JPWO2005007914A1 - オーステナイト系耐熱球状黒鉛鋳鉄 - Google Patents
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Abstract
重量比でMo:1〜4.5%、Sn及び/又はSbを2Sn+Sbで0.001〜0.5%含有する組成を有するオーステナイト系耐熱球状黒鉛鋳鉄。好ましくは、重量比でC:1〜3.5%、Si:1〜6.5%、Cr:3%以下、Ni:10〜40%、Mo:1〜4.5%、Sn及び/又はSbを2Sn+Sbで0.001〜0.5%、黒鉛球状化元素:0.1%以下を含有する組成を有するオーステナイト系耐熱球状黒鉛鋳鉄。
Description
本発明は、自動車エンジン用のターボチャージャーハウジング、エキゾーストマニホルド、触媒ケース等の排気系部品等に好適なオーステナイト系耐熱球状黒鉛鋳鉄に関する。
ターボチャージャーハウジング、エキゾーストマニホルド、触媒ケース、ターボチャージャーハウジングとエキゾーストマニホルドを鋳造一体化したターボチャージャーハウジング一体エキゾーストマニホルド、触媒ケースとエキゾーストマニホルドを鋳造一体化した触媒ケース一体エキゾーストマニホルド等の自動車エンジン用排気系部品は、内部を通過する排気ガスにより繰り返し高温に曝される等、使用条件が高温かつ過酷であり、また排気ガス中の硫黄酸化物、窒素酸化物等に曝されるので、高い耐酸化性、高温耐力、熱亀裂寿命等の耐熱性が要求されている。そのため、自動車エンジン用排気系部品には従来から、高耐熱性のオーステナイト系球状黒鉛鋳鉄(通称ニレジスト)等の耐熱鋳鉄や、Ni、Cr、W等の元素を多量に含有して耐熱性を向上させたフェライト系やオーステナイト系のステンレス鋳鋼等が用いられてきた。
典型的なオーステナイト系球状黒鉛鋳鉄は、重量比でC:2.0%以下、Si:4.0〜6.0%、Mn:0.5〜1.5%、Ni:34.0〜36.0%、及びCr:1.5〜2.5%の組成を有し、常温において伸びが10%以上、0.2%耐力が200N/mm2以上のオーステナイト系球状黒鉛鋳鉄(JIS G 5510のFCDA−NiSiCr 35 5 2)である。しかし、このオーステナイト系球状黒鉛鋳鉄は、常温での伸びや耐力及び鋳造性が良好であり、900℃未満の排気ガス温度での高温耐力も比較的良好であるが、900℃以上の温度では、亀裂の起点となる酸化膜が生成し(耐酸化性が十分ではなく)、熱亀裂寿命も短い。このため、900℃以上の高温排気ガスに曝される排気系部品に使用するのは難しい。
特開昭59−113160号(特許文献1)は、重量比でC:2.5〜3.5%、Si:1.5〜3%、Mn:0.2〜8.0%、Cr:1〜3%、Ni:18〜35%、P:0.05%以下、S:0.15%以下、Fe及び不純物:残部からなる組成を有する耐熱亀裂性に優れたオーステナイト球状黒鉛鋳鉄を開示している。実施例には、C:2.9%、Si:2.7%、Mn:1.5%、Cr:2.0%、Ni:25.0%、Fe及び不純物:残部の組成とすることにより、排気ガス温度850〜200℃の条件における300時間耐久試験で全く亀裂が生じなかったと記載している。このオーステナイト球状黒鉛鋳鉄は、Siの含有量を低減して金属組織中に析出する有害な析出物の量を少なくすることにより耐熱亀裂性を向上させたものであるが、常温における引張応力に抗しうる延性(常温伸び)が不足する。
特開昭63−114938号(特許文献2)は、重量比でC:2.5〜3%、Si:2.6〜3.2%、Mn:0.6〜1.0%、Cr:1.8〜5.0%、Ni:16.0〜30.0%、P:0.08%以下、S:0.02%以下、Mg:0.03〜0.10%、Nb:0.8〜3.3%、Ce及び/又はLa:0.18〜0.7%、及びFe及び不可避的不純物:残部からなる組成を有し、特に繰り返し加熱冷却を受ける環境下で優れた耐酸化性を発揮する耐熱鋳鉄を開示している。この耐熱鋳鉄は、Nbの添加により不可避的不純物のP、S等の粒界析出を抑制して粒界を強化しつつその腐食を抑制し、またCe及び/又はLaの添加により酸化皮膜を緻密かつ強固にして耐酸化性を向上させたものであるが、拘束された排気系部品に作用する高温での圧縮応力に抗する強度(高温耐力)が不足している。
特開平6−128682号(特許文献3)は、重量比でNi:13.0〜40.0%、Si:3.0〜10.0%、Fe:実質的に残部、及びNb、Mo、V、Ti及びTaの一種以上の元素:Siの5〜30重量%からなる組成を有し、酸化減量が小さい高耐熱性鋳鉄を開示している。実施例には、2.83重量%のC、6.17重量%のSi、0.85重量%のMn、0.056重量%のMg、20.3重量%のNi、1.99重量%のCr、及び1.6重量%のMoの組成を示している。この耐熱鋳鉄は、Siを3.0〜10.0重量%と多量に含有するうえに、MoをSiの5〜30重量%含有するので、耐熱性及び高温疲労強度が向上している。しかしこの鋳鉄は、多量のSiの添加により靭性が低下している。その上、単にMoを添加しただけでは黒鉛の球状化が阻害されるとともに炭化物が増加し、特に常温での延性が不足する。
特公平7−6032号(特許文献4)は、片状黒鉛鋳鉄として、重量比でC:3.2〜3.7%、Si:2.0〜2.4%、Mn:0.2〜0.8%、P:0.1%以下、S:0.1%以下、Cr:0.1〜0.4%、Ni:0.2〜0.6%、Mo:0.3〜0.6%、Sb:0.02〜0.05%、及びFe:残部からなる組成を有し、特にSbにより耐熱疲労特性が向上したシリンダヘッド用鋳鉄を開示している。この鋳鉄では黒鉛が球状化していないので、常温伸び、高温耐力及び熱亀裂寿命が不足し、特に900℃以上と高温の排気ガスに曝されたときの耐熱性は不十分である。
近年環境保全の観点から自動車の排気ガスのさらなる削減や燃費の向上が求められ、エンジンの高出力化及び高温燃焼化が進められている。それに応じて自動車エンジン用排気系部品を通過する排気ガスの温度は上昇してきている。
現在主流の自動車のエンジンは、インテークマニホルドやコレクタ等の吸気系部品内でガソリンと空気を混合し、これを燃焼室に供給する構造を有するが、この構造であると、自動車が万一衝突したときに吸気系部品が破損し、その中のガソリンが漏洩し、引火するおそれがある。これを防止するため、従来はエンジンの後方に吸気系部品を配置し、エンジンの前方にエキゾーストマニホルド、ターボチャージャーハウジング等の排気系部品を配置していた。しかし、エンジンの高出力化及び高温燃焼化のために、近年燃焼室内にガソリンを直接噴射する、いわゆる直噴型エンジンが普及しつつある。直噴型エンジンではガソリンが燃料タンクから燃焼室に直接導かれるので、自動車が万一衝突しても外部に漏洩するガソリンの量は僅かであり、大事故になるおそれが小さい。このため、エンジンの前方に吸気系部品を配置し、エンジンの後方に排気系部品を配置する構造が採用されつつある。
さらにエンジンの後方に排気系部品を配置し、これを排気ガス浄化装置と直結してエンジン始動時の排気ガス温度の低下を抑制し、排気ガス浄化用触媒の初期機能を向上させることも行なわれている。ところが、エンジンの後方に排気系部品を配置すると、自動車の走行時に排気系部品に風が当たりにくいため、排気系部品の表面温度が上昇し過ぎるという問題がある。その上、自動車エンジン用排気系部品は排気ガスに含まれる硫黄酸化物、窒素酸化物等に曝される。
このため、自動車エンジン用排気系部品には、高い耐酸化性に加えて、通過する排気ガス温度の上昇や、後方に配置することによる表面温度の上昇等、従来に増して高温で過酷な使用条件への対応が求められている。
具体的には、900℃以上、特に1000℃近い高温の排気ガスに曝されるので、一層高い耐熱性が要求される。ここで耐熱性に優れているとは、硫黄酸化物、窒素酸化物等を含有する高温の排気ガスに曝されても亀裂の起点となる酸化膜が生成されにくい(耐酸化性に優れている)こと、拘束された排気系部品が高温になることにより発生する圧縮応力に抗する強度を有する(高温耐力が大きい)こと、さらに望ましくは、運転と停止の繰り返しで生じる亀裂により熱疲労破壊に至るまでのサイクル数が多い(熱亀裂寿命が長い)ことを意味する。
排気系部品には優れた耐熱性だけでなく、延性も要求される。排気系部品には、生産工程、エンジンへの組み付け工程、自動車の始動時や運転中等に、振動や衝撃が加わる。排気系部品には、振動や衝撃により生ずる引張応力に抗して、亀裂や割れを発生しないように充分な延性が要求される。特に金属は低温で靭性が低下するので、常温以下の低温における延性は重要である。一般に常温以下における延性は、常温伸びで代表される特性である。
オーステナイト系球状黒鉛鋳鉄等の耐熱鋳鉄の代わりに、より高温の条件に対応可能なフェライト系やオーステナイト系のステンレス鋳鋼を排気系部品等に使用することも提案された。これらのステンレス鋳鋼は、優れた耐熱性及び高温強度を有するものの、Ni、Cr、W等の元素を含有するために高価であるという問題がある。
またこれらのステンレス鋳鋼はオーステナイト系球状黒鉛鋳鉄に比べてCの含有量が低くかつ融点が高いために、鋳造性が悪いという問題がある。このためステンレス鋳鋼を用いて薄肉で複雑形状の排気系部品を製造する場合、原材料だけでなく製造コストも高いために、排気系部品が高価になるという問題がある。
従って本発明の目的は、常温伸びを損うことなく、900℃以上の排気ガスに曝されたときの耐酸化性、高温耐力、熱亀裂寿命等の耐熱性が向上された製造コストの低いオーステナイト系耐熱球状黒鉛鋳鉄を提供することである。
オーステナイト系球状黒鉛鋳鉄の900℃以上(特に1000℃付近)における耐酸化性、高温耐力及び熱亀裂寿命を、常温伸びを損うことなく向上させることに関して鋭意研究した結果、(a)炭化物形成元素でありながら黒鉛球状化を阻害する傾向が小さいMoを適量含有すると、鋳造基地組織の析出強化が図られ、オーステナイト系球状黒鉛鋳鉄の高温耐力が向上し、かつ1000℃付近までの平均熱膨張係数が小さくなって、熱膨張係数と温度の積で定まる高温域における熱ひずみが少なくなり、その結果発生する熱応力が低くなること、(b)Si、Cr及びMoの相乗効果により、表面に形成される不働態膜が緻密で強固なものとなり、その結果表面酸化が抑えられて熱亀裂寿命が長くなること、さらに(c)Sn及び/又はSbを適量含有すると、黒鉛球状化率が75%以上に保たれて常温伸びが確保されるとともに、内部酸化による黒鉛の酸化脱落が防止されることを発見し、本発明に想到した。
すなわち、本発明のオーステナイト系耐熱球状黒鉛鋳鉄は、重量比でMo含有量が1〜4.5%であり、Sn及び/又はSbの含有量が2Sn+Sbで0.001〜0.5%であることを特徴とする。
本発明の好ましい実施態様では、オーステナイト系耐熱球状黒鉛鋳鉄は、重量比でC:1〜3.5%、Si:1〜6.5%、Cr:3%以下、Ni:10〜40%、Mo:1〜4.5%、Sn及び/又はSbを2Sn+Sbで0.001〜0.5%、黒鉛球状化元素:0.1%以下を含有する組成を有する。本発明のオーステナイト系耐熱球状黒鉛鋳鉄はさらに0.3重量%以下のNを含有するのが好ましい。
上記オーステナイト系耐熱球状黒鉛鋳鉄は、常温伸びが2%以上であり、950℃の大気雰囲気に200時間保持したときの酸化減量が30mg/cm2以下であり、950℃の大気雰囲気における0.2%耐力が55N/mm2以上であるのが好ましい。また上限温度950℃、温度振幅800℃、拘束率0.5で加熱冷却する熱疲労試験での熱亀裂寿命が400サイクル以上であるのが好ましい。さらに常温から1000℃までの範囲における平均熱膨張係数が18×10−6/℃以下であるのが好ましい。
本発明のオーステナイト系耐熱球状黒鉛鋳鉄は、常温伸びを損うことなく、900℃以上(特に1000℃付近)の排気ガスに曝されたときの耐酸化性、高温耐力及び熱亀裂寿命等の耐熱性に優れ、安価に製造することができる。
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
[1]オーステナイト系耐熱球状黒鉛鋳鉄の組成
本発明のオーステナイト系耐熱球状黒鉛鋳鉄の組成及び特性を以下詳細に説明する。なお割合に関しては、特に断りがない限り重量基準である。
本発明のオーステナイト系耐熱球状黒鉛鋳鉄の組成及び特性を以下詳細に説明する。なお割合に関しては、特に断りがない限り重量基準である。
(1)C(炭素):1〜3.5%
Cは、黒鉛を晶出させるとともに溶湯の流動性を向上する元素である。Cが1.0%未満では球状黒鉛を晶出することができず、かつ溶湯の流動性も低すぎる。一方Cが3.5%を超えると、粗大黒鉛粒子が形成されて、球状黒鉛鋳鉄の常温伸びが不足し、また鋳造時に引け巣が発生しやすくなる。従って、Cは1〜3.5%であり、好ましくは1.5〜2.5%である。
Cは、黒鉛を晶出させるとともに溶湯の流動性を向上する元素である。Cが1.0%未満では球状黒鉛を晶出することができず、かつ溶湯の流動性も低すぎる。一方Cが3.5%を超えると、粗大黒鉛粒子が形成されて、球状黒鉛鋳鉄の常温伸びが不足し、また鋳造時に引け巣が発生しやすくなる。従って、Cは1〜3.5%であり、好ましくは1.5〜2.5%である。
(2)Si(珪素):1〜6.5%
Siは黒鉛の晶出に寄与する元素である。Siを1%以上含有すると表面付近に珪素酸化物からなる不働態皮膜が形成されて、球状黒鉛鋳鉄の耐酸化性が向上する。一方、Siが6.5%を超えると基地が硬くなり、常温伸びの低下が顕著となり、また被削性も悪化する。従って、Siは1〜6.5%であり、好ましくは4.5〜6%である。
Siは黒鉛の晶出に寄与する元素である。Siを1%以上含有すると表面付近に珪素酸化物からなる不働態皮膜が形成されて、球状黒鉛鋳鉄の耐酸化性が向上する。一方、Siが6.5%を超えると基地が硬くなり、常温伸びの低下が顕著となり、また被削性も悪化する。従って、Siは1〜6.5%であり、好ましくは4.5〜6%である。
(3)Cr(クロム):3%以下
Crは鋳鉄基地中で炭素と結合して炭化物を析出させ、基地の析出強化により球状黒鉛鋳鉄の高温耐力を向上させる作用を有する。また表面付近に緻密なクロム酸化物からなる不働態皮膜を形成して耐酸化性を向上させる。しかし、Crが3%を超えると、加工性が低下するとともに黒鉛の球状化に悪影響を及ぼす。従って、Crは3%以下であり、好ましくは1〜3%である。
Crは鋳鉄基地中で炭素と結合して炭化物を析出させ、基地の析出強化により球状黒鉛鋳鉄の高温耐力を向上させる作用を有する。また表面付近に緻密なクロム酸化物からなる不働態皮膜を形成して耐酸化性を向上させる。しかし、Crが3%を超えると、加工性が低下するとともに黒鉛の球状化に悪影響を及ぼす。従って、Crは3%以下であり、好ましくは1〜3%である。
(4)Ni(ニッケル):10〜40%
Niは基地組織をオーステナイト化するのに重要な元素である。Niが10%未満では、オーステナイトを安定化する効果が不十分である。一方、Niが40%を超えるとオーステナイト化効果が飽和し、材料コストの高騰を招くだけである。従って、Niは10〜40%であり、好ましくは25〜40%である。Niのより好ましい下限値は30%であり、またNiのより好ましい上限値は36%である。
Niは基地組織をオーステナイト化するのに重要な元素である。Niが10%未満では、オーステナイトを安定化する効果が不十分である。一方、Niが40%を超えるとオーステナイト化効果が飽和し、材料コストの高騰を招くだけである。従って、Niは10〜40%であり、好ましくは25〜40%である。Niのより好ましい下限値は30%であり、またNiのより好ましい上限値は36%である。
(5)Mo(モリブデン):1〜4.5%
Moは鋳鉄基地中において炭素と結合して炭化物を析出させ、基地の析出強化により使用温度の全域にわたり耐力を大幅に向上させる。Moは炭化物形成元素でありながら黒鉛球状化を阻害する傾向が小さいが、さらにMoをSn及び/又はSbと併用することにより、黒鉛粒数及び黒鉛球状化率の低下を招くことなく、常温伸びを向上させることができる。
Moは鋳鉄基地中において炭素と結合して炭化物を析出させ、基地の析出強化により使用温度の全域にわたり耐力を大幅に向上させる。Moは炭化物形成元素でありながら黒鉛球状化を阻害する傾向が小さいが、さらにMoをSn及び/又はSbと併用することにより、黒鉛粒数及び黒鉛球状化率の低下を招くことなく、常温伸びを向上させることができる。
Moは熱膨張係数の小さな元素であるので、1000℃付近までの平均熱膨張係数を小さくし、熱膨張係数と温度の積で求まる高温域における熱ひずみが少なくなり、その結果発生する熱応力を低くする。またMoはSiやCrとの相乗効果により、表面に形成される珪素酸化物やクロム酸化物等の不働態皮膜を緻密で強固なものとし、表面酸化を抑えて耐酸化性を向上させる。熱応力発生の抑制と耐酸化性の向上との相乗効果により、熱亀裂寿命を長くする。
Moが4.5%を超えると、黒鉛球状化の悪化と析出炭化物の増加とにより常温伸びと被削性が低下する。一方、Moが1%未満であると、炭化物形成による基地の析出強化が不十分である。従って、Moは1〜4.5%であり、好ましくは2〜4%である。
(6)2Sn+Sb:0.001〜0.5%
Sn及びSbはいずれも黒鉛の粒数を増加して黒鉛の偏析を緩和し、また黒鉛の球状化率を75%以上に増加することによりMoの含有による延性の低下を抑える。延性を低下させる傾向を有するSiを6.5%まで含有しても、Sn及び/又はSbを含有することにより、黒鉛粒数及び黒鉛球状化率の低下を招くことなく、常温伸びを確保することができる。またSn及びSbは、内部酸化による黒鉛の酸化脱落を防止し、オーステナイト系耐熱球状黒鉛鋳鉄の耐酸化性を向上させる。このメカニズムは必ずしも明確ではないが、Sn及び/又はSbは黒鉛と基地組織との界面で基地組織側に濃化し、黒鉛から基地中へのCの拡散、及び基地に侵入した酸素の黒鉛との反応を抑制するためと推察される。
Sn及びSbはいずれも黒鉛の粒数を増加して黒鉛の偏析を緩和し、また黒鉛の球状化率を75%以上に増加することによりMoの含有による延性の低下を抑える。延性を低下させる傾向を有するSiを6.5%まで含有しても、Sn及び/又はSbを含有することにより、黒鉛粒数及び黒鉛球状化率の低下を招くことなく、常温伸びを確保することができる。またSn及びSbは、内部酸化による黒鉛の酸化脱落を防止し、オーステナイト系耐熱球状黒鉛鋳鉄の耐酸化性を向上させる。このメカニズムは必ずしも明確ではないが、Sn及び/又はSbは黒鉛と基地組織との界面で基地組織側に濃化し、黒鉛から基地中へのCの拡散、及び基地に侵入した酸素の黒鉛との反応を抑制するためと推察される。
Sbの効果はSnの効果の2倍であるので、Sn及び/又はSbの量を2Sn+Sbで表す。2Sn+Sbが0.5%を超えると、共晶セル境界に燐片状の異常黒鉛を生成したり、基地組織にセメンタイトを形成して靱性の低下、特に常温伸びの低下を招いたり、逆に内部酸化を助長したりする。一方、Sn及び/又はSbが0.001%未満であると、上記効果は得られない。従って、2Sn+Sbは0.001〜0.5%であり、好ましくは0.005〜0.5%であり、より好ましくは0.01〜0.4%である。
(7)N(窒素):0.3%以下
Nはオーステナイト組織の安定化と基地の高温耐力を向上させる効果がある。しかし、Nが0.3%を超えると、窒化物の析出量が増加するとともに黒鉛球状化が阻害され、靭性が低下するとともに、鋳造時にピンホール等のガス欠陥を発生しやすくなる。従って、Nは0.3%以下とする。Nは通常オーステナイト系球状黒鉛鋳鉄中に0.002〜0.006%程度不可避的に含まれる元素であるが、高い高温耐力が必要な場合、Nを所定量含有させる。Nは好ましくは0.01〜0.3%であり、より好ましくは0.03〜0.2%である。Nを添加するには、例えば、溶湯に石灰窒素や窒化クロム(Cr3N)を添加するか、窒素ガスを吹き込む。
Nはオーステナイト組織の安定化と基地の高温耐力を向上させる効果がある。しかし、Nが0.3%を超えると、窒化物の析出量が増加するとともに黒鉛球状化が阻害され、靭性が低下するとともに、鋳造時にピンホール等のガス欠陥を発生しやすくなる。従って、Nは0.3%以下とする。Nは通常オーステナイト系球状黒鉛鋳鉄中に0.002〜0.006%程度不可避的に含まれる元素であるが、高い高温耐力が必要な場合、Nを所定量含有させる。Nは好ましくは0.01〜0.3%であり、より好ましくは0.03〜0.2%である。Nを添加するには、例えば、溶湯に石灰窒素や窒化クロム(Cr3N)を添加するか、窒素ガスを吹き込む。
(8)黒鉛球状化元素:0.1%以下
鋳放しで黒鉛を球状に晶出させて、常温伸び、高温耐力等の特性を向上させるため、純Mg、Fe−Si−Mg合金等のMg系の黒鉛球状化元素、又はCa系の黒鉛球状化元素を0.1%以下含有させる。Mgの含有量は好ましくは0.02〜0.08%である。
鋳放しで黒鉛を球状に晶出させて、常温伸び、高温耐力等の特性を向上させるため、純Mg、Fe−Si−Mg合金等のMg系の黒鉛球状化元素、又はCa系の黒鉛球状化元素を0.1%以下含有させる。Mgの含有量は好ましくは0.02〜0.08%である。
(9)その他の元素
本発明のオーステナイト系耐熱球状黒鉛鋳鉄は、常温伸び、耐酸化性、高温耐力及び熱亀裂寿命を損わない範囲で、Mn及びCuを含有してもよい。Mnはオーステナイト組織の安定化に必要な元素であるが、1.5%を超えると靭性を低下させるほか、ブローホール等のガス欠陥が発生しやすくなり、耐熱性を低下させる。CuはNiと同様に基地に固溶してオーステナイト組織を安定化するとともに、基地組織の結晶粒を微細化して高温耐力の向上に寄与するほか、耐酸化性や耐食性を向上する効果も有する。しかしCuが3%を超えると黒鉛球状化が阻害されるとともに、炭化物の生成により延性が低下する。従って、Mn及びCuを含有する場合、Mnは1.5%以下、Cuは3%以下とするのが好ましい。
本発明のオーステナイト系耐熱球状黒鉛鋳鉄は、常温伸び、耐酸化性、高温耐力及び熱亀裂寿命を損わない範囲で、Mn及びCuを含有してもよい。Mnはオーステナイト組織の安定化に必要な元素であるが、1.5%を超えると靭性を低下させるほか、ブローホール等のガス欠陥が発生しやすくなり、耐熱性を低下させる。CuはNiと同様に基地に固溶してオーステナイト組織を安定化するとともに、基地組織の結晶粒を微細化して高温耐力の向上に寄与するほか、耐酸化性や耐食性を向上する効果も有する。しかしCuが3%を超えると黒鉛球状化が阻害されるとともに、炭化物の生成により延性が低下する。従って、Mn及びCuを含有する場合、Mnは1.5%以下、Cuは3%以下とするのが好ましい。
不可避的不純物としてはP及びSがある。Pは黒鉛の球状化に有害であるとともに、結晶粒界に析出して耐酸化性と室温伸びを低下させるので、0.08%以下にするのが好ましい。またSも黒鉛球状化に有害であるので、0.025%以下にするのが好ましい。
[2]オーステナイト系耐熱球状黒鉛鋳鉄の特性
本発明のオーステナイト系耐熱球状黒鉛鋳鉄は、900℃以上、特に1000℃付近の排気ガスに曝される自動車エンジン用排気系部品に使用するので、常温伸び、耐酸化性及び高温耐力を兼備する必要がある。このため、2%以上の常温伸び、950℃の大気雰囲気に200時間保持したときの30mg/cm2以下の酸化減量、及び950℃の大気雰囲気における55N/mm2以上の0.2%耐力の条件を満たすのが好ましい。このような条件を満たすためには、特に常温伸びの確保及び高温耐力の向上のために、オーステナイト系耐熱球状黒鉛鋳鉄の黒鉛球状化率は75%以上であるのが好ましい。
本発明のオーステナイト系耐熱球状黒鉛鋳鉄は、900℃以上、特に1000℃付近の排気ガスに曝される自動車エンジン用排気系部品に使用するので、常温伸び、耐酸化性及び高温耐力を兼備する必要がある。このため、2%以上の常温伸び、950℃の大気雰囲気に200時間保持したときの30mg/cm2以下の酸化減量、及び950℃の大気雰囲気における55N/mm2以上の0.2%耐力の条件を満たすのが好ましい。このような条件を満たすためには、特に常温伸びの確保及び高温耐力の向上のために、オーステナイト系耐熱球状黒鉛鋳鉄の黒鉛球状化率は75%以上であるのが好ましい。
常温伸びが2.0%未満では、排気系部品の生産中、エンジンへの組み付け中、さらには自動車の始動時や運転中等に加わる振動や衝撃により、亀裂や割れが発生するおそれがある。実用上十分なレベルとして、常温伸びは2%以上であるのが好ましい。
自動車エンジン用排気系部品に使用するオーステナイト系耐熱球状黒鉛鋳鉄としては、常温伸びの他に耐熱性(耐酸化性及び高温耐力)が要求される。950℃の大気雰囲気における酸化減量及び0.2%耐力は、耐熱性の優劣を表す指標である。酸化減量が少ないほど、また高温耐力が大きいほど、耐熱性は優れている。
排気系部品は、エンジンからの排気ガスに含まれる硫黄酸化物、窒素酸化物等に曝される。酸化が起こるとまず表面に酸化膜が形成され、これを起点にして微小亀裂が入り、微小亀裂がまた酸化して亀裂が増幅し、これが繰り返されて亀裂が内部まで大きく進展する。950℃の大気雰囲気に200時間保持したときの酸化減量が30mg/cm2を超えると、亀裂の起点となる表面酸化膜が多く生成され、耐酸化性が不十分となる。従って、酸化減量は30mg/cm2以下であるのが好ましい。
また950℃の大気雰囲気における0.2%耐力が55N/mm2未満では、高温で拘束された排気系部品に作用する圧縮応力に抗しうる強度を確保することが困難である。従って、950℃の大気雰囲気における0.2%耐力は55N/mm2以上であり、好ましくは60N/mm2以上である。
排気系部品はさらにエンジンの運転(加熱)と停止(冷却)の繰り返しに対する熱亀裂寿命が長いことが要求される。具体的には、上限温度950℃、温度振幅800℃、拘束率0.5で加熱冷却する熱疲労試験において亀裂により破壊に至るまでのサイクル数(熱亀裂寿命)は、400サイクル以上であるのが望ましい。この条件での熱亀裂寿命は耐熱性の優劣を表す指標である。熱亀裂寿命が400サイクル未満では、900℃以上、特に1000℃付近の排気ガスに曝される排気系部品の熱亀裂寿命は十分ではない。
排気系部品には、加熱時の膨張と冷却時の収縮との繰り返しにより発生する熱応力に起因して、亀裂が発生する。熱応力を抑制するために、排気系部品は上記常温伸び、耐酸化性及び高温耐力を有するだけでなく、常温から高温域まで小さい平均熱膨張係数を有するのが好ましい。熱膨張係数と温度の積で求まる高温域における熱ひずみが少なくなり、その結果発生する熱応力が低くなると、排気系部品の熱亀裂寿命は向上する。十分な熱亀裂寿命の向上を得るためには、常温から1000℃までの範囲における平均熱膨張係数は18×10−6/℃以下であるのが好ましい。
本発明を以下の実施例によってさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
実施例1〜17、比較例1〜13
表1に示す化学組成(重量%)を有するオーステナイト系耐熱球状黒鉛鋳鉄を、100kg用高周波炉を用いて大気溶解した後、1450℃以上で出湯し、1300℃以上で注湯し、25mm×25mm×165mmのブロック状供試材を鋳造した。実施例1〜17は本発明の範囲内の供試材であり、比較例1〜13は本発明の範囲外の供試材である。比較例1〜3はMo含有量が1%未満の供試材であり、比較例4〜9及び11はSn及びSbを全く含有しない供試材であり、比較例10はMo含有量が4.5%超の供試材であり、比較例12は2Sn+Sbが0.5%超の供試材であり、比較例13はNの含有量が0.3%超の供試材である。比較例4はMo、Sn及びSbを含有しないニレジストD5S(JIS G 5510、JIS−FCDA NiSiCr 35 5 2)に相当する。
表1に示す化学組成(重量%)を有するオーステナイト系耐熱球状黒鉛鋳鉄を、100kg用高周波炉を用いて大気溶解した後、1450℃以上で出湯し、1300℃以上で注湯し、25mm×25mm×165mmのブロック状供試材を鋳造した。実施例1〜17は本発明の範囲内の供試材であり、比較例1〜13は本発明の範囲外の供試材である。比較例1〜3はMo含有量が1%未満の供試材であり、比較例4〜9及び11はSn及びSbを全く含有しない供試材であり、比較例10はMo含有量が4.5%超の供試材であり、比較例12は2Sn+Sbが0.5%超の供試材であり、比較例13はNの含有量が0.3%超の供試材である。比較例4はMo、Sn及びSbを含有しないニレジストD5S(JIS G 5510、JIS−FCDA NiSiCr 35 5 2)に相当する。
各供試材に対して以下の評価試験を行った。
(1)常温伸び
実施例1〜17及び比較例1〜13の各供試材に対して、JIS G5502 10.7.4の黒鉛球状化率判定試験法により黒鉛球状化率を測定した。結果を表2に示す。また実施例12と比較例9の供試材の金属組織を顕微鏡観察した。図1は実施例12の供試材の金属組織を示す顕微鏡写真(倍率100倍)であり、図2は比較例9の供試材の金属組織を示す顕微鏡写真(倍率100倍)である。
(1)常温伸び
実施例1〜17及び比較例1〜13の各供試材に対して、JIS G5502 10.7.4の黒鉛球状化率判定試験法により黒鉛球状化率を測定した。結果を表2に示す。また実施例12と比較例9の供試材の金属組織を顕微鏡観察した。図1は実施例12の供試材の金属組織を示す顕微鏡写真(倍率100倍)であり、図2は比較例9の供試材の金属組織を示す顕微鏡写真(倍率100倍)である。
各供試材から標点間距離が50mm、標点の直径が10mmの鍔付き試験片を切り出し、各試験片を電気−油圧サーボ方式の引張試験機にセットし、25℃における常温伸び(%)を測定した。各供試材について、黒鉛球状化率と常温伸びとの関係を調べた。図3は黒鉛球状化率と常温伸びとの関係を示す。さらに各供試材について、Mo含有量と常温伸びとの関係を調べた。図4はMo含有量と常温伸びとの関係を示す。
表1及び2から明らかなように、実施例1〜17の全ての供試材において黒鉛球状化率は77〜90%と75%以上の条件を満たしており、常温伸びは2.1〜5.3%と2%以上の条件を満たした。一方、Moのみを含有した比較例5〜9の供試材は、黒鉛球状化率が64〜73%と75%未満であり、常温伸びは0.9〜1.9%と2.0%未満であった。
金属組織については、図1に示すように、実施例12の供試材の組織では、黒鉛粒子は多数でかつ良好な球状を呈していた。また実施例12の黒鉛球状化率は84%で、常温伸びは2.3%といずれも高かった。一方図2に示すように、Moを4.87%と過剰に含有し、Sn及び/又はSbを含有しない比較例9の供試材の組織では、黒鉛粒数が少なく、球状化していない黒鉛が多く観察された。また比較例9の黒鉛球状化率は64%で、常温伸びは0.9%といずれも低かった。
図3から、実用上十分な常温伸び(2%以上)を得るには、黒鉛球状化率は75%以上必要であることが分かる。オーステナイト系球状黒鉛鋳鉄では、組織中の黒鉛の球状が壊れて黒鉛球状化率が75%未満となると、ねずみ鋳鉄(片状黒鉛鋳鉄)やバーミキュラ鋳鉄に近くなり、いかに基地組織を強化しても、必要な強度、特に常温伸びを得ることができない。
図4に示すように、Mo含有量の増加にともない常温伸びが低下するが、Mo含有量が4.5%以下であれば、Sn及び/又はSbを含有することにより2%以上の常温伸びを確保できることが分かる。一方、Mo含有量が4.73%と多すぎる比較例10の場合、2Sn+Sbが0.5%近くであっても、常温伸びは1.1%と低かった。また2Sn+Sbが0.6855%と多すぎる比較例12の場合、Mo含有量が3.04%と本発明の範囲内であっても、靱性が低く、常温伸びは1.3%と低かった。
以上から、オーステナイト系耐熱球状黒鉛鋳鉄に1〜4.5%のMo及び0.001〜0.5%(2Sn+Sb)のSn及び/又はSbを含有させることにより、黒鉛粒数及び黒鉛球状化率の低下を招くことなく、実用上十分な2%以上の常温伸びを確保できることが分かる。
(2)耐酸化性
900℃以上、特に1000℃付近の排気ガスに曝される排気系部品への使用を想定し、950℃の大気雰囲気における耐酸化性を評価した。具体的には、各供試材から直径10mm、長さ20mmの丸棒試験片を切り出し、各試験片を950℃の大気中に200時間保持した後、ショットブラストを施して酸化スケールを除去し、酸化試験前後の単位面積当たりの重量変化(酸化減量)を求めた。重量減量が少ないほど耐酸化性が良い。結果を表2に示す。また各供試材について、Mo含有量と酸化減量との関係を調べた。結果を図5に示す。
900℃以上、特に1000℃付近の排気ガスに曝される排気系部品への使用を想定し、950℃の大気雰囲気における耐酸化性を評価した。具体的には、各供試材から直径10mm、長さ20mmの丸棒試験片を切り出し、各試験片を950℃の大気中に200時間保持した後、ショットブラストを施して酸化スケールを除去し、酸化試験前後の単位面積当たりの重量変化(酸化減量)を求めた。重量減量が少ないほど耐酸化性が良い。結果を表2に示す。また各供試材について、Mo含有量と酸化減量との関係を調べた。結果を図5に示す。
図5から明らかなように、Mo含有量が約3%のとき酸化減量は最小であり、また十分に少ない酸化減量を得るにはMo含有量を1〜4.5%とする必要がある。実施例1〜17の供試材では、酸化減量は12.3〜25.4mg/cm2と30mg/cm2未満であった。これに対して、比較例1〜12の供試材では、酸化減量は32.5〜59.0mg/cm2と多かった。特にMo、Sn及びSbを含有しない従来のオーステナイト系球状黒鉛鋳鉄(ニレジストD5S)である比較例4の供試材に較べて、Mo、Sn及びSbを含有する実施例1〜17の供試材は極めて優れた耐酸化性を有していた。
表面酸化及び内部の黒鉛の酸化脱落を調べるため、酸化試験後の供試材の金属組織を顕微鏡観察した。図6は実施例12の供試材の酸化試験後の金属組織を示す顕微鏡写真(倍率:400倍)であり、図7はMo、Sn及びSbを含有しない比較例4の供試材の酸化試験後の金属組織を示す顕微鏡写真(倍率:400倍)である。実施例12の供試材は表面酸化が僅かで、黒鉛の酸化脱落が防止されているのに対し、比較例4の供試材は表面酸化が激しく、酸化脱落した黒鉛の空洞跡に酸化膜が侵入し、さらに内部の黒鉛の一部まで酸化脱落していた。
Mo含有量が約1.4%とほぼ同じで、Sn及びSbの含有の有無が相違する実施例7及び比較例5の供試材の酸化減量を比較すると、2Sn+Sbが0.0212%の実施例7の酸化減量は19.2mg/cm2であるのに対し、Sn及びSbを含有しない比較例5の酸化減量は48.6mg/cm2と約2.5倍も多かった。同様に、Mo含有量が約2.8%でほぼ同量の実施例12及び比較例11の供試材を比較すると、2Sn+Sbが0.0294%の実施例12の供試材では、酸化減量は13.5mg/cm2であるのに対し、Sn及びSbを含有しない比較例11の供試材では、酸化減量は35.7mg/cm2と約2.5倍も多かった。
従って、耐酸化性の向上には、MoのみならずSn及びSbも大きく寄与していることが分かる。このような酸化減量の著しい低減は、Moによる表面での耐酸化性の向上と、Sn及び/又はSbによる内部での耐酸化性の向上との相乗効果によるものと考えられる。従って、比較例1〜3のようにMo含有量が1%未満の場合、2Sn+Sbが0.0014〜0.0335%と本発明の範囲内であっても、酸化減量が34.3〜37.1mg/cm2と比較的多かった。また比較例12のようにMo含有量が本発明の範囲内であっても、2Sn+Sbが0.6855%と上限(0.5%)を超えると、酸化減量は55.6mg/cm2と大幅に増加した。これは、Sn及びSbを過剰に含有すると、かえって内部酸化が助長されるためであると考えられる。
以上から、950℃の大気雰囲気に200時間保持したときの酸化減量が30mg/cm2以下となるように耐酸化性を向上させるには、Mo含有量を1〜4.5%とし、2Sn+Sbを0.001〜0.5%とする必要があることがわかる。とりわけ実施例3〜6及び10〜14では酸化減量が15mg/cm2未満であるが、このように低い酸化減量を得るには、Mo含有量を2〜4%とするのが好ましい。
(3)高温耐力
各供試材の高温耐力は、各供試材から標点間距離が50mm、標点の直径が10mmの鍔付き試験片を切り出し、各試験片を電気−油圧サーボ方式の引張試験機にセットし、950℃の大気雰囲気中で0.2%耐力を測定することにより求めた。結果を表2に示す。また図8はMo含有量と高温耐力との関係を示す。
各供試材の高温耐力は、各供試材から標点間距離が50mm、標点の直径が10mmの鍔付き試験片を切り出し、各試験片を電気−油圧サーボ方式の引張試験機にセットし、950℃の大気雰囲気中で0.2%耐力を測定することにより求めた。結果を表2に示す。また図8はMo含有量と高温耐力との関係を示す。
図8から、Mo含有量の増加にともない高温耐力が増加し、かつ実施例1〜17の供試材は比較例1〜13の供試材より高温耐力が優れていることが分かる。特にMo、Sn及びSbを含有しない比較例4の供試材の高温耐力が51.0N/mm2であるのに対し、実施例1〜17の供試材は56.2〜71.6N/mm2と高い高温耐力を有していた。これから、950℃の大気雰囲気における0.2%耐力を55N/mm2以上とするには、1〜4.5%のMoを含有する必要があることが分かる。なお、比較例5〜13の高温耐力は55N/mm2超であるが、いずれも常温伸びが2.0%未満と不十分であり、さらにほとんどの供試材は酸化減量が30mg/cm2を超えていた。
Mo含有量がほぼ同じでNの含有量が相違する供試材として、Moを約1.4%とほぼ同量含有する実施例7及び8、及び比較例5を高温耐力について比較すると、Nをそれぞれ0.0042%、0.0048%(いずれも不可避的レベル)含有する実施例7及び比較例5の供試材の高温耐力は約57N/mm2であるのに対し、Nを意図的に0.0104%含有した実施例8の供試材では高温耐力は64.4N/mm2と約7N/mm2高かった。またMoをほぼ同量含有する実施例10と比較例6、実施例12と比較例7、及び実施例14と比較例8とをそれぞれ対比すると、Nを不可避的レベルで含有する比較例6、7、8の供試材の高温耐力はそれぞれ約58、62、62N/mm2であるのに対し、Nを意図的に0.01%以上含有させた実施例10、12、14の高温耐力はそれぞれ約67、71、72N/mm2と約9〜10N/mm2高かった。
以上から、高温耐力の向上にはMoの他にNも大きく寄与していることが分かる。これは、Nがオーステナイト組織の安定化と基地強化により高温耐力を向上させるためであると考えられる。60N/mm2以上と高い高温耐力が要求される場合、Nを不可避的レベルを超えて含有させるのが有効であることが分かる。しかし比較例13のようにNを約0.42%と上限を超えて含有させると、高温耐力は向上するものの、常温伸びが0.8%と低下するとともに熱亀裂寿命も大幅に短くなる。これは、過剰なNにより、窒化物の析出量の増加と黒鉛球状化率の悪化により靭性が低下し、かつ鋳造時にピンホール等のガス欠陥が発生したためであると考えられる。
(4)熱亀裂寿命
各供試材から標点間距離が20mm、標点の直径が10mmの丸棒試験片を切り出し、各試験片を電気−油圧サーボ方式の熱疲労試験機にセットし、0.5の伸縮の機械的拘束率、150℃の下限温度、それぞれ750℃、800℃及び950℃の上限温度(それぞれ600℃、650℃及び800℃の温度振幅)、及び1サイクル7分の条件で、加熱冷却サイクルを繰り返して亀裂による熱疲労破壊を起こさせ、破壊までのサイクル数を測定し、熱亀裂寿命を求めた。
各供試材から標点間距離が20mm、標点の直径が10mmの丸棒試験片を切り出し、各試験片を電気−油圧サーボ方式の熱疲労試験機にセットし、0.5の伸縮の機械的拘束率、150℃の下限温度、それぞれ750℃、800℃及び950℃の上限温度(それぞれ600℃、650℃及び800℃の温度振幅)、及び1サイクル7分の条件で、加熱冷却サイクルを繰り返して亀裂による熱疲労破壊を起こさせ、破壊までのサイクル数を測定し、熱亀裂寿命を求めた。
拘束率は、(自由熱膨張伸び−機械的拘束下の熱膨張伸び)/(自由熱膨張伸び)により表される。例えば1.0の拘束率は、試験片が例えば150℃から950℃まで加熱されたときに全く伸びないように機械的に拘束された場合である。また0.5の拘束率は、例えば自由熱膨張伸びが2mmのところを1mmしか伸びないように機械的に拘束された場合である。通常ターボチャージャーハウジング、エキゾーストマニホルド、触媒ケース等の排気系部品は拘束率1.0で拘束されているわけではなく、ある程度加熱冷却に伴う伸びを許容する拘束率0.25〜0.5程度で組み付けられる。このため熱亀裂寿命は、実際の使用状態に近い拘束率0.5で評価した。結果を表2に示す。
図9はMo含有量と温度950℃及び拘束率0.5における熱亀裂寿命との関係を示す。図9から、Mo含有量が約3%のとき熱亀裂寿命がピークとなること、及びMo含有量が1〜4.5%の範囲内(実施例1〜17)のとき熱亀裂寿命は400サイクル以上であることが分かる。一方、比較例1〜13の供試材の熱亀裂寿命はいずれも400サイクル未満であった。このように実施例1〜17の供試材が比較例1〜13の供試材より長い熱亀裂寿命を有するのは、Moの含有による高温域での熱応力の抑制と、Sn及び/又はSbの含有による常温から高温域にわたる延性の確保及び耐酸化性の向上との相乗効果によるものと推察される。Moが4.87%超と多量の比較例9では黒鉛球状化が悪化し、熱亀裂寿命は195サイクルと非常に短かった。Sn及びSbが多すぎる比較例12、及びNが多すぎる比較例13の場合も、熱亀裂寿命はそれぞれ291サイクル及び122サイクルと短かった。これから、Mo、Sn、Sb及びNのいずれも過剰であると、オーステナイト系耐熱球状黒鉛鋳鉄の熱亀裂寿命は短いことが分かる。
以上から、上限温度950℃、温度振幅800℃及び拘束率0.5で加熱冷却する熱疲労試験において400サイクル以上の熱亀裂寿命を得るためには、Mo含有量を1〜4.5%とし、かつ2Sn+Sbを0.001〜0.5%とする必要があることが分かる。
(5)平均熱膨張係数
各供試材から直径5mm及び長さ20mmの丸棒試験片を切り出し、各試験片を熱機械分析装置(理学電機株式会社製のTAS200)にセットし、昇温速度10℃/分で常温から1000℃まで加熱し、100℃ごとの膨張量から常温〜1000℃における平均熱膨張係数を測定した。結果を表2に示す。表3は実施例12及び比較例4の各温度域での熱膨張係数の測定値を示す。
各供試材から直径5mm及び長さ20mmの丸棒試験片を切り出し、各試験片を熱機械分析装置(理学電機株式会社製のTAS200)にセットし、昇温速度10℃/分で常温から1000℃まで加熱し、100℃ごとの膨張量から常温〜1000℃における平均熱膨張係数を測定した。結果を表2に示す。表3は実施例12及び比較例4の各温度域での熱膨張係数の測定値を示す。
表2から、Mo含有量の増加にともない常温〜1000℃の範囲における平均熱膨張係数は減少し、Mo含有量が1%を超えると平均熱膨張係数が18×10−6/℃以下となることが分かる。また表3から、常温から300〜1000℃における100℃ごとの温度域において、実施例12の熱膨張係数は、Mo、Sn及びSbを含有しない比較例4より1.5〜2.1×10−6/℃だけ小さいことが分かる。オーステナイト系耐熱球状黒鉛鋳鉄を自動車エンジン用排気系部品として使用する場合、熱応力に起因する亀裂を抑制するために、常温〜1000℃の範囲における平均熱膨張係数は18×10−6/℃以下であるのが望ましい。そのためには、Mo含有量を1%以上とする必要がある。
図10は、本発明のオーステナイト系耐熱球状黒鉛鋳鉄を使用する排気系部品の例として、エキゾーストマニホルド1、ターボチャージャーハウジング2、及び触媒ケース4を有する排気系部品を示す。例示した排気系部品はエンジン(図示せず)からの排気ガス(矢印Aで示す)をエキゾーストマニホルド1で集合させ、排気ガスの運動エネルギーでターボチャージャーハウジング2内のタービン(図示せず)を回転させ、このタービンと同軸の圧縮機を駆動して吸入した空気(矢印Bで示す)を圧縮し、高密度の空気をエンジンに供給する(矢印Cで示す)ことにより、エンジンの出力を高める。ターボチャージャーハウジング2から出る排気ガスは接続部3を経由して触媒ケース4に入り、触媒ケース4内の触媒により有害物質が削減された後、消音マフラー5を経由して大気中に放出(矢印Dで示す)される。エキゾーストマニホルド1、ターボチャージャーハウジング2、接続部3及び触媒ケース4には排気ガス通路が形成されている。排気ガス通路の肉厚は、例えば、エキゾーストマニホルド1で2.0〜4.5mmであり、ターボチャージャーハウジング2で2.5〜5.5mmであり、接続部3で2.5〜3.5mmであり、触媒ケース4で2.0〜2.5mmである。
図11はターボチャージャーハウジング2の一例を示し、図12はそのA−A断面を示す。ターボチャージャーハウジング2は、スクロール部2aが巻き貝状の空洞を有し、その空洞は一方から他方向に向かって空洞の面積が増大する複雑な形状をしている。またターボチャージャーハウジング2には、バルブ(図示せず)を開閉することにより余剰の排気ガスをバイパスして排出するウェイストゲート部2bが設けられている。ウェイストゲート部2bは、高温の排気ガスが流れるため特に耐酸化性が要求される。
エキゾーストマニホルド1とターボチャージャーハウジング2を実施例12の組成を有するオーステナイト系耐熱球状黒鉛鋳鉄により鋳造した後、機械加工を実施した。得られたエキゾーストマニホルド1とターボチャージャーハウジング2には、引け巣、湯廻り不良、ガス欠陥等の鋳造欠陥が発生しておらず、また機械加工を施しても切削不具合等の問題が生じなかった。
接続部3及び触媒ケース4も同様に本発明のオーステナイト系耐熱球状黒鉛鋳鉄で鋳造することができる。また型分割(見切り)や造型が可能であれば、ターボチャージャーハウジング2とエキゾーストマニホルド1とを一体的に鋳造することも、またターボチャージャーハウジング2を介在させない場合、触媒ケース4とエキゾーストマニホルド1とを一体的に鋳造することもできる。
直列4気筒で排気量2000ccの高性能ガソリンエンジンに相当する排気シミュレータに、実施例12のオーステナイト系耐熱球状黒鉛鋳鉄からなるエキゾーストマニホルド1及びターボチャージャーハウジング2を組み付け、耐久試験を実施した。試験条件は、加熱10分、冷却10分を1サイクルとする加熱冷却サイクルを1000サイクル繰り返すものであった。
全負荷時の排気ガス温度は、ターボチャージャーハウジング2の入口で980℃であった。この条件下で、エキゾーストマニホルド1の集合部での表面温度は約900℃であり、ターボチャージャーハウジング2のウェイストゲート部2bの座面2cでの表面温度は約950℃であった。
図13は、実施例12のオーステナイト系耐熱球状黒鉛鋳鉄で作製したターボチャージャーハウジング2のウェイストゲート部2b付近の外観(1000サイクルの耐久試験の終了後)を示す。図13に示すように、高温の排気ガスが通過するウェイストゲート部2bでも酸化が少なく、熱亀裂は発生せず、また熱変形によるガスの漏洩もなく、優れた耐久性及び信頼性を有していた。またエキゾーストマニホルド1でも、1000サイクルの耐久試験後に熱亀裂や熱変形は発生しなかった。
実施例12のオーステナイト系耐熱球状黒鉛鋳鉄からなるエキゾーストマニホルド1及びターボチャージャーハウジング2には、鋳造、機械加工、耐久試験等(例えば、湯道切断、鋳仕上げ、搬送、切削、組み付け等)の間に常温で振動や衝撃が加わったが、亀裂や割れは発生せず、十分な延性を有することが確認された。
比較のため、Mo、Sn及びSbを含有しない比較例4のオーステナイト系耐熱球状黒鉛鋳鉄からなるターボチャージャーハウジング2をエキゾーストマニホルド1に組み付け、実施例と同一の試験条件で排気シミュレータにより耐久試験を実施した。図14は、このターボチャージャーハウジング2のウェイストゲート部2b付近の外観(耐久試験後)を示す。図14に示すように、急激な酸化により実施例12の約半分の加熱冷却サイクル(540サイクル)でウェイストゲート部2bに大きな亀裂2dが発生し、また座面2cも変形した。
以上の通り、本発明のオーステナイト系耐熱球状黒鉛鋳鉄は十分な常温伸びと優れた耐熱性(耐酸化性、高温耐力及び熱亀裂寿命)を有する。また本発明のオーステナイト系耐熱球状黒鉛鋳鉄は、高価なNiを含有するもののステンレス鋳鋼に較べてCの含有量が多い鋳鉄をベースとしているので、融点が低くて鋳造性が良く、また被削性も良好である。従って、本発明のオーステナイト系耐熱球状黒鉛鋳鉄を用いれば、高度な鋳造技術を必要とせずに高い歩留りで、900℃以上、特に1000℃付近の排気ガスに曝される薄肉で複雑形状の自動車エンジン用排気系部品(エキゾーストマニホルド、ターボチャージャーハウジング及び触媒ケース等)を安価に製造することができる。この排気系部品は過酷な温度環境であるエンジンの後方に配置しても十分な耐熱性を有し、排気ガス浄化用触媒の初期性能を上昇させることができる。
本発明のオーステナイト系耐熱球状黒鉛鋳鉄を自動車エンジン用排気系部品に使用する場合について説明したが、限定的ではなく、常温伸びとともに耐熱性が要求される焼却炉や熱処理炉用の炉床や台車等の燃焼用部品等にも使用可能である。
Claims (6)
- 重量比でMo含有量が1〜4.5%であり、Sn及び/又はSbの含有量が2Sn+Sbで0.001〜0.5%であることを特徴とするオーステナイト系耐熱球状黒鉛鋳鉄。
- 請求項1に記載のオーステナイト系耐熱球状黒鉛鋳鉄において、重量比でC:1〜3.5%、Si:1〜6.5%、Cr:3%以下、Ni:10〜40%、Mo:1〜4.5%、Sn及び/又はSbを2Sn+Sbで0.001〜0.5%、黒鉛球状化元素:0.1%以下を含有する組成を有することを特徴とするオーステナイト系耐熱球状黒鉛鋳鉄。
- 請求項1又は2に記載のオーステナイト系耐熱球状黒鉛鋳鉄において、さらに0.3重量%以下のNを含有することを特徴とするオーステナイト系耐熱球状黒鉛鋳鉄。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のオーステナイト系耐熱球状黒鉛鋳鉄において、常温伸びが2%以上であり、950℃の大気雰囲気に200時間保持したときの酸化減量が30mg/cm2以下であり、950℃の大気雰囲気における0.2%耐力が55N/mm2以上であることを特徴とするオーステナイト系耐熱球状黒鉛鋳鉄。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のオーステナイト系耐熱球状黒鉛鋳鉄において、上限温度950℃、温度振幅800℃、拘束率0.5で加熱冷却する熱疲労試験での熱亀裂寿命が400サイクル以上であることを特徴とするオーステナイト系耐熱球状黒鉛鋳鉄。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のオーステナイト系耐熱球状黒鉛鋳鉄において、常温から1000℃までの範囲における平均熱膨張係数が18×10−6/℃以下であることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のオーステナイト系耐熱球状黒鉛鋳鉄。
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