JPWO2007145310A1 - 石灰焼成装置のコーチング防止剤及びコーチング防止方法 - Google Patents
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Abstract
コーチング防止剤は、粒径0.1〜30μmのマグネシウム化合物を含有する。マグネシウム化合物は、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム及び酸化マグネシウム等である。マグネシウム化合物が水や油に分散、懸濁又は溶解している。石灰焼成装置のコーチング防止方法は、このようなコーチング防止剤を焼成炉に間欠投入しながら、石灰焼成装置の運転を行う。焼成用石灰原料の絶乾処理量1t当たりMgO換算量で0.1〜10kgの上記コーチング防止剤を、10分〜60分/日の範囲で均一に投入する。
Description
本発明は、石灰焼成装置に生ずるコーチングを防止する薬剤に係り、更に詳細には、石灰焼成装置の運転に際し、石灰泥に含まれるナトリウム(Na)、カリウム(K)、リン(P)及び硫黄(S)や加熱用燃料である重油中の低融点灰分に起因する石灰のコーチングや、重油火炎の接触による高温でのコーチング、更には一旦焼成された酸化カルシウム(CaO)が過剰の炭酸ガス(CO2)雰囲気中で再び炭酸カルシウムに変化する際のコーチングなどのコーチング全般を抑制し、石灰焼成装置内壁に配される耐火煉瓦の化学的スポーリングの防止性能をも併有するコーチング防止剤、及びこれを用いた石灰焼成装置のコーチング防止方法に関する。
従前より、キルン方式の石灰焼成装置が知られており、特に、原料(脱水石灰泥や乾燥石灰微粉)を上方から装入し、下方から重油バーナーでキルン内を最高1200〜1450℃で高温加熱し、乾燥〜焼成(造粒)させながら製品(焼成石灰)を下方から排出する傾斜型回転式キルンが、クラフトパルプ製造工場などで汎用されている。
通常、クラフトパルプ製造工場においては、木材及びこれを破砕したチップをアルカリ薬品(白液)と蒸気で蒸解し濾過してパルプと蒸解廃液に分離するが、この蒸解廃液をエバポレーターで約70%固形分まで濃縮し、アルカリ回収ボイラと称される燃焼炉(回収ボイラ)で還元燃焼して、溶融アルカリ(炭酸ナトリウムと硫化ナトリウムの混合塩)物(スメルト)を溶解(緑液)した後に苛性化装置に送り、生石灰を添加して苛性ソーダと硫化ナトリウムのアルカリ薬品(白液)として循環している。
また、苛性化装置での反応の結果、炭酸カルシウムが沈殿物(石灰泥)として分離されるが、これを水洗して可能な範囲でアルカリを低減させてから、上述のような石灰焼成装置にて酸化カルシウム(生石灰)にして再び苛性化装置に供している。
また、苛性化装置での反応の結果、炭酸カルシウムが沈殿物(石灰泥)として分離されるが、これを水洗して可能な範囲でアルカリを低減させてから、上述のような石灰焼成装置にて酸化カルシウム(生石灰)にして再び苛性化装置に供している。
このように、クラフトパルプの製造工程は、全ての化学品の回収と循環により成り立っており、その工程の一部にでも不具合があって運転が休止すると、製造工程全体に多大な影響を与える。
特に、粉体を高温で焼成する工程でコーチングや閉塞を生ずると、上述のパルプ製造工程等の循環型製造プロセスでは、プロセス全体に多大な影響を受けるため、従来からその安定な運転を目的として種々の改善が試みられている。
特に、粉体を高温で焼成する工程でコーチングや閉塞を生ずると、上述のパルプ製造工程等の循環型製造プロセスでは、プロセス全体に多大な影響を受けるため、従来からその安定な運転を目的として種々の改善が試みられている。
具体的には、供給石灰泥の水分量や残留アルカリ量の低減や、オーバーヒートを回避すべく、傾斜型回転式キルンでは、火炎の長さを定期的に変更したり、キルン内の温度を変えたりして局部過熱を防止する方法が採られている(例えば、特許文献1参照)。
また、強固で巨大なコーチング物や閉塞物等については、削岩機等を用いた機械的除去により、できる限り短時間で除去することも行われており、現状では複数の石灰焼成装置を交互に運用することで対応している。
特開2001−255072号公報
また、強固で巨大なコーチング物や閉塞物等については、削岩機等を用いた機械的除去により、できる限り短時間で除去することも行われており、現状では複数の石灰焼成装置を交互に運用することで対応している。
更に、酸化マグネシウム粉体のような高融点で比較的結晶化し難い成分を石炭灰に混合し、高温ガス中に散布する方法も試みられている。
しかしながら、かかる従来のコーチング防止法のうち、供給石灰泥の水分量を低減する手法にあっては、脱水機としての連続プレコートの採用及び脱水助剤の添加等の改善により脱水性能がほぼ限界に達しており、残留アルカリ量を低減するには水洗回数を増加する以外になく、廃水量の増加を招くためにこれも限界がある。また、クラフトパルプ製造工程の回収ボイラから排出されるスメルトの溶解液である緑液又は酸化緑液(炭酸ナトリウム、硫化ナトリウム混合液)を使用するため、アルカリを添加することとなり、コーチング抑制の観点からは逆の運用となってしまう。
一方、機械的除去方法による剥離作業は時間の短縮には有効であるが、石灰焼成装置の煉瓦面の損傷を招くため、その後のコーチングを促進させることとなっていた。
更に、酸化マグネシウム粉体等を石炭灰に混合し、高温ガス中に散布する方法については、目的とする焼成石灰物(酸化カルシウム)が生成できなかったり、散布する薬品費用が過大になったりして産業、操業上有効ではなかった。
更に、酸化マグネシウム粉体等を石炭灰に混合し、高温ガス中に散布する方法については、目的とする焼成石灰物(酸化カルシウム)が生成できなかったり、散布する薬品費用が過大になったりして産業、操業上有効ではなかった。
このように、コーチングや閉塞を基本的に防止できる方法が実質的に提案されていないため、かかるコーチングや閉塞は、依然として連続運転及び循環型製造プロセス全体に多大な悪影響を与えるものであった。例えば、コーチングや閉塞が生ずると、製造能力の低下及び重油原単位の上昇を招く。
また、上述のように交互に運用するための複数の石灰焼成装置を必要とし、コーチング物や閉塞物の除去作業をも必要とするので、費用及び手間がかかり、しかもコーチング物や閉塞物の除去作業は危険を伴う。
更に、焼成装置内に多量に残存するコーチングや閉塞物は酸化カルシウム製造歩留りを低下させることから、石灰泥の過剰供給を招き、石灰泥の熱分解反応式からも容易に推察できるように、地球温暖化ガスのひとつでもある二酸化炭素の排出量を必要以上に増加させることにもなっていた。
更に、焼成装置内に多量に残存するコーチングや閉塞物は酸化カルシウム製造歩留りを低下させることから、石灰泥の過剰供給を招き、石灰泥の熱分解反応式からも容易に推察できるように、地球温暖化ガスのひとつでもある二酸化炭素の排出量を必要以上に増加させることにもなっていた。
なお、本出願人は、上述のようなコーチングや閉塞に対し、球状シリカ化合物とNaやKの所定量を水に安定分散させたコーチング防止剤を用いることを骨子とする石灰焼成装置のコーチング防止運転方法を特開2003−261363号公報にて提案しているが、かかる方法は流動層型石灰焼成装置には有効なものの、汎用されている傾斜型回転式石灰焼成キルンには必ずしも有効ではないことが判明した。
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、コーチングを簡易、効率的且つ低コストで防止し得る石灰焼成装置のコーチング防止剤、及びこれを用いた石灰焼成装置のコーチング防止方法を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、所定粒径のマグネシウム化合物を用いることなどにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の石灰焼成装置のコーチング防止剤は、粒径0.1〜30μmのマグネシウム化合物を含有することを特徴とする。
また、本発明の石灰焼成装置のコーチング防止剤の好適形態は、上記マグネシウム化合物が、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム及び酸化マグネシウムから成る群より選ばれた少なくとも1種の化合物であることを特徴とする。
他の好適形態は、更に水及び/又は油を含有し、上記マグネシウム化合物が水性組成物、O/W型エマルション、W/O型エマルション又は油性組成物の形式で含まれていることを特徴とする。
他の好適形態は、更に水及び/又は油を含有し、上記マグネシウム化合物が水性組成物、O/W型エマルション、W/O型エマルション又は油性組成物の形式で含まれていることを特徴とする。
更に、本発明の石灰焼成装置のコーチング防止剤の更に他の好適形態は、上記マグネシウム化合物をMgO換算量で20〜60%の割合で含有することを特徴とする。
一方、本発明の石灰焼成装置のコーチング防止方法は、上述の如きコーチング防止剤を焼成炉に間欠投入しながら、石灰焼成装置の運転を行うことを特徴とする。
本発明の石灰焼成装置のコーチング防止方法の好適形態は、焼成用石灰原料の絶乾処理量1t当たりMgO換算量で0.1〜10kgの上記コーチング防止剤を、10分〜60分/日の範囲で、上記焼成炉に対して均一に投入することを特徴とする。
以下、本発明のコーチング防止剤及びコーチング防止方法につき詳細に説明する。なお、本明細書において、充填量、配合量及び濃度などについての「%」は特記しない限り質量百分率を表すものとする。
まず、本発明の前提として、石灰焼成装置における石灰の焼成やコーチングの発生につき説明する。
上述のように、石灰焼成装置の代表例であるキルン方式の焼成装置は、脱水石灰泥、乾燥石灰微粉いずれにも適用される。基本的には、炭酸カルシウム(CaCO3)を効率よく熱分解させ、ペレット状(1〜10mm)から塊状(10〜100mm)の酸化カルシウム(CaO)を製造する装置であり、この際の焼成反応は次式(1)で表される。
CaCO3(固体)→CaO(固体)+ CO2(気体)…(1)
上述のように、石灰焼成装置の代表例であるキルン方式の焼成装置は、脱水石灰泥、乾燥石灰微粉いずれにも適用される。基本的には、炭酸カルシウム(CaCO3)を効率よく熱分解させ、ペレット状(1〜10mm)から塊状(10〜100mm)の酸化カルシウム(CaO)を製造する装置であり、この際の焼成反応は次式(1)で表される。
CaCO3(固体)→CaO(固体)+ CO2(気体)…(1)
ここで、純粋なCaCO3の熱分解(焼成)温度は、898℃(解離圧は0.1MPa)であるが、実際には種々の不純物を含むためこれより若干低い温度で熱分解する。CaCO3を含む実際の石灰泥の分解温度は820℃付近である。
かかる焼成装置の加熱に用いられる燃料は一般に重油であり、火炎近辺の温度は1200〜1450℃に達する。焼成物であるCaOの溶融点は2570℃と極めて高く、これ自体が溶融点の関係で粘着(粘性化)して、硬化物、即ちコーチング物を生成することはない。
かかる焼成装置の加熱に用いられる燃料は一般に重油であり、火炎近辺の温度は1200〜1450℃に達する。焼成物であるCaOの溶融点は2570℃と極めて高く、これ自体が溶融点の関係で粘着(粘性化)して、硬化物、即ちコーチング物を生成することはない。
しかし、焼成炉に相当するキルンの長さは最大で100mを超えるものもあり、火炎から一番遠いキルン入口での温度は、この場合、室温程度である。
コーチングの原因は、石灰泥に微量含まれるNa、K及びP等の低融点成分や硫黄成分による硬化と、過剰のCO2(二酸化炭素)ガス雰囲気の下、800℃以下で起こるCaOの再炭酸化現象による硬化であることが知られており、コーチングは次の(2)式で表される反応に起因して発現する。
CaO(固体)+CO2(気体)→CaCO3(固体)…(2)
コーチングの原因は、石灰泥に微量含まれるNa、K及びP等の低融点成分や硫黄成分による硬化と、過剰のCO2(二酸化炭素)ガス雰囲気の下、800℃以下で起こるCaOの再炭酸化現象による硬化であることが知られており、コーチングは次の(2)式で表される反応に起因して発現する。
CaO(固体)+CO2(気体)→CaCO3(固体)…(2)
通常、かかるコーチング物は、キルンの中央部から火炎手前迄の間の領域において、再炭酸化による付着温度域で生成する。図1に、再炭酸化による炭酸カルシウム被膜の付着概念を示す。
なお、石灰泥にはMgが含まれているが、焼成過程で複合塩の形になってしまうためCaOの再炭酸化現象を防止する機能を発現することはない。
なお、石灰泥にはMgが含まれているが、焼成過程で複合塩の形になってしまうためCaOの再炭酸化現象を防止する機能を発現することはない。
次に、実際に操業されているキルン型石灰焼成装置が、クラフト法パルプの製造ラインのどのような位置に配設されているかを、関連設備とともに図2に示す。
同図の関連設備において、一般に苛性化装置でチップ蒸解薬品(水酸化ナトリウムと硫化ナトリウムの混合液であり慣習的に白液と称される)の製造に際し、供給された酸化カルシウムは炭酸カルシウムとなって沈降分離され、洗浄脱水後にウエットケーキ(CaCO3)として石灰焼成装置に供される。
同図の関連設備において、一般に苛性化装置でチップ蒸解薬品(水酸化ナトリウムと硫化ナトリウムの混合液であり慣習的に白液と称される)の製造に際し、供給された酸化カルシウムは炭酸カルシウムとなって沈降分離され、洗浄脱水後にウエットケーキ(CaCO3)として石灰焼成装置に供される。
このウエットケーキは、ロータリキルン6での焼成時のウエットケーキ(石灰泥)の粘性を調整する目的で使用される乾燥石灰1に、パドルミキサー12で添加されながら混合され、ロータリキルン6から発生した燃焼排ガス(約50〜300℃)によりフラッシュドライヤ2で半乾燥され、フィードビン13に送られる。
なお、この際に発生する微粉飛散した粉塵はサイクロン集塵器3で捕集され、パドルミキサー12に戻される。
なお、この際に発生する微粉飛散した粉塵はサイクロン集塵器3で捕集され、パドルミキサー12に戻される。
フィードビン13で調整された半乾燥石灰泥は、スクリューフィーダー14で輸送されロータリキルン6に供給される。
ロータリキルン6の出口側に設置してある加熱バーナー7付近のガス温度は、1200〜1450℃に保持されており、供給された半乾燥石灰泥を球形に造粒しながら焼成する。
ロータリキルン6は加熱バーナー7側を低位置として数度傾斜しており、焼成物は、ロータリキルン6の出口(加熱バーナー7側)から自重で落下し、石灰クーラー8で冷却され、製品(石灰ペレット)となって石灰ビン9に貯蔵される。石灰ビン9で捕集し切れなかった石灰粉はバグフィルター10で捕集される。最終燃焼排ガスは、スクラバー4等で処理され排ガス冷却装置5で冷却されてから大気放出される。
ロータリキルン6の出口側に設置してある加熱バーナー7付近のガス温度は、1200〜1450℃に保持されており、供給された半乾燥石灰泥を球形に造粒しながら焼成する。
ロータリキルン6は加熱バーナー7側を低位置として数度傾斜しており、焼成物は、ロータリキルン6の出口(加熱バーナー7側)から自重で落下し、石灰クーラー8で冷却され、製品(石灰ペレット)となって石灰ビン9に貯蔵される。石灰ビン9で捕集し切れなかった石灰粉はバグフィルター10で捕集される。最終燃焼排ガスは、スクラバー4等で処理され排ガス冷却装置5で冷却されてから大気放出される。
このようなキルン型石灰焼成装置における問題点を明確にすべく、コーチング現象(発生場所)と問題点及び関連事項を図3に示す。なお、コーチングの実際の発生場所は、図2に示す符号11(ロータリキルン6内)である。
本発明は、以上に説明したようなコーチング、特にキルン型石灰焼成装置におけるコーチングを防止するためなされたものであり、上述の如く、所定粒径のマグネシウム化合物を用いることにより、石灰泥中の微量アルカリ金属と炭酸ガスにより粘着性を持ったカルシウム化合物を粘着性を持たない酸化カルシウムとして存在させることを骨子とするものである。
代表的なマグネシウム化合物である水酸化マグネシウムを例にして詳細に説明すると、キルンでは石灰泥(マッド)を焼成して焼成石灰(酸化カルシウム)造粒物にするが、加熱バーナーの不安定な燃焼が起きると、焼成帯の温度が石灰の焼成温度より低くなり燃焼ガスや石灰泥(マッド)から発生する炭酸ガスにより、焼成によって生成した酸化カルシウム造粒物の表面では再炭酸化が起き炭酸カルシウムを生成する(図1参照)。
またこの際、加熱用バーナーの燃料に硫黄分を多く含むC重油等を使用すると、燃焼により発生する硫黄酸化物によって焼成物の硫酸化が起き、酸化カルシウム造粒物の表面では、硫酸カルシウムが生成したり、上記硫黄酸化物が石灰泥中に含まれているアルカリ成分(Na、K)と結合して低融点の硫酸ナトリウム等が生成したりする。
そして、バーナーの不安定な燃焼により、焼成石灰が部分的に過剰加熱されて酸化カルシウムの焼結が起きたりする。
そして、バーナーの不安定な燃焼により、焼成石灰が部分的に過剰加熱されて酸化カルシウムの焼結が起きたりする。
これらの現象において、石灰泥中のアルカリ成分、特にナトリウムの炭酸化物、硫酸化物により焼成物の融点が低下(820℃付近)すると、表面が再炭酸化した焼成石灰造粒物が高度の粘着性を有する炭酸カルシウムを形成し、生成物はキルン煉瓦壁に付着し、ダムリングと呼ばれる付着帯をキルン内温度が約800℃付近で形成して、キルンの閉塞を引き起こす。また、付着物の偏析によりキルンの偏重を起こしたり、キルン内壁のシェルを破損したりしてキルンの回転を不安定にし、連続操業を困難なものとする。
これに対し、本発明者は、石灰泥や高温ガス中に一時的に添加した水酸化マグネシウムが、再炭酸化で生成した炭酸カルシウム層を炭酸カルシウム自体の分解温度より低い温度域(700〜780℃)で分解して酸化カルシウムとし、この酸化カルシウムの表面を高融点の酸化マグネシウムで表面コートして再炭酸化を防止することを見出したのである。
このように、酸化カルシウム造粒物の表面を高融点物である酸化マグネシウムで表面コートすることにより、極めて良好なコーチング防止が実現される。
このように、酸化カルシウム造粒物の表面を高融点物である酸化マグネシウムで表面コートすることにより、極めて良好なコーチング防止が実現される。
なお、後述するが、本発明のコーチング防止剤を所定時間に集中的に所定量間欠添加すれば、マグネシウム化合物の添加総量を低くすることが可能であるため、製造すべき酸化カルシウムの割合を低下させないという利点もある。
ところで、コーチングは、セメントキルンでも起こることが知られている。しかしながら、セメントキルンのコーチングと石灰キルンのコーチングとは、技術的に関連するものではないことは当業者の常識である。このことは、これら両キルンが化学的にも温度的にも著しく異なっていることに起因している。
次に、本発明のコーチング防止剤について詳細に説明する。
上述の如く、本発明のコーチング防止剤は、粒径0.1〜30μmのマグネシウム化合物を含有するものである。なお、この粒径は電子顕微鏡視野での一次粒子径を意味するものとする。
上述の如く、本発明のコーチング防止剤は、粒径0.1〜30μmのマグネシウム化合物を含有するものである。なお、この粒径は電子顕微鏡視野での一次粒子径を意味するものとする。
ここで、マグネシウム化合物としては、有効成分であるMgO・xH2Oを発現できる限り特に限定されるものではなく、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム又はこれらの任意の混合物を挙げることができるが、特に水酸化マグネシウムが望ましい。
また、かかるマグネシウム化合物の粒径は0.1〜30μmであり、好ましくは0.5〜10μmである。
粒径(一次粒子径)が30μmを超えると、充分なコーチング防止効果が得られない。
粒径(一次粒子径)が30μmを超えると、充分なコーチング防止効果が得られない。
本発明のコーチング防止剤は、上記のマグネシウム化合物を含有していればよく、当該マグネシウム化合物のみから構成されていてもよいが、他の材料と組み合わせることが可能であり、典型的には、界面活性剤を3〜12%程度添加することにより、水及び油の少なくとも一方に分散、懸濁又は溶解させたコーチング防止剤組成物とすることができる。
かかるコーチング防止剤組成物としては、具体的には、上記マグネシウム化合物を、水に分散又は溶解させた水性組成物、油に分散又は溶解させた油性組成物、水と油に分散又は懸濁させた水中油滴型(O/W型)エマルション組成物及び油中水滴型(W/O型)エマルション組成物がある。
本発明では、いずれの組成物形式を採用しても、分散安定性や濡れ性などの性能を向上させることができ、更には、粉体形状の場合に注意すべき粉塵対策が不要となる。
かかるコーチング防止剤組成物としては、具体的には、上記マグネシウム化合物を、水に分散又は溶解させた水性組成物、油に分散又は溶解させた油性組成物、水と油に分散又は懸濁させた水中油滴型(O/W型)エマルション組成物及び油中水滴型(W/O型)エマルション組成物がある。
本発明では、いずれの組成物形式を採用しても、分散安定性や濡れ性などの性能を向上させることができ、更には、粉体形状の場合に注意すべき粉塵対策が不要となる。
上記のコーチング防止剤組成物に用いることができる界面活性剤としては、具体的には、アルキルアリルスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ジアルキルスルフォコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル塩及びポリカルボン酸塩などのアニオン界面活性剤や、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルコールエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、高級脂肪酸グリセリンエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン及びアルキロールアミド等の非イオン界面活性剤を挙げることができる。
また、本発明のコーチング防止剤における上記マグネシウム化合物の濃度は、使用状況に応じて適宜変更することができるが、対象設備が乾燥及び焼成を目的にしており、使用上の添加設備の容量から高濃度であることが望ましく、MgO換算量で20〜60%含有されることが好ましい。
濃度が60%を超えると、有効成分であるMgO・xH2Oの粒子同士が接触して凝集し、肥大粒子を形成してしまい、コーチング防止効率が低下することがある。一方、濃度が20%未満では、持込水分や油分が多くなったり、有効成分が少なくなりすぎて所期の効果が得られないことがある。
濃度が60%を超えると、有効成分であるMgO・xH2Oの粒子同士が接触して凝集し、肥大粒子を形成してしまい、コーチング防止効率が低下することがある。一方、濃度が20%未満では、持込水分や油分が多くなったり、有効成分が少なくなりすぎて所期の効果が得られないことがある。
次に、本発明のコーチング防止剤の作用を、水酸化マグネシウムを水又は油に安定分散させた組成物を例に採って説明する。
水酸化マグネシウムを水又は油に安定分散させることにより、コーチング防止機能を効率良く発現する一次粒子径0.1〜30μmを確保し易くなる。このような一次粒子径0.1〜30μmの水酸化マグネシウムを水又は油に安定分散させた組成物をキルン内に集中的に添加すると、水分の蒸発又は油分の燃焼に伴って、これらの一部がキルンの炉壁に付着して高融点の滑り性のあるしかも離型性を有するコーチング防止効率の良い薄い被膜を形成する。これとともに、他の一部は石灰の表面に付着するが、一次粒子径が0.1〜30μmであるため、再炭酸化した石灰表面を再び石灰に戻してそのまま表面に付着することができ、再度の再炭酸化を防止して固結性を低下させることが可能になる。
水酸化マグネシウムを水又は油に安定分散させることにより、コーチング防止機能を効率良く発現する一次粒子径0.1〜30μmを確保し易くなる。このような一次粒子径0.1〜30μmの水酸化マグネシウムを水又は油に安定分散させた組成物をキルン内に集中的に添加すると、水分の蒸発又は油分の燃焼に伴って、これらの一部がキルンの炉壁に付着して高融点の滑り性のあるしかも離型性を有するコーチング防止効率の良い薄い被膜を形成する。これとともに、他の一部は石灰の表面に付着するが、一次粒子径が0.1〜30μmであるため、再炭酸化した石灰表面を再び石灰に戻してそのまま表面に付着することができ、再度の再炭酸化を防止して固結性を低下させることが可能になる。
また、かかるコーチング防止剤組成物では、マグネシウム化合物の一次粒子径が0.1〜30μmであるため、キルン内に対して短時間で多量に添加・投入し易く、容易に酸化マグネシウム被膜層を形成し、酸化カルシウム造粒物がキルン内壁へ焼成物として付着するのを抑制することができる。
本発明は、上記これらの作用の単独乃至複合された効果により石灰のコーチングを有効に防止するのである。
本発明は、上記これらの作用の単独乃至複合された効果により石灰のコーチングを有効に防止するのである。
なお、上記マグネシウム化合物粒子の一次粒子径は上述のように0.1〜30μmであり、その上限よりも粒径が大きいものでは充分なコーチング防止効果が得られないことを説明したが、粒径の大きな、例えば数百μmのマグネシウム化合物では、焼成した酸化カルシウム造粒物の粒径に対して大きすぎるためにその表面をコートすることが殆ど不可能であり、再炭酸化したカルシウムを酸化カルシウムにしたり、再炭酸化を防止したりすることが不可能になってしまう。また、粒径が0.1μm未満の場合は、粒子の凝集性が極めて高く、高濃度のコーチング防止剤として製造や保存することが困難であり、産業的にも費用的にも見合わない。
次に、本発明のコーチング防止方法について説明する。
上述のごとく、本発明のコーチング防止方法は、上記本発明のコーチング防止剤を焼成炉(キルン)に間欠投入しながら、石灰焼成装置の運転を行う。
ここで、投入の方法については、特に限定されるものではないが、このコーチング防止剤を石灰焼成炉内の石灰泥に直接均一に混合するか、より均一に混合したい場合は適宜に水や油等で希釈しながら石灰焼成炉内の高温ガス中に噴霧する方法が推奨される。
なお、本発明では、上述のコーチング防止剤を石灰泥に接触させればコーチングの生成を防止できるので、例えば、焼成炉に投入前の石灰泥に上記コーチング防止剤を予め散布してもよいし、更には、焼成炉内にコーチングが生成する前に、コーチング防止剤を焼成炉内に投入し、これによりコーチングの生成を抑制することも可能である。
上述のごとく、本発明のコーチング防止方法は、上記本発明のコーチング防止剤を焼成炉(キルン)に間欠投入しながら、石灰焼成装置の運転を行う。
ここで、投入の方法については、特に限定されるものではないが、このコーチング防止剤を石灰焼成炉内の石灰泥に直接均一に混合するか、より均一に混合したい場合は適宜に水や油等で希釈しながら石灰焼成炉内の高温ガス中に噴霧する方法が推奨される。
なお、本発明では、上述のコーチング防止剤を石灰泥に接触させればコーチングの生成を防止できるので、例えば、焼成炉に投入前の石灰泥に上記コーチング防止剤を予め散布してもよいし、更には、焼成炉内にコーチングが生成する前に、コーチング防止剤を焼成炉内に投入し、これによりコーチングの生成を抑制することも可能である。
また、本発明においては、上記コーチング防止剤の添加・投入方法を工夫することにより、より少ない使用量でより大きな効果を発揮させることができる。
具体的には、焼成用石灰原料の絶乾処理量1t当たりMgO換算量で0.1〜10kgの上記コーチング防止剤を、1日に10分〜60分の短時間に焼成炉に対して均一に間欠多量添加することが好ましく、この添加方法により、コーチングの防止効果を飛躍的に向上させることができるのである。
具体的には、焼成用石灰原料の絶乾処理量1t当たりMgO換算量で0.1〜10kgの上記コーチング防止剤を、1日に10分〜60分の短時間に焼成炉に対して均一に間欠多量添加することが好ましく、この添加方法により、コーチングの防止効果を飛躍的に向上させることができるのである。
MgO換算の投入量が0.1kg未満では、石灰表面に付着して再炭酸化を回避する量を確保できないことがあり、10kgを超えると、コーチング防止に実質的に寄与しない余剰のマグネシウム化合物を投入してしまうことがあり、コスト的に好ましくない。
また、投入時間が10分未満では、コーチング防止に実質的に寄与しない余剰のマグネシウム化合物を投入してしまうことがある。また、短時間で多量のコーチング防止剤を添加することになるため、焼成物中の石灰濃度を低下させてしまうことがある。一方、60分を超えると、石灰表面に付着して再炭酸化を回避する量を確保できないことがある。
また、投入時間が10分未満では、コーチング防止に実質的に寄与しない余剰のマグネシウム化合物を投入してしまうことがある。また、短時間で多量のコーチング防止剤を添加することになるため、焼成物中の石灰濃度を低下させてしまうことがある。一方、60分を超えると、石灰表面に付着して再炭酸化を回避する量を確保できないことがある。
本発明のコーチング防止剤を連続的に添加しても、上述の作用により、焼成石灰を多孔質化して(溶融させない)その強度を低下させることができるが、その場合、多量のコーチング防止剤を添加しなければコーチングを防止できるほどの強度低下を見込めず、その使用量が多くなってしまう。
これに対し、上述のように間欠多量添加すると、上記コーチング防止剤を添加している間は強度の充分に低い焼成石灰が層状に付着し、コーチング防止剤を添加していない間には強度の高い焼成石灰がその上に付着する。よって、仮にある程度厚い焼成石灰が形成されたとしても、焼成石灰自体の自重や衝撃等によって強度の低い層部分から剥離させて、これと同時に、その上の強度の高い層部分と共に脱落させることができる。
この投入方法では、短時間に集中的に多量のコーチング防止剤を添加するので、合計使用量は連続的に添加した場合よりも少なくなる。従って、この投入方法によれば、より少ない使用量でより大きな効果を発揮させることができる。
これに対し、上述のように間欠多量添加すると、上記コーチング防止剤を添加している間は強度の充分に低い焼成石灰が層状に付着し、コーチング防止剤を添加していない間には強度の高い焼成石灰がその上に付着する。よって、仮にある程度厚い焼成石灰が形成されたとしても、焼成石灰自体の自重や衝撃等によって強度の低い層部分から剥離させて、これと同時に、その上の強度の高い層部分と共に脱落させることができる。
この投入方法では、短時間に集中的に多量のコーチング防止剤を添加するので、合計使用量は連続的に添加した場合よりも少なくなる。従って、この投入方法によれば、より少ない使用量でより大きな効果を発揮させることができる。
更に、上述の投入方法を5〜10日間実行すれば、焼成炉の内壁を構成する耐火煉瓦表面に保護層を形成して、アルカリ等による化学的スポーリングを防止することも可能である。
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜9,比較例1〜3)
下記の表1に示す配合処方を採用して各例のコーチング防止剤を作成した。即ち、水性組成物系のコーチング防止剤については、容器に所定量の水と界面活性剤を秤取し、ホモミキサーで攪拌しながら所定量の水酸化マグネシウムを加え、ほぼ均一なスラリーとした。次いで、このスラリーに、減粘剤として一般的に使用されているポリ燐酸塩を加えて攪拌混合し、均一なスラリーである実施例1〜3と比較例1〜3のコーチング防止剤を得た。
下記の表1に示す配合処方を採用して各例のコーチング防止剤を作成した。即ち、水性組成物系のコーチング防止剤については、容器に所定量の水と界面活性剤を秤取し、ホモミキサーで攪拌しながら所定量の水酸化マグネシウムを加え、ほぼ均一なスラリーとした。次いで、このスラリーに、減粘剤として一般的に使用されているポリ燐酸塩を加えて攪拌混合し、均一なスラリーである実施例1〜3と比較例1〜3のコーチング防止剤を得た。
また、O/W型エマルション系のコーチング防止剤については、所定量の水と界面活性剤を秤取し、ホモミキサーで攪拌しながら所定量の水酸化マグネシウムを加え、ほぼ均一なスラリーとした。次いで、このスラリーに油を加えて攪拌混合し、均一な水中油滴型のエマルションである実施例4及び5のコーチング防止剤を得た。
一方、W/O型エマルション系のコーチング防止剤については、所定量の油と界面活性剤を秤取し、ホモミキサーで攪拌しながら所定量の水酸化マグネシウムを加え、ほぼ均一なスラリーとした。次いで、このスラリーに水を加えて攪拌混合し、均一な油中水滴型のエマルションである実施例6及び7のコーチング防止剤を得た。
更に、油性組成物系のコーチング防止剤については、所定量の油と界面活性剤を秤取し、ホモミキサーで攪拌しながら所定量の水酸化マグネシウムを加え、ほぼ均一なスラリーとすることにより、実施例8及び9のコーチング防止剤を得た。
一方、W/O型エマルション系のコーチング防止剤については、所定量の油と界面活性剤を秤取し、ホモミキサーで攪拌しながら所定量の水酸化マグネシウムを加え、ほぼ均一なスラリーとした。次いで、このスラリーに水を加えて攪拌混合し、均一な油中水滴型のエマルションである実施例6及び7のコーチング防止剤を得た。
更に、油性組成物系のコーチング防止剤については、所定量の油と界面活性剤を秤取し、ホモミキサーで攪拌しながら所定量の水酸化マグネシウムを加え、ほぼ均一なスラリーとすることにより、実施例8及び9のコーチング防止剤を得た。
『モデル試験』
得られた各例のコーチング防止剤を下記の性能評価試験に供した。
得られた各例のコーチング防止剤を下記の性能評価試験に供した。
[コーチング物の強度低下試験(圧潰強度の測定)]
ア)キルンに発生したコーチング物を採取し、100×50×50mmに切断して試験片とした。
イ)各例のコーチング防止剤を、所定温度の電気炉中でN2ガスを噴射剤として噴霧した。
ウ)コーチング防止剤の噴霧はMgO換算1.5gを30分/1日1回噴霧とした。
エ)試験時間は10日間とした。
オ)試験装置の概要を図4に示した。
カ)試験結果は各6回の試験の平均値を表1に示した。
ア)キルンに発生したコーチング物を採取し、100×50×50mmに切断して試験片とした。
イ)各例のコーチング防止剤を、所定温度の電気炉中でN2ガスを噴射剤として噴霧した。
ウ)コーチング防止剤の噴霧はMgO換算1.5gを30分/1日1回噴霧とした。
エ)試験時間は10日間とした。
オ)試験装置の概要を図4に示した。
カ)試験結果は各6回の試験の平均値を表1に示した。
表1より明らかなように、比較例1のφ0.1μm未満のマグネシウム粒子を配合したコーチング防止剤では、試験後の圧潰強度は比較例4(無添加)のそれとの差が小さく、コーチング物断面を分析したところ、マグネシウム粒子による保護コートの膜厚が薄過ぎるため再炭酸化を防止できていないことが判った。
同様に、比較例2及び3のφ50μm以上のマグネシウム粒子を配合したコーチング防止剤でも粒径が大き過ぎて膜が形成されていない部分が存在し、再炭酸化物を抑制できていなかった。
同様に、比較例2及び3のφ50μm以上のマグネシウム粒子を配合したコーチング防止剤でも粒径が大き過ぎて膜が形成されていない部分が存在し、再炭酸化物を抑制できていなかった。
以上の結果から、マグネシウム粒子が大き過ぎるためにコーチング物外表面への付着力が弱く、ガス流速の大きい実炉では、到底、被膜形成及び被膜維持を有効に実現できないことが推察される。
これに対し、実施例1〜9のφ0.1〜30μmの範囲のマグネシウム粒子を配合したコーチング防止剤では、充分な圧潰強度の低下効果が認められ、特にφ0.1〜10μmの範囲のマグネシウム粒子を用いた実施例1、3、4、6及び8のコーチング防止剤がより一層の優れた効果を示すことが判った。
これに対し、実施例1〜9のφ0.1〜30μmの範囲のマグネシウム粒子を配合したコーチング防止剤では、充分な圧潰強度の低下効果が認められ、特にφ0.1〜10μmの範囲のマグネシウム粒子を用いた実施例1、3、4、6及び8のコーチング防止剤がより一層の優れた効果を示すことが判った。
[コーチング成長抑制試験(剥離強度の測定)]
ア)900℃の電気炉中でシャモット煉瓦表面に実施例1〜9、比較例1〜3のコーチング防止剤を、 MgO換算0.5kg/m2の噴霧量で30分間噴霧した。1時間維持後に、溶融点965℃のコーチング物を50kg/cm2の荷重をかけて、10時間900℃で圧着させた。
イ)冷却後、煉瓦とコーチング物の剥離強度を求めた。
ウ)試験装置概要;図5に示した。
エ)試験結果は各5回の試験の平均値を表1に示した。
ア)900℃の電気炉中でシャモット煉瓦表面に実施例1〜9、比較例1〜3のコーチング防止剤を、 MgO換算0.5kg/m2の噴霧量で30分間噴霧した。1時間維持後に、溶融点965℃のコーチング物を50kg/cm2の荷重をかけて、10時間900℃で圧着させた。
イ)冷却後、煉瓦とコーチング物の剥離強度を求めた。
ウ)試験装置概要;図5に示した。
エ)試験結果は各5回の試験の平均値を表1に示した。
表1より明らかなように、比較例1のφ0.1μm未満のマグネシウム粒子を配合したコーチング防止剤では、煉瓦へ被膜が形成できず、逆に比較例2及び3のφ50μm以上のマグネシウム粒子を配合したコーチング防止剤では、砂状となり流動飛散することに起因して所望の効果を発揮できなかった。
これに対し、実施例1〜9のφ0.1〜30μmの範囲のマグネシウム粒子を配合したコーチング防止剤では顕著な剥離強度低下効果が認められた。
これに対し、実施例1〜9のφ0.1〜30μmの範囲のマグネシウム粒子を配合したコーチング防止剤では顕著な剥離強度低下効果が認められた。
『実機試験』
表1に示す実施例3及び6と比較例2のコーチング防止剤を用い、実機としての2系列あるキルンの通常の2ヶ月運転に供した。
表1に示す実施例3及び6と比較例2のコーチング防止剤を用い、実機としての2系列あるキルンの通常の2ヶ月運転に供した。
コーチング防止剤は、図6に示す高濃度/短時間注入方法により投入・添加した。
図6において、コーチング防止剤貯槽21としては容量1tのケミカルコンテナーを用いたが、この貯槽21は、空気抜き管22、ストップバルブ23、液面計24を具備している。
コーチング防止剤は水酸化マグネシウムの分散液ではあるが、粉塵等の混入を考慮し、呼び径25A×40メッシュのストレーナー25を設置し、定量ポンプ26にて所定量添加した。注入時間の管理は、制御盤28に組み込まれたタイマーにて定量ポンプモーター27を起動及び停止させることより行った。なお、符号29は圧力指示計、30はパドルミキサー(既設)である。パドルミキサー30で石灰ケーキ、乾燥石炭泥、コーチング防止剤、必要に応じて、実施例3では水、実施例6では油を均一に混合してスクリューフィーダー14に送る。得られた結果を表2に示す。
図6において、コーチング防止剤貯槽21としては容量1tのケミカルコンテナーを用いたが、この貯槽21は、空気抜き管22、ストップバルブ23、液面計24を具備している。
コーチング防止剤は水酸化マグネシウムの分散液ではあるが、粉塵等の混入を考慮し、呼び径25A×40メッシュのストレーナー25を設置し、定量ポンプ26にて所定量添加した。注入時間の管理は、制御盤28に組み込まれたタイマーにて定量ポンプモーター27を起動及び停止させることより行った。なお、符号29は圧力指示計、30はパドルミキサー(既設)である。パドルミキサー30で石灰ケーキ、乾燥石炭泥、コーチング防止剤、必要に応じて、実施例3では水、実施例6では油を均一に混合してスクリューフィーダー14に送る。得られた結果を表2に示す。
表2より明らかなように、実施例3及び6のコーチング防止剤を1/100の添加比率で30分間及び60分間(いずれも1回/日の添加頻度)添加した結果、画期的な改善効果が得られた。なお、この添加量は、乾燥石灰泥1t当たり、MgO純分で2kg/30分間及び4kg/60分間に相当する。また、この4kg/60分間量は1/2400の添加比率で連続添加した場合と1日の合計添加量が同量であり、このように短時間に集中的に多量の間欠添加を行うことがコーチング防止剤の配合成分と同様に重要である。
また、比較例2では、実施例3及び6と同様の条件(1/100、60分間)にて添加を試みたが、未使用時と殆ど変化がなく、マグネシウム化合物が高温で酸化マグネシウムになった時点のMgOの粒径が極めて重要な要因であることが明白となった。
即ち、石灰泥のような元来高融点の成分を焼成する設備におけるコーチング防止においては、粒径0.1〜30μm、望ましくは1〜10μmのMgOと、高温にてMgO自体を均一に展着させるべく、マグネシウム化合物を水又は油に安定分散させた組成物が有効であることが分かった。
即ち、石灰泥のような元来高融点の成分を焼成する設備におけるコーチング防止においては、粒径0.1〜30μm、望ましくは1〜10μmのMgOと、高温にてMgO自体を均一に展着させるべく、マグネシウム化合物を水又は油に安定分散させた組成物が有効であることが分かった。
また、この実機試験は、実施例3及び6のコーチング防止剤を添加比率1/100で30分及び60分間添加の2水準で行ったが、この結果より、添加比率及び添加時間の増減がコーチング防止効果に影響を与えることが推察される。
そして、この実施例3及び6では添加比率1/100で60分間添加の方が好ましい結果が得られたが、焼成装置の使用条件、特に装置に供給される石灰泥中の不純物濃度、焼成炉の燃焼温度などは各装置により異なるため、各装置におけるコーチングに関連する事項を把握した上で、適宜に添加量と添加時間を決定すればよいと思われる。
そして、この実施例3及び6では添加比率1/100で60分間添加の方が好ましい結果が得られたが、焼成装置の使用条件、特に装置に供給される石灰泥中の不純物濃度、焼成炉の燃焼温度などは各装置により異なるため、各装置におけるコーチングに関連する事項を把握した上で、適宜に添加量と添加時間を決定すればよいと思われる。
また、表2より明らかなように、試験期間の最初の7日間に絶乾処理量1t当たり実施例3のコーチング防止剤をMgO換算量で12.0kgを60分/1日の範囲で添加したものについては、煉瓦表面に保護層が形成されたことが容易に推察される結果が得られた。
以上、本発明を若干の実施例により詳細に説明したが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形が可能である。
例えば、実施例1などのコーチング防止剤の調製方法は、上記の調製手順に限定されるものではない。
例えば、実施例1などのコーチング防止剤の調製方法は、上記の調製手順に限定されるものではない。
本発明によれば、所定粒径のマグネシウム化合物を用いることなどとしたため、コーチングを簡易、効率的且つ低コストで防止し得る石灰焼成装置のコーチング防止剤、及びこれを用いた石灰焼成装置のコーチング防止方法を提供することができる。
即ち、本発明の石灰焼成装置のコーチング防止方法によれば、強固で巨大なコーチング物の発生を防止し、脱落コーチング物による閉塞も改善されることから、省エネ、環境対策、安全操業を含めた長期安定運用を達成することができる。
即ち、本発明の石灰焼成装置のコーチング防止方法によれば、強固で巨大なコーチング物の発生を防止し、脱落コーチング物による閉塞も改善されることから、省エネ、環境対策、安全操業を含めた長期安定運用を達成することができる。
Claims (6)
- 粒径0.1〜30μmのマグネシウム化合物を含有することを特徴とする石灰焼成装置のコーチング防止剤。
- 上記マグネシウム化合物が、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム及び酸化マグネシウムから成る群より選ばれた少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項1に記載の石灰焼成装置のコーチング防止剤。
- 更に水及び/又は油を含有し、上記マグネシウム化合物が水性組成物、O/W型エマルション、W/O型エマルション又は油性組成物の形式で含まれていることを特徴とする請求項1又は2に記載の石灰焼成装置のコーチング防止剤。
- 上記マグネシウム化合物をMgO換算量で20〜60%の割合で含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載の石灰焼成装置のコーチング防止剤。
- 請求項1〜4のいずれか1つの項に記載のコーチング防止剤を焼成炉に間欠投入しながら、石灰焼成装置の運転を行うことを特徴とする石灰焼成装置のコーチング防止方法。
- 焼成用石灰原料の絶乾処理量1t当たりMgO換算量で0.1〜10kgの上記コーチング防止剤を、10分〜60分/日の範囲で、上記焼成炉に対して均一に投入することを特徴とする請求項5に記載の石灰焼成装置のコーチング防止方法。
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