本発明は、無線通信において周波数利用効率を向上させる技術に関する。
従来、無線通信において周波数利用効率を向上させるための技術として、例えば、時空間ブロック符号のように、複数のアンテナを用いてブロック単位のシンボルを送信するものが知られている。この技術は、例えば文献「“Space−Time Block Codes from Orthogonal Designs”IEEE Transactions on Information Theory,pp.1456−1467,vol.45,no.5,July 1999」に開示されている。以下、この非特許文献1に開示された内容について図面を用いて説明する。
図1に示すように、送信装置は複数のアンテナAN1、AN2を有し、各アンテナAN1、AN2から同時に信号を送信する。受信装置は、同時に送信された複数の信号をアンテナAN3で受信する。
図2に、各アンテナAN1、AN2から送信される信号のフレーム構成を示す。アンテナAN1からは送信信号Aが送信され、これと同時にアンテナAN2からは送信信号Bが送信される。送信信号A及び送信信号Bは、符号化利得とダイバーシチ利得とが得られるように同じシンボルが複数回配置されたシンボルブロックからなる。
さらに詳しく説明する。図2において、S1、S2はそれぞれ異なるシンボルを示すと共に、複素共役を“*”で示す。時空間ブロック符号化では、時点iにおいて、第1のアンテナAN1からシンボルS1を送信すると同時に第2のアンテナAN2からシンボルS2を送信し、続く時点i+1において、第1のアンテナAN1からシンボル−S2*を送信すると同時に第2のアンテナAN2からシンボルS1*を送信する。
受信装置のアンテナAN3では、アンテナAN1とアンテナAN3間の伝送路変動h1(t)を受けた送信信号Aと、アンテナAN2とアンテナAN3間の伝送路変動h2(t)を受けた送信信号Bとが合成された信号が受信される。
受信装置は、伝送路変動h1(t)とh2(t)を推定し、その推定値を用いることにより、合成された受信信号から元の送信信号Aと送信信号Bを分離した後に、各シンボルを復調するようになっている。
この際、図2に示すような時空間ブロック符号化された信号を用いると、信号分離時に、伝送路変動h1(t)、h2(t)に拘わらず各シンボルS1、S2を最大比合成できるようになるので、大きな符号化利得とダイバーシチ利得とが得られるようになる。この結果、受信品質を向上させることができる。
"Space−Time Block Codes from Orthogonal Designs"IEEE Transactions on Information Theory,pp.1456−1467,vol.45,no.5,July 1999
ところで、時空間ブロック符号化した信号を用いると、確かに受信品質は向上するものの、伝送効率が低下する欠点がある。すなわち、時点i+1で送信されるS1*や−S2*は、受信装置においてはS1、S2として復調されるので、実質的には時点iで送信されたS1、S2と同じ情報である。このため、同じ情報を2度送信していることになり、この分データの伝送効率が低下する。
例えば一般的なマルチアンテナ通信システムにおいては、時点i+1おいてシンボルS1、S2とは異なるシンボルS3、S4を送信するので、時点iから時点i+1の期間では4つのシンボルS1〜S4を送信することができる。つまり、単純に考えると、時空間ブロック符号化技術を用いた場合、データ伝送効率が、一般的なマルチアンテナ通信の半分に低下してしまう。
本発明の目的は、無線通信におけるデータ伝送効率を一段と向上させることである。
本発明の送信装置の一つの態様は、送信データに応じて変調信号の複数スロットへの割り当て方を変えることにより、送信データに応じてチャネル行列パターンの異なるベースバンド信号を形成するベースバンド信号形成手段と、当該ベースバンド信号を無線信号に変換する無線手段と、当該無線信号を送信する送信アンテナとを具備する構成を採る。
この構成によれば、送信データに応じてチャネル行列パターンを変えるようにしたので、チャネル行列の各要素である変調シンボルに加えて、チャネル行列のパターンでもデータを伝送できるようになる。この結果、周波数帯域を広げることなく、データ伝送量を増やすことができ、周波数利用効率を向上させることができる。
本発明の受信装置の一つの態様は、複数スロットのデータを用いてチャネル行列を推定するチャネル行列推定手段と、このチャネル行列へのデータ割り当てパターンに基づいて送信データを推定する送信データ推定手段とを具備する構成を採る。
本発明の無線通信方法の一つの態様は、送信データに応じて変調信号の複数スロットへの割り当て方を変えることにより、送信データに応じてチャネル行列パターンの異なるベースバンド信号を形成して送信する送信ステップと、複数スロットのデータを用いてチャネル行列を推定し、チャネル行列へのデータ割り当てパターンに基づいて送信データを推定する受信ステップとを含むようにする。
本発明によれば、チャネル行列のパターンでデータを伝送するようにしたので、データ伝送効率を向上させることができる。
[図1]従来のマルチアンテナ通信システムの構成を示すブロック図
[図2]時空間ブロック符号の説明に供する図
[図3]実施の形態のマルチアンテナ通信システムの構成を示すブロック図
[図4]実施の形態1の送信装置の構成を示すブロック図
[図5]時空間ブロック符号信号形成部の構成を示すブロック図
[図6]図6Aは、送信データが「0」の場合に、アンテナAN1に供給される信号の様子を示す図であり、図6Bは、送信データが「1」の場合に、アンテナAN1に供給される信号の様子を示す図
[図7]図7Aは、送信データが「0」の場合に、アンテナAN2に供給される信号の様子を示す図であり、図7Bは、送信データが「1」の場合に、アンテナAN2に供給される信号の様子を示す図
[図8]図8Aは、送信データが「0」の場合の時空間ブロック符号のパターンを示す図であり、図8Bは、送信データが「1」の場合の時空間ブロック符号のパターンを示す図
[図9]実際のフレーム構成例を示す図
[図10]実施の形態1の受信装置の構成を示すブロック図
[図11]復調部の構成を示すブロック図
[図12]実施の形態2の送信装置の構成を示すブロック図
[図13]時空間ブロック符号信号形成部の構成を示すブロック図
[図14]図14Aは、送信データが「0」の場合に、アンテナAN1に供給される信号の様子を示す図であり、図14Bは、送信データが「1」の場合に、アンテナAN1に供給される信号の様子を示す図
[図15]図15Aは、送信データが「0」の場合に、アンテナAN2に供給される信号の様子を示す図であり、図15Bは、送信データが「1」の場合に、アンテナAN2に供給される信号の様子を示す図
[図16]図16Aは、送信データが「0」の場合の時空間ブロック符号のパターンを示す図であり、図16Bは、送信データが「1」の場合の時空間ブロック符号のパターンを示す図
[図17]実際のフレーム構成例を示す図
[図18]実施の形態2の受信装置の構成を示すブロック図
[図19]復調部の構成を示すブロック図
[図20]図20Aは、時空間ブロック符号を時間方向に配置した場合における、送信データが「0」の場合の時空間ブロック符号のパターンを示す図であり、図20Bは、時空間ブロック符号を時間方向に配置した場合における、送信データが「1」の場合の時空間ブロック符号のパターンを示す図
[図21]時空間ブロック符号を時間方向に配置した場合における、実際のフレーム構成を示す図
[図22]図22Aは、(1)式の時空間ブロック符号パターンで送信した場合の信号点配置例を示す図であり、図22Bは、(2)式の時空間ブロック符号パターンで送信した場合の信号点配置例を示す図
[図23]図23Aは、送信データが「0」の場合の他の時空間ブロック符号パターン例を示す図であり、図23Bは、送信データが「1」の場合の他の時空間ブロック符号パターン例を示す図
[図24]M aryスペクトル拡散通信方式を用いた送信装置の構成を示すブロック図
[図25]図25Aは、データ「0」を送る場合のM aryの直交符号割り当て例を示し、図25Bは、データ「1」を送る場合のM aryの直交符号割り当て例を示す図
[図26]図26Aは、データ「00」を送る場合のチャネル行列の例を示し、図26Bは、データ「01」を送る場合のチャネル行列の例を示し、図26Cは、データ「10」を送る場合のチャネル行列の例を示し、図26Dは、データ「11」を送る場合のチャネル行列の例を示す図
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
(実施の形態1)
図3に、本実施の形態のマルチアンテナ通信システム10の全体構成を示す。マルチアンテナ通信システム10において、送信装置100は複数のアンテナAN1、AN2を有し、各アンテナAN1、AN2から同時に信号を送信する。受信装置200は、同時に送信された複数の信号をアンテナAN3で受信する。なお、アンテナAN1から送信された信号は伝送路変動h1(t)を受けてアンテナAN3で受信され、アンテナAN2から送信された信号は伝送路変動h2(t)を受けてアンテナAN3で受信される。
図4に、本実施の形態の送信装置100の構成を示す。送信装置100は、送信ディジタル信号(以下これを単に送信データと呼ぶ)101を時空間ブロック符号信号形成部102に入力する。時空間ブロック符号信号形成部102は、フレーム構成信号生成部109によって生成されたフレーム構成信号110に従って、送信データ101を時空間ブロック符号化処理し、これにより得た時空間ブロック符号信号103、104をそれぞれ拡散部105−A、105−Bに送出する。
各拡散部105−A、105−Bは、時空間ブロック符号信号103、104に拡散符号を乗算することにより拡散信号106−A、106−Bを得、これを無線部107−A、107−Bに送出する。各無線部107−A、107−Bは、拡散信号106−A、106−Bに対して直交変調や周波数変換等の所定の無線処理を施し、これにより得た無線送信信号108−A、108−BをアンテナAN1、AN2に供給する。
図5に、時空間ブロック符号信号形成部102の構成を示す。時空間ブロック符号信号形成部102は、送信データ101を先ずデータ分流部120に入力する。データ分流部120は、送信データ101を送信データ101−A、101−B、101−Cに分流し、送信データ101−Aを変調部121に、送信データ101−Bを変調部122に、送信データ101−Cを信号選択部127にそれぞれ送出する。
変調部121は、送信データ101−Aに対してQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)や16QAM(Quadrature Amplitude Modulation)等のディジタル変調処理を施すことにより、送信シンボルS1を得る。例えばQPSKの場合には、2ビットの送信データ101−Aから1つの送信シンボルS1を得る。変調部121は、これにより得た送信シンボルS1を変調信号123として出力すると共にその複素共役S1*を変調信号124として出力する。
同様に変調部122は、送信データ101−Bに対してQPSKや16QAM等のディジタル変調処理を施すことにより、送信シンボルS2を得る。変調部122は、これにより得た送信シンボルS2を変調信号125として出力すると共にその負の複素共役−S2*を変調信号126として出力する。
信号選択部127は、変調部121からの変調信号123、124及び変調部122からの変調信号125、126を、データ分流部120からの送信データ101−Cに応じた順序で、かつ送信データ101−Cに応じて出力信号103又は出力信号104に割り振って出力する。これにより、送信データ101−Cに応じてパターンの異なる時空間ブロック符号信号103、104が形成される。なお、信号選択部127は、フレーム構成信号110に従った位置に、パイロット信号生成部128によって生成されパイロット信号129を挿入する。
図6A、6B、図7A、7B、図8A、8B及び図9を用いて、信号選択部127による具体的な処理を説明する。図6A、6Bに信号103の様子を示し、図7A、7Bに信号104の様子を示す。図6Aに示すように、信号選択部127は、送信データ101−Cが「0」の場合には、S1、−S2*の順でシンボルを出力することで信号103を得る。これに対して、図6Bに示すように、送信データ101−Cが「1」の場合には、S2、S1*の順でシンボルを出力することで信号103を得る。
また図7Aに示すように、信号選択部127は、送信データ101−Cが「0」の場合には、S2、S1*の順でシンボルを出力することで信号104を得る。これに対して、図7Bに示すように、送信データ101−Cが「1」の場合には、S1、−S2*の順でシンボルを出力することで信号104を得る。
図6A、6B及び図7A、7Bをまとめたものを、図8A、8Bに示す。すなわち、信号選択部127は、送信データ101−Cが「0」の場合には、図8Aに示すようなパターンの時空間ブロック符号信号103、104を形成する。これに対して、信号選択部127は、送信データ101−Cが「1」の場合には、図8Bに示すようなパターンの時空間ブロック符号信号103、104を形成する。
実際のフレーム構成例を、図9に示す。図中の網掛け部分はパイロットシンボルを示す。時点i−1で各アンテナAN1、AN2からパイロットシンボルが送信される。続く時点i及び時点i+1において、データ「0」に対応するパターンの時空間ブロック符号信号103、104が送信される。さらに続く時点i+2及び時点i+3において、データ「1」に対応するパターンの時空間ブロック符号信号103、104が送信される。
これにより、送信装置100においては、シンボルS1、S2により伝送されるデータに加えて、時空間ブロック符号のパターンによってデータを伝送できるので、この分だけ時間当たりに送信できるデータ量を増やすことができる。
例えば変調部121、122によってQPSK変調を行う場合を考える。シンボルS1、S2は、1シンボル当たり2ビットのデータを伝送できるので、時点iから時点i+1の期間において変調シンボルS1、S2で送信できるデータは、4ビットである。これに加えて、時点iと時点i+1の期間において、時空間ブロック符号のパターンによって1ビット伝送できるので、合計5ビット伝送できるようになる。
因みに、変調部121、122がQPSK変調を行う場合には、データ分流部120によって、送信データ101の最初の2ビットを変調部121に送出し、次の2ビットを変調部122に送出し、次の1ビットを信号選択部127に送出すればよい。
図10に、送信装置100から送信された時空間ブロック符号信号を受信する受信装置200の構成を示す。受信装置200は、アンテナAN3で受信した信号201を無線部202に入力する。無線部202は、周波数変換や直交復調等の所定の無線受信処理を施し、これにより得た受信ベースバンド信号203を逆拡散部204に送出する。逆拡散部204は、受信ベースバンド信号203を逆拡散し、逆拡散後の受信ベースバンド信号205を、第1伝送路推定部206、第2伝送路推定部207、同期部210及び復調部212に送出する。
第1伝送路推定部206は、アンテナAN1から送信された信号に含まれるパイロットシンボルに基づいて、アンテナAN1とアンテナAN3との間の伝送路変動h1を求め、これを伝送路推定信号208として復調部212に送出する。第2伝送路推定部207は、アンテナAN2から送信された信号に含まれるパイロットシンボルに基づいて、アンテナAN2とアンテナAN3との間の伝送路変動h2を求め、これを伝送路推定信号209として復調部212に送出する。
同期部210は、各アンテナAN1、AN2から送信された信号に含まれるパイロットシンボルに基づき、各アンテナAN1、AN2から送信された信号の同期をとり、同期のためのタイミング信号211を復調部212に送出する。
図11に、復調部212の構成を示す。復調部212は、検波部220と行列推定部221を有し、これらに伝送路推定信号208、209、受信ベースバンド信号205及びタイミング信号211を入力する。行列推定部221は、伝送路推定行列の行列パターンを推定することにより、どのパターンの時空間ブロック符号を受信したかを推定する。
具体的に説明する。アンテナAN3では、アンテナAN1から送信された信号と、アンテナAN2から送信された信号が合成されて受信される。時点tにおける合成受信信号をR(t)とする。また時点tでの伝送路推定値h1、h2をそれぞれh1(t)、h2(t)とする。すると、図8Aに示すようなパターンの時空間ブロック符号が送信された場合には、次式の関係式が成り立つ。
これに対して、図8Bに示すようなパターンの時空間ブロック符号が送信された場合には、次式の関係式が成り立つ。
したがって、行列推定部221は、(1)式が成り立つか、又は(2)式が成り立つかを推定する。換言すれば、行列推定部221は、送信装置100によって、時点iから時点i+1で、どのパターンの時空間ブロック符号が送信されたかを推定する。例えば、(1)式及び(2)式を用いて、一旦、S1、S2を推定し、どちらの式で推定したS1、S2の方がシンボルとして確からしいかを判断する方法が考えられる。そして、行列推定部221は、(2)式よりも(1)式の方が確からしいと推定した場合には、受信データ215として「0」を出力する。これに対して、行列推定部221は、(1)式よりも(2)式の方が確からしいと推定した場合には、受信データ215として「1」を出力する。
この受信データ215は、検波部220にも送出される。検波部220は、受信データ215として「0」が入力された場合には(1)式を用い、(1)式についての逆行列演算を行うことによりシンボルS1、S2を推定した後、各シンボルS1、S2を復調することにより、シンボルS1についての受信データ213とシンボルS2についての受信データ214を得る。これに対して、検波部220は、受信データ215として「1」が入力された場合には(2)式を用い、(2)式についての逆行列演算を行うことによりシンボルS1、S2を推定した後、各シンボルS1、S2を復調することにより、シンボルS1についての受信データ213とシンボルS2についての受信データ214を得る。
このようにして、受信装置200は、時空間ブロック符号にて伝送されたデータと、時空間ブロック符号のパターンにて伝送されたデータとからなる送信データの全てを復元することができる。
かくして本実施の形態によれば、複数のアンテナを用いて時空間ブロック符号信号を送信する際に、送信データに応じて時空間ブロック符号のパターンを変えるようにしたことにより、時空間ブロック符号によって得られる品質の良いデータ伝送を行うことができるといった効果に加えて、時空間ブロック符号のパターンによってデータを伝送できるので、データ伝送効率を向上させることができる送信装置100を実現できる。
また受信した時空間ブロック符号のパターンを識別することにより時空間ブロック符号のパターンにより伝送されたデータを推定する行列推定部221と、行列推定部221によって推定されたチャネル推定行列を用いて時空間ブロック符号を構成する各変調信号を分離し復調する信号分離復調手段としての検波部220とを設けるようにしたことにより、送信データに応じてパターンの変えられた時空間ブロック符号信号から伝送データを全て復元し得る受信装置200を実現できる。
なおこの実施の形態では、スペクトル拡散通信方式を用いた場合の構成を例にとって説明したが、スペクトル拡散通信方式を用いないときにおいても同様に実施することができる。
(実施の形態2)
この実施の形態では、実施の形態1で説明した、送信データに応じてパターンを変えた時空間ブロック符号信号を、OFDM変調して送信することを提案する。
図4との対応部分に同一符号を付して示す図12に、本実施の形態の送信装置の構成を示す。送信装置300は、時空間ブロック符号信号形成部301の構成が若干異なることと、OFDM変調手段としての、シリアルパラレル変換部(S/P)304−A、304−B及び逆フーリエ変換部(idft)306−A、306−Bを有することを除いて、図4の送信装置100とほぼ同様の構成でなる。
送信装置300は、時空間ブロック符号信号形成部301によって形成した時空間ブロック符号信号302、303をそれぞれ、シリアルパラレル変換部304−A、304−Bに送出する。各シリアルパラレル変換部304−A、304−Bにより得られたパラレル信号305−A、305−Bはそれぞれ、逆フーリエ変換部306−A、306−Bによって逆フーリエ変換されることにより、OFDM信号307−A、307−Bとされる。OFDM信号307−A、307−Bは、無線部308−A、308−Bによって所定の無線処理が施されることにより送信OFDM信号309−A、309−Bとされた後、アンテナAN1、AN2に供給される。
図13に、時空間ブロック符号信号形成部301の構成を示す。なお図13では、図5との対応部分に同一符号を付し、ここではその部分の説明は省略する。信号選択部320は、送信データ101−Cに応じて時空間ブロック符号のパターンを変える。ここで信号選択部320による選択処理は、図5の信号選択部127による選択処理とほぼ同じだが、本実施の形態では時空間ブロック符号をOFDM送信するので、選択のパターンが若干異なる。
図14A、14B、図15A、15B、図16A、16B及び図17を用いて、信号選択部320による具体的な処理を説明する。図14A、14BにOFDM信号307−Aの様子を示し、図15A、15BにOFDM信号307−Bの様子を示す。図14Aに示すように、信号選択部320は、送信データ101−Cが「0」の場合には、信号302としてシンボルS1とシンボル−S2*を出力する。そしてこれら各シンボルS1、−S2*がシリアルパラレル変換部304−A及び逆フーリエ変換部306−AによってOFDM変調されることにより、シンボルS1がキャリア1に、シンボル−S2*がキャリア2に配置され、アンテナAN1から送信される。これに対して、図14Bに示すように、送信データ101−Cが「1」の場合には、信号302としてシンボルS2とシンボルS1*を出力する。そしてこれら各シンボルS2、S1*がシリアルパラレル変換部304−A及び逆フーリエ変換部306−AによってOFDM変調されることにより、シンボルS2がキャリア1に、シンボルS1*がキャリア2に配置され、アンテナAN1から送信される。
また図15Aに示すように、信号選択部320は、送信データ101−Cが「0」の場合には、信号303としてシンボルS2とシンボルS1*を出力する。そしてこれら各シンボルS2、S1*がシリアルパラレル変換部304−B及び逆フーリエ変換部306−BによってOFDM変調されることにより、シンボルS2がキャリア1に、シンボルS1*がキャリア2に配置され、アンテナAN2から送信される。これに対して、図15Bに示すように、送信データ101−Cが「1」の場合には、信号303としてシンボルS1とシンボル−S2*を出力する。そしてこれら各シンボルS1、−S2*シリアルパラレル変換部304−B及び逆フーリエ変換部306−BによってOFDM変調されることにより、シンボルS1がキャリア1に、シンボル−S2*がキャリア2に配置され、アンテナAN2から送信される。
図14A、14B及び図15A、15Bをまとめたものを、図16A、16Bに示す。すなわち、送信データ101−Cが「0」の場合には、図16Aに示すようなシンボル配置のOFDM信号307−A、307−Bが各アンテナAN1、AN2から送信される。つまり、OFDM信号307−AがアンテナAN1から送信されると共にOFDM信号307−BがアンテナAN2から送信される。これに対して、送信データが「1」の場合には、図16Bに示すようなシンボル配置のOFDM信号307−A、307−Bが各アンテナAN1、AN2から送信される。
実際のフレーム構成例を、図17に示す。図中の網掛け部分はパイロットシンボルを示す。時点i−1で各アンテナAN1、AN2からパイロットシンボルが送信される。続く時点iにおいて、各アンテナAN1、AN2からOFDM変調された時空間ブロック符号が送信される。図17には、2つのアンテナAN1、AN2のキャリア1とキャリア2を使って送信データ「0」に対応するパターンの時空間ブロック符号を送信し、キャリア3とキャリア4を使って送信データ「1」に対応するパターンの時空間ブロック符号を送信する場合を示す。
因みに、図17では、図の対応関係を分かり易くするために、キャリア3とキャリア4に割り当てられたシンボルS1とシンボルS2を、キャリア1とキャリア2に割り当てられたシンボルS1とS2と同じ符号を用いて記しているが、キャリア1とキャリア2に割り当てられるシンボルS1、S2と、キャリア3、4に割り当てられるシンボルS1、S2は、異なるデータから得られた異なるシンボルである。
これにより、送信装置300においては、サブキャリア1とサブキャリア2のシンボルS1、S2によって伝送するデータに加えて、その時空間ブロック符号のパターンによってデータを伝送でき、さらにサブキャリア3とサブキャリア4のシンボルによって伝送できるデータに加えて、その時空間ブロック符号のパターンによってデータを伝送できるようになる。
図18に、送信装置300から送信されたOFDM信号を受信する受信装置の構成を示す。受信装置400は、アンテナAN3で受信したOFDM信号401を無線部402に入力する。無線部402は、周波数変換や直交復調等の所定の無線受信処理を施し、これにより得たOFDM受信ベースバンド信号403をフーリエ変換部(dft)404に送出する。フーリエ変換部404は、OFDM受信ベースバンド信号403をフーリエ変換し、フーリエ変換後の受信ベースバンド信号405を、第1伝送路推定部406、第2伝送路推定部407、同期部410及び復調部412に送出する。
第1伝送路推定部406は、アンテナAN1から送信されたOFDM信号の各キャリアに含まれるパイロットシンボルに基づいて、アンテナAN1とアンテナAN3との間の各キャリア毎の伝送路変動を求め、これを伝送路推定信号408として復調部412に送出する。第2伝送路推定部407は、アンテナAN2から送信されたOFDM信号の各キャリアに含まれるパイロットシンボルに基づいて、アンテナAN2とアンテナAN3との間の各キャリア毎の伝送路変動を求め、これを伝送路推定信号409として復調部412に送出する。
同期部410は、各アンテナAN1、AN2から送信された信号に含まれるパイロットシンボルに基づき、各アンテナAN1、AN2から送信された信号の同期をとり、同期のためのタイミング信号411を復調部に送出する。
図19に、復調部412の構成を示す。復調部412は、検波部420と行列推定部421を有し、これらに伝送路推定信号408、409、受信ベースバンド信号405及びタイミング信号411を入力する。行列推定部421は、伝送路推定行列の行列パターンを推定することにより、どのパターンの時空間ブロック符号を受信したかを推定する。
具体的に説明する。アンテナAN3では、アンテナAN1から送信された信号と、アンテナAN2から送信された信号が合成されて受信される。時点tにおける合成受信信号をR(t)とする。また時点tでの伝送路推定値h1、h2をそれぞれh1(t)、h2(t)とする。すると、図16Aに示すようなパターンの時空間ブロック符号が送信された場合には、次式の関係式が成り立つ。
これに対して、図16Bに示すようなパターンの時空間ブロック符号が送信された場合には、次式の関係式が成り立つ。
行列推定部421は、例えば図17に示すようなフレーム構成の信号を受信した場合には、キャリア1とキャリア2については(3)式のパターンの時空間ブロック符号が使われたと推定して、受信データ415として「0」を出力すると共に、このことを検波部420に通知する。またキャリア3とキャリア4については(4)式のパターンの時空間ブロック符号が使われたと推定して、受信データ415として「1」を出力すると共に、このことを検波部420に通知する。
このとき検波部420は、キャリア1とキャリア2については(3)式を用い、(3)式の逆行列演算を行うことによりシンボルS1、S2を推定した後、各シンボルS1、S2を復調することにより、シンボルS1についての受信データ413とシンボルS2についての受信データ414を得る。また検波部420は、キャリア3とキャリア4については(4)式を用い、(4)式の逆行列演算を行うことによりシンボルS1、S2(実際にはこのシンボルS1、S2はキャリア1、2のシンボルとは異なる)を推定した後、各シンボルS1、S2を復調することにより、シンボルS1についての受信データ413とシンボルS2についての受信データ414を得る。
このようにして、受信装置400は、時空間ブロック符号にて伝送されたデータと、時空間ブロック符号のパターンにて伝送されたデータとからなる送信データの全てを復元することができる。
かくして本実施の形態によれば、OFDM信号のサブキャリアに時空間ブロック符号を割り当てて送信するにあたって、送信データに応じて時空間ブロック符号のパターンを変えるようにしたことにより、時空間ブロック符号によって得られる品質の良いデータ伝送を行うことができるといった効果に加えて、時空間ブロック符号のパターンによってデータを伝送できるので、データ伝送効率を向上させることができる。
特に、OFDM信号の各サブキャリアに時空間ブロック符号を割り当てると、単位時間に伝送できる時空間ブロック符号を増やすことができるので、単位時間当たりの伝送データ量を増やすことができるようになる。
なおこの実施の形態では、複数のキャリアに時空間ブロック符号を割り当てる場合(すなわち、周波数方向に時空間ブロックを割り当てる場合)について説明したが、図20A、20B及び図21に示すように、時空間ブロック符号を単一のキャリア(図20A、20B及び図21の場合にはキャリア1)単位で割り当てる(すなわち、時間方向に時空間ブロックを割り当てる)ようにしてもよい。この場合、当然、他のキャリア2、3、4にも他の時空間ブロック符号を割り当てることができる。
具体的に説明する。送信データが「0」の場合には、図20Aに示すOFDM信号307−A、307−Bを各アンテナAN1、AN2から送信する。これに対して、送信データが「1」の場合には、図20Bに示すOFDM信号307−A、307−Bを各アンテナAN1、AN2から送信する。
実際のフレーム構成例を、図21に示す。時点iにてパイロットシンボルを送信した後、時点i、i+1にてデータ「0」に対応するパターンの時空間ブロック符号をキャリア1に配置して送信し、続く時点i+2、i+3にてデータ「1」に対応するパターンの時空間ブロック符号をキャリア1に配置して送信する。
このように時空間ブロック符号の各キャリアへの配置の仕方としては、図16A、16B及び図17に示したように周波数方向に配置する方法、図20A、20B及び図21に示したように時間方向に配置する方法、又は周波数と時間の両方向に配置する方法のどの方法を採用してもよい。
なおこの実施の形態では、OFDM方式を例にとって説明したが、OFDM方式以外のマルチキャリア方式に適用した場合にも、同様の効果を得ることができる。
(実施の形態3)
本実施の形態では、受信装置側で、受信した時空間ブロック符号のパターンを識別する具体的な方法について詳述する。
例えば実施の形態1では、(1)式の送信信号が送信されたのか、(2)式の送信信号が送信されたのかを、受信側で識別することで1ビットのデータを得ることになるが、本実施の形態では、その識別の方法の例について詳しく説明する。
実際上、実施の形態1の場合、時空間ブロック符号のパターンの識別を、図11の行列推定部221によって行うので、ここでは行列推定部221の動作について詳しく説明する。本実施の形態では、送信装置100の変調部121、122でQPSK変調が行われた場合を例にとって説明する。
行列推定部221は、入力されるh1(208)、h2(209)から、時間iにおける16点の候補信号点と、時間i+1における16点の候補信号点とを求める。その様子の一例を図22A、22Bに示した。図22A、22Bにおいて、○は候補信号点を示し、×は受信点を示す。また、●は、(送信シンボルS1で送信した2ビット,送信シンボルS2で送信した2ビット)=(00,00)に対応する候補信号点を示すものである。因みに、(送信シンボルS1で送信した2ビット,送信シンボルS2で送信した2ビット)は、(00,00)〜(11,11)の16点の候補信号点のいずれかで表現される。
図22Aは、(1)式の時空間ブロック符号パターンを用いた信号が受信された場合における、時間iと時間i+1での信号点の状態を示す。図22Bは、(2)式の時空間ブロック符号パターンを用いた信号が受信された場合における、時間iと時間i+1での信号点の状態を示す。
行列推定部221は、受信点と各候補信号点とのユークリッド距離に基づいて、図22Aのパターンの信号が送信されたのか、図22Bのパターンの信号が送信されたのかを識別する。
具体的に説明する。行列推定部221は、先ず、図22Aに示すような、(1)式で送信されたと仮定した場合の信号点の状態に関し、候補信号点と受信信号点のユークリッド距離の2乗を求める。例えば、(00,00)についての時間iの候補信号点と受信信号点とのユークリッド距離の2乗をDx0000(i)とし、(00,00)についての時間i+1の候補信号点と受信信号点とのユークリッド距離の2乗をDx0000(i+1)として、(00,00)に対する受信信号点のユークリッド距離の2乗Dx0000=Dx0000(i)+Dx0000(i+1)を求める。同様にDx0001からDx1111についても求める。
同様に、図22Bに示すような、(2)式で送信されたと仮定した場合の信号点の状態に関し、候補信号点と受信信号点のユークリッド距離の2乗を求める。このとき、受信信号点については、(1)式のときと同様の位置に存在するが、候補信号点については異なる位置に存在することになる。例えば、(00,00)についての時間iの候補信号点と受信信号点とのユークリッド距離の2乗をDy0000(i)とし、(00,00)についての時間i+1の候補信号点と受信信号点とのユークリッド距離の2乗をDy0000(i+1)として、(00,00)に対する受信信号点のユークリッド距離の2乗Dy0000=Dy0000(i)+Dy0000(i+1)を求める。同様にDy0001からDy1111についても求める。
そして、行列推定部221は、Dx0000からDx1111の中の最小値Dx,minを探索すると共に、Dy0000からDy1111の中の最小値Dy,minを探索する。次に、行列推定部221は、Dx,minとDy,minを比較し、小さい値の方が確からしいと判断して、時空間ブロック符号パターンを識別する。
つまり、行列推定部221は、Dx,min>Dy,minのときには、(2)式の時空間ブロック符号パターンで信号が送信されたと判断し、受信データ215として「1」のデータを得る。これに対して、Dy,min>Dx,minのときには、(1)式の時空間ブロック符号パターンで信号が送信されたと判断し、受信データ215として「0」のデータを得る。
このようにして、行列推定部221は、受信データ215を得ることができる。
なお、本実施の形態では、最小値のみに基づき、(1)式の時空間ブロック符号パターンで送信されたか、(2)式の時空間ブロック符号パターンで送信されたかを判断したが、これに限ったものではなく、例えばDxの複数の値とDyの複数の値を用いて判断してもよい。
また本実施の形態では、実施の形態1の送信装置によって送信された信号の時空間ブロック符号パターンを識別する方法を例にとって説明したが、これに限ったものではなく、要は、受信点と候補信号点とのユークリッド距離に基づいて、時空間ブロック符号パターンの確からしさを比較するようにすればよい。このようにすれば、種々の時空間ブロック符号パターンが用いられても、どの時空間ブロック符号パターンが用いられたかを識別することができる。
(他の実施の形態)
なお上述した実施の形態1、2では、送信アンテナ数が2で受信アンテナ数が1の場合について説明したが、本発明はこれに限らず、送信アンテナが2本よりも多い場合、例えば文献“Space−time block codes from orthogonal designs”IEEE Transactions on Information Theory,pp.1456−1467,vol.45,no.5,July 1999や文献“A quasi−orthogonal space−time block code”IEEE Transactions on Communications,pp.1−4,vol.49,no.1,January 2001で示されているような時空間ブロック符号を用いたときも同様に実施することができる。
また上述した実施の形態1では、(1)式及び(2)式からも分かるように、送信データに応じてシンボルを供給するアンテナを切り替えることで、行列の列要素を入れ替えるような時空間ブロック符号のパターンを形成した場合について述べたが、図23A、23Bに示すように、送信データに応じてシンボルを出力する順序を変えることで、行列の行要素を入れ替えるような時空間ブロック符号のパターンを用いるようにしてもよい。さらに、実施の形態1のようなパターンの作り方と、図23A、23Bのようなパターンの作り方を複合的に用いれば、4つのパターンを作ることができるので、時空間ブロック符号を構成するシンボルの情報に加えて、2ビットのデータを伝送できるようになる。
また、特に、送信アンテナ数が4以上の場合には、上記文献を例とするように、ダイバーシチゲインが得られる時空間ブロック符号化方式が複数提案されている。本発明においては、送信データに応じて、これらのいずれかの時空間ブロック符号化方式を選択して送信することで、データを伝送するようにしてもよい。受信側では、どの符号化方式が使われたかを行列のパターンで認識することで、データを得るようにすればよい。つまり、時空間ブロック符号のパターンとして用いることができるのは、実施の形態1や実施の形態2で説明したものに限らず、受信側でダイバーシチゲインの得られる種々のものを適用することができる。
さらには、実施の形態1で説明したようなパターンの作り方や図23A、23Bに示したようなパターンの作り方、異なる符号化方式を用いたパターンの作り方を複合的に用いてパターンを作るようにしてもよい。このようにすれば、多数の時空間ブロック符号のパターンを作ることができるようになるので、時空間ブロック符号のパターンによって伝送できるデータ量をさらに増やすことができる。
また本発明は、換言すると、送信データに応じたチャネル行列のパターンを形成して、このチャネル行列のパターンでデータを送っている言うことができる。このようにすることにより、チャネル行列のパターンに情報をのせることができるようになるので、伝送データ量を増やすことができる。このうち、上述した実施の形態1、2は、各アンテナに供給するシンボルブロックのパターンを、送信データに応じて選択するようにしたものである。また上述した実施の形態1、2は、シンボルブロックとして、時空間ブロック符号を用いたものである。
また本発明を用いれば、さらなる応用として、シンボルS1、S2の信号点を固定とし、送信データにより変調されたチャネル行列のみでデータを伝送することも考えられる。
上述した実施の形態1、2では、時空間ブロックを例にとって説明したが、本発明の送信装置は、送信データに応じて変調信号の複数スロットへの割り当て方を変えることにより、送信データに応じてチャネル行列パターンの異なるベースバンド信号を形成するベースバンド信号形成手段を備えるようにすればよい。これにより、上述した実施の形態1、2で説明したのと同様に、チャネル行列のパターンでデータを送ることができるので、データ伝送効率を向上させることができるようになる。
また本発明の受信装置は、複数スロットのデータを用いてチャネル行列を推定するチャネル行列推定手段と、チャネル行列へのデータ割り当てパターンに基づいて送信データを推定する送信データ推定手段とを備えるようにすればよい。これにより、チャネル行列のパターンで送信データを推定することができるようになる。
ここで本発明のチャネル行列のパターン生成についての簡単な一例と、従来方式であるM aryスペクトル拡散通信方式との違いについて説明する。ここでは、送信アンテナが1つで、受信アンテナが1つの場合を例として説明する。
図24に、M aryスペクトル拡散通信方式を用いた送信装置の構成を示す。各系列発生部(系列1発生部501−1〜系列M発生部501−M)は、互いに直交した拡散符号503−1〜503−Mを発生する。選択部504は、送信データ502及び直交拡散符号503−1〜503−Mを入力し、送信データ502に応じて直交拡散符号503−1〜503−Mのうちのいずれかを選択し、それをベースバンド信号505として無線部506に送出する。無線部506はベースバンド信号505に対して、直交変調、帯域制限、周波数変換、信号増幅などの処理を施すことにより送信信号507を得、これをアンテナ508に送出する。
このM aryスペクトル拡散通信方式の特徴として、次の2つが挙げられる。・系列1から系列Mの拡散符号503−1〜503−Mは、直交(または相互相関が小さい)した系列であること。・拡散利得分のデータ伝送効率の低下を招くこと。
一例として、時間軸方向の2スロットでM aryスペクトル拡散通信方式を用いたときのフレーム構成例について説明する。図25に示すように、送信データが「0」のときには、時間iにおいて(I,Q)=(1,1)、時間i+1において(I,Q)=(1,1)を送信する。一方、送信データが「1」のときには、時間iにおいて(I,Q)=(1,−1)、時間i+1において(I,Q)=(1,−1)を送信する。すると、時間iにおける受信信号をR(i)、時間i+1における受信信号をR(i+1)とし、伝搬係数をh(t)とすると、送信データが「0」のときには(5)式が成立し、送信データが「1」のときには(6)式が成立する。
M aryスペクトル拡散通信方式においても、上式のように、行列で表すことは可能となるが、M aryスペクトル拡散通信方式と本発明とは、以下の点で異なる。M aryスペクトル拡散通信方式は、次の特徴があると言える。・拡散系列が基礎となっており、直交した(または相互相関が小さい)系列で、行列を生成している。・拡散利得を得る技術であり、データの伝送効率(周波数利用効率)が向上する技術ではない。つまり、QPSKと16QAMの関係のような伝送効率の違いを生み出すものではない。
これに対して、本発明のチャネル行列のパターンを用いてデータを伝送する方法においては、データの伝送効率(周波数利用効率)を向上させることができる。図26に、本発明のチャネル行列のパターンを用いてデータを伝送する方法におけるフレーム構成例を示す。図26では、時間方向の2スロットに着目した。なおここでは時間方向のスロットについて説明するが、周波数軸方向のスロットでチャネル行列を形成した場合についても同様のことが言える。
送信データが「00」のとき、時間iにおいて(I,Q)=(1,3)、時間i+1において(I,Q)=(3,1)を送信する。また、送信データが「01」のとき、時間iにおいて(I,Q)=(−1,3)、時間i+1において(I,Q)=(3,−1)を送信する。また、送信データが「10」のとき、時間iにおいて(I,Q)=(1,3)、時間i+1において(I,Q)=(−3,1)を送信する。また、送信データが「11」のとき、時間iにおいて(I,Q)=(3,1)、時間i+1において(I,Q)=(−3,1)を送信する。
したがって、時間iにおける受信信号をR(i)、時間i+1における受信信号をR(i+1)とし、伝搬係数をh(t)とすると、送信データが「00」のときには(7)式が、送信データが「01」のときには(8)式が、送信データが「10」のときには(9)式が、送信データが「11」のときには(10)式が成立する。
このように、本発明は、スペクトル拡散通信方式と比較すると、直交した(または相互相関が小さい)系列を利用していない点、拡散利得を求めていない点が異なる。そして、本発明では、M aryと比較すると、データの伝送効率(周波数利用効率)を向上させることができるといった顕著な効果を得ることができる。つまり、QPSKと16QAMの関係のような伝送効率の違いを生み出すことができる。
なお、ここでは説明を簡単化するために、送信アンテナが1つで、受信アンテナが1つの例を示したが、本発明はこれに限らない。例えば送信アンテナが2つで、受信アンテナが2つの場合には、上述した(7)式〜(10)式の各式が4行×4列のチャネル行列となる。すなわち、送信側で、送信データに応じて変調信号の複数スロットへの割り当て方を変えることにより、4行×4列のチャネル行列と等価となるベースバンド信号を形成して、チャネル行列のパターンにデータをのせた送信を行う。そして、受信側では、複数スロットのデータを用いて4行×4列のチャネル行列を推定し、このチャネル行列へのデータ割り当てパターンに基づいて送信データを推定する。つまり、本発明は、MIMO通信への適用も可能であり、MIMO通信に適用した場合にはチャネル行列のパターンを増やすことができるので、チャネル行列のパターンで伝送するデータ量を増やすことができるようになる。
なお、実施の形態1は、時空間ブロック符号を用いたときの例であり、このときは、特に、ダイバーシチゲインを得ながら、データの伝送効率の向上を図ることができる。
上述した各実施の形態で説明したように、本発明は以下のような態様を採ることができる。
本発明の送信装置の一つの態様は、送信データに応じて変調信号の複数スロットへの割り当て方を変えることにより、送信データに応じてチャネル行列パターンの異なるベースバンド信号を形成するベースバンド信号形成手段と、当該ベースバンド信号を無線信号に変換する無線手段と、当該無線信号を送信する送信アンテナとを具備する構成を採る。
この構成によれば、送信データに応じてチャネル行列パターンを変えるようにしたので、チャネル行列の各要素である変調シンボルに加えて、チャネル行列のパターンでもデータを伝送できるようになる。この結果、周波数帯域を広げることなく、データ伝送量を増やすことができ、周波数利用効率を向上させることができる。
本発明の送信装置の一つの態様は、送信アンテナは複数のアンテナで構成され、ベースバンド信号形成手段は、チャネル行列パターンの異なるベースバンド信号を、複数アンテナぶん形成する構成を採る。
この構成によれば、複数アンテナ分のチャネル行列パターンを用いてデータを伝送できるようになるので、一段とデータ伝送量を増やすことができるようになる。またこの構成によれば、MIMO通信におけるデータ伝送量を増やすことができるようになる。
本発明の送信装置の一つの態様は、送信アンテナは、複数のアンテナで構成され、ベースバンド信号形成手段は、送信データに応じて時空間ブロック符号のパターンを変える時空間ブロック符号信号形成手段を具備する構成を採る。
この構成によれば、時空間ブロック符号によって品質の良いデータ伝送を行うことができるのに加えて、時空間ブロック符号のパターンでデータを伝送できるので、伝送データ量を増やすことができるようになる。
本発明の送信装置の一つの態様は、時空間ブロック符号信号形成手段が、送信データから第1の送信シンボルを形成する第1の変調手段と、送信データから第2の送信シンボルを形成する第2の変調手段と、第1及び第2の送信シンボルを入力し、第1及び第2の送信シンボルとそれらの複素共役信号の出力順序を送信データに応じて変えて、第1及び第2のアンテナに出力することにより、時空間ブロック符号信号を形成する信号選択手段とを具備する構成を採る。
この構成によれば、信号選択手段によって送信データに応じて異なるパターンの時空間ブロック符号信号が得られるので、第1及び第2の変調シンボルからなる時空間ブロック符号によって伝送されるデータに加えて、時空間ブロック符号信号のパターンによってデータを伝送できるようになる。
本発明の送信装置の一つの態様は、さらに、時空間ブロック符号信号形成手段によって形成された信号を、複数のサブキャリアに割り当てるマルチキャリア変調手段を具備し、複数のアンテナからマルチキャリア変調された時空間ブロック符号信号を送信する構成を採る。
この構成によれば、時空間ブロック符号を、例えばOFDM方式により送信するにあたっての伝送データ量を増やすことができるようになる。
本発明の受信装置の一つの態様は、複数スロットのデータを用いてチャネル行列を推定するチャネル行列推定手段と、このチャネル行列へのデータ割り当てパターンに基づいて送信データを推定する送信データ推定手段とを具備する構成を採る。
本発明の受信装置の一つの態様は、送信データ推定手段は、受信した時空間ブロック符号のパターンを識別することにより、送信データを推定する構成を採る。
本発明の受信装置の一つの態様は、送信データ推定手段は、各送受信アンテナ間でのチャネル推定行列のパターンを識別することにより、時空間ブロック符号のパターンを識別する構成を採る。
これらの構成によれば、時空間ブロック符号によって伝送されたデータに加えて、時空間ブロック符号のパターンによって伝送されたデータを復元できるようになる。
本発明の無線通信方法の一つの態様は、送信データに応じて変調信号の複数スロットへの割り当て方を変えることにより、送信データに応じてチャネル行列パターンの異なるベースバンド信号を形成して送信する送信ステップと、複数スロットのデータを用いてチャネル行列を推定し、チャネル行列へのデータ割り当てパターンに基づいて送信データを推定する受信ステップとを含むようにする。
本発明は、上述した実施の形態に限定されずに、種々変更して実施することができる。
本明細書は、2004年2月13日出願の特願2004−37088及び2004年12月14日出願の特願2004−361105に基づく。この内容は全てここに含めておく。
本発明は、例えば無線LAN(Local Area Network)の基地局やその端末、移動通信システムの基地局やその端末に適用し得る。
本発明は、無線通信において周波数利用効率を向上させる技術に関する。
従来、無線通信において周波数利用効率を向上させるための技術として、例えば、時空間ブロック符号のように、複数のアンテナを用いてブロック単位のシンボルを送信するものが知られている。この技術は、例えば文献「“Space-Time Block Codes from Orthogonal Designs” IEEE Transactions on Information Theory, pp.1456-1467, vol.45, no.5, July 1999」に開示されている。以下、この非特許文献1に開示された内容について図面を用いて説明する。
図1に示すように、送信装置は複数のアンテナAN1、AN2を有し、各アンテナAN1、AN2から同時に信号を送信する。受信装置は、同時に送信された複数の信号をアンテナAN3で受信する。
図2に、各アンテナAN1、AN2から送信される信号のフレーム構成を示す。アンテナAN1からは送信信号Aが送信され、これと同時にアンテナAN2からは送信信号Bが送信される。送信信号A及び送信信号Bは、符号化利得とダイバーシチ利得とが得られるように同じシンボルが複数回配置されたシンボルブロックからなる。
さらに詳しく説明する。図2において、S1、S2はそれぞれ異なるシンボルを示すと共に、複素共役を“*”で示す。時空間ブロック符号化では、時点iにおいて、第1のアンテナAN1からシンボルS1を送信すると同時に第2のアンテナAN2からシンボルS2を送信し、続く時点i+1において、第1のアンテナAN1からシンボル−S2*を送信すると同時に第2のアンテナAN2からシンボルS1*を送信する。
受信装置のアンテナAN3では、アンテナAN1とアンテナAN3間の伝送路変動h1(t)を受けた送信信号Aと、アンテナAN2とアンテナAN3間の伝送路変動h2(t)を受けた送信信号Bとが合成された信号が受信される。
受信装置は、伝送路変動h1(t)とh2(t)を推定し、その推定値を用いることにより、合成された受信信号から元の送信信号Aと送信信号Bを分離した後に、各シンボルを復調するようになっている。
この際、図2に示すような時空間ブロック符号化された信号を用いると、信号分離時に、伝送路変動h1(t)、h2(t)に拘わらず各シンボルS1、S2を最大比合成できるようになるので、大きな符号化利得とダイバーシチ利得とが得られるようになる。この結果、受信品質を向上させることができる。
"Space-Time Block Codes from Orthogonal Designs" IEEE Transactions on Information Theory, pp.1456-1467, vol.45, no.5, July 1999
ところで、時空間ブロック符号化した信号を用いると、確かに受信品質は向上するものの、伝送効率が低下する欠点がある。すなわち、時点i+1で送信されるS1*や−S2*は、受信装置においてはS1、S2として復調されるので、実質的には時点iで送信されたS1、S2と同じ情報である。このため、同じ情報を2度送信していることになり、
この分データの伝送効率が低下する。
例えば一般的なマルチアンテナ通信システムにおいては、時点i+1おいてシンボルS1、S2とは異なるシンボルS3、S4を送信するので、時点iから時点i+1の期間では4つのシンボルS1〜S4を送信することができる。つまり、単純に考えると、時空間ブロック符号化技術を用いた場合、データ伝送効率が、一般的なマルチアンテナ通信の半分に低下してしまう。
本発明の目的は、無線通信におけるデータ伝送効率を一段と向上させることである。
本発明の送信装置の一つの態様は、送信データに応じて変調信号の複数スロットへの割り当て方を変えることにより、送信データに応じてチャネル行列パターンの異なるベースバンド信号を形成するベースバンド信号形成手段と、当該ベースバンド信号を無線信号に変換する無線手段と、当該無線信号を送信する送信アンテナとを具備する構成を採る。
この構成によれば、送信データに応じてチャネル行列パターンを変えるようにしたので、チャネル行列の各要素である変調シンボルに加えて、チャネル行列のパターンでもデータを伝送できるようになる。この結果、周波数帯域を広げることなく、データ伝送量を増やすことができ、周波数利用効率を向上させることができる。
本発明の受信装置の一つの態様は、複数スロットのデータを用いてチャネル行列を推定するチャネル行列推定手段と、このチャネル行列へのデータ割り当てパターンに基づいて送信データを推定する送信データ推定手段とを具備する構成を採る。
本発明の無線通信方法の一つの態様は、送信データに応じて変調信号の複数スロットへの割り当て方を変えることにより、送信データに応じてチャネル行列パターンの異なるベースバンド信号を形成して送信する送信ステップと、複数スロットのデータを用いてチャネル行列を推定し、チャネル行列へのデータ割り当てパターンに基づいて送信データを推定する受信ステップとを含むようにする。
本発明によれば、チャネル行列のパターンでデータを伝送するようにしたので、データ伝送効率を向上させることができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
(実施の形態1)
図3に、本実施の形態のマルチアンテナ通信システム10の全体構成を示す。マルチアンテナ通信システム10において、送信装置100は複数のアンテナAN1、AN2を有し、各アンテナAN1、AN2から同時に信号を送信する。受信装置200は、同時に送信された複数の信号をアンテナAN3で受信する。なお、アンテナAN1から送信された信号は伝送路変動h1(t)を受けてアンテナAN3で受信され、アンテナAN2から送信された信号は伝送路変動h2(t)を受けてアンテナAN3で受信される。
図4に、本実施の形態の送信装置100の構成を示す。送信装置100は、送信ディジタル信号(以下これを単に送信データと呼ぶ)101を時空間ブロック符号信号形成部102に入力する。時空間ブロック符号信号形成部102は、フレーム構成信号生成部10
9によって生成されたフレーム構成信号110に従って、送信データ101を時空間ブロック符号化処理し、これにより得た時空間ブロック符号信号103、104をそれぞれ拡散部105−A、105−Bに送出する。
各拡散部105−A、105−Bは、時空間ブロック符号信号103、104に拡散符号を乗算することにより拡散信号106−A、106−Bを得、これを無線部107−A、107−Bに送出する。各無線部107−A、107−Bは、拡散信号106−A、106−Bに対して直交変調や周波数変換等の所定の無線処理を施し、これにより得た無線送信信号108−A、108−BをアンテナAN1、AN2に供給する。
図5に、時空間ブロック符号信号形成部102の構成を示す。時空間ブロック符号信号形成部102は、送信データ101を先ずデータ分流部120に入力する。データ分流部120は、送信データ101を送信データ101−A、101−B、101−Cに分流し、送信データ101−Aを変調部121に、送信データ101−Bを変調部122に、送信データ101−Cを信号選択部127にそれぞれ送出する。
変調部121は、送信データ101−Aに対してQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)や16QAM(Quadrature Amplitude Modulation)等のディジタル変調処理を施すことにより、送信シンボルS1を得る。例えばQPSKの場合には、2ビットの送信データ101−Aから1つの送信シンボルS1を得る。変調部121は、これにより得た送信シンボルS1を変調信号123として出力すると共にその複素共役S1*を変調信号124として出力する。
同様に変調部122は、送信データ101−Bに対してQPSKや16QAM等のディジタル変調処理を施すことにより、送信シンボルS2を得る。変調部122は、これにより得た送信シンボルS2を変調信号125として出力すると共にその負の複素共役−S2*を変調信号126として出力する。
信号選択部127は、変調部121からの変調信号123、124及び変調部122からの変調信号125、126を、データ分流部120からの送信データ101−Cに応じた順序で、かつ送信データ101−Cに応じて出力信号103又は出力信号104に割り振って出力する。これにより、送信データ101−Cに応じてパターンの異なる時空間ブロック符号信号103、104が形成される。なお、信号選択部127は、フレーム構成信号110に従った位置に、パイロット信号生成部128によって生成されパイロット信号129を挿入する。
図6A、6B、図7A、7B、図8A、8B及び図9を用いて、信号選択部127による具体的な処理を説明する。図6A、6Bに信号103の様子を示し、図7A、7Bに信号104の様子を示す。図6Aに示すように、信号選択部127は、送信データ101−Cが「0」の場合には、S1、−S2*の順でシンボルを出力することで信号103を得る。これに対して、図6Bに示すように、送信データ101−Cが「1」の場合には、S2、S1*の順でシンボルを出力することで信号103を得る。
また図7Aに示すように、信号選択部127は、送信データ101−Cが「0」の場合には、S2、S1*の順でシンボルを出力することで信号104を得る。これに対して、図7Bに示すように、送信データ101−Cが「1」の場合には、S1、−S2*の順でシンボルを出力することで信号104を得る。
図6A、6B及び図7A、7Bをまとめたものを、図8A、8Bに示す。すなわち、信号選択部127は、送信データ101−Cが「0」の場合には、図8Aに示すようなパタ
ーンの時空間ブロック符号信号103、104を形成する。これに対して、信号選択部127は、送信データ101−Cが「1」の場合には、図8Bに示すようなパターンの時空間ブロック符号信号103、104を形成する。
実際のフレーム構成例を、図9に示す。図中の網掛け部分はパイロットシンボルを示す。時点i−1で各アンテナAN1、AN2からパイロットシンボルが送信される。続く時点i及び時点i+1において、データ「0」に対応するパターンの時空間ブロック符号信号103、104が送信される。さらに続く時点i+2及び時点i+3において、データ「1」に対応するパターンの時空間ブロック符号信号103、104が送信される。
これにより、送信装置100においては、シンボルS1、S2により伝送されるデータに加えて、時空間ブロック符号のパターンによってデータを伝送できるので、この分だけ時間当たりに送信できるデータ量を増やすことができる。
例えば変調部121、122によってQPSK変調を行う場合を考える。シンボルS1、S2は、1シンボル当たり2ビットのデータを伝送できるので、時点iから時点i+1の期間において変調シンボルS1、S2で送信できるデータは、4ビットである。これに加えて、時点iと時点i+1の期間において、時空間ブロック符号のパターンによって1ビット伝送できるので、合計5ビット伝送できるようになる。
因みに、変調部121、122がQPSK変調を行う場合には、データ分流部120によって、送信データ101の最初の2ビットを変調部121に送出し、次の2ビットを変調部122に送出し、次の1ビットを信号選択部127に送出すればよい。
図10に、送信装置100から送信された時空間ブロック符号信号を受信する受信装置200の構成を示す。受信装置200は、アンテナAN3で受信した信号201を無線部202に入力する。無線部202は、周波数変換や直交復調等の所定の無線受信処理を施し、これにより得た受信ベースバンド信号203を逆拡散部204に送出する。逆拡散部204は、受信ベースバンド信号203を逆拡散し、逆拡散後の受信ベースバンド信号205を、第1伝送路推定部206、第2伝送路推定部207、同期部210及び復調部212に送出する。
第1伝送路推定部206は、アンテナAN1から送信された信号に含まれるパイロットシンボルに基づいて、アンテナAN1とアンテナAN3との間の伝送路変動h1を求め、これを伝送路推定信号208として復調部212に送出する。第2伝送路推定部207は、アンテナAN2から送信された信号に含まれるパイロットシンボルに基づいて、アンテナAN2とアンテナAN3との間の伝送路変動h2を求め、これを伝送路推定信号209として復調部212に送出する。
同期部210は、各アンテナAN1、AN2から送信された信号に含まれるパイロットシンボルに基づき、各アンテナAN1、AN2から送信された信号の同期をとり、同期のためのタイミング信号211を復調部212に送出する。
図11に、復調部212の構成を示す。復調部212は、検波部220と行列推定部221を有し、これらに伝送路推定信号208、209、受信ベースバンド信号205及びタイミング信号211を入力する。行列推定部221は、伝送路推定行列の行列パターンを推定することにより、どのパターンの時空間ブロック符号を受信したかを推定する。
具体的に説明する。アンテナAN3では、アンテナAN1から送信された信号と、アンテナAN2から送信された信号が合成されて受信される。時点tにおける合成受信信号を
R(t)とする。また時点tでの伝送路推定値h1、h2をそれぞれh1(t)、h2(t)とする。すると、図8Aに示すようなパターンの時空間ブロック符号が送信された場合には、次式の関係式が成り立つ。
これに対して、図8Bに示すようなパターンの時空間ブロック符号が送信された場合には、次式の関係式が成り立つ。
したがって、行列推定部221は、(1)式が成り立つか、又は(2)式が成り立つかを推定する。換言すれば、行列推定部221は、送信装置100によって、時点iから時点i+1で、どのパターンの時空間ブロック符号が送信されたかを推定する。例えば、(1)式及び(2)式を用いて、一旦、S1、S2を推定し、どちらの式で推定したS1、S2の方がシンボルとして確からしいかを判断する方法が考えられる。そして、行列推定部221は、(2)式よりも(1)式の方が確からしいと推定した場合には、受信データ215として「0」を出力する。これに対して、行列推定部221は、(1)式よりも(2)式の方が確からしいと推定した場合には、受信データ215として「1」を出力する。
この受信データ215は、検波部220にも送出される。検波部220は、受信データ215として「0」が入力された場合には(1)式を用い、(1)式についての逆行列演算を行うことによりシンボルS1、S2を推定した後、各シンボルS1、S2を復調することにより、シンボルS1についての受信データ213とシンボルS2についての受信データ214を得る。これに対して、検波部220は、受信データ215として「1」が入力された場合には(2)式を用い、(2)式についての逆行列演算を行うことによりシンボルS1、S2を推定した後、各シンボルS1、S2を復調することにより、シンボルS1についての受信データ213とシンボルS2についての受信データ214を得る。
このようにして、受信装置200は、時空間ブロック符号にて伝送されたデータと、時空間ブロック符号のパターンにて伝送されたデータとからなる送信データの全てを復元することができる。
かくして本実施の形態によれば、複数のアンテナを用いて時空間ブロック符号信号を送信する際に、送信データに応じて時空間ブロック符号のパターンを変えるようにしたことにより、時空間ブロック符号によって得られる品質の良いデータ伝送を行うことができるといった効果に加えて、時空間ブロック符号のパターンによってデータを伝送できるので、データ伝送効率を向上させることができる送信装置100を実現できる。
また受信した時空間ブロック符号のパターンを識別することにより時空間ブロック符号のパターンにより伝送されたデータを推定する行列推定部221と、行列推定部221によって推定されたチャネル推定行列を用いて時空間ブロック符号を構成する各変調信号を分離し復調する信号分離復調手段としての検波部220とを設けるようにしたことにより、送信データに応じてパターンの変えられた時空間ブロック符号信号から伝送データを全て復元し得る受信装置200を実現できる。
なおこの実施の形態では、スペクトル拡散通信方式を用いた場合の構成を例にとって説明したが、スペクトル拡散通信方式を用いないときにおいても同様に実施することができる。
(実施の形態2)
この実施の形態では、実施の形態1で説明した、送信データに応じてパターンを変えた時空間ブロック符号信号を、OFDM変調して送信することを提案する。
図4との対応部分に同一符号を付して示す図12に、本実施の形態の送信装置の構成を示す。送信装置300は、時空間ブロック符号信号形成部301の構成が若干異なることと、OFDM変調手段としての、シリアルパラレル変換部(S/P)304−A、304−B及び逆フーリエ変換部(idft)306−A、306−Bを有することを除いて、図4の送信装置100とほぼ同様の構成でなる。
送信装置300は、時空間ブロック符号信号形成部301によって形成した時空間ブロック符号信号302、303をそれぞれ、シリアルパラレル変換部304−A、304−Bに送出する。各シリアルパラレル変換部304−A、304−Bにより得られたパラレル信号305−A、305−Bはそれぞれ、逆フーリエ変換部306−A、306−Bによって逆フーリエ変換されることにより、OFDM信号307−A、307−Bとされる。OFDM信号307−A、307−Bは、無線部308−A、308−Bによって所定の無線処理が施されることにより送信OFDM信号309−A、309−Bとされた後、アンテナAN1、AN2に供給される。
図13に、時空間ブロック符号信号形成部301の構成を示す。なお図13では、図5との対応部分に同一符号を付し、ここではその部分の説明は省略する。信号選択部320は、送信データ101−Cに応じて時空間ブロック符号のパターンを変える。ここで信号選択部320による選択処理は、図5の信号選択部127による選択処理とほぼ同じだが、本実施の形態では時空間ブロック符号をOFDM送信するので、選択のパターンが若干異なる。
図14A、14B、図15A、15B、図16A、16B及び図17を用いて、信号選択部320による具体的な処理を説明する。図14A、14BにOFDM信号307−Aの様子を示し、図15A、15BにOFDM信号307−Bの様子を示す。図14Aに示すように、信号選択部320は、送信データ101−Cが「0」の場合には、信号302としてシンボルS1とシンボル−S2*を出力する。そしてこれら各シンボルS1、−S2*がシリアルパラレル変換部304−A及び逆フーリエ変換部306−AによってOFDM変調されることにより、シンボルS1がキャリア1に、シンボル−S2*がキャリア2に配置され、アンテナAN1から送信される。これに対して、図14Bに示すように、送信データ101−Cが「1」の場合には、信号302としてシンボルS2とシンボルS1*を出力する。そしてこれら各シンボルS2、S1*がシリアルパラレル変換部304−A及び逆フーリエ変換部306−AによってOFDM変調されることにより、シンボルS2がキャリア1に、シンボルS1*がキャリア2に配置され、アンテナAN1から送信される。
また図15Aに示すように、信号選択部320は、送信データ101−Cが「0」の場合には、信号303としてシンボルS2とシンボルS1*を出力する。そしてこれら各シンボルS2、S1*がシリアルパラレル変換部304−B及び逆フーリエ変換部306−BによってOFDM変調されることにより、シンボルS2がキャリア1に、シンボルS1*がキャリア2に配置され、アンテナAN2から送信される。これに対して、図15Bに
示すように、送信データ101−Cが「1」の場合には、信号303としてシンボルS1とシンボル−S2*を出力する。そしてこれら各シンボルS1、−S2*がシリアルパラレル変換部304−B及び逆フーリエ変換部306−BによってOFDM変調されることにより、シンボルS1がキャリア1に、シンボル−S2*がキャリア2に配置され、アンテナAN2から送信される。
図14A、14B及び図15A、15Bをまとめたものを、図16A、16Bに示す。すなわち、送信データ101−Cが「0」の場合には、図16Aに示すようなシンボル配置のOFDM信号307−A、307−Bが各アンテナAN1、AN2から送信される。つまり、OFDM信号307−AがアンテナAN1から送信されると共にOFDM信号307−BがアンテナAN2から送信される。これに対して、送信データが「1」の場合には、図16Bに示すようなシンボル配置のOFDM信号307−A、307−Bが各アンテナAN1、AN2から送信される。
実際のフレーム構成例を、図17に示す。図中の網掛け部分はパイロットシンボルを示す。時点i−1で各アンテナAN1、AN2からパイロットシンボルが送信される。続く時点iにおいて、各アンテナAN1、AN2からOFDM変調された時空間ブロック符号が送信される。図17には、2つのアンテナAN1、AN2のキャリア1とキャリア2を使って送信データ「0」に対応するパターンの時空間ブロック符号を送信し、キャリア3とキャリア4を使って送信データ「1」に対応するパターンの時空間ブロック符号を送信する場合を示す。
因みに、図17では、図の対応関係を分かり易くするために、キャリア3とキャリア4に割り当てられたシンボルS1とシンボルS2を、キャリア1とキャリア2に割り当てられたシンボルS1とS2と同じ符号を用いて記しているが、キャリア1とキャリア2に割り当てられるシンボルS1、S2と、キャリア3、4に割り当てられるシンボルS1、S2は、異なるデータから得られた異なるシンボルである。
これにより、送信装置300においては、サブキャリア1とサブキャリア2のシンボルS1、S2によって伝送するデータに加えて、その時空間ブロック符号のパターンによってデータを伝送でき、さらにサブキャリア3とサブキャリア4のシンボルによって伝送できるデータに加えて、その時空間ブロック符号のパターンによってデータを伝送できるようになる。
図18に、送信装置300から送信されたOFDM信号を受信する受信装置の構成を示す。受信装置400は、アンテナAN3で受信したOFDM信号401を無線部402に入力する。無線部402は、周波数変換や直交復調等の所定の無線受信処理を施し、これにより得たOFDM受信ベースバンド信号403をフーリエ変換部(dft)404に送出する。フーリエ変換部404は、OFDM受信ベースバンド信号403をフーリエ変換し、フーリエ変換後の受信ベースバンド信号405を、第1伝送路推定部406、第2伝送路推定部407、同期部410及び復調部412に送出する。
第1伝送路推定部406は、アンテナAN1から送信されたOFDM信号の各キャリアに含まれるパイロットシンボルに基づいて、アンテナAN1とアンテナAN3との間の各キャリア毎の伝送路変動を求め、これを伝送路推定信号408として復調部412に送出する。第2伝送路推定部407は、アンテナAN2から送信されたOFDM信号の各キャリアに含まれるパイロットシンボルに基づいて、アンテナAN2とアンテナAN3との間の各キャリア毎の伝送路変動を求め、これを伝送路推定信号409として復調部412に送出する。
同期部410は、各アンテナAN1、AN2から送信された信号に含まれるパイロットシンボルに基づき、各アンテナAN1、AN2から送信された信号の同期をとり、同期のためのタイミング信号411を復調部に送出する。
図19に、復調部412の構成を示す。復調部412は、検波部420と行列推定部421を有し、これらに伝送路推定信号408、409、受信ベースバンド信号405及びタイミング信号411を入力する。行列推定部421は、伝送路推定行列の行列パターンを推定することにより、どのパターンの時空間ブロック符号を受信したかを推定する。
具体的に説明する。アンテナAN3では、アンテナAN1から送信された信号と、アンテナAN2から送信された信号が合成されて受信される。時点tにおける合成受信信号をR(t)とする。また時点tでの伝送路推定値h1、h2をそれぞれh1(t)、h2(t)とする。すると、図16Aに示すようなパターンの時空間ブロック符号が送信された場合には、次式の関係式が成り立つ。
これに対して、図16Bに示すようなパターンの時空間ブロック符号が送信された場合には、次式の関係式が成り立つ。
行列推定部421は、例えば図17に示すようなフレーム構成の信号を受信した場合には、キャリア1とキャリア2については(3)式のパターンの時空間ブロック符号が使われたと推定して、受信データ415として「0」を出力すると共に、このことを検波部420に通知する。またキャリア3とキャリア4については(4)式のパターンの時空間ブロック符号が使われたと推定して、受信データ415として「1」を出力すると共に、このことを検波部420に通知する。
このとき検波部420は、キャリア1とキャリア2については(3)式を用い、(3)式の逆行列演算を行うことによりシンボルS1、S2を推定した後、各シンボルS1、S2を復調することにより、シンボルS1についての受信データ413とシンボルS2についての受信データ414を得る。また検波部420は、キャリア3とキャリア4については(4)式を用い、(4)式の逆行列演算を行うことによりシンボルS1、S2(実際にはこのシンボルS1、S2はキャリア1、2のシンボルとは異なる)を推定した後、各シンボルS1、S2を復調することにより、シンボルS1についての受信データ413とシンボルS2についての受信データ414を得る。
このようにして、受信装置400は、時空間ブロック符号にて伝送されたデータと、時空間ブロック符号のパターンにて伝送されたデータとからなる送信データの全てを復元することができる。
かくして本実施の形態によれば、OFDM信号のサブキャリアに時空間ブロック符号を割り当てて送信するにあたって、送信データに応じて時空間ブロック符号のパターンを変えるようにしたことにより、時空間ブロック符号によって得られる品質の良いデータ伝送を行うことができるといった効果に加えて、時空間ブロック符号のパターンによってデー
タを伝送できるので、データ伝送効率を向上させることができる。
特に、OFDM信号の各サブキャリアに時空間ブロック符号を割り当てると、単位時間に伝送できる時空間ブロック符号を増やすことができるので、単位時間当たりの伝送データ量を増やすことができるようになる。
なおこの実施の形態では、複数のキャリアに時空間ブロック符号を割り当てる場合(すなわち、周波数方向に時空間ブロックを割り当てる場合)について説明したが、図20A、20B及び図21に示すように、時空間ブロック符号を単一のキャリア(図20A、20B及び図21の場合にはキャリア1)単位で割り当てる(すなわち、時間方向に時空間ブロックを割り当てる)ようにしてもよい。この場合、当然、他のキャリア2、3、4にも他の時空間ブロック符号を割り当てることができる。
具体的に説明する。送信データが「0」の場合には、図20Aに示すOFDM信号307−A、307−Bを各アンテナAN1、AN2から送信する。これに対して、送信データが「1」の場合には、図20Bに示すOFDM信号307−A、307−Bを各アンテナAN1、AN2から送信する。
実際のフレーム構成例を、図21に示す。時点iにてパイロットシンボルを送信した後、時点i、i+1にてデータ「0」に対応するパターンの時空間ブロック符号をキャリア1に配置して送信し、続く時点i+2、i+3にてデータ「1」に対応するパターンの時空間ブロック符号をキャリア1に配置して送信する。
このように時空間ブロック符号の各キャリアへの配置の仕方としては、図16A、16B及び図17に示したように周波数方向に配置する方法、図20A、20B及び図21に示したように時間方向に配置する方法、又は周波数と時間の両方向に配置する方法のどの方法を採用してもよい。
なおこの実施の形態では、OFDM方式を例にとって説明したが、OFDM方式以外のマルチキャリア方式に適用した場合にも、同様の効果を得ることができる。
(実施の形態3)
本実施の形態では、受信装置側で、受信した時空間ブロック符号のパターンを識別する具体的な方法について詳述する。
例えば実施の形態1では、(1)式の送信信号が送信されたのか、(2)式の送信信号が送信されたのかを、受信側で識別することで1ビットのデータを得ることになるが、本実施の形態では、その識別の方法の例について詳しく説明する。
実際上、実施の形態1の場合、時空間ブロック符号のパターンの識別を、図11の行列推定部221によって行うので、ここでは行列推定部221の動作について詳しく説明する。本実施の形態では、送信装置100の変調部121、122でQPSK変調が行われた場合を例にとって説明する。
行列推定部221は、入力されるh1(208)、h2(209)から、時間iにおける16点の候補信号点と、時間i+1における16点の候補信号点とを求める。その様子の一例を図22A、22Bに示した。図22A、22Bにおいて、○は候補信号点を示し、×は受信点を示す。また、●は、(送信シンボルS1で送信した2ビット,送信シンボルS2で送信した2ビット)=(00,00)に対応する候補信号点を示すものである。因みに、(送信シンボルS1で送信した2ビット,送信シンボルS2で送信した2ビット
)は、(00,00)〜(11,11)の16点の候補信号点のいずれかで表現される。
図22Aは、(1)式の時空間ブロック符号パターンを用いた信号が受信された場合における、時間iと時間i+1での信号点の状態を示す。図22Bは、(2)式の時空間ブロック符号パターンを用いた信号が受信された場合における、時間iと時間i+1での信号点の状態を示す。
行列推定部221は、受信点と各候補信号点とのユークリッド距離に基づいて、図22Aのパターンの信号が送信されたのか、図22Bのパターンの信号が送信されたのかを識別する。
具体的に説明する。行列推定部221は、先ず、図22Aに示すような、(1)式で送信されたと仮定した場合の信号点の状態に関し、候補信号点と受信信号点のユークリッド距離の2乗を求める。例えば、(00,00)についての時間iの候補信号点と受信信号点とのユークリッド距離の2乗をDx0000(i)とし、(00,00)についての時間i+1の候補信号点と受信信号点とのユークリッド距離の2乗をDx0000(i+1)として、(00,00)に対する受信信号点のユークリッド距離の2乗Dx0000=Dx0000(i)+Dx0000(i+1)を求める。同様にDx0001からDx1111についても求める。
同様に、図22Bに示すような、(2)式で送信されたと仮定した場合の信号点の状態に関し、候補信号点と受信信号点のユークリッド距離の2乗を求める。このとき、受信信号点については、(1)式のときと同様の位置に存在するが、候補信号点については異なる位置に存在することになる。例えば、(00,00)についての時間iの候補信号点と受信信号点とのユークリッド距離の2乗をDy0000(i)とし、(00,00)についての時間i+1の候補信号点と受信信号点とのユークリッド距離の2乗をDy0000(i+1)として、(00,00)に対する受信信号点のユークリッド距離の2乗Dy0000=Dy0000(i)+Dy0000(i+1)を求める。同様にDy0001からDy1111についても求める。
そして、行列推定部221は、Dx0000からDx1111の中の最小値Dx,minを探索すると共に、Dy0000からDy1111の中の最小値Dy,minを探索する。次に、行列推定部221は、Dx,minとDy,minを比較し、小さい値の方が確からしいと判断して、時空間ブロック符号パターンを識別する。
つまり、行列推定部221は、Dx,min>Dy,minのときには、(2)式の時空間ブロック符号パターンで信号が送信されたと判断し、受信データ215として「1」のデータを得る。これに対して、Dy,min>Dx,minのときには、(1)式の時空間ブロック符号パターンで信号が送信されたと判断し、受信データ215として「0」のデータを得る。
このようにして、行列推定部221は、受信データ215を得ることができる。
なお、本実施の形態では、最小値のみに基づき、(1)式の時空間ブロック符号パターンで送信されたか、(2)式の時空間ブロック符号パターンで送信されたかを判断したが、これに限ったものではなく、例えばDxの複数の値とDyの複数の値を用いて判断してもよい。
また本実施の形態では、実施の形態1の送信装置によって送信された信号の時空間ブロック符号パターンを識別する方法を例にとって説明したが、これに限ったものではなく、
要は、受信点と候補信号点とのユークリッド距離に基づいて、時空間ブロック符号パターンの確からしさを比較するようにすればよい。このようにすれば、種々の時空間ブロック符号パターンが用いられても、どの時空間ブロック符号パターンが用いられたかを識別することができる。
(他の実施の形態)
なお上述した実施の形態1、2では、送信アンテナ数が2で受信アンテナ数が1の場合について説明したが、本発明はこれに限らず、送信アンテナが2本よりも多い場合、例えば文献“Space-time block codes from orthogonal designs”IEEE Transactions on Information Theory, pp.1456-1467, vol.45, no.5, July 1999や文献“A quasi-orthogonal
space-time block code”IEEE Transactions on Communications, pp.1-4, vol.49, no.1, January 2001で示されているような時空間ブロック符号を用いたときも同様に実施することができる。
また上述した実施の形態1では、(1)式及び(2)式からも分かるように、送信データに応じてシンボルを供給するアンテナを切り替えることで、行列の列要素を入れ替えるような時空間ブロック符号のパターンを形成した場合について述べたが、図23A、23Bに示すように、送信データに応じてシンボルを出力する順序を変えることで、行列の行要素を入れ替えるような時空間ブロック符号のパターンを用いるようにしてもよい。さらに、実施の形態1のようなパターンの作り方と、図23A、23Bのようなパターンの作り方を複合的に用いれば、4つのパターンを作ることができるので、時空間ブロック符号を構成するシンボルの情報に加えて、2ビットのデータを伝送できるようになる。
また、特に、送信アンテナ数が4以上の場合には、上記文献を例とするように、ダイバーシチゲインが得られる時空間ブロック符号化方式が複数提案されている。本発明においては、送信データに応じて、これらのいずれかの時空間ブロック符号化方式を選択して送信することで、データを伝送するようにしてもよい。受信側では、どの符号化方式が使われたかを行列のパターンで認識することで、データを得るようにすればよい。つまり、時空間ブロック符号のパターンとして用いることができるのは、実施の形態1や実施の形態2で説明したものに限らず、受信側でダイバーシチゲインの得られる種々のものを適用することができる。
さらには、実施の形態1で説明したようなパターンの作り方や図23A、23Bに示したようなパターンの作り方、異なる符号化方式を用いたパターンの作り方を複合的に用いてパターンを作るようにしてもよい。このようにすれば、多数の時空間ブロック符号のパターンを作ることができるようになるので、時空間ブロック符号のパターンによって伝送できるデータ量をさらに増やすことができる。
また本発明は、換言すると、送信データに応じたチャネル行列のパターンを形成して、このチャネル行列のパターンでデータを送っている言うことができる。このようにすることにより、チャネル行列のパターンに情報をのせることができるようになるので、伝送データ量を増やすことができる。このうち、上述した実施の形態1、2は、各アンテナに供給するシンボルブロックのパターンを、送信データに応じて選択するようにしたものである。また上述した実施の形態1、2は、シンボルブロックとして、時空間ブロック符号を用いたものである。
また本発明を用いれば、さらなる応用として、シンボルS1、S2の信号点を固定とし、送信データにより変調されたチャネル行列のみでデータを伝送することも考えられる。
上述した実施の形態1、2では、時空間ブロックを例にとって説明したが、本発明の送
信装置は、送信データに応じて変調信号の複数スロットへの割り当て方を変えることにより、送信データに応じてチャネル行列パターンの異なるベースバンド信号を形成するベースバンド信号形成手段を備えるようにすればよい。これにより、上述した実施の形態1、2で説明したのと同様に、チャネル行列のパターンでデータを送ることができるので、データ伝送効率を向上させることができるようになる。
また本発明の受信装置は、複数スロットのデータを用いてチャネル行列を推定するチャネル行列推定手段と、チャネル行列へのデータ割り当てパターンに基づいて送信データを推定する送信データ推定手段とを備えるようにすればよい。これにより、チャネル行列のパターンで送信データを推定することができるようになる。
ここで本発明のチャネル行列のパターン生成についての簡単な一例と、従来方式であるM aryスペクトル拡散通信方式との違いについて説明する。ここでは、送信アンテナが1つで、受信アンテナが1つの場合を例として説明する。
図24に、M aryスペクトル拡散通信方式を用いた送信装置の構成を示す。各系列発生部(系列1発生部501−1〜系列M発生部501−M)は、互いに直交した拡散符号503−1〜503−Mを発生する。選択部504は、送信データ502及び直交拡散符号503−1〜503−Mを入力し、送信データ502に応じて直交拡散符号503−1〜503−Mのうちのいずれかを選択し、それをベースバンド信号505として無線部506に送出する。無線部506はベースバンド信号505に対して、直交変調、帯域制限、周波数変換、信号増幅などの処理を施すことにより送信信号507を得、これをアンテナ508に送出する。
このM aryスペクトル拡散通信方式の特徴として、次の2つが挙げられる。
・系列1から系列Mの拡散符号503−1〜503−Mは、直交(または相互相関が小さい)した系列であること。
・拡散利得分のデータ伝送効率の低下を招くこと。
一例として、時間軸方向の2スロットでM aryスペクトル拡散通信方式を用いたときのフレーム構成例について説明する。図25に示すように、送信データが「0」のときには、時間iにおいて(I,Q)=(1,1)、時間i+1において(I,Q)=(1,1)を送信する。一方、送信データが「1」のときには、時間iにおいて(I,Q)=(1,−1)、時間i+1において(I,Q)=(1,−1)を送信する。すると、時間iにおける受信信号をR(i)、時間i+1における受信信号をR(i+1)とし、伝搬係数をh(t)とすると、送信データが「0」のときには(5)式が成立し、送信データが「1」のときには(6)式が成立する。
M aryスペクトル拡散通信方式においても、上式のように、行列で表すことは可能となるが、M aryスペクトル拡散通信方式と本発明とは、以下の点で異なる。M aryスペクトル拡散通信方式は、次の特徴があると言える。
・拡散系列が基礎となっており、直交した(または相互相関が小さい)系列で、行列を生
成している。
・拡散利得を得る技術であり、データの伝送効率(周波数利用効率)が向上する技術ではない。つまり、QPSKと16QAMの関係のような伝送効率の違いを生み出すものではない。
これに対して、本発明のチャネル行列のパターンを用いてデータを伝送する方法においては、データの伝送効率(周波数利用効率)を向上させることができる。図26に、本発明のチャネル行列のパターンを用いてデータを伝送する方法におけるフレーム構成例を示す。図26では、時間方向の2スロットに着目した。なおここでは時間方向のスロットについて説明するが、周波数軸方向のスロットでチャネル行列を形成した場合についても同様のことが言える。
送信データが「00」のとき、時間iにおいて(I,Q)=(1,3)、時間i+1において(I,Q)=(3,1)を送信する。また、送信データが「01」のとき、時間iにおいて(I,Q)=(−1,3)、時間i+1において(I,Q)=(3,−1)を送信する。また、送信データが「10」のとき、時間iにおいて(I,Q)=(1,3)、時間i+1において(I,Q)=(−3,1)を送信する。また、送信データが「11」のとき、時間iにおいて(I,Q)=(3,1)、時間i+1において(I,Q)=(―3,1)を送信する。
したがって、時間iにおける受信信号をR(i)、時間i+1における受信信号をR(i+1)とし、伝搬係数をh(t)とすると、送信データが「00」のときには(7)式が、送信データが「01」のときには(8)式が、送信データが「10」のときには(9)式が、送信データが「11」のときには(10)式が成立する。
このように、本発明は、スペクトル拡散通信方式と比較すると、直交した(または相互相関が小さい)系列を利用していない点、拡散利得を求めていない点が異なる。そして、本発明では、M aryと比較すると、データの伝送効率(周波数利用効率)を向上させることができるといった顕著な効果を得ることができる。つまり、QPSKと16QAMの関係のような伝送効率の違いを生み出すことができる。
なお、ここでは説明を簡単化するために、送信アンテナが1つで、受信アンテナが1つの例を示したが、本発明はこれに限らない。例えば送信アンテナが2つで、受信アンテナが2つの場合には、上述した(7)式〜(10)式の各式が4行×4列のチャネル行列と
なる。すなわち、送信側で、送信データに応じて変調信号の複数スロットへの割り当て方を変えることにより、4行×4列のチャネル行列と等価となるベースバンド信号を形成して、チャネル行列のパターンにデータをのせた送信を行う。そして、受信側では、複数スロットのデータを用いて4行×4列のチャネル行列を推定し、このチャネル行列へのデータ割り当てパターンに基づいて送信データを推定する。つまり、本発明は、MIMO通信への適用も可能であり、MIMO通信に適用した場合にはチャネル行列のパターンを増やすことができるので、チャネル行列のパターンで伝送するデータ量を増やすことができるようになる。
なお、実施の形態1は、時空間ブロック符号を用いたときの例であり、このときは、特に、ダイバーシチゲインを得ながら、データの伝送効率の向上を図ることができる。
上述した各実施の形態で説明したように、本発明は以下のような態様を採ることができる。
本発明の送信装置の一つの態様は、送信データに応じて変調信号の複数スロットへの割り当て方を変えることにより、送信データに応じてチャネル行列パターンの異なるベースバンド信号を形成するベースバンド信号形成手段と、当該ベースバンド信号を無線信号に変換する無線手段と、当該無線信号を送信する送信アンテナとを具備する構成を採る。
この構成によれば、送信データに応じてチャネル行列パターンを変えるようにしたので、チャネル行列の各要素である変調シンボルに加えて、チャネル行列のパターンでもデータを伝送できるようになる。この結果、周波数帯域を広げることなく、データ伝送量を増やすことができ、周波数利用効率を向上させることができる。
本発明の送信装置の一つの態様は、送信アンテナは複数のアンテナで構成され、ベースバンド信号形成手段は、チャネル行列パターンの異なるベースバンド信号を、複数アンテナぶん形成する構成を採る。
この構成によれば、複数アンテナ分のチャネル行列パターンを用いてデータを伝送できるようになるので、一段とデータ伝送量を増やすことができるようになる。またこの構成によれば、MIMO通信におけるデータ伝送量を増やすことができるようになる。
本発明の送信装置の一つの態様は、送信アンテナは、複数のアンテナで構成され、ベースバンド信号形成手段は、送信データに応じて時空間ブロック符号のパターンを変える時空間ブロック符号信号形成手段を具備する構成を採る。
この構成によれば、時空間ブロック符号によって品質の良いデータ伝送を行うことができるのに加えて、時空間ブロック符号のパターンでデータを伝送できるので、伝送データ量を増やすことができるようになる。
本発明の送信装置の一つの態様は、時空間ブロック符号信号形成手段が、送信データから第1の送信シンボルを形成する第1の変調手段と、送信データから第2の送信シンボルを形成する第2の変調手段と、第1及び第2の送信シンボルを入力し、第1及び第2の送信シンボルとそれらの複素共役信号の出力順序を送信データに応じて変えて、第1及び第2のアンテナに出力することにより、時空間ブロック符号信号を形成する信号選択手段とを具備する構成を採る。
この構成によれば、信号選択手段によって送信データに応じて異なるパターンの時空間ブロック符号信号が得られるので、第1及び第2の変調シンボルからなる時空間ブロック
符号によって伝送されるデータに加えて、時空間ブロック符号信号のパターンによってデータを伝送できるようになる。
本発明の送信装置の一つの態様は、さらに、時空間ブロック符号信号形成手段によって形成された信号を、複数のサブキャリアに割り当てるマルチキャリア変調手段を具備し、複数のアンテナからマルチキャリア変調された時空間ブロック符号信号を送信する構成を採る。
この構成によれば、時空間ブロック符号を、例えばOFDM方式により送信するにあたっての伝送データ量を増やすことができるようになる。
本発明の受信装置の一つの態様は、複数スロットのデータを用いてチャネル行列を推定するチャネル行列推定手段と、このチャネル行列へのデータ割り当てパターンに基づいて送信データを推定する送信データ推定手段とを具備する構成を採る。
本発明の受信装置の一つの態様は、送信データ推定手段は、受信した時空間ブロック符号のパターンを識別することにより、送信データを推定する構成を採る。
本発明の受信装置の一つの態様は、送信データ推定手段は、各送受信アンテナ間でのチャネル推定行列のパターンを識別することにより、時空間ブロック符号のパターンを識別する構成を採る。
これらの構成によれば、時空間ブロック符号によって伝送されたデータに加えて、時空間ブロック符号のパターンによって伝送されたデータを復元できるようになる。
本発明の無線通信方法の一つの態様は、送信データに応じて変調信号の複数スロットへの割り当て方を変えることにより、送信データに応じてチャネル行列パターンの異なるベースバンド信号を形成して送信する送信ステップと、複数スロットのデータを用いてチャネル行列を推定し、チャネル行列へのデータ割り当てパターンに基づいて送信データを推定する受信ステップとを含むようにする。
本発明は、上述した実施の形態に限定されずに、種々変更して実施することができる。
本明細書は、2004年2月13日出願の特願2004−37088及び2004年12月14日出願の特願2004−361105に基づく。この内容は全てここに含めておく。
本発明は、例えば無線LAN(Local Area Network)の基地局やその端末、移動通信システムの基地局やその端末に適用し得る。
従来のマルチアンテナ通信システムの構成を示すブロック図
時空間ブロック符号の説明に供する図
実施の形態のマルチアンテナ通信システムの構成を示すブロック図
実施の形態1の送信装置の構成を示すブロック図
時空間ブロック符号信号形成部の構成を示すブロック図
図6Aは、送信データが「0」の場合に、アンテナAN1に供給される信号の様子を示す図であり、図6Bは、送信データが「1」の場合に、アンテナAN1に供給される信号の様子を示す図
図7Aは、送信データが「0」の場合に、アンテナAN2に供給される信号の様子を示す図であり、図7Bは、送信データが「1」の場合に、アンテナAN2に供給される信号の様子を示す図
図8Aは、送信データが「0」の場合の時空間ブロック符号のパターンを示す図であり、図8Bは、送信データが「1」の場合の時空間ブロック符号のパターンを示す図
実際のフレーム構成例を示す図
実施の形態1の受信装置の構成を示すブロック図
復調部の構成を示すブロック図
実施の形態2の送信装置の構成を示すブロック図
時空間ブロック符号信号形成部の構成を示すブロック図
図14Aは、送信データが「0」の場合に、アンテナAN1に供給される信号の様子を示す図であり、図14Bは、送信データが「1」の場合に、アンテナAN1に供給される信号の様子を示す図
図15Aは、送信データが「0」の場合に、アンテナAN2に供給される信号の様子を示す図であり、図15Bは、送信データが「1」の場合に、アンテナAN2に供給される信号の様子を示す図
図16Aは、送信データが「0」の場合の時空間ブロック符号のパターンを示す図であり、図16Bは、送信データが「1」の場合の時空間ブロック符号のパターンを示す図
実際のフレーム構成例を示す図
実施の形態2の受信装置の構成を示すブロック図
復調部の構成を示すブロック図
図20Aは、時空間ブロック符号を時間方向に配置した場合における、送信データが「0」の場合の時空間ブロック符号のパターンを示す図であり、図20Bは、時空間ブロック符号を時間方向に配置した場合における、送信データが「1」の場合の時空間ブロック符号のパターンを示す図
時空間ブロック符号を時間方向に配置した場合における、実際のフレーム構成を示す図
図22Aは、(1)式の時空間ブロック符号パターンで送信した場合の信号点配置例を示す図であり、図22Bは、(2)式の時空間ブロック符号パターンで送信した場合の信号点配置例を示す図
図23Aは、送信データが「0」の場合の他の時空間ブロック符号パターン例を示す図であり、図23Bは、送信データが「1」の場合の他の時空間ブロック符号パターン例を示す図
M aryスペクトル拡散通信方式を用いた送信装置の構成を示すブロック図
図25Aは、データ「0」を送る場合のM aryの直交符号割り当て例を示し、図25Bは、データ「1」を送る場合のM aryの直交符号割り当て例を示す図
図26Aは、データ「00」を送る場合のチャネル行列の例を示し、図26Bは、データ「01」を送る場合のチャネル行列の例を示し、図26Cは、データ「10」を送る場合のチャネル行列の例を示し、図26Dは、データ「11」を送る場合のチャネル行列の例を示す図