JP2007267602A - 固相上で細胞に核酸を導入し、かつ、この細胞を分化誘導させるための方法および組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】
支持体上に固定された状態では、核酸(例えば、DNA)を導入することが難しい細胞に、そのような物質を導入する(特に、トランスフェクションする)際に、その導入を可能とするかまたは導入効率を改善することができる方法を開発すること。
【解決手段】
細胞接着分子(例えば、コラーゲンIV型)と、遺伝子導入試薬(例えば、Lipofectamine)とを組み合わせて細胞に適用することによって、予測されていたよりも高い核酸導入効率が達成された。また、核酸導入後の細胞は、分化誘導される能力を有していることが明らかになった。
【選択図】 なし

Description

本発明は、DNAのような核酸を導入する技術および細胞の分化誘導に関する。より詳細には、細胞に核酸を導入する効率を上昇させる技術および核酸を導入した後細胞を分化誘導させる技術に関する。
タンパク質の細胞への導入、トランスフェクション、形質転換、形質導入などの遺伝子導入技術を含む標的物質の細胞への導入は、細胞生物学、遺伝子工学、分子生物学など広い分野において広く使用されている。
トランスフェクションは、動物細胞などの細胞において一過的に遺伝子を発現させ、その影響を観察するためなどに利用される技術であり、ポストゲノム時代を迎えた現在、そのゲノムがコードする遺伝子の機能を解明するために頻繁に利用される技術となっている。
トランスフェクションを達成するために種々の技術が開発されており、そのために利用される薬剤が種々開発されている。そのような技術として、カチオオン性の物質であるカチオン性ポリマー、カチオン性脂質などを利用する技術があり、広く使用されている。
しかし、従来の薬剤を使用するのみでは、トランスフェクション効率が十分ではないことが頻繁に起こっており、特に、初代培養細胞、神経細胞などは従来のトランスフェクション方法では、充分に導入が起こらず、充分な研究がなされていないのが現状である。従って、そのような薬剤またはシステムに対する需要は多大に存在する。また、マイクロタイタープレート、アレイなどの固相上での標的物質の導入(例えば、トランスフェクション)を効率的に行うための技術の開発に対する需要はますます高まるばかりである。特に、支持体へ細胞を固定した上で物質(例えば、核酸)を導入する技術への需要は多い。
細胞を固相上に固定する技術もまた、かなり以前から開発されており、現在では、かなりの細胞が、固相上に固定されることができるようになっている。しかし、固相上に細胞を固定した上で、核酸などの外来物質をその細胞へと導入する試みはほとんどなされておらず、その導入効率の改善についてはまったく取り組まれていない。
このように、当該分野において、すべての系および細胞において適用可能な、トランスフェクション系の開発が望まれている。そのようなトランスフェクション系の開発は、例えば、マイクロタイタープレート、アレイなどを用いた大規模ハイスループットアッセイにおいて、種々の細胞および実験系に適用することへの応用が期待されることから、その需要は年々高まるばかりである。
細胞外マトリクス(ECMともいう)に細胞を接着することが、正常な細胞機能(増殖、分化および生存)の維持に重要な役割を果たしていることが広く認知されている(非特許文献1)。細胞外マトリクスタンパク質への限局的かつ繊維性の接着が培養細胞において観察されているが、細胞培養の研究は、インビボでの細胞外マトリクスの架橋相互作用の働きを完全に解明するにはいたっていない。
接着性の哺乳動物細胞は、細胞外マトリクスタンパク質において細胞表面上のインテグリンレセプターを介して特定の配列を認識し、細胞株に依存した様式でレセプターに連結したシグナル伝達経路を介して応答することが知られる。細胞培養の場合、これらの応答は、細胞形態の変化(例えば、アクチン線維の伸長および細胞プレーン化)を引き起こすだけなく、接着に関与するこれら以外の変化をも引き起こすようである。ケラチノサイトを用いた研究(非特許文献2)では、創傷治癒に関与する細胞移動において細胞外マトリクスが影響を与えることが報告されている。ここでは、フィブロネクチンおよびコラーゲンIVがプラスミノゲンアクチベーター系(例えば、セリンプロテアーゼおよび関連分子)の活性化を引き起こし、他方で、コラーゲンI型、III型などは活性化を抑制することが報告されている。DiMilla et al.(非特許文献3)は、平滑筋細胞では、フィブロネクチンおよびコラーゲンIVの表面密度に依存して細胞移動速度が決定されることを見出している。接着アッセイ(非特許文献4)では、PC12細胞がラミニンおよびコラーゲンIV型を用いた場合に広がることが見出されているが、フィブロネクチンでは広がることは観察されなかった。
しかし、これら細胞接着分子の外来物質の取り込みに対する効果についてはこれまで試験されておらず、その働きは未知のままである。
PC12細胞を含む神経系の細胞のような固相上で核酸を導入することが困難な細胞が存在する。これまでは、このような細胞に核酸を導入することは困難であり、そのような細胞を形質転換するために核酸を導入する必要性が当該分野において存在する。
さらに、細胞に核酸を導入した(例えば、固相上で)後、分化誘導をさせることが必要な状況がしばしば存在する。しかし、そのような状況において、核酸を導入した後に分化誘導することができる技術は存在しない。そのような細胞の分化誘導技術に対する必要性が当該分野において存在する。
Ciancotti FG,et al.Science 285,1028−1032,1999 Jones JM etal.Exp.Cell.Res.、280、244−254、2002 DiMilla et al.J.Cell.Biol.122,729−737,1993 Tomaselli KJ.,J.Cell.Biol.105,2347−2358,1987
以上にかんがみて、本発明は、支持体上に固定された状態では、DNAのような核酸を導入することが難しい細胞に、そのような物質を導入する(特に、トランスフェクション)際に、その導入を可能とするかまたは導入効率を改善することができる方法を開発することを課題とする。本発明はまた、上記のような細胞に核酸を導入した後に、さらに、分化誘導をかけることができる技術を開発することを課題とする。
上記課題は、細胞接着分子と、遺伝子導入試薬(例えば、Lipofectamine)とを組み合わせて細胞に適用することによって、予測されていたよりも高い核酸導入効率が達成されたという予想外の効果を発見し、細胞接着分子と、遺伝子導入試薬(例えば、Lipofectamine)とを組み合わせて(例えば、固相上で)細胞に適用することによって、その細胞が適切な刺激(例えば、神経成長因子(NGF)のような細胞増殖因子の付加)により分化誘導することができることを見出したことによって上記課題を解決した。
たことによって解決された。
本発明では、本発明者らは、細胞接着分子(細胞外マトリクスタンパク質(例えば、フィブロネクチン、コラーゲンI型、コラーゲンIV型、ラミニンなど)を含む)がトランスフェクション効率を含む核酸導入効率に対して予想外に効果があり、核酸が導入された細胞は分化誘導される能力が保持されていることを見出した。これらの核酸導入効率の上昇および細胞分化誘導能力の保持は、予想外に固相上においても見出された。特に、局所トランスフェクション細胞アレイを用いた系において、神経細胞、初代培養細胞を含む任意の細胞において効果があることを見出した。本発明者らは、これにより、細胞接着分子(例えば、コラーゲンIV型など)に基づいて効率よく核酸を導入する技術およびおよび細胞分化誘導能力の保持が達成されることを予想外に発見した。特に、神経細胞での核酸導入および細胞分化誘導能力の保持が可能になったことにより、神経細胞の種々の解析が可能になり、パーキンソン病、クロイツフェルトヤコブ病、神経再生、神経幹細胞分化、神経発達などの解析も可能となった。また、初代培養細胞の遺伝子操作も容易になったことによって、より生体に近い環境における遺伝子操作の影響も分析できるようになった。
したがって、本発明は以下を提供する。
(1) 固相上で細胞に核酸を導入するための組成物であって、上記細胞は、核酸導入後も分化誘導する能力が保持される、組成物であって、
A)細胞接着分子;および
B)遺伝子導入試薬、
を含む、組成物。
(2) 上記細胞接着分子は、細胞外マトリクスを含む、項目1に記載の組成物。
(3) 上記細胞接着分子は、コラーゲン、ラミニンおよびフィブロネクチンからなる群より選択される少なくとも1つの細胞外マトリクスを含む、項目1に記載の組成物。
(4) 上記細胞接着分子は、繊維形成コラーゲンまたは基底膜コラーゲンを含む、項目1に記載の組成物。
(5) 上記細胞接着分子は、繊維形成コラーゲンおよび基底膜コラーゲンを含む、項目1に記載の組成物。
(6) 上記細胞接着分子は、コラーゲンI型またはIV型を含む、項目1に記載の組成物。
(7) 上記細胞接着分子は、コラーゲンI型およびIV型を含む、項目1に記載の組成物。
(8) 上記遺伝子導入試薬は、カチオン性高分子、カチオン性脂質、ポリアミン系試薬、ポリイミン系試薬およびリン酸カルシウムからなる群より選択される少なくとも1つの試薬を含む、項目1に記載の組成物。
(9) さらに、導入が企図される核酸を含む、項目1に記載の組成物。
(10) 上記核酸はDNAである、項目1に記載の組成物。
(11) 上記核酸は、遺伝子をコードする配列を含む、項目10に記載の組成物。
(12) 上記組成物は固体である、項目1に記載の組成物。
(13) 上記組成物は液体である、項目1に記載の組成物。
(14) 上記細胞接着分子は多量体形態である、項目1に記載の組成物。
(15) 上記細胞接着分子は、三次元構造をとる、項目1に記載の組成物。
(16) 上記細胞は、固相上での遺伝子導入が困難である細胞である、項目1に記載の組成物。
(17) 上記細胞は、神経系の細胞である、項目1に記載の組成物。
(18) 上記細胞は、神経系の細胞であり、上記細胞接着分子はコラーゲンを含む、項目1に記載の組成物。
(19) 上記核酸の導入は、上記細胞が固相上に配置された状態で行われる、項目1に記載の組成物。
(20) 上記細胞は、初代培養細胞を包含する、項目1に記載の組成物。
(21) 上記細胞接着分子は、5μg/ml〜100μg/mlの濃度で存在する、項目1に記載の組成物。
(22) 上記細胞は、さらに、分化誘導される、項目1に記載の組成物。
(23) 上記分化は、細胞増殖因子により誘導される、項目1に記載の組成物。
(24) 固相上で細胞に核酸を導入するためのデバイスであって、上記細胞は、核酸導入後も分化誘導する能力が保持される、デバイスであって、
A)細胞接着分子;および
B)遺伝子導入試薬、
を含む、組成物が支持体に固定される、デバイス。
(25) 上記細胞接着分子は、細胞外マトリクスを含む、項目24に記載のデバイス。
(26) 上記細胞接着分子は、コラーゲン、ラミニンおよびフィブロネクチンからなる群より選択される少なくとも1つの細胞外マトリクスを含む、項目24に記載のデバイス。
(27) 上記細胞接着分子は、繊維形成コラーゲンまたは基底膜コラーゲンを含む、項目24に記載のデバイス。
(28) 上記細胞接着分子は、繊維形成コラーゲンおよび基底膜コラーゲンを含む、項目24に記載のデバイス。
(29) 上記細胞接着分子は、コラーゲンI型またはIV型を含む、項目24に記載のデバイス。
(30) 上記細胞接着分子は、コラーゲンI型およびIV型を含む、項目24に記載のデバイス。
(31) 上記遺伝子導入試薬は、カチオン性高分子、カチオン性脂質、ポリアミン系試薬、ポリイミン系試薬およびリン酸カルシウムからなる群より選択される少なくとも1つの試薬を含む、項目24に記載のデバイス。
(32) さらに、導入が意図される核酸を含む、項目24に記載のデバイス。
(33) 上記核酸はDNAである、項目24に記載のデバイス。
(34) 上記核酸は遺伝子をコードする配列を含む、項目33に記載のデバイス。
(35) 上記支持体は固体である、項目24に記載のデバイス。
(36) 上記支持体は液体である、項目24に記載のデバイス。
(37) 上記細胞接着分子は多量体形態である、項目24に記載のデバイス。
(38) 上記細胞接着分子は、三次元構造をとる、項目24に記載のデバイス。
(39) 上記細胞は、固相上での遺伝子導入が困難である細胞である、項目24に記載のデバイス。
(40) 上記細胞は、神経系の細胞である、項目24に記載のデバイス。
(41) 上記細胞は、神経系の細胞であり、上記細胞接着分子はコラーゲンを含む、項目24に記載のデバイス。
(42) 上記核酸の導入は、上記細胞が固相上に配置された状態で行われる、項目24に記載のデバイス。
(43) 上記細胞は、初代培養細胞を包含する、項目24に記載のデバイス。
(44) 上記細胞接着分子は、5μg/ml〜100μg/mlの濃度で存在する、項目24に記載のデバイス。
(45) 上記細胞接着分子は、上記支持体にコーティングされる、項目24に記載のデバイス。
(46) 上記細胞接着分子は、多層で上記支持体にコーティングされる、項目24に記載のデバイス。
(47) 上記核酸は、アレイ状で上記支持体に配置される、項目32に記載のデバイス。
(48) 分化誘導因子をさらに含む、項目24に記載のデバイス。
(49) 上記分化誘導因子は、細胞増殖因子を含む、項目24に記載のデバイス。
(50) 固相上で細胞に核酸を導入するための方法であって、
A)細胞の核酸導入効率を改善するための組成物であって、
a)細胞接着分子;および
b)遺伝子導入試薬、
を含む、組成物を、導入が意図される核酸とともに、上記細胞に提供する工程;ならびに
B)核酸が導入される条件に上記細胞をさらす工程、
を包含し、上記細胞は、上記核酸導入後も分化誘導する能力が保持される、
方法。
(51) 上記細胞接着分子は、細胞外マトリクスを含む、項目50に記載の方法。
(52) 上記細胞接着分子は、コラーゲン、ラミニンおよびフィブロネクチンからなる群より選択される少なくとも1つの細胞外マトリクスを含む、項目50に記載の方法。
(53) 上記細胞接着分子は、繊維形成コラーゲンまたは基底膜コラーゲンを含む、項目50に記載の方法。
(54) 上記細胞接着分子は、繊維形成コラーゲンおよび基底膜コラーゲンを含む、項目50に記載の方法。
(55) 上記細胞接着分子は、コラーゲンI型またはIV型を含む、項目50に記載の方法。
(56) 上記細胞接着分子は、コラーゲンI型およびIV型を含む、項目50に記載の方法。
(57) 上記遺伝子導入試薬は、カチオン性高分子、カチオン性脂質、ポリアミン系試薬、ポリイミン系試薬およびリン酸カルシウムからなる群より選択される少なくとも1つの試薬を含む、項目50に記載の方法。
(58) 上記組成物は固体である、項目50に記載の方法。
(59) 上記組成物は液体である、項目50に記載の方法。
(60) 上記細胞接着分子は多量体形態である、項目50に記載の方法。
(61) 上記細胞接着分子は、三次元構造をとる、項目50に記載の方法。
(62) 上記細胞は、固相上での遺伝子導入が困難である細胞である、項目50に記載の方法。
(63) 上記細胞は、神経系の細胞である、項目50に記載の方法。
(64) 上記細胞は、神経系の細胞であり、上記細胞接着分子はコラーゲンを含む、項目50に記載の方法。
(65) 上記核酸の導入は、上記細胞が固相上に配置された状態で行われる、項目50に記載の方法。
(66) 上記細胞は、初代培養細胞を包含する、項目50に記載の方法。
(67) 上記核酸はDNAを含む、項目50に記載の方法。
(68) 上記核酸は、遺伝子をコードする配列を含む、項目50に記載の方法。
(69) 上記組成物および上記核酸は、支持体に固定される、項目50に記載の方法。
(70) 上記支持体は、固体である、項目69に記載の方法。
(71) 上記支持体は、液体である、項目69に記載の方法。
(72) 上記組成物および上記核酸を上記支持体に固定する工程をさらに包含する、項目69に記載の方法。
(73) 上記固定は、インクジェット方式でされる、項目69に記載の方法。
(74) 上記細胞接着分子は、上記支持体にコーティングされる、項目69に記載の方法。
(75) 上記細胞接着分子は、多層で上記支持体にコーティングされる、項目69に記載の方法。
(76) 上記核酸は、アレイ状で上記支持体に配置される、項目69に記載の方法。
(77) 上記細胞を分化誘導する工程をさらに包含する、項目50に記載の方法。
(78) 上記分化誘導は、分化誘導因子により行われる、項目50に記載の方法。
(79) 上記分化誘導因子は、細胞増殖因子を含む、項目78に記載の方法。
(80) 固相上で細胞に核酸を導入し、かつ、上記細胞を分化誘導させるためのキットであって、
A)
a)細胞接着分子;および
b)遺伝子導入試薬、
を含む、組成物;
B)分化誘導因子;および
C)上記組成物および上記分化誘導因子を、上記核酸および上記細胞とともに使用する方法を記載した指示書、
とを備える、キット。
(81) a)細胞接着分子;およびb)遺伝子導入試薬、を含む、組成物の、細胞に遺伝子導入するための使用であって、上記細胞は、上記核酸導入後も分化誘導する能力が保持される、使用。
(82) 固相上で細胞に核酸を導入し、かつ、上記細胞を分化誘導させるための組成物であって、
A)細胞接着分子;
B)遺伝子導入試薬;および
C)分化誘導因子
を含む、組成物。
(83) 上記分化誘導因子は、上記細胞接着因子および上記遺伝子導入試薬とは別個に提供される、項目82に記載の組成物。
(84) 上記分化誘導因子は、上記細胞接着因子および上記遺伝子導入試薬とは一緒に提供される、項目82に記載の組成物。
(85) 上記分化誘導試薬は、アクチビン、インスリン様増殖因子(IGF)−1、線維芽細胞増殖因子(FGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、トランスフォーミング増殖因子(TGF)−β、神経成長因子(NGF)および骨形成タンパク質(BMP)2/4からなる群より選択される、項目82に記載の組成物。
本発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の発明の実施の形態の詳細な説明から一層明らかとなる。
本発明により、固相でも液相でも実施することができる、トランスフェクションの効率上昇が達成された。このようなトランスフェクション効率上昇試薬は、特に固相で細胞を固定しつつトランスフェクション効率を上昇させるために有用である。
本発明はまた、核酸を導入した後に、分化誘導を可能にする技術を提供する。本発明により、任意の核酸を導入し、任意の分化誘導を行うといった自在な試験設定を可能にする。この技術は、固相上で可能なことから、細胞アレイで必要なかなりの条件を任意に設定することができるという効果を奏する。
以下に、本発明の好ましい実施形態を示すが、当業者は本発明の説明および当該分野における周知慣用技術からその実施形態などを適宜実施することができ、本発明が奏する作用および効果を容易に理解することが認識されるべきである。
以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
(一般技術)
本明細書において用いられる分子生物学的手法、生化学的手法、微生物学的手法は、当該分野において周知であり慣用されるものであり、例えば、Sambrook J.et al.(1989).Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harborおよびその3rd Ed.(2001);Ausubel,F.M.(1987).Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley−Interscience;Ausubel,F.M.(1989).Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley−Interscience;Innis,M.A.(1990).PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,Academic Press;Ausubel,F.M.(1992).Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates;Ausubel,F.M.(1995).Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates;Innis,M.A.et al.(1995).PCR Strategies,Academic Press;Ausubel,F.M.(1999).Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Wiley,and annual updates;Sninsky,J.J.et al.(1999).PCR Applications:Protocols for Functional Genomics,Academic Press、別冊実験医学「外来物質導入&発現解析実験法」羊土社、1997などに記載されており、これらは本明細書において関連する部分(全部であり得る)が参考として援用される。
人工的に合成した遺伝子を作製するためのDNA合成技術および核酸化学については、例えば、Gait,M.J.(1985).Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRLPress;Gait,M.J.(1990).Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRL Press;Eckstein,F.(1991).Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approac,IRL Press;Adams,R.L.et al.(1992).The Biochemistry of the Nucleic Acids,Chapman&Hall;Shabarova,Z.et al.(1994).Advanced Organic Chemistry of Nucleic Acids,Weinheim;Blackburn,G.M.et al.(1996).Nucleic Acids in Chemistry and Biology,Oxford University Press;Hermanson,G.T.(I996).Bioconjugate Techniques,Academic Pressなどに記載されており、これらは本明細書において関連する部分が参考として援用される。
(一般生化学)
本明細書において使用される用語「タンパク質」、「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのアミノ酸のポリマーをいう。このポリマーは、直鎖であっても分岐していてもよく、環状であってもよい。アミノ酸は、天然のものであっても非天然のものであってもよく、改変されたアミノ酸であってもよい。この用語はまた、複数のポリペプチド鎖の複合体へとアセンブルされたものを包含し得る。この用語はまた、天然または人工的に改変されたアミノ酸ポリマーも包含する。そのような改変としては、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化または任意の他の操作もしくは改変(例えば、標識成分との結合体化)。この定義にはまた、例えば、アミノ酸の1または2以上のアナログを含むポリペプチド(例えば、非天然のアミノ酸などを含む)、ペプチド様化合物(例えば、ペプトイド)および当該分野において公知の他の改変が包含される。フィブロネクチンのような細胞外マトリクスタンパク質の遺伝子産物は、通常ポリペプチド形態をとる。
本明細書において使用される用語「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのヌクレオチドのポリマーをいう。この用語はまた、「誘導体オリゴヌクレオチド」または「誘導体ポリヌクレオチド」を含む。「誘導体オリゴヌクレオチド」または「誘導体ポリヌクレオチド」とは、ヌクレオチドの誘導体を含むか、またはヌクレオチド間の結合が通常とは異なるオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドをいい、互換的に使用される。そのようなオリゴヌクレオチドとして具体的には、例えば、2’−O−メチル−リボヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がホスホロチオエート結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がN3’−P5’ホスホロアミデート結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリボースとリン酸ジエステル結合とがペプチド核酸結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5プロピニルウラシルで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5チアゾールウラシルで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のシトシンがC−5プロピニルシトシンで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のシトシンがフェノキサジン修飾シトシン(phenoxazine−modified cytosine)で置換された誘導体オリゴヌクレオチド、DNA中のリボースが2’−O−プロピルリボースで置換された誘導体オリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチド中のリボースが2’−メトキシエトキシリボースで置換された誘導体オリゴヌクレオチドなどが例示される。他にそうではないと示されなければ、特定の核酸配列はまた、明示的に示された配列と同様に、その保存的に改変された改変体(例えば、縮重コドン置換体)および相補配列を包含することが企図される。具体的には、縮重コドン置換体は、1またはそれ以上の選択された(または、すべての)コドンの3番目の位置が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換された配列を作成することにより達成され得る(Batzerら、Nucleic Acid Res.19:5081(1991);Ohtsukaら、J.Biol.Chem.260:2605−2608(1985);Rossoliniら、Mol.Cell.Probes 8:91−98(1994))。フィブロネクチンのような細胞外マトリクスタンパク質などの遺伝子は、通常、このポリヌクレオチド形態をとる。また、トランスフェクションの対象となる分子もこのポリヌクレオチドである。
用語「核酸分子」もまた、本明細書において、核酸、オリゴヌクレオチド、およびポリヌクレオチドと互換可能に使用され、cDNA、mRNA、ゲノムDNAなどを含む。本明細書では、核酸および核酸分子は、用語「遺伝子」の概念に含まれ得る。ある遺伝子配列をコードする核酸分子はまた、「スプライス変異体(改変体)」を包含する。同様に、核酸によりコードされた特定のタンパク質は、その核酸のスプライス改変体によりコードされる任意のタンパク質を包含する。その名が示唆するように「スプライス変異体」は、遺伝子のオルタナティブスプライシングの産物である。転写後、最初の核酸転写物は、異なる(別の)核酸スプライス産物が異なるポリペプチドをコードするようにスプライスされ得る。スプライス変異体の産生機構は変化するが、エキソンのオルタナティブスプライシングを含む。読み過し転写により同じ核酸に由来する別のポリペプチドもまた、この定義に包含される。スプライシング反応の任意の産物(組換え形態のスプライス産物を含む)がこの定義に含まれる。したがって、本明細書では、たとえば、コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニンなどの有用な細胞外マトリクスタンパク質には、そのスプライス変異体もまた包含され得る。
本明細書において、「遺伝子」とは、遺伝形質を規定する因子をいう。通常染色体上に一定の順序に配列している。タンパク質の一次構造を規定するものを構造遺伝子といい、その発現を左右するものを調節遺伝子(たとえば、プロモーター)という。本明細書では、遺伝子は、特に言及しない限り、構造遺伝子および調節遺伝子を包含する。また、最近のゲノム配列解読により、構造遺伝子でも調節遺伝子でもない部分が注目されており生命において役割を果たしていることが示唆されている。したがって、遺伝子とは、生命体に存在する核酸およびその核酸によって規定される遺伝形質を決定する因子を包含することが理解される。したがって、コラーゲン遺伝子というときは、通常、コラーゲンの構造遺伝子およびコラーゲンのプロモーターの両方を包含する。本明細書では、「遺伝子」は、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」ならびに/または「タンパク質」「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」を指すことがある。本明細書においてはまた、「遺伝子産物」は、遺伝子によって発現された「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」ならびに/または「タンパク質」「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」を包含する。当業者であれば、遺伝子産物が何たるかはその状況に応じて理解することができる。
本明細書において配列(例えば、核酸配列、アミノ酸配列など)の「相同性」とは、2以上の遺伝子配列の、互いに対する同一性の程度をいう。従って、ある2つの遺伝子の相同性が高いほど、それらの配列の同一性または類似性は高い。2種類の遺伝子が相同性を有するか否かは、配列の直接の比較、または核酸の場合ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーション法によって調べられ得る。2つの遺伝子配列を直接比較する場合、その遺伝子配列間でDNA配列が、代表的には少なくとも50%同一である場合、好ましくは少なくとも70%同一である場合、より好ましくは少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一である場合、それらの遺伝子は相同性を有する。本明細書において、配列(例えば、核酸配列、アミノ酸配列など)の「類似性」とは、上記相同性において、保存的置換をポジティブ(同一)とみなした場合の、2以上の遺伝子配列の、互いに対する同一性の程度をいう。従って、保存的置換がある場合は、その保存的置換の存在に応じて同一性と類似性とは異なる。また、保存的置換がない場合は、同一性と類似性とは同じ数値を示す。
本明細書では、アミノ酸配列および塩基配列の類似性、同一性および相同性の比較は、配列分析用ツールであるFASTAバージョン3においてデフォルトパラメータを用いて算出される。
本明細書において、「アミノ酸」は、本発明の目的を満たす限り、天然のものでも非天然のものでもよい。「アミノ酸誘導体」または「アミノ酸アナログ」とは、天然に存在するアミノ酸とは異なるがもとのアミノ酸と同様の機能を有するものをいう。そのようなアミノ酸誘導体およびアミノ酸アナログは、当該分野において周知である。
本明細書において「天然のアミノ酸」とは、天然のアミノ酸のL−異性体を意味する。天然のアミノ酸は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、メチオニン、トレオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、システイン、プロリン、ヒスチジン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、γ−カルボキシグルタミン酸、アルギニン、オルニチン、およびリジンである。特に示されない限り、本明細書でいう全てのアミノ酸はL体であるが、D体のアミノ酸を用いた形態もまた本発明の範囲内にある。
本明細書において「非天然アミノ酸」とは、タンパク質中で通常は天然に見出されないアミノ酸を意味する。非天然アミノ酸の例として、ノルロイシン、パラ−ニトロフェニルアラニン、ホモフェニルアラニン、パラ−フルオロフェニルアラニン、3−アミノ−2−ベンジルプロピオン酸、ホモアルギニンのD体またはL体およびD−フェニルアラニンが挙げられる。
本明細書において「アミノ酸アナログ」とは、アミノ酸ではないが、アミノ酸の物性および/または機能に類似する分子をいう。アミノ酸アナログとしては、例えば、エチオニン、カナバニン、2−メチルグルタミンなどが挙げられる。アミノ酸模倣物とは、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸と同様な様式で機能する化合物をいう。
本明細書において「ヌクレオチド」は、天然のものでも非天然のものでもよく、目的とする機能を発揮することができる限りヌクレオチド誘導体またはヌクレオチド改変体をも包含する。「ヌクレオチド誘導体」または「ヌクレオチドアナログ」とは、天然に存在するヌクレオチドとは異なるがもとのヌクレオチドと同様の機能を有するものをいう。そのようなヌクレオチド誘導体およびヌクレオチドアナログは、当該分野において周知である。そのようなヌクレオチド誘導体およびヌクレオチドアナログの例としては、ホスホロチオエート、ホスホルアミデート、メチルホスホネート、キラルメチルホスホネート、2−O−メチルリボヌクレオチド、ペプチド−核酸(PNA)が含まれるが、これらに限定されない。
アミノ酸は、その一般に公知の3文字記号か、またはIUPAC−IUB Biochemical Nomenclature Commissionにより推奨される1文字記号のいずれかにより、本明細書中で言及され得る。ヌクレオチドも同様に、一般に認知された1文字コードにより言及され得る。
その文字コードは以下のとおりである。
アミノ酸
3文字記号 1文字記号 意味
Ala A アラニン
Cys C システイン
Asp D アスパラギン酸
Glu E グルタミン酸
Phe F フェニルアラニン
Gly G グリシン
His H ヒスチジン
Ile I イソロイシン
Lys K リジン
Leu L ロイシン
Met M メチオニン
Asn N アスパラギン
Pro P プロリン
Gln Q グルタミン
Arg R アルギニン
Ser S セリン
Thr T トレオニン
Val V バリン
Trp W トリプトファン
Tyr Y チロシン
Asx アスパラギンまたはアスパラギン酸
Glx グルタミンまたはグルタミン酸
Xaa 不明または他のアミノ酸。
塩基
記号 意味
a アデニン
g グアニン
c シトシン
t チミン
u ウラシル
r グアニンまたはアデニンプリン
y チミン/ウラシルまたはシトシンピリミジン
m アデニンまたはシトシンアミノ基
k グアニンまたはチミン/ウラシルケト基
s グアニンまたはシトシン
w アデニンまたはチミン/ウラシル
b グアニンまたはシトシンまたはチミン/ウラシル
d アデニンまたはグアニンまたはチミン/ウラシル
h アデニンまたはシトシンまたはチミン/ウラシル
v アデニンまたはグアニンまたはシトシン
n アデニンまたはグアニンまたはシトシンまたはチミン/ウラシル、不明、または他の塩基。
本明細書において、「対応する」アミノ酸または核酸とは、あるポリペプチド分子またはポリヌクレオチド分子において、比較の基準となるポリペプチド分子またはポリヌクレオチドにおける所定のアミノ酸または核酸と同様の作用を有するか、または有することが予測されるアミノ酸または核酸をいい、特に酵素分子にあっては、活性部位(例えば、コラーゲンの接着部位など)中の同様の位置に存在し触媒活性に同様の寄与をするアミノ酸またはそれをコードする核酸をいう。例えば、アンチセンス分子であれば、そのアンチセンス分子の特定の部分に対応するオルソログにおける同様の部分であり得る。このような対応するアミノ酸または核酸は、当該分野において公知のアラインメント技術を用いて同定することができる。そのようなアラインメント技術としては、例えば、Needleman,SB and Wunsch,CD,J.Mol.Biol.48,443−453,1970に記載される技術が挙げられるがそれに限定されない。
本明細書において「対応する」遺伝子(例えば、ポリヌクレオチドまたはポリペプチド)とは、ある種において、比較の基準となる種における所定の遺伝子(例えば、ポリヌクレオチドまたはポリペプチド)と同様の作用を有するか、または有することが予測される遺伝子をいい、そのような作用を有する遺伝子が複数存在する場合、進化学的に同じ起源を有するものをいう。従って、ある遺伝子の対応する遺伝子は、その遺伝子のオルソログであり得る。したがって、マウスコラーゲン遺伝子に対応する遺伝子は、他の動物(ヒト、ラット、ブタ、ウシなど)においても見出すことができる。そのような対応する遺伝子は、当該分野において周知の技術を用いて同定することができる。したがって、例えば、ある動物における対応する遺伝子は、対応する遺伝子の基準となる遺伝子(例えば、マウスコラーゲンなど)の配列(例えば、配列番号1〜24)をクエリ配列として用いてその動物(例えばヒト、ラット)の配列データベースを検索することによって見出すことができる。
本明細書において「フラグメント」とは、全長のポリペプチドまたはポリヌクレオチド(長さがn)に対して、1〜n−1までの配列長さを有するポリペプチドまたはポリヌクレオチドをいう。フラグメントの長さは、その目的に応じて、適宜変更することができ、例えば、その長さの下限としては、ポリペプチドの場合、3、4、5、6、7、8、9、10、15,20、25、30、40、50およびそれ以上のアミノ酸が挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。また、ポリヌクレオチドの場合、5、6、7、8、9、10、15,20、25、30、40、50、75、100およびそれ以上のヌクレオチドが挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。本明細書において、ポリペプチドおよびポリヌクレオチドの長さは、上述のようにそれぞれアミノ酸または核酸の個数で表すことができるが、上述の個数は絶対的なものではなく、同じ機能を有する限り、上限または加減としての上述の個数は、その個数の上下数個(または例えば上下10%)のものも含むことが意図される。そのような意図を表現するために、本明細書では、個数の前に「約」を付けて表現することがある。しかし、本明細書では、「約」のあるなしはその数値の解釈に影響を与えないことが理解されるべきである。本発明では、フラグメントは、ある一定の大きさ(例えば、5kDa)以上の大きさを有することが好ましい。理論に束縛されないが、細胞接着分子として機能するためにはある程度の大きさが必要であるようであるからである。
本明細書において使用される用語「領域」によって、生体分子の一次構造の物理的に連続した部分を意味する。タンパク質の場合、領域は、そのタンパク質のアミノ酸配列の連続した部分によって定義される。用語「ドメイン」は、本明細書中で、生体分子の既知の機能または推測されている機能に寄与する、その生体分子の構造部分をいうものとして定義される。ドメインは、領域またはその部分と同じ広がりを有し得;ドメインはまた、その領域の全てまたは一部に加えて、特定の領域と区別される生体分子の一部を組み込み得る。本発明の細胞接着分子のドメインの例としては、シグナルペプチド、細胞外(すなわち、N末端)ドメイン、ロイシンリッチ反復ドメイン、RGD部分、他の保存領域が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書において、「ストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド」とは、当該分野で慣用される周知の条件をいう。本発明において使用されるポリヌクレオチド(例えば、コラーゲンIをコードするもの)の中から選択されたポリヌクレオチドをプローブとして、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラーク・ハイブリダイゼーション法あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法等を用いることにより、そのようなポリヌクレオチドを得ることができる。具体的には、コロニーあるいはプラーク由来のDNAを固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0MのNaCl存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2倍濃度のSSC(saline−sodium citrate)溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM 塩化ナトリウム、15mM クエン酸ナトリウムである)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるポリヌクレオチドを意味する。ハイブリダイゼーションは、Molecular Cloning 2nd ed.,Current Protocols in Molecular Biology,Supplement 1〜38、DNA Cloning 1:Core Techniques,A Practical Approach,Second Edition,Oxford University Press(1995)等の実験書に記載されている方法に準じて行うことができる。ここで、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列からは、好ましくは、A配列のみまたはT配列のみを含む配列が除外される。「ハイブリダイズ可能なポリヌクレオチド」とは、上記ハイブリダイズ条件下で別のポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドをいう。ハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドとして具体的には、本発明で具体的に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするDNAの塩基配列と少なくとも60%以上の相同性を有するポリヌクレオチド、好ましくは80%以上の相同性を有するポリヌクレオチド、さらに好ましくは95%以上の相同性を有するポリヌクレオチドを挙げることができる。
本明細書において「高度にストリンジェントな条件」は、核酸配列において高度の相補性を有するDNA鎖のハイブリダイゼーションを可能にし、そしてミスマッチを有意に有するDNAのハイブリダイゼーションを除外するように設計された条件をいう。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、主に、温度、イオン強度、およびホルムアミドのような変性剤の条件によって決定される。このようなハイブリダイゼーションおよび洗浄に関する「高度にストリンジェントな条件」の例は、0.0015M 塩化ナトリウム、0.0015M クエン酸ナトリウム、65〜68℃、または0.015M 塩化ナトリウム、0.0015M クエン酸ナトリウム、および50% ホルムアミド、42℃である。このような高度にストリンジェントな条件については、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory(Cold Spring Harbor,N,Y.1989);およびAnderson et al.、Nucleic Acid Hybridization:a Practical approach、IV、IRL Press Limited(Oxford,England).Limited,Oxford,Englandを参照のこと。必要により、よりストリンジェントな条件(例えば、より高い温度、より低いイオン強度、より高いホルムアミド、または他の変性剤)を、使用してもよい。他の薬剤が、非特異的なハイブリダイゼーションおよび/またはバックグラウンドのハイブリダイゼーションを減少する目的で、ハイブリダイゼーション緩衝液および洗浄緩衝液に含まれ得る。そのような他の薬剤の例としては、0.1%ウシ血清アルブミン、0.1%ポリビニルピロリドン、0.1%ピロリン酸ナトリウム、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(NaDodSOまたはSDS)、Ficoll、Denhardt溶液、超音波処理されたサケ精子DNA(または別の非相補的DNA)および硫酸デキストランであるが、他の適切な薬剤もまた、使用され得る。これらの添加物の濃度および型は、ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーに実質的に影響を与えることなく変更され得る。ハイブリダイゼーション実験は、通常、pH6.8〜7.4で実施されるが;代表的なイオン強度条件において、ハイブリダイゼーションの速度は、ほとんどpH独立である。Anderson et al.、Nucleic Acid Hybridization:a Practical Approach、第4章、IRL Press Limited(Oxford,England)を参照のこと。
DNA二重鎖の安定性に影響を与える因子としては、塩基の組成、長さおよび塩基対不一致の程度が挙げられる。ハイブリダイゼーション条件は、当業者によって調整され得、これらの変数を適用させ、そして異なる配列関連性のDNAがハイブリッドを形成するのを可能にする。完全に一致したDNA二重鎖の融解温度は、以下の式によって概算され得る。
Tm(℃)=81.5+16.6(log[Na])+0.41(%G+C)−600/N−0.72(%ホルムアミド)
ここで、Nは、形成される二重鎖の長さであり、[Na]は、ハイブリダイゼーション溶液または洗浄溶液中のナトリウムイオンのモル濃度であり、%G+Cは、ハイブリッド中の(グアニン+シトシン)塩基のパーセンテージである。不完全に一致したハイブリッドに関して、融解温度は、各1%不一致(ミスマッチ)に対して約1℃ずつ減少する。
本明細書において「中程度にストリンジェントな条件」とは、「高度にストリンジェントな条件」下で生じ得るよりも高い程度の塩基対不一致を有するDNA二重鎖が、形成し得る条件をいう。代表的な「中程度にストリンジェントな条件」の例は、0.015M 塩化ナトリウム、0.0015M クエン酸ナトリウム、50〜65℃、または0.015M 塩化ナトリウム、0.0015M クエン酸ナトリウム、および20%ホルムアミド、37〜50℃である。例として、0.015M ナトリウムイオン中、50℃の「中程度にストリンジェントな」条件は、約21%の不一致を許容する。
本明細書において「高度」にストリンジェントな条件と「中程度」にストリンジェントな条件との間に完全な区別は存在しないことがあり得ることが、当業者によって理解される。例えば、0.015M ナトリウムイオン(ホルムアミドなし)において、完全に一致した長いDNAの融解温度は、約71℃である。65℃(同じイオン強度)での洗浄において、これは、約6%不一致を許容にする。より離れた関連する配列を捕獲するために、当業者は、単に温度を低下させ得るか、またはイオン強度を上昇し得る。
約20ntまでのオリゴヌクレオチドプローブについて、1M NaClにおける融解温度の適切な概算は、
Tm=(1つのA−T塩基につき2℃)+(1つのG−C塩基対につき4℃)
によって提供される。なお、6×クエン酸ナトリウム塩(SSC)におけるナトリウムイオン濃度は、1Mである(Suggsら、Developmental Biology Using Purified Genes、683頁、BrownおよびFox(編)(1981)を参照のこと)。
本発明において使用されるタンパク質をコードする天然の核酸は、例えば、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23などに示される核酸配列の一部を含むPCRプライマーおよびハイブリダイゼーションプローブを有するcDNAライブラリーから容易に分離される。好ましい本発明の核酸は、本質的に1%ウシ血清アルブミン(BSA);500mM リン酸ナトリウム(NaPO);1mM EDTA;42℃の温度で 7% SDS を含むハイブリダイゼーション緩衝液、および本質的に2×SSC(600mM NaCl;60mM クエン酸ナトリウム);50℃の0.1% SDSを含む洗浄緩衝液によって定義される低ストリンジェント条件下、さらに好ましくは本質的に50℃の温度での1%ウシ血清アルブミン(BSA);500mM リン酸ナトリウム(NaPO4);15%ホルムアミド;1mM EDTA; 7% SDS を含むハイブリダイゼーション緩衝液、および本質的に50℃の1×SSC(300mM NaCl;30mM クエン酸ナトリウム);1% SDSを含む洗浄緩衝液によって定義される低ストリンジェント条件下、最も好ましくは本質的に50℃の温度での1%ウシ血清アルブミン(BSA);200mM リン酸ナトリウム(NaPO);15%ホルムアミド;1mM EDTA;7%SDSを含むハイブリダイゼーション緩衝液、および本質的に65℃の0.5×SSC(150mM NaCl;15mM クエン酸ナトリウム);0.1% SDSを含む洗浄緩衝液によって定義される低ストリンジェント条件下に配列番号配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23などに示す配列の1つまたはその一部とハイブリダイズし得る。
本明細書において、「検索」とは、電子的にまたは生物学的あるいは他の方法により、ある核酸塩基配列を利用して、特定の機能および/または性質を有する他の核酸塩基配列を見出すことをいう。電子的な検索としては、BLAST(Altschul et al.,J.Mol.Biol.215:403−410(1990))、FASTA(Pearson & Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 85:2444−2448(1988))、Smith and Waterman法(Smith and Waterman,J.Mol.Biol.147:195−197(1981))、およびNeedleman and Wunsch法(Needleman and Wunsch,J.Mol.Biol.48:443−453(1970))などが挙げられるがそれらに限定されない。生物学的な検索としては、ストリンジェントハイブリダイゼーション、ゲノムDNAをナイロンメンブレン等に貼り付けたマクロアレイまたはガラス板に貼り付けたマイクロアレイ(マイクロアレイアッセイ)、PCRおよび in situハイブリダイゼーションなどが挙げられるがそれらに限定されない。本明細書において、Fn1には、このような電子的検索、生物学的検索によって同定された対応遺伝子も含まれるべきであることが意図される。
本明細書において物質の細胞への「導入」とは、その物質が、細胞膜の内部へ進入することをいう。内部に導入されたかどうかは、例えば、その物質そのものを標識(例えば、蛍光標識、化学発光標識、燐光、放射能などを利用する)しその標識を検出することによるか、あるいは、その物質に起因する細胞内の変化(例えば、遺伝子発現、シグナル伝達、細胞内レセプターへの結合による事象、代謝変化など)を物理学的(例えば、目視)、化学的(分泌物の測定)、生化学的、生物学的に測定することによって判定することができる。従って、そのような「導入」には、単なるタンパク質、核酸などの物質の細胞内への移入の他、通常遺伝子操作とも呼ばれる、トランスフェクション、形質転換、形質導入などの操作も包含される。
本明細書において「外来物質」とは、細胞内への導入が企図される物質をいう。本発明が企図する外来物質は、通常の条件下では、細胞内に導入されない物質をいう。従って、拡散または疎水性相互作用によって通常の条件下で細胞に導入されることができるような物質は、本発明の重要な局面では対象外となる。通常の条件下で細胞内に導入されない標的物質としては、例えば、タンパク質(ポリペプチド)、RNA、DNA、糖(特に多糖)、およびそれら同士の複合分子(例えば、糖タンパク質、PNAなど)またはそれらと別の分子との複合分子(例えば、糖脂質)、ウィルスベクター、他の化合物が挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において「相互作用」とは、2つの物体について言及するとき、その2つの物体が相互に力を及ぼしあうことをいう。そのような相互作用としては、例えば、共有結合、水素結合、ファンデルワールス力、イオン性相互作用、非イオン性相互作用、疎水性相互作用、静電的相互作用などが挙げられるがそれらに限定されない。好ましくは、相互作用は、水素結合、疎水性相互作用などの生体内で生じる通常の相互作用であり得る。
本明細書において「接触」とは、2つの物質(例えば、組成物および細胞)が互いに相互作用するに十分に至近距離に存在することをいう。
(遺伝子の改変)
本発明において使用される細胞接着分子は遺伝子産物の形態をとることが多いが、そのような遺伝子産物は、上述のようにその改変体であってもよいことが理解される。従って、本発明は、以下のような遺伝子改変の技術で生産された物質も使用することができる。
あるタンパク質分子において、配列に含まれるあるアミノ酸は、相互作用結合能力の明らかな低下または消失なしに、例えば、カチオン性領域または基質分子の結合部位のようなタンパク質構造において他のアミノ酸に置換され得る。あるタンパク質の生物学的機能を規定するのは、タンパク質の相互作用能力および性質である。従って、特定のアミノ酸の置換がアミノ酸配列において、またはそのDNAコード配列のレベルにおいて行われ得、置換後もなお、もとの性質を維持するタンパク質が生じ得る。従って、生物学的有用性の明らかな損失なしに、種々の改変が、本明細書において開示されたペプチドまたはこのペプチドをコードする対応するDNAにおいて行われ得る。
上記のような改変を設計する際に、アミノ酸の疎水性指数が考慮され得る。タンパク質における相互作用的な生物学的機能を与える際の疎水性アミノ酸指数の重要性は、一般に当該分野で認められている(Kyte.JおよびDoolittle,R.F.J.Mol.Biol.157(1):105−132,1982)。アミノ酸の疎水的性質は、生成したタンパク質の二次構造に寄与し、次いでそのタンパク質と他の分子(例えば、酵素、基質、レセプター、DNA、抗体、抗原など)との相互作用を規定する。各アミノ酸は、それらの疎水性および電荷の性質に基づく疎水性指数を割り当てられる。それらは:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(−0.4);スレオニン(−0.7);セリン(−0.8);トリプトファン(−0.9);チロシン(−1.3);プロリン(−1.6);ヒスチジン(−3.2);グルタミン酸(−3.5);グルタミン(−3.5);アスパラギン酸(−3.5);アスパラギン(−3.5);リジン(−3.9);およびアルギニン(−4.5))である。
あるアミノ酸を、同様の疎水性指数を有する他のアミノ酸により置換して、そして依然として同様の生物学的機能を有するタンパク質(例えば、酵素活性において等価なタンパク質)を生じさせ得ることが当該分野で周知である。このようなアミノ酸置換において、疎水性指数が±2以内であることが好ましく、±1以内であることがより好ましく、および±0.5以内であることがさらにより好ましい。疎水性に基づくこのようなアミノ酸の置換は効率的であることが当該分野において理解される。米国特許第4,554,101号に記載されるように、以下の親水性指数がアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0);アスパラギン酸(+3.0±1);グルタミン酸(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);スレオニン(−0.4);プロリン(−0.5±1);アラニン(−0.5);ヒスチジン(−0.5);システイン(−1.0);メチオニン(−1.3);バリン(−1.5);ロイシン(−1.8);イソロイシン(−1.8);チロシン(−2.3);フェニルアラニン(−2.5);およびトリプトファン(−3.4)。アミノ酸が同様の親水性指数を有しかつ依然として生物学的等価体を与え得る別のものに置換され得ることが理解される。このようなアミノ酸置換において、親水性指数が±2以内であることが好ましく、±1以内であることがより好ましく、および±0.5以内であることがさらにより好ましい。
本発明において、「保存的置換」とは、アミノ酸置換において、元のアミノ酸と置換されるアミノ酸との親水性指数または/および疎水性指数が上記のように類似している置換をいう。保存的置換の例としては、例えば、親水性指数または疎水性指数が、±2以内のもの同士、好ましくは±1以内のもの同士、より好ましくは±0.5以内のもの同士のものが挙げられるがそれらに限定されない。従って、保存的置換の例は、当業者に周知であり、例えば、次の各グループ内での置換:アルギニンおよびリジン;グルタミン酸およびアスパラギン酸;セリンおよびスレオニン;グルタミンおよびアスパラギン;ならびにバリン、ロイシン、およびイソロイシン、などが挙げられるがこれらに限定されない。
本明細書において、「改変体」とは、もとのポリペプチドまたはポリヌクレオチドなどの物質に対して、一部が変更されているものをいう。そのような改変体としては、置換改変体、付加改変体、欠失改変体、短縮(truncated)改変体、対立遺伝子変異体などが挙げられる。対立遺伝子(allele)とは、同一遺伝子座に属し、互いに区別される遺伝的改変体のことをいう。従って、「対立遺伝子変異体」とは、ある遺伝子に対して、対立遺伝子の関係にある改変体をいう。そのような対立遺伝子変異体は、通常その対応する対立遺伝子と同一または非常に類似性の高い配列を有し、通常はほぼ同一の生物学的活性を有するが、まれに異なる生物学的活性を有することもある。「種相同体またはホモログ(homolog)」とは、ある種の中で、ある遺伝子とアミノ酸レベルまたはヌクレオチドレベルで、相同性(好ましくは、60%以上の相同性、より好ましくは、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上の相同性)を有するものをいう。そのような種相同体を取得する方法は、本明細書の記載から明らかである。「オルソログ(ortholog)」とは、オルソロガス遺伝子(orthologous gene)ともいい、二つの遺伝子がある共通祖先からの種分化に由来する遺伝子をいう。例えば、多重遺伝子構造をもつヘモグロビン遺伝子ファミリーを例にとると、ヒトおよびマウスのαヘモグロビン遺伝子はオルソログであるが,ヒトのαヘモグロビン遺伝子およびβヘモグロビン遺伝子はパラログ(遺伝子重複で生じた遺伝子)である。オルソログは、分子系統樹の推定に有用である。オルソログは、通常別の種においてもとの種と同様の機能を果たしていることがあり得ることから、本発明のオルソログもまた、本発明において有用であり得る。
「保存的(に改変された)改変体」は、アミノ酸配列および核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関して、保存的に改変された改変体とは、同一のまたは本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸をいい、核酸がアミノ酸配列をコードしない場合には、本質的に同一な配列をいう。遺伝コードの縮重のため、多数の機能的に同一な核酸が任意の所定のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCG、およびGCUはすべて、アミノ酸アラニンをコードする。したがって、アラニンがコドンにより特定される全ての位置で、そのコドンは、コードされたポリペプチドを変更することなく、記載された対応するコドンの任意のものに変更され得る。このような核酸の変動は、保存的に改変された変異の1つの種である「サイレント改変(変異)」である。ポリペプチドをコードする本明細書中のすべての核酸配列はまた、その核酸の可能なすべてのサイレント変異を記載する。当該分野において、核酸中の各コドン(通常メチオニンのための唯一のコドンであるAUG、および通常トリプトファンのための唯一のコドンであるTGGを除く)が、機能的に同一な分子を産生するために改変され得ることが理解される。したがって、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変異は、記載された各配列において暗黙に含まれる。好ましくは、そのような改変は、ポリペプチドの高次構造に多大な影響を与えるアミノ酸であるシステインの置換を回避するようになされ得る。このような塩基配列の改変法としては、制限酵素などによる切断、DNAポリメラーゼ、Klenowフラグメント、DNAリガーゼなどによる処理等による連結等の処理、合成オリゴヌクレオチドなどを用いた部位特異的塩基置換法(特定部位指向突然変異法;Mark Zoller and Michael Smith,Methods in Enzymology,100,468−500(1983))が挙げられるが、この他にも通常分子生物学の分野で用いられる方法によって改変を行うこともできる。
本明細書中において、機能的に等価なポリペプチドを作製するために、アミノ酸の置換のほかに、アミノ酸の付加、欠失、または修飾もまた行うことができる。アミノ酸の置換とは、もとのペプチドを1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸で置換することをいう。アミノ酸の付加とは、もとのペプチド鎖に1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸を付加することをいう。アミノ酸の欠失とは、もとのペプチドから1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸を欠失させることをいう。アミノ酸修飾は、アミド化、カルボキシル化、硫酸化、ハロゲン化、アルキル化、グリコシル化、リン酸化、水酸化、アシル化(例えば、アセチル化)などを含むが、これらに限定されない。置換、または付加されるアミノ酸は、天然のアミノ酸であってもよく、非天然のアミノ酸、またはアミノ酸アナログでもよい。天然のアミノ酸が好ましい。
本明細書において使用される用語「ペプチドアナログ」または「ペプチド誘導体」とは、ペプチドとは異なる化合物であるが、ペプチドと少なくとも1つの化学的機能または生物学的機能が等価であるものをいう。したがって、ペプチドアナログには、もとのペプチドに対して、1つ以上のアミノ酸アナログまたはアミノ酸誘導体が付加または置換されているものが含まれる。ペプチドアナログは、その機能が、もとのペプチドの機能(例えば、pKa値が類似していること、官能基が類似していること、他の分子との結合様式が類似していること、水溶性が類似していることなど)と実質的に同様であるように、このような付加または置換がされている。そのようなペプチドアナログは、当該分野において周知の技術を用いて作製することができる。したがって、ペプチドアナログは、アミノ酸アナログを含むポリマーであり得る。
本明細書において「ポリヌクレオチドアナログ」、「核酸アナログ」は、ポリヌクレオチドまたは核酸とは異なる化合物であるが、ポリヌクレオチドまたは核酸と少なくとも1つの化学的機能または生物学的機能が等価であるものをいう。したがって、ポリヌクレオチドアナログまたは核酸アナログには、もとのペプチドに対して、1つ以上のヌクレオチドアナログまたはヌクレオチド誘導体が付加または置換されているものが含まれる。
本明細書において使用される核酸分子は、発現されるポリペプチドが天然型のポリペプチドと実質的に同一の活性を有する限り、上述のようにその核酸の配列の一部が欠失または他の塩基により置換されていてもよく、あるいは他の核酸配列が一部挿入されていてもよい。あるいは、5’末端および/または3’末端に他の核酸が結合していてもよい。また、ポリペプチドをコードする遺伝子をストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、そのポリペプチドと実質的に同一の機能を有するポリペプチドをコードする核酸分子でもよい。このような遺伝子は、当該分野において公知であり、本発明において利用することができる。
このような核酸は、周知のPCR法により得ることができ、化学的に合成することもできる。これらの方法に、例えば、部位特異的変位誘発法、ハイブリダイゼーション法などを組み合わせてもよい。
本明細書において、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの「置換、付加または欠失」とは、もとのポリペプチドまたはポリヌクレオチドに対して、それぞれアミノ酸もしくはその代替物、またはヌクレオチドもしくはその代替物が、置き換わること、付け加わることまたは取り除かれることをいう。このような置換、付加または欠失の技術は、当該分野において周知であり、そのような技術の例としては、部位特異的変異誘発技術などが挙げられる。置換、付加または欠失は、1つ以上であれば任意の数でよく、そのような数は、その置換、付加または欠失を有する改変体において目的とする機能(例えば、ホルモン、サイトカインの情報伝達機能など)が保持される限り、多くすることができる。例えば、そのような数は、1または数個であり得、そして好ましくは、全体の長さの20%以内、10%以内、または100個以下、50個以下、25個以下などであり得る。
本明細書において「単離された」生物学的因子(例えば、核酸またはタンパク質など)とは、その生物学的因子が天然に存在する生物体の細胞内の他の生物学的因子(例えば、核酸である場合、核酸以外の因子および目的とする核酸以外の核酸配列を含む核酸;タンパク質である場合、タンパク質以外の因子および目的とするタンパク質以外のアミノ酸配列を含むタンパク質など)から実質的に分離または精製されたものをいう。「単離された」核酸およびタンパク質には、標準的な精製方法によって精製された核酸およびタンパク質が含まれる。したがって、単離された核酸およびタンパク質は、化学的に合成した核酸およびタンパク質を包含する。
本明細書において「精製された」生物学的因子(例えば、核酸またはタンパク質など)とは、その生物学的因子に天然に随伴する因子の少なくとも一部が除去されたものをいう。したがって、通常、精製された生物学的因子におけるその生物学的因子の純度は、その生物学的因子が通常存在する状態よりも高い(すなわち濃縮されている)。
本明細書中で使用される用語「精製された」および「単離された」は、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも85重量%、よりさらに好ましくは少なくとも95重量%、そして最も好ましくは少なくとも98重量%の、同型の生物学的因子が存在することを意味する。
(遺伝子操作)
本明細書において遺伝子操作について言及する場合、「ベクター」または「組み換えベクター」とは、目的のポリヌクレオチド配列を目的の細胞へと移入させることができるベクターをいう。そのようなベクターとしては、原核細胞、酵母、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、動物個体および植物個体などの宿主細胞において自立複製が可能、または染色体中への組込みが可能で、本発明のポリヌクレオチドの転写に適した位置にプロモーターを含有しているものが例示される。ベクターのうち、クローニングに適したベクターを「クローニングベクター」という。そのようなクローニングベクターは通常、制限酵素部位を複数含むマルチプルクローニング部位を含む。そのような制限酵素部位およびマルチプルクローニング部位は、当該分野において周知であり、当業者は、目的に合わせて適宜選択して使用することができる。そのような技術は、本明細書に記載される文献(例えば、Sambrookら、前出)に記載されている。
本明細書において「発現ベクター」とは、構造遺伝子およびその発現を調節するプロモーターに加えて種々の調節エレメントが宿主の細胞中で作動し得る状態で連結されている核酸配列をいう。調節エレメントは、好ましくは、ターミネーター、薬剤耐性遺伝子のような選択マーカーおよび、エンハンサーを含み得る。生物(例えば、動物)の発現ベクターのタイプおよび使用される調節エレメントの種類が、宿主細胞に応じて変わり得ることは、当業者に周知の事項である。
原核細胞に対する組換えベクターとしては、pcDNA3(+)、pBluescript−SK(+/−)、pGEM−T、pEF−BOS、pEGFP、pHAT、pUC18、pFT−DESTTM42GATEWAY(Invitrogen)などが例示される。
動物細胞に対する組換えベクターとしては、pcDNAI/Amp、pcDNAI、pCDM8(いずれもフナコシより市販)、pAGE107[特開平3−229(Invitrogen)、pAGE103[J.Biochem.,101,1307(1987)]、pAMo、pAMoA[J.Biol.Chem.,268,22782−22787(1993)]、マウス幹細胞ウイルス(Murine Stem Cell Virus)(MSCV)に基づいたレトロウイルス型発現ベクター、pEF−BOS、pEGFPなどが例示される。
植物細胞に対する組換えベクターとしては、pPCVICEn4HPT、pCGN1548、pCGN1549、pBI221、pBI121などが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において「ターミネーター」とは、通常遺伝子のタンパク質をコードする領域の下流に位置し、DNAがmRNAに転写される際の転写の終結、ポリA配列の付加に関与する配列をいう。ターミネーターは、mRNAの安定性に関与して遺伝子の発現量に影響を及ぼすことが知られている。
本明細書において「プロモーター」とは、遺伝子の転写の開始部位を決定し、またその頻度を直接的に調節するDNA上の領域をいい、通常RNAポリメラーゼが結合して転写を始める塩基配列である。したがって、本明細書においてある遺伝子のプロモーターの働きを有する部分を「プロモーター部分」という。プロモーターの領域は、通常、推定タンパク質コード領域の第1エキソンの上流約2kbp以内の領域であることが多いので、DNA解析用ソフトウエアを用いてゲノム塩基配列中のタンパク質コード領域を予測すれば、プロモータ領域を推定することはできる。推定プロモーター領域は、構造遺伝子ごとに変動するが、通常構造遺伝子の上流にあるが、これらに限定されず、構造遺伝子の下流にもあり得る。好ましくは、推定プロモーター領域は、第一エキソン翻訳開始点から上流約2kbp以内に存在する。
本明細書において「エンハンサー」とは、目的遺伝子の発現効率を高めるために用いられる配列をいう。そのようなエンハンサーは当該分野において周知である。エンハンサーは複数個用いられ得るが1個用いられてもよいし、用いなくともよい。
本明細書において「サイレンサー」とは、遺伝子発現を抑制し静止する機能を有する配列をいう。本発明では、サイレンサーとしてはその機能を有する限り、どのようなものを用いてもよく、サイレンサーを用いなくてもよい。
本明細書において「作動可能に連結された(る)」とは、所望の配列の発現(作動)がある転写翻訳調節配列(例えば、プロモーター、エンハンサー、サイレンサーなど)または翻訳調節配列の制御下に配置されることをいう。プロモーターが遺伝子に作動可能に連結されるためには、通常、その遺伝子のすぐ上流にプロモーターが配置されるが、必ずしも隣接して配置される必要はない。
本明細書において、核酸分子を細胞に導入する技術は、どのような技術でもよく、例えば、形質転換、形質導入、トランスフェクションなどが挙げられる。 そのような核酸分子の導入技術は、当該分野において周知であり、かつ、慣用されるものであり、例えば、Ausubel F.A.ら編(1988)、Current Protocols in Molecular Biology、Wiley、New York、NY;Sambrook Jら(1987)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Ed.およびその第三版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY、別冊実験医学「遺伝子導入&発現解析実験法」羊土社、1997などに記載される。遺伝子の導入は、ノーザンブロット、ウェスタンブロット分析のような本明細書に記載される方法または他の周知慣用技術を用いて確認することができる。
また、ベクターの導入方法としては、細胞にDNAを導入する上述のような方法であればいずれも用いることができ、例えば、トランスフェクション、形質導入、形質転換など(例えば、リン酸カルシウム法、リポソーム法、DEAEデキストラン法、エレクトロポレーション法、パーティクルガン(遺伝子銃)を用いる方法など)、リポフェクション法、スフェロプラスト法[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84,1929(1978)]、酢酸リチウム法[J.Bacteriol.,153,163(1983)]、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,75,1929(1978)記載の方法が挙げられる。
本明細書において「外来物質導入試薬」とは、外来物質の導入効率を促進するために使用されている物質をいう。そのような試薬としては、例えば、カチオン性高分子、カチオン性脂質、ポリアミン系試薬、ポリイミン系試薬、リン酸カルシウムなどが挙げられるがそれらに限定されない。このような試薬は、通常、核酸の導入効率を上昇させることから、「遺伝子導入試薬」を包含する。
本明細書において「遺伝子導入試薬」とは、核酸(通常遺伝子をコードするが、それに限定されない)の導入方法において、導入効率を促進するために用いられる試薬をいう。そのような遺伝子導入試薬としては、例えば、カチオン性高分子、カチオン性脂質、ポリアミン系試薬、ポリイミン系試薬、リン酸カルシウムなどが挙げられるがそれらに限定されない。トランスフェクションの際に利用される試薬の具体例としては、種々なソースから市販されている試薬が挙げられ、例えば、Effectene Transfection Reagent(cat.no.301425,Qiagen,CA),TransFastTM Transfection Reagent(E2431,Promega,WI),TfxTM−20 Reagent(E2391,Promega,WI),SuperFect Transfection Reagent(301305,Qiagen,CA),PolyFect Transfection Reagent(301105,Qiagen,CA),LipofectAMINE 2000 Reagent(11668-019,Invitrogen corporation,CA),JetPEI(×4)conc.(101-30,Polyplus-transfection,France)およびExGen 500(R0511,Fermentas Inc.,MD)などが挙げられるがそれらに限定されない。
外来物質導入効率または遺伝子導入効率は、単位面積(例えば、1mmなど)あたりの導入外来物質(導入遺伝子)(例えば、蛍光タンパク質GFPなど)の導入(発現)細胞数、または総信号(蛍光タンパク質の場合は、蛍光)量を測定することによって算定することができる。
本明細書において「形質転換体」とは、形質転換によって作製された細胞などの生命体の全部または一部(組織など)をいう。形質転換体としては、原核生物、酵母、動物、植物、昆虫などの細胞などの生命体の全部または一部(組織など)が例示される。形質転換体は、その対象に依存して、形質転換細胞、形質転換組織、形質転換宿主などともいわれる。本発明において用いられる細胞は、形質転換体であってもよい。
本発明において遺伝子操作などにおいて原核生物細胞が使用される場合、原核生物細胞としては、Escherichia属、Serratia属、Bacillus属、Brevibacterium属、Corynebacterium属、Microbacterium属、Pseudomonas属などに属する原核生物細胞、例えば、Escherichia coli XL1−Blue、Escherichia coli XL2−Blue、Escherichia coli DH1が例示される。あるいは、本発明では、天然物から分離した細胞も使用することができる。
本明細書において遺伝子操作などにおいて使用され得る動物細胞としては、マウス・ミエローマ細胞、ラット・ミエローマ細胞、マウス・ハイブリドーマ細胞、チャイニーズ・ハムスターの細胞であるCHO細胞、BHK細胞、アフリカミドリザル腎臓細胞、ヒト白血病細胞、HBT5637(特開昭63−299)、ヒト結腸癌細胞株などを挙げることができる。マウス・ミエローマ細胞としては、ps20、NSOなど、ラット・ミエローマ細胞としてはYB2/0など、ヒト胎児腎臓細胞としてはHEK293(ATCC:CRL−1573)など、ヒト白血病細胞としてはBALL−1など、アフリカミドリザル腎臓細胞としてはCOS−1、COS−7、ヒト結腸癌細胞株としてはHCT−15、ヒト神経芽細胞腫SK−N−SH、SK−N−SH−5Y、マウス神経芽細胞腫Neuro2Aなどが例示される。あるいは、本発明では、初代培養細胞も使用することができる。
本明細書において遺伝子操作などにおいて使用され得る植物細胞としては、カルスまたはその一部および懸濁培養細胞、ナス科、イネ科、アブラナ科、バラ科、マメ科、ウリ科、シソ科、ユリ科、アカザ科、セリ科などの植物の細胞が挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において遺伝子発現(たとえば、mRNA発現、ポリペプチド発現)の「検出」または「定量」は、例えば、mRNAの測定および免疫学的測定方法を含む適切な方法を用いて達成され得る。分子生物学的測定方法としては、例えば、ノーザンブロット法、ドットブロット法またはPCR法などが例示される。免疫学的測定方法としては、例えば、方法としては、マイクロタイタープレートを用いるELISA法、RIA法、蛍光抗体法、ウェスタンブロット法、免疫組織染色法などが例示される。また、定量方法としては、ELISA法またはRIA法などが例示される。アレイ(例えば、DNAアレイ、プロテインアレイ)を用いた遺伝子解析方法によっても行われ得る。DNAアレイについては、(秀潤社編、細胞工学別冊「DNAマイクロアレイと最新PCR法」)に広く概説されている。プロテインアレイについては、Nat Genet.2002 Dec;32 Suppl:526−32に詳述されている。遺伝子発現の分析法としては、上述に加えて、RT−PCR、RACE法、SSCP法、免疫沈降法、two−hybridシステム、インビトロ翻訳などが挙げられるがそれらに限定されない。そのようなさらなる分析方法は、例えば、ゲノム解析実験法・中村祐輔ラボ・マニュアル、編集・中村祐輔 羊土社(2002)などに記載されており、本明細書においてそれらの記載はすべて参考として援用される。
本明細書において遺伝子、ポリヌクレオチド、ポリペプチドなど遺伝子産物の「発現」とは、その遺伝子などがインビボで一定の作用を受けて、別の形態になることをいう。好ましくは、遺伝子、ポリヌクレオチドなどが、転写および翻訳されて、ポリペプチドの形態になることをいうが、転写されてmRNAが作製されることもまた発現の一形態であり得る。より好ましくは、そのようなポリペプチドの形態は、翻訳後プロセシングを受けたものであり得る。
「発現量」とは、目的の細胞などにおいて、ポリペプチドまたはmRNAが発現される量をいう。そのような発現量としては、本発明の抗体を用いてELISA法、RIA法、蛍光抗体法、ウェスタンブロット法、免疫組織染色法などの免疫学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価される本発明ポリペプチドのタンパク質レベルでの発現量、またはノーザンブロット法、ドットブロット法、PCR法などの分子生物学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価される本発明のポリペプチドのmRNAレベルでの発現量が挙げられる。「発現量の変化」とは、上記免疫学的測定方法または分子生物学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価される本発明のポリペプチドのタンパク質レベルまたはmRNAレベルでの発現量が増加あるいは減少することを意味する。
従って、本明細書において遺伝子、ポリヌクレオチド、ポリペプチドなどの「発現」または「発現量」の「減少」とは、本発明の因子を作用させたときに、作用させないときよりも、発現の量が有意に減少することをいう。好ましくは、発現の減少は、ポリペプチドの発現量の減少を含む。本明細書において遺伝子、ポリヌクレオチド、ポリペプチドなどの「発現」または「発現量」の「増加」とは、細胞内に遺伝子発現に関連する因子(例えば、発現されるべき遺伝子またはそれを調節する因子)を導入したときに、作用させないときよりも、発現の量が有意に増加することをいう。好ましくは、発現の増加は、ポリペプチドの発現量の増加を含む。本明細書において遺伝子の「発現」の「誘導」とは、ある細胞にある因子を作用させてその遺伝子の発現量を増加させることをいう。したがって、発現の誘導は、まったくその遺伝子の発現が見られなかった場合にその遺伝子が発現するようにすること、およびすでにその遺伝子の発現が見られていた場合にその遺伝子の発現が増大することを包含する。
本明細書において、遺伝子が「特異的に発現する」とは、その遺伝子が、植物の特定の部位または時期において他の部位または時期とは異なる(好ましくは高い)レベルで発現されることをいう。特異的に発現するとは、ある部位(特異的部位)にのみ発現してもよく、それ以外の部位においても発現していてもよい。好ましくは特異的に発現するとは、ある部位においてのみ発現することをいう。
本明細書において「生物学的活性」とは、ある因子(例えば、ポリペプチドまたはタンパク質)が、生体内において有し得る活性のことをいい、種々の機能(例えば、転写促進活性)を発揮する活性が包含される。例えば、コラーゲンがそのリガンドと相互作用する場合、その生物学的活性は、結合体の形成または他の生物学的変化を包含する。別の好ましい実施形態では、そのような生物学的活性は、細胞接着活性、ヘパリン結合活性、コラーゲン結合活性などであり得る。細胞接着活性は、細胞播種後に細胞の固相への接着速度を測定し、接着活性として取り扱うことによって測定することができる。ヘパリン結合活性は、ヘパリン固定化カラム等のアフィニティークロマトグラフィーを行い、これに結合するものとして確認できるものによって測定することができる。コラーゲン結合活性は、コラーゲン固定化カラム等のアフィニティークロマトグラフィーを行い、これに結合するものとして確認できるものによって測定することができる。例えば、ある因子が酵素である場合、その生物学的活性は、その酵素活性を包含する。別の例では、ある因子がリガンドである場合、そのリガンドが対応するレセプターへの結合を包含する。そのような生物学的活性は、当該分野において周知の技術によって測定することができる(Molecular Cloning、Current Protocols(本明細書において引用)などを参照)。
本明細書において「キット」とは、通常2つ以上の区画に分けて、提供されるべき部分(例えば、試薬、粒子など)が提供されるユニットをいう。混合されて提供されるべきでなく、使用直前に混合して使用することが好ましいような組成物の提供を目的とするときに、このキットの形態は好ましい。そのようなキットは、好ましくは、提供される部分(例えば、試薬、粒子など)をどのように処理すべきかを記載する説明書を備えていることが有利である。
(ポリペプチドの製造方法)
本発明において使用されるポリペプチドは、そのポリペプチドをコードするDNAを組み込んだ組換え体ベクターを保有する微生物、動物細胞などに由来する形質転換体を、通常の培養方法に従って培養し、このポリペプチドを生成蓄積させ、その培養物よりその本発明のポリペプチドを採取することにより、製造することができる。
形質転換体を培地に培養する方法は、宿主の培養に用いられる通常の方法に従って行うことができる。大腸菌等の原核生物あるいは酵母等の真核生物を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、本発明の生物が資化し得る炭素源(例えば、グルコース、フラクトース、スクロース、これらを含有する糖蜜、デンプンあるいはデンプン加水分解物等の炭水化物、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、エタノール、プロパノール等のアルコール類など)、窒素源(例えば、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の各種無機酸または有機酸のアンモニウム塩、その他含窒素物質、ならびに、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスチープリカー、カゼイン加水分解物、大豆粕および大豆粕加水分解物、各種発酵菌体およびその消化物等など)、無機塩類(例えば、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウム等など)等を含有し、形質転換体の培養を効率的に行える培地であれば天然培地、合成培地(例えば、RPMI1640培地[The Journal of the American Medical Association,199,519(1967)]、EagleのMEM培地[Science,122,501(1952)]、DMEM培地[Virology,8,396(1959)]、199培地[Proceedings of the Society for the Biological Medicine,73,1(1950)]またはこれら培地にウシ胎児血清等を添加した培地等)のいずれを用いてもよい。培養は、振盪培養または深部通気攪拌培養等の好気的条件下で行うことが好ましいがそれに限定されない。培養温度は15〜40℃がよく、培養時間は、通常5時間〜7日間である。培養中pHは、3.0〜9.0に保持する。pHの調整は、無機あるいは有機の酸、アルカリ溶液、尿素、炭酸カルシウム、アンモニア等を用いて行う。また培養中必要に応じて、アンピシリンまたはテトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
本発明において使用されるポリペプチドをコードする核酸配列で形質転換された形質転換体の培養物から、そのポリペプチドを単離または精製するためには、当該分野で周知慣用の通常のポリペプチド(例えば、酵素)の単離または精製法を用いることができる。例えば、本発明のポリペプチドが本発明のポリペプチド製造用形質転換体の細胞外に本発明のポリペプチドが分泌される場合には、その培養物を遠心分離等の手法により処理し、可溶性画分を取得する。その可溶性画分から、溶媒抽出法、硫安等による塩析法脱塩法、有機溶媒による沈澱法、ジエチルアミノエチル(DEAE)−Sepharose(Pharmacia)、DIAION HPA−75(三菱化学)等樹脂を用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、S−Sepharose FF(Pharmacia)等の樹脂を用いた陽イオン交換クロマトグラフィー法、Butyl−Sepharose、Phenyl−Sepharose等の樹脂を用いた疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティークロマトグラフィー法、クロマトフォーカシング法、等電点電気泳動等の電気泳動法等の手法を用い、精製標品を得ることができる。
本発明において使用されるポリペプチドが形質転換体の細胞内に溶解状態で蓄積する場合には、培養物を遠心分離することにより、培養物中の細胞を集め、その細胞を洗浄した後に、超音波破砕機、フレンチプレス、マントンガウリンホモジナイザー、ダイノミル等により細胞を破砕し、無細胞抽出液を得る。その無細胞抽出液を遠心分離することにより得られた上清から、溶媒抽出法、硫安等による塩析法脱塩法、有機溶媒による沈澱法、ジエチルアミノエチル(DEAE)−Sepharose、DIAION HPA−75等樹脂を用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、S−Sepharose FF等の樹脂を用いた陽イオン交換クロマトグラフィー法、Butyl−Sepharose、Phenyl−Sepharose等の樹脂を用いた疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティークロマトグラフィー法、クロマトフォーカシング法、等電点電気泳動等の電気泳動法等の手法を用いることによって、精製標品を得ることができる。
本発明において使用されるポリペプチドが細胞内に不溶体を形成して発現した場合は、同様に細胞を回収後破砕し、遠心分離を行うことにより得られた沈澱画分より、通常の方法により本発明のポリペプチドを回収後、そのポリペプチドの不溶体をポリペプチド変性剤で可溶化する。この可溶化液を、ポリペプチド変性剤を含まないあるいはポリペプチド変性剤の濃度がポリペプチドが変性しない程度に希薄な溶液に希釈、あるいは透析し、本発明のポリペプチドを正常な立体構造に構成させた後、上記と同様の単離精製法により精製標品を得ることができる。
また、通常のタンパク質の精製方法[例えば、J.Evan.Sadlerら:Methods in Enzymology,83,458]に準じて精製できる。また、本発明において使用されるポリペプチドが他のタンパク質との融合タンパク質として生産しても使用され得る場合、融合したタンパク質に親和性をもつ物質を用いたアフィニティークロマトグラフィーを利用して精製することもできる[山川彰夫,実験医学(Experimental Medicine),13,469−474(1995)]。あるいは、Loweらの方法[Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,86,8227−8231(1989)、GenesDevelop.,4,1288(1990)]に記載の方法に準じて、そのようなポリペプチドをプロテインAとの融合タンパク質として生産し、イムノグロブリンGを用いるアフィニティークロマトグラフィーにより精製することができる。また、本発明において使用されるポリペプチドをFLAGペプチドとの融合タンパク質として生産し、抗FLAG抗体を用いるアフィニティークロマトグラフィーにより精製することができる[Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,86,8227(1989)、Genes Develop.,4,1288(1990)]。
さらに、本発明のポリペプチド自身に対する抗体を用いたアフィニティークロマトグラフィーで精製することもできる。本発明のポリペプチドは、公知の方法[J.Biomolecular NMR,6,129−134、Science,242,1162−1164、J.Biochem.,110,166−168(1991)]に準じて、in vitro転写・翻訳系を用いてを生産することができる。
上記で取得されたポリペプチドのアミノ酸情報を基に、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t−ブチルオキシカルボニル法)等の化学合成法によっても本発明のポリペプチドを製造することができる。また、Advanced ChemTech、Applied Biosystems、Pharmacia Biotech、Protein Technology Instrument、Synthecell−Vega、PerSeptive、島津製作所等のペプチド合成機を利用し化学合成することもできる。
(細胞の分化誘導)
本明細書において「分化」とは、一般的には、1 つの系が 2 つ以上の質的に異なる系に分離することをいい、細胞、組織または臓器について用いられるとき、機能および/または形態が特殊化することをいう。分化に伴い、通常、多能性は減少または消失する。分化によって、例えば、表皮細胞、膵実質細胞、膵管細胞、肝細胞、血液細胞、心筋細胞、骨格筋細胞、骨芽細胞、骨格筋芽細胞、神経細胞、血管内皮細胞、色素細胞、平滑筋細胞、脂肪細胞、骨細胞、軟骨細胞などの形態学的に別の細胞に分化するか、あるいは、神経細胞のように樹状突起などが伸展または増殖してもよい。本発明において用いられる場合、分化誘導された分化細胞は、集団または組織の形態を採り得る。
本明細書において「分化誘導」および「分化促進」は、交換可能に用いられ、細胞について言及される場合、分化を誘導または促進することをいう。従って、分化誘導は、分化の速度が上昇することおよび分化がとまっていたり脱分化の方向にある細胞を分化の方向に向けることも含まれる。本明細書において「分化誘導する能力が保持される」とは、細胞に対して使用されるとき、核酸が導入され、好ましくはその核酸が発現される状態で、その細胞が分化因子に曝される場合に、分化が誘導され得る能力を有していることをいう。そのような能力は、分化因子を曝し、分化するかどうかを、種々の細胞マーカーまたは形態を観察することによって確認することができる。
本明細書において「分化因子」、「分化誘導因子」または「分化促進因子」は、交換可能に用いられ、分化細胞への分化を促進または誘導させる因子(例えば、化学物質、温度など)であれば、どのような因子であってもよい。そのような因子としては、例えば、種々の環境要因を挙げることができ、そのような因子としては、例えば、温度、湿度、pH、塩濃度、栄養、金属、ガス、有機溶媒、圧力、化学物質(例えば、ステロイド、抗生物質など)などまたはそれらの任意の組み合わせが挙げられるがそれらに限定されない。代表的な分化因子としては、細胞生理活性物質が挙げられるがそれらに限定されない。そのような因子のうち代表的なものとしては、DNA脱メチル化剤(5−アザシチジンなど)、ヒストン脱アセチル化剤(トリコスタチンなど)、核内レセプターリガンド(例えば、レチノイン酸(ATRA)、ビタミンD、T3など)、細胞増殖因子(アクチビン、インスリン様増殖因子(IGF)−1、線維芽細胞増殖因子(FGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、トランスフォーミング増殖因子(TGF)−β、神経成長因子(NGF)、骨形成タンパク質(BMP)2/4など)、サイトカイン(LIF、IL−2、IL−6など)、ヘキサメチレンビスアセトアミド、ジメチルアセトアミド、ジブチルcAMP、ジメチオルスルホキシド、ヨードデオキシウリジン、ヒドロキシル尿素、シトシンアラビノシド、マイトマイシンC、酪酸ナトリウム、アフィディコリン、フルオロデオキシウリジン、ポリブレン、セレンなどが挙げられるがそれらに限定されない。
具体的な分化因子としては、以下が挙げられる。これらの分化因子は、単独でまたは組み合わせて用いられ得る。
A)角膜:上皮増殖因子(EGF);
B)皮膚(ケラチノサイト):TGF−β、FGF−7(KGF:keratinocyte growth factor)、EGF
C)血管内皮:VEGF、FGF、アンギオポエチン(angiopoietin)
D)腎臓:LIF、BMP、FGF、GDNF
E)心臓:HGF、LIF、VEGF
F)肝臓:HGF、TGF−β、IL−6、EGF、VEGF
G)臍帯内皮:VEGF
H)腸管上皮:EGF、IGF−I、HGF、KGF、TGF−β、IL−11
I)神経:神経成長因子(NGF)、BDNF(脳由来神経栄養因子)、GDNF(グリア細胞由来神経栄養因子)、ニューロトロフィン(neurotrophin)、IL−6、TGF−β、TNF
J)グリア細胞:TGF−β、TNF−α、EGF、LIF、IL−6
K)末梢神経細胞:bFGF、LIF、TGF−β、IL−6、VEGF
L)肺(肺胞上皮):TGF−β、IL−13、IL−1β、KGF、HGF
M)胎盤:成長ホルモン(GH)、IGF、プロラクチン、LIF、IL−1、アクチビンA、EGF
N)膵臓上皮:成長ホルモン、プロラクチン
O)膵臓ランゲルハンス氏島細胞:TGF−β、IGF、PDGF、EGF、TGF−β、TRH(thyroropin)
P)関節滑膜上皮:FGF、TGF−β
Q)骨芽細胞:BMP、FGF
R)軟骨芽細胞:FGF、TGF−β、BMP、TNF−α
S)網膜細胞:FGF、CNTF(絨毛神経栄養因子=cilliary neurotrophic factor)
T)脂肪細胞:インスリン、IGF、LIF
U)筋肉細胞:LIF、TNF−α、FGF。
本発明の細胞は、細胞の維持または所望の分化細胞へ分化する限り、任意の培養液を用いることができる。そのような培養液としては、例えば、DMEM、P199、MEM、HBSS、Ham’s F12、BME、RPMI1640、MCDB104、MCDB153(KGM)およびそれらの混合物などが挙げられるがそれらに限定されない。このような培養液には、デキサメタゾンなどの副腎皮質ステロイド、インスリン、グルコース、インドメタシン、イソブチル−メチルキサンチン(IBMX)、アスコルベート−2−ホスフェート、アスコルビン酸およびその誘導体、グリセロホスフェート、エストロゲンおよびその誘導体、プロゲステロンおよびその誘導体、アンドロゲンおよびその誘導体、aFGF、bFGF、EGF、IGF、TGFβ、ECGF、BMP、PDGFなどの増殖因子、下垂体エキス、松果体エキス、レチノイン酸、ビタミンD、甲状腺ホルモン、ウシ胎仔血清、ウマ血清、ヒト血清、ヘパリン、炭酸水素ナトリウム、HEPES、アルブミン、トランスフェリン、セレン酸(亜セレン酸ナトリウムなど)、リノレン酸、3−イソブチル−1−メチルキサンチン、5−アザンシチジンなどの脱メチル化剤、トリコスタチンなどのヒストン脱アセチル化剤、アクチビン、LIF・IL−2・IL−6などのサイトカイン、ヘキサメチレンビスアセトアミド(HMBA)、ジメチルアセトアミド(DMA)、ジブチルcAMP(dbcAMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヨードデオキシウリジン(IdU)、ヒドロキシウレア(HU)、シトシンアラビノシド(AraC)、マイトマイシンC(MMC)、酪酸ナトリウム(NaBu)、ポリブレン、セレニウム、コレラトキシンなどを1つまたはその組み合わせとして含ませておいてもよい。
(デバイス)
本明細書において「デバイス」とは、装置の一部または全部を構成することができる部分をいい、支持体(好ましくは固相支持体)およびその支持体に担持されるべき標的物質などから構成される。そのようなデバイスとしては、チップ、アレイ、マイクロタイタープレート、細胞培養プレート、シャーレ、フィルム、ビーズなどが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において使用される「支持体」は、生体分子のような物質を固定することができる材料(material)をいう。支持体の材料としては、共有結合かまたは非共有結合のいずれかで、本発明において使用される生体分子のような物質に結合する特性を有するかまたはそのような特性を有するように誘導体化され得る、任意の固体材料が挙げられる。
支持体として使用するためのそのような材料としては、固体表面を形成し得る任意の材料が使用され得るが、例えば、ガラス、シリカ、シリコン、セラミック、二酸化珪素、プラスチック、金属(合金も含まれる)、天然および合成のポリマー(例えば、ポリスチレン、セルロース、キトサン、デキストラン、およびナイロン)などが挙げられるがそれらに限定されない。支持体は、複数の異なる材料の層から形成されていてもよい。例えば、ガラス、石英ガラス、アルミナ、サファイア、フォルステライト、酸化珪素、炭化珪素、窒化珪素などの無機絶縁材料を使用することができる。ポリエチレン、エチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリエチレンテレフタレート、不飽和ポリエステル、含フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、アセタール樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、フェノール樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、スチレン・アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、シリコーン樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリスルホンなどの有機材料を用いることができる。本発明においてはまた、ニトロセルロース膜、ナイロン膜、PVDF膜など、ブロッティングに使用される膜を用いることもできる。支持体を構成する材料が固相である場合、本明細書において特に「固相支持体」という。本明細書において、プレート、マイクロウェルプレート、チップ、スライドグラス、フィルム、ビーズ、金属(表面)などの形態をとり得る。支持体はコーティングされていてもよく、コーティングされていなくてもよい。
本明細書において「液相」とは、当該分野において通常用いられる意味と同じ意味で用いられ、通常、溶液中での状態をいう。
本明細書において「固相」とは、当該分野において用いられる意味と同じ意味で用いられ、通常、固体の状態をいう。本明細書において液体および固体を総合して流体ということがある。
本明細書において「接触」とは、2つの物質(例えば、組成物および細胞)が互いに相互作用するに十分に至近距離に存在することをいう。
本明細書において「相互作用」とは、2つの物体について言及するとき、その2つの物体が相互に力を及ぼしあうことをいう。そのような相互作用としては、例えば、共有結合、水素結合、ファンデルワールス力、イオン性相互作用、非イオン性相互作用、疎水性相互作用、静電的相互作用などが挙げられるがそれらに限定されない。好ましくは、相互作用は、水素結合、疎水性相互作用などの生体内で生じる通常の相互作用であり得る。
(基板/プレート/チップ/アレイ)
本明細書において使用される「プレート」とは、抗体のような分子が固定され得る平面状の支持体をいう。本発明では、プレートは、プラスチック、金、銀またはアルミニウムを含む金属薄膜を片面にもつガラス基板を基材とすることが好ましい。
本明細書において使用される「基板」とは、本発明のチップまたはアレイが構築される材料(好ましくは固体)をいう。したがって、基板はプレートの概念に包含される。基板の材料としては、共有結合かまたは非共有結合のいずれかで、本発明において使用される生体分子に結合する特性を有するかまたはそのような特性を有するように誘導体化され得る、任意の固体材料が挙げられる。
プレートおよび基板として使用するためのそのような材料としては、固体表面を形成し得る任意の材料が使用され得るが、例えば、ガラス、シリカ、シリコン、セラミック、二酸化珪素、プラスチック、金属(合金も含まれる)、天然および合成のポリマー(例えば、ポリスチレン、セルロース、キトサン、デキストラン、およびナイロン)が挙げられるがそれらに限定されない。基板は、複数の異なる材料の層から形成されていてもよい。例えば、ガラス、石英ガラス、アルミナ、サファイア、フォルステライト、炭化珪素、酸化珪素、窒化珪素などの無機絶縁材料を使用できる。また、ポリエチレン、エチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリエチレンテレフタレート、不飽和ポリエステル、含フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、アセタール樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、フェノール樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、スチレン・アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、シリコーン樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリスルホン等の有機材料を用いることができる。基板として好ましい材質は、測定機器などの種々のパラメータによって変動し、当業者は、上述のような種々の材料から適切なものを適宜選択することができる。トランスフェクションアレイのためには、スライドグラスが好ましい。好ましくは、そのような基材は、コーティングされ得る。
本明細書において「コーティング」とは、固相支持体または基板について用いられるとき、その固相支持体または基板の表面上にある物質の膜を形成させることおよびそのような膜をいう。コーティングは種々の目的で行われ、例えば、固相支持体および基板の品質向上(例えば、寿命の向上、耐酸性などの耐環境性の向上)、固相支持体または基板に結合されるべき物質の親和性の向上などを目的とすることが多い。本明細書において、そのようなコーティングのための物質は、「コーティング剤」と呼ばれる。そのようなコーティング剤としては、種々の物質が用いられ得、上述の固相支持体および基板自体に使用される物質のほか、DNA、RNA、タンパク質、脂質などの生体物質、ポリマー(例えば、ポリ−L−リジン、MAS(松浪硝子、岸和田、日本から入手可能)、疎水性フッ素樹脂)、シラン(APS(例えば、γ−アミノプロピルシラン))、金属(例えば、金など)が使用され得るがそれらに限定されない。そのような物質の選択は当業者の技術範囲内にあり、当該分野において周知の技術を用いて場合ごとに選択することができる。一つの好ましい実施形態では、そのようなコーティングは、ポリ−L−リジン、シラン、(例えば、エポキシシランまたはメルカプトシラン、APS(γ−アミノプロピルシラン))、MAS、疎水性フッ素樹脂、金のような金属を用いることが有利であり得る。このような物質は、細胞または細胞を含む物体(例えば、生体、臓器など)に適合する物質を用いることが好ましい。
本明細書において「チップ」または「マイクロチップ」は、互換可能に用いられ、多様の機能をもち、システムの一部となる超小型集積回路をいう。チップとしては、例えば、DNAチップ、プロテインチップなどが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において「アレイ」とは、1以上(例えば、1000以上)の標的物質を含む組成物(例えば、DNA、タンパク質、トランスフェクト混合物)が整列されて配置されたパターンまたはパターンを有する基板(例えば、チップ)そのものをいう。アレイの中で、小さな基板(例えば、10×10mm上など)上にパターン化されているものはマイクロアレイというが、本明細書では、マイクロアレイとアレイとは互換可能に使用される。従って、上述の基板より大きなものにパターン化されたものでもマイクロアレイと呼ぶことがある。例えば、アレイはそれ自身固相表面または膜に固定されている所望のトランスフェクト混合物のセットで構成される。アレイは好ましくは同一のまたは異なる抗体を少なくとも10個、より好ましくは少なくとも10個、およびさらに好ましくは少なくとも10個、さらにより好ましくは少なくとも10個を含む。これらの抗体は、好ましくは表面が125×80mm、より好ましくは10×10mm上に配置される。形式としては、96ウェルマイクロタイタープレート、384ウェルマイクロタイタープレートなどのマイクロタイタープレートの大きさのものから、スライドグラス程度の大きさのものが企図される。固定される標的物質を含む組成物は、1種類であっても複数種類であってもよい。そのような種類の数は、1個〜スポット数までの任意の数であり得る。例えば、約10種類、約100種類、約500種類、約1000種類の標的物質を含む組成物が固定され得る。
基板のような固相表面または膜には、上述のように任意の数の標的物質(例えば、抗体のようなタンパク質)が配置され得るが、通常、基板1つあたり、10個の生体分子まで、他の実施形態において10個の生体分子まで、10個の生体分子まで、10個の生体分子まで、10個の生体分子まで、10個の生体分子まで、または10個の生体分子までの個の生体分子が配置され得るが、10個の生体分子を超える標的物質を含む組成物が配置されていてもよい。これらの場合において、基板の大きさはより小さいことが好ましい。特に、標的物質を含む組成物(例えば、抗体のようなタンパク質)のスポットの大きさは、単一の生体分子のサイズと同じ小さくあり得る(これは、1−2nmの桁であり得る)。最小限の基板の面積は、いくつかの場合において基板上の生体分子の数によって決定される。本発明では、細胞への導入が企図される標的物質を含む組成物は、通常、0.01mm〜10mmのスポット状に共有結合あるいは物理的相互作用によって配列固定されている。
アレイ上には、生体分子の「スポット」が配置され得る。本明細書において「スポット」とは、標的物質を含む組成物の一定の集合をいう。本明細書において「スポッティング」とは、ある標的物質を含む組成物のスポットをある基板またはプレートに作製することをいう。スポッティングはどのような方法でも行うことができ、例えば、ピペッティングなどによって達成され得、あるいは自動装置で行うこともでき、そのような方法は当該分野において周知である。
本明細書において使用される用語「アドレス」とは、基板上のユニークな位置をいい、他のユニークな位置から弁別可能であり得るものをいう。アドレスは、そのアドレスを伴うスポットとの関連づけに適切であり、そしてすべての各々のアドレスにおける存在物が他のアドレスにおける存在物から識別され得る(例えば、光学的)、任意の形状を採り得る。アドレスを定める形は、例えば、円状、楕円状、正方形、長方形であり得るか、または不規則な形であり得る。したがって、「アドレス」は、抽象的な概念を示し、「スポット」は具体的な概念を示すために使用され得るが、両者を区別する必要がない場合、本明細書においては、「アドレス」と「スポット」とは互換的に使用され得る。
各々のアドレスを定めるサイズは、とりわけ、その基板の大きさ、特定の基板上のアドレスの数、標的物質を含む組成物の量および/または利用可能な試薬、微粒子のサイズおよびそのアレイが使用される任意の方法のために必要な解像度の程度に依存する。大きさは、例えば、1−2nmから数cmの範囲であり得るが、そのアレイの適用に一致した任意の大きさが可能である。
アドレスを定める空間配置および形状は、そのマイクロアレイが使用される特定の適用に適合するように設計される。アドレスは、密に配置され得、広汎に分散され得るか、または特定の型の分析物に適切な所望のパターンへとサブグループ化され得る。
マイクロアレイについては、ゲノム機能研究プロトコール(実験医学別冊 ポストゲノム時代の実験講座1)、ゲノム医科学とこれからのゲノム医療(実験医学増刊)などに広く概説されている。
マイクロアレイから得られるデータは膨大であることから、クローンとスポットとの対応の管理、データ解析などを行うためのデータ解析ソフトウェアが重要である。そのようなソフトウェアとしては、各種検出システムに付属のソフトウェアが利用可能である(Ermolaeva Oら(1998)Nat.Genet.20:19−23)。また、データベースのフォーマットとしては、例えば、Affymetrixが提唱しているGATC(genetic analysis technology consortium)と呼ばれる形式が挙げられる。
微細加工については、例えば、Campbell,S.A.(1996).The Science andEngineering of Microelectronic Fabrication,Oxford University Press;Zaut,P.V.(1996).Micromicroarray Fabrication:a Practical Guide to Semiconductor Processing,Semiconductor Services;Madou,M.J.(1997).Fundamentals of Microfabrication,CRC1 5 Press;Rai−Choudhury,P.(1997).Handbook of Microlithography,Micromachining,& Microfabrication:Microlithographyなどに記載されており、これらは本明細書において関連する部分が参考として援用される。
(細胞接着分子)
本発明は、1つの局面では、細胞接着分子と、遺伝子導入試薬との組み合わせによる驚くべき効果(固定に加えて、導入効率が飛躍的に上昇する)ことが見出されたことに有用性がある。
本明細書において「細胞接着分子」(Cell adhesion molecule)または「接着分子」とは、互換可能に使用され、2つ以上の細胞の互いの接近(細胞接着)または基質と細胞との間の接着を媒介する分子をいう。一般には、細胞と細胞の接着(細胞間接着)に関する分子(cell−cell adhesion molecule)と,細胞と細胞外マトリックスとの接着(細胞−基質接着)に関与する分子(cell−substrate adhesion molecule)に分けられる。本発明の組織片では、いずれの分子も有用であり、有効に使用することができる。従って、本明細書において細胞接着分子は、細胞−基質接着の際の基質側のタンパク質を包含するが、本明細書では、細胞側のタンパク質(例えば、インテグリンなど)も包含され、タンパク質以外の分子であっても、細胞接着を媒介する限り、本明細書における細胞接着分子または細胞接着分子の概念に入る。
ある分子が細胞接着分子であるかどうかは、生化学的定量(SDS−PAG法、標識コラーゲン法)、免疫学的定量(酵素抗体法、蛍光抗体法、免疫組織学的検討)PDR法、ハイブリダイゼイション法などのようなアッセイにおいて陽性となることを決定することにより判定することができる。このような細胞接着分子としては、コラーゲン(配列番号1−16)、インテグリン、フィブロネクチン(配列番号23−24)、ラミニン(配列番号17−22)、ビトロネクチン、フィブリノゲン、免疫グロブリンスーパーファミリー(例えば、CD2、CD4、CD8、ICM1、ICAM2、VCAM1)、セレクチン、カドヘリンなどが挙げられるがそれに限定されない。このような細胞接着分子の多くは、細胞への接着と同時に細胞間相互作用による細胞活性化の補助シグナルを細胞内に伝達する。従って、本発明の組織片において用いられる接着因子としては、そのような細胞活性化の補助シグナルを細胞内に伝達するものが好ましい。細胞活性化により、組織片としてある組織または臓器における損傷部位に適用された後に、そこに集合した細胞および/または組織もしくは臓器にある細胞の増殖を促すことができるからである。そのような補助シグナルを細胞内に伝達することができるかどうかは、生化学的定量(SDS−PAG法、標識コラーゲン法)、免疫学的定量(酵素抗体法、蛍光抗体法、免疫組織学的検討)PDR法、ハイブリダイゼイション法というアッセイにおいて陽性となることを決定することにより判定することができる。
本明細書において「細胞外マトリクス」(ECM)とは「細胞外基質」とも呼ばれ、上皮細胞、非上皮細胞を問わず体細胞(somatic cell)の間に存在する物質をいう。細胞外マトリクスは、組織の支持だけでなく、すべての体細胞の生存に必要な内部環境の構成に関与する。細胞外マトリクスは一般に、結合組織細胞から産生されるが、一部は上皮細胞や内皮細胞のような基底膜を保有する細胞自身からも分泌される。線維成分とその間を満たす基質とに大別され、線維成分としては膠原線維および弾性線維がある。基質の基本構成成分はグリコサミノグリカン(酸性ムコ多糖)であり、その大部分は非コラーゲン性タンパクと結合してプロテオグリカン(酸性ムコ多糖−タンパク複合体)の高分子を形成する。このほかに、基底膜のラミニン、弾性線維周囲のミクロフィブリル(microfibril)、線維、細胞表面のフィブロネクチンなどの糖タンパクも基質に含まれる。特殊に分化した組織でも基本構造は同一で、例えば硝子軟骨では軟骨芽細胞によって特徴的に大量のプロテオグリカンを含む軟骨基質が産生され、骨では骨芽細胞によって石灰沈着が起こる骨基質が産生される。本発明において用いられる細胞外マトリクスとしては、例えば、コラーゲン、エラスチン、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン、フィブロネクチン、ラミニン、弾性繊維、膠原繊維などが挙げられるがそれに限定されない。本発明において用いられる場合、細胞外マトリクスは、好ましくは、宿主の自己細胞を呼び寄せる活性を持っていることが有利である。
本明細書において「細胞接着性タンパク質」とは、上述のような細胞接着を媒介する機能を有するタンパク質をいう。従って、本明細書において細胞接着性タンパク質は、細胞−基質接着の際の基質側のタンパク質を包含するが、本明細書では、細胞側のタンパク質(例えば、インテグリンなど)をも包含する。例えば、基質側のタンパク質を吸着した基質(ガラスやプラスチック)の上に無血清条件下で培養細胞を播種すると,レセプターであるインテグリンが細胞接着性タンパク質を認識し、細胞はその基質に接着する。細胞接着性蛋白質の活性部位はアミノ酸レベルで解明されており、RGD,YIGSRなどが知られている(これらを、総合してRGD配列とも呼ぶ)。従って、1つの好ましい実施形態において、本発明の組織片に含まれるタンパク質は、RGD、YIGSRなどのRGD配列を含むことが有利であり得る。通常、細胞接着性タンパク質は、細胞外マトリックス、培養細胞表面、血漿・血清・各種体液に存在する。その生体内での機能としては,細胞の細胞外マトリックスへの接着だけでなく,細胞の移動・増殖・形態調節・組織構築などが知られている。細胞作用とは別に,血液凝固・補体作用の調節機能を示すタンパク質もあり、本発明では、そのような機能を有するタンパク質もまた有用であり得る。そのような細胞接着性タンパク質としては、例えば、フィブロネクチン,コラーゲン,ビトロネクチン,ラミニンなどが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において「RGD分子」とは、アミノ酸配列RGD(Arg−Gly−Asp)またはその機能的に同一な配列を含むタンパク質分子をいう。RGD分子は、細胞接着性蛋白質の細胞接着活性部位のアミノ酸配列として有用なアミノ酸配列であるRGDまたは機能的に等価な別のアミノ酸配列を含むことを特徴とする。RGD配列は、フィブロネクチンの細胞接着部位として発見され、その後,I型コラーゲン、ラミニン,ビトロネクチン,フィブリノゲン,フォンヴィルブランド因子,エンタクチンなど多くの細胞接着性の活性を示す分子に見出された。化学合成したRGDペプチドを固相化すると細胞接着活性を示すことから、本発明における生体分子は、化学合成したRGD分子であってもよい。そのようなRGD分子としては、上述の天然に存在する分子のほかに、例えば、GRGDSPペプチドが挙げられるがそれに限定されない。RGD配列は細胞接着分子(かつ、レセプターでもある)であるインテグリン(例えば、フィブロネクチンのレセプター)によって認識されることから、RGDの機能的に等価な分子は、そのようなインテグリンを用いて相互作用を調べることによって同定することができる。
本明細書において「コラーゲン」とは、タンパク質の一種で、線維形成コラーゲンであり3本のポリペプチド鎖が3重螺旋を巻いた領域の総称であり、細胞生着、増殖の足場であり、組織骨格を形成するものをいう。コラーゲンは、動物の細胞外マトリクスの主成分である。コラーゲンもまた、RGD配列をもち、細胞接着活性を示すことが知られている。コラーゲンは、動物の全タンパク質中の約20〜30%も含まれ、皮膚、腱、軟骨などに多量に含まれることが知られている。コラーゲン分子としては、I型〜XIII型が知られている。通常、分子一つが3本のポリペプチド鎖からなる三重らせん構造を採り、各鎖はα鎖と呼ばれることが多い。コラーゲン分子では、1分子は1種類のα鎖からなっていてもよく、別々の遺伝子にコードされた複数種のα鎖からなっていてもよい。α鎖は、通常、α1,α2,α3のようにαの後に数字をつけてよび,さらにコラーゲンの型をつけて,α1(I)などと称する。従って、本発明では、例えば、[α1(I)α2(I)](I型コラーゲン)のような天然に存在するコラーゲン分子のほか、天然に存在しないような組み合わせの三量体もまた私用され得る。コラーゲンの一次構造の大部分は、[Gly−X−Pro(またはヒドロキシプロリル)](Xは任意のアミノ酸残基)のアミノ酸配列からなる特徴をもつ。この構造は、3残基周期の左巻きらせん構造をとる。コラーゲンは通常、特殊なアミノ酸としてヒドロキシリジンを含む。コラーゲンは、糖タンパク質であるが、糖はヒドロキシリジンの水酸基に結合している。
コラーゲンには、線維状で存在し集まって膠原線維をなす線維形成コラーゲンまたは間質型コラーゲンという種類がある。そのような線維形成コラーゲンには、I型、II型、III型、V型、XI型コラーゲンがあり、本発明の好ましい実施形態において使用される。コラーゲンとしては、このほかに、短鎖コラーゲン(VIII型、X型など)、基底膜コラーゲン(IV型など)、FACITコラーゲン(IX型、XII型、XIV型、XVI型、XIX型など)、multiplexinsコラーゲン(XV型、XVIII型など)、ミクロフィブリルコラーゲン(VI型など)、長鎖コラーゲン(VII型など)、膜結合型コラーゲン(XIII型,XVII型など)などが挙げられ、これらはすべて本発明において使用され得る。本明細書において「基底膜コラーゲン」とは、基底膜を構成する主要なコラーゲンをいう。
本明細書において「I型コラーゲン」とは、[α1(I)α2(I)]という構造を有するコラーゲンであり、α1(I)鎖2本およびα2(I)鎖のポリペプチド鎖のヘテロ3本鎖からなり、生体内のあらゆる組織に存在する組織骨格およびその機能的に等価な分子をいい、そのようなポリペプチドのアミノ酸配列としては、代表的には、Genbankのアクセッション番号では、p02454、p02464が挙げられるがそれに限定されない(例えば、配列番号1〜4に記載のものなど)。本明細書において、I型コラーゲンの機能的に等価な分子は、例えば、酵素抗体法、EIA法という方法により同定することができる。
本明細書において「IV型コラーゲン」とは、基底膜コラーゲンであり、その分子は、7S、NC2、TH2、NC1の4つのドメインからなっており、N末端の7Sで4分子が重合し、C末端のNC1で2分子が重合することにより、網目状のネットワークを形成しているコラーゲンまたはその機能的に等価な分子をいい、そのようなポリペプチドのアミノ酸配列としては、代表的には、Genbankのアクセッション番号p02462、p08572、U02520、D17391、P29400、U04845が挙げられるがそれに限定されない(例えば、配列番号5〜16に記載のものなど)。本明細書において、IV型コラーゲンの機能的に等価な分子は、例えば、酵素抗体法、EIA法という方法により同定することができる。
(細胞)
本明細書において使用される「細胞」は、当該分野において用いられる最も広義の意味と同様に定義され、多細胞生物の組織の構成単位であって、外界を隔離する膜構造に包まれ、内部に自己再生能を備え、遺伝情報およびその発現機構を有する生命体をいう。本明細書において使用される細胞は、天然に存在する細胞であっても、人工的に改変された細胞(例えば、融合細胞、遺伝子改変細胞)であってもよい。細胞の供給源としては、例えば、単一の細胞培養物であり得、あるいは、正常に成長したトランスジェニック動物の胚、血液、または体組織、または正常に成長した細胞株由来の細胞のような細胞混合物が挙げられるがそれらに限定されない。
本発明で用いられる細胞は、どの生物由来の細胞(たとえば、任意の種類の単細胞生物(例えば、細菌、酵母)または多細胞生物(例えば、動物(たとえば、脊椎動物、無脊椎動物)、植物(たとえば、単子葉植物、双子葉植物など)など))でもよい。例えば、脊椎動物(たとえば、メクラウナギ類、ヤツメウナギ類、軟骨魚類、硬骨魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳動物など)由来の細胞が用いられ、より詳細には、哺乳動物(例えば、単孔類、有袋類、貧歯類、皮翼類、翼手類、食肉類、食虫類、長鼻類、奇蹄類、偶蹄類、管歯類、有鱗類、海牛類、クジラ目、霊長類、齧歯類、ウサギ目など)由来の細胞が用いられる。1つの実施形態では、霊長類(たとえば、チンパンジー、ニホンザル、ヒト)由来の細胞、特にヒト由来の細胞が用いられるがそれに限定されない。
本明細書において「幹細胞」とは、自己複製能を有し、多分化能(すなわち多能性)(「pluripotency」)を有する細胞をいう。幹細胞は通常、組織が傷害を受けたときにその組織を再生することができる。本明細書では幹細胞は、胚性幹(ES)細胞または組織幹細胞(組織性幹細胞、組織特異的幹細胞または体性幹細胞ともいう)であり得るがそれらに限定されない。また、上述の能力を有している限り、人工的に作製した細胞(たとえば、本明細書において記載される融合細胞、再プログラム化された細胞など)もまた、幹細胞であり得る。胚性幹細胞とは初期胚に由来する多能性幹細胞をいう。胚性幹細胞は、1981年に初めて樹立され、1989年以降ノックアウトマウス作製にも応用されている。1998年にはヒト胚性幹細胞が樹立されており、再生医学にも利用されつつある。組織幹細胞は、胚性幹細胞とは異なり、分化の方向が限定されている細胞であり、組織中の特定の位置に存在し、未分化な細胞内構造をしている。従って、組織幹細胞は多能性のレベルが低い。組織幹細胞は、核/細胞質比が高く、細胞内小器官が乏しい。組織幹細胞は、概して、多分化能を有し、細胞周期が遅く、個体の一生以上に増殖能を維持する。本明細書において使用される場合は、幹細胞は胚性幹細胞であっても、組織幹細胞であってもよい。
由来する部位により分類すると、組織幹細胞は、例えば、皮膚系、消化器系、骨髄系、神経系などに分けられる。皮膚系の組織幹細胞としては、表皮幹細胞、毛嚢幹細胞などが挙げられる。消化器系の組織幹細胞としては、膵(共通)幹細胞、肝幹細胞などが挙げられる。骨髄系の組織幹細胞としては、造血幹細胞、間葉系幹細胞などが挙げられる。神経系の組織幹細胞としては、神経幹細胞、網膜幹細胞などが挙げられる。
本明細書において「体細胞」とは、卵子、精子などの生殖細胞以外の細胞であり、そのDNAを次世代に直接引き渡さない全ての細胞をいう。体細胞は通常、多能性が限定されているかまたは消失している。本明細書において使用される体細胞は、天然に存在するものであってもよく、遺伝子改変されたものであってもよい。
細胞は、由来により、外胚葉、中胚葉および内胚葉に由来する幹細胞に分類され得る。外胚葉由来の細胞は、主に脳に存在し、神経幹細胞などが含まれる。中胚葉由来の細胞は、主に骨髄に存在し、血管幹細胞、造血幹細胞および間葉系幹細胞などが含まれる。内胚葉由来の細胞は主に臓器に存在し、肝幹細胞、膵幹細胞などが含まれる。本明細書では、体細胞はどのような胚葉由来でもよい。好ましくは、体細胞は、リンパ球、脾臓細胞または精巣由来の細胞が使用され得る。
本明細書において「単離された」とは、通常の環境において天然に付随する物質が少なくとも低減されていること、好ましくは実質的に含まないをいう。従って、単離された細胞とは、天然の環境において付随する他の物質(たとえば、他の細胞、タンパク質、核酸など)を実質的に含まない細胞をいう。核酸またはポリペプチドについていう場合、「単離された」とは、たとえば、組換えDNA技術により作製された場合には細胞物質または培養培地を実質的に含まず、化学合成された場合には前駆体化学物質またはその他の化学物質を実質的に含まない、核酸またはポリペプチドを指す。単離された核酸は、好ましくは、その核酸が由来する生物において天然に該核酸に隣接している(flanking)配列(即ち、該核酸の5’末端および3’末端に位置する配列)を含まない。
本明細書において、「樹立された」または「確立された」細胞とは、特定の性質(例えば、多分化能)を維持し、かつ、細胞が培養条件下で安定に増殖し続けるようになった状態をいう。したがって、樹立された幹細胞は、多分化能を維持する。
本明細書において「分化(した)細胞」とは、機能および形態が特殊化した細胞(例えば、筋細胞、神経細胞など)をいい、幹細胞とは異なり、多能性はないか、またはほとんどない。分化した細胞としては、例えば、表皮細胞、膵実質細胞、膵管細胞、肝細胞、血液細胞、心筋細胞、骨格筋細胞、骨芽細胞、骨格筋芽細胞、神経細胞、血管内皮細胞、色素細胞、平滑筋細胞、脂肪細胞、骨細胞、軟骨細胞などが挙げられる。
本明細書において「初代培養細胞」とは、生体から分離した細胞、組織または器官などを植え込み、第1回目の継代を行うまでの培養の状態にある細胞をいう。したがって、それを植え継いだ「継代培養」細胞とは厳密に区別される。通常、初代培養細胞は、扱いが難しく、遺伝子操作(例えば、トランスフェクション)のような外来物質の導入などを行うことがかなり困難とされている。
本明細書において「神経細胞」とは、細胞体とそれから出る突起とをあわせた神経系の構造的および機能的単位を構成する細胞またはその改変体もしくは機能的等価物をいう。神経細胞であるかどうかは、神経伝達が起こるかどうかを確認することによって判定することができる。そのような神経細胞の機能は、例えば、パッチクランプ法などにより確認することができる。神経細胞の代表的な例として、PC12細胞が使用され得る。PC12細胞は、副腎髄質褐色細胞由来の細胞であるが、その形態が神経細胞に類似することから、神経系のモデルとして代表的な培養細胞として使用されている。
本明細書「指示書」とは、本発明の物質導入方法などを、ユーザー(研究者、実験補助者、または治療においては医師、患者など投与を行う人など)に対して記載したものである。この指示書は、本発明の組成物などを例えば、使用する方法を指示する文言が記載されている。この指示書は、本発明が実施される国の監督官庁が規定した様式に従って作成され、その監督官庁により承認を受けた旨が明記される。指示書は、医薬の場合通常いわゆる添付文書(package insert)の形態をとり、または実験用試薬の形態の場合マニュアルの形態をとり、通常は紙媒体で提供されるが、それに限定されず、例えば、電子媒体(例えば、インターネットで提供されるホームページ、電子メール)のような形態でも提供され得る。
(好ましい実施形態の説明)
1つの局面において、本発明は、細胞の核酸導入効率を改善するための組成物を提供する。ここで、組成物は、A)細胞接着分子;およびB)遺伝子導入試薬、を含むことを特徴とする。核酸を導入するためには、遺伝子導入試薬のような遺伝子導入試薬を使用してきたが、外的因子の付加により導入効率が上昇することは予測されておらず、本発明により見出された細胞接着分子の効果は驚くべきものであるといえる。特に、細胞を固定したときにその効率が変わるとは予測されておらず、むしろ、減るとさえ考えられていた。本発明は、遺伝子導入試薬と、細胞接着分子とを組み合わせて細胞に作用させると、核酸の導入が予想外に向上することが判明したという効果を持つ。本発明によって、従来困難とされていた、初代培養細胞、神経細胞などで液相または固相でトランスフェクションを容易に行うことが可能になった。ここで、細胞接着分子と、遺伝子導入試薬とは、相互作用し得る状態で存在すればよい。これらの物質は、細胞に対して同時に作用させるように構成されていても、別々に構成されていてもよい。ここで、細胞は、核酸導入後も分化誘導する能力が保持される。このように、遺伝子導入後も分化誘導する能力が保持されていたことは驚きべき効果であるといえる。
別の局面において、細胞の核酸導入効率を改善するためのデバイスを提供する。このデバイスは、A)細胞接着分子;およびB)遺伝子導入試薬、を含む、組成物が支持体に固定されている。このようなデバイスは、好ましい実施形態では、指示書を備え得る。ここで、細胞は、核酸導入後も分化誘導する能力が保持される
本発明において使用される細胞接着分子は、好ましくは、タンパク質形態で提供されるが、それに限定されない。タンパク質は、生体分子であり、遺伝子操作により製造可能であるからである。好ましい細胞接着分子には、細胞外マトリクスが含まれる。より好ましくは、細胞接着分子は、コラーゲン、フィブロネクチンまたはラミニンを含み、好ましいコラーゲンとしては、繊維形成コラーゲン、基底膜コラーゲンなどが挙げられるがそれに限定されない。これらの特定のコラーゲンは複数存在してもよく、繊維形成コラーゲンと基底膜コラーゲンとが同時に含まれていてもよい。
好ましい実施形態では、本発明において使用される細胞接着分子は、コラーゲンI型またはIV型を含む。より好ましくは、細胞接着分子は、コラーゲンI型およびIV型を含む。コラーゲンI型は、従来細胞接着因子としての作用のみが知られており、遺伝子導入試薬と組み合わせて使用したときに、核酸の導入効率が相乗的に上昇したことは、格別な発見である。また、コラーゲンIV型が核酸導入効率を上昇させることは知られておらず、格別な効果といえる。また、これらの複数のコラーゲンを組み合わせることで核酸の導入効率はさらに上昇する。コラーゲンの種類が増加すると、核酸の導入を容易にするポイントが増大するからである。
本発明において使用される細胞接着分子は、多量体形態で存在することが好ましい。多量体形態で存在することによって、細胞の固定化が安定化されるからであり、核酸の導入効率を飛躍的に上げるようであることが判明したからである。
好ましい実施形態において、本発明において使用される細胞接着分子は、三次元構造をとる。ここで、「三次元構造」とは、少なくとも2層以上から構成され、平面向きの構造以外にその平面とは垂直方向の分子の広がりを持つ構造をいう。したがって、そのような三次元構造を有することによって、細胞は、より天然の状況に近い状態で存在することになる。
1つの実施形態において、本発明において使用される遺伝子導入試薬は、カチオン性高分子、カチオン性脂質、ポリアミン系試薬、ポリイミン系試薬およびリン酸カルシウムからなる群より選択される少なくとも1つの試薬を含み、ある好ましい実施形態では、これらの試薬は複数用いられてもよい。
本発明の細胞の核酸導入効率および固定化を改善するための組成物は、導入しようとする外来分子を同時に含んでいてもよい。好ましくは、本発明の組成物は、導入が企図される遺伝子をコードする核酸分子を含んでいてもよい。
本発明の組成物は、固体であっても液体であってもよい。液体が好ましい。操作が容易であり、固相上への配置も容易であるからであり、液相での効果も確認されているからである。
本発明が対象とする細胞は、核酸の導入が企図される細胞であれば、どのような細胞であってもよく、通常遺伝子導入が可能な細胞であって、そのような細胞としては、例えば、PC12,Neuro2a,SH−SY5Y,NG108−15,HCN−1Aなどが挙げられるがそれらに限定されない。好ましい細胞としては、例えば、神経細胞、初代培養細胞などが挙げられるがそれらに限定されない。初代培養細胞の原料はどのようなものでもかまわないが、好ましくは、哺乳動物の脳(大脳皮質、海馬、小脳)が挙げられるがそれらに限定されない。
本発明において使用される細胞接着分子は、5μg/ml〜100μg/mlの濃度範囲で存在することが好ましいが、これ以下であっても遺伝子導入試薬の導入効率を上昇させることができ、この上限以上であっても特に問題なく導入効率が上昇することが理解される。上限の例示としては、例えば、1mg/ml、750μg/ml、500μg/ml、400μg/ml、200μg/ml、250μg/ml、200μg/ml、150μg/ml、100μg/ml、90μg/ml、80μg/ml、70μg/ml、60μg/ml、50μg/ml、40μg/ml、30μg/mlなどが挙げられるがそれらに限定されない。下限の例示としては、例えば、75μg/ml、50μg/ml、40μg/ml、20μg/ml、25μg/ml、20μg/ml、15μg/ml、10μg/ml、9μg/ml、8μg/ml、7μg/ml、6μg/ml、5μg/ml、4μg/ml、3μg/ml、2μg/ml、1μg/mlなどが挙げられるがそれらに限定されない。より好ましい範囲としては、20μg/ml〜60μg/mlが挙げられる。
1つの実施形態では、本発明は、固相上での細胞への核酸導入を可能にした点を利用する。従来固相上遺伝子導入が困難である細胞(たとえば、PC12細胞などの神経系の細胞)の核酸導入を可能にしたという点で本発明は、特筆すべきであるといえる。特に好ましい実施形態では、コラーゲンをコーティングした固相支持体の上で細胞を核酸導入するのに本発明の組成物は使用され得る。
別の実施形態では、本発明は、核酸を誘導した後、分化誘導されるために使用される。従って、好ましくは、本発明の組成物またはキットは、分化誘導因子(例えば、神経成長因子など)を含み得る。また、本発明の方法は、核酸を導入した後に、所望の分化を誘導する工程をさらに包含し得ることが理解される。
本発明において支持体が使用される場合、本発明の細胞接着分子は支持体にコーティングされることが好ましい。より好ましくは、細胞接着分子は、多層で前記支持体にコーティングされる。また、支持体は、ポリ−L−リジン、APS(γ−アミノプロピルシラン)、MASでコーティングされることが好ましい。
本発明において支持体が使用される場合、支持体には核酸が配置されることが好ましく、さらに支持体に核酸(例えば、DNA)がアレイ状で配置されることがより好ましい。このようなアレイ状で支持体が構成されることによって、DNAチップなどとして使用することができる。
別の局面において、本発明は、細胞へ核酸を導入する方法を提供する。この方法は、A)細胞の遺伝子導入効率を改善するための組成物であって、a)細胞接着分子;およびb)遺伝子導入試薬、を含む、組成物を、導入が意図される遺伝子をコードする核酸分子とともに、該細胞に提供する工程;ならびにB)核酸が導入される条件に該細胞をさらす工程、を包含する。ここで、本発明の方法において使用される組成物は、本明細書において記載されている。このような組成物を細胞に提供する方法は、当該分野において周知の技術を用いて達成され得る。
本明細書において「核酸が導入される条件」は、導入が意図される核酸が導入される任意の条件を包含し、その核酸によって変動するが、当業者は、そのような条件を、核酸および細胞などの状況を考慮して決定することができる。例えば、核酸がDNAである場合、そのような条件は、pH: 6.0〜8.0;温度:30〜40℃;塩濃度:0.1〜0.2M(例えば、0.15M)などが挙げられるがそれらに限定されない。
1つの好ましい実施形態において、本発明の方法は、固相または液相で行うことができる。固相の場合、細胞接着分子が細胞への固定を行うので、固相トランスフェクションなどの核酸固相導入が可能になる。特に、神経細胞、初代培養細胞などの従来トランスフェクションなどの核酸の導入が不可能であった細胞でも導入が可能になったことにより、種々の分析ができるようになった。このような分析は、従来不可能であった。また、液相の場合でも、本発明の方法は、核酸導入効率を上昇させることがわかった。液相の場合でも細胞接着分子が効果を有するということは知られておらず、その効果は驚くべきものであった。
好ましい実施形態において、本発明の方法は、本発明の組成物と核酸(例えば、DNA)とが支持体に固定されていることが好ましい。支持体は、どのような材料であってもよいが、好ましくは細胞と適合性である。そのような細胞に適合性の材料は、上述したとおりである。固定されることによって、チップを用いた種々の因子の分析を行うことが可能となった。
別の実施形態において、本発明の方法はまた、本発明の組成物および核酸(例えば、DNA)を支持体に固定する工程をさらに包含する。
好ましい実施形態において、本発明の組成物および核酸を支持体に固定する方法としては、例えば、インクジェット方式、バブルジェット(登録商標)方式、手動方式などが挙げられるがそれらに限定されない。
好ましい実施形態では、本発明は、核酸が導入された細胞を分化誘導させる工程を含んでいてもよい。
別の局面において、本発明は、細胞に核酸を導入するためのキットを提供する。このキットは、A)a)細胞接着分子;およびb)遺伝子導入試薬、を含む、組成物;ならびにB)該組成物と、所望の遺伝子をコードする核酸(例えば、DNA)とともに使用する方法を記載した指示書、とを備える。ここで、細胞接着分子および遺伝子導入試薬は、本明細書において上記され、実施例において例示されるようなものである。指示書は、核酸と、本発明の組成物とをどのように処理して、核酸を導入することが実現されるかを記載している。そのような指示書は、本明細書において上記されるとおり、どのような形態であってもよい。好ましい実施形態では、本発明は、分化誘導因子を含んでいてもよい。
別の局面において、a)細胞接着分子;およびb)遺伝子導入試薬、を含む、組成物の、細胞に核酸を導入するための使用に関する。そのような組成物の組成、核酸、細胞などの説明は上記されている。好ましい実施形態では、本発明の組成物は、分化誘導因子を含んでいてもよい。
(細胞の分化誘導のための組成物、方法およびキット)
1つの局面において、本発明は、固相上で細胞に核酸を導入するための組成物であって、上記細胞は、核酸導入後も分化誘導する能力が保持される、組成物を提供する。ここで、本発明の組成物は、A)細胞接着分子;およびB)遺伝子導入試薬、を含む。このような組成物を用いて核酸導入された細胞は、核酸導入後も分化誘導する能力を保持していた。このような現象はこれまでに達成されておらず、従って、本発明は、従来技術から予測できなかった効果を奏するといえる。
好ましい実施形態では、組成物自体が分化誘導因子を含んでいてもよく、別々に提供されていてもよい。分化誘導を制御する必要がある場合、好ましくは、分化誘導因子は、核酸を導入するために用いられる組成物とは別々に提供される。
分化誘導因子は、所望される分化を達成することができる限りどのような因子を用いてもよいが、例えば、細胞増殖因子を挙げることができる。細胞が神経である場合、用いられる分化誘導因子は、神経成長因子(NGF)を含み得る。
別の局面において、本発明は、固相上で細胞に核酸を導入するための方法を提供する。この方法は、A)a)細胞接着分子;およびb)遺伝子導入試薬、を含む、組成物を、導入が意図される核酸とともに、上記細胞に提供する工程;ならびにB)核酸が導入される条件に上記細胞をさらす工程を包含する。ここで、上記細胞は、上記核酸導入後も分化誘導する能力が保持される。
1つの実施形態において、本発明の上記方法において用いられる組成物は、分化誘導因子を含んでいてもよいし、別々の組成物として提供されていてもよい。
好ましい実施形態において、使用される分化誘導因子としては、細胞増殖因子(例えば、神経成長因子(NGF)など)を挙げることができるがそれらに限定されない。このような細胞増殖因子は、使用する細胞により変動することが理解される。
別の実施形態において、本発明の方法、上記細胞を分化誘導させる工程をさらに包含する。
別の局面において、本発明は、固相上で細胞に核酸を導入し、かつ、上記細胞を分化誘導させるための組成物を提供する。ここで、この組成物は、A)細胞接着分子;B)遺伝子導入試薬;およびC)分化誘導因子を含む。そのような組成物の組成、核酸、細胞などの説明は上記されており、任意に好ましい実施形態を採用することができることが理解される。
別の局面において、本発明は、固相上で細胞に核酸を導入し、かつ、上記細胞を分化誘導させるためのキットを提供する。このキットは、A)a)細胞接着分子;およびb)遺伝子導入試薬を含む、組成物、ならびにB)分化誘導因子を備える。そのような組成物の組成、核酸、細胞などの説明は上記されており、任意に好ましい実施形態を採用することができることが理解される。ここで、好ましくは、このキットにおいて、分化誘導因子は、上記組成物とは別個に配置される。
好ましい実施形態では、本発明のキットは、核酸導入、分化誘導などの手順を示した指示書を備えていてもよい。
別の局面において、本発明は、固相上で細胞に核酸を導入し、かつ、上記細胞を分化誘導させる方法を提供する。この方法は、A)a)細胞接着分子;およびb)遺伝子導入試薬を含む、組成物を、導入が意図される核酸とともに、上記細胞に提供する工程;ならびにB)核酸が導入される条件に上記細胞をさらす工程;およびC)上記細胞を分化誘導する工程、を包含する。そのような組成物の組成、核酸、細胞などの説明は上記されており、任意に好ましい実施形態を採用することができることが理解される。ここで、好ましくは、この方法において、分化誘導は、核酸導入とは独立して行われる。
(遺伝子治療)
特定の実施形態において、本発明において組成物が核酸を含む場合、その核酸に関連するポリペプチドの異常な発現および/または活性に関連した疾患または障害を処置、阻害または予防するために、本発明の組成物が遺伝子治療の目的で投与される。遺伝子治療とは、発現されたか、または発現可能な核酸の、被験体への投与により行われる治療をいう。本発明のこの実施形態において、核酸は、それらのコードされたタンパク質を産生し、そのタンパク質は治療効果を媒介する。
当該分野で利用可能な遺伝子治療のための任意の方法が、本発明に従って使用され得る。例示的な方法は、以下のとおりである。
遺伝子治療の方法の一般的な概説については、Goldspielら,Clinical Pharmacy 12:488−505(1993);WuおよびWu,Biotherapy 3:87−95(1991);Tolstoshev,Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol.32:573−596(1993);Mulligan,Science 260:926−932(1993);ならびにMorganおよびAnderson,Ann.Rev.Biochem.62:191−217(1993);May,TIBTECH 11(5):155−215(1993)を参照のこと。遺伝子治療において使用される一般的に公知の組換えDNA技術は、Ausubelら(編),Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,NY(1993);およびKriegler,Gene Transfer and Expression,A Laboratory Manual,Stockton Press,NY(1990)に記載される。
本発明が医薬として使用される場合、そのような医薬は経口的または非経口的に投与され得る。あるいは、そのような医薬は、静脈内または皮下で投与され得る。全身投与されるとき、本発明において使用される医薬は、発熱物質を含まない、薬学的に受容可能な水溶液の形態であり得る。そのような薬学的に受容可能な組成物の調製は、pH、等張性、安定性などを考慮することにより、当業者は、容易に行うことができる。本明細書において、投与方法は、経口投与、非経口投与(例えば、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、粘膜投与、直腸内投与、膣内投与、患部への局所投与、皮膚投与など)であり得る。そのような投与のための処方物は、任意の製剤形態で提供され得る。そのような製剤形態としては、例えば、液剤、注射剤、徐放剤が挙げられる。
本発明の医薬は、必要に応じて生理学的に受容可能なキャリア、賦型剤または安定化剤(日本薬局方第14版またはその最新版、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition,A.R.Gennaro,ed.,Mack Publishing Company,1990などを参照)と、所望の程度の純度を有する組成物とを混合することによって、凍結乾燥されたケーキまたは水溶液の形態で調製され保存され得る。
本発明の処置方法において使用される組成物の量は、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、細胞の形態または種類などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。本発明の処置方法を被検体(または患者)に対して施す頻度もまた、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、および治療経過などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。頻度としては、例えば、毎日−数ヶ月に1回(例えば、1週間に1回−1ヶ月に1回)の投与が挙げられる。1週間−1ヶ月に1回の投与を、経過を見ながら施すことが好ましい。
本発明が化粧品、食品、農薬など別の用途で使用されるときもまた、当局の規定する規制を遵守しながら化粧品などを調製することができる。
本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
以上、本発明を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供したのではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
以下に実施例を示して本発明をさらに詳しく説明するが、この発明は以下の例に限定されるものではない。以下の実施例において用いられる試薬、支持体などは、例外を除き、Sigma(St.Louis,USA、和光純薬(大阪、日本)、松浪硝子(岸和田、日本)などから市販されるものを用いた。
(実験方法)
(物質および方法)
PC12細胞(ラット褐色細胞腫細胞)(ATCC、CRL-1721)は、37℃、5%CO下で、10%ウシ血清および抗生物質(ペニシリンおよびストレプトマイシン)を含有するDMEM(Dulbeccos modified Eagle medium)(14246−25、Nakalai Tesque,JPN)中で培養した。Neuro2a細胞は、37℃、5%CO下で、10% FBS(胎仔ウシ血清)(29−167−54、Lot No.2025F、Dainippon Pharmaceutical CO.,LTD.,JPN)および抗生物質を含有するDMEM中で培養した。
(局所トランスフェクション(LT)細胞アレイのための細胞播種)
チップ(Matsunami Glass Ind.,LTD.,JPN)の9mmグリッド毎に、上記細胞を含む15μl滴の培養培地を播種し、37℃、5%CO下でインキュベートしてこの細胞を基板に接着させ、その後、培養培地を添加してさらに48時間インキュベートした。PC12細胞およびNeuro2a細胞の細胞増殖を考慮して、それぞれ、4500個および3750個の細胞を各グリッドに播種した。
(局所トランスフェクションのためのプロトコル)
各細胞株に適したトランスフェクション試薬を、いくつかのトランスフェクションアッセイによって決定した。PC12細胞については、トランスフェクション試薬として、リポフェクタミン2000(11668−019、Invitrogen corporation、CA)を含有する試薬を選択した。1.5μlのpEGFPを、19μlのDMEMで希釈した。pDNAを穏やかに希釈した後、4.5μlのリポフェクタミン2000を添加し、得られた混合物を室温にて静置して脂質DNA複合体を形成させた。Jet−PEI NP5(101−30、Polyplus−transfection、France)については、1.5μlのpEGFPを、10.5μlのDMEMで希釈した。3μlの7.5mM Jet−PEIポリマー(101−30、Polyplus−transfection、France)を添加し、得られた混合物を室温にて静置してポリマー/pDNA複合体を形成させた。10μl用ピペットチップを用いて、30nlのトランスフェクション複合体を各グリッドに5回スポットし、これをクリーンベンチで乾燥させた。細胞を含む15μl滴を各グリッドに播種し、37℃、5% CO下でインキュベートした後、培養培地を添加した。37℃、5% CO下で細胞をさらに48時間インキュベートし、その後、蛍光を観察した。
(溶液相トランスフェクションのためのプロトコル)
PC12細胞の溶液相トランスフェクションは、Invitrogenのリポフェクタミン2000トランスフェクション用プロトコルを用いて実施した。トランスフェクション溶液の表面積および量を制限するために、ガラススライド上に、シリコンガスケット(表面積10cm)を置いた。次いで、トランスフェクション試薬の量を、販売元のマニュアルに基づき計算した。
(ECMタンパク質によるガラススライドのコーティング)
培養皿として、TEFLON(登録商標)の薄層によって隔てられた48個の正方形区画(9mm表面積)を有するプレーンなガラススライドおよびPLLプレコートガラススライドを使用した。フィブロネクチンのコーティングのために、フィブロネクチン(FN)(16042−41、Nakalai Tesque、JPN)(1mg/ml)溶液を水で希釈した(終濃度0.1μg/ml)。次いで、この溶液400μlを、8つの正方形区画の領域を覆うよう、ガラススライドに添加した。室温にて1時間インキュベートした後、この溶液を取り除き、次いで、超純水でこれらの正方形区画を1度洗浄した。I型コラーゲンのコーティングのために、コラーゲン−1(Type I-C、新田ゼラチン株式会社生物科学研究所)(3mg/ml)を、0.15M酢酸で希釈した(終濃度100μg/ml)。次いで、8つの正方形区画を覆うよう、ガラススライド上にこの溶液400μlを添加した。室温にて1時間インキュベートした後、この溶液を取り除き、次いで、PBSでこれらの正方形区画を1度洗浄した。IV型コラーゲンのコーティングのために、コラーゲン−IV(BDBiosciences、CA、354233)(550μg/ml)を、0.15M酢酸中に希釈した(終濃度100μg/ml)。次いで、8つの正方形区画を覆うよう、ガラススライド上にこの溶液400μlを添加した。室温にて1時間インキュベートした後、この溶液を取り除き、次いで、PBSでこれらの正方形区画を1度洗浄した。
(蛍光イメージング)
蛍光イメージングのために、細胞培地を完全に取り除き、次いで、5%PFAを用いて細胞を固定した。この細胞を、PBSで1度洗浄し、培地成分によるバックグラウンドの蛍光を除いた。次いで、アレイスキャナ(GeneTAC UC4×4、Genomic Solutions Inc.,MI)または共焦点顕微鏡(LSM510,Carl Zeiss Co.,Ltd.,Germany)を用いて蛍光を観察した。さらに、プログラム(Image Quant ver5.2,Molecular Dynamics Inc.,CA,USA)を用いて蛍光強度を評価した。
(実施例1:細胞形態の変化)
細胞外マトリクス(ECM)タンパク質(フィブロネクチン、コラーゲンIV型、コラーゲンI型、ラミニン)でコーティングした培養皿において2時間インキュベートした後、位相顕微鏡(図1A〜D)および共焦点顕微鏡(図1E、F)を用いてPC12細胞の形態変化を観察した。観察前に、SYTO(Molecular Probe,Inc.,Eugene,OR,USA)染色により核を可視化した。図1A〜Dに示されるように、使用したECMコーティングによって、細胞の分布、大きさ、および形状は、顕著に異なっていた。コラーゲンIV上で培養した細胞は、細胞の接着および伸展による扁平化に関して最も大きな増加を示した。核の細胞分布、大きさ、および形状もまた、使用したECMコーティングによって顕著に異なっていた(図1E、図1F1)。接着した細胞は、周囲の形態を星形状に変化させた。これは、アクチン線維の伸長および投射領域の増大に起因する。他のECMタンパク質上での細胞増殖によっては、周囲の形状はほとんど変化せず、IV型コラーゲンの場合のような投射領域の増大を示さなかった。I型コラーゲン上でのみ、同様の星形状が観察されたが、IV型コラーゲンに匹敵するほど投射領域の増加を示さなかった。図1F2は、IV型コラーゲンを用いた場合と、PLLを用いた場合とを、経時的に(1時間、2時間、3時間、6時間)観察した結果を示す。徐々に核が拡張し、核酸が導入されやすい形態となっていることが示される。
図1F3は、PC12細胞について、コラーゲンIV型およびフィブロネクチンを用いた場合の位相顕微鏡による観察結果(1時間および2時間=(a))、ならびに、コラーゲンIV型、フィブロネクチン、コラーゲンI型およびラミニンについて観察した結果(3時間=(b))を示す。これをもとに、核の相対面積をグラフ化したものを図1F3(c)に示す。相対面積は、全体の面積中の核の占める面積を相対比として示した。
図1F3から明らかなように、核の相対面積が広がるほど、トランスフェクション効率が高くなることが示された。従って、他のECMタンパク質を用いる場合でも、各の相対面積が例えば、好ましくは0.1を超えるものを採用することによって、核酸の導入効率が上昇することが理解される。
また、図1Gとして、トランスフェクションチップ(スライドガラス、PLLコート)上に3mm×3mmに3000−6000個の細胞を播種したときの細胞接着形態を示す。
Neuro2a細胞もまた、同様の結果を示す。図1Hとして、コラーゲンIV型(0.005mg/ml)をコーティングしたPLLコートスライドにおけるNeuro2a細胞を示す。示されるように、形態において顕著な変動が示される。
(実施例2:細胞接着の経時的変化)
各々のECM上に対するPC12細胞の接着の経時変化は、位相顕微鏡により得られた知見を支持するものであった。図2に示される通り、最も早く、最も安定な接着は、IV型コラーゲンを用いた場合に観察された。細胞は、30分後にはすでに十分に接着しており、観察した時間全体を通して強い接着を維持していたようである。I型コラーゲンに対する細胞接着は、それよりも遅かったが、ほぼ同程度の安定な接着を示した。フィブロネクチンおよびラミニンに対するPC12細胞の接着は、時間と共に接着率が増加する傾向を示したが、コラーゲン基質の場合よりも有意に低い接着率であった。
次に、Neuro2a細胞における経時的変化を見た。図2Bにおけるように、細胞の固定効果は通常予想されるとおりに示された。
(実施例3:細胞におけるトランスフェクション効率に対するECMタンパク質の影響)
CMVプロモーターEGFP構築ベクターのトランスジェニック遺伝子発現を、共焦点顕微鏡を用いて蛍光細胞によって測定した。本発明者らは、プレーンなガラススライドのECMタンパク質によるコーティングの効果を、PLLでプレコーティングした場合としなかった場合とで調査した(PC12細胞、図3;Neuro2a細胞、図2C)。本発明者らは、ECMタンパク質およびプレコーティングに基づくトランスフェクション効果の違いを試験した。PLLプレコートスライドにおいて、IV型コラーゲンは、トランスフェクションを、PLLコーティングのみの場合と比較して約1000倍まで増大させた。PLLコートスライド上でのラミニンは、IV型コラーゲンの場合と同程度の接着を示したが、トランスフェクション効率はそれよりも低かった(500倍)。I型コラーゲンに対する接着は、IV型コラーゲンおよびラミニンの場合よりも弱かったが、トランスフェクション効率の増大は、IV型コラーゲンの場合と同程度であった。フィブロネクチンに対するPC12細胞接着は弱かったので、トランスフェクションプロセス中に、トランスフェクション試薬によるダメージによって有意な剥離を引き起した。フィブロネクチン上になおも残存していた細胞は、PLLのみを用いた場合よりも高効率のトランスフェクションを示したが、それは無視できる程度であった。非コーティングガラススライド上でのECMタンパク質の効果は、PLLでプレコーティングした場合に観察される効果とわずかに異なるパターンを示した。I型コラーゲンに対する接着およびトランスフェクション効率は、PLLプレコーティングの場合と比較して増大した。フィブロネクチン、ラミニン、およびIV型コラーゲンは、プレーンなスライド上でのトランスフェクション効率に対する効果が、PLLプレコーティングの場合よりも劣っていた。このような効果は、PLLプレコートスライドと比較した場合、プレーンなスライド上での、IV型コラーゲンについてはより低い接着、I型コラーゲンについてはより高い接着により説明され得る。協調的な効果もまた考えられ得る。
また、図2Cに示されるように、Neuro2a細胞でも、同様に、コラーゲンIV型およびI型のトランスフェクション効率の上昇効果が確認された。
次に、コラーゲンIV型のPLLコートおよびプレーンなスライドにおける隔離効果を検証した。図3Cに示されるように、PLLコーティングを行ったところ、トランスフェクションの隔離効果(固定による効果)が顕著であったが、プレーンなスライドでもこの効果は確認された。
次に、各種ECMを用いてコーティングのトランスフェクションに対する効果を確認した。その結果を図3A、3Bおよび3Dに示す。コラーゲン(I型、IV型)およびラミニンでトランスフェクション効率が上昇したことがわかった。コラーゲンによる効果がPLLおよびプレーンで高いことが示される。図3Eには、その強度を数値化したグラフを示す。コラーゲンの効果が顕著であることがより鮮明にわかる。図3Fは、図3Dのものの実際の細胞固定の様子を示す。フィブロネクチンは、固定効果が薄いが、コラーゲンおよびラミニンは比較的固定効果がある上に、トランスフェクション効率上昇効果があることがわかる。図3Gは、スライド表面処理の種類による各種ECMの効果の経時変化を示す。このように、コラーゲンの効果が顕著であるがどのECMも多かれ少なかれ接着効果を有することがわかる。
(実施例4:Ca2+媒介遺伝子発現に対するECMタンパク質の効果)
Ca2+の媒介する遺伝子発現に対するECMタンパク質の影響に関する情報を得るために、PLL、フィブロネクチン、I型コラーゲン、IV型コラーゲン上で増殖させたPC12細胞における核周囲空間からのCa2+放出の変化を、Fura2技術を用いて観察した(図4)。培養液にて5μMに希釈したFura2-AM中にて細胞を37℃にて15分間接触させた後、培地にて洗浄。この方法によりFura2-AMを細胞内に導入した。予備実験からのデータは、フィブロネクチンコーティングした皿と比較して、IV型コラーゲン培養皿で増殖させた細胞において有意なCa2+濃度の増加を示した。この結果は、ECMを認識する細胞表面インテグリンレセプターにより誘導された、分子変化の可能性を示す。これは、細胞接着の効果を凌ぐものである。Ca2+に依存する遺伝子発現は有意に変化したが、トランスフェクションの効果に対する適切な影響もまた影響を与えることが考えられ得る。
(実施例5:種々の細胞株に対するECMタンパク質の効果)
異なる種類の細胞株における細胞接着およびトランスフェクション効率に影響を及ぼすたった1つのECMタンパク質が存在するか否か、または各タイプ(またはクラス)の細胞に特異的なECMタンパク質が存在するか否かを調査するために、本発明者らは、種々の細胞株(hMSC、3T3、HepG2、PC12、Neuro2a(hMSC:Cambrex BioScience Walkersville,Inc.,MD、PT−2501;NIH3T3−3:RIKEN Cell Bank,JPN、RCB0150;HepG2:RIKEN Cell Bank,JPN、RCB1648;PC12:ATCC、CRL-1721;Neuro2a:ATCC、CCL-131)に対するフィブロネクチン、I型コラーゲン、IV型コラーゲン、ラミニンの効果を試験した(図5)。hMSC(PT−2501、Cambrex BioScience Walkersville,Inc.,MD)の場合、フィブロネクチンは、最も安定なECMタンパク質であることが示された。他のECMは、PLLコーティングしたスライドと比較してトランスフェクションを増大しなかった。
(実施例6:PC12細胞のための、局所トランスフェクションアレイ)
本発明者らは、溶液相トランスフェクションにおいて得たこれまでの知見を、本発明者らのLTトランスフェクションアレイシステムに適用し、神経細胞株についての高密度チップに基づく遺伝子発現スクリーニングの可能性を模索した。一般的に、トランスフェクションは、トランスフェクション混合物がスポットされた領域に局在化される。異なるECM上で増殖させたPC12細胞は、溶液相方法において観察されたものと同じ傾向を示した。I型コラーゲンおよびIV型コラーゲンでコーティングしたグリッドにおいて、最大40個のトランスフェクション体が、30nlのトランスフェクション複合体(約1nlのpEGFPを含む)をスポットした領域で観察された。溶液法と比較して、より多くの細胞が、トランスフェクションプロセスを通して接着状態を維持した。この効果は、未処理(プレーンともいう)スライドガラス基板、フィブロネクチン、PLL、PLL+フィブロネクチンの場合にはっきりと確認でき、溶液法と対照的に、最大10個のトランスフェクション体が、1つのスポット上に観察された。これらの発見は、本発明者らの局所トランスフェクション法により、トランスフェクションプロセス時の細胞への損傷が減少し、それによって細胞の生存性およびゆがみが増大することを示唆する。
(実施例7:バイオアレイへの応用)
次に、上述の本発明の効果がアレイを用いた場合でも実証されるかどうかを確認するために規模拡大して実験を行った。
(実験プロトコル)
(細胞供給源、培養培地、および培養条件)
この実施例では、5種類の異なる細胞株を使用した:ヒト間葉系幹細胞(hMSC、PT−2501、Cambrex BioScience Walkersville,Inc.,MD)、ヒト胚性腎細胞HEK293(RCB1637、RIKEN Cell Bank,JPN)、NIH3T3−3(RCB0150、RIKEN Cell Bank,JPN)、HeLa(RCB0007、RIKEN Cell Bank,JPN)、PC12細胞(CRL-1721、ATCC)およびHepG2(RCB1648、RIKEN Cell Bank,JPN)(例示細胞として妥当かどうかご教示ください)。ヒトMSC細胞の場合、この細胞を、市販のヒト間葉細胞基底培地(MSCGM BulletKit PT−3001,Cambrex BioScience Walkersville,Inc.,MD)中で維持した。HEK293細胞、NIH3T3−3細胞、HeLa細胞およびHepG2細胞の場合、これらの細胞を、10% ウシ胎仔血清(FBS、29−167−54、Lot No.2025F、Dainippon Pharmaceutical CO.,LTD.,JPN)を有するダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、L−グルタミンおよびピルビン酸ナトリウムを有する高グルコース(4.5g/L);14246−25、Nakalai Tesque,JPN)中で維持した。全ての細胞株を、37℃、5% COに制御されたインキュベーター中で培養した。hMSCを含む実験において、本発明者らは、表現型の変化を回避するために、5継代未満のhMSCを使用した。
(プラスミドおよびトランスフェクション試薬)
トランスフェクションの効率を評価するために、pEGFP−N1ベクターおよびpDsRed2−N1ベクター(カタログ番号6085−1、6973−1、BD Biosciences Clontech,CA)を使用した。共に遺伝子発現は、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターの制御下であった。トランスフェクトされた細胞は、それぞれ、連続的にEGFPまたはDsRed2を発現した。プラスミドDNAを、Escherichia coli、XL1−blue株(200249,Stratagene,TX)を使用して増幅し、そしてEndoFree Plasmid Kit(EndoFree Plasmid Maxi Kit 12362、QIAGEN、CA)によって精製した。全ての場合において、プラスミドDNAを、DNaseおよびRNaseを含まない水に溶解した。トランスフェクション試薬は以下のようにして得た:Effectene Transfection Reagent(カタログ番号301425、Qiagen、CA)、TransFastTM Transfection Reagent(E2431、Promega、WI)、TfxTM−20 Reagent(E2391、Promega、WI)、SuperFect Transfection Reagent(301305、Qiagen、CA)、PolyFect Transfection Reagent(301105、Qiagen、CA)、LipofectAMINE 2000 Reagent(11668−019、Invitrogen corporation、CA)、JetPEI(×4)conc.(101−30、Polyplus−transfection、France)、およびExGen 500(R0511、Fermentas Inc.,MD)。
(固相系トランスフェクションアレイ(SPTA)生成)
プロトコルの詳細は、ウェブサイト http://staffa.wi.mit.edu/sabatini_public/reverse_transfection.htm の「Reverse Transfection Homepage」に記載されていた。本発明者らの固相系トランスフェクション(SPTA方法)において、疎水性フッ素樹脂コーティングによって分離した48平方パターン(3mm×3mm)を有する3つの型のスライドガラス(シラン処理したスライドガラス;APSスライド、およびポリ−L−リジンでコーティングしたスライドガラス;PLLスライド、およびMASでコーティングしたスライド;Matsunami Glass Ind.,LTD.,JPN)を研究した。
(プラスミドDNAプリンティング溶液の調製)
SPTAを生成するための2つの異なる方法を開発した。その主な違いは、プラスミドDNAプリンティング溶液の調製にある。
(方法A)
Effectene Transfection Reagentを使用する場合、プリンティング溶液は、プラスミドDNAおよび細胞接着分子(4mg/mLの濃度で超純水に溶解したコラーゲンI型、コラーゲンIV型、ラミニン、ウシ血漿フィブロネクチン(カタログ番号16042−41、Nakalai Tesque、JPN)を含んだ。上記の溶液を、インクジェットプリンタ(synQUADTM、Cartesian Technologies,Inc.,CA)を用いてか、または手動で0.5〜10μLチップを用いて、スライドの表面に適用した。このプリントしたスライドガラスを安全キャビネットの内側で室温にて15分間かけて乾燥させた。トランスフェクションの前に、総Effectene試薬を、DNAプリントしたスライドガラス上に静かに注ぎ、そして室温にて15分間インキュベートした。過剰のEffectene溶液を、吸引アスピレーターを用いてスライドガラスから除去し、そして安全キャビネットの内側で室温にて15分間かけて乾燥させた。得られたDNAプリントしたスライドガラスを、100mm培養ディッシュの底に置き、そして約25mLの細胞懸濁液(2〜4×10細胞/mL)を、このディッシュに静かに注いだ。次いで、このディッシュを37℃、5% COのインキュベーターに移し、2〜3日間インキュベートした。
(方法B)
他のトランスフェクション試薬(TransFastTM、TfxTM−20、SuperFect、PolyFect、LipofectAMINE 2000、JetPEI(×4)conc.またはExGen)の場合、プラスミドDNA;コラーゲンI型、コラーゲンIV型、ラミニンまたはフィブロネクチン;およびトランスフェクション試薬を、製造業業者が配布する指示書に示される比率に従って1.5mLのマイクロチューブ中で均一に混合し、そしてチップ上にプリンティングする前に室温にて15分間インキュベートした。プリンティング溶液を、インクジェットプリンターまたは0.5〜10μLチップを用いてスライドガラスの表面上に適用した。このプリントしたスライドガラスを、安全キャビネットの内側で室温にて10分間かけて完全に乾燥させた。プリントしたスライドガラスを100mm培養ディッシュの底に置き、そして約3mLの細胞懸濁液(2〜4×10細胞/mL)を添加し、安全キャビネットの内側で室温にて15分間にわたってインキュベートした。インキュベーション後、新鮮な培地をこのディッシュに静かに注いだ。次いで、このディッシュを37℃、5% COのインキュベーターに移し、2〜3日間インキュベートした。インキュベーション後、本発明者らは、蛍光顕微鏡(IX−71、Olympus PROMARKETING,INC.,JPN)を用いて、増強された蛍光タンパク質(EFP、EGFP、およびDsRed2)の発現に基づいてトランスフェクト体を観察した。位相差画像を同じ顕微鏡を用いて撮った。両プロトコルにおいて、細胞をパラホルムアルデヒド(PFA)固定方法(PBS中の4% PFA、処理時間は、室温にて10分間)を用いることによって固定した。
(レーザー走査および蛍光強度定量)
トランスフェクション効率を定量するために、本発明者らは、DNAマイクロアレイスキャナ(GeneTAC UC4×4、Genomic Solutions Inc.,MI)を使用した。総蛍光強度(任意の単位)を測定した後、表面積あたりの蛍光強度を計算した。
(結果)
(局所的トランスフェクション)
トランスフェクションアレイチップは、PLLコーティングされたスライドグラス上でDNA/トランスフェクション試薬およびコラーゲンI型、コラーゲンIV型、ラミニンなどの細胞接着因子を含む細胞培養液をマイクロプリントすることによって構築した。
種々の細胞をこの実施例において用いた。これらの細胞は、通常使用される培養条件で培養した。これらの細胞はスライドガラスに付着することから、細胞は、効率よく取り込まれ、そしてアレイ上に与えられた位置でプリントされたDNAに対応する遺伝子を発現した。通常のトランスフェクション方法(例えば、カチオン性脂質またはカチオン性高分子媒介トランスフェクション)と比較すると、本発明の方法を用いた場合のトランスフェクション効率は、いずれも顕著に高かった。特に、トランスフェクトすることが困難とされていたHepG2、hMSCなどのような組織幹細胞、PC12細胞のような神経系の細胞でも、効率よくトランスフェクトされることが見出されたことは、特に重要である。hMSCの場合には、従来方法の約40倍以上の効率上昇が見られた。また、高密度アレイに必要な高い集積度も達成された(すなわち、アレイ上で隣接するスポット同士の間の夾雑が顕著に減っていた)。これは、EGFPおよびDs−REDのチェック状パターンのアレイを生成することによって確認した。ヒトMSCをこのアレイにおいて培養し、実質的にすべての空間解像度が示されるように対応する蛍光タンパク質を発現させた。その結果ほとんど夾雑していないことが明らかになった。プリント混合物の個々の成分の役割に関するこの研究に基づいて、種々の細胞に関して、トランスフェクション効率の最適化を行うことができる。
(コラーゲンI型、コラーゲンIV型、ラミニンなどの細胞接着因子による局所的トランスフェクションにおける効率化)
本発明者らの上述してきたデータを総合すると、コラーゲンI型、コラーゲンIV型、ラミニンなどの細胞接着因子は、遺伝子導入試薬の導入効率を格段の上昇させることが明らかになった。そのような活性としては、種々の細胞によって異なるが、これらの活性は、トランスフェクション効率の上昇に関与していることがわかる。なぜなら、液相でも固相でも同様にか、むしろ液相の方がトランスフェクション効率をより上昇させたからである。
(神経細胞の固相系トランスフェクションアレイ)
ネットワークを構築する神経細胞の能力は、神経ネットワークを標的とする研究にとって特に興味深いものになっている。特に、これらの細胞の形質転換についての遺伝子解析は、PC12細胞などの神経細胞の多能性を制御する因子を解明する上で、関心が高まっている。
これを達成するために、従来の方法は、ウイルスベクターまたはエレクトロポレーションのいずれかの技術を含む。本発明者らが開発した複合体−塩という系を用いることにより、種々の細胞株(PC12細胞を含む)に対して高いトランスフェクション効率ならびに密集したアレイ中での空間的な局在の獲得を可能にする固相系トランスフェクションが達成された。固相系トランスフェクションの概略を、図7に示す。
固相系トランスフェクションにより、インビボ遺伝子送達のために使用され得る「トランスフェクションパッチ」の技術的な達成ならびにPC12細胞などの神経細胞における高スループットの遺伝子機能研究のための固相系トランスフェクションアレイ(SPTA)が可能になることが判明した。
哺乳動物細胞をトランスフェクトするための多数の標準的な方法が存在するが、遺伝物質のPC12細胞、初代培養細胞への導入については、HEK293、HeLaなどの細胞株を比較して不便かつ困難であることが知られている。従来使用されるウイルスベクター送達またはエレクトロポレーションのいずれも重要であるが、潜在的な毒性(ウイルス方法)、ゲノムスケールでの高スループット分析を受けにくいこと、およびインビボ研究に対して制限された適用性(エレクトロポレーションに関して)のような不便さが存在する。
固相支持体に簡便に固定することができ、かつ徐放性および細胞親和性を保持した固相支持体固定系が開発されたことにより、これらの欠点のほとんど克服することができた。
マイクロプリンティング技術を使用する本発明者らの技術を用いて、選択された遺伝物質、トランスフェクション試薬および適切な細胞接着分子、ならびに塩を含む混合物を、固体支持体上に固定化し得た。混合物を固定化した支持体の上での細胞培養は、その培養細胞に対する、混合物中の遺伝子の取り込みを可能にした。その結果、支持体−接着細胞における、空間的に分離したDNAの取り込みを可能にした。したがって、これにより、ほぼ均一な条件下で細胞を培養しつつ大量に核酸を取り込ませることができる実験形態を作製することが可能となった。
本実施例の結果、いくつかの重要な効果が達成された:高いトランスフェクション効率(その結果、統計学的に有意な細胞集団が研究され得る)、異なるDNA分子を支持する領域間の低い相互夾雑(その結果、個々の遺伝子の効果が、別々に研究され得る)、トランスフェクト細胞の長期生存、高スループットの互換性のある形式および簡便な検出方法。SPTAは、これらの基準を全て満たすことは、さらなる研究のための適切な基盤となることになる。
これらの目的の達成を明確に確立するために、上述のように本発明者らは、PC12細胞を、本発明者らの方法論(固相系でのトランスフェクション)および従来の液相系トランスフェクションの両方を用いて一連のトランスフェクション条件下で研究した。SPTAの場合、相互夾雑を評価するために、本発明者らは、チェック模様のパターンでガラス支持体上にプリントした赤色蛍光タンパク質(RFP)および緑色蛍光タンパク質(GFP)を使用し、一方、従来の液相系トランスフェクションを含む実験の場合(ここで、本来、トランスフェクト細胞の自発的な空間的分離は達成され得ない)、本発明者らは、GFPを使用した。いくつかのトランスフェクション試薬を評価した:4つの液体トランスフェクション試薬(Effectene、TransFastTM、TfxTM−20、LopofectAMINE 2000)、2つのポリアミン(SuperFect、PolyFect)、ならびに2つの型のポリイミン(JetPEI(×4)およびExGen 500)。
トランスフェクション効率:トランスフェクション効率を、単位面積あたりの総蛍光強度として決定した。使用した細胞株に従って、最適な液相の結果を、異なるトランスフェクション試薬を用いて得た。次いで、これらの効率的なトランスフェクション試薬を、固相系プロトコルの最適化に使用した。いくつかの傾向が観察された。細胞をトランスフェクトするのが困難なPC12細胞の場合においてSPTA方法論に最適化した条件を用いることによって、本発明者らは、細胞の特徴を維持しながら、トランスフェクション効率が数十〜数百倍まで増加したことを観察した。PC12細胞の場合、最良条件は、Lipofectamine2000試薬の使用を含んだ。予想したように、高いトランスフェクション効率を実現するための重要な因子は、試薬組成中の窒素原子(N)の数とプラスミドDNA内のリン酸残基(P)の数との間の電荷バランス(N/P比率)、ならびにDNA濃度である。一般的に、N/P比率および濃度における増大は、トランスフェクション効率の増大を生じる。
チップ上での高いトランスフェクション効率の達成のための重要な点は、使用されるガラスコーティングである。PLLが、トランスフェクション効率および相互夾雑の両方に関して、最良の結果を提供することを発見した(下記に考察する)。フィブロネクチンコーティングしない場合、少数のトランスフェクト体を観察した(他のすべての実験条件は一定に保った)。完全に確立したわけではないが、コラーゲンなどの細胞接着分子の役割はおそらく、細胞接着プロセスを加速し、ゆえに、表面を離れたDNA拡散が可能になる時間を制限するということである。
低い相互夾雑:SPTAプロトコルで観察されたより高いトランスフェクション効率は別として、本技術の重要な利点は、別個に分離された細胞アレイの実現であり、その各位置では、選択した遺伝子が発現する。本発明者らは、フィブロネクチンでコーティングしたガラス表面上に、JetPEI(製造業者が提供する「実験プロトコル」を参照のこと)およびフィブロネクチンと混合した2つの異なるレポーター遺伝子(RFPおよびGFP)をプリントした。得られたトランスフェクションチップを適切な細胞培養に提供した。最良であると見出された実験条件下において、発現されたGFPおよびRFPは、それぞれのcDNAがスポットされた領域に局在した。相互夾雑はほとんど観察されなかった。しかし、フィブロネクチンまたはPLLの非存在下において、相互夾雑は重要であり、そしてトランスフェクション効率は、有意に低かった。このことは、接着した細胞の割合と、支持体表面から離れて拡散するプラスミドDNAとの相対的な割合が、高いトランスフェクション効率および高い相互夾雑の両方に対して重要な因子であるという仮説を立証する。
相互夾雑のさらなる原因は、固体支持体上のトランスフェクション細胞の移動性であり得る。本発明者らは、数個の支持体上での細胞接着速度およびプラスミドDNAの拡散速度の両方を測定した。その結果は、最適条件下においてDNA拡散はほとんど生じないが、高い相互夾雑条件下において、表面からのプラスミドDNAの涸渇は、細胞接着が完了する時間までに相当な量であることを示した。
この確立された技術は、経済的な高スループットの遺伝子機能スクリーニングの状況において特に重要である。実際に、必要とされるトランスフェクション試薬およびDNAの量が少量であること、ならびに全プロセス(プラスミドの単離から検出まで)を自動化が可能であることは、上記の方法の有用性を増大する。
結論として、本発明者らは、細胞接着分子と遺伝子導入試薬とを用いた系で、トランスフェクションアレイを好首尾に実現した。このことは、神経細胞の分化を制御する遺伝子機構の解明など、固相系トランスフェクションを利用した種々の研究における高スループット研究を可能にすることになる。固相系トランスフェクションの詳細な機構ならびに高スループットのリアルタイム遺伝子発現モニタリングに対するこの技術の使用に関する方法論は種々の目的に応用可能であることが明らかになった。
(議論)
細胞培養およびトランスフェクション実験は、インビトロでの培養皿のコーティングに使用したECMタンパク質が、形態、細胞分布、接着、および遺伝子発現に対して重要な効果を保持することを示した。本発明者らは、種々の細胞株HEK293、HEK293T,HeLa、NIH3T3、CHO、HepG2、ヒト間葉幹細胞(hMSC)のための局在化されたトランスフェクション(LT)細胞アレイを用いて報告したように、ECM成分は、未知の遺伝子ネットワークの評価のために有用であることを試験するチップベースの細胞アレイに適した基板であるようだ。この研究は、フィブロネクチンの機能が、接着の役割を凌ぐものであることを明らかにした。インテグリンにより媒介されるフィブロネクチンマトリックス上での細胞の分散が、核のプレーン化を引き起こし、この形状変化は、核Ca2+の一過性の上昇を伴うことが判明している。これらの調査は、Ca2+の核周囲空間からの放出および核への侵入を担う核膜における透過チャネル由来の活性化されたCa2+の存在を示した。次いで、Ca2+により調節された転写因子の活性は、分散した細胞において増強された。本発明者らの最近の報告において、本発明者らはまた、トランスフェクション効率がフィブロネクチンの存在により劇的に増大するという非常に関連する知見を示した。類似の細胞接着プロフィールが、フィブロネクチン(+)およびフィブロネクチン(−)条件で観察されたが、接着細胞の形状は、顕著に異なっていた。アクチンフィラメントの方向の時間依存的な観察と合わせて、このことは、表面に堆積したフィブロネクチンなどの細胞接着分子により誘導されるアクチンフィラメントのオリエンテーションが、トランスフェクション効率の増大において重要な役割を果たすことを示唆する。表面に堆積したフィブロネクチンの存在下で、アクチンフィラメントは、迅速に再配置され、そして細胞拡大のプロセスにおいて核の下に位置する細胞質空間から見えなくなった。さらに、核の表面領域は、フィブロネクチン(+)条件において有意に増大した。このことは、恐らく、機械的ストレスを通してDNA粒子の核通過を容易にしたからだと考えられる。さらに、遺伝子発現と核の形状との間の相関がマイクロパターンにおいて変化することを観察したCarsonらの報告(Carson H.Thomasら、PNAS(2002)Vol.99、No.4、p1972−1977)と緊密に相関する。この報告において、本発明者らは、神経細胞株(特に、神経細胞様PC12細胞)の培養皿またはガラススライド上での接着およびトランスフェクションに適した基板として、IV型コラーゲンを提案する。ラミニンまたはコラーゲン基板で増殖されたPC12細胞は、その細胞骨格と共にそのα1β1インテグリンレセプターの50%を保持することが知られている。α1β1インテグリンヘテロダイマーが、神経細胞においてラミニン/コラーゲン二重レセプターとして作用するという証拠(Tawilら、Biochemistry 1990)は、PC12のそれらのECM成分への同様の接着においてはっきりと見られた。これらの知見は、ラミニンおよびIV型コラーゲン上でのPC12細胞の類似の接着についての十分な説明を与えるが、それらの基板上で獲得されたトランスフェクション体が有意に異なる理由は定かではない。しかし、本発明者らの研究を含め、多くの研究から、細胞のインテグリンに基づく結合および局所的な幾何学的制御は、細胞の微小環境内での増殖および生存の調節のための基礎的なメカニズムを示すことが予想される(Nature Vol 392、730−733、16 April 1998;Science VOL.276、30、1425−1428 MAY 1997;Kubatoら、JBC 1992)。
本発明者らの研究の1つの例示的な目的は、局所トランスフェクション細胞アレイに、神経細胞のような従来外来物質を導入することが困難とされていた細胞を適用するために、トランスフェクション効率および/または細胞接着を増大することである。本発明者らは、上記発見に対する本発明者らのアプローチについての技術的ストラテジーを基礎とし、IV型コラーゲンコーティングに基づく神経細胞株のためのチップベースのLT細胞アレイの可能性を探索した(図6)。この技術は、パラレルなcDNA遺伝子発現研究のバリデーションのための重要なハイスループットツールであることが証明された。さらに、この細胞アレイは、単一遺伝子の過剰発現により、形態変化、細胞増殖、または代替の観察のための微小スケールの過剰発現アレイとして使用され得る。
(実施例8:核酸導入効率は遺伝子導入試薬の種類に依存しない)
次に、本発明に従う核酸導入の核酸導入効率は遺伝子導入試薬の種類に依存しないことを本実施例で実証した。
以下の表に示すような量で混合した組成物を調製した。
ここで、使用した試薬は、それぞれ、以下の通りである:Transfectin(170−3350; BIO−RAD,USA,CA)、LipofectAMINE 2000 Reagent(11668−019,Invitrogen corporation,CA)、SureFECTOR(EM−101−001,B−Bridge,USA,CA)、JetPEI(×4)conc.(101−30,Polyplus−transfection,France)、SuperFect Transfection Reagent(301305,Qiagen,CA)およびTransIT(MIR2304; Mirus Co.,USA,WI)。
この試薬を用いて、実施例4および5に示されるような実験条件を用いてPC12細胞に対する各種ECMタンパク質の効果が、遺伝子導入試薬の種類に依存しないことを示した。
その結果を、図8に示す。aは、各種SECMタンパク質(フィブロネクチン、コラーゲンI、コラーゲンIVおよびラミニン)における、核酸導入の様子を示す。緑色に染まるものが、導入された遺伝子の産物になる。bは、各種ECMタンパク質の効果が、遺伝子導入試薬の種類に依存しないことを示す。z軸は、トランスフェクション効率であり、x軸には各種メーカーの遺伝子導入試薬を示し、y軸には各種ECMタンパク質またはその非存在下である条件を示す。
(実施例9:コラーゲンIVコートチップ上におけるPC12細胞のトランスフェクションマイクロアレイのsiRNAを用いた応用例)
次に、siRNAを用いた遺伝子発現抑制実験を本実施例において行った。本実施例では、EGFPに対するsiRNAが特異的にEGFPの発現を抑制できるかどうかを指標に本発明が機能するかどうかを評価した。
実施例7などに記載されるような条件を用いて、コラーゲンIVをコーティングしたアレイ上でPC12のトランスフェクションを行った。実施例7において使用される遺伝子に代えて、以下の条件を使用した。
0.75ngの発現ベクター(pEGFP−N1)、HcRed(BD Biosciences Clontech,CA)をそれぞれアレイ上の1スポットにスポッティングした。この後、16.5ngのsiRNA(Dharmacon (Lafayette,CO)anti−EGFP siRNA :5’−AAGCAGCAGGACUUCUUCAAG−3’配列番号25=a)またはスクランブルsiRNA(ネガティブコントロール、Scramble II Duplex,Dharmacon:5’−AAGCGCGCUUUGUAGGAUUCG−3’配列番号26=b)をこのスポットに適用した。
結果を図9に示す。図9Aに示されるように、EGFPベクターおよび抗EGFP siRNAを共トランスフェクションしたPC12細胞の場合、HcRedのみが発色し、pEGFP−N1に由来する緑色信号が抑制されていたことが判明した。他方、図9Bに示されるように、スクランブルsiRNAの場合は、緑色の蛍光が観察され、図9Aにおける効果は、RNAiの効果であることが確認された。図9Aおよび図9Bにおける蛍光の強度を相対的に示した図を図9Cに示す。y軸は相対輝度により示す。EGFPによる効果は、ほぼ完全に抑えられていることが分かる。
(実施例10:NGFにより核酸導入されたPC12細胞はアレイ上で分化する)
次に、固相支持体の上で核酸が導入された細胞が、分化誘導因子の存在下で分化が実際に核酸導入後も誘導されるかどうかを実証した。
アレイの調製などは、実施例7に記載される条件に従った。使用したECMタンパク質としては、フィブロネクチン、コラーゲンI型、コラーゲンIV型、およびラミニンが含まれた。図10Aに示されるように、これらのECMタンパク質によるコーティングによって、程度の差はあれ、核酸が導入されていたことが分かる。
次に、トランスフェクション後3日間アレイ上で細胞を培養した後、神経成長因子(NGF)(Chemicon Int.USA,CA)を0.1μg/mlの存在下で分化誘導させた。その結果を図10Bに示す。図10B(左から倍率は、50倍、200倍)は、トランスフェクションアレイにおける分化の様子をスキャン造影したものを示す(左)。図10Bの真ん中は、PC12細胞のトランスフェクション後3日目の顕微鏡写真を示す。図10Bの右は、NGF誘導後1日後の写真を示す。示されるように、PC12細胞が、神経様に分化している様子が明らかになった。
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
実施例における位相顕微鏡(図1A〜D)および共焦点顕微鏡(図1E〜F)を用いて観察されたPC12細胞の形態変化。図1Aは、フィブロネクチンの効果を示す。 実施例における位相顕微鏡(図1A〜D)および共焦点顕微鏡(図1E〜F)を用いて観察されたPC12細胞の形態変化。図1Bは、I型コラーゲンの効果を示す。 実施例における位相顕微鏡(図1A〜D)および共焦点顕微鏡(図1E〜F)を用いて観察されたPC12細胞の形態変化。図1Cは、IV型コラーゲンを示す。 実施例における位相顕微鏡(図1A〜D)および共焦点顕微鏡(図1E〜F)を用いて観察されたPC12細胞の形態変化。図1Dは、ラミニンの効果を示す。 実施例における位相顕微鏡(図1A〜D)および共焦点顕微鏡(図1E〜F)を用いて観察されたPC12細胞の形態変化。図1Eは、フィブロネクチンの効果を示す。 実施例における位相顕微鏡(図1A〜D)および共焦点顕微鏡(図1E〜F)を用いて観察されたPC12細胞の形態変化。図1F1は、IV型コラーゲンを示す。 実施例における位相顕微鏡(図1A〜D)および共焦点顕微鏡(図1E〜F)を用いて観察されたPC12細胞の形態変化。図1F2は、IV型コラーゲンを用いた場合と、PLLを用いた場合とを、経時的に(1時間、2時間、3時間、6時間)観察した結果を示す。徐々に核が拡張し、核酸が導入されやすい形態となっていることが示される。 図1F3は、コラーゲンIV型およびフィブロネクチンを用いた場合の位相顕微鏡による観察結果(1時間および2時間=(a))、ならびに、コラーゲンIV型、フィブロネクチン、コラーゲンI型およびラミニンについて観察した結果(3時間=(b))を示す。これをもとに、核の相対面積をグラフ化したものを図1F3(c)に示す。 トランスフェクションチップ(スライドガラス、PLLコート)上に3mm×3mmに3000−6000個の細胞を播種したときの細胞接着形態を示す。図1Gは、PC12細胞の細胞接着形態を示す。 図1Hは、コラーゲンIV型(0.005mg/ml)をコーティングしたPLLコートスライドにおけるNeuro2a細胞を示す。 実施例において示される例示的なIV型コラーゲンの効果(PC12細胞)。図2Aは、PC12細胞における各種細胞外マトリックス上での接着特性を示す。 実施例において示される例示的なIV型コラーゲンの効果(PC12細胞)。図2Bは、Neuro2a細胞における各種細胞外マトリクスの効果を示す。 実施例において示される例示的なIV型コラーゲンの効果(PC12細胞)。図2Cは、Neuro2a細胞における各種細胞外マトリクスのトランスフェクション効率を示す。 実施例におけるPC12細胞に対するPLLコーティングの有無の効果。図3Aは、各種コート条件および細胞外マトリックスとの組み合わせにおける位相顕微鏡を示す。 実施例におけるPC12細胞に対するPLLコーティングの有無の効果。図3Bは、各種ECMのトランスフェクション効率を示す写真である。 実施例におけるPC12細胞に対するPLLコーティングの有無の効果。図3Cは、それぞれプレーンおよびPLLコーティングスライドにおける隔離効果を示す。 実施例におけるPC12細胞に対するPLLコーティングの有無の効果。図3Dは、各種ECMと各種コーティングとの組み合わせを試験した結果を示す。 実施例におけるPC12細胞に対するPLLコーティングの有無の効果。図3Eには、その強度を数値化したグラフを示す。 実施例におけるPC12細胞に対するPLLコーティングの有無の効果。図3Fは、図3Dのものの実際の細胞固定の様子を示す。 実施例におけるPC12細胞に対するPLLコーティングの有無の効果。図3Gは、スライド表面処理の種類による各種ECMの効果の経時変化を示す。 実施例におけるPC12細胞に対するPLLコーティングの有無の効果。図3Hは、スライド表面処理の種類による各種ECMの効果の経時変化を示す。 Fura2技術を用いて観察されたカルシウムイオン放出の挙動を示す。 種々の細胞接着因子の核酸導入効率への効果をまとめたグラフを示す。 本発明のアレイ技術への応用例を示す。図6Aは、PC12細胞を示す。 本発明のアレイ技術への応用例を示す。図6Bは、Neuro2a細胞を示す。 本発明のアレイ技術への応用例を示す。図6Cは、HepG2を示す。 本発明のアレイ技術への応用例を示す。図6Dは、hMSCを示す。 本発明のアレイ技術への応用例を示す。図6Eは、図6AにおけるPC12細胞の様子を示した写真である。 固相系トランスフェクションの概略を示す。 図8は、核酸導入効率は遺伝子導入試薬の種類に依存しないことを示す。aは、各種ECMタンパク質(フィブロネクチン、コラーゲンI、コラーゲンIVおよびラミニン)における、核酸導入の様子を示す。緑色に染まるものが、導入された遺伝子の産物になる。bは、各種ECMタンパク質の効果が、遺伝子導入試薬の種類に依存しないことを示す。z軸は、トランスフェクション効率であり、x軸には各種メーカーの遺伝子導入試薬を示し、y軸には各種ECMタンパク質またはその非存在下である条件を示す。メーカーの試薬を用いてもPC12細胞のトランスフェクション効率の傾向は変化しないことが明らかになった。 図9は、固相トランスフェクション(PC12)をコラーゲンIVコーティング上で行った場合のsiRNAの効果を示す。図9Aは、EGFPベクターおよび抗EGFP siRNAを共トランスフェクションしたPC12細胞を示す。示されるように、HcRedのみが発色し、pEGFP−N1に由来する緑色信号が抑制されていたことが判明した。他方、図9Bは、スクランブルsiRNAを用いた例を示す。示されるように、緑色の蛍光が観察され、図9Aにおける効果は、RNAiの効果であることが確認された。図9Aおよび図9Bにおける蛍光の強度を相対的に示した図を図9Cに示す。y軸は相対輝度により示す。EGFPによる効果は、ほぼ完全に抑えられていることが分かる。 図10は、NGFによりPC12細胞がアレイ上においても分化誘導することを示す。図10Aは、フィブロネクチン、コラーゲンI型、コラーゲンIV型、およびラミニンをコーティングしたアレイ上での固相トランスフェクションを示す。図10Aは、ガラススライドのスキャン画像を示す。
図10Bは、トランスフェクションアレイにおける分化の様子をスキャン造影したものを示す(左)。図10Bの真ん中は、PC12細胞のトランスフェクション後3日目の顕微鏡写真を示す。図10Bの右は、NGF誘導後1日後の写真を示す。
(配列の説明)
配列番号1:マウスのFVB/Nコラーゲンpro−α−1型I鎖の核酸配列(GENBANK登録番号:U08020)。
配列番号2:配列番号1の核酸にコードされるタンパク質の配列。
配列番号3:マウスのプロコラーゲンI型α2(Col1a2)(GENBANK登録番号:NM_007743)の核酸配列。
配列番号4:配列番号3の核酸にコードされるタンパク質の配列。
配列番号5:マウスのα1型−IVコラーゲンの核酸配列(GENBANK登録番号:M14042)の核酸配列。
配列番号6:配列番号5の核酸にコードされるタンパク質の配列。
配列番号7:マウスのコラーゲンα−2(IV)鎖(GENBANK登録番号:X04647)の核酸配列。
配列番号8:配列番号7の核酸にコードされるタンパク質の配列。
配列番号9:マウスのプロコラーゲンIV型α3(Col4a3)(GENBANK登録番号:NM_007734)。
配列番号10:配列番号9の核酸にコードされるタンパク質の配列。
配列番号11:マウスのコラーゲンIV型α4鎖の核酸配列(GENBANK登録番号:Z35167)。
配列番号12:配列番号11の核酸にコードされるタンパク質の配列。
配列番号13:マウスのコラーゲンIV型α5鎖の核酸配列(GENBANK登録番号:Z35168)。
配列番号14:配列番号13の核酸にコードされるタンパク質の配列。
配列番号15:マウスのプロコラーゲンIV型α6(Col4a6)の核酸配列(GENBANK登録番号:NM_053185)。
配列番号16:配列番号15の核酸にコードされるタンパク質の配列。
配列番号17:ラミニンの核酸配列(マウスα鎖)
配列番号18:ラミニンのアミノ酸配列(マウスα鎖)
配列番号19:ラミニンの核酸配列(マウスβ鎖)
配列番号20:ラミニンのアミノ酸配列(マウスβ鎖)
配列番号21:ラミニンの核酸配列(マウスγ鎖)
配列番号22:ラミニンのアミノ酸配列(マウスγ鎖)
配列番号23:フィブロネクチンの核酸配列(ヒト)
配列番号24:フィブロネクチンのアミノ酸配列(ヒト)
配列番号25:実施例9で使用したsiRNAの配列
配列番号26:実施例9で使用したスクランブルRNAの配列

Claims (85)

  1. 固相上で細胞に核酸を導入するための組成物であって、該細胞は、核酸導入後も分化誘導する能力が保持される、組成物であって、
    A)細胞接着分子;および
    B)遺伝子導入試薬、
    を含む、組成物。
  2. 前記細胞接着分子は、細胞外マトリクスを含む、請求項1に記載の組成物。
  3. 前記細胞接着分子は、コラーゲン、ラミニンおよびフィブロネクチンからなる群より選択される少なくとも1つの細胞外マトリクスを含む、請求項1に記載の組成物。
  4. 前記細胞接着分子は、繊維形成コラーゲンまたは基底膜コラーゲンを含む、請求項1に記載の組成物。
  5. 前記細胞接着分子は、繊維形成コラーゲンおよび基底膜コラーゲンを含む、請求項1に記載の組成物。
  6. 前記細胞接着分子は、コラーゲンI型またはIV型を含む、請求項1に記載の組成物。
  7. 前記細胞接着分子は、コラーゲンI型およびIV型を含む、請求項1に記載の組成物。
  8. 前記遺伝子導入試薬は、カチオン性高分子、カチオン性脂質、ポリアミン系試薬、ポリイミン系試薬およびリン酸カルシウムからなる群より選択される少なくとも1つの試薬を含む、請求項1に記載の組成物。
  9. さらに、導入が企図される核酸を含む、請求項1に記載の組成物。
  10. 前記核酸はDNAである、請求項1に記載の組成物。
  11. 前記核酸は、遺伝子をコードする配列を含む、請求項10に記載の組成物。
  12. 前記組成物は固体である、請求項1に記載の組成物。
  13. 前記組成物は液体である、請求項1に記載の組成物。
  14. 前記細胞接着分子は多量体形態である、請求項1に記載の組成物。
  15. 前記細胞接着分子は、三次元構造をとる、請求項1に記載の組成物。
  16. 前記細胞は、固相上での遺伝子導入が困難である細胞である、請求項1に記載の組成物。
  17. 前記細胞は、神経系の細胞である、請求項1に記載の組成物。
  18. 前記細胞は、神経系の細胞であり、前記細胞接着分子はコラーゲンを含む、請求項1に記載の組成物。
  19. 前記核酸の導入は、前記細胞が固相上に配置された状態で行われる、請求項1に記載の組成物。
  20. 前記細胞は、初代培養細胞を包含する、請求項1に記載の組成物。
  21. 前記細胞接着分子は、5μg/ml〜100μg/mlの濃度で存在する、請求項1に記載の組成物。
  22. 前記細胞は、さらに、分化誘導される、請求項1に記載の組成物。
  23. 前記分化は、細胞増殖因子により誘導される、請求項1に記載の組成物。
  24. 固相上で細胞に核酸を導入するためのデバイスであって、該細胞は、核酸導入後も分化誘導する能力が保持される、デバイスであって、
    A)細胞接着分子;および
    B)遺伝子導入試薬、
    を含む、組成物が支持体に固定される、デバイス。
  25. 前記細胞接着分子は、細胞外マトリクスを含む、請求項24に記載のデバイス。
  26. 前記細胞接着分子は、コラーゲン、ラミニンおよびフィブロネクチンからなる群より選択される少なくとも1つの細胞外マトリクスを含む、請求項24に記載のデバイス。
  27. 前記細胞接着分子は、繊維形成コラーゲンまたは基底膜コラーゲンを含む、請求項24に記載のデバイス。
  28. 前記細胞接着分子は、繊維形成コラーゲンおよび基底膜コラーゲンを含む、請求項24に記載のデバイス。
  29. 前記細胞接着分子は、コラーゲンI型またはIV型を含む、請求項24に記載のデバイス。
  30. 前記細胞接着分子は、コラーゲンI型およびIV型を含む、請求項24に記載のデバイス。
  31. 前記遺伝子導入試薬は、カチオン性高分子、カチオン性脂質、ポリアミン系試薬、ポリイミン系試薬およびリン酸カルシウムからなる群より選択される少なくとも1つの試薬を含む、請求項24に記載のデバイス。
  32. さらに、導入が意図される核酸を含む、請求項24に記載のデバイス。
  33. 前記核酸はDNAである、請求項24に記載のデバイス。
  34. 前記核酸は遺伝子をコードする配列を含む、請求項33に記載のデバイス。
  35. 前記支持体は固体である、請求項24に記載のデバイス。
  36. 前記支持体は液体である、請求項24に記載のデバイス。
  37. 前記細胞接着分子は多量体形態である、請求項24に記載のデバイス。
  38. 前記細胞接着分子は、三次元構造をとる、請求項24に記載のデバイス。
  39. 前記細胞は、固相上での遺伝子導入が困難である細胞である、請求項24に記載のデバイス。
  40. 前記細胞は、神経系の細胞である、請求項24に記載のデバイス。
  41. 前記細胞は、神経系の細胞であり、前記細胞接着分子はコラーゲンを含む、請求項24に記載のデバイス。
  42. 前記核酸の導入は、前記細胞が固相上に配置された状態で行われる、請求項24に記載のデバイス。
  43. 前記細胞は、初代培養細胞を包含する、請求項24に記載のデバイス。
  44. 前記細胞接着分子は、5μg/ml〜100μg/mlの濃度で存在する、請求項24に記載のデバイス。
  45. 前記細胞接着分子は、前記支持体にコーティングされる、請求項24に記載のデバイス。
  46. 前記細胞接着分子は、多層で前記支持体にコーティングされる、請求項24に記載のデバイス。
  47. 前記核酸は、アレイ状で前記支持体に配置される、請求項32に記載のデバイス。
  48. 分化誘導因子をさらに含む、請求項24に記載のデバイス。
  49. 前記分化誘導因子は、細胞増殖因子を含む、請求項24に記載のデバイス。
  50. 固相上で細胞に核酸を導入するための方法であって、
    A)細胞の核酸導入効率を改善するための組成物であって、
    a)細胞接着分子;および
    b)遺伝子導入試薬、
    を含む、組成物を、導入が意図される核酸とともに、該細胞に提供する工程;ならびに
    B)核酸が導入される条件に該細胞をさらす工程、
    を包含し、該細胞は、該核酸導入後も分化誘導する能力が保持される、
    方法。
  51. 前記細胞接着分子は、細胞外マトリクスを含む、請求項50に記載の方法。
  52. 前記細胞接着分子は、コラーゲン、ラミニンおよびフィブロネクチンからなる群より選択される少なくとも1つの細胞外マトリクスを含む、請求項50に記載の方法。
  53. 前記細胞接着分子は、繊維形成コラーゲンまたは基底膜コラーゲンを含む、請求項50に記載の方法。
  54. 前記細胞接着分子は、繊維形成コラーゲンおよび基底膜コラーゲンを含む、請求項50に記載の方法。
  55. 前記細胞接着分子は、コラーゲンI型またはIV型を含む、請求項50に記載の方法。
  56. 前記細胞接着分子は、コラーゲンI型およびIV型を含む、請求項50に記載の方法。
  57. 前記遺伝子導入試薬は、カチオン性高分子、カチオン性脂質、ポリアミン系試薬、ポリイミン系試薬およびリン酸カルシウムからなる群より選択される少なくとも1つの試薬を含む、請求項50に記載の方法。
  58. 前記組成物は固体である、請求項50に記載の方法。
  59. 前記組成物は液体である、請求項50に記載の方法。
  60. 前記細胞接着分子は多量体形態である、請求項50に記載の方法。
  61. 前記細胞接着分子は、三次元構造をとる、請求項50に記載の方法。
  62. 前記細胞は、固相上での遺伝子導入が困難である細胞である、請求項50に記載の方法。
  63. 前記細胞は、神経系の細胞である、請求項50に記載の方法。
  64. 前記細胞は、神経系の細胞であり、前記細胞接着分子はコラーゲンを含む、請求項50に記載の方法。
  65. 前記核酸の導入は、前記細胞が固相上に配置された状態で行われる、請求項50に記載の方法。
  66. 前記細胞は、初代培養細胞を包含する、請求項50に記載の方法。
  67. 前記核酸はDNAを含む、請求項50に記載の方法。
  68. 前記核酸は、遺伝子をコードする配列を含む、請求項50に記載の方法。
  69. 前記組成物および前記核酸は、支持体に固定される、請求項50に記載の方法。
  70. 前記支持体は、固体である、請求項69に記載の方法。
  71. 前記支持体は、液体である、請求項69に記載の方法。
  72. 前記組成物および前記核酸を前記支持体に固定する工程をさらに包含する、請求項69に記載の方法。
  73. 前記固定は、インクジェット方式でされる、請求項69に記載の方法。
  74. 前記細胞接着分子は、前記支持体にコーティングされる、請求項69に記載の方法。
  75. 前記細胞接着分子は、多層で前記支持体にコーティングされる、請求項69に記載の方法。
  76. 前記核酸は、アレイ状で前記支持体に配置される、請求項69に記載の方法。
  77. 前記細胞を分化誘導する工程をさらに包含する、請求項50に記載の方法。
  78. 前記分化誘導は、分化誘導因子により行われる、請求項50に記載の方法。
  79. 前記分化誘導因子は、細胞増殖因子を含む、請求項78に記載の方法。
  80. 固相上で細胞に核酸を導入し、かつ、該細胞を分化誘導させるためのキットであって、
    A)
    a)細胞接着分子;および
    b)遺伝子導入試薬、
    を含む、組成物;
    B)分化誘導因子;および
    C)該組成物および該分化誘導因子を、該核酸および該細胞とともに使用する方法を記載した指示書、
    とを備える、キット。
  81. a)細胞接着分子;およびb)遺伝子導入試薬、を含む、組成物の、細胞に遺伝子導入するための使用であって、該細胞は、該核酸導入後も分化誘導する能力が保持される、使用。
  82. 固相上で細胞に核酸を導入し、かつ、該細胞を分化誘導させるための組成物であって、
    A)細胞接着分子;
    B)遺伝子導入試薬;および
    C)分化誘導因子
    を含む、組成物。
  83. 前記分化誘導因子は、前記細胞接着因子および前記遺伝子導入試薬とは別個に提供される、請求項82に記載の組成物。
  84. 前記分化誘導因子は、前記細胞接着因子および前記遺伝子導入試薬とは一緒に提供される、請求項82に記載の組成物。
  85. 前記分化誘導試薬は、アクチビン、インスリン様増殖因子(IGF)−1、線維芽細胞増殖因子(FGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、トランスフォーミング増殖因子(TGF)−β、神経成長因子(NGF)および骨形成タンパク質(BMP)2/4からなる群より選択される、請求項82に記載の組成物。
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