JPWO2005049823A1 - タンパク質の分泌産生システム - Google Patents

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Abstract

本発明は、低温の培養温度においてもネイティブな構造のタンパク質を、高い効率で産生させることができるタンパク質産生システムを提供することを目的とする。 本発明は、α−ヘモリシン(HlyA)タンパク質を利用する分泌システム中のタンパク質の変異体をコードする遺伝子、及びこれを含む種々のベクターを活用して、宿主内で目的タンパク質とともに発現させることにより、低温の培養温度において既存の分泌発現法と比較しても高い効率でネイティブな構造のタンパク質を産生することができる。

Description

本発明は、遺伝子工学の分野において組換体微生物により組換えタンパク質を調製するために有用な分泌産生システムに関する。
従来、宿主として大腸菌を用いた外来の異種タンパク質(以下、目的タンパク質という)の生産方法には、菌体内発現法と分泌発現法とがある。
前者の菌体内発現法は、目的タンパク質の構造遺伝子を挿入した組換え発現ベクターをバクテリア等の宿主細胞内に導入し、目的タンパク質を発現、蓄積させ、その後菌体を回収、溶解し、得られた菌体の粗抽出液から目的タンパク質を精製する方法である。この菌体内発現法では、一般的に目的タンパク質の生産効率は高いが、発現させたタンパク質が凝集して菌体内で不溶化しやすい為に、目的タンパク質の回収後に可溶化してリホールディングさせる操作や、菌体内の他のタンパク質(プロテアーゼや他の夾雑物)を分離する操作を必要とし、天然における正しい立体構造をもった目的タンパク質、即ち本来の活性を有するネイティブな構造を持った目的タンパク質を得るためには、大変な手間がかかる。また、可溶化操作などの精製処理において、発現した目的タンパク質を100パーセントの確率でネイティブな構造にリホールディングさせる事は通常、不可能である。そのため、菌体内における目的タンパク質の発現量に比べ、精製等の処理によって最終的に回収されるネイティブ構造の目的タンパク質量がかなり少ない場合も多々ある。時には、目的タンパク質の生産効率が低いと云われている分泌発現法と対比して、最終的な回収効率が同等か、それ以下という場合もある。
また、当該菌体内発現法は、成熟型タンパク質のN末端にメチオニン残基が付加される場合が多々ある。この場合、前記N末端にメチオニン残基が無いタンパク質を得るためには、N末端のメチオニン残基を人為的にペプチダーゼで切断する操作が要求されることもある。
このように菌体内発現法は、一連の処理操作が煩雑で時間が掛る割には、ネイティブな構造の目的タンパク質の回収率が悪く、近年、目的タンパク質の大量生産には向かないとされている。
そこで、近年、これら菌体内発現法の問題解決手段として、分泌発現法が注目されている。この分泌発現法においては、発現された目的タンパク質がペリプラズム層又は菌体外へ分泌されるので、上記した菌体内発現法に比べて目的タンパク質の精製が簡便であるという利点がある。特に、菌体外へ分泌される系では、培養液のみを回収し濃縮することによって、目的タンパク質を比較的簡単に回収することができるので、目的タンパクの精製がより簡便になっている。
この分泌発現法は、更に、目的タンパク質をネイティブな構造で生産できる可能性が高い点、及び培養上清中にプロテアーゼや他の夾雑物が少なく精製が容易である点において、目的タンパク質の生産方法として注目されている。
この分泌発現法は、菌体外又はペリプラズム層へ分泌させるために、「シグナル配列」を目的タンパク質と融合させて発現させるベクターを用いることを特徴とする。前記シグナル配列としては、例えば、溶血毒素α−ヘモリシン(HlyA)のC末端配列(以下、HlyAシグナル配列という場合もある)、エンテロトキシン(Enterotoxin)の発現に関与しているAサブユニットとBサブユニットのN末端配列、OmpAシグナル配列、OmpFシグナル配列、PhoAシグナル配列等が挙げられる(非特許文献1)。因みに、組換えベクターとしては、ColE1オリジンをもつpBR322誘導体等の一般的に用いられるプラスミド由来の組換え発現ベクター等が用いられている。
先に列挙したシグナル配列の中でも、特にHlyAシグナル配列を用いた分泌生産方法は、基本的にHlyAシグナル配列に結合する目的タンパク質の大きさに依存せず、分泌の過程で適切なS−S結合を形成させることができることから、目的タンパク質をネイティブな構造で可溶性画分中に発現することが出来る分泌発現系として非常に有用と考えられている。
このHlyAシグナル配列を用いた分泌生産方法は、元々、尿路病原性大腸菌が産生する溶血毒素α−ヘモリシン(HlyA)の分泌に使われるグラム陰性菌Type I分泌システム(非特許文献2参照)を利用したものであり、シグナル配列を含むHlyA、HlyAの菌体外輸送に関わるアデノシントリホスタファーゼ(ATPase)活性を有するタンパク質HlyB、ペリプラズムタンパク質HlyD、および外膜タンパク質TolCを必要とするが、グラム陰性菌における一般的なペリプラズムタンパク質の分泌に関わるSec経路は必要としない。HlyAのC末端の約60位から218位までのアミノ酸は分泌シグナルを形成しており、それ自体の毒性がないことから、外来タンパク質と融合させ菌体外へ分泌させる例がいくつか報告されている(非特許文献3、4参照)。
ところで、分泌発現法においては、より効率的な分泌生産が可能な宿主株の検討も盛んに行われており、中でもグラム陽性菌の枯草菌は、タンパク質の分泌能が高く、各種産業用酵素の供給源として利用されている。しかしながら、枯草菌は多種多様なプロテアーゼを有するという問題がある。このため、宿主株自体の改良が必要であり、種々研究・開発が行われている。しかしながら問題が十分に解消した宿主株は未だ得られていないのが現状である。
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上記した大腸菌を用いた分泌発現法では、最適培養温度である37℃で菌体を培養することにより、菌体が持つ目的タンパク質の発現能及び分泌能を最大限引き出し、目的タンパク質を分泌生産させる。しかしながら、およそ30℃以下の低温で菌体を培養した場合、目的タンパク質の発現能は低下し、分泌能の効率も著しく悪く、菌体内発現法で生産させる場合に比べて著しく生産効率が低い。従って、既存の分泌発現系は、低温下でのタンパク質の大量生産に適切であるとは言えない。
即ち、既存の分泌発現法は、たとえ菌体を最適な培養温度(大腸菌においては37℃)で培養しても、菌体内発現法に比べて遺伝子の発現効率が悪く、生産効率が低いことが多い。従って、場合によっては、目的タンパク質の大量生産に適切な手法であるとは言えず、例えば、ヘモリシンの発現に機能しているHlyAを用いた分泌発現系でも、これまでの報告ではペリプラズム分泌系と同等の産生レベル(総蛋白の2−5%)であり、菌体内発現系と比較して発現量が絶対的に少なかった(非特許文献5)。
また、例え発現効率自体は低くても、発現させた目的タンパク質が可溶性画分に回収できればメリットはあるが、従来の方法ではおよそ30℃以下の低温で培養した場合には、37℃で培養した場合に比べ、更に分泌の効率が低下する。つまり、目的タンパク質を可溶性画分中に回収する目的で、菌体をおよそ30℃以下の低温で培養し分泌発現を促す場合、発現及び分泌レベルは共に著しく低下する。
一方で、タンパク質の調製法として、30℃以下の低温で発現させる方法も一般的に行われている。この理由の1つとしては、菌体内における目的タンパク質の発現効率を敢えて下げることにより、目的タンパク質を含む封入体(inclusion body)の発生を抑制することが出来るからである。即ち、ネイティブな構造の目的タンパク質を、可溶化区分において回収できる。また他の理由としては、低温で発現させることにより、宿主由来のタンパク質の生合成も抑制され、プロテアーゼ活性も低下するため、目的タンパク質を高効率で得ることが期待できるからである。このような理由から、およそ30℃以下の低温でも高効率で目的タンパク質を産生可能な分泌生産システムが求められている。
本願発明の目的は、既存の分泌発現法と対比して、低温の培養温度でも目的タンパク質を高い効率で産生させることができる、タンパク質の分泌系生産システムを提供することにある。
本発明の他の目的は、宿主としてグラム陰性菌、特に大腸菌を用いたHlyA分泌システムにおいて、低温で分泌能が向上する新規の変異タンパク質HlyB’を用いることにより、低温培養において目的タンパク質の分泌を高効率にて実現するシステムを提供することにある。
本発明者らは、上述のような課題を解決するために、鋭意研究を行った結果、尿路病原性大腸菌が産生する溶血毒素α−ヘモリシン(HlyA)の分泌に使われるグラム陰性菌Type I分泌システム(非特許文献6)を改変することにより、低温培養において目的タンパク質の分泌を高効率に実現するシステムが得られることを見出し、本願発明を完成した。
即ち、本発明は、以下に挙げる技術を提供する:
(1)配列番号1若しくは配列番号2に示されるアミノ酸配列;又は
配列番号1若しくは配列番号2に示されるアミノ酸配列において1乃至数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換若しくは付加され尚且つアデノシントリホスファターゼ(ATPase)活性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質。
(2)前記のATPase活性が、α−ヘモリシン(HlyA)の蛋白輸送に関わるアデノシントリホスファターゼ活性である(1)に記載のタンパク質。
(3)前記欠失、挿入、置換若しくは付加が、配列番号50に示されるアミノ酸配列の、アミノ酸番号448位、604位、654位、682位、及び705位からなる群より選択される少なくとも1の部位における欠失、挿入、置換又は付加である、(1)に記載のタンパク質。
(4)(1)乃至(3)の何れか一つに記載のタンパク質をコードする遺伝子。
(5)配列番号4若しくは配列番号5に示される塩基配列、又はこれらの塩基配列がコードするアミノ酸配列と同一のアミノ酸をコードする塩基配列を含む遺伝子。
(6)(4)又は(5)に記載の遺伝子が、所定の宿主において発現可能に挿入された発現ベクター。
(7)プロモーター配列;及び当該プロモーター配列の制御下に、目的タンパク質及びHlyAシグナル配列を同一の読み取り枠にコードする塩基配列を含む、(6)に記載の発現ベクター。
(8)前記プロモーターと同一又は別種類のプロモーター制御下の領域であって、前記の目的タンパク質及びHlyAシグナル配列をコードする塩基配列の挿入部位とは別個の部位に、(4)に記載の遺伝子を発現可能なように挿入した、(7)に記載の発現ベクター。。
(9)更に、配列番号19に記載の塩基配列、又は配列番号18のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子HlyDを発現可能なように含む、(6)〜(8)の何れか一つに記載の発現ベクター。
(10)配列番号18のアミノ酸配列において1乃至数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換、又は付加され、尚且つ宿主内で発現後ペリプラズムに移行して、変異タンパク質HlyB’、タンパク質TolC又はTolC様タンパク質とともに、HlyAシグナル配列が融合した目的タンパク質を菌体外に輸送する輸送孔を形成するタンパク質(当該輸送孔を形成する機能を有するアミノ酸配列)をコードする塩基配列を有する遺伝子HlyDを発現可能なように含む、(6)〜(8)の何れか一つに記載の発現ベクター。
(11)前記プロモーターが、トリプトファンプロモーター、lacプロモーター、トリプトファンプロモーターとlacプロモーターとの雑種プロモーター、T7プロモーター、T5プロモーター、T3プロモーター、SP6プロモーター、アラビノース誘導プロモーター、コールドショックプロモーター、テトラサイクリン誘導性プロモーターからなる群より選択されるいずれか1種のプロモーターである、(7)〜(10)の何れか一つに記載の発現ベクター。
(12)前記HlyAシグナル配列をコードするDNA断片が、配列番号3に示されるアミノ酸配列の60〜218番目のアミノ酸をコードする塩基配列を含み、尚且つ目的タンパク質をコードする塩基配列の3’側に付加されている、(7)〜(11)の何れか一つ記載の発現ベクター。
(13)前記の発現ベクターが、プラスミドベクター、又はファージベクターである、(6)〜(12)の何れか一つに記載の発現ベクター。
(14)(6)に記載の発現ベクターと、目的タンパク質及びHlyAシグナル配列を同一の読み取り枠にコードする塩基配列を含む発現ベクターとの組合わせ;
(6)に記載の発現ベクターと、目的タンパク質及びHlyAシグナル配列を同一の読み取り枠にコードする塩基配列並びにタンパク質HlyDをコードする塩基配列を含む発現ベクターとの組合わせ;
(6)に記載の発現ベクターと、目的タンパク質及びHlyAシグナル配列を同一の読み取り枠にコードする塩基配列を含む発現ベクターと、タンパク質HlyDをコードする塩基配列を含む発現ベクターとの組合わせ;
(6)乃至(13)の何れか一項に記載の発現ベクターの群から選択されるいずれか一つの発現ベクター又は発現ベクターの組合わせ
を宿主に導入してなる、形質転換体。
(15)前記宿主がグラム陰性菌である、(14)に記載の形質転換体。
(16)(14)に記載の形質転換体を所定の条件で培養する工程を含む、タンパク質の生産方法。
(17)更に、前記培養工程後の培養液より宿主細胞を除去する工程;及び適宜、宿主細胞除去後の培養液からタンパク質を精製する工程;を有する、(16)に記載のタンパク質の生産方法。
(18)前記形質転換体を培養する温度が、30℃以下である、(16)又は(17)に記載のタンパク質の生産方法。
(19)前記形質転換体を培養する温度が、19℃以上、30℃以下である、(16)又は(17)に記載のタンパク質の生産方法。
本願発明によれば、既存の分泌発現法と対比して、低温の培養温度でもネイティブな構造のタンパク質を効率良く産生する分泌系生産システムを実現することができる。
更に、グラム陰性菌、特に大腸菌を用いたHlyA分泌システムにおいて、低温で分泌能が向上する新規の変異タンパク質HlyB’を用いることにより、低温培養において、目的タンパク質を高効率に分泌可能な分泌系生産システムを実現することができる。
pSTV−HlyBDを示す図である。 pSub−HlyA218を示す図である。 Error−prone PCRに用いた各プライマーの位置関係を示す図である。 サチライシンEによるスキムミルク分解を示す図である。 各変異株における変異箇所を示す図である。 各変異体におけるHSA14−1scFvの分泌量を示す図である。 各変異株における変異箇所を示す図である。 pGEM−NdE52の作成を示す図である。 各変異体におけるHSA14−1scFvの分泌活性を示す図である。 各温度におけるHSA14−1scFvの分泌量を示す図である。 c−myc及びPTENの分泌を示す図である。
本発明は、HlyAの分泌に使われるグラム陰性菌Type I分泌システム(HlyA分泌システム)を構成するタンパク質HlyBの変異タンパク質(以下、本願においては、タンパク質HlyBについての変異タンパク質を総称して「変異タンパク質HlyB’」と呼び、これをコードする遺伝子を総称して「変異遺伝子HlyB’」と呼び、そしてこの変異タンパク質HlyB’を発現する菌株を総称して「変異体HlyB’」と呼ぶ)、及び変異タンパク質HlyB’を用いたHlyA分泌システムによる目的タンパク質の産生方法である。
変異タンパク質HlyB’は、配列番号1若しくは配列番号2に示されるアミノ酸配列;又は配列番号1若しくは配列番号2に示されるアミノ酸配列において1乃至数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換若しくは付加され尚且つアデノシントリホスファターゼ(ATPase)活性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質である。
配列番号1に示したアミノ酸配列からなる変異タンパク質HlyB’は、野生型タンパク質HlyB(配列番号50にアミノ酸配列を示す)のN末端から448番目のアミノ酸がロイシン(Leu)からフェニルアラニン(Phe)に置換されたタンパク質である(図7;104F参照)。
配列番号2に示したアミノ酸配列からなる変異タンパク質HlyB’は、野生型タンパク質HlyBの654番目のアミノ酸がグリシン(Gly)からセリン(Ser)に置換されたタンパク質である(図5;129、表2参照)。
また、配列番号1に示したアミノ酸配列において1乃至数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなる変異タンパク質HlyB’とは、配列番号1に示したアミノ酸配列における448位のフェニルアラニン(Phe)以外のアミノ酸が欠失、挿入、置換又は付加され、且つアデノシントリホスファターゼ(ATPase)活性を有しているタンパク質である。例えば、複数個のアミノ酸が置換された例としては、図7に示したAE104(配列番号6)及びAE104B〜104D(配列番号8〜10)が挙げられる。これらの変異タンパク質は、後述するHlyA分泌システムによる目的タンパク質の生産方法において好適に使用することができる。これら具体例の変異タンパク質においては、タンパク質HlyBのアミノ酸配列において1〜4個のアミノ酸残基が置換されているが、上記したATPase活性を有している限り、ATPase活性部位以外の部位における変異(欠失、挿入、置換又は付加)、及びATPase活性部位の変異であってATPase活性を保持している変異(欠失、挿入、置換又は付加)の双方が含まれる。また、これらの変異においては、ATPase活性を保持する限り、5個以上のアミノ酸残基の変異(欠失、挿入、置換又は付加)であってもよい。
更に、配列番号2に示したアミノ酸配列において1乃至数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなる変異タンパク質HlyB’とは、配列番号2に示したアミノ酸配列における654位のセリン(Ser)以外のアミノ酸が欠失、挿入、置換又は付加され、且つアデノシントリホスファターゼ(ATPase)活性を有しているペプチドである。この変異タンパク質HlyB’は、上記したATPase活性を有している限り、ATPase活性部位以外の部位における変異(欠失、挿入、置換又は付加)、及びATPase活性部位の変異であってATPase活性を保持している変異(欠失、挿入、置換又は付加)の双方が含まれる。
このような変異タンパク質HlyB’としては、上記のATPase活性がα−ヘモリシン(HlyA)の蛋白輸送に関わるアデノシントリホスファターゼ活性である変異タンパク質HlyB’が挙げられる。具体的には野生型遺伝子HlyBのアミノ酸448位、604位、654位、682位、及び705位からなる群より選択される少なくとも1の部位における欠失、挿入、置換又は付加を有するものを挙げることができる。より好ましくは、野生型遺伝子HlyBのアミノ酸448位、604位、654位、682位、及び705位からなる群より選択される少なくとも1の部位における置換を有するものである。
本発明は、上記した変異タンパク質HlyB’のアミノ酸配列をコードする、変異遺伝子HlyB’をも提供する。これら本願発明の変異遺伝子HlyB’の具体的配列は、本発明者らが溶血毒素α−ヘモリシン(HlyA)の分泌産生する尿路病原性大腸菌から採取したhlyB−hlyDオペロン遺伝子に変異を導入して得た変異体の一部をなすものである(例えば配列番号4、12〜17)。
本発明の変異タンパク質HlyB’のアミノ酸配列をコードする本発明の変異遺伝子HlyB’の具体的な配列としては例えば配列番号4及び配列番号5に示されるものであるが、これら以外にも、本発明の変異タンパク質HlyB’のアミノ酸配列をコードする、その他の塩基配列を有するものも含まれる。
本発明は、本発明の変異遺伝子HlyB’が、所定の宿主において発現可能に挿入された発現ベクターをも提供する。
上記した発現ベクターは、目的のタンパク質をHlyAシグナルと連結したものを発現する別個のベクターと、同一の宿主に共形質転換することにより、当該所定タンパク質の効率的な分泌に利用することが可能である。
さらに、本発明の分泌システムは、上記のような共形質転換により構築される分泌システムに限定されるものではない。本願発明の変異遺伝子HlyB’とHlyAシグナル配列に目的タンパク質を結合した融合タンパク質をコードする塩基配列とを同一発現ベクターに組込み、同発現ベクターを宿主に導入することによっても、目的タンパク質の分泌システムを構築することが可能である。この場合、同一の発現ベクターに組込まれた変異遺伝子HlyB’とHlyAシグナル配列に目的タンパク質を結合した融合タンパク質をコードする塩基配列とは、同一プロモーター制御下の領域に組込んでもよいし、又は、前記変異遺伝子HlyB’と前記融合タンパク質をコードする塩基配列とをそれぞれ別のプロモーター制御下の領域に組込んでもよい。
ここでプロモーターとしては、グラム陰性菌、特に大腸菌内で外来タンパク質の発現に利用される種々のものを挙げることができる。具体例としてはトリプトファンプロモーター、lacプロモーター、トリプトファンプロモーターとlacプロモーターとの雑種プロモーター、T7プロモーター、T5プロモーター、T3プロモーター、SP6プロモーター、アラビノース誘導プロモーター、コールドショックプロモーター、テトラサイクリン誘導性プロモーターを挙げることができる。
本発明のタンパク質分泌産生システムの一態様においては、上記した本発明の発現ベクターに、更に、配列番号19に記載の塩基配列、又は配列番号18のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子HlyDを発現可能なように含めることができる。遺伝子HlyDとしては、これらの配列番号19に記載の塩基配列、及び配列番号18のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するもの以外にも、配列番号18のアミノ酸配列において1乃至数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換、又は付加され、尚且つグラム陰性菌のペリプラズムに移行して、更に変異タンパク質HlyB’、タンパク質TolC又はTolC様タンパク質とともに、HlyAシグナル配列が融合した目的タンパク質を輸送する輸送孔を形成する機能を有するアミノ酸配列をコードしているものを利用することができる。このような変異としては、例えばタンパク質HlyDの41位のアミノ酸が、フェニルアラニンからチロシンに置換されたものを挙げることができる。
タンパク質HlyDを変異タンパク質HlyB’と同一プロモーターにより発現する場合には、変異遺伝子HlyB’と遺伝子HlyDとを同一コドン読取り枠で結合したhlyB’−hlyDオペロンを作成し、同hlyB’−hlyDオペロンを発現ベクターのプロモーター制御下に導入する。変異遺伝子HlyB’と遺伝子HlyDとを同一の発現ベクターのそれぞれ異ったプロモーター制御下の領域に組込み、変異タンパク質HlyB’とタンパク質HlyDとをそれぞれ異なるプロモーターの制御下で発現させることもできる。また、別々のオリジンをもつ発現ベクター上に変異遺伝子HlyB’と遺伝子HlyDを別々組み込み、別々に発現させることもできる。更に、変異遺伝子HlyB’と遺伝子HlyDとをそれぞれ菌体内のゲノムDNAに挿入(インテグレート)させ、変異タンパク質HlyB’とタンパク質HlyDとをそれぞれ発現せることも可能である。勿論、上記したhlyB’−hlyDオペロンを菌体内のゲノムDNAに挿入(インテグレート)させ、変異タンパク質HlyB’とタンパク質HlyDとを発現させてもよい。
本発明の発現ベクターにおいては、上記HlyAシグナル配列をコードするDNA断片は、配列番号3に示されるアミノ酸配列のC末端60〜218番目のアミノ酸をコードする塩基配列を含み、尚且つ目的タンパク質をコードする塩基配列の3’側に付加することができる。
上記(6)〜(8)に記載の発現ベクターとしては、大腸菌、サルモネラ菌、赤痢菌、ビブリオ菌、セラチア菌、緑膿菌などのグラム陰性菌の内から選択される菌体内で発現可能なものが使用される。例えば、大腸菌においてはpBR322誘導体に代表されるColE系プラスミド、p15Aオリジンを持つpACYC系プラスミド、pSC系プラスミド、Bac系等のF因子由来ミニFプラスミドが挙げられる。その他サルモネラ菌、赤痢菌、ビブリオ菌、セラチア菌および緑膿菌については、組換えベクターpGD4が代表的に挙げられる(非特許文献7)。これら組換え発現ベクターのプロモーターとしては、trcやtac等のトリプトファンプロモーターとlacプロモーターの雑種プロモーターや、天然もしくは変異型(lacUV5)のlacプロモーター、T7プロモーター、T5プロモーター、T3プロモーター、SP6プロモーター、アラビノース誘導プロモーター、その他、常に転写活性の高い恒常的に発現しているプロモーターも使用可能である。更に、低温下で発現が誘導されるコールドショックプロモーターや、テトラサイクリン誘導性プロモーター等も好適に利用することができる。
以上に説明した、変異タンパク質HlyB’の発現ベクターを導入した宿主であるグラム陰性菌、特に大腸菌においては、少なくともおよそ30℃以下の低温下で高い膜輸送能が可能となり、HlyAシグナル配列と目的タンパク質との融合タンパク質を菌体内から菌体外へ分泌することができる。
本発明においては、発現・分泌されたHlyAシグナル配列と目的タンパク質との融合タンパク質を、その精製後において、HlyAシグナル配列と目的タンパク質とに切断できるように、HlyAシグナル配列をコードするDNA断片の、例えば5’末端と目的タンパク質をコードする構造遺伝子の、例えば3’末端との間にプロテアーゼの認識配列をコードするDNA断片を介しておくことも可能である。前記認識配列とプロテアーゼは、公知のものを利用すればよい。例えば、認識配列としてIle−Glu−Gly−Arg(配列番号42)を付加した場合にはファクターXaで切断すればよいし、エンテロキナーゼとその認識配列としてAsp−Asp−Asp−Asp−Lys−Ser(配列番号43)を付加した場合にはエンテロキナーゼにより切断すればよい。因みに、HlyAシグナル配列は、他のシグナル配列、例えばOmpAシグナル配列などと同様にタグ配列を付加することもできる。
本発明の発現ベクターを導入する宿主には、上述したようにタンパク質TolC又はTolC様タンパク質を外膜に有するグラム陰性菌を使用することができる。例えば、大腸菌、サルモネラ菌(Salmonella typhimurium SL7207、Salmonella typhi 541Ty)、赤痢菌(Shigella flexneri)、ビブリオ菌(Vivrio cholerae)、セラチア菌(Serratia marcescens)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)が好適に使用できる。因みに、上記サルモネラ菌、赤痢菌、ビブリオ菌、セラチア菌及び緑膿菌に関しては、大腸菌のHlyA分泌システムが機能することが確認されている(非特許文献8)。更に、より好ましくはおよそ30℃以下の低温で生育可能なグラム陰性菌を用いる。
なお、上記した宿主への発現ベクターの導入は、種々の公知の方法により実施される。例えば、カルシウム処理された菌体を用いるコンピテント細胞法や、エレクトロポレーション法などが挙げられる。また、プラスミドベクター以外にもファージベクターを用いて、菌体内に感染させ導入する方法によってもよい。
本発明は、上記したHlyB’(変異タンパク質、変異遺伝子、形質転換体)を利用したHlyA分泌システムによるタンパク質生産方法をも提供する。
本発明のタンパク質生産方法においては、HlyAシグナル配列をコードするDNA断片の、例えば5’末端に所望の目的タンパク質をコードする構造遺伝子の3’末端を結合したDNA断片と、変異タンパク質HlyB’をコードする構造遺伝子と、適宜タンパク質HlyDをコードする構造遺伝子とを、発現ベクターを介して、タンパク質TolC又はTolC様タンパク質を外膜に有するグラム陰性菌へ導入することにより、例えばおよそ30℃以下の低温培養時においても、培地への目的タンパク質の高い分泌能を発揮させ、高い生産効率で目的タンパク質を生産することができる。
本発明のタンパク質の生産方法に於いては、例えば、HlyAシグナル配列をコードするDNA断片の5’末端に所望の目的タンパク質をコードする構造遺伝子をインフレーム且つ発現可能に挿入した組換え発現ベクターと、変異タンパク質HlyB’をコードする構造遺伝子及びタンパク質HlyDをコードする構造遺伝子とを挿入された組換え発現ベクターとを、タンパク質TolC又はTolC様タンパク質を外膜に有する宿主細胞へ導入し、これを所定の条件で培養することにより行う。
本発明のタンパク質生産方法においては、変異遺伝子HlyB’が宿主内で発現することにより、19℃〜30℃、より好適には23℃〜30℃の温度領域において、高いタンパク質の分泌生産能を示す。また、目的タンパク質の種類によっては、当該宿主の通常の培養温度(例えば37℃)においても、高いタンパク質分泌能を有するものもある(図11(B)参照)。
次に発現させた目的タンパク質とHlyAシグナル配列との融合タンパクの抽出・精製法に関しては、既存のタンパク質抽出・精製法を適応することができる。抽出法としては、培養液を限外ろ過することによって該融合タンパク質を濃縮し、その濃縮液から通常の塩析法や各種クロマトグラフィーを用いた方法を適応することができる。精製法としては、上述の塩析法、溶媒沈殿法、透析法、ゲル電気泳動法、ゲルろ過クロマトグラフィー法、イオン交換クロマトグラフィー法などの手法を組み合わせて行うことができる。特に該融合タンパクに含まれるHlyAシグナル配列の一部を認識する抗体を結合させたアフィニティーカラムによって効率的に精製することも可能である。
なお、融合タンパクの形状で精製された該融合タンパク質は、先に述べたように目的タンパク質とHlyAシグナル配列との間(融合部分)にプロテアーゼの認識配列の部分を予め挿入した場合には、前記認識配列に特異的なプロテアーゼを用いて切断でき、よりネイティブな構造を有する目的タンパク質を得ることが可能である。切断の結果得られる目的タンパク質は、上記の各種クロマトグラフィー法を用いてHlyAシグナル配列と分離し、さらに精製することが可能である。
なお、上述した本発明にかかるタンパク質の分泌生産システムによれば、既存の分泌発現法と対比して、30℃以下の培養温度でもネイティブな構造の蛋白質を高い効率で産生させることができる。
宿主細胞として特に、大腸菌等のグラム陰性菌を用いたHlyA分泌システムによる分泌発現法においては、HlyB’(変異タンパク質、変異遺伝子、形質転換体)を用いることにより、およそ30℃以下の温度で培養した場合にネイティブな構造の目的タンパク質を、既存のHlyA分泌システムと比べて数倍〜数十倍の高い効率で産生することができる。
また、本発明のタンパク質生産システムによれば、可溶性のタンパク質のみならず、後述するPTENのような不溶性のタンパク質もネイティブな構造で生産することができる。
以上には、本発明の好適な実施形態を示したが、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の変形変更が可能である。
例えば、宿主であるグラム陰性菌に導入する発現ベクターに、上記HlyAシグナル配列を融合した目的タンパク質の発現にかかる発現ベクターと、上記変異タンパク質HlyB’及びタンパク質HlyDの発現にかかる発現ベクターとの2種類の発現ベクターに代えて、前記目的タンパク質の発現系と変異タンパク質HlyB’及びタンパク質HlyDの発現系とを同時に保持する発現ベクターを作成し導入したグラム陰性菌を使用しても、本発明を好適に実施することができる。
また、例えば大腸菌J96株のゲノムDNA中におけるhlyA及びhlyB遺伝子をノックアウトした大腸菌株を作成し、該大腸菌株を宿主として使用した場合、上記HlyAシグナル配列を融合した目的タンパク質にかかる発現ベクターと、変異タンパク質HlyB’のみを発現可能な発現ベクターとを前記大腸菌株へ導入することにより、本発明を好適に実施できる。勿論、前記目的タンパク質の発現系と変異タンパク質HlyB’の発現系とを同時に保持する発現ベクターを作成し、前記大腸菌株へ導入しても好適に実施することができる。
以下に、本発明の実施例を示して具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
遺伝子のクローニング
HlyAのシグナル配列(C末端218アミノ酸、以下HlyA218と記す)、サチライシンE、HlyBおよびHlyDをコードする遺伝子断片は全て後述するプライマーを用いてPCRによって増幅した。反応系は全て50μlとし、PCRのポリメラーゼはPfuTurbo Hotstart DNA Polymerase(STRATAGENE社)を用いた。PCR反応後、増幅断片を1.0%アガロースゲル電気泳動に供し、ゲルから切り出し後、MinElute Gel Extraction Kit(QIAGEN社)を用いて精製した。精製したDNA断片を該当する制限酵素で消化後、DNA Clean & Concentrator−5(ZYMO RESEARCH社)を用い精製した。これを同様に制限酵素処理したプラスミドベクターとQuick Ligation Kit(New England Biolab社)を用い、室温にて5分間ライゲーションさせた後、大腸菌(Escherichia coli)DH5αのコンピテントセルに導入し、アンピシリンもしくはクロラムフェニコールを含むLB寒天培地にプレーティングした。挿入遺伝子の確認は、各コロニーから培養し調製した組換えプラスミドの一部をそれぞれの組換えに用いた制限酵素で消化し、電気泳動をすることで行った。また、クローニングした遺伝子断片は全てBigDye Terminator Cycle Sequencing Ready Reaction Kit(Applied Biosystems社)を用い、ABI3100シークエンサ(Applied Biosystems社)により塩基配列を確認した。以下、クローニングの手順を個別に示す。
hlyB−hlyD遺伝子断片はhlyBの開始コドンを除いた5’末端にBamHI部位、hlyDの3’末端にSphI部位を持つようにHBBaF1プライマー(配列番号20)およびHDSpRプライマー(配列番号21)を用いて、大腸菌J96株から抽出した染色体DNAを鋳型としてPCRを行って増幅した。PCR反応は、95℃2分ののち、95℃30秒、56℃30秒、72℃4分を25サイクル行った。増幅した遺伝子断片をpSTV28(TAKARA社)のBamHI−SphI部位にクローニングし、プラスミドpSTV−HlyBDを得た(図1)。
サチライシンEとHlyA218の融合タンパクの発現ベクターは以下のように構築した。すなわち、サチライシンEはシグナル配列を含まない26〜381番目のアミノ酸をコードする遺伝子断片を、5’末端(開始コドンGTGから74番目のT)にNcoI部位、3’末端にSacI部位を持つようにプライマーSubNcF(配列番号22)およびプライマーSubXhR(配列番号23)を用いて枯草菌(Bacillus subtilis)168;EMG51の染色体DNAを抽出し、該染色体DNAを鋳型にしてPCRにより増幅した。PCR反応は95℃2分ののち、95℃30秒、55℃30秒、72℃1分を25サイクル行った。一方、5’末端にSacI部位、3’末端にSalI部位を持つHlyA218遺伝子断片をプライマーHlyA218−ScF(配列番号24)およびプライマーHASLR(配列番号25)を用いて大腸菌J96株の染色体DNAを抽出し、該染色体DNAを鋳型としてPCRを行い増幅した。PCR反応はサチライシンEの場合と同様に行った。これらサチライシンEおよびHlyA218の遺伝子断片をTrcHis2C(Invitrogen社)のNcoI−SacI−SalI部位にクローニングし、プラスミドpSub−HlyA218を得た(図2)。PCRに使用したプライマーの配列を以下に示す。
プライマー一覧
HBBaF1:5’−CGCGGATCCGGATTCTTGTCATAAAATTGATTATG−3’(配列番号20)
HDSpR:5’−TGTAAGCATGCTTAACGCTCATGTAAACTTTCTG−3’(配列番号21)
SubNcF:5’−CATGCCATGGTGTCTGTGCAGGCTGCCGGA−3’(配列番号22)
SubXhR:5’−ACCGCTCGAGCTCTTGTGCAGCTGCTTGTACGT−3’(配列番号23)
HlyA218−ScF:5’−AACGAGCTCGGAAATTCTCTTGCAAAAAATGTATTATC−3’(配列番号24)
HASLR:5’−TGAATGGTCGACTTATGCTGATGCTGTCAAAGTTATTG−3’(配列番号25)
ランダム変異の導入
hlyBおよびhlyD遺伝子へのランダム変異の導入は、Mutazyme DNA polymeraseを用いたerror−prone PCR法によってランダム変異を導入するGeneMorph PCR Mutagenesis Kit(STRATAGENE社)を用い、付属のマニュアルに従い行った。すなわち、0.5ngから50ngのpSTV−HlyBDを鋳型にして順方向プライマーBam−F(配列番号26)および逆方向プライマーBsp−R(配列番号27)、順方向プライマーBsp−F(配列番号28)および逆方向プライマーSph−R(配列番号29)、もしくは順方向プライマーAL−F(配列番号30)および逆方向プライマーE52−R(配列番号31)の組み合わせで、error−prone PCRを行った。PCR反応は、95℃1分ののち、95℃30秒、55℃30秒、72℃2分を30サイクル行った。これらのPCR産物をそれぞれpSTV−HlyBD内のそれぞれBamHI−BspHI、BspHI−SphI、もしくはApaLI−Eco52I断片と組換えた遺伝子ライブラリーを作製した。使用したプライマーの配列を以下に示す。各プライマーと遺伝子の位置関係を図3に示した。
プライマー一覧
Bam−F:5’−AGCTCGGTACCCGGGGATCC−3’(配列番号26)
Bsp−R:5’−CACGCAATTCAGAAATAAAATCATGA−3’(配列番号27)
Bsp−F:5’−GCGAAATTAGCAGGTGCTCATGA−3’(配列番号28)
Sph−R:5’−CCAGTGCCAAGCTTGCATGC−3’(配列番号29)
AL−F:5’−CAACCTGTGGTTGGGTGCAC−3’(配列番号30)
E52−R:5’−TAAGCAACCAGACGCGGCCG−3’(配列番号31)
変異体のスクリーニングと変異体の同定
上記実施例2で作成した各遺伝子ライブラリーをそれぞれpSub−HlyA218であらかじめ形質転換した大腸菌JM109に導入し、2% スキムミルク、100μg/mL アンピシリン、30μg/mL クロラムフェニコールおよび0.4mM IPTGを含むLB寒天培地にて23℃で5〜7日培養し、サチライシンのプロテアーゼ活性によってコロニーの周囲に現れるスキムミルク分解を示すクリアーゾーンの大きさから分泌能を測定した。
上記スクリーニングの結果、プライマーAL−FおよびE52−Rの組み合わせによって作製した約4,500クローンの中から野生型に比べ分泌活性の高い変異株を2株(AE104株,AE129株)取得した。これら変異株におけるサチライシンの分泌の様子を図4に示した。
続いて、これら変異株におけるサチライシンEの分泌活性を定量化する試験を行った。すなわち、AE104株およびAE129株を100μg/mL アンピシリンおよび30μg/mL クロラムフェニコールを含むLB培地で37℃にて培養した。波長660nmにおける吸光度が0.2〜0.3となったときにIPTGを終濃度0.4mMとなるように添加し、23℃にて48時間培養した後、上清を回収した。培養上清をLB培地で適宜希釈し、その100μLと基質である0.13mMのN−succinyl−Ala−Ala−Pro−Phe p−nitroanilide(AAPF;SIGMA社)を含む50mM Tris−HCl,1mM CaCl(pH8.5)の溶液とを混合し、37℃にて2〜6時間静置した後、波長410nmにおける吸光度を測定した。吸光度を元に野生株のサチライシン酵素活性を1とした場合のこれら変異株の酵素活性を下記表1に示した。
Figure 2005049823
次に、AE104株およびAE129株が有する変異型hlyB−Dの発現プラスミドを抽出し、pAE104,pAE129とした。これら変異型プラスミドについて変異箇所を確かめるため、ApaLI−Eco52I断片の塩基配列を決定した。その結果、pAE104では7つの点変異が確認され、うち5箇所でアミノ酸置換が起こっていた。一方、pAE129では1箇所の点変異によってアミノ酸置換が起こっていた。これらの変異部位を図5および表2に示した。
Figure 2005049823
一本鎖抗体の分泌試験
AE104株、AE129株において任意の融合タンパクの分泌能が向上するかどうかを確かめるため、ヒト血清アルブミン(以下HSAと略す)に対する一本鎖抗体(非特許文献9)(HSA14−1 scFv)をモデルタンパク質として分泌能を調べた。
HSA14−1 scFv遺伝子は抗HSA抗体を産生するハイブリドーマからmRNAをISOGEN(ニッポンジーン社)を用いて精製し、リコンビナント抗体発現システムキット(Amersham Bioscience社)を用いてマニュアルに従いpCANTAB 5Eベクター(Amersham Bioscience社)のSfiI−NotI部位にNotI部位の下流に位置するE tagとインフレームになるようクローニングした。これをPCRの鋳型とし、NcoI部位を含むセンスプライマー
HSA−NcF1:5’−CCGGCCATGGCCCAGGTGCAG−3’(配列番号32)
およびSacI部位を含むアンチセンスプライマー
HSA−ScR1:5’−AACGAGCTCTGCGGCACGCGGTTCCAGCGG−3’(配列番号33)
を用いてscFv−E tag融合遺伝子を増幅した。これをNcoIおよびSacIで切断後、pSub−HlyA218のサチライシンEをコードするNcoI−SacI断片と組み換え、pHSA14−1−HlyA218とした。
pSTV−HlyBD、pAE104、もしくはpAE129をそれぞれpHSA14−1−HlyA218とともに大腸菌JM109に導入した。これら形質転換体をそれぞれ野生型、AE104株、AE129株とし、以下に記すHSA14−1 scFvの分泌活性の測定を行った。
上記大腸菌の各クローン(野生型、AE104株、AE129株)をそれぞれ培養し、波長660nmにおける吸光度が0.2〜0.3となったときにIPTGを終濃度0.4mMとなるように添加し、37℃または30℃で5時間、もしくは23℃にて24時間培養した後、上清を回収し、以下に示すELISAを行った。
ヒト血清アルブミン(SIGMA社)を10μg/mLとなるよう0.1N NaHCOに溶解し、96ウェルのマキシソーププレート(NalgeNunc International社)に100μL/ウェルで添加し、4℃で一晩吸着させた。プレートを逆さにし溶液を除いた後、2%スキムミルクを含むTris−buffered Saline(TBS)を200μL/ウェル添加し、室温で1時間ブロッキングを行った。0.05% Tween20を含むTBS(以下TBS−Tとする)でプレートを3回洗浄した後、LB培地で適宜希釈した培養上清を100μL/ウェル加え、室温で1時間静置した。TBS−Tで3回洗浄したのち、マレイミド法(Cuatrecasas P and Parikh I.Adsorbents for affinity chromatography.Use of N−hydroxysuccinimide esters of agarose.Biochemistry.11,2291−2299,1972)によりアルカリフォスファターゼ標識した抗E tag抗体(Amersham Bioscience社)の2000倍希釈液を100μL/ウェル添加し、室温で1時間静置した。TBS−Tで3回洗浄後、アルカリフォスファターゼ基質キット(BIO−RAD社)を用いて基質液を100μL/ウェル加え、室温で5分間発色反応を行った。最後に0.4N NaOHを100μL/ウェル加え反応を停止させた後、波長405nmにおける吸光度を測定した。なお、濃度測定のスタンダードとしては大腸菌により発現、精製したHSA14−1 scFv抗体を用いた。
ELISAの結果を図6に示す。野生型は温度の低下と共にscFvの分泌量が著しく低下した。AE129株も同様に温度の低下と共に分泌量が低下したが、野生型と比べて23℃および30℃での分泌活性はそれぞれ7倍および3.5倍高かった。一方、AE104株は37℃では野生型に比べ分泌活性が低いものの、23℃および30℃での分泌活性はそれぞれ40倍および4.1倍高いことが確認された。
以上より、AE104株およびAE129株が有する変異は少なくとも23℃から30℃の範囲において任意のHlyA融合タンパクの発現を向上させるものであると言える。
他の大腸菌株における一本鎖抗体の分泌試験
上記変異が示す表現型が大腸菌JM109のみならず他の菌株においても普遍的に見られるかどうかを確かめるため、例として大腸菌HB2151(Amersham Biosciences社)を用いて一本鎖抗体の分泌試験を行った。
pSTV−HlyBD、pAE104、もしくはpAE129をそれぞれpHSA14−1−HlyA218とともに大腸菌HB2151に導入し、上記〔実施例4〕と同様にHSA14−1 scFvの分泌を行った。その結果、下記[表3]に示すように23℃において野生型に比べAE104株では25倍、AE129株では11倍、30℃においてAE104株は野生型の3.7倍、AE129株は2.3倍分泌活性が高いことが確認された。したがって、AE104株およびAE129株が有する変異は任意の大腸菌においてHlyA融合タンパクの発現を向上させるものであると言える。
Figure 2005049823
AE104株における分泌向上に必要な変異部位の決定
AE104株において分泌能の向上に関わるアミノ酸残基を同定するため、組換えによりpAE104Aを、後述する部位特異的変異法により変異型プラスミドpAE104B,pAE104C,pAE104DおよびpAE104Eを作製した。これら変異型プラスミドの変異箇所を図7に示した。
pAE104AについてはpAE104のBspHI−SphI断片(1829bp)をpSTV−HlyBDの同部位に組み込み、作製した。
部位特異的変異はImaiらの方法(非特許文献10)に従いPCRにより行った。PCRの鋳型にはpSTV−HlyBDのNdeI−Eco52I断片(1247bp)をpGEM5Z−f(+)(Promega)の同部位に組み込んだプラスミドpGEM−NdE52(図8)を2ng用いた。pAE104B,pAE104C,pAE104DおよびpAE104Eの作製に用いたプライマーの組み合わせはそれぞれBD1814−37(配列番号34)−BD1813−1791(配列番号35),BD2050−75(配列番号36)−BD2049−20(配列番号37),BD2119−49(配列番号38)−BD2118−084(配列番号39)およびBD2268−42(配列番号40)−BD2269−94(配列番号41)である。以下に配列を示す。
プライマー一覧
BD1814−37:5’−GCAGGATTATCCGGAGGTCAACGT−3’(配列番号34)
BD1813−1791:5’−CCCCTGTTCCCCGACAATGGTGT−3’(配列番号35)
BD2050−75:5’−TGAACAGGGTAAACATAAGGAGCTGC−3’(配列番号36)
BD2049−20:5’−ACAATTTTCCCTTTTTCCATGACAATAATG−3’(配列番号37)
BD2119−49:5’−GTCAGACTAACAGAAAGAACAGAAGAATATG−3’(配列番号38)
BD2118−084:5’−TGTAACTGATATAAGTAACTGTATAAACTTTCCGG−3’(配列番号39)
BD2268−42:5’−AATTCATTTTCGTCCTTTTCACGTACC−3’(配列番号40)
BD2269−94:5’−CTTACCCGCTCATCTGGAATTAATTG−3’(配列番号41)
PCR反応は95℃2分ののち、95℃30秒、57℃30秒、72℃4分30秒を25サイクル行った。PCR産物を1%アガロースゲル電気泳動に供しMinElute Gel Extraction Kit(QIAGEN社)を用いて精製後、付属の溶出バッファ(EB)45μlで溶出した。このうち1μlを用いてQuick Ligation Kit(New England Biolab社)に付属の2xバッファ5μlとT4 DNA ligase 0.5μl、さらにT4 Polynucleotide Kinase(New England Biolab社)0.5μlの存在下、反応系10μlで37℃、30分間カイネーションとライゲーションを同時に行った。反応液を用いて大腸菌DH5αを形質転換し、プラスミドを回収したのち、変異箇所を含むNdeI−Eco52I断片の塩基配列を確認した。続いてNdeI−Eco52I断片を切り出し精製したのち、pAE104のNdeI−Eco52I部位に移し替え、変異型プラスミドを作製した。
pAE104A,pAE104B,pAE104C,pAE104DおよびpAE104EをそれぞれpHSA14−1−HlyA218とともに大腸菌JM109に導入した。これら形質転換体をそれぞれAE104A,AE104B,AE104C,AE104DならびにAE129株とし、上記〔実施例4〕と同様にHSA14−1 scFvの分泌活性を測定した。図9はAE104株における分泌活性を100%とした場合の各変異体における相対値を示したものである。図9に示すようにAE104A株のみ野生型と同レベルまで活性が下がり、AE104B株,AE104C株,AE104D株およびAE104E株はAE104株と同等の活性を保っていることが確認された。以上のことから、HlyBのN末端から448番目のロイシンのフェニルアラニンへの置換が高分泌活性に重要であることが示唆された。
次に、AE104株における変異型HlyBのN末端から448番目のフェニルアラニンが高分泌活性に重要であることを確認するため、このフェニルアラニンが唯一の変異アミノ酸である変異型プラスミドpAE104Fを、pSTV−HlyBDのBspHI−SphI断片(1829bp)をpAE104の同部位に組み込むことによって作製した。
pAE104FをpHSA14−1−HlyA218とともに大腸菌JM109に導入した。この形質転換体をAE104Fとし、上記実施例4と同様にHSA14−1 scFvの分泌活性を測定した。その結果、図9に示すようにAE104F株におけるHSA14−1 scFvの分泌活性はAE104株と同等レベルであったことから、AE104株においては変異型HlyBのN末端から448番目のフェニルアラニンが分泌活性に重要なアミノ酸残基であることが確かめられた。
AE104F株における至適培養温度の検討
AE104F株についてタンパク質発現の至適温度を確かめるため、19℃、23℃および27℃におけるHSA14−1 scFvの分泌量を上記〔実施例4〕と同様に測定した。比較コントロールとして、AE104株を用いた。波長660nmにおける吸光度から19℃では41時間、23℃では24時間、27℃では17時間後において増殖は定常期の状態であった。図10に示すように、AE104株,AE104F株ともに23℃と27℃では同等の発現レベルを示した一方、19℃では発現レベルは明らかに低下した。これらの結果と上記〔実施例4〕に示した結果から、AE104F株を用いたHSA14−1 scFvの発現の至適温度帯は23℃から27℃であると言える。
AE104Fを用いた細胞内蛋白の発現効果
細胞外蛋白のみならず細胞内蛋白質がAE104Fにおいて効率的に分泌されるかどうかを確かめるため、例としてヒト由来のがん遺伝子c−Myc(配列番号48/GeneBankAccession No.:V00568)およびがん抑制遺伝子PTEN(配列番号49/GeneBankAccession No.:NM000314)についてpAE104Fを用いて低温での分泌試験を行った。HlyAシグナルを付加したc−MycおよびPTENの発現ベクターについては以下に示すように構築を行った。すなわち、c−Mycについては当該遺伝子を有するcDNA断片を用いてNcoI部位を含むセンスプライマー
Myc−NcF:5’−CATGCCATGGCACCCCTCAACGTTAGCTTCACCA−3’(配列番号44)
およびNotI部位を含むアンチセンスプライマー
Myc−NtR:5’−ATAGTTTAGCGGCCGCACAAGAGTTCCGTAGCTGT−3’(配列番号45)
を用いてPCRを行い、NcoIおよびNotIで切断後、E tagを挟んだ融合遺伝子となるようpHSA14−1−HlyA218のHSA14−1 scFvをコードするNcoI−NotI断片と組み換え、pMyc−HlyA218を作製した。pMyc−HlyA218において、発現するタンパク質はc−Myc−E tag−HlyA218の融合タンパク質である。PTENに関してもc−Mycと同様に当該遺伝子を有するcDNA断片を用いてNcoI部位を含むセンスプライマー
PTEN−NcF:5’−CATGCCATGGCAACAGCCATCATCAAAGAGATCGTT−3’(配列番号46)
およびNotI部位を含むアンチセンスプライマー
PTEN−NtR:5’−ATAGTTTAGCGGCCGCGACTTTTGTAATTTGTGTATGCTGATC−3’(配列番号47)
を用いてPCRを行い、NcoIおよびNotIで切断後、pHSA14−1−HlyA218のHSA14−1 scFvをコードするNcoI−NotI断片と組み換え、pPTEN−HlyA218を作製した。
pSTV−HlyBDもしくはpAE104FをpMyc−HlyA218もしくはpPTEN−HlyA218とともに大腸菌JM109に導入した。これら形質転換体を37℃で培養し、波長660nmにおける吸光度が0.2〜0.3となったときにIPTGを終濃度0.4mMとなるよう添加し、37℃で5時間、もしくは23℃で24時間培養した後、4/1000OD660ユニット相当の上清を用いて常法に従いウエスタンブロッティングを行った。ウエスタンブロッティングの1次抗体には抗E tag抗体(Amersham Bioscience社)の2000倍希釈液を、2次抗体にはAlkaline Phosphatase−Rabbit Anti−Mouse IgG(H+L)(ZYMED社)の1000倍希釈液を使用した。検出にはCDP−Star Ready−To Use(Roche社)を使用した。
結果を図11(A)及び図11(B)に示す。c−Mycに関しては野生型では23℃および37℃ともに検出できず、可溶性蛋白として培地中に分泌されていないことが示唆された。一方、AE104Fでは23℃において培地中に検出できたことから、AE104Fを用いたc−Mycの低温での発現が有効であることが確認された。PTENに関しては野生型では37℃においてのみ検出されたが、分泌レベルは低かった。AE104Fでは23℃において37℃における野生型の発現レベルと同等以上であったが、37℃において僅かに分解物が見られるものの多量の分泌が確認された。したがって、PTENの場合は37℃で発現させることで分泌効率を高めることができる。以上の結果から、細胞内蛋白もAE104Fによって効率的に分泌できることがわかった。また、蛋白質の種類によっては37℃でより効率的な分泌発現を行えることが確認された。

Claims (19)

  1. 配列番号1若しくは配列番号2に示されるアミノ酸配列;又は配列番号1若しくは配列番号2に示されるアミノ酸配列において1乃至数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換若しくは付加され尚且つアデノシントリホスファターゼ(ATPase)活性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質。
  2. 前記のATPase活性が、α−ヘモリシン(HlyA)の蛋白輸送に関わるアデノシントリホスファターゼ活性である、請求項1に記載のタンパク質。
  3. 前記欠失、挿入、置換若しくは付加が、配列番号50に示されるアミノ酸配列の、アミノ酸番号448位、604位、654位、682位、及び705位からなる群より選択される少なくとも1の部位における欠失、挿入、置換又は付加である、請求項1に記載のタンパク質。
  4. 請求項1乃至3の何れか一項に記載のタンパク質をコードする遺伝子。
  5. 配列番号4若しくは配列番号5に示される塩基配列、又はこれらの塩基配列がコードするアミノ酸配列と同一のアミノ酸をコードする塩基配列を含む遺伝子。
  6. 請求項4又は5に記載の遺伝子が、所定の宿主において発現可能に挿入された発現ベクター。
  7. プロモーター配列;及び当該プロモーター配列の制御下に、目的タンパク質及びHlyAシグナル配列を同一の読み取り枠にコードする塩基配列を含む、請求項6に記載の発現ベクター。
  8. 前記プロモーターと同一又は別種類のプロモーター制御下の領域であって、前記の目的タンパク質及びHlyAシグナル配列をコードする塩基配列の挿入部位とは別個の部位に、請求項4に記載の遺伝子を発現可能なように挿入した、請求項7に記載の発現ベクター。
  9. 配列番号19に記載の塩基配列、又は配列番号18のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子HlyDを発現可能なように含む、請求項6乃至8の何れか一項に記載の発現ベクター。
  10. 配列番号18のアミノ酸配列において1乃至数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換、又は付加され、尚且つ宿主内で発現後ペリプラズムに移行して、変異タンパク質HlyB’、タンパク質TolC又はTolC様タンパク質とともに、HlyAシグナル配列が融合した目的タンパク質を菌体外に輸送する輸送孔を形成するタンパク質をコードする塩基配列を有する遺伝子HlyDを発現可能なように含む、請求項6乃至8の何れか一項に記載の発現ベクター。
  11. 前記プロモーターが、トリプトファンプロモーター、lacプロモーター、トリプトファンプロモーターとlacプロモーターとの雑種プロモーター、T7プロモーター、T5プロモーター、T3プロモーター、SP6プロモーター、アラビノース誘導プロモーター、コールドショックプロモーター、テトラサイクリン誘導性プロモーターからなる群より選択される1のプロモーターである、請求項7乃至10の何れか一項に記載の発現ベクター。
  12. 前記HlyAシグナル配列をコードするDNA断片が、配列番号3に示されるアミノ酸配列の60〜218番目のアミノ酸をコードする塩基配列を含み、尚且つ目的タンパク質をコードする塩基配列の3’側に付加されている、請求項7乃至11の何れか一項記載の発現ベクター。
  13. 前記発現ベクターが、プラスミドベクター、又はファージベクターである、請求項6乃至12の何れか一項に記載の発現ベクター。
  14. 請求項6に記載の発現ベクターと、目的タンパク質及びHlyAシグナル配列を同一の読み取り枠にコードする塩基配列を含む発現ベクターとの組合わせ;
    請求項6に記載の発現ベクターと、目的タンパク質及びHlyAシグナル配列を同一の読み取り枠にコードする塩基配列並びにタンパク質HlyDをコードする塩基配列を含む発現ベクターとの組合わせ;
    請求項6に記載の発現ベクターと、目的タンパク質及びHlyAシグナル配列を同一の読み取り枠にコードする塩基配列を含む発現ベクターと、タンパク質HlyDをコードする塩基配列を含む発現ベクターとの組合わせ;
    請求項6乃至13の何れか一項に記載の発現ベクターの群から選択されるいずれか一つの発現ベクター又は発現ベクターの組合わせ
    を宿主に導入してなる、形質転換体。
  15. 前記宿主がグラム陰性菌である、請求項14に記載の形質転換体。
  16. 請求項14に記載の形質転換体を所定の条件で培養する工程を含む、タンパク質の生産方法。
  17. 前記培養工程後の培養液より宿主細胞を除去する工程;及び
    適宜、宿主細胞除去後の培養液からタンパク質を精製する工程;
    を有する、請求項16に記載のタンパク質の生産方法。
  18. 前記形質転換体を培養する温度が、30℃以下である、請求項16又は17に記載のタンパク質の生産方法。
  19. 前記形質転換体を培養する温度が、19℃以上、30℃以下である、請求項16又は17に記載のタンパク質の生産方法。
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