しかしながら、このようにデータの記録速度が増加すると光ディスクの回転速度もそれに伴って増加するため、レーザ光が照射される条件が相対的に遅い記録速度の場合と比較して異なってくる。このため、相対的に早い記録速度の場合には、上述するような従来のOPCを行ってパワーのキャリブレーションを行ったとしても、光ディスクに適切にデータを記録することができないという技術的な問題点を有している。即ち、光ディスクに高速にデータを記録した場合、データを記録した後のランドプリピットの再生品質が悪化するがゆえに、適切にこのランドプリピットを再生することができないという技術的な問題点を有している。
本発明は、例えば上述した従来の問題点に鑑みなされたものであり、例えば光ディスク等の情報記録媒体に記録されるデータの再生品質を悪化させることなくデータの記録を行うことを可能とならしめる情報記録装置及び方法並びにコンピュータをこのような情報記録装置として機能させるコンピュータプログラムを提供することを課題とする。
(情報記録装置)
本発明の情報記録装置は上記課題を解決するために、所定のパワーのレーザ光を照射することによって、記録情報の記録を制御するためのプリ情報が予め記録されている情報記録媒体に前記記録情報を記録する記録手段と、前記プリ情報の再生品質である第1再生品質が所定の第1基準を満たす前記パワーで前記記録情報を記録するように前記記録手段を制御する制御手段とを備える。
本発明の情報記録装置によれば、記録手段の動作により、情報記録媒体にレーザ光を照射することで記録情報を記録することができる。
本発明では特に、記録情報の記録を制御するためのプリ情報(例えば、後述のLPP)の再生品質である第1再生品質(例えば、後述のAR(Aperture Ratio)特性等)が所定の第1基準を満たすようなパワー(例えば、後述する実施例における最適レーザパワー)で記録情報を記録するように記録手段を制御する制御手段を備えている。ここに、「所定の第1基準」とは、あるレーザパワーで記録された記録情報を再生した際のプリ情報の第1再生品質が好適な状態ないし数値を実現できるような基準を示す。即ち、第1再生品質が所定の第1基準を満たすような記録情報は、好適な再生が担保される。この所定の第1基準は予め定められているものであってもよいし、或いは記録動作に応じて適宜設定するものであってもよい。
これにより、可変なパワーを有するレーザ光を照射させる情報記録装置において、好適に最適なパワーで記録情報を記録することが可能となる。従って、本発明に係る情報記録装置によれば、好適な再生品質を実現可能な記録情報を記録することが可能となる。
尚、従来の情報記録装置においては、記録される記録情報の再生品質は、OPC(Optimum Power Control)等により検出された最適なパワーに委ねられている。特にOPC等にあっては再生品質として、記録情報のアシンメトリやジッタ値等が好適な状態となるように最適なパワーの検出がなされている。しかし、特に高速記録時には、再生情報のアシンメトリ比やジッタ値が良好となるようなパワーのレーザ光で記録した場合であっても、その他の再生品質(例えば、プリ情報の第1再生品質)が悪化してしまうおそれもあった。しかるに本発明に係る情報記録装置では、記録情報の再生品質が好適な状態となるように(特に、プリ情報の第1再生品質が第1基準を満たすように)、記録情報の好適な再生品質を実現すべく記録手段が制御される(即ち、パワーが制御される)。このため、従来の情報記録装置によって記録される記録情報の再生品質と比較して、その再生品質をより向上させることが可能となる。
以上の結果、本発明に係る情報記録装置によれば、適切なパワーのレーザ光によって記録情報を記録することができる。それに伴って、記録される記録情報の再生品質をより向上させることが可能となる。
本発明の情報記録装置の一の態様は、前記情報記録媒体は、前記記録情報を記録する際の基準記録速度と比較して4倍速以上の記録速度で前記記録情報を記録可能である。
この態様によれば、特に高速記録時(即ち、基準記録速度たる1倍速の記録速度と比較して概ね4倍速以上の記録速度での記録時)において問題となる記録情報を記録した後のプリ情報の読取特性の悪化を効果的に防ぐことができる。従って、低速記録時においても高速記録時においても、記録情報の再生品質(特に、プリ情報の第1再生品質)の向上を図ることが可能となる。
言い換えれば、本発明に係る情報記録装置は、従来のOPCにおける最適レーザパワーの検出のための評価基準となっているアシンメトリやジッタ値を、プリ情報の第1再生品質に単に変更したものでは決してない。即ち、本発明によれば、アシンメトリやジッタ値を許容範囲内に収めながらも、高速記録時において特に問題となるプリ情報の再生品質を向上させることを主眼に新たな効果を奏するものであり、従来のOPCでは解決できない高速記録時におけるプリ情報の再生品質の悪化を効果的に避ける(即ち、再生品質を効果的に向上させる)ことができるという特有の効果を有しているものである。
上述の如く高速な記録速度で記録情報を記録可能な情報記録装置の態様では、前記4倍速以上の記録速度で前記記録情報を記録する場合には、前記制御手段は、前記プリ情報の前記第1再生品質が前記第1基準を満たす前記パワーで前記記録情報を記録するように前記記録手段を制御し、前記基準記録速度と比較して4倍速未満の記録速度で前記記録情報を記録する場合には、前記制御手段は、前記記録情報の再生品質である第2再生品質としてのジッタ値及びアシンメトリ値の少なくとも一方が所定の第2基準を満たす前記パワーで前記記録情報を記録するように前記記録手段を制御するように構成してもよい。
このように構成すれば、4倍速以上の比較的高速な記録速度での記録動作時と4倍速未満の比較的低速な記録速度での記録動作時とで、パワーを制御する際の基準を分けることができる。従って、特に高速記録時に問題となる記録情報を記録した後のプリ情報の再生品質の悪化を高速記録時には効果的に防ぐことができる。他方でこのプリ情報の再生品質の悪化がさほど大きな問題とならない低速記録時には他の再生品質たるジッタ値やアシンメトリをより良好な状態に保つことができる。従って、全体としてみれば低速記録時においても高速記録時においても、記録される記録情報の再生品質を好適に向上させることが可能となる。
本発明の情報記録装置の他の態様は、前記制御手段により、前記プリ情報の前記第1再生品質が前記第1基準を満たす前記パワーで前記記録情報を記録するように前記記録手段が制御されるか、又は前記記録情報の再生品質である第2再生品質としてのジッタ値及びアシンメトリ値の少なくとも一方が所定の第2基準を満たす前記パワーで前記記録情報を記録するように前記記録手段が制御されるかを選択する選択手段を更に備える。
この態様によれば、選択手段の動作により、適宜記録手段の制御方法を変更することができるため、必要に応じてより好適な手法で記録手段を制御することができる。従って、記録される記録情報の品質をより好適に向上させることが可能となる。
本発明の情報記録装置の他の態様は、前記制御手段は、前記パワーと前記第1再生品質との相関関係を示す相関情報に基づいて、前記第1再生品質が前記第1基準を満たす前記パワーで前記記録情報を記録するように前記記録手段を制御する。
この態様によれば、相関情報に基づいて、適切に記録手段を制御することができる。従って、情報記録媒体に記録される記録情報の再生品質を向上させることが可能となる。
上述の如く相関情報に基づいて記録手段を制御する情報記録装置の態様では、前記記録手段を制御することで、前記パワーを変化させながら前記情報記録媒体に試し記録用の試し情報を記録し、且つ該試し情報が記録された記録領域に予め記録されている前記プリ情報の前記第1再生品質を測定することで、前記相関情報を作成する作成手段を更に備えるように構成してもよい。
この態様によれば、例えば後述のOPCの如く、パワーを段階的に或いは連続的に変化させながら試し情報を記録することで、相関情報を好適に作成することができる。このため、この作成された相関情報に基づいて、パワーを適切に制御することが可能となる。特に、実際に記録される記録情報と再生品質との相関関係に基づいて記録手段を制御しているため、情報記録装置毎のばらつきや情報記録媒体毎のばらつき等によらず、好適に記録手段を制御することができる。
上述の如く作成手段を備える情報記録装置の態様では、前記記録手段は、前記作成された相関情報を前記情報記録媒体に記録するように構成してもよい。
このように構成すれば、一度作成した相関情報を、作成後も継続して使用することが可能となる。従って、改めてパワーを制御する際に再度相関情報を作成するという手間を省くことができる。
特に、情報記録媒体に記録するため、当該情報記録媒体を情報記録装置からイジェクトした後に新たに別の情報記録装置にローディングした場合であっても、情報記録媒体中に記録された相関情報を用いて、上述の如く記録手段を適切に制御することができる。
上述の如く作成手段を備える情報記録装置の態様では、前記作成された相関情報を格納するための格納手段を更に備えるように構成してもよい。
このように構成すれば、一度作成した相関情報を、作成後も使用し続けることが可能となる。従って、改めて記録手段を制御する際に再度相関情報を作成するという手間を省くことができる。
特に、情報記録装置自身が備える格納手段に相関情報を格納するため、相関情報を作成した情報記録媒体とは異なる他の情報記録媒体に記録情報を記録する際にも、当該相関情報を用いてパワーを制御することが可能となる。特に、同一種類、同一品質、同一製造元等の情報記録媒体に記録をする際に有効となる。
このとき、相関情報を、情報記録媒体の識別番号(例えば、製造者番号やディスクID等)毎に区分して格納することが好ましい。
本発明の情報記録装置の他の態様は、前記プリ情報は、前記情報記録媒体の記録トラック上に形成されているプリピットにより前記情報記録媒体に予め記録されている。
この態様によれば、情報記録媒体としての一例であるDVD−RやDVD−RW等において、記録手段を適切に制御することができるがゆえに、当該情報記録媒体に記録される記録情報の再生品質(特に、プリ情報の再生品質)を好適に向上させることが可能となる。
上述の如くプリピットによりプリ情報が予め記録されている情報記録装置の態様では、前記プリピットを再生することで生成されるプッシュプル信号の最大振幅と最小振幅とに基づいて、前記プリ情報の第1再生品質を測定する測定手段を更に備えるように構成してもよい。
このように構成すれば、プッシュプル信号に基づいて、プリ情報の再生品質である第1再生品質を適切に測定することができる。従って、この測定された第1再生品質に基づいて、適切に記録手段を制御することができる。
上述の如くプリピットによりプリ情報が記録されている情報記録媒体に記録情報を記録する情報記録媒体の態様では、前記プリピットを再生することで取得される前記プリ情報の再生エラーレートに基づいて、前記第1再生品質を測定する測定手段を更に備えるように構成してもよい。
このように構成すれば、プリ情報のエラーレートに基づいて、プリ情報の再生品質である第1再生品質を適切に測定することができる。従って、この測定された第1再生品質に基づいて、適切に記録手段を制御することができる。
本発明の情報記録装置の他の態様は、前記プリ情報は、所定周期で揺動する前記情報記録媒体の記録トラックに加えられる変調信号により前記情報記録媒体に予め記録されている。
この態様によれば、情報記録媒体としての一例であるDVD+RやDVD+RWやDVD−RAM等において、記録手段を適切に制御することができるがゆえに、当該情報記録媒体に記録される記録情報の再生品質(特に、プリ情報の再生品質)を好適に向上させることが可能となる。
本発明の情報記録装置の他の態様では、前記制御手段は、前記記録情報の再生品質である第2再生品質としてのジッタ値及びアシンメトリ値の少なくとも一方が所定の第2基準を満たす場合において、前記プリ情報の前記第1再生品質が前記第1基準を満たすような前記パワーで前記記録情報を記録するように前記記録手段を制御する。
このように構成すれば、記録情報の記録後のプリ情報の再生品質のみならず、記録情報に係る他の再生品質たるジッタ値やアシンメトリの向上をも十分に考慮して記録手段を制御することが可能となる。従って、情報記録媒体により好適に記録情報を記録することが可能となる。
(情報記録方法)
本発明の情報記録方法は上記課題を解決するために、所定のパワーのレーザ光を照射することによって、記録情報の記録を制御するためのプリ情報が予め記録されている情報記録媒体に前記記録情報を記録する記録工程と、前記プリ情報の再生品質である第1再生品質が所定の第1基準を満たす前記パワーで前記記録情報を記録するように前記パワーを制御する制御工程とを備える。
本発明の情報記録方法によれば、上述した本発明の情報記録装置と同様の各種利益を享受することができる。
尚、上述した本発明の情報記録装置における各種態様に対応して、本発明に係る情報記録方法も各種態様を採ることが可能である。
(コンピュータプログラム)
本発明に係るコンピュータプログラムは上記課題を解決するために、コンピュータを上述した情報記録装置(但し、その各種形態も含む)として機能させる。より具体的には、コンピュータを上述した情報記録装置における前記記録手段及び前記制御手段のうち少なくとも一部として機能させる。
本発明に係るコンピュータプログラムによれば、当該コンピュータプログラムを格納するROM、CD−ROM、DVD−ROM、ハードディスク等の記録媒体から、当該コンピュータプログラムをコンピュータに読み込んで実行させれば、或いは、当該コンピュータプログラムを、通信手段を介してコンピュータにダウンロードさせた後に実行させれば、上述した本発明の情報記録装置を比較的簡単に実現できる。
尚、上述した本発明の情報記録装置における各種態様に対応して、本発明のコンピュータプログラムも各種態様を採ることが可能である。
コンピュータ読取可能な媒体内のコンピュータプログラム製品は上記課題を解決するために、コンピュータにより実行可能なプログラム命令を明白に具現化し、該コンピュータを、上述した情報記録装置における前記記録手段及び前記制御手段のうち少なくとも一部として機能させる。
本発明のコンピュータプログラム製品によれば、当該コンピュータプログラム製品を格納するROM、CD−ROM、DVD−ROM、ハードディスク等の記録媒体から、当該コンピュータプログラム製品をコンピュータに読み込めば、或いは、例えば伝送波である当該コンピュータプログラム製品を、通信手段を介してコンピュータにダウンロードすれば、上述した情報記録装置における前記記録手段及び前記制御手段のうち少なくとも一部を比較的容易に実施可能となる。更に具体的には、当該コンピュータプログラム製品は、上述した情報記録装置における前記記録手段及び前記制御手段のうち少なくとも一部として機能させるコンピュータ読取可能なコード(或いはコンピュータ読取可能な命令)から構成されてよい。
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施例から明らかにされる。
以上説明したように、本発明の情報記録装置又は方法によれば、記録手段及び制御手段、又は記録工程及び制御工程を備える。従って、レーザ光のパワーを適切に制御しながら記録情報を記録することができ、その結果記録される記録情報の再生品質をク尾的に向上させることが可能となる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について実施例毎に順に図面に基づいて説明する。
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
先ず、図1を参照して、本発明の情報記録装置に係る実施例において用いられる情報記録媒体について説明する。本実施例では、情報記録媒体として記録型の光ディスクを用いて説明を進める。ここに、図1は、上側に複数のエリアを有する光ディスクの構造を概略平面図で示すと共に、下側にその径方向におけるエリア構造を概念図で対応付けて示すものである。
図1に示すように、光ディスク100は、例えば、記録(書き込み)が複数回又は1回のみ可能な、光磁気方式、相変化方式等の各種記録方式で記録可能とされており、DVDと同じく直径12cm程度のディスク本体上の記録面に、センターホール102を中心として内周から外周に向けて、リードインエリア104、データ記録エリア106及びリードアウトエリア108が設けられている。そして、各エリアには、例えば、センターホール102を中心にスパイラル状或いは同心円状に、グルーブトラック及びランドトラックが交互に設けられており、このグルーブトラックはウォブリングされてもよいし、これらのうち一方又は両方のトラックにプレピットが形成されていてもよい。尚、本発明は、このような三つのエリアを有する光ディスクには特に限定されない。例えば、リードインエリア104やリードアウトエリア108が存在せずとも、以下に説明するファイル構造は構築可能である。また、リードインエリア104やリードアウトエリア108は更に細分化された構成であってもよい。
(情報記録装置の実施例)
続いて、図2から図10を参照して、本発明の情報記録装置に係る実施例について説明する。
(1)基本構成
先ず、図2を参照して実施例に係る情報記録装置の基本構成について説明する。ここに、図2は、本実施例に係る情報記録装置の基本構成を概念的に示すブロック図である。
図2に示すように、本実施例に係る情報記録装置1は、光ピックアップ501、スピンドルモータ502、RF(Radio Frequency)アンプ503、レーザドライブ回路504、OPC(Optimum Power Control)回路505、トラッキングサーボ回路506、アクチュエータドライブ回路507、LPP(Land Pre Pit)検出器510、GATE作成回路511、LPPデータ検出器512、LPPエラーレート検出器513、イコライザ520、RF振幅測定回路521、2値化回路530、デコーダ531、PLL(Phase Locked Loop)532、ジッタ計測回路540、CPU550、メモリ560を含んで構成されている。
光ピックアップ501は、本発明における「記録手段」の一具体例であって、光ディスク100への記録又は再生を行うもので、半導体レーザ装置、各種レンズ、アクチュエータ等から構成される。より詳細には、光ピックアップ501は、光ディスク100に対してレーザ光LB等の光ビームを、再生時には読み取り光として第1のパワーで照射し、記録時には書き込み光として第2のパワーで且つ変調させながら照射する。このようなレーザ光LBのパワー調整は、後述する「制御手段」の一具体例たるレーザドライブ回路504の制御の下に行われる。より具体的には、所定のパルスストラテジに規定される駆動パルスにより半導体レーザ装置が駆動されることで、所定のレーザパワーを有するレーザ光LBが照射される。また、光ピックアップ501は、トラッキングサーボ回路507により駆動されるアクチュエータドライブ回路508、図示しないスライダ等により光ディスク100の半径方向等に移動できるように構成されている。
スピンドルモータ502は、図示しないサーボ回路等によりスピンドルサーボを受けつつ所定速度で光ディスク100を回転させるように構成されている。
RFアンプ503は、光ピックアップ501から照射されるレーザ光LBの反射光を受光する図示しないPD(Photo Detector)から出力される信号を増幅し、該増幅した信号を出力する。具体的には、読取信号たるRF信号(或いは、LPP信号やウォブル信号等)がLPP検出器510やイコライザ520や2値化回路530やジッタ計測回路540に出力される。
レーザドライブ回路504は、本発明における「制御手段」の一具体例であって、後述のOPC処理時には、後述のOPCパターンの記録及び再生処理により最適なレーザパワーの検出が行えるように、光ピックアップ501内に設けられた半導体レーザを駆動する。その後、データ記録時には、OPC処理により検出された最適なレーザパワーで、光ピックアップ501の半導体レーザを駆動するように構成されている。このデータ記録時には、最適レーザパワーは、記録データに応じて変調される。
OPC回路505は、記録動作前のOPC処理におけるOPCパターンの記録時に、OPCパターンを示す信号を、レーザドライブ回路504に対して出力するように構成されている。なお、OPC処理についての説明は、後に詳述する(図5等参照)。
トラッキングサーボ回路507は、光ピックアップ501からの読取信号たるRF信号よりトラッキングエラー信号等の各種サーボ信号を検出可能に構成されている。そして、この各種サーボ信号は、アクチュエータドライブ回路508や或いはスピンドルモータ502へ出力可能に構成されている。
アクチュエータドライブ回路508は、トラッキングサーボ回路507から出力される各種サーボ信号に基づき、光ディスク100の径方向或いは回転方向への光ピックアップ501の移動を制御可能に構成されている。そして、アクチュエータドライブ回路507によりその移動が制御されている光ピックアップ501により、光ディスク100の所望の記録位置にレーザ光LBが照射されることで各種データを記録することが可能となる。
LPP検出器510は、RFアンプ503からの受光量に応じた出力信号に基づいて、LPP信号を示すプッシュプル信号を検出可能に構成されている。このとき、プッシュプル信号を検出するために、光ピックアップ501の受光素子は、例えば2分割或いは4分割等複数の領域に分けてレーザ光LBの反射光を受光可能に構成されていることが好ましい。
尚、LPPとは、本発明における「プリ信号」の一具体例であって、光ディスク100の一具体例としてのDVD−R/RW等の記録トラック(特に、ランドトラック)上に予め形成されているピットであって、例えば光ディスク100上のアドレス位置や、データ記録時の記録クロック信号の生成のために用いられる。
GATE作成回路511は、LPPデータを検出するためのゲート信号を作成可能に構成されている。具体的には、LPPが形成されているウォブルを対象としてゲート信号を作成することで、LPPデータを検出可能にすると共に、LPPデータに含まれるノイズを効果的に除去することができる。もちろん、ウォブル信号を検出して作成されるゲート信号を用いてもLPPデータを検出することができることはいうまでもない。
LPPデータ検出器512は、LPP検出器510より出力されるLPP信号から、GATE作成回路511により作成されたゲート信号に基づいて、LPPデータを検出可能に構成されている。例えばLPPデータより、光ディスク100上におけるアドレス位置を示すプリフォーマットアドレス情報や、記録動作の際のクロックを示す情報を検出可能に構成されている。
LPPエラーレート検出器513は、LPPデータ検出器512において検出されたLPPデータのエラーの発生率(即ち、エラーレート)を検出可能に構成されている。このエラーレートは、例えば記録後LPP特性(或いは、BERLPPa:Block Error Rate LPP after)と称され、AR特性と同様の数値を示すものである。
ここで、AR特性について簡単な説明を加える。光ピックアップ501は、図示しない2分割受光回路を備えており、夫々の分割再生信号からプッシュプル信号を生成することが出来る。そして、このプッシュプル信号成分のうち光ディスク100上に設けられている記録トラックであるグループトラックとグルーブトラックとの間に存在するLPP(ランドプリピット)信号成分の最大振幅(即ち、LPPが存在するときのレベル)と最小振幅(即ち、実際にはLPPが存在しないときのレベルであって、Wobble centerの位置)との比率をAR特性と称している。例えば、DVD−R/RW上に設けられているLPPを再生したときの再生信号をオシロスコープ上で重ね合わせることで、その再生信号の最大振幅と最低振幅とを認識することができ、これよりAR特性を算出することができる。但し、実際の情報記録装置1においては、LPPデータのエラーレートを算出することで、AR特性の測定と同等の確認が可能であり、同等の動作を行なうことができる。
LPP信号にはアドレス情報や記録時に必要なDISC固有の記録ストラテジ情報等が記録されている。また、LPP信号は、最初にデータを記録するときや途中からデータを記録する(即ち、追記する)ときに特に必要な記録クロックを生成するために必要な基本信号であり、DVD-R/RWシステムでは重要な信号である。しかしながら、LPP信号はグルーブトラック上にデータが記録されると、その信号品質が劣化するため、記録後のLPP信号品質を規格で規定している(DVD Specifications for Recordable Discを参照)。それを数値であらわしたのがAR特性であるといえる。
イコライザ520は、RFアンプ503により検出されたRF信号等に対して所定のフィルタリング(或いは、信号処理)を行い、且つフィルタリング後の信号(例えば、エンベロープ検波等)をRF振幅測定回路521へ出力可能に構成されている。
RF振幅測定回路521は、OPC処理におけるOPCパターンの再生時に、CPU550の制御下で、最適レーザパワー(即ち、本発明における「第1基準を満たすパワー」の一具体例)を検出するために、RFアンプ503からの出力信号たるRF信号のエンベロープ検波のピーク値及びボトム値を検出するように構成されている。係るRF振幅測定回路521は、例えばA/D(Analog/Digital)コンバータ等を含んでいるように構成されてもよい。
2値化回路530は、RFアンプ503により検出されたRF信号等から2値化信号を作成可能に構成されている。具体的には、例えば検出されたRF信号等よりパルス列を作成する。そして、2値化された信号をデコーダ531及びPLL532の夫々へ出力可能に構成されている。
デコーダ531は、2値化回路530で2値化されたRF信号に復調等を施すことで、再生データをバッファや外部出力インタフェース経由で外部へ出力可能に構成されている。そして、当該外部出力インタフェースに接続された外部出力機器(例えば、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等の表示デバイス、或いはスピーカ等)において、所定のコンテンツが再生出力されることとなる。
PLL532は、2値化回路530から出力される2値化信号(特に、2値化されたLPP信号やウォブル信号)に基づいて、記録動作時の基準となるクロック信号を生成可能に構成されている。
ジッタ計測回路540は、RFアンプ503により検出されたRF信号からジッタ値を検出可能に構成されている。
CPU550は、当該情報記録装置1全体の動作を制御するべく、例えば、トラッキングサーボ回路506や記録アサインストラテジ検出器514やRF振幅測定回路521やジッタ計測回路540等からデータを受け取り、その後の制御動作を行なう。そして、これらのデータに基づき、情報記録装置1が備える各手段に対してシステムコマンドを出力することで、情報記録装置1全体の制御を行う。通常、CPU550が動作するためのソフトウェアは、例えば外部のメモリ内に格納されている。
メモリ560は、例えばRAM(Random Access Memory)やフラッシュメモリ等の半導体メモリを含んでなり、情報記録装置1の動作に必要な各種データを一時的に記録可能に構成されている。また、後述するように相関式や最適レーザパワーや相関情報等を記録可能に構成されている。
尚、上述した情報記録装置1においては、本発明の特徴をより分かりやすく説明するために、本実施例において必要となる構成要件を抜き出して図示している。このため、上述した構成要件以外の構成要件を備えていても良いことはいうまでもない。
(動作原理)
続いて、図3から図10を参照して、本実施例に係る情報記録装置1の動作原理について説明する。
(1)記録動作全体
先ず、図3を参照して、本実施例に係る情報記録装置1の、各種データを記録する際の記録動作全体の流れについて説明する。ここに、図3は、本実施例に係る情報記録装置1の記録動作全体の流れを概念的に説明するフローチャートである。
図3に示すように、先ず光ディスク100が情報記録装置にローディングされる(ステップS101)。そして、CPU550の制御下で、光ピックアップ501によりシーク動作が行われ、光ディスク100への記録処理に必要な各種管理用データが取得される。特に、リードインエリア104におけるランドプリピット(LPP)を読み取ることで、予め定められている所定の(或いは、デフォールトとしての)パルスストラテジを取得する。この管理用データに基づいて、CPU550の制御により、例えば外部入力機器等からの指示に応じて、例えば外部入力インタフェース等を介して光ディスク100へのデータの記録が行われる。
このローディング動作の後、実際にデータを記録する際の最適レーザパワーが検出される(ステップS102)。この最適レーザパワーの検出動作については、後に詳述する(図4等参照)。
そして、実際に記録すべきデータを光ディスク100の所定のアドレス位置より記録する(ステップS103)。ここではステップS102で検出された最適レーザパワーに応じた駆動パルスによってレーザ光LBが照射されるように、CPU550の制御の下に、レーザドライブ回路504の動作によって光ピックアップ501(より具体的には、半導体レーザ装置)が制御される。そして、図1に示すデータ記録エリア106にデータが主として記録される。
具体的には、外部入力インタフェース等より入力される記録用のデータは、DVDモジュレータによりDVD変調(例えば、8−16変調)が施される。そして、変調が施されたデータに対して、データ誤り訂正用の符号たるECCコードが、例えば所定のブロック単位(例えば、ECCブロック単位)毎に付加される。その後、光ピックアップ501より所望のレーザ光LBが照射されることで、変調が施され且つECCコードが付加された記録用のデータが記録ピット、記録マーク或いは記録パターンとして光ディスク100上に記録される。
その後、全てのデータの記録が終了したか否かを判定する(ステップS104)。この判定の結果、全てのデータの記録が終了したと判定された場合(ステップS104:Yes)、そのまま記録動作を終了し、必要に応じてDVD−ROMとの互換性を保つためのファイナライズ処理を施したり、或いは光ディスク100を情報記録装置1からイジェクトするように構成してもよい。
続いて、図4から図10を参照して、図3のステップS102における最適レーザパワーの検出動作について説明を進める。ここでは、この検出動作として、第1動作例として、データの記録速度に係わらずAR特性に基づいて最適レーザパワーを検出する検出動作を行なう具体例と、第2動作例として、データの記録速度に応じて最適レーザパワーを検出する手法を切り替える検出動作を行なう具体例について説明を進める。
(2)第1動作例
先ず、図4から図9を参照して、第1動作例について説明する。ここでは、図4を参照して検出動作全体の流れを説明しながら、適宜他の図面を参照することで第1動作例を説明する。ここに、図4は、第1動作例に係る最適レーザパワーの検出動作の流れを概念的に示すフローチャートである。
図4に示すように、先ずOPC処理を行なう(ステップS201)。ここで、OPC処理について、図5を参照しながら詳細な説明を加える。ここに、図5は、本実施例に係る情報記録装置の動作において、16パワーステップの場合の1回のOPC処理を示した模式的タイミングチャート図である。
まず、CPU550による制御下で、光ピックアップ501が光ディスク100上の例えばリードインエリア104等に設けられたPCA(Power Control Area)へ移動される。そして、順次段階的に(例えば、相互に異なる16段階の)レーザパワーが切り換えられて、OPCパターン等のテスト信号がPCAに記録される。具体的には、OPC回路505により生成される図5に示すような基準OPCパターン等のテスト信号が記録される。テスト信号としては、例えば3T〜11Tないしは14Tのランダムパターンが一つの例として挙げられる。このようなOPCパターンは、CPU550の制御の下に、所定のストラテジに従って作成される。図5では、段階的に切り替えられるレーザパワー毎に、ランダムパターンのうち3Tパターンのテスト信号を記録する第1ピット区間及び11Tパターンのテスト信号を記録する第2ピット区間を含んだOPCパターンを記録する態様を一具体例として示している。もちろん、段階的に切り替えられるレーザパワー毎に、異なるOPCパターンを用いるように構成してもよい。
レーザドライブ回路504は、このOPCパターンにより、レーザパワーを順次段階的に切り換えるように、光ピックアップ504内の半導体レーザを駆動する。
その後、このようなPCAへのOPCパターンの記録完了後には、CPU550の制御下で、該PCAにおける記録部分(即ち、OPCパターン)が再生される。そして、段階的に切り替えられたレーザパワー毎に、再生されたRF信号より、各種再生品質を検出する。例えば、RF振幅測定回路521の動作により測定されるRFピーク値及びRFボトム値からアシンメトリ(或いは、β値)を検出したり、ジッタ計測回路540の動作によりジッタ値を検出したり、LPPデータ検出器512或いはLPPエラーレート検出器513の動作によりAR特性(或いは、記録後LPP特性)を検出したりしてもよい。このような再生品質の検出が、段階的に切り替えられたレーザパワー毎に、1回のOPC処理において、例えば記録されたOPCパターンの回数に応じて行われる。
再び図4において、OPC処理の結果に基づいて、CPU550の制御の下に、レーザパワーと各種再生品質(例えば、AR特性やアシンメトリやジッタ値等)との相関関係を示す相関情報を作成する(ステップS202)。この相関情報により、図6に示すような、順次段階的に切り替えられたレーザパワーとそのレーザパワーにて記録されたOPCパターンの各種再生品質との関係を示す情報を作成することができる。なお、図6は、OPC動作により作成された相関情報を概念的に示すグラフである。
例えば、アシンメトリを縦軸に、段階的に切り替えられたレーザパワーを横軸にとるグラフ上において、OPCパターンの再生により得られたアシンメトリをプロットし、且つ近似曲線で結ぶことで、図6(a)に示すような相関情報を得ることができる。係る近似曲線は、例えば最小二乗法等の数学的又は統計的手法を用いて作成することができる。
また、他の再生品質たるAR特性においても同様に、図6(b)に示すような相関情報を作成することができる。このレーザパワーとAR特性との相関関係を示す相関情報が、本発明における「相関情報」の一具体例に相当する。また、他の再生品質たるジッタ値においても同様に、図6(c)に示すような相関情報を作成することができる。
尚、OPCパターンの再生によって得られるレーザパワーと各種再生品質との関係に応じて、例えば数学的に演算等を行うことで最適レーザパワーを検出するものとしてもよい。
再び図4において、CPU550の制御の下に、ステップS202で作成された相関情報に基づいて、ジッタボトム(即ち、ジッタ値が最小)又はアシンメトリが“0”となるようなレーザパワーに対応するAR特性が最大値を有するか否かが判定される(ステップS203)。
本実施例に係る情報記録装置1は、データの再生品質のうちAR特性を特に重要視して最適比を決めるように構成されている。そして、この「AR特性が最大値を有する」条件が、本発明における「所定の第1基準」の一具体例に相当する。また、「ジッタボトム(即ち、ジッタ値が最小)又はアシンメトリが“0”となる」条件が、本発明における「所定の第2基準」の一具体例に相当する。
この判定の結果、ジッタボトム又はアシンメトリが“0”となるようなレーザパワーに対応するAR特性が最大値を有していないと判定された場合(ステップS203:No)、AR特性が最大値を有するようなレーザパワーが最適レーザパワーとして検出される。但し、このときも、最適レーザパワーに対応するジッタ値やアシンメトリが規格上良好な値を有している(即ち、ジッタ値やアシンメトリが最適である)ことがより好ましい。
他方、ジッタボトム又はアシンメトリが“0”となるようなレーザパワーに対応するAR特性が最大値を有していると判定された場合(ステップS203:Yes)、このジッタボトム又はアシンメトリが“0”となるようなレーザパワー(即ち、この場合、AR特性が最大値を有するようなレーザパワー)が最適レーザパワーとして検出される。
このジッタボトム(即ち、ジッタ値が最小)又はアシンメトリが“0”となるようなレーザパワーに対応するAR特性が最適であるか否かの判定動作について、具体的に図7及び図8に示す相関情報を用いて説明する。ここに、図7は、レーザパワーとAR特性及びジッタ値の夫々との相関関係を示す相関情報であって、図8は、レーザパワーとAR特性及びアシンメトリの夫々との相関関係を示す相関情報である。
ジッタ値及びAR値等の再生品質を縦軸に、適宜変化させられたレーザパワーを横軸にとるグラフ上において、試しデータの再生により得られたジッタ値及びAR値の夫々をプロットし、且つ近似曲線で結ぶことで、図7に示すような相関情報を得ることができる。係る近似曲線は、上述したように、例えば最小二乗法等の数学的又は統計的手法を用いて作成することができる。
図7に示すように、ジッタ値が最小(図7においては、ジッタ値=“6.0%”)となるのは、レーザパワー=“15.83mW”となっている場合である。このとき、AR特性を見ると、AR特性=“25.9%”を示している。他方、AR特性が最も大きな値となるのは、AR特性=“26.8%”となっている。従って、この場合は、AR特性が最も大きな値をとるようなレーザパワー(即ち、図7より“15.54mW”なるレーザパワー)が最適レーザパワーとして検出される。このようなレーザパワーを最適レーザパワーとして検出しても、ジッタ値は概ね7%前後の範囲に収まっており、例えば光ディスク100の一具体例たるDVD−R/RWの規格上良好な値を実現しているため、特段再生品質が悪化する等の問題は生じない。
同様に、アシンメトリ及びAR値等の再生品質を縦軸に、適宜変化させられたレーザパワーを横軸にとるグラフ上において、試しデータの再生により得られたアシンメトリ及びAR値の夫々をプロットし、且つ近似曲線で結ぶことで、図8に示すような相関情報を得ることができる。係る近似曲線は、上述したように、例えば最小二乗法等の数学的又は統計的手法を用いて作成することができる。
図8に示すように、アシンメトリが“0”となるのは、レーザパワー=“15.76mW”となっている場合である。このとき、AR特性を見ると、AR特性=“26.5%”を示している。他方、AR特性が最も大きな値となるのは、AR特性=“26.8%”となっている。従って、この場合は、AR特性が最も大きな値をとるようなレーザパワー(即ち、図7より“15.54mW”なるレーザパワー)が最適レーザパワーとして検出される。このようなレーザパワーを最適レーザパワーとして検出しても、アシンメトリは概ね“−0.02”程度の数値であり、例えば光ディスク100の一具体例たるDVD−R/RWの規格上良好な値を実現しているため、特段再生品質が悪化する等の問題は生じない。
以上のように、特に高速記録時には、AR特性が最大となるようなレーザパワーで光ディスクに情報を記録することで、その情報を再生した際の再生品質としてのジッタ値が最小、又はアシンメトリ値が“0”とならないような場合であっても、ジッタ値、アシンメトリ値は概ね許容範囲内に収まることが確認できる。本発明は高速記録した情報を再生した時のジッタ値の変化の度合いがレーザパワーの変化に対して緩やかであることに着目したものである。すなわち、一般に高速記録時には短い時間に高いレーザパワーのレーザ光LBを記録媒体に照射するために、図9(b)に示すように、記録されるピットは横に広がる傾向がある。記録ピットが横に広がると、そのピットを再生するときは再生信号振幅レベルが大きくなり、ジッタ値は良好となる傾向がある。また、レーザパワーの変化に対するアシンメトリ値の変化はジッタ値の変化とある程度の関連性をもって変化することが発明者によって確認されており、ジッタ値が良好になれば多少のレーザパワーの変動があってもジッタ値は大幅に劣化しないことに加え、アシンメトリ値も“0”付近を推移するため、AR特性が最大となるようにレーザパワーを変化させたとしても、ジッタ値及びアシンメトリは許容範囲内に収めることができるのである。
尚、上述の実施例ではAR特性が最大値となるようなレーザパワーを最適レーザパワーとして検出しているがこれに限られるものではない。例えばジッタボトム又はアシンメトリが“0”となるようなレーザパワーに対応するAR特性が好適であるようなレーザパワーを最適レーザパワーとして検出するように構成してもよい。但し、この第1動作例でいう「AR特性が好適」なる条件とは、本発明における「所定の第1基準」の一具体例であって、AR特性が光ディスク100の規格上良好な値を示しているという趣旨であり、例えば光ディスク100がDVD−Rの場合には、AR特性が15%以上の値を実現しており、例えば光ディスク100がDVD−RWの場合には、AR特性が10%以上の値を実現していることを示す。
更に、「ジッタボトム」という条件に代えて、「ジッタが好適である」という条件の場合にAR特性が最大値(或いは、好適)であるかを判定するように構成してもよい。ここに、「ジッタ値が好適」なる条件とは、本発明における「所定の第2基準」の他の具体例であり、ジッタ値が光ディスク100の規格上良好な値を示しているという趣旨であり、例えば光ディスク100がDVD−R/RWの場合には、ジッタ値が8%以下の値(より好ましくは、より小さな値)を実現していることを示す。
同様に、「アシンメトリが好適」という条件の場合にAR特性が最大値(或いは、好適)であるかを判定するように構成してもよい。ここに、「アシンメトリが好適」とは、本発明における「所定の第2基準」の他の具体例であって、アシンメトリが光ディスク100の規格上良好な値を示しているという趣旨であり、例えば光ディスク100がDVD−R/RWの場合には、アシンメトリが−5%から15%の範囲の値(より好ましくは、0%の値)を実現していることを示す。
また、必要に応じては、アシンメトリが好適な範囲になく且つジッタ値とAR特性の双方が好適な範囲にある(より好ましくは、ジッタボトムで且つAR特性が最大値を有するような)レーザパワーを最適レーザパワーとして検出してもよいし、ジッタ値が好適な範囲になく且つアシンメトリとAR特性の双方が好適な範囲にある(より好ましくは、アシンメトリが“0”で且つAR特性が最大値を有するような)レーザパワーを最適レーザパワーとして検出してもよい。或いは、高速記録時のLPP信号のエラーレートを低下させるという観点を強調すれば、ジッタ値とアシンメトリとの双方が好適な範囲になくとも、AR特性がより好適な範囲にある(より好ましくは、最大値を有する)レーザパワーを最適レーザパワーとして検出するように構成してもよい。但し、より好適な再生品質を実現する(即ち、適切にデータを記録する)という観点からは、ジッタ値が最小或いはアシンメトリが“0”となるような場合においてAR特性が最大値(或いは、好適)となるようなレーザパワーを最適レーザパワーとして検出することがより好ましいし、アシンメトリとジッタ値とAR特性との夫々が好適な範囲にあるレーザパワーを最適レーザパワーとして検出することが好ましい。
更に、図7や図8に示すような相関情報は、本発明における「格納手段」の一具体例たるメモリ560に記録するように構成してもよいし、或いは光ディスク100の所定の記録領域に記録するように構成してもよい。また、図4のステップS204又はS205において検出された最適レーザパワーも、メモリ560に格納されるように構成してもよいし、或いは光ディスク100の所定の記録領域に記録するように構成してもよい。
このように特に高速記録時には通常のOPCで重視するアシンメトリやジッタ値によらずとも、再生時のAR特性を特に重視して最適レーザパワーを検出することで、特に高速な記録速度でデータが記録された場合であっても、良好な再生品質を得ることができる。これは高速記録時に光ディスク100上に形成される記録ピットと低速記録時に光ディスク100上に形成される記録ピットとの相違に起因している。この記録ピットの相違について図9を参照して具体的に説明する。ここに、図9は、高速記録時と低速記録時の夫々において形成される記録ピットの形状を概念的に説明する斜視図である。
図9(a)に示すように、低速記録時(具体的には、概ね1倍速や2倍速の記録速度での記録時)においては、光ディスク100の回転速度が相対的に遅いため、レーザ光LBを照射する時間が高速記録時(具体的には、概ね4倍速以上の記録速度での記録時)よりも長くなる。従って、記録ピットは適切なピット形状を有して形成される。
これに対して、図9(b)に示すように、高速記録時には、光ディスク100の回転速度が相対的に速いため、レーザ光LBを照射する時間が低速記録時よりも短くなる。加えて、光ディスク100の回転速度が増加するにつれて、記録動作に要するレーザ光LBのパワーも増加する。従って、短時間で且つ高レーザパワーのレーザ光LBの照射に起因して、記録ピットがグルーブトラックGT上のみならずLPP上にまで形成されてしまう。これにより、LPPの読取特性であるAR特性が大幅に悪化してしまう。
しかるに、本実施例に係る情報記録装置1によれば、再生品質としてAR特性を重視して最適レーザパワーを検出するため、高速記録時においても、低速記録時のように適切な形状を有する記録ピットを形成することができる。即ち、高速記録時においても良好な再生品質(特に、AR特性)を得ることが可能となる。
このとき、図9(c)の右側に示すような駆動パルス(即ち、トップパルスとミドルパルスとを有する駆動パルス)に基づきレーザ光LBを照射することがより好ましい。このような駆動パルスに基づいてレーザ光LBを照射することで、図9(b)に示すようにLPPの部分にまで記録マークを形成されることをより効果的に防ぐことが可能となる。即ち、図9(c)の左側に示すように、高速記録時であっても、低速記録時と同様に適切な形状の記録マークをより好適に形成することが可能となる。これは、図9(c)に示すようなミドルパルスに対応する駆動パルスに基づいてレーザ光LBを照射すれば、当該ミドルパルスに対応する期間のレーザパワーを相対的に小さくし、記録マークの膨らみを防ぐことができる。また、AR特性のみを重視するのではなく、他の再生品質たるアシンメトリやジッタ値ももちろん良好な特性が得られるようなレーザパワーを最適レーザパワーと検出しているため、より良好な再生品質を得ることが可能である。即ち、従来の情報記録装置と比較して、記録されるデータの再生品質をより向上させることが可能となる。
以上の結果、本実施例に係る情報記録装置1によれば、好適なレーザパワーたる最適レーザパワーを好適に検出することができる。このため、この最適レーザパワーに応じた駆動パルスにてレーザ光LBを照射するように光ピックアップ501を制御すれば、記録されるデータの再生品質をより向上させることが可能となる。
また、本実施例では、本発明における「プリ情報」の一具体例としてLPPを用いて説明をしたが、もちろんこれに限られるものではない。例えば、光ディスク100の一具体例としてのDVD+R/RWでは、グルーブトラックを所定周期でうねらせることによりウォブルを作成しており、また該ウォブルに例えばBPM(Bi Phase Modulation)変調を施すことで本発明における「プリ情報」の一具体例を記録している。従って、この場合は、再生品質として、AR特性に代えてウォブルの読取エラーレート等(例えば、ATIP(Absolute Time In Pre-groove)等)により本実施例における各種動作(特に、最適比の検出動作)を行なうことが好ましい。
また、AR特性に加えて又は代えて、再生品質としてRF信号の変調度やデータを再生したときの誤り個数をカウントすることで求められるエラーレートであるPIエラーやRF信号自体のエラーレート等を用いるように構成してもよい。
(3)第2動作例
続いて、図10を参照して、第2動作例について説明する。ここに、図10は、本実施例の第2動作例に係る最適レーザパワーの検出動作の流れを概念的に示すフローチャートである。
図10に示すように、先ず光ディスク100をローディングし(ステップS101)、その後、当該光ディスク100に対して基準記録速度である1倍速の記録速度に対して4倍速以上の記録速度で記録動作を行なうか否かが判定される(ステップS301)。
この判定の結果、4倍速以上の記録速度で記録動作を行なうと判定された場合(ステップS301:Yes)、上述の第1動作例において例示したように最適レーザパワーが検出される(ステップS102)。即ち、AR特性の向上に重点をおいて最適レーザパワーを検出する。そして、その後の記録動作が行なわれ(ステップS103)、必要に応じて記録動作を継続したり或いは記録動作を終了する。
他方、4倍速未満の記録速度(例えば、1倍速や2倍速等の記録速度)で記録動作を行うと判定された場合(ステップS301:No)、通常のOPC動作を行なって最適レーザパワーを検出する(ステップS602)。具体的には、ジッタボトムとなるレーザパワー或いはアシンメトリが“0”となるレーザパワーを最適レーザパワーとして検出する。そして、その後に記録動作が行なわれる(ステップS103)。ここでは、ステップS302において検出された最適レーザパワーに基づいてレーザ光LBを照射することで記録動作を行なう。そして、必要に応じて記録動作を継続したり或いは記録動作を終了する。
このように、記録速度に応じて最適レーザパワーを検出する手法を適宜切り替えることで、特にAR特性の悪化が大きな問題となる高速記録時(即ち、4倍速以上の記録速度での記録時)においては上述したようにAR特性の向上に重点をおいて、最適レーザパワーを検出している。これにより、高速記録時においては、上述した各種利益を享受することができる。
他方、AR特性の悪化がそれ程大きな問題とならない低速記録時(即ち、4倍速未満の記録速度での記録時)には、このようにAR特性の向上に重点をおいて最適レーザパワーを検出しなくとも、AR特性をそれ程悪化させることなく、好適にデータを記録することができる。むしろ低速記録時には、ジッタ値やアシンメトリの悪化の方が大きな問題となるため、これらジッタ値やアシンメトリの向上を図ることができるように最適レーザパワーを検出することが望まれる。従って、第2動作例によれば、低速記録時においても再生品質を悪化させることなく、適切にデータを記録することができる。
もちろんこの変形例においても、低速記録時に記録されたデータの記録品質によっては、必要に応じて上述したようにAR特性の向上に重点をおいて最適レーザパワーの検出を行ってもよいことはいうまでもない。
更に、記録速度の変化に関わらず、AR特性の向上に重点をおいて最適レーザパワーを検出するか或いはアシンメトリやジッタ値の向上に重点をおいて最適レーザパワーを検出するかを適宜選択可能に構成してもよい。このような選択は、本発明における「選択手段」の一具体例たるCPU550の動作により自動的に行われてもよい。この場合、例えば実際に記録したデータの再生品質を必要に応じて測定することで、いずれの手法により最適レーザパワーを検出するかを選択するように構成してもよい。或いは本発明における「選択手段」の他の具体例たるリモコンや操作ボタンやタッチパネル等の外部入力装置を用いてなされる当該情報記録装置1のユーザの指示に基づいて行われてもよい。
また本考案はAR特性の向上に重点をおいて記述したが、DVD-R/RW以外のシステムにおいては、本発明でLPPとして説明したプリ情報に相当する情報として、例えばDVDRAMではエンボスピットにより生成されるCAPA信号、DVD+R/RWやBul-Rayシステムではグルーブウォブルにより生成されるウォブル信号の位相変調でアドレスやその他重要な信号を記録している。そして、これらの信号は記録後にその信号品質が劣化する共通な問題点を持っているため、同様に本考案が有効であることは自明である。
また、上述の実施例では、情報記録媒体の一例として光ディスク100及び情報記録装置の一例として光ディスク100に係るレコーダについて説明したが、本発明は、光ディスク及びそのレコーダに限られるものではなく、他の高密度記録或いは高転送レート対応の各種情報記録媒体並びにそのレコーダにも適用可能である。
本発明は、上述した実施例に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴なう情報記録装置及び方法、並びに、記録制御用のコンピュータプログラムもまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。