近年、モータ駆動用のバッテリを搭載する電気自動車やハイブリッド電気自動車(以下、単に「電気自動車等」ともいう)の開発が急速に進められつつある。電気自動車等に搭載される電池にも、電気自動車の操縦特性、走行距離を向上させるため、当然ながら、軽量、薄型化が求められている。電池を軽量かつ薄型とするため、その外装体に、薄いフィルムからなるラミネート材を用いたフィルム外装電池が開発されている。ラミネート材は、一般に、アルミニウム等の薄い金属層の両表面を薄い樹脂層で被覆した構造をなしており、酸やアルカリに強く、かつ軽量で柔軟な性質を有するものである。
発電要素をラミネート材で被覆したフィルム外装電池は軽量であるという利点がある。しかし、剛性が低く、振動、衝撃の影響を受け易いため、電気自動車等に搭載する場合、これらの課題を解決する必要がある。この課題を解決するため、特開平10−012278号公報に開示されているように、ケース内にフィルム外装電池を挟持固定する技術が従来より知られている。
また、電気自動車等に好適なバッテリとするためにはバッテリの高容量化・高出力化が望まれる。このため、複数個のケース内に入ったフィルム外装電池を重ねて電気接続すること、いわゆる組電池化することが行われている。このとき、各フィルム外装電池の冷却を目的として、フィルム外装電池を入れたケースが、それを重ねて組電池化するときにフィルム外装電池間に適当な通風隙間が形成されるような形状となっている。そして、このような組電池を電気自動車等に搭載した場合には、通常、車室内より取り込んだ空気を冷却風としてフィルム外装電池間の通風隙間に導入し、通風隙間を経て昇温した冷却風を車外に排出するように構成される。
また、フィルム外装電池は対向するラミネート材の間に発電要素を入れ、ラミネート材の周縁部を熱溶着で溶着したものである。そして、このフィルム外装電池の熱融着部にはその一部を、他の部分よりも低い圧力で融着が剥がれるようにしたガス排出部が設けられている。
電池の使用時において、電池に規格範囲外の電圧が印加されると、電解液溶媒の電気分解によりガス種が発生し、電池の内圧が上昇することがある。さらに、電池が規格範囲外の高温で使用されても、電解質塩の分解などによりガス種が生成される。このため、基本的には、規格範囲内で電池を使用してガスを発生させないようにすることが理想的である。しかし、電池の制御回路が何らかの原因で故障して異常な電圧が印加されたり、何らかの原因で周囲が異常に高温となったりすると、場合によっては大量にガスが発生する。
このような、電池内部でのガスの発生は、電池の内圧上昇をもたらす。内圧が極度に上昇し電池が暴発することを防ぐために、外装材として金属缶を用いた電池の多くは、電池の内圧が上昇した際にガスを電池の外部に逃がす圧力安全弁を有している。しかし、フィルムを外装材とするフィルム外装電池においては、圧力安全弁を設けることが構造上難しい。フィルム外装電池では内圧が上昇しすぎるとフィルムが膨張し、最終的には外装材が破裂しその箇所からガスが噴出する。しかし、破裂がどの箇所で発生するか特定できないため、破裂した箇所によっては周囲の機器等に悪影響を及ぼすことがある。
そこで、フィルム外装電池においては、こういった電池内部でのガスの発生による不具合を解消するため、上述したようなガス排出部を熱融着部に設けている。また、図1に示すようにフィルム外装電池101のケース102には、フィルム外装電池101に設けられたガス排出部104を囲むようにガス排出口103が形成されている。なお、ケース入りのフィルム外装電池を重ねて組電池とした状態で電気自動車等に搭載した場合、ガス排出口103は、ガスを車外に排出するための区画された排ガス通路と繋がる。
しかしながら、図1に示すような従来のケース形状の場合、ガス排出口103は、フィルム外装電池101のガス排出部104を囲むように形成されているだけであり、ケースを重ねて組電池化した際にフィルム外装電池間にて通風隙間(冷却通路)となる開口部102aとは連通している。このため、電池の異常でガスが発生したとき、ケースに設けられたガス排出口103を通じて上記の排ガス通路にガスが速やかに排出されないと、上記の冷却通路である開口部102aに漏れ出ることがある。この冷却通路は車室内に繋がっているため、ここにガスが侵入すると、ガスが車室内に逆流してしまい、人体へ悪影響を及ぼす恐れがある。
本発明は、上述した従来技術の問題点に鑑み、電池異常時の発生ガスを確実に排ガス通路に排出し、人体に影響を及ぼすことが無いフィルム外装電池用ケースを提供することを目的とする。
上記目的を達成するための本発明は、充放電可能な電気デバイス要素と、電気デバイス要素を挟んで密封した外装フィルムと、外装フィルムに設けられたガス排出部とを有するフィルム外装電気デバイスを収納するフィルム外装電気デバイス用ケースに関する。このケースは、電気デバイス要素に対応する領域に開口部が形成され、外装フィルムにおける電気デバイス要素の周縁部を保持する枠部材と、枠部材の対向する辺を繋ぐように設けられた、フィルム外装電気デバイスのガス排出部から排出されたガスを外部へと誘導するための排ガス通路部と、を有する。そして、排ガス通路部の、フィルム外装電気デバイスと対向する側となる面の両側縁には、フィルム外装電気デバイスの表面と密着することによって排ガス通路部を開口部から区画する封止材が設けられている。
また、排ガス通路部の外側面に対しても封止材が排ガス通路部の両側縁に沿って設けられていることが好ましい。
このように構成された発明では、排ガス通路部を、冷却通路(通風隙間)となる開口部から完全に区画した。このことにより、電池の異常時に、フィルム外装電気デバイスに設けられたガス排出部からガスが発生しても、冷却通路となる開口部に漏れ出ることが無い。したがって、ガス排出部からのガスは、ガスを車外へと導く排ガス通路に確実に排出されることになる。また、車室内と繋がっている冷却通路である開口部にガスが侵入しないため、人体への影響を皆無に出来る。
上記フィルム外装電気デバイス用ケースでは、封止材が発泡性樹脂または紫外線硬化型樹脂であることが考えられる。
以上説明したように、本発明によれば、電池異常時の発生ガスを確実に排ガス通路に排出し、人体に影響を及ぼすことが無いフィルム外装電池用ケースを提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図2に本実施形態のフィルム外装電池の外観斜視図を示す。
本実施形態のフィルム外装電池1は、正極側活電極、負極側活電極、および電解液を有する発電要素2と、アルミニウムなどの金属フィルムと熱融着性の樹脂フィルムとを重ね合わせて形成したラミネートフィルム7と、を有する。フィルム外装電池1は、2枚のラミネートフィルム7によって発電要素2を密封した構造を有している。すなわち、2枚のラミネートフィルム7によって発電要素2を密封封止する際、ラミネートフィルム7の4辺である熱融着部7aのうち、まず3辺を熱融着して袋状としておく。そして、開放している残りの1辺から内部の空気を排気して真空引きし、その後、残りの1辺の熱融着部7aを熱融着する。
フィルム外装電池1の発電要素2は、セパレータを介して積層された正極側活電極と負極側活電極とからなる積層型であってもよい。あるいは、帯状の正極側活電極と負極側活電極とをセパレータを介して重ね、これを捲回した後、扁平状に圧縮することによって正極側活電極と負極側活電極とが交互に積層された構造の捲回型であってもよい。
また、発電要素2としては、正極、負極および電解質を含むものであれば、通常の電池に用いられる任意の発電要素が適用可能である。一般的なリチウムイオン二次電池における発電要素は、リチウム・マンガン複合酸化物、コバルト酸リチウム等の正極活物質をアルミニウム箔の両面に塗布した正極板と、リチウムをドープ又は脱ドープ可能な炭素材料を銅箔の両面に塗布した負極板とを、セパレータを介して対向させ、それにリチウム塩を含む電解液を含浸させて形成される。発電要素2としては、この他に、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、リチウムメタル一次電池あるいは二次電池、リチウムポリマー電池等、他の種類の化学電池の発電要素が挙げられる。さらに、本発明は、電気二重層キャパシタなどのキャパシタや電解コンデンサなどに例示されるキャパシタ要素のような、電気エネルギを内部に蓄積し化学反応または物理反応でガスが発生しうる電気デバイス要素を外装フィルムで封止した電気デバイスにも適用可能である。
フィルム外装電池1の短手方向の熱融着部7aからは、正極側活電極に接続された正極用電極端子3および負極側活電極に接続された負極用電極端子4がそれぞれ対向して延出している。正極用電極端子3としてはアルミニウムが多く用いられている。また、負極用電極端子4としては銅またはニッケルがその電気的特性により多く用いられている。以下、正極用電極端子3と負極用電極端子4とをまとめて単に電極と称する場合もある。
フィルム外装電池1の長手方向の熱融着部7aにはその一部を、他の部分よりも熱融着強度を弱くし、ガス発生時に他の部分よりも低い圧力で融着が剥がれるようにしたガス排出部8が設けられている。
図3にフィルム外装電池を収納するセルケースの分解斜視図を示す。
フィルム外装電池1の周囲を囲むセルケース10は、第1の枠体11および第2の枠体12を有し、これらの間にフィルム外装電池1を挟持面にて挟持する構成となっている。各枠体11、12の形状はそれぞれ枠状である。フィルム外装電池1の発電要素2に対応した箇所に開口部13が形成されている。
第1の枠体11は、対向する2つの長辺11aと、これら各長辺11aに略直交し、かつ互いに対向して形成された2つの短辺11bからなる矩形の枠である。各長辺11aはフィルム外装電池1のガス排出部8から排出されたガスを外部へと誘導するための排ガス通路部11cで繋がっている。本実施形態では、フィルム外装電池1のガス排出部8が熱融着部7aの概ね中央に形成されていることより、排ガス通路11cもこれにあわせて長辺11aの概ね中央に形成されており、開口部13を2分割している。また、長辺11aの一方であって排ガス通路部11cの一端にはガス排出口16を形成するための切欠11dが形成されている。
第1の枠体11の各短辺11bにはセルケース10に収納されている状態のフィルム外装電池1の電極を外部へと延出させるための切欠11eがそれぞれ形成されている。
排ガス通路部11cの、フィルム外装電池1に対向する側となる面の両側縁には、後述するように開口部13に対する排ガス通路部11cの連通を遮断するための封止部30が設けられている。さらに、封止部30は、排ガス通路部11cの外側面に対しても排ガス通路部11cの両側縁に沿って設けられている。
封止材30としては、ウレタン系、あるいはブチル系の発泡性樹脂が好ましい。なお、封止材30を収納部15内に充填した後に硬化させる場合には、封止材30は、熱硬化型樹脂ではなく、紫外線硬化型の樹脂を用いるのがより好ましい。紫外線硬化型樹脂の場合、紫外線を照射することで硬化するため、硬化時にフィルム外装電池1に対して熱による悪影響を及ぼすことがないためである。
第2の枠体12も基本的な構成は第1の枠体11と同様である。第2の枠体12も2つの長辺12aおよび2つの短辺12bからなる矩形の枠であり、長辺12aの一方にガス排出口16を形成するための切欠12dが形成されている。また、また、第2の枠体12は第1の枠体11の切欠11eに嵌り込む電極保持部12eが設けられている。電極保持部12eは切欠11eに嵌り込んだ状態で電極を延出可能な開口ができるような厚さに形成されている。
次に、フィルム外装電池1のセルケース10への収納手順について説明する。
まず、フィルム外装電池1を、その長手方向の熱融着部7aを上述した第1の枠体11の長辺11aと第2の枠体12の長辺12aとで挟み込み、また、短手方向の熱融着部7aを短辺11bと短辺12bとで挟み込んで挟持する。すなわち、第1の枠体11と第2の枠体12との挟持面(第1の枠体11と第2の枠体12とを対向して配置した際に向かい合う面)にて熱融着部7aを挟持する。なお、この際、ガス排出部8がガス排出口16に位置するようにする。
図4にセルケース10内に収納保持されたフィルム外装電池1の斜視図を示す。なお、図4では各電極3、4は折り曲げた状態で示されている。また、図5に図4のX−X’断面であって、フィルム外装電池1、および該フィルム外装電池1を収納したセルケース10の模式的な断面図を示す。
図4および図5に示すように、フィルム外装電池1の開口部13にて露出する部分は、大気に開放されていることから、冷却風を直接フィルム外装電池1の表面にあてて冷却することができるので良好な冷却特性を得ることができる。そして、フィルム外装電池1が収納されたセルケース10を複数重ねて組電池化した際、開口部13の所が冷却通路としての通風隙間となる。また、排ガス通路部11cの、フィルム外装電池1と対向する面の両側縁には、フィルム外装電池1の表面と密着する封止材30が設けられている。この封止材30によって排ガス通路部11cは第1の枠体11側の開口部13から完全に区画された通路となる(図5参照)。
このように排ガス通路部11cを、冷却通路(通風隙間)となる開口部30から完全に区画したことにより、電池の異常時に、フィルム外装電池1に設けられたガス排出部8からガスが発生しても、少なくとも第1の枠体11側の開口部13に漏れ出ることが無い。
以上のように、排ガス通路部11cが設けられた第1の枠体11側の開口部13に関しては、フィルム外装電池1のガス排出部8から排出されたガスを排ガス通路部11c内に完全に留め、第1の枠体11側の開口部13に漏出させないようにすることができる。一方、排ガス通路部11cが設けられていない第2の枠体12側の開口部13に関しても、ガス排出部8から排出されたガスが第2の枠体12側の開口部13に漏出する場合が考えられる。そこで、図5に示したように排ガス通路部11cの外側面の両側縁にも封止材30を設けることにより、ガス排出部8から排出されたガスを第2の枠体12側の開口部13に漏出させないようにしている。
詳しくは、図6に示すように、フィルム外装電池1が収納されたセルケース10を重ねた際に、第1の枠体11側の開口部13に設けられた排ガス通路部11cが、隣接するセルケース10の第2の枠体12側の開口部13内に配置される。このとき、排ガス通路部11cの外側面に設けられている封止材13が、隣接するセルケース10の第2の枠体12側の開口部13内においてフィルム外装電池1の表面と密着する。このため、第2の枠体12側の開口部13内に配置された排ガス通路部11cも、第2の枠体12側の開口部13から完全に区画された通路となる。これにより、電池の異常時に、フィルム外装電池1のガス排出部8からガスが発生しても、第2の枠体12側の開口部13に漏出することが無くなる。
以上の事により、ガス排出部8からのガスは、セルケース10に設けられた排ガス通路部11cおよびガス排出口16を通じて、ガスを車外へと導く排ガス通路に確実に排出されることになる。また、車室内と繋がっている冷却通路である開口部13にガスが侵入しないため、人体への影響を皆無に出来る。