本発明は、光ディスクなどの光情報記憶媒体に対して情報の記録、再生、または消去を行う光ヘッドと、該光ヘッドに用いる対物レンズと、前記光ヘッドを用いた光ディスク装置と、該光ディスク装置を適用したコンピュータおよび前記光ディスク装置を用いて光情報記憶媒体に対して映像/音声信号を記録および再生する光ディスクレコーダ等のシステムに関する。
光ディスクの第1世代といえるコンパクトディスク(以下、CDと記す)では、対物レンズの開口数を0.45から0.5とし、波長780nmの赤外光を用いて、保護層厚1.2mmの光ディスクに対して情報を記録または再生(以下、記録/再生と記す)している。なお、本明細書中において、保護層とは光ディスクに光ビームが入射する面から情報記録面までの透明な媒体を指す。また、第2世代のデジタルバーサタイルディスク(以下、DVDと記す)では、対物レンズの開口数を0.6とし、波長655nmの赤色光を用いて、保護層厚0.6mmの光ディスクに対して情報を記録/再生している。そして、第3世代のブルーレイディスク(以下、BDと記す)では、対物レンズの開口数を0.85とし、波長405nmの青色光を用いて、保護層厚0.1mmの光ディスクに対して情報を記録/再生している。さらに、BDとは別の規格である次世代DVD(以下、HD−DVDと記す)では、対物レンズの開口数を0.65とし、波長405nmの青色光を用いて、DVDと同じ保護層厚0.6mmの光ディスクに対して情報を記録/再生している。
このように、第3世代の光ディスクに対して情報を記録/再生する光ディスク装置では、短波長の青色レーザ光源と、開口数の大きい光学系とを用いて、従来以上に高密度化を図っており、今後の拡大が期待されている。しかし、高密度光ディスクであるBDおよびHD−DVDにおいても、DVDおよびCDで蓄積された資産の継承が望まれ、装置の大きさの観点からは、異なる光ディスクを、1つの光ヘッドにより記録/再生できる光ディスク装置が求められている。そのためには、保護層の厚みが異なる光ディスクに対して回折限界まで光ビームを絞ることのできる光ヘッドが必要になる。
従来より、異なる種類の光ディスクに対して、複数の波長の光ビームを用いて記録/再生することを目的とした構成が提案されている。この構成について、図23および図24を用いて説明する。
図23は、第1の従来例としての光ヘッドの一例の概略構成を示す断面図である。図23において、青色レーザ光源61から出射した波長405nmの光ビーム63と、赤色レーザ光源62から出射した波長655nmの光ビーム64が、コリメートレンズ65により並行光に変換され、回折素子66と屈折型レンズ67により絞られて光ディスクに収束にする。回折素子66は凸レンズ作用を持ち、波長405nmの光に対しては、2次回折光を最も強く発生し、波長655nmの光に対しては、1次回折光を最も強く発生するよう構成されている。波長405nmの光ビーム63は、回折素子66で回折されて2次回折光となり、屈折型レンズ67により保護層厚0.1mmの光ディスク51の情報記録面に収束する。また、波長655nmの光ビーム64は、回折素子66で回折されて1次回折光となり、保護層厚0.6mmの光ディスク52の情報記録面に収束する。光ディスク51、52で反射した光は、光検出器68で検出される。
図24は、図23に示す回折素子66と屈折型レンズ67の拡大断面図である。図24に示すように、回折素子66は、光ビーム64の開口内の領域66aと、領域66aの外側の領域66bとでは異なる構成を有する。領域66aは、屈折型レンズ67を通して光ビーム63の2次回折光が光ディスク51に収束され、また光ビーム64の1次回折光が光ディスク52に収束されるように構成されている。また、領域66bは、屈折型レンズ67を通して光ビーム63の2次回折光が光ディスク51に収束され、また光ビーム64の1次回折光が光ディスク52に対して収差を持つように構成されている。このようにして、保護層の厚みの違いによる球面収差が補正される(たとえば、特許文献1参照)。
第2の従来例としては、回折素子と、2つの波長選択位相板と、対物レンズとを組み合わせ、3種類の光ディスクに対応する光ヘッドの構成が提案されている。この構成について、図25を用いて説明する。
図25は、第2の従来例としての光ヘッドの一例の概略構成を示す断面図である。図25において、光学ユニット70より出射した波長405nmの青色光71aは、回折素子72の回折と、凹レンズ73の屈折によって略平行光となり、対物レンズ77の色収差を補正して、保護層厚0.1mmの光ディスク51の情報記録面に収束する。また、光学ユニット70より出射した波長655nmの赤色光71bは、回折素子72の影響を受けずに、凹レンズ73により発散光となり、波長選択位相板75により位相を補正されて、保護層厚0.6mmの光ディスク52の情報記録面に収束する。さらに、光学ユニット70より出射した波長780nmの赤外光71cは、回折素子72の影響を受けずに、凹レンズ73により発散光となり、波長選択位相板76により位相を補正されて、保護層厚1.2mmの光ディスク53の情報記録面に収束する。光ディスク51、52、53で反射した光は、逆の経路をたどって光学ユニット70内の光検出器で検出される。
波長選択位相板75には、波長655nmの光ビームに対して位相差を発生させ、波長405nmと780nmの光ビームに対しては、各波長の略整数倍の位相差を発生させる、すなわち位相差がゼロとなるような段差形状(step−profile)を有する位相段差(phase shift pattern)75aが設けられている。このため、波長選択位相板75は、光ビーム71aと71cの位相分布には影響を与えない。また、波長選択位相板76には、波長780nmの光ビームに対して位相差を発生させ、波長405nmと655nmの光ビームに対しては、各波長の略整数倍の位相差を発生させる、すなわち位相差がゼロとなるような段差形状を有する位相段差76aが設けられている。このため、波長選択位相板76は、光ビーム71aと71bの位相分布には影響を与えない。
対物レンズ77は、波長405nmの青色光が平行で入射した時に、保護層厚0.1mmのBDに収束されるように構成されており、保護層厚0.6mmのDVDに対して記録/再生を行う際は、厚みの違いによって球面収差が発生する。この球面収差は、凹レンズ73と波長選択位相板75とを用いて補正される。また、保護層厚1.2mmのCDに対して記録/再生を行う際に発生する球面収差は、凹レンズ73と波長選択位相板76とを用いて補正される(たとえば、特許文献2参照)。
第3の従来例としては、複数の対物レンズを機械的に切り替えて、複数の光ディスクに対して記録/再生を行う構成が提案されている(たとえば、特許文献3参照)。
第4の従来例としては、HD−DVDに関して、異なる種類の光ディスクに対して記録/再生を行う構成が提案されている。この構成について、図26および図27を用いて説明する。
図26は、第4の従来例としての光ヘッドの一例の概略構成を示す断面図である。図26において、青色レーザ光源80から出射した波長405nmの光ビーム83と、赤色レーザ光源81から出射した波長655nmの光ビーム84と、赤外レーザ光源82から出射した波長780nmの光ビーム85とが、回折素子86aを有する対物レンズ86により絞られて、光ディスクに収束にする。
図27は、図26に示す対物レンズ86の部分拡大断面図である。図27に示すように、対物レンズ86は、内周部87と、中周部88と、外周部89とで異なる構成を有する。つまり、回折素子86aの内周部87は、各波長の光に対して1次回折光を最も強く発生させ、中周部88は、波長405nmの光に対して3次回折光を最も強く発生させ、また波長655nmの光に対して2次回折光を最も強く発生させ、外周部89は、波長405nmと波長655nmの光に対して、回折が最大となる次数が異なるように構成されている。さらに、対物レンズ86の屈折面は、上記の最も強くなる回折光が、各光ディスクに収束するように構成されており、内周部87と、中周部88と、外周部89とで非球面係数はそれぞれ異なっている。
このようにして、対物レンズ86は、光ビーム83に対して回折素子86aの全周部により最も強く発生される回折次数の光を、保護層厚0.6mmの光ディスク54の情報記録面に収束し、光ビーム84に対して回折素子86aの内周部87と中周部88により最も強く発生される回折次数の光を、保護層厚0.6mmの光ディスク52の情報記録面に収束し、光ビーム85に対して回折素子86aの内周部87により最も強く発生される回折次数の光を、保護層厚1.2mmの光ディスク53の情報記録面に収束する。このようにして、波長と保護層の厚みの違いに起因した球面収差が補正され、回折素子86aの各領域において回折次数を異ならせることにより、光ビーム83に対する開口数をNA1とし、光ビーム84に対する開口数をNA2とし、光ビーム85に対する開口数をNA3(NA1>NA2>NA3)とするように開口制限が行われる(たとえば、特許文献4参照)。
しかしながら、上記各従来例では、以下のような問題点がある。
第1の従来例では、1つの対物レンズによりBDとDVDに対して記録/再生を行うことができるが、CDに対して記録/再生を行うことはできない。波長405nmの光については回折素子66で発生する2次回折光を利用し、また波長655nmの光については回折素子66で発生する1次回折光を利用して、BDとDVDの保護層厚の差による球面収差を補正するため、波長780nmの光を保護層厚1.2mmのCDの情報記録面に最適に収束させることはできない。波長780nmの光についても回折素子66で1次回折光を発生するが、波長が405nmの2倍に近いため、最適な保護層の厚みがBDの保護層の厚みに近くなってしまい、CDに対する記録/再生を行うことができない。さらに、CDの記録/再生を行う光に対する開口制限手段がなく開口数を0.45に設定できない。つまり、この方式は、BDとDVDとの互換性に関するものであり、CDの記録/再生に必要な光の波長を含めた3波長に対応するには新たな技術的手段が必要である。
第2の従来例では、回折素子と2つの波長選択位相板を用いて、BD、DVD、CDの記録/再生に対応しているが、回折素子と波長選択位相板は、3波長の波長選択性を持たせているため溝が深くなり、溝斜面の回折ロスと溝深さの誤差で光量ロスが増加する。特に、青色光を回折し、赤色光と赤外光を回折しない回折素子72は、4ステップの鋸歯形状により構成され、総合段差が20μmを超えるような深さになる。このため、波長の1桁下の精度を要求される回折素子では、十分な製造精度が確保できない。また、DVDとCDの記録/再生を行う光に対する開口制限手段がなく、DVDに対する開口数を0.6に設定し、CDに対する開口数を0.45に設定するには、光学フィルター等が必要になる。この構成は、回折格子、凹レンズ、2つの波長選択位相板、対物レンズ、さらには光学フィルター等を用いる複雑な構成になる。このため、光ヘッドを駆動するアクチュエータの可動部の質量が増加し、フォーカスやトラッキングの高倍速駆動が困難になり、またコスト面でも不利になる。
第3の従来例では、対物レンズを切り替えているので、複数の対物レンズを要し、部品点数が多くなるとともに、光ヘッド装置の小型化が困難であるという問題がある。また、切り替え機構を要する点でも、さらに装置の小型化が困難となる。
第4の従来例では、回折素子により球面収差の補正と、開口制限とを行って、HD−DVD、DVD、CDの記録/再生に対応しているが、回折素子の回折次数を変えているため、波長が設計波長から変化すると、収束性能が劣化してしまう。回折素子の回折角は、回折次数が増え、波長が長くなるに従って大きくなり、回折格子のピッチが大きくなるに従って小さくなる。このため、回折素子内で、回折次数を変えた場合、波長の変化に対して、回折角の変化が領域ごとに異なって、光ビームを一点に収束できなくなる。波長の変化要因としては、光源の波長ばらつきと、温度依存性があり、波長ばらつきは、青色レーザ光源では±5nm程度、赤外レーザ光源では±10nm程度あり、温度依存性は、各光源も±2nm程度ある。これらが、設計波長からの変化になる。
第4の従来例の構成では、回折素子の回折格子が内周部から中周部に変わるとき、光ビーム83の回折次数は1次から3次に変わるので、中周部の回折格子のピッチを、1次回折光として設計したときの3倍に設定すれば、内周部と中周部の波長変化に対する回折角の変化は一定になる。しかし、光ビーム84の回折次数は1次から2次になるため、中周部の回折格子のピッチは、1次回折光として設計したときの2倍に設定しないと、内周部と中周部の波長変化に対する回折角の変化は一定にならない。このため、両方の光ビームに対して、回折次数が変化したとき、回折角の変化を一定にすることはできず、波長が変化すると、光ビームを1点に収束することができなくなる。
これらのことから、保護層厚が0.1mm、0.6mmおよび1.2mmの光ディスクに対して、青色光、赤色光および赤外光の3波長を用いて記録/再生を行う実用的な互換光ヘッドは実現できていない。
特開2004−192783号公報(第12−18頁、図1、2)
特開2003−281775号公報(第6−11頁、図1)
特開平11−296890号公報(第4−6頁、図1)
特開2004−362626号公報(第5−14頁、図1、3)
本発明は、前記のような従来の問題を解決するものであり、その目的は、1つの対物レンズを用いて異なる種類の光ディスクに対する安定な互換再生および互換記録を可能にする小型で安価な光ヘッドを提供することである。
前記の目的を達成するため、本発明に係る光ヘッドは、第1、第2および第3の光源と、対物レンズと、光検出器とを少なくとも含む。前記第1の光源は波長λ1の光を出射し、前記第2の光源は波長λ2の光を出射し、前記第3の光源は波長λ3の光を出射する。前記対物レンズは、少なくとも回折素子と屈折型レンズから成り、第1の光ディスクに対しては前記波長λ1の光を開口数NA1で収束し、第2の光ディスクに対しては前記波長λ2の光を開口数NA2で収束し、第3の光ディスクに対しては前記波長λ3の光を開口数NA3で収束する。ここで、前記開口数NA1、NA2およびNA3は、NA1>NA2>NA3の関係にある。前記回折素子は、開口数NA3に相当する領域にて、前記波長λ1の光に対して3次回折光を最も強く発生させ、前記波長λ2の光に対して2次回折光を最も強く発生させ、前記波長λ3の光に対して2次回折光を最も強く発生させる格子形状を有する回折格子から成る。また、前記回折素子は、開口数NA3からNA2に相当する領域にて、前記波長λ1の光に対して6次回折光を最も強く発生させ、前記波長λ2の光に対して4次回折光を最も強く発生させ、前記波長λ3の光に対して3次回折光を最も強く発生させる格子形状を有する回折格子から成る。さらに、前記回折素子は、開口数NA2からNA1に相当する領域にて、前記波長λ1の光に対してm次回折光を最も強く発生させる格子形状を有する回折格子から成る。
上記の構成によれば、回折素子と屈折型レンズから成る対物レンズを用い、回折素子により開口制限を受ける複数の領域で光の回折次数を変えたとしても、波長の変化に対する回折角の変化が一定になるように回折格子を構成し、波長の異なる光を保護層厚の異なる光ディスクに、それぞれに合った開口数で収束して、安定に情報を記録/再生することができる。これにより、光学フィルター等の開口制限手段なしに、1つの対物レンズを用いて、保護層厚の差に起因した球面収差を補正でき、種類の異なる光ディスクに対する安定な互換再生および互換記録を可能にする小型で安価な光ヘッドを実現できる。
図1は、本発明の実施の形態1に係る光ヘッドの全体構成を示す断面図である。
図2は、本発明の実施の形態1における対物レンズの一例を示す拡大断面図である。
図3は、本発明の実施の形態1における回折素子の平面(紙面上側)および断面(紙面下側)を示す図である。
図4は、本発明の実施の形態1における回折素子の物理的な断面形状(DG)、回折素子を透過する波長λ1、λ2、およびλ3の光の位相変化(PC(λ1)、PC(λ2)、およびPC(λ3))を示す図である。
図5Aは、本発明の実施の形態1における回折格子の深さ(h)に対する波長λ1の光の回折効率をプロットしたグラフである。
図5Bは、本発明の実施の形態1における回折格子の深さ(h)に対する波長λ2の光の回折効率をプロットしたグラフである。
図5Cは、本発明の実施の形態1における回折格子の深さ(h)に対する波長λ3の光の回折効率をプロットしたグラフである。
図6は、本発明の実施の形態1における対物レンズの変形例を示す拡大断面図である。
図7は、本発明の実施の形態1における対物レンズの他の変形例を示す拡大断面図である。
図8は、本発明の実施の形態2における対物レンズの一例を示す拡大断面図である。
図9は、本発明の実施の形態2における位相段差の一例を示す拡大断面図である。
図10は、本発明の実施の形態2における対物レンズの変形例を示す拡大断面図である。
図11は、本発明の実施の形態2における位相段差の変形例を示す拡大断面図である。
図12は、本発明の実施の形態2における対物レンズの他の変形例を示す拡大断面図である。
図13は、本発明の実施の形態2における位相段差の他の変形例を示す拡大断面図である。
図14は、本発明の実施の形態3に係る光ヘッドの全体構成を示す断面図である。
図15は、本発明の実施の形態3における対物レンズの一例を示す拡大断面図である。
図16は、本発明の第3の実施形態における回折素子の平面(上側)および断面(下側)を示す図である。
図17は、本発明の実施の形態3における回折レンズとコリメートレンズを伝搬する光ビームの様子を示す図である。
図18は、本発明の実施の形態3における対物レンズの変形例を示す拡大断面図である。
図19は、本発明の実施の形態3における対物レンズの他の変形例を示す拡大断面図である。
図20は、本発明の実施の形態4に係る光ディスク装置の概略構成を示す断面図である。
図21は、本発明の実施の形態5に係るコンピュータの概略構成を示す斜視図である。
図22は、本発明の実施の形態6に係る光ディスクレコーダの概略構成を示す斜視図である。
図23は、第1の従来例の光ヘッド装置の一例の概略構成を示す断面図である。
図24は、第1の従来例の光ヘッド装置における対物レンズの一例を示す拡大断面図である。
図25は、第2の従来例の光ヘッド装置の一例の概略構成を示す断面図である。
図26は、第4の従来例の光ヘッド装置の一例の概略構成を示す断面図である。
図27は、第4の従来例の光ヘッド装置における回折素子の部分拡大断面図である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る光ヘッドの全体構成を示す断面図である。図1において、1は波長λ1(略405nm)の光を出射する青色レーザ光源を示し、2は波長λ2(略655nm)の光を出射する赤色レーザ光源、3は波長λ3(略780nm)の光を出射する赤外レーザ光源を示す。10はコリメートレンズ、14は対物レンズを示し、対物レンズ14は、回折素子12と屈折型レンズ13により構成されている。51は保護層厚t1が約0.1mmの光ディスクを示し、波長λ1の光ビームによって、開口数NA1で記録/再生される光情報媒体、例えばBD用の光ディスクである。52は保護層厚t2が約0.6mmの光ディスクを示し、波長λ2の光ビームによって、開口数NA2で記録/再生される光情報媒体、例えばDVD用の光ディスクである。53は保護層厚t3が約1.2mmの光ディスクを示し、波長λ3の光ビームによって、開口数NA3で記録/再生される光情報媒体、例えばCD用の光ディスクである。これらの光ディスクにおける開口数はNA1が0.85、NA2が0.6、NA3が0.45から0.5である。図1では、光ディスク51(実線)、52(破線)53(一点鎖線)は、光ビームが入射する面から情報記録面までの保護層のみを示している。実際には、光ディスク51、52については、機械的強度を確保し、外形をCDと同じ1.2mmにするため、基材を張り合わせている。光ディスク52は、厚み0.6mmの基材を張り合わせ、光ディスク51は、厚み1.1mmの基材を張り合わせているが、図1では、例示の明瞭化のため、基材は省略している。
記録密度の高い光ディスク51の記録/再生を行う際には、青色レーザ光源1から出射した波長λ1の光ビーム4がプリズム7、プリズム8を透過して、ビームスプリッター9に入射する。プリズム7は、波長λ1の光を透過し、波長λ2の光を反射するよう構成され、プリズム8は、波長λ1とλ2の光を透過し、波長λ3の光を反射するよう構成されている。また、ビームスプリッター9は、波長λ1、λ2の光に対しては、一方向の直線偏光を反射し、それと直角方向の直線偏光を透過する偏光分離特性を持ち、波長λ3の光に対しては、一部の光を透過し、一部の光を反射するハーフミラー特性を持った光路分岐素子として機能する。
青色レーザ光源1から出射した光ビーム4の偏光方向は、ビームスプリッター9で反射するよう設定されており、ここを反射した光ビーム4は、コリメートレンズ10より集光され略平行光になり、波長板11により直線偏光から円偏光に変換される。波長板11は、波長λ1、λ2の光に対しては、1/4波長板として作用し、波長λ3の光に対しては、波長板として作用しないよう構成されている。さらに光ビーム4は、回折素子12と屈折型レンズ13からなる対物レンズ14によって絞られ、保護層厚t1を通して光ディスク51の情報記録面に収束する。
光ディスク51の情報記録面で反射した光ビーム4は、もとの光路を逆にたどって、波長板11により往路とは直角方向の直線偏光に変換されて、ビームスプリッター9を透過する。コリメートレンズ10により収束光となった光ビーム4は、ビームスプリッター9を透過することにより非点収差が与えられ、検出レンズ15により光学倍率が変換されて、光検出器16に入射する。光検出器16からの出力信号に演算処理を施すことによって、フォーカス制御に用いられるフォーカス誤差信号、およびトラッキング制御に用いられるトラッキング誤差信号を含めたサーボ信号と、画像および音声情報などの情報信号とが得られる。フォーカス誤差信号は、例えば非点収差法により、またトラッキング誤差信号は、例えばプッシュプル法により得ることができる。
次に、光ディスク52の記録/再生を行う際には、赤色レーザ光源2から出射した波長λ2の光ビーム5がプリズム7で反射し、プリズム8を透過して、ビームスプリッター9に入射する。赤色レーザ光源2から出射した光ビーム5の偏光方向は、ビームスプリッター9で反射するよう設定されており、ここを反射した光ビーム5は、コリメートレンズ10より集光され略平行光になり、波長板11により直線偏光から円偏光に変換される。さらに光ビーム5は、回折素子12と屈折型レンズ13からなる対物レンズ14によって絞られ、保護層厚t2を通して光ディスク52の情報記録面に収束する。
光ディスク52の情報記録面で反射した光ビーム5は、もとの光路を逆にたどって、波長板11により往路とは直角方向の直線偏光に変換されて、ビームスプリッター9を透過する。コリメートレンズ10により収束光となった光ビーム5は、ビームスプリッター9を透過することにより非点収差が与えられ、検出レンズ15により光学倍率が変換されて、光検出器16に入射する。光検出器16からの出力信号に演算処理を施すことによって、フォーカス制御に用いられるフォーカス誤差信号、およびトラッキング制御に用いられるトラッキング誤差信号を含めたサーボ信号と、画像および音声情報などの情報信号とが得られる。
次に、光ディスク53の記録/再生を行う際には、赤外レーザ光源3から出射した波長λ3の光ビーム6がプリズム8で反射されて、ビームスプリッター9に入射する。赤外レーザ光源3から出射した光ビーム6の一部はビームスプリッター9で反射して、コリメートレンズ10より集光され略平行光になり、波長板11を透過する。さらに光ビーム6は、回折素子12と屈折型レンズ13からなる対物レンズ14によって絞られ、保護層厚t3を通して光ディスク53の情報記録面に収束する。
光ディスク53の情報記録面で反射した光ビーム6は、もとの光路を逆にたどって、波長板11、コリメートレンズ10を通り、ビームスプリッター9により一部の光ビーム6を透過する。コリメートレンズ10により収束光となった光ビーム6は、ビームスプリッター9を透過することにより非点収差が与えられ、検出レンズ15により光学倍率が変換されて、光検出器16に入射する。光検出器16からの出力信号に演算処理を施すことによって、フォーカス制御に用いられるフォーカス誤差信号、およびトラッキング制御に用いられるトラッキング誤差信号を含めたサーボ信号と、画像および音声情報などの情報信号とが得られる。
ここで、CD用の光ディスク53には複屈折の大きなものがあり、光ビーム4、5のように、偏光分離による光路分岐を行うと、光検出器16に光が伝搬しないことがある。このため、光ビーム6については、偏光方向によらず、一定の光を反射し、一定の光を透過するハーフミラー特性により光路分岐を行うことが望ましい。
次に、図2から図5を用いて、回折素子12および屈折型レンズ13の働きと構成を説明する。図2は、本発明の実施の形態1における対物レンズ14の一例を示す拡大断面図であり、対物レンズ14を構成する回折素子12と屈折型レンズ13により収束する光の伝搬を示す。図2において、回折素子12は、光ビーム4、5、6を回折して、凸レンズ作用を及ぼす。屈折型レンズ13は、回折素子12によって回折作用を受けた光ビーム4を、保護層厚t1を通して光ディスク51の記録面上へ収束し、波長の違いによる回折作用の差を利用して、光ビーム5を、保護層厚t2を通して光ディスク52の記録面上へ収束し、光ビーム6を、保護層厚t3を通して光ディスク53の記録面上へ収束するように構成されている。
図2において、光ビーム4は実線で示す光路を伝搬して点Q1に収束し、光ビーム5は破線で示す光路を伝搬して点Q2に収束し、光ビーム6は一点鎖線で示す光路を伝搬して点Q3に収束する。このように、光ビーム4、5、6は回折素子12により波面変換され、保護層厚の差による球面収差が補正される。
回折素子12により回折する光の回折角θは、回折格子のピッチが大きくなるにつれて小さくなり、また波長が長くなり、回折次数が増えるにつれて大きくなる。さらに、前記回折次数は回折格子の深さが増すにつれて大きくなる。本発明の実施の形態は、回折次数と、回折格子のピッチとを利用して、保護層厚の差による球面収差を補正し、波長λ2の光を開口数NA2に、また波長λ3の光を開口数NA3に開口制限し、波長が変化しても、光ビーム4、5、6の収束位置にずれが生じないように構成したものである。
図3は、回折素子12の平面(紙面上側)および断面(紙面下側)を示す図である。図3に示すように、回折素子12の回折格子は同心円状をなし、内周部12aと、中周部12bと、外周部12cとで構成が異なっている。
回折素子12の内周部12aは、開口数NA3に相当する部分であり、波長λ1の光ビーム4に対しては3次回折光を最も強く発生し、波長λ2の光ビーム5に対しては2次回折光を最も強く発生し、波長λ3の光ビーム6に対しては2次回折光を最も強く発生する格子形状を有する。そして、光ビーム4の3次回折光は、屈折型レンズ13を通して、光ディスク51に収束され、光ビーム5の2次回折光は、屈折型レンズ13を通して、光ディスク52に収束され、光ビーム6の2次回折光は、屈折型レンズ13を通して、光ディスク53に収束される。
回折素子12の中周部12bは、開口数NA3からNA2に相当する部分であり、波長λ1の光ビーム4に対しては6次回折光を最も強く発生し、波長λ2の光ビーム5に対しては4次回折光を最も強く発生し、波長λ3の光ビーム6に対しては3次回折光を最も強く発生して4次回折光はほとんど発生しない格子形状を有する。そして、光ビーム4の6次回折光は、屈折型レンズ13を通して、光ディスク51に収束され、光ビーム5の4次回折光は、屈折型レンズ13を通して、光ディスク52に収束される。
回折素子12の外周部12cは、開口数NA2からNA1に相当する部分であり、波長λ1の光ビーム4に対して、m(mは3の倍数以外の整数で、例えば2)次回折光を最も強く発生する格子形状を有し、この2次回折光は、屈折型レンズ13を通して、光ディスク51に収束される。
上記の回折素子12の働きについて、図4、図5A、図5Bおよび図5Cを用いて詳しく説明する。図4は、回折素子12を構成する回折格子の物理的な断面形状および各波長に対する位相変化を示す図である。図4において、DGは回折格子の物理的な断面形状、PC(λ1)は回折格子を透過する波長λ1の光の位相変化、PC(λ2)は回折格子を透過する波長λ2の光の位相変化、PC(λ3)は回折格子を透過する波長λ3の光の位相変化を示している。物理的な断面形状DGは、内周部12aと中周部12bとの境界領域を例示しており、特定の回折光を効率よく発生させるため、回折格子は鋸歯状の断面形状を有する。
図5A〜図5Cは、回折素子12の材料を、例えばホウケイ酸クラウンガラス(BK7)としたときの、鋸歯状格子の深さhに対する回折効率DEを示すグラフである。図5Aは、波長λ1の光に対する回折格子の深さhと回折効率DE(λ1)を、図5Bは、波長λ2の光に対する回折格子の深さhと回折効率DE(λ2)を、図5Cは、波長λ3の光に対する回折格子の深さhと回折効率DE(λ3)を示している。ここで、光路長の差を、回折格子の段差の有無によって生じる光路長の差とであると規定した場合、波長λに対する屈折率をnとして、この光路長の差Lは、段差の深さhと、媒質と空気との屈折率の差(n−1)との積として以下のように表わされる。
L=h×(n-1)
この、光路長の差Lが波長のk倍であるとした場合、深さhは、
h=k×λ/(n-1) ・・・(式1)
で表される。
内周部12aにおいて、図4に示すように、回折格子の深さh1は、例えば2.38μmに設定される。波長λ1が405nmのときのBK7の屈折率n1は1.5302であり、上記(式1)のh、λ、nに、それぞれh1、λ1、n1を代入すると、kは3.12になるので、段差h1により光ビーム4に発生する光路長の差は、約3.12波長、すなわち位相差が約6.23πラジアンになる。よって、光ビーム4は3次回折光の強度が最大となり、位相変化は、図4のPC(λ1)で示すようになる。回折効率DE(λ1)は、図5Aに示すように、スカラー計算上約96%となる。
また、波長λ2が655nmのときのBK7の屈折率n2は、1.5144であり、上記(式1)のh、λ、nに、それぞれh1、λ2、n2を代入すると、kは1.87になるので、段差h1により光ビーム5に発生する光路長の差は、約1.87波長、すなわち位相差が約3.74πラジアンになる。よって、光ビーム5は2次回折光の強度が最大となり、位相変化は、図4のPC(λ2)で示すようになる。回折効率DE(λ2)は、図5Bに示すように、スカラー計算上約94%となる。
さらに、波長λ3が780nmのときのBK7の屈折率n3は、1.5112であり、上記(式1)のh、λ、nに、それぞれh1、λ3、n3を代入すると、k3は1.56になるので、段差h1により光ビーム5に発生する光路長の差は、約1.56波長、すなわち位相差が約3.12πラジアンになる。よって、光ビーム6は2次回折光の強度が最大となり、位相変化は、図4のPC(λ3)で示すようになる。回折効率DE(λ3)は、図5Cに示すように、スカラー計算上約50%となる。
次に、回折素子12の中周部12bにて、図4に示すように、回折格子の深さh2は、例えば内周部12aの回折格子の深さh1の2倍である4.76μmに設定される。波長λ1が405nmのときのBK7の屈折率n1は1.5302であり、上記(式1)のh、λ、nに、それぞれh2、λ1、n1を代入すると、段差h2により光ビーム4に発生する光路長の差は、約6.23波長、すなわち位相差が約12.46πラジアンになる。よって、光ビーム4は6次回折光の強度が最大となり、位相変化は、図4のPC(λ1)で示すようになる。回折効率DE(λ1)は、図5Aに示すように、スカラー計算上約82%となる。
また、波長λ2が655nmのときのBK7の屈折率n2は、1.5144であり、上記(式1)のh、λ、nに、それぞれh2、λ2、n2を代入すると、段差h2により光ビーム5に発生する光路長の差は、約3.74波長、すなわち位相差が約7.48πラジアンになる。よって、光ビーム5は4次回折光の強度が最大となり、位相変化は、図4のPC(λ2)で示すようになる。回折効率DE(λ2)は、図5Bに示すように、スカラー計算上約82%となる。
さらに、波長λ3が780nmのときのBK7の屈折率n3は、1.5112であり、上記(式1)のh、λ、nに、それぞれh2、λ3、n3を代入すると、段差h2により光ビーム6に発生する光路長の差は、約3.12波長になる。よって、この形状により光ビーム6は3次回折光の強度が最大となり、回折効率DE(λ3)は、図5Cに示すように、スカラー計算上95%となる。このため、光ビーム6について4次回折光はほとんど発生せず、位相変化は、図4のPC(λ3)で示すようになる。
以上のように、回折素子12は、回折格子の深さを変えることにより、回折次数を変えることができる。ところで、qを回折次数とすると、回折角θは、以下のようになる。
sinθ=q×λ/P ・・・(式2)
つまり、回折次数qが大きくなると、波長λが変化したときの回折角θの変化も大きくなり、波長λが変化すると、光ディスクに収束する光の位置にずれが発生する。本発明の実施の形態では、回折格子のピッチPを、このずれが発生しないように設定しており、波長λの変化に対する回折角θの変化を一定にしている。
中周部12bでは、回折格子の深さh2が、内周部12aの回折格子の深さh1の2倍になる。このため、光ディスク51に収束する光ビーム4は、内周部12aから中周部12bにかけて、3次回折光から6次回折光へと、回折次数が2倍に変化するが、中周部12bの回折格子のピッチP2を、3次回折光として設計したときの2倍に設定することにより、上記(式2)の回折角θは、3次回折光として設計したことと同等になるため、波長の変化に対する回折角の変化は、内周部12aでのそれと同じになる。
また、光ディスク52に収束する光ビーム5は、内周部12aから中周部12bにかけて、2次回折光から4次回折光へと、回折次数が2倍に変化するが、回折格子のピッチP2は、2次回折光として設計したときの2倍になり、回折角θは、2次回折光として設計したことと同等になるため、波長の変化に対する回折角の変化は、内周部12aでのそれと同じになる。
この様子について、図4のDGにおける内周部12aと中周部12bとの境界領域で説明する。中周部12bでは、回折格子の深さがh1からh2へ2倍になり、回折格子のピッチPは光ビーム4の3次回折光として設計したときの2倍になっている。ここで、ピッチP2を隣り合う回折格子のピッチP1の2倍にすると、回折角θは同じになり、光ビーム4の波長λ1が変化しても、回折角は同じように変化し、回折光を1点に収束させることができる。
また、中周部12bでの回折格子のピッチP2は光ビーム5の2次回折光として設計したときの2倍でもあり、光ビーム5の波長λ2が変化しても、回折角は同じように変化し、回折光を1点に収束させることができる。実際には回折素子12の回折角θは一定ではなく、凸レンズ作用を持つように連続的に変化しているため、ピッチPも連続的に変化しているが、この境界領域の隣り合う回折格子のピッチP2はP1の略2倍程度になる。
一方、波長λ3の光ビーム6は、中周部12bで回折格子の深さh2が4.76μmになると、図5Cに示すように、4次回折光をほとんど発生せず、3次回折光になってしまう。3次回折光の次数は、内周部12aでの3/2倍であり、ピッチPは2次回折光として設計したときの2倍になるため、上記(式2)より回折角θは小さくなり、中周部12bで回折した光ビーム6は、内周部12aで回折した光ビーム6と同じ位置には収束しない。つまり、中周部12bで回折した光ビーム6は光ディスク53に収束せず、開口制限することができ、内周部12aを開口数NA3に相当する大きさに設定することにより、光ビーム6は開口数NA3で光ディスク53に収束することになる。
次に、回折素子12の外周部12cにおいて、回折格子の深さh3は、内周部での回折格子の深さh1のm/3倍、例えば2/3倍である1.59μmに設定される。波長λ1が405nmのときのBK7の屈折率n1は1.5302であり、上記(式1)のh、λ、nに、それぞれh3、λ1、n1を代入すると、段差h3により光ビーム4に発生する光路長の差は、約2.08波長、すなわち位相差が約4.16πラジアンになる。よって、光ビーム4の2次回折光の強度が最大となり、回折効率は、図5Aに示すように、スカラー計算上約99%となる。
このように、外周部12cでは、回折格子の深さh3を、内周部12aでの回折格子の深さh1の2/3倍にすることにより、光ディスク51に収束する光ビーム4は、内周部12aに対して、3次回折光から2次回折光へ、回折次数が2/3倍に変化する。前記同様、回折次数が変わっても、波長の変化に対する回折角の変化が一定になるよう、外周部12cの回折格子のピッチPを、3次回折光として設計したときの2/3倍に設定する。これにより、上記(式2)の回折角θは、3次回折光として設計したことと同等になり、波長の変化に対する回折角の変化は、内周部12aのそれと同じになる。よって、波長の変化に対する回折角の変化が一定になり、光ディスクに収束する光の位置にずれは発生しない。
一方、波長λ2の光ビーム5と、波長λ3の光ビーム6については、外周部12cでの回折格子の深さh3が、内周部12aでの回折格子の深さh1の2/3になると、2次回折の2/3に対応する次数がないため、内周部12aでの回折光と同じ位置に収束する回折光が存在しなくなり、開口制限することができる。よって、中周部12bを開口数NA2に相当する大きさにすることにより、光ビーム5は開口数NA2で光ディスク52に収束することになる。光ビーム6も同様に、光ディスク53に収束する回折光が無くなり、この外周部12cにおいても開口制限することができる。
このように、波長λ1の光ビーム4は、回折素子12の内周部12a、中周部12b、および外周部12cにて、それぞれ3次、6次、および2次回折光を光ディスク51に収束させるために、最も大きい開口数NA1に設定される。波長λ2の光ビーム5は、内周部12aおよび中周部12bにて、それぞれ2次、4次回折光を光ディスク52に収束させて、外周部12cからの回折光を光ディスク52に収束させないために、開口数NA2に設定される。波長λ3の光ビーム6は、内周部12aからの2次回折光を光ディスク53に収束させて、中周部12bでの4次回折光の発生を抑え、外周部12cからの回折光を光ディスク53に収束させないために、開口数NA3に設定される。これにより、各光ディスクに対して最適な開口数の関係、すなわちNA1>NA2>NA3を実現できる。
以上の説明では、回折素子12の外周部12cにて、波長λ1の光ビーム4の2次回折光を利用したが、他の回折次数も利用することができる。この領域における光ビーム4の回折次数をmとした場合、内周部12aの回折次数との比であるm/3が整数にならなければ、光ビーム5も光ビーム6も、内周部12aおよび中周部12bの回折光とは異なる位置に収束する。つまり、回折次数mを3の倍数以外の整数に設定すれば、光ビーム5は光ディスク52に収束する回折光が無くなり、光ビーム6は光ディスク53に収束する回折光が無くなるため、開口制限することができる。
上記の構成では、光ビーム4、5、6は、いずれも回折素子12によって波面変換される。したがって、回折素子12と屈折型レンズ13の相対位置に誤差があると、設計通りの波面が屈折型レンズ13に入射せず、光ディスク51、52、53へ入射する光の波面に収差が生じ、収束性能を劣化させる。このため、回折素子12を屈折型レンズ13と一体に形成することが望ましい。
図6は、本発明の実施の形態1における対物レンズの変形例を示す拡大断面図である。図6において、対物レンズ141を構成する屈折型レンズ131の表面に回折素子121が形成されている。回折素子121は、図2に示す回折素子12と同じ働きをするものである。つまり、回折素子121の開口数NA3に相当する内周部の領域では、光ビーム4の3次回折光が保護層厚t1の光ディスク51に収束し、光ビーム5の2次回折光が保護層厚t2の光ディスク52に収束し、光ビーム6の2次回折光が保護層厚t3の光ディスク53に収束する。
また、回折素子121の開口数NA3からNA2に相当する中周部の領域では、光ビーム4の6次回折光が保護層厚t1の光ディスク51に収束し、光ビーム5の4次回折光が保護層厚t2の光ディスク52に収束し、光ビーム6の4次回折光はほとんど発生せず、開口数NA3に開口制限される。
さらに、回折素子121の開口数NA2からNA1に相当する外周部の領域では、mを3の倍数以外の整数とした場合、光ビーム4のm次回折光を保護層厚t1の光ディスク51に収束し、光ビーム5、6の回折光を、それぞれ光ディスク52、53に収束させないよう、開口素子121と屈折型レンズ131が構成される。
図2に示す対物レンズ14の構成では、平面上に回折素子12を形成し、凸レンズ作用を持たせたため、軸外性能が劣化するが、図6に示す対物レンズ141の構成のように、屈折型レンズ131の表面に回折素子121を形成することにより、軸外性能も良好になる。よって、回折素子と屈折型レンズの位置ずれがなく、軸外性能の良い、対物レンズを得ることができる。
また、図2に示す対物レンズ14の構成は、回折素子12に凸レンズ作用を持たせることにより、屈折型レンズ13の色収差と、回折素子12の色収差を相殺している。この色収差は、波長が設計波長から変化したときの、焦点距離の変化である。例えば、波長λ1がΔλ1だけ長くなると、屈折型レンズ13の屈折率はΔn1だけ小さくなり、若干凸レンズ作用が小さくなるが、凸レンズ作用を持つ回折素子12は、波長がΔλ1だけ長くなると、回折角はΔθだけ大きくなり、若干凸レンズ作用が大きくなって、波長の変化に対する焦点距離の変化を抑えることができる。
一方、光ディスク51に光ビームを収束させる対物レンズ14は、開口数NAが大きく、光ディスク53のみに光ビームを収束させる対物レンズに比べて作動距離が短くなる。このため、回折素子12に凸レンズ作用を持たせると、保護層が厚い光ディスク53に対して、作動距離を確保しづらくなる。図2の構成では、焦点距離を長くして、対物レンズ14の作動距離を拡大しているが、焦点距離を長くすると、光ビーム径が大きくなり、光ヘッドの小型化には不利になる。これに対応するための構成を図7に示す。
図7は、本発明の実施の形態1における対物レンズの他の変形例を示す拡大断面図である。図7において、対物レンズ142は、回折素子122と屈折型レンズ132から成り、回折素子122に凹レンズ作用を持たせるよう構成される。回折素子122に凹レンズ作用を持たせた場合、前記色収差が発生し、波長の変化により焦点距離が変化するが、他の手段で補正することが可能である。例えば、コリメートレンズ10(図1)の表面に回折素子を形成することにより、前記色収差を低減することができる。
図7において、回折素子122は、回折素子12と同様に、内周部、中周部、および外周部にて、それぞれ回折格子の構成を変え、波長λ3、λ2の光を開口制限できるように成っており、凹レンズ作用を持たせることによって、光ディスク53の記録/再生を行う場合の、光ビーム6の収束位置が、屈折型レンズ132から、より遠くに離れることになり、作動距離を拡大することができる。また、図6の構成のように、回折素子122を、屈折型レンズ132の表面に形成することにより、回折素子と屈折型レンズとの位置ずれがなく、軸外性能の良い、対物レンズを得ることができる。
なお、本実施の形態では、図1において、3ビーム用回折格子を光源からからビームスプリッター9までの間に配置することにより、光ディスク51、52、53のトラッキング誤差信号を、よく知られたディファレンシャルプッシュプル(DPP)法によって得ることも可能である。
また、コリメートレンズ10を光軸方向(図1の左右方向)へ動かすことにより、光ビームのコリメート度合いを変化させることができる。光ディスク51では、保護層の厚み誤差や、2層ディスクの層間厚みに起因して、従来の光ディスク以上に球面収差が発生するが、コリメートレンズ10を光軸方向に動かすことによって、その球面収差を補正することができる。コリメートレンズ10を動かすことによる球面収差の補正は、開口数NAが0.85である場合、±30μm程度の保護層厚さを補正することができる。しかし、保護層厚0.1mmに対応した対物レンズ14を用いて、DVDの記録/再生を行う際には保護層差を0.5mm以上補償する必要があり、コリメートレンズ10の移動だけでは、球面収差の補正能力が不足するため、本実施の形態のような波面変換が必要となる。
さらに、本実施の形態では、一例としてBDと、DVDと、CDとの互換について例示および説明したが、本発明はこの構成に限定されず、HD−DVDと、DVDと、CDとの互換に対しても同様に適用できるものである。すなわち、保護層厚t1が約0.1mmの光ディスクに対して、開口数0.85で記録/再生を行う例について説明したが、HD−DVDとの互換は、保護層厚t1が約0.6mmの光ディスクに対して、開口数0.65で記録/再生を行うことにより実現できる。
以上のように、実施の形態1によれば、複数種の光ディスクに対して保護層厚の差による球面収差を補正し、各光ディスクに対応した開口数に設定することができる。また、対物レンズを1つの成形レンズで構成することも可能であり、安価で安定した収束性能を得ることができる。
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2を説明する。実施の形態1の説明で用いた図2では、回折素子に凸レンズ作用を持たせることにより、色収差とりわけ焦点距離の波長依存性を相殺したが、波長の差を利用して、保護層の異なる光ディスクの球面収差を補正する構成であるため、波長が設計波長からずれると、球面収差が発生してしまう。
この球面収差を補正するための構成について、図8および図9を用いて説明する。図8は、本発明の実施の形態2における対物レンズの一例を示す拡大断面図である。図8において、本実施の形態の対物レンズ143は、回折素子123と屈折型レンズ133から成り、実施の形態1の屈折型レンズ13を屈折型レンズ133に変更した構成を有する。屈折型レンズ133には、入射光に位相差を生じさせる段差形状(step−profile)を有する位相段差(phase shift pattern)133aが設けられている。図8において、位相段差133aは光ディスクに対向しない屈折型レンズ133の表面に形成されている。このように、位相段差133aを屈折型レンズ133と一体に形成することにより、屈折型レンズ133と位相段差133aとの相対位置誤差を無くすことができる。
図9は、図8に示す位相段差133aの部分拡大断面図である。図9において、位相段差133aは、高さhaの段差を複数有する。段差の高さhaは、波長λ1の10倍の光路長の差、言い換えると20πラジアンの位相差を生じさせるように設定されている。つまり、位相段差133aを形成する基材の、波長λ1に対する屈折率をn1とした場合、下記(式3)を満足するように段差の高さhaが決定される。
ha=10×λ1/(n1−1) ・・・(式3)
例えば、前記基材をBK7とし、波長λ1を405nmとすると、屈折率n1は1.5302になり、上記(式3)より、段差の高さhaは7.639μmとなる。
この高さhaの段差に、波長λの光が入射する場合、波長λに対する光路長の差を波長のk倍とすると、
10×λ1/(n1−1)=k×λ/(n−1) ・・・(式4)
が成り立つ。高さhaの段差に波長λ2として655nmの光が入射する場合、波長λ2の光に対するBK7の屈折率n2は1.5144であるので、上記(式4)のλ、nにλ2、n2を代入すると、kは6.0となり、光路長の差は波長の6倍となる。すなわち、波長λ1の光に対して波長の10倍の光路長の差を生じさせる段差は、波長λ2の光に対しては波長の6倍の光路長の差を生じさせることになる。
また、高さhaの段差に波長λ3として780nmの光が入射する場合、波長λ3の光に対するBK7の屈折率は1.5112であるので、上記(式4)のλ、nにλ3、n3を代入すると、kは5.0となり、光路長の差は波長の5倍となる。すなわち、波長λ1の光に対して波長の10倍の光路長の差を生じさせる段差は、波長λ3の光に対しては波長の5倍の光路長の差を生じさせることになる。
波長の整数倍の光路長の差が生じる位相変化は、2πラジアンの整数倍であり、実質的には位相差を生じない。したがって、波長λ1、λ2、λ3の設計波長に対しては、波面の変化が生じない。そして、レーザ光源の波長ばらつき等により、設計波長から数nm程度の波長変化が起こると、光路長の差が波長の整数倍からずれるため、位相変化が生じる。位相段差は、図8に示すように基材の内部へと堀込んで形成することも、逆に、基材の外側へと盛り上げて形成することもできるので、波長ずれに対する位相変化の方向も自由に設定できる。例えば、波長λ1の光であれば、波長1nmの変化に対する位相変化ΔΦ1は、
ΔΦ1=20π/405=0.049π(ラジアン)
である。レンズや回折素子によって生じる波長1nmあたりの位相変化が、0.049πラジアンになる位置ごとに、高さhaの段差を積み重ねて形成することによって、波長変化による収差を補正することができる。また、波長λ2の光に対しては、波長1nmの変化に対する位相変化ΔΦ2は、
ΔΦ2=12π/655=0.018π(ラジアン)
である。さらに、波長λ3の光に対しては、波長1nmの変化に対する位相変化ΔΦ3は、
ΔΦ3=10π/780=0.013π(ラジアン)
である。波長λ1の光に比べて波長λ2、λ3の光では、位相変化が小さいが、レンズや回折素子によって生じる波長1nm変化あたりの収差も小さいので問題はない。
位相段差133aは高さhaを1単位とするが、その整数倍(2倍、3倍・・・)を1単位としても設計波長に対して波面変化を与えず、それぞれからの波長変化に対してのみ波面を変化させることができる。
また、保護層厚の補正は、実施の形態1と同様に、回折素子123の開口数NA3に相当する内周部では、光ビーム4の3次回折光が保護層厚t1の光ディスク51に収束し、光ビーム5の2次回折光が保護層厚t2の光ディスク52に収束し、光ビーム6の2次回折光が保護層厚t3の光ディスク53に収束するよう行われる。また、開口数NA3からNA2に相当する中周部では、光ビーム4の6次回折光が保護層厚t1の光ディスク51に収束し、光ビーム5の4次回折光が保護層厚t2の光ディスク52に収束し、光ビーム6の4次回折光はほとんど発生せず、開口数NA3に開口制限される。さらに、開口数NA2からNA1に相当する外周部では、mを3の倍数以外の整数として、光ビーム4のm次回折光が保護層厚t1の光ディスク51に収束し、光ビーム5と光ビーム6の回折光は、それぞれ光ディスク52、光ディスク53に収束させないよう、回折素子123と屈折型レンズ133が構成される。
図10は、本発明の実施の形態2における対物レンズの変形例を示す拡大断面図である。図10において、本実施の形態の対物レンズ144は、基板表面に位相段差124dが形成された回折素子124と、屈折型レンズ134とから構成される。図11は、図10に示す位相段差124dの部分拡大断面図である。
位相段差124dは、図8に示す位相段差133aと同様の構成を有し、同じ働きをする。つまり、位相段差124dは、波長λ1の光に対して波長の10倍の光路長の差を与える高さhaの段差を、積み重ねて形成され、波長λ2の光に対しては波長の6倍の光路長の差を生じ、波長λ3の光に対しては波長の5倍の光路長の差を生じさせる。波長の整数倍の光路長の差があっても、実質的には位相差を生じないが、波長が設計波長から変化すると、光路長の差が波長の整数倍からずれて、位相変化が生じる。この位相変化を用いることで、波長変化に起因した収差が補正される。
図12は、本発明の実施の形態2に係る対物レンズの他の変形例を示す拡大断面図である。図12において、本実施の形態の対物レンズ145は、基板表面に回折素子と位相段差135aが一体に形成された屈折型レンズ135から構成される。図13は、図12に示す回折素子と位相段差135aの部分拡大断面図である。
回折素子と位相段差135aは、図8に示す回折素子123および位相段差133aと同じ働きをする。すなわち、回折素子は、保護層厚の差による球面収差の補正を行い、位相段差は、波長λ1の光に対しては10倍の光路長の差を生じ、波長λ2の光に対しては波長の6倍の光路長の差を生じ、波長λ3の光に対しては波長の5倍の光路長の差を生じさせる高さhaの段差を積み重ねて、波長変化による収差を補正するように構成される。
以上の説明では、回折素子に凸レンズ作用を持たせている。これは、図2で説明したように、回折素子の凸レンズ作用により、色収差に起因した焦点距離変化を補正するためである。よって、色収差に起因した焦点距離変化を回折素子により補正し、色収差に起因した球面収差を位相段差により補正することにより、設計どおりの性能を得ることができる。なお、実施の形態1と同様に、回折素子に凹レンズ作用を持たせるとことにより、保護層が厚い光ディスク53の記録/再生を行うときの作動距離を確保し、波長変化に対する焦点距離変化を、回折素子を設けたコリメータレンズ等により低減することもできる。
なお、本実施の形態では、一例としてBDと、DVDと、CDとの互換について例示および説明したが、本発明はこの構成に限定されず、HD−DVDと、DVDと、CDとの互換に対しても同様に適用できるものである。すなわち、保護層厚t1が約0.1mmの光ディスクに対して、開口数0.85で記録/再生を行う例について説明したが、HD−DVDとの互換は、保護層厚t1が約0.6mmの光ディスクに対して、開口数0.65で記録/再生を行うことにより実現できる。
以上のように、本実施の形態では、異種ディスクの互換を実現し、さらに、色収差による球面収差も補正でき、波長の変化に対しても、安定に情報の再生や記録を行うことができる。回折素子と位相段差だけで、異種ディスクの互換と色収差補正の問題を解決することができる。
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3を説明する。図14は、本発明の実施の形態3に係る光ヘッドの全体構成を示す断面図である。図14において、21は波長λ1(略405nm)の光を出射する青色レーザ光源を示し、22は波長λ2(略655nm)の光と、波長λ3(略780nm)の光を出射する2波長レーザ光源を示す。28は回折レンズを示し、回折作用と屈折作用をもっており凸レンズとして作用する。30はコリメートレンズ、34は対物レンズを示し、対物レンズ34は、回折素子32と屈折型レンズ33とで構成されている。
54は保護層厚t1が約0.6mmの光ディスクを示し、波長λ1の光ビームによって、開口数NA1で記録/再生される光情報媒体、例えばHD−DVD用の光ディスクである。52は保護層厚t2が約0.6mmの光ディスクを示し、波長λ2の光ビームによって、開口数NA2で記録/再生される光情報媒体、例えばDVD用の光ディスクである。53は保護層厚t3が約1.2mmの光ディスクを示し、波長λ3の光ビームによって、開口数NA3で記録/再生される光情報媒体、例えばCD用の光ディスクである。これらの光ディスクにおける開口数はNA1が0.65、NA2が0.6、NA3が0.45から0.5である。図14において、光ディスク54(実線)、52(破線)53(一点鎖線)は、例示の明瞭化のため、光ビームが入射する面から情報記録面までの保護層のみを示している。
記録密度の高い光ディスク54の記録/再生を行う際には、青色レーザ光源21から出射した波長λ1の光ビーム23がプリズム26を透過して、プリズム29に入射する。プリズム26は、波長λ1の光に対して、一方向の直線偏光を反射し、それと直角方向の直線偏光を透過する偏光分離特性をもった光路分岐素子であり、青色レーザ光源21から出射した光ビーム23の偏光方向は、プリズム26を透過するよう設定されている。また、プリズム29は、波長λ1の光を反射し、波長λ2、λ3の光を透過する光路分岐素子である。プリズム29に入射した光ビーム23は、プリズム29で反射して、コリメートレンズ30よって集光され略平行光になり、波長板31により直線偏光から円偏光に変換される。波長板31は、波長λ1、λ2の光に対しては、1/4波長板として作用し、波長λ3の光に対しては波長板として作用しないよう構成されている。さらに光ビーム23は、回折素子32と屈折型レンズ33から成る対物レンズ34によって絞られ、保護層厚t1を通して、光ディスク54の情報記録面に収束する。
光ディスク54の情報記録面で反射した光ビーム23は、もとの光路を逆にたどって、波長板31により往路とは直角方向の直線偏光に変換されて、プリズム29とプリズム26で反射する。次に検出レンズ35により非点収差が与えられ、光学倍率が変換されて、光検出器36に入射する。光検出器36からの出力信号に演算処理を施すことによって、フォーカス制御に用いられるフォーカス誤差信号、およびトラッキング制御に用いられるトラッキング誤差信号を含めたサーボ信号と、画像および音声情報などの情報信号とが得られる。フォーカス誤差信号は、例えば非点収差法により、またトラッキング誤差信号は、例えばプッシュプル法により得ることができる。
次に、光ディスク52の記録/再生を行う際には、2波長レーザ光源22から出射した波長λ2の光ビーム24がプリズム27を透過し、回折レンズ28により凸レンズ作用を受け、プリズム29を透過する。プリズム27は、波長λ2の光に対して、一方向の直線偏光を反射し、それと直角方向の直線偏光を透過する偏光分離特性をもち、波長λ3の光に対しては一部の光を透過し、一部の光を反射するハーフミラー特性を持った光路分岐素子であり、2波長レーザ光源22から出射した光ビーム24の偏光方向はプリズム27を透過するよう設定されている。また、回折レンズ28の表面には、回折素子28aが形成され、波長λ2の光は、波長λ3の光よりも凸レンズ作用を大きく受ける。プリズム29を透過した光ビーム24は、コリメートレンズ30よって集光され略平行光になり、波長板31により直線偏光から円偏光に変換される。さらに光ビーム24は、回折素子32と屈折型レンズ33から成る対物レンズ34によって絞られ、保護層厚t2を通して光ディスク52の情報記録面に収束する。
光ディスク52の情報記録面で反射した光ビーム24は、もとの光路を逆にたどって、波長板31により往路とは直角方向の直線偏光に変換され、プリズム29を透過して、プリズム27で反射する。次に、検出レンズ37により非点収差が与えられ、光学倍率が変換されて、光検出器38に入射する。光検出器38からの出力信号に演算処理を施すことによって、フォーカス制御に用いられるフォーカス誤差信号、およびトラッキング制御に用いられるトラッキング誤差信号を含めたサーボ信号と、画像および音声情報などの情報信号とが得られる。
次に、光ディスク53の記録/再生を行う際には、2波長レーザ光源22から出射した波長λ3の光ビーム25の一部がプリズム27を透過し、回折レンズ28により凸レンズ作用を受け、プリズム29を透過する。
波長λ3の光は、波長λ2の光よりも小さい凸レンズ作用を受け、コリメートレンズ30で屈折した光ビーム25は、発散光になる。さらに、光ビーム25は、波長板31を透過して、回折素子32と屈折型レンズ33からなる対物レンズ34によって絞られ、保護層厚t3を通して光ディスク53の情報記録面に収束する。
光ディスク53の情報記録面で反射した光ビーム25は、もとの光路を逆にたどって、プリズム27で一部の光が反射し、検出レンズ37により非点収差が与えられ、光学倍率が変換されて、光検出器38に入射する。光検出器38の出力信号に演算処理を施すことによって、フォーカス制御に用いられるフォーカス誤差信号、およびトラッキング制御に用いられるトラッキング誤差信号を含めたサーボ信号と、画像および音声情報などの情報信号とが得られる。
次に、図15と図16を用いて、回折素子32および屈折型レンズ33の働きと構成を説明する。図15は、本発明の実施の形態3おける対物レンズ34の一例を示す拡大断面図であり、対物レンズ34を構成する回折素子32と屈折型レンズ33により収束する光の伝搬を示す。図15において、対物レンズ34は開口数NA1が0.65に設定されており、回折素子32の回折次数は、実施の形態1の回折素子12と同様である。屈折型レンズ33は、回折素子32によって回折作用を受けた光ビーム23を、保護層厚t1を通して光ディスク54の記録面上へ収束し、波長の違いによる回折作用の差を利用して、波長λ2の光ビーム24を、保護層厚t2を通して光ディスク52の記録面上へ収束し、波長λ3の光ビーム25を、保護層厚t3を通して光ディスク53の記録面上へ収束するように構成されている。
光ビーム23は実線で示す光路を伝搬して点Q4に収束し、光ビーム24は破線で示す光路を伝搬して点Q5に収束し、光ビーム25は一点鎖線で示す光路を伝搬して点Q6に収束する。保護層厚が同じである光ディスク54と52に対して、異なる波長により記録/再生を行うため、回折素子32は、屈折型レンズ33の波長の差で発生する収差を補正することになる。このため、回折素子32の回折だけでは、光ディスク53の保護層で発生する球面収差を十分に補正できず、光ビーム25を発散光にして補正している。実施の形態1および2においても、光ディスク53の保護層で発生する球面収差を補正するため、光ビーム6を発散光にしてもよい。このように構成した場合、作動距離を拡大する点で効果がある。
図16は、図15に示す回折素子32の平面(紙面上側)、および断面(紙面下側)を示す図である。図16に示すように、回折素子32の回折格子は同心円状をなし、内周部32aと、中周部32bと、外周部32cとで回折格子の構成が異なっている。回折素子32の内周部32aは、開口数NA3に相当する部分であり、波長λ1の光ビーム23に対しては3次回折光を最も強く発生し、波長λ2の光ビーム24に対しては2次回折光を最も強く発生し、波長λ3の光ビーム25に対しては2次回折光を最も強く発生する格子形状を有する。
そして、光ビーム23の3次回折光が、屈折型レンズ33を通して、光ディスク54に収束し、光ビーム24の2次回折光は、屈折型レンズ33を通して、光ディスク52に収束し、光ビーム25の2次回折光が、屈折型レンズ33を通して、光ディスク53に収束する。回折格子の深さh1を実施の形態1のそれと同じ2.38μmに設定することにより、同様の回折次数で同様の強度を得ることができる。なお、光ビーム25は、発散光で回折素子32に入射するが、入射角が小さいため、回折次数と強度に関しては、実施の形態1とほぼ同等である。
回折素子32の中周部32bは、開口数NA3からNA2に相当する部分であり、波長λ1の光ビーム23に対しては6次回折光を最も強く発生し、波長λ2の光ビーム24に対しては4次回折光を最も強く発生し、波長λ3の光ビーム25に対しては3次回折光を最も強く発生して4次回折光はほとんど発生しない格子形状を有する。
そして、光ビーム23の6次回折光が、屈折型レンズ33を通して光ディスク54に収束し、光ビーム24の4次回折光が、屈折型レンズ33を通して光ディスク52に収束する。中周部32bの回折格子の深さh2を、実施の形態1のそれと同じく、内周部32aの回折格子の深さh1の2倍である4.76μmに設定することにより、同様の回折次数で同様の強度を得ることができる。よって、波長λ3が780nmのとき、3次回折光が最大になって、4次回折光はほとんど発生しない。
回折素子32の外周部32cは、開口数NA2からNA1に相当する部分であり、波長λ1の光ビーム23に対して、m(mは3の倍数以外の整数で、例えば2)次回折光を最も強く発生する格子形状を有する。この光ビーム23の2次回折光が、屈折型レンズ33を通して、光ディスク54に収束する。外周部32cの回折格子の深さh3を、実施の形態1のそれと同じく、1.59μmに設定すると、波長λ1の光は2次回折光の強度が最大となる。光ビーム24、25については、外周部32cの回折格子の深さh3を、内周部32aの回折格子の深さh1のm/3倍、例えば2/3倍に設定した場合、2次回折の2/3に対応する次数がないため、光ディスク52、53に収束する回折光が無くなり、開口制限することができる。
回折素子32の内周部32aと、中周部32bと、外周部32cとでは回折次数が変わるが、回折格子のピッチPを、実施の形態1のそれと同様に設定することにより、波長変化に対する回折角の変化を一定にすることができる。これにより、波長が変化しても光ディスクに収束する光の位置にずれが発生せず、保護層厚の差による収差を補正できる。この結果、光ビーム23、24、25は、回折素子32と屈折型レンズ33を通して、各々に合った開口数で、光ディスク54、52、53に収束できる。
また、回折素子32の外周部32cにおいて、光ビーム23の2次回折光を利用したが、他の回折次数も利用することができる。この領域における光ビーム23の回折次数をmとした場合、内周部32aの回折次数との比、m/3が整数にならなければ、光ビーム24も光ビーム25も、内周部32aおよび中周部32bの回折光とは異なる位置に収束する。つまり、次数mを3の倍数以外の整数に設定すれば、光ビーム24は、光ディスク52に収束する回折光が無くなり、光ビーム25は、光ディスク53に収束する回折光が無くなるため、開口制限することができる。
次に、図14に示す回折レンズ28の働きについて、図17を用いて説明する。図17は、回折レンズ28とコリメートレンズ30を伝搬する光ビーム24、25の様子を示す図である。図17において、回折素子28aは凹レンズ作用をもち、回折レンズ28は、回折素子28aの凹レンズ作用と、屈折によるレンズ作用とが合わさって凸レンズ作用をもたらす。波長λ3の光は波長λ2の光よりも波長が長いため、回折素子28aによる回折効果が大きく、凹レンズ作用が大きくなる。このため、波長λ3の光が回折レンズ28で受ける凸レンズ作用は、波長λ2の光が受ける凸レンズ作用より小さくなる。
一方、回折レンズ28とコリメートレンズ30は、波長λ2の光ビーム24を集光して略平行光になるよう構成されている。このため、回折レンズ28で受ける凸レンズ作用が小さい波長λ3の光ビーム25は、コリメートレンズ30で集光しても平行光にはならず、発散光になる。よって、光ビーム24は略平行光として、光ビーム25は発散光として、対物レンズ34に入射し、前記のような動作をする。
上記の構成では、回折素子32と屈折型レンズ33との相対位置に誤差があると、設計通りの波面が屈折型レンズ33に入射せず、光ディスク54、52、53へ入射する光の波面に収差が生じ、収束性能を劣化させる。このため、回折素子32を屈折型レンズ33と一体に形成することが望ましい。
図18は、本発明の実施の形態3における対物レンズの変形例を示す拡大断面図であり、対物レンズ341を構成する屈折型レンズ331の表面に、回折素子321が形成されている。図18において、回折素子321は、図15の回折素子32と同じ働きをするものである。
つまり、回折素子321の開口数NA3に相当する内周部の領域では、光ビーム23の3次回折光が保護層厚t1の光ディスク54に収束し、光ビーム24の2次回折光が保護層厚t2の光ディスク52に収束し、光ビーム25の2次回折光が保護層厚t3の光ディスク53に収束する。
また、回折素子321の開口数NA3からNA2に相当する中周部の領域では、光ビーム23の6次回折光が保護層厚t1の光ディスク54に収束し、光ビーム24の4次回折光が保護層厚t2の光ディスク52に収束し、光ビーム25の4次回折光はほとんど発生せず、開口数NA3に開口制限される。
さらに、回折素子321の開口数NA2からNA1に相当する外周部の領域では、回折次数mを3の倍数以外の整数に設定した場合、光ビーム23のm次回折光が保護層厚t1の光ディスク54に収束し、光ビーム24、25の回折光が、それぞれ光ディスク52、53に収束しないよう、回折素子321と屈折型レンズ331が構成される。
図15に示す対物レンズ34の構成では、平面上に回折素子32を形成し、凸レンズ作用を持たせたため、回折素子32に入射する光が傾くと収束性能が劣化する、いわゆる軸外性能が悪いが、図18に示す対物レンズ341の構成では、レンズ面に回折素子を形成するため、軸外性能も良好になる。このように構成することにより、回折素子と屈折型レンズの位置ずれがなく、軸外性能の良い、対物レンズを得ることができる。
なお、本実施の形態では、一例としてHD−DVDと、DVDと、CDとの互換について例示および説明したが、本発明はこの構成に限定されず、BDと、DVDと、CDとの互換に対しても同様に適用できるものである。すなわち、保護層厚t1が約0.6mmの光ディスクに対して、開口数0.65で記録/再生を行う例について説明したが、BDとの互換は、保護層厚t1が約0.1mmの光ディスクに対して、開口数0.85で記録/再生を行うことにより実現できる。
さらに、実施の形態2と同様に、図15に示す回折素子32あるいは屈折レンズ33に、波長λ1の波長の10倍である高さhaの位相段差を設けることにより、波長が設計波長から変化した場合の球面収差を低減することができる。図19は、本発明の実施の形態3における対物レンズの他の変形例を示す拡大断面図である。図19において、本実施の形態の対物レンズ342は、表面に位相段差と回折素子322が形成された屈折型レンズ332から成る。対物レンズ342の構成および作用は、実施の形態2の説明で用いた図12に示す対物レンズ145のそれらと同様である。よって、詳細な説明は省略する。
以上のように、実施の形態3によれば、2波長レーザ光源を用い、複数種の光ディスクに対して保護層厚の差による球面収差を補正して、各光ディスクに対応した開口数に設定することができる。また、対物レンズを1つの成形レンズで構成することも可能であり、安価で安定した収束性能を得ることができる。
(実施の形態4)
図20は、本発明の実施の形態4に係る光ディスク装置の概略構成を示す断面図である。図20において、光ディスク100は、ターンテーブル105に搭載され、モータ104によって回転される。実施の形態1、2または3にて例示および説明した光ヘッド102は、光ディスク100の所望の情報が存在するトラック位置まで、駆動装置101によって移送される。
光ヘッド102は、光ディスク100との位置関係に対応して、フォーカス誤差信号FEおよびトラッキング誤差信号TEを電気回路103へ送る。電気回路103は、これらの信号FE、TEに基づいて、光ヘッド102へ、光ヘッド102内の対物レンズを駆動させるための信号LCを送る。この信号LCに応じて、光ヘッド102は、光ディスク100に対してフォーカス制御とトラッキング制御とを行い、情報の読み出し、書き込み又は消去を行う。
以上の説明において、搭載する光ディスク100は、保護層厚がt1、t2、t3のいずれかの光ディスクである。本実施の形態の光ディスク装置107は、実施の形態1、2または3の光ヘッドを用いるので、1つの光ヘッドにより、記録密度の異なる複数の光ディスクに対応することができる。
(実施の形態5)
図21は、本発明の実施の形態5に係るコンピュータの概略構成を示す斜視図である。図21において、コンピュータ109は、実施の形態4に係る光ディスク装置107と、情報の入力を行うためのキーボード111およびマウス112などの入力装置と、入力装置から入力された情報や、光ディスク装置107から読み出した情報などに基づいて、各種演算を行うCPUなどの演算装置108と、演算装置108によって演算された結果の情報を表示するブラウン管や、液晶表示装置などの出力装置110とから構成される。
本実施の形態に係るコンピュータは、実施の形態4に係る光ディスク装置107を備えており、異なる種類の光ディスクに対して安定に情報を記録又は再生できるので、広い用途に使用できる。
(実施の形態6)
図22は、本発明の実施の形態6に係る光ディスクレコーダの概略構成を示す斜視図である。図22において、光ディスクレコーダ115は、実施の形態4に係る光ディスク装置107と、映像および/または音声信号を光ディスクへの記録信号に変換し、この記録信号を光ディスク装置に送る記録信号処理回路113と、光ディスク装置107から得られた再生信号を映像および/または音声信号に変換する再生信号処理回路114とから構成される。この構成によれば、既に記録した部分を再生することも可能となる。さらに、光ディスクレコーダ115は、情報を表示するブラウン管、液晶表示装置などの出力装置110を備えてもよい。
本実施の形態に係る光ディスクレコーダは、前記実施の形態4に係る光ディスク装置107を備えており、異なる種類の光ディスクに対して安定に情報を記録又は再生できるので、広い用途に使用できる。
本発明の特徴的構成をまとめると、以下のようになる。
本発明に係る光ヘッドは、波長λ1の光を出射する第1の光源と、波長λ2の光を出射する第2の光源と、波長λ3の光を出射する第3の光源と、第1の光ディスクに対しては波長λ1の光を開口数NA1で収束し、第2の光ディスクに対しては波長λ2の光を開口数NA2で収束し、第3の光ディスクに対しては波長λ3の光を開口数NA3で収束する対物レンズと、前記第1、第2および第3の光ディスクからの反射光を検出する少なくとも1つの光検出器とを備え、前記対物レンズは、少なくとも回折素子と屈折型レンズから成り、NA1>NA2>NA3の関係にある開口数を有し、前記回折素子は、前記開口数NA3に相当する領域にて、前記第1の光ディスクに収束する波長λ1の光として3次回折光を最も強く発生し、前記第2の光ディスクに収束する波長λ2の光として2次回折光を最も強く発生し、前記第3の光ディスクに収束する波長λ3の光として2次回折光を最も強く発生する格子形状を有し、前記開口数NA3から前記開口数NA2に相当する領域にて、前記第1の光ディスクに収束する波長λ1の光として6次回折光を最も強く発生し、前記第2の光ディスクに収束する波長λ2の光として4次回折光を最も強く発生し、波長λ3の光に対しては3次回折光を最も強く発生する格子形状を有し、前記開口数NA2から前記開口数NA1に相当する領域にて、前記第1の光ディスクに収束する波長λ1の光としてm次回折光を最も強く発生する格子形状を有する回折格子から成ることを特徴とする。
この構成によれば、光学フィルター等の開口制限手段を新たに設けなくとも、前記回折素子と前記屈折型レンズから成る1つの対物レンズを用いるだけで、波長λ1の光の3次回折光、6次回折光、およびm次回折光を開口数NA1で第1の光ディスクに収束させ、波長λ2の光の2次回折光および4次回折光を開口数NA2で第2の光ディスクに収束させ、波長λ3の光の2次回折光を開口数NA3で第3の光ディスクに収束させて、安定に情報を記録/再生することができる。
本発明に係る光ヘッドはさらに、前記波長λ2の光と波長λ3の光を回折する回折レンズを備えることが好ましい。
この構成によれば、各光ディスクに入射する光ビームの開口数を設定でき、波長λ2と波長λ3の2波長光源を用いた光学系において、波長λ3の光を発散光にして、前記対物レンズに入射させることができる。
本発明に係る光ヘッドにおいて、前記回折レンズは、回折作用と屈折作用を有する凸レンズであり、波長λ2の光に対し波長λ3の光よりも大きな凸レンズ作用を与える構造を有することが好ましい。
この構成によれば、波長λ3の光を発散光にすることで、第3の光ディスクの保護層で発生する球面収差を補正することができる。
本発明に係る光ヘッドにおいて、前記対物レンズは、前記回折素子と、前記屈折型レンズと、入射光に位相差を生じさせる段差を複数有する位相段差とから成り、前記位相段差は、1段の深さを波長λ1の光が透過する際に生じる光路長の差が波長λ1の10倍である構造を有することが好ましい。
この構成によれば、波長λ1が変化したときに第1の光ディスクの保護層で発生する球面収差を抑えることができる。
本発明に係る光ヘッドにおいて、前記位相段差は、前記回折素子と一体に形成されることが好ましい。
この構成によれば、色収差に起因した焦点距離の変化を回折素子により補正し、色収差に起因した球面収差を位相段差により補正することが、小型で安価な構成により実現できる。
本発明に係る光ヘッドにおいて、前記回折素子は、前記屈折型レンズの表面に形成されることが好ましい。
この構成によれば、回折素子と屈折型レンズの位置ずれをなくし、軸外性能の良好な対物レンズを小型で安価に実現できる。
本発明に係る光ヘッドにおいて、前記位相段差と前記回折素子は、前記屈折型レンズの表面に形成されることが好ましい。
この構成によれば、色収差に起因した焦点距離の変化を回折素子により補正し、色収差に起因した球面収差を位相段差により補正でき、また回折素子と屈折型レンズの位置ずれをなくし、軸外性能の良好な対物レンズを小型で安価に実現できる。
本発明に係る光ヘッドにおいて、前記保護層の厚みt1、t2およびt3は、t1<t2<t3の関係にあることが好ましい。また、前記保護層の厚みt1が略0.1mmであり、前記保護層の厚みt2が略0.6mmであり、前記保護層の厚みt3が略1.2mmであることが好ましい。さらに、前記開口数NA1が0.85であり、前記開口数NA2が0.6であり、前記開口数NA3が0.45と0.5との間であることが好ましい。
この構成によれば、1つの対物レンズで、保護層の厚みの異なるBD、DVD、およびCDの記録/再生を行うことができる。
または、本発明に係る光ヘッドにおいて、前記保護層の厚みt1、t2およびt3は、t1=t2<t3の関係にあることが好ましい。また、前記保護層の厚みt1が略0.6mmであり、前記保護層の厚みt2が略0.6mmであり、前記保護層の厚みt3が略1.2mmであることが好ましい。さらに、前記開口数NA1が0.65であり、前記開口数NA2が0.6であり、前記開口数NA3が0.45と0.5との間であることが好ましい。
この構成によれば、1つの対物レンズで、保護層の厚みの異なるHD−DVD、DVD、およびCDの記録/再生を行うことができる。
本発明に係る光ヘッドにおいて、前記回折格子は、同心円を成し、鋸歯状の断面形状を有することが好ましい。
この構成によれば、波長λ1、λ2、λ3の光の回折効率を向上させることができる。
本発明に係る光ヘッドにおいて、前記回折格子は、前記開口数NA3に相当する領域にて、波長λ1の光に対して3波長以上の光路長を与え、波長λ2の光に対して2波長以下の光路長を与える深さh1を有し、前記開口数NA3から前記開口数NA2に相当する領域にて、前記深さh1の2倍の光路長を与える深さh2を有し、前記開口数NA2から前記開口数NA1に相当する領域にて、波長λ1の光に対してm波長の光路長を与える深さh3を有し、波長λ1の前記3次回折光と前記6次回折光と前記m次回折光を前記第1の光ディスクに収束し、波長λ2の前記2次回折光と前記4次回折光を前記第2の光ディスクに収束し、波長λ3の前記2次回折光を前記第3の光ディスクに収束するように、前記各領域にて異なるピッチを有することが好ましい。
この構成によれば、回折素子により開口制限を受ける複数の領域で光の回折次数を変えたとしても、波長の変化に対する回折角の変化が一定になり、光ディスクに収束する光の位置にずれがなくなる。
本発明に係る光ヘッドにおいて、前記m次回折光の次数mは、3の倍数以外の整数に設定されることが好ましい。
この構成によれば、回折素子の開口数NA2からNA1に相当する領域にて、第2および第3の波長の光はそれぞれ、第2および第3の光ディスクに収束する回折光が無くなるので、開口制限することができる。
本発明に係る光ヘッドにおいて、前記回折素子の開口数がNA3からNA2に相当する領域の回折格子のピッチを、波長λ1の3次回折光として設計したときの2倍に設定することが好ましい。
この構成によれば、開口数NA3からNA2に相当する領域での波長の変化に対する回折角の変化が、開口数NA3に相当する領域での波長の変化に対する回折角の変化と同じになる。
本発明に係る光ヘッドにおいて、前記回折素子の開口数がNA2からNA1に相当する領域の回折格子のピッチを、波長λ1の3次回折光として設計したときのm/3倍に設定することが好ましい。
この構成によれば、開口数NA2からNA1に相当する領域での波長の変化に対する回折角の変化が、開口数NA3に相当する領域での波長の変化に対する回折角の変化と同じになる。
本発明に係る光ヘッドにおいて、前記回折素子は、凸レンズ作用を有することが好ましい。
この構成によれば、屈折型レンズの色収差を回折素子の色収差で相殺することで、波長の変化に対する焦点距離の変化を低減することができる。
本発明に係る光ヘッドにおいて、前記波長λ1は405nm近傍であり、前記波長λ2は655nm近傍であり、前記波長λ3は780nm近傍である。
本発明に係る対物レンズは、前記回折素子と前記屈折型レンズから成ることを特徴とする。
本発明に係る光ディスク装置は、本発明に係る光ヘッドと、前記第1、第2または第3の光ディスクを回転するモータと、前記光ヘッドから得られる信号に基づいて、前記モータ、前記光ヘッドに含まれる光学レンズ、及び前記第1、第2または第3の光源の少なくともいずれかを制御および駆動する電気回路とを備えたことを特徴とする。
この構成によれば、本発明に係る光ヘッドを備えているので、記録密度の異なる複数の光ディスクに対応することができる。
本発明に係るコンピュータは、本発明に係る光ディスク装置と、入力された情報、及び前記光ディスク装置から再生された情報の少なくともいずれかに基づいて演算を行う演算装置と、前記入力された情報、前記光ディスク装置から再生された情報、及び前記演算装置によって演算された結果の少なくともいずれかを出力する出力装置とを備えたことを特徴とする。
この構成によれば、本発明に係る光ディスク装置を備えており、記録密度の異なる複数の光ディスクに対して安定に情報を記録または再生できるので、広い用途に適応できる。
本発明に係る光ディスクレコーダは、本発明に係る光ディスク装置と、映像および音声信号の少なくとも1つを前記第1、第2または第3の光ディスクへの記録信号に変換し、前記光ディスク装置に送る記録用信号処理回路と、前記光ディスク装置から得られた再生信号を映像および音声信号の少なくとも1つに変換する再生用信号処理回路とを備えたことを特徴とする。
この構成によれば、本発明に係る光ディスク装置を備えており、記録密度の異なる複数の光ディスクに対して安定に映像および/または音声を記録または再生できるので、広い用途に適応できる。
本発明にかかる光ヘッドは、光学フィルター等の開口制限手段なしに、1つの対物レンズを用いて、各光ディスクの保護層厚の差に起因した球面収差を補正でき、異なる種類のディスクの互換再生および互換記録を安定かつ安価に実現できるという利点を有し、光ディスク装置、コンピュータ、光ディスクレコーダなどの機器に適用した場合に有用である。
本発明は、光ディスクなどの光情報記憶媒体に対して情報の記録、再生、または消去を行う光ヘッドと、該光ヘッドに用いる対物レンズと、前記光ヘッドを用いた光ディスク装置と、該光ディスク装置を適用したコンピュータおよび前記光ディスク装置を用いて光情報記憶媒体に対して映像/音声信号を記録および再生する光ディスクレコーダ等のシステムに関する。
光ディスクの第1世代といえるコンパクトディスク(以下、CDと記す)では、対物レンズの開口数を0.45から0.5とし、波長780nmの赤外光を用いて、保護層厚1.2mmの光ディスクに対して情報を記録または再生(以下、記録/再生と記す)している。なお、本明細書中において、保護層とは光ディスクに光ビームが入射する面から情報記録面までの透明な媒体を指す。また、第2世代のデジタルバーサタイルディスク(以下、DVDと記す)では、対物レンズの開口数を0.6とし、波長655nmの赤色光を用いて、保護層厚0.6mmの光ディスクに対して情報を記録/再生している。そして、第3世代のブルーレイディスク(以下、BDと記す)では、対物レンズの開口数を0.85とし、波長405nmの青色光を用いて、保護層厚0.1mmの光ディスクに対して情報を記録/再生している。さらに、BDとは別の規格である次世代DVD(以下、HD−DVDと記す)では、対物レンズの開口数を0.65とし、波長405nmの青色光を用いて、DVDと同じ保護層厚0.6mmの光ディスクに対して情報を記録/再生している。
このように、第3世代の光ディスクに対して情報を記録/再生する光ディスク装置では、短波長の青色レーザ光源と、開口数の大きい光学系とを用いて、従来以上に高密度化を図っており、今後の拡大が期待されている。しかし、高密度光ディスクであるBDおよびHD−DVDにおいても、DVDおよびCDで蓄積された資産の継承が望まれ、装置の大きさの観点からは、異なる光ディスクを、1つの光ヘッドにより記録/再生できる光ディスク装置が求められている。そのためには、保護層の厚みが異なる光ディスクに対して回折限界まで光ビームを絞ることのできる光ヘッドが必要になる。
従来より、異なる種類の光ディスクに対して、複数の波長の光ビームを用いて記録/再生することを目的とした構成が提案されている。この構成について、図23および図24を用いて説明する。
図23は、第1の従来例としての光ヘッドの一例の概略構成を示す断面図である。図23において、青色レーザ光源61から出射した波長405nmの光ビーム63と、赤色レーザ光源62から出射した波長655nmの光ビーム64が、コリメートレンズ65により並行光に変換され、回折素子66と屈折型レンズ67により絞られて光ディスクに収束にする。回折素子66は凸レンズ作用を持ち、波長405nmの光に対しては、2次回折光を最も強く発生し、波長655nmの光に対しては、1次回折光を最も強く発生するよう構成されている。波長405nmの光ビーム63は、回折素子66で回折されて2次回折光となり、屈折型レンズ67により保護層厚0.1mmの光ディスク51の情報記録面に収束する。また、波長655nmの光ビーム64は、回折素子66で回折されて1次回折光となり、保護層厚0.6mmの光ディスク52の情報記録面に収束する。光ディスク51、52で反射した光は、光検出器68で検出される。
図24は、図23に示す回折素子66と屈折型レンズ67の拡大断面図である。図24に示すように、回折素子66は、光ビーム64の開口内の領域66aと、領域66aの外側の領域66bとでは異なる構成を有する。領域66aは、屈折型レンズ67を通して光ビーム63の2次回折光が光ディスク51に収束され、また光ビーム64の1次回折光が光ディスク52に収束されるように構成されている。また、領域66bは、屈折型レンズ67を通して光ビーム63の2次回折光が光ディスク51に収束され、また光ビーム64の1次回折光が光ディスク52に対して収差を持つように構成されている。このようにして、保護層の厚みの違いによる球面収差が補正される(たとえば、特許文献1参照)。
第2の従来例としては、回折素子と、2つの波長選択位相板と、対物レンズとを組み合わせ、3種類の光ディスクに対応する光ヘッドの構成が提案されている。この構成について、図25を用いて説明する。
図25は、第2の従来例としての光ヘッドの一例の概略構成を示す断面図である。図25において、光学ユニット70より出射した波長405nmの青色光71aは、回折素子72の回折と、凹レンズ73の屈折によって略平行光となり、対物レンズ77の色収差を補正して、保護層厚0.1mmの光ディスク51の情報記録面に収束する。また、光学ユニット70より出射した波長655nmの赤色光71bは、回折素子72の影響を受けずに、凹レンズ73により発散光となり、波長選択位相板75により位相を補正されて、保護層厚0.6mmの光ディスク52の情報記録面に収束する。さらに、光学ユニット70より出射した波長780nmの赤外光71cは、回折素子72の影響を受けずに、凹レンズ73により発散光となり、波長選択位相板76により位相を補正されて、保護層厚1.2mmの光ディスク53の情報記録面に収束する。光ディスク51、52、53で反射した光は、逆の経路をたどって光学ユニット70内の光検出器で検出される。
波長選択位相板75には、波長655nmの光ビームに対して位相差を発生させ、波長405nmと780nmの光ビームに対しては、各波長の略整数倍の位相差を発生させる、すなわち位相差がゼロとなるような段差形状(step−profile)を有する位相段差(phase shift pattern)75aが設けられている。このため、波長選択位相板75は、光ビーム71aと71cの位相分布には影響を与えない。また、波長選択位相板76には、波長780nmの光ビームに対して位相差を発生させ、波長405nmと655nmの光ビームに対しては、各波長の略整数倍の位相差を発生させる、すなわち位相差がゼロとなるような段差形状を有する位相段差76aが設けられている。このため、波長選択位相板76は、光ビーム71aと71bの位相分布には影響を与えない。
対物レンズ77は、波長405nmの青色光が平行で入射した時に、保護層厚0.1mmのBDに収束されるように構成されており、保護層厚0.6mmのDVDに対して記録/再生を行う際は、厚みの違いによって球面収差が発生する。この球面収差は、凹レンズ73と波長選択位相板75とを用いて補正される。また、保護層厚1.2mmのCDに対して記録/再生を行う際に発生する球面収差は、凹レンズ73と波長選択位相板76とを用いて補正される(たとえば、特許文献2参照)。
第3の従来例としては、複数の対物レンズを機械的に切り替えて、複数の光ディスクに対して記録/再生を行う構成が提案されている(たとえば、特許文献3参照)。
第4の従来例としては、HD−DVDに関して、異なる種類の光ディスクに対して記録/再生を行う構成が提案されている。この構成について、図26および図27を用いて説明する。
図26は、第4の従来例としての光ヘッドの一例の概略構成を示す断面図である。図26において、青色レーザ光源80から出射した波長405nmの光ビーム83と、赤色レーザ光源81から出射した波長655nmの光ビーム84と、赤外レーザ光源82から出射した波長780nmの光ビーム85とが、回折素子86aを有する対物レンズ86により絞られて、光ディスクに収束にする。
図27は、図26に示す対物レンズ86の部分拡大断面図である。図27に示すように、対物レンズ86は、内周部87と、中周部88と、外周部89とで異なる構成を有する。つまり、回折素子86aの内周部87は、各波長の光に対して1次回折光を最も強く発生させ、中周部88は、波長405nmの光に対して3次回折光を最も強く発生させ、また波長655nmの光に対して2次回折光を最も強く発生させ、外周部89は、波長405nmと波長655nmの光に対して、回折が最大となる次数が異なるように構成されている。さらに、対物レンズ86の屈折面は、上記の最も強くなる回折光が、各光ディスクに収束するように構成されており、内周部87と、中周部88と、外周部89とで非球面係数はそれぞれ異なっている。
このようにして、対物レンズ86は、光ビーム83に対して回折素子86aの全周部により最も強く発生される回折次数の光を、保護層厚0.6mmの光ディスク54の情報記録面に収束し、光ビーム84に対して回折素子86aの内周部87と中周部88により最も強く発生される回折次数の光を、保護層厚0.6mmの光ディスク52の情報記録面に収束し、光ビーム85に対して回折素子86aの内周部87により最も強く発生される回折次数の光を、保護層厚1.2mmの光ディスク53の情報記録面に収束する。このようにして、波長と保護層の厚みの違いに起因した球面収差が補正され、回折素子86aの各領域において回折次数を異ならせることにより、光ビーム83に対する開口数をNA1とし、光ビーム84に対する開口数をNA2とし、光ビーム85に対する開口数をNA3(NA1>NA2>NA3)とするように開口制限が行われる(たとえば、特許文献4参照)。
特開2004−192783号公報(第12−18頁、図1、2)
特開2003−281775号公報(第6−11頁、図1)
特開平11−296890号公報(第4−6頁、図1)
特開2004−362626号公報(第5−14頁、図1、3)
しかしながら、上記各従来例では、以下のような問題点がある。
第1の従来例では、1つの対物レンズによりBDとDVDに対して記録/再生を行うことができるが、CDに対して記録/再生を行うことはできない。波長405nmの光については回折素子66で発生する2次回折光を利用し、また波長655nmの光については回折素子66で発生する1次回折光を利用して、BDとDVDの保護層厚の差による球面収差を補正するため、波長780nmの光を保護層厚1.2mmのCDの情報記録面に最適に収束させることはできない。波長780nmの光についても回折素子66で1次回折光を発生するが、波長が405nmの2倍に近いため、最適な保護層の厚みがBDの保護層の厚みに近くなってしまい、CDに対する記録/再生を行うことができない。さらに、CDの記録/再生を行う光に対する開口制限手段がなく開口数を0.45に設定できない。つまり、この方式は、BDとDVDとの互換性に関するものであり、CDの記録/再生に必要な光の波長を含めた3波長に対応するには新たな技術的手段が必要である。
第2の従来例では、回折素子と2つの波長選択位相板を用いて、BD、DVD、CDの記録/再生に対応しているが、回折素子と波長選択位相板は、3波長の波長選択性を持たせているため溝が深くなり、溝斜面の回折ロスと溝深さの誤差で光量ロスが増加する。特に、青色光を回折し、赤色光と赤外光を回折しない回折素子72は、4ステップの鋸歯形状により構成され、総合段差が20μmを超えるような深さになる。このため、波長の1桁下の精度を要求される回折素子では、十分な製造精度が確保できない。また、DVDとCDの記録/再生を行う光に対する開口制限手段がなく、DVDに対する開口数を0.6に設定し、CDに対する開口数を0.45に設定するには、光学フィルター等が必要になる。この構成は、回折格子、凹レンズ、2つの波長選択位相板、対物レンズ、さらには光学フィルター等を用いる複雑な構成になる。このため、光ヘッドを駆動するアクチュエータの可動部の質量が増加し、フォーカスやトラッキングの高倍速駆動が困難になり、またコスト面でも不利になる。
第3の従来例では、対物レンズを切り替えているので、複数の対物レンズを要し、部品点数が多くなるとともに、光ヘッド装置の小型化が困難であるという問題がある。また、切り替え機構を要する点でも、さらに装置の小型化が困難となる。
第4の従来例では、回折素子により球面収差の補正と、開口制限とを行って、HD−DVD、DVD、CDの記録/再生に対応しているが、回折素子の回折次数を変えているため、波長が設計波長から変化すると、収束性能が劣化してしまう。回折素子の回折角は、回折次数が増え、波長が長くなるに従って大きくなり、回折格子のピッチが大きくなるに従って小さくなる。このため、回折素子内で、回折次数を変えた場合、波長の変化に対して、回折角の変化が領域ごとに異なって、光ビームを一点に収束できなくなる。波長の変化要因としては、光源の波長ばらつきと、温度依存性があり、波長ばらつきは、青色レーザ光源では±5nm程度、赤外レーザ光源では±10nm程度あり、温度依存性は、各光源も±2nm程度ある。これらが、設計波長からの変化になる。
第4の従来例の構成では、回折素子の回折格子が内周部から中周部に変わるとき、光ビーム83の回折次数は1次から3次に変わるので、中周部の回折格子のピッチを、1次回折光として設計したときの3倍に設定すれば、内周部と中周部の波長変化に対する回折角の変化は一定になる。しかし、光ビーム84の回折次数は1次から2次になるため、中周部の回折格子のピッチは、1次回折光として設計したときの2倍に設定しないと、内周部と中周部の波長変化に対する回折角の変化は一定にならない。このため、両方の光ビームに対して、回折次数が変化したとき、回折角の変化を一定にすることはできず、波長が変化すると、光ビームを1点に収束することができなくなる。
これらのことから、保護層厚が0.1mm、0.6mmおよび1.2mmの光ディスクに対して、青色光、赤色光および赤外光の3波長を用いて記録/再生を行う実用的な互換光ヘッドは実現できていない。
本発明は、前記のような従来の問題を解決するものであり、その目的は、1つの対物レンズを用いて異なる種類の光ディスクに対する安定な互換再生および互換記録を可能にする小型で安価な光ヘッドを提供することである。
前記の目的を達成するため、本発明に係る光ヘッドは、第1、第2および第3の光源と、対物レンズと、光検出器とを少なくとも含む。前記第1の光源は波長λ1の光を出射し、前記第2の光源は波長λ2の光を出射し、前記第3の光源は波長λ3の光を出射する。前記対物レンズは、少なくとも回折素子と屈折型レンズから成り、第1の光ディスクに対しては前記波長λ1の光を開口数NA1で収束し、第2の光ディスクに対しては前記波長λ2の光を開口数NA2で収束し、第3の光ディスクに対しては前記波長λ3の光を開口数NA3で収束する。ここで、前記開口数NA1、NA2およびNA3は、NA1>NA2>NA3の関係にある。前記回折素子は、開口数NA3に相当する領域にて、前記波長λ1の光に対して3次回折光を最も強く発生させ、前記波長λ2の光に対して2次回折光を最も強く発生させ、前記波長λ3の光に対して2次回折光を最も強く発生させる格子形状を有する回折格子から成る。また、前記回折素子は、開口数NA3からNA2に相当する領域にて、前記波長λ1の光に対して6次回折光を最も強く発生させ、前記波長λ2の光に対して4次回折光を最も強く発生させ、前記波長λ3の光に対して3次回折光を最も強く発生させる格子形状を有する回折格子から成る。さらに、前記回折素子は、開口数NA2からNA1に相当する領域にて、前記波長λ1の光に対してm次回折光を最も強く発生させる格子形状を有する回折格子から成る。
本発明によれば、回折素子と屈折型レンズから成る対物レンズを用い、回折素子により開口制限を受ける複数の領域で光の回折次数を変えたとしても、波長の変化に対する回折角の変化が一定になるように回折格子を構成し、波長の異なる光を保護層厚の異なる光ディスクに、それぞれに合った開口数で収束して、安定に情報を記録/再生することができる。これにより、光学フィルター等の開口制限手段なしに、1つの対物レンズを用いて、保護層厚の差に起因した球面収差を補正でき、種類の異なる光ディスクに対する安定な互換再生および互換記録を可能にする小型で安価な光ヘッドを実現できる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る光ヘッドの全体構成を示す断面図である。図1において、1は波長λ1(略405nm)の光を出射する青色レーザ光源を示し、2は波長λ2(略655nm)の光を出射する赤色レーザ光源、3は波長λ3(略780nm)の光を出射する赤外レーザ光源を示す。10はコリメートレンズ、14は対物レンズを示し、対物レンズ14は、回折素子12と屈折型レンズ13により構成されている。51は保護層厚t1が約0.1mmの光ディスクを示し、波長λ1の光ビームによって、開口数NA1で記録/再生される光情報媒体、例えばBD用の光ディスクである。52は保護層厚t2が約0.6mmの光ディスクを示し、波長λ2の光ビームによって、開口数NA2で記録/再生される光情報媒体、例えばDVD用の光ディスクである。53は保護層厚t3が約1.2mmの光ディスクを示し、波長λ3の光ビームによって、開口数NA3で記録/再生される光情報媒体、例えばCD用の光ディスクである。これらの光ディスクにおける開口数はNA1が0.85、NA2が0.6、NA3が0.45から0.5である。図1では、光ディスク51(実線)、52(破線)53(一点鎖線)は、光ビームが入射する面から情報記録面までの保護層のみを示している。実際には、光ディスク51、52については、機械的強度を確保し、外形をCDと同じ1.2mmにするため、基材を張り合わせている。光ディスク52は、厚み0.6mmの基材を張り合わせ、光ディスク51は、厚み1.1mmの基材を張り合わせているが、図1では、例示の明瞭化のため、基材は省略している。
記録密度の高い光ディスク51の記録/再生を行う際には、青色レーザ光源1から出射した波長λ1の光ビーム4がプリズム7、プリズム8を透過して、ビームスプリッター9に入射する。プリズム7は、波長λ1の光を透過し、波長λ2の光を反射するよう構成され、プリズム8は、波長λ1とλ2の光を透過し、波長λ3の光を反射するよう構成されている。また、ビームスプリッター9は、波長λ1、λ2の光に対しては、一方向の直線偏光を反射し、それと直角方向の直線偏光を透過する偏光分離特性を持ち、波長λ3の光に対しては、一部の光を透過し、一部の光を反射するハーフミラー特性を持った光路分岐素子として機能する。
青色レーザ光源1から出射した光ビーム4の偏光方向は、ビームスプリッター9で反射するよう設定されており、ここを反射した光ビーム4は、コリメートレンズ10より集光され略平行光になり、波長板11により直線偏光から円偏光に変換される。波長板11は、波長λ1、λ2の光に対しては、1/4波長板として作用し、波長λ3の光に対しては、波長板として作用しないよう構成されている。さらに光ビーム4は、回折素子12と屈折型レンズ13からなる対物レンズ14によって絞られ、保護層厚t1を通して光ディスク51の情報記録面に収束する。
光ディスク51の情報記録面で反射した光ビーム4は、もとの光路を逆にたどって、波長板11により往路とは直角方向の直線偏光に変換されて、ビームスプリッター9を透過する。コリメートレンズ10により収束光となった光ビーム4は、ビームスプリッター9を透過することにより非点収差が与えられ、検出レンズ15により光学倍率が変換されて、光検出器16に入射する。光検出器16からの出力信号に演算処理を施すことによって、フォーカス制御に用いられるフォーカス誤差信号、およびトラッキング制御に用いられるトラッキング誤差信号を含めたサーボ信号と、画像および音声情報などの情報信号とが得られる。フォーカス誤差信号は、例えば非点収差法により、またトラッキング誤差信号は、例えばプッシュプル法により得ることができる。
次に、光ディスク52の記録/再生を行う際には、赤色レーザ光源2から出射した波長λ2の光ビーム5がプリズム7で反射し、プリズム8を透過して、ビームスプリッター9に入射する。赤色レーザ光源2から出射した光ビーム5の偏光方向は、ビームスプリッター9で反射するよう設定されており、ここを反射した光ビーム5は、コリメートレンズ10より集光され略平行光になり、波長板11により直線偏光から円偏光に変換される。さらに光ビーム5は、回折素子12と屈折型レンズ13からなる対物レンズ14によって絞られ、保護層厚t2を通して光ディスク52の情報記録面に収束する。
光ディスク52の情報記録面で反射した光ビーム5は、もとの光路を逆にたどって、波長板11により往路とは直角方向の直線偏光に変換されて、ビームスプリッター9を透過する。コリメートレンズ10により収束光となった光ビーム5は、ビームスプリッター9を透過することにより非点収差が与えられ、検出レンズ15により光学倍率が変換されて、光検出器16に入射する。光検出器16からの出力信号に演算処理を施すことによって、フォーカス制御に用いられるフォーカス誤差信号、およびトラッキング制御に用いられるトラッキング誤差信号を含めたサーボ信号と、画像および音声情報などの情報信号とが得られる。
次に、光ディスク53の記録/再生を行う際には、赤外レーザ光源3から出射した波長λ3の光ビーム6がプリズム8で反射されて、ビームスプリッター9に入射する。赤外レーザ光源3から出射した光ビーム6の一部はビームスプリッター9で反射して、コリメートレンズ10より集光され略平行光になり、波長板11を透過する。さらに光ビーム6は、回折素子12と屈折型レンズ13からなる対物レンズ14によって絞られ、保護層厚t3を通して光ディスク53の情報記録面に収束する。
光ディスク53の情報記録面で反射した光ビーム6は、もとの光路を逆にたどって、波長板11、コリメートレンズ10を通り、ビームスプリッター9により一部の光ビーム6を透過する。コリメートレンズ10により収束光となった光ビーム6は、ビームスプリッター9を透過することにより非点収差が与えられ、検出レンズ15により光学倍率が変換されて、光検出器16に入射する。光検出器16からの出力信号に演算処理を施すことによって、フォーカス制御に用いられるフォーカス誤差信号、およびトラッキング制御に用いられるトラッキング誤差信号を含めたサーボ信号と、画像および音声情報などの情報信号とが得られる。
ここで、CD用の光ディスク53には複屈折の大きなものがあり、光ビーム4、5のように、偏光分離による光路分岐を行うと、光検出器16に光が伝搬しないことがある。このため、光ビーム6については、偏光方向によらず、一定の光を反射し、一定の光を透過するハーフミラー特性により光路分岐を行うことが望ましい。
次に、図2から図5を用いて、回折素子12および屈折型レンズ13の働きと構成を説明する。図2は、本発明の実施の形態1における対物レンズ14の一例を示す拡大断面図であり、対物レンズ14を構成する回折素子12と屈折型レンズ13により収束する光の伝搬を示す。図2において、回折素子12は、光ビーム4、5、6を回折して、凸レンズ作用を及ぼす。屈折型レンズ13は、回折素子12によって回折作用を受けた光ビーム4を、保護層厚t1を通して光ディスク51の記録面上へ収束し、波長の違いによる回折作用の差を利用して、光ビーム5を、保護層厚t2を通して光ディスク52の記録面上へ収束し、光ビーム6を、保護層厚t3を通して光ディスク53の記録面上へ収束するように構成されている。
図2において、光ビーム4は実線で示す光路を伝搬して点Q1に収束し、光ビーム5は破線で示す光路を伝搬して点Q2に収束し、光ビーム6は一点鎖線で示す光路を伝搬して点Q3に収束する。このように、光ビーム4、5、6は回折素子12により波面変換され、保護層厚の差による球面収差が補正される。
回折素子12により回折する光の回折角θは、回折格子のピッチが大きくなるにつれて小さくなり、また波長が長くなり、回折次数が増えるにつれて大きくなる。さらに、前記回折次数は回折格子の深さが増すにつれて大きくなる。本発明の実施の形態は、回折次数と、回折格子のピッチとを利用して、保護層厚の差による球面収差を補正し、波長λ2の光を開口数NA2に、また波長λ3の光を開口数NA3に開口制限し、波長が変化しても、光ビーム4、5、6の収束位置にずれが生じないように構成したものである。
図3は、回折素子12の平面(紙面上側)および断面(紙面下側)を示す図である。図3に示すように、回折素子12の回折格子は同心円状をなし、内周部12aと、中周部12bと、外周部12cとで構成が異なっている。
回折素子12の内周部12aは、開口数NA3に相当する部分であり、波長λ1の光ビーム4に対しては3次回折光を最も強く発生し、波長λ2の光ビーム5に対しては2次回折光を最も強く発生し、波長λ3の光ビーム6に対しては2次回折光を最も強く発生する格子形状を有する。そして、光ビーム4の3次回折光は、屈折型レンズ13を通して、光ディスク51に収束され、光ビーム5の2次回折光は、屈折型レンズ13を通して、光ディスク52に収束され、光ビーム6の2次回折光は、屈折型レンズ13を通して、光ディスク53に収束される。
回折素子12の中周部12bは、開口数NA3からNA2に相当する部分であり、波長λ1の光ビーム4に対しては6次回折光を最も強く発生し、波長λ2の光ビーム5に対しては4次回折光を最も強く発生し、波長λ3の光ビーム6に対しては3次回折光を最も強く発生して4次回折光はほとんど発生しない格子形状を有する。そして、光ビーム4の6次回折光は、屈折型レンズ13を通して、光ディスク51に収束され、光ビーム5の4次回折光は、屈折型レンズ13を通して、光ディスク52に収束される。
回折素子12の外周部12cは、開口数NA2からNA1に相当する部分であり、波長λ1の光ビーム4に対して、m(mは3の倍数以外の整数で、例えば2)次回折光を最も強く発生する格子形状を有し、この2次回折光は、屈折型レンズ13を通して、光ディスク51に収束される。
上記の回折素子12の働きについて、図4、図5A、図5Bおよび図5Cを用いて詳しく説明する。図4は、回折素子12を構成する回折格子の物理的な断面形状および各波長に対する位相変化を示す図である。図4において、DGは回折格子の物理的な断面形状、PC(λ1)は回折格子を透過する波長λ1の光の位相変化、PC(λ2)は回折格子を透過する波長λ2の光の位相変化、PC(λ3)は回折格子を透過する波長λ3の光の位相変化を示している。物理的な断面形状DGは、内周部12aと中周部12bとの境界領域を例示しており、特定の回折光を効率よく発生させるため、回折格子は鋸歯状の断面形状を有する。
図5A〜図5Cは、回折素子12の材料を、例えばホウケイ酸クラウンガラス(BK7)としたときの、鋸歯状格子の深さhに対する回折効率DEを示すグラフである。図5Aは、波長λ1の光に対する回折格子の深さhと回折効率DE(λ1)を、図5Bは、波長λ2の光に対する回折格子の深さhと回折効率DE(λ2)を、図5Cは、波長λ3の光に対する回折格子の深さhと回折効率DE(λ3)を示している。ここで、光路長の差を、回折格子の段差の有無によって生じる光路長の差とであると規定した場合、波長λに対する屈折率をnとして、この光路長の差Lは、段差の深さhと、媒質と空気との屈折率の差(n−1)との積として以下のように表わされる。
L=h×(n-1)
この、光路長の差Lが波長のk倍であるとした場合、深さhは、
h=k×λ/(n-1) ・・・(式1)
で表される。
内周部12aにおいて、図4に示すように、回折格子の深さh1は、例えば2.38μmに設定される。波長λ1が405nmのときのBK7の屈折率n1は1.5302であり、上記(式1)のh、λ、nに、それぞれh1、λ1、n1を代入すると、kは3.12になるので、段差h1により光ビーム4に発生する光路長の差は、約3.12波長、すなわち位相差が約6.23πラジアンになる。よって、光ビーム4は3次回折光の強度が最大となり、位相変化は、図4のPC(λ1)で示すようになる。回折効率DE(λ1)は、図5Aに示すように、スカラー計算上約96%となる。
また、波長λ2が655nmのときのBK7の屈折率n2は、1.5144であり、上記(式1)のh、λ、nに、それぞれh1、λ2、n2を代入すると、kは1.87になるので、段差h1により光ビーム5に発生する光路長の差は、約1.87波長、すなわち位相差が約3.74πラジアンになる。よって、光ビーム5は2次回折光の強度が最大となり、位相変化は、図4のPC(λ2)で示すようになる。回折効率DE(λ2)は、図5Bに示すように、スカラー計算上約94%となる。
さらに、波長λ3が780nmのときのBK7の屈折率n3は、1.5112であり、上記(式1)のh、λ、nに、それぞれh1、λ3、n3を代入すると、kは1.56になるので、段差h1により光ビーム6に発生する光路長の差は、約1.56波長、すなわち位相差が約3.12πラジアンになる。よって、光ビーム6は2次回折光の強度が最大となり、位相変化は、図4のPC(λ3)で示すようになる。回折効率DE(λ3)は、図5Cに示すように、スカラー計算上約50%となる。
次に、回折素子12の中周部12bにて、図4に示すように、回折格子の深さh2は、例えば内周部12aの回折格子の深さh1の2倍である4.76μmに設定される。波長λ1が405nmのときのBK7の屈折率n1は1.5302であり、上記(式1)のh、λ、nに、それぞれh2、λ1、n1を代入すると、段差h2により光ビーム4に発生する光路長の差は、約6.23波長、すなわち位相差が約12.46πラジアンになる。よって、光ビーム4は6次回折光の強度が最大となり、位相変化は、図4のPC(λ1)で示すようになる。回折効率DE(λ1)は、図5Aに示すように、スカラー計算上約82%となる。
また、波長λ2が655nmのときのBK7の屈折率n2は、1.5144であり、上記(式1)のh、λ、nに、それぞれh2、λ2、n2を代入すると、段差h2により光ビーム5に発生する光路長の差は、約3.74波長、すなわち位相差が約7.48πラジアンになる。よって、光ビーム5は4次回折光の強度が最大となり、位相変化は、図4のPC(λ2)で示すようになる。回折効率DE(λ2)は、図5Bに示すように、スカラー計算上約82%となる。
さらに、波長λ3が780nmのときのBK7の屈折率n3は、1.5112であり、上記(式1)のh、λ、nに、それぞれh2、λ3、n3を代入すると、段差h2により光ビーム6に発生する光路長の差は、約3.12波長になる。よって、この形状により光ビーム6は3次回折光の強度が最大となり、回折効率DE(λ3)は、図5Cに示すように、スカラー計算上95%となる。このため、光ビーム6について4次回折光はほとんど発生せず、位相変化は、図4のPC(λ3)で示すようになる。
以上のように、回折素子12は、回折格子の深さを変えることにより、回折次数を変えることができる。ところで、qを回折次数とすると、回折角θは、以下のようになる。
sinθ=q×λ/P ・・・(式2)
つまり、回折次数qが大きくなると、波長λが変化したときの回折角θの変化も大きくなり、波長λが変化すると、光ディスクに収束する光の位置にずれが発生する。本発明の実施の形態では、回折格子のピッチPを、このずれが発生しないように設定しており、波長λの変化に対する回折角θの変化を一定にしている。
中周部12bでは、回折格子の深さh2が、内周部12aの回折格子の深さh1の2倍になる。このため、光ディスク51に収束する光ビーム4は、内周部12aから中周部12bにかけて、3次回折光から6次回折光へと、回折次数が2倍に変化するが、中周部12bの回折格子のピッチP2を、3次回折光として設計したときの2倍に設定することにより、上記(式2)の回折角θは、3次回折光として設計したことと同等になるため、波長の変化に対する回折角の変化は、内周部12aでのそれと同じになる。
また、光ディスク52に収束する光ビーム5は、内周部12aから中周部12bにかけて、2次回折光から4次回折光へと、回折次数が2倍に変化するが、回折格子のピッチP2は、2次回折光として設計したときの2倍になり、回折角θは、2次回折光として設計したことと同等になるため、波長の変化に対する回折角の変化は、内周部12aでのそれと同じになる。
この様子について、図4のDGにおける内周部12aと中周部12bとの境界領域で説明する。中周部12bでは、回折格子の深さがh1からh2へ2倍になり、回折格子のピッチPは光ビーム4の3次回折光として設計したときの2倍になっている。ここで、ピッチP2を隣り合う回折格子のピッチP1の2倍にすると、回折角θは同じになり、光ビーム4の波長λ1が変化しても、回折角は同じように変化し、回折光を1点に収束させることができる。
また、中周部12bでの回折格子のピッチP2は光ビーム5の2次回折光として設計したときの2倍でもあり、光ビーム5の波長λ2が変化しても、回折角は同じように変化し、回折光を1点に収束させることができる。実際には回折素子12の回折角θは一定ではなく、凸レンズ作用を持つように連続的に変化しているため、ピッチPも連続的に変化しているが、この境界領域の隣り合う回折格子のピッチP2はP1の略2倍程度になる。
一方、波長λ3の光ビーム6は、中周部12bで回折格子の深さh2が4.76μmになると、図5Cに示すように、4次回折光をほとんど発生せず、3次回折光になってしまう。3次回折光の次数は、内周部12aでの3/2倍であり、ピッチPは2次回折光として設計したときの2倍になるため、上記(式2)より回折角θは小さくなり、中周部12bで回折した光ビーム6は、内周部12aで回折した光ビーム6と同じ位置には収束しない。つまり、中周部12bで回折した光ビーム6は光ディスク53に収束せず、開口制限することができ、内周部12aを開口数NA3に相当する大きさに設定することにより、光ビーム6は開口数NA3で光ディスク53に収束することになる。
次に、回折素子12の外周部12cにおいて、回折格子の深さh3は、内周部での回折格子の深さh1のm/3倍、例えば2/3倍である1.59μmに設定される。波長λ1が405nmのときのBK7の屈折率n1は1.5302であり、上記(式1)のh、λ、nに、それぞれh3、λ1、n1を代入すると、段差h3により光ビーム4に発生する光路長の差は、約2.08波長、すなわち位相差が約4.16πラジアンになる。よって、光ビーム4の2次回折光の強度が最大となり、回折効率は、図5Aに示すように、スカラー計算上約99%となる。
このように、外周部12cでは、回折格子の深さh3を、内周部12aでの回折格子の深さh1の2/3倍にすることにより、光ディスク51に収束する光ビーム4は、内周部12aに対して、3次回折光から2次回折光へ、回折次数が2/3倍に変化する。前記同様、回折次数が変わっても、波長の変化に対する回折角の変化が一定になるよう、外周部12cの回折格子のピッチPを、3次回折光として設計したときの2/3倍に設定する。これにより、上記(式2)の回折角θは、3次回折光として設計したことと同等になり、波長の変化に対する回折角の変化は、内周部12aのそれと同じになる。よって、波長の変化に対する回折角の変化が一定になり、光ディスクに収束する光の位置にずれは発生しない。
一方、波長λ2の光ビーム5と、波長λ3の光ビーム6については、外周部12cでの回折格子の深さh3が、内周部12aでの回折格子の深さh1の2/3になると、2次回折の2/3に対応する次数がないため、内周部12aでの回折光と同じ位置に収束する回折光が存在しなくなり、開口制限することができる。よって、中周部12bを開口数NA2に相当する大きさにすることにより、光ビーム5は開口数NA2で光ディスク52に収束することになる。光ビーム6も同様に、光ディスク53に収束する回折光が無くなり、この外周部12cにおいても開口制限することができる。
このように、波長λ1の光ビーム4は、回折素子12の内周部12a、中周部12b、および外周部12cにて、それぞれ3次、6次、および2次回折光を光ディスク51に収束させるために、最も大きい開口数NA1に設定される。波長λ2の光ビーム5は、内周部12aおよび中周部12bにて、それぞれ2次、4次回折光を光ディスク52に収束させて、外周部12cからの回折光を光ディスク52に収束させないために、開口数NA2に設定される。波長λ3の光ビーム6は、内周部12aからの2次回折光を光ディスク53に収束させて、中周部12bでの4次回折光の発生を抑え、外周部12cからの回折光を光ディスク53に収束させないために、開口数NA3に設定される。これにより、各光ディスクに対して最適な開口数の関係、すなわちNA1>NA2>NA3を実現できる。
以上の説明では、回折素子12の外周部12cにて、波長λ1の光ビーム4の2次回折光を利用したが、他の回折次数も利用することができる。この領域における光ビーム4の回折次数をmとした場合、内周部12aの回折次数との比であるm/3が整数にならなければ、光ビーム5も光ビーム6も、内周部12aおよび中周部12bの回折光とは異なる位置に収束する。つまり、回折次数mを3の倍数以外の整数に設定すれば、光ビーム5は光ディスク52に収束する回折光が無くなり、光ビーム6は光ディスク53に収束する回折光が無くなるため、開口制限することができる。
上記の構成では、光ビーム4、5、6は、いずれも回折素子12によって波面変換される。したがって、回折素子12と屈折型レンズ13の相対位置に誤差があると、設計通りの波面が屈折型レンズ13に入射せず、光ディスク51、52、53へ入射する光の波面に収差が生じ、収束性能を劣化させる。このため、回折素子12を屈折型レンズ13と一体に形成することが望ましい。
図6は、本発明の実施の形態1における対物レンズの変形例を示す拡大断面図である。図6において、対物レンズ141を構成する屈折型レンズ131の表面に回折素子121が形成されている。回折素子121は、図2に示す回折素子12と同じ働きをするものである。つまり、回折素子121の開口数NA3に相当する内周部の領域では、光ビーム4の3次回折光が保護層厚t1の光ディスク51に収束し、光ビーム5の2次回折光が保護層厚t2の光ディスク52に収束し、光ビーム6の2次回折光が保護層厚t3の光ディスク53に収束する。
また、回折素子121の開口数NA3からNA2に相当する中周部の領域では、光ビーム4の6次回折光が保護層厚t1の光ディスク51に収束し、光ビーム5の4次回折光が保護層厚t2の光ディスク52に収束し、光ビーム6の4次回折光はほとんど発生せず、開口数NA3に開口制限される。
さらに、回折素子121の開口数NA2からNA1に相当する外周部の領域では、mを3の倍数以外の整数とした場合、光ビーム4のm次回折光を保護層厚t1の光ディスク51に収束し、光ビーム5、6の回折光を、それぞれ光ディスク52、53に収束させないよう、回折素子121と屈折型レンズ131が構成される。
図2に示す対物レンズ14の構成では、平面上に回折素子12を形成し、凸レンズ作用を持たせたため、軸外性能が劣化するが、図6に示す対物レンズ141の構成のように、屈折型レンズ131の表面に回折素子121を形成することにより、軸外性能も良好になる。よって、回折素子と屈折型レンズの位置ずれがなく、軸外性能の良い、対物レンズを得ることができる。
また、図2に示す対物レンズ14の構成は、回折素子12に凸レンズ作用を持たせることにより、屈折型レンズ13の色収差と、回折素子12の色収差を相殺している。この色収差は、波長が設計波長から変化したときの、焦点距離の変化である。例えば、波長λ1がΔλ1だけ長くなると、屈折型レンズ13の屈折率はΔn1だけ小さくなり、若干凸レンズ作用が小さくなるが、凸レンズ作用を持つ回折素子12は、波長がΔλ1だけ長くなると、回折角はΔθだけ大きくなり、若干凸レンズ作用が大きくなって、波長の変化に対する焦点距離の変化を抑えることができる。
一方、光ディスク51に光ビームを収束させる対物レンズ14は、開口数NAが大きく、光ディスク53のみに光ビームを収束させる対物レンズに比べて作動距離が短くなる。このため、回折素子12に凸レンズ作用を持たせると、保護層が厚い光ディスク53に対して、作動距離を確保しづらくなる。図2の構成では、焦点距離を長くして、対物レンズ14の作動距離を拡大しているが、焦点距離を長くすると、光ビーム径が大きくなり、光ヘッドの小型化には不利になる。これに対応するための構成を図7に示す。
図7は、本発明の実施の形態1における対物レンズの他の変形例を示す拡大断面図である。図7において、対物レンズ142は、回折素子122と屈折型レンズ132から成り、回折素子122に凹レンズ作用を持たせるよう構成される。回折素子122に凹レンズ作用を持たせた場合、前記色収差が発生し、波長の変化により焦点距離が変化するが、他の手段で補正することが可能である。例えば、コリメートレンズ10(図1)の表面に回折素子を形成することにより、前記色収差を低減することができる。
図7において、回折素子122は、回折素子12と同様に、内周部、中周部、および外周部にて、それぞれ回折格子の構成を変え、波長λ3、λ2の光を開口制限できるように成っており、凹レンズ作用を持たせることによって、光ディスク53の記録/再生を行う場合の、光ビーム6の収束位置が、屈折型レンズ132から、より遠くに離れることになり、作動距離を拡大することができる。また、図6の構成のように、回折素子122を、屈折型レンズ132の表面に形成することにより、回折素子と屈折型レンズとの位置ずれがなく、軸外性能の良い、対物レンズを得ることができる。
なお、本実施の形態では、図1において、3ビーム用回折格子を光源からからビームスプリッター9までの間に配置することにより、光ディスク51、52、53のトラッキング誤差信号を、よく知られたディファレンシャルプッシュプル(DPP)法によって得ることも可能である。
また、コリメートレンズ10を光軸方向(図1の左右方向)へ動かすことにより、光ビームのコリメート度合いを変化させることができる。光ディスク51では、保護層の厚み誤差や、2層ディスクの層間厚みに起因して、従来の光ディスク以上に球面収差が発生するが、コリメートレンズ10を光軸方向に動かすことによって、その球面収差を補正することができる。コリメートレンズ10を動かすことによる球面収差の補正は、開口数NAが0.85である場合、±30μm程度の保護層厚さを補正することができる。しかし、保護層厚0.1mmに対応した対物レンズ14を用いて、DVDの記録/再生を行う際には保護層差を0.5mm以上補償する必要があり、コリメートレンズ10の移動だけでは、球面収差の補正能力が不足するため、本実施の形態のような波面変換が必要となる。
さらに、本実施の形態では、一例としてBDと、DVDと、CDとの互換について例示および説明したが、本発明はこの構成に限定されず、HD−DVDと、DVDと、CDとの互換に対しても同様に適用できるものである。すなわち、保護層厚t1が約0.1mmの光ディスクに対して、開口数0.85で記録/再生を行う例について説明したが、HD−DVDとの互換は、保護層厚t1が約0.6mmの光ディスクに対して、開口数0.65で記録/再生を行うことにより実現できる。
以上のように、実施の形態1によれば、複数種の光ディスクに対して保護層厚の差による球面収差を補正し、各光ディスクに対応した開口数に設定することができる。また、対物レンズを1つの成形レンズで構成することも可能であり、安価で安定した収束性能を得ることができる。
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2を説明する。実施の形態1の説明で用いた図2では、回折素子に凸レンズ作用を持たせることにより、色収差とりわけ焦点距離の波長依存性を相殺したが、波長の差を利用して、保護層の異なる光ディスクの球面収差を補正する構成であるため、波長が設計波長からずれると、球面収差が発生してしまう。
この球面収差を補正するための構成について、図8および図9を用いて説明する。図8は、本発明の実施の形態2における対物レンズの一例を示す拡大断面図である。図8において、本実施の形態の対物レンズ143は、回折素子123と屈折型レンズ133から成り、実施の形態1の屈折型レンズ13を屈折型レンズ133に変更した構成を有する。屈折型レンズ133には、入射光に位相差を生じさせる段差形状(step−profile)を有する位相段差(phase shift pattern)133aが設けられている。図8において、位相段差133aは光ディスクに対向しない屈折型レンズ133の表面に形成されている。このように、位相段差133aを屈折型レンズ133と一体に形成することにより、屈折型レンズ133と位相段差133aとの相対位置誤差を無くすことができる。
図9は、図8に示す位相段差133aの部分拡大断面図である。図9において、位相段差133aは、高さhaの段差を複数有する。段差の高さhaは、波長λ1の10倍の光路長の差、言い換えると20πラジアンの位相差を生じさせるように設定されている。つまり、位相段差133aを形成する基材の、波長λ1に対する屈折率をn1とした場合、下記(式3)を満足するように段差の高さhaが決定される。
ha=10×λ1/(n1−1) ・・・(式3)
例えば、前記基材をBK7とし、波長λ1を405nmとすると、屈折率n1は1.5302になり、上記(式3)より、段差の高さhaは7.639μmとなる。
この高さhaの段差に、波長λの光が入射する場合、波長λに対する光路長の差を波長のk倍とすると、
10×λ1/(n1−1)=k×λ/(n−1) ・・・(式4)
が成り立つ。高さhaの段差に波長λ2として655nmの光が入射する場合、波長λ2の光に対するBK7の屈折率n2は1.5144であるので、上記(式4)のλ、nにλ2、n2を代入すると、kは6.0となり、光路長の差は波長の6倍となる。すなわち、波長λ1の光に対して波長の10倍の光路長の差を生じさせる段差は、波長λ2の光に対しては波長の6倍の光路長の差を生じさせることになる。
また、高さhaの段差に波長λ3として780nmの光が入射する場合、波長λ3の光に対するBK7の屈折率は1.5112であるので、上記(式4)のλ、nにλ3、n3を代入すると、kは5.0となり、光路長の差は波長の5倍となる。すなわち、波長λ1の光に対して波長の10倍の光路長の差を生じさせる段差は、波長λ3の光に対しては波長の5倍の光路長の差を生じさせることになる。
波長の整数倍の光路長の差が生じる位相変化は、2πラジアンの整数倍であり、実質的には位相差を生じない。したがって、波長λ1、λ2、λ3の設計波長に対しては、波面の変化が生じない。そして、レーザ光源の波長ばらつき等により、設計波長から数nm程度の波長変化が起こると、光路長の差が波長の整数倍からずれるため、位相変化が生じる。位相段差は、図8に示すように基材の内部へと堀込んで形成することも、逆に、基材の外側へと盛り上げて形成することもできるので、波長ずれに対する位相変化の方向も自由に設定できる。例えば、波長λ1の光であれば、波長1nmの変化に対する位相変化ΔΦ1は、
ΔΦ1=20π/405=0.049π(ラジアン)
である。レンズや回折素子によって生じる波長1nmあたりの位相変化が、0.049πラジアンになる位置ごとに、高さhaの段差を積み重ねて形成することによって、波長変化による収差を補正することができる。また、波長λ2の光に対しては、波長1nmの変化に対する位相変化ΔΦ2は、
ΔΦ2=12π/655=0.018π(ラジアン)
である。さらに、波長λ3の光に対しては、波長1nmの変化に対する位相変化ΔΦ3は、
ΔΦ3=10π/780=0.013π(ラジアン)
である。波長λ1の光に比べて波長λ2、λ3の光では、位相変化が小さいが、レンズや回折素子によって生じる波長1nm変化あたりの収差も小さいので問題はない。
位相段差133aは高さhaを1単位とするが、その整数倍(2倍、3倍・・・)を1単位としても設計波長に対して波面変化を与えず、それぞれからの波長変化に対してのみ波面を変化させることができる。
また、保護層厚の補正は、実施の形態1と同様に、回折素子123の開口数NA3に相当する内周部では、光ビーム4の3次回折光が保護層厚t1の光ディスク51に収束し、光ビーム5の2次回折光が保護層厚t2の光ディスク52に収束し、光ビーム6の2次回折光が保護層厚t3の光ディスク53に収束するよう行われる。また、開口数NA3からNA2に相当する中周部では、光ビーム4の6次回折光が保護層厚t1の光ディスク51に収束し、光ビーム5の4次回折光が保護層厚t2の光ディスク52に収束し、光ビーム6の4次回折光はほとんど発生せず、開口数NA3に開口制限される。さらに、開口数NA2からNA1に相当する外周部では、mを3の倍数以外の整数として、光ビーム4のm次回折光が保護層厚t1の光ディスク51に収束し、光ビーム5と光ビーム6の回折光は、それぞれ光ディスク52、光ディスク53に収束させないよう、回折素子123と屈折型レンズ133が構成される。
図10は、本発明の実施の形態2における対物レンズの変形例を示す拡大断面図である。図10において、本実施の形態の対物レンズ144は、基板表面に位相段差124dが形成された回折素子124と、屈折型レンズ134とから構成される。図11は、図10に示す位相段差124dの部分拡大断面図である。
位相段差124dは、図8に示す位相段差133aと同様の構成を有し、同じ働きをする。つまり、位相段差124dは、波長λ1の光に対して波長の10倍の光路長の差を与える高さhaの段差を、積み重ねて形成され、波長λ2の光に対しては波長の6倍の光路長の差を生じ、波長λ3の光に対しては波長の5倍の光路長の差を生じさせる。波長の整数倍の光路長の差があっても、実質的には位相差を生じないが、波長が設計波長から変化すると、光路長の差が波長の整数倍からずれて、位相変化が生じる。この位相変化を用いることで、波長変化に起因した収差が補正される。
図12は、本発明の実施の形態2に係る対物レンズの他の変形例を示す拡大断面図である。図12において、本実施の形態の対物レンズ145は、基板表面に回折素子と位相段差135aが一体に形成された屈折型レンズ135から構成される。図13は、図12に示す回折素子と位相段差135aの部分拡大断面図である。
回折素子と位相段差135aは、図8に示す回折素子123および位相段差133aと同じ働きをする。すなわち、回折素子は、保護層厚の差による球面収差の補正を行い、位相段差は、波長λ1の光に対しては10倍の光路長の差を生じ、波長λ2の光に対しては波長の6倍の光路長の差を生じ、波長λ3の光に対しては波長の5倍の光路長の差を生じさせる高さhaの段差を積み重ねて、波長変化による収差を補正するように構成される。
以上の説明では、回折素子に凸レンズ作用を持たせている。これは、図2で説明したように、回折素子の凸レンズ作用により、色収差に起因した焦点距離変化を補正するためである。よって、色収差に起因した焦点距離変化を回折素子により補正し、色収差に起因した球面収差を位相段差により補正することにより、設計どおりの性能を得ることができる。なお、実施の形態1と同様に、回折素子に凹レンズ作用を持たせるとことにより、保護層が厚い光ディスク53の記録/再生を行うときの作動距離を確保し、波長変化に対する焦点距離変化を、回折素子を設けたコリメータレンズ等により低減することもできる。
なお、本実施の形態では、一例としてBDと、DVDと、CDとの互換について例示および説明したが、本発明はこの構成に限定されず、HD−DVDと、DVDと、CDとの互換に対しても同様に適用できるものである。すなわち、保護層厚t1が約0.1mmの光ディスクに対して、開口数0.85で記録/再生を行う例について説明したが、HD−DVDとの互換は、保護層厚t1が約0.6mmの光ディスクに対して、開口数0.65で記録/再生を行うことにより実現できる。
以上のように、本実施の形態では、異種ディスクの互換を実現し、さらに、色収差による球面収差も補正でき、波長の変化に対しても、安定に情報の再生や記録を行うことができる。回折素子と位相段差だけで、異種ディスクの互換と色収差補正の問題を解決することができる。
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3を説明する。図14は、本発明の実施の形態3に係る光ヘッドの全体構成を示す断面図である。図14において、21は波長λ1(略405nm)の光を出射する青色レーザ光源を示し、22は波長λ2(略655nm)の光と、波長λ3(略780nm)の光を出射する2波長レーザ光源を示す。28は回折レンズを示し、回折作用と屈折作用をもっており凸レンズとして作用する。30はコリメートレンズ、34は対物レンズを示し、対物レンズ34は、回折素子32と屈折型レンズ33とで構成されている。
54は保護層厚t1が約0.6mmの光ディスクを示し、波長λ1の光ビームによって、開口数NA1で記録/再生される光情報媒体、例えばHD−DVD用の光ディスクである。52は保護層厚t2が約0.6mmの光ディスクを示し、波長λ2の光ビームによって、開口数NA2で記録/再生される光情報媒体、例えばDVD用の光ディスクである。53は保護層厚t3が約1.2mmの光ディスクを示し、波長λ3の光ビームによって、開口数NA3で記録/再生される光情報媒体、例えばCD用の光ディスクである。これらの光ディスクにおける開口数はNA1が0.65、NA2が0.6、NA3が0.45から0.5である。図14において、光ディスク54(実線)、52(破線)53(一点鎖線)は、例示の明瞭化のため、光ビームが入射する面から情報記録面までの保護層のみを示している。
記録密度の高い光ディスク54の記録/再生を行う際には、青色レーザ光源21から出射した波長λ1の光ビーム23がプリズム26を透過して、プリズム29に入射する。プリズム26は、波長λ1の光に対して、一方向の直線偏光を反射し、それと直角方向の直線偏光を透過する偏光分離特性をもった光路分岐素子であり、青色レーザ光源21から出射した光ビーム23の偏光方向は、プリズム26を透過するよう設定されている。また、プリズム29は、波長λ1の光を反射し、波長λ2、λ3の光を透過する光路分岐素子である。プリズム29に入射した光ビーム23は、プリズム29で反射して、コリメートレンズ30よって集光され略平行光になり、波長板31により直線偏光から円偏光に変換される。波長板31は、波長λ1、λ2の光に対しては、1/4波長板として作用し、波長λ3の光に対しては波長板として作用しないよう構成されている。さらに光ビーム23は、回折素子32と屈折型レンズ33から成る対物レンズ34によって絞られ、保護層厚t1を通して、光ディスク54の情報記録面に収束する。
光ディスク54の情報記録面で反射した光ビーム23は、もとの光路を逆にたどって、波長板31により往路とは直角方向の直線偏光に変換されて、プリズム29とプリズム26で反射する。次に検出レンズ35により非点収差が与えられ、光学倍率が変換されて、光検出器36に入射する。光検出器36からの出力信号に演算処理を施すことによって、フォーカス制御に用いられるフォーカス誤差信号、およびトラッキング制御に用いられるトラッキング誤差信号を含めたサーボ信号と、画像および音声情報などの情報信号とが得られる。フォーカス誤差信号は、例えば非点収差法により、またトラッキング誤差信号は、例えばプッシュプル法により得ることができる。
次に、光ディスク52の記録/再生を行う際には、2波長レーザ光源22から出射した波長λ2の光ビーム24がプリズム27を透過し、回折レンズ28により凸レンズ作用を受け、プリズム29を透過する。プリズム27は、波長λ2の光に対して、一方向の直線偏光を反射し、それと直角方向の直線偏光を透過する偏光分離特性をもち、波長λ3の光に対しては一部の光を透過し、一部の光を反射するハーフミラー特性を持った光路分岐素子であり、2波長レーザ光源22から出射した光ビーム24の偏光方向はプリズム27を透過するよう設定されている。また、回折レンズ28の表面には、回折素子28aが形成され、波長λ2の光は、波長λ3の光よりも凸レンズ作用を大きく受ける。プリズム29を透過した光ビーム24は、コリメートレンズ30よって集光され略平行光になり、波長板31により直線偏光から円偏光に変換される。さらに光ビーム24は、回折素子32と屈折型レンズ33から成る対物レンズ34によって絞られ、保護層厚t2を通して光ディスク52の情報記録面に収束する。
光ディスク52の情報記録面で反射した光ビーム24は、もとの光路を逆にたどって、波長板31により往路とは直角方向の直線偏光に変換され、プリズム29を透過して、プリズム27で反射する。次に、検出レンズ37により非点収差が与えられ、光学倍率が変換されて、光検出器38に入射する。光検出器38からの出力信号に演算処理を施すことによって、フォーカス制御に用いられるフォーカス誤差信号、およびトラッキング制御に用いられるトラッキング誤差信号を含めたサーボ信号と、画像および音声情報などの情報信号とが得られる。
次に、光ディスク53の記録/再生を行う際には、2波長レーザ光源22から出射した波長λ3の光ビーム25の一部がプリズム27を透過し、回折レンズ28により凸レンズ作用を受け、プリズム29を透過する。
波長λ3の光は、波長λ2の光よりも小さい凸レンズ作用を受け、コリメートレンズ30で屈折した光ビーム25は、発散光になる。さらに、光ビーム25は、波長板31を透過して、回折素子32と屈折型レンズ33からなる対物レンズ34によって絞られ、保護層厚t3を通して光ディスク53の情報記録面に収束する。
光ディスク53の情報記録面で反射した光ビーム25は、もとの光路を逆にたどって、プリズム27で一部の光が反射し、検出レンズ37により非点収差が与えられ、光学倍率が変換されて、光検出器38に入射する。光検出器38の出力信号に演算処理を施すことによって、フォーカス制御に用いられるフォーカス誤差信号、およびトラッキング制御に用いられるトラッキング誤差信号を含めたサーボ信号と、画像および音声情報などの情報信号とが得られる。
次に、図15と図16を用いて、回折素子32および屈折型レンズ33の働きと構成を説明する。図15は、本発明の実施の形態3おける対物レンズ34の一例を示す拡大断面図であり、対物レンズ34を構成する回折素子32と屈折型レンズ33により収束する光の伝搬を示す。図15において、対物レンズ34は開口数NA1が0.65に設定されており、回折素子32の回折次数は、実施の形態1の回折素子12と同様である。屈折型レンズ33は、回折素子32によって回折作用を受けた光ビーム23を、保護層厚t1を通して光ディスク54の記録面上へ収束し、波長の違いによる回折作用の差を利用して、波長λ2の光ビーム24を、保護層厚t2を通して光ディスク52の記録面上へ収束し、波長λ3の光ビーム25を、保護層厚t3を通して光ディスク53の記録面上へ収束するように構成されている。
光ビーム23は実線で示す光路を伝搬して点Q4に収束し、光ビーム24は破線で示す光路を伝搬して点Q5に収束し、光ビーム25は一点鎖線で示す光路を伝搬して点Q6に収束する。保護層厚が同じである光ディスク54と52に対して、異なる波長により記録/再生を行うため、回折素子32は、屈折型レンズ33の波長の差で発生する収差を補正することになる。このため、回折素子32の回折だけでは、光ディスク53の保護層で発生する球面収差を十分に補正できず、光ビーム25を発散光にして補正している。実施の形態1および2においても、光ディスク53の保護層で発生する球面収差を補正するため、光ビーム6を発散光にしてもよい。このように構成した場合、作動距離を拡大する点で効果がある。
図16は、図15に示す回折素子32の平面(紙面上側)、および断面(紙面下側)を示す図である。図16に示すように、回折素子32の回折格子は同心円状をなし、内周部32aと、中周部32bと、外周部32cとで回折格子の構成が異なっている。回折素子32の内周部32aは、開口数NA3に相当する部分であり、波長λ1の光ビーム23に対しては3次回折光を最も強く発生し、波長λ2の光ビーム24に対しては2次回折光を最も強く発生し、波長λ3の光ビーム25に対しては2次回折光を最も強く発生する格子形状を有する。
そして、光ビーム23の3次回折光が、屈折型レンズ33を通して、光ディスク54に収束し、光ビーム24の2次回折光は、屈折型レンズ33を通して、光ディスク52に収束し、光ビーム25の2次回折光が、屈折型レンズ33を通して、光ディスク53に収束する。回折格子の深さh1を実施の形態1のそれと同じ2.38μmに設定することにより、同様の回折次数で同様の強度を得ることができる。なお、光ビーム25は、発散光で回折素子32に入射するが、入射角が小さいため、回折次数と強度に関しては、実施の形態1とほぼ同等である。
回折素子32の中周部32bは、開口数NA3からNA2に相当する部分であり、波長λ1の光ビーム23に対しては6次回折光を最も強く発生し、波長λ2の光ビーム24に対しては4次回折光を最も強く発生し、波長λ3の光ビーム25に対しては3次回折光を最も強く発生して4次回折光はほとんど発生しない格子形状を有する。
そして、光ビーム23の6次回折光が、屈折型レンズ33を通して光ディスク54に収束し、光ビーム24の4次回折光が、屈折型レンズ33を通して光ディスク52に収束する。中周部32bの回折格子の深さh2を、実施の形態1のそれと同じく、内周部32aの回折格子の深さh1の2倍である4.76μmに設定することにより、同様の回折次数で同様の強度を得ることができる。よって、波長λ3が780nmのとき、3次回折光が最大になって、4次回折光はほとんど発生しない。
回折素子32の外周部32cは、開口数NA2からNA1に相当する部分であり、波長λ1の光ビーム23に対して、m(mは3の倍数以外の整数で、例えば2)次回折光を最も強く発生する格子形状を有する。この光ビーム23の2次回折光が、屈折型レンズ33を通して、光ディスク54に収束する。外周部32cの回折格子の深さh3を、実施の形態1のそれと同じく、1.59μmに設定すると、波長λ1の光は2次回折光の強度が最大となる。光ビーム24、25については、外周部32cの回折格子の深さh3を、内周部32aの回折格子の深さh1のm/3倍、例えば2/3倍に設定した場合、2次回折の2/3に対応する次数がないため、光ディスク52、53に収束する回折光が無くなり、開口制限することができる。
回折素子32の内周部32aと、中周部32bと、外周部32cとでは回折次数が変わるが、回折格子のピッチPを、実施の形態1のそれと同様に設定することにより、波長変化に対する回折角の変化を一定にすることができる。これにより、波長が変化しても光ディスクに収束する光の位置にずれが発生せず、保護層厚の差による収差を補正できる。この結果、光ビーム23、24、25は、回折素子32と屈折型レンズ33を通して、各々に合った開口数で、光ディスク54、52、53に収束できる。
また、回折素子32の外周部32cにおいて、光ビーム23の2次回折光を利用したが、他の回折次数も利用することができる。この領域における光ビーム23の回折次数をmとした場合、内周部32aの回折次数との比、m/3が整数にならなければ、光ビーム24も光ビーム25も、内周部32aおよび中周部32bの回折光とは異なる位置に収束する。つまり、次数mを3の倍数以外の整数に設定すれば、光ビーム24は、光ディスク52に収束する回折光が無くなり、光ビーム25は、光ディスク53に収束する回折光が無くなるため、開口制限することができる。
次に、図14に示す回折レンズ28の働きについて、図17を用いて説明する。図17は、回折レンズ28とコリメートレンズ30を伝搬する光ビーム24、25の様子を示す図である。図17において、回折素子28aは凹レンズ作用をもち、回折レンズ28は、回折素子28aの凹レンズ作用と、屈折によるレンズ作用とが合わさって凸レンズ作用をもたらす。波長λ3の光は波長λ2の光よりも波長が長いため、回折素子28aによる回折効果が大きく、凹レンズ作用が大きくなる。このため、波長λ3の光が回折レンズ28で受ける凸レンズ作用は、波長λ2の光が受ける凸レンズ作用より小さくなる。
一方、回折レンズ28とコリメートレンズ30は、波長λ2の光ビーム24を集光して略平行光になるよう構成されている。このため、回折レンズ28で受ける凸レンズ作用が小さい波長λ3の光ビーム25は、コリメートレンズ30で集光しても平行光にはならず、発散光になる。よって、光ビーム24は略平行光として、光ビーム25は発散光として、対物レンズ34に入射し、前記のような動作をする。
上記の構成では、回折素子32と屈折型レンズ33との相対位置に誤差があると、設計通りの波面が屈折型レンズ33に入射せず、光ディスク54、52、53へ入射する光の波面に収差が生じ、収束性能を劣化させる。このため、回折素子32を屈折型レンズ33と一体に形成することが望ましい。
図18は、本発明の実施の形態3における対物レンズの変形例を示す拡大断面図であり、対物レンズ341を構成する屈折型レンズ331の表面に、回折素子321が形成されている。図18において、回折素子321は、図15の回折素子32と同じ働きをするものである。
つまり、回折素子321の開口数NA3に相当する内周部の領域では、光ビーム23の3次回折光が保護層厚t1の光ディスク54に収束し、光ビーム24の2次回折光が保護層厚t2の光ディスク52に収束し、光ビーム25の2次回折光が保護層厚t3の光ディスク53に収束する。
また、回折素子321の開口数NA3からNA2に相当する中周部の領域では、光ビーム23の6次回折光が保護層厚t1の光ディスク54に収束し、光ビーム24の4次回折光が保護層厚t2の光ディスク52に収束し、光ビーム25の4次回折光はほとんど発生せず、開口数NA3に開口制限される。
さらに、回折素子321の開口数NA2からNA1に相当する外周部の領域では、回折次数mを3の倍数以外の整数に設定した場合、光ビーム23のm次回折光が保護層厚t1の光ディスク54に収束し、光ビーム24、25の回折光が、それぞれ光ディスク52、53に収束しないよう、回折素子321と屈折型レンズ331が構成される。
図15に示す対物レンズ34の構成では、平面上に回折素子32を形成し、凸レンズ作用を持たせたため、回折素子32に入射する光が傾くと収束性能が劣化する、いわゆる軸外性能が悪いが、図18に示す対物レンズ341の構成では、レンズ面に回折素子を形成するため、軸外性能も良好になる。このように構成することにより、回折素子と屈折型レンズの位置ずれがなく、軸外性能の良い、対物レンズを得ることができる。
なお、本実施の形態では、一例としてHD−DVDと、DVDと、CDとの互換について例示および説明したが、本発明はこの構成に限定されず、BDと、DVDと、CDとの互換に対しても同様に適用できるものである。すなわち、保護層厚t1が約0.6mmの光ディスクに対して、開口数0.65で記録/再生を行う例について説明したが、BDとの互換は、保護層厚t1が約0.1mmの光ディスクに対して、開口数0.85で記録/再生を行うことにより実現できる。
さらに、実施の形態2と同様に、図15に示す回折素子32あるいは屈折レンズ33に、波長λ1の波長の10倍である高さhaの位相段差を設けることにより、波長が設計波長から変化した場合の球面収差を低減することができる。図19は、本発明の実施の形態3における対物レンズの他の変形例を示す拡大断面図である。図19において、本実施の形態の対物レンズ342は、表面に位相段差と回折素子322が形成された屈折型レンズ332から成る。対物レンズ342の構成および作用は、実施の形態2の説明で用いた図12に示す対物レンズ145のそれらと同様である。よって、詳細な説明は省略する。
以上のように、実施の形態3によれば、2波長レーザ光源を用い、複数種の光ディスクに対して保護層厚の差による球面収差を補正して、各光ディスクに対応した開口数に設定することができる。また、対物レンズを1つの成形レンズで構成することも可能であり、安価で安定した収束性能を得ることができる。
(実施の形態4)
図20は、本発明の実施の形態4に係る光ディスク装置の概略構成を示す断面図である。図20において、光ディスク100は、ターンテーブル105に搭載され、モータ104によって回転される。実施の形態1、2または3にて例示および説明した光ヘッド102は、光ディスク100の所望の情報が存在するトラック位置まで、駆動装置101によって移送される。
光ヘッド102は、光ディスク100との位置関係に対応して、フォーカス誤差信号FEおよびトラッキング誤差信号TEを電気回路103へ送る。電気回路103は、これらの信号FE、TEに基づいて、光ヘッド102へ、光ヘッド102内の対物レンズを駆動させるための信号LCを送る。この信号LCに応じて、光ヘッド102は、光ディスク100に対してフォーカス制御とトラッキング制御とを行い、情報の読み出し、書き込み又は消去を行う。
以上の説明において、搭載する光ディスク100は、保護層厚がt1、t2、t3のいずれかの光ディスクである。本実施の形態の光ディスク装置107は、実施の形態1、2または3の光ヘッドを用いるので、1つの光ヘッドにより、記録密度の異なる複数の光ディスクに対応することができる。
(実施の形態5)
図21は、本発明の実施の形態5に係るコンピュータの概略構成を示す斜視図である。図21において、コンピュータ109は、実施の形態4に係る光ディスク装置107と、情報の入力を行うためのキーボード111およびマウス112などの入力装置と、入力装置から入力された情報や、光ディスク装置107から読み出した情報などに基づいて、各種演算を行うCPUなどの演算装置108と、演算装置108によって演算された結果の情報を表示するブラウン管や、液晶表示装置などの出力装置110とから構成される。
本実施の形態に係るコンピュータは、実施の形態4に係る光ディスク装置107を備えており、異なる種類の光ディスクに対して安定に情報を記録又は再生できるので、広い用途に使用できる。
(実施の形態6)
図22は、本発明の実施の形態6に係る光ディスクレコーダの概略構成を示す斜視図である。図22において、光ディスクレコーダ115は、実施の形態4に係る光ディスク装置107と、映像および/または音声信号を光ディスクへの記録信号に変換し、この記録信号を光ディスク装置に送る記録信号処理回路113と、光ディスク装置107から得られた再生信号を映像および/または音声信号に変換する再生信号処理回路114とから構成される。この構成によれば、既に記録した部分を再生することも可能となる。さらに、光ディスクレコーダ115は、情報を表示するブラウン管、液晶表示装置などの出力装置110を備えてもよい。
本実施の形態に係る光ディスクレコーダは、前記実施の形態4に係る光ディスク装置107を備えており、異なる種類の光ディスクに対して安定に情報を記録又は再生できるので、広い用途に使用できる。
本発明の特徴的構成をまとめると、以下のようになる。
本発明に係る光ヘッドは、波長λ1の光を出射する第1の光源と、波長λ2の光を出射する第2の光源と、波長λ3の光を出射する第3の光源と、第1の光ディスクに対しては波長λ1の光を開口数NA1で収束し、第2の光ディスクに対しては波長λ2の光を開口数NA2で収束し、第3の光ディスクに対しては波長λ3の光を開口数NA3で収束する対物レンズと、前記第1、第2および第3の光ディスクからの反射光を検出する少なくとも1つの光検出器とを備え、前記対物レンズは、少なくとも回折素子と屈折型レンズから成り、NA1>NA2>NA3の関係にある開口数を有し、前記回折素子は、前記開口数NA3に相当する領域にて、前記第1の光ディスクに収束する波長λ1の光として3次回折光を最も強く発生し、前記第2の光ディスクに収束する波長λ2の光として2次回折光を最も強く発生し、前記第3の光ディスクに収束する波長λ3の光として2次回折光を最も強く発生する格子形状を有し、前記開口数NA3から前記開口数NA2に相当する領域にて、前記第1の光ディスクに収束する波長λ1の光として6次回折光を最も強く発生し、前記第2の光ディスクに収束する波長λ2の光として4次回折光を最も強く発生し、波長λ3の光に対しては3次回折光を最も強く発生する格子形状を有し、前記開口数NA2から前記開口数NA1に相当する領域にて、前記第1の光ディスクに収束する波長λ1の光としてm次回折光を最も強く発生する格子形状を有する回折格子から成ることを特徴とする。
この構成によれば、光学フィルター等の開口制限手段を新たに設けなくとも、前記回折素子と前記屈折型レンズから成る1つの対物レンズを用いるだけで、波長λ1の光の3次回折光、6次回折光、およびm次回折光を開口数NA1で第1の光ディスクに収束させ、波長λ2の光の2次回折光および4次回折光を開口数NA2で第2の光ディスクに収束させ、波長λ3の光の2次回折光を開口数NA3で第3の光ディスクに収束させて、安定に情報を記録/再生することができる。
本発明に係る光ヘッドはさらに、前記波長λ2の光と波長λ3の光を回折する回折レンズを備えることが好ましい。
この構成によれば、各光ディスクに入射する光ビームの開口数を設定でき、波長λ2と波長λ3の2波長光源を用いた光学系において、波長λ3の光を発散光にして、前記対物レンズに入射させることができる。
本発明に係る光ヘッドにおいて、前記回折レンズは、回折作用と屈折作用を有する凸レンズであり、波長λ2の光に対し波長λ3の光よりも大きな凸レンズ作用を与える構造を有することが好ましい。
この構成によれば、波長λ3の光を発散光にすることで、第3の光ディスクの保護層で発生する球面収差を補正することができる。
本発明に係る光ヘッドにおいて、前記対物レンズは、前記回折素子と、前記屈折型レンズと、入射光に位相差を生じさせる段差を複数有する位相段差とから成り、前記位相段差は、1段の深さを波長λ1の光が透過する際に生じる光路長の差が波長λ1の10倍である構造を有することが好ましい。
この構成によれば、波長λ1が変化したときに第1の光ディスクの保護層で発生する球面収差を抑えることができる。
本発明に係る光ヘッドにおいて、前記位相段差は、前記回折素子と一体に形成されることが好ましい。
この構成によれば、色収差に起因した焦点距離の変化を回折素子により補正し、色収差に起因した球面収差を位相段差により補正することが、小型で安価な構成により実現できる。
本発明に係る光ヘッドにおいて、前記回折素子は、前記屈折型レンズの表面に形成されることが好ましい。
この構成によれば、回折素子と屈折型レンズの位置ずれをなくし、軸外性能の良好な対物レンズを小型で安価に実現できる。
本発明に係る光ヘッドにおいて、前記位相段差と前記回折素子は、前記屈折型レンズの表面に形成されることが好ましい。
この構成によれば、色収差に起因した焦点距離の変化を回折素子により補正し、色収差に起因した球面収差を位相段差により補正でき、また回折素子と屈折型レンズの位置ずれをなくし、軸外性能の良好な対物レンズを小型で安価に実現できる。
本発明に係る光ヘッドにおいて、前記保護層の厚みt1、t2およびt3は、t1<t2<t3の関係にあることが好ましい。また、前記保護層の厚みt1が略0.1mmであり、前記保護層の厚みt2が略0.6mmであり、前記保護層の厚みt3が略1.2mmであることが好ましい。さらに、前記開口数NA1が0.85であり、前記開口数NA2が0.6であり、前記開口数NA3が0.45と0.5との間であることが好ましい。
この構成によれば、1つの対物レンズで、保護層の厚みの異なるBD、DVD、およびCDの記録/再生を行うことができる。
または、本発明に係る光ヘッドにおいて、前記保護層の厚みt1、t2およびt3は、t1=t2<t3の関係にあることが好ましい。また、前記保護層の厚みt1が略0.6mmであり、前記保護層の厚みt2が略0.6mmであり、前記保護層の厚みt3が略1.2mmであることが好ましい。さらに、前記開口数NA1が0.65であり、前記開口数NA2が0.6であり、前記開口数NA3が0.45と0.5との間であることが好ましい。
この構成によれば、1つの対物レンズで、保護層の厚みの異なるHD−DVD、DVD、およびCDの記録/再生を行うことができる。
本発明に係る光ヘッドにおいて、前記回折格子は、同心円を成し、鋸歯状の断面形状を有することが好ましい。
この構成によれば、波長λ1、λ2、λ3の光の回折効率を向上させることができる。
本発明に係る光ヘッドにおいて、前記回折格子は、前記開口数NA3に相当する領域にて、波長λ1の光に対して3波長以上の光路長を与え、波長λ2の光に対して2波長以下の光路長を与える深さh1を有し、前記開口数NA3から前記開口数NA2に相当する領域にて、前記深さh1の2倍の光路長を与える深さh2を有し、前記開口数NA2から前記開口数NA1に相当する領域にて、波長λ1の光に対してm波長の光路長を与える深さh3を有し、波長λ1の前記3次回折光と前記6次回折光と前記m次回折光を前記第1の光ディスクに収束し、波長λ2の前記2次回折光と前記4次回折光を前記第2の光ディスクに収束し、波長λ3の前記2次回折光を前記第3の光ディスクに収束するように、前記各領域にて異なるピッチを有することが好ましい。
この構成によれば、回折素子により開口制限を受ける複数の領域で光の回折次数を変えたとしても、波長の変化に対する回折角の変化が一定になり、光ディスクに収束する光の位置にずれがなくなる。
本発明に係る光ヘッドにおいて、前記m次回折光の次数mは、3の倍数以外の整数に設定されることが好ましい。
この構成によれば、回折素子の開口数NA2からNA1に相当する領域にて、第2および第3の波長の光はそれぞれ、第2および第3の光ディスクに収束する回折光が無くなるので、開口制限することができる。
本発明に係る光ヘッドにおいて、前記回折素子の開口数がNA3からNA2に相当する領域の回折格子のピッチを、波長λ1の3次回折光として設計したときの2倍に設定することが好ましい。
この構成によれば、開口数NA3からNA2に相当する領域での波長の変化に対する回折角の変化が、開口数NA3に相当する領域での波長の変化に対する回折角の変化と同じになる。
本発明に係る光ヘッドにおいて、前記回折素子の開口数がNA2からNA1に相当する領域の回折格子のピッチを、波長λ1の3次回折光として設計したときのm/3倍に設定することが好ましい。
この構成によれば、開口数NA2からNA1に相当する領域での波長の変化に対する回折角の変化が、開口数NA3に相当する領域での波長の変化に対する回折角の変化と同じになる。
本発明に係る光ヘッドにおいて、前記回折素子は、凸レンズ作用を有することが好ましい。
この構成によれば、屈折型レンズの色収差を回折素子の色収差で相殺することで、波長の変化に対する焦点距離の変化を低減することができる。
本発明に係る光ヘッドにおいて、前記波長λ1は405nm近傍であり、前記波長λ2は655nm近傍であり、前記波長λ3は780nm近傍である。
本発明に係る対物レンズは、前記回折素子と前記屈折型レンズから成ることを特徴とする。
本発明に係る光ディスク装置は、本発明に係る光ヘッドと、前記第1、第2または第3の光ディスクを回転するモータと、前記光ヘッドから得られる信号に基づいて、前記モータ、前記光ヘッドに含まれる光学レンズ、及び前記第1、第2または第3の光源の少なくともいずれかを制御および駆動する電気回路とを備えたことを特徴とする。
この構成によれば、本発明に係る光ヘッドを備えているので、記録密度の異なる複数の光ディスクに対応することができる。
本発明に係るコンピュータは、本発明に係る光ディスク装置と、入力された情報、及び前記光ディスク装置から再生された情報の少なくともいずれかに基づいて演算を行う演算装置と、前記入力された情報、前記光ディスク装置から再生された情報、及び前記演算装置によって演算された結果の少なくともいずれかを出力する出力装置とを備えたことを特徴とする。
この構成によれば、本発明に係る光ディスク装置を備えており、記録密度の異なる複数の光ディスクに対して安定に情報を記録または再生できるので、広い用途に適応できる。
本発明に係る光ディスクレコーダは、本発明に係る光ディスク装置と、映像および音声信号の少なくとも1つを前記第1、第2または第3の光ディスクへの記録信号に変換し、前記光ディスク装置に送る記録用信号処理回路と、前記光ディスク装置から得られた再生信号を映像および音声信号の少なくとも1つに変換する再生用信号処理回路とを備えたことを特徴とする。
この構成によれば、本発明に係る光ディスク装置を備えており、記録密度の異なる複数の光ディスクに対して安定に映像および/または音声を記録または再生できるので、広い用途に適応できる。
本発明にかかる光ヘッドは、光学フィルター等の開口制限手段なしに、1つの対物レンズを用いて、各光ディスクの保護層厚の差に起因した球面収差を補正でき、異なる種類のディスクの互換再生および互換記録を安定かつ安価に実現できるという利点を有し、光ディスク装置、コンピュータ、光ディスクレコーダなどの機器に適用した場合に有用である。
本発明の実施の形態1に係る光ヘッドの全体構成を示す断面図である。
本発明の実施の形態1における対物レンズの一例を示す拡大断面図である。
本発明の実施の形態1における回折素子の平面(紙面上側)および断面(紙面下側)を示す図である。
本発明の実施の形態1における回折素子の物理的な断面形状(DG)、回折素子を透過する波長λ1、λ2、およびλ3の光の位相変化(PC(λ1)、PC(λ2)、およびPC(λ3))を示す図である。
本発明の実施の形態1における回折格子の深さ(h)に対する波長λ1の光の回折効率をプロットしたグラフである。
本発明の実施の形態1における回折格子の深さ(h)に対する波長λ2の光の回折効率をプロットしたグラフである。
本発明の実施の形態1における回折格子の深さ(h)に対する波長λ3の光の回折効率をプロットしたグラフである。
本発明の実施の形態1における対物レンズの変形例を示す拡大断面図である。
本発明の実施の形態1における対物レンズの他の変形例を示す拡大断面図である。
本発明の実施の形態2における対物レンズの一例を示す拡大断面図である。
本発明の実施の形態2における位相段差の一例を示す拡大断面図である。
本発明の実施の形態2における対物レンズの変形例を示す拡大断面図である。
本発明の実施の形態2における位相段差の変形例を示す拡大断面図である。
本発明の実施の形態2における対物レンズの他の変形例を示す拡大断面図である。
本発明の実施の形態2における位相段差の他の変形例を示す拡大断面図である。
本発明の実施の形態3に係る光ヘッドの全体構成を示す断面図である。
本発明の実施の形態3における対物レンズの一例を示す拡大断面図である。
本発明の第3の実施形態における回折素子の平面(上側)および断面(下側)を示す図である。
本発明の実施の形態3における回折レンズとコリメートレンズを伝搬する光ビームの様子を示す図である。
本発明の実施の形態3における対物レンズの変形例を示す拡大断面図である。
本発明の実施の形態3における対物レンズの他の変形例を示す拡大断面図である。
本発明の実施の形態4に係る光ディスク装置の概略構成を示す断面図である。
本発明の実施の形態5に係るコンピュータの概略構成を示す斜視図である。
本発明の実施の形態6に係る光ディスクレコーダの概略構成を示す斜視図である。
第1の従来例の光ヘッド装置の一例の概略構成を示す断面図である。
第1の従来例の光ヘッド装置における対物レンズの一例を示す拡大断面図である。
第2の従来例の光ヘッド装置の一例の概略構成を示す断面図である。
第4の従来例の光ヘッド装置の一例の概略構成を示す断面図である。
第4の従来例の光ヘッド装置における回折素子の部分拡大断面図である。