JPWO2004087961A1 - アポリポタンパクe遺伝子多型検出方法、アポリポタンパクe遺伝子多型のゲノタイプ判定方法及び試薬 - Google Patents

アポリポタンパクe遺伝子多型検出方法、アポリポタンパクe遺伝子多型のゲノタイプ判定方法及び試薬 Download PDF

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Abstract

正確性、信頼性の向上したアポリポタンパクE遺伝子多型検出方法、アポリポタンパクE遺伝子多型のゲノタイプ判定方法及び試薬を提供する。増幅したアポリポタンパクE遺伝子を、コドン112、158の一塩基多型部位をそれぞれ認識配列に含む第1、第2の制限酵素を用いて切断し、切断したDNAを分離し、検出するものであり、遺伝子増幅に用いるプライマー対及び制限酵素は、それぞれの多型に特異的なそれぞれ略100bp以上のDNA断片を生成し得るように選択され、上流側プライマーは第1の制限酵素による切断位置より、60bp以上、236bp以下の上流の位置に、5’末端が設定される。

Description

本発明は、アポリポタンパクEの遺伝子多型検出方法及びそれに用いる試薬に関するものであり、より詳細には、制限酵素断片長多型(RFLP)法を利用したヒト・アポリポタンパクE遺伝子多型のゲノタイプを判定(ゲノタイピング)するのに有用なアポリポタンパクE遺伝子多型検出方法、アポリポタンパクE遺伝子多型のゲノタイプ判定方法及びそれに用いる試薬に関するものである。
アポリポタンパク(以下「Apo」という。)Eは、血中コレステロールの運搬に重要な役割を果たす血漿タンパクであり、主要なアイソフォームとして、ApoE2、ApoE3、ApoE4(それぞれ、以下「E2」、「E3」、「E4」という。)がある。これらApoE遺伝子多型をコードする遺伝子ε2、ε3、ε4は第19染色体上に存在する。ApoE遺伝子多型の一つであるE4は、アルツハイマー病及び心血管疾患の非常に強い危険因子であることが知られており、現在までに多くの報告がなされ、ほぼ確立した知見になっている(例えば、非特許文献1〜5参照。)。
例えば、ApoEのE4型を持つ人では、アルツハイマー病の発症率が持たない人に比較して10倍以上になることが知られており、一見メンデルの法則のような遺伝的家族内集積を示す場合があるほどである。又、高齢者のアルツハイマー型痴呆非罹患群では、ApoEのE4型を持つ固体の頻度は非常に低いところからも、この多型がこの疾患の大きな危険因子であることが考えられる。
現在では、ApoE遺伝子多型は臨床検査にも応用されており、アルツハイマー型痴呆或いは心血管疾患の危険因子として、個々の患者の診断、治療を行う上で重要な臨床的情報となっている。
従来、ApoE遺伝子多型を判別する実験的手法がいくつか報告されている。例えば、下記のものが挙げられる。非特許文献5には、制限酵素断片長多型(Restriction Fragment Length Polymorphism:RFLP)によるタイピング法が記載されている。この方法の基本的な手法は、ポリメラーゼ連鎖反応(Polymeraze Chain Reaction:PCR)によって、ゲノタイピングを行なう目的の遺伝子領域であるApoE特定の領域を増幅し、そのRFLPをポリアクリルアミドゲル電気泳動(Polyacrylamide Electrophoresis)による泳動パターンでゲノタイピングするというものである。この方法は、現在でも多くの研究室等で用いられている方法である。
この方法では、先ず、ヒト・染色体DNA(ゲノムDNA)を血液より抽出した後、ApoE遺伝子に特異的なプライマー対を用いてPCRで増幅し、増幅したDNAを制限酵素HhaIによって断片化する。
図13は、この方法によるゲノタイピングの概念図である。ApoE遺伝子多型は、それぞれ1つのアミノ酸の置換により生じる。即ち、112番目、158番目のアミノ酸が、それぞれE2ではシステイン、システイン、E3ではシステイン、アルギニン、E4ではアルギニン、アルギニンである。制限酵素HhaIは、塩基配列GCGCを認識するため、同図に示すように、ApoEのE2、E3、E4の多型により、制限酵素HhaIが認識してDNAを切断する部位の組み合わせが異なる。つまり、制限酵素HhaIは、112番目アルギニン(E4)及び158番目のアルギニン(E3、E4)をコードするコドンの領域にわたるGCGCを認識して切断するが、112番目のシステイン(E2、E3)及び158番目のシステイン(E2)をコードするコドンの領域にわたるGTGCは切断しない(図中、四角で囲んだT又はCはそれぞれのコドンのはじめの塩基を示す。)。従って、それぞれのApoE遺伝子多型に特異的な長さのDNA制限酵素切断断片(以下「DNA制限断片」という。)が得られるので、各ApoE遺伝子多型の判別が可能となる。
ヒトはアリルを2つ持つため、いずれかのApoE遺伝子多型の2つの組合せを持つことになる。即ち、ApoE遺伝子多型のアリルの組合せのパターン(遺伝子型:ゲノタイプ)には、図13に示すように、E2/E2、E3/E3、E4/E4、E2/E3、E2/E4、E3/E4がある。
ホモ接合体について、E2/E2では、制限酵素HhaIでの切断によって83bp(塩基対)及び91bpの2種類の長さのDNA制限断片が得られるが、E3/E3では、35bp、48bp及び91bp、E4/E4では19bp、35bp、48bp及び72bpのDNA制限断片が得られる。同様に、ヘテロ接合体であるE2/E3、E2/E4、E3/E4についても、図13に示すようにそれぞれ異なったDNA制限断片の組合せが得られる。従って、制限酵素HhaIによる切断によって得られたそれぞれの長さのDNA制限断片をポリアクリルアミドゲル電気泳動法によって分離することで、ApoE遺伝子多型のタイピングが可能になる。尚、19bp以下の長さのDNA制限断片はポリアクリルアミドゲル電気泳動では検出されない。以下、この方法の手順を、非特許文献5に基づき更に説明する。
[DNA抽出]
先ず、セプラテック社のSepracell−MN gradientsを用いて血液から白血球を取り出す。次いで、白血球を5%のSDSと100μg/mlのプロテイナーゼKで55℃、16時間処理する。そして、フェノール抽出を行い、その後エタノールでDNAを精製する。
[ApoE領域のDNA増幅]
上記方法により抽出したDNAから、既に報告されている(非特許文献6)の塩基配列を用いた下記のApoE遺伝子に特異的なプライマー対(pair of primers)を用いて、PCRによってApoE特定の領域を増幅する。増幅は、Taqポリメラーゼ(Parkin Elmer Cetus社)を用い、その供給元の指定の条件に従って行う。
a)プライマー対
Figure 2004087961
b)PCR反応混合物
白血球より抽出したゲノムDNA: 1μg
プライマー対: 1μM
DMSO(dimethyl sulfoxide): 10%
Taqポリメラーゼ: 0.025units/μl
総反応量: 30μl
c)PCRサイクルの条件
95℃、5分間(変性)
次いで、以下のサイクルを30回繰り返す。
95℃,1分間(変性)
60℃,1分間(プライマーアニーリング)
70℃,2分間(伸長反応)
上記PCR条件にて増幅されたDNAフラグメントの量は約300ngである。
[RFLP]
RFLPによってApoE遺伝子多型のゲノタイピングを行なうために、上記PCR産物に直接制限酵素HhaIを5nuit加え、37℃で3時間以上反応させて、該制限酵素による切断を行う。非特許文献5には、斯かる方法で、ほとんどのDNA試料において切断が成功したと記述されている。
[制限酵素切断断片の分離とゲノタイピング]
制限酵素HhaIによるDNA制限断片を8%非変性ポリアクリルアミドゲル(polyacrylamaid non−denaturing gel)(厚さ1.5mm×長さ25cm)で3時間電気泳動する。電気泳動後のゲルをエチジウムブロマイドで処理した後、DNA制限断片のパターンをUV照射により可視化してゲノタイピングを行う。
非特許文献5に記載される上述の方法がApoE遺伝子多型をタイピングした最初の報告である。その後、現在までに、ApoE遺伝子多型のゲノタイピング方法については多数の報告がある。しかし、それらの多くは、基本的に最初の方法の変法である。例えば、非特許文献7、8に記載されるPCR−RFLPによるタイピング法が挙げられる。その他に、例えば、非特許文献9に記載されるような、抗体を用いて変異したタンパク質を同定する方法により間接的にゲノタイピングを行う方法が開発されている。この方法は、現在臨床検査業務で一般的に使用されている。
しかしながら、上記非特許文献5に記載の方法において、制限酵素HhaIで得られるDNA制限断片の長さは100bp未満と極めて短いため、実験室において通常用いられ、且つ、安価なDNA分離方法であるアガロースゲル電気泳動法(Agarose Gel Electrophoresis)では、解像度の低さのため分離が不可能であった。つまり、より短いDNA断片を分離するためには、ゲルをより高濃度にする必要があるが、アガロースゲルでは4%程度が限界であり、この濃度では上記100bpより短い短鎖DNAを高解像度にて分離することはできない。そのため、従来、より操作が煩雑で、時間を要するポリアクリルアミドゲル電気泳動法を用いる必要があった。
又、近年、例えば、Agilent2100 バイオアナライザ(Agilent 2100 BioAnalyzer:以下「Agilent2100」という。)(Agilent Technologies社製)の電気泳動用セット、日立マイクロチップ電気泳動解析システムSV1210 コスモアイ(以下「日立SV1210」という。)(日立ハイテクノロジーズ社製)、ABI PRISM(登録商標)3100(或いは3700) ジェネティック アナライザ(以下「ABI3100」、或いは「ABI3700」という。)(Applied Biosystems社製)等の多くのDNA分離方法が開発されている。これらのDNA分離方法は、基本的には電気泳動法を利用しているが、迅速に大量のサンプルを(順次に若しくは同時に)処理することができ、又、分析の自動化に対応可能である。
しかし、本発明者らの検討によれば、これら近年開発された種々のDNA分離方法を用いる場合にも、上記非特許文献5に記載されるように制限酵素HhaIで切断したDNA制限断片では、正確なゲノタイピングを行うには、満足いく解像度を得ることができなかった。
更に、上述のように、ApoE遺伝子多型の臨床検査業務では、抗体法を用いた生化学的な解析手法(非特許文献9)が一般的に使用されている。しかしながら、斯かる方法は、遺伝子を直接タイピングする方法ではなく、タンパク質の種類を判別する手法を用いているため、擬陽性(false−positive)が多く正確さに欠けるものである。更に、この方法は、実験に用いる試料の作成に時間がかかり、簡便さや、経済性の面で問題がある。
このように、より長鎖のDNA制限断片を得て、より高解像度で正確にApoE遺伝子多型をゲノタイピングをし得るApoE遺伝子多型の検出方法、それに用いる試薬に対する要求がある。又、自動化が可能で迅速、且つ、簡便に大量のサンプルについてApoE遺伝子多型をゲノタイピングし得ることも求められている。
又、非特許文献10は、ゲノムDNAから下記のプライマー対、
Figure 2004087961
を用いてPCRにて218bpのApoE遺伝子特異的な領域を増幅し、2種類の制限酵素AflIII、HaeIIを用いて断片化する。そして、このDNA断片をアガロースゲル電気泳動で分離して、DNA制限断片の長さからApoE遺伝子多型のゲノタイピングを行うことを開示する。この方法によれば、それぞれE3、E2、E4に特異的な145bp、168bp、195bpのDNA制限断片が得られる。しかしながら、本発明者の検討によれば、詳しくは後述するように、斯かる方法は、機械化、製品化を考慮すると、正確性、信頼性の点で満足ゆくものではなかった。
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従って、本発明の目的は、正確、迅速、且つ、簡便にApoE遺伝子多型を検出し、ゲノタイプを判定することを可能とするApoE遺伝子多型検出方法、ApoE遺伝子多型のゲノタイプ判定方法及び試薬を提供することである。
本発明の他の目的は、安価、且つ、簡便なDNA分離方法を用いてApoE遺伝子多型を検出し、ゲノタイプを判定することを可能とするApoE遺伝子多型検出方法、ApoE遺伝子多型のゲノタイプ判定方法及び試薬を提供することである。
本発明の他の目的は、様々なDNA分離方法の利用を可能とし、高速、且つ、大量処理化を可能とするApoE遺伝子多型検出方法、ApoE遺伝子多型のゲノタイプ判定方法及び試薬を提供することである。
本発明の他の目的は、正確性、信頼性の向上したApoE遺伝子多型検出方法、ApoE遺伝子多型のゲノタイプ判定方法及び試薬を提供することである。
本発明の他の目的は、機械化、製品化に際しての正確性、信頼性を更に向上させることができるApoE遺伝子多型検出方法、ApoE遺伝子多型のゲノタイプ判定方法及び試薬を提供することである。
本発明の更に他の目的は、アルツハイマー病、心血管疾患など、ApoE遺伝子多型が関連する疾患の診断、治療にとって有用な情報となるApoE遺伝子多型のゲノタイプの判別を正確、且つ、迅速に行うことのできるApoE遺伝子多型検出方法、ApoE遺伝子多型のゲノタイプ判定方法及び試薬を提供することである。
上記目的は本発明に係るアポリポタンパク遺伝子多型検出方法、ApoE遺伝子多型のゲノタイプ判定方法及び試薬にて達成される。要約すれば、第1の本発明は、アポリポタンパクE遺伝子に特異的なプライマー対を用いてDNAを増幅する段階;増幅したDNAを、アポリポタンパクE遺伝子のコドン112の一塩基多型部位を認識配列に含む第1の制限酵素と、アポリポタンパクE遺伝子のコドン158の一塩基多型部位を認識配列に含む第2の制限酵素と、を用いて、前記コドン112の一塩基多型部位を含む認識配列での第1の切断位置及び前記コドン158の一塩基多型部位を含む認識配列での第2の切断位置で切断する段階;切断したDNA断片を分離する段階;分離されたDNA断片を検出する段階;を含み、前記プライマー対及び前記第1、第2の制限酵素は、それぞれのアポリポタンパクE遺伝子多型に特異的なそれぞれ略100bp以上のDNA断片を生成し得るように選択され、前記プライマー対のうち上流側プライマーは、前記第1の切断位置より、60bp以上、136bp以下の上流の位置に5’末端が設定されることを特徴とするアポリポタンパクE遺伝子多型検出方法である。本発明の一実施態様によると、本発明の一実施態様によると、前記プライマー対のうち下流側プライマーは、前記第2の切断位置より、30bp以上、202bp以下の下流の位置に5’末端が設定される。
第2の本発明によると、アポリポタンパクE遺伝子に特異的なプライマー対を用いてDNAを増幅する段階;増幅したDNAを2種類の制限酵素を用いてアポリポタンパクE遺伝子のコドン112の一塩基多型部位を含む認識配列での第1の切断位置及びアポリポタンパクE遺伝子のコドン158の一塩基多型部位を含む認識配列での第2の切断位置で切断する段階;切断したDNA断片を分離する段階;分離されたDNA断片を検出する段階;を含み、前記プライマー対のうち上流側プライマーは、前記第1の切断位置より、60bp以上、136bp以下の上流の位置に5’末端が設定されることを特徴とするアポリポタンパクE遺伝子多型検出方法が提供される。本発明の一実施態様によると、前記プライマー対のうち下流側プライマーは、前記第2の切断位置より、30bp以上、202bp以下の下流の位置に5’末端が設定される。
第3の本発明によると、上記本発明のアポリポタンパクE遺伝子多型検出方法により検出したDNA断片長の存否の組み合わせからアポリポタンパクE遺伝子多型のゲノタイプを判定することを特徴とするアポリポタンパクE遺伝子多型のゲノタイプ判定方法が提供される。
第3の本発明の一実施態様によると、前記第1の切断位置より上流の配列Aのみを含むDNA断片を断片A(一実施態様では106bp)、前記第2の切断位置より下流の配列Bのみを含むDNA断片を断片B(一実施態様では35bp、18bp、13bp、他の実施態様では80bp、18bp、13bp)、前記第1の切断位置と前記第2の切断位置との間の配列Cのみを含むDNA断片を断片C(一実施態様では145bp)、前記配列A及びCを含むDNA断片を断片D(一実施態様では251bp)、前記配列B及びCを含むDNA断片を断片E(一実施態様では180bp)としたとき、断片C、断片D及び断片Eの存否をアポリポタンパクE遺伝子多型のゲノタイプの判定に用い、(a)断片Eのみの存在によりゲノタイプE2/E2を判定し;(b)断片Cのみの存在によりゲノタイプE3/E3を判定し;(c)断片Dのみの存在によりゲノタイプE4/E4を判定し;(d)断片E及び断片Cのみの存在によりゲノタイプE2/E3を判定し;(e)断片D及び断片Eのみの存在によりゲノタイプE2/E4を判定し;(f)断片D及び断片Cのみの存在によりゲノタイプE3/E4を判定する。
第3の本発明の他の実施態様によると、断片A、断片C、断片D及び断片Eの存否をアポリポタンパクE遺伝子多型のゲノタイプの判定に用い、(a)断片E及び断片Aのみの存在によりゲノタイプE2/E2を判定し;(b)断片C及び断片Aのみの存在によりゲノタイプE3/E3を判定し;(c)断片Dの存在及び断片Aの非存在によりゲノタイプE4/E4を判定し;(d)断片E、断片C及び断片Aのみの存在によりゲノタイプE2/E3を判定し;(e)断片D、断片E及び断片Aのみの存在によりゲノタイプE2/E4を判定し;(f)断片D、断片C及び断片Aのみの存在によりゲノタイプE3/E4を判定する。
第3の本発明の他の実施態様では、前記配列A、配列B及び配列Cを含むヘテロ二本鎖(一実施態様では286bp)の存否をアポリポタンパクE遺伝子多型のゲノタイプの判定に用い、該ヘテロ二本鎖の存在によりゲノタイプE2/E4を判定する。又、他の実施態様では、更に、アポリポタンパクE遺伝子多型E2、E3、E4の全てについて生成する断片Bの存在により、前記切断段階における有効な切断反応の存在を判断し、該有効な切断の存在を判断した場合に、DNA断片長の存否の組み合わせからアポリポタンパクE遺伝子多型のゲノタイプを判定する。
第3の本発明の他の実施態様では、更に、アポリポタンパクE遺伝子多型E2、E3、E4の全てについて生成する断片B(一実施態様では35bp、18bp若しくは13bp、他の実施態様では80bp)を定量した結果に基づいて、断片A、断片C、断片D及び/又は断片Eの存否を判断する。他の実施態様では、更に、前記(d)、(e)又は(f)の各場合の判定に際し、アポリポタンパクE遺伝子多型E2、E3、E4の全てについて生成する断片Bを定量した結果に基づいて求めたヘテロ二本鎖の生成割合に基づいて、断片A、断片C、断片D及び/又は断片Eの存否を判断する。
第3の本発明の他の実施態様によると、前記第1の切断位置より上流の配列Aのみを含むDNA断片を断片Aとしたとき、断片Aの存否をアポリポタンパクE遺伝子多型のゲノタイプの判定に用い、断片Aの非存在によりゲノタイプE4/E4を判定する。
第4の本発明によると、アポリポタンパクE遺伝子の制限酵素切断断片を検出することでアポリポタンパクE遺伝子多型を検出するために用い得る、アポリポタンパクE遺伝子増幅用のプライマー対を備えるアポリポタンパクE遺伝子多型の検出試薬であって、前記プライマー対のうち上流側プライマーは、アポリポタンパクE遺伝子のコドン112の一塩基多型部位を含む認識配列での第1の切断位置より、60bp以上、136以下のbp上流の位置に5’末端が設定されることを特徴とするアポリポタンパクE遺伝子多型の検出試薬が提供される。本発明の一実施態様によると、前記プライマー対のうち下流側プライマーは、前記第2の切断位置より、30bp以上、202bp下流の位置に5’末端が設定される。
尚、本明細書において、遺伝子配列における位置は、5’末端から3’末端方向に一本鎖でみていうものであり、その上流とは該一本鎖でみたときの5’末端側、下流とは3’末端側をいう。
又、ApoE遺伝子について、いずれかの遺伝子多型において制限酵素による切断位置(或いは認識配列)がある場合、その位置に相当する他の遺伝子多型における配列上の位置については、切断されない(或いは認識されない)場合についても切断位置(或いは認識配列)の語を用いて説明する。
図1は、本発明に従うApoE遺伝子多型のゲノタイピングの概念図である。
図2は、本発明に従うプライマー対の設定位置を説明するための模式図である。
図3は、本発明に従うプライマー対の一例を用いた場合のDNA制限断片の長さを説明するための模式図である。
図4は、本発明に従うプライマー対の一例を用いた場合の各ApoE遺伝子多型に対する電気泳動パターンの模式図である。
図5は、本発明に従うプライマー対の他の例を用いた場合のDNA制限断片の長さを説明するための模式図である。
図6は、本発明に従うプライマー対の他の例を用いた場合の各ApoE遺伝子多型に対する電気泳動パターンの模式図である。
図7は、本発明に従うプライマー対の更に他の例を用いた場合のDNA制限断片の長さを説明するための模式図である。
図8は、本発明に従うプライマー対の更に他の例を用いた場合の各ApoE遺伝子多型に対する電気泳動パターンの模式図である。
図9は、本発明に従ってApoE遺伝子の制限断片をアガロースゲル電気泳動により分離した結果を示す図である。
図10は、本発明に従ってApoE遺伝子の制限断片をAgilent2100により分離した結果を示す図である。
図11は、本発明に従ってApoE遺伝子の制限断片を日立SV1210により分離した結果を示す図である。
図12は、本発明に従ってApoE遺伝子の制限断片をABI3100により分離した結果を示す図である。
図13は、制限酵素HhaIを用いた従来のApoE遺伝子多型のゲノタイピングの概念図である。
図14は、従来の方法に従って制限酵素HhaIを用いて得たApoE遺伝子の制限断片をAgilent2100により分離した結果を示す図である。
図15は、従来の方法に従って制限酵素HhaIを用いて得たApoE遺伝子の制限断片を日立SV1210により分離した結果を示す図である。
図16は、ヘテロ二本鎖の生成を説明するための模式図である。
図17は、ヘテロ二本鎖の生成を考慮した、本発明に従うゲノタイピングの概念図である。
図18は、ヘテロ接合体についてヘテロ接合体が生成した場合の各DNA断片の生成量の推定方法の他の例(35bpのDNA断片の定量に用いる例)を説明するための模式図である。
図19は、ホモ接合体についてヘテロ接合体が生成した場合の各DNA断片の生成量の推定方法の他の例(35bpのDNA断片の定量に用いる例)を説明するための模式図である。
図20は、ヘテロ二本鎖の定量について説明するための各ゲノタイプでのDNA制限断片の分離パターンを示す模式図である。
図21は、ヘテロ接合体についてヘテロ接合体が生成した場合の各DNA断片の生成量の推定方法の一例(80bpのDNA断片の定量に用いる例)を説明するための模式図である。
図22は、ホモ接合体についてヘテロ接合体が生成した場合の各DNA断片の生成量の推定方法の一例(80bpのDNA断片の定量に用いる例)を説明するための模式図である。
図23は、本発明に従ってApoE遺伝子の制限断片を日立SV1210により分離した結果を示す図である。
図24は、本発明に従ってApoE遺伝子の制限断片を日立SV1210により分離した結果を示す図である。
図25は、本発明に従ってApoE遺伝子の制限断片を日立SV1210により分離した結果を示す図である。
図26は、図5に示す一部のデータを拡大して示した図である。
図27は、制限酵素AflIII及びHaeIIを用いた従来のApoE遺伝子多型のゲノタイピングの概念図である。
以下、本発明に係るアポリポタンパクE遺伝子多型検出方法及び試薬を図面に則して更に詳しく説明する。
本発明に係るアポリポタンパクE(ApoE)遺伝子多型検出方法は、詳しくは後述するように、一実施態様では、ApoE遺伝子に特異的なプライマー対を用いてPCRにより目的のDNA領域を増幅し、増幅されたDNAを所定の制限酵素を用いて切断し、切断したDNA制限断片を分離し、分離されたDNA断片を検出する各段階を含む。
ApoE遺伝子に特異的なプライマー対は、ゲノムDNAをテンプレート(鋳型)として、ApoE遺伝子の2つの変異箇所を含む、即ち、2箇所の一塩基多型部位を挟んだ所定領域(以下「多型領域」という。)のDNAをPCR法によって増幅するように設計されたオリゴヌクレオチド対(プライマー対)である。プライマー対の一方は、5’末端から3’末端方向に一本鎖でみて、上記ApoE遺伝子の多型領域の上流側にハイブリダイズ可能な適当な長さのオリゴヌクレオチドで、他方は同多型領域の下流側の相補鎖にハイブリダイズ可能な適当な長さのオリゴヌクレオチドである。これらプライマーは、通常通り、2つのプライマーのTmが同程度となり、又増幅効率が良好であるように設計するのが好ましい。
特に、本発明においては、後述の所定の制限酵素による切断で、典型的にはアガロースゲル電気泳動によって十分な解像度にて分離可能な十分な長さのDNA制限断片が得られるように設計される。好ましい一実施態様では、下記の塩基配列を有するオリゴヌクレオチドから成るプライマーの対を用いる。
Figure 2004087961
上記オリゴヌクレオチド配列のプライマー対によれば、ApoE遺伝子多型の2箇所の一塩基多型部位、即ち、ApoEの112番目のアミノ酸をコードするApoE遺伝子領域(以下「コドン112」という。)、ApoEの158番目のアミノ酸をコードするApoE遺伝子領域(以下「コドン158」という。)の一塩基多型部位を含み、75番目〜191番目のアミノ酸をコードするコドン領域にわたる352bpのオリゴヌクレオチド配列をPCR法によって増幅することができる。斯かるオリゴヌクレオチド配列の各プライマーは、斯界にて周知のDNA合成方法、装置を用いて得ることができる。
増幅したDNA産物を切断する所定の制限酵素は、ApoE遺伝子多型間の遺伝子変異で認識部位が出現又は消失するもの、即ち、いずれかのApoE遺伝子多型の一塩基多型部位が認識配列内に存在するものであって、切断後のDNA制限断片が典型的にはアガロースゲル電気泳動法によって十分な解像度にて分離可能な長さを有し得るものである。好ましい一実施態様では、増幅したDNA産物を切断する2種類の制限酵素の組合せを用いる。又、好ましくは、上記プライマー対を用いて増幅されたDNAに関し、2種類の制限酵素のいずれか一方の制限酵素のみによる切断、及び両方の制限酵素による切断によって、いずれかのアポリポタンパクE遺伝子多型に帰属させ得る100bp以上のDNA断片が生成する2種類の制限酵素の組合せを用いる。このような本発明に従う制限酵素の組合せは、好ましい一実施態様では、AflIIIとHaeIIである。
図1に示すように、制限酵素AflIIIは、塩基配列ACRYGT(RはA又はG,YはC又はT)を認識する。又、制限酵素HaeIIは、塩基配列RGCGCY(RはA又はG,YはC又はT)を認識する。即ち、制限酵素AflIIIは、112番目のシステイン(E2、E3)をコードするコドンの領域にわたるACGTGTを認識して切断するが、112番目のアルギニン(E4)をコードするコドンの領域にわたるACGTGCは切断しない。又、制限酵素HaeIIは、158番目のアルギニン(E3、E4)をコードするコドンの領域にわたるAGCGCCを認識して切断するが、158番目のシステイン(E2)をコードするコドンの領域にわたるAGTGCCは切断しない(図中、四角で囲んだT又はCはそれぞれのコドンのはじめの塩基を示す。)。
これらの制限酵素で、上記プライマー対を用いて増幅されたDNAを断片化すると、図1に示すように、ホモ接合体について、E2/E2では106bp及び180bp、E3/E3では106bp及び145bp、E4/E4では251bpのDNA制限断片が得られる。又、ヘテロ接合体であるE2/E3、E2/E4、E3/E4についても、図1に示すようにそれぞれ異なったDNA制限断片の組合せが得られる。
このように、本発明の好ましい一実施態様では、上記プライマー対(配列番号1、2)及び2種類の制限酵素の組合せ(AflIII、HaeII)を用いることにより、非特許文献5において制限酵素HhaIによる切断で得られたものよりも長いDNA制限断片が出現する。
図13に示すように、従来用いられていた制限酵素HhaIは、コドン112、158の一塩基多型部位を含む切断位置以外(それぞれの上流側)に他の多くの切断位置を持つ。これに対して、図1に示すように、本発明にて好適に使用されるAflIIIは、コドン112の一塩基多型部位を含む切断位置より上流及び下流に他の切断位置を持たず、又HaeIIは、コドン158の一塩基多型部位を含む切断位置より上流に他の切断位置を持たない。又、DNA制限断片間の鎖長差は、本発明に従う上記プライマー対及び2種類の制限酵素の組合せを用いると、従来の制限酵素HhaIを用いる場合よりも大きくなり、DNA制限断片の分離を容易ならしめている。
本発明にて用い得る制限酵素及びプライマー対の選択について更に説明する。
[制限酵素]
本発明にて用いることが可能である制限酵素は下記の条件を満たす。
(1)第1の制限酵素は、ApoE遺伝子のコドン112の一塩基配列多型部位を含む認識配列をもち、切断されるか切断されないかが該一塩基多型によって決定するもの。認識配列について上記の条件を満たせば、切断される部位はコドン112から離れていても良い。
(2)第2の制限酵素は、ApoE遺伝子のコドン158の一塩基配列多型部位を含む認識配列をもち、切断されるか切断されないかが、該一塩基多型によって決定するもの。認識配列について上記の条件を満たせば、切断される部位はコドン158から離れていても良い。
(3)ApoE遺伝子の多型領域(ApoE遺伝子の2つの一塩基多型部位を含む領域)を含む増幅された所定のDNA断片を上記第1、第2の制限酵素を用いて切断することにより得られるDNA断片がApoE遺伝子多型の判定に利用可能となるもの、即ち、それぞれのApoE遺伝子多型を特定可能な、特異的な少なくとも1つのDNA断片若しくは少なくとも1つのDNA断片の組合せ(或いは電気泳動によって分離することによって得られる流出パターン)が得られるもの。
(4)それぞれのApoE遺伝子多型が特定可能な、少なくとも1つの特異的なDNA断片若しくは少なくとも1つの特異的なDNA断片の組合せを構成するDNA断片が、実質的に100bp以上になるもの。尚、DNA断片長は、ApoE遺伝子の多型領域(ApoE遺伝子の2つの一塩基多型部位を含む領域)に用いられる所定のプライマーとの関係で許容される最長長さ以下となる。
(5)更に、第1、第2の制限酵素は、認識配列或いは切断部位が、ApoE遺伝子のコドン112の一塩基多型部位を含む認識配列とコドン158の一塩基多型部位を含む認識配列との間には存在しないものであることが望ましい。
上述の本発明の好ましい一実施態様における2種類の制限酵素、AflIII及びHaeIIは、下記条件(1)〜(4)の条件を満たす制限酵素の組み合わせである。これに対して、従来の方法における制限酵素HhaIは、上記条件(4)を満たさず、更に上記条件(5)をも満たさない。
尚、第1、第2の制限酵素は、上記条件(1)〜(4)を満たせば同一のものであっても2種類以上であってもよい。
[プライマー]
ApoE遺伝子多型の判定に必要なDNA断片長は、使用する第1、第2の制限酵素によって変化するため、ApoEの多型領域の増幅に必要なプライマー対の設計は、切断されたDNA断片を分離する際に、いずれかのApoE遺伝子多型に特異的なDNA断片のパターンが形成されるように行われなければならない。以下、第1、第2の制限酵素として、上記制限酵素の組み合わせ、つまりAflIII及びHaeIIの2種類を使用する場合(以下「本実施例」という。)に即して説明する。
(上流側プライマー)
ここで、図2、図3、図5、図7を参照して、コドン112の一塩基多型部位を含む認識配列での切断位置(以下「第1の切断位置」という。)より上流の配列(配列A)のみを含むDNA断片を「DNA断片A」、コドン158の一塩基多型部位を含む認識配列での切断位置(以下「第2の切断位置」という。)より下流の配列(配列B)のみを含むDNA断片を「DNA断片B」、第1の切断位置と第2の切断位置との間の配列(配列C)のみを含むDNA断片を「DNA断片C」、配列A及び配列Cを含むDNA断片を「DNA断片D」、前記配列B及び配列Cを含むDNA断片を「DNA断片E」とする。
この場合、本発明によれば、上流側プライマーは、図2中領域aで示す如く、第1の切断位置より、60bp以上、136bp以上の上流の位置(即ち、第1の切断位置より60〜136bp上流の位置)に5’末端を設定する。このような上流側プライマーは、ApoE遺伝子に特異的であり、且つ、Tmが下流側のプライマーと同程度ものであればよい。これに限定されるものではないが、プライマーの長さに関しては、プライマーのPCRの特性、他のゲノムの領域における特異性を考慮して、20〜25merが好適である。
DNA断片Aは、E2とE3では生成するがE4では生成しない。そして、E4では断片長が(A+145)bpのDNA断片Dが特異的に生成される。つまり、上流側プライマーの5’末端を第1の切断位置より60bp以上の上流の位置に設定することで、DNA断片Dは、DNA断片C(145bp)と分離可能であると共に、DNA断片Eとも良好に分離可能であり、E4に特異的なものとなる。又、斯かる設定により、第1の切断位置が制限酵素で切断されなくなる虞などを低減し、より正確性、信頼性を高めるためることができる。又、上流側プライマーの5’末端を第1の切断位置の上流136bp以下の位置に設定することで、DNA断片Aと、DNA断片Cとを良好に分離することができる。但し、極めて良好にDNA断片AとDNA断片Cとを分離するには、第1の切断位置より120以下の上流の位置(即ち、第1の切断位置より60〜120bp上流の位置)に上流側プライマーの5’末端を設定するのが好ましい。この位置については更に詳しく後述する。
即ち、この条件によって、少なくともE4の判定が可能となる。
本実施例における配列番号1の上流側のプライマーは、第1の切断位置から106bp上流にプライマーの5’末端を設定している。この場合、E2及びE3において生成されるがE4では生成されないDNA断片Aの長さは106bp、又E4に特異的なDNA断片Dは251bpとなる。
詳しくは後述するように、下流側プライマーの選択範囲によって制限酵素切断により生成されるDNA断片長が異なるが、図3及び図5に示すように下流側プライマーを選択する場合においては、DNA断片D、更にDNA断片Aは、他のDNA断片の長さと重なることがなく、該上流側プライマーはApoE遺伝子多型の判定に適切である。即ち、この場合DNA断片DをApoE遺伝子多型の判別の根拠として利用し得るのみならず、DNA断片AをもApoE遺伝子多型の判別の根拠の一つとして利用することができる。この点については、下流側プライマーとの関連で更に詳しく後述する。
一方、図7に示すように下流側プライマーを選択する場合においては、他のDNA断片(図7中B3)の鎖長がDNA断片Aの鎖長とほぼ同等となり重複する可能性があり、この場合は、DNA断片AはApoE遺伝子多型の判別には利用することができない。しかし、(A+145)bpのDNA断片DがE4に特異的であるため、下流側プライマーの設計に拘わらず、E4の検出は可能、且つ、容易である。
(下流側プライマー)
下流側プライマーは、図2中領域bで示す如く、第2の切断位置より、30bp以上、202bp以下の下流の位置(即ち、第2の切断位置より30〜202bp下流の位置)に5’末端を設定する。このような下流側プライマーは、ApoE遺伝子に特異的であり、Tmが上流側のプライマーと同程度ものであればよい。これに限定されるものではないが、プライマーの長さに関しては、プライマーのPCRの特性、他のゲノムの領域における特異性を考慮して、20〜25merが好適である。
下流側プライマーの5’末端を第2の切断位置より30bp以上下流の位置に設定することで、DNA断片Cと、DNA断片Eとを良好に分離することができる。又、下流側プライマーの5’末端を第2の切断位置の下流202bp以下の下流の位置(下流202bpより上流側)とすることにより、以下更に詳しく説明するように下流側プライマーの選択範囲によっては生成される最下流側のDNA断片B3(図7)と、DNA断片Cとを分離することができる。これにより、DNA断片C、DNA断片Eは、それぞれE3、E2に特異的なものとなる。但し、極めて良好にDNA断片B3をDNA断片Cと分離するには、第2の切断位置より185以下の下流の位置(即ち、第2の切断位置より30〜185bp下流の位置)に下流側プライマーの5’末端を設定するのが好ましい。この位置については更に詳しく後述する。
増幅されたDNA断片の切断後に生成される断片長のパターンを、下流側プライマーの選択範囲bを更に図2に示す如くb1、b2、b3の3つの領域に分けて考えることとする。ここで、b1とb2との境界は第2の切断位置から下流側35bpの位置、b2とb3との境界は第2の切断位置から下流側66bpの位置とする。
(1)領域b1から選択する場合(図3、図4):
E2(第1の切断位置が切断され、第2の切断位置が切断されない)に特異的なDNA断片Eの長さは(B1+145)bp=175〜180bpのいずれかとなる。最下流側のDNA断片B1は、E3及びE4(第2の切断位置が切断される)の場合に生成され、その長さは30bp〜35bpのいずれかとなる。これらの断片は、長さが50bp以下となり短いため、DNA分離法によっては同定不可能となる。E3(第1の切断位置及び第2の切断位置でともに切断される)に特異的なDNA断片Cの長さは145bpとなる。又、E4(第1の切断位置で切断されず、第2の切断位置で切断される)に特異的なDNA断片Dの長さは(A+145)bpとなる。このように、各ApoE遺伝子多型に特異的なDNA断片C、D、Eの長さは互いに重なることはなく、又DNA断片B1の長さも、各ApoE遺伝子多型に特異的なDNA断片のいずれにも重ならないので、ApoE遺伝子多型の判別は容易である。
(2)領域b2から選択する場合(図5、図6):
この場合、E2に特異的なDNA断片Eの長さは180bpとなる。E3及びE4の場合に35bpのDNA断片が生成される。E3に特異的なDNA断片Cの長さは145bpとなり、E4に特異的なDNA断片Dの長さは(A+145)bpとなる。又、いずれのApoE遺伝子多型においても、DNA断片B2が生成されるが、その長さは最長でも20bp以下である(長さが18bp以下の長さのDNA断片、或いは長さが18bpの断片及び長さが13bp以下の断片)。このように、各ApoE遺伝子多型に特異的なDNA断片C、D、Eの長さは互いに重なることはなく、又35bpのDNA断片及びDNA断片B2の長さも、各ApoE遺伝子多型に特異的なDNA断片のいずれにも重ならないので、ApoE遺伝子多型の判別は可能である。尚、上述のように、35bpのDNA断片及びDNA断片B2は、長さが短いため分離法によっては同定不可能となる。
(3)領域b3から選択する場合(図7、図8):
この場合、E2に特異的なDNA断片Eの長さは180bpとなる。E3及びE4の場合に35bpのDNA断片が生成される。E3に特異的なDNA断片Cの長さは145bpとなり、E4に特異的なDNA断片Dの長さは(A+145)bpとなる。又、いずれのApoE遺伝子多型においても、18bp、13bpのDNA断片が生成される。35bpのDNA断片及び18bp、13bpのDNA断片は、長さが短いためDNA分離法によっては同定不可能となる。更に、いずれのApoE遺伝子多型においても最下流側DNA断片B3が生成され、その長さは最長でも136bp以下(好ましくは120bp以下)となる。ここで、(a)DNA断片B3がDNA断片Aと分離可能な場合は、DNA断片AがE2及びE3で生成され、E4では生成されないので、DNA断片Aは、ApoE遺伝子多型の判別の根拠の一つとして利用可能となる。一方、(b)DNA断片B3とDNA断片Aとが分離可能でない場合、DNA断片Aの有無の情報はApoE遺伝子多型の判定に利用できないが、180bp(DNA断片E)、145bp(DNA断片C)、(A+145)bp(DNA断片D)のDNA断片が、それぞれE2、E3、E4に特異的であるので、これらの有無のみでもApoE遺伝子多型の判別は可能、且つ、容易である。
本実施例における配列番号2の下流側プライマーでは、第2の切断位置から101bp下流にプライマーの5’末端が設定されており、図7に示すように、最下流側のDNA断片B3の長さは35bpになる。この断片は、ApoE遺伝子多型の判定に必要なDNA断片の長さ(180bp、145bp、(A+145)bp)と重なることがなく、該下流側プライマーは、ApoE遺伝子多型の判定に適切である。
本発明によれば、DNA断片AをもApoE遺伝子多型の判別の根拠の一つとして利用し、更には、DNA断片B、より詳細にはE2、E3、E4の全てについて生成するDNA断片Bの存否及び/又はその量を利用することによって、更にApoE遺伝子多型の検出、ゲノタイピングの正確性、信頼性を高めることができる。以下、この点について説明する。
先ず、本発明によれば、DNA断片AをもApoE遺伝子多型の判別の根拠の一つとして利用することができる。つまり、DNA断片AはE2及びE3において生成されるが、E4では生成されない。このため、DNA断片Aの存在は、それぞれDNA断片E、DNA断片Cの存在と共にApoE遺伝子多型の判別の根拠として利用して、E2又はE3の存在を示す。一方、DNA断片Aの非存在は、E4を示す。このように、ApoE遺伝子多型の判定の根拠を増すことにより、判定の正確性、信頼性を向上させることができる。
上述のように、本発明では、上流側プライマーは、第1の切断位置より60bp以上の上流の位置に5’末端を設定する。即ち、60bp以上の上流の位置に設定することで、DNA断片Dが、DNA断片C、DNA断片Eと極めて良好に分離可能であると共に、DNA断片Aを、前述のAgilent2100、日立SV1210、ABI3100(或いはABI3700)等の高解像度のDNA分離方法で良好に分離、検出することができる。
この観点からは、上流側プライマーの5’末端の位置は、第1の切断位置に対し70bp以上、80bp以上と、より上流に設定するのがよく、より好ましくは90以上上流の位置に設定する。更に好ましくは、100bp以上上流の位置に5’末端の位置を設定することで、例えば従来一般に用いられているアガロースゲル電気泳動によっても断片Aを良好に分離し、検出することができ、更に広範囲のDNA分離方法においてDNA断片AをもApoE遺伝子多型の判別の根拠の一つとして利用することができる。更に、後述するように、DNA断片Bの存否及び/又は量をApoE遺伝子多型の検出、ゲノタイピングに利用する場合、DNA断片AとDNA断片Bとの分離性を良好にする観点からも、上流側プライマーの5’末端は、第1の切断位置に対しより上流に設定することが好ましい。
一方、上述の如く、極めて良好にDNA断片AとDNA断片Cとを分離するには、第1の切断位置より120以下の上流の位置に上流側プライマーの5’末端を設定するのが好ましい。DNA断片Cとの分離性を更に高めるように、上流側プライマーの5’末端は、第1の切断位置より110bp以下の上流の位置とすることも有効である。
次に、本発明によれば、E2、E3、E4の全てについて生成するDNA断片Bの存否によって、制限酵素(HaeII)が効果的に反応しているか否かを判断し、PCR産物の消化が適正に行われたか否かの判断をすることができる。消化反応が適正に行われたか否かを判断することは、正確で、信頼性のあるApoE遺伝子多型の検出、ゲノタイピングにとって重要である。E2、E3、E4の全てについて生成するDNA断片Bが存在するときに、有効な切断反応の存在を判断する。そして、有効な切断反応の存在を判断した場合に、各DNA断片の存否の組み合わせから、ApoE遺伝子多型のゲノタイプを判定するようにすることができる。このDNA断片Bが存在しない場合は、その検出結果を採用しない、或いはゲノタイピング不能であること、若しくは精度が低下していることを判断することができる。
上述のように、本発明によれば、下流側プライマーは、第2の切断位置より30bp以上の下流の位置に5’末端を設定することで、DNA断片CとDNA断片Eとを良好に分離できる。ここで、DNA断片Bを上記のように消化反応の良否判断の目的で利用することを考えると、下流側プライマーは、好ましくは、第2の切断位置より70以上の下流の位置に5’末端を設定する。これにより、前述のAgilent2100、日立SV1210、ABI3100(或いはABI3700)等の高解像度のDNA分離方法を用いるとき、DNA断片B2(本実施例では18bp、13bpのDNA断片)をこの目的のために好適に利用することができる。又、E2、E3、E4の全てについて生成する最下流のDNA断片の長さがDNA断片B1(本実施例では35bp)と同じである場合にはDNA断片B1をDNA断片B3と共にこの目的のために利用することができる。
又、この目的のためには、DNA断片の分離、検出を良好に行うことができるように、下流側プライマーの5’末端の位置を80bp以上、90bp以上と、第2の切断位置より更に下流側に設定することが好ましく、より好ましくは100bp以上の下流の位置に設定する。これにより、DNA断片B3(本実施例では35bpのDNA断片)をこの目的のために好適に使用することができる。第2の切断位置より126以上の下流の位置、136bp以上の下流の位置と、より下流に下流側プライマーの5’末端を設定することも有効である。
但し、上述の如く、極めて良好にDNA断片B3をDNA断片Cと分離するには、第2の切断位置より185以下の下流流の位置に下流側プライマーの5’末端を設定するのが好ましい。又、DNA断片A、DNA断片Bを上述の如く利用する場合には、これらDNA断片AとDNA断片Bとを分離可能とする(9bp、好ましくは20bp、より好ましくは30bp以上の鎖長差を設ける)必要がある。このようにDNA断片AとDNA断片Cとの分離性が良好であるように、下流側プライマーは、好ましくは、第2の切断位置より166bp以下の下流の位置、より好ましくは、第2の切断位置より156bp以下の下流の位置に5’末端の位置を設定する。
好ましくは、DNA断片A、DAN断片Bとをそれぞれ上記の目的で使用する場合、上流側プライマーの5’末端は、第1の切断位置より100bp以上の上流の位置に設定し、下流側プライマーの5’末端位置は、第2の切断位置より156bp以下の下流の位置とする。
つまり、本発明の一態様によれば、検出したDNA断片長の存否の組み合わせからApoE遺伝子多型のゲノタイプを判定するApoE遺伝子多型のゲノタイプ判定方法が提供される。その一実施態様では、DNA断片C(本実施例では145bp)、DNA断片D(本実施例では251bp)及びDNA断片E(本実施例では180bp)の存否をApoE遺伝子多型のゲノタイプの判定に用い、(a)断片Eのみの存在によりE2/E2を判定し;(b)断片Cのみの存在によりE3/E3を判定し;(c)断片Dのみの存在によりE4/E4を判定し;(d)断片E及び断片Cのみの存在によりE2/E3を判定し;(e)断片D及び断片Eのみの存在によりE2/E4を判定し;(f)断片D及び断片Cのみの存在によりE3/E4を判定することができる。
又、断片A、断片C、断片D及び断片Eの存否をApoE遺伝子多型のゲノタイプの判定に用い、(a)断片E及び断片Aのみの存在によりE2/E2を判定し;(b)断片C及び断片Aのみの存在によりE3/E3を判定し;(c)断片Dの存在及び断片Aの非存在によりE4/E4を判定し;(d)断片E、断片C及び断片Aのみの存在によりE2/E3を判定し;(e)断片D、断片E及び断片Aのみの存在によりE2/E4を判定し;(f)断片D、断片C及び断片Aのみの存在によりゲノタイプE3/E4を判定することができる。
そして、更に、断片Bの存在により、制限酵素による切断段階における有効な切断反応の存在を判断し、該有効な切断の存在を判断した場合に、DNA断片長の存否の組み合わせからApoE遺伝子多型のゲノタイプを判定することができる。断片Aの存否をApoE遺伝子多型のゲノタイプの判定に用い、断片Aの非存在によりゲノタイプE4/E4を判定することもできる。
ところで、目的の遺伝子領域を複製する過程において、ヘテロ二本鎖(ヘテロデュプレックス)が生じることがある。ヘテロ二本鎖は、特に、ApoE遺伝子多型のゲノタイプがヘテロの場合(E2/E3、E2/E4、E3/E4)の場合に問題となる。以下この点について説明する。
図16(a)、(b)、(c)は、E2/E3、E2/E4、E3/E4の各ゲノタイプについてヘテロデュプレックスが生じた場合のDNA制限断片のパターンを本実施例に則して模式的に示したものである(ここでは、説明の容易化のために最下流の35bp(DNA断片B3)は無視する。)。
PCRの過程で仮に50%がヘテロ二本鎖を形成したとすると、E2/E3ゲノタイプでは、図16(a)に示すように、50%がE2/E3二本鎖(ヘテロ二本鎖)が50%、E3/E3二本鎖が25%、E2/E2二本鎖が25%生成する。そして、ヘテロ二本鎖では第2の制限酵素(HaeII)の認識配列が消失し、第2の切断位置が切断されなくなる。その結果、見かけ上では、E2(106bp、180bpのDNA断片)が75%、E3(35bp、106bp、145bpのDNA断片)が25%となる。
又、E3/E4ゲノタイプでは、同様に考えると、図16(c)に示すようになる。そして、ヘテロ二本鎖では第1の制限酵素(AflIII)の認識配列が消失し、第1の切断位置が切断されなくなる。その結果、見かけ上では、E4(35bp、251bpのDNA断片)が75%、E3(35bp、106bp、145bpのDNA断片)が25%となる。
一方、E2/E4ゲノタイプでは、同様に考えると、図16(b)に示すようになる。そして、ヘテロ二本鎖では第1及び第2の酵素(AflIII及びHaeII)の認識配列が消失し、第1及び第2の位置が切断されなくなる。第2の切断位置より下流の切断位置ではヘテロ二本鎖であっても切断されるので、E2/E4二本鎖(ヘテロ二本鎖)に特異的な、本実施例では286bpのDNA断片(以下「ヘテロ二本鎖断片という。)が生成する。即ち、ヘテロ二本鎖断片は、配列A、配列B及び配列Cを含む。その結果、見かけ上では、E4(35bp、251bpのDNA断片)が25%、E2(106bp、180bpの断片)が25%、ヘテロ二本鎖断片(286bpのDNA断片)が50%となる。
図17は、ヘテロ二本鎖の生成をも考慮した場合における本実施例に即した各ゲノタイプでのDNA断片の分離パターンを模式的に示す。図示の通り、E2/E3では、180bpにヘテロ二本鎖の生成による太いバンドが出現し、E2/E4では286bpにヘテロ二本鎖の生成による新たなバンドが出現し、E3/E4では251bpにヘテロ二本鎖の生成による太いバンドが出現する。このことから、ヘテロ二本鎖断片(286bpのDNA断片)の出現は、E4/E4ゲノタイプを示し、アポリポタンパクE遺伝子多型のゲノタイプ判定の根拠の一つとして利用することができる。
図17から理解されるように、本発明によれば、ヘテロ二本鎖が生成しても、各ApoE遺伝子多型の検出、ゲノタイピングが可能であるが、本発明によれば、ヘテロ二本鎖の生成をも考慮することで、更にApoE遺伝子多型の検出、ゲノタイピング正確さ、信頼性を高めることができる。以下、この点について説明する。
つまり、本発明によれば、上述のように、E2、E3、E4の全てについて生成するDNA断片Bの出現によって、制限酵素が効果的に反応しているかを判断し、PCR産物の消化が適正に行われたか否かを判断することができる。更に、このDNA断片Bの量を定量することによって、消化反応全体に寄与し、ゲノタイピングの用に供することのできるDNA全量の予測が可能となる。
そして、E2、E3、E4の全てについて生成するDNA断片Bを定量した結果に基づいて、それぞれのゲノタイプに関係付けることのできる断片(各ゲノタイプで出現する特異的なDNA制限断片パターンを構成するそれぞれのDNA断片)、特に、DNA断片A、DNA断片C、DNA断片D及び/又はDNA断片Eをより正確に評価することが可能となる。つまり、それらのDNA断片の存在をより正確に判断することができる。即ち、DNA断片A、DNA断片C、DNA断片D及び/又はDNA断片Eを定量し、その量と、E2、E3、E4の全てについて生成するDNA断片Bの量から推定されるそれらの量とを比較する。これにより、DNA断片A、DNA断片C、DNA断片D及び/又はDNA断片Eがその推定量に相当する量存在するときに、該DNA断片が出現したものと判断することができる。
特に、ヘテロ接合体(E2/E3、E2/E4、E3/E4)については、E2、E3、E4の全てについて生成するDNA断片Bを定量した結果に基づいて、ヘテロ二本鎖の生成割合を求めることができる。そして、このDNA断片Bの量と、ヘテロ二本鎖の生成割合とに基づいて、それぞれのゲノタイプに関係付けることのできるDNA断片(各ゲノタイプで出現する特異的なDNA制限断片パターンを構成するそれぞれのDNA断片)、特に、DNA断片A、DNA断片C、DNA断片D及び/又はDNA断片Eをより正確に正確に評価することが可能となる。つまり、それらのDNA断片の存在をより正確に判断することができる。即ち、DNA断片A、DNA断片C、DNA断片D及び/又はDNA断片Eを定量し、その量と、E2、E3、E4の全てについて生成するDNA断片Bの量及びヘテロ二本鎖の生成割合から推定されるそれらの量とを比較する。これにより、DNA断片A、DNA断片C、DNA断片D及び/又はDNA断片Eがその推定量に相当する量存在するときに、該DNA断片が出現したものと判断することができる。
特に、各DNA断片の定量は、例えば、前述の日立SV1210、Agilent2100などの近年開発されたDNA分離方法を用いれば、ピークを定量することで極めて簡単に行うことができる。自動処理化することも比較的容易である。
以下、この方法の一例を説明する。説明の容易化のために、はじめに、E2、E3、E4の全てについて生成するDNA断片Bとして最下流のDNA断片B3を用いるものとし、且つ、このDNA断片B3が80bpである場合について説明する。図20は、この場合の各ゲノタイプでのDNA断片の分離パターンを模式的に示す。
先ず、ヘテロ二本鎖が生成することのあるヘテロ接合体(E2/E3、E2/E4、E3/E4)について説明する。
E2/E3の場合、テンプレートDNAをE2a/E2b二本鎖、E3a/E3b二本鎖であるとすると、PCRによる増幅の過程でヘテロ二本鎖が生成すると、PCR産物、生成するDNA制限断片長の組み合わせ、それぞれの産物(DNA制限断片)の量の関係は下記表1に示すようになる。尚、表には、増幅された後切断されたPCR産物の全量が100pmolで、ヘテロ二本鎖の生成割合が50%であるとした例を示す。又、図21(a)に表1の場合における各DNA断片の出現量を示す。
Figure 2004087961
図20に示すように、E2、E3、E4の全て、即ち、全てのゲノタイプで80bpのDNA断片(DNA断片B3)、18bp、13bpのDNA断片(DNA断片B2)が出現し、その数は、増幅された後に切断されたDNAの数(以下「反応DNA全量」という。)と同じとなる。
この場合、80bpのDNA断片(DNA断片B3)の量(測定値)をα(pmol)、145bp(DNA断片C)又は35bp(DNA断片B1)のDNA断片の量(測定値)をβ(pmol)とすると、ヘテロ二本鎖の生成割合X(%)は、
X(%)=[(α−2β)/α]×100
となる。即ち、ヘテロ二本鎖に特異的なDNA断片の生成しないE2/E3の場合は、ヘテロ二本鎖以外の二本鎖のみに由来する各DNA断片の量(測定値)(ヘテロ二本鎖以外の二本鎖全体の量はその2倍と推定できる。)と、80bpのDNA断片の量(測定値)(即ち、反応DNA全量)とから、ヘテロ二本鎖の生成割合を求める。
そして、求めたヘテロ二本鎖の生成割合X(%)と、80bpのDNA断片(DNA断片B3)の量から、各DNA断片の量を予測(推定)することができる。つまり、下記、
180bpの(DNA断片E)の推定量:
{[(100−X)×0.01]/2}×α+(α×X×0.01)
145bp(DNA断片C)の推定量:
{[(100−X)×0.01]/2}×α
106bp(DNA断片A)の推定量:
{[(100−X)×0.01]/2}×2×α+(α×X×0.01)
35bp(DNA断片B1)の推定量:
{[(100−X)×0.01]/2}×α
により各DNA断片の量を推定することができる。
次に、E3/E4の場合、テンプレートDNAをE3a/E3b二本鎖、E4a/E4b二本鎖であるとすると、上記E2/E3の場合と同様に考えた場合、下記表2、図21(c)に示すようになる。
Figure 2004087961
この場合、上記E3/E4の場合と同様に考えて、80bpのDNA断片(DNA断片B3)の量(測定値)をα(pmol)、145bp(DNA断片C)又は106bp(DNA断片A)の量(測定値)をβ(pmol)とすると、ヘテロ二本鎖の生成割合X(%)は、
X(%)=[(α−2β)/α]×100
となる。そして、上記E2/E3の場合と同様に考えて、各DNA断片の推定量は、下記、
251bp(DNA断片D)の推定量:
{[(100−X)×0.01]/2}×α+(α×X×0.01)
145bp(DNA断片C)の推定量:
{[(100−X)×0.01]/2}×α
106bp(DNA断片A)の推定量:
{[(100−X)×0.01]/2}×α
35bp(DNA断片B1)の推定量:
{[(100−X)×0.01]/2}×2×α+(α×X×0.01)
となる。
一方、E2/E4の場合、テンプレートDNAをE2a/E2b二本鎖、E4a/E4b二本鎖であるとすると、上記E2/E3、E3/E4の場合と同様に考えた場合、下記表3、図21(b)に示すようになる。
Figure 2004087961
図20に示すように、上記E2/E3、E3/E4の場合と同様、全てのゲノタイプで80bpのDNA断片(DNA断片B3)、18bp、13bpのDNA断片(DNA断片B2)が出現し、その数は、反応DNA全量と同じとなる。
そして、この場合、80bpのDNA断片(DNA断片B3)の量(測定値)をα(pmol)、286bp(ヘテロデュプレクス断片)の量(測定値)をγ(pmol)とすると、ヘテロ二本鎖の生成割合X(%)は、
X(%)=γ/α×100
となる。即ち、ヘテロ二本鎖に特異的な断片の生成するE2/E4の場合は、ヘテロ二本鎖のみに由来するDNA断片の量(測定値)と、80bpのDNA断片(DNA断片B3)の量(測定値)(即ち、反応DNA全量)とから、ヘテロ二本鎖の生成割合を求めることができる。
或いは、上記E2/E3の場合と同様に考えて、80bpのDNA断片(DNA断片B3)の量(測定値)をα、251bp(DNA断片D)、180bp(DNA断片E)又は106bp(DNA断片A)の量(測定値)をβとすると、ヘテロ二本鎖の生成割合X(%)は、
X(%)=[(α−2β)/α]×100
となる。
そして、各DNA断片の推定量は、下記、
251bp(DNA断片D)の推定量:
{[(100−X)×0.01]/2}×α
180bp(DNA断片E)の推定量:
{[(100−X)×0.01]/2}×α
106bp(DNA断片A)の推定量:
{[(100−X)×0.01]/2}×α
35bp(DNA断片B1)の推定量:
{[(100−X)×0.01]/2}×α
となる。
以上のようにして、ヘテロ接合体についての各DNA断片の量を推定することができる。そして、各DNA断片の定量値(測定値)が、その推定量に整合する場合、即ち、推定量に相当する量だけ存在するときに、該DNA断片が出現したものと判断することができる。尚、推定量との誤差がどの程度の場合に該DNA断片が出現したものと判断するかは、適宜、選定することができる。
尚、上述では、E2、E3、E4の全てについて生成するDNA断片Bとして、80bpのDNA断片(DNA断片B3)を用いた場合を例に説明したが、同様にして、18bp、13bpのDNA断片(DNA断片B2)を用いることもできる。
又、ヘテロ二本鎖が問題になるのはヘテロ接合体の場合であるが、ホモ接合体の場合においても、上述したように、E2、E3、E4の全てについて生成するDNA断片Bを定量した結果に基づいて、それぞれのゲノタイプに関係付けることのできるDNA断片、特に、DNA断片A、DNA断片C、DNA断片D及び/又はDNA断片Eの存在をより正確に判断することができる。
つまり、上記ヘテロ接合体の場合と同様に、増幅された後切断されたPCR産物の全量が100pmolであると仮定した場合の、各ゲノタイプで生成する各DNA断片の量(推定量)を図22に示す。酵素処理後には、PCRで増幅された後切断されたDNAの数(反応DNA全量)と同じだけ、13bp、18bp、80bpのDNA断片が生成される。そして、E2/E2、E3/E3、E4/E4のサンプルではヘテロ二本鎖が生成されないため、E2/E2では106bp、180bpの断片、E3/E3では35bp、106bp、145bpの断片、E4/E4では35bp、251bpの断片が、このDNA断片の数と同じだけ生成される。このように、ホモ接合体についても、各DNA断片の量を推定することができる。そして、各DNA断片の定量値(測定値)が、その推定量に整合する場合、即ち、推定量に相当する量だけ存在するときに、該DNA断片が出現したものと判断することができる。
次に、最下流のDNA断片B3の長さがDNA断片B1(本実施例では35bp)と同じである場合について説明する。この場合、E2、E3、E4の全てについて生成するこの鎖長のDNA断片B(DNA断片B1及びB3)を定量した結果に基づいてヘテロ二本鎖の生成割合、各DNA断片の推定量を求めることができる。以下この場合について本実施例に則して説明する。この場合の各ゲノタイプでのDNA断片の分離パターンは、前述のように、図17に示すようになる。
先ず、ヘテロ二本鎖が生成することのあるヘテロ接合体(E2/E3、E2/E4、E3/E4)について説明する。
E2/E3の場合、テンプレートDNAをE2a/E2b二本鎖、E3a/E3b二本鎖であるとすると、PCRによる増幅の過程でヘテロ二本鎖が生成すると、PCR産物、生成するDNA制限断片長の組み合わせ、それぞれの産物(DNA制限断片)の量の関係は下記表4に示すようになる。尚、表には、増幅された後切断されたPCR産物の全量が100pmolで、ヘテロ二本鎖の生成割合が50%であるとした例を示す。又、表中、便宜的に、35bpのDNA断片の鎖長は、DNA断片B1(E3、E4において生成)を35(a)bp、DNA断片B3(E2、E3又はE4の全てで生成)を35(b)bpとして区別している。そして、図18(a)に、表1の場合における各DNA断片の出現量を示す。
Figure 2004087961
図17から分かるように、35bpのDNA断片は、E2、E3、E4の全て、即ち、全てのゲノタイプで出現する。但し、その量には、上述のDNA断片B1由来のものと、DNA断片B3由来のものとが含まれている。
この場合、35bpのDNA断片の量(測定値)をα’(pmol)、145bp(DNA断片C)のDNA断片の量(測定値)をβ(pmol)とすると、ヘテロ二本鎖の生成割合X(%)は、
X(%)=[(α’−3β)/(α’−β)]×100
となる。即ち、E2/E2二本鎖及びヘテロ二本鎖からはDNA断片B3(表中35(b))のみが生成するが、E3/E3二本鎖からはDNA断片B1(表中35(a))及びDNA断片B3(表中35(b))が生成する。このE3/E3二本鎖から生成するDNA断片B1(表中35(a)))の量は、E3/E3二本鎖のみから生成する145bpのDNA断片(DNA断片C)の量と同じである(表中35(b)も同じ量である)ので、35bpのDNA断片の量(α’)からβを差し引いたものが、反応DNA全量となる。つまり、35bpのDNA断片の量α’は、表1を参照して説明した例における(α+β)に相当する。
そして、求めたヘテロ二本鎖の生成割合X(%)と、35bpのDNA断片(DNA断片B3)の量から、各DNA断片の量を予測(推定)することができる。つまり、下記、
180bpの(DNA断片E)の推定量:
{[(100−X)×0.01]/2}×(α’−β)+[(α’−β)×X×0.01]
145bp(DNA断片C)の推定量:
{[(100−X)×0.01]/2}×(α’−β)
106bp(DNA断片A)の推定量:
{[(100−X)×0.01]/2}×2×(α’−β)
+[(α’−β)×X×0.01]
により各DNA断片の量を推定することができる。
次に、E3/E4の場合、テンプレートDNAをE3a/E3b二本鎖、E4a/E4b二本鎖であるとすると、上記E2/E3と同様に考えた場合、下記表5、図18(c)に示すようになる。
Figure 2004087961
この場合、35bpのDNA断片の量(測定値)をα’’(pmol)、145bp(DNA断片C)のDNA断片の量(測定値)をβ(pmol)とすると、ヘテロ二本鎖の生成割合X(%)は、
X(%)=[(α’’/2)−2β]/(α’’/2)]×100
となる。即ち、E3/E3二本鎖、E4/E4二本鎖及びヘテロ二本鎖の全てから、DNA断片B1(表中35(a))及びDNA断片B3(表中35(b))が生成する。従って、35bpのDNA断片の量(α’’)の1/2が反応DNA全量となる。つまり、35bpのDNA断片の量α’’は、表2を参照して説明した例における2αに相当する。
そして、上記E2/E3の場合と同様に考えて、各DNA断片の量の推定量は、下記、
251bp(DNA断片D)の推定量:
{[(100−X)×0.01]/2}×(α’’/2)+[(α’’/2)×X×0.01]
145bp(DNA断片C)の推定量:
{[(100−X)×0.01]/2}×(α’’/2)
106bp(DNA断片A)の推定量:
{[(100−X)×0.01]/2}×(α’’/2)
となる。
一方、E2/E4の場合、テンプレートDNAをE2a/E2b二本鎖、E4a/E4b二本鎖であるとすると、上記E2/E3、E3/E4の場合と同様に考えた場合、下記表6、図18(b)に示すようになる。
Figure 2004087961
この場合、35bpのDNA断片の量をα’(pmol)、251bpのDNA断片(或いは106bp、180bpのそれのDNA断片)の量をβ、286bp(ヘテロデュプレクス断片)の量をγ(pmol)とすると、ヘテロ二本鎖の生成割合X(%)は、
X(%)=γ/(α’−β)×100
となる。即ち、E2/E2二本鎖及びヘテロ二本鎖からはDNA断片B3(表中35(b))のみが生成するが、E4/E4二本鎖からは、DNA断片B1(表中35(a))及びDNA断片B3(表中35(b))が生成する。このE4/E4二本鎖から生成するDNA断片B1(表中35(a)))の量は、E4/E4二本鎖のみから生成する251bpのDNA断片(或いは、E2/E2二本鎖からのみ生成する106bp、180bpのそれのDNA断片)の量と同じであるので、35bpのDNA断片の量(α’)からβを差し引いたものが、反応DNA全量となる。つまり、35bpのDNA断片の量α’は、表3の場合の(α+β)に相当する。
或いは、上記E2/E3の場合と同様に考えて、35bpのDNA断片の量をα’、251bp(DNA断片D)、180bp(DNA断片E)又は106bp(DNA断片A)の量をβとすると、ヘテロ二本鎖の生成割合X(%)は、
X(%)=[(α’−3β)/(α’−β)]×100
となる。
そして、求めたヘテロ二本鎖の生成割合X(%)と、35bpのDNA断片の量から、各DNA断片の量を予測(推定)することができる。
つまり、下記、
251bp(DNA断片D)の推定量:
{[(100−X)×0.01]/2}×(α’−β)
180bp(DNA断片E)の推定量:
{[(100−X)×0.01]/2}×(α’−β)
106bp(DNA断片A)の推定量:
{[(100−X)×0.01]/2}×(α’−β)
により各DNA断片の量を推定することができる。
以上のようにして、ヘテロ接合体についての各DNA断片の量を推定することができる。そして、各DNA断片がその推定量に相当する量だけ存在するときに、該DNA断片が出現したものと判断することができる。
又、ホモ接合体の場合は、次のようになる。増幅された後切断されたPCR産物の全量が100pmolであると仮定した場合の、各ゲノタイプで生成する各DNA断片の量(推定量)を図19に示す。E2/E2については、酵素処理後には、PCRで増幅された後切断されたDNAの数(反応DNA全量)と同じだけ、35bpのDNA断片が生成される。一方、E3/E3、E4/E4については、PCRで増幅された後切断されたDNAの数(反応DNA全量)の2倍、35bpのDNA断片が生成される。
そして、E2/E2、E3/E3、E4/E4のサンプルではヘテロ二本鎖が生成されないため、E2/E2では106bp、180bpの断片が、このDNA断片の数と同じだけ生成される。一方、E3/E3では106bp、145bpの断片が35bpのDNA断片の1/2だけ生成し、E4/E4では251bpの断片が35bpのDNA断片の1/2だけ生成される。このように、ホモ接合体についても、各DNA断片の量を推定することができる。そして、各DNA断片がその推定量に相当する量だけ存在するときに、該DNA断片が出現したものと判断することができる。
ところで、図27は、上記非特許文献10に開示される方法によるApoE遺伝子多型の各ゲノタイプでのDNA断片の分離パターンを模式的に示す。上述のように、この方法では、ゲノムDNAから下記のプライマー対、
F5’−TCCAAGGAGCTGCAGGCGGCGCA
R5’−GCCCCGGCCTGGTACACTGCCA
を用いてApoE遺伝子特異的な領域を増幅し、2種類の制限酵素AflIII、HaeIIを用いて断片化する。そして、図27に示すように、それぞれE3、E2、E4に特異的な145bp、168bp、195bpのDNA制限断片が得られる。
しかしながら、上記非特許文献10は、E2及びE3で出現し、E4で出現しない最上流のDNA断片をApoE遺伝子多型の判別の根拠として用いることについては何ら言及していない。
又、この方法では、全てのゲノタイプで生成するDNA断片はなく、いずれかのDNA断片の存否によってPCR産物の消化が適正に行われたか否かの判断をすることは不可能である。又、同様に、全てのゲノタイプで生成するDNA断片はないので、いずれかのDNA断片の量を定量することによって、複製された後制限酵素で切断され、ゲノタイピングの用に供することのできるDNAの全量を予測することができない。従って、ヘテロ二本鎖の発生割合を求めることも不可能である。
又、上記非特許文献10の方法では、未消化フラグメント(218bp)が、E2/E4の場合に生成し得るヘテロ二本鎖(218bp)と同じであるため、ヘテロ二本鎖が生成したのか、酵素反応が起こっているのかどうかの確認することはできない。そのため、タイピングを誤る可能性がある。これに対して、本発明によれば、E2、E3、E4の全てについて生成するDNA断片Bの存否によりPCR産物の適正な消化が行われたか否かを判断できるのに加え、E2/E4の場合には、酵素が反応した場合、PCR産物の断片(図17に示す例では352bp、図20の例では397bp)は必然的に切断され、短い断片(286bp)の出現によって反応が進んでいることを容易に確認できる。
つまり、本発明に従うApoE遺伝子多型のゲノタイプ判定方法では、更に、ApoE遺伝子多型E2、E3、E4の全てについて生成する断片B(図17の例では35bp、18bp若しくは13bp、図20の例では80bp)を定量した結果に基づいて、断片A、断片C、断片D及び/又は断片Eの存否を判断することができる。更に、該断片Bを定量した結果に基づいて求めたヘテロ二本鎖の生成割合に基づいて、断片A、断片C、断片D及び/又は断片Eの存否を判断することができる。尚、ヘテロ二本鎖(図17、20の例では286bp)の存否をApoE遺伝子多型のゲノタイプの判定に用いることができ、該ヘテロ二本鎖の存在によりゲノタイプE2/E4を判定することができる。
以上、本発明によれば、ApoE遺伝子多型の検出、ゲノタイピングの正確性、信頼性を更に向上させることについて説明した。
尚、蛍光物質などの標識物質によってプライマーを修飾することにより、その標識物質を利用したDNA断片の分離、同定方法も可能である。
本発明に係るApoE遺伝子多型の検出試薬は、一実施態様では、上記ApoE遺伝子に特異的なプライマー対を含む増幅試薬である。増幅試薬は更に、耐熱性DNAポリメラーゼ、dNTP(dATP、dGTP、dTTP、dCTP)、緩衝液のいずれか若しくは全てを含んでいるか、又は組み合わされた試薬セットとされていてよい。詳しくは後述するように、所望に応じてdNTPは、標識物質(例えば蛍光物質)で標識されていてもよい。使用し得る耐熱性DNAポリメラーゼとしては、Taqポリメラーゼ、KODポリメラーゼ、Ventポリメラーゼなどの耐熱性ポリメラーゼが挙げられるが、上記プライマー対(配列番号1、2)を用いる場合には、Taqポリメラーゼが好適である。緩衝液は、使用される耐熱性DNAポリメラーゼに応じて選択すればよい。増幅試薬は更に、塩、保存料(例えば、防腐剤(アジ化ナトリウム等)、酸化防止剤)、DMSO、ホルムアミド、ベタイン、ゼラチンなどの適当な添加成分のいずれか若しくは全てを含んでいるか、又は組み合わされた試薬セットとされていてよい。増幅試薬に含まれる若しくは組み合わされる諸成分の選択、濃度等の条件については、当業者は通常行う実験などを通して適宜選択することができる。
本発明に係るApoE遺伝子多型の検出試薬は、他の実施態様では、上記所定の制限酵素を含む消化試薬である。この消化試薬は更に、緩衝液を含んでいるか、若しくは組み合わされた試薬セットとされていてよい。緩衝液は、使用する制限酵素に応じて選択されるが、制限酵素がAflIII、HaeIIの組合せであるとき、中または高塩濃度緩衝液を好適に使用することができる。消化試薬は更に、塩、保存料(例えば、防腐剤(アジ化ナトリウム等)、酸化防止剤)、BSA、グリセロール、ジチオスレイトール(DTT)などの適当な添加成分のいずれか若しくは全てを含んでいるか、又は組み合わされた試薬セットとされていてよい。消化試薬に含まれる若しくは組み合わされる諸成分の選択、濃度等の条件については、当業者は通常行う実験などを通して適宜選択することができる。
更に、他の実施態様では、ApoE遺伝子多型の検出試薬は、上記増幅試薬、消化試薬とが組み合わされた試薬セットとされていてもよい。
本発明に係るApoE遺伝子多型検出方法は、(1)試料から抽出されたゲノムDNAをテンプレートとして、ApoE遺伝子に特異的なプライマー対を用いてPCR法によってApoE遺伝子の多型領域を増幅し、(2)増幅されたDNAを所定の制限酵素を用いて切断し、(3)切断したDNA制限断片を分離し、分離されたDNA制限断片を検出する各段階を含む。更に、本発明に係るApoE遺伝子多型検出方法は、(4)検出したDNA断片長の組合せからApoE遺伝子多型のゲノタイピングを行う段階を含んでいてよい。
試料は、ゲノムDNAを抽出することが可能であれば何を用いても構わない。例えば、末梢血液、毛根、爪、口腔粘膜などが例示される。好ましくは末梢血液である。
試料からのゲノムDNAの抽出方法としては、如何なる手法をも用い得るが、例えば、市販のDNA精製キットを用いて、試料としての末梢血液から白血球を分離し、該白血球から市販のDNA精製キットを用いてゲノムDNAを抽出することができる。この目的に好適に使用し得るDNA精製キットが、Wizard Plus Midipreps DNA Purification Systemとしてプロメガ社から市販されている。このキットを用いたDNA抽出の操作には3〜4時間ほど要する。一方、ボイリング法と呼ばれるDNA抽出方法(例えば、Applied Biosystems社のPrepMan Ultra Reagent)を用いれば20分ほどでPCR法においてテンプレートとするのに十分な量のゲノムDNAが得られる。
ApoE遺伝子の多型領域は、一般的にサーマルサイクラーと呼ばれるDNA増幅装置を用いてPCR法によって増幅することができる。ゲノムDNAをテンプレートとして用いる場合、ゲノムDNA2本鎖を加熱して変性し、1本鎖にする(変性)。次に、増幅したい特定部位のDNA鎖の両端に相補的な2種類のオリゴヌクレオチドプライマー(プライマー対)を反応系に過剰に加えた状態で温度を下げると、プライマーがDNA鎖の相補的な部位と2本鎖を形成する(アニーリング)。この状態でDNA合成基質のデオキシヌクレオシド3リン酸(dNTP)とDNAポリメラーゼを作用させると、ポリメラーゼはプライマー部位からDNA相補鎖を合成していく(伸長反応)。引き続き、得られた2本鎖を加熱して1本鎖として、プライマーのアニーリング、伸長反応を行い、再度得られた2本鎖を1本鎖とする反応を繰り返す。
PCR反応条件、即ち、PCR反応混合物に含まれるテンプレートDNA、プライマー対、dNTP、緩衝液、DNAポリメラーゼ等の種類・量(濃度)、或いは変性、アニーリング、伸長反応を行う温度・時間、サイクル数は、適宜選択事項である。本発明に従い、上記新規なプライマー対(配列番号1、配列番号2)及びTaqポリメラーゼを用いて、PCR法でゲノタイピングに必要十分量のDNAを好適に得ることのできる一実施例を後述する。
本発明の好ましい一実施態様では、配列番号1、2のプライマーを用いて増幅されたApoE遺伝子の多型領域は、2種類の制限酵素、より具体的には、上記制限酵素AflIII、HaeIIの組合せを用いて切断する。斯かる切断は、当該制限酵素の組合せにおいて最適な条件、即ち、2種類の制限酵素が好適に作用し、RFLPによるゲノタイピングを行うのに十分にApoE遺伝子の多型領域が切断される反応条件(反応混合物に含まれる成分の種類・量(濃度)、反応温度、反応時間など)にて行う。本発明者らの検討により最適と思われる一実施例を後述する。
得られたDNA制限断片は、好ましい一実施態様では、電気泳動で分離する。そして、分離されたDNA制限断片は、使用する電気泳動法に応じた方法により検出する。
上述のように、本発明によれば、上記新規なプライマー対、及び上記本発明に従う制限酵素、特に2種類の制限酵素の組合せ(AflIII、HaeII)を用いることにより、非特許文献5に記載の制限酵素HhaIを用いた場合よりも長いDNA制限断片が得られる。より詳細には、本発明によれば、それぞれのアポリポタンパクE遺伝子多型に特異的な略100bp以上のDNA制限断片が生成し、更に詳しくは、好ましい一実施態様では、上記第1の切断位置と第2の切断位置との間の長さ以上、即ち、144bp以上のDNA制限断片が生成する。これによって、DNA分離方法として、典型的には、斯界にて通常用いられ、且つ、安価なDNA分離方法であるアガロースゲル電気泳動を用いても、高解像度にてDNA制限断片を分離することができる。アガロースゲル電気泳動では、種々の染色法のうち例えば、染色剤としてのエチジウムブロマイドで染色し、紫外線を照射することにより、分離されたDNA制限断片を検出することができる。
又、上記新規なプライマー対、及び上記本発明に従う制限酵素、特に2種類の制限酵素の組合せ(AflIII、HaeII)を用いることにより、上記同様の理由から、前述のAgilent2100、日立SV1210、ABI3100(或いはABI3700)等の多様なDNA分離方法を用い、高解像度にてDNA制限断片を分離、検出することができる。
Agilent2100の電気泳動用セットは、ガラスチップ上にサンプル等の装填用穴と微細な溝とが設けられたマイクロチップ[DNA LabChip(登録商標)]及び所定の試薬キットと共に用い、又日立SV1210は、樹脂チップ上にサンプル等の装填用穴と微細な溝とが設けられたマイクロチップ[i−チップ]及び所定の試薬キット(ゲル、染色試薬、内部標準等)と共に用い、所定の手順に従って所定の試薬及びサンプルをマイクロチップに装填して装置本体にセットすることで、マイクロチップ上の分離部へのゲルの充填、複数のサンプルの電気泳動、バンドの検出、データ出力を自動で行うことができる。分離されたDNA制限断片は、染色剤の蛍光により検出される。Agilent2100は12サンプルを約30分で、又日立SV1210は12サンプルを約5分で分析する。
又、ABI3100(或いはABI3700)は、キャピラリーと呼ばれる微小径ガラス管に充填したポリマー中で電気泳動を行うキャピラリー電気泳動法を利用し、サンプルの蛍光によりバンドを検出するシステムであり、所定のキャピラリーアレイ、セパレーションポリマー及び試薬キットと共に用いることで、キャピラリーへのポリマー充填、複数のサンプルの電気泳動、バンドの検出、データ出力を自動で行うことができる。ABI3100は、使用するキャピラリアレイに応じて、約1時間〜数時間で複数サンプルを分析する。
本発明によれば、非特許文献5に記載の制限酵素HhaIを用いた方法では極めて困難であった、これら近年開発された種々のDNA分離方法の利点を活用することが可能になり、DNA制限断片の分離、検出の迅速化、大量処理化、又自動化が可能になった。更に、これら近年開発されたDNA分離方法においては、サンプル、試薬等の微量化が図れる。
又、本発明によれば、上述したように、DNA断片AをもApoE遺伝子多型の判別の根拠の一つとして利用し、更には、DNA断片Bの存否及び/又はその量を利用することによって、更にApoE遺伝子多型の検出、ゲノタイピングの正確性、信頼性を高めることができる。これらは、前述のAgilent2100、日立SV1210、ABI3100(或いはABI3700)等の近年開発されDNA分離方法では、極めて良好且つ簡便に行うことができ、自動化を図ることもできる。
勿論、所望によりポリアクリルアミドゲル電気泳動によってDNA制限断片を分離、検出することもできる。
検出されたDNA制限断片の分離パターン(検出されたDNA断片長の存否の組み合わせ)から、ApoE遺伝子多型のタイピングを行う。DNA制限断片の分離パターンからApoE遺伝子多型のゲノタイピングを行う段階をコンピュータ処理により自動化してもよい。更に、ロボット化等により自動化を進めてもよい。この場合、ApoE遺伝子多型の各ゲノタイプについて既知のDNA制限断片の分離パターンと、サンプルについて得られたDNA制限断片の分離パターンとを比較し、サンプルをいずれかのApoE遺伝子多型のゲノタイプに関係付ける出力を行うようにすればよいことは当業者にとって自明である。
即ち、上述の本発明のApoE遺伝子多型のゲノタイプ判定方法は、記憶部、演算処理部、出力部を備える一般的なコンピュータで実行可能なプログラムとして提供することができる。即ち、該プログラムにより、演算処理部は、本発明の本発明のApoE遺伝子多型検出方法に従って検出した各DNA断片長の存否の組み合わせと、記憶部に記憶された既知のApoE遺伝子多型の各ゲノタイプの同組み合わせとを比較し、上記本発明の判定方法に従って、サンプルのApoE遺伝子多型のゲノタイプを、いずれかのゲノタイプに関係付ける。そして、こうして関係付けた結果を、コンピュータの画面、記録紙等に出力させる。
又、演算処理部は、上述のように、E2、E3、E4の全てについて生成するDNA断片Bの存否によって制限酵素が効果的に反応しているかを判断し、その結果に応じてサンプルのApoE遺伝子多型のゲノタイプを判定するか、若しくは検出結果を採用しない等の判断を行うことができる。又は、演算処理部は、上述したように、このDNA断片Bのを定量した結果(或いは、このDNA断片Bを定量した結果に基づくヘテロ二本鎖の生成割合)から、各DNA断片の推定量を算出し、該推定量とそれぞれのDNA断片の測定値とを比較することで、測定値が推定量と適宜選定可能な所定の精度範囲で整合するか否かを判断することができる。そして、推定量と測定値とが整合したDNA断片についてそのDNA断片の存在を判断して、各DNA断片の存否の組み合わせから、サンプルのApoE遺伝子多型のゲノタイプを判定することができる。
本発明に従ってヒト検体からの試料についてApoE遺伝子多型のゲノタイピングを行うことにより、ApoE遺伝子多型と関連する疾患の診断、治療のために、迅速、且つ、正確な情報を提供することができる。例えば、上述のように、ApoE遺伝子多型の1つであるE4は、アルツハイマー病、高脂血症、高リポタンパク血症、高コレステロール血症、心血管疾患(アテローム性動脈硬化、虚血性心疾患、脳血管障害など)、睡眠時無呼吸症候群の非常に強い危険因子であることが知られている。従って、ApoE遺伝子多型のゲノタイピングを行うことにより、より詳細には、例えば対象検体がApoE遺伝子多型のE4アリルを1つ有するのか、2つ有するのか、或いは有していないのかを迅速、且つ、正確に検出することによって、これらアルツハイマー病、心血管疾患などの予診が可能である。
特に、上述のような近年開発された種々のDNA分離方法によれば、分析作業の自動化、大量処理化が可能となるので、個々のサンプルのゲノタイピングに要する時間を短縮すると共に、多くの検体からのサンプルを一度に大量に処理することができ、診断、治療に極めて有用な情報を、正確、且つ、迅速に提供することができる。
以下、本発明に係るApoE遺伝子多型検出方法を実施例を通して更に詳しく説明する。以下の説明において、特に言及しない限り、用いられる器具、試薬は斯界にて一般的なものである。又、特に言及しない限り、以下で行われる実験操作も標準的なものと特に変わるところはない。
[DNA抽出]
先ず、ヒト検体の血液を試料として、白血球由来のゲノムDNAを抽出する。ここでは、プロメガ社のDNA精製キットであるWizard Plus Midipreps DNA Purification Systemを用いて、末梢血液から白血球を分離し、その白血球からゲノムDNAを抽出した。各検体毎に、PCR法によるApoE遺伝子の多型領域の増幅に十分量のゲノムDNAを抽出した。抽出の操作は付属のプロトコールに従って行った。
[ApoE領域のDNA増幅]
上記方法により抽出したゲノムDNAをテンプレートとして、下記の条件にてPCR法によりApoE遺伝子の多型領域を増幅した。尚、プライマー対は、DNA(オリゴヌクレオチド)合成装置により合成して得た。又、耐熱性DNAポリメラーゼとしては、Taqポリメラーゼ(Parkin Elmer Cetus社)を用いた。
a)プライマー対
Figure 2004087961
Figure 2004087961
b)PCR反応混合物
白血球より抽出したゲノムDNA: 50ng
プライマー対: 1μM
dNTP 200μM
緩衝液(10倍濃縮標準PCR緩衝液) 1μl
DMSO(dimethyl sulfoxide): 10%
Taqポリメラーゼ: 0.025units/μl
総反応量: 10μl
c)PCRサイクルの条件
94℃,1分間(変性)
次いで、下記のサイクルを35回繰り返す。
94℃,30秒間(変性)
60℃,30秒間(プライマーアニーリング)
72℃,1分間(伸長反応)
次いで、次の条件で最終的に2本鎖を形成する。
72℃,5分間(最終伸長反応)
上記PCR条件にて増幅されたDNAフラグメントの量は約100ngであった。
[RFLP及び制限酵素切断断片の分離とゲノタイピング]
本発明のApoE遺伝子多型検出方法に、代表的ないくつかの電気泳動法を適用可能であるか確認した。それぞれの電気泳動法に関する詳細な実験方法を以下に述べる。
a)アガロースゲル電気泳動
約50〜100ngのPCR産物、制限酵素AflIII(New England biolabs社:以下同様。)(3unit)及びHaeII(New England biolabs社:以下同様。)(6unit)、1×NEBuffer 3、1×BSAを含む反応溶液を、全量が10μlになるように調製し、37℃で2時間以上反応させた。反応液全量を4%アガロースゲル(厚さ7mm×長さ6cm)のウェルに充填し、100Vで30分間電気泳動した。泳動終了後ゲルをエチジウムブロマイドで染色し、UV照射によりバンドを記録した。代表的なDNA制限断片の分離結果を図9に示す。図中左端のレーンはマーカー、次いで左から順にE2/E3、E2/E3、E3/E4、E4/E4の各ゲノタイプのDNA制限断片の分離パターンを示す。
b)Agilent2100
約10〜20ngのPCR産物、制限酵素AflIII(3unit)及びHaeII(6unit)、1×NEBuffer 3、1×BSAを含む反応溶液を、全量が10μlになるように調製し、37℃で30分以上反応させた。その後50mM EDTAを2.5μl加え、制限酵素を失活させた。各サンプルについて、上記反応液の1μlを、測定用のマイクロチップとしてDNA 500 LabChip(登録商標)及びDNA 1000 LabChip(登録商標)(マイクロチップ及び付属試薬キット)を用いたAgilent2100によるDNA制限断片の分離、検出に供した。測定手順は、装置供給元の指示に従った。DNA制限断片の分離結果は、当該装置に接続されたコンピュータのディスプレイ上に表示される。代表的なDNA制限断片の分離結果を図10に示す。図中上から順に、E2/E3、E3/E4、E3/E3、E4/E4の各ゲノタイプのDNA制限断片の分離パターンを示す。
c)日立SV1210
各サンプルについて、上記b)と同様にして制限酵素を作用させた後該制限酵素を失活させた反応溶液の1μlを、下記の条件での日立SV1210によるDNA制限断片の分離、検出に供した。
測定用マイクロチップ: i−チップ IC−1100
試薬キット: IC−9101
測定手順は、装置供給元の指示に従った。DNA制限断片の分離結果は、当該装置に接続されたコンピュータのディスプレイ上に表示される。代表的なDNA制限断片の分離結果を図11、図23〜図25に示す。図11中上から順に、図中に付記したように、E2/E3、E3/E4、E3/E3、E4/E4の各ゲノタイプのDNA制限断片の分離パターンを示す。同様に図23〜25についても、それぞれの結果がいずれのゲノタイプのDNA制限断片パターンを示すかは図中に付記したとおりである。図11、図23は、50bpの内部標準を用いた例を示し、図24及び図25は、10bpの内部標準を用いた場合を示す。
d)ABI3100
キャピラリー電気泳動に供するサンプルの調製のために、上記PCRを行うに際し、PCR反応混合物中のdNTPとして、R6G,R110で蛍光ラベルされたもの(Applied Biosystems社製)を用いた。その後、上記a)のアガロースゲル電気泳動の場合と同様にしてPCR産物を制限酵素で処理した。各サンプルについて、得られた反応溶液の5μlを、下記の条件でのABI3100によるDNA制限断片の分離、検出に供した。
キャピラリー: 3100 Capillary Array 36cm
セパレーションポリマー: 3100 POP−6
試薬キット: DNA Sequencing Kit(BigDye Terminator Ver.3 Cycle Suquencing Ready Reaction)
測定手順は、装置供給元の指示に従った。DNA制限断片の分離結果は、当該装置に接続されたコンピュータのディスプレイ上に表示される。代表的なDNA制限断片の分離結果を図12に示す。図中上から順にE2/E3、E3/E4、E4/E4、E3/E3の各ゲノタイプのDNA制限断片の分離パターンを示す。
e)比較例
比較例として、非特許文献5に記載される方法に従って、同一検体由来のゲノムDNAからApoE遺伝子の多型領域を増幅し、制限酵素HhaIを用いてDNA制限断片を得、上記a)〜d)における各DNA分離方法(アガロースゲル電気泳動、Agilent2100、日立SV1210、ABI3100)によりDNA制限断片を分離した。アガロースゲル電気泳動法、ABI3100(キャピラリー電気泳動)によっては、有意なDNA制限断片の分離パターンを得ることはできなかった。Agilent2100、日立SV1210による代表的なDNA制限断片の分離結果を、それぞれ図14、図15に示す。図14中上から順に、E2/E3、E3/E3、E3/E4、E4/E4の各ゲノタイプであることが既知のDNA制限断片の分離パターンを示す。又、図15中上から順に、E3/E3、E3/E3、E3/E3、E3/E4、E2/E3、E3/E3、E3/E3、E3/E3、E3/E3の各ゲノタイプであることが既知のDNA制限断片についての結果を示す。
[本実施例と比較例との対比]
a)汎用性
本実施例では、本発明に従ってゲノムDNAからApoE遺伝子に特異的なプライマー対、より具体的には、配列番号1及び2の新規プライマー対を用いてPCR法によりApoE遺伝子の多型領域を増幅する。そして、増幅したDNA産物を、本発明にて特徴的な2種類の制限酵素の組み合わせ、より具体的にはAflIIIとHaeIIとで切断する。これらのプライマー対及び制限酵素を用いることによって、上述のように、従来の制限酵素HhaIを用いる方法よりも長いDNA制限断片が出現する。
これによって、本発明によれば、図9から明らかなように、安価で広く用いられているDNA制限断片の分離方法であるアガロースゲル電気泳動によっても、高解像度にてApoE遺伝子多型をゲノタイピングすることができた。
一方、従来の制限酵素HhaIを用いる方法によって得たDNA制限断片は、100bp以下と極めて短いため、アガロースゲル電気泳動では、DNA制限断片を有意に分離することができなかった(データ示さず。)。
又、図10、図11及び図12から明らかなように、本発明によれば、近年開発されたDNA分離方法であるAgilent2100、日立SV1210、ABI3100をも好適に用いることができ、良好に分離した各断片長毎のピークが得られ、高解像度にてApoE遺伝子多型をゲノタイピングすることができた。
一方、従来の制限酵素HhaIを用いる方法によって得たDNA制限断片は、それぞれ図14、図15に示すように、Agilent2100、日立SV1210では各断片長毎のピークを十分に分離することができず、ApoE遺伝子多型の各ゲノタイプを判別することはできなかった。又、ABI3100については、有意なDNA制限断片の分離結果を得ることはできなかった(データ示さず。)。
このように、本発明に係るApoE遺伝子多型の検出方法は、現在使用されている多くの電気泳動法に適用可能であり、極めて汎用性が高い。
更に、本発明は、DNA分離方法を電気泳動法に限定するものではない。上述のように、例えば、アガロースゲル電気泳動法は、安価且つ簡便であることから広く用いられており、又他の近年開発された上述のような電気泳動法を利用した種々のDNA分離方法は極めて迅速、且つ、簡便である等、従来DNA分離法として広く用いられている電気泳動法は、本発明を実施するに当たり最も好ましいと思われるが、本発明は他のDNA分離法、例えば質量分析機(MASS−Spectrometry)等を利用することでも実施可能である。
b)簡便性、迅速性
本発明に従えば、典型的には、アガロースゲル電気泳動を用いる場合で、染色体DNAをテンプレイトにしたPCRから、ApoE遺伝子多型のタイピングの結果が判別するまで約3時間と、非特許文献5に記載される従来の方法に比較して、ゲノタイピングにかかる時間を大幅に短縮することができる。上述の近年開発された種々のDNA分離方法を用いれば、更に時間を短縮することができる。又、斯かる従来の方法において用いられるポリアクリルアミドゲル電気泳動法に比較して、アガロースゲル電気泳動、その他上記各種のDNA分離方法は操作が極めて簡便である。
c)正確性
本発明に従って得たApoE遺伝子多型のタイピング結果の正確性を確認するために、本発明に従って上述のようにアガロースゲル電気泳動、Agilent2100、日立SV1210、ABI3100によるApoE遺伝子多型のゲノタイピングに供したものと同一検体からのサンプルについて、従来汎用されてきた非特許文献5に記載の方法(PCR−RFLP法)に従ってゲノムDNAからApoE遺伝子の多型領域を増幅し、増幅したDNAを制限酵素HhaIを用いて切断し、ポリアクリルアミドゲル電気泳動法によりApoE遺伝子多型をゲノタイピングした結果との比較を行った。その結果、96例のサンプルを用いた一致率は100%であった。
加えて、同一検体からのサンプルについて、ABI3100(Applied Biosystems社製)においてDNA Sequencing Kit(BigDye Terminator Ver.3 Cycle Suquencing Ready Reaction)を用いたDNA直接塩基配列決定法によって多型部分の塩基配列の確認を行ったが、塩基配列から決定されたApoE遺伝子多型と、本発明に従って得たタイピング結果とは全例で一致した。
又、日立SV1210によるデータを示す図24及び図25において、重複するゲノタイプに関するデータは、別人から得られたサンプルについてのデータを示している。図24及び図25から分かるように、本発明によれば、再現性の良好な、正確性、信頼性に富むApoE遺伝子多型のゲノタイプの判定が可能である。尚、図26は、図25中の1:(E2/2)、4:(E2/4)、6:(E3/3)、7:(E3/4)、10:(E2/3)、11:(E4/4)と付記されたデータをそれぞれ拡大して示したものである。図26から分かるように、本発明によれば、DNA断片の分離性は良好であり、又、上述のようにしてDNA断片B(本実施例では35bpのDNA断片)を定量することにより、更に正確性、信頼性の向上したApoE遺伝子多型のゲノタイプの判定が可能である。
d)大量処理
上述のように、本発明は、近年開発された種々のDNA分離装置にも適用可能である。例えば、PCRにおいて蛍光ラベルされたdNTPを使用することによりABI等のキャピラリー電気泳動によってApoE遺伝子多型のゲノタイピングが可能であり、従って、大量のサンプルを迅速、且つ、自動でタイピングすることができる。又、例えば、日立SV1210のシステムでは、マイクロチップへの泳動ゲルの分注と充填、内部標準マーカー及びサンプルの分注を短時間で行う分注ロボットの使用が可能であり、ApoE遺伝子多型のゲノタイピングの高速大量化が可能である。
以上説明したように、本発明によれば、
(A)RFLPのDNA制限断片を検出し易くなる。
(B)加えて、上記(A)によって検出方法の汎用性が広がり、自動処理化にあいまって高速大量処理化が可能になる。又、機械化、製品化に際しての正確性、信頼性を更に向上させることができる。
(C)DNAを直接タイピングすることによって、抗体法(非特許文献9)を用いるようなタンパク質のタイピング法に比較して擬陽性(false−positive)が大幅に減少し、それによってタイピングの正確性を増すことができる。
(D)例えば、アルツハイマー型痴呆、その他の心血管疾患など、ApoE遺伝子多型が関連する疾患の診断、治療にとって有用な情報となるゲノタイピングという臨床検査を行う上で、上記各点は極めて重要な要素であり、本発明によれば、斯かる有用な情報を正確、且つ、迅速に提供することができる。
以上説明したように、本発明によれば、正確、迅速、且つ、簡便にApoE遺伝子多型を検出することができる。又、本発明によれば、安価なDNA分離方法を用いてApoE遺伝子多型を検出することが可能となり、一方で、様々なDNA分離方法の利用を可能とし、高速、且つ、大量化が可能となる。又、本発明によれば、ApoE遺伝子多型検出方法、ApoE遺伝子多型のゲノタイプ判定方法及び試薬の正確性、信頼性を向上させることができる。又、機械化、製品化に際しての正確性、信頼性を更に向上させることができる。更に、本発明によれば、アルツハイマー病、血管疾患等、ApoE遺伝子多型が関連する疾患の診断、治療にとって有用な情報となるApoE遺伝子のタイピングを正確、且つ、迅速に行うことができる。
【配列表】
Figure 2004087961

Claims (39)

  1. アポリポタンパクE遺伝子に特異的なプライマー対を用いてDNAを増幅する段階、
    増幅したDNAを、アポリポタンパクE遺伝子のコドン112の一塩基多型部位を認識配列に含む第1の制限酵素と、アポリポタンパクE遺伝子のコドン158の一塩基多型部位を認識配列に含む第2の制限酵素と、を用いて、前記コドン112の一塩基多型部位を含む認識配列での第1の切断位置及び前記コドン158の一塩基多型部位を含む認識配列での第2の切断位置で切断する段階、
    切断したDNA断片を分離する段階、
    分離されたDNA断片を検出する段階、
    を含み、
    前記プライマー対及び前記第1、第2の制限酵素は、それぞれのアポリポタンパクE遺伝子多型に特異的なそれぞれ略100bp以上のDNA断片を生成し得るように選択され、前記プライマー対のうち上流側プライマーは、前記第1の切断位置より、60bp以上、136bp以下の上流の位置に5’末端が設定されることを特徴とするアポリポタンパクE遺伝子多型検出方法。
  2. 前記第1、第2の制限酵素はいずれも、前記コドン112の一塩基多型部位を含む認識配列と、前記コドン158の一塩基多型部位を含む認識配列との間に切断位置を持たないことを特徴とする請求項1のアポリポタンパクE遺伝子多型検出方法。
  3. 前記第1の制限酵素は前記増幅したDNAにおいてアポリポタンパクE遺伝子のコドン112の一塩基多型部位を含む認識配列より上流に切断位置を持たず、前記第2の制限酵素は前記増幅したDNAにおいてアポリポタンパクE遺伝子のコドン158の一塩基多型部位を含む認識配列より上流に切断位置を持たないことを特徴とする請求項2のアポリポタンパクE遺伝子多型検出方法。
  4. 前記第1の制限酵素は塩基配列ACRYGT(RはA又はG、YはC又はT)を認識して切断し、前記第2の制限酵素は塩基配列RGCGCY(RはA又はG、YはC又はT)を認識して切断することを特徴とする請求項1、2又は3のアポリポタンパクE遺伝子多型検出方法。
  5. 前記第1の制限酵素はAflIII、前記第2の制限酵素はHaeIIであることを特徴とする請求項4のアポリポタンパクE遺伝子多型検出方法。
  6. アポリポタンパクE遺伝子に特異的なプライマー対を用いてDNAを増幅する段階、
    増幅したDNAを2種類の制限酵素を用いてアポリポタンパクE遺伝子のコドン112の一塩基多型部位を含む認識配列での第1の切断位置及びアポリポタンパクE遺伝子のコドン158の一塩基多型部位を含む認識配列での第2の切断位置で切断する段階、
    切断したDNA断片を分離する段階、
    分離されたDNA断片を検出する段階、
    を含み、
    前記プライマー対のうち上流側プライマーは、前記第1の切断位置より、60bp以上、136bp以下の上流の位置に5’末端が設定されることを特徴とするアポリポタンパクE遺伝子多型検出方法。
  7. 前記2種類の制限酵素のうち一方は塩基配列ACRYGT(RはA又はG、YはC又はT)を認識して切断し、他方は塩基配列RGCGCY(RはA又はG、YはC又はT)を認識して切断することを特徴とする請求項6のアポリポタンパクE遺伝子多型検出方法。
  8. 前記2種類の制限酵素は、AflIII及びHaeIIであることを特徴とする請求項7のアポリポタンパクE遺伝子多型検出方法。
  9. それぞれのアポリポタンパクE遺伝子多型に特異的なそれぞれ略100bp以上のDNA断片が生成されることを特徴とする請求項6、7又は8のアポリポタンパクE遺伝子多型検出方法。
  10. 前記プライマー対のうち上流側プライマーは、前記第1の切断位置より90bp以上の上流の位置に5’末端が設定されることを特徴とする請求項1〜9のいずれかの項に記載のアポリポタンパクE遺伝子多型検出方法。
  11. 前記プライマー対のうち上流側プライマーは、前記第1の切断位置より100bp以上の上流の位置に5’末端が設定されることを特徴とする請求項1〜10のいずれかの項に記載のアポリポタンパクE遺伝子多型検出方法。
  12. 前記プライマー対のうち上流側プライマーは、前記第1の切断位置より120bp以下の上流の位置に5’末端が設定されることを特徴とする請求項1〜11のいずれかの項に記載のアポリポタンパクE遺伝子多型検出方法。
  13. 前記プライマー対のうち下流側プライマーは、前記第2の切断位置より、30bp以上、202bp以下の下流の位置に5’末端が設定されることを特徴とする請求項1〜12のいずれかの項に記載のアポリポタンパクE遺伝子多型検出方法。
  14. 前記プライマー対のうち下流側プライマーは、前記第2の切断位置より70bp以上の下流の位置に5’末端が設定されることを特徴とする請求項1〜13のいずれかの項に記載のアポリポタンパクE遺伝子多型検出方法。
  15. 前記プライマー対のうち下流側プライマーは、前記第2の切断位置より100bp以上の下流の位置に5’末端が設定されることを特徴とする請求項1〜14のいずれかの項に記載のアポリポタンパクE遺伝子多型検出方法。
  16. 前記プライマー対のうち下流側プライマーは、前記第2の切断位置より185bp以下の下流の位置に5’末端が設定されることを特徴とする請求項1〜15のいずれかの項に記載のアポリポタンパクE遺伝子多型検出方法。
  17. 前記プライマー対のうち下流側プライマーは、前記第2の切断位置より156bp以下の下流の位置に5’末端が設定されることを特徴とする請求項1〜16のいずれかの項に記載のアポリポタンパクE遺伝子多型検出方法。
  18. 前記プライマー対の各プライマーは、それぞれ下記の塩基配列、
    Figure 2004087961
    を有するオリゴヌクレオチドであることを特徴とする請求項1〜17のいずれかの項に記載のアポリポタンパクE遺伝子多型検出方法。
  19. 切断したDNA断片を電気泳動で分離することを特徴とする請求項1〜18のいずれかの項に記載のアポリポタンパクE遺伝子多型検出方法。
  20. 請求項1〜19のいずれかの項に記載のアポリポタンパクE遺伝子多型検出方法により検出したDNA断片長の存否の組み合わせからアポリポタンパクE遺伝子多型のゲノタイプを判定することを特徴とするアポリポタンパクE遺伝子多型のゲノタイプ判定方法。
  21. 前記第1の切断位置より上流の配列Aのみを含むDNA断片を断片A、前記第2の切断位置より下流の配列Bのみを含むDNA断片を断片B、前記第1の切断位置と前記第2の切断位置との間の配列Cのみを含むDNA断片を断片C、前記配列A及びCを含むDNA断片を断片D、前記配列B及びCを含むDNA断片を断片Eとしたとき、断片C、断片D及び断片Eの存否をアポリポタンパクE遺伝子多型のゲノタイプの判定に用い、
    (a)断片Eのみの存在によりゲノタイプE2/E2を判定し、
    (b)断片Cのみの存在によりゲノタイプE3/E3を判定し、
    (c)断片Dのみの存在によりゲノタイプE4/E4を判定し、
    (d)断片E及び断片Cのみの存在によりゲノタイプE2/E3を判定し、
    (e)断片D及び断片Eのみの存在によりゲノタイプE2/E4を判定し、
    (f)断片D及び断片Cのみの存在によりゲノタイプE3/E4を判定する、
    ことを特徴とする請求項20のアポリポタンパクE遺伝子多型のゲノタイプ判定方法。
  22. 前記第1の切断位置より上流の配列Aのみを含むDNA断片を断片A、前記第2の切断位置より下流の配列Bのみを含むDNA断片を断片B、前記第1の切断位置と前記第2の切断位置との間の配列Cのみを含むDNA断片を断片C、前記配列A及びCを含むDNA断片を断片D、前記配列B及びCを含むDNA断片を断片Eとしたとき、断片A、断片C、断片D及び断片Eの存否をアポリポタンパクE遺伝子多型のゲノタイプの判定に用い、
    (a)断片E及び断片Aのみの存在によりゲノタイプE2/E2を判定し、
    (b)断片C及び断片Aのみの存在によりゲノタイプE3/E3を判定し、
    (c)断片Dの存在及び断片Aの非存在によりゲノタイプE4/E4を判定し、
    (d)断片E、断片C及び断片Aのみの存在によりゲノタイプE2/E3を判定し、
    (e)断片D、断片E及び断片Aのみの存在によりゲノタイプE2/E4を判定し、
    (f)断片D、断片C及び断片Aのみの存在によりゲノタイプE3/E4を判定する、
    ことを特徴とする請求項20のアポリポタンパクE遺伝子多型のゲノタイプ判定方法。
  23. 更に、前記配列A、配列B及び配列Cを含むヘテロ二本鎖の存否をアポリポタンパクE遺伝子多型のゲノタイプの判定に用い、該ヘテロ二本鎖の存在によりゲノタイプE2/E4を判定することを特徴とする請求項21又は22のアポリポタンパクE遺伝子多型のゲノタイプ判定方法。
  24. 更に、アポリポタンパクE遺伝子多型E2、E3、E4の全てについて生成する断片Bの存在により、前記切断段階における有効な切断反応の存在を判断し、該有効な切断の存在を判断した場合に、DNA断片長の存否の組み合わせからアポリポタンパクE遺伝子多型のゲノタイプを判定することを特徴とする請求項21、22又は23のアポリポタンパクE遺伝子多型のゲノタイプ判定方法。
  25. 更に、アポリポタンパクE遺伝子多型E2、E3、E4の全てについて生成する断片Bを定量した結果に基づいて、断片A、断片C、断片D及び/又は断片Eの存否を判断することを特徴とする請求項21〜24のいずれかの項に記載のアポリポタンパクE遺伝子多型のゲノタイプ判定方法。
  26. 更に、前記(d)、(e)又は(f)の各場合の判定に際し、アポリポタンパクE遺伝子多型E2、E3、E4の全てについて生成する断片Bを定量した結果に基づいて求めたヘテロ二本鎖の生成割合に基づいて、断片A、断片C、断片D及び/又は断片Eの存否を判断することを特徴とする請求項17又は18のアポリポタンパクE遺伝子多型のゲノタイプ判定方法。
  27. 前記第1の切断位置より上流の配列Aのみを含むDNA断片を断片Aとしたとき、断片Aの存否をアポリポタンパクE遺伝子多型のゲノタイプの判定に用い、断片Aの非存在によりゲノタイプE4/E4を判定することを特徴とする請求項20のアポリポタンパクE遺伝子多型のゲノタイプ判定方法。
  28. アポリポタンパクE遺伝子の制限酵素切断断片を検出することでアポリポタンパクE遺伝子多型を検出するために用い得る、アポリポタンパクE遺伝子増幅用のプライマー対を備えるアポリポタンパクE遺伝子多型の検出試薬であって、前記プライマー対のうち上流側プライマーは、アポリポタンパクE遺伝子のコドン112の一塩基多型部位を含む認識配列での第1の切断位置より、60bp以上、136bp以下の上流の位置に5’末端が設定されることを特徴とするアポリポタンパクE遺伝子多型の検出試薬。
  29. 前記プライマー対のうち上流側プライマーは、前記第1の切断位置より90bp以上の上流の位置に5’末端が設定されることを特徴とする請求項28のアポリポタンパクE遺伝子多型の検出試薬。
  30. 前記プライマー対のうち上流側プライマーは、前記第1の切断位置より100bp以上の上流の位置に5’末端が設定されることを特徴とする請求項28又は29のアポリポタンパクE遺伝子多型検出方法。
  31. 前記プライマー対のうち上流側プライマーは、前記第1の切断位置より120bp以下の上流の位置に5’末端が設定されることを特徴とする請求項28、29又は30のアポリポタンパクE遺伝子多型検出方法。
  32. 前記プライマー対のうち下流側プライマーは、前記第2の切断位置より、30bp以上、202bp以下の下流の位置に5’末端が設定されることを特徴とする請求項28〜31のいずれかの項に記載のアポリポタンパクE遺伝子多型検出方法。
  33. 前記プライマー対のうち下流側プライマーは、前記第2の切断位置より70bp以上の下流の位置に5’末端が設定されることを特徴とする請求項28〜32のいずれかの項に記載のアポリポタンパクE遺伝子多型検出方法。
  34. 前記プライマー対のうち下流側プライマーは、前記第2の切断位置より100bp以上の下流の位置に5’末端が設定されることを特徴とする請求項28〜33のいずれかの項に記載のアポリポタンパクE遺伝子多型検出方法。
  35. 前記プライマー対のうち下流側プライマーは、前記第2の切断位置より185bp以下の下流の位置に5’末端が設定されることを特徴とする請求項28〜34のいずれかの項に記載のアポリポタンパクE遺伝子多型検出方法。
  36. 前記プライマー対のうち下流側プライマーは、前記第2の切断位置より156bp以下の下流の位置に5’末端が設定されることを特徴とする請求項28〜35のいずれかの項に記載のアポリポタンパクE遺伝子多型検出方法。
  37. 前記プライマー対の各プライマーは、それぞれ下記の塩基配列、
    Figure 2004087961
    を有するオリゴヌクレオチドであることを特徴とする請求項28〜36のいずれかの項に記載のアポリポタンパクE遺伝子多型の検出試薬。
  38. 更に、塩基配列ACRYGT(RはA又はG、YはC又はT)を認識して切断する制限酵素及び塩基配列RGCGCY(RはA又はG、YはC又はT)を認識して切断する制限酵素と組み合わせて成ることを特徴とする請求項28〜37のいずれかの項に記載のアポリポタンパクE遺伝子多型の検出試薬。
  39. 更に、制限酵素AflIII及びHaeIIと組み合わされて成ることを特徴とする請求項38のアポリポタンパクE遺伝子多型の検出試薬。
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