JPWO2008026364A1 - イオントフォレーシス装置 - Google Patents
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Abstract
イオントフォレーシス装置(10)は、作用側電極構造体(20)及び非作用側電極構造体(40)を備えて構成され、作用側電極構造体20の先端の生体接触面(20A)及び非作用側電極構造体(40)の先端の生体接触面(40A)は、これらに沿って一方向に引張ることにより剥離可能なリリースライナー(60)により覆われていて、リリースライナー(60)の前面側には、これに連結されると共に、生体接触面(20A、40A)の前面領域を覆う大きさのベースフィルム(62)と、ベースフィルム(62)の前面に取り付けられたのり層(64)とが設けられていて、リリースライナー(60)を介してベースフィルム(62)を引張ることにより、のり層(64)が皮膚(S)から剥離されるとき、皮膚(S)の接触領域(S1)の角質層や皮脂の一部を剥離することができる。
Description
本発明は、薬物イオンを、電圧を印加することによって生体に投与するためのイオントフォレーシス装置に関する。
上記のようなイオントフォレーシス装置としては、WO0303742号公報に記載されるように、直流電源、作用側電極構造体及び非作用側電極構造体を有し、作用側電極構造体のイオン交換膜から薬液イオンを皮膚や粘膜に投与するものがある。
このWO0303742号公報に記載されるイオントフォレーシス装置における作用側電極構造体を、皮膚や粘膜との生体接触面を構成する第1イオン交換膜、薬液保持部、第2イオン交換膜、第1電解液保持部、作用側電極の順で積層して構成されている。
又、非作用側電極構造体は、皮膚や粘膜との生体接触面である第4イオン交換膜、第3電解液保持部、第3イオン交換膜、第2電解液保持部及び非作用側電極をこの順で積層して構成されている。
前記作用側及び非作用側電極構造体の先端の生体接触面は、当然、皮膚や粘膜と密着させて効率良く薬液イオンを投与する必要があるが、作用電極構造体側においては、皮膚の乾燥度や、皮脂の多寡、あるいは角質層の厚さ等によって、薬液イオンの投与効率が大きく変化してしまう。
この対策として、皮膚から、皮脂や角質層をできるだけ除去してから、作用側及び非作用側電極構造体を皮膚や粘膜に密着させることが考えられる。
しかしながら、皮脂や角質層の除去作業は、医療機関において看護士等が行なう場合は良いが、ユーザが自宅等で自分自身でイオントフォレーシス装置を使用する場合、上記のような除去作業は煩雑であり、なかなか実行されない。
この発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、ユーザが、皮膚における薬液イオン投与領域での皮脂や角質層を一部又は全部を除去してから、使用できるようにしたイオントフォレーシス装置を提供することを課題とする。
即ち、電源と、この電源に接続された作用側電極構造体及び非作用側電極構造体とから構成され、前記作用側電極構造体に保持される薬物イオンを、前記電源からの電圧によって前記作用側電極構造体の先端の生体接触面から生体に投与するためのイオントフォレーシス装置であって、前記生体接触面を覆って取り付けられ、且つ、生体接触面に沿って一方向に引張ることにより剥離可能なリリースライナーを有してなり、このリリースライナーの前面側には、前記生体接触面における、前記引張り方向と反対側の端部近傍で該リリースライナーに連結されると共に、少なくとも前記生体接触面の前面領域を覆うベースフィルムと、このベースフィルムの前面に取り付けられたのり層と、が設けられていて、前記のり層は、前記皮膚に対して、前記ベースフィルムを前記引張り方向に引張って剥離可能な粘着力を有するようにして、使用に先立ち、皮膚の角質層や皮脂を少しでも除去してから、装着するようにして上記課題を解決するものである。
以下に、本発明の実施例1〜4について説明する。
次に、図1、図2を参照して、本発明の実施例1に係るイオントフォレーシス装置10について詳細に説明する。
このイオントフォレーシス装置10は、直流電源12と、この直流電源12の陽極及び陰極の一方に接続された作用側電極構造体20及び他方に接続された非作用側電極構造体40とから構成され、作用側電極構造体20に保持される薬物イオンを、作用側電極構造体20の先端面である生体接触面20Aを介して、前記直流電源12からの電圧によって生体に投与するものである。
このイオントフォレーシス装置10において、作用側電極構造体20及び非作用側電極構造体40は、薬液保持部等の構成部材を、重ね合わせた、いずれも発泡ポリウレタン等の樹脂シートからなる基端支持体14と中間支持体16との間に挟持し、あるいは中間支持体16及び先端支持体部18に形成される貫通孔に収納して構成されている。基端支持体14と中間支持体16とは同一の大きさとされ、又、先端支持体18はこれらより大きく形成されている。
基端支持体14、中間支持体16及び先端支持体18は、いずれも図2において下側面に粘着層14A、16A、18Aが設けられていて、相互に粘着されるとともに、先端支持体18の粘着層18Aは、皮膚又は粘膜に粘着するようにされている。
ここで、中間支持体16は、作用側電極構造体20の一部、及び、非作用側電極構造体40の一部を構成する一枚のシート状部材とされている。
同様に、先端支持体18は、作用側電極構造体20の一部、及び、非作用側電極構造体40の一部を構成する一枚のシート状部材とされている。
作用側電極構造体20の、生体接触面20Aと、非作用側電極構造体40の先端面である生体接触面40Aとは、面一、且つ、隙間を持って隣接して配置されている。又、面一の生体接触面20A、40Aを覆ってリリースライナー60が設けられている。
このリリースライナー60は、生体接触面20A、40Aに沿って一方向、例えば図1において右方向に引張ることにより、これらから剥離可能とされている。
又、このリリースライナー60の前面側には、生体接触面20Aにおける、引張り方向と反対側の端部20B近傍でリリースライナー60に連結されると共に、少なくとも生体接触面20A、40Aの前面領域を覆う大きさのベースフィルム62と、このベースフィルム62の前面に取り付けられたのり層64と、が設けられている。
のり層64は、皮膚Sに対して、ベースフィルム62を引張り方向に引張って剥離可能な粘着力を有し、皮膚Sから剥離される際に、該皮膚Sの表面の角質層や皮脂の一部を同時に剥がすことができるようにされている。
ベースフィルム62は、リリースライナー60を、端部20B近傍でU字形状に湾曲して延在させることによって構成されている。ここで、のり層64は、皮膚Sには粘着するが、生体接触面20A、40Aには粘着し難い材料を用いると良い。
作用側電極構造体20及び非作用側電極構造体40の構成について、更に詳細に説明する。
作用側電極構造体20は、直流電源12における薬物イオンと同種の極性の、陽極又は陰極に接続された作用側電極24と、作用側電極24の前面に配置されたセパレータ26と、セパレータ26の前面に配置され、薬物イオンと反対符号のイオンを選択的に通過させる第2イオン選択性膜28と、第2イオン選択性膜28の前面に配置され、薬物イオンとなる薬物を保持する薬液保持部30と、薬液保持部30の前面に配置され、薬物イオンと同種のイオンを選択的に通過させる第1イオン選択性膜32と、第1イオン選択性膜32の前面に、薬物と同一の薬物を含む粘性液体を塗布して形成された作用側生体接触部34とを、この順で積層して構成されている。この作用側生体接触部34の前端面が皮膚又は粘膜に接触する作用側生体接触面20Aとされている。
作用側電極24は、直流電源12に接続され、且つ、樹脂シート36の前面に印刷により形成された膜状の炭素からなる作用側集電体24Aと、作用側集電体24Aの前面に電気的に接続して配置された作用側分極性電極24Bとから構成されている。
なお、「電気的に接続」とは、直接接触している場合のみでなく、導電体、例えば導電性接着剤等を介して接続する場合も含むものである(以下同じ)。
中間支持体16は、作用側分極性電極24Bとほぼ等しい厚さの樹脂材料からなり、且つ、作用側分極性電極24Bの平面形状における外形とほぼ同一形状の作用側中間貫通孔21Aを有し、作用側分極性電極24Bは、作用側中間貫通孔21A内に収納されている。
又、先端支持体18は、薬液保持部30とほぼ等しい厚さの樹脂材料からなり、作用側分極性電極24Bの平面形状における外形とほぼ同一形状の作用側先端貫通孔22Aを有し、作用側先端貫通孔22A内に、薬液保持部30が収納されている。
非作用側電極構造体40は、基端支持体14側から、直流電源12における、薬物イオンと反対の極性の、陽極又は陰極に接続された非作用側電極44と、非作用側電極44の前面に配置され、セパレータ46と、電解液を保持する電解液保持部48と、薬物イオンと反対符号のイオンを選択的に通過させる第3イオン選択性膜50と、電解液保持部48に保持されている電解液と同一の電解液を含む粘性液体を塗布して形成された非作用側生体接触部52とを、この順で積層して構成されている。この非作用側生体接触部52の前端面が非作用側生体接触面40Aとされている。
非作用側電極44は、樹脂シート36の前面に、作用側電極24の作用側集電体24Aと離間して膜状に印刷された炭素を含む材料からなる非作用側集電体44Aと、非作用側集電体44Aに接触して設けられた非作用側分極性電極44Bとから構成されている。
非作用側分極性電極44Bは、中間支持体16と等しい厚さとされ、これに形成された非作用側中間貫通孔41Aに収納されている。又、電解液保持部48は、先端支持体18と等しい厚さとされ、先端支持体18に形成された非作用側先端貫通孔42Aに収納されている。
実施例1において、貫通孔22A、21A、41A、42Aはいずれも円形とされ、更に、作用側電極24、セパレータ26、第2イオン選択性膜28、薬液保持部30、第1イオン選択性膜32及び作用側生体接触部34も、円形膜状あるいはシート状とされている。
同様に、非作用側電極44、セパレータ46、電解液保持部48、第3イオン選択性膜50及び非作用側生体接触部52も、円形の膜あるいはシート状とされている。
図1において破線で示されるように、樹脂シート36には、作用側電極24における作用側集電体24A及び非作用側電極44における非作用側集電体44Aに、連続的に膜状に印刷して形成された炭素を含む材料からなる作用側導線19A及び非作用側導線19Bがそれぞれ接続されている。作用側導線19A及び非作用側導線19Bは、その先端においてコネクタ(図示省略)を介して直流電源12に接続されている。又、作用側導線19A及び非作用側導線19Bの樹脂シート36と反対側面には、例えばポリイミドフィルムからなる絶縁フィルム19Dが粘着されている。絶縁フィルム19Dは、作用側導線19A及び非作用側導線19Bの、樹脂シート36と接触する範囲及び樹脂シート36からの突出部分の一定範囲を覆う長さとされている。
実施例1においては、図1、図4に示されるように、円形の各部材を作用側電極構造体20と非作用側電極構造体40のそれぞれにおいて厚さ方向に重ねて一体的にして、イオントフォレーシス装置10が構成されている。
ここで、中間支持体16の作用側及び非作用側中間貫通孔21A、41Aには、それぞれ作用側分極性電極24B及び非作用側分極性電極44Bが収納された状態で、その上下から他の部材によって挟み込まれ、同様に、先端支持体18における作用側及び非作用側先端貫通孔22A、42Aにも、薬液保持部30及び電解液保持部48がそれぞれ収納された状態で、その上下から他の部材によって挟み込まれ、更に、基端支持体14と中間支持体16との間及び中間支持体16と先端支持体18との間の部材がそれぞれこれらによって挟み込まれて位置決め固定されるようになっている。
作用側電極24及び非作用側電極44における作用側集電体24A及び非作用側集電体44Aの外径は、作用側及び非作用側中間貫通孔21A、41Aの直径よりもやや大きく、これらの外周部分が、基端支持体14と中間支持体16との間に挟み込まれるようにされている。
図1、図2の符号56は接着剤を示し、接着剤56は、絶縁フィルム19Dにおける作用側及び非作用側集電体24A、44Aの間の中間部分を横断して配置され、絶縁フィルム19Dと中間支持体16を接着し、絶縁フィルム19Dと中間支持体16との間を作用側と非作用側とに隔絶させるものである。
又、図1の符号58は作用側生体接触部34及び非作用側生体接触部52を覆って先端支持体18の前面に剥離可能に取り付けられたリリースライナーを示す。
次に、上記各構成要素の材料、成分等について説明する。
実施例1において、薬液保持部30は、PP(ポリプロピレン)不織布に薬物を含む粘性液体を含浸させて構成されている。又、薬液保持部30に含浸された薬物は、水等の溶媒に溶解するなどにより薬効成分が陽又は陰のイオン(薬物イオンに解離する薬剤(薬剤の前駆体を含む))を含有し、薬効成分が陽のイオンに解離する薬剤としては、麻酔薬である塩酸リドカイン、麻酔薬である塩酸モルヒネ等を例示することができ、薬効成分がマイナスのイオンに解離する薬剤としては、ビタミン剤であるアスコルビン酸等を例示することができる。
又、上記の他に、ホルモン、DNA、RNA、蛋白質、アミノ酸、ミネラル類、リポソームも含むものとする。
非作用側電極構造体40におけるセパレータ46は、PP不織布に電解液(詳細後述)を含む粘性液体を含浸させたものである。又、電解液保持部48も、PP不織布に同様の電解液を含む粘性液体を含浸させたものである。
セパレータ46及び電解液保持部48に用いられる電解液は電解質を主成分とし、この電解質は、水の電解反応(陽極での酸化及び陰極での還元)よりも酸化又は還元され易い電解質、例えば、アスコルビン酸(ビタミンC)やアスコルビン酸ナトリウム等の医薬剤、乳酸、シュウ酸、リンゴ酸、コハク酸、フマル酸等の有機酸及び/又はその塩を使用することが特に好ましく、これにより酸素ガスや水素ガスの発生を抑制することが可能であり、又、溶媒に溶解した際に緩衝電解液となる組合せの複数種の電解質を配合することにより、通電中におけるpHの変動を抑制することができる。
上記のような薬物あるいは電解液を含む粘性液体は、例えば水(イオン交換水)に、HPC(ヒドロキシプロピルセルロース)(例えば日本曹達(株)のH−Type)、あるいは、水に溶けないセルロースを化学的に処理して水溶性の高分子としたメトローズ(例えば信越化学工業(株)の90SH−10000SR)等の粘着性材料を2質量%以上混合して製造することができる。
作用側電極24における作用側分極性電極24B及び非作用側電極44における非作用側分極性電極44Bは、共に、活性炭、好ましくは炭素繊維又は炭素繊維紙により形成されている導電性基材を主成分として構成されている。作用側及び非作用側分極性電極24B、44Bとして、活性炭繊維のみを用いる場合は、活性炭繊維からなる布及びフェルトを組み合わせて層を形成すると良い。又、導電性基材に対して、例えばバインダーポリマー中に活性炭を分散させた層を積層させても良い。上記活性炭は比表面積が10m2/g以上のものを用いてもよい。
作用側分極性電極24Bには、薬液保持部30に保持されている薬物と同一の薬物を含む粘性液体が含浸され、又、非作用側分極性電極44Bには、セパレータ46に保持される電解液と同一の電解液を含む粘性液体が含浸されている。
作用側電極24における作用側集電体24A及び非作用側電極44における非作用側集電体44Aは、共に、PET(ポリエチレンテレフタレート)素材に炭素と接着剤とを混ぜたものを印刷して形成されている。
なお、作用側集電体24A、非作用側集電体44Aの材料としては導電性を有するものであればよく、炭素以外に、金、白金、銀、銅、亜鉛等の導電性の金属を用いても良い。又、印刷によることなく、炭素、金等の導電性素材そのものを集電体としても良い。又、作用側導線19A、非作用側導線19Bの材料についても同様である。
セパレータ26は、PP不織布に、薬液保持部30に保持された薬物と同一の薬物を含有する粘性液体を含浸させたものであり、作用側分極性電極24Bと第2イオン選択性膜28との間に介在させることによって、両者の物理的な接触を防止するものである。
第1イオン選択性膜32は、薬物イオンと同一符号のイオンを選択的に通過させるようにイオン交換基が導入されたイオン交換樹脂を含んで構成されている。即ち、第1イオン選択性膜32は、薬液保持部30の薬液がカチオンに解離するときは陽イオン交換樹脂を含み、アニオンに解離するときは陰イオン交換樹脂を含んでいる。
第2イオン選択性膜28は、薬物イオンと反対符号のイオンを選択的に通過させるようにイオン交換基が導入されたイオン交換樹脂を含有して構成されている。即ち、第2イオン選択性膜28は、薬液保持部30の薬液がカチオンに解離するときは陰イオン交換樹脂を含み、アニオンに解離するときは陽イオン交換樹脂を含んでいる。
第3イオン選択性膜50は、第2イオン選択性膜28と同様に、薬物イオンと反対符号のイオンを選択的に通過させるようにイオン交換基が導入されたイオン交換樹脂を含んで構成されている。即ち、第3イオン選択性膜50は、薬液保持部30の薬液がカチオンに解離するときは陰イオン交換樹脂を含み、アニオンに解離するときは陽イオン交換樹脂を含んでいる。
上記陽イオン交換樹脂としては、ポリスチレン樹脂やアクリル酸系樹脂等の炭化水素系樹脂やパーフルオロカーボン骨格を有するフッ素系樹脂等の3次元的な網目構造を持つ高分子に、スルホン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基等の陽イオン交換基(対イオンが陽イオンである交換基)が導入されたイオン交換樹脂が制限無く使用することができる。
又、上記陰イオン交換樹脂としては、陽イオン交換樹脂と同様の3次元的な網目構造を持つ高分子に、1〜3級アミノ基、4級アンモニウム基、ピルジル基、イミダゾール基、4級ピリジウム基、4級イミダゾリウム基等の陽イオン交換基(対イオンが陰イオンである交換基)が導入されたイオン交換樹脂が制限無く使用できる。
作用側生体接触部34は、薬液保持部30に含浸されているものと同一の粘性液体を、第1イオン選択性膜32の前面に塗布して構成されている。又、非作用側生体接触部52は、電解液保持部48に用いられた電解液と同一の電解液を含有する粘性液体を第3イオン選択性膜50の前面に塗布して構成されている。なお、これらの塗布された粘性液体の上に、リリースライナー58を貼り付けることによって、粘性液体が拡がってしまうことを抑制するため、塗布量は各々7μLと少な目にするのが良い。
イオントフォレーシス装置10の組立時には、図1に示される状態で、各構成部材を配置して積層し、あるいは、貫通孔に収納し、リリースライナー58上に、基端支持体14、中間支持体16、先端支持体18を順次重ねて、これらを粘着層16A、14Aにより粘着して固定し、組立を完了する。
直流電源12としては、ボタン電池、あるいは、例えば特開平11−067236号公報、米国特許公開公報2004/0185667A1号公報、米国特許第6855441号公報等に開示される薄型の電池を使用することができ、本実施形態の構造に限定されるものでない。
上記イオントフォレーシス装置10の使用に際しては、前記ベースフィルム62ののり層64を、図2に示されるように、皮膚Sにおける作用側生体接触面20A及び非作用側生体接触面40A(以下、生体接触面20A、40A)を接触させる箇所である接触領域S1に貼り付ける。
次に、リリースライナー60を、図2において右方向に、生体接触面20A、40Aと平行に引張る。このとき、イオントフォレーシス装置10全体を、例えば使用者が握持して、皮膚Sに対する位置を固定しておく。
これにより、リリースライナー60は生体接触面20A、40Aに沿って移動し、このとき、ベースフィルム62もこのリリースライナー60の移動によって引張られ、のり層64は、図3に示されるように、左側から順次、皮膚Sから剥離される。のり層64には、皮膚Sにおける角質層の一部、皮脂等が粘着しているので、これらが皮膚Sの接触領域S1から引き剥がされることになる。
皮膚Sから剥離されたのり層64は、前記生体接触面20A、40Aに沿って図において右方向に移動していき、ベースフィルム62及びのり層64の末端(図において右端)が、生体接触面20A、40Aを通過したとき、リリースライナー60及びベースフィルム62の剥離が終了する。
この状態で、前記イオントフォレーシス装置10を、生体接触面20A、40Aが皮膚Sに接触するように装着する。
これら生体接触面20A、40Aが接触される接触領域S1は、上記のように、角質層及び皮脂の一部が剥離されているので、インピーダンスが小さく、効率良く薬物イオンを投与することができる。
次に、図4に示される実施例2に係るイオントフォレーシス装置70について説明する。
このイオントフォレーシス装置70は、リリースライナー60、ベースフィルム62とは異なる構成のリリースライナー72及びベースフィルム74を有してなり、他の構成は実施例1に係るイオントフォレーシス装置10の構成と同一であるので、同一部分についての詳細な説明は省略する。
この実施例2におけるリリースライナー72は、図4に示されるように、ベースフィルム74とは別体に設けられ、且つ、リリースライナー72の前面に一体的に設けられ、且つ、端部20B近傍でU字形状に湾曲して延在され、その延在部分にのり層76が形成された構成となっている。
この実施例2においては、リリースライナー72及びこれと一体的に設けられたベースフィルム74を、イオントフォレーシス装置70を支持した状態で図4において右方向に引張ると、のり層76が皮膚Sの接触領域S1から、図4において左端から順に剥離し、このとき、皮膚Sの角質層及び皮脂の一部を剥離させることになる。
この実施例2においては、実施例1と異なり、剥離したのり層76が生体接触面20A、40Aと接触することがないので、リリースライナー72の、生体接触面20A、40Aからの剥離が円滑になされると共に、のり層76の材料の選択範囲が大きくなるという利点がある。
次に、図5に示される本発明の実施例3に係るイオントフォレーシス装置80について説明する。
このイオントフォレーシス装置80は、図4に示される実施例2のイオントフォレーシス装置70に対して、第2のリリースライナー82及び第2のベースフィルム84、第2ののり層86を追加して設けたものであり、他の構成は実施例2のイオントフォレーシス装置70と同一であるので、詳細な説明は省略する。
この実施例3における第2のリリースライナー82は、ベースフィルム74に取り付けられたのり層76の、図5において下側に設けられ、第2のベースフィルム84は、第2のリリースライナー82に対して、その前面に一体的に設けられ、且つ、端部20B近傍でU字形状に湾曲して延在されている。
即ち、実施例2におけるリリースライナー72、ベースフィルム74、のり層76と同一構成の第2のリリースライナー82、第2のベースフィルム84、第2ののり層86を新たに重ねて設けたものである。
この実施例3のイオントフォレーシス装置80においては、まず、皮膚S側の第2のリリースライナー82及び第2のベースフィルム84を、図5において右方向に引張ることによって、第2ののり層86を皮膚Sから剥離させ、且つ、第2のリリースライナー82を、その上ののり層76からも剥離させる。
次に、ベースフィルム74ののり層76を皮膚Sに貼り付けた後に、リリースライナー72とベースフィルム74を図5において右方向に引張ることにより、前記と同様に、のり層76が皮膚Sから角質層の一部及び皮脂を剥離させる。
このように、2回に渡ってのり層86、76によって皮膚Sの角質層と皮脂の一部を剥離させることにより、1回のみ剥離させた場合と比較して、皮膚のインピーダンスをより小さくすることができる。
図5に示される実施例3では、2層ののり層86、76によって皮膚Sから2回角質層の一部等を剥離させているが、本発明はこれに限定されるものでなく、更に、リリースライナー、ベースフィルム及びのり層の組合せを3層以上に設けてもよい。
次に、図6を参照して、本発明の実施例4に係るイオントフォレーシス装置90について説明する。
このイオントフォレーシス装置90は、生体接触面20A、40Aを合わせた形状とほぼ同一形状及び大きさであって、その一側端92Aが、非作用側生体接触面40Aの、図6において右側の端部に取り付けられたリリースライナー92と、このリリースライナー92の一側端92Aに対して反対側の他側端92Bに取り付けられ、該リリースライナー92を他側端92Bから一側端92Aに向かって、回転しつつ巻取り可能なローラ状の巻取り部材94と、を有している。
リリースライナー92は、巻取り部材94に接触する面と反対側の面には、のり層96が設けられていてのり層付きライナーとされている。のり層96は、皮膚Sに対して、リリースライナー92を捲り上げたときに剥離可能な粘着力を有するようにされている。
この実施例4に係るイオントフォレーシス装置90においては、図6に示されるように、生体接触面20A、40Aを接触すべき皮膚Sの接触領域S1の、図において左側から、巻取り部材94の外側ののり層96を接触させて、且つ、巻取り部材94を、例えば右方向に回転させる。
巻取り部材94が図6において右方向に回転すると、その外側ののり層96は接触領域S1に接触して、更に、巻取り部材94によって巻き取られた時に、のり層96の粘着力によって接触領域S1の皮脂や角質層の一部を剥離させることになる。
上記のようにして、巻取り部材94を、接触領域S1に沿って、リリースライナー92を巻き取りつつ進行させると、図7に示されるように、のり層96によって、接触領域S1の全範囲の角質層及び皮脂の一部が剥離されることになる。
この剥離の終了時点では、接触領域S1の上側に生体接触面20A、40Aが位置することになり、リリースライナー92を取り外して、あるいは取り外さずそのままで、生体接触面20A、40Aを接触領域S1に接触させて通電すれば、薬物イオンを効率良く投与することができる。
なお、上記実施例に係るイオントフォレーシス装置10、70、80、90においては、のり層64、76、86、96は、生体接触面20A、40Aの両方が接触する範囲で、皮膚Sにおける接触領域S1から角質層の一部等を剥離しているが、本発明はこれに限定されるものでなく、少なくとも、作用側電極構造体の作用側生体接触面20Aが接触する領域の皮膚Sから、角質層の一部等を剥離するものであれば良い。
又、イオントフォレーシス装置本体の構成は、実施例1〜4の構成に限定されるものでなく、作用側電極構造体にあっては、少なくとも、作用側電極、薬液保持部を有する場合にも適用されるものである。
又、上記のような、作用側肌生体接触部34あるいは非作用側生体接触部52を用いることなく、イオン選択性膜が生体接触面を構成する場合にも適用されるものである。
この発明においては、ユーザが、自分自身で、作用側電極構造体と非作用側電極構造体のうちの少なくとも作用側電極構造体の先端の生体接触面を覆うリリースライナーを用いて皮膚に対してのり層によって粘着されているベースフィルムを引張って、のり層に皮膚の角質層や皮脂の一部を付着させて、薬液イオン投与領域から剥離させることができるので、使い易いイオントフォレーシス装置となる。
Claims (8)
- 電源と、この電源に接続された作用側電極構造体及び非作用側電極構造体とから構成され、前記作用側電極構造体に保持される薬物イオンを、前記電源からの電圧によって、前記作用側電極構造体の先端の生体接触面から生体に投与するためのイオントフォレーシス装置であって、
前記生体接触面を覆って取り付けられ、且つ、生体接触面に沿って一方向に引張ることにより剥離可能なリリースライナーを有してなり、
このリリースライナーの前面側には、前記生体接触面における、前記引張り方向と反対側の端部近傍で該リリースライナーに連結されると共に、少なくとも前記生体接触面の前面領域を覆うベースフィルムと、このベースフィルムの前面に取り付けられたのり層と、が設けられていて、前記のり層は、前記皮膚に対して、前記ベースフィルムを前記引張り方向に引張って剥離可能な粘着力を有することを特徴とするイオントフォレーシス装置。 - 請求項1において、
前記ベースフィルムは、前記リリースライナーを、前記端部近傍でU字形状に湾曲して延在させたものであることを特徴とするイオントフォレーシス装置。 - 請求項1において、
前記ベースフィルムは、前記リリースライナーの前面に一体的に設けられ、且つ、前記端部近傍でU字形状に湾曲して延在させたものであることを特徴とするイオントフォレーシス装置。 - 請求項1乃至3のいずれかにおいて、
前記のり層の前面に、該のり層を覆って取り付けられ、且つ、該のり層に沿って引張ることにより剥離可能な第2のリリースライナーと、
この第2のリリースライナーの前面側に設けられ、前記のり層における、少なくとも前記引張り方向と反対側の端部近傍で該第2のリリースライナーに連結されると共に、少なくとも前記生体接触面の前面領域を覆う第2のベースフィルムと、この第2のベースフィルムの前面に取り付けられた第2ののり層と、を有していて、この第2ののり層は、前記皮膚に対して、前記第2のベースフィルムを前記引張り方向に引張って剥離可能な粘着力を有することを特徴とするイオントフォレーシス装置。 - 請求項4において、
前記第2のベースフィルムは、前記第2のリリースライナーを、前記端部近傍でU字形状に湾曲して延在させたものであることを特徴とするイオントフォレーシス装置。 - 請求項4において、
前記第2のベースフィルムは、前記第2のリリースライナーの前面に一体的に設けられ、且つ、前記端部近傍でU字形状に湾曲して延在させたものであることを特徴とするイオントフォレーシス装置。 - 電源と、この電源に接続された作用側電極構造体及び非作用側電極構造体とから構成され、前記作用側電極構造体に保持される薬物イオンを、前記電源からの電圧によって前記作用側電極構造体の先端の生体接触面から皮膚を介して生体に投与するためのイオントフォレーシス装置であって、
前記生体接触面とほぼ同一形状、大きさであって、一側端が、前記生体接触面の一方の端部に取り付けられたのり層付きリリースライナーと、
前記のり層付きリリースライナーの前記一側端に対して反対側の他側端に取り付けられ、該のり層付きリリースライナーを、前記他側端から一方の一側端に向かって、回転しつつ巻取り可能な巻取り部材と、
を有してなり、
前記のり層付きリリースライナーにおける前記巻取り部材に接触する面と反対側の面にのり層が設けられていて、前記のり層は、前記皮膚に対して、前記のり層付きリリースライナーを捲り上げたときに剥離可能な粘着力を有することを特徴とするイオントフォレーシス装置。 - 請求項1乃至7のいずれかにおいて、
前記生体接触面は、前記非作用側電極構造体の先端の生体接触面を含むことを特徴とするイオントフォレーシス装置。
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