JPWO2008056452A1 - 希少糖の筋萎縮性側索硬化症と関連した運動障害の発症または進行の遅延への利用 - Google Patents

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Abstract

課題:筋萎縮性側索硬化症と関連した運動障害の発症または進行を遅延させる医薬品または特定保健用食品を提供すること。解決手段:D-アロースを有効成分として含有してなる筋萎縮性側索硬化症と関連した運動障害の発症または進行遅延剤。該発症または進行遅延剤を含有する、飲食品または医薬品の形態の組成物。有効量が、D-アロースの量が1日当たり0.5〜50gである上記の組成物。D-アロースを有効成分として含有し、筋萎縮性側索硬化症と関連した運動障害の発症または進行を遅延するために用いられるものである旨の表示を付した飲食品。ヒト被験者における筋萎縮性側索硬化症と関連した運動障害の発症を遅延させる方法であって、該被験者に有効量のD-アロースを投与または給食することを含んでなる前記方法。筋萎縮性側索硬化症と診断されたヒト被験者を治療する方法であって、該被験者に、運動機能の障害の進行を遅延させるのに有効な量のD-アロースを投与または給食することを含んでなる前記方法。

Description

本発明は、D-アロースを有効成分として含有してなる筋萎縮性側索硬化症と関連した運動障害の発症または進行を遅延させる医薬品または特定保健用食品に関する。また、本発明は、被験者に治療上有効な量のD-アロースを投与することにより、該被験者における筋萎縮性側索硬化症と関連する運動障害の発症または進行を遅延させる方法に関する。
筋萎縮性側索硬化症(ALS) は主として中年期以降に手または足の脱力、あるいは球麻痺症状で発症し、数年の経過で四肢の脱力および筋萎縮が進行し、呼吸筋の麻痺により死に至る神経変性疾患である。ALSにおいては上位および下位運動ニューロンが選択的に障害され、通常は感覚障害や痴呆などは伴わない。病理学的には脊髄前角および前根の萎縮、脊髄や脳幹運動核の運動ニューロンの変性消失、および運動皮質の大型錐体細胞の脱落が認められる。これまでにその運動ニューロン変性機序としては、(1) フリーラジカルによる酸化ストレス、(2) グルタミン酸神経毒性、(3) 軸索輸送の障害などの仮説が推定されてきたが、いずれも病態の解明には至っていない。また、運動ニューロンが選択的に障害される機序についても不明である。
ALS発症者の大半は孤発性であるが5〜10%は家族性でその多くは常染色体優性遺伝形式をとることが知られており、家族性ALS(FALS)と呼ばれている。1991年に一部のFALS家系が第21染色体長腕上に連鎖することが明らかとなり、さらに1993年に銅・亜鉛スーパーオキシドジスムターゼ(Cu/Zn SOD)遺伝子がその原因遺伝子として同定された。Cu/Zn SOD 遺伝子は全長11.5 kb で5つのエクソンから成る。Cu/ZnSOD 蛋白は153アミノ酸で約16kDaの構成蛋白の2つから成る約32 kDaのダイマーである。各構成ユニットにはそれぞれ一つずつの銅イオンと亜鉛イオンを含んでおり、フリーラジカルの一つであるスーパーオキシドを不均化し、過酸化水素とする反応を媒介する酵素である。
Cu/Zn SOD の遺伝子異常はFALS 患者の約20% で認められ、現在まで約60種の遺伝子変異が報告されているが、その大半は点突然変異である。変異の種類によって発症年齢、罹病期間が異なることがこれまでの報告より分かってきており、例えば日本人家系で報告されたCu/Zn SOD の46番目のアミノ酸がヒスチジンからアルギニンへの変異 (H46R変異) を持つFALSの罹病者は、罹病期間が平均16.8年と非常に長いことが特徴である。当初はCu/Zn SOD のフリーラジカルスカベンジャーとしての性質から、遺伝子変異により酵素活性が低下したことで細胞内のフリーラジカルが増加し、神経細胞を変性させることが病態と考えられた。しかし、発症年齢や症状の進行の程度が発症者のCu/Zn SOD 酵素活性と相関しないこと、ヒト正常Cu/Zn SOD 遺伝子を導入したトランスジェニックマウス(Tg マウス)は臨床症状の変化がないが変異Cu/Zn SOD を導入したTg マウスが四肢の筋萎縮と筋脱力というALS様の症状を発症すること、逆にCu/Zn SOD ノックアウトマウスがALS様の症状を示さないことから、現在では変異したCu/Zn SOD 蛋白が新たに獲得した神経毒性が病態と考えられている。
変異したCu/Zn SOD 蛋白が神経を変性させる機序として現在想定されているものは、(1) 変異Cu/Zn SOD が、構造的に変化するか、あるいは銅を放出するため、ヒドロキシラジカルの産生を触媒する酵素活性が高くなることにより、細胞傷害を引き起こす 、(2) 変異Cu/Zn SOD がラジカルであるペルオキシナイトライトの生成を促進し、細胞を傷害する、(3) 変異Cu/Zn SOD が凝集し、これが細胞を傷害する等である。これまでヒト変異Cu/Zn SOD 遺伝子を導入したTg マウスは3系統作製されており、これらのマウスは症状の変化、病理などが異なるものの、ALS様の症状を発症することが分かっている。ALSの病因については上記の様にいろいろな仮説があるが、一次的な病因として確立されているものはCu/Zn SOD 遺伝子の変異のみである。
東北大学神経内科ではFALS患者のCu/Zn SOD 遺伝子を検索し、新しい変異を報告してきたが、この中でも、46番目のヒスチジンはCu/Zn SOD の銅イオンが結合する活性中心にあり、この場所に遺伝子変異があるとCu/Zn SOD酵素活性がほとんど認められない。また正常のCu/Zn SOD と比較して、H46R変異は、銅イオンの分画が異なっており、神経変性に関与する銅イオンの役割を考える上で良いモデルとなる。さらには臨床的にはH46R変異を持つ家系の発症者は、症状にばらつきなく罹病期間が非常に長いという特徴を持つため (非特許文献1) 、すでにこの変異を導入した、新たな Tg マウスを作製してきた。これまでにプロモーターの異なる2種の Tg マウスを作製しているが、一つは、全身にCu/Zn SOD を強く発現させるという目的で、chicken b-actinプロモーターを使用した発現ベクターpCXN (非特許文献2)を使い、もう一つは既存の Tg マウスと比較する目的で、既存のTgマウスと同じくヒトCu/ZnSOD のプロモーターを使用した。これまでの検討で、新しく作製したヒトH46R変異導入Tgマウスは、Cu/Zn SOD の脊髄での発現が多く認められた系統では運動ニューロン障害を引き起こすことが分かってきている。
また、特許文献1により抗ALS 薬の探索のためのALS 動物モデルとして有用な、新規トランスジェニックラット「筋萎縮性側索硬化症(ALS)あるいはそれと実質的に同等な症状を発症することのできることを特徴とするトランスジェニックラットまたはその子孫」およびその使用方法が提供される。その発明のトランスジェニックラットを用いることにより、ALS 疾患の治療薬の探索や効果の確認を効率良く行うことが可能である。また、その発明のALS のモデルラット、例えばヒト変異Cu/Zn SOD 遺伝子を導入したTgラットは、その症状および病理像においてヒトALS の病態をよく再現しており、ALS のモデル動物として今後の病態解明や治療法の開発に有用である。
特開2002-142610 Nat. Genet., 5, 323-324 (1993) J, Gene, 108, 193-199 (1991)
本発明は、D-アロースを有効成分として含有してなる筋萎縮性側索硬化症と関連した運動障害の発症または進行を遅延させる医薬品または特定保健用食品を提供することを目的とする。また、本発明は、被験者に治療上有効な量のD-アロースを投与することにより、該被験者における筋萎縮性側索硬化症と関連する運動障害の発症または進行を遅延させる方法を提供することを目的とする。
本発明は、筋萎縮性側索硬化症と関連した運動障害の発症または進行を遅延させるに際し、従来用いられていた既存薬の予防、治療および/または症状進展抑制効果を補完および/または増強し、薬物動態・吸収を改善し、あるいは該薬物の投与量・副作用を軽減し、さらには薬物耐性の発現を防止するといった効果を有する筋萎縮性側索硬化症と関連した運動障害の発症または進行を遅延させる医薬品または特定保健用食品を提供することを目的とする。
本発明は、以下の(1)〜(3)の筋萎縮性側索硬化症と関連した運動障害の発症または進行遅延剤を要旨とする。
(1)D-アロースを有効成分として含有してなる筋萎縮性側索硬化症と関連した運動障害の発症または進行遅延剤。
(2)筋萎縮性側索硬化症の陽性家族歴に起因して、患うリスクを有する筋萎縮性側索硬化症、筋萎縮性側索硬化症と正の相関関係にある、遺伝子変異の存在により、患うリスクを有する筋萎縮性側索硬化症、環境的曝露に起因して、患うリスクを有する筋萎縮性側索硬化症、または筋萎縮性側索硬化症と診断された、筋萎縮性側索硬化症と関連した運動障害の発症または進行を遅延する(1)に記載の発症または進行遅延剤。
(3)筋萎縮性側索硬化症と正の相関関係にある、遺伝子変異の存在により、患うリスクを有する筋萎縮性側索硬化症の、遺伝子変異が、スーパーオキシドジスムターゼをコードする遺伝子に存在する、(2)に記載の発症または進行遅延剤。
また、本発明は、以下の(4)および(5)の組成物を要旨とする。
(4)(1)、(2)または(3)の発症または進行遅延剤を含有する、飲食品または医薬品の形態の組成物。
(5)有効量が、D-アロースの量が1日当たり0.5〜50gである、(4)に記載の組成物。
また、本発明は、以下の(6)〜(11)の飲食品を要旨とする。
(6)D-アロースを有効成分として含有し、筋萎縮性側索硬化症と関連した運動障害の発症または進行を遅延するために用いられるものである旨の表示を付した飲食品。
(7)筋萎縮性側索硬化症の陽性家族歴に起因して、患うリスクを有する筋萎縮性側索硬化症、筋萎縮性側索硬化症と正の相関関係にある、遺伝子変異の存在により、患うリスクを有する筋萎縮性側索硬化症、環境的曝露に起因して、患うリスクを有する筋萎縮性側索硬化症、または筋萎縮性側索硬化症と診断された、筋萎縮性側索硬化症と関連した運動障害の発症または進行を遅延するために用いられる(6)に記載の飲食品。
(8)筋萎縮性側索硬化症と正の相関関係にある、遺伝子変異の存在により、患うリスクを有する筋萎縮性側索硬化症の、遺伝子変異が、スーパーオキシドジスムターゼをコードする遺伝子に存在する、(7)に記載の飲食品。
(9)サプリメント、機能性食品、健康食品、特定保健用食品 、栄養補助飲食品または病者用食品である(6)、(7)または(8)に記載の飲食品。
(10)タブレット状、丸状、カプセル状、粉末状、顆粒状、細粒状、トローチ状または液状である(6)、(7)、(8)または(9)に記載の飲食品。
(11)有効量が、D-アロースの量が1日当たり0.5〜50gである、(6)ないし(10)のいずれかに記載の飲食品。
また、本発明は、以下の(12)〜(15)の運動障害の発症を遅延させる方法を要旨とする。
(12)ヒト被験者における筋萎縮性側索硬化症と関連した運動障害の発症を遅延させる方法であって、該被験者に有効量のD-アロースを投与または給食することを含んでなる前記方法。
(13)筋萎縮性側索硬化症の陽性家族歴に起因して、患うリスクを有する筋萎縮性側索硬化症、筋萎縮性側索硬化症と正の相関関係にある、遺伝子変異の存在により、患うリスクを有する筋萎縮性側索硬化症、または環境的曝露に起因して、患うリスクを有する筋萎縮性側索硬化症と関連した運動障害の発症を遅延させる方法である(12)に記載の方法。
(14)筋萎縮性側索硬化症と正の相関関係にある、遺伝子変異の存在により、患うリスクを有する筋萎縮性側索硬化症の遺伝子変異が、スーパーオキシドジスムターゼをコードする遺伝子に存在する、(13)に記載の方法。
(15)投与または給食されるD-アロースの量が1日当たり0.5〜50gである、(12),(13)または(14)に記載の方法。
また、本発明は、以下の(16)および(17)の運治療する方法を要旨とする。
(16)筋萎縮性側索硬化症と診断されたヒト被験者を治療する方法であって、該被験者に、運動機能の障害の進行を遅延させるのに有効な量のD-アロースを投与または給食することを含んでなる前記方法。
(17)投与または給食されるD-アロースの量が1日当たり0.5〜50gである、(16)に記載の方法。
本発明は、D-アロースを有効成分として含有してなる筋萎縮性側索硬化症と関連した運動障害の発症または進行を遅延させる医薬品または特定保健用食品を提供することが出来る。また、本発明は、被験者に治療上有効な量のD-アロースを投与することにより、該被験者における筋萎縮性側索硬化症と関連する運動障害の発症または進行を遅延させる方法を提供することが出来る。
本発明は、筋萎縮性側索硬化症と関連した運動障害の発症または進行を遅延させるに際し、従来用いられていた既存薬の予防、治療および/または症状進展抑制効果を補完および/または増強し、薬物動態・吸収を改善し、あるいは該薬物の投与量・副作用を軽減し、さらには薬物耐性の発現を防止するといった効果を有する筋萎縮性側索硬化症と関連した運動障害の発症または進行を遅延させる医薬品または特定保健用食品を提供することができる。
H46R脊髄スライスを用い、虚血時におけるグルタミン酸の遊離とD-アロースの効果を示す図である。図左は無処理、図右がD-アロース投与のもので遊離されたグルタミン酸は茶色を呈する。 H46R脊髄スライスを用い、再還流時における過酸化水素の遊離と、それに及ぼすD-アロースの効果を示す図である。図左は無処理のもの、図右がD-アロース投与のものである。遊離された過酸化水素は茶色を呈する。
D-アロース(D-アロヘキソース)は、アルドース(アルドヘキソース)に分類されるアロースのD体であり、融点が178℃の六炭糖(C6H12O6)である。本発明において、「D-アロース」とは、D−アロースおよび/またはその誘導体を意味する用語である。D-アロースの誘導体について説明する。ある出発化合物から分子の構造を化学反応により変換した化合物を出発化合物の誘導体と呼称する。D-プシコースを含む六炭糖の誘導体には、糖アルコール(単糖類を還元すると、アルデヒド基およびケトン基はアルコール基となり、炭素原子と同数の多価アルコールとなる)や、ウロン酸(単糖類のアルコール基が酸化したもので、天然ではD-グルクロン酸、ガラクチュロン酸、マンヌロン酸が知られている)、アミノ糖(糖分子のOH基がNH2基で置換されたもの、グルコサミン、コンドロサミン、配糖体などがある)などが一般的であるが、D-アロースの誘導体についても同様であるが、それらに限定されるものではない。
このD-アロースの製法としては、D-アロン酸ラクトンをナトリウムアマルガムで還元する方法による製法や、また、D-プシコースをL-ラムノースイソメラーゼを用いて異性化し、その混合物からD-アロースを分離することで生産可能である。特開平2004−298106号公報に記載されているように、L-ラムノースイソメラーゼ(L-RhI)を用いてD-プシコースから希少糖D-アロースを大量生産することができる。D−アロースとD−プシコースの混合物を製造するには、L-ラムノースイソメラーゼをD-プシコースに作用させ異性化反応して、D-プシコースおよびD-アロースの混合物を調製する方法が有利に実施できる。D-プシコースとD-アロースを分離することなく、混合結晶として得ることができる。結晶化前の溶液中のD-アロースの割合はD-プシコースよりも50%以下であるにも関わらず、その結晶ではD-アロースが等量もしくはD-プシコースよりも割合が多くなる。一方、D-プシコースとD-アロースが1:1で混合した場合の結晶の組成比もD-プシコースとD-アロースが約2:3でありD-アロースが結晶に多く含まれている。つまり、D-プシコースとD-アロースの混合糖が結晶化した場合、D-プシコースとD-アロースの比率がおよそ1:1から2:3の間で安定した結晶構造になるのではないかと考えられる(PCT/JP2006/304151)。
本発明は、D-アロースを有効成分として含有してなる筋萎縮性側索硬化症と関連した運動障害の発症または進行遅延剤、該進行遅延剤を含有する飲食品または医薬品の形態の組成物、D-アロースを有効成分として含有し、筋萎縮性側索硬化症と関連した運動障害の発症または進行を遅延するために用いられるものである旨の表示を付した飲食品に関するものである。したがって、本発明が対象とする医薬品または特定保健用食品は、配合したD-アロースが有効成分として含有されていることを特徴とする。
医薬品の形態のものである場合、1またはそれ以上の医薬上許容される担体とともに、D-アロースを含む筋萎縮性側索硬化症と関連した運動障害の発症または進行を遅延させる組成物である。当該医薬組成物は、単独で、または1もしくはそれ以上の医薬上許容される担体と組み合わせて、本発明の薬理学的活性化合物の治療上有効量を含んでなる。
D-アロースをを上述の製剤として使用する場合には、公知の方法によって実施することができる。具体的には、例えば、以下に記載するとおりに実施することができる。
本発明の製剤は、必要に応じて糖衣やコーティングを施した錠剤、丸剤、カプセル剤(ハードカプセル、ソフトカプセル、マイクロカプセルを含む)、散剤、顆粒剤、細粒剤、トローチ剤、液剤(シロップ剤、乳剤、懸濁剤を含む)などとして経口的に使用するのが好ましい。
本発明の製剤には、本発明の効果を阻害しない限り、生理学的に許容される担体などを配合することができる。生理学的に許容される担体などとしては、製剤材料として慣用の各種有機あるいは無機担体物質が用いられ、固形製剤における賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤;液状製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、緩衝剤、増粘剤、乳化剤などがあげられる。また、必要に応じて、着色剤、甘味剤、抗酸化剤などの製剤添加剤も用いることができる。さらに本発明の製剤をコーティングしてもよい。
賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、D−マンニトール、D−ソルビトール、デンプン、α化デンプン、デキストリン、結晶セルロース(例えば、微結晶セルロースなど)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アラビアゴム、デキストリン、プルラン、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムなどがあげられる。結合剤としては、例えば、α化デンプン、ショ糖、ゼラチン、マクロゴール、アラビアゴム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、結晶セルロース、白糖、D−マンニトール、トレハロース、デキストリン、プルラン、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリビニルピロリドン(PVP)などがあげられる。崩壊剤としては、例えば、乳糖、白糖、デンプン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、架橋ポリビニルピロリドン、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、軽質無水ケイ酸、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、陽イオン交換樹脂、部分α化でんぷん、トウモロコシデンプンなどがあげられる。滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、ワックス類、コロイドシリカ、DL−ロイシン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、マクロゴール、エアロジルなどがあげられる。
溶剤としては、例えば、注射用水、生理的食塩水、リンゲル液、アルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)、植物油(例えば、サフラワー油、ゴマ油、トウモロコシ油、オリーブ油、綿実油、大豆レシチンなど)などがあげられる。溶解補助剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、D−マンニトール、トレハロース、安息香酸ベンジル、エタノール、トリスアミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、酢酸ナトリウムなどがあげられる。懸濁化剤としては、例えば、ステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、モノステアリン酸グリセリンなどの界面活性剤;例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどの親水性高分子;ポリソルベート類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などがあげられる。緩衝剤としては、例えば、リン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩などの緩衝液などがあげられる。増粘剤としては、例えば、天然ガム類、セルロース誘導体などがあげられる。乳化剤としては、例えば、脂肪酸エステル類(例えば、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルなど)、ワックス(例えば、ミツロウ、菜種水素添加油、サフラワー水素添加油、パーム水素添加油、シトステロール、スチグマステロール、カンペステロール、ブラシカステロール、カカオ脂粉末、カルナウバロウ、ライスワックス、モクロウ、パラフィンなど)、レシチン(例えば、卵黄レシチン、大豆レシチンなど)などがあげられる。
着色剤としては、例えば、水溶性食用タール色素(例、食用赤色2号および3号、食用黄色4号および5号、食用青色1号および2号などの食用色素、水不溶性レーキ色素(例、前記水溶性食用タール色素のアルミニウム塩など)、天然色素(例、β−カロチン、クロロフィル、ベンガラなど)などがあげられる。甘味剤としては、例えば、ショ糖、乳糖、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、アスパルテーム、ステビアなどがあげられる。抗酸化剤としては、例えば、亜硫酸塩、アスコルビン酸及びそれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などがあげられる。
錠剤、顆粒剤、細粒剤などに関しては、味のマスキング、光安定性の向上、外観の向上あるいは腸溶性などの目的のため、コーティング基材を用いて通常の方法でコーティングしてもよい。このコーティング基剤としては、糖衣基剤、水溶性フィルムコーティング基材、腸溶性フィルムコーティング基材などがあげられる。
糖衣基剤としては、例えば、白糖があげられ、さらにタルク、沈降炭酸カルシウム、ゼラチン、アラビアゴム、プルラン、カルナバロウなどから選ばれる1種または2種以上を併用してもよい。
水溶性フィルムコーティング基剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース系高分子;ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーE(オイドラギットE(商品名)、ロームファルマ社)ポリビニルピロリドンなどの合成高分子;プルランなどの多糖類などがあげられる。腸溶性フィルムコーティング基剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロースなどのセルロース系高分子;メタアクリル酸コポリマーL(オイドラギットL(商品名)ロームファルマ社)、メタアクリル酸コポリマーLD(オイドラギットL−30D55(商品名)ロームファルマ社)メタアクリル酸コポリマーS(オイドラギットS(商品名)ロームファルマ社)などのアクリル酸系高分子;セラックなどの天然物などがあげられる。これらのコーティング基剤は、単独で、または2種以上を適宜の割合で混合してコーティングしてもよく、また2種以上を順次コーティングしてもよい。
飲食品の形態の組成物、あるいは機能・効能などの表示を付した飲食品である場合、本発明の食品組成物あるいは飲食品は、機能性食品、健康食品、特定保健用食品 、病者用食品、サプリメントなどとして調製されてもよく、機能性食品として調製されるのが好ましい。このような本発明の食品組成物あるいは飲食品の形状としては、例えば、タブレット状、丸状、カプセル(ハードカプセル、ソフトカプセル、マイクロカプセルを含む)状、粉末状、顆粒状、細粒状、トローチ状、液状(シロップ状、乳状、懸濁状をふくむ)などがあげられ、タブレット状、カプセル状であるのが好ましい。
本発明の食品組成物としては、特にタブレット状、カプセル状であるのが好ましく、とりわけタブレット状の機能性食品、カプセル状の機能性食品であるのが好ましい。
本発明の食品組成物は、例えば、公知の方法によって食品中にD-アロースを含有させることによって製造することができる。具体的には、例えば、タブレット状の食品組成物は、例えば、D-アロース、および、賦形剤(例えば、乳糖、白糖、マンニトールなど)、甘味剤、着香剤などの原料を添加、混合し、打錠機などで圧力をかけてタブレット状に成形することにより製造することができる。必要に応じて、その他の材料(例えば、ビタミンCなどのビタミン類、鉄などミネラル類、食物繊維など)を添加することもできる。カプセル状の食品組成物は、例えば、D-アロースを含有する液状、懸濁状、のり状、粉末状または顆粒状の食品組成物をカプセルに充填するか、またはカプセル基剤で被包成形して製造することができる。
本発明の食品組成物には、本発明の効果を阻害しない限り、通常用いられる食品素材、食品添加物、各種の栄養素、ビタミン類、風味物質(例えば、チーズやチョコレートなど)などに加え、生理学的に許容される担体などを配合することができる。生理学的に許容される担体などとしては、慣用の各種有機あるいは無機担体物質が用いられ、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、甘味剤、防腐剤、抗酸化剤、増粘剤、乳化剤などがあげられる。また食品添加物としては、着色剤、甘味剤、防腐剤、抗酸化剤、着香剤などがあげられる。さらに、その他の材料、例えば、鉄などのミネラル類、ペクチン、カラギーナン、マンナンなどの食物繊維などを含有していてもよい。
賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、緩衝剤、増粘剤、着色剤、甘味剤、防腐剤、抗酸化剤としては、それぞれ前記した本発明の製剤に用いられるものと同様のものがあげられる。
ビタミン類としては、水溶性であっても脂溶性であってもよく、例えばパルミチン酸レチノール、トコフェロール、ビスベンチアミン、リボフラビン、塩酸ピリドキシン、シアノコバラミン、アスコルビン酸ナトリウム、コレカルシフェロール、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、葉酸、ビオチン、重酒石酸コリンなどがあげられる。
タブレット状、顆粒状、細粒状の食品組成物などに関しては、味のマスキング、光安定性の向上、外観の向上あるいは腸溶性などの目的のため、コーティング基材を用いて自体公知の方法でコーティングしてもよい。そのコーティング基材としては、前記した本発明の製剤に用いられるものと同様のものがあげられ、同様にして実施することができる。
本発明において、D-アロースは、安全であるので、ある個人が将来ALSを発症し得る可能性に対する予防法として、あらゆる一般人に投与および/または給食してもよい。本発明の好ましい実施形態において、D-アロースは、ALSのリスクが有ると疑われる個人に投与および/または給食してもよく、リスクを有する原因の例としては、通常よりも高いALSの発症率を有する家族の一員、または、例えばSOD遺伝子における突然変異の結果として決まった遺伝的傾向があげられる。本発明の好ましい実施形態において、D-アロースで予防的に治療してもよい被験者の別のカテゴリーは、ALSの罹患と関連すると考えられる環境的曝露(例えば農薬、除草剤、有機溶媒、水銀、鉛、マンガン、またはセレンへの曝露)を受けた者、喫煙者または神経系へのトラウマ(損傷)を受けた者である。
さらに、D-アロースは、ALSの初期段階の被験者に、好ましくはALSの診断が確からしいという判定を受けた上で、投与してもよい。定義のために述べると、「初期段階」とみなされる期間は、症状の発症から1年間である。
さらなる実施形態において、D-アロースは、症状(特に運動系)の発症を遅延させるため、例えば発声の障害を遅延させるため、および/または頭側の運動神経の機能障害と関連する呼吸筋系の障害を遅延させるために、ALSの後期段階に投与してもよい。定義のために述べると、1年以上ALSを患っている患者は、該疾患の後期段階にある。
D−アロースおよび/またはその誘導体をヒトが摂取する場合、個々人の年齢、体重および症状などによって用法用量が決定されるべきであるが、多くの場合有効な用量はD−アロースおよび/またはその誘導体を使用する場合、1日当たり0.01〜100g、好ましくは0.5〜50gで、分割して食前、食後あるいは食事とともに摂取されるのが適当である。
本発明の好ましい実施形態において、D-アロースは、経口投与および/または給食されるが、皮下、吸入、静脈、くも膜下腔、直腸、または他のあらゆる好適な投与経路を含む、他の投与経路も利用されうる。D-アロースを含有する配合は、投与様式に依存して、標準的な手法及び化合物を用いて、変化し得る。
本発明の詳細を実施例で説明する。本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。
ALSの病態に関しては不明な部分が多いが、少なくとも家族性ALSにおいてはSODの点変異による活性酸素種の過生成と処理不全であることはわかっている。
またこの活性酸素種の生成は神経伝達物質の一種であるが、大量に分泌されると強い神経細胞毒性を発現するグルタミン酸によると考えられる。
活性酸素種はいくつかの代謝系で生成されるが、グルタミン酸毒性による場合はブドウ糖と酸素より生成されることはよく知られている。
本発明者らは既に脳虚血・再還流時における活性酸素の生成をD-アロースが抑制し、遅発性神経細胞死を防ぐ働きがあることを明らかにした(WO2003/097820)
本研究ではD-アロースのALSモデルに対する効果を調べた。
[実験方法]
1.トランスジェニックマウスは東北大学神経内科より分与された種を使用し、香川大学動物実験施設で交配を続けて種を保存している。
2.H46Rのマウスの尾の一部5mmを切り、溶解液で溶かした後にDNAを抽出した。このDNAを用いて、PCR法を行い、目的の遺伝子が導入されているか否かを確認した。
3.H46Rマウスの麻痺は130日前後よりおこるため、生後100日より、午前9時にD-アロースを生理食塩水に溶解したものを2g/kgを1日1回午前9時に経口投与した。コントロール群にはブドウ糖を生理食塩水に溶解したものを2g/kgで同様に経口投与した。
4.行動は目視による観察と運動解析装置(回転カゴ運動測定装置)を用いて行動解析を行った。また、同時にビデオ収録を行った。
5.作用機序解析の一端として、脊髄よりのグルタミン酸遊離実験を行った。80日齢のH46Rの脊髄を用いてスライスを作成し、アクリルの自製チャンバーを顕微鏡下に設置し、虚血・再還流時にグルタミン酸の遊離をD-アロースの存在下、非存在下で観察した。
[実験結果]
1.D-アロースによるALSへの治療効果
H46Rマウスの平均寿命は163±16.4日であり、これに対してD-アロース投与群は189日±8.0日で有意に生存を延長させる。このマウスは151±16.8日で発症し、片側の下肢の麻痺から両側に進行し、さらに上肢に進行し、最終的には呼吸筋の麻痺により死亡する。発症から死亡までの罹患日数は12.3±2.6日である。この間麻痺の進行は連続的であり、下肢の麻痺、進展、硬直というように病状は進行する。一方、D-アロース投与群では発症までの期間は160.0±6.8日で発症を遅くさせる傾向がある。さらにD-アロース投与群の発症から死亡までは30.8±4.8日であり、非投与群の発症から死亡までの期間を有意に延長する。これは一つ一つの症状の進行が遅延することによると考えられる。D-アロースのALSに対する結果を表1に示す
これらの結果は現在ALSの治療薬として唯一使用が認められているリルゾールと実験動物レベルではほぼ同等の効果がある。また、最近報告されたインスリン様成長因子の遺伝子治療とも同等の効果を有しており、単糖であるD-アロースにこれらと同等の効果が認められたことは驚きである。
2.D-アロースのALSへの効果と作用機序の解析
作業機序解析の一端として、脊髄よりのグルタミン酸遊離実験を行った。
D-アロースは、虚血・再還流における神経細胞毒性を有するグルタミン酸の遊離を抑制する(図1)。グルタミン酸は灰白質に特異的に遊離され、本法では茶色に発色する。図1の右はD-アロース存在下での遊離を示すが有意に抑制されている。リルゾールとほぼ同様の作用があった。またブドウ糖の代謝拮抗薬である2−デオキシグルコースも同様の作用を示した。
更に再還流時に遊離され、神経毒性を有する過酸化水素(H2O2)の生成も抑制した(図2)。過酸化水素は灰白質に特異的に遊離され、本法では茶色に発色する。図2の右はD-アロース存在下での遊離を示すが、有意に抑制されている。
このようにD-アロースの作用メカニズムも、グルタミン酸の遊離の抑制と、過酸化水素の生成の抑制というように、具体的に解明が進んでいる。
[結論]
1. D-アロースは、家族性ALSモデルマウスH46Rの発症を遅延させ、進行を有意に遅らせることにより、延命効果を有することが明らかとなった。
2. その作用機序の1として運動神経細胞毒性を有するグルタミン酸の遊離を抑制することが明らかとなった。
3.また、第2の作用機序として運動神経細胞毒性を有する活性酸素種である過酸化水素の生成を抑制することが明らかとなった。
4. 以上よりD-アロースはグルタミン酸の遊離と活性酸素種の生成をともに抑制することにより、脊髄の運動神経細胞死を抑制することにより、ALSに有効性を有すると考えられる。
本発明は、被験者におけるALSと関連する運動障害の発症または進行を遅延させるための方法は、被験者に治療上有効な量のD-アロースを投与することを含む。これは、少なくとも部分的に、D-アロースがH46R変異Cu/ZnSOD遺伝子導入ALS発症モデルマウスにおいて運動障害の発症を遅延させることができたという知見に基づく。従って、D-アロースは、一般人およびより具体的にはALSを発症するリスクがあると考えられる個人(例えば該疾患の陽性の家族歴および/または遺伝子欠陥の存在のため)を予防的に治療するために使用され得る。その上、D-アロースは、既に存在する運動障害の進行を遅延させるため、および/またはまだ検出できるほど該疾患に冒されていない運動系における運動障害の発症を遅延させるために、既にALSと診断された個人を治療するために使用できる。これらの医薬品または特定保健用食として大きなインパクトと需要が期待できる。

Claims (17)

  1. D-アロースを有効成分として含有してなる筋萎縮性側索硬化症と関連した運動障害の発症または進行遅延剤。
  2. 筋萎縮性側索硬化症の陽性家族歴に起因して、患うリスクを有する筋萎縮性側索硬化症、筋萎縮性側索硬化症と正の相関関係にある、遺伝子変異の存在により、患うリスクを有する筋萎縮性側索硬化症、環境的曝露に起因して、患うリスクを有する筋萎縮性側索硬化症、または筋萎縮性側索硬化症と診断された、筋萎縮性側索硬化症と関連した運動障害の発症または進行を遅延する請求項1に記載の発症または進行遅延剤。
  3. 筋萎縮性側索硬化症と正の相関関係にある、遺伝子変異の存在により、患うリスクを有する筋萎縮性側索硬化症の、遺伝子変異が、スーパーオキシドジスムターゼをコードする遺伝子に存在する、請求項2に記載の発症または進行遅延剤。
  4. 請求項1、2または3に記載の発症または進行遅延剤を含有する、飲食品または医薬品の形態の組成物。
  5. 有効量が、D-アロースの量が1日当たり0.5〜50gである、請求項4に記載の組成物。
  6. D-アロースを有効成分として含有し、筋萎縮性側索硬化症と関連した運動障害の発症または進行を遅延するために用いられるものである旨の表示を付した飲食品。
  7. 筋萎縮性側索硬化症の陽性家族歴に起因して、患うリスクを有する筋萎縮性側索硬化症、筋萎縮性側索硬化症と正の相関関係にある、遺伝子変異の存在により、患うリスクを有する筋萎縮性側索硬化症、環境的曝露に起因して、患うリスクを有する筋萎縮性側索硬化症、または筋萎縮性側索硬化症と診断された、筋萎縮性側索硬化症と関連した運動障害の発症または進行を遅延するために用いられる請求項6に記載の飲食品。
  8. 筋萎縮性側索硬化症と正の相関関係にある、遺伝子変異の存在により、患うリスクを有する筋萎縮性側索硬化症の、遺伝子変異が、スーパーオキシドジスムターゼをコードする遺伝子に存在する、請求項7に記載の飲食品。
  9. サプリメント、機能性食品、健康食品、特定保健用食品 、栄養補助飲食品または病者用食品である請求項6、7または8に記載の飲食品。
  10. タブレット状、丸状、カプセル状、粉末状、顆粒状、細粒状、トローチ状または液状である請求項6,7、8または9に記載の飲食品。
  11. 有効量が、D-アロースの量が1日当たり0.5〜50gである、請求項6ないし10のいずれかに記載の飲食品。
  12. ヒト被験者における筋萎縮性側索硬化症と関連した運動障害の発症を遅延させる方法であって、該被験者に有効量のD-アロースを投与または給食することを含んでなる前記方法。
  13. 筋萎縮性側索硬化症の陽性家族歴に起因して、患うリスクを有する筋萎縮性側索硬化症、筋萎縮性側索硬化症と正の相関関係にある、遺伝子変異の存在により、患うリスクを有する筋萎縮性側索硬化症、または環境的曝露に起因して、患うリスクを有する筋萎縮性側索硬化症と関連した運動障害の発症を遅延させる方法である請求項12に記載の方法。
  14. 筋萎縮性側索硬化症と正の相関関係にある、遺伝子変異の存在により、患うリスクを有する筋萎縮性側索硬化症の遺伝子変異が、スーパーオキシドジスムターゼをコードする遺伝子に存在する、請求項13に記載の方法。
  15. 投与または給食されるD-アロースの量が1日当たり0.5〜50gである、請求項12,13または14に記載の方法。
  16. 筋萎縮性側索硬化症と診断されたヒト被験者を治療する方法であって、該被験者に、運動機能の障害の進行を遅延させるのに有効な量のD-アロースを投与または給食することを含んでなる前記方法。
  17. 投与または給食されるD-アロースの量が1日当たり0.5〜50gである、請求項16に記載の方法。
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