JPWO2007043715A1 - Rna結合ペプチド - Google Patents
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Abstract
本発明は、HCVゲノム(+)鎖のGUGAAAループへの結合活性を有するRNA結合ペプチドを提供する。また、GUGAAAループで示される塩基配列を含むRNAのうち当該GUGAAAループへの結合活性を有するRNA結合ペプチド、例えば、1:MAFHRNPNTRQRRRSRRAR(配列番号2)2:MAFLRRINARQRRRQRRAR(配列番号3)3:MASYSNARQRRRARRAQGR(配列番号4)で示されるアミノ酸配列を含むペプチド、その誘導体又はこれらの塩を提供する。
Description
本発明は、GUGAAA配列を含むRNAへの結合活性を有するRNA結合ペプチドに関する。
GUGAAA配列は、C型肝炎ウイルスゲノム+鎖の3’非翻訳領域のうち、塩基配列が広く保存されているX領域に含まれている配列である。X領域は長いヘアピン構造をもつSL1、並びに短いヘアピン構造のSL2及びSL3で構成されていると考えられ、GUGAAA配列は、このうちSL2と呼ばれるステムループ構造のループ部分を形成する配列である(Yi,M.and Lemon,SM.JVirol.77,3557−3568,2003)。
HCVゲノムの3’X領域は、3’X領域欠失変異体を培養細胞に導入した実験(Yi,M.and Lemon,SM.J Virol.77,3557−3568,2003)およびチンパンジーへの感染実験(Yanagi,M.et al.Proc Natl Acad Sci USA 96,2291−2295,1999)からHCVゲノムの複製に欠かせないと考えられている。また、ウイルスタンパク質NS5Bは、SL2を含むX領域と相互作用することが知られている。NS5Bタンパク質はRNA依存性RNAポリメラーゼ活性をもち、C型肝炎ウイルスゲノムの複製に重要な役割を果たしている(Oh,JW.et al.J Biol Chem 275,17710−17717,2000)。
これらの知見から、HCVゲノムの複製を当該ループへの結合により阻害することで、HCVの増殖を抑制する事ができる可能性がある。しかしながら、この目的にかなうペプチドまたはタンパク質はNS5B以外に未だ知られていない。
HCVゲノムの3’X領域は、3’X領域欠失変異体を培養細胞に導入した実験(Yi,M.and Lemon,SM.J Virol.77,3557−3568,2003)およびチンパンジーへの感染実験(Yanagi,M.et al.Proc Natl Acad Sci USA 96,2291−2295,1999)からHCVゲノムの複製に欠かせないと考えられている。また、ウイルスタンパク質NS5Bは、SL2を含むX領域と相互作用することが知られている。NS5Bタンパク質はRNA依存性RNAポリメラーゼ活性をもち、C型肝炎ウイルスゲノムの複製に重要な役割を果たしている(Oh,JW.et al.J Biol Chem 275,17710−17717,2000)。
これらの知見から、HCVゲノムの複製を当該ループへの結合により阻害することで、HCVの増殖を抑制する事ができる可能性がある。しかしながら、この目的にかなうペプチドまたはタンパク質はNS5B以外に未だ知られていない。
本発明は、RNA結合ペプチドを提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するため、鋭意研究を行った結果、GUGAAAループ配列を有する塩基配列に結合することができるペプチドを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1)GUGAAAで示される塩基配列を含むRNAのうち当該GUGAAA配列の全部又は一部に結合することができるペプチド、その誘導体又はこれらの塩。
(2)以下の(a)又は(b)のペプチド、その誘導体又はこれらの塩。
次式I:
Asn−X−Arg−Gln−X−Arg−Arg−X−Arg−Arg−Ala (I)
(Xは任意のアミノ酸残基を表す。)
で示されるアミノ酸配列を含むペプチド、その誘導体又はこれらの塩
(b)上記式Iで示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、GUGAAAで示される塩基配列を含むRNAのうち当該GUGAAA配列の全部又は一部に結合することができるペプチド、その誘導体又はこれらの塩。
(3)Argが少なくとも5残基以上含まれることを特徴とする(1)又は(2)記載のペプチド、その誘導体又はこれらの塩。
(4)アミノ酸配列の一部に化学修飾が施された、(1)〜(3)のいずれか1項に記載のペプチド、その誘導体又はこれらの塩。
(5)(2)記載のペプチドをコードするポリヌクレオチド。
(6)DNAである(5)記載のポリヌクレオチド。
(7)(5)又は(6)記載のポリヌクレオチドを含有する組換えベクター。
(8)(7)記載の組換えベクターを含む形質転換体。
(9)(1)〜(4)のいずれか1項に記載のペプチド、その誘導体又はこれらの塩を含む医薬組成物。
(10)(1)〜(4)のいずれか1項に記載のペプチド、その誘導体又はこれらの塩を含むHCV検出用試薬。
(11)(1)〜(4)のいずれか1項に記載のペプチド、その誘導体又はこれらの塩を含むC型肝炎の診断薬。
(12)抗ウイルス剤として使用するための(9)記載の医薬組成物。
(13)抗HCV剤として使用するための(9)記載の医薬組成物。
(14)CGCUGUGAAAGGUGで示される塩基配列を有するRNA。
(15)GUGAAA配列がターミナルループ配列である(14)記載のRNA。
(16)(14)又は(15)記載のRNAをコードするDNA。
(17)(16)記載のDNAを含む組換えベクター。
(18)(17)記載の組換えベクターを含む形質転換体。
(19)(1)〜(4)のいずれか1項に記載のペプチド、その誘導体又はこれらの塩と、これに結合するRNAとの複合体。
(20)(19)記載の複合体を含む医薬組成物。
(21)(19)記載の複合体を含むHCVの研究用試薬。
(22)(1)〜(4)のいずれか1項に記載のペプチド、その誘導体又はこれらの塩を含む、RNAの担体。
(23)(1)〜(4)のいずれか1項に記載のペプチド、その誘導体又はこれらの塩を含む、RNAの機能促進剤。
(24)(1)〜(4)のいずれか1項に記載のペプチド、その誘導体又はこれらの塩とRNAとを結合させることを特徴とする、当該RNAの標的となる核酸又はタンパク質の機能を抑制する方法。
本発明者は、上記課題を解決するため、鋭意研究を行った結果、GUGAAAループ配列を有する塩基配列に結合することができるペプチドを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1)GUGAAAで示される塩基配列を含むRNAのうち当該GUGAAA配列の全部又は一部に結合することができるペプチド、その誘導体又はこれらの塩。
(2)以下の(a)又は(b)のペプチド、その誘導体又はこれらの塩。
次式I:
Asn−X−Arg−Gln−X−Arg−Arg−X−Arg−Arg−Ala (I)
(Xは任意のアミノ酸残基を表す。)
で示されるアミノ酸配列を含むペプチド、その誘導体又はこれらの塩
(b)上記式Iで示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、GUGAAAで示される塩基配列を含むRNAのうち当該GUGAAA配列の全部又は一部に結合することができるペプチド、その誘導体又はこれらの塩。
(3)Argが少なくとも5残基以上含まれることを特徴とする(1)又は(2)記載のペプチド、その誘導体又はこれらの塩。
(4)アミノ酸配列の一部に化学修飾が施された、(1)〜(3)のいずれか1項に記載のペプチド、その誘導体又はこれらの塩。
(5)(2)記載のペプチドをコードするポリヌクレオチド。
(6)DNAである(5)記載のポリヌクレオチド。
(7)(5)又は(6)記載のポリヌクレオチドを含有する組換えベクター。
(8)(7)記載の組換えベクターを含む形質転換体。
(9)(1)〜(4)のいずれか1項に記載のペプチド、その誘導体又はこれらの塩を含む医薬組成物。
(10)(1)〜(4)のいずれか1項に記載のペプチド、その誘導体又はこれらの塩を含むHCV検出用試薬。
(11)(1)〜(4)のいずれか1項に記載のペプチド、その誘導体又はこれらの塩を含むC型肝炎の診断薬。
(12)抗ウイルス剤として使用するための(9)記載の医薬組成物。
(13)抗HCV剤として使用するための(9)記載の医薬組成物。
(14)CGCUGUGAAAGGUGで示される塩基配列を有するRNA。
(15)GUGAAA配列がターミナルループ配列である(14)記載のRNA。
(16)(14)又は(15)記載のRNAをコードするDNA。
(17)(16)記載のDNAを含む組換えベクター。
(18)(17)記載の組換えベクターを含む形質転換体。
(19)(1)〜(4)のいずれか1項に記載のペプチド、その誘導体又はこれらの塩と、これに結合するRNAとの複合体。
(20)(19)記載の複合体を含む医薬組成物。
(21)(19)記載の複合体を含むHCVの研究用試薬。
(22)(1)〜(4)のいずれか1項に記載のペプチド、その誘導体又はこれらの塩を含む、RNAの担体。
(23)(1)〜(4)のいずれか1項に記載のペプチド、その誘導体又はこれらの塩を含む、RNAの機能促進剤。
(24)(1)〜(4)のいずれか1項に記載のペプチド、その誘導体又はこれらの塩とRNAとを結合させることを特徴とする、当該RNAの標的となる核酸又はタンパク質の機能を抑制する方法。
図1は、レポータープラスミドに組み込んだHCV3’X−tail(+)SL2 terminal loopのRNA2次構造の図である。
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本明細書において引用した刊行物及び特許文献は、参照として本明細書に組み込むものとする。
本発明は、GUGAAAで示される塩基配列を含むRNAのうち、当該GUGAAA配列の全部又は一部に結合することができるRNA結合ペプチドに関する。本発明のペプチドは、アルギニンに富むペプチドであり、当該ペプチドによって、例えばGUGAAA配列を含むRNA(例えばHCVゲノムRNA(+)鎖)の機能を阻害するというものである。
1.GUGAAAループを含む核酸
本発明者は、HCVゲノム(+)鎖のGUGAAAループに結合することができるペプチドが抗ウイルス剤等の医薬品として利用できるものと考え、鋭意努力の結果、本発明を完成するに至った。
一般に、ワトソン−クリックの塩基対からなる核酸の二重らせん構造は、塩基間の水素結合と、塩基対間のスタッキング相互作用によって安定化される。さらに、核酸は、この二重鎖以外にも非塩基対部位や多重鎖構造を形成する。非塩基対部位は、塩基対を形成していない部位と、塩基対を形成している部位に分類され、塩基対を形成していない部位として、バルジアウト、インターナルループ、ターミナルミスマッチ、ヘアピンループ、ダングリングエンドなどが例示され、塩基対を形成する部位として、ミスマッチ塩基対などが例示される。本発明においては、このような核酸のうちターミナルミスマッチを含む核酸を提供する(図1)。
図1に例示するとおり、GUGAAAループを含む核酸は、GUGAAAループとステム配列により構成され、枠で囲った「GUGAAA」部分の配列がGUGAAAループであり、ターミナルループ(ターミナルミスマッチ)を形成する。ターミナルループの配列に連結するステム配列は、図1において5’方向から3’方向に向かって「CCCGCU」で示される塩基配列とその相補鎖「GGUGGG」により形成されるステム配列である。
図1は、具体的にRNAの塩基配列(配列番号9)を例示してあるが、DNA配列であってもよい。また、図1は本発明を説明するための例示であって、図1に示す塩基配列に限定されるものではない。
ステム配列の長さは、ステムを形成する限り互いにワトソン−クリックの相補塩基対(例えばAに対してU又はT、Gに対してC)を形成する関係にある必要はなく、力学的エネルギーの関係により非ワトソン−クリック塩基対による相補鎖を形成すればよい。ステム配列の長さは、特に限定されるものではないが、例えば3〜20塩基、好ましくは3〜10塩基、より好ましくは3〜8塩基、さらに好ましくは4塩基である。本発明において、ステム配列は、図1において5’方向から3’方向に向かって「CGCU」で示される4塩基の塩基配列とその相補鎖「GGUG」により形成されることが好ましい。
本発明においては、発現させたときに上記ターミナルループとステムを形成するように塩基配列を設計し、これをベクターに組み込んで、抗転写終結反応を用いた蛋白RNA相互作用検出系に供することができる。
2.GUGAAAループの全部又は一部に結合することができるペプチド又はその塩
本発明のペプチドは、少なくとも次式I:
Asn−X−Arg−Gln−X−Arg−Arg−X−Arg−Arg−Ala (I)
で示されるアミノ酸配列(配列番号1)を含むペプチド、その誘導体又はこれらの塩である。
上記ペプチドはRNA結合ペプチドの一つであり、GUGAAAループの全部又は一部に結合することができる。なお、本明細書において、アミノ酸表記は「R」(アルギニン)、「Q」(グルタミン)などの1文字表記をする場合もある。Xは任意のアミノ酸残基を表す。任意のアミノ酸残基は、20種類のアミノ酸残基(Ala,Arg,Asp,Asn,Cys,Gln,Glu,Gly,His,Ile,Leu,Lys,Met,Phe,Pro,Ser,Thr,Trp,Tyr,Val)から選ばれる。
本発明において、「ペプチド」とは、2個以上のアミノ酸がペプチド結合によって結合したものを意味し、オリゴペプチド、ポリペプチドなどが含まれる。また、ポリペプチドが立体構造を形成したものはタンパク質と呼ばれるが、本発明においては、このようなタンパク質も上記「ペプチド」に含まれる。従って、本発明のRNA結合ペプチドは、GUGAAAループの全部又は一部に結合することができる限り、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質のいずれをも意味するものである。
本発明のペプチドは、上記式のアミノ酸配列を含み、好ましくは11〜23個、さらに好ましくは11〜19個のアミノ酸配列を有する。
より具体的には、本発明のペプチドは、
(1):MAFHRNPNTRQRRRSRRAR(配列番号2)
(2):MAFLRRINARQRRRQRRAR(配列番号3)
(3):MASYSNARQRRRARRAQGR(配列番号4)
で示されるアミノ酸配列又はその変異体を含む。
本発明のペプチド中のいくつかのアミノ酸はアルギニンに富むドメイン(「アルギニンリッチドメイン」という)を形成する。例えば、上記配列番号2〜4に示す19アミノ酸残基を有するペプチドは、その中の5番目から19番目がアルギニンリッチドメインを形成する。そして、本発明のペプチドにおいて、アルギニンの数は、少なくとも5個である。
また、本発明のペプチドがGUGAAAループの全部又は一部に結合することができる限り、当該アミノ酸配列の1個又は数個のアミノ酸に欠失、置換、付加等の変異が生じてもよい(これらを本発明において「変異体」という)。例えば、式Iで示されるアミノ酸配列(配列番号1)又は配列番号2〜4で表わされるアミノ酸配列の1個又は数個、好ましくは1〜9個、さらに好ましくは1〜5個のアミノ酸が欠失してもよく、式Iで示されるアミノ酸配列又は配列番号2〜4で表わされるアミノ酸配列に1個又は数個、好ましくは1〜9個、さらに好ましくは1〜5個のアミノ酸が付加してもよく、あるいは、式Iで示されるアミノ酸配列又は配列番号2〜4で表わされるアミノ酸配列の1個又は数個、好ましくは1〜9個、さらに好ましくは1〜5個のアミノ酸が他のアミノ酸に置換してもよい。また、式Iで示されるアミノ酸配列又は配列番号2〜4に示されるアミノ酸配列を含む11〜23残基の長さのアミノ酸配列において、上記欠失、置換、付加等の変異を含むペプチドも、GUGAAAループの全部又は一部に結合することができる限り、本発明のペプチドに含まれる。
本発明のペプチドとGUGAAAループの全部又は一部との結合活性は、抗転写終結反応を用いた細胞内蛋白RNA相互作用検出系おけるレポーター遺伝子の発現量を基に、既知のペプチドとの相対的定量化を行い評価することにより測定することができる。この測定系において、本発明のペプチドの解離定数は1μM〜10nMである。
本発明は、上記ペプチドのほかにその誘導体も含まれる。「誘導体」とは、本発明のペプチドを起源とし、3以上のアミノ酸にまでアミノ酸の数を減らしたり、一部のアミノ酸を非天然の物を含んだ他のアミノ酸に置換したものをいう。また、上記誘導体は、天然物の一部を修飾したものであっても、化学合成により合成された修飾残基を含むペプチドであってもよい。
本発明のペプチドは、アミノ酸配列の一部に化学修飾が施されたものも含む。「化学修飾」とは、化学試薬をタンパク質に反応させ、主にアミノ酸残基側鎖の化学構造を変えることをいう。例えば、化学修飾には、本発明のペプチドの活性部位又は活性部位近傍に存在すると予想されるアミノ酸を特異的に修飾する試薬(例えばポリエチレングリコール)を反応させる方法などが採用される。化学修飾のためにアフィニティラベルを行ってもよい。また、化学修飾体にはアミノ酸のα炭素をメチル化したものも含む。化学修飾法は、当分野において周知である(大野素徳・金岡祐一・崎山文夫・前田浩著、生物化学実験法12、蛋白質の化学修飾(上)、学会出版センター)。
なお、化学修飾されたアミノ酸配列を含むペプチドの修飾部分は、ペプチド本来の活性には影響せず、他の効果として作用する(Yamaguchi,H.et al.,Biosci.Biotechnol.Biochem.,67(10),2269−2272,2003)。
置換、欠失等の変異が導入されているかどうかは、アミノ酸配列の配列決定、分子進化的工学やX線やNMRなどによる構造解析を用いて確認することができる。
また、本発明のペプチドの誘導体には、そのレトロエナンチオマーも含む。「レトロエナンチオマー」とは、上記ペプチドのアミノ酸配列の向きが逆になること(鏡像体を形成すること)を意味する。すなわち、ペプチドのN末端がC末端となり、C末端がN末端となり、かつ各アミノ酸がDアミノ酸によって構成されている配列となることを意味する。このようなレトロエナンチオマーも、GUGAAAループの全部又は一部の配列への結合活性を有する限り本発明に含まれる。
さらに、本発明は、上記ペプチド(例えば式Iや配列番号2〜4に示すアミノ酸配列を含むペプチド)、その変異体、又はその誘導体を構成するアミノ酸配列の65%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上を含むペプチド、その誘導体又はこれらの塩を提供する。上記65%以上の領域としては、例えば配列番号2〜4に示す配列のうち、5番目〜19番目(アルギニンリッチドメイン)の領域などが挙げられる。また、配列番号2〜4に示すアミノ酸配列のうち、70%以上、80%以上、90%以上又は95%以上のアミノ酸の領域を例示することができる。
上記のとおり本発明のペプチドのアミノ酸配列が決定されると、その後は、当該アミノ酸配列をコードするDNAを構築し、これを発現させることにより、あるいは上記ペプチドを化学合成することにより、得ることができる。
本発明のペプチドの塩としては、生理学的に許容される酸付加塩又は塩基性塩が好ましい。酸付加塩としては、例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸などの無機酸との塩、あるいは酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸などの有機酸との塩が挙げられる。塩基性塩としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化マグネシウムなどの無機塩基との塩、あるいはカフェイン、ピペリジン、トリメチルアミン、ピリジンなどの有機塩基との塩が挙げられる。
塩は、塩酸などの酸、あるいは水酸化ナトリウムなどの塩基を用いて調製することができる。例えば、水中、又はメタノール、エタノール若しくはジオキサンなどの不活性な水混和性有機溶媒を含む液体中で、標準的なプロトコルを用いて処理することにより調製し得る。
3.ペプチドの化学合成
本発明のペプチドの化学合成を行う場合は、ペプチドの合成の周知方法によって合成できる。例えば、アジド法、酸クロライド法、酸無水物法、混合酸無水物法、DCC法、活性エステル法、カルボイミダゾール法、酸化還元法等が挙げられる。また、その合成は、固相合成法及び液相合成法のいずれをも適用することができる。市販のペプチド合成装置(島津製作所製PSSM−8など)を使用してもよい。
反応後は、溶媒抽出、蒸留、カラムクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、再結晶などの通常の精製法を組み合わせて本発明のペプチドを精製することができる。
4.ペプチドをコードするポリヌクレオチド
本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドは、本発明のペプチドを遺伝子工学的に設計し、得ることができる。例えば、本発明のペプチドのアミノ酸配列をもとに塩基配列を設計し、合成すればよい。ポリヌクレオチドとしてはDNA、RNAなどが挙げられるが、DNAであることが好ましい。
変異体のペプチドを遺伝子工学的に得るには、配列番号1〜4に示すアミノ酸配列をコードするポリペプチドを、当分野において周知の部位特異的突然変異誘発法によって変異させることにより作製することができる。市販の部位特異的突然変異誘発用キットを用いてもよい(例えばTaKaRa Site−Directed Mutagenesis System(Mutan−K、Mutan−Super Express Km等:タカラバイオ社製))。
さらに、本発明においては、本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドに相補的な配列に対し、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、GUGAAAで示される塩基配列を含むRNAのうち当該GUGAAA配列の全部又は一部への結合活性を有するペプチドをコードするポリヌクレオチドも、本発明に含まれる。「ストリンジェントな条件」とは、ハイブリダイゼーション後の洗浄時の条件であって塩濃度が300〜1000mM、温度が40〜75℃、好ましくは塩濃度が600〜900mM、温度が65℃の条件を意味する。例えば、2×SSCで50℃等の条件を挙げることができる。当業者であれば、このようなバッファーの塩濃度、温度等の条件に加えて、反応時間等の諸条件を加味し、本発明のポリヌクレオチドを得るための条件を設定することができる。ハイブリダイゼーション法の詳細な手順については、Molecular Cloning,A Laboratory Manual 2nd ed.(Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)等を参照することができる。
さらに、本発明においては、GUGAAA配列を含むRNA、例えばCGCUGUGAAAGGUG(配列番号5)で示される塩基配列を有するRNAが提供される。このRNAは、GUGAAA配列がターミナルループを形成し、GUGAAA配列の全部又は一部に本発明のペプチドが結合することができる。当該RNAをコードするDNAも本発明に含まれる。
5.組換えベクター、形質転換体及びペプチド
タンパク質発現用組換えベクターは、上記ポリヌクレオチド又はDNAを適当なベクターに連結することにより得ることができ、形質転換体は、本発明の組換えベクターを、目的遺伝子が発現し得るように宿主中に導入することにより得ることができる(Sambrook J and Russel D.Molecular Cloning,A Laboratory Manual,3rd edition,CSHL Press,2001)。
ベクターには、宿主微生物で自律的に増殖し得るファージ又はプラスミドが使用される。プラスミドDNAとしては、大腸菌、枯草菌又は酵母由来のプラスミドなどが挙げられ、ファージDNAとしてはλファージが挙げられる。さらに、動物ウイルス、昆虫ウイルスベクターを用いることもできる。
組換えベクターの作製は、精製されたDNAを適当な制限酵素で切断し、適当なベクターDNAの制限酵素部位等に挿入してベクターに連結すればよい。
形質転換に使用する宿主としては、目的の遺伝子を発現できるものであれば特に限定されるものではない。例えば、細菌(大腸菌、枯草菌等)、酵母、動物細胞(COS細胞、CHO細胞等)、昆虫細胞が挙げられる。
宿主への組換えベクターの導入方法は公知であり、任意の方法(例えばカルシウムイオンを用いる方法、エレクトロポレーション法、スフェロプラスト法、酢酸リチウム法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法等)が挙げられる。
本発明において、本発明のペプチドは、前記形質転換体を培養し、その培養物から採取することにより得ることもできる。「培養物」とは、(a)培養上清、(b)培養細胞若しくは培養菌体又はその破砕物のいずれをも意味するものである。
培養法は、当分野において周知である(前記Sambrookら、Molecular Cloningを参照)。
培養後、目的ペプチドが菌体内又は細胞内に生産される場合には、菌体又は細胞を破砕することによりペプチドを抽出する。また、目的ペプチドが菌体外又は細胞外に生産される場合には、培養液をそのまま使用するか、遠心分離等により菌体又は細胞を除去する。その後、タンパク質の単離精製に用いられる一般的な生化学的方法、例えば硫酸アンモニウム沈殿、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等を単独で又は適宜組み合わせて用いることにより、目的のペプチドを単離精製することができる。
本発明においては、in vitro翻訳によるペプチド合成を採用することができる。この場合は、RNAを鋳型にする方法とDNAを鋳型にする方法(転写/翻訳)の2通りの方法を用いることができる。鋳型RNAとしては、前記4項に記載のポリヌクレオチドが挙げられ、鋳型DNAとしては、翻訳開始点の上流にプロモーターとリボゾーム結合部位を有している上記ポリヌクレオチド、あるいは翻訳開始点の上流に転写に必要なプロモーター等が組み込まれたポリヌクレオチドが挙げられる。in vitro翻訳システムは、市販のシステム、例えばExpresswayTMシステム(Invitrogen社)、PURESYSTEM(登録商標;ポストゲノム研究所)、TNTシステム(登録商標;Promega社)などを用いることができる。in vitro翻訳システムによるペプチド合成後は、上記の一般的な生化学的方法を単独又は組み合わせることにより、目的のペプチドを単離精製することができる。
6.GUGAAAループ結合ペプチド又はその塩を含む医薬組成物
さらに、本発明のペプチドは、細胞又はウイルスの増殖を抑制することができる。従って、本発明のペプチドを抗生物質、抗菌剤、抗癌剤又は抗ウイルス剤などの医薬組成物として、または実験用試薬として、使用することができる。
本発明のペプチドを例えばHCVの増殖抑制剤又は感染予防剤(抗HCV剤)として使用する場合は、HCVウイルス陽性の健常者に対して治療又は予防を特異目的として用いることができる。また、健常者に対して、感染予防の目的で使用することができる。これらの疾患は、単独であっても、併発したものであっても、上記以外の他の疾病を併発したものであってもよく、いずれも本発明のペプチドを使用する対象とすることができる。
また、本発明の医薬組成物は、経口又は非経口的に全身又は局所投与することができる。本発明の医薬組成物を経口投与する場合は、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、丸剤、トローチ剤、内用水剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤等のいずれのものであってもよく、使用する際に再溶解させる乾燥生成物にしてもよい。また、本発明の医薬組成物を非経口投与する場合は、静脈内注射(点滴を含む)、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射、坐剤などの製剤形態を選択することができ、注射用製剤の場合は単位投与量アンプル又は多投与量容器の状態で提供される。
これらの各種製剤は、製剤上通常用いられる賦形剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、潤滑剤、界面活性剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、溶解補助剤、防腐剤、矯味矯臭剤、無痛化剤、安定化剤、等張化剤等などを適宜選択し、常法により製造することができる。
上記各種製剤は、医薬的に許容される担体又は添加物を共に含むものであってもよい。このような担体及び添加物の例として、水、医薬的に許容される有機溶剤、コラーゲン、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、寒天、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン、マンニトール、ソルビトール、ラクトースなどが挙げられる。使用される添加物は、本発明の剤型に応じて上記の中から適宜又は組み合わせて選択される。
本発明の医薬組成物の投与量は、投与対象の年齢、投与経路、投与回数により異なり、広範囲に変えることができる。本発明のペプチドの有効量と適切な希釈剤及び薬理学的に使用し得る担体との組合せとして投与される有効量は、10〜1000mg/body、好ましくは50〜500mg/bodyの範囲の投与量を選ぶことができ、1日1回から数回に分けて1日以上投与される。
7.HCVの検出用試薬および診断薬
本発明のペプチドは、HCVのSL2領域に結合することができるため、HCVの検出用試薬又はC型肝炎の診断薬として使用することができる。例えば、被験者から採取した血液から血漿を得、これと本発明のペプチドとを反応させる。本発明のペプチドに蛍光標識(フルオレセイン、ローダミン等)又は放射標識等(32P、35S)をしておくと、標識によりシグナルが得られた被検試料はHCV陽性又はC型肝炎であると判定することができる。
8.RNA結合ペプチドとRNAの複合体
本発明は、本発明のペプチドとそれに結合するRNAとの複合体を提供する。本発明の複合体は、生理作用を持つ当該RNAの活性をより高くさせるために使用することができる。言い換えると、複合体の一部を構成する本発明のペプチド、その誘導体又はこれらの塩は、RNAの担体として機能し、この担体の存在によって、当該RNAの機能を上昇(促進)させることが可能となる。従って、本発明のペプチド、その誘導体又はこれらの塩は、RNAの機能促進剤として有用である。
例えば、特定の遺伝子の発現を抑制しうるsiRNAとしてデザインされたオリゴRNA二重鎖を結合するリンカーにGUGAAAループを付加し、本発明のペプチドを結合させると、RNAの活性を更に向上させることができる。具体的には、本発明のペプチドにsiRNAを結合させると、そのsiRNAの機能が促進される。その結果、当該siRNAの標的となる核酸又はタンパク質の機能を抑制することが可能である。従って、本発明においては、上記ペプチド、その誘導体又はこれらの塩とRNAとを結合させることにより、当該RNAの標的となる核酸又はタンパク質の機能を抑制する方法を提供する。
本発明の複合体は、標的となる特定の遺伝子の機能を抑制することができる。従って、本発明の複合体を抗生物質、抗菌剤、抗癌剤又は抗ウイルス剤などの医薬組成物として、または実験用試薬として、使用することができる。本発明の複合体を医薬組成物として使用するときの使用形態は前記6項で説明したものと同様であり、本発明の複合体を試薬として使用するときの使用形態は、前記7項で説明したものと同様である、
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
本発明は、GUGAAAで示される塩基配列を含むRNAのうち、当該GUGAAA配列の全部又は一部に結合することができるRNA結合ペプチドに関する。本発明のペプチドは、アルギニンに富むペプチドであり、当該ペプチドによって、例えばGUGAAA配列を含むRNA(例えばHCVゲノムRNA(+)鎖)の機能を阻害するというものである。
1.GUGAAAループを含む核酸
本発明者は、HCVゲノム(+)鎖のGUGAAAループに結合することができるペプチドが抗ウイルス剤等の医薬品として利用できるものと考え、鋭意努力の結果、本発明を完成するに至った。
一般に、ワトソン−クリックの塩基対からなる核酸の二重らせん構造は、塩基間の水素結合と、塩基対間のスタッキング相互作用によって安定化される。さらに、核酸は、この二重鎖以外にも非塩基対部位や多重鎖構造を形成する。非塩基対部位は、塩基対を形成していない部位と、塩基対を形成している部位に分類され、塩基対を形成していない部位として、バルジアウト、インターナルループ、ターミナルミスマッチ、ヘアピンループ、ダングリングエンドなどが例示され、塩基対を形成する部位として、ミスマッチ塩基対などが例示される。本発明においては、このような核酸のうちターミナルミスマッチを含む核酸を提供する(図1)。
図1に例示するとおり、GUGAAAループを含む核酸は、GUGAAAループとステム配列により構成され、枠で囲った「GUGAAA」部分の配列がGUGAAAループであり、ターミナルループ(ターミナルミスマッチ)を形成する。ターミナルループの配列に連結するステム配列は、図1において5’方向から3’方向に向かって「CCCGCU」で示される塩基配列とその相補鎖「GGUGGG」により形成されるステム配列である。
図1は、具体的にRNAの塩基配列(配列番号9)を例示してあるが、DNA配列であってもよい。また、図1は本発明を説明するための例示であって、図1に示す塩基配列に限定されるものではない。
ステム配列の長さは、ステムを形成する限り互いにワトソン−クリックの相補塩基対(例えばAに対してU又はT、Gに対してC)を形成する関係にある必要はなく、力学的エネルギーの関係により非ワトソン−クリック塩基対による相補鎖を形成すればよい。ステム配列の長さは、特に限定されるものではないが、例えば3〜20塩基、好ましくは3〜10塩基、より好ましくは3〜8塩基、さらに好ましくは4塩基である。本発明において、ステム配列は、図1において5’方向から3’方向に向かって「CGCU」で示される4塩基の塩基配列とその相補鎖「GGUG」により形成されることが好ましい。
本発明においては、発現させたときに上記ターミナルループとステムを形成するように塩基配列を設計し、これをベクターに組み込んで、抗転写終結反応を用いた蛋白RNA相互作用検出系に供することができる。
2.GUGAAAループの全部又は一部に結合することができるペプチド又はその塩
本発明のペプチドは、少なくとも次式I:
Asn−X−Arg−Gln−X−Arg−Arg−X−Arg−Arg−Ala (I)
で示されるアミノ酸配列(配列番号1)を含むペプチド、その誘導体又はこれらの塩である。
上記ペプチドはRNA結合ペプチドの一つであり、GUGAAAループの全部又は一部に結合することができる。なお、本明細書において、アミノ酸表記は「R」(アルギニン)、「Q」(グルタミン)などの1文字表記をする場合もある。Xは任意のアミノ酸残基を表す。任意のアミノ酸残基は、20種類のアミノ酸残基(Ala,Arg,Asp,Asn,Cys,Gln,Glu,Gly,His,Ile,Leu,Lys,Met,Phe,Pro,Ser,Thr,Trp,Tyr,Val)から選ばれる。
本発明において、「ペプチド」とは、2個以上のアミノ酸がペプチド結合によって結合したものを意味し、オリゴペプチド、ポリペプチドなどが含まれる。また、ポリペプチドが立体構造を形成したものはタンパク質と呼ばれるが、本発明においては、このようなタンパク質も上記「ペプチド」に含まれる。従って、本発明のRNA結合ペプチドは、GUGAAAループの全部又は一部に結合することができる限り、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質のいずれをも意味するものである。
本発明のペプチドは、上記式のアミノ酸配列を含み、好ましくは11〜23個、さらに好ましくは11〜19個のアミノ酸配列を有する。
より具体的には、本発明のペプチドは、
(1):MAFHRNPNTRQRRRSRRAR(配列番号2)
(2):MAFLRRINARQRRRQRRAR(配列番号3)
(3):MASYSNARQRRRARRAQGR(配列番号4)
で示されるアミノ酸配列又はその変異体を含む。
本発明のペプチド中のいくつかのアミノ酸はアルギニンに富むドメイン(「アルギニンリッチドメイン」という)を形成する。例えば、上記配列番号2〜4に示す19アミノ酸残基を有するペプチドは、その中の5番目から19番目がアルギニンリッチドメインを形成する。そして、本発明のペプチドにおいて、アルギニンの数は、少なくとも5個である。
また、本発明のペプチドがGUGAAAループの全部又は一部に結合することができる限り、当該アミノ酸配列の1個又は数個のアミノ酸に欠失、置換、付加等の変異が生じてもよい(これらを本発明において「変異体」という)。例えば、式Iで示されるアミノ酸配列(配列番号1)又は配列番号2〜4で表わされるアミノ酸配列の1個又は数個、好ましくは1〜9個、さらに好ましくは1〜5個のアミノ酸が欠失してもよく、式Iで示されるアミノ酸配列又は配列番号2〜4で表わされるアミノ酸配列に1個又は数個、好ましくは1〜9個、さらに好ましくは1〜5個のアミノ酸が付加してもよく、あるいは、式Iで示されるアミノ酸配列又は配列番号2〜4で表わされるアミノ酸配列の1個又は数個、好ましくは1〜9個、さらに好ましくは1〜5個のアミノ酸が他のアミノ酸に置換してもよい。また、式Iで示されるアミノ酸配列又は配列番号2〜4に示されるアミノ酸配列を含む11〜23残基の長さのアミノ酸配列において、上記欠失、置換、付加等の変異を含むペプチドも、GUGAAAループの全部又は一部に結合することができる限り、本発明のペプチドに含まれる。
本発明のペプチドとGUGAAAループの全部又は一部との結合活性は、抗転写終結反応を用いた細胞内蛋白RNA相互作用検出系おけるレポーター遺伝子の発現量を基に、既知のペプチドとの相対的定量化を行い評価することにより測定することができる。この測定系において、本発明のペプチドの解離定数は1μM〜10nMである。
本発明は、上記ペプチドのほかにその誘導体も含まれる。「誘導体」とは、本発明のペプチドを起源とし、3以上のアミノ酸にまでアミノ酸の数を減らしたり、一部のアミノ酸を非天然の物を含んだ他のアミノ酸に置換したものをいう。また、上記誘導体は、天然物の一部を修飾したものであっても、化学合成により合成された修飾残基を含むペプチドであってもよい。
本発明のペプチドは、アミノ酸配列の一部に化学修飾が施されたものも含む。「化学修飾」とは、化学試薬をタンパク質に反応させ、主にアミノ酸残基側鎖の化学構造を変えることをいう。例えば、化学修飾には、本発明のペプチドの活性部位又は活性部位近傍に存在すると予想されるアミノ酸を特異的に修飾する試薬(例えばポリエチレングリコール)を反応させる方法などが採用される。化学修飾のためにアフィニティラベルを行ってもよい。また、化学修飾体にはアミノ酸のα炭素をメチル化したものも含む。化学修飾法は、当分野において周知である(大野素徳・金岡祐一・崎山文夫・前田浩著、生物化学実験法12、蛋白質の化学修飾(上)、学会出版センター)。
なお、化学修飾されたアミノ酸配列を含むペプチドの修飾部分は、ペプチド本来の活性には影響せず、他の効果として作用する(Yamaguchi,H.et al.,Biosci.Biotechnol.Biochem.,67(10),2269−2272,2003)。
置換、欠失等の変異が導入されているかどうかは、アミノ酸配列の配列決定、分子進化的工学やX線やNMRなどによる構造解析を用いて確認することができる。
また、本発明のペプチドの誘導体には、そのレトロエナンチオマーも含む。「レトロエナンチオマー」とは、上記ペプチドのアミノ酸配列の向きが逆になること(鏡像体を形成すること)を意味する。すなわち、ペプチドのN末端がC末端となり、C末端がN末端となり、かつ各アミノ酸がDアミノ酸によって構成されている配列となることを意味する。このようなレトロエナンチオマーも、GUGAAAループの全部又は一部の配列への結合活性を有する限り本発明に含まれる。
さらに、本発明は、上記ペプチド(例えば式Iや配列番号2〜4に示すアミノ酸配列を含むペプチド)、その変異体、又はその誘導体を構成するアミノ酸配列の65%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上を含むペプチド、その誘導体又はこれらの塩を提供する。上記65%以上の領域としては、例えば配列番号2〜4に示す配列のうち、5番目〜19番目(アルギニンリッチドメイン)の領域などが挙げられる。また、配列番号2〜4に示すアミノ酸配列のうち、70%以上、80%以上、90%以上又は95%以上のアミノ酸の領域を例示することができる。
上記のとおり本発明のペプチドのアミノ酸配列が決定されると、その後は、当該アミノ酸配列をコードするDNAを構築し、これを発現させることにより、あるいは上記ペプチドを化学合成することにより、得ることができる。
本発明のペプチドの塩としては、生理学的に許容される酸付加塩又は塩基性塩が好ましい。酸付加塩としては、例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸などの無機酸との塩、あるいは酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸などの有機酸との塩が挙げられる。塩基性塩としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化マグネシウムなどの無機塩基との塩、あるいはカフェイン、ピペリジン、トリメチルアミン、ピリジンなどの有機塩基との塩が挙げられる。
塩は、塩酸などの酸、あるいは水酸化ナトリウムなどの塩基を用いて調製することができる。例えば、水中、又はメタノール、エタノール若しくはジオキサンなどの不活性な水混和性有機溶媒を含む液体中で、標準的なプロトコルを用いて処理することにより調製し得る。
3.ペプチドの化学合成
本発明のペプチドの化学合成を行う場合は、ペプチドの合成の周知方法によって合成できる。例えば、アジド法、酸クロライド法、酸無水物法、混合酸無水物法、DCC法、活性エステル法、カルボイミダゾール法、酸化還元法等が挙げられる。また、その合成は、固相合成法及び液相合成法のいずれをも適用することができる。市販のペプチド合成装置(島津製作所製PSSM−8など)を使用してもよい。
反応後は、溶媒抽出、蒸留、カラムクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、再結晶などの通常の精製法を組み合わせて本発明のペプチドを精製することができる。
4.ペプチドをコードするポリヌクレオチド
本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドは、本発明のペプチドを遺伝子工学的に設計し、得ることができる。例えば、本発明のペプチドのアミノ酸配列をもとに塩基配列を設計し、合成すればよい。ポリヌクレオチドとしてはDNA、RNAなどが挙げられるが、DNAであることが好ましい。
変異体のペプチドを遺伝子工学的に得るには、配列番号1〜4に示すアミノ酸配列をコードするポリペプチドを、当分野において周知の部位特異的突然変異誘発法によって変異させることにより作製することができる。市販の部位特異的突然変異誘発用キットを用いてもよい(例えばTaKaRa Site−Directed Mutagenesis System(Mutan−K、Mutan−Super Express Km等:タカラバイオ社製))。
さらに、本発明においては、本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドに相補的な配列に対し、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、GUGAAAで示される塩基配列を含むRNAのうち当該GUGAAA配列の全部又は一部への結合活性を有するペプチドをコードするポリヌクレオチドも、本発明に含まれる。「ストリンジェントな条件」とは、ハイブリダイゼーション後の洗浄時の条件であって塩濃度が300〜1000mM、温度が40〜75℃、好ましくは塩濃度が600〜900mM、温度が65℃の条件を意味する。例えば、2×SSCで50℃等の条件を挙げることができる。当業者であれば、このようなバッファーの塩濃度、温度等の条件に加えて、反応時間等の諸条件を加味し、本発明のポリヌクレオチドを得るための条件を設定することができる。ハイブリダイゼーション法の詳細な手順については、Molecular Cloning,A Laboratory Manual 2nd ed.(Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)等を参照することができる。
さらに、本発明においては、GUGAAA配列を含むRNA、例えばCGCUGUGAAAGGUG(配列番号5)で示される塩基配列を有するRNAが提供される。このRNAは、GUGAAA配列がターミナルループを形成し、GUGAAA配列の全部又は一部に本発明のペプチドが結合することができる。当該RNAをコードするDNAも本発明に含まれる。
5.組換えベクター、形質転換体及びペプチド
タンパク質発現用組換えベクターは、上記ポリヌクレオチド又はDNAを適当なベクターに連結することにより得ることができ、形質転換体は、本発明の組換えベクターを、目的遺伝子が発現し得るように宿主中に導入することにより得ることができる(Sambrook J and Russel D.Molecular Cloning,A Laboratory Manual,3rd edition,CSHL Press,2001)。
ベクターには、宿主微生物で自律的に増殖し得るファージ又はプラスミドが使用される。プラスミドDNAとしては、大腸菌、枯草菌又は酵母由来のプラスミドなどが挙げられ、ファージDNAとしてはλファージが挙げられる。さらに、動物ウイルス、昆虫ウイルスベクターを用いることもできる。
組換えベクターの作製は、精製されたDNAを適当な制限酵素で切断し、適当なベクターDNAの制限酵素部位等に挿入してベクターに連結すればよい。
形質転換に使用する宿主としては、目的の遺伝子を発現できるものであれば特に限定されるものではない。例えば、細菌(大腸菌、枯草菌等)、酵母、動物細胞(COS細胞、CHO細胞等)、昆虫細胞が挙げられる。
宿主への組換えベクターの導入方法は公知であり、任意の方法(例えばカルシウムイオンを用いる方法、エレクトロポレーション法、スフェロプラスト法、酢酸リチウム法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法等)が挙げられる。
本発明において、本発明のペプチドは、前記形質転換体を培養し、その培養物から採取することにより得ることもできる。「培養物」とは、(a)培養上清、(b)培養細胞若しくは培養菌体又はその破砕物のいずれをも意味するものである。
培養法は、当分野において周知である(前記Sambrookら、Molecular Cloningを参照)。
培養後、目的ペプチドが菌体内又は細胞内に生産される場合には、菌体又は細胞を破砕することによりペプチドを抽出する。また、目的ペプチドが菌体外又は細胞外に生産される場合には、培養液をそのまま使用するか、遠心分離等により菌体又は細胞を除去する。その後、タンパク質の単離精製に用いられる一般的な生化学的方法、例えば硫酸アンモニウム沈殿、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等を単独で又は適宜組み合わせて用いることにより、目的のペプチドを単離精製することができる。
本発明においては、in vitro翻訳によるペプチド合成を採用することができる。この場合は、RNAを鋳型にする方法とDNAを鋳型にする方法(転写/翻訳)の2通りの方法を用いることができる。鋳型RNAとしては、前記4項に記載のポリヌクレオチドが挙げられ、鋳型DNAとしては、翻訳開始点の上流にプロモーターとリボゾーム結合部位を有している上記ポリヌクレオチド、あるいは翻訳開始点の上流に転写に必要なプロモーター等が組み込まれたポリヌクレオチドが挙げられる。in vitro翻訳システムは、市販のシステム、例えばExpresswayTMシステム(Invitrogen社)、PURESYSTEM(登録商標;ポストゲノム研究所)、TNTシステム(登録商標;Promega社)などを用いることができる。in vitro翻訳システムによるペプチド合成後は、上記の一般的な生化学的方法を単独又は組み合わせることにより、目的のペプチドを単離精製することができる。
6.GUGAAAループ結合ペプチド又はその塩を含む医薬組成物
さらに、本発明のペプチドは、細胞又はウイルスの増殖を抑制することができる。従って、本発明のペプチドを抗生物質、抗菌剤、抗癌剤又は抗ウイルス剤などの医薬組成物として、または実験用試薬として、使用することができる。
本発明のペプチドを例えばHCVの増殖抑制剤又は感染予防剤(抗HCV剤)として使用する場合は、HCVウイルス陽性の健常者に対して治療又は予防を特異目的として用いることができる。また、健常者に対して、感染予防の目的で使用することができる。これらの疾患は、単独であっても、併発したものであっても、上記以外の他の疾病を併発したものであってもよく、いずれも本発明のペプチドを使用する対象とすることができる。
また、本発明の医薬組成物は、経口又は非経口的に全身又は局所投与することができる。本発明の医薬組成物を経口投与する場合は、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、丸剤、トローチ剤、内用水剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤等のいずれのものであってもよく、使用する際に再溶解させる乾燥生成物にしてもよい。また、本発明の医薬組成物を非経口投与する場合は、静脈内注射(点滴を含む)、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射、坐剤などの製剤形態を選択することができ、注射用製剤の場合は単位投与量アンプル又は多投与量容器の状態で提供される。
これらの各種製剤は、製剤上通常用いられる賦形剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、潤滑剤、界面活性剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、溶解補助剤、防腐剤、矯味矯臭剤、無痛化剤、安定化剤、等張化剤等などを適宜選択し、常法により製造することができる。
上記各種製剤は、医薬的に許容される担体又は添加物を共に含むものであってもよい。このような担体及び添加物の例として、水、医薬的に許容される有機溶剤、コラーゲン、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、寒天、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン、マンニトール、ソルビトール、ラクトースなどが挙げられる。使用される添加物は、本発明の剤型に応じて上記の中から適宜又は組み合わせて選択される。
本発明の医薬組成物の投与量は、投与対象の年齢、投与経路、投与回数により異なり、広範囲に変えることができる。本発明のペプチドの有効量と適切な希釈剤及び薬理学的に使用し得る担体との組合せとして投与される有効量は、10〜1000mg/body、好ましくは50〜500mg/bodyの範囲の投与量を選ぶことができ、1日1回から数回に分けて1日以上投与される。
7.HCVの検出用試薬および診断薬
本発明のペプチドは、HCVのSL2領域に結合することができるため、HCVの検出用試薬又はC型肝炎の診断薬として使用することができる。例えば、被験者から採取した血液から血漿を得、これと本発明のペプチドとを反応させる。本発明のペプチドに蛍光標識(フルオレセイン、ローダミン等)又は放射標識等(32P、35S)をしておくと、標識によりシグナルが得られた被検試料はHCV陽性又はC型肝炎であると判定することができる。
8.RNA結合ペプチドとRNAの複合体
本発明は、本発明のペプチドとそれに結合するRNAとの複合体を提供する。本発明の複合体は、生理作用を持つ当該RNAの活性をより高くさせるために使用することができる。言い換えると、複合体の一部を構成する本発明のペプチド、その誘導体又はこれらの塩は、RNAの担体として機能し、この担体の存在によって、当該RNAの機能を上昇(促進)させることが可能となる。従って、本発明のペプチド、その誘導体又はこれらの塩は、RNAの機能促進剤として有用である。
例えば、特定の遺伝子の発現を抑制しうるsiRNAとしてデザインされたオリゴRNA二重鎖を結合するリンカーにGUGAAAループを付加し、本発明のペプチドを結合させると、RNAの活性を更に向上させることができる。具体的には、本発明のペプチドにsiRNAを結合させると、そのsiRNAの機能が促進される。その結果、当該siRNAの標的となる核酸又はタンパク質の機能を抑制することが可能である。従って、本発明においては、上記ペプチド、その誘導体又はこれらの塩とRNAとを結合させることにより、当該RNAの標的となる核酸又はタンパク質の機能を抑制する方法を提供する。
本発明の複合体は、標的となる特定の遺伝子の機能を抑制することができる。従って、本発明の複合体を抗生物質、抗菌剤、抗癌剤又は抗ウイルス剤などの医薬組成物として、または実験用試薬として、使用することができる。本発明の複合体を医薬組成物として使用するときの使用形態は前記6項で説明したものと同様であり、本発明の複合体を試薬として使用するときの使用形態は、前記7項で説明したものと同様である、
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<材料と方法>
(1)プラスミドの作製
レポータープラスミドは、pACLとpACKプラスミド(1)を親プラスミドとして、Pst I、BamH Iサイトを利用し、T4 DNA ligaseを用いて作製した。試験ペプチドの配列をN端に含むN蛋白をコードするDNA断片を、Nco I及びBsm I処理し、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)により精製して、インサートDNAを作製した。pBRベクターは、pBR NをNco I処理、Bsm I処理を行った後、フェノール抽出とエタノール沈殿後、SAP処理して作製した。インサートDNAとT4 DNA ligaseを用いてライゲーション反応を行い、試験プラスミドを得た。これらの試験プラスミド混合物を用いて形質転換した後、ライブラリーの導入されていない親プラスミドにより形質転換される細胞は約10%であり、残り90%が試験プラスミドにより形質転換された細胞となる。
(2)レポーター細胞の作成
前項(1)のようにして作成したpACLとpACKレポータープラスミドをヒートショック法によりN567細胞に導入しレポーター細胞を作製した。pACLレポーターN567細胞は、一般的なヒートショック用のコンピテントセル作成法に基づいてコンピテントセル化し使用した。また、pACKレポーターN567細胞も、一般的なエレクトロポレーション用のコンピテントセル作成法に基づいてコンピテントセル化し使用した。
(3)検出試験(特異性試験)
検出試験の工程は以下のとおりである。スクリーニングして得られたpBRプラスミド(0.25μl)を標的のpAC LacZレポーターN567細胞(10μl)とpACRRE LacZレポーターN567細胞(10μl)それぞれ2種類のレポーター細胞にヒートショック法により形質転換し、tryptone mesiumを各500μlを加え、37℃において一時間培養を行った。大腸菌を撒くプレートはアンピシリン(100mg/L)、クロラムフェニコール(20mg/L)、IPTG(0.05mM)、X−gal(5−Bromo−4−Chloro−3−Indolyl−β−Galactopyranoside、80mg/L)を含む。培養したそれぞれのトランスフォーメーションした細胞を10μlずつ1枚のプレートに撒いた。このとき1枚のプレート上で2種類の細胞の発色を比較するために撒く場所を2つに分けて撒いた。これを37℃において24時間、その後24℃で72時間培養しコロニーの青色の発色を観察した。
このような特異性試験において、スクリーニングして得られたpBRプラスミドをpAC標的LacZレポーターN567細胞に導入するとX−galの分解による青い発色を呈するが、pAC RRE LacZレポーターN567細胞に導入してもX−galの分解による青い発色を呈さなかった場合、スクリーニングして得られたpBRプラスミドは標的のpAC LacZレポーターN567細胞が発現するRNAと特異的な結合をしていることになる。こうして標的RNAに特異的に結合するポリペプチドを発現するpBRを選別する。またこの特異性試験で両方のレポーター細胞で青色を呈した場合は非特異的なクローン、両方とも発色が見られなかった場合は疑似陽性なクローンを選別したという結果となる。
文献:
1)Peled−Zehavi,H.,Horiya,S.,Das,C.,Harada,K.,Frankel,A.D.(2003)Selection of RRE RNA binding peptides using a kanamycin antitermination assay.RNA9,252−61.
<結果>
(1)RNA結合ポリペプチドのARPL2からの細胞内選択
HCV3’X−tail(+)SL2 terminal loopレポータープラスミドを標的とし、RNA結合ペプチドの3種類の検出試験を行った。これら3クローンの特異性試験の結果を表1に記す
SL2:HCV3’X−tail(+)SL2 terminal loopレポーター細胞,RRE:HIV RREレポーター細胞。
37℃24時間培養後、室温24時間培養したコロニーの青色の度合を+の数で評価した。
表1より、本発明のペプチドは、SL2に特異的に結合することが示された。
(1)プラスミドの作製
レポータープラスミドは、pACLとpACKプラスミド(1)を親プラスミドとして、Pst I、BamH Iサイトを利用し、T4 DNA ligaseを用いて作製した。試験ペプチドの配列をN端に含むN蛋白をコードするDNA断片を、Nco I及びBsm I処理し、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)により精製して、インサートDNAを作製した。pBRベクターは、pBR NをNco I処理、Bsm I処理を行った後、フェノール抽出とエタノール沈殿後、SAP処理して作製した。インサートDNAとT4 DNA ligaseを用いてライゲーション反応を行い、試験プラスミドを得た。これらの試験プラスミド混合物を用いて形質転換した後、ライブラリーの導入されていない親プラスミドにより形質転換される細胞は約10%であり、残り90%が試験プラスミドにより形質転換された細胞となる。
(2)レポーター細胞の作成
前項(1)のようにして作成したpACLとpACKレポータープラスミドをヒートショック法によりN567細胞に導入しレポーター細胞を作製した。pACLレポーターN567細胞は、一般的なヒートショック用のコンピテントセル作成法に基づいてコンピテントセル化し使用した。また、pACKレポーターN567細胞も、一般的なエレクトロポレーション用のコンピテントセル作成法に基づいてコンピテントセル化し使用した。
(3)検出試験(特異性試験)
検出試験の工程は以下のとおりである。スクリーニングして得られたpBRプラスミド(0.25μl)を標的のpAC LacZレポーターN567細胞(10μl)とpACRRE LacZレポーターN567細胞(10μl)それぞれ2種類のレポーター細胞にヒートショック法により形質転換し、tryptone mesiumを各500μlを加え、37℃において一時間培養を行った。大腸菌を撒くプレートはアンピシリン(100mg/L)、クロラムフェニコール(20mg/L)、IPTG(0.05mM)、X−gal(5−Bromo−4−Chloro−3−Indolyl−β−Galactopyranoside、80mg/L)を含む。培養したそれぞれのトランスフォーメーションした細胞を10μlずつ1枚のプレートに撒いた。このとき1枚のプレート上で2種類の細胞の発色を比較するために撒く場所を2つに分けて撒いた。これを37℃において24時間、その後24℃で72時間培養しコロニーの青色の発色を観察した。
このような特異性試験において、スクリーニングして得られたpBRプラスミドをpAC標的LacZレポーターN567細胞に導入するとX−galの分解による青い発色を呈するが、pAC RRE LacZレポーターN567細胞に導入してもX−galの分解による青い発色を呈さなかった場合、スクリーニングして得られたpBRプラスミドは標的のpAC LacZレポーターN567細胞が発現するRNAと特異的な結合をしていることになる。こうして標的RNAに特異的に結合するポリペプチドを発現するpBRを選別する。またこの特異性試験で両方のレポーター細胞で青色を呈した場合は非特異的なクローン、両方とも発色が見られなかった場合は疑似陽性なクローンを選別したという結果となる。
文献:
1)Peled−Zehavi,H.,Horiya,S.,Das,C.,Harada,K.,Frankel,A.D.(2003)Selection of RRE RNA binding peptides using a kanamycin antitermination assay.RNA9,252−61.
<結果>
(1)RNA結合ポリペプチドのARPL2からの細胞内選択
HCV3’X−tail(+)SL2 terminal loopレポータープラスミドを標的とし、RNA結合ペプチドの3種類の検出試験を行った。これら3クローンの特異性試験の結果を表1に記す
37℃24時間培養後、室温24時間培養したコロニーの青色の度合を+の数で評価した。
表1より、本発明のペプチドは、SL2に特異的に結合することが示された。
HCVは、そのNS5Bタンパク質にSL2が結合することにより増殖することができるため、SL2はHCVの増殖に必須の因子である。SL2に本発明のペプチドが結合すると、SL2はNS5Bに結合することができなくなるため、HCVの増殖が阻害される。従って、本発明のペプチドは、抗ウイルス剤(抗HCV剤)として有用である。
Claims (24)
- GUGAAAで示される塩基配列を含むRNAのうち当該GUGAAA配列の全部又は一部に結合することができるペプチド、その誘導体又はこれらの塩。
- 以下の(a)又は(b)のペプチド、その誘導体又はこれらの塩。
(a)次式I:
Asn−X−Arg−Gln−X−Arg−Arg−X−Arg−Arg−Ala (I)
(Xは任意のアミノ酸残基を表す。)
で示されるアミノ酸配列を含むペプチド、その誘導体又はこれらの塩
(b)上記式Iで示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、GUGAAAで示される塩基配列を含むRNAのうち当該GUGAAA配列の全部又は一部に結合することができるペプチド、その誘導体又はこれらの塩。 - Argが少なくとも5残基以上含まれることを特徴とする請求項1又は2記載のペプチド、その誘導体又はこれらの塩。
- アミノ酸配列の一部に化学修飾が施された、請求項1〜3のいずれか1項に記載のペプチド、その誘導体又はこれらの塩。
- 請求項2記載のペプチドをコードするポリヌクレオチド。
- DNAである請求項5記載のポリヌクレオチド。
- 請求項5又は6記載のポリヌクレオチドを含有する組換えベクター。
- 請求項7記載の組換えベクターを含む形質転換体。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載のペプチド、その誘導体又はこれらの塩を含む医薬組成物。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載のペプチド、その誘導体又はこれらの塩を含むHCV検出用試薬。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載のペプチド、その誘導体又はこれらの塩を含むC型肝炎の診断薬。
- 抗ウイルス剤として使用するための請求項9記載の医薬組成物。
- 抗HCV剤として使用するための請求項9記載の医薬組成物。
- CGCUGUGAAAGGUGで示される塩基配列を有するRNA。
- GUGAAA配列がターミナルループ配列である請求項14記載のRNA。
- 請求項14又は15記載のRNAをコードするDNA。
- 請求項16記載のDNAを含む組換えベクター。
- 請求項17記載の組換えベクターを含む形質転換体。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載のペプチド、その誘導体又はこれらの塩と、これに結合するRNAとの複合体。
- 請求項19記載の複合体を含む医薬組成物。
- 請求項19記載の複合体を含むHCVの研究用試薬。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載のペプチド、その誘導体又はこれらの塩を含む、RNAの担体。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載のペプチド、その誘導体又はこれらの塩を含む、RNAの機能促進剤。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載のペプチド、その誘導体又はこれらの塩とRNAとを結合させることを特徴とする、当該RNAの標的となる核酸又はタンパク質の機能を抑制する方法。
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2005300350 | 2005-10-14 | ||
JP2005300350 | 2005-10-14 | ||
PCT/JP2006/320991 WO2007043715A1 (ja) | 2005-10-14 | 2006-10-16 | Rna結合ペプチド |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPWO2007043715A1 true JPWO2007043715A1 (ja) | 2009-04-23 |
Family
ID=37942926
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2007540237A Pending JPWO2007043715A1 (ja) | 2005-10-14 | 2006-10-16 | Rna結合ペプチド |
Country Status (2)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPWO2007043715A1 (ja) |
WO (1) | WO2007043715A1 (ja) |
-
2006
- 2006-10-16 WO PCT/JP2006/320991 patent/WO2007043715A1/ja active Application Filing
- 2006-10-16 JP JP2007540237A patent/JPWO2007043715A1/ja active Pending
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
WO2007043715A9 (ja) | 2007-06-07 |
WO2007043715A1 (ja) | 2007-04-19 |
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