JP4677646B2 - アポリポタンパクe遺伝子多型検出方法、アポリポタンパクe遺伝子多型のゲノタイプ判定方法及び試薬 - Google Patents

アポリポタンパクe遺伝子多型検出方法、アポリポタンパクe遺伝子多型のゲノタイプ判定方法及び試薬 Download PDF

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本発明は、アポリポタンパクEの遺伝子多型検出方法及びそれに用いる試薬に関するものであり、より詳細には、制限酵素断片長多型(RFLP)法を利用したヒト・アポリポタンパクE遺伝子多型のゲノタイプを判定(ゲノタイピング)するのに有用なアポリポタンパクE遺伝子多型検出方法、アポリポタンパクE遺伝子多型のゲノタイプ判定方法及びそれに用いる試薬に関するものである。
アポリポタンパク(以下「Apo」という。)Eは、血中コレステロールの運搬に重要な役割を果たす血漿タンパクであり、主要なアイソフォームとして、ApoE2、ApoE3、ApoE4がある。ApoE2、ApoE3、ApoE4のそれぞれをコードする遺伝子ε2、ε3、ε4は第19染色体上に存在する。これらApoE遺伝子多型(以下、単にそれぞれ「E2」、「E3」、「E4」という。)の一つであるE4は、アルツハイマー病及び心血管疾患の非常に強い危険因子であることが知られており、現在までに多くの報告がなされ、ほぼ確立した知見になっている(例えば、非特許文献1〜5参照。)。
例えば、ApoE遺伝子のE4型を持つ人では、アルツハイマー病の発症率が持たない人に比較して10倍以上になることが知られており、一見メンデルの法則のような遺伝的家族内集積を示す場合があるほどである。又、高齢者のアルツハイマー型痴呆非罹患群では、ApoE遺伝子のE4型を持つ固体の頻度は非常に低いところからも、この多型がこの疾患の大きな危険因子であることが考えられる。
現在では、ApoE遺伝子多型は臨床検査にも応用されており、アルツハイマー型痴呆或いは心血管疾患の危険因子として、個々の患者の診断、治療を行う上で重要な臨床的情報となっている。
従来、ApoE遺伝子多型を判別する実験的手法がいくつか報告されている。例えば、下記のものが挙げられる。非特許文献5には、制限酵素断片長多型(Restriction Fragment Length Polymorphism:RFLP)によるタイピング法が記載されている。この方法の基本的な手法は、ポリメラーゼ連鎖反応(Polymerase Chain Reaction:PCR)によって、ゲノタイピングを行なう目的の遺伝子領域であるApoE特定の領域を増幅し、そのRFLPをポリアクリルアミドゲル電気泳動(Polyacrylamide Electrophoresis)による泳動パターンでゲノタイピングするというものである。この方法は、現在でも多くの研究室等で用いられている方法である。
この方法では、先ず、ヒト・染色体DNA(ゲノムDNA)を血液より抽出した後、ApoE遺伝子に特異的な次のプライマー対、
F4(5’−ACAGAATTCGCCCCCGGCCTGGTACAC−3’)
F6(5’−TAAGCTTGGCACGGCTGTCCAAGGA−3’)
を用いてPCRで増幅し、増幅したDNAを制限酵素HhaIによって断片化する。
図12は、この方法によるゲノタイピングの概念図である。ApoE遺伝子多型は、それぞれ1つのアミノ酸の置換により生じる。即ち、112番目、158番目のアミノ酸が、それぞれE2ではシステイン、システイン、E3ではシステイン、アルギニン、E4ではアルギニン、アルギニンである。制限酵素HhaIは、塩基配列GCGCを認識するため、同図に示すように、E2、E3、E4の多型により、制限酵素HhaIが認識してDNAを切断する部位の組み合わせが異なる。つまり、制限酵素HhaIは、112番目アルギニン(E4)及び158番目のアルギニン(E3、E4)をコードするコドンの領域にわたるGCGCを認識して切断するが、112番目のシステイン(E2、E3)及び158番目のシステイン(E2)をコードするコドンの領域にわたるGTGCは切断しない(図中、四角で囲んだT又はCはそれぞれのコドンのはじめの塩基を示す。)。従って、それぞれのApoE遺伝子多型に特異的な長さのDNA制限酵素切断断片(以下「DNA制限断片」という。)が得られるので、各ApoE遺伝子多型の判別が可能となる。
ヒトはアリルを2つ持つため、いずれかのApoE遺伝子多型の2つの組合せを持つことになる。即ち、ApoE遺伝子多型のアリルの組合せのパターン(遺伝子型:ゲノタイプ)には、図12に示すように、E2/E2、E3/E3、E4/E4、E2/E3、E2/E4、E3/E4がある。
ホモ接合体について、E2/E2では、制限酵素HhaIでの切断によって83bp(塩基対)及び91bpの2種類の長さのDNA制限断片が得られるが、E3/E3では、35bp、48bp及び91bp、E4/E4では19bp、35bp、48bp及び72bpのDNA制限断片が得られる。同様に、ヘテロ接合体であるE2/E3、E2/E4、E3/E4についても、図12に示すようにそれぞれ異なったDNA制限断片の組合せが得られる。従って、制限酵素HhaIによる切断によって得られたそれぞれの長さのDNA制限断片をポリアクリルアミドゲル電気泳動法によって分離することで、ApoE遺伝子多型のタイピングが可能になる。尚、19bp以下の長さのDNA制限断片はポリアクリルアミドゲル電気泳動では検出されない。
非特許文献5に記載される上述の方法がApoE遺伝子多型をタイピングした最初の報告である。その後、現在までに、ApoE遺伝子多型のゲノタイピング方法については多数の報告がある。しかし、それらの多くは、基本的に最初の方法の変法である。
しかしながら、非特許文献5に記載の方法において、制限酵素HhaIで得られるDNA制限断片の長さは100bp未満と極めて短いため、実験室において通常用いられ、且つ、安価なDNA分離方法であるアガロースゲル電気泳動法(Agarose Gel Electrophoresis)では、解像度の低さのため分離が不可能であった。つまり、より短いDNA断片を分離するためには、ゲルをより高濃度にする必要があるが、アガロースゲルでは4%程度が限界であり、この濃度では上記100bpより短い短鎖DNAを高解像度にて分離することはできない。そのため、従来、より操作が煩雑で、時間を要するポリアクリルアミドゲル電気泳動法を用いる必要があった。
又、近年、日立マイクロチップ電気泳動解析システムSV1210 コスモアイ(以下「日立SV1210」という。)(日立ハイテクノロジーズ社製)等のDNA分離装置が開発されている。斯かるDNA分離装置は、基本的には電気泳動法を利用しているが、迅速に大量のサンプルを(順次に若しくは同時に)処理することができ、又、分析の自動化に対応可能である。この他、Agilent2100 バイオアナライザ(Agilent 2100 BioAnalyzer:以下「Agilent2100」という。)(Agilent Technologies社製)の電気泳動用セット、ABI PRISM(登録商標)3100(或いは3700) ジェネティック アナライザ(以下「ABI3100」、或いは「ABI3700」という。)(Applied Biosystems社製)等のDNA分離装置がある。
しかし、本発明者らの検討によれば、これら近年開発された高解像度の種々のDNA分離方法を用いる場合にも、非特許文献5に記載されるように制限酵素HhaIで切断したDNA制限断片では、正確なゲノタイピングを行うには、満足のゆく解像度を得ることができなかった。
非特許文献6は、ゲノムDNAから下記のプライマー対、
F5’−TCCAAGGAGCTGCAGGCGGCGCA
R5’−GCCCCGGCCTGGTACACTGCCA
を用いてPCRにて218bpのApoE遺伝子特異的な領域を増幅し、2種類の制限酵素AflIII、HaeIIを用いて断片化する方法を開示する。この方法によれば、それぞれE3、E2、E4に特異的な145bp、168bp、195bpといった長鎖のDNA制限断片が得られる。そして、非特許文献6では、このDNA断片を4%アガロースゲル電気泳動で分離して、DNA制限断片の長さからApoE遺伝子多型のゲノタイピングを行っている。
しかしながら、本発明者の検討によれば、詳しくは後述するように、斯かる方法は、機械化、製品化を考慮すると、正確性、信頼性の点で満足のゆくものではなかった。
その他に、抗体を用いて変異したタンパク質を同定する方法により間接的にゲノタイピングを行う方法が開発されている。この方法は、現在臨床検査業務で一般的に使用されている。しかしながら、斯かる抗体法を用いた生化学的な解析手法は、遺伝子を直接タイピングする方法ではなく、タンパク質の種類を判別する手法を用いているため、擬陽性(false-positive)が多く正確さに欠けるものである。更に、この方法は、実験に用いる試料の作成に時間がかかり、簡便さや、経済性の面で問題がある。
このように、より長鎖のDNA制限断片を得て、より高解像度で正確にApoE遺伝子多型をゲノタイピングをし得るApoE遺伝子多型の検出方法、それに用いる試薬に対する要求がある。又、自動化が可能で迅速、且つ、簡便に大量のサンプルについてApoE遺伝子多型をゲノタイピングし得ることも求められている。更に、機械化、製品化に際しての正確性、信頼性を更に高めることが求められている。
Corder E.H., Saunders A.M., Strittmatter W.J., Schmechel D.E., Gaskell P.C., Small G.W., Roses A.D., Haines J.L., Pericak-Vance M.A. Gene dose of apolipoprotein E type 4 allele and the risk of Alzheimer's disease in late onset families. Science 1993 Aug 13;261(5123):921-3 Ueki A., Kawano M., Namba Y., Kawakami M., Ikeda K. A high frequency of apolipoprotein E4 isoprotein in Japanese patients with late-onset nonfamilial Alzheimer's disease. Neurosci Lett 1993 Dec 12;163(2):166-8 Saunders A. M., Strittmatter W. J., Schmechel D., St. George-Hyslop P. H., Pericak-Vance M. A., Joo S. H., Rosi B. L., Gusella J. F., Crapper-MacLachlan D. R., Alberts M. J., Hulette C., Crain B., Goldgaber D., Roses A. D. Association of apolipoprotein E allele E4 with late-onset familial and sporadic Alzheimer's disease. Neurology 1993;43:1467-1472. Eichner J.E., Dunn S.T., Perveen G., Thompson D.M., Stewart K.E., Stroehla B.C. Apolipoprotein E polymorphism and cardiovascular disease: a HuGE review. Am J Epidemiol 2002 Mar 15;155(6):487-95 James E. H. and Daniel T. V. Restriction of human apolipoprotein E by gene amplification and cleavage with HhaI. J. Lipid. Res .1990; 31: 545-548. Zivelin, A., Rosenberg, N., Peretz, H., Amit, Y., Kornbrot, N., and Seligsohn, U., Improved Method for Genotyping Apolipoprotein E Polymorphisms by a PCR-Based Assay Simultaneously Utilizing Two Distinct Restriction Enzymes. Clinical Chemistry, 43, No9, 1657-1659, 1997
従って、本発明の目的は、正確、迅速、且つ、簡便にApoE遺伝子多型を検出し、ゲノタイプを判定することを可能とするApoE遺伝子多型検出方法、ApoE遺伝子多型のゲノタイプ判定方法及び試薬を提供することである。
本発明の他の目的は、安価、簡便なDNA分離方法を用いてApoE遺伝子多型を検出し、ゲノタイプを判定することを可能とするApoE遺伝子多型検出方法、ApoE遺伝子多型のゲノタイプ判定方法及び試薬を提供することである。
本発明の他の目的は、様々なDNA分離方法の利用を可能とし、高速、且つ、大量処理化を可能とするApoE遺伝子多型検出方法、ApoE遺伝子多型のゲノタイプ判定方法及び試薬を提供することである。
本発明の他の目的は、正確性、信頼性の向上したApoE遺伝子多型検出方法、ApoE遺伝子多型のゲノタイプ判定方法及び試薬を提供することである。
本発明の他の目的は、機械化、製品化に際しての正確性、信頼性を更に向上させることができるApoE遺伝子多型検出方法、ApoE遺伝子多型のゲノタイプ判定方法及び試薬を提供することである。
本発明の更に他の目的は、アルツハイマー病、心血管疾患など、ApoE遺伝子多型が関連する疾患の診断、治療にとって有用な情報となるApoE遺伝子多型のゲノタイプの判別を正確、且つ、迅速に行うことのできるApoE遺伝子多型検出方法、ApoE遺伝子多型のゲノタイプ判定方法及び試薬を提供することである。
上記目的は本発明に係るアポリポタンパク遺伝子多型検出方法、ApoE遺伝子多型のゲノタイプ判定方法及び試薬にて達成される。要約すれば、本発明は、アポリポタンパクE遺伝子に特異的なプライマー対を用いてDNAを増幅する段階;増幅されたDNAを、アポリポタンパクE遺伝子のコドン112の一塩基多型部位を認識配列に含む第1の制限酵素と、アポリポタンパクE遺伝子のコドン158の一塩基多型部位を認識配列に含む第2の制限酵素と、を用いて切断する段階;切断されたDNA断片を分離する段階;分離されたDNA断片を検出する段階;を有し、前記プライマー対のうち上流側プライマーは、前記コドン112の一塩基多型部位を含む前記第1の制限酵素の認識配列より上流側に前記第1の制限酵素の認識配列を導入する、少なくとも1塩基の変異を導入された配列であって、前記コドン112の一塩基多型部位を含む前記第1の制限酵素の認識配列での切断位置より45bp以上、136bp以下の上流の位置に前記第1の制限酵素による切断位置が配置されるように設定される配列を有し、且つ、該上流側プライマーは、前記導入される前記第1の制限酵素の認識配列での切断位置よりも45bp以上の上流の位置に5’末端が設定され、前記プライマー対のうち下流側プライマーは、前記コドン158の一塩基多型部位を含む前記第2の制限酵素の認識配列での切断位置より70bp以上の下流の位置に5’末端が設定されることを特徴とするアポリポタンパクE遺伝子多型検出方法である。
本発明の他の態様によると、第1の本発明のアポリポタンパクE遺伝子多型検出方法により検出されたDNA断片の存否の組み合わせからアポリポタンパクE遺伝子多型のゲノタイプを判定するアポリポタンパクE遺伝子多型のゲノタイプ判定方法が提供される。
本発明の他の態様によると、アポリポタンパクE遺伝子に特異的なプライマー対を用いてDNAを増幅し、増幅されたDNAを、アポリポタンパクE遺伝子のコドン112の一塩基多型部位を認識配列に含む第1の制限酵素と、アポリポタンパクE遺伝子のコドン158の一塩基多型部位を認識配列に含む第2の制限酵素と、を用いて切断することを含むアポリポタンパクE遺伝子多型検出方法に使用するための、前記プライマー対を備えるアポリポタンパクE遺伝子多型検出用試薬であって、前記プライマー対のうち上流側プライマーは、前記コドン112の一塩基多型部位を含む前記第1の制限酵素の認識配列より上流側に前記第1の制限酵素の認識配列を導入する、少なくとも1塩基の変異を導入された配列であって、前記コドン112の一塩基多型部位を含む前記第1の制限酵素の認識配列での切断位置より45bp以上、136bp以下の上流の位置に前記第1の制限酵素による切断位置が配置されるように設定される配列を有し、且つ、該上流側プライマーは、前記導入される前記第1の制限酵素の認識配列での切断位置よりも45bp以上の上流の位置に5’末端が設定され、前記プライマー対のうち下流側プライマーは、前記コドン158の一塩基多型部位を含む前記第2の制限酵素の認識配列での切断位置より70bp以上の下流の位置に5’末端が設定されることを特徴とするアポリポタンパクE遺伝子多型検出用試薬が提供される。
尚、本明細書において、遺伝子配列における位置は、5’末端から3’末端方向に一本鎖でみていうものであり、その上流とは該一本鎖でみたときの5’末端側、下流とは3’末端側をいう。
又、ApoE遺伝子について、いずれかの遺伝子多型において制限酵素による切断位置(或いは認識配列)がある場合、その位置に相当する他の遺伝子多型における配列上の位置については、切断されない(或いは認識されない)場合についても切断位置(或いは認識配列)の語を用いて説明する。
本発明によれば、正確、迅速、且つ、簡便にApoE遺伝子多型を検出することができる。又、本発明によれば、安価、簡便なDNA分離方法を用いてApoE遺伝子多型を検出することが可能となる。又、本発明によれば、様々なDNA分離方法の利用を可能とし、高速、且つ、大量化が可能となる。又、本発明によれば、ApoE遺伝子多型検出方法、ApoE遺伝子多型のゲノタイプ判定方法及び試薬の正確性、信頼性を向上させることができる。機械化、製品化に際しての正確性、信頼性を更に向上させることができる。更に、本発明によれば、アルツハイマー病、血管疾患等、ApoE遺伝子多型が関連する疾患の診断、治療にとって有用な情報となるApoE遺伝子のタイピングを正確、且つ、迅速に行うことができる。
以下、本発明に係るアポリポタンパクE遺伝子多型検出方法及び試薬を図面に則して更に詳しく説明する。
本発明に係るアポリポタンパクE(ApoE)遺伝子多型検出方法は、ApoE遺伝子に特異的なプライマー対を用いてPCRにより目的のDNA領域を増幅し、増幅されたDNAを所定の制限酵素を用いて切断し、切断したDNA制限断片を分離し、分離されたDNA断片を検出する各段階を含む。
ApoE遺伝子に特異的なプライマー対は、ゲノムDNAをテンプレート(鋳型)として、ApoE遺伝子の2箇所の一塩基多型部位、即ち、ApoEの112番目のアミノ酸をコードするApoE遺伝子領域(以下「コドン112」という。)、ApoEの158番目のアミノ酸をコードするApoE遺伝子領域(以下「コドン158」という。)を挟んだ所定領域(以下「多型領域」という。)のDNAをPCR法によって増幅するように設計されたオリゴヌクレオチド対(プライマー対)である。プライマー対の一方は、5’末端から3’末端方向に一本鎖でみて、上記ApoE遺伝子の多型領域の上流側にハイブリダイズ可能な適当な長さのオリゴヌクレオチドで、他方は同多型領域の下流側の相補鎖にハイブリダイズ可能な適当な長さのオリゴヌクレオチドである。これらプライマーは、通常通り、当業者には周知のプライマーとしての好適条件、例えば、標的遺伝子に対する特異性が良好であること、2つのプライマーのTmが同程度となること、又増幅効率が良好であることなどを考慮して設計される。
増幅したDNA産物を切断する所定の制限酵素は、ApoE遺伝子多型間の遺伝子変異で認識部位が出現又は消失するもの、即ち、いずれかのApoE遺伝子多型の一塩基多型部位が認識配列内に存在するものである。特に、この制限酵素は、切断後のDNA制限断片が典型的にはアガロースゲル電気泳動法によって十分な解像度にて分離可能な長さを有し得るものである。本発明では、ApoE遺伝子のコドン112の一塩基多型部位を認識配列に含む第1の酵素と、ApoE遺伝子のコドン158の一塩基多型部位を認識配列に含む第2の制限酵素とを用いる。以下、制限酵素、プライマー対についてより詳しく説明する。
(制限酵素)
本発明にて用いることが可能である制限酵素は下記の条件を満たす。
(1)第1の制限酵素は、ApoE遺伝子のコドン112の一塩基配列多型部位を含む認識配列をもち、切断されるか切断されないかが該一塩基多型によって決定するもの。認識配列について上記の条件を満たせば、切断される部位はコドン112から離れていても良い。
(2)第2の制限酵素は、ApoE遺伝子のコドン158の一塩基配列多型部位を含む認識配列をもち、切断されるか切断されないかが、該一塩基多型によって決定するもの。認識配列について上記の条件を満たせば、切断される部位はコドン158から離れていても良い。
(3)ApoE遺伝子の多型領域(ApoE遺伝子の2つの一塩基多型部位を含む領域)を含む増幅された所定のDNA制限断片を上記第1、第2の制限酵素を用いて切断することにより得られるDNA断片が、ApoE遺伝子多型の判定に利用可能となるもの、即ち、それぞれのApoE遺伝子多型を特定可能な、特異的な少なくとも1つのDNA制限断片若しくは少なくとも1つのDNA制限断片の組合せ(或いは電気泳動によって分離することによって得られる流出パターン)が得られるもの。
(4)それぞれのApoE遺伝子多型が特定可能な、少なくとも1つの特異的なDNA制限断片若しくは少なくとも1つの特異的なDNA断片の組合せを構成するDNA制限断片の分離性が良好であること、好ましくは、該DNA制限断片が実質的に100bp以上になるもの。尚、DNA制限断片長は、ApoE遺伝子の多型領域(ApoE遺伝子の2つの一塩基多型部位を含む領域)に用いられる所定のプライマーとの関係で許容される最長長さ以下となる。
(5)更に、第1、第2の制限酵素は、認識配列或いは切断部位が、ApoE遺伝子のコドン112の一塩基多型部位を含む認識配列とコドン158の一塩基多型部位を含む認識配列との間には存在しないものであることが望ましい。
本発明の好ましい一実施態様では、増幅したDNA産物を切断する第1、第2の制限酵素としての2種類の制限酵素として、AflIIIとHaeIIとの組み合わせを用いる。これら制限酵素の組み合わせを用いることにより、増幅されたDNAに関し、2種類の制限酵素のいずれか一方の制限酵素のみによる切断、及び両方の制限酵素による切断によって、いずれかのアポリポタンパクE遺伝子多型に帰属させ得る100bp以上のDNA断片が生成する。
図3に示すように、制限酵素AflIIIは、塩基配列ACRYGT(RはA又はG,YはC又はT)を認識する。又、制限酵素HaeIIは、塩基配列RGCGCY(RはA又はG,YはC又はT)を認識する。即ち、制限酵素AflIIIは、112番目のシステイン(E2、E3)をコードするコドンの領域にわたるACGTGTを認識して切断するが、112番目のアルギニン(E4)をコードするコドンの領域にわたるACGTGCは切断しない。又、制限酵素HaeIIは、158番目のアルギニン(E3、E4)をコードするコドンの領域にわたるAGCGCCを認識して切断するが、158番目のシステイン(E2)をコードするコドンの領域にわたるAGTGCCは認識せず、切断しない(図中、四角で囲んだT又はCはそれぞれのコドンのはじめの塩基を示す。)。つまり、E2では、コドン158の一塩基多型部位を含むHaeIIの認識配列が消失し、E4では、コドン112の一塩基多型部位を含むAflIIIの認識配列が消失する。
これにより、これらの制限酵素AflIII、HaeIIを用いて増幅されたDNAを断片化すると、E3では、コドン112の一塩基多型部位を含む切断位置(以下「第1切断位置」という。)とコドン158の一塩基多型部位を含む切断位置(以下「第2切断位置」という。)との間の配列(図中B)のみを含む特異的なDNA断片B(=145bp)が生成する。E2では、第1切断位置から第2切断位置より下流に位置する端部までの配列(図中D)を含む特異的なDNA断片Dが生成する。又、E4では、第2の切断位置から第1の切断位置より上流に位置する端部までの配列(図中C)を含む特異的なDNA断片Cを生成する。従って、詳しくは後述するように、適切なプライマーを設計することにより、図3中に示すように、E2/E2、E3/E3、E4/E4、E2/E3、E2/E4、E3/E4の6種類のゲノタイプを明瞭に判定することができる。
図12に示すように、非特許文献5に開示される従来の方法においては、制限酵素HhaIは、コドン112、158の一塩基多型部位を含む切断位置以外(それぞれの上流側)に他の多くの切断位置を持つ。これに対して、AflIIIは、コドン112の一塩基多型部位を含む切断位置より上流及び下流に他の切断位置を持たず、又HaeIIは、コドン158の一塩基多型部位を含む切断位置より上流に他の切断位置を持たない。
従って、これらの制限酵素AflIII、HaeIIの組み合わせを用いることで、制限酵素HhaIによる切断で得られたものよりも長い、E2、E3、E4にそれぞれ特異的なDNA制限断片を生成することができる。又、適切なプライマーを設計することにより、DNA制限断片間の鎖長差は、非特許文献5に開示される従来方法よりも大きくなり、DNA制限断片の分離を容易ならしめる。
上述の2種類の制限酵素、AflIII及びHaeIIは、上記条件(1)〜(4)、更には(5)の条件を満たす制限酵素の組み合わせである。これに対して、従来の方法における制限酵素HhaIは、上記条件(4)を満たさず、更に上記条件(5)をも満たさない。
尚、第1、第2の制限酵素は、上記条件(1)〜(4)、更に望ましくは(5)を満たせば同一のものであっても2種類以上であってもよい。
(プライマー対)
そして、本発明では、以下に説明する新規プライマー対を用いる。このプライマー対は、ApoE遺伝子多型E2、E3、E4の全てについて生成するDNA断片の存否によって、制限酵素による切断反応が適正に行われた否かを判定し得るように設計される。又、ApoE遺伝子多型E2、E3、E4の全てについて生成するDNA断片を定量した結果に基づいて、E2、E3、E4に特異的なDNA断片の存否を判定できる。これにより、ApoE遺伝子多型の検出、ゲノタイピングの正確性、信頼性を著しく高めることができる。以下、第1の制限酵素としてAflIII、第2の制限酵素としてHaeIIを用いる場合に即して更に説明する。
1.上流側プライマー
本発明では、ApoE遺伝子に特異的なプライマー対のうち上流側プライマーには、E2、E3、E4の全ての多型について第1の制限酵素(AflIII)によって切断されて生成するDNA断片を得るために、コドン112の一塩基多型部位を含む認識配列より上流側に第1の制限酵素(AflIII)の認識配列を導入するように変異(ミューテーション)を加える。即ち、上流側プライマーは、天然のApoE遺伝子に対し、コドン112の一塩基多型部位を含む第1の制限酵素(AflIII)の認識配列より上流側に第1の制限酵素(AflIII)の認識配列を導入するための少なくとも1塩基の変異を導入された配列(以下、導入される各変異配列を「ミスマッチ配列」という。)を有するミスマッチプライマーである。
ところで、図3に示すように、ApoE遺伝子には、E2、E3、E4の全ての多型について、第1切断位置よりも142bp上流の位置に第2の制限酵素(HaeII)の切断位置がある。即ち、コドン95〜コドン96の領域にわたるHaeIIの認識配列がある。
上流側プライマーの5’末端を第1の切断位置よりも142bp以上の上流の位置に設定すると、第1切断位置より上流、且つ、上流側プライマーによって導入される第1の制限酵素(AflIII)の認識配列での切断位置(以下「導入切断位置」という。)より下流の配列(図中A)のみを含むDNA断片A(=142bp)と、第1切断位置と第2切断位置との間の配列(図中B)のみを含むDNA断片B(=145bp)との良好な分離が難しくなり、DNA断片BはE3に特異的なものではなくなることがある。
そのため、導入切断位置は、DNA断片AとDNA断片B(=145bp)との良好な分離が可能なように設定する(9bp以上、好ましくは20bp以上、更に好ましくは30bp以上の鎖長差を有する)必要がある。このことから、導入切断位置が第1切断位置より136bp以下の上流の位置となるように、上流側プライマーによって第1の制限酵素(AflIII)の認識配列を導入するのが好ましい。この観点からは、例えば、典型的にはアガロース電気泳動によっても十分な解像度にて分離可能となるように、導入切断位置は第1切断位置よりも、より好ましくは130bp以下、更に好ましくは125bp以下の上流の位置とすることがより好ましい。
又、導入切断位置は、上記の第2の切断位置から第1の切断位置より上流に位置する端部までの配列(図中C)を含むDNA断片C(即ち、配列A及び配列Bを含むDNA断片C)が、DNA断片B(=145bp)と良好に分離可能であると共に、上記の第1切断位置から第2切断位置より下流に位置する端部までの配列(図中D)を含むDNA断片Dとも良好に分離可能であるように設定する(9bp以上、好ましくは20bp以上、更に好ましくは30bp以上の鎖長差を有する)必要がある。このことから、導入切断位置が第1の切断位置より45bp以上、より好ましくは60bp以上の上流の位置となるように、上流側プライマーによって第1の制限酵素(AflIII)の認識配列を導入するのが好ましい。この観点からは、例えば、典型的にはアガロース電気泳動によっても十分な解像度にて分離可能となるように、導入切断位置は、第1切断位置よりも70bp以上、80bp以上、90bp以上、100bp以上の上流の位置と、より上流とされるのが好ましい。
尚、詳しくは後述するが、下流側プライマーの選択範囲によって生成されるDNA制限断片長が異なるが、第2切断位置より下流の配列(図中R)のみを含むDNA断片Rと、上記DNA断片Aとが良好に分離可能である場合、DNA断片Aの長さは他のDNA断片の長さと重なることがなく、このDNA断片AはApoE遺伝子多型判別の根拠の一つとして利用することができる。
又、導入切断位置より上流の配列(図中F)のみを含むDNA断片Fは、典型的にはアガロース電気泳動によって十分な解像度にて分離可能な十分な長さであることが好ましい。好ましくは、DNA断片Fは45bp以上、より好ましくは50bp以上とされる。このことから、上流側プライマーの5’末端の位置は、導入切断位置よりも45bp以上の上流の位置に設定するのが好ましい。より好ましくは、上流側プライマーの5’末端の位置は、導入切断位置よりも50bp以上の上流の位置とする。
一方、DNA断片Fと、他のDNA断片、特に、E2、E3、E4のそれぞれに特異的なDNA断片B、DNA断片C、DNA断片Dと良好に分離可能である(9bp以上、好ましくは20bp以上、更に好ましくは30bp以上の鎖長差を有する)ことが必要である。又、プライマーの性能等の点から、DNA断片Fは、110bp以下、より好ましくは70bp以下、更に好ましくは50bp以下とされる。このことから、上流側プライマーの5’末端の位置は、導入切断位置よりも110bp以下の上流の位置に設定するのが好ましい。より好ましくは、上流側プライマーの5’末端の位置は、導入切断位置よりも70bp以下の上流の位置とする。更に好ましくは50bp以下の上流の位置とする。
更に、DNA断片Fは、詳しくは後述するDNA断片Rとも良好に分離可能である(9bp以上、好ましくは20bp以上、更に好ましくは30bp以上の鎖長差を有する)必要がある。
ここで、上流側プライマーの5’末端の位置の設定によって、上述の第1切断位置より142bp上流側の第2の制限酵素(HaeII)の切断位置がプライマー配列中に入ることがある。この場合には、この切断位置に対応する第2の制限酵素(HaeII)の認識配列をミューテーションにより消失させることができる。即ち、この場合、上流側プライマーは、天然のApoE遺伝子に対し、コドン112の一塩基多型部位より上流側における第2の制限酵素(HaeII)の認識配列を消失させるための少なくとも1塩基のミスマッチ配列を有するミスマッチプライマーである。
2.下流側プライマー
一方、ApoE遺伝子に特異的なプライマー対のうち下流側プライマーは、5’末端の位置を第2切断位置より下流の適切な位置に設定することにより、E2、E3、E4の全ての多型について生成する、第2切断位置より下流の配列(図中R)のみを含むDNA断片Rを得ることができる。
図3に示すように、E2、E3、E4の全ての多型について、第2切断位置よりも35bp、53bp(35bp+18bp)、66bp(35bp+18bp+13bp)下流に、それぞれ第2の制限酵素(HaeII)の切断位置がある。従って、下流側プライマーの5’末端の位置の設定により、第2の制限酵素(HaeII)による切断で生成されるDNA断片Rが異なってくる。
下流側プライマーの5’末端を第2切断位置より35bp以上、53bp以下の下流の位置に設定(即ち、図中配列R3内に設定)することで、E2、E3、E4の全ての多型について、DNA断片R3(最長でも18bp)が生成する。E3、E4では、DNA断片R4(=35bp)も生成する。
又、下流側プライマーの5’末端位置を第2切断位置より53bp以上、66bp以下の下流の位置に設定(即ち、図中配列R2内に設定)することで、E2、E3、E4の全ての多型について、DNA断片R3(=18bp)、DNA断片R2(最長でも13bp)が生成する。E3、E4ではDNA断片R4(=35bp)も生成する。
更に、下流側プライマーの5’末端の位置を少なくとも第2切断位置より66bp以上の下流の位置、好ましくは70bp以上、80bp以上、90bp以上と、より第2切断位置より下流の位置に設定(即ち、図中配列R1内に設定)することにより、E2、E3、E4の全ての多型について、所望の鎖長のDNA断片R1が生成する。このとき、E2、E3、E4の全ての多型について、DNA断片R3(=18bp)、DNA断片R2(=13bp)が生成する。E3、E4ではDNA断片R4(=35bp)も生成する。これにより、好ましくは下流側プライマーの5’末端位置を第2切断位置より70bp以上の下流の位置とすることにより、E2、E3、E4の全ての多型について生成するDNA断片R1、或いは18bp(DNA断片R3)、13bp(DNA断片R2)のDNA断片を上記の如く消化反応の良否判断等の目的で利用することができる。
ここで、DAN断片Rは、上記DNA断片Fと同様に、典型的にはアガロース電気泳動によって十分な解像度にて分離可能な十分な長さであることが好ましい。好ましくは、DNA断片R1は45bp以上、より好ましくは50bp以上とされる。この観点からは、下流側プライマーの5’末端の位置は、第2切断位置より100bp以上の下流の位置、120bp以上の下流の位置、126bp以上の下流の位置と、より下流の位置とするのが好ましく、更に好ましくは136bp以上の下流の位置に設定する。
一方、DNA断片R1と、特にDNA断片B(更にはDNA断片C、D)とを良好に分離するためには、下流側プライマーの5’末端の位置は、第2切断位置より202bp以下の下流の位置(下流202bpよりも上流側)に設定するのが好ましい。この観点からは、下流側プライマーの5’末端の位置は、第2切断位置より185bp以下の下流の位置に設定するのが好ましい。更に、ApoE遺伝子多型の判定の根拠の一つとして利用可能なDNA断片AとDNA断片R1との分離を良好とすることをも考慮すると、下流側プライマーの5’末端の位置は、好ましくは第2切断位置より166bp以下の下流の位置、より好ましくは156bp以下の下流の位置に5’末端を設定する。
更に、DNA断片Rは、DNA断片Fとも、典型的にはアガロース電気泳動によって十分な解像度にて分離可能である(9bp以上、好ましくは20bp以上、更に好ましくは30bp以上の鎖長差を有する)ことが必要である。
尚、これらの条件を満たすことにより、下流側プライマーの5’末端の位置は第2切断位置より30bp以上の下流の位置となり、DNA断片BとDNA断片Dとを良好に分離することができる。
好ましい一実施態様では、下記の塩基配列を有するオリゴヌクレオチドから成るプライマーの対を用いる。
上流側プライマー(AE−Fafl5):配列番号1
5’−ACACCCTCCCGCCCTCTCGGCCGCAGGGCGCGGATGGACGAGACCATGAACGCGTTGAAG−3’
下流側プライマー(AE−Rhae):配列番号2
5’−GCCCGCTCCTGTAGCGGC−3’
配列番号1の上流側プライマーは、第1切断位置より114〜173bp上流に位置する(5’末端は第1切断位置より173bp上流に位置する。)60merのオリゴヌクレオチドである。配列番号2の下流側プライマーは、第2切断位置より129〜146bp下流に位置する(5’末端は第2切断位置より146bp下流に位置する。)18merのオリゴヌクレオチドである。上記オリゴヌクレオチド配列のプライマー対によれば、ApoE遺伝子多型の2箇所の一塩基多型部位、即ち、コドン112、コドン158の一塩基多型部位を含み、53番目〜208番目のアミノ酸をコードするコドン領域にわたる464bpのDNAをPCR法によって増幅することができる。斯かるオリゴヌクレオチド配列の各プライマーは、市販のDNA合成装置を用いて斯界にて周知のDNA合成方法により得ることができる。
図2に示すように、配列番号1の上流側プライマーは、コドン41〜コドン42にわたる領域の配列AGGAGT(ApoE遺伝子2658番目〜2663番目の塩基)中の上流側から2番目のGと4番目のAを、それぞれC、Cに変異させた、配列ACGCGTを有する。これにより、AflIIIの認識配列ACRYGT(RはA又はG、YはC又はT)が導入される。
上記の如く制限酵素の認識配列を導入するためにプライマー配列中にミスマッチ配列を入れる場合、テンプレートDNAとの結合性等からミスマッチ数はできる限り少ない方がよい。又、ミスマッチ配列は、プライマー配列の末端(特に3’末端)からできるだけ離れていた方がよく、好ましくは3bp、より好ましくは5bp以上離れていた方がよい。配列番号1の上流側プライマーにおけるミスマッチ配列の位置、3’末端の位置は、これらの観点から好適である。
更に、配列番号1の上流側プライマーで導入される第1の制限酵素(AflIII)による切断位置(導入切断位置)は、第1切断位置よりも123bp上流に位置する。従って、図3に示した第1切断位置より上流且つ導入切断位置より下流の配列(図中A)のみを含むDNA断片Aは123bpとなる。このDNA断片Aは、典型的にはアガロース電気泳動によって十分な解像度にて分離可能であると共に、DNA断片Bの145bpと良好に分離可能である。これにより、DNA断片B(=145bp)は、E3に特異的なものとなる。更に、配列番号1で導入される導入切断位置によれば、DNA断片Cは、DNA断片Bと良好に分離可能であると共に、DNA断片Dとも良好に分離可能である。
一方、図2に示すように、配列番号1の上流側プライマーは、コドン95〜コドン96にわたる領域の配列GGCGCT(ApoE遺伝子2635番目〜2640番目の塩基)中の上流側から6番目のTを、Gに変異させた、配列GGCGCGを有する。これにより、HaeIIの認識配列RGCGCY(RはA又はG、YはC又はT)が消失する。この認識配列が消失すれば、認識領域内のミスマッチ配列の位置、ミスマッチ配列の数、ミスマッチ配列の塩基は適宜選択できる。
上記の如く制限酵素の認識配列を消失させるためにプライマー配列中にミスマッチ配列を入れる場合も、テンプレートDNAとの結合性等からミスマッチ数はできる限り少ない方がよい。又、ミスマッチ配列は、プライマー配列の末端(特に3’末端)からできるだけ離れていた方がよく、好ましくは3bp、より好ましくは5bp以上離れていた方がよい。配列番号1の上流側プライマーにおけるミスマッチ配列の位置、5’末端の位置は、これらの観点から好適である。
更に、配列番号1の上流側プライマーにより、第1の切断位置より142bp上流(導入切断位置より19bp上流)の第2の制限酵素(HaeII)による切断位置を消失させ、又、上流側プライマーの5’末端を導入切断位置より50bp上流の位置(第1の切断位置より173bp上流の位置)に設定することで、図3に示した導入切断位置より上流の配列(図中F)のみを含む、E2、E3、E4の全ての多型について生成するDNA断片Fは、典型的にはアガロース電気泳動によって十分な解像度にて分離可能な十分な長さとなる。従って、このDNA断片Fの存否により、制限酵素による切断段階で適切な切断反応が起きたか否かを判定することができる。又、詳しくは後述するように、DNA断片Fを定量した結果に基づいて、E2、E3、E4のそれぞれに特異的なDNA断片の存否の判定することにより、より精度の高いApoE遺伝子多型の検出、ゲノタイピングを実現できる。
配列番号2の下流側プライマーは、5’末端が第2切断位置より146bp下流に設定されている。これにより、図3に示した、第2切断位置よりも下流の配列(図中R)のみを含むDNA断片Rとして、E2、E3、E4の全ての多型について、80bpのDNA断片R1、13bpのDNA断片R2、18bpのDNA断片R3が生成する。又、E3、E4については35bpのDNA断片R4が生成する。これにより、上記DNA断片R1、R2、R3、特に、80bpのDNA断片R3は、典型的にはアガロース電気泳動によって十分な解像度にて分離可能な十分な長さとなる。従って、このE2、E3、E4の全ての多型について生成するDNA断片R、特に、DNA断片R3の存否により、制限酵素による切断段階で適切な切断反応が起きたか否かを判定することができる。又、詳しくは後述するように、このE2、E3、E4の全ての多型について生成するDNA断片R、特に、DNA断片R3を定量した結果に基づいて、E2、E3、E4のそれぞれに特異的なDNA断片の存否の判定することにより、より精度の高いApoE遺伝子多型の検出、ゲノタイピングを実現できる。
更に、配列番号1の上流側プライマー、配列番号2の下流側プライマーを用いることで、上記E2、E3、E4の全てについて生成するDNA配列Fと、E2、E3、E4の全てについて生成するDNA配列Rとは、典型的にはアガロース電気泳動によって十分な解像度にて分離可能である(鎖長30bp)。
配列番号1の上流側プライマーは、上記の箇所以外にミスマッチ配列はない。又、配列番号2の下流側プライマーにはミスマッチ配列はない。
上記配列番号1、2のプライマー対を用いて増幅したDNAをAflIII、HaeIIを用いれば、上流側プライマーにより導入されるAflIII(第1の制限酵素)の認識配列より上流側、導入されるAflIII(第1の制限酵素)の認識配列とコドン112の一塩基多型部位を含むAflIII(第1の制限酵素)の認識配列との間、コドン112の一塩基多型部位を含むAflIII(第1の制限酵素)の認識配列とコドン158の一塩基多型部位を含むHaeII(第2の制限酵素)の認識配列との間に、AflIII(第1の制限酵素)及びHaeII(第2の制限酵素)のいずれの認識配列も持たない。
図1は、配列番号1、2のプライマー対を用いて増幅したDNAをAflIII、HaeIIを用いて消化した際の、E2、E3、E4の各多型におけるDNA制限断片長、及び各ゲノタイプにおけるDNA制限断片長の組み合わせを示す。図1に示すように、ホモ接合体については、下記の通りのDNA断片が得られる。
E2/E2:180bp(DNA断片D)、123bp(DNA断片A)、
80bp(DNA断片R1)、50bp(DNA断片F)、
18bp(DNA断片R3)、13bp(DNA断片R2)
E3/E3:145bp(DNA断片B)、123bp(DNA断片A)、
80bp(DNA断片R1)、50bp(DNA断片F)、
35bp(DNA断片R4)、18bp(DNA断片R3)、
13bp(DNA断片R2)
E4/E4:268bp(DNA断片C)、
80bp(DNA断片R1)、50bp(DNA断片F)、
35bp(DNA断片R4)、18bp(DNA断片R3)、
13bp(DNA断片R2)
又、ヘテロ接合体については、下記の通りのDNA断片が得られる。
E2/E3:180bp(DNA断片D)、145bp(DNA断片B)、
123bp(DNA断片A)、
80bp(DNA断片R1)、50bp(DNA断片F)、
35bp(DNA断片R4)、18bp(DNA断片R3)、
13bp(DNA断片R2)
E2/E4:268bp(DNA断片C)、180bp(DNA断片D)、
123bp(DNA断片A)、
80bp(DNA断片R1)、50bp(DNA断片F)、
35bp(DNA断片R4)、18bp(DNA断片R3)、
13bp(DNA断片R2)
E3/E4:268bp(DNA断片C)、145bp(DNA断片B)、
123bp(DNA断片A)、
80bp(DNA断片R1)、50bp(DNA断片F)、
35bp(DNA断片R4)、18bp(DNA断片R3)、
13bp(DNA断片R2)
本発明によれば、DNA断片AをもApoE遺伝子多型の判別の根拠の一つとして利用することができる(下流側プライマーの5’末端の位置の設定によってDNA断片R1と良好に分離可能である場合。)。更に、DNA断片F、及び、E2、E3、E4の全ての多型について生成するDNA断片R(特にDNA断片R1)の存否及び/又はその量を利用することによって、ApoE遺伝子多型の検出、ゲノタイピングの正確性、信頼性を更に高めることができる。
つまり、先ず、DNA断片AはE2及びE3において生成されるが、E4では生成されない。このため、DNA断片Aの存在は、それぞれDNA断片D、DNA断片Bの存在と共にApoE遺伝子多型の判別の根拠として利用して、E2、E3の存在を示す。一方、DNA断片Aの非存在は、E4の存在、より詳細には、ゲノタイプE4/E4を示す。
尚、100bp以上のDNA制限断片の存否の組み合わせによりApoE遺伝子多型の検出、ゲノタイプの判定を行うことが精度、信頼性の点で好ましいが、高解像度のDNA分離方法(装置)を利用する場合などには、DNA断片R4をApoE遺伝子多型の判別の根拠の一つとして利用することもできる。上述のように、第2切断位置より下流の配列Rのみを含むDNA断片として、DNA断片R4は、E3、E4では生成されるが、E2では生成されない。下流側プライマーの5’末端の位置の設定によって、DNA断片R1とDNA断片R4とが良好に分離可能である場合には、DNA断片R4の存在は、それぞれDNA断片B(更にはDNA断片A)、DNA断片Cの存在と共にApoE遺伝子多型の判別の根拠として利用して、E3、E4の存在を示す。一方、DNA断片R4の非存在は、E2の存在、より詳細にはゲノタイプE2/E2を示す。
このように、ApoE遺伝子多型の判定の根拠を増すことにより、判定の正確性、信頼性を向上させることができる。
次に、E2、E3、E4の全てについて生成するDNA断片Fの存否により、第1の制限酵素(AflIII)が効果的に反応しているか否かを判断することができる。又、E2、E3、E4の全てについて生成するDNA断片Rの存否によって、第2の制限酵素(HaeII)が効果的に反応しているか否かを判断することができる。これにより、PCR産物の消化が適正に行われたか否かの判断をすることができる。
消化反応が適正に行われたか否かを判断することは、正確で、信頼性のあるApoE遺伝子多型の検出、ゲノタイピングにとって重要である。DNA断片F及び/又はE2、E3、E4の全てについて生成するDNA断片Rが存在するときに、有効な切断反応の存在を判断する。より詳細には、DNA断片Fの存在により、第1の制限酵素(AflIII)による有効な切断反応の存在を判断する。又、E2、E3、E4の全てについて生成するDNA断片Rの存在により、第2の制限酵素(HaeII)による有効な切断反応の存在を判断する。そして、有効な切断反応の存在を判断した場合に、各DNA断片の存否の組み合わせから、ApoE遺伝子多型のゲノタイプを判定するようにすることができる。このDNA断片F、E2、E3、E4の全てについて生成するDNA断片Rが存在しない場合は、その検出結果を採用しない、或いはゲノタイピング不能であること、若しくは精度が低下していることを判断することができる。
上述のように、本発明の一態様によれば、上流側プライマーにより導入される認識配列での切断位置(導入切断位置)より上流の配列Fのみを含むDNA断片をDNA断片F、コドン158の一塩基多型部位を含む認識配列での切断位置(第2切断位置)より下流の配列Rのみを含むDNA断片をDNA断片R、コドン112の一塩基多型部位を含む認識配列での切断位置(第1切断位置)より上流且つ前記導入切断位置より下流の配列Aのみを含むDNA断片をDNA断片A、第1切断位置と第2切断位置との間の配列Bのみを含むDNA断片をDNA断片B、配列A及びBを含むDNA断片をDNA断片C、配列B及びRを含むDNA断片をDNA断片Dとしたとき、検出したDNA断片の存否の組み合わせからApoE遺伝子多型のゲノタイプを判定するApoE遺伝子多型のゲノタイプ判定方法が提供される。その一実施態様では、DNA断片B(配列番号1、2のプライマー対、制限酵素AflIII、HaeIIを用いた場合の鎖長。以下括弧内の鎖長は同様:145bp)、DNA断片C(268bp)及びDNA断片D(180bp)の存否をApoE遺伝子多型のゲノタイプの判定に用い、(a)DNA断片D(180bp)のみの存在によりゲノタイプE2/E2を判定し;(b)DNA断片B(145bp)のみの存在によりゲノタイプE3/E3を判定し;(c)DNA断片C(268bp)のみの存在によりゲノタイプE4/E4を判定し;(d)DNA断片B(145bp)及びDNA断片D(180bp)のみの存在によりゲノタイプE2/E3を判定し;(e)DNA断片C(268bp)及びDNA断片D(180bp)のみの存在によりゲノタイプE2/E4を判定し;(f)DNA断片B(145bp)及びDNA断片C(268bp)のみの存在によりゲノタイプE3/E4を判定することができる。
又、他の実施態様では、DNA断片A(123bp)、DNA断片B(145bp)、DNA断片C(268bp)及びDNA断片D(180bp)の存否をApoE遺伝子多型のゲノタイプの判定に用い、(a)DNA断片A(123bp)及びDNA断片D(180bp)のみの存在によりゲノタイプE2/E2を判定し;(b)DNA断片A(123bp)及びDNA断片B(145bp)のみの存在によりゲノタイプE3/E3を判定し;(c)DNA断片C(268bp)のみの存在によりゲノタイプE4/E4を判定し;(d)DNA断片A(123bp)、DNA断片B(145bp)及びDNA断片D(180bp)のみの存在によりゲノタイプE2/E3を判定し;(e)DNA断片A(123bp)、DNA断片C(268bp)及びDNA断片D(180bp)のみの存在によりゲノタイプE2/E4を判定し;(f)DNA断片A(123bp)、DNA断片B(145bp)及びDNA断片C(268bp)のみの存在によりゲノタイプE3/E4を判定することができる。
又、他の実施態様では、DNA断片A(123bp)の存否をApoE遺伝子多型のゲノタイプの判定に用い、DNA断片A(123bp)の非存在によりゲノタイプE4/E4を判定することができる。
更に、本発明によれば、DNA断片F又はE2、E3、E4の全ての多型について生成するDNA断片Rの存在により、制限酵素による切断段階における有効な切断反応の存在を判定することができる。より詳細には、DNA断片Fの存在及びE2、E3、E4の全ての多型について生成するDNA断片Rの存在により、第1の制限酵素(AflIII)及び第2の制限酵素(HaeII)による切断段階における有効な切断反応の存在を判定することができる。そして、この有効な切断の存在を判定した場合に、DNA断片の存否の組み合わせからApoE遺伝子多型のゲノタイプを判定することができる。
(ヘテロ二本鎖)
ところで、目的の遺伝子領域を複製する過程において、ヘテロ二本鎖(ヘテロデュプレックス)が生じることがある。ヘテロ二本鎖は、特に、ApoE遺伝子多型のゲノタイプがヘテロの場合(E2/E3、E2/E4、E3/E4)の場合に問題となる。以下この点について説明する。ここでは、配列番号1、2のプライマー、制限酵素AflIII、HaeIIを用いる場合に即して説明する。
図4(a)、(b)、(c)は、E2/E3、E3/E4、E2/E4の各ゲノタイプについてヘテロ二本鎖が生じた場合のDNA制限断片のパターンを模式的に示したものである。
PCRの過程で仮に50%がヘテロ二本鎖を形成したとすると、E2/E3ゲノタイプでは、図4(a)に示すように、E2/E3二本鎖(ヘテロ二本鎖)が50%、E3/E3二本鎖が25%、E2/E2二本鎖が25%生成する。そして、ヘテロ二本鎖ではコドン158の一塩基多型部位を含む第2の制限酵素(HaeII)の認識配列が消失し、第2切断位置が切断されなくなる。その結果、見かけ上では、E2(123bp、180bpのDNA制限断片)が75%、E3(35bp、123bp、145bpのDNA制限断片)が25%となる。
又、E3/E4ゲノタイプについて同様に考えると、図4(b)に示すように、E3/E4二本鎖(ヘテロ二本鎖)ではコドン112の一塩基多型部位を含む第1の制限酵素(AflIII)の認識配列が消失し、第1切断位置が切断されなくなる。その結果、見かけ上では、E4(35bp、268bpのDNA制限断片)が75%、E3(35bp、123bp、145bpのDNA制限断片)が25%となる。
一方、E2/E4ゲノタイプについて同様に考えると、図4(c)に示すように、E2/E4二本鎖(ヘテロ二本鎖)ではコドン112の一塩基多型部位を含む第1の制限酵素(AflIII)の認識配列、及びコドン158の一塩基多型部位を含む第2の制限酵素(HaeII)の認識配列が消失し、第1切断位置及び第2切断位置の両方が切断されなくなる。第2切断位置より下流の切断位置ではヘテロ二本鎖であっても切断されるので、E2/E4二本鎖(ヘテロ二本鎖)に特異的なDNA断片(以下「ヘテロ二本鎖特異的断片という。)(303bp)が生成する。即ち、ヘテロ二本鎖特異的断片は、図3に示した配列A、配列B及び配列Rを含む。その結果、見かけ上では、E4(35bp、268bpのDNA制限断片)が25%、E2(123bp、180bpのDNA制限断片)が25%、ヘテロ二本鎖特異的断片(303bpのDNA制限断片)が50%となる。
図5は、ヘテロ二本鎖の生成をも考慮した場合における各ゲノタイプでのDNA制限断片の分離パターンを模式的に示す。図示の通り、ゲノタイプE2/E3では、180bpにヘテロ二本鎖の生成による太いバンドが出現し、ゲノタイプE2/E4では303bpにヘテロ二本鎖の生成による新たなバンドが出現し、E3/E4では268bpにヘテロ二本鎖の生成による太いバンドが出現する。
尚、ヘテロ二本鎖特異的断片は、アポリポタンパクE遺伝子多型のゲノタイプ判定の根拠の一つとして利用することができ、ヘテロ二本鎖特異的断片の存在はゲノタイプE2/E4を示す。
(定量法)
図5から理解されるように、本発明によれば、ヘテロ二本鎖が生成しても、各ApoE遺伝子多型の検出、ゲノタイピングが可能であるが、本発明によれば、ヘテロ二本鎖の生成をも考慮することで、更にApoE遺伝子多型の検出、ゲノタイピングの正確さ、信頼性を高めることができる。以下、この点について説明する。
つまり、本発明によれば、上述のように、制限酵素が効果的に反応しているかを判断し、PCR産物の消化が適正に行われたか否かを判断することができると共に、DNA断片F、E2、E3、E4の全ての多型について生成するDNA断片Rの一方若しくは両方を定量することによって、消化反応全体に寄与し、ゲノタイピングの用に供することのできるDNA全量の予測が可能となる。そして、その定量結果に基づいて、それぞれのゲノタイプに関係付けることのできる断片(各ゲノタイプに特異的なDNA制限断片パターンを構成するそれぞれのDNA制限断片)、特に、DNA断片A、DNA断片B、DNA断片C及び/又はDNA断片Dをより正確に評価することが可能となる。つまり、それらのDNA断片の存否をより正確に判断することができる。
より詳細には、DNA断片A、DNA断片B、DNA断片C及び/又はDNA断片Dを定量し、その量(測定値)と、DNA断片F及び/又はE2、E3、E4の全てについて生成するDNA断片Rの量から推定されるそれらの量(推定値)とを比較する。これにより、DNA断片A、DNA断片B、DNA断片C及び/又はDNA断片Dがその推定量に相当する量存在するときに、そのDNA断片が出現したものと判断することができる。
特に、ヘテロ接合体(ゲノタイプE2/E3、E2/E4、E3/E4)については、DNA断片F及び/又はE2、E3、E4の全てについて生成するDNA断片Rを定量した結果に基づいて、ヘテロ二本鎖の生成割合を求めることができる。そして、このDNA断片Bの量と、ヘテロ二本鎖の生成割合とに基づいて、それぞれのゲノタイプに関係付けることのできるDNA断片、特に、DNA断片A、DNA断片B、DNA断片C及び/又はDNA断片Dをより正確に評価することが可能となる。つまり、それらのDNA断片の存否をより正確に判断することができる。
より詳細には、DNA断片A、DNA断片B、DNA断片C及び/又はDNA断片Dを定量し、その量(測定値)と、DNA断片F及び/又はE2、E3、E4の全てについて生成するDNA断片Rの量並びにヘテロ二本鎖の生成割合から推定されるそれらの量(推定値)とを比較する。これにより、DNA断片A、DNA断片B、DNA断片C及び/又はDNA断片Dがその推定量に相当する量存在するときに、そのDNA断片が出現したものと判断することができる。
特に、各DNA制限断片の定量は、例えば、前述の日立SV1210、Agilent2100などの近年開発されたDNA分離方法を用いれば、ピークを定量することで極めて簡単に行うことができる。自動処理化することも比較的容易である。
以下、この方法の一例を説明する。ここでは、配列番号1、2のプライマー対、制限酵素AflIII、HaeIIを用いた場合に即して説明する。
先ず、ヘテロ二本鎖が生成することのあるヘテロ接合体(ゲノタイプE2/E3、E2/E4、E3/E4)について説明する。
ゲノタイプE2/E3の場合、テンプレートDNAをE2a/E2b二本鎖、E3a/E3b二本鎖であるとすると、PCRによる増幅の過程でヘテロ二本鎖が生成すると、PCR産物、生成するDNA制限断片長の組み合わせ、それぞれの産物(DNA制限断片)の量の関係は下記表1、及び図6(a)に示すようになる。尚、ここでは、増幅された後切断されたPCR産物の全量が100pmolで、ヘテロ二本鎖の生成割合が50%であるとした例を示す。
Figure 0004677646
E2、E3、E4の全ての多型、即ち、全てのゲノタイプで80bpのDNA制限断片(DNA断片R1)、50bpのDNA制限断片(DNA断片F)、更には18bpのDNA制限断片(DNA断片R3)、13bpのDNA制限断片(DNA断片R2)が出現し、その数は、増幅された後に切断されたDNAの数(以下「反応DNA全量」という。)と同じとなる。
この場合、80bp(DNA断片R1)又は50bp(DNA断片F)のDNA制限断片の量(測定値)をα(pmol)、145bp(DNA断片B)又は35bp(DNA断片R4)のDNA制限断片の量(測定値)をβ(pmol)とすると、ヘテロ二本鎖の生成割合X(%)は、
X(%)=[(α−2β)/α]×100
となる。即ち、ヘテロ二本鎖に特異的なDNA制限断片の生成しないゲノタイプE2/E3の場合は、ヘテロ二本鎖以外の二本鎖のみに由来する145bp(DNA断片B)又は35bp(DNA断片R4)のDNA制限断片の量(測定値)(ヘテロ二本鎖以外の二本鎖全体の量はその2倍と推定できる。)と、E2、E3、E4の全ての多型について生成する80bp(DNA断片R1)又は50bp(DNA断片F)のDNA制限断片の量(測定値)(即ち、反応DNA全量)とから、ヘテロ二本鎖の生成割合を求める。
そして、求めたヘテロ二本鎖の生成割合X(%)と、E2、E3、E4の全ての多型について生成する80bp(DNA断片R1)又は50bp(DNA断片F)のDNA制限断片の量(測定値)α(pmol)から、各DNA制限断片の理論上の出現数に基づいて各DNA断片の量を予測(推定)することができる。つまり、下記、
180bpの(DNA断片D)の推定量(pmol):
{[(100−X)×0.01]/2}×α+(α×X×0.01)
145bp(DNA断片B)の推定量(pmol):
{[(100−X)×0.01]/2}×α
123bp(DNA断片A)の推定量(pmol):
{[(100−X)×0.01]/2}×2×α+(α×X×0.01)
35bp(DNA断片R4)の推定量(pmol):
{[(100−X)×0.01]/2}×α
により各DNA断片の量を推定することができる。
次に、ゲノタイプE3/E4の場合、テンプレートDNAをE3a/E3b二本鎖、E4a/E4b二本鎖であるとすると、上記ゲノタイプE2/E3の場合と同様に考えた場合、生成するDNA制限断片長の組み合わせ、それぞれの量の関係は、下記表2、及び図6(b)に示すようになる。
Figure 0004677646
この場合、上記ゲノタイプE3/E4の場合と同様に考えて、80bp(DNA断片R1)又は50bp(DNA断片F)のDNA制限断片の量(測定値)をα(pmol)、145bp(DNA断片B)又は123bp(DNA断片A)の量(測定値)をβ(pmol)とすると、ヘテロ二本鎖の生成割合X(%)は、
X(%)=[(α−2β)/α]×100
となる。そして、上記ゲノタイプE2/E3の場合と同様に考えて、各DNA制限断片の推定量は、下記、
268bp(DNA断片C)の推定量(pmol):
{[(100−X)×0.01]/2}×α+(α×X×0.01)
145bp(DNA断片B)の推定量(pmol):
{[(100−X)×0.01]/2}×α
123bp(DNA断片A)の推定量(pmol):
{[(100−X)×0.01]/2}×α
35bp(DNA断片R4)の推定量(pmol):
{[(100−X)×0.01]/2}×2×α+(α×X×0.01)
となる。
一方、ゲノタイプE2/E4の場合、テンプレートDNAをE2a/E2b二本鎖、E4a/E4b二本鎖であるとすると、上記ゲノタイプE2/E3、E3/E4の場合と同様に考えた場合、生成するDNA制限断片長の組み合わせ、それぞれの量の関係は、下記表3、及び図6(c)に示すようになる。
Figure 0004677646
上記E2/E3、E3/E4の場合と同様、全てのゲノタイプで80bpのDNA制限断片(DNA断片R1)、50bpのDNA制限断片(DNA断片F)、更には18bpのDNA制限断片(DNA断片R3)、13bpのDNA制限断片(DNA断片R2)が出現し、その数は、反応DNA全量と同じとなる。
そして、この場合、80bp(DNA断片R1)又は50bp(DNA断片F)のDNA制限断片の量(測定値)をα(pmol)、303bp(ヘテロ二本鎖特異的断片)のDNA制限断片の量(測定値)をγ(pmol)とすると、ヘテロ二本鎖の生成割合X(%)は、
X(%)=γ/α×100
となる。即ち、ヘテロ二本鎖に特異的なDNA制限断片の生成するゲノタイプE2/E4の場合は、ヘテロ二本鎖のみに由来する303bp(ヘテロ二本鎖特異的断片)のDNA断片の量(測定値)と、E2、E3、E4の全ての多型について生成する80bp(DNA断片R1)又は50bp(DNA断片F)のDNA制限断片の量(測定値)(即ち、反応DNA全量)とから、ヘテロ二本鎖の生成割合を求めることができる。
或いは、上記ゲノタイプE2/E3の場合と同様に考えて、80bp(DNA断片R1)又は50bp(DNA断片F)の量(測定値)をα(pmol)、268bp(DNA断片C)、180bp(DNA断片D)、123bp(DNA断片A)又は35bp(DNA断片R4)の量(測定値)をβとすると、ヘテロ二本鎖の生成割合X(%)は、
X(%)=[(α−2β)/α]×100
となる。
そして、各DNA断片の推定量は、下記、
268bp(DNA断片C)の推定量(pmol):
{[(100−X)×0.01]/2}×α
180bp(DNA断片D)の推定量(pmol):
{[(100−X)×0.01]/2}×α
123bp(DNA断片A)の推定量(pmol):
{[(100−X)×0.01]/2}×α
35bp(DNA断片R4)の推定量(pmol):
{[(100−X)×0.01]/2}×α
となる。
以上のようにして、ヘテロ接合体についての各DNA制限断片の量を推定することができる。そして、各DNA制限断片の定量値(測定値)が、その推定量に整合する場合、即ち、推定量に相当する量だけ存在するときに、該DNA制限断片が出現したものと判断することができる。尚、推定量との誤差がどの程度の場合に該DNA制限断片が出現したものと判断するかは、適宜、選定することができる。
尚、上述では、E2、E3、E4の全てについて生成するDNA断片Rとして、80bpのDNA断片(DNA断片R1)を用いた場合を例に説明したが、高解像度のDNA分離方法(装置)を用いる場合などにおいて、18bp(DNA断片R3)、13bp(DNA断片R2)のDNA断片を、適切な切断反応の存在の判定、DNA制限断片の定量に用いることもできる。
又、ヘテロ二本鎖が問題になるのはヘテロ接合体の場合であるが、ホモ接合体の場合においても、上述したように、DNA断片F及び/又はE2、E3、E4の全てについて生成するDNA断片Rを定量した結果に基づいて、それぞれのゲノタイプに関係付けることのできるDNA断片、特に、DNA断片A、DNA断片B、DNA断片C及び/又はDNA断片Dの存在をより正確に判断することができる。
つまり、上記ヘテロ接合体の場合と同様に、増幅された後切断されたPCR産物の全量が100pmolであると仮定した場合の、各ゲノタイプで生成する各DNA制限断片の量(推定量)を図7に示す。酵素処理後には、E2、E3、E4の全ての多型について生成する13bp(DNA断片R2)、18bp(DNA断片R3)、50bp(DNA断片F)、80bp(DNA断片R1)のDNA制限断片が、PCRで増幅された後切断されたDNAの数(反応DNA全量)と同じだけ生成される。
そして、ゲノタイプE2/E2、E3/E3、E4/E4のサンプルではヘテロ二本鎖が生成されないため、ゲノタイプE2/E2では123bp(DNA断片A)、180bp(DNA断片D)のDNA制限断片、ゲノタイプE3/E3では35bp(DNA断片R4)、123bp(DNA断片A)、ゲノタイプ145bp(DNA断片B)のDNA制限断片、ゲノタイプE4/E4では35bp(DNA断片R4)、268bp(DNA断片C)のDNA制限断片が、上記のE2、E3、E4の全ての多型について生成するDNA制限断片の数(反応DNA全量)と同じだけ生成される。このように、ホモ接合体についても、各DNA断片の量を推定することができる。そして、各DNA断片の定量値(測定値)が、その推定量に整合する場合、即ち、推定量に相当する量だけ存在するときに、該DNA断片が出現したものと判断することができる。
上述のように、適正な消化反応の判定、DNA制限断片の定量に使用するためには、E2、E3、E4の全ての多型について生成するDNA断片R1とDNA断片R4とが良好に分離可能であることが好ましい。但し、DNA断片R1とDNA断片R4とが重なる場合であっても、同じ目的のためにこのDNA断片R(DNA断片R1及びR4)を用いることができる。この場合の各ゲノタイプでのDNA制限断片の分離パターンを図8に示す。
次に、DNA断片R1の長さがDNA断片R4と同じであるとき(即ち、DNA断片R1、R4が共に35bpであるとき)に、DNA断片R1をDNA制限断片の定量のために用いる場合について説明する。尚、当然、以下の説明によらず、E2、E3、E4の全ての多型について生成するDNA断片Rは制限酵素(より詳細には第2の制限酵素(HaeII))による適正な切断反応の存在の判定のために用い、DNA断片Fを制限酵素(より詳細には第1の制限酵素AflIII)による適正な切断反応の判定とDNA制限断片の定量とのために用いてもよい。勿論、高解像度のDNA分離方法(装置)を用いる場合などにおいて、上記同様、18bp(DNA断片R3)、13bp(DNA断片R2)のDNA制限断片を、適切な切断反応の存在の判定、DNA制限断片の定量に用いることもできる。
この場合、E2、E3、E4の全てについて生成する35bp(DNA断片R1及びR4)のDNA制限断片を定量した結果に基づいてヘテロ二本鎖の生成割合、各DNA断片の推定量を求めることができる。
先ず、ヘテロ二本鎖が生成することのあるヘテロ接合体(ゲノタイプE2/E3、E2/E4、E3/E4)について説明する。
ゲノタイプE2/E3の場合、テンプレートDNAをE2a/E2b二本鎖、E3a/E3b二本鎖であるとすると、PCRによる増幅の過程でヘテロ二本鎖が生成すると、PCR産物、生成するDNA制限断片長の組み合わせ、それぞれの産物(DNA制限断片)の量の関係は下記表4、及び図9(a)に示すようになる。尚、ここでは、増幅された後切断されたPCR産物の全量が100pmolで、ヘテロ二本鎖の生成割合が50%であるとした例を示す。又、表中、便宜的に、35bpのDNA断片の鎖長は、DNA断片4(E3、E4において生成)を35(a)bp、DNA断片R1(E2、E3又はE4の全てで生成)を35(b)bpとして区別している。
Figure 0004677646
35bpのDNA断片は、E2、E3、E4の全ての多型、即ち、全てのゲノタイプで出現する。但し、その量には、DNA断片R4由来のものと、DNA断片R1由来のものとが含まれている。
この場合、35bpのDNA制限断片の量(測定値)をα’(pmol)、145bp(DNA断片B)のDNA制限断片の量(測定値)をβ(pmol)とすると、ヘテロ二本鎖の生成割合X(%)は、
X(%)=[(α’−3β)/(α’−β)]×100
となる。即ち、E2/E2二本鎖及びヘテロ二本鎖からはDNA断片R1(表中35(b))のみが生成するが、E3/E3二本鎖からはDNA断片R4(表中35(a))及びDNA断片R1(表中35(b))が生成する。このE3/E3二本鎖から生成するDNA断片R4(表中35(a)))の量は、E3/E3二本鎖のみから生成する145bp(DNA断片B)のDNA制限断片の量と同じである(表中35(b)も同じ量である)ので、35bpのDNA制限断片の量α’(pmol)からβ(pmol)を差し引いたものが、反応DNA全量となる。つまり、35bpのDNA断片の量α’は、表1を参照して説明した例における(α+β)に相当する。
そして、求めたヘテロ二本鎖の生成割合X(%)と、35bp(DNA断片R1及びR4)のDNA制限断片の量α’(pmol)、145bp(DNA断片B)のDNA制限断片の量β(pmol)から、各DNA制限断片の理論上の出現数に基づいて各DNA断片の量を予測(推定)することができる。つまり、下記、
180bpの(DNA断片D)の推定量(pmol):
{[(100−X)×0.01]/2}×(α’−β)+[(α’−β)×X×0.01]
145bp(DNA断片B)の推定量(pmol):
{[(100−X)×0.01]/2}×(α’−β)
123bp(DNA断片A)の推定量(pmol):
{[(100−X)×0.01]/2}×2×(α’−β)
+[(α’−β)×X×0.01]
により各DNA制限断片の量を推定することができる。
次に、ゲノタイプE3/E4の場合、テンプレートDNAをE3a/E3b二本鎖、E4a/E4b二本鎖であるとすると、上記ゲノタイプE2/E3と同様に考えた場合、生成するDNA制限断片長の組み合わせ、それぞれの量の関係は、下記表5、及び図9(b)に示すようになる。
Figure 0004677646
この場合、35bpのDNA制限断片の量(測定値)をα’’(pmol)、145bp(DNA断片B)又は123bp(DNA断片A)のDNA断片の量(測定値)をβ(pmol)とすると、ヘテロ二本鎖の生成割合X(%)は、
X(%)=[(α’’/2)−2β]/(α’’/2)]×100
となる。即ち、E3/E3二本鎖、E4/E4二本鎖及びヘテロ二本鎖の全てから、DNA断片R4(表中35(a))及びDNA断片R1(表中35(b))が生成する。従って、35bpのDNA断片の量α’’(pmol)の1/2が反応DNA全量となる。つまり、35bpのDNA断片の量α’’は、表2を参照して説明した例における2αに相当する。
そして、上記E2/E3の場合と同様に考えて、各DNA断片の量の推定量は、下記、
268bp(DNA断片C)の推定量(pmol):
{[(100−X)×0.01]/2}×(α’’/2)+[(α’’/2)×X×0.01]
145bp(DNA断片B)の推定量(pmol):
{[(100−X)×0.01]/2}×(α’’/2)
123bp(DNA断片A)の推定量(pmol):
{[(100−X)×0.01]/2}×(α’’/2)
となる。
一方、ゲノタイプE2/E4の場合、テンプレートDNAをE2a/E2b二本鎖、E4a/E4b二本鎖であるとすると、上記ゲノタイプE2/E3、E3/E4の場合と同様に考えた場合、生成するDNA制限断片長の組み合わせ、それぞれの量の関係は、下記表6、及び図9(c)に示すようになる。
Figure 0004677646
この場合、35bpのDNA断片の量をα’(pmol)、268bp(DNA断片C)(或いは、123bp(DNA断片A)又は180bp(DNA断片D))のDNA制限断片の量をβ(pmol)、286bp(ヘテロ二本鎖特異的断片)のDNA制限断片の量をγ(pmol)とすると、ヘテロ二本鎖の生成割合X(%)は、
X(%)=γ/(α’−β)×100
となる。即ち、E2/E2二本鎖及びヘテロ二本鎖からはDNA断片R1(表中35(b))のみが生成するが、E4/E4二本鎖からはDNA断片R4(表中35(a))及びDNA断片R1(表中35(b))が生成する。このE4/E4二本鎖から生成するDNA断片R4(表中35(a)))の量は、E4/E4二本鎖のみから生成する268bp(DNA断片C)のDNA制限断片(或いは、E2/E2二本鎖からのみ生成する123bp(DNA断片A)又は180bp(DNA断片D)のDNA制限断片)の量と同じであるので、35bpのDNA断片の量α’(pmol)からβ(pmol)を差し引いたものが、反応DNA全量となる。つまり、35bpのDNA断片の量α’は、表3の場合の(α+β)に相当する。
或いは、上記ゲノタイプE2/E3の場合と同様に考えて、35bpのDNA制限断片の量をα’(pmol)、268bp(DNA断片C)、180bp(DNA断片D)又は123bp(DNA断片A)のDNA制限断片の量をβ(pmol)とすると、ヘテロ二本鎖の生成割合X(%)は、
X(%)=[(α’−3β)/(α’−β)]×100
となる。
そして、求めたヘテロ二本鎖の生成割合X(%)と、35bpのDNA断片の量から、各DNA断片の量を予測(推定)することができる。つまり、下記、
268bp(DNA断片C)の推定量(pmol):
{[(100−X)×0.01]/2}×(α’−β)
180bp(DNA断片D)の推定量(pmol):
{[(100−X)×0.01]/2}×(α’−β)
123bp(DNA断片A)の推定量(pmol):
{[(100−X)×0.01]/2}×(α’−β)
により各DNA制限断片の量を推定することができる。
以上のようにして、ヘテロ接合体についての各DNA制限断片の量を推定することができる。そして、各DNA制限断片がその推定量に相当する量だけ存在するときに、該DNA断片が出現したものと判断することができる。
又、ホモ接合体の場合は、次のようになる。増幅された後切断されたPCR産物の全量が100pmolであると仮定した場合の、各ゲノタイプで生成する各DNA制限断片の量(推定量)を図10に示す。ゲノタイプE2/E2については、酵素処理後には、PCRで増幅された後切断されたDNAの数(反応DNA全量)と同じだけ、35bpのDNA制限断片(DNA断片R1)が生成される。一方、E3/E3、E4/E4については、PCRで増幅された後切断されたDNAの数(反応DNA全量)の2倍、35bpのDNA制限断片(DNA断片R1及びR4)が生成される。
そして、ゲノタイプE2/E2、E3/E3、E4/E4のサンプルではヘテロ二本鎖が生成されないため、ゲノタイプE2/E2では123bp(DNA断片A)、180bp(DNA断片D)のDNA制限断片が、このDNA断片の数と同じだけ生成される。一方、ゲノタイプE3/E3では123bp(DNA断片A)、145bp(DNA断片B)のDNA制限断片が35bpのDNA制限断片(DNA断片R1及びR4)の1/2だけ生成し、E4/E4では268bp(DNA断片C)のDNA制限断片が35bpのDNA制限断片(DNA断片R1及びR4)の1/2だけ生成される。このように、ホモ接合体についても、各DNA制限断片の量を推定することができる。そして、各DNA制限断片がその推定量に相当する量だけ存在するときに、該DNA制限断片が出現したものと判断することができる。
ところで、図13は、上記非特許文献6に開示される方法によるApoE遺伝子多型の各ゲノタイプでのDNA断片の分離パターンを模式的に示す。非特許文献6の方法では、前述のプライマー対を用いてApoE遺伝子特異的な領域を増幅し、2種類の制限酵素AflIII、HaeIIを用いて断片化する。そして、図13に示すように、それぞれE3、E2、E4に特異的な145bp、168bp、195bpのDNA制限断片が得られる。
しかしながら、非特許文献6は、E2及びE3で出現し、E4で出現しない最上流のDNA断片をApoE遺伝子多型の判別の根拠として用いることについては何ら言及していない。
又、この方法では、全てのゲノタイプで生成するDNA断片はなく、いずれかのDNA断片の存否によってPCR産物の消化が適正に行われたか否かの判断をすることは不可能である。又、同様に、全てのゲノタイプで生成するDNA断片はないので、いずれかのDNA断片の量を定量することによって、複製された後制限酵素で切断され、ゲノタイピングの用に供することのできるDNAの全量を予測することができない。従って、ヘテロ二本鎖の発生割合を求めることも不可能である。
又、非特許文献6の方法では、未消化フラグメント(218bp)が、E2/E4の場合に生成し得るヘテロ二本鎖(218bp)と同じであるため、ヘテロ二本鎖が生成したのか、酵素反応が起こっているのかどうかの確認することはできない。そのため、タイピングを誤る可能性がある。
これに対して、本発明によれば、DNA断片F及び/又はE2、E3、E4の全てについて生成するDNA断片Rの存否によりPCR産物の適正な消化が行われたか否かを判断できる。これに加え、E2/E4の場合にヘテロ二本鎖が生成されると、酵素が反応したときにはPCR産物(図5に示す例では464bp、図8の例では419bp)は必然的に切断され、短いヘテロ二本鎖特異的断片(303bp)が出現する。によって反応が進んでいることを容易に確認できる。
上述のように、本発明に係るApoE遺伝子多型検出方法は、一実施態様では、(1)ゲノムDNAをテンプレートとして、ApoE遺伝子に特異的なプライマー対を用いてPCR法によってApoE遺伝子の多型領域を増幅し、(2)増幅されたDNAを所定の制限酵素を用いて切断し、(3)切断したDNA制限断片を分離し、分離されたDNA制限断片を検出する各段階を含む。又、本発明に係るApoE遺伝子多型検出方法は、(4)検出したDNA断片長の組合せからApoE遺伝子多型のゲノタイピングを行う段階を更に含んでいてよい。更に、試料からゲノムDNAを抽出する段階を含んでいてよい。
試料は、ゲノムDNAを抽出することが可能であれば何を用いても構わない。例えば、末梢血液、毛根、爪、口腔粘膜などが例示される。好ましくは末梢血液である。
試料からのゲノムDNAの抽出方法としては、如何なる手法をも用い得るが、例えば、市販のDNA精製キットを用いて、試料としての末梢血液から白血球を分離し、該白血球から市販のDNA精製キットを用いてゲノムDNAを抽出することができる。この目的に好適に使用し得るDNA精製キットが、Wizard Plus Midipreps DNA Purification Systemとしてプロメガ社から市販されている。このキットを用いたDNA抽出の操作には3〜4時間ほど要する。一方、ボイリング法と呼ばれるDNA抽出方法(例えば、Applied Biosystems社のPrepMan Ultra Reagent)を用いれば20分ほどでPCR法においてテンプレートとするのに十分な量のゲノムDNAが得られる。
ApoE遺伝子の多型領域は、一般的にサーマルサイクラーと呼ばれるDNA増幅装置を用いてPCR法によって増幅することができる。ゲノムDNAをテンプレートとして用いる場合、ゲノムDNA2本鎖を加熱して変性し、1本鎖にする(変性)。次に、増幅したい特定部位のDNA鎖の両端に相補的な2種類のオリゴヌクレオチドプライマー(プライマー対)を反応系に過剰に加えた状態で温度を下げると、プライマーがDNA鎖の相補的な部位と2本鎖を形成する(アニーリング)。この状態でDNA合成基質のデオキシヌクレオシド3リン酸(dNTP)とDNAポリメラーゼを作用させると、ポリメラーゼはプライマー部位からDNA相補鎖を合成していく(伸長反応)。引き続き、得られた2本鎖を加熱して1本鎖として、プライマーのアニーリング、伸長反応を行い、再度得られた2本鎖を1本鎖とする反応を繰り返す。
PCR反応条件、即ち、PCR反応混合物に含まれるテンプレートDNA、プライマー対、dNTP、緩衝液、DNAポリメラーゼ等の種類・量(濃度)、或いは変性、アニーリング、伸長反応を行う温度・時間、サイクル数は、適宜選択事項である。本発明に従い、上記新規なプライマー対(配列番号1、配列番号2)及びTaqポリメラーゼを用いて、PCR法でゲノタイピングに必要十分量のDNAを好適に得ることのできる一実施例を後述する。
本発明の好ましい一実施態様では、配列番号1、2のプライマーを用いて増幅されたApoE遺伝子の多型領域は、2種類の制限酵素、より具体的には、上記制限酵素AflIII、HaeIIの組合せを用いて切断する。斯かる切断は、当該制限酵素の組合せにおいて最適な条件、即ち、2種類の制限酵素が好適に作用し、RFLPによるゲノタイピングを行うのに十分にApoE遺伝子の多型領域が切断される反応条件(反応混合物に含まれる成分の種類・量(濃度)、反応温度、反応時間など)にて行う。本発明者らの検討により最適と思われる一実施例を後述する。
得られたDNA制限断片は、好ましい一実施態様では、電気泳動で分離する。そして、分離されたDNA制限断片は、使用する電気泳動法に応じた方法により検出する。
上述のように、本発明によれば、上記新規なプライマー対、及び上記本発明に従う制限酵素、特に2種類の制限酵素の組合せ(AflIII、HaeII)を用いることにより、非特許文献5に記載の制限酵素HhaIを用いた場合よりも長いDNA制限断片が得られる。より詳細には、本発明によれば、それぞれのアポリポタンパクE遺伝子多型に特異的な略100bp以上のDNA制限断片が生成し、更に詳しくは、好ましい一実施態様では、上記第1の切断位置と第2の切断位置との間の長さ以上、即ち、144bp以上のDNA制限断片が生成する。これによって、DNA分離方法として、典型的には、斯界にて通常用いられ、且つ、安価なDNA分離方法であるアガロースゲル電気泳動を用いても、高解像度にてDNA制限断片を分離することができる。アガロースゲル電気泳動では、種々の染色法のうち例えば、染色剤としてのエチジウムブロマイドで染色し、紫外線を照射することにより、分離されたDNA制限断片を検出することができる。
又、上記新規なプライマー対、及び上記本発明に従う制限酵素、特に2種類の制限酵素の組合せ(AflIII、HaeII)を用いることにより、上記同様の理由から、前述の日立SV1210、Agilent2100、ABI3100(或いはABI3700)等の多様なDNA分離方法を用い、高解像度にてDNA制限断片を分離、検出することができる。
日立SV1210は、樹脂チップ上にサンプル等の装填用穴と微細な溝とが設けられたマイクロチップ[i−チップ]及び所定の試薬キット(ゲル、染色試薬、内部標準等)と共に用い、又、Agilent2100の電気泳動用セットは、ガラスチップ上にサンプル等の装填用穴と微細な溝とが設けられたマイクロチップ[DNA LabChip(登録商標)]及び所定の試薬キットと共に用い、所定の手順に従って所定の試薬及びサンプルをマイクロチップに装填して装置本体にセットすることで、マイクロチップ上の分離部へのゲルの充填、複数のサンプルの電気泳動、バンドの検出、データ出力を自動で行うことができる。分離されたDNA制限断片は、染色剤の蛍光により検出される。日立SV1210は12サンプルを約5分で、Agilent2100は12サンプルを約30分で分析する。
又、ABI3100(或いはABI3700)は、キャピラリーと呼ばれる微小径ガラス管に充填したポリマー中で電気泳動を行うキャピラリー電気泳動法を利用し、サンプルの蛍光によりバンドを検出するシステムであり、所定のキャピラリーアレイ、セパレーションポリマー及び試薬キットと共に用いることで、キャピラリーへのポリマー充填、複数のサンプルの電気泳動、バンドの検出、データ出力を自動で行うことができる。ABI3100は、使用するキャピラリアレイに応じて、約1時間〜数時間で複数サンプルを分析する。
非特許文献5に記載の制限酵素HhaIを用いた方法では、これら近年開発された種々のDNA分離方法を用いた場合にも、正確なゲノタイピングを行うには満足のゆく解像度を得ることができなかった。これに対し、本発明によれば、これらのDNA分離方法の利点を活用することが可能になり、DNA制限断片の分離、検出の迅速化、大量処理化、又自動化が可能になった。更に、これら近年開発されたDNA分離方法においては、サンプル、試薬等の微量化が図れる。
又、本発明によれば、DNA断片F及び/又はE2、E3、E4の全ての多型について生成するDNA断片Rの量を利用することによって、更にApoE遺伝子多型の検出、ゲノタイピングの正確性、信頼性を高めることができる。日立SV1210、Agilent2100、ABI3100(或いはABI3700)等の近年開発されDNA分離方法では、DNA制限断片の同定、定量等の処理を極めて良好に高速且つ簡便に行うことができ、自動化を図ることもできる。
勿論、所望によりポリアクリルアミドゲル電気泳動によってDNA制限断片を分離、検出することもできる。
検出されたDNA制限断片の分離パターン(検出されたDNA断片長の存否の組み合わせ)から、ApoE遺伝子多型のタイピングを行う段階は、コンピュータ処理により自動化してもよい。更に、ロボット化等により自動化を進めてもよい。この場合、ApoE遺伝子多型の各ゲノタイプについて既知のDNA制限断片の分離パターンと、サンプルについて得られたDNA制限断片の分離パターンとを比較し、サンプルをいずれかのApoE遺伝子多型のゲノタイプに関係付ける出力を行うようにすればよいことは当業者にとって自明である。
即ち、本発明のApoE遺伝子多型のゲノタイプ判定方法は、記憶部、演算処理部、出力部を備える一般的なコンピュータで実行可能なプログラムとして提供することができる。即ち、該プログラムにより、演算処理部は、本発明の本発明のApoE遺伝子多型検出方法に従って検出した各DNA断片長の存否の組み合わせと、記憶部に記憶された既知のApoE遺伝子多型の各ゲノタイプの同組み合わせとを比較し、上記本発明の判定方法に従って、サンプルのApoE遺伝子多型のゲノタイプを、いずれかのゲノタイプに関係付ける。そして、こうして関係付けた結果を、コンピュータの画面、記録紙等に出力させる。
又、演算処理部は、上述のように、DNA断片F及び/又はE2、E3、E4の全てについて生成するDNA断片Rの存否によって制限酵素が効果的に反応しているかを判断し、その結果に応じてサンプルのApoE遺伝子多型のゲノタイプを判定するか、若しくは検出結果を採用しない等の判断を行うことができる。又は、演算処理部は、上述したように、DNA断片F及び/又はE2、E3、E4の全てについて生成するDNA断片Rを定量した結果(或いは、このDNA断片Bを定量した結果に基づくヘテロ二本鎖の生成割合)から、各DNA断片の推定量を算出し、該推定量とそれぞれのDNA断片の測定値とを比較することで、測定値が推定量と適宜選定可能な所定の精度範囲で整合するか否かを判断することができる。そして、推定量と測定値とが整合したDNA断片についてそのDNA断片の存在を判断して、各DNA断片の存否の組み合わせから、サンプルのApoE遺伝子多型のゲノタイプを判定することができる。
本発明に従ってヒト検体からの試料についてApoE遺伝子多型のゲノタイピングを行うことにより、ApoE遺伝子多型と関連する疾患の診断、治療のために、迅速、且つ、正確な情報を提供することができる。例えば、上述のように、ApoE遺伝子多型の1つであるE4は、アルツハイマー病、高脂血症、高リポタンパク血症、高コレステロール血症、心血管疾患(アテローム性動脈硬化、虚血性心疾患、脳血管障害など)、睡眠時無呼吸症候群の非常に強い危険因子であることが知られている。従って、ApoE遺伝子多型のゲノタイピングを行うことにより、より詳細には、例えば対象検体がApoE遺伝子多型のE4アリルを1つ有するのか、2つ有するのか、或いは有していないのかを迅速、且つ、正確に検出することによって、これらアルツハイマー病、心血管疾患などの予診が可能である。
特に、上述のような近年開発された種々のDNA分離方法によれば、分析作業の自動化、大量処理化が可能となるので、個々のサンプルのゲノタイピングに要する時間を短縮すると共に、多くの検体からのサンプルを一度に大量に処理することができ、診断、治療に極めて有用な情報を、正確、且つ、迅速に提供することができる。
尚、蛍光物質などの標識物質によってプライマーを修飾することにより、その標識物質を利用したDNA断片の分離、同定方法も可能である。
本発明に係るApoE遺伝子多型の検出試薬は、一実施態様では、上記ApoE遺伝子に特異的なプライマー対を含む増幅試薬である。増幅試薬は更に、耐熱性DNAポリメラーゼ、dNTP(dATP、dGTP、dTTP、dCTP)、緩衝液のいずれか若しくは全てを含んでいるか、又は組み合わされた試薬セットとされていてよい。詳しくは後述するように、所望に応じてdNTPは、標識物質(例えば蛍光物質)で標識されていてもよい。使用し得る耐熱性DNAポリメラーゼとしては、Taqポリメラーゼ、KODポリメラーゼ、Ventポリメラーゼなどの耐熱性ポリメラーゼが挙げられるが、上記プライマー対(配列番号1、2)を用いる場合には、Taqポリメラーゼが好適である。緩衝液は、使用される耐熱性DNAポリメラーゼに応じて選択すればよい。増幅試薬は更に、塩、保存料(例えば、防腐剤(アジ化ナトリウム等)、酸化防止剤)、DMSO、ホルムアミド、ベタイン、ゼラチンなどの適当な添加成分のいずれか若しくは全てを含んでいるか、又は組み合わされた試薬セットとされていてよい。増幅試薬に含まれる若しくは組み合わされる諸成分の選択、濃度等の条件については、当業者は通常行う実験などを通して適宜選択することができる。
本発明に係るApoE遺伝子多型の検出試薬は、他の実施態様では、上記所定の制限酵素を含む消化試薬である。この消化試薬は更に、緩衝液を含んでいるか、若しくは組み合わされた試薬セットとされていてよい。緩衝液は、使用する制限酵素に応じて選択されるが、制限酵素がAflIII、HaeIIの組合せであるとき、中または高塩濃度緩衝液を好適に使用することができる。消化試薬は更に、塩、保存料(例えば、防腐剤(アジ化ナトリウム等)、酸化防止剤)、BSA、グリセロール、ジチオスレイトール(DTT)などの適当な添加成分のいずれか若しくは全てを含んでいるか、又は組み合わされた試薬セットとされていてよい。消化試薬に含まれる若しくは組み合わされる諸成分の選択、濃度等の条件については、当業者は通常行う実験などを通して適宜選択することができる。
更に、他の実施態様では、ApoE遺伝子多型の検出試薬は、上記増幅試薬、消化試薬が組み合わされた試薬セットとされていてもよい。
以下、本発明に係るApoE遺伝子多型検出方法を実施例を通して更に詳しく説明する。以下の説明において、特に言及しない限り、用いられる器具、試薬は斯界にて一般的なものである。又、特に言及しない限り、以下で行われる実験操作も標準的なものと特に変わるところはない。
実施例1
[DNA抽出]
先ず、ヒト検体の血液を試料として、白血球由来のゲノムDNAを抽出する。ここでは、プロメガ社のDNA精製キットであるWizard Plus Midipreps DNA Purification Systemを用いて、末梢血液から白血球を分離し、その白血球からゲノムDNAを抽出した。各検体毎に、PCR法によるApoE遺伝子の多型領域の増幅に十分量のゲノムDNAを抽出した。抽出の操作は付属のプロトコールに従って行った。
[ApoE領域のDNA増幅]
上記方法により抽出したゲノムDNAをテンプレートとして、下記の条件にてPCR法によりApoE遺伝子の多型領域を増幅した。尚、プライマー対は、DNA(オリゴヌクレオチド)合成装置により合成して得た。又、耐熱性DNAポリメラーゼとしては、Taqポリメラーゼ(Parkin Elmer Cetus社)を用いた。
a)プライマー対
上流側プライマー(AE−Fafl5):配列番号1
5’−ACACCCTCCCGCCCTCTCGGCCGCAGGGCGCGGATGGACGAGACCATGAACGCGTTGAAG−3’
下流側プライマー(AE−Rhae):配列番号2
5’−GCCCGCTCCTGTAGCGGC−3’。
b)PCR反応混合物
白血球より抽出したゲノムDNA: 50ng
プライマー対: 1μM
dNTP 200μM
緩衝液(10倍濃縮標準PCR緩衝液) 1μl
DMSO(dimethyl sulfoxide): 5%
Betaine(ベタイン):1M
Taqポリメラーゼ: 0.025units/μl
総反応量: 10μl。
c)PCRサイクルの条件
94℃,1分間(変性)
次いで、下記のサイクルを35回繰り返す。
94℃,30秒間(変性)
60℃,30秒間(プライマーアニーリング)
72℃,1分間(伸長反応)
次いで、次の条件で最終的に2本鎖を形成する。
72℃,5分間(最終伸長反応)。
上記PCR条件にて増幅されたDNAフラグメントの量は約100ngであった。
[RFLP及び制限酵素切断断片の分離とゲノタイピング]
約10〜20ngのPCR産物、制限酵素AflIII(New England biolabs社)(3unit)及びHaeII(New England biolabs社)(6unit)、1×NEBuffer 3、1×BSAを含む反応溶液を、全量が10μlになるように調製し、37℃で30分以上反応させた。その後50mM EDTAを2.5μl加え、制限酵素を失活させた。その後、反応溶液の1μlを、下記の条件での日立SV1210によるDNA制限断片の分離、検出に供した。
測定用マイクロチップ: i−チップ IC−1100
試薬キット: IC−9101。
測定手順は、装置供給元の指示に従った。DNA制限断片の分離結果は、当該装置に接続されたコンピュータのディスプレイ上に表示される。代表的なDNA制限断片の分離結果を図11に示す。図中に付記したように、上から順にE2/E3、E3/E4、E4/E4、E3/E3、E2/E3の各ゲノタイプのDNA制限断片の分離パターンを示す。図11は、10bpの内部標準を用いた例を示す。
[結果]
a)汎用性
図11に示すように、本発明によれば、近年開発されたDNA分離方法である日立SV1210を好適に用いて良好に分離した各断片長毎のピークが得られた。そして、高解像度にてApoE遺伝子多型をゲノタイピングすることができた。DNA制限断片の分離性、ゲノタイピングの容易性は、制限酵素HhaIを用いる非特許文献5の方法と比較して著しく向上した。
又、安価で広く用いられているDNA制限断片の分離方法であるアガロースゲル電気泳動によっても、高解像度にてApoE遺伝子多型をゲノタイピングすることができる。
このように、本発明に係るApoE遺伝子多型の検出方法は、現在使用されている多くの電気泳動法に適用可能であり、極めて汎用性が高い。
更に、本発明は、DNA分離方法を電気泳動法に限定するものではない。上述のように、例えば、アガロースゲル電気泳動法は、安価且つ簡便であることから広く用いられている。又、日立SV1210等の他の近年開発された電気泳動法を利用した種々のDNA分離方法は極めて迅速、且つ、簡便である。これらの理由から、従来DNA分離法として広く用いられている電気泳動法は、本発明を実施するに当たり最も好ましいと思われるが、本発明は他のDNA分離法、例えば質量分析機(MASS-Spectrometry)等を利用することでも実施可能である。
b)簡便性、迅速性
本発明によれば、日立SV1210等の高速、自動処理が可能なDNA分離方法を好適に活用できるので、ApoE遺伝子多型の検出、ゲノタイピングにかかる時間を大幅に短縮することができる。又、アガロースゲル電気泳動を用いる場合でも、染色体DNAをテンプレートにしたPCRから、ApoE遺伝子多型のタイピングの結果が判別するまで約3時間と、ポリアクリルアミドゲル電気泳動法を用いる非特許文献5の方法に比較して、ゲノタイピングにかかる時間を大幅に短縮することができる。更に、ポリアクリルアミドゲル電気泳動法に比較して、アガロースゲル電気泳動は操作が極めて簡便であり、日立SV1210等のDNA分離方法は更に操作は簡便である。
c)正確性
ApoE遺伝子多型のゲノタイピングを本発明に従い日立SV1210を用いて行った結果と、同一検体からのサンプルについて従来汎用されてきた非特許文献5に記載の方法によりApoE遺伝子多型をゲノタイピングした結果は、全サンプルで一致した。
加えて、同一検体からのサンプルについて、ABI3100(Applied Biosystems社製)においてDNA Sequencing Kit (BigDye Terminator Ver. 3 Cycle Suquencing Ready Reaction)を用いたDNA直接塩基配列決定法によって多型部分の塩基配列の確認を行ったが、塩基配列から決定されたApoE遺伝子多型と、本発明に従って得たタイピング結果とは全例で一致した。
又、DNA断片F(図11中50bp近傍のピーク)、E2、E3、E4の全ての多型について生成するDNA断片R(図11中80bp近傍のピーク)の存在により、それぞれAflIII、HaeIIによる切断反応が適切に進行したことを判定することができる。更に、これらDNA断片F、E2、E3、E4の全ての多型について生成するDNA断片Rを定量することにより、更に正確性、信頼性の向上したApoE遺伝子多型のゲノタイプの判定が可能である。
DNA断片F(50bpのDNA制限断片)、E2、E3、E4の全ての多型から生成するDNA断片R(ここでは80bpのDNA制限断片)からヘテロ二本鎖の生成割合Xを求め、このヘテロ二本鎖の生成割合Xから求まる代表的なDNA制限断片の生成量の計算値と実測値とを比較したいくつかの例を下記表7〜9に示す。表中α1は50bpのDNA制限断片を定量した値、α2は80bpのDNA制限断片を定量した値(単位ng/μL・bp[濃度/size]:molに相当する)を示す。X1、X2は、上記α1、α2をそれぞれ用いて算出されたヘテロ二本鎖の生成割合である。又、βはゲノタイプE3/E4については145bpのDNA制限断片の生成量(実測値)を、ゲノタイプE2/E3についても145bpのDNA制限断片の生成量(実測値)を用いた。そして、E3/E4については、145bpのDNA断片以外の123bp、268bpのDNA断片に関し上記実測値を用いて前述の式により計算した計算値(推測値)と実測値を比較した。又、E2/E3についても、145bpのDNA断片以外の123bp、180bpのDNA断片に関し上記実測値を用いて前述の式により計算した計測値(推測値)と実測値とを比較した。下記表7、8、9より、略10%以内の誤差で実測値と計測値が一致していることが分かる。
Figure 0004677646
Figure 0004677646
Figure 0004677646
d)大量処理
例えば、日立SV1210のシステムでは、マイクロチップへの泳動ゲルの分注と充填、内部標準マーカー及びサンプルの分注を短時間で行う分注ロボットの使用が可能であり、ApoE遺伝子多型のゲノタイピングの高速大量化が可能である。
以上説明したように、本発明によれば、
(A)RFLPのDNA制限断片を検出し易くなる。
(B)加えて、上記(A)によって検出方法の汎用性が広がり、自動処理化にあいまって高速大量処理化が可能になる。又、機械化、製品化に際しての正確性、信頼性を更に向上させることができる。
(C)DNAを直接タイピングすることによって、抗体法を用いるようなタンパク質のタイピング法に比較して擬陽性(false-positive)が大幅に減少し、それによってタイピングの正確性を増すことができる。
(D)制限酵素による消化反応が適正に行われたか否かを判断することができ、又定量的にDNA制限断片の存否を判定することができるので、ApoE遺伝子多型の検出、ゲノタイプの判定の正確性、信頼性を格段に向上させることができる。
(E)例えば、アルツハイマー型痴呆、その他の心血管疾患など、ApoE遺伝子多型が関連する疾患の診断、治療にとって有用な情報となるゲノタイピングという臨床検査を行う上で、上記各点は極めて重要な要素であり、本発明によれば、斯かる有用な情報を正確、且つ、迅速に提供することができる。
本発明に従うApoE遺伝子多型のゲノタイピングの概念図である。 上流側プライマーの一実施例を示す模式図である。 本発明に従うプライマー対の設定位置を説明するための模式図である。 ヘテロ二本鎖の生成を説明するための模式図である。 ヘテロ二本鎖の生成を考慮した場合の本発明に従うゲノタイピングの概念図である。 ヘテロ接合体についてヘテロ接合体が生成した場合の各DNA断片の生成量の推定方法の一例を説明するための模式図である。 ホモ接合体についてヘテロ接合体が生成した場合の各DNA断片の生成量の推定方法の一例を説明するための模式図である。 ヘテロ二本鎖の生成を考慮した場合の本発明に従うゲノタイピングの他の例の概念図である。 ヘテロ接合体についてヘテロ接合体が生成した場合の各DNA断片の生成量の推定方法の他の例を説明するための模式図である。 ホモ接合体についてヘテロ接合体が生成した場合の各DNA断片の生成量の推定方法の他の例を説明するための模式図である。 本発明に従ってApoE遺伝子の制限断片を日立SV1210により分離した結果を示す図である。 制限酵素HhaIを用いた従来のApoE遺伝子多型のゲノタイピングの概念図である。 制限酵素AflIII及びHaeIIを用いた従来のApoE遺伝子多型のゲノタイピングの概念図である。

Claims (33)

  1. アポリポタンパクE遺伝子に特異的なプライマー対を用いてDNAを増幅する段階、
    増幅されたDNAを、アポリポタンパクE遺伝子のコドン112の一塩基多型部位を認識配列に含む第1の制限酵素と、アポリポタンパクE遺伝子のコドン158の一塩基多型部位を認識配列に含む第2の制限酵素と、を用いて切断する段階、
    切断されたDNA断片を分離する段階、
    分離されたDNA断片を検出する段階、
    を有し、
    前記プライマー対のうち上流側プライマーは、前記コドン112の一塩基多型部位を含む前記第1の制限酵素の認識配列より上流側に前記第1の制限酵素の認識配列を導入する、少なくとも1塩基の変異を導入された配列であって、前記コドン112の一塩基多型部位を含む前記第1の制限酵素の認識配列での切断位置より45bp以上、136bp以下の上流の位置に前記第1の制限酵素による切断位置が配置されるように設定される配列を有し、且つ、該上流側プライマーは、前記導入される前記第1の制限酵素の認識配列での切断位置よりも45bp以上の上流の位置に5’末端が設定され、
    前記プライマー対のうち下流側プライマーは、前記コドン158の一塩基多型部位を含む前記第2の制限酵素の認識配列での切断位置より70bp以上の下流の位置に5’末端が設定されることを特徴とするアポリポタンパクE遺伝子多型検出方法。
  2. 前記プライマー対のうち上流側プライマーは、前記切断段階にて、前記導入される前記第1の制限酵素の認識配列での切断位置よりも上流の配列のみを含む45bp以上のDNA断片が生成するように設定されることを特徴とする請求項のアポリポタンパクE遺伝子多型検出方法。
  3. 前記プライマー対のうち上流側プライマーは、前記導入される前記第1の制限酵素の認識配列での切断位置より110bp以下の上流の位置に5’末端が設定されることを特徴とする請求項1又は2のアポリポタンパクE遺伝子多型検出方法。
  4. 前記プライマー対のうち上流側プライマーは、前記コドン112の一塩基多型部位より上流側における第2の制限酵素の認識配列を消失させる、少なくとも1塩基の変異を導入された配列を有することを特徴とする請求項1〜のいずれかの項に記載のアポリポタンパクE遺伝子多型検出方法。
  5. 前記切断段階で生成される、前記導入される前記第1の制限酵素の認識配列での切断位置より上流の配列のみを含むDNA断片と、アポリポタンパクE遺伝子のE2、E3、E4の全てについて生成する前記コドン158の一塩基多型部位を含む前記第2の制限酵素の認識配列での切断位置よりも下流側の配列のみを含むDNA断片と、が分離可能であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載のアポリポタンパクE遺伝子多型検出方法。
  6. 前記プライマー対のうち下流側プライマーは、前記コドン158の一塩基多型部位を含む前記第2の制限酵素の認識配列での切断位置よりも100bp以上の下流の位置に5’末端が設定されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかの項に記載のアポリポタンパクE遺伝子多型検出方法。
  7. 前記プライマー対のうち下流側プライマーは、前記コドン158の一塩基多型部位を含む前記第2の制限酵素の認識配列での切断位置より202bp以下の下流の位置に5’末端が設定されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかの項に記載のアポリポタンパクE遺伝子多検出方法。
  8. 前記プライマー対のうち下流側プライマーは、前記切断段階にて、アポリポタンパクE遺伝子のE2、E3、E4の全てについて、前記コドン158の一塩基多型部位を含む前記第2の制限酵素の認識配列での切断位置よりも下流の配列のみを含む5bp以上のDNA断片が生成するように設定されることを特徴とする請求項1〜7のいずれかの項に記載のアポリポタンパクE遺伝子多型検出方法。
  9. 記導入される前記第1の制限酵素の認識配列より上流側、前記導入される前記第1の制限酵素の認識配列と前記コドン112の一塩基多型部位を含む前記第1の制限酵素の認識配列との間、前記コドン112の一塩基多型部位を含む前記第1の制限酵素の認識配列と前記コドン158の一塩基多型部位を含む前記第2の制限酵素の認識配列との間に、前記第1及び第2の制限酵素のいずれの認識配列も持たないことを特徴とする請求項1〜8のいずれかの項に記載のアポリポタンパクE遺伝子多型検出方法。
  10. 前記第1の制限酵素は塩基配列ACRYGT(RはA又はG、YはC又はT)を認識して切断し、前記第2の制限酵素は塩基配列RGCGCY(RはA又はG、YはC又はT)を認識して切断することを特徴とする請求項1〜9のいずれかの項に記載のアポリポタンパクE遺伝子多型検出方法。
  11. 前記第1の制限酵素はAflIII、前記第2の制限酵素はHaeIIであることを特徴とする請求項10のアポリポタンパクE遺伝子多型検出方法。
  12. 前記プライマー対のうち上流側プライマーは、配列番号1の配列から成るオリゴヌクレオチドであり、前記プライマー対のうち下流側プライマーは、配列番号2の配列から成るオリゴヌクレオチドであることを特徴とする請求項1〜11のいずれかの項に記載のアポリポタンパクE遺伝子多型検出方法。
  13. 切断されたDNA断片を電気泳動で分離することを特徴とする請求項1〜12のいずれかの項に記載のアポリポタンパクE遺伝子多型検出方法。
  14. 請求項1〜13のいずれかの項に記載のアポリポタンパクE遺伝子多型検出方法により検出されたDNA断片の存否の組み合わせからアポリポタンパクE遺伝子多型のゲノタイプを判定するアポリポタンパクE遺伝子多型のゲノタイプ判定方法であって、
    前記上流側プライマーにより導入される認識配列での切断位置(導入切断位置)より上流の配列Fのみを含むDNA断片を断片F、前記コドン158の一塩基多型部位を含む認識配列での切断位置(第2切断位置)より下流の配列Rのみを含むDNA断片を断片R、前記コドン112の一塩基多型部位を含む認識配列での切断位置(第1切断位置)より上流且つ前記導入切断位置より下流の配列Aのみを含むDNA断片を断片A、前記第1切断位置と前記第2切断位置との間の配列Bのみを含むDNA断片を断片B、前記配列A及びBを含むDNA断片を断片C、前記配列B及びRを含むDNA断片を断片Dとしたとき、断片B、断片C及び断片Dの存否をアポリポタンパクE遺伝子多型のゲノタイプの判定に用い、
    (a)断片Dのみの存在によりゲノタイプE2/E2を判定し、
    (b)断片Bのみの存在によりゲノタイプE3/E3を判定し、
    (c)断片Cのみの存在によりゲノタイプE4/E4を判定し、
    (d)断片B及び断片Dのみの存在によりゲノタイプE2/E3を判定し、
    (e)断片C及び断片Dのみの存在によりゲノタイプE2/E4を判定し、
    (f)断片B及び断片Cのみの存在によりゲノタイプE3/E4を判定する、
    ことを特徴とするアポリポタンパクE遺伝子多型のゲノタイプ判定方法。
  15. 請求項1〜13のいずれかの項に記載のアポリポタンパクE遺伝子多型検出方法により検出されたDNA断片の存否の組み合わせからアポリポタンパクE遺伝子多型のゲノタイプを判定するアポリポタンパクE遺伝子多型のゲノタイプ判定方法であって、
    前記上流側プライマーにより導入される認識配列での切断位置(導入切断位置)より上流の配列Fのみを含むDNA断片を断片F、前記コドン158の一塩基多型部位を含む認識配列での切断位置(第2切断位置)より下流の配列Rのみを含むDNA断片を断片R、前記コドン112の一塩基多型部位を含む認識配列での切断位置(第1切断位置)より上流且つ前記導入切断位置より下流の配列Aのみを含むDNA断片を断片A、前記第1切断位置と前記第2切断位置との間の配列Bのみを含むDNA断片を断片B、前記配列A及びBを含むDNA断片を断片C、前記配列B及びRを含むDNA断片を断片Dとしたとき、断片A、断片B、断片C及び断片Dの存否をアポリポタンパクE遺伝子多型のゲノタイプの判定に用い、
    (a)断片A及び断片Dのみの存在によりゲノタイプE2/E2を判定し、
    (b)断片A及び断片Bのみの存在によりゲノタイプE3/E3を判定し、
    (c)断片Cのみの存在によりゲノタイプE4/E4を判定し、
    (d)断片A、断片B及び断片Dのみの存在によりゲノタイプE2/E3を判定し、
    (e)断片A、断片C及び断片Dのみの存在によりゲノタイプE2/E4を判定し、
    (f)断片A、断片B及び断片Cのみの存在によりゲノタイプE3/E4を判定する、
    ことを特徴とするアポリポタンパクE遺伝子多型のゲノタイプ判定方法。
  16. 請求項1〜13のいずれかの項に記載のアポリポタンパクE遺伝子多型検出方法により検出されたDNA断片の存否の組み合わせからアポリポタンパクE遺伝子多型のゲノタイプを判定するアポリポタンパクE遺伝子多型のゲノタイプ判定方法であって、
    前記上流側プライマーにより導入される認識配列での切断位置(導入切断位置)より上流の配列Fのみを含むDNA断片を断片F、前記コドン158の一塩基多型部位を含む認識配列での切断位置(第2切断位置)より下流の配列Rのみを含むDNA断片を断片R、前記コドン112の一塩基多型部位を含む認識配列での切断位置(第1切断位置)より上流且つ前記導入切断位置より下流の配列Aのみを含むDNA断片を断片A、前記第1切断位置と前記第2切断位置との間の配列Bのみを含むDNA断片を断片Bとしたとき、前記配列A、配列B及び配列Rを含むヘテロ二本鎖特異的断片の存否をアポリポタンパクE遺伝子多型のゲノタイプの判定に用い、該ヘテロ二本鎖特異的断片の存在によりゲノタイプE2/E4を判定することを特徴とするアポリポタンパクE遺伝子多型のゲノタイプ判定方法。
  17. 請求項1〜13のいずれかの項に記載のアポリポタンパクE遺伝子多型検出方法により検出されたDNA断片の存否の組み合わせからアポリポタンパクE遺伝子多型のゲノタイプを判定するアポリポタンパクE遺伝子多型のゲノタイプ判定方法であって、
    前記上流側プライマーにより導入される認識配列での切断位置(導入切断位置)より上流の配列Fのみを含むDNA断片を断片F、前記コドン158の一塩基多型部位を含む認識配列での切断位置(第2切断位置)より下流の配列Rのみを含むDNA断片を断片R、前記コドン112の一塩基多型部位を含む認識配列での切断位置(第1切断位置)より上流且つ前記導入切断位置より下流の配列Aのみを含むDNA断片を断片Aとしたとき、断片Aの存否をアポリポタンパクE遺伝子多型のゲノタイプの判定に用い、断片Aの非存在によりゲノタイプE4/E4を判定することを特徴とするアポリポタンパクE遺伝子多型のゲノタイプ判定方法。
  18. 更に、断片Fの存在により、前記切断段階における有効な切断反応の存在を判定することを特徴とする請求項14〜17のいずれかの項に記載のアポリポタンパクE遺伝子多型のゲノタイプ判定方法。
  19. 更に、アポリポタンパクE遺伝子多型E2、E3、E4の全てについて生成される断片Rの存在により、前記切断段階における有効な切断反応の存在を判定することを特徴とする請求項14〜17のいずれかの項に記載のアポリポタンパクE遺伝子多型のゲノタイプ判定方法。
  20. 更に、断片Fの存在及びアポリポタンパクE遺伝子多型E2、E3、E4の全てについて生成する断片Rの存在により、前記切断段階における前記第1の制限酵素による有効な切断反応及び前記第2の制限酵素による有効な切断反応の存在を判定することを特徴とする請求項14〜17のアポリポタンパクE遺伝子多型のゲノタイプ判定方法。
  21. 前記有効な切断反応の存在判定した場合に、検出されたDNA断片の存否の組み合わせからアポリポタンパクE遺伝子多型のゲノタイプを判定することを特徴とする請求項18、19又は20のアポリポタンパクE遺伝子多型のゲノタイプ判定方法。
  22. 更に、断片及び/又はアポリポタンパクE遺伝子多型E2、E3、E4の全てについて生成される断片Rを定量した結果に基づいて、断片A、断片B、断片C及び/又は断片Dの存否を判断することを特徴とする請求項14又は15のアポリポタンパクE遺伝子多型のゲノタイプ判定方法。
  23. 前記断片及び/又はアポリポタンパクE遺伝子多型E2、E3、E4の全てについて生成される断片Rを定量した結果に基づいて、断片A、断片B、断片C及び/又は断片Dの推定量を求め、該推定量を、それぞれ断片A、断片B、断片C及び/又は断片Dを定量した実測値と比較することで、それぞれの断片の存否を判断することを特徴とする請求項22のアポリポタンパクE遺伝子多型のゲノタイプ判定方法。
  24. 更に、前記(d)、(e)又は(f)の各場合の判定に際し、断片F及び/又はアポリポタンパクE遺伝子多型E2、E3、E4の全てについて生成する断片Rを定量した結果から求めたヘテロ二本鎖の生成割合に基づいて、断片A、断片B、断片C及び/又は断片Dの存否を判断することを特徴とする請求項14又は15のアポリポタンパクE遺伝子多型のゲノタイプ判定方法。
  25. 前記ヘテロ二本鎖の生成割合に基づいて、断片A、断片B、断片C及び/又は断片Dの推定量を求め、該推定量を、それぞれ断片A、断片B、断片C及び/又は断片Dを定量した実測値と比較することで、それぞれの断片の存否を判断することを特徴とする請求項24のアポリポタンパクE遺伝子多型のゲノタイプ判定方法。
  26. アポリポタンパクE遺伝子に特異的なプライマー対を用いてDNAを増幅し、増幅されたDNAを、アポリポタンパクE遺伝子のコドン112の一塩基多型部位を認識配列に含む第1の制限酵素と、アポリポタンパクE遺伝子のコドン158の一塩基多型部位を認識配列に含む第2の制限酵素と、を用いて切断することを含むアポリポタンパクE遺伝子多型検出方法に使用するための、前記プライマー対を備えるアポリポタンパクE遺伝子多型検出用試薬であって、
    前記プライマー対のうち上流側プライマーは、前記コドン112の一塩基多型部位を含む前記第1の制限酵素の認識配列より上流側に前記第1の制限酵素の認識配列を導入する、少なくとも1塩基の変異を導入された配列であって、前記コドン112の一塩基多型部位を含む前記第1の制限酵素の認識配列での切断位置より45bp以上、136bp以下の上流の位置に前記第1の制限酵素による切断位置が配置されるように設定される配列を有し、且つ、該上流側プライマーは、前記導入される前記第1の制限酵素の認識配列での切断位置よりも45bp以上の上流の位置に5’末端が設定され、
    前記プライマー対のうち下流側プライマーは、前記コドン158の一塩基多型部位を含む前記第2の制限酵素の認識配列での切断位置より70bp以上の下流の位置に5’末端が設定されることを特徴とするアポリポタンパクE遺伝子多型検出用試薬。
  27. 前記プライマー対のうち上流側プライマーは、前記コドン112の一塩基多型部位より上流側における第2の制限酵素の認識配列を消失させる、少なくとも1塩基の変異を導入された配列を有することを特徴とする請求項26のアポリポタンパクE遺伝子多型検出用試薬。
  28. 前記プライマー対のうち上流側プライマーは、前記導入される前記第1の制限酵素の認識配列での切断位置より110bp以下の上流の位置に5’末端が設定されることを特徴とする請求項26又は27のアポリポタンパクE遺伝子多型検出用試薬。
  29. 前記プライマー対のうち下流側プライマーは、前記コドン158の一塩基多型部位を含む前記第2の制限酵素の認識配列での切断位置より202bp以下の下流の位置に5’末端が設定されることを特徴とする請求項26〜28のいずれかの項に記載のアポリポタンパクE遺伝子多型検出用試薬。
  30. 前記プライマー対のうち上流側プライマーは、配列番号1の配列から成るオリゴヌクレオチドであり、前記プライマー対のうち下流側プライマーは、配列番号2の配列から成るオリゴヌクレオチドであることを特徴とする請求項26〜29のいずれかの項に記載のアポリポタンパクE遺伝子多型検出用試薬。
  31. 前記第1の制限酵素及び前記第2の制限酵素での切断により生成される、前記導入される前記第1の制限酵素の認識配列での切断位置より上流の配列のみを含むDNA断片と、アポリポタンパクE遺伝子のE2、E3、E4の全てについて生成する前記コドン158の一塩基多型部位を含む前記第2の制限酵素の認識配列での切断位置よりも下流側の配列のみを含むDNA断片と、が分離可能であることを特徴とする請求項26〜30のいずれかの項に記載のアポリポタンパクE遺伝子多型検出用試薬
  32. 更に、塩基配列ACRYGT(RはA又はG、YはC又はT)を認識して切断する前記第1の制限酵素、塩基配列RGCGCY(RはA又はG、YはC又はT)を認識して切断する前記第2の制限酵素と組み合わされて成ることを特徴とする請求項26〜31のいずれかの項に記載のアポリポタンパクE遺伝子多型検出用試薬。
  33. 前記第1の制限酵素はAflIII、前記第2の制限酵素はHaeIIであることを特徴とする請求項32のアポリポタンパクE遺伝子多型検出用試薬。
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