JPWO2005036965A1 - 殺虫剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】低い有効成分濃度で高い殺虫活性を示すと共に、その殺虫活性の持続性に優れた殺虫剤を提供すること。
【解決手段】炭素数8〜22の脂肪酸グリセリドとマクロライド系殺虫剤とを含有することを特徴とする殺虫剤。

Description

この発明は、殺虫剤に関し、さらに詳しくは、農園芸分野において殊に防除が困難な害虫に対して優れた防除効果とその持続性とを有する殺虫剤に関する。
土壌放線菌によって生産されるマクロライド系化合物は、広範囲の害虫に低濃度で殺虫活性を示すため、害虫防除剤として広く使用されている。現在、使用されている代表的なマクロライド系薬剤としては、スピノサド(商品名:スピノエース)、エマメクチン安息香酸塩(商品名:アファーム)、ミルベメクチン(商品名:コロマイト)、ネマデクチン(商品名:メガトップ)等を挙げることができる。しかし、殺虫活性が広いとはいえ、化合物によっては、殺虫活性にある程度の選択性があることが報告されている(例えば、非特許文献1参照)。
「植物防疫」、第54巻、第9号(2001年)、P377 また、これまでに、澱粉とスピノサドまたはエマメクチン安息香酸塩と含有する防除効果の持続性に優れた殺虫・殺ダニ剤が知られている。(例えば、特許文献1参照)。
特開2001−302416号公報(請求項1) この殺虫・殺ダニ剤は、それぞれ通常の使用濃度で混合することによって殺成虫力の向上とその持続性とを企図した薬剤である。しかしながら、実際には、散布後飛来した害虫や散布後ふ化した幼虫に対しては、殺虫力が微弱であるという問題があった。
この発明は、このような従来の問題を解消し、低い有効成分濃度で高い殺虫活性を示すと共に、その殺虫活性の持続性に優れた殺虫剤を提供することをその課題とする。
本発明者らは、前記課題を解決するために、殺虫剤を組成する成分について検討を重ねた結果、この成分として、本来、単独では殺虫活性の低い脂肪酸グリセリドと、マクロライド系殺虫剤とを混用することによって、意外にも、殺虫活性および/またはその持続性に耐性を有する害虫に対しても、前記課題が解決できるということを見出し、この知見に基づいてこの発明を完成するに到った。
すなわち、この発明の前記課題を解決するためのこの発明の手段は、
炭素数が8〜22である脂肪酸とグリセリンとから得られる脂肪酸グリセリド(以下において、単に脂肪酸グリセリドと称することがある。)とマクロライド系殺虫剤とを含有することを特徴とする殺虫剤である。
この発明の前記課題を解決するための手段における好ましい態様としては、下記(1)〜(3)の殺虫剤を挙げることができる。
(1)前記脂肪酸グリセリドを形成する脂肪酸が、植物体由来の脂肪酸である殺虫剤。
(2)前記脂肪酸グリセリドの濃度が200〜3000ppmであり、前記マクロライド系殺虫剤の濃度が0.2〜100ppmである殺虫剤。
(3)ハダニ目害虫、半翅目害虫、総翅目害虫または鱗翅目害虫の防除用である殺虫剤。
この発明によれば、本来、マクロライド系殺虫剤では殺虫活性を示さない害虫や低濃度では効果の劣る害虫に対して、低濃度の炭素数8〜22の脂肪酸から得られる脂肪酸グリセライドとマクロライド系殺虫剤とを混用することによって、対象とする害虫の卵から成虫へと成長する各過程において、特異的な殺虫作用が認められた。すなわち、散布後、生存した成虫や産下された卵に対して、殺卵作用、産卵抑制作用、摂食停止作用および殺成虫力の向上が見られ、結果として高い害虫防除効果が奏され、農園芸分野における害虫防除に寄与するところはきわめて多大である。
この発明は、脂肪酸グリセリドとマクロライド系殺虫剤とを含有する殺虫剤である。
この発明に用いる脂肪酸グリセリドは、炭素数が8〜22である脂肪酸とグリセリンとのグリセリンエステルである。前記脂肪酸グリセリドを形成する脂肪酸は、天然脂肪酸であっても合成脂肪酸であってもよいが、植物体由来、例えば、大豆、綿実または菜種由来の脂肪酸であることが好ましい。炭素数8〜22の脂肪酸としては、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ヘンエイコサン酸、及びべヘン酸等を挙げることができ、中でも、カプリル酸、カプリン酸およびこれらの混合物が好ましい。
前記脂肪酸グリセリドは、前記前記脂肪酸とグリセリンとから、常法によりエステル化またはエステル交換することにより製造することができる。製造される脂肪酸グリセリドには、脂肪酸モノグリセリド、脂肪酸ジグリセリドまたは脂肪酸トリグリセリドがあり、いずれの脂肪酸グリセリドをも用いることができる。中でも、カプリル酸とカプリン酸との混合脂肪酸のグリセリド(デカノイルオクタノイルグリセロール、商品名:サンクリスタル乳剤)が好ましい。
この発明に用いるマクロライド系殺虫剤としては、土壌放線菌によって生産されるマクロライド系化合物から成る殺虫剤、例えば、スピノサド(商品名:スピノエース)、エマメクチン安息香酸塩(商品名:アファーム)、ミルベメクチン(商品名:コロマイト)またはネマデクチン(商品名:メガトップ)等を挙げることができる。
この発明の殺虫剤は、例えば前記脂肪酸グリセリドと前記マクロライド系殺虫剤とを混合することにより調製することができる。調製にあたっては、前記脂肪酸グリセリドが常温で固体であるときにはこれを加熱溶融して液状物としてから前記マクロライド系殺虫剤と混合してもよく、前記脂肪酸グリセライドを溶解することのできる溶媒と前記脂肪酸グリセライドとを混合して溶液又は懸濁液を調製し、この溶液とマクロライド系殺虫剤とを混合して調製しても良い。前記溶媒としては、脂肪酸グリセライドを溶解することのできる公知の溶媒を挙げることができ、具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール等の溶剤またはこれらの混合溶剤を挙げることができる。前記脂肪酸グリセリドが常温で液状であるときには、常温で、又は加熱しながらこの脂肪酸グリセリドと前記マクロライド系殺虫剤とを混合調製するのが良い。また、混合調製にあたり、この殺虫剤の技術分野において公知の乳化剤、分散剤、及び補助剤等を前記脂肪酸グリセリド及びマクロライド系殺虫剤に適宜に添加混合することもできる。
このときに用いるマクロライド系殺虫剤粒子は粒状であるのが好ましく、粒状で用いるときの前記マクロライド系殺虫剤の粒径に特に制限はない。また、マクロライド系殺虫剤粒子を混合する条件にも制限はない。
前記脂肪酸グリセリドと前記マクロライド系殺虫剤との混合割合にも特別な制限はない。
この発明の殺虫剤は、脂肪酸グリセリドおよびマクロライド系殺虫剤に乳化剤、分散剤及び固着剤等の補助剤を加えて製造することができる。
このようにして製造されたこの発明の殺虫剤は、そのまま使用に供することができるが、水などで希釈して散布等の使用に供することが好ましい。
前記希釈に当たっては、水等を加えて希釈した脂肪酸グリセリドと水等を加えて希釈したマクロライド系殺虫剤とを混合してもよい。希釈の程度に制限はない。このようにして希釈された殺虫剤における前記脂肪酸グリセリドの濃度は、通常、200〜3000ppmであり、前記マクロライド系殺虫剤の濃度は、通常、0.2〜100ppmである。
この発明の殺虫剤によって防除される対象害虫としては、ハダニ類(ミカンハダニ、リンゴハダニ、ナミハダニ、カンザワハダニ等)等のハダニ目害虫、アブラムシ類(ワタアブラムシ、モモアカアブラムシ等)等の半翅目害虫、コナジラミ類(オンシツコナジラミ、シルバーリーフコナジラミ、タバココナジラミ等)、アザミウマ類(ミナミキイロアザミウマ、ミカンキイロアザミウマ、チャノキイロアザミウマ等)等の総翅目害虫、シンクイムシ類、ヨトウ類等の鱗翅目害虫を挙げることができる。
この発明の殺虫剤においては、このような害虫に対して、その卵から成虫へと成長する各過程において、特異的な殺虫作用を有し、散布後、生存した成虫や産下された卵に対して、殺卵作用、産卵抑制作用、摂食停止作用および殺成虫力の向上が認められる。特に前記0.2〜100ppmという低濃度では、本来、殺虫活性を示さないマクロライド系殺虫剤が、脂肪酸グリセリドと混用することによって、高い害虫防除作用を発揮するのである。
以下、実施例を挙げてこの発明をさらに詳しく説明するが、これら実施例によってこの発明はなんら限定されるものではない。
実施例(殺虫剤の製造例)
デカノイルオクタノイルグリセロールを有効成分として90%含有するサンクリスタル(市販品。商品名。剤型は乳剤。)に以下の表に示す希釈倍数となるように水を加えて希釈することによりサンクリスタル希釈液を調製した。また、スピノサドを有効成分としてこれを25%含有するスピノエース(市販品。商品名。剤型は顆粒水和剤。)に以下の表に示す希釈倍数となるように水を加えてスピノエース希釈液を調製した。次いで、前記サンクリスタル希釈液と前記スピノエース希釈液とを混合して、殺虫剤を製造した。
サンクリスタルに以下の表に示す希釈倍数と成るように水を加えて希釈することにより調製されたサンクリスタル希釈液と、アファーム製剤に以下の表に示す希釈倍数と成るように水を加えて希釈することにより調製されたアファーム希釈液とを混合して、殺虫剤を製造した。
サンクリスタルに以下の表に示す希釈倍数と成るように水を加えて希釈することにより調製されたサンクリスタル希釈液と、コロマイト乳剤に以下の表に示す希釈倍数と成るように水を加えて希釈することにより調製されたコロマイト希釈液とを混合して、殺虫剤を製造した。
サンクリスタルに以下の表に示す希釈倍数と成るように水を加えて希釈することにより調製されたサンクリスタル希釈液と、メガトップ液剤に以下の表に示す希釈倍数と成るように水を加えて希釈することにより調製されたメガトップ希釈液とを混合して、殺虫剤を製造した。
比較例1(殺虫剤の製造例)
前記サンクリスタルを以下の表に示す希釈倍数の水で希釈したサンクリスタル希釈液を殺虫剤とし、この殺虫剤を表において「比較例1」と表示した。サンクリスタルに以下の表に示す希釈倍数と成るように水を加えて希釈することにより調製されたサンクリスタル希釈液と、カスケード乳剤に以下の表に示す希釈倍数と成るように水を加えて希釈することにより調製されたカスケード希釈液とを混合して、殺虫剤を製造した。この殺虫剤を、表においては「比較例1+K」と表示した。サンクリスタルに以下の表に示す希釈倍数と成るように水を加えて希釈することにより調製されたサンクリスタル希釈液と、ダントツ水溶剤に以下の表に示す希釈倍数と成るように水を加えて希釈することにより調製されたダントツ希釈液とを混合して、殺虫剤を製造した。この殺虫剤を、表においては「比較例1+D」と表示した。サンクリスタルに以下の表に示す希釈倍数と成るように水を加えて希釈することにより調製されたサンクリスタル希釈液と、オルトラン水和剤に以下の表に示す希釈倍数と成るように水を加えて希釈することにより調製されたオルトラン希釈液とを混合して、殺虫剤を製造した。この殺虫剤を、表においては「比較例1+R」と表示した。
比較例2
スピノエースを以下の表に示す希釈倍数の水で希釈したスピノエース希釈液を殺虫剤とし、この殺虫剤を表において「比較例2」と表示した。前記スピノエース希釈液と、表に示される希釈倍数となるように水で粘着くん液剤を希釈してなる粘着くん液希釈液との混合液を殺虫剤とし、この殺虫剤を表においては「比較例2+N」と表示した。前記スピノエース希釈液と、表に示される希釈倍数となるように水でオレート液剤を希釈してなるオレート希釈液との混合液を殺虫剤とし、この殺虫剤を表においては「比較例2+O」と表示した。前記スピノエース希釈液と、表に示される希釈倍数となるように水でアカリタッチ乳剤を希釈してなるアカリタッチ希釈液との混合液を殺虫剤とし、この殺虫剤を表においては「比較例2+A」と表示した。
比較例3
アファーム製剤に以下の表に示す希釈倍数と成るように水を加えて希釈することにより調製されたアファーム希釈液を殺虫剤とし、これを表においては「F」と表示した。コロマイト乳剤に以下の表に示す希釈倍数と成るように水を加えて希釈することにより調製されたコロマイト希釈液を殺虫剤とし、これを表においては「C」と表示した。カスケード乳剤に以下の表に示す希釈倍数と成るように水を加えて希釈することにより調製されたカスケード希釈液を殺虫剤とし、これを表においては「K」と表示した。ダントツ水和剤に以下の表に示す希釈倍数と成るように水を加えて希釈することにより調製されたダントツ希釈液を殺虫剤とし、これを表においては「D」と表示した。オルトラン水和剤に以下の表に示す希釈倍数と成るように水を加えて希釈することにより調製されたオルトラン希釈液を殺虫剤とし、これを表においては「R」と表示した。メガトップ液剤に以下の表に示す希釈倍数と成るように水を加えて希釈することにより調製されたメガトップ希釈液を殺虫剤とし、これを表においては「M」と表示した。表に示される希釈倍数となるように水で粘着くん液剤を希釈してなる粘着くん液希釈液を殺虫剤とし、この殺虫剤を表においては「N」と表示した。表に示される希釈倍数となるように水でオレート液剤を希釈してなるオレート希釈液を殺虫剤とし、この殺虫剤を表においては「O」と表示した。表に示される希釈倍数となるように水でアカリタッチ乳剤を希釈してなるアカリタッチ希釈液を殺虫剤とし、この殺虫剤を表においては「A」と表示した。
評価試験1〜6
ポット栽培のキュウリ(品種:オナー、1.5葉期)の葉上にナミハダニ雌成虫を放虫して、雌成虫が定着した2日後に寄生虫数を調査し、表1に示す希釈倍数で希釈された殺虫剤を小型噴霧器により散布した。散布1日後の雌成虫の生死状況を調査した。結果を表1に示す。
Figure 2005036965
表1に示すように比較例1、2の結果から分かるように、スピノエースのナミハダニ雌成虫に対する効果については、麻痺虫が多く、速効性の点に難点があり、殺成虫力としては低いものであった。一方、サンクリスタル乳剤では、生虫が多く、殺成虫力としては高いものではなかった。ところが、スピノエースとサンクリスタルとを混用することにより、速効性と殺成虫力との向上が認められた。この試験は、散布1日後の成虫に対する速効性を見たものであるが、通常、3〜4日で麻痺虫が生と死とに別れる。麻痺の状態であっても、その程度によって産卵能を有するので、殺ダニ剤にとって成虫に対する速効性はきわめて重要である。
評価試験7〜12
ポット栽培のインゲン(品種:さつきみどり2号、第1複葉期)に、表2に示す殺虫剤を、表2に示す希釈倍数(水による希釈)で小型噴霧器により散布した。散布後、ガラスハウス内で管理し、散布1日後および4日後にインゲンの第1複葉にナミハダニ雌成虫を20頭づつ放虫した。放虫3日後に雌成虫の生存虫数と総産卵数を調査した。結果を表2に示す。
Figure 2005036965
( )内は、生存虫1頭当りの産卵数である。
表2の実施例及び比較例の結果から分かるように、スピノエースとサンクリスタルとを混用することにより、それぞれ単独で使用する場合に比較して、殺虫力の向上と産卵数の減少が認められた。この傾向は、散布後4日後の放虫に対しても維持され、残効性の向上も期待できる。散布後、放虫した成虫が3日間で産卵した卵数は、無散布区で1頭当り22〜24個、スピノエースの単独使用で19〜23個、サンクリスタルの単独使用で115〜116個となった。混用区では、低濃度区を含めて4〜8個の産卵数であり、散布後、放虫された成虫は、葉上の殺虫剤付着部位に接触するか、吸汁による食毒作用によるのか定かではないが、3日間で死亡固体が多く見られ、生存固体の産卵数も減少し、混用によって、産卵数の明らかな減少が認められた。防除の面からは、殺虫剤のかかりにくい葉裏のダニや、散布後、風によって飛来したダニが殺虫剤処理葉に接触することにより、殺ダニ作用が見られることは、残効性の点からも重要である。
評価試験13〜19
ポット栽培のインゲン(品種:さつきみどり2号、第1複葉期)に、ナミハダニ雌成虫を20頭ずつ放虫し、ガラスハウス内で2日間、産卵させた後、表3に示す殺虫剤を、表3に示す希釈倍数(水による希釈)で小型噴霧器により散布した。散布7日後、寄生ナミハダニ数を成育段階ごとに調査した。結果を表3に示す。
Figure 2005036965
表3に示されるように、スピノエース顆粒水和剤、サンクリスタル乳剤各単用では、殺成虫力は認められるが、ふ化幼虫から成育した若虫が多数見られた。スピノエースとサンクリスタルとを混用することにより、殺卵力の向上が認められ、さらに、ふ化幼虫の成育停止が認められた。なお、ナミハダニと同類のカンザワハダニ27℃条件下における成育ステージは、表4に示すとおりである。
Figure 2005036965
つまり、産卵から成虫までの日数は10日間である。この試験では、成虫と2日間産卵させた卵を対象として散布した。散布後、生存している成虫は産卵し続ける。卵からふ化した幼虫(足が6本)は、第1静止期に入り、脱皮して若虫(足が8本)に成育する。各単用区からふ化した幼虫は正常に成育し、大部分が若虫となった。スピノエースとサンクリスタルとの混用により、混合区では、ふ化幼虫は摂食阻害によって餓死固体が見られた。混合区では、ふ化幼虫の生虫が見られるが、後記するように、日数が経つに従い餓死する。
評価試験20〜25
ポット栽培のインゲン(品種:さつきみどり2号)初生葉に、ナミハダニ雌成虫を20頭ずつ放虫した。2日間、産卵させた後、表5に示す殺虫剤を、表5に示す濃度で小型噴霧器により散布した。散布5、7、10日後にそれぞれのポットからインゲンの初生葉を切り取り、ふ化幼虫の生存虫数を調査した。結果を表5に示す。
Figure 2005036965
( )内は、増殖抑制率である。
増殖抑制率=1−(散布区の生存虫数/無散布区の生存虫数)×100
スピノエース顆粒水和剤、サンクリスタル乳剤各単用では、散布後、日数が経つに従い、幼虫数の増加傾向が見られた。ところが、スピノエースとサンクリスタルとを混用することによって、ふ化幼虫に対する摂食阻害作用のため、死亡固体が多く認められ、10日後ではナミハダニの増殖を完全に抑制することができた。
評価試験26〜41
ポット栽培のインゲン(品種:さつきみどり2号)初生葉に、ナミハダニ雌成虫を1葉当り10頭ずつ放虫し、ガラスハウス内で3日間、産卵させた。放虫3日後、表6に示す殺虫剤を、表6に示す希釈倍数(水による希釈)および濃度で小型噴霧器により散布した。散布9日後の寄生虫数から増殖抑制率を算出した。結果を表6に示す。
Figure 2005036965
増殖抑制率=1−(散布区の生存虫数/無散布区の生存虫数)×100
スピノエースとサンクリスタルとのそれぞれを単独で使用した場合には、生存虫が多数見られたが、スピノエースとサンクリスタルとを混用することによって、生存虫が激減し、高い相乗効果が認められた。この効果を奏する混合濃度(ppm)比は、スピノエース:サンクリスタル=1:8〜1:250であった。また、完全阻止混合濃度比は、1:58であった。
評価試験42〜49
プランター栽培のナス(品種:千両号6葉期)に、ナミハダニ寄生葉切片を接種した。接種3日後に殺虫剤散布前のナミハダニ寄生虫数を調査した後、表7に示す殺虫剤を、表6に示す希釈倍数(水による希釈)で小型噴霧器により散布した。散布7、14、20、29日後の寄生虫数を全葉について調査し、それぞれの寄生虫数から防除効率を算出した。結果を表7に示す。
Figure 2005036965
防除効率=(1−CbΣTai/TbΣCai)×100
Cb:無散布区の殺虫剤散布前の虫数
Tai:散布区の殺虫剤散布後のi回目の虫数
Tb:散布区の殺虫剤散布前の虫数
Cai:無散布区の殺虫剤散布後のi回目の虫数
スピノエース及びサンクリスタル夫々を単独で使用した場合には、ナミハダニに対する効果は劣るものであったが、スピノエースとサンクリスタルとを混用することによって、効果の向上が認められた。
評価試験50〜61
ポット栽培のインゲン(品種:さつきみどり2号)第1複葉に、ナミハダニ雌成虫を20頭/株ずつ放虫し、ガラスハウス内で1日間、産卵させた。殺虫剤散布前のナミハダニ寄生虫数を調査した後、表8に示す殺虫剤を、表8に示す希釈倍数(水による希釈)で小型噴霧器により散布し、散布7日後の寄生虫数を調査した。結果を表8に示す。
Figure 2005036965
N:粘着くん液剤(住友化学工業株式会社製、5%でんぷん)
O:オレート液剤(大塚化学株式会社製、20%オレイン酸ナトリウム)
A:アカリタッチ乳剤(石原産業株式会社製、70%プロピレングリコールモノ
脂肪酸エステル)
なお、表8にといて、殺虫剤につき「比較例2+N」とあるのは、その殺虫剤が比較例2で調製された殺虫剤と粘着くん液剤との混合物であることを、示す。殺虫剤につき「比較例2+O」及び殺虫剤につき「比較例2+A」とある表示も同様のことを示す。
物理的防除剤である粘着くん液剤、オレート液剤またはアカリタッチ乳剤とスピノエースとの混用効果は認められなかった。スピノエースとサンクリスタルとをそれぞれ単独で使用する場合は、殺ダニ効果は劣るものであったが、スピノエースとサンクリスタルとを混用することによって、ふ化幼虫の死亡固体が多く見られ、他の類似の物理的防除剤とは異なる作用効果が得られることが認められた。
評価試験62〜97
野外ミカン樹(温州ミカン)から葉(1枝1葉)を採取し、水洗、水挿した後、ミカンハダニ雌成虫を1葉当り10頭ずつ放虫した。4日間、25℃室内で産卵させた後、雌成虫を除去し、産卵数を調査した。同日、表9に示す殺虫剤を、表9に示す希釈倍数(水による希釈)および濃度で小型噴霧器により散布した。散布後は25℃室内に置き、散布8日後のふ化幼虫の死亡率を算出した。結果を表9に示す。
Figure 2005036965
スピノエースとサンクリスタルとをそれぞれ単独で使用する場合は、殺幼虫効果はほとんど見られなかったが、スピノエースとサンクリスタルとを混用することによって、餓死固体が多く見られ、幼虫に対する効果に著しい向上が認められた。増殖抑制効果、防除効果に比較して、一見、全体的に死亡率が低いように見受けられるが、日数が経つに従い、餓死固体が増加する。また、試験した殺卵効果においては、混用による効果は認められなかったが、混用によってふ化した幼虫が成育しない点が最も特徴的な点である。この作用効果は、サンクリスタルの単独使用では見られず、連続散布することによって幼虫にサンクリスタルが散布された場合にのみ、発現する点で異なるものである。
評価試験98〜132
ポット栽培のインゲン(品種:さつきみどり2号)初生葉に、表10に示す殺虫剤を、表10に示す希釈倍数(水による希釈)および濃度で小型噴霧器により散布し、マメハモグリバエ発生地に配置した。散布14日後に散布後に発生したマメハモグリバエ食入加害虫数を調査した後、被害阻止率を算出した。結果を表10に示す。
Figure 2005036965
被害阻止率=(1−散布区の寄生虫数/無散布区の寄生虫数)×100
スピノエースのマメハモグリバエ食入幼虫に対する直接殺虫力の高いことは知られているが、この試験のような散布後、寄生加害する幼虫、ふ化幼虫に対する効果は見られていない。サンクリスタルを単独使用する場合においても。同様である。スピノエースとサンクリスタルとを混用することによって、産卵はするものの、ふ化幼虫に対する効果が増強され、高い被害防止効果が得られることが認められた。散布後、マメハモグリバエ多発地に配置したところ、スピノエースとサンクリスタルとを混用することによって、成虫の死亡固体も見られるが、食痕、産卵数も多数見られる。ふ化が始まる頃に、ふ化幼虫の小さい食痕が見られるが、ふ化・食害後、幼虫は死亡する。残効も長い。現在、マメハモグリバエ専用剤で被害防止効果を示す薬剤は少ない。
評価試験133〜146
プランター栽培のミニトマト(品種:タイニーティム6.5葉期、10株植え)に、表11に示す殺虫剤を、表11に示す希釈倍数(水による希釈)でプランター当り500ml杓型噴霧器により散布した。散布8日後に上位5葉(1区50葉)を対象に、マメハモグリバエによる被害程度を調査した。この被害程度から被害葉率、被害度および防除価を算出した。結果を表11に示す。
Figure 2005036965
F:アファーム乳剤(シンジェンタジャパン株式会社製、1%エマメクチン安息香酸塩)
C:コロマイト乳剤(三共株式会社製、1%ミルベメクチン)
K:カスケード乳剤(ビーエーエスエフアグロ株式会社製、10%フルフェノクスロン)
D:ダントツ水溶剤(武田薬品工業株式会社製、16%クロチアニジン)
R:オルトラン水和剤(武田薬品工業株式会社製、50%アセフェート)
調査葉数:150
被害程度
0:潜行痕なし。
1:潜行痕が総面積の10%未満。
2:潜行痕が総面積の10〜25%未満。
3:潜行痕が総面積の25〜50%未満。
4:潜行痕が総面積の0%以上。
被害度=n+2n+3n+4n/4×N
n:被害程度が示す葉数。
N:調査葉数。
被害価=無処理区の被害度−処理区の被害度/無処理区の被害度×100
マクロライド系殺虫剤とサンクリスタル乳剤とを混用することによって、高い防除効果が得られることが認められた。
評価試験147〜159
ポット栽培のインゲン(品種:さつきみどり2号)第1複葉期に寄生しているミナミキイロアザミウマ幼虫を対象に、表12に示す殺虫剤を、表12に示す濃度で小型噴霧器により散布した。散布5日後に寄生しているミナミキイロアザミウマの生死状況を調査し、死虫率を算出した。結果を表12に示す。
Figure 2005036965
スピノエースを単独で使用する場合には効果が劣る12.5ppm以下の濃度区において、スピノエースとサンクリスタルとを混用することによって、高い防除効果が得られることが認められた。
評価試験160〜164
ポット栽培のインゲン(品種:虎丸うずら)初生葉を飼育ケージ(30×25×28cm)に入れ、オンシツコナジラミ成虫を放虫して、2日間、産卵させた。産卵後、表13に示す殺虫剤を、表13に示す希釈倍数(水による希釈)で小型噴霧器により散布した。散布2日後に寄生葉を切り取り、実態顕微鏡を用いて、ふ化状況およびふ化幼虫の死虫率を調査した。結果を表13に示す。
Figure 2005036965
スピノエースとサンクリスタルとを混用することによって、ふ化幼虫に対する効果が著しく向上し、安定した効果が得られることが認められた。
評価試験165〜200
ポット栽培のキュウリ(品種:新光A号)第1本葉に、ワタアブラムシ寄生葉を接種し、1日後に寄生虫数を調査した。調査後、表14に示す殺虫剤を、表14に示す希釈倍数(水による希釈)および濃度で小型噴霧器により散布した。散布5日後に寄生虫数を調査し、増殖抑制率を算出した。結果を表14に示す。
Figure 2005036965
増殖抑制率=(1−無処理区の処理前虫数×処理区の処理後虫数/処理区の
処理前虫数×無処理区の処理後虫数)×100
スピノエースの単独使用では効果が見られなかったが、スピノエースとサンクリスタルとを混用することによって、ワタアブラムシに対する増殖抑制効果が高められた。
評価試験201〜230
ポット栽培のインゲン(品種:さつきみどり2号)初生葉に、ナミハダニ雌成虫20頭(2ポット)ずつ放虫した。2日間、産卵させた後、表15に示す殺虫剤を、表15に示す濃度で小型噴霧器により散布した。散布9日後に生存虫数を調査し、増殖抑制率を算出した。結果を表15に示す。
Figure 2005036965
増殖抑制率=(1−散布区の生存虫数/無散布区の生存虫数)×100
C:コロマイト乳剤(三共株式会社製、1%ミルベメクチン)
コロマイト乳剤単用では効果が劣る1ppm以下の濃度において、コロマイト乳剤とサンクリスタル乳剤とを混用することによって、安定した効果が得られた。最適混合割合は、コロマイト:サンクリスタル=1000ppm:1.13ppm(1:885)であった。
評価試験231〜238
ポット栽培のキュウリ(品種:新光A号)第1本葉に、表16及び表17に示す殺虫剤を、表16及び表17に示す希釈倍数(水による希釈)で小型噴霧器により散布した。散布2、4、6、8日後にキュウリ葉表面にナミハダニ雌成虫を15頭づつ放虫した。各放虫の2日後に葉裏に移動したナミハダニの生存虫数と産卵数を調査した。( )内は1頭当りの産卵数である。結果を表16及び表17に示す。
Figure 2005036965
Figure 2005036965
C:コロマイト乳剤(三共株式会社製、1%ミルベメクチン)
散布されたキュウリの第1本葉は、散布8日後で2.5倍伸長した。散布後、放虫したナミハダニ成虫に対するコロマイト乳剤の効果は顕著なものではなかった。葉表面から葉裏に移動した成虫の産卵数は、コロマイト乳剤単用では散布4日後まで低下し、産卵抑制効果が認められた。コロマイト乳剤とサンクリスタル乳剤とを混用することによって、さらに産卵数は低下し、散布8日後まで産卵抑制効果を持続することができた。
評価試験239〜263
ポット栽培のインゲン(品種:さつきみどり2号)初生葉に、ナミハダニ雌成虫20頭(2ポット)ずつ放虫した。放虫1日後に、表18に示す殺虫剤を、表18に示す希釈倍数(水による希釈)および濃度で小型噴霧器により散布した。散布7日後の成虫とふ化した幼虫を調査し、増殖抑制率を算出した。結果を表18に示す。
Figure 2005036965
F:アファーム乳剤(シンジェンタジャパン株式会社製、1%エマメクチン安息香酸塩)
増殖抑制率=(1−無処理区の処理前虫数×処理区の処理後虫数/処理区の
処理前虫数×無処理区の処理後虫数)×100
無処理区生存虫数:成虫12、幼虫28、合計40
アファーム乳剤単用でも増殖抑制効果は高かったが、効果の劣るアファーム1.62ppm区において、アファーム乳剤とサンクリスタル乳剤とを混用することによって、高い効果が得られることが認められた。
評価試験264〜288
ポット栽培のインゲン(品種:さつきみどり2号)初生葉に、ナミハダニ雌成虫20頭(2ポット)ずつ放虫した。放虫1日後に、表19に示す殺虫剤を、表19に示す希釈倍数(水による希釈)および濃度で小型噴霧器により散布した。散布7日後の成虫とふ化した幼虫を調査し、増殖抑制率を算出した。結果を表19に示す。
Figure 2005036965
M:メガトップ液剤(ビーエーエスエフアグロ株式会社製、3.6%ネマデクチン)
増殖抑制率=(1−無処理区の処理前虫数×処理区の処理後虫数/処理区の
処理前虫数×無処理区の処理後虫数)×100
メガトップ液剤単用では、効果が不安定であったが、メガトップ液剤とサンクリスタルとを混用することによって、安定した効果が得られることが認められた。
評価試験289〜324
ポット栽培のインゲン(品種:さつきみどり2号)初生葉に、表20に示す殺虫剤を、表20に示す希釈倍数(水による希釈)および濃度で小型噴霧器により散布した。散布後、マメハモグリバエガ多発しているミニトマト栽培ハウスに配置し、産卵、加害させた。散布13日後に初生葉に寄生しているマメハモグリバエガ幼虫数を調査し、寄生虫数から被害阻止率を算出した。結果を表20に示す。
Figure 2005036965
F:アファーム乳剤(シンジェンタジャパン株式会社製、1%エマメクチン安息香酸塩)
被害阻止率=(1−散布区の寄生虫数/無散布区の寄生虫数)×100
アファーム乳剤単用では、2000倍(5ppm)において高い効果が認められるが、これ以下の濃度では全く効果を示さなかった。効果の劣る2.5ppm以下の濃度区において、アファーム乳剤とサンクリスタルとを混用することによって、被害防止効果が著しく向上した。
評価試験325〜334
ポット栽培のキュウリ(品種:新光A号、2葉期)に、ワタアブラムシ寄生片を接種した。接種2日後の散布前の虫数調査した後、表21に示す殺虫剤を、表21に示す希釈倍数(水による希釈)で小型噴霧器により散布した。散布3日後に寄生虫数を調査し、補正密度指数を算出した。結果を表21に示す。
Figure 2005036965
C:コロマイト乳剤(三共株式会社製、1%ミルベメクチン)
F:アファーム乳剤(シンジェンタジャパン株式会社製、1%エマメクチン安息香酸塩)
補正密度指数=無処理区の処理前虫数×処理区の処理後虫数/処理区の処理前虫数×無
処理区の処理後虫数
コロマイト乳剤及びアファーム乳剤夫々の単独使用では、効果が劣るものであったが、コロマイト乳剤またはアファーム乳剤とサンクリスタルの900倍希釈液とを混用することによって、高い効果が得られることが認められた。
評価試験335〜343
野外栽培のナス(品種:千両2号)に寄生しているチャノホコリダニ被害新葉部に、表22に示す殺虫剤を、表22に示す希釈倍数(水による希釈)で小型噴霧器により散布した。散布3日後に散布した新葉部を切り取り、顕微鏡下で生存虫数を調査した。結果を表22に示す。
Figure 2005036965
C:コロマイト乳剤(三共株式会社製、1%ミルベメクチン)
コロマイト乳剤及びアーデント水和剤夫々の単独使用では、効果の劣る16000倍、32000倍において、コロマイト乳剤とサンクリスタルの600倍希釈液とを混用することによって、高い効果が得られることが認められた。

Claims (4)

  1. 炭素数が8〜22である脂肪酸とグリセリンとから得られる脂肪酸グリセリドとマクロライド系殺虫剤とを含有することを特徴とする殺虫剤。
  2. 前記脂肪酸グリセリドを形成する脂肪酸が、植物体由来の脂肪酸である請求項1に記載の殺虫剤。
  3. 前記脂肪酸グリセリドの濃度が200〜3000ppmであり、前記マクロライド系殺虫剤の濃度が0.2〜100ppmである請求項1または2に記載の殺虫剤。
  4. ハダニ目害虫、半翅目害虫、総翅目害虫または鱗翅目害虫の防除用である請求項1〜3のいずれか一項に記載の殺虫剤。
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