JP6992277B2 - 超音波信号処理装置、超音波診断装置、および、超音波信号処理方法 - Google Patents

超音波信号処理装置、超音波診断装置、および、超音波信号処理方法 Download PDF

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Description

本発明は、超音波信号処理装置、超音波診断装置、および、超音波信号処理方法に関し、特に、カラーフローマッピング法を用いる超音波信号処理装置における受信ビームフォーミング処理方法、および、カラーフローマッピング演算処理に関する。
超音波診断装置は、超音波プローブ(以後、「プローブ」とする)により被検体内部に超音波を送信し、被検体組織の音響インピーダンスの差異により生じる超音波反射波(エコー)を受信する。さらに、この受信から得た電気信号に基づいて、被検体の内部組織の構造を示す画像を生成し、モニタ(以後、「表示部」とする)上に表示するものである。超音波診断装置は、被検体への侵襲が少なく、リアルタイムに体内組織の状態を断層画像などで観察できるため、生体の形態診断に広く用いられている。
近年、多くの超音波診断装置には、カラーフローマッピング(CFM;Color Flow Mapping)法が具備されている。CFM法では、血流等の体内組織の動きによるエコーに発生するドプラシフト(周波数偏移)を検出し、速度情報やパワー情報を二次元画像として、二次元断層画像(Bモード断層画像)に重畳表示を行う。
一般に、CFM法では血流から得られる情報(以下、「血流情報」と呼ぶ)の画像化を行う。そのため、エコーに含まれる血流情報の成分(以下、「血流成分」と呼ぶ)の抽出処理として、MTI(Moving Target Indiator)フィルタを使用して、エコーから組織の動きや静止している組織から得られる情報の成分(以下、「クラッタ成分」と呼ぶ)を取り除いている。このMTIフィルタとしては、例えば、血流成分とクラッタ成分との平均速度の差を用いたFIRフィルタのほか、入力信号に応じて係数を変化させる適用型のMTIフィルタが使用されている。適用型のMTIフィルタとしては、例えば、相関行列から固有ベクトルを算出し、固有ベクトルからフィルタ行列を生成する方法が知られている(例えば、特許文献1、非特許文献1)。
特開2014-158698号公報
"Eigen-Based Clutter Filter Design for Ultrasound Color Flow Imaging: A Review", Alfred C. H. Yu, and Lasse Lovstakken, IEEE Transactions on Ultrasonics, Ferroelectrics, and Frequency Control, Vol. 57, No. 5, pp1096-1111, May 2010
適用型のMTIフィルタを用いる場合、相関行列を計算するための信号をどのように選択するかによって、フィルタの性能が異なるという課題がある。
本開示は、上記課題に鑑みてなされたものであり、クラッタ成分を十分に除去して血流成分を高精度に抽出するMTIフィルタを実現することを目的とする。
本開示の一態様に係る超音波信号処理装置は、超音波プローブに列設された複数の振動子を駆動して被検体に対する超音波送受信を実行して血流情報を算出する超音波信号処理装置であって、前記複数の振動子を介し、被検体中の少なくとも解析対象範囲を示す関心領域に対して検出波を複数回送信する送信部と、前記検出波のそれぞれに対し、前記複数の振動子にて時系列に受信された被検体からの反射超音波に基づいて受信信号列を生成する受信部と、前記検出波のそれぞれに対応する前記受信信号列を直交検波して複素信号列を生成する直交検波部と、前記関心領域のうちフィルタ元領域を特定し、前記フィルタ元領域に含まれる複数の観測点のそれぞれに係る時系列の複素信号列を用いて、行列演算を行うことでフィルタを形成し、前記関心領域に含まれる複数の観測点のそれぞれに係る時系列の複素信号列に対して前記フィルタを用いてフィルタ処理を行い抽出複素信号列を生成するフィルタ処理部と、前記抽出複素信号列から前記関心領域に含まれる複数の観測点それぞれの血流情報を検出する速度検出部とを備え、前記フィルタ元領域に含まれる観測点における血流情報は、前記関心領域に含まれるが前記フィルタ元領域に含まれない観測点における血流情報より少ないことを特徴とする。
上記構成により、血流情報の多い観測点がフィルタ元領域に含まれる観測点として特定することを抑止する。そのため、フィルタ元領域に含まれる観測点の間で血流成分が共通成分となることを抑制し、共通成分に占めるクラッタ成分の割合を高めることができる。したがって、適用型MTIフィルタにおいて、血流成分への影響を抑止し、かつ、クラッタ成分を高精度に取り除くことが可能となる。
実施の形態1に係る超音波診断システム1000の機能ブロック図である。 (a)は、実施の形態1に係るCFM処理部105の機能ブロック図である。(b)は、実施の形態に係るフィルタ処理部1052の機能ブロック図である。 実施の形態1に係る超音波診断装置100の動作を示すフローチャートである。 実施の形態1に係るフィルタ処理部1052におけるMTIフィルタ処理を示すフローチャートである。 実施の形態1に係る関心領域、血流領域、観測点Pj、フィルタ元領域、第2観測点Qiの相互の関係を示す模式図である。 血流成分とクラッタ成分それぞれの帯域の例を示す模式図であり、(a)は血流成分とクラッタ成分で帯域の重複がない例、(b)は血流成分とクラッタ成分で帯域の重複がある例である。 変形例に係るフィルタ処理部におけるMTIフィルタ処理を示すフローチャートである。 実施の形態2に係るCFM処理部205の機能ブロック図である。 実施の形態2に係る関心領域とサブ関心領域との相互の関係を示す模式図である。 実施の形態2に係る超音波診断装置の動作を示すフローチャートである。 関心領域内に頸動脈を含むパワードプラ画像であり、(a)はFIRフィルタ、(b)は従来の適用型MTIフィルタ、(c)は実施の形態に係る適用型MTIフィルタ、をそれぞれMTIフィルタとして用いた画像である。 関心領域内に甲状腺を含むパワードプラ画像であり、(a)はFIRフィルタ、(b)は従来の適用型MTIフィルタ、(c)は実施の形態に係る適用型MTIフィルタ、をそれぞれMTIフィルタとして用いた画像である。 関心領域内に人差し指の側頭部を含むパワードプラ画像であり、(a)はFIRフィルタ、(b)は従来の適用型MTIフィルタ、(c)は実施の形態に係る適用型MTIフィルタ、をそれぞれMTIフィルタとして用いた画像である。
≪発明を実施するための形態に至った経緯≫
発明者は、固有ベクトルを用いた適用型のMTIフィルタを用いる場合、相関行列を計算するための信号をどのように選択するかについて、各種の検討を行った。
固有ベクトルを用いた適用型のMTIフィルタは、血流成分とクラッタ成分との平均速度の差を利用した、FIRフィルタなどの高域通過フィルタに対して以下のような優位点を有している。FIRフィルタなどの高域通過フィルタは、血流成分とクラッタ成分との平均速度の差を利用して、所定のカットオフ周波数より低い周波数の信号を除去する、というフィルタである。このフィルタは、血流成分とクラッタ成分とで、周波数帯域の重複がない場合には有効に機能する。例えば、図6(a)に示すように、血流成分241とクラッタ成分242との周波数帯域が分離している場合には、血流成分241の最低周波数より低く、かつ、クラッタ成分242の最高周波数より高い周波数Δf1をカットオフ周波数とする。このようにすることで、血流成分241はFIRフィルタを通過する一方でクラッタ成分242はFIRフィルタで除去されるため、血流成分241のみを抽出することができる。しかしながら、血流成分とクラッタ成分との間で周波数帯域の重複がある場合、FIRフィルタは有効と言えない。例えば、図6(b)に示すように、血流成分251とクラッタ成分252との周波数帯域が重複している場合を想定する。このとき、血流成分251の最低周波数Δf2よりクラッタ成分252の最高周波数より高い周波数Δf4の方が高いため、周波数がΔf2からΔf4の範囲の帯域に対しては、血流成分251とクラッタ成分252の分離が原理上不可能である。そのため、カットオフ周波数をΔf2以上に設定すると血流成分の一部が失われることとなる一方で、カットオフ周波数をΔf4以下に設定するとクラッタ成分が残存する。特に、周波数がΔf2からΔf3の範囲ではクラッタ成分のパワーが同周波数の血流成分のパワーより強いため、周波数がΔf3以下の血流成分については、FIRフィルタで取り出すことができない。これに対し、固有ベクトルを用いた適用型のMTIフィルタは、クラッタ成分が信号全体に普遍的に存在していることを利用し、相関行列を用いた演算によりクラッタ成分を除去するフィルタを生成するものである。したがって、血流成分とクラッタ成分との間で周波数帯域の重複があっても、クラッタ成分のみを除去することが可能である。すなわち、血流成分とクラッタ成分の周波数帯域が重複しているか否かは、固有ベクトルを用いた適用型のMTIフィルタの性能に影響を与えない。
一方で、固有ベクトルを用いた適用型のMTIフィルタでは、相関行列を計算するための信号をどのように選択するかによってMTIフィルタの性能が変化する。これは、相関行列を計算するための複数の信号に共通して含まれる速度成分をクラッタ成分であるとみなしているからである。したがって、例えば特許文献1の技術では、同一の位置から受信される時系列のデータから相関行列を計算している。これは、クラッタ成分の差異が少なくなるように複数の信号を選択することで、クラッタ成分が高精度に特定されるからである。
ここで、発明者は、さらにクラッタ成分の特定精度を向上させることを検討し、クラッタ成分のみが含まれる信号のみを相関行列を計算するための信号として使用するという着想を得た。相関行列を計算するための信号に血流成分が含まれている場合、血流成分の一部がクラッタ成分として誤検出される可能性があり、MTIフィルタによって血流成分の除去が発生することがある。そこで、発明者は、血流成分を含む信号を、相関行列を計算するための信号から除去し、MTIフィルタで除去すべきクラッタ成分と雑音を主成分とする信号から相関行列を計算する、という着想を得た。これにより、実施の形態に係る超音波信号処理装置、超音波信号処理方法、および、それを用いた超音波診断装置に相当するに至ったものである。
以下、実施の形態に係る超音波信号処理装置、超音波信号処理方法、および、それを用いた超音波診断装置について、図面を用いて詳細に説明する。
≪実施の形態1≫
<全体構成>
以下、実施の形態1に係る超音波診断装置100について、図面を参照しながら説明する。
図1は、実施の形態1に係る超音波診断システム1000の機能ブロック図である。図1に示すように、超音波診断システム1000は、被検体に向けて超音波を送信しその反射波を受信する複数の振動子101aを有するプローブ101、プローブ101に超音波の送受信を行わせプローブ101からの出力信号に基づき超音波画像を生成する超音波診断装置100、超音波画像を画面上に表示する表示部108を有する。プローブ101、表示部108は、それぞれ、超音波診断装置100に各々接続可能に構成されている。図1は超音波診断装置100に、プローブ101、表示部108が接続された状態を示している。なお、プローブ101と、表示部108とは、超音波診断装置100の内部にあってもよい。
<超音波診断装置100の構成>
超音波診断装置100は、プローブ101の複数ある振動子101aのうち、送信または受信の際に用いる振動子を各々に選択し、選択された振動子に対する入出力を確保するマルチプレクサ部102、超音波の送信を行うためにプローブ101の各振動子101aに対する高電圧印加のタイミングを制御する送信ビームフォーマ部103と、プローブ101で受信した超音波の反射波に基づき、複数の振動子101aで得られた電気信号を増幅およびA/D変換して受信信号列を生成し、受信信号列に対し受信ビームフォーミングを行って音響線信号を生成する受信ビームフォーマ部104を有する。また、超音波診断装置100は、受信ビームフォーマ部104からの出力信号を周波数解析してカラーフロー情報を生成するCFM処理部105と、受信ビームフォーマ部104からの出力信号に基づいて断層画像(Bモード画像)を生成する断層画像処理部106と、カラーフロー情報をBモード画像に重畳してドプラ画像を生成し表示部108に表示させる画像生成部107と、受信ビームフォーマ部104が生成する受信信号列および/または音響線信号、CFM処理部105が生成するカラーフロー情報、および、断層画像処理部106が生成するBモード画像を保存するデータ処理部と、各要素を制御する制御部110をさらに備える。このうち、マルチプレクサ部102、送信ビームフォーマ部103、受信ビームフォーマ部104、CFM処理部105、断層画像処理部106、画像生成部107は、超音波信号処理回路である、超音波信号処理装置150を構成する。
超音波診断装置100を構成する各要素、例えば、マルチプレクサ部102、送信ビームフォーマ部103、受信ビームフォーマ部104、CFM処理部105、断層画像処理部106、画像生成部107、制御部110は、それぞれ、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などのハードウェア回路により実現される。
データ格納部109は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、MO、DVD、DVD-RAM、BD、半導体メモリ等を用いることができる。また、データ格納部109は、超音波診断装置100に外部から接続された記憶装置であってもよい。
なお、本実施の形態に係る超音波診断装置100は、図1で示した構成の超音波診断装置に限定されない。例えば、マルチプレクサ部102がなく、送信ビームフォーマ部103と受信ビームフォーマ部104とが直接、プローブ101の各振動子101aに接続されていてもよい。また、プローブ101に送信ビームフォーマ部103や受信ビームフォーマ部104、またその一部などが内蔵される構成であってもよい。これは、本実施の形態に係る超音波診断装置100に限られず、後に説明する変形例に係る超音波診断装置でも同様である。
<各構成要素の説明>
1.送信ビームフォーマ部103
送信ビームフォーマ部103は、マルチプレクサ部102を介してプローブ101と接続され、プローブ101から超音波の送信を行うためにプローブ101に存する複数の振動子101aの全てもしくは一部に当たる送信振動子列からなる送信開口に含まれる複数の振動子の各々に対する高電圧印加のタイミングを制御する。送信ビームフォーマ部103は送信部1031から構成される。
送信部1031は、制御部110からの送信制御信号に基づき、プローブ101に存する複数の振動子101a中、送信開口に含まれる各振動子に超音波ビームを送信させるためのパルス状の送信信号を供給する送信処理を行う。具体的には、送信部1031は、例えば、クロック発生回路、パルス発生回路、遅延回路を備えている。クロック発生回路は、超音波ビームの送信タイミングを決定するクロック信号を発生させる回路である。パルス発生回路は、各振動子を駆動するパルス信号を発生させるための回路である。遅延回路は、超音波ビームの送信タイミングを振動子毎に遅延時間を設定し、遅延時間だけ超音波ビームの送信を遅延させて超音波ビームのフォーカシングを行うための回路である。具体的には、送信開口の中心に位置する振動子ほど送信タイミングを遅らせるように各振動子の送信タイミングを制御する。これにより、送信開口内の振動子列から送信された超音波送信波は、被検体のある深度において、波面がある一点、すなわち送信フォーカス点で、フォーカスがあう(集束する)状態となる。送信フォーカス点Fで合焦した波面は、再び拡散し、被検体内を超音波送信波が伝播する。なお、送信ビームフォーマ部103は、送信フォーカス深さにおいて、波面がある領域、すなわち送信フォーカス領域に超音波が集束するように制御してもよい。
送信部1031は、超音波ビームの送信を所定の回数行った後、送信開口を列方向に所定の距離だけ移動させて再び超音波ビームの送信を所定の回数行い、の処理を繰り返すことで、プローブ101に存する全ての振動子101aから超音波送信を行う。以下、超音波ビームの送信のそれぞれを送信イベントと呼び、所定の回数の送信イベントで構成される、同一の送信開口を用いた一連の超音波送信の全体を送信イベントセットと呼ぶ。なお、所定の回数は少なくとも2回であり、本実施の形態では、一例として、10回である。すなわち、本実施の形態では、10回の超音波送信ごとに、送信開口が移動する。送信開口が異なる複数の送信イベントセットにより、1フレーム分の信号が受信される。
なお、送信部1031は、超音波探触子1を構成する各振動素子から送出される送信検出波が特定の向きに進行する平面波を超音波ビームとして送信してもよい。この場合、すべての振動子を同時に駆動させる、または、隣接する2つの振動子の間の遅延時間差が所定の値となるように遅延処理が行われる。また、この場合は、送信イベントセット間で送信開口は移動させず、1回の送信イベントセットにより、1フレーム分の信号が受信される。
2.受信ビームフォーマ部104
受信ビームフォーマ部104は、プローブ101で受波した超音波の反射波に基づき、複数の振動子101aで得られた電気信号を増幅およびA/D変換してRF信号とし、複数のRF信号を時系列に並べた受信信号列を生成する。また、受信ビームフォーマ部104は、受信信号列に対し受信ビームフォーミングを行って音響線信号を作成する。音響線信号を生成する場合、送信イベントに同期し、着目領域内の各観測点について、観測点からの反射超音波に基づく受信信号を同定し、受信信号ごとに遅延処理を行って加算する。
3.CFM処理部105
CFM処理部105は、送信イベントセットのそれぞれで得た受信信号列に基づき、周波数解析を行って、CFM信号を生成する。なお、CFM処理部105は、送信イベントセットのそれぞれで得た音響線信号に基づき、周波数解析を行って、CFM信号を生成してもよい。ここで、ある1つの観測点については、送信イベントごとにRF信号が得られることとなる。以下、これらの1つの観測点に係る複数のRF信号を時系列の信号列として扱い、これを、当該観測点に対するアンサンブルと呼ぶ。CFM信号とは、ある観測点に対する、血流情報を示す信号である。血流情報については後述する。図2(a)は、CFM処理部105の機能ブロック図である。図2(a)に示すように、CFM処理部105は、直交検波部1051、フィルタ処理部1052、速度解析部1053を備える。
(1)直交検波部1051
直交検波部1051は、送信イベントに同期されて生成される受信信号列のそれぞれに対して直交検波を行い、各観測点における受信信号の位相を示す複素受信信号を生成する回路である。具体的には、各観測点のアンサンブルに含まれるそれぞれのRF信号に対して、以下の処理が行われる。まず、送信超音波と周波数が同一である第1参照信号と、第1参照信号と周波数及び振幅が同一で位相のみ90°異なっている第2参照信号とを生成する。次に、RF信号と第1参照信号を積算し、LPFにより第1参照信号の約2倍の周波数を有する高周波成分を取り除き、第1成分とする。同様に、RF信号と第2参照信号を積算し、LPFにより第2参照信号の約2倍の周波数を有する高周波成分を取り除いて第2成分とする。最後に、第1成分を実部(I成分;In Phase)、第2成分を虚部(Q成分;Quadrature Phase)として、複素受信信号を生成する。
(2)フィルタ処理部1052
フィルタ処理部1052は、複素受信信号からクラッタ成分を取り除くフィルタ回路である。クラッタ成分とは、組織の動きのうち、画像化の対象としない成分のことであり、具体的には、血管壁、筋肉、臓器などの組織の動きを示す情報である。詳細は後述する。
(3)速度解析部1053
速度解析部1053は、フィルタ処理された後の複素受信信号から、各観測点に対応する血流情報を推定する回路である。速度解析部1053は、各観測点について、当該観測点に対するアンサンブルのそれぞれの信号から位相を推定し、位相の変化速度を算出する。なお、速度解析部1053は、アンサンブルを構成する複数の複素受信信号の間で相関処理を行うことにより、位相の変化速度を推定するとしてもよい。
速度解析部1053は、位相の変化速度から各観測点で生じたドプラシフト量を算出し、ドプラシフト量から、血流の平均速度Vを推定する。速度解析部1053は、血流の平均速度Vを超音波の送信方向(被検体の深さ方向)に連なった信号の列としたCFM信号を生成し、画像生成部107とデータ格納部109に出力する。なお、速度解析部1053は、血流の速度の分散値Tと、ドプラシフト量のパワースペクトルを基に血流のパワーPをさらに算出するとしてもよい。速度解析部1053は、これらの血流情報を、CFM信号として画像生成部107に出力する。
4.断層画像処理部106
断層画像処理部106は、受信ビームフォーマ部104が生成した1回の送信イベントに係る音響線信号に対し、包絡線検波、対数圧縮を行い、1フレーム分のBモード画像データを生成する。生成されたBモード画像データは、画像生成部107とデータ格納部109に出力される。
5.画像生成部107
画像生成部107は、断層画像処理部106が生成したBモード断層画像に、CFM処理部105が生成したCFM信号を色調変換して重畳することでカラードプラ画像を生成するための回路である。または、画像生成部107は、断層画像処理部106が生成したBモード断層画像に、CFM処理部105が生成したCFM信号を色調変換して重畳することでパワードプラ画像を生成してもよい。
カラードプラ画像を生成する場合は、以下の処理を行う。画像生成部107は、まず、CFM信号の座標系を直交座標系に変換する。次に、各観測点の平均速度Vを色情報に変換してカラーフロー情報を生成する。このとき、例えば、(1)プローブに向かう向きは赤色、プローブから遠ざかる向きは青色、(2)速度の絶対値が大きいほど彩度が高く、絶対値が小さいほど彩度が低い、のように変換を行う。より具体的には、プローブに向かう速度成分については速度の絶対値を赤色の輝度値に変換し、プローブから遠ざかる速度成分については速度の絶対値を青色の輝度値に変換する。なお、画像生成部107は、CFM処理部105から速度分散を示す信号Tをさらに受信し、分散の値を緑の輝度値に変換してもよい。このようにすることで、乱流の発生位置を示すことができる。最後に、画像生成部107は、断層画像処理部106が生成したBモード断層画像に、上述したカラーフロー情報を重畳することで、カラードプラ画像を生成する。カラードプラ画像は、表示部108に表示される。
一方、パワードプラ画像を生成する場合は、以下の処理を行う。画像生成部107は、まず、CFM信号の座標系を直交座標系に変換する。次に、各観測点のパワーPを色情報に変換してカラーフロー情報を生成する。このとき、例えば、血流のパワーが大きいほど輝度が高く、パワーが小さいほど輝度が低い、のように変換を行う。より具体的には、血流のパワーが所定の値以上である点は鮮やかな黄色、パワーが所定の値未満である点は暗いオレンジ色、パワーがゼロとみなせる点は無色(透明)で示す。最後に、画像生成部107は、断層画像処理部106が生成したBモード断層画像に、上述したカラーフロー情報を重畳することで、パワードプラ画像を生成する。パワードプラ画像は、表示部108に表示される。
<フィルタ処理部の説明>
以下、フィルタ処理部1052について、より詳細に説明する。図2(b)は、フィルタ処理部1052の機能ブロック図である。図2(b)に示すように、フィルタ処理部1052は、複素化部1151、データ選択部1152、共分散算出部1153、固有値算出部1154、フィルタ作成部1155、フィルタ適用部1156、実部虚部分離部1157を備える。
1.複素化部1151
複素化部1151は、直交検波部1051から出力される複素受信信号のそれぞれについて、I成分を実部、Q成分を虚部とする、単一の複素数に変換する回路である。複素化部1151は、複素化された複素受信信号をフィルタ適用部1156とデータ選択部1152に出力する。
2.データ選択部1152
データ選択部1152は、適用型MTIフィルタを生成するための信号を選択する回路である。具体的には、データ選択部1152は、フィルタを生成するためのアンサンブルに係る観測点を選択する。本実施の形態においては、Bモード断層画像の輝度を基準として観測点を選択する。
以下、図5の模式図を用いて説明する。図5は、Bモード断層画像の着目領域201の内部に、CFM処理の対象となる関心領域211が含まれている場合を示している。ここで、領域221は血管内腔に対応し、領域222および領域223は筋肉に対応しているとする。また、関心領域211には、観測点がy方向に5個並び、x方向に4個並び、計20個の観測点Pjが関心領域211に含まれているものとする。図5において、領域221内の観測点は「○」で示し、領域222および領域223内の観測点Qiは「×」で示している。
上述したように、適応型MTIフィルタは、フィルタを生成するための複数のアンサンブルに共通する信号成分をクラッタ成分として抽出することにより、当該共通信号成分を打ち消すフィルタとして作成される。したがって、データ選択部1152は、血流成分を含むアンサンブル、すなわち、血流領域である領域221内の観測点に係るアンサンブルを含まないように、アンサンブルに係る観測点である第2観測点を選択する。具体的には、観測点グループ230のうち、血流領域221に含まれる観測点グループ232を特定し、観測点グループ230から観測点グループ232を除いた観測点グループ231に属する観測点を選択する。すなわち、観測点グループ231の存在領域がフィルタ元領域となる。これにより、観測点グループ231に属する観測点に係る複数のアンサンブルに共通する信号成分をクラッタ成分として抽出でき、血流成分に影響を与えずにクラッタ成分を取り除く適用型MTIフィルタを実現できる。本実施の形態では、データ選択部1152は、データ格納部109からBモード断層画像を読み出し、Bモード断層画像における輝度が所定の閾値以上である観測点を観測点グループ231に、輝度が所定の閾値未満である観測点を観測点グループ232に、それぞれ分類する。これは、Bモード断層画像において、血管内腔では輝度が低い一方で、筋組織や骨などの輝度が高いため、輝度の高い領域をフィルタ元領域とすることで、血流が存在している領域をフィルタ領域から排除できるからである。そして、観測点グループ231に属する観測点に係るアンサンブルを、以下に示すように行列Xとして共分散算出部1153に出力する。
Figure 0006992277000001
ここで、Mは観測点グループ231に属する観測点の数であり、Nはアンサンブルに含まれる複素受信信号の数である。なお、Nは送信イベントセットに含まれる送信イベント数と一致する。行列Xの要素であるxi,jは、i番目の観測点に係るアンサンブル中のj番目の送信イベントにおける複素受信信号である。
3.共分散算出部1153
共分散算出部1153は、フィルタを生成するための複数のアンサンブルを示す行列Xから共分散行列を算出する回路である。
共分散行列Σは、以下のように示されるN行N列の対称行列である。
Figure 0006992277000002
ここで、共分散行列Σの要素Σp,qは、以下のように算出される。
Figure 0006992277000003
Figure 0006992277000004
共分散算出部1153は、共分散行列Σを固有値算出部1154に出力する。
4.固有値算出部1154
固有値算出部1154は、共分散行列Σの固有値と固有ベクトルを算出する回路である。
固有値算出部1154は、算出した固有値λi(i=1~N、|λ1|≧|λ2|≧|λ3|≧…≧|λN|)と、固有値λiのそれぞれに対応する固有ベクトルei(i=1~N)をフィルタ作成部に出力する。
5.フィルタ作成部1155
フィルタ作成部1155は、共分散行列Σの固有値λiと固有ベクトルeiとに基づき、フィルタ行列を作成する回路である。
フィルタ作成部1155は、固有ベクトルeiに基づいて、行列eを作成する。
Figure 0006992277000005
ここで、行列eの各要素と、固有ベクトルeiは以下の関係を有する。
Figure 0006992277000006
すなわち、行列eは、固有ベクトルeiを、対応する固有値λiの絶対値が大きい順に左から右の方向に並べた行列である。
さらに、フィルタ作成部1155は、N行N列の対角行列であるゲイン行列Gを作成する。
Figure 0006992277000007
ここで、gi(i=1~N)は共分散行列Σの固有値λiに対応するゲイン値であり、固有値λiの絶対値が大きいほどgiは小さな値をとる。また、g1~gj(jは1以上(N-1)以下の整数)を全て0としてもよく、この場合におけるjをランクカット数と呼ぶ。ランクカット数jは、例えば、共分散行列Σの固有値において、|λj|が所定の閾値以上、かつ、|λj+1|が所定の閾値未満となるように定めることができる。
さらに、フィルタ作成部1155は、以下のように、フィルタ行列AEigenを作成する。
Figure 0006992277000008
ここで、行列eHは、行列eの複素共役転置行列である。
フィルタ作成部1155は、作成したフィルタ行列AEigenを、フィルタ適用部1156に出力する。
6.フィルタ適用部1156
フィルタ適用部1156は、フィルタ作成部1155が作成したフィルタ行列AEigenを複素化された複素受信信号に適用することで、フィルタ処理を行い、抽出複素受信信号を生成する。
フィルタ適用部1156は、観測点グループ230に含まれる全ての観測点に係るアンサンブルを、以下に示すように行列Yとする。
Figure 0006992277000009
ここで、Lは観測点グループ230に属する観測点の数であり、Nはアンサンブルに含まれる複素受信信号の数である。行列Yの要素であるyi,jは、i番目の観測点に係るアンサンブル中のj番目の送信イベントにおける複素受信信号である。
次に、フィルタ適用部1156は、フィルタ作成部1155が作成したフィルタ行列AEigenを行列Yに適用する。
Figure 0006992277000010
最後に、フィルタ適用部1156は、行列Y'の各要素を、フィルタ後のアンサンブルである抽出複素受信信号として出力する。すなわち、行列Y'の要素であるy'i,jは、i番目の観測点に係るアンサンブル中のj番目の送信イベントにおける抽出複素受信信号である。
7.実部虚部分離部
実部虚部分離部は、抽出複素受信信号のそれぞれについて、実部をフィルタ後のI成分I’として、虚部をフィルタ後のQ成分Q’として分離して出力する。
<動作>
以上の構成からなる超音波診断装置100の動作について説明する。
図3は、超音波診断装置100の動作を示すフローチャートである。
まず、ステップS10において、関心領域(ROI)の設定を行う。関心領域を設定する方法は、例えば、表示部108に事前に取得したBモード断層画像を表示し、タッチパネル、マウス、トラックボールなどの入力部(図示しない)を通して検査者に関心領域を指定させる。なお、関心領域の設定方法はこの場合に限られず、例えば、Bモード断層画像の全域を関心領域としてもよいし、あるいは、Bモード断層画像の中央部分を含む一定範囲を関心領域としてもよい。また、関心領域を設定する際に、後述するステップS20、S30の動作を行ってもよい。
次に、関心領域を含む着目領域に対して超音波の送受信を行い、反射超音波に基づくRF信号を生成する(ステップS20)。具体的には、1フレーム分の受信信号列を生成するために必要な、1回以上の送信イベントと、反射超音波に基づく受信処理による受信信号列の生成を行う。
次に、Bモード断層画像を生成する(ステップS30)。具体的には、ステップS20で取得した受信信号列に対して受信ビームフォーマ部104が整相加算処理を行って音響線信号を生成し、断層画像処理部106は音響線信号に対して包絡線検波、対数圧縮を行い、Bモード断層画像を生成する。生成されたBモード断層画像は、画像生成部107とデータ格納部109に出力される。
次に、関心領域に対して超音波の送受信を複数回行い、超音波送信を行うごとに反射超音波に基づくRF信号を生成する処理を行う(ステップS40)。具体的には、1フレーム分の受信信号列を生成するために必要な1回以上の送信イベントセットを行い、送信イベントセットに含まれる送信イベントごとに、反射超音波に基づく受信処理による受信信号列の生成を行う。
次に、RF信号を直交検波し、複素超音波信号を生成する(ステップS50)。これにより、関心領域内の各観測点に対応するアンサンブルが取得される。
次に、複素超音波信号に対し、適応型MTIフィルタ処理を行う(ステップS60)。ここで、ステップS60における、MTIフィルタ処理について、図4を用いて詳細に説明する。図4は、フィルタ処理部1052におけるMTIフィルタ処理を示すフローチャートである。
まず、データ選択部1152が、ROI内の観測点Pj(j=1~L)から、Bモード画像輝度値に基づいて、フィルタ元領域に含まれる第2観測点Qi(i=1~M)を抽出する(ステップS61)。具体的には以下の動作となる。まず、データ選択部1152は、ステップS30で生成されたBモード断層画像を、データ格納部109から読み出す。次に、データ選択部1152は、ROI内の各観測点PjにおけるBモード断層画像の輝度値を取得する。そして、Bモード断層画像の輝度値が所定の閾値以上である観測点を、フィルタ元領域に含まれる第2観測点Qiとして抽出する。なお、データ選択部1152は、Bモード断層画像から、ROI内かつ輝度値が所定の閾値以上である領域をフィルタ元領域として抽出した後、フィルタ元領域内の観測点全てを第2観測点Qiとして抽出してもよい。
次に、第2観測点Qiに対応する時系列の複素受信信号を要素として用いることで、行列Xを生成する(ステップS62)。まず、複素化部1151は観測点Pjに係るアンサンブルに含まれる各複素超音波信号を複素数に変換する。次に、データ選択部1152は、複素化部1151が複素数化した観測点Pjに係るアンサンブルデータから、ステップS61で抽出した第2観測点Qiに係るアンサンブルデータのみを取り出す。最後に、複数のアンサンブルデータを、行方向が時間(送信イベント)、列方向が観測点(インデックスi)を示すように配置して行列Xを生成する。
次に、共分散算出部1153は、行列Xから、共分散行列Σを生成する(ステップS63)。
次に、固有値算出部1154は、共分散行列ΣのN個の固有値λiと、固有値λiのそれぞれに対応する固有ベクトルeiを算出する(ステップS64)。
次に、フィルタ作成部1155は、固有値λiに基づいて、ゲイン行列Gを作成する(ステップS65)。具体的には、固有値λiを絶対値の大きい順に並べ、固有値λiの絶対値が大きいほど対応するゲイン値gが小さくなるようにゲイン値gを定め、ゲイン値gを並べてゲイン行列Gを作成する。
次に、フィルタ作成部1155は、固有ベクトルeiとゲイン行列Gから、フィルタ行列AEigenを作成する(ステップS66)。具体的には、固有ベクトルeiを、対応する固有値λiの絶対値の大きい順に並べることで行列eを作成する。次に、行列eの複素共役転置行列eHを算出し、最後に、行列e、ゲイン行列G、複素共役転置行列eHの順に掛け算を行うことでフィルタ行列AEigenを作成する。
次に、フィルタ適用部1156は、観測点Pjに対応する時系列の複素受信信号を要素として用いることで、行列Yを生成する(ステップS67)。具体的には、フィルタ適用部1156は、ステップS62において複素化部1151が複素数化した観測点Pjに係るアンサンブルデータを用いて、行列Yを作成する。行列Yには、複数のアンサンブルデータが、行方向が時間(送信イベント)、列方向が観測点(インデックスj)を示すように配置されている。
最後に、フィルタ適用部1156は、フィルタ行列AEigenを行列Yに適用して、フィルタ後のアンサンブルである行列Y'を作成する(ステップS68)。
図3に戻って説明を続ける。次に、速度解析部1053は、MTIフィルタ後の抽出複素受信信号から位相変化を検出してCFM信号を生成する(ステップS70)。具体的には、実部虚部分離部1157が行列Y'に含まれるアンサンブル中の各抽出複素受信信号をI成分I’とQ成分Q’との組み合わせに戻した後、速度解析部1053は、各観測点について、I成分I’とQ成分Q’との組み合わせが示す位相がアンサンブル内でどのように変化したかを検出する。速度解析部1053は、位相変化の平均及び分散を検出して、血流速度の平均及び分散を算出する。また、速度解析部1053は、さらに血流速度のパワースペクトルから、血流速度のパワーを算出してもよい。
次に、画像生成部107は、CFM信号に基づいてカラードプラ画像を生成する(ステップS80)。具体的には、画像生成部107は、CFM信号に含まれる平均速度について、向きを色彩に変換し、大きさを輝度に変換する。なお、画像生成部107は、さらに、CFM信号に含まれる速度の分散について、大きさを緑色の輝度に変換してもよい。
最後に、ドプラ画像を表示する(ステップS90)。具体的には、画像生成部107は、ステップS80で生成したカラードプラ画像を、ステップS30で生成されたBモード断層画像に重畳し、表示部108に表示させる。
<まとめ>
上記構成により、適用型MTIフィルタであるフィルタ行列AEigenは、血流が存在していない可能性が十分に高いフィルタ元領域に基づいて作成される。そのため、クラッタ成分はフィルタ領域内の第2観測点から取得されたアンサンブルに共通して含まれる一方、血流成分はフィルタ領域内の第2観測点から取得されたアンサンブルに含まれない。したがって、適用型MTIフィルタであるフィルタ行列AEigenは、クラッタ成分を高精度に取り除くフィルタである一方で、血流成分に対しては影響を与える可能性が十分に低い。これにより、高精度のMTIフィルタが実現でき、クラッタ成分を確実に取り除きつつ、血流成分を高精度に発見することが可能となる。
≪変形例≫
実施の形態1では、関心領域に含まれる観測点のうち、Bモード断層画像における輝度が所定の閾値以上である観測点のみを含むように、フィルタ元領域を設定した。しかしながら、フィルタ元領域は血流成分を含む観測点を含まなければよく、その選択の方法は以下のような手法であってもよい。
<動作>
以下、変形例に係る超音波診断装置におけるMTIフィルタ処理を、図7を用いて説明する。図7は、変形例に係るMTIフィルタ処理を示すフローチャートである。なお、図4と同じ動作については同じステップ番号を付し、説明を省略する。
データ選択部は、過去の血流情報に基づいて、関心領域内の観測点Pjから、フィルタ元領域に含まれる第2観測点Qiを抽出する(ステップS161)。まず、データ選択部は、データ格納部から、関心領域に係るCFM信号を取得する。このCFM信号は、処理に係るフレームより前のフレームに係るCFM信号である。データ選択部は、CFM信号から、関心領域に含まれる観測点のそれぞれの平均速度の大きさを取得する。そして、データ選択部は、関心領域に含まれる観測点から、過去の平均速度の大きさが所定の閾値以下である観測点を第2観測点として選択する。すなわち、読み出されたCFM信号に係るカラードプラ画像またはパワードプラ画像において、彩色がなされない領域をフィルタ元領域であるとして抽出する。これは、過去に血流成分が観測されていない観測点は血流が存在しない点であると考えられ、第2観測点として好適であるからである。なお、データ選択部は、CFM信号から、関心領域に含まれる観測点のそれぞれの血流のパワーを取得し、血流のパワーの大きさが所定の閾値以下である観測点を第2観測点として選択してもよい。
以下、第2観測点Qiを特定した後の動作(ステップS62~S68)は、実施の形態と同一であるので省略する。
<まとめ>
上記構成により、適用型MTIフィルタであるフィルタ行列AEigenは、血流が観測されたことがないフィルタ元領域に基づいて作成される。そのため、血流成分はフィルタ領域内の第2観測点から取得されたアンサンブルに含まれない。これにより、高精度のMTIフィルタが実現でき、クラッタ成分を確実に取り除きつつ、血流成分を高精度に発見することが可能となる。
≪実施の形態2≫
実施の形態1では、関心領域から1つのフィルタ元領域を抽出してフィルタ行列を1つ生成し、関心領域内のすべての観測点Pjに係る複素音響線信号にフィルタを適用し、フィルタ後の抽出複素音響線信号を用いて血流情報を算出するとした。
これに対し、本実施の形態では、関心領域を複数のサブ関心領域に分割し、サブ関心領域ごとにMTIフィルタと血流情報の算出を行うことを特徴とする。
<構成要素の構成>
実施の形態2に係る超音波診断装置は、CFM処理部105に替えてCFM処理部205を備えることに特徴があり、それ以外の構成は実施の形態1に係る超音波診断装置100と同様である。
以下、CFM処理部205について詳細に説明する。
1.CFM処理部205
CFM処理部205は、関心領域を複数のサブ関心領域に分割し、それぞれのサブ関心領域において、送信イベントセットのそれぞれで得た受信信号列に基づき、周波数解析を行って、部分CFM信号を生成する。そして、CFM処理部205は、部分CFM信号を合成することにより、関心領域全体に係るCFM信号を生成する。図8はCFM処理部205の機能ブロック図である。なお、図2と同じ構成については同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。CFM処理部205は、直交検波部1051、領域分割部2051、P個(Pは2以上の整数)のフィルタ処理部1052-kと速度解析部1053-kとの組み合わせ(kは1以上P以下の整数)、速度合成部2052を備える。
(1)領域分割部2051
領域分割部2051は、関心領域を、P個のサブ関心領域に分割する。図9(a)は、関心領域を9個のサブ関心領域に分割する場合(P=9)の模式図である。ここでは、関心領域211を、x方向に3分割し、y方向に3分割することにより、9個のサブ関心領域Rab(a、bはいずれも1以上3以下の整数)に分割する。
なお、領域のサブ関心領域への分割は上述の例に限られず、任意の数や形状に分割してよい。また、例えば、複数のサブ関心領域が空間的に重複するように、すなわち、1の観測点が複数のサブ関心領域に含まれるように、分割を行ってもよい。図9(b)は、関心領域を9個のサブ関心領域に分割する場合の他の模式図である。図9(b)に示すように、例えば、領域261は、サブ領域R11とサブ領域R12のいずれにも含まれる。また、領域262は、サブ領域R11とサブ領域R21のいずれにも含まれる。また、領域263は、4つのサブ領域R11、R12、R21、R22のいずれにも含まれる。
なお、サブ関心領域の数はP個に限られず、2個以上(P-1)個以下の数、としてもよい。
領域分割部2051は、第1のサブ関心領域内のすべての観測点Pjに対応する複素受信信号列(I1,Q1)をフィルタ処理部1052-1に、第2のサブ関心領域内のすべての観測点Pjに対応する複素受信信号列(I2,Q2)をフィルタ処理部1052-2に、…、P番目のサブ関心領域内のすべての観測点Pjに対応する複素受信信号列(IP,QP)をフィルタ処理部1052-Pに、それぞれ出力する。また、領域分割部2051は、各サブ関心領域の範囲を示す情報を、速度合成部2052に出力する。
(2)フィルタ処理部1052-k(kは1以上P以下の整数)
フィルタ処理部1052-kは、k番目のサブ関心領域からフィルタ元領域を抽出してフィルタを作成し、k番目のサブ関心領域内のすべての複素受信信号列(Ik,Qk)にフィルタを適用して抽出複素受信信号列(I’k,Q’k)を生成する。具体的な動作は、サブ関心領域を関心領域とみなす以外、実施の形態1に係るフィルタ処理部1052と同様であるので説明を省略する。
(3)速度解析部1053-k(kは1以上p以下の整数)
速度解析部1053-kは、対応するフィルタ処理部1052-kが出力したk番目のサブ関心領域内の観測点Pjに係る抽出複素受信信号列(I’k,Q’k)から、各観測点に対応する血流情報を算出する。具体的な動作は、サブ関心領域を関心領域とみなす以外、実施の形態1に係る速度解析部1053と同様であるので説明を省略する。
(4)速度合成部2052
速度合成部2052は、P個の速度解析部1053-kが算出した血流情報に基づいて、関心領域内のすべての観測点Pjに対応する血流情報を算出する。
サブ関心領域が相互に重複していない、すなわち、関心領域内のすべての観測点Pjがいずれか1つのサブ関心領域に属している場合、当該観測点Pjに対する血流情報は、当該1つのサブ関心領域の血流情報を算出した速度解析部1053-kのみから得られることとなる。したがって、速度合成部2052は、全ての速度解析部1053-kから得た血流情報を、関心領域内のすべての観測点Pjに対応する血流情報として出力する。
一方、サブ関心領域間に重複する領域が存在する、すなわち、複数のサブ関心領域にまたがって存在する観測点Pjが存在する場合、当該観測点Pjに対する血流情報は、複数の速度解析部1053-kから得られることとなる。したがって、速度合成部2052は、観測点Pjの位置に基づいて、複数の血流情報を合成して1つの血流情報を得る。具体的には、速度合成部2052は、関心領域内の観測点Pjについて、(i)1つのサブ関心領域にのみ存在する場合、得られた1つの血流情報を当該観測点Pjの血流情報として出力し、(ii)複数のサブ関心領域にのみ存在する場合、得られた複数の血流情報の代表値を算出して当該観測点Pjの血流情報として出力する。なお、代表値としては、相加平均であってもよいし、相乗平均や最大値などであってもよい。
<動作>
以下、実施の形態2に係る超音波診断装置の動作を、図10を用いて説明する。図10は、実施の形態2に係る超音波診断装置の動作を示すフローチャートである。なお、図3と同じ動作については同じステップ番号を付し、説明を省略する。
関心領域(ROI)の設定(ステップS10)から直交検波(ステップS10)までの動作は、実施の形態1と同じであるので説明を省略する。
直交検波の後、領域分割部2051は、関心領域(ROI)を、p個のサブ関心領域に分割する(ステップS110)。具体的には、関心領域をx方向、y方向ともに所定の数で分割することで、サブ関心領域を決定する。なお、サブ関心領域の設定方法はこの場合に限られず、例えば、予め設定されている複数のサブ関心領域候補について、関心領域と重複する領域をそれぞれサブ関心領域としてもよい。このようにすることで、サブ関心領域間に重複する領域を容易に設定することができる。
次に、カウンタkを初期化し(ステップS120)、k番目のサブ関心領域について、MTIフィルタを作成して適用することで抽出複素受信信号を生成し(ステップS160)、部分CFM信号を生成する(ステップS170)。ステップS160の動作は、k番目のサブ関心領域内の観測点のみに基づいてフィルタを作成することを除き、ステップS60の動作と同じである。また、ステップS170の動作は、同様にk番目のサブ関心領域内の観測点についてCFM信号を部分CFM信号として生成することを除き、ステップS70の動作と同じである。そして、kをインクリメントしながら(ステップS140)、ステップS160とステップS170を繰り返し、全てのサブ関心領域について、それぞれの観測点Pjにおける部分CFM信号を生成する(ステップS130)。
全てのサブ関心領域について部分CFM信号を生成した後(ステップS130でNo)、速度合成部2052は、P回行われたステップS60の結果に基づいて、関心領域内のすべての観測点PjについてのCFM信号を作成する(ステップS150)。
以下の動作(ステップS80、ステップS90)については実施の形態1と同様であるので、説明を省略する。
<まとめ>
上記構成により、サブ関心領域の単位で適用型MTIフィルタと速度算出が行われるので、サブ関心領域の面積を小さくすることができる。そのため、サブ関心領域内における観測点ごとのクラッタ成分のバラつきを小さくすることができ、共通性をより向上させることができる。したがって、クラッタ成分の除去性能をさらに向上させるとともに、血流成分への影響をさらに小さくすることができる。
≪フィルタ評価≫
図11~13を用いて、実施の形態に係るMTIフィルタ(以下、「本MTIフィルタ」と表記する)、および、FIRフィルタ、従来型MTIフィルタのそれぞれによるフィルタ結果を説明する。なお、FIRフィルタは、いわゆる広域通過フィルタである。また、ここでいう従来型MTIフィルタとは、関心領域内の観測点Pjを全てフィルタ元領域に含まれる第2観測点Qiとして用いる、固有ベクトルを用いる適用型MTIフィルタを指す。すなわち、血流成分を含むアンサンブルを用いてフィルタ行列AEigenを生成している点で、本MTIフィルタとは異なる。
図11(a)~(c)は、関心領域内に頸動脈を含むパワードプラ画像であり、同一のアンサンブルに対して、それぞれ、FIRフィルタ、従来型MTIフィルタ、本MTIフィルタを適用した結果である。図11(b)に示すように、従来型MTIフィルタでは、血流領域のうち血流速度の遅い領域、すなわち、図11(c)における略長方形の血流領域の右下部分が、血流として検出されていない。これは、当該部分がフィルタ元領域として用いられた結果、当該部分の血流成分がクラッタ成分と同様に共通成分として解析され、フィルタによって血流成分までもが除去された結果と考えられる。また、図11(a)に示すように、FIRフィルタでは従来型MTIフィルタに対して血流の検出精度は高いものの、血流速度の遅い領域の一部が血流として検出されていない。これは、発明を実施するための形態に至った経緯で説明したように、クラッタ成分における平均速度より遅い血流成分を原理上検出できないからである。これらに対し、図11(c)に示すように、本MTIフィルタにおいては、FIRフィルタと従来型MTIフィルタのいずれに対しても、血流成分を高精度に抽出しており、クラッタ成分の残存も発生していないのが見て取れる。
図12(a)~(c)は、関心領域内に甲状腺を含むパワードプラ画像であり、同一のアンサンブルに対して、それぞれ、FIRフィルタ、従来型MTIフィルタ、本MTIフィルタを適用した結果である。図10(b)と同様、図11(b)に示すように、従来型MTIフィルタでは、図11(a)および図11(c)の右側に検出されている血流領域が検出されていない。また、図11(a)においても、FIRフィルタでは血流速度が閾値より低い領域が検出できないため、血流成分の検出精度が図11(c)に対して低い。これらに対し、図11(c)に示すように、本MTIフィルタにおいては、FIRフィルタと従来型MTIフィルタのいずれに対しても、血流成分を高精度に抽出しており、クラッタ成分の残存も発生していないのが見て取れる。
図12(a)~(c)は、関心領域内に人差し指の側頭部を含むパワードプラ画像であり、同一のアンサンブルに対して、それぞれ、FIRフィルタ、従来型MTIフィルタ、本MTIフィルタを適用した結果である。この例では、図12(b)に示すように、従来型MTIフィルタではFIRフィルタより血流の検出精度は高いものの、血流速度の遅い領域の一部が血流として検出されていない。一方で、図12(a)に示すように、FIRフィルタでは血流領域の検出精度が低い。これは、血流成分の平均速度とクラッタ成分の平均速度との差が小さく血流成分とクラッタ成分で重複する周波数成分が多いことにより、FIRフィルタではクラッタ成分の除去に伴って血流成分の一部が除去されたと考えられる。一方で、図12(b)に示すように、従来型MTIフィルタでは、図12(c)で検出されている血流領域の一部が検出されていない。これは、上述の通り、血流領域がフィルタ元領域として用いられた結果、フィルタによって血流成分までもが除去された結果と考えられる。
以上示したように、FIRフィルタと従来型MTIフィルタの間には、血流成分とクラッタ成分それぞれの平均速度や分散に起因した優劣関係が存在している。一方で、本MTIフィルタは、FIRフィルタと従来型MTIフィルタのいずれに対しても、同等以上のクラッタ成分の除去性能を有しつつ、血流成分への悪影響が最も低いという優れたフィルタ性能を有している。
≪実施の形態に係るその他の変形例≫
(1)実施の形態1、2および変形例では、直交検波によって得られた複素受信信号または複素音響線信号について、I成分を実部、Q成分を虚部とした複素数として、MTIフィルタを実施した。しかしながら、例えば、I成分とQ成分をそれぞれ独立にMTIフィルタを実施する、としてもよい。この場合、例えば、CMF処理部は、フィルタ処理部1052に替えて、複素化部と虚部実部分離部とを備えないフィルタ処理部1052を2つ備え、I成分について一方のフィルタ処理部で実数を成分とする行列XIに基づいてフィルタを作成して実数を成分とする行列YIに対してフィルタを適用、Q成分について他方のフィルタ処理部で実数を成分とする行列XQに基づいてフィルタを作成して実数を成分とする行列YQに対してフィルタを適用、とすることで、MTIフィルタを実施することができる。なお、この場合において、2つのフィルタ処理部は、同一の領域をフィルタ元領域としてよい。
(2)実施の形態1、2、および変形例では、CFM処理部105は、受信信号に基づいてCFM信号を生成するとした。しかしながら、例えば、CFM処理部は、整相加算後の音響線信号に基づいてCFM信号を生成するとしてもよい。この場合、受信ビームフォーマ部は、アンサンブルの生成時に送信イベントごとに整相加算を行って音響線信号を生成し、CFM処理部は、音響線信号を直交検波して複素音響線信号を生成し、複素音響線信号にMTIフィルタ処理を行ってから速度解析を行う。
また、実施の形態1では、Bモード画像の生成のために用いるRF信号をCFM信号生成のために用いるRF信号とは別途取得していたが、Bモード画像の生成のために用いるRF信号をそのまま1番目のアンサンブルとして用いてもよい。また、整相加算後の音響線信号に基づいてCFM信号を生成する場合、Bモード画像の生成のための音響線信号を、そのまま1番目のアンサンブルとして用いてもよい。
(3)実施の形態1、2、および変形例では、共分散算出部が行列Xに基づいてN行N列の共分散行列Σを生成し、固有値算出部は、共分散行列Σの、固有値と固有ベクトルのN個の組み合わせを算出するとした。しかしながら、例えば、フィルタ処理部は、行列Xに基づいてN行N列の相関行列Cを生成し、相関行列Cの、固有値と固有ベクトルのN個の組み合わせから、フィルタ行列AEigenを生成する、としてもよい。
具体的には、フィルタ処理部は、共分散算出部に替えて、相関行列Cを算出する相関算出部を備える。N行N列の対称行列である相関行列Cは、以下の式で与えられる。
Figure 0006992277000011
ここで、相関行列Cの各要素Cp,qは、以下の式で与えられる。
Figure 0006992277000012
Figure 0006992277000013
固有値算出部は、共分散行列Σに替えて、相関行列Cの、固有値と固有ベクトルのN個の組み合わせを算出する。フィルタ作成部の動作は、共分散行列Σの固有値と固有ベクトルに替えて相関行列Cの固有値と固有ベクトルを用いることを除き、実施の形態および変形例と同様である。
(4)実施の形態1、2では、Bモード断層画像の輝度に基づき、変形例では、過去に測定されたCFM信号における平均速度に基づき、データ選択部は、フィルタ元領域に含まれる第2観測点Qiを選択するとした。しかしながら、フィルタ元領域に含まれる第2観測点Qiを選択する方法は上述の例に限られず、血流の有無を判定する任意の方法であってよい。例えば、組織の動きを検出する組織ドプラ画像に基づいて第2観測点Qiを選択するとしてもよい。また、例えば、複数の方法を組み合わせてもよく、Bモード断層画像の輝度と過去のCFM信号における平均速度の双方を用いてもよいし、過去のCFM信号における平均速度が存在しない場合にBモード断層画像の輝度を用いる、としてもよい。
また、実施の形態では、Bモード断層画像の輝度に基づいて、データ選択部は第2観測点Qiを選択するとしたが、Bモード断層画像の輝度に替えて、音響線信号の振幅の絶対値や、振幅の2乗値など、Bモード断層画像の輝度が高いほど大きくなる値を用いても当然よい。
また、フィルタ元領域に含まれる第2観測点Qiに係る観測点から得られるアンサンブルは、血流成分を含んでいてもよい。関心領域に含まれるがフィルタ元領域に含まれない観測点Pj(すなわち、データ選択部により第2観測点Qiとして選択されない観測点Pj)に係るアンサンブルに含まれる血流成分が、第2観測点Qiに係る観測点から得られるアンサンブルに含まれる血流成分より多ければよい。これにより、関心領域全体をフィルタ元領域としてフィルタ行列を生成する場合と比較して、フィルタ行列により取り除かれる血流成分が小さくなるため、従来型の適用型MTIフィルタよりフィルタ性能が向上する。
また、実施の形態1、2、および変形例では、フィルタ元領域に含まれる第2観測点Qiに係るアンサンブルを全て用いて行列Xを生成したが、フィルタ元領域に含まれる第2観測点Qiに係るアンサンブルの一部のみを行列Xに用いてもよい。言い換えれば、行列Xは、関心領域のうち血流領域内に存在しない全ての観測点に係るアンサンブルからなる必要はない。例えば、行列Xは、関心領域のうち、血流領域内に存在しない観測点のうち一部の観測点に係るアンサンブルからなる行列であってもよい。
(5)なお、本発明を上記実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明は、上記の実施の形態に限定されず、以下のような場合も本発明に含まれる。
例えば、本発明は、マイクロプロセッサとメモリを備えたコンピュータシステムであって、上記メモリは、上記コンピュータプログラムを記憶しており、上記マイクロプロセッサは、上記コンピュータプログラムにしたがって動作するとしてもよい。例えば、本発明の超音波診断装置の診断方法のコンピュータプログラムを有しており、このプログラムに従って動作する(又は接続された各部位に動作を指示する)コンピュータシステムであってもよい。
また、上記超音波診断装置の全部、もしくは一部、またビームフォーミング部の全部又は一部を、マイクロプロセッサ、ROM、RAM等の記録媒体、ハードディスクユニットなどから構成されるコンピュータシステムで構成した場合も本発明に含まれる。上記RAM又はハードディスクユニットには、上記各装置と同様の動作を達成するコンピュータプログラムが記憶されている。上記マイクロプロセッサが、上記コンピュータプログラムにしたがって動作することにより、各装置はその機能を達成する。
また、上記の各装置を構成する構成要素の一部又は全部は、1つのシステムLSI(Large Scale Integration(大規模集積回路))から構成されているとしてもよい。システムLSIは、複数の構成部を1個のチップ上に集積して製造された超多機能LSIであり、具体的には、マイクロプロセッサ、ROM、RAMなどを含んで構成されるコンピュータシステムである。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部又は全てを含むように1チップ化されてもよい。なお、LSIは、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。上記RAMには、上記各装置と同様の動作を達成するコンピュータプログラムが記憶されている。上記マイクロプロセッサが、上記コンピュータプログラムにしたがって動作することにより、システムLSIは、その機能を達成する。例えば、本発明のビームフォーミング方法がLSIのプログラムとして格納されており、このLSIがコンピュータ内に挿入され、所定のプログラム(ビームフォーミング方法)を実施する場合も本発明に含まれる。
なお、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサー(Reconfigurable Processor)を利用してもよい。
さらには、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。
また、各実施の形態に係る、超音波診断装置の機能の一部又は全てを、CPU等のプロセッサがプログラムを実行することにより実現してもよい。上記超音波診断装置のMTIフィルタや、速度解析を実施させるプログラムが記録された非一時的なコンピュータ読み取り可能な記録媒体であってもよい。プログラムや信号を記録媒体に記録して移送することにより、プログラムを独立した他のコンピュータシステムにより実施するとしてもよい、また、上記プログラムは、インターネット等の伝送媒体を介して流通させることができるのは言うまでもない。
また、上記実施形態に係る超音波診断装置の各構成要素は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)やプロセッサなどのプログラマブルデバイスとソフトウェアにより実現される構成であってもよい。後者の構成は、いわゆるGPGPU(General-Purpose computing on Graphics Processing Unit)である。これらの構成要素は一個の回路部品とすることができるし、複数の回路部品の集合体にすることもできる。また、複数の構成要素を組合せて一個の回路部品とすることができるし、複数の回路部品の集合体にすることもできる。
上記実施形態に係る超音波診断装置では、記憶装置であるデータ格納部を超音波診断装置内に含む構成としたが、記憶装置はこれに限定されず、半導体メモリ、ハードディスクドライブ、光ディスクドライブ、磁気記憶装置、等が、超音波診断装置に外部から接続される構成であってもよい。
また、ブロック図における機能ブロックの分割は一例であり、複数の機能ブロックを一つの機能ブロックとして実現したり、一つの機能ブロックを複数に分割したり、一部の機能を他の機能ブロックに移してもよい。また、類似する機能を有する複数の機能ブロックの機能を単一のハードウェア又はソフトウェアが並列又は時分割に処理してもよい。
また、上記のステップが実行される順序は、本発明を具体的に説明するために例示するためのものであり、上記以外の順序であってもよい。また、上記ステップの一部が、他のステップと同時(並列)に実行されてもよい。
また、超音波診断装置には、プローブ及び表示部が外部から接続される構成としたが、これらは、超音波診断装置内に一体的に具備されている構成としてもよい。
また、上記実施の形態においては、プローブは、複数の圧電素子が一次元方向に配列されたプローブ構成を示した。しかしながら、プローブの構成は、これに限定されるものではなく、例えば、複数の圧電変換素子を二次元方向に配列した二次元配列振動子や、一次元方向に配列された複数の振動子を機械的に揺動させて三次元の断層画像を取得する揺動型プローブを用いてもよく、測定に応じて適宜使い分けることができる。例えば、2次元に配列されたプローブを用いた場合、圧電変換素子に電圧を与えるタイミングや電圧の値を個々に変化させることによって、送信する超音波ビームの照射位置や方向を制御することができる。
また、プローブは、送受信部の一部の機能をプローブに含んでいてもよい。例えば、送受信部から出力された送信電気信号を生成するための制御信号に基づき、プローブ内で送信電気信号を生成し、この送信電気信号を超音波に変換する。併せて、受信した反射超音波を受信電気信号に変換し、プローブ内で受信電気信号に基づき受信信号を生成する構成を採ることができる。
また、各実施の形態に係る超音波診断装置、及びその変形例の機能のうち少なくとも一部を組み合わせてもよい。更に上記で用いた数字は、全て本発明を具体的に説明するために例示するものであり、本発明は例示された数字に制限されない。
さらに、本実施の形態に対して当業者が思いつく範囲内の変更を施した各種変形例も本発明に含まれる。
≪まとめ≫
(1)実施の形態に係る超音波信号処理装置は、超音波プローブに列設された複数の振動子を駆動して被検体に対する超音波送受信を実行して血流情報を算出する超音波信号処理装置であって、前記複数の振動子を介し、被検体中の少なくとも解析対象範囲を示す関心領域に対して検出波を複数回送信する送信部と、前記検出波のそれぞれに対し、前記複数の振動子にて時系列に受信された被検体からの反射超音波に基づいて受信信号列を生成する受信部と、前記検出波のそれぞれに対応する前記受信信号列を直交検波して複素信号列を生成する直交検波部と、前記関心領域のうちフィルタ元領域を特定し、前記フィルタ元領域に含まれる複数の観測点のそれぞれに係る時系列の複素信号列を用いて、行列演算を行うことでフィルタを形成し、前記複素信号列に対して前記フィルタを用いてフィルタ処理を行い抽出複素信号列を生成するフィルタ処理部と、前記抽出複素信号列から前記観測点それぞれの血流情報を検出する速度検出部とを備え、前記フィルタ元領域に含まれる血流情報は、前記関心領域に含まれる血流情報より少ないことを特徴とする。
また、実施の形態に係る超音波信号処理方法は、超音波プローブに列設された複数の振動子を駆動して被検体に対する超音波送受信を実行して血流情報を算出する超音波信号処理方法であって、前記複数の振動子を介し、被検体中の少なくとも解析対象範囲を示す関心領域に対して検出波を複数回送信し、前記検出波のそれぞれに対し、前記複数の振動子にて時系列に受信された被検体からの反射超音波に基づいて受信信号列を生成し、前記検出波のそれぞれに対応する前記受信信号列を直交検波して複素信号列を生成し、前記関心領域のうちフィルタ元領域を特定し、前記フィルタ元領域に含まれる複数の観測点のそれぞれに係る時系列の複素信号列を用いて、行列演算を行うことでフィルタを形成し、前記複素信号列に対して前記フィルタを用いてフィルタ処理を行い抽出複素信号列を生成し、前記抽出複素信号列から前記観測点それぞれの血流情報を検出する処理を含み、前記フィルタ元領域に含まれる血流情報は、前記関心領域に含まれる血流情報より少ないことを特徴とする。
本発明の一態様に係る超音波信号処理装置、超音波信号処理方法、及び、それを用いた超音波診断装置によれば、血流情報の多い観測点がフィルタ元領域に含まれる観測点として特定することを抑止する。そのため、フィルタ元領域に含まれる観測点の間で血流成分が共通成分となることを抑制し、共通成分に占めるクラッタ成分の割合を高めることができる。したがって、適用型MTIフィルタにおいて、血流成分への影響を抑止し、かつ、クラッタ成分を高精度に取り除くことが可能となる。
(2)また、上記(1)の超音波信号処理装置は、前記フィルタ元領域に含まれる観測点における血流情報は、前記関心領域に含まれ前記フィルタ元領域に含まれない血流情報と比べ、血流に起因する速度情報が少ない、としてもよい。
(3)また、上記(1)の超音波信号処理装置は、前記フィルタ元領域に含まれる観測点における血流情報は、前記関心領域に含まれ前記フィルタ元領域に含まれない観測点の血流情報と比べ、血流に起因する成分のパワーが少ない、としてもよい。
これら上記(2)または(3)の構成により、フィルタ元領域に含まれる観測点の間で血流成分が共通成分となることが抑止され、血流成分への影響をさらに低減させることができる。
(4)また、上記(1)~(3)の超音波信号処理装置は、前記速度検出部が算出した前記関心領域内の複数の観測点に係る速度を保持する血流情報保持部をさらに備え、前記フィルタ処理部は、前記血流情報保持部が保持している前記関心領域内の複数の位置に係る速度に基づいて、前記フィルタ元領域を特定する、としてもよい。
上記構成により、各観測点における速度を以前の速度に基づいて推定でき、血流成分の少ない観測点を第2観測点として特定することができる。
(5)また、上記(4)の超音波信号処理装置は、前記フィルタ処理部は、前記血流情報保持部が保持している速度の平均が所定の閾値以下である前記関心領域内の複数の観測点のみを含むように、前記フィルタ元領域を特定する、としてもよい。
上記構成により、血流領域内に存在する、平均速度の大きい観測点が第2観測点として特定されることを抑止し、血流成分への影響がより少ないフィルタを生成することが可能となる。
(6)また、上記(1)~(3)の超音波信号処理装置は、前記関心領域を少なくとも含む対象領域に対して検出波を前記送信部に送信させ、前記受信部が反射超音波に基づいて生成した受信信号列に対して整相加算を行って音響線信号を生成する整相加算部をさらに備え、前記フィルタ処理部は、前記関心領域に係る音響線信号に基づいて、前記フィルタ元領域を特定する、としてもよい。
上記構成により、Bモード断層画像に基づいて、血流成分の少ない観測点を第2観測点として特定することができる。
(7)また、上記(6)の超音波信号処理装置は、前記フィルタ処理部は、音響線信号の振幅の絶対値が所定の閾値以上である前記関心領域内の観測点のみを含むように、前記フィルタ元領域を特定する、としてもよい。
(8)また、上記(6)の超音波信号処理装置は、前記音響線信号に基づいてBモード画像を生成するBモード画像生成部をさらに備え、前記フィルタ処理部は、Bモード画像における輝度値が所定の閾値以上である前記関心領域内の観測点のみを含むように、前記フィルタ元領域を特定する、としてもよい。
上記構成により、血流領域は超音波反射率が低くBモード画像上で輝度が低い、という特性に基づいて、血流成分の少ない観測点を第2観測点として特定することができる。
(9)また、上記(1)~(8)の超音波信号処理装置は、前記フィルタ処理部は、前記フィルタ元領域に含まれる複数の観測点のそれぞれに係る時系列の複素信号列から、共分散行列と相関行列とのうち一方を生成してその固有値と固有ベクトルを算出し、所定の順序に並べた固有値に基づいてゲイン行列を生成し、前記ゲイン行列と、固有ベクトルを対応する固有値の前記所定の順序に並べた行列とからフィルタ行列を作成する、としてもよい。
上記構成により、フィルタ元領域に含まれる複数の第2観測点に係るアンサンブルに共通するクラッタ成分を選択的に除外するフィルタを実現することができる。
(10)また、上記(1)~(9)の超音波信号処理装置は、前記関心領域を複数のサブ関心領域に分割する領域分割部をさらに備え、前記フィルタ処理部は、前記サブ関心領域のそれぞれに対してフィルタ元領域を特定し、前記複数のフィルタ元領域のそれぞれに対して、フィルタ元領域に含まれる複数の観測点のそれぞれに係る時系列の複素信号列を用いて行列演算を行うことでフィルタを形成し、前記サブ関心領域のそれぞれに対する複素信号列に対して前記サブ関心領域に対応するフィルタを用いてフィルタ処理を行うことで、抽出複素信号列を生成し、前記速度検出部は、前記複数のサブ関心領域のそれぞれにおいて、サブ関心領域に対応する抽出複素信号列から観測点それぞれの血流情報を検出し、前記領域分割部は、前記速度検出部が検出した観測点それぞれの血流情報を用いて、前記関心領域内の観測点それぞれの血流情報を検出する、としてもよい。
上記構成により、MTIフィルタ処理と血流情報の算出を小さな領域に対して行えるため、MTIフィルタの精度と血流情報の検出精度をいずれも向上させることができる。
(11)また、上記(10)の超音波信号処理装置は、1の観測点に係る複数の血流情報を合成する速度合成部をさらに備え、前記領域分割部は、2つの異なるサブ関心領域のいずれにも含まれる観測点が存在するように前記関心領域を複数のサブ関心領域に分割する、としてもよい。
上記構成により、複数のサブ関心領域にまたがって存在する観測点について、MTIフィルタの精度と血流情報の検出精度をいずれも向上させることができる。
(12)また、上記(1)~(11)の超音波信号処理装置は、前記フィルタ処理部は、前記複素信号列のうち実部データのみを用いて行列演算を行うことで実部フィルタを形成し、前記複素信号列の実部データに対して前記実部フィルタを用いてフィルタ処理を行って抽出実部信号列を生成し、前記複素信号列のうち虚部データのみを用いて行列演算を行うことで虚部フィルタを形成し、前記複素信号列の虚部データに対して前記虚部フィルタを用いてフィルタ処理を行って抽出虚部信号列を生成し、前記抽出実部信号列と前記抽出虚部信号列とから抽出複素信号列を生成する、としてもよい。
上記構成により、行列演算を実数演算で行うことができ、演算を単純化することができる。
(13)また、実施の形態に係る超音波診断装置は、上記(1)~(12)の超音波信号処理装置を備える、としてもよい。
このようにすることで、上記の特徴を備えた超音波診断装置を実現できる。
本開示に係る超音波信号処理装置、超音波信号処理方法、超音波診断装置は、従来の超音波診断装置の性能向上、特に、血流領域の検出精度を向上させたカラードプラ画像生成装置、パワードプラ画像生成装置として有用である。
100 超音波診断装置
101 プローブ
101a 振動子
102 マルチプレクサ部
103 送信ビームフォーマ部
1031 送信部
104 受信ビームフォーマ部
105、205 CFM処理部
1051 直交検波部
1052 フィルタ処理部
1151 複素化部
1152 データ選択部
1153 共分散算出部
1154 固有値算出部
1155 フィルタ作成部
1156 フィルタ適用部
1157 実部虚部分離部
2051 領域分割部
2052 速度合成部
1053 速度解析部
106 断層画像処理部
107 画像生成部
108 表示部
109 データ格納部
110 制御部
150 超音波信号処理装置
1000 超音波診断システム

Claims (14)

  1. 超音波プローブに列設された複数の振動子を駆動して被検体に対する超音波送受信を実行して血流情報を算出する超音波信号処理装置であって、
    前記複数の振動子を介し、被検体中の少なくとも解析対象範囲を示す関心領域に対して検出波を複数回送信する送信部と、
    前記検出波のそれぞれに対し、前記複数の振動子にて時系列に受信された被検体からの反射超音波に基づいて受信信号列を生成する受信部と、
    前記検出波のそれぞれに対応する前記受信信号列を直交検波して複素信号列を生成する直交検波部と、
    前記関心領域のうちフィルタ元領域を特定し、前記フィルタ元領域に含まれる複数の観測点のそれぞれに係る時系列の複素信号列を用いて、行列演算を行うことでフィルタを形成し、前記関心領域に含まれる複数の観測点のそれぞれに係る時系列の複素信号列に対して前記フィルタを用いてフィルタ処理を行い抽出複素信号列を生成するフィルタ処理部と、
    前記抽出複素信号列から前記関心領域に含まれる複数の観測点それぞれの血流情報を検出する速度検出部と
    を備え、
    前記フィルタ元領域に含まれる観測点における血流情報は、前記関心領域に含まれるが前記フィルタ元領域に含まれない観測点における血流情報より少ない
    ことを特徴とする超音波信号処理装置。
  2. 前記フィルタ元領域に含まれる観測点における血流情報は、前記関心領域に含まれ前記フィルタ元領域に含まれない観測点の血流情報と比べ、血流に起因する速度情報が少ない
    ことを特徴とする請求項1に記載の超音波信号処理装置。
  3. 前記フィルタ元領域に含まれる観測点における血流情報は、前記関心領域に含まれ前記フィルタ元領域に含まれない観測点の血流情報と比べ、血流に起因する成分のパワーが少ない
    ことを特徴とする請求項1に記載の超音波信号処理装置。
  4. 前記速度検出部が算出した前記関心領域内の複数の観測点に係る血流情報を保持する血流情報保持部をさらに備え、
    前記フィルタ処理部は、前記血流情報保持部が保持している前記関心領域内の複数の位置に係る速度に基づいて、前記フィルタ元領域を特定する
    ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の超音波信号処理装置。
  5. 前記フィルタ処理部は、前記血流情報保持部が保持している血流情報が所定の閾値以下である前記関心領域内の複数の観測点のみを含むように、前記フィルタ元領域を特定する
    ことを特徴とする請求項4に記載の超音波信号処理装置。
  6. 前記関心領域を少なくとも含む対象領域に対して検出波を前記送信部に送信させ、前記受信部が反射超音波に基づいて生成した受信信号列に対して整相加算を行って音響線信号を生成する整相加算部をさらに備え、
    前記フィルタ処理部は、前記関心領域に係る音響線信号に基づいて、前記フィルタ元領域を特定する
    ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の超音波信号処理装置。
  7. 前記フィルタ処理部は、音響線信号の振幅の絶対値が所定の閾値以上である前記関心領域内の観測点のみを含むように、前記フィルタ元領域を特定する
    ことを特徴とする請求項6に記載の超音波信号処理装置。
  8. 前記音響線信号に基づいてBモード画像を生成するBモード画像生成部をさらに備え、
    前記フィルタ処理部は、Bモード画像における輝度値が所定の閾値以上である前記関心領域内の観測点のみを含むように、前記フィルタ元領域を特定する
    ことを特徴とする請求項6に記載の超音波信号処理装置。
  9. 前記フィルタ処理部は、
    前記フィルタ元領域に含まれる複数の観測点のそれぞれに係る時系列の複素信号列から、共分散行列と相関行列とのうち一方を生成してその固有値と固有ベクトルを算出し、所定の順序に並べた固有値に基づいてゲイン行列を生成し、
    前記ゲイン行列と、固有ベクトルを対応する固有値の前記所定の順序に並べた行列とからフィルタ行列を作成する
    ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の超音波信号処理装置。
  10. 1の観測点に係る複数の血流情報を合成する速度合成部と、前記関心領域を複数のサブ関心領域に分割する領域分割部をさらに備え、
    前記フィルタ処理部は、前記サブ関心領域のそれぞれに対してフィルタ元領域を特定し、前記複数のフィルタ元領域のそれぞれに対して、フィルタ元領域に含まれる複数の観測点のそれぞれに係る時系列の複素信号列を用いて行列演算を行うことでフィルタを形成し、前記サブ関心領域のそれぞれに対する複素信号列に対して前記サブ関心領域に対応するフィルタを用いてフィルタ処理を行うことで、抽出複素信号列を生成し、
    前記速度検出部は、前記複数のサブ関心領域のそれぞれにおいて、サブ関心領域に対応する抽出複素信号列から観測点それぞれの血流情報を検出し、
    前記速度合成部は、前記速度検出部が検出した観測点それぞれの血流情報を用いて、前記関心領域内の観測点それぞれの血流情報を検出する
    ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の超音波信号処理装置。
  11. 前記領域分割部は、2つの異なるサブ関心領域のいずれにも含まれる観測点が存在するように前記関心領域を複数のサブ関心領域に分割する
    ことを特徴とする請求項10に記載の超音波信号処理装置。
  12. 前記フィルタ処理部は、前記フィルタ元領域に含まれる複数の観測点のそれぞれに係る時系列の複素信号列のうち実部データのみを用いて行列演算を行うことで実部フィルタを形成し、前記関心領域に含まれる複数の観測点のそれぞれに係る時系列の複素信号列の実部データに対して前記実部フィルタを用いてフィルタ処理を行って抽出実部信号列を生成し、前記フィルタ元領域に含まれる複数の観測点のそれぞれに係る時系列の複素信号列のうち虚部データのみを用いて行列演算を行うことで虚部フィルタを形成し、前記関心領域に含まれる複数の観測点のそれぞれに係る時系列の複素信号列の虚部データに対して前記虚部フィルタを用いてフィルタ処理を行って抽出虚部信号列を生成し、前記抽出実部信号列と前記抽出虚部信号列とから抽出複素信号列を生成する
    ことを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の超音波信号処理装置。
  13. 前記超音波プローブが接続可能に構成された、
    請求項1から12のいずれか1項に記載の超音波信号処理装置を備える超音波診断装置。
  14. 超音波プローブに列設された複数の振動子を駆動して被検体に対する超音波送受信を実行して血流情報を算出する超音波信号処理方法であって、
    前記複数の振動子を介し、被検体中の少なくとも解析対象範囲を示す関心領域に対して検出波を複数回送信し、
    前記検出波のそれぞれに対し、前記複数の振動子にて時系列に受信された被検体からの反射超音波に基づいて受信信号列を生成し、
    前記検出波のそれぞれに対応する前記受信信号列を直交検波して複素信号列を生成し、
    前記関心領域のうちフィルタ元領域を特定し、前記フィルタ元領域に含まれる複数の観測点のそれぞれに係る時系列の複素信号列を用いて、行列演算を行うことでフィルタを形成し、前記関心領域に含まれる複数の観測点のそれぞれに係る時系列の複素信号列に対して前記フィルタを用いてフィルタ処理を行い抽出複素信号列を生成し、
    前記抽出複素信号列の位相の時間変化に基づいて前記関心領域に含まれる複数の観測点それぞれの速度を検出する処理を含み、
    前記フィルタ元領域に含まれる観測点における血流情報は、前記関心領域に含まれるが前記フィルタ元領域に含まれない観測点における血流情報より少ない
    ことを特徴とする超音波信号処理方法。
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