本発明はマルチキャリア伝送方式に関するものであり、より特定的には、移動体通信における伝送路応答の変動及び送受信装置内で発生する位相雑音等に起因するキャリア間干渉を軽減する技術に関するものである。
地上波ディジタルテレビジョン放送や無線LAN(Local Area Network)など、マルチパスによる遅延分散を伴う伝送路を介して安定に通信を行う方法として、直交周波数分割多重(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplex)伝送方式(以下、OFDM伝送方式という)に代表されるマルチキャリア伝送方式が広く用いられている。一方、送信装置或いは受信装置又はその両方が移動しながら通信を行う移動体通信においては、ドップラ現象による周波数変動、マルチパスによる遅延分散に起因する受信信号の振幅変動が発生する。また、送信装置または受信装置の周波数変換部において、発振回路の位相雑音によって位相変動が発生する場合もある。OFDM伝送方式は、各サブキャリアの変調波をその周波数スペクトルが互いに重なり合うように密に多重して伝送する方式である。よって、OFDM伝送方式を移動体通信に用いた場合、前述の周波数変動、振幅変動、または位相変動などによってサブキャリア間の直交性が損なわれ、サブキャリア間でキャリア間干渉が発生し、通信品質が劣化するという問題がある。
OFDM伝送方式における従来のキャリア間干渉軽減技術としては、非特許文献1に記載されている方法(以下、セルフキャンセレーション法という)が知られている。このセルフキャンセレーション法は、OFDM伝送方式における複数のサブキャリアを、周波数配置が連続するL個のサブキャリア(Lは2以上の整数)を各々有する複数のグループに分割し、同一グループのL個のサブキャリアの変調に特定の相関を持たせる。これにより、キャリア間干渉が相殺抑圧される。
以下に図面を参照しながら、従来のキャリア間干渉軽減技術であるセルフキャンセレーション法について具体的に説明する。
図11は、上記セルフキャンセレーション法を用いたOFDM伝送方式における送信装置および受信装置の構成を示すブロック図である。図12は、セルフキャンセレーション法を用いたOFDM伝送方式における、(a)変調ベクトルをサブキャリアの周波数軸上に並べたときの該変調ベクトルの配置状態、並びに、(b)変調ベクトル及びキャンセリング復調された復調ベクトルの各信号点配置(複素平面上)を示す図である。図11において、送信装置101は、送信データを入力し、その入力された送信データに基づいて搬送波にOFDM変調を施し、OFDM信号を生成して送出する。送信装置101から送出されたOFDM信号は伝送路103を介して受信装置102で受信される。受信装置102は、伝送路103を経て受信したOFDM信号を復調し、受信データを出力する。
送信装置101は、ベクトル変調部111と、キャンセリング変調部112と、IDFT(Inverse Discrete Fourier Transform)部113と、ガードインターバル付加部114と、周波数変換部115とを備えている。IDFT部113とガードインターバル付加部114は、マルチキャリア変調部126を構成する。以下に送信装置101の各部の動作を説明するが、従来技術の要旨を簡潔に説明するために、OFDM伝送方式における1シンボル当たりの動作について説明する。
OFDM伝送方式における1シンボルごとに、Kビットの送信データが送信装置101に入力される。送信装置101に入力された送信データはベクトル変調部111に供給される。
ベクトル変調部111は、Kビットの送信データを入力する。ベクトル変調部111は、入力したKビットの送信データをG個のグループに分割し、各グループに与えられた(K/G)ビットの送信データに基づいてG個の変調ベクトルを生成し、出力する。ベクトル変調部111が出力する各変調ベクトルは(K/G)ビットの送信データを含むことになる。ここで、K、Gは0より大きい整数である。なお、セルフキャンセレーション法を説明するに当たり、KをGの倍数としても問題は生じないので、以降の説明ではKはGの倍数とする。
ベクトル変調部111が出力するG個の変調ベクトルは、キャンセリング変調部112に供給される。キャンセリング変調部112は、入力されたG個の変調ベクトルをG個のサブキャリアグループにそれぞれ割り当てる。ここで、G個のサブキャリアグループは、N個のサブキャリアを、周波数配置が連続するL個のサブキャリアごとにG個のグループに分割して得られるものである。N=G×Lの関係が成り立つ。
キャンセリング変調部112は、遅延要素をDとする離散フィルタの多項式P(D)=(1−D)(L−1)に基づき、フィルタの係数を定めている。上記離散フィルタの多項式は、フィルタのインパルス応答を表すものである。フィルタの係数は、式P(D)=(1−D)(L−1)を展開することで得られる。その展開式は、Dについての多項式として表される。Dの各次数の係数を、次数0から順にP0、P1、P2、・・・、P(L−1)とすると、展開式は、P(D)=P0+P1D+P2D2+・・・+P(L−1)D(L−1)と表される。なお、P0、P1、P2、・・・、P(L−1)は各々、Pi(但し、0≦i≦(L−1)で且つiは整数)で表すことができる。
上記の如く、G個のサブキャリアグループは、各々、L個のサブキャリアを有する。L個のサブキャリアには、周波数が小さいものから順に0番から(L−1)番の番号が付されている。キャンセリング変調部112は、各サブキャリアグループを構成するi番目(0≦i≦(L−1)で且つiは整数)のサブキャリアにマルチキャリア変調を施す係数付き変調ベクトルを生成する。係数付き変調ベクトルは、各グループに割り当てられた上記変調ベクトルに上記係数Piを乗じることで得られる。これにより、キャンセリング変調部112は、入力したG個の変調ベクトルと、サブキャリアごとに割り当てられたL個の係数Piとに基づき、N個(N=G×L)の係数付き変調ベクトルを生成し、出力する。
なお、Lが2の場合にはP(D)=1−Dとなる(すなわち、P0=1、P1=−1)ので、隣接する2つのサブキャリアを各々変調する変調ベクトルの極性を互いに反転させる(図12(a)参照)。これにより、互いに極性が反転した変調ベクトルの対が構成される。対を構成する2つの変調ベクトルには、同じ送信データが乗せられるものとする。また、Lが2の場合には、隣接する2つのサブキャリアを1グループとして、G=N/2個のグループが構成される。
マルチキャリア変調部126を構成するIDFT部113は、キャンセリング変調部112が出力するN個の係数付き変調ベクトルを入力する。IDFT部113は、入力したN個の係数付き変調ベクトルに逆フーリエ変換を施す。IDFT部113は、逆フーリエ変換後の信号をベースバンドOFDM信号として出力する。
ガードインターバル付加部114は、IDFT部113が出力するベースバンドOFDM信号を入力する。ガードインターバル付加部114は、入力したベースバンドOFDM信号にガードインターバルの信号を付加し、出力する。
周波数変換部115は、ガードインターバル信号を付加したベースバンドOFDM信号を入力する。周波数変換部115は、入力したベースバンドOFDM信号を無線周波数帯域の信号に周波数変換し、無線周波数帯域のOFDM信号を出力する。周波数変換部115が出力するOFDM信号は、送信装置101の出力するOFDM信号として、空中線を介して伝送路103に供給される。
伝送路103を経由した上記OFDM信号は、空中線を介して受信装置102に供給される。
受信装置102は、周波数変換部121、ガードインターバル除去部122、DFT(Discrete Fourier Transform)部123、キャンセリング復調部124、および、ベクトル復調部125からなる。ガードインターバル除去部122とDFT部123は、マルチキャリア復調部127を構成する。以下に受信装置102の各部の動作を説明する。なお、従来技術の要旨を簡潔に説明するために、OFDM伝送方式における1シンボル当たりの動作について説明する。
受信装置102が伝送路103を経由して受信したOFDM信号は、周波数変換部121に供給される。
周波数変換部121は、受信装置102が受信した無線周波数帯域のOFDM信号を入力する。周波数変換部121は、入力したOFDM信号をダウンコンバージョンしてベースバンドOFDM信号を生成し、出力する。
ガードインターバル除去部122は、周波数変換部121が出力するベースバンドOFDM信号を入力する。ガードインターバル除去部122は、入力されたベースバンドOFDM信号からガードインターバル信号を除去し、出力する。
マルチキャリア復調部127を構成するDFT部123は、ガードインターバル信号が除去されたベースバンドOFDM信号を入力する。DFT部123は、入力したベースバンドOFDM信号にフーリエ変換を施してN個の係数付き復調ベクトルを生成し、出力する。
キャンセリング復調部124は、N個の係数付き復調ベクトルを入力する。キャンセリング復調部124は、まず、入力したN個の係数付き復調ベクトルをG個のグループに分割する。次いで、キャンセリング復調部124は、各グループ毎に、各グループのi番目(0≦i≦(L−1))の係数付き復調ベクトルに上記係数Piの逆数を乗じて係数Piを取り去り、係数Piを取り去ったものの総和を求めて復調ベクトルを生成し、出力する。復調ベクトルは、サブキャリアグループごとに1つのベクトルが生成され、出力される。よって、全てのサブキャリアグループについてはG個の復調ベクトルが生成され、出力される。
ベクトル復調部125は、キャンセリング復調部124が出力するG個の復調ベクトルを入力する。ベクトル復調部125は、入力したG個の復調ベクトルからK個の復調データを判定し出力する。
ベクトル復調部125が出力するK個の復調データは、受信装置102から復調データとして出力される。
ここで、セルフキャンセレーション法によるキャリア間干渉軽減技術の原理を説明する。
ドップラ現象により或るサブキャリアに周波数変動が生じた場合、そのサブキャリアと他の複数のサブキャリアとの間にキャリア間干渉が生じる。キャリア間干渉の干渉成分は周波数軸方向に隣接するサブキャリアの間で相関が大きい。すなわち、i番目のサブキャリアの周波数変動により該サブキャリアとk番目のサブキャリアの間に生じるキャリア間干渉の干渉係数をS(i−k)とし、(i+1)番目のサブキャリアの周波数変動により該サブキャリアとk番目のサブキャリアの間に生じるキャリア間干渉の干渉係数をS(i+1−k)とすると、干渉係数同士の間にS(i−k)≒S(i+1−k)なる関係が存在することが知られている(詳細は非特許文献1に記載されている)。
最も簡単な例として、上記グループを構成するサブキャリアの数Lが2である場合について説明する。L=2の場合、上記多項式P(D)の展開式はP(D)=1−Dとなり、P0=1、P1=−1となる。或るサブキャリアグループを構成するi番目と(i+1)番目の2つのサブキャリアで伝送される変調ベクトル(ベクトル変調部111から与えられる)をX(i)とする。P0=1、P1=−1であるから、キャンセリング変調部112はi番目のサブキャリアにP0X(i)=X(i)を、(i+1)番目のサブキャリアにはP1X(i)=−X(i)を割り当ててキャンセリング変調を行う。ここで、周波数変動したi番目及び(i+1)番目の2つのサブキャリアと、k番目のサブキャリアとの間に生じるキャリア間干渉量の差Scは、Sc=X(i)S(i−k)−X(i)S(i+1−k)となる。右辺をX(i)で括ると、Sc=X(i)(S(i−k)−S(i+1−k))となる。キャリア間干渉の干渉係数S(i−k)とS(i+1−k)の間には上記の如くS(i−k)≒S(i+1−k)の関係があり、右辺を左辺に移項すると、S(i−k)−S(i+1−k)≒0となる。よって、上記キャリア間干渉量の差は実質的にゼロ(Sc≒0)となる。つまり、i番目のサブキャリアとk番目のサブキャリア間に生じるキャリア間干渉量と、(i+1)番目のサブキャリアとk番目のサブキャリア間に生じるキャリア間干渉量の差は実質的にゼロとなり、これらキャリア間干渉量は互いに相殺し合うことになる。よって、キャリア間干渉の発生が軽減される。
しかしながら上記従来の技術では、キャンセリング変調部112において、L個のサブキャリアを1つのサブキャリアグループとし、各グループにつき、同じ送信データが乗った1つの変調ベクトルしか伝送しない。よって、上記従来の技術は、全サブキャリアに各々独立に変調ベクトルを割り当てる通常のOFDM伝送方式に比べて信号伝送効率がL分の一になり、伝送効率が低下するという課題を有していた。また、通常のOFDM伝送方式と同じ伝送効率を実現しようとすると、ベクトル変調部111において、1つの変調ベクトルに対して通常のOFDM伝送方式に比べてL倍の送信データを含めなければならない。この場合、送信データの信号点間距離が短くなる。信号点間距離は、雑音に対する耐性を示すものである。信号点間距離が大きい程、雑音に強い。よって、送信データを多く含めることは信号点間距離を小さくすることに繋がり、伝送品質の劣化を招くという課題を有していた。例えば、16QAMは、1個の変調ベクトルあたり4ビットの情報を伝送可能である。この16QAMを用いて通常のOFDM伝送を行う場合と同じ伝送効率を上記従来技術で実現しようとすると、L=2としても1個の変調ベクトルあたり8ビット伝送可能な256QAMを用いる必要がある。この場合、伝送品質が劣化することは容易に理解できる。
また、上記従来技術では、キャンセリング変調部112において、フィルタリングの多項式P(D)に基づき極性を互いに反転させた変調ベクトルにより、隣接する2つのサブキャリアに対して各々キャンセリング変調を施す。この場合、キャンセリング変調部112のフィルタリング効果によって、IDFT部113が出力するベースバンドOFDM信号の時間応答波形はシンボル中央部の時間に高出力の信号が集中し、シンボル中央部の信号振幅が大きくなる(図13下段参照)。図13上段に通常のOFDM信号の電力−時間応答、図13下段に上記従来技術(セルフキャンセレーション法)を用いた場合のOFDM信号の電力−時間応答を示す。図13において、横軸はシンボル内のサンプリング時間、縦軸は平均電力を1としたときの瞬時電力値である。一般にOFDM伝送方式は送信平均電力に対して送信ピーク電力が高く、最大出力電力が高い高周波電力増幅器が必要であるという課題を有している。ところが、セルフキャンセレーション法を用いるとシンボル中央部において更に送信ピーク電力が高くなる。よって、上記従来技術は最大出力電力が通常のOFDM伝送方式よりも高い高周波電力増幅器を必要とするという課題を有している。例えば、セルフキャンセレーション法において上記サブキャリア数Lを2とした場合、送信ピーク電力は通常のOFDM伝送方式に比べて2倍になる(図13参照)。
また、上記従来技術では、図12(a)に例示する如く、極性が反転し且つ同一の送信データが乗った変調ベクトルの対を構成する。これは、変調ベクトルの信号点数(信号点配置を表す複素平面上の)に対し、キャンセリング復調された復調ベクトルの信号点数を増加させないためである(図12(b)参照)。信号点数を増加させなければ、信号点を送信側と受信側とで1対1で得ることができ(図12(b)参照)、受信側で容易に送信データを復元することができる。図12(b)に示される例では、変調ベクトルの信号点数が4(×印の数)であり、キャンセリング復調後の復調ベクトルの信号点数も4(●の数)である。
キャンセリング復調は、上記したキャリア間干渉の特性に基づき、隣接するサブキャリアに対応する復調ベクトル同士の引き算により行われる。極性を反転させた信号点は、信号点配置図の原点を中心とした点対称の位置に移る(図12(b)参照)。よって、隣接するサブキャリアに対応する復調ベクトル同士の引き算をしても、ベクトルの大きさが2倍になる、すなわち、信号点配置上は信号点の位置が外側にずれるだけである。図12(b)に示される如く、キャンセリング復調の前後で信号点の数は変化しない。
一方、図14(a)に示されるように極性の反転を行わない変調ベクトルを使用すると、キャンセリング復調後に信号点数が増加する。なお、極性の反転を行わない場合、全ての変調ベクトルは各々、対応する送信データに応じた向きを有する。図14(a)では、図示の便宜上、全ての変調ベクトルの向きを揃えて図示している。図14(b)に示される例では、変調ベクトルの信号点数が4(×印の数)であるのに対し、キャンセリング復調された復調ベクトルの信号点数が9(●の数)となる。これは、4個の信号点につき、各信号点同士のベクトルの引き算を行うため、結果として9個の信号点が現れるのである。この場合、何らかの手段を講じない限り、受信側において元の送信データを一義的に復元することができない。これは、データの正確な伝送ができないことを意味する。
このような理由により、従来、キャリア間干渉の軽減を行うために、各グループに割り当てられるサブキャリア数Lが例えば2の場合には、各サブキャリアグループにつき極性が反転した変調ベクトルの対を構成していた。しかしながら、サブキャリアをグループ分けした場合、各グループのサブキャリアに同じ送信データしか乗せないことから、伝送効率が1/Lになってしまうことは上述の通りである。なお、上記信号点の増加は、キャリア間干渉の軽減のためにキャンセリング復調を行った場合に生じるものであって、キャンセリング復調を行わない場合には生じない。
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、伝送効率を低下させることなく、周波数変動、振幅変動、または位相変動などで発生するキャリア間干渉を軽減することができるマルチキャリア伝送方式を提供することを目的とする。
本発明に係る伝送方式における送信装置は、互いに直交するサブキャリアにマルチキャリア変調を施してディジタルデータを伝送するマルチキャリア伝送方式における送信装置であって、
送信データを入力し、上記送信データにプリコード処理を施してプリコードされた変調情報を生成し、該プリコードされた変調情報を出力するプリコード部と、
上記プリコードされた変調情報を複素平面上の変調ベクトルに変換して出力するベクトル変調部と、
上記変調ベクトルで上記サブキャリアに変調を施してマルチキャリア変調信号を生成し、該マルチキャリア変調信号を出力するマルチキャリア変調部とを備え、
上記マルチキャリア変調部は、上記サブキャリアを上記変調ベクトルにより1対1の関係で変調し、
受信装置で上記マルチキャリア変調信号がマルチキャリア復調され、該復調により得られる復調ベクトルにキャリア間干渉を相殺するフィルタリング処理が施されたとき、該フィルタリング処理により得られるフィルタリングされた復調ベクトルは、上記プリコードされた変調情報に一義的に対応する、ことを特徴とする。
本発明におけるマルチキャリア伝送には、OFDM(直交周波数分割多重変調)伝送の他、ウェーブレット変調等を用いた伝送も含まれる。
本発明によれば、プリコード部が送信データにプリコード処理を施す。このプリコード処理は、受信装置においてキャリア間干渉を相殺するフィルタリング処理が施された復調ベクトルが、送信装置においてプリコードされた変調情報に一義的に対応するように、送信データに予め施しておく符号化処理である。プリコード処理を行うことで、受信装置におけるフィルタリング処理によって信号点の数が増加しても、受信装置において、プリコードされた変調情報を一義的に導出することができる。プリコードされた変調情報を一義的に導出できれば、該変調情報に基づいて、送信データを正確に復元することができる。また、マルチキャリア変調部が、サブキャリアを変調ベクトルにより1対1の関係で変調する。よって、各サブキャリアに個別に送信データが乗ることになり、伝送効率が低下しない。
従って、本発明によれば、伝送効率を低下させることなく、周波数変動、振幅変動、または位相変動などで発生するキャリア間干渉を軽減し、受信装置において正確に送信データを復元することが可能となる。
本発明においては、上記プリコード処理の開始に当たり、上記プリコード部は、上記送信データを複数のグループに分割し、各グループが有する上記送信データを仮の変調情報とし、上記プリコード部は、プリコード処理を行うための式(1)に従い上記仮の変調情報の最初の情報X
1にプリコード処理を施す際に必要とされる(L−1)個の変調情報X’
2−L,・・・,X’
0を、変調情報X
1の入力前に初期値として予め入力し保持しておくことが好ましい。
式(1)
この場合、プリコード部に所定の初期値を予め入力しておくので、確実にプリコード処理を行うことができる。
本発明においては、上記プリコード部は、剰余器を含み且つ遅延要素をDとしてインパルス応答が1/(1−D)(L−1)(Lは2以上の整数)で表されるIIR(Infinite Inpulse Response)フィルタで構成されることが好ましい。
本発明に係るマルチキャリア伝送方式の受信装置は、互いに直交する複数のサブキャリアにマルチキャリア変調を施してディジタルデータを伝送するマルチキャリア伝送方式における受信装置であって、
受信したマルチキャリア変調信号を入力し、入力したマルチキャリア変調信号を復調し、復調して得られた復調ベクトルを出力するマルチキャリア復調部と、
上記復調ベクトルを入力し、周波数軸方向に隣接する上記サブキャリアに各々対応する上記復調ベクトルにキャリア間干渉を相殺するフィルタリング処理を施し、該フィルタリング処理により得られたフィルタリングされた復調ベクトルを出力するキャンセリングフィルタ部と、
上記フィルタリングされた復調ベクトルから受信データを判定して出力するベクトル復調部とを備え、
上記マルチキャリア復調部は、上記サブキャリアを1対1の関係で変調した上記変調ベクトルを復調し、
上記フィルタリングされた復調ベクトルは、送信装置で送信データにプリコード処理を施して得られたプリコードされた変調情報に一義的に対応し、且つ、その対応関係を上記ベクトル復調部で判定可能である、ことを特徴とする。
本発明によれば、キャンセリングフィルタ部が、キャリア間干渉を相殺するフィルタリング処理を施す。よって、キャリア間干渉が低減する。また、フィルタリングされた復調ベクトルは、送信装置においてプリコードされた変調情報に一義的に対応する。ベクトル復調部は、その対応関係を判定可能である。よって、フィルタリング処理により信号点の数が増加しても、ベクトル復調部は、フィルタリングされた復調ベクトルに対応する送信データを正確に復元することができる。また、マルチキャリア復調部は、サブキャリアを1対1の関係で変調した変調ベクトルを復調する。各サブキャリアに個別に送信データが乗るので、伝送効率が低下しない。
従って、本発明によれば、伝送効率を低下させることなく、周波数変動、振幅変動、または位相変動などで発生するキャリア間干渉を軽減し、該受信装置において正確に送信データを復元することが可能となる。
本発明においては、上記フィルタリング処理を開始するに当たり、上記キャンセリングフィルタ部は、フィルタリング処理を行うための式(2)に従い上記復調ベクトルの最初の値Y
1にフィルタリング処理を施す際に必要とされる(L−1)個の上記復調ベクトルY
2−L,・・・,Y
0を、上記復調ベクトルY
1の入力前に初期値として予め送信装置から受信入力し保持しておくことが好ましい。
式(2)
この場合、キャンセリングフィルタ部に所定の初期値を予め受信入力しておくので、確実にキャリア間干渉のキャンセリング処理を行うことができる。
本発明においては、受信した上記マルチキャリア変調信号の周波数変動、振幅変動、または位相変動のうち少なくともいずれか一つの変動量を推定する変動量推定部を更に備え、
上記変動量推定部は、上記推定された変動量に応じて、上記キャンセリングフィルタ部のフィルタ係数を制御することが好ましい。
この場合、周波数変動、位相変動、または振幅変動などの変動によって生じる伝送路応答のずれを補正し、変動の影響を更に軽減することができる。
本発明においては、上記キャンセリングフィルタ部は、遅延要素をDとしてインパルス応答が(1−D)(L−1)(Lは2以上の整数)で表される遅延器を有するFIR(Finite Inpulse Response)フィルタを含むことが好ましい。
本発明においては、上記受信装置が移動する速度を検出する移動速度測定部を更に備え、
上記移動速度測定部により得られた移動速度情報に応じて、上記キャンセリングフィルタ部のフィルタ係数を制御することが好ましい。
この場合、特に周波数変動の影響を更に軽減することができる。
本発明においては、上記受信装置は、移動体の速度パルス発生部を含み、
上記移動速度測定部は、上記速度パルス発生部が出力する速度パルスに基づき、上記受信装置の移動速度情報を求めることが好ましい。
この場合、特に周波数変動の影響を更に軽減することができる。
本発明においては、上記移動速度測定部は、所定の時間間隔で上記受信装置の位置情報を取得し、上記位置情報と上記時間間隔に基づき、上記受信装置の移動速度情報を求めることが好ましい。
この場合、特に周波数変動の影響を更に軽減することができる。
本発明に係るマルチキャリア伝送方式の受信装置は、互いに直交するサブキャリアにマルチキャリア変調を施してディジタルデータを伝送するマルチキャリア伝送方式における受信装置であって、
送信装置から受信したマルチキャリア変調信号を入力し、上記マルチキャリア変調信号を復調し、復調して得られた復調ベクトルを出力するマルチキャリア復調部と、
上記復調ベクトルを入力し、周波数軸方向に隣接する上記サブキャリアに各々対応する上記復調ベクトルに対してキャリア間干渉を相殺するフィルタリング処理を施し、該フィルタリング処理により得られたフィルタリングされた復調ベクトルを出力するキャンセリングフィルタ部と、
上記フィルタリングされた復調ベクトルを入力し、上記フィルタリング処理の状態変数を用いたトレリス遷移に基づいて上記フィルタリングされた復調ベクトルの復号処理を行い、該復号処理により得られた受信データを出力するトレリス復号部とを備え、
上記マルチキャリア復調部は、上記サブキャリアを1対1の関係で変調した上記変調ベクトルを復調する、ことを特徴とする。
本発明によれば、キャンセリングフィルタ部が、キャリア間干渉を相殺するフィルタリング処理を施す。よって、キャリア間干渉が低減する。また、トレリス復号部が、フィルタリングされた復調ベクトルを入力し、フィルタリング処理の状態変数を用いたトレリス遷移に基づいて、フィルタリングされた復調ベクトルの復号処理を行い、該復号処理により得られた受信データを出力する。よって、フィルタリング処理により信号点の数が増加しても、送信装置において送信データにプリコード処理を施すことなく、受信装置において送信データを正確に復元することができる。また、マルチキャリア復調部は、サブキャリアを1対1の関係で変調した変調ベクトルを復調する。各サブキャリアに個別に送信データが乗るので、伝送効率が低下しない。
従って、本発明によれば、伝送効率を低下させることなく、周波数変動、振幅変動、または位相変動などで発生するキャリア間干渉を軽減し、該受信装置において正確に送信データを復元することが可能となる。しかも、プリコード部を含まない一般の送信装置から信号を受信し、これらの効果を奏することができる。
本発明によれば、全てのサブキャリアに各々独立に変調を施す。よって、伝送効率を劣化させずに、周波数変動、振幅変動、または位相変動などで発生するキャリア間干渉を軽減し、高品質な移動体通信を実現することができる。
図1は、本発明の実施の形態1における、マルチキャリア伝送方式の送信装置および受信装置の構成を示すブロック図である。
図2は、本発明の実施の形態1における、キャンセリングフィルタ部の構成例を示すブロック図である。
図3は、本発明の実施の形態1における、(a)変調ベクトルをサブキャリアの周波数軸上に並べたときの該変調ベクトルの配置状態、並びに、(b)変調ベクトル及びキャンセリングフィルタ処理された復調ベクトルの各信号点配置(複素平面上)を示す図である。
図4は、本発明の実施の形態1における、プリコード部の構成例を示すブロック図である。
図5は、本発明の実施の形態1における、マルチキャリア変調部の構成例を示すブロック図である。
図6は、本発明の実施の形態1における、マルチキャリア復調部の構成例を示すブロック図である。
図7は、本発明の実施の形態1における、プリコード部の演算及びキャンセリングフィルタ部の演算を示す図である。
図8は、本発明の実施の形態2における、マルチキャリア伝送方式の受信装置の構成を示すブロック図である。
図9は、本発明の実施の形態3における、マルチキャリア伝送方式の受信装置の構成の一部を示すブロック図である。
図10は、本発明の実施の形態4における、マルチキャリア伝送方式の受信装置の構成の一部を示すブロック図である。
図11は、セルフキャンセレーション法を用いた従来のOFDM伝送方式の送信装置および受信装置の構成を示すブロック図である。
図12は、セルフキャンセレーション法を用いた従来のOFDM伝送方式における、(a)変調ベクトルをサブキャリアの周波数軸上に並べたときの該変調ベクトルの配置状態、並びに、(b)変調ベクトル及びキャンセリング復調された復調ベクトルの各信号点配置(複素平面上)を示す図である。
図13は、セルフキャンセレーション法を用いた従来のOFDM伝送方式の電力−時間応答を示す図である。
図14は、セルフキャンセレーション法を用いた従来のOFDM伝送方式において変調ベクトルの極性を反転させない場合の、(a)変調ベクトルをサブキャリアの周波数軸上に並べたときの該変調ベクトルの配置状態、並びに、(b)変調ベクトル及びキャンセリング復調された復調ベクトルの各信号点配置(複素平面上)を示す図である。
符号の説明
201 送信装置
202、2020 受信装置
211 プリコード部
212 ベクトル変調部
213 マルチキャリア変調部
222 マルチキャリア復調部
223 キャンセリングフィルタ部
224 ベクトル復調部
225 トレリス復号部
226 変動量推定部
227 移動速度測定部
以下本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるマルチキャリア伝送方式に基づいた送信装置および受信装置の構成を示すブロック構成図である。
送信装置201は、送信データを入力し、入力された送信データに基づいてマルチキャリア変調を施し、マルチキャリア信号を生成して送出するものである。送信装置201から送出されたマルチキャリア信号は伝送路203を介して受信装置202に与えられる。受信装置202は、伝送路203を経て受信したマルチキャリア信号を復調し、受信データを出力する。
送信装置201は、プリコード部211と、ベクトル変調部212と、マルチキャリア変調部213、及び周波数変換部214を備えている。以下に送信装置201の各部の動作を説明するが、本発明の要旨を簡潔に説明するために、マルチキャリア伝送における1シンボルあたりの動作について説明する。
1シンボルごとに、Kビットの送信データが送信装置201に入力される。送信装置201に入力された送信データはプリコード部211に供給される。
プリコード部211におけるプリコード処理は、受信装置102のベクトル復調部224が復調ベクトルから復調データを容易に判定できるようにするためのものである。
プリコード部211は、Kビットの送信データを入力し、入力されたKビットの送信データをN個のグループに分割する。この分割処理により仮の変調情報が生成される。プリコード部211は、各グループが有する(K/N)ビットの送信データ、すなわち仮の変調情報に後述するプリコード処理を施し、N個の変調情報を生成して出力する。ここで、プリコード部211は、受信装置202のキャンセリングフィルタ部223の処理に対応するプリコード処理を行う。K、Nは0より大きい整数である。本実施の形態1を説明するに当たって、KをNの倍数としても問題は生じないので、以降の説明ではKはNの倍数とする。
ベクトル変調部212は、プリコード部211が出力するN個のプリコードされた変調情報を入力する。ベクトル変調部212は、入力した変調情報に基づき変調ベクトルを生成し、該N個の変調ベクトルを出力する。
マルチキャリア変調部213は、ベクトル変調部212が出力するN個の変調ベクトルを入力する。マルチキャリア変調部213は、そのN個の変調ベクトルでN個のサブキャリアに各々変調を施してベースバンドのマルチキャリア変調信号を生成し、出力する。
周波数変換部214は、マルチキャリア変調部213が出力するベースバンドのマルチキャリア変調信号を入力する。周波数変換部214は、入力されたベースバンドのマルチキャリア変調信号を所定の無線周波数帯の信号に周波数変換し、周波数変換した信号をマルチキャリア変調信号として出力する。周波数変換部214が出力するマルチキャリア変調信号は、送信装置201の出力するマルチキャリア変調信号として、空中線を介して伝送路203に供給される。
伝送路203を経由した上記マルチキャリア変調信号は、空中線を介して受信装置202に供給される。
受信装置202は、周波数変換部221、マルチキャリア復調部222、キャンセリングフィルタ部223、及びベクトル復調部224を備えている。以下に受信装置202の各部の動作を説明する。本発明の要旨を簡潔に説明するために、マルチキャリア伝送における1シンボルあたりの動作について説明する。
受信装置202が伝送路203を経由して受信したマルチキャリア変調信号は、周波数変換部221に供給される。
周波数変換部221は、受信装置202が受信したマルチキャリア変調信号を入力する。周波数変換部221は、入力されたマルチキャリア変調信号をベースバンド帯域の信号に周波数変換し、周波数変換した信号をベースバンドのマルチキャリア変調信号として出力する。
マルチキャリア復調部222は、周波数変換部221が出力するベースバンドのマルチキャリア変調信号を入力する。マルチキャリア復調部222は、N個のサブキャリアに対応するマルチキャリア変調信号を各々復調してN個の復調ベクトルを生成し、出力する。
キャンセリングフィルタ部223は、マルチキャリア復調部222が出力するN個の復調ベクトルを入力する。詳細は後述するが、キャンセリングフィルタ部223は、隣接するサブキャリアに各々対応する復調ベクトルに個別にフィルタリング処理を施し、これによりN個のフィルタリングされた復調ベクトルを生成し、出力する。
ベクトル復調部224は、キャンセリングフィルタ部223が出力するN個のフィルタリングされた復調ベクトルを入力する。ベクトル復調部224は、そのフィルタリングされた復調ベクトルからKビットの復調データを判定し、出力する。
ベクトル復調部224の出力するKビットの復調データは、受信装置102から復調データとして出力される。
図2は、本発明の実施の形態1における受信装置102のキャンセリングフィルタ部223の構成例を示すブロック図である。図3(a)は、本発明の実施の形態1における変調ベクトルをサブキャリアの周波数軸上に並べたときの該変調ベクトルの配置状態を示す図である。図3(b)は、実施の形態1における変調ベクトル及びキャンセリングフィルタ処理された復調ベクトルの各信号点配置(複素平面上)を示す図である。なお、図3(b)において、×印は、ベクトル変調部212から出力される変調ベクトルの一例を信号点で表したものである。●印は、キャンセリングフィルタ部223から出力されるフィルタリング処理された復調ベクトルの一例を信号点で表したものである。
図2に示されるキャンセリングフィルタ部223は、マルチキャリア復調部222からN個の復調ベクトルを順次入力する。キャンセリングフィルタ部223は、入力したN個の復調ベクトル(図3参照)に、1対1の関係でN個のサブキャリアを対応させる。なお、サブキャリアを変調ベクトルでマルチキャリア変調する処理は、マルチキャリア変調部213で行われる。図3(a)に示す例では、変調ベクトルの向きを全て一方向に揃えているが、これは便宜的なものであって、送信データに応じて信号点(図3(b)参照)の位置が異なれば変調ベクトルの向きも異なる。N個のサブキャリアには、その周波数軸方向の配置順に1番からN番までの番号が付されている。N個の復調ベクトルは、順にY1、Y2、・・・、YNと表される。キャンセリングフィルタ部223は、フィルタリングのためにフィルタリングの式P(D)=(1−D)(L−1)(Lは2以上の整数)を用いる。式P(D)=(1−D)(L−1)を展開すると、多項式P(D)=P0+P1D+P2D2+・・・+P(L−1)D(L−1)が得られる。キャンセリングフィルタ部223は以下の式(1)を用いてN個のフィルタリングされた復調ベクトルY’1、Y’2、・・・、Y’Nを求める。キャンセリングフィルタ部223は、求めた復調ベクトルを順次出力する。
式(1)(特許請求の範囲に記載した式(2)に相当)
キャンセリングフィルタ部223はFIR(Finite Impulse Response)型フィルタとして構成することができる。例えば、上記フィルタリングの式P(D)=(1−D)(L−1)においてフィルタ長Lを2とすると、P(D)=(1−D)となる。すなわち、式P(D)の展開式においてP0=1、P1=−1となる。この場合、キャンセリングフィルタ部223は図2に示されるように構成することができる。図2に示されるように、キャンセリングフィルタ部223は、遅延器301と、係数付与器302及び303と、加算器304とを含む。キャンセリングフィルタ部223は、マルチキャリア復調部222からN個の復調ベクトルYiを順次入力する。遅延器301は、順次入力された復調ベクトルYiを1サンプル分遅延させて出力する。遅延器301は、復調ベクトルYiが入力されている時刻に1サンプル前の復調ベクトルYi−1を出力する。入力された復調ベクトルYiには、係数付与器302でフィルタ係数”1”が乗算される。この係数は「P0=1」に基づき設定されるものである。遅延器301が出力する復調ベクトルYi−1には、係数付与器303でフィルタ係数”−1”が乗算される。この係数は「P1=−1」に基づき設定されるものである。加算器304において、係数付与器302と係数付与器303で各々係数が乗算された復調ベクトルの和が求められる。これにより、フィルタリングされた復調ベクトルY’iが順次求められる。キャンセリングフィルタ部223は、フィルタリングされた復調ベクトルY’iを順次出力する。
背景技術の欄で述べたように、i番目のサブキャリアとk番目のサブキャリア間に生じるキャリア間干渉と、(i+1)番目のサブキャリアとk番目のサブキャリア間に生じるキャリア間干渉の和は実質的にゼロとなり、これらキャリア間干渉は互いに相殺し合う。よって、キャンセリングフィルタ部223においてフィルタリングされた復調ベクトルY’iは干渉成分が実質的にゼロとなる。つまり、隣接するサブキャリアが各々他のサブキャリアに及ぼすキャリア間干渉は、多項式P(D)に基づくフィルタリング作用で互いに相殺される。従って、周波数変動、振幅変動、または位相変動などで発生するキャリア間干渉は、キャンセリングフィルタ部223において軽減することができる。また、実施の形態1では、N個の変調ベクトルをN個のサブキャリアに各々割り当てるので、変調ベクトルとサブキャリアが1対1に対応する。よって、上記従来技術と異なり、伝送効率が低下しない。
図4は、本発明の実施の形態1における送信装置201のプリコード部211の構成例を示すブロック図である。プリコード部211は、キャンセリングフィルタ部223をパーシャルレスポンスフィルタとみなして非特許文献2に記載されるように構成することができる。プリコード部211は、ベクトル復調部224においてキャンセリングフィルタ部223が出力するフィルタリングされた復調ベクトルから復調データを判定する際に、その判定を容易にするためのものである。プリコード部211は、キャンセリングフィルタ部223での処理に対応して送信データを予め符号化する。以下、プリコード部211の構成及び動作を詳細に説明する。
プリコード部211は、まず、入力されたKビットの送信データをN個のグループに分割して仮の変調情報X1,X2,・・・,XNを生成する。プリコード部211は、以下の式(2)に従って仮の変調情報X1,X2,・・・,XNの符号化を行う。これにより、プリコード部211は、N個の変調情報X’1,X’2,・・・,X’Nを生成し、出力する。
式(2)(特許請求の範囲に記載した式(1)に相当)
例えば、キャンセリングフィルタ部223のフィルタ長Lを2としてフィルタリングの式P(D)=(1−D)とした場合、キャンセリングフィルタ部223に対応するプリコード部211は図4に示されるように構成することができる。図4に示されるように、プリコード部211は、分割器401と、加算器402と、剰余器403と、遅延器404とを含む。分割器401は、プリコード部211が入力するKビットの送信データを入力する。分割器401は、入力された送信データをN個のグループに分割して仮の変調情報X1,X2,・・・,XNを生成し、順次出力する。仮の変調情報は、Xi(1≦i≦N、iは整数)と表すことができる。遅延器404は、プリコード部211が順次出力するプリコードされた変調情報X’iを入力し、入力した情報を1サンプル分遅延して出力する。1サンプル前の変調情報はX’i−1と表される。加算器402は、分割器401が出力する仮の変調情報Xiと遅延器404が出力する1サンプル前のプリコードされた変調情報X’i−1の和を求める。剰余器403は、加算器402が出力する加算結果を多値数M(Mは2以上の整数)で割った剰余を求める。剰余器403は、求めた剰余をプリコードされた変調情報X’iとして出力する。
ベクトル変調部212における変調規則にM値PAM(Pulse Amplitude Modulation)などの振幅変調を用いる場合、仮の変調情報Xiおよびプリコードされた変調情報X’iはM個の実数値で表される。剰余器403は、M個の実数値を各々Mで割った剰余を求める。なおMが2の場合、変調規則は2値PAMとなり、BPSK(Binary Phase Shift Keying)と等価となる。
ベクトル変調部212における変調規則にM値QAM(Quadrature Amplitude Modulation)などの直交振幅変調を用いる場合、仮の変調情報Xiおよび変調情報X’iは、m個の実数部とm個の虚数部とを有するm2個の複素数値で表される。なお、M=m2である。剰余器403は、実数部の値および虚数部の値を各々Mで割った剰余を求める。なお、mが2(すなわち、Mが4)の場合、変調規則は4値QAMとなり、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)と等価となる。
ここで、プリコード部211が上記式(2)に従ってN個の変調情報X’1,X’2,・・・,X’Nを順次求める際、最初に変調情報X’1を求める。変調情報X’1を求めるには、遅延器404が出力する値として予め(L−1)個の変調情報X’2−L,・・・,X’0が必要となる。そこで、変調情報X’2−L,・・・,X’0には、予め既知の値が与えられるものとする。プリコード部211はそれらの変調情報X’2−L,・・・,X’0を変調情報X’1、X’2,・・・,X’Nに先行して入力保持し、送出すればよい。例えば、L=2の場合を想定した図4に示されるプリコード部211においては、N個の変調情報X’1,X’2,・・・,X’Nを求める際に、遅延器404が出力する値として1個の変調情報X’0が予め必要となる。すなわち、分割器401が仮の変調情報X1を出力するのと同時に遅延器404が変調情報X’0を出力する必要がある。この場合、変調情報X’0を既知の値として予め遅延器404に保持しておくとともに、分割器401が仮の変調情報X1を出力するのと同期して遅延器404から変調情報X’0を出力すればよい。
また、キャンセリングフィルタ部223で式(1)に従ってN個のフィルタリングされた復調ベクトルY’1、Y’2、・・・、Y’Nを求める際、最初にフィルタリングされた復調ベクトルY’1を求める。復調ベクトルY’1を求めるには、遅延器301が出力する値として予め(L−1)個の復調ベクトルY2−L,・・・,Y0が必要となる。そこで、プリコード部211が送出する既知の上記(L−1)個の変調情報X’2−L,・・・,X’0に対応する復調ベクトルY2−L、・・・、Y0を、キャンセリングフィルタ部223が予め入力しておけばよい。受信装置202は、復調ベクトルY2−L、・・・、Y0を送信装置201から予め受信しておき、その受信した復調ベクトルをキャンセリングフィルタ部223が入力する。例えば、L=2の場合を想定した図2に示されるキャンセリングフィルタ部223においては、N個のフィルタリングされた復調ベクトルY’1、Y’2、・・・、Y’Nを順次求める際に、遅延器301が出力する値として復調ベクトルY0が予め必要となる。すなわち、キャンセリングフィルタ部223が復調ベクトルY1を入力するのと同時に遅延器301が復調ベクトルY0を出力する必要がある。この場合、キャンセリングフィルタ部223に復調ベクトルY1が入力されるまでに遅延器301に復調ベクトルY0を先行して受信し入力しておけばよい。
以上の構成によれば、送信装置201におけるプリコード部211は、送信データをN個のグループに分割し、分割したデータにプリコード処理を施してN個の変調情報を生成する。ベクトル変調部212は、N個の変調情報からN個の変調ベクトルを生成する。マルチキャリア変調部213は、N個の変調ベクトルによりN個のサブキャリアを各々マルチキャリア変調する。よって、N個のサブキャリア全てに各々独立に送信データが乗せられるため、伝送効率が低下しない。また、受信装置202におけるキャンセリングフィルタ部223は、隣接するサブキャリア間のキャリア間干渉特性に基づきフィルタリング処理を施し、キャリア間干渉を相殺する。よって、周波数変動、振幅変動、または位相変動などで発生するキャリア間干渉を軽減することができる。また、送信装置201において、従来の如くサブキャリアを2個ずつにグループ分けし、各グループに割り当てられる変調ベクトルの極性を隣接するサブキャリア間で反転させるといった処理をしない。よって、マルチキャリア変調部213から出力されるマルチキャリア変調信号の時間応答波形は,図13上側に示されるように比較的平坦となる。上記従来技術の如くシンボル中央部の時間に高出力の信号が集中し、シンボル中央部の信号振幅が大きくなるといった不都合は生じない。従って、送信装置201における高周波電力増幅器の最大出力電力を上げずに済む。また、後述の実施例で示すように、キャンセリング処理を行って信号点数が増加しても、送信側でプリコード処理を行うことにより、受信側で一意的に元の送信データを復元することができる。
なお、本実施の形態においては、マルチキャリア伝送方式の一例としてOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)伝送方式を挙げることができる。OFDM伝送方式を用いた場合は、マルチキャリア変調部213およびマルチキャリア復調部222を各々、図5および図6に示されるように構成することができる。
図5に示されるように、マルチキャリア変調部213は、IDFT部231と、ガードインターバル付加部232とを含んでいる。IDFT部231は、マルチキャリア変調部213に入力されたN個の変調ベクトルを入力し、入力された変調ベクトルに逆フーリエ変換を施してベースバンド帯域のOFDM信号を生成し、出力する。ガードインターバル付加部232は、IDFT部231が出力するベースバンド帯域のOFDM信号を入力し、入力したベースバンド帯域のOFDM信号に周期拡張したガードインターバルの信号を付加する。ガードインターバル付加部232は、ガードインターバルの信号を付加したベースバンド帯域のマルチキャリア変調信号をマルチキャリア変調部213から出力する。
図6に示されるように、マルチキャリア復調部222は、ガードインターバル除去部241と、DFT部242とを含む。ガードインターバル除去部241は、マルチキャリア復調部222が入力するベースバンド帯域のマルチキャリア変調信号からガードインターバルの信号を除去して出力する。DFT部242は、ガードインターバル除去部241が出力する信号をフーリエ変換してN個の復調ベクトルを求める。次いでDFT部242は、N個の復調ベクトルをマルチキャリア復調部222から出力する。
(実施例)
以下、実施の形態1についての実施例を紹介する。プリコード部211及びキャンセリングフィルタ部223の作用を、図2、3、4、及び7を参照しつつ説明する。図7は、プリコード部211で行われる演算処理と、キャンセリングフィルタ部223で行われる演算処理とを並べて示す図である。この例では、マルチキャリア変調方式の多値数Mが4である場合を想定する。具体的な変調方式は特に限定されるものではないが、例えば、QAMを用いることができる。キャンセリングフィルタ部223のフィルタ長Lを2とし、フィルタの多項式P(D)=(1−D)とする。図7は、i番目の変調情報X’i及びi番目の復調ベクトルY’iを求める演算のすべての組み合わせを示している。図7では、各々の列が、左端列から順に、Xi、X’i−1、X’i、Yi、Yi−1、Y’iを示している。
図4において、プリコード部211に入力された送信データは、まず分割器401に入力される。分割器401は、入力した送信データを2ビットずつに分割し、分割した2ビットを1シンボルに割り当てる。送信データを2ビットずつに分割することで、送信データは4個の値に符号化される。これにより、送信データは、[0,1,2,3]の4値(すなわち多値数4)を持つ仮の変調情報Xiに変換され、分割器401から出力される。加算器402は、i番目の仮の変調情報Xiと、遅延器404に保持されている(i−1)番目の変調情報X’i−1とを合算する。(i−1)番目の変調情報X’i−1も[0,1,2,3]の4個の値を持つ。その合算値は、剰余器403に入力される。剰余器403は、入力された合算値を多値数4で割って余りを求める。剰余器403で求められた余りは、i番目の変調情報X’iとしてプリコード部211から出力される。ここで、i番目の変調情報X’iは剰余器403において多値数4で割った余りであるため、図11に示される如く[0,1,2,3]の4個の値を持つ。すなわち、i番目の仮の変調情報Xiと(i−1)番目の変調情報X’i−1とからi番目の変調情報X’iが得られる。得られた変調情報X’iは、ベクトル変調部212において複素平面上の変調ベクトルに変換される。得られた変調ベクトルは、マルチキャリア変調部213においてサブキャリアのマルチキャリア変調に用いられる。得られたマルチキャリア変調信号は、周波数変換部214において無線通信に適した周波数帯域の信号に周波数変換され、送信装置201から送出される。
送信装置201から送出されたマルチキャリア変調信号は、受信装置202で受信される。受信装置202において、マルチキャリア変調信号は、周波数変換器221においてベースバンド帯域のマルチキャリア変調信号に変換される。ベースバンド帯域のマルチキャリア変調信号は、マルチキャリア復調器222において復調される。復調された信号は、キャンセリングフィルタ部223においてフィルタリング処理される。図2において、キャンセリングフィルタ部223にi番目の復調ベクトルYiが入力されるとき、遅延器301には既に(i−1)番目の復調ベクトルYi−1が保持されている。i番目の復調ベクトルYiには係数付与器302でフィルタ係数”1”が乗算され、(i−1)番目の復調ベクトルYi−1には係数付与器303でフィルタ係数”−1”が乗算される。各々フィルタ係数が乗算されたYiとYi−1は、加算器304で合算される。加算器304で得られた合算結果は、i番目のフィルタリングされた復調ベクトルY’iとしてキャンセリングフィルタ部223から出力される。すなわち、i番目のフィルタリングされた復調ベクトルY’iは、i番目の復調ベクトルYiから(i−1)番目の復調ベクトルYi−1を減算したものになる。これは、隣接するサブキャリアに各々対応する2つの復調ベクトル同士の引き算をしていることを意味する。
送信装置201と受信装置202間の伝送においてキャリア間干渉以外に伝送誤りがないものとする。つまり、i番目の復調ベクトルYiはi番目の変調情報X’iと等しく、(i−1)番目の復調ベクトルYi−1は(i−1)番目の変調情報X’i−1と等しいものとする。この場合、i番目のフィルタリングされた復調ベクトルY’iは図7の右端列に示されるような値となる。フィルタリングされた復調ベクトルY’iは、キャンセリングフィルタ部223の出力である。図7から、i番目のフィルタリングされた復調ベクトルY’iが”0”の場合は、左端列に示されるようにi番目の仮の変調情報Xiとして”0”が送信されたことが分かる。同様に、Y’iが”1”または”−3”の場合はXiとして”1”が送信されたことが分かる。Y’iが”2”または”−2”の場合はXiとして”2”が送信されたことが分かる。Y’iが”3”または”−1”の場合はXiとして”3”が送信されたことが分かる。すなわち、i番目のフィルタリングされた復調ベクトルY’iを観測すれば、送信されたi番目の仮の変調情報Xiを一意に推定することができる。仮の変調情報Xiを一意に求まれば、該仮の変調情報Xiに対応する送信データを求めることができる。従って、実施の形態1では、図3(b)に示される如くキャンセリング復調直後に信号点の数が増加しても、ベクトル復調部224において、容易且つ一意に送信データを復元することができる。
キャンセリングフィルタ部223の処理では、i番目のフィルタリングされた復調ベクトルY’iは、(i−1)番目の復調ベクトルYi−1に基づき求められる。本実施例においては、プリコード部211の作用によって、(i−1)番目の復調ベクトルYi−1すなわち(i−1)番目の変調情報X’i−1がどのような値であっても、i番目のフィルタリングされた復調ベクトルYiから送信されたi番目の仮の変調情報Xiを一義的に推定することができる。以上の説明により、送信装置においてプリコード処理を行うことで、上記従来技術の如くサブキャリアをL個ずつにグループ分けし、各グループを構成する隣接サブキャリア間で変調ベクトルの関係を一意に決定させなくても、受信側において正確に送信データを復元できることが分かる。よって、実施の形態1は、上記従来技術の如く信号の伝送効率が1/Lになってしまうことがなく、伝送効率が低下しない。
(実施の形態2)
図8は、本発明の実施の形態2におけるマルチキャリア伝送方式の受信装置の構成を示すブロック図である。
図8に示されるように、受信装置2020は、周波数変換部221と、マルチキャリア復調部222と、キャンセリングフィルタ部223と、トレリス復号部225とを含む。受信装置2020は、実施の形態1における受信装置202(図1参照)のベクトル復調部224を、トレリス復号部225に置き換えたものであり、その他の構成については同一とすることができる。以下の説明では、実施の形態1と同じ構成については同一の参照符号を付してその説明を省略する。
トレリス復号部225は、キャンセリングフィルタ部223が出力するN個のフィルタリングされた復調ベクトルを入力する。トレリス復号部225は、フィルタリングされた復調ベクトルのトレリス復号を行ってK個の復調データを生成し、出力する。トレリス復号部225から出力されたK個の復調データは、受信装置2020から出力される。
トレリス復号部225は、キャンセリングフィルタ部223の遅延器301が保持する(L−1)個の復調ベクトルを状態変数とするトレリス遷移に基づいて、入力された復調ベクトルから尤も確からしい遷移を求める。トレリス復号部225は、その尤も確からしい遷移を生起するデータを、復調データとして得る。トレリス復号部225は、復号アルゴリズムとして例えば、ビタビアルゴリズム(非特許文献3)、BCJRアルゴリズム(非特許文献4)、MAP(最大事後確率)復号などを用いることで構成することができる。
この受信装置2020によれば、キャンセリングフィルタ部223でフィルタリング処理を施し、トレリス復号部225でキャンセリングフィルタ部223の状態遷移を復号する。よって、受信装置2020は、信号の伝送効率を劣化させることなく、周波数変動、振幅変動、または位相変動などにより発生するキャリア間干渉を低減し、送信データを正確に復元することができる。また、送信装置201において従来の如く隣接する2つのサブキャリアを各々変調する変調ベクトルの極性を互いに反転させるといった処理をしない。よって、マルチキャリア変調部213から出力されるマルチキャリア変調信号の時間応答波形は比較的平坦となる。従って、送信装置201における高周波電力増幅器の最大出力電力を上げずに済む。
なお、受信装置202にトレリス復号部225を用いる場合は、送信装置201でプリコード処理を行わなくてもよい。この場合、プリコード部211に代えて、分割器401を設ければよい。プリコード部211に代えて、分割器401を設けたものは、OFDM伝送用の一般の送信装置として既に存在する。よって、本実施の形態に係る送信装置201に代えて、一般の送信装置を使用することができる。これにより、その一般の送信装置を使用しても、実施の形態1における上記の優れた効果を奏することができる。実施の形態2は、放送用送信装置等の如くプリコード部211を設けることに制約がある場合に特に有効である。
(実施の形態3)
図9は、本発明の実施の形態3におけるマルチキャリア伝送方式の受信装置の一部を示すブロック図である。
実施の形態3における受信装置(図示せず)は、図9に示される如く、キャンセリングフィルタ部223の係数付与部302、303に変動量推定部226が接続されている点が実施の形態1と異なっており、他の構成は実施の形態1と同一である。実施の形態1と同一の構成については同じ参照符号を付してその説明を省略する。変動量推定部226は、周波数変動、振幅変動、または位相変動などの変動量を推定する。変動量推定部226は、例えば、マルチキャリア変調信号に付加された既知のパイロット信号から伝送路応答を推定し、その伝送路応答の時間変動から周波数変動、振幅変動、または位相変動などの変動量を推定する。変動量推定部226で推定された変動量に基づき、キャンセリングフィルタ部223は、その係数付与器302、303の係数を制御することができる。
変動量推定部226で推定された変動量に応じて係数付与器302、303の係数を制御することで、周波数変動、位相変動、または振幅変動などの変動によって生じる伝送路応答のずれを補正し、変動の影響を更に軽減することができる。
(実施の形態4)
図10は、本発明の実施の形態4におけるマルチキャリア伝送方式の受信装置の一部を示すブロック図である。実施の形態4における受信装置(図示せず)は、図10に示される如く、キャンセリングフィルタ部223の係数付与部302、303に移動速度測定部227が接続されている点が実施の形態1と異なっており、他の構成は実施の形態1と同一である。実施の形態1と同一の構成については同じ参照符号を付してその説明を省略する。移動速度測定部227は、例えば、受信装置202が自動車等の移動体上に設置され、或いは、受信装置202が人に持ち運びされる場合を想定して設けられている。移動速度測定部227における移動速度測定手段は特に限定されるものではないが、例えば、車速パルス発生器等、移動体の速度パルス発生器を用いて受信装置202の移動速度を検出することができる。或いは、移動速度測定部227は、GPS等の位置測定技術を用いて、所定の時間間隔で移動体の現在位置を測定し、その所定の時間に移動した距離から移動速度を算出してもよい。
一般に、ドップラ現象に起因するキャリア間干渉は、送信装置或いは受信装置の移動速度との相関が高い。よって、移動速度測定部227より得られた受信装置202の移動速度情報に基づいて、キャンセリングフィルタ部223の係数付与器302、303の係数を制御することで、特に周波数変動の影響を更に軽減することができる。
なお、以上に述べた全実施の形態は、集積回路であるLSIとして実現することができる。各実施の形態は、個別に1チップ化されてもよいし、或いは、全実施の形態を含むように1チップ化されてもよい。
なお、上記LSIは、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSI等の各種LSIを含むものとする。
また、各実施の形態の集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路又は汎用プロセッサで実現してもよい。或いは、LSI製造後にプログラミングすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続或いは設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用しても良い。
さらには、半導体技術の進歩又は派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適応等が可能性としてあり得る。
本発明にかかるマルチキャリア伝送方式における送信装置および受信装置は、ドップラ現象による周波数変動などで発生するキャリア間干渉を軽減することができ、移動体通信等において有用である。
本発明はマルチキャリア伝送方式に関するものであり、より特定的には、移動体通信における伝送路応答の変動及び送受信装置内で発生する位相雑音等に起因するキャリア間干渉を軽減する技術に関するものである。
地上波ディジタルテレビジョン放送や無線LAN(Local Area Network)など、マルチパスによる遅延分散を伴う伝送路を介して安定に通信を行う方法として、直交周波数分割多重(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplex)伝送方式(以下、OFDM伝送方式という)に代表されるマルチキャリア伝送方式が広く用いられている。一方、送信装置或いは受信装置又はその両方が移動しながら通信を行う移動体通信においては、ドップラ現象による周波数変動、マルチパスによる遅延分散に起因する受信信号の振幅変動が発生する。また、送信装置または受信装置の周波数変換部において、発振回路の位相雑音によって位相変動が発生する場合もある。OFDM伝送方式は、各サブキャリアの変調波をその周波数スペクトルが互いに重なり合うように密に多重して伝送する方式である。よって、OFDM伝送方式を移動体通信に用いた場合、前述の周波数変動、振幅変動、または位相変動などによってサブキャリア間の直交性が損なわれ、サブキャリア間でキャリア間干渉が発生し、通信品質が劣化するという問題がある。
OFDM伝送方式における従来のキャリア間干渉軽減技術としては、非特許文献1に記載されている方法(以下、セルフキャンセレーション法という)が知られている。このセルフキャンセレーション法は、OFDM伝送方式における複数のサブキャリアを、周波数配置が連続するL個のサブキャリア(Lは2以上の整数)を各々有する複数のグループに分割し、同一グループのL個のサブキャリアの変調に特定の相関を持たせる。これにより、キャリア間干渉が相殺抑圧される。
以下に図面を参照しながら、従来のキャリア間干渉軽減技術であるセルフキャンセレーション法について具体的に説明する。
図11は、上記セルフキャンセレーション法を用いたOFDM伝送方式における送信装置および受信装置の構成を示すブロック図である。図12は、セルフキャンセレーション法を用いたOFDM伝送方式における、(a)変調ベクトルをサブキャリアの周波数軸上に並べたときの該変調ベクトルの配置状態、並びに、(b)変調ベクトル及びキャンセリング復調された復調ベクトルの各信号点配置(複素平面上)を示す図である。図11において、送信装置101は、送信データを入力し、その入力された送信データに基づいて搬送波にOFDM変調を施し、OFDM信号を生成して送出する。送信装置101から送出されたOFDM信号は伝送路103を介して受信装置102で受信される。受信装置102は、伝送路103を経て受信したOFDM信号を復調し、受信データを出力する。
送信装置101は、ベクトル変調部111と、キャンセリング変調部112と、IDFT(Inverse Discrete Fourier Transform)部113と、ガードインターバル付加部114と、周波数変換部115とを備えている。IDFT部113とガードインターバル付加部114は、マルチキャリア変調部126を構成する。以下に送信装置101の各部の動作を説明するが、従来技術の要旨を簡潔に説明するために、OFDM伝送方式における1シンボル当たりの動作について説明する。
OFDM伝送方式における1シンボルごとに、Kビットの送信データが送信装置101に入力される。送信装置101に入力された送信データはベクトル変調部111に供給される。
ベクトル変調部111は、Kビットの送信データを入力する。ベクトル変調部111は、入力したKビットの送信データをG個のグループに分割し、各グループに与えられた(K/G)ビットの送信データに基づいてG個の変調ベクトルを生成し、出力する。ベクトル変調部111が出力する各変調ベクトルは(K/G)ビットの送信データを含むことになる。ここで、K、Gは0より大きい整数である。なお、セルフキャンセレーション法を説明するに当たり、KをGの倍数としても問題は生じないので、以降の説明ではKはGの倍数とする。
ベクトル変調部111が出力するG個の変調ベクトルは、キャンセリング変調部112に供給される。キャンセリング変調部112は、入力されたG個の変調ベクトルをG個のサブキャリアグループにそれぞれ割り当てる。ここで、G個のサブキャリアグループは、N個のサブキャリアを、周波数配置が連続するL個のサブキャリアごとにG個のグループに分割して得られるものである。N=G×Lの関係が成り立つ。
キャンセリング変調部112は、遅延要素をDとする離散フィルタの多項式P(D)=(1−D)(L-1)に基づき、フィルタの係数を定めている。上記離散フィルタの多項式は、フィルタのインパルス応答を表すものである。フィルタの係数は、式P(D)=(1−D)(L-1)を展開することで得られる。その展開式は、Dについての多項式として表される。Dの各次数の係数を、次数0から順にP0、P1、P2、・・・、P(L-1)とすると、展開式は、P(D)=P0+P1D+P2D2+・・・+P(L-1)D(L-1)と表される。なお、P0、P1、P2、・・・、P(L-1)は各々、Pi(但し、0≦i≦(L−1)で且つiは整数)で表すことができる。
上記の如く、G個のサブキャリアグループは、各々、L個のサブキャリアを有する。L個のサブキャリアには、周波数が小さいものから順に0番から(L−1)番の番号が付されている。キャンセリング変調部112は、各サブキャリアグループを構成するi番目(0≦i≦(L−1)で且つiは整数)のサブキャリアにマルチキャリア変調を施す係数付き変調ベクトルを生成する。係数付き変調ベクトルは、各グループに割り当てられた上記変調ベクトルに上記係数Piを乗じることで得られる。これにより、キャンセリング変調部112は、入力したG個の変調ベクトルと、サブキャリアごとに割り当てられたL個の係数Piとに基づき、N個(N=G×L)の係数付き変調ベクトルを生成し、出力する。
なお、Lが2の場合にはP(D)=1−Dとなる(すなわち、P0=1、P1=−1)ので、隣接する2つのサブキャリアを各々変調する変調ベクトルの極性を互いに反転させる(図12(a)参照)。これにより、互いに極性が反転した変調ベクトルの対が構成される。対を構成する2つの変調ベクトルには、同じ送信データが乗せられるものとする。また、Lが2の場合には、隣接する2つのサブキャリアを1グループとして、G=N/2個のグループが構成される。
マルチキャリア変調部126を構成するIDFT部113は、キャンセリング変調部112が出力するN個の係数付き変調ベクトルを入力する。IDFT部113は、入力したN個の係数付き変調ベクトルに逆フーリエ変換を施す。IDFT部113は、逆フーリエ変換後の信号をベースバンドOFDM信号として出力する。
ガードインターバル付加部114は、IDFT部113が出力するベースバンドOFDM信号を入力する。ガードインターバル付加部114は、入力したベースバンドOFDM信号にガードインターバルの信号を付加し、出力する。
周波数変換部115は、ガードインターバル信号を付加したベースバンドOFDM信号を入力する。周波数変換部115は、入力したベースバンドOFDM信号を無線周波数帯域の信号に周波数変換し、無線周波数帯域のOFDM信号を出力する。周波数変換部115が出力するOFDM信号は、送信装置101の出力するOFDM信号として、空中線を介して伝送路103に供給される。
伝送路103を経由した上記OFDM信号は、空中線を介して受信装置102に供給される。
受信装置102は、周波数変換部121、ガードインターバル除去部122、DFT(Discrete Fourier Transform)部123、キャンセリング復調部124、および、ベクトル復調部125からなる。ガードインターバル除去部122とDFT部123は、マルチキャリア復調部127を構成する。以下に受信装置102の各部の動作を説明する。なお、従来技術の要旨を簡潔に説明するために、OFDM伝送方式における1シンボル当たりの動作について説明する。
受信装置102が伝送路103を経由して受信したOFDM信号は、周波数変換部121に供給される。
周波数変換部121は、受信装置102が受信した無線周波数帯域のOFDM信号を入力する。周波数変換部121は、入力したOFDM信号をダウンコンバージョンしてベースバンドOFDM信号を生成し、出力する。
ガードインターバル除去部122は、周波数変換部121が出力するベースバンドOFDM信号を入力する。ガードインターバル除去部122は、入力されたベースバンドOFDM信号からガードインターバル信号を除去し、出力する。
マルチキャリア復調部127を構成するDFT部123は、ガードインターバル信号が除去されたベースバンドOFDM信号を入力する。DFT部123は、入力したベースバンドOFDM信号にフーリエ変換を施してN個の係数付き復調ベクトルを生成し、出力する。
キャンセリング復調部124は、N個の係数付き復調ベクトルを入力する。キャンセリング復調部124は、まず、入力したN個の係数付き復調ベクトルをG個のグループに分割する。次いで、キャンセリング復調部124は、各グループ毎に、各グループのi番目(0≦i≦(L−1))の係数付き復調ベクトルに上記係数Piの逆数を乗じて係数Piを取り去り、係数Piを取り去ったものの総和を求めて復調ベクトルを生成し、出力する。復調ベクトルは、サブキャリアグループごとに1つのベクトルが生成され、出力される。よって、全てのサブキャリアグループについてはG個の復調ベクトルが生成され、出力される。
ベクトル復調部125は、キャンセリング復調部124が出力するG個の復調ベクトルを入力する。ベクトル復調部125は、入力したG個の復調ベクトルからK個の復調データを判定し出力する。
ベクトル復調部125が出力するK個の復調データは、受信装置102から復調データとして出力される。
ここで、セルフキャンセレーション法によるキャリア間干渉軽減技術の原理を説明する。
ドップラ現象により或るサブキャリアに周波数変動が生じた場合、そのサブキャリアと他の複数のサブキャリアとの間にキャリア間干渉が生じる。キャリア間干渉の干渉成分は周波数軸方向に隣接するサブキャリアの間で相関が大きい。すなわち、i番目のサブキャリアの周波数変動により該サブキャリアとk番目のサブキャリアの間に生じるキャリア間干渉の干渉係数をS(i−k)とし、(i+1)番目のサブキャリアの周波数変動により該サブキャリアとk番目のサブキャリアの間に生じるキャリア間干渉の干渉係数をS(i+1−k)とすると、干渉係数同士の間にS(i−k)≒S(i+1−k)なる関係が存在することが知られている(詳細は非特許文献1に記載されている)。
最も簡単な例として、上記グループを構成するサブキャリアの数Lが2である場合について説明する。L=2の場合、上記多項式P(D)の展開式はP(D)=1−Dとなり、P0=1、P1=−1となる。或るサブキャリアグループを構成するi番目と(i+1)番目の2つのサブキャリアで伝送される変調ベクトル(ベクトル変調部111から与えられる)をX(i)とする。P0=1、P1=−1であるから、キャンセリング変調部112はi番目のサブキャリアにP0X(i)=X(i)を、(i+1)番目のサブキャリアにはP1X(i)=−X(i)を割り当ててキャンセリング変調を行う。ここで、周波数変動したi番目及び(i+1)番目の2つのサブキャリアと、k番目のサブキャリアとの間に生じるキャリア間干渉量の差Scは、Sc=X(i)S(i−k)−X(i)S(i+1−k)となる。右辺をX(i)で括ると、Sc=X(i)(S(i−k)−S(i+1−k))となる。キャリア間干渉の干渉係数S(i−k)とS(i+1−k)の間には上記の如くS(i−k)≒S(i+1−k)の関係があり、右辺を左辺に移項すると、S(i−k)−S(i+1−k)≒0となる。よって、上記キャリア間干渉量の差は実質的にゼロ(Sc≒0)となる。つまり、i番目のサブキャリアとk番目のサブキャリア間に生じるキャリア間干渉量と、(i+1)番目のサブキャリアとk番目のサブキャリア間に生じるキャリア間干渉量の差は実質的にゼロとなり、これらキャリア間干渉量は互いに相殺し合うことになる。よって、キャリア間干渉の発生が軽減される。
しかしながら上記従来の技術では、キャンセリング変調部112において、L個のサブキャリアを1つのサブキャリアグループとし、各グループにつき、同じ送信データが乗った1つの変調ベクトルしか伝送しない。よって、上記従来の技術は、全サブキャリアに各々独立に変調ベクトルを割り当てる通常のOFDM伝送方式に比べて信号伝送効率がL分の一になり、伝送効率が低下するという課題を有していた。また、通常のOFDM伝送方式と同じ伝送効率を実現しようとすると、ベクトル変調部111において、1つの変調ベクトルに対して通常のOFDM伝送方式に比べてL倍の送信データを含めなければならない。この場合、送信データの信号点間距離が短くなる。信号点間距離は、雑音に対する耐性を示すものである。信号点間距離が大きい程、雑音に強い。よって、送信データを多く含めることは信号点間距離を小さくすることに繋がり、伝送品質の劣化を招くという課題を有していた。例えば、16QAMは、1個の変調ベクトルあたり4ビットの情報を伝送可能である。この16QAMを用いて通常のOFDM伝送を行う場合と同じ伝送効率を上記従来技術で実現しようとすると、L=2としても1個の変調ベクトルあたり8ビット伝送可能な256QAMを用いる必要がある。この場合、伝送品質が劣化することは容易に理解できる。
また、上記従来技術では、キャンセリング変調部112において、フィルタリングの多項式P(D)に基づき極性を互いに反転させた変調ベクトルにより、隣接する2つのサブキャリアに対して各々キャンセリング変調を施す。この場合、キャンセリング変調部112のフィルタリング効果によって、IDFT部113が出力するベースバンドOFDM信号の時間応答波形はシンボル中央部の時間に高出力の信号が集中し、シンボル中央部の信号振幅が大きくなる(図13下段参照)。図13上段に通常のOFDM信号の電力−時間応答、図13下段に上記従来技術(セルフキャンセレーション法)を用いた場合のOFDM信号の電力−時間応答を示す。図13において、横軸はシンボル内のサンプリング時間、縦軸は平均電力を1としたときの瞬時電力値である。一般にOFDM伝送方式は送信平均電力に対して送信ピーク電力が高く、最大出力電力が高い高周波電力増幅器が必要であるという課題を有している。ところが、セルフキャンセレーション法を用いるとシンボル中央部において更に送信ピーク電力が高くなる。よって、上記従来技術は最大出力電力が通常のOFDM伝送方式よりも高い高周波電力増幅器を必要とするという課題を有している。例えば、セルフキャンセレーション法において上記サブキャリア数Lを2とした場合、送信ピーク電力は通常のOFDM伝送方式に比べて2倍になる(図13参照)。
また、上記従来技術では、図12(a)に例示する如く、極性が反転し且つ同一の送信データが乗った変調ベクトルの対を構成する。これは、変調ベクトルの信号点数(信号点配置を表す複素平面上の)に対し、キャンセリング復調された復調ベクトルの信号点数を増加させないためである(図12(b)参照)。信号点数を増加させなければ、信号点を送信側と受信側とで1対1で得ることができ(図12(b)参照)、受信側で容易に送信データを復元することができる。図12(b)に示される例では、変調ベクトルの信号点数が4(×印の数)であり、キャンセリング復調後の復調ベクトルの信号点数も4(●の数)である。
キャンセリング復調は、上記したキャリア間干渉の特性に基づき、隣接するサブキャリアに対応する復調ベクトル同士の引き算により行われる。極性を反転させた信号点は、信号点配置図の原点を中心とした点対称の位置に移る(図12(b)参照)。よって、隣接するサブキャリアに対応する復調ベクトル同士の引き算をしても、ベクトルの大きさが2倍になる、すなわち、信号点配置上は信号点の位置が外側にずれるだけである。図12(b)に示される如く、キャンセリング復調の前後で信号点の数は変化しない。
一方、図14(a)に示されるように極性の反転を行わない変調ベクトルを使用すると、キャンセリング復調後に信号点数が増加する。なお、極性の反転を行わない場合、全ての変調ベクトルは各々、対応する送信データに応じた向きを有する。図14(a)では、図示の便宜上、全ての変調ベクトルの向きを揃えて図示している。図14(b)に示される例では、変調ベクトルの信号点数が4(×印の数)であるのに対し、キャンセリング復調された復調ベクトルの信号点数が9(●の数)となる。これは、4個の信号点につき、各信号点同士のベクトルの引き算を行うため、結果として9個の信号点が現れるのである。この場合、何らかの手段を講じない限り、受信側において元の送信データを一義的に復元することができない。これは、データの正確な伝送ができないことを意味する。
このような理由により、従来、キャリア間干渉の軽減を行うために、各グループに割り当てられるサブキャリア数Lが例えば2の場合には、各サブキャリアグループにつき極性が反転した変調ベクトルの対を構成していた。しかしながら、サブキャリアをグループ分けした場合、各グループのサブキャリアに同じ送信データしか乗せないことから、伝送効率が1/Lになってしまうことは上述の通りである。なお、上記信号点の増加は、キャリア間干渉の軽減のためにキャンセリング復調を行った場合に生じるものであって、キャンセリング復調を行わない場合には生じない。
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、伝送効率を低下させることなく、周波数変動、振幅変動、または位相変動などで発生するキャリア間干渉を軽減することができるマルチキャリア伝送方式を提供することを目的とする。
本発明に係る伝送方式における送信装置は、互いに直交するサブキャリアにマルチキャリア変調を施してディジタルデータを伝送するマルチキャリア伝送方式における送信装置であって、
送信データを入力し、上記送信データにプリコード処理を施してプリコードされた変調情報を生成し、該プリコードされた変調情報を出力するプリコード部と、
上記プリコードされた変調情報を複素平面上の変調ベクトルに変換して出力するベクトル変調部と、
上記変調ベクトルで上記サブキャリアに変調を施してマルチキャリア変調信号を生成し、該マルチキャリア変調信号を出力するマルチキャリア変調部とを備え、
上記マルチキャリア変調部は、上記サブキャリアを上記変調ベクトルにより1対1の関係で変調し、
受信装置で上記マルチキャリア変調信号がマルチキャリア復調され、該復調により得られる復調ベクトルにキャリア間干渉を相殺するフィルタリング処理が施されたとき、該フィルタリング処理により得られるフィルタリングされた復調ベクトルは、上記プリコードされた変調情報に一義的に対応する、ことを特徴とする。
本発明におけるマルチキャリア伝送には、OFDM(直交周波数分割多重変調)伝送の他、ウェーブレット変調等を用いた伝送も含まれる。
本発明によれば、プリコード部が送信データにプリコード処理を施す。このプリコード処理は、受信装置においてキャリア間干渉を相殺するフィルタリング処理が施された復調ベクトルが、送信装置においてプリコードされた変調情報に一義的に対応するように、送信データに予め施しておく符号化処理である。プリコード処理を行うことで、受信装置におけるフィルタリング処理によって信号点の数が増加しても、受信装置において、プリコードされた変調情報を一義的に導出することができる。プリコードされた変調情報を一義的に導出できれば、該変調情報に基づいて、送信データを正確に復元することができる。また、マルチキャリア変調部が、サブキャリアを変調ベクトルにより1対1の関係で変調する。よって、各サブキャリアに個別に送信データが乗ることになり、伝送効率が低下しない。
従って、本発明によれば、伝送効率を低下させることなく、周波数変動、振幅変動、または位相変動などで発生するキャリア間干渉を軽減し、受信装置において正確に送信データを復元することが可能となる。
本発明においては、上記プリコード処理の開始に当たり、上記プリコード部は、上記送信データを複数のグループに分割し、各グループが有する上記送信データを仮の変調情報とし、上記プリコード部は、プリコード処理を行うための式(1)に従い上記仮の変調情報の最初の情報X
1にプリコード処理を施す際に必要とされる(L−1)個の変調情報X’
2-L,・・・,X’
0を、変調情報X
1の入力前に初期値として予め入力し保持しておくことが好ましい。
式(1)
この場合、プリコード部に所定の初期値を予め入力しておくので、確実にプリコード処理を行うことができる。
本発明においては、上記プリコード部は、剰余器を含み且つ遅延要素をDとしてインパルス応答が1/(1−D)(L-1)(Lは2以上の整数)で表されるIIR(Infinite Inpulse Response)フィルタで構成されることが好ましい。
本発明に係るマルチキャリア伝送方式の受信装置は、互いに直交する複数のサブキャリアにマルチキャリア変調を施してディジタルデータを伝送するマルチキャリア伝送方式における受信装置であって、
受信したマルチキャリア変調信号を入力し、入力したマルチキャリア変調信号を復調し、復調して得られた復調ベクトルを出力するマルチキャリア復調部と、
上記復調ベクトルを入力し、周波数軸方向に隣接する上記サブキャリアに各々対応する上記復調ベクトルにキャリア間干渉を相殺するフィルタリング処理を施し、該フィルタリング処理により得られたフィルタリングされた復調ベクトルを出力するキャンセリングフィルタ部と、
上記フィルタリングされた復調ベクトルから受信データを判定して出力するベクトル復調部とを備え、
上記マルチキャリア復調部は、上記サブキャリアを1対1の関係で変調した上記変調ベクトルを復調し、
上記フィルタリングされた復調ベクトルは、送信装置で送信データにプリコード処理を施して得られたプリコードされた変調情報に一義的に対応し、且つ、その対応関係を上記ベクトル復調部で判定可能である、ことを特徴とする。
本発明によれば、キャンセリングフィルタ部が、キャリア間干渉を相殺するフィルタリング処理を施す。よって、キャリア間干渉が低減する。また、フィルタリングされた復調ベクトルは、送信装置においてプリコードされた変調情報に一義的に対応する。ベクトル復調部は、その対応関係を判定可能である。よって、フィルタリング処理により信号点の数が増加しても、ベクトル復調部は、フィルタリングされた復調ベクトルに対応する送信データを正確に復元することができる。また、マルチキャリア復調部は、サブキャリアを1対1の関係で変調した変調ベクトルを復調する。各サブキャリアに個別に送信データが乗るので、伝送効率が低下しない。
従って、本発明によれば、伝送効率を低下させることなく、周波数変動、振幅変動、または位相変動などで発生するキャリア間干渉を軽減し、該受信装置において正確に送信データを復元することが可能となる。
本発明においては、上記フィルタリング処理を開始するに当たり、上記キャンセリングフィルタ部は、フィルタリング処理を行うための式(2)に従い上記復調ベクトルの最初の値Y
1にフィルタリング処理を施す際に必要とされる(L−1)個の上記復調ベクトルY
2-L,・・・,Y
0を、上記復調ベクトルY
1の入力前に初期値として予め送信装置から受信入力し保持しておくことが好ましい。
式(2)
この場合、キャンセリングフィルタ部に所定の初期値を予め受信入力しておくので、確実にキャリア間干渉のキャンセリング処理を行うことができる。
本発明においては、受信した上記マルチキャリア変調信号の周波数変動、振幅変動、または位相変動のうち少なくともいずれか一つの変動量を推定する変動量推定部を更に備え、
上記変動量推定部は、上記推定された変動量に応じて、上記キャンセリングフィルタ部のフィルタ係数を制御することが好ましい。
この場合、周波数変動、位相変動、または振幅変動などの変動によって生じる伝送路応答のずれを補正し、変動の影響を更に軽減することができる。
本発明においては、上記キャンセリングフィルタ部は、遅延要素をDとしてインパルス応答が(1−D)(L-1)(Lは2以上の整数)で表される遅延器を有するFIR(Finite Inpulse Response)フィルタを含むことが好ましい。
本発明においては、上記受信装置が移動する速度を検出する移動速度測定部を更に備え、
上記移動速度測定部により得られた移動速度情報に応じて、上記キャンセリングフィルタ部のフィルタ係数を制御することが好ましい。
この場合、特に周波数変動の影響を更に軽減することができる。
本発明においては、上記受信装置は、移動体の速度パルス発生部を含み、
上記移動速度測定部は、上記速度パルス発生部が出力する速度パルスに基づき、上記受信装置の移動速度情報を求めることが好ましい。
この場合、特に周波数変動の影響を更に軽減することができる。
本発明においては、上記移動速度測定部は、所定の時間間隔で上記受信装置の位置情報を取得し、上記位置情報と上記時間間隔に基づき、上記受信装置の移動速度情報を求めることが好ましい。
この場合、特に周波数変動の影響を更に軽減することができる。
本発明に係るマルチキャリア伝送方式の受信装置は、互いに直交するサブキャリアにマルチキャリア変調を施してディジタルデータを伝送するマルチキャリア伝送方式における受信装置であって、
送信装置から受信したマルチキャリア変調信号を入力し、上記マルチキャリア変調信号を復調し、復調して得られた復調ベクトルを出力するマルチキャリア復調部と、
上記復調ベクトルを入力し、周波数軸方向に隣接する上記サブキャリアに各々対応する上記復調ベクトルに対してキャリア間干渉を相殺するフィルタリング処理を施し、該フィルタリング処理により得られたフィルタリングされた復調ベクトルを出力するキャンセリングフィルタ部と、
上記フィルタリングされた復調ベクトルを入力し、上記フィルタリング処理の状態変数を用いたトレリス遷移に基づいて上記フィルタリングされた復調ベクトルの復号処理を行い、該復号処理により得られた受信データを出力するトレリス復号部とを備え、
上記マルチキャリア復調部は、上記サブキャリアを1対1の関係で変調した上記変調ベクトルを復調する、ことを特徴とする。
本発明によれば、キャンセリングフィルタ部が、キャリア間干渉を相殺するフィルタリング処理を施す。よって、キャリア間干渉が低減する。また、トレリス復号部が、フィルタリングされた復調ベクトルを入力し、フィルタリング処理の状態変数を用いたトレリス遷移に基づいて、フィルタリングされた復調ベクトルの復号処理を行い、該復号処理により得られた受信データを出力する。よって、フィルタリング処理により信号点の数が増加しても、送信装置において送信データにプリコード処理を施すことなく、受信装置において送信データを正確に復元することができる。また、マルチキャリア復調部は、サブキャリアを1対1の関係で変調した変調ベクトルを復調する。各サブキャリアに個別に送信データが乗るので、伝送効率が低下しない。
従って、本発明によれば、伝送効率を低下させることなく、周波数変動、振幅変動、または位相変動などで発生するキャリア間干渉を軽減し、該受信装置において正確に送信データを復元することが可能となる。しかも、プリコード部を含まない一般の送信装置から信号を受信し、これらの効果を奏することができる。
本発明によれば、全てのサブキャリアに各々独立に変調を施す。よって、伝送効率を劣化させずに、周波数変動、振幅変動、または位相変動などで発生するキャリア間干渉を軽減し、高品質な移動体通信を実現することができる。
以下本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるマルチキャリア伝送方式に基づいた送信装置および受信装置の構成を示すブロック構成図である。
送信装置201は、送信データを入力し、入力された送信データに基づいてマルチキャリア変調を施し、マルチキャリア信号を生成して送出するものである。送信装置201から送出されたマルチキャリア信号は伝送路203を介して受信装置202に与えられる。受信装置202は、伝送路203を経て受信したマルチキャリア信号を復調し、受信データを出力する。
送信装置201は、プリコード部211と、ベクトル変調部212と、マルチキャリア変調部213、及び周波数変換部214を備えている。以下に送信装置201の各部の動作を説明するが、本発明の要旨を簡潔に説明するために、マルチキャリア伝送における1シンボルあたりの動作について説明する。
1シンボルごとに、Kビットの送信データが送信装置201に入力される。送信装置201に入力された送信データはプリコード部211に供給される。
プリコード部211におけるプリコード処理は、受信装置102のベクトル復調部224が復調ベクトルから復調データを容易に判定できるようにするためのものである。
プリコード部211は、Kビットの送信データを入力し、入力されたKビットの送信データをN個のグループに分割する。この分割処理により仮の変調情報が生成される。プリコード部211は、各グループが有する(K/N)ビットの送信データ、すなわち仮の変調情報に後述するプリコード処理を施し、N個の変調情報を生成して出力する。ここで、プリコード部211は、受信装置202のキャンセリングフィルタ部223の処理に対応するプリコード処理を行う。K、Nは0より大きい整数である。本実施の形態1を説明するに当たって、KをNの倍数としても問題は生じないので、以降の説明ではKはNの倍数とする。
ベクトル変調部212は、プリコード部211が出力するN個のプリコードされた変調情報を入力する。ベクトル変調部212は、入力した変調情報に基づき変調ベクトルを生成し、該N個の変調ベクトルを出力する。
マルチキャリア変調部213は、ベクトル変調部212が出力するN個の変調ベクトルを入力する。マルチキャリア変調部213は、そのN個の変調ベクトルでN個のサブキャリアに各々変調を施してベースバンドのマルチキャリア変調信号を生成し、出力する。
周波数変換部214は、マルチキャリア変調部213が出力するベースバンドのマルチキャリア変調信号を入力する。周波数変換部214は、入力されたベースバンドのマルチキャリア変調信号を所定の無線周波数帯の信号に周波数変換し、周波数変換した信号をマルチキャリア変調信号として出力する。周波数変換部214が出力するマルチキャリア変調信号は、送信装置201の出力するマルチキャリア変調信号として、空中線を介して伝送路203に供給される。
伝送路203を経由した上記マルチキャリア変調信号は、空中線を介して受信装置202に供給される。
受信装置202は、周波数変換部221、マルチキャリア復調部222、キャンセリングフィルタ部223、及びベクトル復調部224を備えている。以下に受信装置202の各部の動作を説明する。本発明の要旨を簡潔に説明するために、マルチキャリア伝送における1シンボルあたりの動作について説明する。
受信装置202が伝送路203を経由して受信したマルチキャリア変調信号は、周波数変換部221に供給される。
周波数変換部221は、受信装置202が受信したマルチキャリア変調信号を入力する。周波数変換部221は、入力されたマルチキャリア変調信号をベースバンド帯域の信号に周波数変換し、周波数変換した信号をベースバンドのマルチキャリア変調信号として出力する。
マルチキャリア復調部222は、周波数変換部221が出力するベースバンドのマルチキャリア変調信号を入力する。マルチキャリア復調部222は、N個のサブキャリアに対応するマルチキャリア変調信号を各々復調してN個の復調ベクトルを生成し、出力する。
キャンセリングフィルタ部223は、マルチキャリア復調部222が出力するN個の復調ベクトルを入力する。詳細は後述するが、キャンセリングフィルタ部223は、隣接するサブキャリアに各々対応する復調ベクトルに個別にフィルタリング処理を施し、これによりN個のフィルタリングされた復調ベクトルを生成し、出力する。
ベクトル復調部224は、キャンセリングフィルタ部223が出力するN個のフィルタリングされた復調ベクトルを入力する。ベクトル復調部224は、そのフィルタリングされた復調ベクトルからKビットの復調データを判定し、出力する。
ベクトル復調部224の出力するKビットの復調データは、受信装置102から復調データとして出力される。
図2は、本発明の実施の形態1における受信装置102のキャンセリングフィルタ部223の構成例を示すブロック図である。図3(a)は、本発明の実施の形態1における変調ベクトルをサブキャリアの周波数軸上に並べたときの該変調ベクトルの配置状態を示す図である。図3(b)は、実施の形態1における変調ベクトル及びキャンセリングフィルタ処理された復調ベクトルの各信号点配置(複素平面上)を示す図である。なお、図3(b)において、×印は、ベクトル変調部212から出力される変調ベクトルの一例を信号点で表したものである。●印は、キャンセリングフィルタ部223から出力されるフィルタリング処理された復調ベクトルの一例を信号点で表したものである。
図2に示されるキャンセリングフィルタ部223は、マルチキャリア復調部222からN個の復調ベクトルを順次入力する。キャンセリングフィルタ部223は、入力したN個の復調ベクトル(図3参照)に、1対1の関係でN個のサブキャリアを対応させる。なお、サブキャリアを変調ベクトルでマルチキャリア変調する処理は、マルチキャリア変調部213で行われる。図3(a)に示す例では、変調ベクトルの向きを全て一方向に揃えているが、これは便宜的なものであって、送信データに応じて信号点(図3(b)参照)の位置が異なれば変調ベクトルの向きも異なる。N個のサブキャリアには、その周波数軸方向の配置順に1番からN番までの番号が付されている。N個の復調ベクトルは、順にY1、Y2、・・・、YNと表される。キャンセリングフィルタ部223は、フィルタリングのためにフィルタリングの式P(D)=(1−D)(L-1) (Lは2以上の整数)を用いる。式P(D)=(1−D)(L-1)を展開すると、多項式P(D)=P0+P1D+P2D2+・・・+P(L-1)D(L-1)が得られる。キャンセリングフィルタ部223は以下の式(1)を用いてN個のフィルタリングされた復調ベクトルY’1、Y’2、・・・、Y’Nを求める。キャンセリングフィルタ部223は、求めた復調ベクトルを順次出力する。
式(1)(特許請求の範囲に記載した式(2)に相当)
キャンセリングフィルタ部223はFIR(Finite Impulse Response)型フィルタとして構成することができる。例えば、上記フィルタリングの式P(D)=(1−D)(L-1)においてフィルタ長Lを2とすると、P(D)=(1−D)となる。すなわち、式P(D)の展開式においてP0=1、P1=−1となる。この場合、キャンセリングフィルタ部223は図2に示されるように構成することができる。図2に示されるように、キャンセリングフィルタ部223は、遅延器301と、係数付与器302及び303と、加算器304とを含む。キャンセリングフィルタ部223は、マルチキャリア復調部222からN個の復調ベクトルYiを順次入力する。遅延器301は、順次入力された復調ベクトルYiを1サンプル分遅延させて出力する。遅延器301は、復調ベクトルYiが入力されている時刻に1サンプル前の復調ベクトルYi-1を出力する。入力された復調ベクトルYiには、係数付与器302でフィルタ係数”1”が乗算される。この係数は「P0=1」に基づき設定されるものである。遅延器301が出力する復調ベクトルYi-1には、係数付与器303でフィルタ係数”−1”が乗算される。この係数は「P1=−1」に基づき設定されるものである。加算器304において、係数付与器302と係数付与器303で各々係数が乗算された復調ベクトルの和が求められる。これにより、フィルタリングされた復調ベクトルY’iが順次求められる。キャンセリングフィルタ部223は、フィルタリングされた復調ベクトルY’iを順次出力する。
背景技術の欄で述べたように、i番目のサブキャリアとk番目のサブキャリア間に生じるキャリア間干渉と、(i+1)番目のサブキャリアとk番目のサブキャリア間に生じるキャリア間干渉の和は実質的にゼロとなり、これらキャリア間干渉は互いに相殺し合う。よって、キャンセリングフィルタ部223においてフィルタリングされた復調ベクトルY’iは干渉成分が実質的にゼロとなる。つまり、隣接するサブキャリアが各々他のサブキャリアに及ぼすキャリア間干渉は、多項式P(D)に基づくフィルタリング作用で互いに相殺される。従って、周波数変動、振幅変動、または位相変動などで発生するキャリア間干渉は、キャンセリングフィルタ部223において軽減することができる。また、実施の形態1では、N個の変調ベクトルをN個のサブキャリアに各々割り当てるので、変調ベクトルとサブキャリアが1対1に対応する。よって、上記従来技術と異なり、伝送効率が低下しない。
図4は、本発明の実施の形態1における送信装置201のプリコード部211の構成例を示すブロック図である。プリコード部211は、キャンセリングフィルタ部223をパーシャルレスポンスフィルタとみなして非特許文献2に記載されるように構成することができる。プリコード部211は、ベクトル復調部224においてキャンセリングフィルタ部223が出力するフィルタリングされた復調ベクトルから復調データを判定する際に、その判定を容易にするためのものである。プリコード部211は、キャンセリングフィルタ部223での処理に対応して送信データを予め符号化する。以下、プリコード部211の構成及び動作を詳細に説明する。
プリコード部211は、まず、入力されたKビットの送信データをN個のグループに分割して仮の変調情報X1,X2,・・・,XNを生成する。プリコード部211は、以下の式(2)に従って仮の変調情報X1,X2,・・・,XNの符号化を行う。これにより、プリコード部211は、N個の変調情報X’1,X’2,・・・,X’Nを生成し、出力する。
式(2)(特許請求の範囲に記載した式(1)に相当)
例えば、キャンセリングフィルタ部223のフィルタ長Lを2としてフィルタリングの式P(D)=(1−D)とした場合、キャンセリングフィルタ部223に対応するプリコード部211は図4に示されるように構成することができる。図4に示されるように、プリコード部211は、分割器401と、加算器402と、剰余器403と、遅延器404とを含む。分割器401は、プリコード部211が入力するKビットの送信データを入力する。分割器401は、入力された送信データをN個のグループに分割して仮の変調情報X1,X2,・・・,XNを生成し、順次出力する。仮の変調情報は、Xi(1≦i≦N、iは整数)と表すことができる。遅延器404は、プリコード部211が順次出力するプリコードされた変調情報X’iを入力し、入力した情報を1サンプル分遅延して出力する。1サンプル前の変調情報はX’i-1と表される。加算器402は、分割器401が出力する仮の変調情報Xiと遅延器404が出力する1サンプル前のプリコードされた変調情報X’i-1の和を求める。剰余器403は、加算器402が出力する加算結果を多値数M(Mは2以上の整数)で割った剰余を求める。剰余器403は、求めた剰余をプリコードされた変調情報X’iとして出力する。
ベクトル変調部212における変調規則にM値PAM(Pulse Amplitude Modulation)などの振幅変調を用いる場合、仮の変調情報Xiおよびプリコードされた変調情報X’iはM個の実数値で表される。剰余器403は、M個の実数値を各々Mで割った剰余を求める。なおMが2の場合、変調規則は2値PAMとなり、BPSK(Binary Phase Shift Keying)と等価となる。
ベクトル変調部212における変調規則にM値QAM(Quadrature Amplitude Modulation)などの直交振幅変調を用いる場合、仮の変調情報Xiおよび変調情報X’iは、m個の実数部とm個の虚数部とを有するm2個の複素数値で表される。なお、M=m2である。剰余器403は、実数部の値および虚数部の値を各々Mで割った剰余を求める。なお、mが2(すなわち、Mが4)の場合、変調規則は4値QAMとなり、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)と等価となる。
ここで、プリコード部211が上記式(2)に従ってN個の変調情報X’1,X’2,・・・,X’Nを順次求める際、最初に変調情報X’1を求める。変調情報X’1を求めるには、遅延器404が出力する値として予め(L−1)個の変調情報X’2-L,・・・,X’0が必要となる。そこで、変調情報X’2-L,・・・,X’0には、予め既知の値が与えられるものとする。プリコード部211はそれらの変調情報X’2-L,・・・,X’0を変調情報X’1、X’2,・・・,X’Nに先行して入力保持し、送出すればよい。例えば、L=2の場合を想定した図4に示されるプリコード部211においては、N個の変調情報X’1,X’2,・・・,X’Nを求める際に、遅延器404が出力する値として1個の変調情報X’0が予め必要となる。すなわち、分割器401が仮の変調情報X1を出力するのと同時に遅延器404が変調情報X’0を出力する必要がある。この場合、変調情報X’0を既知の値として予め遅延器404に保持しておくとともに、分割器401が仮の変調情報X1を出力するのと同期して遅延器404から変調情報X’0を出力すればよい。
また、キャンセリングフィルタ部223で式(1)に従ってN個のフィルタリングされた復調ベクトルY’1、Y’2、・・・、Y’Nを求める際、最初にフィルタリングされた復調ベクトルY’1を求める。復調ベクトルY’1を求めるには、遅延器301が出力する値として予め(L−1)個の復調ベクトルY2-L,・・・,Y0が必要となる。そこで、プリコード部211が送出する既知の上記(L−1)個の変調情報X’2-L,・・・,X’0に対応する復調ベクトルY2-L、・・・、Y0を、キャンセリングフィルタ部223が予め入力しておけばよい。受信装置202は、復調ベクトルY2-L、・・・、Y0を送信装置201から予め受信しておき、その受信した復調ベクトルをキャンセリングフィルタ部223が入力する。例えば、L=2の場合を想定した図2に示されるキャンセリングフィルタ部223においては、N個のフィルタリングされた復調ベクトルY’1、Y’2、・・・、Y’Nを順次求める際に、遅延器301が出力する値として復調ベクトルY0が予め必要となる。すなわち、キャンセリングフィルタ部223が復調ベクトルY1を入力するのと同時に遅延器301が復調ベクトルY0を出力する必要がある。この場合、キャンセリングフィルタ部223に復調ベクトルY1が入力されるまでに遅延器301に復調ベクトルY0を先行して受信し入力しておけばよい。
以上の構成によれば、送信装置201におけるプリコード部211は、送信データをN個のグループに分割し、分割したデータにプリコード処理を施してN個の変調情報を生成する。ベクトル変調部212は、N個の変調情報からN個の変調ベクトルを生成する。マルチキャリア変調部213は、N個の変調ベクトルによりN個のサブキャリアを各々マルチキャリア変調する。よって、N個のサブキャリア全てに各々独立に送信データが乗せられるため、伝送効率が低下しない。また、受信装置202におけるキャンセリングフィルタ部223は、隣接するサブキャリア間のキャリア間干渉特性に基づきフィルタリング処理を施し、キャリア間干渉を相殺する。よって、周波数変動、振幅変動、または位相変動などで発生するキャリア間干渉を軽減することができる。また、送信装置201において、従来の如くサブキャリアを2個ずつにグループ分けし、各グループに割り当てられる変調ベクトルの極性を隣接するサブキャリア間で反転させるといった処理をしない。よって、マルチキャリア変調部213から出力されるマルチキャリア変調信号の時間応答波形は,図13上側に示されるように比較的平坦となる。上記従来技術の如くシンボル中央部の時間に高出力の信号が集中し、シンボル中央部の信号振幅が大きくなるといった不都合は生じない。従って、送信装置201における高周波電力増幅器の最大出力電力を上げずに済む。また、後述の実施例で示すように、キャンセリング処理を行って信号点数が増加しても、送信側でプリコード処理を行うことにより、受信側で一意的に元の送信データを復元することができる。
なお、本実施の形態においては、マルチキャリア伝送方式の一例としてOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)伝送方式を挙げることができる。OFDM伝送方式を用いた場合は、マルチキャリア変調部213およびマルチキャリア復調部222を各々、図5および図6に示されるように構成することができる。
図5に示されるように、マルチキャリア変調部213は、IDFT部231と、ガードインターバル付加部232とを含んでいる。IDFT部231は、マルチキャリア変調部213に入力されたN個の変調ベクトルを入力し、入力された変調ベクトルに逆フーリエ変換を施してベースバンド帯域のOFDM信号を生成し、出力する。ガードインターバル付加部232は、IDFT部231が出力するベースバンド帯域のOFDM信号を入力し、入力したベースバンド帯域のOFDM信号に周期拡張したガードインターバルの信号を付加する。ガードインターバル付加部232は、ガードインターバルの信号を付加したベースバンド帯域のマルチキャリア変調信号をマルチキャリア変調部213から出力する。
図6に示されるように、マルチキャリア復調部222は、ガードインターバル除去部241と、DFT部242とを含む。ガードインターバル除去部241は、マルチキャリア復調部222が入力するベースバンド帯域のマルチキャリア変調信号からガードインターバルの信号を除去して出力する。DFT部242は、ガードインターバル除去部241が出力する信号をフーリエ変換してN個の復調ベクトルを求める。次いでDFT部242は、N個の復調ベクトルをマルチキャリア復調部222から出力する。
(実施例)
以下、実施の形態1についての実施例を紹介する。プリコード部211及びキャンセリングフィルタ部223の作用を、図2、3、4、及び7を参照しつつ説明する。図7は、プリコード部211で行われる演算処理と、キャンセリングフィルタ部223で行われる演算処理とを並べて示す図である。この例では、マルチキャリア変調方式の多値数Mが4である場合を想定する。具体的な変調方式は特に限定されるものではないが、例えば、QAMを用いることができる。キャンセリングフィルタ部223のフィルタ長Lを2とし、フィルタの多項式P(D)=(1−D)とする。図7は、i番目の変調情報X’i及びi番目の復調ベクトルY’iを求める演算のすべての組み合わせを示している。図7では、各々の列が、左端列から順に、Xi、X’i-1、X’i、Yi、Yi-1、Y’iを示している。
図4において、プリコード部211に入力された送信データは、まず分割器401に入力される。分割器401は、入力した送信データを2ビットずつに分割し、分割した2ビットを1シンボルに割り当てる。送信データを2ビットずつに分割することで、送信データは4個の値に符号化される。これにより、送信データは、[0,1,2,3]の4値(すなわち多値数4)を持つ仮の変調情報Xiに変換され、分割器401から出力される。加算器402は、i番目の仮の変調情報Xiと、遅延器404に保持されている(i−1)番目の変調情報X’i-1とを合算する。(i−1)番目の変調情報X’i-1も[0,1,2,3]の4個の値を持つ。その合算値は、剰余器403に入力される。剰余器403は、入力された合算値を多値数4で割って余りを求める。剰余器403で求められた余りは、i番目の変調情報X’iとしてプリコード部211から出力される。ここで、i番目の変調情報X’iは剰余器403において多値数4で割った余りであるため、図11に示される如く[0,1,2,3]の4個の値を持つ。すなわち、i番目の仮の変調情報Xiと(i−1)番目の変調情報X’i-1とからi番目の変調情報X’iが得られる。得られた変調情報X’iは、ベクトル変調部212において複素平面上の変調ベクトルに変換される。得られた変調ベクトルは、マルチキャリア変調部213においてサブキャリアのマルチキャリア変調に用いられる。得られたマルチキャリア変調信号は、周波数変換部214において無線通信に適した周波数帯域の信号に周波数変換され、送信装置201から送出される。
送信装置201から送出されたマルチキャリア変調信号は、受信装置202で受信される。受信装置202において、マルチキャリア変調信号は、周波数変換器221においてベースバンド帯域のマルチキャリア変調信号に変換される。ベースバンド帯域のマルチキャリア変調信号は、マルチキャリア復調器222において復調される。復調された信号は、キャンセリングフィルタ部223においてフィルタリング処理される。図2において、キャンセリングフィルタ部223にi番目の復調ベクトルYiが入力されるとき、遅延器301には既に(i−1)番目の復調ベクトルYi-1が保持されている。i番目の復調ベクトルYiには係数付与器302でフィルタ係数”1”が乗算され、(i−1)番目の復調ベクトルYi-1には係数付与器303でフィルタ係数”−1”が乗算される。各々フィルタ係数が乗算されたYiとYi-1は、加算器304で合算される。加算器304で得られた合算結果は、i番目のフィルタリングされた復調ベクトルY’iとしてキャンセリングフィルタ部223から出力される。すなわち、i番目のフィルタリングされた復調ベクトルY’iは、i番目の復調ベクトルYiから(i−1)番目の復調ベクトルYi-1を減算したものになる。これは、隣接するサブキャリアに各々対応する2つの復調ベクトル同士の引き算をしていることを意味する。
送信装置201と受信装置202間の伝送においてキャリア間干渉以外に伝送誤りがないものとする。つまり、i番目の復調ベクトルYiはi番目の変調情報X’iと等しく、(i−1)番目の復調ベクトルYi-1は(i−1)番目の変調情報X’i-1と等しいものとする。この場合、i番目のフィルタリングされた復調ベクトルY’iは図7の右端列に示されるような値となる。フィルタリングされた復調ベクトルY’iは、キャンセリングフィルタ部223の出力である。図7から、i番目のフィルタリングされた復調ベクトルY’iが”0”の場合は、左端列に示されるようにi番目の仮の変調情報Xiとして”0”が送信されたことが分かる。同様に、Y’iが”1”または”−3”の場合はXiとして”1”が送信されたことが分かる。Y’iが”2”または”−2”の場合はXiとして”2”が送信されたことが分かる。Y’iが”3”または”−1”の場合はXiとして”3”が送信されたことが分かる。すなわち、i番目のフィルタリングされた復調ベクトルY’iを観測すれば、送信されたi番目の仮の変調情報Xiを一意に推定することができる。仮の変調情報Xiを一意に求まれば、該仮の変調情報Xiに対応する送信データを求めることができる。従って、実施の形態1では、図3(b)に示される如くキャンセリング復調直後に信号点の数が増加しても、ベクトル復調部224において、容易且つ一意に送信データを復元することができる。
キャンセリングフィルタ部223の処理では、i番目のフィルタリングされた復調ベクトルY’iは、(i−1)番目の復調ベクトルYi-1に基づき求められる。本実施例においては、プリコード部211の作用によって、(i−1)番目の復調ベクトルYi-1すなわち(i−1)番目の変調情報X’i-1がどのような値であっても、i番目のフィルタリングされた復調ベクトルYiから送信されたi番目の仮の変調情報Xiを一義的に推定することができる。以上の説明により、送信装置においてプリコード処理を行うことで、上記従来技術の如くサブキャリアをL個ずつにグループ分けし、各グループを構成する隣接サブキャリア間で変調ベクトルの関係を一意に決定させなくても、受信側において正確に送信データを復元できることが分かる。よって、実施の形態1は、上記従来技術の如く信号の伝送効率が1/Lになってしまうことがなく、伝送効率が低下しない。
(実施の形態2)
図8は、本発明の実施の形態2におけるマルチキャリア伝送方式の受信装置の構成を示すブロック図である。
図8に示されるように、受信装置2020は、周波数変換部221と、マルチキャリア復調部222と、キャンセリングフィルタ部223と、トレリス復号部225とを含む。受信装置2020は、実施の形態1における受信装置202(図1参照)のベクトル復調部224を、トレリス復号部225に置き換えたものであり、その他の構成については同一とすることができる。以下の説明では、実施の形態1と同じ構成については同一の参照符号を付してその説明を省略する。
トレリス復号部225は、キャンセリングフィルタ部223が出力するN個のフィルタリングされた復調ベクトルを入力する。トレリス復号部225は、フィルタリングされた復調ベクトルのトレリス復号を行ってK個の復調データを生成し、出力する。トレリス復号部225から出力されたK個の復調データは、受信装置2020から出力される。
トレリス復号部225は、キャンセリングフィルタ部223の遅延器301が保持する(L−1)個の復調ベクトルを状態変数とするトレリス遷移に基づいて、入力された復調ベクトルから尤も確からしい遷移を求める。トレリス復号部225は、その尤も確からしい遷移を生起するデータを、復調データとして得る。トレリス復号部225は、復号アルゴリズムとして例えば、ビタビアルゴリズム(非特許文献3)、BCJRアルゴリズム(非特許文献4)、MAP(最大事後確率)復号などを用いることで構成することができる。
この受信装置2020によれば、キャンセリングフィルタ部223でフィルタリング処理を施し、トレリス復号部225でキャンセリングフィルタ部223の状態遷移を復号する。よって、受信装置2020は、信号の伝送効率を劣化させることなく、周波数変動、振幅変動、または位相変動などにより発生するキャリア間干渉を低減し、送信データを正確に復元することができる。また、送信装置201において従来の如く隣接する2つのサブキャリアを各々変調する変調ベクトルの極性を互いに反転させるといった処理をしない。よって、マルチキャリア変調部213から出力されるマルチキャリア変調信号の時間応答波形は比較的平坦となる。従って、送信装置201における高周波電力増幅器の最大出力電力を上げずに済む。
なお、受信装置202にトレリス復号部225を用いる場合は、送信装置201でプリコード処理を行わなくてもよい。この場合、プリコード部211に代えて、分割器401を設ければよい。プリコード部211に代えて、分割器401を設けたものは、OFDM伝送用の一般の送信装置として既に存在する。よって、本実施の形態に係る送信装置201に代えて、一般の送信装置を使用することができる。これにより、その一般の送信装置を使用しても、実施の形態1における上記の優れた効果を奏することができる。実施の形態2は、放送用送信装置等の如くプリコード部211を設けることに制約がある場合に特に有効である。
(実施の形態3)
図9は、本発明の実施の形態3におけるマルチキャリア伝送方式の受信装置の一部を示すブロック図である。
実施の形態3における受信装置(図示せず)は、図9に示される如く、キャンセリングフィルタ部223の係数付与部302、303に変動量推定部226が接続されている点が実施の形態1と異なっており、他の構成は実施の形態1と同一である。実施の形態1と同一の構成については同じ参照符号を付してその説明を省略する。変動量推定部226は、周波数変動、振幅変動、または位相変動などの変動量を推定する。変動量推定部226は、例えば、マルチキャリア変調信号に付加された既知のパイロット信号から伝送路応答を推定し、その伝送路応答の時間変動から周波数変動、振幅変動、または位相変動などの変動量を推定する。変動量推定部226で推定された変動量に基づき、キャンセリングフィルタ部223は、その係数付与器302、303の係数を制御することができる。
変動量推定部226で推定された変動量に応じて係数付与器302、303の係数を制御することで、周波数変動、位相変動、または振幅変動などの変動によって生じる伝送路応答のずれを補正し、変動の影響を更に軽減することができる。
(実施の形態4)
図10は、本発明の実施の形態4におけるマルチキャリア伝送方式の受信装置の一部を示すブロック図である。実施の形態4における受信装置(図示せず)は、図10に示される如く、キャンセリングフィルタ部223の係数付与部302、303に移動速度測定部227が接続されている点が実施の形態1と異なっており、他の構成は実施の形態1と同一である。実施の形態1と同一の構成については同じ参照符号を付してその説明を省略する。移動速度測定部227は、例えば、受信装置202が自動車等の移動体上に設置され、或いは、受信装置202が人に持ち運びされる場合を想定して設けられている。移動速度測定部227における移動速度測定手段は特に限定されるものではないが、例えば、車速パルス発生器等、移動体の速度パルス発生器を用いて受信装置202の移動速度を検出することができる。或いは、移動速度測定部227は、GPS等の位置測定技術を用いて、所定の時間間隔で移動体の現在位置を測定し、その所定の時間に移動した距離から移動速度を算出してもよい。
一般に、ドップラ現象に起因するキャリア間干渉は、送信装置或いは受信装置の移動速度との相関が高い。よって、移動速度測定部227より得られた受信装置202の移動速度情報に基づいて、キャンセリングフィルタ部223の係数付与器302、303の係数を制御することで、特に周波数変動の影響を更に軽減することができる。
なお、以上に述べた全実施の形態は、集積回路であるLSIとして実現することができる。各実施の形態は、個別に1チップ化されてもよいし、或いは、全実施の形態を含むように1チップ化されてもよい。
なお、上記LSIは、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSI等の各種LSIを含むものとする。
また、各実施の形態の集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路又は汎用プロセッサで実現してもよい。或いは、LSI製造後にプログラミングすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続或いは設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用しても良い。
さらには、半導体技術の進歩又は派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適応等が可能性としてあり得る。
本発明にかかるマルチキャリア伝送方式における送信装置および受信装置は、ドップラ現象による周波数変動などで発生するキャリア間干渉を軽減することができ、移動体通信等において有用である。
本発明の実施の形態1における、マルチキャリア伝送方式の送信装置および受信装置の構成を示すブロック図
本発明の実施の形態1における、キャンセリングフィルタ部の構成例を示すブロック図
本発明の実施の形態1における、(a)変調ベクトルをサブキャリアの周波数軸上に並べたときの該変調ベクトルの配置状態、並びに、(b)変調ベクトル及びキャンセリングフィルタ処理された復調ベクトルの各信号点配置(複素平面上)を示す図
本発明の実施の形態1における、プリコード部の構成例を示すブロック図
本発明の実施の形態1における、マルチキャリア変調部の構成例を示すブロック図
本発明の実施の形態1における、マルチキャリア復調部の構成例を示すブロック図
本発明の実施の形態1における、プリコード部の演算及びキャンセリングフィルタ部の演算を示す図
本発明の実施の形態2における、マルチキャリア伝送方式の受信装置の構成を示すブロック図
本発明の実施の形態3における、マルチキャリア伝送方式の受信装置の構成の一部を示すブロック図
本発明の実施の形態4における、マルチキャリア伝送方式の受信装置の構成の一部を示すブロック図
セルフキャンセレーション法を用いた従来のOFDM伝送方式の送信装置および受信装置の構成を示すブロック図
セルフキャンセレーション法を用いた従来のOFDM伝送方式における、(a)変調ベクトルをサブキャリアの周波数軸上に並べたときの該変調ベクトルの配置状態、並びに、(b)変調ベクトル及びキャンセリング復調された復調ベクトルの各信号点配置(複素平面上)を示す図
セルフキャンセレーション法を用いた従来のOFDM伝送方式の電力−時間応答を示す図
セルフキャンセレーション法を用いた従来のOFDM伝送方式において変調ベクトルの極性を反転させない場合の、(a)変調ベクトルをサブキャリアの周波数軸上に並べたときの該変調ベクトルの配置状態、並びに、(b)変調ベクトル及びキャンセリング復調された復調ベクトルの各信号点配置(複素平面上)を示す図
符号の説明
201 送信装置
202、2020 受信装置
211 プリコード部
212 ベクトル変調部
213 マルチキャリア変調部
222 マルチキャリア復調部
223 キャンセリングフィルタ部
224 ベクトル復調部
225 トレリス復号部
226 変動量推定部
227 移動速度測定部