JPWO2006004139A1 - 導波路型光制御素子とその製造方法 - Google Patents

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Abstract

電気光学効果若しくは熱光学効果を有する絶縁体材料から成る光導波路と、光導波路に接してまたは近接して設けられた制御用電極とを有し、光導波路の伝搬損失が波長1.3〜1.6μmにおいて1dB/cm以下である導波路型光制御素子であって、そのキャリア電子濃度が5.5×1020個/cm3以下かつ抵抗率が9.5×10−4Ωcm以下である導電性酸化物膜により上記制御用電極が構成され、導電性酸化物膜の波長1.55μmにおける光波の消衰係数が0.240以下であることを特徴とする。

Description

この発明は、光ファイバー通信、光ファイバー計測において光波の強度、位相、偏光状態を制御するための導波路型光制御素子に関する。
光ファイバー通信系および光ファイバー計測系において、光波の強度、位相、偏光状態等、種々の処理が必要とされる。このため、例えば、光強度変調器、光スイッチ、光減衰器等が開発され実用化されている。
これら光処理技術の一つに光導波路技術がある。光導波路技術は低電圧、集積化の容易さ、堅牢性、大量かつ安価に製造できるという利点がある。光導波路の基板材料として用いられるものは、半導体材料、酸化物結晶材料、ガラス等、多様である。中でも、光導波路型強度変換器には、強誘電体ニオブ酸リチウムやチタン酸ジルコン酸鉛ランタンなどに代表される電気光学効果を有する酸化物結晶材料が基板材料として多用されている。
ここで、光導波路に接してまたは近接して設けられる制御用電極の作用を、以下の数式(1)、数式(2)を用いて説明する。
Δφ=(2π/λ)・δn・L (1)
δn=(−1/2)・n・r・Γ・(V/G) (2)
上記数式(1)において、Δφは印加電圧によって生じた位相変化量、λは入力波長、δnは誘起される屈折率変化、Lは電極長さである。
また、数式(2)において、nは屈折率、rは基板結晶の電気光学定数、Γは光波・電場重なりパラメーター、Vは印加電圧、Gは電極間ギャップを示す。
そして、数式(1)、数式(2)からわかるように、できるだけ大きな位相変化Δφを得るにはできるだけ大きな屈折率変化δnを得ることが必要である。
このためには、以下の点が重要となる。
(1)電極間ギャップGを可能な限り小さくする。これにより電場を強くすることができる。
(2)光波・電場重なりパラメーターΓを大きくする。このためには、電極幅を出来るだけ大きくとり、光導波モード分布の基板内で深い領域での電気力線を多くし、十分強い電場が掛かるようにする。
一般に、電極幅は用いられる光導波路の面積制限内で最大化して構成するため検討代は限られる。従って、電極間ギャップGを如何に狭くするかが検討される。
ここで、ニオブ酸リチウム基板を用い、その基板材料の電気光学効果を利用した導波路型光制御素子に共通した典型的な構造と、これを作成する手順を整理して示しておく。このような導波路型光制御素子の一例として、マッハツェンダー干渉計型光強度変調器の光回路構成とその構成要素を第6図に例示した。
フォトリソグラフィー技術によってニオブ酸リチウム基板11上に幅10μm程度の金属Tiのストライプを形成した後、基板を1000℃程度で処理してニオブ酸リチウム基板内部にTi原子を拡散させる。この結果、深さ5μm程度、幅10μm程度の範囲にTi原子が拡散し、分布を生じる。この部分ではTi原子の濃度にほぼ比例して屈折率が上昇する。この屈折率の上昇領域が光導波路12a、12b、13a、13b、15となる。この領域で、光ファイバー通信系で使用される波長1.3〜1.55μmの光波が単一モードとして伝搬する。
光導波路の形成に続き、SiOをニオブ酸リチウム基板の光導波路面に蒸着してバッファ層を設ける。バッファ層の役割は、電極に用いる金属が上記光波を吸収しないようにするためである。
その後、金属薄膜をバッファ層の表面に蒸着し、パターン化して第6図の14a、14bで示す電極を作成する。電極のパターン化には、上述の光導波路形成の場合と同じくリソグラフィー技術を用いる。すなわち、一様に、例えば、TiやCrを蒸着して形成した膜の上にAuを蒸着した後、化学エッチングにより不要部分を除去するエッチング法や、パターン化されたフォトレジストを形成した後に金属材料を蒸着し引き続きフォトレジストを溶解除去するリフトオッフ法を用いる。
電極の第一層としてTiやCrを用いるのは、これらが例えばニオブ酸リチウム結晶といった基板材料やバッファ層として用いられるSiOとの密着性にも優れているからである。また、第二層としてAuを用いるのは、Auは電気伝導性、耐環境性に優れ、さらにワイヤーボンディングが容易という理由からである。
ところで、上述したように、バッファ層の役割は、電極に用いられる金属が光導波路内を伝搬する光波を吸収しないようにすることであるが、バッファ層があることにより発生する問題がある。例えば、DCドリフトである。
DCドリフトとはどのような現象であるのかを説明する。光導波路領域の電場Eは、Vを外部印加電圧、gを電極ギャップとして数式(3)で示される。
E=V/g (3)
但し、ここでgは、数式(1)に用いた実際の電極間ギャップGではなく、直感的に理解するために実効的な電極ギャップ値gを導入している。
数式(3)によれば、Vを一定に保てばEは一定に保たれ、光出力は一定値に保たれる。しかし、外部印加電圧Vを一定に保っているにも関らず、Eが時間的に変化して、その結果、光出力が一定値に保たれないという現象が起きる。これがDCドリフトである。このDCドリフトはバッファ層自体およびバッファ層と光導波路基板の界面における実効的な容量成分と抵抗成分の効果として起きるものである。光スイッチ、光変調器などの導波路型光制御素子が実際に使用されるためにはDCドリフトの抑制が必要となる。
DCドリフトを解消するためにバッファ層を排除した場合、電極による光波の吸収を防止するためにバッファ層に替わる何らかの方策が必要となる。とりわけ、単一モード光ファイバー系の中では一般に偏光が時間的に一定しないため、この中で使用する導波路型光制御素子では、電場振動方向が基板面に平行で、電極での吸収が顕著でないTEモード、電場振動方向が時間的に垂直で、電極での吸収が顕著なTMモードの双方のモードに対して同一の振る舞いを示すこと、すなわち偏波無依存性が要求される。
また、熱光学効果を利用した導波路型光制御素子においては、基板に石英ガラスや高分子材料などの、透明性が高く、屈折率の温度依存性が適度に大きいものが用いられる。そして、Crなどの金属伝導体ストリップを干渉計の片方アームのみに設置して、これに電流を流すことによりジュール熱を発生させ、この熱により片方アームのみの屈折率を変化させ、結果として両アーム間に位相差を生じさせる。この位相差によって出力光量の変化がもたらされることは電気光学効果と全く同様である。
そして、金属伝導体は上記電極と同様に光波を吸収するため、バッファ層を用いない場合には光導波路から一定距離金属伝導体を離す必要があり、また、バッファ層を用いた場合にはより近接させることが可能であるものの、バッファ層を設けるという工程が必要となる。
このような煩雑な問題に対する解決策として、可視域が透明な導電性酸化物であるITO膜(Indium Tin Oxide膜、In:Sn膜)を制御用電極に用いた構造が提案されている(ドイツ特許DE3724634号公報参照)。これによれば、光導波路上に電極としてのITO膜を成膜し、その上に保護膜層を装荷している。
一般に、物質に光が入射すると、一部は反射され、残りの一部は物質内に吸収され、更にその残りが透過される。In系の導電性酸化物材料はn型半導体であり、キャリア電子が存在して、その移動が電気伝導に寄与する。このような導電性酸化物膜中のキャリア電子は、近赤外域の光を反射・吸収する。導電性酸化物膜中のキャリア電子が多くなるほど近赤外の光の反射・吸収量は多くなり(オーム社、日本学術振興会編、「透明導電膜の技術」p.55〜57参照)、導電性酸化物膜の消衰係数は大きくなる。
現在広範に用いられているITO膜は、低抵抗であるが、キャリア電子濃度が8×1020個/cm以上であり、波長1.3〜1.6μmの近赤外領域において反射・吸収が著しい。このような膜を光導波路に接してまたは近接して制御用電極として用いると、光導波路内を進行する波長1.3〜1.6μmの近赤外光の損失が著しくなる。従って、波長1.3〜1.6μmの赤外光を用いる光導波路用の制御用電極としては、キャリア電子濃度が少ないことが必要となる。
一方、物質の抵抗率ρ(電気導電率1/ρ)は、キャリア電子濃度nとキャリア電子の移動度μの積に依存する(1/ρ=enμ、e:電荷素量)。キャリア電子濃度が低くて電気導電率の高い電極材料を実現するためには、キャリア電子の移動度μが大きい必要がある。ITO膜のキャリア電子の移動度は、約10〜35cm/Vsecである。n型半導体である酸化インジウム(In)系材料のキャリア電子の移動度は、主に、イオン化不純物散乱や中性不純物散乱に支配されている(不純物に関しては、イオンの状態で含まれる不純物をイオン化不純物と呼び、周囲に余分な酸素が吸着して中性の状態で含まれる不純物を中性不純物と呼んでいる)。
キャリア電子濃度を増大させるために添加する不純物元素の量が多くなると、キャリア電子は散乱され、キャリア電子の移動度は低下する。ITO膜への酸素の導入を増加させてITO膜のキャリア濃度を低下させることは可能であるが、ITO膜の移動度は酸素の導入による中性不純物の増加によってさらに小さくなり、電気導電率は著しく低下してしまう。
ITO膜は光ファイバー通信分野で用いられる光波長領域1.55μm帯では十分に低吸収とは言えず、例えば、長さ40mmの制御用電極を有する導波路素子の上記電極をITO製とした場合、この電極に起因する損失は8dB程度となることが避けられない。この損失レベルでは実用的とは言えず、さらなる低損失化が必要である。
電極による光波の吸収が低減できれば、素子の挿入損失が低減できるのみでなく、駆動電圧の低下にもつながる。なぜならば、光学吸収が低減されれば、損失を一定にしたとき、電極間隔をより狭くとることができる。電極間隔を狭くすれば、電圧を同じに仮定したとき光導波路領域での電場が強くなる。
従って、電極間隔を狭めれば低電圧でも一定値の屈折率変化を誘起することができて、結局、低駆動電圧の素子が実現できる。
本発明はこのような問題点に着目してなされており、その目的とするところは、DCドリフトが抑制され、かつ、低電圧駆動、任意の入射偏波に対して低損失を達成できる導波路型光制御素子とその製造方法を提供することにある。
すなわち、本発明は、電気光学効果若しくは熱光学効果を有する絶縁体材料からなる光導波路と、光導波路に接してまたは近接して設けられた制御用電極とを有し、光導波路の伝搬損失が波長1.3〜1.6μmにおいて1dB/cm以下である導波路型光制御素子において、
そのキャリア電子濃度が5.5×1020個/cm以下かつ抵抗率が9.5×10−4Ωcm以下である導電性酸化物膜により上記制御用電極が構成されると共に、導電性酸化物膜の波長1.55μmにおける光波の消衰係数が0.240以下であることを特徴とする。
波長1.3〜1.6μmの近赤外線の反射・吸収を増大させない(つまり消衰係数を増大させない)電極膜のキャリア電子濃度は、発明者らの実験・調査によると5.5×1020個/cm以下、好ましくは4.0×1020個/cm以下である必要があり、この条件を満たしかつ抵抗率が9.5×10−4Ωcm以下の条件を満たせば光導波路用の制御用電極には有用となる。
そして、このような条件を満たす導電性酸化物膜は、酸化インジウムを主成分とし、チタン/インジウムの原子数比でチタン元素が0.003〜0.120の割合で含まれている結晶性導電性酸化物膜でこれを構成することができる。
導電性酸化物膜を結晶性とすることにより、非晶質である同一組成の酸化物膜に比べて移動度の著しい増加により導電性を顕著に向上させることができるからである。尚、導電性酸化物膜をスパッタリング蒸着法によって成膜する際に、基板温度を140℃以上に加熱した状態で成膜すれば、完全な結晶性の膜が得られる。あるいは140℃未満の基板温度にてスパッタリング蒸着法により非晶質相を含む酸化物膜を成膜した後で、150℃以上に加熱処理することによっても同様に結晶化させることができる。加熱処理を大気中で長時間行うと酸化物膜中に余分な酸素が導入されて導電性の低下が起きてしまうが、真空中(例えば1Pa以下)若しくは不活性ガス(窒素やアルゴンなど)中で行うと、酸化物膜の余分な酸化による導電性低下を回避することができ、安定に低抵抗の結晶膜を得ることができる。また、大気中で行う加熱処理でも、なるべく低温で短時間の処理とすれば、例えば150〜200℃で10分程度であれば、導電性の悪化を回避して結晶膜を得ることが可能である。尚、上記制御用電極としての導電性酸化物膜の厚さとしては、後述する理由から100nm〜5μmが好ましい。
また、制御用電極としての導電性酸化物膜の表面に補助電極として金属の単層膜若しくは多層膜を形成してもよい。上記補助電極を設けるのは次のような理由による。導電性酸化物からなる制御用電極は低抵抗とはいえ、典型的な金属、例えば金、アルミニウム、チタンと比較すれば遥かに高抵抗である。しかるに、導電性酸化物からなる電極が40mm程度と長くなると、電極の抵抗が光導波路デバイスの特性に悪影響を及ぼすこともある。例えば、高速応答性が求められる素子において、電極の抵抗による時間遅れが生ずる。また電気入力が大きい場合に、電極抵抗が高いと発熱が生ずる。このような問題を解決して導電性酸化物の本来の特徴を生かす方法は、典型的な金属の高電気伝導性(低抵抗性)と導電性酸化物の透明性の両方を生かすことである。
具体的には、先に導電性酸化物で例えば20μmギャップ、光導波路の両脇の各々が幅50μmの電極パターンを形成した後、その上に重ねて、金、アルミニウム、チタンなどの典型的金属で、先に装荷した導電性酸化物による電極よりも大きなギャップ、例えば40μmギャップの電極パターンを形成する。また、基板上での電極からの配線は、後で装荷した金属膜が受け持つものとする。このようにすれば、典型的金属による電極のギャップは十分大きいため光損失には寄与しない。また、導電性酸化物のみからなる電極は典型的金属と比べて高抵抗という弱点も克服できる。
次に、本発明に係る導波路型光制御素子を製造するには、電気光学効果若しくは熱光学効果を有する絶縁体材料から成る光導波路の上または近傍に制御用電極として導電性酸化物膜を成膜する際、インジウムとチタンを含む酸化物焼結体を原料として用いたスパッタリング蒸着法あるいはイオンプレーティング法により成膜することで得ることができる。
そして、制御用電極として導電性酸化物膜をスパッタリング蒸着法により成膜する際、光導波路の基板とターゲットとの間の距離を50〜80mmとし、スパッタリング成膜中における成膜ガス中の酸素量をアルゴンガス量に対して0.25〜4%とし、かつ、成膜ガス圧を0.3〜1.0Paとして上記基板温度を140〜350℃に設定して成膜するとよい。あるいは、上記制御用電極としての導電性酸化物膜を形成するに際し、光導波路の基板とターゲットとの間の距離を50〜80mmとし、スパッタリング成膜中における成膜ガス中の酸素量をアルゴンガス量に対して0.25〜4%とし、かつ、成膜ガス圧を0.3〜1.0Paとして上記基板温度を140℃未満とした条件下でスパッタリング法蒸着法により酸化物膜を形成した後、この酸化物膜を150〜350℃にて加熱処理してもよい。この加熱処理は真空中あるいは不活性ガス中でこれを行うことが望ましい。
尚、制御用電極としての上記導電性酸化物膜を成膜する方法として、スパッタリング蒸着法あるいはイオンプレーティング法を例示したが、これ等の成膜方法に限定されるものでなく、当然のことながら適用可能な他の成膜方法を採ってもよい。
上述したように本発明に係る導波路型光制御素子は、そのキャリア電子濃度が5.5×1020個/cm以下かつ抵抗率が9.5×10−4Ωcm以下である導電性酸化物膜により光導波路の制御用電極が構成され、上記導電性酸化物膜の波長1.55μmにおける光波の消衰係数が0.240以下であることを特徴としている。
そして、キャリア電子濃度等が特定された導電性酸化物膜の採用によりバッファ層の形成が省略されてDCドリフトを抑制でき、かつ、低電圧駆動、任意の入射偏波に対して低損失を達成することができる。
また、上記導電性酸化物膜として、チタンが添加された結晶性の酸化インジウム系導電性酸化物膜材料(In−Ti−O、以下ITiOと略称する)を用いることにより、従来、主として採用されていたITO(In−Sn−O)材料に比べて近赤外領域において格段に光波の透過性に優れる結果、電極ギャップを狭く設計することが可能となり、TEおよびTMモード双方の入射偏光に対して低電圧性と低損失性を兼ね備えた導波路型光制御素子が可能となる。
更に、熱光学効果を用いた導波路型光制御素子においても、発熱体としてチタンが添加された結晶性の酸化インジウム系導電性酸化物膜材料(ITiO)を用いることにより、その低光吸収性によって、発熱体を光導波路に殆ど制限されることなく近づけることが可能となり、効率的に屈折率変化を誘起させることができ、低電力化につながる。
従って、本発明によれば、赤外域の光ファイバー通信で利用可能な、損失が極めて小さく、かつ、低電圧駆動の高性能の光変調器や電気光学光スイッチ、偏波制御デバイス、可変光減衰器を提供できるため、産業上、極めて有用である。
第1図は本発明に係る導波路型光制御素子の一例を示す斜視図。
第2図は実施例19の導波路型光制御素子における電極長を振った電極の形状を示す平面図。
第3図は実施例19の電極長とその損失との関係を示すグラフ図。
第4図は実施例43の電極間ギャップを振った電極の形状を示す平面図。
第5図は実施例43の電極間ギャップとその損失との関係を示すグラフ図。
第6図は従来例に係る導波路型光制御素子の一例を示す斜視図。
本発明は、光導波路の伝搬損失が波長1.3〜1.6μmにおいて1dB/cm以下であり、制御用電極の波長1.55μmにおける光波の消衰係数が0.240以下である導波路型光制御素子とその製造方法を提供するものである。
ここで、導波路型光制御素子の挿入損失は、素子への光入出力に起因する損失と、光導波路に起因する損失(伝搬損失×光導波路長)、および、制御用電極に起因する損失(過剰損失×電極長)の合計となる。
本発明では、上記導波路型光制御素子の制御用電極として特定の導電性酸化物膜を用いる。具体的には、キャリア電子濃度が5.5×1020個/cm以下、抵抗率が9.5×10−4Ωcm以下である導電性酸化物膜が適用される。このような導電性酸化物を用いることにより、光導波路の伝搬損失が波長1.3〜1.6μmにおいて1dB/cm以下となり、制御用電極の波長1.55μmにおける光波の消衰係数が0.240以下となる。
より具体的には、実施例に示すようにチタン/インジウムの原子数比で0.003〜0.120の割合でチタン元素が含まれている結晶性の導電性酸化物膜を用いたものである。また、上述したように導電性酸化物膜を結晶性とすることにより、非晶質である同一組成の酸化物に比べて導電性を顕著に向上させることができる。結晶膜にすることにより、チタンが酸化インジウムのインジウム位置に置換し、高い移動度の膜が形成されるためである。導電性酸化物膜をスパッタリング蒸着法によって成膜する際に、基板温度を140℃以上に加熱した状態で成膜することにより、完全に結晶性の膜が得られる。あるいは140℃未満の基板温度にてスパッタリング蒸着法で非晶質相を含む酸化物膜を形成してから150〜350℃にて加熱処理することによっても同様に完全に結晶性の導電性酸化物膜を得ることができる。この加熱処理は、例えば窒素やアルゴンなどの不活性ガス中で行うことが望ましい。なぜなら酸化しやすい雰囲気中で膜を加熱処理すると膜中に酸素が過剰に取り込まれ、中性不純物が増加して移動度が低下し、導電性に優れた膜が得難いからである。
次に、本発明の光導波路および制御用電極の形成方法について説明する。
上述したように、フォトリソグラフィー技術によってニオブ酸リチウム基板上に幅10μm程度のTi金属のストライプを蒸着した後、基板を1000℃近辺の高温に5〜10時間さらすことによりTi金属を基板内部に拡散させる。こうして深さ5μm、幅10μm程度の屈折率の上昇領域が、単一モードの光導波路を形成する。
次に、スパッタリング蒸着法あるいはイオンプレーティング法により、制御用電極に用いるチタンを含んだ結晶性の酸化インジウムの導電性酸化物膜を形成する。
すなわち、スパッタリング蒸着法では、例えば、チタンを含む酸化インジウム焼結体ターゲットを用い、スパッタリング蒸着装置内に光導波路の基板と上記ターゲットを配置し、酸素ガスを含むアルゴン不活性ガス雰囲気中で、基板を所定の温度に加熱し、この基板と上記ターゲット間に電場を印加してターゲットと基板との間にプラズマを発生させて、酸化インジウム内のインジウムの一部をチタンで置換した導電性酸化物膜を基板上に形成する。
他方、イオンプレーティング法では、例えば、チタンを含む酸化インジウム焼結体タブレットを用い、イオンプレーティング装置内で上記基板とタブレットを銅ハース内に配置し、酸素ガスを含むアルゴン不活性ガス雰囲気中で上記基板を所定の温度に加熱し、電子銃を用いて銅ハースからタブレットを蒸発させ、基板付近でプラズマを発生させることによってタブレット蒸気をイオン化し、酸化インジウム内のインジウムの一部をチタンで置換した導電性酸化物膜を基板上に形成する。
尚、上記ターゲットあるいはタブレット中のチタンの含有量を変えることにより、導電性酸化物膜中のチタンの含有量を変化させることができる。この時、形成される導電性酸化物膜の構造や結晶性は、導電性酸化物膜中のチタンの含有量、基板の加熱温度、不活性ガス雰囲気中の酸素分圧、成膜速度等の成膜条件に依存する。
こうした条件は、装置により異なることがあるため具体的に限定できないが、例えば、市販されている通常のスパッタリング装置を用いて成膜する場合には、ターゲットと基板との間の距離を50〜80mmとし、スパッタリング成膜中における成膜ガス中の酸素量をアルゴンガス量に対して0.25〜4%とし、成膜ガス圧を0.3〜1.0Paとすることが好ましい。
成膜ガス中の酸素量が0.25%未満の場合、酸化インジウム相の酸素欠損量が多くなり、それによるキャリア電子の発生が多くなりすぎて赤外光領域の透過率の低い導電性酸化物膜しか得られないことがある。また、成膜ガス中の酸素量が4%を超えた場合、酸化インジウム内におけるチタンの不純物元素の周囲に、余分な酸素が導入されて中性不純物が増大し、キャリア電子の移動度が低下して低抵抗の導電性酸化物膜が得られなくなることがある。
また、成膜ガス圧は、スパッタリング蒸着中の基板に到達するスパッタ粒子の運動エネルギーに影響を与える。成膜ガス圧が0.3Pa未満であると、スパッタ粒子の運動エネルギーが高すぎてスパッタ粒子による導電性酸化物膜の再スパッタが行われ、表面の荒れた導電性酸化物膜しかできないことがある。他方、1.0Paを超えると、スパッタ粒子の運動エネルギーが低すぎて、基板に到達したスパッタ粒子が基板上でマイグレーションせずに多孔質で密度の低い導電性酸化物膜しか得られないことがある。このような導電性酸化物膜は、キャリア電子の粒界散乱が大きく、抵抗率が高い。
結晶性の導電性酸化物膜では、チタンが酸化インジウム内のインジウムの一部と置き換わって固溶し、移動度が高くて抵抗率が低いものとなる。結晶性の導電性酸化物膜を得るには、基板温度を操作せずに非晶質の導電性酸化物膜を得てから加熱処理して結晶性の導電性酸化物膜としてもよいが、予め基板温度を140〜350℃にして成膜すれば、結晶性の導電性酸化物膜が得られるため、基板温度を140〜350℃に加熱しつつスパッタリング蒸着することが好ましい。基板温度が140℃未満であると、完全に非晶質な膜か、非晶質と結晶質が混在した膜が生成し、完全な結晶質の導電性酸化物膜が得られない。また、350℃を超えた加熱では、かかる温度設定に時間がかかってしまい、実用上、不可能である。
尚、上述したように140℃未満の基板温度にてスパッタリング蒸着法で得た非晶質相を含む酸化物膜を成膜した場合でも、その膜を150℃以上の温度にて加熱処理することによって同様に結晶化させることができる。加熱処理を大気中で長時間行うと酸化物膜中に余分な酸素が導入されて導電性の低下が起きてしまう場合があるが、真空中(例えば1Pa以下)若しくは不活性ガス(窒素やアルゴンなど)中で行うと、酸化物膜の余分な酸化による導電性低下を回避することができ、安定して低抵抗の結晶膜を得ることができる。また、大気中で行う加熱処理でも、150℃以上の温度で、なるべく低温で短時間、例えば150〜200℃で10分程度以内であれば、導電性の悪化を回避しながら特性の良好な結晶性の導電性酸化物膜を得ることが可能である。
また、上記導電性酸化物膜の膜厚は100nm〜5μm、好ましくは200nm〜1μmが導電性および電極のパターン形成の容易さから好ましい。
形成された導電性酸化膜をリアクティブ・イオンエッチングにより膜の一部を除去して電極パターンを形成する。エッチャントとしては、ITOで通常用いられているHBrを主成分とするエッチングガスを用いることができる。
また、140℃未満の基板温度でスパッタリング蒸着法により非晶質相を含む酸化物膜を成膜した後に加熱処理して結晶性の導電性酸化物膜を得る方法では、加熱処理工程を行う前にレジスト材を用いたリフトオフ法によるパターンを形成することで加熱処理後に電極パターンを形成することができる。
このような方法で形成された本発明に係る導波路型光制御素子は良好な電気的光学的特性を有し、光ファイバー通信、光ファイバー計測において光波の強度、位相、偏光状態を制御するための素子として好適に利用される。
次に、本発明に係る導波路型光制御素子の一例について図面を参照して詳細に説明する。
第1図は本発明に係る導波路型光制御素子の一例を示す斜視図である。第1図中、符号1はニオブ酸リチウム単結晶基板、符号2aおよび2bはチャンネル型直線光導波路、符号3aおよび3bはマッハツェンダー干渉計を構成するチャンネル型光導波路(アーム)をそれぞれ示す。また、符号4aおよび4bは酸化インジウムを主成分とし、チタンが含まれている結晶性の導電性酸化物膜である。この導電性酸化物膜は制御用電極として用いられる。
この導波路型光制御素子のチャンネル型直線光導波路2aの入射側からレーザー光を入射させる。ここで制御用電極4aと4bの間に電圧を印加すると、電気光学効果によって光導波路領域の屈折率が変化し、マッハツェンダー干渉計の両アーム3aと3bを伝搬する光の間に位相差が生じ、光が合波するY分岐光導波路5で互いに干渉する結果、チャンネル型直線光導波路2bを伝搬する光の強度が変化する。すなわち、制御用電極4aと4bの間に印加する電圧を制御することによってチャンネル型直線光導波路2bから出る光の強度を制御することができる。この作用を利用して、導波路型の光強度変調器または可変光減衰器を実現することができる。
ここで、制御用電極4aおよび4bは、酸化インジウムを主成分としチタン元素が含まれている結晶性の導電性酸化物膜であることから、電極による光の吸収が起きにくく制御用電極を光導波路に十分に近接させることができ、印加する電圧すなわち駆動電圧を低減させることができる。
例えば、第1図に示す導波路型光制御素子の制御用電極について、酸化インジウムを主成分とし、チタン/インジウムの原子数比で0.05の割合でチタン元素が含まれていて結晶性の導電性酸化物膜をスパッタリング蒸着法によって形成した場合、電極ギャップ値が20μm以上ではギャップ値によらずTE、TM各モードにおいて電極による損失(過剰損失)は0.1dB/cm以下である。ギャップ値が20μm未満ではギャップ値の減少とともに徐々に電極による上記損失が増加するが10μmでは0.2dB/cmである。
基板上の取り回し配線も、通常、電極形成と同一プロセスで形成される。配線が複雑になる場合、また、異種機能の導波路型光制御素子を同一基板上に形成したい場合、この電気的取り回し配線が光導波路と交差することが一般的に避けられない。光導波路直上に付加した場合でも、1dB/cmの増加に過ぎないため、幅50μm程度の取り回し配線が光導波路を横切る際に生じる損失はわずかである。
また、制御用電極4aおよび4bは、酸化インジウムを主成分としチタン元素が含まれている結晶性の導電性酸化物膜を形成してからその表面に補助的に金属膜(例えばTiとAuの積層膜)を形成することによっても(すなわちITiO/Ti/Auの構造)、電極による光の吸収が起きにくく、制御用電極を光導波路に十分に近接させることができるため、印加する電圧すなわち駆動電圧を低減させることができる。
例えば、第1図に示す導波路型光制御素子の制御用電極について、酸化インジウムを主成分とし、チタン/インジウムの原子数比で0.05の割合でチタン元素が含まれていて結晶性の導電性酸化物膜をスパッタリング蒸着法によって300nmほど形成した後で、この導電性酸化物膜の表面に真空蒸着法で110nmのTi膜と60nmのAu膜を順次形成した場合、電極ギャップ値が20μm以上では、ギャップ値によらずTE、TM各モードにおいて電極による損失(過剰損失)は0.1dB/cm以下である。ギャップ値が20μm未満ではギャップ値の減少とともに徐々に電極による上記損失が増加するが、10μmでは0.2dB/cmである。光導波路直上に付加した場合でも1dB/cmの増加に過ぎず、光導波路を横切る電極配線で生じる損失はわずかである。
また、第1図に示す導波路型光制御素子における電極による損失(過剰損失)は、制御用電極を構成する導電性酸化物膜の膜厚にも依存し、導電性酸化物膜の膜厚が大きいほど過剰損失が小さくなる傾向を示す。例えば、電極間ギャップ値が10μmでは導電性酸化物膜の膜厚が150nm以上で過剰損失が0.2dB/cm以下の低損失であり、光導波路の直上に付加した場合でも200nm以上で1dB/cm以下での増加に過ぎず、光導波路を横切る電極配線で生じる損失はわずかである。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明の技術内容がこれら実施例により限定されるものではない。
[実施例1〜9]
結晶性チタン含有酸化インジウム膜(ITiO膜)の形成
厚さ1.1mmのコーニング7059ガラス基板上に、スパッタリング蒸着法で、酸化インジウムを主成分とし、チタン濃度がそれぞれ異なるITiOターゲットを用いて、チタン/インジウム原子数比で0.003〜0.120の割合でチタンを含有した膜厚200nmの結晶性導電性酸化物膜を形成した。
スパッタリング成膜は、直径6インチのターゲットを用い、直流電力160Wを投入して、酸素を1%混合したアルゴンガスを用い、スパッタリング蒸着時のガス圧0.6Pa、ターゲットと基板間距離を60mm、基板温度を200℃で行った。チタン濃度が異なるターゲットを用いることにより、第1表の「膜組成Ti/In原子数比」欄に示す比率でチタンを含む酸化インジウム薄膜を形成した。
そして、四探針法による表面抵抗の測定値と膜厚から、得られた酸化インジウム薄膜の抵抗率値を算出した。また、酸化インジウム薄膜のキャリア濃度と移動度は、ホール効果測定装置(東陽テクニカ社製)を用いてファンデルパウ法[例えば、東京大学出版会 庄野克房著 物理工学実験2 半導体技術(上)p.105の記載参照]によるホール効果測定および上記抵抗率測定から求めた。また、分光エリプソメトリー(偏光解析法)で酸化インジウム薄膜の光学定数[屈折率(n)、消衰係数(k)]を測定した。これ等の結果を第1表に示す。
第1表から、Ti/In原子数比=0.003〜0.120の範囲でチタンを含む酸化インジウム膜は、抵抗率が1.9×10−4〜7.1×10−4Ωcmと低いだけでなく、光通信によく使われる波長1.3〜1.6μmにおける光波の消衰係数、波長1.55μmにおける光波の消衰係数が、後述する従来のITO膜と比べて極めて小さかった。
Figure 2006004139
[実施例10〜15]
実施例3で適用されたターゲットを用い、スパッタリング蒸着中の酸素量のみを増減(0.25%〜4%)させた以外は実施例3と同様にして、チタンを含む酸化インジウム薄膜を形成した。
そして、上記キャリア電子濃度、キャリア電子の移動度、膜の抵抗率、波長1.3μm、1.55μm、1.6μmにおける膜の消衰係数を同様の条件で測定した。結果を第2表に示す。
Figure 2006004139
これらは、同一ターゲット(実施例3で用いたターゲット)から形成したものであり、組成分析をICP(誘導結合プラズマ)発光分光測定で測定したところ、Ti/In原子数比で0.015〜0.019であった。
[実施例16〜18]
実施例8で用いたターゲットを用い、スパッタリング蒸着中の酸素量のみを増加(2%〜4%)させた以外は実施例8と同様にして、チタンを含む酸化インジウム薄膜を形成した。
上記キャリア電子濃度、キャリア電子の移動度、膜の抵抗率、波長1.3μm、1.55μm、1.6μmにおける膜の消衰係数を同様の条件で測定した。結果を第3表に示す。
Figure 2006004139
「評価」
(1)第1表、第2表および第3表に示したチタンを含む酸化インジウム薄膜は、キャリア電子濃度が5.5×1020個/cm以下と低かった。このことが近赤外域の消衰係数を小さくしている要因である。他方、低キャリア濃度であるにもかかわらず、抵抗率は9.5×10−4Ωcm以下、膜によっては1.9×10−4Ωcm〜2.1×10−4Ωcm(実施例6〜7、実施例4〜5)と非常に低い電気抵抗率を有していた。これは、第1表〜第3表のすべての膜において、キャリア電子の移動度が44cm/Vsec以上、膜によっては70cm/Vsec以上と高いからであり、これによって高い電気導電性を実現しているといえる。
(2)第1表、第2表および第3表に示したチタンを含む酸化インジウム薄膜は、全て結晶性の良い膜であることがX線回折測定から明らかとなった。更に、結晶性の良い酸化インジウムのビックスバイト型構造の膜であることがわかり、また、酸化インジウム相以外の結晶相に起因するピークは観察されなかったことから、チタンは、酸化インジウム相のインジウムに置き換わって、固溶していることがわかった。
(3)第1表、第2表および第3表に示したチタンを含む酸化インジウム薄膜を、室温〜138℃の基板上にスパッタリング蒸着法で形成すると、非晶質構造の膜や結晶質と非晶質が混在した膜が得られることがX線回折測定で明らかとなっている。このような膜は、キャリア電子の移動度が30cm/Vsec以下、電気抵抗率が2×10−3Ωcm以上であり、導電性が不十分な膜であることもわかった。しかし、これらの非晶質膜や結晶質と非晶質が混在した膜を真空中(1×10−4Pa〜1Pa)や、窒素やアルゴンなどの不活性ガス中で150〜350℃で加熱処理すると、第1表、第2表および第3表に示された結晶性の良い膜と同程度のキャリア電子の移動度と電気抵抗率とになり、本発明の目的に使用できることもわかった。また、上記非晶質膜や結晶質と非晶質が混在した膜を、150〜200℃で10分間の大気加熱であれば、第1表、第2表および第3表に示された結晶性の良い膜と同程度のキャリア電子の移動度と電気抵抗率とになり、本発明の目的に使用できることもわかった。
(4)以上をまとめると、各実施例に係る結晶性の良い導電性酸化物膜(酸化インジウム膜)はTi/In原子数比で0.003〜0.120の割合であり、キャリア電子濃度が5.5×1020個/cm以下、作製条件によっては2.0×1020個/cm以下(実施例14〜15、実施例17〜18)である。この結果、波長1.3〜1.6μmにおける光波の消衰係数が0.240以下と小さい。特に、光通信で広範に用いられている波長1.55μmにおける光波に対する消衰係数は0.240以下であり、更に膜組成や膜作製条件によっては0.08以下と極めて小さい値も示す。また、キャリア電子の移動度が44〜90cm/Vsecと高いため、高い電気導電性を示す。こうした赤外光の反射・吸収の小さい高導電性の酸化物電極材料は従来にはないものであった。
[実施例19]
ITiO膜を制御用電極に適用した導波路型光制御素子の形成
(光導波路の形成)
第2図に示す導波路型光制御素子を作製するため、a軸を主面とするニオブ酸リチウム単結晶基板21上に、フォトリソグラフィー技術によってc軸に平行に幅8μm、長さ70mmのTiストライプを直線状に複数本蒸着した。これを大気中に1050℃、9時間さらすことによって光導波路22を形成した。この導波路は入射光波長1.55μmに対して単一モード動作が確認された。
(電極材料の成膜)
この導波路型光制御素子の表面に、Ti/In原子数比=0.008(実施例2と同一条件)組成のチタンを含む酸化インジウム薄膜を実施例2と同様にして300nmの膜厚だけ形成した。
(電極のパターニング)
スッパタリング蒸着法によって上記基板21に成膜した酸化インジウム薄膜を、光導波路形成と同様のフォトリソグラフィー技術を用いて電極形状にパターニングし、HBrを主なエッチングガスとして用いたリアクティブ・ドライエッチングによって、光導波路の直上に幅100μmとし、長さ0〜60mmに振った膜厚300nmの電極23を形成した(第2図参照)。
(電極による損失測定)
得られた導波路型光制御素子に光ファイバーを用いて波長1.55μmのレーザー光をTMモードにてチャネル光導波路端面から導入した。光導波路内を伝搬した後、光導波路端面から出射した光の強度を測定した。
第3図は各電極長に対する挿入損失を測定した結果である。
第3図に示すグラフの傾きから、電極による光導波路の過剰損失を計算した結果、0.64dB/cmとなった。一方、通常電極として用いられている金属アルミニウムによる光導波路の過剰損失を同様に測定した結果、69.6dB/cmであった。
従って、実施例に係る導電性酸化物膜(酸化インジウム膜)にて構成される制御用電極は、アルミニウム電極と比較してはるかに損失が小さいことが確認される。
[実施例20]
Ti/In原子数比=0.017(実施例3と同一条件)組成のチタンを含む酸化インジウム薄膜を実施例3と同様にして300nmの膜厚だけ形成した以外は実施例19と同様の方法で、ITiO膜を制御用電極に用いた実施例19と同一構造の導波路型光制御素子を作製した。
そして、ITiO膜電極による光導波路の過剰損失を計算した結果、0.74dB/cmであった。同じ構造の電極を、材質として金属アルミニウムを用いて作製したときの過剰損失(69.6dB/cm)と比べて著しく小さかった。
[実施例21〜27]
Ti/In原子数比=0.003(実施例1と同一条件)組成のチタンを含む酸化インジウム薄膜(実施例21)、Ti/In原子数比=0.024(実施例4と同一条件)組成のチタンを含む酸化インジウム薄膜(実施例22)、Ti/In原子数比=0.033(実施例5と同一条件)組成のチタンを含む酸化インジウム薄膜(実施例23)、Ti/In原子数比=0.055(実施例6と同一条件)組成のチタンを含む酸化インジウム薄膜(実施例24)、Ti/In原子数比=0.088(実施例7と同一条件)組成のチタンを含む酸化インジウム薄膜(実施例25)、Ti/In原子数比=0.100(実施例8と同一条件)組成のチタンを含む酸化インジウム薄膜(実施例26)、および、Ti/In原子数比=0.120(実施例9と同一条件)組成のチタンを含む酸化インジウム薄膜(実施例27)をそれぞれ300nmの膜厚だけ形成した以外は実施例19と同様の方法で、ITiO膜を制御用電極に用いた実施例19と同一構造の各実施例(実施例21〜27)に係る導波路型光制御素子を作製した。
そして、ITiO膜電極による光導波路の過剰損失を計算した結果、何れも実施例19と同様に低い損失(1.0dB/cm以下)を示した。
[実施例28〜36]
実施例10と同一方法によりチタンを含む酸化インジウム薄膜(実施例28)、実施例11と同一方法によりチタンを含む酸化インジウム薄膜(実施例29)、実施例12と同一方法によりチタンを含む酸化インジウム薄膜(実施例30)、実施例13と同一方法によりチタンを含む酸化インジウム薄膜(実施例31)、実施例14と同一方法によりチタンを含む酸化インジウム薄膜(実施例32)、実施例15と同一方法によりチタンを含む酸化インジウム薄膜(実施例33)、実施例16と同一方法によりチタンを含む酸化インジウム薄膜(実施例34)、実施例17と同一方法によりチタンを含む酸化インジウム薄膜(実施例35)、実施例18と同一方法によりチタンを含む酸化インジウム薄膜(実施例36)をそれぞれ300nmの膜厚だけ形成した以外は実施例19と同様の方法で、ITiO膜を制御用電極に用いた実施例19と同一構造の各実施例(実施例28〜36)に係る導波路型光制御素子を作製した。
そして、ITiO膜電極による光導波路の過剰損失を計算した結果、何れも実施例19と同様に低い損失(1.0dB/cm以下)を示した。
[実施例37〜42]
Ti/In原子数比=0.017組成のチタンを含む酸化インジウム薄膜の厚さを100nm(実施例37)、200nm(実施例38)、500nm(実施例39)、1000nm(実施例40)、2500nm(実施例41)、5000nm(実施例42)とした以外は実施例19と同様の方法で、ITiO膜を制御用電極に用いた実施例19と同一構造の各実施例(実施例37〜42)に係る導波路型光制御素子を作製した。
そして、ITiO膜電極による光導波路の過剰損失を計算した結果、それぞれ0.72dB/cm(実施例37)、0.70dB/cm(実施例38)、0.69dB/cm(実施例39)、0.70dB/cm(実施例40)、0.70dB/cm(実施例41)、0.70dB/cm(実施例42)であり、何れも実施例19と同様に低い損失(1.0dB/cm以下)を示した。
[実施例43]
実施例19と同様の方法により第2図に示した光導波路を形成した後、Ti/In原子数比=0.017(実施例3と同一条件)組成のチタンを含む酸化インジウム薄膜(膜厚300nm)をスパッタリング蒸着法によって形成した。
次に、第4図に示すように上記光導波路31の両脇部に、電極間ギャップ33を振った電極32をリアクティブブ・イオンエッチングによって形成した。尚、電極32の長さはいずれのギャップにおいても60mmである。
次いで、実施例19と同様、得られた導波路型光制御素子に光ファイバーを用いて波長1.55μmのレーザー光をTMモードにてチャネル光導波路端面から導入した。光導波路内を伝搬した後、光導波路端面から出射した光の強度を測定した。
そして、電極間ギャップ(μm)と損失(dB)との関係を示す第5図のグラフ図において、電極間ギャプが20μm以上では、黒丸で示すようにこの実施例に係る導電性酸化物膜電極による損失がほぼ0dB(0.1dB以下)であり、また、電極間ギャップが10μmと狭い場合でもわずか1dBの増加にとどまっていることが確認された。
従って、上記導電性酸化物膜電極を適用することにより電極間ギャップを狭くすることが可能となり、制御用の電圧を著しく低減することができる。
[実施例44]
ITiO膜を制御用電極に用いかつTi膜とAu膜を補助電極に用いた導波路型光制御素子の形成
Ti/In原子数比=0.017(実施例3と同一条件)組成のチタンを含む酸化インジウム薄膜(膜厚300nm)を制御電極(但し、電極間ギャップ10μm)とし、Ti膜(膜厚110nm)とAu膜(膜厚60nm)の積層体を補助電極(但し、電極間ギャップ20μm)とした(すなわちITiO/Ti/Au構造の電極を用いた)以外は実施例19と同様の方法で、ITiO膜を制御用電極に用いた実施例19と同一構造の導波路型光制御素子を作製した。
そして、ITiO膜の制御用電極とTi膜とAu膜の補助電極による光導波路の過剰損失を計算した結果、0.78dB/cmであった。
電極として通常用いられている金属アルミニウムを制御用電極とし補助電極を用いた場合の光導波路の過剰損失(2.1dE/cm)と比べて著しく小さかった。
[実施例45〜50]
Ti/In原子数比=0.017組成のチタンを含む酸化インジウム薄膜の厚さを100nm(実施例45)、200nm(実施例46)、250nm(実施例47)、400nm(実施例48)、500nm(実施例49)、1000nm(実施例50)とした以外は実施例44と同様の方法で、ITiO膜を制御用電極に用いた実施例44と同一構造の各実施例(実施例45〜50)に係る導波路型光制御素子を作製した。
そして、ITiO膜の制御用電極とTi膜とAu膜の補助電極による光導波路の過剰損失を計算した結果、それぞれ16.52dB/cm(実施例45)、0.95dB/cm(実施例46)、0.82dB/cm(実施例47)、0.71dB/cm(実施例48)、0.69dB/cm(実施例49)および0.69dB/cm(実施例50)であり、電極として通常用いられている金属アルミニウムを制御用電極とし補助電極を用いた場合の光導波路の過剰損失(2.1dB/cm)と比べて実施例45を除き著しく小さかった。特に、導電性酸化物膜の膜厚が200nm以上の場合に1.0dB/cm以下の低損失を示した。
[実施例51〜57]
Ti/In原子数比=0.003(実施例1と同一条件)組成のチタンを含む酸化インジウム薄膜(実施例51)、Ti/In原子数比=0.024(実施例4と同一条件)組成のチタンを含む酸化インジウム薄膜(実施例52)、Ti/In原子数比=0.033(実施例5と同一条件)組成のチタンを含む酸化インジウム薄膜(実施例53)、Ti/In原子数比=0.055(実施例6と同一条件)組成のチタンを含む酸化インジウム薄膜(実施例54)、Ti/In原子数比=0.088(実施例7と同一条件)組成のチタンを含む酸化インジウム薄膜(実施例55)、Ti/In原子数比=0.100(実施例8と同一条件)組成のチタンを含む酸化インジウム薄膜(実施例56)、および、Ti/In原子数比=0.120(実施例9と同一条件)組成のチタンを含む酸化インジウム薄膜(実施例57)をそれぞれ300nmの膜厚だけ形成した以外は実施例44と同様の方法で、ITiO膜の制御用電極と金属の補助電極を用いた(すなわちITiO/Ti/Au構造の電極を用いた)実施例44と同一構造の各実施例(実施例51〜57)に係る導波路型光制御素子を作製した。
そして、ITiO膜の制御用電極とTi膜とAu膜の補助電極による光導波路の過剰損失を計算した結果、何れも実施例44と同様に低い損失(1.0dB/cm以下)を示した。
[比較例1〜4](従来のITO膜の例)
スパッタリング蒸着法で、厚さ1.1mmのコーニング7059ガラス基板上に、従来から光通信用の液晶セルに利用されているスズを含みチタンを含まない膜厚200nmの酸化インジウム(ITO)膜を以下の手順で形成し、電気特性と光学特性を測定した。
スパッタリング成膜は、直径6インチの汎用の10質量%SnOを含有するIn焼結体ターゲットを用い、直流電力160Wを投入して、酸素を1〜8%混合したアルゴンガスを用い、スパッタリング蒸着時のガス圧0.6Pa、ターゲットと基板間の距離を60mm、基板温度を200℃で行った。
得られた膜について、四探針法による表面抵抗の測定値と膜厚から抵抗率値を算出した。膜のキャリア濃度と移動度は、ホール効果測定装置(東陽テクニカ社製)を用いて実施例1と同様の条件で測定した。また、分光エリプソメトリー(偏光解析法)で膜の光学定数[屈折率(n)、消衰係数(k)]を実施例1と同様の方法で測定した。
ITO膜の抵抗率はスパッタリング蒸着中の酸素量を増加させることによって増加させることができた。酸化インジウム系の導電性酸化物膜は、スパッタ中の酸素量を増加させることによって膜中の酸素欠損量を減少させキャリア濃度を減少することが可能である。
上記条件の中で、スパッタリング蒸着中の酸素量のみを増加させて、比較例1〜4に係るITO薄膜を作製した。これらの膜のキャリア電子濃度、キャリア電子の移動度、膜の抵抗率、波長1.3μm、1.55μm、1.6μmにおける膜の消衰係数を実施例と同様の条件で測定した。結果を第4表に示す。
Figure 2006004139
「確認」
第4表より以下のことが確認できる。
(1)酸素量1%、3%で作製した比較例1〜2に係るITO膜の抵抗率は低いが、波長1.3μm〜1.6μmにおける膜の消衰係数が第1表〜第3表に記載された実施例に係るITiO膜と比べて著しく高い。
他方、スパッタリング蒸着中の酸素量を6%、8%と増加(比較例3〜4)させることによって波長1.3μm〜1.6μmにおける膜の消衰係数は減少したが、膜の抵抗率は増加してしまい、第1表〜第3表に記載された実施例に係るITiO膜と比べて高かった。このような導電性に劣った材料は光導波路の制御用電極として用いることはできない。
(2)ITO膜はX線回折測定から全て結晶性が良好であった。ホール効果測定から、膜のキャリア電子濃度と、キャリア電子の移動度を測定した。酸素1%で作製した比較例1に係るITO膜は、抵抗率が1.3×10−4Ωcmと低いが、キャリア電子濃度が1.5×1021個/cmと高いため、キャリア電子による赤外光の吸収と反射による影響が大きくて消衰係数が高い。
このような膜を導波路型光制御素子の制御用電極に用いると、導波路内を通過する近赤外光の吸収が大きくて素子の挿入損失が大きくなる。これを回避するため、電極間隔を広くとる必要があり、屈折率変化を誘起させるための高い駆動電圧を印加しなければならなく低駆動電圧の素子が実現できない。
(3)スパッタリング蒸着中の酸素を増やすと、キャリア電子濃度を下げることができる。第4表の酸素量8%において形成した比較例4に係るITO膜のキャリア濃度は5.7×1020個/cmと低く、近赤外域の消衰係数も低下したが抵抗率は著しく増加した。
これは、低抵抗のITOのキャリア電子の移動度が低い上、更に過剰の酸素が膜中に取り込まれると、中性不純物による散乱が増加して移動度が更に低下したからである。このような導電性に劣った材料は光導波路の制御用電極として用いることはできない。
[比較例5]
スパッタリング蒸着法で、厚さ1.1mmのコーニング7059ガラス基板上に、従来から光通信用の液晶セルに利用されている金属Ti膜を、実施例1と同様に以下の手順で形成し、電気特性と光学特性を測定した。
スパッタリング成膜は、直径6インチの金属Tiターゲットを用い、直流電力160Wを投入して、純アルゴンガスを用いて、ガス圧0.6Pa、ターゲットと基板間の距離を60mmにて、基板温度を室温にて行った。
得られた膜について、四探針法による表面抵抗の測定値と膜厚から抵抗率値を算出した。膜のキャリア濃度と移動度は、ホール効果測定装置(東陽テクニカ社製)を用いて実施例1と同様の条件で測定した。また、分光エリプソメトリー(偏光解析法)で膜の光学定数[屈折率(n)、消衰係数(k)]を実施例1と同様の方法で測定した。
Ti膜の抵抗率は50μΩcmと低かったが、消衰係数は、波長1.3μm〜1.55μmにおいて4.2〜4.7であり、第1表に記載された実施例1に係るITiO膜と比べて著しく高かった。
[比較例6、7]
比較例2と比較例3に係るITO膜(膜厚300nm)を制御用電極膜として用いた以外は実施例19と同様の方法で、ITO膜を制御用電極に用いた実施例19と同一構造の比較例6と比較例7に係る導波路型光制御素子を作製した。
そして、ITO膜電極による光導波路の過剰損失を計算した結果、共に8.3dB/cmであり、ITiO膜を電極に用いた実施例19に係る導波路型光制御素子と比べて損失は著しく高かった。
[比較例8]
光導波路を実施例19と同様な方法で形成した後、この上に電極材料としてアルミニウム同様よく使用されているチタンと金の2層構造を持つ金属電極を付加し、実施例43と同様の実験を行った結果、電極間ギャップ(μm)と損失(dB)との関係を示した第5図のグラフ図において、電極間ギャプが20μm以上では、白丸で示すように電極による損失は3.5dBであり、また、電極間ギャップを32μmとしたときに電極による損失がほぼ0dB(0.1dB以下)となった。
従って、電極間ギャップが広いため制御用の電圧が上昇することは免れない。
[比較例9〜10]
Ti/In原子数比=0.002組成のチタンを含む酸化インジウム薄膜(比較例9)と、Ti/In原子数比=0.140組成のチタンを含む酸化インジウム薄膜(比較例10)とした以外は実施例1と同様にしてチタンを含む酸化インジウム膜を作成し、四探針法による表面抵抗の測定値と膜厚から、得られた比較例9と10に係る膜の抵抗率値を算出した。
また、比較例9と10に係る膜のキャリア濃度と移動度は、ホール効果測定装置(東陽テクニカ社製)を用いてファンデルパウ法[上述した東京大学出版会 庄野克房著 物理工学実験2 半導体技術(上)p.105の記載参照]によるホール効果測定および上記抵抗率測定から求めた。また、分光エリプソメトリー(偏光解析法)で酸化インジウム薄膜の光学定数[屈折率(n)、消衰係数(k)]を測定した。これ等の結果を第5表に示す。
Figure 2006004139
第5表中の比較例9と比較例10に係る膜は、本発明で特徴としている導電性酸化物膜の組成範囲(Ti/In原子数比が0.003〜0.120)から外れた組成を有している。比較例9と比較例10に係る膜は、X線回折測定から結晶性に優れた膜であることが確認されたが、抵抗率が9.8×10−4Ωcmで本発明の要件(抵抗率が9.5×10−4Ωcm以下)を満たさず、実施例1〜18の膜と比べて高い。この傾向は、Ti/In原子数比が0.003〜0.120の範囲から外れるほど顕著であり、比抵抗は増加する傾向を示した。
これは、比較例9と比較例10に係る膜の移動度が、実施例1〜18の導電性酸化物膜と比べて低いことが主な要因である。このことから近赤外線制御用の電極として有用な、高移動度で低抵抗の電気特性を有する導電性酸化物膜を得るためには、単にInにTiを含ませるだけでなく、Ti含有量をTi/In原子数比で0.003〜0.120の割合で存在させる必要がある。
[比較例11〜12]
実施例3で用いたターゲットを用い、スパッタリング蒸着中の酸素量のみを増減(0.1%〜5%)させた以外は実施例3と同様にして、チタンを含む酸化インジウム薄膜を形成した。
そして、キャリア電子濃度、キャリア電子の移動度、膜の抵抗率、波長1.3μm、1.55μm、1.6μmにおける膜の消衰係数を同様の条件で測定した。結果を第6表に示す。
Figure 2006004139
これらは同一のターゲットから作製したものであり、組成分析をICP(誘導結合プラズマ)発光分光測定で測定したところ、Ti/In原子数比で0.015〜0.019であった。
しかし、比較例11の膜は、過剰な酸素欠陥が導入されたことによりキャリア電子濃度が6.0×1020個/cmとなり、本発明の要件(キャリア電子濃度が5.5×1020個/cm以下)を満たさず、実施例1〜18の膜と比べて高く近赤外域の消衰係数が高い。このような膜を近赤外光の制御用の電極に用いると損失が大きいため高性能の導波路型光制御素子を製造できない。
また、比較例12の膜はその抵抗率が1.1×10−3Ωcmで本発明の要件(抵抗率が9.5×10−4Ωcm以下)を満たさず、実施例1〜18の膜と比べて高い。これは膜中に酸素が過剰に取り込まれて中性不純物が多く生成され移動度が低下したからである。このような導電性に劣った膜は、導波路型光制御素子の制御用電極として利用することができない。
本発明によれば、DCドリフトが抑制され、かつ、低電圧駆動、任意の入射偏波に対して低損失の導波路型光制御素子を提供することが可能となる。
従って、赤外域の光ファイバー通信で利用可能な、損失が極めて小さく、かつ、低電圧駆動の高性能の光変調器や電気光学光スイッチ、偏波制御デバイス、可変光減衰器に適用するのに適している。

Claims (8)

  1. 電気光学効果若しくは熱光学効果を有する絶縁体材料から成る光導波路と、光導波路に接してまたは近接して設けられた制御用電極とを有し、上記光導波路の伝搬損失が波長1.3〜1.6μmにおいて1dB/cm以下である導波路型光制御素子において、
    そのキャリア電子濃度が5.5×1020個/cm以下かつ抵抗率が9.5×10−4Ωcm以下である導電性酸化物膜により上記制御用電極が構成されると共に、導電性酸化物膜の波長1.55μmにおける光波の消衰係数が0.240以下であることを特徴とする導波路型光制御素子。
  2. 上記導電性酸化物膜が、酸化インジウムを主成分とし、チタン/インジウムの原子数比で0.003〜0.120の割合でチタン元素が含まれている結晶性導電性酸化物膜であることを特徴とする請求の範囲第1項記載の導波路型光制御素子。
  3. 導電性酸化物膜の厚さが100nm〜5μmであることを特徴とする請求の範囲第1項または第2項記載の導波路型光制御素子。
  4. 上記導電性酸化物膜の表面に補助電極として金属の単層膜若しくは多層膜を形成したことを特徴とする請求の範囲第1項または第2項記載の導波路型光制御素子。
  5. 請求の範囲第1項または第2項記載の導波路型光制御素子の製造方法において、
    電気光学効果若しくは熱光学効果を有する絶縁体材料から成る光導波路の上または近傍に制御用電極として導電性酸化物膜を成膜する際、インジウムとチタンを含有する酸化物焼結体を原料として用いたスパッタリング蒸着法あるいはイオンプレーティング法により上記導電性酸化物膜を成膜することを特徴とする導波路型光制御素子の製造方法。
  6. 制御用電極として導電性酸化物膜をスパッタリング蒸着法により成膜する際、上記光導波路の基板とターゲットとの間の距離を50〜80mmとし、スパッタリング成膜中における成膜ガス中の酸素量をアルゴンガス量に対して0.25〜4%とし、かつ、成膜ガス圧を0.3〜1.0Paとして上記基板温度を140〜350℃とすることを特徴とする請求の範囲第5項記載の導波路型光制御素子の製造方法。
  7. 制御用電極としての導電性酸化物膜を形成するに際し、上記光導波路の基板とターゲットとの間の距離を50〜80mmとし、スパッタリング成膜中における成膜ガス中の酸素量をアルゴンガス量に対して0.25〜4%とし、かつ、成膜ガス圧を0.3〜1.0Paとして上記基板温度を140℃未満とした条件下でスパッタリング法蒸着法により酸化物膜を形成した後、この酸化物膜を150〜350℃にて加熱処理することを特徴とする請求の範囲第5項記載の導波路型光制御素子の製造方法。
  8. 上記酸化物膜の加熱処理が真空中あるいは不活性ガス中で行われることを特徴とする請求の範囲第7項記載の導波路型光制御素子の製造方法。
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