水20部を添加し、撹拌後、これを40℃で60分間静置した。その後、これを油相と水相に分離した。油相中の脂肪酸メチルエステル濃度は96.5%であった。
(4)リサイクル工程(R)
上記(3)のエステル交換反応で得られたグリセリン相と水洗により得られた水相とを混合し、その混合液に対して、70%硫酸を添加してpH3.0とし、60℃において60分間撹拌混合した。ついで、この混合物から生成した硫酸ナトリウムを遠心分離で除去した後、脂肪酸相と、水、メタノール、グリセリンを含む水相とに分離した。
水、メタノール、グリセリンを含む水相については、150℃で水とメタノールをフラッシュ蒸留で除き、粗グリセリンを得た。また、フラッシュ蒸留により留出した水、メタノール混合物はついで、メタノール精留塔に導入し、70℃で蒸留を行ってメタノールを留出液として回収し、廃水を残留物として除去した。
一方、脂肪酸相を、脱ガム物100部に対して4部返送、混合した。得られた混合物の酸価は8.7で、水分含有量は600ppmであった。
(5)エステル化工程(A)およびエステル交換反応工程(B)
上記(4)で得られた酸価が8.7の混合物に対して、上記(2)と同条件でエステル化工程(A)を実施し、酸価0.4のエステル混合油を含む反応混合物を得た。なお、反応混合物中の水分含有量は、3500ppmであった。
そして、上記(3)と同条件で、このエステル混合油についてエステル交換反応工程(B)を行い、油相とグリセリン相とを得た。水洗後の油相中の脂肪酸メチルエステル濃度は95.3%であった。
(6)蒸留工程(C)
上記(5)で得られた油相に対して、まず、170℃の常圧でフラッシュ蒸留して、メタノールと水とを留出液として除去した。
ついで、フラッシュ蒸留の残留物に対して、減圧蒸留工程(トップ温度180℃、トップ圧力1.3kPa)を行って、炭素数6、8、10の脂肪酸に由来する脂肪酸メチルエステルを主成分とする留出液を得た。
(7)分留工程(D)
上記(6)で得られた残留物に対して、トップ圧力を8kPa、トップ温度を180℃、還流比を1として、炭素数12の脂肪酸に由来する脂肪酸メチルエステルを留出させ、ついで、その残留物に対して、トップ圧力を2kPa、トップ温度を200℃、還流比を1として、炭素数14の脂肪酸に由来する脂肪酸メチルエステルを留出させ、さらにその残留物に対して、トップ圧力を0.6kPa、トップ温度を200℃、蒸発率98%、還流比0として、炭素数16、18の脂肪酸に由来する脂肪酸メチルエステルを主成分とする留出液を得た。
ついで、この留出液に対して、トップ圧力を1.0kPa、トップ温度を205℃、還流比を0.5として、炭素数16の脂肪酸に由来する脂肪酸メチルエステルを留出させ、その残留物に対して、トップ圧力を0.5kPa、トップ温度を190℃、還流比0、蒸発率99%として、炭素数18の脂肪酸に由来する脂肪酸メチルエステルを留出させた。
残留物は、分留工程(D)における、炭素数16、18の脂肪酸に由来する脂肪酸メチルエステルを主成分として留出させる工程に戻した。
一方、(6)で得られた炭素数6,8,10の脂肪酸に由来する脂肪酸メチルエステルを主成分とする留出液に対して、トップ圧力を10.6kPa、トップ温度を70℃、還流比を12.2として、炭素数6の脂肪酸に由来する脂肪酸メチルエステルを留出させ、ついで、その残留物に対して、トップ圧力を10kPaとし、トップ温度を121℃、ボトム温度を160℃、還流比を1.2として、炭素数8の脂肪酸に由来する脂肪酸メチルエステルを留出させ、炭素数10の脂肪酸に由来する脂肪酸メチルエステルを残留物として得た。
これらのうち主要な炭素数12、16、18の脂肪酸メチルエステルについて、その性状、収率などについて表1にまとめる。
[実施例4]
以下の工程により、実施例2で使用したものと同じマレーシア産の粗パーム油(CPO)から脂肪酸メチルエステルを製造した。
(1)脱ガム工程(P)
実施例2の(1)と同様にして、粗パーム油から脱ガム物を得た。
(2)エステル化工程(A)
酸性ゲル型カチオン交換樹脂として、三菱化学社製のダイヤイオンSK104(商品名、架橋度4%)を充填したカラムを使用した以外は実施例2の(2)と同様にしてエステル化工程(A)を行って、反応混合物を得た。反応混合物中のエステル混合油は、酸価が0.2であった。また、反応混合物中の水分含有量は、3200ppmであった。
(3)エステル交換反応工程(B)
上記(2)で得られたエステル混合油に対して、エステル交換反応工程(B)(2段)を次のように行った。
(i)1段目
まず、エステル混合油を84%含有する反応混合物に対して、メタノールと、アルカリ触媒である水酸化ナトリウムとを添加した。ここで、メタノールの添加量は、反応混合物120部に対して15部であり、水酸化ナトリウムの添加量は式(1)から決定し、エステル混合油100部に対して0.21部とした。
そして、これを実施例1の(2)と同様にして、脂肪酸メチルエステルを主成分とする油相と、グリセリン相とを生成させ、40℃で60分間静置した後、油相とグリセリン相に分離した。油相中の脂肪酸メチルエステル濃度は95.3%であった。
(ii)2段目
ついで、得られた油相100部に対してメタノールを5部、アルカリ触媒である水酸化ナトリウムを0.1部添加し、処理温度60℃で5分間エステル交換反応を実施した。
得られた混合物100部に対して水洗用の水14部を添加し、撹拌後、これを40℃で60分間静置した。その後、これを油相と水相(セッケン、メタノール、グリセリン、水酸化ナトリウムなどの水溶性物質が溶解している相)に分離した。油相中の脂肪酸メチルエステル濃度は99.2%であった。
(4)リサイクル工程(R)
上記(3)のエステル交換反応において、1段目で得られたグリセリン相と2段目で得られた水相とを混合し、その混合液に対して、90%硫酸を添加してpH3.0とし、60℃において60分間撹拌混合した。ついで、この混合物から生成した硫酸ナトリウムを遠心分離で除去した後、脂肪酸相と、水、メタノール、グリセリンを含む水相とに分離した。
水、メタノール、グリセリンを含む水相については、実施例1と同様の処理を実施して、粗グリセリンを得るとともに、メタノールの回収と、廃水の除去を行った。
一方、脂肪酸相を、脱ガム物100部に対して3部返送、混合した。得られた混合物の酸価は8.3で、水分含有量は600ppmであった。
(5)エステル化工程(A)およびエステル交換反応工程(B)
上記(4)で得られた酸価が8.3の混合物に対して、上記(2)と同条件でエステル化工程(A)を実施し、酸価0.4のエステル混合油を含む反応混合物を得た。なお、反応混合物中の水分含有量は、3400ppmであった。
そして、1段目の触媒量を前記式(1)から算出し、0.23部とした以外は上記(3)と同条件で、このエステル混合油について2段からなるエステル交換反応工程(B)を行い、油相とグリセリン相とを得た。水洗後の油相中の脂肪酸メチルエステル濃度は99.1%であった。なお、1段目終了時点では、油相中の脂肪酸メチルエステル濃度は95.2%であった。
(6)蒸留工程(C)および分留工程(D)
実施例2の(4)および(5)と同様に操作した。得られた脂肪酸メチルエステルのうち、主要な炭素数12、16、18の脂肪酸メチルエステルについて、その性状、収率などについて表1にまとめる。
[実施例5]
以下の工程により、実施例2で使用したものと同じマレーシア産の粗パーム油(CPO)から脂肪酸メチルエステルを製造した。
(1)脱ガム工程(P)
実施例4の(1)と同様にして、粗パーム油から脱ガム物を得た。
(2)エステル化工程(A)
実施例4の(2)と同様に行った。反応混合物中のエステル混合油は、酸価が0.2であった。また、反応混合物中の水分含有量は、3200ppmであった。
(3)エステル交換反応工程(B)
上記(2)で得られたエステル混合油に対して、実施例4の(3)と同様にしてエステル交換反応工程(B)(2段)を行った。
1段目で得られた油相中の脂肪酸メチルエステル濃度は96.0%であった。
2段目で得られた油相中の脂肪酸メチルエステル濃度は99.3%であった。
(4)リサイクル工程(R)
上記(3)のエステル交換反応において、1段目で得られたグリセリン相に90%硫酸を添加してpH3.0とし、60℃において60分間撹拌混合した。ついで、これから、生成した硫酸ナトリウムを遠心分離で除去した後、これに2段目で得られた水相を混合した。そして、この混合液に再度90%硫酸を添加してpH3.0とし、60℃において60分間静置し、脂肪酸相と、メタノール、グリセリンなどを主成分とする水相とに分離した。
メタノール、グリセリンなどを主成分とする水相については、実施例1と同様の処理を実施して、粗グリセリンを得るとともに、メタノールの回収と、廃水の除去を行った。
一方、脂肪酸相を、粗パーム油100部に対して3部返送、混合した。得られた混合物の酸価は8.9で、ガム質含有量は0.51%であった。
(5)脱ガム工程(P)、エステル化工程(A)およびエステル交換反応工程(B)
上記(4)で得られた酸価が8.9の混合物に対して、上記(1)と同条件で脱ガム工程(P)を実施した。得られた脱ガム物のガム質含有量は0.2%であり、上記(1)の場合と同程度の脱ガム効果であった。また、水分含有量は1000ppmであった。
ついで、上記(2)と同条件でエステル化工程(A)を実施し、酸価0.4のエステル混合油を含む反応混合物を得た。なお、反応混合物中の水分含有量は、4000ppmであった。
そして、1段目の触媒量を0.23部とした以外は、上記(3)と同条件で、このエステル混合油について2段のエステル交換反応工程(B)を行い、油相とグリセリン相とを得た。水洗後の油相中の脂肪酸メチルエステル濃度は99.0%であった。なお、なお、1段目終了時点では、油相中の脂肪酸メチルエステル濃度は96.1%であった。
(6)蒸留工程(C)および分留工程(D)
実施例2の(4)および(5)と同様に操作した。得られた脂肪酸メチルエステルのうち、主要な炭素数12、16、18の脂肪酸メチルエステルについて、その性状、収率などについて表1にまとめる。
[比較例1]
脱ガム工程(P)とエステル化工程(A)とを行わない以外は実施例2と同様にして(アルカリ触媒(水酸化ナトリウム)量は0.3部)、エステル交換反応工程(B)を行った。しかしながら、エステル交換反応はほとんど進行せず、得られた混合物を40℃で30分間静置したが、油相とグリセリン相に分離しなかった。
[比較例2]
水酸化ナトリウムの量を0.8部とした以外は比較例1と同様にして、エステル交換反応工程(B)を行った。得られた混合物を40℃で30分間静置し、油相とグリセリン相に分離し、油相100部に対して水20部を添加し、攪拌後、これを40℃で60分間静置し油相と水相に分離した。油相中の脂肪酸メチルエステル濃度は95.0%であった。
ついで、油相に対し、実施例2と同じ条件で蒸留工程(C)および分留工程(D)を行った。
得られた主要な脂肪酸メチルエステルについて、その性状、収率などについて表1にまとめる。
[比較例3]
エステル化工程の条件を変化させ、得られたエステル混合物の酸価が4になるようにした以外は、実施例2と同様にして、脱ガム工程から分留工程までを実施した。結果を表1にまとめる。
[比較例4]
(3)のエステル交換反応工程の1段目での触媒量を1.5部とした以外は、実施例2と同様にして、脱ガム工程から分留工程までを実施した。結果を表1にまとめる。
[比較例5]
上記(3)で得られた油相に対して、蒸留工程としてフラッシュ蒸留のみ行い、減圧蒸留工程を行わずに、分留工程を実施した以外は実施例2と同様にして、脱ガム工程から分留工程までを実施した。結果を表1にまとめる。
脂肪酸メチルエステルの濃度は、ガスクロマトグラフィ(GC)により、あらかじめ作製された検量線を用いて求めた。すなわち、前処理後の試料を採血ビンに約0.2g取り、n−ヘキサン約1gを加えて溶解し、下記GC測定条件で操作し、検量線から各留分の濃度を算出した。
なお、検量線は、脂肪酸メチルエステル標準品(炭素数6〜22、和光純薬社製)の各々をn−ヘキサンに溶解し、所定の濃度となるように標準溶液を調製し、各標準溶液を下記条件でGC分析して作製した。
<GC測定条件>・GC:島津製作所社製、商品名GC6A・カラム:DEGS(ジエチレングリコールサクシネート20%)、カラム温度:180℃、注入口温度:250℃・検出器温度:250℃、RANGE(10):n=3・キャリアーガス:N、50mL/min、 検出器:FID、注入器:1μL
グリセライドの含有量は、試料約20mgをバイアル瓶に採取し、ピリジン100μLとBSTFA(ビストリメチルシリルトリフルオロアセトアミド)200μLを加えてよく撹拌し、これを80℃で30分間加熱後、室温まで冷却したものを試料溶液とし、これをGC測定して求めた。
<GC測定条件>・カラム:DB−HT(キャピラリーカラム、J&W社)、カラム温度:初期50℃から400℃まで、10℃/分で昇温・注入口温度:380℃、検出器温度:400℃、検出器:FID、キャリアガス:ヘリウム、スプリット比:約50:1、試料注入量:1μL
臭いの評価は次の方法で行った。
各例で得られた脂肪酸メチルエステルについて、専門パネル5名が下記の基準サンプルと一対比較し、評点をつけた。そして、専門パネル5名の評点の平均値を求め、その平均値から、臭いを「良」、「中」、「悪」の3段階に評価し、表1に示した。
評点:臭い
4〜5:良
3:中
1〜2:悪
(1)炭素数18留分の臭気評価
和光純薬工業製の試薬特級のステアリン酸メチルエステル、オレイン酸メチルエステル及びリノール酸メチルエステルを使用し、それらの質量をそれぞれX,Y,Zとして、下記の比率で混合して、基準サンプルA1、A2、A3、B1、B2、B3を調製した。
A1:X/Y/Z=8/73/19
A2:X/Y/Z=24/61/15
A3:X/Y/Z=11/71/18
B1:前記A1をCDM試験(基準油脂分析法:20L/hrs空気、120℃で、酸化劣化)で処理し、発生するガスを吸収した水の導電率が300μS/cmとなった時点のもの。
B2:前記A2をCDM試験(基準油脂分析法:20L/hrs空気、120℃で、酸化劣化)で処理し、発生するガスを吸収した水の導電率が300μS/cmとなった時点のもの。
B3:前記A3をCDM試験(基準油脂分析法:20L/hrs空気、120℃で、酸化劣化)で処理し、発生するガスを吸収した水の導電率が300μS/cmとなった時点のもの。
そして、実施例2、4、5、比較例2〜5の脂肪酸メチルエステルについては、次のような基準により評価した。
評点:評価基準
5:A1と同等の臭い
4:質量比 A1/B1=4/1の混合物と同等の臭い
3:質量比 A1/B1=1/1の混合物と同等の臭い
2:質量比 A1/B1=1/4の混合物と同等の臭い
1:B1と同等の臭い
実施例1の脂肪酸メチルエステルについては、次のような基準により評価した。
評点:評価基準
5:A2と同等の臭い
4:質量比 A2/B2=4/1の混合物と同等の臭い
3:質量比 A2/B2=1/1の混合物と同等の臭い
2:質量比 A2/B2=1/4の混合物と同等の臭い
1:B2と同等の臭い
実施例3の脂肪酸メチルエステルについては、次のような基準により評価した。
評点:評価基準
5:A3と同等の臭い
4:質量比 A3/B3=4/1の混合物と同等の臭い
3:質量比 A3/B3=1/1の混合物と同等の臭い
2:質量比 A3/B3=1/4の混合物と同等の臭い
1:B3と同等の臭い
(2)炭素数12留分の臭気評価
和光純薬工業製の試薬特級のラウリン酸メチルエステルを基準サンプルL1とし、L1をCDM試験(基準油脂分析法:20L/hrs空気、120℃で、酸化劣化)で処理し、発生するガスを吸収した水の導電率が300μS/cmとなった時点のものを基準サンプルL2とした。
実施例1、3の脂肪酸メチルエステルについては、次のような基準により評価した。
評点:評価基準
5:L1と同等の臭い
4:質量比 L1/L2=4/1の混合物と同等の臭い
3:質量比 L1/L2=1/1の混合物と同等の臭い
2:質量比 L1/L2=1/4の混合物と同等の臭い
1:L2と同等の臭い
(3)炭素数16留分の臭気評価
和光純薬工業製の試薬特級のパルミチン酸メチルエステルを基準サンプルP1とし、P1をCDM試験(基準油脂分析法:20L/hrs空気、120℃で、酸化劣化)で処理し、発生するガスを吸収した水の導電率が300μS/cmとなった時点のものを基準サンプルP2とした。
実施例1〜5、比較例2〜5の脂肪酸メチルエステルについて、以下のように評価した。
評点:評価基準
5:P1と同等の臭い
4:質量比 P1/P2=4/1の混合物と同等の臭い
3:質量比 P1/P2=1/1の混合物と同等の臭い
2:質量比 P1/P2=1/4の混合物と同等の臭い
1:P2と同等の臭い
以上のように、各実施例では、高純度で着色や臭いのない脂肪酸メチルエステルが炭素数ごとに高収率で安定に得られた。
本発明によれば、着色や臭いがなく、界面活性剤の原料や、セッケン、高級アルコールの原料などに好適な高純度の脂肪酸低級アルキルエステルを高収率で炭素数ごとに安定に製造できる。

Claims (7)

  1. パーム油を含む原料から、脂肪酸低級アルキルエステルを製造する方法であって、
    カチオン交換樹脂を使用して、前記原料中の脂肪酸を低級アルキルアルコールでエステル化し、酸価が2以下のエステル混合油を含む反応混合物を得るエステル化工程(A)と、
    アルカリ触媒の量を前記エステル混合油100質量部に対して0.1〜1質量部の範囲内で、前記酸価に応じて調整しながら、前記エステル混合油中の油脂を低級アルキルアルコールでエステル交換する1段目の工程を少なくとも備えたエステル交換反応工程(B)と、
    前記エステル交換反応工程(B)で得られた油相から、低炭素数側の脂肪酸低級アルキルエステルを含有する留出液を留去し、高炭素数側の脂肪酸低級アルキルエステルを含有する残留物を残留させる蒸留工程(C)と、
    前記残留物から、該残留物に含まれる高炭素数側の脂肪酸低級アルキルエステルを炭素数ごとに留出させる工程を少なくとも備えた分留工程(D)とを有し、
    前記の高炭素数側の脂肪酸低級アルキルエステルを含有する残留物は、炭素数16の脂肪酸に由来する脂肪酸低級アルキルエステルと、炭素数18の脂肪酸に由来する脂肪酸低級アルキルエステルとを含有し、
    前記分留工程(D)は、前記の高炭素数側の脂肪酸低級アルキルエステルを含有する残留物から、前記の炭素数16の脂肪酸に由来する脂肪酸低級アルキルエステルと前記の炭素数18の脂肪酸に由来する脂肪酸低級アルキルエステルとを主成分とする留出液を留出させて、該留出液とそれ以外の残留物とに分けてから、該留出液を分留して、前記の炭素数16の脂肪酸に由来する脂肪酸低級アルキルエステルと、前記の炭素数18の脂肪酸に由来する脂肪酸低級アルキルエステルとを順次留出させる工程を有することを特徴とする脂肪酸低級アルキルエステルの製造方法。
  2. 前記分留工程(D)で前記の炭素数18の脂肪酸に由来する脂肪酸低級アルキルエステルを留出させた後の残留物を、前記の高炭素数側の脂肪酸低級アルキルエステルを含有する残留物に加えることを特徴とする請求項1に記載の脂肪酸低級アルキルエステルの製造方法。
  3. 前記パーム油が未精製油脂である場合、該未精製油脂からガム質を除去する脱ガム工程(P)を前記エステル化工程(A)の前段側に有することを特徴とする請求項1または2に記載の脂肪酸低級アルキルエステルの製造方法。
  4. 前記脱ガム工程(P)は、前記未精製油脂にリン酸を含む変性剤とパーライトを含む吸着剤とを混合し、得られた混合物をろ過する工程であることを特徴とする請求項3に記載の脂肪酸低級アルキルエステルの製造方法。
  5. 前記エステル交換反応工程(B)は2段の工程を含むことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の脂肪酸低級アルキルエステルの製造方法。
  6. 前記エステル交換反応工程(B)で副生したセッケンをpH2〜5の条件下、酸で分解して脂肪酸とし、該脂肪酸を前記エステル化工程(A)または該エステル化工程(A)よりも前段側の工程に返送するリサイクル工程(R)を有することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の脂肪酸低級アルキルエステルの製造方法。
  7. 前記アルカリ触媒として水酸化ナトリウムを使用するとともに、前記酸として硫酸を使用して、前記リサイクル工程(R)で硫酸ナトリウムを副生させることを特徴とする請求項6に記載の脂肪酸低級アルキルエステルの製造方法。
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