JPWO2006046494A1 - 圧電/電歪デバイス - Google Patents
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Abstract
この圧電/電歪デバイスは、固定部11と、固定部に支持された薄板部12と、複数の電極と複数の圧電/電歪層とが交互に積層されてなる圧電/電歪素子14とを備えている。圧電/電歪デバイスは、後に薄板部12を構成する薄板体と圧電/電歪層積層体とを切断加工した後、この切断面(側端面)に対して所定の特定処理(例えば、熱処理)を施すことで製造される。これにより、圧電/電歪素子14の側端面の正射影の面積に対する同圧電/電歪素子14の実際の表面積の割合が「4」以下となり、漏電やイオンマイグレーションが実質的に発生しない程度にまで同側端面への水分の付着が抑制され得る。この結果、耐久性の高い圧電/電歪デバイスが提供され得る。
Description
本発明は、固定部と、固定部に支持された薄板部と、層状の電極及び圧電/電歪層からなる圧電/電歪素子とを備えた圧電/電歪デバイスに関する。
この種の圧電/電歪デバイスは、精密加工を行うためのアクチュエータ、光学的情報や磁気的情報等の読取り及び/又は書込み用素子(例えば、ハードディスクドライブの磁気ヘッド)の位置を制御するアクチュエータ、或いは機械的振動を電気信号に変換するセンサ等として活発に開発されてきている。
このような圧電/電歪デバイスの一例として、特開2001−320103号公報に開示されているものは、図13に示したように、固定部100と、固定部100に支持された薄板部110と、前記薄板部110の先端に設けられた対象物(例えば、ハードディスクドライブの磁気ヘッドそのもの)を保持するための保持部(可動部)120と、少なくとも前記薄板部110の平面上に形成されるとともに複数の電極と複数の圧電/電歪層とが交互に積層された圧電/電歪素子130とを備えている。そして、この圧電/電歪デバイスは、圧電/電歪素子130の電極間に電界を形成して同圧電/電歪素子130の圧電/電歪層を伸縮させることで薄板部110を変形させ、これにより、保持部120(従って、同保持部120に保持される対象物)を変位させるようになっている。
また、図13に示した圧電/電歪デバイスは、先ず、図14に示したように、複数のセラミックグリーンシート(及び/又は、セラミックグリーンシート積層体)を準備し、図15に示したように、これらのセラミックグリーンシートを積層して一体焼成することでセラミックの積層体200を形成し、図16に示したように、外表面に複数の電極と複数の圧電/電歪層とが交互に積層された圧電/電歪層積層体210を形成し、この圧電/電歪層積層体210をワイヤーソーWSを利用したワイヤーソー加工(或いは、ダイシング加工等)により図17に示した切断線C1〜C4にて切断することにより製造され得るものである。
ところで、上記開示された圧電/電歪デバイスが実際に使用される場合(例えば、ハードディスクドライブの磁気ヘッドの位置決め用のアクチュエータとして使用される場合)において、圧電/電歪素子130の側端面(図17の切断線C3又はC4に沿った切断面)に水分が付着する場合がある。係る水分は、例えば、雰囲気中(空気中)の水蒸気の結露等に起因して発生し得る。
圧電/電歪素子130の側端面(特に、圧電/電歪素子130の側端面の一部である圧電/電歪層の側端面)に水分が付着すると、側端面に水分が付着した圧電/電歪層の絶縁抵抗値が減少することで同圧電/電歪層を挟む両側の電極間にて漏電が発生し易くなる。或いは、圧電/電歪層の側端面に付着した水分の存在により同側端面上にて所謂イオンマイグレーションが助長され、この結果、同側端面に水分が付着した圧電/電歪層を挟む両側の電極間でショート(短絡)が発生し易くなる。
係る漏電が発生すると、電極間の電圧が減少することで同電極間に形成される電界が弱くなる。この結果、圧電/電歪層の伸縮量が小さくなって圧電/電歪素子130(従って、圧電/電歪デバイス)による所期の作動が達成され得なくなる。また、係るショートが発生すると、電極間の電圧が発生し得なくなることで圧電/電歪素子130が伸縮し得なくなり、この結果、圧電/電歪素子130(従って、圧電/電歪デバイス)が作動し得なくなる。
加えて、上記開示された圧電/電歪デバイスを、例えば、ハードディスクドライブの磁気ヘッドの位置決め用のアクチュエータとして使用する場合、ハードディスク上等にゴミ、ほこり等が付着すると誤った情報の読取り・書込み等がなされ得ることから圧電/電歪デバイスはゴミ、ほこり等の発生(以下、ゴミ、ほこり等が発生することを「発塵」と云うこともある。)をできる限り回避すべき環境下に置かれることになる。
この場合、上記開示された圧電/電歪デバイスは、一つの平面を構成するその側端面(図17の切断線C3又はC4に沿った切断面)がハードディスクの表面に対して比較的小さなギャップをもって対向した状態にて使用されるから、圧電/電歪デバイスの側端面を構成する各構成要素の側端面(図17の切断線C3又はC4に沿った切断面)からの微小粒子の離脱(以下、粒子が離脱することを「脱粒」と云うこともある。)による発塵を特に防止する必要がある。係る観点から、近年、この種の圧電/電歪デバイスについて、発塵に係わる検査項目が加わってきている。
以上のことから、上記開示された圧電/電歪デバイスにおいては、同圧電/電歪デバイスが実際に使用される場合において圧電/電歪素子130の側端面に水分が付着することを効果的に抑制すること、及び同側端面からの発塵を効果的に抑制することが要求されているところである。
このような圧電/電歪デバイスの一例として、特開2001−320103号公報に開示されているものは、図13に示したように、固定部100と、固定部100に支持された薄板部110と、前記薄板部110の先端に設けられた対象物(例えば、ハードディスクドライブの磁気ヘッドそのもの)を保持するための保持部(可動部)120と、少なくとも前記薄板部110の平面上に形成されるとともに複数の電極と複数の圧電/電歪層とが交互に積層された圧電/電歪素子130とを備えている。そして、この圧電/電歪デバイスは、圧電/電歪素子130の電極間に電界を形成して同圧電/電歪素子130の圧電/電歪層を伸縮させることで薄板部110を変形させ、これにより、保持部120(従って、同保持部120に保持される対象物)を変位させるようになっている。
また、図13に示した圧電/電歪デバイスは、先ず、図14に示したように、複数のセラミックグリーンシート(及び/又は、セラミックグリーンシート積層体)を準備し、図15に示したように、これらのセラミックグリーンシートを積層して一体焼成することでセラミックの積層体200を形成し、図16に示したように、外表面に複数の電極と複数の圧電/電歪層とが交互に積層された圧電/電歪層積層体210を形成し、この圧電/電歪層積層体210をワイヤーソーWSを利用したワイヤーソー加工(或いは、ダイシング加工等)により図17に示した切断線C1〜C4にて切断することにより製造され得るものである。
ところで、上記開示された圧電/電歪デバイスが実際に使用される場合(例えば、ハードディスクドライブの磁気ヘッドの位置決め用のアクチュエータとして使用される場合)において、圧電/電歪素子130の側端面(図17の切断線C3又はC4に沿った切断面)に水分が付着する場合がある。係る水分は、例えば、雰囲気中(空気中)の水蒸気の結露等に起因して発生し得る。
圧電/電歪素子130の側端面(特に、圧電/電歪素子130の側端面の一部である圧電/電歪層の側端面)に水分が付着すると、側端面に水分が付着した圧電/電歪層の絶縁抵抗値が減少することで同圧電/電歪層を挟む両側の電極間にて漏電が発生し易くなる。或いは、圧電/電歪層の側端面に付着した水分の存在により同側端面上にて所謂イオンマイグレーションが助長され、この結果、同側端面に水分が付着した圧電/電歪層を挟む両側の電極間でショート(短絡)が発生し易くなる。
係る漏電が発生すると、電極間の電圧が減少することで同電極間に形成される電界が弱くなる。この結果、圧電/電歪層の伸縮量が小さくなって圧電/電歪素子130(従って、圧電/電歪デバイス)による所期の作動が達成され得なくなる。また、係るショートが発生すると、電極間の電圧が発生し得なくなることで圧電/電歪素子130が伸縮し得なくなり、この結果、圧電/電歪素子130(従って、圧電/電歪デバイス)が作動し得なくなる。
加えて、上記開示された圧電/電歪デバイスを、例えば、ハードディスクドライブの磁気ヘッドの位置決め用のアクチュエータとして使用する場合、ハードディスク上等にゴミ、ほこり等が付着すると誤った情報の読取り・書込み等がなされ得ることから圧電/電歪デバイスはゴミ、ほこり等の発生(以下、ゴミ、ほこり等が発生することを「発塵」と云うこともある。)をできる限り回避すべき環境下に置かれることになる。
この場合、上記開示された圧電/電歪デバイスは、一つの平面を構成するその側端面(図17の切断線C3又はC4に沿った切断面)がハードディスクの表面に対して比較的小さなギャップをもって対向した状態にて使用されるから、圧電/電歪デバイスの側端面を構成する各構成要素の側端面(図17の切断線C3又はC4に沿った切断面)からの微小粒子の離脱(以下、粒子が離脱することを「脱粒」と云うこともある。)による発塵を特に防止する必要がある。係る観点から、近年、この種の圧電/電歪デバイスについて、発塵に係わる検査項目が加わってきている。
以上のことから、上記開示された圧電/電歪デバイスにおいては、同圧電/電歪デバイスが実際に使用される場合において圧電/電歪素子130の側端面に水分が付着することを効果的に抑制すること、及び同側端面からの発塵を効果的に抑制することが要求されているところである。
従って、本発明の目的は、圧電/電歪素子の側端面に水分が付着すること、及び同側端面からの発塵を効果的に抑制し得る圧電/電歪デバイスを提供することにある。
上記目的を達成するための本発明の特徴は、薄板部と、前記薄板部を支持する固定部と、少なくとも前記薄板部の平面上に形成されるとともに複数の電極と少なくとも一つの圧電/電歪層とが積層されてなり、同複数の電極の各側端面と同少なくとも一つの圧電/電歪層の側端面とにより形成された側端面を有する圧電/電歪素子とを備えた圧電/電歪デバイスにおいて、前記圧電/電歪素子の側端面の正射影の面積に対する同圧電/電歪素子の側端面の実際の表面積の割合が4以下であることにある。
一般に、或る表面に水分が付着する場合、その表面の実際の表面積(即ち、表面上の大小総ての凹凸が考慮された三次元的な総表面積)が小さいほど水分が付着し難くなる。従って、圧電/電歪素子の側端面の実際の表面積が小さいほど同側端面に水分が付着し難くなるということができる。
また、圧電/電歪素子の側端面の実際の表面積を小さくすることは、圧電/電歪素子の側端面の正射影の面積に対する同圧電/電歪素子の側端面の実際の表面積の割合(以下、「表面積増加率」と称呼する。)を小さくすることに繋がる。
ここで、本発明者は、係る圧電/電歪デバイスを通常の使用条件下にて実際に使用する場合において、圧電/電歪素子の側端面の表面積増加率が「4」以下であれば、上述した漏電やイオンマイグレーションが実質的に発生しない程度にまで同側端面への水分の付着が抑制され得ることを見出した。
加えて、圧電/電歪素子の側端面の実際の表面積(従って、表面積増加率)は、側端面からの脱粒の程度と強い相関があり、表面積増加率が「4」以下であれば、側端面からの脱粒(従って、発塵)を効果的に抑制できることを見出した。
従って、上記構成によれば、圧電/電歪素子の側端面に水分が付着すること、及び同側端面からの発塵が効果的に抑制され得る。この結果、圧電/電歪デバイスの所期の作動が長時間に亘って維持され得る。換言すれば、耐久性の高い圧電/電歪デバイスが提供され得る。加えて、発塵ができる限り回避されるべき環境下で使用可能な圧電/電歪デバイスを提供することができる。
一般に、圧電/電歪素子の側端面をワイヤーソー加工、ダイシング加工等の機械加工等のみにて形成すると(仕上げると)、圧電/電歪素子の側端面の表面積増加率が「4」よりも大きくなる。従って、上記本発明に係る圧電/電歪デバイスを提供するためには、実際には、前記電極と前記圧電/電歪層の積層体を切断加工する工程に加え、前記切断加工により形成された切断面に対して所定の特定処理を施すことにより、前記圧電/電歪素子の側端面の表面積増加率が4以下となる同圧電/電歪素子の側端面を形成する(仕上げる)工程を含んだ製造方法が採用される。
即ち、本発明は、このような製造方法により、前記圧電/電歪素子の側端面が、前記電極と前記圧電/電歪層の積層体を切断加工することで形成された切断面に対して所定の特定処理を施すことにより形成された端面であることを特徴とする圧電/電歪デバイスを提供することができる。
上記特定処理は、前記切断面に対してYAGレーザー加工を行う処理、前記切断面に対してエキシマレーザー加工を行う処理、前記切断面に対してブラスト加工を行う処理、前記切断面に対して超音波洗浄を行う処理、前記切断面に対して炉内で加熱を行う処理(即ち、熱処理(加熱処理))、前記切断面に対して研磨(ポリッシュ)を行う処理のうちの何れか(或いは、2つ以上の任意の組み合わせ)であることが好適である。
上記特定処理として、これらの処理のうちの何れか(或いは、2つ以上の任意の組み合わせ)を採用すれば、比較的簡易な処理にて確実に、圧電/電歪素子の側端面の表面積増加率を「4」以下とすることができる。
上記目的を達成するための本発明の特徴は、薄板部と、前記薄板部を支持する固定部と、少なくとも前記薄板部の平面上に形成されるとともに複数の電極と少なくとも一つの圧電/電歪層とが積層されてなり、同複数の電極の各側端面と同少なくとも一つの圧電/電歪層の側端面とにより形成された側端面を有する圧電/電歪素子とを備えた圧電/電歪デバイスにおいて、前記圧電/電歪素子の側端面の正射影の面積に対する同圧電/電歪素子の側端面の実際の表面積の割合が4以下であることにある。
一般に、或る表面に水分が付着する場合、その表面の実際の表面積(即ち、表面上の大小総ての凹凸が考慮された三次元的な総表面積)が小さいほど水分が付着し難くなる。従って、圧電/電歪素子の側端面の実際の表面積が小さいほど同側端面に水分が付着し難くなるということができる。
また、圧電/電歪素子の側端面の実際の表面積を小さくすることは、圧電/電歪素子の側端面の正射影の面積に対する同圧電/電歪素子の側端面の実際の表面積の割合(以下、「表面積増加率」と称呼する。)を小さくすることに繋がる。
ここで、本発明者は、係る圧電/電歪デバイスを通常の使用条件下にて実際に使用する場合において、圧電/電歪素子の側端面の表面積増加率が「4」以下であれば、上述した漏電やイオンマイグレーションが実質的に発生しない程度にまで同側端面への水分の付着が抑制され得ることを見出した。
加えて、圧電/電歪素子の側端面の実際の表面積(従って、表面積増加率)は、側端面からの脱粒の程度と強い相関があり、表面積増加率が「4」以下であれば、側端面からの脱粒(従って、発塵)を効果的に抑制できることを見出した。
従って、上記構成によれば、圧電/電歪素子の側端面に水分が付着すること、及び同側端面からの発塵が効果的に抑制され得る。この結果、圧電/電歪デバイスの所期の作動が長時間に亘って維持され得る。換言すれば、耐久性の高い圧電/電歪デバイスが提供され得る。加えて、発塵ができる限り回避されるべき環境下で使用可能な圧電/電歪デバイスを提供することができる。
一般に、圧電/電歪素子の側端面をワイヤーソー加工、ダイシング加工等の機械加工等のみにて形成すると(仕上げると)、圧電/電歪素子の側端面の表面積増加率が「4」よりも大きくなる。従って、上記本発明に係る圧電/電歪デバイスを提供するためには、実際には、前記電極と前記圧電/電歪層の積層体を切断加工する工程に加え、前記切断加工により形成された切断面に対して所定の特定処理を施すことにより、前記圧電/電歪素子の側端面の表面積増加率が4以下となる同圧電/電歪素子の側端面を形成する(仕上げる)工程を含んだ製造方法が採用される。
即ち、本発明は、このような製造方法により、前記圧電/電歪素子の側端面が、前記電極と前記圧電/電歪層の積層体を切断加工することで形成された切断面に対して所定の特定処理を施すことにより形成された端面であることを特徴とする圧電/電歪デバイスを提供することができる。
上記特定処理は、前記切断面に対してYAGレーザー加工を行う処理、前記切断面に対してエキシマレーザー加工を行う処理、前記切断面に対してブラスト加工を行う処理、前記切断面に対して超音波洗浄を行う処理、前記切断面に対して炉内で加熱を行う処理(即ち、熱処理(加熱処理))、前記切断面に対して研磨(ポリッシュ)を行う処理のうちの何れか(或いは、2つ以上の任意の組み合わせ)であることが好適である。
上記特定処理として、これらの処理のうちの何れか(或いは、2つ以上の任意の組み合わせ)を採用すれば、比較的簡易な処理にて確実に、圧電/電歪素子の側端面の表面積増加率を「4」以下とすることができる。
図1は、本発明の実施形態に係る圧電/電歪デバイスの斜視図である。
図2は、図1に示した圧電/電歪デバイスの部分拡大正面図である。
図3は、図1に示した圧電/電歪デバイスの変形例の斜視図である。
図4は、本発明による圧電/電歪デバイスの製造方法において積層されるセラミックグリーンシートの斜視図である。
図5は、図4に示したセラミックグリーンシートを積層・圧着したセラミックグリーンシート積層体の斜視図である。
図6は、図5に示したセラミックグリーンシートが一体焼成されて形成されたセラミック積層体の斜視図である。
図7は、圧電/電歪層積層体が形成された図6に示したセラミック積層体の斜視図である。
図8は、図7に示したセラミック積層体及び圧電/電歪層積層体の切断工程を示した図である。
図9は、本発明に係る種々の特定処理を施した各試験品、及び同特定処理を施す前の試験品についての、圧電/電歪素子の側端面の表面積増加率比のデータをそれぞれ示したグラフである。
図10は、本発明に係る種々の特定処理を施した各試験品、及び同特定処理を施す前の試験品についての、圧電/電歪素子の電極間の絶縁抵抗値のデータをそれぞれ示したグラフである。
図11は、本発明に係る種々の特定処理を施した各試験品、及び同特定処理を施す前の試験品についての、圧電/電歪素子の側端面からの脱粒粒子数のデータをそれぞれ示したグラフである。
図12は、図1に示した圧電/電歪デバイスの他の変形例の斜視図である。
図13は、従来の圧電/電歪デバイスの斜視図である。
図14は、図13に示した圧電/電歪デバイスの製造過程において積層されるセラミックグリーンシートの斜視図である。
図15は、図14に示したセラミックグリーンシートが積層・圧着された後に一体焼成されて形成されたセラミック積層体の斜視図である。
図16は、圧電/電歪層積層体が形成された図15に示したセラミック積層体の斜視図である。
図17は、図16に示したセラミック積層体及び圧電/電歪層積層体の切断工程を示した図である。
図18Aは、従来における円形ラップ治具上へのワークの貼付向きを示した図である。
図18Bは、本発明における円形ラップ治具上へのワークの貼付向きを示した図である。
図2は、図1に示した圧電/電歪デバイスの部分拡大正面図である。
図3は、図1に示した圧電/電歪デバイスの変形例の斜視図である。
図4は、本発明による圧電/電歪デバイスの製造方法において積層されるセラミックグリーンシートの斜視図である。
図5は、図4に示したセラミックグリーンシートを積層・圧着したセラミックグリーンシート積層体の斜視図である。
図6は、図5に示したセラミックグリーンシートが一体焼成されて形成されたセラミック積層体の斜視図である。
図7は、圧電/電歪層積層体が形成された図6に示したセラミック積層体の斜視図である。
図8は、図7に示したセラミック積層体及び圧電/電歪層積層体の切断工程を示した図である。
図9は、本発明に係る種々の特定処理を施した各試験品、及び同特定処理を施す前の試験品についての、圧電/電歪素子の側端面の表面積増加率比のデータをそれぞれ示したグラフである。
図10は、本発明に係る種々の特定処理を施した各試験品、及び同特定処理を施す前の試験品についての、圧電/電歪素子の電極間の絶縁抵抗値のデータをそれぞれ示したグラフである。
図11は、本発明に係る種々の特定処理を施した各試験品、及び同特定処理を施す前の試験品についての、圧電/電歪素子の側端面からの脱粒粒子数のデータをそれぞれ示したグラフである。
図12は、図1に示した圧電/電歪デバイスの他の変形例の斜視図である。
図13は、従来の圧電/電歪デバイスの斜視図である。
図14は、図13に示した圧電/電歪デバイスの製造過程において積層されるセラミックグリーンシートの斜視図である。
図15は、図14に示したセラミックグリーンシートが積層・圧着された後に一体焼成されて形成されたセラミック積層体の斜視図である。
図16は、圧電/電歪層積層体が形成された図15に示したセラミック積層体の斜視図である。
図17は、図16に示したセラミック積層体及び圧電/電歪層積層体の切断工程を示した図である。
図18Aは、従来における円形ラップ治具上へのワークの貼付向きを示した図である。
図18Bは、本発明における円形ラップ治具上へのワークの貼付向きを示した図である。
以下、図面を参照しながら本発明による圧電/電歪デバイスの実施形態について説明する。図1に斜視図を示した前記実施形態に係る圧電/電歪デバイス10は、直方体の固定部11と、固定部から立設するように同固定部11に支持されるとともに互いに対向する一対の薄板部12,12と、前記薄板部12,12の先端近傍の各内側に設けられた突起部12a,12aよりも先端側の各内側に設けられた保持部(可動部)13,13と、少なくとも前記薄板部12,12の各外側の平面上に形成された層状の電極と圧電/電歪層とが交互に積層された圧電/電歪素子14,14とを備えている。これらの構成の概略は、例えば、前述した特開2001−320103に開示されている。
この圧電/電歪デバイス10は、例えば、一対の保持部13,13の間に対象物(図示せず)を接着材により接着させることで同対象物を保持し、圧電/電歪素子14,14が発生する力によって薄板部12,12を変形せしめ、これにより保持部13,13を変位させて対象物の位置を制御し得るアクチュエータとして使用されるようになっている。即ち、突起部12a,12aは、接着剤を使用する領域を規定する機能を有する。この対象物は、磁気ヘッド、光ヘッド、或いは、センサとしての感度調整用重り等である。
固定部11、薄板部12,12、及び保持部13,13から構成された部分(これらは「基体部」とも総称される。)は、後に詳述するようにセラミックグリーンシートの積層体を焼成により一体化したセラミック積層体により構成されている。このようなセラミックスの一体化物は、各部の接合部に接着剤が介在しないことから、経時的な状態変化が殆ど生じないので、接合部位の信頼性が高く、かつ、剛性確保に有利である。また、セラミック積層体は、後述するセラミックグリーンシート積層法により、容易に製造することができる。
なお、基体部は、全体をセラミックス又は金属により構成してもよく、セラミックスと金属とを組合せたハイブリッド構造とすることもできる。また、基体部は、セラミックスを有機樹脂やガラス等の接着剤で接着して構成したり、金属をロウ付け、半田付け、共晶接合、拡散接合、或いは溶接等で接合して構成することもできる。
圧電/電歪素子14は、図2に拡大して示したように、固定部11(の一部)と薄板部12(の一部)がなす外側壁面(外側平面)上に形成されるとともに、複数の層状電極と複数の圧電/電歪層を有し、層状の電極と圧電/電歪層とが交互に積層された積層体である。電極と圧電/電歪層の各層は薄板部12の平面と平行な層を形成している。より具体的に述べると、圧電/電歪素子14は、薄板部12の外側平面上に、電極14a1、圧電/電歪層14b1、電極14a2、圧電/電歪層14b2、電極14a3、圧電/電歪層14b3、電極14a4、圧電/電歪層14b4、及び電極14a5が順に積層されてなる積層体である。電極14a1,14a3,14a5は互いに電気的に接続され、互いに電気的に接続された電極14a2,14a4と、絶縁状態を維持するように形成されている。換言すると、互いに電気的に接続された電極14a1,14a3,14a5と、互いに電気的に接続された電極14a2,14a4とは、櫛歯状の電極を構成している。
この圧電/電歪素子14は、後述するように、膜形成方法により基体部に一体的に形成される。また、圧電/電歪素子14を基体部とは別体として製造しておき、有機樹脂等の接着剤を用いて、或いは、ガラス、ロウ付け、半田付け、共晶接合等により基体部に貼り付けてもよい。
なお、ここでは、電極が全部で5層である多層構造を有する例を示したが、層の数は特に限定されない。一般には、層の数を多くすることにより、薄板部12,12を変形する力(駆動力)が増大する一方、消費電力も増大する。従って、実施にあたっては、用途及び使用状態等に応じて層の数を適宜選定すればよい。
以下、上記圧電/電歪デバイス10の各構成要素について追加的な説明を行う。
保持部13,13は、薄板部12,12の変位に基づいて作動する部分であり、同保持部13,13には圧電/電歪デバイス10の使用目的に応じて種々の部材が取り付けられる。例えば、圧電/電歪デバイス10を物体を変位させる素子(変位素子)として使用する場合、特に、ハードディスクドライブの磁気ヘッドの位置決めやリンギング抑制のために使用するのであれば、磁気ヘッドを有するスライダ、磁気ヘッドそのもの、及びスライダを有するサスペンション等の部材(即ち、位置決めを必要とする部材)が取り付けられてもよい。また、光シャッタの遮蔽板等が取り付けられてもよい。
固定部11は、上述したように、薄板部12,12並びに保持部13,13を支持する部分である。この圧電/電歪デバイス10を、例えば、前記ハードディスクドライブの磁気ヘッドの位置決めに利用する場合には、固定部11はVCM(ボイスコイルモータ)に取り付けられたキャリッジアーム、同キャリッジアームに取り付けられた固定プレート、又はサスペンション等に支持固定される。また、この固定部11には、圧電/電歪素子14,14を駆動するための図示しない端子(端子電極)及びその他の部材が配置される場合もある。端子電極の構造は上記電極と同様な幅であっても良いし、上記電極より狭いもの、或いは、一部が狭いものであっても良い。
保持部13,13及び固定部11を構成する材料は、保持部13,13及び固定部11が剛性を有するように構成される限りにおいて特に限定されない。一般には、これらの材料として、後述するセラミックグリーンシート積層法を適用できるセラミックスを用いることが好適である。より具体的には、この材料として、安定化ジルコニア、部分安定化ジルコニアをはじめとするジルコニア、アルミナ、マグネシア、窒化珪素、窒化アルミニウム、又は酸化チタンを主成分とする材料等が挙げられるほか、これらの混合物を主成分とした材料が挙げられる。ジルコニア、特に安定化ジルコニアを主成分とする材料と部分安定化ジルコニアを主成分とする材料は、機械的強度や靱性が高い点において圧電/電歪デバイス10にとって好適である。また、保持部13,13及び固定部11を金属材料により製造する場合、その金属材料としては、ステンレス鋼、ニッケル等が好適である。
薄板部12,12は、上述したように、圧電/電歪素子14,14により駆動される部分である。薄板部12,12は、可撓性を有する薄板状の部材であって、表面に配設された圧電/電歪素子14,14の伸縮変位を屈曲変位に変換し、保持部13,13に伝達する機能を有する。従って、薄板部12,12の形状や材質は、可撓性を有し、屈曲変形によって破損しない程度の機械的強度を有するものであれば足り、保持部13,13の応答性、操作性等を考慮して選択される。
薄板部12の厚みDd(図1を参照)は、2μm〜100μm程度とすることが好ましく、薄板部12と圧電/電歪素子14とを合わせた厚みは7μm〜500μmとすることが好ましい。電極14a1〜14a5の各厚みは0.1μm〜50μm、圧電/電歪層14b1〜15b5の各厚みは3μm〜300μmとすることが好ましい。
薄板部12,12を構成する材料には、保持部13,13や固定部11と同様のセラミックスを用いることが好適であり、ジルコニア、中でも安定化ジルコニアを主成分とする材料と部分安定化ジルコニアを主成分とする材料は、薄肉であっても機械的強度が大きいこと、靱性が高いこと、圧電/電歪素子14の電極14a1を構成する電極材や圧電/電歪層14b1との反応性が小さいことから更に好適である。
また、薄板部12,12は、可撓性を有し、屈曲変形が可能な金属材料で形成することもできる。薄板部12,12に好適な金属材料のうち鉄系材料としては、各種ステンレス鋼、各種バネ鋼鋼材を挙げることができ、非鉄系材料としては、ベリリウム銅、リン青銅、ニッケル、ニッケル鉄合金を挙げることができる。
この圧電/電歪デバイス10に使用する前述した安定化ジルコニア並びに部分安定化ジルコニアは、次のように安定化並びに部分安定化されたものが好ましい。即ち、ジルコニアに、酸化イットリウム、酸化イッテルビウム、酸化セリウム、酸化カルシウム、及び酸化マグネシウムのうち少なくとも1つの化合物、又はこれらのうち二つ以上の化合物を、同ジルコニアを安定化並びに部分安定化させる化合物として添加・含有させる。
なお、それぞれの化合物の添加量としては、酸化イットリウムや酸化イッテルビウムの場合にあっては、1〜30モル%、好ましくは1.5〜10モル%、酸化セリウムの場合にあっては、6〜50モル%、好ましくは8〜20モル%、酸化カルシウムや酸化マグネシウムの場合にあっては、5〜40モル%、好ましくは5〜20モル%とすることが望ましい。特に、酸化イットリウムを安定化剤として用いることが好ましく、その場合においては、1.5〜10モル%、(機械的強度を特に重視するときには更に好ましくは2〜4モル%、耐久信頼性を特に重視するときには更に好ましくは5〜7モル%)とすることが望ましい。
また、ジルコニアに、焼結助剤等の添加物としてアルミナ、シリカ、遷移金属酸化物等を0.05〜20wt%の範囲で添加することが可能である。圧電/電歪素子14,14の形成手法として、膜形成法による焼成一体化を採用する場合は、アルミナ、マグネシア、遷移金属酸化物等を添加物として添加することも好ましい。
なお、固定部11、薄板部12、及び保持部13の少なくとも一つをセラミックスで構成する場合、そのセラミックスの機械的強度が高く且つ安定した結晶相が得られるように、ジルコニアの平均結晶粒子径を0.05〜3μmとすることが好ましく、0.05〜1μmとすることが更に望ましい。また、上述のように、薄板部12,12は、保持部13,13並びに固定部11と同様(同様であるが異種)のセラミックスにより形成することができるが、好ましくは、保持部13,13並びに固定部11と実質的に同一の材料を用いて形成することが、接合部分の信頼性の向上、圧電/電歪デバイス10の強度の向上、及び同デバイス10の製造の煩雑さの低減を図る上で有利である。
圧電/電歪デバイスには、ユニモルフ型、バイモルフ型等の圧電/電歪素子を用いることができるが、薄板部12,12と組み合わせたユニモルフ型の方が、発生する変位量の安定性に優れ、軽量化に有利であり、且つ、圧電/電歪素子の発生応力の力の向きとデバイスの変形に伴う歪の向きとが相反することがないように保つことが容易に設計可能であることから、このような圧電/電歪デバイス10に適している。
前記圧電/電歪素子14,14は、図1に示したように、その一端を固定部11(又は保持部13でも良い。)上に位置させ、他端を薄板部12,12の側面の平面上に形成すると、薄板部12,12をより大きく駆動させることができる。
圧電/電歪層14b1〜14b4は、圧電セラミックスにより構成されることが好適である。その一方、圧電/電歪層14b1〜14b4は、電歪セラミックス、強誘電体セラミックス、或いは反強誘電体セラミックスにより構成することも可能である。また、このような圧電/電歪デバイス10において、保持部13,13の変位量と駆動電圧(又は出力電圧)とのリニアリティが重要とされる場合、圧電/電歪層14b1〜14b4は歪み履歴の小さい材料で形成されることが好ましく、従って、それらの抗電界が10kV/mm以下の材料で形成されることが好ましい。
圧電/電歪層14b1〜14b4の具体的な材料としては、ジルコン酸鉛、チタン酸鉛、マグネシウムニオブ酸鉛、ニッケルニオブ酸鉛、亜鉛ニオブ酸鉛、マンガンニオブ酸鉛、アンチモンスズ酸鉛、マンガンタングステン酸鉛、コバルトニオブ酸鉛、チタン酸バリウム、チタン酸ナトリウムビスマス、ニオブ酸カリウムナトリウム、タンタル酸ストロンチウムビスマス等を単独であるいは混合物として含有するセラミックスが挙げられる。
圧電/電歪層14b1〜14b4の材料には、特に、高い電気機械結合係数と圧電定数を有し、同圧電/電歪層14b1〜14b4の焼結時における薄板部(セラミックス)12との反応性が小さく、且つ、安定した組成のものが得られる点において、ジルコン酸鉛、チタン酸鉛、及びマグネシウムニオブ酸鉛を主成分とする材料、もしくはチタン酸ナトリウムビスマスを主成分とする材料が好適である。
更に、圧電/電歪層14b1〜14b4の材料に、ランタン、カルシウム、ストロンチウム、モリブデン、タングステン、バリウム、ニオブ、亜鉛、ニッケル、マンガン、セリウム、カドミウム、クロム、コバルト、アンチモン、鉄、イットリウム、タンタル、リチウム、ビスマス、スズ等の酸化物等を混合したセラミックスを用いてもよい。この場合、例えば、主成分であるジルコン酸鉛、チタン酸鉛、及びマグネシウムニオブ酸鉛に、ランタンやストロンチウムを含有させることにより、抗電界や圧電特性を調整可能となる等の利点を得られる場合がある。
なお、圧電/電歪層14b1〜14b4の材料にシリカ等のガラス化し易い材料を添加することは避けることが望ましい。なぜならば、シリカ等の材料は、圧電/電歪層14b1〜14b4の熱処理時に、圧電/電歪材料と反応し易く、その組成を変動させ、圧電特性を劣化させるからである。
一方、圧電/電歪素子14,14の電極14a1〜14a5は、室温で固体であり、導電性に優れた金属で構成されていることが好ましく、例えばアルミニウム、チタン、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、パラジウム、ロジウム、銀、スズ、タンタル、タングステン、イリジウム、白金、金、鉛等の金属単体、もしくはこれらの合金で構成され得る。更に、これらの金属に圧電/電歪層14b1〜14b4、或いは薄板部12,12と同じ材料を分散させたサーメット材料を電極材として用いてもよい。
圧電/電歪素子14における電極材の選定は、圧電/電歪層14b1〜14b4の形成方法に依存して決定される。例えば、薄板部12の上に一つの電極14a1を形成した後、この電極14a1の上に圧電/電歪層14b1を焼成により形成する場合、電極14a1を、圧電/電歪層14b1の焼成温度においても変化しない白金、パラジウム、白金−パラジウム合金、銀−パラジウム合金等の高融点金属で形成しておく必要がある。このことは、形成後に圧電/電歪層が焼成される電極(電極14a2〜電極14a4)についても同様である。
これに対し、圧電/電歪層14b4の上に形成される最外層の電極14a5は、同電極14a5の形成後に圧電/電歪層の焼成がなされないので、アルミニウム、金、銀等の低融点金属を主成分とした材料で形成することができる。
また、層状の電極14a1〜14a5は、圧電/電歪素子14の変位を低下させる要因ともなるため、各層は薄いことが望ましい。特に圧電/電歪層14b4の焼成後に形成される電極14a5には、焼成後に緻密でより薄い膜が得られる有機金属ペースト、例えば金レジネートペースト、白金レジネートペースト、銀レジネートペースト等の材料を用いることが好ましい。
図1に示した圧電/電歪デバイス10においては、接着剤を使用する領域を規定するための突起部12a,12aが設けられているが、図3に示したように、突起部12a,12aを省略してもよい。これにより、保持部13,13に物品を取り付ける場合に、保持部13,13間に薄板部12,12間の距離に相当する大きさの物品を挟み込むように取り付けることが可能となる。この場合、物品を取り付けるための接着剤が使用される領域が実質的に保持部13,13を構成することになる。
上述した圧電/電歪デバイス10は、超音波センサや加速度センサ、角速度センサや衝撃センサ、質量センサ等の各種センサとしても利用することもできる。また、かかる圧電/電歪デバイス10を各種センサとして利用する場合には、同圧電/電歪デバイス10は、対向する保持部13,13間、或いは薄板部12,12間に取り付けられる物体のサイズを適宜調整することにより、センサの感度調整を容易に行い得るという更なる長所を有する。
次に、上記圧電/電歪デバイス10の製造方法について説明する。圧電/電歪デバイス10の圧電/電歪素子14,14を除く基体部(即ち、固定部11、薄板部12,12、並びに保持部13,13)は、セラミックグリーンシート積層法を用いて製造されることが好ましい。一方、圧電/電歪素子14,14は、薄膜や厚膜等の膜形成手法を用いて製造されることが好ましい。
圧電/電歪デバイス10の基体部における各部材を一体的に成形することが可能なセラミックグリーンシート積層法によれば、各部材の接合部の経時的な状態変化がほとんど生じないため、接合部位の信頼性を高くすることができ、かつ、剛性を確保することができる。また、基体部を金属板を積層して形成する場合、金属の拡散接合法によれば、各部材の接合部の経時的な状態変化がほとんど生じず、接合部位の信頼性と剛性とを確保することができる。
この実施の形態に係る図1に示した圧電/電歪デバイス10においては、薄板部12,12と固定部11との境界部分(接合部分)並びに薄板部12,12と保持部13,13との境界部分(接合部分)は、変位発現の支点となるため、これらの接合部分の信頼性は圧電/電歪デバイス10の特性を左右する重要なポイントである。
また、以下において説明する製造方法は、生産性が高く成形性にも優れるため、所定形状の圧電/電歪デバイス10を短時間に、かつ、再現性よく得ることができる。
なお、以下において、複数のセラミックグリーンシートを積層して得られた積層体をセラミックグリーンシート積層体22(図5を参照。)と定義し、このセラミックグリーンシート積層体22を焼成して一体化したものをセラミック積層体23(図6を参照。)と定義する。
また、かかる製造方法の実施にあたっては、図6のセラミック積層体を縦横に複数個並べたものと同等の1枚のシートを準備し、このシートの表面に後に圧電/電歪素子14となる積層体24(図7を参照。)を所定の部位に複数個分だけ連続させたものを形成し、このシートを切断することで、同一工程で多数個の圧電/電歪デバイス10を製造することが望ましい。更には、一つの窓(図4に示したWd1等)から2個以上の複数の圧電/電歪デバイス10が取り出されるように製造することが望ましい。但し、以下においては、説明を簡単にするため、セラミック積層体の切断により圧電/電歪デバイス10を1個だけ取り出す方法について説明する。
まず、ジルコニア等のセラミック粉末にバインダ、溶剤、分散剤、可塑剤等を添加混合してスラリーを作製し、これを脱泡処理後、リバースロールコーター法、ドクターブレード法等の方法により、所定の厚みを有する長方形のセラミックグリーンシートを作製する。
次に、図4に示したように、必要に応じて金型を用いた打抜加工やレーザ加工等の方法によりセラミックグリーンシートを種々の形状に加工し、複数枚のセラミックグリーンシート21a〜21fを得る。
図4に示した例においては、セラミックグリーンシート21b〜21eに対して、長方形の窓Wd1〜Wd4をそれぞれ形成する。窓Wd1と窓Wd4は略同一形状であり、窓Wd2と窓Wd3は略同−形状である。セラミックグリーンシート21a,21fは、後に薄板部12,12を構成する部分を含む。なお、セラミックグリーンシートの枚数は、あくまでも一例である。また、図示された例では、セラミックグリーンシート21c,21dは、所定の厚みを有する一枚のグリーンシートでもよく、或いは、同所定の厚みを得るために複数枚のセラミックグリーンシートを積層する又は積層したものであってもよい。
その後、図5に示したように、セラミックグリーンシート21a〜21fを積層・圧着してセラミックグリーンシート積層体22を形成する。次いで、そのセラミックグリーンシート積層体を焼成して図6に示したセラミック積層体23を形成する。
なお、セラミックグリーンシート積層体22を形成するための(積層一体化のための)圧着回数や順序は限定されない。なお、一軸加圧(一方向への加圧)によっては圧力が十分に伝達されない箇所が存在する場合、複数回圧着を繰り返すか、或いは圧力伝達物を充填して圧着を行うことが望ましい。また、製造する圧電/電歪デバイス10の構造や機能に応じて、例えば窓Wd1〜Wd4の各形状、セラミックグリーンシートの枚数や厚み等は適宜決定され得る。
上記積層一体化のための圧着を加熱しながら行うようにすると、より確実な積層状態を得ることができる。また、セラミック粉末、バインダを主体としたペースト、又はスラリー等を接合補助層としてセラミックグリーンシート上に塗布、又は印刷して圧着を行えば、セラミックグリーンシート界面の接合状態をより良好な状態とすることができる。この場合、接合補助剤として使用されるセラミック粉末は、セラミックグリーンシート21a〜21fに使用されたセラミックスと同一又は類似した組成を有していることが、接合の信頼性確保の点で好ましい。更に、セラミックグリーンシート21a,21fが薄い場合、プラスチックフィルム(特に、表面にシリコーン系の離型剤をコーティングしたポリエチレンテレフタレートフィルム)を用いて同セラミックグリーンシート21a,21fを取り扱うことが好ましい。また、セラミックグリーンシート21b,21e等の比較的薄いシートに窓Wd1,Wd4等を形成する際、これらのシートを前記プラスチックフィルムに取り付けた状態で同窓Wd1,Wd4等を形成するための加工を行ってもよい。
次に、図7に示すように、前記セラミック積層体23の両表面、即ち、積層されたセラミックグリーンシート21a,21fの焼成後の表面にそれぞれ圧電/電歪層積層体24,24を形成する。圧電/電歪層積層体24,24の形成法としては、スクリーン印刷法、ディッピング法、塗布法、及び電気泳動法等の厚膜形成法や、イオンビーム法、スパッタリング法、真空蒸着、イオンプレーティング法、化学気相成長法(CVD)、及びめっき等の薄膜形成法を用いることができる。
このような膜形成法を用いて圧電/電歪層積層体24,24を形成することにより、接着剤を用いることなく、圧電/電歪層積層体24,24と薄板部12,12とを一体的に接合(配設)することができ、信頼性、再現性を確保できると共に、集積化を容易にすることができる。
この場合、厚膜形成法により圧電/電歪層積層体24,24を形成することがより好ましい。厚膜形成法を用いれば、平均粒径0.01〜5μm、好ましくは0.05〜3μmの圧電セラミックスの粒子や粉末を主成分とするペーストやスラリー、又はサスペンションやエマルジョン、ゾル等を用いて膜化することができ、それを焼成することによって良好な圧電/電歪特性を得ることができるからである。
なお、電気泳動法は、膜を高い密度で、かつ、高い形状精度で形成できるという利点を有する。また、スクリーン印刷法によれば、膜厚の制御とパターン形成とを同時に行うことができるので、製造工程を簡略化することが可能である。
ここで、セラミック積層体23及び圧電/電歪層積層体24,24の形成方法の一例について詳述する。まず、セラミックグリーンシート積層体22を1200〜1600℃の温度で焼成して一体化し、図6に示したセラミック積層体23を得た後、図2に示したように、同セラミック積層体23の両表面の所定位置に電極14a1,14a1を印刷して焼成し、次いで、圧電/電歪層14b1,14b1を印刷して焼成し、その上に電極14a2,14a2を印刷して焼成する。このような処理を所定回数繰り返して圧電/電歪層積層体24,24を形成する。その後、電極14a1,14a3,14a5、及び電極14a2,14a4を駆動回路にそれぞれ電気的に接続するための端子電極(図示省略)を印刷、焼成する。
なお、最下層の電極14a1を印刷して焼成し、その後、圧電/電歪層14b1と電極14a2とを印刷してから同時に焼成し、その後、同様に、一つの圧電/電歪層と一つの電極とを印刷してから同時に焼成する工程を所定回数だけ繰り返すことで圧電/電歪層積層体24,24を形成してもよい。
この場合、例えば、電極14a1,14a2,14a3,14a4を白金(Pt)を主体とした材料、圧電/電歪層14b1〜14b4をジルコン酸チタン酸鉛(PZT)を主体とした材料、他の電極14a5を金(Au)、更に、端子電極を銀(Ag)でそれぞれ構成するように、各部材の焼成温度が積層順に従って低くなるように材料を選定すると、ある焼成段階において、それより以前に焼成された材料の再焼結が起こらず、電極材等の剥離や凝集といった不具合の発生を回避することができる。
なお、適当な材料を選択することにより、圧電/電歪層積層体24,24の各部材と端子電極とを逐次印刷して、1回で一体焼成することも可能である。また、最外層の圧電/電歪層14b4の焼成温度を圧電/電歪層14b1〜14b3の焼成温度より高くして、これらの圧電/電歪層14b1〜14b4の最終的な焼結状態を同一にするように圧電/電歪積層体24を形成してもよい。
また、圧電/電歪層積層体24,24の各部材と端子電極は、スパッタ法や蒸着法等の薄膜形成法によって形成してもよく、この場合には、必ずしも熱処理を必要としない。
圧電/電歪層積層体24,24の形成においては、セラミックグリーンシート積層体22の両表面、即ち、セラミックグリーンシート21a及び21fの各表面に予め圧電/電歪層積層体24,24を形成しておき、そのセラミックグリーンシート積層体22と圧電/電歪層積層体24,24とを同時に焼成してもよい。
圧電/電歪層積層体24,24とセラミックグリーンシート積層体22とを同時焼成する方法としては、スラリー原料を用いたテープ成形法等によって圧電/電歪層積層体24,24の前駆体を成形し、この焼成前の圧電/電歪層積層体24,24の前駆体をセラミックグリーンシート積層体22の表面上に熱圧着等で積層し、その後、これらを同時に焼成する方法が挙げられる。但し、この方法では、上述した膜形成法を用いて、セラミックグリーンシート積層体22の表面及び/又は圧電/電歪層積層体24,24に予め電極14a1,14a1を形成しておく必要がある。
その他の方法としては、セラミックグリーンシート積層体22の少なくとも最終的に薄板部12,12となる部分にスクリーン印刷により圧電/電歪層積層体24,24の各構成層である電極14a1〜14a5、及び圧電/電歪層14b1〜14b4を形成し、これらを同時に焼成する方法が挙げられる。
圧電/電歪層積層体24,24の構成膜の焼成温度は、これを構成する材料によって適宜決定されるが、一般には、500〜1500℃であり、圧電/電歪層14b1〜14b4に対しては、1000〜1400℃が好適な焼成温度である。この場合、圧電/電歪層14b1〜14b4の組成を制御するためには、圧電/電歪層14b1〜14b4の材料の蒸発が制御される状態(例えば、蒸発源の存在下)で焼結することが好ましい。なお、圧電/電歪層14b1〜14b4とセラミックグリーンシート積層体22を同時焼成する場合には、両者の焼成条件を合わせることが必要である。圧電/電歪層積層体24,24は、必ずしもセラミック積層体23もしくはセラミックグリーンシート積層体22の両面に形成される必要はなく、セラミック積層体23もしくはセラミックグリーンシート積層体22の片面のみに形成されてもよい。
次に、上述のようにして、圧電/電歪層積層体24,24が形成されたセラミック積層体23(以下、後に圧電/電歪デバイス10を構成する「セラミック積層体23及び圧電/電歪層積層体24からなるもの」を「被加工物」と云うこともある。)のうちの不要な部分を切除する。即ち、図8に示した切断線(破線)C1〜C4に沿って被加工物を切断する。切断は、ワイヤーソー加工やダイシング加工等の機械加工等により行うことが可能である。
この切断のうち、図8に示した切断線C3及びC4に沿う被加工物の切断は、比較的強度が小さく脆い圧電/電歪層と粘り易い延性を有する金属とからなる圧電/電歪層積層体24,24の切断を含むから、切断時に被加工物に対して大きな加工負荷が加わるダイシング加工によることは好ましくなく、被加工物に対する加工負荷が小さい他の加工によることが望ましい。中でも複数個の圧電/電歪デバイス10を同時に形成するための同時切断に適し、加工負荷が小さいワイヤーソー加工が係る切断に適している。
また、切断線C3及びC4に沿う切断のように機械的な特性(切断加工に対する物理的な特性)が互いに異なる複数のセラミック、電極、及び圧電/電歪層からなる複合体の切断ではなく、切断線C1及びC2に沿う切断のように均一又は類似の機械的特性を有するセラミックで構成された部分の切断には、ワイヤーソー加工のほか、他の加工方法を用いても良い。例えば、切断線C1及びC2に沿う切断には、ダイシング加工を採用することが好ましい。
上述のようにして、図8に示した切断線C1〜C4に沿って被加工物を切断すると、突起部12a、12aが形成される前であって、且つ後述する特定処理が施される前の図1に示した圧電/電歪デバイス10に相当する被加工物が得られる。
次に、係る被加工物に対して上述したセラミックグリーンシート21a〜21fの作製に使用されたスラリーと同一のスラリーを用いて後に突起部12a,12aを構成する突起体(即ち、焼成前の突起部12a,12a)を同被加工物の所定の位置にそれぞれ形成する。係る突起体の形成法としても、上述した圧電/電歪層積層体24,24の形成法と同様、スクリーン印刷法、ディッピング法、塗布法、及び電気泳動法等の厚膜形成法や、イオンビーム法、スパッタリング法、真空蒸着、イオンプレーティング法、化学気相成長法(CVD)、及びめっき等の薄膜形成法を用いることができる。
次いで、その突起体が形成された被加工物を焼成する。これにより、薄板部12,12と同一の材料で一体焼結された突起部12a,12aが形成される。この結果、特定処理が施される前の図1に示した圧電/電歪デバイス10に相当する被加工物(以下、「特定処理前圧電/電歪デバイス」と称呼する。)が得られる。
そして、最後に、圧電/電歪素子デバイス10の2つの側端面に対応する特定処理前圧電/電歪デバイスの2つの側端面(即ち、上記切断線C3及びC4に沿った切断面)に対して特定処理を施す。これにより、図1に示した圧電/電歪デバイス10が製造される。
以下、係る特定処理について詳述する。この特定処理は、圧電/電歪デバイス10が実際に使用される場合において、圧電/電歪素子14,14の側端面(特に、圧電/電歪層14b1〜14b4の側端面。図2を参照)に水分が付着することを効果的に抑制することで上述した漏電やイオンマイグレーションの発生を効果的に抑制するための処理である。
より具体的には、この特定処理は、圧電/電歪素子14の側端面(即ち、圧電/電歪層14b1〜14b4の側端面と電極14a1〜14a5の側端面とにより形成された側端面全体)の実際の表面積(以下、「実表面積Sact」と称呼する。)を小さくし、その結果、同圧電/電歪素子14の側端面の正射影の面積Sproに対する同圧電/電歪素子14の側端面の実表面積Sactの割合「Sact/Spro」(従って、前記表面積増加率Smag)を小さくするための処理である。これは、圧電/電歪素子14の側端面の実表面積Sactが小さいほど(従って、表面積増加率Smagが小さいほど)、同圧電/電歪素子14の側端面(従って、圧電/電歪層14b1〜14b4の側端面)に水分が付着し難くなるという事実に基づく。
特定処理は、例えば、YAGレーザー加工、エキシマレーザー加工、ドライアイスブラスト加工、超音波洗浄、熱処理、研磨(ポリッシュ)、或いは研磨と熱処理の組み合わせにより行うことが可能である。以下、各処理の具体例の概要について順に説明していく。
(NO.1:YAGレーザー加工)
YAGレーザー加工は、例えば、esi(株)製のYAG3次レーザー加工機「MICRO MACHINING SYSTEM MODEL4420」を使用して下記条件下にて、特定処理前圧電/電歪デバイスの2つの側端面に対して行われる。これにより、圧電/電歪素子14,14の側端面が再溶融することで同側端面の凹凸が小さくなり(或いは、凹凸の一部が消滅して)、この結果、同側端面の実表面積Sact(従って、表面積増加率Smag)が小さくなる。
〈YAGレーザー加工条件〉
・パルス周波数は4kHzに設定する。
・加工速度は1mm/secに設定する。
・YAG3次レーザー波長は355nmに設定する。
(NO.2:エキシマレーザー加工)
エキシマレーザー加工は、例えば、三菱電機(株)製のエキシマレーザー加工機「エキシマワークシステムMEX−24−M」を使用して下記条件下にて、特定処理前圧電/電歪デバイスの2つの側端面に対して行われる。これにより、圧電/電歪素子14,14の側端面が再溶融することで同側端面の凹凸が小さくなり(或いは、凹凸の一部が消滅して)、この結果、同側端面の実表面積Sact(従って、表面積増加率Smag)が小さくなる。
〈エキシマレーザー加工条件〉
・KrFレーザー波長は248nmに設定する。
(NO.3:ドライアイスブラスト加工)
ドライアイスブラスト加工は、例えば、Alpheus(株)製のドライアイスブラスト加工機「CO2 cleanblast Precision series Model T−2」を使用して所定の条件下にて、特定処理前圧電/電歪デバイスの2つの側端面に対して行われる。これにより、圧電/電歪素子14,14の側端面の微細な凸部が削り取られることで凹凸が小さくなり、この結果、同側端面の実表面積Sact(従って、表面積増加率Smag)が小さくなる。
(NO.4:超音波洗浄)
超音波洗浄は、例えば、下記条件の砥粒が混入された所定の溶液中に特定処理前圧電/電歪デバイスを投入し、所定の超音波洗浄機を使用して所定の条件下にて、同特定処理前圧電/電歪デバイスの全表面に対して超音波洗浄を行うことにより行われる。これにより、圧電/電歪素子14,14の側端面の微細な凸部が削り取られることで凹凸が小さくなり、この結果、同側端面の実表面積Sact(従って、表面積増加率Smag)が小さくなる。
〈超音波洗浄条件〉
超音波洗浄A:#800 AL2O3を砥粒として使用する。
超音波洗浄B:#1000 SiCを砥粒として使用する。
(NO.5:熱処理)
熱処理は、例えば、東京理科器械(株)製の大気炉熱処理機「ELECTRIC FURNACE TMF−3200−R」を使用して下記条件下にて特定処理前圧電/電歪デバイス全体を加熱することで行う。これにより、圧電/電歪素子14,14の側端面が再焼結する(且つ、多少、再溶融する)ことで同側端面の凹凸が小さくなり(或いは、凹凸の一部が消滅して)、この結果、同側端面の実表面積Sact(従って、表面積増加率Smag)が小さくなる。
〈熱処理条件〉
熱処理A:800℃を1時間維持する。
熱処理B:900℃を1時間維持する。
熱処理C:1000℃を1時間維持する。
(NO.6:CMP)
CMP(ケミカルメカニカルポリッシュ、メカノケミカルポリッシュ)は、表面をラッピング加工もしくはポリシュ加工して表面粗さを小さくする研磨方法の一種であり、研磨剤にアルカリ性の研磨液と平均粒径が100nm以下のコロイダルシリカ等の砥粒を用いた研磨方法である。
この研磨方法では、微小な研磨剤が被研磨物に衝突するとき発生する熱などのエネルギーによって被研磨物と研削液の化学反応をその位置で増幅させることで被研磨物が化学的に溶解させられる。この方法では、砥粒による機械的な破壊による加工ではなく化学的な溶解反応による加工が行われるため、スクラッチが無く研磨面に残留する歪(加工歪、内部応力)が少ない、或いは、殆どない状態を形成することできるという利点がある。この方法を圧電/電歪デバイス加工の表面処理に適用することで、加工面からの粒子の発生、即ち、加工面からの脱粒を抑えることができる。これにより、圧電/電歪素子14,14の側端面の微細な凸部が溶融により小さくなり、この結果、同側端面の実表面積Sact(従って、表面積増加率Smag)が小さくなる。
〈CMP条件〉
研磨剤:fujimi製 クリアライトS
ポリシイングクロス:fujimi製 surfin 018‐3(スウェード)
12inch 100rpm分、加重0.4kg
なお、この条件でCMPを行った後における圧電/電歪層の側端面の表面粗さは、Ry0.03μm以下であった。なお、CMPでは、非常に小さい砥粒(粒径:100nm以下)が使用される。従って、CMP後においては、係る微小砥粒(微小粒子)を除去するため、ブラシ洗浄や超音波洗浄等を十分に行う必要がある。特に、超音波洗浄が行われる場合、圧電/電歪素子へのダメージを少なくし、且つ、微小粒子に対する高い洗浄性を確保するため、50kHz以上、好ましくは100kHz以上の周波数の超音波を使用することが好ましい。
(NO.7:2回熱処理)
この2回の熱処理も、上述したNO.5の熱処理と同様、例えば、東京理科器械(株)製の大気炉熱処理機「ELECTRIC FURNACE TMF−3200−R」を使用して特定処理前圧電/電歪デバイス全体を加熱することで順に行う。このとき、1回目の熱処理温度を2回目の熱処理温度よりも高くする。これにより、圧電/電歪素子14,14の側端面が再焼結する(且つ、多少、再溶融する)ことが繰り返されて、同側端面の凹凸が小さくなり(或いは、凹凸の一部が消滅して)、この結果、同側端面の実表面積Sact(従って、表面積増加率Smag)が小さくなる。なお、1回目の熱処理と2回目の熱処理との間には、超音波洗浄工程が実施される。
〈2回熱処理条件〉
1回目の熱処理:800℃〜1000℃を1時間維持する。
2回目の熱処理:600℃を1時間維持する。
(NO.8:2回研磨)
係る圧電/電歪デバイスは、上述のごとく、基体部と、同基体部に一体形成された圧電/電歪素子14,14とから形成されている。即ち、圧電/電歪デバイスは、基体部を構成する硬い材料であるジルコニア、圧電/電歪層を構成する比較的柔らかい材料である圧電/電歪材料、及び電極を構成する金属材料という加工性(加工特性)がそれぞれ異なる材料から構成されることになる。
この結果、例えば、硬い材料であるジルコニアに加工条件を合わせると、圧電/電歪材料が削れ過ぎるという現象が生じ易いという問題がある。一方、比較的柔らかい材料である圧電/電歪材料等に加工条件を合わせるとジルコニアが加工され難いため加工時間が長くなるという問題があった。更には、比較的柔らかい材料である圧電/電歪材料(圧電/電歪素子)の側端面はカケを生じ易いという問題があった。
このため、ここでは、圧電/電歪素子14,14の側端面の角部に対して研磨により曲面加工(R加工)又は面取り加工を施す第1研磨工程と、その後、圧電/電歪素子14,14の側端面の平面部(表面)を研磨により仕上げて同圧電/電歪素子14,14を形成する第2研磨工程とが行われる。これにより、圧電/電歪素子14,14の側端面の微細な凹部が削り取られることで同側端面の凹凸が小さくなり、この結果、同側端面の実表面積Sact(従って、表面積増加率Smag)が小さくなる。
この製造方法は、圧電/電歪素子14,14の側端面(圧電/電歪デバイスの側端面)の角部をR加工又は面取り加工(以下、単に「R加工」と称呼する。)することで同角部への衝撃集中を分散させられることに着目したものである。即ち、圧電/電歪素子14,14の側端面(圧電/電歪デバイスの側端面)を研磨する際、最初にその角部にR加工を施しておく。これにより、その後において上記側端面の平面部(表面)に対して研磨による比較的強い負荷を加えてもカケが生じないことがわかった。また、加工時間を短くする事もできることがわかった。
〈2回研磨条件〉
1回目の研磨(側端面の角部の研磨)として、
研磨剤:平均粒径1μmのダイヤモンドスラリー
ポリシイングクロス:fujimi製 surfin 191
12inch 100rpm分、加重0.4kg
2回目の研磨(側端面の平面部の研磨)として、
研磨剤:平均粒径0.5μmのダイヤモンドスラリー
ポリシイングクロス:fujimi製 K−0013
12inch 100rpm分、加重0.4kg
なお、この条件で2回目の研磨を行った後における圧電/電歪層の側端面の平面部の表面粗さは、Ry0.03μm以下であった。また、1回目の研磨として、CMPを行ってもよい。これによれば、カケが発生し易い側端面の角部に対して加工歪が少ないCMPがなされることになるから、側端面のカケ・クラック等の発生を少なくすることができる。更には、研磨剤としてダイヤモンドスラリーを使用した場合に比して研磨の加工速度が速くなり、加工効率を高めることができる。
(NO.9:2回研磨+2回熱処理)
この2回研磨も、NO.8の2回研磨と同じ条件で行う。圧電/電歪素子14,14の側端面の角部に対する係るR加工が施され、且つ、圧電/電歪素子14,14の側端面の平面部が研磨により仕上げられた後、洗浄を実施し、次いで、熱処理(1回目の熱処理)を施すことによって、上記洗浄で除去され得なかった付着物内の有機成分を除去することができる。また、圧電/電歪素子の側端面(以下、「加工面」とも称呼する。)の表面の粒子の固相反応が促進されることで、加工面の加工歪が修復されて、加工面からの圧電/電歪素子の粒子の脱粒が低減され得る。
但し、付着物内の無機成分は1回目の熱処理後に灰分として残留するため、1回目の熱処理後に再び洗浄を施すことで除去する必要がある。ここでは、1回目の熱処理後の再洗浄の更に後に再び熱処理(2回目の熱処理)を施すことで、圧電/電歪素子の気孔部からの脱粒を低減させる効果を付加した。
〈2回研磨後における2回熱処理条件〉
1回目の熱処理:600℃を1時間維持する。
2回目の熱処理:600℃を1時間維持する。
なお、研磨後に得られた圧電/電歪層の側端面の平面部の表面粗さは、Ra 1μm以下であった。
以下、特定処理として係る熱処理を行う場合について追加的な説明を行う。係る熱処理を行う場合において熱処理温度が比較的高い場合、端子電極(図示せず)、或いは最外層の電極14a5の材料として、例えば、金レジネートペースト、或いはPtレジネートペーストに、ジルコニアZrやロジウムRh等を500ppm以上添加したものを使用することが望ましい。これにより、端子電極、及び最外層の電極14a5を構成する薄膜の耐熱性が向上する。
この場合、上記薄膜の膜厚は、熱処理を行わない場合に比して、0.1μm以上厚くすることが好ましく、0.5μm以上厚くすることがより好ましく、1μm以上厚くすることが更に好ましい。ただし、膜厚を厚くするにつれて圧電/電歪素子14の変位量が低下していく。従って、圧電/電歪デバイス10が要求される諸元等に応じて、熱処理温度、膜厚等をそれぞれ最適値に設定することが好ましい。
また、圧電/電歪素子14が要求される変位量が大きい場合、更に耐熱性の高い高温用の金ペースト、或いは、Pt又はPt/PZTサーメットを、端子電極、或いは最外層の電極14a5の材料として使用することが好ましい。
ここで、Pt/PZTサーメットが使用される場合、PtとPZTの配合比は、電極の十分な導通性が確保され得る値に設定されることが要求される。具体的には、PZTに対するPtの配合比率(体積比率)は、1以上であることが好ましく、4以上であることが更に好ましい。
また、Pt又はPt/PZTサーメットが、端子電極、或いは最外層の電極14a5の材料として使用される場合、印刷・焼成を層毎に独立して行ってもよいし、圧電/電歪層14b4の印刷後に最外層の電極14a5と端子電極を印刷し、圧電/電歪層14b1〜b4、電極14a1〜a5、及び端子電極を同時に焼成してもよい。
更には、熱処理温度は、800℃以上、1400℃以下に設定されることが好ましい。800℃未満では上述した圧電/電歪素子14,14の側端面の再焼結等のような熱処理による効果が認められず、また、1400℃を超えるとPZTの分解が発生するからである。ただし、熱処理温度が1000℃以上に設定される場合、圧電/電歪層14b1〜14b4の材料(PZT)の蒸気圧を制御するため(従って、圧電/電歪層14b1〜14b4の組成を制御するため)、圧電/電歪層14b1〜14b4の材料と同一の材料からなる物体(PZT蒸発源)を炉の中に投入した状態で熱処理が行われることが好ましい。
また、大気炉を使用する場合、熱処理温度は、800℃以上、1000℃以下に設定されることが好ましい。大気炉を使用する場合、800℃未満では上述した圧電/電歪素子14,14の側端面の再焼結等ような熱処理による効果が認められず、また、1000℃を超えるとPZTの分解が発生するからである。なお、大気炉を使用する場合、熱処理温度を850℃以上、950℃以下に設定することが更に好ましい。
加えて、特定処理として、上述したレーザー加工、ブラスト加工、超音波洗浄よりも熱処理を採用することが好ましい。熱処理は、比較的安価な設備をもって実行可能であり、また、大量一括処理が可能であるため量産性に優れるからである。
次に、上記NO.1〜上記NO.9の特定処理の効果を確認するための効果確認試験を行ったので、その試験内容、及びその結果について説明する。この効果確認試験は、以下の手順にて行った。
先ず、本発明に係る試験品として、上記条件にてYAGレーザー加工を行ったもの(YAGレーザー加工品。サンプル数n=2)、上記条件にてエキシマレーザー加工を行ったもの(エキシマレーザー加工品。サンプル数n=2)、上記条件にてドライアイスブラスト加工を行ったもの(ドライアイスブラスト加工品。サンプル数n=2)、上記条件にて超音波洗浄Aを行ったもの(超音波洗浄品A。サンプル数n=1)、上記条件にて超音波洗浄Bを行ったもの(超音波洗浄品B。サンプル数n=1)、上記条件にて熱処理Aを行ったもの(熱処理品A。サンプル数n=1)、上記条件にて熱処理Bを行ったもの(熱処理品B。サンプル数n=1)、上記条件にて熱処理Cを行ったもの(熱処理品C。サンプル数n=1)、上記条件にてCMPを行ったもの(CMP品。サンプル数n=1)、上記条件にて2回熱処理を行ったもの(2回熱処理品。サンプル数n=1)、上記条件にて2回研磨を行ったもの(2回研磨品。サンプル数n=1)、上記条件にて2回研磨+2回熱処理を行ったもの(2回研磨+2回熱処理品。サンプル数n=1)をそれぞれ準備するとともに、比較対象に係る試験品として、特定処理前圧電/電歪デバイス(特定処理無し品。サンプル数n=2)を準備した。
次に、各試験品についての圧電/電歪素子14の側端面の表面積増加率Smag(=Sact/Spro)をそれぞれ測定した。この測定は、OLYMPUS(株)製の走査型共焦点レーザー顕微鏡「OLS1100」を用いて、各試験品についての圧電/電歪素子14の側端面の微細な凹凸形状(三次元形状)を画像解析により評価することで行った。なお、この走査型共焦点レーザー顕微鏡に代えて、或る表面の画像解析を行うことで微細な凹凸形状を含めた同表面の三次元的な形状を三次元的な位置データとして認識できるその他の装置によっても同様に、上記表面積増加率Smagを測定することができる。このような装置としては、例えば、原子間力顕微鏡(例えば、Digital Instruments社製Nano Scope 4等)が挙げられる。
この効果確認試験の結果を表1に示す。特定処理による表面積増加率Smagの減少効果をより把握し易くするため、表1は、各試験品の表面積増加率Smagの測定結果のみならず、表面積増加率Smag=5となった特定処理無し品を基準品として扱った場合における、基準品の表面積増加率である基準表面積増加率Smagref(=5)に対する各試験品の表面積増加率Smagの割合「Smag/Smagref」(以下、「表面積増加率比ratioSmag」と称呼する。)の計算結果をも示している。また、上記表面積増加率比ratioSmagの計算結果をグラフにて表すと図9に示すようになる。
表1から理解できるように、圧電/電歪素子14の側端面の表面積増加率Smagは、特定処理無し品(試験品数:2)では総て「4」より大きくなる一方、特定処理が施された本発明に係る圧電/電歪デバイス10(試験品数:15)では総て「4」以下となっている。
換言すれば、ワイヤーソー加工による切断により形成されたままの圧電/電歪素子14の側端面の表面積増加率Smagは「4」より大きくなる一方、上記NO.1〜上記NO.9の何れかの特定処理を施すと、同表面積増加率Smagが小さくなって「4」以下となる(或いは、「4.5」以下、或いは、「3.7」以下となる)。
また、表1から理解できるように、特定処理としてYAGレーザー加工、熱処理、或いは研磨を施すと、表面積増加率Smagは約「3」以下となり、大きな表面積増加率Smagの低減効果を得ることができた。特に、CMP、2回研磨、或いは2回研磨+2回熱処理を施すと、表面積増加率Smagは約「1.5」以下となり、特に大きな表面積増加率Smagの低減効果を得ることができた。
このようにして、特定処理による圧電/電歪素子14の側端面の表面積増加率Smagの低減効果(従って、実表面積Sactの低減効果)を確認することができた。なお、この例(基準表面積増加率Smagref=5の場合)では、「表面積増加率Smag=4」は、「表面積増加率比ratioSmag=0.8」に相当する(図9を参照)。なお、これらの表面積は、表面の傷・穴などの明らかに異常な表面形状に対応する部分を除いて測定されている。
更に、本発明者は、係る圧電/電歪デバイス10を通常の使用条件下にて実際に使用する場合において、圧電/電歪素子14の側端面の表面積増加率Smagが「4.5」以下、より好ましくは「4」以下であれば、同側端面への水分の付着が十分に抑制され得、この結果、上述した漏電やイオンマイグレーションが実質的に発生しないことを、別途、所定の耐久試験、加速試験等を通して確認している。
例えば、本発明者は、タバイエスペック(株)製のクリーン恒温恒湿器度「PCR−3KP」を使用して、温度85℃湿度85%の環境下で電極間電圧をsin波6kHz20±20Vで印加する1000時間の耐久試験を行った。上述した漏電やイオンマイグレーションの発生の程度は、圧電/電歪素子の電極間の絶縁抵抗値Rを測定することで確認した。
表2、及び図10は、表1(従って、図9)に示したデータを測定する際に使用した試験品と同じ試験品についての圧電/電歪素子14の電極間の絶縁抵抗値Rをそれぞれ測定した結果を示している。
表2、及び図10から理解できるように、圧電/電歪素子14の電極間の絶縁抵抗値Rは、特定処理無し品(試験品数:1)では大きく低下している一方、特定処理が施された本発明に係る圧電/電歪デバイス10(試験品数:15)では殆ど低下していない。即ち、係る圧電/電歪デバイス10を通常の使用条件下にて実際に使用する場合において、圧電/電歪素子14の側端面に特定処理を施すと、同側端面への水分の付着が十分に抑制され得ること(即ち、耐電圧性が高いこと)が確認できた。
以下、上記特定処理(特に、レーザー加工と熱処理)について付言しておく。上述したレーザー加工、ブラスト加工、超音波洗浄、及び熱処理は圧電/電歪素子14の側端面(特に、圧電/電歪層14b1〜14b4の側端面。図2を参照)に水分が付着することを効果的に防止するが、特に、レーザー加工及び熱処理では、圧電/電歪素子14の側端面において表面改質(化学的な親和性変化)が同時にもたらされることで上記水分の付着がより一層防止される。
より具体的に述べると、レーザー加工及び熱処理が施される前の表面(特定処理前圧電/電歪デバイスの2つの側端面)は切断面(加工面)であるから、その表面におけるダングリングボンドに水酸基や水素基が結合している。従って、水素結合によりその表面において水分子が結合され易い。一方、レーザー加工又は熱処理後の表面(特に、圧電/電歪素子14の側端面)では、その処理の際に同表面に付与されたエネルギー(例えば、熱エネルギー)によってダングリングボンド同士の結合が発生する。この結果、ダングリングボンドに結合していた水酸基や水素基がなくなって圧電/電歪素子14の側端面において水分子が結合され難くなる。
また、上述したように、レーザー加工及び熱処理が施される前の表面(特定処理前圧電/電歪デバイスの2つの側端面)は加工面である。圧電/電歪層は比較的加工され易いセラミックスからなり、電極は延性を有する金属からなる。従って、圧電/電歪層と電極の間の加工特性の相違により、上記加工面において電極が突起した形状となったり電極にバリが発生し易い。ここで、電極が突起した形状になると電界集中が発生して圧電/電歪素子の耐電圧性が低下する。また、電極にバリが発生すると圧電/電歪層を介した2つの電極間の最短距離が短くなって圧電/電歪素子の耐電圧性が低下する。一方、レーザー加工又は熱処理が施されると、金属からなる電極が圧電/電歪層よりも溶融される。溶融された金属(電極)はその表面エネルギーを小さくするため収縮し、丸みを帯びる。これにより、上記電極の突起が少なくなり、また、同電極のバリが短くなる。よって、電界集中が発生する箇所が少なくなり、また、上記電極間の最短距離が長くなる。これにより、圧電/電歪素子の耐電圧性が高くなる。
また、上述したように、レーザー加工及び熱処理が施される前の表面(特定処理前圧電/電歪デバイスの2つの側端面)は加工面である。従って、加工時の応力により、圧電/電歪層の表面においてその結晶構造が歪み、圧電/電歪層の圧電特性が弱くなる。一方、レーザー加工又は熱処理が施されると、その熱エネルギーにより原子の再構築が行われる。この結果、結晶構造が再構築されて圧電/電歪層の圧電特性が回復する。
加えて、上記加工時の負荷により、圧電/電歪層にクラックが発生している場合がある。一方、レーザー加工又は熱処理が施されると、その熱エネルギーにより再焼結が発生し、上記発生したクラックが補修される効果がある。
ところで、上述したように、特定処理による圧電/電歪素子14の側端面の実表面積Sact(従って、表面積増加率Smag)の低減効果を確認するために表面積増加率Smagを直接的に測定・評価しようとする場合、走査型共焦点レーザー顕微鏡、原子間力顕微鏡等の比較的高価、且つ精密な装置が必要となる。従って、本発明者は、より安価、且つ簡便に圧電/電歪素子14の側端面の実表面積Sact(従って、表面積増加率Smag)を評価できる手法はないかと研究を重ねた。
その結果、圧電/電歪素子14の側端面の実表面積Sact(従って、表面積増加率Smag)は、同側端面からの微小粒子の離脱(以下、粒子が離脱することを「脱粒」と呼ぶ。)の程度(脱粒する粒子数N)と強い相関があることを見出した。
表3、及び図11は、表1(従って、図9)に示したデータを測定する際に使用した試験品と同じ試験品についての圧電/電歪素子14の側端面からの脱粒粒子数Nをそれぞれ測定した結果を示している。
係る脱粒粒子数Nの測定は、RION社製のLPC(liquid particle counter)「KL−26」を利用して行った。具体的には、試験品を所定の超純水が入った容量1000mlのビーカーに投入して超音波洗浄を行う。これにより、試験品から脱粒した粒子を超純水中に拡散させる。そして、係る超純水中の粒径が0.5μm以上の粒子数を上記LPCで計測することで、試験品の圧電/電歪素子14の側端面からの脱粒粒子数Nをカウントする。なお、超純水中に拡散した脱粒粒子が圧電/電歪素子14の側端面から発生していることは、同拡散した脱粒粒子をフィルターで捕集し、堀場製作所(株)製EDS(Energy Dispersive X−ray Spectrometer)「HORIBA XerophyS−298HXI」を使用してその組成分析を行うことで確認している。また、圧電/電歪層における外部に露呈した面全体の正射影の面積は0.045cm2以下である。
図11と図9の比較結果から理解できるように、圧電/電歪素子14の側端面からの脱粒粒子数Nと、圧電/電歪素子14の側端面の表面積増加率Smag(従って、実表面積Sact)とは、定性的な傾向がほぼ一致するということができる。即ち、特に、CMP、2回研磨、或いは2回研磨+2回熱処理を施すと、絶大な脱粒防止効果を得ることができた。
これは、一般に、或る表面の微細な凹凸が大きくてその表面の表面積が大きくなるほど、表面の微細な凸部が同表面から離脱することで脱粒が発生し易くなるという関係があることに基づくものと考えられる。
以上のように、圧電/電歪素子14の側端面からの脱粒粒子数Nは、周知のLPCを利用することにより、安価、且つ簡便に測定できる。また、圧電/電歪素子14の側端面の実表面積Sact(従って、表面積増加率Smag)は、同側端面からの脱粒粒子数Nと強い相関があることが判った。従って、圧電/電歪素子14の側端面からの脱粒粒子数Nを測定することで、安価、且つ簡易に圧電/電歪素子14の側端面の実表面積Sact(従って、表面積増加率Smag)を評価(検査)することができた。
また、LPCは圧電/電歪デバイス10からのゴミ、ほこり等の発生(以下、ゴミ、ほこり等が発生することを「発塵」と云う。)を確認していることになる。ここで、圧電/電歪デバイス10の使用環境によっては(例えば、半導体製造装置の位置決めアクチュエータ等に使用される場合)、発塵はできる限り回避されなければならない。以上のことから、本発明による特定処理を行うことにより、圧電/電歪素子14の側端面の実表面積Sactの減少効果のみならず、同側端面からの脱粒による発塵の防止効果をも発揮され得ることがわかる。
ところで、圧電/電歪素子14の構成要素である複数の電極14a1〜14a5は、例えば、粘り強い延性を有する白金等の金属から成るとともに、同構成要素である複数の圧電/電歪層14b1〜14b4は、例えば、比較的強度が小さく脆い(脆弱な)ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)を主体とした圧電セラミック材料から成っている。比較的強度が小さく脆い(脆弱な)材料は、脱粒が発生する可能性が高い。従って、圧電/電歪素子14の側端面のうち脱粒が発生する可能性が最も高いのは圧電セラミック材料から成る圧電/電歪層14b1〜14b4の側端面であると云える。換言すれば、上記脱粒粒子数Nの殆どは、圧電/電歪層14b1〜14b4からの脱粒によるものと考えられる。
以上、説明したように、本発明による圧電/電歪デバイスは、各種トランスデューサ、各種アクチュエータ、周波数領域機能部品(フィルタ)、トランス、通信用や動力用の振動子や共振子、発振子、ディスクリミネータ等の能動素子のほか、超音波センサや加速度センサ、角速度センサや衝撃センサ、質量センサ等の各種センサ用のセンサ素子として利用することができる。また、この圧電/電歪デバイスは、光学機器、精密機器等の各種精密部品等の変位や位置決め調整、角度調整の機構に用いられる各種アクチュエータとして利用することができる。
また、この圧電/電歪デバイスは、機械加工(ワイヤーソー加工)により切断された圧電/電歪素子14の側端面(切断面)に上述した特定処理を施すことにより、圧電/電歪素子14の側端面の正射影の面積Sproに対する同圧電/電歪素子14の側端面の実際の表面積Sactの割合(表面積増加率Smag)が「4」以下となっている。従って、上述した漏電やイオンマイグレーションが実質的に発生しない程度にまで圧電/電歪素子14の側端面への水分の付着が抑制され得、この結果、圧電/電歪デバイスの所期の作動が長時間に亘って維持され得る。換言すれば、耐久性の高い圧電/電歪デバイスが提供され得る。加えて、発塵ができる限り回避されるべき環境下で使用可能な圧電/電歪デバイスを提供することができる。
本発明は上記実施形態に限らず、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記実施形態においては、特定処理としてのレーザー加工として、YAGレーザー加工とエキシマレーザー加工が挙げられているが、その他のレーザー加工法、例えば、プラズマアッシャー、逆スパッタ等を特定処理として採用してもよい。
また、上記実施形態においては、特定処理としてのブラスト加工として、ドライアイスブラスト加工が挙げられているが、その他のブラスト加工、例えば、SiC,SiO2,ZrO2,AL2O3等のセラミック粒子、ポリエチレン(PET)等の有機物質粒子、AL等の金属粒子、液化CO2によるブラスト加工を特定処理として採用してもよい。
また、上記実施形態においては、特定処理としての超音波洗浄に際し、AL2O3,SiC(セラミック粒子)を砥粒として使用していたが、SiO2,ZrO2等の他のセラミック粒子、ポリエチレン(PET)等の有機物質粒子、AL等の金属粒子等を砥粒として使用してもよい。
また、上記実施形態においては、特定処理としての熱処理に際し、大気炉を使用していたが、酸素、窒素等の雰囲気炉、真空炉を使用してもよい。
また、上記実施形態においては、圧電/電歪素子14は、複数の電極14a1〜14a5と複数の圧電/電歪素子層14b1〜14b4を備えていたが、圧電/電歪素子を、一対の電極と同一対の電極に挟まれた一つの圧電/電歪層を備えてなるように構成してもよい。
また、固定部11、薄板部12,12、及び保持部13,13を金属で構成する場合、図6に示したセラミック積層体23に代えて、このセラミック積層体と同形の金属構造物を鋳造により形成してもよく、或いは、図4に示した各セラミックグリーンシートと同形の薄板状の金属を準備し、これらの金属板をクラッディング法により接合(拡散接合)してセラミック積層体23と同形の金属構造体を形成することもできる。また、断面長方形の棒状金属をコの字状に屈曲させることで、固定部11、薄板部12,12、及び保持部13,13を構成してもよい。
また、上記実施形態においては、圧電/電歪デバイス10の全長(保持部13の端部から固定部11の端部までの長さ)の規定が図6に示した焼成体(セラミック積層体23)の切断加工(ダイシング加工)により行われているが、図4に示したセラミックグリーンシート21a〜21fの加工の際に行うようにしてもよい。具体的には、保持部13の端面に対応する面を内壁面の一部とする開口窓と固定部11の端面に対応する面を内壁面の一部とする開口窓とをセラミックグリーンシート21a〜21fに加工しておいてもよい。これにより、厚い焼成体を切断する場合に比して圧電/電歪デバイス10の全長を製品毎に均一にする(全長を精度良く規定する)ことができる。
また、上記実施形態の圧電/電歪デバイス10においては、一対の保持部13,13の間に対象物を保持していたが、一対の保持部13,13の間にスペーサ(図示せず)を接着剤により介在させてもよい。更に、上記実施形態に係る圧電/電歪デバイスの保持部の側面側(図1においては前面側、又は背面側)に保持すべき対象物を接着等により保持してもよい。
更に、図12に示したように、上述した実施形態における固定部11の中央部を切除して、一対の固定部11a,11aを形成し、各固定部が各薄板部を保持するように構成するとともに、上記一対の薄板部12,12の先端部分を一体に連結する部分で保持部13aを構成してもよい。
上述したNO.6のCMPについて付言しておく。CMPを行った場合、LPC評価値である粒径0.5μm以上の粒子数は、平均粒径1μmのダイヤモンドスラリー、及び錫研磨プレートを用いて加工したものの1/2以下になった。このような効果は、その後において熱処理を施すことなく得ることができる。加えて、このような効果は、上述したR加工を施すことなく得ることができる。この方法を用いることで、粒子の発生の少ない信頼性の高い圧電/電歪デバイスが実現できる。更に、大気中にて650℃ 1h熱処理を施したものは、LPC評価値である粒径0.5μm以上の粒子数がその1/2以下になった。
この方法と更に熱処理など他の方法とを組み合わせることも可能である。熱処理などの温度を上げて表面の加工歪を除去する方法が採用できない場合であっても、化学的に研磨(ポリッシュ)前の加工による表面歪を除去できるし、メカノケミカルポリシング自身が歪を発生させないため、非常に有効である。
研磨(ポリッシュ)を行う前に研磨プレートでラッピング加工し、マスタープレートに貼り付けたデバイス表面高さを揃えておくと、研磨(ポリッシュ)時間を低減できるため有効である。このとき、研磨プレートとして、錫や銅あるいはその化合物のもの、或いは、セラミック研磨プレートを用いることができるが、樹脂研磨プレート(プラスチックプレート)を用いると、被研磨物に対してクラックや欠けをより少なく仕上げることもできる。
研磨クロスを用いたポリシュ加工についても、やわらかい研磨クロスで最初加工し、エッジをまるめておいて、仕上げに硬いクロスで面全体を仕上げることで、加工端面のクラックや欠けの無い加工面を得ることができる。
これらの加工は組み合わせても良い。また、砥粒の粒径を加工が進むに従って小さくしていくことで表面に残る加工歪の量を小さくすることができる。
これらの加工を行った後、コロイダルシリカ等によるメカノケミカルポリシングを施す事で、より精度の高い平面度を合わせ持った圧電/電歪デバイスが実現できる。
メカノケミカルポリシングを施した圧電/電歪デバイスの形状の特徴は、電極材料のPtと圧電/電歪層に化学的研磨差が原因の段差ができることであり、上記実施例ではPtが高くなる方向で約2μmの段差が確認できた。
上述したNO.8の2回研磨について付言しておく。2回研磨を行う場合において、1回目の研磨(第1研磨工程)として圧電/電歪素子の側端面の角部に対してR加工として曲面加工が施される場合、その曲面は、曲率半径が2μm以上200μm以下の曲面から構成されることが好ましい。また、圧電/電歪素子の側端面の角部に対してR加工として面取り加工が施される場合、同角部の辺の面取り長さは、2μm以上200μm以下であることが好ましい。
この場合、前記第1研磨工程、及び前記第2研磨工程における研磨は、研磨クロスを使用して行われることが好適である。更には、この場合、前記第1研磨工程に使用される研磨クロスは、前記第2研磨工程に使用される研磨クロスよりも柔らかいことが好ましい。
このように、圧電/電歪素子の側端面(圧電/電歪デバイスの側端面)を研磨する際、硬い研磨プレートを使用せずに研磨クロスを使用することで、特に応力が集中しやすい角部の残留応力を小さくできる。加えて、圧電/電歪材料の側端面の平面部(表面)の残留応力をも小さくすることができる。この結果、圧電/電歪素子の側端面からの脱粒を少なくすることができた。
また、圧電/電歪素子の側端面の平面部を研磨した後に同側端面の角部にR加工を施したものに比して、カケが少なく滑らかな側端面が容易に得ることができた。また、これにより、取扱いによる衝撃に対しても、角部への衝撃集中を避けることができ、この結果、取扱い易く、且つ信頼性の高い圧電/電歪デバイスが得られた。
更には、R加工後の研磨処理として、硬い研磨プレートを使用せずに研磨クロスを使用することで圧電/電歪素子の側端面(加工面)からの脱粒を少なくすることができた。
加えて、圧電/電歪素子(圧電/電歪デバイス)の加工面の残留応力を緩和するために熱処理を施す場合、熱処理温度を、一般に使用される800℃以上という高温ではなく650℃程度の比較的低い温度に設定しても、優れた脱粒防止効果を奏することができた。この結果、端子材料を高温の熱処理に耐えられる材料に限定することなく圧電/電歪デバイスを構成することができた。
上述したNO.9の2回研磨+2回熱処理(600℃)について付言しておく。これにより、脱粒粒子数が、2回研磨後において1回目の熱処理のみが施される場合に比して、約1/2以下に低減される。このように、圧電/電歪素子の気孔部からの脱粒が抑制されるメカニズムは、以下のようであると推定される。即ち、加工工程(研磨工程)においては、圧電/電歪素子の気孔に砥粒や加工除去物等が出入りし、その結果、研磨の圧力等により気孔内面に歪が与えられる。加えて、洗浄で除去され得ない異物が気孔内に残される。
そして、その後の1回目の熱処理により、固相反応による歪除去が残渣による歪により阻害される。このため、1回目の熱処理後に洗浄して気孔中の残渣が除かれた後、更に、2回目の熱処理を施すことで、同気孔からの粒子発生を低減することができる。
なお、上述したNO.9の2回研磨+2回熱処理(600℃)において、2回熱処理(600℃)に代えて高温の熱処理(800℃〜1000℃)を1回のみ行っても同等の脱粒防止効果が得られることが判っている。このように、2回研磨後において高温の熱処理(800℃〜1000℃)を1回のみ行う場合、2回研磨後において通常の熱処理(600℃)を2回行う場合に比して工程数が減少するというメリットがある。一方、この場合、圧電/電歪素子の電極の材料を高温の熱処理に適するものにしなければならないというデメリットもある。なお、上述した高温の熱処理後においても、通常の熱処理後と同様、付着物内の無機成分が灰分として残留するため、高温の熱処理後においても、再び洗浄を施すことで係る灰分を除去する必要がある。
ところで、平面の外周部に軟質なセラミックスが配置された複合体セラミックスの研磨(ポリッシュ)方法においては、第一の研磨(ポリッシュ)により前記複合体セラミックスの前記平面の外周部のみを研磨(ポリッシュ)する第1研磨工程と、次いで、前記第1の研磨(ポリッシュ)とは異なる第2の研磨(ポリッシュ)により前記複合体セラミックスの前記平面の内部を研磨(ポリッシュ)する第2研磨工程とを含むことが好適である。
一般に、平面の外周部に軟質なセラミックスが配置された複合体セラミックスの同平面の外周部と同平面の内部とを同時に研磨(ポリッシュ)すると、同外周部にかけ等の損傷が発生し易い。これに対し、上記のように、第一の研磨(ポリッシュ)により複合体セラミックスにおける平面の外周部のみを先ず研磨(ポリッシュ)し、次いで、同第1の研磨(ポリッシュ)とは異なる第2の研磨(ポリッシュ)により同複合体セラミックスにおける平面の内部を研磨(ポリッシュ)するようにすると、同複合体セラミックスの外周部の損傷が防止され得ることが判明した。
また、外周部に軟質の材料を有し、且つ、左右対称基準線に対して左右対称形状を有するセラミック部材を円形ラップ治具上に貼り付け、同円形ラップ治具を円形研磨盤上にて相対回転させることで同セラミック部材を研磨(ポリッシュ)するセラミック部材の研磨方法においては、前記セラミック部材を前記円形ラップ治具上に貼り付ける際、前記セラミック部材の左右対称基準線が前記円形ラップ治具の円周方向と一致する向きに、同セラミック部材が同円形ラップ治具上に貼り付けられることが好ましい(図18Bを参照)。
これによれば、セラミック部材の左右対称基準線が円形ラップ治具の円周方向と直角方向(即ち、半径方向)と一致する向きに同セラミック部材が同円形ラップ治具上に貼り付けられる場合(図18Aを参照)に比して、研磨(ポリッシュ)されるセラミック部材(ワーク)の左右のR形状が、より均一になることが判明した。
この圧電/電歪デバイス10は、例えば、一対の保持部13,13の間に対象物(図示せず)を接着材により接着させることで同対象物を保持し、圧電/電歪素子14,14が発生する力によって薄板部12,12を変形せしめ、これにより保持部13,13を変位させて対象物の位置を制御し得るアクチュエータとして使用されるようになっている。即ち、突起部12a,12aは、接着剤を使用する領域を規定する機能を有する。この対象物は、磁気ヘッド、光ヘッド、或いは、センサとしての感度調整用重り等である。
固定部11、薄板部12,12、及び保持部13,13から構成された部分(これらは「基体部」とも総称される。)は、後に詳述するようにセラミックグリーンシートの積層体を焼成により一体化したセラミック積層体により構成されている。このようなセラミックスの一体化物は、各部の接合部に接着剤が介在しないことから、経時的な状態変化が殆ど生じないので、接合部位の信頼性が高く、かつ、剛性確保に有利である。また、セラミック積層体は、後述するセラミックグリーンシート積層法により、容易に製造することができる。
なお、基体部は、全体をセラミックス又は金属により構成してもよく、セラミックスと金属とを組合せたハイブリッド構造とすることもできる。また、基体部は、セラミックスを有機樹脂やガラス等の接着剤で接着して構成したり、金属をロウ付け、半田付け、共晶接合、拡散接合、或いは溶接等で接合して構成することもできる。
圧電/電歪素子14は、図2に拡大して示したように、固定部11(の一部)と薄板部12(の一部)がなす外側壁面(外側平面)上に形成されるとともに、複数の層状電極と複数の圧電/電歪層を有し、層状の電極と圧電/電歪層とが交互に積層された積層体である。電極と圧電/電歪層の各層は薄板部12の平面と平行な層を形成している。より具体的に述べると、圧電/電歪素子14は、薄板部12の外側平面上に、電極14a1、圧電/電歪層14b1、電極14a2、圧電/電歪層14b2、電極14a3、圧電/電歪層14b3、電極14a4、圧電/電歪層14b4、及び電極14a5が順に積層されてなる積層体である。電極14a1,14a3,14a5は互いに電気的に接続され、互いに電気的に接続された電極14a2,14a4と、絶縁状態を維持するように形成されている。換言すると、互いに電気的に接続された電極14a1,14a3,14a5と、互いに電気的に接続された電極14a2,14a4とは、櫛歯状の電極を構成している。
この圧電/電歪素子14は、後述するように、膜形成方法により基体部に一体的に形成される。また、圧電/電歪素子14を基体部とは別体として製造しておき、有機樹脂等の接着剤を用いて、或いは、ガラス、ロウ付け、半田付け、共晶接合等により基体部に貼り付けてもよい。
なお、ここでは、電極が全部で5層である多層構造を有する例を示したが、層の数は特に限定されない。一般には、層の数を多くすることにより、薄板部12,12を変形する力(駆動力)が増大する一方、消費電力も増大する。従って、実施にあたっては、用途及び使用状態等に応じて層の数を適宜選定すればよい。
以下、上記圧電/電歪デバイス10の各構成要素について追加的な説明を行う。
保持部13,13は、薄板部12,12の変位に基づいて作動する部分であり、同保持部13,13には圧電/電歪デバイス10の使用目的に応じて種々の部材が取り付けられる。例えば、圧電/電歪デバイス10を物体を変位させる素子(変位素子)として使用する場合、特に、ハードディスクドライブの磁気ヘッドの位置決めやリンギング抑制のために使用するのであれば、磁気ヘッドを有するスライダ、磁気ヘッドそのもの、及びスライダを有するサスペンション等の部材(即ち、位置決めを必要とする部材)が取り付けられてもよい。また、光シャッタの遮蔽板等が取り付けられてもよい。
固定部11は、上述したように、薄板部12,12並びに保持部13,13を支持する部分である。この圧電/電歪デバイス10を、例えば、前記ハードディスクドライブの磁気ヘッドの位置決めに利用する場合には、固定部11はVCM(ボイスコイルモータ)に取り付けられたキャリッジアーム、同キャリッジアームに取り付けられた固定プレート、又はサスペンション等に支持固定される。また、この固定部11には、圧電/電歪素子14,14を駆動するための図示しない端子(端子電極)及びその他の部材が配置される場合もある。端子電極の構造は上記電極と同様な幅であっても良いし、上記電極より狭いもの、或いは、一部が狭いものであっても良い。
保持部13,13及び固定部11を構成する材料は、保持部13,13及び固定部11が剛性を有するように構成される限りにおいて特に限定されない。一般には、これらの材料として、後述するセラミックグリーンシート積層法を適用できるセラミックスを用いることが好適である。より具体的には、この材料として、安定化ジルコニア、部分安定化ジルコニアをはじめとするジルコニア、アルミナ、マグネシア、窒化珪素、窒化アルミニウム、又は酸化チタンを主成分とする材料等が挙げられるほか、これらの混合物を主成分とした材料が挙げられる。ジルコニア、特に安定化ジルコニアを主成分とする材料と部分安定化ジルコニアを主成分とする材料は、機械的強度や靱性が高い点において圧電/電歪デバイス10にとって好適である。また、保持部13,13及び固定部11を金属材料により製造する場合、その金属材料としては、ステンレス鋼、ニッケル等が好適である。
薄板部12,12は、上述したように、圧電/電歪素子14,14により駆動される部分である。薄板部12,12は、可撓性を有する薄板状の部材であって、表面に配設された圧電/電歪素子14,14の伸縮変位を屈曲変位に変換し、保持部13,13に伝達する機能を有する。従って、薄板部12,12の形状や材質は、可撓性を有し、屈曲変形によって破損しない程度の機械的強度を有するものであれば足り、保持部13,13の応答性、操作性等を考慮して選択される。
薄板部12の厚みDd(図1を参照)は、2μm〜100μm程度とすることが好ましく、薄板部12と圧電/電歪素子14とを合わせた厚みは7μm〜500μmとすることが好ましい。電極14a1〜14a5の各厚みは0.1μm〜50μm、圧電/電歪層14b1〜15b5の各厚みは3μm〜300μmとすることが好ましい。
薄板部12,12を構成する材料には、保持部13,13や固定部11と同様のセラミックスを用いることが好適であり、ジルコニア、中でも安定化ジルコニアを主成分とする材料と部分安定化ジルコニアを主成分とする材料は、薄肉であっても機械的強度が大きいこと、靱性が高いこと、圧電/電歪素子14の電極14a1を構成する電極材や圧電/電歪層14b1との反応性が小さいことから更に好適である。
また、薄板部12,12は、可撓性を有し、屈曲変形が可能な金属材料で形成することもできる。薄板部12,12に好適な金属材料のうち鉄系材料としては、各種ステンレス鋼、各種バネ鋼鋼材を挙げることができ、非鉄系材料としては、ベリリウム銅、リン青銅、ニッケル、ニッケル鉄合金を挙げることができる。
この圧電/電歪デバイス10に使用する前述した安定化ジルコニア並びに部分安定化ジルコニアは、次のように安定化並びに部分安定化されたものが好ましい。即ち、ジルコニアに、酸化イットリウム、酸化イッテルビウム、酸化セリウム、酸化カルシウム、及び酸化マグネシウムのうち少なくとも1つの化合物、又はこれらのうち二つ以上の化合物を、同ジルコニアを安定化並びに部分安定化させる化合物として添加・含有させる。
なお、それぞれの化合物の添加量としては、酸化イットリウムや酸化イッテルビウムの場合にあっては、1〜30モル%、好ましくは1.5〜10モル%、酸化セリウムの場合にあっては、6〜50モル%、好ましくは8〜20モル%、酸化カルシウムや酸化マグネシウムの場合にあっては、5〜40モル%、好ましくは5〜20モル%とすることが望ましい。特に、酸化イットリウムを安定化剤として用いることが好ましく、その場合においては、1.5〜10モル%、(機械的強度を特に重視するときには更に好ましくは2〜4モル%、耐久信頼性を特に重視するときには更に好ましくは5〜7モル%)とすることが望ましい。
また、ジルコニアに、焼結助剤等の添加物としてアルミナ、シリカ、遷移金属酸化物等を0.05〜20wt%の範囲で添加することが可能である。圧電/電歪素子14,14の形成手法として、膜形成法による焼成一体化を採用する場合は、アルミナ、マグネシア、遷移金属酸化物等を添加物として添加することも好ましい。
なお、固定部11、薄板部12、及び保持部13の少なくとも一つをセラミックスで構成する場合、そのセラミックスの機械的強度が高く且つ安定した結晶相が得られるように、ジルコニアの平均結晶粒子径を0.05〜3μmとすることが好ましく、0.05〜1μmとすることが更に望ましい。また、上述のように、薄板部12,12は、保持部13,13並びに固定部11と同様(同様であるが異種)のセラミックスにより形成することができるが、好ましくは、保持部13,13並びに固定部11と実質的に同一の材料を用いて形成することが、接合部分の信頼性の向上、圧電/電歪デバイス10の強度の向上、及び同デバイス10の製造の煩雑さの低減を図る上で有利である。
圧電/電歪デバイスには、ユニモルフ型、バイモルフ型等の圧電/電歪素子を用いることができるが、薄板部12,12と組み合わせたユニモルフ型の方が、発生する変位量の安定性に優れ、軽量化に有利であり、且つ、圧電/電歪素子の発生応力の力の向きとデバイスの変形に伴う歪の向きとが相反することがないように保つことが容易に設計可能であることから、このような圧電/電歪デバイス10に適している。
前記圧電/電歪素子14,14は、図1に示したように、その一端を固定部11(又は保持部13でも良い。)上に位置させ、他端を薄板部12,12の側面の平面上に形成すると、薄板部12,12をより大きく駆動させることができる。
圧電/電歪層14b1〜14b4は、圧電セラミックスにより構成されることが好適である。その一方、圧電/電歪層14b1〜14b4は、電歪セラミックス、強誘電体セラミックス、或いは反強誘電体セラミックスにより構成することも可能である。また、このような圧電/電歪デバイス10において、保持部13,13の変位量と駆動電圧(又は出力電圧)とのリニアリティが重要とされる場合、圧電/電歪層14b1〜14b4は歪み履歴の小さい材料で形成されることが好ましく、従って、それらの抗電界が10kV/mm以下の材料で形成されることが好ましい。
圧電/電歪層14b1〜14b4の具体的な材料としては、ジルコン酸鉛、チタン酸鉛、マグネシウムニオブ酸鉛、ニッケルニオブ酸鉛、亜鉛ニオブ酸鉛、マンガンニオブ酸鉛、アンチモンスズ酸鉛、マンガンタングステン酸鉛、コバルトニオブ酸鉛、チタン酸バリウム、チタン酸ナトリウムビスマス、ニオブ酸カリウムナトリウム、タンタル酸ストロンチウムビスマス等を単独であるいは混合物として含有するセラミックスが挙げられる。
圧電/電歪層14b1〜14b4の材料には、特に、高い電気機械結合係数と圧電定数を有し、同圧電/電歪層14b1〜14b4の焼結時における薄板部(セラミックス)12との反応性が小さく、且つ、安定した組成のものが得られる点において、ジルコン酸鉛、チタン酸鉛、及びマグネシウムニオブ酸鉛を主成分とする材料、もしくはチタン酸ナトリウムビスマスを主成分とする材料が好適である。
更に、圧電/電歪層14b1〜14b4の材料に、ランタン、カルシウム、ストロンチウム、モリブデン、タングステン、バリウム、ニオブ、亜鉛、ニッケル、マンガン、セリウム、カドミウム、クロム、コバルト、アンチモン、鉄、イットリウム、タンタル、リチウム、ビスマス、スズ等の酸化物等を混合したセラミックスを用いてもよい。この場合、例えば、主成分であるジルコン酸鉛、チタン酸鉛、及びマグネシウムニオブ酸鉛に、ランタンやストロンチウムを含有させることにより、抗電界や圧電特性を調整可能となる等の利点を得られる場合がある。
なお、圧電/電歪層14b1〜14b4の材料にシリカ等のガラス化し易い材料を添加することは避けることが望ましい。なぜならば、シリカ等の材料は、圧電/電歪層14b1〜14b4の熱処理時に、圧電/電歪材料と反応し易く、その組成を変動させ、圧電特性を劣化させるからである。
一方、圧電/電歪素子14,14の電極14a1〜14a5は、室温で固体であり、導電性に優れた金属で構成されていることが好ましく、例えばアルミニウム、チタン、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、パラジウム、ロジウム、銀、スズ、タンタル、タングステン、イリジウム、白金、金、鉛等の金属単体、もしくはこれらの合金で構成され得る。更に、これらの金属に圧電/電歪層14b1〜14b4、或いは薄板部12,12と同じ材料を分散させたサーメット材料を電極材として用いてもよい。
圧電/電歪素子14における電極材の選定は、圧電/電歪層14b1〜14b4の形成方法に依存して決定される。例えば、薄板部12の上に一つの電極14a1を形成した後、この電極14a1の上に圧電/電歪層14b1を焼成により形成する場合、電極14a1を、圧電/電歪層14b1の焼成温度においても変化しない白金、パラジウム、白金−パラジウム合金、銀−パラジウム合金等の高融点金属で形成しておく必要がある。このことは、形成後に圧電/電歪層が焼成される電極(電極14a2〜電極14a4)についても同様である。
これに対し、圧電/電歪層14b4の上に形成される最外層の電極14a5は、同電極14a5の形成後に圧電/電歪層の焼成がなされないので、アルミニウム、金、銀等の低融点金属を主成分とした材料で形成することができる。
また、層状の電極14a1〜14a5は、圧電/電歪素子14の変位を低下させる要因ともなるため、各層は薄いことが望ましい。特に圧電/電歪層14b4の焼成後に形成される電極14a5には、焼成後に緻密でより薄い膜が得られる有機金属ペースト、例えば金レジネートペースト、白金レジネートペースト、銀レジネートペースト等の材料を用いることが好ましい。
図1に示した圧電/電歪デバイス10においては、接着剤を使用する領域を規定するための突起部12a,12aが設けられているが、図3に示したように、突起部12a,12aを省略してもよい。これにより、保持部13,13に物品を取り付ける場合に、保持部13,13間に薄板部12,12間の距離に相当する大きさの物品を挟み込むように取り付けることが可能となる。この場合、物品を取り付けるための接着剤が使用される領域が実質的に保持部13,13を構成することになる。
上述した圧電/電歪デバイス10は、超音波センサや加速度センサ、角速度センサや衝撃センサ、質量センサ等の各種センサとしても利用することもできる。また、かかる圧電/電歪デバイス10を各種センサとして利用する場合には、同圧電/電歪デバイス10は、対向する保持部13,13間、或いは薄板部12,12間に取り付けられる物体のサイズを適宜調整することにより、センサの感度調整を容易に行い得るという更なる長所を有する。
次に、上記圧電/電歪デバイス10の製造方法について説明する。圧電/電歪デバイス10の圧電/電歪素子14,14を除く基体部(即ち、固定部11、薄板部12,12、並びに保持部13,13)は、セラミックグリーンシート積層法を用いて製造されることが好ましい。一方、圧電/電歪素子14,14は、薄膜や厚膜等の膜形成手法を用いて製造されることが好ましい。
圧電/電歪デバイス10の基体部における各部材を一体的に成形することが可能なセラミックグリーンシート積層法によれば、各部材の接合部の経時的な状態変化がほとんど生じないため、接合部位の信頼性を高くすることができ、かつ、剛性を確保することができる。また、基体部を金属板を積層して形成する場合、金属の拡散接合法によれば、各部材の接合部の経時的な状態変化がほとんど生じず、接合部位の信頼性と剛性とを確保することができる。
この実施の形態に係る図1に示した圧電/電歪デバイス10においては、薄板部12,12と固定部11との境界部分(接合部分)並びに薄板部12,12と保持部13,13との境界部分(接合部分)は、変位発現の支点となるため、これらの接合部分の信頼性は圧電/電歪デバイス10の特性を左右する重要なポイントである。
また、以下において説明する製造方法は、生産性が高く成形性にも優れるため、所定形状の圧電/電歪デバイス10を短時間に、かつ、再現性よく得ることができる。
なお、以下において、複数のセラミックグリーンシートを積層して得られた積層体をセラミックグリーンシート積層体22(図5を参照。)と定義し、このセラミックグリーンシート積層体22を焼成して一体化したものをセラミック積層体23(図6を参照。)と定義する。
また、かかる製造方法の実施にあたっては、図6のセラミック積層体を縦横に複数個並べたものと同等の1枚のシートを準備し、このシートの表面に後に圧電/電歪素子14となる積層体24(図7を参照。)を所定の部位に複数個分だけ連続させたものを形成し、このシートを切断することで、同一工程で多数個の圧電/電歪デバイス10を製造することが望ましい。更には、一つの窓(図4に示したWd1等)から2個以上の複数の圧電/電歪デバイス10が取り出されるように製造することが望ましい。但し、以下においては、説明を簡単にするため、セラミック積層体の切断により圧電/電歪デバイス10を1個だけ取り出す方法について説明する。
まず、ジルコニア等のセラミック粉末にバインダ、溶剤、分散剤、可塑剤等を添加混合してスラリーを作製し、これを脱泡処理後、リバースロールコーター法、ドクターブレード法等の方法により、所定の厚みを有する長方形のセラミックグリーンシートを作製する。
次に、図4に示したように、必要に応じて金型を用いた打抜加工やレーザ加工等の方法によりセラミックグリーンシートを種々の形状に加工し、複数枚のセラミックグリーンシート21a〜21fを得る。
図4に示した例においては、セラミックグリーンシート21b〜21eに対して、長方形の窓Wd1〜Wd4をそれぞれ形成する。窓Wd1と窓Wd4は略同一形状であり、窓Wd2と窓Wd3は略同−形状である。セラミックグリーンシート21a,21fは、後に薄板部12,12を構成する部分を含む。なお、セラミックグリーンシートの枚数は、あくまでも一例である。また、図示された例では、セラミックグリーンシート21c,21dは、所定の厚みを有する一枚のグリーンシートでもよく、或いは、同所定の厚みを得るために複数枚のセラミックグリーンシートを積層する又は積層したものであってもよい。
その後、図5に示したように、セラミックグリーンシート21a〜21fを積層・圧着してセラミックグリーンシート積層体22を形成する。次いで、そのセラミックグリーンシート積層体を焼成して図6に示したセラミック積層体23を形成する。
なお、セラミックグリーンシート積層体22を形成するための(積層一体化のための)圧着回数や順序は限定されない。なお、一軸加圧(一方向への加圧)によっては圧力が十分に伝達されない箇所が存在する場合、複数回圧着を繰り返すか、或いは圧力伝達物を充填して圧着を行うことが望ましい。また、製造する圧電/電歪デバイス10の構造や機能に応じて、例えば窓Wd1〜Wd4の各形状、セラミックグリーンシートの枚数や厚み等は適宜決定され得る。
上記積層一体化のための圧着を加熱しながら行うようにすると、より確実な積層状態を得ることができる。また、セラミック粉末、バインダを主体としたペースト、又はスラリー等を接合補助層としてセラミックグリーンシート上に塗布、又は印刷して圧着を行えば、セラミックグリーンシート界面の接合状態をより良好な状態とすることができる。この場合、接合補助剤として使用されるセラミック粉末は、セラミックグリーンシート21a〜21fに使用されたセラミックスと同一又は類似した組成を有していることが、接合の信頼性確保の点で好ましい。更に、セラミックグリーンシート21a,21fが薄い場合、プラスチックフィルム(特に、表面にシリコーン系の離型剤をコーティングしたポリエチレンテレフタレートフィルム)を用いて同セラミックグリーンシート21a,21fを取り扱うことが好ましい。また、セラミックグリーンシート21b,21e等の比較的薄いシートに窓Wd1,Wd4等を形成する際、これらのシートを前記プラスチックフィルムに取り付けた状態で同窓Wd1,Wd4等を形成するための加工を行ってもよい。
次に、図7に示すように、前記セラミック積層体23の両表面、即ち、積層されたセラミックグリーンシート21a,21fの焼成後の表面にそれぞれ圧電/電歪層積層体24,24を形成する。圧電/電歪層積層体24,24の形成法としては、スクリーン印刷法、ディッピング法、塗布法、及び電気泳動法等の厚膜形成法や、イオンビーム法、スパッタリング法、真空蒸着、イオンプレーティング法、化学気相成長法(CVD)、及びめっき等の薄膜形成法を用いることができる。
このような膜形成法を用いて圧電/電歪層積層体24,24を形成することにより、接着剤を用いることなく、圧電/電歪層積層体24,24と薄板部12,12とを一体的に接合(配設)することができ、信頼性、再現性を確保できると共に、集積化を容易にすることができる。
この場合、厚膜形成法により圧電/電歪層積層体24,24を形成することがより好ましい。厚膜形成法を用いれば、平均粒径0.01〜5μm、好ましくは0.05〜3μmの圧電セラミックスの粒子や粉末を主成分とするペーストやスラリー、又はサスペンションやエマルジョン、ゾル等を用いて膜化することができ、それを焼成することによって良好な圧電/電歪特性を得ることができるからである。
なお、電気泳動法は、膜を高い密度で、かつ、高い形状精度で形成できるという利点を有する。また、スクリーン印刷法によれば、膜厚の制御とパターン形成とを同時に行うことができるので、製造工程を簡略化することが可能である。
ここで、セラミック積層体23及び圧電/電歪層積層体24,24の形成方法の一例について詳述する。まず、セラミックグリーンシート積層体22を1200〜1600℃の温度で焼成して一体化し、図6に示したセラミック積層体23を得た後、図2に示したように、同セラミック積層体23の両表面の所定位置に電極14a1,14a1を印刷して焼成し、次いで、圧電/電歪層14b1,14b1を印刷して焼成し、その上に電極14a2,14a2を印刷して焼成する。このような処理を所定回数繰り返して圧電/電歪層積層体24,24を形成する。その後、電極14a1,14a3,14a5、及び電極14a2,14a4を駆動回路にそれぞれ電気的に接続するための端子電極(図示省略)を印刷、焼成する。
なお、最下層の電極14a1を印刷して焼成し、その後、圧電/電歪層14b1と電極14a2とを印刷してから同時に焼成し、その後、同様に、一つの圧電/電歪層と一つの電極とを印刷してから同時に焼成する工程を所定回数だけ繰り返すことで圧電/電歪層積層体24,24を形成してもよい。
この場合、例えば、電極14a1,14a2,14a3,14a4を白金(Pt)を主体とした材料、圧電/電歪層14b1〜14b4をジルコン酸チタン酸鉛(PZT)を主体とした材料、他の電極14a5を金(Au)、更に、端子電極を銀(Ag)でそれぞれ構成するように、各部材の焼成温度が積層順に従って低くなるように材料を選定すると、ある焼成段階において、それより以前に焼成された材料の再焼結が起こらず、電極材等の剥離や凝集といった不具合の発生を回避することができる。
なお、適当な材料を選択することにより、圧電/電歪層積層体24,24の各部材と端子電極とを逐次印刷して、1回で一体焼成することも可能である。また、最外層の圧電/電歪層14b4の焼成温度を圧電/電歪層14b1〜14b3の焼成温度より高くして、これらの圧電/電歪層14b1〜14b4の最終的な焼結状態を同一にするように圧電/電歪積層体24を形成してもよい。
また、圧電/電歪層積層体24,24の各部材と端子電極は、スパッタ法や蒸着法等の薄膜形成法によって形成してもよく、この場合には、必ずしも熱処理を必要としない。
圧電/電歪層積層体24,24の形成においては、セラミックグリーンシート積層体22の両表面、即ち、セラミックグリーンシート21a及び21fの各表面に予め圧電/電歪層積層体24,24を形成しておき、そのセラミックグリーンシート積層体22と圧電/電歪層積層体24,24とを同時に焼成してもよい。
圧電/電歪層積層体24,24とセラミックグリーンシート積層体22とを同時焼成する方法としては、スラリー原料を用いたテープ成形法等によって圧電/電歪層積層体24,24の前駆体を成形し、この焼成前の圧電/電歪層積層体24,24の前駆体をセラミックグリーンシート積層体22の表面上に熱圧着等で積層し、その後、これらを同時に焼成する方法が挙げられる。但し、この方法では、上述した膜形成法を用いて、セラミックグリーンシート積層体22の表面及び/又は圧電/電歪層積層体24,24に予め電極14a1,14a1を形成しておく必要がある。
その他の方法としては、セラミックグリーンシート積層体22の少なくとも最終的に薄板部12,12となる部分にスクリーン印刷により圧電/電歪層積層体24,24の各構成層である電極14a1〜14a5、及び圧電/電歪層14b1〜14b4を形成し、これらを同時に焼成する方法が挙げられる。
圧電/電歪層積層体24,24の構成膜の焼成温度は、これを構成する材料によって適宜決定されるが、一般には、500〜1500℃であり、圧電/電歪層14b1〜14b4に対しては、1000〜1400℃が好適な焼成温度である。この場合、圧電/電歪層14b1〜14b4の組成を制御するためには、圧電/電歪層14b1〜14b4の材料の蒸発が制御される状態(例えば、蒸発源の存在下)で焼結することが好ましい。なお、圧電/電歪層14b1〜14b4とセラミックグリーンシート積層体22を同時焼成する場合には、両者の焼成条件を合わせることが必要である。圧電/電歪層積層体24,24は、必ずしもセラミック積層体23もしくはセラミックグリーンシート積層体22の両面に形成される必要はなく、セラミック積層体23もしくはセラミックグリーンシート積層体22の片面のみに形成されてもよい。
次に、上述のようにして、圧電/電歪層積層体24,24が形成されたセラミック積層体23(以下、後に圧電/電歪デバイス10を構成する「セラミック積層体23及び圧電/電歪層積層体24からなるもの」を「被加工物」と云うこともある。)のうちの不要な部分を切除する。即ち、図8に示した切断線(破線)C1〜C4に沿って被加工物を切断する。切断は、ワイヤーソー加工やダイシング加工等の機械加工等により行うことが可能である。
この切断のうち、図8に示した切断線C3及びC4に沿う被加工物の切断は、比較的強度が小さく脆い圧電/電歪層と粘り易い延性を有する金属とからなる圧電/電歪層積層体24,24の切断を含むから、切断時に被加工物に対して大きな加工負荷が加わるダイシング加工によることは好ましくなく、被加工物に対する加工負荷が小さい他の加工によることが望ましい。中でも複数個の圧電/電歪デバイス10を同時に形成するための同時切断に適し、加工負荷が小さいワイヤーソー加工が係る切断に適している。
また、切断線C3及びC4に沿う切断のように機械的な特性(切断加工に対する物理的な特性)が互いに異なる複数のセラミック、電極、及び圧電/電歪層からなる複合体の切断ではなく、切断線C1及びC2に沿う切断のように均一又は類似の機械的特性を有するセラミックで構成された部分の切断には、ワイヤーソー加工のほか、他の加工方法を用いても良い。例えば、切断線C1及びC2に沿う切断には、ダイシング加工を採用することが好ましい。
上述のようにして、図8に示した切断線C1〜C4に沿って被加工物を切断すると、突起部12a、12aが形成される前であって、且つ後述する特定処理が施される前の図1に示した圧電/電歪デバイス10に相当する被加工物が得られる。
次に、係る被加工物に対して上述したセラミックグリーンシート21a〜21fの作製に使用されたスラリーと同一のスラリーを用いて後に突起部12a,12aを構成する突起体(即ち、焼成前の突起部12a,12a)を同被加工物の所定の位置にそれぞれ形成する。係る突起体の形成法としても、上述した圧電/電歪層積層体24,24の形成法と同様、スクリーン印刷法、ディッピング法、塗布法、及び電気泳動法等の厚膜形成法や、イオンビーム法、スパッタリング法、真空蒸着、イオンプレーティング法、化学気相成長法(CVD)、及びめっき等の薄膜形成法を用いることができる。
次いで、その突起体が形成された被加工物を焼成する。これにより、薄板部12,12と同一の材料で一体焼結された突起部12a,12aが形成される。この結果、特定処理が施される前の図1に示した圧電/電歪デバイス10に相当する被加工物(以下、「特定処理前圧電/電歪デバイス」と称呼する。)が得られる。
そして、最後に、圧電/電歪素子デバイス10の2つの側端面に対応する特定処理前圧電/電歪デバイスの2つの側端面(即ち、上記切断線C3及びC4に沿った切断面)に対して特定処理を施す。これにより、図1に示した圧電/電歪デバイス10が製造される。
以下、係る特定処理について詳述する。この特定処理は、圧電/電歪デバイス10が実際に使用される場合において、圧電/電歪素子14,14の側端面(特に、圧電/電歪層14b1〜14b4の側端面。図2を参照)に水分が付着することを効果的に抑制することで上述した漏電やイオンマイグレーションの発生を効果的に抑制するための処理である。
より具体的には、この特定処理は、圧電/電歪素子14の側端面(即ち、圧電/電歪層14b1〜14b4の側端面と電極14a1〜14a5の側端面とにより形成された側端面全体)の実際の表面積(以下、「実表面積Sact」と称呼する。)を小さくし、その結果、同圧電/電歪素子14の側端面の正射影の面積Sproに対する同圧電/電歪素子14の側端面の実表面積Sactの割合「Sact/Spro」(従って、前記表面積増加率Smag)を小さくするための処理である。これは、圧電/電歪素子14の側端面の実表面積Sactが小さいほど(従って、表面積増加率Smagが小さいほど)、同圧電/電歪素子14の側端面(従って、圧電/電歪層14b1〜14b4の側端面)に水分が付着し難くなるという事実に基づく。
特定処理は、例えば、YAGレーザー加工、エキシマレーザー加工、ドライアイスブラスト加工、超音波洗浄、熱処理、研磨(ポリッシュ)、或いは研磨と熱処理の組み合わせにより行うことが可能である。以下、各処理の具体例の概要について順に説明していく。
(NO.1:YAGレーザー加工)
YAGレーザー加工は、例えば、esi(株)製のYAG3次レーザー加工機「MICRO MACHINING SYSTEM MODEL4420」を使用して下記条件下にて、特定処理前圧電/電歪デバイスの2つの側端面に対して行われる。これにより、圧電/電歪素子14,14の側端面が再溶融することで同側端面の凹凸が小さくなり(或いは、凹凸の一部が消滅して)、この結果、同側端面の実表面積Sact(従って、表面積増加率Smag)が小さくなる。
〈YAGレーザー加工条件〉
・パルス周波数は4kHzに設定する。
・加工速度は1mm/secに設定する。
・YAG3次レーザー波長は355nmに設定する。
(NO.2:エキシマレーザー加工)
エキシマレーザー加工は、例えば、三菱電機(株)製のエキシマレーザー加工機「エキシマワークシステムMEX−24−M」を使用して下記条件下にて、特定処理前圧電/電歪デバイスの2つの側端面に対して行われる。これにより、圧電/電歪素子14,14の側端面が再溶融することで同側端面の凹凸が小さくなり(或いは、凹凸の一部が消滅して)、この結果、同側端面の実表面積Sact(従って、表面積増加率Smag)が小さくなる。
〈エキシマレーザー加工条件〉
・KrFレーザー波長は248nmに設定する。
(NO.3:ドライアイスブラスト加工)
ドライアイスブラスト加工は、例えば、Alpheus(株)製のドライアイスブラスト加工機「CO2 cleanblast Precision series Model T−2」を使用して所定の条件下にて、特定処理前圧電/電歪デバイスの2つの側端面に対して行われる。これにより、圧電/電歪素子14,14の側端面の微細な凸部が削り取られることで凹凸が小さくなり、この結果、同側端面の実表面積Sact(従って、表面積増加率Smag)が小さくなる。
(NO.4:超音波洗浄)
超音波洗浄は、例えば、下記条件の砥粒が混入された所定の溶液中に特定処理前圧電/電歪デバイスを投入し、所定の超音波洗浄機を使用して所定の条件下にて、同特定処理前圧電/電歪デバイスの全表面に対して超音波洗浄を行うことにより行われる。これにより、圧電/電歪素子14,14の側端面の微細な凸部が削り取られることで凹凸が小さくなり、この結果、同側端面の実表面積Sact(従って、表面積増加率Smag)が小さくなる。
〈超音波洗浄条件〉
超音波洗浄A:#800 AL2O3を砥粒として使用する。
超音波洗浄B:#1000 SiCを砥粒として使用する。
(NO.5:熱処理)
熱処理は、例えば、東京理科器械(株)製の大気炉熱処理機「ELECTRIC FURNACE TMF−3200−R」を使用して下記条件下にて特定処理前圧電/電歪デバイス全体を加熱することで行う。これにより、圧電/電歪素子14,14の側端面が再焼結する(且つ、多少、再溶融する)ことで同側端面の凹凸が小さくなり(或いは、凹凸の一部が消滅して)、この結果、同側端面の実表面積Sact(従って、表面積増加率Smag)が小さくなる。
〈熱処理条件〉
熱処理A:800℃を1時間維持する。
熱処理B:900℃を1時間維持する。
熱処理C:1000℃を1時間維持する。
(NO.6:CMP)
CMP(ケミカルメカニカルポリッシュ、メカノケミカルポリッシュ)は、表面をラッピング加工もしくはポリシュ加工して表面粗さを小さくする研磨方法の一種であり、研磨剤にアルカリ性の研磨液と平均粒径が100nm以下のコロイダルシリカ等の砥粒を用いた研磨方法である。
この研磨方法では、微小な研磨剤が被研磨物に衝突するとき発生する熱などのエネルギーによって被研磨物と研削液の化学反応をその位置で増幅させることで被研磨物が化学的に溶解させられる。この方法では、砥粒による機械的な破壊による加工ではなく化学的な溶解反応による加工が行われるため、スクラッチが無く研磨面に残留する歪(加工歪、内部応力)が少ない、或いは、殆どない状態を形成することできるという利点がある。この方法を圧電/電歪デバイス加工の表面処理に適用することで、加工面からの粒子の発生、即ち、加工面からの脱粒を抑えることができる。これにより、圧電/電歪素子14,14の側端面の微細な凸部が溶融により小さくなり、この結果、同側端面の実表面積Sact(従って、表面積増加率Smag)が小さくなる。
〈CMP条件〉
研磨剤:fujimi製 クリアライトS
ポリシイングクロス:fujimi製 surfin 018‐3(スウェード)
12inch 100rpm分、加重0.4kg
なお、この条件でCMPを行った後における圧電/電歪層の側端面の表面粗さは、Ry0.03μm以下であった。なお、CMPでは、非常に小さい砥粒(粒径:100nm以下)が使用される。従って、CMP後においては、係る微小砥粒(微小粒子)を除去するため、ブラシ洗浄や超音波洗浄等を十分に行う必要がある。特に、超音波洗浄が行われる場合、圧電/電歪素子へのダメージを少なくし、且つ、微小粒子に対する高い洗浄性を確保するため、50kHz以上、好ましくは100kHz以上の周波数の超音波を使用することが好ましい。
(NO.7:2回熱処理)
この2回の熱処理も、上述したNO.5の熱処理と同様、例えば、東京理科器械(株)製の大気炉熱処理機「ELECTRIC FURNACE TMF−3200−R」を使用して特定処理前圧電/電歪デバイス全体を加熱することで順に行う。このとき、1回目の熱処理温度を2回目の熱処理温度よりも高くする。これにより、圧電/電歪素子14,14の側端面が再焼結する(且つ、多少、再溶融する)ことが繰り返されて、同側端面の凹凸が小さくなり(或いは、凹凸の一部が消滅して)、この結果、同側端面の実表面積Sact(従って、表面積増加率Smag)が小さくなる。なお、1回目の熱処理と2回目の熱処理との間には、超音波洗浄工程が実施される。
〈2回熱処理条件〉
1回目の熱処理:800℃〜1000℃を1時間維持する。
2回目の熱処理:600℃を1時間維持する。
(NO.8:2回研磨)
係る圧電/電歪デバイスは、上述のごとく、基体部と、同基体部に一体形成された圧電/電歪素子14,14とから形成されている。即ち、圧電/電歪デバイスは、基体部を構成する硬い材料であるジルコニア、圧電/電歪層を構成する比較的柔らかい材料である圧電/電歪材料、及び電極を構成する金属材料という加工性(加工特性)がそれぞれ異なる材料から構成されることになる。
この結果、例えば、硬い材料であるジルコニアに加工条件を合わせると、圧電/電歪材料が削れ過ぎるという現象が生じ易いという問題がある。一方、比較的柔らかい材料である圧電/電歪材料等に加工条件を合わせるとジルコニアが加工され難いため加工時間が長くなるという問題があった。更には、比較的柔らかい材料である圧電/電歪材料(圧電/電歪素子)の側端面はカケを生じ易いという問題があった。
このため、ここでは、圧電/電歪素子14,14の側端面の角部に対して研磨により曲面加工(R加工)又は面取り加工を施す第1研磨工程と、その後、圧電/電歪素子14,14の側端面の平面部(表面)を研磨により仕上げて同圧電/電歪素子14,14を形成する第2研磨工程とが行われる。これにより、圧電/電歪素子14,14の側端面の微細な凹部が削り取られることで同側端面の凹凸が小さくなり、この結果、同側端面の実表面積Sact(従って、表面積増加率Smag)が小さくなる。
この製造方法は、圧電/電歪素子14,14の側端面(圧電/電歪デバイスの側端面)の角部をR加工又は面取り加工(以下、単に「R加工」と称呼する。)することで同角部への衝撃集中を分散させられることに着目したものである。即ち、圧電/電歪素子14,14の側端面(圧電/電歪デバイスの側端面)を研磨する際、最初にその角部にR加工を施しておく。これにより、その後において上記側端面の平面部(表面)に対して研磨による比較的強い負荷を加えてもカケが生じないことがわかった。また、加工時間を短くする事もできることがわかった。
〈2回研磨条件〉
1回目の研磨(側端面の角部の研磨)として、
研磨剤:平均粒径1μmのダイヤモンドスラリー
ポリシイングクロス:fujimi製 surfin 191
12inch 100rpm分、加重0.4kg
2回目の研磨(側端面の平面部の研磨)として、
研磨剤:平均粒径0.5μmのダイヤモンドスラリー
ポリシイングクロス:fujimi製 K−0013
12inch 100rpm分、加重0.4kg
なお、この条件で2回目の研磨を行った後における圧電/電歪層の側端面の平面部の表面粗さは、Ry0.03μm以下であった。また、1回目の研磨として、CMPを行ってもよい。これによれば、カケが発生し易い側端面の角部に対して加工歪が少ないCMPがなされることになるから、側端面のカケ・クラック等の発生を少なくすることができる。更には、研磨剤としてダイヤモンドスラリーを使用した場合に比して研磨の加工速度が速くなり、加工効率を高めることができる。
(NO.9:2回研磨+2回熱処理)
この2回研磨も、NO.8の2回研磨と同じ条件で行う。圧電/電歪素子14,14の側端面の角部に対する係るR加工が施され、且つ、圧電/電歪素子14,14の側端面の平面部が研磨により仕上げられた後、洗浄を実施し、次いで、熱処理(1回目の熱処理)を施すことによって、上記洗浄で除去され得なかった付着物内の有機成分を除去することができる。また、圧電/電歪素子の側端面(以下、「加工面」とも称呼する。)の表面の粒子の固相反応が促進されることで、加工面の加工歪が修復されて、加工面からの圧電/電歪素子の粒子の脱粒が低減され得る。
但し、付着物内の無機成分は1回目の熱処理後に灰分として残留するため、1回目の熱処理後に再び洗浄を施すことで除去する必要がある。ここでは、1回目の熱処理後の再洗浄の更に後に再び熱処理(2回目の熱処理)を施すことで、圧電/電歪素子の気孔部からの脱粒を低減させる効果を付加した。
〈2回研磨後における2回熱処理条件〉
1回目の熱処理:600℃を1時間維持する。
2回目の熱処理:600℃を1時間維持する。
なお、研磨後に得られた圧電/電歪層の側端面の平面部の表面粗さは、Ra 1μm以下であった。
以下、特定処理として係る熱処理を行う場合について追加的な説明を行う。係る熱処理を行う場合において熱処理温度が比較的高い場合、端子電極(図示せず)、或いは最外層の電極14a5の材料として、例えば、金レジネートペースト、或いはPtレジネートペーストに、ジルコニアZrやロジウムRh等を500ppm以上添加したものを使用することが望ましい。これにより、端子電極、及び最外層の電極14a5を構成する薄膜の耐熱性が向上する。
この場合、上記薄膜の膜厚は、熱処理を行わない場合に比して、0.1μm以上厚くすることが好ましく、0.5μm以上厚くすることがより好ましく、1μm以上厚くすることが更に好ましい。ただし、膜厚を厚くするにつれて圧電/電歪素子14の変位量が低下していく。従って、圧電/電歪デバイス10が要求される諸元等に応じて、熱処理温度、膜厚等をそれぞれ最適値に設定することが好ましい。
また、圧電/電歪素子14が要求される変位量が大きい場合、更に耐熱性の高い高温用の金ペースト、或いは、Pt又はPt/PZTサーメットを、端子電極、或いは最外層の電極14a5の材料として使用することが好ましい。
ここで、Pt/PZTサーメットが使用される場合、PtとPZTの配合比は、電極の十分な導通性が確保され得る値に設定されることが要求される。具体的には、PZTに対するPtの配合比率(体積比率)は、1以上であることが好ましく、4以上であることが更に好ましい。
また、Pt又はPt/PZTサーメットが、端子電極、或いは最外層の電極14a5の材料として使用される場合、印刷・焼成を層毎に独立して行ってもよいし、圧電/電歪層14b4の印刷後に最外層の電極14a5と端子電極を印刷し、圧電/電歪層14b1〜b4、電極14a1〜a5、及び端子電極を同時に焼成してもよい。
更には、熱処理温度は、800℃以上、1400℃以下に設定されることが好ましい。800℃未満では上述した圧電/電歪素子14,14の側端面の再焼結等のような熱処理による効果が認められず、また、1400℃を超えるとPZTの分解が発生するからである。ただし、熱処理温度が1000℃以上に設定される場合、圧電/電歪層14b1〜14b4の材料(PZT)の蒸気圧を制御するため(従って、圧電/電歪層14b1〜14b4の組成を制御するため)、圧電/電歪層14b1〜14b4の材料と同一の材料からなる物体(PZT蒸発源)を炉の中に投入した状態で熱処理が行われることが好ましい。
また、大気炉を使用する場合、熱処理温度は、800℃以上、1000℃以下に設定されることが好ましい。大気炉を使用する場合、800℃未満では上述した圧電/電歪素子14,14の側端面の再焼結等ような熱処理による効果が認められず、また、1000℃を超えるとPZTの分解が発生するからである。なお、大気炉を使用する場合、熱処理温度を850℃以上、950℃以下に設定することが更に好ましい。
加えて、特定処理として、上述したレーザー加工、ブラスト加工、超音波洗浄よりも熱処理を採用することが好ましい。熱処理は、比較的安価な設備をもって実行可能であり、また、大量一括処理が可能であるため量産性に優れるからである。
次に、上記NO.1〜上記NO.9の特定処理の効果を確認するための効果確認試験を行ったので、その試験内容、及びその結果について説明する。この効果確認試験は、以下の手順にて行った。
先ず、本発明に係る試験品として、上記条件にてYAGレーザー加工を行ったもの(YAGレーザー加工品。サンプル数n=2)、上記条件にてエキシマレーザー加工を行ったもの(エキシマレーザー加工品。サンプル数n=2)、上記条件にてドライアイスブラスト加工を行ったもの(ドライアイスブラスト加工品。サンプル数n=2)、上記条件にて超音波洗浄Aを行ったもの(超音波洗浄品A。サンプル数n=1)、上記条件にて超音波洗浄Bを行ったもの(超音波洗浄品B。サンプル数n=1)、上記条件にて熱処理Aを行ったもの(熱処理品A。サンプル数n=1)、上記条件にて熱処理Bを行ったもの(熱処理品B。サンプル数n=1)、上記条件にて熱処理Cを行ったもの(熱処理品C。サンプル数n=1)、上記条件にてCMPを行ったもの(CMP品。サンプル数n=1)、上記条件にて2回熱処理を行ったもの(2回熱処理品。サンプル数n=1)、上記条件にて2回研磨を行ったもの(2回研磨品。サンプル数n=1)、上記条件にて2回研磨+2回熱処理を行ったもの(2回研磨+2回熱処理品。サンプル数n=1)をそれぞれ準備するとともに、比較対象に係る試験品として、特定処理前圧電/電歪デバイス(特定処理無し品。サンプル数n=2)を準備した。
次に、各試験品についての圧電/電歪素子14の側端面の表面積増加率Smag(=Sact/Spro)をそれぞれ測定した。この測定は、OLYMPUS(株)製の走査型共焦点レーザー顕微鏡「OLS1100」を用いて、各試験品についての圧電/電歪素子14の側端面の微細な凹凸形状(三次元形状)を画像解析により評価することで行った。なお、この走査型共焦点レーザー顕微鏡に代えて、或る表面の画像解析を行うことで微細な凹凸形状を含めた同表面の三次元的な形状を三次元的な位置データとして認識できるその他の装置によっても同様に、上記表面積増加率Smagを測定することができる。このような装置としては、例えば、原子間力顕微鏡(例えば、Digital Instruments社製Nano Scope 4等)が挙げられる。
この効果確認試験の結果を表1に示す。特定処理による表面積増加率Smagの減少効果をより把握し易くするため、表1は、各試験品の表面積増加率Smagの測定結果のみならず、表面積増加率Smag=5となった特定処理無し品を基準品として扱った場合における、基準品の表面積増加率である基準表面積増加率Smagref(=5)に対する各試験品の表面積増加率Smagの割合「Smag/Smagref」(以下、「表面積増加率比ratioSmag」と称呼する。)の計算結果をも示している。また、上記表面積増加率比ratioSmagの計算結果をグラフにて表すと図9に示すようになる。
換言すれば、ワイヤーソー加工による切断により形成されたままの圧電/電歪素子14の側端面の表面積増加率Smagは「4」より大きくなる一方、上記NO.1〜上記NO.9の何れかの特定処理を施すと、同表面積増加率Smagが小さくなって「4」以下となる(或いは、「4.5」以下、或いは、「3.7」以下となる)。
また、表1から理解できるように、特定処理としてYAGレーザー加工、熱処理、或いは研磨を施すと、表面積増加率Smagは約「3」以下となり、大きな表面積増加率Smagの低減効果を得ることができた。特に、CMP、2回研磨、或いは2回研磨+2回熱処理を施すと、表面積増加率Smagは約「1.5」以下となり、特に大きな表面積増加率Smagの低減効果を得ることができた。
このようにして、特定処理による圧電/電歪素子14の側端面の表面積増加率Smagの低減効果(従って、実表面積Sactの低減効果)を確認することができた。なお、この例(基準表面積増加率Smagref=5の場合)では、「表面積増加率Smag=4」は、「表面積増加率比ratioSmag=0.8」に相当する(図9を参照)。なお、これらの表面積は、表面の傷・穴などの明らかに異常な表面形状に対応する部分を除いて測定されている。
更に、本発明者は、係る圧電/電歪デバイス10を通常の使用条件下にて実際に使用する場合において、圧電/電歪素子14の側端面の表面積増加率Smagが「4.5」以下、より好ましくは「4」以下であれば、同側端面への水分の付着が十分に抑制され得、この結果、上述した漏電やイオンマイグレーションが実質的に発生しないことを、別途、所定の耐久試験、加速試験等を通して確認している。
例えば、本発明者は、タバイエスペック(株)製のクリーン恒温恒湿器度「PCR−3KP」を使用して、温度85℃湿度85%の環境下で電極間電圧をsin波6kHz20±20Vで印加する1000時間の耐久試験を行った。上述した漏電やイオンマイグレーションの発生の程度は、圧電/電歪素子の電極間の絶縁抵抗値Rを測定することで確認した。
表2、及び図10は、表1(従って、図9)に示したデータを測定する際に使用した試験品と同じ試験品についての圧電/電歪素子14の電極間の絶縁抵抗値Rをそれぞれ測定した結果を示している。
以下、上記特定処理(特に、レーザー加工と熱処理)について付言しておく。上述したレーザー加工、ブラスト加工、超音波洗浄、及び熱処理は圧電/電歪素子14の側端面(特に、圧電/電歪層14b1〜14b4の側端面。図2を参照)に水分が付着することを効果的に防止するが、特に、レーザー加工及び熱処理では、圧電/電歪素子14の側端面において表面改質(化学的な親和性変化)が同時にもたらされることで上記水分の付着がより一層防止される。
より具体的に述べると、レーザー加工及び熱処理が施される前の表面(特定処理前圧電/電歪デバイスの2つの側端面)は切断面(加工面)であるから、その表面におけるダングリングボンドに水酸基や水素基が結合している。従って、水素結合によりその表面において水分子が結合され易い。一方、レーザー加工又は熱処理後の表面(特に、圧電/電歪素子14の側端面)では、その処理の際に同表面に付与されたエネルギー(例えば、熱エネルギー)によってダングリングボンド同士の結合が発生する。この結果、ダングリングボンドに結合していた水酸基や水素基がなくなって圧電/電歪素子14の側端面において水分子が結合され難くなる。
また、上述したように、レーザー加工及び熱処理が施される前の表面(特定処理前圧電/電歪デバイスの2つの側端面)は加工面である。圧電/電歪層は比較的加工され易いセラミックスからなり、電極は延性を有する金属からなる。従って、圧電/電歪層と電極の間の加工特性の相違により、上記加工面において電極が突起した形状となったり電極にバリが発生し易い。ここで、電極が突起した形状になると電界集中が発生して圧電/電歪素子の耐電圧性が低下する。また、電極にバリが発生すると圧電/電歪層を介した2つの電極間の最短距離が短くなって圧電/電歪素子の耐電圧性が低下する。一方、レーザー加工又は熱処理が施されると、金属からなる電極が圧電/電歪層よりも溶融される。溶融された金属(電極)はその表面エネルギーを小さくするため収縮し、丸みを帯びる。これにより、上記電極の突起が少なくなり、また、同電極のバリが短くなる。よって、電界集中が発生する箇所が少なくなり、また、上記電極間の最短距離が長くなる。これにより、圧電/電歪素子の耐電圧性が高くなる。
また、上述したように、レーザー加工及び熱処理が施される前の表面(特定処理前圧電/電歪デバイスの2つの側端面)は加工面である。従って、加工時の応力により、圧電/電歪層の表面においてその結晶構造が歪み、圧電/電歪層の圧電特性が弱くなる。一方、レーザー加工又は熱処理が施されると、その熱エネルギーにより原子の再構築が行われる。この結果、結晶構造が再構築されて圧電/電歪層の圧電特性が回復する。
加えて、上記加工時の負荷により、圧電/電歪層にクラックが発生している場合がある。一方、レーザー加工又は熱処理が施されると、その熱エネルギーにより再焼結が発生し、上記発生したクラックが補修される効果がある。
ところで、上述したように、特定処理による圧電/電歪素子14の側端面の実表面積Sact(従って、表面積増加率Smag)の低減効果を確認するために表面積増加率Smagを直接的に測定・評価しようとする場合、走査型共焦点レーザー顕微鏡、原子間力顕微鏡等の比較的高価、且つ精密な装置が必要となる。従って、本発明者は、より安価、且つ簡便に圧電/電歪素子14の側端面の実表面積Sact(従って、表面積増加率Smag)を評価できる手法はないかと研究を重ねた。
その結果、圧電/電歪素子14の側端面の実表面積Sact(従って、表面積増加率Smag)は、同側端面からの微小粒子の離脱(以下、粒子が離脱することを「脱粒」と呼ぶ。)の程度(脱粒する粒子数N)と強い相関があることを見出した。
表3、及び図11は、表1(従って、図9)に示したデータを測定する際に使用した試験品と同じ試験品についての圧電/電歪素子14の側端面からの脱粒粒子数Nをそれぞれ測定した結果を示している。
図11と図9の比較結果から理解できるように、圧電/電歪素子14の側端面からの脱粒粒子数Nと、圧電/電歪素子14の側端面の表面積増加率Smag(従って、実表面積Sact)とは、定性的な傾向がほぼ一致するということができる。即ち、特に、CMP、2回研磨、或いは2回研磨+2回熱処理を施すと、絶大な脱粒防止効果を得ることができた。
これは、一般に、或る表面の微細な凹凸が大きくてその表面の表面積が大きくなるほど、表面の微細な凸部が同表面から離脱することで脱粒が発生し易くなるという関係があることに基づくものと考えられる。
以上のように、圧電/電歪素子14の側端面からの脱粒粒子数Nは、周知のLPCを利用することにより、安価、且つ簡便に測定できる。また、圧電/電歪素子14の側端面の実表面積Sact(従って、表面積増加率Smag)は、同側端面からの脱粒粒子数Nと強い相関があることが判った。従って、圧電/電歪素子14の側端面からの脱粒粒子数Nを測定することで、安価、且つ簡易に圧電/電歪素子14の側端面の実表面積Sact(従って、表面積増加率Smag)を評価(検査)することができた。
また、LPCは圧電/電歪デバイス10からのゴミ、ほこり等の発生(以下、ゴミ、ほこり等が発生することを「発塵」と云う。)を確認していることになる。ここで、圧電/電歪デバイス10の使用環境によっては(例えば、半導体製造装置の位置決めアクチュエータ等に使用される場合)、発塵はできる限り回避されなければならない。以上のことから、本発明による特定処理を行うことにより、圧電/電歪素子14の側端面の実表面積Sactの減少効果のみならず、同側端面からの脱粒による発塵の防止効果をも発揮され得ることがわかる。
ところで、圧電/電歪素子14の構成要素である複数の電極14a1〜14a5は、例えば、粘り強い延性を有する白金等の金属から成るとともに、同構成要素である複数の圧電/電歪層14b1〜14b4は、例えば、比較的強度が小さく脆い(脆弱な)ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)を主体とした圧電セラミック材料から成っている。比較的強度が小さく脆い(脆弱な)材料は、脱粒が発生する可能性が高い。従って、圧電/電歪素子14の側端面のうち脱粒が発生する可能性が最も高いのは圧電セラミック材料から成る圧電/電歪層14b1〜14b4の側端面であると云える。換言すれば、上記脱粒粒子数Nの殆どは、圧電/電歪層14b1〜14b4からの脱粒によるものと考えられる。
以上、説明したように、本発明による圧電/電歪デバイスは、各種トランスデューサ、各種アクチュエータ、周波数領域機能部品(フィルタ)、トランス、通信用や動力用の振動子や共振子、発振子、ディスクリミネータ等の能動素子のほか、超音波センサや加速度センサ、角速度センサや衝撃センサ、質量センサ等の各種センサ用のセンサ素子として利用することができる。また、この圧電/電歪デバイスは、光学機器、精密機器等の各種精密部品等の変位や位置決め調整、角度調整の機構に用いられる各種アクチュエータとして利用することができる。
また、この圧電/電歪デバイスは、機械加工(ワイヤーソー加工)により切断された圧電/電歪素子14の側端面(切断面)に上述した特定処理を施すことにより、圧電/電歪素子14の側端面の正射影の面積Sproに対する同圧電/電歪素子14の側端面の実際の表面積Sactの割合(表面積増加率Smag)が「4」以下となっている。従って、上述した漏電やイオンマイグレーションが実質的に発生しない程度にまで圧電/電歪素子14の側端面への水分の付着が抑制され得、この結果、圧電/電歪デバイスの所期の作動が長時間に亘って維持され得る。換言すれば、耐久性の高い圧電/電歪デバイスが提供され得る。加えて、発塵ができる限り回避されるべき環境下で使用可能な圧電/電歪デバイスを提供することができる。
本発明は上記実施形態に限らず、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記実施形態においては、特定処理としてのレーザー加工として、YAGレーザー加工とエキシマレーザー加工が挙げられているが、その他のレーザー加工法、例えば、プラズマアッシャー、逆スパッタ等を特定処理として採用してもよい。
また、上記実施形態においては、特定処理としてのブラスト加工として、ドライアイスブラスト加工が挙げられているが、その他のブラスト加工、例えば、SiC,SiO2,ZrO2,AL2O3等のセラミック粒子、ポリエチレン(PET)等の有機物質粒子、AL等の金属粒子、液化CO2によるブラスト加工を特定処理として採用してもよい。
また、上記実施形態においては、特定処理としての超音波洗浄に際し、AL2O3,SiC(セラミック粒子)を砥粒として使用していたが、SiO2,ZrO2等の他のセラミック粒子、ポリエチレン(PET)等の有機物質粒子、AL等の金属粒子等を砥粒として使用してもよい。
また、上記実施形態においては、特定処理としての熱処理に際し、大気炉を使用していたが、酸素、窒素等の雰囲気炉、真空炉を使用してもよい。
また、上記実施形態においては、圧電/電歪素子14は、複数の電極14a1〜14a5と複数の圧電/電歪素子層14b1〜14b4を備えていたが、圧電/電歪素子を、一対の電極と同一対の電極に挟まれた一つの圧電/電歪層を備えてなるように構成してもよい。
また、固定部11、薄板部12,12、及び保持部13,13を金属で構成する場合、図6に示したセラミック積層体23に代えて、このセラミック積層体と同形の金属構造物を鋳造により形成してもよく、或いは、図4に示した各セラミックグリーンシートと同形の薄板状の金属を準備し、これらの金属板をクラッディング法により接合(拡散接合)してセラミック積層体23と同形の金属構造体を形成することもできる。また、断面長方形の棒状金属をコの字状に屈曲させることで、固定部11、薄板部12,12、及び保持部13,13を構成してもよい。
また、上記実施形態においては、圧電/電歪デバイス10の全長(保持部13の端部から固定部11の端部までの長さ)の規定が図6に示した焼成体(セラミック積層体23)の切断加工(ダイシング加工)により行われているが、図4に示したセラミックグリーンシート21a〜21fの加工の際に行うようにしてもよい。具体的には、保持部13の端面に対応する面を内壁面の一部とする開口窓と固定部11の端面に対応する面を内壁面の一部とする開口窓とをセラミックグリーンシート21a〜21fに加工しておいてもよい。これにより、厚い焼成体を切断する場合に比して圧電/電歪デバイス10の全長を製品毎に均一にする(全長を精度良く規定する)ことができる。
また、上記実施形態の圧電/電歪デバイス10においては、一対の保持部13,13の間に対象物を保持していたが、一対の保持部13,13の間にスペーサ(図示せず)を接着剤により介在させてもよい。更に、上記実施形態に係る圧電/電歪デバイスの保持部の側面側(図1においては前面側、又は背面側)に保持すべき対象物を接着等により保持してもよい。
更に、図12に示したように、上述した実施形態における固定部11の中央部を切除して、一対の固定部11a,11aを形成し、各固定部が各薄板部を保持するように構成するとともに、上記一対の薄板部12,12の先端部分を一体に連結する部分で保持部13aを構成してもよい。
上述したNO.6のCMPについて付言しておく。CMPを行った場合、LPC評価値である粒径0.5μm以上の粒子数は、平均粒径1μmのダイヤモンドスラリー、及び錫研磨プレートを用いて加工したものの1/2以下になった。このような効果は、その後において熱処理を施すことなく得ることができる。加えて、このような効果は、上述したR加工を施すことなく得ることができる。この方法を用いることで、粒子の発生の少ない信頼性の高い圧電/電歪デバイスが実現できる。更に、大気中にて650℃ 1h熱処理を施したものは、LPC評価値である粒径0.5μm以上の粒子数がその1/2以下になった。
この方法と更に熱処理など他の方法とを組み合わせることも可能である。熱処理などの温度を上げて表面の加工歪を除去する方法が採用できない場合であっても、化学的に研磨(ポリッシュ)前の加工による表面歪を除去できるし、メカノケミカルポリシング自身が歪を発生させないため、非常に有効である。
研磨(ポリッシュ)を行う前に研磨プレートでラッピング加工し、マスタープレートに貼り付けたデバイス表面高さを揃えておくと、研磨(ポリッシュ)時間を低減できるため有効である。このとき、研磨プレートとして、錫や銅あるいはその化合物のもの、或いは、セラミック研磨プレートを用いることができるが、樹脂研磨プレート(プラスチックプレート)を用いると、被研磨物に対してクラックや欠けをより少なく仕上げることもできる。
研磨クロスを用いたポリシュ加工についても、やわらかい研磨クロスで最初加工し、エッジをまるめておいて、仕上げに硬いクロスで面全体を仕上げることで、加工端面のクラックや欠けの無い加工面を得ることができる。
これらの加工は組み合わせても良い。また、砥粒の粒径を加工が進むに従って小さくしていくことで表面に残る加工歪の量を小さくすることができる。
これらの加工を行った後、コロイダルシリカ等によるメカノケミカルポリシングを施す事で、より精度の高い平面度を合わせ持った圧電/電歪デバイスが実現できる。
メカノケミカルポリシングを施した圧電/電歪デバイスの形状の特徴は、電極材料のPtと圧電/電歪層に化学的研磨差が原因の段差ができることであり、上記実施例ではPtが高くなる方向で約2μmの段差が確認できた。
上述したNO.8の2回研磨について付言しておく。2回研磨を行う場合において、1回目の研磨(第1研磨工程)として圧電/電歪素子の側端面の角部に対してR加工として曲面加工が施される場合、その曲面は、曲率半径が2μm以上200μm以下の曲面から構成されることが好ましい。また、圧電/電歪素子の側端面の角部に対してR加工として面取り加工が施される場合、同角部の辺の面取り長さは、2μm以上200μm以下であることが好ましい。
この場合、前記第1研磨工程、及び前記第2研磨工程における研磨は、研磨クロスを使用して行われることが好適である。更には、この場合、前記第1研磨工程に使用される研磨クロスは、前記第2研磨工程に使用される研磨クロスよりも柔らかいことが好ましい。
このように、圧電/電歪素子の側端面(圧電/電歪デバイスの側端面)を研磨する際、硬い研磨プレートを使用せずに研磨クロスを使用することで、特に応力が集中しやすい角部の残留応力を小さくできる。加えて、圧電/電歪材料の側端面の平面部(表面)の残留応力をも小さくすることができる。この結果、圧電/電歪素子の側端面からの脱粒を少なくすることができた。
また、圧電/電歪素子の側端面の平面部を研磨した後に同側端面の角部にR加工を施したものに比して、カケが少なく滑らかな側端面が容易に得ることができた。また、これにより、取扱いによる衝撃に対しても、角部への衝撃集中を避けることができ、この結果、取扱い易く、且つ信頼性の高い圧電/電歪デバイスが得られた。
更には、R加工後の研磨処理として、硬い研磨プレートを使用せずに研磨クロスを使用することで圧電/電歪素子の側端面(加工面)からの脱粒を少なくすることができた。
加えて、圧電/電歪素子(圧電/電歪デバイス)の加工面の残留応力を緩和するために熱処理を施す場合、熱処理温度を、一般に使用される800℃以上という高温ではなく650℃程度の比較的低い温度に設定しても、優れた脱粒防止効果を奏することができた。この結果、端子材料を高温の熱処理に耐えられる材料に限定することなく圧電/電歪デバイスを構成することができた。
上述したNO.9の2回研磨+2回熱処理(600℃)について付言しておく。これにより、脱粒粒子数が、2回研磨後において1回目の熱処理のみが施される場合に比して、約1/2以下に低減される。このように、圧電/電歪素子の気孔部からの脱粒が抑制されるメカニズムは、以下のようであると推定される。即ち、加工工程(研磨工程)においては、圧電/電歪素子の気孔に砥粒や加工除去物等が出入りし、その結果、研磨の圧力等により気孔内面に歪が与えられる。加えて、洗浄で除去され得ない異物が気孔内に残される。
そして、その後の1回目の熱処理により、固相反応による歪除去が残渣による歪により阻害される。このため、1回目の熱処理後に洗浄して気孔中の残渣が除かれた後、更に、2回目の熱処理を施すことで、同気孔からの粒子発生を低減することができる。
なお、上述したNO.9の2回研磨+2回熱処理(600℃)において、2回熱処理(600℃)に代えて高温の熱処理(800℃〜1000℃)を1回のみ行っても同等の脱粒防止効果が得られることが判っている。このように、2回研磨後において高温の熱処理(800℃〜1000℃)を1回のみ行う場合、2回研磨後において通常の熱処理(600℃)を2回行う場合に比して工程数が減少するというメリットがある。一方、この場合、圧電/電歪素子の電極の材料を高温の熱処理に適するものにしなければならないというデメリットもある。なお、上述した高温の熱処理後においても、通常の熱処理後と同様、付着物内の無機成分が灰分として残留するため、高温の熱処理後においても、再び洗浄を施すことで係る灰分を除去する必要がある。
ところで、平面の外周部に軟質なセラミックスが配置された複合体セラミックスの研磨(ポリッシュ)方法においては、第一の研磨(ポリッシュ)により前記複合体セラミックスの前記平面の外周部のみを研磨(ポリッシュ)する第1研磨工程と、次いで、前記第1の研磨(ポリッシュ)とは異なる第2の研磨(ポリッシュ)により前記複合体セラミックスの前記平面の内部を研磨(ポリッシュ)する第2研磨工程とを含むことが好適である。
一般に、平面の外周部に軟質なセラミックスが配置された複合体セラミックスの同平面の外周部と同平面の内部とを同時に研磨(ポリッシュ)すると、同外周部にかけ等の損傷が発生し易い。これに対し、上記のように、第一の研磨(ポリッシュ)により複合体セラミックスにおける平面の外周部のみを先ず研磨(ポリッシュ)し、次いで、同第1の研磨(ポリッシュ)とは異なる第2の研磨(ポリッシュ)により同複合体セラミックスにおける平面の内部を研磨(ポリッシュ)するようにすると、同複合体セラミックスの外周部の損傷が防止され得ることが判明した。
また、外周部に軟質の材料を有し、且つ、左右対称基準線に対して左右対称形状を有するセラミック部材を円形ラップ治具上に貼り付け、同円形ラップ治具を円形研磨盤上にて相対回転させることで同セラミック部材を研磨(ポリッシュ)するセラミック部材の研磨方法においては、前記セラミック部材を前記円形ラップ治具上に貼り付ける際、前記セラミック部材の左右対称基準線が前記円形ラップ治具の円周方向と一致する向きに、同セラミック部材が同円形ラップ治具上に貼り付けられることが好ましい(図18Bを参照)。
これによれば、セラミック部材の左右対称基準線が円形ラップ治具の円周方向と直角方向(即ち、半径方向)と一致する向きに同セラミック部材が同円形ラップ治具上に貼り付けられる場合(図18Aを参照)に比して、研磨(ポリッシュ)されるセラミック部材(ワーク)の左右のR形状が、より均一になることが判明した。
Claims (22)
- 薄板部と、
前記薄板部を支持する固定部と、
少なくとも前記薄板部の平面上に形成されるとともに複数の電極と少なくとも一つの圧電/電歪層とが積層されてなり、同複数の電極の各側端面と同少なくとも一つの圧電/電歪層の側端面とにより形成された側端面を有する圧電/電歪素子と、
を備えた圧電/電歪デバイスにおいて、
前記圧電/電歪素子の側端面の正射影の面積に対する同圧電/電歪素子の側端面の実際の表面積の割合が4以下であることを特徴とする圧電/電歪デバイス。 - 請求の範囲1に記載の圧電/電歪デバイスにおいて、
前記圧電/電歪素子の側端面は、前記電極と前記圧電/電歪層の積層体を切断加工することで形成された切断面に対して所定の特定処理を施すことにより形成された端面であることを特徴とする圧電/電歪デバイス。 - 薄板部と、
前記薄板部を支持する固定部と、
少なくとも前記薄板部の平面上に形成されるとともに複数の電極と少なくとも一つの圧電/電歪層とが積層されてなり、同複数の電極の各側端面と同少なくとも一つの圧電/電歪層の側端面とにより形成された側端面を有する圧電/電歪素子と、
を備えた圧電/電歪デバイスの製造方法であって、
前記電極と前記圧電/電歪層の積層体を切断加工する工程と、
前記切断加工により形成された切断面に対して所定の特定処理を施すことにより、前記圧電/電歪素子の側端面の正射影の面積に対する同圧電/電歪素子の側端面の実際の表面積の割合が4以下となる同圧電/電歪素子の側端面を形成する工程と、
を含んだ圧電/電歪デバイスの製造方法。 - 請求の範囲2に記載の圧電/電歪デバイス、又は請求の範囲3に記載の圧電/電歪デバイスの製造方法において、
前記特定処理は、
前記切断面に対してYAGレーザー加工を行う処理であることを特徴とする圧電/電歪デバイス、又は圧電/電歪デバイスの製造方法。 - 請求の範囲2に記載の圧電/電歪デバイス、又は請求の範囲3に記載の圧電/電歪デバイスの製造方法において、
前記特定処理は、
前記切断面に対してエキシマレーザー加工を行う処理であることを特徴とする圧電/電歪デバイス、又は圧電/電歪デバイスの製造方法。 - 請求の範囲2に記載の圧電/電歪デバイス、又は請求の範囲3に記載の圧電/電歪デバイスの製造方法において、
前記特定処理は、
前記切断面に対してブラスト加工を行う処理であることを特徴とする圧電/電歪デバイス、又は圧電/電歪デバイスの製造方法。 - 請求の範囲2に記載の圧電/電歪デバイス、又は請求の範囲3に記載の圧電/電歪デバイスの製造方法において、
前記特定処理は、
前記切断面に対して超音波洗浄を行う処理であることを特徴とする圧電/電歪デバイス、又は圧電/電歪デバイスの製造方法。 - 請求の範囲2に記載の圧電/電歪デバイス、又は請求の範囲3に記載の圧電/電歪デバイスの製造方法において、
前記特定処理は、
前記切断面に対して加熱を行う処理であることを特徴とする圧電/電歪デバイス、又は圧電/電歪デバイスの製造方法。 - 薄板部と、
前記薄板部を支持する固定部と、
少なくとも前記薄板部の平面上に形成されるとともに複数の電極と少なくとも一つの圧電/電歪層とが積層されてなり、同複数の電極の各側端面と同少なくとも一つの圧電/電歪層の側端面とにより形成された側端面を有する圧電/電歪素子と、
を備えた圧電/電歪デバイスの製造方法であって、
前記圧電/電歪素子の側端面の角部に対して研磨クロスを使用した研磨により曲面加工、及び/又は面取り加工を施す第1研磨工程と、
その後、前記圧電/電歪素子の側端面の平面部を研磨クロスを使用した研磨により仕上げて同圧電/電歪素子を形成する第2研磨工程と、
を含んだ圧電/電歪デバイスの製造方法。 - 請求の範囲9に記載の圧電/電歪デバイスの製造方法において、
前記第1研磨工程に使用される研磨クロスは、前記第2研磨工程に使用される研磨クロスよりも柔らかいことを特徴とする圧電/電歪デバイスの製造方法。 - 請求の範囲9又は請求の範囲10に記載の圧電/電歪デバイスの製造方法において、
前記第1研磨工程にて前記圧電/電歪素子の側端面の角部に対して曲面加工が施される場合、その曲面は、曲率半径が2μm以上200μm以下の曲面から構成されることを特徴とする圧電/電歪デバイスの製造方法。 - 請求の範囲9又は請求の範囲10に記載の圧電/電歪デバイスの製造方法において、
前記第1研磨工程にて前記圧電/電歪素子の側端面の角部に対して面取り加工が施される場合、同角部の辺の面取り長さは、2μm以上200μm以下であることを特徴とする圧電/電歪デバイスの製造方法。 - 請求の範囲9乃至請求の範囲12の何れか一項に記載の圧電/電歪デバイスの製造方法を用いて製造された圧電/電歪デバイス。
- 平面の外周部に軟質なセラミックスが配置された複合体セラミックスの研磨方法であって、
第一の研磨により前記複合体セラミックスの前記平面の外周部のみを研磨する第1研磨工程と、
次いで、前記第1の研磨とは異なる第2の研磨により前記複合体セラミックスの前記平面の内部を研磨する第2研磨工程と、
を含んだ複合体セラミックスの研磨方法。 - 外周部に軟質の材料を有し、且つ、左右対称基準線に対して左右対称形状を有するセラミック部材を円形ラップ治具上に貼り付け、同円形ラップ治具を円形研磨盤上にて相対回転させることで同セラミック部材を研磨するセラミック部材の研磨方法であって、
前記セラミック部材を前記円形ラップ治具上に貼り付ける際、前記セラミック部材の左右対称基準線が前記円形ラップ治具の円周方向と一致する向きに、同セラミック部材が同円形ラップ治具上に貼り付けられることを特徴とするセラミック部材の研磨方法。 - 薄板部と、
前記薄板部を支持する固定部と、
少なくとも前記薄板部の平面上に形成されるとともに複数の電極と少なくとも一つの圧電/電歪層とが積層されてなり、同複数の電極の各側端面と同少なくとも一つの圧電/電歪層の側端面とにより形成された側端面を有する圧電/電歪素子と、
を備えた圧電/電歪デバイスであって、
請求の範囲14又は請求の範囲15に記載の研磨方法を用いて製造された圧電/電歪デバイス。 - 薄板部と、
前記薄板部を支持する固定部と、
少なくとも前記薄板部の平面上に形成されるとともに複数の電極と少なくとも一つの圧電/電歪層とが積層されてなり、同複数の電極の各側端面と同少なくとも一つの圧電/電歪層の側端面とにより形成された側端面を有する圧電/電歪素子と、
を備え、
前記圧電/電歪素子の側端面の角部に対して曲面加工、及び/又は面取り加工が施されていて、且つ、前記圧電/電歪素子の側端面の平面部が研磨によりその表面粗さがRaで1μm以下に仕上げられている圧電/電歪デバイスであって、
その後において、加熱を行う処理が2回以上繰り返して施されていることを特徴とする圧電/電歪デバイス。 - 請求の範囲17に記載の圧電/電歪デバイスにおいて、
前記2回以上繰り返して施される加熱を行う処理は、600℃以下の温度でなされることを特徴とする圧電/電歪デバイス。 - 薄板部と、
前記薄板部を支持する固定部と、
少なくとも前記薄板部の平面上に形成されるとともに複数の電極と少なくとも一つの圧電/電歪層とが積層されてなり、同複数の電極の各側端面と同少なくとも一つの圧電/電歪層の側端面とにより形成された側端面を有する圧電/電歪素子と、
を備え、
前記圧電/電歪素子の側端面の角部に対して曲面加工、及び/又は面取り加工が施されていて、且つ、前記圧電/電歪素子の側端面の平面部が研磨によりその表面粗さがRaで1μm以下に仕上げられている圧電/電歪デバイスであって、
その後において、800℃〜1000℃の温度で加熱を行う処理が施されていることを特徴とする圧電/電歪デバイス。 - 請求の範囲8に記載の圧電/電歪デバイス、又は圧電/電歪デバイスの製造方法において、
前記加熱を行う処理は2回行われ、1回目の加熱温度は2回目の加熱温度よりも高く設定され、1回目の処理と2回目の処理の間に超音波洗浄工程が行われることを特徴とする圧電/電歪デバイス、又は圧電/電歪デバイスの製造方法。 - 請求の範囲2に記載の圧電/電歪デバイス、又は請求項3に記載の圧電/電歪デバイスの製造方法において、
前記特定処理は、メカノケミカルポリシングを行う処理であることを特徴とする圧電/電歪デバイス、又は圧電/電歪デバイスの製造方法。 - 請求の範囲9乃至請求の範囲12の何れか一項に記載の圧電/電歪デバイスの製造方法において、
前記第1研磨工程では、メカノケミカルポリシングが行われることを特徴とする圧電/電歪デバイスの製造方法。
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