JPWO2004050886A1 - Ebウイルスベクターのためのパッケージング細胞システム - Google Patents
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Abstract
パッケージングシグナルを欠失したEBウイルス遺伝子を保持するがパッケージングシグナルを有する野生型EBウイルス遺伝子を保持しないパッケージング細胞を用意し、この細胞に、パッケージングシグナルを有するがウイルス複製能力を持たないアンプリコンプラスミドを導入してパッケージング細胞を作製する。このアンプリコン導入パッケージング細胞を溶解感染誘導すると、ウイルス複製能力を持たないEBウイルスベクターが産生される。
Description
本発明は、EBウイルスベクターを産生する方法ならびに該方法に用いるためのパッケージング細胞システムに関する。
細胞への遺伝子導入において遺伝子を標的細胞へ運ぶ働きをするものを「ベクター」という。ウイルス由来のベクターは、安全のため可能な限り元になる野生型ウイルスの遺伝子を除いたものが良い。エプスタイン・バー(Epstein−Barr)ウイルス(以下「EBウイルス」という)は、ヘルペスウイルスの一種であり、ヒトBリンパ球に感染してその増殖を促進する能力を有する。EBウイルスベクターは現在使用されている他のウイルスに基づくベクターと比較して、1)細胞内に長期間安定して維持される;2)100kb以上の大きな外来遺伝子を組み込むことができる;3)静止期のBリンパ球、特に、初代培養Bリンパ球に高率に遺伝子を導入できる;4)抗原提示細胞であるBリンパ球に遺伝子を導入発現できる;5)遺伝子導入されたBリンパ球を生体外で増殖させることができる;6)大腸菌の中で組換えウイルスを作製するシステムを使用すれば、ベクターの調整が大変容易になる、などの多くの利点を有している。
EBウイルスを産生する細胞株としては、Akata細胞、B95−8細胞、P3HR−1細胞などが知られている。このうちAkata細胞は核内におよそ20コピーの環状のEBウイルスゲノムを持っており、抗ヒトイムノグロブリン抗体を液体培地中に加えることにより感染性EBウイルス産生を誘導できるため、EBウイルスの大量生産に適した細胞株である(Takada K,Int J Cancer 33,27−32(1984);Takada K and Ono Y,J Virol 63,445−449(1989))。Akata細胞の長期継代により得られたEBウイルスゲノムが脱落したクローン(以下「EBウイルス陰性Akata細胞」という。)は、EBウイルスを再感染することによって、抗ヒトイムノグロブリン抗体処理によるウイルス産生能を再び示すことができる(特開平7−115966)。また、Akata細胞内で薬剤マーカー遺伝子を持つ相同組換えEBウイルスを作製し、EBウイルス産生を誘導し、EBウイルス陰性Akata細胞に再感染させて薬剤選択を行うことにより、組換えEBウイルスゲノムのみを持つAkata細胞を作製することができる。この細胞は抗ヒトイムノグロブリン抗体処理により、組換えEBウイルスを大量に産生する能力を有する(特開平8−009971)。
EBウイルスB95−8株の環状EBウイルスゲノムを大腸菌人工染色体に組み込んだ形で大腸菌内で増殖させる方法が報告されている(米国特許第6,291,246号)。このシステムを用いることにより、EBウイルスの複製増殖に必須の遺伝子であっても大腸菌内での相同組換えによって効率良く変異を導入できる。また、ドイツの研究グループは大腸菌内でパッケージングシグナルを除去したEBウイルスゲノムを胎児の腎臓由来の293細胞に導入し、EBウイルスベクターの産生のためのパッケージング細胞として使用する方法を開示している(Delecluse HJ,Pich D,Hilsendegen T,Baum C,Hammerschmidt W.Proc Natl Acad Sci USA 96,5188−5193(1999))。この293細胞に、EBウイルス初期遺伝子BZLF1とアンプリコンプラスミドを同時に外来性に導入し、発現させることでEBウイルスベクター産生を誘導するものである。しかし、このシステムはEBウイルスベクター産生のための手段が煩雑であり、しかも産生されたEBウイルスベクターの力価が大変低いため、EBウイルスベクターの大量生産には適していない。
また、EBウイルスの外被を用いて細胞に外来遺伝子を効率良く導入するためのシステム(Delecluse H.J,Hammerschmidt W,J Clin Pathol:Mol Pathol 2000;53:270−279等)、およびヘルパーウイルスを含まない遺伝子ベクターDNAのパッケージング方法(特開平11−221073)が報告されている。
本発明の目的は、ウイルス複製能力を持たないEBウイルスベクターを効率良く大量に産生できるシステムを提供することである。
EBウイルスを産生する細胞株としては、Akata細胞、B95−8細胞、P3HR−1細胞などが知られている。このうちAkata細胞は核内におよそ20コピーの環状のEBウイルスゲノムを持っており、抗ヒトイムノグロブリン抗体を液体培地中に加えることにより感染性EBウイルス産生を誘導できるため、EBウイルスの大量生産に適した細胞株である(Takada K,Int J Cancer 33,27−32(1984);Takada K and Ono Y,J Virol 63,445−449(1989))。Akata細胞の長期継代により得られたEBウイルスゲノムが脱落したクローン(以下「EBウイルス陰性Akata細胞」という。)は、EBウイルスを再感染することによって、抗ヒトイムノグロブリン抗体処理によるウイルス産生能を再び示すことができる(特開平7−115966)。また、Akata細胞内で薬剤マーカー遺伝子を持つ相同組換えEBウイルスを作製し、EBウイルス産生を誘導し、EBウイルス陰性Akata細胞に再感染させて薬剤選択を行うことにより、組換えEBウイルスゲノムのみを持つAkata細胞を作製することができる。この細胞は抗ヒトイムノグロブリン抗体処理により、組換えEBウイルスを大量に産生する能力を有する(特開平8−009971)。
EBウイルスB95−8株の環状EBウイルスゲノムを大腸菌人工染色体に組み込んだ形で大腸菌内で増殖させる方法が報告されている(米国特許第6,291,246号)。このシステムを用いることにより、EBウイルスの複製増殖に必須の遺伝子であっても大腸菌内での相同組換えによって効率良く変異を導入できる。また、ドイツの研究グループは大腸菌内でパッケージングシグナルを除去したEBウイルスゲノムを胎児の腎臓由来の293細胞に導入し、EBウイルスベクターの産生のためのパッケージング細胞として使用する方法を開示している(Delecluse HJ,Pich D,Hilsendegen T,Baum C,Hammerschmidt W.Proc Natl Acad Sci USA 96,5188−5193(1999))。この293細胞に、EBウイルス初期遺伝子BZLF1とアンプリコンプラスミドを同時に外来性に導入し、発現させることでEBウイルスベクター産生を誘導するものである。しかし、このシステムはEBウイルスベクター産生のための手段が煩雑であり、しかも産生されたEBウイルスベクターの力価が大変低いため、EBウイルスベクターの大量生産には適していない。
また、EBウイルスの外被を用いて細胞に外来遺伝子を効率良く導入するためのシステム(Delecluse H.J,Hammerschmidt W,J Clin Pathol:Mol Pathol 2000;53:270−279等)、およびヘルパーウイルスを含まない遺伝子ベクターDNAのパッケージング方法(特開平11−221073)が報告されている。
本発明の目的は、ウイルス複製能力を持たないEBウイルスベクターを効率良く大量に産生できるシステムを提供することである。
ウイルス複製能力を持たないEBウイルスベクターを産生する系を作製するために用いられるパッケージング細胞を製造する方法を提供する。
第1の態様においては、本発明の方法は、
パッケージングシグナルが欠失した相同組換え用遺伝子断片をEBウイルス陽性Akata細胞に導入することにより、EBウイルスのパッケージングシグナルを相同組換えにより欠失させ、そして
パッケージングシグナルを欠失したEBウイルスゲノムを保持するがパッケージングシグナルを有する野生型EBウイルスゲノムを保持しないパッケージング細胞をクローニングする、
の各工程を含む。
第2の態様においては、本発明の方法は、
パッケージングシグナルが欠失したEBウイルスゲノムを大腸菌を用いて作製し、該EBウイルスゲノムをEBウイルス陽性Akata細胞に導入し、そして
パッケージングシグナルを欠失したEBウイルスゲノムを保持するがパッケージングシグナルを有する野生型EBウイルスゲノムを保持しないパッケージング細胞をクローニングする、
の各工程を含む。
第3の態様においては、本発明の方法は、
パッケージングシグナルが欠失したEBウイルスゲノムを大腸菌を用いて作製し、該EBウイルスゲノムをEBウイルス陰性であってEBNA1を発現するAkata細胞に導入し、そして
パッケージングシグナルを欠失したEBウイルスゲノムを保持するがパッケージングシグナルを有する野生型EBウイルスゲノムを保持しないパッケージング細胞をクローニングする、
の各工程を含む。
別の観点においては、本発明は、ウイルス複製能力を持たないEBウイルスベクターを産生するためのアンプリコンプラスミド導入Akataパッケージング細胞を製造する方法を提供する。該方法は、上述のいずれかの方法により得られたパッケージング細胞に、パッケージングシグナルを有するがウイルス複製能力を持たないアンプリコンプラスミドを導入する工程を含む。
さらに別の観点においては、本発明は、上述の本発明の方法により製造されるアンプリコンプラスミドを導入したAkataパッケージング細胞を溶解感染誘導することにより、ウイルス外被に包まれたEBウイルスベクターを放出させることを含む、ウイルス複製能力を持たないEBウイルスベクターを産生する方法を提供する。
さらに別の観点においては、本発明は、上述の本発明の方法により製造されるアンプリコンプラスミド導入Akataパッケージング細胞を溶解感染誘導することにより、ウイルス外被に包まれたEBウイルスベクターを放出させ、そして得られたEBウイルスベクターをBリンパ球に感染させることを含む、不死化Bリンパ球を製造する方法を提供する。
本発明にしたがって、パッケージング細胞にアンプリコンプラスミドを導入して作製したアンプリコンプラスミド導入パッケージング細胞を溶解感染誘導することにより、ウイルス複製能力を持たないEBウイルスベクターを簡便かつ効率よく産生することができる。
第1の態様においては、本発明の方法は、
パッケージングシグナルが欠失した相同組換え用遺伝子断片をEBウイルス陽性Akata細胞に導入することにより、EBウイルスのパッケージングシグナルを相同組換えにより欠失させ、そして
パッケージングシグナルを欠失したEBウイルスゲノムを保持するがパッケージングシグナルを有する野生型EBウイルスゲノムを保持しないパッケージング細胞をクローニングする、
の各工程を含む。
第2の態様においては、本発明の方法は、
パッケージングシグナルが欠失したEBウイルスゲノムを大腸菌を用いて作製し、該EBウイルスゲノムをEBウイルス陽性Akata細胞に導入し、そして
パッケージングシグナルを欠失したEBウイルスゲノムを保持するがパッケージングシグナルを有する野生型EBウイルスゲノムを保持しないパッケージング細胞をクローニングする、
の各工程を含む。
第3の態様においては、本発明の方法は、
パッケージングシグナルが欠失したEBウイルスゲノムを大腸菌を用いて作製し、該EBウイルスゲノムをEBウイルス陰性であってEBNA1を発現するAkata細胞に導入し、そして
パッケージングシグナルを欠失したEBウイルスゲノムを保持するがパッケージングシグナルを有する野生型EBウイルスゲノムを保持しないパッケージング細胞をクローニングする、
の各工程を含む。
別の観点においては、本発明は、ウイルス複製能力を持たないEBウイルスベクターを産生するためのアンプリコンプラスミド導入Akataパッケージング細胞を製造する方法を提供する。該方法は、上述のいずれかの方法により得られたパッケージング細胞に、パッケージングシグナルを有するがウイルス複製能力を持たないアンプリコンプラスミドを導入する工程を含む。
さらに別の観点においては、本発明は、上述の本発明の方法により製造されるアンプリコンプラスミドを導入したAkataパッケージング細胞を溶解感染誘導することにより、ウイルス外被に包まれたEBウイルスベクターを放出させることを含む、ウイルス複製能力を持たないEBウイルスベクターを産生する方法を提供する。
さらに別の観点においては、本発明は、上述の本発明の方法により製造されるアンプリコンプラスミド導入Akataパッケージング細胞を溶解感染誘導することにより、ウイルス外被に包まれたEBウイルスベクターを放出させ、そして得られたEBウイルスベクターをBリンパ球に感染させることを含む、不死化Bリンパ球を製造する方法を提供する。
本発明にしたがって、パッケージング細胞にアンプリコンプラスミドを導入して作製したアンプリコンプラスミド導入パッケージング細胞を溶解感染誘導することにより、ウイルス複製能力を持たないEBウイルスベクターを簡便かつ効率よく産生することができる。
図1は、本発明のパッケージング細胞の作製方法を示す。
図2は、アンプリコンプラスミド導入Akataパッケージング細胞によるEBウイルスベクターの産生を示す。
図3は、パッケージングシグナル遺伝子(TR)のクローニングとパッケージングシグナルを破壊するためのターゲット用のプラスミドの構築を示す。
図4は、相同的遺伝子組換えの確認に用いたプライマーの位置を示す。
図5は、野生型EBウイルス脱落確認のための遺伝子増幅に用いたプライマーの位置を示す。
図6は、アンプリコンプラスミド導入パッケージング細胞中に存在するTR欠損EBウイルスゲノムおよびアンプリコンプラスミドの構造の一例を示す。
図7は、アンプリコンプラスミド導入パッケージング細胞によるEBウイルスベクターの産生を示す。
図8は、ウイルスゲノムを複製できないウイルスの作製と、該ウイルスゲノムを感染導入したパッケージング細胞を用いたウイルスゲノムを複製できないEBウイルスベクターの産生を示す。
図9は、BALF2遺伝子を破壊欠失するためのターゲット用のプラスミドの構築と相同組換えウイルスの検出に用いたプローブを示す。
図10は、相同組換えによりBALF2遺伝子欠失ウイルスが作製されたことを確認するための遺伝子増幅に用いたプライマーの位置を示す。
発明の詳細な説明
本発明は、ウイルス複製能力を持たないEBウイルスベクターを産生する系を作製するために用いられるパッケージング細胞を製造する方法を提供する。
「パッケージング細胞」とは、パッケージングシグナルを欠失するが、ウイルス粒子を作るのに必要なウイルス蛋白質を発現することができるEBウイルスゲノムを有する細胞である。パッケージングシグナルとは、遺伝子がEBウイルス粒子中にパッケージされるために必要なシス作用配列であり、TR(Terminal Repeat)とも称される。ここで、「欠失している」とは、パッケージングシグナルの全部が欠失している場合、およびパッケージングシグナルの一部が欠失または変異していることによりパッケージングシグナルとしての機能を失っている場合の両方を含む。
「EBウイルスベクター」とは、EBウイルスの外被をまとい、ヒトBリンパ球に感染する能力を有するウイルス粒子を意味する。EBウイルスベクターは外来遺伝子を含んでいてもよい。「ウイルス複製能力を持たないEBウイルスベクター」とは、宿主細胞に感染し、その細胞中でゲノムの複製をすることはできるが、その細胞を溶解感染誘導したときに、ウイルス外被をまとったウイルス粒子として放出されることがないベクターを意味する。
本発明で用いるAkata細胞は既知のヒトリンパ球であり、環状EBウイルスゲノムを核内におよそ20個保有しており、相同組換え法により組換えEBウイルスを作製することができる(特開平8−009971)。また、Akata細胞は長期継代によりEBウイルスゲノムが脱落したクローンを分離できる(特開平7−115966)ことより、同様の方法により組換えEBウイルスゲノムのみを保持し、野生型EBウイルスゲノムは脱落した細胞クローンを分離できる。さらに、Akata細胞は抗ヒトイムノグロブリン抗体で処理することにより、大量のEBウイルスを産生することができる(Takada K,Int J Cancer 33,:27−32(1984);Takada K and Ono Y,J Virol 63,445−449(1989))。
本発明の方法の第1の態様の概略が図1に示される。まず、EBウイルス陽性Akata細胞中においてEBウイルスのパッケージングシグナルを相同組換えにより欠失させる。この工程は、パッケージングシグナルを挟む領域を有し、かつパッケージングシグナルが欠失している相同組換え用遺伝子断片をEBウイルス陽性Akata細胞に導入することにより行われる。相同組換え用遺伝子断片は、好ましくは30kb以下の長さ、より好ましくは20kb以下の長さである。このような遺伝子断片は、既知のEBウイルス遺伝子配列に基づいて大腸菌系において作成することができる。遺伝子の導入は、電気穿孔法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法、遺伝子銃法等により行うことができる。次に、薬剤耐性を利用して、パッケージングシグナルを欠失したAkata株EBウイルスゲノムと野生型EBウイルスゲノムの両方を持つAkata細胞クローンを分離する。図1においては、組換えウイルスの選択にネオマイシン耐性遺伝子を使用しているが、Akata細胞で機能するどのような選択マーカーを利用してもよい。次に、分離した細胞クローンをヒドロキシウレアで処理し、再び細胞クローンに分けることにより、野生型ウイルスが脱落し、パッケージングシグナルを欠失したウイルスのみを保持するパッケージング細胞を分離することができる。ヒドロキシウレアを用いずに、継代培養して限界希釈することによりクローニングすることもできる。
本発明の方法の第2の態様においては、EBウイルスのパッケージングシグナルを相同組換えにより欠失させる工程は、EBウイルスDNAを大腸菌人工染色体に組み込んで大腸菌に導入し、大腸菌菌体内で遺伝子組換えによりパッケージングシグナルが欠失したEBウイルスゲノムを作製し、これをEBウイルス陽性Akata細胞に導入することにより行う。EBウイルス陽性Akata細胞はEBウイルス陰性Akata細胞より外来性遺伝子の導入効率が高く、かつ安定に増殖することができるためである。
具体的には、まず、EBウイルスゲノム由来の遺伝子断片にpBeloBAC11(Genome Systems社)由来の大腸菌人工染色体(BAC)ベクター断片を挿入した相同組換え用遺伝子断片を作製し、これを野生型の環状EBウイルスゲノムを持つAkata細胞に導入して、相同組換えを起こしたクローンを選択する。次に、このクローンから調製したゲノムDNAで大腸菌をトランスフォームすることにより、BACとAkata細胞由来EBウイルスゲノムとを含むプラスミドを得る。大腸菌遺伝子組換え系においてこのプラスミド上のEBウイルスゲノムの任意の部位を欠失、変異させることができる。このようにして作製したパッケージングシグナルを欠失させたBAC−EBウイルスDNAをAkata細胞に導入して、Akata細胞内で相同組換えを生じさせることができる。
本発明の方法の第3の態様においては、EBウイルスのパッケージングシグナルを相同組換えにより欠失させる工程は、EBウイルスDNAを大腸菌人工染色体に組み込んで大腸菌に導入し、大腸菌菌体内で遺伝子組換えによりパッケージングシグナルが欠失したEBウイルスゲノムを作製し、これをEBウイルス陰性であってEBNA1を発現するAkata細胞に導入することにより行う。EBNA1を発現するAkata細胞は、EBウイルス陰性Akata細胞に、EBNA1遺伝子と適当な抗生物質耐性遺伝子とを連結した直鎖状DNAをトランスフェクションした後、この抗生物質で選択を行うことによりクローニングすることができる。EBNA1蛋白質はEBウイルスが細胞核内においてエピゾームとして複製・維持されるために必須の蛋白質であり、EBNA1を発現するAkata細胞ではエピゾーム形成の効率が高いと考えられる。
本発明はまた、上述の方法により製造されるパッケージング細胞を提供する。本発明のパッケージング細胞にパッケージングシグナルを含む外来遺伝子(アンプリコン)を導入して作製したアンプリコンプラスミド導入Akataパッケージング細胞において溶解感染誘導すると、TR(−)EBウイルスゲノムに由来するEBウイルス遺伝子産物を利用して、アンプリコンのDNAのみがウイルスの外被をまとってEBウイルスベクターとして産生される。すなわち、本発明のパッケージング細胞は、外来遺伝子を含みウイルス複製能力を持たないEBウイルスベクターを産生するためのヘルパー機能を有する。
すなわち、別の観点においては、本発明は、ウイルス複製能力を持たないEBウイルスベクターを産生するためのアンプリコンプラスミド導入Akataパッケージング細胞を製造する方法を提供する。この方法の概略が図2に示される。パッケージングシグナルを欠失したEBウイルスゲノムを保持するがパッケージングシグナルを有する野生型EBウイルスゲノムを保持しないパッケージング細胞に、アンプリコンプラスミドを導入し、適当な薬剤で選択することにより、アンプリコンプラスミドを含有するAkataパッケージング細胞をクローニングする。アンプリコンプラスミドの導入は、電気穿孔法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法、遺伝子銃法等により行うことができる。
「アンプリコンプラスミド」とは、ウイルス由来の遺伝子を含むが、ウイルス産生能を欠失したプラスミド(環状DNA)をいう。アンプリコンプラスミドは、パッケージングシグナルおよびウイルスの複製開始点を含み、ウイルス複製に必須な蛋白質をコードする遺伝子の1またはそれ以上を欠失している環状DNAである。好ましくは、アンプリコンプラスミドは選択のためのマーカー遺伝子を有する。特に好ましくは、アンプリコンプラスミドは、パッケージングシグナル、EBウイルス潜伏感染期の複製開始点oriP、EBウイルス溶解感染誘導期の複製開始点oriLyt、EBNA1を有する。さらに、EBウイルスベクターを外来遺伝子導入の目的で用いる場合には、アンプリコンプラスミドはさらに導入すべき所望の外来遺伝子を有する。
図2においては、アンプリコンプラスミドはマーカーとしてピューロマイシン耐性遺伝子を有しており、ピューロマイシンによりアンプリコンが導入されたアンプリコンプラスミド導入Akataパッケージング細胞の選択を行っているが、この細胞で機能するどのような選択マーカーを利用してもよい。好ましくはパッケージング細胞の作製に使用した選択マーカーとは異なる選択マーカーを用いる。
パッケージング細胞へのアンプリコンプラスミドの導入はまた、ウイルスゲノムを複製できないウイルスの感染による方法を用いてもよい。この方法の概略が図8に示される。EBウイルス陽性Akata細胞中においてEBウイルスゲノムの複製に重要な遺伝子を相同組換えにより欠失させる。図8においては相同組換えウイルスの選択にハイグロマイシン耐性遺伝子を使用している。分離した相同組換えウイルスと野生型ウイルスの両方を持つAkata細胞クローンを抗ヒトイムノグロブリン抗体で処理することにより、欠失したEBウイルス遺伝子産物が野生型ウイルスから供給されて、相同組換えウイルスと野生型ウイルスの両方が産生される。産生されたウイルス液をパッケージング細胞に感染させ、パッケージング細胞の作製に使用した選択マーカー(ネオマイシン)とウイルスゲノムを複製できないウイルスの作製に使用した選択マーカー(ハイグロマイシン)で選択すると同時に、細胞をクローニングすることにより、パッケージングシグナルを欠失したTR(−)EBウイルス遺伝子とウイルスゲノムの複製に重要な遺伝子を欠失したEBウイルス遺伝子のみを含有するアンプリコンプラスミド導入Akataパッケージング細胞を分離する。このようにして得られた、ウイルスゲノムの複製に重要な遺伝子を欠失したEBウイルス遺伝子をアンプリコンとして含有するAkataパッケージング細胞を抗ヒトイムノグロブリン抗体で処理することにより、EBウイルスの外被をまとったアンプリコンプラスミドのみがEBウイルスベクターとして放出される。
本発明はまた、上述の方法により製造される、導入されたアンプリコンプラスミドを持つAkataパッケージング細胞を提供する。本発明のアンプリコンプラスミドを持つAkataパッケージング細胞は、抗ヒトイムノグロブリン抗体で処理することにより、EBウイルスの外被をまとったアンプリコンプラスミドDNAをEBウイルスベクターとして産生する能力を有する。EBウイルスのゲノムはローリングサークル形式で伸長複製されるが、パッケージングシグナルを欠失していると切り出されず、従ってウイルス粒子に取り込まれない。一方、アンプリコンプラスミドの遺伝子もローリングサークル形式で伸長し、アンプリコンはコンカテマーを作って、パッケージングシグナルの部分で切断され、EBウイルスゲノムの大きさであるおよそ170kbのサイズでパッケージングされる(図7を参照)。すなわち、EBウイルスの外被をまとったアンプリコンプラスミドのみがEBウイルスベクターとして放出される。好ましくは、本発明の方法により製造されるアンプリコンプラスミドを持つAkataパッケージング細胞は、ウイルス複製能力を持たないEBウイルスベクターを最大で従来の方法の1,000倍以上の効率で産生し、かつ野生型EBウイルスを産生しない。
すなわち、別の観点においては、本発明は、上述の本発明の方法により製造されるアンプリコンプラスミド導入Akataパッケージング細胞を溶解感染誘導することにより、ウイルス外被に包まれたEBウイルスベクターを放出させることを含む、ウイルス複製能力を持たないEBウイルスベクターを産生する方法を提供する。アンプリコンプラスミド導入Akataパッケージング細胞の溶解感染誘導は、抗イムノグロブリン抗体で処理することにより容易に行うことができる。
さらに、本発明はまた、上述の方法にしたがって製造されるEBウイルスベクターを提供する。このEBウイルスベクターは、EBウイルス粒子中にアンプリコンプラスミドを含有しており、Bリンパ球に感染してこれを不死化する能力を有するが、自身をウイルス粒子として複製する能力を有しない。したがって、所望の抗体を産生するBリンパ球に本発明のEBウイルスベクターを感染させ、これを不死化してインビトロで増殖させることにより、ヒト抗体を容易に製造することができる。すなわち、本発明はまた、本発明のEBウイルスベクターを用いて不死化Bリンパ球を製造する方法、ならびに本発明の方法により製造される不死化Bリンパ球を提供する。また、アンプリコンプラスミドに所望の遺伝子を組み込んでおくことにより、従来困難だった末梢血静止期Bリンパ球への遺伝子導入が可能となる。静止期Bリンパ球においてのみ遺伝子の発現が可能なプロモーターを使用することにより、Bリンパ球特異的かつ高レベルな遺伝子発現が期待できる。
本明細書において明示的に引用される全ての特許および参考文献の内容は全て本明細書の一部としてここに引用する。また、本出願が有する優先権主張の基礎となる出願である日本特許出願2002−349467号の明細書および図面に記載の内容は全て本明細書の一部としてここに引用する。
図2は、アンプリコンプラスミド導入Akataパッケージング細胞によるEBウイルスベクターの産生を示す。
図3は、パッケージングシグナル遺伝子(TR)のクローニングとパッケージングシグナルを破壊するためのターゲット用のプラスミドの構築を示す。
図4は、相同的遺伝子組換えの確認に用いたプライマーの位置を示す。
図5は、野生型EBウイルス脱落確認のための遺伝子増幅に用いたプライマーの位置を示す。
図6は、アンプリコンプラスミド導入パッケージング細胞中に存在するTR欠損EBウイルスゲノムおよびアンプリコンプラスミドの構造の一例を示す。
図7は、アンプリコンプラスミド導入パッケージング細胞によるEBウイルスベクターの産生を示す。
図8は、ウイルスゲノムを複製できないウイルスの作製と、該ウイルスゲノムを感染導入したパッケージング細胞を用いたウイルスゲノムを複製できないEBウイルスベクターの産生を示す。
図9は、BALF2遺伝子を破壊欠失するためのターゲット用のプラスミドの構築と相同組換えウイルスの検出に用いたプローブを示す。
図10は、相同組換えによりBALF2遺伝子欠失ウイルスが作製されたことを確認するための遺伝子増幅に用いたプライマーの位置を示す。
発明の詳細な説明
本発明は、ウイルス複製能力を持たないEBウイルスベクターを産生する系を作製するために用いられるパッケージング細胞を製造する方法を提供する。
「パッケージング細胞」とは、パッケージングシグナルを欠失するが、ウイルス粒子を作るのに必要なウイルス蛋白質を発現することができるEBウイルスゲノムを有する細胞である。パッケージングシグナルとは、遺伝子がEBウイルス粒子中にパッケージされるために必要なシス作用配列であり、TR(Terminal Repeat)とも称される。ここで、「欠失している」とは、パッケージングシグナルの全部が欠失している場合、およびパッケージングシグナルの一部が欠失または変異していることによりパッケージングシグナルとしての機能を失っている場合の両方を含む。
「EBウイルスベクター」とは、EBウイルスの外被をまとい、ヒトBリンパ球に感染する能力を有するウイルス粒子を意味する。EBウイルスベクターは外来遺伝子を含んでいてもよい。「ウイルス複製能力を持たないEBウイルスベクター」とは、宿主細胞に感染し、その細胞中でゲノムの複製をすることはできるが、その細胞を溶解感染誘導したときに、ウイルス外被をまとったウイルス粒子として放出されることがないベクターを意味する。
本発明で用いるAkata細胞は既知のヒトリンパ球であり、環状EBウイルスゲノムを核内におよそ20個保有しており、相同組換え法により組換えEBウイルスを作製することができる(特開平8−009971)。また、Akata細胞は長期継代によりEBウイルスゲノムが脱落したクローンを分離できる(特開平7−115966)ことより、同様の方法により組換えEBウイルスゲノムのみを保持し、野生型EBウイルスゲノムは脱落した細胞クローンを分離できる。さらに、Akata細胞は抗ヒトイムノグロブリン抗体で処理することにより、大量のEBウイルスを産生することができる(Takada K,Int J Cancer 33,:27−32(1984);Takada K and Ono Y,J Virol 63,445−449(1989))。
本発明の方法の第1の態様の概略が図1に示される。まず、EBウイルス陽性Akata細胞中においてEBウイルスのパッケージングシグナルを相同組換えにより欠失させる。この工程は、パッケージングシグナルを挟む領域を有し、かつパッケージングシグナルが欠失している相同組換え用遺伝子断片をEBウイルス陽性Akata細胞に導入することにより行われる。相同組換え用遺伝子断片は、好ましくは30kb以下の長さ、より好ましくは20kb以下の長さである。このような遺伝子断片は、既知のEBウイルス遺伝子配列に基づいて大腸菌系において作成することができる。遺伝子の導入は、電気穿孔法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法、遺伝子銃法等により行うことができる。次に、薬剤耐性を利用して、パッケージングシグナルを欠失したAkata株EBウイルスゲノムと野生型EBウイルスゲノムの両方を持つAkata細胞クローンを分離する。図1においては、組換えウイルスの選択にネオマイシン耐性遺伝子を使用しているが、Akata細胞で機能するどのような選択マーカーを利用してもよい。次に、分離した細胞クローンをヒドロキシウレアで処理し、再び細胞クローンに分けることにより、野生型ウイルスが脱落し、パッケージングシグナルを欠失したウイルスのみを保持するパッケージング細胞を分離することができる。ヒドロキシウレアを用いずに、継代培養して限界希釈することによりクローニングすることもできる。
本発明の方法の第2の態様においては、EBウイルスのパッケージングシグナルを相同組換えにより欠失させる工程は、EBウイルスDNAを大腸菌人工染色体に組み込んで大腸菌に導入し、大腸菌菌体内で遺伝子組換えによりパッケージングシグナルが欠失したEBウイルスゲノムを作製し、これをEBウイルス陽性Akata細胞に導入することにより行う。EBウイルス陽性Akata細胞はEBウイルス陰性Akata細胞より外来性遺伝子の導入効率が高く、かつ安定に増殖することができるためである。
具体的には、まず、EBウイルスゲノム由来の遺伝子断片にpBeloBAC11(Genome Systems社)由来の大腸菌人工染色体(BAC)ベクター断片を挿入した相同組換え用遺伝子断片を作製し、これを野生型の環状EBウイルスゲノムを持つAkata細胞に導入して、相同組換えを起こしたクローンを選択する。次に、このクローンから調製したゲノムDNAで大腸菌をトランスフォームすることにより、BACとAkata細胞由来EBウイルスゲノムとを含むプラスミドを得る。大腸菌遺伝子組換え系においてこのプラスミド上のEBウイルスゲノムの任意の部位を欠失、変異させることができる。このようにして作製したパッケージングシグナルを欠失させたBAC−EBウイルスDNAをAkata細胞に導入して、Akata細胞内で相同組換えを生じさせることができる。
本発明の方法の第3の態様においては、EBウイルスのパッケージングシグナルを相同組換えにより欠失させる工程は、EBウイルスDNAを大腸菌人工染色体に組み込んで大腸菌に導入し、大腸菌菌体内で遺伝子組換えによりパッケージングシグナルが欠失したEBウイルスゲノムを作製し、これをEBウイルス陰性であってEBNA1を発現するAkata細胞に導入することにより行う。EBNA1を発現するAkata細胞は、EBウイルス陰性Akata細胞に、EBNA1遺伝子と適当な抗生物質耐性遺伝子とを連結した直鎖状DNAをトランスフェクションした後、この抗生物質で選択を行うことによりクローニングすることができる。EBNA1蛋白質はEBウイルスが細胞核内においてエピゾームとして複製・維持されるために必須の蛋白質であり、EBNA1を発現するAkata細胞ではエピゾーム形成の効率が高いと考えられる。
本発明はまた、上述の方法により製造されるパッケージング細胞を提供する。本発明のパッケージング細胞にパッケージングシグナルを含む外来遺伝子(アンプリコン)を導入して作製したアンプリコンプラスミド導入Akataパッケージング細胞において溶解感染誘導すると、TR(−)EBウイルスゲノムに由来するEBウイルス遺伝子産物を利用して、アンプリコンのDNAのみがウイルスの外被をまとってEBウイルスベクターとして産生される。すなわち、本発明のパッケージング細胞は、外来遺伝子を含みウイルス複製能力を持たないEBウイルスベクターを産生するためのヘルパー機能を有する。
すなわち、別の観点においては、本発明は、ウイルス複製能力を持たないEBウイルスベクターを産生するためのアンプリコンプラスミド導入Akataパッケージング細胞を製造する方法を提供する。この方法の概略が図2に示される。パッケージングシグナルを欠失したEBウイルスゲノムを保持するがパッケージングシグナルを有する野生型EBウイルスゲノムを保持しないパッケージング細胞に、アンプリコンプラスミドを導入し、適当な薬剤で選択することにより、アンプリコンプラスミドを含有するAkataパッケージング細胞をクローニングする。アンプリコンプラスミドの導入は、電気穿孔法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法、遺伝子銃法等により行うことができる。
「アンプリコンプラスミド」とは、ウイルス由来の遺伝子を含むが、ウイルス産生能を欠失したプラスミド(環状DNA)をいう。アンプリコンプラスミドは、パッケージングシグナルおよびウイルスの複製開始点を含み、ウイルス複製に必須な蛋白質をコードする遺伝子の1またはそれ以上を欠失している環状DNAである。好ましくは、アンプリコンプラスミドは選択のためのマーカー遺伝子を有する。特に好ましくは、アンプリコンプラスミドは、パッケージングシグナル、EBウイルス潜伏感染期の複製開始点oriP、EBウイルス溶解感染誘導期の複製開始点oriLyt、EBNA1を有する。さらに、EBウイルスベクターを外来遺伝子導入の目的で用いる場合には、アンプリコンプラスミドはさらに導入すべき所望の外来遺伝子を有する。
図2においては、アンプリコンプラスミドはマーカーとしてピューロマイシン耐性遺伝子を有しており、ピューロマイシンによりアンプリコンが導入されたアンプリコンプラスミド導入Akataパッケージング細胞の選択を行っているが、この細胞で機能するどのような選択マーカーを利用してもよい。好ましくはパッケージング細胞の作製に使用した選択マーカーとは異なる選択マーカーを用いる。
パッケージング細胞へのアンプリコンプラスミドの導入はまた、ウイルスゲノムを複製できないウイルスの感染による方法を用いてもよい。この方法の概略が図8に示される。EBウイルス陽性Akata細胞中においてEBウイルスゲノムの複製に重要な遺伝子を相同組換えにより欠失させる。図8においては相同組換えウイルスの選択にハイグロマイシン耐性遺伝子を使用している。分離した相同組換えウイルスと野生型ウイルスの両方を持つAkata細胞クローンを抗ヒトイムノグロブリン抗体で処理することにより、欠失したEBウイルス遺伝子産物が野生型ウイルスから供給されて、相同組換えウイルスと野生型ウイルスの両方が産生される。産生されたウイルス液をパッケージング細胞に感染させ、パッケージング細胞の作製に使用した選択マーカー(ネオマイシン)とウイルスゲノムを複製できないウイルスの作製に使用した選択マーカー(ハイグロマイシン)で選択すると同時に、細胞をクローニングすることにより、パッケージングシグナルを欠失したTR(−)EBウイルス遺伝子とウイルスゲノムの複製に重要な遺伝子を欠失したEBウイルス遺伝子のみを含有するアンプリコンプラスミド導入Akataパッケージング細胞を分離する。このようにして得られた、ウイルスゲノムの複製に重要な遺伝子を欠失したEBウイルス遺伝子をアンプリコンとして含有するAkataパッケージング細胞を抗ヒトイムノグロブリン抗体で処理することにより、EBウイルスの外被をまとったアンプリコンプラスミドのみがEBウイルスベクターとして放出される。
本発明はまた、上述の方法により製造される、導入されたアンプリコンプラスミドを持つAkataパッケージング細胞を提供する。本発明のアンプリコンプラスミドを持つAkataパッケージング細胞は、抗ヒトイムノグロブリン抗体で処理することにより、EBウイルスの外被をまとったアンプリコンプラスミドDNAをEBウイルスベクターとして産生する能力を有する。EBウイルスのゲノムはローリングサークル形式で伸長複製されるが、パッケージングシグナルを欠失していると切り出されず、従ってウイルス粒子に取り込まれない。一方、アンプリコンプラスミドの遺伝子もローリングサークル形式で伸長し、アンプリコンはコンカテマーを作って、パッケージングシグナルの部分で切断され、EBウイルスゲノムの大きさであるおよそ170kbのサイズでパッケージングされる(図7を参照)。すなわち、EBウイルスの外被をまとったアンプリコンプラスミドのみがEBウイルスベクターとして放出される。好ましくは、本発明の方法により製造されるアンプリコンプラスミドを持つAkataパッケージング細胞は、ウイルス複製能力を持たないEBウイルスベクターを最大で従来の方法の1,000倍以上の効率で産生し、かつ野生型EBウイルスを産生しない。
すなわち、別の観点においては、本発明は、上述の本発明の方法により製造されるアンプリコンプラスミド導入Akataパッケージング細胞を溶解感染誘導することにより、ウイルス外被に包まれたEBウイルスベクターを放出させることを含む、ウイルス複製能力を持たないEBウイルスベクターを産生する方法を提供する。アンプリコンプラスミド導入Akataパッケージング細胞の溶解感染誘導は、抗イムノグロブリン抗体で処理することにより容易に行うことができる。
さらに、本発明はまた、上述の方法にしたがって製造されるEBウイルスベクターを提供する。このEBウイルスベクターは、EBウイルス粒子中にアンプリコンプラスミドを含有しており、Bリンパ球に感染してこれを不死化する能力を有するが、自身をウイルス粒子として複製する能力を有しない。したがって、所望の抗体を産生するBリンパ球に本発明のEBウイルスベクターを感染させ、これを不死化してインビトロで増殖させることにより、ヒト抗体を容易に製造することができる。すなわち、本発明はまた、本発明のEBウイルスベクターを用いて不死化Bリンパ球を製造する方法、ならびに本発明の方法により製造される不死化Bリンパ球を提供する。また、アンプリコンプラスミドに所望の遺伝子を組み込んでおくことにより、従来困難だった末梢血静止期Bリンパ球への遺伝子導入が可能となる。静止期Bリンパ球においてのみ遺伝子の発現が可能なプロモーターを使用することにより、Bリンパ球特異的かつ高レベルな遺伝子発現が期待できる。
本明細書において明示的に引用される全ての特許および参考文献の内容は全て本明細書の一部としてここに引用する。また、本出願が有する優先権主張の基礎となる出願である日本特許出願2002−349467号の明細書および図面に記載の内容は全て本明細書の一部としてここに引用する。
以下に実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
本実施例では図1の方法に基づいてAkata株EBウイルスのパッケージングシグナルの破壊をおこなった。まず、pUC119に8kbのAkata株EBウイルスのBam−Nhet領域をクローニングし、pUC119Nhetを作製した(図3a)。クローニングしたBam−Nhet領域にはパッケージングシグナル(TR)が1個のみ存在した。次に、pUC119NhetのBspHIとEcoRI制限酵素部位の間にネオマイシン耐性遺伝子(neor)と赤色色素遺伝子(DsRed)を挿入することにより、TRが破壊された遺伝子破壊用のプラスミドpUCNhetneoRedを作製した(図3b)。このプラスミドDNAをEBウイルス陽性のAkata細胞に電気穿孔法で遺伝子導入を行った。
続いてAkata細胞のネオマイシン選択を行い、耐性となった約500個のクローンに対してDNAハイブリダイゼーション法を行い、相同組換えが起こった場合に出現するサイズのDNAバンドを持つAkata細胞クローンをスクリーニングした。制限酵素BamHIで消化したDNA断片を、ネオマイシン耐性遺伝子をプローブとして反応させ、予想される11.6kbのバンドを検出した。
次に、相同組換えが起こっているか否かを遺伝子増幅法で調べた。ANC F1およびANC R2はそれぞれ組換え部位の5’端および3’端外側で設計したプライマーであり、ANC R1およびANC F2はneorの内部で設計したプライマーである。図4にそれぞれのプライマーのおおよその位置と方向を示す。相同組換えが起こっている場合はANC F1とANC R1のプライマーペアによって、5.3kbのDNA断片が増幅され、ANC F2とANC R2のプライマーペアによって、10.3kbのDNA断片が増幅される。相同組換えが起こっていない場合は何も増幅されない。この方法で12個のクローンが相同組換えEBウイルスを保持していることを確認した。
次に、相同組換えによってパッケージングシグナルが破壊されたTR(−)ウイルスゲノムのみを持つAkata細胞の分離をおこなった。TR(−)EBウイルスゲノムを保持しているクローンである119細胞を選択培地(50%EBウイルス陰性Akata細胞培養上清,0.35mg/mlG418,50μMヒドロキシウレア)で10日培養後、ヒドロキシウレアを除いてさらに10日培養した。96穴プレートに1穴あたり0.5個の細胞が入るように希釈して培養を行い、増殖してきたクローンからTRの外側で設計したプライマーペアによる遺伝子増幅を行い、野生型のバンド(2.0kb)が脱落し、組換え型のバンド(5.7kb)のみが認められるAkata細胞クローンを分離した。さらにサザンブロット法によるDNA制限酵素切断パターンの変化から、パッケージングシグナルを欠失したEBウイルスのみを持つパッケージング細胞が分離されたことを確認した。
続いてAkata細胞のネオマイシン選択を行い、耐性となった約500個のクローンに対してDNAハイブリダイゼーション法を行い、相同組換えが起こった場合に出現するサイズのDNAバンドを持つAkata細胞クローンをスクリーニングした。制限酵素BamHIで消化したDNA断片を、ネオマイシン耐性遺伝子をプローブとして反応させ、予想される11.6kbのバンドを検出した。
次に、相同組換えが起こっているか否かを遺伝子増幅法で調べた。ANC F1およびANC R2はそれぞれ組換え部位の5’端および3’端外側で設計したプライマーであり、ANC R1およびANC F2はneorの内部で設計したプライマーである。図4にそれぞれのプライマーのおおよその位置と方向を示す。相同組換えが起こっている場合はANC F1とANC R1のプライマーペアによって、5.3kbのDNA断片が増幅され、ANC F2とANC R2のプライマーペアによって、10.3kbのDNA断片が増幅される。相同組換えが起こっていない場合は何も増幅されない。この方法で12個のクローンが相同組換えEBウイルスを保持していることを確認した。
次に、相同組換えによってパッケージングシグナルが破壊されたTR(−)ウイルスゲノムのみを持つAkata細胞の分離をおこなった。TR(−)EBウイルスゲノムを保持しているクローンである119細胞を選択培地(50%EBウイルス陰性Akata細胞培養上清,0.35mg/mlG418,50μMヒドロキシウレア)で10日培養後、ヒドロキシウレアを除いてさらに10日培養した。96穴プレートに1穴あたり0.5個の細胞が入るように希釈して培養を行い、増殖してきたクローンからTRの外側で設計したプライマーペアによる遺伝子増幅を行い、野生型のバンド(2.0kb)が脱落し、組換え型のバンド(5.7kb)のみが認められるAkata細胞クローンを分離した。さらにサザンブロット法によるDNA制限酵素切断パターンの変化から、パッケージングシグナルを欠失したEBウイルスのみを持つパッケージング細胞が分離されたことを確認した。
本実施例ではアンプリコンプラスミドを作製した。アンプリコンプラスミドとしてはパッケージングシグナル(TR)を持った構造が必要である。さらに、EBウイルス潜伏感染期の複製開始点oriPとoriPをトランスに活性化するEBNA1遺伝子を持っていることが導入細胞内でのプラスミドの維持に重要であり、EBウイルス溶解感染誘導期の複製開始点oriLytを持っていることが、抗ヒトイムノグロブリン抗体刺激によるアンプリコンプラスミド導入パッケージング細胞からのEBウイルスベクターの産生に必要である。図6bに作製したアンプリコンプラスミドを示す。EBウイルスの遺伝子としてはEBNA−1,oriP,TR,oriLytのみを含み、さらにレポーターとして用いる緑色蛍光蛋白質(GFP)遺伝子とアンプリコンプラスミドが細胞で維持されるための選択用のピューロマイシン耐性遺伝子を組み込んだ21kbのアンプリコンプラスミド(pPsi)である。ヘルパーウイルスのゲノムはローリングサークル形式で伸長複製されるが、TRを欠いているので切り出されない。従ってウイルス粒子に取り込まれることはない。一方、アンプリコンプラスミドの遺伝子もローリングサークル形式で伸長し、アンプリコンはコンカテマーを作って、TRの部分で切断され、EBウイルスゲノムの大きさであるおよそ170kbのサイズでパッケージングされる(図7)。すなわち、アンプリコンプラスミドの遺伝子を持つEBウイルスが放出される。
本実施例では作製したアンプリコンプラスミドpPsiをパッケージング細胞に電気穿孔法により遺伝子導入し、0.35μg/mlピューロマイシン,50%EBウイルス陰性Akata細胞培養上清,0.35mg/mlG418で選択培養を行った。その結果得られた72個のピューロマイシン耐性クローンはすべてGFP陽性であった。そのうち1個のクローンを抗ヒトイムノグロブリン抗体で処理し、EBウイルスの構成蛋白質であるキャプシド抗原(VCA)が発現していること、その上清に野生型ウイルスが存在しないことを確認した。さらに、上清中の組換えEBウイルスをEBウイルス陰性Daudi細胞に感染させたところ、20%弱の細胞が組換えEBウイルスに感染して、GFPを発現することが確認された。
本実施例では図8の方法に基づいてAkata株EBウイルスのEBウイルス一本鎖DNA結合蛋白質をコードするBALF2遺伝子をハイグロマイシン耐性遺伝子で置換することにより破壊欠失させた。まず、pUC119にAkata株EBウイルスのEco−DhetおよびEco−J領域の11,429塩基対のEcoRI−SalI断片をクローニングし、2,500塩基対のCla I−Eco RV領域を除去し、1,853塩基対のハイグロマイシン耐性遺伝子を挿入置換することにより、BALF2遺伝子が破壊された遺伝子破壊用のプラスミドpUC119 EcoD−JHygを作製した(図9a)。このプラスミドDNAの7,807塩基対のSac I−Bgl II断片をEBウイルス陽性Akata細胞に電気穿孔法で遺伝子導入を行った。
続いてAkata細胞のハイグロマイシン選択を行い、耐性となった約1,000個のクローンに対してDNAハイブリダイゼイション法を行い、相同組換えが起こった場合に出現するサイズのDNAバンドを持つAkata細胞クローンをスクリーニングした。制限酵素NcoIで消化したDNA断片を、図9bに示したハイグロマイシン耐性遺伝子をプローブとして反応させ、予想される4.8kbのバンドを5個のAkata細胞クローンから分離したDNAで検出した。
次に、遺伝子増幅法を用いて相同組換えが起こっていることを確認した。F1およびR2はそれぞれ組換え部位の5’端および3’端外側で設計したプライマーであり、HygFおよびHygRはそれぞれハイグロマイシン耐性遺伝子の内部で設計したプライマーである。図10にそれぞれのプライマーのおおよその位置と方向を示す。相同組換えが起こっている場合はF1とHygRのプライマーペアによって、4,112塩基対のDNA断片が増幅され、HygFとR2のプライマーペアによって、4,534塩基対のDNA断片が増幅される。相同組換えが起こっていない場合は何も増幅されない。この方法で2個のクローンが相同組換えEBウイルスを保持していることを確認した。
次に、相同組換えEBウイルスを保持しているクローンを抗ヒトイムノグロブリン抗体で処理し、組換え型と野生型の両方が混合したウイルスを産生させた。産生されたウイルス液を実施例1で作製したパッケージング細胞に感染させ、ネオマイシンとハイグロマイシンの存在下に細胞をクローニングすることにより、BALF2遺伝子を欠失したEBウイルスゲノムとヘルパーであるTR(−)EBウイルスゲノムのみを含有し、野生型ウイルスゲノムを持たないAkataパッケージング細胞を分離した。このAkataパッケージング細胞を抗ヒトイムノグロブリン抗体で処理し、BALF2遺伝子欠損EBウイルスのみからなるEBウイルスベクターを回収した。産生されたBALF2遺伝子欠損EBウイルスの10倍段階希釈液をそれぞれ100μlずつ5x105個の腑帯血由来リンパ球に感染させ4週間培養した。その結果、およそ105TD50/mlのトランスフォーミング活性を持つが、増殖不能なEBウイルスベクターが産生されたことを確認した。
続いてAkata細胞のハイグロマイシン選択を行い、耐性となった約1,000個のクローンに対してDNAハイブリダイゼイション法を行い、相同組換えが起こった場合に出現するサイズのDNAバンドを持つAkata細胞クローンをスクリーニングした。制限酵素NcoIで消化したDNA断片を、図9bに示したハイグロマイシン耐性遺伝子をプローブとして反応させ、予想される4.8kbのバンドを5個のAkata細胞クローンから分離したDNAで検出した。
次に、遺伝子増幅法を用いて相同組換えが起こっていることを確認した。F1およびR2はそれぞれ組換え部位の5’端および3’端外側で設計したプライマーであり、HygFおよびHygRはそれぞれハイグロマイシン耐性遺伝子の内部で設計したプライマーである。図10にそれぞれのプライマーのおおよその位置と方向を示す。相同組換えが起こっている場合はF1とHygRのプライマーペアによって、4,112塩基対のDNA断片が増幅され、HygFとR2のプライマーペアによって、4,534塩基対のDNA断片が増幅される。相同組換えが起こっていない場合は何も増幅されない。この方法で2個のクローンが相同組換えEBウイルスを保持していることを確認した。
次に、相同組換えEBウイルスを保持しているクローンを抗ヒトイムノグロブリン抗体で処理し、組換え型と野生型の両方が混合したウイルスを産生させた。産生されたウイルス液を実施例1で作製したパッケージング細胞に感染させ、ネオマイシンとハイグロマイシンの存在下に細胞をクローニングすることにより、BALF2遺伝子を欠失したEBウイルスゲノムとヘルパーであるTR(−)EBウイルスゲノムのみを含有し、野生型ウイルスゲノムを持たないAkataパッケージング細胞を分離した。このAkataパッケージング細胞を抗ヒトイムノグロブリン抗体で処理し、BALF2遺伝子欠損EBウイルスのみからなるEBウイルスベクターを回収した。産生されたBALF2遺伝子欠損EBウイルスの10倍段階希釈液をそれぞれ100μlずつ5x105個の腑帯血由来リンパ球に感染させ4週間培養した。その結果、およそ105TD50/mlのトランスフォーミング活性を持つが、増殖不能なEBウイルスベクターが産生されたことを確認した。
Claims (6)
- ウイルス複製能力を持たないEBウイルスベクターを産生する系を作製するために用いられるパッケージング細胞を製造する方法であって、
パッケージングシグナルが欠失した相同組換え用遺伝子断片をAkata細胞に導入することにより、EBウイルスのパッケージングシグナルを相同組換えにより欠失させ、そして
パッケージングシグナルを欠失したEBウイルスゲノムを保持するがパッケージングシグナルを有する野生型EBウイルスゲノムを保持しないパッケージング細胞をクローニングする、
の各工程を含む方法。 - ウイルス複製能力を持たないEBウイルスベクターを産生する系を作製するために用いられるパッケージング細胞を製造する方法であって、
パッケージングシグナルが欠失したEBウイルスゲノムを大腸菌を用いて作製し、該EBウイルスゲノムをEBウイルス陽性Akata細胞に導入し、そして
パッケージングシグナルを欠失したEBウイルスゲノムを保持するがパッケージングシグナルを有する野生型EBウイルスゲノムを保持しないパッケージング細胞をクローニングする、
の各工程を含む方法。 - ウイルス複製能力を持たないEBウイルスベクターを産生する系を作製するために用いられるパッケージング細胞を製造する方法であって、
パッケージングシグナルが欠失したEBウイルスゲノムを大腸菌を用いて作製し、該EBウイルスゲノムをEBウイルス陰性であってEBNA1を発現するAkata細胞に導入し、そして
パッケージングシグナルを欠失したEBウイルスゲノムを保持するがパッケージングシグナルを有する野生型EBウイルスゲノムを保持しないパッケージング細胞をクローニングする、
の各工程を含む方法。 - ウイルス複製能力を持たないEBウイルスベクターを産生するためのアンプリコンプラスミド導入Akataパッケージング細胞を製造する方法であって、請求項1−3のいずれかに記載の方法により得られたパッケージング細胞に、パッケージングシグナルを有するがウイルス複製能力を持たないアンプリコンプラスミドを導入する工程を含む方法。
- ウイルス複製能力を持たないEBウイルスベクターを産生する方法であって、請求項4記載の方法により製造されるアンプリコンプラスミド導入Akataパッケージング細胞を溶解感染誘導することにより、ウイルス外被に包まれたEBウイルスベクターを放出させることを含む方法。
- 不死化Bリンパ球を製造する方法であって、請求項4記載の方法により製造されるアンプリコンプラスミド導入Akataパッケージング細胞を溶解感染誘導することにより、ウイルス外被に包まれたEBウイルスベクターを放出させ、そして得られたEBウイルスベクターをBリンパ球に感染させることを含む方法。
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