JP5071932B2 - 組織再生用スキャッフォールド及びその製造方法 - Google Patents
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Description
Surface absorption of DNA to tissue engineering scaffolds for efficient gene delivery. by Jang JH, Bengali Z, Houchin L, Shea LD, J. Biomed. Mater. Res. 77A: 50-58, 2006. A new technique for the assay of infectivity of human adenovirus 5 DNA. by Graham FL, van der Eb AJ, Virology 52: 456-467, 1973. A bio-recognition device developed onto nano-crystals of carbonate apatite for cell-targeted gene delivery. by Chowdlhury EH, Akaike T Biotechnology and Bioengineering 90: 414-421, 2005.
(1)基材の表面に、リン酸カルシウムマトリックス層と、該層の内部及び/又は表面に存在する、遺伝子及び細胞接着因子とからなる複合体層を備えた組織再生用スキャッフォールド。
(2)基材は、該表面にリン酸カルシウム捕捉層を備えることを特徴とする前記(1)に記載の組織再生用スキャッフォールド。
(3)前記リン酸カルシウムマトリックス層がアパタイトを含むことを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の組織再生用スキャッフォールド。
(4)細胞接着因子がラミニンであることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の組織再生用スキャッフォールド。
(5)前記遺伝子がプラスミド単体に保持された遺伝子であることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の組織再生用スキャッフォールド。
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載の組織再生用スキャッフォールド上に、培養された細胞体を備えることを特徴とする組織再生体。組織再生体とは、体外の培養条件下でスキャッフォールドへ細胞を付着させ、分化増殖させて組織を再生させ、組織の修復材料としたものである。
(7)表面にリン酸カルシウム捕捉層を有する基材を用意する工程と、前記基材を細胞接着因子及び遺伝子を添加したリン酸カルシウム過飽和溶液に浸漬して、リン酸カルシウムマトリックス層と、該層の内部及び/又は表面に存在する、遺伝子及び細胞接着因子とからなる複合体層を基材表面に形成させる工程とを備えることを特徴とする組織再生用スキャッフォールドの製造方法。
ここで、少なくともその表面が親水性を有する基材とは、基材自体が親水性を有するものはもちろんのこと、基材自体は親水性を有するものではないが、親水化処理(粗面化処理を含む)によって、表面が親水性となるものも包含される。
親水化処理としては、それ自体公知のものが何れも適用でき、グロー放電処理、コロナ放電処理、アルカリ溶液処理、酸溶液処理、酸化剤処理、親水性官能基のグラフト処理、シランカップリング処理、陽極酸化処理、粗面化処理、等を採ればよい。
リン酸カルシウム捕捉層を構成する物質としては、Si-OH基、Ti-OH基、カルボキシル基、リン酸基、硫酸基、水酸基等の官能基(末端にこれらの官能基を有するシランカップリング剤やグラフト鎖、金属酸化物ゲル等も包含される)や、それらの官能基にアルカリ金属またはアルカリ土類金属イオンを結合させたものや、炭酸カルシウム、アパタイトやアパタイトの前躯体等、少なくともリン及び/又はカルシウムを含む化合物が有効である。
(実施例1)
[細胞と遺伝子]
使用した細胞はハムスター繊維芽細胞由来のBHK-21細胞(理化学研究所細胞開発銀行)である。BHK-21細胞表面はラミニンに対して親和性を持つことが知られている。細胞培養液としては10 %の牛胎児血清を含むDMEM培地を用いた。
遺伝子としてはpGL3プラスミド(Promega)を用いた。このプラスミドはluciferaseのcomplementary 遺伝子を含んでおり、遺伝子が細胞内へ移行した場合にはluciferaseが発現するので、細胞融解液中のluciferase活性を測定すれば遺伝子の細胞への移行の有無、程度を評価することができる。
大きさ10×10×1 mm3のエチレンビニルアルコール共重合体を#2000のSiC研磨紙で研磨し、アセトン及びエタノールで超音波洗浄した後、100 ℃で24時間真空乾燥させた。上記基板を、200 mM CaCl2水溶液 20 mLに10秒間、同量の超純水に1秒間浸した後乾燥させ、次いで、200 mM K2HPO4・3H2O水溶液 20 mLに10秒間、同量の超純水に1秒間浸浸した後乾燥させた。同操作を3回繰り返した。細胞培養用試料については、上記処理の後に、エチレンオキサイドガスで基板を滅菌した。以上により作製された基板を以後、EVと略称する。
超純水に、NaCl 142 mM、CaCl2 3.75 mM、K2HPO4・3H2O 1.5 mMとなるように各試薬を溶解し、その後トリスヒドロキシメチルアミノメタンと塩酸を用いて25℃でpH 7.40となるように調整した。以後この溶液をCP溶液と呼ぶ。また、CP溶液に遺伝子を加えた溶液(D溶液)、ラミニンを加えた溶液(L溶液)、及び、ラミニン及び遺伝子を加えた溶液(DL溶液)を調製した。いずれの溶液中においても、ラミニン及び遺伝子濃度は、40μg/mLとした。
CP、D、L、及びDL溶液3mLに、EVを、25℃で24時間浸漬した。溶液から取り出した基板は、超純水(表面構造解析用試料)、またはリン酸緩衝液(細胞培養用試料)で洗浄した。以上の処理により得られた試料をそれぞれ次のように略記する。
・EV-CP(CP溶液浸漬後のEV)
・EV-D(D溶液浸漬後のEV)
・EV-L(L溶液浸漬後のEV)
・EV-DL(DL溶液浸漬後のEV)
前記で得た各試料(EV-CP、EV-D、EV-L、EV-DL)の表面構造を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した。その結果、いずれの試料の表面にも、ナノ〜マイクロスケールの微細構造を有する均一な層の形成が認められた(図1−1,図1−2)。
上記試料表面の結晶構造を薄膜X線回折(TF-XRD)により調べた。いずれの試料のXRDパターンにも、EV基板由来のピークの他に、アパタイトに帰属されるブロードなピークが検出された(図2、左)。以上の結果から、CP、D、L、及びDL溶液中においてEV基板表面に形成された層は、低結晶性アパタイトからなることが分かった。なお、EV-D、EV-L、及びEV-DL表面のアパタイトのピーク強度は、EV-CP表面のそれよりも小さかった。D、L、及びDL溶液中に添加した遺伝子及びラミニン分子が、アパタイトの結晶成長を阻害したためと考えられる。
上記試料表面をX線光電子分光分析(XPS)によって調べた。いずれの試料表面にも、アパタイトの構成成分であるカルシウム及びリンが検出された(図2、右)。この結果は、XRD(図2、左)の結果と一致している。また、EV-D、EV-L、及びEV-DL表面には、上記の元素の他に窒素が検出された。窒素はラミニン及び遺伝子の構成成分である。従って、EV-D表面に形成されたアパタイト層中には遺伝子が、EV-L表面に形成されたアパタイト層中にはラミニンが、EV-DL表面に形成されたアパタイト層中には、ラミニン、及び/または、遺伝子が担持されていると考えられる。
EVの浸漬による、CP、D、L、DL溶液中のカルシウム及びリンの元素濃度変化を高周波結合誘導プラズマ発光分光分析により調べた。その結果から、各試料表面に形成されたアパタイト層中のカルシウム及びリンの量を求めた。結果を図3に示す。EV-D、EV-L、及びEV-DL表面のカルシウム及びリンの量は、EV-CP表面のそれよりも少なかった。これは、EV-D、EV-L、及びEV-DL表面のアパタイト形成量が、EV-CP表面のそれよりも少ないことを示している。以上の結果は、XRDの結果(図2、左)と一致する。D、L、及びDL溶液中に添加した遺伝子及びラミニン分子が、アパタイトの結晶成長を阻害したためと考えられる。
EVの浸漬による、CP、D、L、DL溶液中の遺伝子、及びラミニン濃度変化を紫外可視分光光度計により測定した。ラミニン濃度の測定には、BioRad Protein Assay Kitを用いた。各溶液中の遺伝子、及びラミニン濃度の変化量から、各試料表面のアパタイト層中に担持された遺伝子、及びラミニンの量を求めた。結果を図4に示す。EV-D、及びEV-DL表面には約20μg/cmの遺伝子が、EV-L、及びEV-DL表面には15〜25 μg/cm2のラミニンが担持されたことが分かった。以上の結果は、XPSの結果(図2、右)と一致している。
以上に示した結果から、EV表面にはアパタイト層が、EV-D表面には遺伝子担持アパタイト層が、EV-L表面にはラミニン担持アパタイト層が、EV-DL表面には遺伝子-ラミニン担持アパタイト層が形成されたことが確認された。
EV-CP、EV-D、EV-L、及びEV-DLを、24-wellの細胞培養用マイクロプレート上に静置した。各ウェルに、BHK-21細胞を105 cell/mLとなるように懸濁させた細胞培養液 0.5 mLを注いだ。その後、37 ℃、5 %炭酸ガス雰囲気で1、3、及び7日間細胞培養を行った。
所定期間培養を行った後のEV-CP、EV-D、EV-L、及びEV-DLを1 mLのリン酸緩衝液で3回洗浄後、0.2 mLの細胞融解液(Promega luciferase assay kitに含まれる)中に浸漬した。ピペッティングにより試料上の細胞を十分に融解後、1.5 mLマイクロチューブへ細胞融解液を移し、8000 rpmで3分間遠心した。この上清中の蛋白質濃度を、micro BCA protein assay kit (PIERCE)を用いて測定した。この蛋白質濃度は基板上での細胞数を反映しているものと考えられた。図5に、培養期間1、3、7日間(Day1、Day3、Day7)のそれぞれの試料の蛋白質濃度を示す。いずれの培養期間でも、EV-DとEV-DL間では有意な差は見られなかった。これは、試料表面のラミニンの有無が細胞増殖には影響を与えていないことを示している。
前項で、各試料から得られた細胞融解液の上清中のluciferase活性を測定した。lucifrease活性測定においては、上記の上清10ulと90ulのluciferase発光基質(Promega luciferase assay kitに含まれる)を混合し、ルミノメーターで発光強度を測定した。この発光強度値を図5に示した蛋白質濃度で割ることにより、細胞数による補正を行い、luciferase 活性(RLU activity)とした。Day1, Day3, Day7すべての培養期間で、EV-DLのluciferase 活性がEV-Dよりも高く、Day3(t検定, P<0.01)とDay7(t検定, P<0.05)では有意な差が認められた(図6)。この結果は、EV-DL表面において遺伝子の細胞への導入がEV-D表面よりも効率良く行なわれたことを示している。
参考として、他の方法により遺伝子導入を行った際のluciferase活性を図7に示す。Lipofectamin(GIBCO)は遺伝子とカチオニックなリポソームを形成する脂質であり、最も良く用いられる遺伝子導入試薬である。Lipofectaminは、ウイルスを用いない遺伝子移入方法としてはトップクラスの効率を発揮する。我々のデータでも、Lipofectaminのluciferase活性は当システムの数倍高い(図7)。しかしLipofectaminの問題点として、毒性が強く生体内での使用は難しいという点がある。もう一つの比較対照として、遺伝子を含むキトサンナノ粒子を用いて、遺伝子を細胞へ移入した。キトサンは低毒性でそのナノ粒子は生体内へ投与可能であるが、luciferase活性は当システムの数十分の一程度と低いものであった(図7)。当システムでは細胞毒性を示すものは使用されておらず、生体内で使用可能な遺伝子導入システムの内では非常に高い遺伝子導入効率を示していると思われる。(Lipofectamin、キトサンではそれぞれのシステムで最もluciferase活性が高くなる条件を採用した。)
[PS透明基板の作製]
大きさ10×10×1mm3のポリスチレン基板をコンパウンドで研磨し、エタノールで超音波洗浄した後、80℃で24時間真空乾燥させた。これを、30Paの酸素雰囲気中、電力密度0.50W/cm2の条件下で、30秒間プラズマ処理に付した。上記基板を、100mMのCaCl2を含む50vol%エタノール溶液20mLに10秒間、同量の50vol%エタノール溶液に1秒間浸した後乾燥させ、次いで、100 mMのK2HPO4・3H2Oを含む50vol%エタノール溶液20mLに10秒間、同量の50vol%エタノール溶液に1秒間浸浸した後乾燥させた。同操作を3回繰り返した。同試料を以後、PSと略称する。
実施例1の基板であるEVを、PSに代えた以外は実施例1と同様にして、PS表面に、アパタイト層、遺伝子担持アパタイト層、ラミニン担持アパタイト層、及び遺伝子-ラミニン担持アパタイト層を形成させた。以後、試料名を次のように命名する。
・PS-CP(CP溶液浸漬後のPS、表面にアパタイト層形成)
・PS-D(D溶液浸漬後のPS、表面に遺伝子担持アパタイト層形成)
・PS-L(L溶液浸漬後のPS、表面にラミニン担持アパタイト層形成)
・PS-DL(DL溶液浸漬後のPS、表面に遺伝子-ラミニン担持アパタイト層形成)
各表面層の形成は、実施例1に示したのと同様の表面構造解析手法により確認した。この結果から、表面にリン酸カルシウム捕捉層を有する基材を、遺伝子及び細胞接着因子を添加したリン酸カルシウム過飽和溶液に浸漬することによる、遺伝子、接着因子、及びアパタイトの複合化手法が、エチレン−ビニルアルコール共重合体以外の基材に対しても有効であることが確認された。
実施例1で作製された試料であるEV-CP、EV-D、EV-L、及びEV-DLを、PS-CP、PS-D、PS-L、及びPS-DLに代えた以外は実施例1と同様にして、細胞培養を行った。細胞混濁液中の細胞濃度は5 x 104 cell/mLとした。
培養4日後の試料表面の細胞の形態を、位相差光学顕微鏡により観察した。PS-CP及びPS-Dではほとんどの細胞が球状を呈していた(図8)。これに対してPS-L及びPS-DLでは球状をていしている細胞の他に、扁平状を呈して試料表面に接着している細胞が幾つも観察された。試料表面にラミニンが担持されていることにより、細胞に対する親和性が亢進していると考えられた。これらの所見より当システムでは、扁平状に接着している細胞と試料の間の閉鎖的空間に、試料表面層から遺伝子、または遺伝子−カルシウム複合体が放出されることにより、高効率に細胞に遺伝子が導入されている可能性が高いと思われる(図9、右)。これに対してラミニンの無いPS-D表面では、細胞に対する親和性が十分でないため、細胞は球状となり、遺伝子、または遺伝子−カルシウム複合体は培養液中に放出されるのみではないかと推察される(図9、左)。これらの違いが遺伝子導入効率の差となっている可能性が高いものと思われる。
[CP溶液中のラミニン濃度の影響]
実施例1の、CP溶液中に加えるラミニンの濃度を変化させた以外は実施例1と同様にして、EV表面に遺伝子-ラミニン担持アパタイト層を形成させ、同層表面での遺伝子導入効率を評価した。細胞培養期間3日間とした。図10に示す通り、CP溶液中のラミニン濃度の増加に伴い、同溶液中で形成されるアパタイト層中のラミニン担持量は増加、これに対してアパタイト層中の遺伝子担持量はほぼ同じであった(図10(a))。それぞれのラミニン濃度で形成された遺伝子-ラミニン担持アパタイト層の上で細胞を培養して遺伝子導入率を観ると、ラミニン担持量の多いものほど遺伝子導入効率は向上していた(図10(b))。遺伝子導入効率の向上は、アパタイト層中のラミニン担持量の増加に起因していると考えられた。以上の結果から、CP溶液中のラミニン濃度を変化させることにより、同溶液中で形成されるアパタイト層中のラミニン担持量を変化させることができ、これによって、同層表面での遺伝子導入効率をコントロールできることが分かった。
実施例1の、CP溶液中に加える遺伝子の濃度を変化させた以外は実施例1と同様にして、EV表面に遺伝子-ラミニン担持アパタイト層を形成させ、同層表面での遺伝子導入効率を評価した。細胞培養期間3日間とした。図11(a)に示す通り、CP溶液中の遺伝子濃度の増加に伴い、同溶液中で形成されるアパタイト層中の遺伝子担持量は増加した。一方、アパタイト層中のラミニン担持量は、遺伝子濃度20μg/mLに対して、40μg/mLでは増加し、80μg/mLでは減少した。それぞれの条件で形成された遺伝子-ラミニン担持アパタイト層の上で細胞を培養して遺伝子導入効率を比較した。遺伝子導入効率は、CP溶液中の遺伝子濃度40μg/mLで最も高く、80μg/mL、20μg/mLの順に減少した(図11(b))。遺伝子濃度80μg/mLでは、アパタイト層中の遺伝子担持量は最大であったが、ラミニン担持量が最小であったために、遺伝子導入効率が遺伝子濃度40μg/mLの場合よりも低くなったものと考えられる。以上の結果から、CP溶液中の遺伝子濃度を変化させることにより、同溶液中で形成されるアパタイト層中の遺伝子及びラミニン担持量を変化させることができ、これによって、同層表面での遺伝子導入効率をコントロールできることが分かった。
実施例1の、CP溶液中に加える担持物質をラミニンからアルブミンに変えた以外は実施例1と同様にして、EV表面に遺伝子-アルブミン担持アパタイト層を形成させた(試料名をEV-DAと命名する)。遺伝子-アルブミン担持アパタイト層の形成は、実施例1に示したのと同様の表面構造解析手法により確認した。この結果から、表面にリン酸カルシウム捕捉層を有する基材を、遺伝子及び細胞接着因子を添加したリン酸カルシウム過飽和溶液に浸漬することによる、遺伝子、接着因子、及びアパタイトの複合化手法が、ラミニン以外の生体分子に対しても有効であることが確認された。
EV-D、EV-DA、及びEV-DL表面での遺伝子導入効率を実施例1と同様の方法で評価した結果を図12に示す(細胞培養期間は3日間)。図12に示す通り、EV-DL表面の遺伝子導入効率は、EV-D、及びEV-DA表面のそれよりも有意に高かった。また、EV-DA表面の遺伝子導入効率はEV-D表面のそれと同程度であった。細胞接着活性を持たないアルブミンを担持させても遺伝子導入効率の向上は認められず、細胞接着活性を有するラミニンを担持させた場合に遺伝子導入効率の向上が認められた。以上の結果から、高い遺伝子導入効率を得るためには、細胞接着活性を有する接着因子をアパタイト層中に担持させることが効果的であることが確認された。
実施例1で用いた細胞をMG-63、HeLa、CHO-K1、及びBHK-21 細胞(理化学研究所細胞開発銀行)に、培養液をそれぞれの細胞に適した培養液(MG-63とHeLaは10%牛胎児血清を含むMEM培地、CHO-K1は10%牛胎児血清を含むRPMI1640培地、そしてBHK-21は10%牛胎児血清を含むDMEM培地)に変えた以外は実施例1と同様にして、EV-D及びEV-DL表面での遺伝子導入効率を評価した。細胞培養期間3日間とした。図13に結果を示す。Lipofectaminを用いた場合の遺伝子導入効率も参考値として示した。EV-DL表面での遺伝子導入効率は細胞の種類によって異なり、CHO-K1細胞に対して最も高い導入効率が得られた。また、いずれの細胞に対しても、EV-DL表面の遺伝子導入効率はEV-D表面の導入効率よりも有意に高かった。以上の結果から、アパタイト層中にラミニンを担持させることによる遺伝子導入効率の向上効果は、BHK-21細胞だけでなく種々の細胞に対して認められるが、その効果の度合いは細胞の種類によって異なることが分かった。また、いくつかの細胞に対しては、EV-DL表面の遺伝子導入効率が、既に実用化されているLipofectaminを用いた場合の導入効率と同等もしくはそれよりも高かったことから、本システムは、実用的にも十分高効率な遺伝子導入手法であると言える。
実施例1の、CP溶液中に加える遺伝子の種類をβ-ガラクトシターゼの遺伝子を含むpcDNA3.1/His/LacZプラスミド(Invitrogen)に変えた以外は実施例1と同様にして、EV表面に遺伝子担持アパタイト層(試料名をEV-D’と命名する)、及び遺伝子-ラミニン担持アパタイト層(試料名EV-D’Lと命名する)を形成させた。遺伝子担持アパタイト層、及び遺伝子-ラミニン担持アパタイト層の形成は、実施例1に示したのと同様の表面構造解析手法により確認した。この結果から、表面にリン酸カルシウム捕捉層を有する基材を、遺伝子及び細胞接着因子を添加したリン酸カルシウム過飽和溶液に浸漬することによる、遺伝子、接着因子、及びアパタイトの複合化手法が、pGL3プラスミド以外の遺伝子に対しても有効であることが確認された。
EV-D’及びEV-D’L表面でのCHO-K1細胞に対する遺伝子導入効率を、β-Gal staining kit(Invitrogen)を用いて調べた。このキットを用いると、β-ガラクトシターゼの遺伝子を発現している細胞は緑に染色される。図14に示す通り、EV-D’L表面では、多数の細胞がβ-ガラクトシターゼの遺伝子を発現(強染色細胞を矢印で表示)しているのに対し、EV-D’表面ではβ-ガラクトシターゼの遺伝子を発現している細胞はほとんど観察されなかった。この結果は、EV-D’Lアパタイト層表面において遺伝子の細胞への導入がEV-D’表面よりも効率良く行なわれたことを示している。以上の結果から、当システムによって、pGL3プラスミドだけでなく種々の遺伝子を細胞内に導入可能であることが分かった。
Claims (7)
- 基材の表面に、リン酸カルシウムマトリックス層と、該層の内部及び/又は表面に存在する、遺伝子及び細胞接着因子とからなる複合体層を備えた組織再生用スキャッフォールド。
- 前記基材は、該表面にリン酸カルシウム捕捉層を備えることを特徴とする請求項1に記載の組織再生用スキャッフォールド。
- 前記リン酸カルシウムマトリックス層がアパタイトを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の組織再生用スキャッフォールド。
- 前記細胞接着因子がラミニンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の組織再生用スキャッフォールド。
- 前記遺伝子がプラスミド単体に保持された遺伝子であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の組織再生用スキャッフォールド。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の組織再生用スキャッフォールド上に、培養された細胞体を備えることを特徴とする組織再生体。
- 表面にリン酸カルシウム捕捉層を有する基材を用意する工程と、前記基材を細胞接着因子及び遺伝子を添加したリン酸カルシウム過飽和溶液に浸漬して、リン酸カルシウムマトリックス層と、該層の内部及び/又は表面に存在する、遺伝子及び細胞接着因子とからなる複合体層を基材表面に形成させる工程とを備えることを特徴とする組織再生用スキャッフォールドの製造方法。
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