JPWO2006082974A1 - 虚血性疾患治療剤 - Google Patents
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Abstract
本発明は、血栓塞栓性虚血性疾患の発症後、特に血栓又は塞栓形成後に投与するための、組織因子阻害物質を含む医薬組成物、一次血栓形成後に投与するための組織因子阻害物質を含む複次血栓形成抑制剤、血栓又は塞栓形成後に投与するための組織因子阻害物質を含む血流低下抑制剤、および一次血栓形成後に組織因子の作用を阻害することにより複次血栓の形成を抑制する方法に関する。
Description
本発明は、血栓塞栓性の虚血性疾患の発症後に投与することを特徴とする、組織因子阻害物質を含む医薬組成物に関する。また、本発明は、複次血栓形成抑制及び/又は血流低下抑制のために使用される、組織因子阻害物質を含む医薬組成物にも関する。
血管内において、種々の要因により血液凝固線溶の調節機能に異常が発生すると、形成された血栓が血管を閉塞することにより血液の循環不全(血栓症又は血栓塞栓症)、それに続く虚血性疾患が引き起こされ、場合によっては致死的な病態を引き起こす原因ともなる。
このような血栓症又は血栓塞栓症は、血管閉塞が発生する箇所により、静脈血栓症又は動脈血栓症に分類される。静脈血栓症には、下肢深部静脈血栓症、肺塞栓症及び脳静脈洞血栓症などが含まれ、動脈血栓症には、脳梗塞、心筋梗塞などが含まれ、一過性脳虚血発作(transient ischemic attack:以下、TIAとも称す)、狭心症及び慢性動脈閉塞症などにおいても血栓形成による虚血が生じる。
血栓症又は血栓塞栓症に起因する虚血性疾患においては、虚血に陥った組織が血流量の低下に起因する酸素供給量などの低下により不可逆的な障害を受け、後遺症や合併症を伴う重篤な症状を呈する場合があるが、その一方で、発症後短期間のうちに血液の灌流障害を取り除き血流が回復した場合は、虚血状態の組織が障害を負うことなく回復する場合がある。従って、当該虚血性疾患の治療においては、急性期、特に発症直後に適切な処置を施し、血流量の低下を最小限に止めることが重要となる。これらの疾患における薬物療法においては、アスピリンなどの抗血小板薬、ウロキナーゼなどの血栓溶解薬、及びワルファリン及びヘパリンなどの抗凝固薬などが用いられているが、これらの薬剤は、おもに合併症の防止や再発防止を目的に用いられる場合が多く、現状においては急性期及び超急性期において十分な効果を発揮する薬物療法が確立しているとは言い難い。
また、脳梗塞治療剤として有効性が評価されているt−PA(tissue−plasminogen activator)は、脳内出血の副作用のため発症後3時間以内の使用に限られている。従って、臨床の現場においては、特に発症後に投与する際にTTW(therapeutic time window)の広い薬剤が求められている。
組織因子(tissue factor:以下、TFとも称す)は、細胞表面に発現する30kDaの膜貫通型の糖タンパク質であり、血液凝固第VII因子受容体として血液凝固反応の実質的な開始因子として機能する(非特許文献1:Thromb.Haemost.1995年、第74巻(1):第180−184頁を参照)。TFは血液凝固第VII因子との複合体形成を通じて、血液凝固第IX因子及びX因子を活性化させる。TFは、通常、血管内皮や血球等の血液にさらされている組織にはほとんど存在しない。一方で、TFは血管外膜や結合組織には豊富に存在し、血管損傷の際に血液凝固系を活性化することにより、出血を最小限にとどめるための機能を果たしている。
近年、抗TF抗体などのTFの血液凝固作用を阻害する物質を、出血等の副作用の少ない安全で有効な抗血液凝固薬として使用する研究が行われている。特にヒト化された抗TF抗体は安全で有効かつ、血中存在期間が長い優れた治療薬となる可能性を有すると考えられている(例えば、特許文献1〜8などを参照)。
例えば、ヒトTFに対するマウスモノクローナル抗体の可変領域(V領域)とヒト抗体の定常領域(C領域)とからなるヒト/マウスキメラ抗体、さらにはヒトTFに対するマウスモノクローナル抗体の軽鎖(L鎖)V領域及び重鎖(H鎖)V領域の相捕性決定領域がヒト抗体に移植されているヒト化(humanized)抗体が、優れた播種性血管内凝固症候群(DIC)、動脈血栓症及び静脈血栓症治療薬として期待できることが報告されている(特許文献7:WO99/51743、特許文献8:WO01/24626)。
TFの血液凝固作用を阻害する物質の、血栓性又は血栓塞栓性の虚血性疾患における薬効に関する研究もされている。例えば、抗ヒトTFモノクローナル抗体を血管閉塞発生前に投与した実験動物(baboon)において、中大脳動脈(middle cerebral artery:以下、MCAとも称す)を一定時間閉塞させた後、血流を再灌流させた際の、血栓の発生量や血流量について報告されている(非特許文献2:Stroke 1994年、第25巻、第1847−1854頁、非特許文献3:Stroke 1993年、第24巻、第847−854頁を参照。)。しかし、TFの血液凝固作用を阻害する物質を血管閉塞発生後に投与した場合の当該物質の治療効果については特に報告されていなかった。
国際公開第88/07543号パンフレット
国際公開第96/40921号パンフレット
国際公開第98/40408号パンフレット
国際公開第01/70984号パンフレット
国際公開第03/37911号パンフレット
国際公開第03/93422号パンフレット
国際公開第99/51743号パンフレット
国際公開第01/24626号パンフレット
Thromb.Haemost.1995年、第74巻(1):第180−184頁
Stroke 1994年、第25巻、第1847−1854頁
Stroke 1993年、第24巻、第847−854頁
本発明の目的は、血栓性又は血栓塞栓性の虚血性疾患の発症後の投与により治療効果を得ることができる医薬組成物を提供することである。また、本発明の目的は、血栓塞栓性の虚血性疾患の発症後に適用可能な薬物療法の手段を提供することである。
本発明者らは、上記課題を克服すべく鋭意研究を続けた結果、血栓塞栓性の虚血性疾患の発症後にTF阻害物質を投与することにより、当該虚血性疾患に対する治療効果が得られることを見出して本発明を完成した。
すなわち、本発明の1つの側面によれば、血栓塞栓性虚血性疾患の発症後に投与するための、TF阻害物質を含む医薬組成物が提供される。ここで、前記医薬組成物は、例えば血栓塞栓性虚血性疾患の治療のために用いることができる。また、前記血栓塞栓性虚血性疾患は、例えば脳梗塞などの梗塞であってもよい。また、組織因子阻害物質は、例えば組織因子に結合する抗体であってもよい。
本発明の別の側面によれば、血栓又は塞栓形成後に投与するための、組織因子阻害物質を含む医薬組成物が提供される。ここで、前記医薬組成物は、例えば血栓塞栓性虚血性疾患の治療のために用いることができる。また、前記血栓塞栓性虚血性疾患は、例えば脳梗塞などの梗塞であってもよい。また、組織因子阻害物質は、例えば組織因子に結合する抗体であってもよい。
さらに本発明の別の側面によれば、一次血栓形成後に投与するための、組織因子阻害物質を含む複次血栓形成抑制剤が提供される。ここで、前記組織因子阻害物質は、組織因子に結合する抗体であってもよい。
さらに本発明の別の側面によれば、血栓又は塞栓形成後に投与するための、組織因子阻害物質を含む血流低下抑制剤が提供される。ここで、前記組織因子阻害物質は、組織因子に結合する抗体であってもよい。
さらに本発明の別の側面によれば、一次血栓形成後に組織因子の作用を阻害することにより、複次血栓の形成を抑制する方法が提供される。
さらに本発明の別の側面によれば、梗塞発症後に組織因子の作用を阻害することにより、梗塞の拡大を抑制する方法が提供される。
さらに本発明の別の側面によれば、血栓形成後又は塞栓形成後に組織因子の作用を阻害することにより、血流量低下を抑制する方法が提供される。
本発明により、血栓性又は血栓塞栓性の虚血性疾患の発症後に使用することができる医薬組成物が提供される。本発明の医薬組成物の投与は、当該疾患発症後の薬物療法における処置手段として有用である。
以下に本発明の詳細について説明する。
本発明における「TF阻害物質」は、TFの作用を阻害して、抗血液凝固作用を示す物質であれば特に制限されない。TF阻害物質の例としては、例えば、抗ヒトTF抗体、tissue factor pathway inhibitor(TFPI)、不活性化凝固第VII因子(FVIIai)、nematode anticoagulant protein(rNAPc2)、可溶型TF変異物質(Kelly,RF.ら、Blood、1997年、第9巻、第3219−3227頁)などを挙げることができる。本発明において、好ましいTF阻害物質としては抗ヒトTF抗体である。
本発明においてTFの血液凝固作用の阻害とは、TFの凝固第VII因子への結合(TF/凝固第VII因子複合体の形成)により、凝固第IX因子及びX因子を活性化する作用を阻害することをいう。従って、TFの血液凝固作用の阻害とは、例えば、TFと凝固第VII因子の結合の阻害(TF/凝固第VII因子複合体の形成の阻害)、若しくは、凝固第IX因子又はX因子の活性化の阻害を含む。
本発明において抗ヒトTF抗体とは、ヒトTFを認識する抗体であれば如何なる抗体でもよいが、ヒトTFを特異的に認識する抗体が好ましい。又、認識されるヒトTFは、単体のヒトTF、複合体を形成しているヒトTFなど如何なる状態のヒトTFでもよい。抗ヒトTF抗体は、モノクローナル抗体であってもポリクローナル抗体であってもよいが、均質な抗体を安定に生産できる点でモノクローナル抗体が好ましい。また、抗ヒトTF抗体はマウス抗体、ヒト抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体などを適宜用いることができるが、好ましくはヒト化抗ヒトTF抗体である。
抗ヒトTF抗体については、既に多数報告されている既知の抗体(例えば、WO99/51743、WO88/07543、WO96/40921、WO98/40408、WO01/70984、WO03/037911、WO03/93422など)を用いることができる。また、抗原となるTFは既に知られているので(Ito Tら,J.Biochem.第114巻、第691−696頁、1993年)、例えば当業者に公知の以下のような方法で作製してもよい。
まず、ヒトTFをコードする遺伝子配列を公知の発現ベクター系に挿入して適当な宿主細胞を形質転換させた後、その宿主細胞中又は培養上清中から目的のヒトTFタンパク質を公知の方法で精製することができる。
次に、この精製ヒトTFタンパク質を感作抗原として用いることができる。あるいは、ヒトTFの部分ペプチドを感作抗原として使用することもできる。また、部分ペプチドはヒトTFのアミノ酸配列から化学合成により得ることも可能である。
本発明の抗ヒトTF抗体の認識するエピトープは特定のものに限定されず、ヒトTF分子上に存在するエピトープならばどのエピトープを認識してもよい。従って、本発明の抗ヒトTF抗体を作製するための抗原として、ヒトTF分子上に存在するエピトープを含む断片ならば、如何なる断片も用いることが可能である。
上記抗原で感作される哺乳動物としては、特に限定されるものではないが、細胞融合に使用する親細胞との適合性を考慮して選択するのが好ましく、一般的にはげっ歯類の動物、例えば、マウス、ラット、ハムスター、あるいはウサギ、サル等が使用される。
上記抗原による動物の免疫は、公知の免疫方法にしたがって行われる。例えば、一般的方法として、抗原を哺乳動物の腹腔内又は皮下に注射することにより行われる。具体的には、抗原をPBS(Phosphate−Buffered Saline)や生理食塩液等で適当量に希釈、懸濁したものに所望により通常のアジュバント、例えばフロイント完全アジュバントを適量混合し、乳化後、哺乳動物に4〜21日毎に数回投与する。また、抗原免疫時に適当な担体を使用することもできる。
このように哺乳動物を免疫し、血清中に所望の抗体レベルが上昇するのを確認した後に、哺乳動物から免疫細胞を採取し、細胞融合に付されるが、好ましい免疫細胞としては、特に脾細胞が挙げられる。
前記免疫細胞と融合される他方の親細胞として、哺乳動物のミエローマ細胞を用いる。このミエローマ細胞は、公知の種々の細胞株、例えば、P3(P3x63Ag8.653)(J.Immnol.第123巻、第1548−1550頁、1979年)、P3x63Ag8U.1(Current Topics in Microbiology and Immunology、第81巻、第1−7頁、1978年)、NS−1(Kohler.G.and Milstein、C.Eur.J.Immunol.、第6巻、第511−519頁、1976年)、MPC−11(Margulies.D.H.ら、Cell、第8巻、第405−415頁,1976年)、SP2/0(Shulman,M.ら、Nature、第276巻、第269−270頁、1978年)、FO(deSt.Groth,S.F.ら、J.Immunol.Methods、第35巻、第1−21頁、1980年)、S194(Trowbridge、I.S.、J.Exp.Med.、第148巻、第313−323頁、1978年)、R210(Galfre,G.ら、Nature、第277巻、第131−133頁、1979年)等が好適である。
前記免疫細胞とミエローマ細胞との細胞融合は、基本的には公知の方法、たとえば、ケーラーとミルステインらの方法(Kohler.G.及びMilstein,C.、Methods Enzymol.、第73巻、第3−46頁、1981年)等に準じて行うことができる。
より具体的には、前記細胞融合は、例えば細胞融合促進剤の存在下に通常の栄養培養液中で実施される。融合促進剤としては、例えばポリエチレングリコール(PEG)、センダイウイルス(HVJ)等が使用され、更に所望により融合効率を高めるためにジメチルスルホキシド等の補助剤を添加使用することもできる。
免疫細胞とミエローマ細胞との使用割合は任意に設定することができる。例えば、ミエローマ細胞に対して免疫細胞を1〜10倍とするのが好ましい。前記細胞融合に用いる培養液としては、例えば、前記ミエローマ細胞株の増殖に好適なRPMI 1640培養液、MEM培養液、その他、この種の細胞培養に用いられる通常の培養液が使用可能であり、さらに、牛胎児血清(FCS)等の血清補液を併用することもできる。
細胞融合は、前記免疫細胞とミエローマ細胞との所定量を前記培養液中でよく混合し、予め37℃程度に加温したPEG溶液(例えば平均分子量1,000〜6,000程度)を通常30〜60%(w/v)の濃度で添加し、混合することによって目的とする融合細胞(ハイブリドーマ)を形成する。続いて、適当な培養液を逐次添加し、遠心して上清を除去する操作を繰り返すことによりハイブリドーマの生育に好ましくない細胞融合剤等を除去する。
このようにして得られたハイブリドーマは、通常の選択培養液、例えばHAT培養液(ヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンを含む培養液)で培養することにより選択される。上記HAT培養液での培養は、目的とするハイブリドーマ以外の細胞(非融合細胞)が死滅するのに十分な時間(通常、数日〜数週間)継続する。ついで、通常の限界希釈法を実施し、目的とする抗体を産生するハイブリドーマのスクリーニング及び単一クローニングを行う。
また、ヒト以外の動物に抗原を免疫して上記ハイブリドーマを得る他に、ヒトリンパ球をin vitroでTFに感作し、感作リンパ球をヒト由来の永久分裂能を有するミエローマ細胞と融合させ、TFへの結合活性を有する所望のヒト抗体を得ることもできる(特公平1−59878号公報参照)。さらに、ヒト抗体遺伝子の全てのレパートリーを有するトランスジェニック動物に抗原となるTFを投与して抗TF抗体産生細胞を取得し、これを不死化させた細胞からTFに対するヒト抗体を取得してもよい(WO94/25585号公報、WO93/12227号公報、WO92/03918号公報、WO94/02602号公報参照)。
このようにして作製されるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、通常の培養液中で継代培養することが可能であり、また、液体窒素中で長期保存することが可能である。
当該ハイブリドーマからモノクローナル抗体を取得するには、当該ハイブリドーマを通常の方法により培養し、その培養上清として得る方法、あるいはハイブリドーマをこれと適合性がある哺乳動物に投与して増殖させ、その腹水として得る方法などが採用される。前者の方法は、高純度の抗体を得るのに適しており、一方、後者の方法は、抗体の大量生産に適している。
一方で、本発明において使用するモノクローナル抗体 は、ファージ抗体ライブラリーから単離してもよい(Clacksonら、Nature、1991年、第352巻、第624−628頁;Marksら、J.Mol.Biol.、1991年、第222巻、第581−597頁)。Clacksonら及びMarksらの上記文献は、各々、ファージライブラリーを用いたマウス及びヒト抗体の単離について開示する。
本発明では、モノクローナル抗体として、抗体遺伝子をハイブリドーマからクローニングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主に導入し、遺伝子組換え技術を用いて産生させた組換え型のものを用いることができる(例えば、Vandamme,A.M.ら、Eur.J.Biochem.、第192巻、第767−775頁、1990年を参照)。
具体的には、抗TF抗体を産生するハイブリドーマから、抗TF抗体の可変(V)領域をコードするmRNAを単離する。mRNAの単離は、公知の方法、例えば、グアニジン超遠心法(Chirgwin,J.M.ら、Biochemistry、第18巻、第5294−5299頁、1979年)、AGPC法(Chomczynski,P.ら、Anal.Biochem.、第162巻、第156−159頁、1987年)等により行って全RNAを調製し、mRNA Purification Kit(Pharmacia製)等を使用して目的のmRNAを調製する。また、QuickPrep mRNA Purification Kit(Pharmacia製)を用いることによりmRNAを直接調製することもできる。
得られたmRNAから逆転写酵素を用いて抗体V領域のcDNAを合成する。cDNAの合成は、AMV Reverse Transcriptase First−strand cDNA Synthesis Kit(生化学工業社製)等を用いて行う。また、cDNAの合成及び増幅を行うには、5’−Ampli FINDER RACE Kit(Clontech製)及びPCRを用いた5’−RACE法(Frohman,M.A.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、第85巻、第8998−9002頁、1988年;Belyavsky,A.ら、Nucleic Acids Res.、第17巻、第2919−2932頁、1989年)等を使用することができる。
得られたPCR産物から目的とするDNA断片を精製し、ベクターDNAと連結する。さらに、これより組換えベクターを作製し、大腸菌等に導入してコロニーを選択して所望の組換えベクターを調製する。そして、目的とするDNAの塩基配列を公知の方法、例えば、ジデオキシヌクレオチドチェインターミネーション法等により確認する。
目的とする抗TF抗体のV領域をコードするDNAを得たのち、これを、所望の抗体定常領域(C領域)をコードするDNAを含有する発現ベクターへ組み込む。
本発明で使用される抗ヒトTF抗体を製造するには、通常、抗体遺伝子を発現制御領域、例えば、エンハンサー、プロモーターの制御のもとで発現するよう発現ベクターに組み込む。次に、この発現ベクターにより、宿主細胞を形質転換し、抗体を発現させる。
抗体遺伝子の発現は、抗体重鎖(H鎖)又は軽鎖(L鎖)をコードするDNAを別々に発現ベクターに組み込んで宿主細胞を同時形質転換させてもよいし、あるいはH鎖及びL鎖をコードするDNAを単一の発現ベクターに組み込んで宿主細胞を形質転換させてもよい(WO94/11523号公報参照)。
また、組換え型抗体の産生には上記宿主細胞だけではなく、トランスジェニック動物を使用することができる。例えば、抗体遺伝子を、乳汁中に固有に産生されるタンパク質(ヤギβカゼインなど)をコードする遺伝子の途中に挿入して融合遺伝子として調製する。抗体遺伝子が挿入された融合遺伝子を含むDNA断片をヤギの胚へ注入し、この胚を雌のヤギへ導入する。胚を受容したヤギから生まれるトランスジェニックヤギ又はその子孫が産生する乳汁から所望の抗体を得る。また、トランスジェニックヤギから産生される所望の抗体を含む乳汁量を増加させるために、適宜ホルモンをトランスジェニックヤギに使用してもよい(Ebert,K.M.ら、Bio/Technology、第12巻、第699−702頁、1994年)。
本発明の抗体には、上記抗体のほかに、ヒトに対する異種抗原性を低下させること等を目的として人為的に改変した改変抗体、例えば、キメラ抗体、ヒト化(Humanized)抗体などを含む。これらの改変抗体は、既知の方法を用いて製造することができる。
キメラ抗体は、前記のようにして得た抗体V領域をコードするDNAを例えばヒト抗体C領域をコードするDNAと連結し、これを発現ベクターに組み込んで宿主に導入し産生させることにより得られる。この既知の方法を用いて、キメラ抗体を得ることができる。
キメラ抗体は、前記のようにして得た抗体V領域をコードするDNAを例えばヒト抗体C領域をコードするDNAと連結し、これを発現ベクターに組み込んで宿主に導入し産生させることにより得られる。この既知の方法を用いて、キメラ抗体を得ることができる。
ヒト化抗体は、再構成(reshaped)ヒト抗体とも称され、これは、ヒト以外の哺乳動物、例えばマウス抗体の相補性決定領域(CDR;complementarity determining region)をヒト抗体の相補性決定領域へ移植したものであり、その一般的な遺伝子組換え手法も知られている(EP125023号公報、WO96/02576号公報参照)。
具体的には、マウス抗体のCDRとヒト抗体のフレームワーク領域(framework region;FR)とを連結するように設計したDNA配列を、CDR及びFR両方の末端領域にオーバーラップする部分を有するように作製した数個のオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いてPCR法により合成する(WO98/13388号公報に記載の方法を参照)。
CDRを介して連結されるヒト抗体のフレームワーク領域は、相補性決定領域が良好な抗原結合部位を形成するものが選択される。必要に応じ、再構成ヒト抗体の相補性決定領域が適切な抗原結合部位を形成するように、抗体の可変領域におけるフレームワーク領域のアミノ酸を置換してもよい(Sato,K.ら、Cancer Res.、第53巻、第851−856頁、1993年)。
一般にキメラ抗体及びヒト化抗体のC領域には、ヒト抗体のものが使用され、例えばH鎖では、Cγ1、Cγ2、Cγ3、Cγ4を、L鎖ではCκ、Cλを使用することができる。また、抗体又はその産生の安定性を改善するために、ヒト抗体C領域を修飾してもよい。
キメラ抗体やヒト化抗体はヒト体内における抗原性が低下されているため、治療目的などでヒトに投与する場合に有用と考えられる。
本発明で使用される抗体は、抗体の全体分子に限られずTFを認識する限り、抗体の断片又はその修飾物であってもよく、2価抗体も1価抗体も含まれる。例えば、抗体の断片としては、Fab、F(ab’)2、Fv、1個のFabと完全なFcを有するFab/c、又はH鎖若しくはL鎖のFvを適当なリンカーで連結させた1本鎖Fv(scFv)、minibody、diabodyなどが挙げられる。具体的には、抗体を酵素、例えばパパイン、ペプシンで処理し抗体断片を生成させるか、又は、これら抗体断片をコードする遺伝子を構築し、これを発現ベクターに導入した後、適当な宿主細胞で発現させる(例えば、Co,M.S.ら、J.Immunol.、第152巻、第2968−2976頁、1994年;Better,M.及びHorwitz,A.H.、Methods in Enzymology、第178巻、第476−496頁、1989年;Academic Press Inc.、Plueckthun,A.及びSkerra,A.、Methods in Enzymology、第178巻、第476−496頁、1989年;Academic Press Inc.、Lamoyi,E.、Methods in Enzymology、第121巻、第652−663頁、1989年;Rousseaux,J.ら、Methods in Enzymology、第121巻、第663−669頁、1989年;Bird,R.E.ら、TIBTECH,第9巻、第132−137頁、1991年などを参照)。
scFvは、抗体のH鎖V領域とL鎖V領域とを連結することにより得られる。このscFvにおいて、H鎖V領域とL鎖V領域は、リンカー、好ましくはペプチドリンカーを介して連結される(Huston,J.S.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、第85巻、第5879−5883頁、1988年)。scFvにおけるH鎖V領域及びL鎖V領域は、本明細書に抗体として記載されたもののいずれの由来であってもよい。V領域を連結するペプチドリンカーとしては、例えばアミノ酸5〜20残基程度の任意の1本鎖ペプチドが用いられる。
scFvをコードするDNAは、前記抗体のH鎖又はH鎖V領域をコードするDNA、及びL鎖又はL鎖V領域をコードするDNAのうち、それらの配列のうちの全部又は所望のアミノ酸配列をコードするDNA部分を鋳型とし、その両端を規定するプライマー対を用いてPCR法により増幅し、次いで、さらにペプチドリンカー部分をコードするDNA、及びその両端が各々H鎖、L鎖と連結されるように規定するプライマー対を組み合わせて増幅することにより得られる。
また、一旦scFvをコードするDNAが作製されると、それらを含有する発現ベクター、及び該発現ベクターにより形質転換された宿主を常法に従って得ることができ、また、その宿主を用いることにより、常法に従ってscFvを得ることができる。
minibodyは天然抗体のVL及びVHドメインが免疫グロブリンのヒンジ領域及びCH3ドメインに融合した抗原結合タンパクを意味する(minibodyの調製方法は、例えば米国特許第5,837,821号を参照)。
これら抗体の断片は、前記と同様にしてその遺伝子を取得し発現させ、宿主により産生させることができる。本発明における「抗体」にはこれらの抗体の断片も包含される。
抗体の修飾物として、ポリエチレングリコール(PEG)等の各種分子と結合した抗TF抗体を挙げることができる。本発明における「抗体」には、このような他の物質と結合している抗体修飾物も包含される。このような抗体修飾物は、得られた抗体に化学的な修飾を施すことによって得ることができる。なお、抗体の修飾方法はこの分野においてすでに確立されている。
抗体の修飾物として、ポリエチレングリコール(PEG)等の各種分子と結合した抗TF抗体を挙げることができる。本発明における「抗体」には、このような他の物質と結合している抗体修飾物も包含される。このような抗体修飾物は、得られた抗体に化学的な修飾を施すことによって得ることができる。なお、抗体の修飾方法はこの分野においてすでに確立されている。
さらに、本発明で使用される抗体は、2重特異性抗体(bispecific antibody)であってもよい。2重特異性抗体はTF分子上の異なるエピトープを認識する抗原結合部位を有する2重特異性抗体であってもよいし、一方の抗原結合部位がTFを認識し、他方の抗原結合部位が他の物質を認識する2重特異性抗体であってもよい。2重特異性抗体は2種類の抗体のHL対を結合させて作製することもできるし、異なるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを融合させて2重特異性抗体産生融合細胞を作製し、得ることもできる。さらに、遺伝子工学的手法により2重特異性抗体を作製することも可能である。
上述のように構築した抗体遺伝子は、公知の方法により発現させ、取得することができる。哺乳類細胞の場合、常用される有用なプロモーター、発現させる抗体遺伝子、その3’側下流にポリAシグナルを機能的に結合させて発現させることができる。例えばプロモーター/エンハンサーとしては、ヒトサイトメガロウィルス前期プロモーター/エンハンサー(human cytomegalovirus immediate early promoter/enhancer)を挙げることができる。
また、その他に本発明で使用される抗体発現に使用できるプロモーター/エンハンサーとして、レトロウィルス、ポリオーマウィルス、アデノウィルス、シミアンウィルス40(SV40)等のウィルスプロモーター/エンハンサー、あるいはヒトエロンゲーションファクター1α(HEF1α)などの哺乳類細胞由来のプロモーター/エンハンサー等が挙げられる。
SV40プロモーター/エンハンサーを使用する場合はMulliganらの方法(Nature、第277巻、第108頁、1979年)により、また、HEF1αプロモーター/エンハンサーを使用する場合はMizushimaらの方法(Nucleic AcidsRes.,第18巻、第5322頁、1990年)により、容易に遺伝子発現を行うことができる。
大腸菌の場合、常用される有用なプロモーター、抗体分泌のためのシグナル配列及び発現させる抗体遺伝子を機能的に結合させて当該遺伝子を発現させることができる。プロモーターとしては、例えばlacZプロモーター、araBプロモーターを挙げることができる。lacZプロモーターを使用する場合は、Wardらの方法(Nature,第341巻、第544−546頁、1998年;FASEB J.、第6巻、第2422−2427頁、1992年)により、あるいはaraBプロモーターを使用する場合はBetterらの方法(Science,第240巻、第1041−1043頁、1988年)により発現させることができる。
抗体分泌のためのシグナル配列としては、大腸菌のペリプラズムに産生させる場合、pelBシグナル配列(Lei,S.P.ら、Bacteriol.、第169巻、第4379頁、1987年)を使用すればよい。そして、ペリプラズムに産生された抗体を分離した後、抗体の構造を適切に組み直して(refold)使用する。
複製起源としては、SV40、ポリオーマウィルス、アデノウィルス、ウシパピローマウィルス(BPV)等の由来のものを用いることができ、さらに、宿主細胞系で遺伝子コピー数増幅のため、発現ベクターは、選択マーカーとしてアミノグリコシドトランスフェラーゼ(APH)遺伝子、チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、大腸菌キサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Ecogpt)遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素(dhfr)遺伝子等を含むことができる。
本発明で使用される抗体の製造のために、任意の発現系、例えば真核細胞又は原核細胞系を使用することができる。真核細胞としては、例えば樹立された哺乳類細胞系、昆虫細胞系、真糸状菌細胞及び酵母細胞などが挙げられ、原核細胞としては、例えば大腸菌細胞等の細菌細胞が挙げられる。
好ましくは、本発明で使用される抗体は、哺乳類細胞、例えばCHO、COS、ミエローマ、BHK、Vero、HeLa細胞中で発現される。
次に、形質転換された宿主細胞をin vitro又はin vivoで培養して目的とする抗体を産生させる。宿主細胞の培養は公知の方法に従い行う。例えば、培養液として、DMEM、MEM、RPMI 1640、IMDMを使用することができ、牛胎児血清(FCS)等の血清補液を併用することもできる。
上述のように発現、産生された抗体は、細胞、宿主動物から分離し均一にまで精製することができる。本発明で使用される抗体の分離、精製はアフィニティーカラムを用いて行うことができる。例えば、プロテインAカラムを用いたカラムとして、Hyper D、POROS、Sepharose F.F.(Pharmacia製)等が挙げられる。その他、通常のタンパク質で使用されている分離、精製方法を使用すればよく、何ら限定されるものではない。例えば、上記アフィニティーカラム以外のクロマトグラフィーカラム、フィルター、限外濾過、塩析、透析等を適宜選択、組み合わせることにより、抗体を分離、精製することができる(Antibodies A Laboratory Manual.、Ed.Harlow, David Lane、Cold Spring Harbor Laboratory,1988年)。
抗体の抗原結合活性(Antibodies A Laboratory Manual.、Ed.Harlow, David Lane、Cold Spring Harbor Laboratory、1988年)の測定には公知の手段を使用することができる。
本発明で使用される抗TF抗体の抗原結合活性を測定する方法として、ELISA(酵素結合免疫吸着検定法)、EIA(酵素免疫測定法)、RIA(放射免疫測定法)あるいは蛍光抗体法を用いることができる。例えば、酵素免疫測定法を用いる場合、TFをコーティングしたプレートに、抗TF抗体を含む試料、例えば、抗TF抗体産生細胞の培養上清や精製抗体を加え、アルカリフォスファターゼ等の酵素で標識した2次抗体を添加し、プレートをインキュベートし、洗浄した後、p−ニトロフェニルリン酸などの酵素基質を加えて吸光度を測定することで抗原結合活性を評価することができる。
本発明において、血栓塞栓性虚血性疾患とは、血栓や塞栓が原因又は原因の一部となり発症する虚血性疾患のことをいう。当該虚血性疾患の具体的な例としては、例えば動脈血栓症として、脳梗塞や心筋梗塞などの梗塞、TIA、狭心症及び慢性動脈閉塞症などを挙げることができ、静脈血栓症として、下肢深部静脈血栓症、肺塞栓症及び脳静脈洞血栓症などを挙げることができる。
本発明において血栓塞栓性虚血性疾患の例としては、梗塞を挙げることができる。当該梗塞の発生部位は特に限定されず、脳、心臓など如何なる部位の梗塞でもよい。
本明細書における梗塞には、脳、心臓、肺、腎臓又は脾臓などにおける貧血性梗塞を含む。本発明においては、脳での梗塞(脳梗塞)が好適である。脳梗塞には、アテローム血栓性脳梗塞、ラクナ梗塞、心原性脳塞栓症などの臨床病型を含む。
本発明において虚血性疾患発症後とは、血管の狭窄又は閉塞に起因する虚血性疾患の症状が確認された後のことを意味する。当該症状は重度であっても軽度であってもよく、徐々に進行して増強してくるもの、及び突然に完成するものも当該症状に含まれる。発症及び発症時期の診断・判断は、通常、医師又はそれに準ずる者により行われる。本発明の医薬組成物の投与時期は、虚血性疾患発症後であれば特に限定されないが、例えば虚血性疾患発症後の急性期又は超急性期、具体的には、発症後48時間以内、より好ましくは発症後24時間以内、さらにより好ましくは発症後6時間以内、最も好ましくは発症後3時間以内に投与されてもよい。また、本発明の医薬組成物は慢性期の治療を目的としても用いることができる。
本発明において「梗塞発症後」には、「梗塞の存在が確認された後」及び「梗塞が存在する可能性が高い若しくはあると判断された後」も含まれる。また、「血栓又は塞栓形成後」には、「血栓又は塞栓の存在が確認された後」及び「血栓・塞栓が存在する可能性が高い若しくはあると判断された後」も含まれる。梗塞、血栓又は塞栓の存在は、通常、CT、MRI、MRA(Magnetic Resonance Angiography)、血管造影などにより確認することができる。「梗塞の拡大を抑制」は、梗塞体積及び/又は梗塞面積の拡大の抑制を意味する。
一次血栓とは、病巣部位又はその近辺において最初に形成又は確認された血栓のことをいう。
本発明において複次血栓とは、一次血栓の形成以降に形成される血栓のことを指し、具体的には二次血栓、三次血栓、四次血栓などをいう(棚橋紀夫、脳と循環、第4巻、第319−325頁、1997年)。一次血栓形成後に形成される血栓を二次血栓といい、二次血栓形成後に形成される血栓を三次血栓、以下四次血栓、五次血栓等という。複次血栓には、一次血栓の存在下で異なる部位に形成される血栓及び、一次血栓の溶解後に同じ部位又は異なる部位で形成される血栓を含む。複次血栓の形成の抑制とは、複次血栓の形成を完全に抑制する、複次血栓の形成量を減少させる、複次血栓が形成される時期を遅らせる、又は形成される若しくは形成された複次血栓を縮小化することをいう。
血流低下の抑制とは、血管を流れる血液の量の減少を抑制することをいい、通常、病巣部位の血管を流れる血液の量の減少を抑制することをいう。血流量の測定は当業者に公知の方法で行うことができる。
本発明の医薬組成物がTFに結合する抗体を有効成分として含む場合、非経口的に全身又は局所的に投与することができる。例えば、点滴などの静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射を選択することができ、患者の年齢、症状により適宜投与方法を選択することができる。有効投与量は、一回につき体重1kgあたり0.001mgから100mgの範囲、好ましくは0.01mgから10mgの範囲、最も好ましくは0.1mgから1mgの範囲で選ばれる。
本発明の医薬組成物がTFに結合する抗体を有効成分として含む場合、投与経路次第で医薬的に許容される担体や添加物を共に含むものであってもよい。このような担体及び添加物の例として、水、医薬的に許容される有機溶剤、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、寒天、ジグリセリン、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン(HSA)、マンニトール、フルビトール、ラクトース、医薬添加物として許容される界面活性剤などが挙げられる。使用される添加物は、本発明の剤形に応じて上記の中から適宜又は組み合わせて選択されるが、これらに限定されるものではない。
本発明の医薬組成物は、抗血小板薬、血栓溶解薬、抗凝固薬などの1以上の他の薬剤と同時に、連続的に、又は別々に投与することにより、組み合わせの薬物療法に使用することもできる。組み合わせの薬物療法において、好ましい抗血小板薬はアスピリン、塩酸チクロピジン、オザグレルナトリウムなどであり、血栓溶解薬はウロキナーゼ、t−PAなどであり、抗凝固薬はワルファリン、ヘパリン、アルガトロバンなどである。また、本発明の医薬組成物は、外科的治療法と組み合わせて用いることもできる。
本発明を以下の実施例によってさらに詳しく説明するが、本発明の範囲はこれに限定されない。本発明の記載に基づき種々の変更、修飾が当業者には可能であり、これらの変更、修飾も本発明に含まれる。
1)被検サンプル及び実験動物
実施例で用いた被検サンプルは、以下の方法により調製又は入手した。
実施例で用いた被検サンプルは、以下の方法により調製又は入手した。
抗ヒトTF抗体は、WO99/51743に記載された方法により作製した(重鎖としてWO99/51743に記載のヒト化H鎖バージョンiを、軽鎖としてWO99/51743に記載のヒト化L鎖バージョンb2を用いた)。抗ヒトTF抗体は溶媒(20mmol/L 酢酸ナトリウム、150mmol/L NaCl、pH6.0)中の溶液(15.4mg/mL)として、使用の際まで冷凍保存した(設定温度:−80℃)。
抗ヒトTF抗体希釈用の緩衝液(20mmol/L 酢酸ナトリウム、150mmol/L NaCl、pH6.0)は、調製後冷蔵保存して使用した(設定温度:4℃)。各サンプルにおいて投与量が、0.01mg/5mL/kg、0.03mg/5mL/kg、0.1mg/5mL/kg、1mg/5mL/kg、及び10mg/5mL/kgとなるように抗ヒトTF抗体希釈用緩衝液にて抗ヒトTF抗体を希釈した。サンプルの調製は投与日の当日に行い、調製後は室温で保存した。
抗ヒトTF抗体は霊長類の抗原とのみ交叉性を示すため、本実施例の薬効評価試験ではヒトTFを発現させたhTF−KIマウス(WO02/94016を参照)(76系統)を用いた。雄、10〜19週齢、体重:21.6〜35.7g(MCA閉塞実験使用時)のマウスを無作為に群分けした。馴化期間を5日以上として視認による一般状態観察により健康状態を観察した。
2)試験方法
(2−1)PIT(photochemically induced thrombosis)法によるマウスMCA閉塞モデルの作製
イソフルラン吸入(背景麻酔;酸素30%、笑気70%)によりマウスを麻酔し、麻酔下の動物は自然呼吸のまま仰臥位に固定した。保温パッド及び白熱灯により直腸温度を37℃付近に維持し、光照射直前の温度を記録した。イソジン(明治製菓)にて頸部を消毒した後、頸部皮膚を切開し、左頸静脈を剥離した。PE10カテーテルを頸静脈に挿入し、縫合糸で固定した。次に、動物の向きを左側が上面となる位置に直した。イソジンを左側頭部に塗布した後、左外耳と左外眼角の中央部の皮膚を切開し、頭骸骨及び側頭筋を露出させた。側頭筋を切開し、マイクロピンセットを用いて側頭筋を頭骸骨より剥離した。この状態で頭骸骨の上から透けて見えるMCAを確認した。頭蓋骨に電気ドリルをあて、薄骨を一層残して円形(直径2〜3mm程度)に頭蓋骨を削り、薄骨をマイクロピンセットで除去した。骨穴の位置に見えるMCA上にマイクロマニピュレーターを用いて光照射用のプローブ(A5355MOD、浜松ホトニクス)を設置し、血栓モデル作成用光源(L4887、浜松ホトニクス)を用いて光照射強度3000ルクス(0.4W/cm2)のキセノン緑色光(540nm)を10分間照射した。光照射開始と同時に、rose bengal溶液(投与量は20mg/mL/kg、溶媒は生理食塩液)を約1分間かけて頸静脈カテーテルを介して投与した。光照射終了後、術創を閉じ、速やかに麻酔から覚醒させた。その後、脳摘出まで一定時間(24時間)飼育した。
(2−1)PIT(photochemically induced thrombosis)法によるマウスMCA閉塞モデルの作製
イソフルラン吸入(背景麻酔;酸素30%、笑気70%)によりマウスを麻酔し、麻酔下の動物は自然呼吸のまま仰臥位に固定した。保温パッド及び白熱灯により直腸温度を37℃付近に維持し、光照射直前の温度を記録した。イソジン(明治製菓)にて頸部を消毒した後、頸部皮膚を切開し、左頸静脈を剥離した。PE10カテーテルを頸静脈に挿入し、縫合糸で固定した。次に、動物の向きを左側が上面となる位置に直した。イソジンを左側頭部に塗布した後、左外耳と左外眼角の中央部の皮膚を切開し、頭骸骨及び側頭筋を露出させた。側頭筋を切開し、マイクロピンセットを用いて側頭筋を頭骸骨より剥離した。この状態で頭骸骨の上から透けて見えるMCAを確認した。頭蓋骨に電気ドリルをあて、薄骨を一層残して円形(直径2〜3mm程度)に頭蓋骨を削り、薄骨をマイクロピンセットで除去した。骨穴の位置に見えるMCA上にマイクロマニピュレーターを用いて光照射用のプローブ(A5355MOD、浜松ホトニクス)を設置し、血栓モデル作成用光源(L4887、浜松ホトニクス)を用いて光照射強度3000ルクス(0.4W/cm2)のキセノン緑色光(540nm)を10分間照射した。光照射開始と同時に、rose bengal溶液(投与量は20mg/mL/kg、溶媒は生理食塩液)を約1分間かけて頸静脈カテーテルを介して投与した。光照射終了後、術創を閉じ、速やかに麻酔から覚醒させた。その後、脳摘出まで一定時間(24時間)飼育した。
(2−2)脳血流量の測定
PIT法によるマウスMCA閉塞モデル作製時に、光照射プローブの直上遠位部の頭頂部位にレーザードップラー組織血流計のプローブ(ST−N、OMEGA FLOW)を設置し、非接触型レーザードップラー組織血流計(FLO−N1、OMEGA FLOW)を用いて光照射5分程度前から光照射中(10分間)の脳組織血流量を連続的に測定した。光照射開始から一定基準の血流低下が見られるまでの時間(time to occlusion:以下、TTOとも称す)及び一定基準時の血流残存率を脳血流量低下の指標として求めた。「一定基準」の血流低下としては、
1. 最低血流(lowest);及び
2. 1分以上の血流安定低下(plateau)
の二通りとした。
PIT法によるマウスMCA閉塞モデル作製時に、光照射プローブの直上遠位部の頭頂部位にレーザードップラー組織血流計のプローブ(ST−N、OMEGA FLOW)を設置し、非接触型レーザードップラー組織血流計(FLO−N1、OMEGA FLOW)を用いて光照射5分程度前から光照射中(10分間)の脳組織血流量を連続的に測定した。光照射開始から一定基準の血流低下が見られるまでの時間(time to occlusion:以下、TTOとも称す)及び一定基準時の血流残存率を脳血流量低下の指標として求めた。「一定基準」の血流低下としては、
1. 最低血流(lowest);及び
2. 1分以上の血流安定低下(plateau)
の二通りとした。
(2−3)脳梗塞の定量
MCA閉塞の24時間後にイソフルラン吸入(背景麻酔;酸素30%、笑気70%)によりマウスに麻酔をかけ、断頭により速やかに脳を摘出した。摘出した脳を大脳と小脳の境界より吻側方向に厚さ1mmで切断して6枚の連続的大脳冠状切片を作製し、脳梗塞の定量に使用した。脳切片は、37℃の気相インキュベーターにて保温した2%(w/v)の2,3,5−トリフェニルテトラゾリウムクロリド(2,3,5−triphenyltetrazolium chloride:以下、TTCとも称す)を含む生理食塩液に浸し、同インキュベーター中で30分間保温することにより染色した。その後10%中性緩衝ホルマリン溶液に浸し、固定した。各切片の吻側面を写真撮影し、写真上でTTC染色領域(正常組織領域)と非染色領域(梗塞領域)を区分した。梗塞領域に関しては、大脳皮質領域(cortex)と大脳皮質以外の領域(subcortex)の二つの部位に分けて定量を実施し、併せて大脳皮質領域と大脳皮質以外の領域をまとめた総領域(total)についても解析を行った。梗塞体積は、梗塞面積に切片の厚さ(1mm)を乗することにより各切片の梗塞体積を計算し、これを6枚の切片に関して総和することにより求めた。また、脳浮腫による梗塞拡大の影響を考慮して、対側大脳面積と患側大脳面積との比を元に補正を行い、梗塞面積及び体積の結果は全て補正済みの値として算出した(Stroke 1993年;第24巻、第117〜121頁を参照)。最終的に、患側大脳半球に対する梗塞体積の割合を算出した。
MCA閉塞の24時間後にイソフルラン吸入(背景麻酔;酸素30%、笑気70%)によりマウスに麻酔をかけ、断頭により速やかに脳を摘出した。摘出した脳を大脳と小脳の境界より吻側方向に厚さ1mmで切断して6枚の連続的大脳冠状切片を作製し、脳梗塞の定量に使用した。脳切片は、37℃の気相インキュベーターにて保温した2%(w/v)の2,3,5−トリフェニルテトラゾリウムクロリド(2,3,5−triphenyltetrazolium chloride:以下、TTCとも称す)を含む生理食塩液に浸し、同インキュベーター中で30分間保温することにより染色した。その後10%中性緩衝ホルマリン溶液に浸し、固定した。各切片の吻側面を写真撮影し、写真上でTTC染色領域(正常組織領域)と非染色領域(梗塞領域)を区分した。梗塞領域に関しては、大脳皮質領域(cortex)と大脳皮質以外の領域(subcortex)の二つの部位に分けて定量を実施し、併せて大脳皮質領域と大脳皮質以外の領域をまとめた総領域(total)についても解析を行った。梗塞体積は、梗塞面積に切片の厚さ(1mm)を乗することにより各切片の梗塞体積を計算し、これを6枚の切片に関して総和することにより求めた。また、脳浮腫による梗塞拡大の影響を考慮して、対側大脳面積と患側大脳面積との比を元に補正を行い、梗塞面積及び体積の結果は全て補正済みの値として算出した(Stroke 1993年;第24巻、第117〜121頁を参照)。最終的に、患側大脳半球に対する梗塞体積の割合を算出した。
3)抗ヒトTF抗体の薬効評価試験
(3−1)薬効試験構成
PIT法によるマウスMCA閉塞モデルを用いて、抗ヒトTF抗体の静脈内単回投与による脳梗塞抑制作用について検討した。本試験では、抗ヒトTF抗体の投与タイミング及び投与量を変えて、下記の3つの実験を行った。
(3−1)薬効試験構成
PIT法によるマウスMCA閉塞モデルを用いて、抗ヒトTF抗体の静脈内単回投与による脳梗塞抑制作用について検討した。本試験では、抗ヒトTF抗体の投与タイミング及び投与量を変えて、下記の3つの実験を行った。
実験1:光照射終了直後投与
・コントロール群
・抗ヒトTF抗体 0.1mg/kg投与群
・抗ヒトTF抗体 1mg/kg投与群
実験2:光照射終了直後投与
・コントロール群
・抗ヒトTF抗体 0.01mg/kg投与群
・抗ヒトTF抗体 0.03mg/kg投与群
・抗ヒトTF抗体 0.1mg/kg投与群
実験3:光照射終了3時間後投与
・コントロール群
・抗ヒトTF抗体 0.1mg/kg投与群
・抗ヒトTF抗体 1mg/kg投与群
抗ヒトTF抗体溶液(抗ヒトTF抗体投与群)あるいは抗ヒトTF抗体希釈用緩衝液(コントロール群)の投与は、rose bengal溶液投与と同一の経路を介して、すなわち頸静脈内に留置したカテーテルから、光照射終了後に単回投与として行った。投与は、MCA閉塞モデル作製者に群構成を盲検化して実施した。また、実験日毎に各群の均等かつ無作為な割り付けを行った。上述の脳梗塞体積を指標として抗ヒトTF抗体の薬効を評価した。
・コントロール群
・抗ヒトTF抗体 0.1mg/kg投与群
・抗ヒトTF抗体 1mg/kg投与群
実験2:光照射終了直後投与
・コントロール群
・抗ヒトTF抗体 0.01mg/kg投与群
・抗ヒトTF抗体 0.03mg/kg投与群
・抗ヒトTF抗体 0.1mg/kg投与群
実験3:光照射終了3時間後投与
・コントロール群
・抗ヒトTF抗体 0.1mg/kg投与群
・抗ヒトTF抗体 1mg/kg投与群
抗ヒトTF抗体溶液(抗ヒトTF抗体投与群)あるいは抗ヒトTF抗体希釈用緩衝液(コントロール群)の投与は、rose bengal溶液投与と同一の経路を介して、すなわち頸静脈内に留置したカテーテルから、光照射終了後に単回投与として行った。投与は、MCA閉塞モデル作製者に群構成を盲検化して実施した。また、実験日毎に各群の均等かつ無作為な割り付けを行った。上述の脳梗塞体積を指標として抗ヒトTF抗体の薬効を評価した。
4)統計学的解析方法
上述の抗ヒトTF抗体の薬効評価試験において、統計学的解析方法により薬効を評価し、梗塞体積に関してコントロール群と抗ヒトTF抗体投与群の間でDunnett検定により比較を行った。また、脳血流量低下の指標として、血流残存率及びTTOに関してコントロール群と抗ヒトTF抗体投与群の間でDunnett検定により比較を行った。マウス体重、手術時のマウス直腸温に関しても、コントロール群と抗ヒトTF抗体投与群の間でDunnett検定により比較を行った。結果は、全て平均値±標準誤差で示した。両側検定においてp<0.05を統計学的に有意とした。また、Web版SAS(Ver.6.12)統計解析ソフトを使用した。
上述の抗ヒトTF抗体の薬効評価試験において、統計学的解析方法により薬効を評価し、梗塞体積に関してコントロール群と抗ヒトTF抗体投与群の間でDunnett検定により比較を行った。また、脳血流量低下の指標として、血流残存率及びTTOに関してコントロール群と抗ヒトTF抗体投与群の間でDunnett検定により比較を行った。マウス体重、手術時のマウス直腸温に関しても、コントロール群と抗ヒトTF抗体投与群の間でDunnett検定により比較を行った。結果は、全て平均値±標準誤差で示した。両側検定においてp<0.05を統計学的に有意とした。また、Web版SAS(Ver.6.12)統計解析ソフトを使用した。
5)結果
脳梗塞体積は、患側大脳半球に対する割合(%)として図1〜3に示す。梗塞領域に関しては、脳全体の総領域(total)として定量する以外にも、大脳皮質領域(cortex)とそれ以外の領域(subcortex)の二つの部位に分けた定量結果も図1〜3に示す。
脳梗塞体積は、患側大脳半球に対する割合(%)として図1〜3に示す。梗塞領域に関しては、脳全体の総領域(total)として定量する以外にも、大脳皮質領域(cortex)とそれ以外の領域(subcortex)の二つの部位に分けた定量結果も図1〜3に示す。
実験1:光照射終了直後投与
抗ヒトTF抗体:0.1mg/kg及び抗ヒトTF抗体:1mg/kgの投与により、大脳皮質領域及び総領域おいて有意な脳梗塞抑制作用が認められた(図1を参照)。
抗ヒトTF抗体:0.1mg/kg及び抗ヒトTF抗体:1mg/kgの投与により、大脳皮質領域及び総領域おいて有意な脳梗塞抑制作用が認められた(図1を参照)。
実験2:光照射終了直後投与(低用量での作用検討)
抗ヒトTF抗体:0.1mg/kg投与により、総領域おいて有意な脳梗塞抑制作用が認められた(図2を参照)。
抗ヒトTF抗体:0.1mg/kg投与により、総領域おいて有意な脳梗塞抑制作用が認められた(図2を参照)。
実験3:光照射終了3時間後投与
抗ヒトTF抗体:1mg/kgの投与により、大脳皮質領域及び総領域おいて有意な脳梗塞抑制作用が認められた(図3を参照)。
抗ヒトTF抗体:1mg/kgの投与により、大脳皮質領域及び総領域おいて有意な脳梗塞抑制作用が認められた(図3を参照)。
実験1〜3におけるマウス体重、直腸温度及び脳血流量の測定値をそれぞれ表1〜3に示す。
PIT法によるマウスMCA閉塞モデルにおいては、10分間の光照射中にMCA内に血栓形成(いわゆる一次血栓形成)が起こり、急速に脳血流量が低下して脳虚血に陥ることが示された(表1〜3を参照)。なお、実験1〜3を通じて、手術時直腸温度、血流残存率及びTTOに関しては、各群で有意な差は生じなかった。従って、コントロール群と抗ヒトTF抗体群において一次血栓による脳血流量の低下は同程度であり、同一の脳虚血条件下で脳梗塞形成に対する抗ヒトTF抗体の効果が検証された。
実験1〜3の結果から、光照射終了後(すなわち一次血栓形成後)に抗ヒトTF抗体を投与した場合であっても脳梗塞抑制作用が示されることが明らかとなった。また、特に光照射終了3時間後からの投与で脳梗塞抑制作用が認められたことから、抗ヒトTF抗体が広いTTWを有することが明らかとなり、脳梗塞発症後の投与であっても梗塞の拡大を抑制できることが示された。
抗ヒトTF抗体はTF阻害作用を有することから、脳梗塞抑制作用が示された機序としては、抗ヒトTF抗体によりTFの関与する血栓形成が抑制され、その結果、血栓による脳血流量の低下が抑制されたものと考えられる。本実施例では、抗ヒトTF抗体が一次血栓形成後に投与されていることから、抗ヒトTF抗体により形成が抑制された血栓は第一に一次血栓の存在下で異なる部位に形成される複次血栓であると言える。また第二に、PIT法により形成された一次血栓は部分的に溶解して再灌流を生じ、その後同じ部位に血栓形成が生じる過程を繰り返すことが知られており、抗ヒトTF抗体はこの一次血栓と同じ部位に形成される複次血栓を抑制したことも考えられる。
本実施例は本発明の医薬組成物の脳梗塞に対する効果に関するものであるが、心臓、肺などその他の臓器においても、本発明の医薬組成物の投与が本実施例と同様な機序による梗塞抑制作用をもたらすことが本実施例により示唆される。
また、梗塞に限らず、血栓や塞栓が原因あるいは原因の一部となり発症する虚血性疾患全般において、複次血栓の形成が血流低下の進行させ、病状の拡大に関与するものと考えられている。従って、血栓や塞栓による虚血性疾患全般においても、本発明の医薬組成物の発症後の投与が治療効果をもたらすことが本実施例の結果から示唆される。
Claims (17)
- 血栓塞栓性虚血性疾患の発症後に投与するための、組織因子阻害物質を含む医薬組成物。
- 血栓塞栓性虚血性疾患の治療のために用いる、請求項1に記載の医薬組成物。
- 前記血栓塞栓性虚血性疾患が梗塞である、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
- 前記梗塞が脳梗塞である、請求項3に記載の医薬組成物。
- 組織因子阻害物質が組織因子に結合する抗体である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
- 血栓又は塞栓形成後に投与するための、組織因子阻害物質を含む医薬組成物。
- 血栓塞栓性虚血性疾患の治療のために用いる、請求項6に記載の医薬組成物。
- 前記血栓塞栓性虚血性疾患が梗塞である、請求項7に記載の医薬組成物。
- 前記梗塞が脳梗塞である、請求項8に記載の医薬組成物。
- 組織因子阻害物質が組織因子に結合する抗体である、請求項6〜9のいずれか1項に記載の医薬組成物。
- 一次血栓形成後に投与するための、組織因子阻害物質を含む複次血栓形成抑制剤。
- 組織因子阻害物質が組織因子に結合する抗体である、請求項11に記載の複次血栓形成抑制剤。
- 血栓又は塞栓形成後に投与するための、組織因子阻害物質を含む血流低下抑制剤。
- 組織因子阻害物質が組織因子に結合する抗体である、請求項13に記載の血流低下抑制剤。
- 一次血栓形成後に組織因子の作用を阻害することにより、複次血栓の形成を抑制する方法。
- 梗塞発症後に組織因子の作用を阻害することにより、梗塞の拡大を抑制する方法。
- 血栓形成後又は塞栓形成後に組織因子の作用を阻害することにより、血流量低下を抑制する方法。
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