JPWO2005068396A1 - ハニカム構造体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
気孔径の場所によるばらつきを低減することができ、かつ全体の平均気孔径を大きくすることができるハニカム構造体及びその製造方法を提供する。ハニカム状の成形体を焼成する工程を含む、コージェライト製のハニカム構造体1の製造方法を提供する。焼成工程において、雰囲気温度を昇温する際に、1200℃から1250℃までの昇温速度を40℃/hr以上とし、1250℃から1300℃までの昇温速度を2℃〜40℃/hrとし、1300℃から1400℃までの昇温速度を40℃/hr以上とする昇温工程を含むハニカム構造体1の製造方法を提供する。更に、気孔率が50〜70%、平均気孔径が15〜30μm、中心部と外周部の平均気孔径の差が5μm以下、中心部と外周部の熱膨張係数が1.0×10-6/℃以下、中心部と外周部のA軸圧縮強度が1.5MPa以上であるハニカム構造体を提供する。
Description
本発明は、ハニカム構造体及びその製造方法に関し、特にフィルターや触媒担体等として用いることができるハニカム構造体及びそのハニカム構造体を好適に製造することができる製造方法に関する。
近年、年々強化される自動車排ガス規制に対応すべく、ディーゼルエンジンから排出される微粒子を捕捉するフィルター(DPF)としてハニカム構造体が使用されている。また、自動車排ガス中に含まれる窒素酸化物、硫黄酸化物、塩化水素、炭化水素及び一酸化炭素等を除去するため、触媒を担持したハニカム構造体が使用されている。
このようなハニカム構造体において、圧力損失の低減等を目的として気孔径を大きくしたり、気孔率を高くしたりすることが求められている。また大型自動車の排ガス浄化を目的としたハニカム構造体の大型化が求められている。
しかし、従来のハニカム構造体の製造方法では、ハニカム構造体の平均気孔径を大きくすると、例えばハニカム構造体をDPFに用いた場合に、捕集効率が低下するという問題があった。この問題は、高気孔率化や大型化を図ろうとすると更に大きくなる傾向があった。また、高気孔率化や大型化に伴いアイソスタティック強度や耐熱衝撃性が低下するという問題もあった。
従来のハニカム構造体の製造方法における焼成工程において、アイソスタティック強度の向上と圧力損失の低減を目的として、400〜1200℃の昇温速度を所定の範囲内に制御することが開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、高い吸水率と低い熱膨張率のハニカム構造体を得ることを目的として、1100〜1200℃間を60℃/hr以下の昇温速度とし、1200℃〜1300℃間を80℃/hr以上の昇温速度とすることが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
更に、耐熱衝撃性と耐熱性に優れたハニカム構造体を得ることを目的として、所定の粒子径の原料を用い、1100℃までを250℃/hr以下の昇温速度とし、1100℃以上では30〜300℃/hrの昇温速度とすることが開示されている(例えば、特許文献3参照)。
しかし、このような従来の製造方法では、例えばDPF等のフィルター用のハニカム構造体を製造した場合に、ハニカム構造体の平均気孔径を大きくすることに伴う捕集効率の低下を抑制することは困難であった。
特開2003−277162号公報
特許第2981034号公報
特公昭57−28390号公報
本発明は、全体の平均気孔径を大きくすることができ、かつ気孔径の場所によるばらつきを低減することができるハニカム構造体の製造方法及び気孔径が大きくかつ気孔径の場所によるばらつきが低減されたハニカム構造体を提供することを特徴とする。
本発明者は、DPFに用いられる高気孔率のコージェライト製ハニカム構造体について、捕集効率の低下の原因を調査した。その結果、ハニカム構造体の中心部の気孔径が外周部の気孔径よりも大きくなり、中心部からスート等の漏れが発生し、捕集効率の低下が起こっていることを見出した。
更に、気孔径のばらつきの原因を詳細に検討した結果、焼成工程の昇温過程において、1250〜1300℃間のコージェライト生成過程で大きな発熱反応が起こり、ハニカム構造体中心部の昇温速度が急に大きくなる現象を見出し、中心部の昇温速度と外周部の昇温速度の差によって、気孔径、熱膨張係数、及びA軸圧縮強度の違いが発生していることを見出した。
更に、このような現象を抑制する検討を行ったところ、1250〜1300℃間の昇温速度を40℃/hr以下とすることにより、発熱反応を穏やかに進行させることができ、ハニカム構造体の中心部と外周部との昇温速度の差が小さくなり、中心部と外周部との気孔径の差を小さくできることを見出した。更に、1200〜1250℃及び1300〜1400℃間の昇温速度を40℃/hr以上とすることにより中心部と外周部の気孔径の差を小さく保ったまま全体の平均気孔径を大きくできることを見出した。そして、気孔径の場所によるばらつきが小さく、中心部と外周部の熱膨張係数が共に小さく、A軸圧縮強度の場所によるばらつきが小さく、かつアイソスタティック強度が高いハニカム構造体を得ることに成功した。
即ち、本発明は、ハニカム状の成形体を焼成する工程を含む、コージェライト製のハニカム構造体の製造方法であって、前記焼成工程において、雰囲気温度を昇温する際に、1200℃から1250℃までの昇温速度を40℃/hr以上とし、1250℃から1300℃までの昇温速度を2℃〜40℃/hrとし、1300℃から1400℃までの昇温速度を40℃/hr以上とする昇温工程を含むハニカム構造体の製造方法を提供するものである。
本発明において、気孔率が50%〜70%、平均気孔径が15〜30μm、中心部と外周部の平均気孔径の差が5μm以下であるハニカム構造体を製造することが好ましい。また、直径が100mm以上、長さが100mm以上のハニカム構造体を製造することも好ましい。更に、中心部と外周部の熱膨張係数が1.0×10-6/℃以下であるハニカム構造体を製造することが好ましく、中心部と外周部のA軸圧縮強度が1.5MPa以上であるハニカム構造体を製造することが更に好ましく、アイソスタティック強度が1.0MPa以上であるハニカム構造体を製造することが特に好ましい。
更に、目封じ用のスラリーを焼成前の成形体に圧入した後焼成することが好ましい。
また、本発明はコージェライト製のハニカム構造体であって、気孔率が50〜70%、平均気孔径が15〜30μm、中心部と外周部の平均気孔径の差が5μm以下、中心部と外周部の熱膨張係数が1.0×10-6/℃以下、及び中心部と外周部のA軸圧縮強度が1.5MPa以上であるハニカム構造体を提供するものである。このハニカム構造体はアイソスタティック強度が1.0MPa以上であることが更に好ましい。
焼成工程における昇温速度を上述のように制御することにより、ハニカム構造体の平均気孔径を大きくし、かつ中心部と外周部における気孔径の差を小さくすることができる。また、ハニカム構造体の高気孔率化又は大型化を図っても、気孔径の場所によるばらつきを抑制することができる。更に、ハニカム構造体全体に渡って熱膨張係数を小さく、A軸圧縮強度を向上することができ、アイソスタティック強度を向上させることができる。
また、ハニカム構造体の気孔率、平均気孔径、中心部と外周部の平均気孔径の差、中心部と外周部の熱膨張係数、及び中心部と外周部のA軸圧縮強度、好ましくは更にアイソスタティック強度を所定の範囲とすることにより、例えばDPFとして用いた場合に圧力損失を小さくし、捕集効率を高くし、更に熱や圧力に対する耐久性を向上させることができる。
1…ハニカム構造体、2…隔壁、2a…中心部の隔壁、2b…外周部の隔壁、3…セル、4…目封じ部、5…重心点、42…端面、44…端面。
以下、具体例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。なお、以下において、DPF用のハニカム構造体を例に本発明を説明するが、本発明の特徴は、平均気孔径を大きくし、かつ気孔径の場所によるばらつきを抑制でき、更にはハニカム構造体全体に渡って、熱膨張係数を小さく、A軸圧縮強度に代表される材料強度を向上でき、アイソスタティック強度を向上させることができること及びこのようなハニカム構造体を提供することにあり、このような特徴は、DPF用のハニカム構造体だけでなく、触媒担体等、コージェライト製の多孔質のハニカム構造体全般に好適に適用できるものである。
図1(a)は、DPF用のコージェライト製ハニカム構造体の一例を示す模式的な斜視図であり、図1(b)は、図1(a)のb部を拡大した一部拡大平面図であり、図1(c)は、図1(a)に示すハニカム構造体の軸方向に平行な断面の一部を模式的に示す一部拡大図である。図1(a)〜(c)に示すハニカム構造体1は、一の端面42から他の端面44まで軸方向に延びる複数のセル3を形成するように配置された隔壁2を備える。そして、セル3を何れかの端面において目封じするように配置された目封じ部4を備える。このような形態とすることにより、一の端面42からセル3内に流入する排ガスは、多孔質の隔壁2を通って隣りのセル3を経て他の端面44から排出される。この際、隔壁2がフィルターとなって、スート等のPMを捕捉する。なお、ハニカム構造体を触媒担体等に用いる場合には、目封じ部は必要なく、本発明は、目封じ部を有するハニカム構造体及び目封じ部を有しないハニカム構造体の両方を対象とするものである。また、コージェライト製のハニカム構造体とは、隔壁を構成する物質の50質量%以上がコージェライトであることを意味し、70%質量%以上、特に90質量%以上がコージェライトであることが好ましい。
このようなコージェライト製のハニカム構造体は、焼成原料として、コージェライト化原料を含むハニカム状の成形体を焼成することにより製造することができる。コージェライト化原料とは、焼成によりコージェライトとなる原料を意味し、SiO2が42〜56質量%、Al2O3が30〜45質量%、MgOが12〜16質量%の範囲に入る化学組成となるようにように配合されたセラミック原料である。具体的にはタルク、カオリン、仮焼カオリン、アルミナ、水酸化アルミニウム、シリカの中から選ばれた複数の無機原料を上記化学組成となるような割合で含むものが挙げられる。
ハニカム状の成形体は、通常、コージェライト化原料の他に、加工助剤及び分散媒を含む。加工助剤の具体例としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、グリセリン等のバインダー、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等の分散剤、更にグラファイト、小麦粉、澱粉、フェノール樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、未発泡の発泡樹脂、既発泡の発泡樹脂、吸水性ポリマー等の造孔剤を挙げることができ、これらを目的に応じて単独又は複数組み合わせて含むことが好ましい。分散媒としては、通常は水が用いられる。
このような成形体を焼成する前に乾燥することが好ましい。乾燥は、成形体に含まれる水分や分散媒などを除去するために行われる。乾燥の方法に特に制限はなく、一般に熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥等で行うことができるが、中でも、全体を迅速かつ均一に乾燥することができる点で、熱風乾燥と、マイクロ波乾燥又は誘電乾燥とを組み合わせた乾燥工程で行うことが好ましい。熱風乾燥の乾燥温度は80〜150℃の範囲が迅速に乾燥できる点で好ましい。
焼成は、ハニカム状の成形体を焼成炉内に置き、雰囲気温度を昇温して所定の温度で所定時間保持することにより行うことができる。昇温開始温度から1200℃までの温度範囲では昇温速度が気孔径に与える影響が小さいため、昇温速度に特に制限はなく焼成クラックが生じない程度の昇温速度で昇温すれば良い。このような昇温速度は成形体の形状等により異なり、当業者であれば適宜選択することができるが、例えば、500℃/hr以下、更には300℃/hr以下、特に200℃/hr以下の昇温速度とすることが好ましい。一方、生産性の観点からは、2℃/hr以上、更には5℃/hr以上、特に10℃/hr以上であることが好ましい。
そして、1200〜1250℃の温度範囲を40℃/hr以上の昇温速度で昇温し、1250〜1300℃の温度範囲を2℃〜40℃/hrの昇温速度で昇温し、1300〜1400℃の温度範囲を40℃/hr以上の昇温速度で昇温する。
上述のように、1250〜1300℃の温度範囲における昇温速度を40℃/hr以下とすることにより、ハニカム構造体の中心部と外周部との気孔径の差を小さくすることができる。気孔径の差をより小さくするためには、昇温速度は、40℃/hr未満であることが好ましく、30℃/hr以下であることが更に好ましく、特に20℃/hr以下であることが好ましい。一方、昇温速度が低すぎると生産性が低下するため、昇温速度は2℃/hr以上であることが必要であり、3℃/hr以上であることが好ましく、5℃/hr以上であることが更に好ましい。
一方、1200〜1400℃の温度範囲においては、昇温速度を高くすることにより、気孔径を大きくすることができる。従って、1200〜1250℃及び1300〜1400℃の温度範囲における昇温速度を40℃/hr以上とすることにより、全体として気孔径を大きくできる。また、上述のように1250〜1300℃の温度範囲における昇温速度を40℃/hr以下とすることにより、気孔径の場所によるばらつきの少ないハニカム構造体とすることができるため、このようなハニカム構造体を、例えばDPFとして用いた場合に、低圧力損失と高捕集効率の両立を図ることができる。全体の気孔径を更に大きくする観点からは、1200〜1250℃及び1300〜1400℃の温度範囲における昇温速度は、45℃/hr以上であることが好ましく、50℃/hr以上であることが更に好ましい。
更に、このように温度制御することにより、ハニカム構造体全体に渡って、熱膨張係数を小さく、A軸圧縮強度に代表される材料強度を向上させ、かつアイソスタティック強度を向上させることができる。これは、コージェライト生成過程における発熱反応による急激な温度上昇を抑制することにより、不均一な温度分布による不均一な径の気孔の形成と不均一なコージェライト結晶の形成とを抑制することができるためと考えられる。従って、より均一な径の気孔とより良好な結晶状態のコージェライトを形成することができ、ハニカム構造体全体に渡って熱膨張係数を小さくし、A軸圧縮強度を向上させ、アイソスタティック強度を向上させることができるものと考えられる。
焼成の最高温度は、1400〜1440℃程度が好ましく、この範囲の最高温度で2〜20時間保持することが好ましい。1400℃〜最高温度の温度範囲における昇温速度に特に制限はないが、昇温速度が高すぎるとオーバーシューティングによるハニカム構造体の溶損が発生する可能性が生じるため、50℃/hr以下とすることが好ましい。なお、昇温速度は、各温度範囲における平均の昇温速度を意味する。
気孔率が比較的高いハニカム構造体を製造する場合に、気孔径の場所によるばらつきの問題が大きくなる傾向にあるが、このような焼成工程により、平均気孔径が大きく、中心部と外周部の平均気孔径の差が小さいハニカム構造体を得ることができる。本発明によって製造するハニカム構造体の好ましい気孔率は50〜70%、平均気孔径は15〜30μm、中心部と外周部の平均気孔径の差は5μm以下である。この範囲は、特にDPF用のハニカム構造体の場合に、低圧力損失と高捕集効率の両立が図りうるため好ましい。また、このような範囲の特性を有するハニカム構造体において、中心部と外周部の熱膨張係数を1.0×10-6/℃以下、A軸圧縮強度を1.5MPa以上、アイソスタティック強度を1.0MPa以上とすることが可能であり、このようなハニカム構造体を製造することが好ましい。
ここで、ハニカム構造体の平均気孔径及び気孔率は図1(c)に示す隔壁2全体の平均気孔径及び気孔率を各々意味する。また、中心部の平均気孔径、気孔率、熱膨張係数及びA軸圧縮強度とは、図2に示すように、ハニカム構造体1の体積中心点5を中心として、ハニカム構造体1の体積の1/64の相似形Sを描いた際に、この相似形Sの中に入る中心部の隔壁2aの部分の平均気孔径、気孔率、熱膨張係数及びA軸圧縮強度を各々意味し、外周部の平均気孔径、気孔率、熱膨張係数及びA軸圧縮強度とは同じく図2に示すハニカム構造体1の体積中心点5を中心として、ハニカム構造体1の体積の27/64の相似形S’の外側に位置する外周部の隔壁2bの部分の平均気孔径、気孔率、熱膨張係数及びA軸圧縮強度を各々意味する。なお、図2はハニカム構造体の軸方向に平行な断面を模式的に示す断面図である。
気孔率及び気孔径は水銀圧入式ポロシメーターで測定した値であり、熱膨張係数はJIS R1618に準拠して40〜800℃の範囲で測定した値である。A軸圧縮強度はJIS B7733に適合した圧縮試験機によって、社団法人自動車技術会発行の自動車規格JASO規格M505−87に準拠して測定した値である。アイソスタティック強度は、ハニカム構造体が破壊したときの加圧圧力値で示され、JASO規格M505−87に準拠して測定した値である。
本発明を適用するのに好ましい別の形態は、大型のハニカム構造体である。ハニカム構造体を大型化することによっても、中心部と外周部の気孔径、熱膨張係数及びA軸圧縮強度に代表される材料強度の差が大きくなりやすいため、上述した方法によりその差を少なくすることが好ましい。この場合における好ましい適用対象の具体例として、直径が100mm以上、長さが100mm以上、更に好ましくは直径140mm以上、長さが150mm以上、特に好ましくは直径140mm〜350mm、長さが150mm〜400mmのハニカム構造体が挙げられる。
本発明におけるハニカム状の成形体を形成する方法に特に制限はないが、例えば以下のような方法で形成することができる。上述のコージェライト化原料、加工助剤及び分散媒を混合して混練し、坏土とした後、ハニカム状に成形する。混合は一般的なミキサーを用いて行うことができる。混練は、一般的なニーダー、加圧ニーダー、一軸連続押出機、二軸連続混練押出機、真空土練機等などの混練機を用いて行うことができる。成形は、押出成形、射出成形、プレス成形等公知のいずれの方法を用いても良いが、ハニカム構造体の成形には押出成形が好ましい。また、二軸連続混練押出機等の押出機で坏土化工程と成形工程とを連続的に行うことも好ましい。
DPF等のフィルター用のハニカム構造体を製造する場合には、目封じ部を形成する。目封じ部は以下のようにして形成することができる。セラミックスの粉体を用意し、これにバインダー、分散剤及び水やグリセリンなどの分散媒を加えて、スラリー状とし、上部が開口した容器に入れる。ハニカム状の成形体の一の端面において、所定のセルの開口部をフィルムなどでマスキングする。そして、成形体のマスキングされた端面を下に向け、容器内のスラリーに浸漬し、更に上から押圧することにより、マスキングされていないセル内に所定の深さでスラリーを詰めることができる。
以上の工程を他の端面についても行うこともできる。目封じ部は、両端面において目封じ部を備えるセルと備えないセルとが市松模様状を呈するように、両端面において互い違いに各セルに配置することが好ましい。目封じ部を構成するセラミックスに特に制限はないが、周りの隔壁との接着性を考慮すると、コージェライト化原料であることが好ましい。また、このような工程は、焼成後のハニカム構造体について行うより、成形体について行った方が好ましい。成形体について行う場合には、その後の焼成工程により、目封じ部が形成される。焼成後のハニカム構造体について行う場合には、その後、更にハニカム構造体を加熱することにより、目封じ部を形成しなくてはならず、成形体について行うより工数が増加する。また、成形体について行った場合、端面部が強化された状態で焼成されるため、焼成工程での切れ発生が抑制される。更に、焼成後にハニカム構造部と目封じ部がコージェライト化反応によってより強固に接着するるため、エンジンからの排気ガスによる圧力又は逆洗時にかかる圧力によって、目封じ部がハニカム構造部から抜け落ちることを無くすことができる。
上述した製造方法で好適に製造できるハニカム構造体として、気孔率が50〜70%、平均気孔径が15〜30μm、中心部と外周部の平均気孔径の差が5μm以下であり、更に中心部と外周部の熱膨張係数が共に1.0×10-6/℃以下、好ましくは0.9×10-6/℃以下、更に好ましくは0.8×10-6/℃以下であるハニカム構造体が挙げられる。このようなハニカム構造体は、低圧力損失、高捕集効率を示すと共に良好な耐熱衝撃性を示す。また、中心部と外周部のA軸圧縮強度は共に1.5MPa以上であることが好ましく、1.7MPa以上であることが更に好ましく、2.0MPa以上であることが特に好ましい。このようなハニカム構造体は、構造体中に特に強度の弱い部位が無いため、高いアイソスタティック強度を示す。アイソスタティック強度は1.0MPa以上であることが好ましく、1.2MPaであることが更に好ましく、1.5MPaであることが特に好ましい。このようなハニカム構造体は、キャニング時や実使用時の破損が抑制され、良好な耐久性を示す。
本発明のハニカム構造体の形状について特に制限はない。例えば、軸方向に垂直な断面の形状を円形、楕円形、レーストラック形、多角形等任意の形状とすることができる。また、セルの形状についても特に制限はなく、例えば、断面形状が三角形、四角形、六角形等の多角形、円、又は楕円等何れでも良い。セル密度も特に制限はないが、例えば50〜600セル/平方インチ(7.8〜93セル/cm2)、好ましくは100〜500セル/平方インチ(15.5〜77.5セル/cm2)程度とすることができる。隔壁の厚さにも特に制限はないが、例えば50〜650μm、好ましくは75〜500μm、更に好ましくは100〜450μm程度とすることができる。
また、ハニカム構造体の多孔質の隔壁に、触媒を担持させることもできる。触媒としては、貴金属系のPt、Pd、Rh等、非金属系のペロブスカイト型触媒等が挙げられ、これらのうちの少なくとも1種をハニカム構造体に担持させることができる。触媒は、ウォッシュコート法等、従来公知の方法で担持させることができる。
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(評価方法)
平均気孔径:マイクロメリティックス社製の水銀圧入式ポロシメーターで測定した。
気孔率:マイクロメリティックス社製の水銀圧入式ポロシメーターで全気孔容積を測定し、コージェライトの真比重を2.52g/ccとして、当該全気孔容積から、気孔率を計算した。
熱膨張係数:図2の2a、2bからそれぞれ切出した試料をJIS R1618に準拠して40〜800℃の範囲で測定した。
A軸圧縮強度:JASO規格M505−87に準拠した方法で、図2の2a、2bからそれぞれA軸圧縮強度試料を切出し、JIS B7733に適合した圧縮試験機で破壊荷重を求め、これを加圧面の面積で除すことでA軸圧縮強度を得た。
アイソスタティック強度:JASO規格M505−87に準拠して以下の方法により測定した。ハニカム構造体の端面と同一径の金属板でハニカム構造体の両端面を覆い、更に同一径のゴムチューブでハニカム構造体の外周面を覆うと共に金属板を固定した後、ゴムチューブとその周辺にゴムテープを貼り付け、ハニカム構造体内に水が入らないように密閉した。この状態でハニカム構造体を水中に沈め、ハニカム構造体が破損するまで水圧を上げ、破損した水圧からアイソスタティック強度を得た。
スート捕集効率:スートジェネレーターによりスートを発生させた排ガスを、各実施例及び比較例で得られたハニカム構造体に、スートが1g/L堆積するまで通過させ、ハニカム構造体を通過した排ガスに含まれるスートを濾紙で捕集し、スートの重量(W1)を測定した。また、同じ時間、スートを発生させた排ガスを、ハニカム構造体を通過させずに濾紙で捕集し、スートの重量(W2)を測定した。次いで、得られた各重量(W1)(W2)を以下に示す式(1)に代入して捕集効率を求めた。
式(1):(W2−W1)/(W2)×100
スート捕集圧力損失:各実施例及び比較例で得られたハニカム構造体の両端面に、内径130mmのリングを圧接した。このリングを介して、スートジェネレーターで発生させたスートを、ハニカム構造体の130mmの直径の範囲内に流入させ、1g/L分のスートを捕集させた。次いで、ハニカム構造体がスートを捕集した状態で、2.27Nm3/minの空気を流し、ハニカム構造体前後の圧力差を測定して、スートを捕集した状態での圧力損失を評価した。
平均気孔径:マイクロメリティックス社製の水銀圧入式ポロシメーターで測定した。
気孔率:マイクロメリティックス社製の水銀圧入式ポロシメーターで全気孔容積を測定し、コージェライトの真比重を2.52g/ccとして、当該全気孔容積から、気孔率を計算した。
熱膨張係数:図2の2a、2bからそれぞれ切出した試料をJIS R1618に準拠して40〜800℃の範囲で測定した。
A軸圧縮強度:JASO規格M505−87に準拠した方法で、図2の2a、2bからそれぞれA軸圧縮強度試料を切出し、JIS B7733に適合した圧縮試験機で破壊荷重を求め、これを加圧面の面積で除すことでA軸圧縮強度を得た。
アイソスタティック強度:JASO規格M505−87に準拠して以下の方法により測定した。ハニカム構造体の端面と同一径の金属板でハニカム構造体の両端面を覆い、更に同一径のゴムチューブでハニカム構造体の外周面を覆うと共に金属板を固定した後、ゴムチューブとその周辺にゴムテープを貼り付け、ハニカム構造体内に水が入らないように密閉した。この状態でハニカム構造体を水中に沈め、ハニカム構造体が破損するまで水圧を上げ、破損した水圧からアイソスタティック強度を得た。
スート捕集効率:スートジェネレーターによりスートを発生させた排ガスを、各実施例及び比較例で得られたハニカム構造体に、スートが1g/L堆積するまで通過させ、ハニカム構造体を通過した排ガスに含まれるスートを濾紙で捕集し、スートの重量(W1)を測定した。また、同じ時間、スートを発生させた排ガスを、ハニカム構造体を通過させずに濾紙で捕集し、スートの重量(W2)を測定した。次いで、得られた各重量(W1)(W2)を以下に示す式(1)に代入して捕集効率を求めた。
式(1):(W2−W1)/(W2)×100
スート捕集圧力損失:各実施例及び比較例で得られたハニカム構造体の両端面に、内径130mmのリングを圧接した。このリングを介して、スートジェネレーターで発生させたスートを、ハニカム構造体の130mmの直径の範囲内に流入させ、1g/L分のスートを捕集させた。次いで、ハニカム構造体がスートを捕集した状態で、2.27Nm3/minの空気を流し、ハニカム構造体前後の圧力差を測定して、スートを捕集した状態での圧力損失を評価した。
(実施例1)
表1のバッチNo.1に示すコージェライト化原料、発泡樹脂、バインダー、界面活性剤を、プローシェアーミキサーで、表1に示す配合比の水を噴霧添加しながら混合した。これを更にニーダーで混練して可塑性の坏土とした。この可塑性の坏土を、真空土練機でシリンダー状に成形し、押出し成形機に投入してハニカム状に成形した。次いで、得られた成形体を、マイクロ波乾燥した後、熱風乾燥で絶乾し、所定の寸法に両端面を切断した。次いで、バッチNo.1と同様の組成のコージェライト化原料からなるスラリーを用い、両端面においてセルを互い違いに目封じした。最後に、常温から400℃までを10℃/hr、400℃から1200℃までを50℃/hrの条件で昇温し、表2の通り1200℃〜1250℃を50℃/hr、1250℃〜1300℃を2℃/hr、1300℃〜1400℃を50℃/hrの条件で昇温し、その後オーバーシュートによる製品の溶損を避けるため、最高温度の1420℃まで20℃/hrで昇温した後、1420℃で5hr保持し焼成して、直径144mm×長さ152mmの円柱形であって、隔壁厚さ300μm、セル数300セル/平方インチ(約46.5セル/cm2)のハニカム構造体を得た。
表1のバッチNo.1に示すコージェライト化原料、発泡樹脂、バインダー、界面活性剤を、プローシェアーミキサーで、表1に示す配合比の水を噴霧添加しながら混合した。これを更にニーダーで混練して可塑性の坏土とした。この可塑性の坏土を、真空土練機でシリンダー状に成形し、押出し成形機に投入してハニカム状に成形した。次いで、得られた成形体を、マイクロ波乾燥した後、熱風乾燥で絶乾し、所定の寸法に両端面を切断した。次いで、バッチNo.1と同様の組成のコージェライト化原料からなるスラリーを用い、両端面においてセルを互い違いに目封じした。最後に、常温から400℃までを10℃/hr、400℃から1200℃までを50℃/hrの条件で昇温し、表2の通り1200℃〜1250℃を50℃/hr、1250℃〜1300℃を2℃/hr、1300℃〜1400℃を50℃/hrの条件で昇温し、その後オーバーシュートによる製品の溶損を避けるため、最高温度の1420℃まで20℃/hrで昇温した後、1420℃で5hr保持し焼成して、直径144mm×長さ152mmの円柱形であって、隔壁厚さ300μm、セル数300セル/平方インチ(約46.5セル/cm2)のハニカム構造体を得た。
(実施例2〜7及び比較例1〜6)
表1に示す配合及び/又は表2に示す昇温速度とした以外は、実施例1と同様にして、各ハニカム構造体を得た。
表1に示す配合及び/又は表2に示す昇温速度とした以外は、実施例1と同様にして、各ハニカム構造体を得た。
得られたハニカム構造体について、上記評価方法で、中心部及び外周部の気孔率、中心部及び外周部の平均気孔径、中心部及び外周部の熱膨張係数、中心部及び外周部のA軸圧縮強度、アイソスタティック強度、スート捕集圧力損失、スート捕集効率の評価を行った。結果を表2に示す。
表2に示すように、実施例1〜7の製造方法により、比較的大きな平均気孔径を有しながら、中心部と外周部の平均気孔径の差が小さいハニカム構造体を得ることができた。一方、比較例1、2、及び4の製造方法では、1250℃〜1300℃の昇温速度を大きくすることにより、中心部と外周部との気孔径の差が大きくなってしまった。また、比較例3、5、及び6の製造方法では、1200℃〜1250℃の昇温速度及び/又は1300℃〜1400℃の昇温速度を小さくすることにより、ハニカム構造体全体の気孔径が小さくなってしまった。従って、1250〜1300℃の温度範囲の昇温速度を40℃/hr以下とし、更に1200〜1250℃及び1300〜1400℃の温度範囲の昇温速度を40℃/hr以上とすることにより、ハニカム構造体全体の平均気孔径を大きくし、かつハニカム構造体の中心部と外周部の平均気孔径の差を小さくできることがわかる。更に、実施例1〜6に示すように、気孔率及び平均気孔径を所定の範囲にコントロールすることにより、ハニカム構造体全体に渡って、熱膨張係数が小さく、A軸圧縮強度が高く、アイソスタティック強度が高く、圧力損失が小さくかつ捕集効率の高い、DPFとして好適に用いることができるフィルター用ハニカム構造体とすることができた。
本発明の製造方法により、場所による平均気孔径のばらつきが小さく、かつ全体の平均気孔径が大きいコージェライト製ハニカム構造体を製造することができる。このようなハニカム構造体は、DPF等のフィルターをはじめ、触媒担体等種々の分野で好適に用いることができる。
Claims (9)
- ハニカム状の成形体を焼成する工程を含む、コージェライト製のハニカム構造体の製造方法であって、前記焼成工程において、雰囲気温度を昇温する際に、1200℃から1250℃までの昇温速度を40℃/hr以上とし、1250℃から1300℃までの昇温速度を2℃〜40℃/hrとし、1300℃から1400℃までの昇温速度を40℃/hr以上とする昇温工程を含むハニカム構造体の製造方法。
- 気孔率が50〜70%、平均気孔径が15〜30μm、中心部と外周部の平均気孔径の差が5μm以下であるハニカム構造体を製造する請求項1に記載のハニカム構造体の製造方法。
- 直径が100mm以上、長さが100mm以上のハニカム構造体を製造する請求項1又は2に記載のハニカム構造体の製造方法。
- 中心部と外周部の熱膨張係数が1.0×10-6/℃以下であるハニカム構造体を製造する請求項1〜3の何れかに記載のハニカム構造体の製造方法。
- 中心部と外周部のA軸圧縮強度が1.5MPa以上であるハニカム構造体を製造する請求項1〜4の何れかに記載のハニカム構造体の製造方法。
- アイソスタティック強度が1.0MPa以上であるハニカム構造体を製造する請求項1〜5の何れかに記載のハニカム構造体の製造方法。
- 目封じ用のスラリーを成形体に圧入した後焼成する請求項1〜6の何れかに記載のハニカム構造体の製造方法。
- コージェライト製のハニカム構造体であって、気孔率が50〜70%、平均気孔径が15〜30μm、中心部と外周部の平均気孔径の差が5μm以下、中心部と外周部の熱膨張係数が1.0×10-6/℃以下、及び中心部と外周部のA軸圧縮強度が1.5MPa以上であるハニカム構造体。
- アイソスタティック強度が1.0MPa以上である請求項8に記載のハニカム構造体。
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