JPWO2006088094A1 - 超音波ドプラ血流計 - Google Patents

超音波ドプラ血流計 Download PDF

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Abstract

超音波ドプラ血流計は、ウォールフィルタの過渡現象を抑えるために、位相検波部104の検波出力からクラッタ成分の振幅、初期位相、位相速度をクラッタ成分推定部110で推定する。推定されたデータをもとにウォールフィルタ105の初期設定値をフィルタ初期値生成部11で生成し、ウォールフィルタ105に与え、フィルタ処理を行なう。

Description

本発明は、医用分野において、超音波のドプラ現象を利用して体内の血流を測定し、測定された血流情報を画像表示する超音波ドプラ血流計に関する。
超音波のドプラ現象を利用し、生体中の血流分布を色に対応させた状態で白黒の2次元断層像に重ね合わせて表示を行う、超音波ドプラ血流計(カラーフロー装置)が知られている(例えば、特許文献1)。
特開平11−299786号公報
図6に超音波ドプラ血流計10Aの概略構成を示す。図示する超音波血流計10Aでは、送信部1が、プローブ2を介して超音波パルスを被検者の体内に照射する。照射された超音波パルスの体内からのエコーは、プローブ2により電気信号に変換され、受信部3に入力される。受信部3は、微弱な信号を増幅し、図示しないA/D変換器により、アナログ信号からディジタル信号に変換する。その後、ディジタル信号は、位相検波部4に入力され、ベースバンドに変換されたエコー信号となる。ベースバンドに変換されたエコー信号は、ウォールフィルタ5に入力される。ウォールフィルタ5は、一般的にはFIR型フィルタもしくはIIR型フィルタによって構成されており、通常クラッタと呼ばれる低周波信号成分である不要な体内組織からの信号を除去する。ウォールフィルタ5によりクラッタを除去されたエコー信号は、血流情報演算部(速度演算部)6に送信され、そこで血流速度が算出される。この血流速度は、包絡線検波部7からのBモード信号とともにディジタルスキャンコンバータ(以下、本明細書では「DSC」と表す。)8に入力される。DSC8は、Bモード信号と血流信号を混合し、その混合された信号を用いてモニタ9が二次元血流像を映し出す。
図7は、2次のIIR型フィルタにより構成されたウォールフィルタの概略構成を示す。図中、x(m)はウォールフィルタ5に入力される信号(入力)、y(m)はウォールフィルタ5から出力される信号(出力)、20〜20は加算器、21a2〜21a3、21b1〜21b3は掛算器、22〜22は記憶素子(レジスタ)、a(2)〜a(3)、b(1)〜b(3)はフィルタ係数である。
このような超音波ドプラ血流計においては、より正確な血流情報を得るためにはウォールフィルタ5に急峻な特性を持たせることが望ましいが、そのような急峻な特性は大きな過渡応答の発生を招き、このような過渡応答を含んだデータからは正確な血流情報を得ることができない。その結果、過渡応答の影響を除去して正確に血流速度を演算するために、多くのデータを破棄しなければならず、そのため速度演算部に送られるデータ点数が減り、また平均化の処理回数が減るので、信号/ノイズ比の低下を招くという問題があった。
また、破棄データを補うためにデータサンプル数を増やすことは、同一方向への音波の繰り返し送受信回数を増やすこととなり、フレームレートが低下するという問題があった。
さらに、従来の超音波ドプラ血流計においては、動きの速度変化の著しい部位、例えば心臓などにおいて、動きのゆっくりしている時相においてはクラッタの周波数がフィルタのカットオフ周波数以下であり、クラッタ信号は遮断されるが、動きの速い時相においてはクラッタの周波数がフィルタのカットオフ周波数以上になり、クラッタ信号が遮断されず血流速度の計算に誤差を生じることが発生する。この事象においては、クラッタ周波数の上限以上にフィルタのカットオフ周波数を上げると、動きのゆっくりしている時相において血流速度がカットオフ周波数より低くなってしまうため、血流が良好に表示されなくなるという問題も発生する。
本発明は、これらの問題を解決するためになされたもので、急峻な特性のウォールフィルタを用いつつ、過渡応答の少ないフィルタ出力を得、良好な血流表示を行なう超音波ドプラ血流計を提供することを目的とする。
また、本発明は、従来の問題を解決するためになされたもので、動きの速度変化の激しい部位において、クラッタの周波数が大きく変動しても良好にクラッタを除去し、血流信号を抽出できるフィルタ処理を行ない、良好な血流表示を行なう超音波ドプラ血流計を提供することを目的とするものである。
このような課題を解決するために、本発明に係る超音波ドプラ血流計は、被検体中に送信した複数の超音波パルスに対する複数のエコー信号から、クラッタ成分の振幅、速度、位相を単一周波数の正弦波に近似して求め、この近似クラッタ成分がウォールフィルタに定常的に入力して、前記複数のエコー信号取得開始タイミングに至ったとき、ウォールフィルタ内のレジスタに蓄積されているべきデータを求め、ウォールフィルタに設定することで、信号の不連続性を抑え、過渡応答による不要な成分を低減し、良好な血流情報を得るものである。そのため、本発明の超音波ドプラ血流計は、電気パルス信号を発生する送信部と、前記送信部で発生した電気パルスを超音波信号に変換し体内への送受信を行なう探触子と、前記探触子で得た体内からのエコー信号を位相検波する位相検波部と、前記位相検波部の出力から周波数の低いクラッタ成分を除去するウォールフィルタと、前記ウォールフィルタを通過した信号より血流情報を演算する血流情報演算部と、前記血流情報演算部で得た血流情報を走査変換するディジタルスキャンコンバータと、前記ディジタルスキャンコンバータで走査変換された信号を表示するモニタを備えた超音波ドプラ血流計において、前記位相検波部から出力された少なくとも2つの信号をもとに前記クラッタ成分を正弦波で近似するクラッタ成分推定部と、前記クラッタ成分推定部で近似された正弦波をもとに前記ウォールフィルタの初期値データを生成するフィルタ初期値生成部を備えていることを特徴とする。
本発明の他の形態に係る超音波ドプラ血流計は、単一周波数の正弦波に近似して求めたクラッタ信号の速度から、ウォールフィルタのカットオフ周波数を、このクラッタ成分を除去できるように設定する手段を設けることで、クラッタ成分を常に除去し、血流成分を常に抽出できるようにしたもので、推定されたクラッタ成分からフィルタのカットオフ周波数を設定するカットオフ周波数設定部を備えたことを特徴とする。
また、本発明の他の形態に係る超音波ドプラ血流計は、単一周波数の正弦波に近似して求めたクラッタ信号の振幅から、この近似したクラッタ信号がクラッタであるか、それとも血流であるかを判断し、ウォールフィルタのカットオフ周波数を設定することで、クラッタ成分を常に除去し、血流成分を常に抽出できる精度を高めたもので、推定されたクラッタ成分の振幅からその振幅がクラッタに起因するのか血流に起因するのかを判定するクラッタ判定部を備えたことを特徴とする。
さらに、本発明の他の形態に係る超音波ドプラ血流計は、すでに抽出を終えている、当該部位に近接した部位、もしくは過去に得た当該部位のクラッタ信号の情報から、クラッタ信号の見極めを行ない、ウォールフィルタの設定を行なうことで、クラッタ成分を常に除去し、血流成分を常に抽出できる精度を高めたもので、走査する部位の近傍の領域のクラッタ成分の振幅情報、または同じ部位の以前に走査した際のクラッタ成分の振幅情報をもとに、推定されたクラッタ成分の振幅がクラッタに起因するのか血流に起因するのかを判定するクラッタ判定部を備えたことを特徴とする。
このような構成を採用した本発明の超音波ドプラ血流計によれば、大振幅のクラッタによる過渡応答を抑えたフィルタを実現することができ、精度の良い血流情報を得ることができる。
本発明の実施の形態1に係る超音波ドプラ血流計の構成を示すブロック図。 図1に示す超音波ドプラ血流計のウォールフィルタの過渡応答を防ぐ構成部分を示す図。 本発明の実施の形態2に係る超音波ドプラ血流計の構成を示すブロック図。 本発明の実施の形態3に係る超音波ドプラ血流計の構成を示すブロック図。 本発明の実施の形態4に係る超音波ドプラ血流計の構成を示すブロック図。 従来の超音波ドプラ血流計の構成を示すブロック図。 図6の超音波ドプラ血流計に含まれるウォールフィルタの構成を示す図。
符号の説明
1,101…送信部、2,102…探触子、3,103…受信部、4,104…位相検波部、5,105,105A,105B…ウォールフィルタ、6、106…血流情報演算部、7,107…包絡線検波部、8,108…DSC、9,109…モニタ、110…クラッタ成分推定部、111…フィルタ初期値生成部、112…カットオフ周波数設定部、113…フィルタ係数生成部、115…クラッタ判定部、116…クラッタ情報蓄積部。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
実施の形態1
図1は、本発明の実施の形態1に係る超音波ドプラ血流計の構成を示すブロック図である。図示する超音波ドプラ血流計100Aは、概略、図6を参照して説明した従来の血流計Aにクラッタ成分推定部110とフィルタ初期値生成部111が付加されている。
このように構成された血流計100Aの動作時、送信部101は、プローブ102を介して超音波パルスを被検者の体内に照射する。照射された超音波パルスの体内からのエコーは、プローブ102により電気信号に変換され、受信部103に入力される。受信部103は、微弱な信号を増幅し、図示しないA/D変換器により、アナログ信号からディジタル信号に変換する。その後、ディジタル信号は、位相検波部104に入力され、ベースバンドに変換されたエコー信号となる。ベースバンドに変換されたエコー信号は、ウォールフィルタ105とクラッタ成分推定部110に入力される。クラッタ成分推定部110は、位相検波部104の出力を用いてクラッタ成分を推定する。フィルタ初期値生成部111は、推定されたクラッタ成分を用いてフィルタ初期値を生成し、この生成されたフィルタ初期値をウォールフィルタ105に提供する。ウォールフィルタ105は、一般的にはFIR型フィルタもしくはIIR型フィルタによって構成されており、フィルタ初期値生成部111から提供されたフィルタ初期値を用いて、クラッタと呼ばれる低周波信号成分である不要な体内組織からの信号を除去する。ウォールフィルタ105によりクラッタを除去されたエコー信号は、血流情報演算部(速度演算部)106に送信され、そこで血流速度が算出される。この血流速度は、包絡線検波部107からのBモード信号とともにディジタルスキャンコンバータ(以下、本明細書では「DSC」と表す。)108に入力される。DSC108は、Bモード信号と血流信号を混合し、その混合された信号を用いてモニタ109が二次元血流像を映し出す。
図2を参照して、血流計100Aにおける特徴部分の構成と動作(処理)を具体的に説明する。図示するように、血流計100Aは、記憶部112を備えており、位相検波部104から出力された位相検波出力x(1)〜x(n)、x(1)〜x(n)を記憶部112に記憶する。記憶部112は、位相検波出力x(1)〜x(n)、x(1)〜x(n)を対応するウォールフィルタ105A,105Bにそれぞれ出力するとともに、第1と第2の位相検波出力x(1),x(2)、x(1),x(2)をクラッタ成分推定部110に出力する。
クラッタ成分推定部110は、第1と第2の位相検波出力x(1),x(2)、x(1),x(2)を用い、位相検波出力に含まれるクラッタ成分を正弦波で近似して推定する。この推定プロセスにおいて、クラッタ成分推定部110は、数式1,2に基づいて複素数E,Eを計算する。
Figure 2006088094
Figure 2006088094
推定する正弦波の振幅をa、位相をθc(t)とすると、位相θc(t)は数式3で表される。
Figure 2006088094
ここで、初期位相mと位相速度nは、数式4,5で表される。
Figure 2006088094
Figure 2006088094
angle(E)は複素数Eの位相角、Eは共役複素数、T,Tはそれぞれ第1と第2の検波出力のタイミング(受信時刻に対応する)である。
一方、振幅aは数式6で表される。
Figure 2006088094
クラッタ成分推定部110は、以上の数式に基づいて計算された振幅aと位相θc(t)で定義される正弦波を推定した後、この正弦波に対応する信号をフィルタ初期値生成部111に出力する。フィルタ初期値生成部111は、クラッタ成分推定部110から出力された信号に基づいてフィルタ初期値データzi10,zi20、zq10,zq20を作成し、これらの初期値データをウォールフィルタ6A,6Bに出力する。
ウォールフィルタ105A,105Bは図2に示す構成を有する。図中、120〜120は加算器、121a2〜121a3、121b1〜121b3は掛算器、122,122は記憶素子(レジスタ)、123,123はスイッチ、a(2)〜a(3)、b(1)〜b(3)、a(2)〜a(3)、b(1)〜b(3)はフィルタ係数である。
このように構成されたウォールフィルタ105A,105Bに対し、フィルタ初期値生成部111で生成された初期値データzi10,zi20、zq10,zq20に対応する信号がフィルタ105Aのスイッチ123,123とフィルタ105Bのスイッチ123,123を通じて入力される。初期値データが入力されたウォールフィルタ105A,105Bは、それら初期値データzi10,zi20、zq10,zq20をもとに、記憶部112からウォールフィルタ105A,105Bへの位相検波出力x(1)〜x(n)、x(1)〜x(n)を処理してクラッタ成分を除去する。
図2に示す構成において、ウォールフィルタ105A,105Bの出力y(m)、y(m)、また各ウォールフィルタ105A,105Bにおける記憶素子122,122の入出力zi1(m)、zi2(m)、zq1(m)、zq2(m)は以下の数式7〜12で定義される。
Figure 2006088094
Figure 2006088094
Figure 2006088094
Figure 2006088094
Figure 2006088094
Figure 2006088094
そして、ウォールフィルタ105A,105Bは、数式7〜数12のz1i(m−1)、zi2(m−1)、z1q(m−1)、zq2(m−1)に上述の初期値データzi10,zi20、zq10,zq20を入力し、これらの初期値データと記憶部112からウォールフィルタ105A,105Bに入力されたデータx(1)、x(1)をもとに、y(1)、y(1)を計算する。以後同様にして、(m−1)番目の位相検波出力に対する計算時に計算された出力z1i(m−1)、zi2(m−1)、z1q(m−1)、zq2(m−1)を用いて、m番目の位相検波出力を処理する。
このように、ウォールフィルタ105A,105Bでは、最初の位相検波出力x(1)、x(1)について、クラッタ成分を正弦波で近似して初期値データを利用して出力y(1)、y(1)を得る。そのため、ウォールフィルタ105A,105Bから発生する過渡応答は低減し、血流信号を精度良く抽出できる。
以上の説明では、第1と第2の位相検波出力x(1),x(2)、x(1),x(2)を用いて、位相検波出力に含まれるクラッタ成分を正弦波で近似したが、例えばクラッタの速度変化が小さい場合、n≧u>2の関係を有する任意のu(整数)を選択し、第1番目と第u番目の位相検波出力x(1),x(u)、x(1),x(u)を用い、上述と同様の方法により、近似する正弦波を推定してもよい。この場合、推定される正弦波の位相速度nは数式13で定義される。
Figure 2006088094
実施の形態2
図3は本発明の実施の形態2に係る超音波ドプラ血流計100Bのブロック図である。図示する超音波ドプラ血流計100Bは、実施の形態1の超音波ドプラ血流計100A(図2参照)と比べてみると明らかなように、カットオフ周波数設定部113とフィルタ係数生成部114が付加されている点に特徴を有する。
この超音波ドプラ血流計100Bによれば、位相検波部104の検波出力信号をもとにクラッタ成分推定部110がクラッタを正弦波で近似するとともに、この正弦波の振幅と位相速度を推定する。推定された情報は、実施の形態1で説明したように、フィルタ初期値生成部111に入力されるとともに、カットオフ周波数設定部113に入力される。
とろこで、超音波ドプラ血流計にあっては、多くの場合、心臓のようなクラッタおよび血流の位相速度の変化が激しい部位において、つねにクラッタのみを除去し、血流のみを抽出することが望まれる。したがって、カットオフ周波数設定部113では、クラッタの位相速度と振幅をもとに、クラッタが除去される最低のカットオフ周波数を設定し、フィルタ係数生成部114に対応するデータを送信する。フィルタ係数生成部114は、選定されたカットオフ周波数のフィルタを実現するフィルタ係数〔図2に示すフィルタ係数a(2)〜a(3)、b(1)〜b(3)、a(2)〜a(3)、b(1)〜b(3)〕を生成し、ウォールフィルタ105に与える。ウォールフィルタ105は、フィルタ係数生成部114から与えられたフィルタ係数を用いて出力yi(m)、yq(m)を求める。
実施の形態1ではフィルタ係数は不変としているが、実施の形態2ではフィルタ係数が新たな血流情報を得る度に変化する。したがって、実施の形態2では、フィルタ係数が変化に応じて、フィルタ初期値を変化させることが好ましい。そこで、実施の形態2では、フィルタ係数生成部114で生成されたフィルタ係数をフィルタ初期値生成部111に出力する。フィルタ初期値生成部111は、フィルタ係数生成部114から受け取ったフィルタ係数と、クラッタ成分推定値110で推定されたクラッタ近似値の振幅、初期位相、位相速度をもとに、フィルタ初期値を生成してウォールフィルタ105を設定する。
フィルタ係数生成部114は、予め決められた方法に基づいてカットオフ周波数からクラッタ係数を計算してもよいが、カットオフ周波数とフィルタ係数を相互に関連付けたテーブルを用意(記憶)しておき、このテーブルに基づいてフィルタ係数を選択してもよい。
このように、実施の形態2に係る超音波ドプラ血流計100Bによれば、心臓のようなクラッタおよび血流の位相速度の変化が激しい部位において、つねにクラッタのみを除去し、血流のみを抽出することができ、精度の高いデータを提供することができる。
実施の形態3
図4は本発明の実施の形態3に係る超音波ドプラ血流計100Cのブロック図である。図示する超音波ドプラ血流計100Cは、実施の形態2の超音波ドプラ血流計100B(図3参照)と比べてみると明らかなように、クラッタ判定部114が付加されている点に特徴を有する。
超音波診断法にあっては、体内から返ってくるエコー信号において、多くの場合はクラッタの振幅が血流の振幅の数十倍もしくは百数十倍と大きい。しかし、例えば心臓の腔内のような血液のみが存在している部位からのエコー信号では、血流の振幅がクラッタの振幅より大きくなることがある。このような場合において、実施の形態2のような方法でクラッタ信号を同定し、除去を行なうと、振幅の大きな血流信号がクラッタとみなされてしまい、除去されてしまうおそれがある。
したがって、実施の形態3では、クラッタ判定部115においてクラッタと血流の判別を行なう。具体的には、クラッタ判定部115は、振幅の閾値を設定し、クラッタ成分推定部110で近似された正弦波の振幅がこの閾値を超える場合にある基準以上の振幅の場合は、推定された正弦波をクラッタとみなして以後の信号処理を行なう。しかし、推定された正弦波の振幅が閾値以下の振幅の場合は血流とみなし、上述したフィルタ初期値生成部111、カットオフ周波数設定部113、フィルタ係数生成部114における処理の実行を禁止する。
このように構成された実施の形態3に係る超音波ドプラ血流計100Cによれば、心腔内のような血流信号がクラッタ信号より振幅が大きい場合にも血流信号を抽出でき、精度の高いデータを提供することができる。
実施の形態4
図5は本発明の実施の形態4に係る超音波ドプラ血流計100Dのブロック図である。図示する超音波ドプラ血流計100Dは、実施の形態3の超音波ドプラ血流計100C(図4参照)と比べてみると明らかなように、クラッタ情報蓄積部115が付加されている点に特徴を有する。
具体的に説明すると、上述した実施の形態3では、振幅の閾値を設けることで、エコー信号中に含まれる最も大きな振幅の信号がクラッタであるか、血流であるかを判断したが、実施の形態4では、閾値を設定するための手段としてクラッタ情報蓄積部15が設けられている。
超音波ドプラ血流計においては、体内を順次、走査していく過程において、近傍の部位の走査がすでに終わっており、クラッタや血流の情報が既に得られ、また、同じ部位を既に走査してその際にデータが取得されていることが通常である。そこで、実施の形態4の超音波ドプラ血流計100Dでは、既に取得された情報をクラッタ情報蓄積部115に蓄積しておき、この蓄積された情報を用いてクラッタ判定部114又はクラッタ情報蓄積部115が閾値を設定する。
ところで、超音波ドプラ血流計の全走査範囲において、すべての範囲でクラッタが血流より小さいということは考えにくい。クラッタが血流より大きく、かつ、そのレベルは血流信号ではありえない振幅になるのが常である。そこで、現在走査している部位の近傍においてクラッタが血流より大きい部位を探すことで、クラッタと血流の振幅の敷居値を設定することができる。また、クラッタの振幅について空間的な分布を求めることで、現在走査している場所がどの程度のクラッタがあるかを予測することもできる。同じ部位について言えば、以前その部位において、例えば心臓の弁が横切るなどして、大振幅の信号が入力した経緯があるならば、それを基準にクラッタと血流の敷居値を設けることができる。したがって、実施の形態4によれば、蓄積された情報をもとに振幅の閾値が設定されるので、精度の良い血流情報を得ることができる。
本発明は、医用分野において、超音波のドプラ現象を利用して体内の血流を測定し、測定された血流情報を画像表示する超音波ドプラ血流計に関する。
超音波のドプラ現象を利用し、生体中の血流分布を色に対応させた状態で白黒の2次元断層像に重ね合わせて表示を行う、超音波ドプラ血流計(カラーフロー装置)が知られている(例えば、特許文献1)。
特開平11−299786号公報
図6に超音波ドプラ血流計10Aの概略構成を示す。図示する超音波血流計10Aでは、送信部1が、プローブ2を介して超音波パルスを被検者の体内に照射する。照射された超音波パルスの体内からのエコーは、プローブ2により電気信号に変換され、受信部3に入力される。受信部3は、微弱な信号を増幅し、図示しないA/D変換器により、アナログ信号からディジタル信号に変換する。その後、ディジタル信号は、位相検波部4に入力され、ベースバンドに変換されたエコー信号となる。ベースバンドに変換されたエコー信号は、ウォールフィルタ5に入力される。ウォールフィルタ5は、一般的にはFIR型フィルタもしくはIIR型フィルタによって構成されており、通常クラッタと呼ばれる低周波信号成分である不要な体内組織からの信号を除去する。ウォールフィルタ5によりクラッタを除去されたエコー信号は、血流情報演算部(速度演算部)6に送信され、そこで血流速度が算出される。この血流速度は、包絡線検波部7からのBモード信号とともにディジタルスキャンコンバータ(以下、本明細書では「DSC」と表す。)8に入力される。DSC8は、Bモード信号と血流信号を混合し、その混合された信号を用いてモニタ9が二次元血流像を映し出す。
図7は、2次のIIR型フィルタにより構成されたウォールフィルタの概略構成を示す。図中、x(m)はウォールフィルタ5に入力される信号(入力)、y(m)はウォールフィルタ5から出力される信号(出力)、20〜20は加算器、21a2〜21a3、21b1〜21b3は掛算器、22〜22は記憶素子(レジスタ)、a(2)〜a(3)、b(1)〜b(3)はフィルタ係数である。
このような超音波ドプラ血流計においては、より正確な血流情報を得るためにはウォールフィルタ5に急峻な特性を持たせることが望ましいが、そのような急峻な特性は大きな過渡応答の発生を招き、このような過渡応答を含んだデータからは正確な血流情報を得ることができない。その結果、過渡応答の影響を除去して正確に血流速度を演算するために、多くのデータを破棄しなければならず、そのため速度演算部に送られるデータ点数が減り、また平均化の処理回数が減るので、信号/ノイズ比の低下を招くという問題があった。
また、破棄データを補うためにデータサンプル数を増やすことは、同一方向への音波の繰り返し送受信回数を増やすこととなり、フレームレートが低下するという問題があった。
さらに、従来の超音波ドプラ血流計においては、動きの速度変化の著しい部位、例えば心臓などにおいて、動きのゆっくりしている時相においてはクラッタの周波数がフィルタのカットオフ周波数以下であり、クラッタ信号は遮断されるが、動きの速い時相においてはクラッタの周波数がフィルタのカットオフ周波数以上になり、クラッタ信号が遮断されず血流速度の計算に誤差を生じることが発生する。この事象においては、クラッタ周波数の上限以上にフィルタのカットオフ周波数を上げると、動きのゆっくりしている時相において血流速度がカットオフ周波数より低くなってしまうため、血流が良好に表示されなくなるという問題も発生する。
本発明は、これらの問題を解決するためになされたもので、急峻な特性のウォールフィルタを用いつつ、過渡応答の少ないフィルタ出力を得、良好な血流表示を行なう超音波ドプラ血流計を提供することを目的とする。
また、本発明は、従来の問題を解決するためになされたもので、動きの速度変化の激しい部位において、クラッタの周波数が大きく変動しても良好にクラッタを除去し、血流信号を抽出できるフィルタ処理を行ない、良好な血流表示を行なう超音波ドプラ血流計を提供することを目的とするものである。
このような課題を解決するために、本発明に係る超音波ドプラ血流計は、被検体中に送信した複数の超音波パルスに対する複数のエコー信号から、クラッタ成分の振幅、速度、位相を単一周波数の正弦波に近似して求め、この近似クラッタ成分がウォールフィルタに定常的に入力して、前記複数のエコー信号取得開始タイミングに至ったとき、ウォールフィルタ内のレジスタに蓄積されているべきデータを求め、ウォールフィルタに設定することで、信号の不連続性を抑え、過渡応答による不要な成分を低減し、良好な血流情報を得るものである。そのため、本発明の超音波ドプラ血流計は、電気パルス信号を発生する送信部と、前記送信部で発生した電気パルスを超音波信号に変換し体内への送受信を行なう探触子と、前記探触子で得た体内からのエコー信号を位相検波する位相検波部と、前記位相検波部の出力から周波数の低いクラッタ成分を除去するウォールフィルタと、前記ウォールフィルタを通過した信号より血流情報を演算する血流情報演算部と、前記血流情報演算部で得た血流情報を走査変換するディジタルスキャンコンバータと、前記ディジタルスキャンコンバータで走査変換された信号を表示するモニタを備えた超音波ドプラ血流計において、前記位相検波部から出力された少なくとも2つの信号をもとに前記クラッタ成分を正弦波で近似するクラッタ成分推定部と、前記クラッタ成分推定部で近似された正弦波をもとに前記ウォールフィルタの初期値データを生成するフィルタ初期値生成部を備えていることを特徴とする。
本発明の他の形態に係る超音波ドプラ血流計は、単一周波数の正弦波に近似して求めたクラッタ信号の速度から、ウォールフィルタのカットオフ周波数を、このクラッタ成分を除去できるように設定する手段を設けることで、クラッタ成分を常に除去し、血流成分を常に抽出できるようにしたもので、推定されたクラッタ成分からフィルタのカットオフ周波数を設定するカットオフ周波数設定部を備えたことを特徴とする。
また、本発明の他の形態に係る超音波ドプラ血流計は、単一周波数の正弦波に近似して求めたクラッタ信号の振幅から、この近似したクラッタ信号がクラッタであるか、それとも血流であるかを判断し、ウォールフィルタのカットオフ周波数を設定することで、クラッタ成分を常に除去し、血流成分を常に抽出できる精度を高めたもので、推定されたクラッタ成分の振幅からその振幅がクラッタに起因するのか血流に起因するのかを判定するクラッタ判定部を備えたことを特徴とする。
さらに、本発明の他の形態に係る超音波ドプラ血流計は、すでに抽出を終えている、当該部位に近接した部位、もしくは過去に得た当該部位のクラッタ信号の情報から、クラッタ信号の見極めを行ない、ウォールフィルタの設定を行なうことで、クラッタ成分を常に除去し、血流成分を常に抽出できる精度を高めたもので、走査する部位の近傍の領域のクラッタ成分の振幅情報、または同じ部位の以前に走査した際のクラッタ成分の振幅情報をもとに、推定されたクラッタ成分の振幅がクラッタに起因するのか血流に起因するのかを判定するクラッタ判定部を備えたことを特徴とする。
このような構成を採用した本発明の超音波ドプラ血流計によれば、大振幅のクラッタによる過渡応答を抑えたフィルタを実現することができ、精度の良い血流情報を得ることができる。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
実施の形態1
図1は、本発明の実施の形態1に係る超音波ドプラ血流計の構成を示すブロック図である。図示する超音波ドプラ血流計100Aは、概略、図6を参照して説明した従来の血流計Aにクラッタ成分推定部110とフィルタ初期値生成部111が付加されている。
このように構成された血流計100Aの動作時、送信部101は、プローブ102を介して超音波パルスを被検者の体内に照射する。照射された超音波パルスの体内からのエコーは、プローブ102により電気信号に変換され、受信部103に入力される。受信部103は、微弱な信号を増幅し、図示しないA/D変換器により、アナログ信号からディジタル信号に変換する。その後、ディジタル信号は、位相検波部104に入力され、ベースバンドに変換されたエコー信号となる。ベースバンドに変換されたエコー信号は、ウォールフィルタ105とクラッタ成分推定部110に入力される。クラッタ成分推定部110は、位相検波部104の出力を用いてクラッタ成分を推定する。フィルタ初期値生成部111は、推定されたクラッタ成分を用いてフィルタ初期値を生成し、この生成されたフィルタ初期値をウォールフィルタ105に提供する。ウォールフィルタ105は、一般的にはFIR型フィルタもしくはIIR型フィルタによって構成されており、フィルタ初期値生成部111から提供されたフィルタ初期値を用いて、クラッタと呼ばれる低周波信号成分である不要な体内組織からの信号を除去する。ウォールフィルタ105によりクラッタを除去されたエコー信号は、血流情報演算部(速度演算部)106に送信され、そこで血流速度が算出される。この血流速度は、包絡線検波部107からのBモード信号とともにディジタルスキャンコンバータ(以下、本明細書では「DSC」と表す。)108に入力される。DSC108は、Bモード信号と血流信号を混合し、その混合された信号を用いてモニタ109が二次元血流像を映し出す。
図2を参照して、血流計100Aにおける特徴部分の構成と動作(処理)を具体的に説明する。図示するように、血流計100Aは、記憶部112を備えており、位相検波部104から出力された位相検波出力x(1)〜x(n)、x(1)〜x(n)を記憶部112に記憶する。記憶部112は、位相検波出力x(1)〜x(n)、x(1)〜x(n)を対応するウォールフィルタ105A,105Bにそれぞれ出力するとともに、第1と第2の位相検波出力x(1),x(2)、x(1),x(2)をクラッタ成分推定部110に出力する。
クラッタ成分推定部110は、第1と第2の位相検波出力x(1),x(2)、x(1),x(2)を用い、位相検波出力に含まれるクラッタ成分を正弦波で近似して推定する。この推定プロセスにおいて、クラッタ成分推定部110は、数式1,2に基づいて複素数E,Eを計算する。
Figure 2006088094
Figure 2006088094
推定する正弦波の振幅をa、位相をθc(t)とすると、位相θc(t)は数式3で表される。
Figure 2006088094
ここで、初期位相mと位相速度nは、数式4,5で表される。
Figure 2006088094
Figure 2006088094
angle(E)は複素数Eの位相角、Eは共役複素数、T,Tはそれぞれ第1と第2の検波出力のタイミング(受信時刻に対応する)である。
一方、振幅aは数式6で表される。
Figure 2006088094
クラッタ成分推定部110は、以上の数式に基づいて計算された振幅aと位相θc(t)で定義される正弦波を推定した後、この正弦波に対応する信号をフィルタ初期値生成部111に出力する。フィルタ初期値生成部111は、クラッタ成分推定部110から出力された信号に基づいてフィルタ初期値データzi10,zi20、zq10,zq20を作成し、これらの初期値データをウォールフィルタ6A,6Bに出力する。
ウォールフィルタ105A,105Bは図2に示す構成を有する。図中、120〜120は加算器、121a2〜121a3、121b1〜121b3は掛算器、122,122は記憶素子(レジスタ)、123,123はスイッチ、a(2)〜a(3)、b(1)〜b(3)、a(2)〜a(3)、b(1)〜b(3)はフィルタ係数である。
このように構成されたウォールフィルタ105A,105Bに対し、フィルタ初期値生成部111で生成された初期値データzi10,zi20、zq10,zq20に対応する信号がフィルタ105Aのスイッチ123,123とフィルタ105Bのスイッチ123,123を通じて入力される。初期値データが入力されたウォールフィルタ105A,105Bは、それら初期値データzi10,zi20、zq10,zq20をもとに、記憶部112からウォールフィルタ105A,105Bへの位相検波出力x(1)〜x(n)、x(1)〜x(n)を処理してクラッタ成分を除去する。
図2に示す構成において、ウォールフィルタ105A,105Bの出力y(m)、y(m)、また各ウォールフィルタ105A,105Bにおける記憶素子122,122の入出力zi1(m)、zi2(m)、zq1(m)、zq2(m)は以下の数式7〜12で定義される。
Figure 2006088094
Figure 2006088094
Figure 2006088094
Figure 2006088094
Figure 2006088094
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そして、ウォールフィルタ105A,105Bは、数式7〜数12のz1i(m−1)、zi2(m−1)、z1q(m−1)、zq2(m−1)に上述の初期値データzi10,zi20、zq10,zq20を入力し、これらの初期値データと記憶部112からウォールフィルタ105A,105Bに入力されたデータx(1)、x(1)をもとに、y(1)、y(1)を計算する。以後同様にして、(m−1)番目の位相検波出力に対する計算時に計算された出力z1i(m−1)、zi2(m−1)、z1q(m−1)、zq2(m−1)を用いて、m番目の位相検波出力を処理する。
このように、ウォールフィルタ105A,105Bでは、最初の位相検波出力x(1)、x(1)について、クラッタ成分を正弦波で近似して初期値データを利用して出力y(1)、y(1)を得る。そのため、ウォールフィルタ105A,105Bから発生する過渡応答は低減し、血流信号を精度良く抽出できる。
以上の説明では、第1と第2の位相検波出力x(1),x(2)、x(1),x(2)を用いて、位相検波出力に含まれるクラッタ成分を正弦波で近似したが、例えばクラッタの速度変化が小さい場合、n≧u>2の関係を有する任意のu(整数)を選択し、第1番目と第u番目の位相検波出力x(1),x(u)、x(1),x(u)を用い、上述と同様の方法により、近似する正弦波を推定してもよい。この場合、推定される正弦波の位相速度nは数式13で定義される。
Figure 2006088094
実施の形態2
図3は本発明の実施の形態2に係る超音波ドプラ血流計100Bのブロック図である。図示する超音波ドプラ血流計100Bは、実施の形態1の超音波ドプラ血流計100A(図2参照)と比べてみると明らかなように、カットオフ周波数設定部113とフィルタ係数生成部114が付加されている点に特徴を有する。
この超音波ドプラ血流計100Bによれば、位相検波部104の検波出力信号をもとにクラッタ成分推定部110がクラッタを正弦波で近似するとともに、この正弦波の振幅と位相速度を推定する。推定された情報は、実施の形態1で説明したように、フィルタ初期値生成部111に入力されるとともに、カットオフ周波数設定部113に入力される。
とろこで、超音波ドプラ血流計にあっては、多くの場合、心臓のようなクラッタおよび血流の位相速度の変化が激しい部位において、つねにクラッタのみを除去し、血流のみを抽出することが望まれる。したがって、カットオフ周波数設定部113では、クラッタの位相速度と振幅をもとに、クラッタが除去される最低のカットオフ周波数を設定し、フィルタ係数生成部114に対応するデータを送信する。フィルタ係数生成部114は、選定されたカットオフ周波数のフィルタを実現するフィルタ係数〔図2に示すフィルタ係数a(2)〜a(3)、b(1)〜b(3)、a(2)〜a(3)、b(1)〜b(3)〕を生成し、ウォールフィルタ105に与える。ウォールフィルタ105は、フィルタ係数生成部114から与えられたフィルタ係数を用いて出力yi(m)、yq(m)を求める。
実施の形態1ではフィルタ係数は不変としているが、実施の形態2ではフィルタ係数が新たな血流情報を得る度に変化する。したがって、実施の形態2では、フィルタ係数が変化に応じて、フィルタ初期値を変化させることが好ましい。そこで、実施の形態2では、フィルタ係数生成部114で生成されたフィルタ係数をフィルタ初期値生成部111に出力する。フィルタ初期値生成部111は、フィルタ係数生成部114から受け取ったフィルタ係数と、クラッタ成分推定値110で推定されたクラッタ近似値の振幅、初期位相、位相速度をもとに、フィルタ初期値を生成してウォールフィルタ105を設定する。
フィルタ係数生成部114は、予め決められた方法に基づいてカットオフ周波数からクラッタ係数を計算してもよいが、カットオフ周波数とフィルタ係数を相互に関連付けたテーブルを用意(記憶)しておき、このテーブルに基づいてフィルタ係数を選択してもよい。
このように、実施の形態2に係る超音波ドプラ血流計100Bによれば、心臓のようなクラッタおよび血流の位相速度の変化が激しい部位において、つねにクラッタのみを除去し、血流のみを抽出することができ、精度の高いデータを提供することができる。
実施の形態3
図4は本発明の実施の形態3に係る超音波ドプラ血流計100Cのブロック図である。図示する超音波ドプラ血流計100Cは、実施の形態2の超音波ドプラ血流計100B(図3参照)と比べてみると明らかなように、クラッタ判定部114が付加されている点に特徴を有する。
超音波診断法にあっては、体内から返ってくるエコー信号において、多くの場合はクラッタの振幅が血流の振幅の数十倍もしくは百数十倍と大きい。しかし、例えば心臓の腔内のような血液のみが存在している部位からのエコー信号では、血流の振幅がクラッタの振幅より大きくなることがある。このような場合において、実施の形態2のような方法でクラッタ信号を同定し、除去を行なうと、振幅の大きな血流信号がクラッタとみなされてしまい、除去されてしまうおそれがある。
したがって、実施の形態3では、クラッタ判定部115においてクラッタと血流の判別を行なう。具体的には、クラッタ判定部115は、振幅の閾値を設定し、クラッタ成分推定部110で近似された正弦波の振幅がこの閾値を超える場合にある基準以上の振幅の場合は、推定された正弦波をクラッタとみなして以後の信号処理を行なう。しかし、推定された正弦波の振幅が閾値以下の振幅の場合は血流とみなし、上述したフィルタ初期値生成部111、カットオフ周波数設定部113、フィルタ係数生成部114における処理の実行を禁止する。
このように構成された実施の形態3に係る超音波ドプラ血流計100Cによれば、心腔内のような血流信号がクラッタ信号より振幅が大きい場合にも血流信号を抽出でき、精度の高いデータを提供することができる。
実施の形態4
図5は本発明の実施の形態4に係る超音波ドプラ血流計100Dのブロック図である。図示する超音波ドプラ血流計100Dは、実施の形態3の超音波ドプラ血流計100C(図4参照)と比べてみると明らかなように、クラッタ情報蓄積部115が付加されている点に特徴を有する。
具体的に説明すると、上述した実施の形態3では、振幅の閾値を設けることで、エコー信号中に含まれる最も大きな振幅の信号がクラッタであるか、血流であるかを判断したが、実施の形態4では、閾値を設定するための手段としてクラッタ情報蓄積部15が設けられている。
超音波ドプラ血流計においては、体内を順次、走査していく過程において、近傍の部位の走査がすでに終わっており、クラッタや血流の情報が既に得られ、また、同じ部位を既に走査してその際にデータが取得されていることが通常である。そこで、実施の形態4の超音波ドプラ血流計100Dでは、既に取得された情報をクラッタ情報蓄積部115に蓄積しておき、この蓄積された情報を用いてクラッタ判定部114又はクラッタ情報蓄積部115が閾値を設定する。
ところで、超音波ドプラ血流計の全走査範囲において、すべての範囲でクラッタが血流より小さいということは考えにくい。クラッタが血流より大きく、かつ、そのレベルは血流信号ではありえない振幅になるのが常である。そこで、現在走査している部位の近傍においてクラッタが血流より大きい部位を探すことで、クラッタと血流の振幅の敷居値を設定することができる。また、クラッタの振幅について空間的な分布を求めることで、現在走査している場所がどの程度のクラッタがあるかを予測することもできる。同じ部位について言えば、以前その部位において、例えば心臓の弁が横切るなどして、大振幅の信号が入力した経緯があるならば、それを基準にクラッタと血流の敷居値を設けることができる。したがって、実施の形態4によれば、蓄積された情報をもとに振幅の閾値が設定されるので、精度の良い血流情報を得ることができる。
本発明の実施の形態1に係る超音波ドプラ血流計の構成を示すブロック図。 図1に示す超音波ドプラ血流計のウォールフィルタの過渡応答を防ぐ構成部分を示す図。 本発明の実施の形態2に係る超音波ドプラ血流計の構成を示すブロック図。 本発明の実施の形態3に係る超音波ドプラ血流計の構成を示すブロック図。 本発明の実施の形態4に係る超音波ドプラ血流計の構成を示すブロック図。 従来の超音波ドプラ血流計の構成を示すブロック図。 図6の超音波ドプラ血流計に含まれるウォールフィルタの構成を示す図。
符号の説明
1,101…送信部、2,102…探触子、3,103…受信部、4,104…位相検波部、5,105,105A,105B…ウォールフィルタ、6、106…血流情報演算部、7,107…包絡線検波部、8,108…DSC、9,109…モニタ、110…クラッタ成分推定部、111…フィルタ初期値生成部、112…カットオフ周波数設定部、113…フィルタ係数生成部、115…クラッタ判定部、116…クラッタ情報蓄積部。

Claims (4)

  1. 電気パルス信号を発生する送信部と、前記送信部で発生した電気パルスを超音波信号に変換し体内への送受信を行なう探触子と、前記探触子で得た体内からのエコー信号を位相検波する位相検波部と、前記位相検波部の出力から周波数の低いクラッタ成分を除去するウォールフィルタと、前記ウォールフィルタを通過した信号より血流情報を演算する血流情報演算部と、前記血流情報演算部で得た血流情報を走査変換するディジタルスキャンコンバータと、前記ディジタルスキャンコンバータで走査変換された信号を表示するモニタを備えた超音波ドプラ血流計において、前記位相検波部から出力された少なくとも2つの信号をもとに前記クラッタ成分を正弦波で近似するクラッタ成分推定部と、前記クラッタ成分推定部で近似された正弦波をもとに前記ウォールフィルタの初期値データを生成するフィルタ初期値生成部を備えていることを特徴とする超音波ドプラ血流計。
  2. 推定されたクラッタ成分からフィルタのカットオフ周波数を設定するカットオフ周波数設定部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の超音波ドプラ血流計。
  3. 推定されたクラッタ成分の振幅からその振幅がクラッタに起因するのか血流に起因するのかを判定するクラッタ判定部を備えたことを特徴とする請求項2に記載の超音波ドプラ血流計。
  4. 走査する部位の近傍の領域のクラッタ成分の振幅情報、または同じ部位の以前に走査した際のクラッタ成分の振幅情報をもとに、推定されたクラッタ成分の振幅がクラッタに起因するのか血流に起因するのかを判定するクラッタ判定部を備えたことを特徴とする請求項3に記載の超音波診断装置。
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