JP2015147753A - 新生児低酸素性虚血性脳症の予防又は治療剤及びその利用 - Google Patents
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Abstract
【課題】新生児HIEの予防又は治療剤を提供する。【解決手段】抗IL−6レセプター抗体を有効成分として含有する、新生児HIEの予防又は治療剤とする。【選択図】なし
Description
本明細書は、新生児低酸素性虚血性脳症の予防又は治療剤及びその利用に関する。
脳性麻痺は、出生100人に対し2〜3人の割合で生じ、新生児医療が大きく進歩した昨今においても、解決されていない重大な問題である。脳性麻痺の大きな原因の1つとして、新生児仮死に続発する満期産児の低酸素性虚血性脳症(Hypoxic ischemic encephalopacy;HIE)などの新生児HIEが挙げられる。なかでも、HIEは、我が国においても、出生1000に対して0.29人の発症があり、そのうちの12%が死亡し、49%が後遺症を残すとされている。
一方、新生児HIEに対する根本的な治療法は未だ開発されていないのが現状である。近年その有効性が明らかとなってきた脳低体温療法においても、治療適用や設備等の問題があり常に有効な策とは言えない。新生児HIEに対する新しい治療法の開発は急務である。
抗インターロイキン−6(IL−6)は、B細胞刺激因子2又はインターフェロンβとも呼称されたサイトカインである。IL−6は、細胞上で二種のタンパク質を介してその活性を伝達する。1つは、IL−6が結合するリガンド結合性タンパク質のIL−6レセプターである。他の1つは、非リガンド結合性のリグなる伝達に関わる分子量約130kDの膜タンパク質gp130である。IL−6とIL−6レセプターとは、IL−6/IL−6レセプター複合体を形成し、次いでgp130と結合してIL−6の生物学的活性が細胞内に伝達される。
例えば、抗インターロイキン6(IL−6)レセプター抗体の投与は、成獣脊椎損傷にて治療効果があることが確認されている(非特許文献1)。一方、成獣脳梗塞では、むしろ悪化させることが報告されている(非特許文献2)。さらに、概して、IL−6の脳虚血における作用は神経保護作用であるとされている(非特許文献3)。
Okada S, et al. Neurosci Res. 2004;76(2):265-76
Yamashita T, et al. J Neurochem. 2005;94(2):459-68
南雅文、YAKUGAKU ZASSI 131(4) 539-544(2011)
上述のように、成獣においては、脊髄損傷に抗IL−6レセプター抗体の有効性が確認されているものの、虚血性脳疾患では、抗IL−6受容体抗体は、虚血面積を増大させることが知られていた。さらに抗IL−6レセプター抗体は、IL−6の神経保護作用を阻害する可能性も考えられる。以上のことから、新生児HIEに対して抗IL−6レセプター抗体の適用の有効性は全く予測できないのが現状であった。
本明細書は、新生児HIEの予防又は治療剤を提供する。
本発明者らは、HIEを発症した新生マウスに対して抗IL−6レセプター抗体を投与したところ、脳内虚血面積の抑制効果を確認した。HIEに関して抗IL−6レセプター抗体の適用が有効であるという知見を得た。本明細書は、この知見に基づき以下の手段を提供する。
(1)抗IL−6レセプター抗体を有効成分として含有する、新生児HIEの予防又は治療剤。
(2)前記抗IL−6レセプター抗体は、抗ヒトIL−6レセプター抗体である、(1)に記載の予防又は治療剤。
(3)前記抗IL−6レセプター抗体が、モノクローナル抗体である、(1)又は(2)に記載の予防又は治療剤。
(4)新生児用である、(1)〜(3)のいずれかに記載の予防又は治療剤。
(5)抗IL−6レセプター抗体が、ヒト抗体定常領域を有する抗体である、(1)〜(4)のいずれかに記載の予防又は治療剤。
(6)抗IL−6レセプター抗体が、IL−6レセプターに対するキメラ抗体又はヒト型化抗体である、(1)〜(5)のいずれかに記載の予防又は治療剤。
(2)前記抗IL−6レセプター抗体は、抗ヒトIL−6レセプター抗体である、(1)に記載の予防又は治療剤。
(3)前記抗IL−6レセプター抗体が、モノクローナル抗体である、(1)又は(2)に記載の予防又は治療剤。
(4)新生児用である、(1)〜(3)のいずれかに記載の予防又は治療剤。
(5)抗IL−6レセプター抗体が、ヒト抗体定常領域を有する抗体である、(1)〜(4)のいずれかに記載の予防又は治療剤。
(6)抗IL−6レセプター抗体が、IL−6レセプターに対するキメラ抗体又はヒト型化抗体である、(1)〜(5)のいずれかに記載の予防又は治療剤。
本明細書の開示は、抗IL−6レセプター抗体を有効成分として含有する新生児HIEの予防又は治療剤に関する。本開示によれば、新生児の低酸素性虚血性脳症において抗IL−6レセプター抗体の投与が脳虚血面積を減少することから、HIEを予防し又は治療できることが明らかとなった。
(抗IL−6レセプター抗体)
本開示で使用される抗IL-6レセプター抗体は、新生児HIEの治療効果、新生児HIEにおける脳虚血面積の減少効果を示すものであれば、その由来、種類および形状を問わない。
本開示で使用される抗IL-6レセプター抗体は、新生児HIEの治療効果、新生児HIEにおける脳虚血面積の減少効果を示すものであれば、その由来、種類および形状を問わない。
本開示で使用される抗IL-6レセプター抗体は、IL-6レセプターと結合することにより、IL-6のIL-6レセプターへの結合を阻害してIL-6の生物学的活性の細胞内への伝達を阻害する抗体である。したがって、本開示で使用される抗IL-6レセプター抗体は、IL-6の生物学的活性を中和する抗体が好ましい。
本開示で使用される抗IL-6レセプター抗体は、公知の手段を用いてポリクローナルまたはモノクローナル抗体として得ることができる。本発明で使用される抗IL-6レセプター抗体として、モノクローナル抗体が好ましい。さらに、モノクローナル抗体として、特に哺乳動物由来のモノクローナル抗体が好ましい。
哺乳動物由来のモノクローナル抗体としては、ハイブリドーマに産生されるもの、および遺伝子工学的手法により抗体遺伝子を含む発現ベクターで形質転換した宿主に産生されるものが挙げられる。
このような抗体としては、MR16-1抗体(Saito, et al., J. Immunol. (1993) 147, 168-173)、PM-1抗体(Hirata, et al., J. Immunology (1989) 143, 2900-2906 )、AUK12-20抗体、AUK64-7 抗体あるいはAUK146-15 抗体(国際特許出願公開番号WO 92-19759 )などが挙げられる。これらのうちで、特に好ましい抗体としてPM-1抗体が挙げられる。なお、PM-1抗体産生ハイブリドーマ細胞株は、PM-1として、工業技術院生命工学工業技術研究所(茨城県つくば市東1 丁目1 番3 号)に、平成2 年7 月10日に、FERM BP-2998としてブダペスト条約に基づき国際寄託されている。
また、MR16-1抗体産生ハイブリドーマ細胞株は、Rat-mouse hybridoma MR16-1として、工業技術院生命工学工業技術研究所(茨城県つくば市東1 丁目1 番3 号)に、平成9 年3 月13日に、FERM BP-5875としてブダペスト条約に基づき国際寄託されている。
( IL-6レセプターの調製)
感作抗原であるIL-6レセプターは、基本的には公知技術を使用して作製できる。具体的には、IL-6レセプターを作製するには次のようにすればよい。例えば、ヒトIL-6レセプターは、欧州特許出願公開番号EP 325474 に、マウスIL-6レセプターは日本特許出願公開番号特開平3-155795に開示されたIL-6レセプター遺伝子/アミノ酸配列を用いることによって得られる。抗体取得の感作抗原として使用されるIL-6レセプターは、ヒトIL-6レセプターが好ましい。
感作抗原であるIL-6レセプターは、基本的には公知技術を使用して作製できる。具体的には、IL-6レセプターを作製するには次のようにすればよい。例えば、ヒトIL-6レセプターは、欧州特許出願公開番号EP 325474 に、マウスIL-6レセプターは日本特許出願公開番号特開平3-155795に開示されたIL-6レセプター遺伝子/アミノ酸配列を用いることによって得られる。抗体取得の感作抗原として使用されるIL-6レセプターは、ヒトIL-6レセプターが好ましい。
IL-6レセプター蛋白質は、細胞膜上に発現しているものと細胞膜より離脱しているもの(可溶性IL-6レセプター)(Yasukawa, et al., J. Biochem. (1990) 108, 673-676 )との二種類がある。可溶性IL-6レセプター抗体は細胞膜に結合しているIL-6レセプターの本質的に細胞外領域から構成されており、細胞膜貫通領域、あるいは細胞膜貫通領域と細胞内領域が欠損している点で膜結合型IL-6レセプターと異なっている。抗体取得の感作抗原として使用されるIL-6レセプターは、その目的を達する限り、細胞膜に結合しているIL-6レセプターおよび可溶性IL-6レセプターのいずれでもよい。
IL-6レセプターの遺伝子配列を公知の発現ベクター系に挿入して適当な宿主細胞を形質転換させた後、その宿主細胞中または、培養上清中から目的のIL-6レセプター蛋白質を公知の方法で精製し、この精製IL-6レセプター蛋白質を感作抗原として用いればよい。また、IL-6レセプターを発現している細胞やIL-6レセプター蛋白質と他の蛋白質との融合蛋白質を感作抗原として用いてもよい。また、その目的を達する限り、IL-6レセプター変異体を抗体取得の感作抗原として使用することができる。ヒトIL-6レセプターをコードするcDNAを含むプラスミドpIBIBSF2R を含有する大腸菌(E.coli)は、HB101-pIBIBSF2R として、平成元年(1989年)1 月9 日付で工業技術院生命工学工業技術研究所に、受託番号FERM BP-2232としてブダペスト条約に基づき国際寄託されている。
(抗体産生ハイブリドーマの作製)
モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、基本的に公知技術を使用して、以下のように作製できる。すなわち、IL-6レセプターを感作抗原として使用して、これを通常の免疫方法にしたがって免疫し、得られる免疫細胞を通常の細胞融合法によって公知の親細胞と融合させ、通常のスクリーニング法により、モノクローナルな抗体産生細胞をスクリーニングすることによって作製できる。
モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、基本的に公知技術を使用して、以下のように作製できる。すなわち、IL-6レセプターを感作抗原として使用して、これを通常の免疫方法にしたがって免疫し、得られる免疫細胞を通常の細胞融合法によって公知の親細胞と融合させ、通常のスクリーニング法により、モノクローナルな抗体産生細胞をスクリーニングすることによって作製できる。
感作抗原で免疫される哺乳動物としては、特に限定されるものではないが、細胞融合に使用する親細胞との適合性を考慮して選択するのが好ましく、一般的にはげっ歯目、ウサギ目、霊長目の動物が使用される。げっ歯目の動物としては、例えばマウス、ラット、ハムスター等が使用される。ウサギ目の動物としては、例えばウサギが使用される。霊長目の動物としては、例えばサルが使用される。サルとしては、狭鼻下目のサル(旧世界ザル)、例えばカニクイザル、アカゲザル、マントヒヒ、チンパンジー等が使用される。
感作抗原を動物に免疫するには、公知の方法にしたがって行われる。例えば一般的方法として、感作抗原を哺乳動物の腹腔内または、皮下に注射することにより行われる。具体的には、感作抗原をPBS (Phosphate-Buffered Saline )や生理食塩水等で適当量に希釈、懸濁したものを所望により通常のアジュバント、例えばフロイント完全アジュバントを適量混合し、乳化後、哺乳動物に4 〜21日毎に数回投与するのが好ましい。また、感作抗原免疫時に適当な担体を使用することができる。
このように免疫し、血清中に所望の抗体レベルが上昇するのを確認した後に、哺乳動物から免疫細胞、例えばリンパ節細胞や脾細胞が取り出され、細胞融合に付される。細胞融合に付される好ましい免疫細胞としては、特に脾細胞が挙げられる。
前記免疫細胞と融合される他方の親細胞としての哺乳動物のミエローマ細胞は、すでに、公知の種々の細胞株、例えばP3X63Ag8.653(J. Immnol. (1979) 123, 1548-1550)、P3X63Ag8U.1 (Current Topics in Microbiology and Immunology (1978) 81, 1-7)、NS-1(Kohler. G. and Milstein, C. Eur. J. Immunol. (1976) 6, 511-519)、MPC-11(Margulies. D. H. et al., Cell (1976) 8, 405-415 )、SP2/0 (Shulman, M. et al., Nature (1978) 276, 269-270)、FO(de St. Groth, S. F. et al., J. Immunol. Methods (1980) 35, 1-21 )、S194(Trowbridge, I. S. J. Exp. Med. (1978) 148, 313-323)、R210(Galfre, G. et al., Nature (1979) 277, 131-133 )等が適宜使用される。
前記免疫細胞とミエローマ細胞の細胞融合は基本的には公知の方法、例えばミルステインらの方法(Kohler. G. and Milstein, C. 、Methods Enzymol. (1981) 73: 3-46)等に準じて行うことができる。より具体的には、前記細胞融合は、例えば細胞融合促進剤の存在下に通常の栄養培養液中で実施される。融合促進剤としては、例えばポリエチレングリコール(PEG )、センダイウィルス(HVJ )等が使用され、更に所望により融合効率を高めるためにジメチルスルホキシド等の補助剤を添加使用することもできる。
免疫細胞とミエローマ細胞との使用割合は、例えばミエローマ細胞に対して免疫細胞を1-10倍とするのが好ましい。前記細胞融合に用いる培養液としては、例えば前記ミエローマ細胞株の増殖に好適なRPMI1640培養液、MEM 培養液、その他この種の細胞培養に用いられる通常の培養液が使用可能であり、さらに、牛胎児血清(FCS )等の血清補液を併用することもできる。
細胞融合は、前記免疫細胞とミエローマ細胞との所定量を前記培養液中でよく混合し、予め、37℃程度に加温したPEG 溶液、例えば平均分子量1000-6000 程度のPEG 溶液を通常、30〜60%(w/v )の濃度で添加し、混合することによって目的とする融合細胞(ハイブリドーマ)が形成される。続いて、適当な培養液を逐次添加し、遠心して上清を除去する操作を繰り返すことによりハイブリドーマの生育に好ましくない細胞融合剤等を除去できる。
当該ハイブリドーマは、通常の選択培養液、例えばHAT 培養液(ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンを含む培養液)で培養することにより選択される。当該HAT 培養液での培養は、目的とするハイブリドーマ以外の細胞(非融合細胞)が死滅するのに十分な時間、通常数日〜数週間継続する。ついで、通常の限界希釈法を実施し、目的とする抗体を産生するハイブリドーマのスクリーニングおよびクローニングが行われる。
また、ヒト以外の動物に抗原を免疫して上記ハイブリドーマを得る他に、ヒトリンパ球をin vitroで所望の抗原蛋白質または抗原発現細胞で感作し、感作B リンパ球をヒトミエローマ細胞、例えばU266と融合させ、特定の抗原または抗原発現細胞への結合活性を有する所望のヒト抗体を得ることもできる(特公平1-59878 参照)。さらに、ヒト抗体遺伝子のレパートリーを有するトランスジェニック動物に抗原または抗原発現細胞を投与し、前述の方法に従い所望のヒト抗体を取得してもよい(国際特許出願公開番号WO 93-12227 、WO 92-03918 、WO 94-02602 、WO 94-25585 、WO 96-34096 、WO 96-33735 、米国特許番号US 5545806参照)。
このようにして作製されるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、通常の培養液中で継代培養することが可能であり、また、液体窒素中で長期保存することが可能である。当該ハイブリドーマからモノクローナル抗体を取得するには、当該ハイブリドーマを通常の方法にしたがい培養し、その培養上清として得る方法、あるいはハイブリドーマをこれと適合性がある哺乳動物に投与して増殖させ、その腹水として得る方法などが採用される。前者の方法は、高純度の抗体を得るのに適しており、一方、後者の方法は、抗体の大量生産に適している。
例えば、抗IL-6レセプター抗体産生ハイブリドーマの作製は、特開平3-139293に開示された方法により行うことができる。工業技術院生命工学工業技術研究所(茨城県つくば市東1 丁目1 番3 号)に、平成2 年7 月10日に、FERM BP-2998としてブタペスト条約に基づき国際寄託されたPM-1抗体産生ハイブリドーマをBALB/cマウス(日本クレア製)の腹腔内に注入して腹水を得、この腹水からPM-1抗体を精製する方法や、本ハイブリドーマを適当な培地、例えば10%ウシ胎児血清、5 %BM-Condimed H1(Boehringer Mannheim 製)含有RPMI1640培地、ハイブリドーマSFM 培地(GIBCO-BRL 製)、PFHM-II 培地(GIBCO-BRL 製)等で培養し、その培養上清からPM-1抗体を精製する方法で行うことができる。ハイブリドーマを作製して抗体を産生させる他に、所望の抗体を産生する免疫細胞、例えば感作リンパ球等を癌遺伝子(oncogene)により不死化させた細胞を用いて抗体を得てもよい。
(組換え型抗体)
本開示には、モノクローナル抗体として、抗体遺伝子を抗体産生細胞、例えばハイブリドーマからクローニングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主に導入し、遺伝子組換え技術を用いて産生させた組換え型抗体を用いることができる(例えば、Carl, A. K. Borrebaeck, James, W. Larrick, THERAPEUTIC MONOCLONAL ANTIBODIES, Published in the United Kingdom by MACMILLAN PUBLISHERS LTD, 1990 参照)。
本開示には、モノクローナル抗体として、抗体遺伝子を抗体産生細胞、例えばハイブリドーマからクローニングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主に導入し、遺伝子組換え技術を用いて産生させた組換え型抗体を用いることができる(例えば、Carl, A. K. Borrebaeck, James, W. Larrick, THERAPEUTIC MONOCLONAL ANTIBODIES, Published in the United Kingdom by MACMILLAN PUBLISHERS LTD, 1990 参照)。
具体的には、目的とする抗体を産生するハイブリドーマや抗体を産生する免疫細胞、例えば感作リンパ球等を癌遺伝子(oncogene)等により不死化させた細胞から、抗体の可変領域(V 領域)をコードするmRNAを単離する。mRNAの単離は、公知の方法、例えば、グアニジン超遠心法(Chirgwin, J. M. ら、Biochemistry (1979) 18, 5294-5299 )、AGPC法(Chmczynski, P.ら、(1987) 162, 156-159 )等により全RNA を調製し、mRNA Purification Kit (Pharmacia 製)等を使用してmRNAを調製する。また、QuickPrep mRNA Purification Kit(Pharmacia 製)を用いることによりmRNAを直接調製することができる。
得られたmRNAから逆転写酵素を用いて抗体V 領域のcDNAを合成する。cDNAの合成は、AMV Reverse Transcriptase First-strand cDNA Synthesis Kit 等を用いて行うことができる。また、cDNAの合成および増幅を行うには5'-Ampli FINDER RACE Kit (Clontech製)およびPCR を用いた5'-RACE 法(Frohman, M.A. ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1988) 85, 8998-9002 ;Belyavsky, A. ら、Nucleic Acids Res. (1989) 17, 2919-2932 )を使用することができる。得られたPCR 産物から目的とするDNA 断片を精製し、ベクターDNA と連結する。さらに、これより組換えベクターを作成し、大腸菌等に導入してコロニーを選択して所望の組換えベクターを調製する。目的とするDNA の塩基配列を公知の方法、例えば、デオキシ法により確認する。
目的とする抗体のV 領域をコードするDNA が得られれば、これを所望の抗体定常領域(C 領域)をコードするDNA と連結し、これを発現ベクターへ組み込む。または、抗体のV 領域をコードするDNA を、抗体C 領域のDNA を含む発現ベクターへ組み込んでもよい。本開示で使用される抗体を製造するには、後述のように抗体遺伝子を発現制御領域、例えば、エンハンサー/プロモーターの制御のもとで発現するよう発現ベクターに組み込む。次に、この発現ベクターにより宿主細胞を形質転換し、抗体を発現させることができる。
抗体遺伝子の発現は、抗体の重鎖(H 鎖)または軽鎖(L 鎖)を別々に発現ベクターに組み込んで宿主を同時形質転換させてもよいし、あるいはH 鎖およびL 鎖をコードするDNA を単一の発現ベクターに組み込んで宿主を形質転換させてもよい(国際特許出願公開番号WO 94-11523 参照)。
抗体遺伝子の発現は、抗体の重鎖(H 鎖)または軽鎖(L 鎖)を別々に発現ベクターに組み込んで宿主を同時形質転換させてもよいし、あるいはH 鎖およびL 鎖をコードするDNA を単一の発現ベクターに組み込んで宿主を形質転換させてもよい(国際特許出願公開番号WO 94-11523 参照)。
(改変抗体)
本開示では、ヒトに対する異種抗原性を低下させること等を目的として人為的に改変した遺伝子組換え型抗体、例えば、キメラ(Chimeric)抗体、ヒト型化(Humanized )抗体を使用できる。これらの改変抗体は、既知の方法を用いて製造することができる。
キメラ抗体は、前記のようにして得た抗体V 領域をコードするDNA をヒト抗体C 領域をコードするDNA と連結し、これを発現ベクターに組み込んで宿主に導入し産生させることにより得られる(欧州特許出願公開番号EP 125023 、国際特許出願公開番号WO 92-19759 参照)。この既知の方法を用いて、本開示に有用なキメラ抗体を得ることができる。
本開示では、ヒトに対する異種抗原性を低下させること等を目的として人為的に改変した遺伝子組換え型抗体、例えば、キメラ(Chimeric)抗体、ヒト型化(Humanized )抗体を使用できる。これらの改変抗体は、既知の方法を用いて製造することができる。
キメラ抗体は、前記のようにして得た抗体V 領域をコードするDNA をヒト抗体C 領域をコードするDNA と連結し、これを発現ベクターに組み込んで宿主に導入し産生させることにより得られる(欧州特許出願公開番号EP 125023 、国際特許出願公開番号WO 92-19759 参照)。この既知の方法を用いて、本開示に有用なキメラ抗体を得ることができる。
例えば、キメラPM-1抗体のL 鎖およびH 鎖のV 領域をコードするDNA を含むプラスミドは、各々pPM-k3およびpPM-h1と命名され、このプラスミドを有する大腸菌は、National Collections of Industrial and Marine Bacteria Limitedに、1991年2 月11日に、各々NCIMB 40366 、NCIMB40362としてブダペスト条約に基づき国際寄託されている(国際特許出願公開番号WO 92-19759 参照)。
ヒト型化抗体は、再構成(reshaped)ヒト抗体とも称され、ヒト以外の哺乳動物、例えばマウス抗体の相補性決定領域(CDR; complementarity determining region )をヒト抗体のCDR へ移植したものであり、その一般的な遺伝子組換え手法も知られている(欧州特許出願公開番号EP 125023 、国際特許出願公開番号WO 92-19759 参照)。
具体的には、マウス抗体のCDR とヒト抗体のフレームワーク領域(FR; framework region)を連結するように設計したDNA 配列を、末端部にオーバーラップする部分を有するように作製した数個のオリゴヌクレオチドからPCR 法により合成する。得られたDNA をヒト抗体C 領域をコードするDNA と連結し、次いで発現ベクターに組み込んで、これを宿主に導入し産生させることにより得られる(欧州特許出願公開番号EP 239400 、国際特許出願公開番号WO 92-19759 参照)。
CDR を介して連結されるヒト抗体のFRは、CDR が良好な抗原結合部位を形成するものが選択される。必要に応じ、再構成ヒト抗体のCDR が適切な抗原結合部位を形成するように抗体のV 領域のFRのアミノ酸を置換してもよい(Sato, K.et al., Cancer Res. (1993) 53,851-856 )。
キメラ抗体、ヒト型化抗体には、ヒト抗体C 領域が使用される。好ましいヒト抗体C 領域としては、C γが挙げられ、例えば、C γ1 、C γ2 、C γ3 、C γ4 を使用することができる。また、抗体またはその産生の安定性を改善するために、ヒト抗体C 領域を修飾してもよい。
キメラ抗体はヒト以外の哺乳動物抗体由来のV 領域とヒト抗体由来のC 領域からなり、ヒト型化抗体はヒト以外の哺乳動物抗体由来のCDR とヒト抗体由来のFRおよびC 領域からなり、ヒト体内における抗原性が低下しているため、本開示の治療剤の有効成分として有用である。
本開示に使用されるヒト型化抗体の好ましい具体例としては、ヒト型化PM-1抗体が挙げられる(国際特許出願公開番号WO 92-19759 参照)。
(抗体断片および抗体修飾物)
本開示で使用される抗体は、本開示に好適に使用され得るかぎり、抗体断片や抗体修飾物であってよい。例えば、抗体断片としては、Fab 、F(ab')2 、FvまたはシングルチェインFv(scFv)が挙げられる。scFvは H鎖とL 鎖のFvを適当なリンカーで連結させた構造を有する。
本開示で使用される抗体は、本開示に好適に使用され得るかぎり、抗体断片や抗体修飾物であってよい。例えば、抗体断片としては、Fab 、F(ab')2 、FvまたはシングルチェインFv(scFv)が挙げられる。scFvは H鎖とL 鎖のFvを適当なリンカーで連結させた構造を有する。
これらの抗体断片を得るためには、抗体を酵素、例えば、パパイン、ペプシンで処理し抗体断片を生成させるか、または、これら抗体断片をコードする遺伝子を構築し、これを発現ベクターに導入した後、適当な宿主細胞で発現させる(例えば、Co, M.S. et al., J. Immunol. (1994) 152, 2968-2976、Better, M. & Horwitz, A. H. Methods in Enzymology (1989) 178, 476-496, Academic Press, Inc. 、Plueckthun, A. & Skerra, A. Methods in Enzymology (1989) 178, 476-496, Academic Press, Inc. 、Lamoyi, E., Methods in Enzymology (1989) 121, 652-663 、Rousseaux, J. et al., Methods in Enzymology(1989) 121, 663-669 、Bird, R. E. et al., TIBTECH (1991) 9, 132-137 参照)。
scFvは、抗体のH 鎖V 領域とL 鎖V 領域を連結することにより得られる(国際特許出願公開番号WO 88-09344 参照)。このscFvにおいて、H 鎖V 領域とL 鎖V 領域はリンカー、好ましくは、ペプチドリンカーを介して連結される(Huston, J. S. et al.、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (1988) 85, 5879-5883)。scFvにおけるH 鎖V 領域およびL 鎖V 領域は、上記抗体として記載されたもののいずれの由来であってもよい。V 領域を連結するペプチドリンカーとしては、例えばアミノ酸12-19 残基からなる任意の一本鎖ペプチドが用いられる(米国特許US 5525491参照)。
scFvをコードするDNA は、前記抗体のH 鎖または、H 鎖V 領域をコードするDNA 、およびL 鎖または、L 鎖V 領域をコードするDNA を鋳型とし、それらの配列のうちの所望のアミノ酸配列をコードするDNA 部分を、その両端を規定するプライマー対を用いてPCR 法により増幅し、次いで、さらにペプチドリンカー部分をコードするDNA およびその両端を各々H 鎖、L 鎖と連結されるように規定するプライマー対を組み合せて増幅することにより得られる。
また、一旦scFvをコードするDNA が作製されれば、それらを含有する発現ベクター、および該発現ベクターにより形質転換された宿主を常法に従って得ることができる。また、その宿主を用いて常法に従って、scFvを得ることができる。
また、一旦scFvをコードするDNA が作製されれば、それらを含有する発現ベクター、および該発現ベクターにより形質転換された宿主を常法に従って得ることができる。また、その宿主を用いて常法に従って、scFvを得ることができる。
これら抗体断片は、前述のようにその遺伝子を取得し発現させ、宿主により産生させることができる。本願特許請求の範囲でいう「抗体」にはこれらの抗体断片も包含される。
抗体修飾物として、ポリエチレングリコール(PEG )等の各種分子と結合した抗体を使用することもできる。本願特許請求の範囲でいう「抗体」にはこれらの抗体修飾物も包含される。このような抗体修飾物を得るには、得られた抗体に化学的な修飾を施すことによって得ることができる。これらの方法はこの分野においてすでに確立されている。
抗体修飾物として、ポリエチレングリコール(PEG )等の各種分子と結合した抗体を使用することもできる。本願特許請求の範囲でいう「抗体」にはこれらの抗体修飾物も包含される。このような抗体修飾物を得るには、得られた抗体に化学的な修飾を施すことによって得ることができる。これらの方法はこの分野においてすでに確立されている。
(発現および産生)
前記のように構築した抗体遺伝子は、公知の方法により発現させ、抗体を取得することができる。哺乳類細胞を使用する場合、常用される有用なプロモーター/エンハンサー、発現される抗体遺伝子、その3'側下流にポリA シグナルを機能的に結合させたDNA あるいはそれを含むベクターにより発現させることができる。例えばプロモーター/エンハンサーとしては、ヒトサイトメガロウィルス前期プロモーター/エンハンサー(human cytomegalovirus immediate early promoter/enhancer )を挙げることができる。
前記のように構築した抗体遺伝子は、公知の方法により発現させ、抗体を取得することができる。哺乳類細胞を使用する場合、常用される有用なプロモーター/エンハンサー、発現される抗体遺伝子、その3'側下流にポリA シグナルを機能的に結合させたDNA あるいはそれを含むベクターにより発現させることができる。例えばプロモーター/エンハンサーとしては、ヒトサイトメガロウィルス前期プロモーター/エンハンサー(human cytomegalovirus immediate early promoter/enhancer )を挙げることができる。
また、その他に本開示で使用される抗体発現に使用できるプロモーター/エンハンサーとして、レトロウィルス、ポリオーマウィルス、アデノウィルス、シミアンウィルス40(SV 40 )等のウィルスプロモーター/エンハンサーやヒトエロンゲーションファクター1 α(HEF1α)などの哺乳類細胞由来のプロモーター/エンハンサーを用いればよい。
例えば、SV 40 プロモーター/エンハンサーを使用する場合、Mulliganらの方法(Nature (1979) 277, 108)、また、HEF1αプロモーター/エンハンサーを使用する場合、Mizushima らの方法(Nucleic Acids Res. (1990) 18, 5322)に従えば容易に実施することができる。
例えば、SV 40 プロモーター/エンハンサーを使用する場合、Mulliganらの方法(Nature (1979) 277, 108)、また、HEF1αプロモーター/エンハンサーを使用する場合、Mizushima らの方法(Nucleic Acids Res. (1990) 18, 5322)に従えば容易に実施することができる。
大腸菌の場合、常用される有用なプロモーター、抗体分泌のためのシグナル配列、発現させる抗体遺伝子を機能的に結合させて発現させることができる。例えばプロモーターとしては、lacZプロモーター、araBプロモーターを挙げることができる。lacZプロモーターを使用する場合、Wardらの方法(Nature (1098) 341, 544-546;FASEB J. (1992) 6, 2422-2427)、araBプロモーターを使用する場合、Betterらの方法(Science (1988) 240, 1041-1043 )に従えばよい。
抗体分泌のためのシグナル配列としては、大腸菌のペリプラズムに産生させる場合、pelBシグナル配列(Lei, S. P. et al J. Bacteriol. (1987) 169, 4379 )を使用すればよい。ペリプラズムに産生された抗体を分離した後、抗体の構造を適切にリフォールド(refold)して使用する(例えば、国際特許出願公開番号WO96-30394、日本特許出願公告特公平7-93879 を参照)。
抗体分泌のためのシグナル配列としては、大腸菌のペリプラズムに産生させる場合、pelBシグナル配列(Lei, S. P. et al J. Bacteriol. (1987) 169, 4379 )を使用すればよい。ペリプラズムに産生された抗体を分離した後、抗体の構造を適切にリフォールド(refold)して使用する(例えば、国際特許出願公開番号WO96-30394、日本特許出願公告特公平7-93879 を参照)。
複製起源としては、SV 40 、ポリオーマウィルス、アデノウィルス、ウシパピローマウィルス(BPV )等の由来のものを用いることができる。さらに、宿主細胞系で遺伝子コピー数増幅のため、発現ベクターは選択マーカーとして、アミノグリコシドトランスフェラーゼ(APH )遺伝子、チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、大腸菌キサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Ecogpt)遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素(dhfr)遺伝子等を含むことができる。
本開示で使用される抗体の製造のために、任意の産生系を使用することができる。抗体製造のための産生系は、in vitroおよびin vivo の産生系がある。in vitroの産生系としては、真核細胞を使用する産生系や原核細胞を使用する産生系が挙げられる。
本開示で使用される抗体の製造のために、任意の産生系を使用することができる。抗体製造のための産生系は、in vitroおよびin vivo の産生系がある。in vitroの産生系としては、真核細胞を使用する産生系や原核細胞を使用する産生系が挙げられる。
真核細胞を使用する場合、動物細胞、植物細胞、真菌細胞を用いる産生系がある。動物細胞としては、(1) 哺乳類細胞、例えばCHO (J. Exp. Med. (1995) 108, 945)、COS 、ミエローマ、BHK (baby hamster kidney )、HeLa、Vero、(2) 両生類細胞、例えばアフリカツメガエル卵母細胞(Valle, et al., Nature (1981) 291, 358-340 )、あるいは(3) 昆虫細胞、例えばsf9 、sf21、Tn5 が知られている。CHO 細胞としては、特にDHFR遺伝子を欠損したCHO 細胞であるdhfr-CHO(Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1980) 77, 4216-4220 )やCHO K-1 (Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1968) 60, 1275)を好適に使用することができる。
植物細胞としては、Nicotiana tabacum 由来の細胞が知られており、これをカルス培養すればよい。真菌細胞としては、酵母、例えばサッカロミセス(Saccharomyces )属、例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、糸状菌、例えばアスペルギウス属(Aspergillus )属、例えばアスペルギウス・ニガー(Aspergillus niger )などが知られている。
原核細胞を使用する場合、細菌細胞を用いる産生系がある。細菌細胞としては、大腸菌(E. coli )、枯草菌が知られている。
原核細胞を使用する場合、細菌細胞を用いる産生系がある。細菌細胞としては、大腸菌(E. coli )、枯草菌が知られている。
これらの細胞に、目的とする抗体遺伝子を形質転換により導入し、形質転換された細胞をin vitroで培養することにより抗体が得られる。培養は、公知の方法に従い行う。例えば、培養液として、DMEM、MEM 、RPMI1640、IMDMを使用することができる。その際、牛胎児血清(FCS )等の血清補液を併用することもできるし、無血清培養してもよい。また、抗体遺伝子を導入した細胞を動物の腹腔等へ移すことにより、in vivo にて抗体を産生してもよい。
一方、in vivo の産生系としては、動物を使用する産生系や植物を使用する産生系が挙げられる。これらの動物または植物に抗体遺伝子を導入し、動物または植物の体内で抗体を産生させ、回収する。
動物を使用する場合、哺乳類動物、昆虫を用いる産生系がある。
哺乳類動物としては、ヤギ、ブタ、ヒツジ、マウス、ウシを用いることができる(Vicki Glaser, SPECTRUM Biotechnology Applications, 1993 )。また、哺乳類動物を用いる場合、トランスジェニック動物を用いることができる。
動物を使用する場合、哺乳類動物、昆虫を用いる産生系がある。
哺乳類動物としては、ヤギ、ブタ、ヒツジ、マウス、ウシを用いることができる(Vicki Glaser, SPECTRUM Biotechnology Applications, 1993 )。また、哺乳類動物を用いる場合、トランスジェニック動物を用いることができる。
例えば、抗体遺伝子をヤギβカゼインのような乳汁中に固有に産生される蛋白質をコードする遺伝子の途中に挿入して融合遺伝子として調製する。抗体遺伝子が挿入された融合遺伝子を含むDNA 断片をヤギの胚へ注入し、この胚を雌のヤギへ導入する。胚を受容したヤギから生まれるトランスジェニックヤギまたはその子孫が産生する乳汁から所望の抗体を得る。トランスジェニックヤギから産生される所望の抗体を含む乳汁量を増加させるために、適宜ホルモンをトランスジェニックヤギに使用してもよい。(Ebert, K.M. et al., Bio/Technology (1994) 12, 699-702 )。
また、昆虫としては、例えばカイコを用いることができる。カイコを用いる場合、目的の抗体遺伝子を挿入したバキュロウィルスをカイコに感染させ、このカイコの体液より所望の抗体を得る(Susumu, M. et al., Nature (1985) 315, 592-594 )。
さらに植物を使用する場合、例えばタバコを用いることができる。タバコを用いる場合、目的の抗体遺伝子を植物発現用ベクター、例えばpMON 530に挿入し、このベクターをAgrobacterium tumefaciens のようなバクテリアに導入する。このバクテリアをタバコ、例えばNicotiana tabacum に感染させ、本タバコの葉より所望の抗体を得る(Julian, K.-C. Ma et al., Eur. J. Immunol. (1994) 24, 131-138)。
さらに植物を使用する場合、例えばタバコを用いることができる。タバコを用いる場合、目的の抗体遺伝子を植物発現用ベクター、例えばpMON 530に挿入し、このベクターをAgrobacterium tumefaciens のようなバクテリアに導入する。このバクテリアをタバコ、例えばNicotiana tabacum に感染させ、本タバコの葉より所望の抗体を得る(Julian, K.-C. Ma et al., Eur. J. Immunol. (1994) 24, 131-138)。
上述のようにin vitroまたはin vivo の産生系にて抗体を産生する場合、抗体のH 鎖またはL 鎖をコードするDNA を別々に発現ベクターに組み込んで宿主を同時形質転換させてもよいし、あるいはH 鎖およびL 鎖をコードするDNA を単一の発現ベクターに組み込んで、宿主を形質転換させてもよい(国際特許出願公開番号WO 94-11523 参照)。宿主への発現ベクターの導入方法としては、公知の方法、例えばリン酸カルシウム法(Virology (1973) 52, 456-467 )やエレクトロポレーション法(EMBO J. (1982) 1, 841-845 )等が用いられる。
(抗体の分離、精製)
前記のように産生、発現された抗体は、細胞内外、宿主から分離し均一にまで精製することができる。本開示で使用される抗体の分離、精製は、通常の蛋白質の精製で使用されている分離、精製方法を使用すればよく、何ら限定されるものではない。例えば、アフィニティークロマトグラフィー等のクロマトグラフィーカラム、フィルター、限外濾過、塩析、透析等を適宜選択、組み合わせれば抗体を分離、精製することができる(Antibodies: A Laboratory Manual. Ed Harlow and David Lane, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988)。
前記のように産生、発現された抗体は、細胞内外、宿主から分離し均一にまで精製することができる。本開示で使用される抗体の分離、精製は、通常の蛋白質の精製で使用されている分離、精製方法を使用すればよく、何ら限定されるものではない。例えば、アフィニティークロマトグラフィー等のクロマトグラフィーカラム、フィルター、限外濾過、塩析、透析等を適宜選択、組み合わせれば抗体を分離、精製することができる(Antibodies: A Laboratory Manual. Ed Harlow and David Lane, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988)。
アフィニティークロマトグラフィーに用いるカラムとしては、例えばプロテインA カラム、プロテインG カラムが挙げられる。プロテインA カラムに用いる担体として、例えばHyper D 、POROS 、Sepharose F.F. (Pharmacia)等が挙げられる。
アフィニティークロマトグラフィー以外のクロマトグラフィーとしては、例えばイオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、ゲル濾過、逆相クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー等が挙げられる(Strategies for Protein Purification and Characterization: A Laboratory Course Manual. Ed Daniel R. Marshak et al., Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1996)。
これらのクロマトグラフィーは、液相クロマトグラフィー、例えばHPLC、FPLC等の液相クロマトグラフィーを用いて行うことができる。
アフィニティークロマトグラフィー以外のクロマトグラフィーとしては、例えばイオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、ゲル濾過、逆相クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー等が挙げられる(Strategies for Protein Purification and Characterization: A Laboratory Course Manual. Ed Daniel R. Marshak et al., Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1996)。
これらのクロマトグラフィーは、液相クロマトグラフィー、例えばHPLC、FPLC等の液相クロマトグラフィーを用いて行うことができる。
(抗体の濃度測定)
得られた抗体の濃度測定は、吸光度の測定または酵素結合免疫吸着検定法(enzyme-linked immunosorbent assay; ELISA)等により行うことができる。すなわち、吸光度の測定による場合には、得られた抗体をPBS で適当に希釈した後、280 nmの吸光度を測定する。例えば、ヒト抗体の場合、1 mg/ml を1.35 OD として算出すればよい。
得られた抗体の濃度測定は、吸光度の測定または酵素結合免疫吸着検定法(enzyme-linked immunosorbent assay; ELISA)等により行うことができる。すなわち、吸光度の測定による場合には、得られた抗体をPBS で適当に希釈した後、280 nmの吸光度を測定する。例えば、ヒト抗体の場合、1 mg/ml を1.35 OD として算出すればよい。
また、ELISA による場合は以下のように測定することができる。すなわち、0.1M 重炭酸緩衝液(pH9.6 )で1 mg/ml に希釈したヤギ抗ヒトIgG (TAGO製)100 ml を96穴プレート(Nunc製)に加え、4℃で一晩インキュベートし、抗体を固層化する。ブロッキングの後、適宜希釈した本開示で使用される抗体または抗体を含むサンプル、あるいは濃度標準品として既知の濃度のヒトIgG (CAPPEL製)100 ml を添加し、室温にて1時間インキュベートする。洗浄後、5000倍希釈したアルカリフォスファターゼ標識抗ヒトIgG (BIO SOURCE製)100ml を加え、室温にて1時間インキュベートする。洗浄後、基質溶液を加えインキュベートの後、MICROPLATE READER Model 3550(Bio-Rad 製)を用いて405nm での吸光度を測定し、目的の抗体の濃度を算出する。
また、抗体の濃度測定には、BIAcore (Pharmacia 製)を使用することができる。
また、抗体の濃度測定には、BIAcore (Pharmacia 製)を使用することができる。
(抗体の活性の確認)
本開示で使用される抗IL-6レセプター抗体の抗原結合活性、結合阻害活性、中和活性の評価は、通常知られた方法を使用することができる。例えば、IL-6反応性細胞、例えばMH60.BSF2 を培養したプレートにIL-6を添加する。ついで抗IL-6レセプター抗体を共存させることによりIL-6反応性細胞の3H標識チミジン取込みを指標として評価すればよい。また、IL-6レセプター発現細胞、例えばU266を培養したプレートに抗IL-6レセプター抗体と125I標識IL-6を加える。そして、IL-6レセプター発現細胞に結合した125I標識IL-6を測定することにより評価すればよい(Antibodies: A Laboratory Manual. Ed Harlow and David Lane, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988)。
本開示で使用される抗IL-6レセプター抗体の抗原結合活性、結合阻害活性、中和活性の評価は、通常知られた方法を使用することができる。例えば、IL-6反応性細胞、例えばMH60.BSF2 を培養したプレートにIL-6を添加する。ついで抗IL-6レセプター抗体を共存させることによりIL-6反応性細胞の3H標識チミジン取込みを指標として評価すればよい。また、IL-6レセプター発現細胞、例えばU266を培養したプレートに抗IL-6レセプター抗体と125I標識IL-6を加える。そして、IL-6レセプター発現細胞に結合した125I標識IL-6を測定することにより評価すればよい(Antibodies: A Laboratory Manual. Ed Harlow and David Lane, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988)。
また、本開示で使用される抗IL-6レセプター抗体の抗原結合活性を測定する方法として、ELISA 、EIA (酵素免疫測定法)、RIA (放射免疫測定法)あるいは蛍光抗体法を用いることができる。例えば、ELISA を用いる場合、IL-6レセプター抗体に対する抗体、例えばそのC 領域に対する抗体を固相化した96穴プレートにIL-6レセプターを添加し、次いで目的の抗IL-6レセプター抗体を含む試料、例えば抗IL-6レセプター抗体産生細胞の培養上清や精製抗体を加える。
アルカリフォスファターゼ等の酵素で標識した目的の抗IL-6レセプター抗体を認識する二次抗体を添加し、プレートをインキュベートおよび洗浄した後、p- ニトロフェニルリン酸等の酵素基質を加えて吸光度を測定することにより抗原結合活性を評価することができる。IL-6レセプターとして、可溶性IL-6レセプターを使用してもよい。
本開示で使用される抗IL-6レセプター抗体のリガンドレセプター結合阻害活性を測定する方法としては、通常のCell ELISA、あるいはリガンドレセプター結合アッセイを用いることができる。
本開示で使用される抗IL-6レセプター抗体のリガンドレセプター結合阻害活性を測定する方法としては、通常のCell ELISA、あるいはリガンドレセプター結合アッセイを用いることができる。
例えば、Cell ElLISA の場合、IL-6レセプターを発現する細胞を96穴プレートで培養して接着させ、パラホルムアルデヒド等で固定化する。または、IL-6レセプターを発現する細胞の膜分画を調製して固相化した96穴プレートを作製する。このプレートに目的の抗IL-6レセプター抗体を含む試料、例えば抗IL-6レセプター抗体産生細胞の培養上清や精製抗体を、放射性同位元素、例えば125I等で標識したIL-6を添加する。
プレートをインキュベートおよび洗浄した後、放射活性を測定することでIL-6レセプターに結合したIL-6量を測定でき、抗IL-6レセプター抗体のリガンドレセプター結合阻害活性を評価することができる。
プレートをインキュベートおよび洗浄した後、放射活性を測定することでIL-6レセプターに結合したIL-6量を測定でき、抗IL-6レセプター抗体のリガンドレセプター結合阻害活性を評価することができる。
例えば、細胞上のIL-6レセプターに対するIL-6の結合阻害アッセイには、IL-6レセプターを発現する細胞を遠心分離等の手段で分離した後、細胞懸濁液として調製する。放射性同位元素、例えば125I等で標識したIL-6の溶液あるいは非標識IL-6と標識IL-6の混合溶液と濃度調製した抗IL-6レセプター抗体を含む溶液を細胞懸濁液に添加する。一定時間の後、細胞を分離し細胞上に結合した標識IL-6の放射活性を測定すればよい。
上記抗体の活性評価には、BIAcore (Pharmacia 製)を使用することができる。
上記抗体の活性評価には、BIAcore (Pharmacia 製)を使用することができる。
(治療効果の確認)
本開示の予防および/または治療剤の治療対象疾患は、新生児HIEである。新生児HIEとは、周産期胎児及び新生児において発症するHIEである。周産期胎児及び新生児において発症する限り、新生児期を経過しても本開示における新生児HIEに含まれる。なお、新生児とは、出生後28日未満のヒト乳児である。
本開示の予防および/または治療剤の治療対象疾患は、新生児HIEである。新生児HIEとは、周産期胎児及び新生児において発症するHIEである。周産期胎児及び新生児において発症する限り、新生児期を経過しても本開示における新生児HIEに含まれる。なお、新生児とは、出生後28日未満のヒト乳児である。
本開示により達成される効果は、抗IL-6レセプター抗体を、新生児HIEの病態を呈するモデル動物に投与することによりその効果を確認できる。使用できるモデル動物としては、ヒトの新生児のHIEの病態を最もよくあらわすモデル動物が用いられる。例えば、ヒトの新生児のHIEの病態を最もよくあらわすモデル動物は、後述する実施例で示すように、生後7日目のマウスの右総頸動脈を二箇所において結紮し切離して、休息後8%37℃20分の低酸素負荷を付与することで得ることができる。
新生児HIEは、妊娠中や出産の際、何らかの原因で胎児や新生児の脳に酸素を十分に含んだ血液が循環しなくなり、低酸素、虚血によって脳障害を含む様々な脳神経障害を起こす異常の総称である。
後述の実施例に示されるように、新生児HIEモデルマウスへ抗IL-6レセプター抗体を投与することにより、脳内虚血面積の減少が認められた。新生児HIEモデルマウスは、ヒト新生児HIEの病態をよく反映しているモデル動物であることから、抗IL-6レセプター抗体は新生児HIEに対して治療効果を有することがわかった。
以上のことから、本開示の予防又は治療剤は、新生児HIEの予防又は治療剤として有用である。本開示の予防又は治療剤は、脳内虚血面積を減少させるための予防又は治療剤として有用である。また、amplitude integrated electroencephalography(aEEG)を用いて、Peter D Gluckman, et al., Lancet 2005; 365-: 663-670に記載されるように分類して、中程度HIE及び重症HIEを定義することもできる。本開示の予防又は治療剤は、中程度HIE及び重症HIEにも好適に適用できる。
(投与経路および製剤)
本開示の予防又は治療剤は、経口的あるいは非経口的に全身あるいは局所的に投与することができる。非経口的投与としては、例えば、点滴などの静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射を選択することができる。
本開示の予防又は治療剤は、経口的あるいは非経口的に全身あるいは局所的に投与することができる。非経口的投与としては、例えば、点滴などの静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射を選択することができる。
本開示の予防又は治療剤は、HIEを発症した患者にHIEの症状を治癒するか、あるいは少なくとも部分的に阻止するために十分な量で投与される。例えば、有効投与量は、一回につき体重1 kgあたり0.01 mg から100 mgの範囲で選ばれる。あるいは、患者あたり1-1000 mg 、好ましくは5-50 mg の投与量を選ぶことができる。しかしながら、本開示の予防および/または治療剤はこれらの投与量に制限されるものではない。投与時期は、HIEが生じてから投与してもよいし、あるいはHIEの発症が予測される時に発症時の症状緩和のために予防的に投与してもよい。また、投与期間は、患者の年齢、症状により適宜選択することができる。
本開示の予防又は治療剤は、投与経路次第で医薬的に許容される担体や添加物を共に含むものであってもよい。このような担体および添加物の例として、水、医薬的に許容される有機溶媒、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、寒天、ジグリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン(HSA )、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、医薬添加物として許容される界面活性剤などが挙げられる。使用される添加物は、剤型に応じて上記の中から適宜あるいは組合せて選択されるが、これらに限定されるものではない。
以下、実施例を提示して本開示を具体的に説明するが、本開示はこれらに限定されるものではない。
(1)HIEモデルの作成(P7 mouse)
まず、生後7日齢のC57−BL6Jマウスの右総頸動脈を二箇所結紮した。すなわち、ペントバルビタール(ネンブタール)を腹腔内投与後、マウスの四肢と首とを伸展させ、伏臥位でテープ固定した。頸部の正中やや右よりを1cm程度切開し、曲がりセッシ(鈍)で少しずつ剥離し、総頚動脈を見つける拍動を確認、その後、曲がりセッシ(鋭)で動脈をすくいながら、神経や結合組織を落とす。総頸動脈を上下2ヵ所で結紮し、間を切離し、皮膚を針つきで1針で縫合した。
まず、生後7日齢のC57−BL6Jマウスの右総頸動脈を二箇所結紮した。すなわち、ペントバルビタール(ネンブタール)を腹腔内投与後、マウスの四肢と首とを伸展させ、伏臥位でテープ固定した。頸部の正中やや右よりを1cm程度切開し、曲がりセッシ(鈍)で少しずつ剥離し、総頚動脈を見つける拍動を確認、その後、曲がりセッシ(鋭)で動脈をすくいながら、神経や結合組織を落とす。総頸動脈を上下2ヵ所で結紮し、間を切離し、皮膚を針つきで1針で縫合した。
マウスを箱に入れ、37℃で1〜2時間休ませた後、抗IL−6レセプター抗体(MR16-1、中外製薬株式会社)及びコントロール(ラットIgG)を体重(g)あたり10μl(100μg)を腹腔内投与した。O28%、37℃に設定したおいた低酸素インキュベーターにマウスを箱ごと投入し、15〜20分放置して低酸素負荷を与えた。その後、37℃で一時間休ませた後、母親ケージに戻した。
(2)虚血面積の測定
低酸素負荷から48時間後に、各群2mm間隔の脳切片(6枚)のTTC染色を行い、平均虚血面積を比較した。TTC染色は、以下のとおりに行った。
低酸素負荷から48時間後に、各群2mm間隔の脳切片(6枚)のTTC染色を行い、平均虚血面積を比較した。TTC染色は、以下のとおりに行った。
(TTC染色)
TTC(トリフェニルテトラゾリウムクロライド)をPBSに溶解し1%溶液を調製した。さらに、この1%TTC溶液を6 well plateに3mlずつ入れて、37℃で30〜40分インキュベートした。次いで、ラットを生食10mlで灌流し血液を除いた。灌流は、以下の通り行った。ラットをエーテル麻酔後、肋骨下端で横切開し、横隔膜を切り上げ、肋骨を切断しながら左右の腋窩まで切り上げた後、直鉗子で切断片を翻転固定し、心臓を露出した。右心耳(RA)に針で脱血用の穴をあけ、左心室LVに灌流針を固定し、生食をゆっくり注入した。
TTC(トリフェニルテトラゾリウムクロライド)をPBSに溶解し1%溶液を調製した。さらに、この1%TTC溶液を6 well plateに3mlずつ入れて、37℃で30〜40分インキュベートした。次いで、ラットを生食10mlで灌流し血液を除いた。灌流は、以下の通り行った。ラットをエーテル麻酔後、肋骨下端で横切開し、横隔膜を切り上げ、肋骨を切断しながら左右の腋窩まで切り上げた後、直鉗子で切断片を翻転固定し、心臓を露出した。右心耳(RA)に針で脱血用の穴をあけ、左心室LVに灌流針を固定し、生食をゆっくり注入した。
次いで、マウスの項部の皮膚を横切開し、後頭部から前頭部へ縦に切開を広げ、皮膚を翻転させ、保持した。頭蓋骨を側頭から縫合線にそって切断し、頭頂部から前頭部へ切開を広げて脳を損傷しないよう注意して骨を剥離し、大脳を摘出した。摘出した大脳から2mm厚のスライス脳切片を作製した。
作製した切片を調製済みの6 well plateに浸し(37℃、10分程度:十分染色されるまで)、TTC溶液をピペットで除去して10%ホルムアルデヒド液2mlに置換、48時間以上浸した。こうして染色された脳切片を1週間以内に写真撮影した。写真から判定した各マウスの虚血面積を各群で平均化した。結果を図1に示す。
図1に示すように、抗IL−6レセプター抗体投与群の平均虚血面積は、コントロール群の平均虚血面積よりも有意に減少していた。以上のことから、抗IL−6レセプター抗体による脳虚血における虚血面積減少効果を確認できた。
実施例1に準じて処置した生後7日齢のC57−BL6Jマウスの低酸素インキュベーターでの放置時間を異ならせて、コントロール群での平均虚血面積を5%以下、5%超10%以下、10%超の3群となるようにし、抗IL−6レセプター抗体投与群も同様の低酸素条件で処置した。TTC染色後の写真から判定した各マウスの虚血面積を各群で平均化した。結果を図2に示す。
図2に示すように、全ての低酸素負荷レベルで抗IL−6レセプター抗体投与の効果は認められた。なかでも、平均虚血面積が10%超となる低酸素負荷レベルが高い群では、抗IL−6レセプター抗体投与の効果が平均虚血面積が10%以下の群よりも、抗IL−6レセプター抗体投与の効果が大きかった。
以上のことから、抗IL−6レセプター抗体の投与は、低酸素負荷が大きい、すなわち、平均虚血面積が比較的大きくなる重症のHIEに対してより有効であることがわかった。
実施例1と同様に操作して抗IL−6レセプター抗体投与群とコントロール群を作製し、抗体又はコントロール投与後0、2、4及び24時間経過後の時点でマウス心臓から採血して血清を分離した。この血清につき、MouseIL-6ELISA Kit (Endogan Co., Ltd.)にて血清中のIL-6濃度を測定した。結果を、図3に示す。
図3に示すように、IL−6濃度のピークは投与後約2時間経過後にあり、24時間経過後には投与前に近くなった。抗体投与群では、IL−6レセプターがブロックされているため、血清中のIL−6濃度が高値になると考えられる。
以上のことから、腹腔内投与された抗IL−6レセプター抗体は、全身の血液中において作用していることがわかった。
実施例1と同様に操作して抗IL−6レセプター抗体投与群と対照群1(ラットIgG投与)及び対照群2(溶媒投与)を作製し、負荷から3時間経過後の時点で脳を摘出し、パラホルムアルデヒドを利用(0.2Mリン酸バッファpH7.4:8%PFA溶液(pH7.0)(1:1)混液で固定)してパラフィン切片を作製した。パラフィン切片につき、抗ラットIgG抗体で免疫染色(DAB)を行った。なお、免疫染色は、脱パラフィン後に、3% 過酸化水素を200μl/切片ずつ加えインキュベート後、TBSで洗浄、所定のブロッキング溶液にてブロッキング後に洗浄し、一次抗体を加えてインキュベート後に洗浄し、二次抗体を加えてインキュベート後に洗浄した後、ABC標準液を添加・洗浄後に、DABを加えた。結果を図4に示す。
図4に示すように、抗IL−6レセプター抗体投与群では、抗IL−6レセプター抗体の脳局在を確認できた。なお、本例においては、酸素負荷が小さく虚血部位が小さかったため、DAB染色部位も小さくなった。
以上のことから、投与された抗IL−6レセプター抗体は確かに脳の虚血部位に存在していることがわかった。
Claims (6)
- 抗IL−6受容体抗体を有効成分として含有する、新生児低酸素性虚血性脳症の予防又は治療剤。
- 前記抗IL−6レセプター抗体は、抗ヒトIL−6レセプター抗体である、請求項1に記載の予防又は治療剤。
- 前記抗IL−6レセプター抗体が、モノクローナル抗体である、請求項1又は2に記載の予防又は治療剤。
- 新生児用である、請求項1〜3のいずれかに記載の予防又は治療剤。
- 抗IL−6レセプター抗体が、ヒト抗体定常領域を有する抗体である、請求項1〜4のいずれかに記載の予防又は治療剤。
- 抗IL−6レセプター抗体が、IL−6レセプターに対するキメラ抗体又はヒト型化抗体である、請求項1〜5のいずれかに記載の予防又は治療剤。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2014022411A JP2015147753A (ja) | 2014-02-07 | 2014-02-07 | 新生児低酸素性虚血性脳症の予防又は治療剤及びその利用 |
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JP2014022411A JP2015147753A (ja) | 2014-02-07 | 2014-02-07 | 新生児低酸素性虚血性脳症の予防又は治療剤及びその利用 |
Publications (1)
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ID=53891462
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JP2014022411A Pending JP2015147753A (ja) | 2014-02-07 | 2014-02-07 | 新生児低酸素性虚血性脳症の予防又は治療剤及びその利用 |
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JP (1) | JP2015147753A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2019189725A1 (ja) * | 2018-03-30 | 2019-10-03 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター | 新生児低酸素性虚血性脳症の重症度判定方法と予後予測方法 |
-
2014
- 2014-02-07 JP JP2014022411A patent/JP2015147753A/ja active Pending
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