JP2019085344A - 放射性フッ素標識化合物 - Google Patents
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Abstract
Description
その結果、18F-フルオロ-αメチルフェニルアラニン([18F]-FAMP)の製造に成功し、同化合物を用いて上記の課題に合致した造影剤が達成されることを知見し、また、最も腫瘍集積性及び体内動態に優れていた2-[18F]-L-FAMPの新規大量合成法を開発し、本発明を完成した。
[1] 下記式(I)で表される化合物又はその塩。
[4] 前記化合物がD体である、[1]又は[2]に記載の化合物又はその塩。
[5] [1]〜[4]の何れかに記載の化合物又はその塩を含む、陽電子放射断層撮影造影剤。
[6] αメチルフェニルアラニンと、18F-アセチルハイポフルオライトを反応させる工程を含む、[1]〜[4]の何れかに記載の化合物の製造方法。
[7] 下記式(V)で表される、αメチルフェニルアラニン標識前駆体化合物。
[8] [7]に記載の化合物と、18F-イオンを反応させる工程を含む、[1]〜[4]の何れかに記載の化合物の製造方法。
[9] [1]〜[4]の何れかに記載の化合物又はその塩が投与された被検体を撮像することを含む、陽電子放射断層撮像方法。
[10] [1]〜[4]の何れかに記載の化合物又はその塩を、撮像が必要な対象に投与する工程を含む、陽電子放射断層撮影造影方法。
(1)化合物
本発明の一態様は、下記式(I)で表される化合物(以下、「式(I)の化合物」又は「本発明の化合物」ということがある)である18F-フルオロ-αメチルフェニルアラニン及びその塩に関する。
本発明の一態様は、式(I)の化合物の製造方法に関する(以下、「本発明の製造方法」ということがある)。具体的には、出発物質となるαメチルフェニルアラニンと、フッ素化剤となる18F-アセチルハイポフルオライト(CH3COO18F)を反応させ、式(I)の化合物を得る。
αメチルフェニルアラニンと18F-アセチルハイポフルオライトの割合は、モル比で、例えば1:2〜5:1、好ましくは2:3〜2:1とすることができる。
αメチルフェニルアラニンを溶解する溶媒としては、αメチルフェニルアラニンを溶解でき、αメチルフェニルアラニンと18F-アセチルハイポフルオライトとの反応が可能であれば、特に限定されず、例えば、トリフルオロ酢酸(TFA)、酢酸及びそれらの混合物等を使用できる。
アミノ基の保護基として、例えばtert-ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基等のカルバメート系保護基;ピバロイル基、ベンゾイル基等のアシル系保護基;p−トルエンスルホニル基、p−ニトロベンゼンスルホニル基等のスルホン系保護基等が挙げられる。立体配置の維持等の観点から、ピバロイル基(Piv)を好ましく用いることができる。
式(VI)〜(VIII)の化合物としては、L体、D体、ラセミ体が存在するが、いずれも本発明の範囲に含まれ、式(I)の化合物の標識前駆体として使用できる。
式(VI)〜(VIII)で表される化合物として具体的には、例えば(メシチル)(N-(tert-ブトキシカルボニル)-αメチル-L-フェニルアラニン-メチルエステル)-2-ヨードニウム-テトラフルオロボラート)、(メシチル)(N-(tert-ブトキシカルボニル)-αメチル-L-フェニルアラニン-メチルエステル)-3-ヨードニウム-テトラフルオロボラート);(メシチル)(N-(tert-ブトキシカルボニル)-αメチル-L-フェニルアラニン-メチルエステル)-4-ヨードニウム-テトラフルオロボラート)、(メシチル)(N-(tert-ブトキシカルボニル)-αメチル-D-フェニルアラニン-メチルエステル)-2-ヨードニウム-テトラフルオロボラート)、(メシチル)(N-(tert-ブトキシカルボニル)-αメチル-D-フェニルアラニン-メチルエステル)-3-ヨードニウム-テトラフルオロボラート);(メシチル)(N-(tert-ブトキシカルボニル)-αメチル-D-フェニルアラニン-メチルエステル)-4-ヨードニウム-テトラフルオロボラート)が挙げられる。
の合成方法を説明する。
新規標識前駆体と18F-イオンの割合は、モル比で、例えば1000:1程度とすることができる。
反応に用いる溶媒としては、新規標識前駆体及び18F-イオンを溶解でき、新規標識前駆体と18F-イオンとの反応が可能であれば、特に限定されず、例えば、(無水)N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド又はN-メチルピロリドン等の非プロトン性溶媒等を使用できる。
生成した式(I)の化合物は、HPLC等により分離精製、分画すること等により、精製、単離できる。
本発明の一態様は、式(I)の化合物又はその塩を含む、PET造影剤(以下、「本発明の造
影剤」ということがある)に関する。本発明の更なる一態様は、本発明のPET造影剤を用いたPET造影方法(以下、「本発明の造影方法」ということがある)に関する。
(A)本発明の造影剤を被検体に投与する工程。
(B)被検体から放射されるγ線を計測して画像化する工程。
(材料)
L-αメチルフェニルアラニン及びD-αメチルフェニルアラニンは、長瀬産業より購入した。18Fは、バイオメディカルサイクロトロンCYPRIS HM-18 (住友重機械工業)で製造した。[18F]-FAMTをTomiyoshi et al. (Nucl Med Commun. 1997;18:169-175)の改変法により調製した。2-[77Br]-L-BAMPおよび2-[76Br]-L-BAMPを非特許文献2に記載の方法により調製した。[18F]-FDGはFDG合成装置F200(住友重機械工業)を用いてフッ素イオン法により製造した。[18F]F2を、酢酸ナトリウム三水和物を封入したカラム中を通過させることにより、18F-アセチルハイポフルオライトを調製した。
逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)分析は、C-18カラム(Capcell Pak C18 AQ,
10×250 mm;資生堂)にて、流速5 mL/minで、0.1% トリフルオロ酢酸含有水及び0.1% トリフルオロ酢酸含有アセトニトリルを95:5から90:10のリニアグラジエントで30分間溶出した。
統計解析は、SYSTAT 13ソフトウェア(Systat)を用いて行った。結果は、平均±SDで示される。結果は、2群の相違の比較について独立t検定(unpaired t test)で解析し、複数群間の相違の比較について1-way ANOVAを行い、チューキーのHSD検定(Tukey honestly significant difference test)を行い、解析した。P値が<0.05であれば、相違は有意であると考えられる。
L-αメチルフェニルアラニン又はD-αメチルフェニルアラニンに対して、18F-アセチルハイポフルオライトを反応させることにより、[18F]-FAMPを製造した。L体又はD体と反応させると、それぞれ2位、3位又は4位に18Fが導入されたL体又はD体の[18F]-FAMPができる。3つの位置にそれぞれ18Fが導入された[18F]-FAMPの混合物は、HPLCを用いて分離可能である。
実施例1で得た6つの18F標識体の健常マウスにおける、投与10分後、30分後、60分後、180分後の体内動態を比較検討した。
具体的には、以下のようにして実験を行った。
18F標識体(200 kBq, <2 μmol)を健常ddYマウス(日本SLC)の尾静脈より投与し、各時間後に血液を回収、各臓器を摘出し、重量及び放射活性を測定した。結果を図2に示す。Y軸の単位「% dose/g」は各臓器における放射能の投与放射能に対する割合(%)を、各臓器の重さで割った値であり、単位重量辺りの薬剤の集積量を示す。
比較として、現在臨床使用されている[18F]-FAMT、並びに優れた体内分布及び腫瘍集積性を報告している2-[77Br]-L-BAMP(非特許文献2)を用いた結果も合わせて提示した。
L体の3つを比較した場合、2-[18F]-L-FAMPが血液クリアランス及び腎臓からのクリアランスが最も早かった。なお、[18F]-L-FAMPは、血液クリアランスに関しては[18F]-FAMTや2-[77Br]-L-BAMPと比較するとゆっくりであったが、標的分子LAT1発現臓器である膵臓への集積は大きく向上した。
一方、D体の3つに関しては、どの[18F]-D-FAMPも[18F]-FAMTや2-[18F]-L-BAMPと同等の速やかな血液クリアランスを示し、腎臓からのクリアランスも速やかであった。しかしな
がら3つの[18F]-D-FAMPは膵臓からもクリアランスされ、全体として2-[77Br]-L-BAMPとほぼ同様の体内動態を示した。
実施例2で、血液及び腎クリアランスが速やかであった2-L-FAMP及び3つのD-FAMPの18F標識体について、ヒト大腸がん細胞株LS180を皮下に移植した担がんマウスにおける投与1時間後の体内分布を比較検討した。ヒト大腸がん細胞株LS 180はアメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection)より購入した。
その結果、2-[18F]-L-FAMPが最も高い腫瘍集積性を示した(図3、P<0.05)。[18F]-FAMTと比較しても腫瘍集積性は大きく向上し(P<0.05)、腎集積性が大きく低下した(P<0.05)。また、2-[77Br]-L-BAMPと比較しても腫瘍集積性は大きく向上した。
動物用PET装置を用いて、2-[18F]-L-FAMPを投与したLS180担がんマウスの撮像を行った。
具体的には、以下のようにして実験を行った。
PETイメージングは、動物用PETスキャナー(Inveon;シーメンス)を用いて行った。担がんマウスは、マウスの肩部にLS180細胞(5×106cells/頭)を移植することで作製した。[18F]-FDG又は2-[18F]-L-FAMP (7 MBq, 10 μmol)を担がんマウスの尾静脈より投与し、1時間後にイソフルラン麻酔下においてPET撮像を行った。また、以前に撮像を行った2-[76Br]-L-BAMPの画像との比較を行った。
図5のように、投与1時間後において腫瘍を明瞭に描出することができた。同じマウスの[18F]-FDG画像と比較して、他臓器への集積が少なく、より高いコントラストで腫瘍を描出できた。また、2-[76Br]-L-BAMPの画像と比較して画像が明瞭であった(腫瘍の輪郭や不均一な集積も描出)。これは18Fと76Brの核種の違いに起因すると考えられた。
2-[18F]-L-FAMPの、腫瘍細胞に特異的に発現しているアミノ酸トランスポーター、LAT1に対する特異性を確認するために、LAT1発現細胞株(LS 180)を用いた取り込み実験を行った。
具体的には、以下のようにして実験を行った。
αメチル-L-チロシン(AMT)及びαメチル-アミノイソブチル酸(MeAIB)は、シグマ−アルドリッチより購入した。2-アミノビシクロ-(2,2,1)-ヘプタン-2-カルボン酸(BCH)は、ナード研究所より入手した。
0.49 mM MgCl2, 0.41 mM MgSO4, 0.35 mM K2HPO4, 0.44 mM KH2PO4, 4.2 mM KHCO3, 5.6
mM D-グルコース (pH 7.4))で洗浄した後、Na+-free HBSS中で10分間インキュベートした。細胞を2-[18F]-L-FAMP (100 kBq, 最終濃度: 1 μM)と共に、37℃で1分間インキュベートした。インキュベーション後、細胞を氷冷Na+-free HBSSで3回洗浄し、500 μLの0.1
M NaOHで溶解し、放射活性を測定した。
図6に示すように、2-[18F]-L-FAMPを添加後1分で細胞内への放射活性の取り込みが確認され、またNa存在下及び非存在下における取込量に変化が認められなかったことから、2-[18F]-L-FAMPの取り込みはNa非依存性であることが明らかとなった。
具体的には、以下のようにして実験を行った。
阻害測定のため、細胞を、1 mMの各種インヒビター(アミノ酸又はそれらのアナログ)及び2-[18F]-L-FAMP (100 kBq, 最終濃度: 1 μMを添加したNa+-free HBSS中で1分間インキュベートした。インキュベーション後、先と同様に、放射活性を測定した。
その結果、LAT1の基質となる中性の大型アミノ酸によって取り込み量は大きく減少し(図7)、その阻害傾向はLAT1に特異的なアミノ酸製剤として知られているFAMTと同様の傾向であった。またFAMTの添加によって、取り込みが大きく阻害されほとんど認められなくなった。以上より2-[18F]-L-FAMPの取り込みはLAT1に対して特異的であると考えられる。
18F-を用いて標識を行うための新規標識前駆体として、(メシチル)(N-(tert-ブトキシカルボニル)-αメチル-L-フェニルアラニン-メチルエステル)-2-ヨードニウム-テトラフルオロボラート)(4)の合成を行った。
長瀬産業より購入した2-ヨード-αメチル-L-フェニルアラニン (319 mg, 1.0 mmol) をメタノール10 mLに懸濁した。氷冷した懸濁液に塩化チオニル (0.96 mL, 13.2 mL) を緩徐に加え、室温に戻し2時間攪拌した後、50時間還流した。溶媒を減圧留去し、得られた残渣に飽和炭酸水素ナトリウム溶液15 mLを加え、クロロホルム(20 mL×3)で抽出した。
有機層に無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥した後、溶媒を留去することで化合物(1) (350 mg, quant.)を薄茶色固体として得た。
化合物(1) (320 mg, assume 1.0 mmol)をピリジン2 mLに溶解した。ピバロイルクロリド(256 μL, 2.05 mmol)を滴下し、室温で20時間攪拌した。反応溶液に2 Mの塩酸水溶液を加え、酢酸エチル(10 mL×3)で抽出した。有機層を水、飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムを加え乾燥した。溶媒を留去して得られた残渣をヘキサン:酢酸エチルを溶出溶媒とするフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製を行うことで化合物(2)(175 mg, 43.4 %)を白色固体として得た。
反応に先立ちシグマアルドリッチより購入した1-クロロメチル-4-フルオロ-1,4-ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン ビス(テトラフルオロボラート) (Slectfluor(登録商標))を無水ジクロロメタンにて洗浄し、ろ取した後デシケーター内で一晩真空乾燥した。窒素置換したグローブボックス内で化合物(2) (175 mg, 0.43 mmol)を無水アセトニトリル1.5 mLに溶解した。同グローブボックス内で、別容器に乾燥したSelectfluor(登録商標) (200 mg, 0.57 mmol) を秤量し、無水アセトニトリル 7 mLに懸濁し、酢酸トリメチルシリル(TMSOAc, 0.173 g, 1.29 mmol) を緩徐に加えた。Selectfluor(登録商標)/ TMSOAc混合液を化合物(2)溶液に30秒掛けて滴下し、ガラス栓をした後、室温で24時間攪拌した。反応溶液に粉末状の2,4,6-トリメチルフェニルトリフルオロボラート・カリウム塩 (98 mg,
0.43 mmol)を加え、続いて無水アセトニトリル2 mLを加えた。無水アセトニトリル400 μLに溶解したトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル(TMSOTf, 92 μL, 0.43 mmol)を滴下し、5分間室温で攪拌した後、反応容器をグローブボックスより取り出した。溶媒を減圧留去した後、デシケーター内で一時間真空乾燥した。得られた残渣にジクロロメタンを加え、懸濁液をろ過することで不溶物をろ去し、ろ液を0.5 M 酢酸ナトリウム緩衝液 (pH 5.0) (5 mL×3)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムを加え乾燥した。溶媒を留去し、デシケーター内で15 分間減圧乾燥した。得られた残渣をアセトニトリル1 mLに溶解し、ヘキサリン酸ナトリウム水溶液 (0.13 mg/ 4 mL)に加え、激しく振盪した後、ジクロロメタン(4 mL×3)で抽出した。有機層に無水硫酸ナトリウムを加え乾燥した後、溶媒を留去し、デシケーター内で15分減圧乾燥した。残渣をアセトニトリル:水 (9:1)溶液に溶解し、陰イオン交換樹脂に通じた。溶媒を留去したのち、残渣にアセトニトリル10 mLを加え共沸により水分を除去し、デシケーター内で真空乾燥させることにより化合物(3) (165
mg, 57 %)を粗生成物として得た。
化合物(3) (165 mg, assume 0.25 mmol)をジクロロメタン2 mLに溶解し、飽和テトラフルオロほう酸リチウム水溶液(2 mL)を加え室温で2.5時間激しく攪拌した。水層の比重を有機層よりも小さくするため水を必要最小量添加した後、ジクロロメタン(2 mL×3)で抽出し、無水硫酸ナトリウムを加え乾燥した。溶媒を留去して得られた残渣をジクロロメタン:イソプロパノールを溶出溶媒とするフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製を行うことで油状物質を得た。油状物質を最小量のジクロロメタンに溶解し、ヘキサンを過剰に加えることにより固体化させ、ろ取し、デシケーター内で真空乾燥させることにより化合物(4) (99.8 mg, 65.6 %)を白色固体として得た。
製造した担体無添加の[18F]フッ素イオンを、超純水10 mLで洗浄したQMAカートリッジ (炭酸イオン形)に通じて吸着した。QMAカートリッジに吸着させた[18F]フッ素イオンを、クリプトフィックス222(10 mg)と炭酸カリウム(3 mg)を含む90%アセトニトリル溶液(1 mL)で溶出し、ガラスバイアルに導入した。窒素気流下で加熱し、溶媒を留去した。次に、無水アセトニトリル(0.3 mL×3)を加え、共沸 乾固させ、充分に反応容器を乾燥した。無水ジメチルホルムアミドを添加し、[18F]KF/K[2,2,2]複合体溶液を得た。
反応容器に化合物(4) 3.66 mg, 6 μmolを秤量し、窒素置換された無水ジメチルホルムアミド(350 μL)に溶解した。窒素雰囲気下、銅触媒((CH3CN)4CuOTfまたはCu(OTf)2, 30 μmol) の無水ジメチルホルムアミド(150 μL)溶液を加え攪拌した。[18F]KF/K[2,2,2]複合体溶液(250 μL)を加え、85℃で25分間加熱攪拌した。反応溶液を室温に戻し、超純水 1 mLを加え反応を停止した。キレート樹脂を加え、銅イオンを吸着し、さらに超純水10 mLで希釈した後、エタノール(5 mL)、超純水(10 mL)の順で洗浄したC18カートリッジに通じて未反応の18F- を除去し、生成物を吸着させた。C18カートリッジを超純水10 mLで洗浄後、窒素気流下乾燥し、アセトニトリル(3 mL)で溶出した。溶媒を留去し、化合物(5)を混合物として得た(放射化学的収率 32-55 %)。
化合物(5)を含む混合物に57% ヨウ化水素酸(300 μL)を加え、130℃で15 分間加熱した。反応溶液を室温に戻した後、アセトニトリル:水:トリフルオロ酢酸 (5:95:0.1) 溶液 (700 μL)で希釈し、アセトニトリル:水:トリフルオロ酢酸を溶出溶媒とする高速液体クロマトグラフィーにより精製を行った。アスコルビン酸溶液を 100 μL加えた後溶媒を留去し、化合物(6)を得た。精製後の2-[18F]-L-FAMPは、非放射性の2-FAMPとのHPLCにおける保持時間の一致により確認した。半減期補正後の放射化学的収率 は18.7 %であった。
従来の合成法である18F-アセチルハイポフルオライト(CH3COO18F)を用いて作製した2-[18F]-L-FAMPと新規合成法である18F-を用いて作製した2-[18F]-L-FAMPの健常マウスにおける体内動態比較を行った。図8に示すように、両合成法により作製した2-[18F]-L-FAMPは同様の血液クリアランスを示し、各臓器からのクリアランスもほぼ同様であった。また標的分子LAT1の発現臓器である膵臓への集積性も同様であった。このことから、18F-を用いた新規標識法により作製した2-[18F]-L-FAMPは従来法による合成品と同等の品質を有していることが示された。LAT1が発現している膵臓への集積性が同様であったことから、LAT1を標的分子として集積する腫瘍に関しても両者は同様の集積性を示し、同様にPET装置にて明瞭に画像化することが可能であると予想される。
本剤には半減期が110分である18Fを用いるため、製薬企業による製造及び供給が可能になると考えられる。実際、腫瘍イメージング剤である[18F]-FDGは製薬企業による製造・供給が行われている。[18F]-FDGよりも腫瘍特異的な本発明の18F標識診断薬剤により、今後、サイクロトロンを持たない国公立病院や民間病院においても、本薬剤を使用しがんの鑑別診断ができるようになり、多くのがん患者が恩恵を受けると考えられる。
Claims (9)
- 下記式(I)で表される化合物又はその塩。
- 前記化合物が、下記式(II)、(III)又は(IV)で表される、請求項1に記載の化合物又はその塩。
- 前記化合物がL体である、請求項1又は2に記載の化合物又はその塩。
- 前記化合物がD体である、請求項1又は2に記載の化合物又はその塩。
- 請求項1〜4の何れか一項に記載の化合物又はその塩を含む、陽電子放射断層撮影造影剤。
- αメチルフェニルアラニンと、18F-アセチルハイポフルオライトを反応させる工程を含む、
請求項1〜4の何れか一項に記載の化合物の製造方法。 - 下記式(V)で表される、αメチルフェニルアラニン標識前駆体化合物。
- 請求項7に記載の化合物と、18F-イオンとを反応させる工程を含む、請求項1〜4の何れか一項に記載の化合物の製造方法。
- 請求項1〜4の何れか一項に記載の化合物又はその塩が投与された被検体を撮像することを含む、陽電子放射断層撮像方法。
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