JPWO2005115971A1 - 放射性チロシン誘導体、その製造方法、放射性チロシン誘導体からなるポジトロンイメージング用標識剤及び腫瘍の悪性度評価薬剤並びに腫瘍の検出方法 - Google Patents

放射性チロシン誘導体、その製造方法、放射性チロシン誘導体からなるポジトロンイメージング用標識剤及び腫瘍の悪性度評価薬剤並びに腫瘍の検出方法 Download PDF

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Abstract

式(I)で表される放射性チロシン誘導体又はその薬学的に許容可能な塩。【化1】(式中、R1は、−11CH3、−11CH2CH3、−CH218F及び−CH2CH2CH218Fからなる群より選ばれる基を表す。)

Description

本発明は、放射性チロシン誘導体、その製造方法、放射性チロシン誘導体からなるポジトロンイメージング用標識剤及び腫瘍の悪性度評価薬剤並びに腫瘍の検出方法に関する。
PET(ポジトロン・エミッション・トモグラフィー)による腫瘍診断は、腫瘍組織が正常組織と比較して急速に増殖しているという現象を利用している。例えば、現在、臨床上最も広く用いられている[18F]−2−フルオロ−2−デオキシ−D−グルコース(以下、[18F]FDGと略す。)はブドウ糖の類似体であり、[18F]FDGの局在がエネルギー代謝を反映することを利用している。また、天然型アミノ酸の誘導体であるL−[11C]メチオニン(以下、L−[11C]Metと略す。)もPETによる腫瘍診断に用いられており、L−[11C]Metの局在がアミノ酸代謝を反映することを利用している(例えば、非特許文献1参照)。
ザ・ジャーナル・オブ・ニュークリアー・メディスン(The Journal of Nuclear Medicine)1991年、32巻、6号、p1211−1218 ザ・ジャーナル・オブ・ニュークリアー・メディスン(The Journal of Nuclear Medicine)1999年、40巻、1号、p205−212 ザ・ジャーナル・オブ・ニュークリアー・メディスン(The Journal of Nuclear Medicine)1999年、40巻、8号、p1367−1373
しかし、[18F]FDGは炎症部位等にも集積することから、腫瘍への特異性は必ずしも高くない。また、放射線治療の効果判定に[18F]FDGを用いるには、治療直後は炎症によるものと考えられる一過性の[18F]FDGの上昇を示すため、治療後1ヶ月以上経過してからでないと使用できない。したがって、[18F]FDGは治療効果の判定に用いるのには適していない。一方、L−[11C]Metは、脳腫瘍などの一部の腫瘍診断には有効であるものの、腫瘍自体に対する特異性は低いという問題点がある。
したがって、本発明の目的は、腫瘍に対する特異性の高いポジトロンイメージング用標識化合物及び早期に治療効果を判定することのできる標識化合物を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明は、式(I)で表される放射性チロシン誘導体又はその薬学的に許容可能な塩を提供する。
Figure 2005115971
(式中、Rは、−11CH、−11CHCH、−CH 18F及び−CHCHCH 18Fからなる群より選ばれる基を表す。)
ここで、Rが−11CHである化合物は、O−[11C]メチル−D−チロシン(以下、D−[11C]MTと略す。)であり、Rが−CH 18Fである化合物はO−[18F]フルオロメチル−D−チロシン(以下、D−[18F]FMTと略す。)である。また、Rが−11CHCHである化合物は、O−[11C]エチル−D−チロシン(以下、D−[11C]ETと略す。)であり、Rが−CHCHCH 18Fである化合物はO−[18F]フルオロプロピル−D−チロシン(以下、D−[18F]FPTと略す。)である。
これらの放射性チロシン誘導体に類似した化合物として、式(III)で表されるO−[18F]フルオロエチル−D−チロシン(以下、D−[18F]FETと略す。)が既に知られている(例えば、非特許文献2及び3参照)。
Figure 2005115971
しかしながら、D−[18F]FETは血液脳関門の透過性が低いことや、ガン細胞への取り込みが少なく腫瘍組織に集積しないことから、腫瘍のイメージングには使えないと考えられていた(例えば、非特許文献2及び3参照)。
しかしながら、本発明者らは、式(I)で表される放射性チロシン誘導体又はその薬学的に許容可能な塩は、非特許文献2及び3に記載されている挙動とは全く異なって、腫瘍組織に充分集積し、しかも腫瘍組織に対して特異的に集積することを見出し、PET用標識化合物として使用できることを明らかにした。
そして、このように優れた特性を有する式(I)で表される放射性チロシン誘導体又はその薬学的に許容可能な塩は、D−チロシンをアルキル化又はフルオロアルキル化することにより、効率よく確実に得ることが可能である。
本発明は、また、式(II)で表される放射性チロシン誘導体又はその薬学的に許容可能な塩からなるポジトロンイメージング用標識剤を提供する。
Figure 2005115971
(式中、Rは、−11CH、−11CHCH、−CH 18F、−CHCH 18F及び−CHCHCH 18Fからなる群より選ばれるいずれかの基を表す。)
式(I)で表される放射性チロシン誘導体のみならず、式(II)で表される放射性チロシン誘導体も、腫瘍組織に充分集積し、しかも腫瘍組織に対して特異的に集積するため、PET用標識化合物として使用できる。
本発明は、また、式(II)で表される放射性チロシン誘導体又はその薬学的に許容可能な塩からなる腫瘍の悪性度評価薬剤を提供する。式(II)で表される放射性チロシン誘導体又はその薬学的に許容可能な塩は、腫瘍の増殖速度に応じて腫瘍への集積度が異なるため、腫瘍の悪性度評価薬剤としても使用できる。式(II)で表される放射性チロシン誘導体は[18F]FDGと異なり、炎症の影響を受けにくいため、治療後速やかに治療効果の判定に用いることが可能である。
本発明は、さらに、式(II)で表される放射性チロシン誘導体又はその薬学的に許容可能な塩を被検体に投与する工程と、被検体の組織ごとの放射線量を測定する工程と、組織ごとの放射線量の比較により相対的に放射線量の大きい組織を腫瘍が形成された組織として検出する検出工程と、を備える腫瘍の検出方法を提供する。式(II)で表される放射性チロシン誘導体又はその薬学的に許容可能な塩は正常組織には集積しにくく、腫瘍組織に集積しやすいことを利用して、腫瘍の検出を行うことが可能である。検出工程において、血液の放射線量を基準として相対的に放射線量の大きい組織を腫瘍が形成された組織として検出することが好ましい。血液の放射線量を基準とすることにより、正常組織と腫瘍組織の差異を明確にできるからである。
腫瘍に対する特異性の高いポジトロンイメージング用標識剤及び早期に治療効果を判定することのできる標識剤として有用な化合物を提供することができる。
L−及びD−[11C]Metの各臓器における集積量を表した図である。(a)では集積量をSUVで表し、(b)では集積量をSUV(臓器)/SUV(血液)で表している。 L−及びD−[11C]MTの各臓器における集積量を表した図である。(a)では集積量をSUVで表し、(b)では集積量をSUV(臓器)/SUV(血液)で表している。 L−及びD−[18F]FMTの各臓器における集積量を表した図である。(a)では集積量をSUVで表し、(b)では集積量をSUV(臓器)/SUV(血液)で表している。 L−及びD−[11C]Metを投与した場合のプラナー計測の結果を表した図である。 L−及びD−[11C]MTを投与した場合のプラナー計測の結果を表した図である。 L−及びD−[18F]FMTを投与した場合のプラナー計測の結果を表した図である。 HeLa移植後の経過日数と腫瘍体積の関係を表した図である。 各化合物の血液及び腫瘍における集積量(SUV)を表した図である。 各化合物の腫瘍における集積量(SUV(臓器)/SUV(血液))を表した図である。 L−及びD−[11C]ETの各臓器における集積量を表した図である。集積量をSUV(臓器)/SUV(血液)で表している。 L−及びD−[18F]FETの各臓器における集積量を表した図である。集積量をSUV(臓器)/SUV(血液)で表している。 L−及びD−[18F]FPTの各臓器における集積量を表した図である。集積量をSUV(臓器)/SUV(血液)で表している。 各化合物の腫瘍における集積量(SUV(臓器)/SUV(血液))を表した図である。
符号の説明
1…腫瘍部位。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
まず、本発明の放射性チロシン誘導体について説明する。本発明の放射性チロシン誘導体は式(I)で表される。これらの誘導体は、腫瘍組織に充分集積し、しかも腫瘍組織に対して特異的に集積することからポジトロンイメージング用標識剤として有用である。また、これらの誘導体は、腫瘍の増殖速度に応じて腫瘍への集積度が変化することから、腫瘍の悪性度評価薬剤としても有用である。
式(I)で表される化合物は、D−チロシンのアルキル化又はフルオロアルキル化により合成することができる。以下に、D−[11C]MT及びD−[18F]FMTを例に挙げて合成方法について説明する。
D−[11C]MTは、D−チロシンのメチル化により合成することが可能である。メチル化に用いる試薬としては、例えば、[11C]塩化メチル、[11C]臭化メチル、[11C]ヨウ化メチル等の[11C]ハロゲン化メチルや[11C]メチルトリフレート等が挙げられる。その中でも、[11C]ヨウ化メチル及び[11C]メチルトリフレートは、反応性が高いため短時間で収率よくD−[11C]MTを合成できるため、特に好ましい。これらの試薬は、公知の方法(例えば、Journal of Labelled Compounds and Radiopharmaceuticals, Vol. 46, p555-566 (2003)に記載の方法)により合成することが可能である。
反応溶媒は、出発原料と反応せずに溶解するものであれば特に限定されないが、例えば、ジメチルスルホキシド等を用いることが可能である。反応終了後、粗生成物を逆相HPLCにより精製しD−[11C]MTを得ることができる。
D−[18F]FMTは、D−チロシンのフルオロメチル化により合成することが可能である。フルオロメチル化に用いる試薬としては、例えば、[18F]FCHBrや[18F]フルオロメチルトリフレート等が挙げられる。これらの試薬は反応性が高いために短時間で効率よくD−[18F]FMTを合成できる。これらの試薬は、公知の方法(例えば、Journal of Labelled Compounds and Radiopharmaceuticals, Vol. 46, p555-566 (2003)に記載の方法)により合成することが可能である。
反応溶媒は、出発原料と反応せずに溶解するものであれば特に限定されないが、例えば、ジメチルスルホキシド等を用いることが可能である。反応終了後、粗生成物を逆相HPLCにより精製しD−[18F]FMTを得ることができる。
同様に、[11C]ヨウ化エチル等により、D−チロシンをエチル化することにより、D−[11C]ETを合成することができる。また、[18F]FCHCHCHOTs(Ts:p−トルエンスルホニル基)等により、D−チロシンをフルオロプロピル化することにより、D−[18F]FPTを合成することができる。
本発明の放射性チロシン誘導体の薬学的に許容可能な塩としては、例えば、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩など)、カルシウム塩、アミン塩(ジエチルアミン塩など)などが挙げられる。また、塩酸塩、臭化水素塩、硫酸塩及び重硫酸塩、リン酸塩及びリン酸水素塩、酢酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩なども挙げられる。
次に本発明のポジトロンイメージング用標識剤について説明する。本発明のポジトロンイメージング用標識剤は、式(II)で表される放射性チロシン誘導体又はその薬学的に許容可能な塩からなる。これらの誘導体は、腫瘍組織に充分集積し、しかも腫瘍組織に対して特異的に集積することからポジトロンイメージング標識剤として有用である。
式(II)で表される放射性チロシン誘導体の合成は、D−[11C]MT及びD−[18F]FMTの合成方法に準じた方法で行うことが可能である。また、The Journal of Nuclear Medicine, Vol. 40, No. 1, pp205-212, 1999に記載の方法を利用することも可能である。
薬学的に許容可能な塩としては、例えば、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩など)、カルシウム塩、アミン塩(ジエチルアミン塩など)などが挙げられる。また、塩酸塩、臭化水素塩、硫酸塩及び重硫酸塩、リン酸塩及びリン酸水素塩、酢酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩なども挙げられる。
式(II)で表される放射性チロシン誘導体を用いたPET計測は、例えば、式(II)で表される放射性チロシン誘導体を被験者に投与し、PETシステム(例えば、浜松ホトニクス(株)製、PPIS−4800)を用いてPET計測を行うことができる。PETシステムにおいては、投与された放射性チロシン誘導体が有する放出核種(11C又は18F)から放出された陽電子と周囲の物質構成電子との結合により放出される消滅光子、すなわちγ線が検出される。さらに、必要に応じて、得られた計測データを画像再構成ソフトウェアにより処理して、イメージ画像を得ることも可能である。
式(II)で表される放射性チロシン誘導体は、腫瘍組織に集積する一方で正常組織への集積は低いため、γ線量を測定することにより又はイメージ画像を解析することにより、式(II)で表される放射性チロシン誘導体が集積している場所を特定でき、そこに腫瘍が形成されていると判定できる。
次に本発明の腫瘍の悪性度評価薬剤について説明する。本発明の腫瘍の悪性度評価薬剤は、式(II)で表される放射性チロシン誘導体又はその薬学的に許容可能な塩からなる。これらの誘導体は、腫瘍の増殖速度に応じて腫瘍への集積度が異なることから、腫瘍の悪性度評価薬剤としても有用である。
式(II)で表される放射性チロシン誘導体を用いた腫瘍の悪性度の評価は次の方法により行うことが可能である。式(II)で表される放射性チロシン誘導体を被験者に投与し、前述の方法と同様の方法によりPET計測を行う。腫瘍部位のγ線量又はイメージ画像を解析することにより、その腫瘍の悪性度を評価することが可能である。すなわち、式(II)で表される放射性チロシン誘導体は、増殖速度の速い腫瘍組織に対して集積しやすい性質を有しているため、γ線量の大きな場合には悪性度の高い(増殖速度の速い)と判定できる。
本発明の腫瘍の悪性度の評価薬剤を用いたPET計測を、放射線治療などの治療の前後で行うことにより、治療効果を判定することが可能である。すなわち、腫瘍部位のγ線量が治療後に低下していれば、腫瘍の増殖速度を抑制でき充分な治療効果があったと判定することができる。
最後に、本発明の腫瘍の検出方法について説明する。本発明の腫瘍の検出方法は、式(II)で表される放射性チロシン誘導体又はその薬学的に許容可能な塩を被検体に投与する工程と、被検体の組織ごとの放射線量を測定する工程と、組織ごとの放射線量の比較により相対的に放射線量の大きい組織を腫瘍が形成された組織として検出する検出工程と、を備える。
腫瘍の検出を行うには、まず、式(II)で表される放射性チロシン誘導体を被検体に投与する。投与方法は、通常、静脈内投与である。次に、被検体の組織ごとの放射線量を測定する。放射線量の測定は、既述のPET計測により行うことが可能である。次に組織ごとの放射線量の比較により相対的に放射線量の大きい組織を腫瘍が形成された組織として検出する。比較には、SUV(Standardized Uptake Value)、特に、血液の放射線量を基準とした相対的な値であるSUV(組織)/SUV(血液)を用いるのが好ましい。また、イメージ画像から相対的に放射線量の大きい組織を同定してもよい。
以下、実施例を挙げて本発明について詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1:D−[11C]MTの合成)
まず、[11C]ヨウ化メチルを以下の方法で合成した。サイクロトロンを用いて、ターゲットに充填した窒素ガスにプロトンビーム(18MeV,20μA)を照射して[11C]炭酸ガスを生成させた。生成した[11C]炭酸ガスを冷却した0.1M水素化アルミニウムリチウムのテトラヒドロフラン溶液(0.5mL)に吹き込み、[11C]炭酸ガスを[11C]メタノールに還元した。この溶液に0.5mLのヨウ化水素酸を加え、[11C]ヨウ化メチルを生成させた。
D−チロシン(1mg)に10%水酸化ナトリウム水溶液(4.41μl)を加え、更にジメチルスルホキシド(0.3mL)を加えて原料溶液とした。上記方法により生成させた[11C]ヨウ化メチルを吹き込んで捕集した後、反応容器を密閉して80℃で3分間反応を行った。粗生成物に対して以下の条件でHPLCを行い、保持時間8分の放射能ピーク画分を分取し、減圧下に濃縮を行ってD−[11C]MTを精製した。
HPLC条件
カラム YMC−Pack ODS−A(10×250mm)((株)ワイエムシー)
移動相 エタノール:酢酸:水=100:25:875
流速 4mL/min
検出波長 280nm。
濃縮して得られた残渣を生理食塩水3mLに再溶解し、0.22μmのメンブランフィルターで滅菌ろ過することにより、2〜5GBqのD−[11C]MTの生理食塩水溶液が得られた(放射化学的純度97%以上)。
(実施例2:D−[18F]FMTの合成)
まず、[18F]FCHBrをRadiation and Isotopes, Vol. 57, pp347-352, 2002に記載の方法と同様の方法により合成した。
D−チロシン(1mg)に10%水酸化ナトリウム水溶液(4.41μl)を加え、更にジメチルスルホキシド(0.3mL)を加えて原料溶液とした。上記方法により生成させた[18F]FCHBrを吹き込んで捕集した後、反応容器を密閉して80℃で5分間反応を行った。粗生成物に対して以下の条件でHPLCを行い、保持時間9分の放射能ピーク画分を分取し、減圧下に濃縮を行ってD−[18F]FMTを精製した。
HPLC条件
カラム YMC−Pack ODS−A(10×250mm)((株)ワイエムシー)
移動相 エタノール:酢酸:水=100:25:875
流速 4mL/min
検出波長 280nm。
濃縮して得られた残渣を生理食塩水3mLに再溶解し、0.22μmのメンブランフィルターで滅菌ろ過することにより、1〜3GBqのD−[18F]FMTの生理食塩水溶液が得られた(放射化学的純度97%以上)。
(比較例1:O−[11C]メチル−L−チロシン(L−[11C]MT)の合成)
原料としてD−チロシンの代わりにL−チロシンを用いて、実施例1に記載の方法と同様の方法でL−[11C]MTの合成を行った。
(比較例2:O−[18F]フルオロメチル−L−チロシン(D−[18F]FMT)の合成)
原料としてD−チロシンの代わりにL−チロシンを用いて、実施例1に記載の方法と同様の方法でD−[18F]FMTの合成を行った。
(比較例3〜7:その他の既知のPET標識化合物の合成)
L−及びD−[11C]Met(比較例3及び4)は、The Journal of Nuclear Medicine, Vol. 28 pp1037-1040, 1987)に記載の方法で合成した。[18F]FDG(比較例5)は、The Journal of Nuclear Medicine, Vol. 27 pp235-238, 1986に記載の方法で合成した。[11C]コリン(比較例6)は、The Journal of Nuclear Medicine, Vol. 38 pp842-847, 1997に記載の方法で合成した。3’−デオキシ−3’−[18F]フルオロチミジン([18F]FLT;比較例7)は、Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry, Vol. 243 pp843-846, 2000に記載の方法で合成した。
(試験例1:担ガンマウスにおける臓器分布計測)
ヒト子宮頸ガン細胞であるHeLa(Cell Strain:15S3D)5×10個を7週齢のヌードマウス(BALB/cA Jcl−nu、日本クレア)の大腿皮下に移植した。移植2週間後(9週齢)に実施例1〜2の化合物及び比較例1〜7の化合物(実施例1並びに比較例1、3、4及び6は10MBq、実施例2並びに比較例2、5及び7は1MBq)を尾静脈より投与した。投与1時間後にマウスを断頭して、各臓器(血液、心臓、肺、肝臓、腎臓、脾臓、筋肉、骨、小腸、消化管、膵臓、脳及び腫瘍)を採取した。各臓器の放射能をオートガンマカウンターで測定し、各臓器の重量を測定し、投与化合物の集積量の指標であるSUV(Standardized Uptake Value)を求めた。さらに、集積量を補正するために、各臓器のSUVを血液のSUVで除したSUV(臓器)/SUV(血液)を求めた。得られた結果を図1〜3に示す。
図1は、L−及びD−[11C]Metの各臓器における集積量を表した図である。図1(a)では集積量をSUVで表し、図1(b)では集積量をSUV(臓器)/SUV(血液)で表している。図1(b)に示した結果から分かるように、L−及びD−[11C]Metは腫瘍への集積は認められるものの、正常組織(特に、肝臓、腎臓、脾臓、腸及び膵臓)への集積も高かった。したがって、腫瘍への特異性が低いことから、L−及びD−[11C]Metは腫瘍診断には不向きであることが明らかとなった。
図2は、L−及びD−[11C]MTの各臓器における集積量を表した図である。図2(a)では集積量をSUVで表し、図2(b)では集積量をSUV(臓器)/SUV(血液)で表している。図2(b)に示した結果から分かるように、L−及びD−[11C]MTは腫瘍への集積が認められる一方で膵臓以外の正常組織への集積は低く、腫瘍に特異的に集積した。さらに、D体はL体に比べて、腫瘍のSUV(臓器)/SUV(血液)は高く、また、SUV(臓器)/SUV(血液)で表した膵臓への集積の、腫瘍への集積に対する比は、D−体の方がL−体よりも低いことが分かった。したがって、D体はL体に比べて優れた腫瘍診断薬として利用できることが示唆された。
図3は、L−及びD−[18F]FMTの各臓器における集積量を表した図である。図3(a)では集積量をSUVで表し、図3(b)では集積量をSUV(臓器)/SUV(血液)で表している。図3(b)に示した結果から分かるように、L−及びD−[11C]MTは腫瘍への集積が認められる一方で膵臓以外の正常組織への集積は低く、腫瘍に特異的に集積した。さらに、D体はL体に比べて、腫瘍のSUV(臓器)/SUV(血液)は高く腫瘍に対する特異性が特に高いことが分かった。したがって、D体はL体に比べて優れた腫瘍診断薬として利用できることが示唆された。
(試験例2:担ガンマウスにおけるプラナー計測)
試験例1と同様にHeLaを移植したヌードマウス(BALB/cA Jcl−nu)に実施例1〜2の化合物及び比較例1〜7の化合物(2.5MBq)を尾静脈より投与した。計測は、プラナーイメージングシステム(浜松ホトニクス(株)製、PPIS−4800)を用い、化合物の投与直後から1分×60フレームで60分間実施して、10フレームずつ積算した画像で表した。各投与化合物のプラナー計測により得られた結果を図4〜6に示す。
図4は、L−及びD−[11C]Metを投与した場合のプラナー計測の結果を表した図である。L体及びD体のいずれも腫瘍部位への集積が確認されたものの、正常組織への集積の方が著しく強く、腫瘍のイメージングに適していないことが明らかとなった。
図5は、L−及びD−[11C]MTを投与した場合のプラナー計測の結果を表した図である。L体及びD体のいずれも腫瘍部位への集積が確認された。また、D体はL体に比べて腫瘍に特異的に集積していることも確認された。
図6は、L−及びD−[18F]FMTを投与した場合のプラナー計測の結果を表した図である。L体及びD体のいずれも腫瘍部位への集積が確認された。また、D体はL体に比べて腫瘍に特異的に集積していることも確認された。
(試験例3:腫瘍の増殖速度とポジトロンイメージング用標識化合物の集積度の関係)
細胞増殖速度の異なるHeLa細胞をヌードマウス(BALB/cA Jcl−nu)に移植し、実施例1〜2の化合物及び比較例1〜7の化合物を投与した場合の腫瘍への集積を調べた。HeLa−K(Cell Strain:15S3D)は5×10個、HeLa−B(ヒューマンサイエンス研究資源バンク:JCRB9004)は2×10個を、メスBALB/cA Jcl−nuヌードマウス(HeLa−K:7週齢、HeLa−B:5週齢)の大腿皮下に移植した。HeLa−K移植マウスは移植2週間後、HeLa−Bは4週間後に、また、それぞれ9週齢となったところで実験に用いた。担ガンマウスにおける各標識化合物の集積と腫瘍組織の増殖速度の関係を見るために、腫瘍の大きさを連日計測した。倍加時間(doubling time:DT)の計算は、Schwartzの提案した計算式:DT=t×log2(V1/V0)にて算出した。なおtは腫瘍体積がV0(mm)からV1(mm)になるまでの日数を示し、体積(mm)は、腫瘍の長径から、1/2×length(mm)×width(mm)で計算した。図7はHeLa移植後の経過日数と腫瘍体積の関係を表すグラフである。図7から分かるように、HeLa−Kは増殖速度の速いガン細胞であり、HeLa−Bは増殖速度の遅いガン細胞である。また、図7から、HeLa−K及びHeLa−Bの倍加時間を算出したところ、それぞれ4.4日及び11.0日であった。
HeLa−K及びHeLa−Bを移植したヌードマウスに、[18F]FDG、[11C]コリン、[18F]FLT、L−及びD−[11C]Met並びにL−及びD−[11C]MTを尾静脈より投与し([18F]FDG及び[18F]FLTは1MBq、[11C]コリン、L−及びD−[11C]Met並びにL−及びD−[11C]MTは10MBq)、投与1時間後にマウスを断頭して、血液及び腫瘍を採取した。血液及び腫瘍の放射能をオートガンマカウンターで測定し、重量を測定し、SUVを求めた。さらに、集積量を補正するために、腫瘍のSUVを血液のSUVで除したSUV(臓器)/SUV(血液)を求めた。得られた結果を図8及び9に示す。
図8及び9は、各化合物の血液及び腫瘍における集積量を表した図である。図8では集積量をSUVで表し、図9では集積量をSUV(臓器)/SUV(血液)で表している。図9に示した結果から分かるように、D−[11C]MTの集積は増殖の早いHeLa−Kにより多く集積した。増殖速度の違いによる集積度の違いは、L−[11C]MTやD−[11C]Metと比較して顕著に大きかった。なお、[18F]FDGやL−[11C]Metでは増殖速度の違いによる集積度の違いは検出されなかった。
集積度の違いにより増殖速度の違いを検出できるということは、治療効果が現れて腫瘍の増殖速度が低下した際にその変化を捉えることができることを示唆している。したがって、D−[11C]MTは既存の標識化合物と比べて、腫瘍の治療効果判定に優れていると考えられる。
(実施例3:D−[11C]ETの合成)
まず、[11C]ヨウ化エチルをApplied Radiation and Isotopes, Vol. 50, pp693-697, 1999に記載の方法と同様の方法により合成した。
D−チロシン(1mg)に10%水酸化ナトリウム水溶液(4.41μl)を加え、更にジメチルスルホキシド(0.3mL)を加えて原料溶液とした。上記方法により生成させた[11C]ヨウ化エチルを吹き込んで捕集した後、反応容器を密閉して80℃で3分間反応を行った。粗生成物に対して以下の条件でHPLCを行い、保持時間13分の放射能ピーク画分を分取し、減圧下に濃縮を行ってD−[11C]ETを精製した。
HPLC条件
カラム YMC−Pack ODS−A(10×250mm)((株)ワイエムシー)
移動相 エタノール:酢酸:水=120:25:855
流速 4mL/min
検出波長 280nm。
濃縮して得られた残渣を生理食塩水3mLに再溶解し、0.22μmのメンブランフィルターで滅菌ろ過することにより、0.8〜1.5GBqのD−[11C]ETの生理食塩水溶液が得られた(放射化学的純度99%以上)。
(実施例4:D−[18F]FETの合成)
まず、[18F]FCHCHOTsをSynapse, Vol. 54, pp37-45, 2004に記載の方法と同様の方法により合成した。
D−チロシン(3mg)に10%水酸化ナトリウム水溶液(13.2μl)を加え、更にジメチルスルホキシド(0.3mL)を加えて原料溶液とした。上記方法により生成させた[18F]FCHCHOTsに原料溶液を加え、反応容器を密閉して125℃で10分間反応を行った。粗生成物に対して以下の条件でHPLCを行い、保持時間9分の放射能ピーク画分を分取し、減圧下に濃縮を行ってD−[18F]FETを精製した。
HPLC条件
カラム YMC−Pack ODS−A(10×250mm)((株)ワイエムシー)
移動相 エタノール:酢酸:水=100:25:875
流速 4mL/min
検出波長 280nm。
濃縮して得られた残渣を生理食塩水3mLに再溶解し、0.22μmのメンブランフィルターで滅菌ろ過することにより、0.5〜2GBqのD−[18F]FETの生理食塩水溶液が得られた(放射化学的純度99%以上)。
(実施例5:D−[18F]FPTの合成)
まず、[18F]FCHCHCHOTsを、原料にTsOCHCHCHOTsを用い、Synapse, Vol. 54, pp37-45, 2004に記載の方法と同様の方法により合成した。
D−チロシン(3mg)に10%水酸化ナトリウム水溶液(13.2μl)を加え、更にジメチルスルホキシド(0.3mL)を加えて原料溶液とした。上記方法により生成させた[18F]FCHCHCHOTsに原料溶液を加え、反応容器を密閉して125℃で10分間反応を行った。粗生成物に対して以下の条件でHPLCを行い、保持時間17分の放射能ピーク画分を分取し、減圧下に濃縮を行ってD−[18F]FPTを精製した。
HPLC条件
カラム YMC−Pack ODS−A(10×250mm)((株)ワイエムシー)
移動相 エタノール:酢酸:水=120:25:855
流速 4mL/min
検出波長 280nm。
濃縮して得られた残渣を生理食塩水3mLに再溶解し、0.22μmのメンブランフィルターで滅菌ろ過することにより、0.2〜0.6GBqのD−[18F]FPTの生理食塩水溶液が得られた(放射化学的純度99%以上)。
(比較例8:O−[11C]エチル−L−チロシン(L−[11C]ET)の合成)
原料としてD−チロシンの代わりにL−チロシンを用いて、実施例3に記載の方法と同様の方法でL−[11C]ETの合成を行った。
(比較例9:O−[18F]フルオロエチル−L−チロシン(L−[18F]FET)の合成)
原料としてD−チロシンの代わりにL−チロシンを用いて、実施例4に記載の方法と同様の方法でL−[18F]FETの合成を行った。
(比較例10:O−[18F]フルオロプロピル−L−チロシン(L−[18F]FPT)の合成)
原料としてD−チロシンの代わりにL−チロシンを用いて、実施例5に記載の方法と同様の方法でL−[18F]FPTの合成を行った。
(試験例4:担ガンマウスにおける臓器分布計測)
試験例1と同様の方法により、実施例3〜5及び比較例8〜10の化合物の臓器分布を計測した。得られた結果を図10〜12に示す。
図10は、L−及びD−[11C]ETの各臓器における集積量を表した図である。集積量をSUV(臓器)/SUV(血液)で表している。この結果から分かるように、L−及びD−[11C]MTは腫瘍への集積が認められる一方で膵臓以外の正常組織への集積は低く、腫瘍に特異的に集積した。さらに、D体の腫瘍のSUV(臓器)/SUV(血液)は、L体と比べて同程度であり、また、SUV(臓器)/SUV(血液)で表した膵臓への集積の、腫瘍への集積に対する比は、D−体の方がL−体よりも低いことが分かった。したがって、D体はL体に比べて優れた腫瘍診断薬として利用できることが示唆された。
図11は、L−及びD−[18F]FETの各臓器における集積量を表した図である。集積量をSUV(臓器)/SUV(血液)で表している。この結果から分かるように、L−及びD−[18F]FETは腫瘍への集積が認められる一方で膵臓以外の正常組織への集積は低く、腫瘍に特異的に集積した。さらに、D体はL体に比べて、腫瘍のSUV(臓器)/SUV(血液)は高く腫瘍に対する特異性が特に高いことが分かった。また、SUV(臓器)/SUV(血液)で表した膵臓への集積の、腫瘍への集積に対する比は、D−体の方がL−体よりも低いことが分かった。したがって、D体はL体に比べて優れた腫瘍診断薬として利用できることが示唆された。
図12は、L−及びD−[18F]FPTの各臓器における集積量を表した図である。集積量をSUV(臓器)/SUV(血液)で表している。この結果から分かるように、L−及びD−[18F]FPTは腫瘍への集積が認められる一方で膵臓及び骨以外の正常組織への集積は低く、腫瘍に特異的に集積した。さらに、D体の腫瘍のSUV(臓器)/SUV(血液)は、L体と比べて同程度であり、また、SUV(臓器)/SUV(血液)で表した膵臓への集積の、腫瘍への集積に対する比は、D−体の方がL−体よりも低いことが分かった。したがって、D体はL体に比べて優れた腫瘍診断薬として利用できることが示唆された。
(試験例5:腫瘍の増殖速度とポジトロンイメージング用標識化合物の集積度の関係)
HeLa−K及びHeLa−Bを移植したヌードマウスに、L−及びD−[11C]ET、L−及びD−[18F]FMT、L−及びD−[18F]FET並びにL−及びD−[18F]FPTを尾静脈より投与し(L−及びD−[11C]ETは10MBq、他は1MBq)、投与1時間後にマウスを断頭して、血液及び腫瘍を採取した。血液及び腫瘍の放射能をオートガンマカウンターで測定し、重量を測定し、SUVを求めた。さらに、集積量を補正するために、腫瘍のSUVを血液のSUVで除したSUV(臓器)/SUV(血液)を求めた。得られた結果を図13に示す。
図13は、各化合物の腫瘍における集積量を表した図である。集積量をSUV(臓器)/SUV(血液)で表している。この結果から分かるように、全ての化合物の集積は増殖の早いHeLa−Kにより多く集積した。D−[18F]FMTの増殖速度の違いによる集積度の違いは、D−[18F]FMTと比べて顕著に大きかった。したがって、これらの化合物は既存の標識化合物と比べて、腫瘍の治療効果判定に優れていると考えられる。
本願発明により、PETによる腫瘍診断が可能となり、特に、放射線治療などの治療効果を早期に判定することが可能となる。
L−及びD−[11C]Metの各臓器における集積量を表した図である。(a)では集積量をSUVで表し、(b)では集積量をSUV(臓器)/SUV(血液)で表している。 L−及びD−[11C]MTの各臓器における集積量を表した図である。(a)では集積量をSUVで表し、(b)では集積量をSUV(臓器)/SUV(血液)で表している。 L−及びD−[18F]FMTの各臓器における集積量を表した図である。(a)では集積量をSUVで表し、(b)では集積量をSUV(臓器)/SUV(血液)で表している。 L−及びD−[11C]Metをマウスに投与した場合のプラナー計測の結果を表した図である。 L−及びD−[11C]MTをマウスに投与した場合のプラナー計測の結果を表した図である。 L−及びD−[18F]FMTをマウスに投与した場合のプラナー計測の結果を表した図である。 HeLa移植後の経過日数と腫瘍体積の関係を表した図である。 各化合物の血液及び腫瘍における集積量(SUV)を表した図である。 各化合物の腫瘍における集積量(SUV(臓器)/SUV(血液))を表した図である。 L−及びD−[11C]ETの各臓器における集積量を表した図である。集積量をSUV(臓器)/SUV(血液)で表している。 L−及びD−[18F]FETの各臓器における集積量を表した図である。集積量をSUV(臓器)/SUV(血液)で表している。 L−及びD−[18F]FPTの各臓器における集積量を表した図である。集積量をSUV(臓器)/SUV(血液)で表している。 各化合物の腫瘍における集積量(SUV(臓器)/SUV(血液))を表した図である。
D−[11C]MTは、D−チロシンの 11 C]メチル化により合成することが可能である。メチル化に用いる試薬としては、例えば、[11C]塩化メチル、[11C]臭化メチル、[11C]ヨウ化メチル等の[11C]ハロゲン化メチルや[11C]メチルトリフレート等が挙げられる。その中でも、[11C]ヨウ化メチル及び[11C]メチルトリフレートは、反応性が高いため短時間で収率よくD−[11C]MTを合成できるため、特に好ましい。これらの試薬は、公知の方法(例えば、Journal of Labelled Compounds and Radiopharmaceuticals, Vol. 46, p555-566 (2003)に記載の方法)により合成することが可能である。
D−[18F]FMTは、D−チロシンの 18 F]フルオロメチル化により合成することが可能である。フルオロメチル化に用いる試薬としては、例えば、[18F]FCHBrや[18F]フルオロメチルトリフレート等が挙げられる。これらの試薬は反応性が高いために短時間で効率よくD−[18F]FMTを合成できる。これらの試薬は、公知の方法(例えば、Journal of Labelled Compounds and Radiopharmaceuticals, Vol. 46, p555-566 (2003)に記載の方法)により合成することが可能である。
同様に、[11C]ヨウ化エチル等により、D−チロシンを 11 C]エチル化することにより、D−[11C]ETを合成することができる。また、[18F]FCHCHCHOTs(Ts:p−トルエンスルホニル基)等により、D−チロシンを 18 F]フルオロプロピル化することにより、D−[18F]FPTを合成することができる。
(比較例2:O−[18F]フルオロメチル−L−チロシン(L−18F]FMT)の合成)
原料としてD−チロシンの代わりにL−チロシンを用いて、実施例2に記載の方法と同様の方法でL−18F]FMTの合成を行った。
図10は、L−及びD−[11C]ETの各臓器における集積量を表した図である。集積量をSUV(臓器)/SUV(血液)で表している。この結果から分かるように、L−及びD−[11C]ETは腫瘍への集積が認められる一方で膵臓以外の正常組織への集積は低く、腫瘍に特異的に集積した。さらに、D体の腫瘍のSUV(臓器)/SUV(血液)は、L体と比べて同程度であり、また、SUV(臓器)/SUV(血液)で表した膵臓への集積の、腫瘍への集積に対する比は、D−体の方がL−体よりも低いことが分かった。したがって、D体はL体に比べて優れた腫瘍診断薬として利用できることが示唆された。
図13は、各化合物の腫瘍における集積量を表した図である。集積量をSUV(臓器)/SUV(血液)で表している。この結果から分かるように、全ての化合物の集積は増殖の早いHeLa−Kにより多く集積した。D−[18F]FMTの増殖速度の違いによる集積度の違いは、L−18F]FMTと比べて顕著に大きかった。したがって、これらの化合物は既存の標識化合物と比べて、腫瘍の治療効果判定に優れていると考えられる。

Claims (6)

  1. 式(I)で表される放射性チロシン誘導体又はその薬学的に許容可能な塩。
    Figure 2005115971
    (式中、Rは、−11CH、−11CHCH、−CH 18F及び−CHCHCH 18Fからなる群より選ばれる基を表す。)
  2. 請求項1に記載の放射性チロシン誘導体又はその薬学的に許容可能な塩の製造方法であって、D−チロシン又はその薬学的に許容可能な塩をアルキル化又はフルオロアルキル化することを特徴とする製造方法。
  3. 式(II)で表される放射性チロシン誘導体又はその薬学的に許容可能な塩からなるポジトロンイメージング用標識剤。
    Figure 2005115971
    (式中、Rは、−11CH、−11CHCH、−CH 18F、−CHCH 18F及び−CHCHCH 18Fからなる群より選ばれる基を表す。)
  4. 式(II)で表される放射性チロシン誘導体又はその薬学的に許容可能な塩からなる腫瘍の悪性度評価薬剤。
  5. 式(II)で表される放射性チロシン誘導体又はその薬学的に許容可能な塩を被検体に投与する工程と、
    被検体の組織ごとの放射線量を測定する工程と、
    組織ごとの放射線量の比較により相対的に放射線量の大きい組織を腫瘍が形成された組織として検出する検出工程と、
    を備える腫瘍の検出方法。
  6. 検出工程において、血液の放射線量を基準として相対的に放射線量の大きい組織を腫瘍が形成された組織として検出する、請求項5に記載の腫瘍の検出方法。
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