JPWO2005073385A1 - 遺伝子導入効率を上昇させるための組成物および方法 - Google Patents

遺伝子導入効率を上昇させるための組成物および方法 Download PDF

Info

Publication number
JPWO2005073385A1
JPWO2005073385A1 JP2005517495A JP2005517495A JPWO2005073385A1 JP WO2005073385 A1 JPWO2005073385 A1 JP WO2005073385A1 JP 2005517495 A JP2005517495 A JP 2005517495A JP 2005517495 A JP2005517495 A JP 2005517495A JP WO2005073385 A1 JPWO2005073385 A1 JP WO2005073385A1
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
cells
cell adhesion
target substance
antibody
composition
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2005517495A
Other languages
English (en)
Inventor
三宅 正人
正人 三宅
智啓 吉川
智啓 吉川
英一郎 内村
英一郎 内村
三宅 淳
淳 三宅
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
CytoPathfinder Inc
Original Assignee
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
CytoPathfinder Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST, CytoPathfinder Inc filed Critical National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
Publication of JPWO2005073385A1 publication Critical patent/JPWO2005073385A1/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N15/00Mutation or genetic engineering; DNA or RNA concerning genetic engineering, vectors, e.g. plasmids, or their isolation, preparation or purification; Use of hosts therefor
    • C12N15/09Recombinant DNA-technology
    • C12N15/87Introduction of foreign genetic material using processes not otherwise provided for, e.g. co-transformation
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K16/00Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies
    • C07K16/18Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies against material from animals or humans
    • C07K16/28Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies against material from animals or humans against receptors, cell surface antigens or cell surface determinants
    • C07K16/2839Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies against material from animals or humans against receptors, cell surface antigens or cell surface determinants against the integrin superfamily
    • C07K16/2842Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies against material from animals or humans against receptors, cell surface antigens or cell surface determinants against the integrin superfamily against integrin beta1-subunit-containing molecules, e.g. CD29, CD49

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Biophysics (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • General Engineering & Computer Science (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Immunology (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Wood Science & Technology (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Biotechnology (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Plant Pathology (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
  • Peptides Or Proteins (AREA)
  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)

Abstract

本発明は、細胞に導入されることが難しい標的物質(例えば、DNA、ポリペプチド、糖、あるいはそれらの複合体など)を導入する(特に、トランスフェクション)際に、その導入効率をどのような状況にもとでも改善することができる方法を提供する。標的物質の細胞への導入効率を上昇させるための組成物であって、細胞接着関連因子を含む、標的物質の細胞への導入効率を上昇させるための組成物が提供される。本発明はまた、このような組成物を用いたデバイスおよび方法にも関する。

Description

本発明は、細胞生物学の分野に関する。より詳細には、本発明は、細胞への物質の導入効率を上げる化合物、組成物、デバイス、方法およびシステムに関する。
タンパク質の細胞への導入、トランスフェクション、形質転換、形質導入などの遺伝子導入技術を含む標的物質の細胞への導入は、細胞生物学、遺伝子工学、分子生物学など広い分野において広く使用されている。
トランスフェクションは、動物細胞などの細胞において一過的に遺伝子を発現させ、その影響を観察するためなどに利用される技術であり、ポストゲノム時代を迎えた現在、そのゲノムがコードする遺伝子の機能を解明するために頻繁に利用される技術となっている。
トランスフェクションを達成するために種々の技術が開発されており、そのために利用される薬剤が種々開発されている。そのような技術として、カチオオン性の物質であるカチオン性ポリマー、カチオン性脂質などを利用する技術があり、広く使用されている。
しかし、従来の薬剤を使用するのみでは、トランスフェクション効率が十分ではないことが頻繁に起こっており、固相、液相を問わずに使用することができるような薬剤は未だに開発されていない。従って、そのような薬剤に対する需要は多大に存在する。また、マイクロタイタープレート、アレイなどの固相上での標的物質の導入(例えば、トランスフェクション)を効率的に行うための技術の開発に対する需要はますます高まるばかりである。
哺乳動物においてドミナントネガティブスクリーニングを開発する際の進行を妨げるもののうちの1つは、トランスフェクト細胞またはトランスジェニック生物の作製である。この問題に取り組むための1つの手段として高効率のレトロウイルストランスフェクションが開発されている。このレトロウイルストランスフェクションは、強力であるが、ウイルス中間体にパッケージングされるDNAの作製を必要とし、適用性に限界がある。あるいは、高密度トランスフェクションアレイも開発されつつあるが、これもまた、すべての細胞に適用可能というわけではない。液相トランスフェクションについても、種々の系が開発されているものの、付着細胞では効率が悪いなど、すべての細胞に適用可能というわけではない。
このように、当該分野において、すべての系および細胞において適用可能な、トランスフェクション系の開発が望まれている。そのようなトランスフェクション系の開発は、例えば、マイクロタイタープレート、アレイなどを用いた大規模ハイスループットアッセイにおいて、種々の細胞および実験系に適用することへの応用が期待されることから、その需要は年々高まるばかりである。
以上にかんがみて、本発明は、従来拡散あるいは疎水性相互作用によっては細胞に導入されることが難しい標的物質(例えば、DNA、ポリペプチド、糖、あるいはそれらの複合体など)を導入する(特に、トランスフェクション)際に、その導入効率をどのような状況にもとでも改善することができる方法を開発することを課題とする。
上記課題は、インテグリンに対する抗体のような細胞接着関連因子を用いた系によって標的物質を細胞に導入する効率が飛躍的に上昇することを予想外に見いだしたことによって解決された。上記課題の解決は一部、細胞の接着を阻害することによって、遺伝子などの標的物質の導入が予想外に向上し、さらに遺伝物質などでは細胞内での発現が活性であったことを予想外に見いだしたことにも起因する。
従って、本発明は、以下の発明を提供する。
(1)細胞接着関連因子を含む、標的物質の細胞への導入効率を上昇させるための組成物。
(2)上記細胞接着関連因子は、細胞接着分子と相互作用する相互作用物質を含む、標的物質の細胞への導入効率を上昇させるための組成物。
(3)上記細胞接着分子は、細胞外マトリクスである、項目2に記載の組成物。
(4)上記細胞接着分子は、インテグリンレセプターを含む、項目2に記載の組成物。
(5)上記細胞接着分子は、インテグリンを含む、項目2に記載の組成物。
(6)上記相互作用物質は、上記細胞接着分子のパートナーと抗原抗体反応する、項目1に記載の組成物。
(7)上記相互作用物質は、抗体またはその誘導体である、項目1に記載の組成物。
(8)上記相互作用物質は、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体である、項目1に記載の組成物。
(9)上記相互作用物質は、抗CD49a抗体、抗CD49b抗体、抗CD49c抗体、抗CD49e抗体および抗CD49f抗体からなる群より選択される抗体を含む、項目1に記載の組成物。
(10)上記標的物質は、遺伝物質を含む、項目1に記載の組成物。
(11)上記標的物質は、核酸分子を含む、項目1に記載の組成物。
(12)上記標的物質は、DNAを含む、項目1に記載の組成物。
(13)上記インテグリンレセプターは、CD49a、CD49b、CD49c、CD49d、CD49e、CD49f、ならびにCD29からなる群より選択される、項目4に記載の組成物。
(14)上記インテグリンレセプターは、CD29、CD49a、CD49c、CD49d、CD49eおよびCD49fからなる群より選択される、項目4に記載の組成物。
(15)上記インテグリンレセプターは、コラーゲン、フィブロネクチン、ビトロネクチンおよびラミニンからなる群より選択される分子と相互作用する、項目4に記載の組成物。
(16)上記細胞は、幹細胞および分化細胞からなる群より選択される少なくとも1つの細胞を含む、項目1に記載の組成物。
(17)上記細胞接着分子は、上記細胞に特異的に発現される、項目1に記載の組成物。
(18)上記標的物質は、遺伝物質であり、さらに遺伝子導入試薬を含む、項目1に記載の組成物。
(19)上記遺伝子導入試薬は、カチオン性高分子、カチオン性脂質およびリン酸カルシウムからなる群より選択される、項目18に記載の組成物。
(20)さらに、粒子を含む、項目1に記載の組成物。
(21)上記粒子は、金コロイドを含む、項目20に記載の組成物。
(22)さらに、塩を含む、項目1に記載の組成物。
(23)上記塩は、緩衝剤に含まれる塩類および培地に含まれる塩類からなる群より選択される、項目22に記載の組成物。
(24)
遺伝子導入効率を上昇させるためのキットであって、
(a)細胞接着関連因子;および
(b)遺伝子導入試薬、
を備える、キット。
(25)標的物質を細胞内へ導入するための組成物であって、
A)標的物質、
B)細胞接着関連因子、
を含む、組成物。
(26)上記標的物質は、DNA、RNA、ポリペプチド、糖およびこれらの複合体からなる群より選択される物質を含む、項目25に記載の組成物。
(27)上記標的物質は、トランスフェクトされるべき遺伝子配列をコードするDNAを含む、項目25に記載の組成物。
(28)さらに、遺伝子導入試薬を含む、項目25に記載の組成物。
(29)上記細胞接着関連因子は、細胞接着分子と相互作用する相互作用物質を含む、項目25に記載の組成物。
(30)上記細胞接着関連因子は、細胞接着分子の抗体を含む、項目25に記載の組成物。
(31)液相として存在する、項目25に記載の組成物。
(32)固相として存在する、項目25に記載の組成物。
(33)標的物質の細胞への導入効率を上昇させるためのデバイスであって、
A)標的物質;および
B)細胞接着関連因子、
を含み、上記細胞接着関連因子が、支持体に固定された、デバイス。
(34)上記標的物質は、DNA、RNA、ポリペプチド、糖およびこれらの複合体からなる群より選択される物質を含む、項目33に記載のデバイス。
(35)上記標的物質は、遺伝子発現することを目的とする遺伝子配列をコードするDNAを含む、項目33に記載のデバイス。
(36)遺伝子導入試薬をさらに含む、項目33に記載のデバイス。
(37)上記細胞接着関連因子は、細胞接着分子と相互作用する相互作用物質を含む、項目36に記載のデバイス。
(38)上記細胞接着関連因子は、細胞接着分子の抗体を含む、項目36に記載のデバイス。
(39)上記支持体は、プレート、マイクロウェルプレート、チップ、スライドグラス、フィルム、ビーズおよび金属からなる群より選択される、項目36に記載のデバイス。
(40)上記支持体は、コーティング剤でコーティングされる、項目36に記載のデバイス。
(41)上記コーティング剤は、ポリ−L−リジン、シラン、MAS、疎水性フッ素樹脂および金属からなる群より選択される物質を含む、項目40に記載のデバイス。
(42)標的物質の細胞への導入効率を上昇させるための方法であって、
A)標的物質を提供する工程;
B)細胞接着関連因子を提供する工程;
C)上記標的物質および上記細胞接着関連因子を上記細胞に接触させる工程、
を包含する、方法。
(43)上記標的物質は、DNA、RNA、ポリペプチド、糖、およびこれらの複合体からなる群より選択される物質を含む、項目42に記載の方法。
(44)上記標的物質は、トランスフェクトされるべき遺伝子配列をコードするDNAを含む、項目43に記載の方法。
(45)遺伝子導入試薬を提供する工程をさらに包含し、上記遺伝子導入試薬は、上記細胞に接触される、項目42に記載の方法。
(46)上記細胞接着関連因子は、細胞接着分子と相互作用する相互作用物質を含む、項目42に記載の方法。
(47)上記細胞接着関連因子は、細胞接着分子の抗体を含む、項目42に記載の方法。
(48)上記細胞接着分子は、細胞外マトリクスである、項目46に記載の方法。
(49)上記工程は、液相中で行われる、項目42に記載の方法。
(50)上記工程は、固相上で行われる、項目42に記載の方法。
(51)標的物質の細胞への導入効率を上昇させるための方法であって、
I)A)標的物質と
B)細胞接着分子と
を支持体に固定する工程;および
II)上記支持体上の上記組成物に細胞を接触させる工程、
を包含する、方法。
(52)遺伝子導入試薬を提供する工程をさらに包含し、上記遺伝子導入試薬は、上記細胞に接触される、項目51に記載の方法。
(53)上記遺伝子導入試薬の提供後に、上記標的物質と上記遺伝子導入との複合体を形成する工程をさらに包含し、その後、上記細胞接着関連因子が提供されることを特徴とする、項目52に記載の方法。
(54)上記細胞接着関連因子は、細胞接着分子と相互作用する相互作用物質を含む、項目51に記載の方法。
以下に、本発明の好ましい実施形態を示すが、当業者は本発明の説明および当該分野における周知慣用技術からその実施形態などを適宜実施することができ、本発明が奏する作用および効果を容易に理解することが認識されるべきである。
本発明により、固相でも液相でも実施することができる、トランスフェクションの効率上昇が達成された。このようなトランスフェクション効率上昇試薬は、特に固相でのトランスフェクションを実施するために有用である。
図1は、インテグリンレセプターと、認識される細胞外マトリクスとの関係を示す。 図2Aは、HepG2細胞を用いた実験において、種々の細胞接着関連因子およびフィブロネクチンを用いたトランスフェクション効率の結果を示す。 図2Bは、HepG2細胞を用いた実験において、別の細胞接着関連因子を用いたトランスフェクション効率の結果を示す。 図3Aは、実施例3におけるHepG2細胞上に発現する各種インテグリンレセプター(CD49a,d,f)と認識される細胞外マトリクスの関係、各細胞外マトリクスコーティングされた表面でのトランスフェクション効率を示す。 図3Bは、HepG2を用いた実験における、トランスフェクションの様子を示す細胞写真である。コーティングなしは、コーティングを施していないコントロールであり、フィブロネクチンおよびCD29を示す。 図3Cは、HepG2を用いた実験における、トランスフェクションの様子を示す細胞写真である。CD44、CD46およびCD54を示す。 図3Dは、HepG2を用いた実験における、トランスフェクションの様子を示す細胞写真である。CD49a、CD49cおよびCD49dを示す。 図3Eは、HepG2を用いた実験における、トランスフェクションの様子を示す細胞写真である。CD49e、CD49fおよびHLAを示す。 図4は、実施例4におけるPC12細胞上に発現する各種インテグリンレセプター(CD49a,d,f)と認識される細胞外マトリクスの関係、各細胞外マトリクスコーティングされた表面でのトランスフェクション効率を示す。 図5A〜Bには、実施例4におけるPC12細胞の細胞接着の様子を示す。細胞接着関連因子(例えば、CD抗体)を用いたPC12細胞のTypeIV コラーゲンコート表面への接着阻害およびトランスフェクションを示す。ポリ-L-リシンコートスライドガラス上にTypeIVコラーゲンコート。その後、あらかじめ抗体溶液を接触させておいたPC12細胞を播種し通常(液相系)のプロトコールに従いLipofectamin2000を用いてのトランスフェクションを行った。図5Aは抗CD49aにおいてはTypeIVコラーゲンコート表面へのPC12細胞の接着が顕著に阻害された。抗CD49dにおいてはPC12細胞の接着は阻害されず抗体のないControlと同等のトランスフェクション効率を示す。PC12細胞は図4より明らかなようにCD49dを発現していない。また、CD49dはフィブロネクチンに対するレセプターであり、このことよりTypeIVコラーゲンコート表面への接着が阻害されなかったためと考えられる。つまり、抗体の存在自体はトランスフェクション効率に影響を与えない。図5Bは同様に抗CD49f共存下におけるトランスフェクション効率違いを示す。表示されている数値は抗体のストック溶液を何倍に希釈してあらかじめPC12細胞に接触させたかを示している。 図5A〜Bには、実施例4におけるPC12細胞の細胞接着の様子を示す。細胞接着イ関連因子(例えば、CD抗体)を用いたPC12細胞のTypeIV コラーゲンコート表面への接着阻害およびトランスフェクションを示す。ポリ-L-リシンコートスライドガラス上にTypeIVコラーゲンコート。その後、あらかじめ抗体溶液を接触させておいたPC12細胞を播種し通常(液相系)のプロトコールに従いLipofectamin2000を用いてのトランスフェクションを行った。図5Aは抗CD49aにおいてはTypeIVコラーゲンコート表面へのPC12細胞の接着が顕著に阻害された。抗CD49dにおいてはPC12細胞の接着は阻害されず抗体のないControlと同等のトランスフェクション効率を示す。PC12細胞は図4より明らかなようにCD49dを発現していない。また、CD49dはフィブロネクチンに対するレセプターであり、このことよりTypeIVコラーゲンコート表面への接着が阻害されなかったためと考えられる。つまり、抗体の存在自体はトランスフェクション効率に影響を与えない。図5Bは同様に抗CD49f共存下におけるトランスフェクション効率違いを示す。表示されている数値は抗体のストック溶液を何倍に希釈してあらかじめPC12細胞に接触させたかを示している。 図6は、実施例4におけるPC12細胞の支持体におけるコーティングのトランスフェクション効果を示す。抗CD49a抗体、抗CD49c抗体、抗CD49d抗体を使用して行った。 図7は、実施例4におけるPC12細胞の支持体におけるコーティングのトランスフェクション効果を示す。抗CD49e抗体、抗CD49f抗体、抗HLA抗体を使用して行った。 図8は、細胞接着関連因子を利用した固相系トランスフェクションの概略を示す。右下は図1を同じである。右上は、3種の抗CD抗体を用いた蛍光強度分布の結果である。左には、相対トランスフェクション効率指数を示す。
配列の説明
配列番号1:フィブロネクチンの核酸配列(ヒト)
配列番号2:フィブロネクチンのアミノ酸配列(ヒト)
配列番号3:CD29(アイソフォーム1A前駆体)のアミノ酸配列
配列番号4:CD49aのアミノ酸配列
配列番号5:CD49bのアミノ酸配列
配列番号6:CD49c(アイソフォームa前駆体)のアミノ酸配列
配列番号7:CD49d(前駆体)のアミノ酸配列
配列番号8:CD49e(前駆体)のアミノ酸配列
配列番号9:CD49fのアミノ酸配列
配列番号10:CD29(アイソフォーム1B前駆体)のアミノ酸配列
配列番号11:CD29(アイソフォーム1C−1前駆体)のアミノ酸配列
配列番号12:CD29(アイソフォーム1C−2前駆体)のアミノ酸配列
配列番号13:CD29(アイソフォーム1D前駆体)のアミノ酸配列
配列番号14:CD49c(アイソフォームb前駆体)のアミノ酸配列
以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。
(用語)
以下に本明細書において特に言及される用語を説明する。
本明細書において「細胞接着分子」(Cell adhesion molecule)または「接着分子」とは、互換可能に使用され、2つ以上の細胞の互いの接近(細胞接着)または基質と細胞との間の接着を媒介する分子をいう。一般には、細胞と細胞の接着(細胞間接着)に関する分子(cell−cell adhesion molecule)と, 細胞と細胞外マトリックスとの接着(細胞−基質接着)に関与する分子(cell−substrate adhesion molecule)に分けられる。細胞は、通常、このような細胞接着分子を含む。従って、本明細書において細胞接着分子は、細胞−基質接着の際の基質側のタンパク質を包含するが、本明細書では、細胞側のタンパク質(例えば、インテグリンレセプターなど)も包含され、タンパク質以外の分子であっても、細胞接着を媒介する限り、本明細書における細胞接着分子または接着分子の概念に入る。
細胞間接着に関しては、カドヘリン、免疫グロブリンスーパーファミリーに属する多くの分子(NCAM、L1、ICAM、ファシクリンII、IIIなど)、セレクチンなどが知られており、それぞれ独特な分子反応により細胞膜を結合させることも知られている。
このように多種多様な分子が細胞接着に関与しており、それぞれの機能は異なっていることから、当業者は、目的に応じて、適宜本発明において考慮されるべき分子を選択することができる。細胞接着に関する技術は、上述のもののほかの知見も周知であり、例えば、細胞外マトリックス −臨床への応用― メディカルレビュー社に記載されている。
ある分子が細胞接着分子であるかどうかは、生化学的定量(SDS−PAG法、標識コラーゲン法)、免疫学的定量(酵素抗体法、蛍光抗体法、免疫組織学的検討)、PCR法、ハイブリダイゼイション法などのようなアッセイにおいて陽性となることを決定することにより判定することができる。このような細胞接着分子としては、コラーゲン、インテグリン、フィブロネクチン、ラミニン、ビトロネクチン、フィブリノゲン、免疫グロブリンスーパーファミリー(例えば、CD2、CD4、CD8、ICM1、ICAM2、VCAM1)、セレクチン、カドヘリン、CD29、CD49ファミリーなどが挙げられるがそれに限定されない。このような細胞接着分子の多くは、細胞への接着と同時に細胞間相互作用による細胞活性化の補助シグナルを細胞内に伝達する。
細胞接着分子としては、例えば、組織固着性の細胞系に広く知られる細胞接着分子としてカドヘリンがある。一方, 非固着性の血液・免疫系の細胞では, 細胞接着分子としては、例えば、免疫グロブリンスーパーファミリー分子(CD 2、LFA−3、ICAM−1、CD2、CD4、CD8、ICM1、ICAM2、VCAM1など);インテグリンファミリー分子(LFA−1、Mac−1、gpIIbIIIa、p150、95、VLA1、VLA2、VLA3、VLA4、VLA5、VLA6など);セレクチンファミリー分子(L−セレクチン,E−セレクチン, P−セレクチンなど);CD29、CD49ファミリー(CD49a、CD49b、CD49c、CD49d、CD49e、CD49fなど)などが挙げられるがそれらに限定されない。従って、そのような分子は、血液・免疫系の組織または臓器を処置するための特に有用であり得る。
細胞接着分子は、非固着性の細胞が固定するために必要となる。その場合, 恒常的に発現するセレクチン分子などによる一次接着、それに続いて活性化されるインテグリン分子などの二次接着によって細胞間の接着は段階的に強くなると考えられている。従って、本発明において考慮される細胞接着分子としては、そのような一次接着を媒介する因子、二次接着を媒介する因子、またはその両方が一緒に考慮され得るが、二次接着の方が好ましいようである。細胞接着分子がタンパク質の場合、その活性部位はアミノ酸レベルで解明されており、RGD,YIGSRなどが知られている(これらを、総合してRGD配列とも呼ぶ)。
本明細書において「細胞接着関連因子」とは、細胞が他の物質(例えば、支持体、他の細胞など)へ接着する活性を抑制する因子をいう。そのような因子としては、細胞接着分子と相互作用する相互作用物質が挙げられるがそれらに限定されない。そのような相互作用物質は、フィブロネクチンなどのECM基質をコートした表面への細胞を播種した際に相互作用物質が共存することによって接着阻害作用などが確認される。また、そのような相互作用活性を有する基質を表面上に化学的、または物理的に固定した際、細胞のその表面上への接着性の亢進が確認される。相互作用物質には、例えば、競合相手とアロステリックに相互作用する物質、抗原抗体反応におけるパートナー(抗原であれば抗体、抗体であれば抗原)、レセプター−リガンドの関係にあるパートナー(レセプターであればリガンド、リガンドであればレセプター)などが挙げられるがそれらに限定されない。本発明では、細胞接着が強化される限り、本発明の目的(標的物質の導入)が達成されることから、特に限定されないことが理解されるべきである。
本明細書において「RGD分子」とは、アミノ酸配列RGD(Arg−Gly−Asp)またはその機能的に同一な配列を含むタンパク質分子をいう。RGD分子は、細胞接着性蛋白質の細胞接着活性部位のアミノ酸配列として有用なアミノ酸配列であるRGDまたは機能的に等価な別のアミノ酸配列を含むことを特徴とする。RGD配列は、フィブロネクチンの細胞接着部位として発見され、その後,I型コラーゲン、ラミニン,ビトロネクチン,フィブリノゲン,フォンヴィルブランド因子,エンタクチンなど多くの細胞接着性の活性を示す分子に見出された。化学合成したRGDペプチドを固相化すると細胞接着活性を示すことから、本発明における生体分子は、化学合成したRGD分子であってもよい。そのようなRGD分子としては、上述の天然に存在する分子のほかに、例えば、GRGDSPペプチドが挙げられるがそれに限定されない。RGD配列は細胞接着分子(かつ、レセプターでもある)であるインテグリン(例えば、CD49ファミリー、CD29など)によって認識されることから、RGDの機能的に等価な分子は、そのようなインテグリンを用いて相互作用を調べることによって同定することができる。
本明細書において、「インテグリン」または「インテグリンレセプター」とは、互換可能にもちいられ、細胞接着に関与するレセプターである膜貫通糖タンパク質をいう。インテグリンは、細胞表面に存在し、細胞が細胞外マトリックスに接着するときに機能する。血球系などでは細胞どうしの接着にも関与することが知られている。そのようなインテグリンとしては、例えば、フィブロネクチン、ビトロネクチン、コラーゲンなどのレセプター、血小板のIIb/IIIa,マクロファージのMac−1,リンパ球のLFA−1,VLA−1〜6,ショウジョウバエのPSAなどが挙げられるがそれに限定されない。通常、インテグリンは,分子量130kDa〜210kDaのα鎖と分子量95kDa〜130kDaのβ鎖とが,非共有結合で1対1に会合したヘテロ二量体の構造をとる。α鎖としては、例えば、α1、α2、α3、α4、α5、α6、αL、αM、αX、αIIb、αV、αEなどがあるがそれに限定されない。β鎖としては、例えばβ1、β2、β3、β4、β5、β6、β7などがあるがそれに限定されない。
このようなヘテロ二量体としては、例えば、GpIIbIIIaのほかに、VLA−1、VLA−2、VLA−3、VLA−4、VLA−5、VLA−6、CD51/CD29、CD49ファミリー、LFA−1、Mac−1、p150,90、ビトロネクチンレセプター、β4サブファミリー、β5サブファミリー、β6サブファミリー、LPAM−1、HML−1などがあるがそれに限定されない。通常、α鎖の細胞外ドメインに二価カチオン結合部位があり、β鎖の細胞外ドメインにシステインリッチ領域があり、β鎖の細胞内ドメインにチロシンリン酸化部位があることが多い。結合リガンド中の認識部位はRGD配列であることが多い。従って、インテグリンは、RGD分子であり得る。
本明細書において「細胞外マトリクスタンパク質」とは「細胞外マトリクス」のうちタンパク質であるものをいう。本明細書において「細胞外マトリクス」(ECM)とは「細胞外基質」とも呼ばれ、当該分野において通常用いられる意味と同様の意味で用いられ、上皮細胞、非上皮細胞を問わず体細胞(somatic cell)の間に存在する物質をいう。細胞外マトリクスは、組織の支持だけでなく、すべての体細胞の生存に必要な内部環境の構成に関与する。細胞外マトリクスは一般に、結合組織細胞から産生されるが、一部は上皮細胞または内皮細胞のような基底膜を保有する細胞自身からも分泌される。細胞外マトリクスは一般に、線維成分とその間を満たす基質とに大別され、線維成分としては膠原線維および弾性線維がある。基質の基本構成成分はグリコサミノグリカン(酸性ムコ多糖)であり、その大部分は非コラーゲン性タンパクと結合してプロテオグリカン(酸性ムコ多糖−タンパク複合体)の高分子を形成する。このほかに、基底膜のラミニン、弾性線維周囲のミクロフィブリル(microfibril)線維、細胞表面のフィブロネクチンなどの糖タンパクも基質に含まれる。特殊に分化した組織でも基本構造は同一で、例えば硝子軟骨では軟骨芽細胞によって特徴的に大量のプロテオグリカンを含む軟骨基質が産生され、骨では骨芽細胞によって石灰沈着が起こる骨基質が産生される。従って、本発明において用いられる細胞外マトリクスとしては、例えば、コラーゲン、エラスチン、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、弾性繊維、膠原繊維などが挙げられるがそれに限定されない。本発明において用いられる場合、細胞外マトリクスタンパク質としては、例えば、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニンなどが挙げられるがそれらに限定されない。
本発明おいて細胞外マトリクスタンパク質としては、細胞接着に関連する因子であれば、どのようなものであっても考慮され得る。
CD番号は元々は白血球の細胞表面抗原として分化マーカーとして同定された際の命名法である。CD49aはインテグリンα鎖サブユニットであるα1であり(アミノ酸配列は、配列番号4)、CD49bはインテグリンα鎖サブユニットであるα2であり(アミノ酸配列は、配列番号5)、CD49cはインテグリンα鎖サブユニットであるα3であり(アミノ酸配列は、配列番号6および14)、CD49dはインテグリンα鎖サブユニットであるα4であり(アミノ酸配列は、配列番号7)、CD49eはインテグリンα鎖サブユニットであるα5であり(アミノ酸配列は、配列番号8)、CD49fはインテグリンα鎖サブユニットであるα6であり(アミノ酸配列は、配列番号9)、CD29はインテグリンβ鎖サブユニットであるβ1である(アミノ酸配列は、配列番号3、10、11、12および13)。CD44は、細胞表面のヒアルロン酸結合タンパク質であり、CD46は、膜補因子タンパク質(MCP)と呼ばれる細胞接着因子であり、CD54は、細胞と細胞を結合させる細胞間接着分子ICAM-1 である。HLAは、主要組織適合抗原遺伝子複合体(HLA遺伝子)複合体の産物を示す。
(一般技術)
本明細書において用いられる分子生物学的手法、生化学的手法、微生物学的手法は、当該分野において周知であり慣用されるものであり、例えば、Sambrook J.et al.(1989).Molecular Cloning: A Laboratory Manual,Cold Spring Harborおよびその3rd Ed.(2001);Ausubel,F.M.(1987).Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley−Interscience;Ausubel,F.M.(1989).Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley−Interscience;Innis,M.A.(1990).PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications,Academic Press;Ausubel,F.M.(1992).Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates;Ausubel,F.M.(1995).Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates;Innis,M.A.et al.(1995).PCR Strategies,Academic Press;Ausubel,F.M.(1999).Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Wiley,and annual updates;Sninsky,J.J.et al.(1999).PCR Applications: Protocols for Functional Genomics,Academic Press、別冊実験医学「遺伝子導入&発現解析実験法」羊土社、1997などに記載されており、これらは本明細書において関連する部分(全部であり得る)が参考として援用される。
人工的に合成した遺伝子を作製するためのDNA合成技術および核酸化学については、例えば、Gait,M.J.(1985).Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRLPress;Gait,M.J.(1990).Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRL Press;Eckstein,F.(1991).Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approac,IRL Press;Adams,R.L.et al.(1992).The Biochemistry of the Nucleic Acids,Chapman&Hall;Shabarova,Z.et al.(1994).Advanced Organic Chemistry of Nucleic Acids,Weinheim;Blackburn,G.M.et al.(1996).Nucleic Acids in Chemistry and Biology,Oxford University Press;Hermanson,G.T.(I996).Bioconjugate Techniques,Academic Pressなどに記載されており、これらは本明細書において関連する部分が参考として援用される。
本明細書において使用される用語「生体分子」とは、生体に関連する分子をいう。本明細書において「生体」とは、生物学的な有機体をいい、動物、植物、菌類、ウイルスなどを含むがそれらに限定されない。従って、本明細書では生体分子は、生体から抽出される分子を包含するが、それに限定されず、生体に影響を与え得る分子であれば生体分子の定義に入る。したがって、コンビナトリアルケミストリで合成された分子、医薬品として利用され得る低分子(たとえば、低分子リガンドなど)もまた生体への効果が意図され得るかぎり、生体分子の定義に入る。そのような生体分子には、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、ペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、核酸(例えば、cDNA、ゲノムDNAのようなDNA、mRNAのようなRNAを含む)、ポリサッカライド、オリゴサッカライド、脂質、低分子(例えば、ホルモン、リガンド、情報伝達物質、有機低分子など)、これらの複合分子(糖脂質、糖タンパク質、リポタンパク質など)などが包含されるがそれらに限定されない。生体分子にはまた、細胞への導入が企図される限り、細胞自体、組織の一部も包含され得る。好ましくは、生体分子は、核酸(DNAまたはRNA)またはタンパク質を含む。別の好ましい実施形態では、生体分子は、核酸(例えば、ゲノムDNAまたはcDNA、あるいはPCRなどによって合成されたDNA)である。他の好ましい実施形態では、生体分子はタンパク質であり得る。
本明細書において「遺伝物質」とは、遺伝情報を担う任意の物質をいう。そのような物質としては、例えば、DNA、RNAなどの核酸、PNA、タンパク質などが挙げられるがそれらに限定されない。DNAは、cDNA、ゲノムDNA,人工DNA、RNAiなど任意の形態のものであり得る。RNAは、mRNA、tRNA、rRNA、RNAiなどであってもよい。
本明細書において使用される用語「タンパク質」、「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのアミノ酸のポリマーをいう。このポリマーは、直鎖であっても分岐していてもよく、環状であってもよい。アミノ酸は、天然のものであっても非天然のものであってもよく、改変されたアミノ酸であってもよい。この用語はまた、複数のポリペプチド鎖の複合体へとアセンブルされたものを包含し得る。この用語はまた、天然または人工的に改変されたアミノ酸ポリマーも包含する。そのような改変としては、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化または任意の他の操作もしくは改変(例えば、標識成分との結合体化)。この定義にはまた、例えば、アミノ酸の1または2以上のアナログを含むポリペプチド(例えば、非天然のアミノ酸などを含む)、ペプチド様化合物(例えば、ペプトイド)および当該分野において公知の他の改変が包含される。フィブロネクチンのような細胞外マトリクスタンパク質の遺伝子産物は、通常ポリペプチド形態をとる。
本明細書において使用される用語「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのヌクレオチドのポリマーをいう。この用語はまた、「誘導体オリゴヌクレオチド」または「誘導体ポリヌクレオチド」を含む。「誘導体オリゴヌクレオチド」または「誘導体ポリヌクレオチド」とは、ヌクレオチドの誘導体を含むか、またはヌクレオチド間の結合が通常とは異なるオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドをいい、互換的に使用される。そのようなオリゴヌクレオチドとして具体的には、例えば、2’−O−メチル−リボヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がホスホロチオエート結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がN3’−P5’ホスホロアミデート結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリボースとリン酸ジエステル結合とがペプチド核酸結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5プロピニルウラシルで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5チアゾールウラシルで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のシトシンがC−5プロピニルシトシンで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のシトシンがフェノキサジン修飾シトシン(phenoxazine−modified cytosine)で置換された誘導体オリゴヌクレオチド、DNA中のリボースが2’−O−プロピルリボースで置換された誘導体オリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチド中のリボースが2’−メトキシエトキシリボースで置換された誘導体オリゴヌクレオチドなどが例示される。他にそうではないと示されなければ、特定の核酸配列はまた、明示的に示された配列と同様に、その保存的に改変された改変体(例えば、縮重コドン置換体)および相補配列を包含することが企図される。具体的には、縮重コドン置換体は、1またはそれ以上の選択された(または、すべての)コドンの3番目の位置が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換された配列を作成することにより達成され得る(Batzerら、Nucleic Acid Res.19:5081(1991);Ohtsukaら、J.Biol.Chem.260:2605−2608(1985);Rossoliniら、Mol.Cell.Probes 8:91−98(1994))。フィブロネクチンのような細胞外マトリクスタンパク質などの遺伝子は、通常、このポリヌクレオチド形態をとる。また、トランスフェクションの対象となる分子もこのポリヌクレオチドである。
本明細書において、用語「核酸分子」もまた、核酸、オリゴヌクレオチド、およびポリヌクレオチドと互換可能に使用され、cDNA、mRNA、ゲノムDNAなどを含む。本明細書では、核酸および核酸分子は、用語「遺伝子」の概念に含まれ得る。ある遺伝子配列をコードする核酸分子はまた、「スプライス変異体(改変体)」を包含する。同様に、核酸によりコードされた特定のタンパク質は、その核酸のスプライス改変体によりコードされる任意のタンパク質を包含する。その名が示唆するように「スプライス変異体」は、遺伝子のオルタナティブスプライシングの産物である。転写後、最初の核酸転写物は、異なる(別の)核酸スプライス産物が異なるポリペプチドをコードするようにスプライスされ得る。スプライス変異体の産生機構は変化するが、エキソンのオルタナティブスプライシングを含む。読み過し転写により同じ核酸に由来する別のポリペプチドもまた、この定義に包含される。スプライシング反応の任意の産物(組換え形態のスプライス産物を含む)がこの定義に含まれる。したがって、本明細書では、たとえば、細胞接着関連因子として有用な細胞外マトリクスタンパク質には、そのスプライス変異体もまた包含され得る。
本明細書において、「遺伝子」とは、遺伝形質を規定する因子をいう。通常染色体上に一定の順序に配列している。タンパク質の一次構造を規定するものを構造遺伝子といい、その発現を左右するものを調節遺伝子(たとえば、プロモーター)という。本明細書では、遺伝子は、特に言及しない限り、構造遺伝子および調節遺伝子を包含する。したがって、フィブロネクチン遺伝子というときは、通常、フィブロネクチンの構造遺伝子およびフィブロネクチンのプロモーターの両方を包含する。本明細書では、「遺伝子」は、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」ならびに/または「タンパク質」「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」を指すことがある。本明細書においてはまた、「遺伝子産物」は、遺伝子によって発現された「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」ならびに/または「タンパク質」「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」を包含する。当業者であれば、遺伝子産物が何たるかはその状況に応じて理解することができる。
本明細書において配列(例えば、核酸配列、アミノ酸配列など)の「相同性」とは、2以上の遺伝子配列の、互いに対する同一性の程度をいう。従って、ある2つの遺伝子の相同性が高いほど、それらの配列の同一性または類似性は高い。2種類の遺伝子が相同性を有するか否かは、配列の直接の比較、または核酸の場合ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーション法によって調べられ得る。2つの遺伝子配列を直接比較する場合、その遺伝子配列間でDNA配列が、代表的には少なくとも50%同一である場合、好ましくは少なくとも70%同一である場合、より好ましくは少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一である場合、それらの遺伝子は相同性を有する。本明細書において、配列(例えば、核酸配列、アミノ酸配列など)の「類似性」とは、上記相同性において、保存的置換をポジティブ(同一)とみなした場合の、2以上の遺伝子配列の、互いに対する同一性の程度をいう。従って、保存的置換がある場合は、その保存的置換の存在に応じて同一性と類似性とは異なる。また、保存的置換がない場合は、同一性と類似性とは同じ数値を示す。
本明細書では、アミノ酸配列および塩基配列の類似性、同一性および相同性の比較は、配列分析用ツールであるFASTAにおいてデフォルトパラメータを用いて算出される。
本明細書において、「アミノ酸」は、本発明の目的を満たす限り、天然のものでも非天然のものでもよい。「誘導体アミノ酸」または「アミノ酸アナログ」とは、天然に存在するアミノ酸とは異なるがもとのアミノ酸と同様の機能を有するものをいう。そのような誘導体アミノ酸およびアミノ酸アナログは、当該分野において周知である。用語「天然のアミノ酸」とは、天然のアミノ酸のL−異性体を意味する。天然のアミノ酸は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、メチオニン、トレオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、システイン、プロリン、ヒスチジン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、γ−カルボキシグルタミン酸、アルギニン、オルニチン、およびリジンである。特に示されない限り、本明細書でいう全てのアミノ酸はL体であるが、D体のアミノ酸を用いた形態もまた本発明の範囲内にある。用語「非天然アミノ酸」とは、タンパク質中で通常は天然に見出されないアミノ酸を意味する。非天然アミノ酸の例として、ノルロイシン、パラ−ニトロフェニルアラニン、ホモフェニルアラニン、パラ−フルオロフェニルアラニン、3−アミノ−2−ベンジルプロピオン酸、ホモアルギニンのD体またはL体およびD−フェニルアラニンが挙げられる。「アミノ酸アナログ」とは、アミノ酸ではないが、アミノ酸の物性および/または機能に類似する分子をいう。アミノ酸アナログとしては、例えば、エチオニン、カナバニン、2−メチルグルタミンなどが挙げられる。アミノ酸模倣物とは、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸と同様な様式で機能する化合物をいう。
本明細書において、アミノ酸は、その一般に公知の3文字記号か、またはIUPAC−IUB Biochemical Nomenclature Commissionにより推奨される1文字記号のいずれかにより、本明細書中で言及され得る。ヌクレオチドも同様に、一般に認知された1文字コードにより言及され得る。
本明細書において、「対応する」アミノ酸とは、あるタンパク質分子またはポリペプチド分子において、比較の基準となるタンパク質またはポリペプチドにおける所定のアミノ酸と同様の作用を有するか、または有することが予測されるアミノ酸をいい、特に酵素分子にあっては、活性部位中の同様の位置に存在し触媒活性に同様の寄与をするアミノ酸をいう。例えば、本発明において使用されるインテグリンの結合部位であれば、その分子の結合部位に対応するオルソログにおける同様の部位(ドメイン)であり得る。
本明細書において「ヌクレオチド」は、天然のものでも非天然のものでもよい。「誘導体ヌクレオチド」または「ヌクレオチドアナログ」とは、天然に存在するヌクレオチドとは異なるがもとのヌクレオチドと同様の機能を有するものをいう。そのような誘導体ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログは、当該分野において周知である。そのような誘導体ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログの例としては、ホスホロチオエート、ホスホルアミデート、メチルホスホネート、キラルメチルホスホネート、2−O−メチルリボヌクレオチド、ペプチド−核酸(PNA)が含まれるが、これらに限定されない。
本明細書において、「フラグメント」とは、全長のポリペプチドまたはポリヌクレオチド(長さがn)に対して、1〜n−1までの配列長さを有するポリペプチドまたはポリヌクレオチドをいう。フラグメントの長さは、その目的に応じて、適宜変更することができ、例えば、その長さの下限としては、ポリペプチドの場合、3、4、5、6、7、8、9、10、15,20、25、30、40、50およびそれ以上のアミノ酸が挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。また、ポリヌクレオチドの場合、5、6、7、8、9、10、15,20、25、30、40、50、75、100およびそれ以上のヌクレオチドが挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。本明細書において、ポリペプチドおよびポリヌクレオチドの長さは、上述のようにそれぞれアミノ酸または核酸の個数で表すことができるが、上述の個数は絶対的なものではなく、同じ機能を有する限り、上限または加減としての上述の個数は、その個数の上下数個(または例えば上下10%)のものも含むことが意図される。そのような意図を表現するために、本明細書では、個数の前に「約」を付けて表現することがある。しかし、本明細書では、「約」のあるなしはその数値の解釈に影響を与えないことが理解されるべきである。本発明では、フラグメントは、ある一定の大きさ(例えば、5kDa)以上の大きさを有することが好ましい。理論に束縛されないが、細胞接着関連因子として機能するためにはある程度の大きさが必要であるようであるからである。
本明細書において、「ストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド」とは、当該分野で慣用される周知の条件をいう。本発明のポリヌクレオチド中から選択されたポリヌクレオチドをプローブとして、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラーク・ハイブリダイゼーション法あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法等を用いることにより、そのようなポリヌクレオチドを得ることができる。具体的には、コロニーあるいはプラーク由来のDNAを固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0MのNaCl存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2倍濃度のSSC(saline−sodium citrate)溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM 塩化ナトリウム、15mM クエン酸ナトリウムである)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるポリヌクレオチドを意味する。ハイブリダイゼーションは、Molecular Cloning 2nd ed.,Current Protocols in Molecular Biology,Supplement 1〜38、DNA Cloning 1:Core Techniques,A Practical Approach,Second Edition,Oxford University Press(1995)等の実験書に記載されている方法に準じて行うことができる。ここで、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列からは、好ましくは、A配列のみまたはT配列のみを含む配列が除外される。「ハイブリダイズ可能なポリヌクレオチド」とは、上記ハイブリダイズ条件下で別のポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドをいう。ハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドとして具体的には、本発明で具体的に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするDNAの塩基配列と少なくとも60%以上の相同性を有するポリヌクレオチド、好ましくは80%以上の相同性を有するポリヌクレオチド、さらに好ましくは95%以上の相同性を有するポリヌクレオチドを挙げることができる。
本明細書において「RNAi」とは、RNA interferenceの略称で、二本鎖RNA(dsRNAともいう)のようなRNAiを引き起こす因子を細胞に導入することにより、相同なmRNAが特異的に分解され、遺伝子産物の合成が抑制される現象およびそれに用いられる技術をいう。本明細書においてRNAiはまた、場合によっては、RNAiを引き起こす因子と同義に用いられ得る。
本明細書において「RNAiを引き起こす因子」とは、RNAiを引き起こすことができるような任意の因子をいう。本明細書において「遺伝子」に対して「RNAiを引き起こす因子」とは、その遺伝子に関するRNAiを引き起こし、RNAiがもたらす効果(例えば、その遺伝子の発現抑制など)が達成されることをいう。そのようなRNAiを引き起こす因子としては、例えば、標的遺伝子の核酸配列の一部に対して少なくとも約70%の相同性を有する配列またはストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列を含む、少なくとも10ヌクレオチド長の二本鎖部分を含むRNAまたはその改変体が挙げられるがそれに限定されない。ここで、この因子は、好ましくは、3’突出末端を含み、より好ましくは、3’突出末端は、2ヌクレオチド長以上のDNA(例えば、2〜4ヌクレオチド長のDNAであり得る。
理論に束縛されないが、RNAiが働く機構として考えられるものの一つとして、dsRNAのようなRNAiを引き起こす分子が細胞に導入されると、比較的長い(例えば、40塩基対以上)RNAの場合、ヘリカーゼドメインを持つダイサー(Dicer)と呼ばれるRNaseIII様のヌクレアーゼがATP存在下で、その分子を3’末端から約20塩基対ずつ切り出し、短鎖dsRNA(siRNAとも呼ばれる)を生じる。本明細書において「siRNA」とは、short interfering RNAの略称であり、人工的に化学合成されるかまたは生化学的に合成されたものか、あるいは生物体内で合成されたものか、あるいは約40塩基以上の二本鎖RNAが体内で分解されてできた10塩基対以上の短鎖二本鎖RNAをいい、通常、5’−リン酸、3’−OHの構造を有しており、3’末端は約2塩基突出している。このsiRNAに特異的なタンパク質が結合して、RISC(RNA−induced−silencing−complex)が形成される。この複合体は、siRNAと同じ配列を有するmRNAを認識して結合し、RNaseIII様の酵素活性によってsiRNAの中央部でmRNAを切断する。siRNAの配列と標的として切断するmRNAの配列の関係については、100%一致することが好ましい。しかし、siRNAの中央から外れた位置についての塩基の変異については、完全にRNAiによる切断活性がなくなるのではなく、部分的な活性が残存する。他方、siRNAの中央部の塩基の変異は影響が大きく、RNAiによるmRNAの切断活性が極度に低下する。このような性質を利用して、変異をもつmRNAについては、その変異を中央に配したsiRNAを合成し、細胞内に導入することで特異的に変異を含むmRNAだけを分解することができる。従って、本発明では、siRNAそのものをRNAiを引き起こす因子として用いることができるし、siRNAを生成するような因子(例えば、代表的に約40塩基以上のdsRNA)をそのような因子として用いることができる。
また、理論に束縛されることを希望しないが、siRNAは、上記経路とは別に、siRNAのアンチセンス鎖がmRNAに結合してRNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRP)のプライマーとして作用し、dsRNAが合成され、このdsRNAが再びダイサーの基質となり、新たなsiRNAを生じて作用を増幅することも企図される。従って、本発明では、siRNA自体およびsiRNAが生じるような因子もまた、有用である。実際に、昆虫などでは、例えば35分子のdsRNA分子が、1,000コピー以上ある細胞内のmRNAをほぼ完全に分解することから、siRNA自体およびsiRNAが生じるような因子が有用であることが理解される。
本発明においてsiRNAと呼ばれる、約20塩基前後(例えば、代表的には約21〜23塩基長)またはそれ未満の長さの二本鎖RNAを用いることができる。このようなsiRNAは、細胞に発現させることにより遺伝子発現を抑制し、そのsiRNAの標的となる病原遺伝子の発現を抑えることから、疾患の治療、予防、予後などに使用することができる。
本発明において用いられるsiRNAは、RNAiを引き起こすことができる限り、どのような形態を採っていてもよい。
別の実施形態において、本発明のRNAiを引き起こす因子は、3’末端に突出部を有する短いヘアピン構造(shRNA;short hairpin RNA)であり得る。本明細書において「shRNA」とは、一本鎖RNAで部分的に回文状の塩基配列を含むことにより、分子内で二本鎖構造をとり、ヘアピンのような構造となる約20塩基対以上の分子をいう。そのようなshRNAは、人工的に化学合成される。あるいは、そのようなshRNAは、センス鎖およびアンチセンス鎖のDNA配列を逆向きに連結したヘアピン構造のDNAをT7 RNAポリメラーゼによりインビトロでRNAを合成することによって生成することができる。理論に束縛されることは希望しないが、そのようなshRNAは、細胞内に導入された後、細胞内で約20塩基(代表的には例えば、21塩基、22塩基、23塩基)の長さに分解され、siRNAと同様にRNAiを引き起こし、本発明の処置効果があることが理解されるべきである。このような効果は、昆虫、植物、動物(哺乳動物を含む)など広汎な生物において発揮されることが理解されるべきである。このように、shRNAは、siRNAと同様にRNAiを引き起こすことから、本発明の有効成分として用いることができる。shRNAはまた、好ましくは、3’突出末端を有し得る。二本鎖部分の長さは特に限定されないが、好ましくは約10ヌクレオチド長以上、より好ましくは約20ヌクレオチド長以上であり得る。ここで、3’突出末端は、好ましくはDNAであり得、より好ましくは少なくとも2ヌクレオチド長以上のDNAであり得、さらに好ましくは2〜4ヌクレオチド長のDNAであり得る。
本発明において用いられるRNAiを引き起こす因子は、人工的に合成した(例えば、化学的または生化学的)ものでも、天然に存在するものでも用いることができ、この両者の間で本発明の効果に本質的な違いは生じない。化学的に合成したものでは、液体クロマトグラフィーなどにより精製をすることが好ましい。
本発明において用いられるRNAiを引き起こす因子は、インビトロで合成することもできる。この合成系において、T7 RNAポリメラーゼおよびT7プロモーターを用いて、鋳型DNAからアンチセンスおよびセンスのRNAを合成する。これらをインビトロでアニーリングした後、細胞に導入すると、上述のような機構を通じてRNAiが引き起こされ、本発明の効果が達成される。ここでは、例えば、リン酸カルシウム法でそのようなRNAを細胞内に導入することができる。
本発明のRNAiを引き起こす因子としてはまた、mRNAとハイブリダイズし得る一本鎖、あるいはそれらのすべての類似の核酸アナログのような因子も挙げられる。そのような因子もまた、本発明の処置方法および組成物において有用である。
本明細書において「塩」は、当該分野において通常用いられる意味と同じ意味で用いられ、無機塩および有機塩の両方を含む。塩は、通常、酸と塩基との中和反応によって生成する。塩には中和反応で生成するNaCl、KSOなどといったもののほかに、金属と酸との反応で生成するPbSO、ZnClなど種々の種類があり、これらは、直接中和反応によって生成したものでなくても、酸と塩基との中和反応から生成したとみなすことができる。塩としては、正塩(酸のHや塩基のOHが塩に含まれていないもの、例えば、NaCl、NHCl、CHCOONa、NaCO)、酸性塩(酸のHが塩に残っているもの、例えば、NaHCO、KHSO、CaHPO)、塩基性塩(塩基のOHが塩の中に残っているもの、例えば、MgCl(OH)、CuCl(OH))などに分類することができるがそれらの分類は、本発明においてはそれほど重要ではない。好ましい塩としては、培地を構成する塩(例えば、塩化カルシウム、リン酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ピルビン酸ナトリウム、HEPES、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫化マグネシウム、硝酸鉄、アミノ酸、ビタミン、緩衝液を構成する塩(例えば、塩化カルウム、塩化マグネシウム、リン酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム)などが好ましい。細胞に対する親和性を保持または改善する効果がより高いからである。これらの塩は、単独で用いてもよいし、複数用いてもよい。複数用いることが好ましい。細胞に対する親和性が高くなる傾向があるからである。従って、NaClなどを単独で用いるよりも、培地中に含まれる塩(例えば、塩化カルウム、塩化マグネシウム、リン酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム)を複数を用いることが好ましく、より好ましくは、培地中に含まれる塩全部をそのまま使用することが有利であり得る。別の好ましい実施形態では、グルコースを加えてもよい。
本明細書において、「検索」とは、電子的にまたは生物学的あるいは他の方法により、ある核酸塩基配列を利用して、特定の機能および/または性質を有する他の核酸塩基配列を見出すことをいう。電子的な検索としては、BLAST(Altschul et al.,J.Mol.Biol.215:403−410(1990))、FASTA(Pearson & Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 85:2444−2448(1988))、Smith and Waterman法(Smith and Waterman,J.Mol.Biol.147:195−197(1981))、およびNeedleman and Wunsch法(Needleman and Wunsch,J.Mol.Biol.48:443−453(1970))などが挙げられるがそれらに限定されない。生物学的な検索としては、ストリンジェントハイブリダイゼーション、ゲノムDNAをナイロンメンブレン等に貼り付けたマクロアレイまたはガラス板に貼り付けたマイクロアレイ(マイクロアレイアッセイ)、PCRおよび in situハイブリダイゼーションなどが挙げられるがそれらに限定されない。本明細書において、Fn1には、このような電子的検索、生物学的検索によって同定された対応遺伝子も含まれるべきであることが意図される。
本明細書において物質の細胞への「導入」とは、その物質が、細胞膜の内部へ進入することをいう。内部に導入されたかどうかは、例えば、その物質そのものを標識(例えば、蛍光標識、化学発光標識、燐光、放射能などを利用する)しその標識を検出することによるか、あるいは、その物質に起因する細胞内の変化(例えば、遺伝子発現、シグナル伝達、細胞内レセプターへの結合による事象、代謝変化など)を物理学的(例えば、目視)、化学的(分泌物の測定)、生化学的、生物学的に測定することによって判定することができる。従って、そのような「導入」には、単なるタンパク質などの物質の細胞内への移入の他、通常遺伝子操作とも呼ばれる、トランスフェクション、形質転換、形質導入などの操作も包含される。
本明細書において「標的物質」とは、細胞内への導入が企図される物質をいう。本発明が企図する標的物質は、通常の条件下では、細胞内に導入されない物質をいう。従って、拡散または疎水性相互作用によって通常の条件下で細胞に導入されることができるような物質は、本発明の重要な局面では対象外となる。通常の条件下で細胞内に導入されない標的物質としては、例えば、タンパク質(ポリペプチド)、RNA、DNA、糖(特に多糖)、およびそれらの複合分子(例えば、糖タンパク質、PNAなど)、ウイルスベクター、他の化合物が挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において「抗体」とは、当該分野で通常使用される意味で用いられ、本明細書においては、抗体の全部およびそのフラグメント、誘導体、それらの、ヒト化抗体、キメラ抗体、および抗イディオタイプ抗体、ならびにそれらの断片、例えばF(ab’)2およびFab断片、ならびにその他の組換えにより生産された結合体なども包含する。好ましくは、本発明において使用されるポリペプチドを認識する抗体であり、より好ましくは、本発明において使用されるポリペプチドを特異的に認識する抗体である。そのような抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のいずれでもよい。本発明の1実施形態において、そのような抗体もまた、本発明の範囲内に包含される。
本明細書において「抗原」とは、抗体と結合したり、Bリンパ球、Tリンパ球などの特異的レセプターに結合して、抗体産生および/または細胞障害などの免疫反応をひきおこす物質(例えば、タンパク質、脂質、糖などが挙げられるがそれらに限定されない)をいう。抗体またはリンパ球レセプターとの結合性を、「抗原性」(antigecity)という。抗体産生などの免疫応答を誘導する特性を「免疫原性」(immunogenicity)という。抗原として使用される物質は、例えば、その目的とする物質(例えば、タンパク質)を少なくとも1つ含む。含まれる物質は、全長が好ましいが、免疫を惹起し得るエピトープを少なくとも一つ含んでいれば、部分配列でもよい。本明細書において「エピトープ」または「抗原決定基」とは、抗体またはリンパ球レセプターが結合する抗原分子中の部位をいう。エピトープを決定する方法は、当該分野において周知であり、そのようなエピトープは、核酸またはアミノ酸の一次配列が提供されると、当業者はそのような周知慣用技術を用いて決定することができる。
本明細書において「細胞接着分子」のパートナーとは、細胞接着分子と特異的に相互作用する分子をいう。本明細書では、細胞接着因子と「特異的に相互作用する」とは、その特定の細胞接着因子以外の物質よりもその細胞接着因子に対して高い親和性で相互作用することをいう。
本明細書において「デバイス」とは、装置の一部または全部を構成することができる部分をいい、支持体(好ましくは固相支持体)およびその支持体に担持されるべき標的物質などから構成される。そのようなデバイスとしては、チップ、アレイ、マイクロタイタープレート、細胞培養プレート、シャーレ、フィルム、ビーズなどが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において使用される「支持体」は、生体分子のような物質を固定することができる材料(material)をいう。支持体の材料としては、共有結合かまたは非共有結合のいずれかで、本発明において使用される生体分子のような物質に結合する特性を有するかまたはそのような特性を有するように誘導体化され得る、任意の固体材料が挙げられる。
支持体として使用するためのそのような材料としては、固体表面を形成し得る任意の材料が使用され得るが、例えば、ガラス、シリカ、シリコン、セラミック、二酸化珪素、プラスチック、金属(合金も含まれる)、天然および合成のポリマー(例えば、ポリスチレン、セルロース、キトサン、デキストラン、およびナイロン)などが挙げられるがそれらに限定されない。支持体は、複数の異なる材料の層から形成されていてもよい。例えば、ガラス、石英ガラス、アルミナ、サファイア、フォルステライト、酸化珪素、炭化珪素、窒化珪素などの無機絶縁材料を使用することができる。ポリエチレン、エチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリエチレンテレフタレート、不飽和ポリエステル、含フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、アセタール樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、フェノール樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、スチレン・アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、シリコーン樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリスルホンなどの有機材料を用いることができる。本発明においてはまた、ニトロセルロース膜、ナイロン膜、PVDF膜など、ブロッティングに使用される膜を用いることもできる。支持体を構成する材料が固相である場合、本明細書において特に「固相支持体」という。本明細書において、プレート、マイクロウェルプレート、チップ、スライドグラス、フィルム、ビーズ、金属(表面)などの形態をとり得る。支持体はコーティングされていてもよく、コーティングされていなくてもよい。
本明細書において「液相」とは、当該分野において通常用いられる意味と同じ意味で用いられ、通常、溶液中での状態をいう。
本明細書において「固相」とは、当該分野において用いられる意味と同じ意味で用いられ、通常、固体の状態をいう。本明細書において液体および固体を総合して流体ということがある。
本明細書において「接触」とは、2つの物質(例えば、組成物および細胞)が互いに相互作用するに十分に至近距離に存在することをいう。
本明細書において「相互作用」とは、2つの物体について言及するとき、その2つの物体が相互に力を及ぼしあうことをいう。そのような相互作用としては、例えば、共有結合、水素結合、ファンデルワールス力、イオン性相互作用、非イオン性相互作用、疎水性相互作用、静電的相互作用などが挙げられるがそれらに限定されない。好ましくは、相互作用は、水素結合、疎水性相互作用などの生体内で生じる通常の相互作用であり得る。
本明細書において「相互作用物質」とは、ある対象に対して相互作用する物質を言う。そのような物質としては、例えば、抗原に対する抗体、レセプターに対するリガンド、あるいはその逆などが挙げられるがそれらに限定されない。
(遺伝子の改変)
本発明において使用される細胞接着分子は遺伝子産物の形態をとることが多いが、そのような遺伝子産物は、上述のようにその改変体であってもよいことが理解される。従って、本発明は、以下のような遺伝子改変の技術で生産された物質も使用することができる。
あるタンパク質分子において、配列に含まれるあるアミノ酸は、相互作用結合能力の明らかな低下または消失なしに、例えば、カチオン性領域または基質分子の結合部位のようなタンパク質構造において他のアミノ酸に置換され得る。あるタンパク質の生物学的機能を規定するのは、タンパク質の相互作用能力および性質である。従って、特定のアミノ酸の置換がアミノ酸配列において、またはそのDNAコード配列のレベルにおいて行われ得、置換後もなお、もとの性質を維持するタンパク質が生じ得る。従って、生物学的有用性の明らかな損失なしに、種々の改変が、本明細書において開示されたペプチドまたはこのペプチドをコードする対応するDNAにおいて行われ得る。
上記のような改変を設計する際に、アミノ酸の疎水性指数が考慮され得る。タンパク質における相互作用的な生物学的機能を与える際の疎水性アミノ酸指数の重要性は、一般に当該分野で認められている(Kyte.JおよびDoolittle,R.F.J.Mol.Biol.157(1):105−132,1982)。アミノ酸の疎水的性質は、生成したタンパク質の二次構造に寄与し、次いでそのタンパク質と他の分子(例えば、酵素、基質、レセプター、DNA、抗体、抗原など)との相互作用を規定する。各アミノ酸は、それらの疎水性および電荷の性質に基づく疎水性指数を割り当てられる。それらは:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(−0.4);スレオニン(−0.7);セリン(−0.8);トリプトファン(−0.9);チロシン(−1.3);プロリン(−1.6);ヒスチジン(−3.2);グルタミン酸(−3.5);グルタミン(−3.5);アスパラギン酸(−3.5);アスパラギン(−3.5);リジン(−3.9);およびアルギニン(−4.5))である。
あるアミノ酸を、同様の疎水性指数を有する他のアミノ酸により置換して、そして依然として同様の生物学的機能を有するタンパク質(例えば、酵素活性において等価なタンパク質)を生じさせ得ることが当該分野で周知である。このようなアミノ酸置換において、疎水性指数が±2以内であることが好ましく、±1以内であることがより好ましく、および±0.5以内であることがさらにより好ましい。疎水性に基づくこのようなアミノ酸の置換は効率的であることが当該分野において理解される。
親水性指数もまた、タンパク質の改変において考慮され得る。米国特許第4,554,101号に記載されるように、以下の親水性指数がアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0);アスパラギン酸(+3.0±1);グルタミン酸(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);スレオニン(−0.4);プロリン(−0.5±1);アラニン(−0.5);ヒスチジン(−0.5);システイン(−1.0);メチオニン(−1.3);バリン(−1.5);ロイシン(−1.8);イソロイシン(−1.8);チロシン(−2.3);フェニルアラニン(−2.5);およびトリプトファン(−3.4)。アミノ酸が同様の親水性指数を有しかつ依然として生物学的等価体を与え得る別のものに置換され得ることが理解される。このようなアミノ酸置換において、親水性指数が±2以内であることが好ましく、±1以内であることがより好ましく、および±0.5以内であることがさらにより好ましい。
本発明において、「保存的置換」とは、アミノ酸置換において、元のアミノ酸と置換されるアミノ酸との親水性指数または/および疎水性指数が上記のように類似している置換をいう。保存的置換の例としては、例えば、親水性指数または疎水性指数が、±2以内のもの同士、好ましくは±1以内のもの同士、より好ましくは±0.5以内のもの同士のものが挙げられるがそれらに限定されない。従って、保存的置換の例は、当業者に周知であり、例えば、次の各グループ内での置換:アルギニンおよびリジン;グルタミン酸およびアスパラギン酸;セリンおよびスレオニン;グルタミンおよびアスパラギン;ならびにバリン、ロイシン、およびイソロイシン、などが挙げられるがこれらに限定されない。
本明細書において、「改変体」とは、もとのポリペプチドまたはポリヌクレオチドなどの物質に対して、一部が変更されているものをいう。そのような改変体としては、置換改変体、付加改変体、欠失改変体、短縮(truncated)改変体、対立遺伝子変異体などが挙げられる。対立遺伝子(allele)とは、同一遺伝子座に属し、互いに区別される遺伝的改変体のことをいう。従って、「対立遺伝子変異体」とは、ある遺伝子に対して、対立遺伝子の関係にある改変体をいう。そのような対立遺伝子変異体は、通常その対応する対立遺伝子と同一または非常に類似性の高い配列を有し、通常はほぼ同一の生物学的活性を有するが、まれに異なる生物学的活性を有することもある。「種相同体またはホモログ(homolog)」とは、ある種の中で、ある遺伝子とアミノ酸レベルまたはヌクレオチドレベルで、相同性(好ましくは、60%以上の相同性、より好ましくは、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上の相同性)を有するものをいう。そのような種相同体を取得する方法は、本明細書の記載から明らかである。「オルソログ(ortholog)」とは、オルソロガス遺伝子(orthologous gene)ともいい、二つの遺伝子がある共通祖先からの種分化に由来する遺伝子をいう。例えば、多重遺伝子構造をもつヘモグロビン遺伝子ファミリーを例にとると、ヒトおよびマウスのαヘモグロビン遺伝子はオルソログであるが,ヒトのαヘモグロビン遺伝子およびβヘモグロビン遺伝子はパラログ(遺伝子重複で生じた遺伝子)である。オルソログは、分子系統樹の推定に有用である。オルソログは、通常別の種においてもとの種と同様の機能を果たしていることがあり得ることから、本発明のオルソログもまた、本発明において有用であり得る。
本明細書において「保存的(に改変された)改変体」は、アミノ酸配列および核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関して、保存的に改変された改変体とは、同一のまたは本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸をいい、核酸がアミノ酸配列をコードしない場合には、本質的に同一な配列をいう。遺伝コードの縮重のため、多数の機能的に同一な核酸が任意の所定のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCG、およびGCUはすべて、アミノ酸アラニンをコードする。したがって、アラニンがコドンにより特定される全ての位置で、そのコドンは、コードされたポリペプチドを変更することなく、記載された対応するコドンの任意のものに変更され得る。このような核酸の変動は、保存的に改変された変異の1つの種である「サイレント改変(変異)」である。ポリペプチドをコードする本明細書中のすべての核酸配列はまた、その核酸の可能なすべてのサイレント変異を記載する。当該分野において、核酸中の各コドン(通常メチオニンのための唯一のコドンであるAUG、および通常トリプトファンのための唯一のコドンであるTGGを除く)が、機能的に同一な分子を産生するために改変され得ることが理解される。したがって、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変異は、記載された各配列において暗黙に含まれる。好ましくは、そのような改変は、ポリペプチドの高次構造に多大な影響を与えるアミノ酸であるシステインの置換を回避するようになされ得る。このような塩基配列の改変法としては、制限酵素などによる切断、DNAポリメラーゼ、Klenowフラグメント、DNAリガーゼなどによる処理等による連結等の処理、合成オリゴヌクレオチドなどを用いた部位特異的塩基置換法(特定部位指向突然変異法;Mark Zoller and Michael Smith,Methods in Enzymology,100,468−500(1983))が挙げられるが、この他にも通常分子生物学の分野で用いられる方法によって改変を行うこともできる。
本明細書中において、機能的に等価なポリペプチドを作製するために、アミノ酸の置換のほかに、アミノ酸の付加、欠失、または修飾もまた行うことができる。アミノ酸の置換とは、もとのペプチドを1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸で置換することをいう。アミノ酸の付加とは、もとのペプチド鎖に1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸を付加することをいう。アミノ酸の欠失とは、もとのペプチドから1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸を欠失させることをいう。アミノ酸修飾は、アミド化、カルボキシル化、硫酸化、ハロゲン化、アルキル化、グリコシル化、リン酸化、水酸化、アシル化(例えば、アセチル化)などを含むが、これらに限定されない。置換、または付加されるアミノ酸は、天然のアミノ酸であってもよく、非天然のアミノ酸、またはアミノ酸アナログでもよい。天然のアミノ酸が好ましい。
本明細書において使用される用語「ペプチドアナログ」または「ペプチド誘導体」とは、ペプチドとは異なる化合物であるが、ペプチドと少なくとも1つの化学的機能または生物学的機能が等価であるものをいう。したがって、ペプチドアナログには、もとのペプチドに対して、1つ以上のアミノ酸アナログまたはアミノ酸誘導体が付加または置換されているものが含まれる。ペプチドアナログは、その機能が、もとのペプチドの機能(例えば、pKa値が類似していること、官能基が類似していること、他の分子との結合様式が類似していること、水溶性が類似していることなど)と実質的に同様であるように、このような付加または置換がされている。そのようなペプチドアナログは、当該分野において周知の技術を用いて作製することができる。したがって、ペプチドアナログは、アミノ酸アナログを含むポリマーであり得る。
本明細書において、「ポリヌクレオチドアナログ」、「核酸アナログ」は、ポリヌクレオチドまたは核酸とは異なる化合物であるが、ポリヌクレオチドまたは核酸と少なくとも1つの化学的機能または生物学的機能が等価であるものをいう。したがって、ポリヌクレオチドアナログまたは核酸アナログには、もとのペプチドに対して、1つ以上のヌクレオチドアナログまたはヌクレオチド誘導体が付加または置換されているものが含まれる。
本明細書において使用される核酸分子は、発現されるポリペプチドが天然型のポリペプチドと実質的に同一の活性を有する限り、上述のようにその核酸の配列の一部が欠失または他の塩基により置換されていてもよく、あるいは他の核酸配列が一部挿入されていてもよい。あるいは、5’末端および/または3’末端に他の核酸が結合していてもよい。また、ポリペプチドをコードする遺伝子をストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、そのポリペプチドと実質的に同一の機能を有するポリペプチドをコードする核酸分子でもよい。このような遺伝子は、当該分野において公知であり、本発明において利用することができる。
このような核酸は、周知のPCR法により得ることができ、化学的に合成することもできる。これらの方法に、例えば、部位特異的変位誘発法、ハイブリダイゼーション法などを組み合わせてもよい。
本明細書において、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの「置換、付加または欠失」とは、もとのポリペプチドまたはポリヌクレオチドに対して、それぞれアミノ酸もしくはその代替物、またはヌクレオチドもしくはその代替物が、置き換わること、付け加わることまたは取り除かれることをいう。このような置換、付加または欠失の技術は、当該分野において周知であり、そのような技術の例としては、部位特異的変異誘発技術などが挙げられる。置換、付加または欠失は、1つ以上であれば任意の数でよく、そのような数は、その置換、付加または欠失を有する改変体において目的とする機能(例えば、ホルモン、サイトカインの情報伝達機能など)が保持される限り、多くすることができる。例えば、そのような数は、1または数個であり得、そして好ましくは、全体の長さの20%以内、10%以内、または100個以下、50個以下、25個以下などであり得る。
(相互作用因子)
本明細書においてポリヌクレオチドまたはポリペプチドに対して「特異的に相互作用する因子」とは、そのポリヌクレオチドまたはそのポリペプチドに対する親和性が、他の無関連の(特に、同一性が30%未満の)ポリヌクレオチドまたはポリペプチドに対する親和性よりも、代表的には同等またはより高いか、好ましくは有意に高いものをいう。そのような親和性は、例えば、ハイブリダイゼーションアッセイ、結合アッセイなどによって測定することができる。
本明細書において「因子」としては、意図する目的を達成することができる限りどのような物質または他の要素(例えば、エネルギー)でもあってもよい。そのような物質としては、例えば、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、ペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、核酸(例えば、cDNA、ゲノムDNAのようなDNA、mRNA、siRNA、RNAiのようなRNAを含む)、ポリサッカリド、オリゴサッカリド、脂質、有機低分子(例えば、ホルモン、リガンド、情報伝達物質、有機低分子、コンビナトリアルケミストリで合成された分子、医薬品として利用され得る低分子(例えば、低分子リガンドなど)など)、これらの複合分子が挙げられるがそれらに限定されない。ポリヌクレオチドに対して特異的な因子としては、代表的には、そのポリヌクレオチドの配列に対して一定の配列相同性を(例えば、70%以上の配列同一性)もって相補性を有するポリヌクレオチド、プロモーター領域に結合する転写因子のようなポリペプチドなどが挙げられるがそれらに限定されない。ポリペプチドに対して特異的な因子としては、代表的には、そのポリペプチドに対して特異的に指向された抗体またはその誘導体あるいはその類似物(例えば、単鎖抗体)、そのポリペプチドがレセプターまたはリガンドである場合の特異的なリガンドまたはレセプター、そのポリペプチドが酵素である場合、その基質などが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において「単離された」生物学的因子(例えば、核酸またはタンパク質など)とは、その生物学的因子が天然に存在する生物体の細胞内の他の生物学的因子(例えば、核酸である場合、核酸以外の因子および目的とする核酸以外の核酸配列を含む核酸;タンパク質である場合、タンパク質以外の因子および目的とするタンパク質以外のアミノ酸配列を含むタンパク質など)から実質的に分離または精製されたものをいう。「単離された」核酸およびタンパク質には、標準的な精製方法によって精製された核酸およびタンパク質が含まれる。したがって、単離された核酸およびタンパク質は、化学的に合成した核酸およびタンパク質を包含する。
本明細書において「精製された」生物学的因子(例えば、核酸またはタンパク質など)とは、その生物学的因子に天然に随伴する因子の少なくとも一部が除去されたものをいう。したがって、通常、精製された生物学的因子におけるその生物学的因子の純度は、その生物学的因子が通常存在する状態よりも高い(すなわち濃縮されている)。
本明細書中で使用される用語「精製された」および「単離された」は、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも85重量%、よりさらに好ましくは少なくとも95重量%、そして最も好ましくは少なくとも98重量%の、同型の生物学的因子が存在することを意味する。
(遺伝子操作)
本明細書において遺伝子操作について言及する場合、「ベクター」または「組み換えベクター」とは、目的のポリヌクレオチド配列を目的の細胞へと移入させることができるベクターをいう。そのようなベクターとしては、原核細胞、酵母、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、動物個体および植物個体などの宿主細胞において自立複製が可能、または染色体中への組込みが可能で、本発明のポリヌクレオチドの転写に適した位置にプロモーターを含有しているものが例示される。従って、プラスミドもまた、ベクターの一例である。ベクターのうち、クローニングに適したベクターを「クローニングベクター」という。そのようなクローニングベクターは通常、制限酵素部位を複数含むマルチプルクローニング部位を含む。そのような制限酵素部位およびマルチプルクローニング部位は、当該分野において周知であり、当業者は、目的に合わせて適宜選択して使用することができる。そのような技術は、本明細書に記載される文献(例えば、Sambrookら、前出)に記載されている。
本明細書において「発現ベクター」とは、構造遺伝子およびその発現を調節するプロモーターに加えて種々の調節エレメントが宿主の細胞中で作動し得る状態で連結されている核酸配列をいう。調節エレメントは、好ましくは、ターミネーター、薬剤耐性遺伝子のような選択マーカーおよび、エンハンサーを含み得る。生物(例えば、動物)の発現ベクターのタイプおよび使用される調節エレメントの種類が、宿主細胞に応じて変わり得ることは、当業者に周知の事項である。
原核細胞に対する組換えベクターとしては、pcDNA3(+)、pBluescript−SK(+/−)、pGEM−T、pEF−BOS、pEGFP、pHAT、pUC18、pFT−DESTTM42GATEWAY(Invitrogen)などが例示される。
動物細胞に対する組換えベクターとしては、pcDNAI/Amp、pcDNAI、pCDM8(いずれもフナコシより市販)、pAGE107[特開平3−229(Invitrogen)、pAGE103[J.Biochem.,101,1307(1987)]、pAMo、pAMoA[J.Biol.Chem.,268,22782−22787(1993)]、マウス幹細胞ウイルス(Murine Stem Cell Virus)(MSCV)に基づいたレトロウイルス型発現ベクター、pEF−BOS、pEGFPなどが例示される。
植物細胞に対する組換えベクターとしては、pPCVICEn4HPT、pCGN1548、pCGN1549、pBI221、pBI121などが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において「ターミネーター」とは、通常遺伝子のタンパク質をコードする領域の下流に位置し、DNAがmRNAに転写される際の転写の終結、ポリA配列の付加に関与する配列をいう。ターミネーターは、mRNAの安定性に関与して遺伝子の発現量に影響を及ぼすことが知られている。
本明細書において「プロモーター」とは、遺伝子の転写の開始部位を決定し、またその頻度を直接的に調節するDNA上の領域をいい、通常RNAポリメラーゼが結合して転写を始める塩基配列である。したがって、本明細書においてある遺伝子のプロモーターの働きを有する部分を「プロモーター部分」という。プロモーターの領域は、通常、推定タンパク質コード領域の第1エキソンの上流約2kbp以内の領域であることが多いので、DNA解析用ソフトウエアを用いてゲノム塩基配列中のタンパク質コード領域を予測すれば、プロモータ領域を推定することはできる。推定プロモーター領域は、構造遺伝子ごとに変動するが、通常構造遺伝子の上流にあるが、これらに限定されず、構造遺伝子の下流にもあり得る。好ましくは、推定プロモーター領域は、第一エキソン翻訳開始点から上流約2kbp以内に存在する。
本明細書において「エンハンサー」とは、目的遺伝子の発現効率を高めるために用いられる配列をいう。そのようなエンハンサーは当該分野において周知である。エンハンサーは複数個用いられ得るが1個用いられてもよいし、用いなくともよい。
本明細書において「サイレンサー」とは、遺伝子発現を抑制し静止する機能を有する配列をいう。本発明では、サイレンサーとしてはその機能を有する限り、どのようなものを用いてもよく、サイレンサーを用いなくてもよい。
本明細書において「作動可能に連結された(る)」とは、所望の配列の発現(作動)がある転写翻訳調節配列(例えば、プロモーター、エンハンサー、サイレンサーなど)または翻訳調節配列の制御下に配置されることをいう。プロモーターが遺伝子に作動可能に連結されるためには、通常、その遺伝子のすぐ上流にプロモーターが配置されるが、必ずしも隣接して配置される必要はない。
本明細書において、核酸分子を細胞に導入する技術は、どのような技術でもよく、例えば、形質転換、形質導入、トランスフェクションなどが挙げられる。 そのような核酸分子の導入技術は、当該分野において周知であり、かつ、慣用されるものであり、例えば、Ausubel F.A.ら編(1988)、Current Protocols in Molecular Biology、Wiley、New York、NY;Sambrook Jら(1987)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Ed.およびその第三版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY、別冊実験医学「遺伝子導入&発現解析実験法」羊土社、1997などに記載される。遺伝子の導入は、ノーザンブロット、ウェスタンブロット分析のような本明細書に記載される方法または他の周知慣用技術を用いて確認することができる。
ベクターの導入方法としては、細胞にDNAを導入する上述のような方法であればいずれも用いることができ、例えば、トランスフェクション、形質導入、形質転換など(例えば、リン酸カルシウム法、リポソーム法、DEAEデキストラン法、エレクトロポレーション法、パーティクルガン(遺伝子銃)を用いる方法など)、リポフェクション法、スフェロプラスト法[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84,1929(1978)]、酢酸リチウム法[J.Bacteriol.,153,163(1983)]、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,75,1929(1978)記載の方法が挙げられる。
本明細書において「遺伝子導入試薬」とは、遺伝子導入方法において、導入効率を促進するために用いられる試薬をいう。そのような遺伝子導入試薬としては、例えば、カチオン性高分子、カチオン性脂質、ポリアミン系試薬、ポリイミン系試薬、リン酸カルシウムなどが挙げられるがそれらに限定されない。トランスフェクションの際に利用される試薬の具体例としては、種々なソースから市販されている試薬が挙げられ、例えば、Effectene Transfection Reagent(cat.no.301425,Qiagen,CA),TransFastTM Transfection Reagent(E2431,Promega,WI),TfxTM-20 Reagent(E2391,Promega,WI),SuperFect Transfection Reagent(301305,Qiagen,CA),PolyFect Transfection Reagent(301105,Qiagen,CA),LipofectAMINE 2000 Reagent(11668-019,Invitrogen corporation,CA),JetPEI(×4)conc.(101-30,Polyplus-transfection,France)およびExGen 500(R0511,Fermentas Inc.,MD)などが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書「指示書」とは、本発明の標的物質導入方法などを、ユーザー(研究者、実験補助者、または治療においては医師、患者など投与を行う人など)に対して記載したものである。この指示書は、本発明の組成物などを例えば、使用する方法を指示する文言が記載されている。この指示書は、本発明が実施される国の監督官庁が規定した様式に従って作成され、その監督官庁により承認を受けた旨が明記される。指示書は、医薬の場合通常いわゆる添付文書(package insert)の形態をとり、または実験用試薬の形態の場合マニュアルの形態をとり、通常は紙媒体で提供されるが、それに限定されず、例えば、電子媒体(例えば、インターネットで提供されるホームページ、電子メール)のような形態でも提供され得る。
本明細書において「形質転換体」とは、形質転換によって作製された細胞などの生命体の全部または一部(組織など)をいう。形質転換体としては、原核生物、酵母、動物、植物、昆虫などの細胞などの生命体の全部または一部(組織など)が例示される。形質転換体は、その対象に依存して、形質転換細胞、形質転換組織、形質転換宿主などともいわれる。本発明において用いられる細胞は、形質転換体であってもよい。
本明細書において遺伝子操作などにおいて原核生物細胞が使用される場合、原核生物細胞としては、Escherichia属、Serratia属、Bacillus属、Brevibacterium属、Corynebacterium属、Microbacterium属、Pseudomonas属などに属する原核生物細胞、例えば、Escherichia coli XL1−Blue、Escherichia coli XL2−Blue、Escherichia coli DH1が例示される。あるいは、本発明では、天然物から分離した細胞も使用することができる。
本明細書において遺伝子操作などにおいて使用され得る動物細胞としては、マウス・ミエローマ細胞、ラット・ミエローマ細胞、マウス・ハイブリドーマ細胞、チャイニーズ・ハムスターの細胞であるCHO細胞、BHK細胞、アフリカミドリザル腎臓細胞、ヒト白血病細胞、HBT5637(特開昭63−299)、ヒト結腸癌細胞株などを挙げることができる。マウス・ミエローマ細胞としては、ps20、NSOなど、ラット・ミエローマ細胞としてはYB2/0など、ヒト胎児腎臓細胞としてはHEK293(ATCC:CRL−1573)など、ヒト白血病細胞としてはBALL−1など、アフリカミドリザル腎臓細胞としてはCOS−1、COS−7、ヒト結腸癌細胞株としてはHCT−15、ヒト神経芽細胞腫SK−N−SH、SK−N−SH−5Y、マウス神経芽細胞腫Neuro2Aなどが例示される。あるいは、本発明では、初代培養細胞も使用することができる。
本明細書において遺伝子操作などにおいて使用され得る植物細胞としては、カルスまたはその一部および懸濁培養細胞、ナス科、イネ科、アブラナ科、バラ科、マメ科、ウリ科、シソ科、ユリ科、アカザ科、セリ科などの植物の細胞が挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において遺伝子発現(たとえば、mRNA発現、ポリペプチド発現)の「検出」または「定量」は、例えば、mRNAの測定および免疫学的測定方法を含む適切な方法を用いて達成され得る。分子生物学的測定方法としては、例えば、ノーザンブロット法、ドットブロット法またはPCR法などが例示される。免疫学的測定方法としては、例えば、方法としては、マイクロタイタープレートを用いるELISA法、RIA法、蛍光抗体法、ウェスタンブロット法、免疫組織染色法などが例示される。また、定量方法としては、ELISA法またはRIA法などが例示される。アレイ(例えば、DNAアレイ、プロテインアレイ)を用いた遺伝子解析方法によっても行われ得る。DNAアレイについては、(秀潤社編、細胞工学別冊「DNAマイクロアレイと最新PCR法」)に広く概説されている。プロテインアレイについては、Nat Genet.2002 Dec;32 Suppl:526−32に詳述されている。遺伝子発現の分析法としては、上述に加えて、RT−PCR、RACE法、SSCP法、免疫沈降法、two−hybridシステム、インビトロ翻訳などが挙げられるがそれらに限定されない。そのようなさらなる分析方法は、例えば、ゲノム解析実験法・中村祐輔ラボ・マニュアル、編集・中村祐輔 羊土社(2002)などに記載されており、本明細書においてそれらの記載はすべて参考として援用される。
本明細書において遺伝子、ポリヌクレオチド、ポリペプチドなど遺伝子産物の「発現」とは、その遺伝子などがインビボで一定の作用を受けて、別の形態になることをいう。好ましくは、遺伝子、ポリヌクレオチドなどが、転写および翻訳されて、ポリペプチドの形態になることをいうが、転写されてmRNAが作製されることもまた発現の一形態であり得る。より好ましくは、そのようなポリペプチドの形態は、翻訳後プロセシングを受けたものであり得る。
本明細書において「発現量」とは、目的の細胞などにおいて、ポリペプチドまたはmRNAが発現される量をいう。そのような発現量としては、本発明の抗体を用いてELISA法、RIA法、蛍光抗体法、ウェスタンブロット法、免疫組織染色法などの免疫学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価される本発明ポリペプチドのタンパク質レベルでの発現量、またはノーザンブロット法、ドットブロット法、PCR法などの分子生物学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価される本発明のポリペプチドのmRNAレベルでの発現量が挙げられる。「発現量の変化」とは、上記免疫学的測定方法または分子生物学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価される本発明のポリペプチドのタンパク質レベルまたはmRNAレベルでの発現量が増加あるいは減少することを意味する。
従って、本明細書において遺伝子、ポリヌクレオチド、ポリペプチドなどの「発現」または「発現量」の「減少」とは、本発明の因子を作用させたときに、作用させないときよりも、発現の量が有意に減少することをいう。好ましくは、発現の減少は、ポリペプチドの発現量の減少を含む。本明細書において遺伝子、ポリヌクレオチド、ポリペプチドなどの「発現」または「発現量」の「増加」とは、細胞内に遺伝子発現に関連する因子(例えば、発現されるべき遺伝子またはそれを調節する因子)を導入したときに、作用させないときよりも、発現の量が有意に増加することをいう。好ましくは、発現の増加は、ポリペプチドの発現量の増加を含む。本明細書において遺伝子の「発現」の「誘導」とは、ある細胞にある因子を作用させてその遺伝子の発現量を増加させることをいう。したがって、発現の誘導は、まったくその遺伝子の発現が見られなかった場合にその遺伝子が発現するようにすること、およびすでにその遺伝子の発現が見られていた場合にその遺伝子の発現が増大することを包含する。
本明細書において、遺伝子が「特異的に発現する」とは、その遺伝子が、植物の特定の部位または時期において他の部位または時期とは異なる(好ましくは高い)レベルで発現されることをいう。特異的に発現するとは、ある部位(特異的部位)にのみ発現してもよく、それ以外の部位においても発現していてもよい。好ましくは特異的に発現するとは、ある部位においてのみ発現することをいう。
本明細書において「生物学的活性」とは、ある因子(例えば、ポリペプチドまたはタンパク質)が、生体内において有し得る活性のことをいい、種々の機能(例えば、転写促進活性)を発揮する活性が包含される。例えば、細胞接着関連因子が細胞接着分子と相互作用する場合、その生物学的活性は、フィブロネクチンなどのECM基質をコートした表面への細胞を播種した際に相互作用物質が共存することによって接着阻害作用などが確認される。また、そのような相互作用活性を有する基質を表面上に化学的、または物理的に固定した際、細胞のその表面上への接着性の亢進が確認される。従って、このような原理をもとにしたアッセイによって測定することができる。別の好ましい実施形態では、そのような生物学的活性は、細胞接着活性、ヘパリン結合活性、コラーゲン結合活性などであり得る。細胞接着活性は、細胞播種後に細胞の固相への接着速度を測定し、接着活性として取り扱うことによって測定することができる。ヘパリン結合活性は、ヘパリン固定化カラム等のアフィニティークロマトグラフィーを行い、これに結合するものとして確認できるものによって測定することができる。コラーゲン結合活性は、コラーゲン固定化カラム等のアフィニティークロマトグラフィーを行い、これに結合するものとして確認できるものによって測定することができる。例えば、ある因子が酵素である場合、その生物学的活性は、その酵素活性を包含する。別の例では、ある因子がリガンドである場合、そのリガンドが対応するレセプターへの結合を包含する。そのような生物学的活性は、当該分野において周知の技術によって測定することができる(Molecular Cloning、Current Protocols(本明細書において引用)などを参照)。
本明細書において「粒子」とは、一定の硬度を有し、一定の大きさ以上の大きさを有する物質をいい、本発明では、金属などによって構成されるものをいう。本発明において使用される粒子としては、例えば、金コロイド、銀コロイド、ラテックスコロイドなどが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において「キット」とは、通常2つ以上の区画に分けて、提供されるべき部分(例えば、試薬、粒子など)が提供されるユニットをいう。混合されて提供されるべきでなく、使用直前に混合して使用することが好ましいような組成物の提供を目的とするときに、このキットの形態は好ましい。そのようなキットは、好ましくは、提供される部分(例えば、試薬、粒子など)をどのように処理すべきかを記載する説明書を備えていることが有利である。
(ポリペプチドの製造方法)
本発明において使用されるポリペプチドは、そのポリペプチドをコードするDNAを組み込んだ組換え体ベクターを保有する微生物、動物細胞などに由来する形質転換体を、通常の培養方法に従って培養し、このポリペプチドを生成蓄積させ、その培養物よりその本発明のポリペプチドを採取することにより、製造することができる。
形質転換体を培地に培養する方法は、宿主の培養に用いられる通常の方法に従って行うことができる。大腸菌等の原核生物あるいは酵母等の真核生物を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、本発明の生物が資化し得る炭素源(例えば、グルコース、フラクトース、スクロース、これらを含有する糖蜜、デンプンあるいはデンプン加水分解物等の炭水化物、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、エタノール、プロパノール等のアルコール類など)、窒素源(例えば、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の各種無機酸または有機酸のアンモニウム塩、その他含窒素物質、ならびに、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスチープリカー、カゼイン加水分解物、大豆粕および大豆粕加水分解物、各種発酵菌体およびその消化物等など)、無機塩類(例えば、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウム等など)等を含有し、形質転換体の培養を効率的に行える培地であれば天然培地、合成培地(例えば、RPMI1640培地[The Journal of the American Medical Association,199,519(1967)]、EagleのMEM培地[Science,122,501(1952)]、DMEM培地[Virology,8,396(1959)]、199培地[Proceedings of the Society for the Biological Medicine,73,1(1950)]またはこれら培地にウシ胎児血清等を添加した培地等)のいずれを用いてもよい。培養は、振盪培養または深部通気攪拌培養等の好気的条件下で行うことが好ましいがそれに限定されない。培養温度は15〜40℃がよく、培養時間は、通常5時間〜7日間である。培養中pHは、3.0〜9.0に保持する。pHの調整は、無機あるいは有機の酸、アルカリ溶液、尿素、炭酸カルシウム、アンモニア等を用いて行う。また培養中必要に応じて、アンピシリンまたはテトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
本発明において使用されるポリペプチドをコードする核酸配列で形質転換された形質転換体の培養物から、そのポリペプチドを単離または精製するためには、当該分野で周知慣用の通常のポリペプチド(例えば、酵素)の単離または精製法を用いることができる。例えば、本発明のポリペプチドが本発明のポリペプチド製造用形質転換体の細胞外に本発明のポリペプチドが分泌される場合には、その培養物を遠心分離等の手法により処理し、可溶性画分を取得する。その可溶性画分から、溶媒抽出法、硫安等による塩析法脱塩法、有機溶媒による沈澱法、ジエチルアミノエチル(DEAE)−Sepharose(Pharmacia)、DIAION HPA−75(三菱化学)等樹脂を用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、S−Sepharose FF(Pharmacia)等の樹脂を用いた陽イオン交換クロマトグラフィー法、Butyl−Sepharose、Phenyl−Sepharose等の樹脂を用いた疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティークロマトグラフィー法、クロマトフォーカシング法、等電点電気泳動等の電気泳動法等の手法を用い、精製標品を得ることができる。
本発明において使用されるポリペプチドが形質転換体の細胞内に溶解状態で蓄積する場合には、培養物を遠心分離することにより、培養物中の細胞を集め、その細胞を洗浄した後に、超音波破砕機、フレンチプレス、マントンガウリンホモジナイザー、ダイノミル等により細胞を破砕し、無細胞抽出液を得る。その無細胞抽出液を遠心分離することにより得られた上清から、溶媒抽出法、硫安等による塩析法脱塩法、有機溶媒による沈澱法、ジエチルアミノエチル(DEAE)−Sepharose、DIAION HPA−75等樹脂を用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、S−Sepharose FF等の樹脂を用いた陽イオン交換クロマトグラフィー法、Butyl−Sepharose、Phenyl−Sepharose等の樹脂を用いた疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティークロマトグラフィー法、クロマトフォーカシング法、等電点電気泳動等の電気泳動法等の手法を用いることによって、精製標品を得ることができる。
本発明において使用されるポリペプチドが細胞内に不溶体を形成して発現した場合は、同様に細胞を回収後破砕し、遠心分離を行うことにより得られた沈澱画分より、通常の方法により本発明のポリペプチドを回収後、そのポリペプチドの不溶体をポリペプチド変性剤で可溶化する。この可溶化液を、ポリペプチド変性剤を含まないあるいはポリペプチド変性剤の濃度がポリペプチドが変性しない程度に希薄な溶液に希釈、あるいは透析し、本発明のポリペプチドを正常な立体構造に構成させた後、上記と同様の単離精製法により精製標品を得ることができる。
また、通常のタンパク質の精製方法[例えば、J.Evan.Sadlerら:Methods in Enzymology,83,458]に準じて精製できる。また、本発明において使用されるポリペプチドが他のタンパク質との融合タンパク質として生産しても使用され得る場合、融合したタンパク質に親和性をもつ物質を用いたアフィニティークロマトグラフィーを利用して精製することもできる[山川彰夫,実験医学(Experimental Medicine),13,469−474(1995)]。あるいは、Loweらの方法[Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,86,8227−8231(1989)、GenesDevelop.,4,1288(1990)]に記載の方法に準じて、そのようなポリペプチドをプロテインAとの融合タンパク質として生産し、イムノグロブリンGを用いるアフィニティークロマトグラフィーにより精製することができる。また、本発明において使用されるポリペプチドをFLAGペプチドとの融合タンパク質として生産し、抗FLAG抗体を用いるアフィニティークロマトグラフィーにより精製することができる[Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,86,8227(1989)、Genes Develop.,4,1288(1990)]。
さらに、本発明のポリペプチド自身に対する抗体を用いたアフィニティークロマトグラフィーで精製することもできる。本発明のポリペプチドは、公知の方法[J.Biomolecular NMR,6,129−134、Science,242,1162−1164、J.Biochem.,110,166−168(1991)]に準じて、in vitro転写・翻訳系を用いてを生産することができる。
上記で取得されたポリペプチドのアミノ酸情報を基に、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t−ブチルオキシカルボニル法)等の化学合成法によっても本発明のポリペプチドを製造することができる。また、Advanced ChemTech、Applied Biosystems、Pharmacia Biotech、Protein Technology Instrument、Synthecell−Vega、PerSeptive、島津製作所等のペプチド合成機を利用し化学合成することもできる。
(基板/プレート/チップ/アレイ)
本明細書において使用される「プレート」とは、抗体のような分子が固定され得る平面状の支持体をいう。本発明では、プレートは、プラスチック、金、銀またはアルミニウムを含む金属薄膜を片面にもつガラス基板を基材とすることが好ましい。
本明細書において使用される「基板」とは、本発明のチップまたはアレイが構築される材料(好ましくは固体)をいう。したがって、基板はプレートの概念に包含される。基板の材料としては、共有結合かまたは非共有結合のいずれかで、本発明において使用される生体分子に結合する特性を有するかまたはそのような特性を有するように誘導体化され得る、任意の固体材料が挙げられる。
プレートおよび基板として使用するためのそのような材料としては、固体表面を形成し得る任意の材料が使用され得るが、例えば、ガラス、シリカ、シリコン、セラミック、二酸化珪素、プラスチック、金属(合金も含まれる)、天然および合成のポリマー(例えば、ポリスチレン、セルロース、キトサン、デキストラン、およびナイロン)が挙げられるがそれらに限定されない。基板は、複数の異なる材料の層から形成されていてもよい。例えば、ガラス、石英ガラス、アルミナ、サファイア、フォルステライト、炭化珪素、酸化珪素、窒化珪素などの無機絶縁材料を使用できる。また、ポリエチレン、エチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリエチレンテレフタレート、不飽和ポリエステル、含フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、アセタール樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、フェノール樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、スチレン・アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、シリコーン樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリスルホン等の有機材料を用いることができる。基板として好ましい材質は、測定機器などの種々のパラメータによって変動し、当業者は、上述のような種々の材料から適切なものを適宜選択することができる。トランスフェクションアレイのためには、スライドグラスが好ましい。好ましくは、そのような基材は、コーティングされ得る。
本明細書において「コーティング」とは、固相支持体または基板について用いられるとき、その固相支持体または基板の表面上にある物質の膜を形成させることおよびそのような膜をいう。コーティングは種々の目的で行われ、例えば、固相支持体および基板の品質向上(例えば、寿命の向上、耐酸性などの耐環境性の向上)、固相支持体または基板に結合されるべき物質の親和性の向上などを目的とすることが多い。本明細書において、そのようなコーティングのための物質は、「コーティング剤」と呼ばれる。そのようなコーティング剤としては、種々の物質が用いられ得、上述の固相支持体および基板自体に使用される物質のほか、DNA、RNA、タンパク質、脂質などの生体物質、ポリマー(例えば、ポリ−L−リジン、MAS(松浪硝子、岸和田、日本から入手可能)、疎水性フッ素樹脂)、シラン(APS(例えば、γ−アミノプロピルシラン))、金属(例えば、金など)が使用され得るがそれらに限定されない。そのような物質の選択は当業者の技術範囲内にあり、当該分野において周知の技術を用いて場合ごとに選択することができる。一つの好ましい実施形態では、そのようなコーティングは、ポリ−L−リジン、シラン、(例えば、エポキシシランまたはメルカプトシラン、APS(γ−アミノプロピルシラン))、MAS、疎水性フッ素樹脂、金のような金属を用いることが有利であり得る。このような物質は、細胞または細胞を含む物体(例えば、生体、臓器など)に適合する物質を用いることが好ましい。
本明細書において「チップ」または「マイクロチップ」は、互換可能に用いられ、多様の機能をもち、システムの一部となる超小型集積回路をいう。チップとしては、例えば、DNAチップ、プロテインチップなどが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において「アレイ」とは、1以上(例えば、1000以上)の標的物質を含む組成物(例えば、DNA、タンパク質、トランスフェクト混合物)が整列されて配置されたパターンまたはパターンを有する基板(例えば、チップ)そのものをいう。アレイの中で、小さな基板(例えば、10×10mm上など)上にパターン化されているものはマイクロアレイというが、本明細書では、マイクロアレイとアレイとは互換可能に使用される。従って、上述の基板より大きなものにパターン化されたものでもマイクロアレイと呼ぶことがある。例えば、アレイはそれ自身固相表面または膜に固定されている所望のトランスフェクト混合物のセットで構成される。アレイは好ましくは同一のまたは異なる抗体を少なくとも10個、より好ましくは少なくとも10個、およびさらに好ましくは少なくとも10個、さらにより好ましくは少なくとも10個を含む。これらの抗体は、好ましくは表面が125×80mm、より好ましくは10×10mm上に配置される。形式としては、96ウェルマイクロタイタープレート、384ウェルマイクロタイタープレートなどのマイクロタイタープレートの大きさのものから、スライドグラス程度の大きさのものが企図される。固定される標的物質を含む組成物は、1種類であっても複数種類であってもよい。そのような種類の数は、1個〜スポット数までの任意の数であり得る。例えば、約10種類、約100種類、約500種類、約1000種類の標的物質を含む組成物が固定され得る。
基板のような固相表面または膜には、上述のように任意の数の標的物質(例えば、抗体のようなタンパク質)が配置され得るが、通常、基板1つあたり、10個の生体分子まで、他の実施形態において10個の生体分子まで、10個の生体分子まで、10個の生体分子まで、10個の生体分子まで、10個の生体分子まで、または10個の生体分子までの個の生体分子が配置され得るが、10個の生体分子を超える標的物質を含む組成物が配置されていてもよい。これらの場合において、基板の大きさはより小さいことが好ましい。特に、標的物質を含む組成物(例えば、抗体のようなタンパク質)のスポットの大きさは、単一の生体分子のサイズと同じ小さくあり得る(これは、1−2nmの桁であり得る)。最小限の基板の面積は、いくつかの場合において基板上の生体分子の数によって決定される。本発明では、細胞への導入が企図される標的物質を含む組成物は、通常、0.01mm〜10mmのスポット状に共有結合あるいは物理的相互作用によって配列固定されている。
アレイ上には、生体分子の「スポット」が配置され得る。本明細書において「スポット」とは、標的物質を含む組成物の一定の集合をいう。本明細書において「スポッティング」とは、ある標的物質を含む組成物のスポットをある基板またはプレートに作製することをいう。スポッティングはどのような方法でも行うことができ、例えば、ピペッティングなどによって達成され得、あるいは自動装置で行うこともでき、そのような方法は当該分野において周知である。
本明細書において使用される用語「アドレス」とは、基板上のユニークな位置をいい、他のユニークな位置から弁別可能であり得るものをいう。アドレスは、そのアドレスを伴うスポットとの関連づけに適切であり、そしてすべての各々のアドレスにおける存在物が他のアドレスにおける存在物から識別され得る(例えば、光学的)、任意の形状を採り得る。アドレスを定める形は、例えば、円状、楕円状、正方形、長方形であり得るか、または不規則な形であり得る。したがって、「アドレス」は、抽象的な概念を示し、「スポット」は具体的な概念を示すために使用され得るが、両者を区別する必要がない場合、本明細書においては、「アドレス」と「スポット」とは互換的に使用され得る。
各々のアドレスを定めるサイズは、とりわけ、その基板の大きさ、特定の基板上のアドレスの数、標的物質を含む組成物の量および/または利用可能な試薬、微粒子のサイズおよびそのアレイが使用される任意の方法のために必要な解像度の程度に依存する。大きさは、例えば、1−2nmから数cmの範囲であり得るが、そのアレイの適用に一致した任意の大きさが可能である。
アドレスを定める空間配置および形状は、そのマイクロアレイが使用される特定の適用に適合するように設計される。アドレスは、密に配置され得、広汎に分散され得るか、または特定の型の分析物に適切な所望のパターンへとサブグループ化され得る。
マイクロアレイについては、ゲノム機能研究プロトコール(実験医学別冊 ポストゲノム時代の実験講座1)、ゲノム医科学とこれからのゲノム医療(実験医学増刊)などに広く概説されている。
マイクロアレイから得られるデータは膨大であることから、クローンとスポットとの対応の管理、データ解析などを行うためのデータ解析ソフトウェアが重要である。そのようなソフトウェアとしては、各種検出システムに付属のソフトウェアが利用可能である(Ermolaeva Oら(1998)Nat.Genet.20:19−23)。また、データベースのフォーマットとしては、例えば、Affymetrixが提唱しているGATC(genetic analysis technology consortium)と呼ばれる形式が挙げられる。
微細加工については、例えば、Campbell,S.A.(1996).The Science andEngineering of Microelectronic Fabrication,Oxford University Press;Zaut,P.V.(1996).Micromicroarray Fabrication:a Practical Guide to Semiconductor Processing,Semiconductor Services;Madou,M.J.(1997).Fundamentals of Microfabrication,CRC1 5 Press;Rai−Choudhury,P.(1997).Handbook of Microlithography,Micromachining,& Microfabrication:Microlithographyなどに記載されており、これらは本明細書において関連する部分が参考として援用される。
(細胞)
本明細書において使用される「細胞」は、当該分野において用いられる最も広義の意味と同様に定義され、多細胞生物の組織の構成単位であって、外界を隔離する膜構造に包まれ、内部に自己再生能を備え、遺伝情報およびその発現機構を有する生命体をいう。本明細書において使用される細胞は、天然に存在する細胞であっても、人工的に改変された細胞(例えば、融合細胞、遺伝子改変細胞)であってもよい。細胞の供給源としては、例えば、単一の細胞培養物であり得、あるいは、正常に成長したトランスジェニック動物の胚、血液、または体組織、または正常に成長した細胞株由来の細胞のような細胞混合物が挙げられるがそれらに限定されない。
本発明で用いられる細胞は、どの生物由来の細胞(たとえば、任意の種類の単細胞生物(例えば、細菌、酵母)または多細胞生物(例えば、動物(たとえば、脊椎動物、無脊椎動物)、植物(たとえば、単子葉植物、双子葉植物など)など))でもよい。例えば、脊椎動物(たとえば、メクラウナギ類、ヤツメウナギ類、軟骨魚類、硬骨魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳動物など)由来の細胞が用いられ、より詳細には、哺乳動物(例えば、単孔類、有袋類、貧歯類、皮翼類、翼手類、食肉類、食虫類、長鼻類、奇蹄類、偶蹄類、管歯類、有鱗類、海牛類、クジラ目、霊長類、齧歯類、ウサギ目など)由来の細胞が用いられる。1つの実施形態では、霊長類(たとえば、チンパンジー、ニホンザル、ヒト)由来の細胞、特にヒト由来の細胞が用いられるがそれに限定されない。
本明細書において「幹細胞」とは、自己複製能を有し、多分化能(すなわち多能性)(「pluripotency」)を有する細胞をいう。幹細胞は通常、組織が傷害を受けたときにその組織を再生することができる。本明細書では幹細胞は、胚性幹(ES)細胞または組織幹細胞(組織性幹細胞、組織特異的幹細胞または体性幹細胞ともいう)であり得るがそれらに限定されない。また、上述の能力を有している限り、人工的に作製した細胞(たとえば、本明細書において記載される融合細胞、再プログラム化された細胞など)もまた、幹細胞であり得る。胚性幹細胞とは初期胚に由来する多能性幹細胞をいう。胚性幹細胞は、1981年に初めて樹立され、1989年以降ノックアウトマウス作製にも応用されている。1998年にはヒト胚性幹細胞が樹立されており、再生医学にも利用されつつある。組織幹細胞は、胚性幹細胞とは異なり、分化の方向が限定されている細胞であり、組織中の特定の位置に存在し、未分化な細胞内構造をしている。従って、組織幹細胞は多能性のレベルが低い。組織幹細胞は、核/細胞質比が高く、細胞内小器官が乏しい。組織幹細胞は、概して、多分化能を有し、細胞周期が遅く、個体の一生以上に増殖能を維持する。本明細書において使用される場合は、幹細胞は胚性幹細胞であっても、組織幹細胞であってもよい。
由来する部位により分類すると、組織幹細胞は、例えば、皮膚系、消化器系、骨髄系、神経系などに分けられる。皮膚系の組織幹細胞としては、表皮幹細胞、毛嚢幹細胞などが挙げられる。消化器系の組織幹細胞としては、膵(共通)幹細胞、肝幹細胞などが挙げられる。骨髄系の組織幹細胞としては、造血幹細胞、間葉系幹細胞などが挙げられる。神経系の組織幹細胞としては、神経幹細胞、網膜幹細胞などが挙げられる。
本明細書において「体細胞」とは、卵子、精子などの生殖細胞以外の細胞であり、そのDNAを次世代に直接引き渡さない全ての細胞をいう。体細胞は通常、多能性が限定されているかまたは消失している。本明細書において使用される体細胞は、天然に存在するものであってもよく、遺伝子改変されたものであってもよい。
細胞は、由来により、外胚葉、中胚葉および内胚葉に由来する幹細胞に分類され得る。外胚葉由来の細胞は、主に脳に存在し、神経幹細胞などが含まれる。中胚葉由来の細胞は、主に骨髄に存在し、血管幹細胞、造血幹細胞および間葉系幹細胞などが含まれる。内胚葉由来の細胞は主に臓器に存在し、肝幹細胞、膵幹細胞などが含まれる。本明細書では、体細胞はどのような胚葉由来でもよい。好ましくは、体細胞は、リンパ球、脾臓細胞または精巣由来の細胞が使用され得る。
本明細書において「単離された」とは、通常の環境において天然に付随する物質が少なくとも低減されていること、好ましくは実質的に含まないをいう。従って、単離された細胞とは、天然の環境において付随する他の物質(たとえば、他の細胞、タンパク質、核酸など)を実質的に含まない細胞をいう。核酸またはポリペプチドについていう場合、「単離された」とは、たとえば、組換えDNA技術により作製された場合には細胞物質または培養培地を実質的に含まず、化学合成された場合には前駆体化学物質またはその他の化学物質を実質的に含まない、核酸またはポリペプチドを指す。単離された核酸は、好ましくは、その核酸が由来する生物において天然に該核酸に隣接している(flanking)配列(即ち、該核酸の5’末端および3’末端に位置する配列)を含まない。
本明細書において、「樹立された」または「確立された」細胞とは、特定の性質(例えば、多分化能)を維持し、かつ、細胞が培養条件下で安定に増殖し続けるようになった状態をいう。したがって、樹立された幹細胞は、多分化能を維持する。
本明細書において「分化(した)細胞」とは、機能および形態が特殊化した細胞(例えば、筋細胞、神経細胞など)をいい、幹細胞とは異なり、多能性はないか、またはほとんどない。分化した細胞としては、例えば、表皮細胞、膵実質細胞、膵管細胞、肝細胞、血液細胞、心筋細胞、骨格筋細胞、骨芽細胞、骨格筋芽細胞、神経細胞、血管内皮細胞、色素細胞、平滑筋細胞、脂肪細胞、骨細胞、軟骨細胞などが挙げられる。
(医薬・化粧品など、およびそれを用いる治療、予防など)
別の局面において、本発明は、細胞へ有効成分を導入するための医薬(例えば、ワクチン等の医薬品、健康食品、タンパク質または脂質は抗原性を低減した医薬品)、化粧品、農薬、食品などに関する。このような医薬および化粧品は、薬学的に受容可能なキャリアなどをさらに含み得る。本発明の医薬に含まれる薬学的に受容可能なキャリアとしては、当該分野において公知の任意の物質が挙げられる。
そのような適切な処方材料または薬学的に受容可能なキャリアとしては、抗酸化剤、保存剤、着色料、風味料、および希釈剤、乳化剤、懸濁化剤、溶媒、フィラー、増量剤、緩衝剤、送達ビヒクル、希釈剤、賦形剤および/または薬学的アジュバント挙げられるがそれらに限定されない。代表的には、本発明の医薬は、化合物、またはその改変体もしくは誘導体を、1つ以上の生理的に受容可能なキャリア、賦形剤または希釈剤とともに含む組成物の形態で投与される。例えば、適切なビヒクルは、注射用水、生理的溶液、または人工脳脊髄液であり得、これらには、非経口送達のための組成物に一般的な他の物質を補充することが可能である。
本明細書で使用される受容可能なキャリア、賦形剤または安定化剤は、レシピエントに対して非毒性であり、そして好ましくは、使用される投薬量および濃度において不活性であり、そして以下が挙げられる:リン酸塩、クエン酸塩、または他の有機酸;アスコルビン酸、α−トコフェロール;低分子量ポリペプチド;タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン);親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン);アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリジン);モノサッカリド、ジサッカリドおよび他の炭水化物(グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む);キレート剤(例えば、EDTA);糖アルコール(例えば、マンニトールまたはソルビトール);塩形成対イオン(例えば、ナトリウム);ならびに/あるいは非イオン性表面活性化剤(例えば、Tween、プルロニック(pluronic)またはポリエチレングリコール(PEG))。
例示の適切なキャリアとしては、中性緩衝化生理食塩水、または血清アルブミンと混合された生理食塩水が挙げられる。好ましくは、その生成物は、適切な賦形剤(例えば、スクロース)を用いて凍結乾燥剤として処方される。他の標準的なキャリア、希釈剤および賦形剤は所望に応じて含まれ得る。他の例示的な組成物は、pH7.0−8.5のTris緩衝剤またはpH4.0−5.5の酢酸緩衝剤を含み、これらは、さらに、ソルビトールまたはその適切な代替物を含み得る。
本発明が医薬として使用される場合、そのような医薬は経口的または非経口的に投与され得る。あるいは、そのような医薬は、静脈内または皮下で投与され得る。全身投与されるとき、本発明において使用される医薬は、発熱物質を含まない、薬学的に受容可能な水溶液の形態であり得る。そのような薬学的に受容可能な組成物の調製は、pH、等張性、安定性などを考慮することにより、当業者は、容易に行うことができる。本明細書において、投与方法は、経口投与、非経口投与(例えば、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、粘膜投与、直腸内投与、膣内投与、患部への局所投与、皮膚投与など)であり得る。そのような投与のための処方物は、任意の製剤形態で提供され得る。そのような製剤形態としては、例えば、液剤、注射剤、徐放剤が挙げられる。
本発明の医薬は、必要に応じて生理学的に受容可能なキャリア、賦型剤または安定化剤(日本薬局方第14版またはその最新版、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition,A.R.Gennaro,ed.,Mack Publishing Company,1990などを参照)と、所望の程度の純度を有する組成物とを混合することによって、凍結乾燥されたケーキまたは水溶液の形態で調製され保存され得る。
本発明の処置方法において使用される組成物の量は、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、細胞の形態または種類などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。本発明の処置方法を被検体(または患者)に対して施す頻度もまた、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、および治療経過などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。頻度としては、例えば、毎日−数ヶ月に1回(例えば、1週間に1回−1ヶ月に1回)の投与が挙げられる。1週間−1ヶ月に1回の投与を、経過を見ながら施すことが好ましい。
本発明が化粧品、食品、農薬など別の用途で使用されるときもまた、当局の規定する規制を遵守しながら化粧品などを調製することができる。
(好ましい実施形態の説明)
以下に好ましい実施形態の説明を記載するが、この実施形態は本発明の例示であり、本発明の範囲はそのような好ましい実施形態に限定されないことが理解されるべきである。
1つの局面において、細胞接着関連因子を含む、標的物質の細胞への導入効率を上昇させるための組成物を提供する。本発明は、通常の条件下では、ほとんど細胞に導入されない物質(例えば、DNA、RNA、ポリペプチド、糖鎖またはそれらの複合物質など)が、細胞接着関連因子(代表的には、インテグリンに対する抗体)の作用により、導入が促進されることを予想外に見いだしたことによって、上記目的を達成した。特に、トランスフェクションなどのDNAを用いた遺伝子操作の際に、このような細胞接着関連因子がその導入効率促進に顕著な効果があることは、従来全く知られておらず予想もされていなかったことから、本発明は、特に遺伝子研究において顕著なブレークスルーをもたらすものとして注目されるべきである。
1つの好ましい実施形態において、本発明において用いられる細胞接着関連因子は、細胞接着分子(例えば、細胞外マトリクス、インテグリンレセプター、RGD分子など)と相互作用する相互作用物質を含む。
好ましい実施形態において、本発明において使用される相互作用物質は、細胞接着分子のパートナーと抗原抗体反応する。従って、本発明の相互作用物質は、抗体(例えば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体など)またはその誘導体(キメラ抗体、抗体フラグメントなど)であり得る。
好ましくは、相互作用物質は、抗CD49a抗体、抗CD49b抗体、抗CD49c抗体、抗CD49e抗体および抗CD49f抗体からなる群より選択される抗体を含む。このような抗体が好ましいのは、予想外に遺伝物質(DNA)の細胞導入効率が上昇したからである。理論に束縛されることを望まないが、このような効果が好ましいのは、本来、細胞外マトリックスなどの基質を用いて細胞を接着させることはCD49a-fを含むインテグリンを介した接着となる。このような細胞接着関連因子を介した接着は細胞に対して好ましい影響、つまりこの場合特に遺伝物質(DNA)の細胞導入効率が上昇が観察される(前の特許またはリファレンス)。したがって抗CD49抗体を接着基質として用いるいることは、この作用を模倣した機能示していると推測できるからである。従って、CD49に関連するCD49a-fを含む抗インテグリンという分子に対する抗体もまた、本発明の好ましい実施形態としてあげることができる。
1つの実施形態において、本発明において標的とされる標的物質は、遺伝物質(例えば、DNA、RNAのような核酸分子)を含む。そのようなDNAとしては、例えば、プラスミドDNA、Naked DNA、cDNA、ゲノムDNAなどが挙げられるがそれらに限定されない。
1つの実施形態において、本発明において考慮されるインテグリンレセプターは、CD49a、CD49b、CD49c、CD49d、CD49e、CD49f、ならびにCD29からなる群より選択される(例えば、CD29、CD49a、CD49c、CD49d、CD49eおよびCD49f)。理論に束縛されることは望まないが、CD29もまた好ましいのは、本来、細胞外マトリックスなどの基質を用いて細胞を接着させることはインテグリンを介した接着となるからである。CD29はインテグリンレセプターのβサブユニットであり多くのインテグリンレセプターの共通のユニットである。このような細胞接着関連因子を介した接着は細胞に対して好ましい影響、つまりこの場合特に遺伝物質(DNA)の細胞導入効率が上昇が観察される(前の特許またはリファレンス)。したがって抗CD29抗体を接着基質として用いるいることは、この作用を模倣した機能示していると推測できるからである。
あるいは、インテグリンレセプターは、コラーゲン、フィブロネクチン、ビトロネクチンおよびラミニンからなる群より選択される分子と相互作用するものであってもよい。
1つの実施形態において、本発明が対象とする細胞は、幹細胞および分化細胞からなる群より選択される少なくとも1つの細胞を含み得る。本発明では、幹細胞であっても、分化細胞であっても、いずれでも対象とすることができる。ただし、細胞に応じて、細胞接着に関連する因子が異なり得ることから、そのような細胞に応じて、細胞接着関連因子を選択することが好ましい。好ましくは、細胞接着分子は、細胞に特異的に発現されるものである。このような細胞特異的な接着分子は、当該分野において公知のものを使用することができ、あるいは、当業者が任意の周知の技術を用いて同定することができる。
好ましい実施形態において、本発明において使用される標的物質は、遺伝物質であり、さらに遺伝子導入試薬を含むことが有利である。遺伝物質は、遺伝子導入試薬に適した遺伝物質であり得るが、通常、DNAである。
従って、遺伝子導入が企図される実施形態において、本発明の組成物は、遺伝子導入試薬をさらに含むことが好ましい。そのような遺伝子導入試薬を含むことによって、本発明の導入効率上昇効果が相乗的に発揮されるからである。
本発明において使用される遺伝子導入試薬は、カチオン性高分子、カチオン性脂質およびリン酸カルシウムからなる群より選択され得る。遺伝子導入試薬としては、Effectene、TransFastTM、TfxTM-20、SuperFect、PolyFect、LipofectAMINE 2000、JetPEIおよびExGen 500などが挙げられるがそれらに限定されない。LipofectAMINE 2000が好ましい。遺伝子導入効率が高いからである。
別の実施形態において、本発明の組成物は、粒子をさらに含む。粒子を含むことにより、物質の細胞内への導入、特に、標的化した導入が効率よく行うことができるからである。そのような粒子の好ましい例としては、例えば、金コロイドのような金属コロイドなどが挙げられるがそれらに限定されない。
別の好ましい実施形態では、本発明の組成物は、塩をさらに含む。理論に束縛されることは望まないが、そのような塩を含むことにより、支持体が用いられる場合には、固定効果が増強され、あるいは、標的物質の三次元構造がより適切な形で保持される効果が奏されると考えられる。
このような塩としては、無機塩または有機塩であればどのような塩でも使用することができるが、単塩よりも、複数の塩の混合物を使用することが好ましい。そのような複数の塩の混合物としては、例えば、緩衝剤に含まれる塩類および培地に含まれる塩類などが挙げられるがそれらに限定されない。
1つの好ましい実施形態において、本発明の組成物において含有される細胞接着関連因子は、インテグリンレセプターの抗体またはその改変体もしくはそのフラグメントである。本発明において、インテグリンレセプターの抗体またはその改変体もしくはそのフラグメントが予想外に標的物質導入効果を有することが見いだされたことから、本発明では、細胞外マトリクスタンパク質による、物質の細胞への導入効率上昇という効果にも注目すべきである。
本発明において考慮されるポリペプチド(例えば、インテグリンなど)は、当該分野において公知のアミノ酸配列を有するポリペプチド、またはその改変配列を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチドであってもよい。
あるいは、1つの好ましい実施形態において、上記改変配列における置換、付加および欠失の数は、限定され、例えば、50以下、40以下、30以下、20以下、15以下、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、2以下であることが好ましい。ある特定の実施形態では、そのような置換、付加および/または欠失の数は1または数個であり得る。より少ない数の置換、付加および欠失が好ましいが、生物学的活性を保持する(好ましくは、細胞接着関連因子と類似するかまたは実質的に同一の活性を有する)限り、多い数であってもよい。
別の好ましい実施形態において、ポリペプチドの対立遺伝子変異体が使用され、比較の基礎となる配列と少なくとも90%の相同性を有し得る。同一系統内のものなどでは、例えば、そのような対立遺伝子変異体は少なくとも99%の相同性を有することが好ましい。
上記種相同体は、その種の遺伝子配列データベースが存在する場合、そのデータベースに対して、本発明の細胞外マトリクスタンパク質、インテグリンレセプター(例えば、CD49ファミリー)の遺伝子配列の全部または一部をクエリ配列として検索することによって同定することができる。あるいは、本発明の遺伝子の全部または一部をプローブまたはプライマーとして、その種の遺伝子ライブラリーをスクリーニングすることによって同定することができる。そのような同定方法は、当該分野において周知であり、本明細書において記載される文献にも記載されている。種相同体は、例えば、もとの配列と少なくとも約30%の相同性を有することが好ましい。種相同性は、好ましくは、もとの配列と少なくとも約50%の相同性を有する。あるいは、別の好ましい実施形態において、上記種相同体は、もとの配列と少なくとも約30%の相同性を有することが好ましい。種相同体は、好ましくは、もとの配列と少なくとも約50%の相同性を有する。
細胞接着関連因子の濃度は、当業者であれば、本明細書の記載を参照すれば、容易に決定することができる。例えば、そのような濃度の例としては、少なくとも約0.1μg/μLであり、好ましくは約0.2μg/μLであり、より好ましくは0.5μg/μLである。1つの実施形態では、約0.5μg/μLを超える濃度ではプラトーに達することから、約0.5μg/μL〜2.0μg/μLの濃度が好ましい濃度範囲であり得る。
(キット)
別の局面において、本発明は、遺伝子導入効率を上昇させるためのキットを提供する。そのようなキットは、(a)細胞接着関連因子を含む組成物;および(b)遺伝子導入試薬、を備える。細胞接着関連因子としては、上述の本発明の標的物質の細胞内への導入の効率を上昇させるための組成物において詳述した形態が適用され得る。そのような形態は、当業者は、本明細書の記載に基づけば、適切な形態を選択し実施することができる。このようなキットの形態で本発明が提供されるとき、そのようなキットは、さらに指示書を備えていてもよい。この指示書は、本発明が実施される国の監督官庁が規定した様式に従って作成され、その監督官庁により承認を受けた旨が明記されていてもよいがそれに限定されない。指示書は、通常、マニュアルの形態をとり、通常は紙媒体で提供されるが、それに限定されず、例えば、電子媒体(例えば、インターネットで提供されるホームページ、電子メール)のような形態でも提供され得る。このような細胞接着関連因子としては、上述したように、本発明の標的物質の細胞への導入効率を上昇させるための組成物において適用される形態を当業者が任意に選択して本発明を実施することができる。したがって、好ましくは、細胞接着関連因子は、インテグリンレセプターの抗体またはその改変体もしくはそのフラグメントであり得る。より好ましくは、抗CD49a抗体、抗CD49b抗体、抗CD49c抗体、抗CD49e抗体および抗CD49f抗体からなる群より選択される抗体またはそのフラグメントもしくはその改変体が使用され得る。
(組成物)
別の局面において、本発明は、標的物質の細胞への導入効率を上昇させるための組成物を提供する。本発明は、通常の条件下では、ほとんど細胞に導入されない標的物質(例えば、DNA、RNA、ポリペプチド、糖鎖またはそれらの複合物質など)が、細胞接着関連因子(代表的には、インテグリンレセプターの抗体)の作用により、導入が促進されることを予想外に見いだしたことによって完成されたものであり、この場合、本発明は、標的物質と細胞接着関連因子とが含有された組成物の形式で提供される。このような細胞接着関連因子としては、上述したように、本発明の標的物質の細胞への導入効率を上昇させるための組成物において適用される形態を当業者が任意に選択して本発明を実施することができる。したがって、好ましくは、細胞接着関連因子は、インテグリンレセプターの抗体またはその改変体であり得る。より好ましくは、抗CD49a抗体、抗CD49b抗体、抗CD49c抗体、抗CD49e抗体および抗CD49f抗体からなる群より選択される抗体またはそのフラグメントもしくはその改変体が使用され得る。
本発明の標的物質を細胞内へ導入するための組成物において含まれる標的物質としては、好ましくは例えば、DNA、RNA、ポリペプチド、糖およびこれらの複合体などが挙げられるがそれらに限定されない。特定の好ましい実施形態では、標的物質としてDNAが選択される。このようなDNAは、遺伝子発現を目的とする場合、目的とする遺伝子をコードすることが好ましい。したがって、トランスフェクションを目的とする実施形態では、標的物質は、トランスフェクトされるべき遺伝子配列をコードするDNAを含む。別の好ましい実施形態では、標的物質としてRNAが選択される。このようなRNAは、遺伝子発現を目的とする場合、目的とする遺伝子をコードすることが好ましい。この場合、RNAに適した遺伝子導入剤とともに遺伝子配列をコードするRNAを用いることが好ましい。
遺伝子の導入を目的とする実施形態では、本発明の標的物質を細胞内へ導入するための組成物は、遺伝子導入試薬をさらに含んでいてもよい。理論に束縛されないが、1つの実施形態では、そのような遺伝子導入試薬と本発明において見出された細胞接着関連因子とが共同で作用することによって、従来にはない効率よい遺伝子の細胞内への導入がされると考えられる。
好ましい実施形態において、本発明の組成物に含有され得る、そのような遺伝子導入試薬としては、例えば、カチオン性高分子、カチオン性脂質、ポリアミン系試薬、ポリイミン系試薬、リン酸カルシウムなどが挙げられるがそれらに限定されない
1つの好ましい実施形態において、本発明の標的物質を細胞内へ導入するための組成物は、液相として存在し得る。液相として存在する場合は、本発明は、例えば、液相トランスフェクション系として有用である。
別の好ましい実施形態において、本発明の標的物質を細胞内へ導入するための組成物は、固相として存在し得る。固相として存在する場合は、本発明は、例えば、固相トランスフェクション系として有用である。固相トランスフェクションの好ましい実施形態としては、例えば、マイクロタイタープレートを用いたトランスフェクション系、またはアレイ(もしくはチップ)を用いたトランスフェクション系が挙げられるがそれらに限定されない。ポリペプチドを導入する際にも、これらの液相および固相の形態は有用である。
(デバイス)
別の局面において、本発明はまた、標的物質の細胞への導入効率を上昇させるためのデバイスを提供する。このデバイスでは、A)標的物質;およびB)細胞接着関連因子、を含む、組成物が、固相支持体に固定されている。本発明のデバイスは、通常の条件下では、ほとんど細胞に導入されない標的物質(例えば、DNA、RNA、ポリペプチド、糖鎖またはそれらの複合物質など)が、細胞接着関連因子(代表的には、インテグリンレセプターの抗体またはその改変体)の作用により、導入が促進されることを予想外に見いだしたことによって完成されたものであり、この場合、本発明は、標的物質と細胞接着関連因子とが含有された組成物が固相支持体に固定された形式で提供される。このような細胞接着関連因子としては、上述したように、本発明の標的物質の細胞への導入効率を上昇させるための組成物において適用される形態を当業者が任意に選択して本発明を実施することができる。したがって、好ましくは、細胞接着関連因子は、インテグリンレセプターの抗体またはその改変体であり得る。より好ましくは、抗CD49a抗体、抗CD49b抗体、抗CD49c抗体、抗CD49e抗体および抗CD49f抗体からなる群より選択される抗体またはそのフラグメントもしくはその改変体が使用され得る。
本発明のデバイスにおいて含まれる標的物質としては、好ましくは例えば、DNA、RNA、ポリペプチド、糖およびこれらの複合体などが挙げられるがそれらに限定されない。特定の好ましい実施形態では、標的物質としてDNAが選択される。このようなDNAは、遺伝子発現を目的とする場合、目的とする遺伝子をコードすることが好ましい。したがって、トランスフェクションを目的とする実施形態では、標的物質は、トランスフェクトされるべき遺伝子配列をコードするDNAを含む。
遺伝子の導入を目的とする実施形態では、本発明のデバイスは、遺伝子導入試薬をさらに含んでいてもよい。理論に束縛されないが、1つの実施形態では、そのような遺伝子導入試薬と本発明において見出された細胞接着関連因子とが共同で作用することによって、従来にはない効率よい遺伝子の細胞内への導入がされると考えられる。デバイスでは固相支持体に組成物が固定されることから、遺伝子導入試薬としては、固相支持体への適合性があるものを使用することが好ましい。
好ましい実施形態において、本発明のデバイスにおいて用いられる固相支持体は、プレート、マイクロウェルプレート、チップ、スライドグラス、フィルム、ビーズおよび金属からなる群より選択されるものであってもよい。
特定の実施形態において、本発明のデバイスが固相支持体としてチップが用いられる場合、そのようなデバイスは、アレイとも称され得る。アレイには、通常、導入が意図される生体分子(例えば、DNA、タンパク質など)が基板上に整列またはパターン化されて配置されている。そのようなアレイのうち、トランスフェクションを目的とするものは、本明細書においてトランスフェクションアレイとも呼ばれる。本発明では、従来のシステムでは達成不可能であった、幹細胞などでもトランスフェクションが生じることが判明した。従って、本発明の細胞接着関連因子を使用した組成物、デバイスおよび方法は、どのような細胞でも実施可能なトランスフェクションアレイを提供するという、従来にはなかった予想外の効果を達成することになる。
ここで、本発明のデバイスにおいて使用される固相支持体はコーティングされることが好ましい。コーティングすることによって、固相支持体および基板の品質向上(例えば、寿命の向上、耐酸性などの耐環境性の向上)、固相支持体または基板に結合されるべき物質への親和性および細胞への親和性が高くなるからである。好ましい実施形態において、そのようなコーティングにおいて、ポリ−L−リジン、シラン(たとえば、APS(γ−アミノプロピルシラン))、MAS、疎水性フッ素樹脂、エポキシシランまたはメルカプトシランのようなシラン、金のような金属を含むコーティング剤が使用される。好ましくは、コーティング剤は、ポリ−L−リジンである。
(細胞導入効率上昇方法)
別の局面において、本発明は、標的物質の細胞への導入効率を上昇させるための方法を提供する。本発明は、通常の条件下では、ほとんど細胞に導入されない標的物質(例えば、DNA、RNA、ポリペプチド、糖鎖またはそれらの複合物質など)を、細胞接着関連因子とともに細胞に提示する(好ましくは、接触させる)ことによって、その標的物質が効率よく細胞に導入されるという作用をはじめて見出したことによって完成された発明である。従って、本発明の方法は、A)標的物質を提供する工程;B)細胞接着関連因子を提供する工程を順不同に包含し、C)該標的物質および該細胞接着関連因子を該細胞に接触させる工程をさらに包含する。ここで、標的物質および細胞接着関連因子は、一緒に提供されてもよく、別々に提供されてもよい。細胞接着関連因子としては、上述の本発明の標的物質の細胞内への導入の効率を上昇させるための組成物において詳述した形態が適用され得る。そのような形態は、当業者は、本明細書の記載に基づけば、適切な形態を選択し実施することができる。したがって、このような細胞接着関連因子としては、本発明の標的物質の細胞への導入効率を上昇させるための組成物において適用される形態を当業者が任意に選択して本発明を実施することができる。好ましくは、細胞接着関連因子は、インテグリンレセプターの抗体またはその改変体であり得る。より好ましくは、抗CD49a抗体、抗CD49b抗体、抗CD49c抗体、抗CD49e抗体および抗CD49f抗体からなる群より選択される抗体またはそのフラグメントもしくはその改変体が使用され得る。
本発明の方法において使用される標的物質としては、好ましくは例えば、DNA、RNA、ポリペプチド、糖およびこれらの複合体などが挙げられるがそれらに限定されない。特定の好ましい実施形態では、標的物質としてDNAが選択される。このようなDNAは、遺伝子発現を目的とする場合、目的とする遺伝子をコードすることが好ましい。したがって、トランスフェクションを目的とする実施形態では、標的物質は、トランスフェクトされるべき遺伝子配列をコードするDNAを含む。
遺伝子の導入を目的とする実施形態では、本発明の方法では、遺伝子導入試薬をさらに使用してもよい。理論に束縛されないが、1つの実施形態では、そのような遺伝子導入試薬と本発明において見出された細胞接着関連因子とが共同で作用することによって、従来にはない効率よい遺伝子の細胞内への導入がされると考えられる。遺伝子導入試薬の提供は、標的物質および/または細胞接着関連因子と一緒でもよく、別々であってもよい。好ましくは、標的物質と遺伝子導入試薬との間で複合体を形成させてから細胞接着関連因子が提供されることが有利であり得る。理論に束縛されないが、そのような順番で行うことが導入効率を上げるようであるからである。
好ましい実施形態において、本発明の方法において使用され得る、そのような遺伝子導入試薬としては、例えば、カチオン性高分子、カチオン性脂質、ポリアミン系試薬、ポリイミン系試薬、リン酸カルシウムなどが挙げられるがそれらに限定されない。
本発明において対象となる細胞は、標的物質の導入が意図される限り、どのような細胞を包含してもよく、例えば、幹細胞、体細胞などが挙げられる。本発明の顕著な効果は、幹細胞、体細胞など細胞の種類を問わず、どのような細胞でもほぼ満遍なくトランスフェクションのような標的物質の導入が達成されることにあり、これは従来の方法にはなかった予想外の効果といえる。好ましくは、幹細胞のうち、対象には組織幹細胞が包含され得るがそれに限定されず、胚性幹細胞もまた対象として包含され得る。理論に束縛されないが、幹細胞のうちでは、組織幹細胞が胚性幹細胞よりも導入効率がよいようであるからである。
1つの特定の実施形態において、本発明の標的物質細胞導入方法は、その一部または全部が液相中で行われ得る。別の特定の実施形態において、本発明の標的物質細胞導入方法は、その一部または全部が固相上で行われ得る。従って、本発明の標的物質細胞導入方法は、液相中と固相上との組み合わせで行うことも可能である。
(支持体上での細胞導入効率上昇方法)
別の局面において、本発明は、支持体を利用した標的物質の細胞への導入効率を上昇させるための方法を提供する。本発明は、通常の条件下では、ほとんど細胞に導入されない標的物質(例えば、DNA、RNA、ポリペプチド、糖鎖またはそれらの複合物質など)を支持体上に固定し、細胞接着関連因子とともに細胞に提示する(好ましくは、接触させる)ことによって、その標的物質が効率よく細胞に導入されるという作用をはじめて見出したことによって完成された発明である。支持体で標的物質(特にDNA、好ましくは、トランスフェクトされるべき遺伝子をコードする配列を含むDNA)の導入効率が上昇したという効果は、従来技術では達成不可能であり、その達成すら予測されていなかったことから、当該分野において顕著なブレークスルーをもたらすということができる。従って、本発明の固相支持体を利用した方法は、I)A)標的物質;およびB)細胞接着関連因子、を含む組成物、を支持体に固定する工程;II)該支持体上の該組成物に細胞を接触させる工程、を包含する。細胞接着関連因子としては、上述の本発明の標的物質の細胞内への導入の効率を上昇させるための組成物において詳述した形態が適用され得る。そのような形態は、当業者は、本明細書の記載に基づけば、適切な形態を選択し実施することができる。したがって、このような細胞接着関連因子としては、本発明の標的物質の細胞への導入効率を上昇させるための組成物において適用される形態を当業者が任意に選択して本発明を実施することができる。好ましくは、細胞接着関連因子は、インテグリンレセプターの抗体またはその改変体であり得る。より好ましくは、抗CD49a抗体、抗CD49b抗体、抗CD49c抗体、抗CD49e抗体および抗CD49f抗体からなる群より選択される抗体またはそのフラグメントもしくはその改変体が使用され得る。
標的物質として使用される場合、DNAは裸(Naked DNA)で提供されてもよいが、好ましくは、制御配列(プロモーターなど)とともにベクター(プラスミド)を用いて提供されることが有利であり得る。そのような場合、DNAは作動可能に制御配列に連結されることが好ましい。
本発明の方法はまた、好ましくは、遺伝子導入試薬を提供する工程をさらに包含し、ここで、遺伝子導入試薬は、細胞に接触されるように提供される。遺伝子導入試薬の使用は、本発明の方法において導入効率をさらに向上させることから好ましい。遺伝子導入試薬の提供は、当該分野において周知であり、例えば、遺伝子導入試薬が溶解した溶液を実験系に添加することなどが挙げられるがそれに限定されない。好ましくは、遺伝子導入試薬は、標的物質であるDNAと複合体を形成させた後、細胞接着関連因子が提供される。理論に束縛されないが、このような順序をとることによって、固相支持体上での標的物質の細胞への導入効率が飛躍的に上昇することが判明しているからである。
1つの実施形態では、遺伝子導入試薬(例えば、カチオン性脂質)−標的物質複合体は、標的物質(例えば、発現ベクター中のDNA)および遺伝子導入試薬を含み、これは水または脱イオン水のような適切な溶媒中に溶解される。この溶液をスライドのような表面にスポットし、それにより特定の位置に遺伝子導入試薬−標的物質複合体が付着された表面を生成する。その後、適宜細胞接着関連因子が添加される。スポットした遺伝子導入試薬−標的物質複合体がスライドに付着され、そしてこの方法のその後の工程で使用される条件下で、そのスポットがこの付着された位置に留まるように十分乾燥させる。例えば、遺伝子導入試薬−標的物質複合体を、ポリ−L−リジン(Sigma,Inc.などから入手可能)でコーティングしたガラススライドのようなスライドまたはチップ上に、例えば手動で、またはマイクロアレイ製造機を用いてスポットする。その後、このスライドまたはチップを室温もしくは室温より高い温度で、または減圧乾燥させることによって、DNAスポットをスライドに付着することができる。十分な乾燥が起こるのに必要な時間の長さは、表面に配置された混合物の量および使用された温度および湿度条件のようないくつかの因子による。本発明では、細胞接着関連因子は、複合体が付着された後に提供されることが好ましい。
混合物中に存在するDNAの濃度は、各用途のために実験的に決定されるが、一般的には約0.01μg/μlから約0.2μg/μlの範囲であり、特定の実施形態では約0.02μg/μlから約0.10μg/μlである。あるいは、遺伝子導入試薬−標的物質複合体中に存在するDNAの濃度は、約0.01μg/μlから約0.5μg/μl、約0.01μg/μlから約0.4μg/μl、および約0.01μg/μlから約0.3μg/μlであり得る。同様に、細胞接着関連因子、または遺伝子導入試薬のような別のキャリア高分子の濃度は、各用途のために実験的に決定されるが、一般的には0.01%から0.5%の範囲であり、特定の実施形態では約0.05%から約0.5%、約0.05%から約0.2%、または約0.1%から約0.2%である。細胞接着関連因子−標的物質複合体中のDNAの最終的な濃度(例えば、細胞接着関連因子中のDNA)は、一般的には約0.02μg/μlから約0.1μg/μlであり、そして別の実施形態では、DNAは約0.05μg/μlに等しい最終DNA濃度とされ得る。
使用されるDNAがベクターに担持されて提供される場合、ベクターはプラスミドまたはウイルスに基づくベクターのような任意の型であり得、そこに目的のDNA(細胞で発現されるべきDNA)が導入され得、そしてその後その細胞において発現され得る。そのようなベクターとしては、例えば、CMV駆動発現ベクターを使用し得る。市販で入手可能な、pEGFP(Clontech)またはpcDNA3(Invitrogen)のようなプラスミドに基づくベクターまたはウイルスに基づくベクターを使用し得る。この実施形態において、遺伝子導入試薬−標的物質複合体を含むスポットを乾燥させた後、スポットを有する表面を適切な量の脂質に基づいたトランスフェクション試薬で被覆し、そして生じた生成物をスポット中のDNAおよび遺伝子導入試薬(たとえば、カチオン性脂質などのトランスフェクション試薬)との間の複合体形成に適切な条件下で維持(インキュベート)する。その後に細胞接着関連因子が提供されるか、または同時に細胞接着関連因子が提供されることが好ましい。1つの実施形態では、生じた生成物を25℃で約20分間インキュベートする。続いて、遺伝子導入試薬を除去し、DNA(トランスフェクション試薬との複合体中のDNA)を有する表面を生成し、そして適切な培養液中の細胞を表面上にプレーティングする。生じた生成物(DNAおよびプレーティングした細胞を有する表面)を、プレーティングした細胞へのDNAの侵入を引き起こす条件下で維持する。
本発明において使用される場合は、約1〜2細胞周期が、トランスフェクションが起こるのに十分であるが、これは使用される細胞の型および条件によって変動し、そして特定の組み合わせのために適切な時間の長さは、当業者が用意に実験的に決定され得る。十分な時間が経過した後、トランスフェクション効率、コードされた産物の発現、細胞への影響などに関して、公知の方法を用いて評価することができる。例えば、免疫蛍光の検出、または酵素免疫細胞学、インサイチュハイブリダイゼーション、オートラジオグラフィー、あるいはDNAの発現またはコードされた産物もしくはDNA自体による導入された細胞に対する影響を検出する他の手段によって、上記パラメータを判定することができる。コードされたタンパク質の発現を検出するために免疫蛍光を使用する場合、タンパク質に結合しかつ蛍光標識された抗体を使用し(例えば、抗体のタンパク質への結合に適切な条件下でスライドに加える)、そしてタンパク質を含む位置(表面上のスポットまたは領域)を、蛍光を検出することによって同定する。蛍光の存在は、蛍光を示す規定位置においてトランスフェクションが起こり、そしてコードされたタンパク質が発現したことを示す。使用された方法によって検出された、スライド上のシグナルの存在は、シグナルが検出された特定の位置において、トランスフェクションおよびコードされた産物の発現または細胞におけるDNA導入が起こったことを示す。各特定の位置に存在するDNAの正体は既知であってもよく未知であってもよい;従って、発現が起こった場合、発現したタンパク質の正体も既知であってもよく、未知であってもよい。そのような情報は既知であることが好ましい。従来の情報と相関付けすることができるからである。
本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
以上、本発明を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供したのではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
以下に実施例を示して本発明をさらに詳しく説明するが、この発明は以下の例に限定されるものではない。以下の実施例において用いられる試薬、支持体などは、例外を除き、Sigma(St.Louis,USA、和光純薬(大阪、日本)、松浪硝子(岸和田、日本)などから市販されるものを用いた。
(実施例1:細胞接着関連因子混合物の調製)
細胞接着関連因子の候補として、種々の細胞接着関連因子を準備した。この実施例において調製したものは以下のとおりである。抗体は、市販のものを用いたか、あるいは、インテグリンレセプターに対して抗体を惹起することによって調製した。ポリペプチドは、市販のものを使用したか、または遺伝子操作し発現させたものを用いた。CD29、CD49ファミリーについては、抗体惹起には、配列番号3〜14に記載のアミノ酸配列を用いて作製することもできる。
1)フィブロネクチン(配列番号1);
2)CD49a抗体(IMMUNOTECH(a coulter company), france, monoclonal antibody CD49a−VLA alfa1 Cat.No.1599//COSMOBIO, Japan,mouse−ANTIratCD49a)。
3)CD49b抗体(IMMUNOTECH(a coulter company), france, monoclonal antibody CD49b Cat.No.0717)。
4)CD49c抗体(IMMUNOTECH(a coulter company), france, monoclonal antibody CD49c Cat.No2000)。
5)CD49d抗体(IMMUNOTECH(a coulter company), france, monoclonal antibody CD49d Cat.No0764// ENDOGEN, USA, mouse−ANTIratCD49d)。
6)CD49e抗体(IMMUNOTECH(a coulter company), france, monoclonal antibody CD49e Cat.No.0771)。
7)CD49f抗体(IMMUNOTECH(a coulter company), france, monoclonal antibody CD49f Cat.No.0769// AntigenixAmerica, USA, mouse−ANTIratCD49f, PRO.NO.MR496620)。
8)CD29抗体(IMMUNOTECH(a coulter company), france, monoclonal antibody CD29 Cat.No1151)。
これらの抗体・細胞接着関連因子を指定の用法・用量にてreconstitutionした溶液をPBSにて100〜5000倍に希釈した後、ガラススライド表面上に播種し乾燥させた。乾燥した後PBSにてよく洗浄し、その上に遺伝子導入試薬、遺伝子の複合体をプリントする。それらのガラススライドに目的の細胞を播種し固相系遺伝子導入法を行う。PC12細胞などについては抗ラットモノクローナル抗体を用いた。
このインテグリンレセプターと、認識される細胞外マトリクスとの関係を図1に示す。
DNAとしてトランスフェクションのためのプラスミドを調製した。プラスミドとして、pEGFP−N1およびpDsRed2−N1(ともにBD Biosciences,Clontech、CA、USA)を用いた。これらのプラスミドでは、遺伝子発現はサイトメガロウイルス(CMV)の制御下にある。プラスミドDNAを、E.coli(XL1 blue、Stratgene,TX,USA)中で増幅し増幅したプラスミドDNAを複合体パートナーの一方として用いた。DNAは、DNaseもRNaseも含まない蒸留水中に溶解した。
使用したトランスフェクション試薬は以下の通りである:Effectene Transfection Reagent(cat.no.301425,Qiagen,CA),TransFastTM Transfection Reagent(E2431,Promega,WI),TfxTM−20 Reagent(E2391,Promega,WI),SuperFect Transfection Reagent(301305,Qiagen,CA),PolyFect Transfection Reagent(301105,Qiagen,CA),LipofectAMINE 2000 Reagent(11668−019,Invitrogen corporation,CA),JetPEI(×4)conc.(101−30,Polyplus−transfection,France)およびExGen 500(R0511,Fermentas Inc.,MD)。LipofectAMINE 2000を用いるのが好ましいようであるが、それに限定されない。トランスフェクション試薬は、上記DNAおよび細胞接着関連因子にあらかじめ加えるかあるいはDNAと複合体を先に生成してから使用した。
このようにして調製した溶液を以下のトランスフェクション効率の改善試験に用いた。
(実施例2:液相におけるトランスフェクション効率の改善)
本実施例では、液相におけるトランスフェクション効率の改善を観察した。液相トランスフェクションのプロトコルは、LipofectAMINE 2000、提供する指示書に従った。
本実施例では、上述のように調製した細胞接着関連因子の有り無しにより、PC12細胞を用いて液相トランスフェクションにおけるこれらの物質の効果を調べた。PC12 (rat pheochromocytoma cells:ATCC CRL−1721) これらは、L−glutおよびpen/strepを含むDMEM/10%calf serum (GIBCO)中で培養した。
細胞接着関連因子は、PBS中で200μg/mlのストックとして保存した。全ての希釈をPBS、ddHOまたはダルベッコMEM培地を用いて行った。希釈系列として、例えば、0.2μg/ml、0.067μg/ml、0.04μg/ml、1.0μg/ml、5.0μg/ml、10.0μg/ml、50.0μg/mlなどを調製した。
その結果、これらの細胞接着関連因子は、液相トランスフェクションにおいて効率を上げることが明らかになった。特にコラーゲンIVがその効率の上昇に顕著な効果を有することが明らかになった。
(実施例3:固相におけるトランスフェクション効率の改善)
本実施例では、固相におけるトランスフェクション効率の改善を観察した。そのプロトコルを以下に示す。
(プロトコル)
DNAの最終濃度は、1μg/μLに調整した。細胞接着関連因子は、ddHO中で200μg/mlのストックとして保存した。全ての希釈をPBS、ddHOまたはダルベッコMEM培地を用いて行った。希釈系列として、例えば、0.2μg/ml、0.067μg/ml、0.04μg/ml、、1.0μg/mlなどを調製した。
トランスフェクション試薬は、それぞれの製造業者が提供する指示書に従って、使用した。
プラスミドDNA:グリセロールストックから100mLのL−amp中で一晩増殖させ、Qiaprep MiniprepまたはQiagen Plasmid Purification Maxiを用いて製造業者が提供する標準プロトコールによって精製した。
本実施例では、以下の細胞を利用して、効果を確認した: HepG2(RCB1648、RIKEN Cell Bank,JPN)。これらは、L−glutおよびpen/strepを含むDMEM/10%IFS中で培養した。
(希釈およびDNAのスポット)
トランスフェクション試薬とDNAとを混合してDNA−トランスフェクション試薬複合体を形成させる。複合体形成にはある程度の時間が必要であることから、上記混合物を、ピペットを用いて固相支持体(例えば、ポリ−L−リジンスライド)にスポットした。
複合体形成およびスポット固定のために、真空乾燥機中で一晩スライドを乾燥させた。
細胞接着関連因子は、上記複合体形成時に使用してもよいが、本実施例では、固相支持体(例えば、ポリ−L−リジンスライド)へ物理的にコートした。これらの抗体・細胞接着関連因子を指定の用法・用量にて再構成した溶液をPBSにて100〜5000倍に希釈した後、ガラススライド表面上に播種し乾燥させた。乾燥した後PBSにてよく洗浄し、その上に遺伝子導入試薬、遺伝子の複合体をプリントする。それらのガラススライドに目的の細胞を播種し固相系遺伝子導入法を行った。
(混合液の調製および固相支持体への適用)
(細胞の分配)
次に、細胞を添加するプロトコルを示す。トランスフェクトのために細胞を分配した。この分配は、通常、フード内で試薬を減圧吸引して行った。スライドを皿に置き、そしてトランスフェクションのために細胞を含む溶液を加えた。細胞の分配は、以下のとおりである。
細胞の濃度が25mL中10細胞になるように、増殖中の細胞を分配した。四角の100×100×15mmのペトリ皿または半径100mm×15mmの円形ディッシュ中で、スライド上に細胞をプレーティングした。約40時間、トランスフェクションを進行させた。これは、約2細胞周期にあたる。免疫蛍光のためにスライドを処理した。
(遺伝子導入の評価)
遺伝子導入の評価は、例えば、免疫蛍光、蛍光顕微鏡検査、レーザー走査、放射性標識および感受性フィルムまたはエマルジョンを用いた検出によって達成した。
可視化されるべき発現されたタンパク質が蛍光タンパク質であるなら、それらを蛍光顕微鏡検査で見てそして写真を撮ることができる。大きな発現アレイに関しては、スライドをデータ保存のためにレーザースキャナーで走査し得る。発現されたタンパク質を蛍光抗体が検出し得るなら、免疫蛍光のプロトコールが引き続いて行うことができる。検出が放射能に基づくなら、スライドを上記で示したように付着し得、そしてフィルムまたはエマルジョンを用いたオートラジオグラフィーによって放射能を検出することができる。
(レーザー走査および蛍光強度定量)
トランスフェクション効率を定量するために、本発明者らは、共焦点レーザー顕微鏡(LSM510、Carl Zeiss Co.,Lrd)を使用した。総蛍光強度(任意の単位)を測定した後、表面積あたりの蛍光強度を計算した。
(結果)
図2Aに一例としてHepG2細胞を用いた場合の種々の細胞接着関連因子およびフィブロネクチンを用いた結果を示す。図2Bは別の例として、HepG2細胞を用いた実験において、別の細胞接着関連因子(HLA、CD46およびCD54)を用いたトランスフェクション効率の結果を示す。
結果から明らかなように、CD49ファミリー抗体は、フィブロネクチンと同様に、顕著にトランスフェクションが起こっていた。従って、細胞接着関連因子は、トランスフェクション効率を顕著に上昇させることが実証された。
図3Aには、HepG2細胞上に発現する各種インテグリンレセプター(CD49a,d,f)と認識される細胞外マトリクスの関係、各細胞外マトリクスコーティングされた表面でのトランスフェクション効率を示す。図3B〜3Eには、各種細胞接着関連因子をコーティングした場合のトランスフェクション後の細胞の変化を示す。
細胞接着関連因子の効果はトランスフェクションの効率を上げていた。従って、トランスフェクション可能とされていたHEK293、HeLa、3T3はもちろん、トランスフェクションが困難とされていたHepG2でも、HeLaおよび3T3に匹敵するトランスフェクション効率が達成された。このような効果は、従来のトランスフェクション系では決して達成されなかったことであり、事実上すべての細胞についてトランスフェクション効率をさらに上昇させることができ、実用に耐え得るトランスフェクションをすべての細胞に提供する系が史上初めて提供されたことになる。また、固相条件を採用したことによって、相互夾雑も顕著に減少した。従って、固相支持体を使用する場合本発明は、集積化バイオアレイを製造するために適切な方法であることが実証された。
また、種々のプレートを用いた場合、コーティングをしたときには、コーティングをしていない場合よりも夾雑が少なくなっており、トランスフェクション効率も上昇しているようであることが明らかになった。
さらに、トランスフェクション効率は、抗体の濃度の上昇に伴って上昇することが明らかになった。ただし、一定濃度で効率がプラトーに達していることがわかる。
(実施例4:PC12細胞での実証)
神経様細胞として知られる、PC12細胞を用いて、分化細胞でも本発明の細胞接着関連因子の効果が見られるかどうかを観察した。
実施例3に従って、各種試薬および細胞を調製した。ただし、PC12細胞は以下の手順に従った。
PC12(rat pheochromocytoma cells:ATCC CRL-1721) これらは、L−glutおよびpen/strepを含むDMEM/10%calfserum (GIBCO)中で培養した。細胞の濃度が25mL中10細胞になるように、増殖中の細胞を分配した。四角の100×100×15mmのペトリ皿または半径100mm×15mmの円形ディッシュ中で、スライド上に細胞をプレーティングした。約48時間、トランスフェクションを進行させた。免疫蛍光のためにスライドを処理した。
(結果)
結果を図4〜7に示す。図4は、実施例3における図3Aと同様の結果を示す。見られるように、フィブロネクチンで効果が薄いPC12細胞でも、本発明の細胞接着関連因子は、トランスフェクション効率を上昇させることが明らかになった。
図5A〜Bには、細胞接着の様子を示す、図6にはトランスフェクションの様子を対比した写真を示す。図5A〜Bには、実施例4におけるPC12細胞の細胞接着の様子を示す。CD抗体を用いたPC12細胞のTypeIV コラーゲンコート表面への接着阻害およびトランスフェクション。ポリ-L-リシンコートスライドガラス上にTypeIVコラーゲンコート。その後、あらかじめ抗体溶液を接触させておいたPC12細胞を播種し通常(液相系)のプロトコールに従いLipofectamin2000を用いてのトランスフェクションを行った。図5Aは抗CD49aにおいてはTypeIVコラーゲンコート表面へのPC12細胞の接着が顕著に阻害された。抗CD49dにおいてはPC12細胞の接着は阻害されず抗体のないControlと同等のトランスフェクション効率を示す。PC12細胞は図4より明らかなようにCD49dを発現していない。また、CD49dはフィブロネクチンに対するレセプターであり、このことよりTypeIVコラーゲンコート表面への接着が阻害されなかったためと考えられる。抗体の存在自体はトランスフェクション効率に影響を与えない。図5Bは同様に抗CD49f共存下におけるトランスフェクション効率違いを示す。表示されている数値は抗体のストック溶液を何倍に希釈してあらかじめPC12細胞に接触させたかを示している。図より明らかなようにトランスフェクション効率は接触させた抗体の濃度依存的に減少している。CD49fはラミニンに対するレセプターであるが、このことよりTypeIVコラーゲンコート表面への接着が阻害されいないと考えられる。PC12細胞は図4より明らかなようにCD49fを発現しており、ラミニンによりトランスフェクション効率は上昇することから抗CD49fはトランスフェクション効率を上昇することができる(図6,7参照)。
図5より明らかなようにトランスフェクション効率は接触させた抗体の濃度依存的に減少している。CD49fはラミニンに対するレセプターであるが、このことよりTypeIV コラーゲンコート表面への接着が阻害されいないと考えられる。PC12細胞は図4より明らかなようにCD49fを発現しており、ラミニンによりトランスフェクション効率は上昇することから抗CD49fはトランスフェクション効率を上昇することができる(図6,7参照)と考えられる。その結果図7に示すように抗CD49fを用いることによってトランスフェクション効率を上昇させることができることが実証された。
このように、細胞接着の阻害と、トランスフェクションの効率の上昇が逆相関であることが示された。このようなことは、従来知られておらず、本発明は、細胞接着の促進を行うことによって、トランスフェクション効率を上昇させることを見出したことから、任意の細胞において細胞接着を促進することによって、トランスフェクション効率を上げることを示す。
図7には、支持体における細胞接着関連因子のコーティングの効果を示す。コラーゲンIV型をコーティングすると、トランスフェクション効率は上がるようである。
本発明者らが開発した複合体−塩という系を用いることにより、種々の細胞株(HepG2)に対して高いトランスフェクション効率ならびに密集したアレイ中での空間的な局在の獲得を可能にする固相系トランスフェクションが達成された。細胞接着関連因子を利用した固相系トランスフェクションの概略を、図8に示す。
固相系トランスフェクションにより、インビボ遺伝子送達のために使用され得る「トランスフェクションパッチ」の技術的な達成ならびにHepG2、PC12における高スループットの遺伝子機能研究のための固相系トランスフェクションアレイ(SPTA)が可能になることが判明した。
哺乳動物細胞をトランスフェクトするための多数の標準的な方法が存在するが、遺伝物質のHepG2、PC12などの細胞株への導入については、HEK293、HeLaなどの細胞株を比較して不便かつ困難であることが知られている。従来使用されるウイルスベクター送達またはエレクトロポレーションのいずれも重要であるが、潜在的な毒性(ウイルス方法)、ゲノムスケールでの高スループット分析を受けにくいこと、およびインビボ研究に対して制限された適用性(エレクトロポレーションに関して)のような不便さが存在する。
固相支持体に簡便に固定することができ、かつ徐放性および細胞親和性を保持した固相支持体固定系が開発されたことにより、これらの欠点のほとんど克服することができた。
マイクロプリンティング技術を使用する本発明者らの技術を用いて、選択された遺伝物質、トランスフェクション試薬および適切な細胞接着分子、ならびに塩を含む混合物を、固体支持体上に固定化し得た。混合物を固定化した支持体の上での細胞培養は、その培養細胞に対する、混合物中の遺伝子の取り込みを可能にした。その結果、支持体−接着細胞における、空間的に分離したDNAの取り込みを可能にした。
本実施例の結果、いくつかの重要な効果が達成された:高いトランスフェクション効率(その結果、統計学的に有意な細胞集団が研究され得る)、異なるDNA分子を支持する領域間の低い相互夾雑(その結果、個々の遺伝子の効果が、別々に研究され得る)、トランスフェクト細胞の長期生存、高スループットの互換性のある形式および簡便な検出方法。SPTAは、これらの基準を全て満たすことは、さらなる研究のための適切な基盤となることになる。
これらの目的の達成を明確に確立するために、上述のように本発明者らは、HepG2およびフィブロネクチンでは効率が悪い分化細胞(PC12細胞)を、本発明者らの方法論(固相系でのトランスフェクション)および従来の液相系トランスフェクションの両方を用いて一連のトランスフェクション条件下で研究した。
トランスフェクション効率:トランスフェクション効率を、単位面積あたりの総蛍光強度として決定した。使用した細胞株に従って、最適な液相の結果を得た。次いで、これらの効率的なトランスフェクション試薬を、固相系プロトコルの最適化に使用した。いくつかの傾向が観察された:容易にトランスフェクト可能な細胞株(例えば、HEK293、HeLa、NIH3T3)の場合、固相系プロトコルで観察されたトランスフェクション効率は、標準的な液相系プロトコルと比較してわずかに優れていたが、本質的に類似したレベルで達成されている。
しかし、細胞をトランスフェクトするのが困難な場合(例えば、PC12細胞、およびHepG2)においてSPTA方法論に最適化した条件を用いることによって、本発明者らは、特にPC12細胞の場合、細胞の特徴を維持しながら、トランスフェクション効率が100倍まで増加したことを観察した。予備的実験の結果ではHeLa細胞では上記のように本質的に高いトランスフェクション効率を示した。
チップ上での高いトランスフェクション効率の達成のための重要な点は、使用されるガラスコーティングである。PLLが、トランスフェクション効率および相互夾雑の両方に関して、最良の結果を提供することを発見した。細胞接着関連因子を使用しない場合、少数のトランスフェクト体を観察した(他のすべての実験条件は一定に保った)。完全に確立したわけではないが、細胞接着関連因子の役割はおそらく、DNAの導入が可能になる時間を制限するということである。
低い相互夾雑:SPTAプロトコルで観察されたより高いトランスフェクション効率は別として、本技術の重要な利点は、別個に分離された細胞アレイの実現であり、その各位置では、選択した遺伝子が発現する。本発明者らは、細胞接着関連因子でコーティングしたガラス表面上に、JetPEIおよびフィブロネクチンと混合した2つの異なるレポーター遺伝子をプリントした。得られたトランスフェクションチップを適切な細胞培養に提供した。最良であると見出された実験条件下において、発現されたGFPおよびRFPは、それぞれのcDNAがスポットされた領域に局在した。相互夾雑はほとんど観察されなかった。
この確立された技術は、経済的な高スループットの遺伝子機能スクリーニングの状況において特に重要である。実際に、必要とされるトランスフェクション試薬およびDNAの量が少量であること、ならびに全プロセス(プラスミドの単離から検出まで)を自動化が可能であることは、上記の方法の有用性を増大する。
結論として、本発明者らは、細胞接着関連因子を用いた系で、PC12細胞およびhMSCトランスフェクションアレイを好首尾に実現した。このことは、多能性幹細胞の分化を制御する遺伝子機構の解明など、固相系トランスフェクションを利用した種々の研究における高スループット研究を可能にすることになる。固相系トランスフェクションの詳細な機構ならびに高スループットのリアルタイム遺伝子発現モニタリングに対するこの技術の使用に関する方法論は種々の目的に応用可能であることが明らかになった。
(実施例5:ヒト間葉系幹細胞での実証)
トランスフェクションについては、実施例3に記載されるように固相トランスフェクション法を用いて行った。
細胞の調製は以下のとおりであった。hMSCs(ヒト間葉系幹細胞、PT-2501、Cambrex BioScience Walkersville,Inc.,MD)、ヒトMSC細胞の場合、この細胞を、市販のヒト間葉細胞基底培地(MSCGM BulletKit PT−3001,Cambrex BioScience Walkersville,Inc.,MD)中で維持した。
実施例4の結果と同様に、本発明者らは、細胞接着関連因子を用いた系で、ヒト間葉系幹細胞でのトランスフェクションアレイを好首尾に実現した。このことは、多能性幹細胞の分化を制御する遺伝子機構の解明など、固相系トランスフェクションを利用した種々の研究における高スループット研究を可能にすることになる。固相系トランスフェクションの詳細な機構ならびに高スループットのリアルタイム遺伝子発現モニタリングに対するこの技術の使用に関する方法論は種々の目的に応用可能であることが明らかになった。
(実施例6:ヒト神経芽細胞腫での実証)
SHSY5Y(humanneuroblastoma:ATCC CRL―2266)を用いて、神経芽細胞腫でのトランスフェクション効率の上昇を実証した。
トランスフェクションは実施例3に記載されるように行った。細胞の調製は、L−グルタミンおよびpen/strepを含むDMEM/10%FBS中で培養することによって行った。
実施例4の結果と同様に、本発明者らは、細胞接着関連因子を用いた系で、ヒト神経芽細胞腫でのトランスフェクションアレイを好首尾に実現した。このことは、癌細胞の分化を制御する遺伝子機構の解明など、固相系トランスフェクションを利用した種々の研究における高スループット研究を可能にすることになる。固相系トランスフェクションの詳細な機構ならびに高スループットのリアルタイム遺伝子発現モニタリングに対するこの技術の使用に関する方法論は種々の目的に応用可能であることが明らかになった。
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
本発明により、固相でも液相でも実施することができる、トランスフェクションの効率上昇が達成された。このようなトランスフェクション効率上昇試薬は、特に固相でのトランスフェクションを実施するために有用である。従って、遺伝子操作を使用する任意の分野において有用である。

Claims (54)

  1. 細胞接着関連因子を含む、標的物質の細胞への導入効率を上昇させるための組成物。
  2. 前記細胞接着関連因子は、細胞接着分子と相互作用する相互作用物質を含む、標的物質の細胞への導入効率を上昇させるための組成物。
  3. 前記細胞接着分子は、細胞外マトリクスである、請求項2に記載の組成物。
  4. 前記細胞接着分子は、インテグリンレセプターを含む、請求項2に記載の組成物。
  5. 前記細胞接着分子は、RGD分子を含む、請求項2に記載の組成物。
  6. 前記相互作用物質は、前記細胞接着分子のパートナーと抗原抗体反応する、請求項1に記載の組成物。
  7. 前記相互作用物質は、抗体またはその誘導体である、請求項1に記載の組成物。
  8. 前記相互作用物質は、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体である、請求項1に記載の組成物。
  9. 前記相互作用物質は、抗CD49a抗体、抗CD49b抗体、抗CD49c抗体、抗CD49e抗体および抗CD49f抗体からなる群より選択される抗体を含む、請求項1に記載の組成物。
  10. 前記標的物質は、遺伝物質を含む、請求項1に記載の組成物。
  11. 前記標的物質は、核酸分子を含む、請求項1に記載の組成物。
  12. 前記標的物質は、DNAを含む、請求項1に記載の組成物。
  13. 前記インテグリンレセプターは、CD49a、CD49b、CD49c、CD49d、CD49e、CD49f、ならびにCD29からなる群より選択される、請求項4に記載の組成物。
  14. 前記インテグリンレセプターは、CD29、CD49a、CD49c、CD49d、CD49eおよびCD49fからなる群より選択される、請求項4に記載の組成物。
  15. 前記インテグリンレセプターは、コラーゲン、フィブロネクチン、ビトロネクチンおよびラミニンからなる群より選択される分子と相互作用する、請求項4に記載の組成物。
  16. 前記細胞は、幹細胞および分化細胞からなる群より選択される少なくとも1つの細胞を含む、請求項1に記載の組成物。
  17. 前記細胞接着分子は、前記細胞に特異的に発現される、請求項1に記載の組成物。
  18. 前記標的物質は、遺伝物質であり、さらに遺伝子導入試薬を含む、請求項1に記載の組成物。
  19. 前記遺伝子導入試薬は、カチオン性高分子、カチオン性脂質およびリン酸カルシウムからなる群より選択される、請求項18に記載の組成物。
  20. さらに、粒子を含む、請求項1に記載の組成物。
  21. 前記粒子は、金コロイドを含む、請求項20に記載の組成物。
  22. さらに、塩を含む、請求項1に記載の組成物。
  23. 前記塩は、緩衝剤に含まれる塩類および培地に含まれる塩類からなる群より選択される、請求項22に記載の組成物。
  24. 遺伝子導入効率を上昇させるためのキットであって、
    (a)細胞接着関連因子;および
    (b)遺伝子導入試薬、
    を備える、キット。
  25. 標的物質を細胞内へ導入するための組成物であって、
    A)標的物質、
    B)細胞接着関連因子、
    を含む、組成物。
  26. 前記標的物質は、DNA、RNA、ポリペプチド、糖およびこれらの複合体からなる群より選択される物質を含む、請求項25に記載の組成物。
  27. 前記標的物質は、トランスフェクトされるべき遺伝子配列をコードするDNAを含む、請求項25に記載の組成物。
  28. さらに、遺伝子導入試薬を含む、請求項25に記載の組成物。
  29. 前記細胞接着関連因子は、細胞接着分子と相互作用する相互作用物質を含む、請求項25に記載の組成物。
  30. 前記細胞接着関連因子は、細胞接着分子の抗体を含む、請求項25に記載の組成物。
  31. 液相として存在する、請求項25に記載の組成物。
  32. 固相として存在する、請求項25に記載の組成物。
  33. 標的物質の細胞への導入効率を上昇させるためのデバイスであって、
    A)標的物質;および
    B)細胞接着関連因子、
    を含み、該細胞接着関連因子が、支持体に固定された、デバイス。
  34. 前記標的物質は、DNA、RNA、ポリペプチド、糖およびこれらの複合体からなる群より選択される物質を含む、請求項33に記載のデバイス。
  35. 前記標的物質は、遺伝子発現することを目的とする遺伝子配列をコードするDNAを含む、請求項33に記載のデバイス。
  36. 遺伝子導入試薬をさらに含む、請求項33に記載のデバイス。
  37. 前記細胞接着関連因子は、細胞接着分子と相互作用する相互作用物質を含む、請求項36に記載のデバイス。
  38. 前記細胞接着関連因子は、細胞接着分子の抗体を含む、請求項36に記載のデバイス。
  39. 前記支持体は、プレート、マイクロウェルプレート、チップ、スライドグラス、フィルム、ビーズおよび金属からなる群より選択される、請求項36に記載のデバイス。
  40. 前記支持体は、コーティング剤でコーティングされる、請求項36に記載のデバイス。
  41. 前記コーティング剤は、ポリ−L−リジン、シラン、MAS、疎水性フッ素樹脂および金属からなる群より選択される物質を含む、請求項40に記載のデバイス。
  42. 標的物質の細胞への導入効率を上昇させるための方法であって、
    A)標的物質を提供する工程;
    B)細胞接着関連因子を提供する工程;
    C)該標的物質および該細胞接着関連因子を該細胞に接触させる工程、
    を包含する、方法。
  43. 前記標的物質は、DNA、RNA、ポリペプチド、糖、およびこれらの複合体からなる群より選択される物質を含む、請求項42に記載の方法。
  44. 前記標的物質は、トランスフェクトされるべき遺伝子配列をコードするDNAを含む、請求項43に記載の方法。
  45. 遺伝子導入試薬を提供する工程をさらに包含し、該遺伝子導入試薬は、前記細胞に接触される、請求項42に記載の方法。
  46. 前記細胞接着関連因子は、細胞接着分子と相互作用する相互作用物質を含む、請求項42に記載の方法。
  47. 前記細胞接着関連因子は、細胞接着分子の抗体を含む、請求項42に記載の方法。
  48. 前記細胞接着分子は、細胞外マトリクスである、請求項46に記載の方法。
  49. 前記工程は、液相中で行われる、請求項42に記載の方法。
  50. 前記工程は、固相上で行われる、請求項42に記載の方法。
  51. 標的物質の細胞への導入効率を上昇させるための方法であって、
    I)A)標的物質と
    B)細胞接着分子と
    を支持体に固定する工程;および
    II)該支持体上の該組成物に細胞を接触させる工程、
    を包含する、方法。
  52. 遺伝子導入試薬を提供する工程をさらに包含し、該遺伝子導入試薬は、前記細胞に接触される、請求項51に記載の方法。
  53. 前記遺伝子導入試薬の提供後に、前記標的物質と該遺伝子導入との複合体を形成する工程をさらに包含し、その後、前記細胞接着関連因子が提供されることを特徴とする、請求項52に記載の方法。
  54. 前記細胞接着関連因子は、細胞接着分子と相互作用する相互作用物質を含む、請求項51に記載の方法。
JP2005517495A 2004-01-29 2005-01-27 遺伝子導入効率を上昇させるための組成物および方法 Pending JPWO2005073385A1 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004022315 2004-01-29
JP2004022315 2004-01-29
PCT/JP2005/001148 WO2005073385A1 (ja) 2004-01-29 2005-01-27 遺伝子導入効率を上昇させるための組成物および方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPWO2005073385A1 true JPWO2005073385A1 (ja) 2008-01-10

Family

ID=34823826

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2005517495A Pending JPWO2005073385A1 (ja) 2004-01-29 2005-01-27 遺伝子導入効率を上昇させるための組成物および方法

Country Status (5)

Country Link
US (1) US20080038824A1 (ja)
EP (1) EP1715052A4 (ja)
JP (1) JPWO2005073385A1 (ja)
CA (1) CA2554753A1 (ja)
WO (1) WO2005073385A1 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
DE10361932A1 (de) * 2003-12-30 2005-07-28 Celanese Ventures Gmbh Protonenleitende Membran und deren Verwendung
JP5071932B2 (ja) * 2006-07-24 2012-11-14 独立行政法人産業技術総合研究所 組織再生用スキャッフォールド及びその製造方法
JP6439690B2 (ja) 2013-07-12 2018-12-19 石原産業株式会社 細胞への遺伝子導入用組成物

Family Cites Families (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
AU720359B2 (en) * 1995-09-29 2000-06-01 Indiana University Research And Technology Corporation Methods for enhanced virus-mediated DNA transfer using molecules with virus- and cell-binding domains
KR100608154B1 (ko) * 1998-07-01 2006-08-04 다카라 바이오 가부시키가이샤 유전자 도입 방법
AUPQ147799A0 (en) * 1999-07-07 1999-07-29 Medvet Science Pty. Ltd. Mesenchymal precursor cell
US6627442B1 (en) * 2000-08-31 2003-09-30 Virxsys Corporation Methods for stable transduction of cells with hiv-derived viral vectors
AU2002258778C1 (en) * 2001-04-13 2008-12-04 Biogen Ma Inc. Antibodies to VLA-1
DK1407787T3 (da) * 2001-06-20 2009-06-02 Dainippon Sumitomo Pharma Co Fremgangsmåde til fremme af nukleinsyreoverförsel
US6905878B2 (en) * 2002-12-19 2005-06-14 The Scripps Research Institute DNA array for high throughput solid-phase transfection and method for producing the same
SE0301087D0 (sv) * 2003-04-14 2003-04-14 Cartela Ab New monoclonal antibody

Also Published As

Publication number Publication date
EP1715052A1 (en) 2006-10-25
CA2554753A1 (en) 2005-08-11
WO2005073385A1 (ja) 2005-08-11
EP1715052A4 (en) 2007-10-03
US20080038824A1 (en) 2008-02-14

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Melchior et al. Mechanisms of nuclear protein import
Oyama et al. Patterns of alternative splicing of fibronectin pre-mRNA in human adult and fetal tissues
CN109641015A (zh) 通过移除组蛋白h3-赖氨酸三甲基化增加人类体细胞核转移(scnt)效率,以及增加人类nt-esc衍生物的方法和组合物
US20200362008A1 (en) Loss of Function mutations in KCNJ10 cause SeSAME, a human syndrome with sensory, neurological, and renal deficits
Weißenbruch et al. Distinct roles of nonmuscle myosin II isoforms for establishing tension and elasticity during cell morphodynamics
JPWO2005073385A1 (ja) 遺伝子導入効率を上昇させるための組成物および方法
JP2006519026A (ja) 標的物質の細胞導入効率を上昇させるための組成物および方法
JP4231920B2 (ja) ディスク状バイオチップ及びその読取り装置
US20100310532A1 (en) Gene targets in anti-aging therapy and tissue repair
AU2002361467B2 (en) Methods and compositions for pearl oyster cultivation
CN111315765A (zh) Cornulin(CRNN)变体及其用途
WO2006001396A1 (ja) 固相に固着させた核酸を細胞に導入するための方法および組成物
JP2007259855A (ja) ディスク状バイオチップ及びその読取り装置
US20060288431A1 (en) Marker for undifferentiated state of cell and composition and method for separation and preparation of stem cells
CN116789859B (zh) 一种用于评价bcma靶向car-t细胞药效的靶细胞及其应用
TW201326195A (zh) 衍生自雞貧血病毒(cav)vp2蛋白質的細胞核定位信號胜肽以及它們的應用
JPWO2005001090A1 (ja) 細胞の核酸導入効率を改善する方法および組成物
US20040158043A1 (en) Canine CYP1A2 sequences
JP4412734B2 (ja) 脊椎動物の初期発生における中胚葉形成を支配する新規遺伝子BrachyuryExpressionNuclearInhibitor,BENI
Li Biochemical analysis of the interaction between transfer ribonucleic acid and exportin-t
CN115491377A (zh) 一种诱导rna干扰和降低并清除细胞中病毒污染的核苷酸序列及应用
US20040157295A1 (en) Canine dioxin/aryl hydrocarbon receptor sequences
JPH09508523A (ja) グルタミン酸受容体のサブユニット、その製法及びその使用
JP2003183177A (ja) 骨・関節疾患の予防・治療剤
Siddiqa Analysis of the Transcriptional Regulation of the Fibronectin Gene

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20071102

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20071102

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20090116

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20090521