JPWO2006104237A1 - 空間情報検出装置 - Google Patents
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Abstract
本発明は、4波混合により試料から放出された誘導パラメトリック光を検出することにより蛍光染色することなく多数の試料内物質を同時に検出することが可能な空間情報検出装置を提供する。レーザからの照射光を2つの光路に分流し、一方の光路上で予め設定されたポンプ光を生成し、他方の光路上で予め設定されたプローブ光を生成する。また、これらの2つの光路は合流されてポンプ光とプローブ光とが空間的・時間的に重畳される。その後、重畳されたポンプ光とプローブ光とを収束させて試料を照射し、試料から放出される光から予め設定された波長の放出光を抽出して検出器で同時に検出する。このポンプ光は、試料内物質が多光子で電子共鳴が起こるような周波数ω1,ω2,…ωnで設定され、試料からの放出光のうち抽出されるように予め設定する波長放出光は、ポンプ光の周波数ω1,ω2,…ωnの和とプローブ光の周波数ωn+1との差周波数ωn+2=(ω1+ω2+…ωn)−ωn+1に近づくように設定される。
Description
本発明は、試料内の目的物質が放出する光を検出することにより試料内物質の空間情報を取得する空間情報検出装置、とりわけ所謂4光波混合過程における誘導パラメトリック蛍光を検出することによって試料内物質の空間情報を取得する顕微鏡に関する。
近年、生体細胞等の観察、特に生体内のタンパク質を可視化することが求められており、これを実現すべく種々のタイプの光学顕微鏡が開発されている。このような顕微鏡として従来から蛍光顕微鏡が存在する。この顕微鏡は、観察試料の分子又は組織を蛍光染色した後に励起光を照射して発生する蛍光を観察することで観察試料分子等の空間分布を検出している。近年、このような蛍光顕微鏡において、3次元分解能向上のため超短パルス光レーザにより照射光として長波長の短いパルス光で試料分子等を2光子励起(又は多光子励起)し、その蛍光を観測する多光子励起蛍光顕微鏡が開発されている。
しかしながら、この顕微鏡は放出される蛍光強度が低いため光の利用効率が悪く、高い3次元分解能で可視的に試料観測する顕微鏡を所望し難いという問題があった。また、この顕微鏡では蛍光性の試料、あるいは蛍光色素で染色しなければ観測することができないという問題も並存している。さらに、従来の多光子励起蛍光顕微鏡では試料内の複数物質を同時に観測することが困難であり、生体試料等においては物質相互間の相対動作を認識できないという問題も指摘されている。
また、近年、他の顕微鏡として、周波数の異なる2つ光パルスを試料内分子に同時に入射させ、その差周波により分子振動や回転準位を励起し、さらに上の仮想準位を励起することによって発せられるコヒーレントアンチストークスラマン散乱光(Coherent Antistokes Raman Spectroscopy:以下、「CARS光」と称する)を観測するコヒーレントアンチストークスラマン散乱顕微鏡(以下、「CARS顕微鏡」と称する)が開発されている。
この顕微鏡では、試料分子への入射光の周波数差が試料分子固有の分子振動準位と共嗚したときにCARS光が増幅されるという光学原理を利用したものであり、試料分子に蛍光染色を行うことなく試料観測可能である点では有利であるが、その反面、観測対象となるCARS光の増強は2つの異なる周波数の入射光の差周波に依存し、観測されるCARS光も該入射光の差周波に依存するものであるため、実現化設計、特に目的試料分子が複数に亘る場合における調整の困難性が指摘されている。また、CARS顕微鏡では、目的試料分子の分子振動準位との共鳴で増強されたCARS光を観測対象としており蛍光顕微鏡のように蛍光観測するものではないため、既存の蛍光染色技術を活用して観測光の選択増強をすることもできないという問題もあった。
例えば、上記従来技術を示す文献として目本国特開2002−107301号公報のごときが存在する。
しかしながら、この顕微鏡は放出される蛍光強度が低いため光の利用効率が悪く、高い3次元分解能で可視的に試料観測する顕微鏡を所望し難いという問題があった。また、この顕微鏡では蛍光性の試料、あるいは蛍光色素で染色しなければ観測することができないという問題も並存している。さらに、従来の多光子励起蛍光顕微鏡では試料内の複数物質を同時に観測することが困難であり、生体試料等においては物質相互間の相対動作を認識できないという問題も指摘されている。
また、近年、他の顕微鏡として、周波数の異なる2つ光パルスを試料内分子に同時に入射させ、その差周波により分子振動や回転準位を励起し、さらに上の仮想準位を励起することによって発せられるコヒーレントアンチストークスラマン散乱光(Coherent Antistokes Raman Spectroscopy:以下、「CARS光」と称する)を観測するコヒーレントアンチストークスラマン散乱顕微鏡(以下、「CARS顕微鏡」と称する)が開発されている。
この顕微鏡では、試料分子への入射光の周波数差が試料分子固有の分子振動準位と共嗚したときにCARS光が増幅されるという光学原理を利用したものであり、試料分子に蛍光染色を行うことなく試料観測可能である点では有利であるが、その反面、観測対象となるCARS光の増強は2つの異なる周波数の入射光の差周波に依存し、観測されるCARS光も該入射光の差周波に依存するものであるため、実現化設計、特に目的試料分子が複数に亘る場合における調整の困難性が指摘されている。また、CARS顕微鏡では、目的試料分子の分子振動準位との共鳴で増強されたCARS光を観測対象としており蛍光顕微鏡のように蛍光観測するものではないため、既存の蛍光染色技術を活用して観測光の選択増強をすることもできないという問題もあった。
例えば、上記従来技術を示す文献として目本国特開2002−107301号公報のごときが存在する。
以上の事情に鑑みて、本発明は多数の目的試料物質を高感度、低侵襲に同時検出することができ、且つ試料物質への蛍光染色を必須としない顕微鏡等の空間情報検出手段を提供することを目的とする。
第一の本発明は、試料内の目的物質が放出する光を検出することにより試料内物質の空間情報を取得する空間情報検出装置を提供している。具体的には、長波長の短パルス光を照射する光源(例えば、実施形態におけるレーザ光源1を参照)と、光源からの照射光を2つの光路に分流する第1分流手段(例えば、実施形態におけるビームスプリッタBS1)と、第1分流手段により分けられた2つの光路のうち一方の光路上で予め設定されたポンプ光を生成するポンプ光生成手段と、第1分流手段により分けられた2つの光路のうち他方の光路上で予め設定されたプローブ光を生成するプローブ光生成手段と、2つの光路を合流させて前記ポンプ光と前記プローブ光とを空間的に重畳させる合流手段(例えば、実施形態のビームスプリッタBS2)と、合流手段で重畳されたポンプ光とプローブ光とを収束させて試料を照射する試料照射手段(例えば、実施形態の対物レンズ対9、ステージ10、対物レンズ9a)と、試料照射手段により前記ポンプ光と前記プローブ光とを照射された試料から放出される光から予め設定された波長の放出光を抽出する目的放出光抽出手段(例えば、実施形態の対物レンズ9b、フィルター11)と、目的光抽出手段により抽出された波長光を検出する検出器(例えば、実施形態の検出器12)とを備え、予め設定されたポンプ光は、試料内物質が多光子で電子共鳴が起こるような周波数ω1,ω2,…ωnで設定され、目的放出光抽出手段により抽出される予め設定された波長の放出光は、ポンプ光の周波数ω1,ω2,…ωnの和と予め設定されたプローブ光の周波数ωn+1との差周波数ωn+2=(ω1+ω2+…ωn)−ωn+1に近づくように設定される(例えば、ポンプ光は、試料内物質が2光子で電子共嗚が起こるような周波数ω1,ω2で設定され、放出光は、ポンプ光の周波数ω1,ω2の和と予め設定されたプローブ光の周波数ω3との差周波数ω4=ω1+ω2−ω3に近づくように設定される)。
上記ポンプ光生成手段又はプローブ光生成手段は、第1分流手段から合流手段までの一方の光路の光路長を変化させる光路長伸縮手段を有することができる。また、予め設定されたポンプ光は2光子で電子共嗚が起こるような周波数ω1,ω2で設定されることが好ましい。予め設定されたポンプ光の周波数ω1,ω2は、同一の周波数ω1であることが好ましい。
また、プローブ光生成手段は、伝送される光から広帯域波長光を生成する光ファイバと該光ファイバから放出された広帯域波長光から予め設定された波長域の光を抽出するプローブ光抽出手段とを有することが好ましい。
ポンプ光生成手段は、伝送される光の周波数変換を行う発振器(例えば、実施形態におけるOPO:optical parametric oscillator)を有しても良い。また、ポンプ光生成手段は、伝送される光から広帯域波長光を生成する光ファイバを有しても良く、この場合、光ファイバから放出された広帯域波長光から予め設定された波長域の光を抽出するポンプ光抽出手段を供えることや、光ファイバから放出された広帯域波長光から予め設定された波長域の光を抽出するポンプ光抽出手段を有することが考えられる。
また、ポンプ光ω1、ω2、ω3それぞれ異なる周波数に設定する光学系として、第1として(図3及びこれを参照する実施形態の説明参照)、ポンプ光生成手段は、伝送される光の周波数変換を行う発振器と、発振器で変換された光を2つ以上の光路に分流する第2分流手段と、第2分流手段により分流された光路のうち一つの光路を伝送する光から広帯域の波長光を生成する光ファイバとを有し、合流手段は、第2分流手段により分流された光路を伝送するそれぞれのポンプ光を合流させてプローブ光に重畳させる光学系が提供される。
第2として(図4及びこれを参照する実施形態の説明参照)、ポンプ光生成手段は、伝送される光を2つ以上の光路に分流する第2分流手段と、第2分流手段により分流された光路のうち一つの光路を伝送する光から広帯域の波長光を生成する光ファイバと、第2分流手段により分流された光路のうち他の一つの光路を伝送する光の周波数変換を行う発振器とを有し、合流手段は、第2分流手段により分流された光路を伝送するそれぞれのポンプ光を合流させてプローブ光に重畳させる光学系も提供される。
さらに、第3として(図5及びこれを参照する実施形態の説明参照)、光源が広帯域の波長光を生成し(図5に示さず)、又は光源から第1分流手段までの光路に光帯域の波長光を生成する光ファイバを配設し(図5参照)、 さらに、プローブ光生成手段は、第1分流手段から伝送される広帯域波長光から予め設定された波長域の光を抽出するプローブ光抽出手段を有し、ポンプ光生成手段は、伝送される光を2つ以上の光路に分流する第2分流手段と、第2分流手段により分流された光路のうち一つの光路を伝送する光の周波数変換を行う発振器とを有し、合流手段は、第2分流手段により分流された光路を伝送するそれぞれのポンプ光を合流させてプローブ光に重畳させる光学系も提供される。
また、本発明は試料照射手段の具体的構成も提供している。例えば、少なくとも試料を載置するステージと該ステージを3次元移動させる駆動手段とを備えた試料移動手段を有する構成や、セルソータのごとき1つ以上の試料を順次一方向に搬送する搬送手段を有する構成も提供される。
第二の本発明の空間情報検出手段は、試料内の目的物質が放出する光を検出することにより試料内物質の空間情報を取得する空間情報検出装置であって、複数の所定強度以上の周波数光ω1,ω2,…ωnを含む一の超短パルス光を照射する光照射手段と、光照射手段からの照射光に含まれる周波数光ω1、ω2、…ωnのうちから設定される2つのポンプ光ωpとプローブ光ωdとを時間的に重畳させる時間差補償手段と、時間差補償手段で重畳されたポンプ光ωpとプローブ光ωdとを集光させて試料に照射する試料照射手段と、試料照射手段によりポンプ光ωpとプローブ光ωdとを照射された試料から放出される光から予め設定された波長の放出光を抽出する目的放出光抽出手段と、目的光抽出手段により抽出された波長光を検出する検出器とを備えている。ここで言うポンプ光ωpは、試料内物質が多光子で電子共鳴が起こるような周波数成分を有し、目的放出光抽出手段により抽出される波長の放出光は、ポンプ光ωdの和と前記プローブ光ωdとの差周波数ωSPE=2ωd−ωdに近づくように設定される。
また、光照射手段は、単一の広帯域スペクトルを有するパルス光を照射し、ポンプ光ωpとプローブ光ωdとは、照射されるパルス光の中心周波数から前後に離間した2つの周波数成分でそれぞれ設定され、時間差補償手段は、ポンプ光ωdとプローブ光ωdとの両者を時間的に重畳させても良い。また、光照射手段が、複数の頂部強度を含むスペクトルを有する単一のパルス光を照射し、ポンプ光ωpとプローブ光ωdとが、複数の頂部のうちの2つの頂部における周波数成分でそれぞれ設定され、さらに、時間差補償手段が、ポンプ光ωdとプローブ光ωdとの両者を時間的に重畳させても良い。さらに、光照射手段は少なくとも、光源からの照射光を光ファイバにより広帯域波長光に変換するように構成しても良いし、少なくとも、光源と、光源からの照射光を分流する分流手段と、分流された各照射光をそれぞれ所望の周波数変換する発振器とを備える構成であっても良い。なお、上述する目的光抽出手段は、試料の前後いずれかの光路上に配設され試料から放出される信号光と同じ帯域の局所発振光を生成する局所発振光発振動装置と、局所発振光発振動装置からの信号光と試料から放出される信号光とを空間的に重畳させる光学系と、重畳させた信号光の相互間に所定の遅延時間を付与する光学系と、を備えることが好ましく、誘導パラメトリック光信号の増強が容易に可能である。
上記ポンプ光生成手段又はプローブ光生成手段は、第1分流手段から合流手段までの一方の光路の光路長を変化させる光路長伸縮手段を有することができる。また、予め設定されたポンプ光は2光子で電子共嗚が起こるような周波数ω1,ω2で設定されることが好ましい。予め設定されたポンプ光の周波数ω1,ω2は、同一の周波数ω1であることが好ましい。
また、プローブ光生成手段は、伝送される光から広帯域波長光を生成する光ファイバと該光ファイバから放出された広帯域波長光から予め設定された波長域の光を抽出するプローブ光抽出手段とを有することが好ましい。
ポンプ光生成手段は、伝送される光の周波数変換を行う発振器(例えば、実施形態におけるOPO:optical parametric oscillator)を有しても良い。また、ポンプ光生成手段は、伝送される光から広帯域波長光を生成する光ファイバを有しても良く、この場合、光ファイバから放出された広帯域波長光から予め設定された波長域の光を抽出するポンプ光抽出手段を供えることや、光ファイバから放出された広帯域波長光から予め設定された波長域の光を抽出するポンプ光抽出手段を有することが考えられる。
また、ポンプ光ω1、ω2、ω3それぞれ異なる周波数に設定する光学系として、第1として(図3及びこれを参照する実施形態の説明参照)、ポンプ光生成手段は、伝送される光の周波数変換を行う発振器と、発振器で変換された光を2つ以上の光路に分流する第2分流手段と、第2分流手段により分流された光路のうち一つの光路を伝送する光から広帯域の波長光を生成する光ファイバとを有し、合流手段は、第2分流手段により分流された光路を伝送するそれぞれのポンプ光を合流させてプローブ光に重畳させる光学系が提供される。
第2として(図4及びこれを参照する実施形態の説明参照)、ポンプ光生成手段は、伝送される光を2つ以上の光路に分流する第2分流手段と、第2分流手段により分流された光路のうち一つの光路を伝送する光から広帯域の波長光を生成する光ファイバと、第2分流手段により分流された光路のうち他の一つの光路を伝送する光の周波数変換を行う発振器とを有し、合流手段は、第2分流手段により分流された光路を伝送するそれぞれのポンプ光を合流させてプローブ光に重畳させる光学系も提供される。
さらに、第3として(図5及びこれを参照する実施形態の説明参照)、光源が広帯域の波長光を生成し(図5に示さず)、又は光源から第1分流手段までの光路に光帯域の波長光を生成する光ファイバを配設し(図5参照)、 さらに、プローブ光生成手段は、第1分流手段から伝送される広帯域波長光から予め設定された波長域の光を抽出するプローブ光抽出手段を有し、ポンプ光生成手段は、伝送される光を2つ以上の光路に分流する第2分流手段と、第2分流手段により分流された光路のうち一つの光路を伝送する光の周波数変換を行う発振器とを有し、合流手段は、第2分流手段により分流された光路を伝送するそれぞれのポンプ光を合流させてプローブ光に重畳させる光学系も提供される。
また、本発明は試料照射手段の具体的構成も提供している。例えば、少なくとも試料を載置するステージと該ステージを3次元移動させる駆動手段とを備えた試料移動手段を有する構成や、セルソータのごとき1つ以上の試料を順次一方向に搬送する搬送手段を有する構成も提供される。
第二の本発明の空間情報検出手段は、試料内の目的物質が放出する光を検出することにより試料内物質の空間情報を取得する空間情報検出装置であって、複数の所定強度以上の周波数光ω1,ω2,…ωnを含む一の超短パルス光を照射する光照射手段と、光照射手段からの照射光に含まれる周波数光ω1、ω2、…ωnのうちから設定される2つのポンプ光ωpとプローブ光ωdとを時間的に重畳させる時間差補償手段と、時間差補償手段で重畳されたポンプ光ωpとプローブ光ωdとを集光させて試料に照射する試料照射手段と、試料照射手段によりポンプ光ωpとプローブ光ωdとを照射された試料から放出される光から予め設定された波長の放出光を抽出する目的放出光抽出手段と、目的光抽出手段により抽出された波長光を検出する検出器とを備えている。ここで言うポンプ光ωpは、試料内物質が多光子で電子共鳴が起こるような周波数成分を有し、目的放出光抽出手段により抽出される波長の放出光は、ポンプ光ωdの和と前記プローブ光ωdとの差周波数ωSPE=2ωd−ωdに近づくように設定される。
また、光照射手段は、単一の広帯域スペクトルを有するパルス光を照射し、ポンプ光ωpとプローブ光ωdとは、照射されるパルス光の中心周波数から前後に離間した2つの周波数成分でそれぞれ設定され、時間差補償手段は、ポンプ光ωdとプローブ光ωdとの両者を時間的に重畳させても良い。また、光照射手段が、複数の頂部強度を含むスペクトルを有する単一のパルス光を照射し、ポンプ光ωpとプローブ光ωdとが、複数の頂部のうちの2つの頂部における周波数成分でそれぞれ設定され、さらに、時間差補償手段が、ポンプ光ωdとプローブ光ωdとの両者を時間的に重畳させても良い。さらに、光照射手段は少なくとも、光源からの照射光を光ファイバにより広帯域波長光に変換するように構成しても良いし、少なくとも、光源と、光源からの照射光を分流する分流手段と、分流された各照射光をそれぞれ所望の周波数変換する発振器とを備える構成であっても良い。なお、上述する目的光抽出手段は、試料の前後いずれかの光路上に配設され試料から放出される信号光と同じ帯域の局所発振光を生成する局所発振光発振動装置と、局所発振光発振動装置からの信号光と試料から放出される信号光とを空間的に重畳させる光学系と、重畳させた信号光の相互間に所定の遅延時間を付与する光学系と、を備えることが好ましく、誘導パラメトリック光信号の増強が容易に可能である。
第一の本発明の空間情報検出装置(顕微鏡等)によれば多光子、とりわけ試料内物質を電子励起準位を2光子のポンプ光ω1、ω2(ω2=ω1も含む)で共鳴させ、ポンプ光で電子励起された目的物質にプローブ光ω3を照射することでω1+ω2−ω3の周波数の誘導パラメトリック光ω4を放出される構成を採用している。この光学系を採用すれば、目的物質ごとに設定される誘導パラメトリック光をポンプ光に依存させ、プローブ光にあまり依存させないこととなるので、複数の目的物質を蛍光染色せずに同時に検出する方法として非常に有利である。また、この光学系における励起・発光は全てコヒーレントな状態で行われ、発光も入射光に対してコヒーレントであり、発光は励起光と同様のパルスになるという特性を得ることもできる。
また、本発明装置ではポンプ光を広帯域波長光やマルチスペクトルパルス光に基づいて生成することができるので上記試料からの放出光(誘導パラメトリック光)の周波数がプローブ光の周波数に依存しない性質と相俟って、同時に多数(理論的には無数)の目的物質ごとに異なる周波数の誘導パラメトリック発光を容易に検出することができる。さらに、本発明装置は、共鳴効果を起こす対象を電子励起準位としているため広義には蛍光増強技術(非蛍光染色でありながら)といえ、誘導パラメトリック蛍光が増強するようにポンプ光を設定しておけば、誘導パラメトリック蛍光と同時に2光子蛍光を観察することも可能であり、CARS顕微鏡ではできなかった試料内物質を蛍光染色し観察する従来の観察手法を同時に踏襲することもでき、非常にユーザビリティが高い。さらに、出力光が入射光と同様の超短光パルスを生成するため、同期検出やヘテロダイン増幅にも好ましい。
また、本発明装置では、同一試料の走査検出のみならず、複数の試料に含まれる特定物質を順次検出する試料照射手段も提供されており、複数患者の生体細胞に特定物質が含まれているかを検出する場合等においても迅速な検出方法を提供することができる。以下、本発明の具体的な実施形態を例示する。
なお、第二の本発明の空間情報検出装置によれば、第一の本発明の場合と異なり、ポンプ光とプローブ光とを生成するためにレーザからの照射光を分流する必要がなく、シングルパルス光のうちに含まれる周波数成分からポンプ光とプローブ光とを生成し、誘導パラメトリック光(SPE)を生成し得るように分散補償素子により両者を時間差補償することできるので、光学系として調整し易く、シンプル、安価なものを提供可能となる。また、本発明によれば誘導パラメトリック光信号に局所発振光を干渉させることで信号増強も容易である。さらに、誘導パラメトリック光強度が試料の屈折率、吸収率に依存するため、屈折率、吸収率の空間分布を取得可能であり、このとき試料からの干渉信号(試料からの信号およびこれに局所発振光を干渉させた信号光)の位相情報から試料の屈折率と吸収率の情報を分離して取得可能である。
また、本発明装置ではポンプ光を広帯域波長光やマルチスペクトルパルス光に基づいて生成することができるので上記試料からの放出光(誘導パラメトリック光)の周波数がプローブ光の周波数に依存しない性質と相俟って、同時に多数(理論的には無数)の目的物質ごとに異なる周波数の誘導パラメトリック発光を容易に検出することができる。さらに、本発明装置は、共鳴効果を起こす対象を電子励起準位としているため広義には蛍光増強技術(非蛍光染色でありながら)といえ、誘導パラメトリック蛍光が増強するようにポンプ光を設定しておけば、誘導パラメトリック蛍光と同時に2光子蛍光を観察することも可能であり、CARS顕微鏡ではできなかった試料内物質を蛍光染色し観察する従来の観察手法を同時に踏襲することもでき、非常にユーザビリティが高い。さらに、出力光が入射光と同様の超短光パルスを生成するため、同期検出やヘテロダイン増幅にも好ましい。
また、本発明装置では、同一試料の走査検出のみならず、複数の試料に含まれる特定物質を順次検出する試料照射手段も提供されており、複数患者の生体細胞に特定物質が含まれているかを検出する場合等においても迅速な検出方法を提供することができる。以下、本発明の具体的な実施形態を例示する。
なお、第二の本発明の空間情報検出装置によれば、第一の本発明の場合と異なり、ポンプ光とプローブ光とを生成するためにレーザからの照射光を分流する必要がなく、シングルパルス光のうちに含まれる周波数成分からポンプ光とプローブ光とを生成し、誘導パラメトリック光(SPE)を生成し得るように分散補償素子により両者を時間差補償することできるので、光学系として調整し易く、シンプル、安価なものを提供可能となる。また、本発明によれば誘導パラメトリック光信号に局所発振光を干渉させることで信号増強も容易である。さらに、誘導パラメトリック光強度が試料の屈折率、吸収率に依存するため、屈折率、吸収率の空間分布を取得可能であり、このとき試料からの干渉信号(試料からの信号およびこれに局所発振光を干渉させた信号光)の位相情報から試料の屈折率と吸収率の情報を分離して取得可能である。
図1は、第一の本発明の実施形態の光学系例を示している。
図2は、図1の光学系例の主たる構成の略図を示している。
図3は、本発明の他の光学系例を略示している。
図4は、図3の光学系例の変形例である。
図5は、図3の光学系例の他の変形例である。
図6は、CARS顕微鏡の基本原理であるCARS過程を示している。
図7は、本発明の空間情報検出装置の基本原理である誘導パラメトリック過程の一態様を示している。
図8は、図7の誘導パラメトリック過程の変形態様の一つを示している。
図9は、3つの光路を伝送する光を時間的に重畳させる方法の一例を略示している。
図10は、第二の本発明の光学系例の略図である。
図11は、図10の光照射手段で照射されるシングルパルス光のスペクトルを示している。
図12は、図10の光照射手段で照射されるシングルパルス光のスペクトルを示している。
図13は、図10の光照射手段で照射されるシングルパルス光のスペクトルを示している。
図14は、第二の本発明の他の光学系例を示している。
図15は、第二の本発明の他の光学系例を示している。
図16は、光ファイバを通過した超短光パルスの実際のスペクトルを略示したものである。
図17は、誘導パラメトリック光を増強するための光学系例が示されている。
図2は、図1の光学系例の主たる構成の略図を示している。
図3は、本発明の他の光学系例を略示している。
図4は、図3の光学系例の変形例である。
図5は、図3の光学系例の他の変形例である。
図6は、CARS顕微鏡の基本原理であるCARS過程を示している。
図7は、本発明の空間情報検出装置の基本原理である誘導パラメトリック過程の一態様を示している。
図8は、図7の誘導パラメトリック過程の変形態様の一つを示している。
図9は、3つの光路を伝送する光を時間的に重畳させる方法の一例を略示している。
図10は、第二の本発明の光学系例の略図である。
図11は、図10の光照射手段で照射されるシングルパルス光のスペクトルを示している。
図12は、図10の光照射手段で照射されるシングルパルス光のスペクトルを示している。
図13は、図10の光照射手段で照射されるシングルパルス光のスペクトルを示している。
図14は、第二の本発明の他の光学系例を示している。
図15は、第二の本発明の他の光学系例を示している。
図16は、光ファイバを通過した超短光パルスの実際のスペクトルを略示したものである。
図17は、誘導パラメトリック光を増強するための光学系例が示されている。
まず、第一の本発明の具体的な実施形態を説明するにあたって基本原理となる非線形光学効果、特に一例としての4波混合について概説する。4波混合は、4つの電磁波を伴う非線形過程に帰属されるものであり、また3次の非線形光学過程であり3次の非線形感受率に支配される特性を有している。この3次の非線形光学効果とは、3つの周波数ω1,ω2,ω3の光を物質に入射すると、ω4=ω1±ω2±ω3 の周波数をもつ光が放出される現象であるが、2次の非線形光学効果と異なり分子の反転対称性の有無に拘わらず全ての物質で生じる反面、2次の非線形光学効果に比してその効果が弱いという特徴を有する。
しかしながら、その効果の脆弱性は、レーザにより高いピーク強度の入射光を使用し、物質の共鳴効果を利用することで解決することができ、3次の非線形光学効果を検出することを可能とするものである。
ここでは具体的説明として、上述するCARS顕微鏡の基本光学過程となるCARS過程と本発明の顕微鏡の基本光学過程として定義された誘導パラメトリック過程について図6〜7を参照しつつ概説することで4波混合における3次の非線形光学過程の説明に代替する。まず、図6はCARS過程のエネルギー準位を略示している。この図においてω1はポンプ光としての入射光の周波数、ω3はポンプ光ω1に重畳するプローブ光としての入射光の周波数、ω4はCARS光の周波数である。具体的には、超短パルス光レーザにより試料表面又は内部の同一分子にポンプ光ω1とプローブ光ω3とを同時に集光入射させ、この2つの光波の周波数差 Ω=ω1−ω3 が試料分子の分子振動数に一致することによって発せられるCARS光ω4を観測する。CARS過程では、2光子のポンプ光ω1とプローブ光ω3との差周波数Ωが試料分子が固有に有する分子振動準位と共鳴(試料分子固有の分子振動数と一致)すると発せられるCARS光が増強する特徴を有するので、出力光波長(CARS光波長)を設計する際にポンプ光及びプローブ光の両者の相関をもって設計する必要があり、出力光波長がポンプ光やプローブ光と近づくと波長による分光で出力光を抽出することができない場合がある等、適切な波長選択をすることが難しくなる。また、CARS過程では共鳴が生じる帯域幅が狭い分子振動共鳴に依存するためスペクトル幅をもったパルスを用いて効率良くCARS光を観測することも難しくなる。
これに対して、誘導パラメトリック過程ではこのような問題が解決される。図7を参照すれば、誘導パラメトリック過程のエネルギー準位を略示している。ここでもω1はポンプ光としての入射光の周波数、ω3はポンプ光ω1に重畳するプロープ光としての入射光の周波数、ω4は出力光の周波数である。具体的には、2光子励起可能な超短パルス光レーザにより試料表面又は内部の同一分子にポンプ光ω1を集光入射させて試料分子の電子励起準位を励起し、同時重畳的にプローブ光ω3を集光入射させることで励起された試料分子に強い電場を付与して発光するω4=2ω1−ω3の出力光を観測する。誘導パラメトリック光(蛍光)信号は、2光子のポンプ光ω1が試料分子が固有に有する電子励起準位と共嗚すると増強する特徴を有するので、ポンプ光の波長に依存するがプローブ光には依存しない。従って、上記CARS過程の場合と相異し、プローブ光の波長を変化させるだけで誘導パラメトリック光波長を自由に設計することができ、観測し易い出力光波長を選択することができる(出力光の波長選択が容易である)。また、誘導パラメトリック過程では電子共鳴が生じる帯域幅がCARS過程における分子振動共鳴が生じる帯域よりも広いため、スペクトル幅をもったパルスを用いて効率良く誘導パラメトリック蛍光を観測することができる。
次に、この誘導パラメトリック過程を活用した本発明の顕微鏡(誘導パラメトリック蛍光顕微鏡)の実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の顕微鏡(以下、「誘導パラメトリック蛍光顕微鏡」と称する)の光学系の基本例(後述の図2)に基づく具体的構成例である。図1に示す誘導パラメトリック蛍光顕微鏡は、まず光源としてフェムト秒オーダ〜数十フェムト秒オーダの超短パルスレーザなどから構成されるレーザ光源1を使用している。レーザ光源をこのようなフェムト秒オーダ〜数十フェムト秒オーダの超短パルスレーザ、すなわち数十フェムト秒オーダ以下の超短パルスレーザから構成することにより、これらの高い出力光強度に起因して極めて高い光信号強度を得ることができる。
また、レーザ光の光路には、ハーフミラーHM1とミラーM1との間にプリズム対3が設けられる。このプリズム対3を往復入射することでレーザ光の分散を補償することとができる。さらに、プリズム対3により分散補償されたレーザ光の光路は90度変換されて所定の光学系を構成すべくミラーM1〜M5が設けられ、ミラーM1〜M5を経由した光はビームスプリッタBS1に入射される。なお、レーザ1の後光路には光は系の反射戻り光を防止するためにアイソレータ2を設けることが好ましい。
次に、ビームスプリッタBS1への入射光は、2分割され、一方の光はミラーM6、対物レンズ6−1を介して光ファイバ(photonic cryatal fiber、以下、「PCF」と称する)7に入射される。このPCF7に超短パルスのレーザ光が入射されるとPCFの内部で非線形光学効果が生じ、広帯域パルス光を発生させる。その後、フィルター8により広帯域パルス光から所望する波長光を抽出してプローブ光が形成され、ミラー7を介してビームスプリッタBS2に入射される。なお、プローブ光を抽出するフィルター8は、例えば抽出する中心波長と半値全幅が既知の干渉フィルターと遮断波長が既知のロングパスフィルター(又はショートパスフィルター)とを組み合わせて構成される。なお、伝送光はPCFを透過すると広帯域波長光を生成するが同時にパルス幅を拡大させるのでPCF7後の光路上で分散補償する光学系を付与する必要がある(以下述べる実施形態においても、PCFを透過させた場合には該分散補償が必要となるが、これについては既知の技術であるため説明を省略する)。
また、ビームスプリッタBS1で2分割(分流)された、他方の光は、ポンプ光を生成する。詳細には、リトロリフレクター(3枚のミラーにより入射光を逆方向に反射させる光素子)4に入射・反射され、ビームスプリッタBS2まで到達し、前述のポンプ光と空間的に重畳される。また、リトロリフレクター4は図示しない時間遅延ステージ上に配置され、該ステージの往復動に応じてビームスプリッタBS2までの光路長が変化する。その結果、時間遅延ステージ(ディレイライン)を調整すればポンプ光とプローブ光を時間的に重畳することができる。その後、重畳された光はミラーM8により反射されて対物レンズ対9a,9bに照射される。
また、対物レンズ対9a、9bの間に試料が介挿され、この試料に対物レンズ9aにより収束されたレーザ光が照射されると焦点近傍の物質が電子励起され、前述する誘導パラメトリック発光が生じる。そして、対物レンズ9bから出射した光のうち誘導パラメトリック光の波長成分のみを抽出する。この誘導パラメトリック光は前述するようにポンプ光ω1とブローブ光ω3とから決定される周波数ω4(=2ω1−ω3)を有するため既知の波長λ4(=1/ω4)であり、フィルター11を該波長のみ透過するように設定することとで抽出することができる(このフィルター11の構成例は前述するフィルター8を参照)。そして、抽出された誘導パラメトリック光をイメージインテンシアファイア付きCCD等の検出器12に入射し、受光された誘導パラメトリック光は検出器12で電気信号に変換された後、コンピュータ(図示せず)に送られ、所定の演算処理を受ける。その結果、前記誘導パラメトリック光が3次元的に解析され、この解析結果としての目的試料物質の状態が3次元的に所定の画面上に映し出される。
なお、図1には試料が対物レンズ対9a,9b間で往復動可能なようにステージ10により位置決めされている様子が示されているが、これは誘導パラメトリック過程が対物レンズ9aにより収束されたレーザ光の焦点近傍で生じるため(非線形光学過程であるため)目的試料物質に焦点を一致させるように試料の深さ方向及び平面方向に走査可能(3次元走査可能)であることを示したものである。従って、観測しようとする試料内の目的物質の電子励起準位と共鳴する2光子のポンプ光ω1を設定し、ステージ10を往復動させるとレーザ光の焦点近傍に目的物質が存在すれば増強された誘導パラメトリック光が観測され、フィルター11を介して検出器12で検出されることとなる。
また、図1の実施形態は多種の試料内物質を観測することも可能である。前述するように誘導パラメトリック過程ではポンプ光により集光点近傍の電子励起準位を励起することで出力強度を増強するため観測光である誘導パラメトリック光の出力強度がポンプ光に依存し、プローブ光にはあまり依存しない性質を有している。この点を図1の顕微鏡に照らしてみると、レーザ1からの照射光の周波数を変化させてもプローブ光はPCF7により一旦、広帯域パルスに生成された後、フィルター8で所望波長のみ抽出されるため固定である。すなわち、図1の実施形態ではポンプ光を変化させてもプローブ光は固定させることができる。従って、ポンプ光ω1を生成してもプローブ光ω3が共通であるため放出される誘導パラメトリック光の周波数ω4は2ω1−ω3であり、ポンプ光の周波数(又は波長)に対応して一対一に誘導パラメトリック光が決定されるものであるため、異なる複数のポンプ光を設定すれば電子共鳴準位の異なる複数の試料内物質を容易に観測することができる。
以上の光学系における試料までの主構成と光路を伝送される光の周波数とを略示したものが図2に示されている(後述の他の光学系で比較参照するための理解を助ける図であり、参照番号は図1と重複する)。
また、図1及び図2の実施形態では試料は3次元移動可能なステージ10に位置決めされており、該ステージを移動させることで試料内の任意3次元位置において目的物質が存在するかを検出して検出器でイメージングする所謂3次元走査検出の構成が示されているが、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、対物レンズ対9a,9b間にセルソータのごとき管状の運搬器を設け、この中に複数の試料を流すことも可能である。この場合、流される複数試料のそれぞれにレーザ光の焦点が位置するように位置決めすれば焦点通過した時点で目的物質が存在すれば誘導パラメトリック蛍光を発することとなり試料内に目的物質(複数でも良い)が含まれているか否かを迅速に検出することが容易である。
上記説明で目的試料物質に対応して異なる周波数のポンプ光を設定することを言及したが、この複数のポンプ光をさらに多数のポンプ光に拡大設定することも可能である。具体的に説明すれば、図2の光学系では入射光として2光子のポンプ光ω1とプローブ光ω3とを重畳することで放出光ω3と誘導パラメトリック光ω4を得る過程を活用しているが、他の実施形態では2光子のポンプ光のいずれか1つをPCFにより広帯域パルス光(例えば波長が390nm〜1600nmに広がった白色パルス光)にし、該広帯域パルスから所望波長(周波数ω2)を抽出することで、誘導パラメトリック光ω4を放出させることも考えられる。
ここで、図3の光学系を参照すればレーザ1からの照射光の周波数をプローブ光ω3とし、を入射光ω1のうち一つの周波数をω2とし、放出光ω3と観測対象となる誘導パラメトリック光ω4を放出させる光学系が示されている。この過程の場合、レーザ1の照射光が分流され、一方の光路でそのままプローブ光ω3として伝送される。また、他方の光路ではOPO20で周波数がω1に変換された後にビームスプリッタBS3により分流され、一の光路ではそのまま伝送されポンプ光ω1を生成し、他の光路ではPCF22により広帯域波長光ω2のポンプ光が生成されている。従って、ポンプ光ω1と複数の所望波長(周波数ω2=ω21、ω22、ω23、ω24、…)を含んだ広帯域パルス光としてのポンプ光ω2とが試料に同時照射され、前述の図1及び図2に示すように共通周波数ω3のプローブ光を同期させて試料照射するので、放出される誘導パラメトリック光の周波数はそれぞれの目的物質ごとに固定のω4=ω1+ω2−ω3となる。従って、観測試料内で空間情報を取得したい物質ごとにそれぞれ電子励起準位の周波数ω1+ω2を仮定し、誘導パラメトリック光ω4=ω1+ω2−ω3設定しておけば、集光点近傍で放出される光のうち設定された周波数ω4(対応する波長)が検出されるとこれに対応する物質情報が集光点近傍に位置することを検出することが可能となる。換言すれば、図3の実施形態によればポンプ光として広帯域パルスを使用することにより一度に試料内の複数物質の空間情報を同時に検出することが可能となる。なお、複数の目的物質にそれぞれ対応する誘導パラメトリック光は設定された周波数に基づく波長を抽出すべく、ファルター11の代替として分光器を設ける又はPCFの後にフィルター(図2のフィルター8のごとき)を設けることが好ましい。
また、図4の光学系を参照すれば図3の光学系の変形例が示されている。具体的には、レーザ1からの照射光を分流し一方の光路ではプローブ光ω3を生成し、他の光路をさらに分流してポンプ光ω1、ω2を生成する点では上記図3と同様であるが、図4の光学系の場合、図3においてビームスプリッタBS3より前の光路上にOPO20を配設する変わりにビームスプリッタBS3で分流された後にPCF24が配設される光路以外の光路上にOPO26を配設する構成を採用している。また、図5の光学系も図3の光学系の変形例であり、レーザ1からの照射光を分流し、ポンプ光ω1、ω2、プローブ光ω3を生成する点では上記図3と同様であるが、図5の光学系の場合、レーザ1からの放出光が分流される前にPCF28で広帯域波長光に変換している。この場合、PCF28の放出光ω1が分流されて、プローブ光生成側の光路ではフィルター8により波長抽出されてプローブ光ω3が放出され、ポンプ光生成側では、ブームスプリッタBS3で分流した後、一方の光路はレーザ光そのまま周波数ω1を伝送し、もう一方の光路ではOPO30を配設しポンプ光ω2を生成している。また、図6ではレーザ1の放出光からPCF28で広帯域波長光を生成する構成が示されているが、原始的に広帯域波長光を放出しているレーザ1の場合はOPO28による周波数変換は不要である。
さらに、上記説明では試料内物質自体の放出蛍光(誘導パラメトリック光)を検出し、試料内物質の空間情報を取得する方法が提供されたが、既知の2光子蛍光観察と併用することも可能である。既知の2光子蛍光観察とは観測対象物質(分子)を蛍光試料で染色し、長波長の短パルス光を蛍光試料に励起光として照射することで放出される蛍光を検出する観察方法である。これを本発明と併用するには、まず誘導パラメトリック光が増強されるポンプ光を選択し、プローブ光と共に蛍光試料へ入射し、蛍光試料から発生する蛍光を検出する。このようにすれば蛍光試料の電子共鳴特性が既知のものであるためポンプ光が電子共鳴を起こす適切な波長であるか否かを判断することができ、顕微鏡としての精度を向上させることができる。
その他、特に図示しないが図1及び図2の変形例(図7の光学過程を利用する態様)としてレーザ光の周波数をω3としてプローブ光生成側の光路にそのまま伝送し、ポンプ光生成側の光路においてPCFにより広帯域波長光(周波数ω1)を生成する光学系も考えられる。また、これも図示しないが図3(及び図4〜5の変形例(図8の光学過程を利用する態様)としてレーザ光の周波数をプローブ光生成側の光路にそのまま伝送しプローブ光ω3を生成し又はプローブ光生成側の光路でOPOにより特定周波数ω3に変換してプローブ光ω3を生成し、ポンプ光生成側の光路においてPCFにより広帯域波長光(周波数ω1,ω2)を生成する光学系も考えられる。
なお、上述する図1の光学系の説明(段落(0023)参照)においてポンプ光とプローブ光とを時間的に重畳する方法が示されたが、図3〜5の光学系のように3つの光路上のポンプ光及びプローブ光を時間的に重畳させる場合の光学系例を図9に参照しておく。この場合、2本の光路を一方の時間調整ステージで時間調整し、調整された2光と残りの光を他の時間ステージにより時間調整することとしている。
次に第二の本発明の実施形態について説明する。上述する第一の本発明では、図2〜図5を参照しても理解されるように、レーザ1からの超短パルス光を一旦、2つの光学系に分流し、少なくとも一方の光学系で周波数変調させることでポンプ光とプローブ光とを生成し、試料照射することで誘導パラメトリック光を発生させるように構成している。これに対して、レーザからの照射光を分流しないで誘導パラメトリック光を発生し得るポンプ光とプローブ光とを生成する。
まず、図10は第二の本発明における第一実施形態の光学系を簡略化して示している。この図からも明らかなようにこの光学系によれば図2〜図5に示す第一の本発明の光学系と異なりポンプ光とプローブ光とを生成するために光照射手段(レーザを含む)100からの照射光を分流する光学系が存在せず、光照射手段からの照射光は位相変調手段102を経て試料を照射している。
ここで、光照射手段100からの照射光、およびポンプ光、プローブ光の生成について言及する。まず、光照射手段100で生成される1つの照射光として、図11に示すような所定帯域スペクトルを有する単一の超短パルス光、すなわち連続スペクトルを形成するシングルパルス光が挙げられる。通常、2光子レーザの照射光それ自体がこのような所定帯域スペクトルで形成されている。従って、図11のような連続スペクトルを有する照射光を用いる場合の光照射手段100は、レーザ1そのものでも良い。
この照射光のスペクトルは周波数成分に応じてその強度が増大し、所定の周波数成分(「中心周波数成分」と称する:図11中の一点鎖線参照)を境界に周波数成分に応じてその強度が減少するように形成されるものであり、所定強度以上の周波数帯域が広がっている。また、この帯域の幅は光学系を経ていくにつれて増大していく性質があり、分散と称される。第二の本発明の第一実施形態では所定強度以上の帯域の両端の周波数成分をそれぞれポンプ光ωp、プローブ光ωdとして用いることとしている。なお、プローブ光はダンプ(dump)光とも称するためωdと標記する。
しかしながら、照射光である超短光パルスは分散が生じているものであり、分散していない場合には含まれる周波数(波長)成分が中心となる基準時間で概ね揃っている(時間的に重畳)が、分散している場合、各周波数成分が基準時間からずれ、ある周波数成分では基準時間よりも前に、ある周波数成分は基準時間よりも後ろに存在するという状態になる。従って、上記のように連続スペクトルを有するシングルパルス光の所定周波数成分をポンプ光ωp、プローブωdとして設定しようとしても、両者は時間的にずれて伝播することとなり、これをそのまま試料に照射しても略同時照射を条件とする誘導パラメトリック発光は生じない。
そこで、第二の本発明では位相変調手段(時間差補償手段)102によりポンプ光、プローブ光として設定する周波数光ωpとωdとの位相を変調し、互いに位相共鳴させることとで両者を時間的に重畳させる時間補償を行うようにしている。具体的には、位相変調手段102として一般的に分散補償素子として用いるプリズム対や回折格子、空間光変調器(SLM)を使用する。これにより、ωpの周波数成分とωdの周波数成分とが時間的に重畳する。また、ωpの周波数成分とωdの周波数成分とを位相共鳴させるため他の周波数成分は位相干渉を生ぜしめ結果、ωpの周波数成分とωdの周波数成分の強度が他の周波数成分に比して格段に大きくなる。
以上により、ポンプ光としてωpの周波数成分、プローブ光としてωdの周波数成分を抽出でき且つ時間的に重畳させて試料に照射できるため、誘導パラメトリック光ωSPE= 2ωp − 2ωd を発生させることが可能となる。
次に、第二の本発明における第二実施形態の光学系、および原理について説明する。この実施形態も前述の第一実施形態と同様に、レーザからの照射光を分流しないで誘導パラメトリック光を発生し得るポンプ光とプローブ光とを生成する。
図10に示す簡略化された光学系は、ここで説明する第二実施形態にも適用され、上述するようにポンプ光とプローブ光とを生成するために光照射手段100からの照射光を分流する光学系が存在せず、光照射手段100からの照射光は位相変調手段102を経て試料を照射している。
ここでの光照射手段100で生成される1つの照射光は、図12に示すように2つの周波数域ωp、ωdで強度ピークを有するスペクトル(ダブルスペクトル)が形成される単一のパルス光(シングルパルス光)である。照射光としてこのようなダブルスペクトルを有するシングルパルス光を用いた第二の本発明の第二実施形態では2つのピーク強度を有する周波数成分をそれぞれポンプ光ωp、プローブ光ωdとして用いることとしている。そして、この場合にも上述するようにポンプ光ωpとプローブωdとは、時間的にずれて伝播することとなり、誘導パラメトリック光を発生させるために両者を時間的に重畳させる必要がある。従って、この第二実施形態においても位相変調手段102によりポンプ光、プローブ光として設定する周波数光ωpとωdとの位相を変調し、互いに位相共鳴させることとで両者を時間的に重畳させる時間補償を行うようにしており、ここでも位相変調手段102としてプリズム対や回折格子、空間光変調器(SLM)、デフォーマブルミラー等の一般的に分散補償素子を使用する。これにより、ωpの周波数成分とωdの周波数成分とが時間的に重畳し、誘導パラメトリック光ωSPE = 2ωp − 2ωd を発生させることが可能となる。
次に、第二の本発明における第三実施形態の場合も第一実施形態、第二実施形態と同様に、レーザからの照射光を分流しないで誘導パラメトリック光を発生し得るポンプ光とプローブ光とを生成し、図10に示す光学系で略示されるように光照射手段100からの照射光を分流せず、光照射手段100からの照射光は位相変調手段102を経て試料を照射している。ここでの光照射手段100で生成される1つの照射光は、図13に示すように複数の周波数域ω1、ω2、ω3、ω4、…、ωnの強度ピークを有するスペクトル(マルチスペクトル)が形成されるシングルパルス光である。照射光としてこのようなマルチスペクトルを有する照射光を用いた場合、複数のピーク強度を有する周波数成分ω1、ω2、ω3、ω4、…、ωnのうち任意選択された2つをそれぞれポンプ光ωp、プローブ光ωdとして用いることとしている。そして、この場合にも上述するようにポンプ光ωpとプローブωdとを時間的に重畳させる必要があり、上記同様に位相変調手段102により時間補償を行い、誘導パラメトリック光ωSPE = 2ωp − 2ωd を発生させる。
図14を参照すれば、この第三実施形態として使用される光照射手段100の一例が略示されている。具体的には、照射光はレーザ(オシレータ)112からの照射光を光ファイバ(PCF)114を経ることで広帯域スペクトルを有するように生成される。このとき光ファイバ(PCF)114で生成される実際のスペクトルは、通常、図15に示すように複数のピーク強度を有するマルチスペクトル光である。従って、各ピークの周波数成分のうち2つを任意選択したそれぞれをポンプ光、プローブ光として設定し、両者を分散補償素子で時間的に重畳すれば誘導パラメトリック光を発生させ得ることとなる。
さらに、図16では第三実施形態の光照射手段100の他の例を示している。この場合、照射光はレーザ(オシレータ)112からの照射光をビームスプリッタBSにより分流し、それぞれをOPO116で所望の周波数成分に変換する。これにより、OPO116の数に応じて複数の周波数成分を生成することが可能となり、生成された各周波数成分のうち2つを任意選択してそれぞれをポンプ光、プローブ光として設定すれば、両者を分散補償素子で時間的に重畳することで誘導パラメトリック光を発生させ得ることとなる。
なお、ここでは広帯域スペクトル光を生成するためにPCF(フォトニック結晶ファイバ)を使用する例を示したが、他のもの、例えばテーパーファイバ、高非線形分散シフトファイバ、水晶、水等でも代替できる。
また、図17に示すように、広帯域の誘導パラメトリック光ω4に局所発振器200で発生された同じ周波数(波長)帯域の広帯域局所発信光を空間的に重畳させて分光器202で目的波長光を抽出して測定することも好ましい。この場合、分光器202上で、誘導パラメトリック光と局所発信光との間に適当な遅延時間を付与することにより(遅延手段としては図1の符号4、図9参照)スペクトル干渉させることができ、取得される誘導パラメトリック光信号を増強可能となる。
また、図17では、局所発振光を生成するには光照射手段(レーザ1等)からの超短光パルス光(ポンプ光,プローブ光)を分流した後に局所発振器200を別途配設して生成する手段が示されているが、誘導パラメトリック光の増強のための局所発振光の生成はこれに限定されるものではなく、分流せずに同じ光路上で局所発振光発生装置を設けることで発生させても良い。例えば、試料への集光点と異なる位置(但し、同一光路)に設けられたレンズに集光させる方法でも良く、レンズの代わりに試料を被覆するカバーガラスに集光させても良く、外乱にも強いため有利である。また、局所発振光発生装置は試料の前後どちらかにおいて発生させても良い。さらに、スペクトル干渉を行えば足りるため、広帯域スペクトル光の一部を局所発振光として用いることも可能である。
しかしながら、その効果の脆弱性は、レーザにより高いピーク強度の入射光を使用し、物質の共鳴効果を利用することで解決することができ、3次の非線形光学効果を検出することを可能とするものである。
ここでは具体的説明として、上述するCARS顕微鏡の基本光学過程となるCARS過程と本発明の顕微鏡の基本光学過程として定義された誘導パラメトリック過程について図6〜7を参照しつつ概説することで4波混合における3次の非線形光学過程の説明に代替する。まず、図6はCARS過程のエネルギー準位を略示している。この図においてω1はポンプ光としての入射光の周波数、ω3はポンプ光ω1に重畳するプローブ光としての入射光の周波数、ω4はCARS光の周波数である。具体的には、超短パルス光レーザにより試料表面又は内部の同一分子にポンプ光ω1とプローブ光ω3とを同時に集光入射させ、この2つの光波の周波数差 Ω=ω1−ω3 が試料分子の分子振動数に一致することによって発せられるCARS光ω4を観測する。CARS過程では、2光子のポンプ光ω1とプローブ光ω3との差周波数Ωが試料分子が固有に有する分子振動準位と共鳴(試料分子固有の分子振動数と一致)すると発せられるCARS光が増強する特徴を有するので、出力光波長(CARS光波長)を設計する際にポンプ光及びプローブ光の両者の相関をもって設計する必要があり、出力光波長がポンプ光やプローブ光と近づくと波長による分光で出力光を抽出することができない場合がある等、適切な波長選択をすることが難しくなる。また、CARS過程では共鳴が生じる帯域幅が狭い分子振動共鳴に依存するためスペクトル幅をもったパルスを用いて効率良くCARS光を観測することも難しくなる。
これに対して、誘導パラメトリック過程ではこのような問題が解決される。図7を参照すれば、誘導パラメトリック過程のエネルギー準位を略示している。ここでもω1はポンプ光としての入射光の周波数、ω3はポンプ光ω1に重畳するプロープ光としての入射光の周波数、ω4は出力光の周波数である。具体的には、2光子励起可能な超短パルス光レーザにより試料表面又は内部の同一分子にポンプ光ω1を集光入射させて試料分子の電子励起準位を励起し、同時重畳的にプローブ光ω3を集光入射させることで励起された試料分子に強い電場を付与して発光するω4=2ω1−ω3の出力光を観測する。誘導パラメトリック光(蛍光)信号は、2光子のポンプ光ω1が試料分子が固有に有する電子励起準位と共嗚すると増強する特徴を有するので、ポンプ光の波長に依存するがプローブ光には依存しない。従って、上記CARS過程の場合と相異し、プローブ光の波長を変化させるだけで誘導パラメトリック光波長を自由に設計することができ、観測し易い出力光波長を選択することができる(出力光の波長選択が容易である)。また、誘導パラメトリック過程では電子共鳴が生じる帯域幅がCARS過程における分子振動共鳴が生じる帯域よりも広いため、スペクトル幅をもったパルスを用いて効率良く誘導パラメトリック蛍光を観測することができる。
次に、この誘導パラメトリック過程を活用した本発明の顕微鏡(誘導パラメトリック蛍光顕微鏡)の実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の顕微鏡(以下、「誘導パラメトリック蛍光顕微鏡」と称する)の光学系の基本例(後述の図2)に基づく具体的構成例である。図1に示す誘導パラメトリック蛍光顕微鏡は、まず光源としてフェムト秒オーダ〜数十フェムト秒オーダの超短パルスレーザなどから構成されるレーザ光源1を使用している。レーザ光源をこのようなフェムト秒オーダ〜数十フェムト秒オーダの超短パルスレーザ、すなわち数十フェムト秒オーダ以下の超短パルスレーザから構成することにより、これらの高い出力光強度に起因して極めて高い光信号強度を得ることができる。
また、レーザ光の光路には、ハーフミラーHM1とミラーM1との間にプリズム対3が設けられる。このプリズム対3を往復入射することでレーザ光の分散を補償することとができる。さらに、プリズム対3により分散補償されたレーザ光の光路は90度変換されて所定の光学系を構成すべくミラーM1〜M5が設けられ、ミラーM1〜M5を経由した光はビームスプリッタBS1に入射される。なお、レーザ1の後光路には光は系の反射戻り光を防止するためにアイソレータ2を設けることが好ましい。
次に、ビームスプリッタBS1への入射光は、2分割され、一方の光はミラーM6、対物レンズ6−1を介して光ファイバ(photonic cryatal fiber、以下、「PCF」と称する)7に入射される。このPCF7に超短パルスのレーザ光が入射されるとPCFの内部で非線形光学効果が生じ、広帯域パルス光を発生させる。その後、フィルター8により広帯域パルス光から所望する波長光を抽出してプローブ光が形成され、ミラー7を介してビームスプリッタBS2に入射される。なお、プローブ光を抽出するフィルター8は、例えば抽出する中心波長と半値全幅が既知の干渉フィルターと遮断波長が既知のロングパスフィルター(又はショートパスフィルター)とを組み合わせて構成される。なお、伝送光はPCFを透過すると広帯域波長光を生成するが同時にパルス幅を拡大させるのでPCF7後の光路上で分散補償する光学系を付与する必要がある(以下述べる実施形態においても、PCFを透過させた場合には該分散補償が必要となるが、これについては既知の技術であるため説明を省略する)。
また、ビームスプリッタBS1で2分割(分流)された、他方の光は、ポンプ光を生成する。詳細には、リトロリフレクター(3枚のミラーにより入射光を逆方向に反射させる光素子)4に入射・反射され、ビームスプリッタBS2まで到達し、前述のポンプ光と空間的に重畳される。また、リトロリフレクター4は図示しない時間遅延ステージ上に配置され、該ステージの往復動に応じてビームスプリッタBS2までの光路長が変化する。その結果、時間遅延ステージ(ディレイライン)を調整すればポンプ光とプローブ光を時間的に重畳することができる。その後、重畳された光はミラーM8により反射されて対物レンズ対9a,9bに照射される。
また、対物レンズ対9a、9bの間に試料が介挿され、この試料に対物レンズ9aにより収束されたレーザ光が照射されると焦点近傍の物質が電子励起され、前述する誘導パラメトリック発光が生じる。そして、対物レンズ9bから出射した光のうち誘導パラメトリック光の波長成分のみを抽出する。この誘導パラメトリック光は前述するようにポンプ光ω1とブローブ光ω3とから決定される周波数ω4(=2ω1−ω3)を有するため既知の波長λ4(=1/ω4)であり、フィルター11を該波長のみ透過するように設定することとで抽出することができる(このフィルター11の構成例は前述するフィルター8を参照)。そして、抽出された誘導パラメトリック光をイメージインテンシアファイア付きCCD等の検出器12に入射し、受光された誘導パラメトリック光は検出器12で電気信号に変換された後、コンピュータ(図示せず)に送られ、所定の演算処理を受ける。その結果、前記誘導パラメトリック光が3次元的に解析され、この解析結果としての目的試料物質の状態が3次元的に所定の画面上に映し出される。
なお、図1には試料が対物レンズ対9a,9b間で往復動可能なようにステージ10により位置決めされている様子が示されているが、これは誘導パラメトリック過程が対物レンズ9aにより収束されたレーザ光の焦点近傍で生じるため(非線形光学過程であるため)目的試料物質に焦点を一致させるように試料の深さ方向及び平面方向に走査可能(3次元走査可能)であることを示したものである。従って、観測しようとする試料内の目的物質の電子励起準位と共鳴する2光子のポンプ光ω1を設定し、ステージ10を往復動させるとレーザ光の焦点近傍に目的物質が存在すれば増強された誘導パラメトリック光が観測され、フィルター11を介して検出器12で検出されることとなる。
また、図1の実施形態は多種の試料内物質を観測することも可能である。前述するように誘導パラメトリック過程ではポンプ光により集光点近傍の電子励起準位を励起することで出力強度を増強するため観測光である誘導パラメトリック光の出力強度がポンプ光に依存し、プローブ光にはあまり依存しない性質を有している。この点を図1の顕微鏡に照らしてみると、レーザ1からの照射光の周波数を変化させてもプローブ光はPCF7により一旦、広帯域パルスに生成された後、フィルター8で所望波長のみ抽出されるため固定である。すなわち、図1の実施形態ではポンプ光を変化させてもプローブ光は固定させることができる。従って、ポンプ光ω1を生成してもプローブ光ω3が共通であるため放出される誘導パラメトリック光の周波数ω4は2ω1−ω3であり、ポンプ光の周波数(又は波長)に対応して一対一に誘導パラメトリック光が決定されるものであるため、異なる複数のポンプ光を設定すれば電子共鳴準位の異なる複数の試料内物質を容易に観測することができる。
以上の光学系における試料までの主構成と光路を伝送される光の周波数とを略示したものが図2に示されている(後述の他の光学系で比較参照するための理解を助ける図であり、参照番号は図1と重複する)。
また、図1及び図2の実施形態では試料は3次元移動可能なステージ10に位置決めされており、該ステージを移動させることで試料内の任意3次元位置において目的物質が存在するかを検出して検出器でイメージングする所謂3次元走査検出の構成が示されているが、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、対物レンズ対9a,9b間にセルソータのごとき管状の運搬器を設け、この中に複数の試料を流すことも可能である。この場合、流される複数試料のそれぞれにレーザ光の焦点が位置するように位置決めすれば焦点通過した時点で目的物質が存在すれば誘導パラメトリック蛍光を発することとなり試料内に目的物質(複数でも良い)が含まれているか否かを迅速に検出することが容易である。
上記説明で目的試料物質に対応して異なる周波数のポンプ光を設定することを言及したが、この複数のポンプ光をさらに多数のポンプ光に拡大設定することも可能である。具体的に説明すれば、図2の光学系では入射光として2光子のポンプ光ω1とプローブ光ω3とを重畳することで放出光ω3と誘導パラメトリック光ω4を得る過程を活用しているが、他の実施形態では2光子のポンプ光のいずれか1つをPCFにより広帯域パルス光(例えば波長が390nm〜1600nmに広がった白色パルス光)にし、該広帯域パルスから所望波長(周波数ω2)を抽出することで、誘導パラメトリック光ω4を放出させることも考えられる。
ここで、図3の光学系を参照すればレーザ1からの照射光の周波数をプローブ光ω3とし、を入射光ω1のうち一つの周波数をω2とし、放出光ω3と観測対象となる誘導パラメトリック光ω4を放出させる光学系が示されている。この過程の場合、レーザ1の照射光が分流され、一方の光路でそのままプローブ光ω3として伝送される。また、他方の光路ではOPO20で周波数がω1に変換された後にビームスプリッタBS3により分流され、一の光路ではそのまま伝送されポンプ光ω1を生成し、他の光路ではPCF22により広帯域波長光ω2のポンプ光が生成されている。従って、ポンプ光ω1と複数の所望波長(周波数ω2=ω21、ω22、ω23、ω24、…)を含んだ広帯域パルス光としてのポンプ光ω2とが試料に同時照射され、前述の図1及び図2に示すように共通周波数ω3のプローブ光を同期させて試料照射するので、放出される誘導パラメトリック光の周波数はそれぞれの目的物質ごとに固定のω4=ω1+ω2−ω3となる。従って、観測試料内で空間情報を取得したい物質ごとにそれぞれ電子励起準位の周波数ω1+ω2を仮定し、誘導パラメトリック光ω4=ω1+ω2−ω3設定しておけば、集光点近傍で放出される光のうち設定された周波数ω4(対応する波長)が検出されるとこれに対応する物質情報が集光点近傍に位置することを検出することが可能となる。換言すれば、図3の実施形態によればポンプ光として広帯域パルスを使用することにより一度に試料内の複数物質の空間情報を同時に検出することが可能となる。なお、複数の目的物質にそれぞれ対応する誘導パラメトリック光は設定された周波数に基づく波長を抽出すべく、ファルター11の代替として分光器を設ける又はPCFの後にフィルター(図2のフィルター8のごとき)を設けることが好ましい。
また、図4の光学系を参照すれば図3の光学系の変形例が示されている。具体的には、レーザ1からの照射光を分流し一方の光路ではプローブ光ω3を生成し、他の光路をさらに分流してポンプ光ω1、ω2を生成する点では上記図3と同様であるが、図4の光学系の場合、図3においてビームスプリッタBS3より前の光路上にOPO20を配設する変わりにビームスプリッタBS3で分流された後にPCF24が配設される光路以外の光路上にOPO26を配設する構成を採用している。また、図5の光学系も図3の光学系の変形例であり、レーザ1からの照射光を分流し、ポンプ光ω1、ω2、プローブ光ω3を生成する点では上記図3と同様であるが、図5の光学系の場合、レーザ1からの放出光が分流される前にPCF28で広帯域波長光に変換している。この場合、PCF28の放出光ω1が分流されて、プローブ光生成側の光路ではフィルター8により波長抽出されてプローブ光ω3が放出され、ポンプ光生成側では、ブームスプリッタBS3で分流した後、一方の光路はレーザ光そのまま周波数ω1を伝送し、もう一方の光路ではOPO30を配設しポンプ光ω2を生成している。また、図6ではレーザ1の放出光からPCF28で広帯域波長光を生成する構成が示されているが、原始的に広帯域波長光を放出しているレーザ1の場合はOPO28による周波数変換は不要である。
さらに、上記説明では試料内物質自体の放出蛍光(誘導パラメトリック光)を検出し、試料内物質の空間情報を取得する方法が提供されたが、既知の2光子蛍光観察と併用することも可能である。既知の2光子蛍光観察とは観測対象物質(分子)を蛍光試料で染色し、長波長の短パルス光を蛍光試料に励起光として照射することで放出される蛍光を検出する観察方法である。これを本発明と併用するには、まず誘導パラメトリック光が増強されるポンプ光を選択し、プローブ光と共に蛍光試料へ入射し、蛍光試料から発生する蛍光を検出する。このようにすれば蛍光試料の電子共鳴特性が既知のものであるためポンプ光が電子共鳴を起こす適切な波長であるか否かを判断することができ、顕微鏡としての精度を向上させることができる。
その他、特に図示しないが図1及び図2の変形例(図7の光学過程を利用する態様)としてレーザ光の周波数をω3としてプローブ光生成側の光路にそのまま伝送し、ポンプ光生成側の光路においてPCFにより広帯域波長光(周波数ω1)を生成する光学系も考えられる。また、これも図示しないが図3(及び図4〜5の変形例(図8の光学過程を利用する態様)としてレーザ光の周波数をプローブ光生成側の光路にそのまま伝送しプローブ光ω3を生成し又はプローブ光生成側の光路でOPOにより特定周波数ω3に変換してプローブ光ω3を生成し、ポンプ光生成側の光路においてPCFにより広帯域波長光(周波数ω1,ω2)を生成する光学系も考えられる。
なお、上述する図1の光学系の説明(段落(0023)参照)においてポンプ光とプローブ光とを時間的に重畳する方法が示されたが、図3〜5の光学系のように3つの光路上のポンプ光及びプローブ光を時間的に重畳させる場合の光学系例を図9に参照しておく。この場合、2本の光路を一方の時間調整ステージで時間調整し、調整された2光と残りの光を他の時間ステージにより時間調整することとしている。
次に第二の本発明の実施形態について説明する。上述する第一の本発明では、図2〜図5を参照しても理解されるように、レーザ1からの超短パルス光を一旦、2つの光学系に分流し、少なくとも一方の光学系で周波数変調させることでポンプ光とプローブ光とを生成し、試料照射することで誘導パラメトリック光を発生させるように構成している。これに対して、レーザからの照射光を分流しないで誘導パラメトリック光を発生し得るポンプ光とプローブ光とを生成する。
まず、図10は第二の本発明における第一実施形態の光学系を簡略化して示している。この図からも明らかなようにこの光学系によれば図2〜図5に示す第一の本発明の光学系と異なりポンプ光とプローブ光とを生成するために光照射手段(レーザを含む)100からの照射光を分流する光学系が存在せず、光照射手段からの照射光は位相変調手段102を経て試料を照射している。
ここで、光照射手段100からの照射光、およびポンプ光、プローブ光の生成について言及する。まず、光照射手段100で生成される1つの照射光として、図11に示すような所定帯域スペクトルを有する単一の超短パルス光、すなわち連続スペクトルを形成するシングルパルス光が挙げられる。通常、2光子レーザの照射光それ自体がこのような所定帯域スペクトルで形成されている。従って、図11のような連続スペクトルを有する照射光を用いる場合の光照射手段100は、レーザ1そのものでも良い。
この照射光のスペクトルは周波数成分に応じてその強度が増大し、所定の周波数成分(「中心周波数成分」と称する:図11中の一点鎖線参照)を境界に周波数成分に応じてその強度が減少するように形成されるものであり、所定強度以上の周波数帯域が広がっている。また、この帯域の幅は光学系を経ていくにつれて増大していく性質があり、分散と称される。第二の本発明の第一実施形態では所定強度以上の帯域の両端の周波数成分をそれぞれポンプ光ωp、プローブ光ωdとして用いることとしている。なお、プローブ光はダンプ(dump)光とも称するためωdと標記する。
しかしながら、照射光である超短光パルスは分散が生じているものであり、分散していない場合には含まれる周波数(波長)成分が中心となる基準時間で概ね揃っている(時間的に重畳)が、分散している場合、各周波数成分が基準時間からずれ、ある周波数成分では基準時間よりも前に、ある周波数成分は基準時間よりも後ろに存在するという状態になる。従って、上記のように連続スペクトルを有するシングルパルス光の所定周波数成分をポンプ光ωp、プローブωdとして設定しようとしても、両者は時間的にずれて伝播することとなり、これをそのまま試料に照射しても略同時照射を条件とする誘導パラメトリック発光は生じない。
そこで、第二の本発明では位相変調手段(時間差補償手段)102によりポンプ光、プローブ光として設定する周波数光ωpとωdとの位相を変調し、互いに位相共鳴させることとで両者を時間的に重畳させる時間補償を行うようにしている。具体的には、位相変調手段102として一般的に分散補償素子として用いるプリズム対や回折格子、空間光変調器(SLM)を使用する。これにより、ωpの周波数成分とωdの周波数成分とが時間的に重畳する。また、ωpの周波数成分とωdの周波数成分とを位相共鳴させるため他の周波数成分は位相干渉を生ぜしめ結果、ωpの周波数成分とωdの周波数成分の強度が他の周波数成分に比して格段に大きくなる。
以上により、ポンプ光としてωpの周波数成分、プローブ光としてωdの周波数成分を抽出でき且つ時間的に重畳させて試料に照射できるため、誘導パラメトリック光ωSPE= 2ωp − 2ωd を発生させることが可能となる。
次に、第二の本発明における第二実施形態の光学系、および原理について説明する。この実施形態も前述の第一実施形態と同様に、レーザからの照射光を分流しないで誘導パラメトリック光を発生し得るポンプ光とプローブ光とを生成する。
図10に示す簡略化された光学系は、ここで説明する第二実施形態にも適用され、上述するようにポンプ光とプローブ光とを生成するために光照射手段100からの照射光を分流する光学系が存在せず、光照射手段100からの照射光は位相変調手段102を経て試料を照射している。
ここでの光照射手段100で生成される1つの照射光は、図12に示すように2つの周波数域ωp、ωdで強度ピークを有するスペクトル(ダブルスペクトル)が形成される単一のパルス光(シングルパルス光)である。照射光としてこのようなダブルスペクトルを有するシングルパルス光を用いた第二の本発明の第二実施形態では2つのピーク強度を有する周波数成分をそれぞれポンプ光ωp、プローブ光ωdとして用いることとしている。そして、この場合にも上述するようにポンプ光ωpとプローブωdとは、時間的にずれて伝播することとなり、誘導パラメトリック光を発生させるために両者を時間的に重畳させる必要がある。従って、この第二実施形態においても位相変調手段102によりポンプ光、プローブ光として設定する周波数光ωpとωdとの位相を変調し、互いに位相共鳴させることとで両者を時間的に重畳させる時間補償を行うようにしており、ここでも位相変調手段102としてプリズム対や回折格子、空間光変調器(SLM)、デフォーマブルミラー等の一般的に分散補償素子を使用する。これにより、ωpの周波数成分とωdの周波数成分とが時間的に重畳し、誘導パラメトリック光ωSPE = 2ωp − 2ωd を発生させることが可能となる。
次に、第二の本発明における第三実施形態の場合も第一実施形態、第二実施形態と同様に、レーザからの照射光を分流しないで誘導パラメトリック光を発生し得るポンプ光とプローブ光とを生成し、図10に示す光学系で略示されるように光照射手段100からの照射光を分流せず、光照射手段100からの照射光は位相変調手段102を経て試料を照射している。ここでの光照射手段100で生成される1つの照射光は、図13に示すように複数の周波数域ω1、ω2、ω3、ω4、…、ωnの強度ピークを有するスペクトル(マルチスペクトル)が形成されるシングルパルス光である。照射光としてこのようなマルチスペクトルを有する照射光を用いた場合、複数のピーク強度を有する周波数成分ω1、ω2、ω3、ω4、…、ωnのうち任意選択された2つをそれぞれポンプ光ωp、プローブ光ωdとして用いることとしている。そして、この場合にも上述するようにポンプ光ωpとプローブωdとを時間的に重畳させる必要があり、上記同様に位相変調手段102により時間補償を行い、誘導パラメトリック光ωSPE = 2ωp − 2ωd を発生させる。
図14を参照すれば、この第三実施形態として使用される光照射手段100の一例が略示されている。具体的には、照射光はレーザ(オシレータ)112からの照射光を光ファイバ(PCF)114を経ることで広帯域スペクトルを有するように生成される。このとき光ファイバ(PCF)114で生成される実際のスペクトルは、通常、図15に示すように複数のピーク強度を有するマルチスペクトル光である。従って、各ピークの周波数成分のうち2つを任意選択したそれぞれをポンプ光、プローブ光として設定し、両者を分散補償素子で時間的に重畳すれば誘導パラメトリック光を発生させ得ることとなる。
さらに、図16では第三実施形態の光照射手段100の他の例を示している。この場合、照射光はレーザ(オシレータ)112からの照射光をビームスプリッタBSにより分流し、それぞれをOPO116で所望の周波数成分に変換する。これにより、OPO116の数に応じて複数の周波数成分を生成することが可能となり、生成された各周波数成分のうち2つを任意選択してそれぞれをポンプ光、プローブ光として設定すれば、両者を分散補償素子で時間的に重畳することで誘導パラメトリック光を発生させ得ることとなる。
なお、ここでは広帯域スペクトル光を生成するためにPCF(フォトニック結晶ファイバ)を使用する例を示したが、他のもの、例えばテーパーファイバ、高非線形分散シフトファイバ、水晶、水等でも代替できる。
また、図17に示すように、広帯域の誘導パラメトリック光ω4に局所発振器200で発生された同じ周波数(波長)帯域の広帯域局所発信光を空間的に重畳させて分光器202で目的波長光を抽出して測定することも好ましい。この場合、分光器202上で、誘導パラメトリック光と局所発信光との間に適当な遅延時間を付与することにより(遅延手段としては図1の符号4、図9参照)スペクトル干渉させることができ、取得される誘導パラメトリック光信号を増強可能となる。
また、図17では、局所発振光を生成するには光照射手段(レーザ1等)からの超短光パルス光(ポンプ光,プローブ光)を分流した後に局所発振器200を別途配設して生成する手段が示されているが、誘導パラメトリック光の増強のための局所発振光の生成はこれに限定されるものではなく、分流せずに同じ光路上で局所発振光発生装置を設けることで発生させても良い。例えば、試料への集光点と異なる位置(但し、同一光路)に設けられたレンズに集光させる方法でも良く、レンズの代わりに試料を被覆するカバーガラスに集光させても良く、外乱にも強いため有利である。また、局所発振光発生装置は試料の前後どちらかにおいて発生させても良い。さらに、スペクトル干渉を行えば足りるため、広帯域スペクトル光の一部を局所発振光として用いることも可能である。
Claims (19)
- 試料内の目的物質が放出する光を検出することにより試料内物質の空間情報を取得する空間情報検出装置であって、
超短パルス光を照射する光源と、
該光源からの照射光を2つの光路に分流する第1分流手段と、
前記第1分流手段により分けられた2つの光路のうち一方の光路上で予め設定されたポンプ光を生成するポンプ光生成手段と、
前記分流手段により分けられた2つの光路のうち他方の光路上で予め設定されたプローブ光を生成するプローブ光生成手段と、
前記2つの光路を合流させて前記ポンプ光と前記プローブ光とを空間的に重畳させる合流手段と、
前記合流手段で重畳された前記ポンプ光と前記プローブ光とを収束させて試料を照射する試料照射手段と、
前記試料照射手段により前記ポンプ光と前記プローブ光とを照射された試料から放出される光から予め設定された波長の放出光を抽出する目的放出光抽出手段と、
前記目的光抽出手段により抽出された波長光を検出する検出器とを備え、
前記予め設定されたポンプ光は、試料内物質が多光子で電子共鳴が起こるような周波数ω1,ω2,…ωnで設定され、前記目的放出光抽出手段により抽出される予め設定された波長の放出光は、前記ポンプ光の周波数ω1,ω2,…ωnの和と前記予め設定されたプローブ光の周波数ωn+1との差周波数ωn+2=(ω1+ω2+…ωn)−ωn+1に近づくように設定される、ことを特徴とする空間情報検出装置。 - 前記ポンプ光生成手段及び/又は前記プローブ光生成手段は前記第1分流手段から前記合流手段までの光路の光路長を変化させる光路長伸縮手段を有することを特徴とする請求項1に記載の空間情報検出装置。
- 前記予め設定されたポンプ光は2光子で電子共鳴が起こるような周波数ω1,ω2で設定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の空間情報検出装置。
- 前記予め設定されたポンプ光の周波数ω1,ω2は、同一の周波数ω1であることを特徴とする請求項3に記載の空間情報検出装置。
- 前記プローブ光生成手段は、伝送される光から広帯域波長光を生成する光ファイバと該光ファイバから放出された広帯域波長光から予め設定された波長域の光を抽出するプローブ光抽出手段とを有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の空間情報検出装置。
- 前記ポンプ光生成手段は、伝送される光の周波数変換を行う発振器を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の空間情報検出装置。
- 前記ポンプ光生成手段は、伝送される光から広帯域波長光を生成する光ファイバを有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の空間情報検出装置。
- 前記ポンプ光生成手段は、さらに前記光ファイバから放出された広帯域波長光から予め設定された波長域の光を抽出するポンプ光抽出手段を有することを特徴とする請求項7に記載の空間情報検出装置。
- 前記ポンプ光生成手段は、伝送される光の周波数変換を行う発振器と、前記発振器で変換された光を2つ以上の光路に分流する第2分流手段と、該第2分流手段により分流された光路のうち一つの光路を伝送する光から広帯域の波長光を生成する光ファイバと、を有し、
前記合流手段は、前記第2分流手段により分流された光路を伝送するそれぞれのポンプ光を合流させて前記プローブ光に重畳させる、ことを特徴とした請求項1〜3のいずれか1項に記載の空間情報検出装置。 - 前記ポンプ光生成手段は、伝送される光を2つ以上の光路に分流する第2分流手段と、
該第2分流手段により分流された光路のうち一つの光路を伝送する光から広帯域の波長光を生成する光ファイバと、前記第2分流手段により分流された光路のうち他の一つの光路を伝送する光の周波数変換を行う発振器と、を有し、
前記合流手段は、前記第2分流手段により分流された光路を伝送するそれぞれのポンプ光を合流させて前記プローブ光に重畳させる、ことを特徴とした請求項1〜3のいずれか1項に記載の空間情報検出装置。 - 前記光源が広帯域の波長光を生成し、又は前記光源から前記第1分流手段までの光路に光帯域の波長光を生成する光ファイバを配設し、
さらに、前記プローブ光生成手段は、前記第1分流手段から伝送される広帯域波長光から予め設定された波長域の光を抽出するプローブ光抽出手段を有し、前記ポンプ光生成手段は、伝送される光を2つ以上の光路に分流する第2分流手段と、該第2分流手段により分流された光路のうち一つの光路を伝送する光の周波数変換を行う発振器とを有し、
前記合流手段は、前記第2分流手段により分流された光路を伝送するそれぞれのポンプ光を合流させて前記プローブ光に重畳させる、ことを特徴とした請求項1〜3のいずれか1項に記載の空間情報検出装置。 - 前記試料照射手段は、少なくとも試料を載置するステージと該ステージを3次元移動させる駆動手段とを備えた試料移動手段を有することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の空間情報検出手段。
- 前記試料照射手段は、1つ以上の試料を順次一方向に搬送する搬送手段を有することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の空間情報検出手段。
- 試料内の目的物質が放出する光を検出することにより試料内物質の空間情報を取得する空間情報検出装置であって、
複数の所定強度以上の周波数光ω1,ω2,…ωnを含む一の超短パルス光を照射する光照射手段と、
前記光照射手段からの照射光に含まれる周波数光ω1、ω2、…ωnのうちから設定される2つのポンプ光ωpとプローブ光ωdとを時間的に重畳させる時間差補償手段と、
前記時間差補償手段で重畳された前記ポンプ光ωpとプローブ光ωdとを集光させて試料に照射する試料照射手段と、
前記試料照射手段により前記ポンプ光ωpとプローブ光ωdとを照射された試料から放出される光から予め設定された波長の放出光を抽出する目的放出光抽出手段と、
前記目的光抽出手段により抽出された波長光を検出する検出器とを備え、
前記ポンプ光ωpは、試料内物質が多光子で電子共鳴が起こるような周波数成分を有し、前記目的放出光抽出手段により抽出される波長の放出光は、前記ポンプ光ωdの和と前記プローブ光ωdとの差周波数ωSPE =2ωd−ωdに近づくように設定される、ことを特徴とする空間情報検出装置。 - 前記光照射手段は、単一の広帯域スペクトルを有するパルス光を照射し、
前記ポンプ光ωpと前記プローブ光ωdとは、照射されるパルス光の中心周波数から前後に離間した2つの周波数成分でそれぞれ設定され、
前記時間差補償手段は、前記ポンプ光ωdと前記プローブ光ωdとの両者を時間的に重畳させる、ことを特徴とする請求項14に記載の空間情報検出装置。 - 前記光照射手段は、複数の頂部強度を含むスペクトルを有する単一のパルス光を照射し、
前記ポンプ光ωpと前記プローブ光ωdとは、前記複数の頂部のうちの2つの頂部における周波数成分でそれぞれ設定され、
前記時間差補償手段は、前記ポンプ光ωdと前記プロープ光ωdとの両者を時間的に重畳させる、ことを特徴とする請求項14に記載の空間情報検出装置。 - 前記光照射手段は少なくとも、光源からの照射光を光ファイバにより広帯域波長光に変換する、ことを特徴とする請求項16に記載の空間情報検出装置。
- 前記光照射手段は少なくとも、光源と、前記光源からの照射光を分流する分流手段と、前記分流された各照射光をそれぞれ所望の周波数変換する発振器と、を備える、ことを特徴とする請求項16に記載の空間情報検出装置。
- 前記目的光抽出手段は、試料の前後いずれかの光路上に配設され試料から放出される信号光と同じ帯域の局所発振光を生成する局所発振光発振動装置と、前記局所発振光発振動装置からの信号光と試料から放出される信号光とを空間的に重畳させる光学系と、重畳させた信号光の相互間に所定の遅延時間を付与する光学系と、を備えることを特徴とする請求項1〜18のいずれか1項に記載の空間情報検出装置。
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