JPWO2008047802A1 - D−セリンデヒドラターゼ及びその利用 - Google Patents

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Abstract

現行のD−セリン定量法における様々な問題を解消する新規なD−セリン定量法を提供すること。また、D−セリン定量法に利用される新規な酵素、それをコードする遺伝子などを提供すること。(a)配列番号1で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質、又は(b)配列番号1で示されるアミノ酸配列と相同なアミノ酸配列を有し、D−セリンデヒドラターゼ活性をもつタンパク質からなる新規なD−セリンデヒドラターゼが提供される。また、当該酵素を試料に反応させた後、生じたアンモニア又はピルビン酸を定量し、定量値から試料中のD−セリン量を算出することを特徴とするD−セリン定量法が提供される。

Description

本発明はD−セリンデヒドラターゼに関する。詳しくは、本発明は真核生物由来のD−セリンデヒドラターゼ及びその用途に関する。
アミノ酸にはL体とD体という二つの鏡像異性体が存在する。L−アミノ酸についてはタンパク質を構成するという重要な役割を果たすことに加え、生体内において様々な生理活性を発揮することが知られている。一方のD−アミノ酸は細胞壁の構成成分として細菌の生育に必須であることは以前より知られていたものの、真核生物におけるその役割は不明であった。最近になって、D−アミノ酸が真核生物においても重要な生理作用を有することが分かってきた。D−アミノ酸の中でもD−セリンについては、哺乳動物の脳に遊離状態で存在し、NMDA受容体のコアゴニストとして作用すること(非特許文献1)、統合失調症患者の脳脊髄液又は血清ではD−セリン含量が有意に低下しているとともに全セリン含量に占めるD−セリン含量の割合(D−セリン含量/全セリン含量)も有意に低下していること(非特許文献2、3)、さらにはアルツハイマー病患者の血清では全セリン含量に占めるD−セリン含量の割合(D−セリン含量/全セリン含量)が有意に低下していること(非特許文献4)等が報告されており、特に神経疾患との関係が注目されている。このように今後の応用が期待されるD−セリンであるが、簡便な定量法が存在しないのが現状である。酵素を利用したD−セリンの定量法は実用化されておらず、専ら、蛍光試薬等で標識した後にHPLCやキャピラリー電気泳動を用いて定量する方法、又は誘導体化した後にガスクロマトグラフィー(GC)を用いて定量する方法によってセリンの定量が行われている(非特許文献5)。
Lesson, P.D., and Iverson, L.L.(1994) J. Med. Chem. 37, 4053-4067. Hashimoto et al. (2003) Arch. Gen. Psychiatry 60, 572 Hashimoto et al. (2005) Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry 29, 767 Hashimoto et al. (2004) Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry. 28, 385-8. Sensitive Determination of D-Amino Acids in Mammals and the Effect of D-Amino-Acid Oxidase Activity on Their Amounts. Biological & Pharmaceutical Bulletin. (2005), 28, 1578 Characterization of the catalytic pathway for D-serine dehydratase. Evidence for variation of the rate-determining step with substrate structure. J Biol Chem. (1983) 258(9):5379-5385. D-serine dehydratase acting also on L-serine from Klebsiella pneumoniae. J Biochem . 1978 Nov;84(5):1133-1138.
現行のD−セリン定量法は、熟練を要すること、時間がかかること、HPLCやキャピラリー電気泳動、GCといった高額な機器を要すること、使い捨てが困難なため臨床応用に際して安全性の確保が困難であること等の問題を抱えている。即ち現行の方法では、不安定な蛍光試薬による誘導体化など煩雑な前処理を必要とするほか、血液・脊髄液などの生体試料を分析する場合にはD−セリンより遙かに量の多いL−アミノ酸によるノイズが大きくなるため結果の解析が難しくなる。そのため、熟練者でなければ正確な定量が難しいのが実情である。またHPLCを用いた標準的な分析では、前処理時間を除いても1検体に30分程度の時間を要する。高価な分析機器の使用は多検体の同時解析を困難にするとともに、同一器具の再使用を余儀なくすることから分析者への感染リスクを増大させる。以上の様々な問題点を克服するために、酵素を利用したD−セリンの定量法の確立が切望されるところである。現在利用可能な酵素である、細菌(Escherichia coli 、Klebsiella pneumoniae)のD−セリンデヒドラターゼはわずかではあるがL−セリンにも反応する(非特許文献6、7)。一般に、生体試料中のL−セリン量はD−セリン量に比べて遙かに多いため、このL−セリンに対する反応性は、これら細菌由来の酵素のD−セリン定量への応用を困難にさせる。
そこで本発明は、現行のD−セリン定量法における様々な問題を解消する新規なD−セリン定量法を提供することを課題とする。また、D−セリン定量法に利用される新規な酵素、それをコードする遺伝子などを提供することも課題とする。
本発明者らは以上の課題に鑑み鋭意検討した。その結果、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)由来の新規なD−セリンデヒドラターゼを発見することに成功した。この酵素の構造上の特徴を調べたところ、細菌由来の既知のD−セリンデヒドラターゼ(D−セリンデアミナーゼ、D−セリンアンモニアリアーゼ(EC4.3.1.18))と同様にD−セリンをピルビン酸とアンモニアに分解するが、既知のD−セリンデヒドラターゼとは一次構造上の相同性を有していないことが明らかとなった。また、驚くべきことに当該酵素はL−セリンには全く反応せず、基質特異性が極めて高いことが判明した。この特性は当該酵素がD−セリンの定量に非常に有用であることを意味する。当該酵素によれば試料中のD−セリン量を正確に定量できるとともに、D−セリンに比べてL−セリンの含量がはるかに多い生体試料中のD−セリンの定量など、既存の酵素では到底不可能な条件下でのD−セリンの定量も可能になる。
本発明は主として以上の成果・知見に基づくものであり、以下のD−セリンデヒドラターゼ、それをコードする遺伝子等、及びD−セリン定量法を提供する。
[1]以下の(a)又は(b)のタンパク質からなるD−セリンデヒドラターゼ:
(a)配列番号1で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質;
(b)配列番号1で示されるアミノ酸配列と相同なアミノ酸配列を有し、D−セリンデヒドラターゼ活性をもつタンパク質。
[2]L−セリンには反応しないことを特徴とする、[1]に記載のD−セリンデヒドラターゼ。
[3]D−セリンに対する反応性を100%としたときのD−スレオニンに対する反応性が5%以下である、[1]又は[2]に記載のD−セリンデヒドラターゼ。
[4]大腸菌を宿主として発現させた組換えタンパク質であることを特徴とする、[1]〜[3]のいずれかに記載のD−セリンデヒドラターゼ。
[5]以下の(A)〜(C)からなる群より選択されるいずれかのDNAからなるD−セリンデヒドラターゼ遺伝子:
(A)配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードするDNA;
(B)配列番号2で示される塩基配列からなるDNA;
(C)配列番号2で示される塩基配列と相同な塩基配列を有し、且つD−セリンデヒドラターゼ活性をもつタンパク質をコードするDNA。
[6][5]に記載の遺伝子を含有するD−セリンデヒドラターゼ発現用ベクター。
[7][5]に記載の遺伝子が導入されている形質転換体。
[8]以下のステップを含む、D−セリンデヒドラターゼの生産方法:
(1)[7]に記載の形質転換体を、前記遺伝子がコードするタンパク質が産生される条件下で培養するステップ;及び
(2)産生された前記タンパク質を回収するステップ。
[9][1]〜[4]のいずれかに記載のD−セリンデヒドラターゼを含むD−セリン定量用試薬。
[10][9]に記載のD−セリン定量用試薬と、使用説明書とを含む、D−セリン定量用キット。
[11]以下のステップを含む、D−セリン定量法:
(1)試料を用意するステップ;
(2)[1]〜[4]のいずれかに記載のD−セリンデヒドラターゼを前記試料に添加し、反応させるステップ;
(3)(2)の結果生じたアンモニア又はピルビン酸を定量するステップ;
(4)(3)で得た定量値より、前記試料中のD−セリン量を算出するステップ。
[12]以下のステップを更に含む、[11]に記載のD−セリン定量法:
(5)アミノ酸ラセマーゼをステップ(2)後の反応液に添加し、前記D−セリンデヒドラターゼの共存下で反応させるステップ;
(6)(5)の結果生じたアンモニア又はピルビン酸を定量するステップ;
(7)(6)で得た定量値と、(4)で算出したD−セリン量より、前記試料中の全セリン量を算出するステップ。
[13]以下のステップを含む、D−セリン定量法:
(1)試料を用意するステップ;
(2)[1]〜[4]のいずれかに記載のD−セリンデヒドラターゼを前記試料の一部に添加し、反応させるステップ;
(3)(2)の結果生じたアンモニア又はピルビン酸を定量するステップ;
(4)(3)で得た定量値より、前記試料中のD−セリン量を算出するステップ;
(5)[1]〜[4]のいずれかに記載のD−セリンデヒドラターゼとアミノ酸ラセマーゼとを、前記試料の他の一部に添加し、反応させるステップ;
(6)(5)の結果生じたアンモニア又はピルビン酸を定量するステップ;
(7)(6)で得た定量値より、前記試料中の全セリン量を算出するステップ。
サッカロマイセス・セレビシエ由来の新規D−セリンデヒドラターゼのアミノ酸配列(配列番号1)。 新規D−セリンデヒドラターゼについてのSDS-PAGEの結果。レーン左は分子量マーカー、レーン右がサンプルレーン。新規D−セリンデヒドラターゼの見かけ上の分子量は約50kDaである。 新規D−セリンデヒドラターゼと、同酵素と一次構造上の相同性を示すタンパク質(YGL196Wホモログ)のアミノ酸配列との間の比較。新規D−セリンデヒドラターゼと各種起源のYGL196Wホモログとの間の相同性は、38.3%(S. pombe)、26.3%(A. nidulans)、29.1%(C. lipolytica)、17.1%(A. oryzae)であった。なお検索の結果得られたYGL196Wホモログは、いずれも機能未知である。 新規D−セリンデヒドラターゼの基質特異性を示す表。新規D−セリンデヒドラターゼの基質特異性と、既知の酵素(大腸菌D−セリンデヒドラターゼと)の基質特異性とが比較される。新規D−セリンデヒドラターゼはL−セリンに対して全く反応せず、D−スレオニンに対する反応性も非常に低い。 新規D−セリンデヒドラターゼの酵素活性に対する金属イオンの影響を示すグラフ。新規D−セリンデヒドラターゼはEDTAにより阻害され、低濃度の亜鉛イオンによって活性化される。 新規D−セリンデヒドラターゼの酵素活性に対するpHの効果を示すグラフ。新規酵素はMOPSおよびHEPES緩衝液を用いた場合に高い活性を示した。至適pHは8付近にあり、約7.5〜約9.0のpH域で良好な反応性が認められる。 新規D−セリンデヒドラターゼの動力学的特性を示すグラフ。D−セリン濃度の逆数に対する、反応速度の逆数プロットから、新規D−セリンデヒドラターゼのVmax値は4.2 mmol/min/mg、D−セリンに対するKm値は0.46 mMと算出された。 新規D−セリンデヒドラターゼを用いた定量法(酵素法)と従来法の比較。ヒト尿中D−セリン濃度を酵素法と従来法で定量し、結果を比較した。 酵素法で測定した際の尿濃度と吸光度(340nm)の減少の関係を表すグラフ。
(用語)
本発明において「タンパク質をコードするDNA」とは、それを発現させた場合に当該タンパク質が得られるDNA、即ち、当該タンパク質のアミノ酸配列に対応する塩基配列を有するDNAのことをいう。従ってコドンの縮重も考慮される。
本明細書において用語「疾患」は、疾病、病気、又は病態など、正常でない状態を表す言葉と交換可能に用いられる。
本明細書において用語「単離された」は「精製された」と交換可能に使用される。本発明のD−セリンデヒドラターゼに関して使用する場合の「単離された」とは、本発明の酵素が天然材料に由来する場合、当該天然材料の中で当該酵素以外の成分を実質的に含まない(特に夾雑タンパク質を実質的に含まない)状態をいう。具体的には例えば、本発明の単離された酵素では、夾雑タンパク質の含有量は重量換算で全体の約20%未満、好ましくは約10%未満、更に好ましくは約5%未満、より一層好ましくは約1%未満である。一方、本発明の酵素が遺伝子工学的手法によって調製されたものである場合の用語「単離された」とは、使用された宿主細胞に由来する他の成分や培養液等を実質的に含まない状態をいう。具体的には例えば、本発明の単離された酵素では夾雑成分の含有量は重量換算で全体の約20%未満、好ましくは約10%未満、更に好ましくは約5%未満、より一層好ましくは約1%未満である。尚、それと異なる意味を表すことが明らかでない限り、本明細書において単に「D−セリンデヒドラターゼ」と記載した場合は「単離された状態のD−セリンデヒドラターゼ」を意味する。D−セリンデヒドラターゼの代わりに使用される用語「酵素」についても同様である。
DNAについて使用する場合の「単離された」とは、もともと天然に存在しているDNAの場合、典型的には、天然状態において共存するその他の核酸から分離された状態であることをいう。但し、天然状態において隣接する核酸配列(例えばプロモーター領域の配列やターミネーター配列など)など一部の他の核酸成分を含んでいてもよい。例えばゲノムDNAの場合の「単離された」状態では、好ましくは、天然状態において共存する他のDNA成分を実質的に含まない。一方、cDNA分子など遺伝子工学的手法によって調製されるDNAの場合の「単離された」状態では、好ましくは、細胞成分や培養液などを実質的に含まない。同様に、化学合成によって調製されるDNAの場合の「単離された」状態では、好ましくは、dDNTPなどの前駆体(原材料)や合成過程で使用される化学物質等を実質的に含まない。尚、それと異なる意味を表すことが明らかでない限り、本明細書において単に「DNA」と記載した場合には単離された状態のDNAを意味する。
本明細書において用語「〜を含む」又「〜含んでなる」は、「〜からなる」の意味をも含む表現として使用される。
(D−セリンデヒドラターゼ)
本発明の第1の局面は、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)の機能未知遺伝子がD−セリンデヒドラターゼをコードすることを発見したことに基づき、新規なD−セリンデヒドラターゼを提供する。以下、説明の便宜上、本発明のD−セリンデヒドラターゼのことを「本発明の酵素」ともいう。
一態様では、本発明の酵素は配列番号1のアミノ酸配列を有するタンパク質からなる。尚、当該アミノ酸配列は、機能未知タンパク質をコードするものとしてGenebank(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/Genbank/index.html)に登録されている(Accession: P53095、DEFINITION: Uncharacterized protein YGL196W.)。
本発明となる酵素は、細菌由来の既知のD−セリンデヒドラターゼ(D−セリンデアミナーゼ、D−セリンアンモニアリアーゼ)(EC4.3.1.18)と同様、D−セリンをピルビン酸とアンモニアに分解するが、既知のD−セリンデアミナーゼとは一次構造上の相同性を有していない。
後述の実施例に示すように、当該酵素はD−セリンに対する基質特異性が非常に高い。即ち、当該酵素にはL−セリンに対する反応性は認められず、D−スレオニンに対する反応性も非常に低い(D−セリンに対する反応性を100%としたときのD−スレオニンに対する反応性が5%以下であった)。このように本発明の酵素は、既知の同種の酵素に比較して基質特異性に優れる。
一般に、あるタンパク質のアミノ酸配列の一部に改変を施した場合において改変後のタンパク質が改変前のタンパク質と同等の機能を有することがある。即ちアミノ酸配列の改変がタンパク質の機能に対して実質的な影響を与えず、タンパク質の機能が改変前後において維持されることがある。そこで本発明は他の態様として、配列番号1で示されるアミノ酸配列と相同なアミノ酸配列を有し、D−セリンデヒドラターゼ活性をもつタンパク質(以下、「相同タンパク質」ともいう)を提供する。ここでの「相同なアミノ酸配列」とは、配列番号1で示されるアミノ酸配列と一部で相違するが、当該相違がタンパク質の機能(ここではD−セリンデヒドラターゼ活性)に実質的な影響を与えていないアミノ酸配列のことをいう。
「アミノ酸配列の一部の相違」とは、典型的には、アミノ酸配列を構成する1〜数個のアミノ酸の欠失、置換、若しくは1〜数個のアミノ酸の付加、挿入、又はこれらの組合せによりアミノ酸配列に変異(変化)が生じていることをいう。ここでのアミノ酸配列の相違はD−セリンデヒドラターゼ活性が保持される限り許容される(活性の多少の変動があってもよい)。この条件を満たす限りアミノ酸配列が相違する位置は特に限定されず、また複数の位置で相違が生じていてもよい。ここでの複数とは例えば全アミノ酸の約30%未満に相当する数であり、好ましくは約20%未満に相当する数であり、さらに好ましくは約10%未満に相当する数であり、より一層好ましくは約5%未満に相当する数であり、最も好ましくは約1%未満に相当する数である。即ち相同タンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列と例えば約70%以上、好ましくは約80%以上、さらに好ましくは約90%以上、より一層好ましくは約95%以上、最も好ましくは約99%以上の同一性を有する。
好ましくは、D−セリンデヒドラターゼ活性に必須でないアミノ酸残基において保存的アミノ酸置換を生じさせることによって相同タンパク質を得る。ここでの「保存的アミノ酸置換」とは、あるアミノ酸残基を、同様の性質の側鎖を有するアミノ酸残基に置換することをいう。アミノ酸残基はその側鎖によって塩基性側鎖(例えばリシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えばアスパルギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分岐側鎖(例えばスレオニン、バリン、イソロイシン)、芳香族側鎖(例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)のように、いくつかのファミリーに分類されている。保存的アミノ酸置換は好ましくは、同一のファミリー内のアミノ酸残基間の置換である。
ところで、二つのアミノ酸配列又は二つの核酸(以下、これらを含む用語として「二つの配列」を使用する)の同一性(%)は例えば以下の手順で決定することができる。まず、最適な比較ができるよう二つの配列を並べる(例えば、第一の配列にギャップを導入して第二の配列とのアライメントを最適化してもよい)。第一の配列の特定位置の分子(アミノ酸残基又はヌクレオチド)が、第二の配列における対応する位置の分子と同じであるとき、その位置の分子が同一であるといえる。二つの配列の同一性は、その二つの配列に共通する同一位置の数の関数であり(すなわち、同一性(%)=同一位置の数/位置の総数 × 100)、好ましくは、アライメントの最適化に要したギャップの数およびサイズも考慮に入れる。
二つの配列の比較及び同一性の決定は数学的アルゴリズムを用いて実現可能である。配列の比較に利用可能な数学的アルゴリズムの具体例としては、KarlinおよびAltschul (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264-68に記載され、KarlinおよびAltschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-77において改変されたアルゴリズムがあるが、これに限定されることはない。このようなアルゴリズムは、Altschulら (1990) J. Mol. Biol. 215:403-10に記載のNBLASTプログラムおよびXBLASTプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている。本発明の核酸分子に相同的なヌクレオチド配列を得るには例えば、NBLASTプログラムでscore = 100、wordlength = 12としてBLASTヌクレオチド検索を行えばよい。本発明のポリペプチド分子に相同的なアミノ酸配列を得るには例えば、XBLASTプログラムでscore = 50、wordlength = 3としてBLASTポリペプチド検索を行えばよい。比較のためのギャップアライメントを得るためには、Altschulら (1997) Amino Acids Research 25(17):3389-3402に記載のGapped BLASTが利用可能である。BLASTおよびGapped BLASTを利用する場合は、対応するプログラム(例えばXBLASTおよびNBLAST)のデフォルトパラメータを使用することができる。詳しくはhttp://www.ncbi.nlm.nih.govを参照されたい。配列の比較に利用可能な他の数学的アルゴリズムの例としては、MyersおよびMiller (1988) Comput Appl Biosci. 4:11-17に記載のアルゴリズムがある。このようなアルゴリズムは、例えばGENESTREAMネットワークサーバー(IGH Montpellier、フランス)またはISRECサーバーで利用可能なALIGNプログラムに組み込まれている。アミノ酸配列の比較にALIGNプログラムを利用する場合は例えば、PAM120残基質量表を使用し、ギャップ長ペナルティ=12、ギャップペナルティ=4とすることができる。
二つのアミノ酸配列の同一性を、GCGソフトウェアパッケージのGAPプログラムを用いて、Blossom 62マトリックスまたはPAM250マトリックスを使用し、ギャップ加重=12、10、8、6、又は4、ギャップ長加重=2、3、又は4として決定することができる。また、二つの核酸配列の相同度を、GCGソフトウェアパッケージ(http://www.gcg.comで利用可能)のGAPプログラムを用いて、ギャップ加重=50、ギャップ長加重=3として決定することができる。
本発明の酵素は、遺伝子工学的手法によって容易に調製することができる。例えば、本発明のタンパク質をコードするDNAで適当な宿主細胞(例えば大腸菌)を形質転換し、形質転換体内で発現されたタンパク質を回収することにより調製することができる。回収されたタンパク質は目的に応じて適宜精製される。このように組換えタンパク質として本発明の酵素を得ることにすれば種々の修飾が可能である。例えば、本発明の酵素をコードするDNAと他の適当なDNAとを同じベクターに挿入し、当該ベクターを用いて組換えタンパク質の生産を行えば、任意のペプチドないしタンパク質が連結された組換えタンパク質からなる酵素を得ることができる。また、糖鎖及び/又は脂質の付加や、あるいはN末端若しくはC末端のプロセッシングが生ずるような修飾を施してもよい。以上のような修飾により、組換えタンパク質の抽出、精製の簡便化、又は生物学的機能の付加等が可能である。
尚、本発明の酵素の調製法は遺伝子工学的手法によるものに限られない。例えば天然に存在するものであれば、天然材料から標準的な手法(破砕、抽出、精製など)によって本発明の酵素を調製することもできる。尚、本発明の酵素は、通常、単離された状態に調製される。
(D−セリンデヒドラターゼをコードするDNA)
本発明の第2の局面は本発明の酵素をコードする遺伝子、即ち新規なD−セリンデヒドラターゼ遺伝子を提供する。
一態様において本発明の遺伝子は、配列番号1のアミノ酸配列をコードするDNAからなる。当該態様の具体例は、配列番号2で示される塩基配列からなるDNA、配列番号3で示される塩基配列からなるDNAである。配列番号2で示される塩基配列はタンパク質YGL196Wの全長cDNAである。尚、イントロンは存在せず、cDNAの配列はゲノムDNAの配列に一致する。
ここで、一般に、あるタンパク質をコードするDNAの一部に改変を施した場合において、改変後のDNAがコードするタンパク質が、改変前のDNAがコードするタンパク質と同等の機能を有することがある。即ちDNA配列の改変が、コードするタンパク質の機能に実質的に影響を与えず、コードするタンパク質の機能が改変前後において維持されることがある。そこで本発明は他の態様として、配列番号2で示される塩基配列と相同な塩基配列を有し、D−セリンデヒドラターゼ活性をもつタンパク質をコードするDNA(以下、「相同DNA」ともいう)を提供する。ここでの「相同な塩基配列」とは、配列番号2で示される核酸と一部で相違するが、当該相違によってそれがコードするタンパク質の機能(ここではD−セリンデヒドラターゼ活性)が実質的な影響を受けていない塩基配列のことをいう。
相同DNAの具体例は、配列番号2で示される塩基配列に相補的な塩基配列に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAである。ここでの「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。このようなストリンジェントな条件は当業者に公知であって例えばMolecular Cloning(Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York)やCurrent protocols in molecular biology(edited by Frederick M. Ausubel et al., 1987)を参照して設定することができる。ストリンジェントな条件として例えば、ハイブリダイゼーション液(50%ホルムアミド、10×SSC(0.15M NaCl, 15mM sodium citrate, pH 7.0)、5×Denhardt溶液、1% SDS、10% デキストラン硫酸、10μg/mlの変性サケ精子DNA、50mMリン酸バッファー(pH7.5))を用いて約42℃〜約50℃でインキュベーションし、その後0.1×SSC、0.1% SDSを用いて約65℃〜約70℃で洗浄する条件を挙げることができる。更に好ましいストリンジェントな条件として例えば、ハイブリダイゼーション液として50%ホルムアミド、5×SSC(0.15M NaCl, 15mM sodium citrate, pH 7.0)、1×Denhardt溶液、1%SDS、10%デキストラン硫酸、10μg/mlの変性サケ精子DNA、50mMリン酸バッファー(pH7.5))を用いる条件を挙げることができる。
相同DNAの他の具体例として、配列番号2で示される塩基配列を基準として1若しくは複数の塩基の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含む塩基配列からなり、D−セリンデヒドラターゼ活性をもつタンパク質をコードするDNAを挙げることができる。塩基の置換や欠失などは複数の部位に生じていてもよい。ここでの「複数」とは、当該DNAがコードするタンパク質の立体構造におけるアミノ酸残基の位置や種類によっても異なるが例えば2〜40塩基、好ましくは2〜20塩基、より好ましくは2〜10塩基である。以上のような相同DNAは例えば、制限酵素処理、エキソヌクレアーゼやDNAリガーゼ等による処理、位置指定突然変異導入法(Molecular Cloning, Third Edition, Chapter 13 ,Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York)やランダム突然変異導入法(Molecular Cloning, Third Edition, Chapter 13 ,Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York)による変異の導入などを利用して、塩基の置換、欠失、挿入、付加、及び/又は逆位を含むように配列番号2で示される塩基配列を有するDNAを改変することによって得ることができる。また、紫外線照射など他の方法によっても相同DNAを得ることができる。
相同DNAの更に他の例として、SNPに代表される多型に起因して上記のごとき塩基の相違が認められるDNAを挙げることができる。
本発明の遺伝子は、本明細書又は添付の配列表が開示する配列情報を参考にし、標準的な遺伝子工学的手法、分子生物学的手法、生化学的手法などを用いることによって単離された状態に調製することができる。具体的には、適当な酵母ゲノムDNAライブラリー又はcDNAライブラリー、或は酵母の菌体内抽出液から、本発明の遺伝子に対して特異的にハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドプローブ・プライマーを適宜利用して調製することができる。オリゴヌクレオチドプローブ・プライマーは、市販の自動化DNA合成装置などを用いて容易に合成することができる。尚、本発明の遺伝子を調製するために用いるライブラリーの作製方法については、例えばMolecular Cloning, Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New Yorkを参照できる。
例えば、配列番号2で示される塩基配列を有する遺伝子であれば、当該塩基配列又はその相補配列の全体又は一部をプローブとしたハイブリダイゼーション法を利用して単離することができる。また、当該塩基配列の一部に特異的にハイブリダイズするようにデザインされた合成オリゴヌクレオチドプライマーを用いた核酸増幅反応(例えばPCR)を利用して増幅及び単離することができる。
(ベクター)
本発明のさらなる局面は本発明の遺伝子を含有するベクターに関する。本明細書において用語「ベクター」は、それに挿入された核酸分子を細胞等のターゲット内へと輸送することができる核酸性分子をいい、その種類、形態は特に限定されるものではない。従って、本発明のベクターはプラスミドベクター、コスミドベクター、ファージベクター、ウイルスベクター(アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター等)の形態をとり得る。
使用目的(クローニング、タンパク質の発現)に応じて、また宿主細胞の種類を考慮して適当なベクターが選択される。ベクターの具体例を挙げれば、大腸菌を宿主とするベクター(M13ファージ又はその改変体、λファージ又はその改変体、pBR322又はその改変体(pB325、pAT153、pUC8など)など)、酵母を宿主とするベクター(pYepSec1、pMFa、pYES2等、昆虫細胞を宿主とするベクター(pAc、pVLなど)、哺乳類細胞を宿主とするベクター(pCDM8、pMT2PCなど)等である。
本発明のベクターは好ましくは発現ベクターである。「発現ベクター」とは、それに挿入された核酸を目的の細胞(宿主細胞)内に導入することができ、且つ当該細胞内において発現させることが可能なベクターをいう。発現ベクターは通常、挿入された核酸の発現に必要なプロモーター配列や発現を促進させるエンハンサー配列等を含む。選択マーカーを含む発現ベクターを使用することもできる。かかる発現ベクターを用いた場合には選択マーカーを利用して発現ベクターの導入の有無(及びその程度)を確認することができる。
本発明の遺伝子のベクターへの挿入、選択マーカー遺伝子の挿入(必要な場合)、プロモーターの挿入(必要な場合)等は標準的な組換えDNA技術(例えば、Molecular Cloning, Third Edition, 1.84, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New Yorkを参照することができる、制限酵素及びDNAリガーゼを用いた周知の方法)を用いて行うことができる。
(形質転換体)
本発明は更に、本発明の遺伝子が導入された形質転換体に関する。本発明の形質転換体では、本発明の遺伝子が外来性の分子として存在することになる。本発明の形質転換体は、好ましくは、上記本発明のベクターを用いたトランスフェクション乃至はトランスフォーメーションによって調製される。トランスフェクション等はリン酸カルシウム共沈降法、エレクトロポーレーション(Potter,H. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 81, 7161-7165(1984))、リポフェクション(Felgner, P.L. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 84,7413-7417(1984))、マイクロインジェクション(Graessmann,M. & Graessmann,A., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 73,366-370(1976))等によって実施することができる。
宿主細胞としては大腸菌などの細菌細胞、酵母細胞(例えば、Saccharomyces cerevisiae, Schizosaccharomyces pombe, Pichia pastoris等)等を例示することができる。
(D−セリンデヒドラターゼの生産方法)
上記の形質転換体を用いてD−セリンデヒドラターゼを生産することができる。そこで本発明の更に他の局面は、上記の形質転換体を用いたD−セリンデヒドラターゼの生産方法を提供する。本発明の生産方法では上記の形質転換体を、それに導入された遺伝子によってコードされるタンパク質が産生される条件下で培養するステップが行われる。様々なベクター宿主系に関して形質転換体の培養条件が公知であり(例えば大島泰郎 他 編 (2002) ポストシークエンスタンパク質実験法2 試料調製法、東京化学同人が参考になる)、当業者であれば適切な培養条件を容易に設定することができる。
培養ステップに続き、産生されたタンパク質(即ち、D−セリンデヒドラターゼ)を回収するステップが行われる。培養後の培養液又は菌体より目的のタンパク質を回収することができる。菌体外に産生された場合には培養液より、それ以外であれば菌体内より回収することができる。培養液から回収する場合には、例えば培養上清をろ過、遠心処理して不溶物を除去した後、硫安沈殿等の塩析、透析、各種クロマトグラフィーなどを組み合わせて分離、精製を行うことにより目的のタンパク質を取得することができる。他方、菌体内から回収する場合には、例えば菌体を加圧処理、超音波処理などによって破砕した後、上記と同様に分離、精製を行うことにより目的のタンパク質を取得することができる。尚、ろ過、遠心処理などによって予め培養液から菌体を回収した後、上記一連の工程(菌体の破砕、分離、精製)を行ってもよい。
(D−セリンデヒドラターゼの用途)
本発明は更に本発明の酵素の用途を提供する。いくつかのD−セリンデヒドラターゼ(非特許文献6に記載されたEscherichia coliの酵素、非特許文献7に記載されたKlebsiella pneumoniaeの酵素など)が見出されているものの、D−セリンデヒドラターゼを用いてD−セリンを定量したとの報告はない。その理由は既知の酵素の基質特異性の低さにあると予想される。本発明の酵素は、既知の同種の酵素に比較して基質特異性に優れ、L−セリンに対する反応性が実質的にない。この特性を備える本発明の酵素によれば、試料中のD−セリンを選択的に定量することが可能である。このように本発明の酵素はD−セリンの定量に適したものである。即ち、本発明の酵素はD−セリンの定量用試薬として有用である。そこで本発明は、本発明の酵素を含むD−セリンの定量用試薬を提供する。
本発明は更に、本発明の酵素を用いたD−セリン定量法(以下、「本発明の定量法」ともいう)を提供する。本発明のD−セリン定量法は次の原理による。即ち、D−セリンに対する特異性の高い本発明の酵素を用いて試料中のD−セリンを分解し、生じたアンモニア又はピルビン酸を定量する。
本発明の定量法では以下のステップ、即ち(1)試料を用意するステップ;(2)本発明のD−セリンデヒドラターゼを前記試料に添加し、反応させるステップ;(3)(2)の結果生じたアンモニア又はピルビン酸を定量するステップ;及び(4)(3)で得た定量値より、前記試料中のD−セリン量を算出するステップ、がこの順で実施される。以下、各ステップの詳細を説明する。
1.ステップ(1)
このステップでは試料を用意する。試料の種類は特に限定されず、生体(ヒト又は非ヒト動物・植物、微生物)由来の試料(例えば血液、血清、リンパ液、脊髄液、骨髄液、組織抽出液、植物抽出液、細胞抽出液等)又は非生体由来の試料(例えば、食品、薬品、飼料、土壌、河川および海洋水等)が用いられる。これらの試料は常法で調製すればよい。
2.ステップ(2)
このステップでは、本発明のD−セリンデヒドラターゼを試料に添加し、反応させる。D−セリンデヒドラターゼの添加量は、これに限定されるものではないが、例えば1μg/ml〜50μg/mlとする。反応温度は例えば20℃〜40℃とし、好ましくは30℃〜37℃とする。反応溶液のpHは例えば約7.5〜約9.0の範囲内で設定し、好ましくはpH8付近とする。pH調整にはTris系緩衝液やHEPES系緩衝液を用いることができる。反応時間は例えば5分〜3時間とする。経時的な測定を行うことにしてもよい。
以上の反応条件はあくまでも一例であって、一部又は全部の条件を適宜修正することができる。当業者であれば予備実験を通して反応条件の修正、最適化が可能である。
このステップをピリドキサール5’−リン酸の存在下で実施することが好ましい。即ち、D−セリンデヒドラターゼとともにピリドキサール5’−リン酸を試料に添加することが好ましい。D−セリンデヒドラターゼにはもともとピリドキサール5’−リン酸が共有結合しており、反応系にピリドキサール5’−リン酸を添加することは必須ではないが、ピリドキサール5’−リン酸を添加することによって、一部の酵素分子においてピリドキサール5’−リン酸がはずれていた場合においても正確で且つ信頼性の高い実験データを得ることができる。ピリドキサール5’−リン酸の添加量については特に限定されるものではないが、例えば0.25μg/ml〜5μg/mlとする。
3.ステップ(3)
このステップでは、ステップ(2)の結果生じたアンモニア又はピルビン酸を定量する。アンモニアの定量にはネスラー法(例えばJohn,Cら (1976) Biochemical J. 159:803-806を参照)、インドフェノール法(例えばJ. Berthelot:Report chem Appt 1, 284, 1859、特公昭58−11024号公報、特開昭61−38463号公報、特開昭61−44351号公報を参照)、血漿中のアンモニアにグルタミン酸脱水素酵素、NADPH及びα−ケトグルタレートを反応させNADPHの減少に伴う吸光度の変化量を測定する酵素法(例えば特開昭50−23699号公報を参照)等を利用できる。この中でもネスラー法及びインドフェノール法は簡便な手順で行え、しかも特別な器具・装置も必要とせず、好ましい方法である。
一方、ピルビン酸の定量法には、ピルビン酸を乳酸脱水素酵素とカップリングさせNADHの酸化に伴う紫外線領域の吸光度の減少を分析する方法(例えばNishimura ら (1991) Biochemistry 30, 4032-4077、(社)日本臨床検査薬協会編集、「体外診断用医薬品集」、488頁、薬事日報社(1991年)等を参照)、酵素によってピルビン酸を酸化し、反応の進行に伴って生成する過酸化水素を分析する方法等を利用することができる。尚、これらの方法以外にも様々なピルビン酸の定量法が提案されており(例えば、特開昭62−14799号公報、特開平4−346796号公報、特開平5−95798号公報、特開平5−219991号公報)、この中のいずれかを利用することにしてもよい。
この中でも乳酸脱水素酵素を用いる方法及びピルビン酸オキシダーゼを用いる方法は簡便な手順で行え、しかも特別な器具・装置も必要とせず、好ましい方法である。
尚、二種類以上の測定法によってアンモニア(又はピルビン酸)を定量することにしてもよい。このようにすれば各測定法による定量値を検証することができ、定量結果の信頼性向上が図られる。同様の目的でアンモニアとピルビン酸の両者を定量することにしてもよい。
4.ステップ(4)
このステップでは、ステップ(3)で得たアンモニア又はピルビン酸の定量値より、試料中のD−セリン量を算出する。通常は、D−セリン含量の判明している複数の試料を用い、アンモニア量又はピルビン酸量とD−セリン量との関係を表す検量線を予め作成しておき、アンモニア又はピルビン酸の定量値を当該検量線に照らし合わせることによって試料中のD−セリン量を算出する。
本発明の一態様では、以上のステップ(1)〜(4)の後に以下のステップ、即ち(5)アミノ酸ラセマーゼをステップ(2)後の反応液に添加し、前記D−セリンデヒドラターゼの共存下で反応させるステップ;(6)(5)の結果生じたアンモニア又はピルビン酸を定量するステップ;及び(7)(6)で得た定量値と、(4)で算出したD−セリン量より、前記試料中の全セリン量を算出するステップ、がこの順で実施される。
この態様の定量法は、試料中のD−セリン量を定量する一方、アミノ酸ラセマーゼを利用して試料中のL−セリンをD−セリンへ転換することで試料中の全セリン量を定量する。即ちこの態様の定量法によれば、試料中のD−セリン量に加えて全セリン量(即ちD−セリン量とL−セリン量を合算したもの)が求められることになり、全セリン量に対するD−セリン量の比率を明らかにすることが可能となる。
最近の報告によれば、統合失調症患者の脳脊髄液や血清、アルツハイマー病患者の血清では、全セリン含量に占めるD−セリン含量の割合(D−セリン含量/全セリン含量)が有意に低下している(非特許文献2〜4)。このことから、この態様の定量法は、統合失調症やアルツハイマー症の診断に有用な情報(データ)を提供するといえる。また、統合失調症やアルツハイマー病に限らず、全セリン含量に対するD−セリン含量の比率と、その発症や進行状態或いは病態等との間に関連性を認める様々な疾患の診断において、この態様の定量法が利用されることを期待できる。
以下、この態様に特徴的な各ステップの詳細を説明する。
5.ステップ(5)
このステップではアミノ酸ラセマーゼをステップ(2)後の反応液に添加し、反応させる。ステップ(2)後の反応液中には先に添加したD−セリンデヒドラターゼ及びピリドキサール5’−リン酸が共存することから、アミノ酸ラセマーゼによる酵素反応とD−セリンデヒドラターゼによる酵素反応が同時に進行することになる。尚、この態様の定量法では、ステップ(2)の後に一部の反応液をサンプリングし、これを用いてステップ(3)を実施することにするとともに、残りの反応液(又はその一部)を当該ステップ(5)に使用する。
L−セリンをD−セリンに変換する活性を有する酵素である限り、本発明におけるアミノ酸ラセマーゼとして使用できる。従って、本発明で使用するアミノ酸ラセマーゼは通常セリンラセマーゼとして扱われている酵素に限られない。但し、L−セリンのD−セリンへの効率的な変換を行うため、セリンラセマーゼを採用することが好ましい。セリンラセマーゼとして細菌型ラセマーゼ(吉村徹(2005)ビタミン 79, 277-283を参照)、動物型ラセマーゼ(Arias C.A.ら(2000)Microbiology 146, 1727-1734を参照)が知られている。
アミノ酸ラセマーゼの添加量は、これに限定されるものではないが、例えば1μg/ml〜50μg/mlとする。このステップの反応条件(反応温度、反応pH、反応時間)は、原則、上記ステップ(2)の反応条件に準ずる。
但し、一部又は全部の条件を適宜修正してもよい。また、当業者であれば予備実験を通して反応条件の修正、最適化が可能である。
尚、例えばD−セリンデヒドラターゼが失活したおそれのある場合やアミノ酸ラセマーゼの作用によって生ずるD−セリンの量が過大な場合など、先に添加したD−セリンデヒドラターゼの十分な作用が期待できない場合には、アミノ酸ラセマーゼとともにD−セリンデヒドラターゼを追加で添加するとよい。また、このステップをピリドキサール5’−リン酸の存在下で実施することが好ましく、この段階においてピリドキサール5’−リン酸を追加することにしてもよい。
6.ステップ(6)
このステップでは、ステップ(5)の結果生じたアンモニア又はピルビン酸を定量する。即ち、アミノ酸ラセマーゼの作用で生成したD−セリンがD−セリンデヒドラターゼで分解されることによって生じたアンモニア又はピルビン酸が定量される。このステップは上記ステップ(3)と同様に実施される。
7.ステップ(7)
このステップでは、ステップ(6)で得たアンモニア又はピルビン酸の定量値と、ステップ(4)で算出したD−セリン量より、試料中の全セリン量を算出する。まず、ステップ(6)で得た定量値を用い、試料中に当初存在していたL−セリン量を算出する。得られたL−セリン量に、ステップ(4)で算出したD−セリン量(試料中に当初存在していたD−セリン量)を合算することによって試料中の全セリン量とする。尚、L−セリン量は、ステップ(4)におけるD−セリンの算出方法と同様の方法、即ちアンモニア量又はピルビン酸量とL−セリン量との関係を表す検量線を用いた方法によって算出することができる。
以上の態様では、D−セリンデヒドラターゼを反応させた後の試料(反応液)を用いて更にD−セリンデヒドラターゼとアミノ酸ラセマーゼによる反応を行い試料中のL−セリン量を定量することにしたが、以下に示すように、D−セリンデヒドラターゼを用いたD−セリン量の定量と、D−セリンデヒドラターゼ及びアミノ酸ラセマーゼによるL−セリン量の定量を独立したものとして行うこともできる。即ち、本発明は他の態様として、以下のステップ、即ち(1)試料を用意するステップ;(2)本発明のD−セリンデヒドラターゼを前記試料の一部に添加し、反応させるステップ;(3)(2)の結果生じたアンモニア又はピルビン酸を定量するステップ;(4)(3)で得た定量値より、前記試料中のD−セリン量を算出するステップ;(5)本発明のD−セリンデヒドラターゼとアミノ酸ラセマーゼとを、前記試料の他の一部に添加し、反応させるステップ;(6)(5)の結果生じたアンモニア又はピルビン酸を定量するステップ;(7)(6)で得た定量値より、前記試料中の全セリン量を算出するステップ、を含むD−セリン定量法を提供する。ステップ(2)〜(4)と、ステップ(5)〜(7)はいずれを先に実施してもよく、また並行して実施してもよい。
ステップ(6)で得た定量値は、試料中に当初存在していたL−セリン量及びD−セリン量を反映したものとなる。従って、ステップ(6)で得た定量値より、試料中の全セリン量を算出することができる(ステップ(7))。尚、この態様における各ステップは上記の対応するステップと同様の方法、条件で実施することができる。
本発明は更に、本発明の定量法を実施するためのキットを提供する。当該キットによれば、本発明の定量法をより簡便に且つより短時間で実施することが可能となる。本発明のキットは、本発明のD−セリンデヒドラターゼ(D−セリン定量用試薬)を必須の構成要素とする。また、当該酵素の反応や反応生成物の検出等に必要な一以上の試薬(例えば緩衝液、ピリドキサール5’−リン酸、標準試薬としてのD−セリン)、器具等を本発明のキットに含めてもよい。試料中のD−セリン含量に加えて、全セリン含量も定量する方法に使用されるキットにはアミノ酸ラセマーゼを含めることが好ましい。またアミノ酸ラセマーゼの反応や反応生成物の検出等に必要な一以上の試薬(例えば緩衝液、ピリドキサール5’−リン酸、標準試薬としてのL−セリン)、器具等を含めることがさらに好ましい。尚、通常、本発明のキットには使用説明書が添付される。
尚、本明細書で特に言及しない事項(条件、操作方法など)については常法に従えばよく、例えばMolecular Cloning(Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York)、Current protocols in molecular biology(edited by Frederick M. Ausubel et al., 1987)、大島泰郎 他 編 (2002) ポストシークエンスタンパク質実験法2 試料調製法(東京化学同人)等を参考にすることができる。
1.新規D−セリンデヒドラターゼの検索
以下の方法で新規D−セリンデヒドラターゼを検索した。BLAST検索により、サッカロマイセス・セレビシエのゲノム上に細菌アラニンラセマーゼのN-末端ドメインと相同な立体構造を有するタンパク質をコードすると考えられる遺伝子、YGL196Wを見いだした。そこで、後述した方法でYGL196W遺伝子がコードするタンパク質を調製した。調製したタンパク質を用い、D-セリン、L-セリン、D-トレオニン、L-トレオニンを基質として後述の方法でアンモニアの生成を測定した。その結果、サッカロマイセス・セレビシエの機能未知タンパク質YGL196W(図1、配列番号1)がD−セリンデヒドラターゼ活性を有することが判明した。尚、当該タンパク質をコードするcDNAの配列を配列番号2に示す。
2.新規D−セリンデヒドラターゼの調製及び解析
(1)遺伝子クローニング
サッカロマイセス・セレビシエBY4742株(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC))の染色体DNAを鋳型に、下記プライマーを用いてPCRを行った。
5'-atgctcgaggttctatctcaatataaagggtgctcag-3'(配列番号3)
5'-accaagcttaccatttctgaaaaggtaaccaaacatcg-3'(配列番号4)
得られたDNA断片をXhoI及びHindIIIで切断後、同じ制限酵素で切断したpET15b(Novagen社)にライゲーションした。なお構築したプラスミドpDsdSC、はN端に6個のHis残基とトロンビン切断部位を有する10残基の計16残基のアミノ酸タグを付加したD−セリンデヒドラターゼをコードしている。
(2)タンパク質の発現及び精製
常法に従い、プラスミドpDsdSCを大腸菌BL21(DE3)(Novagen社)に導入した。導入操作後のBL21(DE3)細胞を50μg/mlのアンピシリンを含むLB培地5 mlに植菌し、37℃で一晩培養した。これを200 mlの同培地に植菌し37℃で培養、610 nmで測定した培養液の濁度が0.5になった時点で、IPTG(終濃度、0.5 mM)を加え30℃で3時間培養した。細胞を集菌、洗浄後、結合用バッファー(500 mM NaCl、5 mMイミダゾールを含む20 mM Tris HCl(pH 7.9))に懸濁し、超音波破砕した。20,000 X gで30分遠心して得られた上清を、結合用バッファーで平衡化したNi-キレーティングカラム(Novagen His-Bind Resin)にアプライした。カラムの10倍量の洗浄用バッファー(500 mM NaCl、80 mM を含む20 mM TrisHCl (pH 7.9) )で洗浄後、溶出用バッファー(500 mM NaCl、1 M イミダゾールを含む20 mM TrisHCl (pH 7.9) )で溶出した。活性画分を500倍量のA buffer (140 mM NaClを含む20 mM TrisHCl (pH 7.5) )で透析後、2 x 10-5 M ピリドキサール5'-リン酸を含むAバッファーで平衡化したDEAE-TOYOPEARLカラム(10 ml)に供した。同バッファーで溶出させた酵素の純度(purity)をSDS-PAGEで確認した(図2)。
(3)活性測定
D−セリンデヒドラターゼは以下の反応式で示される反応を触媒する。
セリンデヒドラターゼの活性は、反応生成物であるアンモニアをネスラー法で測定するか、または反応生成物であるピルビン酸を乳酸脱水素酵素とカップリングさせNADHの酸化によって測定した。以下、各方法の概要を示す。
(a)ネスラー法
50 mMのHEPES-NaOH buffer (pH 8.0)、20μmolのピリドキサール5’−リン酸、10 mMのD−セリンを含む反応液(最終容量200μl)に、適当量のD−セリンデヒドラターゼを加え、30℃でインキュベート後、終濃度5%のトリクロロ酢酸を加えて反応を停止、遠心上清中のアンモニアをネスラー試薬を用いて定量した。
(b)乳酸脱水素酵素を用いる方法
50 mMのHEPES-NaOH buffer (pH 8.0)、20μmolのピリドキサール5’−リン酸、10 mMのD−セリン、0.3 mMのNADH、20 unitsの乳酸脱水素酵素を含む反応液(最終容量1ml)に、適当量のD−セリンデヒドラターゼを加え、30℃で反応させた。NADHからNADへの転換に伴う340 nmの吸収の減少を測定した。
精製した酵素の活性をネスラー法で測定した結果、比活性は3.7 μmol/min/mgであった。
(4)新規酵素の一次構造の検討
次に、新規酵素の構造的特徴を明らかにするために、そのアミノ酸配列と相同な配列を持つタンパク質をデータベース上に検索した。その結果、図3に示す通り、新規酵素と相同なアミノ酸配列を有するタンパク質はいずれも機能未知のタンパク質であり、新規酵素は既知のD−セリンデヒドラターゼと一次構造上の相同性を有していないことが判明した。
(5)基質特異性の検討
新規酵素の基質特異性を以下の方法で検討した。即ち、基質としてD−セリンの他、L−セリン及びD−スレオニンを用意し、ネスラー法によって各基質に対する反応性を調べた。尚、L−セリン又はD−スレオニンに対する反応性を調べる場合には、基質としてL−セリン(和光純薬工業株式会社)又はD−スレオニン(和光純薬工業株式会社)を使用する以外、D−セリンの場合と同一の条件下でネスラー法を実施した。
結果を図4に示す。図4から明らかなように、新規酵素(左)にはL−セリンに対する反応性が全く認められなかった。また、D−スレオニンに対する反応も非常に低い。このように新規酵素はD−セリンに対する基質特異性に極めて優れることが明らかとなった。
(6)酵素活性に対する金属イオンの影響
新規酵素の活性に対する金属イオンの影響・効果を以下の方法で検討した。図5に示した化合物を未処理の新規酵素、および2mMのEDTAとインキュベートした後トリス緩衝液で透析した新規酵素を、それぞれ0.05 mM,または0.5 mMのKCl、NaCl, MnCl2,MgCl2,CaCl2,NiSO4,CuSO4,ZnCl2のいずれかの存在下、ネスラー法によってD-セリンデヒドラターゼ活性を測定した。
結果を図5に示す。図5から明らかなように、新規酵素はEDTA処理により活性の大部分を失うこと、また亜鉛の添加によって活性化されることが明らかとなった。また亜鉛の濃度を変えて同様の実験を行った結果、0.005 mMが酵素活性を最も増大させる亜鉛濃度であることが判明した。
(7)酵素活性に対するpHの効果
新規酵素の活性と反応時のpHとの関係を以下の方法で検討した。ネスラー法においてそれぞれ緩衝液をMOPS(pH 6.5-8.0)、MES(pH 6.0-6.5)、HEPES(pH 7.0-8.5)、Tris(pH 7.5-9.0)に変更した反応液を用いて、新規酵素のD−セリンデヒドラターゼ活性を測定した。
結果を図6に示す。図6から明らかなように、新規酵素の至適pHは8付近にあり、約7.5〜約9.0のpH域で良好な反応性が認められる。
(8)動力学的特性の検討
新規酵素の動力学的特性を以下の方法で検討した。ネスラー法において、D−セリン濃度を変化させ、それぞれのD−セリン濃度下における新規酵素のD−セリンデヒドラターゼ活性を測定した。得られた速度の逆数をD−セリン濃度の逆数に対してプロットし、y切片の逆数から最大速度を、x軸切片の逆数からKm値を算出した。
結果を図7に示す。図7から明らかなように最大速度は4.2 μmol/min/mg、Km値は0.46 mMと算出された。
3.D−セリンの定量法
(1)D−セリンの定量
被検者の末梢血より血清(50μl)を調製する(血清サンプル)。血清サンプルを10 mMのHEPES-NaOH buffer (pH 8.0)で10倍希釈した後、2μMのピリドキサール5’−リン酸溶液10μlと、1 nmolのD−セリンデヒドラターゼを加え、30℃で10分間インキュベートする。その後、終濃度5%のトリクロロ酢酸を加えて反応を停止させる。遠心処理(10,000 rpm、5分間)の後、上清中に含まれるアンモニアをネスラー試薬を用いて定量する。
血清サンプルの代わりに所定量のD−セリンを含む標準試薬(1mM、10mM、50mM、100mM)を用いて上記の定量法を実施し、アンモニアの定量値とD−セリン含量との関係を示す検量線を作成する。この検量線に基づき、血清サンプルについて得られたアンモニアの定量値より血清サンプル中のD−セリン量を算出する。
(2)全セリン量に対するD−セリン量の比率の測定
(2−1)D−セリン量の定量
被検者の末梢血より血清(50μl×2)を調製する(血清サンプル1及び2)。血清サンプル1中のD−セリンを(1)と同様の手順で定量する。
(2−2)全セリン量の定量
一方、血清サンプル2中の全セリンを以下の方法で定量する。血清サンプル2を10 mMのHEPES-NaOH buffer (pH 8.0)で10倍希釈した後、2μMのピリドキサール5’−リン酸溶液 10μl、1 nmolのセリンラセマーゼ、及び1 nmolのD−セリンデヒドラターゼを加え、30℃で10分間インキュベートする。その後、終濃度5%のトリクロロ酢酸を加えて反応を停止させる。遠心処理(10,000rpm、5分間)の後、上清中に含まれるアンモニアをネスラー試薬を用いて定量する。(1)の方法と同様に作成した検量線に基づき、アンモニアの定量値より血清サンプル2中のD−セリン量を算出する。尚、ここでの定量法の原理は次の通りである。セリンラセマーゼの作用によって血清サンプル中のL−セリンがD−セリンに変換される。このようにして生じたD−セリンと最初から存在していたD−セリンがD−セリンデヒドラターゼで定量される。
尚、活性や安定性から本測定法に最も適すると考えられる細胞性粘菌(Dictyostelium discoideum)のセリンラセマーゼは以下の方法で調製することができる。D. discoideumのセリンラセマーゼ遺伝子(DDB0230209)をDicty cDBクローンを鋳型とし、C末端に6個のHis残基を配するように設計したプライマーを用いてPCRによって増幅する。得られたDNA断片をpET16b(Novagen)へ挿入して構築した発現ベクターを用いてEscherichia coli Rosetta株を形質転換し、IPTG添加によってセリンラセマーゼを発現させる。セリンラセマーゼの精製はNi-NTA・Bind Resins(Novagen)を用いて行う。細胞性粘菌由来の酵素以外にも、本測定用いるセリンラセマーゼとしては、細菌由来のもの(調製法は、Arias C.A.ら(2000)Microbiology 146, 1727-1734を参照)、および副反応としてセリンのラセミ化を触媒する細菌由来のアラニンラセマーゼ(調製法は、Tanizawa K. ら(1988), Biochemistry. 27, 1311-1316.)、低基質特異性アミノ酸ラセマーゼ(調製法は、Lim YH,ら (1993) J Bacteriol. 175, 4213-4217.)も使用可能である。
(2−1)と(2−2)の結果より、全セリン量に対するD−セリン量の比率(D−セリン量/全セリン量)を算出する。
4.ヒト尿中D−セリン定量
(1)方法
種々の量のヒト尿(-20℃に保存)と50 mM HEPES-NaOH 緩衝液 (pH 8.0), 20 μM PLP、0.3 mM NADH, 2ユニットのウサギ筋肉由来乳酸脱水素酵素、および2 μg のD−セリンデヒドラターゼ(2.で調製された新規酵素)を含む反応液(200 μl)を37℃で30分間インキュベートし、NADHに由来する340 nmの吸収の減少を測定した。
またコントロールとして、蛍光ジアステレオマー化したD−セリンをHPLCにより分離定量する従来法により、同一標品のD−セリン定量を行った。
(2)結果
本酵素法により定量した尿中D−セリン濃度は、243±7.0 μM (平均値±標準偏差)(n=6、CV 2.9%)であった(図8)。一方、HPLC法により定量したD−セリン濃度は、239±9.8 μM (平均値±標準偏差)(n=6)で良い一致を示した。
測定の際の尿濃度に対する340 nmでの吸収の減少をプロットしたところ、r2 = 0.996 のよい直線性が得られた(図9)。このことから、D−セリン以外の尿成分は本酵素定量法に影響を与えないことが示唆された。
本明細書で開示される新規D−セリンデヒドラターゼはD−セリンに対する基質特異性が高い。このような基質特異性に優れた酵素を用いた本発明の定量法によれば、試料中に夾雑物質(特にL−セリン)が存在している場合であっても正確にD−セリンを定量することが可能である。従って、本発明の定量法は生体試料中のD−セリンを定量することに好適な方法といえる。また、本発明の定量法によれば、D−セリンに比べてL−セリンの含量がはるかに多い生体試料中のD−セリンの定量など、既存の酵素では到底不可能な条件下でのD−セリンの定量も可能になる。このことから、統合失調症やアルツハイマー病、或いはBSE(牛海綿状脳症)など、ヒトや哺乳動物の神経疾患の診断へと本発明の定量法が応用されることも期待できる。
一方、本発明の定量法は、極めて一般的なマイクロプレートリーダーや分光光度計を利用して実施することが可能である。煩雑な前処理も必須でなく、キット化が容易である点も本発明の定量法の大きな利点である。また、本発明の定量法は簡便な操作で実施することができ、データの解析にも熟練を要しない。さらに、マイクロプレート等の使い捨て可能な器具を用いて実施することが可能であることから、生体試料を扱う場合の作業者への感染リスクの軽減にも貢献する。加えて、本発明の定量法によれば、従来のD−セリンの定量法で問題視される経済的、時間的コストを大幅に削減可能であり、集団検診などへの適用も期待される。
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。

Claims (13)

  1. 以下の(a)又は(b)のタンパク質からなるD−セリンデヒドラターゼ:
    (a)配列番号1で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質;
    (b)配列番号1で示されるアミノ酸配列と相同なアミノ酸配列を有し、D−セリンデヒドラターゼ活性をもつタンパク質。
  2. L−セリンには反応しないことを特徴とする、請求項1に記載のD−セリンデヒドラターゼ。
  3. D−セリンに対する反応性を100%としたときのD−スレオニンに対する反応性が5%以下である、請求項1又は2に記載のD−セリンデヒドラターゼ。
  4. 大腸菌を宿主として発現させた組換えタンパク質であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のD−セリンデヒドラターゼ。
  5. 以下の(A)〜(C)からなる群より選択されるいずれかのDNAからなるD−セリンデヒドラターゼ遺伝子:
    (A)配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードするDNA;
    (B)配列番号2で示される塩基配列からなるDNA;
    (C)配列番号2で示される塩基配列と相同な塩基配列を有し、且つD−セリンデヒドラターゼ活性をもつタンパク質をコードするDNA。
  6. 請求項5に記載の遺伝子を含有するD−セリンデヒドラターゼ発現用ベクター。
  7. 請求項5に記載の遺伝子が導入されている形質転換体。
  8. 以下のステップを含む、D−セリンデヒドラターゼの生産方法:
    (1)請求項7に記載の形質転換体を、前記遺伝子がコードするタンパク質が産生される条件下で培養するステップ;及び
    (2)産生された前記タンパク質を回収するステップ。
  9. 請求項1〜4のいずれかに記載のD−セリンデヒドラターゼを含むD−セリン定量用試薬。
  10. 請求項9に記載のD−セリン定量用試薬と、使用説明書とを含む、D−セリン定量用キット。
  11. 以下のステップを含む、D−セリン定量法:
    (1)試料を用意するステップ;
    (2)請求項1〜4のいずれかに記載のD−セリンデヒドラターゼを前記試料に添加し、反応させるステップ;
    (3)(2)の結果生じたアンモニア又はピルビン酸を定量するステップ;
    (4)(3)で得た定量値より、前記試料中のD−セリン量を算出するステップ。
  12. 以下のステップを更に含む、請求項11に記載のD−セリン定量法:
    (5)アミノ酸ラセマーゼをステップ(2)後の反応液に添加し、前記D−セリンデヒドラターゼの共存下で反応させるステップ;
    (6)(5)の結果生じたアンモニア又はピルビン酸を定量するステップ;
    (7)(6)で得た定量値と、(4)で算出したD−セリン量より、前記試料中の全セリン量を算出するステップ。
  13. 以下のステップを含む、D−セリン定量法:
    (1)試料を用意するステップ;
    (2)請求項1〜4のいずれかに記載のD−セリンデヒドラターゼを前記試料の一部に添加し、反応させるステップ;
    (3)(2)の結果生じたアンモニア又はピルビン酸を定量するステップ;
    (4)(3)で得た定量値より、前記試料中のD−セリン量を算出するステップ;
    (5)請求項1〜4のいずれかに記載のD−セリンデヒドラターゼとアミノ酸ラセマーゼとを、前記試料の他の一部に添加し、反応させるステップ;
    (6)(5)の結果生じたアンモニア又はピルビン酸を定量するステップ;
    (7)(6)で得た定量値より、前記試料中の全セリン量を算出するステップ。
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