以下本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明の液晶表示装置は、垂直配向モードの液晶セルと該液晶セルを挟んで偏光板A及び偏光板Bが設けられた液晶表示装置において、前記偏光板Aは偏光板保護フィルムA1、A2を有し、前記偏光板Bは偏光板保護フィルムB1、B2を有し、液晶セル側に配置されている偏光板保護フィルムA2、B2の少なくとも一方が前記式(a)、(b)で表されるフィルム面内リターデーション値Roが0〜10nm、フィルム厚み方向リターデーション値Rtが−20〜20nmを同時に満たすセルロースエステルフィルムYを含み、偏光板保護フィルムA2、B2の少なくとも一方が光学異方性層を有する光学補償フィルムWであることを特徴とする。
本発明者らは、前記課題に鑑み鋭意検討した結果、液晶セル側に配置されている偏光板保護フィルムA2、B2の少なくとも一方が光学異方性層を有する偏光板保護フィルムである場合、それと対向する偏光板保護フィルムA2、B2の少なくとも一方に、リターデーション値Roが0〜10nm、Rtが−20〜20nmを同時に満たす光学的異方性の低減された偏光板保護フィルムを用いることにより、環境変動があっても色味変化が少なく、鑑賞する際の角度が変わっても色変化が少なく、コントラストが高く、延伸斑による視認性のばらつきが少ない液晶表示装置が得られることを見出し本発明を成すに至った次第である。
ここで、前記光学補償フィルムWは、前記セルロースエステルフィルムY上に前記光学異方性層を設けた構成も含む。
また、本発明に係る、A2、B2の少なくとも一方がセルロースエステルフィルムYを含み、とはA2、B2の少なくとも一方が、セルロースエステルフィルムYである構成に加えセルロースエステルフィルムY上に前記光学異方性層を設けた構成も意味する。
図1にMVAモード型液晶表示装置の模式図を示した。
図1において、例えば、偏光板Aの偏光板保護フィルムA2が本発明のセルロースエステルフィルムYであり、偏光板Bにおいて偏光板保護フィルムB2が本発明の光学補償フィルムWである。もしくは偏光板保護フィルムA2が光学補償フィルムWで、偏光板保護フィルムB2がセルロースエステルフィルムYであってもよい。あるいは、偏光板保護フィルムA2、B2の少なくとも一方がセルロースエステルフィルムY上に光学異方性層を設けられた光学補償フィルムWであってもよい。そして、偏光板保護フィルムA2、B2の両方がセルロースエステルフィルムY上に光学異方性層を設けられた光学補償フィルムWであってもよい。
特に本発明に係る光学補償フィルムWを用いた偏光板を大画面の液晶セルのバックライト側に、セルロースエステルフィルムYを用いた偏光板を液晶セルの視認側に使用した場合に優れた耐久性を発揮する。画面が17型以上、特に画面が30型以上の大画面の液晶表示装置では、上記の効果以外にも、色ムラや波打ちムラによって蛍光灯の反射像が歪んで見えていたものが、鏡の反射のように歪みがないため、長時間の鑑賞でも目が疲れないという効果があった。
図2にセルロースエステルフィルムYと光学補償フィルムW、より具体的にはセルロースエステルフィルムYと光学異方性層の種々の配置パターンを示す。図においてBLはバックライト側を意味する。
図2の(a−1)〜(a−3)の形態では液晶セルの両面に対向する位置の双方に光学異方性層を配置した場合で、(a-1)ではフィルムA2、B2の両方がセルロースエステルフィルムYを含み、(a-2)ではバックライト側のフィルムB2がセルロースエステルフィルムYを含み、(a-3)では視認側のフィルムA2がセルロースエステルフィルムYを含む。
この配置においては、(a-1)>(a-2)>(a-3)の関係で(a-1)が最も優れた効果を示す。
図2の(b−1)〜(b−3)の形態では液晶セルのバックライト側の面に対向する位置に光学異方性層を配置した場合で、(b-1)ではフィルムA2、B2の両方がセルロースエステルフィルムYを含み、(b-2)ではバックライト側のフィルムB2がセルロースエステルフィルムYを含み、(b-3)では視認側のフィルムA2がセルロースエステルフィルムYである。
この配置においては、(b-1)>(b-2)>(b-3)の関係で(b-1)が最も優れた効果を示す。
図2の(c−1)〜(c−3)の形態では液晶セルの視認側の面に対向する位置に光学異方性層を配置した場合で、(c-1)ではフィルムA2、B2の両方がセルロースエステルフィルムYを含み、(c-2)ではバックライト側のフィルムB2がセルロースエステルフィルムYであり、(c-3)では視認側のフィルムA2がセルロースエステルフィルムYを含む。
この配置においては、(c-1)>(c-2)>(c-3)の関係で(c-1)が最も優れた効果を示す。
全体的には{(a-1)>(a-2)>(a-3)>(b-1)>(b-2)>(b-3)>(c-1)>(c-2)>(c-3)}の関係で(a-1)が最も優れた効果を示す。
本発明では、A2もしくはB2の少なくとも一方が光学補償フィルムWであり、A2もしくはB2の少なくとも一方にセルロースエステルフィルムYが用いられている。また、光学補償フィルムWがセルロースエステルフィルムYを含む場合もある。
以下、本発明を詳細に説明する。
最初に光学異方性層を有する偏光板保護フィルムである光学補償フィルムWについて説明する。
本発明では、前記光学異方性層が、液晶性化合物により形成された液晶性化合物層もしくは、ポリエーテルケトン、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミドイミド、及びポリエステルイミドから選ばれる少なくとも1種よりなるポリマーを含有し延伸して形成されたポリマー層であることが好ましい。
尚、偏光板保護フィルムA2、B2が共に光学異方性層を有する場合、光学異方性層の材質やリターデーション値Ro、Rtと言った光学特性は同一でも良いし、異なった組み合わせとすることもできる。例えば、偏光板保護フィルムA2側の光学異方性層をCプレートとし、偏光板保護フィルムB2側の光学異方性層はAプレートとすることも可能である。
(ポリマー層)
ポリマー層は、後述するセルロースエステルフィルムもしくは本発明に係るセルロースエステルフィルムY上に塗布によって設けることが好ましい。ポリマー層の形成工程は、支持体としてのセルロースエステルフィルムが溶液流延または溶融流延されフィルムとして形成された後であれば特に制限はなく、例えばフィルム製膜工程中で連続して行ってもよい。またフィルム製膜後、一旦巻き取られたセルロースエステルフィルムを繰り出して、マイクログラビアコーターや押出しコーター等によりポリマー層を塗布・乾燥し、次いでテンターを用いた延伸工程により支持体ごと延伸・乾燥処理を行う方法でもよい。生産上の自由度、品質保証上の観点からフィルム溶融製膜工程とポリマー層の形成工程/延伸工程は別に行う方法が好ましい。
また、別法としてポリマー層を別の支持体上に塗布形成し、接着剤等を介してセルロースエステルフィルムに転写する方法をとることも出来る。
本発明に係るポリマー層の厚さは1〜20μmであることが好ましく、1μm未満では所望の位相差特性を付与することが困難である場合があり、20μmを超えると膜が厚くなり過ぎ、ひび割れや折れなど取り扱い性に劣る。薄型化や目的とする位相差特性の付与性の点より好ましいポリマー層の厚さは、15μm以下、更に好ましくは12μm以下、特に2〜10μmであることが好ましい。
ポリマー層に用いられるポリマーとしては、光透過率が75%以上、特に85%以上の透光性に優れる層を形成しうる耐熱性の良好な固体ポリマーが好ましい。
本発明の光学異方性層が液晶性化合物により形成された層である場合、用いられる液晶性化合物は、配向層上で配向できるものであれば特に限定されるものではなく、また、配向層なしで配向できるものであっても良く、該配向によって可視光領域で光散乱することなく光学的に異方性を付与することが求められる。
本発明に用いられる液晶性化合物が高分子液晶である場合、例えば公告2592694号、同2687035号、同2711585号、同2660601号、特開平10−186356号、同10−206637号、同10−333134号記載の構造の化合物が挙げられる。中でも、光学的に正の複屈折性を有するものが好ましく用いられる。
高分子液晶以外の本発明に係る液晶性化合物としては、一般に棒状の液晶性化合物が挙げられ、光学的に正の複屈折性を示す液晶性化合物が好ましく、不飽和エチレン性基を有する正の複屈折性の液晶性化合物が配向の固定化の観点から好ましく、例えば、特開平9−281480号、同9−281481号記載の構造の化合物を用いることができるが、本発明は特にこれらに限定されない。
本発明では、その塗工層形成性、延伸による位相差付与等の点よりポリエーテルケトン、特にポリアリールエーテルケトン、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミドイミド又はポリエステルイミドの1種、又は2種以上を混合したものなどが好ましく用いられる。
前記したポリエーテルケトン、特にポリアリールエーテルケトンの具体例としては、例えば下記の一般式(1)で表される繰返し単位を有するものなどがあげられる(特開2001−49110号公報)。
前記の一般式(1)において、Xはハロゲン、アルキル基又はアルコキシ基であり、ベンゼン環へのXの結合数q、すなわちp−テトラフルオロベンゾイレン基とオキシアルキレン基が結合しない、残る位置での水素原子の置換数qの値は、0〜4の整数である。またR1は下記の一般式(2)で表される化合物(基)であり、mは0又は1である。さらにnは、重合度を表し、2〜5000が好ましく、特に5〜500が好ましい。
尚、前記一般式(1)におけるXとしてのハロゲンとしては、例えばフッ素原子や臭素原子、塩素原子やヨウ素原子などがあげられ、フッ素原子が好ましい。またアルキル基としては、例えばメチル基やエチル基、プロピル基やイソプロピル基、ブチル基の如き炭素数が1〜6、中でも1〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキル基などがあげられ、中でもメチル基やエチル基、それらのトリフルオロメチル基の如きハロゲン化アルキル基が好ましい。
更にアルコキシ基としては、例えばメトキシ基やエトキシ基、プロポキシ基やイソプロポキシ基、ブトキシ基の如き炭素数が1〜6、中でも1〜4の直鎖又は分岐鎖のアルコキシ基などがあげられ、中でもメトキシ基やエトキシ基、それらのトリフルオロメトキシ基の如きハロゲン化アルコキシ基が好ましい。前記において特に好ましいXは、フッ素原子である。
一方、前記一般式(2)で表される基において、X’はハロゲン、アルキル基又はアルコキシ基であり、ベンゼン環へのX’の結合数q’の値は、0〜4の整数である。X’としてのハロゲン、アルキル基又はアルコキシ基としては、前記したXと同じものが例示できる。
好ましいX’は、フッ素原子、メチル基やエチル基、それらのトリフルオロメチル基の如きハロゲン化アルキル基、メトキシ基やエトキシ基、それらのトリフルオロメトキシ基の如きハロゲン化アルコキシ基であり、中でもフッ素原子が好ましい。
尚、前記の一般式(1)においてXとX’は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。また一般式(1)、(2)においてq又はq’が2以上であることに基づいて分子中に2個以上存在するX又はX’は、それぞれ独立に同じであってもよいし、異なっていてもよい。
特に好ましいR1は、下記の一般式(3)で表される基である。
前記の一般式(2)、(3)においてR2は、2価の芳香族基であり、Pは0又は1である。その2価の芳香族基としては、例えば(o,m又はp−)フェニレン基、ナフタレン基、ビフェニル基、アントラセン基、(o,m又はp−)テルフェニル基、フェナントレン基、ジベンゾフラン基、ビフェニルエーテル基、ビフェニルスルホン基、下記の式で表される2価の芳香族基などがあげられる。なお当該2価の芳香族基は、その芳香環に直接結合する水素が前記したハロゲン、アルキル基又はアルコキシ基で置換されていてもよい。
前記において好ましい2価の芳香族基(R2)は、下記の式で表されるものである。
前記した一般式(1)で表されるポリアリールエーテルケトンは、同じ繰返し単位からなっていてもよいし、異なる繰返し単位の2種又は3種以上を有するものであってもよい。後者の場合、各繰返し単位は、ブロック状に存在していてもよいし、ランダムに存在していてもよい。
上記を踏まえて一般式(1)で表されるポリアリールエーテルケトンの内の好ましいものは、下記の一般式(4)で表されるものである。
また分子末端の基を含めた場合の好ましいポリアリールエーテルケトンは、一般式(1)に対応して下記の一般式(5)で表されるものであり、一般式(4)に対応するものは下記の一般式(6)で表されるものである。これらは分子内のp−テトラフルオロベンゾイレン基側にフッ素原子が結合し、オキシアルキレン基側に水素原子が結合したものである。
一方、上記したポリアミド又はポリエステルの具体例としては、例えば下記の一般式(7)で表される繰返し単位を有するものなどがあげられる。
前記の一般式(7)において、Bは、ハロゲン、炭素数1〜3のアルキル基若しくはそのハロゲン化物、それらの1種若しくは2種以上で置換されたフェニル基、又は非置換のフェニル基である。zは0〜3の整数である。
Eは、共有結合、炭素数2のアルケニル基若しくはそのハロゲン化物、CH2基、C(CX3)2基、CO基、O原子、S原子、SO2基、Si(R)2基、又はNR基である。前記のC(CX3)2基におけるXは、水素原子又はハロゲンであり、Si(R)2基及びNR基におけるRは、炭素数1〜3のアルキル基又はそのハロゲン化物である。なおEは、カルボニル基又はY基に対してメタ位又はパラ位にある。またハロゲンは、フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子又は臭素原子である(以下、一般式(7)において同じ)。
更にYは、O原子又はNH基である。Aは、水素原子、ハロゲン、炭素数1〜3のアルキル基若しくはそのハロゲン化物、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜3のチオアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基若しくはそのハロゲン化物、アリール基若しくはそのハロゲン化物、炭素数1〜9のアルキルエステル基、炭素数1〜12のアリールエステル基若しくはその置換誘導体、又は炭素数1〜12のアリールアミド基若しくはその置換誘導体である。
またnは0〜4の整数、pは0〜3の整数、qは1〜3の整数、rは0〜3の整数である。好ましいポリアミド又はポリエステルは、前記のrとqが1であり、そのビフェニル環の少なくとも1個が2位及び2’位で置換されてなる下記の一般式(8)で表される繰返し単位を有するものである。
前記の一般式(8)においてmは0〜3の整数、好ましくは1又は2であり、x及びyは0又は1で、かつ共に0であることはない。なお他の記号は前記の一般式(7)の場合と同義であるが、Eはカルボニル基又はY基に対してパラ配向の共有結合である。
前記の一般式(7)、(8)において、B、E、Y又はAが分子中に複数存在する場合、それらは同じであってもよいし、異なっていてもよい。z、n、m、x、yも同様に同じであってもよいし、異なっていてもよい。なおその場合、B、E、Y、A、z、n、m、x、yは、それぞれ独立に判断される。
前記の一般式(7)で表されるポリアミド又はポリエステルは、同じ繰返し単位からなっていてもよいし、異なる繰返し単位の2種又は3種以上を有するものであってもよい。後者の場合、各繰返し単位は、ブロック状に存在していてもよいし、ランダムに存在していてもよい。
他方、上記したポリイミドの具体例としては、例えば9,9−ビス(アミノアリール)フルオレンと芳香族テトラカルボン酸二無水物との縮合重合生成物を含み、下記の一般式(9)で表される繰返し単位を1単位以上有するものなどがあげられる。
前記一般式(9)において、Rは、水素原子、ハロゲン、フェニル基、1〜4個のハロゲン若しくは1〜10個の炭素原子を有するアルキル基で置換されたフェニル基、又は1〜10個の炭素原子を有するアルキル基である。4個のRは、各々独立に決定でき、0〜4個の範囲で置換することができる。その置換基は、前記のものであることが好ましいが、一部に異なるものを含んでいてもよい。なおハロゲンは、フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子又は臭素原子である(以下、一般式(9)において同じ)。
Zは、6〜20個の炭素原子を有する三置換芳香族基である。好ましいZは、ピロメリット基、あるいはナフチレン基やフルオレニレン基、ベンゾフルオレニレン基やアントラセニレン基の如き多環式芳香族基若しくはその置換誘導体、又は下記の一般式(10)で表される基である。なお前記多環式芳香族基の置換誘導体における置換基としては、ハロゲン、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基又はそのフッ素化物などがあげられる。
前記の一般式(10)において、Dは、共有結合、C(R2)2基、CO基、O原子、S原子、SO2基、Si(C2H5)2基、N(R3)2基又はそれらの組合せであり、mは1〜10の整数である。なお前記のR2は各々独立に、水素原子又はC(R4)3基である。またR3は独立に、水素原子、1〜約20個の炭素原子を有するアルキル基、又は約6〜約20個の炭素原子を有するアリール基である。R4は各々独立に、水素原子、フッ素原子又は塩素原子である。
また前記以外のポリイミドとして下記の一般式(11)、(12)で表される単位を有するものなどもあげることができる。また、一般式(13)で表される単位を有するポリイミドが好ましい。
前記の一般式(11)、(12)、(13)において、T及びLは、ハロゲン、炭素数1〜3のアルキル基若しくはそのハロゲン化物、それらの1種若しくは2種以上で置換されたフェニル基、又は非置換のフェニル基である。前記のハロゲンは、フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子又は臭素原子である(以下、一般式(11)、(12)、(13)において同じ)。zは0〜3の整数である。
またG及びJは、共有結合若しくは結合ボンド、CH2基、C(CX3)2基、CO基、O原子、S原子、SO2基、Si(C2H5)2基、又はN(CH3)基である。前記C(CX3)2基におけるXは、水素原子又はハロゲンである(以下、一般式(11)、(12)、(13)において同じ)。
Aは、水素原子、ハロゲン、アルキル基若しくはそのハロゲン化物、ニトロ基、シアノ基、チオアルキル基、アルコキシ基若しくはそのハロゲン化物、アリール基若しくはそのハロゲン化物、又はアルキルエステル基若しくはその置換誘導体である。
Rは、水素原子、ハロゲン、フェニル基若しくはそのハロゲン化物等の置換フェニル基、又はアルキル基若しくはそのハロゲン化物等の置換アルキル基である。nは0〜4の整数、pは0〜3の整数、qは1〜3の整数である。
尚、前記の一般式(11)、(12)、(13)においてT、A、R又はLは、それぞれ独立に分子中に複数存在する場合、それらは同じであってもよいし、異なっていてもよい。z、n、mも同様に同じであってもよいし、異なっていてもよい。なおその場合、T、A、R、L、z、n、mは、それぞれ独立に判断される。
前記した一般式(9)、(11)、(12)、(13)で表されるポリイミドは、同じ繰返し単位からなっていてもよいし、異なる繰返し単位の2種又は3種以上を有するものであってもよい。その異なる繰返し単位は、前記以外の酸二無水物又は/及びジアミンの1種又は2種以上を共重合させて形成したものであってもよい。ジアミンとしては特に芳香族ジアミンが好ましい。後者の異なる繰返し単位を有する場合、各繰返し単位は、ブロック状に存在していてもよいし、ランダムに存在していてもよい。
前記した異なる繰返し単位を形成するための酸二無水物としては、例えばピロメルト酸二無水物、3,6−ジフェニルピロメルト酸二無水物、3,6−ビス(トリフルオロメチル)ピロメルト酸二無水物、3,6−ジブロモピロメルト酸二無水物、3,6−ジクロロピロメルト酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルカルボン酸二無水物、ビス(2,3−ジカルボフェニル)メタン二無水物があげられる。
またビス(2,5,6−トリフルオロ−3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物(4,4’−オキシジフタル酸無水物)、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物(3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸無水物)、4,4’−〔4,4’−イソプロピリデン−ジ(p−フェニレンオキシ)〕ビス(フタル酸無水物)も前記酸二無水物の例としてあげられる。
さらにN,N−(3,4−ジカルボキシフェニル)−N−メチルアミン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジエチルシラン二無水物、2,3,6,7−ナフタレン−テトラカルボン酸二無水物や1,2,5,6−ナフタレン−テトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロ−ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物の如きナフタレンテトラカルボン酸二無水物、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物やピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ピリジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物の如き複素環式芳香族テトラカルボン酸二無水物なども前記酸二無水物の例としてあげられる。
好ましく用いうる酸二無水物は、2,2’−ジブロモ−4,4’,5,5’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物や2,2’−ジクロロ−4,4’,5,5’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’−トリハロ置換二無水物の如き2,2’−置換二無水物などであり、特に2,2−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’,5,5’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が好ましい。
一方、前記した異なる繰返し単位を形成するためのジアミンとしては、例えば(o,m又はp−)フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、1,4−ジアミノ−2−メトキシベンゼン、1,4−ジアミノ−2−フェニルベンゼン、1,3−ジアミノ−4−クロロベンゼンの如きベンゼンジアミン、4,4’−ジアミノビフェニル、4,4−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)一1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼンがあげられる。
また4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルチオエ一テル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、2,2’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、1,8−ジアミノナフタレンや1,5−ジアミノナフタレンの如きナフタレンジアミン、2,6−ジアミノピリジンや2,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノ−S−トリアジンの如き複素環式芳香族ジアミンなども前記したジアミンの例としてあげられる。
好ましく用いうるポリイミドは、例えば2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物や4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−2,2−ジフェニルプロパン二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物やビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物などの芳香族系酸二無水物を用いて調製された、耐熱性で溶媒可溶性のポリイミドである。
またジアミンとして、例えば4,4−(9−フルオレニリデン)−ジアニリンや2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタンや2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’,5,5’−テトラクロロベンジジンや2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンや1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼンや1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンなどの芳香族系ジアミンを用いて調製された、耐熱性で溶媒可溶性のポリイミドも好ましく用いうる。
他方、上記したポリアミドイミド又はポリエステルイミドとしては、特に限定はなく適宜なものを1種又は2種以上用いうる。中でも、特開昭61−162512号公報に記載されたポリアミドイミドや、特開昭64−38472号公報に記載されたポリエステルイミドなどが好ましく用いうる。
ポリマー層形成用の固体ポリマーの分子量は、特に限定はないが溶剤に可溶であることが好ましい。塗工膜の厚さ精度や表面精度ないし表面平滑性、膜強度、フィルム化した場合の伸縮や歪等によるクラック発生の防止性、溶剤に対する溶解性(ゲル化防止)などの点より重量平均分子量に基づいて1万〜100万、好ましくは2万〜50万、特に5万〜20万が好ましい。なお重量平均分子量は、ポリエチレンオキサイドを標準試料とし、ジメチルホルムアミド溶媒を使用してゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した値である。
ポリマー層の形成には上記のポリアリールエーテルケトンやポリアミド、ポリエステルやポリイミド等の固体ポリマーを単独で用いてもよいし、同種物を2種以上混合して用いてもよい。また例えばポリアリールエーテルケトンとポリアミドの混合物の如く、異なる官能基を持つ2種以上のポリマーの混合物として用いてもよい。
またポリマー層を形成する上記固体ポリマーの配向性が著しく低下しない範囲で、上記以外の適宜なポリマーの1種又は2種以上を併用してもよい。ちなみにその併用ポリマーの例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ABS樹脂及びAS樹脂、ポリアセテート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリケトン、ポリイミド、ポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレート、ポリアリレート、液晶ポリマー(光重合性液晶モノマーを含む)などの熱可塑性樹脂があげられる。
またエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ノボラック樹脂の如き熱硬化性樹脂なども前記併用ポリマーの例としてあげられる。併用ポリマーの使用量は、配向性が著しく低下しない範囲であれば特に制限されないが、通常50質量%以下、好ましくは40質量%以下、特に好ましくは30質量%以下である。
ポリマー層を形成する固体ポリマーの液状化には、固体ポリマーが熱可塑性ポリマーであれば加熱して溶融させる方式や、固体ポリマーを溶媒に溶解させて溶液とする方法などの適宜な方式を採ることができる。従って当該ポリマー層の固体化は、前者の溶融液ではそのポリマー層を冷却させることにより、また後者の溶液ではそのポリマー層より溶媒を除去して乾燥させることにより行うことができる。ポリマー層の形成に際しては、安定剤や可塑剤や金属類等からなる種々の添加剤を必要に応じて配合することができる。
前記ポリマー層塗設後の乾燥は自然乾燥(風乾)方式や加熱乾燥方式、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波などで行うことができる。簡便さの点で熱風で行うことが好ましい。乾燥温度は、次工程であるテンター等による延伸処理温度に鑑み、40〜180℃の範囲でゾーン乾燥方法で3〜5段階の温度に分けて、徐々に高くしていくことが好ましく、80〜170℃の範囲で行うことがポリマー層の耐傷性や寸法安定性等の物性を良くするためにより好ましい。
前記の溶媒としては、例えばクロロホルムやジクロロメタン、四塩化炭素やジクロロエタン、テトラクロロエタンやトリクロロエチレン、テトラクロロエチレンやクロロベンゼン、オルソジクロロベンゼンの如きハロゲン化炭化水素類、フェノールやパラクロロフェノールの如きフェノール類、ベンゼンやトルエン、キシレンやメトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼンの如き芳香族炭化水素類、アセトンやメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンやシクロヘキサノン、シクロペンタノンや2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドンの如きケトン類、酢酸エチルや酢酸ブチルの如きエステル類があげられる。
また、t−ブチルアルコールやグリセリン、エチレングリコールやトリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテルやジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールやジプロピレングリコール、2−メチル−2,4−ペンタンジオールの如きアルコール類、ジメチルホルムアミドやジメチルアセトアミドの如きアミド類、アセトニトリルやブチロニトリルの如きニトリル類、ジエチルエーテルやジブチルエーテル、テトラヒドロフランの如きエーテル類、その他、塩化メチレンや二硫化炭素、エチルセロソルブやブチルセロソルブなども前記溶媒の例としてあげられる。
溶媒は、単独で、あるいは2種以上を適宜な組合せで混合して用いることができる。溶液は、塗工粘度等の点より、溶媒100質量部に対して固体ポリマーを2〜100質量部、好ましくは5〜50質量部、特に10〜40質量部溶解させたものが好ましい。
液状化したポリマーのセルロースエステルフィルム上への展開には、例えばスピンコート法やロールコート法、フローコート法やプリント法、ディップコート法や流延成膜法、バーコート法やグラビア印刷法等のキャスティング法、押出法などの適宜なフィルム形成方式を採ることができる。中でも、厚さムラや配向歪ムラ等の少ないフィルムの量産性などの点より、キャスティング法等の溶液製膜法が好ましく適用することができる。
ポリマー層は、上記のように溶媒に溶解させて液状化したポリマー溶液を支持体上に塗布して乾燥させ、支持体ごと後述する延伸処理を行う。延伸処理はテンター方式による延伸が好ましい。この方式によれば、ポリマー層を基材で支持した状態で処理できて製造効率や処理精度などに優れており、連続製造も可能である。
(延伸操作)
本発明の光学補償フィルムWに好ましい延伸操作について説明する。
本発明の光学補償フィルムWは、溶液流延または溶融流延されたセルロースエステルフィルム若しくは本発明に係るセルロースエステルフィルムY上に前記ポリマー層を設けた後、下記延伸操作によりポリマー層とセルロースエステルフィルムとを同時に延伸して位相差の制御を行うことが好ましい。また、ポリマー層を設ける前に溶液流延または溶融流延されたセルロースエステルフィルム単独で位相差を制御する為に延伸されていてもよい。
支持体として、特にエチレン性不飽和モノマーを重合して得られた重量平均分子量が500以上30000以下であるポリマーを含有するセルロースエステルフィルムYの上のポリマー層を形成して延伸することが好ましく、色変化が少なく、コントラストが高く、延伸斑による視認性のばらつきが少ない表示装置を提供することができるため好ましい。
延伸は、光学補償フィルムWの一方向に1.0〜2.0倍に延伸し、もう一方は0.7〜1.5倍程度に延伸することが好ましい。
例えばフィルムの長手方向及びそれとフィルム面内で直交する方向、即ち幅手方向に対して、逐次または同時に延伸することが出来るが、このとき少なくとも1方向に対しての延伸倍率が小さ過ぎると十分な位相差が得られず、大き過ぎると延伸が困難となり破断が発生してしまう場合がある。
光学補償フィルムWとして、面内方向若しくは厚み方向のリタデーションを制御するため、製膜方向に自由端一軸延伸、若しくは幅方向に延伸し流延方向に収縮させるアンバランス二軸延伸を行ってもよい。収縮させる方向の倍率は0.7〜1.0倍が好ましい。
応力に対して、正の複屈折を得るセルロースエステルを用いる場合、幅方向に延伸することで、光学補償フィルムの遅相軸を幅方向に付与することが出来る。この場合、本発明において、表示品質の向上のためには、光学補償フィルムWの遅相軸が、幅方向にあるほうが好ましく、(幅方向の延伸倍率)>(流延方向の延伸倍率)を満たすことが好ましい。
ポリマー層を塗布された溶液流延または溶融流延されたセルロースエステルフィルムは、延伸に先だって50〜180℃以下、より好ましくは60〜160℃以下、更に好ましくは70〜150℃以下で、5秒以上3分以下、より好ましくは10秒以上2分以下、更に好ましくは15秒以上90秒以下熱処理(前熱処理)するのが好ましい。この熱処理はテンターでフィルムを把持する直前から把持してから延伸が始まる直前までの間に実施することが好ましい。特に好ましくはテンターでフィルムを把持してから延伸が始まる直前までの間に実施することがよい。
延伸は5〜300%/分、より好ましくは10〜200%/分、更に好ましくは15〜150%/分で実施することが好ましい。延伸にはテンターを用いてフィルム両端を把持して行うのが好ましい。
幅方向に伸ばす延伸角度としては、2°〜10°が好ましく、3°〜7°が更に好ましく、3°〜5°が最も好ましい。延伸速度は、一定で行っても良いし、変化させても良い。
延伸時の温度は、40〜250℃が好ましく、70〜180℃がより好ましい。
テンター工程内の雰囲気温度は分布が少ない事が好ましく、幅手方向で±5℃以内が好ましく、±2℃以内がより好ましく、±1℃以内が更に好ましく、±0.5℃以内が最も好ましい。テンター工程内では、熱伝達係数20J/m2hr〜130×103J/m2hrで熱処理を行うのが好ましい。更に好ましくは、40J/m2hr〜130×103J/m2hrの範囲であり、最も好ましくは42J/m2hr〜84×103J/m2hrの範囲である。
テンター内などの製膜工程でのフィルム搬送張力は温度にもよるが、120N/m〜200N/mが好ましく、140N/m〜200N/mが更に好ましい。140N/m〜160N/mが最も好ましい。
製膜工程内での意図しないフィルムの伸びを防止する目的で、テンターの前或いは後ろにテンションカットロールを設けることが好ましい。
本発明に係る光学補償フィルムは延伸後、熱処理して残存する歪を緩和することが好ましい。熱処理は110〜150℃、好ましくは100〜180℃で行うことが好ましく、更に好ましくは130〜160℃で行うことである。このとき、熱伝達係数20J/m2hr〜130×103J/m2hrで熱処理を行うのが好ましい。更に好ましくは、40J/m2hr〜130×103J/m2hrの範囲であり、最も好ましくは42J/m2hr〜84×103J/m2hrの範囲である。これによって、残存する歪が低減され、90℃などの高温条件、或いは80℃、90%RHなどの高温高湿条件における寸法安定性が改善される。
延伸されたフィルムは、延伸後室温まで冷却される。延伸されたフィルムは、テンターで幅保持されたまま冷却し始めることが好ましく、この間にテンターによって把持している幅を延伸後のフィルム幅に対し1〜10%、より好ましくは2〜9%、更に好ましくは2%以上8%以下縮め、弛緩させるのが好ましい。冷却速度は10〜300℃/分で実施するのが好ましく、より好ましくは30〜250℃/分、更に好ましくは50〜200℃/分である。テンターで把持したまま室温まで冷却してもよいが、途中で把持をやめて、ロール搬送に切り替えることが好ましく、この後ロール状に巻き取られる。
以上のようにして製造された本発明の光学補償フィルムWは以下の特性を有している。
(光学特性)
本発明の光学補償フィルムWは、セルロースエステルフィルム上に光学異方性層(ポリマー層)が積層された状態で、前記式により定義されるリターデーション値Roが20〜300nmでかつリタデーション値Rtが−600〜600nmの範囲にあることが好ましい。また、より好ましい範囲はRo値が20〜120nm、Rt値が−400〜400nmの範囲であり、特に好ましい範囲はRo値が40〜100nm及びRt値が−300〜300nmの範囲である。
本発明の光学補償フィルムWは、VAモードの液晶セルを有するVA型液晶表示装置の光学補償フィルムとして特に有利に用いられる。VA型液晶表示装置に用いる光学補償フィルムはRo値を20〜150nmとし、Rt値を70〜400nmとすることが好ましい。Ro値は、30〜100nmであることが更に好ましい。VA型液晶表示装置に二枚の光学補償フィルムを使用する場合、フィルムのRt値は70〜250nmであることが好ましい。VA型液晶表示装置に一枚の光学補償フィルムを使用する場合、フィルムのRt値は150〜400nmであることが好ましい。
リタデーション値を上記範囲にすることで、特に偏光板用位相差フィルムとしての光学性能を十分に満足することが出来る。
以下、本発明の光学補償フィルムWの他の物性について説明する。以下の物性は溶液流延されたセルロースエステルフィルム上にポリマー層を塗設、固定化した光学補償フィルムとしての好ましい物性値である。
(透湿度)
本発明の光学補償フィルムWの透湿度は、25℃、90%RH環境下で1〜250g/m2・24時間であることが好ましく、10〜200g/m2・24時間であることが更に好ましく、20〜180g/m2・24時間であることが最も好ましい。透湿度は、JIS Z0208に記載の方法で測定する事が出来る。
(平衡含水率)
光学補償フィルムWは、温度25℃且つ相対湿度60%における平衡含水率が0.1〜4%であることが好ましく、0.3〜3%であることが更に好ましく、0.5〜1.5%であることが特に好ましい。
平衡含水率は、カールフィッシャー法に従う測定機(カールフィッシャー水分測定装置CA−05、三菱化学(株)製、水分気化装置:VA−05、内部液:アクアミクロンCXμ、外部液:アクアミクロンAX、窒素気流量:200ml/分、加熱温度:150℃)を用いて容易に測定出来る。具体的には、25℃、相対湿度60%で24時間以上調湿した試料を、0.6〜1.0g精秤し、測定機で測定し、得られた水分量から平衡含水率を求めることが出来る。
本発明の光学補償フィルムWの含水量は、ポリビニルアルコール(偏光子)との接着性を損なわないために、30℃85%RH下で0.3〜15g/m2であることが好ましい。0.5〜10g/m2であることがより好ましい。15g/m2より大きいと温度変化や湿度変化によるリタデーションの変動が大きくなる傾向がある
次に、本発明に係る光学的異方性の低減された偏光板保護フィルムであるセルロースエステルフィルムYについて説明する。
本発明は、偏光板保護フィルムA2、B2の少なくとも一方に、リターデーション値Roが0〜10nm、Rtが−20〜20nmを同時に満たす光学的異方性の低減された偏光板保護フィルムを用いることが必要である。
〈ポリマー〉
本発明で用いられるセルロースエステルフィルムYは、上記リターデーション値Ro、Rtを同時に満足する為に、延伸方向に対して負の複屈折を示すポリマーを含有させることが好ましい。該ポリマーとして特に限定されるものではないが、例えばエチレン性不飽和モノマーを重合して得られた重量平均分子量が500以上30000以下であるポリマーを含有することが好ましい。これらのポリマーを1〜35質量%含有することが好ましい。
特に前記ポリマーが重量平均分子量が500以上30000以下であるアクリル系ポリマーであることが好ましい。
該ポリマーを合成するには、通常の重合では分子量のコントロールが難しく、分子量をあまり大きくしない方法で出来るだけ分子量を揃えることの出来る方法を用いることが望ましい。かかる重合方法としては、クメンペルオキシドやt−ブチルヒドロペルオキシドのような過酸化物重合開始剤を使用する方法、重合開始剤を通常の重合より多量に使用する方法、重合開始剤の他にメルカプト化合物や四塩化炭素等の連鎖移動剤を使用する方法、重合開始剤の他にベンゾキノンやジニトロベンゼンのような重合停止剤を使用する方法、更に特開2000−128911号または同2000−344823号公報にあるような一つのチオール基と2級の水酸基とを有する化合物、或いは、該化合物と有機金属化合物を併用した重合触媒を用いて塊状重合する方法等を挙げることが出来、何れも本発明において好ましく用いられるが、特に、該公報に記載の方法が好ましい。
本発明に有用なポリマーを構成するモノマー単位としてのモノマーを下記に挙げるがこれに限定されない。
エチレン性不飽和モノマーを重合して得られるポリマーを構成するエチレン性不飽和モノマー単位としては:ビニルエステルとして、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、吉草酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、オクチル酸ビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、ソルビン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等;アクリル酸エステルとして、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル(i−、n−)、アクリル酸ブチル(n−、i−、s−、t−)、アクリル酸ペンチル(n−、i−、s−)、アクリル酸ヘキシル(n−、i−)、アクリル酸ヘプチル(n−、i−)、アクリル酸オクチル(n−、i−)、アクリル酸ノニル(n−、i−)、アクリル酸ミリスチル(n−、i−)、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸(2−エチルヘキシル)、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェネチル、アクリル酸(ε−カプロラクトン)、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(4−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシブチル)、アクリル酸−p−ヒドロキシメチルフェニル、アクリル酸−p−(2−ヒドロキシエチル)フェニル等;メタクリル酸エステルとして、上記アクリル酸エステルをメタクリル酸エステルに変えたもの;不飽和酸として、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸等を挙げることが出来る。上記モノマーで構成されるポリマーはコポリマーでもホモポリマーでもよく、ビニルエステルのホモポリマー、ビニルエステルのコポリマー、ビニルエステルとアクリル酸またはメタクリル酸エステルとのコポリマーが好ましい。
本発明において、アクリル系ポリマーという(単にアクリル系ポリマーという)のは、芳香環或いはシクロヘキシル基を有するモノマー単位を有しないアクリル酸またはメタクリル酸アルキルエステルのホモポリマーまたはコポリマーを指す。芳香環を側鎖に有するアクリル系ポリマーというのは、必ず芳香環を有するアクリル酸またはメタクリル酸エステルモノマー単位を含有するアクリル系ポリマーである。また、シクロヘキシル基を側鎖に有するアクリル系ポリマーというのは、シクロヘキシル基を有するアクリル酸またはメタクリル酸エステルモノマー単位を含有するアクリル系ポリマーである。
芳香環及びシクロヘキシル基を有さないアクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル(i−、n−)、アクリル酸ブチル(n−、i−、s−、t−)、アクリル酸ペンチル(n−、i−、s−)、アクリル酸ヘキシル(n−、i−)、アクリル酸ヘプチル(n−、i−)、アクリル酸オクチル(n−、i−)、アクリル酸ノニル(n−、i−)、アクリル酸ミリスチル(n−、i−)、アクリル酸(2−エチルヘキシル)、アクリル酸(ε−カプロラクトン)、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(4−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−メトキシエチル)、アクリル酸(2−エトキシエチル)等、または上記アクリル酸エステルをメタクリル酸エステルに変えたものを挙げることが出来る。
アクリル系ポリマーは上記モノマーのホモポリマーまたはコポリマーであるが、アクリル酸メチルエステルモノマー単位が30質量%以上を有していることが好ましく、また、メタクリル酸メチルエステルモノマー単位が40質量%以上有することが好ましい。特にアクリル酸メチルまたはメタクリル酸メチルのホモポリマーが好ましい。
芳香環を有するアクリル酸またはメタクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、アクリル酸フェニル、メタクリル酸フェニル、アクリル酸(2または4−クロロフェニル)、メタクリル酸(2または4−クロロフェニル)、アクリル酸(2または3または4−エトキシカルボニルフェニル)、メタクリル酸(2または3または4−エトキシカルボニルフェニル)、アクリル酸(oまたはmまたはp−トリル)、メタクリル酸(oまたはmまたはp−トリル)、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ベンジル、アクリル酸フェネチル、メタクリル酸フェネチル、アクリル酸(2−ナフチル)等を挙げることが出来るが、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニチル、メタクリル酸フェネチルを好ましく用いることが出来る。
芳香環を側鎖に有するアクリル系ポリマー中、芳香環を有するアクリル酸またはメタクリル酸エステルモノマー単位が20〜40質量%を有し、且つアクリル酸またはメタクリル酸メチルエステルモノマー単位を50〜80質量%有することが好ましい。該ポリマー中、水酸基を有するアクリル酸またはメタクリル酸エステルモノマー単位を2〜20質量%有することが好ましい。
シクロヘキシル基を有するアクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸(4−メチルシクロヘキシル)、メタクリル酸(4−メチルシクロヘキシル)、アクリル酸(4−エチルシクロヘキシル)、メタクリル酸(4−エチルシクロヘキシル)等を挙げることが出来るが、アクリル酸シクロヘキシル及びメタクリル酸シクロヘキシルを好ましく用いることが出来る。
シクロヘキシル基を側鎖に有するアクリル系ポリマー中、シクロヘキシル基を有するアクリル酸またはメタクリル酸エステルモノマー単位を20〜40質量%を有し且つ50〜80質量%有することが好ましい。また、該ポリマー中、水酸基を有するアクリル酸またはメタクリル酸エステルモノマー単位を2〜20質量%有することが好ましい。
上述のエチレン性不飽和モノマーを重合して得られるポリマー、アクリル系ポリマー、芳香環を側鎖に有するアクリル系ポリマー及びシクロヘキシル基を側鎖に有するアクリル系ポリマーは何れもセルロース樹脂との相溶性に優れる。
これらの水酸基を有するアクリル酸またはメタクリル酸エステルモノマーの場合はホモポリマーではなく、コポリマーの構成単位である。この場合、好ましくは、水酸基を有するアクリル酸またはメタクリル酸エステルモノマー単位がアクリル系ポリマー中2〜20質量%含有することが好ましい。
本発明において、側鎖に水酸基を有するポリマーも好ましく用いることが出来る。水酸基を有するモノマー単位としては、前記したモノマーと同様であるが、アクリル酸またはメタクリル酸エステルが好ましく、例えば、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(4−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシブチル)、アクリル酸−p−ヒドロキシメチルフェニル、アクリル酸−p−(2−ヒドロキシエチル)フェニル、またはこれらアクリル酸をメタクリル酸に置き換えたものを挙げることが出来、好ましくは、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル及びメタクリル酸−2−ヒドロキシエチルである。ポリマー中に水酸基を有するアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルモノマー単位はポリマー中2〜20質量%含有することが好ましく、より好ましくは2〜10質量%である。
前記のようなポリマーが上記の水酸基を有するモノマー単位を2〜20質量%含有したものは、勿論セルロース樹脂との相溶性、保留性、寸法安定性が優れ、透湿度が小さいばかりでなく、偏光板用保護フィルムとしての偏光子との接着性に特に優れ、偏光板の耐久性が向上する効果を有している。
アクリル系ポリマーの主鎖の少なくとも一方の末端に水酸基を有するようにする方法は、特に主鎖の末端に水酸基を有するようにする方法であれば限定ないが、アゾビス(2−ヒドロキシエチルブチレート)のような水酸基を有するラジカル重合開始剤を使用する方法、2−メルカプトエタノールのような水酸基を有する連鎖移動剤を使用する方法、水酸基を有する重合停止剤を使用する方法、リビングイオン重合により水酸基を末端に有するようにする方法、特開2000−128911号または2000−344823号公報にあるような一つのチオール基と2級の水酸基とを有する化合物、或いは、該化合物と有機金属化合物を併用した重合触媒を用いて塊状重合する方法等により得ることが出来、特に該公報に記載の方法が好ましい。この公報記載に関連する方法で作られたポリマーは、綜研化学社製のアクトフロー・シリーズとして市販されており、好ましく用いることが出来る。上記の末端に水酸基を有するポリマー及び/または側鎖に水酸基を有するポリマーは、本発明において、ポリマーの相溶性、透明性を著しく向上する効果を有する。
更に、エチレン性不飽和モノマーとして、スチレン類を用いたポリマーも用いることが出来る。スチレン類としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、クロロメチルスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、ビニル安息香酸メチルエステルなどが挙げられるが、これらに限定される物ではない。前記不飽和エチレン性モノマーとして挙げた例示モノマーと共重合してもよく、また複屈折を制御する目的で、2種以上の上記ポリマーをもちいてセルロース樹脂に相溶させて用いても良い。
更に、本発明に係るセルロースエステルフィルムYは、分子内に芳香環と親水性基を有しないエチレン性不飽和モノマーXaと分子内に芳香環を有せず、親水性基を有するエチレン性不飽和モノマーXbとを共重合して得られた重量平均分子量2000以上30000以下のポリマーXと、芳香環を有さないエチレン性不飽和モノマーYaを重合して得られた重量平均分子量500以上3000以下のポリマーYとを含有することが本発明においてより高い効果が得られるため好ましい。
<ポリマーX、ポリマーY>
本発明のRoおよびRthを調整する方法としては、種々の方法が知られておりいずれを採用することもできるが、透明性の点から、分子内に芳香環と親水性基を有しないエチレン性不飽和モノマーXaと分子内に芳香環を有せず、親水性基を有するエチレン性不飽和モノマーXbとを共重合して得られた重量平均分子量5000以上30000以下のポリマーX、そしてより好ましくは、芳香環を有さないエチレン性不飽和モノマーYaを重合して得られた重量平均分子量500以上3000以下のポリマーYとを含有したセルロースエステルフィルムであることが好ましい。
一般にモノマー中、特に主鎖に芳香環を有する物質はセルロースエステルの複屈折性と同様に正の複屈折性を持つことが知られており、セルロースエステルフィルムのリターデーション値Rthを打ち消さないため、負の複屈折性を持つ材料をフィルム中に添加することが好ましい。
本発明のポリマーXは分子内に芳香環と親水性基を有しないエチレン性不飽和モノマーXaと分子内に芳香環を有せず、親水性基を有するエチレン性不飽和モノマーXbとを共重合して得られた重量平均分子量5000以上30000以下のポリマーである。
好ましくは、Xaは分子内に芳香環と親水性基を有しないアクリルまたはメタクリルモノマー、Xbは分子内に芳香環を有せず親水性基を有するアクリルまたはメタクリルモノマーである。
本発明のポリマーXは、下記一般式(1)で表される。
一般式(1)
−(Xa)m−(Xb)n−(Xc)p−
さらに好ましくは、下記一般式(1−1)で表されるポリマーである。
一般式(1−1)
(式中、R1、R3は、HまたはCH3を表す。R2は炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基を表す。R4は−CH2−、−C2H4−または−C3H6−を表す。Xcは、Xa、Xbに重合可能なモノマー単位を表す。m、nおよびpは、モル組成比を表す。ただしm≠0、n≠0、m+n+p=100である。)
本発明のポリマーXを構成するモノマー単位としてのモノマーを下記に挙げるがこれに限定されない。
Xにおいて、親水性基とは、水酸基、エチレンオキシド連鎖を有する基をいう。
分子内に芳香環と親水性基を有しないエチレン性不飽和モノマーXaは、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル(i−、n−)、アクリル酸ブチル(n−、i−、s−、t−)、アクリル酸ペンチル(n−、i−、s−)、アクリル酸ヘキシル(n−、i−)、アクリル酸ヘプチル(n−、i−)、アクリル酸オクチル(n−、i−)、アクリル酸ノニル(n−、i−)、アクリル酸ミリスチル(n−、i−)、アクリル酸(2−エチルヘキシル)、アクリル酸(ε−カプロラクトン)、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−エトキシエチル)等、または上記アクリル酸エステルをメタクリル酸エステルに変えたものを挙げることが出来る。中でも、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル(i−、n−)であることが好ましい。
分子内に芳香環を有せず、親水性基を有するエチレン性不飽和モノマーXbは、水酸基を有するモノマー単位として、アクリル酸またはメタクリル酸エステルが好ましく、例えば、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(4−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシブチル)、またはこれらアクリル酸をメタクリル酸に置き換えたものを挙げることが出来、好ましくは、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)及びメタクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)である。
Xcとしては、Xa、Xb以外のものでかつ共重合可能なエチレン性不飽和モノマーであれば、特に制限はないが、芳香環を有していないものが好ましい。
Xa、XbおよびXcのモル組成比m:nは99:1〜65:35の範囲が好ましく、更に好ましくは95:5〜75:25の範囲である。Xcのpは0〜10である。Xcは複数のモノマー単位であってもよい。
Xaのモル組成比が多いとセルロースエステルとの相溶性が良化するがフィルム厚み方向のリターデーション値Rthが大きくなる。Xbのモル組成比が多いと上記相溶性が悪くなるが、Rthを低減させる効果が高い。また、Xbのモル組成比が上記範囲を超えると製膜時にヘイズが出る傾向があり、これらの最適化を図りXa、Xbのモル組成比を決めることが好ましい。
ポリマーXの分子量は重量平均分子量が5000以上30000以下であり、更に好ましくは8000以上25000以下である。
重量平均分子量を5000以上とすることにより、セルロースエステルフィルムの、高温高湿下における寸法変化が少ない、偏光板保護フィルムとしてカールが少ない等の利点が得られ好ましい。重量平均分子量が30000を以内とした場合は、セルロースエステルとの相溶性がより向上し、高温高湿下においてのブリードアウト、さらには製膜直後でのヘイズの発生が抑制される。
本発明のポリマーXの重量平均分子量は、公知の分子量調節方法で調整することが出来る。そのような分子量調節方法としては、例えば四塩化炭素、ラウリルメルカプタン、チオグリコール酸オクチル等の連鎖移動剤を添加する方法等が挙げられる。また、重合温度は通常室温から130℃、好ましくは50℃から100℃で行われるが、この温度または重合反応時間を調整することで可能である。
重量平均分子量の測定方法は下記方法によることが出来る。
(重量平均分子量測定方法)
重量平均分子量Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定した。
測定条件は以下の通りである。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いる。
本発明のポリマーYは芳香環を有さないエチレン性不飽和モノマーYaを重合して得られた重量平均分子量500以上3000以下のポリマーである。重量平均分子量500以上ではポリマーの残存モノマーが減少し好ましい。また、3000以下とすることは、リターデーション値Rth低下性能を維持するために好ましい。Yaは、好ましくは芳香環を有さないアクリルまたはメタクリルモノマーである。
本発明のポリマーYは、下記一般式(2)で表される。
一般式(2)
−(Ya)k−(Yb)q−
さらに好ましくは、下記一般式(2−1)で表されるポリマーである。
一般式(2−1)
−[CH2−C(−R5)(−CO2R6)]k−[Yb]q−
(式中、R5は、HまたはCH3を表す。R6は炭素数1〜12のアルキル基またはシクロアルキル基を表す。Ybは、Yaと共重合可能なモノマー単位を表す。kおよびqは、モル組成比を表す。ただしk≠0、k+q=100である。)
Ybは、Yaと共重合可能なエチレン性不飽和モノマーであれば特に制限はない。Ybは複数であってもよい。k+q=100、qは好ましくは0〜30である。
芳香環を有さないエチレン性不飽和モノマーを重合して得られるポリマーYを構成するエチレン性不飽和モノマーYaはアクリル酸エステルとして、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル(i−、n−)、アクリル酸ブチル(n−、i−、s−、t−)、アクリル酸ペンチル(n−、i−、s−)、アクリル酸ヘキシル(n−、i−)、アクリル酸ヘプチル(n−、i−)、アクリル酸オクチル(n−、i−)、アクリル酸ノニル(n−、i−)、アクリル酸ミリスチル(n−、i−)、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸(2−エチルヘキシル)、アクリル酸(ε−カプロラクトン)、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(4−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシブチル)、メタクリル酸エステルとして、上記アクリル酸エステルをメタクリル酸エステルに変えたもの;不飽和酸として、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸等を挙げることが出来る。
Ybは、Yaと共重合可能なエチレン性不飽和モノマーであれば特に制限はないが、ビニルエステルとして、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、吉草酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、オクチル酸ビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、ソルビン酸ビニル、桂皮酸ビニル等が好ましい。Ybは複数であってもよい。
ポリマーX、Yを合成するには、通常の重合では分子量のコントロールが難しく、分子量をあまり大きくしない方法で出来るだけ分子量を揃えることの出来る方法を用いることが望ましい。かかる重合方法としては、クメンペルオキシドやt−ブチルヒドロペルオキシドのような過酸化物重合開始剤を使用する方法、重合開始剤を通常の重合より多量に使用する方法、重合開始剤の他にメルカプト化合物や四塩化炭素等の連鎖移動剤を使用する方法、重合開始剤の他にベンゾキノンやジニトロベンゼンのような重合停止剤を使用する方法、更に特開2000−128911号または同2000−344823号公報にあるような一つのチオール基と2級の水酸基とを有する化合物、あるいは、該化合物と有機金属化合物を併用した重合触媒を用いて塊状重合する方法等を挙げることが出来、何れも本発明において好ましく用いられるが、特に、ポリマーYは、分子中にチオール基と2級の水酸基とを有する化合物を連鎖移動剤として使用する重合方法が好ましい。この場合、ポリマーYの末端には、重合触媒および連鎖移動剤に起因する水酸基、チオエーテルを有することとなる。この末端残基により、Yとセルロースエステルとの相溶性を調整することができる。
ポリマーXおよびYの水酸基価は30〜150[mgKOH/g]であることが好ましい。
(水酸基価の測定方法)
この測定は、JIS K 0070(1992)に準ずる。この水酸基価は、試料1gをアセチル化させたとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数と定義される。具体的には試料Xg(約1g)をフラスコに精秤し、これにアセチル化試薬(無水酢酸20mlにピリジンを加えて400mlにしたもの)20mlを正確に加える。フラスコの口に空気冷却管を装着し、95〜100℃のグリセリン浴にて加熱する。1時間30分後、冷却し、空気冷却管から精製水1mlを加え、無水酢酸を酢酸に分解する。次に電位差滴定装置を用いて0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液で滴定を行い、得られた滴定曲線の変曲点を終点とする。更に空試験として、試料を入れないで滴定し、滴定曲線の変曲点を求める。水酸基価は、次の式によって算出する。
水酸基価={(B−C)×f×28.05/X}+D
(式中、Bは空試験に用いた0.5mol/Lの水酸化カリウムエタノール溶液の量(ml)、Cは滴定に用いた0.5mol/Lの水酸化カリウムエタノール溶液の量(ml)、fは0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液のファクター、Dは酸価、また、28.05は水酸化カリウムの1mol量56.11の1/2を表す)
上述のXポリマーポリマーYは何れもセルロースエステルとの相溶性に優れ、蒸発や揮発もなく生産性に優れ、偏光板用保護フィルムとしての保留性がよく、透湿度が小さく、寸法安定性に優れている。
ポリマーXとポリマーYのセルロースエステルフィルム中での含有量は、下記式(i)、式(ii)を満足する範囲であることが好ましい。ポリマーXの含有量をXg(質量%=ポリマーXの質量/セルロースエステルの質量 ×100)、ポリマーYの含有量をYg(質量%)とすると、
式(i) 5≦Xg+Yg≦35(質量%)
式(ii) 0.05≦Yg/(Xg+Yg)≦0.4
式(i)の好ましい範囲は、10〜25質量%である。
ポリマーXとポリマーYは総量として5質量%以上であれば、リターデーション値Rthの低減に十分な作用をする。また、総量として35質量%以下であれば、偏光子PVAとの接着性が良好である。又、ポリマー層を形成したあとで、支持体ごと延伸してポリマー層に光学異方性を付与する際に延伸斑が起こりにくく、視認性に優れた表示装置を提供することができる。
ポリマーXとポリマーYは後述するドープ液を構成する素材として直接添加、溶解するか、もしくはセルロースエステルを溶解する有機溶媒に予め溶解した後ドープ液に添加することが出来る。
(セルロースエステル)
本発明で用いられる偏光板保護フィルムA1、A2、B1、B2の素材として用いられるセルロースエステルフィルム、特に、本発明の光学補償フィルムWの支持体として、またセルロースエステルフィルムYの素材として用いられるセルロースエステルは、セルロースの低級脂肪酸エステルであることが好ましい。セルロースの低級脂肪酸エステルにおける低級脂肪酸とは、炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味し、例えば、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等や、特開平10−45804号、同8−231761号、米国特許第2,319,052号等に記載されているようなセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等の混合脂肪酸エステルを用いることが出来る。上記記載の中でも、特に好ましく用いられるセルロースの低級脂肪酸エステルは、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートである。これらのセルロースエステルは単独或いは混合して用いることが出来る。
セルローストリアセテートの場合には、平均酢化度(結合酢酸量)54.0〜62.5%のものが好ましく用いられ、特に好ましいのは平均酢化度が58.0〜62.5%のセルローストリアセテートである。
セルローストリアセテート以外で好ましいセルロースエステルは、炭素原子数2〜4のアシル基を置換基として有し、アセチル基の置換度をXとし、炭素数3〜22の脂肪酸エステル基の置換度をYとした時、下記式(I)及び(II)を同時に満たすセルロースエステルである。
(I)2.8≦X+Y≦3.0
(II)1.0≦X≦2.95
中でも1.0≦X≦2.95、0.1≦Y≦2.0のセルロースアセテートプロピオネートが好ましい。アシル基で置換されていない部分は、通常水酸基として存在しているものである。これらは公知の方法で合成することが出来る。
セルロースエステルは綿花リンター、木材パルプ、ケナフ等を原料として合成されたセルロースエステルを単独或いは混合して用いることが出来る。特に、綿花リンター(以下、単にリンターとすることがある)から合成されたセルロースエステルを単独或いは混合して用いることが好ましい。
セルロースエステルの分子量が大きいと、熱による弾性率の変化率が小さくなるが、分子量を上げすぎると、セルロースエステルの溶解液の粘度が高くなりすぎ、生産性が低下する。セルロースエステルの分子量は、数平均分子量(Mn)で30000〜200000のものが好ましく、40000〜170000のものが更に好ましい。
セルロースエステルは、20mlの純水(電気伝導度0.1μS/cm以下、pH6.8)に1g投入し、25℃、1hr、窒素雰囲気下にて攪拌した時のpHが6〜7、電気伝導度が1〜100μS/cmであることが好ましい。pHが6未満の場合、残留有機酸が加熱溶融時にセルロースの劣化を促進させる恐れがあり、pHが7より高い場合、加水分解が促進する恐れがある。また、電気伝導度が100μS/cm以上の場合、残留イオンが比較的多く存在するため、加熱溶融する場合にはにセルロースを劣化させる要因になると考えられる。
(可塑剤)
本発明で用いられるセルロースエステルフィルムには、従来から使用されている可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等を含有させることができる。特に、セルロースエステルフィルムYに、これらの添加剤を添加する場合は、リターデーションRtが著しく上昇しない程度に含有させることが好ましい。
本発明のセルロースエステルフィルムは、以下の可塑剤を用いることが出来る。
リン酸エステル系の可塑剤:具体的には、トリアセチルホスフェート、トリブチルホスフェート等のリン酸アルキルエステル、トリシクロベンチルホスフェート、シクロヘキシルホスフェート等のリン酸シクロアルキルエステル、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリナフチルホスフェート、トリキシリルオスフェート、トリスオルト−ビフェニルホスフェート等のリン酸アリールエステルが挙げられる。これらの置換基は、同一でもあっても異なっていてもよく、更に置換されていても良い。またアルキル基、シクロアルキル基、アリール基のミックスでも良く、また置換基同志が共有結合で結合していても良い。
またエチレンビス(ジメチルホスフェート)、ブチレンビス(ジエチルホスフェート)等のアルキレンビス(ジアルキルホスフェート)、エチレンビス(ジフェニルホスフェート)、プロピレンビス(ジナフチルホスフェート)等のアルキレンビス(ジアリールホスフェート)、フェニレンビス(ジブチルホスフェート)、ビフェニレンビス(ジオクチルホスフェート)等のアリーレンビス(ジアルキルホスフェート)、フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)、ナフチレンビス(ジトルイルホスフェート)等のアリーレンビス(ジアリールホスフェート)等のリン酸エステルが挙げられる。これらの置換基は、同一でもあっても異なっていてもよく、更に置換されていても良い。またアルキル基、シクロアルキル基、アリール基のミックスでも良く、また置換基同志が共有結合で結合していても良い。
更にリン酸エステルの部分構造が、ポリマーの一部、或いは規則的にペンダントされていても良く、また酸化防止剤、酸捕捉剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていても良い。上記化合物の中では、リン酸アリールエステル、アリーレンビス(ジアリールホスフェート)が好ましく、具体的にはトリフェニルホスフェート、フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)が好ましい。
エチレングリコールエステル系の可塑剤:具体的には、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールジブチレート等のエチレングリコールアルキルエステル系の可塑剤、エチレングリコールジシクロプロピルカルボキシレート、エチレングリコールジシクロヘキルカルボキシレート等のエチレングリコールシクロアルキルエステル系の可塑剤、エチレングリコールジベンゾエート、エチレングリコールジ4−メチルベンゾエート等のエチレングリコールアリールエステル系の可塑剤が挙げられる。これらアルキレート基、シクロアルキレート基、アリレート基は、同一でもあっても異なっていてもよく、更に置換されていても良い。またアルキレート基、シクロアルキレート基、アリレート基のミックスでも良く、またこれら置換基同志が共有結合で結合していても良い。更にエチレングリコール部も置換されていても良く、エチレングリコールエステルの部分構造が、ポリマーの一部、或いは規則的にペンダントされていても良く、また酸化防止剤、酸捕捉剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていても良い。
グリセリンエステル系の可塑剤:具体的にはトリアセチン、トリブチリン、グリセリンジアセテートカプリレート、グリセリンオレートプロピオネート等のグリセリンアルキルエステル、グリセリントリシクロプロピルカルボキシレート、グリセリントリシクロヘキシルカルボキシレート等のグリセリンシクロアルキルエステル、グリセリントリベンゾエート、グリセリン4−メチルベンゾエート等のグリセリンアリールエステル、ジグリセリンテトラアセチレート、ジグリセリンテトラプロピオネート、ジグリセリンアセテートトリカプリレート、ジグリセリンテトララウレート、等のジグリセリンアルキルエステル、ジグリセリンテトラシクロブチルカルボキシレート、ジグリセリンテトラシクロペンチルカルボキシレート等のジグリセリンシクロアルキルエステル、ジグリセリンテトラベンゾエート、ジグリセリン3−メチルベンゾエート等のジグリセリンアリールエステル等が挙げられる。これらアルキレート基、シクロアルキルカルボキシレート基、アリレート基は、同一でもあっても異なっていてもよく、更に置換されていても良い。またアルキレート基、シクロアルキルカルボキシレート基、アリレート基のミックスでも良く、またこれら置換基同志が共有結合で結合していても良い。更にグリセリン、ジグリセリン部も置換されていても良く、グリセリンエステル、ジグリセリンエステルの部分構造が、ポリマーの一部、或いは規則的にペンダントされていても良く、また酸化防止剤、酸捕捉剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていても良い。
多価アルコールエステル系の可塑剤:具体的には、特開2003−12823号公報の段落30〜33記載の多価アルコールエステル系可塑剤が挙げられる。
これらアルキレート基、シクロアルキルカルボキシレート基、アリレート基は、同一でもあっても異なっていてもよく、更に置換されていても良い。またアルキレート基、シクロアルキルカルボキシレート基、アリレート基のミックスでも良く、またこれら置換基同志が共有結合で結合していても良い。更に多価アルコール部も置換されていても良く、多価アルコールの部分構造が、ポリマーの一部、或いは規則的にペンダントされていても良く、また酸化防止剤、酸捕捉剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていても良い。
ジカルボン酸エステル系の可塑剤:具体的には、ジドデシルマロネート(C1)、ジオクチルアジペート(C4)、ジブチルセバケート(C8)等のアルキルジカルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、ジシクロペンチルサクシネート、ジシクロヘキシルアジーペート等のアルキルジカルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、ジフェニルサクシネート、ジ4−メチルフェニルグルタレート等のアルキルジカルボン酸アリールエステル系の可塑剤、ジヘキシル−1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート、ジデシルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボキシレート等のシクロアルキルジカルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、ジシクロヘキシル−1,2−シクロブタンジカルボキシレート、ジシクロプロピル−1,2−シクロヘキシルジカルボキシレート等のシクロアルキルジカルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、ジフェニル−1,1−シクロプロピルジカルボキシレート、ジ2−ナフチル−1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート等のシクロアルキルジカルボン酸アリールエステル系の可塑剤、ジエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート等のアリールジカルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、ジシクロプロピルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート等のアリールジカルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、ジフェニルフタレート、ジ4−メチルフェニルフタレート等のアリールジカルボン酸アリールエステル系の可塑剤が挙げられる。これらアルコキシ基、シクロアルコキシ基は、同一でもあっても異なっていてもよく、また一置換でも良く、これらの置換基は更に置換されていても良い。アルキル基、シクロアルキル基はミックスでも良く、またこれら置換基同志が共有結合で結合していても良い。更にフタル酸の芳香環も置換されていて良く、ダイマー、トリマー、テトラマー等の多量体でも良い。またフタル酸エステルの部分構造が、ポリマーの一部、或いは規則的にポリマーへペンダントされていても良く、酸化防止剤、酸捕捉剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていても良い。
多価カルボン酸エステル系の可塑剤:具体的には、トリドデシルトリカルバレート、トリブチル−meso−ブタン−1,2,3,4−テトラカルボキシレート等のアルキル多価カルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、トリシクロヘキシルトリカルバレート、トリシクロプロピル−2−ヒドロキシ−1,2,3−プロパントリカルボキシレート等のアルキル多価カルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、トリフェニル2−ヒドロキシ−1,2,3−プロパントリカルボキシレート、テトラ3−メチルフェニルテトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボキシレート等のアルキル多価カルボン酸アリールエステル系の可塑剤、テトラヘキシル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボキシレート、テトラブチル−1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボキシレート等のシクロアルキル多価カルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、テトラシクロプロピル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボキシレート、トリシクロヘキシル−1,3,5−シクロヘキシルトリカルボキシレート等のシクロアルキル多価カルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、トリフェニル−1,3,5−シクロヘキシルトリカルボキシレート、ヘキサ4−メチルフェニル−1,2,3,4,5,6−シクロヘキシルヘキサカルボキシレート等のシクロアルキル多価カルボン酸アリールエステル系の可塑剤、トリドデシルベンゼン−1,2,4−トリカルボキシレート、テトラオクチルベンゼン−1,2,4,5−テトラカルボキシレート等のアリール多価カルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、トリシクロペンチルベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレート、テトラシクロヘキシルベンゼン−1,2,3,5−テトラカルボキシレート等のアリール多価カルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤トリフェニルベンゼン−1,3,5−テトラカルトキシレート、ヘキサ4−メチルフェニルベンゼン−1,2,3,4,5,6−ヘキサカルボキシレート等のアリール多価カルボン酸アリールエステル系の可塑剤が挙げられる。これらアルコキシ基、シクロアルコキシ基は、同一でもあっても異なっていてもよく、また一置換でも良く、これらの置換基は更に置換されていても良い。アルキル基、シクロアルキル基はミックスでも良く、またこれら置換基同志が共有結合で結合していても良い。更にフタル酸の芳香環も置換されていて良く、ダイマー、トリマー、テトラマー等の多量体でも良い。またフタル酸エステルの部分構造が、ポリマーの一部、或いは規則的にポリマーへペンダントされていても良く、酸化防止剤、酸捕捉剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていても良い。
(紫外線吸収剤)
液晶画像表示装置に用いる偏光板保護フィルムや他のフィルムには、紫外線吸収剤が含有されており、紫外線吸収剤は屋外で使用する際に液晶や偏光膜の劣化防止の役割をする。一方、本発明で用いられるセルロースエステルフィルムYには、必ずしも紫外線吸収剤を含有しなくてもよく、紫外線吸収性を付与する場合には、紫外線吸収剤を含有させることができる。紫外線吸収剤は屋外で使用する際に液晶や偏光膜の劣化防止の役割をするが、セルロースエステルフィルムYを偏光膜と液晶セルとの間に用いられる偏光板保護フィルムとして使用する場合などは、可視光透過率の向上などを優先して、紫外線吸収剤を添加しなくてもよい。
紫外線吸収剤は波長370nm以下の紫外線を吸収する性能に優れ、かつ波長400nm以上の可視光の吸収が可及的に少なく、透過率が50%以上であることが好ましい。特に、波長370nmでの透過率が10%以下であることが好ましく、更に好ましくは5%以下である。本発明において、使用し得る紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物等を挙げることが出来るが、着色の少ないベンゾトリアゾール系化合物が好ましい。光に対しする安定性を有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やベンゾフェノン系紫外線吸収剤が好ましく、不要な着色がより少ないベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が特に好ましい。例えばチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製のTINUVIN109、TINUVIN171、TINUVIN326、TINUVIN327、TINUVIN328等を好ましく用いることが出来るが、低分子の紫外線吸収剤は使用量によっては可塑剤同様に製膜中にウェブに析出したり、揮発する場合があるので、その添加量は0.1〜5質量%が好ましい。
本発明においては、上記低分子の紫外線吸収剤より析出等が起こりにくい高分子紫外線吸収剤を、本発明に係るポリマーと共にセルロースエステルフィルムに含有させることがより好ましく、寸法安定性、保留性、透湿性等を損なうことなく、またフィルム中で相分離することもなく安定した状態で紫外線を十分にカットすることが出来る。本発明に有用な高分子紫外線吸収剤としては、特開平6−148430号公報に記載されている高分子紫外線吸収剤や、紫外線吸収剤モノマーを含むポリマーを好ましく用いることが出来る。
特に、本発明では下記一般式(14)で表される紫外線吸収性モノマーから合成される紫外線吸収性共重合ポリマー(高分子紫外線吸収剤、またはポリマーUV剤ということがある)を含有していることが好ましい。
〔式中、nは0〜3の整数を表し、R1〜R5は水素原子、ハロゲン原子、又は置換基を表し、Xは−COO−、−CONR7−、−OCO−、−NR7CO−、を表し、R6、R7は水素原子、アルキル基、又はアリール基を表す。但し、R6で表される基は重合性基を部分構造として有する。〕
前記一般式(14)において、nは0〜3の整数を表し、nが2以上の時、複数のR5同士は同じであっても異なっていても良く、また互いに連結して5〜7員の環を形成していても良い。
R1〜R5は、各々水素原子、ハロゲン原子又は置換基を表す。ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ、好ましくはフッ素原子、塩素原子である。また、置換基としては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ヒドロキシエチル基、メトキシメチル基、トリフルオロメチル基、t−ブチル基など)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基、3−ブテン−1−イル基など)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、p−トリル基、p−クロロフェニル基など)、ヘテロ環基(例えば、ピリジル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基、ベンズオキサゾリル基など)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基など)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基など)、ヘテロ環オキシ基(例えば、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基など)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基など)、アシル基(例えば、アセチル基、プロパノイル基、ブチロイル基など)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基など)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル基など)、カルバモイル基(例えば、メチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基、ジメチルカルバモイル基など)、アミノ基、アルキルアミノ基(例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基など)、アニリノ基(例えば、アニリノ基、N−メチルアニリノ基など)、アシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基など)、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、スルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基など)、スルファモイルアミノ基(例えば、ジメチルスルファモイルアミノ基など)、スルホニル基(例えば、メタンスルホニル基、ブタンスルホニル基、フェニルスルホニル基など)、スルファモイル基(例えば、エチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基など)、スルホニルアミノ基(例えば、メタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基など)、ウレイド基(例えば、3−メチルウレイド基、3,3−ジメチルウレイド基、1,3−ジメチルウレイド基など)、イミド基(例えば、フタルイミド基など)、シリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基など)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n−ブチルチオ基など)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基など)等が挙げられるが、好ましくは、アルキル基、アリール基である。
一般式(14)において、R1〜R5で表される各基が、更に置換可能な基である場合、更に置換基を有していてもよく、また、隣接するR1〜R4が互いに連結して5〜7員の環を形成していてもよい。
R6は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表すが、アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、アミル基、イソアミル基、ヘキシル基などが挙げられる。また、上記アルキル基は更にハロゲン原子、置換基を有していてもよく、ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ、置換基としては、例えば、アシル基(例えば、アセチル基、プロパノイル基、ブチロイル基など)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基など)、アミノ基、アルキルアミノ基(例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基など)、アシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基など)、ヒドロキシル基、シアノ基、カルバモイル基(例えば、メチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基、ジメチルカルバモイル基など)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基、ピバロイルオキシ基など)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基など)が挙げられる。
シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基などの飽和環式炭化水素を挙げることが出来、これらは無置換でも、置換されていても良い。
アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、1−メチル−2−プロペニル基、3−ブテニル基、2−ブテニル基、3−メチル−2−ブテニル基、オレイル基などが挙げられるが、好ましくはビニル基、1−メチル−2−プロペニル基である。
アルキニル基としては、例えば、エチニル基、ブタジイル基、プロパルギル基、1−メチル−2−プロピニル基、2−ブチニル基、1,1−ジメチル−2−プロピニル基などが挙げられるが、好ましくは、エチニル基、プロパルギル基である。
一般式(14)において、Xは−COO−、−CONR7−、−OCO−又は−NR7CO−を表す。
R7は水素原子、アルキル基、シクロアルキル基を表すが、アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、アミル基、イソアミル基、ヘキシル基などが挙げられる。かかるアルキル基は、更にハロゲン原子、置換基を有していてもよく、ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ、置換基としては、例えば、アシル基(例えば、アセチル基、プロパノイル基、ブチロイル基など)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基など)、アミノ基、アルキルアミノ基(例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基など)、アニリノ基(例えば、アニリノ基、N−メチルアニリノ基など)、アシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基など)、ヒドロキシル基、シアノ基、カルバモイル基(例えば、メチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基、ジメチルカルバモイル基など)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基、ピバロイルオキシ基など)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基など)が挙げられる。
シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基などの飽和環式炭化水素を挙げることが出来、これらは無置換でも、置換されていても良い。
本発明でいう重合性基とは、不飽和エチレン系重合性基又は二官能系重縮合性基を意味するが、好ましくは不飽和エチレン系重合性基である。不飽和エチレン系重合性基の具体例としては、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、スチリル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、シアン化ビニル基、2−シアノアクリルオキシ基、1,2−エポキシ基、ビニルエーテル基などが挙げられるが、好ましくは、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基アクリルアミド基、メタクリルアミド基である。また、重合性基を部分構造として有するとは、上記重合性基が直接、若しくは2価以上の連結基によって結合していることを意味し、2価以上の連結基とは、例えば、アルキレン基(例えば、メチレン、1,2−エチレン、1,3−プロピレン、1,4−ブチレン、シクロヘキサン−1,4−ジイルなど)、アルケニレン基(例えば、エテン−1,2−ジイル、ブタジエン−1,4−ジイルなど)、アルキニレン基(例えば、エチン−1,2−ジイル、ブタン−1,3−ジイン−1,4−ジイルなど)、ヘテロ原子連結基(酸素、硫黄、窒素、ケイ素、リン原子など)が挙げられるが、好ましくは、アルキレン基、及び、ヘテロ原子で連結する基である。これらの連結基は更に組み合わせて複合基を形成してもよい。紫外線吸収性モノマーから誘導されるポリマーの重量平均分子量が2000以上30000以下であることが好ましく、より好ましくは5000以上20000以下である。
本発明に用いられる紫外線吸収性共重合ポリマーの重量平均分子量は、公知の分子量調節方法で調整することが出来る。そのような分子量調節方法としては、例えば四塩化炭素、ラウリルメルカプタン、チオグリコール酸オクチル等の連鎖移動剤を添加する方法等が挙げられる。重合温度は通常室温から130℃、好ましくは50℃から100℃で行われる。
本発明に用いられる紫外線吸収性共重合ポリマーは、紫外線吸収性モノマーのみの単重合体であっても、他の重合性モノマーとの共重合体であってもよいが、共重合可能な他の重合性モノマーとしては、例えば、スチレン誘導体(例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルナフタレンなど)、アクリル酸エステル誘導体(例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸シクロヘキシルなど)、メタクリル酸エステル誘導体(例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸シクロヘキシル等)、アルキルビニルエーテル(例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテルなど)、アルキルビニルエステル(例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、ステアリン酸ビニルなど)、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリルアミド、メタクリルアミドなどの不飽和化合物が挙げられる。好ましくは、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、酢酸ビニルである。
紫外線吸収性モノマーから誘導されるポリマー中の紫外線吸収性モノマー以外の共重合成分が、親水性のエチレン性不飽和モノマーを少なくとも1種含有することも好ましい。
親水性のエチレン性不飽和モノマーとしては、親水性で分子中に重合可能な不飽和二重結合を有するもので有れば特に制限されず、例えば、アクリル酸或いはメタクリル酸等の不飽和カルボン酸、若しくはヒドロキシル基又はエーテル結合を有する、アクリル酸若しくはメタクリル酸エステル(例えば、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、2,3−ジヒドロキシ−2−メチルプロピルメタクリレート、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸2−エトキシエチル、アクリル酸ジエチレングリコールエトキシレート、アクリル酸3−メトキシブチルなど)、アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の(N−置換)(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルオキサゾリドン等が挙げられる。
親水性のエチレン性不飽和モノマーとしては、水酸基若しくはカルボキシル基を分子内に有する(メタ)アクリレートが好ましく、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピルが特に好ましい。
これらの重合性モノマーは、1種、または2種以上併用して紫外線吸収性モノマーと共重合させることが出来る。
本発明に用いられる紫外線吸収性共重合ポリマーの重合方法は、特に問わないが、従来公知の方法を広く採用することが出来、例えば、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合などが挙げられる。ラジカル重合法の開始剤としては、例えば、アゾ化合物、過酸化物等が挙げられ、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビスイソブチル酸ジエステル誘導体、過酸化ベンゾイル、過酸化水素などが挙げられる。重合溶媒は特に問わないが、例えば、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ジクロロエタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒、メタノール等のアルコール系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル系溶媒、アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、水溶媒等が挙げられる。溶媒の選択により、均一系で重合する溶液重合、生成したポリマーが沈澱する沈澱重合、ミセル状態で重合する乳化重合、懸濁状態で重合する懸濁重合を行うことも出来る。但し、乳化重合によって得られる紫外線吸収性ラテックスは光学フィルム用途として適していない。
上記紫外線吸収性モノマー、これと共重合可能な重合性モノマー及び親水性のエチレン性不飽和モノマーの使用割合は、得られる紫外線吸収性共重合ポリマーと他の透明ポリマーとの相溶性、光学フィルムの透明性や機械的強度に対する影響を考慮して適宜選択される。
紫外線吸収性モノマーから誘導されるポリマー中の紫外線吸収性モノマーの含有量が1〜70質量%であることが好ましく、より好ましくは、5〜60質量%である。紫外線吸収性ポリマーにおける紫外線モノマーの含有量が1質量%未満の場合、所望の紫外線吸収性能を満たそうとした場合に多量の紫外線吸収性ポリマーを使用しなければならず、ヘイズの上昇或いは析出などにより透明性が低下し、フィルム強度を低下させる要因となる。一方、紫外線吸収性ポリマーにおける紫外線モノマーの含有量が70質量%を超えた場合、他のポリマーとの相溶性が低下するため、透明な光学フィルムを得ることが出来ない。また、溶媒に対する溶解度が低くなり、フィルム作製の際の作業性、生産性が劣る。
親水性エチレン性不飽和モノマーは、上記紫外線吸収性共重合体中に、0.1〜50質量%含まれることが好ましい。0.1質量%以下では、親水性エチレン性不飽和モノマーによる相溶性の改良効果が現れず、50質量%より多いと共重合体の単離精製が困難となる。親水性エチレン性不飽和モノマーの更に好ましい含量は0.5〜20質量%である。紫外線吸収性モノマー自身に親水性基が置換している場合、親水性の紫外線吸収性モノマーと、親水性エチレン性不飽和モノマーの合計の含量が上記範囲内であることが好ましい。
紫外線吸収性モノマー及び親水性モノマーの好ましい含有量を満たすために、両者に加え、更に分子中に親水性基を有さないエチレン性不飽和モノマーを共重合させることが好ましい。
紫外線吸収性モノマー及び(非)親水性エチレン性不飽和モノマーは、各々2種以上混合して共重合させても良い。
以下、本発明に好ましく用いられる紫外線吸収性モノマーの代表例を例示するが、これらに限定されるものではない。
本発明に用いられる紫外線吸収剤、紫外線吸収性モノマー及びその中間体は公知の文献を参照して合成することが出来る。例えば、米国特許第3,072,585号、同3,159,646号、同3,399,173号、同3,761,272号、同4,028,331号、同5,683,861号、ヨーロッパ特許第86,300,416号、特開昭63−227575号、同63−185969号、Polymer Bulletin.V.20(2)、169−176及びChemical Abstracts V.109、No.191389などを参照して合成することが出来る。
本発明に用いられる紫外線吸収剤及び紫外線吸収性ポリマーは、他の透明ポリマーに混合する際に、必要に応じて低分子化合物若しくは高分子化合物、無機化合物などを一緒に用いることも出来る。例えば、本発明に用いられる紫外線吸収剤と他の低分子紫外線吸収剤とを同時に他の透明ポリマーに混合したり、本発明に用いられる紫外線吸収性ポリマーと他の低分子紫外線吸収剤とを、同時に他の透明ポリマーに混合することも好ましい態様の一つである。同様に、酸化防止剤、可塑剤、難燃剤などの添加剤を同時に混合することも好ましい態様の一つである。
セルロースエステルフィルムへの本発明に用いられる紫外線吸収剤及び紫外線吸収性ポリマーの添加方法は、セルロースエステルフィルム中に含有させてもよいし、セルロースエステルフィルム上に塗布してもよい。セルロースエステルフィルム中に含有させる場合、直接添加してもインライン添加してもいずれでも構わない。インライン添加は、予め有機溶媒(例えば、メタノール、エタノール、メチレンクロライドなど)に溶解させた後、インラインミキサー等でドープ組成中に添加する方法である。
本発明に用いられる紫外線吸収剤及び紫外線吸収性ポリマーの使用量は、化合物の種類、使用条件などにより一様ではないが、紫外線吸収剤である場合には、セルロースエステルフィルム1m2当たり0.2〜3.0gが好ましく、0.4〜2.0が更に好ましく、0.5〜1.5が特に好ましい。また、紫外線吸収ポリマーである場合には、セルロースエステルフィルム1m2当たり0.6〜9.0gが好ましく、1.2〜6.0が更に好ましく、1.5〜3.0が特に好ましい。
更に、液晶劣化防止の観点から、波長380nm以下の紫外線吸収性能に優れ、かつ、良好な液晶表示性の観点から、400nm以上の可視光吸収が少ないものが好ましい。本発明においては、特に、波長380nmでの透過率が8%以下であることが好ましく、4%以下が更に好ましく、1%以下であることが特に好ましい。
本発明に用いることの出来る市販品としての紫外線吸収剤モノマーとして、UVM−1の1−(2−ベンゾトリアゾール)−2−ヒドロキシ−5−(2−ビニルオキシカルボニルエチル)ベンゼン、大塚化学社製の反応型紫外線吸収剤RUVA−93の1−(2−ベンゾトリアゾール)−2−ヒドロキシ−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)ベンゼンまたはこの類似化合物がある。これらを単独又は共重合したポリマーまたはコポリマーも好ましく用いられるが、これらに限定されない。例えば、市販品の高分子紫外線吸収剤として、大塚化学(株)製のPUVA−30Mも好ましく用いられる。紫外線吸収剤は2種以上用いてもよい。紫外線吸収剤のドープへの添加方法は、アルコールやメチレンクロライド、ジオキソラン、酢酸メチルなどの有機溶媒に紫外線吸収剤を溶解してから添加するか、または直接ドープ組成中に添加してもよい。
また、本発明で用いられるセルロースエステルフィルムには、酸化防止剤を含有していてもよい。例えば特開平5−197073号公報に記載されているような、過酸化物分解剤、ラジカル連鎖禁止剤、金属不活性剤または酸捕捉剤を含有していてもよい。これらの化合物の添加量は、セルロースエステルに対して質量割合で1ppm〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmが更に好ましい。
また本発明において、セルロースエステルフィルム中に、微粒子のマット剤を含有することが好ましく、微粒子のマット剤としては、例えば二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の無機微粒子や架橋高分子微粒子を含有させることが好ましい。中でも二酸化ケイ素がフィルムのヘイズを小さく出来るので好ましい。微粒子の2次粒子の平均粒径は0.01〜1.0μmの範囲で、その含有量はセルロースエステルに対して0.005〜1質量%、特に好ましくは0.005〜0.3質量%であることが好ましい。二酸化ケイ素のような微粒子には有機物により表面処理されている場合が多いが、このようなものはフィルムのヘイズを低下出来るため好ましい。表面処理で好ましい有機物としては、ハロシラン類、アルコキシシラン類(特にメチル基を有するアルコキシシラン類)、シラザン、シロキサンなどが挙げられる。微粒子の平均粒径が大きい方がマット効果は大きく、反対に平均粒径の小さい方は透明性に優れるため、好ましい微粒子の一次粒子の平均粒径は5〜50nmで、より好ましくは7〜16nmである。これらの微粒子はセルロースエステルフィルム中では、通常、凝集体として存在しセルロースエステルフィルム表面に0.01〜1.0μmの凹凸を生成させることが好ましい。二酸化ケイ素の微粒子としてはアエロジル(株)製のAEROSIL 200、200V、300、R972、R972V、R974、R202、R812、RA200HS、OX50、TT600等を挙げることが出来、好ましくはAEROSIL 200V、R972、R972V、R974、R202、R812、RH200HSである。これらのマット剤は2種以上併用してもよい。2種以上併用する場合、任意の割合で混合して使用することが出来る。この場合、平均粒径や材質の異なるマット剤、例えばAEROSIL 200VとR972Vを質量比で0.1:99.9〜99.9〜0.1の範囲で使用出来る。
次に、本発明で用いられるセルロースエステルフィルムの製造方法について述べる。
本発明におけるセルロースエステルドープの調製方法について述べる。セルロースエステルに対する良溶媒を主とする有機溶媒に溶解釜中でフレーク状のセルロースエステルを攪拌しながら溶解し、ドープを形成する。溶解には、常圧で行う方法、主溶媒の沸点以下で行う方法、主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法、特開平9−95544号、同9−95557号または同9−95538号公報に記載の如き冷却溶解法で行う方法、特開平11−21379号公報に記載の如き高圧で行う方法等種々の溶解方法がある。溶解後ドープを濾材で濾過し、脱泡してポンプで次工程に送る。ドープ中のセルロースエステルの濃度は10〜35質量%程度である。更に好ましくは、15〜25質量%である。本発明に有用なポリマーをセルロースエステルドープ中に含有させるには、予め有機溶媒に該ポリマーを溶解してから添加、セルロースエステルドープに直接添加等、添加方法については、制限なく行うことが出来る。この場合、ポリマーがドープ中で白濁したり、相分離したりしないように添加する。ポリマーの添加量については、5〜30質量部、好ましくは10〜20質量部添加することが好ましい。
セルロースエステルに対する良溶媒としての有機溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、ギ酸エチル、アセトン、シクロヘキサノン、アセト酢酸メチル、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、塩化メチレン、ブロモプロパン等を挙げることが出来、酢酸メチル、アセトン、塩化メチレンを好ましく用いられる。しかし最近の環境問題から非塩素系の有機溶媒の方が好ましい傾向にある。また、これらの有機溶媒に、メタノール、エタノール、ブタノール等の低級アルコールを併用すると、セルロースエステルの有機溶媒への溶解性が向上したりドープ粘度を低減出来るので好ましい。特に沸点が低く、毒性の少ないエタノールが好ましい。本発明に係るドープに使用する有機溶媒は、セルロースエステルの良溶媒と貧溶媒を混合して使用することが、生産効率の点で好ましく、良溶媒と貧溶媒の混合比率の好ましい範囲は、良溶媒が70〜98質量%であり、貧溶媒が2〜30質量%である。本発明に用いられる良溶媒、貧溶媒とは、使用するセルロースエステルを単独で溶解するものを良溶媒、単独では溶解しないものを貧溶媒と定義している。本発明に係るドープに使用する貧溶媒としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、n−ブタノール、シクロヘキサン、アセトン、シクロヘキサノン等を好ましく使用し得る。本発明にに係るポリマーに対しても、有機溶媒の選定は、セルロースエステルの良溶媒を用いるのが好ましい。前記のように、低分子可塑剤を使用する場合には、通常の添加方法で行うことが出来、ドープ中に直接添加しても、予め有機溶媒に溶解してからドープ中に注ぎ入れてもよい。
本発明において、前記のような種々の添加剤をセルロースエステルドープに添加する際、セルロースエステルドープと各種添加剤を少量のセルロースエステルとを溶解させた溶液にしてインライン添加し混合を行うことも出来好ましい。例えば、スタチックミキサーSWJ(東レ静止型管内混合器 Hi−Mixer)(東レエンジニアリング製)のようなインラインミキサーを使用するのが好ましい。インラインミキサーを用いる場合、セルロースエステルを高圧下で濃縮溶解したドープに適用するのが好ましく、加圧容器の種類は特に問うところではなく、所定の圧力に耐えることが出来、加圧下で加熱、攪拌が出来ればよい。
本発明において、セルロースエステルドープは濾過することによって異物、特に液晶画像表示装置において、画像と認識しまごう異物は除去しなければならい。偏光板用保護フィルムの品質は、この濾過によって決まるといってよい。濾過に使用する濾材は絶対濾過精度が小さい方が好ましいが、絶対濾過精度が小さ過ぎると濾過材の目詰まりが発生しやすく、濾材の交換を頻繁に行わなければならず、生産性を低下させるという問題点ある。このため、本発明のセルロースエステルドープの濾材は、絶対濾過精度0.008mm以下のものが好ましく、0.001〜0.008mmの範囲がより好ましく、0.003〜0.006mmの範囲の濾材が更に好ましい。濾材の材質には特に制限はなく、通常の濾材を使用することが出来るが、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等のプラスチック繊維製の濾材やステンレス繊維等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく好ましい。本発明のセルロースエステルドープの濾過は通常の方法で行うことが出来るが、溶媒の常圧での沸点以上でかつ溶媒が沸騰しない範囲の温度で加圧下加熱しながら濾過する方法が、濾過前後の差圧(以下、濾圧とすることがある)の上昇が小さく、好ましい。好ましい温度範囲は45〜120℃であり、45〜70℃がより好ましく、45〜55℃の範囲であることが更に好ましい。濾圧は小さい方が好ましい。濾圧は1.6×106Pa以下であることが好ましく、1.2×106Pa以下であることがより好ましく、1.0×106Pa以下であることが更に好ましい。原料のセルロースにアシル基の未置換若しくは低置換度のセルロースエステルが含まれていると異物故障(以下輝点とすることがある)が発生することがある。輝点は直交状態(クロスニコル)の2枚の偏光板の間にセルロースエステルフィルムを置き、光を片側から照射して、その反対側から光学顕微鏡(50倍)で観察すると、正常なセルロースエステルフィルムであれば、光が遮断されていて、黒く何も見えないが、異物があるとそこから光が漏れて、スポット状に光って見える現象である。輝点の直径が大きいほど液晶画像表示装置とした場合実害が大きく、50μm以下であることが好ましく、10μm以下がより好ましく、更に8μm以下が好ましい。尚、輝点の直径とは、輝点を真円に近似して測定する直径を意味する。輝点は上記の直径のものが400個/cm2以下であれば実用上問題ないが、300個/cm2以下が好ましく、200個/cm2以下がより好ましい。このような輝点の発生数及び大きさを減少させるために、細かい異物を十分濾過する必要がある。また、特開2000−137115号公報に記載のような、一度製膜したセルロースエステルフィルムの粉砕品をドープにある割合再添加して、セルロースエステル及びその添加剤の原料とする方法は輝点を低減することが出来るため好ましく用いることが出来る。
次に、セルロースエステルドープを金属支持体上に流延する工程、金属支持体上での乾燥工程及びウェブを金属支持体から剥離する剥離工程について述べる。金属支持体は無限に移行する無端の金属ベルト或いは回転する金属ドラムであり、その表面は鏡面となっている。流延工程は、上記の如きドープを加圧型定量ギヤポンプを通して加圧ダイに送液し、流延位置において、金属支持体上に加圧ダイからドープを流延する工程である。その他の流延する方法は流延されたドープ膜をブレードで膜厚を調節するドクターブレード法、或いは逆回転するロールで調節するリバースロールコーターによる方法等があるが、口金部分のスリット形状を調整出来、膜厚を均一にし易い加圧ダイが好ましい。加圧ダイには、コートハンガーダイやTダイ等があるが、何れも好ましく用いられる。製膜速度を上げるために加圧ダイを金属支持体上に2基以上設け、ドープ量を分割して重層してもよい。膜厚の調節には、所望の厚さになるように、ドープ濃度、ポンプの送液量、ダイの口金のスリット間隙、ダイの押し出し圧力、金属支持体の速度等をコントロールするのがよい。
金属支持体上での乾燥工程は、ウェブ(金属支持体上に流延した以降のドープ膜の呼び方をウェブとする)を支持体上で加熱し溶媒を蒸発させる工程である。溶媒を蒸発させるには、ウェブ側及び支持体裏側から加熱風を吹かせる方法、支持体の裏面から加熱液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等がある。またそれらを組み合わせる方法も好ましい。また、ウェブの膜厚が薄ければ乾燥が早い。金属支持体の温度は全体が同じでも、位置によって異なっていてもよい。
本発明に適した金属支持体上での乾燥方法は、例えば、金属支持体温度を0〜40℃、好ましくは5〜30℃として流延するのが好ましい。ウェブに当てる乾燥風は30〜45℃程度が好ましいが、これに限定されない。
剥離工程は、金属支持体上で有機溶媒を蒸発させて、金属支持体が一周する前にウェブを剥離する工程で、その後ウェブは乾燥工程に送られる。金属支持体からウェブを剥離する位置のことを剥離点といい、また剥離を助けるロールを剥離ロールという。ウェブの厚さにもよるが、剥離点でのウェブの残留溶媒量(下記式)があまり大き過ぎると剥離し難かったり、逆に支持体上で充分に乾燥させてから剥離すると、途中でウェブの一部が剥がれたりすることがある。通常、残留溶媒量が20〜180質量%でウェブの剥離が行われる。本発明において好ましい剥離残留溶媒量は20〜40質量%または60〜150質量%で、特に好ましくは80〜140質量%である。製膜速度を上げる方法(残留溶媒量が出来るだけ多いうちに剥離するため製膜速度を上げることが出来る)として、残留溶媒量が多くとも剥離出来るゲル流延法(ゲルキャスティング)がある。その方法としては、ドープ中にセルロースエステルに対する貧溶媒を加えて、ドープ流延後、ゲル化する方法、支持体の温度を低めてゲル化する方法等がある。また、ドープ中に金属塩を加える方法もある。支持体上でゲル化させ膜を強くすることによって、剥離を早め製膜速度を上げることが出来る。残留溶媒量がより多い時点で剥離する場合、ウェブが柔らか過ぎると剥離時平面性を損なったり、剥離張力によるツレや縦スジが発生し易く、経済速度と品質との兼ね合いで残留溶媒量を決められる。
本発明で用いる残留溶媒量は下記の式で表せる。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mはウェブの任意時点での質量、NはMを110℃で3時間乾燥させた時の質量である。
また、セルロースエステルフィルムの乾燥工程においては、支持体より剥離したフィルムを更に乾燥し、残留溶媒量を2.0質量%以下にすることが好ましい、より好ましくは1.0質量%、更に好ましくは、0.5質量%以下である。
ウェブ乾燥工程ではロールを千鳥状に配置したロール乾燥装置、ウェブの両端をクリップで把持しながら、幅保持或いは若干幅方向に延伸するテンター乾燥装置でウェブを搬送しながら乾燥する方式が採られる。本発明においては、テンター乾燥装置支持体より剥離した後任意の過程で、また任意の残留溶媒量の多いところで、幅保持または延伸することによって光学性能の湿度安定性を良好ならしめるため特に好ましい。ウェブを乾燥させる手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行う。簡便さの点で熱風で行うのが好ましい。乾燥温度は40〜180℃の範囲で段階的に高くしていくことが好ましく、50〜160℃の範囲で行うことが更に好ましい。また、リターデーション値Rt、Roを低下させる効果があることから、高温下での乾燥時間を長時間とることが好ましい。
又、高温で熱処理する際には雰囲気置換率を12〜45回/時間とすることが好ましい。雰囲気置換率とは、熱処理室の雰囲気容量をV(m3)、Fresh−air送風量をFA(m3/hr)とした場合、下式によって求められる単位時間あたり熱処理室の雰囲気をFresh−airで置換する回数である。Fresh−airは熱処理室に送風される風のうち、循環再利用している風ではなく、揮発した溶媒若しくは可塑剤などを含まない、若しくはそれらが除去された新鮮な風のことを意味している。
雰囲気置換率=FA/V(回/時間)
本発明で用いられるセルロースエステルフィルムは、平面性確保のため、MD(フィルム搬送方向)/TD(搬送方向に垂直方向)共に1%以上延伸することが好ましい。面内に位相差を持たないフィルムを作製する場合にはMD延伸率とTD延伸率は近いことが好ましいが、MDとTD方向の延伸率が異なってもかまわない。ただし、MD延伸率とTD延伸率の総和は小さい方がリターデーション値Rtは低くなるため、適宜調整する。また、Rtの低減効果の観点から、いずれの延伸時においても高温下で行うことが好ましい。
尚、延伸操作は多段階に分割して実施してもよく、流延方向、幅手方向に二軸延伸を実施することが好ましい。また、二軸延伸を行う場合にも同時二軸延伸を行ってもよいし、段階的に実施してもよい。この場合、段階的とは、例えば、延伸方向の異なる延伸を順次行うことも可能であるし、同一方向の延伸を多段階に分割し、かつ異なる方向の延伸をそのいずれかの段階に加えることも可能である。
セルロースエステルフィルムの膜厚は薄い方が出来上がった偏光板が薄くなり、液晶ディスプレイの薄膜化が容易になるため好ましいが、薄過ぎると、透湿度や、引き裂き強度などが劣化する。これらを両立するセルロースエステルフィルムの膜厚は10〜100μmが好ましく、10〜80μmが更に好ましく、10〜70μmが特に好ましい。
セルロースエステルフィルムの幅は、1.3m以上、好ましくは1.4m〜4mの範囲が、生産性の観点から大サイズの液晶表示装置に好ましい。
本発明で用いられるセルロースエステルフィルムは、高い透湿性、寸法安定性などから液晶表示用部材に用いられるのが好ましい。液晶表示用部材とは液晶表示装置に使用される部材のことで、例えば、偏光板用保護フィルムとして好ましく用いられる。更に、反射防止層、ハードコート層、防眩層、防汚層、光学異方性層、配向層、液晶層、バックコート層、帯電防止層、光拡散層、などの機能層を適宜組み合わせて付与することが出来る。特に、偏光板保護フィルムA1として液晶表示装置の最表面に用いられる場合は、フィルム表面に反射防止層を設けることが好ましい。
(反射防止層)
本発明に用いられる光干渉による反射防止層について説明する。
(反射防止層の構成)
本発明に用いられる反射防止層は低屈折率層のみの単層構成でも、また多層の屈折率層でもどちらでも構成出来る。透明なフィルム支持体上に、ハードコート層を有しその表面上に光学干渉によって反射率が減少するように屈折率、膜厚、層の数、層順等を考慮して積層出来る。反射防止層は、支持体よりも屈折率の高い高屈折率層と、支持体よりも屈折率の低い低屈折率層を組み合わせて構成したり、特に好ましくは、3層以上の屈折率層から構成される反射防止層であり、支持体側から屈折率の異なる3層を、中屈折率層(支持体またはハードコート層よりも屈折率が高く、高屈折率層よりも屈折率の低い層)/高屈折率層/低屈折率層の順に積層されているものが好ましい。
本発明の反射防止フィルムの好ましい層構成の例を下記に示す。ここで/は積層配置されていることを示している。
バックコート層/支持体/ハードコート層/低屈折率層
バックコート層/支持体/ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層
バックコート層/支持体/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
バックコート層/支持体/帯電防止層/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
帯電防止層/支持体/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層バックコート層/支持体/ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
汚れや指紋のふき取りが容易となるように、最表面の低屈折率層の上に、更に防汚層を設けることも出来る。防汚層としては、含フッ素有機化合物が好ましく用いられる。
(活性線硬化樹脂層)
本発明で用いられる偏光板保護フィルムA1にはハードコート層が塗設されることが好ましい。ハードコート層として用いられる活性線硬化樹脂層の製造方法について述べる。
本発明のセルロースエステルフィルムに用いられる、ハードコート層として活性線硬化樹脂層が好ましく用いられる。
活性線硬化樹脂層とは紫外線や電子線のような活性線照射により架橋反応等を経て硬化する樹脂を主たる成分とする層をいう。活性線硬化樹脂としては、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを含む成分が好ましく用いられ、紫外線や電子線のような活性線を照射することによって硬化させてハードコート層が形成される。活性線硬化樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等が代表的なものとして挙げられるが、紫外線照射によって硬化する樹脂が好ましい。
紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、または紫外線硬化型エポキシ樹脂等が好ましく用いられる。
紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂は、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、またはプレポリマーを反応させて得られた生成物に更に2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下アクリレートにはメタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示する)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることが出来る。例えば、特開昭59−151110号に記載のものを用いることが出来る。
例えば、ユニディック17−806(大日本インキ(株)製)100部とコロネートL(日本ポリウレタン(株)製)1部との混合物等が好ましく用いられる。
紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂としては、一般にポリエステルポリオールに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート系のモノマーを反応させると容易に形成されるものを挙げることが出来、特開昭59−151112号に記載のものを用いることが出来る。
紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂の具体例としては、エポキシアクリレートをオリゴマーとし、これに反応性希釈剤、光反応開始剤を添加し、反応させて生成するものを挙げることが出来、特開平1−105738号に記載のものを用いることが出来る。
紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂の具体例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることが出来る。
これら紫外線硬化性樹脂の光反応開始剤としては、具体的には、ベンゾイン及びその誘導体、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及びこれらの誘導体を挙げることが出来る。光増感剤と共に使用してもよい。上記光反応開始剤も光増感剤として使用出来る。また、エポキシアクリレート系の光反応開始剤の使用の際、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等の増感剤を用いることが出来る。紫外線硬化樹脂組成物に用いられる光反応開始剤また光増感剤は該組成物100質量部に対して0.1〜15質量部であり、好ましくは1〜10質量部である。
樹脂モノマーとしては、例えば、不飽和二重結合が一つのモノマーとして、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、酢酸ビニル、スチレン等の一般的なモノマーを挙げることが出来る。また不飽和二重結合を二つ以上持つモノマーとして、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、1,4−シクロヘキシルジメチルアジアクリレート、前出のトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリルエステル等を挙げることが出来る。
本発明において使用し得る紫外線硬化樹脂の市販品としては、アデカオプトマーKR・BYシリーズ:KR−400、KR−410、KR−550、KR−566、KR−567、BY−320B(旭電化(株)製);コーエイハードA−101−KK、A−101−WS、C−302、C−401−N、C−501、M−101、M−102、T−102、D−102、NS−101、FT−102Q8、MAG−1−P20、AG−106、M−101−C(広栄化学(株)製);セイカビームPHC2210(S)、PHC X−9(K−3)、PHC2213、DP−10、DP−20、DP−30、P1000、P1100、P1200、P1300、P1400、P1500、P1600、SCR900(大日精化工業(株)製);KRM7033、KRM7039、KRM7130、KRM7131、UVECRYL29201、UVECRYL29202(ダイセル・ユーシービー(株)製);RC−5015、RC−5016、RC−5020、RC−5031、RC−5100、RC−5102、RC−5120、RC−5122、RC−5152、RC−5171、RC−5180、RC−5181(大日本インキ化学工業(株)製);オーレックスNo.340クリヤ(中国塗料(株)製);サンラッドH−601、RC−750、RC−700、RC−600、RC−500、RC−611、RC−612(三洋化成工業(株)製);SP−1509、SP−1507(昭和高分子(株)製);RCC−15C(グレース・ジャパン(株)製)、アロニックスM−6100、M−8030、M−8060(東亞合成(株)製)等を適宜選択して利用出来る。
また、具体的化合物例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることが出来る。
これらの活性線硬化樹脂層はグラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、インクジェット法等公知の方法で塗設することが出来る。
紫外線硬化性樹脂を光硬化反応により硬化させ、硬化皮膜層を形成する為の光源としては、紫外線を発生する光源であれば制限なく使用出来る。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることが出来る。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、活性線の照射量は好ましくは、5〜150mJ/cm2であり、特に好ましくは20〜100mJ/cm2である。
また、活性線を照射する際には、フィルムの搬送方向に張力を付与しながら行うことが好ましく、更に好ましくは幅方向にも張力を付与しながら行うことである。付与する張力は30〜300N/mが好ましい。張力を付与する方法は特に限定されず、バックロール上で搬送方向に張力を付与してもよく、テンターにて幅方向、若しくは2軸方向に張力を付与してもよい。これによって更に平面性が優れたフィルムを得ることが出来る。
紫外線硬化樹脂層組成物塗布液の有機溶媒としては、例えば、炭化水素類(トルエン、キシレン、)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸メチル)、グリコールエーテル類、その他の有機溶媒の中から適宜選択し、或いはこれらを混合し利用出来る。プロピレングリコールモノアルキルエーテル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)またはプロピレングリコールモノアルキルエーテル酢酸エステル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)等を5質量%以上、より好ましくは5〜80質量%以上含有する上記有機溶媒を用いるのが好ましい。
また、紫外線硬化樹脂層組成物塗布液には、特にシリコン化合物を添加することが好ましい。例えば、ポリエーテル変性シリコーンオイルなどが好ましく添加される。ポリエーテル変性シリコーンオイルの数平均分子量は、例えば、1,000〜100,000、好ましくは、2,000〜50,000が適当であり、数平均分子量が1,000未満では、塗膜の乾燥性が低下し、逆に、数平均分子量が100,000を越えると、塗膜表面にブリードアウトしにくくなる傾向にある。
シリコン化合物の市販品としては、DKQ8−779(ダウコーニング社製商品名)、SF3771、SF8410、SF8411、SF8419、SF8421、SF8428、SH200、SH510、SH1107、SH3749、SH3771、BX16−034、SH3746、SH3749、SH8400、SH3771M、SH3772M、SH3773M、SH3775M、BY−16−837、BY−16−839、BY−16−869、BY−16−870、BY−16−004、BY−16−891、BY−16−872、BY−16−874、BY22−008M、BY22−012M、FS−1265(以上、東レ・ダウコーニングシリコーン社製商品名)、KF−101、KF−100T、KF351、KF352、KF353、KF354、KF355、KF615、KF618、KF945、KF6004、シリコーンX−22−945、X22−160AS(以上、信越化学工業社製商品名)、XF3940、XF3949(以上、東芝シリコーン社製商品名)、ディスパロンLS−009(楠本化成社製)、グラノール410(共栄社油脂化学工業(株)製)、TSF4440、TSF4441、TSF4445、TSF4446、TSF4452、TSF4460(GE東芝シリコーン製)、BYK−306、BYK−330、BYK−307、BYK−341、BYK−344、BYK−361(ビックケミ−ジャパン社製)日本ユニカー(株)製のLシリーズ(例えばL7001、L−7006、L−7604、L−9000)、Yシリーズ、FZシリーズ(FZ−2203、FZ−2206、FZ−2207)等が挙げられ、好ましく用いられる。
これらの成分は基材や下層への塗布性を高める。積層体最表面層に添加した場合には、塗膜の撥水、撥油性、防汚性を高めるばかりでなく、表面の耐擦り傷性にも効果を発揮する。これらの成分は、塗布液中の固形分成分に対し、0.01〜3質量%の範囲で添加することが好ましい。
紫外線硬化性樹脂組成物塗布液の塗布方法としては、前述のものを用いることが出来る。塗布量はウェット膜厚として0.1〜30μmが適当で、好ましくは、0.5〜15μmである。また、ドライ膜厚としては0.1〜20μm、好ましくは1〜10μmである。
紫外線硬化性樹脂組成物は塗布乾燥中または後に、紫外線を照射するのがよく、前記の5〜150mJ/cm2という活性線の照射量を得る為の照射時間としては、0.1秒〜5分程度がよく、紫外線硬化性樹脂の硬化効率または作業効率の観点から0.1〜10秒がより好ましい。
また、これら活性線照射部の照度は50〜150mW/m2であることが好ましい。
こうして得た硬化樹脂層に、ブロッキングを防止する為、また対擦り傷性等を高める為、或いは防眩性や光拡散性を持たせる為また屈折率を調整する為に無機化合物或いは有機化合物の微粒子を加えることも出来る。
ハードコート層に使用される無機微粒子としては、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることが出来る。特に、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウムなどが好ましく用いられる。
また有機微粒子としては、ポリメタアクリル酸メチルアクリレート樹脂粉末、アクリルスチレン系樹脂粉末、ポリメチルメタクリレート樹脂粉末、シリコン系樹脂粉末、ポリスチレン系樹脂粉末、ポリカーボネート樹脂粉末、ベンゾグアナミン系樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、或いはポリ弗化エチレン系樹脂粉末等紫外線硬化性樹脂組成物に加えることが出来る。特に好ましくは、架橋ポリスチレン粒子(例えば、綜研化学製SX−130H、SX−200H、SX−350H)、ポリメチルメタクリレート系粒子(例えば、綜研化学製MX150、MX300)が挙げられる。
これらの微粒子粉末の平均粒径としては、0.005〜5μmが好ましく0.01〜1μmであることが特に好ましい。紫外線硬化樹脂組成物と微粒子粉末との割合は、樹脂組成物100質量部に対して、0.1〜30質量部となるように配合することが望ましい。
紫外線硬化樹脂層は、JIS B 0601で規定される中心線平均粗さ(Ra)が1〜50nmのクリアハードコート層であるか、若しくはRaが0.1〜1μm程度の防眩層であることが好ましい。中心線平均粗さ(Ra)は光干渉式の表面粗さ測定器で測定することが好ましく、例えばWYKO社製RST/PLUSを用いて測定することが出来る。
又、あらかじめ凹凸が設けられたエンボスロールを用いて、表面に凹凸を有する紫外線硬化樹脂層を形成したり、インクジェット法や印刷法によって、表面に凹凸を形成することで防眩性を付与した紫外線硬化樹脂層も好ましく用いられる。
〈バックコート層〉
本発明のハードコートフィルムのハードコート層を設けた側と反対側の面にはバックコート層を設けることが好ましい。バックコート層は、塗布やCVDなどによって、ハードコート層やその他の層を設けることで生じるカールを矯正する為に設けられる。即ち、バックコート層を設けた面を内側にして丸まろうとする性質を持たせることにより、カールの度合いをバランスさせることが出来る。尚、バックコート層は好ましくはブロッキング防止層を兼ねて塗設され、その場合、バックコート層塗布組成物には、ブロッキング防止機能を持たせる為に微粒子が添加されることが好ましい。
バックコート層に添加される微粒子としては無機化合物の例として、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、ITO、水和珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることが出来る。微粒子は珪素を含むものがヘイズが低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。
これらの微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することが出来る。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することが出来る。ポリマー微粒子の例として、シリコーン樹脂、弗素樹脂及びアクリル樹脂を挙げることが出来る。シリコーン樹脂が好ましく、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上東芝シリコーン(株)製)の商品名で市販されており、使用することが出来る。
これらの中でもアエロジル200V、アエロジルR972Vがヘイズを低く保ちながら、ブロッキング防止効果が大きい為特に好ましく用いられる。本発明で用いられるハードコートフィルムは、ハードコート層の裏面側の動摩擦係数が0.9以下、特に0.1〜0.9であることが好ましい。
バックコート層に含まれる微粒子は、バインダーに対して0.1〜50質量%好ましくは0.1〜10質量%であることが好ましい。バックコート層を設けた場合のヘイズの増加は1%以下であることが好ましく0.5%以下であることが好ましく、特に0.0〜0.1%であることが好ましい。
バックコート層は、具体的にはセルロースエステルフィルムを溶解させる溶媒または膨潤させる溶媒を含む組成物を塗布することによって行われる。用いる溶媒としては、溶解させる溶媒及び/または膨潤させる溶媒の混合物の他更に溶解させない溶媒を含む場合もあり、これらを透明樹脂フィルムのカール度合や樹脂の種類によって適宜の割合で混合した組成物及び塗布量を用いて行う。
カール防止機能を強めたい場合は、用いる溶媒組成を溶解させる溶媒及び/または膨潤させる溶媒の混合比率を大きくし、溶解させない溶媒の比率を小さくするのが効果的である。この混合比率は好ましくは(溶解させる溶媒及び/または膨潤させる溶媒):(溶解させない溶媒)=10:0〜1:9で用いられる。このような混合組成物に含まれる、透明樹脂フィルムを溶解または膨潤させる溶媒としては、例えば、ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、酢酸メチル、酢酸エチル、トリクロロエチレン、メチレンクロライド、エチレンクロライド、テトラクロロエタン、トリクロロエタン、クロロホルムなどがある。溶解させない溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブタノール或いは炭化水素類(トルエン、キシレン、シクロヘキサノール)などがある。
これらの塗布組成物をグラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター等を用いて透明樹脂フィルムの表面にウェット膜厚1〜100μmで塗布するのが好ましいが、特に5〜30μmであることが好ましい。バックコート層のバインダーとして用いられる樹脂としては、例えば塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニルとビニルアルコールの共重合体、部分加水分解した塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、塩素化ポリ塩化ビニル、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体或いは共重合体、ニトロセルロース、セルロースアセテートプロピオネート(好ましくはアセチル基置換度1.8〜2.3、プロピオニル基置換度0.1〜1.0)、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートブチレート樹脂等のセルロース誘導体、マレイン酸及び/またはアクリル酸の共重合体、アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、塩素化ポリエチレン、アクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエーテルポリウレタン樹脂、ポリカーボネートポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、アミノ樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、ブタジエン−アクリロニトリル樹脂等のゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂等を挙げることが出来るが、これらに限定されるものではない。例えば、アクリル樹脂としては、アクリペットMD、VH、MF、V(三菱レーヨン(株)製)、ハイパールM−4003、M−4005、M−4006、M−4202、M−5000、M−5001、M−4501(根上工業株式会社製)、ダイヤナールBR−50、BR−52、BR−53、BR−60、BR−64、BR−73、BR−75、BR−77、BR−79、BR−80、BR−82、BR−83、BR−85、BR−87、BR−88、BR−90、BR−93、BR−95、BR−100、BR−101、BR−102、BR−105、BR−106、BR−107、BR−108、BR−112、BR−113、BR−115、BR−116、BR−117、BR−118等(三菱レーヨン(株)製)のアクリル及びメタクリル系モノマーを原料として製造した各種ホモポリマー並びにコポリマーなどが市販されており、この中から好ましいモノを適宜選択することも出来る。
特に好ましくはジアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネートのようなセルロース系樹脂層である。
バックコート層を塗設する順番はセルロースエステルフィルムの、バックコート層とは反対側の層(クリアハードコート層或いはその他の例えば帯電防止層等の層)を塗設する前でも後でも構わないが、バックコート層がブロッキング防止層を兼ねる場合は先に塗設することが望ましい。或いはハードコート層の塗設の前後に2回以上に分けてバックコート層を塗布することも出来る。
〈低屈折率層〉
本発明に用いられる偏光板保護フィルムA1に好ましく用いられる低屈折率層では以下の中空シリカ系微粒子が好適に用いられる。
(中空シリカ系微粒子)
中空微粒子は、(I)多孔質粒子と該多孔質粒子表面に設けられた被覆層とからなる複合粒子、または(II)内部に空洞を有し、かつ内容物が溶媒、気体または多孔質物質で充填された空洞粒子である。尚、低屈折率層には(I)複合粒子または(II)空洞粒子のいずれかが含まれていればよく、また双方が含まれていてもよい。
尚、空洞粒子は内部に空洞を有する粒子であり、空洞は粒子壁で囲まれている。空洞内には、調製時に使用した溶媒、気体または多孔質物質等の内容物で充填されている。このような中空球状微粒子の平均粒子径が5〜300nm、好ましくは10〜200nmの範囲にあることが望ましい。使用される中空球状微粒子は、形成される透明被膜の厚さに応じて適宜選択され、形成される低屈折率層等の透明被膜の膜厚の2/3〜1/10の範囲にあることが望ましい。これらの中空球状微粒子は、低屈折率層の形成のため、適当な媒体に分散した状態で使用することが好ましい。分散媒としては、水、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール)及びケトン(例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、ケトンアルコール(例えばジアセトンアルコール)が好ましい。
複合粒子の被覆層の厚さまたは空洞粒子の粒子壁の厚さは、1〜20nm、好ましくは2〜15nmの範囲にあることが望ましい。複合粒子の場合、被覆層の厚さが1nm未満の場合は、粒子を完全に被覆することが出来ないことがあり、後述する塗布液成分である重合度の低いケイ酸モノマー、オリゴマー等が容易に複合粒子の内部に内部に進入して内部の多孔性が減少し、低屈折率の効果が十分得られないことがある。また、被覆層の厚さが20nmを越えると、前記ケイ酸モノマー、オリゴマーが内部に進入することはないが、複合粒子の多孔性(細孔容積)が低下し低屈折率の効果が十分得られなくなることがある。また空洞粒子の場合、粒子壁の厚さが1nm未満の場合は、粒子形状を維持出来ないことがあり、また厚さが20nmを越えても、低屈折率の効果が十分に現れないことがある。
複合粒子の被覆層または空洞粒子の粒子壁は、シリカを主成分とすることが好ましい。また、シリカ以外の成分が含まれていてもよく、具体的には、Al2O3、B2O3、TiO2、ZrO2、SnO2、CeO2、P2O3、Sb2O3、MoO3、ZnO2、WO3等が挙げられる。複合粒子を構成する多孔質粒子としては、シリカからなるもの、シリカとシリカ以外の無機化合物とからなるもの、CaF2、NaF、NaAlF6、MgF等からなるものが挙げられる。このうち特にシリカとシリカ以外の無機化合物との複合酸化物からなる多孔質粒子が好適である。シリカ以外の無機化合物としては、Al2O3、B2O3、TiO2、ZrO2、SnO2、CeO2、P2O3、Sb2O3、MoO3、ZnO2、WO3等との1種または2種以上を挙げることが出来る。このような多孔質粒子では、シリカをSiO2で表し、シリカ以外の無機化合物を酸化物換算(MOX)で表したときのモル比MOX/SiO2が、0.0001〜1.0、好ましくは0.001〜0.3の範囲にあることが望ましい。多孔質粒子のモル比MOX/SiO2が0.0001未満のものは得ることが困難であり、得られたとしても細孔容積が小さく、屈折率の低い粒子が得られない。また、多孔質粒子のモル比MOX/SiO2が、1.0を越えると、シリカの比率が少なくなるので、細孔容積が大きくなり、更に屈折率が低いものを得ることが難しいことがある。
このような多孔質粒子の細孔容積は、0.1〜1.5ml/g、好ましくは0.2〜1.5ml/gの範囲であることが望ましい。細孔容積が0.1ml/g未満では、十分に屈折率の低下した粒子が得られず、1.5ml/gを越えると微粒子の強度が低下し、得られる被膜の強度が低下することがある。尚、このような多孔質粒子の細孔容積は水銀圧入法によって求めることが出来る。また、空洞粒子の内容物としては、粒子調製時に使用した溶媒、気体、多孔質物質等が挙げられる。溶媒中には空洞粒子調製する際に使用される粒子前駆体の未反応物、使用した触媒等が含まれていてもよい。また多孔質物質としては、前記多孔質粒子で例表した化合物からなるものが挙げられる。これらの内容物は、単一の成分からなるものであってもよいが、複数成分の混合物であってもよい。
このような中空球状微粒子の製造方法としては、例えば特開平7−133105号公報の段落番号[0010]〜[0033]に開示された複合酸化物コロイド粒子の調製方法が好適に採用される。
このようにして得られた中空微粒子の屈折率は、内部が空洞であるので屈折率が低く、それを用いた本発明に用いられる低屈折率層の屈折率は、1.30〜1.50であることが好ましく、1.35〜1.44であることが更に好ましい。
外殻層を有し、内部が多孔質または空洞である中空シリカ系微粒子の低屈折率層塗布液中の含量(質量)は、10〜80質量%が好ましく、更に好ましくは20〜60質量%である。
(テトラアルコキシシラン化合物またはその加水分解物)
本発明の低屈折率層には、ゾルゲル素材としてテトラアルコキシシラン化合物またはその加水分解物が含有されることが好ましい。
本発明に用いられる低屈折率層用の素材として、前記無機珪素酸化物以外に有機基を有する珪素酸化物を用いることも好ましい。これらは一般にゾルゲル素材と呼ばれるが、金属アルコレート、オルガノアルコキシ金属化合物及びその加水分解物を用いることが出来る。特に、アルコキシシラン、オルガノアルコキシシラン及びその加水分解物が好ましい。これらの例としては、テトラアルコキシシラン(テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等)、アルキルトリアルコキシシラン(メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン等)、アリールトリアルコキシシラン(フェニルトリメトキシシラン等)、ジアルキルジアルコキシシラン、ジアリールジアルコキシシラン等が挙げられる。
本発明に用いられる低屈折率層は前記珪素酸化物と下記シランカップリング剤を含むことが好ましい。
具体的なシランカップリング剤の例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシエトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン等が挙げられる。
また、珪素に対して2置換のアルキル基を持つシランカップリング剤の例として、ジメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
シランカップリング剤の具体例としては、信越化学工業株式会社製KBM−303、KBM−403、KBM−402、KBM−403、KBM−1403、KBM−502、KBM−503、KBE−502、KBE−503、KBM−603、KBE−603、KBM−903、KBE−903、KBE−9103、KBM−802、KBM−803等が挙げられる。
これらシランカップリング剤は予め必要量の水で加水分解されていることが好ましい。シランカップリング剤が加水分解されていると、前述の珪素酸化物粒子及び有機基を有する珪素酸化物の表面が反応し易く、より強固な膜が形成される。また、加水分解されたシランカップリング剤を予め塗布液中に加えてもよい。
また、低屈折率層は、5〜50質量%の量のポリマーを含むことも出来る。ポリマーは、微粒子を接着し、空隙を含む低屈折率層の構造を維持する機能を有する。ポリマーの使用量は、空隙を充填することなく低屈折率層の強度を維持出来るように調整する。ポリマーの量は、低屈折率層の全量の10〜30質量%であることが好ましい。ポリマーで微粒子を接着するためには、(1)微粒子の表面処理剤にポリマーを結合させるか、(2)微粒子をコアとして、その周囲にポリマーシェルを形成するか、或いは(3)微粒子間のバインダーとして、ポリマーを使用することが好ましい。
バインダーポリマーは、飽和炭化水素またはポリエーテルを主鎖として有するポリマーであることが好ましく、飽和炭化水素を主鎖として有するポリマーであることが更に好ましい。バインダーポリマーは架橋していることが好ましい。飽和炭化水素を主鎖として有するポリマーは、エチレン性不飽和モノマーの重合反応により得ることが好ましい。架橋しているバインダーポリマーを得るためには、二以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーを用いることが好ましい。2以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの例としては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル(例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ジクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート)、ビニルベンゼン及びその誘導体(例えば、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン)、ビニルスルホン(例えば、ジビニルスルホン)、アクリルアミド(例えば、メチレンビスアクリルアミド)及びメタクリルアミドが挙げられる。
また、本発明に用いられる低屈折率層が、熱または電離放射線により架橋する含フッ素樹脂(以下、「架橋前の含フッ素樹脂」ともいう)の架橋からなる低屈折率層であってもよい。
架橋前の含フッ素樹脂としては、含フッ素ビニルモノマーと架橋性基付与のためのモノマーから形成される含フッ素共重合体を好ましく挙げることが出来る。上記含フッ素ビニルモノマー単位の具体例としては、例えばフルオロオレフィン類(例えば、フルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール等)、(メタ)アクリル酸の部分または完全フッ素化アルキルエステル誘導体類(例えば、ビスコート6FM(大阪有機化学製)やM−2020(ダイキン製)等)、完全または部分フッ素化ビニルエーテル類等が挙げられる。架橋性基付与のためのモノマーとしては、グリシジルメタクリレートや、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルグリシジルエーテル等のように分子内に予め架橋性官能基を有するビニルモノマーの他、カルボキシル基やヒドロキシル基、アミノ基、スルホン酸基等を有するビニルモノマー(例えば、(メタ)アクリル酸、メチロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアクリレート、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルアリルエーテル等)が挙げられる。後者は共重合の後、ポリマー中の官能基と反応する基ともう1つ以上の反応性基を持つ化合物を加えることにより、架橋構造を導入出来ることが特開平10−25388号、同10−147739号に記載されている。架橋性基の例には、アクリロイル、メタクリロイル、イソシアナート、エポキシ、アジリジン、オキサゾリン、アルデヒド、カルボニル、ヒドラジン、カルボキシル、メチロール及び活性メチレン基等が挙げられる。含フッ素共重合体が、加熱により反応する架橋基、若しくは、エチレン性不飽和基と熱ラジカル発生剤若しくはエポキシ基と熱酸発生剤等の相み合わせにより、加熱により架橋する場合、熱硬化型であり、エチレン性不飽和基と光ラジカル発生剤若しくは、エポキシ基と光酸発生剤等の組み合わせにより、光(好ましくは紫外線、電子ビーム等)の照射により架橋する場合、電離放射線硬化型である。
架橋前の含フッ素共重合体を形成するために用いられる上記各モノマーの使用割合は、含フッ素ビニルモノマーが好ましくは20〜70モル%、より好ましくは40〜70モル%、架橋性基付与のためのモノマーが好ましくは1〜20モル%、より好ましくは5〜20モル%、併用されるその他のモノマーが好ましくは10〜70モル%、より好ましくは10〜50モル%の割合である。
本発明に用いられる低屈折率層は、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法(米国特許2681294号)により、塗布により形成することが出来る。また、2以上の層を同時に塗布してもよい。同時塗布の方法については、米国特許2,761,791号、同2,941,898号、同3,508,947号、同3,526,528号及び原崎勇次著、コーティング工学、253頁、朝倉書店(1973)に記載がある。
本発明の低屈折率層の膜厚は50〜200nmであることが好ましく、60〜150nmであることがより好ましい。
〈高屈折率層及び中屈折率層〉
本発明においては、反射率の低減のために透明支持体と低屈折率層との間に、高屈折率層を設けることが好ましい。また、該透明支持体と高屈折率層との間に中屈折率層を設けることは、反射率の低減のために更に好ましい。高屈折率層の屈折率は、1.55〜2.30であることが好ましく、1.57〜2.20であることが更に好ましい。中屈折率層の屈折率は、透明支持体の屈折率と高屈折率層の屈折率との中間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.55〜1.80であることが好ましい。高屈折率層及び中屈折率層の厚さは、5nm〜1μmであることが好ましく、10nm〜0.2μmであることが更に好ましく、30nm〜0.1μmであることが最も好ましい。高屈折率層及び中屈折率層のヘイズは、5%以下であることが好ましく、3%以下であることが更に好ましく、1%以下であることが最も好ましい。高屈折率層及び中屈折率層の強度は、1kg荷重の鉛筆硬度でH以上であることが好ましく、2H以上であることが更に好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
本発明に用いられる中、高屈折率層は下記一般式(1)で表される有機チタン化合物のモノマー、オリゴマーまたはそれらの加水分解物を含有する塗布液を塗布し乾燥させて形成させた屈折率1.55〜2.5の層であることが好ましい。
一般式(1) Ti(OR1)4
式中、R1としては炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基がよいが、好ましくは炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基である。また、有機チタン化合物のモノマー、オリゴマーまたはそれらの加水分解物は、アルコキシド基が加水分解を受けて−Ti−O−Ti−のように反応して架橋構造を作り、硬化した層を形成する。
本発明に用いられる有機チタン化合物のモノマー、オリゴマーとしては、Ti(OCH3)4、Ti(OC2H5)4、Ti(O−n−C3H7)4、Ti(O−i−C3H7)4、Ti(O−n−C4H9)4、Ti(O−n−C3H7)4の2〜10量体、Ti(O−i−C3H7)4の2〜10量体、Ti(O−n−C4H9)4の2〜10量体等が好ましい例として挙げられる。これらは単独で、または2種以上組み合わせて用いることが出来る。中でもTi(O−n−C3H7)4、Ti(O−i−C3H7)4、Ti(O−n−C4H9)4、Ti(O−n−C3H7)4の2〜10量体、Ti(O−n−C4H9)4の2〜10量体が特に好ましい。
本発明に用いられる有機チタン化合物のモノマー、オリゴマーまたはそれらの加水分解物は、塗布液に含まれる固形分中の50.0質量%〜98.0質量%を占めていることが望ましい。固形分比率は50質量%〜90質量%がより好ましく、55質量%〜90質量%が更に好ましい。この他、塗布組成物には有機チタン化合物のポリマー(予め有機チタン化合物の加水分解を行って架橋したもの)或いは酸化チタン微粒子を添加することも好ましい。
本発明に用いられる高屈折率層及び中屈折率層は、微粒子として金属酸化物粒子を含み、更にバインダーポリマーを含むことが好ましい。
上記塗布液調製法で加水分解/重合した有機チタン化合物と金属酸化物粒子を組み合わせると、金属酸化物粒子と加水分解/重合した有機チタン化合物とが強固に接着し、粒子のもつ硬さと均一膜の柔軟性を兼ね備えた強い塗膜を得ることが出来る。
高屈折率層及び中屈折率層に用いる金属酸化物粒子は、屈折率が1.80〜2.80であることが好ましく、1.90〜2.80であることが更に好ましい。金属酸化物粒子の1次粒子の重量平均径は、1〜150nmであることが好ましく、1〜100nmであることが更に好ましく、1〜80nmであることが最も好ましい。層中での金属酸化物粒子の重量平均径は、1〜200nmであることが好ましく、5〜150nmであることがより好ましく、10〜100nmであることが更に好ましく、10〜80nmであることが最も好ましい。金属酸化物粒子の平均粒径は、20〜30nm以上であれば光散乱法により、20〜30nm以下であれば電子顕微鏡写真により測定される。金属酸化物粒子の比表面積は、BET法で測定された値として、10〜400m2/gであることが好ましく、20〜200m2/gであることが更に好ましく、30〜150m2/gであることが最も好ましい。
金属酸化物粒子の例としては、Ti、Zr、Sn、Sb、Cu、Fe、Mn、Pb、Cd、As、Cr、Hg、Zn、Al、Mg、Si、P及びSから選択される少なくとも一種の元素を有する金属酸化物であり、具体的には二酸化チタン(例、ルチル、ルチル/アナターゼの混晶、アナターゼ、アモルファス構造)、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、及び酸化ジルコニウムが挙げられる。中でも、酸化チタン、酸化錫及び酸化インジウムが特に好ましい。金属酸化物粒子は、これらの金属の酸化物を主成分とし、更に他の元素を含むことが出来る。主成分とは、粒子を構成する成分の中で最も含有量(質量%)が多い成分を意味する。他の元素の例としては、Ti、Zr、Sn、Sb、Cu、Fe、Mn、Pb、Cd、As、Cr、Hg、Zn、Al、Mg、Si、P及びS等が挙げられる。
金属酸化物粒子は表面処理されていることが好ましい。表面処理は、無機化合物または有機化合物を用いて実施することが出来る。表面処理に用いる無機化合物の例としては、アルミナ、シリカ、酸化ジルコニウム及び酸化鉄が挙げられる。中でもアルミナ及びシリカが好ましい。表面処理に用いる有機化合物の例としては、ポリオール、アルカノールアミン、ステアリン酸、シランカップリング剤及びチタネートカップリング剤が挙げられる。中でも、シランカップリング剤が最も好ましい。
高屈折率層及び中屈折率層中の金属酸化物粒子の割合は、5〜65体積%であることが好ましく、より好ましくは10〜60体積%であり、更に好ましくは20〜55体積%である。
上記金属酸化物粒子は、媒体に分散した分散体の状態で、高屈折率層及び中屈折率層を形成するための塗布液に供される。金属酸化物粒子の分散媒体としては、沸点が60〜170℃の液体を用いることが好ましい。分散溶媒の具体例としては、水、アルコール(例、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル)、脂肪族炭化水素(例、ヘキサン、シクロヘキサン)、ハロゲン化炭化水素(例、メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素)、芳香族炭化水素(例、ベンゼン、トルエン、キシレン)、アミド(例、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン)、エーテル(例、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラハイドロフラン)、エーテルアルコール(例、1−メトキシ−2−プロパノール)が挙げられる。中でも、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン及びブタノールが特に好ましい。
また金属酸化物粒子は、分散機を用いて媒体中に分散することが出来る。分散機の例としては、サンドグラインダーミル(例、ピン付きビーズミル)、高速インペラーミル、ペッブルミル、ローラーミル、アトライター及びコロイドミルが挙げられる。サンドグラインダーミル及び高速インペラーミルが特に好ましい。また、予備分散処理を実施してもよい。予備分散処理に用いる分散機の例としては、ボールミル、三本ロールミル、ニーダー及びエクストルーダーが挙げられる。
本発明に用いられる高屈折率層及び中屈折率層は、架橋構造を有するポリマー(以下、架橋ポリマーともいう)をバインダーポリマーとして用いることが好ましい。架橋ポリマーの例として、ポリオレフィン等の飽和炭化水素鎖を有するポリマー、ポリエーテル、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミン、ポリアミド及びメラミン樹脂等の架橋物が挙げられる。中でも、ポリオレフィン、ポリエーテル及びポリウレタンの架橋物が好ましく、ポリオレフィン及びポリエーテルの架橋物が更に好ましく、ポリオレフィンの架橋物が最も好ましい。
本発明に用いられるモノマーとしては、2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーが最も好ましいが、その例としては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル(例、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ジクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート)、ビニルベンゼン及びその誘導体(例、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン)、ビニルスルホン(例、ジビニルスルホン)、アクリルアミド(例、メチレンビスアクリルアミド)及びメタクリルアミド等が挙げられる。アニオン性基を有するモノマー、及びアミノ基または4級アンモニウム基を有するモノマーは市販のモノマーを用いてもよい。好ましく用いられる市販のアニオン性基を有するモノマーとしては、KAYAMARPM−21、PM−2(日本化薬(株)製)、AntoxMS−60、MS−2N、MS−NH4(日本乳化剤(株)製)、アロニックスM−5000、M−6000、M−8000シリーズ(東亞合成化学工業(株)製)、ビスコート#2000シリーズ(大阪有機化学工業(株)製)、ニューフロンティアGX−8289(第一工業製薬(株)製)、NKエステルCB−1、A−SA(新中村化学工業(株)製)、AR−100、MR−100、MR−200(第八化学工業(株)製)等が挙げられる。また、好ましく用いられる市販のアミノ基または4級アンモニウム基を有するモノマーとしてはDMAA(大阪有機化学工業(株)製)、DMAEA,DMAPAA(興人(株)製)、ブレンマーQA(日本油脂(株)製)、ニューフロンティアC−1615(第一工業製薬(株)製)等が挙げられる。
ポリマーの重合反応は、光重合反応または熱重合反応を用いることが出来る。特に光重合反応が好ましい。重合反応のため、重合開始剤を使用することが好ましい。例えば、ハードコート層のバインダーポリマーを形成するために用いられる熱重合開始剤、及び光重合開始剤が挙げられる。
重合開始剤として市販の重合開始剤を使用してもよい。重合開始剤に加えて、重合促進剤を使用してもよい。重合開始剤と重合促進剤の添加量は、モノマーの全量の0.2〜10質量%の範囲であることが好ましい。
反射防止層の各層またはその塗布液には、前述した成分(金属酸化物粒子、ポリマー、分散媒体、重合開始剤、重合促進剤)以外に、重合禁止剤、レベリング剤、増粘剤、着色防止剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤、帯電防止剤や接着付与剤を添加してもよい。
本発明の中〜高屈折率層及び低屈折率層の塗設後、金属アルコキシドを含む組成物の加水分解または硬化を促進するため、活性エネルギー線を照射することが好ましい。より好ましくは、各層を塗設するごとに活性エネルギー線を照射することである。
本発明に使用する活性エネルギー線は、紫外線、電子線、γ線等で、化合物を活性させるエネルギー源であれば制限なく使用出来るが、紫外線、電子線が好ましく、特に取り扱いが簡便で高エネルギーが容易に得られるという点で紫外線が好ましい。紫外線反応性化合物を光重合させる紫外線の光源としては、紫外線を発生する光源であれば何れも使用出来る。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることが出来る。また、ArFエキシマレーザ、KrFエキシマレーザ、エキシマランプまたはシンクロトロン放射光等も用いることが出来る。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、照射光量は20mJ/cm2〜10,000mJ/cm2が好ましく、更に好ましくは、100mJ/cm2〜2,000mJ/cm2であり、特に好ましくは、400mJ/cm2〜2,000mJ/cm2である。
(偏光板)
本発明の偏光板、それを用いた本発明の液晶表示装置について説明する。
本発明の偏光板は一般的な方法で作製することが出来る。本発明のセルロースエステルフィルムYまたは光学補償フィルムWの裏面側(偏光子と貼り合わせる面側)をアルカリ鹸化処理し、処理したフィルムを、ヨウ素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の両面に、各々完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせることが好ましい。
偏光板の主たる構成要素である偏光子とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光子は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがある。偏光子は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。偏光子の膜厚は5〜40μm、好ましくは5〜30μmであり、特に好ましくは5〜25μmである。該偏光子の面上に、本発明のセルロースエステルフィルムYまたは光学補償フィルムWを貼り合わせて偏光板を形成する。好ましくは完全鹸化ポリビニルアルコール等を主成分とする水系の接着剤によって貼り合わせる。また、ケン化適性の低いセルロースエステルフィルム以外の樹脂フィルムの場合は、適当な粘着層を介して偏光板に接着加工することが出来る。
偏光子は一軸方向(通常は長手方向)に延伸されているため、偏光板を高温高湿の環境下に置くと延伸方向(通常は長手方向)は縮み、延伸と垂直方向(通常は幅方向)には伸びる。偏光板保護用フィルムの膜厚が薄くなるほど偏光板の伸縮率は大きくなり、特に偏光子の延伸方向の収縮量が大きい。通常、偏光子の延伸方向は偏光板保護用フィルムの流延方向(MD方向)と貼り合わせるため、偏光板保護用フィルムを薄膜化する場合は、特に流延方向の伸縮率を抑える事が重要である。本発明で用いられるセルロースエステルフィルム及び光学補償フィルムは寸法安定に優れる為、このような偏光板保護フィルムとして好適に使用される。
偏光板は、更に該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成することが出来る。プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。この場合、プロテクトフィルムは、偏光板の表面を保護する目的で貼合され、偏光板を液晶板へ貼合する面の反対面側に用いられる。また、セパレートフィルムは液晶板へ貼合する接着層をカバーする目的で用いられ、偏光板を液晶セルへ貼合する面側に用いられる。
本発明の偏光板は、垂直配向モードの液晶セルと該液晶セルを挟んで偏光板A及び偏光板Bが設けられた液晶表示装置において、前記偏光板Aは偏光板保護フィルムA1、A2を有し、前記偏光板Bは偏光板保護フィルムB1、B2を有し、液晶セル側に配置されている偏光板保護フィルムA2、B2の少なくとも一方が本発明のセルロースエステルフィルムYを含み、偏光板保護フィルムA2、B2の少なくとも一方が本発明の光学異方性層を有する光学補償フィルムWが配置されることで、本発明の目的が達成できる特徴を有する。あるいは、偏光板保護フィルムA2、B2の少なくとも一方がセルロースエステルフィルムY上に光学異方性層を設けた光学補償フィルムWであっても良い。
各々の偏光板のもう一方の面にも本発明のセルロースエステルフィルムY、光学補償フィルムWを用いても、別の偏光板保護フィルムを用いてもよい。本発明のセルロースエステルフィルムY、光学補償フィルムWに対して、もう一方の面に用いられる偏光板保護フィルムは市販のセルロースエステルフィルムを用いることが出来る。例えば、市販のセルロースエステルフィルムとして、KC8UX2M、KC4UX、KC5UX、KC4UY、KC8UY、KC12UR、KC8UCR−3、KC8UCR−4、KC8UY−HA、KC8UX−RHA(以上、コニカミノルタオプト(株)製)、フジタックTD80UF、フジタックT80UZ、フジタックT40UZ、反射防止フイルム(富士フイルムCVクリアビューUA、富士写真フイルム(株)製)等が好ましく用いられる。
また、もう一方の面に用いられる偏光板保護フィルム、特に視認側の偏光板保護フィルムA1には2〜20μmの厚さのハードコート層もしくはアンチグレア層を有することが好ましい。例えば、特開2003−114333号公報、特開2004−203009号公報、2004−354699号公報、2004−354828号公報等記載のハードコート層もしくはアンチグレア層を有する偏光板保護フィルムが好ましく用いられる。更に、クリアハードコート層もしくはアンチグレア層の上に少なくとも低屈折率層を含む前述の反射防止層を有することが好ましく、該低屈折率層には前記中空微粒子を含有することが特に好ましい。
(液晶表示装置)
本発明の偏光板を表示装置に組み込むことによって、種々の視認性に優れた本発明の液晶表示装置を作製することができる。特にVA型(MVA型、PVA型)の液晶表示装置で好ましく適用される。
本発明の偏光板を用いた液晶表示装置は、特にマルチドメイン型の液晶表示装置、より好ましくは複屈折モードによってマルチドメイン型の液晶表示装置に使用することが本発明の効果をより発揮することが出来る。
マルチドメイン化とは、1画素を構成する液晶セルをさらに複数に分割する方式であり、視野角依存性の改善・画像表示の対称性の向上にも適しており、種々の方式が報告されている「置田、山内:液晶,6(3),303(2002)」。該液晶表示セルは、「山田、山原:液晶,7(2),184(2003)」にも示されており、これらに限定される訳ではない。
表示セルの表示品質は、人の観察において左右対称であることが好ましい。従って、表示セルが液晶表示セルである場合、実質的に観察側の対称性を優先してドメインをマルチ化することが出来る。ドメインの分割は、公知の方法を採用することが出来、2分割法、より好ましくは4分割法によって、公知の液晶モードの性質を考慮して決定出来る。
本発明の偏光板は垂直配向モードに代表されるMVA(Multi−domein Vertical Alignment)モード、特に4分割されたMVAモード、電極配置によってマルチドメイン化された公知のPVA(Patterned Vertical Alignment)モードに効果的に用いることが出来る。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(セルロースエステルフィルムAの作製)
(二酸化珪素分散液A)
アエロジル972V(日本アエロジル(株)製) 12質量部
(一次粒子の平均径16nm、見掛け比重90g/リットル)
エタノール 88質量部
以上をディゾルバーで30分間撹拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。二酸化珪素分散液に88質量部のメチレンクロライドを撹拌しながら投入し、ディゾルバーで30分間撹拌混合し、二酸化珪素分散希釈液Aを作製した。
(インライン添加液Aの作製)
チヌビン109(チバスペシャルティケミカルズ(株)製) 11質量部
チヌビン171(チバスペシャルティケミカルズ(株)製) 5質量部
メチレンクロライド 100質量部
以上を密閉容器に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解し、濾過した。
これに二酸化珪素分散希釈液Aを36質量部、撹拌しながら加えて、さらに30分間撹拌した後、セルロースアセテートプロピオネート(アセチル基置換度1.9、プロピオニル基置換度0.8)6質量部を撹拌しながら加えて、さらに60分間撹拌した後、アドバンテック東洋(株)のポリプロピレンワインドカートリッジフィルターTCW−PPS−1Nで濾過し、インライン添加液Aを調製した。
(ドープ液Aの調製)
セルロースエステル(リンター綿から合成されたセルローストリアセテート、Mn=148000、Mw=310000、Mw/Mn=2.1、アセチル基置換度2.92)
100質量部
トリフェニルホスフェート 10質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート 2質量部
メチレンクロライド 430質量部
エタノール 40質量部
以上を密閉容器に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解し、安積濾紙(株)製の安積濾紙No.24を使用して濾過し、ドープ液Aを調製した。
製膜ライン中で日本精線(株)製のファインメットNFでドープ液Aを濾過した。インライン添加液ライン中で、日本精線(株)製のファインメットNFでインライン添加液Aを濾過した。濾過したドープ液Aを100質量部に対し、濾過したインライン添加液Aを2質量部加えて、インラインミキサー(東レ静止型管内混合機 Hi−Mixer、SWJ)で十分混合し、次いで、ベルト流延装置を用い、温度35℃、2m幅でステンレスバンド支持体に均一に流延した。ステンレスバンド支持体で、残留溶剤量が120%になるまで溶媒を蒸発させ、ステンレスバンド支持体上から剥離した。剥離したセルロースエステルのウェブを35℃で溶媒を蒸発させ、1650mm幅にスリットし、その後、テンターでTD方向(フィルムの搬送方向と直交する方向)に1.1倍に延伸しながら、135℃の乾燥温度で、乾燥させた。このときテンターで延伸を始めたときの残留溶剤量は30%であった。
その後、120℃で乾燥させた後、135℃の熱処理ゾーンを多数のロールで搬送させながら熱処理を終了させ、1.5m幅にスリットし、フィルム両端に幅15mm、平均高さ10μmのナーリング加工を施し、巻き取り初期張力220N/m、終張力110N/mで内径6インチコアに巻き取り、セルロースエステルフィルムAを得た。ステンレスバンド支持体の回転速度とテンターの運転速度から算出される剥離直後のMD方向(フィルムの搬送方向と同一方向)の延伸倍率は1.07倍であった。セルロースエステルフィルムAの残留溶剤量は0.1%未満であり、平均膜厚は80μm、巻数は3000mであった。Roは0nm、Rtは50nmであった。
(セルロースエステルフィルム1〜31の作製)
〈ポリマーXの合成〉
攪拌機、2個の滴下ロート、ガス導入管および温度計の付いたガラスフラスコに、表1記載の種類及び比率のモノマーXa、Xb混合液40g、連鎖移動剤のメルカプトプロピオン酸2gおよびトルエン30gを仕込み、90℃に昇温した。その後、一方の滴下ロートから、表1記載の種類及び比率のモノマーXa、Xb混合液60gを3時間かけて滴下すると共に、同時にもう一方のロートからトルエン14gに溶解したアゾビスイソブチロニトリル0.4gを3時間かけて滴下した。その後さらに、トルエン56gに溶解したアゾビスイソブチロニトリル0.6gを2時間かけて滴下した後、さらに2時間反応を継続させ、ポリマーXを得た。該ポリマーXの重量平均分子量は下記測定法により表1に示した。連鎖移動剤のメルカプトプロピオン酸の添加量、アゾビスイソブチロニトリルの添加速度を変更して、分子量の異なるポリマーXを作製した。
尚、表1記載の、MA、MMA、HEA及びHEMAはそれぞれ以下の化合物の略称である。
MA :メチルアクリレート
MMA:メタクリル酸メチル
HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
(分子量測定)
重量平均分子量の測定は、高速液体クロマトグラフィーを用いて測定した。
測定条件は以下の通りである。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806,K805,K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いる。
〈ポリマーYの合成〉
特開2000−128911号公報に記載の重合方法により塊状重合を行った。すなわち、攪拌機、窒素ガス導入管、温度計、投入口及び環流冷却管を備えたフラスコにモノマーYaとして、下記メチルアクリレート、若しくはメタクリル酸メチルを投入し、窒素ガスを導入してフラスコ内を窒素ガスで置換した下記チオグリセロールを攪拌下添加した。チオグリセロール添加後、内容物の温度を適宜変化させ4時間重合を行い、内容物を室温に戻し、それにベンゾキノン5質量%テトラヒドロフラン溶液を20質量部添加し、重合を停止させた。内容物をエバポレーターに移し、80℃で減圧下、テトラヒドロフラン、残存モノマー及び残存チオグリセロールを除去し、表1に記載のポリマーYを得た。該ポリマーYの重量平均分子量は上記測定法により表1に示した。
メチルアクリレート若しくはメタクリル酸メチル 100質量部
チオグリセロール 5質量部
〈ポリマーUV剤P−1合成例〉
2(2′−ヒドロキシ−5′−t−ブチル−フェニル)−5−カルボン酸−(2−メタクリロイルオキシ)エチルエステル−2H−ベンゾトリアゾール(例示化合物MUV−19)を、下記に記載の方法に従って合成した。
20.0gの3−ニトロ−4−アミノ−安息香酸を160mlの水に溶かし、濃塩酸43mlを加えた。20mlの水に溶解させた8.0gの亜硝酸ナトリウムを0℃で加えた後、0℃のまま2時間撹拌した。この溶液に、17.3gの4−t−ブチルフェノールを水50mlとエタノール100mlに溶解させた溶液中に、炭酸カリウムで液性をアルカリ性に保ちながら0℃で滴下した。この溶液を0℃に保ちながら1時間、更に室温で1時間撹拌した。反応液を塩酸で酸性にし、生成した沈殿物をろ過した後、よく水洗した。
ろ過した沈殿を500mlの1モル/LのNaOH水溶液に溶解させ、35gの亜鉛粉末を加えた後、40%NaOH水溶液110gを滴下した。滴下後、約2時間撹拌し、ろ過、水洗し、濾液を塩酸で中和して中性とした。析出した沈殿物をろ過、水洗、乾燥後、酢酸エチルとアセトンの混合溶媒で再結晶を行うことにより、2(2′−ヒドロキシ−5′−t−ブチル−フェニル)−5−カルボン酸−2H−ベンゾトリアゾールが得られた。
次いで、10.0gの2(2′−ヒドロキシ−5′−t−ブチル−フェニル)−5−カルボン酸−2H−ベンゾトリアゾールと0.1gのハイドロキノン、4.6gの2−ヒドロキシエチルメタクリレート、0.5gのp−トルエンスルホン酸とをトルエン100ml中に加え、エステル管を備えた反応容器で10時間加熱灌流を行う。反応溶液を水中に注ぎ、析出した結晶をろ過、水洗、乾燥し、酢酸エチルで再結晶を行うことで、例示化合物MUV−19である2(2′−ヒドロキシ−5′−t−ブチル−フェニル)−5−カルボン酸−(2−メタクリロイルオキシ)エチルエステル−2H−ベンゾトリアゾールが得られた。
次いで、2(2′−ヒドロキシ−5′−t−ブチル−フェニル)−5−カルボン酸−(2−メタクリロイルオキシ)エチルエステル−2H−ベンゾトリアゾールとメタクリル酸メチルとの共重合体(高分子UV剤P−1)を下記に記載の方法に従って合成した。
テトラヒドロフラン80mlに、上記合成例3で合成した4.0gの2(2′−ヒドロキシ−5′−t−ブチル−フェニル)−5−カルボン酸−(2−メタクリロイルオキシ)エチルエステル−2H−ベンゾトリアゾールと6.0gのメタクリル酸メチルとを加え、次いで、アゾイソブチロニトリル1.14gを加えた。窒素雰囲気下で9時間加熱還流した。テトラヒドロフランを減圧留去した後、20mlのテトラヒドロフランに再溶解し、大過剰のメタノール中に滴下した。析出した沈殿物を濾取し、40℃で真空乾燥して、9.1gの灰白色紛状重合体である高分子UV剤P−1を得た。この共重合体は、標準ポリスチレンを基準とするGPC分析により、数平均分子量4500のものであると確認した。また、NMRスペクトル及びUVスペクトルから、上記共重合体が、2(2′−ヒドロキシ−5′−t−ブチル−フェニル)−5−カルボン酸−(2−メタクリロイルオキシ)エチルエステル−2H−ベンゾトリアゾールとメタクリル酸メチルの共重合体であることを確認した。上記重合体の組成は略、2(2′−ヒドロキシ−5′−t−ブチル−フェニル)−5−カルボン酸−(2−メタクリロイルオキシ)エチルエステル−2H−ベンゾトリアゾール:メタクリル酸メチル=40:60であった。
(セルロースエステルフィルムYの作製)
本発明に係るセルロースエステルフィルムYを以下のように作製した。
(ドープ液の調製)
セルロースエステル(リンター綿から合成されたセルローストリアセテート、Mn=148000、Mw=310000、Mw/Mn=2.1、アセチル基置換度2.92)
100質量部
ポリマーX 表1記載量
ポリマーY 表1記載量
ポリマーUV剤P−1 3質量部
酸化ケイ素微粒子(アエロジルR972V(日本アエロジル株式会社製))
0.1質量部
メチレンクロライド 430質量部
エタノール 40質量部
(セルロースエステルフィルムYの製膜)
表1記載のポリマーX、ポリマーY添加比率で上記ドープ液を作製し次いで日本精線(株)製のファインメットNFで濾過し、ベルト流延装置を用い、温度22℃、2m幅でステンレスバンド支持体に均一に流延した。ステンレスバンド支持体で、残留溶剤量が90%になるまで溶媒を蒸発させ、剥離張力162Newton/mでステンレスバンド支持体上から剥離した。剥離したセルロースエステルのウェブを35℃で溶媒を蒸発させ、1.6m幅にスリットし、その後、テンターで幅方向に1.1倍に延伸しながら、135℃の乾燥温度で乾燥させた。このときテンターで延伸を始めたときの残留溶剤量は10%であった。テンターで延伸後130℃で5分間緩和を行った後、120℃、130℃の乾燥ゾーンを多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させ、1.5m幅にスリットし、フィルム両端に幅10mm高さ5μmのナーリング加工を施し、初期張力220N/m、終張力110N/mで内径6インチコアに巻き取り、表1記載の本発明のセルロースエステルフィルムYであるセルロースエステルフィルム1〜31を得た。ステンレスバンド支持体の回転速度とテンターの運転速度から算出されるMD方向の延伸倍率は1.1倍であった。表1記載のセルロースエステルフィルムの残留溶剤量は各々0.1%であり、膜厚は80μm、巻数は4000mであった。
尚、セルロースエステルフィルム30は膜厚を40μm、セルロースエステルフィルム8は膜厚を60μmに調整した以外は同様にして作製し、セルロースエステルフィルム4、29は前記ポリマーUV剤P−1を除いた以外は同様にして作製した。更にセルロースエステルフィルム30、31は前記ポリマーUV剤P−1の替わりに下記紫外線吸収剤を添加した以外は同様にして作製した。
チヌビン109(チバスペシャルティケミカルズ(株)製) 1.5質量部
チヌビン171(チバスペシャルティケミカルズ(株)製) 0.7質量部
〈評価方法〉
得られたセルロースエステルフィルム1〜31について以下の評価を実施した。
(リターデーションRo、Rt)
自動複屈折率計(王子計測機器(株)製、KOBRA−21ADH)を用いてセルロースエステルフィルム1〜31を23℃、55%RHの環境下で、590nmの波長において10カ所測定し、式(a)で表される面内方向のリターデーションRoを、また、式(b)で表される厚み方向のリターデーションRtを求めた。それぞれ10カ所測定しその平均値で示した。尚、平均屈折率はアッベの屈折率計により求めた。
式(a) Ro=(nx−ny)×d
式(b) Rt={(nx+ny)/2−nz}×d(式中、Roはフィルム面内リターデーション値、Rtはフィルム厚み方向リターデーション値、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率、nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率、nzはフィルムの厚み方向の屈折率、dはフィルムの厚さ(nm)を表す。)
上記評価結果を下記表1および2に示す。
(光学補償フィルムWの作製)
〈光学補償フィルム1の作製〉
2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン酸二無水物(6FDA)と2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(PFMB)から、下記式(W)で表される繰り返し単位から構成されるポリイミド(Mw=100000)を合成した。
このポリイミドを、シクロヘキサノン溶媒に溶解し、15質量%のポリイミド溶液を調製した。この溶液を、セルロースエステルフィルムAの上に塗布した後、160℃で乾燥処理しながら、テンターで幅手方向に1.1倍となるように延伸し、延伸されたTACフィルム上に複屈折性光学フィルムを得た。ポリイミド層の膜厚は6μmであった。
得られた光学補償フィルム1は、フィルム全体でRo75nm、Rt260nmであった。
〈光学補償フィルム2〉
2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン酸二無水物(6FDA)と2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(PFMB)から、前記式(W)で表される繰り返し単位から構成されるポリイミド(Mw=120000)を合成した。
このポリイミドを、シクロヘキサノン溶媒に溶解し、15質量%のポリイミド溶液を調製した。この溶液を、セルロースエステルフィルム4の上に塗布した後、160℃で乾燥処理しながら、テンターで幅手方向に1.1倍となるように延伸し、延伸されたTACフィルム上に複屈折性光学フィルムを得た。ポリイミド層の膜厚は6μmであった。
得られた光学補償フィルム2は、フィルム全体でRo80nm、Rt220nmであった。
〈光学補償フィルム3〉
2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン酸二無水物(6FDA)と2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(PFMB)から、前記式(W)で表される繰り返し単位から構成されるポリイミド(Mw=110000)を合成した。
このポリイミドを、シクロヘキサノン溶媒に溶解し、15質量%のポリイミド溶液を調製した。この溶液を、セルロースエステルフィルム4の上に塗布した後、160℃で乾燥処理しながら、テンターで幅手方向に1.1倍となるように延伸し、延伸されたTACフィルム上に複屈折性光学フィルムを得た。ポリイミド層の膜厚は8μmであった。
得られた光学補償フィルム3は、フィルム全体でRo100nm、Rt260nmであった。
〈光学補償フィルム4〉
(配向膜の作製)セルロースエステルフィルムYである上記セルロースエステルフィルム1にゼラチン薄膜(0.1μm)を塗設し、1gの直鎖アルキル変性ポリビニルアルコール(MP203;クラレ(株)製)をメタノール/水=1:4混合比を有する溶媒100mlに溶解した溶液をワイヤーバーNo.3により塗布した。これらを80℃温風にて乾燥させた後、ラビング処理を行い、配向膜を作製した。
(液晶性化合物塗布溶液の組成)
MEK(メチルエチルケトン) 89.5部
化合物1 2部
化合物2 4部
化合物3 3部
イルガキュアー369(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)
1.5部
上記配向膜上に上記組成の液晶性化合物塗布溶液をワイヤーバーNo.5を用いて塗設した。更に、これを55度の無風状態で30秒乾燥、次いで75度30秒熱処理を行い、98kPaで60秒間窒素パージした後、酸素濃度0.1%条件下で450mJの紫外線により硬化させた膜を作製した。こうして得られた1層の液晶配向層を有するシートを光学補償フィルム4とした。
この光学補償フィルム4を王子計測機器製KOBRA21ADHにてR0,Rthの測定を行ったところ、R0=450nm,Rt=225nmであった。
尚、偏光板作成の際には、偏光板の吸収軸と本光学補償フィルム4の遅相軸とが直行するように配置した。
〈光学補償フィルム5〉
(光官能性配向膜組成)
繰り返し単位の構成 (I/Z)
I
Z
共重合組成比(モル%):95/5
数平均分子量:11000
(光官能性配向膜の形成)
上記記組成の光官能性配向膜をメチルエチルケトンで溶解して1.5質量%の溶液を調整した。この溶液を、スピンコーターを用い、上記セルロースエステルフィルムAに塗布し80℃の温風で2分間乾燥した。波長313nm付近の輝線スペクトルを有する直線偏光の紫外線をフィルム面に垂直な方向から照射し、光官能性配向膜の層を設けた。照射光量は500mJ/cm2であり、光照射後の表面エネルギーは45mJ/cm2であった。
(光学的異方性層)
前記光官能性配向膜上に、下記の組成の塗布液を、バーコーターを用いて連続的に塗布した。塗布層を125℃で1分間加熱して、ディスコティック液晶性化合物を配向させた。その温度で4秒間、600mJ/cm2の紫外線を照射してディスコティック液晶性化合物を重合させ、配向状態を固定した。このようにして光学的異方性層(厚み4.5μm)を形成し、光学補償フィルム5を作製した。
この光学補償フィルム5を王子計測機器製KOBRA21ADHにて波長590nmでR0,Rthの測定を行ったところ、R0=412nm,Rt=225nmであった。
(ディスコティック液晶性化合物組成物層の塗布液組成)
下記のディスコティック液晶性化合物 30.0質量%
下記の増感剤 0.15質量%
下記の光重合開始剤 0.45質量%
下記の配向制御剤 0.10質量%
メチルエチルケトン 69.3質量%
ディスコティック液晶性化合物
増感剤
光重合開始剤
配向制御剤
(反射防止フィルムA1の作製)
上記作製したセルロースエステルフィルムAを用いて、下記調製条件で反射防止層を塗設し反射防止フィルムA1を作製した。
〈ハードコート層及びバックコート層の塗設〉
上記作製したセルロースエステルフィルムA上に、下記のハードコート層用塗布液1を孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過してハードコート層塗布液1を調製し、これをマイクログラビアコーターを用いて塗布し、90℃で乾燥の後、紫外線ランプを用い照射部の照度が100mW/cm2で、照射量を0.1J/cm2として塗布層を硬化させ、ドライ膜厚7μmのハードコート層1を形成しハードコートフィルムを作製した。
〈ハードコート層塗布液1〉
下記材料を攪拌、混合しハードコート層塗布液1とした。
アクリルモノマー;KAYARAD DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、日本化薬製) 220質量部
イルガキュア184(チバスペシャルティケミカルズ(株)製) 20質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 110質量部
酢酸エチル 110質量部
更に、下記バックコート層組成物をウェット膜厚10μmとなるように押し出しコーターで塗布し、85℃にて乾燥し巻き取り、バックコート層を設けた。
〈バックコート層組成物〉
アセトン 54質量部
メチルエチルケトン 24質量部
メタノール 22質量部
ジアセチルセルロース 0.6質量部
超微粒子シリカ2%アセトン分散液
(日本アエロジル(株)製アエロジル200V) 0.2質量部
〈反射防止フィルムの作製〉
上記作製したハードコートフィルム1上に、下記のように高屈折率層、次いで、低屈折率層の順に反射防止層を塗設し、反射防止フィルムA1を作製した。
(反射防止層の作製:高屈折率層)
ハードコートフィルム上に、下記高屈折率層塗布組成物1を押し出しコーターで塗布し、80℃で1分間乾燥させ、次いで紫外線を0.1J/cm2照射して硬化させ、更に100℃で1分熱硬化させ、厚さが78nmとなるように高屈折率層1を設けた。
この高屈折率層の屈折率は1.62であった。
〈高屈折率層塗布組成物1〉
金属酸化物微粒子のイソプロピルアルコール溶液(固形分20%、ITO粒子、粒径5nm) 55質量部
金属化合物:Ti(OBu)4(テトラ−n−ブトキシチタン) 1.3質量部
電離放射線硬化型エステル:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
3.2質量部
光重合開始剤:イルガキュア184(チバスペシャルティケミカルズ(株)製)
0.8質量部
直鎖ジメチルシリコーン−EOブロックコポリマー(FZ−2207、日本ユニカー(株)製)の10%プロピレングリコールモノメチルエーテル液 1.5質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 120質量部
イソプロピルアルコール 240質量部
メチルエチルケトン 40質量部
(反射防止層の作製:低屈折率層)
前記高屈折率層上に、下記の低屈折率層塗布組成物1を押し出しコーターで塗布し、100℃で1分間乾燥させた後、紫外線を0.1J/cm2照射して硬化させ、更に120℃で5分間熱硬化させ、厚さ95nmとなるように低屈折率層を設けけ。反射防止フィルムA1を作製した。尚、この低屈折率層の屈折率は1.37であった。
(低屈折率層塗布組成物1の調製)
〈テトラエトキシシラン加水分解物Aの調製〉
テトラエトキシシラン289gとエタノール553gを混和し、これに0.15%酢酸水溶液157gを添加し、25℃のウォーターバス中で30時間攪拌することで加水分解物Aを調製した。
テトラエトキシシラン加水分解物A 110質量部
中空シリカ系微粒子分散液 30質量部
KBM503(シランカップリング剤、信越化学(株)製) 4質量部
直鎖ジメチルシリコーン−EOブロックコポリマー(FZ−2207、日本ユニカー(株)製)の10%プロピレングリコールモノメチルエーテル液 3質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 400質量部
イソプロピルアルコール 400質量部
〈中空シリカ系微粒子分散液の調製〉
平均粒径5nm、SiO2濃度20質量%のシリカゾル100gと純水1900gの混合物を80℃に加温した。この反応母液のpHは10.5であり、同母液にSiO2として0.98質量%のケイ酸ナトリウム水溶液9000gとAl2O3として1.02質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液9000gとを同時に添加した。その間、反応液の温度を80℃に保持した。反応液のpHは添加直後、12.5に上昇し、その後、ほとんど変化しなかった。添加終了後、反応液を室温まで冷却し、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度20質量%のSiO2・Al2O3核粒子分散液を調製した。(工程(a))
この核粒子分散液500gに純水1700gを加えて98℃に加温し、この温度を保持しながら、ケイ酸ナトリウム水溶液を陽イオン交換エステルで脱アルカリして得られたケイ酸液(SiO2濃度3.5質量%)3000gを添加して第1シリカ被覆層を形成した核粒子の分散液を得た。(工程(b))
次いで、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度13質量%になった第1シリカ被覆層を形成した核粒子分散液500gに純水1125gを加え、更に濃塩酸(35.5%)を滴下してpH1.0とし、脱アルミニウム処理を行った。次いで、pH3の塩酸水溶液10Lと純水5Lを加えながら限外濾過膜で溶解したアルミニウム塩を分離し、第1シリカ被覆層を形成した核粒子の構成成分の一部を除去したSiO2・Al2O3多孔質粒子の分散液を調製した(工程(c))。上記多孔質粒子分散液1500gと、純水500g、エタノール1,750g及び28%アンモニア水626gとの混合液を35℃に加温した後、エチルシリケート(SiO228質量%)104gを添加し、第1シリカ被覆層を形成した多孔質粒子の表面をエチルシリケートの加水分解重縮合物で被覆して第2シリカ被覆層を形成した。次いで、限外濾過膜を用いて溶媒をエタノールに置換した固形分濃度20質量%の中空シリカ系微粒子分散液を調製した。
この中空シリカ系微粒子の第1シリカ被覆層の厚さは3nm、平均粒径は47nm、MOx/SiO2(モル比)は0.0017、屈折率は1.28であった。ここで、平均粒径は動的光散乱法により測定した。
(反射率)
作製した反射防止フィルムについて分光光度計(U−4000、日立製作所製)を用いて、380〜780nmの波長領域において、入射角5°における分光反射率を測定した。反射防止性能は広い波長領域において反射率が小さいほど良好であるため、測定結果から450〜650nmにおける最低反射率を求めた。測定は、観察側の裏面を粗面化処理した後、黒色のスプレーを用いて光吸収処理を行い、フィルム裏面での光の反射を防止して、反射率の測定を行った。
その結果、反射防止フィルムA1の反射率は0.4%であった。
(偏光板及び液晶表示装置の作製)
上記作製したセルロースエステルフィルムA、反射防止フィルムA1、セルロースエステルフィルム1〜31、光学補償フィルム1〜5、コニカミノルタタックKC8UX2MW(Ro:0nm、Rt:55nm)、コニカミノルタタックKC8UX−RHA(何れもコニカミノルタオプト(株)製)を用いて偏光板を作製した。
〈視認側偏光板Aの作製〉
厚さ、75μmのポリビニルアルコールフィルムを、一軸延伸(温度110℃、延伸倍率5倍)した。これをヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g、水100gからなる水溶液に60秒間浸漬し、次いでヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gからなる68℃の水溶液に浸漬した。これを水洗、乾燥し偏光膜を得た。
次いで、下記工程1〜5に従って偏光膜と上記反射防止フィルムA1、上記作製したセルロースエステルフィルム1〜31、光学補償フィルム1、コニカミノルタタックKC8UX2MW、コニカミノルタタックKC8UX−RHAとを表3、4の構成で貼り合わせて偏光板を作製した。
工程1:60℃の2モル/Lの水酸化ナトリウム溶液に90秒間浸漬し、次いで水洗し乾燥して、偏光子と貼合する側を鹸化した反射防止フィルムA1、セルロースエステルフィルム1〜31、光学補償フィルム1、コニカミノルタタックKC8UX2MW、コニカミノルタタックKC8UX−RHAを得た。
工程2:前記偏光膜を固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒浸漬した。
工程3:工程2で偏光膜に付着した過剰の接着剤を軽く拭き除き、これを工程1で処理した反射防止フィルムA1、上記作製したセルロースエステルフィルム1〜31、光学補償フィルム1、コニカミノルタタックKC8UX2MW、コニカミノルタタックKC8UX−RHAの上に乗せて積層した。
工程4:工程3で積層した偏光膜と反射防止フィルムA1、上記作製したセルロースエステルフィルム1〜31、光学補償フィルム1、コニカミノルタタックKC8UX2MW、コニカミノルタタックKC8UX−RHAを圧力20〜30N/cm2、搬送スピードは約2m/分で貼合した。
工程5:80℃の乾燥機中に工程4で作製した偏光膜と反射防止フィルムA1、上記作製したセルロースエステルフィルム1〜31、光学補償フィルム1、コニカミノルタタックKC8UX2MW、コニカミノルタタックKC8UX−RHAとを貼り合わせた試料を2分間乾燥し、視認側偏光板A1〜A39を作製した。
〈バックライト側偏光板Bの作製〉
上記作製した偏光膜、光学補償フィルム1〜5、セルロースエステルフィルムA、コニカミノルタタックKC8UX2MWを用いて、表3、4の構成で上記工程1〜5に従ってバックライト側偏光板B1〜B39を作製した。尚、偏光膜に対して光学補償フィルムはポリマー層が外側になるように貼合した。
《液晶表示装置の作製》
液晶パネルを以下のようにして作製し、液晶表示装置としての特性を評価した。市販の垂直配向型液晶表示装置(VA型)AQ−32AD5(シャープ(株)製)の液晶セルの両面に貼合されていた偏光板のみを慎重に剥離した後、貼合されていた偏光板の偏光軸と同じになるように、作成した偏光板(A)及び偏光板(B)をそれぞれの面に貼合し、本発明及び比較の液晶表示装置1〜39を作製した。
《評価》
〈視野角特性の評価〉
視野角の評価にはELDIM社製EZ−contrastを用い黒表示及び白表示時の透過光量を測定した。視野角の評価はコントラスト=(白表示時の透過光量:cd/cm2)/(黒表示時の透過光量:cd/cm2)を算出し評価を行った。
その結果、いずれも視野角160°の全領域でコントラスト20以上であった。
〈黒・コントラストムラ(コーナームラも含む)の評価〉
シャープ製液晶テレビAQ−32AD5に貼ってあった偏光板を剥離してから本発明の偏光板を粘着シートを用いて貼合・オートクレーブ処理したのち、50℃95%で100時間処理し、室温(23℃55%RH)で24時間調湿しバックライトを点灯し輝度を最大の設定として2時間後の黒表示の光漏れおよびコントラストを観察し、ムラの評価を行った。ムラはコニカミノルタセンシング製CA−1500を用いて、全画面が視野に収まる距離から測定を行った。
◎:光漏れ全てで観察されず
○:黒表示で全面に若干ムラがあるが、非常に弱く実用上全く問題にならない
△:黒表示で全面に若干ムラが出て、コーナーにも弱い光漏れが発生
×:黒表示で全面に光漏れが発生しのコーナーの光モレが強く、実用上問題
〈色味の評価〉
23℃55%RHで24時間調湿し、バックライトを点灯し輝度を最大の設定として2時間後に、ELDIM製EZ−Contrast160Dを用い、正面方向を基準として倒れ角60°、70°のΔE*全方位で算出し、その最大値で評価を行った。具体的には、法線方向から観察したときのL*,U*,V* (CIE 1976)を求める。これをL1 *,U1 *,V1 *とする。そして所定の観察角度で観察したときのL*,U*,V*を求め、これをL2 *,U2 *,V2 *とする。これを用いて下式に従って、正面方向を基準として倒れ角60°及び70°のΔE*の値を全方位で算出し、その最大値で評価を行った。ΔE*=√((L2 *−L1 *)2+(U2 *−U1 *)2+(V2 *−V1 *)2)
また、目視により倒れ角60°〜70°で黒表示の色味変化を観察し、その結果から総合評価を行った。さらに、上の条件で耐久処理した後、同様の測定を行った。
◎:ΔE*が6未満であり良好
○:ΔE*が6〜10である。
×:ΔE*が10を超え色味変化大きい
及び
◎:初期・耐久後共に黒の目視評価で変化が感じられず
○:初期は黒の目視評価で変化少なく、耐久後も若干の変化あるが実用上問題にならない
△:初期は黒の目視評価で変化少なく、耐久後の変化が若干目立つ
×:初期の黒で変化大きい
以上の評価結果を表5に示した。
上表から本発明の構成である液晶表示装置1〜31、33〜36、38〜39は比較例の液晶表示装置32、37に対し黒・コントラストムラ、色味が優れていることが分かる。