JPWO2007116613A1 - 運動案内装置および運動案内装置に用いられるクラッド材 - Google Patents
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Abstract
運動案内装置は、軌道部材41と、軌道部材41に複数の転動体を介して移動自在に取り付けられる移動部材とを備えており、軌道部材41および移動部材の少なくとも一方が、クラッド材により構成されている。クラッド材は、第1の金属材料(例えば、β型チタン合金)61と第2の金属材料(例えば、α型チタン合金)62との複合材料として構成されており、第1の金属材料61は、第2の金属材料62より高硬度であり、さらに、少なくとも複数の転動体と接触する転動体転走面41aの近傍が、第1の金属材料61によって構成されていることが好適である。また、第1の金属材料61は、例えば、転動体転走面41aの表面から深さ0.5mmの範囲を占めるように構成されていることが好適である。
Description
本発明は、運動案内装置および運動案内装置に用いられるクラッド材に係り、特に、構成部材がクラッド材により構成される運動案内装置に関するものである。
従来から、リニアガイドや直線案内装置、ボールスプライン装置、ボールねじ装置などのような運動案内装置においては、かかる装置を構成する部材が繰り返し転動・摺動動作を伴うことから、その構成部材には、一般的に、高炭素クロム軸受鋼やステンレス鋼、肌焼鋼のような硬度の高い金属材料が採用されている。
一方、近年の運動案内装置の適用範囲拡大の要請から、様々な条件下で用いることができる運動案内装置の実用化が望まれている。例えば、下記特許文献1には、非磁性であり、且つ、耐食環境、真空環境、高温環境下で用いることのできる軸受を実現するために、軸受を構成する内輪および外輪をチタン合金で構成した技術が開示されている。下記特許文献1によれば、従来のチタン合金は、焼き付きや硬度、耐摩耗性の面で問題があったので、軸受などの転動装置に用いることは不可能であったが、置換型固溶元素であるCrと侵入型固溶元素であるO、N、Cの添加量を最適化することにより、従来チタン合金では得られなかった著しく硬化したα’マルテンサイト組織を有するチタン合金を得ることができ、さらに、このα’マルテンサイトの量比を制御することによって、水中等の特殊環境下で長寿命な特殊環境用軸受を提供することができるとされている。
また、上述した技術をさらに改良するために、チタン合金の硬度アップを図る観点から、種々の発明が創案されている(例えば、下記特許文献2参照)。
しかしながら、チタン合金の高硬度化を図る技術には限界があり、リニアガイドや直線案内装置、ボールスプライン装置、ボールねじ装置、回転ベアリング装置などのような運動案内装置にあっては、チタン合金を採用したものは未だ量産化されるには至っておらず、商業ベースで実用化するまでには至っていない。
また、上記特許文献1,2が開示する軸受などの転動装置においては、チタン合金の表面硬度を高くするという考えに基づいて発明が成されているが、チタン合金の硬度を向上することは、そのままチタン合金の靭性低下を引き起こしてしまうことになるため、硬度の向上という考え方にはある程度の限界がある。また、転がり軸受よりも構造的に複雑な運動案内装置を難加工材料であるチタン合金によって製造することは、加工コストの面でも問題があり、現実にチタン合金製の運動案内装置を量産化することは未だ実現されていない。
本発明は、上述した課題の存在に鑑みて成されたものであって、運動案内装置の構成部材のうち、軌道部材および移動部材の少なくとも一方をクラッド材によって構成することにより、従来の運動案内装置では採用が困難であったチタン合金などのヤング率の低い金属材料を採用可能とし、さらには、従来の運動案内装置では実現できなかった新たな作用効果を奏する運動案内装置を提供し、運動案内装置の適用範囲の拡大を図ることを目的とするものである。
本発明に係る運動案内装置は、軌道部材と、前記軌道部材に複数の転動体を介して移動自在に取り付けられる移動部材と、を備える運動案内装置であって、前記軌道部材および前記移動部材の少なくとも一方が、クラッド材により構成されていることを特徴とする。
本発明に係る運動案内装置において、前記クラッド材は、第1の金属材料と第2の金属材料との複合材料として構成されており、前記第1の金属材料は、前記第2の金属材料より高硬度であり、さらに、少なくとも前記複数の転動体と接触する転動体転走面の近傍が、前記第1の金属材料によって構成されていることが好適である。
また、本発明に係る運動案内装置において、前記第1の金属材料がβ型チタン合金又はα+β型チタン合金であり、前記第2の金属材料がα型チタン合金であることとすることができる。
さらに、本発明に係る運動案内装置において、前記第2の金属材料は、前記軌道部材又は前記移動部材の芯材となるように配置され、前記第1の金属材料は、前記第2の金属材料を中心として複数が対称位置に配置されることとすることができる。
本発明に係るクラッド材は、第1の金属材料と第2の金属材料との複合材料として構成され、軌道部材と、前記軌道部材に複数の転動体を介して移動自在に取り付けられる移動部材と、を備える運動案内装置に用いられるクラッド材であって、前記第1の金属材料は、前記第2の金属材料より高硬度であり、さらに、少なくとも前記複数の転動体と接触する転動体転走面の近傍が、前記第1の金属材料によって構成されていることを特徴とする。
本発明に係るクラッド材は、前記第1の金属材料がβ型チタン合金又はα+β型チタン合金であり、前記第2の金属材料がα型チタン合金であることとすることができる。
また、本発明に係るクラッド材において、前記第2の金属材料は、前記軌道部材又は前記移動部材の芯材となるように配置され、前記第1の金属材料は、前記第2の金属材料を中心として複数が対称位置に配置されることとすることができる。
なお上記発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた発明となり得る。
本発明によれば、軌道部材および移動部材の少なくとも一方をクラッド材によって構成したので、従来では実現できなかった機能を発揮することが可能な全く新しい運動案内装置を提供することができる。
具体的には、本発明に係るクラッド材は、第1の金属材料と第2の金属材料との複合材料として構成されており、第1の金属材料は、第2の金属材料より高硬度であり、さらに、少なくとも複数の転動体と接触する転動体転走面の近傍が、硬度の高い第1の金属材料によって構成されている。したがって、本発明によれば、転動体転走面近傍の高硬度化によって運動案内装置としての機能を維持しつつも、芯材としての第2の金属材料が低硬度のため修正加工が施しやすく、しかも材料全体としては構造材としての機能を発揮することが可能なクラッド材により、従来にない運動案内装置を提供することが可能である。
特に、第1の金属材料にβ型チタン合金又はα+β型チタン合金を、第2の金属材料にα型チタン合金を採用することによって、従来実用化が困難であったチタン合金製の運動案内装置を実現することが可能となる。すなわち、硬度の高い第1の金属材料(β型チタン合金又はα+β型チタン合金)の占める範囲を自由に決めることができるクラッド材の採用によって、従来技術では不可能であった深さ(例えば、転動体転走面の表面から深さ0.5mmの範囲)までチタン合金の硬度を向上させることができ、チタン合金製の運動案内装置が実用化可能となった。
また、上記特許文献1,2等、従来技術が開示するような、全て同一のチタン合金で1つの構成部材を作成する場合には、靭性の低下を考慮して硬度の向上には限界(350〜400HV)があった。しかしながら、本発明に係るクラッド材の場合には、第1の金属材料(β型チタン合金又はα+β型チタン合金)の方を最大限(450〜550HV)に硬化させたとしても、第2の金属材料(α型チタン合金)の存在によって構造材全体としての靭性が維持できるので、従来技術に比べて高負荷・長寿命の運動案内装置を実現することができる。
さらに、本発明では、第2の金属材料を、軌道部材又は移動部材の芯材となるように配置し、第1の金属材料を、第2の金属材料を中心として複数が対称位置に配置されるように構成するようにしたので、構造材全体としての強度バランスが安定し、加工の際の形状出しが非常に容易となる。
40 リニアガイド装置、41 軌道レール、41a 転動体転走面、42 ボール、43 移動ブロック、43a 負荷転動体転走面、45 取付孔、52 負荷転走路、53 無負荷転走路、55 方向転換路、61,71 第1の金属材料、62,72 第2の金属材料。
発明者の検討によって、チタン合金などのようなヤング率の低い金属材料を運動案内装置に利用しようとする場合、同一負荷での応力発生位置を比較すると、従来用いていた鋼やセラミック材料のようなヤング率の高い材料に比べて、その応力発生位置が深くなってしまうことが判明した。
すなわち、発明者は、ヘルツ(Hertz)の理論を用いて「球」と「平板」との2つの物体の接触状態を考えた。図1は、本検討を行う際に用いたモデル図であって、「球」である物体Iと「平板」である物体IIの接触状態を示している。図1のように、2つの物体が荷重Qで互いに押しつけられているとき、「球」である物体Iの曲面は、互いに直交する2つの主曲率面を持ち、その面内には、物体Iの最大曲率と最小曲率が含まれている。そして、曲線の曲率半径をrとすると、曲率ρは、ρ=1/rで表される。以後、曲率ρおよび曲率半径rについては、例えば物体Iの主曲率面1の場合、曲率ρI1,曲率半径rI1で表す。つまり、1番目の添字は物体を表し、2番目の添字は主曲率面を表している。
そして、これら2物体が接触する接触面は、長軸半径aおよび長軸半径bで構成される楕円(円を含む)として把握することができる。そして、これら長軸半径aおよび長軸半径bは、それぞれ以下の数式(A)および(B)として表すことができる。
今回考えた物体Iおよび物体IIは、それぞれ「球」と「平板」であるため、a=bとなり、接触面の形状は円となる。したがって、接触面積は、πa2となり、上記数式(D)において、圧縮荷重Qが一定、球体半径がrとすると、物体Iおよび物体IIのヤング率EI,EIIが低くなれば、長軸半径aは大きくなることがわかる。つまり、ヤング率の低い材料の接触面積は、ヤング率の高い材料に比べて大きくなるのである。
また、以上のようにして求めた長軸半径a、短軸半径bと図2に示す図から、最大剪断応力深さz1を求めることができる。すなわち、a=bからb/a=1となり、図2からすればz1/b=0.47の値を求めることができる。したがって、z1/a=0.47となり、aの値が大きくなれば最大剪断応力深さz1の値も大きくなる。よって、ヤング率の低い材料ほど最大剪断応力深さは、深くなることが確認できる。
以上から、チタン合金などのようなヤング率の低い金属材料を運動案内装置に利用しようとする場合、同一負荷での応力発生位置を比較すると、従来用いていた鋼やセラミックス材料のようなヤング率の高い材料に比べて、ヤング率の低い金属材料は、その応力発生位置が深くなってしまうので、その深さに応じた設計を行う必要がある。
ちなみに、上記特許文献1,2が開示する軸受などの従来の転動装置においては、チタン合金の表面硬度を高くするという考えに基づいて設計が成されており、そのための表面処理やコーティング技術が適用されている。しかしながら、このような表面処理による硬度向上は、表面から0.1mm程度の深さに適用することが限界である。特に、現在実用化されている運動案内装置の構成(例えば、ボール径や装置寸法など)や設計の際の安全率等を考慮した場合、上記検討をふまえると、少なくとも転動体転走面の表面から深さ0.5mm程度の位置までの領域で硬度向上を図る必要があると考えられる。しかしながら、現在、チタン合金などのようなヤング率の低い金属材料に対して、そのような深さまで硬度向上を実現する表面処理技術は実用化されていない。
発明者は、上記検討結果をふまえた上で、母材自体の強度向上が不可欠であることに鑑み、運動案内装置の構成部材にクラッド材を用いることを創案した。そこで、以下に本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
なお、本明細書における「運動案内装置」は、例えば、工作機械などに用いられる転がり軸受全般や真空中で使用される無潤滑軸受、リニアガイドや直線案内装置、ボールスプライン装置、ボールねじ装置、ローラねじ装置、クロスローラリング等のような、あらゆる転動・摺動動作を伴う装置を含むものである。以下の説明では、運動案内装置がリニアガイド装置として構成される場合における、本発明の適用事例を説明する。
(リニアガイド装置への適用例)
本実施形態に係るクラッド材は、図3Aおよび図3Bに示すようなリニアガイド装置として構成される運動案内装置に対して適用することが可能である。ここで、図3Aは、本実施形態に係るクラッド材により構成されるリニアガイド装置の一形態を例示する外観斜視図である。また、図3Bは、図3Aで示したリニアガイド装置が備える無限循環路を説明するための断面図である。
本実施形態に係るクラッド材は、図3Aおよび図3Bに示すようなリニアガイド装置として構成される運動案内装置に対して適用することが可能である。ここで、図3Aは、本実施形態に係るクラッド材により構成されるリニアガイド装置の一形態を例示する外観斜視図である。また、図3Bは、図3Aで示したリニアガイド装置が備える無限循環路を説明するための断面図である。
まず、図3Aおよび図3Bに例示するリニアガイド装置40の構成について説明すると、本実施形態に係る運動案内装置としてのリニアガイド装置40は、軌道部材としての軌道レール41と、軌道レール41に多数の転動体として設置されるボール42…を介してスライド可能に取り付けられた移動部材としての移動ブロック43とを備えている。軌道レール41はその長手方向と直交する断面が概略矩形状に形成された長尺の部材であり、その表面(上面および両側面)にはボールが転がる際の軌道になる転動体転走面41a…が軌道レール41の全長に渡って形成されている。
ここで、軌道レール41は、直線的に伸びるように形成されることもあるし、曲線的に伸びるように形成されることもある。また、転動体転走面41a…の本数は左右で2条ずつ合計4条設けられているが、その条数はリニアガイド装置40の用途等に応じて変更することができる。
一方、移動ブロック43には、転動体転走面41a…とそれぞれ対応する位置に負荷転動体転走面43a…が設けられている。軌道レール41の転動体転走面41a…と移動ブロック43の負荷転動体転走面43a…とによって負荷転走路52…が形成され、複数のボール42…が挟まれている。さらに、移動ブロック43には、各転動体転走面41a…と平行に伸びる4条の無負荷転走路53…と、各無負荷転走路53…と各負荷転走路52…とを結ぶ方向転換路55…が設けられている。1つの負荷転走路52および無負荷転走路53と、それらを結ぶ一対の方向転換路55との組み合わせによって、1つの無限循環路が構成されている(図3B参照)。
そして、複数のボール42…が、負荷転走路52と無負荷転走路53と一対の方向転換路55,55とから構成される無限循環路に無限循環可能に設置されることにより、移動ブロック43が軌道レール41に対して相対的に往復運動可能となっている。
以上のような構成を備える本実施形態に係るリニアガイド装置40においては、その特徴的な点として、軌道部材としての軌道レール41および移動部材としての移動ブロック43の少なくとも一方が、クラッド材により構成されていることが挙げられる。
例えば、軌道レール41の具体的実施形態について、図4Aおよび図4Bを用いて説明する。なお、図4Aは、本実施形態に係る軌道レールの側面図であり、図4Bは、本実施形態に係る軌道レールの取付孔形成位置での縦断面側面図である。
本実施形態に係る軌道レール41は、第1の金属材料61と第2の金属材料62との複合材料として構成されるクラッド材によって形成されている。そして、本実施形態では、第1の金属材料61はβ型チタン合金によって構成されており、一方、第2の金属材料62はα型チタン合金によって構成されている。そして、特に重要なことは、複数の転動体転走面41a…が形成される部位には、硬度の高いβ型チタン合金からなる第1の金属材料61が配置されており、その他の部位には、硬度の低いα型チタン合金からなる第2の金属材料62が配置されている点が挙げられる。
本実施形態に係る軌道レール41を上記のような構成のクラッド材によって形成することにより、まず、繰り返し転がり負荷を受けることになる転動体転走面41a近傍を高硬度化することができ、運動案内装置としての機能を維持することが可能となる。
また、転動体転走面41a近傍の第1の金属材料(β型チタン合金)61が高硬度であり、且つ、芯材としての第2の金属材料(α型チタン合金)62が低硬度であるため、例えばクラッド材を軌道レール41の形状に成型して転動体転走面41aを切削加工した後でも、転動体転走面41aの直進性を維持しながら第2の金属材料(α型チタン合金)62に修正を加え、軌道レール41全体としての形状を所望の寸法に修正加工することなどができるので、難加工材であるチタン合金の加工面での不具合を低減することができる。
さらに、軌道レール41の場合には、固定設置のための取付孔45を穿設する必要があるが、この取付孔45を穿設しなければならない領域は、低硬度の第2の金属材料(α型チタン合金)62によって構成されているので、加工面での負荷が低減されている。
またさらに、本実施形態に係る軌道レール41を図4Aおよび図4Bで示されるようなクラッド材により形成したことによって、従来のチタン合金製軌道レールでは不可能であった深さまで構成材料の硬度を向上させることが可能となっている。すなわち、本実施形態に係るクラッド材の採用によって、例えば、転動体転走面41aの表面から深さ0.5mm(あるいはそれ以上の深さ)の範囲を硬度の高い第1の金属材料(β型チタン合金)61によって占めるように構成することができるので、剪断応力が及ぶ深さ位置での硬度向上が可能となり、チタン合金製の運動案内装置が実用化可能となったのである。
さらにまた、本実施形態に係るクラッド材の採用は、従来のチタン合金製運動案内装置では不可能なレベルの硬度向上が可能となっている。すなわち、上記特許文献1,2等、従来技術が開示するような、全て同一のチタン合金で1つの構成部材を作成する場合には、靭性の低下を考慮して硬度の向上には限界(350〜400HV)があった。しかしながら、本実施形態に係るクラッド材の場合には、第1の金属材料(β型チタン合金)61の方を最大限(450〜550HV)に硬化させたとしても、第2の金属材料(α型チタン合金)62の存在によって構造材全体としての靭性が維持できるのである。したがって、本実施形態に係るクラッド材によれば、従来技術に比べて高負荷・長寿命の運動案内装置を実現することができる。
また、本実施形態に係るクラッド材の好適な構成として、図4Aおよび図4Bで示されるように、第2の金属材料(α型チタン合金)62を、軌道レール41の芯材となるように中央位置に配置し、一方の第1の金属材料(β型チタン合金)61については、第2の金属材料(α型チタン合金)62を中心としてその複数の第1の金属材料(β型チタン合金)61が、対称位置に配置されるように構成するようにした。すなわち、図4Aおよび図4Bの例では、第2の金属材料(α型チタン合金)62を中心として、軌道レール41の上方の左右に同一形状をした一対の第1の金属材料(β型チタン合金)61を対向して配置し、軌道レール41の下方の左右にも同一形状をした一対の第1の金属材料(β型チタン合金)61を対向して配置している。このようにして第1の金属材料(β型チタン合金)61を対向配置することにより、軌道レール41全体としての強度バランスが安定することとなり、加工の際の形状出しが非常に容易となるのである。
なお、上述した本実施形態に係るクラッド材により、移動ブロック43を形成することも可能である。図5は、本実施形態に係るクラッド材により形成される移動ブロックを示した縦断面側面図である。図5において示されるように、本実施形態に係る移動ブロック43は、負荷転動体転走面43a…の近傍を硬度の高い第1の金属材料(β型チタン合金)71によって構成し、その他の部分を硬度の低い第2の金属材料(α型チタン合金)72によって構成することができる。なお、図5において例示する移動ブロック43では、負荷転動体転走面43a…の近傍のみに第1の金属材料(β型チタン合金)71が配置されているが、移動ブロック43全体の強度バランスを考慮して、負荷転動体転走面43a…と対向する移動ブロック43の外周面側の位置に第1の金属材料(β型チタン合金)71を配置することも好適である。
(クラッド材の製造方法)
本実施形態に係るクラッド材の製造方法としては、所望の製品形状に応じて様々な方法を採用することが可能であるが、一般に用いられている熱間圧延、冷間圧延、拡散接合、爆発圧接などの方法でクラッド材を作製したのちに成型加工を行うようにしても良いし、異種金属積層板を深絞り加工によって接合と成形を同時に行ってクラッド材を製造する方法を採用しても良い。なお、上述した本実施形態に係る軌道レール41の場合には、α型チタン合金とβ型チタン合金とをろう付けにより密着接合し、約600℃程度に加熱して圧下率60〜80%程度の熱間圧延を行い、その後、全体形状の成型や転動体転走面41aの切削・研削加工を行い、所望の軌道レール41に仕上げる方法を採用している。
本実施形態に係るクラッド材の製造方法としては、所望の製品形状に応じて様々な方法を採用することが可能であるが、一般に用いられている熱間圧延、冷間圧延、拡散接合、爆発圧接などの方法でクラッド材を作製したのちに成型加工を行うようにしても良いし、異種金属積層板を深絞り加工によって接合と成形を同時に行ってクラッド材を製造する方法を採用しても良い。なお、上述した本実施形態に係る軌道レール41の場合には、α型チタン合金とβ型チタン合金とをろう付けにより密着接合し、約600℃程度に加熱して圧下率60〜80%程度の熱間圧延を行い、その後、全体形状の成型や転動体転走面41aの切削・研削加工を行い、所望の軌道レール41に仕上げる方法を採用している。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
例えば、本実施形態に係るクラッド材は、転がり軸受全般や真空中で使用される無潤滑軸受、リニアガイドや直線案内装置、ボールスプライン装置、ボールねじ装置、ローラねじ装置、クロスローラリング等のような、あらゆる転動・摺動動作を伴う運動案内装置に適用することが可能である。そして、例えば、ボールねじ装置のねじ軸やナット部材の転動体転走面近傍、あるいはボールスプライン装置のスプライン軸やスプライン外筒の転動体転走面近傍は、硬度の高い第1の金属材料(β型チタン合金など)61,71によって構成し、その他の部分は硬度の低い第2の金属材料(α型チタン合金など)62,72によって構成することが可能である。このような場合にも、転動体転走面の表面から深さ0.5mm(あるいはそれ以上の深さ)の範囲を硬度の高い第1の金属材料(β型チタン合金など)61,71によって構成したり、第1の金属材料(β型チタン合金など)61,71を複数個対向配置して強度的なバランスを取るように構成したりすることが好適である。
また、上述した実施形態では、硬度の高い第1の金属材料61,71にβ型チタン合金を採用した場合を例示して説明したが、α+β型チタン合金を採用することも可能である。
さらに、第1の金属材料61,71と第2の金属材料62,72の組み合わせについては、β型チタン合金とα型チタン合金、α+β型チタン合金とα型チタン合金の組み合わせだけでなく、例えば、
(1)オ−ステナイト、マルテンサイト、フェライト系ステンレス鋼の組み合わせや、
(2)マルテンサイト系の銅とその他(例えば、フェライト系やオーステナイト系)の銅との組み合わせ、ベリリウム銅やチタン銅とその他(例えば、純銅、黄銅、青銅)の銅合金との組み合わせなどといった、純金属と合金金属との組み合わせ、
(3)アルミニウムとマグネシウム、鉄とチタンといった異種金属同士の組み合わせなど、
様々な組み合わせを採用することが可能である。
(1)オ−ステナイト、マルテンサイト、フェライト系ステンレス鋼の組み合わせや、
(2)マルテンサイト系の銅とその他(例えば、フェライト系やオーステナイト系)の銅との組み合わせ、ベリリウム銅やチタン銅とその他(例えば、純銅、黄銅、青銅)の銅合金との組み合わせなどといった、純金属と合金金属との組み合わせ、
(3)アルミニウムとマグネシウム、鉄とチタンといった異種金属同士の組み合わせなど、
様々な組み合わせを採用することが可能である。
またさらに、クラッド材を構成する第1の金属材料61,71と第2の金属材料62,72の積層数については、何層であっても良い。
以上の様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、請求の範囲の記載から明らかである。また、以上説明したような構成の採用によって、従来では実現できなかった機能を発揮することが可能な全く新しい運動案内装置を提供することができる。
Claims (7)
- 軌道部材と、
前記軌道部材に複数の転動体を介して移動自在に取り付けられる移動部材と、
を備える運動案内装置であって、
前記軌道部材および前記移動部材の少なくとも一方が、クラッド材により構成されていることを特徴とする運動案内装置。 - 請求項1に記載の運動案内装置において、
前記クラッド材は、第1の金属材料と第2の金属材料との複合材料として構成されており、
前記第1の金属材料は、前記第2の金属材料より高硬度であり、さらに、
少なくとも前記複数の転動体と接触する転動体転走面の近傍が、前記第1の金属材料によって構成されていることを特徴とする運動案内装置。 - 請求項2に記載の運動案内装置において、
前記第1の金属材料がβ型チタン合金又はα+β型チタン合金であり、
前記第2の金属材料がα型チタン合金であることを特徴とする運動案内装置。 - 請求項2又は3に記載の運動案内装置において、
前記第2の金属材料は、前記軌道部材又は前記移動部材の芯材となるように配置され、
前記第1の金属材料は、前記第2の金属材料を中心として複数が対称位置に配置されることを特徴とする運動案内装置。 - 第1の金属材料と第2の金属材料との複合材料として構成され、
軌道部材と、前記軌道部材に複数の転動体を介して移動自在に取り付けられる移動部材と、を備える運動案内装置に用いられるクラッド材であって、
前記第1の金属材料は、前記第2の金属材料より高硬度であり、さらに、
少なくとも前記複数の転動体と接触する転動体転走面の近傍が、前記第1の金属材料によって構成されていることを特徴とするクラッド材。 - 請求項5に記載のクラッド材において、
前記第1の金属材料がβ型チタン合金又はα+β型チタン合金であり、
前記第2の金属材料がα型チタン合金であることを特徴とするクラッド材。 - 請求項5又は6に記載のクラッド材において、
前記第2の金属材料は、前記軌道部材又は前記移動部材の芯材となるように配置され、
前記第1の金属材料は、前記第2の金属材料を中心として複数が対称位置に配置されることを特徴とするクラッド材。
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