JPWO2008038716A1 - 積層軟包装材料及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、水性色インキを使用したグラビア印刷であって、さらに白インキの使用量を制限し、加えてVOC含有のアンカーコート剤の使用をやめてVOC発生の削減と高隠蔽性を付与させることができ、特にグラビア印刷に際してクロム層に替わる表面強化被覆層としてダイヤモンドライクカーボン(DLC)層を設けたグラビアシリンダーを用いるようにした、グラビア印刷された積層軟包装材料とその製造方法を提供する。基材フィルム、水性グラビア色インキ層、アンカーコート剤層、白顔料含有樹脂層及びシーラント層が順次積層された軟包装材料であって、前記水性グラビア色インキ層の形成を、ダイヤモンドライクカーボン被膜を設けたグラビアシリンダーを用いるグラビア印刷によって行うようにした。

Description

本発明は、揮発性有機化合物(以下「VOC」という。)の使用量を最大で約92%削減することにより、環境問題、健康問題に配慮したグラビア印刷を施した積層軟包装材料及びこの積層軟包装材料の製造方法に関し、特に、グラビア印刷に際してクロム層に替わる表面強化被覆層としてダイヤモンドライクカーボン(DLC)層を設けたグラビアシリンダーを用いるようにしたものである。
従来のグラビア印刷が施された軟包装材料は、図10に示すように、基材フィルム11に油性グラビア色インキ層12を形成し、この表面に油性グラビア白インキ層13を形成し、この表面に油性アンカーコート剤層14を形成し、この表面に溶融押出ラミネート層15を形成し、この表面にヒートシール性熱可塑性樹脂フィルム層16を形成したものが一般的である。そして、この印刷に用いられるグラビアインキの場合、その調整には有機溶剤が用いられているため、この有機溶剤の大気中への蒸発発散に基づく環境と健康問題が指摘されている。
そこで、本願出願人の一方は、有機溶剤を用いない水性グラビアインキを用いたグラビア印刷方法の提案を行っている(特許文献1)。また、グラビア印刷が施されたプラスチックフィルム製の軟包装材料の製法において、VOCの含まれているアンカーコート剤の使用を止めて、極性付与樹脂をラミネート材として押し出し使用するラミネート方法の提案も行っている(特許文献2)。
また、軟包装材料の場合、内容物を隠蔽する性能を付与したものがあり、この隠蔽方法としては、印刷インキを用いた所謂ベタ刷りの他に、アルミニュウム箔のラミネートあるいは、アルミニュウム蒸着フィルムのラミネート方法等がある。しかし、これらの方法を用いて隠蔽性を付与すると、VOCの問題に併せて、製品コストが高くなるという欠点がある。
更に詳しくVOC問題を説明すると、軟包装材料の製造過程において油性タイプのインキによりグラビア印刷を行うことにより包装材料の意匠性を高めることが一般的である。この時、色インキだけの印刷では印刷表現に限界があるため、白押さえ印刷を全面に施すことが一般的である。そのため、通常白インキの使用量は色インキを含めた全インキ使用量の60%以上を占めるに至っており、油性インキを使用した場合、大量のVOCを発生させることになる。油性インキの使用状態における組成は、顔料及び樹脂分が20%、溶剤(酢酸エチル、MEK、IPA他)80%が通常である。つまり、使用インキの約80%はVOCであり、空気中に蒸発発散されるものである。
この放出されるVOCを低減させるために、有機溶剤を使用する油性インキから水性インキに変更することにより、大幅に削減することができる。しかし、水性インキであってもその技術上の問題により100%水性化は現在では達成されておらず、20%ほどのアルコール系溶剤が使用されている。
一方、グラビア印刷では、グラビアシリンダー(グラビア製版ロール)に対し、製版情報に応じた微小な凹部(グラビアセル)を形成して版面を製作し当該グラビアセルにインキを充填して被印刷物に転写するものである。一般的なグラビア製版ロールにおいては、アルミニウムや鉄などの金属製中空ロールの表面に版面形成用の銅メッキ層(版材)を設け、該銅メッキ層にエッチングによって製版情報に応じ多数の微小な凹部(グラビアセル)を形成し、次いでグラビア製版ロールの耐刷力を増すためのクロムメッキによって硬質のクロム層を形成して表面強化被覆層とし、製版(版面の製作)が完了する。しかし、クロムメッキ工程においては毒性の高い六価クロムを用いているために、作業の安全維持を図るために余分なコストがかかる他、公害発生の問題もあり、クロム層に替わる表面強化被覆層の出現が待望されているのが現状である。
他方、グラビアシリンダーの製造について、セルを形成した銅メッキ層にダイヤモンドライクカーボン(DLC)を形成し、表面強化被覆層として用いる技術は知られているが(特許文献3)、DLC層は銅との密着性が弱く、剥離し易いという問題があった。また、本願出願人の他方は、金属製中空ロールにゴム又は樹脂層を形成し、その上にダイヤモンドライクカーボン(DLC)の被膜を形成した後、セルを形成し、グラビア印刷版を製造する技術をすでに提案している(特許文献4〜6)。
特開2002−178622号公報 特開2002−326335号公報 特開平4−282296号公報 特開平11−309950号公報 特開平11−327124号公報 特開2000−15770号公報 「新版染料便覧」(社団法人有機合成化学協会編、丸善株式会社、昭和45年7月20日発行)
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決しようとするものであり、水性色インキを使用したグラビア印刷であって、さらに白インキの使用量を制限し、加えてVOC含有のアンカーコート剤の使用をやめてVOC発生の削減と高隠蔽性を付与させることができ、特にグラビア印刷に際してクロム層に替わる表面強化被覆層としてダイヤモンドライクカーボン(DLC)層を設けたグラビアシリンダーを用いるようにした、グラビア印刷された積層軟包装材料とその製造方法を提供するのが目的である。
上記目的を達成するため、本発明の軟包装材料の第1の態様は、基材フィルム、水性グラビア色インキ層、アンカーコート剤層、白顔料含有樹脂層及びシーラント層が順次積層された軟包装材料であって、前記水性グラビア色インキ層の形成を、中空ロールと、該中空ロールの表面に設けられかつ表面に多数のグラビアセルが形成された銅メッキ層と、該銅メッキ層の表面を被覆するダイヤモンドライクカーボン被膜とを含むグラビアシリンダーを用いるグラビア印刷によって行うようにしたことを特徴とするものである。
本発明の軟包装材料の第2の態様は、基材フィルム、水性グラビア色インキ層、アンカーコート剤層、白顔料含有樹脂層が順次積層された軟包装材料であって、前記水性グラビア色インキ層の形成を、中空ロールと、該中空ロールの表面に設けられかつ表面に多数のグラビアセルが形成された銅メッキ層と、該銅メッキ層の表面を被覆するダイヤモンドライクカーボン被膜とを含むグラビアシリンダーを用いるグラビア印刷によって行うようにしたことを特徴とするものである。
本発明の軟包装材料の第3の態様は、基材フィルム、水性グラビア色インキ層、白顔料含有樹脂層及びシーラント層が順次積層された軟包装材料であって、前記白顔料含有樹脂層の白顔料含有樹脂が、接着性極性付与樹脂であり、前記水性グラビア色インキ層の形成を、中空ロールと、該中空ロールの表面に設けられかつ表面に多数のグラビアセルが形成された銅メッキ層と、該銅メッキ層の表面を被覆するダイヤモンドライクカーボン被膜とを含むグラビアシリンダーを用いるグラビア印刷によって行うようにしたことを特徴とするものである。
本発明の軟包装材料の第1及び第2の態様において、前記アンカーコート剤が水性であるのが好適である。
本発明の軟包装材料の第1〜第3の態様において、印刷作業中の印刷状態を確保するのに必要な面積を限定して水性グラビア色インキにより白押えを行うことが好ましい。
本発明の軟包装材料の第1〜第3の態様において、白顔料含有樹脂層の白顔料が酸化チタンであり、その白顔料含有樹脂層中の酸化チタン含有量が2〜50重量%であることが好ましい。
本発明のグラビア印刷積層軟包装材料の製造方法の第1の態様は、基材フィルムに水性グラビア色インキ層とアンカーコート剤層を形成し、これにヒートシール性熱可塑性樹脂フィルムを対向させ、その間に溶融した白顔料含有樹脂を層状に押し出して基材側とヒートシール性熱可塑性樹脂フィルム側とを圧着するグラビア印刷積層軟包装材料の製造方法であって、前記水性グラビア色インキ層の形成を、中空ロールと、該中空ロールの表面に設けられかつ表面に多数のグラビアセルが形成された銅メッキ層と、該銅メッキ層の表面を被覆するダイヤモンドライクカーボン被膜とを含むグラビアシリンダーを用いるグラビア印刷によって行うようにしたことを特徴とするものである。
本発明のグラビア印刷積層軟包装材料の製造方法の第2の態様は、基材フィルムに水性グラビア色インキ層を形成し、これにヒートシール性熱可塑性樹脂フィルムを対向させ、その間に溶融した白顔料含有樹脂を層状に押し出して基材側とヒートシール性熱可塑性樹脂フィルム側とを圧着するグラビア印刷積層軟包装材料の製造方法であって、前記白顔料含有樹脂層の白顔料含有樹脂が、接着性極性付与樹脂であり、前記水性グラビア色インキ層の形成を、中空ロールと、該中空ロールの表面に設けられかつ表面に多数のグラビアセルが形成された銅メッキ層と、該銅メッキ層の表面を被覆するダイヤモンドライクカーボン被膜とを含むグラビアシリンダーを用いるグラビア印刷によって行うようにしたことを特徴とするものである。
本発明において、前記銅メッキ層の表面に金属層を設け、該金属層の表面に当該金属の炭化金属層を設け、該炭化金属層の表面にダイヤモンドライクカーボン被膜を形成するのが好ましい。
本発明において、前記炭化金属層が、炭化金属傾斜層であって、該炭化金属傾斜層における炭素の組成比が前記金属層側から前記ダイヤモンドライクカーボン被膜方向に対して炭素の比率が徐々に増大するように設定されている構成とするのが好ましい。
本発明において、前記銅メッキ層の厚さが50〜200μm、前記グラビアセルの深度が5〜150μm、前記金属層の厚さが0.001〜1μm、好ましくは0.001〜0.1μm、さらに好ましくは0.001〜0.05μm、前記炭化金属層の厚さが0.1〜1μm、及び前記ダイヤモンドライクカーボン被膜の厚さが0.1〜10μmであるのが好適である。
前記金属が炭化可能でありかつ銅と親和性の高い金属であることが好ましい。前記金属としては、タングステン(W)、珪素(Si)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、及びジルコニウム(Zr)からなる群から選ばれる一種又は二種以上の金属を用いるのが好ましい。
前記金属層、前記炭化金属層、好ましくは炭化金属傾斜層及び前記ダイヤモンドライクカーボン被膜をスパッタリング法によってそれぞれ形成することが好適である。
本発明においては、ダイヤモンドライクカーボン被膜の形成にはCVD法を適用することもできる。この場合、銅メッキ層の表面に密着層を形成し、該密着層の表面を被覆するダイヤモンドライクカーボン被膜を形成するのが好ましく、該密着層及びダイヤモンドライクカーボン被膜の両方をCVD法で形成するものである。
前記密着層が、アルミニウム(Al),リン(P),チタン(Ti),及び珪素(Si)からなる群から選ばれる一種又は二種以上から形成されるのが好ましい。
この場合、前記銅メッキ層の厚さが50〜200μm、前記グラビアセルの深度が5〜150μm、前記密着層の厚さが0.1〜1μm、及び前記ダイヤモンドライクカーボン被膜の厚さが0.1〜10μmであるのが好適である。
前記密着層を形成するために、トリメチルアルミニウム、チタニウムテトライソプロポキシド、チタニウムテトラエトキシド、テトラメチルシラン、亜リン酸トリメチル、ヘキサメチルジシロキサンから選ばれる一種又は二種以上のガス種を用いるのが好適である。
前記グラビアセルの形成は、エッチング法又は電子彫刻法によって行えばよいが、エッチング法が好適である。ここでエッチング法はグラビアシリンダーの銅メッキ層に感光液を塗布して直接焼き付けた後、エッチングしてグラビアセルを形成する方法である。電子彫刻法は、デジタル信号によりダイヤモンド彫刻針を機械的に作動させグラビアシリンダーの銅メッキ層表面にグラビアセルを彫刻する方法である。
本発明によれば、以下の効果が達成される。
1.軟包装材料において、白顔料含有樹脂を用いてラミネートを行うことにより、白インキ押さえを行わないか、又は印刷作業中の印刷状態を確認する為に必要な面積及び塗布量を限定して白押さえを行うことにより、水性色インキ使用時に白押えインキの使用が無くなるか、僅かとなるため、この分のVOCを削減することが可能である。このことにより環境問題、健康問題及び省資源化、省エネルギー化、炭酸ガス発生の削減により地球温暖化防止が可能である。
2.グラビアインキとして水性色インキを併用することにより、さらにVOCの削減が可能である。
3.白顔料含有接着性極性付与樹脂をラミネート樹脂として用いることにより、アンカーコート剤の使用を無くすことができるため、さらなるVOC削減が可能である。
4.食品包装料の場合、水性色インキ使用であること、さらには全インキの使用量の60%以上を占める白押さえをおこなわないか、又は印刷作業状態を確認する為に必要な面積を限定して白押さえを行う為、インキの使用量削減と、有機溶剤を使用しない為、包装材料中の残留溶剤が少なく、より安全な包装材料を提供できる。
5.白押さえを行わないか又は印刷作業中の印刷状態を確認する為に必要な面積に限定して白インキを使用するため、インキの乾燥性が大きく向上し、印刷速度を大きく上げることが可能である。
6.白押さえを行わないか又は印刷作業中の印刷状態を確認する為に必要な面積に限定して白インキを使用するため、インキの使用量が削減でき、経済的である。
7.白インキと比較して酸化チタン顔料を含有する白顔料含有樹脂は、樹脂中の顔料の分散性がよく、ラミネート後の白顔料が平滑で滑らかな為、印刷表現効果が向上する。
8.表面強化被覆層としてダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜を用いることに
より、クロムメッキ工程を省略することができるので、毒性の高い六価クロムを用いることがなくなり、作業の安全性を図るための余分なコストが不要で、公害発生の心配も全くなく、しかもダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜はクロム層に匹敵する強度を有し耐刷力にも優れるものである。
本発明の軟包装材料の第1の例を示す断面説明図である。 本発明の軟包装材料の第2の例を示す断面説明図である。 本発明の軟包装材料の第3の例を示す断面説明図である。 本発明に用いられるグラビアシリンダーの製造工程の一例を模式的に示す説明図で、(a)は中空ロールの全体断面図、(b)は中空ロールの表面に銅メッキ層を形成した状態を示す部分拡大断面図、(c)は中空ロールの銅メッキ層にグラビアセルを形成した状態を示す部分拡大断面図、(d)は中空ロールの銅メッキ層表面に炭化タングステン層を形成した状態を示す部分拡大断面図、(e)は中空ロールの金属層表面に炭化金属層を形成した状態を示す部分拡大断面図、(f)は中空ロールの炭化金属層表面にダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜を被覆した状態を示す部分拡大断面図である。 本発明に用いられるグラビアシリンダーの製造方法の一例を示すフローチャートである。 本発明に用いられるグラビアシリンダーの一例の要部の拡大断面図である。 本発明に用いられるグラビアシリンダーの製造工程の他の例を模式的に示す説明図で、(a)は中空ロールの全体断面図、(b)は中空ロールの表面に銅メッキ層を形成した状態を示す部分拡大断面図、(c)は中空ロールの銅メッキ層にグラビアセルを形成した状態を示す部分拡大断面図、(d)は中空ロールの銅メッキ層表面に密着層を形成した状態を示す部分拡大断面図、(e)は中空ロールの密着層表面にダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜を被覆した状態を示す部分拡大断面図である。 本発明に用いられるグラビアシリンダーの製造方法の他の例を示すフローチャートである。 本発明に用いられるグラビアシリンダーの他の例の要部の拡大断面図である。 従来の油性グラビア色インキ使用軟包装材料の積層構造を示す説明図である。
符号の説明
11:基材フィルム、12:油性グラビア色インキ層、13:油性グラビア白インキ層、14:油性アンカーコート剤層、15:溶融押出ラミネート層、16:シーラント層、ヒートシール性熱可塑性樹脂フィルム層、17:水性グラビア色インキ層、18:水性グラビア白インキ層、19:アンカーコート剤層、20:白顔料含有樹脂層、白顔料含有押出ラミネート樹脂層、21:白顔料含有樹脂層、白顔料含有接着性極性付与樹脂層、30:版母材(中空ロール)、30a:グラビア製版ロール、32:銅メッキ層、34:グラビアセル、36:金属層、37:密着層、38:炭化金属層、好ましくは炭化金属傾斜層、40:ダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜。
本発明者は、アルコール系溶剤を低減させるために、油性インキの代わりに水性色インキを使用したグラビア印刷を行い、且つ白インキの使用量を減らすために、白インキを印刷しないか、又は、印刷作業中の印刷状態の確認に必要な最小限の使用(面積と塗布量濃度の削減)にとどめ、その代わりとして白顔料含有樹脂を使用することにより、最終印刷の仕上がりの確保とVOC削減が達成でき、さらに、その結果として高隠蔽性を保持させることも可能であることを見出したものである。
即ち、本発明者は、基材フィルム、水性グラビア色インキ層、アンカーコート剤層、白顔料含有樹脂層及びシーラント層を順次積層することにより、VOC削減及び高隠蔽性が達成できることを見出した。前記アンカーコート剤として水性のアンカーコート剤を用いることによりさらにVOC削減を達成することができる。
なお、顔料の大きさと隠蔽力の関係については、粒子が小さくなるに従って隠蔽力は増大し、色によって定まる限界値−チタン白は0.7〜0.4μm−で最大になり、それより小さくなると光の散乱が起こり、光の半波長以下の大きさでは急激に透明になることが知られている(非特許文献1)。
水性インキの使用状態における組成は、顔料及び樹脂分として27%、水53%、アルコール20重量%が通常である。つまり水性インキの場合、使用インキの20%がVOCであり、油性インキと比較してその割合の低いことがわかる。
また、水性インキはその特性上、油性インキと比較して版深が浅く、その塗布量は油性インキと比較して約60%ほどである。水性インキは、上記のようにVOC溶剤の割合が低く、さらにその塗布量も少ないため、VOCの発生量が油性インキと比較して85%も削減することができる。また、本発明により、水性色インキを使用し且つ白インキの印刷を行わないとVOCの発生量が水性インキと比較して90%も削減することができる。
さらに、本発明者は、軟包装材料のラミネートに際し、アンカーコート剤の塗布を必要としない接着性極性付与樹脂を用いることによりさらにVOCの削減が可能であることを見出した。即ち、本発明者は、アンカーコート剤を省略して、白顔料含有樹脂として白顔料含有接着性極性付与樹脂を用いて、基材フィルム、水性グラビア色インキ層、白顔料含有樹脂層及びシーラント層を順次積層することにより、更にVOC削減が達成できることを見出したものである。
ラミネート用接着剤としての油性アンカーコート剤のコート量は、約3kg/500mmであり、その組成は、樹脂分としての固形分8%、溶剤として酢酸エチルが92%の割合が通常である。この油性アンカーコート剤を水性タイプのアンカーコート剤に代えるか、接着性極性付与樹脂を使用することにより、水性インキの採用と合わせて88%のVOCの削減ができる。
また、本発明により、水性色インキを使用し、且つ白インキの印刷を行わず、さらに水性アンカーコート剤を使用するか、又はアンカーコート剤を用いずに白顔料含有接着性極性付与樹脂を用いることにより、油性色インキ、油性アンカーコート剤と比較して93%ものVOCの削減が可能である。
その上で、本発明者は、水性グラビア色インキとアンカーコート剤を使用したグラビア印刷を施した基材フィルムに、シーラント層となるヒートシール性熱可塑性樹脂フィルムを対向させ、その間に溶融した白顔料含有樹脂を層状に押し出しながら基材フィルム側とヒートシール性熱可塑性樹脂フィルム型とを白顔料含有樹脂を挟んで圧着することにより、VOCを削減した軟包装材料の製造方法を見出すに至った。
また、本発明者は、水性グラビア色インキを使用したグラビア印刷を施した基材フィルムと、シーラント層となるヒートシール性熱可塑性樹脂フィルムを対向させ、その間に水性グラビア色インキにアンカーコート剤無しで接着可能となるように極性付与された白顔料含有樹脂を層状に押し出しながら基材フィルム側とヒートシール性熱可塑性樹脂フィルム側とを圧着することにより、VOCを削減した軟包装材料の製造方法を見出すに至った。
またさらに、本発明者は、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)層を用いることによってクロム層に匹敵する強度を有しかつ毒性はなく公害発生の心配も全くない表面強化被覆層を得ることができることを見出した。
以下に本発明の実施の形態を添付図面を基にして詳細に説明するが、これら実施の形態は例示的に示されるもので、本発明の技術思想から逸脱しない限り種々の変形が可能なことはいうまでもない。
図1は本発明のVOC削減軟包装材料の第1の例を示す断面説明図であり、基材フィルム11、水性グラビア色インキ層17、アンカーコート剤層19、白顔料含有樹脂層20及びシーラント層16から構成されている。図2は、本発明の積層軟包装材料の第2の例を示す断面説明面であり、基材フィルム11、水性グラビア色インキ層17、水性グラビア白インキ層18、アンカーコート剤層19、白顔料含有樹脂層20及びシーラント層16から構成されている。
基材フィルム11は、水性色インキを使用してグラビア印刷可能なフィルムであればどのようなものでもよく、例えば、OPP、O−NYLON、ポリエステルフィルム等を基材として使用することができる。基材フィルム11の厚みは特に限定されず、使用目的に応じて適宜選択することができる。
水性グラビア色インキ層17は、水性ウレタン樹脂等が樹脂べースであり、溶媒として水+アルコール系を使用した構成が代表的なものであるが、各々の樹脂、白顔料材は特定されるものではなく、グラビア印刷ができ、水もしくは水+アルコール系インキであれば良い。また、この水性グラビア色インキを用いてグラビア印刷を行う時、白押さえ印刷は、印刷作業中の印刷状態を確認できれば必要ないものであり、なくすことができる。しかし、必要に応じて最小限の面積を印刷する場合は、版深を落として通常の白印刷版より浅くし、従来の10%までを限界として行うものである。
また、水性グラビア色インキ層として、複数の水性インキ層、例えば、図2に示した如く、水性グラビア色インキ層17及び水性グラビア白インキ層18を用いてもよい。
アンカーコート剤層19に用いられるアンカーコート剤としては、公知のアンカーコート剤が使用可能であるが、水性のアンカーコート剤が好適である。
白顔料含有樹脂層20は、水性グラビア色インキを用いてグラビア印刷を行い、このとき白印刷を行わないか、もしくは必要最低限の面積、塗布濃度で行った印刷物に白インキの代わりに行うものであり、印刷の見栄えと包装材料に隠蔽性を与えるものである。その結果として、VOCの低減が可能である。該白顔料含有樹脂層20は、押出しラミネート法等により形成されてなるラミネート樹脂層であることが好ましい。
前記白顔料含有樹脂としては、白顔料を熱可塑性樹脂中に分散させたものが好適に用いられる。該白顔料としては、食品などの内容物に影響を与えず、隠蔽性が高く、紫外線及び可視光を十分に遮光することができる顔料を使用することが必要である。このような白顔料としては、酸化チタンを上げることができるが、これに限定されるものではない。
熱可塑性樹脂としては、このような包装材料において従来より使用されている熱可塑性樹脂を使用することができ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、酸コポリマーを良好に使用することができる。
白顔料の配合割合は、使用する顔料の種類や、熱可塑性樹脂の種類により異なるが、少ないと隠蔽性が十分でなく、多すぎると脆くなる。したがって、一般には2〜50重量%が望ましい。
シーラント層16は、この発明の包装材料を袋に成形する際に、ヒートシールするための層であり、内容物に影響を与えないヒートシール性熱可塑性樹脂であればよい。該ヒートシール性熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等が上げられる。また、シーラント層の厚みは、使用目的に応じて選択することができ、特に限定されるものではない。
また、白顔料含有樹脂層をシーラント層と兼用しても同様の効果が得られる。さらに、別に白顔料含有フィルムを作成し、ドライラミネート法、押出サンド樹脂法等の貼合方法により貼り合わせても同様の目的とする包装材料を得ることができる。
図3は、本発明の軟包装材料の第3の例を示す断面説明図であり、基材フィルム11、水性グラビア色インキ層17、白顔料含有接着性極性付与樹脂層21、シーラント層16から構成されている。
図3に示した如く、白顔料含有樹脂として水性グラビア色インキとの接着にアンカーコート剤を必要としない白顔料含有接着性極性付与樹脂(例えば酸コポリマー)等を使用することにより、アンカーコート剤層を省略することが可能であり、さらにVOCを削減することができる。
接着性極性付与樹脂としては、前記コポリマー以外に、エチレン−(メタ)アクリル酸の共重合系樹脂や低度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂を不飽和カルボン酸等の極性付与剤で変性したポリオレフィン系が該当するが、これらに限定されるものではない。
続いて、本発明に用いられるグラビアシリンダーの一例について、図4〜図6によって説明する。図4はグラビアシリンダー(グラビア製版ロール)の製造工程の一例を模式的に示す説明図で、(a)は中空ロールの全体断面図、(b)は中空ロールの表面に銅メッキ層を形成した状態を示す部分拡大断面図、(c)は中空ロールの銅メッキ層にグラビアセルを形成した状態を示す部分拡大断面図、(d)は中空ロールの銅メッキ層表面に金属層を形成した状態を示す部分拡大断面図、(e)は中空ロールの金属層表面に炭化金属層を形成した状態を示す部分拡大断面図、(f)は中空ロールの炭化金属層表面にダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜を被覆した状態を示す部分拡大断面図である。図5はグラビアシリンダーの製造方法の一例を示すフローチャートである。図6はグラビアシリンダーの一例の要部の拡大断面図である。
上記グラビアシリンダーの製造方法を図4〜図6を用いて説明する。図4(a)及び図6において、符号30は版母材で、アルミニウム、鉄等の金属又は炭素繊維強化樹脂(CFRP)等の強化樹脂からなる中空ロールが用いられる(図5のステップ100)。該中空ロール30の表面には銅メッキ処理によって銅メッキ層32が形成される(図5のステップ102)。
該銅メッキ層32の表面には多数の微小な凹部(グラビアセル)34が形成される(図5のステップ104)。グラビアセル34の形成方法としては、エッチング法(版胴面に感光液を塗布して直接焼き付けた後、エッチングしてグラビアセル34を形成する)や電子彫刻法(デジタル信号によりダイヤモンド彫刻針を機械的に作動させ銅表面にグラビアセル34を彫刻する)等の公知の方法を用いることができるが、エッチング法が好適である。
次に、グラビアセル34を形成した銅メッキ層32(グラビアセル34を含む)の表面に金属層36を形成する(図5のステップ106)。さらに、この金属層36の表面に当該金属の炭化金属層、好ましくは炭化金属傾斜層38を形成する(図5のステップ108)。金属層36及び炭化金属層、好ましくは炭化金属傾斜層38の形成方法としては、図4〜図6に示したスパッタリング法の他に、真空蒸着法(エレクトロンビーム法)、イオンプレーティング法、MBE(分子線エピタキシー法)、レーザーアブレーション法、イオンアシスト成膜法、CVD法(プラズマCVD法を含む)等の公知の方法を適用できる。
前記金属としては、炭化可能でありかつ銅と親和性の高い金属が好ましい。この金属としては、タングステン(W)、珪素(Si)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、及びジルコニウム(Zr)等を用いることができる。
前記炭化金属層、好ましくは炭化金属傾斜層38における金属は前記金属層36と同一の金属を用いる。炭化金属傾斜層38における炭素の組成比は金属層36側から後述するダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜40方向に対して炭素の比率が徐々に増大するように設定する。つまり、炭素の組成比は0%〜徐々に(段階状もしくは無段階状に)比率を増し、最後はほぼ100%となるように成膜を行う。
この場合、炭化金属層、好ましくは炭化金属傾斜層38中の炭素の組成比の調整方法は公知の方法を用いればよいが、例えば、スパッタリング法(固体金属ターゲットを用い、アルゴンガス雰囲気で炭化水素ガス、例えば、メタンガス、エタンガス、プロパンガス、ブタンガス、アセチレンガス等の注入量を段階状又は無段階状に徐々に増大する)によって、炭化金属層38中の炭素の割合が銅メッキ層32の側からダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜40方向に対して段階状又は無段階状に徐々に増大するように炭素及び金属の両者の組成割合を変化させた炭化金属層、即ち炭化金属傾斜層38を形成することができる。
このように炭化金属層38の炭素の割合を調整することによって銅メッキ層32及びダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜40の双方に対する炭化金属層38の密着度を向上させることができる。また、炭化水素ガスの注入量を一定とすれば、炭素及び金属の組成割合を一定とした炭化金属層とすることができ、炭化金属傾斜層と同様の作用を行わせることができる。
続いて、前記炭化金属層、好ましくは炭化金属傾斜層38の表面にダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜40を被覆形成する(図5のステップ110)。ダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜40の形成方法としては、金属層36及び炭化金属層、好ましくは炭化金属傾斜層38の形成と同様に、スパッタリング法を用いればよいが、真空蒸着法(エレクトロンビーム法)、イオンプレーティング法、MBE(分子線エピタキシー法)、レーザーアブレーション法、イオンアシスト成膜法、プラズマCVD法等の公知の方法を適用できる。
上記したダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜40により被覆し、このダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜40を表面強化被覆層として作用させることによって、毒性がなくかつ公害発生の心配も皆無となるとともに耐刷力に優れたグラビア製版ロール30aを得ることができる。
この場合、前記銅メッキ層32の厚さが50〜200μm、前記グラビアセル34の深度が5〜150μm、前記金属層36の厚さが0.001〜1μm、好ましくは0.001〜0.1μm、さらに好ましくは0.001〜0.05μm、前記炭化金属層38の厚さが0.1〜1μm、及び前記ダイヤモンドライクカーボン被膜40の厚さが0.1〜10μmであるのが好適である。
ここで、スパッタリング法は、薄膜にしたい材料(ターゲット材料)にイオンをぶつけると材料がはね飛ばされるが、このはね飛ばされた材料を基板上に堆積させ薄膜を作製する方法であり、ターゲット材料の制約が少なく、薄膜を大面積に再現性よく作製できるなどの特徴がある。
真空蒸着法(エレクトロンビーム法)は、薄膜にしたい材料に電子ビームを照射し加熱蒸発させ、この蒸発させた材料を基板上に付着(堆積)させ、薄膜を作製する方法であり、成膜速度が速く基板へのダメージが少ない等の特徴がある。
イオンプレーティング法は、薄膜にしたい材料を蒸発させた後、高周波(RF)(RFイオンプレーティング法)又はアーク(アークイオンプレーティング法)によりイオン化させた基板上に堆積させ薄膜を作製する方法であり、成膜速度が速い、付着強度が大きい等の特徴がある。
分子線エピタキシー法は、超高真空中で原料物質を蒸発させ、加熱した基板上へ供給し薄膜を形成する方法である。
レーザーアブレーション法は、ターゲットに高密度化したレーザーパルスを入射することによりイオンを放出させ、対向の基板上に薄膜を形成する方法である。
イオンアシスト成膜法は、真空容器内に蒸発源とイオン源とを設置し、イオンを補助的に利用して成膜する方法である。
プラズマCVD法は、減圧下でCVD法を行う際により低温で薄膜形成を行う目的から、プラズマ励起を利用して原料ガスを分解させ、基板上で反応堆積させる方法である。
さらに、本発明に用いられるグラビアシリンダーの他の例について、図7〜図9によって説明する。図7は本発明に用いられるグラビアシリンダーの製造工程の他の例を模式的に示す説明図で、(a)は中空ロールの全体断面図、(b)は中空ロールの表面に銅メッキ層を形成した状態を示す部分拡大断面図、(c)は中空ロールの銅メッキ層にグラビアセルを形成した状態を示す部分拡大断面図、(d)は中空ロールの銅メッキ層表面に密着層を形成した状態を示す部分拡大断面図、(e)は中空ロールの密着層表面にダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜を被覆した状態を示す部分拡大断面図である。図8は本発明に用いられるグラビアシリンダーの製造方法の他の例を示すフローチャートである。図9は本発明に用いられるグラビアシリンダーの他の例の要部の拡大断面図である。
上記グラビアシリンダーの製造方法の他の例を図7〜図9を用いて説明するが、図7〜図9においては、図4〜図6における金属層36及び炭化金属層38を密着層37に換え(図5における金属層の形成106及び炭化金属層の形成108を図8におけるCVDによる密着層の形成107に換え)かつスパッタリング法の替わりにCVD法、好ましくはプラズマCVD法によって密着層及びダイヤモンドライクカーボン被膜を形成した点が異なるのみであり、その他は図4〜図6の場合と同様であるので再度の詳細な説明は省略する。
前記密着層37が、アルミニウム(Al),リン(P),チタン(Ti),及び径素(Si)からなる群から選ばれる一種又は二種以上から形成されるのが好ましい。
この場合、前記銅メッキ層32の厚さが50〜200μm、前記グラビアセル34の深度が5〜150μm、前記密着層37の厚さが0.1〜1μm及び前記ダイヤモンドライクカーボン被膜40の厚さが0.1〜10μmであるのが好適である。
前記密着層37を形成するために、トリメチルアルミニウム、チタニウムテトライソプロポキシド、チタニウムテトラエトキシド、テトラメチルシラン、亜リン酸トリメチル、ヘキサメチルジシロキサンから選ばれる一種又は二種以上のガス種を用いるのが好適である。
以下に実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、これらの実施例は例示的に示されるもので限定的に解釈されるべきでないことはいうまでもない。
(実施例1)
厚さ30μの2軸延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡績株式会社製、商品名p2161)を基材フィルム11とし、水性グラビア色インキ(東洋インキ製造株式会社製、商品名JW250)を用いてグラビア印刷を行った。なお、上記したグラビア印刷は後記する実験例1記載のグラビアシリンダーを用いた。
これとは別に厚さ30μの未延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡績株式会社製、商品名P−11128)をシーラント層16として用意した。
さらに、白顔料含有樹脂として、熱可塑性ポリエチレン樹脂M−11P(プライムポリマー株式会社製)と酸化チタン70%を白顔料としたマスターバッチを10%添加して最終酸化チタン含有量として6.25%の押出ラミネート用白顔料含有樹脂を作成した。
前記白顔料含有樹脂を溶融押出して、グラビア印刷を施した基材フィルム11と、シーラント層16とを圧着貼り合わせを行い、VOC削減軟包装材料を製造した。
このとき、水性グラビア色インキ面にアンカーコート剤をコーティングして接着性を持たせる必要があり、使用するアンカーコート剤として、水性アンカーコート剤(東洋モートン株式会社製、商品名EL−667)を使用した。
この実施例で得られたVOC削減軟包装材料は、前記した本発明の効果をいずれも達成する性能を有していた。
(実施例2)
アンカーコート剤を用いず、且つ白顔料含有樹脂として、熱可塑性接着性極性付与酸コポリマー樹脂(三井・デュポン株式会社製)と酸化チタン70%を白顔料としたマスターバッチを10%添加して最終酸化チタン含有量として6.25%の白顔料含有接着性極性付与樹脂を用いた以外は実施例1と同様の方法により軟包装材料を製造した。得られた軟包装材料は、白顔料含有樹脂面と水性色インキ面が接合しており、VOCが大幅に削減された。
(実施例3)
後記する実験例2のグラビアシリンダーを用いてグラビア印刷した以外は実施例1と同様にしてVOC削減軟包装材料を製造し、同様の結果が得られた。
(実験例1)
円周600mm、面長1100mmのグラビアシリンダー(アルミ中空ロール)をメッキ槽に装着し、陽極室をコンピューターシステムによる自動スライド装置で20mmまで中空ロールに近接させ、メッキ液をオーバーフローさせ、中空ロールを全没させて18A/dm、6.0Vで80μmの銅メッキ層を形成した。メッキ時間は20分、メッキ表面はブツやピットの発生がなく、均一な銅メッキ層を得た。
上記形成した銅メッキ層に感光膜をコートして画像をレーザー露光し現像しバーニングしてレジスト画像を形成し、次いでプラズマエッチング等のドライエッチングを行ってグラビアセルからなる画像を彫り込み、その後レジスト画像を取り除くことにより印刷版を形成した。このとき、グラビアセルの深度を10μmとした中空ロールを作製した。
このグラビアセルを形成した銅メッキ層の上面にスパッタリング法によってタングステン(W)層を形成した。スパッタリング条件は次の通りである。タングステン(W)試料:固体タングステンターゲット、雰囲気:アルゴンガス雰囲気、成膜温度:200〜300℃、成膜時間:60分、成膜厚さ:0.03μm。
次に、タングステン層(W)の上面に炭化タングステン層を形成した。スパッタリング条件は次の通りである。タングステン(W)試料:固体タングステンターゲット、雰囲気:アルゴンガス雰囲気で炭化水素ガスを徐々に増加、成膜温度:200〜300℃、成膜時間:60分、成膜厚さ:0.1μm。
さらに、炭化タングステン層の上面にスパッタリング法によってダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜を被覆形成した。スパッタリング条件は次の通りである。DLC試料:固体カーボンターゲット、雰囲気:アルゴンガス雰囲気、成膜温度:200〜300℃、成膜時間:150分、成膜厚さ:1μm。このようにして、グラビアシリンダーを完成した。
(実験例2)
実験例1と同様にしてグラビアセルの深度を10μmとした中空ロールを作製した。上記中空ロールに対してタングステン(W)試料を珪素(Si)試料に変更した以外は実験例1と同様に処理してグラビアシリンダーを完成した。
(実施例4)
後記する実験例3のグラビアシリンダーを用いてグラビア印刷した以外は実施例1と同様にしてVOC削減包装材料を製造し、同様の結果が得られた。
(実験例3)
実験例1と同様にしてグラビアセルの深度を10μmとした中空ロールを作製した。この中空ロールの銅メッキ層の上面にガス種としてトリメチルアルミニウムを用いプラズマCVD法によって厚さ0.1μmのアルミニウム(Al)層を形成した。
次に、アルミニウム(Al)の上面にプラズマCVD法によって厚さ1μmのダイヤモンドライクカーボン被膜を被覆形成した。このようにしてグラビアシリンダーを完成した。
(実施例5)
後記する実験例4のグラビアシリンダーを用いてグラビア印刷した以外は実施例1と同様にしてVOC削減包装材料を製造し、同様の結果が得られた。
(実験例4)
実験例1と同様にしてグラビアセルの深度を10μmとした中空ロールを作製した。この中空ロールの銅メッキ層の上面にガス種としてチタニウムテトライソプロポキシドを用いプラズマCVD法によって厚さ0.1μmのチタン(Ti)層を形成した以外は実験例3と同様にしてグラビアシリンダーを完成した。
なお、ガス種として、チタニウムテトラエトキシド、テトラメチルシラン、亜リン酸トリメチル、ヘキサメチルジシロキサンを用い、プラズマCVD法によってそれぞれ厚さ0.1μmのチタン(Ti)層、珪素(Si)層、リン(P)層、珪素(Si)層を形成して、同様の実験を行い、同様の結果が得られることを確認した。

Claims (10)

  1. 基材フィルム、水性グラビア色インキ層、アンカーコート剤層、白顔料含有樹脂層及びシーラント層が順次積層された軟包装材料であって、前記水性グラビア色インキ層の形成を、中空ロールと、該中空ロールの表面に設けられかつ表面に多数のグラビアセルが形成された銅メッキ層と、該銅メッキ層の表面を被覆するダイヤモンドライクカーボン被膜とを含むグラビアシリンダーを用いるグラビア印刷によって行うようにしたことを特徴とする軟包装材料。
  2. 基材フィルム、水性グラビア色インキ層、アンカーコート剤層及び白顔料含有樹脂層が順次積層された軟包装材料であって、前記水性グラビア色インキ層の形成を、中空ロールと、該中空ロールの表面に設けられかつ表面に多数のグラビアセルが形成された銅メッキ層と、該銅メッキ層の表面を被覆するダイヤモンドライクカーボン被膜とを含むグラビアシリンダーを用いるグラビア印刷によって行うようにしたことを特徴とする軟包装材料。
  3. 基材フィルム、水性グラビア色インキ層、白顔料含有樹脂層及びシーラント層が順次積層された軟包装材料であって、前記白顔料含有樹脂層の白顔料含有樹脂が、接着性極性付与樹脂であり、前記水性グラビア色インキ層の形成を、中空ロールと、該中空ロールの表面に設けられかつ表面に多数のグラビアセルが形成された銅メッキ層と、該銅メッキ層の表面を被覆するダイヤモンドライクカーボン被膜とを含むグラビアシリンダーを用いるグラビア印刷によって行うようにしたことを特徴とする軟包装材料。
  4. 前記アンカーコート剤層が水性であることを特徴とする請求項1又は2記載の軟包装材料。
  5. 印刷作業中の印刷状態を確認するのに必要な面積を限定して水性グラビア色インキ層に白押えを行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の軟包装材料。
  6. 前記白顔料含有樹脂層の白顔料が酸化チタンであり、その白顔料含有樹脂層中の酸化チタン含有量が2〜50重量%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の軟包装材料。
  7. 前記ダイヤモンドライクカーボン被膜をスパッタリング法又はCVD法によって形成することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の軟包装材料。
  8. 基材フィルムに水性グラビア色インキ層とアンカーコート剤層を形成し、これにヒートシール性熱可塑性樹脂フィルムを対向させ、その間に溶融した白顔料含有樹脂を層状に押し出して基材フィルム側とヒートシール性熱可塑性樹脂フィルム側とを圧着するグラビア印刷積層軟包装材料の製造方法であって、前記水性グラビア色インキ層の形成を、中空ロールと、該中空ロールの表面に設けられかつ表面に多数のグラビアセルが形成された銅メッキ層と、該銅メッキ層の表面を被覆するダイヤモンドライクカーボン被膜とを含むグラビアシリンダーを用いるグラビア印刷によって行うようにしたことを特徴とするグラビア印刷積層軟包装材料の製造方法。
  9. 基材フィルムに水性グラビア色インキ層を形成し、これにヒートシール性熱可塑性樹脂フィルムを対向させ、その間に溶融した白顔料含有樹脂を層状に押し出して基材フィルム側とヒートシール性熱可塑性樹脂フィルム側とを圧着するグラビア印刷積層軟包装材料の製造方法であって、前記白顔料含有樹脂が接着性極性付与樹脂であり、前記水性グラビア色インキ層の形成を、中空ロールと、該中空ロールの表面に設けられかつ表面に多数のグラビアセルが形成された銅メッキ層と、該銅メッキ層の表面を被覆するダイヤモンドライクカーボン被膜とを含むグラビアシリンダーを用いるグラビア印刷によって行うようにしたことを特徴とするグラビア印刷積層軟包装材料の製造方法。
  10. 前記ダイヤモンドライクカーボン被膜をスパッタリング法又はCVD法によって形成することを特徴とする請求項8又は9記載の軟包装材料の製造方法。
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