本発明は、ディジタル放送を受信するディジタル放送受信機に関し、特に同期受信の精度向上や同期処理の迅速化等を実現するディジタル放送受信機に関する。
一般に、リアルタイムに放送されてくるディジタル放送を受信するためには、受信機側で同期受信を行う必要がある。
この同期受信を行うため、特開2004−208286号公報に開示されているOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplex)方式によるDAB(Digital Audio Broadcasting)システムのディジタル音声放送を受信する放送受信機では、放送局側からベースバンド信号に乗せて所定のフレーム長(フレーム周期)毎に伝送されてくる送信電力の小さいヌルシンボル(Null symbol)を検出するヌルシンボル検出装置が設けられている。
この従来のヌルシンボル検出装置は、同公報の図1に示されているように、振幅検出部と、複数個の同期加算バッファと、移動平均処理部と、伝送モード判定部と、ヌル位置検出部とを有して構成されている。受信すべき放送チャンネルが切り替え選択等されると、初期同期のための処理が開始され、振幅検出部がベースバンド信号のエンベロープを検出し、伝送モードに従って所定のフレーム長毎に繰り返し伝送されてくるヌルシンボルを他のシンボルの振幅との差異に基づいて検出する。
そして、検出された各ヌルシンボルの期間を、伝送モード毎に対応付けられている各同期加算バッファが計測して蓄積していき、移動平均処理部が各同期加算バッファに蓄積された複数の計測データの移動平均値に基づいてヌルシンボルの期間を判定し、伝送モード判定部がその判定されたヌルシンボルの期間に基づいて伝送モードを判定し、更にヌル位置検出部がその伝送モードの判定結果に基づいてヌルシンボルの開始位置で同期パルスを発生することにより、同期パルスに基づいて同期受信を行っている。
ところで、上記従来の放送受信機では、初期同期の際、振幅検出部がベースバンド信号のエンベロープを単にレベル判定することによって、他のシンボルより小振幅となるヌルシンボルの期間を検出しているにすぎないため、受信強度が変動した場合等では、振幅検出部だけではヌルシンボルの期間を精度良く検出することができず、且つ検出したヌルシンボルの期間に基づいて伝送モードを誤りなく判定することができない場合を生じる。
例えば、DAB放送システムでは、フレーム長とヌルシンボル長の異なる4つの伝送モード「1」〜「4」が規定されており、伝送モード「1」のフレーム長とヌルシンボル長は96msecと1.297msec、伝送モード「2」のフレーム長とヌルシンボル長は24msecと324μsec、伝送モード「3」のフレーム長とヌルシンボル長は24msecと168μsec、伝送モード「4」のフレーム長とヌルシンボル長は48msecと648μsecに定められていることから、従来の放送受信機では、特に、フレーム長が同じでヌルシンボル長の差が小さい伝送モード「2」と「3」を識別できるように、各シンボルを精度良く検出することができない場合を招来する。
そこで、上記従来のヌルシンボル検出装置では、多数のフレーム長に亘って各ヌルシンボルの期間を検出及び計測して、各計測データを同期加算バッファに蓄積した後、移動平均処理部が、蓄積されている多数の計測データの移動平均を演算するという統計的手法を講じることで、ヌルシンボルの期間をより高い確度で推定するという処置がなされている。
しかし、このようにして放送局側から伝送された放送との初期同期を取ることとすると、長時間に亘って多数のヌルシンボルを検出した後でなければ同期したことの確定を行うことができないため、初期同期処理に多大な時間を要するという問題がある。例えば、ユーザー等が放送チャンネルを切り替えた場合や、受信状況の良好な放送チャンネルを自動的に探索するためのシーク又はサーチ処理を行う場合に、初期同期を取る必要があるが、上記従来の放送受信機では初期同期処理に多大な時間を要することから、ユーザー等の操作性や利便性を損なう等の問題を招来する。
本発明はこのような従来の問題に鑑みて成されたものであり、同期受信の精度向上、同期処理の迅速化等を図ったディジタル放送受信機と同期検出方法を提供することを目的とする。
請求項1に記載の発明は、ヌルシンボル期間を有する信号を同期受信するディジタル放送受信機であって、前記ヌルシンボル期間を有する信号をエンベロープ検出してエンベロープ信号を生成するローパスフィルタと、前記ヌルシンボル期間を有する信号を所定の時間区間毎に平均演算して平均値信号を生成する平均値演算手段と、前記エンベロープ信号を所定の減衰率で減衰させた減衰エンベロープ信号と前記平均値信号とのレベルを比較し、前記平均値信号のレベルが減衰エンベロープ信号のレベルより小さい期間をホールド期間として前記ローパスフィルタにホールド動作させ、前記平均値信号のレベルが減衰エンベロープ信号のレベルより小さくなる時点から、前記ホールド期間における減衰エンベロープ信号のレベルより前記平均値信号のレベルが大きくなる時点までの期間を前記伝送信号に含まれるヌルシンボルの期間として判定する同期信号判定手段と、を有することを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のディジタル放送受信機において、前記ローパスフィルタと平均値演算手段と同期信号判定手段は、ディジタル信号処理によって前記エンベロープ信号と平均値信号の生成と前記判定を夫々行うことを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のディジタル放送受信機において、前記ローパスフィルタは、前記ヌルシンボル期間を有する信号に代えて、前記平均値演算手段で生成される前記平均値信号をエンベロープ検出して前記エンベロープ信号を生成することを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか1項に記載のディジタル放送受信機において、受信信号を局発信号に基づいて周波数変換することにより中間周波信号を生成する周波数変換手段と、前記中間周波信号を再生搬送波信号に基づいてベースバンド信号に周波数変換する直交復調手段とを有し、前記ヌルシンボル期間を有する信号は、前記中間周波信号であることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、受信信号を局発信号に基づいて周波数変換することにより中間周波信号を生成する周波数変換手段と、前記中間周波信号を再生搬送波信号に基づいてベースバンド信号に周波数変換する直交復調手段とを有し、前記ヌルシンボル期間を有する信号は、前記ベースバンド信号であることを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項1〜3の何れか1項に記載のディジタル放送受信機において、受信信号を局発信号に基づいてベースバンド信号に周波数変換する直交復調手段を有し、前記ヌルシンボル期間を有する信号は、前記ベースバンド信号であることを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、請求項4〜6の何れか1項に記載のディジタル放送受信機において、前記ベースバンド信号をディジタル信号処理によるデータ復調を行うことにより復調データを生成するデータ復調手段と、前記同期信号判定手段で判定されるヌルシンボルの期間に同期して、前記復調データに含まれる位相基準シンボルを抽出し、当該抽出した位相基準シンボルと予め記憶している位相基準シンボルとを相互相関演算して、当該演算結果から検出した周波数誤差に基づいて前記位相基準シンボルの周波数を調整する制御手段と、を有することを特徴とする。
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載のディジタル放送受信機において、前記制御手段は、初期同期処理に際して、前記データ復調手段で生成される復調データに含まれる位相基準シンボルを抽出し、当該抽出した位相基準シンボルと予め記憶している位相基準シンボルとの相互相関演算によって伝播路の応答を示すチャンネルインパルスレスポンスを演算し、当該演算結果から検出した時間誤差の100%に相当する移動量に基づいて、前記データ復調手段のデータ復調の際のサンプリング開始時点を調整することを特徴とする。
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載のディジタル放送受信機において、前記制御手段は、前記位相基準シンボルの周波数を調整した後、前記チャンネルインパルスレスポンスの演算結果から検出した時間誤差の100%に相当する移動量に基づいて、前記データ復調手段のデータ復調の際のサンプリング開始時点を調整することを特徴とする。
請求項10に記載の発明は、請求項7〜9の何れか1項に記載のディジタル放送受信機において、前記制御手段は、前記周波数変換手段が受信信号を中間周波信号に周波数変換する際の前記局発信号の周波数を、前記周波数誤差の100パーセントに相当する誤差周波数に基づいて調整することを特徴とする。
請求項11に記載の発明は、請求項7〜9の何れか1項に記載のディジタル放送受信機において、前記制御手段は、前記直交復調手段が中間周波信号をベースバンド信号に周波数変換する際の前記再生搬送波信号の周波数を、前記周波数誤差の100パーセントに相当する誤差周波数に基づいて調整することを特徴とする。
請求項12に記載の発明は、請求項7〜9の何れか1項に記載のディジタル放送受信機において、前記制御手段は、前記直交復調手段が受信信号をベースバンド信号に周波数変換する際の前記局発信号の周波数を、前記周波数誤差の100パーセントに相当する誤差周波数に基づいて調整することを特徴とする。
本発明の実施形態のディジタル放送受信機の構成を表したブロック図と、放送局から伝送されてくる伝送信号のフレーム構成を模式的に表した図である。
図1のディジタル放送受信機に設けられている同期信号検出部の動作を説明するための波形図である。
実施例1のディジタル放送受信機の構成を表したブロック図と、同期信号検出部の構成を表したブロック図である。
図3のディジタル放送受信機に設けられている直交復調器の構成例を表したブロック図である。
実施例1のディジタル放送受信機の動作を説明するためのフローチャートである。
実施例1のディジタル放送受信機における時間誤差の補正原理を説明するための図である。
実施例1のディジタル放送受信機に設けられる同期信号検出部の変形例の構成を表したブロック図である。
実施例2のディジタル放送受信機の構成を表したブロック図である。
実施例3のディジタル放送受信機の構成を表したブロック図である。
実施例4のディジタル放送受信機の構成と周波数変換器の構成例を表したブロック図である。
実施例5のディジタル放送受信機の構成を表したブロック図である。
本発明の好適な実施形態として、DABシステムのディジタル音声放送を受信するOFDM方式のディジタル放送受信機について、図1、図2を参照して説明する。図1(a)は、本実施形態のディジタル放送受信機の構成を表したブロック図、図1(b)は、放送局から伝送されてくる伝送信号のフレーム構成を模式的に表した図である。図2は、同期信号検出部の動作を説明するための波形図である。
まず、図1(b)を参照して、DABシステムにおいて放送されるベースバンドの伝送信号(ベースバンド信号)の構成を説明する。DABシステムでは、従来技術で説明したように、フレーム長とヌルシンボル長が異なる4種類の伝送モード「1」〜「4」が規定されている。
各伝送モードで設定されるフレーム長のDABトランスミッションフレーム(DAB Transmittion Frame)は、先頭部分に伝送電力の小さいヌルシンボル(Null symbol)とそれに続く位相基準シンボル(Phase reference symbol)とから成る同期チャンネル(Synchronization Channel)と、各種制御情報を有するファーストインフォメーションチャンネル(Fast Information Channel)と、ファーストインフォメーションチャンネルに続く複数の伝送シンボルから成るメインサービスチャンネル(Main Service Channel)とを有して構成されている。更に、各々の伝送シンボルが、ガードインターバルと有効シンボル期間とを有する構成となっている。
次に、図1(a)を参照して、本実施形態のディジタル放送受信機1の構成を説明する。
このディジタル放送受信機1は、中間周波数のIF信号を直交検波することによってベースバンド信号I,Qを生成して出力する直交復調器2aと、搬送波再生部2b、A/D変換器3と、データ復調器4の他、同期信号検出部5と制御部6を有して構成されている。
すなわち、直交復調器2aは、フロントエンド部(図示略)側から供給されるIF信号を、搬送波再生部2bで再生される搬送周波数fcと等しい周波数の再生搬送波信号に基づいて直交検波することにより、同相成分と直交成分を有するベースバンド信号I,Qに周波数変換し、そのベースバンド信号I,QをA/D変換器3がサンプリングしディジタルデータDi,Dqにアナログディジタル変換して出力する。
データ復調器4は、ディジタルデータDi,Dqを複素離散フーリエ変換処理(DFT処理)して復号処理を行うことにより、復調データDmodを生成し、誤り訂正及び復号処理等を行う復号器(図示略)側へ出力する。
同期信号検出部5は、供給されるディジタルデータDi,Dqから伝送電力の小さなヌルシンボルを検出し、検出結果としての同期検出信号Dsynを制御部6に供給する、ローパスフィルタ5aと平均値演算部5bと同期信号判定部5cとを有して構成されている。
ここで、上述のローパスフィルタ5aは、ディジタルデータDi,Dqを入力してディジタルローパスフィルタリングを施すことにより、ディジタルデータDi,Dqのレベル変化(値の変化)をエンベロープ検出し、その検出したデータ系列をエンベロープ信号Denvとして同期信号判定部5cに供給する。
また、ローパスフィルタ5aは、同期信号判定部5cから指令されるホールド開始からホールド解除までの期間(ホールド期間)Tにおいてエンベロープ信号Denvをホールドして出力するホールド機能を有している。つまり、同期信号判定部5cからホールド開始の指令を受けると、その指令に従って(同期して)エンベロープ信号Denvのレベルをホールドすると共に、そのホールドした一定レベルの信号をエンベロープ信号Denvとして継続して出力し、その後、ホールド解除の指令を受けるとホールド動作を終了してエンベロープ検出を再開することで、ディジタルデータDi,Dqのレベル変化に応じたエンベロープ信号Denvを出力する。
平均値演算部5bは、所定の時間区間毎にディジタルデータDi,Dqを複数サンプル入力すると共に、そのサンプル数のディジタルデータDi,Dqの平均値を演算し、その演算結果であるデータ系列を平均値信号Davとして同期信号判定部5cに供給する。本実施形態では、A/D変換器3の基準のサンプリング周波数fsが例えば2.048MHzに決められており、平均値演算部5bは、ディジタルデータDi,Dqを32サンプル入力する毎にその平均値を演算している。したがって、32サンプルの時間区間毎に平均値が変化する平均値信号Davが、平均値演算部5bから出力される。
同期信号判定部5cは、エンベロープ信号Denvを所定の減衰率(例えば、1/2)で減衰させて入力し、その減衰させたエンベロープ信号(以下「減衰エンベロープ信号」と称する)Dattと平均値信号Davのレベルを逐一比較する。そして、減衰エンベロープ信号Dattより大きなレベルであった平均値信号Davが、次式(1)で表されるように、減衰エンベロープ信号Dattより小さなレベルに変化した時点を検出すると上述のホールド開始(ホールド期間Tの開始)の指令を行って、ローパスフィルタ5aにホールド動作を開始させ、その後、ホールドされた減衰エンベロープ信号Dattより小さいレベルであった平均値信号Davが、次式(2)で表されるように、その減衰エンベロープ信号Dattより大きなレベルに変化した時点を検出すると上述のホールド解除(ホールド期間Tの終了)の指令を行って、ローパスフィルタ5aにエンベロープ検出によるエンベロープ信号Denvの出力を再開させる。
そして、同期信号判定部5cは、平均値信号Davのレベルが減衰エンベロープ信号Dattのレベルより小さくなる期間をヌルシンボルの期間τであると判定し、その判定した期間τを示す同期検出信号Dsynを制御部6へ出力する。例えば、判定した期間τの間だけ論理“1”から論理“0”に反転する2値信号等から成る同期検出信号Dsynを制御部6へ出力する。
このように、ローパスフィルタ5aと平均値演算部5bと同期信号判定部5cを有する同期信号検出部5によってヌルシンボルを検出することとすると、図2(a)に模式的に示すようなヌルシンボルを有するベースバンド信号I,QのディジタルデータDi,Dqが生じた場合、ローパスフィルタ5aでエンベロープ検出されるヌルシンボルのエンベロープ信号Denvは、図2(b)に示すように、サンプリング遅延を有するローパスフィルタ5aの伝達特性に起因して、時間的に先に入力されたディジタルデータDi,Dqのレベル変化の影響を受けた波形となり、急峻にレベル変化する実際のヌルシンボルよりも遅延し且つ鈍った(なまった)波形となる。
これに対し、平均値演算部5bで生成されるヌルシンボルの平均値信号Davは、図2(c)に示すように、複数サンプルの平均値のデータ系列であるため、時間的に先のディジタルデータDi,Dqのレベル変化の影響を受けることなく、鈍りのない凹形状の波形となる。
そして、同期信号判定部5cが、上述の鈍った波形のエンベロープ信号Denvを減衰させた減衰エンベロープ信号Datt(図2(d)参照)として入力し、減衰エンベロープ信号Dattと平均値信号Davとを上記式(1)の条件に従って比較してホールド期間Tを設定すると、図2(e)に示すように、ホールド期間Tでは、ローパスフィルタ5aのエンベロープ信号Denvと減衰エンベロープ信号Dattのレベルが一定に保たれる。
この結果、同期信号判定部5cがヌルシンボル期間を判定する際、減衰エンベロープ信号Dattより平均値信号Davの方が小さいレベルに変化した時点tsをヌルシンボル期間の開始時点であると判断し、次に、一定レベルに保たれている減衰エンベロープ信号Dattより平均値信号Davの方が大きいレベルに変化した時点teをヌルシンボル期間の終了時点であると判断することによって、上述の時点tsからteの期間をヌルシンボル期間τであるとする同期検出信号Dsynを生成して出力する。
つまり、同期信号判定部5cは、図2(b)に示した鈍ったエンベロープ信号Denvを単にレベル判定してヌルシンボル期間を検出するのではなく、減衰エンベロープ信号Dattより平均値信号Davの方が小さいレベルに変化した時点tsをヌルシンボル期間τの開始時点と判定するので、ヌルシンボル期間τの開始時点を高い確度で検出することができ、更に、ホールド期間T内で一定レベルに保たれた減衰エンベロープ信号(すなわち、鈍ったエンベロープ信号Denvの影響を受けていない減衰エンベロープ信号)Dattより平均値信号Davの方が大きいレベルに変化した時点teをヌルシンボル期間τの終了時点と判定するので、ヌルシンボル期間τの終了時点を高い確度で検出することができる。このため、ヌルシンボル期間を同期検出信号Dsynとして極めて正確に検出することが可能となっている。
次に、制御部6は、同期検出信号Dsynで示されるヌルシンボル期間τに対応する伝送モードを判定し、その判定結果に基づいてDABトランスミッションフレームの構成、すなわちヌルシンボルに続く位相基準シンボルとFICチャンネルのシンボルと伝送シンボル等の位置とシンボル長を識別する。更に、データ復調器4から出力される位相基準シンボルの復調データの開始時点を同期検出信号Dsynに同期して検出し、その位相基準シンボルの復調データからCAZAC(Constant Amplitude Zero Autocorrelation)シーケンスを抽出して入力する。そして、抽出したCAZACシーケンスと、予め制御部6内に記憶されている位相基準シンボルとしてのCAZACシーケンスとの相互相関演算を行い、相関係数のピーク位置のズレ量から周波数誤差を検出する。
すなわち、CAZACシーケンスは、自己相関の結果が0になるという自己直交シーケンスであることから、制御部6は、上述の抽出したCAZACシーケンスと予め記憶しているCAZACシーケンスとの相互相関演算を行い、それによって得られた相関係数のピーク位置のズレ量を周波数誤差として検出する。
更に、制御部6は、データ復調器4から出力される位相基準シンボルの復調データの開始時点を同期検出信号Dsynに同期して検出し、その位相基準シンボルの復調データ(検出した周波数誤差の分だけ周波数シフトしたデータ)と予め記憶している位相基準シンボルとの相互相関演算を行うことにより、伝播路の応答を示すチャンネルインパルスレスポンス(Channel Impulse Response:CIR)を求め、求めたCIRデータ中のインパルスの位置ズレ量から時間誤差を検出すると共に、インパルスのピークの有無を判定して、ピーク有りと判定すると初期同期に成功したと判断する。
更に、制御部6は、初期同期成功と判断すると、上述の時間誤差の100%に相当する移動量に基づいて、データ復調器4がディジタルデータDi,Dqをサンプリングして伝送シンボルをデータ復調する際のサンプリング開始時点を調整する。
つまり、時間誤差が0であった場合には、CIRデータ中のインパルスの位置は、各伝送シンボルの有効シンボル期間に相当する開始位置と終了位置に一致していることとなり、且つデータ復調器4が上記データ復調を行う際のサンプリング開始時からサンプリング終了時までの範囲(以下「FFT窓」と称する)が有効シンボル期間と一致していることになる。これに対し、時間誤差が0でない場合には、CIRデータ中のインパルスの位置は、各伝送シンボルの有効シンボル期間に相当する開始位置と終了位置からずれていることになり、且つFFT窓が有効シンボル期間と一致せずにずれていることになる。
そこで、制御部6が時間誤差の100%に相当する移動量だけFFT窓の位置を調整することによって、前後に位置する伝送シンボルをデータ復調の対象とすることなく、有効シンボル期間の有効シンボルを適切にデータ復調することができるように補正している。これにより、シンボル間干渉による復調性能の悪化を未然に防止することができる。
更に、制御部6は、FFT窓の位置を補正した後、上述のCAZACシーケンスを利用して既に求めておいた周波数誤差を示す周波数微調整信号Scntをフロントエンド部内の局部発振器(図示略)に供給し、局発信号の現在の同調周波数を、周波数誤差の100%に相当する周波数分だけ微調整させ、初期同期の処理を完了する。これにより、フロントエンド部内の周波数変換器は、受信アンテナ(図示略)から出力されるRF受信信号に対して正確な同調周波数で周波数変換を行うようになり、直交復調器2とデータ復調器4等における検波とデータ復調等の精度を向上させることができる。
そして、本ディジタル放送受信機1は、初期同期の処理の完了に引き続いて、受信動作を継続する。
以上に説明したように、本実施形態のディジタル放送受信機1によれば、同期信号検出部5によってヌルシンボルを正確に検出することができる。
更に、同期信号検出部5によってヌルシンボルを正確に検出することができることから、その検出結果に基づいて位相基準シンボルの位置を正確に検出することができ、周波数誤差と時間誤差を補正するための初期同期処理を短時間で完了することができる。
すなわち、複数回のヌルシンボル検出を行わなければヌルシンボル期間を正確に検出することができない従来技術では、時間誤差と周波数誤差を補正するための処理に移行するのに長時間を要することとなるため、初期同期処理を短時間で完了することができないのに対し、本ディジタル放送受信機1では、1回のヌルシンボル検出でヌルシンボル期間τを正確に検出することができるため、短時間で時間誤差と周波数誤差を補正して初期同期処理を完了することができる。
更に、一般に知られている従来のディジタル放送受信機では、初期同期に際して、位相基準シンボルから周波数誤差と時間誤差を検出すると、その周波数誤差と時間誤差の例えば50%分だけFFT窓の位置と同調周波を微調整した後、再び周波数誤差と時間誤差を検出して、その周波数誤差と時間誤差の例えば50%分だけFFT窓の位置と同調周波を微調整するという処理を多数回繰り返すことにより、FFT窓の位置と同調周波を徐々に適切な状態に近付けていくようになっているため、初期同期に要する時間が長くなるという問題があった。これに対し、本実施形態のディジタル放送受信機1では、初期同期に際して、1回のヌルシンボル検出でヌルシンボル期間を正確に検出することができるため、位相基準シンボルから検出した時間誤差と周波数誤差の100%で、FFT窓の位置と同調周波数を調整するだけで、いわゆる同調点に正確に近づけることができる。
このため、本実施形態のディジタル放送受信機1は、上述の一般的な従来のディジタル放送受信機のような、ヌルシンボル検出と周波数誤差の検出を多数回繰り返す必要がなく、短時間に初期同期処理を完了することが可能である。
なお、図1(a)に示した構成では、直交復調器2aから出力されるアナログのベースバンド信号I,QをA/D変換器3によってディジタルデータDi,Dqにアナログディジタル変換しているが、IF信号をアナログディジタル変換して直交復調器2aに供給すると共に、直交復調器2aと搬送波再生部2bを、ディジタル信号によって直交検波と再生搬送波を再生するディジタル回路で形成し、A/D変換器3を省略する構成としてもよい。
かかる構成によれば、ディジタル回路の直交復調器2aに、IF信号に相当するディジタルデータが供給されることとなるため、その直交復調器2aが直交検波を行うことで、ベースバンド信号に相当するディジタルデータDi,Dqを生成し、データ復調器4と同期信号検出部5に供給することができ、図1(a)に示した回路構成と同様の作用効果を発揮することができる。また、ディジタル放送受信機の更なるディジタル化を実現することができる。
また、このように直交復調器2aと搬送波再生部2bをディジタル回路で形成して、IF信号に相当するディジタルデータを直交復調器2aに供給するA/D変換器を直交復調器2aの前段に設ける構成とした場合、ディジタルデータDi,Dqに代えて、そのIF信号に相当するディジタルデータを同期信号検出部5に供給してヌルシンボル期間τを検出する構成としてもよい。すなわち、ヌルシンボルは変調等がなされていない信号成分であるため、同期信号検出部5がIF信号に相当するディジタルデータを処理対象としてヌルシンボル検出を行っても、図2(a)〜(e)を参照して説明したのと同様の処理を行うこととなり、IF信号に相当するディジタルデータに基づいてヌルシンボル期間τを高精度に検出することができる。
また、以上の説明では、DABシステムのディジタル音声放送を受信するディジタル放送受信機の実施形態について述べたが、本ディジタル放送受信機1は、図1(b)に示したのと同様のフレーム構成を有する他の放送システムにおける伝送信号(ベースバンド信号)に基づいて初期同期を行う場合にも適用可能である。
また、同期信号検出部5と制御部6をいわゆるハードウェア構成で形成してもよいし、上述した同期信号検出部5と制御部6の機能をコンピュータプログラムで実現し、そのコンピュータプログラムをディジタルシグナルプロセッサ(DSP)やマイクロプロセッサ(MPU)で実行させるいわゆるソフトウェア構成としてもよい。
次に、上述の実施形態に係るより具体的な実施例について、図3ないし図7を参照して説明する。図3は、本実施例のディジタル放送受信機の構成を表したブロック図であり、図1(a)と同一又は相当する部分を同一符号で示している。図4は、直交復調器の構成を表したブロック図、図5は、本実施例のディジタル放送受信機の動作を説明するためのフローチャート、図6は、時間誤差の補正原理を説明するための図、図7は、同期信号検出部の変形例の構成を表したブロック図である。
図3において、このディジタル放送受信機1は、受信アンテナ8で受信されたRF受信信号を増幅して出力するRF部9と、RF受信信号と局部発振器7からの局発信号とを混合することで中間周波数のIF信号を生成する周波数変換器10と、そのIF信号を所定周波数に周波数帯域制限し増幅して出力する中間周波増幅部11と、中間周波増幅部11からのIF信号を搬送周波数fcの再生搬送波信号に基づいて直交検波することによってベースバンド信号I,Qを生成する直交復調器2aと、ベースバンド信号I,Qから上述の搬送周波数fcの再生搬送波信号を再生して直交復調器2aに供給する搬送波再生部2bと、ベースバンド信号I,QをディジタルデータDi,Dqにアナログディジタル変換するA/D変換器3と、データ復調器4、同期信号検出部5、制御部6を有する他、データ復調器4の出力である復調データDmodに対して誤り訂正等を行って復号処理を行う復号器12と、復号器12から出力される復号データを音声データにデコードするMPEGデコーダ13と、音声データをアナログ音声信号にディジタルアナログ変換するD/A変換器14と、音声信号を電力増幅してスピーカ等(図示略)に供給する増幅器15を備えて構成されている。
ここで、直交検波を行う直交復調器2aは、ASK、PSK、APSK等の変調波に対する直交検波を行う典型的な場合の構成例として、図4に示すような構成となっており、乗算器2aaが、搬送波再生部2bで再生される搬送周波数fcの再生搬送波信号とIF信号とを乗算して所定周波数帯域のローパスフィル2adに通すことで同相成分のベースバンド信号Iを出力し、乗算器2abが、−90°移相器2acを介して供給される再生搬送波信号とIF信号とを乗算して所定周波数帯域のローパスフィル2aeに通すことで直交成分のベースバンド信号Qを出力するようになっている。
同期信号検出部5は、図3(b)のブロック図に示すように、図1(a)に示したローパスフィルタ5a及び平均値演算部5bと、同期信号判定部5cを形成する減衰器5caと比較器5cb,5ccを有して構成されている。
ローパスフィルタ5aは、IIR型ディジタルフィルタ等のディジタルフィルタで形成されており、ディジタルデータDi,Dqをディジタルフィルタリングすることによりエンベロープ検波し、エンベロープ信号Denvを出力する。また、比較器5ccの出力に従ってホールド期間Tの間にディジタルフィルタリングの動作を一時的に停止することで、ホールド期間Tの直前にエンベロープ検出したレベルを保持し、図2(d)(e)に例示したように、ホールド期間Tの間その保持した一定レベルをエンベロープ信号Denvとして出力する。
平均値演算部5bは、所定サンプル数のディジタルデータDi,Dqをバッファリングするデータバッファと、そのデータバッファに蓄積されたディジタルデータDi,Dqの平均値を演算する演算回路を有し、所定サンプル数の平均値を演算する毎に平均値信号Davを出力して処理を繰り返す。なお、本実施例では、A/D変換器3の基準サンプリング周波数fsが2.048MHzに決められており、平均値演算部5bは、ディジタルデータDi,Dqを32サンプル入力する毎にその平均値を演算している。
減衰器5caは、エンベロープ信号Denvを1/2の減衰率(すなわち、−6dB)で減衰させ、減衰エンベロープ信号Dattとして出力する。したがって、図2(a)に例示したベースバンド信号I,QのディジタルデータDi,Dqがローパスフィルタ5aでエンベロープ検出されて、図2(b)に例示したエンベロープ信号Denvが供給されると、減衰器5caは、図2(d)(e)に例示したように、ホールド期間Tの間一定レベルとなり全体的に減衰させた減衰エンベロープ信号Dattを出力する。
比較器5ccは、減衰エンベロープ信号Dattと平均値信号Davのレベルを比較するディジタルコンパレータで形成されている。そして、減衰エンベロープ信号Dattより大きなレベルであった平均値信号Davが減衰エンベロープ信号Dattより小さなレベルに変化した時点を検出すると、ローパスフィルタ5aに対してホールド動作開始の指令をし、その後、一定レベルにホールドされた減衰エンベロープ信号Dattより小さいレベルであった平均値信号Davがその減衰エンベロープ信号Dattより大きなレベルに変化した時点を検出すると、ローパスフィルタ5aに対してホールド動作解除の指令をすることにより、上述のホールド期間Tを設定する。
比較器5cbは、減衰エンベロープ信号Dattと平均値信号Davのレベルを比較するディジタルコンパレータで形成されており、平均値信号Davのレベルが減衰エンベロープ信号Dattのレベルより小さくなる期間をヌルシンボルの期間τであると判定し、判定した期間τの間だけ論理“1”から論理“0”に反転する2値信号等から成る同期検出信号Dsynを制御部6へ出力する。
制御部6は、ディジタルシグナルプロセッサ(DSP)やマイクロプロセッサ(MPU)、あるいはハードウェア構成のディジタル回路で形成されており、実施形態で説明した初期同期処理の機能を有する他、初期同期を完了した後の同期制御を行う。
次に、かかる構成を有するディジタル放送受信機1の動作について、図5及び図6を参照して説明する。
図5において、例えばユーザー等から所望の放送チャンネルへの切り替え指示がなされた場合や、受信状況の良好な放送チャンネルを自動探索するためのシークやサーチ処理の開始の指示がなされた場合のように、初期同期を必要とする指示がなされると、同期処理を開始する。
ステップS1において、同期信号検出部5がヌルシンボル期間τを判定するための同期検出処理を行う。
ヌルシンボル期間τが判定されると、ステップS2において、制御部6が、同期検出信号Dsynで示されたヌルシンボル期間τに基づいて伝送モードを判定し、その判定結果に基づいてデータ復調器4から出力される位相基準シンボルを抽出して入力し、その抽出した位相基準シンボル内のCAZACシーケンスと予め記憶しているCAZACシーケンスとの相互相関演算を行うことにより、周波数誤差を検出する。
次に、ステップS3において、制御部6が、ステップS2で行った周波数誤差検出が同期処理の開始から第1回目(初回)に当たるか否か判断し、初回であればステップS4へ移行する。
次に、制御部6が、ステップS4において、初回の周波数誤差に基づいて、データ復調器4から出力される位相基準シンボルの復調データを周波数シフトさせた後、ステップS5において、その周波数シフトされた位相基準シンボルの復調データと予め記憶している位相基準シンボルのデータとの相互相関演算を行うことにより、伝播路の応答を示すチャンネルインパルスレスポンス(CIR)を求め、求めたCIRデータ中のインパルスの位置ズレ量から時間誤差を検出することで、有効シンボル期間に対するFFT窓の位置ズレ(誤差)を検出する。
次に、ステップS6において、制御部6が、CIRデータ中のインパルスのピークの有無を判定して、ピーク有りと判定するとステップS8へ移行して、初期同期に成功したと判断する。一方、ピーク無しと判定すると、ステップS7へ移行して、初期同期に失敗したと判断し、今までの同期処理を終了した後、ステップS1に戻って同期処理を再開(初回の同期処理として再開)する。
ステップS8で初期同期に成功したと判断すると、制御部6はステップS9に移行して、上述のステップS5で検出した時間誤差の100%に相当する移動量でFFT窓の位置を調整することで、シンボル間干渉による復調性能の悪化を未然に防止できるように補正する。
すなわち、図6に示すように、ある伝送シンボル(n)の有効シンボルとFFT窓との開始位置が一致している場合には、CIRデータ中のインパルスの位置ズレ量(時間誤差)が0となり、伝送シンボル(n)のガードインターバルとFFT窓との開始位置が一致している場合には、CIRデータ中のインパルスの位置が有効シンボルに相当する期間の開始位置に一致していることになり、前方の伝送シンボル(n−1)や後方の伝送シンボル(n+1)にFFT窓が掛かっている場合には、CIRデータ中のインパルスの位置がガードインターバルに相当する期間から外れていることになる。
そこで、制御部6が時間誤差の100%に基づいてFFT窓の位置を調整することによって、前後に位置する伝送シンボルをデータ復調の対象とすることなく、各有効シンボルを適切にデータ復調することができるように調整する。
次に、ステップS10において、制御部6が、ステップS2で既に求めておいた周波数誤差を示す周波数微調整信号Scntをフロントエンド部側の局部発振器7に供給し、局発信号の現在の同調周波数を、周波数誤差の100%に相当する周波数分だけ微調整させた後、初期同期の処理を完了する。これにより、周波数変換器10は、RF受信信号に対して正確な同調周波数で周波数変換を行うようになり、直交復調器2とデータ復調器4等における検波とデータ復調等の精度が向上する。
次に、初期同期が完了した後、良好な受信状態を維持するための同期受信の動作について説明する。
初期同期が完了すると、2回目以降の同期処理がステップS1から繰り返され、ステップS1においてヌルシンボル期間τを判定するための同期検出処理が行われると共に、ステップS2において、CAZACシーケンスを利用した周波数誤差検出が行われる。
次に、ステップS3において、制御部6は、周波数誤差検出が2回目以降の同期処理によるものである(初期同期ではない)と判断してステップS11へ移行する。
ステップS11では、制御部6が、その2回目以降の周波数誤差(df)がフーリエ変換(DFT)の周波数分解能の1/2に相当する周波数より大きいか否か判断し、小さい場合にはステップS12,S13の処理を行ってからステップS14へ移行し、大きい場合には直接ステップS14へ移行する。
ステップS12では、制御部6が、データ復調器4の復調データDmodから位相基準シンボルを抽出して予め記憶している位相基準シンボルのデータとの相互相関演算を行うことでCIRを演算し、そのCIRデータ中のピークの位置ズレからFFT窓の位置ズレ(時間誤差)を検出する。
次に、ステップS13では、制御部6がデータ復調器4に対して、ステップS12で求めた時間誤差の50%に相当する移動量に基づいてFFT窓の位置を調整させることにより、FFT窓を有効シンボルに対応させるように補正する。
次に、ステップS14において、制御部6が、上述の周波数誤差(df)の50%に相当する誤差周波数を示す周波数微調整信号Scntをフロントエンド部側の局部発振器7に供給し、局発信号の現在の同調周波数をその誤差周波数分だけ微調整させることで、周波数誤差(df)の一部周波数分だけの補正を行わせる。
次に、ステップS15では、制御部6が、予め決められている同期判定時間が経過したか否か判断し、未経過の場合には、再びステップS1に戻って処理を繰り返す。すなわち、本実施例のディジタル放送受信機1では、初期同期の処理が完了した後の継続受信中では、予め決められた同期判定期間内にステップS1からの処理を複数回繰り返すことにより、ステップS13,S14においてFFT窓の位置と同調周波数を次第に適正状態に近付けるようにしている。
そして、同期判定時間が経過すると、制御部6はステップS15において、「経過」と判断してステップS16へ移行する。
ステップS16では、復号器12が復調データDmodを誤り訂正して復号を行う際に検出するビットエラーレート(Bit Error Rate:BER)等を制御部6が入力し、そのビットエラーレートの値等に基づいて同期誤差を判定する。そして、ビットエラーレートの値等が良好な受信状態の得られる範囲内である場合、すなわち同期誤差が小さい場合には、ステップS17に移行して同期受信に成功したと判断して、ステップS1からの処理を繰り返し、ビットエラーレートの値等が良好な受信状態の得られる範囲外である場合、すなわち同期誤差が大きい場合には、ステップS18に移行して同期受信に失敗したと判断し、今までの同期処理の内容をリセットした後、初期同期の処理(初回の同期処理)を新規に開始すべく、ステップS1からの処理を繰り返する。
そして、本ディジタル放送受信機1は、ステップS17において同期成功との判断がなされると、復号器12とMPEGデコーダ13等によって復号及びデコード処理がなされる通常の受信を継続する。
以上説明したように、本実施例のディジタル放送受信機1によると、同期信号検出部5によってヌルシンボルを正確に検出することができる。
更に、同期信号検出部5によってヌルシンボルを正確に検出することができることから、複数回のヌルシンボル検出を行うことなく、その検出結果に基づいて位相基準シンボルの位置を正確に検出することができ、周波数誤差と時間誤差を補正するための初期同期処理を短時間で完了することが可能である。
更に、初期同期に際して、1回のヌルシンボル検出でヌルシンボル期間を正確に検出することができることから、位相基準シンボルから検出した時間誤差と周波数誤差の100%で、FFT窓の位置と同調周波数を調整するだけで、いわゆる同調点に正確に近づけることができるため、短時間に初期同期処理を完了して、引き続き通常の同期受信へと継続することができる。
更に、初期同期が完了してから引き続き通常の受信を行うための同期処理を行っている際、ステップS18において同期受信に失敗した場合に、新規に初期同期処理を行うこととなるが、上述したように初期同期に要する時間そのものを短縮化できることから、通常の同期受信へと再び復帰するまでの時間を短縮化することができる。
なお、図3(b)に示した同期検出部5では、ローパスフィルタ5aと平均値演算部5bの両者に、ベースバンド信号I,QのディジタルデータDi,Dqを供給する構成となっているが、図7のブロック図に示すように、ディジタルデータDi,Dqを平均値演算部5bに供給して平均値演算を行わせ、生成される平均値信号Davをローパスフィルタ5aに供給してエンベロープ検出を行わせる構成としてもよい。
同期検出部5を図7の構成とすると、平均値演算部5bが高域ノイズ成分等を平均演算によって低減するので、ローパスフィルタ5aの次数を下げることができ、ローパスフィルタ5aを簡素な構成で実現することができる等の効果が得られる。
また、以上の本実施例の説明では、図5中のステップS9とS10においてFFT窓の位置の補正と同調周波数の補正を行っているが、設計仕様等に応じて、いずれか一方の処理を省略してもよい。
また、図3(b)に示した減衰器5caの減衰率は必ずしも1/2(すなわち、−6dB)でなくともよく、減衰エンベロープ信号Dattと平均値信号Davのレベル差を乖離させ得る減衰率であることを条件に適宜に決めることが可能である。
また、平均値演算部5bが32サンプル数ずつの平均値演算を行う場合について説明したが、A/D変換器3のサンプリング周波数又はローパスフィルタ5aの周波数特性との関係でサンプル数を適宜に設定してもよい。
また、図3(a)に示した構成では、アナログ回路から成る直交復調器2aによってIF信号をベースバンド信号I,Qに周波数変換し、そのベースバンド信号I,QをA/D変換器3がディジタルデータDi,Dqにアナログディジタル変換することにより、データ復調器4と同期信号検出部5がディジタル信号処理を行うようにしている。しかし、かかる構成に限らず、中間周波数増幅器11と直交復調器2aの間に、IF信号をアナログディジタル変換して直交復調器2aに供給するA/D変換器を設けると共に、直交復調器2aと搬送波再生部2bをディジタル回路で構成し、A/D変換器3を省略して、その直交復調器2aの出力を直接、データ復調器4と同期信号検出部5に供給する構成としてもよい。かかる構成によると、ディジタル回路の直交復調器2aがディジタル信号処理によって直交検波を行うこととなるため、その直交復調器2aからベースバンド信号に相当するディジタルデータDi,Dqが出力されて、データ復調器4と同期信号検出部5に供給される。このため、図3(a)に示した構成と同様の機能を発揮することができ、更に、よりディジタル化を図ったディジタル放送受信機を実現することができる。
次に、図3(a)に示したディジタル放送受信機の変形例に相当する他の実施例について、図8を参照して説明する。なお、図8は、本実施例のディジタル放送受信機の構成を表したブロック図であり、図3(a)と同一又は相当する部分を同一符号で示している。
図8に示す本実施例のディジタル放送受信機1と図3(a)に示したディジタル放送受信機との構成上の差異を説明すると、図3(a)に示したディジタル放送受信機では、前述したように、制御部6が復調データDmodから抽出したCAZACシーケンスと予め記憶しているCAZACシーケンスとの相互相関演算を行うことによって求めた周波数誤差を示す周波数微調整信号Scntに基づいて局部発振器7を制御して局発信号の同調周波数を微調整させ、その微調整された局発信号に基づいて、周波数変換器10がRF信号をIF信号に周波数変換する構成となっている。
これに対し、図8に示す本実施例のディジタル放送受信機1は、周波数微調整信号Scntに基づいて局部発振器7を制御する代わりに、その周波数微調整信号Scntを搬送波再生部2bに供給することにより、再生搬送波信号の周波数fcを微調整させ、その微調整された再生搬送波信号に基づいて直交復調器2aがIF信号をベースバンド信号I,Qに周波数変換する構成となっている。そして、他の構成については、図3(a)のディジタル放送受信機と同様となっている。
すなわち、本実施例のディジタル放送受信機1では、図5のフローチャートを参照して説明した初期同期処理の際のステップS10において、制御部6から搬送波再生部2bへ周波数微調整信号Scntを供給することにより、周波数誤差の100%に相当する周波数分だけ再生搬送波信号の周波数fcを微調させ、また、図5の2回目以降の同期処理の際のステップS40において、制御部6から搬送波再生部2bへ周波数微調整信号Scntを供給することにより、周波数誤差の50%に相当する周波数分だけ再生搬送波信号の周波数fcを微調整させる構成となっている。
かかる構成を有する本実施例のディジタル放送受信機1、すなわち、搬送波再生部2bを周波数微調整信号Scntの指示に従って微調整する構成とすると、例えばユーザー等からの選局操作等によって局部発振器7に設定された同調周波数を周波数微調整信号Scntの指示に従って微調整することでいわゆる同調点に近付ける効果が得られ、データ復調器4等におけるデータ復調等の精度を向上させることができる。
次に、図8に示したディジタル放送受信機の更に変形例に相当する実施例について、図9を参照して説明する。なお、図9(a)(b)は、本実施例の2態様のディジタル放送受信機の構成を表したブロック図であり、図8と同一又は相当する部分を同一符号で示している。
まず、図9(a)に示すディジタル放送受信機1は、中間周波数増幅部11と直交復調器2aの間にA/D変換器3aが設けられ、図8に示したA/D変換器3が省略された構成となっている。そして、直交復調器2aと搬送波再生部2bがディジタル信号処理によって直交変換と再生搬送波の再生を行うディジタル回路で形成されている。
かかる構成によると、中間周波増幅部11から出力されるIF信号をA/D変換器3aがアナログディジタル変換して、ディジタル回路の直交復調器2aに供給し、ディジタル回路の搬送波再生部2bが、制御部6から供給される周波数誤差を示す周波数微調整信号Scntの指示に従って、再生搬送波信号の周波数fcを微調させて、直交復調器2aに供給する。これにより、直交復調器2aは、IF信号に相当するディジタルデータを再生搬送波信号に基づくディジタル信号処理によって直交検波し、ベースバンド信号に相当するディジタルデータDi,Dqを出力して、データ復調器4と同期信号検出部5に供給する。
このように、ディジタル放送受信機1を図9(a)に示す構成としても、ベースバンド信号に相当するディジタルデータDi,Dqをデータ復調器4と同期信号検出部5に供給することができるため、図8に示したディジタル放送受信機と同様の作用効果を発揮することができる。更に、ディジタル放送受信機の更なるディジタル化を実現することが可能である。
次に、図9(b)に示すディジタル放送受信機1は、中間周波数増幅部11と直交復調器2aの間にA/D変換器3aが設けられ、図8に示したA/D変換器3が省略された構成となっている。そして、直交復調器2aと搬送波再生部2bがディジタル信号処理によって直交変換と再生搬送波の再生を行うディジタル回路で形成されている。更に、A/D変換器3aによってアナログディジタル変換されたIF信号に相当するディジタルデータDifが、ベースバンド信号に相当するディジタルデータDi,Dqの代わりに、同期信号検出部5に供給されている。
かかる構成によると、同期信号検出部5は、IF信号に相当するディジタルデータDifに対してヌルシンボル期間τを検出するための処理を行うこととなるが、ヌルシンボルは変調等がなされていない信号成分であるため、図2(a)〜(e)を参照して説明したのと同様の処理を行うこととなる。このため、IF信号に相当するディジタルデータDifをヌルシンボルの検出対象としても、そのヌルシンボル期間τを高精度に検出することができる。
次に、図8に示したディジタル放送受信機の更なる変形例に相当する実施例について、図10を参照して説明する。なお、図10(a)は、本実施例のディジタル放送受信機1の構成を表したブロック図であり、図8と同一又は相当する部分を同一符号で示している。図10(b)は、直交復調器の後段に従属接続された周波数変換器の構成を表したブロック図である。
図10(a)に示す本実施例のディジタル放送受信機1と図8に示したディジタル放送受信機との構成上の差異を説明すると、図8に示したディジタル放送受信機では、前述したように、直交復調器2aが直交検波を行うための再生搬送波信号を生成する搬送波再生部2bに対して、制御部6が周波数微調整信号Scntを供給して、再生搬送波信号の周波数fcを微調整させる構成となっている。
これに対して、図10(a)に示すディジタル放送受信機1では、周波数微調整信号Scntによって搬送波再生部2bを制御する代わりに、直交復調器2aの後段に周波数変換器2cを接続し、更に周波数変換器2cに供給するための再生搬送波信号を再生する搬送波再生部2dを設けて、その搬送波再生部2dを周波数微調整信号Scntによって制御する構成となっている。
ここで、直交復調器2aは、図4に例示した構成を有し、周波数変換部2cは、図10(b)に例示する構成を有している。
すなわち、周波数変換部2cは、図10(b)に示すように、所定の配線接続がなされた乗算器2ca,2cc,2cd,2ceと、減算器2cfと、加算器2cgと、−90°移相器2chとを有して形成され、周波数誤差を示す周波数微調整信号Scntに従って搬送波再生部2dが微調整した再生搬送波信号と、−90°移相器2chによって移相された再生搬送波信号とに基づいて、直交復調器2aからのベースバンド信号I,Qを周波数変換し、その周波数変換したベースバンド信号I,Qを、A/D変換器3側へ出力する。
かかる構成を有する本実施例のディジタル放送受信機1によれば、直交復調器2aと搬送数再生部2bによって、IF信号をベースバンド信号I,Qに直交変換するための基本的な処理を行い、そのベースバンド信号I,Qに対して周波数変換部2cと搬送数再生部2dが、周波数微調整信号Scntに従って微調整した再生搬送波信号に基づいて周波数変換を行うので、周波数誤差分の周波数シフトを施したベースバンド信号I,Qを生成し、A/D変換器3を介して、データ復調器4と同期信号検出部5側へ供給することができる。このため、いわゆる同調点に近付ける効果が得られ、データ復調器4等におけるデータ復調等の精度を向上させることができる。
なお、本実施例の更なる変形例として、A/D変換器3を省略すると共に、中間周波数増幅器11と直交復調器2aの間に、IF信号をアナログディジタル変換するA/D変換器を設け、更に、直交復調器2aと周波数変換器2c及び搬送波再生部2b,2dをディジタル回路で形成してもよい。
また、中間周波数増幅器11と直交復調器2aの間に上述のA/D変換器を設ける構成とした場合に、ベースバンド信号に相当するディジタルデータDi,Dqの代わりに、そのA/D変換器の出力、すなわちIF信号に相当するディジタルデータを同期信号検出部5に供給して、ヌルシンボル期間τを検出するようにしてもよい。
次に、更に他の実施例について、図11を参照して説明する。なお、図11は、本実施例のディジタル放送受信機の構成を表したブロック図であり、図8と同一又は相当する部分を同一符号で示している。
図11に示す本実施例のディジタル放送受信機1と図8に示したディジタル放送受信機との構成上の差異を説明すると、図8に示したディジタル放送受信機では、RF受信信号をIF信号に周波数変換する周波数変換器10と中間周波数増幅部11及び局部発振器7が設けられているのに対し、図11に示す本実施例のディジタル放送受信機1では、RF部9の出力に直交復調器2aが接続されると共に、直交復調器2aに同調周波数の局発信号を供給する局部発振器17が設けられ、その局部発振器17に制御部6から周波数微調整信号Scntを供給することで、同調周波数を微調整させた局発信号を直交復調器2aに供給する構成となっている。
かかる構成によると、例えばユーザー等からの選局操作等によって設定された局発信号の同調周波数を、局部発振器17が周波数微調整信号Scntに従って微調整し、その微調整後の同調周波数の局発信号に基づいて直交復調器2aが、RF受信信号を直接ベースバンド信号I,Qに周波数変換し、A/D変換器3を介して、データ復調器4と同期信号検出部5へ供給する。
したがって、本実施例のディジタル放送受信機によれば、RF受信信号をIF信号に周波数変換するための構成を不要にして、構成の簡素化等を実現することができると共に、ヌルシンボル期間τを高精度で検出して初期同期及び同期受信の精度向上を図ることができる。
本発明は、ディジタル放送を受信するディジタル放送受信機に関し、特に同期受信の精度向上や同期処理の迅速化等を実現するディジタル放送受信機に関する。
一般に、リアルタイムに放送されてくるディジタル放送を受信するためには、受信機側で同期受信を行う必要がある。
この同期受信を行うため、特開2004−208286号公報に開示されているOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplex)方式によるDAB(Digital Audio Broadcasting)システムのディジタル音声放送を受信する放送受信機では、放送局側からベースバンド信号に乗せて所定のフレーム長(フレーム周期)毎に伝送されてくる送信電力の小さいヌルシンボル(Null symbol)を検出するヌルシンボル検出装置が設けられている。
この従来のヌルシンボル検出装置は、同公報の図1に示されているように、振幅検出部と、複数個の同期加算バッファと、移動平均処理部と、伝送モード判定部と、ヌル位置検出部とを有して構成されている。受信すべき放送チャンネルが切り替え選択等されると、初期同期のための処理が開始され、振幅検出部がベースバンド信号のエンベロープを検出し、伝送モードに従って所定のフレーム長毎に繰り返し伝送されてくるヌルシンボルを他のシンボルの振幅との差異に基づいて検出する。
そして、検出された各ヌルシンボルの期間を、伝送モード毎に対応付けられている各同期加算バッファが計測して蓄積していき、移動平均処理部が各同期加算バッファに蓄積された複数の計測データの移動平均値に基づいてヌルシンボルの期間を判定し、伝送モード判定部がその判定されたヌルシンボルの期間に基づいて伝送モードを判定し、更にヌル位置検出部がその伝送モードの判定結果に基づいてヌルシンボルの開始位置で同期パルスを発生することにより、同期パルスに基づいて同期受信を行っている。
ところで、上記従来の放送受信機では、初期同期の際、振幅検出部がベースバンド信号のエンベロープを単にレベル判定することによって、他のシンボルより小振幅となるヌルシンボルの期間を検出しているにすぎないため、受信強度が変動した場合等では、振幅検出部だけではヌルシンボルの期間を精度良く検出することができず、且つ検出したヌルシンボルの期間に基づいて伝送モードを誤りなく判定することができない場合を生じる。
例えば、DAB放送システムでは、フレーム長とヌルシンボル長の異なる4つの伝送モード「1」〜「4」が規定されており、伝送モード「1」のフレーム長とヌルシンボル長は96msecと1.297msec、伝送モード「2」のフレーム長とヌルシンボル長は24msecと324μsec、伝送モード「3」のフレーム長とヌルシンボル長は24msecと168μsec、伝送モード「4」のフレーム長とヌルシンボル長は48msecと648μsecに定められていることから、従来の放送受信機では、特に、フレーム長が同じでヌルシンボル長の差が小さい伝送モード「2」と「3」を識別できるように、各シンボルを精度良く検出することができない場合を招来する。
そこで、上記従来のヌルシンボル検出装置では、多数のフレーム長に亘って各ヌルシンボルの期間を検出及び計測して、各計測データを同期加算バッファに蓄積した後、移動平均処理部が、蓄積されている多数の計測データの移動平均を演算するという統計的手法を講じることで、ヌルシンボルの期間をより高い確度で推定するという処置がなされている。
しかし、このようにして放送局側から伝送された放送との初期同期を取ることとすると、長時間に亘って多数のヌルシンボルを検出した後でなければ同期したことの確定を行うことができないため、初期同期処理に多大な時間を要するという問題がある。例えば、ユーザー等が放送チャンネルを切り替えた場合や、受信状況の良好な放送チャンネルを自動的に探索するためのシーク又はサーチ処理を行う場合に、初期同期を取る必要があるが、上記従来の放送受信機では初期同期処理に多大な時間を要することから、ユーザー等の操作性や利便性を損なう等の問題を招来する。
本発明はこのような従来の問題に鑑みて成されたものであり、同期受信の精度向上、同期処理の迅速化等を図ったディジタル放送受信機と同期検出方法を提供することを目的とする。
請求項1に記載の発明は、ヌルシンボル期間を有する信号を同期受信するディジタル放送受信機であって、前記ヌルシンボル期間を有する信号をエンベロープ検出してエンベロープ信号を生成するローパスフィルタと、前記ヌルシンボル期間を有する信号を所定の時間区間毎に平均演算して平均値信号を生成する平均値演算手段と、前記エンベロープ信号を所定の減衰率で減衰させた減衰エンベロープ信号と前記平均値信号とのレベルを比較し、前記平均値信号のレベルが減衰エンベロープ信号のレベルより小さい期間をホールド期間として前記ローパスフィルタにホールド動作させ、前記平均値信号のレベルが減衰エンベロープ信号のレベルより小さくなる時点から、前記ホールド期間における減衰エンベロープ信号のレベルより前記平均値信号のレベルが大きくなる時点までの期間を前記伝送信号に含まれるヌルシンボルの期間として判定する同期信号判定手段と、を有することを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のディジタル放送受信機において、前記ローパスフィルタと平均値演算手段と同期信号判定手段は、ディジタル信号処理によって前記エンベロープ信号と平均値信号の生成と前記判定を夫々行うことを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のディジタル放送受信機において、前記ローパスフィルタは、前記ヌルシンボル期間を有する信号に代えて、前記平均値演算手段で生成される前記平均値信号をエンベロープ検出して前記エンベロープ信号を生成することを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか1項に記載のディジタル放送受信機において、受信信号を局発信号に基づいて周波数変換することにより中間周波信号を生成する周波数変換手段と、前記中間周波信号を再生搬送波信号に基づいてベースバンド信号に周波数変換する直交復調手段とを有し、前記ヌルシンボル期間を有する信号は、前記中間周波信号であることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、受信信号を局発信号に基づいて周波数変換することにより中間周波信号を生成する周波数変換手段と、前記中間周波信号を再生搬送波信号に基づいてベースバンド信号に周波数変換する直交復調手段とを有し、前記ヌルシンボル期間を有する信号は、前記ベースバンド信号であることを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項1〜3の何れか1項に記載のディジタル放送受信機において、受信信号を局発信号に基づいてベースバンド信号に周波数変換する直交復調手段を有し、前記ヌルシンボル期間を有する信号は、前記ベースバンド信号であることを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、請求項4〜6の何れか1項に記載のディジタル放送受信機において、前記ベースバンド信号をディジタル信号処理によるデータ復調を行うことにより復調データを生成するデータ復調手段と、前記同期信号判定手段で判定されるヌルシンボルの期間に同期して、前記復調データに含まれる位相基準シンボルを抽出し、当該抽出した位相基準シンボルと予め記憶している位相基準シンボルとを相互相関演算して、当該演算結果から検出した周波数誤差に基づいて前記位相基準シンボルの周波数を調整する制御手段と、を有することを特徴とする。
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載のディジタル放送受信機において、前記制御手段は、初期同期処理に際して、前記データ復調手段で生成される復調データに含まれる位相基準シンボルを抽出し、当該抽出した位相基準シンボルと予め記憶している位相基準シンボルとの相互相関演算によって伝播路の応答を示すチャンネルインパルスレスポンスを演算し、当該演算結果から検出した時間誤差の100%に相当する移動量に基づいて、前記データ復調手段のデータ復調の際のサンプリング開始時点を調整することを特徴とする。
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載のディジタル放送受信機において、前記制御手段は、前記位相基準シンボルの周波数を調整した後、前記チャンネルインパルスレスポンスの演算結果から検出した時間誤差の100%に相当する移動量に基づいて、前記データ復調手段のデータ復調の際のサンプリング開始時点を調整することを特徴とする。
請求項10に記載の発明は、請求項7〜9の何れか1項に記載のディジタル放送受信機において、前記制御手段は、前記周波数変換手段が受信信号を中間周波信号に周波数変換する際の前記局発信号の周波数を、前記周波数誤差の100パーセントに相当する誤差周波数に基づいて調整することを特徴とする。
請求項11に記載の発明は、請求項7〜9の何れか1項に記載のディジタル放送受信機において、前記制御手段は、前記直交復調手段が中間周波信号をベースバンド信号に周波数変換する際の前記再生搬送波信号の周波数を、前記周波数誤差の100パーセントに相当する誤差周波数に基づいて調整することを特徴とする。
請求項12に記載の発明は、請求項7〜9の何れか1項に記載のディジタル放送受信機において、前記制御手段は、前記直交復調手段が受信信号をベースバンド信号に周波数変換する際の前記局発信号の周波数を、前記周波数誤差の100パーセントに相当する誤差周波数に基づいて調整することを特徴とする。
本発明の好適な実施形態として、DABシステムのディジタル音声放送を受信するOFDM方式のディジタル放送受信機について、図1、図2を参照して説明する。図1(a)は、本実施形態のディジタル放送受信機の構成を表したブロック図、図1(b)は、放送局から伝送されてくる伝送信号のフレーム構成を模式的に表した図である。図2は、同期信号検出部の動作を説明するための波形図である。
まず、図1(b)を参照して、DABシステムにおいて放送されるベースバンドの伝送信号(ベースバンド信号)の構成を説明する。DABシステムでは、従来技術で説明したように、フレーム長とヌルシンボル長が異なる4種類の伝送モード「1」〜「4」が規定されている。
各伝送モードで設定されるフレーム長のDABトランスミッションフレーム(DAB Transmittion Frame)は、先頭部分に伝送電力の小さいヌルシンボル(Null symbol)とそれに続く位相基準シンボル(Phase reference symbol)とから成る同期チャンネル(Synchronization Channel)と、各種制御情報を有するファーストインフォメーションチャンネル(Fast Information Channel)と、ファーストインフォメーションチャンネルに続く複数の伝送シンボルから成るメインサービスチャンネル(Main Service Channel)とを有して構成されている。更に、各々の伝送シンボルが、ガードインターバルと有効シンボル期間とを有する構成となっている。
次に、図1(a)を参照して、本実施形態のディジタル放送受信機1の構成を説明する。
このディジタル放送受信機1は、中間周波数のIF信号を直交検波することによってベースバンド信号I,Qを生成して出力する直交復調器2aと、搬送波再生部2b、A/D変換器3と、データ復調器4の他、同期信号検出部5と制御部6を有して構成されている。
すなわち、直交復調器2aは、フロントエンド部(図示略)側から供給されるIF信号を、搬送波再生部2bで再生される搬送周波数fcと等しい周波数の再生搬送波信号に基づいて直交検波することにより、同相成分と直交成分を有するベースバンド信号I,Qに周波数変換し、そのベースバンド信号I,QをA/D変換器3がサンプリングしディジタルデータDi,Dqにアナログディジタル変換して出力する。
データ復調器4は、ディジタルデータDi,Dqを複素離散フーリエ変換処理(DFT処理)して復号処理を行うことにより、復調データDmodを生成し、誤り訂正及び復号処理等を行う復号器(図示略)側へ出力する。
同期信号検出部5は、供給されるディジタルデータDi,Dqから伝送電力の小さなヌルシンボルを検出し、検出結果としての同期検出信号Dsynを制御部6に供給する、ローパスフィルタ5aと平均値演算部5bと同期信号判定部5cとを有して構成されている。
ここで、上述のローパスフィルタ5aは、ディジタルデータDi,Dqを入力してディジタルローパスフィルタリングを施すことにより、ディジタルデータDi,Dqのレベル変化(値の変化)をエンベロープ検出し、その検出したデータ系列をエンベロープ信号Denvとして同期信号判定部5cに供給する。
また、ローパスフィルタ5aは、同期信号判定部5cから指令されるホールド開始からホールド解除までの期間(ホールド期間)Tにおいてエンベロープ信号Denvをホールドして出力するホールド機能を有している。つまり、同期信号判定部5cからホールド開始の指令を受けると、その指令に従って(同期して)エンベロープ信号Denvのレベルをホールドすると共に、そのホールドした一定レベルの信号をエンベロープ信号Denvとして継続して出力し、その後、ホールド解除の指令を受けるとホールド動作を終了してエンベロープ検出を再開することで、ディジタルデータDi,Dqのレベル変化に応じたエンベロープ信号Denvを出力する。
平均値演算部5bは、所定の時間区間毎にディジタルデータDi,Dqを複数サンプル入力すると共に、そのサンプル数のディジタルデータDi,Dqの平均値を演算し、その演算結果であるデータ系列を平均値信号Davとして同期信号判定部5cに供給する。本実施形態では、A/D変換器3の基準のサンプリング周波数fsが例えば2.048MHzに決められており、平均値演算部5bは、ディジタルデータDi,Dqを32サンプル入力する毎にその平均値を演算している。したがって、32サンプルの時間区間毎に平均値が変化する平均値信号Davが、平均値演算部5bから出力される。
同期信号判定部5cは、エンベロープ信号Denvを所定の減衰率(例えば、1/2)で減衰させて入力し、その減衰させたエンベロープ信号(以下「減衰エンベロープ信号」と称する)Dattと平均値信号Davのレベルを逐一比較する。そして、減衰エンベロープ信号Dattより大きなレベルであった平均値信号Davが、次式(1)で表されるように、減衰エンベロープ信号Dattより小さなレベルに変化した時点を検出すると上述のホールド開始(ホールド期間Tの開始)の指令を行って、ローパスフィルタ5aにホールド動作を開始させ、その後、ホールドされた減衰エンベロープ信号Dattより小さいレベルであった平均値信号Davが、次式(2)で表されるように、その減衰エンベロープ信号Dattより大きなレベルに変化した時点を検出すると上述のホールド解除(ホールド期間Tの終了)の指令を行って、ローパスフィルタ5aにエンベロープ検出によるエンベロープ信号Denvの出力を再開させる。
そして、同期信号判定部5cは、平均値信号Davのレベルが減衰エンベロープ信号Dattのレベルより小さくなる期間をヌルシンボルの期間τであると判定し、その判定した期間τを示す同期検出信号Dsynを制御部6へ出力する。例えば、判定した期間τの間だけ論理“1”から論理“0”に反転する2値信号等から成る同期検出信号Dsynを制御部6へ出力する。
このように、ローパスフィルタ5aと平均値演算部5bと同期信号判定部5cを有する同期信号検出部5によってヌルシンボルを検出することとすると、図2(a)に模式的に示すようなヌルシンボルを有するベースバンド信号I,QのディジタルデータDi,Dqが生じた場合、ローパスフィルタ5aでエンベロープ検出されるヌルシンボルのエンベロープ信号Denvは、図2(b)に示すように、サンプリング遅延を有するローパスフィルタ5aの伝達特性に起因して、時間的に先に入力されたディジタルデータDi,Dqのレベル変化の影響を受けた波形となり、急峻にレベル変化する実際のヌルシンボルよりも遅延し且つ鈍った(なまった)波形となる。
これに対し、平均値演算部5bで生成されるヌルシンボルの平均値信号Davは、図2(c)に示すように、複数サンプルの平均値のデータ系列であるため、時間的に先のディジタルデータDi,Dqのレベル変化の影響を受けることなく、鈍りのない凹形状の波形となる。
そして、同期信号判定部5cが、上述の鈍った波形のエンベロープ信号Denvを減衰させた減衰エンベロープ信号Datt(図2(d)参照)として入力し、減衰エンベロープ信号Dattと平均値信号Davとを上記式(1)の条件に従って比較してホールド期間Tを設定すると、図2(e)に示すように、ホールド期間Tでは、ローパスフィルタ5aのエンベロープ信号Denvと減衰エンベロープ信号Dattのレベルが一定に保たれる。
この結果、同期信号判定部5cがヌルシンボル期間を判定する際、減衰エンベロープ信号Dattより平均値信号Davの方が小さいレベルに変化した時点tsをヌルシンボル期間の開始時点であると判断し、次に、一定レベルに保たれている減衰エンベロープ信号Dattより平均値信号Davの方が大きいレベルに変化した時点teをヌルシンボル期間の終了時点であると判断することによって、上述の時点tsからteの期間をヌルシンボル期間τであるとする同期検出信号Dsynを生成して出力する。
つまり、同期信号判定部5cは、図2(b)に示した鈍ったエンベロープ信号Denvを単にレベル判定してヌルシンボル期間を検出するのではなく、減衰エンベロープ信号Dattより平均値信号Davの方が小さいレベルに変化した時点tsをヌルシンボル期間τの開始時点と判定するので、ヌルシンボル期間τの開始時点を高い確度で検出することができ、更に、ホールド期間T内で一定レベルに保たれた減衰エンベロープ信号(すなわち、鈍ったエンベロープ信号Denvの影響を受けていない減衰エンベロープ信号)Dattより平均値信号Davの方が大きいレベルに変化した時点teをヌルシンボル期間τの終了時点と判定するので、ヌルシンボル期間τの終了時点を高い確度で検出することができる。このため、ヌルシンボル期間を同期検出信号Dsynとして極めて正確に検出することが可能となっている。
次に、制御部6は、同期検出信号Dsynで示されるヌルシンボル期間τに対応する伝送モードを判定し、その判定結果に基づいてDABトランスミッションフレームの構成、すなわちヌルシンボルに続く位相基準シンボルとFICチャンネルのシンボルと伝送シンボル等の位置とシンボル長を識別する。更に、データ復調器4から出力される位相基準シンボルの復調データの開始時点を同期検出信号Dsynに同期して検出し、その位相基準シンボルの復調データからCAZAC(Constant Amplitude Zero Autocorrelation)シーケンスを抽出して入力する。そして、抽出したCAZACシーケンスと、予め制御部6内に記憶されている位相基準シンボルとしてのCAZACシーケンスとの相互相関演算を行い、相関係数のピーク位置のズレ量から周波数誤差を検出する。
すなわち、CAZACシーケンスは、自己相関の結果が0になるという自己直交シーケンスであることから、制御部6は、上述の抽出したCAZACシーケンスと予め記憶しているCAZACシーケンスとの相互相関演算を行い、それによって得られた相関係数のピーク位置のズレ量を周波数誤差として検出する。
更に、制御部6は、データ復調器4から出力される位相基準シンボルの復調データの開始時点を同期検出信号Dsynに同期して検出し、その位相基準シンボルの復調データ(検出した周波数誤差の分だけ周波数シフトしたデータ)と予め記憶している位相基準シンボルとの相互相関演算を行うことにより、伝播路の応答を示すチャンネルインパルスレスポンス(Channel Impulse Response:CIR)を求め、求めたCIRデータ中のインパルスの位置ズレ量から時間誤差を検出すると共に、インパルスのピークの有無を判定して、ピーク有りと判定すると初期同期に成功したと判断する。
更に、制御部6は、初期同期成功と判断すると、上述の時間誤差の100%に相当する移動量に基づいて、データ復調器4がディジタルデータDi,Dqをサンプリングして伝送シンボルをデータ復調する際のサンプリング開始時点を調整する。
つまり、時間誤差が0であった場合には、CIRデータ中のインパルスの位置は、各伝送シンボルの有効シンボル期間に相当する開始位置と終了位置に一致していることとなり、且つデータ復調器4が上記データ復調を行う際のサンプリング開始時からサンプリング終了時までの範囲(以下「FFT窓」と称する)が有効シンボル期間と一致していることになる。これに対し、時間誤差が0でない場合には、CIRデータ中のインパルスの位置は、各伝送シンボルの有効シンボル期間に相当する開始位置と終了位置からずれていることになり、且つFFT窓が有効シンボル期間と一致せずにずれていることになる。
そこで、制御部6が時間誤差の100%に相当する移動量だけFFT窓の位置を調整することによって、前後に位置する伝送シンボルをデータ復調の対象とすることなく、有効シンボル期間の有効シンボルを適切にデータ復調することができるように補正している。これにより、シンボル間干渉による復調性能の悪化を未然に防止することができる。
更に、制御部6は、FFT窓の位置を補正した後、上述のCAZACシーケンスを利用して既に求めておいた周波数誤差を示す周波数微調整信号Scntをフロントエンド部内の局部発振器(図示略)に供給し、局発信号の現在の同調周波数を、周波数誤差の100%に相当する周波数分だけ微調整させ、初期同期の処理を完了する。これにより、フロントエンド部内の周波数変換器は、受信アンテナ(図示略)から出力されるRF受信信号に対して正確な同調周波数で周波数変換を行うようになり、直交復調器2とデータ復調器4等における検波とデータ復調等の精度を向上させることができる。
そして、本ディジタル放送受信機1は、初期同期の処理の完了に引き続いて、受信動作を継続する。
以上に説明したように、本実施形態のディジタル放送受信機1によれば、同期信号検出部5によってヌルシンボルを正確に検出することができる。
更に、同期信号検出部5によってヌルシンボルを正確に検出することができることから、その検出結果に基づいて位相基準シンボルの位置を正確に検出することができ、周波数誤差と時間誤差を補正するための初期同期処理を短時間で完了することができる。
すなわち、複数回のヌルシンボル検出を行わなければヌルシンボル期間を正確に検出することができない従来技術では、時間誤差と周波数誤差を補正するための処理に移行するのに長時間を要することとなるため、初期同期処理を短時間で完了することができないのに対し、本ディジタル放送受信機1では、1回のヌルシンボル検出でヌルシンボル期間τを正確に検出することができるため、短時間で時間誤差と周波数誤差を補正して初期同期処理を完了することができる。
更に、一般に知られている従来のディジタル放送受信機では、初期同期に際して、位相基準シンボルから周波数誤差と時間誤差を検出すると、その周波数誤差と時間誤差の例えば50%分だけFFT窓の位置と同調周波を微調整した後、再び周波数誤差と時間誤差を検出して、その周波数誤差と時間誤差の例えば50%分だけFFT窓の位置と同調周波を微調整するという処理を多数回繰り返すことにより、FFT窓の位置と同調周波を徐々に適切な状態に近付けていくようになっているため、初期同期に要する時間が長くなるという問題があった。これに対し、本実施形態のディジタル放送受信機1では、初期同期に際して、1回のヌルシンボル検出でヌルシンボル期間を正確に検出することができるため、位相基準シンボルから検出した時間誤差と周波数誤差の100%で、FFT窓の位置と同調周波数を調整するだけで、いわゆる同調点に正確に近づけることができる。
このため、本実施形態のディジタル放送受信機1は、上述の一般的な従来のディジタル放送受信機のような、ヌルシンボル検出と周波数誤差の検出を多数回繰り返す必要がなく、短時間に初期同期処理を完了することが可能である。
なお、図1(a)に示した構成では、直交復調器2aから出力されるアナログのベースバンド信号I,QをA/D変換器3によってディジタルデータDi,Dqにアナログディジタル変換しているが、IF信号をアナログディジタル変換して直交復調器2aに供給すると共に、直交復調器2aと搬送波再生部2bを、ディジタル信号によって直交検波と再生搬送波を再生するディジタル回路で形成し、A/D変換器3を省略する構成としてもよい。
かかる構成によれば、ディジタル回路の直交復調器2aに、IF信号に相当するディジタルデータが供給されることとなるため、その直交復調器2aが直交検波を行うことで、ベースバンド信号に相当するディジタルデータDi,Dqを生成し、データ復調器4と同期信号検出部5に供給することができ、図1(a)に示した回路構成と同様の作用効果を発揮することができる。また、ディジタル放送受信機の更なるディジタル化を実現することができる。
また、このように直交復調器2aと搬送波再生部2bをディジタル回路で形成して、IF信号に相当するディジタルデータを直交復調器2aに供給するA/D変換器を直交復調器2aの前段に設ける構成とした場合、ディジタルデータDi,Dqに代えて、そのIF信号に相当するディジタルデータを同期信号検出部5に供給してヌルシンボル期間τを検出する構成としてもよい。すなわち、ヌルシンボルは変調等がなされていない信号成分であるため、同期信号検出部5がIF信号に相当するディジタルデータを処理対象としてヌルシンボル検出を行っても、図2(a)〜(e)を参照して説明したのと同様の処理を行うこととなり、IF信号に相当するディジタルデータに基づいてヌルシンボル期間τを高精度に検出することができる。
また、以上の説明では、DABシステムのディジタル音声放送を受信するディジタル放送受信機の実施形態について述べたが、本ディジタル放送受信機1は、図1(b)に示したのと同様のフレーム構成を有する他の放送システムにおける伝送信号(ベースバンド信号)に基づいて初期同期を行う場合にも適用可能である。
また、同期信号検出部5と制御部6をいわゆるハードウェア構成で形成してもよいし、上述した同期信号検出部5と制御部6の機能をコンピュータプログラムで実現し、そのコンピュータプログラムをディジタルシグナルプロセッサ(DSP)やマイクロプロセッサ(MPU)で実行させるいわゆるソフトウェア構成としてもよい。
次に、上述の実施形態に係るより具体的な実施例について、図3ないし図7を参照して説明する。図3は、本実施例のディジタル放送受信機の構成を表したブロック図であり、図1(a)と同一又は相当する部分を同一符号で示している。図4は、直交復調器の構成を表したブロック図、図5は、本実施例のディジタル放送受信機の動作を説明するためのフローチャート、図6は、時間誤差の補正原理を説明するための図、図7は、同期信号検出部の変形例の構成を表したブロック図である。
図3において、このディジタル放送受信機1は、受信アンテナ8で受信されたRF受信信号を増幅して出力するRF部9と、RF受信信号と局部発振器7からの局発信号とを混合することで中間周波数のIF信号を生成する周波数変換器10と、そのIF信号を所定周波数に周波数帯域制限し増幅して出力する中間周波増幅部11と、中間周波増幅部11からのIF信号を搬送周波数fcの再生搬送波信号に基づいて直交検波することによってベースバンド信号I,Qを生成する直交復調器2aと、ベースバンド信号I,Qから上述の搬送周波数fcの再生搬送波信号を再生して直交復調器2aに供給する搬送波再生部2bと、ベースバンド信号I,QをディジタルデータDi,Dqにアナログディジタル変換するA/D変換器3と、データ復調器4、同期信号検出部5、制御部6を有する他、データ復調器4の出力である復調データDmodに対して誤り訂正等を行って復号処理を行う復号器12と、復号器12から出力される復号データを音声データにデコードするMPEGデコーダ13と、音声データをアナログ音声信号にディジタルアナログ変換するD/A変換器14と、音声信号を電力増幅してスピーカ等(図示略)に供給する増幅器15を備えて構成されている。
ここで、直交検波を行う直交復調器2aは、ASK、PSK、APSK等の変調波に対する直交検波を行う典型的な場合の構成例として、図4に示すような構成となっており、乗算器2aaが、搬送波再生部2bで再生される搬送周波数fcの再生搬送波信号とIF信号とを乗算して所定周波数帯域のローパスフィル2adに通すことで同相成分のベースバンド信号Iを出力し、乗算器2abが、−90°移相器2acを介して供給される再生搬送波信号とIF信号とを乗算して所定周波数帯域のローパスフィル2aeに通すことで直交成分のベースバンド信号Qを出力するようになっている。
同期信号検出部5は、図3(b)のブロック図に示すように、図1(a)に示したローパスフィルタ5a及び平均値演算部5bと、同期信号判定部5cを形成する減衰器5caと比較器5cb,5ccを有して構成されている。
ローパスフィルタ5aは、IIR型ディジタルフィルタ等のディジタルフィルタで形成されており、ディジタルデータDi,Dqをディジタルフィルタリングすることによりエンベロープ検波し、エンベロープ信号Denvを出力する。また、比較器5ccの出力に従ってホールド期間Tの間にディジタルフィルタリングの動作を一時的に停止することで、ホールド期間Tの直前にエンベロープ検出したレベルを保持し、図2(d)(e)に例示したように、ホールド期間Tの間その保持した一定レベルをエンベロープ信号Denvとして出力する。
平均値演算部5bは、所定サンプル数のディジタルデータDi,Dqをバッファリングするデータバッファと、そのデータバッファに蓄積されたディジタルデータDi,Dqの平均値を演算する演算回路を有し、所定サンプル数の平均値を演算する毎に平均値信号Davを出力して処理を繰り返す。なお、本実施例では、A/D変換器3の基準サンプリング周波数fsが2.048MHzに決められており、平均値演算部5bは、ディジタルデータDi,Dqを32サンプル入力する毎にその平均値を演算している。
減衰器5caは、エンベロープ信号Denvを1/2の減衰率(すなわち、−6dB)で減衰させ、減衰エンベロープ信号Dattとして出力する。したがって、図2(a)に例示したベースバンド信号I,QのディジタルデータDi,Dqがローパスフィルタ5aでエンベロープ検出されて、図2(b)に例示したエンベロープ信号Denvが供給されると、減衰器5caは、図2(d)(e)に例示したように、ホールド期間Tの間一定レベルとなり全体的に減衰させた減衰エンベロープ信号Dattを出力する。
比較器5ccは、減衰エンベロープ信号Dattと平均値信号Davのレベルを比較するディジタルコンパレータで形成されている。そして、減衰エンベロープ信号Dattより大きなレベルであった平均値信号Davが減衰エンベロープ信号Dattより小さなレベルに変化した時点を検出すると、ローパスフィルタ5aに対してホールド動作開始の指令をし、その後、一定レベルにホールドされた減衰エンベロープ信号Dattより小さいレベルであった平均値信号Davがその減衰エンベロープ信号Dattより大きなレベルに変化した時点を検出すると、ローパスフィルタ5aに対してホールド動作解除の指令をすることにより、上述のホールド期間Tを設定する。
比較器5cbは、減衰エンベロープ信号Dattと平均値信号Davのレベルを比較するディジタルコンパレータで形成されており、平均値信号Davのレベルが減衰エンベロープ信号Dattのレベルより小さくなる期間をヌルシンボルの期間τであると判定し、判定した期間τの間だけ論理“1”から論理“0”に反転する2値信号等から成る同期検出信号Dsynを制御部6へ出力する。
制御部6は、ディジタルシグナルプロセッサ(DSP)やマイクロプロセッサ(MPU)、あるいはハードウェア構成のディジタル回路で形成されており、実施形態で説明した初期同期処理の機能を有する他、初期同期を完了した後の同期制御を行う。
次に、かかる構成を有するディジタル放送受信機1の動作について、図5及び図6を参照して説明する。
図5において、例えばユーザー等から所望の放送チャンネルへの切り替え指示がなされた場合や、受信状況の良好な放送チャンネルを自動探索するためのシークやサーチ処理の開始の指示がなされた場合のように、初期同期を必要とする指示がなされると、同期処理を開始する。
ステップS1において、同期信号検出部5がヌルシンボル期間τを判定するための同期検出処理を行う。
ヌルシンボル期間τが判定されると、ステップS2において、制御部6が、同期検出信号Dsynで示されたヌルシンボル期間τに基づいて伝送モードを判定し、その判定結果に基づいてデータ復調器4から出力される位相基準シンボルを抽出して入力し、その抽出した位相基準シンボル内のCAZACシーケンスと予め記憶しているCAZACシーケンスとの相互相関演算を行うことにより、周波数誤差を検出する。
次に、ステップS3において、制御部6が、ステップS2で行った周波数誤差検出が同期処理の開始から第1回目(初回)に当たるか否か判断し、初回であればステップS4へ移行する。
次に、制御部6が、ステップS4において、初回の周波数誤差に基づいて、データ復調器4から出力される位相基準シンボルの復調データを周波数シフトさせた後、ステップS5において、その周波数シフトされた位相基準シンボルの復調データと予め記憶している位相基準シンボルのデータとの相互相関演算を行うことにより、伝播路の応答を示すチャンネルインパルスレスポンス(CIR)を求め、求めたCIRデータ中のインパルスの位置ズレ量から時間誤差を検出することで、有効シンボル期間に対するFFT窓の位置ズレ(誤差)を検出する。
次に、ステップS6において、制御部6が、CIRデータ中のインパルスのピークの有無を判定して、ピーク有りと判定するとステップS8へ移行して、初期同期に成功したと判断する。一方、ピーク無しと判定すると、ステップS7へ移行して、初期同期に失敗したと判断し、今までの同期処理を終了した後、ステップS1に戻って同期処理を再開(初回の同期処理として再開)する。
ステップS8で初期同期に成功したと判断すると、制御部6はステップS9に移行して、上述のステップS5で検出した時間誤差の100%に相当する移動量でFFT窓の位置を調整することで、シンボル間干渉による復調性能の悪化を未然に防止できるように補正する。
すなわち、図6に示すように、ある伝送シンボル(n)の有効シンボルとFFT窓との開始位置が一致している場合には、CIRデータ中のインパルスの位置ズレ量(時間誤差)が0となり、伝送シンボル(n)のガードインターバルとFFT窓との開始位置が一致している場合には、CIRデータ中のインパルスの位置が有効シンボルに相当する期間の開始位置に一致していることになり、前方の伝送シンボル(n−1)や後方の伝送シンボル(n+1)にFFT窓が掛かっている場合には、CIRデータ中のインパルスの位置がガードインターバルに相当する期間から外れていることになる。
そこで、制御部6が時間誤差の100%に基づいてFFT窓の位置を調整することによって、前後に位置する伝送シンボルをデータ復調の対象とすることなく、各有効シンボルを適切にデータ復調することができるように調整する。
次に、ステップS10において、制御部6が、ステップS2で既に求めておいた周波数誤差を示す周波数微調整信号Scntをフロントエンド部側の局部発振器7に供給し、局発信号の現在の同調周波数を、周波数誤差の100%に相当する周波数分だけ微調整させた後、初期同期の処理を完了する。これにより、周波数変換器10は、RF受信信号に対して正確な同調周波数で周波数変換を行うようになり、直交復調器2とデータ復調器4等における検波とデータ復調等の精度が向上する。
次に、初期同期が完了した後、良好な受信状態を維持するための同期受信の動作について説明する。
初期同期が完了すると、2回目以降の同期処理がステップS1から繰り返され、ステップS1においてヌルシンボル期間τを判定するための同期検出処理が行われると共に、ステップS2において、CAZACシーケンスを利用した周波数誤差検出が行われる。
次に、ステップS3において、制御部6は、周波数誤差検出が2回目以降の同期処理によるものである(初期同期ではない)と判断してステップS11へ移行する。
ステップS11では、制御部6が、その2回目以降の周波数誤差(df)がフーリエ変換(DFT)の周波数分解能の1/2に相当する周波数より大きいか否か判断し、小さい場合にはステップS12,S13の処理を行ってからステップS14へ移行し、大きい場合には直接ステップS14へ移行する。
ステップS12では、制御部6が、データ復調器4の復調データDmodから位相基準シンボルを抽出して予め記憶している位相基準シンボルのデータとの相互相関演算を行うことでCIRを演算し、そのCIRデータ中のピークの位置ズレからFFT窓の位置ズレ(時間誤差)を検出する。
次に、ステップS13では、制御部6がデータ復調器4に対して、ステップS12で求めた時間誤差の50%に相当する移動量に基づいてFFT窓の位置を調整させることにより、FFT窓を有効シンボルに対応させるように補正する。
次に、ステップS14において、制御部6が、上述の周波数誤差(df)の50%に相当する誤差周波数を示す周波数微調整信号Scntをフロントエンド部側の局部発振器7に供給し、局発信号の現在の同調周波数をその誤差周波数分だけ微調整させることで、周波数誤差(df)の一部周波数分だけの補正を行わせる。
次に、ステップS15では、制御部6が、予め決められている同期判定時間が経過したか否か判断し、未経過の場合には、再びステップS1に戻って処理を繰り返す。すなわち、本実施例のディジタル放送受信機1では、初期同期の処理が完了した後の継続受信中では、予め決められた同期判定期間内にステップS1からの処理を複数回繰り返すことにより、ステップS13,S14においてFFT窓の位置と同調周波数を次第に適正状態に近付けるようにしている。
そして、同期判定時間が経過すると、制御部6はステップS15において、「経過」と判断してステップS16へ移行する。
ステップS16では、復号器12が復調データDmodを誤り訂正して復号を行う際に検出するビットエラーレート(Bit Error Rate:BER)等を制御部6が入力し、そのビットエラーレートの値等に基づいて同期誤差を判定する。そして、ビットエラーレートの値等が良好な受信状態の得られる範囲内である場合、すなわち同期誤差が小さい場合には、ステップS17に移行して同期受信に成功したと判断して、ステップS1からの処理を繰り返し、ビットエラーレートの値等が良好な受信状態の得られる範囲外である場合、すなわち同期誤差が大きい場合には、ステップS18に移行して同期受信に失敗したと判断し、今までの同期処理の内容をリセットした後、初期同期の処理(初回の同期処理)を新規に開始すべく、ステップS1からの処理を繰り返する。
そして、本ディジタル放送受信機1は、ステップS17において同期成功との判断がなされると、復号器12とMPEGデコーダ13等によって復号及びデコード処理がなされる通常の受信を継続する。
以上説明したように、本実施例のディジタル放送受信機1によると、同期信号検出部5によってヌルシンボルを正確に検出することができる。
更に、同期信号検出部5によってヌルシンボルを正確に検出することができることから、複数回のヌルシンボル検出を行うことなく、その検出結果に基づいて位相基準シンボルの位置を正確に検出することができ、周波数誤差と時間誤差を補正するための初期同期処理を短時間で完了することが可能である。
更に、初期同期に際して、1回のヌルシンボル検出でヌルシンボル期間を正確に検出することができることから、位相基準シンボルから検出した時間誤差と周波数誤差の100%で、FFT窓の位置と同調周波数を調整するだけで、いわゆる同調点に正確に近づけることができるため、短時間に初期同期処理を完了して、引き続き通常の同期受信へと継続することができる。
更に、初期同期が完了してから引き続き通常の受信を行うための同期処理を行っている際、ステップS18において同期受信に失敗した場合に、新規に初期同期処理を行うこととなるが、上述したように初期同期に要する時間そのものを短縮化できることから、通常の同期受信へと再び復帰するまでの時間を短縮化することができる。
なお、図3(b)に示した同期検出部5では、ローパスフィルタ5aと平均値演算部5bの両者に、ベースバンド信号I,QのディジタルデータDi,Dqを供給する構成となっているが、図7のブロック図に示すように、ディジタルデータDi,Dqを平均値演算部5bに供給して平均値演算を行わせ、生成される平均値信号Davをローパスフィルタ5aに供給してエンベロープ検出を行わせる構成としてもよい。
同期検出部5を図7の構成とすると、平均値演算部5bが高域ノイズ成分等を平均演算によって低減するので、ローパスフィルタ5aの次数を下げることができ、ローパスフィルタ5aを簡素な構成で実現することができる等の効果が得られる。
また、以上の本実施例の説明では、図5中のステップS9とS10においてFFT窓の位置の補正と同調周波数の補正を行っているが、設計仕様等に応じて、いずれか一方の処理を省略してもよい。
また、図3(b)に示した減衰器5caの減衰率は必ずしも1/2(すなわち、−6dB)でなくともよく、減衰エンベロープ信号Dattと平均値信号Davのレベル差を乖離させ得る減衰率であることを条件に適宜に決めることが可能である。
また、平均値演算部5bが32サンプル数ずつの平均値演算を行う場合について説明したが、A/D変換器3のサンプリング周波数又はローパスフィルタ5aの周波数特性との関係でサンプル数を適宜に設定してもよい。
また、図3(a)に示した構成では、アナログ回路から成る直交復調器2aによってIF信号をベースバンド信号I,Qに周波数変換し、そのベースバンド信号I,QをA/D変換器3がディジタルデータDi,Dqにアナログディジタル変換することにより、データ復調器4と同期信号検出部5がディジタル信号処理を行うようにしている。しかし、かかる構成に限らず、中間周波数増幅器11と直交復調器2aの間に、IF信号をアナログディジタル変換して直交復調器2aに供給するA/D変換器を設けると共に、直交復調器2aと搬送波再生部2bをディジタル回路で構成し、A/D変換器3を省略して、その直交復調器2aの出力を直接、データ復調器4と同期信号検出部5に供給する構成としてもよい。かかる構成によると、ディジタル回路の直交復調器2aがディジタル信号処理によって直交検波を行うこととなるため、その直交復調器2aからベースバンド信号に相当するディジタルデータDi,Dqが出力されて、データ復調器4と同期信号検出部5に供給される。このため、図3(a)に示した構成と同様の機能を発揮することができ、更に、よりディジタル化を図ったディジタル放送受信機を実現することができる。
次に、図3(a)に示したディジタル放送受信機の変形例に相当する他の実施例について、図8を参照して説明する。なお、図8は、本実施例のディジタル放送受信機の構成を表したブロック図であり、図3(a)と同一又は相当する部分を同一符号で示している。
図8に示す本実施例のディジタル放送受信機1と図3(a)に示したディジタル放送受信機との構成上の差異を説明すると、図3(a)に示したディジタル放送受信機では、前述したように、制御部6が復調データDmodから抽出したCAZACシーケンスと予め記憶しているCAZACシーケンスとの相互相関演算を行うことによって求めた周波数誤差を示す周波数微調整信号Scntに基づいて局部発振器7を制御して局発信号の同調周波数を微調整させ、その微調整された局発信号に基づいて、周波数変換器10がRF信号をIF信号に周波数変換する構成となっている。
これに対し、図8に示す本実施例のディジタル放送受信機1は、周波数微調整信号Scntに基づいて局部発振器7を制御する代わりに、その周波数微調整信号Scntを搬送波再生部2bに供給することにより、再生搬送波信号の周波数fcを微調整させ、その微調整された再生搬送波信号に基づいて直交復調器2aがIF信号をベースバンド信号I,Qに周波数変換する構成となっている。そして、他の構成については、図3(a)のディジタル放送受信機と同様となっている。
すなわち、本実施例のディジタル放送受信機1では、図5のフローチャートを参照して説明した初期同期処理の際のステップS10において、制御部6から搬送波再生部2bへ周波数微調整信号Scntを供給することにより、周波数誤差の100%に相当する周波数分だけ再生搬送波信号の周波数fcを微調させ、また、図5の2回目以降の同期処理の際のステップS40において、制御部6から搬送波再生部2bへ周波数微調整信号Scntを供給することにより、周波数誤差の50%に相当する周波数分だけ再生搬送波信号の周波数fcを微調整させる構成となっている。
かかる構成を有する本実施例のディジタル放送受信機1、すなわち、搬送波再生部2bを周波数微調整信号Scntの指示に従って微調整する構成とすると、例えばユーザー等からの選局操作等によって局部発振器7に設定された同調周波数を周波数微調整信号Scntの指示に従って微調整することでいわゆる同調点に近付ける効果が得られ、データ復調器4等におけるデータ復調等の精度を向上させることができる。
次に、図8に示したディジタル放送受信機の更に変形例に相当する実施例について、図9を参照して説明する。なお、図9(a)(b)は、本実施例の2態様のディジタル放送受信機の構成を表したブロック図であり、図8と同一又は相当する部分を同一符号で示している。
まず、図9(a)に示すディジタル放送受信機1は、中間周波数増幅部11と直交復調器2aの間にA/D変換器3aが設けられ、図8に示したA/D変換器3が省略された構成となっている。そして、直交復調器2aと搬送波再生部2bがディジタル信号処理によって直交変換と再生搬送波の再生を行うディジタル回路で形成されている。
かかる構成によると、中間周波増幅部11から出力されるIF信号をA/D変換器3aがアナログディジタル変換して、ディジタル回路の直交復調器2aに供給し、ディジタル回路の搬送波再生部2bが、制御部6から供給される周波数誤差を示す周波数微調整信号Scntの指示に従って、再生搬送波信号の周波数fcを微調させて、直交復調器2aに供給する。これにより、直交復調器2aは、IF信号に相当するディジタルデータを再生搬送波信号に基づくディジタル信号処理によって直交検波し、ベースバンド信号に相当するディジタルデータDi,Dqを出力して、データ復調器4と同期信号検出部5に供給する。
このように、ディジタル放送受信機1を図9(a)に示す構成としても、ベースバンド信号に相当するディジタルデータDi,Dqをデータ復調器4と同期信号検出部5に供給することができるため、図8に示したディジタル放送受信機と同様の作用効果を発揮することができる。更に、ディジタル放送受信機の更なるディジタル化を実現することが可能である。
次に、図9(b)に示すディジタル放送受信機1は、中間周波数増幅部11と直交復調器2aの間にA/D変換器3aが設けられ、図8に示したA/D変換器3が省略された構成となっている。そして、直交復調器2aと搬送波再生部2bがディジタル信号処理によって直交変換と再生搬送波の再生を行うディジタル回路で形成されている。更に、A/D変換器3aによってアナログディジタル変換されたIF信号に相当するディジタルデータDifが、ベースバンド信号に相当するディジタルデータDi,Dqの代わりに、同期信号検出部5に供給されている。
かかる構成によると、同期信号検出部5は、IF信号に相当するディジタルデータDifに対してヌルシンボル期間τを検出するための処理を行うこととなるが、ヌルシンボルは変調等がなされていない信号成分であるため、図2(a)〜(e)を参照して説明したのと同様の処理を行うこととなる。このため、IF信号に相当するディジタルデータDifをヌルシンボルの検出対象としても、そのヌルシンボル期間τを高精度に検出することができる。
次に、図8に示したディジタル放送受信機の更なる変形例に相当する実施例について、図10を参照して説明する。なお、図10(a)は、本実施例のディジタル放送受信機1の構成を表したブロック図であり、図8と同一又は相当する部分を同一符号で示している。図10(b)は、直交復調器の後段に従属接続された周波数変換器の構成を表したブロック図である。
図10(a)に示す本実施例のディジタル放送受信機1と図8に示したディジタル放送受信機との構成上の差異を説明すると、図8に示したディジタル放送受信機では、前述したように、直交復調器2aが直交検波を行うための再生搬送波信号を生成する搬送波再生部2bに対して、制御部6が周波数微調整信号Scntを供給して、再生搬送波信号の周波数fcを微調整させる構成となっている。
これに対して、図10(a)に示すディジタル放送受信機1では、周波数微調整信号Scntによって搬送波再生部2bを制御する代わりに、直交復調器2aの後段に周波数変換器2cを接続し、更に周波数変換器2cに供給するための再生搬送波信号を再生する搬送波再生部2dを設けて、その搬送波再生部2dを周波数微調整信号Scntによって制御する構成となっている。
ここで、直交復調器2aは、図4に例示した構成を有し、周波数変換部2cは、図10(b)に例示する構成を有している。
すなわち、周波数変換部2cは、図10(b)に示すように、所定の配線接続がなされた乗算器2ca,2cc,2cd,2ceと、減算器2cfと、加算器2cgと、−90°移相器2chとを有して形成され、周波数誤差を示す周波数微調整信号Scntに従って搬送波再生部2dが微調整した再生搬送波信号と、−90°移相器2chによって移相された再生搬送波信号とに基づいて、直交復調器2aからのベースバンド信号I,Qを周波数変換し、その周波数変換したベースバンド信号I,Qを、A/D変換器3側へ出力する。
かかる構成を有する本実施例のディジタル放送受信機1によれば、直交復調器2aと搬送数再生部2bによって、IF信号をベースバンド信号I,Qに直交変換するための基本的な処理を行い、そのベースバンド信号I,Qに対して周波数変換部2cと搬送数再生部2dが、周波数微調整信号Scntに従って微調整した再生搬送波信号に基づいて周波数変換を行うので、周波数誤差分の周波数シフトを施したベースバンド信号I,Qを生成し、A/D変換器3を介して、データ復調器4と同期信号検出部5側へ供給することができる。このため、いわゆる同調点に近付ける効果が得られ、データ復調器4等におけるデータ復調等の精度を向上させることができる。
なお、本実施例の更なる変形例として、A/D変換器3を省略すると共に、中間周波数増幅器11と直交復調器2aの間に、IF信号をアナログディジタル変換するA/D変換器を設け、更に、直交復調器2aと周波数変換器2c及び搬送波再生部2b,2dをディジタル回路で形成してもよい。
また、中間周波数増幅器11と直交復調器2aの間に上述のA/D変換器を設ける構成とした場合に、ベースバンド信号に相当するディジタルデータDi,Dqの代わりに、そのA/D変換器の出力、すなわちIF信号に相当するディジタルデータを同期信号検出部5に供給して、ヌルシンボル期間τを検出するようにしてもよい。
次に、更に他の実施例について、図11を参照して説明する。なお、図11は、本実施例のディジタル放送受信機の構成を表したブロック図であり、図8と同一又は相当する部分を同一符号で示している。
図11に示す本実施例のディジタル放送受信機1と図8に示したディジタル放送受信機との構成上の差異を説明すると、図8に示したディジタル放送受信機では、RF受信信号をIF信号に周波数変換する周波数変換器10と中間周波数増幅部11及び局部発振器7が設けられているのに対し、図11に示す本実施例のディジタル放送受信機1では、RF部9の出力に直交復調器2aが接続されると共に、直交復調器2aに同調周波数の局発信号を供給する局部発振器17が設けられ、その局部発振器17に制御部6から周波数微調整信号Scntを供給することで、同調周波数を微調整させた局発信号を直交復調器2aに供給する構成となっている。
かかる構成によると、例えばユーザー等からの選局操作等によって設定された局発信号の同調周波数を、局部発振器17が周波数微調整信号Scntに従って微調整し、その微調整後の同調周波数の局発信号に基づいて直交復調器2aが、RF受信信号を直接ベースバンド信号I,Qに周波数変換し、A/D変換器3を介して、データ復調器4と同期信号検出部5へ供給する。
したがって、本実施例のディジタル放送受信機によれば、RF受信信号をIF信号に周波数変換するための構成を不要にして、構成の簡素化等を実現することができると共に、ヌルシンボル期間τを高精度で検出して初期同期及び同期受信の精度向上を図ることができる。
本発明の実施形態のディジタル放送受信機の構成を表したブロック図と、放送局から伝送されてくる伝送信号のフレーム構成を模式的に表した図である。
図1のディジタル放送受信機に設けられている同期信号検出部の動作を説明するための波形図である。
実施例1のディジタル放送受信機の構成を表したブロック図と、同期信号検出部の構成を表したブロック図である。
図3のディジタル放送受信機に設けられている直交復調器の構成例を表したブロック図である。
実施例1のディジタル放送受信機の動作を説明するためのフローチャートである。
実施例1のディジタル放送受信機における時間誤差の補正原理を説明するための図である。
実施例1のディジタル放送受信機に設けられる同期信号検出部の変形例の構成を表したブロック図である。
実施例2のディジタル放送受信機の構成を表したブロック図である。
実施例3のディジタル放送受信機の構成を表したブロック図である。
実施例4のディジタル放送受信機の構成と周波数変換器の構成例を表したブロック図である。
実施例5のディジタル放送受信機の構成を表したブロック図である。
符号の説明
2a…直交復調器
4…データ復調器
5…同期信号検出部
5a…ローパスフィルタ
5b…平均値演算部
5c…同期信号判定部
6…制御部
10…周波数変換器