JPWO2008044651A1 - ポリ乳酸系接着剤 - Google Patents
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Abstract
長期にわたって優れた接着性および透明性を保持する生分解性ポリ乳酸系接着剤を提供すること。結晶性ポリ乳酸、非結晶性ポリ乳酸および可塑剤から本質的になり、非結晶性ポリ乳酸が、結晶性ポリ乳酸と非結晶性ポリ乳酸との合計量の5〜33質量%、可塑剤が組成物全量の30質量%以下の割合で含まれるポリ乳酸樹脂組成物を含有するポリ乳酸系接着剤。
Description
本発明は、生分解性ポリ乳酸系接着剤に関する。
ポリ乳酸は、トウモロコシやサツマイモなどの植物資源を原料として、微生物による乳酸発酵を介して乳酸が作られ、その乳酸またはラクチドを重合することによって得られる。ポリ乳酸は生態環境下において加水分解や酵素分解されることにより、乳酸へと戻り、さらに二酸化炭素と水まで分解される環境循環型の生分解性高分子である。ポリ乳酸は、石油資源の枯渇化からもそれらに変わる代替材料として注目されており、また地球環境の保護と地球資源の有効利用という観点から研究も盛んに行われている。
ポリ乳酸に関する研究は、1932年にCarothersによって乳酸から合成される高分子として開拓されて関心を集めた。当初は低分子量体のみしか得られなかったことから、その機械的特性は乏しく、実用化には遠いものとして考えられていた。1954年にDuPont社によって高分子量体の生産が開発された。1972年にはEthiconによって高強度を有し、かつ、生体内において徐々に分解され吸収される生体吸収性縫合糸として、ポリ乳酸とポリグリコール酸の共重合体が報告された。これを境に医用材料として骨固定材や薬剤徐放担体としての応用が検討されている。
ポリ乳酸は非常に優れた生体適合性と生分解性を有した高分子であるが、その製造にコストがかかり、その適用範囲は非常に制限されたものであった。ここ10年で生産技術が格段に進歩し、工業的に大量生産が可能となったことから、最近では、ポリ乳酸を安価で入手することができる。
ポリ乳酸は、その接着性や強度等の特性を利用して、接着剤などの生活用品を含め種々の実用品が開発され、市場に投入されている。
例えば、特許文献1においては、波長が400nm以下で、強度値が120mW/cm2以上の紫外線を放射する光源で光を照射したポリ乳酸に可塑剤が配合されてなる可塑化ポリ乳酸組成物が提案されており、可塑化ポリ乳酸を接着剤原料として用いることが記載されている。
また例えば、特許文献2においては、L−乳酸とD−乳酸のモル比(L/D)が0.1〜9、極限粘度が0.5〜2.2、軟化点が70℃以上、重量平均分子量と数平均分子量の比(Mw/Mn)が3.0未満であるポリ乳酸を60質量%以上含有することを特徴とする接着剤用ポリエステル樹脂が提案されている。
特開2000−86877号公報
特開2003−82319号公報
しかしながら、従来のポリ乳酸を主成分とする接着剤は耐環境性に問題があり、長期環境下におかれると、透明性が失われる。透明性が失われると、本来透明であるべき部分が白濁し、接着成型品の外観不良が発生してしまう。
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、長期にわたって優れた接着性および透明性を保持するポリ乳酸系接着剤を提供することを目的とする。
本発明は、結晶性ポリ乳酸、非結晶性ポリ乳酸および可塑剤から本質的になり、非結晶性ポリ乳酸が、結晶性ポリ乳酸と非結晶性ポリ乳酸との合計量の5〜33質量%、可塑剤が組成物全量の5〜30質量%の割合で含まれるポリ乳酸樹脂組成物を含有するポリ乳酸系接着剤に関する。
本発明のポリ乳酸系接着剤は、接着硬化後において柔軟で透明であり、かつ実用的接着強度、耐環境性を有し、しかもそれらの特性を長期間保持できる。その結果、比較的長期にわたって優れた接着性および透明性を発揮できる。
本発明のポリ乳酸系接着剤は特定のポリ乳酸樹脂組成物を含有してなり、通常はさらに溶剤を含み、当該溶剤中、当該組成物の構成成分が溶解されてなっている。
本発明のポリ乳酸系接着剤を構成するポリ乳酸樹脂組成物は、結晶性ポリ乳酸、非結晶性ポリ乳酸および可塑剤から本質的になるものである。
「結晶性ポリ乳酸」という用語における「結晶性」という用語は、適度な条件下で結晶化後、偏光顕微鏡等で結晶ドメインが観察されるものの意味で使用している。結晶性ポリ乳酸とは、D体乳酸の重合体(以下、「ポリD乳酸」という)またはL体乳酸の重合体(以下、「ポリL乳酸」という)を包含する意味で使用している。ポリD乳酸とポリL乳酸の混合物(100/0〜0/100:質量比)であってもよい。ポリD乳酸あるいはポリL乳酸はすでに公知の化合物であり、それ自体は、本質的に硬くて脆い性質を有している。本発明においては、上記「結晶性」という定義に当てはまる限り、ポリD乳酸の場合であれば、L乳酸モノマー単位、または脂肪族ヒドロキシカルボン酸、脂肪族ジオール、脂肪族ジカルボン酸等の乳酸モノマーと共重合可能な他のモノマー単位を含んでいてもよい。ポリL乳酸の場合も同様である。本発明においてはそのような共重合体も結晶性ポリ乳酸に含まれる。これらのうち、ポリL乳酸が結晶化度が高く、入手も容易であり好ましい。
本発明に使用できる結晶性ポリ乳酸は、適当な溶媒に溶解し、その溶液から溶媒を除去しポリ乳酸のフィルムが形成できる程度の分子量を有していれば特に限定されない。このような結晶性ポリ乳酸として、重量平均分子量(Mw)50,000〜1,000,000、好ましくは100,000〜500,000の範囲で製造あるいは入手可能である。市販品としてはレイシアH−100(三井化学社製)、トヨタエコプラスチックU’s(トヨタ自動車社製)等が入手可能である。
なお、本発明で使用する重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)は、サイズ排除クロマトグラフにより測定された標準ポリスチレン換算値を使用している。以下同様である。
なお、本発明で使用する重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)は、サイズ排除クロマトグラフにより測定された標準ポリスチレン換算値を使用している。以下同様である。
「非結晶性ポリ乳酸」における「非結晶性」という用語は、適度な条件下で結晶化後、偏光顕微鏡等で結晶ドメインが観察されないものの意味で使用している。非結晶性ポリ乳酸とは、D体乳酸とL体乳酸の共重合体(以下、「ポリDL乳酸」という)であるという意味で使用している。D体とL体の比率は上記非結晶性が確保する限りどのような重合比率であってもよく、D乳酸:L乳酸の共重合比90:10〜10:90の範囲から適宜選択選定するようにすればよい。また共重合体の形態は、ブロック共重合体、グラフト共重合体、ランダム共重合体等いずれであってもよい。本発明においては、上記「非結晶性」という定義に当てはまる限り、脂肪族ヒドロキシカルボン酸、脂肪族ジオール、脂肪族ジカルボン酸等の乳酸モノマーと共重合可能な他のモノマー単位を含んでいてもよい。本発明においてはそのような共重合体も非結晶性ポリ乳酸に含まれる。
本発明に使用できる非結晶性ポリ乳酸は、重量平均分子量(Mw)50,000〜1,000,000、好ましくは100,000〜500,000の範囲で製造あるいは入手可能であり、市販品としてはレイシアH−280(三井化学社製)等が入手可能である。
非結晶性ポリ乳酸は、結晶性ポリ乳酸と非結晶ポリ乳酸との合計量の50質量%以下、好ましくは33質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは少なくとも5質量%以上の量を使用するようにする。このように非結晶性ポリ乳酸を結晶性ポリ乳酸に添加することにより、下記する可塑剤との添加と相俟って、実用可能な強度と耐熱性を保持する程度に結晶化の進行を抑制し、柔軟性、透明性の経時での低下を低減させることができる。非結晶性ポリ乳酸の割合が多すぎても、添加量に見合うさらなる効果の向上が見られず、また強度および熱的耐性の低下、ブロッキングが生じる。非結晶性ポリ乳酸の割合が少なすぎると本発明の効果を十分に享受できない恐れが生じる。
本発明で使用するポリ乳酸樹脂組成物を利用すると、結晶性ポリ乳酸の結晶の大きさ、結晶の分散性、結晶化度を制御することができ、その結果、強度と柔軟性の両立を図れ、かつ透明性を確保することができ、それらの特性を長期間保持できる。
本発明で使用する可塑剤は樹脂に添加して柔軟性を付与する化合物であれば、特に制限はなく用いることができる。本発明の可塑剤としては、例えば、多塩基酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、多価アルコール系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、エポキシ系可塑剤、脂肪酸系可塑剤、スルホン酸系可塑剤などをあげることができる。好ましい可塑剤は、多価アルコール系可塑剤である。
多塩基酸エステル系可塑剤の具体例としては、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジアミルフタレート、ジヘキシルフタレート、ブチルオクチルフタレート、ブチルイソデシルフタレート、ブチルラウリルフタレート、ジ−(2−エチルヘキシル)フタレート、ジ−n−オクチルフタレート、ジ−2−オクチルフタレート、ブチルココナットアルキルフタレート、椰子油の高圧還元による高級アルコールのフタレート、高級アルコールのフタレート、高級アルコールアルキレンオキサイド付加物のフタレート、混合アルコールフタレート、直鎖アルコールフタレート、ジラウリルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジイソオクチルフタレート、オクチルデシルフタレート、n−オクチル,n−デシルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジトリデシルフタレート、エチルヘキシルデシルフタレート、ジノニルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジアリルフタレート、アルキルアリルフタレート、アルキルアリル変性フタレート、アルキル脂肪酸フタレート、n−アルキル脂肪酸フタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジブトキシエチルフタレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、変性フタレート等のフタル酸エステル;ジ−n−ブチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジ−(2−エチルヘキシル)アジペート、ジイソオクチルアジペート、ジイソデシルアジペート、オクチルデシルアジペート、ジカプリルアジペート、ベンジル−n−ブチルアジペート、ポリプロピレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ジブトキシエチルアジペート、ベンジルオクチルアジペート、高級アルコールのアジペート、高級アルコールアルキレンオキサイド付加物のアジペート等のアジピン酸エステル;ジ−2(−エチルヘキシル)アゼレート、ジイソオクチルアゼレート、ジ−2−エチルヘキシル−4−チオアゼレート、ジ−n−ヘキシルアゼレート、ジイソブチルアゼレート等のアゼライン酸エステル。ジメチルセバケート、ジエチルセバケート、ジブチルセバケート、ジ−(2−エチルヘキシル)セバケート、ジイソオクチルセバケート等のセバシン酸エステル;ジ−n−ブチルマレート、ジメチルマレート、ジエチルマレート、ジ−(2−エチルヘキシル)マレート、ジノニルマレート等のマレイン酸エステル;ジブチルフマレート、ジ−(2−エチルヘキシル)フマレート等のフマル酸エステル。トリ−(2−エチルヘキシル)トリメリテート、トリイソデシルトリメリテート、n−オクチル,n−デシルトリメリテート、トリイソオクチルトリメリテート、ジイソオクチルモノイソデシルトリメリテート等のトリメリット酸エステル。トリエチルシトレート、トリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリ−n−オクチル,n−デシルシトレート、アセチルトリ−(2−エチルヘキシル)シトレート等のクエン酸エステルなどがあげられる。
ポリエステル系可塑剤の具体例としては、アジピン酸、セバチン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸などの酸成分と、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどのジオール成分からなるポリエステルや、ポリカプロラクトンなどのヒドロキシカルボン酸からなるポリエステルなどを挙げることができる。これらのポリエステルは単官能カルボン酸もしくは単官能アルコールで末端封鎖されていてもよく、またエポキシ化合物などで末端封鎖されていてもよい。
多価アルコール系可塑剤の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、デカンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレンオキサイド・プロピレンオキサイド)ブロックおよび/又はランダム共重合体、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、エリスリトール、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、トリメチレンプロパノール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の多価アルコールやこれらの重合体、また、エチレンオキシド付加重合体、プロピレンオキシド付加重合体などのアルキレンオキシド付加重合体などをあげる事ができる。さらにこれらの多価アルコールの誘導体も好適に用いることが出来、例えば、トリエチレングリコールジ−(2−エチルブチレート)、トリエチレングリコールジ−(2−エチルヘキソエート)、トリエチレングリコールジベンゾエート、ポリエチレングリコールジ−(2−エチルヘキソエート)、ジブチルメチレンビス−チオグリコレート、グリセリンモノアセテート、グリセリンジアセテート、グリセリントリアセテート、グリセリントリブチレート、グリセリントリプロピオネート、グリセリンジアセトモノカプレート、グリセリンモノアセトモノラウレート、グリセリンジアセトモノオレート、グリセリンモノリシノレートトリアセテート、グリセリンモノアセトモノモンタネート、ポリオキシエチレングリセリントリアセテート、ジグリセリンテトラアセテート、ポリグリセリンモノラウレートアセテートなどを挙げることができる。
リン酸エステル系可塑剤の具体例としては、リン酸トリエチル、リン酸トリブチル、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリオクチル、リン酸トリフェニル、リン酸ジフェニル−2−エチルヘキシル、リン酸トリキシリルおよびリン酸トリクレシルなどを挙げることができる。
エポキシ系可塑剤の具体例としては、ブチルエポキシステアレート、エポキシモノエステル、オクチルエポキシステアレート、エポキシ化ブチルオレート、ジ−(2−エチルヘキシル)4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−カーボキシレート、エポキシ化半乾性油、エポキシ化トリグリセライド、エポキシブチルステアレート、エポキシオクチルステアレート、エポキシデシルステアレート、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油、メチルエポキシヒドロステアレート、グリセリルトリ−(エポキシアセトキシステアレート)、イソオクチルエポキシステアレート、主にビスフェノールAとエピクロロヒドリンを原料とするような、いわゆるエポキシ樹脂等が挙げられる。
脂肪酸系可塑剤の具体例としては、メチルオレート、ブチルオレート、メトキシエチルオレート、テトラヒドロフルフリルオレート、グリセリルモノオレート、ジエチレングリコールモノオレート、メチルアセチルリシノレート、ブチルアセチルリシノレート、グリセリルモノリシノレート、ジエチレングリコールモノリシノレート、グリセリルトリ−(アセチルリシノレート)、アルキルアセチルリシノレート、n−ブチルステアレート、グリセリルモノステアレート、ジエチレングリコールジステアレート、安定化ペンタクロロメチルステアレート、塩素化メチルステアレート、塩素化アルキルステアレート、ジエチレングリコールモノラウレート、ジエチレングリコールジペラルゴネート、トリエチレングリコールジペラルゴネート、ブチルセロソルブペラルゴネート、クロルヒドリンメチルエーテル構造を含む直鎖脂肪酸エステル等が挙げられる。
スルホン酸系可塑剤の具体例としては、ベンゼンスルホンブチルアミド、o−トルエンスルホンアミド、p−トルエンスルホンアミド、N−エチル−p−トルエンスルホンアミド、o−トルエンエチルスルホンアミド、p−トルエンエチルスルホンアミド、N−シクロヘキシル−p−トルエンスルホンアミド、フェノール及びクレゾールのアルキルスルホン酸エステル、スルホンアミド−ホルムアミド等が挙げられる。
可塑剤は、組成物全量(固形分)の30質量%以下、好ましくは25質量%以下であり、少なくとも5質量%含有させるようにする。その含有量が、多すぎると可塑剤のブリーディング、強度及びフィルム成形能、透明性の低下などの問題があり、少なすぎると十分な柔軟性が得られないといった問題がある。
可塑剤は上記可塑剤からなるグループから選択される少なくとも1種が使用されてよい。2種以上の可塑剤が組み合わせて使用される場合はそれらの合計量が上記範囲内であればよい。
可塑剤は上記可塑剤からなるグループから選択される少なくとも1種が使用されてよい。2種以上の可塑剤が組み合わせて使用される場合はそれらの合計量が上記範囲内であればよい。
ポリ乳酸樹脂組成物には、本発明の目的効果を損なわない限り、その他の添加剤、例えば紫外線等の光吸収剤、熱安定剤、染顔料、無機充填剤、結晶核剤、加水分解抑制剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤等、その他ポリ乳酸に相溶性があり所望の特性を有する物質を適宜選択して添加してもよい。
本発明のポリ乳酸系接着剤を構成する溶剤は、少なくとも結晶性ポリ乳酸、非結晶性ポリ乳酸および可塑剤を溶解させ得るものであれば、特に制限はなく用いることができる。そのような溶剤としては通常、有機系の溶剤が使用され、例えば、芳香族系溶剤、塩素系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、アルコール系溶剤、脂肪族炭化水素系溶剤および脂環族炭化水素系溶剤等が挙げられる。好ましい溶剤は、塩素系溶剤である。
芳香族系溶剤の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。
塩素系溶剤の具体例としては、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等が挙げられる。
エステル系溶剤の具体例としては、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、イソホロン、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。
ケトン系溶剤の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
エーテル系溶剤の具体例としては、ジエチルエーテル、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等が挙げられる。
アルコール系溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール等が挙げられる。
脂肪族炭化水素系溶剤の具体例としては、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、ノナン等が挙げられる。
脂環族炭化水素系溶剤の具体例としては、シクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。
塩素系溶剤の具体例としては、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等が挙げられる。
エステル系溶剤の具体例としては、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、イソホロン、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。
ケトン系溶剤の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
エーテル系溶剤の具体例としては、ジエチルエーテル、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等が挙げられる。
アルコール系溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール等が挙げられる。
脂肪族炭化水素系溶剤の具体例としては、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、ノナン等が挙げられる。
脂環族炭化水素系溶剤の具体例としては、シクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。
溶剤の使用量は本発明の目的が達成される限り特に制限されず、通常は、接着剤の固形分濃度が0.1〜0.8g/ml、好ましくは0.3〜0.7g/mlとなるような量である。
溶剤は上記溶剤からなるグループから選択される少なくとも1種が使用されてよい。2種以上の溶剤が組み合わせて使用される場合であっても、接着剤の固形分濃度が上記範囲内であればよい。
溶剤は上記溶剤からなるグループから選択される少なくとも1種が使用されてよい。2種以上の溶剤が組み合わせて使用される場合であっても、接着剤の固形分濃度が上記範囲内であればよい。
本発明のポリ乳酸系接着剤から、例えばフィルムを形成した場合、そのフィルムの有する好ましい諸特性を以下に示す。なお、下記には、フィルムの物性値を例示しているが、フィルム以外の成形品も、それらの諸物性が反映されて、時間が経過しても非常に高い柔軟性と透明性、かつ強度を保持していることは言うまでもない。
諸物性測定の対象の「フィルム」は、結晶性ポリ乳酸、非結晶性ポリ乳酸および可塑剤を含有し、非結晶性ポリ乳酸が、結晶性ポリ乳酸と非結晶性ポリ乳酸との合計量の30質量%以下の割合で含まれるポリ乳酸樹脂組成物100mgを、溶媒(クロロホルム)10mlに室温で溶解させ、シャーレにキャスト後、室温で48時間乾燥させ、直径300mm×(厚さ)40μmに成形することにより形成した。
結晶粒子(結晶化度、結晶子径、球晶)
(1)結晶化度(%):23%以下、3%以上、好ましくは7%以上、
大気環境下60℃、1時間処理後の結晶化度:42%以下、22%以上、好ましくは40%以上
結晶化度(crystalinity)(%)とは、試料全体に対する結晶質の割合を意味し、X線回折装置により測定した回折パターンから非晶質に起因するブロードなハロー及び結晶質に起因するシャープなピーク面積を算出し、結晶質と非晶質のピーク面積の和に対する結晶質の割合を示したものである。
(1)結晶化度(%):23%以下、3%以上、好ましくは7%以上、
大気環境下60℃、1時間処理後の結晶化度:42%以下、22%以上、好ましくは40%以上
結晶化度(crystalinity)(%)とは、試料全体に対する結晶質の割合を意味し、X線回折装置により測定した回折パターンから非晶質に起因するブロードなハロー及び結晶質に起因するシャープなピーク面積を算出し、結晶質と非晶質のピーク面積の和に対する結晶質の割合を示したものである。
結晶化度は、本発明に於いて引っ張り強度と柔軟性に大きく影響し、その値が大きくなる程、引っ張り強度が増加するのに対し、柔軟性が低下する。一方、その値が小さすぎる場合には、実用に十分な強度、耐熱性が得られなくなる。
(2)結晶子径
結晶子径(Å):110〜140
大気環境下60℃、1時間処理後の結晶子径(Å):160〜190
結晶子(crystallite)とは、単結晶とみなせる最大の集まりを意味し、結晶子径(crystallite size)(Å)は、X線回折により得られた回折ピークから半価幅をScherrerの式(D=K・λ/βcosθ D:結晶子の大きさ λ:測定X線波長 β:半価幅 θ:回折線のブラッグ角 K:Scherrer定数)に代入することにより算出したものである。結晶子径は、本発明に於いて光透過性に影響し、その値が増加すると、透明性の低下を招く。
結晶子径(Å):110〜140
大気環境下60℃、1時間処理後の結晶子径(Å):160〜190
結晶子(crystallite)とは、単結晶とみなせる最大の集まりを意味し、結晶子径(crystallite size)(Å)は、X線回折により得られた回折ピークから半価幅をScherrerの式(D=K・λ/βcosθ D:結晶子の大きさ λ:測定X線波長 β:半価幅 θ:回折線のブラッグ角 K:Scherrer定数)に代入することにより算出したものである。結晶子径は、本発明に於いて光透過性に影響し、その値が増加すると、透明性の低下を招く。
(3)球晶
最大球晶径:15μm以下、好ましくは4〜10μm
球晶(spherulite)とは、単結晶の球状集合体で、最大球晶径(spherulite size)は、偏光顕微鏡観察により得られた画像をWinROOFで解析することにより測定し算出したものである。最大球晶径は、本発明に於いて透明性に大きく影響し、その値が大きくなる程、透明性は低下する。
最大球晶径:15μm以下、好ましくは4〜10μm
球晶(spherulite)とは、単結晶の球状集合体で、最大球晶径(spherulite size)は、偏光顕微鏡観察により得られた画像をWinROOFで解析することにより測定し算出したものである。最大球晶径は、本発明に於いて透明性に大きく影響し、その値が大きくなる程、透明性は低下する。
球晶径分布
直径1μm以下の球晶の個数割合が40%以上
球晶径分布は、偏光顕微鏡観察により得られた画像をWinroofで解析することにより測定し算出したものである。球晶径分布は、本発明に於いて透明性に大きく影響し、より小さい球晶の分布割合が多くなればなるほど、透明性は増す。
直径1μm以下の球晶の個数割合が40%以上
球晶径分布は、偏光顕微鏡観察により得られた画像をWinroofで解析することにより測定し算出したものである。球晶径分布は、本発明に於いて透明性に大きく影響し、より小さい球晶の分布割合が多くなればなるほど、透明性は増す。
引張強度、引張伸張率
引張強度:90MPa以上
切断時の伸張率:190%以上
引張強度:90MPa以上
切断時の伸張率:190%以上
透明性(HAZE値(単位厚さ(μm)当たり))
HAZE値:0.45以下
大気環境下60℃、1時間処理後のHAZE値:0.45以下
HAZE値:0.45以下
大気環境下60℃、1時間処理後のHAZE値:0.45以下
HAZEとは、試験片を通過する透過光のうち、前方散乱によって、入射光から2.5°以上それた透過光の百分率を意味し、透明性を評価する目安となる値である。その値が大きいほどフィルムは不透明であり、反対にその値が小さいほどフィルムは透明である。
[実施例]
本発明のポリ乳酸系接着剤は、市販の接着剤と同程度の接着性を有しながらも、優れた透明性を有し、しかもそのような優れた接着性および透明性を比較的長期にわたって保持できる。
本発明のポリ乳酸系接着剤は、市販の接着剤と同程度の接着性を有しながらも、優れた透明性を有し、しかもそのような優れた接着性および透明性を比較的長期にわたって保持できる。
本発明のポリ乳酸系接着剤は市販品の塩ビ系接着剤スコッチ(カタログNo.6004N;3M社製)と同等の接着能力を有する。例えば、該スコッチ接着剤で以下の接着性実験(参考例)を行った場合、引張弾性率59.5MPa、引張強度0.83MPa、引張最大点伸び0.10mmを示すが、本発明のポリ乳酸系接着剤も、それと同等あるいは、それ以上の接着力を有するのである。しかも、硬化後において本発明のポリ乳酸系接着剤は前記したフィルム特性をそのまま維持し、特に、長期環境下においてもその透明性が維持される
参考例
[接着性実験]
直方体形状の木片(24mm×14mm×8mm)をメタノールで洗浄し、150℃で2時間乾燥させ、前記スコッチ接着剤(50mg)を塗布して2個の木片の表面(14mm×8mm)間で挟持し、重り(150g)で5分間加圧した後、室温で24時間乾燥させた。10kNのロードセルを備えた引張試験機(オリエンテック社製;RTC−1310)を用いて、2個の木片間における接着剤層の引張弾性率、引張強度、引張最大点伸び)を測定した。引張弾性率は応力とひずみの比(ひずみ0.01mm−0.02mm間)、引張強度は応力最大点における引張応力、引張最大点伸びは引張強度に対応する伸びである。試験は初期ゲージ長10mmおよびクロスヘッドスピード0.5mm/secで行った。各接着剤について測定を5回実施し、平均値を求めた。
[接着性実験]
直方体形状の木片(24mm×14mm×8mm)をメタノールで洗浄し、150℃で2時間乾燥させ、前記スコッチ接着剤(50mg)を塗布して2個の木片の表面(14mm×8mm)間で挟持し、重り(150g)で5分間加圧した後、室温で24時間乾燥させた。10kNのロードセルを備えた引張試験機(オリエンテック社製;RTC−1310)を用いて、2個の木片間における接着剤層の引張弾性率、引張強度、引張最大点伸び)を測定した。引張弾性率は応力とひずみの比(ひずみ0.01mm−0.02mm間)、引張強度は応力最大点における引張応力、引張最大点伸びは引張強度に対応する伸びである。試験は初期ゲージ長10mmおよびクロスヘッドスピード0.5mm/secで行った。各接着剤について測定を5回実施し、平均値を求めた。
[持続接着性試験]
接着性実験と同条件で調製した試験片を乾燥後、3か月間温度20℃、湿度65%で保管した後、同様に引張試験を行い、引張強度の保持率を測定した。
接着性実験と同条件で調製した試験片を乾燥後、3か月間温度20℃、湿度65%で保管した後、同様に引張試験を行い、引張強度の保持率を測定した。
[ガラス接着性および透明性試験]
アセトンで洗浄し、105℃で2時間乾燥させたスライドグラス(75mm×25mm×1.2mm)に接着剤(100mg)を塗布して2枚のスライドグラスの表面(75mm×25mm)間で挟持し、重り(150g)で5分間加圧した後、室温で24時間乾燥させた。接着剤層を挟んだ2枚のスライドグラスを手ではがすことができるかを評価した。
アセトンで洗浄し、105℃で2時間乾燥させたスライドグラス(75mm×25mm×1.2mm)に接着剤(100mg)を塗布して2枚のスライドグラスの表面(75mm×25mm)間で挟持し、重り(150g)で5分間加圧した後、室温で24時間乾燥させた。接着剤層を挟んだ2枚のスライドグラスを手ではがすことができるかを評価した。
また濁度計(日本電色社製;NDH2000)を用い、2枚のスライドグラスを通しての全光線透過率を測定した。全光線透過率とは試験片の平行入射光束に対する全透過光束の割合であり、全光線透過率が高いほど試験片の透明性が高いことをあらわす。
[持続ガラス接着性および透明性試験]
ガラス接着性および透明性試験と同条件で調製した試験片を乾燥後、1か月間温度20℃、湿度80%で保管した後、同様に接着性を評価した。また全光線透過率を測定した。
ガラス接着性および透明性試験と同条件で調製した試験片を乾燥後、1か月間温度20℃、湿度80%で保管した後、同様に接着性を評価した。また全光線透過率を測定した。
実施例
[ポリ乳酸系接着剤の製造]
結晶性ポリ乳酸として、ポリL乳酸(PLLA)(H−100;三井化学社製、Mw=156000、Mw/Mn=2.1、[α]20 589=−151deg/dm−1/g−1/cm3)を用いた。
非結晶性ポリ乳酸として、ポリDL乳酸(PDLLA)(H−280;三井化学社製、Mw=220000、Mw/Mn=2.0、[α]20 589=−118deg/dm−1/g−1/cm3)を用いた。
可塑剤として、ジグリセロールテトラアセテート(DGTA)(リケマールPL−710;理研ビタミン社製)、グリセロールモノカプレート・カプリレートジアセテート(AMG)(リケマールPL−019;理研ビタミン社製)を用いた。
[ポリ乳酸系接着剤の製造]
結晶性ポリ乳酸として、ポリL乳酸(PLLA)(H−100;三井化学社製、Mw=156000、Mw/Mn=2.1、[α]20 589=−151deg/dm−1/g−1/cm3)を用いた。
非結晶性ポリ乳酸として、ポリDL乳酸(PDLLA)(H−280;三井化学社製、Mw=220000、Mw/Mn=2.0、[α]20 589=−118deg/dm−1/g−1/cm3)を用いた。
可塑剤として、ジグリセロールテトラアセテート(DGTA)(リケマールPL−710;理研ビタミン社製)、グリセロールモノカプレート・カプリレートジアセテート(AMG)(リケマールPL−019;理研ビタミン社製)を用いた。
PLLA、PDLLA、DGTAおよびAMGを表1に記載の組成比率で塩化メチレンに溶解させ、接着剤を調製した。いずれの接着剤も固形分濃度0.5g/mlとした。
上記参考例における接着性試験において、スコッチ接着剤に代えて、表1の接着剤を使用した以外同様にして、引張弾性率、引張強度、引張最大点伸びを測定した。また、持続接着性試験を行った。結果を表1に示す。
引張弾性率は30MPaが実用上問題のない範囲内で、好ましくは40Mpa以上、より好ましくは50MPa以上である。
引張強度は0.60MPa以上が実用上問題のない範囲内で、好ましくは0.80MPa以上である。
引張強度は0.60MPa以上が実用上問題のない範囲内で、好ましくは0.80MPa以上である。
引張最大点伸びは0.05mm以上が実用上問題のない範囲内で、好ましくは0.08mm以上である。
上記参考例における透明性試験において、スコッチ接着剤に代えて、表2の接着剤を使用した以外同様にして、ガラス接着性および透明性を測定した。また、持続ガラス接着性および透明性試験を行った。結果を表2に示す。
透明性は全光線透過率が80%以上であれば、文字などを充分判別できる程度の透明性があり好ましい。
本発明のポリ乳酸系接着剤は、例えば木工用接着剤、布用接着剤、紙用接着剤として有用であり、特に木工用接着剤として使用されることが好ましい。
Claims (7)
- 結晶性ポリ乳酸、非結晶性ポリ乳酸および可塑剤から本質的になり、非結晶性ポリ乳酸が、結晶性ポリ乳酸と非結晶性ポリ乳酸との合計量の5〜33質量%、可塑剤が組成物全量の5〜30質量%の割合で含まれるポリ乳酸樹脂組成物を含有するポリ乳酸系接着剤。
- 結晶性ポリ乳酸が、ポリL乳酸である請求項1に記載のポリ乳酸系接着剤。
- 非結晶性ポリ乳酸が、ポリDL乳酸である請求項1または請求項2に記載のポリ乳酸系接着剤。
- 可塑剤が、多塩基酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、多価アルコール系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、エポキシ系可塑剤、脂肪酸系可塑剤およびスルホン酸系可塑剤からなるグループから選択される少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれかに記載のポリ乳酸系接着剤。
- 可塑剤が、多価アルコール系可塑剤である、請求項1〜3のいずれかに記載のポリ乳酸系接着剤。
- ポリ乳酸系接着剤がさらに溶剤を含む、請求項1〜5のいずれかに記載のポリ乳酸系接着剤。
- 溶剤が芳香族系溶剤、塩素系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、アルコール系溶剤、脂肪族炭化水素系溶剤および脂環族炭化水素系溶剤から選択される少なくとも1種である、請求項1〜5のいずれかに記載のポリ乳酸系接着剤。
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